(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】車両のための電気機械的なステアリングシステム用のステアリング伝動装置および車両のための電気機械的なステアリングシステム
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20221215BHJP
B62D 3/08 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B62D5/04
B62D3/08 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523018
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2020078841
(87)【国際公開番号】W WO2021074189
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】102019127953.4
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フーバ ネーメト
(72)【発明者】
【氏名】ベルント-ローベルト ヘーン
(72)【発明者】
【氏名】フランツ-トーマス ミッテラー
(72)【発明者】
【氏名】ヤーノス トート
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】アーメド ザレメ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン クリンケ
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB03
3D333CB14
3D333CC16
3D333CD12
3D333CD14
3D333CD16
3D333CD18
3D333CD21
3D333CE03
3D333CE05
3D333CE12
3D333CE14
(57)【要約】
車両のための電気機械的なステアリングシステム用のステアリング伝動装置(120)が提案される。ステアリング伝動装置(120)は、電動モータ(230)と、サーボ伝動装置(240)と、ステアリングシステムのステアリングコラムをステアリングシステムのピットマンアームに結合するための直交形伝動装置(250)とを有している。直交形伝動装置(250)は、ボールナット(254)を備えた、機械的に駆動されるボール循環伝動装置であり、ボールナットは、ステアリング伝動装置(120)の、ピットマンアームに結合可能または結合されたセグメント軸(122)に係合する。ボール循環伝動装置のスピンドル(252)は、連続的である。スピンドル(252)は、一方の側においてサーボ伝動装置(240)の出力軸に結合されている。サーボ伝動装置(240)は、電動モータ(230)により駆動可能または駆動される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)のための電気機械的なステアリングシステム(110)用のステアリング伝動装置(120)であって、前記ステアリング伝動装置(120)は、電動モータ(230)と、サーボ伝動装置(240)と、前記ステアリングシステム(110)のステアリングコラム(114)を前記ステアリングシステム(110)のピットマンアーム(116)に結合するための直交形伝動装置(250)とを有している、ステアリング伝動装置(120)において、
前記直交形伝動装置(250)は、ボールナット(254)を備えた、機械的に駆動されるボール循環伝動装置であり、前記ボールナット(254)は、前記ステアリング伝動装置(120)の、前記ピットマンアーム(116)に結合可能または結合されたセグメント軸(122)に係合しており、前記ボール循環伝動装置のスピンドル(252)は、連続的であり、前記スピンドル(252)は、一方の側において前記サーボ伝動装置(240)の出力軸に結合されており、前記サーボ伝動装置(240)は、前記電動モータ(230)により駆動可能または駆動されていることを特徴とする、ステアリング伝動装置(120)。
【請求項2】
前記サーボ伝動装置(240)は、遊星歯車伝動装置であって、前記遊星歯車伝動装置は、同一の歯数および幾何学形状を有するプラネタリギヤ(348)を有しており、前記プラネタリギヤ(348)は、互いに異なる歯数を有する、互いに独立した2つのリングギヤ(342,344)に噛み合っており、前記プラネタリギヤ(348)は、キャリヤ(346)を介して前記電動モータ(230)により駆動可能または駆動されている、請求項1記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項3】
前記サーボ伝動装置(240)は、偏心遊星歯車伝動装置であって、前記偏心遊星歯車伝動装置は、1つの共通のプラネタリギヤ(348)を有しており、前記プラネタリギヤ(348)は、2つのリングギヤ(342,344)に噛み合っており、前記2つのリングギヤ(342,344)間の歯数の差は、1以上であり、前記プラネタリギヤ(348)は、前記電動モータ(230)により駆動可能または駆動されているキャリヤに偏心的に組み付けられている、請求項1記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項4】
前記プラネタリギヤ(348)の歯先が、係合横断面に依存して切除されて成形されている、請求項3記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項5】
前記プラネタリギヤ(348)は、前記プラネタリギヤ(348)と前記両リングギヤ(342,344)のうちの少なくとも一方のリングギヤとの間の歯車係合のバックラッシを調節するために、キャリヤに調整可能に組み付けられている、請求項3または4記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項6】
前記少なくとも1つのプラネタリギヤ(348)および/またはリングギヤ(342,344)の歯領域が、形状シフトを伴って成形されている、請求項2から5までのいずれか1項記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項7】
前記ボール循環伝動装置の前記ボールナット(254)は、リニアガイド装置を有しており、前記リニアガイド装置は、前記セグメント軸(122)と前記ボールナット(254)との間の噛み合いにより導入される半径方向荷重を吸収するように形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項8】
前記リニアガイド装置は、滑り軸受、特に多層滑り軸受またはプラスチック滑り軸受として構成されている、請求項7記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項9】
前記リニアガイド装置は、転がり軸受、特にニードル軸受として、またはニードル軸受と転がり軸受との組合せとして構成されている、請求項7記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項10】
車両(100)のための電気機械的なステアリングシステム(110)であって、前記ステアリングシステム(110)は、ステアリングコラム(114)と、ピットマンアーム(116)とを有している、ステアリングシステム(110)において、
請求項1から9までのいずれか1項記載のステアリング伝動装置(120)が設けられており、前記ステアリングコラム(114)と前記ピットマンアーム(116)とが、前記ステアリング伝動装置(120)により互いに結合されていることを特徴とする、ステアリングシステム(110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のための電気機械的なステアリングシステム用のステアリング伝動装置と、車両、特に商用車のための電気機械的なステアリングシステムとに関する。
【0002】
商用車のステアリングシステムの一部としてのパワーステアリングシステムは通常、ハイドロリックシステムとして実現されていてもよい。ハイドロリックシステムは、エネルギ効率に関して不利であることがあり、操舵力を提供するために常時高い体積流量がステアリングを通して圧送されなければならない。さらに、たとえばドライバ支援システムのような、実際の操舵機能に対して付加的な機能拡張は、実現するのに手間がかかる。さらに、ステアリングポンプとステアリング伝動装置との間で、これらの組込み箇所が離れていることに基づいて、通常は複数の管路が必要となってしまう。これらの管路は、車両の組立て時に設置され、充填され、試験されなければならない。
【0003】
このような背景から、本発明の課題は、車両のための電気機械的なステアリングシステム用の改善されたステアリング伝動装置と、車両のための改善された電気機械的なステアリングシステムを提供することである。
【0004】
この課題は、独立請求項に記載の、車両のための電気機械的なステアリングシステム用のステアリング伝動装置および車両のための電気機械的なステアリングシステムにより解決される。
【0005】
実施形態によれば、特に、商用車のためのステアリングシステムのパワーステアリングのために、もしくは商用車のためのステアリングシステムのために、サーボ伝動装置ユニット、たとえば遊星歯車サーボ伝動装置ユニットまたは偏心サーボ伝動装置ユニットを、ボール循環伝動装置を備えた電気的なパワーステアリングシステムのために提供することができる。この場合、たとえば、電動的に駆動されるサーボ伝動装置、特に遊星歯車伝動装置または遊星歯車偏心伝動装置を備えたボール循環ステアリング伝動装置が、商用車の電気的なパワーステアリングのために配置されていてもよい。サーボ支援は、たとえば、電動モータにより駆動される遊星歯車サーボ伝動装置または遊星歯車偏心サーボ伝動装置により増幅されていてもよい。このようなサーボ伝動装置、特に遊星歯車サーボ伝動装置または遊星歯車偏心サーボ伝動装置は、ボール循環ステアリングユニットのスピンドルに結合されていてもよく、増幅された電気に支援されたトルクを、パワーステアリング伝動装置のセグメント軸もしくは出力軸に伝達することができる。
【0006】
有利には、実施形態によれば、特に、同一の伝達比を有する2つの伝動装置段を備えた従来の遊星歯車サーボ伝動装置と比較して、構造空間需要を減じることができる。付加的には、たとえば、従来の2段の遊星歯車伝動装置と比較して、噛み合っているもしくは係合している構成要素の個数を減じることができる。したがって、換言すると、車両、特に商用車の電気機械的なステアリングシステムのために、省スペースかつ低メンテナンスのステアリング伝動装置を提供することができる。したがって、従来の2段の遊星歯車伝動装置と比較して減じられた歯車の個数により、製造コストを減じることができる。
【0007】
車両のための電気機械的なステアリングシステム用のステアリング伝動装置は、電動モータと、サーボ伝動装置と、ステアリングシステムのステアリングコラムをステアリングシステムのピットマンアームに結合するための直交形伝動装置とを有していて、直交形伝動装置が、ボールナットを備えた、機械的に駆動されるボール循環伝動装置であり、ボールナットが、ステアリング伝動装置の、ピットマンアームに結合可能または結合されたセグメント軸に係合しており、ボール循環伝動装置のスピンドルが連続的であり、スピンドルが、一方の側においてサーボ伝動装置の出力軸に結合されており、サーボ伝動装置が、電動モータにより駆動可能である、または駆動されている。
【0008】
車両は、乗員と、付加的または代替的に物品とを輸送する自動車、特に商用車、たとえばトラック等であってもよい。各伝動装置は、伝動装置ユニットと呼ぶこともできる。サーボ伝動装置は、電動モータに連結されていてもよい。2つの構成要素が互いに結合または連結されている場合、これらの構成要素間で形状結合と、付加的または代替的に摩擦結合とが生じていてもよい。
【0009】
1つの実施形態によれば、サーボ伝動装置は、遊星歯車伝動装置であってもよい。この場合、遊星歯車伝動装置は、同一の歯数および幾何学形状を有する複数のプラネタリギヤを有していてもよい。これらのプラネタリギヤは、互いに異なる歯数を有する、互いに独立した2つのリングギヤに噛み合うことができる。プラネタリギヤは、キャリヤを介して電動モータにより駆動可能または駆動されていてもよい。プラネタリギヤは、キャリヤ上に組み付けられていてもよい。キャリヤは、電動モータによって駆動されていてもよい。このような実施形態は、ステアリングシステム用の電気機械的な駆動装置を、特に省スペースかつ信頼性よく、かつアンバランスなしに実現することができるという利点を提供する。
【0010】
代替的には、サーボ伝動装置が偏心遊星歯車伝動装置であってもよい。この場合、偏心遊星歯車伝動装置は、1つの共通のプラネタリギヤを有していてもよい。プラネタリギヤは、2つのリングギヤに噛み合うことができる。2つのリングギヤ間の歯数の差は、1以上であってもよい。プラネタリギヤは、電動モータにより駆動可能または駆動されているキャリヤに、偏心して組み付けられていてもよい。このような実施形態は、ステアリングシステムのために、特に省スペースかつ信頼性よく負荷可能である、電気機械的な駆動装置を提供することができるという利点を提供する。
【0011】
プラネタリギヤの歯先が、係合横断面に依存して切除されて成形されていてもよい。このような実施形態は、信頼性のよいトルク伝達を実現するために、種々異なる係合横断面を考慮することができるという利点を提供する。
【0012】
また、プラネタリギヤは、プラネタリギヤと両リングギヤのうちの少なくとも一方のリングギヤとの間の歯車係合のバックラッシを調節するために、キャリヤに調整可能に組み付けられていてもよい。より正確には、偏心を介して、ほとんどバックラッシなしで、伝動装置段もしくは段、たとえば好適には2段を調節することができる。このような実施形態は、最小限の摩耗および最小限の損失でトルク伝達を達成することができるという利点を提供する。
【0013】
1つの実施形態によれば、少なくとも1つのプラネタリギヤの歯領域と、付加的または代替的にリングギヤの歯領域とは、形状シフトを伴って成形されていてもよい。このような実施形態は、それぞれの歯車の適切かつ確実な係合もしくは噛み合いを達成することができるという利点を提供する。
【0014】
さらに、ボール循環伝動装置のボールナットが、リニアガイド装置を有していてもよく、このリニアガイド装置は、セグメント軸とボールナットとの間の噛み合いにより導入される半径方向荷重を吸収するように形成されている。このような実施形態は、運転時にボール機構に作用し得る半径方向荷重を低減するためのこのような補強および付加的な軸受取付けによって、ステアリング伝動装置の信頼性のよい連続運転を可能にすることができるという利点を提供する。
【0015】
この場合、リニアガイド装置は、滑り軸受、特に多層滑り軸受またはプラスチック滑り軸受として構成されていてもよい。このような実施形態は、従来の容易に入手可能である軸受装置を、信頼性のよい荷重支持を達成するために使用することができるという利点を提供する。
【0016】
代替的には、リニアガイド装置が、転がり軸受、特にニードル軸受として、またはニードル軸受と転がり軸受との組合せとして構成されていてもよい。このような実施形態で、従来の容易に入手可能な軸受装置を、信頼性のよい荷重支持を達成するために使用することができるという利点を提供する。
【0017】
車両のための電気機械的なステアリングシステムは、ステアリングコラムとピットマンアームとを有しており、電気機械的なステアリングシステムは、前述のステアリング伝動装置の1つの実施形態を有しており、ステアリングコラムとピットマンアームとは、ステアリング伝動装置によって互いに結合されている。
【0018】
電気機械的なステアリングシステムに関連して、ステアリングホイールにおけるステアリング入力のトルクを表すステアリングトルクと、電動モータおよびサーボ伝動装置により提供されるトルクを表す支援トルクとを直交形伝動装置を介してセグメント軸に加えるために、上述のステアリング伝動装置の1つの実施形態を有利に使用または利用することができる。電気機械的なステアリングシステムは、電気機械的なパワーステアリング、または電気機械的な駆動装置を備えたパワーステアリングとも呼ぶことができる。
【0019】
本明細書において提示されるアプローチの実施例を、図に関連した以下の説明においてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】1つの実施例による電気機械的なステアリングシステムを備えた車両の概略図である。
【
図2】1つの実施例によるステアリング伝動装置の概略図である。
【
図3】
図2に示したステアリング伝動装置の概略図である。
【
図4】
図2もしくは
図3に示したステアリング伝動装置の部分区分の概略図である。
【
図7】1つ実施例によるステアリング伝動装置の概略図である。
【
図8】
図7に示したステアリング伝動装置の概略図である。
【
図9】
図7もしくは
図8に示したステアリング伝動装置の概略図である。
【0021】
図1は、1つの実施例による電気機械的なステアリングシステム110を備えた車両100の概略図を示している。車両100は、自動車、特にたとえばトラック等のような商用車である。ステアリングシステム110は、ステアリングコラム114とピットマンアーム116とを有している。ステアリングコラム114は、ステアリングホイール112に結合されている。ステアリングホイール112は、ステアリングシステム110の一部であってもよい。ピットマンアーム116は、適切な装置を介して、たとえば車両100の1つのアクスルの操舵可能なホイールに連結されている。さらにステアリングシステム110は、ステアリング伝動装置120を有している。ステアリング伝動装置120は、電気機械的なステアリング伝動装置として、もしくは電気機械的な駆動装置を備えて構成されている。ステアリング伝動装置120により、もしくはステアリング伝動装置120を介して、ステアリングコラム114およびピットマンアーム116が互いに結合されている。
図1にはステアリング伝動装置120のセグメント軸122も示されている。セグメント軸122は、ピットマンアーム116に結合されている。ステアリング伝動装置120について、下記の図面に関連してさらに詳細に説明する。
【0022】
図2は、1つの実施例によるステアリング伝動装置120の概略図を示している。ここでは、ステアリング伝動装置120は斜視図で図示されている。ステアリング伝動装置120は、
図1に示したステアリング伝動装置に対応または類似している。したがって、ステアリング伝動装置120は、車両のための電気機械的なステアリングシステムのために設けられている。ステアリング伝動装置120は、電動モータ230と、サーボ伝動装置240もしくはサーボ伝動装置ユニット240と、直交形伝動装置250とを有している。さらに、ステアリング伝動装置120は、セグメント軸122と入力軸221とを有している。セグメント軸122は、ステアリングシステムのピットマンアームに連結可能または連結されている。セグメント軸122は、ピットマンアームを介して旋回運動をステアリングシステムのステアリングロッドに伝達するために働き、ステアリングロッドは、たとえば、車両のフロントホイールを所望の方向に運動させる。入力軸221は、ステアリングシステムのステアリングコラムに連結可能または連結されている。
【0023】
直交形伝動装置250は、ステアリングシステムの、入力軸221に連結されたステアリングコラムを、ステアリングシステムの、セグメント軸122に連結されたピットマンアームに結合するように構成されている。直交形伝動装置250は、機械的に駆動されるボール循環伝動装置である。この場合、直交形伝動装置250は、スピンドル252およびボールナット254を有している。ボールナット254は、セグメント軸122に歯付き区分256を介して連結されているか、もしくは係合している。スピンドル252は、連続的に構成されている。スピンドル252は、入力軸221とサーボ伝動装置240との間に延びている。入力軸221には、スピンドル252が一方の端部においてトーションバーを介して結合されている。反対側に位置する端部において、スピンドル252は、サーボ伝動装置240、より正確にはサーボ伝動装置240の出力軸に結合されている。サーボ伝動装置240は、電動モータ230によって駆動可能または駆動されている。電動モータ230は、サーボ伝動装置240に結合されている。
図2に図示した実施例によれば、サーボ伝動装置240は、遊星歯車サーボ伝動装置または遊星歯車伝動装置として構成されている。サーボ伝動装置240は、電動モータ230と直交形伝動装置250との間に接続されている。
【0024】
ステアリング伝動装置120は、たとえば、160ミリメートル×210ミリメートル×160ミリメートルの構造空間に一致する寸法を例示的に有している。
【0025】
図3は、
図2に示したステアリング伝動装置120の概略図を示している。
図3では、ステアリング伝動装置120は、部分断面図で図示されている。サーボ伝動装置240のうち、第1のリングギヤ342、第2のリングギヤ344、キャリヤ346および複数のプラネタリギヤ348のうちの1つのプラネタリギヤが示されている。遊星歯車伝動装置もしくは遊星歯車サーボ伝動装置として構成されたサーボ伝動装置240は、複数のプラネタリギヤ348を備えている。プラネタリギヤ348は、同一の歯数および同一の幾何学形状を有している。第1のリングギヤ342と第2のリングギヤ344とは、互いに独立している。さらに、第1のリングギヤ342と第2のリングギヤ344とは、互いに異なる歯数を有している。プラネタリギヤ348は、リングギヤ342および344に噛み合っている。プラネタリギヤ348は、キャリヤ346を介して電動モータ230に連結され、この電動モータ230により駆動可能または駆動されている。
【0026】
図3に図示した実施例による遊星歯車サーボ伝動装置ユニットもしくはサーボ伝動装置240は、中央歯車シャフトとしての内側歯列を有する2つのリングギヤ342,344もしくは2つの内歯歯車を備えた従来の遊星歯車伝動装置列と、電動モータ230のトルクにより駆動されるキャリヤ346またはキャリヤシャフトを含んでいる。キャリヤ346は、たとえば、公転するように配置された3つの遊星もしくはプラネタリギヤ348を含んでいる。各遊星は、両リングギヤ342,344もしくは外歯歯車に噛み合う。結果として生じる歯車係合力は、プラネタリシャフトに組み付けられているプラネタリベアリングによって吸収され、力はキャリヤ346もしくはプラネタリキャリヤに伝達される。第1のリングギヤ342は、ステアリング伝動装置120のハウジングに取り付けられているので、回転することはできない。第2のリングギヤ344は、軸ハブ接続等によってスピンドル252に直接結合されていて、サーボ伝動装置240の出力軸を成している。
【0027】
第1のリングギヤ342の歯数は、第2のリングギヤ344の歯数より若干少なく、これにより、1.0より幾らか大きな正のストールトルク比が生じる。ストールトルク比とは、キャリヤシャフトが固定であり、一方の中央シャフトが他方の中央シャフトを駆動する場合の遊星歯車セットにとって特徴的な比である。上述の歯車セット構成では、このことは、ウィリス方程式(Willis-Gleichung)で特定される高い比をもたらす。効率的な歯車接触のために、サーボ伝動装置240の歯車の歯は、低損失の歯として設計されていてもよく、この歯は、改善された効率のために延長されたスライドもしくは滑りを提供することができる。
【0028】
第1のリングギヤ342は、53の歯数zH1を有していてもよく、つまりzH1=53であってもよい。第2のリングギヤ344は、55の歯数zH2を有していてもよく、つまりzH2=55であってもよい。各プラネタリギヤ348は、23の歯数zPを有していてもよく、つまりzP=23であってもよい。電動モータ230のトルクは、たとえば20ニュートンメートルであってもよい。サーボ伝動装置240の効率ηは、たとえば、90.85%であってもよい。スピンドル252には、サーボ伝動装置240によって、たとえば512ニュートンメートルのトルクを伝達することができる。直交形伝動装置250の効率ηは、たとえば、90%であってもよい。直交形伝動装置250の伝達比iBSは、たとえば18であってもよく、つまりiBS=18であってもよく、総伝達比iGESは、たとえば495であってもよく、つまりiGES=495であってもよい。直交形伝動装置250からセグメント軸122に伝達されるトルクは、たとえば8197ニュートンメートルであってもよい。
【0029】
図4は、
図2もしくは
図3に示したステアリング伝動装置120の部分区分の概略図を示している。
図4では、ステアリング伝動装置120が、部分断面図で図示されている。ステアリング伝動装置120の、
図4に示した部分区分は、電動モータ230と、サーボ伝動装置240と、スピンドル252の部分区分とを含んでいる。
【0030】
図5は、
図2,
図3もしくは
図4に示したステアリング伝動装置の概略図を示している。
図5では、ステアリング伝動装置120は側面図で示されている。特に、
図5の図面は、視点が異なることを除いて、
図2の図面に一致する。
【0031】
図6は、
図2,
図3,
図4もしくは
図5に示したステアリング伝動装置の概略図を示している。
図6では、ステアリング伝動装置120は、電動モータ230を上から見た平面図で図示されている。特に、
図6の図面は、視点が異なることを除いて、
図2もしくは
図5に示した図面に一致する。ここでは、図示の関係で、ステアリング伝動装置120のうちセグメント軸122および電動モータ230が明示的に示されている。
【0032】
図7は、1つの実施例によるステアリング伝動装置120の概略図を示している。ステアリング伝動装置120は
図7では斜視図で図示されている。
図7に示したステアリング伝動装置120は、サーボ伝動装置240が偏心伝動装置、偏心遊星歯車伝動装置もしくは遊星歯車偏心伝動装置として構成されていることを除いて、
図2に示したステアリング伝動装置に一致している。
【0033】
ステアリング伝動装置120は、たとえば180ミリメートル×235ミリメートル×180ミリメートルの構造空間に対応する寸法を例示的に有している。
【0034】
図8は、
図7に示したステアリング伝動装置120の概略図を示している。
図8では、ステアリング伝動装置120が、部分断面図で図示されている。
図8の図面は、
図3に示した図面に類似している。
図8では、サーボ伝動装置240のうち、第1のリングギヤ342、第2のリングギヤ344および1つの共通のプラネタリギヤ348もしくはプラネタリギヤ対も示されている。共通のプラネタリギヤ348は、両リングギヤ342,344に噛み合っている。2つのリングギヤ342,344間の歯数の差は、1以上である。共通のプラネタリギヤ348は、電動モータ230により駆動可能または駆動されているキャリヤに、偏心して組み付けられている。
【0035】
遊星歯車偏心サーボ伝動装置ユニットまたは偏心伝動装置として構成されたサーボ伝動装置240は、中央歯車シャフトとしての内側歯を有する2つのリングギヤ342,344もしくは2つの内歯歯車を備えた従来の遊星歯車伝動装置列と、電動モータ230のトルクにより駆動されるキャリヤまたはキャリヤシャフトとを含んでいる。キャリヤは、電気機械または電動モータ230の回転軸に直接結合されていて、両リングギヤ342および344に噛み合うプラネタリギヤ348を有している。結果として生じる、歯車係合力は、プラネタリシャフトに組み付けられているプラネタリベアリングによって吸収され、力はキャリヤもしくはプラネタリキャリヤに伝達される。第1のリングギヤ342は、ステアリング伝動装置120のハウジングに取り付けられているので、回転することはできない。第2のリングギヤ344は、軸ハブ接続等によってスピンドル252に直接結合されていて、サーボ伝動装置240の出力軸を成している。
【0036】
1つの実施例によれば、キャリヤもしくはキャリヤシャフトとのプラネタリシャフトの結合は、調整可能に実施されている。したがって、組付け中に、偏心結合部を、プラネタリギヤ348と、両リングギヤ342,344の一方のリングギヤとの間の歯車係合のバックラッシを排除することができるように、調節することができる。バックラッシのない歯車係合は、サーボ伝動装置240もしくはステアリング伝動装置120の回転方向の変更をトルク中断なしに可能にする。
【0037】
第1のリングギヤ342の歯数は、第2のリングギヤ344の歯数よりも若干少なく、これにより、1.0より幾らか大きな正のストールトルク比が生じる。ストールトルク比とは、キャリヤシャフトが固定であり、一方の中央シャフトが他方の中央シャフトを駆動する場合の遊星歯車装置列にとって特徴的な比である。上述の歯車セット構成では、このことは、ウィリス方程式で特定される高い比をもたらす。共通のプラネタリギヤ348の歯数は、内歯歯車の歯数の差が約7または8であるように選択されている。
【0038】
第1のリングギヤ342は、28の歯数zH1を有していてもよく、つまりzH1=28であってもよい。第2のリングギヤ344は、29の歯数zH2を有していてもよく、つまりzH2=29であってもよい。共通のプラネタリギヤ348は、21の歯数zPを有していてもよく、つまりzP=21であってもよい。電動モータ230のトルクは、たとえば20ニュートンメートルであってもよい。サーボ伝動装置240の効率ηは、たとえば、92.85%であってもよい。スピンドル252には、サーボ伝動装置240によって、たとえば534ニュートンメートルのトルクを伝達することができる。直交形伝動装置250の効率ηは、たとえば、90%であってもよい。直交形伝動装置250の伝達比iBSは、たとえば、18であってもよく、つまりiBS=18であってもよい。総伝達比iGESは、たとえば、522であってもよく、つまりiGES=522であってもよい。直交形伝動装置250からセグメント軸122に伝達されるトルクは、たとえば、8699ニュートンメートルであってもよい。
【0039】
プラネタリギヤ348の歯幾何学形状は、2つのリングギヤ342,344との両歯車係合のために同一であり、このことは、プラネタリギヤ348の容易な製造を可能にする。固定的な第1のリングギヤ342との歯車係合は、プラネタリギヤ348の歯車の歯の上側領域にあり、スピンドル252もしくはスピンドルシャフトに結合されている第2のリングギヤ344との歯車係合は、プラネタリギヤ348の歯車の歯の下側領域にある。干渉を避けるために、プラネタリギヤ348の歯先は、スピンドル252に結合され、より多くの歯数を有する第2のリングギヤ344との係合の領域においてより小さな直径で回転させられる。効率的な歯車接触のために、歯車の歯は、低損失の歯として設計されていてもよく、この歯は、改善された効率のために延長されたスライドもしくは滑りを提供することができる。
【0040】
図9は、
図7もしくは
図8に示したステアリング伝動装置120の概略図を示している。
図9では、ステアリング伝動装置120は部分断面図で図示されている。
図9の図面は、
図4に示した図面に類似している。ステアリング伝動装置120の、
図9に示した部分区分は、電動モータ230、サーボ伝動装置240およびスピンドル252の部分区分を含んでいる。
【0041】
図10は、
図7,
図8もしくは
図9に示したステアリング伝動装置120の概略図である。
図10では、ステアリング伝動装置120が側面図で図示されている。
図10の図面は、
図5に示した図面に類似する。特に、
図10の図面は、視点が異なることを除いて、
図7に示した図面に一致する。
【0042】
図11は、
図7,
図8,
図9もしくは
図10に示したステアリング伝動装置120の概略図である。
図11では、ステアリング伝動装置120は、電動モータ230を上から見た平面図で図示されている。
図11の図面は、
図6に示した図面に類似する。特に、
図11の図面は、視点が異なることを除いて、
図7もしくは
図10に示した図面に一致する。図示の関係で、
図11では、ステアリング伝動装置120のうちセグメント軸122および電動モータ230が明示的に示されている。
【0043】
上述した図を参照して、ステアリング伝動装置120の1つの実施例によれば、少なくとも1つのプラネタリギヤ348および/またはリングギヤ342,344の歯領域も形状シフトを伴って成形されていてもよいことに留意されたい。
【符号の説明】
【0044】
100 車両
110 ステアリングシステム
112 ステアリングホイール
114 ステアリングコラム
116 ピットマンアーム
120 ステアリング伝動装置
122 セグメント軸
221 入力軸
230 電動モータ
240 サーボ伝動装置
250 直交形伝動装置
252 スピンドル
254 ボールナット
256 歯付き区分
342 第1のリングギヤ
344 第2のリングギヤ
346 キャリヤ
348 プラネタリギヤ
【国際調査報告】