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特表2022-553246車両のための電気機械的なステアリングシステム用のステアリング伝動装置および車両のための電気機械的なステアリングシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】車両のための電気機械的なステアリングシステム用のステアリング伝動装置および車両のための電気機械的なステアリングシステム
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523019
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2020078842
(87)【国際公開番号】W WO2021074190
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】102019127965.8
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ヴィルト
(72)【発明者】
【氏名】フランツ-トーマス ミッテラー
(72)【発明者】
【氏名】ヤーノス トート
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】アーメド ザレメ
(72)【発明者】
【氏名】フーバ ネーメト
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン クリンケ
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB03
3D333CB13
3D333CC16
3D333CD12
3D333CD14
3D333CD16
3D333CD21
3D333CE08
3D333CE12
(57)【要約】
車両のための電気機械的なステアリングシステム用のステアリング伝動装置(120)が提案される。ステアリング伝動装置(120)は、ステアリングシステムのステアリングコラムに連結可能または連結された入力軸(121)と、ステアリングシステムのピットマンアームに連結可能または連結されたセグメント軸(122)と、直交形伝動装置(240)と、サーボ伝動装置(250)と、該サーボ伝動装置(250)を駆動するための電動モータ(230)とを有している。直交形伝動装置(240)は、傘歯車伝動装置として構成されている。入力軸(121)および電動モータ(230)は、サーボ伝動装置(250)に結合されている。サーボ伝動装置(250)は、直交形伝動装置(240)に結合されている。直交形伝動装置(240)は、セグメント軸(122)に結合されている。直交形伝動装置(240)は、サーボ伝動装置(250)からのトルクを2つの伝達経路を介してセグメント軸(122)に伝達するように成形されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(100)のための電気機械的なステアリングシステム(110)用のステアリング伝動装置(120)であって、前記ステアリング伝動装置(120)は、前記ステアリングシステム(110)のステアリングコラム(114)に連結可能または連結された入力軸(121)と、前記ステアリングシステム(110)のピットマンアーム(116)に連結可能または連結されたセグメント軸(122)と、直交形伝動装置(240)と、サーボ伝動装置(250)と、該サーボ伝動装置(250)を駆動するための電動モータ(230)とを有している、ステアリング伝動装置(120)において、
前記直交形伝動装置(240)は、傘歯車伝動装置として構成されており、前記入力軸(121)および前記電動モータ(230)は、前記サーボ伝動装置(250)に結合されており、前記サーボ伝動装置(250)は、前記直交形伝動装置(240)に結合されており、前記直交形伝動装置(240)は、前記セグメント軸(122)に結合されており、前記直交形伝動装置(240)は、前記サーボ伝動装置(250)からのトルクを2つの伝達経路を介して前記セグメント軸(122)に伝達するように成形されていることを特徴とする、ステアリング伝動装置(120)。
【請求項2】
傘歯車伝動装置として構成された前記直交形伝動装置(240)は、傘歯車(242)と、第1のピニオン(244)と、第2のピニオン(246)とを有しており、前記ピニオン(244,246)は、前記傘歯車(242)に係合しており、前記第1のピニオン(244)は、前記サーボ伝動装置(250)の第1の構成要素(266)に結合されており、前記第2のピニオン(246)は、前記サーボ伝動装置(250)の第2の構成要素(262)に結合されており、前記第1のピニオン(244)は、前記伝達経路のうちの第1の伝達経路の一部であり、前記第2のピニオン(246)は、前記伝達経路のうちの第2の伝達経路の一部である、請求項1記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項3】
前記サーボ伝動装置(250)は、第1の遊星歯車伝動装置(260)と、第1の平歯車伝動装置(270)と、第2の遊星歯車伝動装置(280)と、第2の平歯車伝動装置(290)とを有しており、前記入力軸(121)は、前記第1の平歯車伝動装置(270)を介して前記第1の遊星歯車伝動装置(260)に結合されており、前記電動モータ(230)は、前記第2の遊星歯車伝動装置(280)および前記第2の平歯車伝動装置(290)を介して前記第1の遊星歯車伝動装置(260)に結合されており、前記第1の遊星歯車伝動装置(260)は、前記直交形伝動装置(240)に結合されている、請求項1または2記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項4】
前記第1の平歯車伝動装置(270)は、前記第2の平歯車伝動装置(290)と前記第1の遊星歯車伝動装置(260)との間に接続されており、前記第2の平歯車伝動装置(290)は、前記第2の遊星歯車伝動装置(280)と前記第1の平歯車伝動装置(270)との間に接続されている、請求項3記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項5】
前記第1の遊星歯車伝動装置(260)は、第1のリングギヤ(262)と、第1のサンギヤ(264)と、少なくとも1つの第1のプラネタリギヤ(266)とを有しており、前記第1のサンギヤ(264)は、前記平歯車伝動装置(270,290)に結合されており、前記少なくとも1つの第1のプラネタリギヤ(266)は、傘歯車伝動装置として構成されている前記直交形伝動装置(240)の2つのピニオン(244,246)のうちの第1のピニオン(244)に結合されており、前記第1のリングギヤ(262)は、傘歯車伝動装置として構成されている前記直交形伝動装置(240)の2つのピニオン(244,264)のうちの第2のピニオン(246)に結合されている、請求項3または4記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項6】
前記第2の遊星歯車伝動装置(280)は、第2のリングギヤ(382)と、第2のサンギヤ(384)と、少なくとも1つの第2のプラネタリギヤ(386)とを有しており、前記第2のリングギヤ(382)は、前記ステアリング伝動装置(120)のハウジング(424)に位置固定されており、前記第2のサンギヤ(384)は、前記電動モータ(230)に結合されており、前記少なくとも1つの第2のプラネタリギヤ(386)は、前記第2の平歯車伝動装置(290)に結合されている、請求項3から5までのいずれか1項記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項7】
前記サーボ伝動装置(250)は、前記入力軸(121)および前記電動モータ(230)からのトルクを前記直交形伝動装置(240)に伝達するために、平歯車伝動装置段(270,290)と、遊星歯車伝動装置段(260,280)とを有している、請求項1から6までのいずれか1項記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項8】
前記電動モータ(230)は、前記サーボ伝動装置(250)の別の遊星歯車伝動装置(280)を介して前記平歯車伝動装置段(270,290)に結合されている、請求項7記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項9】
前記サーボ伝動装置(250)は、前記入力軸(121)および前記電動モータ(230)からのトルクを前記直交形伝動装置(240)に伝達するために、ベルト駆動伝動装置段と、遊星歯車伝動装置段(260,280)とを有している、請求項1または2記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項10】
前記第1の平歯車伝動装置(270)は、ベルト伝動装置、チェーン伝動装置、ウォーム伝動装置、軸伝動装置または偏心伝動装置として構成されている、かつ/または前記第2の遊星歯車伝動装置(280)は、ベルト伝動装置、チェーン伝動装置、ウォーム伝動装置、軸伝動装置または偏心伝動装置として構成されている、かつ/または第2の平歯車伝動装置(290)は、ベルト伝動装置、チェーン伝動装置、ウォーム伝動装置、軸伝動装置または偏心伝動装置として構成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載のステアリング伝動装置(120)。
【請求項11】
車両(100)のための電気機械的なステアリングシステム(110)であって、該ステアリングシステム(110)は、ステアリングコラム(114)と、ピットマンアーム(116)とを有している、ステアリングシステムにおいて、
請求項1から10までのいずれか1項記載のステアリング伝動装置(120)が設けられており、前記ステアリングコラム(114)と前記ピットマンアーム(116)とが、前記ステアリング伝動装置(120)により互いに結合されていることを特徴とする、ステアリングシステム(110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のための電気機械的なステアリングシステム用のステアリング伝動装置と、車両、特に商用車のための電気機械的なステアリングシステムとに関する。
【0002】
商用車のステアリングシステムの一部としてのパワーステアリングシステムは通常、ハイドロリックシステムとして実現されていてよい。ハイドロリックシステムは、エネルギ効率に関して不利であることがあり、操舵力を提供するために常時高い体積流量がステアリングを通して圧送されなければならない。さらに、たとえばドライバ支援システムのような、実際の操舵機能に対して付加的な機能拡張は、実現するのに手間がかかる。さらに、ステアリングポンプとステアリング伝動装置との間で、これらの組込み箇所が離れていることに基づいて、通常は複数の管路が必要となってしまう。これらの管路は、車両の組立て時に設置され、充填され、試験されなければならない。
【0003】
このような背景から、本発明の課題は、車両のための電気機械的なステアリングシステム用の改善されたステアリング伝動装置と、車両のための改善された電気機械的なステアリングシステムを提供することである。
【0004】
この課題は、独立請求項に記載の、車両のための電気機械的なステアリングシステム用のステアリング伝動装置および車両のための電気機械的なステアリングシステムにより解決される。
【0005】
複数の実施形態により、特に商用車のためのステアリングシステムのパワーステアリングもしくは商用車のためのステアリングシステムのためのステアリング伝動装置として、傘歯車伝動装置として構成された直交形伝動装置を、遊星歯車サーボ伝動装置による電気的なパワーステアリングのために提供することができる。商用車のためのこのようなパワーステアリング伝動装置は、たとえばステアリング伝動装置の回転運動を傘歯車伝動装置によって出力軸の旋回運動に変換するように構成されていてよい。傘歯車伝動装置は、このような支援伝動装置の入力トルクが、ステアリング伝動装置の出力軸もしくはセグメント軸に結合されていてもよい傘歯車にトルクを加える2つの分配経路に分配されるように、構成されていてもよい。
【0006】
有利には、複数の実施形態により、頑丈でメンテナンスが少なく、信頼性のよいコンパクトなステアリング伝動装置もしくは電気機械的なステアリング伝動装置を提供することができる。このためには、操舵補助を、電動モータにより駆動されている、特に直列接続された2つの遊星歯車サーボ伝動装置によって増幅することができる。2つの遊星歯車サーボ伝動装置の間には、たとえば少なくとも1つの平歯車伝動装置が配置されていてもよい。これにより、ステアリングコラムもしくはステアリングホイールへの接続も実現されていてもよく、ステアリングホイール入力をサーボ伝動装置ユニットに加えることができる。特に、最後の伝動装置段において、ステアリング入力および支援トルクを傘歯車伝動装置に加えることができる。傘歯車伝動装置は、回転運動をピットマンアーム(Lenkstockhebel)の旋回運動に変換することができる。このピットマンアームは、操舵伝動装置の出力軸もしくはセグメント軸に取り付けられていてもよい。傘歯車伝動装置は、たとえば、このような支援伝動装置の入力トルクが2つの分配経路に分配され、これらの分配経路が、出力軸もしくはセグメント軸に結合されている傘歯車伝動装置の傘歯車にトルクを加えるように設計されていてもよい。
【0007】
車両のための電気機械的なステアリングシステム用のステアリング伝動装置は、ステアリングシステムのステアリングコラムに連結可能または連結された入力軸と、ステアリングシステムのピットマンアームに連結可能または連結されたセグメント軸と、直交形伝動装置と、サーボ伝動装置と、このサーボ伝動装置を駆動するための電動モータとを有しており、直交形伝動装置が、傘歯車伝動装置として構成されており、入力軸と電動モータとが、サーボ伝動装置に結合されており、サーボ伝動装置が、直交形伝動装置に結合されており、直交形伝動装置が、セグメント軸に結合されており、直交形伝動装置は、サーボ伝動装置からのトルクを2つの伝達経路を介してセグメント軸に伝達するように成形されている。
【0008】
車両は、乗員と、付加的または代替的に物品とを輸送する自動車、特に商用車、たとえばトラック等であってもよい。各伝動装置は、伝動装置ユニットと呼ぶこともできる。2つの構成要素が互いに係合、接続、または連結している場合、これらの構成要素間で形状結合と、付加的または代替的に摩擦結合とが生じていてもよい。
【0009】
特に、傘歯車伝動装置として構成された直交形伝動装置は、傘歯車、第1のピニオンおよび第2のピニオンを有していてもよい。ここで、これらのピニオンは傘歯車と係合していてもよい。第1のピニオンは、サーボ伝動装置の第1の構成要素に結合されていてもよい。第2のピニオンは、サーボ伝動装置の第2の構成要素に結合されていてもよい。第1のピニオンは、2つの伝達経路のうちの第1の伝達経路の一部であってもよい。第2のピニオンは、2つの伝達経路のうちの第2の伝達経路の一部であってもよい。この場合、ピニオンは、傘歯車の直径の対峙する端部で傘歯車に係合することができる。このような実施形態は、セグメント軸への信頼性のよい堅牢なトルク伝達を達成することができるという利点を提供する。
【0010】
1つの実施形態によれば、サーボ伝動装置は、第1の遊星歯車伝動装置、第1の平歯車伝動装置、第2の遊星歯車伝動装置および第2の平歯車伝動装置を有していてもよい。入力軸は、第1の平歯車伝動装置を介して第1の遊星歯車伝動装置に結合されていてもよい。電動モータは、第2の遊星歯車伝動装置および第2の平歯車伝動装置を介して第1の遊星歯車伝動装置に結合されていてもよい。第1の遊星歯車伝動装置は、直交形伝動装置に結合されていてもよい。これにより、有利な変速比と有利なトルク分配およびトルク伝達を実現することができる。
【0011】
第1の平歯車伝動装置は、第2の平歯車伝動装置と第1の遊星歯車伝動装置との間に接続されていてもよい。この場合、第2の平歯車伝動装置は、第2の遊星歯車伝動装置と第1の平歯車伝動装置との間に接続されていてもよい。このような実施形態は、平歯車伝動装置によって簡単な構造形式ならびに高い効率を達成することができるという利点を提供する。
【0012】
第1の遊星歯車伝動装置は、第1のリングギヤ、第1のサンギヤおよび少なくとも1つの第1のプラネタリギヤを有していてもよい。ここで、第1のサンギヤは、平歯車伝動装置に結合されていてもよい。少なくとも1つの第1のプラネタリギヤは、傘歯車伝動装置として構成された直交形伝動装置の2つのピニオンのうちの第1のピニオンに結合されていてもよい。第1のリングギヤは、傘歯車伝動装置として構成された直交形伝動装置の2つのピニオンのうちの第2のピニオンに結合されていてもよい。これにより、入力軸からのトルクと電動モータからのトルクを信頼性よく合成し、2つの伝達経路への有利なトルク分配を達成することができる。
【0013】
さらに、第2の遊星歯車伝動装置は、第2のリングギヤ、第2のサンギヤおよび少なくとも1つの第2のプラネタリギヤを有していてもよい。この場合、第2のリングギヤは、ステアリング伝動装置のハウジングに位置固定されていてもよい。第2のサンギヤは、電動モータに結合されていてもよい。少なくとも1つの第2のプラネタリギヤは、第2の平歯車伝動装置に結合されていてもよい。このような実施形態は、電動モータのトルクを有利な変速比で増幅することができるという利点を提供する。
【0014】
換言すると、サーボ伝動装置は、入力軸からのトルクおよび電動モータからのトルクを直交形伝動装置に伝達するために平歯車伝動装置段と遊星歯車伝動装置段とを有していてもよい。このような実施形態は、簡単な構造、有利な変速比ならびに高い効率を実現することができるという利点を提供する。
【0015】
電動モータは、サーボ伝動装置の別の遊星歯車伝動装置を介して平歯車伝動装置段に結合されていてもよい。このような実施形態は、電動モータのトルクの信頼性のよい増幅を引き起こすことができるという利点を提供する。
【0016】
1つの実施形態によれば、サーボ伝動装置は、入力軸からのトルクおよび電動モータからのトルクを直交形伝動装置に伝達するために、ベルト駆動伝動装置段および遊星歯車伝動装置段を有していてもよい。ベルト駆動伝動装置段は、ベルト伝動装置段とも呼ぶことができる。このような実施形態は、廉価かつメンテナンスの少ないトルク伝達を実現することができるという利点を提供する。
【0017】
特に、第1の平歯車伝動装置は、ベルト伝動装置、チェーン伝動装置、ウォーム伝動装置、軸伝動装置、または偏心伝動装置として構成されていてもよい。付加的または代替的には、第2の遊星歯車伝動装置が、ベルト伝動装置、チェーン伝動装置、ウォーム伝動装置、軸伝動装置、または偏心伝動装置として構成されていてもよい。付加的または代替的には、第2の平歯車伝動装置が、ベルト伝動装置、チェーン伝動装置、ウォーム伝動装置、軸伝動装置、または偏心伝動装置として構成されていてもよい。したがって、伝動装置タイプの多様な構成もしくは多様な使用および伝動装置の組み合わせの多様な構成もしくは多様な使用が生じる。
【0018】
車両のための電気機械的なステアリングシステムは、ステアリングコラムとピットマンアームとを有しており、電気機械的なステアリングシステムは、上述のステアリング伝動装置の1つの実施形態を有しており、ステアリングコラムとピットマンアームとは、ステアリング伝動装置によって互いに結合されている。
【0019】
電気機械的なステアリングシステムに関連して、ステアリングホイールにおけるステアリング入力のトルクを表すステアリングトルクと、電動モータおよびサーボ伝動装置により提供されるトルクを表す支援トルクとを直交形伝動装置を介してセグメント軸に加えるために、上述のステアリング伝動装置の1つの実施形態を有利に使用または利用することができる。電気機械的なステアリングシステムは、電気機械的なパワーステアリング、または電気機械的な駆動装置を備えたパワーステアリングとも呼ぶことができる。
【0020】
本明細書において提示されるアプローチの実施例を、図に関連した以下の説明においてもより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】1つの実施例による電気機械的なステアリングシステムを備えた車両の概略図である。
図2】1つの実施例によるステアリング伝動装置の概略図である。
図3図2に示したステアリング伝動装置の概略図である。
図4図2もしくは図3に示したステアリング伝動装置の概略図である。
図5図2図3もしくは図4に示したステアリング伝動装置の概略図である。
図6図2図3図4および図5に示したステアリング伝動装置の概略図である。
図7図2図3図4図5および図6に示したステアリング伝動装置の概略図である。
図8図2図3図4図5図6および図7に示したステアリング伝動装置の概略図である。
【0022】
図1は、1つの実施例による電気機械的なステアリングシステム110を備えた車両100の概略図を示している。車両100は、自動車、特にたとえばトラック等のような商用車である。ステアリングシステム110は、ステアリングコラム114とピットマンアーム116とを有している。ステアリングコラム114は、ステアリングホイール112に結合されている。ステアリングホイール112は、ステアリングシステム110の一部であってもよい。ピットマンアーム116は、適切な装置を介して、たとえば車両100の1つのアクスルの操舵可能なホイールに連結されている。さらにステアリングシステム110は、ステアリング伝動装置120を有している。ステアリング伝動装置120は、電気機械的なステアリング伝動装置として、もしくは電気機械的な駆動装置を備えて構成されている。ステアリング伝動装置120により、もしくはステアリング伝動装置120を介して、ステアリングコラム114およびピットマンアーム116が互いに結合されている。図1にはステアリング伝動装置120の入力軸121およびセグメント軸122も示されている。入力軸121は、ステアリングコラム114に結合されている。セグメント軸122は、ピットマンアーム116に結合されている。ステアリング伝動装置120について、下記の図面に関連して詳細に説明する。
【0023】
図2は、1つの実施例によるステアリング伝動装置120の概略図を示している。ステアリング伝動装置120は、図1に示したステアリング伝動装置に対応または類似している。したがって、ステアリング伝動装置120は、車両のための電気機械的なステアリングシステムのために設けられている。ステアリング伝動装置120は、ステアリングシステムのステアリングコラムに連結可能または連結された入力軸121と、ステアリングシステムのピットマンアームに連結可能または連結されたセグメント軸122と、直交形伝動装置240と、サーボ伝動装置250と、サーボ伝動装置250、ひいては直交形伝動装置240も駆動するための電動モータ230とを含んでいる。さらに、図2では、可視化する目的で、ステアリングシステムのステアリングホイール112が入力軸121に結合するものとして示されている。
【0024】
直交形伝動装置240は、傘歯車伝動装置として構成されている。入力軸121と電動モータ230とは、サーボ伝動装置250に結合されている。サーボ伝動装置250は、直交形伝動装置240に結合されている。直交形伝動装置240は、セグメント軸122に結合されている。直交形伝動装置240は、サーボ伝動装置250からのトルクを2つの伝達経路を介してセグメント軸122に伝達するように成形されている。
【0025】
傘歯車伝動装置として構成された直交形伝動装置240は、傘歯車242と、第1のピニオン244と、第2のピニオン246とを含んでいる。第1のピニオン244と第2のピニオン246とは、中間アクスル248に沿って延びる1つの共通の回転軸線を中心として回転可能に支承されている。第1のピニオン244は、中間アクスル248に取り付けられている。ピニオン244,246は、傘歯車242と係合している。傘歯車242の回転軸線は、中間アクスル248に対して垂直に、または直交して延びている。傘歯車242は、セグメント軸122に結合されている。第1のピニオン244は、2つの伝達経路のうちの第1の伝達経路の一部である。第2のピニオン246は、2つの伝達経路のうちの第2の伝達経路の一部である。
【0026】
サーボ伝動装置250は、第1の遊星歯車伝動装置260と、第1の平歯車伝動装置270と、第2の遊星歯車伝動装置280と、第2の平歯車伝動装置290とを有している。入力軸121は、第1の平歯車伝動装置270を介して第1の遊星歯車伝動装置260に結合されている。電動モータ230は、第2の遊星歯車伝動装置280および第2の平歯車伝動装置290を介して第1の遊星歯車伝動装置260に結合されている。第1の遊星歯車伝動装置260は、直交形伝動装置240に結合されている。
【0027】
第1の遊星歯車伝動装置260は、第1のリングギヤ262と、第1のサンギヤ264と、少なくとも1つの第1のプラネタリギヤ266とを有している。第1のサンギヤ264は、平歯車伝動装置270,290に結合されており、より詳細には、第1の平歯車伝動装置270に直接に結合されている。少なくとも1つの第1のプラネタリギヤ266は、直交形伝動装置240の第1のピニオン244に結合されている。したがって、第1のピニオン244は、サーボ伝動装置250の第1の構成要素としての少なくとも1つの第1のプラネタリギヤ266に結合されている。第1のリングギヤ262は、直交形伝動装置240の第2のピニオン246に結合されている。したがって、第2のピニオン246は、サーボ伝動装置250の第2の構成要素として第1のリングギヤ262に結合されている。
【0028】
たとえば、電動モータ230は、20ニュートンメートルのトルクを有しており、第2の遊星歯車伝動装置280および第2の平歯車伝動装置290は、97パーセントの効率を有しており、第1の平歯車伝動装置270は、約0.50の変速比および99パーセントの効率を有しており、第1の遊星歯車伝動装置260は、約-6の変速比および約97.5パーセントの効率を有しており、直交形伝動装置240の両伝達経路は、約3の変速比および90パーセントの効率を有しており、この場合、セグメント軸122において8500ニュートンメートルのトルクが生じる。
【0029】
図3は、図2に示したステアリング伝動装置120の概略図を示している。図3に示したステアリング伝動装置120は、付加的に第2の遊星歯車伝動装置280および第2の平歯車伝動装置290が明示的もしくはより詳細に図示されていることを除いて、図2に示したステアリング伝動装置に一致する。
【0030】
第2の遊星歯車伝動装置280は、第2のリングギヤ382と、第2のサンギヤ384と、少なくとも1つの第2のプラネタリギヤ386とを有している。第2のリングギヤ382は、ステアリング伝動装置120のハウジングに位置固定されている。第2のサンギヤ384は、電動モータ230に結合されている。少なくとも1つの第2のプラネタリギヤ386は、第2の平歯車伝動装置290に結合されている。したがって、第1の平歯車伝動装置270は、第2の平歯車伝動装置290と第1の遊星歯車伝動装置260との間に接続されている。第2の平歯車伝動装置290は、第2の遊星歯車伝動装置280と第1の平歯車伝動装置270との間に接続されている。
【0031】
電動モータ230は、たとえば、運転時に20ニュートンメートルのトルクを有しており、第2の遊星歯車伝動装置280は、たとえば、5.0の変速比を有しており、第2の平歯車伝動装置290は、たとえば2.56の変速比を有しており、この場合、第1の遊星歯車伝動装置260において、たとえば組み合わせられた伝動装置280,290のための効率が97%である場合に、入力側でたとえば248ニュートンメートルの第1のトルクが生じ、たとえば伝動装置260のための効率が98%である場合に、たとえば1453ニュートンメートルの第2のトルクと、たとえば1695ニュートンメートルの第3のトルクとが出力側で生じる。したがって、直交形伝動装置240において、たとえば直交形伝動装置240のための効率が90%である場合に、第1の伝達経路のために、たとえば4577ニュートンメートルのトルクが出力側で生じ、第2の伝達経路のために、たとえば3923ニュートンメートルのトルクが出力側で生じ、セグメント軸122において、たとえば8500Nmである合算された総トルクが生じる。
【0032】
図4は、図2もしくは図3に示したステアリング伝動装置120の概略図を示している。ここでは、ステアリング伝動装置120が斜視図で図示されている。図示の関係で、図4では、ステアリング伝動装置120のうち、入力軸121、セグメント軸122、電動モータ230、さらに直交形伝動装置の傘歯車242、第1のピニオン244、第2のピニオン246および中間アクスル248、さらにサーボ伝動装置の第1の遊星歯車伝動装置260、第1の平歯車伝動装置270、第2の遊星歯車伝動装置280および第2の平歯車伝動装置290ならびに付加的に別の入力軸423およびハウジング424が明示的に示されている。
【0033】
図4に図示された実施例による、商用車のための電気機械的なステアリング伝動装置120は、トーションバーにより傘歯車伝動装置240の中間軸248に結合されている別の入力軸423を含んでいる。傘歯車伝動装置240は、出力軸またはセグメント軸122に結合されており、出力軸もしくはセグメント軸は、ピットマンアームおよび結合された被操舵ホイール、特に車両のフロントホイールへの操舵入力のための旋回運動を実施する。第1の遊星歯車伝動装置260および第1の平歯車伝動装置270は、ステアリングホイールに直接に結合された入力軸121によって導入されたステアリングトルクおよび運動量を増幅させる。電動モータ230により形成される支援トルクは、第2の遊星歯車伝動装置280および第2の平歯車伝動装置290によって増幅されて、第1の遊星歯車伝動装置260に伝達される。
【0034】
ステアリング伝動装置120は、たとえば250ミリメートル×635ミリメートル×255ミリメートルの構造空間に対応する寸法を例示的に有している。
【0035】
図5は、図2図3もしくは図4に示したステアリング伝動装置120の概略図を示している。ステアリング伝動装置120は、図5では、中間アクスル248に関して垂直もしくは直交する平面図で図示されている。図5の図面は、図5では視点が異なっており、図示の関係でセグメント軸が隠れていることを除いて、図4の図面に一致している。
【0036】
図6は、図2図3図4もしくは図5に示したステアリング伝動装置120の概略図を示している。ステアリング伝動装置120は、図6では、中間アクスル248に関して垂直もしくは直交する平面図で、かつ図5に示した視点に対して約90度回転されて図示されている。図6の図面は、図6では視点が異なっており、図示の関係で入力軸が隠れていることを除いて、図4の図面に一致している。
【0037】
図7は、図2図3図4図5もしくは図6に示したステアリング伝動装置120の概略図を示している。ステアリング伝動装置120は、図7では、電動モータ230を中間アクスルに沿って上から見た平面図で図示されている。図7の図面は、図7では図示の関係でステアリング伝動装置120のうち、入力軸121、セグメント軸122、電動モータ230、第1の平歯車伝動装置270、第2の平歯車伝動装置290およびハウジング424のみが明示的に示されていることを除いて、図4図5もしくは図6の図面に一致する。
【0038】
図8は、図2図3図4図5図6および図7に示したステアリング伝動装置120の概略図を示している。ステアリング伝動装置120は、図8では、中間アクスルに沿った概略的な部分断面図で図示されている。図8の図面は、図8では見やすさおよび利用可能なスペースの理由から、ステアリング伝動装置120のうち、入力軸121、セグメント軸122、電動モータ230、平歯車伝動装置240およびサーボ伝動装置250のみが示されていることを除いて、図2もしくは図3の図面に類似または一致する。
【0039】
上記で説明した図面を参照しながら、1つの実施例によるステアリング伝動装置もしくは運転中のステアリング伝動装置の機能について、以下にもう一度要約して異なる言葉で説明する。
【0040】
ドライバに起因するステアリングトルクは、平歯車伝動装置段もしくは第1の平歯車伝動装置270によって、第1の遊星歯車伝動装置セットもしくは第1の遊星歯車伝動装置260の、第1のサンギヤ264を支持するサンギヤ軸に伝達される。第1の遊星歯車伝動装置260は、サンギヤ軸、少なくとも1つの第1のプラネタリギヤ266を支持するキャリヤ軸および第1のリングギヤ262を支持するリングギヤ軸ならびに負のストールトルク比(Standuebersetzung)を有する従来の公転伝動装置列として構成されている。第1の遊星歯車伝動装置260は、入力された出力を、分離した2つの経路、すなわち遊星キャリヤに沿った一方の経路と、リングギヤ軸に沿った他方の経路とに分配するように構成されている。遊星キャリヤまたはキャリヤ軸は、中間軸248に結合されており、傘歯車伝動装置セットもしくは直交形伝動装置240の第1のピニオン244を駆動する。リングギヤ軸は、直交形伝動装置240の第2のピニオン246に結合されている。キャリヤ軸の回転方向は、リングギヤ軸の回転方向と反対である。第1の遊星歯車伝動装置260のキャリヤ軸およびリングギヤ軸の出力が負であるので、トルクも互いに異なる方向を有している。直交形伝動装置240のピニオン244、246は、反対に位置する側で噛み合うか、または係合するので、両出力経路もしくは伝達経路から到来する出力は、出力軸もしくはセグメント軸122に合算される。
【0041】
電動モータ230により形成された支援トルクは、第2の遊星歯車伝動装置280および第2の平歯車伝動装置290により増幅されて、第1の遊星歯車伝動装置260のサンギヤ軸に伝達され、ここで、変換されたステアリングトルクに重畳される。第2の遊星歯車伝動装置280は、第2のサンギヤ384を支持するサンギヤ軸、少なくとも1つの第2のプラネタリギヤ386を支持するキャリヤ軸および第2のリングギヤ382を支持するリングギヤ軸ならびに負のストールトルク比を有する従来の公転伝動装置列として構成されている。第2のリングギヤ382は、ステアリング伝動装置120のハウジング484に位置固定されている。電動モータ230のロータ軸もしくは回転軸の入力トルクは、第2の遊星歯車伝動装置280において、公転伝動装置列の一般法則に従って増幅されてキャリヤ軸に伝達される。キャリヤ軸は、後置された平歯車伝動装置段もしくは第2の平歯車伝動装置290のピニオンに結合されている。第2の平歯車伝動装置290の被駆動ギヤは、第1の遊星歯車伝動装置260のサンギヤ軸に取り付けられている。これ以降は、出力の流れ経路は、ドライバのステアリングトルクの流れ経路と同一である。
【0042】
これらの実施例の別の利点は、たとえば顧客の要望または製造者の要望に応じたステアリング伝達比の調整が、平歯車伝動装置270の平歯車の対応する設計もしくは寸法設定により容易に実現可能であり、さらにステアリングホイール112、入力軸121および第1の平歯車伝動装置270の省略によってステアリング・バイ・ワイヤ・ステアリングシステムの簡単な実現が与えられ、多様な伝動装置タイプの構成もしくは多様な伝動装置タイプの利用および第1の平歯車伝動装置270、第2の遊星歯車伝動装置280および第2の平歯車伝動装置290の伝動装置の組み合わせが可能であることにある。その際に考えられる伝動装置バリエーションは、ベルト伝動装置、チェーン伝動装置、ウォーム伝動装置、軸伝動装置、偏心伝動装置のような全ての汎用もしくは既知のタイプを含んでいる。
【符号の説明】
【0043】
100 車両
110 ステアリングシステム
112 ステアリングホイール
114 ステアリングコラム
116 ピットマンアーム
120 ステアリング伝動装置
121 入力軸
122 セグメント軸
230 電動モータ
240 直交形伝動装置
242 傘歯車
244 第1のピニオン
246 第2のピニオン
248 中間アクスル
250 サーボ伝動装置
260 第1の遊星歯車伝動装置
262 第1のリングギヤ
264 第1のサンギヤ
266 第1のプラネタリギヤ
270 第1の平歯車伝動装置
280 第2の遊星歯車伝動装置
290 第2の平歯車伝動装置
382 第2のリングギヤ
384 第2のサンギヤ
386 第2のプラネタリギヤ
423 別の入力軸
424 ハウジング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】