(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】新製剤
(51)【国際特許分類】
C07D 285/08 20060101AFI20221215BHJP
A61K 31/433 20060101ALI20221215BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20221215BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221215BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20221215BHJP
A61K 9/30 20060101ALI20221215BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20221215BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221215BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221215BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221215BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20221215BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20221215BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20221215BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20221215BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C07D285/08 CSP
A61K31/433
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/30
A61K47/44
A61K47/38
A61K47/32
A61P43/00 111
A61P3/10
A61P3/04
A61P9/00
A61P35/00
A61K47/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523275
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 GB2020052618
(87)【国際公開番号】W WO2021074646
(87)【国際公開日】2021-04-22
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522156427
【氏名又は名称】ベタゲノン アーベー
【氏名又は名称原語表記】BETAGENON AB
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】エドランド トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウェストマン ヤコブ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA36
4C076AA45
4C076AA53
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4C076GG03
4C076GG18
4C086AA01
4C086AA10
4C086BC86
4C086MA01
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4C086NA14
4C086ZA36
4C086ZA70
4C086ZB26
4C086ZC35
4C086ZC41
(57)【要約】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのアルカリ金属塩及びその製剤が提供される。この塩は、AMPKの活性化によって改善される障害又は病態の治療又は予防において特定の有用性を見出す。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのアルカリ金属塩。
【請求項2】
前記塩が、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム又はカリウム塩である、請求項1に記載の塩。
【請求項3】
前記塩が、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩である、請求項2に記載の塩。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の塩を含む、薬学的製剤。
【請求項5】
前記塩が、粉砕されている、請求項4に記載の薬学的製剤。
【請求項6】
前記製剤が、請求項1~3のいずれか一項に記載の塩を含有する粒子を含み、前記粒子が、10μm未満のD90によって定義される粒径分布を有する、請求項4又は請求項5に記載の薬学的製剤。
【請求項7】
前記粒子が、9μm未満のD90、6μm未満のD50、5μm未満のD50、2μm未満のD10、又は1.5μm未満のD10によって定義される粒径分布を有する、請求項4~6のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項8】
前記製剤が、腸溶コーティングをさらに含む、請求項4~7のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項9】
前記腸溶コーティングが、蜜蝋、シェラック、アルキルセルロースポリマー樹脂(例えば、エチルセルロースポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)又はアクリルポリマー樹脂(例えば、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、コポリマー、メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、メタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸)(無水物)、メチルメタクリレート、ポリメタクリレート、メチルメタクリレートコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(メタクリル酸無水物)、及びグリシジルメタクリレートコポリマー)、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレートを含む、請求項8に記載の薬学的製剤。
【請求項10】
前記製剤が、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項4~9のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項11】
前記少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤が、滑沢剤、結合剤、充填剤、界面活性剤、希釈剤、付着防止剤、コーティング、香味料、着色剤、滑剤、防腐剤、甘味料、崩壊剤、吸着剤、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、溶解促進剤、溶解遅延剤、及び湿潤剤からなる群から選択される、請求項10に記載の薬学的製剤。
【請求項12】
前記製剤が、PVP K30、Na-ドキュセート、及びマンニトールを含む、請求項10又は請求項11に記載の薬学的製剤。
【請求項13】
前記製剤が、カプセル又は錠剤の形態で提供される、請求項4~12のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
前記腸溶コーティングが、前記カプセル又は錠剤上に存在する、請求項13に記載の薬学的製剤。
【請求項15】
前記カプセル又は錠剤が、前記塩を含む粒子を含有し、各粒子が、前記腸溶コーティングでコーティングされている、請求項13又は14に記載の薬学的製剤。
【請求項16】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル] -3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの前記塩が、前記塩を含有する粒子が10μm未満のD90によって定義される粒径分布を有するように粉砕されており、前記製剤が、腸溶コーティングをさらに含む、請求項4~15のいずれか一項に記載の薬学的製剤。
【請求項17】
AMPKの活性化によって改善される障害又は病態の治療のための医薬品の製造における、請求項1~3のいずれか一項に記載の塩又は請求項4~16のいずれか一項に記載の薬学的製剤の使用。
【請求項18】
AMPKの活性化によって改善される障害又は病態の治療方法であって、治療を必要とする対象に、請求項1~3のいずれか一項に記載の塩又は請求項4~16のいずれか一項に記載の薬学的製剤を投与することを含む、方法。
【請求項19】
AMPKの活性化によって改善される前記障害又は病態が、2型糖尿病である、請求項17に記載の使用又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
AMPKの活性化によって改善される前記障害又は病態が、肥満症及び心血管疾患からなる群から選択される高インスリン血症に関連する病態である、請求項17に記載の使用又は請求項18に記載の方法。
【請求項21】
AMPKの活性化によって改善される前記障害又は病態が、がんである、請求項17に記載の使用又は請求項18に記載の方法。
【請求項22】
請求項6~16のいずれか一項に記載の薬学的製剤を調製するためのプロセスであって、前記プロセスが、請求項1~3のいずれか一項に記載の塩を、任意選択的に1つ以上の賦形剤と一緒に粉砕して、10μm未満のD90によって定義される粒径分布を有する粒子を生成することを含む、プロセス。
【請求項23】
前記プロセスが、乾式粉砕を含み、任意選択的に、前記乾式粉砕が、ジェット粉砕を伴う、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの前記塩が、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの前記塩を粉砕した後、1つ以上の賦形剤と混合される、請求項22又は請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
前記薬学的製剤が、カプセル又は錠剤の形態で提供され、前記プロセスが、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの前記粉砕塩が前記カプセル又は錠剤に組み込まれた後に、前記腸溶コーティングで前記カプセル又は錠剤をコーティングする工程をさらに含む、請求項22~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項26】
前記薬学的製剤が、カプセル又は錠剤の形態で提供され、前記プロセスが、前記粉砕塩が前記カプセル又は錠剤に組み込まれる前に、前記腸溶コーティングを4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの前記粉砕塩に適用する工程をさらに含む、請求項22~24のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の薬学的有効成分のアルカリ金属塩、及び医薬品におけるそのような塩の使用に関する。特に、本発明は、粉砕された有効成分のアルカリ金属塩を含む経口製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)は、3つのタンパク質サブユニットからなるプロテインキナーゼ酵素であり、ホルモン、サイトカイン、運動、及び細胞のエネルギー状態を低下させるストレス(例えば、グルコース欠乏)によって活性化される。AMPKの活性化は、アデノシン5’-三リン酸(ATP)を生成するプロセス(例えば、脂肪酸酸化)を増加させ、ATPを消費するが、生存に緊急に必要ではない脂肪酸合成、グリセロ脂質合成、及びタンパク質合成などの他のプロセスを制限する。逆に、細胞に過剰なグルコースが持続的に提示されると、AMPK活性が低下し、脂肪酸合成、グリセロ脂質合成、及びタンパク質合成が増強される。したがって、AMPKは、細胞のエネルギー恒常性に重要な役割を果たすプロテインキナーゼ酵素である。したがって、AMPKの活性化は、グルコース低下作用と結びついており、コレステロール合成の阻害、脂質生成、トリグリセリド合成、及び高インスリン血症の低減を含む、他のいくつかの生物学的作用を引き起こす。
【0003】
上記を考慮すると、AMPKはメタボリックシンドローム、特に2型糖尿病の治療に好ましい標的である。AMPKはまた、多くの異なる疾患に重要な多くの経路にも関与している(例えば、AMPKはまた、CNS障害、線維症、骨粗鬆症、心不全、及び性的機能不全に重要である多くの経路にも関与している)。
【0004】
AMPKはまた、がんにおいて重要である多くの経路にも関与している。いくつかの腫瘍抑制因子は、AMPK経路の一部である。AMPKは、哺乳類TOR(mTOR)及びEF2経路の負の調節因子として機能し、これらは、細胞の成長と増殖の主要な調節因子である。したがって、調節解除は、がん(並びに糖尿病)などの疾患に関連している可能性がある。したがって、AMPK活性化因子は、抗がん剤として有用であり得る。
【0005】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(すなわち、式Iの化合物)は、WO2011/004162において最初に開示され、AMPK活性化因子であることが示されている。
【0006】
【0007】
AMPKアゴニスト(すなわち、AMPK活性化因子)として、式Iの化合物は、AMPKの活性化によって改善される障害また病態の治療に有用である。そのような化合物は、がん、糖尿病、心血管疾患、高インスリン血症及び関連する病態、線維症が役割を果たす病態/障害、性的機能不全、骨粗鬆症並びに神経変性疾患の治療に有用であり得る。
【発明の概要】
【0008】
医学におけるそれらの有効性を改善するために、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドなどの有効成分のインビボにおける生物学的利用能を改善する必要性が残っている。本発明者らは、式Iの化合物の特定の塩の使用が、驚くべきことに、インビボでの該化合物についての生物学的利用能を向上させることを見出した。
【0009】
本明細書における明らかに先に公開された文献のリスト又は考察は、その文献が最新技術の一部であるか、又は共通の一般知識であるという認識として必ずしも解釈されるべきではない。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのアルカリ金属塩が提供される。
【0011】
「アルカリ金属」は、水素とともに周期表の第I族に含まれる金属である。アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、及びフランシウムである。したがって、「アルカリ金属塩」は、1つ以上のアルカリ金属のカチオン及び関連するアニオンの集合体からなる化合物であることが理解されよう。
【0012】
したがって、「4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのアルカリ金属塩」という用語は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのアルカリ金属カチオン(例えば、リチウム、ルビジウム、セシウム及び、特に、ナトリウム並びにカリウム)とアニオンとを含む化合物を指す。例えば、「4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのアルカリ金属塩は、式IIの化合物と称され得、
【0013】
【化2】
式中、X
+は、アルカリ金属(例えば、リチウム、ルビジウム、セシウム、又は、特に、ナトリウム若しくはカリウム)カチオンを表す。
【0014】
当業者は、好適な溶媒(例えば、水)に溶解すると、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのアルカリ金属塩が、そのアニオン性成分及びカチオン性成分に解離し得ることを認識されよう。
【0015】
化合物名4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、市販のソフトウェアパッケージAutonom(MDL Information Systemsが販売するSymyx Draw2.1(商標)オフィススイートで使用するためのアドオンとして提供される命名ソフトウェアのブランド)を使用して導出された。
【0016】
この明細書全体を通して、構造は、化学名とともに表示される場合があるか、又は表示されない場合がある。命名法に関して任意の疑問が生じた場合は、構造が優先する。化合物が互変異性体として(例えば、代替共鳴形態で)存在する可能性がある場合、描写された構造は、可能な互変異性体の形態の1つを表し、観察された実際の互変異性体の形態は、溶媒、温度、又はpHなどの環境要因に依存して変わる可能性がある。全ての互変異性体(及び共鳴)形態並びにそれらの混合物は、本発明の範囲内に含まれる。例えば、以下の互変異性体が本発明の範囲内に含まれる。
【0017】
【0018】
誤解を避けるために、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのアルカリ金属塩は、周囲条件下で固体であり、したがって、本発明の範囲は、その全ての非晶質、結晶性及び部分結晶性形態を含む。
【0019】
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのアルカリ金属塩は、当業者に周知である技術に従って調製され得る。例えば、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、適切なアルカリ金属水酸化物と、又は代替アルカリ金属塩基化合物と反応させられ得る。塩スイッチング技術もまた、1つの塩を別の塩に変換するために使用され得る。
【0020】
販売が4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドから調製される場合、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、当業者に周知である技術に従って調製され得る。例えば、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、国際特許出願第2011/004162号に記載されている技術に従って作製され得、その全ての内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
別段の指示がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって理解される一般的な意味を有する。
【0022】
特定の実施形態では、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのアルカリ金属塩は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム又はカリウム塩である。好ましくは、塩は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのナトリウム塩である。ナトリウム塩は、有効成分がこの形態で投与されると、血漿曝露が増加することを示す例のデータによって証明されるように、インビボで特に増強された生物学的利用能を示すことが見出された。
【0023】
誤解を避けるために、当業者は、本発明の特定の態様の化合物(例えば、本発明の第1の態様)への本明細書での言及が、その全ての実施形態及び特定の特徴への言及を含み、その実施形態及び特定の特徴を組み合わせて、本発明のさらなる実施形態及び特徴を形成し得ることを理解するであろう。
【0024】
本発明の第1の態様による塩は、本明細書では「本発明の塩」と称される。
【0025】
薬学的製剤
本明細書に示されるように、本発明の塩は、様々な医学的障害又は病態を治療するための治療薬として有用である。典型的には、本発明の塩は、それを必要とする対象に薬学的製剤の形態で投与されるであろう。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩)を含む薬学的製剤が提供される。そのような製剤は、以後「本発明の製剤」と称される。本発明の第1の態様に関して本明細書に記載されている全ての実施形態及び特定の特徴は、本発明の第2の態様に関して本明細書に開示されている。
【0027】
特定の実施形態では、薬学的製剤は、全ての実施形態及びその特定の特徴を含む、本発明の第1の態様で定義されている塩を含み、該塩は粉砕されている。
【0028】
本明細書で使用される「粉砕された」という用語(「サイズを縮小した」、「細かく砕かれた(comminuted)」、「研削された(ground)」及び「粉砕された(pulverised)」などの他の当該技術分野の用語と交換可能に使用され得る)は、固体試料の粒径を縮小するために、機械的エネルギー(例えば、研削による)に供されている。例えば、粗い粒子は、より細かい粒子に分解され得、それにより平均粒径が縮小される。
【0029】
「塩が粉砕された」という句は、固体塩生成物の平均的な粒径が、当該技術分野において既知のプロセスによって生成されたが、その粒径を縮小するために、処理されていない4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの対応する塩の平均的な粒径よりも小さいように、該塩を粉砕する工程を伴う任意のプロセスによって得られた本発明の塩(本発明の第1の態様で定義された)を指すことを理解されたい。
【0030】
粉砕は、微粒子を生成するための「トップダウン」アプローチとみなされている。例えば、薬物固形物は、鋭利な刃(例えば、カッターミル)によって切断され、ハンマーによって押し込まれ、高圧均質化にかけられ、又は圧力の適用(例えば、ローラーミル又は乳棒及び乳鉢)によって粉砕若しくは圧縮され得る。限られた量のエネルギーが通常与えられるので、そのような方法によって生成された粒子は比較的粗いままである。粉砕装置の技術的進歩により、ミクロン(すなわち、μm単位の範囲)、又はさらにはサブミクロン(例えば、nm単位の範囲)の寸法までの超微細な薬物粒子の製造が可能となった。
【0031】
ある特定の粉砕プロセスは、乾式粉砕プロセスとして特徴付けられ得る。そのようなプロセスは、本発明の塩の処理に好ましい。
【0032】
「乾式粉砕」とは、薬物がその乾燥状態で、すなわち液体媒体がない状態で(例えば、実質的に水がない状態で)粉砕されるプロセスを指す。乾燥状態では、薬物は、単独で、又は薬学的に許容される賦形剤などの1つ以上の他の成分の存在下で粉砕することができる。塩などの他の研磨材料は、粒径の縮小を助けるために、粉砕プロセス中に存在し得る。乾式粉砕によって付与される機械的エネルギーは、ファンデルワールス力又は水素結合を介して、薬物の粒子(及び任意選択的に他の存在する物質)間の相互作用を促進する。
【0033】
医薬品の粉砕プロセスのレビューは、例えば、Loh et al., Asian Journal of Pharmaceutical Sciences, 10(2015), 255-274に見出され得る。薬物粒子に含めるのに好適な賦形剤は、当技術分野で既知であり、例えば、Peltonen et al, Handbook of Polymers for Pharmaceutical Technologies, ed. Thakur and Thakur, Wiley, volume 4, chapter 3, 67-87、及びNekkanti et al, Drug Nanoparticles-An Overview, The Delivery of Nanoparticles, IntechOpenに記載されている。これらの文書の内容は、参照により組み込まれる。
【0034】
本発明の塩及び製剤(本発明の第1及び第2の態様、並びにそれらの態様の全ての実施形態によって定義される)は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドを遊離塩基の形態で含む薬学的製剤と比較して、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのインビボにおける生物学的利用能を改善する(例えば、増加する)のに驚くほど効果的であることが見出された。生物学的利用能における改善は、動物、典型的には哺乳動物への薬学的製剤の投与後のCmax又は曲線下面積(AUC)を測定することによって実証され得る。本発明の塩及び製剤は、本発明に記載される療法で、そのような療法を必要とする対象において有用である。好ましくは、対象はヒトである。
【0035】
本発明の文脈において、「遊離塩基」という用語は、塩の形態ではない4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの形態を指す。例えば、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、1つ以上の反対に帯電したイオン(例えば、カチオン)と関連付けられたイオン性(例えば、アニオン)形態ではない。遊離塩基4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、式Iの化合物として描写され得る。
【0036】
【0037】
「Cmax」及び「AUC」という用語は、本文脈において、それぞれ、投与(例えば、ヒト対象への)後の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのピーク血漿濃度、及び本発明の塩又は製剤の投与後のその物質についての濃度/時間曲線の積分を指すことが当業者には十分に理解されるであろう。
【0038】
有効成分の塩の投与は、驚くべきことに、非塩形態(すなわち、該化合物の遊離形態)での化合物の投与と比較して、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身曝露の著しい増加をもたらすことが見出された。
【0039】
ポリマー及び界面活性剤などの安定剤は、多くの場合、粒子間の反発力を高め、かつ凝集を抑制するために、粉砕プロセス中に使用される。微粉化中に細かく研削された粒子の凝集が起こる場合があり、これは最終的に溶解プロセスを遅くし、生物学的利用能に影響を与える可能性がある。4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身曝露の増加は、安定剤を添加しなくても、有効成分の乾式粉砕された塩の投与後に生じることが見出された。したがって、一実施形態では、薬学的製剤はいかなる安定剤も含まない。
【0040】
したがって、本発明の第2の態様の製剤は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの遊離塩基形態を含む薬学的製剤と比較して、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの生物学的利用能を増加させることができる。
【0041】
本発明者らが「4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの遊離塩基形態を含む薬学的製剤と比較して、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの生物学的利用能を増加させることができる」と述べる場合、本発明者らは、本発明の塩を含む製剤の投与が、遊離4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドを含む製剤の投与と比較して、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのインビボにおけるより大きな全身的に利用可能な画分をもたらすことを意味する。遊離4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドを含む製剤の投与と比較して、本発明の塩を含む製剤の投与後に全身的に利用可能である4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの量における増加は、少なくとも約10%、(少なくとも)約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%(すなわち、2倍)、約150%、約200%(すなわち、3倍)、約250%、約300%(すなわち、4倍)、約350%、又は約400%(すなわち、5倍)であり得る。
【0042】
本発明の製剤によって提供される生物学的利用能の改善は、当該技術分野において既知の好適な方法を使用して実証され得る。例えば、生物学的利用能における改善は、本発明の塩を含む製剤を投与された対象についての薬物動態データ(例えば、AUCデータ)を、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドを遊離塩基形態で含む、薬学的製剤を投与された対象についての対応するデータと比較することによって実証され得る。
【0043】
粉砕により、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドのアルカリ金属塩を含有する粒子の平均的なサイズを縮小させる。粉砕の程度及び有効性は、粉砕プロセスの前後の該粒子の粒径分布を測定することによって決定され得る。
【0044】
「粒径分布」という用語は、粉末、粒状材料、又は流体中に分散された粒子などの固体試料中にサイズに応じて存在する粒子の相対的な数を指す。粒径分布は、多くの点で固体試料(例えば、粉末など)の特性に影響を与える。本発明者らは、平均粒径の縮小が、得られる医薬品の生物学的利用能における驚くべき改善をもたらすことを見出した。
【0045】
固体試料の粒径分布は、当該技術分野において周知である技術を使用して測定され得る。例えば、固体試料の粒径分布は、レーザ回折、動的光散乱、画像分析(例えば動的画像分析)、ふるい分析、風篩分析、光学的計数、電気抵抗計数、沈降、レーザ遮蔽及び音響(例えば、超音波減衰)分光法によって、測定され得る。本発明の塩の粒子の粒径分布を測定するために言及され得る特定の方法は、動的光散乱及びレーザ回折である。
【0046】
粒径分布はまた、ふるい分析の結果に基づいて決定され得る。ふるい分析は、各ふるいに保持された累積質量対ふるいメッシュサイズのS曲線の形式で粒径情報を提示する。粒径分布を記述するときに最も一般的に使用されるメトリックは、D値である(例えば、それぞれ累積質量の10%、50%、及び90%の切片であるD10、D50、及びD90)。本発明の粒径分布は、好ましくは、そのような値のうちの1つ以上を使用して定義される。D値は本質的に、粒子が昇順の質量ベースで配置されている場合に、試料の質量を指定されたパーセンテージに分割する球の直径を表す。例えば、D10値は、試料の質量の10%がこの値未満の直径を有する粒子で構成される直径である。D50値は、試料の質量の50%がそれよりも小さく、かつ試料の質量の50%がそれよりも大きい粒子の直径である。
【0047】
本発明の塩を含む粒子は、約10μm未満(例えば、約5μm~約10μm)のD90によって定義される粒径分布を有し得る。本発明の塩からなる粒子は、約6μm未満(例えば、約1μm~約6μm)のD50によって定義される粒径分布を有し得る。本発明の塩からなる粒子の粒径分布は、さらに、約2μm未満(例えば、約0.5μm~約2μm)のD10によって定義され得る。特定の実施形態では、製剤は、本発明の塩を含有する粒子を含み、該粒子は、約10μm未満のD90によって定義される粒径分布を有する。
【0048】
上記の粒径分布パラメータは、任意の所与の塩、混合物、又は製剤に、個別に若しくは組み合わせて適用可能であり得る。例えば、特定の実施形態では、製剤は、本発明の塩を含有する粒子を含み、該粒子は、約10μm未満のD90及び約6μm未満のD50によって定義される粒径分布を有する。
【0049】
本発明の塩を含む粒子の粒径分布は、例えば、粒径分析器(例えば、Shimadzu SALD-2300など)を使用して、レーザ回折によって測定され得る。そのようなプロセスが、液体媒体(例えば、水)中で分析される物質の分散を伴う場合、好適な量の分散剤、例えば、Tween 20(ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート)が使用され得る。
【0050】
本発明はまた、粒子が生成されるプロセスに関係なく、本明細書で定義される粒径分布のいずれかを有する本発明の塩を含有する粒子を含む薬学的製剤を包含する。
【0051】
好ましくは、本発明の第2の態様の薬学的製剤は、本明細書に記載の特定の粒径分布のいずれかを有する本発明の塩の粒子を含み、粒子は、該塩を粉砕することを伴うプロセスによって得られる。
【0052】
本発明の第2の態様の薬学的製剤は、標準的及び/又は受け入れられている薬学的に慣行に従って調製され得る。
【0053】
本発明の第2の態様の実施形態では、本発明の塩は、塩を含有する粒子中に存在する唯一の薬学的有効成分である。本発明の第2の態様のさらなる実施形態では、本発明の塩は、1つ以上の他の薬学的有効成分と一緒に製剤中に存在するか、又は1つ以上の他の薬学的有効成分との併用療法の一部として投与され得る。
【0054】
本明細書に記載されるように、第2の態様の本発明の製剤は、例えば、粒子が約10μm未満のD90によって定義される粒径分布を有するように塩が粉砕された本発明の塩を含有する粒子を含み得る。
【0055】
したがって、本発明の第3の態様によれば、上記で定義された製剤(すなわち、本発明の第2の態様による製剤、及びその全ての実施形態)を調製するためのプロセスが提供され、このプロセスは、本発明の塩を、任意選択的に1つ以上の賦形剤と一緒に粉砕して、約10μm未満のD90によって定義される粒径分布を有する粒子を生成することを含む。
【0056】
本発明の第3の態様の一実施形態では、粒子は、乾式粉砕を使用して粉砕される。乾式粉砕は、典型的には、他の成分が実質的に存在しない状態で(例えば、薬学的製剤のいかなる他の成分も実質的に存在しない状態で)物質(すなわち、薬物)の粉砕を伴う。したがって、一実施形態では、粒子は、本発明の塩から本質的になり、本明細書で定義されるような粒径分布を有する。別の実施形態では、粒子は、本発明の塩から本質的になり、乾式粉砕によって得られている。
【0057】
任意選択的に、乾式粉砕は、ジェットミリングを伴う。ジェットミリングは、薬物粒子のサイズを典型的には20~100μmの範囲から10μm未満に縮小するために、高速の圧縮空気流を伴う粉砕プロセスである。粒径の縮小は、衝撃(粒子間又は粉砕チャンバーの壁への粒子のいずれか)及び摩耗(粒子が互いに反対方向に移動するとき)の組み合わせによって達成される。当業者は、当技術分野において既知である方法に従って粉砕条件を変化させることによって、粒径の制御を達成することができることを理解するであろう。
【0058】
本発明の第3の態様のプロセスの特定の実施形態では、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの塩は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの塩を粉砕した後、1つ以上の賦形剤と混合される。
【0059】
本発明の第3の態様のプロセスの他の実施形態では、腸溶コーティングは、得られた製剤中の本発明の塩が、腸溶コーティング内に封入されるという条件で、任意の時点で製剤に導入され得る。例えば、薬学的製剤がカプセル又は錠剤の形態で提供される場合、プロセスは、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの粉砕塩が該カプセル又は錠剤に組み込まれた前後に(好ましくは、後に)、該カプセル又は錠剤を腸溶コーティングでコーティングする工程をさらに含み得る。代替的に、このプロセスは、該粒子のカプセル又は錠剤への組み込みの前に、腸溶コーティングを4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの粉砕塩に適用する工程をさらに含み得る。
【0060】
乾式粉砕は、湿式粉砕から得られる粒子よりも一般にサイズが大きい粒子を生成するのに有用であり得る。この文脈で言及され得る特定の粒径分布には、約10μm未満、約9μm未満、約8μm未満、約7μm未満、又は約6μm未満のD90を有するものが含まれる。
【0061】
より具体的には、本明細書で定義される製剤中に存在する本発明の塩を含有する粒子は、約5μm、約5.5μm、約6μm、約6.5μm、約7μm、約7.5μm、約8μm、約8.5μm、約9μm、約9.5μm又は約10μmのD90によって定義される粒径分布を有し得る。該粒径分布は、好ましくは、本発明の塩から本質的になる粒子に関するものである。
【0062】
好ましくは、本発明の塩を含有する粒子は、約6μm未満、約5μm未満、約4μm未満、約3μm未満、又は約2μm未満のD50によって定義される粒径分布を有する。
【0063】
本発明の塩を含有する粒子の粒径分布はまた、約1μm、約1.5μm、約2μm、約2.5μm、約3μm、約3.5μm、約4μm、約4.5μm、約5、約5.5又は約6μmのD50によって定義され得る。
【0064】
なおさらに、本発明の塩を含む粒子は、約2μm未満、約1.5μm未満、又は約1μm未満のD10によって定義される粒径分布を有し得る。
【0065】
本発明の塩を含有する粒子の粒径分布はまた、約0.5μm、約1μm、約1.5μm又は約2μmのD10によって定義され得る。
【0066】
したがって、製剤(すなわち、本発明の第2の態様のいずれかの実施形態による製剤)の特定の実施形態では、本発明の塩を含有する粒子は、9μm未満のD90、6μm未満のD50、5μm未満のD50、2μm未満のD10、又は1.5μm未満のD10によって定義される粒径分布を有する。
【0067】
本発明の第2の態様の製剤は、一般に、本発明の塩と1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とを含む混合物として提供される。1つ以上の薬学的に許容される賦形剤は、標準的な薬学的慣行に従って、意図された投与経路を十分に考慮して選択され得る。そのような薬学的に許容される賦形剤は、好ましくは、活性化合物に対して化学的に不活性であり、好ましくは、使用条件下で有害な副作用又は毒性を有しない。好適な医薬製剤は、例えば、Remington The Science and Practice of Pharmacy,19th ed.,Mack Printing Company,Easton, Pennsylvania(1995)に見出され得る。薬物送達の方法の簡単なレビューはまた、例えば、Langer,Science 249,1527(1990)に見出されるかも知れない。
【0068】
pH調節賦形剤は、本発明の製剤において特に有利であることが見出された。pH調節賦形剤は、該賦形剤を別途含まない同じ製剤の水溶液のpHと比較して、製剤の水溶液のpHを実質的に変更するものである。pH調節賦形剤は、該賦形剤を含まない同じ製剤の水溶液と比較して、製剤の水溶液のpHを上昇(又は低下)させ得る(例えば、8以上のpHに)。そのような賦形剤は、製剤中の本発明の化合物の水溶解度及び/又は安定性を増加させる(すなわち、改善する)ために有用であり得る。
【0069】
本発明の製剤において、塩基性賦形剤が本発明の塩と組み合わせて有用であり、化合物の溶解度の改善をもたらすことが見出された。したがって、本発明の第2の態様の特定の実施形態では、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤は、塩基性賦形剤である。
【0070】
本明細書で使用される場合、「塩基性賦形剤」という用語は、製剤の微小環境pHを増加させる薬学的に許容される賦形剤を指す。製剤の微小環境pHの調節は、製剤中の有効成分の溶解を改善することが見出されており、これは、次には、有効成分の経口吸収の増強につながり得る。言及され得る特定の塩基性賦形剤としては、酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸カルシウムが挙げられる。特定の実施形態では、塩基性賦形剤は酸化マグネシウムである。
【0071】
したがって、特定の実施形態によれば、製剤は、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。特に、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤は、滑沢剤、結合剤、充填剤、界面活性剤、希釈剤、付着防止剤、コーティング、香味料、着色剤、滑剤、防腐剤、甘味料、崩壊剤、吸着剤、緩衝剤、抗酸化剤、キレート剤、溶解促進剤、溶解遅延剤、又は湿潤剤であり得る。
【0072】
言及され得る特定の薬学的に許容される賦形剤としては、マンニトール、PVP(ポリビニルピロリドン)K30、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、デンプン、アミロペクチン、セルロース誘導体、ゼラチン、又は他の好適な成分、並びに崩壊剤及びNa-ドキュセート、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム及びポリエチレングリコールワックスなどの滑沢剤が挙げられる。経口投与用の本発明の塩の薬学的製剤の調製において、本発明の塩を含有する粒子(好ましくは粉砕後)を、マンニトール、PVP(ポリビニルピロリドン)K30及びNa-ドキュセートと一緒に混合又は別々に混合され得る。したがって、特定の実施形態では、本発明の製剤は、PVP K30、Na-ドキュセート及びマンニトールを含む。
【0073】
次いで、そのような混合物は、ペレット若しくは顆粒に加工されるか、又は錠剤に圧縮され得る。したがって、本発明の薬学的製剤は、経口投与用の錠剤、ミニ錠剤、ブロック、ペレット、粒子、顆粒、又は粉末の形態で提供される製剤を含む。
【0074】
当業者は、本発明に記載の製剤が全身的に作用し得、したがって当業者に既知の好適な技法を使用して、適宜投与され得ることを理解するであろう。本明細書に記載される製剤は、通常、薬学的に許容される剤形で経口投与される。したがって、本発明の第2の態様の薬学的製剤は、好ましくは経口薬学的製剤である。
【0075】
本発明の製剤は、カプセルの形態で経口投与用に調製され得る。例えば、ソフトゼラチンカプセルなどのカプセルは、本発明の塩を単独で、又は好適なビヒクル、例えば、植物油、脂肪などと一緒に含むように調製され得る。同様に、ハードゼラチンカプセルは、本発明の塩を単独で、又は二糖類(例えば、ラクトース又はサッカロース)、アルコール糖(例えば、ソルビトール又はマンニトール)、植物性デンプン(例えば、馬鈴薯デンプン、又はコーンスターチ)、多糖類(例えば、アミロペクチン又はセルロース誘導体)若しくはゲル化剤(例えば、ゼラチン)などの固体粉末成分と組み合わせて含有み得る。
【0076】
したがって、本発明の薬学的製剤には、例えば、経口投与用のカプセル又は錠剤の形態で提供される製剤が含まれる。
【0077】
経口投与を目的とした調製物は、胃環境での溶解又は崩壊を防止若しくは最小化するために、腸溶コーティングをさらに含み得る。したがって、腸溶コーティングによりコーティングされた経口調製物(例えば、カプセル又は錠剤)は、小腸における本発明の塩の標的化された放出を提供し得る。例えば、腸溶コーティングは、製剤の表面(例えば、錠剤又はカプセルの表面上)に存在し得るか、又は本発明の塩を含有する粒子のそれぞれは、腸溶コーティングでコーティングされ得る。したがって、特定の実施形態では、製剤は、腸溶コーティングをさらに含む。
【0078】
胃環境におけるカプセル又は錠剤(など)の溶解又は崩壊を最小限に抑えること、及び/又は小腸における有効成分の標的化された放出を提供することが望ましい場合がある。したがって、特定の実施形態では、腸溶コーティングは、該カプセル又は錠剤上に存在する。例えば、該コーティングは、該カプセル又は錠剤の外層として提供され得る。
【0079】
代替的に、本発明の塩を含有する粒子は、腸溶コーティングで個別にコーティングされ得、該コーティングされた粒子は、カプセルに装填され得るか、又は錠剤に圧縮され得る。したがって、特定の実施形態では、カプセル又は錠剤は、本発明の塩を含む粒子を含有し、各粒子は腸溶コーティングでコーティングされている。
【0080】
「腸溶コーティング」という用語は、経口薬剤に組み込まれ(例えば、錠剤、カプセル、粒子又はペレットの表面に適用され)、胃環境における薬剤の溶解又は崩壊を阻害する物質(例えば、ポリマー)を指す。腸溶コーティングは、典型的には胃に見られる強酸性のpHで安定しているが、小腸の比較的塩基性のpHで急速に分解する。したがって、腸溶コーティングは、小腸に到達するまで、薬剤中の有効成分の放出を防止する。
【0081】
当業者に既知の任意の腸溶コーティングが、本発明において使用され得る。言及され得る特定の腸溶コーティング材料としては、蜜蝋、シェラック、アルキルセルロースポリマー樹脂(例えば、エチルセルロースポリマー、カルボキシメチルエチルセルロース、若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)又はアクリルポリマー樹脂(例えば、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、エトキシエチルメタクリレート、シアノエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、コポリマー、メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、メタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、メタクリル酸アルキルアミドコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸)(無水物)、メチルメタクリレート、ポリメタクリレート、メチルメタクリレートコポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)コポリマー、ポリアクリルアミド、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリ(メタクリル酸無水物)、及びグリシジルメタクリレートコポリマー)、セルロースアセテートフタレート、及びポリビニルアセテートフタレートを含むものが挙げられる。言及され得る特定のポリアクリル樹脂は、ポリアクリル樹脂HB-50である。
【0082】
好ましくは、本発明の第2の態様の薬学的製剤は、本発明の塩の粉砕粒子を含み、該粒子は、本明細書に記載の特定の粒径分布のいずれかを有し、製剤は、腸溶コーティングをさらに含む。したがって、特定の実施形態では、本発明の第2の態様の薬学的製剤において、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの塩は、塩を含有する粒子が10μm未満のD90によって定義される粒径分布を有するように粉砕されており、製剤はさらに腸溶コーティングを含む。
【0083】
言及され得る薬学的製剤には、本発明の塩が製剤の少なくとも1重量%(又は少なくとも10重量%、少なくとも30重量%、又は少なくとも50重量%である)である総量で存在するものが含まれる。すなわち、本発明の塩と、薬学的製剤の成分(すなわち、本発明の塩及び全ての医薬的賦形剤、例えば、アジュバント、希釈剤及び担体)の全体との重量比は、少なくとも1:99(又は少なくとも10:90、少なくとも30:70又は少なくとも50:50)である。
【0084】
本明細書で使用される「治療有効量」、「有効量」又は「投与量」は、治療的及び/又は有益な効果であり得る所望の効果を生み出すのに十分である本発明の塩の量を指す。有効量又は投与量は、対象(例えば、ヒト)の年齢又は一般的な状態、治療される病態の重症度、投与される特定の薬剤、治療の期間、いずれの同時に受けている治療の性質、使用される薬学的に許容される担体、及び当業者の知識並びに専門的判断にある同様の要因により変わるであろう。適切な場合は、いずれの個々の場合においても「治療的有効量」、「有効量」又は「投与量」は、関連するテキスト及び文献を参照することによって、及び/又は日常的な実験を行うことによって、当業者によって決定することができる。当業者は、対象に何らかの利益が提供される限り、治療効果が完全又は治癒的である必要はないことを理解するであろう。
【0085】
当業者は、本発明の製剤が様々な用量で(例えば、上記の1つ以上の調製物として)投与され得、好適な用量が当業者によって容易に決定されることを理解するであろう。本発明の塩のそれを必要とする対象に投与される総投与量は、1日当たり約0.01~約2000mg/kg体重(mg/kg/日)、約0.1~約500mg/kg/日、又は約1~約100mg/kg/日の範囲であり得る。そのような投与量は、例えば、本発明の第2の態様の製剤の経口投与量であり得る。
【0086】
経口投与される場合、そのような製剤(そのような製剤を含有するカプセルを含む)による治療は、約0.01mg~約3000mgの本発明の塩、例えば、約0.1mg~約2000mg、又は約1mg~約1000mg(例えば、約10mg~約500mg)の本発明の塩を含有する単位用量製剤の投与を含み得る。有利に、治療は、1日1回の用量を使用して、本発明の塩(該製剤を含有するカプセルを含む)の投与を含み得る。代替的に、本発明の塩の1日総投与量は、1日2回、3回又は4回に分けて投与され得る(例えば、本明細書に記載の用量に関して1日2回、例えば、100mg、250mg、500mg、又は1000mgの用量を1日2回)。熟練した医師であれば、投与量が対象ごとに異なることを認識するであろう。
【0087】
特定の実施形態では、対象に投与される本発明の塩の1日用量は、約1~約3000mg、好ましくは約1~約1000mgの範囲である。
【0088】
化合物の量、用量、時間、温度などの測定可能な値を指すときに本明細書で使用される「約」という用語は、指定された量の20%、10%、5%、1%、0.5%、又はわずか0.1%の変動を指す。各場合において、そのような用語は、表記「±10%」などで(又は関連する値に基づいて計算された特定量の変動を示すことによって)代置され得ることが企図される。また、各場合において、そのような用語は、削除され得ることが企図される。
【0089】
誤解を避けるために、本発明の文脈における、対象、特にヒト対象に投与される用量は、妥当な時間枠にわたって対象において治療応答に影響を与えるのに十分であるべきである。当業者は、正確な用量及び組成並びに最も適切な送達レジメンの選択が、とりわけ、製剤の薬理学的特性、治療を受ける病態の性質及び重症度、並びに投薬を受ける者の身体的状態及び精神的鋭敏さ、並びに特定の化合物の力価、治療される対象の年齢、状態、体重、性別及び反応、並びに疾患の病期/重症度によっても影響を受けることを認識するであろう。
【0090】
いずれにしても、医師又は他の熟練者は、個々の対象に最も好適な実際の投与量を日常的に決定することができるであろう。上記の投薬量は、平均的な場合の例示であり、当然、より高い又はより低い投薬量範囲がふさわしい個々の事例が存在し得、そのようなものは本発明の範囲内である。
【0091】
医療用途
本発明の塩、及びその製剤は、医薬品としても有用である。
【0092】
本発明の塩(すなわち、全ての実施形態及びその特定の特徴を含む、本発明の第1の態様で定義される塩)、及びその製剤(すなわち、全ての実施形態及びその特定の特徴を含む、本発明の第2で定義される製剤)は、AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化によって改善される障害又は病態の治療において特に有用であり得る。したがって、本発明の第4の態様では、本明細書で定義されるような、本発明の塩、又は該塩を含む製剤の、AMPKの活性化によって改善される障害又は病態の治療のための医薬品の製造における使用が提供される。
【0093】
同様に、AMPKの活性化によって改善される障害又は病態を治療する方法が提供され、治療有効量の本発明の塩又は該塩を含む製剤を、それを必要とする対象(例えば、ヒト)に投与することを含む。同様に、AMPKの活性化によって改善される障害又は状態を治療する方法で使用するための本発明の塩(又は該塩を含む製剤)が提供される。
【0094】
「AMPKを活性化する」とは、本発明者らは、AMPK-αサブユニットのThr-172部分のリン酸化の定常状態レベルが、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド非存在下でのリン酸化の定常状態レベルと比較して増加することを意味する。代替的に、又はさらに、本発明者らは、アセチル-CoAカルボキシラーゼ(ACC)などのAMPKの下流にある任意の他のタンパク質のリン酸化の定常状態レベルが高いことを意味する。
【0095】
「AMPKの活性化によって改善される障害又は病態」という用語は、がん、糖尿病、心血管疾患、高インスリン血症及び関連する病態、線維症が役割を果たす病態/障害、性的機能不全、骨粗鬆症、及び神経変性疾患を含むことが、当業者には理解されるであろう。
【0096】
「がん」という用語は、細胞の制御されていない分裂及びこれらの細胞が他の組織に侵入する能力によって、浸潤、増殖、又は転移による遠隔部位への移植による隣接組織への直接増殖のいずれかによって、特徴付けられる障害のクラスにおける1つ以上の疾患を含むと当業者によって理解されるであろう。「増殖」とは、本発明者らは、がん細胞の数及び/又はサイズの増加を含める。「転移」とは、本発明者らは、対象の体内の原発腫瘍部位から対象の体内の他の1つ以上の領域(細胞が二次性腫瘍を形成する可能性がある)へのがん細胞の移動又は移行(例えば、浸潤性)を意味する。4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドは、がん細胞の増殖及びがん細胞の転移を阻害することができる。
【0097】
したがって、本発明の製剤は、全ての腫瘍(非固形腫瘍、好ましくは、臓器に関係なく、がん腫、腺腫、腺がん、血液がんなどの固形腫瘍)を含む任意のがん型の治療に使用するのに好適であり得る。例えば、がん細胞は、乳房、胆管、脳、結腸、胃、生殖器官、甲状腺、造血系、肺及び気道、皮膚、胆嚢、肝臓、鼻咽頭、神経細胞、腎臓、前立腺、リンパ腺、胃腸管のがん細胞からなる群から選択され得る。好ましくは、がんは、結腸がん(結腸直腸腺腫を含む)、乳がん(例えば、閉経後乳がん)、子宮内膜がん、造血系のがん(例えば、白血病、リンパ腫など)、甲状腺がん、腎臓がん、食道腺がん、卵巣がん、前立腺がん、膵臓がん、胆嚢がん、肝臓がん、及び子宮頸がんの群から選択される。より好ましくは、がんは、結腸、前立腺、及び、特に乳がんの群から選択される。がんが非固形腫瘍である場合、それは、好ましくは、白血病(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL))などの造血器腫瘍である。好ましくは、がん細胞は乳がん細胞である。
【0098】
「糖尿病」(すなわち、真性糖尿病)という用語は、当業者によって、1型(インスリン依存性)糖尿病及び2型(インスリン非依存性)糖尿病の両方を指すと理解され、これらは両方ともグルコース恒常性の機能不全を伴う。本発明の塩及びその製剤は、1型糖尿病及び/又は2型糖尿病の治療に使用するために特に好適であり得る。
【0099】
「高インスリン血症又は関連する病態」という用語は、高インスリン血症、2型糖尿病、耐糖能異常、インスリン抵抗性、代謝症候群、脂質異常症、小児期の高インスリン血症、高コレステロール血症、高血圧、肥満症、脂肪肝の状態、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、脳卒中などの脳血管病態、全身性エリテマトーデス、アルツハイマー病などの神経変性疾患、及び多嚢胞性卵巣症候群を含むことが当業者によって理解されるであろう。他の病状には、慢性腎不全などの進行性腎疾患が含まれる。
【0100】
特に、本発明の塩及びその製剤は、高インスリン血症に関連する肥満症及び/又は高インスリン血症に関連する心血管疾患の治療に使用するために好適であり得る。
【0101】
本発明の塩及びその製剤はまた、心不全などの心血管疾患の治療に使用するために好適であり得、該心血管疾患は、高インスリン血症とは関連していない。同様に、本発明の塩及びその製剤はまた、高インスリン血症に関連しない肥満症の治療に使用するために好適であり得る。誤解を避けるために、AMPK活性化が有益であり得る肥満症及び/又は心血管疾患(心不全など)の治療は、本発明の範囲内に含まれる。
【0102】
線維症が役割を果たす病態/障害には、瘢痕治癒、ケロイド、強皮症、肺線維症(特発性肺線維症を含む)、腎性全身性線維症、及び心血管線維症(心内膜心筋線維症を含む)、全身性硬化症、肝硬変、眼黄斑変性症、網膜及び硝子体網膜症、クローン/炎症性腸疾患、術後瘢痕組織形成、放射線及び化学療法薬誘発性線維症、並びに心血管線維症が挙げられる(ただし、これらに限定されない)。
【0103】
本発明の塩はまた、性的機能不全の治療(例えば、勃起不全の治療)においても有用であり得る。本発明の塩はまた、炎症の治療に有用であり得る。
【0104】
言及される可能性のある神経変性疾患には、アルツハイマー病、パーキンソン病及びハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、歯状核赤核・淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)、及び多くの脊髄小脳失調症(SCA)などのポリグルタミン障害が挙げられ得る。
【0105】
当業者であれば、特定の状態の治療(又は、同様に、その状態を治療すること)への言及は、医学分野における通常の意味をとることを理解するであろう。特に、この用語は、病態に関連する1つ以上の臨床症状の重症度及び/又は発生頻度の軽減を達成することを指し、そのような症状を有するか又はかかりやすい対象を看る医師によって判断され得る。
【0106】
本明細書で使用される場合、対象(又は複数の対象)への言及は、哺乳動物(例えば、ヒト)対象を含む、治療されている、又は予防的医薬を受けている、生きている対象を指す。特に、対象への言及はヒトである対象を指す。
【0107】
誤解を避けるために、当業者は、そのような治療又は予防がそれを必要とする対象において行われることを理解するであろう。対象がそのような治療又は予防を必要とすることは、日常的な技法を使用して当業者によって評価され得る。
【0108】
本発明の文脈において、本発明の塩の「必要としている対象」は、AMPKの活性化によって改善される障害又は病態に苦しんでいる対象を含む。
【0109】
本明細書で使用される場合、「疾患」及び「障害」という用語(及び同様に、状態、病気、医学的課題などの用語)は、交換可能に使用され得る。
【0110】
理論に束縛されることを望むものではないが、本発明の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの塩の形態が、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの体循環における生物学的利用能を増強すると考えられる。本発明の塩を含む製剤は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドを遊離塩基形態で含む製剤と比較して、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの生物学的利用能をある特定の状況下で約2倍の増加を提供することが示された。
【0111】
本発明の塩(及びその製剤)は、上記の適応症における使用のため、又は別様の使用のためであるかにかかわらず、先行技術で既知の他の療法よりも、より効果的であり、より毒性が低く、より長く作用し、より効力があり、より副作用が少なく、より吸収されやすく、かつ/又はより良好な薬物動態プロファイル(例えば、より高い経口生物学的利用能及び/若しくはより低いクリアランス)を有し、かつ/又は他の有用な薬理学的、物理的、若しくは化学的特性を有し得るという利点を有し得る。特に、本発明の製剤は、インビボで、より有効であり、かつ/又は有利な特性を呈するという利点を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0112】
以下の図面は、本発明の概念の様々な態様を説明するために提供されており、本明細書で指定されない限り、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0113】
【
図1】懸濁液及び非コーティングカプセル中の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(化合物1)、及び別々に非コーティングカプセル中の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドナトリウム塩(化合物2)、並びに4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドカリウム塩(化合物3)を使用した経口薬物動態研究の比較結果を示す。
【
図2】懸濁液中及び腸溶コーティングカプセル中の化合物1、並びに別々に腸溶コーティングカプセル中の化合物2及び化合物3を使用した経口薬物動態研究の比較結果を示す。
【
図3】懸濁液としての、及び非コーティングカプセル中の化合物1、並びに別々に非コーティングカプセル中の化合物2及び化合物3の製剤についての絶対及び相対C
maxの結果を示す。
【
図5】懸濁液としての、及び非コーティングカプセル中の化合物1、並びに別々に非コーティングカプセル中の化合物2及び化合物3の製剤についての絶対及び相対AUCの結果を示す。
【
図7】懸濁液としての、及び腸溶コーティングカプセル中の化合物1、並びに別々に腸溶コーティングカプセル中の化合物2及び化合物3の製剤についての絶対及び相対C
maxの結果を示す。
【
図9】懸濁液としての、及び腸溶コーティングカプセル中の化合物1、並びに別々に腸溶コーティングカプセル中の化合物2及び化合物3の製剤についての絶対及び相対AUCの結果を示す。
【実施例】
【0114】
略語
AUC0-t:時間ゼロから最後の定量化可能な濃度までの濃度-時間曲線下面積
AUC0-∞:時間ゼロから無限大までの濃度-時間曲線下面積
b.w.:体重
CE:衝突エネルギー
CL:クリアランス
Cmax:ピーク血漿濃度。
CXP:衝突出口電位
DLS:動的光散乱
DP:デクラスタリング電位
EP:入口電位
h:時間
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
ISD:内部標準
K2EDTA エチレンジアミン四酢酸二カリウム
LC:液体クロマトグラフィー
LC-MS/MS:液体クロマトグラフィー-(タンデム)質量分析
LS:光散乱
MRT:平均滞留時間。
min:分
PVP K30:ポリビニルピロリドンK30
rpm:毎分回転数
RT:室温
T1/2:半減期
Tmax:ピーク血漿濃度に到達するまでの時間
v/v:体積/体積
w/v:重量/体積
【0115】
本発明は、本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例を参照することによってさらに説明される。
【0116】
材料
4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(化合物1)、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドナトリウム塩(化合物2)、及び4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドカリウム塩(化合物3)は、Anthem Biosciencesによって調製された。
【0117】
ナトリウム-ドキュセート、PVP K30、及びマンニトールは、Sigma-Aldrichによって供給された。
【0118】
調製1-4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドナトリウム塩(化合物2)
【0119】
スキーム:
【0120】
【0121】
手順:
【0122】
イソプロパノール(1.0L)の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(100g、0.2629mol)の懸濁液に、水(100mL)中の水酸化ナトリウム(11.56g、0.2891mol)の溶液を、25±5℃でゆっくりと添加した。塊を25±5℃で3時間撹拌し、5±5℃に冷却した。塊を5±5℃で3時間撹拌し、濾過して固形物を回収した。固形物をイソプロパノール(300mL)で洗浄し、35±5℃で減圧下にて8時間乾燥させた。乾燥させた固形物を、4.0kg/cm2の一次圧力、7.0kg/cm2の二次圧力及び8 RPMのスクリューフィーダを備えたエアジェットミルを使用して2回微粉化させ、所望のナトリウム塩を白色固形物(50g、48%)として単離した。
【0123】
調製2-4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドカリウム塩(化合物3)
【0124】
スキーム:
【0125】
【0126】
手順:
【0127】
イソプロパノール(1.0L)の4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミド(100g、0.2629mol)の懸濁液に、水(100mL)中の水酸化カリウム(16.22g、0.2891mol)の溶液を、25±5℃でゆっくりと添加した。塊を25±5℃で3時間撹拌し、5±5℃に冷却した。塊を5±5℃で3時間撹拌し、濾過して固形物を回収した。固形物をイソプロパノール(300mL)で洗浄し、35±5℃で減圧下にて8時間乾燥させた。乾燥させた固形物を、4.0kg/cm2の一次圧力、7.0kg/cm2の二次圧力及び8 RPMのスクリューフィーダを備えたエアジェットミルを使用して2回微粉化させ、所望のカリウム塩を白色固形物(55g、50%)として単離した。
【0128】
実施例1-粉砕生成物
【0129】
以下のパラメータを用いて、エアジェットミル(装置コード、CP-AJM-01;Promas engineers)を使用して、実施例1aから1cについて粉砕を実施した。
【0130】
【0131】
同じパラメータを使用してエアジェットミリングをもう一度実行することにより、全ての実施例で微粉化を繰り返した。これにより、粒径のD90を10μm未満に縮小することができた。
【0132】
粒径分析
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
調製
【0137】
Tween 20を4滴、25mLの水に添加し、混合物を3分間超音波処理して、分散剤溶液を形成した。
【0138】
粉砕した材料0.05gを250mLのガラスビーカに移した。分散剤溶液(Tween 20/水混合物)25mLをビーカに添加し、2~3分間連続的に回転させた。懸濁液を測定ユニットに移し、粒径分布測定を3回行った。
【0139】
【0140】
実施例2~8-ウサギにおける単回経口薬物動態研究
【0141】
以下に詳述する研究(及び実施例2~8と称される)を、非コーティング及び腸溶コーティングカプセルを使用して、化合物1、並びにその化合物のナトリウム及びカリウム塩についての比較単回投与経口薬物動態データを提供するために、雄のニュージーランドホワイトウサギで行った。
【0142】
製剤の調製
【0143】
1.カプセル
【0144】
すぐに使用可能な腸溶コーティング及び非コーティングカプセルを使用した。カプセルはCapsulCN International Co.,Ltdから入手した。
【0145】
化合物1をWO2011/004162に記載されているプロセスを使用して作製し、実施例1cに記載されているように粉砕した。非コーティング又は腸溶コーティングゼラチンカプセルを、示されるように、付随する賦形剤とともに、180mgの乾式粉砕した化合物1で個別に充填した。両方のカプセルタイプを、1.8mgのナトリウムドキュセート、0.18mgのPVP K30及び9mgのマンニトールとともに化合物1で充填した。
【0146】
同様に、化合物2では、非コーティング又は腸溶コーティングゼラチンカプセルを、180mgの乾式粉砕した化合物2(実施例1fのように得られた)を、1.8mgのドナトリウムキュセート、0.18mgのPVP K30及び9mgのマンニトールとともに個別に充填した。
【0147】
化合物3については、非コーティング又は腸溶コーティングゼラチンカプセルを、90mgの乾式粉砕した化合物3(実施例1iで得られる)を、0.90mgのナトリウムドキュセート、0.09mgのPVP K30及び4.50mgのマンニトールとともに個別に充填した。
【0148】
調製したら、カプセルを動物に投与する前に19~25℃のデシケータ中に保管した。
【0149】
製剤の詳細を表2にまとめている。
【0150】
2.懸濁液
【0151】
化合物1を、WO2011/004162に記載されているプロセスを使用して作製した。
【0152】
4mMリン酸緩衝液pH7.4中の2%w/vメチルセルロース溶液を調製した。
【0153】
2%w/vメチルセルロース溶液40mLを2mmのガラスビーズ10gと一緒に250mLの三角フラスコに添加し、激しく撹拌した。化合物1(720mg)をゆっくりと溶液に添加し、混合物を1時間連続的に撹拌した。ホモジネートを別のフラスコに移し、そのpHを記録した。動物に投与する前に、懸濁液製剤を調製した。
【0154】
動物の管理
【0155】
ウサギ(ニュージーランドホワイト、雄)を、標準的な実験室条件下で、適切な新鮮な空気の供給(1時間当たり10~15回の空気交換)、室温(22±3℃)、相対湿度30~70%、12時間の明サイクル及び12時間の暗サイクルで、環境的に監視された空調室に収容された。温度及び相対湿度を1日1回記録した。
【0156】
各動物を、ステンレス鋼メッシュとごみ処理用の取り外し可能な下部トレイ、ペレット状の餌を保持するためのフードホッパー、飲料水ボトルとサイフォンチューブ用のホルダー及びラベルホルダーを備えた標準ステンレス鋼ウサギケージSS-304(サイズ:L24“×B18”×H18“)内に収容した。床敷材料として、清潔で滅菌されたトウモロコシの穂軸を提供した。
【0157】
動物には、順応化及び実験期間全体を通して、Krishna Valley Agrotechのウサギ用飼料を自由に与えた。
【0158】
水は順応化及び実験期間全体を通して自由に提供した。アクアガード浄水器兼精製器からの水をオートクレーブにかけ、ステンレス鋼のシッパーチューブを備えたポリプロピレン製のウォーターボトルで提供した。
【0159】
順応化
【0160】
動物を最低1週間(7日間)施設の部屋の条件に順応させ、毎日臨床兆候を観察した。全ての動物の獣医学的検査を、受け入れ日、毎日、及び無作為化の日に実施した。
【0161】
グループ化
【0162】
動物のグループ化を、体重の層別化及び無作為化の方法によって行った。研究のために選択された動物の体重を測定し、体重の範囲によってグループ分けした。これらの体重層別ウサギを、使用される動物の体重変動が平均体重の±20%を超えないように、可能であれば全ての研究群に同数で分配した。グループ化は、治療開始の1日前に行った。
【0163】
【0164】
用量管理
【0165】
約2~3か月齢の健康な成体の雄ニュージーランドホワイトウサギを7日間の順応化後に、実験に使用した。
【0166】
1.カプセル
【0167】
充填されたカプセルを投与するために、柔らかいプラスチック製投与チューブを使用した。充填されたカプセルを、カプセルの短い方の端がチューブの先端からわずかに突き出るように投与チューブに挿入した。カプセルの先端を、飲み込みを助けるために鉱油に浸した。
【0168】
上顎を片手で押さえて頭をしっかりと掴んだ。カプセルを含有する投薬チューブを切歯の後ろに挿入した。投与チューブを口の後ろにまっすぐにスライドさせた。投与チューブのプランジャを押すことにより、カプセルを排出させた。投与チューブを取り外し、ウサギの口を閉じた。首をやさしく撫でて飲み込みやすくした。
【0169】
2.懸濁液
【0170】
懸濁液を投与するために、乳児用栄養チューブを使用した。栄養チューブをウサギの口から食道と胃に挿入し、動物に投与する前に気管に挿入されていないことを確認した。化合物1の懸濁液を、栄養チューブを通して投与した。懸濁液の投与後、約2.0~2.5mLの飲料水を投与して栄養チューブの内容物を洗い流した。
【0171】
血液サンプリング
【0172】
動物をウサギ拘束具で拘束し、血液試料(400~500μL/時点)を、投与後、0.16、0.25、0.50、1.0、2.0、4.0、6.0、8.0、24.0、48.0、及び72時間で中耳動脈を介して採取した。採取した血液検体を4000又は6000rpm、4℃で10分間遠心分離し、血漿試料を分離して分析まで-80℃で保存した。
【0173】
生物分析
【0174】
ニュージーランドホワイトウサギにおける化合物1の分析物の濃度を、API 3200 Q-trap LC-MS/MSシステムを使用して決定した。
【0175】
方法の概要
【0176】
クロマトグラフィーによる分離は、Zorbax C18、50×4.6mm、5μmのカラムで、メタノール-0.1%ギ酸を移動相としての勾配溶離を用いて行った。流量は、1.0mL分-1に設定した。検出は、ポジティブモードで適用された電子スプレーイオン化源を介した多重反応モニタリング(MRM)走査でトリプル四重極タンデム型質量分析計によって達成した。定量に最適化された質量遷移イオン対は、化合物1ではm/z379.999→125.000であり、ISD(ハロペリドール)では、m/z376.165→165.00であった。キャリブレーションプロットは、11.062~20594.820ng/mLの範囲にわたって直線的であった。
【0177】
緩衝液(0.1%ギ酸)
【0178】
約1.0mLのギ酸を、999mLの超純水タイプ1に添加し、緩衝液を作成した。この溶液を室温で保存し、調製日から2日以内に使用した。
【0179】
希釈溶媒(メタノール:水、80:20%v/v)
【0180】
800mLのメタノール及び200mLの超純水タイプ1を正確に、試薬ボトルに添加し、十分に混合して超音波処理した。この溶液を室温で保存し、調製日から7日以内に使用した。
【0181】
すすぎ溶媒(メタノール:水、50:50%v/v)
【0182】
500mLのメタノール及び500mLの超純水タイプ1を正確に、試薬ボトルに添加し、十分に混合して超音波処理した。この溶液を室温で保存し、調製日から3日以内に使用した。
【0183】
化合物1ストック溶液の調製
【0184】
3.044mgの化合物1を秤量し、5.0mLのメスフラスコに移し、5mLのメタノール中に溶解して605.756μg/mLのストック溶液を得た。化合物1の最終濃度は、標準物質の力価及び実際に秤量した量に応じて補正した。
【0185】
内部標準ストック溶液
【0186】
約2.00mgのハロペリドール(Sigma-Aldrich)を秤量し、5.0mLのメスフラスコに移し、メタノール中に溶解して、400μg/mLの内部標準ストック溶液を得た。ハロペリドールの最終濃度を、標準物質の力価に応じて補正した。
【0187】
内部標準(ハロペリドール)希釈標準溶液の調製。
【0188】
希釈溶媒(メタノール/水、80:20)を使用して、約0.250mLの内部標準ストック溶液を10mLに希釈し、約10μg/mLの溶液を得た。
【0189】
血漿中の化合物1についての検量線の作製
【0190】
検量線標準を、ブランク血漿に水性分析物標準をスパイクすることによって、血漿中の11.062~20594.820ng/mL(調製濃度:11.062、20.112、40.224、80.449、160.897、321.794、643.588、1287.176、2574.353、5148.705、10297.410、及び20594.820ng/mL)の範囲で作製した。
【0191】
検量線の範囲内にある品質管理試料LQC、MQC、及びHQCを、ブランク血漿に好適な水性分析物標準をスパイクすることにより、血漿中の化合物1(調製濃度:40.224、5148.705、及び10297.410ng/mL)について調製した。
【0192】
血漿試料の液液抽出法
【0193】
・10μLのISD希釈標準溶液(約10μg/mL)をRIAバイアルに添加した。
・ポリプロピレン製のキャップ付きチューブ/バイアルから正確に50μLのウサギ血漿を、RIAバイアルに添加し、30~40秒間ボルテックスした。
・2.5mLのTBMEをRIAバイアルに添加し、次いでvibramaxシェーカを使用して2000rpmで10分間ボルテックスした。
・試料を4℃にて4000rpmで10分間遠心分離した。
・2mLの有機層を分離し、ターボエバポレータを用いて50℃で20分間蒸発乾固させた。
・試料残留物を、200μLの再構成溶媒(メタノール)で再構成した。
・次いで、再構成した試料を、オートサンプラバイアルに移した。
・10μLの再構成した試料を、API 3200 Q Trap LC-MS/MSシステムに注入した。
【0194】
【0195】
データ分析
【0196】
分析物の化合物1についてのそれぞれの時点までの血漿濃度のデータを薬物動態分析に使用した。薬物動態分析を、Phoenix WinNonlin 6.3ソフトウェアのノンコンパートメント解析(NCA)モジュールを使用して実行し、次の薬物動態パラメータを決定した。
【0197】
・Cmax
・Tmax
・AUC0-t
・AUC0-∞
・T1/2:
・MRT
【0198】
Analystソフトウェアバージョン1.6.1を使用して取得したデータのクロマトグラムをピーク面積比法により処理した。重み係数として1/×2を使用した。未知物質の濃度は、次の式から計算する。
【0199】
y=mx+c
式中、x=薬物の濃度;
m=検量線の傾き;
y=ピーク面積比;及び
c=検量線の切片。
【0200】
結果
【0201】
ウサギにおける単回経口薬物動態研究についての結果を、以下の表3~8に表にし、
図1~10にグラフで示す。
【0202】
結果は、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドが、遊離塩基有効成分(化合物1)と比較して、乾式粉砕ナトリウム塩(化合物2)として投与されるとき、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身曝露における、50~100%の増加があることを示す(実施例2及び3を比較し、また実施例5及び6、
図3~10も比較されたい)。乾式粉砕カリウム塩(化合物3)は、粉砕遊離塩基有効成分と比較して、より穏やかな改善を示した(実施例2及び4を比較し、また実施例5及び7、
図3~10も比較されたい)。
【0203】
有効成分の標準懸濁液(実施例8)と比較した場合、有効成分が、非コーティングカプセル又は腸溶コーティングカプセルのいずれかで乾式粉砕ナトリウム塩(化合物2)として投与されると、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身曝露における驚くほど大幅な(最大6倍の)増加があった。
【0204】
したがって、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身曝露は、アルカリ金属塩の形態での化合物の投与によって増加する。全身曝露の最大の改善は、薬物がナトリウム塩の形態で投与されるときに観察された。
【0205】
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
実施例9及び10
【0212】
以下の研究(実施例9及び10と称される)は、pH調節剤(酸化マグネシウム)の存在下で、雄のニュージーランドホワイトウサギにおいて腸用コーティングカプセルを使用した、化合物2(化合物1のナトリウム塩)についての比較単回経口投与薬物動態データを提供した。研究は、以下に示されている場合を除いて、実施例2~8に関して上で述べた方法を使用して実施した。
【0213】
腸溶コーティングゼラチンカプセルを、以下で個別に充填した:
実施例9:化合物2(62.5mg)、ナトリウムドキュセート(6.25mg)、PVP K30(0.625mg)及び酸化マグネシウム(125mg)。
実施例10:化合物2(62.5mg)、ナトリウムドキュセート(6.25mg)、PVP K30(0.625mg)及びマンニトール(125mg)。
【0214】
動物には、25mg/kg b.w.の化合物2を単回投与した。
【0215】
結果
【0216】
ウサギにおける単回投与経口薬物動態研究についての結果を、以下の表9に作表する。
【0217】
結果は、アルカリ性賦形剤の非存在下での製剤と比較して、化合物2がアルカリ性賦形剤と一緒に製剤化されるとき、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身曝露における増加があることを示す。
【0218】
【0219】
実施例11
【0220】
次の研究は、pH調整剤(酸化マグネシウム)の存在下で雄ニュージーランドホワイトウサギにおいて腸溶コーティングカプセルを使用した、化合物2についての単回投与経口薬物動態研究である。研究は、以下に示されている場合を除いて、実施例2~8に関して上で述べた方法を使用して実施した。
【0221】
腸溶コーティングゼラチンカプセルに、化合物2(106mg、実施例1fで得られたもの)、ナトリウムドキュセート(10.6mg)、PVP K30(1.1mg)、及び酸化マグネシウム(100mg)を個別に充填した。
【0222】
動物には、53mg/kg b.wの化合物2(50mg/kgの化合物1に相当する)を単回投与した。
【0223】
結果
【0224】
ウサギにおける単回投与経口薬物動態研究についての結果を、以下の表10に表にする。
【0225】
結果は、化合物2がアルカリ性賦形剤と一緒に製剤化されるとき、4-クロロ-N-[2-[(4-クロロフェニル)メチル]-3-オキソ-1,2,4-チアジアゾール-5-イル]ベンズアミドの全身曝露がかなりの量であることを示す。
【0226】
【0227】
実施例12
【0228】
以下は、ヒトにおける治療的又は予防的使用のための化合物2を含有する代表的な薬学的錠剤の剤形を示す。
【0229】
【0230】
これらの製剤は、製剤技術分野において周知の従来の手順によって得られ得る。錠剤はまた、例えば、ポリメタクリレートのコーティングを提供するために、従来の手段によって腸溶コーティングされ得る。
【国際調査報告】