(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】オゾンを発生させるための放電セル
(51)【国際特許分類】
C01B 13/11 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
C01B13/11 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523320
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 US2020056645
(87)【国際公開番号】W WO2021081085
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513180152
【氏名又は名称】エヴォクア ウォーター テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Evoqua Water Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225543
【氏名又は名称】上原 真
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ティンズリー デムスター
【テーマコード(参考)】
4G042
【Fターム(参考)】
4G042CA01
4G042CC04
4G042CC10
(57)【要約】
放電オゾン発生セルは、非導電性の平坦なスペーサ板によって分離された第1および第2の電極基板を有する。スペーサ板の中央開口部内に、第1の電極基板と密接に接触している電極板が嵌め込まれている。第2の電極基板およびスペーサ板と密接に接触している誘電体板は、スペーサ板の内縁および電極板と共にガス放電室を規定するのに役立つ。スペーサ板の両側において中央開口部の周りにありスペーサ板の内縁から間隔を置いて配置されたガスケットにより、放電室のガスシール性を確実とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電オゾン発生セルであって、
第1および第2の電極基板を分離する非導電性スペーサ板であって、前記スペーサ板の中央開口部を規定する2つの側面および内縁を有するスペーサ板と、
前記第1の電極基板と密接に接触している電極板であって、前記スペーサ板の中央開口部内に嵌め込まれた電極板と、
前記第2の電極基板および前記スペーサ板と密接に接触している誘電体板であって、前記誘電体板、前記スペーサ板の内縁および前記電極板によってガス放電室を画定する、誘電体板と、
前記スペーサ板の両側において前記中央開口部の周りにあり前記スペーサ板の内縁から間隔を置いて配置されたガスケットであって、前記ガスケットにより、前記放電室内のオゾンへの曝露を低減しつつ、前記放電室のガスシール性を確実にする、ガスケットと、
を含む、放電オゾン発生セル。
【請求項2】
前記ガスケットがOリングガスケットを含む、請求項1に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項3】
前記Oリングガスケットを受け入れるように、前記スペーサ板の両側において前記中央開口部の周りにあり前記スペーサ板の内縁から間隔を置いて配置された溝を更に備える、請求項2に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項4】
前記ガスケットが弾性材料を含む、請求項1に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項5】
前記ガスケットがFKM(フルオロエラストマー)材料を含む、請求項4に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項6】
前記スペーサ板がポリカーボネートを含む、請求項1に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項7】
前記電極板が、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が注入された陽極酸化アルミニウムを含む、請求項1に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項8】
前記電極板が陽極酸化アルミニウムを含む、請求項1に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項9】
前記電極板が高クロム鋼を含む、請求項1に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項10】
前記電極板が、導電性担体に結合された陽極酸化アルミナを含む、請求項1に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項11】
前記第1および第2の電極基板がアルミニウムを含む、請求項1に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項12】
前記スペーサ板は第1の所定の厚さを有し、前記電極板は第2の所定の厚さを有し、前記誘電体板は第3の所定の厚さを有し、前記第1の所定の厚さと、前記第2および第3の所定の厚さの合計との間の差が前記スペーサ板の内縁と共に前記放電室を形成している、請求項1に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項13】
放電オゾン発生セルであって、
第1および第2の電極基板を分離する非導電性スペーサ板であって、前記スペーサ板の中央開口部を規定する2つの側面および内縁を有するスペーサ板と、
前記第1の電極基板と密接に接触している電極板であって、前記スペーサ板の中央開口部内に嵌め込まれた電極板と、
前記第2の電極基板および前記スペーサ板と密接に接触している誘電体板であって、前記誘電体板、前記スペーサ板の内縁および前記電極板によってガス放電室を画定する、誘電体板と、
前記放電室のガスシール性を確実にするための、前記スペーサ板の両側において前記中央開口部の周りにあるガスケットと、
を含み、
前記スペーサ板が第1の所定の厚さを有し、前記電極板が第2の所定の厚さを有し、前記誘電体板が第3の所定の厚さを有し、前記第1の所定の厚さと、前記第2および第3の所定の厚さの合計との間の差が、前記スペーサ板の内縁と共に前記放電室を形成している、放電オゾン発生セル。
【請求項14】
前記第1の所定の厚さと、前記第2および第3の所定の厚さの合計との間の差が(10~30)×10-3インチの範囲である、請求項13に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項15】
前記スペーサ板がポリカーボネートを含む、請求項13に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項16】
前記電極板が、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が注入された陽極酸化アルミニウムを含む、請求項13に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項17】
前記第1および第2の電極基板がアルミニウムを含む、請求項13に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項18】
前記ガスケットが弾性材料を含む、請求項13に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項19】
前記ガスケットがFKM(フルオロエラストマー)材料を含む、請求項18に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項20】
放電オゾン発生セルであって、
第1および第2の電極基板を分離する非導電性スペーサ板であって、前記スペーサ板の中央開口部を規定する2つの側面および内縁を有するスペーサ板と、
前記第1の電極基板と密接に接触している電極板であって、前記スペーサ板の中央開口部内に嵌め込まれた電極板であり、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が注入された陽極酸化アルミニウムを含む電極板と、
前記第2の電極基板および前記スペーサ板と密接に接触している誘電体板であって、前記誘電体板、前記スペーサ板の内縁および前記電極板によってガス放電室を画定する、誘電体板と、
前記スペーサ板の両側において前記中央開口部の周りにあり前記スペーサ板の内縁から間隔を置いて配置されたガスケットであって、前記ガスケットにより、前記放電室内のオゾンへの曝露を低減しつつ、前記放電室のガスシール性を確実にする、ガスケットと、
を含む、放電オゾン発生セル。
【請求項21】
前記スペーサ板がポリカーボネートを含む、請求項20に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項22】
前記第1および第2の電極基板がアルミニウムを含む、請求項20に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項23】
前記ガスケットが弾性材料を含む、請求項20に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項24】
前記ガスケットがFKM(フルオロエラストマー)材料を含む、請求項23に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項25】
放電オゾン発生セルであって、
第1および第2の電極基板を分離する非導電性の平坦なスペーサ板であって、前記スペーサ板の中央開口部を規定する2つの側面および内縁を有するスペーサ板と、
前記第1の電極基板と密接に接触している平坦な電極板であって、前記スペーサ板の中央開口部内に嵌め込まれた電極板と、
前記第2の電極基板および前記スペーサ板と密接に接触している平坦な誘電体板であって、前記誘電体板、前記スペーサ板の内縁および前記電極板によってガス放電室を画定する、誘電体板と、
前記スペーサ板の両側において前記中央開口部の周りにあり前記スペーサ板の内縁から間隔を置いて配置されたガスケットであって、前記ガスケットにより、前記放電室内のオゾンへの曝露を低減しつつ、前記放電室のガスシール性を確実にする、ガスケットと、
前記スペーサ板を介して前記第1および第2の電極基板の周囲に係合するクランプ構成と、
を含み、これにより、前記平坦なスペーサ板、平坦な電極板、平坦な誘電体板、およびガスケットが、歪みを最小限に抑えつつ、前記第1の電極基板と第2の電極基板との間に一緒に結合されている、放電オゾン発生セル。
【請求項26】
前記クランプ構成が、前記第1および第2の電極基板並びに前記スペーサ板の周囲に分布する複数の穴と、対応する複数の非導電性留め具とを含み、各留め具が前記第1および第2の電極基板を、対応する穴を通して、前記第1および第2の電極基板の間の前記平坦なスペーサ板と結合する、請求項25に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項27】
各留め具がねじ棒および相対的なねじナットを含む、請求項26に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項28】
前記ねじ棒がボルトを含む、請求項27に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項29】
各留め具がガラス繊維で強化されたプラスチックを含む、請求項26に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項30】
前記第1および第2の電極基板の周囲に分布する複数の穴がそれぞれ、面取りされている、請求項25に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項31】
前記第1および第2の電極基板がそれぞれ、前記スペーサ板に面する平面を有しており、前記第1および第2の電極基板の周囲に分布する複数の穴がそれぞれ、前記平面にて面取りされている、請求項30に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項32】
前記スペーサ板が、前記第1および第2の電極基板を超えて横方向に延在している、請求項25に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項33】
前記平坦なスペーサ板が前記中央開口部の周囲において片側に凹部を含むことで、前記誘電体板を保持している、請求項25に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項34】
前記凹部が、前記中央開口部の周りにあり前記スペーサ板の内縁から間隔を置いて配置されたガスケットのうちの1つを含む、請求項33に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項35】
放電オゾン発生セルであって、
第1および第2の電極基板を分離する非導電性スペーサ板であって、前記スペーサ板の中央開口部を規定する2つの側面および内縁を有するスペーサ板と、
前記第1の電極基板の表面と密接に接触している電極板であって、前記スペーサ板の中央開口部内に嵌め込まれた電極板と、
前記第2の電極基板および前記スペーサ板と密接に接触している誘電体板であって、前記誘電体板、前記スペーサ板の内縁および前記電極板によってガス放電室を画定し、前記ガス放電室が2つの対向する端部を有しており、前記中央開口部の内縁が前記2つの対向する端部にて前記電極板からずれている、誘電体板と、
前記ガス放電室の2つの対向する端部のそれぞれにあり前記第1の電極基板の表面に沿ったチャネルであって、前記第1の電極基板を介してガス入力および出力端子に接続されたチャネルであり、前記中央開口部の内縁が前記2つの対向する端部にて前記電極板からずれていることによって前記ガス放電室に曝露されるチャネルと、
を含み、
それにより、前記チャネルが前記ガス放電室への、および前記ガス放電室からのガスの入力および出力のためのマニホールドを形成する、放電オゾン発生セル。
【請求項36】
前記スペーサ板が第1の所定の厚さを有し、前記電極板が第2の所定の厚さを有し、前記誘電体板が第3の所定の厚さを有し、前記第1の所定の厚さと前記第2および第3の所定の厚さの合計との間の差が、前記スペーサ板の内縁と共に前記放電室を形成する、請求項35に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項37】
前記スペーサ板の両側において前記中央開口部の周りにあり前記スペーサ板の内縁から間隔を置いて配置されたガスケットを更に備え、それによって、前記ガスケットが前記放電室内のオゾンへの曝露を低減しつつ、前記放電室のガスシール性を確実にする、請求項35に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項38】
前記ガスケットが弾性材料を含む、請求項37に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項39】
前記ガスケットがFKM(フルオロエラストマー)材料を含む、請求項38に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項40】
前記スペーサ板がポリカーボネートを含む、請求項35に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項41】
前記電極板がPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)が注入された陽極酸化アルミニウムを含む、請求項35に記載の放電オゾン発生セル。
【請求項42】
前記第1および第2の電極基板がアルミニウムを含む、請求項35に記載の放電オゾン発生セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電セルに関し、より具体的には、オゾンを発生させるための放電セルに関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンには、廃棄物および水処理、消毒、洗浄、臭気除去、害虫駆除、および滅菌を含む多くの用途がある。従って、多くのオゾン発生システムは、都市ごみおよび水処理プラント用のシステムのように非常に大規模である一方、他のオゾン生成システムは、小規模な産業および家庭用途向けのシステムのように小規模である。
【0003】
典型的なオゾン発生システムでは、原料ガス源が、流量コントローラを介して原料ガスをオゾン発生セルに供給する。酸素に加えて、原料ガスは、周囲空気または酸素濃縮空気であり得る。電源によりセルにエネルギーが供給されて、アプリケーションプロセス用のオゾンが生成される。
【0004】
オゾン発生セルは、放電(コロナ放電とも呼ばれる)を使用して酸素をイオン化することによるオゾンの生成を含む、多くの方法で動作可能である。本発明は、そのオゾン発生セルにおいてそのような放電を使用する。しかしながら、オゾンおよびその生成には多くの問題がある。オゾンは腐食性が高いため、材料の選択やオゾンに耐性のある材料のコストにおける問題が生じる。発生セル内の腐食した要素は、時々交換する必要がある。従って、オゾン発生セルは簡単に修理できる必要があり、および/または腐食した要素は簡単に交換可能である必要がある。発生セルはまた、比較的低コストでオゾンを最適に生成するように設計する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの問題に対処する放電オゾン発生セルに関する。オゾン発生セルは、部品の交換やセルの修理が簡単で、組み立てや分解が簡単な比較的低コストの部品を有する。セルの放電室は、オゾンの高出力用に設計されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、放電オゾン発生セルを提供し、この放電オゾン発生セルは、第1および第2の電極基板を分離する非導電性スペーサ板であって、スペーサ板の中央開口部を規定する2つの側面および内縁を有するスペーサ板と、第1の電極基板と接触している電極板であって、スペーサ板の中央開口部内に嵌め込まれた電極板と、第2の電極基板およびスペーサ板と接触している誘電体板であって、誘電体板、スペーサ板の内縁および電極板によってガス放電室を画定する、誘電体板と、スペーサ板の両側において中央開口部の周りにありスペーサ板の内縁から間隔を置いて配置されたガスケットであって、ガスケットにより、放電室内のプラズマおよびオゾンへの曝露を低減しつつ、放電室のガスシール性を確実にする、ガスケットと、を有する。
【0007】
本発明はまた、放電オゾン発生セルを提供し、この放電オゾン発生セルは、第1および第2の電極基板を分離する非導電性スペーサ板であって、スペーサ板の中央開口部を規定する2つの側面および内縁を有するスペーサ板と、第1の電極基板と密接に接触している電極板であって、スペーサ板の中央開口部内に嵌め込まれた電極板と、第2の電極基板およびスペーサ板と密接に接触している誘電体板であって、誘電体板、スペーサ板の内縁および電極板によってガス放電室を画定する、誘電体板と、放電室のガスシール性を確実にするための、スペーサ板の両側において中央開口部の周りにあるガスケットと、を有し、スペーサ板が第1の所定の厚さを有し、電極板が第2の所定の厚さを有し、誘電体板が第3の所定の厚さを有し、第1の所定の厚さと、第2および第3の所定の厚さの合計との間の差がスペーサ板の内縁と共に放電室を形成している。
【0008】
本発明はまた、放電オゾン発生セルを提供し、この放電オゾン発生セルは、第1および第2の電極基板を分離する非導電性スペーサ板であって、スペーサ板の中央開口部を規定する2つの側面および内縁を有するスペーサ板と、第1の電極基板と密接に接触している電極板であって、スペーサ板の中央開口部内に嵌め込まれた電極板であり、陽極酸化アルミニウムを含む電極板と、第2の電極基板およびスペーサ板と密接に接触している誘電体板であって、誘電体板、スペーサ板の内縁および電極板によってガス放電室を画定する、誘電体板と、スペーサ板の両側において中央開口部の周りにありスペーサ板の内縁から間隔を置いて配置されたガスケットであって、ガスケットにより、放電室内のオゾンへの曝露を低減しつつ、放電室のガスシール性を確実にする、ガスケットと、を有する。陽極酸化アルミニウム電極板は、PTFEが注入されていることが好ましい。
【0009】
本発明はまた、放電オゾン発生セルを提供し、この放電オゾン発生セルは、第1および第2の電極基板を分離する非導電性の平坦なスペーサ板であって、スペーサ板の中央開口部を規定する2つの側面および内縁を有するスペーサ板と、第1の電極基板と密接に接触している平坦な電極板であって、スペーサ板の中央開口部内に嵌め込まれた電極板と、第2の電極基板およびスペーサ板と密接に接触している平坦な誘電体板であって、誘電体板、スペーサ板の内縁および電極板によってガス放電室を画定する、誘電体板と、スペーサ板の両側において中央開口部の周りにありスペーサ板の内縁から間隔を置いて配置されたガスケットであって、ガスケットにより、放電室内のオゾンへの曝露を低減しつつ、放電室のガスシール性を確実にする、ガスケットと、スペーサ板を介して第1および第2の電極基板の周囲に係合するクランプ構成と、を有し、これにより、平坦なスペーサ板、平坦な電極板、平坦な誘電体板、およびガスケットが、歪みを最小限に抑えつつ、第1の電極基板と第2の電極基板との間に一緒に結合されている。
【0010】
本発明は、更に、放電オゾン発生セルを提供し、この放電オゾン発生セルは、第1および第2の電極基板を分離する非導電性スペーサ板であって、スペーサ板の中央開口部を規定する2つの側面および内縁を有するスペーサ板と、第1の電極基板の表面と密接に接触している電極板であって、スペーサ板の中央開口部内に嵌め込まれた電極板と、第2の電極基板およびスペーサ板と密接に接触している誘電体板であって、誘電体板、スペーサ板の内縁および電極板によってガス放電室を画定し、ガス放電室が2つの対向する端部を有しており、中央開口部の内縁が2つの対向する端部にて電極板からずれている、誘電体板と、ガス放電室の2つの対向する端部のそれぞれにある第1の電極基板の表面に沿ったチャネルであって、第1の電極基板を介してガス入力および出力端子に接続されたチャネルであり、中央開口部の内縁が2つの対向する端部にて電極板からずれていることによってガス放電室に曝露されるチャネルと、を有し、それにより、チャネルがガス放電室への、およびガス放電室からのガスの入力および出力のためのマニホールドを形成している。
【0011】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明および添付図面を検討することで明らかになるであろう。添付図面において、同様の参照符号は、図面全体を通して同様の特徴を表す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による、組み立てられたオゾン発生コロナ放電セルの斜視図である。
【
図2A】冷却フィンに平行な方向における、組み立てられた
図1のオゾン発生コロナ放電セルの側面図である。
【
図2B】冷却フィンに垂直な方向における、組み立てられた
図1のオゾン発生コロナ放電セルの側面図である。
【
図3】冷却フィンに垂直な方向における、
図1のオゾン発生コロナ放電セルの分解側面図である。
【
図4】
図1のオゾン発生コロナ放電セルの分解斜視図である。
【
図5A】
図1のオゾン発生セルのスペーサ板要素の一角部の上面詳細図である。
【
図6A】
図1のオゾン発生セルの放電室の詳細な断面側面図である。
【
図7A】組み立てられた
図1のセルの留め具の断面側面図である。
【
図7B】組み立てられた
図1のセルの基板電極およびスペーサ板の端部の詳細な断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面は読者に理解させることを目的とするものであり、必ずしも縮尺通り描かれているわけではないことを理解されよう。
【0014】
組み立てられた放電オゾン発生セル10の斜視図を
図1に示す。セル10は、上部ヒートシンクおよび電極基板11、並びに、下部ヒートシンクおよび電極基板16を、平坦な非導電性スペーサ板14の両側に備えている。スペーサ板14は、好ましくは、ポリカーボネートまたは他の適切なプラスチックから形成する。各基板11および16は、スペーサ板14に面している平面と、平面の反対側にある冷却フィン12とを有する一体構造を有する。動作中、空気がセル10上に吹き付けられ、冷却フィン12がセル10の温度を下げる。電極基板11および16は、板11と板16との間に高い交流電圧電位を提供する電源に接続されている。絶縁スペーサ板14の厚さは、板11と板16との間の伝導を妨げる。図面を参照する「上部」および「下部」という用語は、読者の利益のために使用されていることに留意されたい。動作上、オゾン発生コロナ放電セル10は、向きに関係なく動作可能である。
【0015】
図2Aおよび
図2Bは、組み立てられたオゾン発生コロナ放電セル10の側面図である。
図2Aは、冷却フィン12の方向に平行な図面であり、
図2Bは、冷却フィン12の方向に垂直な図面である。これらの側面図は、電極基板11および16の間にスペーサ板14を挟む電極基板11および16の各平面を示している。非導電性留め具13は、板11および16をスペーサ板14に結合する。下部ヒートシンクおよび電極基板16上には、ガス入口/出口23およびガス入口/出口24があり、これらは以下でより詳細に説明する。
【0016】
図3は、放電オゾン発生セル10の分解側面図であり、上部ヒートシンクおよび電極基板11、下部ヒートシンクおよび電極基板16、並びにスペーサ板14に加えて、セルの主要な要素の多くを示している。弾性Oリングガスケット42および誘電体板25は、上部基板11とスペーサ板14との間に配置されている。弾性Oリングガスケット45および電極板21は、下部基板16とスペーサ板14との間に配置されている。スペーサ板14は、中央開口部(図示せず)を有し、Oリングガスケット42および45は、スペーサ板14の両側の開口部周辺を取り囲むことで、気密シールを形成するのを助ける。スペーサ板14の中央開口部、誘電体板25および電極板21が、主に、オゾンが生成される放電室を規定する。
【0017】
図4は、電極基板11および16がスペーサ板14から間隔を置いて配置されたセル10の分解斜視図である。非導電性留め具13は、ガラス繊維で強化されたプラスチックで形成されたねじ棒13Cとして詳細に示されている。棒13Cは、棒の両端部にてソケットヘッドねじ13Aおよび13Bと係合する。非導電性ねじ13Aおよび13Bは、同様に、ガラス繊維で強化されたプラスチックから形成されている。他の可能な構成には、留め具13用のナットおよびボルトが含まれる。留め具13、より正確には、棒13Cは、スペーサ板14の周囲に位置する穴33を通過し、また、上部および下部ヒートシンク並びに電極基板11、16の周囲の穴31および30をそれぞれ通過する。
【0018】
スペーサ板14の中央開口部40の周囲には凹部41があり、その凹部41内に、誘電体板25(
図3参照)が上部ヒートシンクおよび電極基板11に当たって嵌まる。Oリングガスケット42は溝43に嵌まり、この溝43は中央開口部40を取り囲み、中央開口部40の角部のみが
図5Aの詳細図によって示されている。
図5Bは、中央開口部40を取り囲むOリングガスケット45のための溝46を示している。Oリングガスケット45および溝46は、スペーサ板14のうち、下部ヒートシンクおよび電極基板16に面する側にある。ガスケット42および45は両方とも、セル10の最終組み立ての前に、ガスケット42および45の対応する溝43および46に接着される。ガスケット42および45は、適切な弾性材料、好ましくはFKM、Viton(登録商標)Oリングのようなフルオロエラストマーのファミリーから形成する。Viton(登録商標)は、デラウェア州ウィルミントンのThe Chemours Companyの登録商標である。
【0019】
平坦な電極板21は、セル10が組み立てられたとき、スペーサ板14の中央開口部40内に嵌まる。板21は、オゾン腐食に耐えるよう、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン、または一般に、デラウェア州ウィルミントンのThe Chemours Companyの登録商標であるTeflon(登録商標))が注入された陽極酸化アルミニウムであることが好ましい。板21はまた、単純に陽極酸化アルミニウムであるか、または高クロム鋼、例えば、ステンレス鋼、チタン、または導電性担体に結合されたアルミナを含む、導電性材料の様々なサンドイッチで構成されてもよい。板21は、複数のねじ33によって下部ヒートシンクおよび電極基板16の平面と密接に接触するように取り付けられている。ねじ33は、下部基板16の穴35を通して板21にブラインドタップされている。あるいは、ねじ33はまた、板21をタップスルーしていてもよい。ねじ33は、ブラインドタップまたはタップスルーのいずれかで、下部電極基板16にタップされる平頭ねじであり得る。または、板21は、下部電極基板16に単純に結合されてもよい。好ましくは、ねじ33は、それらのヘッドの下にOリングシールまたはワッシャシールを有する。いずれの場合も、板21は、セル10の内部から外部へのガス漏れを許容しないように下部電極基板16に取り付けられている。
【0020】
図4に示すように、下部ヒートシンクおよび電極基板16の平面に沿ってチャネル36および37があることで、原料ガスがセル10の放電室(
図5Bに示す)に入るための、かつ、放電室内で製造されたオゾンおよび未消費ガスが放電室から出るためのマニホールドを形成する。ガスマニホールドチャネル36および37は、それぞれのマニホールドチャネル36、37の底部にある穴38および39を通じて電極基板16を介してガス入口/出口24およびガス入口/出口23にそれぞれ接続されている。
図2Aではガス入口/出口24および23が互いに隣り合って示されている一方、
図4で明らかなように、ガス入口/出口24および23は、互いに離間している。
【0021】
平坦な誘電体板25は、アルミナセラミックから形成されている。よく知られているように、誘電体板は、放電室の狭い隙間に放電を供給するのに役立つ。放電の供給がなければ、電気アークが特定の場所に確立され、オゾンをほとんど生成せず、発生セルに損傷を与える。
【0022】
上述したように、誘電体板25は、セル10が組み立てられたときに、凹部41内に嵌まる。スペーサ板14の厚さと電極板21および誘電体板25の厚さの合計とにおける差から、誘電体板25、電極板21およびスペーサ板14の中央開口部40の端縁によって放電室50が形成される。放電室空間50の側面図が
図6Aに示されている。誘電体板25と電極板21との間の隙間は狭く、最適な放電およびオゾン生成のために、隙間の範囲は(10~30)×10-3インチである。原料ガスは、マニホールドチャネル36、37のうちの一方を介して放電室50に導入される。電極板21と誘電体板25との間の電位差が、放電室50内の放電の条件を提供する。原料ガスは、マニホールドチャネル36、37のうちの一方を介して放電室50に導入され、結果として生じるオゾンおよび残りの原料ガスは、マニホールド37、36のうちの他方を介して除去される。
図6Bの上面図は、ガスマニホールドチャネル36および37が電極板21に平行であり、かつ組み立てられたセル10の電極板21の両端に配置されていることを示している。ガスマニホールドチャネル36および37は、オゾンの最適な生成のために、原料ガスを放電室50を通して分配する。
【0023】
オゾン生成における電位差、即ち電圧は高く、望ましくない電気的短絡を回避するように注意が払われている。
図7Aの詳細図に示されるように、上部および下部ヒートシンク並びに電極基板11、16の平面の穴31および30は、それぞれ面取りされている。上記のように、スペーサ板14の穴33と共に穴31および30は、セルアセンブリをクランプするための留め具棒13Cを受け入れる。穴31および30を面取りすることにより、穴33、31および30を通る電極基板11と16との間の距離が増加する。距離が増加すると、電極板11と16との間の望ましくない放電の可能性が低減する。更に、絶縁スペーサ板14は、電極基板11および16よりも横方向により大きく作成される。これにより、より薄いスペーサ板14が可能となる。
図7Bの側面図に示すように、延長されたスペーサ板14は、導電性の上部および下部ヒートシンク並びに電極基板11、16の間の距離を増加させ、アセンブリの端縁周辺の短絡を更に防ぐ。
【0024】
セル10の主要な構造要素は平坦であるか、または平面に適合していることに留意する必要がある。これにより、要素がシンプルかつ簡単に製造可能となる。例えば、上部および下部基板要素11および16でさえ、本質的には、平坦なベース11A、16Aおよび冷却フィン13の組み合わせである。ヒートシンクおよび電極基板11および16を機械加工または押し出し加工のいずれかによって単一の部品として構築することが好ましいが、これらの要素11および16は、別個のヒートシンクおよび電極基板として構築することもできる。
図2Aおよび
図2Bの点線は、各基板要素11および16を2つの別個の部品、即ち、平面を有する基板11Aおよび16Aと冷却フィンサブアセンブリ13とから作成する方法を示しており、これらを接合してヒートシンクおよび電極基板11および16を形成することができる。従って、これを行うためには複数の方法があり、これは当業者には明らかであろう。代替的な方法を使用しても、本発明の精神は変わらないであろう。
【0025】
平坦な要素により、セル10を電極基板11および16の周囲のスペーサ板14と一緒にクランプすることができる。このように構成することで、セル10の組み立ておよび分解が容易になる。部品の修理および交換は迅速かつ簡素である。要素が平坦であり、かつ構造上の不規則性がないことにより、セルアセンブリの歪みおよび不利な性能が回避される。オゾン発生セル用に選定される材料は低コストであり、セル内の放電室の設計により、オゾン発生性能が高くなっている。オゾン発生セルはコンパクトで、一実施形態では約10”×7.5”×3”であり、また、複数のセルを容易に積み重ねることができるので、オゾン生成には拡張性がある。
【0026】
本発明のこの説明は、例示および説明の目的で提示されている。網羅的であること、または本発明を記載された正確な形態に限定することを意図するものではなく、上記の教示に照らして多くの修正および変形が可能である。実施形態は、本発明の原理およびその実際の適用を最もよく説明するために選択し、説明したものである。この説明は、他の当業者が、様々な実施形態において、特定の用途に適するように様々な修正を加えて、本発明を最もよく利用および実施することを可能にする。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定義される。
【国際調査報告】