(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】溶媒含有セルロース粒子から溶媒を回収するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
B01D 11/02 20060101AFI20221215BHJP
B01D 29/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
B01D11/02 101
B01D23/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523374
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(85)【翻訳文提出日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 EP2020079559
(87)【国際公開番号】W WO2021078767
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507127314
【氏名又は名称】レンチング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェイナー、ローラント
(72)【発明者】
【氏名】トリン、チ フエン トラン
(72)【発明者】
【氏名】スペルガー、クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4D056
4D116
【Fターム(参考)】
4D056AB17
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4D116UU20
(57)【要約】
溶媒含有セルロース粒子(2)から溶媒(1)を回収するためのプロセス(100)が示されており、プロセスは、a)液体抽出媒体(3)によってセルロース粒子(2)から溶媒(1)を抽出し、それによって溶媒富化抽出媒体(5)を得るステップと、b)溶媒富化抽出媒体(5)から回収された溶媒(6)を得るステップと、を含んでいる。プロセスの効率を改善するために、ステップa)において、連続フロー抽出反応器(4)において、溶媒(1)がセルロース粒子(2)から抽出され、ここで、抽出媒体(3)は連続的に抽出反応器(4)を通って流れ、セルロース粒子(2)から溶媒(1)を抽出することが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒含有セルロース粒子(2)からの溶媒(1)の回収プロセスであって、
a)液体抽出媒体(3)によってセルロース粒子(2)から溶媒(1)を抽出し、それによって溶媒富化抽出媒体(5)を得、
b)溶媒富化抽出媒体(5)から回収溶媒(6)を得る工程を含み、
工程a)において、連続フロー抽出反応器(4)において溶媒(1)がセルロース粒子(2)から抽出され、抽出媒体(3)が抽出反応器(4)を連続的に流れて、セルロース粒子(2)から溶媒(1)を抽出することを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記溶媒含有セルロース粒子(2)が、再生セルロース成形体の製造のためのプロセス、より詳細にはリヨセル紡糸ドープ廃棄物(9)からの製造廃棄物(8)から得られることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記溶媒(1)は直接溶解溶媒であり、より詳細にはアミン酸化物、より好ましくはNMMOであることを特徴とする請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記抽出媒体(3)が水を含むことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
工程a)の前に、前記セルロース粒子(2)が空の抽出反応器(4)に充填されていることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
空の抽出反応器(4)に充填する際にセルロース粒子(2)が水性の懸濁液(7)中に含まれることを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記懸濁液(7)を前記抽出反応器(4)に充填する前に、前記懸濁液(7)から余分な液体(13)を除去することを特徴とする請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
懸濁液(7)から余分な液体(13)を除去するために、懸濁液(7)を湾曲形状の篩(12)を介して抽出反応器(4)内に充填することを特徴とする請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記抽出反応器(4)は、前記抽出媒体(3)用の頂部入口(14)及び底部篩出口(15)を有し、前記抽出媒体(3)は、前記抽出反応器(4)内で頂部から底部に流れることを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記溶剤富化抽出媒体(5)は、前記抽出反応器(4)の前記底部篩出口(15)から出ている抽出媒体(3)から得られることを特徴とする請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記抽出媒体(3)は、前記抽出反応器(4)を連続的に流動し、前記溶媒富化抽出媒体(5)中の溶媒(1)の含有量が所定の残留値以下に達するまで、連続的に流動することを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記溶剤富化抽出媒体(5)中の溶媒(1)の含有量が所定の残留量に達した後に、前記抽出反応器(4)を通る抽出媒体(3)の連続フローを停止し、前記抽出反応器(4)を空にすることを特徴とする請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記抽出反応器(4)を空にした後、本質的に溶媒を含まないセルロース粒子(18)をプレス及び/又は乾燥させることを特徴とする請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記回収溶媒(6)は、前記溶媒富化抽出媒体(5)から得られることを特徴とする請求項1~13の何れか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶媒含有セルロース粒子から溶媒を回収する方法に関し、この方法は、a)液体抽出媒体によってセルロース粒子から溶媒を抽出し、それによって溶媒富化抽出媒体を得、そしてb)溶媒富化抽出媒体から回収溶媒を得る工程を含む。
【背景技術】
【0002】
生産プロセス、特に再生セルロース成形体生産の分野における環境負荷の低減は、産業界のますます重要な目的となってきている。
【0003】
特に、リヨセル繊維のような再生セルロース成形体を製造するプラントからの生産廃棄物の取り扱いは、いくつかの課題を提起する。このような生産廃棄物は、通常、直接処分または更なる加工の何れも不適当な溶媒をかなりの量含んでいる。一方、生産廃棄物からの溶媒の抽出は、大量の水または他の抽出剤を消費し、一方、廃水流中の前記溶媒は、廃水処理施設の負荷及び化学的酸素需要を実質的に増加させる。したがって、前記生産廃棄物から溶剤を回収することが望ましい。
【0004】
CN 104711706 Aにおいて、リヨセルドープ廃棄物からの直接溶解溶媒(NMMO)の回収のための回収装置が開示され、前記装置によれば、ドープ廃棄物が押し出されてストリップとされ、前記ストリップは冷却され、続いて小さなペレットに粉砕される。ペレットから溶媒を回収するために、ペレットはバッチプロセスで浸出装置に供され、前記浸出装置により、ペレットは、浸出液中に数回、それぞれ約24時間浸漬される。セルロースペレット中の溶媒の低い残留量に達するためには、大量の浸出液(水)が必要である。さらに、いくつかの浸出サイクルが必要であり、溶媒の回収のためのそのようなプロセスは非常に遅く、且つ非効率的になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、溶媒を回収する際により高い効率を有する、最初に言及したタイプの改良されたプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
記載された目的は、独立請求項1に係る方法によって、発明的に達成される。
【0008】
ステップa)において、連続フロー抽出反応器でセルロース粒子から溶媒を抽出する場合、水消費を効果的に低減でき、効率的な回収プロセスを得ることができる。セルロース粒子が抽出媒体に一定時間浸漬される従来技術によるバッチ式プロセスでは、セルロース粒子から抽出媒体への溶媒の輸送は、平衡効果によって支配され、したがって、セルロース粒子内部及び抽出媒体中の溶媒の濃度は、濃度勾配によって駆動される溶媒が、徐々にコアからセルロース粒子の外殻に拡散し、最終的にセルロース粒子と接触して抽出媒体に入るにつれ、時間と共に均一化する傾向がある。この拡散駆動抽出プロセスの効率はセルロース粒子内部及びセルロース粒子と抽出媒体との間の溶媒濃度勾配に依存するので、このバッチ式プロセスは遅く、最終的にセルロース粒子中の溶媒の低い残留濃度に到達するために新鮮な抽出媒体による多数のサイクルを必要とする。本発明の方法では、抽出反応器を通る抽出媒体の連続的な流れのために、セルロース粒子への新鮮な抽出媒体の一定の供給を提供することができる。これにより、抽出媒体中とセルロース粒子中の溶媒濃度の差が常に最大となり、セルロース粒子から抽出媒体への急峻な濃度勾配がもたらされる。したがって、大きな濃度勾配は、セルロース粒子から抽出媒体への溶媒の一定の輸送を可能にし、また、セルロース粒子内部の急峻な濃度勾配を確実にし、それによって、セルロース粒子のコアからそれらの外殻を介して抽出媒体への溶媒の拡散を駆動する。したがって、抽出プロセスのステップa)において、抽出媒体が抽出反応器を通って流れる間、抽出媒体は絶えず溶媒によって富化される。次いで、ステップb)において、溶媒富化抽出媒体を使用して、回収された溶媒を得ることができる。
【0009】
溶媒含有セルロース粒子の水性懸濁液が、再生セルロース成形体の製造プロセスからの粉砕セルローススクラップまたは廃棄物である場合、本発明の方法を有利に使用することができる。このようなプロセスでは、セルロースまたは誘導体化セルロースを溶解するために適切な溶媒が使用される。
【0010】
より好ましくは、溶媒含有セルロース粒子は、リヨセルプロセスの製造廃棄物から得られる。特に、生産廃棄物は、それによって、リヨセルプロセスからの紡糸ドープ廃棄物である。このような紡糸ドープ廃棄物は、例えば、フィルムトルーダ(filmtruder)または製造ラインのブリーディングから得られるドープ廃棄物、またはスピンアップ中に得られる洗浄されていないセルロース成形体の廃棄物であってもよい。これによりセルロース粒子中に含まれる溶媒は、アミン酸化物、特にN-メチルモルフォリン-N-オキシド(NMMO)、またはイオン液体のようなセルロースの直接溶解溶媒である。
【0011】
更に、抽出媒体が水である場合には、容易で信頼性のあるプロセスを提供することができる。水は、特に適当な抽出媒体であるが、溶媒が例えばNMMOのような水溶性溶媒である場合には、本明細書に記載されるプロセスは、特に、液体抽出媒体による溶媒含有セルロース粒子からの溶媒の回収に適しており、ここで、セルロース粒子はリヨセルプロセスの紡糸ドープ廃液から得られ、溶媒はNMMOであり、抽出媒体は水であり、言い換えれば、水を液体抽出媒体として使用するNMMO含有リヨセル紡糸ドープ廃液からのNMMOの回収に適している。
【0012】
空の抽出反応器が、工程a)の前に溶媒含有セルロース粒子で最初に充填される場合、前述のプロセスの再現性は、さらに改善され得る。したがって、本発明の方法は、抽出反応器が溶媒含有セルロース粒子の新鮮なバッチで満たされ、次いで溶媒が抽出反応器を通る抽出媒体の連続流を介してセルロース粒子から抽出される、不連続な様式で実施され得る。
【0013】
空の抽出反応器に溶媒含有セルロース粒子を充填する際に、セルロース粒子が水性懸濁液中に含有される場合、技術的により容易なプロセスを提供することができる。懸濁されていない粉砕溶媒含有セルロース粒子は、通常かなり高い粘度を示し、したがって不適切な流動特性をもたらすので、セルロース粒子を水溶液中に懸濁させると、セルロース粒子の取扱い特性を改善することができる。
【0014】
抽出反応器に懸濁液を充填する前に、懸濁液から余分な液体を除去すれば、溶媒の抽出の有効性をさらに向上させることができる。粉砕及び調製中、懸濁液中のセルロース粒子の固体濃度は比較的低く、従って、懸濁液はそのほとんどが液体であるから、抽出反応器に直接懸濁液を充填することは非常に非効率的である。抽出反応器内の固体含有量、ひいてはプロセスの効率を増加させるために、抽出反応器を充填する前に、余分な液体が懸濁液から排出されることが望ましい。従って、高速で効率的なプロセスを提供することができる。
【0015】
懸濁液から過剰な液体を除去するために、懸濁液が、湾曲形状の篩(bow-shaped sieve)を介して抽出反応器に充填される場合、容易で信頼性のあるプロセスがさらに提供され得る。好ましくは、過剰の液体のみが篩を通過し得、一方、セルロース系粒子は篩の表面上を抽出反応器に流れ、したがって過剰の液体から分離される。
【0016】
ステップa)におけるセルロース粒子からの溶媒の連続抽出は、抽出反応器が抽出媒体のための頂部入口及び底部篩出口を有する場合、信頼性があり効率的な方法で行うことができる。新鮮な抽出媒体は、これにより、頂部注入口を通して連続的に抽出反応器に供給され得る。次いで、抽出媒体は、溶媒含有セルロース粒子が充填された抽出反応器を通って流れ、それによって溶媒が濃縮される。次いで、抽出反応器の底部において、溶媒富化抽出媒体が底部篩出口を通って抽出反応器を出る。それにより、底部篩出口は、抽出媒体のみがそれを通って抽出反応器から出ることができるように構成されることが好ましい。抽出反応器内の頂部から底部への抽出媒体の流れは、特に溶媒が抽出媒体より高い比重を有する場合、溶媒抽出の効率を有利に増加させることができる。これは、溶媒が、NMMOまたはイオン液体のような直接溶解溶媒の如きセルロースの溶解のための溶媒である場合に特に当てはまる。抽出媒体の頂部から底部への流れを通して、抽出媒体とセルロース粒子との間の望ましい溶媒濃度勾配を抽出反応器全体にわたって維持することができる。
【0017】
さらに、上記プロセスにおいて、溶媒富化抽出媒体は、抽出反応器の底部篩出口から出る抽出媒体から得られる。抽出媒体が抽出反応器内の頂部から底部へ流れるために、溶媒の最高濃度を有する溶媒富化抽出媒体は、抽出反応器の底部に蓄積し、したがって、溶媒の回収のための溶媒富化抽出媒体の一定の供給が、抽出反応器の底部篩出口から得られ得る。
【0018】
溶媒富化抽出媒体中の溶媒の含有量が所定の残留値以下に達するまで、抽出媒体が抽出反応器中を連続的に流れる場合、プロセスの効率をさらに向上させることができる。溶媒富化抽出媒体中の溶媒の濃度を連続的にモニタリングすることにより、セルロース粒子中の溶媒の残留濃度に関する非常に信頼できる尺度を提供することができ、従って、抽出媒体の流れをいつ停止することができるかを判定するための手段を提供することができる。これにより、セルロース粒子から溶媒を抽出するのに十分な抽出媒体の量を、セルロース粒子中の溶媒の規定された残留濃度まで、さらに減少させることができる。
【0019】
溶媒富化抽出媒体中の溶媒の濃度を決定するための適切な手段は、例えば、抽出反応器の内側の抽出媒体、又は抽出反応器を出た後の抽出媒体の導電率測定であり得る。
【0020】
溶媒の濃度を抽出反応器の底部、特に抽出反応器の底部篩出口で連続的に監視する場合、前述の利点をさらに改善することができる。溶媒富化抽出媒体中の溶媒の最高濃度は、抽出反応器の底部において見出されるので、抽出反応器の底部篩出口から出る溶媒富化抽出媒体中の溶媒の濃度が所定の残留値以下に達した後に抽出媒体の連続フローを停止する場合、より信頼性のあるプロセスが提供され得る。
【0021】
抽出媒体中の溶媒の濃度が所定の残留値以下の含有量に到達した後、抽出反応器を通る抽出媒体の連続フローを停止し、抽出反応器を空にした後、セルロース粒子のバッチから溶媒を抽出するための容易で信頼性のある不連続プロセスを設けることができる。抽出媒体の流れを停止した後、抽出反応器内の余剰の抽出媒体は、底部篩出口を通って排出され得る。次いで、溶媒が抽出された本質的に溶媒を含まない抽出反応器中のセルロース粒子が、底部出口を通して抽出反応器を出るようにすることができる。抽出反応器が空になった後、新しいバッチの新しく溶媒を含むセルロース粒子を補充して、抽出媒体の連続フローを再び開始することができる。あるいは、残留量の過剰抽出媒体を抽出反応器内に保持して、底部出口を通して抽出反応器を空にするのを助けることができる。
【0022】
抽出反応器を空にした後、抽出反応器を空にすることから得られた本質的に溶媒を含まないセルロース粒子をプレス及び/又は乾燥させる場合、より環境に優しいプロセスを提供することができる。溶媒を抽出した後、本質的に溶媒を含まないセルロース粒子は依然として過剰な抽出溶液を含んでいてもよく、これは抽出反応器を空にした後の更なる工程で除去されてもよい。これに代わって、本質的に溶媒を含まないセルロース粒子をプレスして、過剰な抽出溶液を除去することができ、従って、抽出溶液の損失を低減することができる。さらに、本質的に溶媒を含まないセルロース粒子を乾燥させて、最終的に乾燥した溶媒を含まないセルロース生成物を得ることができる。これは、最初の廃棄物から溶媒とセルロース粒子の両方を回収することにより、全ての資源を効率的に使用することを可能とする。本質的に溶媒を含まないセルロース粒子をプレスすることは、例えば、FAN分離器または遠心分離器を通して前記粒子を供給することによって実行してもよい。
【0023】
抽出後の本質的に無溶媒のセルロース粒子の残留溶媒の含有量が500mg/kgCell未満である場合、溶媒の非常に信頼性の高い抽出が提供され得る。ここで、mg/kgCellは溶媒含有量をセルロース粒子1kg当たりmgで表す。同時に、抽出媒体の総消費量が50kg/kgCell未満、すなわちセルロース粒子1kgあたり抽出媒体が50kg未満であれば、工程の効率が大幅に改善される可能性がある。
【0024】
最後に、回収された溶媒富化抽出媒体から回収溶媒を得ることができる。
【0025】
本発明の方法は、セルロース粒子を製造するために有利に使用することができ、この場合、紡糸ドープが水中グラニュレータに押し出されてセルロース粒子を生成し、請求項1~14のいずれかに記載の方法でセルロース粒子から溶媒が抽出され、最終的に乾燥され、本質的に溶媒を含まないセルロース粒子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下では、図面を参照して実施形態に基づいて本発明を例示する。
【
図1】
図1は、第1のプロセス工程における第1の実施形態によるプロセスの概略図を示す。
【
図2】
図2は、
図1のプロセスにおける第2のプロセス工程の概略図を示す。
【
図3】
図3は、
図1のプロセスにおける第3のプロセス工程の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1~
図3には、本発明の第1の実施形態による、溶媒含有セルロース粒子2から溶媒1を回収するためのプロセス100が示されている。第1の実施形態によるプロセス100は、
a)溶媒含有セルロース粒子2及び水を水性媒体11として含む水性懸濁液7で空の抽出反応器4を充填するステップと、
b)液体抽出媒体3によってセルロース粒子2から溶媒1を抽出するステップ、より詳細には、連続フロー抽出反応器4において、抽出媒体3が連続的に抽出反応器4を上から下に流れてセルロース粒子2から抽出媒体3に溶媒1を抽出し、それによって溶媒富化抽出媒体5を得るステップと、
c)抽出反応器4の底部篩出口15を出る溶媒富化抽出媒体5から回収溶媒6を得るステップと、
を含む。
【0028】
したがって、プロセス100では、連続流抽出反応器4内の液体抽出媒体3によって、溶媒含有セルロース粒子2から溶媒1が抽出される。液体抽出媒体3は、抽出反応器4を通って連続的に流れ、セルロース粒子2からの溶媒1で富化され、したがって、溶媒富化抽出媒体5を形成する。次いで、前記溶媒富化抽出媒体5は、抽出反応器4を出る際に収集され得、回収された溶媒6は、それから得られ得る。
【0029】
図1では、プロセス100の第1のステップがより詳細に描かれている。空の抽出反応器4は、溶媒1の抽出が開始される前に、最初に溶媒含有セルロース粒子2が充填される。本実施形態では、セルロース粒子2を含んだ水性懸濁液7を用いてセルロース粒子2を抽出反応器4に充填する。水性懸濁液7はセルロース粒子2のより良いハンドリングを可能にするが、セルロース粒子2は、それ以外では非常に不利な流れ特性を示す傾向がある。本実施形態では、セルロース粒子2は、最初に、再生セルロース成形体の製造のためのリヨセル法の生産廃棄物8から得られる。溶媒1を含むこのような生産廃棄物8は、特に、例えばフィルムトルーダまたは紡糸ドープラインのブリーディングにより得られ、あるいは再生セルロース成形体の押し出し中に得られる、リヨセルプラントからの紡糸ドープ廃棄物9である。通常、紡糸ドープ廃棄物9は、上述したように、異なる発生源からの廃棄物の収集・混合物であり、従って、含まれる溶媒1の濃度は変動する。この場合、溶媒1は、セルロースの直接溶解溶媒、特にNMMOのようなアミンオキシドまたは任意のイオン液体であり、紡糸ドープ廃棄物9は、リヨセルプラントの種々の段から生じる。したがって、本実施形態では、紡糸ドープ廃棄物9から溶媒1を再生するための抽出媒体3として水が使用される。紡糸ドープ廃棄物9は、本プロセス100の前にさらなる処理を受けていないので、少なくとも部分的に非凝固のセルロース溶液であり、セルロースは溶媒1中に溶解され、非常に高い粘度を示す。従って、紡糸ドープ廃棄物9を容易に取り扱い、その中から溶媒1を効率的に取り出すことができるように、まずシュレッダー10で粉砕し、溶媒含有セルロース粒子2を形成する。これにより、紡糸ドープ廃棄物9と水性媒体11とがシュレッダー10に添加され、これにより、紡糸ドープ廃棄物9を粉砕及び凝固させる。リヨセル紡糸ドープ廃棄物9の本ケースでは、水性媒体11は好ましくは水であってもよいが、他の任意の適合する媒体を使用することも同様に可能である。さらなる抽出プロセスとの高い適合性を保証するために、水性媒体11は、特に、抽出反応器4内のセルロース粒子2から溶媒1を抽出するために使用される抽出媒体3と同一であり、これにより、さらなる洗浄または洗浄ステップを省略することができる。シュレッダー10から得られた溶媒含有セルロース粒子2は、液体が水性媒体11である懸濁液7に含まれる。
【0030】
さらなる実施形態において、シュレッダー10は、水中造粒機であってもよく、前記水中造粒機において、紡糸ドープ廃棄物9は、回転ナイフを通して水の流れに供給され、セルロース粒子2を形成するが、これは図には描かれていない。
【0031】
図1に示すように、懸濁液7は更に湾曲形状の篩12を介して抽出反応器4に供給され、懸濁液7から余分な液体13を除去する。湾曲形状の篩12は、セルロース粒子2は湾曲形状の篩12を通過できず、上面に沿って抽出反応器4に流れるような形をしており、一方、過剰な液体13は湾曲形状の篩12を通過して捕集され得る。余剰液体13は、本質的に、紡糸ドープ廃棄物9を粉砕するために使用された水性媒体11を含むが、さらにセルロース粒子2から抽出される溶媒1を含んでもよい。余剰液体13中の溶媒1の量に応じて、回収溶媒6を得るためにも用いることが好ましい場合がある。
【0032】
図2は、第2のプロセスステップにおけるプロセス100を示す。抽出反応器4にセルロース粒子2を充填した後、抽出媒体3の連続フローを開始する。これにより、抽出媒体3は、頂部入口14を通って抽出反応器4に入り、セルロース粒子2の間を抽出反応器4の底部に向かって流れる。本実施形態では、前記頂部入口14は、前記抽出反応器4の頂部側に配置され、一方、さらなる実施形態では、前記頂部入口14は、前記抽出反応器4の頂部に配置される。さらなる実施形態では、抽出媒体3は、頂部入口14に入るときに、抽出反応器4全体にわたって均質に分布される。
【0033】
抽出媒体3は、セルロース粒子2の間を流れることにより、セルロース粒子2と接触し、これにより、溶媒1がセルロース粒子2から抽出媒体3に抽出され、これにより溶媒富化抽出媒体5が形成される。次いで、前記溶媒富化抽出媒体5は、前記抽出反応器4の底部篩出口15から得られる。従って、底部篩出口15は篩16を含み、これは溶媒富化抽出媒体5を通すが、セルロース粒子2を保持する。このようにして、頂部入口14を介して新鮮な抽出媒体3を抽出反応器4に連続的に供給し、底部篩出口15から溶媒富化抽出媒体5を連続的に得ることができる。次いで、底部篩出口15から出た溶媒富化抽出媒体5は、溶媒回収装置17に供給され、溶媒回収装置17において溶媒富化抽出媒体5から溶媒6が回収される。
【0034】
溶媒回収装置17は、浮揚、イオン交換、蒸発などの任意の組み合わせなど、溶媒富化抽出媒体5から溶媒を回収することができる任意の装置であってもよい。一実施形態では、溶媒回収装置17において、多数の予備精製工程の後に、過剰の水を蒸発させることができる。
【0035】
さらなる実施形態では、抽出反応器4を充填している間に湾曲形状の篩12から得られた過剰の液体13もまた、溶媒回収装置17に供給されて、回収溶媒6を得る。これは、溶媒回収装置17への第2の破線供給ラインによって
図1に示される。
【0036】
好ましい一実施形態では、底部篩出口15から得られる溶媒富化抽出媒体5中の溶媒1の濃度が所定の濃度値を下回るまで、抽出媒体3が頂部入口14を介して抽出反応器4に連続的に供給される。前記濃度値は、セルロース粒子2中の溶媒1の最大残留濃度に関する要件、及びプロセス100で使用される抽出媒体3の最大量に関する制約に従って選択することができる。溶媒富化抽出媒体5中の溶媒1の濃度は、例えば導電率測定によって恒久的に測定及びモニタリングすることができる。溶媒富化抽出媒体5が、あらかじめ定義された値よりも低い溶媒1の濃度に達すると、新鮮な抽出媒体3の連続フローが停止される。
【0037】
図3において、プロセス100は、抽出媒体3の抽出及び連続フローが停止された後の第3のプロセスステップで示されている。溶媒富化抽出媒体5は、抽出反応器4から排出され、溶媒抽出セルロース粒子18のみが抽出反応器4内に残される。次いで、抽出反応器4が空にされ、溶媒が抽出されたセルロース粒子18が、抽出反応器4の底部出口20に接続されたポンプ19を通して供給される。ポンプ19はさらに、溶媒抽出セルロース粒子18を脱水装置21に輸送し、そこで溶媒抽出セルロース粒子18に含まれる残留溶媒富化抽出媒体5が除去される。脱水装置21を出た乾燥セルロース粒子22は、本質的に溶媒1を含まず、実質的に乾燥している。
【0038】
図にさらに示されていない別の実施形態では、溶媒抽出セルロース粒子18のポンプ19及び抽出反応器4の底部出口20を通る流動特性を改善するために、抽出反応器4を空にする前に、溶媒富化抽出媒体5の残留量を抽出反応器4に残すことができる。
【0039】
一実施形態では、脱水装置21は、FANセパレータを備え、溶媒が抽出されたセルロース粒子18は、残留溶媒富化抽出媒体5を除去するためにプレスされる。別の実施形態では、脱水装置21は遠心分離機を備え、セルロース粒子18は遠心分離されて残留溶媒富化抽出媒体5を除去する。さらに別の実施形態では、脱水装置21は、さらにセルロース粒子から余分な液体を取り除いて乾燥セルロース粒子22を得るために、FAN分離器、遠心分離器等に続く乾燥機を含んでいてもよい。
【実施例】
【0040】
以下では、本願明細書に記載されるプロセスを、多数の実施例に従って実証する。
【0041】
実施例1~3では、溶媒含有セルロース粒子のバッチを本発明の方法で処理し、回収溶媒を得る。溶媒含有セルロース粒子は、リヨセルプロセスの紡糸ドープ廃棄物から得られる。セルロースと溶媒としてのNMMOを含む前記リヨセル紡糸ドープ廃棄物を、水を添加して粉砕し、平均サイズが約3~5mmの溶媒含有セルロース粒子の懸濁液を形成した。次いで、セルロース粒子を含む懸濁液を湾曲形状の篩を介して抽出反応器に充填し、セルロース粒子を適切に脱水した。これにより、抽出反応器は、2m3の活動容積及び184kgの全セルロース粒子充填量を有していた。次いで、水を抽出媒体として抽出反応器を通して連続的に流し、セルロース粒子中のNMMOが所望の残留濃度に達するまで、セルロース粒子からNMMOを抽出した。
【0042】
表1に、実施例1~3の結果をまとめる。
【0043】
実施例1では、セルロース粒子中のNMMOの残留濃度がセルロース粒子1kg当たり10000mg未満の値に達するまで、抽出反応器を通して抽出媒体を連続的に供給した。抽出反応器を空にした後、セルロース粒子が6808mg/kgCellの残留含有量のNMMOを含有することが測定された。したがって抽出反応器を通してセルロース粒子1kg当たり合計17.4kgの水が供給された。完全な抽出サイクルは、約5時間で終了した。抽出終了時に得られた溶媒富化抽出媒体(NMMO-水溶液)のNMMO濃度は0.48%であった。
【0044】
実施例2は実施例1と同様に行ったが、セルロース粒子中のNMMOの残留濃度が500mg/kgCell未満に達するまで、抽出反応器を通して抽出媒体を連続的に供給し、それによって総水消費量30.7kg/kgCellが必要とされ、総抽出時間は約6時間に達した。抽出反応器を空にした後、セルロース粒子は464mg/kgCell のNMMOを含有していた。得られたNMMOの水溶液は最終的にNMMO濃度0.05%であった。
【0045】
同様に、実施例3では、セルロース粒子中のNMMOの残留濃度が50mg/kgCell以下になるまで、抽出反応器を通して抽出媒体を連続的に供給した。これにより、41.9kg/kgCellの総水消費量が必要となり、総抽出時間は4時間に達した。抽出反応器を空にした後、セルロース粒子は1kgCellあたり36mg未満のNMMOを含んでいた。得られた水中のNMMOの溶液は最終的に0.02%のNMMO濃度を有していた。
【0046】
さらに、比較例1、2では、従来技術に従って攪拌槽内でバッチ処理によりセルロース粒子を抽出した。したがって、セルロース粒子は、上述のように、リヨセル紡糸ドープを粉砕し、その後、撹拌槽に充填することによって得られた。次に、数サイクルに亘って撹拌容器に水を充填し、セルロース粒子-水混合物を一定時間撹拌し、水を容器から再度排出した。次に、このサイクルを数回繰り返した。
【0047】
比較例1及び2についての結果を表1にまとめる。
【0048】
比較例1では、上述したように2回の抽出サイクル(2段階)を行った。抽出終了後、セルロース粒子中のNMMOの残留量は35000mg/kgCellであった。抽出には2時間を要し、総量101kg/kgCellの水を消費した。
【0049】
比較例2においては、同様の方法で11回の抽出サイクル(2段階)を行った。セルロース粒子中のNMMOの残留量を抽出後500mg/kgCellであった。抽出に要した時間は11時間で、総量で288kg/kgCellの水を消費した。
【0050】
【0051】
したがって、本発明の方法は、抽出の間に消費される水の量を有意に減少させることができ、一方で抽出時間も減少する。さらに、溶媒(NMMO)の回収のための得られた溶液は、はるかに高い濃度を有し、前記溶媒のより効率的な回収を可能にする。
【国際調査報告】