(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】基材からのエレクトロルミネッセンス材料の除去
(51)【国際特許分類】
H05B 33/10 20060101AFI20221215BHJP
C11D 7/34 20060101ALI20221215BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20221215BHJP
C07C 323/03 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
H05B33/10
C11D7/34
H05B33/22 D
H05B33/14 A
C07C323/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523381
(86)(22)【出願日】2020-10-08
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 IB2020059479
(87)【国際公開番号】W WO2021079223
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】スミス,シーン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ルンドバーグ,ディヴィッド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シウ,ザイ-ミン
【テーマコード(参考)】
3K107
4H003
4H006
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107CC45
3K107DD64
3K107DD80
3K107FF14
3K107GG28
3K107GG33
4H003DA09
4H003DA12
4H003DA15
4H003DB01
4H003EA05
4H003EB02
4H003EB12
4H003EB20
4H003EB21
4H003ED03
4H003ED29
4H003ED31
4H003FA12
4H006AA03
4H006AB70
4H006TA04
(57)【要約】
組成物は、構造式(I):Rf-S-Rh (I)[式中、Rfは、2個~9個の炭素原子を有するフッ素化又はペルフルオロ化基であり、任意に1個以上の鎖状に連結されたヘテロ原子又は塩素原子を含み、Rhは、1個~3個の炭素原子を有する非フッ素化炭化水素基である]によって表されるハイドロフルオロチオエーテルを含む。組成物は、エレクトロルミネッセンス材料を更に含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式(I):
Rf-S-Rh (I)
[式中、Rfは、2個~9個の炭素原子を有するフッ素化又はペルフルオロ化基であり、任意に1個以上の鎖状に連結されたヘテロ原子又は塩素原子を含み、Rhは、1個~3個の炭素原子を有する非フッ素化炭化水素基である]によって表されるハイドロフルオロチオエーテルと、
エレクトロルミネッセンス材料と、を含む、組成物。
【請求項2】
Rfが、2個~5個の炭素原子を有するペルフルオロ化飽和基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Rhが、CH
3又はCH
3CH
2である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エレクトロルミネッセンス材料が、銅(II)フタロシアニン、イリジウム、又は白金を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記エレクトロルミネッセンス材料が、前記組成物中に溶解している、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記構造式(I)を有する化合物が、前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも50重量%の量で前記組成物中に存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
基材からエレクトロルミネッセンス材料を除去するためのプロセスであって、
前記基材を、以下の構造式(I):
Rf-S-Rh (I)
[式中、Rfは、2個~9個の炭素原子を有するフッ素化又はペルフルオロ化基であり、任意に1個以上の鎖状に連結されたヘテロ原子を含み、Rhは、1個~3個の炭素原子を有する非フッ素化炭化水素基である]を有するハイドロフルオロチオエーテルと接触させる工程を含む、プロセス。
【請求項8】
Rfが、2個~5個の炭素原子を有するペルフルオロ化飽和基である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
Rhが、CH
3又はCH
3CH
2である、請求項7又は8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記エレクトロルミネッセンス材料が、銅(II)フタロシアニン、イリジウム、又は白金を含む、請求項7~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記基材が、金属を含む、請求項7~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記エレクトロルミネッセンス材料が、前記金属の外面上に配置されている、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
基材からエレクトロルミネッセンス材料を除去するためのプロセスであって、
前記基材を、NMP、NBP、シクロヘキサノン、及びIPAからなる群から選択される溶媒と接触させる工程と、
前記基材を、以下の構造式(I):
Rf-S-Rh (I)
[式中、Rfは、2個~9個の炭素原子を有するフッ素化又はペルフルオロ化基であり、任意に1個以上の鎖状に連結されたヘテロ原子を含み、Rhは、1個~3個の炭素原子を有する非フッ素化炭化水素基である]を有するハイドロフルオロチオエーテルと接触させる工程とを含む、プロセス。
【請求項14】
前記基材をハイドロフルオロチオエーテルと接触させる工程が、前記基材を前記溶媒と接触させる工程の後に行われる、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
Rfが、2個~5個の炭素原子を有するペルフルオロ化飽和基である、請求項13又は14に記載のプロセス。
【請求項16】
Rhが、CH
3又はCH
3CH
2である、請求項13~15のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記エレクトロルミネッセンス材料が、銅(II)フタロシアニン、イリジウム、又は白金を含む、請求項13~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記基材が、金属を含む、請求項13~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記エレクトロルミネッセンス材料が、前記金属の外面上に配置されている、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
以下の構造式(II):
【化1】
[式中、nは、0又は1であり、
Xは、酸素原子又は硫黄原子であり、
(i)Rh’は、1個~4個の炭素原子及び少なくとも1個の水素原子を有する部分フッ素化アルキル基であり、任意に1個以上の鎖状に連結されたヘテロ原子又は塩素原子を含み、Rf’は、1個~4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基であり、任意に1個以上の鎖状に連結されたヘテロ原子又は塩素原子を含むか、あるいは
(ii)Rh’及びRf’は一緒に結合して、少なくとも1個の水素原子を有しかつ任意に1個以上の鎖状に連結されたヘテロ原子又は塩素原子を含む5員又は6員フッ素化環を形成する]によって表されるハイドロフルオロチオエーテルと、
エレクトロルミネッセンス材料と、を含む、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基材からエレクトロルミネッセンス材料を除去するための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属基材からエレクトロルミネッセンス材料を除去するための様々な組成物は、例えば、米国特許第7,073,518号に記載されている。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態では、組成物は、以下の構造式(I):
Rf-S-Rh (I)
[式中、Rfは、2個~9個の炭素原子を有するフッ素化又はペルフルオロ化基であり、任意に1個以上の鎖状に連結されたヘテロ原子又は塩素原子を含み、Rhは、1個~3個の炭素原子を有する非フッ素化炭化水素基である]によって表されるハイドロフルオロチオエーテルを含む。組成物は、エレクトロルミネッセンス材料を更に含む。
【0004】
上記の本開示の概要は、本開示の各実施形態を説明することを意図したものではない。本開示の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明にも記載される。本開示の他の特徴、目的及び利点は、本明細書及び特許請求の範囲から明らかになろう。
【発明を実施するための形態】
【0005】
有機発光ダイオード(organic light emitting diode、OLED)製造プロセスでは、エレクトロルミネッセンス材料が金属マスク上に堆積される(又は他の方法で存在する)ことが一般的である。これらの金属マスクを再利用するために、エレクトロルミネッセンス材料を除去する必要がある。N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-2-ブチルピロリドン(NBP)、シクロヘキサノン、又はイソプロピルアルコール(IPA)などの特定の溶媒を使用して、金属マスクからエレクトロルミネッセンス材料を除去することができる。エレクトロルミネッセンス材料の除去に続いて、そのような初期溶媒の乾燥時間がそれらの高沸点のために許容できないほど長くなるため、溶媒は、追加の溶媒(例えば、ハイドロフルオロエーテル流体)を使用して金属マスクから除去される必要がある(例えば、すすぎ落とされる)。更に、これらの溶媒の使用は、一般に、それらの好ましくない環境プロファイル(例えば、高いGWP)、毒性プロファイル、又は引火点(すなわち、安全性の懸念)のために望ましくない。
【0006】
最近、単一段階のエレクトロルミネッセンス材料の除去を容易にする組成物が開発されている。しかしながら、組成物は、共沸混合物を形成するハイドロフルオロ化合物と有機溶媒との共沸ブレンド(例えば、トランス-ジクロロエチレン)である。そのような多成分組成物は、許容できる洗浄性能のために、業界が回避することを好む塩素含有材料(例えば、トランス-ジクロロエチレン)を含むので理想的とは言えない。
【0007】
結果として、(i)単一の成分組成(ブレンドとは対照的に)を使用して、単一段階プロセス(すなわち、追加のすすぎ工程を必要と得ないプロセス)で実行することができる、並びに/又は(ii)より好ましい毒性プロファイルを有する、及び/若しくは引火点のない材料を使用する、金属マスクからエレクトロルミネッセンス材料を除去するための組成物及び方法が望ましい場合がある。
【0008】
一般に、本開示は、金属マスクからエレクトロルミネッセンス材料を除去するための組成物及び方法を対象とし、この組成物及び方法は、特定のハイドロフルオロチオエーテルを含む。驚くべきことに、これらのハイドロフルオロチオエーテルは、洗浄性能と加速された乾燥時間との独自の組み合わせを示す(すなわち、1段階プロセスを可能にする)一方で、好ましい毒性、不燃性、及び環境プロファイルも提供する。
【0009】
本明細書で使用する場合、「フルオロ-」(例えば、「フルオロアルキレン」又は「フルオロアルキル」又は「フルオロカーボン」の場合などの、基又は部分に関して)又は「フッ素化」とは、炭素に結合した水素原子が少なくとも1つは存在するように、部分的にフッ素化されていることを意味する。
【0010】
本明細書で使用する場合、「ペルフルオロ」(例えば、「ペルフルオロアルキレン」若しくは「ペルフルオロアルキル」若しくは「ペルフルオロカーボン」の場合などの、基若しくは部分に関して)又は「ペルフルオロ化」は、完全にフッ素化されており、別段の指示をされている場合を除き、フッ素で置き換えることが可能な、炭素に結合した水素原子が存在しないことを意味する。
【0011】
本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容が明確に別段の規定をしない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の実施形態で使用する場合、用語「又は」は、その内容が明確に別段の規定をしない限り、一般に「及び/又は」を含めた意味で用いる。
【0012】
本明細書で使用する場合、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.8、4及び5を含む)。
【0013】
別段の指示がない限り、本明細書及び実施形態で使用される量又は成分、特性の測定値などを表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されていると理解されるものとする。したがって、反対の指示がない限り、前述の明細書及び添付の実施形態のリストにおいて述べる数値パラメータは、本開示の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る。最低でも、各数値パラメータは少なくとも、報告される有効桁の数に照らして通常の丸め技法を適用することにより解釈されるべきであるが、このことは請求項記載の実施形態の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではない。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示は、基材(例えば、OLED製造プロセスで一般的に使用されるタイプの金属マスク)からエレクトロルミネッセンス材料を除去するための組成物に関する。組成物は、1個以上のハイドロフルオロチオエーテル化合物を含み得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、好適なハイドロフルオロチオエーテルは、以下の構造式(I):
Rf-S-Rh (I)によって表される。
【0016】
いくつかの実施形態では、Rfは、飽和又は不飽和、直鎖又は分枝鎖、非環式又は環状であり、任意に1個以上の鎖状に連結されたヘテロ原子、塩素原子、又は臭素原子を含む、2個~9個、2個~6個、2個~5個、又は2個~4個の炭素原子を有する部分フッ素化又はペルフルオロ化基である。いくつかの実施形態では、Rfは、部分的にフッ素化されている。いくつかの実施形態では、Rfは、2個以下の水素原子を有する。いくつかの実施形態では、Rfはペルフルオロ化されている。いくつかの実施形態では、Rfは、3個~6個の炭素原子を有するペルフルオロ化、飽和分枝鎖の基である。
【0017】
いくつかの実施形態では、Rhは、飽和若しくは不飽和、直鎖若しくは分枝鎖であり、任意に1個以上の鎖状に連結されたヘテロ原子を含む、1個~3個、又は1個~2個の炭素原子を有する非フッ素化炭化水素基である。いくつかの実施形態において、Rhは、CH3又はCH3CH2である。いくつかの実施形態において、Rhは、CH3である。
【0018】
いくつかの実施形態では、好適なハイドロフルオロチオエーテルは、以下の構造式(II):
【化1】
によって表される。
【0019】
いくつかの実施形態では、nは、0又は1であり、xは、酸素原子又は硫黄原子であり、(i)Rh’は、1個~4個又は1個~3個の炭素原子及び少なくとも1個の水素原子を有する部分フッ素化アルキル基であり、任意に1個以上の鎖状に連結されたヘテロ原子、塩素原子、又は臭素原子を含み、及びRf’は、1個~4個又は1個~3個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基であり、任意に1個以上の鎖状に連結されたヘテロ原子、塩素原子、又は臭素原子を含むか、あるいは(ii)Rh’及びRf’が一緒に結合して、少なくとも1個の水素原子を有する5員又は6員フッ素化環を形成し、任意に1個以上の鎖状に連結されたヘテロ原子、塩素原子、又は臭素原子を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、上述の鎖状に連結されたヘテロ原子のいずれかは、Oが2個の炭素原子に結合した第二級Oヘテロ原子であってもよい。いくつかの実施形態では、上述の鎖状に連結されたヘテロ原子のいずれかは、Nが3個の炭素原子に結合した第三級Nヘテロ原子であってもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、本開示のハイドロフルオロチオエーテル化合物のフッ素含有量は、化合物をASTM D-3278-96 e-1試験法(「Flash Point of Liquids by Small Scale Closed Cup Apparatus」)による不燃とするのに十分であり得る。
【0022】
様々な実施形態において、一般式(I)の化合物の代表例には、以下が挙げられる:
CF
3CF
2-S-CH
3、
HCF
2CF
2-S-CH
3、
HCFClCF
2-S-CH
3、
CF
2ClCF
2-S-CH
3、
CF
3CFCl-S-CH
3、
CF
3CF
2CF
2-S-CH
3、
CF
3OCF
2CF
2-S-CH
3、
CF
3CHFCF
2-S-CH
3、
(CF
3)
2CF-S-CH
3、
(CF
3)
2CF-S-CH
2Cl、
CF
3CHFCF
2-S-CH
3、
CF
3CF
2CF
2CF
2-S-CH
3、
(CF
3)
2CFCF
2-S-CH
3、
CF
3CF(CF
3)CF
2-S-CH
3、
CF
3CF
2CF(CF
3)-S-CH
3、
CF
3OCF
2CF
2CF
2-S-CH
3、
CF
3CF
2CF
2CF
2-S-CH
2CH
3、
CF
3CF
2CF
2CF
2-S-CH
2OCH
3、
CF
3CF
2CF(CF
3)-S-CH
2CH
3、
CF
3CF
2CF
2CF
2-S-CH
2CH
3、
(CF
3)
2NCF
2-S-CH
3、
【化2】
【0023】
いくつかの実施形態では、本開示は、基材からエレクトロルミネッセンス材料を除去するための作動流体を対象とする。作動流体は、上記のハイドロフルオロチオエーテル化合物を、組成物の総重量に基づいて、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、又は少なくとも99重量%の量で含んでもよい。いくつかの実施形態では、作動流体は、本開示のハイドロフルオロチオエーテルから本質的になり得る。いくつかの実施形態では、そのような作動流体はまた、1つ以上の追加の溶媒(例えば、NMP、NBP、シクロヘキサノン、又はIPA)を含み得る。例えば、そのような追加の溶媒は、作動流体中に存在し得るが、作動流体の総重量に基づいて、10重量%未満、5重量%未満、又は1重量%未満%の量で存在し得る。
【0024】
本開示の組成物は、金属基材の表面からエレクトロルミネッセンス材料(例えば、OLED色素)を適切に除去することが発見され、金属マスク洗浄プロセスで従来用いられている材料(例えば、NMP、シクロヘキサノン、及びIPA)に対して著しく短い乾燥時間に関連することが理解されるべきである。
【0025】
いくつかの実施形態では、本開示は更に、後洗浄の状態の上記組成物を対象とする。この点に関して、本開示は、溶解、分散、又は他の方法で中に含有される1つ以上のエレクトロルミネッセンス材料を含む、上記洗浄組成物のいずれかを対象とする。いくつかの実施形態では、エレクトロルミネッセンス材料は、電気刺激に応答する任意の高度共役染料(OLED製造プロセスでしばしば用いられるものなど)を含み得る。いくつかの実施形態では、エレクトロルミネッセンス材料は、銅(II)フタロシアニン、イリジウム、又は白金を含み得る。いくつかの実施形態では、エレクトロルミネッセンス材料は、後洗浄組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.001重量%又は少なくとも0.01重量%の量で、後洗浄組成物中に存在し得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、上述の好ましい毒性プロファイルを有する。より具体的には、本開示の組成物は、金属マスク(例えば、NMP)からエレクトロルミネッセンス材料を洗浄するために一般的に用いられる材料よりも好ましい毒性プロファイルを有し得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示は、金属基材を洗浄する方法を更に対象とする。より具体的には、いくつかの実施形態では、本開示は、金属マスク(OLED製造プロセスで一般的に使用されるものなど)からエレクトロルミネッセンス材料を除去する方法を更に対象とする。いくつかの実施形態では、方法は、基材の外面上に配置されたエレクトロルミネッセンス材料を有する金属基材(例えば、金属マスク)を提供することを最初に含む。エレクトロルミネッセンス材料は、少なくとも10,000オングストローム、少なくとも15,000オングストローム、又は少なくとも20,000オングストロームの厚さを有する層の外面上に配置され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、本方法は、次いで、上記のハイドロフルオロチオエーテル又は作動流体のいずれかを、金属マスクを担持するエレクトロルミネッセンス材料と接触させることを含み得る。ハイドロフルオロチオエーテル又は作動流体は、気体状態又は液体状態のいずれか(又は両方)で使用することができ、基材と「接触させる」ための既知技法又は将来の技法のいずれかを用いることができる。例えば、液体組成物を基材上に噴霧若しくははけ塗りすることができ、気体組成物を基材全体に吹き付けることができ、又は基材を気体若しくは液体組成物のいずれかに(部分的に又は完全に)さらすことができる。高温、超音波エネルギー及び/又は撹拌を使用して、洗浄を促進することができる。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、室温で実行される。様々な異なる洗浄技法が、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる、B.N.EllisによってCleaning and Contamination of Electronics Components and Assemblies,Electrochemical Publications Limited,Ayr,Scotland,182~94(1986)に記載されている。次いで、この方法は、金属マスクからハイドロフルオロチオエーテル又は作動流体を除去することを含み得る。そのような除去は、本開示のハイドロフルオロチオエーテルが、容易に蒸発して、清潔で乾燥した金属マスク表面を残すことが見出されたため、単純な蒸発を介して実行され得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、本開示のハイドロフルオロチオエーテル(又は作動流体を含有するハイドロフルオロチオエーテル)はまた、金属マスクからエレクトロルミネッセンス材料を除去するための一般的に用いられる溶媒(例えば、NMP、NBP、シクロヘキサノン、又はIPA)のうちの1つ以上と組み合わせて使用され得る。そのような実施形態では、方法は、最初に、金属マスクを担持するエレクトロルミネッセンス材料を、一般的に用いられる溶媒のうちのいずれか1つ以上と接触させることを含み得る。これらの実施形態では、一般的に用いられる溶媒は、エレクトロルミネッセンス材料を金属マスクから移動させるための主要な機構として特徴付けることができる。エレクトロルミネッセンス材料の移動後、若干の量の溶媒が金属マスク上に残ることを理解されたい。前述のように、大部分がそれらの高沸点に起因して、そのような溶媒の乾燥時間は、許容できないほど長い。より速い乾燥を促進するために、いくつかの実施形態では、本開示の方法は、溶媒担持金属マスクを上記のハイドロフルオロチオエーテル又は作動流体のいずれかと接触させることによって溶媒を除去することを含み得る。これに関して、本開示のハイドロフルオロチオエーテルは、一般的に用いられる溶媒を効率的に湿潤及び置換し、急速に蒸発することが発見された。ハイドロフルオロチオエーテルは、アミン含有溶媒(NMP及びNBP)の存在下で非常に優れた安定性を示すことが更に発見された。この実施形態では、そのような安定性は、不安定性がフッ化物生成につながり、洗浄のためのフッ素化溶媒の有効性を著しく低下させることになる点で重要であり得る。不安定性はまた、フッ化水素の形成をもたらし得、これは、望ましくないハードウェアエッチングをもたらすであろう。前述の実施形態と同様に、本方法は、次いで、金属マスクからハイドロフルオロチオエーテル又は作動流体を除去すること(例えば、蒸発を介して)を含み得る。
【実施例】
【0030】
本開示の目的及び利点を、以下の比較例及び実施例によって更に説明する。別途断りのない限り、実施例及び本明細書のその他の部分における、全ての部、百分率、比などは重量によるものであり、実施例で使用した全ての試薬は、一般的な化学物質供給元、例えば、Sigma-Aldrich Corp.(Saint Louis,MO,US)などから入手したもの、若しくは入手可能なものであるか、又は通常の方法によって合成することができる。
【0031】
【0032】
ハイドロフルオロエーテルHTFE1の調製:(CF3)2CFSCH3
乾燥した600mLのHastalloy Parr反応器に、昇華硫黄(36g、1.1mol)、無水噴霧乾燥フッ化カリウム(15g、260mmol)及び無水N,N-ジメチルホルムアミド(300mL)を添加した。反応器を密封し、内容物を撹拌しながら60℃に加熱した。この温度で反応器を安定化させると、ヘキサフルオロプロペン(150g、1.0mol)を6g/分の速度で添加し、温度を65℃未満に維持した。添加が完了したとき、反応物を60℃で1時間撹拌した後、周囲温度まで冷却した。得られたスラリーを、残りの試薬の添加に対応するために、2Lの丸底フラスコに移した。フッ化カリウム(116g、2.0mol)を一度に添加し、続いて硫酸ジメチル(104mL、1.1mol)を添加漏斗を介して、45℃未満の内部反応温度を維持する速度で添加した。添加が完了したら、得られた反応物を周囲温度で12時間撹拌した。次いで、不均質な溶液を濾過して固形物を除去し、次いで等量の水で3回洗浄した。下相を回収し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過した。粗物質を淡黄色の油状物として回収した(117g、GC-fidによる93%の所望の生成物)。この物質を周囲圧力で蒸留により精製して、ペルフルオロイソプロピルメチルチオエーテル(98g、45%収率、沸点65℃)を得た。
【0033】
ハイドロフルオロエーテル及び比較溶媒中の有機発光材料の溶解度
試験混合物を、0.01g(グラム)のエレクトロルミネッセンス材料(ALQ3、又はFIrPic)のうちの1つを、3gの流体(NMP、NBP、CHO、NOVEC 73DE、又はHFTE1)のうちの1つに添加することによって調製した。各混合物を5分間撹拌し、得られた材料を、濁り及び未溶解の粒子状物質について肉眼で観察した。表2に記載されるように、定性的溶解度評価を各混合物に割り当てた。結果を表3に示す。1又は2の溶解度評価は、流体が金属メッシュなどの基材からエレクトロルミネッセンス材料を洗浄するのに有用であることを意味すると解釈された。
【0034】
【0035】
【0036】
沸点
単一成分流体溶媒の沸点を表4に要約する。比較的低い沸点は、比較的短い乾燥時間の指標として解釈される。HFTE1の沸点は、NMP、NBP、及びCHOの沸点よりもはるかに低く、HFTE1が比較化合物よりも迅速に乾燥することを示す。
【0037】
【0038】
当業者には、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することのない、本開示に対する様々な改変及び変更が明らかとなるであろう。本開示は、本明細書に記載した例示的な実施形態及び実施例によって不当に制限されることは意図していないこと、並びにそのような実施例及び実施形態は、以下のような本明細書に記載の特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図した本開示の範囲内の例示としてのみ提示されることを理解されたい。本開示に引用される参照文献は全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】