(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】水性プライマー組成物及びその方法
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20221215BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20221215BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20221215BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221215BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20221215BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/00 D
C09D5/00 Z
C09D163/00
C09D7/63
C09D7/61
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523382
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 IB2020059715
(87)【国際公開番号】W WO2021079238
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】チェン,リアンゾウ
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB001
4J038HA446
4J038JB04
4J038JC12
4J038JC39
4J038KA03
4J038KA06
4J038KA09
4J038MA10
4J038NA03
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
周囲条件下で粒子状固体である第1の熱硬化性樹脂と、周囲条件下で液体であり、かつ第1の熱硬化性樹脂が少なくとも部分的に可溶な反応性合体剤として作用する第2の熱硬化性樹脂と、を含む水性プライマー組成物が提供される。第2の熱硬化性樹脂は、合体剤として作用して、プライマーが硬化する前にプライマーが乾燥されるときに連続プライマーフィルムを形成することを可能にする。組成物は、実質的に非水溶性であり、第1及び第2の熱硬化性樹脂と反応性である硬化剤を更に含む。全組成物は、最大4重量パーセントの水以外の揮発性溶媒を含有し、有機溶媒を添加する必要なく連続フィルムを形成することができる貯蔵安定性プライマーを提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性プライマー組成物であって、
周囲条件下で粒子状固体である第1の熱硬化性樹脂と、
周囲条件下で液体であり、かつ前記第1の熱硬化性樹脂が少なくとも部分的に可溶な反応性合体剤として作用する第2の熱硬化性樹脂と、
実質的に非水溶性であり、前記第1及び第2の熱硬化性樹脂と反応性である硬化剤と、を含み、
前記水性プライマー組成物が、前記水性プライマー組成物の総重量に対して、最大4パーセントの水以外の揮発性溶媒を含有する、水性プライマー組成物。
【請求項2】
前記第1及び第2の熱硬化性樹脂が、界面活性剤によって水中に分散されて、エマルジョンを形成する、請求項1に記載の水性プライマー組成物。
【請求項3】
前記第1の熱硬化性樹脂が、少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む、請求項1又は2に記載の水性プライマー組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのエポキシ樹脂が、ノボラックエポキシ樹脂を含む、請求項3に記載の水性プライマー組成物。
【請求項5】
前記第1の熱硬化性樹脂が、50ナノメートル~300マイクロメートルのメジアン一次粒径(D50)を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性プライマー組成物。
【請求項6】
前記第1の熱硬化性樹脂が、揮発性溶媒を除く前記水性プライマー組成物の総重量に対して20重量パーセント~70重量パーセントの量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性プライマー組成物。
【請求項7】
前記第2の熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の水性プライマー組成物。
【請求項8】
前記第2の熱硬化性樹脂が、揮発性溶媒を除く前記水性プライマー組成物の総重量に対して5重量パーセント~40重量パーセントの量で存在する、請求項7に記載の水性プライマー組成物。
【請求項9】
前記硬化剤が、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル]プロパン、2,2’-ジアミノジフェニルスルホン、及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホンのうちの1つ以上を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の水性プライマー組成物。
【請求項10】
前記硬化剤が、50ナノメートル~300マイクロメートルのメジアン一次粒径(D50)を有する粒子状固体である、請求項1~9のいずれか一項に記載の水性プライマー組成物。
【請求項11】
ヒュームドシリカを更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の水性プライマー組成物。
【請求項12】
ポリリン酸ストロンチウムアルミニウム水和物、リン酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、及びポリリン酸亜鉛アルミニウム水和物のうちの1つ以上を含む腐食抑制剤を更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の水性プライマー組成物。
【請求項13】
基材上に連続プライマーフィルムを提供する方法であって、
請求項1~12のいずれか一項に記載の前記水性プライマー組成物を前記基材上に配置する工程と、
前記水性プライマー組成物から水を除去する工程と、
第2の熱硬化性樹脂内で第1の熱硬化性樹脂を合体させる工程と、
前記第1及び第2の熱硬化性樹脂を、硬化剤と反応させて、前記連続プライマーフィルムを得る工程と、を含む、方法。
【請求項14】
水性プライマー組成物の製造方法であって、
第1の熱硬化性樹脂と、周囲条件下で液体でありかつ前記第1の熱硬化性樹脂が少なくとも部分的に可溶な第2の熱硬化性樹脂と、非水溶性硬化剤と、を水中で分散させて、樹脂エマルジョンを得る工程であって、前記第1の熱硬化性樹脂及び前記非水溶性硬化剤が、周囲条件下で粒子状固体である、樹脂エマルジョンを得る工程と、
前記粒子状固体を、前記熱硬化性樹脂について50ナノメートル~300マイクロメートルのメジアン粒径に加工し、前記非水溶性硬化剤について50ナノメートル~300マイクロメートルのメジアン粒径に加工する工程と、を含み、
前記水性プライマー組成物が、前記水性プライマー組成物の総重量に対して、最大4重量パーセントの水以外の揮発性溶媒を含有する、製造方法。
【請求項15】
前記粒子状固体を加工することが、前記樹脂エマルジョン中で前記粒子状固体をミリング加工することを含む、請求項14に記載の水性プライマー組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
基材を腐食から保護するのに有用な水性プライマー組成物が提供される。提供される水性プライマー組成物は、一次及び二次航空機構造に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
航空機製造業者らは、それらの航空機の長期耐久性を確保するために多大な努力を払っている。多くの航空機構造物が鋼又はアルミニウムなどの金属から製造されるため、これらの部品を腐食から保護することが主な懸念である。化学腐食は苛性洗浄剤への曝露によって引き起こされ得るが、電気化学腐食は塩水などの導電性液体への曝露によって誘発され得る。両方とも、航空機用途において一般に遭遇する高温、高湿度、及び高腐食性の海洋環境によって悪化し得る。
【0003】
腐食は、脆弱な金属構造物の表面上のバリア層として機能するプライマーコーティング(又はフィルム)を金属表面上に適用することによって回避することができる。追加の保護については、そのようなプライマーに腐食抑制剤を添加することが可能である。従来、アルミニウム合金に対する腐食抑制剤は、表面調製物及び有機プライマー組成物の両方において使用される六価クロム化合物から誘導されている。これらのクロム化合物は、一般に、CrO4
2-などのクロム及び酸素を含有するアニオンとの塩であるクロム酸塩を含む。これらのプライマーは、下地基材を保護するだけでなく、その後、基材に接着される、構造用接着剤を含む様々な接着剤への接着も促進する。
【0004】
クロム酸塩は腐食に対して効果的であるが、環境、健康、及び安全上の懸念からますます好ましくなくなっている。進展する規制制度により、製造業者は新しい規制基準を満たすことができる根本的に新しいプライマーシステムの使用を模索するようになった。
【発明の概要】
【0005】
既存のプライマーは、一般に、水系(すなわち、水性)又は有機溶媒系のいずれかとして分類される。有機溶媒系プライマーは、コーティングされる基材を直接濡らす低粘度の有機溶媒中に溶解された硬化性樹脂を含有する。揮発性溶媒として水を使用する水性プライマーは、水性分散液中に分散された熱硬化性樹脂の乳化粒子である、ラテックスの形態で提供される。典型的には、分散液は基材上にコーティングされ、乾燥され、次いで加熱され、熱硬化性樹脂が硬化する。
【0006】
水溶液は、揮発性有機溶媒の排出量を大幅に低減することができるが、これらの溶液の開発は、水性組成物の固有の湿潤挙動に起因する新しい技術的課題をもたらす。これらの組成物中の樹脂及び硬化性粒子は、通常、高融点又は高軟化点の固体であり、乾燥時に滑らかかつ連続的なフィルムを形成しない。この代わりに、これらのコーティングは、粗く粉末状のテクスチャーを有する傾向があり、コーティングされた部品が取り扱われるとき、欠け及び擦傷に対して脆弱性であり得る。これらのコーティングの不均一な性質はまた、硬化系の耐薬品性及び耐食性を劣化させ得る。
【0007】
この問題に対する1つの可能性のある解決策は、有機溶媒をエマルジョンに導入し、エマルジョンが乾燥すると樹脂粒子を合体させ、組成物のフィルム形成能力を向上させることである。このアプローチの欠点は、これらの組成物が、プライマー貯蔵中に安定性を低下させ、プライマーを乾燥及び硬化させる場合の湿潤能力を低下させ、製品性能の変動が大きくなる傾向があることである。貯蔵及び適用中に安定したままであり、硬化前後のコーティングされた部品の取り扱い及び輸送を容易にし、優れた耐薬品性及び耐食性を提供する、クロム酸塩を含まない水性プライマー組成物が依然として必要とされている。
【0008】
本明細書に記載されるのは、反応性液体エポキシが非反応性有機溶媒ではなく合体剤として機能し、上記プロセスの乾燥及び硬化工程の過程で、連続プライマーフィルムが形成されることを可能にするプライマー組成物である。有利には、このプロセスは、追加の有機溶媒を必要とすることなく連続フィルムの形成を可能にする。この技術的ジレンマを解決することにより、これらのプライマー組成物は、硬化時に均一であり、表面保護を改善し、その未硬化状態での高度の貯蔵安定性を示すプライマーフィルムを同時に提供することができる。
【0009】
第1の態様では、水性プライマー組成物が提供される。水性プライマー組成物は、周囲条件下で粒子状固体である第1の熱硬化性樹脂と、周囲条件下で液体であり、かつ第1の熱硬化性樹脂が少なくとも部分的に可溶な反応性合体剤として作用する第2の熱硬化性樹脂と、実質的に非水溶性であり、第1及び第2の熱硬化性樹脂と反応性である硬化剤と、を含み、水性プライマー組成物が、水性プライマー組成物の総重量に対して、最大4パーセントの水以外の揮発性溶媒を含有する。
【0010】
第2の態様では、基材上に連続プライマーフィルムを提供する方法であって、水性プライマー組成物を基材上に配置する工程と、水性プライマー組成物から水を除去する工程と、第2の熱硬化性樹脂内で第1の熱硬化性樹脂を合体させる工程と、第1及び第2の熱硬化性樹脂を、硬化剤と反応させて、連続プライマーフィルムを得る工程と、を含む方法が提供される。
【0011】
第3の態様では、水性プライマー組成物の製造方法であって、第1の熱硬化性樹脂と、周囲条件下で液体でありかつ第1の熱硬化性樹脂が少なくとも部分的に可溶な第2の熱硬化性樹脂と、非水溶性硬化剤と、を水中で分散させて、樹脂エマルジョンを得る工程であって、第1の熱硬化性樹脂及び非水溶性硬化剤が、周囲条件下で粒子状固体である、樹脂エマルジョンを得る工程と、粒子状固体を、熱硬化性樹脂について50ナノメートル~300マイクロメートルのメジアン粒径に加工し、非水溶性硬化剤について50ナノメートル~300マイクロメートルのメジアン粒径に加工する工程と、を含み、水性プライマー組成物が、水性プライマー組成物の総重量に対して、最大4重量パーセントの水以外の揮発性溶媒を含有する、製造方法が提供される。
【0012】
定義
本明細書で使用するとき、
「周囲条件」は、25℃の温度及び1気圧(すなわち、101.3kPa)の圧力を意味し;
「周囲温度」は、25℃の温度を指し;
「平均」は、別途指示しない限り、デフォルトで数値平均を指し;
「硬化する」は、任意の形態で放射線に曝露すること、加熱すること、又は硬化若しくは粘度の増加をもたらす化学反応を受けさせることなどによって、化学的に架橋すること(例えば、室温又は加熱条件下)を指し;
「ポリマー」は、複数の繰り返し単位を有する分子を指し;
「溶媒」は、シリコーン、有機化合物、水、アルコール、イオン性液体、及び超臨界流体などの、固体、液体、又は気体を溶解させることができる液体を指し;
「実質的に」は、重量又は体積に基づいて、組成物の、少なくとも50%、60、70、80、90、95、96、97、98、99、99.5、99.9、99.99、又は99.999%、若しくは100%の量のような過半数、又は大部分を指し;
「実質的に含まない」は、組成物が、所与の成分の0重量%~5重量%、又は成分の0重量%~1重量%、若しくは5重量%、4.5重量%、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.01、又は0.001重量%、若しくは0重量%未満であるか、それに等しいか、又はそれを超えるごくわずかな量を有することを意味し;
「置換された」は、そこに含有される1つ以上の水素原子が1つ以上の非水素原子によって置き換えられている状態を指す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用する場合、「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、一定の状況下で一定の利点をもたらすことができる、本明細書に記載の実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況下で好ましい場合がある。更に、1つ以上の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、本発明の範囲から他の実施形態を除外することを意図するものではない。
【0014】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、文脈上別段の明記がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示物を含むものとする。したがって、例えば、「a」又は「the」が付いた構成要素への言及には、構成要素及び当業者に公知のその等価物のうちの1つ以上を含んでもよい。更に、「及び/又は」という用語は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0015】
「含む」という用語及びそのバリエーションは、これらの用語が添付の記載に現れた場合、限定的意味を有しないことに注意されたい。また更に、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、本明細書では互換的に使用される。
【0016】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「実施形態」に対する言及は、その実施形態に関して記載される特定の機能部、構造、材料又は特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な箇所にある「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」又は「実施形態では」などの句の出現は、必ずしも本発明の同一の実施形態に言及しているわけではない。該当する場合、商品名は、全て大文字で記載する。
【0017】
プライマー組成物
開示されるプライマー組成物は、表面を腐食に対して保護し、接着を促進し、動作条件における接着耐久性を高めるために使用することができる。航空宇宙用途では、そのような動作条件としては、塩、水分、及び広範な熱変動への曝露が挙げられる。
【0018】
プライマー組成物は、多数の可能な基材のいずれかに配置することができる。航空機産業で一般に遭遇する基材としては、アルミニウム、アルミニウムクラッディング、チタン、及び繊維強化複合材が挙げられる。しかしながら、潜在的な基材の範囲は、そのように限定される必要はない。代替的な用途では、例えば、プライマー組成物は、一般に塗装基材、熱可塑性基材、電気めっき金属基材、及び金属基材に適用することができる。
【0019】
例示的なプライマー組成物は、水中に分散された硬化性樹脂に基づく水性プライマーである。本明細書で使用する場合、「分散された」及び「分散」という用語は、液体の第2の成分中に分散された液体及び/又は固体の第1の成分の微粒子を指す。第1の成分の粒子が、好適な界面活性剤を含むか、又は含まずに第2の成分内で安定化されるとき、分散液は、一般にエマルジョンと称される。第1の成分がポリマーであるとき、エマルジョンは一般にラテックスエマルジョンと称される。
【0020】
提供されるプライマー組成物では、第1の成分は複数の成分を含む。複数の成分は、集合的に硬化してポリマーネットワークを形成することができる少なくとも2つの熱硬化性樹脂を含む。少なくとも1つの第1の熱硬化性樹脂は、周囲条件下で固体であり、少なくとも1つの第2の熱硬化性樹脂は、周囲条件下で液体である。提供されるプライマー組成物はまた、実質的に非水溶性であり、プライマーが硬化するときに第1及び第2の熱硬化性樹脂と反応する硬化剤を含有する。
【0021】
有利には、第1の熱硬化性樹脂は、第2の熱硬化性樹脂に少なくとも部分的に可溶であり、第2の熱硬化性樹脂がプライマー組成物の反応性合体剤として作用することを可能にする。プライマー組成物から水が排出されると、合体剤は、第1の熱硬化性樹脂の粒子状固体が互いに流れ込み、液体熱硬化性樹脂と共に、比較的滑らかかつ連続的なフィルムを形成することを可能にする。プライマー組成物から形成されたフィルムは、非粘着性であることができ、これは、硬化前のプライマー処理された基材のユーザの取り扱いを容易にする。
【0022】
第2の熱硬化性樹脂が合体剤として作用する場合、従来の水性プライマー組成物で頻繁に使用される、不活性合体剤溶媒に対する必要性が低減される。プライマー組成物で使用のために選択される樹脂に応じて、水性プライマー組成物は、水性プライマー組成物の総重量に対して、最大4パーセント、最大3パーセント、最大2パーセント、又は、いくつかの実施形態では、0.25パーセント、0.5、0.75、1、1.2、1.5、1.7、2、2.5、3、3.5、4、4.5、若しくは5パーセント未満、それに等しい又はそれを超える水以外の揮発性溶媒を含有することができる。いくつかの実施形態では、プライマー組成物は、水以外のいかなる揮発性溶媒も実質的に含まない。
【0023】
周囲温度で粒子状固体である第1の熱硬化性樹脂は、エポキシ、ビスマレイミド、フェノール、又は不飽和ポリエステル樹脂から構成され得る。いくつかの実施形態では、熱硬化性樹脂は、前述の樹脂のうちの2つ以上の混合物を含むことができる。
【0024】
好適なエポキシ樹脂は、少なくとも1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.2、2.4、2.5、2.7、3、3.5、4、又はそれ以上の平均官能価を有する従来のエポキシ樹脂を含む。いくつかの実施形態では、エポキシ樹脂は、イオン性基又はエステル基を実質的に含有しない。エポキシ樹脂は、レゾルシノール及びビスフェノールなどの、鎖延長されたフェノールのグリシジルエーテル、例えば、ビスフェノールA及びビスフェノールFとすることができる。他の有用なエポキシ樹脂は、固体ノボラックエポキシ樹脂及びビスフェノールA(「DGEBA」)樹脂の固体ジグリシジルエーテルである。
【0025】
市販のエポキシ樹脂には、Hexion,Inc.,Columbus,OHからの、8の平均官能価、82℃の融点、及び215g/molのエポキシ当量を有するポリマーエポキシ樹脂であるEPONSU-8;Dow Chemical Companyからの、135℃~155℃の軟化点及び3500g/mol~5500g/molのエポキシ当量を有する高分子量固体エポキシ樹脂であるDER669;またHexion,Inc.,Columbus,OHからの、550g/mol~650g/molのエポキシ当量、及び75℃~85℃の融点を有する固体DGEBAエポキシである、EPON1002;及びHuntsman Corporation,The Woodlands,TXから、3.8~5.4のエポキシ官能価、225g/mol~235g/molのエポキシ当量、及び73℃~99℃の融点を有する、ARALDITE ECN 1273、1280、及び1299ノボラック固体エポキシ樹脂が挙げられる。
【0026】
代表的なエポキシコモノマー樹脂は、論文Handbook of Epoxy Resins,McGraw-Hill,Inc.,1967に記載されている。そのような樹脂の例には、ビスフェノールA、ビスフェノールF、及びビスフェノールSなどのビスフェノールのビスグリシジルエーテルが挙げられる。様々なフェノール性及びクレゾール性ノボラック型樹脂、並びに様々なグリシドキシアミン及びアミノフェノール、特に、N,N,N’,N’-テトラキス(グリシジル)-4,4-ジアミノジフェニルメタン及びN,N,O-トリス(グリシジル)-4-アミノフェノールも好適である。様々なジヒドロキシ-ナフタレン及びフェノール化ジシクロペンタジエンのグリシジルエーテルに基づくエポキシ樹脂の使用もまた可能である。
【0027】
有用なフェノール樹脂には、o-メチレン対p-メチレン結合の比が最大1であるノボラック型フェノール樹脂、及び/又はレゾール型フェノール樹脂が挙げられる。ノボラック型及びレゾール型のフェノール樹脂の混合物が使用されてもよい。
【0028】
第1の熱硬化性樹脂は、0.05マイクロメートル~300マイクロメートル、0.2マイクロメートル~200マイクロメートル、1マイクロメートル~100マイクロメートル、又はいくつかの実施形態では、0.05マイクロメートル、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、120、150、170、200、250、若しくは300マイクロメートル未満、それに等しいか、又はそれを超えるメジアン粒径(D50)を有する一次粒子から構成され得る。
【0029】
揮発性溶媒を除くプライマー組成物の総重量に対して、固体熱硬化性樹脂は、20パーセント~70パーセント、30パーセント~60パーセント、30パーセント~55パーセント、又はいくつかの実施形態では、20パーセント、25、30、35、40、45、50、55、60、65、若しくは70パーセント未満、それに等しい、それを超える量で存在し得る。
【0030】
周囲条件下で液体である第2の熱硬化性樹脂は、1つ以上のエポキシ樹脂から構成され得る。好適な液体エポキシ樹脂には、ビスフェノールA及びビスフェノールFエポキシ樹脂、液体ノボラックエポキシ樹脂、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N,O-トリス(グリシジル)-4-アミノフェノールが挙げられる。いくつかの実施形態では、液体エポキシ樹脂は、非イオン性水性分散液の形態で提供される。第2の熱硬化性樹脂に使用することができる市販の樹脂としては、Hexion Inc.,Columbus,OHにより商品名EPI-REZで入手可能なものが挙げられる。
【0031】
好適な液体エポキシ樹脂には、多官能性であり、かつ2つ以上のエポキシ官能価を有するエポキシ樹脂が挙げられる。液体エポキシ樹脂は、それらの高いエポキシ官能価により、高架橋密度を提供することができる1つ以上のノボラック樹脂を含むことができる。
【0032】
液体エポキシ樹脂は、100g/mol~1000g/mol、120g/mol~700g/mol、150g/mol~500g/mol、又はいくつかの実施形態では、100g/mol、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、若しくは500g/mol未満、それに等しい、又はそれを超える分子量を有することができる。
【0033】
水に分散されたとき、第2の熱硬化性樹脂の粒子は、0.1~10、0.2~7、0.5~5、又はいくつかの実施形態では、0.05マイクロメートル、0.1、0.2、0.5、0.7、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、若しくは300マイクロメートル未満、それに等しい、又はそれを超えるメジアン一次粒径(D50)を有することができる。
【0034】
液体熱硬化性樹脂は、揮発性溶媒を除いたプライマー組成物の総重量に対して、5パーセント~40パーセント、10パーセント~30パーセント、10パーセント~25パーセント、又はいくつかの実施形態では、5パーセント、6、7、8、9、10、12、15、17、20、22、25、27、30、32、35、37、若しくは40パーセント未満、それに等しい、又はそれを超える量で存在し得る。
【0035】
提供される組成物は、所望の硬化条件下で、典型的にはプライマー焼き付け温度で、第1及び第2の熱硬化性樹脂と反応することができる硬化剤を更に含有する。延長された貯蔵安定性のために、プライマー組成物の貯蔵中の硬化剤と熱硬化性樹脂との間の反応が最小限であるように、硬化剤が固体であり、かつ水に不溶であることが好ましい。硬化性樹脂と熱硬化性樹脂との間の早期反応が、溶融及び硬化プロセス中の粘度、並びにプライマー湿潤問題をもたらす場合があり、これは一般的に望ましくない。
【0036】
好適な非水溶性硬化剤には、芳香族アミン及びそれらの混合物が挙げられる。例示的な芳香族アミンには、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]フェニル)プロパン、3,3’-及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-及び4,4’-ジアミノジフェニルオキシド、3,3’-及び4,4’-ジアミノジフェニルオキシド、3,3’-及び4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-及び4,4’-ジアミノジフェニルケトン、並びに4,4’-[1,4-フェニレン(1-メチルエチリデン)]-ビス(ベンゼンアミン)が挙げられる。
【0037】
固体ジアミン硬化剤には、2,4-トルエンジアミン、1,4-フェニレンジアミン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルオキシド、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、o-トルイジンスルホン、及び4,4’-ジアミノベンズアニリドが挙げられる。特に好ましいのは、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、2,2-ビス(4-[3-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン、2,2-ビス(4-[4-アミノフェノキシ]フェニル)スルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4-[4-アミノフェノキシ)フェニル)エーテル、及び2,2-ビス([4-(4-アミノ-2-トリフルオロフェノキシ)]フェニル)ヘキサフルオロプロパンである。
【0038】
好ましい芳香族アミンとしては、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル]プロパン、2、2’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、及びそれらの混合物が挙げられる。前述の硬化剤に関するオプション及び利点は、米国特許第5,641,818号(Sweet)及び同第6,475,621号(Kohliら)に見出すことができる。
【0039】
好ましい実施形態では、固体硬化剤は、250°F未満、240℃未満、又は220°F未満の融点を有する。
【0040】
組成物は、プライマーの硬化を促進するために、1つ以上の硬化剤及び/又は触媒を更に含有することができる。これらの成分は、水溶性又は非水溶性とすることができる。好適な硬化剤としては、水溶性置換アミノトリアジン(この例は、商品名CUREZOLで市販されている)、商品名ANCAMINEで入手可能な変性ポリアミン、ジシアンジアミド(DICY)、トルエン-2,4-ビス(N,N’ジメチル尿素)などのビス尿素系硬化剤(Emerald Performance Materials LLC,Vancouver,WAから商品名OMICUREで入手可能)、並びに非水溶性アミン-エポキシ付加物及び2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)などの芳香族アミンが挙げられる。
【0041】
粒子状硬化剤は、0.05マイクロメートル~300マイクロメートル、0.2マイクロメートル~200マイクロメートル、1マイクロメートル~100マイクロメートル、又はいくつかの実施形態では、0.05マイクロメートル、0.1、0.2、0.5、0.7、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100マイクロメートル未満、それに等しい、又はそれを超えるメジアン一次粒径(D50)を有することができる。
【0042】
非水溶性硬化剤は、揮発性溶媒を除くプライマー組成物の総重量に基づいて、0.5重量%~40重量%、5重量%~30重量%、10重量%~20重量%、又はいくつかの実施形態では、0.5%、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、22、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、若しくは40%未満、それに等しい、又はそれを超える量で存在することができる。
【0043】
前述したように、合体剤溶媒の量は、存在する場合、少量であることが好ましい。しかしながら、存在する場合、合体溶媒は、水の蒸発速度よりも低いが、広範囲の温度及び湿度条件下で適切な膜形成を可能にするために十分高い蒸発速度を有することが好ましい。蒸発は、硬化中に合体剤溶媒をプライマーフィルムから除去されるように十分に高くあるべきである。
【0044】
本組成物は、当該技術分野において既知の多数の染料、顔料、充填剤、レベリング剤、追加の分散剤、増粘剤、及び腐食抑制剤のうちのいずれかを更に含有してもよい。
【0045】
腐食抑制剤は、プライマー組成物に添加されると、プライマーが適用される基材の腐食速度を低下させる化学化合物である。腐食は、航空機表面が湿潤環境、酸性雨、及び熱サイクルに曝露され得る航空宇宙用途において大きな問題を提起し得る。有用な腐食抑制剤は、クロム酸塩系腐食抑制剤、あるいはクロム及びクロム化合物を実質的に含まない非クロム酸塩腐食抑制剤であり得る。
【0046】
クロム酸塩系腐食抑制剤としては、クロム酸塩ストロンチウム、クロム酸塩バリウム、クロム酸塩亜鉛、クロム酸塩カルシウム、及びそれらの組み合わせが挙げられる。非クロム酸塩腐食抑制剤としては、ポリリン酸ストロンチウムアルミニウム水和物(strontium aluminum polyphosphate hydrate)、リン酸カルシウム、リン酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、及びポリリン酸亜鉛アルミニウム水和物(zinc aluminum polyphosphate hydrate)、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、提供されるプライマー組成物は、クロム及びクロム化合物を実質的に又は完全に含まないように配合することができる。
【0047】
腐食抑制剤は、メジアン一次粒径(0.1マイクロメートル~100マイクロメートルのD50)を有する粒子状固体とすることができ、揮発性溶媒を除くプライマー組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~30重量%、2重量%~25重量%、4重量%~20重量%、又はいくつかの実施形態では、0.1重量%、0.2、0.5、0.7、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、22、25、26、27、28、29、若しくは30重量%未満、それに等しい、又はそれを超える量で存在することができる。
【0048】
プライマー組成物は、無機充填剤を更に含むことができる。有用な無機充填剤は特に制限されず、それらの添加は、プライマー組成物の硬化のプロセス中にサギング(sagging)を防止するために役立つことができる。例示的な無機充填剤は、保護される基材の表面にそれが適用されると、プライマー組成物の粘度を増加させる増粘剤として使用することができるヒュームドシリカである。
【0049】
いくつかの実施形態では、無機充填剤は、揮発性溶媒を除くプライマー組成物の総重量に基づいて、0.01重量%~15重量%、0.5重量%~2重量%、1重量%~5重量%、又はいくつかの実施形態では、0.01重量%、0.02、0.03、0.04、0.05、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、1、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20重量%未満、それに等しい、又はそれを超える量で存在する。
【0050】
製造方法
提供されるプライマー組成物は、最初に固体の第1の熱硬化性樹脂を水に分散させることによって製造することができる。いくつかの実施形態では、これらの樹脂は、水に予備分散される。そうでない場合、エポキシ樹脂は、それらの融点を超えるまで加熱されるか、又は溶媒中に溶解されて濃縮溶液を形成し、それから溶媒が後に除去され得る。得られた液体エポキシ樹脂又はエポキシ樹脂溶液は、多数のミクロンサイズの穴を含む金属プレートにエポキシを急速に撹拌した水に押し出すことによって、又は当業者に既知の任意の他の方法によって、高剪断撹拌下でそれをゆっくりと添加して水に分散させることができる。
【0051】
水中の安定なエマルジョンを維持するために、有効量の界面活性剤が一般に分散液に添加される。そのような界面活性剤は、親水性及び疎水性(親油性)部分の両方を含み、長鎖脂肪酸のナトリウム塩及びアンモニウム塩、長鎖脂肪族アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート又は繰り返しポリオキシプロピレン若しくはポリオキシブチレン基又は1つ以上の長鎖オレフィンオキシド反応生成物から誘導される疎水性部分と、繰り返しオキシエチレン基を含む親水性基とを含有するブロックポリオキシアルキレンポリエーテルを含むことができる。
【0052】
熱硬化性樹脂を水相に分散させた後、硬化剤が添加される。硬化剤はまた、噴霧乾燥、溶液沈殿、ボールミリング加工、砂ミリング加工、エアジェットミリング加工などを含む既知の方法によって小さな粒子サイズに低減され得る。次いで、微細な硬化性粒子を樹脂分散液に添加し、均一な混合物が得られるまで撹拌することができる。あるいは、熱硬化性樹脂分散液中に分散している間、固体硬化性粒子をより微細な粒子に加工することが有利であり得る。そのような加工は、ミリング加工又は当該技術分野において既知の任意の他の方法によって達成することができる。
【0053】
硬化剤を添加する前又は後に、染料、顔料、腐食防止剤などの他の添加剤を添加し、熱硬化性樹脂及び硬化性エマルジョンに完全に混合して、プライマー組成物を完成させることができる。
【0054】
使用方法
提供されるプライマー組成物は、任意の既知の方法を使用して所与の基材上にコーティングされ得る。航空宇宙用プライマーの場合、プライマーがスプレーコーティングを介して効率的に適用されることが一般的である。提供されるプライマー組成物は、当該技術分野で知られている高容量低圧噴霧ガンなどの、空気駆動又はエアレススプレーガンのいずれかを使用して効果的に噴霧され得る。
【0055】
プライマー組成物が水性分散液から基材に適用されると、組成物を乾燥させる。乾燥は、組成物から水及び他の揮発性物質を除去し、加熱を必要とせずに周囲条件下又は周囲条件近くで生じ得る。周囲温度では、乾燥時間は、5分~300分、10分~100分、20分~50分、又はいくつかの実施形態では、10分、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、150、200、250、若しくは300分未満、それに等しい、又はそれを超えてもよい。
【0056】
第1の熱硬化性樹脂及び硬化剤などの粒子状固体として存在する成分は、水が除去されると積層された粒子として残るのではなく、液体樹脂が組成物中の固体樹脂を部分的に溶解するときに互いに合体する。したがって、固体熱硬化性樹脂の合体は、液体熱硬化性樹脂内で少なくとも部分的に生じ得る。その結果、粉末状の表面テクスチャーの外観を著しく低減又は排除する連続フィルムを形成する。
【0057】
十分に乾燥されると、プライマー処理された基材は、温度を上げてプライマー組成物を硬化させることができ、これは、第1及び第2の熱硬化性樹脂が硬化剤と反応し、かつ互いに反応して架橋ネットワークを形成する反応である。硬化温度は、60℃~200℃、100℃~180℃、120℃~180℃、又はいくつかの実施形態では、60℃、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、若しくは200℃未満、それに等しいか、又はそれを超えることができる。硬化プライマーの厚さは、1マイクロメートル~20マイクロメートル、2マイクロメートル~10マイクロメートル、3マイクロメートル~8マイクロメートル、又はいくつかの実施形態では、1マイクロメートル、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20マイクロメートル未満、それに等しいか、又はそれを超えることができる。
【0058】
硬化温度のような焼き付け時間は、用途に基づいて変化し得るが、一般に、0.1時間~6時間、0.5時間~2時間、0.7時間~2時間、又はいくつかの実施形態では、好適な硬化温度で0.1時間、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、若しくは6時間未満、それに等しいか、又はそれを超える範囲である。
【0059】
プライマーが金属被着体などの基材に適用されると、第2の金属基材又は複合基材などの第2の被着体を、構造用接着剤などの熱硬化性接着剤を、基材のプライマー処理された表面と第2の被着体との間に配置し、次いで、接着剤を硬化させるために熱及び圧力を加えることによって、通常の方法でそのようなプライマー処理された基材に接着することができる。そのような用途及び関連する硬化条件に対するそれらの適合性と共に、特定の用途のためのそのような接着剤の使用は、当業者に周知である。
【0060】
更なる例示的な実施形態は、以下に提供されるが、網羅されていることを意図していない。
【0061】
1. 水性プライマー組成物であって、
周囲条件下で粒子状固体である第1の熱硬化性樹脂と、周囲条件下で液体であり、かつ第1の熱硬化性樹脂が少なくとも部分的に可溶な反応性合体剤として作用する第2の熱硬化性樹脂と、
実質的に非水溶性であり、第1及び第2の熱硬化性樹脂と反応性である硬化剤と、を含み、
水性プライマー組成物が、水性プライマー組成物の総重量に対して、最大4パーセントの水以外の揮発性溶媒を含有する、水性プライマー組成物。
【0062】
2. 水性プライマー組成物が、水性プライマー組成物の総重量に対して、最大3パーセントの水以外の揮発性溶媒を含有する、実施形態1に記載の水性プライマー組成物。
【0063】
3. 水性プライマー組成物が、水性プライマー組成物の総重量に対して、最大2パーセントの水以外の揮発性溶媒を含有する、実施形態2に記載の水性プライマー組成物。
【0064】
4. 第1及び第2の熱硬化性樹脂が、界面活性剤によって水中に分散されて、エマルジョンを形成する、実施形態1~3のいずれか1つに記載の水性プライマー組成物。
【0065】
5. 第1の熱硬化性樹脂が、少なくとも1つのエポキシ樹脂を含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の水性プライマー組成物。
【0066】
6. 少なくとも1つのエポキシ樹脂が、ノボラックエポキシ樹脂を含む、実施形態5に記載の水性プライマー組成物。
【0067】
7. 第1の熱硬化性樹脂が、50ナノメートル~300マイクロメートルのメジアン一次粒径(D50)を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の水性プライマー組成物。
【0068】
8. 第1の熱硬化性樹脂が、200ナノメートル~200マイクロメートルのメジアン一次粒径(D50)を有する、実施形態7に記載の水性プライマー組成物。
【0069】
9. 第1の熱硬化性樹脂が、1マイクロメートル~100マイクロメートルのメジアン一次粒径(D50)を有する、実施形態8に記載の水性プライマー組成物。
【0070】
10. 第1の熱硬化性樹脂が、揮発性溶媒を除く水性プライマー組成物の総重量に対して、20重量パーセント~70重量パーセントの量で存在する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の水性プライマー組成物。
【0071】
11. 第1の熱硬化性樹脂が、揮発性溶媒を除く水性プライマー組成物の総重量に対して、30重量パーセント~60重量パーセントの量で存在する、実施形態10に記載の水性プライマー組成物。
【0072】
12. 第1の熱硬化性樹脂が、揮発性溶媒を除く水性プライマー組成物の総重量に対して、30重量パーセント~55重量パーセントの量で存在する、実施形態11に記載の水性プライマー組成物。
【0073】
13. 第2の熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の水性プライマー組成物。
【0074】
14. 第2の熱硬化性樹脂が、揮発性溶媒を除く水性プライマー組成物の総重量に対して、5重量パーセント~40重量パーセントの量で存在する、実施形態13に記載の水性プライマー組成物。
【0075】
15. 第2の熱硬化性樹脂が、揮発性溶媒を除く水性プライマー組成物の総重量に対して、10重量パーセント~30重量パーセントの量で存在する、実施形態14に記載の水性プライマー組成物。
【0076】
16. 第2の熱硬化性樹脂が、揮発性溶媒を除く水性プライマー組成物の総重量に対して、10重量パーセント~25重量パーセントの量で存在する、実施形態15に記載の水性プライマー組成物。
【0077】
17. 硬化剤が、2,2-ビス-[4-(4-アミノフェノキシ)-フェニル]プロパン、2,2’-ジアミノジフェニルスルホン、及び4,4’-ジアミノジフェニルスルホンのうちの1つ以上を含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の水性プライマー組成物。
【0078】
18. 硬化剤が、50ナノメートル~300マイクロメートルのメジアン一次粒径(D50)を有する粒子状固体である、実施形態1~17のいずれか1つに記載の水性プライマー組成物。
【0079】
19. 硬化剤が、200ナノメートル~200マイクロメートルのメジアン一次粒径(D50)を有する粒子状固体である、実施形態18に記載の水性プライマー組成物。
【0080】
20. 硬化剤が、1マイクロメートル~100マイクロメートルのメジアン一次粒径(D50)を有する粒子状固体である、実施形態19に記載の水性プライマー組成物。
【0081】
21. ヒュームドシリカを更に含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の水性プライマー組成物。
【0082】
22. ヒュームドシリカが、揮発性溶媒を除く水性プライマー組成物の総重量に対して、0.5重量パーセント~2重量パーセントの量で存在する、実施形態24に記載の水性プライマー組成物。
【0083】
23. ポリリン酸ストロンチウムアルミニウム水和物、リン酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛及びポリリン酸亜鉛アルミニウム水和物のうちの1つ以上を含む腐食抑制剤を更に含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の水性プライマー組成物。
【0084】
24. 腐食抑制剤が、0.1マイクロメートル~100マイクロメートルのメジアン一次粒径(D50)を有する粒子状固体である、実施形態23に記載の水性プライマー組成物。
【0085】
25. 基材上に連続プライマーフィルムを提供する方法であって、実施形態1~24のいずれか1つに記載の水性プライマー組成物を基材上に配置する工程と、水性プライマー組成物から水を除去する工程と、第2の熱硬化性樹脂内で第1の熱硬化性樹脂を合体させる工程と、第1及び第2の熱硬化性樹脂を硬化剤と反応させて、連続プライマーフィルムを得る工程と、を含む、方法。
【0086】
26. 水性プライマー組成物の製造方法であって、第1の熱硬化性樹脂と、周囲条件下で液体でありかつ第1の熱硬化性樹脂が少なくとも部分的に可溶な第2の熱硬化性樹脂と、非水溶性硬化剤と、を水中で分散させて、樹脂エマルジョンを得る工程であって、第1の熱硬化性樹脂及び非水溶性硬化剤が、周囲条件下で粒子状固体である、樹脂エマルジョンを得る工程と、粒子状固体を、熱硬化性樹脂について50ナノメートル~300マイクロメートルのメジアン粒径に加工し、非水溶性硬化剤について50ナノメートル~300マイクロメートルのメジアン粒径に加工する工程と、を含み、水性プライマー組成物が、水性プライマー組成物の総重量に対して、最大4重量パーセントの水以外の揮発性溶媒を含有する、製造方法。
【0087】
27. 粒子状固体を加工することが、樹脂エマルジョン中で粒子状固体をミリング加工することを含む、実施形態26に記載の水性プライマー組成物の製造方法。
【実施例】
【0088】
本開示の目的及び利点は以下の非限定的な実施例によって更に例証されるが、これらの実施例に引用される具体的な材料及びそれらの量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を過度に制限するものと解釈されるべきではない。別段の記載がない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量によるものである。
【0089】
【0090】
試験方法:
グレード2024T3のむき出しアルミニウムパネルをErickson Metals of Minnesota,Inc.,Coon Rapids,Minnesotaから入手した。構造用接着剤で接着する前に、パネルを以下の表面調製プロセスに供した。
【0091】
FPLエッチング及びリン酸陽極酸化アルミニウム基材の調製
むき出しのアルミニウムパネルを、85℃(185°F)で10分間、OAKITE165苛性洗浄液に浸漬した。次いで、パネルを21℃(69.8°F)で10分間水道水に浸漬し、続いて水道水で約3分間連続スプレーすすぎした。次いで、パネルを森林製品研究所(FPL)のエッチング液に66℃(151°F)で10分間浸漬した後、パネルを21℃(69.8°F)で、約3分間水でスプレーすすぎした。次いで、エッチングされたパネルを、85%リン酸の浴中で、22.2℃(72°F)で約25分間、電圧15ボルト、最大電流100アンペアで陽極酸化し、21℃(69.8°F)で約3分間、水ですすぎ、更に10分間滴下乾燥させた後、66℃(151°F)で10分間、オーブンで乾燥させた。陽極酸化している24時間以内に、アルミニウムパネルを、以下の実施例に記載されるようにプライマー組成物でプライマー処理した。乾燥したプライマーの厚さは2.5マイクロメートル~5.1マイクロメートル(0.1ミル~0.2ミル)であった。
【0092】
接着フィルムについてのフローティングローラー剥離(FRP)強度試験
20.3cm×7.6cm×0.16cm(8.0インチ×3.0インチ×0.063インチ)及び25.4cm×7.6cm×0.064cm(10インチ×3インチ×0.025インチ)の2024-T3むき出しアルミニウムのプライマー処理されたパネルを、上記の「FPLエッチング及びリン酸陽極酸化アルミニウム基材」で記載したように、試験用に調製した。ライナーを片側から取り外した後、閉じ込められた空気を排除し、露出した接着剤と試験パネル基材との間の密接な接触を確保するような様式で、小さなゴムローラーを使用して、AF-163-2を手で適用した。プライマー処理されたパネルを一緒に接着し、オートクレーブ内で硬化させ(以下に定義される接着剤硬化サイクル法を参照)、次いで、以下の変更を有するASTM D-3167-76に従ってフローティングローラー剥離強度を評価した。幅1.27cm(0.5インチ)の試験片を、接着したアルミニウムパネルの縦方向に沿ってカットした。21.2℃(70°F)で30.5cm/分(6インチ/分)の速度で動作する引張試験機をより厚い基材からより薄い基材を剥がすために使用し、結果を2.54cm(1インチ)の幅に正規化した。試験パネルを調製して評価した(各実施例につき1つ)。
【0093】
接着剤硬化サイクル
接着試料を、ASC Process Systems,Sylmar,Californiaからのオートクレーブ、モデル番号「ECONOCLAVE3×5」中で、約94.8kPa(28水銀柱インチ)の圧力まで真空袋詰めした。オートクレーブ圧力を310.3kPa(45psi)に増加させ、その間、オートクレーブ圧力が103.4kPa(15psi)を超えると真空バッグを大気中に排気した。次いで、オートクレーブ温度を、毎分2.5℃(4.5°F)の速度で121℃(250°F)まで上昇させた。設定点に到達した後、試料をこの温度で60分間保持し、次いで、1分当たり2.8℃(5°F)の速度で22.2℃(72°F)まで冷却した後、圧力を放出させた。
【0094】
耐擦傷性
パネルに接着した、空気乾燥した未硬化のフィルムの表面を、指又は乾燥した白い布で擦り、数回擦った後にいずれのフィルム材料が付着しているかどうかを確認した。フィルム材料が付着していなかった場合、試料は合格した。
【0095】
調製例1(PE1):
固体硬化剤-エポキシの予備ミリング加工された分散液を以下のように調製した。5.0グラムのM5を、25℃(77℃)で約2~4分間、1,000rpm~2,000rpmで動作する高速ミキサーを用いて、78.3グラムのWD-510、302.3グラムのEPZ-3546、及び30.7グラムのEPZ-5108の混合物中に均一に分散させた。ミキサーを300rpm~500rpmで運転し続けることによって、55.3グラムのBAPPを分散液にブレンドし、続いて100グラムの蒸留水及び0.32グラムのDC-29を混合し、均一になるまで混合し続けた。ミリング加工は、250ml/分の流量及び4,320rpmで0.5mmのイットリア安定化ジルコニアミリング加工媒体を用いて、MINICER Laboratory Mill(Exton,PA,UnitedStatesのNetzschから入手)で実施した。粒径は、PARTICA LA-950レーザ回折粒径分布分析器(Horiba,Irvine CA)を使用して測定した。50%の累積分布での粒子直径であるメジアン(D50とも称される)は、2.19マイクロメートルであり、累積分布の90%での粒子直径であるD90は3.64マイクロメートルであった。
【0096】
調製例2(PE2):
80グラムのBAPPを、320gの水に分散させ、次いでミリング加工した。ミリング加工は、250ml/分の流量及び4,320rpmで動作する0.5mmのイットリア安定化ジルコニアミリング加工媒体を用いて、MINICER Laboratory Millで実施した。粒径を、上記のように、PARTICA LA-950レーザ回折粒径分布分析器を使用して測定した。3分間ミリング加工した後、分散液が増粘した。次いで、400グラムの水をミルホッパーに添加し、残りの試料を流出させた。最終的なBAPP濃度は約10%であった。D50は10.18マイクロメートルであり、D90は15.42マイクロメートルであった。
【0097】
実施例1及び比較例1~3(EX1及びCE1~CE3):
プライマーを、表2に特定される材料を分散させることによって調製した。
【0098】
【0099】
実施例1(EX1)
1,000rpm~2,000rpmで動作する高速ミキサーを用いて、11.2グラムのSAAP及び2.8グラムのZAPを、172グラムのPE1に25℃で約2分~4分間ブレンドした。5分後、298.0グラムの水を添加し、続いて5.9グラムのTDI、次いで1.5グラムのWetlink78を添加した。混合を更に15分間続けた。
【0100】
比較例1(CE1):
噴霧乾燥コーティングによって製造された10.8グラムのEPZ-5108及び13.5グラムのDER669粉末形態、45.5グラムのPZ3903-2、10.2グラムのBAPP、3.0グラムのTDI尿素、1.8グラムのM5、11.2グラムのSAAP、並びに2.8グラムのZAPを、1,000rpm~2,000rpmで動作する高速ミキサーを使用して、25℃で約2分~4分間、ブレンドした。1.5グラムのWetlink78を添加し、混合した。181.2グラムの脱イオン水を添加し、固形量を20%に調整した。
【0101】
比較例2(CE2):
11.2グラムのSAAP及び2.8グラムのZAPを172グラムのPE1に、1,000rpm~2,000rpmで動作する高速ミキサーを用いて、25℃で約2分~4分間にブレンドした。11.4グラムのIPA、3.1グラムのアセトン、及び0.93グラムのARCOSOLVを、3分~5分の間隔でゆっくりと添加した。5分後、264.0グラムの水を添加し、続いて5.9グラムのTDI、次いで1.5グラムのWetlink78を添加した。混合を更に15分間続けた。
【0102】
比較例3(CE3):
噴霧乾燥コーティングによって製造された10.8グラムのEPZ-5108及び13.5グラムのDER669粉末形態、45.5グラムの3903-2、102グラムのPE2、3.0グラムのTDI尿素、1.8グラムのM5、11.2グラムのSAAP、2.8グラムのZAPP、14グラムのアセトン、14グラムの2-プロポキシエタノール、並びに17グラムのIPAを、1,000rpm~2,000rpmで動作する高速ミキサーを用いて、25℃で約2分~4分間ブレンドした。1.5グラムのWetlink78を添加し、混合し、136.0グラムの脱イオン水を添加して固形量を20%に調整した。
【0103】
プライマー組成物試料をアルミニウムパネル上に噴霧し、硬化させた。プライマーをまた32.2℃(90°F)で7日間エージングして、FRPでプライマー性能を試験した。耐擦傷性及びFRP試験についての結果を表3及び表4に示す。
【0104】
【0105】
【0106】
上記の特許出願において引用された全ての参考文献、特許文献及び特許出願は、一貫した形でその全文が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれている参照文献の部分と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の説明における情報が優先される。前述の記載は、当業者が、特許請求の範囲に記載の開示を実践することを可能にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲及びその全ての等価物によって定義される。
【国際調査報告】