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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】経口摂取性送達系
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/48 20060101AFI20221215BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20221215BHJP
【FI】
A61K9/48
A61K45/00
A61K47/04
A61K38/02
A61P35/00
A61P3/00
A61P37/08
A61P5/00
A61P17/00
A61P9/00
A61P9/14
A61P7/00
A61P21/00
A61P19/00
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P37/02
A61P1/00
A61P13/00
A61P15/00
A61P25/00
A61K47/46
A61K38/43
A61K47/24
A61K47/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523388
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(85)【翻訳文提出日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 US2020056464
(87)【国際公開番号】W WO2021080972
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】62/981,651
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/950,527
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/010,132
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/058,231
(32)【優先日】2020-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/923,783
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/088,070
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522157907
【氏名又は名称】ソーン ファーマ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ソーン,アレキサンダー,ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】グリーン,アリソン,エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ソーン,デービッド,エス.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076AA63
4C076AA67
4C076BB01
4C076CC11
4C076CC14
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC18
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC30
4C076DD25
4C076DD29
4C076DD49
4C076DD63
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE42
4C076EE53
4C076EE56
4C076EE57
4C076FF63
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA03
4C084DC01
4C084NA03
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA01
4C084ZA36
4C084ZA44
4C084ZA51
4C084ZA66
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB07
4C084ZB11
4C084ZB13
4C084ZB15
4C084ZB26
4C084ZC03
4C084ZC21
(57)【要約】
本発明は、哺乳動物の腸内に治療剤を放出するための経口摂取性送達系を含み、該系は、治療剤および治療剤区画内に治療剤を含む示差的に透過性のカプセル系を含み、該示差的に透過性のカプセル系は、経口摂取のためおよび哺乳動物の胃、その後の腸への通過のために寸法的に適合され、示差的に透過性のカプセル系は、酸抵抗性シェルおよび分散性酸障壁を含み、分散性酸障壁は、経口摂取性送達系が胃内にある場合に形成され;分散性酸障壁は、腸内で分散され、それにより腸内の酵素が、治療剤区画に到達することが許容される。本発明はまた、該系を製造する方法およびその使用のための方法を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療剤および治療剤区画内に治療剤を含む示差的に透過性のカプセル系を含む、哺乳動物の腸内に治療剤を放出するための経口摂取性送達系であって、
該示差的に透過性のカプセル系は、経口摂取のためおよび哺乳動物の胃、その後の腸への通過のために寸法的に適合され;
示差的に透過性のカプセル系は、酸抵抗性シェルおよび分散性酸障壁を含み;
分散性酸障壁は、酸抵抗性シェルの外部面、酸抵抗性シェル内の内部面および酸抵抗性シェルの下の下方領域からなる群より選択される位置に配置され、該分散性酸障壁は、胃内での酸抵抗性シェルと胃液の間の接触を阻害し;
分散性酸障壁は、該経口摂取性送達系が胃内にある場合に形成され;
分散性酸障壁は、腸内で分散され、それにより腸内の酵素が治療剤区画に達し、それにより腸内で治療剤が放出される、
経口摂取性送達系。
【請求項2】
酸抵抗性シェルが、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜である、請求項1記載の経口摂取性送達系。
【請求項3】
酸抵抗性シェルが、ロウ状物質を含む、請求項1記載の経口摂取性送達系。
【請求項4】
酸抵抗性シェルが繊維を含む、請求項1記載の経口摂取性送達系。
【請求項5】
繊維が消化性または加水分解性である、請求項4記載の経口摂取性送達系。
【請求項6】
酸抵抗性シェルが本質的にロウ状物質からなる、請求項3記載の経口摂取性送達系。
【請求項7】
分散性酸障壁が気体障壁である、請求項1記載の経口摂取性送達系。
【請求項8】
気体障壁が、胃酸と気体生成物質の反応により形成され、気体生成物質が、酸抵抗性シェルの外部面、酸抵抗性シェル内の内部面および酸抵抗性シェルの下の下方領域の少なくとも1つに配置される、請求項7記載の経口摂取性送達系。
【請求項9】
酸抵抗性シェルが、気体生成物質の堆積物を含む孔の系により貫通される、請求項8記載の経口摂取性送達系。
【請求項10】
気体障壁が二酸化炭素を含む、請求項7記載の経口摂取性送達系。
【請求項11】
気体障壁が、腸内の二酸化炭素と重炭酸塩の相互作用により分散される、請求項10記載の経口摂取性送達系。
【請求項12】
酸抵抗性シェルが、空間占有流体または空間占有固体を含む、請求項1記載の経口摂取性送達系。
【請求項13】
空間占有流体または空間占有固体が、孔の系内に配置される、請求項12記載の経口摂取性送達系。
【請求項14】
空間占有流体が無極性液体である、請求項12記載の経口摂取性送達系。
【請求項15】
空間占有固体が胃液と反応して、液体または気体を含む第2の空間占有流体を生成する、請求項12記載の経口摂取性送達系。
【請求項16】
空間占有固体が固体重炭酸塩を含み、気体が二酸化炭素を含む、請求項15記載の経口摂取性送達系。
【請求項17】
酸抵抗性シェルの外部面の外部で分散される保護層をさらに含む、請求項1記載の経口摂取性送達系。
【請求項18】
保護層が、犠牲的保護層である、請求項17記載の経口摂取性送達系。
【請求項19】
哺乳動物の腸内に治療剤を送達する方法であって、
請求項1記載の経口摂取性送達系を提供する工程;
口を通して哺乳動物に経口摂取性送達系を投与する工程;
経口摂取性送達系の胃への通過を許容する工程;
ここで経口摂取性送達系は、該経口摂取性送達系と相互作用する胃酸に暴露されて、分散性酸障壁を形成する;および
経口摂取性送達系の腸へのさらなる通過を許容する工程、
ここで分散性酸障壁は、腸の流体との相互作用により分散され、腸の流体は、分散性酸障壁が分散された後に、酸抵抗性シェルを貫通し、治療剤区画から治療剤が放出され、
それにより治療剤を腸に送達する、
を含む、方法。
【請求項20】
腸の流体が、酸抵抗性シェルの完全性を損ない、それにより治療剤区画からの治療剤の放出を容易にする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
治療剤が、胃内の分解に感受性である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
治療剤がタンパク質またはペプチドである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
治療剤が生きた生物である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
治療剤の有効量の送達を必要とする患者に治療剤の有効量を送達する方法であって、
請求項1記載の経口摂取性送達系を提供する工程、ここで該経口摂取性送達系は、治療剤の有効量を含む;
口を通して患者に経口摂取性送達系を投与する工程;
患者の胃への経口摂取性送達系の通過を許容する工程、
ここで該経口摂取性送達系は、経口摂取性送達系と相互作用する胃酸に暴露されて、分散性酸障壁を形成する;および
患者の腸への経口摂取性送達系のさらなる通過を許容する工程、
ここで該分散性酸障壁は、腸の流体との相互作用により分散され、腸の流体は、分散性酸障壁の分散の後に、酸抵抗性シェルを貫通して、治療剤区画から治療剤が放出され、
それにより治療剤の有効量を患者に送達する、
を含む、方法。
【請求項25】
患者が、癌、代謝性障害、アレルギー性障害、ホルモン性障害、皮膚科学的障害、心臓血管障害、呼吸器障害、血液学的障害、筋骨格障害、炎症性障害、リウマチ学的障害、自己免疫障害、胃腸障害、泌尿器科学障害、性的障害および生殖障害、神経学的障害ならびに遺伝的障害からなる群より選択される状態について、治療剤による治療を受けている、請求項24記載の方法。
【請求項26】
治療剤区画の周囲の酸抵抗性シェルを含み、酸抵抗性シェルの外部面、酸抵抗性シェル内の内部面および酸抵抗性シェルの下の下方領域からなる群より選択される場所に配置される空間占有流体または空間占有固体をさらに含む、経口摂取性送達系であって、
該空間占有流体または空間占有固体が、胃酸による酸抵抗性シェルの貫通に対する機械的障害を提供する、経口摂取性送達系。
【請求項27】
酸抵抗性シェルが、孔の系により貫通される、請求項26記載の経口摂取性送達系。
【請求項28】
空間占有流体または空間占有固体の少なくとも一部が孔の系内にある、請求項27記載の経口摂取性送達系。
【請求項29】
治療剤区画が、送達可能な治療剤を含むように寸法的に適合される、請求項26記載の経口摂取性送達系。
【請求項30】
治療剤区画が中空である、請求項29記載の経口摂取性送達系。
【請求項31】
治療剤区画が送達可能な治療剤を含む、請求項30記載の経口摂取性送達系。
【請求項32】
送達可能な治療剤が少なくとも1つの治療剤を含む、請求項31記載の経口摂取性送達系。
【請求項33】
空間占有流体または空間占有固体が酸反応性物質である、請求項26記載の経口摂取性送達系。
【請求項34】
酸反応性物質が、胃内の塩酸との接触時に気体を生成するかまたは放出する気体形成物質を含み、気体が、胃酸による酸抵抗性シェルの貫通に対する機械的障害を提供する、請求項33記載の経口摂取性送達系。
【請求項35】
気体が二酸化炭素である、請求項34記載の経口摂取性送達系。
【請求項36】
治療剤区画の周囲の消化性カプセル系を含む経口摂取性送達系であって、
消化性カプセル系が酸抵抗性シェルおよび分散性酸障壁を含み;
分散性酸障壁が、酸抵抗性シェルの外部面、酸抵抗性シェル内の内部面および酸抵抗性シェルの下の下方領域からなる群より選択される場所に配置され;
分散性酸障壁が、少なくとも1つの酸および酵素が治療剤区画に到達して、治療剤区画の完全性を損なうことを防ぎ;
分散性酸障壁が、一旦形成されると、十二指腸の流体の構成成分への暴露により分散され;治療剤区画が送達可能な治療剤を含む、経口摂取性送達系。
【請求項37】
分散性酸障壁が、空間占有固体または空間占有流体を含む、請求項36記載の経口摂取性送達系。
【請求項38】
空間占有流体が気体である、請求項37記載の経口摂取性送達系。
【請求項39】
空間占有固体または空間占有流体が酸反応性物質を含む、請求項37記載の経口摂取性送達系。
【請求項40】
空間占有固体または空間占有流体が、胃内の酸との接触の際に第2の空間占有材料を生成し、第2の空間占有材料が、全体的または部分的に分散性酸障壁を形成する、請求項38記載の経口摂取性送達系。
【請求項41】
第2の空間占有材料が気体である、請求項38記載の経口摂取性送達系。
【請求項42】
治療剤区画の完全性が、分散性酸障壁の分散後の酵素活性により損なわれる、請求項36記載の経口摂取性送達系。
【請求項43】
十二指腸の流体の構成成分が、重炭酸塩または胆汁酸塩である、請求項36記載の経口摂取性送達系。
【請求項44】
哺乳動物の腸に治療剤を送達する方法であって、
請求項37記載の経口摂取性送達系を提供する工程;
口を通して哺乳動物に経口摂取性送達系を投与する工程;
口を通して経口摂取性送達系を投与する工程の前、その間またはその後に、経口摂取性送達系を酸に暴露する工程、ここで該酸は、酸反応性の空間占有流体または空間占有固体と相互作用して、分散性酸障壁を形成する第2の空間占有流体を形成する;
経口摂取性送達系が哺乳動物の胃を通って腸まで通過することを許容する工程;および
経口摂取性送達系と十二指腸の流体を接触させる工程、
ここで十二指腸の流体の構成成分は、分散性酸障壁を分散させ、それにより経口摂取性送達系を腸内の酵素活性に暴露し、
酵素活性が、治療剤区画の完全性を損ない、それにより治療剤区画から治療剤を放出し、治療剤を腸に送達する、
を含む、方法。
【請求項45】
経口摂取性送達系が、口を通して経口摂取性送達系を投与する工程の後に酸に暴露され、酸が胃酸である、請求項44記載の方法。
【請求項46】
酸抵抗性シェルを提供する工程;および
酸反応性物質の1つ以上の堆積物を酸抵抗性シェルに固定させるか、または酸反応性物質の1つ以上の堆積物を酸抵抗性シェル内に埋め込む工程
を含む、示差的に透過性のカプセル系を製造する方法であって、
堆積物が、酸抵抗性シェルの外部面、酸抵抗性シェル内の内部面および酸抵抗性シェルの下の下方領域からなる群より選択される場所に配置される、方法。
【請求項47】
酸抵抗性シェルが繊維を含む、請求項46記載の方法。
【請求項48】
酸抵抗性シェルがロウ状物質を含む、請求項46記載の方法。
【請求項49】
酸抵抗性シェルが孔の系により貫通される、請求項46記載の方法。
【請求項50】
堆積物が、孔の系内で少なくとも部分的に配置される、請求項49記載の方法。
【請求項51】
酸反応性物質が気体生成物質を含む、請求項46記載の方法。
【請求項52】
気体生成物質が、塩酸への暴露の際に二酸化炭素を形成する、請求項51記載の方法。
【請求項53】
治療剤区画を囲むように酸抵抗性シェルを形成する工程をさらに含む方法であって、治療剤区画が、送達可能な治療剤を含むように寸法的に適合される、請求項46記載の方法。
【請求項54】
治療剤区画中に送達可能な治療剤を含むことをさらに含む、請求項53記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2019年10月21日に出願された米国仮出願番号第62/923,783号、2019年12月19日に出願された米国仮出願番号第62/950,527号、2020年2月26日に出願された米国仮出願番号第62/981,651号、2020年4月15日に出願された米国仮出願第63/010,132号、2020年7月29日に出願された米国仮出願番号第63/058,231号および2020年10月6日に出願された米国仮出願第63/088,070号の利益を主張する。上記出願の全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
出願の分野
本願は、薬物、生物製剤または他の治療剤のための経口摂取性送達系に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
医学的状態を治療するための治療剤は、患者に投与される場合に、薬剤の送達および取込みを最適化するように製剤化される。本明細書で使用する場合、「治療剤」は、治療的介入をもたらすようにヒトまたは動物に送達される任意の物質、材料、デバイス、生物またはその部分である。不確かさを回避するために、治療的介入は、診断的介入およびサーベイランス介入(すなわち診断してそれにより予想される障害を予防する介入、および予想される障害の予防を容易にするために健康または疾患の状態についてのデータを集めるための介入)を含み得る。
【0004】
薬物動態学は、身体内への、身体を通るおよび身体から外への薬学的または生物学的治療剤の移動:その吸収、分布、代謝および排出を扱う薬理学の支流である。バイオアベイラビリティは、全身の循環に達する投与された治療剤の量に言及する吸収のサブカテゴリーである。薬剤を静脈内投与する場合、定義により、全用量は全身循環に進入し、100%のバイオアベイラビリティを有する。静脈内以外の他の経路(すなわち経口、筋内、皮下、経皮、舌下、経直腸等)により投与される薬剤は典型的に、より低い吸収およびそのためにより低いバイオアベイラビリティを有する(すなわち投与されたよりも少ない用量が循環に到達し、そのためより少ない量が標的臓器および細胞に分布される)。バイオアベイラビリティは、薬剤の血漿濃度 対 時間を測定する薬物動態学的試験により測定され;この血漿濃度 対 時間曲線についての用量補正曲線下面積は、バイオアベイラビリティを示す。静脈内に投与された場合のそのバイオアベイラビリティと比較した非静脈経路を介して送達される薬剤のバイオアベイラビリティは、その絶対バイオアベイラビリティと称される。
【0005】
治療剤についての送達の経路は、胃腸管(「腸内の」または「腸の」投与と称される)または胃腸管を含まない他の経路(「非経口」投与と称される)を含み得る。静脈内投与は1つの非経口送達経路であるが、他のものがあり:例としては、体腔、筋肉、皮膚の下、皮膚の中への注射、粘膜を通るまたは皮膚を通る拡散および吸入が挙げられる。非経口投与は、特定の良く理解された利点を有する。最も重要なことに、これは、治療剤の有効な取込みが、変化した血流、低い胃腸運動性、乏しい吸収または第1の通過する代謝(first pass metabolism)の効果のために、予測できないものになり得る消化管を通り抜ける必要なく、治療剤を迅速に全身の循環に到達させる。これらの理由のために、非経口機構は典型的に、より大きな絶対バイオアベイラビリティを生じる。さらに、タンパク質、ペプチドならびにウイルスおよび細胞などの生きた生物を含む治療剤は、治療剤を無効にする胃における消化に対して感受性であるので、今日まで、非経口投与を必要としてきた。
【0006】
非経口投与のバイオアベイラビリティの利点は集中治療および緊急の情況において重要であるが、これらの経路は、より多くの常套的または慢性の治療について明確な欠点を有する。非経口送達は一般的に、滅菌技術を使用して、技術を有する人員により行われる針の穿刺および注入などの侵襲性の介入を必要とし;他の情況下では、非経口送達は特殊なエアロゾルまたはポンプなどの複雑な機構に頼る。これらの補助的な要件は、特に治療が頻繁に施される必要がある場合に、非経口送達を、患者にとって高価、不便および/または喜ばしくないものにする。侵襲性または技術的に複雑な介入の必要性は、小児の患者およびより複雑な送達システムについて医療施設へのアクセスを有さない、サービスが行き届いていない地域の患者などの特定の患者集団にとって、非経口送達を特に望ましくないものにする。
【0007】
これらの欠点に関わらず、繰り返しおよび広範囲の治療を必要とする多くの状態、例えば慢性の状態、または予防接種による疾患予防などの集団に基づく状態は、多くの場合において治療剤が腸内-具体的に経口-投与と適合性ではないので、現在では非経口的に治療される。経口投与により治療可能ではない他の状態は、腸内投与、例えば経直腸送達(浣腸、坐剤等)を介した非経口経路に適切である。経直腸送達の例としては、有効成分が結腸自体に対して直接作用し得る潰瘍性大腸炎、および生きた生物が結腸に導入されて、それを健常な細菌と共に増殖させる細菌療法(例えば便の移植)により治療される障害などの結腸の疾患が挙げられる。非経口的または経直腸的に治療されるこれらの状態の多くについて、経口送達は、便利であり、よく知られており、一般的に患者によく許容されるので好ましい。
【0008】
経口投与の間に、治療剤は、口から食道を通って胃へと通過し、次いで胃から十二指腸へと、その後小腸の残りへと通過する。経口剤のための送達ビヒクルは、口から胃への通過を生き延びさせるために十分な機械的完全性(integrity)を有する必要があるが、これは、かなり標準的な医薬技術を含む。胃は、薬物または生物製剤に対してより厄介な条件を提示する。胃粘膜中の細胞は、塩酸を産生し、胃内で酸性の環境(pH約1.0)をもたらす。さらに、胃細胞は、タンパク質を分解する酵素であるペプシンのプロ酵素であるペプシノーゲンを分泌する。胃内の酸は、タンパク質を加水分解し、さらにプロ酵素ペプシノーゲンをその活性形態のペプシンに変換させ;ペプシンは、胃内のタンパク質を消化して、それらをペプチドに分解し、ペプチドは、小腸内でさらに消化されてその後吸収される。経口的に送達される小分子は、胃酸による加水分解に感受性である。経口的に送達されるタンパク質およびペプチドは、胃酸により加水分解されるだけでなく、ペプシンによっても消化される。胃内のこれらの条件は、多くの治療剤について経口送達経路の使用を妨げるかまたは損なう。
【0009】
慢性または集団特異的な状態を治療するための医薬および生物医薬が開発される場合、それらの送達形態に関連する欠点を回避することが望ましい。インスリン依存性糖尿病から慢性炎症性疾患までの広範囲の障害は、非経口的に投与される医薬および生物医薬剤により治療され得る。他の障害は、ワクチンなどの大きな集団にわたる広い治療措置を必要とするか、または非経口投与を許容することが困難であるとみられる小児などの集団へのアクセスを必要とする。特定の障害は現在、経直腸的に送達される薬剤により治療されるだけであり得る。これらの送達形態には費用がかかり、欠点があるとしても、これらは、胃の通過を生き延びることができないので、現在では、これらの薬剤のための唯一の選択肢なままである。
【0010】
そのため、当該技術分野において、胃の条件への暴露を許容しない治療剤、例えば生物医薬、生きた生物、マイクロデバイスおよび小分子の経口投与のための向上された送達ビヒクルについての必要性が残る。患者に、この投与経路が含む不快さおよび不便さをかけさせないための経直腸送達の代替物についても必要性が存在する。これらの向上された送達機構は、患者の便利さおよび許容性の増加ならびに複雑さおよび健康管理費用の低下のために、頻繁な投薬を必要とする慢性状態または特殊な集団において特に有利である。
【0011】
そのため、当該技術分野において、胃の条件への暴露を許容しない治療剤、例えば生物医薬、生きた生物、マイクロデバイスおよび小分子の経口投与のための向上された送達ビヒクルについてのさらなる必要性が残る。患者に、この投与経路が含む不快さおよび不便さをかけさせないための経直腸送達の代替物についても必要性が存在する。これらの向上された送達機構は、患者の便利さおよび許容性の増加ならびに複雑さおよび健康管理費用の低下のために、頻繁な投薬を必要とする慢性状態または特殊な集団において特に有利である。有利なことに、向上された送達ビヒクルは、例えば味の良いおよび食べやすい剤型または環境において、容易な摂取のために最適化され得る。食用の形態の医薬生成物、例えば「グミ」としてのビタミン剤、口内錠としての咳止めドロップ、チョコレートおよびキャラメル中のカルシウムおよびビタミンD等は当該技術分野において周知である。送達ビヒクルの粘稠度および風味を向上することにより、患者による、特に錠剤の嚥下を嫌がるかまたはできない集団についてのその全体的な許容性が向上され得る。摂取を容易にする食品品目中の送達ビヒクルを提供することはさらに有利である。例えば、液体、ゲルまたは半固体培体、例えばスープ、飲料、ミルクシェイク、アイスクリーム、ヨーグルト、ゼリー等に添加し得る送達ビヒクルは、消費者にとって魅力的であり、嚥下が容易である。かかる向上された送達機構は、頻繁な投薬を必要とするこれらの状態、または患者の便利さおよび許容性の増加ならびに複雑さおよび健康管理費用の低下のために、嚥下困難を有する小児もしくは患者などの特殊な集団において特に望ましい。
【発明の概要】
【0012】
発明の概要
ある局面において、本発明は、治療剤および治療剤区画内に治療剤を含む示差的に(differentially)透過性のカプセル系を含む、哺乳動物の腸内で治療剤を放出するための経口摂取性送達系に関し、ここで該示差的に透過性のカプセル系は、経口摂取および哺乳動物の胃、その後の腸への通過のために寸法的に適合され;示差的に透過性のカプセル系は、酸抵抗性シェルおよび分散性酸障壁を含み;該分散性酸障壁は、酸抵抗性シェルの外部面、酸抵抗性シェル内の内部面および酸抵抗性シェルの下の下方領域からなる群より選択される場所で配置(deploy)され、該分散性酸障壁は、胃内の酸抵抗性シェルと胃液との接触を阻害し;分散性酸障壁は、経口摂取性送達系が胃内にある場合に形成され;分散性酸障壁は、腸内で分散され、それにより、腸内の酵素が治療剤区画に到達する。
【0013】
さらなる局面において、本発明は、経口摂取性送達系に関し、酸抵抗性シェルは酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜である。なおさらなる局面において、酸抵抗性シェルは、ロウ状物質(waxy substance)を含むかまたは本質的にそれからなる。さらなる局面において、酸抵抗性シェルは、線維を含み、任意に線維は消化性または加水分解性である。
【0014】
なおさらなる局面において、分散性酸障壁は気体障壁であり、例えば気体障壁は、胃酸と気体生成物質の反応により形成され得、気体生成物質は、酸抵抗性シェルの外部面、酸抵抗性シェル内の内部面および酸抵抗性シェルの下の下方領域の少なくとも1つに配置され;任意に、酸抵抗性シェルは、気体生成物質の堆積物を含む孔の系により貫通される。ある局面において、気体障壁は、二酸化炭素を含む。なおさらなる態様において、気体障壁は、腸内の二酸化炭素と重炭酸塩の相互作用により分散される。
【0015】
さらなる局面において、酸抵抗性シェルは、空間占有流体または空間占有固体を含む。空間占有流体または空間占有固体は、例えば孔の系内に配置され得る。ある局面において、空間占有流体は、無極性液体である。なおさらなる局面において、空間占有固体は、胃液と反応して、液体または気体を含む第2の空間占有流体を作製し;例えば空間占有固体は固体重炭酸塩を含み、気体は二酸化炭素を含む。
【0016】
本発明はまた、本明細書に記載される経口摂取性送達系を提供する工程;口を通して経口摂取性送達系を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の腸に治療剤を送達する方法を含み;経口摂取性送達系は、胃を通過し、経口摂取性送達系は、経口摂取性送達系と相互作用する胃酸に暴露されて、分散性酸障壁を形成し;次いで、経口摂取性送達系は、腸を通過し、分散性酸障壁は、腸の流体との相互作用により分散され、腸の流体は、酸抵抗性シェルを貫通し、その後分散性酸障壁が分散し、治療剤区画から治療剤を放出し;それにより治療剤を腸に送達する。ある局面において、腸の流体は、酸抵抗性シェルの完全性を損ない、それにより治療剤区画からの治療剤の放出を容易にする。特定のさらなる局面において、治療剤は、胃内での分解に感受性である。治療剤は、タンパク質またはペプチドまたは生きた生物であり得る。
【0017】
本発明はまた、治療剤の有効量の送達を必要とする患者に、治療剤の有効量を送達する方法を包含し、該方法は:本明細書に記載される経口摂取性送達系を提供する工程、ここで経口摂取性送達系は、治療剤の有効量を含む;口を通して患者に経口摂取性送達系を投与する工程を含み;経口摂取性送達系は、患者の胃を通過して、経口摂取性送達系は、経口摂取性送達系と相互作用する胃酸に暴露されて、分散性酸障壁を形成し;次いで、経口摂取性送達系は、患者の腸を通過し、分散性酸障壁は、腸の流体との相互作用により分散され、腸の流体は、酸抵抗性シェルを貫通して、その後分散性酸障壁が分散し、治療剤区画から治療剤を放出し、それにより治療剤の有効量を患者に送達する。
【0018】
ある局面において、患者は、癌、代謝性障害、アレルギー性障害、ホルモン性障害、皮膚科学的障害、心臓血管障害、呼吸器障害、血液学的障害、筋骨格障害、炎症性障害、リウマチ学的障害、自己免疫障害、胃腸障害、泌尿器科学障害、性的および生殖障害、神経学的障害ならびに遺伝的障害からなる群より選択される状態について、治療剤による治療を受けている。
【0019】
本発明はさらに、治療剤区画の周囲の酸抵抗性シェルを含み、酸抵抗性シェルの外部面、酸抵抗性シェル内の内部面および酸抵抗性シェルの下の下方領域からなる群より選択される場所に配置される空間占有流体または空間占有固体をさらに含む経口摂取性送達系を包含し、ここで空間占有流体または空間占有固体は、胃酸による酸抵抗性シェルの貫通に対する機械的障害を提供する。ある局面において、酸抵抗性シェルは、孔の系により貫通され;任意に、空間占有流体または空間占有固体の少なくとも一部は、孔の系内に存在する。さらなる局面において、治療剤区画は、送達可能な治療剤を含むように寸法的に適合され;例えば治療剤区画は中空(void)である。なおさらなる局面において、治療剤区画は、送達可能な治療剤を含み、任意に、送達可能な治療剤は、少なくとも1つの治療剤を含む。ある局面において、空間占有流体または空間占有固体は、酸反応性物質である。例えば、酸反応性物質は、胃内の塩酸との接触の際に気体を生成または放出する、気体形成物質を含み得、気体は、胃酸による酸抵抗性シェルの貫通に対する機械的障害を提供する。ある局面において、気体は二酸化炭素である。
【0020】
本発明はまた、治療剤区画の周囲の消化性カプセル系を含む経口摂取性送達系を含み、ここで消化性カプセル系は、酸抵抗性シェルおよび分散性酸障壁を含み;分散性酸障壁は、酸抵抗性シェルの外部面、酸抵抗性シェル内の内部面および酸抵抗性シェルの下の下方領域からなる群より選択される位置に配置され;分散性酸障壁は、酸および酵素の少なくとも1つが治療剤区画に到達して、その完全性を損なうことを防ぎ;分散性酸障壁は、一旦形成されると、十二指腸の流体の構成成分への暴露により分散され;治療剤区画は、送達可能な治療剤を含む。ある局面において、分散性酸障壁は、空間占有固体または空間占有流体を含む。ある局面において、空間占有流体は気体である。なおさらなる局面において、空間占有固体または空間占有流体は、酸反応性物質を含み;任意に、空間占有固体または空間占有流体は、胃内の酸との接触の際に第2の空間占有材料を作製し、第2の空間占有材料は、全体または部分的に分散性酸障壁を形成し;および/またはさらに任意に、第2の空間占有材料は気体である。なおさらなる局面において、治療剤区画の完全性は、酵素活性により損なわれ、その後分散性酸障壁が分散する。さらなる局面において、十二指腸の流体の構成成分は、重炭酸塩または胆汁酸塩である。
【0021】
本発明はまた、哺乳動物の腸に治療剤を送達する方法を包含し、該方法は:上記の経口摂取性送達系を提供する工程;口を通して哺乳動物に経口摂取性送達系を投与する工程;口を通して経口摂取性送達系を投与する工程の前、その間またはその後に、経口摂取性送達系を酸に暴露する工程、ここで酸は、酸反応性の空間占有流体または空間占有固体と相互作用して、分散性酸障壁を形成する第2の空間占有流体を形成する;経口摂取性送達系を、哺乳動物の胃を通って腸まで通過させる工程;および経口摂取性送達系と十二指腸の流体を接触させる工程を含み、十二指腸の流体の構成成分は、分散性酸障壁を分散させ、それにより経口摂取性送達系を腸内の酵素活性に暴露し、酵素活性は、治療剤区画の完全性を損ない、それにより治療剤区画から治療剤を放出させ、治療剤を腸に送達する。ある局面において、経口摂取性送達系は、口を通して経口摂取性送達系を投与する工程の後に酸に暴露され、酸は胃酸である。本発明はまた、酸抵抗性シェルを提供する工程;および酸反応性物質の1つ以上の堆積物を、酸抵抗性シェルに固定させるかまたは酸反応性物質の1つ以上の堆積物を、酸抵抗性シェル内に埋め込む工程を含む、示差的に透過性のカプセル系を製造する方法を含み、ここで堆積物は、酸抵抗性シェルの外部面、酸抵抗性シェル内の内部面および酸抵抗性シェルの下の下方領域からなる群より選択される位置に配置される。酸抵抗性シェルは、線維を含み得るかまたはロウ状物質を含み得る。ある局面において、酸抵抗性シェルは、孔の系により貫通され;任意に、堆積物は、孔の系内で少なくとも部分的に配置される。特定のさらなる局面において、酸反応性物質は、気体生成物質を含み;任意に、気体生成物質は、塩酸への暴露の際に二酸化炭素を形成する。なおさらなる局面において、該方法はさらに、酸抵抗性シェルを形成して、治療剤区画を囲む工程を含み、治療剤区画は、送達可能な治療剤を含むように寸法的に適合される。該方法はさらに、治療剤区画中に送達可能な治療剤を含むことを含み得る。
【0022】
本発明はさらに、治療剤および治療剤区画内に治療剤を含む消化性カプセル系を含む、治療剤を哺乳動物の腸内に放出するための経口摂取性送達系を含み、消化性カプセル系は、経口摂取のためおよび哺乳動物の胃、その後の腸への通過のために寸法的に適合され、消化性カプセル系は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜および分散性酸障壁を含み、
分散性酸障壁は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜の外部表面および酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜内の内部領域からなる群より選択される位置において配置され、該分散性酸障壁は、胃内での胃液との接触を阻害し、
分散性酸障壁は、胃内で形成され、腸内で分散されて、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を腸内の酵素活性に暴露し、
腸内の酵素活性に暴露された酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜は、酵素活性により全体的または部分的に消化され、それにより治療剤を腸内に放出する。
【0023】
ある局面において、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜は、内部プロテアーゼ消化性層および外部酸抵抗性層を含む。さらなる局面において、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜の外部表面上または酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜の内部領域内に配置された分散性酸障壁は、気体障壁である。気体障壁は、例えば胃酸と気体生成物質との反応により形成され得、気体生成物質は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜の内部領域に含まれる。任意に、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜は、気体生成物質の堆積物を含む孔の系により貫通され、胃酸と気体生成物質の反応により、気体障壁が生じる。さらなる局面において、気体障壁は、二酸化炭素を含む。なおさらなる局面において、気体障壁は、腸内の二酸化炭素と重炭酸塩の相互作用により分散される。なおさらなる局面において、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜の外部表面上または酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜の内部領域内に配置された分散性酸障壁は、空間占有流体または空間占有固体、例えば無極性の液体を含む。ある局面において、空間占有流体または空間占有固体は、孔の系内に配置され、および/または空間占有固体は、胃液と反応して、液体または気体を含む空間占有流体を作製する。具体的な局面において、空間占有固体は、固体の重炭酸塩を含み、気体は二酸化炭素である。
【0024】
本発明は、哺乳動物の腸に治療剤を送達する方法を包含し、該方法は、本明細書に記載される経口摂取性送達系を提供する工程;口を通して哺乳動物に経口摂取性送達系を投与する工程;経口摂取性送達系の胃への通過を許容する工程、ここで経口摂取性送達系は、経口摂取性送達系と相互作用する胃酸に暴露されて、経口摂取性送達系内および/またはその上に分散性酸障壁を形成する;ならびに経口摂取性送達系の腸へのさらなる通過を許容する工程、ここで分散性酸障壁は、腸内の分泌物との相互作用により分散され、腸内の酵素活性は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜と接触し、その後分散性酸障壁が分散し、それにより酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜の完全性を損ない、その中に含まれる治療剤の排出を許容し;それにより治療剤を腸に送達させる、を含む。ある局面において、治療剤、例えばタンパク質またはペプチドは、胃内の分解に感受性である。さらなる局面において、治療剤は生きた生物である。
【0025】
なおさらなる局面において、本発明は、治療剤の有効量の送達を必要とする患者に治療剤の有効量を送達する方法に関し、該方法は:本明細書に記載される経口摂取性送達系を提供する工程、ここで経口摂取性送達系は、治療剤の有効量を含む;口を通して患者に経口摂取性送達系を投与する工程;患者の胃への経口摂取性送達系の通過を許容する工程、ここで経口摂取性送達系は、経口摂取性送達系と相互作用する胃酸に暴露されて、分散性酸障壁を形成する;および患者の腸への経口摂取性送達系のさらなる通過を許容する工程を含み、ここで分散性酸障壁は、腸内の分泌物との相互作用により分散され、腸内の酵素活性は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜と接触し、その後分散性酸障壁が分散し、それにより酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜の完全性を損ない、治療剤区画からの治療剤の排出を許容し;それにより治療剤の有効量を患者に送達する。ある局面において、患者は、癌、代謝性障害、アレルギー性障害、ホルモン性障害、皮膚科学的障害、心臓血管障害、呼吸器障害、血液学的障害、筋骨格障害、炎症性障害、リウマチ学的障害、自己免疫障害、胃腸障害、泌尿器科学障害、性的および生殖障害、神経学的障害ならびに遺伝的障害からなる群より選択される状態について、治療剤による治療を受けている。
【0026】
本発明はさらに、治療剤区画の周囲の消化性カプセル系を含む経口摂取性送達系を包含し、ここで治療剤区画は、送達可能な治療剤を含むように寸法的に適合され、消化性カプセル系は、空間占有流体または固体が配置される酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を含む。ある局面において、治療剤区画は中空である。なおさらなる局面において、治療剤区画は、送達可能な治療剤を含み、例えば送達可能な治療剤は、少なくとも1つの治療剤を含む。なおさらなる局面において、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜は、孔の系により貫通される。ある態様において、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜は、内部プロテアーゼ消化性層および外部酸抵抗性層を含み、ここで孔の系は、全体的または部分的に外部酸抵抗性層内に配置される。さらなる局面において、空間占有流体または固体の少なくとも一部は、孔の系内に存在する。
【0027】
本発明はさらに、治療剤区画の周囲の消化性カプセル系を含む経口摂取性送達系を包含し、ここで消化性カプセル系は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜および分散性酸障壁を含み、分散性酸障壁は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜の外部表面および酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜内に含まれる孔の内部の系の少なくとも1つの上またはその中で形成され;分散性酸障壁は、酸および酵素の少なくとも1つが治療剤区画に到達して、その完全性を損なうことを防ぎ;分散性酸障壁は、一旦形成されると、十二指腸の流体の構成成分への暴露により分散され;治療剤区画は送達可能な治療剤を含む。ある局面において、分散性酸障壁は、空間占有固体または流体を含む。空間占有固体または流体は、例えば、胃内の酸との接触の際に第2の空間占有材料を作製し、第2の空間占有材料は、全体的または部分的に分散性酸障壁を形成する。なおさらなる局面において、治療剤区画の完全性は酵素活性により損なわれ、その後分散性酸障壁が分散される。さらなる態様において、十二指腸の流体の構成成分は、重炭酸塩または胆汁酸塩である。
【0028】
本発明はまた、哺乳動物の腸に治療剤を送達する方法を包含し、該方法は:上記の経口摂取性送達系を提供する工程;口を通して哺乳動物に経口摂取性送達系を投与する工程;口を通して経口摂取性送達系を投与する工程の前、その間またはその後に、経口摂取性送達系を酸に暴露する工程、ここで酸は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜内に配置される酸反応性物質と相互作用して、それにより分散性酸障壁を形成する空間占有流体を作製する;経口摂取性送達系に、哺乳動物の胃を通って十二指腸へと通過させる工程;および経口摂取性送達系と十二指腸の流体を接触させる工程、ここで十二指腸の流体の構成成分は、分散性酸障壁を分散させ、それにより経口摂取性送達系を、腸内の酵素活性に暴露し、酵素活性は、治療剤区画の完全性を損ない、それにより治療剤区画から治療剤を放出し、治療剤を腸に送達する、を含む。ある局面において、経口摂取性送達系は、口を通して経口摂取性送達系を投与する工程の後に酸に暴露され、酸は胃酸である。
【0029】
態様において、治療剤および治療剤チャンバー内に治療剤を含む消化性カプセル系を含む、哺乳動物の腸内に治療剤を放出するための経口摂取性送達系が本明細書に開示され、該消化性カプセル系は、経口消化のためおよび哺乳動物の胃、その後の腸への通過のために寸法的に適合され、消化性カプセル系は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜および分散性気体障壁を含み、分散性気体障壁は、全体的または部分的に、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜の外表面上に配置され、該分散性気体障壁は、胃内の胃液との接触を阻害し、分散性気体障壁は、胃内で形成され、腸内で分散されて、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を腸内の酵素活性に暴露し、腸内の酵素活性に暴露された酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜は、全体的または部分的に酵素活性により消化され、それにより腸内に治療剤を放出する。態様において、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜は、内部プロテアーゼ消化性層および外部酸抵抗性層を含む。態様において、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜は、気体生成物質の堆積物を含む孔の系により貫通され、胃酸と気体生成物質の反応により、分散性気体障壁を形成するように蓄積する気体が生成される。態様において、気体は、二酸化炭素を含み、分散性気体障壁は、腸内で二酸化炭素と重炭酸塩の相互作用により分散される。
【0030】
態様において、哺乳動物の腸に治療剤を送達する方法が本明細書においてさらに開示され、該方法は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜および治療剤を含む治療剤チャンバーを含む経口摂取性送達系を提供する工程、口を通して哺乳動物に経口摂取性送達系を投与する工程、経口摂取性送達系の胃への通過を許容する工程、ここで経口摂取性送達系は、経口摂取性送達系と相互作用する胃酸に暴露されて、経口摂取性送達系内および/またはその上で分散性気体障壁を形成する、ならびに腸への経口摂取性送達系のさらなる通過を許容する工程、ここで分散性気体障壁は、腸内の重炭酸塩分泌物との相互作用により分散され、腸内の酵素活性は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜と接触して、その完全性および治療剤チャンバーの完全性を損ない、それによりその中に含まれる治療剤の排出を許容し、腸に治療剤を送達する、を含む。態様において、治療剤は、胃内の分解に感受性である。態様において、治療剤は、タンパク質もしくはペプチドまたは生きた生物である。態様において、治療剤の有効量の送達を必要とする患者に、治療剤の有効量を送達する方法も本明細書において開示され、該方法は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜および治療剤の有効量を含む治療剤チャンバーを含む経口摂取性送達系を提供する工程、口を通して患者に経口摂取性送達系を投与する工程、患者の胃への経口摂取性送達系の通過を許容する工程、ここで経口摂取性送達系は、経口摂取性送達系と相互作用する胃酸に暴露されて、分散性気体障壁を形成する;および経口摂取性送達系の患者の腸へのさらなる通過を許容する工程、ここで分散性気体障壁は、腸内の重炭酸塩分泌物との相互作用により分散され、腸内の酵素活性は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜と相互作用して、その完全性を損ない、それにより治療剤チャンバーから治療剤を放出して、患者に治療剤の有効量を送達する、を含む。態様において、患者は、癌、代謝性障害、アレルギー性障害、ホルモン性障害、皮膚科学的障害、心臓血管障害、呼吸器障害、血液学的障害、筋骨格障害、炎症性障害、リウマチ学的障害、自己免疫障害、ホルモンの不均衡による障害、胃腸障害、泌尿器科学的障害、性的および生殖障害、神経学的障害および遺伝的障害からなる群より選択される状態について、治療剤による治療を受けている。
【0031】
態様において、治療剤チャンバーの周囲の消化性カプセル系を含む経口摂取性送達系も本明細書において開示され、ここで治療剤チャンバーは、送達可能な治療剤を含むように寸法的に適合され、消化性カプセル系は、気体生成物質が配置される酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を含む。態様において、治療剤チャンバーは中空であり、態様において、治療剤チャンバーは、少なくとも1つの治療剤を含む送達可能な治療剤を含む。態様において、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜は、孔の系により貫通される。態様において、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜は、2つの層、内部プロテアーゼ消化性層および外部酸抵抗性層を含み、孔の系は、外部酸抵抗性層内に配置される。態様において、気体生成物質の少なくとも一部は、孔の系内に存在する。
【0032】
態様において、治療剤チャンバーの周囲の消化性カプセル系を含む経口摂取性送達系が、本明細書においてさらに開示され、ここで治療剤チャンバーは、送達可能な治療剤;酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜;および分散性気体障壁を含み、分散性気体障壁は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜の外部表面および酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜内に含まれる孔の内部の系の少なくとも1つの上またはその中に形成され、分散性気体障壁は、酸および酵素の少なくとも1つが治療剤チャンバーに到達して、その完全性を損なうことを防ぐ。態様において、分散性気体障壁は、酸との接触により形成され、分散性気体障壁は、一旦形成されると、中性または塩基性の環境への暴露により分散可能である。態様において、治療的酸チャンバーの完全性は、酵素活性により損なわれ、その後分散性気体障壁が分散される。
【0033】
態様において、治療剤を、哺乳動物の腸に送達する方法も本明細書において開示され、該方法は、上記の経口摂取性送達系を提供する工程;口を通して哺乳動物に経口摂取性送達系を投与する工程;口を通して経口摂取性送達系を投与する工程の前、その間またはその後に、経口摂取性送達系を酸に暴露する工程、ここで酸は、経口摂取性送達系内に一体化される気体生成物質と相互作用して、それにより分散性気体障壁を作製する;経口摂取性送達系を、哺乳動物の胃を通して腸へと通過させる工程;および経口摂取性送達系を、腸内の中性または塩基性の分泌物と接触させる工程、ここで腸内の中性または塩基性の分泌物は、分散性気体障壁を分散させ、それにより経口摂取性送達系を、腸内の酵素活性に暴露し、酵素活性は、治療剤チャンバーの完全性を損ない、それにより治療剤から治療剤を放出させ、治療剤を腸に送達する、を含む。態様において、経口摂取性送達系は、口を通して経口摂取性送達系を投与する工程の後に酸に暴露され、酸は胃酸である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図面の簡単な説明
図1図1は、経口摂取性送達系の態様を概略的に示す。
図2図2は、断面における経口摂取性送達系の態様の部分を概略的に示す。
図3図3は、断面における経口摂取性送達系の態様の部分を概略的に示す。
図4図4は、断面における経口摂取性送達系の態様の部分を概略的に示す。
図5図5は、断面における経口摂取性送達系の態様の部分を概略的に示す。
図6図6は、断面における経口摂取性送達系の態様の部分を概略的に示す。
図7図7は、断面における経口摂取性送達系の態様の部分を概略的に示す。
図8図8は、断面における経口摂取性送達系の態様の部分を概略的に示す。
図9図9は、断面における経口摂取性送達系の態様の部分を概略的に示す。
図10図10は、断面における経口摂取性送達系の態様の部分を概略的に示す。
図11図11は、断面における経口摂取性送達系の態様の部分を概略的に示す。
図12図12は、概略的に断面における経口摂取性送達系の態様の部分である。
図13図13は、概略的に断面における経口摂取性送達系の態様の部分である。
図14図14は、断面における経口摂取性送達系の態様を概略的に示す。
図15図15は、断面における経口摂取性送達系の態様を概略的に示す。
図16図16は、胃内での残存の期間後の、断面における経口摂取性送達系の態様を概略的に示す。
図17図17は、胃内での残存の期間後の、断面における経口摂取性送達系の態様を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
本明細書で使用する場合、不定冠詞「a」または「an」は、そうではないと特定されない限り「1つ以上」を意味することを意図する。
【0036】
態様において、患者の胃腸管の管腔内に、治療剤を放出するための経口摂取性送達系が本明細書に開示される。本明細書で使用する場合、用語「胃腸管」は、限定されないが、胃、その3つの区分(十二指腸、空腸、回腸)を有する小腸および大腸を含み、小腸および大腸はまとめて「腸管」と称される。本明細書に開示される経口摂取性送達系は特に、小腸または大腸内での吸収のために、治療剤を標的領域に送達するために適合される。態様において、治療剤は小腸内に送達され;他の態様において、治療剤は大腸内に送達され;さらに他の態様は、治療剤が小腸くまなく、大腸くまなくまたはその両方に送達されるように、送達の点を組み合わせ得る。
【0037】
A. 経口摂取性送達系および製造方法
1. 一般的な経口摂取性送達系:胃への通過
本明細書に開示される送達系は、それが胃を通過する際に、指定される完全性の程度を保持するように設計される。態様において、本明細書に開示される送達系は、それが胃を通過する際に、実質的に無傷なままであり、その後胃から遠位のいくつかの点で分解されるかもしくは消化され、またはそれが胃を通過する際に実質的に無傷なままであり、胃の流体の進入に抵抗するが、腸管の流体に対して透過性になる。
【0038】
この特徴により送達系は、胃における流体の進入に対して予め選択された程度の抵抗性を有し、腸における流体の進入に対する異なる予め選択された程度の抵抗性は、本明細書において「示差的に透過性」であると称される。一態様において、経口摂取性送達系(OIDS)は、胃における流体の進入に抵抗するが腸における流体の進入に感受性である示差的に透過性のカプセル系を含むので、胃の流体は、カプセル系を通って治療剤区画にアクセスすることが阻害されるが、腸の流体は、カプセル系を通って治療剤区画にアクセスすることが許容される。かかる態様において、治療剤区画の内容物は、胃酸への暴露から保護されるので、内容物は比較的無傷で腸へと通過し、ここで治療剤区画は、腸の流体により到達され、貫通されるので、治療剤は、腸管内に放出される。
【0039】
本明細書で使用する場合、用語「消化する」およびこの用語を含む関連のある語彙単位は、胃腸管内で経口的に摂取された材料に対してそれらが作用する場合に、酵素、酸または他の生理学的剤への暴露によりもたらされる破壊、分解、崩壊、プロセッシングまたは構造的完全性の消失をいう。用語「消化」は本明細書で使用する場合は単に、経口的に摂取された材料の機械的および/または化学的な崩壊をいい、その後のその吸収または排出は言わない。態様において、経口摂取性送達系は、大きなまたは任意の消化を伴わずに胃を通過し、次いで十二指腸または空腸または回腸において治療剤を放出する。他の態様において、経口摂取性送達系は、大きなまたは任意の消化を伴わずに胃および小腸の一部を通過し、次いで結腸において治療剤を放出する。
【0040】
より詳細に、経口摂取性送達系は、口を通して摂取され、次いで食道、その後の胃へと通過する。態様において、送達系は、胃内でその完全性の少なくとも一部を保持するように設計され、胃または胃の遠位での完全性の任意の消失は、該設計に組み込まれる。例えば、以下に記載される経口摂取性送達系の周囲の外殻またはコーティングは、胃内で部分的に溶解されるように製剤化され得る。他の態様において、全経口摂取性送達系は、胃内でその分解または消化を開始するように設計され、任意に系に包まれるかまたは系自体の壁内に埋め込まれる治療剤のいくつかまたは全てが放出される。本明細書で使用する場合、用語「示差的に透過性のカプセル系」は、胃および腸管内で異なる透過性を有する経口摂取性送達系の構造をいう。一態様において、カプセルは、胃腸管の1つ以上の場所(例えば胃および/または十二指腸)において消化を受けるように設計される。一態様において、示差的に透過性のカプセル系は、もしあれば消化が最小で胃を通過するが、十二指腸内の消化には感受性である。示差的に透過性のカプセル系の特徴および例示的態様を以下により詳細に記載し、特定の以下の図により図示される。明確性の目的で、用語「示差的に透過性のカプセル系」は、本明細書に記載される「消化性カプセル系」または「選択的消化性カプセル系」を包含する。示差的に透過性のカプセル系が、胃内 対 腸内の流体の進入に対して異なる程度の抵抗性を付与し得る1つの方法は、腸と比較して胃内のカプセル状の層(1つまたは複数)の異なる程度の消化を許容することによる。カプセル系に示差的に透過性の性質を付与するための他の方法は、カプセルが胃内にある場合はカプセルへのおよびそれを通る流体の通過を阻害するため、およびカプセルが腸内にある場合はカプセルへのおよびカプセルを通る流体の通過を許容するための機構を含み得、ここでかかる機構は、カプセル自体の消化の代わりになり得るかまたはそれを補い得る。
【0041】
図1は、その消化後および胃内での残存の期間後の経口摂取性送達系100の態様を断面的に示す。示されるように、経口摂取性送達系100は、治療剤を治療剤区画102内に閉じ込める示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系104を含む。治療剤区画102は、それ自体の壁により別個の囲いとして形成され得るか、または治療剤を含むための示差的に透過性のカプセル系104内の1つ以上の経口摂取性送達系として形成され得るか、または経口摂取性送達系100内での固体、液体もしくは半固体治療剤の保持に適した任意の他の構成で形成され得る。
【0042】
この図およびそれ以降の図は治療剤区画102を単一の区画として示すが、経口摂取性送達系内に配置される1つ、2つまたはそれ以上の治療剤区画102があり得、それぞれの区画が、他のものと同じであり得るかまたは他のものとは異なり得る治療剤を含むことが理解される。
【0043】
本明細書で使用する場合、用語「治療剤区画」は、治療剤が、治療剤区画として働く経口摂取性送達系内の予め形成された空間に挿入されるかどうかまたは治療剤が、治療剤が存在するように方向づけられる別個の空間の形成なしに、経口摂取性送達系の外部の層に包まれるかもしくはコーティングされるかのいずれにせよ、治療剤の位置をいう。例えば、経口摂取性送達系は、流体治療剤が注入され得る内部空洞を伴って、予め形成され得る。かかる予め形成された空洞は、示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系104に一体化されるものに加えて、保護または制御放出の他の層を有し得る。または別の例として、第三者は、例えばコーティングの任意の層を有するカプセル内にそれ自体の囲いおよび/またはコーティング(1つまたは複数)を有する治療剤を作製し得、その際にかかる治療剤形成因子は、例えばその周囲に示差的に透過性のカプセル系104を形成することにより、または予め形成された示差的に透過性のカプセル系内にそれを包むことにより、または示差的に透過性のカプセル系を形成する材料内にそれ自体の囲いおよび/またはコーティング(1つまたは複数)で第三の治療剤をコーティングするかもしくは第三の治療剤をそれに浸すことにより、経口摂取性送達系内に含まれるように提示され得る。全てのこれらの情況において、経口摂取性送達系内に空間が予め形成されるかまたは示差的に透過性のカプセル系が、それ自体の囲いおよび/またはコーティング(1つまたは複数)を有する治療剤を覆う、包むもしくは囲うように形成されるかのいずれにせよ、治療剤の存在の位置は、「治療剤区画」と称される。
【0044】
本明細書に提供される図は単一の治療剤区画を示すが、経口摂取性送達系内に配置される複数の治療剤区画があり得ることが理解され、ここでそれぞれの区画の内容物は同じであり得るかまたは異なり得る。例えば、1つの治療剤区画は第1の治療剤を含み得、別の治療剤区画は第2の治療剤を含み得、その両方は、相乗的に作用するが異なる治療効果を有し:そのため、かかる組合せは、同じ送達系において、患者に2つ以上の治療剤を提供し得る。別の例として、1つの治療剤は第1の治療剤を含み得、別の治療剤区画は第2の治療剤を含み得、ここで第2の治療剤は、それ自体が独立した治療効果を有さない第1の治療剤の効果を高める。例として、プロバイオティック(probiotic)治療剤は、1つの治療剤区画内で送達され得、プレバイオティック(prebiotic)物質は、別の治療剤区画内で送達され得、プレバイオティック剤は、プロバイオティック物質の有効性を高めることが意図される。単一丸剤組合せは、喘息、糖尿病、高血圧および脂質異常症などの慢性の状態を管理するための価値のあるツールとして認識される。胃の通過を生き延びさせるその能力のために、本明細書に開示される経口摂取性送達系は、以前には非経口投与を必要とした治療剤のための併用療法の利点を提供し得る。
【0045】
図1に示されるように、示差的に透過性(permeable)(例えば消化性)のカプセル系104は、分散性酸障壁110が配置されるその表面上またはその中に酸抵抗性シェル108(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)を含む。本明細書で使用する場合、用語「酸抵抗性シェル」は、胃酸の加水分解効果に抵抗性の経口摂取性送達系100の構造的な層をいう。酸抵抗性シェルの構築を、以下の図に関連して以下により詳細に記載する。酸抵抗性シェル108が胃の流体の流入および通過(through-passage)を完全に防いだ場合、これは胃内での経口摂取性送達系100の消化を防ぎ、腸管内での消化をさらに損ない得たか、遅延し得たかまたは防ぎ得た。しかしながら、経口摂取性送達系100は、示差的に透過性であるように意図され、胃内で実質的に無傷のままであるが、次いで腸内での十分な消化または十分な腸の流体の流入を許容することで、治療剤チャンバー102の内容物は、胃の遠位の選択された位置で経口摂取性送達系100から放出され得る。
【0046】
そのため、酸抵抗性シェルは、胃の流体(すなわち胃内で産生される液体分泌物)または腸の流体(すなわち腸管内に存在する膵臓、肝臓または腸により産生される液体分泌物)のいずれにせよ、全ての流体の流入を可能にするように構築され得、これは、かかる流体が酸抵抗性シェルを通過することおよび治療剤チャンバー102の内容物にアクセスすることを構造的に可能にする。しかしながら、胃および小腸の両方における酸抵抗性シェルを通るこの無差別の流体の通過は、分散性酸障壁110により防がれる。分散性酸障壁110は、胃内で形成され、以下に詳細に記載されるように、胃の流体が、酸抵抗性シェル108へとおよび/またはそれを通って通過することを防ぐ。次いで、経口摂取性送達系100が腸内に通過する際に、分散性酸障壁110は分散し、腸の流体が、酸抵抗性シェル108へとおよびそれを通って通過することを可能にし、最終的に治療剤チャンバー102の内容物にアクセスし、任意に経口摂取性送達系100の残りの部分的または完全な破壊を生じる。
【0047】
この図に示される分散性酸障壁110は、酸抵抗性シェル108(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の表面上に配置されるが、分散性酸障壁110は、酸抵抗性シェル108内で、例えば酸抵抗性シェル108中の孔もしくはチャンネル内または酸抵抗性シェル108の下でも配置され得るかまたはその代わりに配置され得ることが理解される。分散性酸障壁についてのこれらの位置の特定のものを、図に示す。本明細書で使用する場合、用語「分散性酸障壁」は、胃酸の酸抵抗性シェル108へのおよび/またはそれを通る進入を防ぐ、流体または固体粒子(一体化されるかまたは単離されるかのいずれにせよ)から形成される物理的障害をいう。本明細書で使用する場合、「流体」と称される物質は、気相または液相の材料、すなわち適用されたせん断応力下で流れるかまたは変形する任意の物質を含む物体の状態にある。より一般的に使用する場合、用語「障壁」は、通過を遮断するかまたは移動もしくは動作を防ぐもしくは阻害する任意の物理的障害、例えば胃酸が治療剤チャンバー102に進入することを防ぐ/阻害するまたは酸が酸抵抗性シェル108の外部もしくは内部の面に接触することを防ぐ/阻害する物理的障害をいう。
【0048】
より詳細に、分散性酸障壁110は、酸抵抗性シェル108を、胃酸との接触(全体的または部分的)から保護するために、示されるように酸抵抗性シェル108(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の外側に配置され得るかまたは酸抵抗性シェル108内に配置され得るか(示さず)またはその両方である。酸抵抗性シェル108の表面上の分散性酸障壁110は、酸抵抗性シェル108内に配置される分散性酸障壁とは異なる物質を含み得ることおよび分散性酸障壁についてのこれらの異なる組成物が、単一の経口摂取性送達系100内で共存し得ることが理解される。本明細書で使用する場合、用語「分散性」、「分散する」などは、限定されることなく、障壁(気体、液体または固体のいずれにせよ)が、その物理的特性および/または完全性に影響するように、消散(dispelled)、分解、溶解、散乱、消散(dissipated)、破壊、化学的な変化をするか、またはそうでなければその元の位置から除去されるもしくはその元の位置において低減されるこれらのプロセスをいう。該用語は、障壁の構成成分(例えば酸障壁を形成するように胃内で産生されるCO2気体の泡)が、よりpHが中性の溶液例えば十二指腸内に見られるもの内で平衡になり、共役酸(例えば炭酸)を形成する場合に起こる、溶解のプロセスを含む。該用語はまた、障壁の構成成分(例えば油、ワックスまたは他の親水性流体または固体)が、十二指腸内で胆汁酸塩、リパーゼ等と遭遇する場合に起こる、乳化、可溶化、加水分解等のプロセスを含む。態様において、分散性酸障壁110は、一旦形成されると、下にある酸抵抗性シェル108を、胃酸とのさらなる接触から保護する、示されるような疎水性の外層を提供し得る。他の態様において、分散性酸障壁110は、酸抵抗性シェル108内に機械的障害を提供して、胃酸の、酸抵抗性シェル自体108への貫通を阻害し得る。
【0049】
分散性酸障壁110は、態様において、以下により詳細に記載されるように、酸抵抗性シェル108(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)内にまたはそれと連続して埋め込まれるかまたはそうでなければ配置される気体生成物質(示さず)の間の反応により形成され得る。本明細書で使用する場合、用語「気体生成物質」は、胃液中の酸と反応する場合に気体を生成する材料をいう。気体生成物質の例は、胃酸との接触時に、二酸化炭素気体を形成する固体の重炭酸塩粒子であるが、他の例は当業者に明らかである。二酸化炭素気体は、以下により詳細に記載されるように、酸抵抗性殻内および/またはその頂部で、胃酸のさらなる進入を防ぐように作用するが、胃と十二指腸の間のpHの差のために十二指腸内で分散性である分散性酸障壁110を形成し得る。
【0050】
この図および他の図に示されるように、分散性酸障壁110は、酸抵抗性シェル108(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の表面上に存在し得、酸抵抗性シェル108内の分散性酸障壁110の任意の伸長または始まりは示されないが;他の態様において(例えば図8~11に示されるもの)、分散性酸障壁110は、連続もしくは非連続的な障壁層を表面上に形成するように外側に伸長するかまたは酸抵抗性シェル108内に含まれたまま残るかまたはその両方のいずれかで、酸抵抗性シェル108内に形成される。さらに他の態様において、分散性酸障壁110は、酸抵抗性シェル108内でまたはそれに隣接して、胃酸との接触に応答して、酸抵抗性シェル108自体の中で流体の障害を形成する、別の層内に配置される物質から形成される。
【0051】
酸抵抗性シェル108(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)は、以下により詳細に記載されるように、二層の膜、一層の膜または多層の膜として形成され得る。一態様において、酸抵抗性シェル108は、酸抵抗性を付与する疎水性の層で形成される。これは、示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系104を形成するように、他の構成成分(別の層、一体化された層または治療剤区画102内に囲まれる/コーティングされる/封入される治療剤のいずれにせよ)と合わされ得る。例えば、酸抵抗性シェル108は、プロテアーゼ消化性である内部のタンパク質性の層(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の周囲に形成され得;この態様において、酸抵抗性シェル108は、分散性酸障壁110により遮断または保護される一連の孔またはチャンネルにより貫通され得るので、胃または十二指腸の流体は、分散性酸障壁110が分散される場合にこれらの孔またはチャンネルを通って通過し得、それによりその消化に影響するように、内部のタンパク質性の層へのアクセスが獲得される。別の態様において、酸抵抗性シェル108は、変動性の特性を有する単一の非対称な層として形成されるので、単一の層の外部面は、より疎水性の特性を有し、一方で内部面は、プロテアーゼ消化に感受性であるタンパク質性の構成成分の優占を有する。
【0052】
内部プロテアーゼ消化性層の周囲にあるかまたはそれを含む酸抵抗性シェル108のこれらの態様は、「酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜」と称され得る。本明細書で使用する場合、用語「酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜」は、別の層としてまたは一体化された層としてのいずれかで、プロテアーゼ消化性構成成分を構造的に含む酸抵抗性シェル108をいう。一緒になって単一の酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を形成する酸抵抗性シェル108およびプロテアーゼ消化性構成成分の存在は、示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系104内の酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜の機能と一致し、これら2つの特徴のそれぞれは、示差的な透過性の異なる因子を追加することが理解される。より詳細に、酸抵抗性シェルは、酸抵抗性を提供し、胃内での示差的に透過性のカプセル系104の消化を防ぐかまたは遅延し、一方でプロテアーゼ消化性構成成分は、十二指腸内で消化性である。プロテアーゼ消化性構成成分は、胃内でも消化性であるが、分散性酸障壁110(この図およびこれ以降の図に示される)は、胃の酵素がプロテアーゼ消化性構成成分に達することを防ぐ。したがって、酸抵抗性シェル108およびプロテアーゼ消化性構成成分を有する系は、示差的に透過性のカプセル系104を形成し、胃の流体および十二指腸の流体の経口摂取性送達系100への示差的な通過を許容する。本明細書で使用する場合、用語「酸抵抗性シェル」は、一体化された酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜の酸抵抗性の特徴を含み得るか、または酸抵抗性の層単独をいい得る。
【0053】
ある態様において、酸抵抗性シェル108または酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜は、構造的支持もしくは弾性(elastic resiliency)を提供するために、他の有利な特性を付与するための他の層、例えば埋め込まれた生分解性構造的支持体を含む例えば機械的強度または安定性を付加する層、または口および食道を通過する際に機械的保護を付与する胃内で消化される外部層、または酸抵抗性シェルの外側の面にわたり全体的もしくは部分的に配置されるメッシュ層を含む。
【0054】
図2は、図1に示されるような経口摂取性送達系200のセクション(section)を示し、ここで図2のセクションは、図1に示される線A-A'で取られる。図2に見られるように、示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系204は、治療剤区画202内に治療剤を囲む。以下により詳細に記載されるように、治療剤区画202は、他の被覆層ありまたはなしで、1つ以上の送達可能な治療剤(丸剤、顆粒剤、散剤、液体等)を含み得る。例えば、治療剤区画内の治療剤(1つまたは複数)は、ゼラチンなどのプロテアーゼ消化性層により、または医薬の分野でよく知られる他の保護もしくは遅延放出コーティングにより囲まれ得る。
【0055】
示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系204は、酸抵抗性シェル208(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)およびここで酸抵抗性シェル208の表面上に示される分散性酸障壁210を含む。図2に示されるように、酸抵抗性シェル208は、単層として形成され得るが、上記のように、酸抵抗性シェルの他の配置が構想され得、これは酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を形成するためのプロテアーゼ消化性構成成分を含み得る。示されるように、酸抵抗性シェル208は、層にくまなく配置される孔の系212により貫通され、特定の孔は、内部に開いて治療剤区画202と流体連絡し、他の孔は、外部に開いて分散性酸障壁210と流体連絡する。孔の系212は、孔の系212が、酸抵抗性シェル208の外部の面と治療剤区画202の間で流体連絡を提供するように相互に連結する。態様において、孔は、格子または網目構造系において酸抵抗性シェル208内に配置され、孔チャンネルは、膜自体の内部で交差する。より詳細に、酸抵抗性シェル208を貫通する孔の系212は、直線、曲線状、蛇行状、分離、交差または酸抵抗性シェル208を通るアクセスを提供して、治療剤区画202への最終的なアクセスを提供する任意の構成であり得る。態様において、孔は、より蛇行状ではなく、より直線であり得、酸抵抗性シェル208の外部の面から治療剤区画202へのより直接的な通過を可能にする。(この図には示されない)他の態様において、孔は、非交差であり得、例えば連絡を取り合うことのない単一のチャンネルの複数として配置される。態様において、孔の系212内の孔は、ミクロンスケールの進入直径、例えば約10ミクロンまたは約1~約10ミクロンまたは約100nm~約10ミクロンの進入直径を有するような寸法であるが、他の孔サイズ、形状および構成が設計され得る。図2は、内容物、外部に配置された分散性酸障壁210により偏向される入口を有さない孔の系212を示すが、孔自体が、流体または固体のいずれにせよ分散性酸障壁物質(示さず)のいくつかの形態を含み得、その存在が、酸抵抗性シェル208の表面に配置される分散性酸障壁210を補い得るかまたは置き換え得ることが理解される。孔内の分散性酸障壁物質は、酸抵抗性シェル208の表面上に形成される分散性酸障壁210と同じであり得るかまたは異なり得る。
【0056】
ある態様において、酸抵抗性シェル208(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)は、一様にまたは均質に形成され得、その中で孔212は分散される。他の態様において、酸抵抗性シェル208は、不連続の酸抵抗性の粒子、液滴、線維等の混合により形成され得、これは、周囲の環境からの流体の流入を防ぐかまたは妨げる障壁層を形成するように互いに十分に近位にまたは並列して配置される。
【0057】
図3は、その摂取後および胃内での一定期間の滞留後の経口摂取性送達系300の態様を示す。酸抵抗性シェル308および分散性酸障壁310(ここでは酸抵抗性シェル308の表面上に示される)を含む示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系304は、その中に1つ以上の治療剤306が配置される治療剤区画302を囲む。
【0058】
より詳細に、酸抵抗性シェル308(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)は、胃酸の加水分解活性に抵抗性の任意の材料で形成され得る外部酸抵抗性層を提供する。一態様において、ミツロウ、ダイズワックス、カルナウバワックス等のロウ状物質は、外部酸抵抗性層についての基材物質として使用され得る。本明細書で使用する場合、用語「ワックス」は、典型的に約40℃より高い融点を有する周囲温度の近くで脂質親和性かつ展性の固体である任意の炭化水素をいう。例として、ワックスは、1分子当たり典型的に20~40の炭素原子を有する長鎖脂肪族炭化水素または1分子当たり典型的に12~32の炭素原子を含む脂肪酸/アルコールエステル、例えばミツロウおよびカルナウバワックス中に見られるセロチン酸ミリシル(myricyl cerotate)を含み得る。
【0059】
治療剤(1つまたは複数)306は、固体、半固体、液体、ゲルまたはそれらのいくつかの組合せとして製剤化され得る。この図に示されるように、治療剤306は、治療剤区画302に囲まれ、ここで治療剤区画302は、治療剤306を覆う壁またはさらなる層で形成され得る。態様において、治療剤306は、壁で囲われた治療剤区画302内に存在し得、ここで壁は、いくつかの方法において経口摂取性送達系300からの治療剤306の送達を改変することを意図する。治療剤区画302の壁は、治療剤306の放出の改変を提供するまたは機械的保護を提供するまたは酸抵抗性シェル308を貫通し得るプロテアーゼに対するさらなる抵抗性を提供するように設計され得る。他の態様において、治療剤区画302は、さらなる囲み層を有さない、中に治療剤306が存在する中空である。態様において、治療剤306は、別の覆い層なしで、治療剤区画302内に存在し得る。
【0060】
態様において、1つ以上の治療剤306は、治療剤区画302内に存在し得、それぞれはそれ自体の覆い層を有し;送達可能な治療剤が複数の治療剤を含む場合は、治療剤の2つ以上を囲むような別々の覆い層が提供され得る。単一または複数の治療剤は治療剤区画302内に存在し得、全体で送達可能な治療剤を含む。本明細書で使用する場合、用語「送達可能な治療剤」は、治療剤区画302の全内容物をいい、これは、別々にパッケージ化される複数の治療剤または治療剤および支持環境または別々の単位としての1つ以上の治療剤306のための剤型の他の変形を含み得る。態様において、治療剤区画302内のそれぞれの治療剤306は、それ自体の覆い層の系を有して、例えば経口摂取性送達系300からのその放出後に機械的安定性を提供し得るか、またはその放出特性を改変し得るか、またはその取込みもしくはその治療効果を高め得る。かかる態様において、例えば覆い層の系によりこのように製剤化される治療剤306は、治療剤区画302に無傷で挿入され得、それ自体の製剤化によりその放出プロフィールが提供されるので、治療剤306の放出を最適化するために、経口摂取性送達系の特別な改変は必要ない。かかる情況において、その適切な放出改変製剤を有する治療剤306は、空の治療剤区画302に挿入され得、すなわち治療剤区画302は、特殊な壁または酸抵抗性シェル308およびその構成成分から離れる他の覆いを有さず、任意に内部プロテアーゼ消化性層314を含む中空として形成される。酸抵抗性シェルおよび内部プロテアーゼ消化性構成成分を組み合わせることにより形成される膜は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜と称され得、これは示される態様において示される酸抵抗性シェル308および内部プロテアーゼ消化性層314を含む。代替的にまたは付加的に、適切な放出改変製剤を有する治療剤306は、酸抵抗性シェル308によりまたはその中にコーティングされ得、覆われ得またはそうでなければ包まれ得、コーティング、覆いまたは包み込みは、これらのプロセスが酸抵抗性シェル308を治療剤306または送達可能な治療剤の周囲に配置する場合、事実上治療剤区画302を形成する。態様において、治療剤306は、固体、液体またはゲルであり得、任意にゼラチンカプセルなどのプロテアーゼ消化性層314内に包まれ得る。示される態様において、プロテアーゼ消化性層314は、治療剤区画302の外壁として働く。他の態様において、プロテアーゼ消化性層314は存在しない。図3に示される態様において、示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系304の酸抵抗性シェル308は、任意の内部プロテアーゼ消化性層314を囲い得、2つの層は一緒になって酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を形成する。態様において、外部の酸抵抗性シェル308は、胃酸の効果に対して不感受性であるかまたは最小に感受性であるのみであり、一方で他の態様において、外部の酸抵抗性シェル308は、任意のプロテアーゼ消化性層314と比較して、胃酸の効果に対して比較的感受性が低い。示される態様において、外部の酸抵抗性シェル308は、層308中に配置される孔の系312により貫通され、特定の孔は、分散性酸障壁310と接触する酸抵抗性シェル308の外部の面上で開いて、特定の孔は、酸抵抗性シェル308の内部の面に対して開いてプロテアーゼ消化性層314と接触する。図3に示されるように、孔の系312は、酸抵抗性シェル308のみを貫通し、孔のいくつかまたは全ては酸抵抗性シェル308の外部の面およびプロテアーゼ消化性層314とも連絡する。態様において、孔は、格子または網目構造の系内の酸抵抗性シェル308内に配置され、孔チャンネルは、酸抵抗性シェル308内で互いに交差する。より詳細に、酸抵抗性シェル308を貫通する孔の系312は、直線、曲線、蛇行状、分離、交差または酸抵抗性シェル308を通るアクセスを提供する任意の構成であり得、孔のいくつかまたは全ては、内部プロテアーゼ消化性層314上に隣接する。(この図には示さない)他の態様において、孔は、非交差であり得、例えば連絡を取り合うことなく、単一のチャンネルの複数として配置される。態様において、孔の系312内の孔は、ミクロンスケールの進入直径、例えば約10ミクロンまたは約1~約10ミクロンの進入直径を有する寸法である。
【0061】
以前に記載されるように、態様において、酸抵抗性シェル308の表面上の分散性酸障壁310は、胃酸の孔の系内への進入を防ぎ得;他の態様において、孔は、流体または固体のいずれにせよ、分散性酸障壁物質(示さず)を含み得、これは胃酸の進入を防ぎ、酸抵抗性シェル308(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の表面上に配置される分散性酸障壁310を置き換え得るかまたは補助し得る。孔内の分散性酸障壁物質は、酸抵抗性シェル308の表面上に形成される分散性酸障壁310と同じであり得るかまたは異なり得ることが理解される。
【0062】
図3に示されるように、酸抵抗性シェル308(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)は、不規則な表面を有する。理論に限定されることなく、膜表面の不規則性は、表面張力の現象を利用し、流体(すなわち気体または液体)または固体粒子の表面への接着を向上させて、それにより分散性酸障壁をより強壮にし得ることが理解される。分散性酸障壁310はこの図において、酸抵抗性シェル308の表面にわたり連続性を有するように示されるが、分散性酸障壁310は、任意の配置で不連続でもあり得、例えば酸抵抗性シェル308内の溝もしくは陥凹のみに存在するか、または酸抵抗性シェル308の外部面内への孔の開口の周囲の領域に存在するか、または胃液が酸抵抗性シェル308と接触することを防ぐその機能を高める任意の他の構成において存在する。以前に記載されるように、分散性酸障壁310は、酸抵抗性シェル308の表面上のみに示されるが、分散性酸障壁はまた、その後の図に示されるように、孔の系312内に形成され得、保持され得る。
【0063】
以前に記載されるように、経口摂取性送達系300は、摂取後に胃内に存在するようになり、そこで胃液内の酸および酵素と遭遇する。経口摂取性送達系300が胃に進入する場合、これは、本明細書中および以下に記載されるように送達系の特徴と相互作用する胃酸に覆われる。胃酸との遭遇の結果として、図3に示される系は、その表面上で分散性酸障壁310を形成する。態様において、経口摂取性送達系300は、その摂取前に酸の環境と遭遇し得、それが胃酸にどのように応答するかと同様に応答する。酸との遭遇後に分散性酸障壁310が形成される態様において、経口摂取性送達系300は、胃に到達する前に酸により予め処理されて、分散性酸障壁310の形成を高め得る。例えば、経口摂取性送達系300は、摂取のために酸環境内に提供され得るか、または酸性の液体、ゲルもしくは固体と共に嚥下され得る。これらの条件下、酸でのかかる前処理は、経口摂取性送達系が胃に到達する前およびその後の両方で、分散性酸障壁を作製するための機構を開始する。胃に到達する前に経口摂取性送達系300が酸に暴露された場合、胃酸とのさらなる接触は、分散性酸障壁310を作製するプロセスを継続し得ることが理解される。
【0064】
経口摂取性送達系が胃酸または他の酸と相互作用する特定の機構は、図4、5および6に概略的に、より詳細に図示される。
【0065】
図4に示されるように、経口摂取性送達系400は、摂取の前、摂取の間またはそれが胃に進入する際のいずれにせよ、酸および胃の酵素を含む胃の流体416に暴露される。以前に記載され、図1および2に図示されるように、経口摂取性送達系400は、治療剤区画402の周囲に酸抵抗性シェル408(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)を含む。態様において、酸抵抗性シェル408の表面は、胃内で迅速に侵食される可溶性または消化性のコーティング(示さず)、例えばゼラチン、多糖またはいくつかの他の消化性バイオポリマーで作製されるコーティングで被覆され得る。かかるコーティングは、その保存、取扱いおよび経口摂取の間に経口摂取性送達系400に、機械的保護を提供し得る。他の態様において、コーティングは、細長い要素または線維のメッシュまたは網目構造として形成され得、構造的安定性、耐久性または弾性を提供し得る。態様において、コーティングは、胃内でコーティングが腐食、損傷または破壊されるまで、下にある構成成分を保護し得る。例えば、気体生成物質は、コーティングの下および酸抵抗性シェルの頂部に配置され得るので、コーティングが劣化する際に胃酸と反応し、それにより酸抵抗性シェル408の外部面を保護する気体の層(示さず)を形成する。
【0066】
態様において、剤は、酸抵抗性シェル408(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)またはそれに適用される任意に完全もしくは部分的な覆いに添加されて、胃内の機械的応力に関わらずその強度または弾性を高め得る。例えば、酸抵抗性シェル408の強度または弾性は、以下により詳細に記載されるように、ポリイソブチレンまたは他の同等の薬剤などの物質を、この層を形成するために使用されるマトリックスに添加することにより向上され得る。他の態様において、ここで単層として示される酸抵抗性シェル408は、例えば図3に記載されるように複数の層で構築され得るか、または他の層と組み合され得、そこで外部酸抵抗性層は、内部プロテアーゼ消化性層を覆い、単一の酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を形成する。
【0067】
示される態様に示されるように、酸抵抗性シェル408(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)は、そのマトリックス内に、酸抵抗性シェル408の外部面に進入し、そのマトリックスにくまなく拡散する、網目構造の交差する孔の系412を有する。態様において、酸抵抗性シェル408は、気体生成物質の堆積物と共にかん流され得、気体生成物質と胃酸の接触は、外部酸抵抗性層内で気体生成物質から気体を放出させる。
【0068】
示される態様において、孔412自体は、孔の全網目構造の至る所で障壁形成物質422によって完全には塞がれない。そのため、酸416(例えば胃液内)が最初に、酸抵抗性シェル408の外表面を貫通する孔412と遭遇する場合(すなわち任意の分散性酸障壁の形成前)、酸416は、孔に進入し得、孔を通って拡散し得、孔内に分散される障壁形成物質の堆積物422aおよび任意に酸抵抗性シェル408のマトリックス内に分散される障壁形成物質の堆積物422bと遭遇する。これらの堆積物422aおよび/または422bは、胃の流体416内の胃酸と遭遇する際に、胃の流体内の酸および/または酵素と反応し、以前の図に示される酸障壁層を作製する。態様において、障壁形成物質422aおよび/または422bは、孔412およびマトリックスのより表面上の面において優先的に配置され得るので、孔412に進入する任意の胃酸は、かなり迅速に障壁形成物質422aおよび/または422bに遭遇し、気体を形成してそれが胃酸のさらなる進入を防ぎ、それにより胃の流体416の効果から、下にある治療剤を保護する。
【0069】
態様において、障壁形成物質422aおよび422bは、胃内の塩酸との接触時に気体を産生または放出する気体形成物質であり得る。例として、障壁形成物質422aおよび/または422bは、胃の流体416内の胃酸との接触後に二酸化炭素を形成する重炭酸塩結晶を含み得、二酸化炭素は、孔412に進入し、任意に酸抵抗性シェル408(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の表面上に存在するようになり、ここで二酸化炭素の存在は、分散性酸障壁として作用し、その表面をコーティングすること、酸抵抗性シェル408内の孔もしくは他のチャンネルを遮断することまたはその両方のいずれかにより、酸抵抗性シェル408の胃の流体へのさらなる暴露を機械的に防止する。かかる障壁形成物質は、それらの塩酸との遭遇が気体を形成する場合に、本明細書において「気体形成物質」と称される。例として、炭酸塩含有物質、限定されないが、炭酸カルシウム(例えば沈降炭酸カルシウム(PCC))、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム等)等の金属炭酸塩などは、マグネシウム粒子などの水素形成体と同様に、塩酸との遭遇時に二酸化炭素を形成するので、気体形成物質である。
【0070】
障壁形成物質は、図において示されるように、孔422a内で濃縮され得るかもしくはマトリックス422b内で分散され得るかまたはその両方であり得る。例えば、障壁形成物質はまた、障壁形成物質が含まれる422aの代わりにまたはそれに加えて、酸抵抗性シェル408を通って堆積物422b内に無作為に散乱され得る。したがって、障壁形成物質は、それが孔に進入するかもしくは酸抵抗性シェル408(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)に侵入するかまたはその両方の際に、胃の流体416内の胃酸と接触する。胃の流体416に含まれる胃酸と障壁形成物質の接触により形成される分散性酸障壁408は、障壁形成物質がマトリックス422b内に配置される場合にマトリックスから孔に進入し得るか、または分散性酸障壁は、障壁形成物質が孔内の422aに含まれる場合に孔内で形成され得る。
【0071】
態様において、さらなる障壁形成物質は、経口摂取性送達系400の他の構成成分内、例えば酸抵抗性シェル(示さず)の2つ以上の層の間もしくは酸抵抗性シェル408の下に添加される気体産生層(示さず)内、または治療剤区画402内に含まれる別個の堆積物として、または治療剤もしくは送達可能な治療剤自体内に分散され得る。種々の位置、例えば孔412内の堆積物422a内およびマトリックス内の堆積物422b内のまたは経口摂取性送達系400の他の構成成分内に分散される障壁形成物質は、異なる物質または製剤を含み得ることが理解される。
【0072】
この図において、酸抵抗性シェル408(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)は、酸抵抗性シェル408にくまなく分散される障壁形成物質の複数の堆積物422aおよび422bを含む。堆積物422aのいくつかは、孔内に存在するかまたは孔の系内の孔に部分的に接触し、一方で他の堆積物422bは、孔と接触することなく酸抵抗性シェル408の物質内に包まれる。特定の態様において、孔の系412内の孔は、中空であるように構築され、障壁形成物質の堆積物422aは、その中に存在するかまたはそうでなければ、中空孔に侵入する胃液416にアクセス可能である。(図には示さない)さらに他の態様において、孔の系412のいくつかまたは全ては、ペーストまたは油、例えば食用油を含み得、その中に堆積物422aが分散され得る。かかる油は、孔内で油を保持するように作り変えられる粘度を有し得、油は、酸化、加水分解およびその耐久性および保存寿命に影響し得る他の有害なプロセスに抵抗するように選択され得る。例えば、不飽和の油または油配合物が選択され得る。孔の系412を、ペーストまたは油で充填することは、酸抵抗性シェル408にさらなる保護を与えて、胃からの液体の進入を防ぎ得、そのために胃酸および酵素が、その中から膜408に遭遇することを防ぎ得る。他の態様において、孔についての構成は、酸抵抗性シェルが形成されて治療剤区画上または治療剤自体の上に配置される際に、酸抵抗性シェル408にくまなく散乱される消化性材料によりパターン化され得る。酸抵抗性シェル408を形成するための同じプロセスの一部として、障壁形成物質は、ランダムなパターンでマトリックスにくまなく散乱され得るか、またはそれらは、マトリックス内および/または孔内に分散される線維(示さず)に取り付けられ得る。態様において、線維は、消化性または加水分解性であるので、それらが消化または加水分解される場合、酸性環境の酸416は、障壁形成物質と接触するようになり、それにより、障壁形成物質は、線維の消化後に後に残る経口摂取性送達系または孔を充填する流体を産生するように活性化される。障壁形成物質により産生される流体のいくつかは、孔を通過し得、分散性酸障壁(示さず)として酸抵抗性シェル408の表面上に存在するようになる。このように形成される分散性酸障壁(外部流体層および孔を充填する流体を含む)は、さらなる酸416が酸抵抗性シェル408に再度進入してその消化に影響を及ぼすことを防ぐ。
【0073】
図4に示されるように、障壁形成物質422aおよび422bは、胃の流体416中の任意の酸と依然として接触しておらず、したがって酸抵抗性シェル408を貫通および被覆する分散性酸障壁になる任意の流体は、依然として形成されていない。系およびその活性化の機構を図4に関してより詳細に記載することにより:最初に、胃の流体416内の酸が孔の系412に進入し(例えば胃内で、塩酸が、孔内および/または酸抵抗性シェル408のマトリックス内の障壁形成物質と接触するようになる);次いで、酸との接触後、堆積物422aは、孔内および表面上で分散性酸障壁を形成する流体を形成し;分散性酸障壁の表面構成成分はすでに図1、2、3および5に示されているが、図4には示されない。
【0074】
図4は、実質的にサイズが同様である複数の堆積物422aおよび422bを示すが、堆積物422aおよび422bのサイズは、同様であり得るかまたは変化し得ること、および堆積物は、酸抵抗性シェル408(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)のマトリックスにくまなくおよび孔の系412の孔内に規則的にまたは無作為的に分散され得ることが理解される。特定の堆積物422bが全体的に、酸抵抗性シェル408のマトリックス内に包まれる場合に、液体輸送を可能にする多孔性線維または他の媒体は、孔と接触しながらマトリックス内に埋め込まれ得、それにより酸が孔に進入して、酸抵抗性シェル408のマトリックスおよびその内に運ばれるので、かかる酸はマトリックスに埋め込まれる堆積物422bと接触し;酸と堆積物422bの接触により産生される流体は、マトリックスから排出され、チャンネルを通って孔または以前は多孔質線維もしくは他の媒体で占有された経口摂取性送達系に進入し得る。障壁形成物質と胃酸の間のこの反応は、孔の系412を横切る流体(示さず)の産生をもたらし、流体は、いくつかの場合において孔を全体的に遮断し、表面張力の力により孔内に残存させ、他の場合において孔の系から排出され、酸抵抗性シェル408の表面上に堆積されるようになる。流体のこれらの泡または液滴は、酸抵抗性シェル408の表面上に一体化して、他の図に示されるように表面上で分散性酸障壁を形成し得る。分散性酸障壁層は以前の図において連続またはほぼ連続に示されているが、分散性酸障壁(すなわち流体充填孔)を形成する泡または液滴(別々または合流のいずれにせよ)は、領域的に分離され得、それらの障壁効果を生じることが理解される。例えば、泡または液滴(別々または合流のいずれにせよ)は、孔の開口部に局在化され得、酸抵抗性シェル408の残りの表面上に拡散することなく、孔上の「キャップ」として働く。または例えば、流体の泡または液滴(別々または合流のいずれにせよ)はまたもしくは代替的に、酸抵抗性シェル408の表面上の溝またはそのでこぼこ内に存在し得、表面張力によりそれらの付着を保持する。膜表面上および/または孔内の流体の泡または液滴(別々または合流のいずれにせよ)の他の配置は、分散性酸障壁の役割、すなわち胃内で酸抵抗性シェル408を保護する機械的障害を提供し、一方、十二指腸内で分散させて、十二指腸の酵素を膜にアクセスさせて膜を溶解させることと一致するように構想され得る。
【0075】
酸抵抗性シェル408(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の改変は、その表面上の液滴または泡(別々または合流のいずれにせよ)の付着または局在化を高めるようになされ得る。例えば、酸抵抗性シェル408のマトリックス内に含まれる線維は、その表面から突出して液滴または泡(別々または合流のいずれにせよ)を特定の領域の表面上にトラップするように、およびそれらの付着を向上させるように配置され得る。かかる線維(示さず)は、規則的なパターンでマトリックスを通して散乱され得るかまたは示差的に配置され得るので、それらは酸抵抗性シェル408の外部面上に優先的に配置される。他の態様において、液滴または泡(別々または合流のいずれにせよ)をトラップまたは保持するように機能する線維は、それらがマトリックス内に埋め込まれることなく、酸抵抗性シェル408の外表面上に別々に付着もしくは配置され得るか、またはそれらは、孔の系412の開口部の周囲で濃縮され得る。態様において、障壁形成物質は、酸抵抗性シェル408の表面上またはその表面部分に配置され得、膜表面上での分散性酸障壁の産生を促進する。
【0076】
図5は、経口摂取性送達系が酸含有流体516(例えば酸および胃の酵素を含む胃の流体)に暴露された場合の経口摂取性送達系500の断面の別の態様を示す。示される態様において、酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)508は治療剤区画502の周囲にある。酸抵抗性シェル508は、非連続的に形成され得、酸抵抗性材料518の島または液滴または塊は、互いの頂部に配置され、固められた層を形成する。例えば、固められた層が噴霧により形成される場合、酸抵抗性材料518の島または液滴または塊、例えば懸濁物中の噴霧された粒状物質は、互いの頂部におよび互いに隣接して、液体、固体またはゲルの不連続な塊として配置されて、酸抵抗性シェル508の実質的に固体の層を形成し得る。チャンネル、中空または孔512は、噴霧された材料518が層状になるかまたはそうでなければ完全に一体化することなく互いに接触するように配置される場合、配置プロセスの間に形成される。これらのチャンネル、中空または孔512は、酸抵抗性シェル508を完全に貫通して、潜在的に外部の酸含有流体516を治療剤区画502に到達させ得る。
【0077】
示される態様において、内部腐食性層514、例えば酸消化性またはプロテアーゼ消化性材料の層は、酸抵抗性シェル508と治療剤区画502の間に挿入される。態様において、酸抵抗性シェル508と内部腐食性層514の組合せは、内部腐食性層がプロテアーゼ消化性である場合に酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を形成する。本明細書で使用する場合、「腐食性層」は、胃または腸管内の物理的または化学的条件への暴露の際に劣化する経口摂取性送達系の構造的構成成分として含まれる任意の層、例えばプロテアーゼ消化性層、酸加水分解性層または胃もしくは腸管内の物理的もしくは化学的条件により消化もしくはそうでなければ破壊もしくは損傷され得る任意の他の材料をいう。
【0078】
この図に示されるように、複数の障壁形成物質522、例えば気体形成物質は、この層514に埋め込まれる。これらの障壁形成物質522は、それらが、酸抵抗性シェル508(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)を通って漏れる酸または酸含有流体516由来の気体に遭遇する場合に放出または活性化され得る。例えば、重炭酸塩結晶が障壁形成物質として腐食性層514内に配置される場合、胃酸との遭遇の際にそれらは二酸化炭素気体に変換され得、そのように形成された二酸化炭素は、以下のように分散性酸障壁を作製し得る。上述のように、酸含有流体516は、完全に合流になることなく、噴霧されているかまたはそうでなければ互いの頂部に配置されている液滴518の間の隙間として酸抵抗性シェル508内に存在するチャンネル、中空または孔512を貫通することにより内部腐食性層514にアクセスし得る。腐食性層514内で障壁形成物質522(例えば重炭酸塩結晶)の堆積物から放出される二酸化炭素気体(示さず)は、次いで膨脹してチャンネル、中空または孔512を(部分的または完全に)充填し得、酸含有流体516のさらなる進入を防ぐように十分にそれらを充填する。
【0079】
図5は、内部腐食性層514を示し、障壁形成物質522が内部腐食性層により実質的に囲まれるが、別個の内部腐食性層514を最小化するかまたは排除する障壁形成物質522の他の配置が構想され得る。例えば、内部腐食性層514は、障壁形成物質522が、その中に埋め込まれるのではなく(その上またはその下)に付着した薄層であり得る。他の態様(示さず)において、腐食性層514は、任意のレベルで酸抵抗性シェル508内に配置され得、それらの酸含有流体516との遭遇の際に、酸抵抗性シェル508内で放出され得る障壁形成物質を含み得る。内部腐食性層514は、網目構造またはメッシュであり、障壁形成物質522は、それに付着されるかまたは、かかる網目構造もしくはメッシュの隙間内に配置され得る。内部腐食性層514の非存在下、障壁形成物質522は、治療剤区画502に一体化され得、例えば送達可能な治療剤の周囲にコーティングを形成するかまたは、送達可能な治療剤自体の周囲の液体もしくは固体として、治療剤区画502に囲まれる。これらの情況において、同じ機構が含まれ、外部の酸含有流体516は、酸抵抗性シェル508内の隙間512を通って漏れ、障壁形成物質522にアクセスする。しかしながら、かかる態様において、酸含有流体は、治療剤区画自体を貫通し、ここで酸は、その中に含まれる障壁形成物質を活性化する。
【0080】
他の態様において、図6に示されるように、障壁形成物質622(概略的に示し、一定の縮尺でない)は、示されるような隙間612中または酸抵抗性材料618の島もしくは液滴もしくは塊の網目構造もしくはメッシュ内(示さず)のいずれかで、酸抵抗性シェル608(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)のマトリックス内に配置され得る。図6において、腐食性層614は、障壁形成物質を何ら含まないが、代わりに、単純に酸抵抗性シェル608の下および治療剤区画602の頂部に配置される。態様において、酸抵抗性シェル608および内部腐食性層614の組合せは、内部腐食性層がプロテアーゼ消化性である場合に酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を形成する。腐食性層614も省略され得、酸抵抗性シェル608内の障壁形成物質622は、酸含有流体616の進入に対して十分な障壁保護を提供し、治療剤区画602内の送達可能な治療剤を保護する。
【0081】
態様において、経口摂取性送達系は、例えば図5および6ならびにその後の図に示されるように、胃内で迅速に腐食される可溶性または消化性のコーティング(示さず)、例えばゼラチン、多糖またはいくつかの他の消化性バイオポリマーで作製されるコーティングで被覆され得る。かかるコーティングは、その保存、取扱いおよび経口摂取の間に、経口摂取性送達系に対して機械的保護を提供し得る。態様において、コーティングは、コーティングが胃内で腐食、損傷または破壊されるまで、下にある構成成分を保護し得る。例えば、気体生成物質は、コーティングの下または酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の頂部に配置され得るので、それらは、コーティングが劣化する際に胃酸と反応し得、それにより酸抵抗性シェル608の外部の面を保護する気体の層(示さず)を形成する。
【0082】
他の態様において、コーティングは、細長い要素または線維のメッシュまたは網目構造として形成され得、構造的安定性、耐久性または弾性を提供し得る。態様において、薬剤は、酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)またはそれに適用される任意の完全もしくは部分的な覆いに添加され得、胃内の機械的応力に関わらずその強度または弾性を高める。例えば、酸抵抗性シェルの強度または弾性は、以下により詳細に記載されるように、ポリイソブチレンまたは他の同等の薬剤などの物質を、この層を形成するために使用されるマトリックスに添加することにより向上され得る。他の態様において、図4、5および6に単層として示される酸抵抗性シェルは、複数の層と共に構築されるかまたは他の層と組み合されて、有利な特性を提供し得る。酸抵抗性シェルの作製のための他の選択肢は、以下により詳細に記載される。
【0083】
2. 一般的な経口摂取性送達系:十二指腸への通過
以前に記載されるように、経口摂取性送達系が酸性環境に遭遇する場合、例えばそれが胃に進入する場合に形成される分散性酸障壁は、下にある酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)を胃酸および酵素の作用から保護する。分散性酸障壁は、内部、外部またはその両方のいずれにせよ、酸抵抗性シェルを、酸およびプロテアーゼの両方から切り離すように機械的に作用する。したがって、経口摂取性送達系は、胃を通過し得、治療剤は、その低いpHおよび豊富な消化酵素を有する胃の環境にもかかわらず、治療剤区画内で実質的に無傷である。
【0084】
しかしながら、経口摂取性送達系は、治療剤を放出するように作り変えられ、治療剤は胃の通過後に治療効果を有し得る。胃および十二指腸内の条件に対するこの示差的な感受性は、示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系を含むようにOIDSを特徴付ける。この選択性により、治療剤が比較的無傷でOIDSが胃を生き延び、次いで治療剤を十二指腸内または胃腸系内の他の場所で放出することを可能にする。
【0085】
治療剤の放出の第1の工程は、十二指腸内での分散性酸障壁の分散である。分散性酸障壁は、上記のように胃内で生成される気体、例えば二酸化炭素であり得る。二酸化炭素が、十二指腸により膵臓内で放出される重炭酸塩と遭遇する場合、これは分散され、これが提供する機械的保護は消失する。外部の分散性酸障壁(もしあれば)の分散に伴い、酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の外部および/または内部の面は、十二指腸の酵素に直接暴露される。内部の分散性酸障壁の分散に伴い、これらの酵素は、示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系の酸抵抗性シェルを貫通する孔に進入し得る。単層の示差的に透過性のカプセル系について、十二指腸酵素の進入は、孔内からの膜の消化を可能にする。例えば酸抵抗性シェルおよびプロテアーゼ消化性構成成分(それにより酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を形成する)または別の形態の腐食性内部層を含む二重層または多層の示差的に透過性のカプセル系について、十二指腸酵素の進入は、孔内で実行されるそれらの消化性活性に加えて、これらの薬剤が腐食性内部層に到達して、これを消化することを可能にする。例えば外部酸抵抗性層および内部腐食性層を有する多層の示差的に透過性のカプセル系について、内部腐食性層の消化およびその後の崩壊は、構造支持体の外部酸抵抗性層を奪い得、それを劣化させる。外部酸抵抗性層の劣化に伴い、十二指腸酵素と腐食性層の間の接触の増加があり得るので、この層の消化は加速され得る。
【0086】
空間占有流体または固体により形成される分散性酸障壁は、経口摂取性送達系が胃を通って十二指腸に通過する際に類似してふるまう。上記のように、分散性酸障壁を提供するかまたはそれに寄与する空間占有流体または固体が選択されるので、これは胃酸に対して抵抗性であるが、十二指腸内では分散性(例えば溶解性)である。例として、空間占有流体として選択される無極性油は、胃酸により変化を受け得ず、それが元のように配置された場合に、経口摂取性送達系の孔内に残る。しかしながらデバイスが十二指腸に進入する場合、胆汁酸塩およびリパーゼは、無極性の油を分散(ここでは乳化または消化)させるので、これはデバイスの孔から除去され、それによりそれらを、十二指腸プロテアーゼの進入に対して開放させ、デバイスを十分に破壊し得、その中の治療剤を放出させる。別の例として、空間占有固体は、孔内に配置され得るので、これらの固体は、胃酸により影響を受けないか、または固体、液体もしくは気体のいずれにせよ、他の空間占有体を形成することにより、それらは胃酸に応答し得る。空間占有固体自体は、十二指腸流体に反応して、分散され得る(二酸化炭素気体が、十二指腸内の重炭酸塩とのその反応後に気体または流体のいずれかとして分散されることが見られるように)か、または胃内で形成される固体の反応生成物は、十二指腸の流体の作用に対して感受性であり得、それらの分散をもたらす。空間占有気体と同様に、空間占有流体または固体により、腸内の分散は、十二指腸から経口摂取性送達系の孔への消化性流体の進入を可能にし;このアクセスにより、プロテアーゼなどの消化性流体が、経口摂取性送達系の酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)に対してさらに作用して、治療剤が放出されるように十分にそれを破壊することが可能になる。
【0087】
より詳細に、消化性酵素は、胃だけでなく膵臓においても産生され、膵臓によりその酵素は、膵管を介して十二指腸に送達される。胃内で産生される主要な酵素はペプシンであり、これは食物中のタンパク質の分解の開始の原因である。ペプシンは、胃酸による前駆体ペプシノーゲンの切断により形成される。胃は、胃内容物中の脂質の加水分解を開始するリパーゼも産生し、その後この材料は十二指腸へと通過する。上記のように、経口摂取性送達系の表面上および/または孔内で形成される分散性酸障壁は、これらの酵素の全ての作用から、下にある酸抵抗性シェルを保護する。
【0088】
一旦経口摂取性送達系が十二指腸に進入すると、これは異なる環境に遭遇する。膵臓は、重炭酸塩を十二指腸に送達し、十二指腸は胃のキームス(chyme)の酸性pHを中和する。膵臓はまた、プロテアーゼ前駆体を十二指腸に送達し、ここでそれらは、活性化されてプロテアーゼトリプシンおよびキモトリプシンを形成する。他の膵臓酵素としては、カルボキシペプチダーゼ、膵臓リパーゼ、ホスホリパーゼ、ステロールエステラーゼならびにいくつかのエラスターゼおよびヌクレアーゼが挙げられる。酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)自体は、胃酸などの酸の作用に抵抗するように設計されるが、これは腐食性であるようにも設計される。経口摂取性送達系は、十二指腸環境に遭遇する場合にその分散性酸障壁を失う。例えば、分散性酸障壁が胃内で二酸化炭素を発生する重炭酸塩固体などの気体生成物質で形成されている場合、この気体(例えば二酸化炭素)は、胃内にある間に機械的保護を提供する。しかしながら、十二指腸内で、二酸化炭素は十二指腸内の重炭酸塩により除去され、それにより低pH胃環境内にある間に二酸化炭素が提供する機械的保護を分散させる。この点で、酸抵抗性シェルは、十二指腸内の種々の酵素、特にプロテアーゼの作用に暴露される。プロテアーゼは、酸抵抗性シェルを損傷し得るかおよび/またはそれらは、酸抵抗性シェルを貫通して、治療剤(1つまたは複数)の周囲の経口摂取性送達系の内部の層を攻撃し得る。
【0089】
同様に、分散性酸障壁が、胃の流体の活性に対し抵抗性である空間占有流体または固体により形成されている場合、経口摂取性送達系は、比較的無傷に胃を通過する。空間占有流体または固体は、十二指腸内で分散性であるように選択されており:すなわち十二指腸酵素、胆汁酸塩、重炭酸塩等の活性は、空間占有流体または固体に影響し、その分散をもたらすように意図される。例えば、食用油などの空間占有無極性流体は、胃の条件により最小に影響を受け得るが、十二指腸内の胆汁酸塩により乳化され得、十二指腸リパーゼにより消化され得、および/またはpH変化により不安定化され得るので、これは分散されるようになる。分散性酸障壁の消失に伴い、これが流体(液体または気体)または固体により提供されているかどうかいずれにせよ、酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)は、その外側表面で十二指腸内の消化性酵素に暴露され、該酵素はこの膜のタンパク質構成成分を攻撃し始め得る。上記のように、この外部の攻撃に加えて、酸抵抗性シェルおよび経口摂取性送達系の下にある層は、内部から攻撃され得る。
【0090】
治療剤区画からの治療剤または送達可能な治療剤の放出は、酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の孔が酸により貫通されて適切に開放される場合に開始し得る。該プロセスは、酸抵抗性シェルが分解されてその完全性を失うにつれて加速され得る。酸抵抗性シェルの分解の速度は、以下により詳細に記載されるように、この膜の構造を作り変えることにより制御され得る。さらに、治療剤または送達可能な治療剤内の薬剤は、それ/それらの活性形態での放出を促進するかもしくは遅延するように、または囲み酸抵抗性シェルが破られた後に十二指腸内のそれ/それらが遭遇する消化性酵素の作用から、それ/それらを保護するように製剤化され得る。例えば、治療剤は、治療剤をプロテアーゼの作用から保護するかまたはそれらの効果を遅延させるプロテアーゼ阻害剤を用いて製剤化され得る。本明細書で使用する場合、用語「阻害する」およびこの用語を含む関連する語彙単位は、別の作用またはプロセスを妨げる、抑止する、遅延する、干渉するまたは防ぐ作用またはプロセスをいう。腸管内での放出を遅延するための他の製剤は、当該技術分野でよく知られている。他の態様において、治療剤区画内の治療剤は、さらなる作り変えられた保護を提供するおよび/または腸管内の放出を遅延する、保護的な液体または固体のカプセルにより囲まれ得る。治療剤は、固体、液体、ゲルまたは凍結乾燥製剤として製剤化され得る。態様において、治療剤は、単一の薬剤(例えば活性医薬成分(「API」))または薬剤の組合せ(例えば2つ以上のAPI、またはAPI(1つまたは複数)と相互作用して、それらの効力を促進することが意図される非医薬物質と組み合された1つ以上のAPIまたは生きた生物およびそれらの支持環境の堆積)であり得;かかる組み合わせは送達可能な治療剤を含み得る。
【0091】
3. 経口摂取性送達系:酸抵抗性シェルについての一般的な構造
より詳細に、本明細書に開示される酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)は、合流、連続または不連続の構成成分材料およびそれらの任意の組合せで形成され得る。一例として、酸抵抗性シェルは、単一の酸抵抗性物質で均一に形成され得る。以前の図に示されるように、かかる均一な酸抵抗性シェルは、分散性酸障壁により遮断される一連の孔により貫通され得、該孔は、そうでなければ酸抵抗性シェルを通る胃の流体のアクセスが治療剤区画に到達することを可能にする。別の例として、酸抵抗性シェルは、互いに近位であるかまたは互いに接近して配置される不連続の酸抵抗性要素、例えば互いに対して添加されて、個々の固体の液滴の間にチャンネルもしくは隙間を有する近接する、隣接するまたは積層される粒子の層を形成する一連のワックス液滴で形成され得る。固体要素は、例えばワックス液滴を分散して丸石様の層または多層膜を形成する噴霧プロセスにより、互いに対して積層され得る、編み込まれ得るまたは隣に配置され得る。別個の対向する要素の間のチャンネルは、個々の粒子が堆積されるように形成され、該チャンネルは、気体または液体を、いずれかの方向(内側から外側または外側から内側)で幕を通して通過させ得る。態様において、不連続の要素で形成される酸抵抗性シェルは、積層、エアレイド(air-laid)、ドライレイド(dry-laid)、ウェットレイド(wet-laid)、スパンメルトされ(spun-melt)、編み込まれ、またはそうでなければ互いに対して近位に配置される線維で形成され得、ここで線維は、気体または液体を通過させ得るそれらの間のチャンネルまたは経路から排出されるような方法で配置される。態様において、線維の網はエアレイドであり得、ワックスは、線維の網目構造を一緒に結合させるかまたは接着するように同時に噴霧される。一態様において、オオバコ種子の殻、セルロース線維、リグニン等の非酸水溶性線維が使用され得る。他の態様において、線維は、それらが溶解に感受性であり、線維が溶解される場合に酸抵抗性シェル内のチャンネルまたは経路から排出されるような方法で配置される。
【0092】
以前に記載されるように、障壁形成物質は、酸抵抗性シェルの要素の間の隙間内でもしくは酸抵抗性シェルの要素内でまたはその両方に配置され得る。一態様において、酸抵抗性シェルを形成するために不溶性の線維が使用され得、ワックスなどの物質と一体化されて酸に対してより均一な抵抗性を提供する。例えば、態様において、酸抵抗性または酸溶解性の線維は、溶解されたワックス中に撹拌されて懸濁物を形成し得、次いで線維保有ワックス懸濁物は、酸抵抗性シェル層に形成され得る。代替的に、かかる線維は、網目構造に使用される前にワックスもしくは同様の物質によりコーティングされ得るか、または線維は、網目構造内に整列されて、その後噴霧され得るかもしくはそうでなければワックスもしくは同様の物質でコーティングされ得る。
【0093】
態様において、障壁形成物質は、ワックス層内に配置され得るかまたはそれらは、ワックスコーティングを有する線維に取り付けられ得る。この技術を使用して適切な酸抵抗性シェル層を形成するために、障壁形成物質を保有するワックスコーティング線維は、別の接着剤もしくは他の固定技術を必要とすることなく互いに接着されると予想され得る。ワックスコーティング線維はまた、線維自体に埋め込まれる障壁形成物質を含み得る。例えば、線維は単純に、水および重炭酸ナトリウムの溶液中に撹拌されて、線維が水および溶解された重炭酸ナトリウムに浸漬されることを可能にし得る。その後線維は、除去および乾燥され得、重炭酸ナトリウム結晶が線維内で再度形成されて、障壁形成物質として働く。他の態様において、ワックスを使用して酸不溶性または酸溶解性の線維をコーティングし得、線維は障壁形成物質を含み得る。線維が溶解する場合、障壁形成物質は、それらの溶解の前に線維により占有される空間を充填する障壁材料(例えば二酸化炭素気体)を産生する。
【0094】
一態様において、線維は、選択された種類の線維、例えば酸不溶性線維を溶解性気体形成固体の層でコーティングすることにより、酸抵抗性シェル層を形成する使用のために調製され得、次いで溶解性気体形成固体の層はワックスの外部層で被覆される。ワックスの外部層が貫通される場合、酸は、気体形成固体(例えば重炭酸ナトリウム)の層にアクセスし得、それらを溶解し、気体(例えば二酸化炭素)を放出し、気体形成固体が以前に存在した場所の後ろの中空から排出し得る。別の態様において、線維は、気体形成固体または他の固体と組み合され得、該固体は線維の外側に取り付けられるかもしくは線維内に埋め込まれるかもしくは含まれる(entrained)か、またはそれに取り付けられるかもしくはそれの内に一体化されることなく、線維の近位で酸抵抗性シェルに挿入される。線維が酸溶解性である場合、線維は、酸との接触の際に腐食され得、そのプロセスの間に、線維は、酸を固体と接触させるように誘導する導管として働く。酸との接触の際に、気体形成固体は、気体を放出し得、次いで気体は、線維および固体が以前に存在した空間を占有する。すなわち、空間は最初に酸溶解性線維で占有され、固体は気体で充填され、次いでさらなる酸の進入を防ぐ。線維が酸抵抗性であり、気体形成または他の固体がその外側に取り付けられるかまたはその中に埋め込まれるかまたは含まれる場合、かかる線維は依然として、酸を固体に接触させる導管として働き得:酸は、(例えば毛細管作用により)酸抵抗性線維の外表面に沿って流れ得るので、これは近位の固体と接触するようになる。酸のとの接触の際に、気体形成固体は気体を放出し得、次いで気体は、以前に固体が存在した空間を占有する。酸抵抗性線維は無傷なままであるが、気体形成固体から放出された気体は、これらの固体が以前に存在した空間を占有する。態様において、線維の近位またはその中に配置された気体形成固体は、デンプンまたは胃酸と接触する際に膨潤し得る他の材料を伴い得る。胃酸との接触後、かかる膨潤性材料は体積を増加し、その周囲の空間を広げ、その中で、放出された気体が存在し得るより大きな体積を潜在的に生じ、および/または固体もしくは気体もしくはその両方のためのより画定されたもしくはよりアクセス可能なチャンネルを形成する。
【0095】
線維は、酸抵抗性または酸溶解性のいずれにせよ、それらが酸と接触する場合のみに、胃酸についての導管として働き得る。そのため、線維はいくつかの方法で、酸と接触しなければならない。この接触を提供するためのいくつかの方法が、当業者により構想され得る。例えば、線維の一部は、酸抵抗性膜の外側面上で暴露され得るので、酸は、これらの暴露された部分に接触し得る。別の例として、酸抵抗性膜がプロテアーゼ消化性層で被覆される場合、線維は、それが消化されるまでかかる層により一時的に被覆され;その後プロテアーゼ消化性層の消化が続き、線維が胃酸に暴露され、線維を導管として働かせる。線維の暴露された部分を被覆する外部層の存在は、酸抵抗性膜内の気体発生のプロセスを微調整するために使用され得る。同様に、酸抵抗性膜の内部の層は、この層を通る治療剤区画への酸のさらなる脱線(excursion)を防ぐように配置され得る。
【0096】
別のアプローチとして、固体のチャンネルは、固体粒子をワックス層単独に添加することにより、または界面活性剤と混合される水または界面活性剤単独と共に添加することにより、酸抵抗性シェル内で作製され得る。例として、デンプンおよび炭酸カルシウム粉末を一緒に混合し得、液体界面活性剤を添加してペーストを作製し得る。このペーストは、ワックス相に直接添加され得る。デンプンまたは炭酸カルシウム粉末は、界面活性剤およびワックスと混合されるのみであるので、いずれも溶解せず;したがって、これらの固体はワックス内で無傷で残り、その後以下のようにチャンネルの形成を可能にする。胃酸との接触後、ペースト内のデンプンは、溶解および膨潤し得、それにより潜在的に、それが占有する空間を広げ、および/または炭酸カルシウムについてより画定されたもしくはよりアクセス可能なチャンネルを形成し;次いで元のペースト堆積物由来の炭酸カルシウムは、胃酸と反応して気体を発生し得る。ここでこの気体は、チャンネルの内部に閉じ込められる障壁として働き得る。そのため、十二指腸液との接触の際に、気体は除去され得、チャンネルは、デバイスの内部領域に暴露される。上述のようにデンプンは、ゼラチン粉末、ペクチン、キサンタンガム、カラギーナンまたは任意の他の親水コロイドまたは水もしくは胃酸と接触した場合に溶解および膨潤し得る材料により置き換えられ得る。さらに、任意の液体界面活性剤は、ペーストを生成するために使用され得るか、または粉末化界面活性剤は、使用され得、他の粉末化材料と単純に混合され得、ワックスとも組み合され得る。
【0097】
態様において、2つ以上の異なる固体を酸抵抗性シェルのマトリックスに埋め込み得、該異なる固体は、異なる機能を実行する。例えば、1つの材料は、下記のように気体生成物質として働き得る。第2の材料は、形成される気体の泡と相互作用して、それらを、例えば表面張力誘引または他の物理的もしくは化学的な力によりマトリックス内の特定の場所に保持し得る。胃の流体との接触時に気体を形成する第1の気体生成物質が使用され得、十二指腸の流体との接触時にのみ気体を形成する第2の気体生成物質が使用され得る。酸抵抗性シェル内に固体の異なる配置を有する他の態様が、当業者により構想され得る。
【0098】
態様において、本明細書に記載されるように、障壁形成物質は、気体生成物質であり得る。胃内の塩酸への暴露の際に二酸化炭素を発生する気体生成物質が特に有利である。気体生成物質(例えば炭酸カルシウム(沈降炭酸カルシウム(PCC)を含む)、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウムおよび他の金属炭酸塩等の例えば二酸化炭素形成体または例えばマグネシウム粒子等の水素形成体)は、固体材料としてまたは他の物理的状態で存在して、態様において、酸抵抗性シェルに埋め込まれ得るかまたはその孔に埋め込まれ得るので、それらは胃酸に暴露される場合に二酸化炭素または他の気体を発生する。一態様において、気体生成物質は、消化性ポリマーまたは小分子マトリックス内に埋め込まれ得、酸抵抗性シェルの壁形成材料と絡み合わされ得るので、胃酸との接触時に、このマトリックスは分解して、埋め込まれた気体生成物質を暴露させて、胃酸と反応する。
【0099】
特定の気体生成物質により生成されるもおと同様に二酸化炭素は、腸の天然の分泌物に溶解して、膵臓分泌により十二指腸に放出される重炭酸塩と反応するので、分散性酸障壁の主要構成成分として特に有利である。この特徴は、気体生成物質に対する胃酸の作用により、胃内で形成された二酸化炭素気体障壁を、十二指腸内に迅速に分散させて、以下により詳細に記載されるように、酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)への種々の膵臓酵素の流入を可能にする。
【0100】
障壁形成物質が気体生成物質である場合、それらは、経口摂取性カプセル系を胃酸の効果から保護し:一方で経口摂取性カプセル系は胃内にあるが、流体は、酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)にアクセスすることおよび気体から形成される分散性酸障壁により孔に進入することが防がれ、これは連続層または不連続相としてカプセル系を被覆し、および/または孔自体内に存在する。いずれかの場合に、気体生成物質から形成される分散性酸障壁は、胃内の液体との気体-流体界面を作製し、これが孔のいくつかまたは全てに進入することを防ぐ。膜の表面上の孔開口部のいくつかまたは全ては、気体生成物質で形成される分散性酸障壁により胃内の流体の進入から機械的に保護され得るので、胃酸は、酸抵抗性シェルの内部にアクセスし得ない。分散性酸障壁が気体生成物質で形成される場合、気体の泡も、孔の系内に同様に存在するようになり得るか、または代替的に、孔自体の中で別個の気体障壁を形成し得る。気体の泡は別個の泡として図に示すが、これらの気体の泡は、一体化して、孔内の空間のいくつかまたは実質的に全てを占有し;この一体化は、気体が気体生成物質から形成され、孔内を広げる場合に予想されることが理解される。そのため、孔内の気体は、最初の胃酸の進入が気体形成物質からの気体の形成を引き起こした後に、胃酸の進入に対する機械的障壁として働く。さらに、気体生成物質から形成される分散性酸障壁が酸抵抗性シェルの表面上に存在するようになる程度まで、この障壁は、胃酸が膜の外部の面と接触することを防ぐ。
【0101】
他の態様において、本明細書に記載される障壁形成物質は、気体生成物質の代わりにまたはそれに加えて、空間占有固体または流体(すなわち気体または液体のいずれにせよ任意の流体)であり得る。態様において、マトリックス内の孔は、胃酸の流入に対する機械的障壁を提供する固体および/または流体で部分的にまたは完全に充填され得る。例えば、孔は、胃酸と反応しないまたは胃酸に溶解しない食用油などの液体形態の無極性流体を含み得、それにより胃酸が孔に進入することを遮断する。かかる材料は、経口摂取性送達系が胃を横切る際に無傷なままその位置に残るが、胆汁酸塩により流体が乳化され、その後分散される場合に、十二指腸内で分散性である。態様において、固体は、無極性流体の代わりにまたはそれに加えて、孔内に配置され得る。態様において、固体または液体は、酸流入の機械的妨害を付加し得るか、および/または障壁形成に寄与するように胃酸と反応性であり得る。態様において、酸反応性液体または固体は、胃酸と相互作用して、胃酸のさらなる流入に対する機械的障壁を提供する空間占有材料を形成し得る。例えば、固体の重炭酸塩粒子は、酸反応性固体であり得、胃酸と相互作用して、二酸化炭素の泡を形成し、これは次いで、以前に記載されるように系に対するそれら自体の機械的保護を提供する。別の例として、無極性材料、例えばワックスまたはゲルは、空間占有固体として働き得るが、体温でまたは胃酸もしくは酵素の作用に暴露される際に、空間占有液体に変形され得る。酸との接触の際に別の物質を形成する物質は、「酸反応性物質」と称される。
【0102】
これらの態様の特定のもの(気体生成物質である障壁形成物質および空間占有固体または流体である障壁形成物質)を、図7~13を参照して以下で議論する。気体生成物質(例えば重炭酸塩結晶)が胃酸と遭遇する場合、それらは、孔を充填し、チャンネルまたは孔から塩酸を排出する(displace)気体(例えば二酸化炭素)を産生する。態様において、気体は、外部酸抵抗性層を横切って酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の表面に到達し、その上で分散性酸障壁を形成し得る。他の態様において、放出された気体は、孔の系をくまなく移動して、完全または部分的にそれらを充填して、その中で分散性酸障壁を形成し得る。さらに他の態様において、放出された気体は、より完全にまたはより完全ではなく孔を充填し、表面上で気体の層を形成する。孔内の気体および/または表面上の気体の層(特定の場合において孔またはチャンネルの外部の開口部の周囲で濃縮される)は、胃酸の外部酸抵抗性層へのさらなる流入を防ぎ、それにより胃液との接触から内部腐食性層を保護する。
【0103】
態様において、酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)は、胃酸が、その中に含まれる気体生成物質に到達することを可能にし、さらに気体生成物質から放出された気体(1つまたは複数)が表面に到達することを可能にするチャンネルまたは孔を含む。態様において、酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)は、気体生成物質の活性化の際に孔を作製する、その中に埋め込まれた気体生成物質により形成され得;代替的にまたは付加的にその孔は、機械的に作製され得る。チャンネルまたは孔を機械的に形成することは、例えばそれが配置された後にマイクロニードルで層に穴をあけることを含み得るので、胃酸が層に進入し、その中に配置された気体生成物質の少なくともいくつかに到達することを可能にする直接の経路が作製される。態様において、酸抵抗性シェルの多孔質構造は、マトリックス内に多孔質網目構造が形成されるように中空およびマトリックスの固体領域を同時に形成する、3-Dプリンティングまたは他の技術により作製され得る。他の態様において、酸抵抗性シェルは、その中に埋め込まれる気体生成物質により形成され得、次いでその孔は、化学的に作製され得る。例えば、チャンネルまたは孔を化学的に形成することは、層内に分散されたフィラメントまたは線維などの酸消化性の細長い構造がある場合に起こり得、細長い構造は、胃酸により腐食または消化されて、それを通って胃酸が層に浸潤する中空を後に残す。例えば、酸抵抗性シェルは、その中に埋め込まれる気体生成物質およびマトリックスにくまなく分散される親水性物質(線維または他の封入物、ポリマー等)により形成され得るので、親水性物質は、胃酸がマトリックスに進入して気体生成物質と反応する導管を提供し得;態様において、親水性物質は、それらが胃酸により加水分解性であるように選択され、マトリックス内に中空を作製し、上記のように、気体生成物質により産生された気体がマトリックスから排出されて、酸抵抗性シェルの表面上に分散性酸障壁を形成することを可能にする。
【0104】
態様において、示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系は、治療剤区画を囲むが非対称な特性を有する単層として形成され得る。かかる単層構造の特性が、酸抵抗性およびプロテアーゼ消化性の両方を含む場合、該構造は、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜であると考えられ得る。例えば、かかる層は、上述の技術を使用して、ゼラチンなどの天然に由来するポリマーまたは埋め込まれた空間占有固体もしくは流体を有する作り変えられたポリマー性マトリックス、またはその中の重炭酸塩結晶などの気体生成物質を含み得る。次いで層は、より疎水性で酸抵抗性の外部領域および内部のより親水性の内部領域を有する勾配として形成され得る。例えば、層は、外部領域上の混合物中にロウ状または疎水性のポリマーをより多く、および内部領域上の混合物中によりタンパク質に基づくかまたは親水性のポリマーを含み得る。態様において、非対称の層は、層内に2つの似ていない構成成分の勾配を生じる温度勾配を使用して形成され得る。態様において、非対称の層は、温度勾配により形成され得る。層は、似ていない温度の2つの層の間に配置される。2つの温度境界の間に、バルク層内の位置の関数としての温度があり、バルク層内の任意の切片は、温度T(z)の小さな層を有する。2つの似ていない構成成分の好ましい混合分布は、温度の関数である。これは、T(z)がzにおいてそれぞれの層について異なる場合、構成成分C1およびC2の混合は他のz位置とは異なり、そのために厚さに沿った位置zでの有限の厚さのバルク層にくまなく、C1とC2の異なる混合比があることを意味する。次いで層が漸進的な冷却によりその位置で「凍結」される場合、z依存的混合比はそのままであるので、C1およびC2の混合が全体を通して均一ではない。
【0105】
態様において、特性の組合せ、例えば外部酸抵抗性シェルおよび内部腐食性層を有する系と同様の挙動を有する1層の示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系が作製され得る。腐食性材料および酸抵抗性材料(例えばゼラチンおよびロウ状マトリックス)を含む単一の配合された層は、一緒に配合された2つの構成成分および空間占有流体または固体またはその中に配置された気体生成物質で形成され得る。胃酸による腐食性材料の消化は、酸が障壁形成物質にアクセスして、それらを活性化または放出することを可能にするチャンネルを形成する。気体生成物質から気体が産生されるかまたはその堆積物から空間占有流体が放出される場合、これは、チャンネルを充填し、任意に層の表面に到達して、以前に記載されるように、内部および外部の分散性酸障壁を作製する。代替的にまたは付加的に、気体生成層および/または空間占有流体の層は、単一の配合された層の内部に配置され得るので、単一の配合された層の腐食性部分を腐食する胃酸が到達する場合に、障壁形成層により、それぞれ気体が生成されるかまたは流体が放出される。本明細書により詳細に記載される補強材料は、単一の配合された層に付加されて、強度および/または弾性を付加し得る。
【0106】
態様において、例えば1層の示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系は、水膨潤性、酸加水分解性および/またはプロテアーゼ消化性の相ならびに水抵抗性および加水分解抵抗性の相の混合物から形成され得;この1層系は、治療剤または送達可能な治療剤を囲む。態様において、水膨潤性、酸加水分解性および/またはプロテアーゼ消化性の相は、多糖、タンパク質またはそれらのいくつかの組合せを含み得る。当該技術分野で良く知られる多糖、例えばデンプン(タピオカ、コメおよびトウモロコシ等)、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、キサンタンガム、カラギーナン、アラビアガム、寒天、アルギン酸塩等がこの相に使用され得る。態様において、親水コロイド特性を有する多糖は、水への暴露時に膨潤するそれらの能力を発揮するために選択され得る。タンパク質、例えばゼラチン、小麦グルテン、トウモロコシゼイン、ダイズタンパク質、ホエータンパク質およびヤエナリタンパク質がこの相に使用され得、水膨潤性タンパク質溶液を形成し得る。気体生成物質または空間占有流体は、他に本明細書に記載される物質などの分布と同様に、この相内に分散され得る。水不溶性、酸抵抗性の相は、種々の物質、例えばセルロース、脂肪酸、ワックス、ポリオレフィン、食用/天然のエラストマー(例えば天然のラテックス、クマ・マクロカルパ(couma macrocarpa)、ツヌ(tunu)、ジェルトン(jelutong)またはチクル(chicle))から形成され得る。この水不溶性、酸抵抗性の相はまた、非消化性の食品等級の材料、例えばこの層の強度および耐久性を向上することを意図した線維も含み得る。
【0107】
図7は、上述のように気体生成障壁形成物質を使用する機構により形成される酸抵抗性シェル708(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の表面上にある気体の泡を含む外部分散性酸障壁710、および同じ機構により孔の系712内に形成される内部分散性酸障壁716を概略的に図示する経口摂取性送達系700の態様を示す。この図に示される経口摂取性送達系700は、胃内の滞留の期間に胃酸に暴露されている。結果的に、孔の系712内に元から分散される気体生成物質(示さず)は、全体的または部分的に胃酸と反応して、孔の系712内に孔の系712を占有して遮断する気体の泡720を生じ、内部分散性酸障壁716を形成する(孔の系内の3つの気体の泡の線形の配置としてこの図に概略的に示すが、この内部の分散性酸障壁716は、孔の全てまたは実質的に全てを充填して、より適切な障壁効果を提供するように設計され得ることが理解される)。以下により詳細に記載されるように、孔の系712内の気体の泡720は、一体化して強壮な内部分散性酸障壁716を形成し得;さらに気体の泡720は、孔の系712を横切り、酸抵抗性シェル708の表面に到達し得、ここで気体の泡は、外部分散性酸障壁710を形成する。わずかな気体の泡720のみをこの図に示すが、複数の気体の泡が産生されて、孔の系712を部分的または完全に占有して、それにより内部分散性酸障壁716を提供するように十分に孔の系712を塞ぎ得ることが理解される。態様において、気体生成物質722の未反応の堆積物は、酸抵抗性シェル708のマトリックス内または孔の系712(示さず)内に残り得;他の態様において、これらの気体生成物質は全て反応して気体の泡720を産生しているので、孔の系712内に気体生成物質の未反応の堆積物はない。
【0108】
図7に示されるように、酸抵抗性シェル708は、内部に配置される内部腐食性層714と共に使用され得、治療剤区画702は、内部腐食性層714の内部に配置されて、2層の示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系を効果的に作製し;内部腐食性層714がプロテアーゼ消化性である場合、酸抵抗性シェル708および内部腐食性層714の組合せは、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を形成する。示される態様におけるように、2層の示差的に透過性のカプセル系において、内部腐食性層714は、孔内で形成される気体の泡720および/または外部分散性酸障壁710の保護効果により胃液の作用から保護される。この図に示されない態様において、腐食性層714は、障壁形成物質、例えば酸抵抗性シェル708内に示される気体生成物質を含み得る。この図に示されない他の態様において、酸抵抗性シェルは、そのマトリックス内に同様の孔の系を有する単層として形成され得るが、内部腐食性層714とは結合されない。さらに他の態様において、酸抵抗性シェル708は、それ自体の内に他の層を含むかまたは他の層と合わされて他の有利な特性を付与する。例えば、層は、機械的強度または安定性を増加するように付加され得、埋め込まれた生分解性構造支持体、例えばその強度を付加するための線維もしくは内部メッシュ構造、または胃もしくは腸内の条件に暴露された場合に反応し得るさらなる障壁形成物質を含む埋め込まれた生分解性層、または口および食道を通過する間に機械的保護を提供する、胃内で消化もしくは分散される外部層を含む。他の態様において、外部層は、弾性線維の網目構造またはメッシュの形態で、酸抵抗性シェル708の頂部に提供され得、該線維は、カプセルが胃の蠕動により進む際にカプセルを護って保護する。酸抵抗性シェルの任意のレベル(上、下または中)での他のかかる層が当業者により構想され得る。
【0109】
図7に示されるように、胃酸と気体生成物質の堆積物の接触により産生される気体の泡720のいくつかは、孔の系712内に残る(それにより内部分散性酸障壁716を形成する)が、一方で他の気体の泡720は、孔の系から排出され、酸抵抗性シェル708(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の表面上に存在する外部分散性酸障壁710を形成する。本明細書で使用する場合、用語「分散性酸障壁」は、酸抵抗性シェル708の外部の面に配置される外部分散性酸障壁710を含み、さらに任意の単一もしくは合流の気体の泡720または孔の系712内に存在する他の分散性の障壁物質(すなわち内部分散性酸障壁716)を含む。示される態様において、外部分散性酸障壁710および孔712内の気体の泡720(すなわち内部分散性酸障壁716)の両方は、示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系704に包まれる酸抵抗性シェル708および治療剤ペイロード(示さず)を、胃酸および胃の酵素との接触および作用から保護するように働き;さらに外部分散性酸障壁710および孔内に存在する気体の泡720の両方は、以下により詳細に記載されるように、十二指腸内の重炭酸塩の作用により、および非酸性腸流体に溶解することにより、分散性である。この図および他の図において気体の泡720を別個の泡として示すが、気体の泡720は、一体化して、孔内の空間のいくつかまたは実質的に全てを占有し得ることが理解され;この一体化は、気体生成物質から気体が放出され、孔712内を広げるように予想される。
【0110】
この図において概略的に図示されるように、酸抵抗性シェル708(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)は、不規則な表面(溝、窪み、しわ等を有して不規則的または規則的に不規則)を提供し得るかまたはそれを有して形成され得、外部分散性酸障壁710は、それ自体、不規則な様式で、酸抵抗性シェル708の外部の面に沿って整列し、例えばより多くの気体の泡が酸抵抗性シェル708表面の窪みまたは陥凹に含まれて、それにより分散性酸障壁710自体に対して不規則または均一な不連続の外部面をもたらす。胃酸が、それらを含むかまたは支持するマトリックスの形状を変形し得る気体の泡を生じるので、不規則な表面は、胃内の滞留の期間中に形成され得る。態様において、酸抵抗性シェル708の消化または劣化は、その表面の変化をもたらし得るので、これは不規則になる。どのように形成されるかに関係なく、外部分散性酸障壁界面の不規則性は、外部分散性酸障壁710の疎水性を増加し得、胃液などの液体をはじくその能力を高め得る。ある態様において、酸抵抗性シェル708は、規則的な表面を有して形成され得る。かかる態様において、表面構成は、外部分散性酸障壁710の形成および保持を補助しないことがあるが、内部分散性酸障壁716の保護効果は、下にある内部腐食性層714および下にある治療剤区画702を、胃酸による攻撃から切り離すのに十分であり得る。他の態様において、表面構成の特徴は、それらが外部分散性酸障壁の形成および保持を補助するように選択され得る。ある態様において、表面の規則的な特性は、外部分散性酸障壁の形成および保持を補助し得る。
【0111】
図8は、内部分散性酸障壁816の形成をより詳細に図示する態様を概略的に示す。この図に示されるように、経口摂取性送達系800は、酸抵抗性シェル808(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)および治療剤区画802を含む。酸抵抗性シェル808の内部に配置される内部プロテーゼ消化性層814がある。以前に記載されるように、酸抵抗性シェル808を含む示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系の構造は、単層構造、2層構造または多層構造を含み得る。示される態様において、酸抵抗性シェル808の酸抵抗性外部層818は、孔の系812により貫通される。孔の系812は、ここで個々の気体の泡820および集合した気体の泡824とも示される気体により充填される。孔の系812内の気体の効果は、外部環境からの流体の進入を防ぐ内部分散性酸障壁816を作製することである。以前に記載されるように、その中に気体生成物質が配置された孔の系812を有する酸抵抗性シェル808が、最初に形成され得(示さず);態様において、気体生成物質822はまた、酸抵抗性シェル808の外部酸抵抗性層818のマトリックス内および/または他の示される位置に配置され得る。示される態様において、孔の系812の部分は、孔内の気体形成物質と胃酸の相互作用により形成された気体により充填されている。このように産生された気体の泡820は、全体または部分的に孔を占有し、一体化824し得、胃液のさらなる進入を防ぐ内部分散性酸障壁816を産生する。気体の泡820および一体化した気体824を、この図において孔の系812の一部のみを占有するように示すが、経口摂取性送達系800は、より高いまたはより低い程度の孔の充填を生じるように作り変えられ得る。図は、空の孔、気体の泡820で充填された孔および一体化された気体824の組合せを示すが、これらの図示は単なる例示である。内部分散性酸障壁816は、十分に気体が充填された孔、部分的に気体が充填された孔、一体化した気体の泡が充填された孔および別個の気体の泡を含む孔の任意の組合せを含み得;さらに、孔内の気体の挙動は、泡形成および孔の系812を通る泡の通過の機構に応じて動的であり得る。
【0112】
理論に拘束されないが、気体自体の表面張力により、胃液の進入に対して耐久性の障壁として、気体が孔812内に保持されることが理解される。態様において、孔の系の気体含有物は、孔812から漏れ出て、放出される気体の泡828として、胃の周囲に放出され得る。他の態様において、例えば以前の図に示されるように、気体の泡は、酸抵抗性シェル808(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の表面上に保持されて、この図に示される内部分散性酸障壁816と共力的に作動する外部分散性酸障壁(示さず)を形成し得る。態様において、内部分散性酸障壁816は、内部腐食性膜812のその後の消化を生じる胃液の系800への流入を防ぐ唯一または主要な保護を提供する。示される態様において、外部分散性酸障壁は非存在であり;他の態様において、内部分散性酸障壁816の機能に対して付随または代替としてこれは任意である。外部分散性酸障壁の存在および内部分散性酸障壁に対するその関係は、他の図に図示される。
【0113】
代替的な機構は、本明細書に記載される経口摂取性送達系を用いた使用のための気体性の機械的障壁を含む分散性酸障壁を作製するために利用可能であり;有用な機構を図示するための非限定的な例を本明細書に提供する。例として、重炭酸塩溶液を含むエマルジョンは、重炭酸塩溶液中の水を蒸発させる条件下でのその製造の間に、酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の表面上に噴霧され得るかまたはそうでなければ配置され得、それによりエマルジョン層に埋め込まれた重炭酸塩結晶が酸抵抗性シェルの表面上から排出される。胃酸と接触して、次いで重炭酸塩結晶は、二酸化炭素を形成するように反応し得、これは酸抵抗性シェル表面上のへこみまたはでこぼこ内に存在するようになり得、それにより外部分散性酸障壁が作製される。別の例として、孔は、機械的手段(例えば針、ピン等)により疎水性層において穴をあけられ得、孔、チャンネル、へこみ等の交差しない系を生じる。態様において、孔は、例えば層を重炭酸塩溶液に浸漬し、溶媒を乾燥させることにより、その中に配置された重炭酸塩を有し得る。気体系分散性酸障壁を形成するためのさらなる機構が、当業者により構想され得る。
【0114】
以前に記載されているように、気体形成物質822などの障壁形成物質は、別の腐食性層814内、その下またはその頂部に配置され得る。かかる層における障壁形成物質は、胃または腸の流体との遭遇時に反応して、内部分散性酸障壁816を形成し得るかまたはそれに付加され得る。
【0115】
上述のように、態様において、本明細書に記載される障壁形成物質は、気体生成物質の代わりにまたはそれに加えて、空間占有固体または流体を含み得る。図9は、例示的態様を示す。図9において、経口摂取性送達系900は、酸抵抗性シェル908(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)および治療剤区画902を含む。以前に記載されているように、酸抵抗性シェル908のための構造は、単層構造、2層構造または多層構造を含み得る。示される態様において、酸抵抗性シェル908内部に配置され、治療剤区画902を囲み、以前に開示されるこれらの配置と同様である内部腐食性層914があり;内部腐食性層914がプロテアーゼ消化性である場合、酸抵抗性シェル908とのその組合せは、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を形成する。酸抵抗性シェル908は、孔の系912により貫通され、その中は空間占有流体であり、ここで孔912を遮断し得る個々の流体液滴920としておよび空間占有流体924の合流層(一体化した流体液滴で形成され得る)として、概略的に示される。孔912内の空間占有流体液滴920および/または層924は、胃の流体の進入に対する機械的障壁を提供するので、916として概略的に示される内部または内側分散性酸障壁が構成される。示される態様は完全に形成された外部分散性酸障壁を欠くが、他の態様において、例えば外部酸抵抗性層918の表面上に空間占有流体の合流がある場合、かかる障壁が形成され得;かかる部分的な合流は928として概略的に図示される。示される態様において、部分的に合流した外部酸抵抗性層928の存在は、胃の流体の進入に対する適切な障壁を提供するのに十分であり得る。示される態様において、空間占有流体は、孔912を部分的にのみ充填するが、胃の流体の進入を遮断するのに十分である。他の態様において、空間占有流体は、孔を完全に、または外部の胃の流体の進入に対する部分的もしくは完全な機械的遮断を提供するのに十分な任意のレベルまで充填し得る。示される態様における孔912は、巻き込まれ、交差するように示されるが、孔912は、以前に記載されているように、外部の消化性流体(胃または腸からのいずれにせよ)の治療剤区画902への最終的なアクセスを可能にする任意の配置で構成され得ることが理解される。例えば、孔は、直線、湾曲、分岐、交差、網目構造、格子様または任意の他の形状もしくは構成であり得、孔の網目構造は、網目構造の残りと全体的または部分的に連結しないブラインドポケットまたは閉じたチャンネルを含み得る。
【0116】
一態様において、孔912は、全体的または部分的に、胃酸の作用に対して抵抗性である液体、例えば無極性食用油により充填され得る。態様において、任意の保護層(示さず)は、経口摂取性送達系900の外部面上に配置され得、これは摂取の前に系全体を包み、孔の系912内に空間占有流体を保持し;保護層は、犠牲的(sacrificial)であることが意図され、すなわち胃の流体との遭遇の際に全体的または部分的に溶解する。したがって、経口摂取性送達系900が胃に進入する場合、外部コーティングは、迅速に溶解し得、酸抵抗性シェル908(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の表面およびその中に空間占有流体920および924が存在する孔912の開口が暴露される。しかしながら、胃内で、空間占有流体920および924は、胃の内容物とチャンネル内の液体の間の表面張力要素および/または極性の差のために、孔912内に実質的に残る。孔内の流体は、胃の流体の進入を防ぎ、それらの任意の内部腐食性層914へのアクセスを防ぐ障壁を提供するので、916として概略的に示される内部分散性酸障壁が構成される。ある態様において、チャンネル内の空間占有流体は、酸抵抗性シェル908の表面上に流体の層928を形成するように遊出し得る。この外部流体遊出928は、示されるように孔の外部開口の周囲に位置するままであり得るか、または部分的もしくは完全に合流になり、内部分散性酸障壁916により提供される保護を補充し得る外部分散性酸障壁(示さず)を形成し得る。
【0117】
外部分散性酸障壁(孔に重なる部分的な合流928のみによりこの図に示される)および内部分散性酸障壁916の分散は、経口摂取性送達系900が十二指腸に進入し、その中の胆汁酸塩およびリパーゼに遭遇する場合に起こる。態様において、孔912内(および任意に表面928上)の空間占有流体が胆汁酸塩およびリパーゼに遭遇する場合、流体自体は、消化および/または乳化され得る。特定の空間占有流体の有利な特徴は、十二指腸内に見られる胆汁酸塩およびリパーゼによる乳化および/または消化に対するそれらの感受性であり;これらの剤は、流体に対して作用して、それを乳化またはそれを消化して、より小さい液滴を形成し得るので、流体の分散および結果的な流体が形成する分散性酸障壁の分散が可能になる。より詳細に、一旦経口摂取性送達系900が十二指腸内に進入してリパーゼおよび胆汁酸塩を含むより中性のpH環境に暴露されると、孔912内の液体は液滴に乳化されて、孔912から除去される。空間占有流体の分散により、機械的障壁が消散し、十二指腸流体内のプロテアーゼは、任意の内部腐食性層914の消化の直後またはその後のいずれかに、孔を通って治療剤区画902への直接のアクセスを有する。さらに、十二指腸プロテアーゼは、孔の系912の内側からおよび酸抵抗性シェル908の外表面から、酸抵抗性シェル908のマトリックスへのアクセスを有する。この内部アクセスは、内部プロテアーゼの作用に対して、かなり大きな暴露された表面積を提供し、それにより、プロテアーゼ感受性酸抵抗性シェル908の破壊、その後の治療剤区画902からの治療剤の放出を容易にする。
【0118】
態様において、界面活性剤は、内部分散性酸障壁916が調製される場合に液相に予め負荷され得る。他の態様において、液体界面活性剤は、内部腐食性層914の頂部または酸抵抗性シェル908(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の下表面またはその両方で拡散され得る。界面活性剤は、それらがこの図9または他の図に示されるように酸抵抗性シェルまたは内部腐食性層のいずれかに添加され得、界面活性剤はこれらの層の間の接着を向上し得ることが理解される。界面活性剤は粉末または液体形態で使用され得る。それらは、例えば層が形成される間に層の融解相内で撹拌されること、または形成されたシート上に噴霧もしくは拡散されることにより当業者に良く知られた任意の様式で適用され得る。有利なことに、これらの目的に使用される界面活性剤は、pH感受性であり得るので、それらは十二指腸のpHで活性であり、胃のpHでは活性でなく、それによりそれらが胃内の内部分散性酸障壁916の乳化に寄与することが防がれる。
【0119】
有用な界面活性剤の例としては、双極性または両性の界面活性剤、例えばベタイン、またはアミンもしくはアンモニウムと共にホスフェートアニオンを有するもの、例えばリン脂質ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリンおよびスフィンゴミエリンが挙げられる。内部分散性酸障壁916内の界面活性剤が胃のpHへの暴露から保護され得る場合、そのpH感受性に独立して任意の界面活性剤、例えば油中水エマルジョンを形成し得る高HLB界面活性剤、例えばタンパク質、リン脂質、カリウムおよびナトリウム塩、アルギン酸塩、モノグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、レシチン、エトキシル化モノグリセリド等が使用され得る。界面活性剤の混合物または組み合わせは有利に使用され得、異なる界面活性剤は異なる層で使用され得る。例えば、荷電した界面活性剤が使用されている場合、アニオン性界面活性剤が1つの層に使用され得、カチオン性界面活性が他の層に使用され得る。
【0120】
態様において、空間占有流体は、当該技術分野で公知の機構、例えば酸抵抗性シェル908(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)において孔を形成し、次いでこの膜を、流体が孔に進入して孔が以前に含んだどのようなものでも置き換える十分な圧力下で空間占有流体に浸漬することにより、孔912に直接送達され得る。例えば、より低密度の流体は、最初に孔内に配置され得、次いでこの流体は、より高密度の油型流体で置き換えられ得、これは治療剤が酸抵抗性シェル908に囲まれる場合に、最終的な系内で空間占有流体を構成する。代替的に、酸抵抗性シェル908マトリックスおよび/またはその孔に、弱酸、例えばクエン酸または酢酸への暴露により前もって除去され得る重炭酸塩ナトリウムなどの気体形成物質が詰められ得;他の態様において、塩または糖が、孔に導入され得、水により溶解され得る。これらの情況において、残存気体または水は、遠心分離除去され得、油型流体が送達され得る空のチャンネル(すなわち孔912)を後に残す。他の態様において、空間占有流体は、無傷な酸抵抗性シェル908に注入され得、それにより孔912が形成され、同時に空間占有流体が導入される。
【0121】
任意の犠牲的な頂部コーティング(示さず)は、酸抵抗性シェル908の外部に配置され得、最初に孔912内の流体を拘束し、系900全体を機械的外傷から保護する。この最も外側の層は、任意のプロテアーゼ消化性または酸消化性材料であり得、胃内で腐食され得るので、空間占有流体は最初に孔912内に拘束されるが、次いで最も外側の層自体が犠牲になるように環境に暴露される。他の態様において、任意の非犠牲的コーティングが酸抵抗性シェル908の外部に配置され得、これは系900全体を、胃の流体への暴露から部分的に保護するが、これは十二指腸内で消化に感受性であり:かかる非犠牲的コーティングはpH感受性であり得るので、例えばこれは胃などの酸性環境中でその完全性を保持するが、腸管の中性または塩基性環境中で消化または溶解される。
【0122】
内部分散性酸障壁916を形成するために有用な空間占有流体は、胃の流体(酸および/または酸性環境中のプロテアーゼ)に抵抗性であるが、腸内でより遠位に見られる消化性物質(例えば胆汁酸塩、リパーゼ、プロテアーゼ、全ては中性または塩基性環境内に配置される)の活性に感受性であるか、またはそれらの完全性が腸管内のpHにより影響を受けるようにpH感受性であるものである。
【0123】
有利なことに、空間占有流体は、容易に乳化され得、胃酸から分離される食用油などの無極性材料である。例として、植物油または植物材料由来のトリグリセリド、脂肪酸およびエステルなどの材料は、空間占有流体として有用である。態様において、中鎖脂肪酸が望ましい。中鎖脂肪酸を含む例示的な食用油としては、ココナッツ油、MCT油、パーム核油、ゲッケイジュ油およびカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸またはラウリン酸を含む他の油が挙げられる。有用な材料としてはまた、食用油から産生されるトリグリセリドおよびエステル、例えばカプリル酸およびカプリン酸エステル製品、例えばCAPTEX(登録商標)製品、NEOBEE(登録商標)製品、MIGLYOL(登録商標)製品等が挙げられる。長鎖または短鎖脂肪酸を含む他の食用油、例えばオリーブ油、ヤシ油、ダイズ油、カノーラ油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、アボカド油、カラシ油、米ぬか油、ベニバナ油、ゴマ油、ヒマワリ油、アーモンド油、アマニ(flaxseed)油、綿実油、ブドウ種子油、バター、マーガリンラード、アマニ(linseed)油、アサ油、マカダミア油、カボチャ種子油、クルミ油、獣脂、茶種子油、ヘーゼルナッツ油、アサイー核油、ジャンブー(jambu)油、グラビオラ油、ツクマ油、ブラジルナッツ油、カラパ油、ブリチー(buriti)油、パッションフルーツ油、プラカシー油、ソラリウム(solarium)油、カカオバター油、ペカン油、エゴマ油、ビタミンA油、ビタミンE油、タラ肝油、サメ肝油、オキアミ油または例えばニシン、サーディン、マグロ、カタクチイワシ、サバおよびサケ等の魚類由来の魚油も使用され得る。態様において、空間占有流体はそれ自体、腸内の流体の分散により放出される治療剤を含み得る。
【0124】
態様において、空間占有流体は、上述のように液体として孔に導入され得る。他の態様において、空間占有流体は、熱感受性である脂肪または油であるので、孔内に導入される場合は液体であるが、系が冷却される場合は固化し;かかる材料は、室温で固化し得、例えば体温で再度液化し得、または冷却される場合は固化して体温で固体を保持し得る。かかる材料は、特定の温度で液体および他の温度で固体であり、いずれかの場合に機械的保護を提供するハイブリッド空間占有体である。
【0125】
態様において、空間占有流体は、カプセルに入れることにより孔に導入され得る。流体は、上述のように無極性材料であり得るが、マイクロカプセルに包まれた孔内に導入され得、該マイクロカプセルは寸法的に孔内に合うように適合される。マイクロカプセルは、例えば直径約0.3ミクロン~約10ミクロンの範囲のサイズで、孔内に合うような任意の寸法のサイズであり得る。
【0126】
代表的な態様を図10に示す。この図に示されるように、経口摂取性送達系1000は、以前に記載されるものと同様な酸抵抗性シェル1008(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)および治療剤区画1002を含む。以前に記載されているように、酸抵抗性シェル1008についての構造は、単層構造または多層構造を含み得る。示される態様において、酸抵抗性シェル1008の内部に配置され、治療剤区画1002を囲み、以前に開示されるこれらの配置と同様である任意の内部腐食性層1014がある。以前の図に示されたように、内部腐食性層1014がプロテアーゼ消化性である場合、酸抵抗性シェル1008とのその組合せは、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を形成する。孔の系1012は外部酸抵抗性層にくまなく分散される。図に示されるように、点線A-A'の左に、孔の系は、複数のマイクロカプセル1026を詰められる。該図のこのセクションは、経口摂取性送達系1000が最初に摂取される場合の系の分散性酸障壁の状態を示す。図10に示されるように、犠牲的コーティング1030は、点線A-A'の左側で経口摂取性送達系1000の外部面を被覆し;示されるように、犠牲的コーティング1030は、胃に進入する前、例えば保存条件の間にマイクロカプセル1026を保護し得、および/または胃への進入の際にマイクロカプセル1026を胃の流体への最初の暴露から最初に保護し得る。以前に記載されるように、胃の流体は、犠牲的コーティング1030を腐食し得るので、マイクロカプセル1026が、胃内の酸およびプロテアーゼに暴露される。マイクロカプセル1026の壁は、胃内の酸および/またはプロテアーゼにより腐食され得るゼラチンなどの材料で形成され得、それによりマイクロカプセルの内容物が放出されて、空間占有流体1024または1020になる。点線A-A'の右側でこの状況を図に示し、犠牲的コーティングが腐食され、マイクロカプセル1026のいくつかが破断される場合、それらの流体内容物が孔の系内の合流流体層1024および/または流体の泡1020として放出される。点線A-A'の右側に示されるように、合流流体層1024のいくつかは、孔1012から遊出され、経口摂取性送達系1000の表面上に存在し;この遊出した材料1028は、孔開口部の上に配置されたまま残り得るか、またはそれ自体合流になり得、それにより空間占有流体により形成される、内部分散性酸障壁を補充するかまたは取って代わる外部分散性酸障壁が形成される。他の態様において、犠牲的コーティング1030は、上述のように、非犠牲的であり得、経口摂取性送達系が腸管に到達するまで少なくとも部分的に無傷のままであることが意図される。さらに他の態様において、犠牲的コーティング1030は選択的であり;これらの場合、マイクロカプセル1026は孔の系1012内に配置されるので、系が胃に進入する場合、それらは実質的に、孔1012内に残り、胃内で溶解されて、胃を通るおよび/または腸内のデバイスの通過の間に、孔内で気体または液体の形態でそれらの内容物を放出する。態様において、マイクロカプセル1026は、それら自体が機械的障壁を形成するように十分に密に詰められ:したがってこれらの構造は、それらが溶解してそれらの流体内容物を放出するまで空間占有固体として働く。
【0127】
図10に図示されるマイクロカプセル1026は、孔内で機械的障壁を形成して、胃の流体の進入を防ぎ得る空間占有固体の一例である。図11で以下に示されるように、他の空間占有固体は同じ機能を実行し得る。
【0128】
図11は、ここで、上述のように、空間占有流体(気体または液体のいずれにせよ)から形成されている合流流体層1124を補充するように示される空間占有固体1132(流体形成または非流体形成のいずれにせよ)が孔内に配置される経口摂取性送達系1100の態様を示す。示される態様は、以前に記載されたものと同様であり、治療剤区画1102を被覆し、酸抵抗性シェル1118を有し、孔の系1112により貫通され、酸抵抗性シェル1108(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)を示し、孔の系は、外部酸抵抗性層1118を通る外部環境からの流体の通過が、任意の内部腐食性層1114に接触することを可能にし得る。以前の図について記載されたように、内部腐食性層1114がプロテアーゼ消化性である場合、酸抵抗性シェル1108とのその組合せは酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を形成する。孔を閉塞するのに十分な寸法の合流流体層1124(気体または液体のいずれにせよ)および任意の遊離浮遊流体の泡1120(気体または液体のいずれにせよ)は、以前に記載されるように、それら自体で内部分散性酸障壁1116を形成し得る。さらに、合流流体層1124は、孔1112から遊出して、さらなる部分的または完全な外部分散性酸障壁1128を形成し得る。しかしながら、示される態様において、合流流体層1124および遊離浮遊流体の泡1120により提供される機械的保護は、空間占有固体1132により提供される機械的障壁により補充され得るかまたは置き換えられさえし得る。さらに、系1100の周囲の外部コーティング(示さず)は、犠牲的コーティングまたは非犠牲的コーティングのいずれかであり得、孔1112の内容物を含む系1100全体に過剰な保護を提供する。
【0129】
この図に示されるように、空間占有固体1132は、孔1112のいくつかまたは全ての外部部分内に詰められ;またこの図に示されるように、空間占有固体1132は、合流流体層1124および任意の閉塞する流体の泡1120により表されるように、孔1112内の空間占有流体と共に作動する。他の態様において、空間占有固体1132は、孔1112内の体積のより大きな部分または実質的に全てを占有して、胃の流体に対する機械的保護の大部分を提供し得る。態様において、空間占有固体1132は単純に、空間を占有し、したがって、胃の流体の進入を逸らす。他の態様において、空間占有固体は、それらが胃の流体内の酸またはプロテアーゼと反応する場合に、空間占有流体(液体または気体のいずれにせよ)を形成し得る。例えば、空間占有固体1132は、以前に詳細に記載されている現象である、胃酸への暴露時に二酸化炭素気体を産生する重炭酸塩粒子であり得る。または図10に関して上述されるように、空間占有固体1132は、マイクロカプセル壁が胃の流体により消化される場合に放出される空間占有流体を含む、マイクロカプセルであり得る。胃内の酸および/またはプロテアーゼと、または腸の酵素と反応するこれらの空間占有固体1132について、それらは、第1の空間占有流体および第2の空間占有流体を含む二相の障壁系を形成し得;態様において、第1の空間占有流体は、胃の通過の際に保護を提供し得、一方で第2の空間占有流体は、腸管の一部の通過の間に保護を提供し得る。この二相の障壁系の組成は、腸管における治療剤の最終的な取込みを最適化するように作り変えられ得る。
【0130】
空間占有固体1132の例として、孔を全体的または部分的に充填するために、固体粒子が粉末形態で使用され得、選択された物質は、胃などの強酸性環境において不溶性または最小に溶解性であり、一方で十二指腸における環境などの中性またはより高いpHにおいてより溶解性である。かかるものの例は、安息香酸、胆汁酸、サリチル酸、クエン酸、ホウ酸および酒石酸である。酸形態の長鎖脂肪酸も使用され得、ここで選択された材料は、高度に酸性の環境では不溶性であるが、乳化胆汁酸塩に富む中性からアルカリ性のpH環境、例えば十二指腸内では溶解性になる。かかる脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノエライジン酸(linoelaidic acid)、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸 エルカ酸、ドコサヘキサエン酸が挙げられ得る。
【0131】
4. 経口摂取性送達系:酸抵抗性シェル構造の製造方法
本明細書に記載される酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)を形成するために、種々の製造技術が利用可能である。これらの製造技術は、障壁形成物質として気体生成物質を使用するこれらの態様を参照して例示され、ここで気体生成物質は、胃酸への暴露の際に気体を形成する。しかしながら、これらの製造技術の多くは、空間占有流体または固体を使用して、本明細書に開示される分散性酸障壁を作製するこれらの系に適用され得ることが理解される。以下に記載される製造技術は、常套的な実験以下の使用により空間占有流体および固体の使用を包含するように、当業者に改変され得る。
【0132】
例示的態様において、水、重炭酸塩およびキサンタンガムを含む水相を、精製されていないミツロウおよびポリイソブチレンを含むロウ状の層内で乳化し得、このエマルジョンを使用して、多孔質酸抵抗性シェルを形成し得る。ポリイソブチレンの量は、層に所望の可撓性および完全性を提供するように選択され得、例えば約0.5%~約5%の範囲の量である。一態様において、エマルジョンは、約1%のポリイソブチレンを含み得る。その構造的強度を向上するために、線維などの添加物をエマルジョンに含み得る。
【0133】
特に気体生成物質が膜のマトリックス内に配置される態様において、キサンタンなどの線維状添加物は、膜内の細長いチャンネルの形成に寄与し得、これらのチャンネルは、胃酸の進入を可能にするように十分に伸長および絡み合い得;胃酸が膜内に配置される気体生成物質と遭遇する場合に、これは、これらの物質を活性化して、以前に記載されているように、チャンネルを占有して、チャンネルを通って広がる気体を産生する。態様において、食用タンパク質または親水コロイドは、細長いチャンネルの形成に寄与し得る。態様において、ホエータンパク質、ダイズタンパク質または天然もしくは部分的に加水分解されたコラーゲンなどの食用タンパク質は、細長いチャンネルの形成に寄与し得る。
【0134】
気体生成物質の存在下でチャンネルまたは孔を化学的に形成するための別のアプローチとして、専用の気体形成体が、半固体マトリックスに付加され得るので、それらは、半固体マトリックスを通るチャンネルを形成する気体を産生し、チャンネルは、それが固化して多孔質酸抵抗性層を形成する場合にマトリックス中で一体化され;第2の組の気体生成物質は、マトリックスを通って別々にまたは同じプロセスの一部として分散され得、ここでこの第2の組の気体生成物質は、胃酸との接触の際に活性化されるように予定される。半固体マトリックス中でチャンネルを作製する専用の気体形成体は、それらが、半固体マトリックス内で、最終的に固定化されて、マトリックス内にチャンネルまたは孔を形成する気体の泡を産生することを可能にするような化学反応または他の機構により作動し得る。
【0135】
態様において、チャンネルまたは孔は、酸抵抗性マトリックス中で構造的に、すなわちマトリックスがチャンネルまたは孔を含むようにマトリックス自体の配置を設計することにより、形成され得る。例えば、層は、当該技術分野でよく知られる格子構築のための技術を使用して、ロウ状材料の多孔質格子として形成され得る。例示的アプローチとして、チャンネルまたは孔は、層が規則的または不規則的な網目構造として作製される場合に層に含まれ得る。層は、例えば互いに覆うより薄いサブ層のパターンを含み得、それぞれのサブ層は、マトリックス材料および規則的もしくは不規則的なパターンで配置される中空を有するか、または例えば、突出した固体もしくは半固体マトリックスのもつれが、隙間の中空が存在するように下に横たわる。層内にチャンネルまたは孔を作製するための他の配置または層がチャンネルまたは孔を含むように層を設計することは、当業者に構想され得る。態様において、ロウ状の層がゲル層と絡み合う一層酸抵抗性シェルが形成され得、層全体内に配置された気体形成物質は、表面に浸透し、分散性酸障壁を形成するように気体が形成されることを可能にする。
【0136】
1つ以上の組の気体形成物質を使用する場合、それらの全ては、層が形成されるように酸抵抗性シェル内に分散され得る。ロウ状の層が酸抵抗性シェルのためのマトリックスを形成する態様において、重炭酸塩の濃縮された水溶液中で混合することによりエマルジョンがロウ状物質内に形成され得;次いで、(ロウ状の相および水相を含む)エマルジョンを使用して、遊離形態、例えば内部プロテアーゼ消化性層の周囲に巻きつけられるかまたはそれに適用される酸抵抗性シェルを形成し得る。態様において、エマルジョンは、標準的な技術(浸漬、噴霧等)を使用してゼラチンカプセルに適用され得、ここで該カプセルの壁は、デバイスのための内部腐食性層として働く。この技術を使用して、エマルジョンの水相中の水は蒸発し得、マトリックス内の気体生成物質の堆積物として重炭酸塩結晶を後に残す。以前に記載されるように、これらの結晶は、胃内の塩酸と反応することにより二酸化炭素を形成し得、胃酸は、ロウ状マトリックスに進入し、層内のチャンネルまたは孔の系を介して結晶にアクセスする。
【0137】
態様において、気体生成物質または空間占有流体は、酸抵抗性シェルの下の別々の層に含まれ得、これらの物質は、酸抵抗性シェル内のチャンネルまたは孔の系を通過する胃酸によりアクセスされる。かかる層は、デバイスの一部として形成されるかまたは治療剤の周囲の層として形成されるかのいずれにせよ、ゼラチンなどのマトリックス内に含まれ、治療剤の表面に噴霧され、またはそうでなければ酸抵抗性シェルと内部腐食性層の間に配置される気体生成物質を含み得る。ロウ状の層の下の空間占有流体の層は、胃酸または酵素により腐食される犠牲的コーティングに被覆され得、孔内に空間占有流体を放出して、胃酸を排出する。気体生成物質、空間占有流体またはその両方の他の配置が当業者に構想され得る。
【0138】
ロウ状の物質が防御用構築物を必要とする場合、エマルジョンが形成される際に、さらなるポリマーがロウ状のマトリックスに付加され得る。例えば、少量のゴム状の疎水性ポリマー、例えばポリイソブチレンが、構造安定性および完全性を増加させるために付加され得る。その機械的特性を向上するために、例えばポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリビニルアセテート等の他のポリマーが、単独または組み合わせて、ロウ状のマトリックスに同様に付加され得る。例えばキサンタンガムまたは他の親水性ポリマーは、ワックス中の水相の拡散を促進するようにロウ状の物質に付加され得、それにより孔の系の形成が容易になる。態様において、ロウ状の物質に対する添加物としては、セルロース誘導体(例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)および他の親水コロイド(ペクチン、プルラン、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム、アカシアガム(acacia gum)、カラギーナン、アルギン酸塩、キチン、キトサン、デンプン、ダイズタンパク質、ホエータンパク質、コラーゲンおよびゼラチン)、ポリペプチド、ポリビニルアルコール、多糖および誘導体、ヒアルロン酸、ポロキサマー、PEG、ポリ(N-ビニルピロリドン);小分子、例えば単糖およびオリゴ糖、水溶性の塩、グリセロールおよび食用の界面活性剤(例えばラウリン酸アルギネート)が挙げられ得る。
【0139】
態様において、強度、弾性または耐久性を向上するために、線維が酸抵抗性シェルに付加され得る。任意の種類の線維が使用され得るが、それが含む酸抵抗性シェルおよび任意の線維は、摂取され、消化されるので、食用線維、例えば特定の植物由来線維が特に有利である。前述のものに関わらず、栄養および/または医薬製品における使用に適切な場合、無機線維が使用され得る。適切な植物線維としては、例えば植物の茎の周囲の被膜もしくは篩部(bast)または植物の果実由来の線維(例えばバナナ線維、ココナッツ線維、ダイズ線維等)または葉もしくは葉柄由来の線維(例えば小麦、米、大麦、草等)が挙げられ得る。線維は、ロウ状のマトリックスと混合され得、次いで水相はその中で乳化され、または線維は、ロウ状のマトリックス(含まれる水相ありまたはなし)が適用され得る補強または支持構造を構築するために使用され得る。さらに他の態様において、孔についての構造は、それが形成される場合に酸抵抗性シェルにくまなく散乱される消化性材料と共にパターン化され得、膜は、治療剤区画または治療剤自体の上に配置される。
【0140】
態様において、ロウ状のマトリックス材料は、予め形成された格子に適用され得、ここで格子は、より堅いワックス、ポリマー性網目構造または線維から形成される。態様において、格子は、ワックス、脂肪または脂肪酸でコーティングされた脱線維化(defibrillated)線維により形成され得、格子は次いで、酸抵抗性シェルのためのロウ状の基質でコーティングされる。気体形成物質および/または空間占有流体もしくは固体は、格子に適用されるロウ状基質内に含まれ得るか、またはかかる物質は、コーティングされた格子内に存在する孔もしくはチャンネルにより胃酸が到達し得る下層コーティング(undercoat)に含まれ得る。
【0141】
態様において、障壁形成物質(気体生成物質および/または空間占有物質のいずれにせよ)は、格子がワックスでコーティングされる前、格子がワックスでコーティングされる後またはその両方でそこに配置される格子の隙間内に存在し得る。例えば、格子は最初に形成され得、次いで以前に記載された水中ワックスエマルジョンによりコーティングされ、ここでエマルジョンの水相は、重炭酸塩の濃縮された水溶液を含み;水が蒸発する場合に、重炭酸塩は、エマルジョンがそれを運ぶ場所、例えば格子構造の谷部および中空内に残る。他の態様において、pH感受性物質、例えば気体生成物質は、マトリックス内で線維に取り付けられ得るので、線維が胃酸により消化される場合、酸も気体生成物質を含みそれらを活性化し、そのため気体または流体は、孔を充填して、分散性酸障壁として酸抵抗性シェルの表面に到達するようになる。態様において、線維は、障壁形成物質でコーティングされ得るかまたはそれにより浸透され得、例えば障壁形成物質は、線維に接着するかまたはその中に埋め込まれる。態様において、線維中に障壁形成物質を含むために、線維は、障壁形成物質材料と共に一緒に押し出し成型され得る。他の態様において、上述のように、障壁形成物質は、溶液中の線維に進入し得、その後線維が乾燥する際に結晶化される。
【0142】
態様において、酸抵抗性シェルは、例えば上述のエマルジョン技術を使用して別々に形成され得、固化され得る。次いで、固体または半固体の層は、内部腐食性層の周りにまかれ得るか、またはそれは、腐食性層(例えばゲルカプセル)内に既に囲まれる治療剤の周りにまかれ得る。2層系において、酸抵抗性シェルは、酸およびプロテアーゼの両方に抵抗する物質、例えばワックスから形成され得る。内部層は、プロテアーゼにより消化性である材料、例えばゼラチンカプセルにから形成され得る。内部層は、例えば図5および6に示されるように、経口摂取性送達系自体に固有であり得るか、または内部層は、図10に関して以下に記載されるように、治療剤区画内に存在する治療剤の剤型に固有であり得る。さらに、2層または多層系において、気体生成物質は、内部腐食性層と酸抵抗性シェルの両方内に配置され得ることが理解される。
【0143】
態様において、障壁形成物質を保有する線維の層は、酸抵抗性シェルを提供するためにロウ状のマトリックスなしで使用され得る。例えば、トウモロコシの殻または他の植物性物質などの不溶性線維は、障壁形成物質が懸濁、取り付けまたはそうでなければ配置される網目構造またはクモの巣状の層を形成するために使用され得る。かかる層において、障壁形成物質は、溶解性の特定の線維内に配置され得るので、障壁形成物質は、線維が溶解される際に、線維から解放される。態様において、接着剤材料は、障壁形成物質を可溶性または不溶性の線維に取り付け、一方で他の態様において;種々の食用の接着剤が利用可能であるか、または線維をコーティングし、その近位に障壁形成物質トラップするためにワックスなどの材料が使用され得る。次いで、これらのコーティングされた線維を使用して、任意の他のロウ状のマトリックスとは別に、酸抵抗性シェルを形成し得る。網目構造またはクモの巣状の線維を作製して酸抵抗性シェルを提供するために、線維は、例えば織り、押し出し成型、空気積層(air-laying)、スピン融解(spin melting)等の任意の商業的に利用可能な技術を使用してもつれ得る。有利なことに、構造的安定性を提供するためおよび最初に酸抵抗性シェルを胃の流体の流入から保護するために、外部コーティングが酸抵抗性シェル上に適用され得る。有利なことに、それ自体が障壁形成物質に埋め込まれるかまたは埋め込まれずに、治療剤放出の微調整を可能にするために、内部腐食性層が提供され得る。
【0144】
障壁形成物質として空間占有固体または流体を使用するこれらの系について、孔内でのそれらの分散の代わりにまたはそれに加えて、酸抵抗性シェルのマトリックス内で障壁形成物質を分散するために同様の技術が使用され得る。例として、内部腐食性層は、治療剤の頂部に形成され得るか、または封入された治療剤として、例えば治療剤を含むゲルカプセルとして第三者により提供され得る。次いで、層内の空の孔の系を開発するために、治療剤形成要素を、ミツロウおよびポリイソブチレンの層でコーティングし得、その中で除去され得る溶解性であり得る材料が懸濁される。例えば、重炭酸塩ナトリウム結晶は、ロウ状の層内に懸濁され得、層を酸に暴露することにより除去され、これにより重炭酸塩が二酸化炭素に変換される。撹拌により、二酸化炭素の泡がロウ状の層から排出され得、空のチャンネルまたは孔がその後に残る。これらのチャンネルは、浸漬、噴霧、注入または当該技術分野で公知の他の技術により空間占有流体または固体で充填され得る。一旦チャンネルが空間占有流体および/または固体で適切に充填されると、これらの物質は、以前に記載されるように、デバイスが摂取される場合に、デバイスを胃の流体から保護し得る障壁を生じる。
【0145】
5. 経口摂取性送達系:コーティングおよびさらなる層
当業者に理解されるように、酸貫通の速度および/または酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の分解時間は、例えば外部酸抵抗性層の厚さを増加することまたは外部酸抵抗性層に添加剤を含ませて、酸抵抗性を向上すること、剥げ落ちやすさを減少することもしくは外部酸抵抗性層の下にある腐食性層への接着を変化させることにより、治療剤についての所望の送達プロフィールに適合するように作り変えられ得る。さらに、内部腐食性、例えばプロテアーゼ消化性の層などの内部層は、プロテアーゼに暴露される場合にその消化を遅延する剤を含むように製剤化され得、それにより治療剤区画に含まれる治療剤を保護し、その放出を遅延させる。例えば、内部腐食性層がゼラチンで形成される場合、遅延物質は、ゼラチン自体内で製剤化され得、治療剤は、かかる特別に製剤化されたゼラチン層に囲まれ得る。
【0146】
他の態様において、障壁形成物質を含む層は、酸抵抗性シェルの下または酸抵抗性シェル内に提供され得るので、酸抵抗性シェルを貫通する胃の流体は、その中に配置される障壁形成物質へのアクセスを有する。かかる保護層は、ゼラチン層などの内部腐食性層に適用され得るか、またはそれ自体の層として、酸抵抗性シェルの下面に適用され得る。後者の情況において、酸抵抗性シェルおよび障壁形成物質を含む保護層は、別のゼラチンカプセルまたは第三者により提供される他の形成要素に適用され得、ここで他の形成要素は、治療剤または送達可能な治療剤を含み得る。
【0147】
態様において、酸抵抗性シェル(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)は、胃の流体の通過を可能にするように構築され得るが、流体は、保護層内で障壁形成物質と遭遇する。図12に例示的態様を示す。図12は、孔の系1212により貫通される酸抵抗性シェル1208を示す経口摂取性送達系1200の態様の断面を示し、ここで経口摂取性送達系は、平行かつ実質的に同様のサイズで示され、例えば酸抵抗性シェル1208のマトリックス1218を、複数の同一線上のマイクロニードルで穴を開けることにより作製される。孔の系1212は、以前に記載されているように、直線、湾曲、蛇行状、分離、交差または非交差であり得ることが理解される。示される態様において、孔の系1212は、空であり得るかまたは障壁形成もしくは非障壁形成のいずれかの流体もしくは固体材料で充填され得る。示されるように、孔は、異なる長さであり、それらは異なる深さまでマトリックス1218を貫通するが、孔は、同様の程度のマトリックス貫通で、同様の長さであり得ることが理解される。孔のいくつかまたは全ては、酸抵抗性シェルを完全に貫通し得る。示されるように、酸抵抗性シェル1208の下に配置され得る複数の障壁形成物質1202は孔の下に配置され、孔の系1212に進入する胃液(示さず)は、障壁形成物質1202のいくつかまたは全てにアクセスして、それらを活性化、例えば孔の系1212に進入し得、胃の流体のさらなる進入を防ぐように孔を遮断し得る気体の泡1204を放出し得る。示される態様において、さらなる任意の保護層1210が、酸抵抗性シェル1208の下表面上、酸抵抗性シェル1208と治療剤チャンバー1206の間に図示される。示されるように、障壁形成物質1202は、点線A-A'の左(セクション1)に示されるように、保護層1210の頂部およびその中;または単純に点線A-A'の右および点線B-B'の左(セクション2)に示されるように、保護層1210内;または点線B-B'の右および点線C-C'の左(セクション3)に示されるように、保護層1210の下;または点線C-C'の右(セクション4)に示されるように、保護層1210の頂部に配置され得る。保護層1210が内部腐食性、例えばゼラチンなどの酸加水分解性および/またはプロテアーゼ消化性材料で形成される場合、1214に概略的に示されるように、これは、孔の系1212を通ってこれに到達する胃の流体により腐食され得る。酸抵抗性シェル1208およびプロテアーゼ消化性保護層1210の組合せは、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を形成する。酸またはプロテアーゼが障壁形成物質1202に被さる保護層1210を消化する場合、これらの物質は、放出されるか活性化されて、孔の系1212に進入し、そうでなければ孔の系1212に進入する胃の流体のさらなる効果に対する保護を提供し得る。
【0148】
態様において、保護層1210は、ゼラチンなどの酸加水分解性および/またはプロテアーゼ消化性材料で形成される。しかしながら、保護層1210は、任意の生体適合性材料で形成され得る。例えば、態様において、保護層1210は、必ずしも酸加水分解性および/またはプロテアーゼ消化性ではない腐食性層であるが、むしろ胃腸管の適切な区分における治療剤の放出を最適化するように選択される材料(1つまたは複数)で作製される。障壁形成物質1202の配置は、保護層1210に関してこの図において図示されているが、保護層1210は任意であることが理解される。保護層1210の非存在下で、障壁形成物質1202は、別のシートとして酸抵抗性シェル1208(例えば酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜)の下に配置され得るか、または障壁形成物質1202は、酸抵抗性シェルマトリックス1218の下表面に取り付けられ得るか、または障壁形成物質1202は、治療剤区画1206に取り付けられ得るかまたは送達可能な治療剤(示さず)と一体化され得る。他の態様において、この図に示されないが、本明細書に記載される障壁形成物質を含むシートまたは保護層は、任意のレベルで酸抵抗性シェルマトリックス内に配置され得:これは酸抵抗性シェルマトリックスの下に配置される必要はない。
【0149】
本明細書に開示される原理を実現する例示的な多層設計において、酸加水分解性および/またはプロテアーゼ消化性カプセル、例えばゼラチンカプセルは、送達可能な薬物を包み得、次いでこのカプセルは、固体の層でコーティングされ得る。このコーティングは、カプセルの表面に噴霧される固体を含む懸濁物もしくは溶液であり得、および/またはカプセルはまた、コーティング中に浸漬され得るかもしくは転がされ得る。以前に記載されるように、固体は、カプセルの周りに巻かれるように、または酸抵抗性シェルの下表面に固定されるように、または酸抵抗性シェルの2つの層に挟まれるように、それら自体の予め形成された層に含まれ得る。しかしながら、配置されるこの層内の固体は、気体産生固体または非気体形成固体であり得る。それらは、それらの適用を容易にする液体もしくはゲルビヒクル、例えば噴霧プロセスの間に容易に除去される揮発性液体または経時的に固化し得る濃縮可能もしくは硬化可能な液体に懸濁され得る。固体を懸濁するために液体単独が使用され得るか、または例えばゼラチン、シェラック、トウモロコシデンプン、ゼイン、ペクチン等の層の固化を補助するために他の添加剤が使用され得る。例示的態様において、炭酸カルシウムをゼラチンに懸濁し得、懸濁物を加熱する。加熱されながら、懸濁物は、下にあるゼラチンカプセル上に噴霧され得、経時的に固化し得るか、またはゼラチンカプセルは懸濁物に浸漬され得る。これらの技術により、固体材料の粒子は、それら自体の層の内部にトラップされ、固められる。一旦この層がゼラチンカプセルに適用されると、次いでワックスの層が、その頂部に適用されて、酸抵抗性シェルが作製され得る。この酸抵抗性シェルは単純に、ワックスおよび可塑剤として働くポリイソブチレンなどのポリマーで形成され得る。ワックス層に、それを貫通する孔が提供され、胃の流体が、ワックス層に浸透して、固体を含む層に到達することが可能になる。かかるワックス層を形成するためにいくつかの機構が既に記載されている。例えば、ワックスは、噴霧されて層を形成し得、これは、ミクロンサイズの一体化した液滴または「小石(pebble)」による層を作製する技術である。このシナリオにおいて、小石の間の空間は、流体透過性チャンネルとして働くので、胃の流体は、チャンネルを通過して下にある固体の層にアクセスし得る。別の機構として、ワックスを均一なシートに適用し得、その後シート中に孔を形成し得る。マイクロニードルなどの機械的な手段を使用して、シート中に孔を形成し得る。線維を腐食するかまたは線維と相互作用して、ワックス層中に孔または切れ目を作製する胃の流体により、消化性線維を使用して孔を形成し得る。酸抵抗性シェル内に孔の系を作製するための他の機構が、当業者により構想され得る。
【0150】
上述のような噴霧または浸漬技術の他に、本明細書に開示される原理に従う経口摂取性送達系を開発するために使用され得る他のハイスループット製造技術がある。例えば、全経口摂取性送達系は、以前に形成された多層シートで形成され得るか、または経口摂取性送達系は、1つ以上の別々に形成されたシートで形成され得る。例えば、酸加水分解性および/またはプロテアーゼ消化性層(例えばゼラチン)は最初に、ブレードコーティング、押し出し成型、カーテンコーティング(curtain coating)または当業者に良く知られた他の技術により形成され得る。ブレードコーティングは、均一に薄い液体のフィルムを、表面上に液体を均一に広げるブレードなどの移動平化デバイスの使用により、表面上に連続に適用するプロセスである。押し出し成型(例えばホットメルト押し出し成型)は、熱および圧力をかけて材料を融解し、連続プロセスでそれをスリットまたは開口部に通すプロセスであり、バッグ、球、フィルム、シート、チューブ、線維、泡およびパイプなどの種々の形状において均一な形状および密度を有する生成物の形成が可能になる。カーテンコーティングは、シートとして流体を分配する保持タンクの基部で、スリットまたは金型により作製される、基板上に落ちる流体の連続したシートを作製する。経口摂取性送達系の1つ以上の層は、この方法で形成され得、次いで層が合わされて、全体の経口摂取性送達系を形成し得る。例えば、ゼラチンなどの第1の酸加水分解性および/またはプロテアーゼ消化性の層は平坦なシートとして形成され得、次いで酸抵抗性シェルは別のシートとして形成され得る。これらの2つの層は、一緒に合わされて、2層複合物を形成し得、上述のように酸抵抗性シェルに孔が形成される。かかる2層複合物は、酸抵抗性シェル層およびプロテアーゼ消化性層を含む場合、酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜を形成する。障壁形成物質は、上述のように、酸抵抗性シェル内またはその下に配置され得る。かかる層を形成するための技術のいずれかは、当業者に理解されるように、経口摂取性送達系の層のいずれかまたは全てに使用され得る。
【0151】
当業者にさらに理解されるように、酸抵抗性シェルの分解時間は、内部腐食性層の頂部または下にコーティング、例えば胃酸および/またはプロテアーゼに暴露される場合に遅延放出もしくは拡大放出特性を有するコーティングを付加することによりさらに調整され得る。また、酸抵抗性シェル自体は、例えば胃酸および/またはプロテアーゼに暴露される場合に遅延放出もしくは拡大放出特性を有するさらなる犠牲的または非犠牲的コーティングで被覆され得る。かかる層を形成するための技術は、当該技術分野で周知であり、噴霧、浸漬、ブレードコーティング、押し出し成型、カーテンコーティング等の上述の技術が挙げられる。例えば、従来の腸溶性コーティングは、外部酸抵抗性層を頂部に配置する前に、内部腐食性層の頂部(例えばゼラチンカプセルの頂部)に付加され得る。従来の腸溶性コーティングは、小腸内の条件に十分に耐えるように選択および製剤化され得るので、その中に輸送される治療剤区画に囲まれる治療剤が、小腸または結腸内の所望の場所に到達することが可能になる。態様において、治療剤自体は、以前に記載されるように、経口摂取性送達系に一体化される他のコーティング層の代わりにまたはそれに加えて、腸内での治療剤の放出を制御するように意図されるコーティングにより覆われ得る。
【0152】
広範囲の従来の腸溶性コーティング製剤が使用され得るが、経口摂取性送達系は、従来の腸溶性コーティングに使用される材料または厚さよりも強壮でない、さらなるコーティング層(内部腐食性層の頂部または内部腐食性コーティング層の下のいずれに添加されるにせよ)のための材料および厚さの選択を許容する。これは、それらが酸およびプロテアーゼ誘導加水分解を含む胃内の厳しい条件に抵抗し得るように、従来の腸溶性コーティングがより大きな耐久性を必要とするためである。対照的に、本明細書に開示される経口摂取性送達系の分散性酸障壁は、胃の流体から内部腐食性層を保護する。そのため、分散性酸障壁により提供されるさらなる保護のために、従来の腸溶性コーティングと比較して、示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系の中、上または下に挿入される腸溶性コーティングについて、より低い性能要求がある。したがって、態様において、酸およびプロテアーゼ消化に抵抗することにおいてむしろ「弱い」と考えられる腸溶性コーティングが使用され得る。他の態様において、挿入される腸溶性コーティングは、腸内の条件について具体的に設計され得る。例えば、胆汁分泌は、プロテアーゼに加えて、豊富な量のリパーゼおよび界面活性剤を放出する。したがって、挿入される改変された放出層は、予想される速度で中性のpHにおいてリパーゼにより消化性である脂質系製剤であり得る。代替的に、従来の腸溶性コーティングが使用され得るが、通常の層よりも薄い。
【0153】
腸溶性コーティングおよび他の特殊化されたコーティングは、治療剤の剤型に直接適用され得る。腸溶性コーティングおよび他の特殊化されたコーティングは、代替的または付加的に、全経口摂取性送達系に適用され得る。系全体に適用されるコーティングは、系の摂取性を向上するように、または系が胃を通過する際に系を機械的外傷から保護するように選択され得る。例えば、糖菓製造者のグレーズまたは薬学的なグレーズは、デバイス全体の周りに光沢の仕上げおよび保護コーティングを提供し得る。かかるコーティングは製剤化の分野で周知である。かかるコーティングは、シェラック(昆虫の排出物で形成される)およびカルナウバワックスなどの天然の成分で形成され得る。
【0154】
6. 経口摂取性送達系:治療剤改変
以前に記載されるように、治療剤自体は、改変され得るかまたはそうでなければ本明細書に記載される経口摂取性送達系と協力して相互作用するように製剤化され得る。治療剤自体は、剤型の一部として気体生成物質および/または空間占有流体もしくは固体を用いて製剤化され得るか、またはかかる物質の層で覆われ得ることも理解される。例えば、治療剤区画中の剤型は、それらが胃酸と遭遇する場合に活性化のために利用可能である、気体生成物質のさらなる層を噴霧され得る。
【0155】
態様において、治療剤は、治療剤剤型または送達可能な治療剤として製剤化され得るので、それは上にある腐食性層を含み、それが、経口摂取性送達系の示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系に挿入されることが可能になる。これは、治療剤剤型が、経口摂取性送達系の製造者とは異なる関係者により作製されることを許容するので、剤型は、示差的に透過性のカプセル系に導入またはそれで被覆されて、完全な経口摂取性送達系を生じ得る。構成の態様を図13に示す。
【0156】
図13に示されるように、経口摂取性送達系1300は、ここで酸抵抗性層1318を含み、内部分散性酸障壁1316を有するように概略的に示される単層の示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系1304として形成され得、ここで点線は、3つの代表的な気体の泡または流体の滴的を囲み、それぞれは、孔1312内に示される単一の気体の泡または流体の液滴1320と同様であり、内部分散性酸障壁1316は、単一の流体の泡もしくは液滴または一連の流体の泡もしくは液滴または流体の合流層で形成され得るという事実を表す。任意の外部分散性酸障壁1310も示され、ここで示差的に透過性のカプセル系1304は、送達可能な治療剤1302を囲むかまたは包む。以前に開示されている経口摂取性送達系による使用のための示差的に透過性のカプセル系の他の表示と同様に、この図に示される酸抵抗性シェル1318は、そのマトリックス内に孔の系1312を含み、孔1312は、胃酸と気体生成物質の遭遇により産生されている複数の気体の泡1320を含む。この図に示される経口摂取性送達系1300は、胃内の滞留の期間に胃酸に暴露されている。結果的に、孔の系1312内に元から分散される気体産生物質(示さず)は、全体的または部分的に胃酸と反応して、孔の系1312内で気体の泡1320を産生しており、それにより内部分散性酸障壁1316および任意に外部分散性酸障壁1310を形成する。
【0157】
より詳細に、内部分散性酸障壁1316は、内部分散性酸障壁1316を構成する際に3つの非合流の気体の泡のみを示すが、例えば図8に図示され、図8に関連してさらに記載される内部分散性酸障壁の変形の全てが、この図に示される内部分散性酸障壁1316の概略図に包含されることが理解される。この図の気体の泡1320は別個の泡として示されるが、気体の泡1320は、合流し得、孔内の空間のいくつかまたは実質的に全てを占有し得;気体が気体生成物質から放出され、孔1312内に広がる場合に、この合流が予想されることが理解される。この図に示されるように、いくつかの反応しない気体生成物質1322はマトリックス1324内に残り、一方で以前に孔の系1312に含まれたこれらの気体生成物質は、胃酸との接触により既に活性化され、気体の泡1320が孔1312に放出される。この図は、内部分散性酸障壁1316として働く気体の泡1320を示すが、以前に図示されているように、空間占有流体および/または固体も内部分散性酸障壁として働くことが理解される。
【0158】
この図に示されるように、示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系1304は、別々に提供され得る送達可能な治療剤1302を囲む。示差的に透過性のカプセル系1304は、酸抵抗性層1318、ならびに孔1312内および任意に表面1310上に分散性酸障壁1316を提供する。送達可能な治療剤1302は、その後示差的に透過性のカプセル系1304内に囲まれるように第三者により提供され得る。これにより、示差的に透過性のカプセル系1304が、送達可能な治療剤1302の第三者の製造者(一人または複数)の必要性に適合される。
【0159】
態様において、送達可能な治療剤1302は、全体的または部分的に治療剤1308自体の周りに配置される腐食性囲み層1306を含み得る。図は単一の治療剤1308に言及するが、送達可能な治療剤は、1つ以上の同一または異なる治療剤を含み得ることが理解される。送達可能な治療剤1302を囲む示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系1304は、この図に企図されるように気体産生によるかまたは空間占有流体もしくは固体の分散によるかのいずれにせよ、本明細書に記載される機構により、酸抵抗性の層を提供するように設計される。しかしながら、一旦、任意の外部分散性酸障壁1310および/または内部分散性酸障壁1316により提供される保護障壁層(1つまたは複数)が小腸内に分散すると、示差的に透過性のカプセル系1304に含まれる送達可能な治療剤1302は、プロテアーゼを含む腸の流体の内容物からの攻撃に暴露され得る。
【0160】
送達可能な治療剤1302は、独立して、および腸の流体の効果に抵抗または応答するのに任意の有利な方法で製剤化され得る。例えば、態様において、治療剤1308の腸管への送達を改変し得る最初の囲み層1306が提供され得る。一態様において、囲み層1306は、腐食性、例えばプロテアーゼ消化性であり得、上述のように、腸の酵素が上にある酸抵抗性層1318を貫通して、次いで障壁が分散する場合、小腸内の治療剤1308のかなり迅速な放出をもたらし得る。態様において、治療剤1308のためのさらなる囲み層(示さず)は、小腸または大腸内での治療剤1308の放出をより良く改変するために、最初の囲み層1306の上または下に提供され得る。かかるさらなる囲み層(示さず)は、特定の場所への治療剤1308の送達を標的化するため、またはその放出プロフィールを微調整するために、例えば治療剤1308の製剤化の間に付加され得る。態様において、囲み層1306は、最小または全体的に非存在であり得、治療剤1308は、それに付加される別の囲みを有さない錠剤またはカプレットとして製剤化され得る(コーティングされるかまたはコーティングされない)。態様において、送達可能な治療剤1302は、単一の囲み層1306、例えばゼラチンカプセルなどの腐食性の囲み層に全体的に覆われる複数の個々の治療剤剤型を含み得、個々の剤型は、それぞれがそれ自体で、それらの放出を制御する、それらを環境から保護する等の1つ以上の被覆層により囲まれ得るかまたは覆われ得る。他の態様において、送達可能な治療剤1302は、それを保護する、それを支持する、その放出を改変する等の他の物質と共に任意にパッケージ化される単一の治療剤剤型を含む。例えば、プロバイオティック生物を含む送達可能な治療剤1302はまた、生きた生物を支持する、それらに栄養を提供するまたはそれらが、小腸もしくは結腸内のそれらの標的目的地に到達する場合にそれらと共力的に作用する物質を含み得る。他の態様において、酸抵抗性層1318内に分布される複数の治療剤の堆積物(示さず)があり得、種々の治療剤堆積物は、同じまたは異なる送達可能な治療剤を含む。
【0161】
図13に示される経口摂取性送達系1300は、広範囲の送達可能な治療剤1302を用いた使用に適切であり、送達性物質(deliverable)1302はまた、経口摂取性送達系1300内の囲みのために第三者により提供され得る。態様において、示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系1304は、送達可能な治療剤1302とは別に作製され得、2つの構成成分は、特定の送達性物質のために全経口摂取性送達系1300を二次的に形成するように一緒に合わされる。態様において、多くの送達可能な治療剤1302について同じ示差的に透過性のカプセル系1304が使用され得、送達性物質は、例えば製薬会社により製造され、そのために示差的に透過性のカプセル系1304でコーティングされるかまたはその中に包まれる。態様において、示差的に透過性のカプセル系1304は、送達可能な治療剤1302のためにカスタマイズされず;代わりに治療剤1308または薬剤を剤型として製剤化し、次いでそれらを、示差的に透過性のカプセル系1304への挿入またはそれによる囲みのために、ゼラチンカプセルなどの腐食性囲み層1306内にコーティングまたは包む医薬製造者により、送達性物質1302自体に対してカスタマイズが提供される。送達可能な治療剤1302のためのカスタマイズプロセスは、小腸もしくは大腸内の治療剤(1つまたは複数)の送達、その後の示差的に透過性のカプセル系1304のプログラムされた溶解のためのタイミングおよび場所を制御するために、特殊化された製剤、さらなる層、別々の剤型等を含み得る。
【0162】
より詳細に、送達可能な治療剤1302は、図13に示される腐食性囲み層1306を有する液体、半固体または固体の形態の治療剤1308から形成され得る。例えば、プロテアーゼ消化性グリセリンカプセルは、治療剤1308をコーティングまたは包むために使用され得る。グリセリンカプセルの上または下で、所望の特性を付与するため、例えば強度を向上するためまたは放出のタイミングもしくは持続時間を改変するためのコーティングとして、他の層が使用され得る。態様において、グリセリンカプセルの上または下で、酸抵抗性層1318内で実行される障壁の形成(例えば空間占有流体の気体形成または放出)を補充するため、または治療剤放出のタイミングもしくは程度に影響する異なる保護の層を提供するために、障壁形成物質を含むさらなる層が適用され得る。示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系1304の酸抵抗性シェル1318は、送達可能な治療剤1302を囲んで、送達性物質を、胃酸の作用から保護し得るが、それが、上述のような障壁の形成により、腸内の指定される場所に放出されることを可能にする。態様において、示差的に透過性のカプセル系1304および送達可能な治療剤1302は、別々におよび/または異なる製造者により作製され得、2つの構成成分は、同じ製造者(一人または複数)により、または2つの構成成分を合わせて完全な経口摂取性送達系を作製するさらに別の製造者により、その後一緒にされる。
【0163】
送達性物質中の活性医薬剤の一体化を強調して、上に送達可能な治療剤が記載されているが、治療剤の全ての変形が、これらの系および方法を用いた使用に適切であることが理解される。用語「治療剤」は、以下でより詳細に定義および記載されるように、限定されないが医薬、機能性食品(nutraceutical)、診断剤および医学デバイスを含む任意の治療目的のために使用される任意の物質(生体または非生体のいずれにせよ)を含み得る。
【0164】
7. 経口摂取性送達系:食品および飲料のための適用
水膨潤性、酸加水分解性および/またはプロテアーゼ消化性の相を含む経口摂取性送達系は、その親しみおよび嗜好性のために、食品または飲料における経口投与のための特定の利点を有する。かかる系は、例えばAPI、ワクチン、プロバイオティクス等の治療剤を食用送達ビヒクルの構成成分として送達するために使用され得る。例として、経口摂取性送達系は、気体形成物質を含むタピオカデンプン(水膨潤性、酸加水分解性の相)のマトリックス、食品等級セルロース線維の混合された不溶性マトリックスにより浸透される前記の溶解性、水膨潤性マトリックスの混合物を用いて製剤化され得る。該系は、ペレットもしくは粉末としての脱水形態または食用ゲルもしくは液体などの選り抜きの食用送達ビヒクルへの添加の準備ができた他の形成された物品において販売され得る。水和の際、系は膨潤して、経口送達ビヒクルに懸濁される。例として、系は、風味づけされた飲料に溶解される「真珠状のもの(pearl)」(また任意の有利な形状およびサイズ)として形式を定められ得、ここでそれらは、水和して、懸濁され、簡単な撹拌により飲用となる。一旦摂取されると、「真珠状のもの」は、その治療剤内容物のプログラムされた放出を有する、本明細書に記載される他の1層の経口摂取性送達系と同様に挙動する。当業者に理解されるように、食品の着色剤および/または芳香剤/矯味矯臭剤を真珠状のものに添加して、この送達ビヒクルの消費者アピールを高め得る。態様において、この特殊化された経口送達ビヒクルは、より便利であるかまたは商業的に適切である場合に、水和形態で販売され得る。
【0165】
態様において、治療剤を哺乳動物の腸に送達するための、親水性マトリックスおよびその中に配置される疎水性骨格を含む経口摂取性送達系が本明細書に開示され、ここで治療剤は、親水性マトリックスに含まれ、親水性マトリックスはさらに、胃酸への暴露時に気体に変換する気体形成物質を含む複数の気体形成体パケットを含み、親水性マトリックスは、親水性マトリックス残留物を形成するように胃酸または胃の酵素による消化に感受性であり、親水性マトリックスの消化は、気体形成体パケットを胃酸に暴露し、それにより気体形成物質を保護気体に変換し、保護気体は、親水性マトリックス残留物の表面に移動してその上で分散性気体障壁を形成し、分散性気体障壁は、親水性マトリックス残留物を、胃酸または胃の酵素によるさらなる消化から保護し、分散性気体障壁は、腸の十二指腸部分中の重炭酸塩により分散可能であり、それにより親水性残留物の表面が腸の酵素活性に暴露され、腸の酵素活性はさらに、親水性マトリックス残留物を消化し、その中に含まれる治療剤を放出し、それにより治療剤を腸に送達する。態様において、治療剤は、別個のパケット内に配置される。態様において、パケットは、囲まれるかまたはコーティングされる。態様において、治療剤は、親水性マトリックスに含まれる第2の治療剤と合わされる。態様において、治療剤および第2の治療剤は、別個のパケット内に含まれ、他の態様において、治療剤および第2の治療剤の少なくとも1つは、別個のパケット内に配置されることなく親水性マトリックスに含まれる。態様において、親水性マトリックスは、タンパク質または多糖を含み、親水性マトリックスは、親水コロイド特性を有し得る。態様において、タンパク質はゼラチンである。態様において、疎水性枠組みは、セルロース、脂肪酸、ワックス、ポリオレフィンおよび食用または天然のエラストマーからなる群より選択され得る疎水性ポリマーを含む。態様において、疎水性ポリマーは、精製されないミツロウである。疎水性枠組みはさらに、有利な機械的特性を有する第2のポリマーを含み得る。態様において、第2のポリマーは、ポリイソブチレンポリマーまたはセルロースポリマーであり得る。態様において、気体形成物質は、二酸化炭素気体を産生する物質であり、気体形成物質はカーボネートイオンを含み得る。態様において、胃酸または胃の酵素による消化は、消化が親水性マトリックス残留物を形成する際に疎水性枠組みの一部を暴露し、それにより暴露された疎水性枠組みを形成する。保護気体は、それが親水性マトリックス残留物の表面に移動する際に、暴露された疎水性枠組みに接着し得るかまたはそれに取り付けられ得る。
【0166】
治療剤を哺乳動物の腸に送達する方法がさらに本明細書に開示され、該方法は、上述の経口摂取性送達系を提供する工程;経口摂取性送達系を、口を通して哺乳動物に投与する工程;経口摂取性送達系の哺乳動物の胃への通過を許容する工程、ここで経口摂取性送達系は、経口摂取性送達系を消化して部分的に消化された残留物を形成し、経口摂取性送達系と相互作用して、部分的に消化された残留物の表面上で分散性気体障壁を形成する胃酸に暴露され、分散性気体障壁は、部分的に消化された残留物を、胃内のさらなる消化から保護する;および部分的に消化された残留物の腸へのさらなる通過を許容する工程、ここで分散性気体障壁は、腸内の重炭酸塩分泌物との相互作用により分散され、腸内の酵素活性は、部分的に消化された残留物を腐食して、その中に含まれる治療剤を放出し、それにより治療剤を腸に送達する、を含む。態様において、哺乳動物は、治療剤による治療を必要とするヒト患者である。態様において、ヒト患者は、癌、代謝性障害、アレルギー性障害、ホルモン性障害、皮膚科学的障害、心臓血管障害、呼吸器障害、血液学的障害、筋骨格障害、炎症性障害、リウマチ学的障害、自己免疫障害、胃腸障害、泌尿器科学障害、性的および生殖障害、神経学的障害ならびに遺伝的障害からなる群より選択される条件について、治療剤による治療を受けている。態様において、タンパク質またはペプチドまたは生きた生物であり得る治療剤は、胃内での分解に感受性である。
【0167】
以下の図に示されるように、経口摂取性送達系の特定の態様は、食糧および飲料の適用に特に有利である。
【0168】
図14は、断面において、それを通って治療剤1404の別個のパケット(例えば粒子、カプセル、小胞等)が分散され、それを通って気体形成物質1408の複数の別個のパケット(例えば粒子、カプセル、小胞等)がさらに分散される親水性マトリックス1402を含み、親水性マトリックス1402内に配置される疎水性枠組み1410をさらに含む経口摂取性送達系1400の態様を示す。本明細書で使用する場合、用語「パケット」は、問題の物質の別個の堆積物をいい、これは、コーティングされず囲まれない形態(ネイキッドパケット)であり得るか、または全体的または部分的に問題の物質の堆積物を覆う別の材料で囲まれ得るおよび/またはコーティングされ得る。パケット内で送達されている物質は、分散物またはエマルジョンとして固体、液体、ゲルまたはそれらの組合せを含む任意の物理的状態にあり得ることが理解される。
【0169】
その手触りおよび味のために選択され得る親水性マトリックス1402を有する系1400は、その味覚アピールおよびその口当たり(mouthfeel)を最適化するために、消化のために寸法的に適合される。マトリックスに適した食品等級材料は、多糖、例えばデンプン(タピオカ、米およびトウモロコシ等)、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、キサンタンガム、カラギーナン、アラビアガム、寒天、アルギン酸塩等、またはゼラチン、小麦グルテン、トウモロコシゼイン、ダイズタンパク質、ホエータンパク質およびヤエナリタンパク質で作製されるタンパク質溶液を含み得る。適切なマトリックス材料の他の例は、当業者により容易に構想され得る。態様において、マトリックスは、風味または摂取性を向上する、下にあるマトリックスを保護する、潤滑を提供する等のために、従来の丸薬をコーティングするための製剤科学者に良く知られた材料でコーティングされ得る。代表的なコーティングとしては、限定されないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、カルナウバワックス(canuba wax)、メタクリル酸コポリマー、カルボキシメチルセルロースポリマー、酢酸セルロース、ポリビニルピロリドンおよび前述のコーティング剤の混合物が挙げられる。
【0170】
態様において、親水性マトリックス1402は、親水コロイドから形成され得、これは形成に続いて最初に脱水され得、次いで摂取の時間の近くで再水和され得る。例として、タピオカデンプンのマトリックスを有する系1400は、ゼリー状の粘稠度を有する球または「真珠状のもの」として形成され得る。次いで、真珠状のものは、飲料(例えばオレンジジュース、スポーツドリンクまたは単に水)への添加の準備ができた脱水された形態で販売され得る。水和の際に、真珠状のもの(任意のサイズおよび形状、ゴマ種子からエンドウのサイズ、例えば真珠状のものまたは細長いひもまたは設計された「ゴム状」の形状)は、水和して、簡単に撹拌しながら飲料中に懸濁されたままである。
【0171】
他の態様において、系1400は、その最終的な形状に形成され、次いで以前の脱水なしで摂取に供される。任意の消化性形態要素が使用され得、摂取に適した任意の粘稠度が選択され得る。例えば、マトリックスは、シロップまたは飲料などの液体中で嚥下され得る複数のゼラチン状の球に形成され得る。別の例として、マトリックスは、全体を咀嚼し得るかまたは嚥下し得るガムドロップまたはグミ状のクマなどの摂取について興味をそそる形状に形成され得る。系1400は、事実上全ての食品項目(例えばヨーグルト、冷たいスープ、サラダ、ジャム、ゼリー、味付けペースト、香辛料等)および事実上全ての飲料(例えばアイスティー、アイスコーヒー、ミルクシェイク、フルーツジュース等)への添加のために適合され得る。
【0172】
疎水性材料を含む支持枠組み1410が親水性マトリックス1402内に含まれる。系1400は、単一の構造として形成されるが、これは、2つの異なる種類の材料、親水性材料および疎水性材料を含み、そのそれぞれは、本明細書において「相」と称される。そのため、系1400自体は、モノリス状(monolithic)三次元物体であると理解され、その中に2つの相:親水性マトリックス1402および疎水性枠組み1410が分布される。この第2の水不溶性、酸抵抗性の相は、種々の疎水性材料、例えばセルロース、脂肪酸、ワックス、ポリオレフィン、食用/天然のエラストマー(例えば天然のラテックス、クマ・マクロカルパ、ツヌ、ジェルトンまたはチクル)等から選択され得る。誘導体化セルロース(例えばメチルまたはヒドロキシプロピル置換)または不活性セルロース物質(例えば酢酸、2酢酸および三酢酸のセルロース等)などの医薬賦形剤として使用される材料も、疎水性枠組み1410を形成するために適切である。枠組み1410自体は、何ら特定の構造を必要とせず:その形状は、構成成分の網目構造もしくは交差として、または疎水性相に使用される1つまたは複数の材料の特性に基づく任意の他の形状で組織化され得る。態様において、枠組み1410は、懸濁またはそうでなければマトリックス1402内に配置される、適切な規則的または不規則的な形状を有する一体化された単位として形成され得る。他の態様において、枠組み1410は、疎水性要素、例えば配置される疎水性線維、シャード、粒子、複合物または他の寸法的に適切な形状、例えば網目構造、メッシュ、網状物(reticulation)、方眼組織状または方眼格子性の構造等の任意の配置から構築または編集(compiled)され得る。枠組み1410は、単一の疎水性構成成分から形成され得るか、またはそれは、複数の疎水性構成成分を含み得;枠組み1410は、マトリックスにくまなく連続または不連続であり得る。態様において、疎水性枠組み1410は、それ自体が疎水性である活性薬成分から形成され得る。任意に、気体形成物質1408は、親水性枠組みに、取り付けられ得るか、埋め込まれるかまたはそうでなければそれと一体化され得る。
【0173】
本明細書に記載されるように、マトリックス1402および枠組み1410を形成するために、種々の製造技術が利用可能である。例えば、水、重炭酸塩およびウシゼラチンを含む水相は、精製されないミツロウおよびポリイソブチレンを含む疎水性層内で乳化され得、このエマルジョンは、系1400を形成するために使用され得る。かかるエマルジョンにおいて、炭酸カルシウム気体形成結晶は、以下により詳細に記載されるように水相に懸濁され得る。ポリイソブチレンの量は、デバイスに所望の柔軟性および完全性を提供するように選択され得、例えば約0.5%~約5%の範囲の量である。一態様において、エマルジョンは、約1%のポリイソブチレンを含み得る。その構造的強度を向上するために、線維などの添加物がエマルジョンに含まれ得る。態様において、マトリックス1402を形成するために、一般的な親水コロイドが使用され得、疎水性相がその中に埋め込まれるかまたはその中で形成される。態様において、マトリックス1402を形成するために、ホエータンパク質、ダイズタンパク質または天然もしくは部分的に加水分解されたコラーゲンなどの食用タンパク質が使用され得る。態様において、マトリックス1402および枠組み1410二相系が形成され得、その中で疎水性層がゲル層と絡み合い、気体形成物質1408および治療剤パケット1404は、全体の層内に配置される。一態様において、濃縮された重炭酸塩の水溶液中で混合することにより、マトリックス1402内でエマルジョンが形成され得;態様において、このエマルジョン技術は、それらが親水性マトリックス1402内で疎水性枠組み1410を形成するように協同する際に、親水性培体および疎水性培体を合わせるためのプロセスと合わされ得るので、気体形成要素は、系が形成される際に系にくまなく分散される。この技術を使用して、エマルジョンの水相内の水は、蒸発し得、マトリックス1402内の気体生成物質1408の堆積物としての重炭酸塩結晶が後に残る。
【0174】
態様において、非対称な特性を有する系が形成され得る。例えば、上述の技術を使用して、マトリックス1402は、ゼラチンなどの天然由来のポリマーまたはその中に埋め込まれた重炭酸塩結晶を有する作り変えられたポリマー性マトリックスから形成され得る。次いで、この親水性マトリックス1402は、部類分けされた様式で、疎水性枠組み材料と一体化し得るので、より多くの疎水性の材料は周囲に配置され、より多くの親水性の材料は中心に配置される。態様において、相の非対称な配置は、2つの異なる構成成分である親水性相および疎水性相の勾配を生じる温度勾配を使用して形成され得る。この非対称な配置を形成するために、これらの2つの構成成分を含む混合物は、構成成分材料の混合分布が温度の関数になるように、2つの異なる温度境界の間に配置され得る。これにより、2つの構成成分が、温度勾配に対するそれぞれの応答に基づいて、系の体積にわたり示差的に分布される。
【0175】
疎水性枠組み1410が防御用構築物(fortification)を必要とする場合、エマルジョンが形成されている際に、さらなるポリマーが疎水性枠組みに付加され得、ここでかかるさらなるポリマーは、有利な機械的特性を有するように、例えば枠組みの構造的安定性、完全性、硬さまたは可撓性を向上するように選択される。例えば、構造的安定性および完全性を増加するために、少量のゴム状の疎水性ポリマー、例えばポリイソブチレンが付加され得る。その機械的特性を向上するために、例えばポリエチレン、ポリイソブチレン、ポリビニルアセテート等の他のポリマーが、疎水性枠組み1410に単独または組み合わせて同様に付加され得る。例えば、キサンタンガムまたは他の親水性ポリマーは、疎水性枠組み材料と合わされ得る。態様において、疎水性枠組みに対する添加剤としては、セルロース誘導体(例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)および他の親水コロイド(ペクチン、プルラン、グアーガム、キサンタンガム、アラビアガム、アカシアガム、カラギーナン、アルギン酸塩、キチン、キトサン、デンプン、ダイズタンパク質、ホエータンパク質、コラーゲンおよびゼラチン)、ポリペプチド、ポリビニルアルコール、多糖および誘導体、ヒアルロン酸、ポロキサマー、PEG、ポリ(N-ビニルピロリドン);単糖およびオリゴ糖などの小分子、水溶性の塩、グリセロールおよび食用界面活性剤(例えばラウリン酸アルギネート)が挙げられ得る。
【0176】
態様において、水膨潤性、酸加水分解性および/またはプロテアーゼ消化性の親水性相および水抵抗性かつ加水分解抵抗性の相を有する経口摂取性送達系1400が形成され得る。本明細書に記載される治療剤パケット1404および気体形成体パケット1408がこの系内に配置される。態様において、水膨潤性、酸加水分解性および/またはプロテアーゼ消化性の相は、多糖、タンパク質またはそれらのいくつかの組合せを含み得る。当該技術分野においてよく知られる多糖、例えばデンプン(タピオカ、米およびトウモロコシ等)、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、キサンタンガム、カラギーナン、アラビアガム、寒天、アルギン酸塩等がこの相に使用され得る。態様において、水への暴露の際に膨潤するそれらの能力を発揮するために、親水コロイド特性を有する多糖が選択され得る。ゼラチン、小麦グルテン、トウモロコシゼイン、ダイズタンパク質、ホエータンパク質およびヤエナリタンパク質などのタンパク質がこの相に使用され得、水膨潤性タンパク質溶液を形成し得る。気体生成物質1408および治療剤パケットがこの層内に分散される。水不溶性、酸抵抗性の相は、種々の物質、例えばセルロース、脂肪酸、ワックス、ポリオレフィン、食用/天然のエラストマー(例えば天然のラテックス、クマ・マクロカルパ、ツヌ、ジェルトンまたはチクル)から形成され得る。この水不溶性、酸抵抗性の相は、この相の強度および耐久性を向上することを意図する線維などの非消化性の食品等級の材料も含み得る。
【0177】
態様において、線維(示さず)は、強度、弾性または耐久性を向上するために、マトリックス1402または親水性枠組み1410に付加され得る。食用線維、例えば特定の植物由来の線維、例えば植物の茎の周囲の被膜もしくは篩部または植物の果実由来の線維(例えばバナナ線維、ココナッツ線維、ダイズ線維等)または葉もしくは葉柄由来の線維(例えば小麦、米、大麦、草等)が特に有利である。線維は、疎水性相もしくは水相と混合され得るか、または線維は、疎水性枠組み1410を作製するために、疎水性材料が適用され得る補強または支持構造を構築するために使用され得る。態様において、疎水性材料は、予め形成された格子に適用され得、ここで格子は、より堅いワックス、ポリマー性網目構造または線維から形成される。態様において、格子は、ワックス、脂肪または脂肪酸でコーティングされた脱小線維化線維により形成され得、次いで格子は、外部酸抵抗性層について疎水性基質でコーティングされる。気体形成物質1408は、格子に適用される疎水性材料内に含まれ得るか、または気体形成物質108は、格子が疎水性材料でコーティングされる前、格子が疎水性材料でコーティングされる後またはその両方にそこに配置される格子の隙間内に存在し得る。例えば、格子は、最初に形成されて、次いで以前に記載された水中ワックスエマルジョンでコーティングされ得、ここでエマルジョンの水相は、濃縮された重炭酸塩の水溶液を含み;水が蒸発する際に、重炭酸塩は、エマルジョンによりそれが運ばれる場所、例えば格子構造の谷部および中空内に残り、濃縮された水溶液から水が失われる際に、それは結晶化する。他の態様において、気体生成物質1408は、マトリックス1402内で線維に取り付けられ得るので、線維が胃酸により消化される際に、酸はまた、気体生成物質と接触して、それらを活性化し、図15において以下に示されるように分散性気体障壁の形成を生じる。
【0178】
二組のパケット:治療剤1404のパケットおよび気体形成物質1408のパケットがマトリックス内に埋め込まれる。本明細書で使用する場合、用語「パケット」は、治療剤または気体生成のいずれにせよ、問題の物質を含むように寸法的に適合された任意の種類の可視または半可視の構造をいう。「パケット」は、物質自体から一体化して形成され得るか、またはそれは、その中に物質が含まれるカプセル、覆いまたは他の容器として形成され得る。態様において、パケットは、約0.01ミクロンから約1ミクロンまでのサイズの範囲であり、それらは規則的または不規則的に形成され得、限定されないが、球、立方体、台形、線形、小線維、フレーク状、もつれ、細長い、円筒形、先細りまたは均一の形状およびそれらの組合せなどの任意の都合の良い形状で形成され得る。全ての態様において、パケットは、送達系自体のサイズよりも実質的に小さいサイズである。態様において、特定の物質についてマトリックス内に数百または数千のパケットがあり得る。
【0179】
パケットのサイズおよび形状は、多数のパケットがマトリックス中に懸濁され得、無作為または規則的なパターンでマトリックス中の物質の分散が許容されるようなものである。例えば、パケットは、マトリックスにくまなく適切に均一に分散され得るか、またはパケットは、特定の領域に優先的に配置され得る。例えば気体形成体パケット1408は、系1400の表面のより近くに配置され得、一方で治療剤パケット1404は、より中心に集められ得る。以下により詳細に記載されるように、系の治療目的を達成するために、当業者によりパケットの他の配置が構想され得る。気体形成体パケット1408は、胃酸に暴露される場合に気体を酸性する、固体または液体形態の気体産生物質を含む。本明細書で使用する場合、用語「気体形成体」または「気体形成物質」は、それが胃液内に見られるような酸と反応する場合に気体を産生するように選択される材料をいう。胃内の塩酸への暴露の際、二酸化炭素を発生する気体形成物質が特に有利である。気体形成物質(例えば炭酸カルシウム(沈降炭酸カルシウム(PCC)を含む)などの二酸化炭素形成体、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム等または例えばマグネシウム粒子等の水素形成体)は、固体材料としてまたは態様において、胃酸に暴露される場合に二酸化炭素を放出するようにマトリックス内のパケットに埋め込まれ得る他の物理的状態で存在する。一態様において、気体形成物質は、マトリックス内に配置される消化性ポリマーまたは小分子担体内に埋め込まれ得るので、胃酸との接触の際に、担体は、分解されて、胃酸と反応するように埋め込まれた気体形成物質を暴露する。
【0180】
例として、沈降炭酸カルシウム(PCC)は、胃内の塩酸に暴露される場合に二酸化炭素を発生する。マトリックス1402内に配置されるPCC粒子は、マトリックス1402の外部層が胃酸により加水分解されて腐食される際に、胃酸と接触するようになる。胃酸がPCC結晶と接触する際に二酸化炭素が形成される。二酸化炭素のいくつかは胃液内に自由に拡散するが、他のCO2の泡は、腐食したマトリックスの表面上にそれ自体を整列し、保護障壁を形成する。このプロセスを、以下の図16により詳細に示す。
【0181】
マトリックス1402はまた、治療剤を含む複数のパケット1404を含む。態様において、治療剤パケット1404の分布は、所望の量の治療剤が、マトリックス1402内の治療剤パケットの密度に基づいて、マトリックス1402内に分布されるように予め選択される。これらの治療剤パケット104は、それらの周囲のマトリックス1402と同様に、胃酸加水分解に弱い。そのため、マトリックス1402が胃酸との接触により腐食される場合、治療剤パケット1404のいくらかも加水分解され得る。しかしながら、マトリックス1402内のより内部に配置されるこれらの治療剤パケット1404は、図15により詳細に示されるように、系1400の表面に蓄積する二酸化炭素の層の下で保存され得る。
【0182】
態様において、マトリックス1402中の治療剤パケット1404の規則的な分布は、系1400の完全性が例えば咀嚼により破られたとしても、治療剤を均一に放出し得ることが理解される。マトリックス1402が咀嚼を意図する場合、これはより小さな断片に破壊され、そのそれぞれは、マトリックス内のこれらのパケットの密度に基づいて、およびまたそれぞれの咀嚼された断片の体積に基づいて、ある量の治療剤パケット1404および気体形成体パケット1408を含む。マトリックス内の治療剤1404および気体形成体パケット1408の均質な分布により、咀嚼は単に、系1400の全体積をサブ単位に分けて、その中に懸濁されるパケットの機能を損なわず;咀嚼は単に、より大きな系1400をより小さな粒子に破壊し、(以下により詳細に記載されるように)それぞれは、胃酸との遭遇時により大きな系1400と同様に機能する。
【0183】
図15は、その中で治療剤が溶解または分散される親水性マトリックス1502を含む経口摂取性送達系1500の態様の断面を示し、治療剤1504は、マトリックス1502自体と一体化される。この態様において、治療剤1504は、別個のパケットに含まれないが、むしろマトリックス1502に含まれる。また、気体形成物質1508の複数の別個のパケット(例えば粒子、カプセル、小胞等)もマトリックス1502内に分散される。疎水性枠組み1510はマトリックス内に埋め込まれる。任意に気体形成物質1508は、親水性枠組みに取り付けられ得るか、埋め込まれ得るかまたはそうでなければそれと一体化され得る。示される態様の親水性枠組み1510は、その組成および構成において、図14に関して記載されるものと実質的に同様である。
【0184】
図16は、その摂取に続く、胃内の滞留の期間の後の図14に示される経口摂取性送達系1600の態様の断面を示す。この図に示されるように、経口摂取性送達系1600は、その中に治療剤1604の別個のパケットが分散され、その中にくまなく気体形成物質1608の複数の別個のパケット(例えば粒子、カプセル、小胞等)がさらに分散される親水性マトリックス1602を含む。系1600は、親水性マトリックス1602内に配置される疎水性枠組み1610を含む。図16に概略的に示されるように、系1600の形状は、胃内の塩酸への暴露の効果を反映し:図14に示される経口摂取性送達系と比較して、系1600の表面1612は、不規則であり、マトリックスの体積は減少され、胃酸との接触によるマトリックス1602の腐食をもたらす。系1600の完全性は、マトリックス1602内に埋め込まれる疎水性枠組み1610により維持される。この枠組み1610は、胃酸により影響されないので、構造的支持をもたらす。
【0185】
図16にさらに示されるように、特定の気体形成体パケット1608は、まだ胃酸が到達していない場合は依然としてマトリックス1602内に存在する。特定の他の気体形成体パケットは胃酸と接触しており、気体の泡1614aおよび1614bを放出し;例えばPCC気体形成体によると、気体の泡1614aおよび1614bは二酸化炭素気体である。特定の気体の泡1614aは、胃液内に放出され、一方で他のものは、系1600の表面1612と接触したままである。腐食が継続する場合、より多くの気体形成体パケット1608は、胃酸と接触し、系の表面1612上に存在する気体の泡1614bを放出する。これらの泡1614bは合流して分散性気体障壁1618を形成し、これは次いで下にあるマトリックス1602およびその中に含まれる治療剤パケット1604を保護する。図16に示される酸腐食の後、分散性気体障壁1618が形成される前に胃酸に遭遇する場合、より表面にある治療剤パケットのいくつかは、加水分解または消化される。しかしながら、分散性気体障壁1618が固化すると、残りの治療剤パケット1604は保護され得る。
【0186】
図16に示されるように、特定の気体形成体パケット1608はマトリックス1602内に残り、胃酸と接触しない。そのため、示される態様において、それらの保護効果は、それらの気体形成能力が活性化されないので消失する。態様において、気体形成体パケット1608および治療剤パケット1604は、マトリックス1602中にくまなく実質的に均一に分布される。気体形成体パケット1608および治療剤パケットは、より小さい体積の咀嚼された断片内に比例して分布されるので、この配置は咀嚼可能な系を用いた使用に有利であり、そのためにそれぞれの咀嚼された断片からの治療剤の送達は、比例して均一である。しかしながら、パケットがマトリックス1602中にくまなく比較的均一に分布されるこの均一な分布は、特定の割合の治療剤パケット1604をより表面に配置し得るので、それらは胃酸による攻撃に弱い。かかる配置において、これらのより表面の治療剤パケット1604は、胃酸がマトリックスを腐食する際に犠牲になり;そのため、それらの内容物は破壊され、その必要がある患者に送達されない。代替物として、ある態様において、気体形成体パケット1608および治療剤パケット1604の示差的な配置があり得るので、気体形成体パケット1608はより表面にあり、一方で治療剤パケット1604はより深く埋められる。この配置により、より表面に配置される気体形成体パケットが、最初に胃酸に遭遇し、マトリックス1602が十分に腐食されて、治療剤パケット1604を胃酸の有害な効果に暴露する前に、分散性気体障壁1618を形成する。他の態様において、マトリックス1602は、胃酸を、孔またはチャンネルを介してマトリックスに貫通させ得、マトリックス内部に配置される気体形成体1608と反応させ得る複数の孔またはチャンネル(示さず)により貫通され得る。さらに他の態様において、系1600は、胃酸をマトリックス1602に運ぶ線維または他の導管を含み得るので、内部の気体形成体1608が活性化され得る。
【0187】
系1600の表面1612上に形成される分散性気体障壁1618は、マトリックス1602およびその中に分散される治療剤パケット1604の残りを、胃酸および胃の消化酵素から保護する。しかしながら、系から放出される治療剤について、分散性気体障壁1618は分散されなければならない。これは、以下に記載されるように十二指腸内で起こる。二酸化炭素は、腸の中性の分泌物に溶解し、膵臓分泌物内に放出される重炭酸塩と反応するので、分散性気体障壁1618の主成分として特に有利である。この特徴は、気体生成物質に対する胃酸の作用により胃内で形成された二酸化炭素気体障壁を十二指腸内に迅速に分散させ、以下により詳細に記載されるように、種々の膵臓酵素の酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜への進入を可能にする。
【0188】
図16に示されるように、経口摂取性送達系1600のマトリックス1602の外部面は、酸消化のために腐食され、マトリックス材料が消失し、治療剤1604のいくつかが消失する。胃内での治療剤1604の消失を制御するために、系1600は、マトリックス1602の表面層の腐食を減少するように作り変えられ得る。上記のように、系1600は、疎水性および親水性の構成成分または気体形成体1608の示差的な配分により設計され得るので、より多くの疎水性材料および/またはより多くの気体形成体1608が、酸加水分解に抵抗するように周囲に配置される。また、上記のように、治療剤1604は、より中心に配置され得るので、それは、マトリックス1602の周囲が消化されるのと同程度には消化に対してアクセス可能ではない。態様において、添加剤は、マトリックス1602全体にまたはマトリックス1602の外部に一体化され得、その酸抵抗性を向上する。態様において、マトリックスは、プロテアーゼに暴露される場合にその消化性を妨げる剤を含み得、それにより内部に含まれる治療剤1604を保護する。例えば、マトリックス1602がゼラチンで形成される場合、ゼラチン自体の中に遅延物質が配合され得る。
【0189】
当業者にさらに理解されるように、マトリックス1602の分解時間は、その頂部にコーティング、例えば胃酸および/またはプロテアーゼに暴露される場合に遅延放出または延長放出特性を有するコーティングを付加することによりさらに調整され得る。かかる層を形成するための技術は当該技術分野で周知である。ある態様において、腸溶性コーティングは治療剤パケット1604に適用されて、それらが小腸内の条件から保護され得、それにより治療剤1604が十二指腸の遠位の所望の位置、例えば空腸、回腸または結腸に到達することが可能になる。広範囲の従来の腸溶性コーティング製剤が使用され得るが、従来の腸溶性コーティングに使用されるこれらの材料または厚さよりも強壮でない治療剤パケット1604のための保護コーティングが選択され得ることが構想される。これは、従来の腸溶性コーティングが、酸およびプロテアーゼ誘導加水分解を含む胃内の厳しい条件に抵抗し得るようにより高い耐久性を必要とするためである。対照的に、胃内で形成される気体障壁1618は、系1600を加水分解から保護する。そのため、治療剤パケット1604に適用される腸溶性コーティングについて、従来の腸溶性コーティングと比較して、より低い性能要求がある。したがって、態様において、酸およびプロテアーゼ分解への抵抗において、むしろ「弱い」と考えられる腸溶性コーティングが使用され得る。他の態様において、治療剤1604のための腸溶性コーティングは、腸内の条件に対して特異的に設計され得る。例えば、胆汁分泌物は、プロテアーゼに加えて豊富な量のリパーゼおよび界面活性剤を放出する。したがって、改変された放出層は、予想される速度で、中性pHでリパーゼにより分解可能である脂質系製剤であり得る。代替的に、通常の層よりも薄いものとしてではあるが、従来の腸溶性コーティングが使用され得る。
【0190】
態様において、系全体に適用されるコーティングは、系の摂取性を向上する、その嗜好性を向上するまたはそれを機械的外傷から保護するように選択され得る。例えば、糖菓製造者のグレーズまたは薬学的なグレーズは、デバイス全体の周りに光沢の仕上げおよび保護コーティングを提供し得る。かかるコーティングは製剤化の分野で周知である。かかるコーティングは、シェラック(昆虫の排出物で形成される)およびカルナウバワックスなどの天然の成分で形成され得る。
【0191】
図17は、その摂取に続く、胃内の滞留の期間後の図15に示される経口摂取性送達系1700の態様の断面を示す。この図に示されるように、経口摂取性送達系1700は、その中にくまなく気体形成物質1708の複数の別個のパケット(例えば粒子、カプセル、小胞等)が分散される親水性マトリックス1702を含む。治療剤は、親水性マトリックス内に溶解または分散される。系1700はさらに、親水性マトリックス1702内に配置される疎水性枠組み1710を含む。図17に概略的に示されるように、系1700の形状は、胃内の塩酸への暴露の影響を反映し:図16に示される経口摂取性送達系と比較して、系1700の表面1712は、不規則であり、マトリックスの体積は減少され、胃酸との接触によるマトリックス1702の腐食を跳ね返す(reflect)。系1700の完全性は、マトリックス1702内に埋め込まれる疎水性枠組み1710により維持される。この枠組み1710は、胃酸により影響を受けず、そのため構造的支持を提供する。
【0192】
図17にさらに示されるように、特定の気体形成体パケット1708は、胃酸がまだ到達していない場合、以前としてマトリックス1702内に存在する。特定の他の気体形成体パケットは、胃酸と接触しており、気体の泡1714aおよび1714bを放出し;例えばPCC気体形成体を用いると、気体の泡1714aおよび1714bは二酸化炭素気体である。特定の気体の泡1714aは、胃液内に放出され、一方で他のものは、系1700の表面1712と接触したままである。腐食が続く場合、より多くの気体形成体パケット1708が胃酸と接触し、系の表面1712上に存在する気体の泡1714bが放出される。これらの泡1714bは、一体化して分散性気体障壁1718を形成し、次いで下にあるマトリックス1702およびマトリックス1702内に分散される治療剤を保護する。図17に示される酸腐食の後、より表面の領域のマトリックス1702は、分散性気体障壁1718が形成される前に胃酸と遭遇する場合、加水分解または消化され;マトリックス1702が腐食される場合、その中に含まれる治療剤も破壊される。しかしながら、分散性気体障壁1718の固化により、残りのマトリックス1702およびその中に分散される治療剤は、保護され得る。態様において、マトリックス1702内の治療剤は、均一に配置されるので、表面のマトリックス1702の腐食は、治療剤の同等の消失を生じる。他の態様において、マトリックス1702内に治療剤の示差的な局在化があり、例えばより高い濃度の治療剤はより中心にあり、より表面のマトリックス1702内により少ない治療剤が含まれるかまたは治療剤は含まれない。この配置において、表面のマトリックス1702の消化または加水分解は、胃酸への暴露後に系1700内の治療剤の全濃度に対してより低い影響を有し:胃酸により腐食されるマトリックス1702の部分は、それが消化されずに残るように保護されたマトリックス1702の部分よりも比較的少ない治療剤を含む。
【0193】
図16に関して記載されたように、ある態様において、より多くの気体形成体パケット1708がマトリックス1702内のより表面に配置されるような気体形成体パケット1708の示差的な配置があり得る。態様において、気体形成体パケット1708のこの示差的な配置は、以前に記載されるようにマトリックス1702内の治療剤の示差的な局在化と合わされ得るので、例えばマトリックス1702のより中心により高濃度の治療剤がある。気体形成体パケット1708がより表面に配置される場合、それらは最初に胃酸に遭遇し、分散性気体障壁1718を形成し、これは次いで残りのマトリックス1702およびその中に配置される治療剤を保護する。気体形成体パケット1708の表面の位置がマトリックス1702中の治療剤の示差的(differential)でより中心の位置と合わされる場合、これは、治療剤にさらなる保護を提供し、マトリックス1702中の治療剤の均一な分散と比較して、胃酸腐食に対するその消失のより多くを防ぐ。態様において、マトリックス1702は、胃酸を、孔またはチャンネルを介してマトリックスに貫通させ得、マトリックス内部に配置される気体形成体1708と反応させ得る複数の孔またはチャンネル(示さず)により貫通され得る。さらに他の態様において、系1700は、胃酸をマトリックス1702に運ぶ線維または他の導管を含み得るので、内部の気体形成体1708が活性化され得る。
【0194】
系1700の表面1712上に形成される分散性気体障壁1718は、マトリックス1702およびその中に分散される治療剤の残りを、胃酸および胃の消化酵素から保護する。図16に関して記載されたように、二酸化炭素は、腸の中性の分泌物に溶解し、膵臓分泌物内に放出される重炭酸塩と反応するので、分散性気体障壁1718の主成分として特に有利である。この特徴により、気体形成物質に対する胃酸の作用により胃内で形成された二酸化炭素気体障壁は、十二指腸内で迅速に分散され、以下により詳細に記載されるように、種々の膵臓酵素の酸抵抗性プロテアーゼ消化性膜への進入が可能になる。
【0195】
上の図は、比較的完全な形態で経口的に摂取されると推定される(咀嚼または口内溶解について許容される)経口摂取性送達系の態様を示す。系と胃酸の遭遇の結果、マトリックス内の気体形成体の胃酸への暴露により、マトリックスは消化されて、それらは系の表面上で一体化する気体の泡を形成して、分散性気体障壁を提供する。しかしながら、態様において、経口摂取性送達系は、その摂取前に酸環境に遭遇し得、それが胃酸に対してどのように応答するかと同様に、暴露に対して応答する。例えば、経口摂取性送達系は、摂取について酸性環境に提供され得るか、またはそれは酸性の液体、ゲルもしくは固体と共に嚥下され得る。胃の前の酸との接触は、胃内であるかまたはそれが胃に到達す前であるかのいずれにせよ、分散性気体障壁を産生するための機構を開始させる。摂取性送達系が胃への到達前に酸に暴露された場合、胃酸とのさらなる接触は、マトリックス内での気体形成体との反応を継続し得、分散性気体障壁を生じることが理解される。
【0196】
態様において、送達系は、1つまたは複数の治療剤の正確な投与を最適化するように作り変えられ得る。その中で治療剤が溶解または分散されるマトリックスの外側のいくつかの腐食があることが理解される。治療剤のいくつかがマトリックスの外部面に存在する場合(治療剤パケットまたはマトリックス内で溶解される場合)、それが胃酸または酵素に遭遇する場合に、それは、分解(例えば消化、変性、不活性化、治療効力の消失、不安定性または他の有害な効果)に供される。以前に記載されるように、治療剤および/または気体形成体パケットの示差的な配置は、デバイス内での治療剤の保護を補助し得る。態様において、治療剤は、マトリックス内のより中心に配置され得るので、マトリックスの外側部分は消化されるが、治療剤は胃液との遭遇から逃れる。他の態様において、マトリックスの外側部分における気体形成体パケットの優勢さがあり得るので、それらは胃酸により活性化されて分散性気体障壁を形成し、次いでこれはマトリックス内の治療剤を保護する。
【0197】
さらに他の態様において、治療剤についての送達される用量の計算は、胃液との遭遇により犠牲になる、マトリックスに元から含まれる治療剤の量についての補正を含み得る。態様において、消化されるマトリックスの量は、予め計算され得、治療剤の負荷は、マトリックス消化の間のいくつかの消失を計上した後に、所望の用量が投与されるように調整され得る。特定の数学モデルは、マトリックス消失の近似を許容し;より正確な情報を提供するために経験的方法も使用され得る。
【0198】
態様において、送達系自体のサイズまたは形状を調整することにより、種々の用量の治療剤は投与され得る。例えば、マトリックスは、治療剤が均一な様式でその中に分散または溶解される平坦なリボンまたは細長いストランドまたは中空の円筒として形作られ得る。次いで、リボン/ストランド/円筒を特定の長さに切断することにより、適切な用量の治療剤が提供され得る。例えば、マトリックス内に均一に分布された100mgの治療剤を含む5cmの長さの剤型において、1cmの長さの断片は、20mgの治療剤を含む。
【0199】
別の態様において、送達系は、球または楕円などの対称な三次元の物体に形作られ得、特定の物体中の治療剤の量は、物体の体積に伴い変化する。例えば、5mmの半径を有する球は、約0.52cm3の体積を有し;マトリックスが1cm3当たり100mgの濃度を有する場合、この球は、約52mgを含む。このサイズの球は、全体の嚥下に適切であり得るか、またはそれは咀嚼され得る。咀嚼が回避される場合、球はより小さく作製され得、より多くのより小さな球を嚥下することにより同じ用量が達成され得る。この場合、剤が1cm3当たり100mgの濃度でマトリックス中に存在する場合、2mmの半径を有する球は、約0.033cm3の体積を有し、約3.3mgの治療剤を含む。単一の0.5cmの半径の球と同じ用量の治療剤を提供するために、約16の2mmの半径の球が摂取される必要がある。しかしながら、複数の2mmの半径の球は、全体を嚥下するためにかなり適切であり得、例えば液体または嚥下が容易な食品物質中に懸濁され得る。さらに小さい球、卵形、棒等は、それら自体を、さらに容易な摂取に役立たせ得る。例示目的で、対称の三次元の物体が上述されるが、三次元の送達系は非対称に構築され得るか、または魅力的な形状に成形され得るか、またはそうでなければ医薬製造者、糖菓製造者等に良く知られた技術を使用して作製され得る。
【0200】
態様において、送達系は、その摂取をより容易にするつるつるしたおよび/または味の良いコーティング(例えば糖菓製造者のグレーズ、カルナウバワックス(canuba wax)、ゼラチン、粘漿剤等)でコーティングされ得る。態様において、送達系は、その嚥下を容易にするために、液体、ゲルまたは固体と共に摂取され得る。全体の嚥下のために寸法的に適合されたこれらの送達系について、治療剤の送達される用量を減少する胃内での腐食についてさらなる調整を行うことが依然として必要であり得る。咀嚼が意図される送達系のためのさらなる難題は、単一の剤型の、複数の咀嚼された断片への断片化である。咀嚼後、断片のそれぞれは、断片の体積に基づいて、最初の投与された用量の一部を含むが、それぞれの断片中に存在する治療剤は、例えば断片の表面積または構成に応じて、胃酸および酵素により異なって攻撃され得る。そのため、正確な用量を必要としない治療剤にとって、咀嚼可能な送達系が特に適切である。より正確な用量を必要とする治療剤を含む咀嚼可能な送達系について、投与用量は、適切な量の投与される治療剤が、咀嚼された断片の胃の通過後に患者に利用可能となることを確実にするために、経験的な調査または数学的なモデリングを必要とする。
【0201】
B. 経口摂取性送達系を使用した治療方法
1. 定義および概観
本明細書で使用する場合、用語「治療(treatment)」、「治療すること(treating)」、「治療(therapy)」、「治療的(therapeutic)」等は、ヒトまたは動物の幸福に影響を及ぼす障害または状態を治療(cure)、治癒、緩和、向上、矯正、診断またはそうでなければ有益に影響するように意図される介入をいい得る。障害は、ヒトまたは動物の恒常的な幸福を変化させる任意の状態であり、限定されないが、急性もしくは慢性の疾患、または哺乳動物を急性もしくは慢性の疾患にかかりやすくする病理学的状態が挙げられる。障害の非限定的な例としては、癌、代謝障害(例えば糖尿病)、アレルギー性障害(例えば喘息)、ホルモン性障害、皮膚学的障害、心臓血管障害、呼吸器学的障害、血液学的障害、骨格筋障害、炎症性もしくはリウマチ障害、自己免疫障害、胃腸障害、泌尿器障害、性的および生殖障害、神経学的障害、遺伝的障害等が挙げられる。本明細書で使用する場合、用語「状態(condition)」は、障害、およびそれにもかかわらず特定の疾患または状態に対する感受性を特徴とする非病理学的状態を含む。用語「状態」はまた、ヒトの主観的な利益に対して、向上、増強またはそうでなければ好ましく変化され得るヒトにおける健康の状態(state)を含む。本明細書で使用する場合、用語「患者」は、障害に罹患した任意のヒトまたは動物であり;用語「患者」は、文脈において、ヒト、家庭動物、愛玩動物、農場動物、スポーツ動物、労働動物等を含む任意の哺乳動物をいい得る。患者は、出生前の哺乳動物などの任意の齢であり得る。治療を必要とする患者は、徴候的であるかどうかのいずれにせよ既に特定の障害または状態を有するもの、および障害の予防が望ましいものの両方を含む。
【0202】
本明細書で使用する場合、用語「治療」、「治療すること」、「治療」、「治療的」等は、障害もしくは状態を診断することを意図する、またはそうでなければ患者における障害もしくは状態の状態(status)を評価することを意図する介入をいい得る。かかる診断または評価は、障害または状態の状態または状態を詳細に示すために、任意の種類の介入、手順または情報を集めるプロセスを含み得る。例えば、診断または評価は、生物学、化学または物理学の方法を使用して実行され得る。診断または評価のための例示的および非限定的な生物学的方法は、例えば領域の生検実施、領域由来の剥離した細胞の回収、特定の刺激に対する組織の応答の試験等の技術を含む。診断または評価のための例示的および非限定的な化学的方法は、身体の流体または生物学的試料における化学的パラメーターの測定等を含む。例示的および非限定的な物理的方法は、直接視覚化または画像捕捉による視覚的診査、スキャン、超音波、X線による診断的画像化等を含む。
【0203】
適切な状況下で、用語「治療」、「治療すること」、「治療」、「治療的」等は、ヒトまたは非ヒト被験体における健康または他の所望の身体的もしくは生理学的状態を促進することを意図する介入をいい得るので、「治療」、「治療」等は、満足な、精神に影響を与えるまたは他の非医学的、全体論的もしくは気晴らしの効果を有する介入をいい得る。かかる「治療」、「治療」等の例は、被験体の幸福および健康の感覚を向上することを意図する種々の機能性食品または健康剤を含み得る。かかる「治療」、「治療」等の他の例は、例えば大麻、大麻由来物質、特定のカンナビノイド等の気晴らし、快楽的または肉感的な目的で摂取される物質を含み得る。医療的大麻、合成カンナビノイド生成物、例えばドロナビノール(Unimedにより販売されるMarinol(登録商標))またはカンナビジオール(CBD)調製物Epidiolex(登録商標)(GW Research Ltd.により販売される)および「医師の処方不要な」調製物であるジェネリックカンナビジオールは疾患または障害の治療に有用性を有するが、全植物大麻または向精神性カンナビノイドデルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)などの調製物は、非医学的、気晴らしまたは健康/幸福誘導目的で使用され得る。かかる物質は、医学的または非医学的効果のいずれを達成するにせよ、本開示の目的の「治療」「治療」等であると考えられる。
【0204】
態様において、治療は、治療剤の治療有効量を必要とする患者に治療剤の治療有効量を提供することを含む。「治療有効量」は、既存の障害の治療または予想される障害の予防(かかる治療またはかかる予防のいずれも「治療的介入」である)を実行するための、少なくとも最少濃度の治療剤を必要とするヒトまたは動物に投与される少なくとも最少濃度の治療剤である。
【0205】
広範囲の治療剤は、本明細書に記載される経口摂取性送達系内での配置に適切である。1つ以上の治療剤は、当業者に良く知られた製剤化方法を使用して、経口摂取性送達系内に含まれ得る。態様において、治療剤は、液体、半固体もしくは固体形態またはそれらの任意の組合せでの送達のために製剤化される医薬、機能性食品(すなわち生理学的利益を要求する医薬代替物)または診断剤である。固体形態としては、粉末、ペレット、結晶等が挙げられ得る。半固体形態としては、スラリー、ペースト、ゲル、ガム等が挙げられ得る。治療剤の物性、それらの取込み速度、それらの遅延または制御放出等を高めるように設計された賦形剤を含む治療剤の製剤は、当該技術分野で良く知られた技術を使用して作製され得る。治療剤は、それらを包む、それらを溶解から保護する、それらの放出を長引かせるまたは当業者に良く知られた他の適応を意図する他の膜または層に囲まれ得る。
【0206】
より詳細に、本明細書に記載される経口摂取性送達系内での配置のための治療剤は、即時放出または改変された放出のための剤型として製剤化され得る。本明細書で使用する場合、用語「剤型」は、単回投与で治療効果を達成するのに十分な量の治療剤を含む製剤の任意の形態を意味する。剤型は、活性医薬成分の即時放出または活性医薬成分の改変された放出または放出パターンの組合せを提供するように作り変えられ得る。
【0207】
本明細書で使用する場合、用語「即時放出」は、活性医薬成分(API)が、投与後に迅速に達成される速い溶解プロフィールで剤型から放出される、剤型または送達系をいう。用語「即時放出」は、しばしば単に、高度に溶解性のAPIをいうが、同等の即時放出プロフィールは、薬物溶解を促進するために製剤に界面活性剤などの賦形剤が添加される場合に、より溶解性の低い治療剤により達成され得る。経口摂取性送達系により送達されるおよび即時放出が意図される治療剤は、かなり短い時間(Tmaxと称される)でその最高の血漿レベル(Cmaxと称される)に到達する受動拡散または能動輸送などの機構により、腸粘膜境界を通過し得る。即時放出剤型は通常、プロセスの速度が治療剤の濃度に比例する一次動力学プロフィールに従う単一の作用で治療剤を放出する。
【0208】
即時放出剤型の不利な点に打ち消すためまたは別々の治療結果を達成するために、剤型は、治療剤の放出プロフィールを改変するように設計され得る。本明細書で使用する場合、製剤または組成物のための用語「改変された放出」は、上述の即時放出とは異なる速度で治療剤を送達する任意の剤型をいう。改変された放出剤型は、時間経過または放出場所において即時放出剤型とは異なる薬物放出特性を有する。改変された剤型は、薬物が、最初の投与の時間および場所とは異なる時間および/または場所の点で放出される「遅延放出」、および薬物の放出が、即時放出型と比較して経時的に延長される「延長放出」としてさらに分類され得る。
【0209】
態様において、本明細書に記載される経口摂取性送達系により使用される治療剤は、治療剤が送達系から放出された後であっても治療剤の放出を遅延するように(例えば腸溶性コーティングで)さらにコーティングされ得る。遅延放出改変は、小腸内で送達系から放出される治療剤が、予め選択された解剖学的な場所での取込みのために、胃腸管に沿ってさらに通過することを可能にし得る。例えば、経口剤型は、製剤が胃を通過するまでまたは薬物が胃腸管から結腸まで通過するまで、医薬の放出を遅延するように、腸溶性コーティングされ得る。典型的に、延長放出剤型は、治療剤を、投与後の延長された時間にわたり利用可能にするような様式で製剤化される。延長放出剤型は、持続放出または制御放出としてさらに特徴付けられ得る。持続放出系は、延長された時間にわたり薬物放出の速度を維持する。持続放出剤型は、治療剤を徐々に、例えば小腸全体に沿って放出させ得、延長された吸収期間および結果的な治療範囲の薬物濃度の延長された間隔を生じる。持続的放出剤型は一般的に、顆粒もしくは錠剤をコーティングするまたはその中で薬物が溶解もしくは分散されるマトリックスを形成する種々のポリマーを使用する。制御放出系は、持続放出プロフィールを提供するが、適用の生物学的環境に依存しない治療剤の予想される一定の血漿濃度を提供するように作り変えられる。改変された放出剤型のための種々のアプローチは交換可能ではないが、それらは全て一般的に、毒性を増加するかまたは治療効力を減少する血漿レベルにおけるピークおよび谷についての可能性を減少しながら、単一投与後に薬物が治療範囲にある時間を長引かせる傾向を有する。治療剤の送達のための他のアプローチを使用して、1つまたは複数の剤の所望の血漿レベルを達成し得る。例えば、2つの治療剤用量は、1つの剤型に合わされ得、それぞれの用量は、送達のための異なるタイミングを達成するように製剤化されるか、または2つの異なる治療剤は剤型に合わされ得る。(同じ剤または異なる剤のいずれかで)用量の放出プロフィールを調整することにより、1つ以上の剤の一時的な分布が最適化され得る。持続または制御放出を容易にするための添加剤および製剤は当該技術分野で周知である。例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースまたは他のセルロースエーテルなどのポリマー材料が製剤化に使用され得る。剤型は、持続放出を調整するために腸溶性コーティングにより製剤化され得る。当該技術分野で良く知られたコーティング材料としては、pH依存性溶解性を有するポリマー(すなわちpH制御放出)、遅いかまたはpH依存性の膨潤、溶解または腐食の速度を有するポリマー(すなわち時間制御放出)、酵素により分解されるポリマー(すなわち酵素制御放出)および圧力の増加により破壊される堅固な層を形成するポリマー(すなわち圧力制御放出)が挙げられる。錠剤は、浸透性で制御された放出錠剤を形成するための公知の方法を使用してコーティングされ得る。小腸および結腸における送達のための製剤は、例えばpH6以上のみで可溶性であるポリ(メタクリル酸、メチルメタクリレート)などのメタクリル酸コポリマーに基づく腸溶性コーティング系を含み、そのため、ポリマーは、経口摂取性送達系から小腸への放出の際にのみ溶解し始める。かかるポリマー製剤が崩壊する部位は、小腸通過の速度および存在するポリマーの量に依存する。例えば、結腸への送達のためには比較的厚いポリマーコーティングが使用され得、一方でコーティングのより速い溶解が望ましい場合はより薄い層が適切である。部位特異的結腸送達を提供し得るポリマーも使用され得、ここでポリマーは、ポリマーコーティングの酵素分解およびそれにより薬物の放出を提供するために、大腸の細菌叢に頼る。例えば、アゾポリマー、グリコシドおよび種々の天然に利用可能な改変された多糖がかかる製剤に使用され得る。本明細書に記載される経口摂取性送達系を使用して、複数の治療剤が、送達可能な治療剤として送達され得る。態様において、複数の治療剤は、一緒になって結合され得るか、単一のマトリックスもしくはカバー層内に囲まれ得るかまたはそうでなければその後送達系の治療剤区画内に囲まれ得る単一構造に一体化され得る。他の態様において、いくつかの異なる剤型は、単一の治療剤区画内に囲まれ得、それぞれはそれ自体の囲みおよびそれ自体の送達特性を有する。限定されずに、送達可能な治療剤は、単一または複数の剤型で提供され得、任意に遅延または拡大された放出のために製剤化され得、次いで本明細書に記載される経口摂取性送達系により囲まれ得、かかる剤は、例えばそれぞれの剤を治療剤区画の内部のそれ自体の区画内に配置することまたはそれぞれの剤を、分解および薬物放出のための特定のパラメーターを有するそれ自体の膜に包むことにより、一緒に混合されるかまたは完全もしくは部分的に互いから単離されるかのいずれかである。送達可能な治療剤内の単一の剤また複数の剤は、カプセル内または他の囲み媒体内に含まれるペレットとして製剤化され得る。態様において、1つの治療剤は、単一の形成要素または複数の二層コーティングカプセルのいずれかとして第2の治療剤の表面上にコーティングされ得、二層医薬構造(1つまたは複数)は、治療剤区画内に配置されるので、送達可能な治療剤を含む。1つの形成要素内の2つの治療剤の組合せは、患者の治療計画により必要とされる場合、2つの剤の2方式薬物動態学的放出を達成し得る。代替的にまたは付加的に、腸のより遠位で溶解する外部腸溶性コーティングが提供されて、遅延放出が可能になり得る。態様において、治療剤の組合せは、経口摂取性送達系による送達のための送達可能な治療剤として合わされ得、ここで治療剤の組合せは、相補的または相乗的である。例えば治療剤の組合せ、例えばインクレチンなどのペプチド(例えばエキセナチド)およびビグアニド化合物などの小分子(例えばメトホルミン)は、糖尿病および他のグルコース制御障害を治療するために提供され得る。態様において、小分子治療剤は、マトリックス内で溶解され得、一方で不溶性またはより大規模の治療剤は、マトリックス中でくまなくパケット内に分散される。2つの剤の投与調製物は、適切な血液レベルおよび治療効力が達成されるように滴定され得る。
【0210】
別の例として、互いに相乗的または相補的なプロバイオティック細菌およびプレバイオティック物質などの生きた生物および栄養物質の組合せは、送達可能な治療剤(医薬または機能性食品の使用のいずれが意図されたとしても)として単一の経口摂取性送達系内に含まれ得る。該用語を本明細書において使用する場合、プレバイオティック物質は、腸管内に存在するかもしくは存在するようになる1つまたは制限された数の細菌の増殖および/または活性を選択的に刺激し得る非消化性または最小消化性の食品成分を含み、より広範囲に、宿主に対して健康の利益を付与するように微生物により選択的に使用される物質を含み得る。プレバイオティック物質は、導入されるプロバイオティック生物のための支持環境を提供し得る非消化性の線維(例えばガラクト-オリゴ糖、フルクト-オリゴ糖、オリゴフルクトース、チコリー線維、イヌリン等)などの材料を含み得る。他のプレバイオティック物質は、天然または部分的に加水分解されたコラーゲンおよびプロバイオティック生物のための支持環境として働き得るおよび/または独立機能性食品効果を有する他のタンパク質を含み得る。
【0211】
プロバイオティック生物およびプレバイオティック物質の両方は、経口摂取性送達系により提供される胃から腸管への移動から利益を受け得;経口摂取性送達系の特性およびそれが含む治療剤のパッケージングは、プレバイオティック物質およびプロバイオティック生物を大腸または小腸内の予め選択された目的地に送達するようにさらに最適化され得る。態様において、単一の経口摂取性送達系は、副作用を最小化しながらバイオーム増殖および維持を容易にするように設計されたプレバイオティック物質およびプロバイオティック生物の最適化された組合せを含み得;プレバイオティック物質およびプロバイオティック生物の組合せは、経口摂取性送達系の治療剤区画内で一緒に送達され得る。一緒に投与されるプレバイオティックスおよびプロバイオティックスの組合せは、プレバイオティック物質およびプロバイオティック生物を組み合わせる生成物として理解される「シンバイオティック」としても作用し得、そのためそれらは、それらの増殖および/または代謝を選択的に刺激することにより、胃腸管内の生きた微生物の生存および埋め込みを向上するように相乗的に相互作用する。シンバイオティック製剤に使用されるプロバイオティック株は、乳酸桿菌属、ビフィドバクテリウム種、サッカロミセス・ブラウディ(S. boulardii)、バチルス・コアグランス(B. coagulans)等を含み得、一方で使用される主要なプレバイオティックスは、フルクトオリゴ糖、ガラクト-オリゴ糖、キシロースオリゴ糖、イヌリンなどのオリゴ糖、チコリーおよびヤーコンの根などの天然の供給源由来のプレバイオティックス等を含む。
【0212】
プレバイオティック物質およびプロバイオティック生物の物理的近接は、2つの治療剤の下流の相互作用を最大化するように経口摂取性送達系内で作り変えられ得る。態様において、プロバイオティック生物およびプレバイオティック物質は、別個の経口摂取性送達系、例えばプロバイオティック生物の送達に適合される1つの系およびプレバイオティック物質の送達に適合される別の系を用いて別々に送達され得;この例において、2つの送達系は、患者の臨床的必要性に基づいて、同時にまたは連続して投与され得る。さらに他の態様において、プロバイオティック生物は、プロバイオティック生物の生存力を高めるかまたはそれらの治療効果を増加するために、プレバイオティック成分以外の他の物質と組み合わせて製剤化され得、これらの組合せは、経口摂取性送達系内の送達可能な治療剤として送達され得る。プロバイオティック細菌などの生きた生物を使用する調製物は、従来の方法を使用して、腸の予め選択された領域へのそれらの送達を調整する任意の腸溶性コーティングと共に、例えばペレット型に製剤化され得;他の態様において、凍結乾燥された生きた細菌を含む調製物は、腸内の指定された標的部位へのそれらの送達を容易にするために、ペレット化され得、腸溶性コーティング物質に包まれ得る。当業者に理解されるように、プロバイオティック生物を含む複数のペレットを使用した他の製剤化、例えばプロバイオティック負荷ペレットと緩衝剤(cushoning agent)(微結晶セルロース、ラクトース一水和物、トウモロコシデンプン、多孔質カルシウム等)を混合し、該混合物を、その後経口摂取性送達系の治療剤区画内に含まれ得る錠剤に圧縮する製剤化プロセスが構想され得る。
【0213】
治療剤は、それらが本明細書に記載される経口摂取性送達系から放出される際に、それらの薬物動力学の局面を最適化するように特別に製剤化され得る。経口摂取性送達系を使用して、特定の治療剤は、無傷または活性または活性化可能な形態で、小腸内に送達され得、例えばそこからそれらが腸粘膜を通って吸収されて、それらが全身の循環に到達してそれらの所望の効果を発揮できなければならない。一態様において、これは、1つまたは複数の治療剤を液体またはゲルマトリックス内に製剤化することにより達成され得、そのためそれらはエンドサイトーシス(限定されないが貪食作用、飲作用およびポトサイトーシス(potocytosis)を含む)により吸収され、それにより小胞内で、腸の絨毛の細胞全体に輸送されて循環に進入する。エンドサイトーシスによる治療剤の取込み後、それは腸壁内の細胞外流体への排出のために腸細胞を横切って移動し、そこからそれは、リンパ管および/または全身性の循環に進入し得る。
【0214】
特定の治療剤の製剤化について、治療剤自体は最初に、水性媒体、例えば溶液の水含有量を最小化するようにオリゴ糖が負荷された粘性マトリックスなどの親水性環境の水溶性のタンパク質に溶解され得る。水性媒体は、pH緩衝化され得、1つ以上のオリゴ糖、例えばイヌリン、トレハロース、デキストラン等と共に、非経口投与のためのタンパク質の製剤に見られるような他の保護賦形剤を含み得る。次いで、水性媒体は、油相内に混合されて、水中油エマルジョンを形成し得、ここで水性の液滴は、油性マトリックス内に懸濁される。油相は、当該技術分野で良く知られた食用油および脂肪、例えばココナッツ油、パーム油、オリーブ油、オメガ-3および-6含有魚油等および/またはそれらの対応するモノグリセリドまたは長鎖脂肪酸(またはそれらの混合物)を含み得る。超音波振動および均質化などの医薬製剤化および作り変えにおける公知技術を使用して、水相および油相が合され得、そのために油相は、開始油相として水相の超微細ナノ液滴(例えば直径数十~数百ナノメートル)を含む。レシチンおよびリン脂質などの食用界面活性剤は、エマルジョンを安定化するために使用され得る。この治療剤製剤の経口摂取性送達系からの放出の際に、水性ナノ液滴を含む油性材料は、トランスサイトーシスにより小腸に摂取され得;さらに油相は小腸内のリパーゼの作用に感受性であるが、それはナノ液滴内の治療剤を、腸内の腸プロテアーゼの酵素作用から保護する。結果的に、油性マトリックス内の水性ナノ液滴は、小腸により吸収され得、全身循環へのさらなる吸収のために粘膜を通って細胞外流体に送達され得る。
【0215】
油型ビヒクルは、それらを水性ナノ液滴に含むことなく、他の種類の治療剤を輸送し得る。例えば、凍結乾燥されたタンパク質粒子は、油マトリックス内に永続的に懸濁され得、それが小腸に吸収されてその後経口摂取性送達系からのその放出の際に、油内で共に運ばれ得る。同様に、生きた生物は、油性マトリックス内に単独で懸濁され得るか、またはその後油性マトリックスにより乳化されてその中に生きた生物を有する水性ナノ液滴を含む水中油エマルジョンを形成する粘性の水性マトリックスに含まれ得、水性ナノ液滴は、油性マトリックス内に懸濁される。ある態様において、水性ナノ液滴はまた、生きた細胞を保存および保護するための栄養を含み得;他の態様において、水性ナノ液滴は、生きた細胞の代わりに、例えばウイルス粒子、凍結乾燥細胞等の他の生物を含み得る。
【0216】
治療のための他の組合せは、癌治療またはHIVの治療などの条件について当業者により容易に構想され得、ここで該治療は、異なる薬物動態学的特性および異なる用量を有する複数の薬剤を必要とする。異なる特性(例えば固体、半固体、ゲル化、エマルジョン、単相水性ビヒクル、油ビヒクル等)を有する薬物組合せを経口摂取性送達系内に包むことは、それらが胃および異なる治療剤に対するその効果を迂回し、指定された標的領域に送達されることを可能にし、胃の遠位のより焦点が当てられた特異的なおよび/または予想可能な吸収を可能にする。
【0217】
本明細書に開示されるような治療系および治療方法は、広範囲の病気、疾患および状態に適切である。そうでなければそれらの胃内での分解への感受性のために非経口投与を必要とするこれらの治療剤のために、本明細書に記載される経口摂取性送達系により治療剤を送達することが特に有利である。例えば、特定の小分子は、胃内の酸に暴露される場合に加水分解を受ける。これらが従来の経口製剤に使用される場合、それらは特殊な調製物またはさらにはそれらが胃酸の効果に抵抗することを可能にするためのそれらの化学的構造の改変を必要とする。別の例として、ペプチド、タンパク質および関連のある構造などの1つ以上のペプチド結合を特徴とする分子は、そのプロテアーゼによる胃での酵素の攻撃に感受性であり;これらの分子を含む治療製剤は典型的に、非経口投与を必要とする。さらに別の例として、有益な細菌(「プロバイオティクス」)または他の生きた生物を含む調製物は、胃内での損傷に弱く、最終的に結腸または他の腸標的に到達する生細菌細胞または他の生細胞(適用可能な場合)の数を低減する。例えば、プロバイオティクスを経口投与した場合にそれらを保護するための種々のコーティング戦略および錠剤調製物が調査中であるが、生細菌細胞を含む調製物は一般的に、それらが健康な状態で結腸に到達することを確実にするために、浣腸により送達される。本明細書に記載される系および方法は、生細胞を、これらの脆弱であるが重要な治療剤のためのそれらの腸の目的地に運ぶための、代替的な送達経路および/またはよりよい環境を提供する。
【0218】
さらなる利益として、経口摂取性送達系は、胃に対して有害であり得る治療剤から胃を保護する。特定の部類の薬物、例えばコルチコステロイドまたは非ステロイド性抗炎症剤は、胃の内層に対してよく認識される損傷を与え、胃炎および潰瘍形成を引き起こす。胃を迂回することは、この臓器をこれらの作用から保護することを補助し得、一方で治療剤が非破壊性の様式でその有益な効果を発揮することを可能にする。
【0219】
限定されないが、広範囲の治療剤は、本明細書に記載される経口摂取性送達系を使用する投与に適切である。例えば種々の抗生物質、抗ウイルス剤、抗寄生生物剤、免疫抑制剤等の特定のこれらの治療剤が、現在、経口剤型で利用可能である。本明細書に開示される経口摂取性送達系の使用は、他の利点を提供し得、例えばこれは、薬物動力学を向上し得、胃関連副作用を予防し得る。経口投与に現在利用可能でない他の治療剤、特に胃内の分解に感受性のペプチドおよびタンパク質は、本明細書に開示される経口摂取性送達系を使用して、有利に経口送達され得る。経口摂取に現在利用可能な治療剤および経口摂取に現在利用可能ではなく、現在は非経口または経直腸的に送達される治療剤を用いたその使用の具体例と共に、経口摂取性送達系の治療的使用のさらなる記載が以下に提供される。本明細書に開示される経口摂取性送達系は、限定されないが、経口摂取される治療剤、非経口送達される治療剤および直腸送達される治療剤について、現在の送達機構を置き換えるために適切である。
【0220】
2. 経口摂取性送達系による送達に適切な経口摂取される治療剤
a. 活性医薬成分
特定の治療剤(例えば活性医薬成分または「API」)は、経口摂取のために現在製剤化される。態様において、これらのAPIは、ペプチドおよびタンパク質などの巨大分子ではなく小分子であり得る。胃の吸収を制御するための特定の製剤化なしで、APIは、それらの吸収プロフィールに対する効果を伴う例えば加水分解によりまたはそれらのイオン化状態の変化により、胃内で変化または改変され得:例えば弱酸性である薬物(例えばアスピリン)は、胃内で主にそれらの非イオン性形態で存在してそれらの胃内での吸収を可能にし、一方で弱塩基である薬物は、それらのイオン性形態であり、胃内で吸収されない。さらに、特定のこれらのAPIは、胃自体を損傷し得る。これらの理由(胃内の吸収を制御するためおよび損傷をもたらす薬物と胃の接触を回避するため)の両方のために、その環境またはその組織に遭遇することなく、特定のAPIに胃を通過させることが望ましい。
【0221】
現在、変動性の結果を伴って、いくつかのAPIが、胃酸への暴露に抵抗するように製剤化されている。例として、特定の抗生物質、例えばマクロライド抗生物質(例えばエリスロマイシン)は、胃内の低pH条件下で不安定である。胃を迂回することにより、これらの薬物が胃のpHにより損傷されることなく取込みのために小腸に送達され得る場合にバイオアベイラビリティが向上され得る。別の例として、特定の薬物は、有害な効果を有することが知られているが、経口的に送達され得る。これらの薬物(例えばNSAID、COX阻害剤、コルチコステロイド、ビスホスフォネート、クロピドグレル、カリウム補給剤および癌化学療法に使用される種々の細胞傷害性剤)について、胃の粘膜に対してそれらの有害な効果を生じる局所および全身性の要素の両方が同定されている。胃の粘膜を迂回することは、局所的な有害の効果を低減し得、それらの使用に関連する病的状態が潜在的に低減される。
【0222】
b. 健康生成物
他の例において、特定の治療剤は、健康を高めること、幸福の感覚を向上することまたは気晴らしもしくは快楽の利益を提供することなどの非医学的な利益を達成することが意図される。医学的および非医学的な利益の両方を提供する一群の治療剤の例は、カンナビノイドファミリーである。全植物または大麻浸出食品(いわゆる「食料」)によるカンナビノイドの経口投与が周知である。しかしながら、経口摂取を介した生体活性カンナビノイドのバイオアベイラビリティは変動性である。種々の社会的、経済的および快楽的理由のために経口調製物が望ましいが、一貫したかつ再現可能なバイオアベイラビリティも望ましい。本明細書において提供される経口摂取性送達系などの送達系は、より予想可能な吸収、バイオアベイラビリティおよび生理学的効果を生じ得る。
【0223】
プロバイオティック治療は、ハイブリッド治療モダリティを示し、経口および経直腸投与の両方が現在使用される。本明細書に開示される系および方法は、両方の送達経路の代替物を提供する。プロバイオティックスの文書で示される有益な効果は、下痢、便秘の予防または治療、胆汁酸塩共役の変化、抗細菌活性の増加および抗炎症効果を含む。種々の下痢状態(例えば急性乳児性下痢、抗生物質関連下痢および旅行者下痢)は、プロバイオティックスにより成功裡に治療され、免疫系の刺激、腸上皮細胞上の結合部位との競合および殺菌素(bactericidin)の分泌などの機構が含まれる。過敏性腸症候群(IBS)、腹部の不快、鼓脹および異常な腸の習慣の再発性の発作を特徴とする慢性の状態は、いくつかの試験においてプロバイオティック生物により効果的に治療された。プロバイオティック生物の投与はまた、腸管の炎症を引き起こし、重度の下痢および腹痛を生じる炎症性腸障害(IBD)、慢性、再発性、多因子性の障害を治療するための見込みを保持し;IBDは、腸管中で起こり、(結腸および直腸に影響する)潰瘍性大腸炎および(胃腸管の任意の部分に影響する)クローン病の診断を含む。これらの状態におけるプロバイオティック投与の効力のための機構は、病原性叢とのそれらの競合的相互作用および免疫系に対するそれらの効果を含む。IBSおよびIBDはまた、特定のプレバイオティック物質(例えば加水分解グアーガム)により治療され、シンバイオティックアプローチがさらに良い治療応答を生じ得る可能性を生じた。プロバイオティックスは、アレルギー、癌、AIDS、呼吸器および泌尿器管感染、心臓血管疾患および高コレステロール血症、代謝性疾患などの非胃腸状態を治療するためにも使用されている。プロバイオティック生物の経直腸送達は典型的に、以下により詳細に記載されるように、深刻な疾患の治療のために残され、一方で経口投与は、より穏やかな疾患の治療のためおよび健康の利益を達成するために使用される。
【0224】
本明細書に記載される経口摂取性送達系の使用は、生きた生物が胃および近位の腸を途中に通りそれらの標的目的地まで通過する際に、それらを保護し得る。そのため、深刻な疾患について経口投与経路が使用され得、ここで生きた生物の十分な量でのおよび指定された解剖学的位置への送達が重要であり得る。経口経路はまた、健康目的にも使用され得、より正確な用量の生きた生物が送達され、それらの生存能力はより安定である。より詳細に本明細書に記載される一例は、これらの系および方法を使用したプロバイオティック細菌の送達である。プロバイオティック細菌は市販の食料品により送達され得るが、食品が含む細菌は胃および腸内の生理学的条件で生存できないので、例えばチーズ、ヨーグルト、牛乳等の食品は、多くの生きた細菌をそれらの標的まで送達しない。従来の医薬製品は、生きた機能性細菌を、所望の健康の利益を達成するのに十分な数でそれらの標的まで送達する試みにおいて、ビーズ、カプセルおよび錠剤などの送達系を使用する。しかしながら典型的に、所望の健康関連効果を発揮するために、108~109の用量の健常な細菌が腸に到達しなければならないが、試験では、従来の製剤により経口投与された生きた細菌の60%までが胃内で殺傷され得ることが示された。本明細書に開示される経口摂取性送達系は、プロバイオティック細菌を胃内の条件から保護するそれらのための経口送達経路を提供し、それらが生きた状態およびそれらの意図する有益な効果を提供するのに十分な数で、大腸または小腸内のそれらの標的領域に到達することを可能にする。
【0225】
態様において、プロバイオティック細菌は、有利に、プレバイオティック物質または生きた生物の生存能力または効力を高め得る他の薬剤と合わされ得る。以前に記載されるように、プロバイオティック生物は、それらの生存能力および/または治療効力を高めるためにプレバイオティック物質と合わされ得、単一の経口摂取性送達系内で一緒に送達されるかまたは別の送達系において別々に送達される。(例えばシンバイオティック製剤における)プロバイオティック生物およびプレバイオティック物質の組合せの相乗効果は、治療の利点を提供し得る。態様において、プロバイオティック生物は、それらの生存能力および/または治療的効力を高める他の薬剤と合わされ得、該組合せは、十分な量で指定された領域への生物の投与を最適化するために、単一の経口摂取性送達系内で投与される。生存能力/効力エンハンサー、例えばムチンおよびプロバイオティック生物の腸粘膜への付着を容易にし得るおよび/または粘膜の表面の修復を容易にし得る他の接着剤と共に補助剤がプロバイオティックペイロードに含まれ得、これは種々の下痢状態において存在するような腸粘膜の混乱において特に有益であり得る。
【0226】
疾患の治療または健康の増強のためのいずれにせよ、プロバイオティック生物治療の治療的能力は、これらの生物がそれらの標的目的地に到達する際のこれらの生存に依存する。プロバイオティック細菌の治療的効力は、いくつかの要因に由来する。第1に、これらの細菌は、胃および腸を通過しなければならないので、それらは、胃腸管の標的化された領域内の粘膜細胞に接着し得る。この接着は、競合的排除のプロセスにより腸の病原菌の結合を阻害し得る。この接着はまた、サイトカインの産生を刺激するシグナル伝達事象を開始させ得る。同時に、プロバイオティック細菌は、腸(gut)内の片利共生微生物の増殖に影響を及ぼす乳酸および他の殺菌性物質を産生し得る。さらに、プロバイオティック細菌は、腸粘膜細胞の代謝回転に影響し、病原菌の増殖を阻害し、潜在的な発癌物質を中和し、一般的に腸の生態系の健康を向上する酪酸などの物質を産生し得る。特定の機構(例えば製剤化調整、酸抵抗性株の選択および微小カプセル封入)は、生きた生物数を増加し得るが、少しの割合の投与されたプロバイオティック生物のみが生存して胃腸管内のそれらの目的地に到達することがよく知られる。本明細書に開示される系および方法は、プロバイオティック細菌およびプレバイオティック-プロバイオティック製剤の経口投与に有利に適合され得、これらの生物が攻撃に供される胃腸管の領域を迂回するために、良好な細菌の生存が見込まれる。
【0227】
3. 経口摂取性送達系を介した送達に適した非経口的に送達される治療剤
非経口投与、すなわち胃腸管以外の経路によるものは、現在では治療剤が胃腸管を通って投与される場合に十分なバイオアベイラビリティを達成できない状況において必要とされている。経口投与に適切でない薬物、例えばタンパク質およびペプチドなどの胃内の分解に感受性の治療剤は、典型的に非経口的に送達される。
【0228】
一態様において、本明細書に記載される経口摂取性送達系による使用に適した治療剤としては、ペプチドおよびタンパク質が挙げられる。本明細書で使用する場合、用語「タンパク質」は、ペプチド結合により一緒になって連結され、別個の三次構造を生じるのに十分に長い鎖の長さ、典型的に1~3000kDの分子量を有するアミノ酸の配列をいう。用語「タンパク質」に対して、用語「ペプチド」は、ペプチド結合により一緒になって連結されるが、別個の三次構造を有さないアミノ酸の配列をいう。典型的に、ペプチドは、50以下のアミノ酸を含むが、その鎖中により多くのアミノ酸を有するがタンパク質の三次構造を欠くより大きなペプチドまたはポリペプチドが存在する。
【0229】
a) タンパク質
広範囲のバイオポリマーが、用語「タンパク質」の範囲に含まれ、限定されないが、例えば抗体、融合タンパク質、酵素、PEG化タンパク質、合成ポリペプチド、タンパク質断片、リポ蛋白、酵素、構造ペプチド、抗感染薬、抗増殖薬、サイトカイン、ワクチン等のタンパク質構造が挙げられる。経口摂取性送達系が有利に使用され得る例示的であるが非限定的なタンパク質のカテゴリーが、以下により詳細に記載される。
【0230】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、プラズマ細胞により産生され、細菌、ウイルスまたは腫瘍細胞などの外来物質を中和するために免疫系により使用される免疫グロブリンをいう。抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルとして分類される。モノクローナル抗体は、単一のエピトープに対する親和性を有する親細胞のクローンである同一の免疫細胞により産生され;ポリクローナル抗体は、複数の異なる免疫細胞株より産生され、複数のエピトープに結合する。二重特異性モノクローナル抗体は、2つの標的との親和性を可能にするように遺伝子工学で作り変えられ得る。
【0231】
態様において、抗体は、他の物質、例えば活性医薬成分と合わされて、APIの予め選択された領域への標的化された送達を可能にし得る。抗体-薬物コンジュゲート(ADC)と称されるかかる組み合わせは、典型的に、切断可能な結合を有する化学リンカーにより生物学的に活性な薬物に取り付けられたモノクローナル抗体である。癌治療について、ADCのモノクローナル抗体は、特定の腫瘍細胞上の表面抗原に特異的であり得るので、ADCは、より近位での腫瘍細胞自体との接触に、強力な抗腫瘍剤を運び得る。抗体と細胞傷害性剤のカップリングは、抗癌薬の悪性組織への送達を大きく増加して、健常な組織に対する影響を最小にしながら、薬物の薬物動力学のより大きな制御を可能にし得る。ADCは、(1)抗体部分を介して腫瘍細胞に選択的に結合すること、(2)受容体媒介エンドサイト―シスを介して細胞内区画への内面化を促進することおよび(3)リソソーム性分解後に細胞に細胞傷害性ペイロードを放出して細胞死を引き起こすことによりそれらの活性を発揮する。代表的なADCとしては、それぞれ転移性乳癌の治療に使用されるAdo-トラスツズマブエムタンシン(KADCYLA(登録商標)、Genentech/Roche)およびFam-トラスツズマブデルクステカン(deruxtecan)-nxki (ENHERTU(登録商標)、Daiichi SankyoおよびAstraZeneca);それぞれ種々のリンパ腫の治療に使用されるブレンツキシマブベドチン(ADCETRIS(登録商標)、Seattle Genetics)およびポラツズマブベドチン-piiq (POLIVYTM、Genentech/Roche);転移性の尿路上皮癌の治療に使用されるエンホルツマブベドチン(PADCEVTM、Astellas Pharma / Seattle Genetics);ならびにそれぞれ種々の白血病の治療に使用されるゲムツズマブオゾガマイシン(MYLOTARG(登録商標)、Pfizer)およびイノツズマブオゾガマイシン(BESPONSA(登録商標)、Pfizer)が挙げられる。
【0232】
ある態様において、抗体は、PEG化され得るかまたはそうでなければ誘導体化され得、それらの半減期を延長し得るおよび/またはそれらのバイオアベイラビリティを高め得る。PEG化抗体および他のPEG化タンパク質は、ポリ(エチレングリコール)またはそれに共有結合した他のステルスポリマー基を有し、腎臓濾過によるそれらの除去を低減し得るかまたは細網内皮細胞系によるそれらの取り込みを減少し得るかまたはそれらの酵素分解を減少し得る。抗体は、種々のヒト障害または状態のための良く知られた治療剤であり、特定の標的に対するそれらの親和性は、障害または状態の改善をもたらすように活用され得る。例えばモノクローナル抗体は、特定の細胞またはタンパク質に特異的に結合するように遺伝子工学で作り変えられ得、次いで患者の免疫系を刺激して、そのようにタグ付けされた標的を攻撃する。タンパク質としての抗体は、胃内の変性および酵素消化に感受性であり、不活性化、治療効力の消失、不安定性または他の有害な効果を生じるので、それらは、非経口投与を必要とする。本明細書に開示される経口摂取性送達系を用いた送達に適切な抗体の非限定的な例としては、以下のものが挙げられ得る:
【0233】
アダリムマブ(AbbVieにより販売されるHUMIRA(登録商標))は、種々の炎症、および潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、クローン病、プラーク乾癬等を含む自己免疫状態を治療するために使用される腫瘍壊死因子(TNF)遮断薬である。ベバシズマブ(Genentechにより販売されるAVASTIN(登録商標))は、静脈内注入により結腸癌、肺癌、乳癌、脳癌、卵巣癌および腎臓癌などのいくつかの癌を治療するために使用される脈管形成阻害剤(抗VEGF-A)であり;癌治療について、これは、5-フルオロウラシル、パクリタキセルおよびカルボプラチンなどの標準的な小分子化学療法剤と合わされ得る。セツキシマブ(Eli Lillyにより販売されるERBITUX(登録商標))は、頭頸部癌、転移性結腸癌および転移性肺癌を治療するために使用される上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤である。デノスマブ(Amgenにより販売されるPROLIA(登録商標))は、それらのRANK表面受容体に影響することにより前破骨細胞の破骨細胞への成熟を阻害し;これは、骨粗鬆症、骨の巨細胞腫瘍および骨に転移した癌を治療するために使用される。インフリキシマブ(Janssen Biotechにより販売されるREMICADE(登録商標))は、クローン病、潰瘍性大腸炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、乾癬およびベーチェット病などの種々の自己免疫疾患を治療するために使用されるTNF遮断薬である。ナタリズマブ(Biogen Idecにより販売されるTYSABRI(登録商標))は、多発性硬化症およびクローン病を治療するために使用される細胞接着分子α4インテグリンに対する抗体である。リツキシマブ(BiogenおよびGenentechにより販売されるRITUXAN(登録商標))は、免疫系B細胞の表面上に見られるタンパク質CD20に結合して、それがこのタンパク質に結合した際に細胞死を誘発し;このモノクローナル抗体は、悪性B細胞を有する血液癌、ならびに関節リウマチ、血小板減少性紫斑病、溶血性貧血、水泡性皮膚疾患および非常に多くのB細胞、過活性B細胞または機能異常B細胞を有することにより媒介される他の障害などの自己免疫疾患を治療するために使用される。ウステキヌマブ(Janssen Biotechにより販売されるSTELARA(登録商標))は、免疫系を制御し、特定の自己免疫炎症性障害に関連するタンパク質であるインターロイキン12およびインターロイキン23のアンタゴニストとして作用するモノクローナル抗体であり;これは、乾癬、乾癬性関節炎およびクローン病を治療するために使用される。
【0234】
本明細書で使用する場合、用語「融合タンパク質」または「キメラタンパク質」は、2つの異なる遺伝子によりコードされる2つの異なるタンパク質から作製され、成分タンパク質の機能的特性のいくらかまたは全てを保持する得られたタンパク質をいう。いくつかの融合タンパク質は、元のタンパク質の全機能性ドメインを含み得る。他の場合、融合タンパク質は、他の断片を別の成分タンパク質由来のドメインで置き換えながら、成分タンパク質の有利な断片を保持するように遺伝子工学で作り変えられる。例えば、マウス遺伝子を使用して産生される治療抗体は、ヒトに与えられた場合に免疫反応を誘起する断片を含み得;遺伝子工学のキメラ化プロセスを使用して、タンパク質の免疫原性部分を、ヒト抗体由来の対応するドメインで置き換えた融合タンパク質が産生され得るのでその治療標的についてのその特異性は、免疫学的副作用を有することなく保持される。タンパク質としての融合タンパク質は、分解(例えば不活性化、治療効力の消失、不安定性または他の有害効果)、特に胃内での変性および酵素消化に感受性であるので、それらは非経口投与を必要とする。本明細書に開示される経口摂取性送達系を用いた送達に適切な融合タンパク質の非限定的な例としては以下のものが挙げられ得る:
【0235】
アバタセプト(Bristol-Myers Squibbにより販売されるORENCIA(登録商標))は、関節リウマチ、乾癬性関節炎および若年性特発性関節炎を治療するために使用される、T細胞に結合して、それらの活性化を防ぐ融合タンパク質である。エタネルセプト(Amgenにより販売されるENBREL(登録商標))は、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎および強直性脊椎炎などの自己免疫障害を治療するために使用されるTNF阻害剤である。リロナセプト(Rilonacept)(Regeneronにより販売されるARCALYST(登録商標))は、クリオプリン関連周期性症候群の治療に使用される、FDAにより「オーファン薬物」の地位が与えられるインターロイキン1阻害剤である。ロミプロスチム(Amgenにより販売されるNPLATE(登録商標))は、血小板の前駆細胞である巨核球の産生および分化を刺激するホルモンであるトロンボポイエチンの融合タンパク質アナログであり;これは、慢性の特発性血小板減少性紫斑病を治療するために使用される。
【0236】
本明細書で使用する場合、用語「酵素」は、生化学反応のための触媒である大分子をいう。特定の反応についての酵素の特異性は主に、その三次元構造に由来する。酵素は典型的にタンパク質であるが、特定の触媒性RNA分子も酵素として作用し得る(これらのRNA分子はリボザイムとして公知である)。酵素は、酵素欠損を特徴とする障害における治療として使用され得る。酵素置換療法(ERT)と称されるかかる治療について、酵素は、酵素を含む溶液を静脈内に投与することにより外因的に置換される。現在、ERTは、重要な酵素が形成されないいくつかの遺伝性疾患を治療するために使用される。本明細書に開示される経口摂取性送達系を用いた治療に適切な酵素欠損の非限定的な例としては、以下のものが挙げられ得る:
【0237】
例えば、特定のリソソーム貯蔵疾患(例えばゴーシェ病、ファブリー病、ムコ多糖症MPS I、IIおよびVIならびにポーンプ病)は、欠損している酵素を置き換えることにより治療され;リソソーム貯蔵疾患は、小児期に始まる遺伝的媒介性の、治療なしでは致死性の疾患の群であり、リソソームに使用される特定の酵素が非存在で、細胞内の基質または代謝産物の蓄積をもたらす。別の例として、アデノシンデアミナーゼ欠失により生じる重症複合免疫不全(SCID)症候群を有する患者は、かかる酵素を置き換えるためにERTにより治療され得;SCID症候群は、小児期に始まる遺伝的媒介性の、治療なしでは致死性の疾患であり、その特定の場合には、酵素アデノシンデアミナーゼが欠損しており、リンパ球中の代謝産物の蓄積を引き起こし、これはそれらの発生および免疫学的機能を損なう。ERTは、これらの疾患に対する治療を提供せず、それらは、一時的緩和を提供するために欠損した酵素の終生の静脈内注入を必要とする。タンパク質としての酵素は、胃内の変性および酵素消化に感受性であるので、それらは非経口投与を必要とする。
【0238】
本明細書で使用する場合、用語「サイトカイン」は、個々の細胞および組織の機能的活性を調節して、細胞間の相互作用を媒介し、細胞外環境との細胞性相互作用を制御するための体液制御因子としてナノ-ピコモル濃度で作用する小タンパク質、ペプチドおよび糖タンパク質のファミリーをいう。特定のサイトカインはそれらの生物学的活性および全身性効果においてホルモンと似ており、例えば炎症、敗血症および創傷治癒などの生物学的現象を媒介する。他のサイトカインは、酵素と同様の構造または活性を有し、循環ホルモンよりもかなり低い濃度ではあるが、他の生体分子の活性を刺激または阻害するように作用する。サイトカインは、互いに異なる一次配列を有する傾向があるが、いくつかは、それらをファミリーに分類させる同様の三次元特性を有し得る。サイトカインサブファミリーとしては特に、インターロイキン、リンホカイン、モノカイン、インターフェロン、コロニー刺激因子およびケモカインが挙げられる。細胞により分泌されるサイトカインは、グリコシル化を行う細胞内小器官を通って処理され得るので、これらのサイトカインは、糖タンパク質として放出される。タンパク質、糖タンパク質またはペプチドとしてのサイトカインは、分解(例えば不活性化、治療効力の消失、不安定性または他の有害な効果)、特に胃内での変性および酵素消化に感受性であるので、それらは非経口投与を必要とする。本明細書に開示される経口摂取性送達系を用いた送達に適切なサイトカインの非限定的な例としては、以下のものが挙げられ得る:エポエチンアルファ(Amgenにより販売されるEPOGEN(登録商標)またはJanssen Biotechにより販売されるPROCRIT(登録商標))は、例えば慢性腎臓疾患および癌化学療法中の慢性貧血を治療するために使用される、赤血球産生を刺激する糖タンパク質サイトカインであるエリスロポイエチンの組換え形態である。フィルグラスチム(Amgenにより販売されるNEUPOGEN(登録商標))は、例えば癌化学療法により、放射線障害によりまたはHIV/AIDSにおいて生じる好中球減少を治療するために使用される、骨髄を刺激して、好中球および幹細胞を産生させる糖タンパク質サイトカインである顆粒球コロニー刺激因子の組換え形態である。顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、白血球増殖を刺激するモノマー性糖タンパク質であり;癌化学療法後などの好中球減少性状態における使用のためおよび骨髄移植後の白血球増殖を刺激するための組換え形態において販売される。別の型のサイトカインであるインターフェロンは、抗ウイルス剤として作用し、免疫系を調製するシグナル伝達タンパク質の大ファミリーである。それらはまた、内皮細胞の脈管形成および増殖を抑制し得、マクロファージおよびナチュラルキラー細胞などの免疫細胞を活性化する。種々のインターフェロンが現在臨床的に使用されている:B型肝炎および慢性C型肝炎などの肝炎の治療のためのペグ化インターフェロンα2b(Merckにより販売され、しばしばプロテアーゼ阻害剤およびレトロウイルス剤などの他の抗ウイルス剤と組み合されるPEGINTRON(登録商標))ならびに黒色腫の治療のため(Merckにより販売されるSYLATRON(登録商標));再発性多発性硬化症の治療のためのインターフェロンβ1a(Biogenにより販売されるAVONEX(登録商標)、EMD Seronoにより販売されるREBIF(登録商標));悪性疾患についての潜在的な適用を有する、慢性肉芽腫性疾患および悪性骨粗鬆症の治療のために使用されるインターフェロンγ(Horizon Pharmaにより販売されるACTIMMUNE(登録商標))。注意して、種々のサイトカインは全て、非経口投与を必要とする。それらはしばしば、投与の薬物動力学に関連し得る有意な副作用を有する。例として、インターフェロンγについて、発熱、疲労、悪心、嘔吐、下痢、神経毒性および白血球減少などの全身性副作用は、非経口投与に伴う投与要件に起因している。
【0239】
b) ワクチン、生きた生物、核酸
本明細書で使用する場合、用語「ワクチン」は、特定の疾患について活性の獲得免疫を刺激する生物学的調製物をいう。ワクチンは、それに対してそれらが保護する生物に関連する種々の剤を含み得:生きた弱毒化されたワクチンは、生きたウイルスであるが弱体化されたウイルスを含むので、それらの投与は、疾病(例えば麻疹-ムンプス-風疹、水痘、インフルエンザ)を引き起こさず;不活性化されたかまたは殺傷されたワクチンは、生きていないかもしくは非病原性の状態であるがウイルスを含み(例えばA型肝炎、ポリオ);類毒素は、不活性化された毒素を含み、ここで病原性生物により産生された毒素は、疾患誘発生物により生じる疾患(例えばジフテリア、破傷風)の原因であり;サブユニット/コンジュゲートワクチンは、病原菌のサブユニット(B型肝炎、百日咳、髄膜炎菌性または肺炎球菌性ワクチン)を含む。ワクチンは典型的に、タンパク質またはペプチドを含み、そのためそれらは、分解(例えば不活性化、治療効力の消失、不安定性または他の有害な効果)、特に胃内での変性および酵素消化に感受性である。ほとんどのワクチンは非経口投与を必要とする。いくつかのワクチン、例えば腸の病原菌に対するワクチンは、経口投与に適切であるかまたはさらに好ましいが、ワクチンの経口形態はしばしば、一貫して有効である十分な免疫応答を生じない。本明細書に開示される経口摂取性送達系を使用することは、疾患予防に対してより都合がよく経済的なアクセスを可能にすることにより、予防接種プログラムについての利点を提供し得る。
【0240】
本明細書に開示される経口摂取性送達系を使用して、他の生きた生物も送達され得る。治療剤区画および示差的に透過性(例えば消化性)のカプセル系は、胃を通過して胃腸管に沿ってそれらの予め選択された腸内の標的部位に進む際に、生きた生物を保護しながらそれらの生存能力を向上するにように作り変えられ得る。例えば、以前に記載されるように、プロバイオティック生物は、(プレバイオティック物質ありまたはなしのいずれかで)治療剤区画内に配置され得、それらがそれらの意図される腸標的に到達する場合にそれらの生存能力を最適化するように製剤化され得る。現在投与されるプロバイオティック生物製剤は、胃の過酷な条件に遭遇し、生物集団の低い生存能力を生じるので、本明細書に開示される経口摂取性送達系は、この治療モダリティについての新規の治療的範囲を開発し得:胃酸への暴露から保護され、プロバイオティック生物は、小腸内のそれらの標的に到達し得、それらの有益な効果を発揮し得る。同様に、生存可能な幹細胞および他の生存可能な細胞は、治療剤区画に配置され得、適切に製剤化され得(例えばそれらに、それらの生存能力を促進する培体および他の因子を提供するため、または予め選択された時間もしくは部位でのそれらの遅延放出を可能にするため)、大腸または小腸内の予め選択された部位への到達の際に分散が可能にされ得る。
【0241】
遺伝子療法の分野は、標的細胞への遺伝子材料(DNAまたはRNA)の送達を含む。次いでこの遺伝子材料は、標的細胞、DNAの場合は標的細胞核に進入し、そこで、それが所望のタンパク質生成物の製造を誘導する。例えば治療的DNAは、タンパク質合成のための一次的鋳型として使用され得るか、またはそれは、宿主のDNAに永久に組み込まれて、継続の治療効果を生じ得る。遺伝子材料の送達は、ウイルスまたは非ウイルスベクターを使用して起こり得る。遺伝子療法のために全身性の静脈内送達が一般的に使用されるが、外科的、経皮的およびカテーテル系の送達系を含む局所送達方法も適用可能である。遺伝子療法技術の経口送達は、胃腸系により提示される難題:胃の酸性pH、胃および小腸内の酵素ならびに粘膜細胞へのアクセスを防ぐ粘膜障壁により阻害されている。治療的効力を達成するために、遺伝子材料は、標的組織の細胞に輸送されなければならない。
【0242】
本明細書に開示される経口摂取性送達系の使用は、それらが胃および小腸を横切る際に、遺伝子療法モダリティについての保護を提供し得る。小腸内のそれらの指定された場所に到達する際に、遺伝子材料は、送達ビヒクルから排出され得、局所的な標的化された細胞アクセスを達成し得る。遺伝子材料は、その細胞特異的標的化を容易にするようにならびにそれが標的細胞にアクセスおよび進入する能力を向上するように製剤化され得る。例えば、遺伝子材料は、その安定性、その放出特性またはその取込みを向上するために包まれ得、遺伝子材料はさらに、その効率的な取込みおよび細胞貫通を可能にするように製剤化され得る(例えば二重材料または複数区画の粒子系において)。
【0243】
本明細書で使用する場合、用語「生存可能な細胞」および「生きた生物」は、天然に産生されるかまたは遺伝的に改変されるかのいずれにせよ、任意の生きた細胞を包含する。態様において、遺伝的に改変された生存可能な細胞は、遺伝子に基づく障害についての治療として働くように遺伝子工学で作り変えられ得る。例として、FIX遺伝子の変異のための凝固因子IX(FIX)の欠損により引き起こされる血友病B、X連鎖凝固障害は、生きた生物の注入を介する遺伝子または細胞療法を用いた治療に向いている。今日まで、アデノ随伴ウイルスベクターを使用した遺伝子治療が実験的に使用されているが、有意な副作用を有する。遺伝的に改変された細胞の使用が、代替物として提供されている。一組の動物試験において、誘導多能性幹細胞が血友病動物から回収されて、次いで関連のある遺伝子欠損を修正するように遺伝的に改変された。次いでこれらの細胞を、良好な結果を伴って動物に埋め込んだ。それらの遺伝子改変を有するかかる細胞は、用語「生存可能な細胞」の範囲に該当する。遺伝子工学で作り変えられた生物(例えば特定のタンパク質を発現するように改変された生きた細菌、遺伝子修正を含むかまたは特定のタンパク質もしくは他の因子を発現するように誘導され得る幹細胞等)の他の例が当業者により容易に構想され得;かかる遺伝子工学で作り変えられた生物は、限定されることなく本明細書で使用される「生存可能な細胞」または「生きた生物」の定義に含まれる。
【0244】
c) ペプチド
ペプチドは、治療剤としての種々の用途を有する。例えばそれらは、ホルモン、シグナル伝達分子、受容体アゴニストまたはより大きな巨大分子アセンブリの構造構成成分として働き得る。現存するペプチドファミリーとしては、抗菌ペプチド、タキキニンペプチド、血管作動性腸ペプチド、膵臓ポリペプチド、オピオイドペプチド、カルシトニンペプチド、サイトカイン等が挙げられる。ペプチド療法(ペプチドアゴニストおよびアンタゴニストの両方)は、インスリン非依存性糖尿病などの代謝障害、高血圧などの心臓血管障害、腫瘍学的癌障害、骨粗鬆症および異常成長などのホルモン関連障害等で方向づけられる。本明細書に開示される経口摂取性送達系を用いた送達に適切なペプチドの非限定的な例としては、以下のものが挙げられ得る:
【0245】
エキセナチド(BYETTA(登録商標))は、ドクトガゲ(desert Gila monster)の唾液腺により分泌される39アミノ酸ペプチドの合成形態であり;これは、哺乳動物GLP-1Rの強力なアゴニストであり、これが2型糖尿病の治療に使用されることを可能にするが;これは現在、定期的な皮下注射を必要とする。
【0246】
テリパラチド(Eli Lillyにより販売されるFORTEO(登録商標))は、内因性副甲状腺ホルモンの34のN末端アミノ酸を含む組換えヒトタンパク質であり;これは、骨の再成長を刺激することにより重度の骨粗鬆症を治療するために使用される。しかしながら、ペプチドとして、テリパラチドは、皮下注射されなければならない。副甲状腺ホルモン自体は、骨、腎臓および腸に対するその効果により血清カルシウムを制御するホルモンである。これは、その標的細胞と相互作用してそれらを活性化する84アミノ酸ペプチドプロホルモンである。特定の条件および外科的介入が低い副甲状腺ホルモンレベルを生じ得る場合、ホルモン自体について現在特定の置き換えはない。その代り、カルシウム代謝に対する低い副甲状腺ホルモンの効果は、カルシウムおよびビタミンD補給物およびテリパラチドの組合せにより現在治療される。
【0247】
ソマトスタチン(成長ホルモン阻害ホルモン)は、14アミノ酸活性形態および28アミノ酸活性形態を有するペプチドホルモンである。このホルモンは、内分泌系を制御し、特定のGタンパク質共役受容体との相互作用および二次的なホルモン放出の阻害を介して神経伝達および細胞増殖に影響する。ソマトスタチンは、インスリンおよびグルカゴンの分泌を阻害する。合成ペプチドは、ソマトスタチン様の効果を生じ得、臨床用途のものである。オクレオチド(SANDOSTATIN(登録商標)、Novartis)およびランレオチド(SOMATULINE(登録商標)、Ipsen Pharmaceuticals)は、成長ホルモンであるグルカゴンおよびインスリンを阻害し;それらは、カルチノイド症候群、末端肥大症ならびに肝臓および腎臓の多嚢胞性疾患を治療するために使用される。両方は現在非経口的に投与される。
【0248】
ソマトトロピン(ヒト成長ホルモン)は、191アミノ酸の一本鎖として形成されるペプチドホルモンである。これは、細胞再生産、細胞再生ならびにヒト成長および発生を制御する。この組換え形態において、これは、小児における低身長または成長不全(例えばターナー症候群、特発性低身長、SHOX欠損、在胎齢出生について小さい後の高さに追いつくことの失敗)および成体における成人で始まる成長ホルモン欠損などの状態を治療するために使用される。これは非経口的に投与される。ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)は、視床下部により放出され、前方下垂体を標的化する線形デカペプチドホルモンであり、これはゴナドトロピンホルモン濾胞刺激ホルモンおよび黄体形成ホルモンの放出を刺激する。GnRHのアナログは、ゴナドトロピンの放出を刺激するかまたはそれらの放出を抑制するかのいずれかのために臨床的に使用される。1つのアナログであるリュープロレリンは、乳癌、前立腺癌および性的早熟症を治療するために使用される。GnRHアナログに反応性の他の条件としては、エストロゲン依存的条件、例えば子宮内膜症または子宮筋腫およびインビトロ受精の間の卵巣刺激の制御が挙げられる。GnRHアナログは、連続静脈内注入により送達される。インクレチンは、インスリン放出を刺激および/またはグルカゴン放出を阻害して、それにより血糖を低下させるホルモンのファミリーである。インクレチンまたはインクレチンの合成アナログに基づく医薬は、2型糖尿病の治療に使用される。インクレチンは、腸ペプチドGLP-1(グルカゴン様ペプチド)およびGIP(胃阻害性ペプチド、グルコース依存的インスリン分泌性(insulinotropic)ペプチドとも称される)を含む。GLP-1ペプチドは、膵臓β細胞上のGLP-1受容体を刺激して、それによりインスリンの放出を増加し、その後血糖を低下させるように作用する。エキセナチド(上述)、リラグルチド(Victoza(登録商標)としてNovo Nordiskにより販売される、アクリル化30~31アミノ酸ペプチド)、リキシセナチド(lixisenatixe)(ドクトカゲ(Gila monster)毒由来の44アミノ酸ペプチド)、アルビグルチド(TANZEUM(登録商標)としてGSKにより販売される、645アミノ酸ペプチド)、デュラグルチド(dulaglutide)(TRULICITY(登録商標)としてEli Lillyにより販売される、内因性GLP-1と90%アミノ酸相同性を有し、小ペプチドリンカーを介してヒトIgG4-Fc重鎖に共有結合されるペプチド)などのペプチドがインクレチンアナログに含まれる。これらの剤の全ては典型的に非経口的に投与される。2019年9月に、GLP-1受容体アゴニストであるセマグルチドの経口形態であるRYBELSUS(登録商標)が、2型糖尿病の治療のためにFDAに承認され;このペプチドは、以前には注射可能形態のみで利用可能であった。
【0249】
インスリンは、グルコースの細胞への進入を制御するペプチドホルモンであり、血流から循環グルコースを除去し、細胞にエネルギー源を提供する。インスリンは、膵臓の島細胞により産生される。有効なインスリンの欠損は、1型および2型糖尿病の両方の重要な特徴であり:両方の場合で、グルコースは血流中にとどまり、有害な効果を引き起こすが、細胞はエネルギー産生のための適切なグルコースを奪われる。1型糖尿病は、患者自身の免疫系が島細胞を攻撃する場合に起こるので、それらは、インスリンの産生を停止し;これらの患者が生存するために、インスリンを外部から補充しなければならない。2型糖尿病は、より潜行性の開始を有し、インスリンがグルコースを細胞に輸送するのに不適切である場合に起こる。2型糖尿病において、組織はインスリンの正常な効果に対する抵抗性を発生させ、島細胞は、組織抵抗性を克服するのに十分なインスリンを産生できない。インスリンは依然として産生されているので、2型糖尿病におけるインスリン抵抗性を克服するための治療が存在する。しかしながら、2型糖尿病において、内因性インスリンは不十分であり得、外因性インスリン投与が必要である。インスリンは、ジスルフィド結合により一緒に連結され、1つが21アミノ酸を有し、もう一方が30アミノ酸を有する2つのペプチド鎖から形成される。ペプチドは胃および十二指腸の過酷な条件で生存できないので、今日まで、インスリンの送達形態は非経口のみであり;種々の規則的な投与スケジュールでこのホルモンを患者に送達するために、インスリンショット、インスリンペン、インスリンポンプおよびインスリン吸入器が利用可能であり、インスリンは、緊急の介入のために静脈内に注入され得る。しかしながら経口剤型が望ましいので、糖尿病患者は、頻繁な注射棒または他の侵襲性の手段を回避し得る。いくつかの会社は、経口インスリン送達の難題に対処しており、例えばNovo NordiscおよびOramed Pharmaceuticals Inc.により開発された製剤ならびにRani TherapeuticsおよびMITの科学者により作製されたものなどのデバイスがある。
【0250】
食後のインスリン放出と共に、膵臓のβ細胞により血流中に放出されるアミリンは、小(37アミノ酸)ホルモンである。このホルモンは1型糖尿病を有する患者には全くない。アミリンのアナログであるプラムリンタイド(Astra Zenecaにより販売されるSYMLIN(登録商標))は、糖尿病患者における血糖の制御において、外因的に投与されたインスリンと共力的であり、胃の空腹を遅延させ、飽満を促進するように視床下部受容体を刺激し、異化ホルモングルカゴンの放出を阻害する。プラムリンタイドは非経口的に投与される。
【0251】
バソプレシンおよびバソプレシンアナログ、例えばデスモプレシンおよびテルリプレシンは、尿排出量、血漿重量オスモル濃度、血圧および種々の凝固因子を制御するペプチドである。非経口および経口の剤型は、多尿および多渇症、尿崩症、血友病およびヴォン・ヴィレブランド病、鎌状赤血球症、ならびに原発性夜間遺尿症を含む状態を治療するために利用可能である。経口剤型は、非経口形態よりもかなり低い有効用量を送達するので、それらは、低用量のペプチドを必要とする条件に使用される傾向がある。より高い用量について、特に非小児患者において、非経口投与が使用される。
【0252】
d) 内因性化学メッセンジャー
アミノ酸およびモノアミンおよびペプチドなどの小分子は、内因性化学メッセンジャー、例えば神経伝達物質として働き得る。かかる化学メッセンジャーとしては、アミノ酸(例えばグルタミン酸、アスパラギン酸、D-セリン、γアミノ酪酸、グリシン)、モノアミン(例えばドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン、ヒスタミン、セロトニン)、痕跡アミン(例えばフェネチルアミン、N-メチルフェネチルアミン、チラミン、トリプタミン)、プリン(例えばアデノシン、アデノシン三リン酸)および種々の神経ペプチドが挙げられる。神経伝達物質として機能する場合、分子は、膜電圧に影響することなく、シナプス後膜に対する影響を介してニューロン間でメッセージを運び得る。神経伝達物質は、それを励起するかまたはそれを阻害するかのいずれかでニューロンに直接作用する。特定の疾患および障害は、特定の神経伝達物質の過活性、欠失または不均衡により生じ:例えばパーキンソン病は、主に黒質における不十分なドーパミン産生のためであり;他の神経学的および神経精神医学的障害は、セロトニンおよびグルタミン酸などの神経伝達物質の不均衡に起因しており;依存性の行動は、脳内のドーパミンに対する依存性物質の効果に結び付けられる。神経伝達物質関連障害の治療は、脳内の指定された神経伝達物質の有効量を増加するように作用し得る神経伝達物質前駆体の投与を含み得る。神経伝達物質関連障害の他の治療は、神経伝達物質の放出または分解を制御する活性医薬成分の投与を含み得る。これらの剤および神経伝達物質自体は、本明細書に開示される経口摂取性送達系を用いた送達に適切である。神経系内ではなく循環系を介して移動するシグナル伝達分子はホルモンと称される。
【0253】
ホルモンは、循環系により遠位の標的臓器へと輸送され、それによりそれらの挙動を制御する、体内の特定の臓器(腺)により産生されるシグナル伝達分子の群である。特定のホルモンはタンパク質またはペプチドであり;タンパク質またはペプチドホルモンを含むタンパク質またはペプチドを送達するために本明細書に開示される経口摂取性送達系を使用する例が上に提供されている。しかしながら、ホルモンは、他の化学構造を含み得る。タンパク質またはペプチドとして構成されるもの以外の3つの他の部類のホルモン:アミンまたは小分子アミノ酸誘導体;エイコサノイド;およびステロイドがある。多くのホルモンならびにそれらの構造的および機能的アナログ、例えばエストロゲン、プロゲストゲン、チロキシン、蛋白同化ステロイドおよびコルチコステロイドは医薬として有用である。これらの特定のものは経口投与のために製剤化され、一方で他のものは非経口的に投与される。これらの非タンパク質/ペプチドホルモンは、より治療的な選択肢を提供するために、本明細書に開示される経口摂取性送達系を使用して有利に送達され得る。
【0254】
4. 経口摂取性送達系を介した送達に適切な経直腸送達される治療剤
投与の経直腸経路は、結腸脈管を介した全身取込みが意図される治療剤のためまたは結腸に対してそれらの効果を発揮することが意図される治療剤のための特定の治療剤に適切である。この第1のカテゴリーについて、いくつかの薬物は、迅速な吸収が望ましい状況について坐剤により利用可能であり:経直腸投与は、同様の用量で経口または筋内投与される薬物と比較した場合、より良い血漿レベルおよび治療有効性を達成し得る。経直腸投与はまた、非経口投与の形態が利用可能でないかまたは望ましくない場合に薬物を送達するため、例えば医療設定におけるものの代わりに家庭で医薬を送達するために、または注射が痛いかもしくはあまり許容されない小児の患者もしくは他の患者集団を治療するために使用され得る。特定のカテゴリーの治療剤は、経直腸投与され、結腸自体内で作用することが意図される。このカテゴリーの例は、治療剤が病理学の部位に送達され、罹患した組織に対してその効果を直接発揮する潰瘍性大腸炎の治療、例えば遠位結腸性潰瘍性大腸炎の治療のためのメサラジン坐剤において見られる。
【0255】
潰瘍性大腸炎およびクローン病などの炎症性腸疾患(「IBD」)は、GI管の慢性の炎症性の障害であり、症状は、腹痛、下痢、直腸出血および腸粘膜に対する損傷を含む。近年、抗TNF-α、抗α4β7および抗インターロイキンモノクローナル抗体などの生物学的薬剤が、良好な結果を伴ってIBDを治療するために利用可能になっている。しかしながら、これらの治療は、一様に成功裡ではない。したがって、幹細胞送達を含むものなどの他の治療モダリティが調査されている。健常な腸粘膜は、粘膜陰窩の底に存在する腸幹細胞により維持される単層の腸上皮細胞として形成される。粘膜潰瘍形成はIBDの顕著な病変であるので、幹細胞投与により粘膜を更新または再生することは、IBDの治療に潜在的に有用なアプローチを提供する。
【0256】
今日まで、他の治療に抵抗性の患者における幹細胞移植の試みは、従来の全身幹細胞移植プロトコルを使用した、造血幹細胞または間葉幹細胞の非経口投与を含んだ。これらのプロトコルは、頻繁な重度の有害事象を有する患者にとって困難である。腸幹細胞または他の幹細胞の局所(local)または局所(topical)移植は、従来の幹細胞移植の全身効果を回避する選択肢であり、一方でIBDについての有効な治療の可能性を提供する。しかしながら、標的組織への幹細胞の送達は、それらの生存能力を保存する方法で達成される必要がある。適切な幹細胞の経直腸送達(または直腸を欠く患者のためもしくはそれらの腸解剖学的構造の他の変更を有する患者のための、小孔を介したそれらの送達)は、これを達成し得るが、該送達経路は潰瘍性大腸炎患者のみに利用可能であり得、小腸に罹患するクローン病を有する患者については利用可能でない。本明細書に開示される経口摂取性送達系を介した送達は、別の投与経路を提供し、1つはIBDにより損傷を受けた領域の物理的操作を回避し、1つは幹細胞治療の必要性を有する腸の領域(1つまたは複数)において幹細胞を配置するように作り変えられ得る。態様において、幹細胞は、生きた生物の生存能力もしくは効力を高めるための培体と、または生きた生物と共力的もしくは協調的に作用して、それらの生存能力もしくは効力を高め得る他の医薬もしくは非医薬剤と有利に合され得る。経口摂取性送達系を介した幹細胞の送達は、複数の連続用量の治療剤と適合性であり、用量はそれぞれ、同じまたは異なる解剖学的領域に到達するように作り変えられる。本明細書に開示される経口摂取性送達系の他の適合は、IBDおよび同様の障害の治療要件に精通した当業者により構想され得る。
【0257】
態様において、治療剤は、正常な胃腸叢への損傷を特徴とする状態または障害のために経直腸送達され、その治療は、腸(特に結腸)に、いわゆる「有益な細菌」、そうでなければプロバイオティック細菌として公知の、天然の胃腸叢を満たすことにより有益な健康の効果を提供する生きた微生物を生息させることを含む。本明細書に開示される経口摂取性送達系は、ヒトの腸管へのプロバイオティック細菌の送達に利点を提供する。
【0258】
プロバイオティック細菌は、便移植または糞便移植(fecal microbiota transplant) (FMT)として公知の手順により、健常な個体から、結腸微生物叢の混乱に苦しむレシピエントへと移植され得る。FMTは、別の感染を治療するための抗生物質の延長された投与によりしばしば引き起こされるクロストリジウム・ディフィシレ(C. Diff)感染などの感染を治療するために使用され、ここで元の抗生物質は、腸内の健常な細菌も殺傷し、C. Diffの過剰増殖を可能にする。C. Diff感染の治療抵抗性の症例は、FMTにより治療され得、移植された細菌は、C. Diffと競合し、最終的にC. Diffに取って代わる。FMTは、他の疾患、特に潰瘍性大腸炎の治療のために使用されている。C. Diff感染は単一のFMTにより治療され得るが、他の疾患は、複数または慢性の治療を必要とし得る。凍結乾燥としての結腸微生物叢の調製物および他の胃抵抗性経口調製物が存在するが、それらは、依然として胃内の攻撃および損傷に弱い。典型的に、FMTは、ドナーの健常で生存可能な結腸微生物叢を、結腸鏡検査または浣腸を介した結腸への便の注入により導入することを必要とする。本明細書に開示される経口摂取性送達系は、そうでなければFMTと同様に患者に経直腸的に送達されるようなプロバイオティック細菌のための経口送達経路を提供する。治療有効量の生存可能な細菌を、経口の摂取経路を介して大腸または小腸内のそれらの標的領域にアクセスさせることは、経直腸投与の不都合さおよび不快さの必要性を排除し得、反復もしくは慢性の治療が必要な場合または繊細な患者集団(例えば小児、年配または医学的に弱い患者)が含まれる場合に特に価値がある。
【0259】
プロバイオティック細菌は、天然の腸叢の補充およびヒトまたは動物の健康または幸福の向上のために、機能性食品生成物中の治療剤として広く推奨される。プロバイオティック細菌栄養補助食品が利益を提供する程度は、それらがどのように送達されるかに応じて変化する。経直腸投与は、非医学的状態のため、すなわち主要な疾患を治療するのではなく健康を向上するかまたは幸福を高めることを意図する使用のためには使用されない。
【実施例
【0260】
実施例
以下の材料を、以下の実施例1~10で使用し得るか、または使用した。
・キサンタンガム、製造業者Bob's Red Mill、供給源Amazon
・黄色有機蜜ろう、製造業者Mary Taylor、供給源Amazon
・白色有機蜜ろう、製造業者Mary Taylor、供給源Amazon
・Bio Case膵臓酵素製剤(formula)、製造業者Thomas Labs、供給源 Amazon
・ゼラチン空カプセルサイズ00、製造業者Herb Affair、供給源Amazon
・1/4インチのゆるい(loose)自転車ボールベアリング、供給源Amazon
・ダイズレシチン粉末、製造業者Will Powder、供給源Amazon
・純粋な生のアマニ油、製造業者Sunnyside、供給源Amazon
・スチールブルーレイアウトフルイド(steel blue layout fluid)、製造業者Dykem、供給源Amazon
・Master AirbrushモデルG22、製造業者Master Airbrush、供給源Amazon
・重炭酸ナトリウム、供給源Sigma
・Span 20、供給源Sigma
・ポリ(エチレングリコール)ジグリシジル(diglycydal)エーテル、供給源Sigma
・ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、供給源Sigma
・ウシゼラチン、供給源Sigma
【0261】
実施例1
空カプセルを以下のように調製した。
【0262】
3つの1/4インチ鋼鉄ボールベアリングを、ゼラチン空カプセル(ゼラチン空カプセルサイズ00、製造業者Herb Affair、供給源Amazon)内に配置した。これに、5滴のブルーレイアウトフルイドを添加した。カプセルを閉じた。
【0263】
コーティングしたカプセルを、以下のように調製した。
【0264】
コーティング層:2つのビーカーB1(疎水性相)およびB2(親水性相)を、以下に詳述するように調製した。B1は、6グラムの有機黄色蜜ろうを含んだ。この蜜ろうに、0.1グラムのアマニ油をピペットにより添加した。B1を、ホットプレート上に、温度60~80℃へと融解するまで配置する。蜜ろうを融解させ、撹拌バー(stir bar)を、ホットプレート(組み合わせユニット)上で使用して、アマニを蜜ろう相に入れて撹拌し;次いで、2つの相は混和できた。この混合物に、おおよそ0.1グラムの界面活性剤(Span 20)をピペットにより添加した。B2は、親水性相を含んだ。親水性相の基剤は、脱イオン水に飽和の点まで希釈した10質量%の重炭酸ナトリウムを有する脱イオン水であった。6グラムの重炭酸ナトリウム/水溶液を、ビーカーにピペットで入れた。測定した重炭酸ナトリウム/水溶液を、ホットプレート上に配置し、60~80℃に到達させた。撹拌バーを回転させて、B2中の親水性相を、ろう状のB1に添加し、60~80℃ホットプレート上で1(1)分間完全に混合されるまで、混合した。
【0265】
コーティングプロセス:得られたコーティング溶液を、エアブラシのレザバに注いだ。ヒートガン(heat gun)を使用して、エアブラシレザバおよびノズルを60℃超に維持した。調製したカプセルを、巻いた紙の断片で部分的に包み、しっかりと保持した。露出した半分を、エアブラシにより噴霧し、半分コーティングしたカプセルを形成した。半分コーティングしたカプセルを、トレー中に配置し、10分間乾燥させた。次いで、半分コーティングしたカプセルを、紙の断片で包み、コーティングされていない末端を露出した。このコーティングされていない末端を、エアブラシおよびコーティング溶液により噴霧した。実施例1の方法に従って調製したコーティングしたカプセルを、以後「試料1」と称し、他の実施例の方法に従って調製したコーティングしたカプセルを、かかる実施例に対応した番号で示す。
【0266】
実施例2
コーティングしたカプセルを、以下の改変を伴って、実施例1の方法に従って調製した。
【0267】
コーティング層:この実施例について、界面活性剤をB1に添加しなかった以外は、実施例1のとおりにB1およびB2を調製した。B2において、0.01gのキサンタンガムを添加し、5(5)分間高剪断で混合した。混合した重炭酸ナトリウム/水とキサンタンガムの溶液を、60~80℃まで加熱し、B1中の融解した蜜ろう/アマニ油に60~80℃で添加した。合わせた溶液を、コーティングプロセスの前に、1分間60~80℃で撹拌した。実施例2の方法に従って調製したコーティングしたカプセルを、以後、「試料2」と称する。
【0268】
実施例3
コーティングしたカプセルを、以下の改変を伴って、実施例1の方法に従って調製した。
【0269】
コーティング層:B1において、0.03gポリ(エチレングリコール)ジグリシジルエーテルを、アマニ油の代わりに該蜜ろうに添加した。B1における組み合わせを、ホットプレート上で60~80℃まで加熱し、続いて、1分間撹拌した。B2において、0.1gベンジルトリエチルアンモニウムクロリドを、キサンタンガムの代わりに添加した。B2における組み合わせを、5分間混合し、ホットプレート上で60~80℃まで加熱した。B1とB2を、合わせて、60~80℃で5分間撹拌し、その後、コーティングを、実施例1に記載のとおりにカプセルに適用した。実施例3の方法に従って調製したコーティングしたカプセルを、以後、「試料3」と称する。
【0270】
実施例4
コーティングしたカプセルを、以下の改変を伴って、実施例2の方法に従って調製した。
【0271】
添加剤溶液:以下の溶液を調製し、以下に記載されるようにコーティング層に添加した。
【0272】
ポリイソブチレンヘキサン溶液の調製:
1グラムのポリイソブチレンを、約0.2グラムの断片に切断し、該断片を、ビーカーに配置した。該ビーカーに、溶液が1質量%のポリイソブチレンとなるような容量のヘキサンを添加した。該溶液を、高剪断でポリイソブチレンが溶解するまで撹拌した。
【0273】
ポリイソブチレントルエン溶液の調製:
1グラムのポリイソブチレンを、約0.2グラムの断片に切断し、断片を、ビーカーに配置した。該ビーカーに、溶液が1質量%のポリイソブチレンとなるような容量のトルエンを添加した。該溶液を、高剪断でポリイソブチレンが溶解するまで撹拌した。
【0274】
ポリイソブチレンベンゼン溶液の調製:
1グラムのポリイソブチレンを、約0.2グラムの断片に切断し、断片を、ビーカーに配置した。該ビーカーに、溶液が1質量%のポリイソブチレンとなるような容量のベンゼンを添加した。該溶液を、高剪断でポリイソブチレンが溶解するまで撹拌した。
【0275】
コーティング層:B1において、6グラムの黄色蜜ろうを、ホットプレート上で60~80℃で融解した。0.01~0.04gのポリイソブチレンヘキサン、ポリイソブチレントルエン、またはポリイソブチレンベンゼンの溶液を、融解蜜ろうにピペットにより添加した。組み合わせを、60~80℃で1分間撹拌した。B2において、3~6gの重炭酸ナトリウム/水に、0.005~0.01gのキサンタンガムを添加した。組み合わせを、高剪断で5分間混合した。次いで、B2を、ホットプレート上で60~80 ℃まで加熱した。コーティングプロセスの前に、B1およびB2を、合わせ、60~80℃で1分間混合した。
【0276】
実施例4において調製した組み合わせを、以下の表1に列挙する。各組み合わせは、絶対量が試験により異なることを除いて、上記実施例4で議論されるものと同じ調製工程を経た。実施例4の方法に従って調製した試料の組成を、以下に列挙する:
【表1】
【0277】
実施例5
B1を実験4のとおりに調製した。キサンタンをゼラチン粉末0.01、0.05および0.11グラムで置き換えたことを除いて、B2を、実施例3のとおりに調製した。B2における各組み合わせを、60~80℃で1分間溶解するまで混合した。B1とB2を、実施例4のとおりに合わせ、実施例1に記載されるコーティングプロセスを、実施した。
【0278】
実施例5において調製した組み合わせを、以下の表2に列挙する。各組み合わせは、絶対量が試験により異なることを除いて、上記したものと同じ調製工程を経た。実施例5の方法に従って調製した試料の組成を、以下に列挙する:
【表2】
【0279】
実施例6
この実施例について、有機白色みつ蝋を、有機黄色みつ蝋の代わりに使用したが、同量であることを除いて、B1を実施例4のとおりに調製した。0.6グラムのSpan 20を、ピペットによりB1中の融解したみつ蝋に添加した。B2を、2.7グラムの重炭酸ナトリウム/水および0.3グラムのゼラチンを用いて調製した。B2中の組み合わせを、1分間60~80℃で溶解するまで混合した。B1とB2を、コーティングプロセスの前に、実施例4のとおりに合わせた。実施例6の方法に従って調製したコーティングしたカプセルを、以後、「試料6」と称する。
【0280】
実施例7
実施例2~6において調製したとおりのコーティングしたカプセルを、ヒトの胃中の条件に類似した実験条件を生成することにより、塩酸およびプロテアーゼに対するそれらの感受性について試験した。2つの試験溶液を調製した。塩酸溶液を、pH2の塩酸ストック溶液を使用して調製した。プロテアーゼ溶液を、13.5グラムの水中に1.5グラムのThomas Lab Bio Case膵臓酵素製剤を高剪断で混合することにより、調製した。この実施例および以下の全ての実施例において、第1の溶液を、「酸溶液」と称し、第2の溶液を、「プロテアーゼ溶液」と称する。各混合した溶液を、37℃で水浴に配置した。
【0281】
実施例2~6のとおりに調製したコーティングしたカプセルを、試験溶液の各々に該カプセルを浸漬することにより試験した。十分な試験溶液を、試験したコーティングしたカプセル全体が浸されるように(試験あたり約20ml)使用した。コーティングしたカプセルを試験溶液に浸す間に、観察を行った。カプセル内からの着色した液体の可視度により示されるカプセルの破損の最初の信号に注目し、最初の浸漬と破損のこの最初の信号の間の時間を、各浸漬試験についての「残存時間」と表す。これらの試験の結果を、以下の表3に示す。
【表3-1】
【表3-2】
【0282】
実施例8
空カプセルを、以下のように調製し得る:3つの1/4インチ鋼鉄ボールベアリングを、空カプセルの内部に配置し得る。これに、水溶性オレンジ調味料、例えば、Sazon Goyaを添加し得る。次いで、カプセルを、閉じ得る。
【0283】
コーティングしたカプセルを、コーティング層を調製し、該コーティング層を、カプセルをコーティングするために使用することにより、調製し得る。
【0284】
コーティング層:疎水性コーティングを、6グラムの有機黄色蜜ろうを使用して調製し得る。該蜜ろうを含むビーカーを、ホットプレート上で温度60~80℃へと融解するまで配置し得る。該蜜ろうが融解する場合、ヘキサン中の0.1グラムの1%ポリイソブチレンを、ピペットで添加し、1分間混合したままにし得る。クエン酸を、蜜ろう相に添加し、60~80℃ホットプレート上で1(1)分間完全に混合されるまで混合したままにし得る。
【0285】
コーティングプロセス:上記するような得られたコーティング層混合物を、エアブラシのレザバに注ぎ得る。ヒートガンを使用して、エアブラシレザバおよびノズルを60℃超に維持し得る。上記するように調製したカプセルを、巻いた紙の断片で部分的に包み、しっかりと保持し得る。露出した半分を、エアブラシにより噴霧し、半分コーティングしたカプセルを形成し得る。半分コーティングしたカプセルを、トレー中に配置し、10分間乾燥させ得る。次いで、半分コーティングしたカプセルを、紙の断片で包み得、コーティングされていない末端を露出する。このコーティングされていない末端を、エアブラシおよびコーティング溶液により噴霧し得、別の層を、少なくとも10分間乾燥させたままにし得る(with another layer and left to dry for at least ten minutes)。
【0286】
ゼラチンオーバーコート:次いで、ゼラチンオーバーコーティングを、任意の犠牲(sacrificial)層として、上に付加し得る。このゼラチンコーティングを、以下のこれらの工程により製造し得る:まず、水のビーカーを、撹拌しながらホットプレート上で80℃まで加熱し得る。パーム油グリセリンを添加して、脱イオン水中のパーム油グリセリンの0.1%溶液を形成する。加熱した溶液を勢いよく撹拌しながらゼラチン(ウシゼラチン、供給源Sigma)を添加し、2%溶液を形成し得る。溶液を、ゼラチン粉末が溶解するまで、撹拌したままにし得る。次いで、ゼラチンおよびグリセリンを含む最終溶液を、エアブラシレザバに添加し、前記したのと同じ様式で噴霧し、カプセル構造の上に一様なゼラチンコーティングを形成する。このように形成されたコーティングしたカプセルを、一晩乾燥させたままにし得る。
【0287】
試験手順:3つのカプセルを、上記するような試験のために製造し得る。調製されたコーティングしたカプセルを、ヒトの胃中の条件に類似した実験条件を生成することにより、塩酸およびプロテアーゼに対するそれらの感受性について試験し得る。2つの試験溶液を、実験7に概略を述べるように調製し得る:(a)塩酸溶液を、pH2の塩酸ストック溶液を使用して調製し得る(酸溶液);および(b)プロテアーゼ溶液を、13.5グラムの水中に1.5グラムのThomas Lab Bio Case膵臓酵素製剤を高剪断で混合することにより、調製し得る(プロテアーゼ溶液)。各混合した溶液を、37℃で水浴に配置し得る。コーティングしたカプセルを、試験溶液の各々に該カプセルを浸漬することにより試験し、これらの結果を観察し得る。十分な試験溶液を、試験したコーティングしたカプセルの全体が浸され得るように(試験あたり約20ml)使用するべきである。上記するような残存時間を測定し得る。これらの試験のあり得る結果を、以下の表4に示す。
【表4】
【0288】
実施例9
みつ蝋シートを調製するために、ヘキサン中のポリイソブチレンの1%溶液を、調製し得る。6gのダイズみつ蝋を、ホットプレート上で約50℃~60℃で融解させ撹拌し得、3gの1%ポリイソブチレン溶液を、融解したみつ蝋に添加し、数分間ヘキサンが蒸発するまで撹拌したままにし得る。1.2gのアルギン酸塩線維を、同様に混合し得る。加熱している間、みつ蝋/線維懸濁液を、テーブルの上面または他の平坦な表面に直接注ぎ得る。200μmの遊び(clearance)を有する湿潤フィルムコーティングアプリケーターを、熱い懸濁液の上に注意深く配置し、材料が広がったままでないようになるまでテーブルの領域にわたって引き得る。この層を、約10分間乾燥させたままにし得る。一旦層を乾燥させると、剃刀を使用して、シートの4つの末端を切断し、長方形のシートを製造し得、シートをまた、25mm x 32mm長方形に切断し得る。以前の実験に記載のとおりに、各長方形を、pH紙のシート上に配置し、該各長方形に酸溶液またはプロテアーゼ溶液を適用することにより、各長方形を別々に試験し得る。pH紙は、酸溶液の長方形を通る染み込みを示すpHの変化を同定し得、この染み込みの時間を測定し得;プロテアーゼ溶液が染み込んだ場合、pH変化は示され得ないが、該紙は、濡れて見え、これは、染み込みの時間の測定を可能にする。別の実験として、各長方形を、円柱に巻き得、端部を、近くのライターで軽く融解し、継ぎ目を生成し得る。側面をまた、折りたたみ、軽く融解させ、同じ様式で側面を閉じさせ得る。3つのこれらの閉じた円柱を、以前の実験に記載のとおりの酸溶液およびプロテアーゼ溶液中での続く試験のために製造し得る。
【0289】
実施例10
みつ蝋シートを調製するために、ヘキサン中のポリイソブチレンの1%溶液を、調製し得る。6gのダイズみつ蝋を、ホットプレート上で約50℃~60℃で融解させ撹拌し得、3gの1%ポリイソブチレン溶液を、融解したみつ蝋に添加し、数分間ヘキサンが蒸発するまで撹拌したままにし得る。0.6gのデンプン、0.6gの炭酸カルシウム、および1gのTween 80界面活性剤を含むペーストを、調製し得る。このペーストを、みつ蝋に混合し得る。加熱する間、みつ蝋/線維懸濁液を、テーブルの上面または他の平坦な表面上に直接注ぎ得る。200μmの遊びを有する湿潤フィルムコーティングアプリケーターを、熱い懸濁液の上に注意深く配置し、材料が広がったままでないようになるまでテーブルの領域にわたって引き得る。この層を、約10分間乾燥させたままにし得る。
【0290】
一旦層を乾燥させると、剃刀を使用して、シートの4つの末端を切断し、長方形のシートを製造し得、シートをまた、25mm x 32mm長方形に切断し得る。以前の実験に記載のとおりに、各長方形を、pH紙のシート上に配置し、該各長方形に酸溶液またはプロテアーゼ溶液を適用することにより、各長方形を別々に試験し得る。pH紙は、pHの変化を同定し得るか、または湿りを示し得、このいずれも、それぞれの溶液の長方形を通る染み込みを示し得、この染み込みの時間を測定し得るようにする。別の実験として、各長方形を、円柱に巻き得、端部を、近くのライターで軽く融解させ、継ぎ目を生成し得る。側面をまた、折りたたみ、軽く融解させ、同じ様式で側面を閉じさせ得る。3つのこれらの閉じた円柱を、以前の実験に記載のとおりの酸溶液およびプロテアーゼ溶液中での続く試験のために製造し得る。
【0291】
実施例1~2のように調製し得るコーティングしたカプセルを、試験溶液の各々に該カプセルを浸漬することにより試験した。十分な試験溶液を、試験したコーティングしたカプセル全体が浸されるように(試験あたり約20ml)使用し得る。空カプセルを、実施例8に前記されるのと同じ様式で調製し得る。これらの試験のあり得る結果を、以下の表5に示す。
【表5】
【0292】
実施例11~17についての材料:以下の材料を、以下の実施例11~17で使用し得る:
・ゼラチンカプセル(サイズ000)
・ゼラチンカプセル(サイズ0)
・ゼラチンシート
・ダイズみつ蝋
・エタノール
・粉末化ウシゼラチン
・DI水
・ヘキサン
・ポリイソブチレン
・ダイズレシチン
・セルロース線維
【0293】
実施例11
ゼラチン溶液を、5gの粉末化ゼラチンを13gの水に混合し、それを開花(bloom)/そのままにし、3~5分間水を吸収させることにより製造し得る。次いで、7gのエタノールを、揮発性成分として添加し得、これは、ゼラチンカプセルの分解を防止するために使用される水の量を最小化するものであり、該溶液を、攪拌プレート(stir plate)上で約50℃~60℃で混合し、覆い得る。6gのCaCO3および0.3gのダイズレシチンを、添加し、同様に混合し得る。加熱している間、懸濁液を、エアブラシ噴霧器のレザバに注ぎ、相対的に一様な(even)コーティングとして、ゼラチンカプセル(サイズ0)上に噴霧し、1時間乾燥したままにし得る。
【0294】
第2のコーティングを調製するために、ヘキサン中のポリイソブチレンの1%溶液を、調製し得る。6gのダイズ蜜ろうを、ホットプレート上で約50℃~60℃で融解させ撹拌し得、3gの1%ポリイソブチレン溶液を、融解した蜜ろうに添加し、数分間ヘキサンが蒸発するまで撹拌したままにし得る。加熱している間、蜜ろう溶液を、エアブラシ噴霧器のレザバに注ぎ、相対的に一様なコーティングとして、ゼラチンカプセル上に噴霧し、1時間乾燥したままにし得る。
【0295】
最後のコーティングとして、コーティングしたゼラチンカプセルを、より大きなゼラチンカプセル(サイズ000)にカプセル化し、3つの層:内部ゼラチン層、中間蜜ろう層、外部ゼラチン層を有するカプセルを形成し得る。3つのこれらの3層カプセルを、以前の実験に記載のとおりの酸溶液およびプロテアーゼ溶液中での続く試験のために製造し得る。
【0296】
実施例12
前もって形成したゼラチンシートを、基板の上に広げ得る。
【0297】
蜜ろうコーティングを調製するために、ヘキサン中のポリイソブチレンの1%溶液を調製し得る。6gのダイズ蜜ろうを、ホットプレート上で約50℃~60℃で融解し撹拌し得、3gの1%ポリイソブチレン溶液を、融解した蜜ろうに添加し、数分間ヘキサンが蒸発するまで撹拌したままにし得る。1.2gのCaCO3および0.3gのダイズレシチンを、添加し、同様に混合し得る。加熱している間、懸濁液を、エアブラシ噴霧器のレザバに注ぎ、相対的に一様なコーティングとして、ゼラチンシート上に噴霧し得る。コーティングはなお粘着性であるが、最後のゼラチンシートを、蜜ろうコーティングの上に配置し、内部ゼラチン層、中間蜜ろう層、外部ゼラチン層を有する3層シートを形成し得る。3つのこれらのシートを、以前の実験に記載のとおりの酸溶液およびプロテアーゼ溶液中での続く試験のために製造し得る。
【0298】
実施例13
ゼラチン溶液を、5gの粉末化ゼラチンを20gの水に混合することにより製造し得、該溶液を、撹拌プレート上で約50℃~60℃で混合し得る。6gのCaCO3を、添加し、同様に混合し得る。加熱している間、懸濁液を、テーブルの上面に注ぎ得、100μmの遊びを有する湿潤フィルムコーティングアプリケーターを、熱い懸濁液の上に注意深く配置し、材料が広がったままでないようになるまでテーブルの領域にわたって引き得る。この層を、約10分間乾燥させたままにし得る。
【0299】
第2の層を調製するために、ヘキサン中のポリイソブチレンの1%溶液を、調製し得る。6gのダイズ蜜ろうを、ホットプレート上で約50℃~60℃で融解させ撹拌し得、3gの1%ポリイソブチレン溶液を、融解した蜜ろうに添加し、数分間ヘキサンが蒸発するまで撹拌したままにし得る。1.2gのセルロース線維および0.3gのダイズレシチンを、同様に混合し得る。加熱している間、蜜ろう/線維懸濁液を、以前に製造したゼラチンシートの1つの面上に直接注ぎ得る。200μmの遊びを有する湿潤フィルムコーティングアプリケーターを、熱い懸濁液の上に注意深く配置し、材料が広がったままでないようになるまでゼラチンシートにわたって引き得る。この層を、約10分間乾燥させたままにし得る。
【0300】
最後の層として、上記するような同じゼラチン溶液を、5gの粉末化ゼラチンを20gの水に混合することにより製造し得、該溶液を、撹拌プレート(stir plate)上で約50℃~60℃で混合し、覆い得る。加熱している間、ゼラチン溶液を、以前に製造した蜜ろうシートの1つの面上に直接注ぎ得る。100μmの遊びを有する湿潤フィルムコーティングアプリケーターを、熱い溶液の上に注意深く配置し、材料が広がったままでないようになるまで蜜ろうシートにわたって引き得る。これを、1時間乾燥させたままにし得る。
【0301】
一旦層を乾燥させると、剃刀を使用して、シートの4つの末端を切断し、長方形のシートを製造し得、シートをまた、25mm x 32mm長方形に切断し得る。各長方形を、円柱に巻き得、端部を、近くのライターで軽く融解させ、継ぎ目を生成し得る。側面をまた、折りたたみ、軽く融解させ、同じ様式で側面を閉じさせることができる。3つのこれらの閉じた円柱を、以前の実験に記載のとおりの酸溶液およびプロテアーゼ溶液中での続く試験のために製造し得る。
【0302】
実施例14
ゼラチン溶液を、5gの粉末化ゼラチンを20gの水に混合することにより製造し得、該溶液を、撹拌プレート上で約50℃~60℃で混合し得る。6gのCaCO3を、添加し、同様に混合し得る。加熱している間、懸濁液を、テーブルの上面に注ぎ得、100μmの遊びを有する湿潤フィルムコーティングアプリケーターを、熱い懸濁液の上に注意深く配置し、材料が広がったままでないようになるまでテーブルの領域にわたって引き得る。この層を、約10分間乾燥させたままにし得る。
【0303】
第2の層を調製するために、ヘキサン中のポリイソブチレンの1%溶液を、調製し得る。6gのダイズ蜜ろうを、ホットプレート上で約50℃~60℃で融解させ撹拌し得、3gの1%ポリイソブチレン溶液を、融解した蜜ろうに添加し、数分間ヘキサンが蒸発するまで撹拌したままにし得る。1.2gのセルロース線維および0.3gのダイズレシチンを、同様に混合し得る。加熱している間、蜜ろう/線維懸濁液を、以前に製造したゼラチンシートの1つの面上に直接注ぎ得る。400μmの遊びを有する湿潤フィルムコーティングアプリケーターを、熱い懸濁液の上に注意深く配置し、材料が広がったままでないようになるまでゼラチン層にわたって引き得る。この層を、約10分間乾燥させたままにし得る。
【0304】
最後の層として、上記するのと同様のゼラチン溶液を、5gの粉末化ゼラチンを20gの水に混合することにより製造し得、該溶液を、撹拌プレート上で約50℃~60℃で混合し、覆い得る。加熱している間、ゼラチン溶液を、以前に製造した蜜ろうシートの1つの面上に直接注ぎ得る。100μmの遊びを有する湿潤フィルムコーティングアプリケーターを、熱い溶液の上に注意深く配置し、材料が広がったままでないようになるまで蜜ろう層にわたって引き得る。これを、1時間乾燥させたままにし得る。
【0305】
一旦層を乾燥させると、剃刀を使用して、シートの4つの末端を切断し、長方形のシートを製造し得、シートをまた、25mm x 32mm長方形に切断し得る。各長方形を、円柱に巻き得、端部を、近くのライターで軽く融解させ、継ぎ目を生成し得る。側面をまた、折りたたみ、軽く融解させ、同じ様式で側面を閉じさせ得る。3つのこれらの閉じた円柱を、以前の実験に記載のとおりの酸溶液およびプロテアーゼ溶液中での続く試験のために製造し得る。
【0306】
実施例15
ゼラチンシートを、購入し、最初のコーティングとして使用し、基板上に広げ得る。
【0307】
ゼラチンシートの上に第2の層を調製するために、ヘキサン中のポリイソブチレンの1%溶液を、調製し得る。別個に、水中のCaCO3の懸濁液(約20%)を、製造し得、セルロース線維を、この懸濁液に添加し、撹拌プレート上で撹拌させ得る。次いで、このビーカーを、約120℃でオーブンに配置し、水を完全に蒸発させ得る。これは、線維をコーティングし得る。さらに別のビーカーにおいて、6gのダイズ蜜ろうを、ホットプレート上で約50℃~60℃で融解させ撹拌し得、3gの1%ポリイソブチレン溶液を、融解した蜜ろうに添加し、数分間ヘキサンが蒸発するまで撹拌したままにし得る。1.2gのコーティングしたセルロース線維および0.3gのダイズレシチンを、同様に混合し得る。加熱している間、蜜ろう/線維懸濁液を、ゼラチンシートの端部の上に直接注ぎ得る。200μmの遊びを有する湿潤フィルムコーティングアプリケーターを、熱い懸濁液の上に注意深く配置し、材料が広がったままでないようになるまでゼラチンシートにわたって引き得る。
【0308】
最後の層として、別のゼラチンシートを、穏やかに加熱した蜜ろう層の上に配置し得る。
【0309】
一旦全てを乾燥させると、剃刀を使用して、シートの4つの末端を切断し、一様な厚さの長方形のシートを製造し得、シートをまた、25mm x 32mm長方形に切断し得る。各長方形を、円柱に巻き得、端部を、近くのライターで軽く融解させ、継ぎ目を生成し得る。側面をまた、折りたたみ、軽く融解させ、同じ様式で側面を閉じさせることができる。3つのこれらの閉じた円柱を、以前の実験に記載のとおりの酸溶液およびプロテアーゼ溶液中での続く試験のために製造し得る。
【0310】
実施例16
ゼラチン溶液を、5gの粉末化ゼラチンを20gの水に混合することにより製造し得、該溶液を、撹拌プレート上で約50℃~60℃で混合し得る。6gのCaCO3および0.3gのダイズレシチンを、添加し、同様に混合し得る。加熱している間、懸濁液を、テーブルの上面に注ぎ得、100μmの遊びを有する湿潤フィルムコーティングアプリケーターを、熱い懸濁液の上に注意深く配置し、材料が広がったままでないようになるまでテーブルの領域にわたって引き得る。この層を、約10分間乾燥させたままにし得る。
【0311】
ゼラチン層の上に第2の層を調製するために、ヘキサン中のポリイソブチレンの1%溶液を、調製し得る。別個に、6gのダイズ蜜ろうを、ホットプレート上で約50℃~60℃で融解させ撹拌し得、3gの1%ポリイソブチレン溶液を、融解した蜜ろうに添加し、数分間ヘキサンが蒸発するまで撹拌したままにし得る。加熱している間、蜜ろう懸濁液を、ゼラチン層の端部の上に直接注ぎ得る。200μmの遊びを有する湿潤フィルムコーティングアプリケーターを、熱い懸濁液の上に注意深く配置し、材料が広がったままでないようになるまでゼラチンシートにわたって引き得る。乾燥の10分後、マイクロニードルローラーを、蜜ろう層の上を注意深く転がし、蜜ろう層中に微小孔を生成し得、ここで、該ニードルが、ゼラチン層を貫通しないように注意する。
【0312】
最後の層として、別のゼラチンシートを、5gの粉末化ゼラチンを20gの水に混合することにより、上記と同様に製造し得、該溶液を、撹拌プレート上で約50℃~60℃で混合し、覆い得る。加熱している間、ゼラチン溶液を、別の何もない(blank)テーブル状の基板に注ぎ得る。100μmの遊びを有する湿潤フィルムコーティングアプリケーターを、熱い懸濁液の上に注意深く配置し、材料が広がったままでないようになるまでテーブルの上面にわたって引き得る。これを、約10分間乾燥させたままにし得、以前のゼラチン/蜜ろう層を、(蜜ろう側を下にして)上に配置し得る。
【0313】
次いで、剃刀を使用して、シートの4つの末端を切断し、一様な厚さの長方形のシートを製造し得、シートをまた、25mm x 32mm長方形に切断し得る。各長方形を、円柱に巻き得、端部を、近くのライターで軽く融解させ、継ぎ目を生成し得る。側面をまた、折りたたみ、軽く融解させ、同じ様式で側面を閉じさせることができる。3つのこれらの閉じた円柱を、以前の実験に記載のとおりの胃酸および十二指腸液中での続く試験のために製造し得る。
【0314】
実施例17
実施例11~16に従って調製したコーティングしたカプセルを、以下のプロトコルを使用して試験し得る:
実施例11~16のとおりに調製し得るコーティングしたカプセルを、酸溶液およびプロテアーゼ溶液の各々に該カプセルを浸漬することにより試験し得る。十分な量の試験溶液を、試験したコーティングしたカプセル全体が浸されるように(試験あたり約20ml)使用し得る。これらの試験の予言的な結果を、以下の表6に示す。空カプセルを、以前の実施例に記載されるとおり3つの1/4インチ鋼鉄ボールベアリングおよび水溶性オレンジ食品着色料または調味料を使用して、実施例1に記載されるのと同じ様式で調製し得る。残存時間を、実施例6に示すとおりに決定し得る。
【表6-1】
【表6-2】
【0315】
実施例18~25についての材料:以下の材料を、以下の実施例18~25において使用し得る。
・ウシゼラチン、供給源Sigma
・黄色有機蜜ろう、製造業者Mary Taylor、供給源Amazon
・沈澱化炭酸カルシウム粉末、供給源Amazon
・Span 80、供給源Sigma
・ステアリン酸ナトリウム、供給源Sigma
・ペクチン、供給源Sigma
・ヘキサン、供給源Sigma
・ポリイソブチレン、供給源Sigma
・セルロース線維、供給源Sigma
・ビタミンA、供給源Sigma
・ビタミンD、供給源Sigma
・ビタミンE、供給源Sigma
・ビタミンK、供給源Sigma
【0316】
実施例18
この実施例について、水相を、2グラムのウシゼラチンを6グラムの加熱した水に溶解し、25重量%ウシゼラチン溶液を生成することにより調製する。室温に冷却した場合、ゼラチンは、ゲル様マトリックスに固化する。冷却期間の前に、約0.8グラムの沈澱化炭酸カルシウム(PCC)を、撹拌しながら添加する。PCCはゼラチン水に溶解しないことが観察される。代わりに、撹拌により、PCC結晶が冷却しているゼラチン溶液内に分配される。ゼラチンが冷却するにつれて、PCCは、小さな結晶として一様に懸濁される。別個に、疎水性相を、摂氏約60度で数グラムの未精製黄色蜜ろうを融解させ、1重量%以下のSpan 80を融解した未精製黄色蜜ろうに添加し、一定の熱を印加しながら該2つを一緒にして十分混合することにより調製する。次いで、PCC結晶を含む水相および疎水性相を、比1:5の蜜ろう:水で勢いよく混合し、それにより、両方がなお液体である間に2つの相を混合する。混合物を、鋳型に注ぎ、冷却させる。最終生成物は、一様に見え、弾性特性を有し圧縮可能であり、その結果、最終生成物は、大きな力が印加されない場合、その元の形状に戻る。
【0317】
実施例19
この実施例において、本発明者らは、最終生成物製剤の機械的特性を強めるために、ポリイソブチレン(PIB)を、実施例18で調製した疎水性相に添加することにより、実施例18を改変する。希釈溶液としてPIB添加剤を調製するために、本発明者らは、撹拌運動を使用して、室温で1重量%のPIBをヘキサン溶媒に溶解する。実施例18に記載のとおりに、疎水性相を、未精製黄色蜜ろうを融解させ、Span 80を添加することにより調製する。水相を、実施例18のとおりに調製し、温かい水に溶解した25重量%のウシゼラチンの溶液を生じ、それに、10重量%のPCCを添加する。これらの疎水性相および水相を混合する前に、本発明者らは、短い撹拌をしながら、3重量%のPIB溶液(の疎水性相)を60℃で直接該疎水性相に添加する。ヘキサンを蒸発させ、疎水性相内に混入したPIBを後に残す。溶解したPIBをこのように疎水性相に添加して、本発明者らは、疎水性相と水相を合わせ、最終生成物を生じる。
【0318】
実施例20
この実施例において、本発明者らは、少量(1~3%)のペクチンを水相に添加することにより、実施例18または19を改変する。ペクチンは、カルシウムイオンに引き付けられることにより、カルシウム環境におけるゲル化のプロセスを補助する多糖である。この実施例において、1~3重量%のペクチン溶液を、8グラムのゼラチン/水に添加し、これは、実施例18および19において水相を形成するものである。同時にまたはその少し後に、本発明者らは、PCCを水相に添加し、撹拌して、PCCおよびペクチンを水相中くまなく分散させる。ペクチンは、PCC中でカルシウムイオンに引き付けられ、PCCの周囲に親水性表面層を存在させる。これは、水相と疎水性相の最終混合の間に、水相中くまなくPCCを分散させる。
【0319】
実施例21
この実施例において、本発明者らは、セルロース線維を疎水性相中の未精製黄色蜜ろうに添加することにより、実施例18または19または20を改変する。1~2グラムのセルロース線維を、実施例18に従って調製した(融解した未精製黄色蜜ろうおよび1重量%Span 80)疎水性相に添加し、60℃でセルロース中で撹拌しながら、3グラムの総質量を生じる。そのセルロース添加剤と共に疎水性相を形成した後、本発明者らは、以前の実施例に記載のとおりにこの相と水相を合わせ、撹拌し、その後、さらなる製剤化を続けた。
【0320】
実施例22
この実施例は、1つ以上の脂溶性(水不溶性)ビタミンを実施例18、19、20、または21の疎水性相に添加することにより、実施例18または19または20または21の改変を提供する。0.5~1グラム総量のビタミンA、D、E、およびKの組み合わせを、3グラム正味重量の実施例18、19、20、または21の疎水性相に60℃で添加し、例えば、粉末形態のビタミン(1つまたは複数)に入れて撹拌する。脂溶性ビタミンを疎水性相に添加した後、以前の実施例に記載されるとおりに水相と合わせる。
【0321】
実施例23
本発明者らは、109グラムのDI水、10グラムのPCC、および0.3グラムのステアリン酸ナトリウム(ステアリン酸)を温度60℃超で合わせ、数分間撹拌することにより、沈澱化炭酸カルシウム(PCC)のストック溶液を調製した。第2のビーカーにおいて、本発明者らは、4グラムの未精製黄色蜜ろうを60℃で融解させた。第3のビーカーにおいて、本発明者らは、12グラムのDI水および3グラムのウシゼラチンを摂氏60で合わせ、撹拌することにより、融解ゼラチンのストック溶液を調製した。疎水性相ビーカーにおいて、本発明者らは、2グラムのPCC水溶液を4グラムの融解未精製黄色蜜ろうに添加した。本発明者らは、8グラムのゼラチンストック溶液を疎水性相ビーカーに注ぎ、60℃で撹拌した。本発明者らは、得られた生成物を鋳型に注ぎ、混合物を冷却させた。結果は、水相と疎水性相は分離を完了した、であった。
【0322】
実施例24
本発明者らは、実施例23に従って調製した7グラムのストックゼラチン溶液と1.80グラムの融解未精製黄色蜜ろうおよび0.2グラムのPCCストック溶液(実施例23に従って調製した)を60℃で合わせ、撹拌した。これに、本発明者らは、約2mlのSpan 80界面活性剤を添加し、60℃で混合し続け、高剪断撹拌した。本発明者らは、この生成物を鋳型に注ぎ、固化させた。結果は、水相が優勢であり、機械的剛性の量が低い生成物であった。
【0323】
実施例25
1つのビーカーにおいて、本発明者らは、13.86グラムのDI水および3.26グラムのウシゼラチンを合わせ、60℃で撹拌し、水相を形成した。第2のビーカーにおいて、本発明者らは、3.9グラムの未精製黄色蜜ろうを60℃で融解し、約2mlのSpan 80界面活性剤を添加し、疎水性相を形成した。ゼラチンおよび水を有する第1のビーカーに、本発明者らは、1.45グラムのPCCをその粉末形態で添加し、それを撹拌して混合し、溶液にした。本発明者らは、疎水性相を60℃で直接水相に添加し、撹拌して混合した。本発明者らは、この生成物を鋳型に注ぎ、冷却させた。結果は、粘着性かつ弾性の堅さ(consistency)を有する一様な材料であった。
【0324】
本発明は特に、その好ましい態様を参照して示され、記載されるが、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲を逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が本発明においてなされ得ることが当業者に理解されよう。
【0325】
本発明の特定の態様が本明細書で開示されてきたが、上記の明細書は例示的であり、限定的ではない。本発明は、その好ましい態様を参照して特に示され説明されてきたが、添付の特許請求の範囲に含まれる発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更を本発明においてなし得ることが当業者によって理解されよう。本明細書を検討する際、本発明の多くの変形が当業者に明らかになるであろう。そうでないと示されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される、反応条件、成分の量等を表す全ての数字は、全ての場合において用語「約」によって修飾されるものとして理解されるべきである。従って、そうでないと示されない限り、本明細書に示される数値パラメータは、本発明が得ようと努める所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
図1
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【国際調査報告】