(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】積層造形用のFeCrAlの印刷可能な粉末材料及び積層造形された物体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20221215BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20221215BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20221215BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20221215BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221215BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20221215BHJP
B22F 10/362 20210101ALN20221215BHJP
B22F 10/36 20210101ALN20221215BHJP
B22F 10/62 20210101ALN20221215BHJP
【FI】
C22C38/00 304
B22F1/00 T
B22F1/05
B22F10/28
B33Y10/00
B33Y70/00
B22F10/362
B22F10/36
B22F10/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523465
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2020079797
(87)【国際公開番号】W WO2021078885
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591098101
【氏名又は名称】カンタール・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】カオ, ペンチェン
(72)【発明者】
【氏名】チェーレン, ミケル
(72)【発明者】
【氏名】サリーム, サウド
【テーマコード(参考)】
4K018
【Fターム(参考)】
4K018AA32
4K018BA16
4K018BB04
4K018FA27
4K018KA07
4K018KA32
(57)【要約】
本開示は、新規な積層造形用の印刷可能な粉末材料及び積層造形された物体及びその使用に関する。本開示はまた、物体を作製するための積層造形方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷可能なフェライトFeCrAl粉末組成物であって、
FeCrAl粉末組成物が、重量%で、
Cr 9.0~25.0、
Al 2.5~8.0、
Si ≦3.0、
Mo ≦4.0、
Ni ≦1.0、
Mn ≦1.0、
C ≦0.1、
S ≦0.01、
P ≦0.01、
N ≦0.1、
O ≦0.2、
Ti ≦1.7、
Y ≦3.0、
Nb ≦3.3、
Zr ≦3.3、
V ≦1.8
Ta+Hf ≦6.5
La ≦1.0、
Ce ≦1.0、
残部Fe及び不可避不純物からなり、
FeCrAl粉末組成物が、10μmと120μmの間などの4~200μmの間の粉末粒度分布を有する、印刷可能なフェライトFeCrAl粉末組成物。
【請求項2】
Cの含有量が≦0.05重量%である、請求項1に記載の印刷可能なFeCrAl粉末組成物。
【請求項3】
Mnの含有量が≦0.5重量%である、請求項1又は請求項2に記載の印刷可能なFeCrAl粉末組成物。
【請求項4】
Siの含有量が0.5wt%未満又は0.5超~3.0重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の印刷可能なFeCrAl粉末組成物含有量。
【請求項5】
Alの含有量が3~6重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の印刷可能なFeCrAl粉末組成物。
【請求項6】
Crの含有量が9~11重量%又は18~24重量%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の印刷可能なFeCrAl粉末組成物。
【請求項7】
重量%で、
Cr 18~24、
Al 4~6、
Mn ≦0.5、
Si ≦0.5又は0.5超~3、
Mo ≦0.5、
Ti ≦0.5、
Y ≦1.0、
Nb ≦0.5、
Zr ≦0.5、
V ≦0.5、
Ta+Hf ≦1.0、
La ≦0.5、
Ce ≦0.5、
残部Fe及び不可避不純物からなる、
請求項1又は請求項2に記載の印刷可能なFeCrAl粉末組成物。
【請求項8】
重量%で、
Cr 18~24、
Al 4~6、
Mn ≦0.5、
Si ≦0.5又は0.5超~3、
Mo 1~4、
Ti ≦0.5、
Y ≦1.0、
Nb ≦0.5、
Zr ≦0.5、
V ≦0.5、
Ta+Hf ≦1.0、
La ≦0.5、
Ce ≦0.5、
残部Fe及び不可避不純物からなる、
請求項1又は請求項2に記載の印刷可能なFeCrAl粉末組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の印刷可能な粉末組成物を含む、積層造形された物体。
【請求項10】
物体が高温耐熱発熱体又は高温耐熱コンポーネントである、請求項9に記載の積層造形された物体。
【請求項11】
物体が電気発熱体又は電気抵抗コンポーネントである、請求項9に記載の積層造形された物体。
【請求項12】
積層造形方法が粉末床溶融結合積層造形方法又は指向性エネルギー堆積(DED)から選択され、請求項1~9のいずれか一項に記載のフェライトFeCrAl粉末が使用される、請求項9~11のいずれか一項に記載の物体を製造するための積層造形方法。
【請求項13】
粉末床溶融結合積層造形メソッドが使用され、粉末床溶融結合積層造形メソッドがSLM又はEBMである、請求項12に記載の積層造形方法。
【請求項14】
電気発熱又は高温用途におけるコンポーネントとしての、又は発熱体としての、請求項9~13のいずれか一項に記載の積層造形された物体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、新規な積層造形用の印刷可能な粉末材料及び積層造形された物体及びその使用に関する。本開示はまた、物体を作製するための積層造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形は、金属製の機能プロトタイプ及びコンポーネント、特に複雑な設計を有するものを製造するためのますます魅力的な解決策となっている。
【0003】
アルミニウムを含有するフェライト合金は、電気発熱及び高温用途での使用に魅力的である。しかしながら、これらの合金の問題の1つは、それらの脆い性質のために溶接が困難であることである。さらに、これらの合金は、機械加工が困難な場合もある。したがって、これらの合金において複雑な構造物を製造することは、困難かつ複雑であり得る。本開示は、上記の問題を解決又は少なくとも低減することを目的とする。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本開示の一態様は、積層造形に使用される印刷可能なフェライト鉄-クロム-アルミニウム(FeCrAl)金属粉末組成物を提供することである。したがって、本開示は、印刷可能なフェライトFeCrAl粉末組成物であって、FeCrAl粉末組成物が、重量%で、
Cr 9.0~25.0、
Al 2.5~8.0、
Si ≦3.0、
Mo ≦4.0、
Ni ≦1.0、
Mn ≦1.0、
C ≦0.1、
O ≦0.2、
S ≦0.01、
P ≦0.01、
N ≦0.1、
Ti ≦1.7、
Y ≦3.0、
Nb ≦3.3、
Zr ≦3.3、
V ≦1.8
Ta+Hf ≦6.5
La ≦1.0、
Ce ≦1.0、
残部Fe及び不可避不純物からなり、FeCrAl粉末組成物が、10μmと120μmとの間などの4~200μmの間の粉末粒度分布を有する、印刷可能なフェライトFeCrAl粉末組成物に関する。
【0005】
本粉末は、良好な流動性、良好な充填密度及び良好な展延性を有し、したがって印刷するのに優れている。印刷可能な粉末組成物はまた、粉末がガスアトマイズ方法によって得られたことを意味する、ガスアトマイズされたフェライト鉄-クロム-アルミニウム(FeCrAl)粉末組成物である。印刷可能なフェライトFeCrAl粉末組成物は、本質的に完全に緻密であり、優れた高温酸化特性を有し、優れた高温クリープ特性を有する3D成形物体を得るのに有利である。加えて、粉末はまた、特定の所望の粒径分布になるようにふるい分けされてもよい。
【0006】
本開示はまた、以下として上記で定義されるFeCrAl粉末としての範囲内の合金元素を含み、前記FeCrAl粉末から製造される積層造形された物体に関する。積層造形された物体の3D形状は、最終使用に依存する。本発明者らは、驚くべきことに、上記又は以下に定義されるFeCrAl粉末から製造され、それによって上記又は以下に定義される粉末の同じ範囲内の同じ元素からなる合金を含む積層造形された物体が、高温で優れた機械的特性を有し、より具体的には、高温で優れた耐クリープ性及びさらに高い耐酸化性を有することを見出した。
【0007】
積層造形された物体は、高温用途(400~1350℃で動作する用途)における電気発熱体又はコンポーネントとして、又は電気発熱用途のコンポーネントとして特に有用である。物体はまた、高温摩耗及び腐食から別の物体を保護するために使用することができる。したがって、本物体は、電気発熱及び高温用途の両方に使用することができる。
【0008】
本開示の別の態様は、積層造形方法を提供することである。したがって、本開示は、上記又は以下に定義される粉末の上記又は以下に定義される物体を製造するための積層造形方法であって、積層造形方法が、粉末床溶融結合積層造形方法又は指向性エネルギー堆積(DED)から選択される、積層造形方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】印刷された試料と従来の製造された合金との間の900℃及び1100℃及び1200℃でのクリープ特性の差を示す図である。
【
図2】印刷された試料と従来の製造された合金との間の1100℃での質量増加の差を示す図である。
【
図3】DEDを使用して上記又は以下に定義される粉末から製造された物体の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、印刷可能なフェライトFeCrAl粉末組成物であって、FeCrAl粉末組成物が、重量%(wt%)で、
Cr 9.0~25.0、
Al 2.5~8.0、
Si ≦3.0、
Mo ≦4.0、
Ni ≦1.0、
Mn ≦1.0、
C ≦0.1、
S ≦0.01、
P ≦0.01、
N ≦0.1、
O ≦0.2、
Ti ≦1.7、
Y ≦3.0、
Nb ≦3.3、
Zr ≦3.3、
V ≦1.8
Ta+Hf ≦6.5
La <1.0、
Ce <1.0、
残部Fe及び不可避不純物
からなり、
FeCrAl粉末組成物が、10~120μmなどの4~200μmの粉末粒度分布を有する、印刷可能なフェライトFeCrAl粉末組成物に関する。さらに、したがって、本開示の一態様は、複雑な構造及び機械的特性において優れた物体を得るための積層造形方法に使用することができる印刷可能なフェライトFeCrAl粉末組成物を提供することである。「印刷可能」という用語は、粉末を少なくとも1つの積層造形方法において使用することができることを意味する。
【0011】
粉末の合金元素の大部分について以下に説明する。説明では、元素の重要な特性のいくつかを列挙する。しかしながら、そのリストは、完全なリストとして考慮されるべきではない。元素は、本明細書に列挙されていない他の特性を有してもよい。
【0012】
クロム(Cr)
クロムは、いわゆる第3の元素効果を通して、すなわち一過性の酸化段階における酸化クロムの形成によって、上記又は以下に定義される合金上のAl2O3層の形成を促進する。クロムは、上記又は以下に定義される合金中に少なくとも9wt%の量で存在するものとする。Cr含有量が増加すると、フェライト構造物に対する固溶硬化効果が増加する。約11wt%以上のCrから、フェライト構造物は、300~500℃の温度範囲で不安定になる。次いで、フェライトは、1つの低Crフェライト相と1つの高Crフェライト相とに分解され得る。これが起こると、材料は、より硬くなり、より脆くなる。この不安定性は、Crの増加と共に増加するため、最大Crは、25wt%に設定される。したがって、本開示の一実施形態によれば、Crの含有量は、19から23.5wt%などの18から24wt%である。したがって、本開示の別の実施形態によれば、Crの含有量は、9から11wt%であり、したがって、さらに別の実施形態によれば、Crの含有量は、9から15wt%である。
【0013】
アルミニウム(Al)
アルミニウムは、高温で酸素に曝されたときに緻密で薄い酸化Al2O3を形成し、下にある合金表面をさらなる酸化から保護するため、上記又は以下に定義される粉末中の重要な元素である。アルミニウムの量は、Al2O3層が形成され、Al2O3層が損傷した場合にAl2O3層を修復するのに十分なアルミニウムが存在することを確実にするために、少なくとも2.5wt%であるべきである。しかしながら、アルミニウムは、本粉末組成物から得られる物体の成形性に悪影響を及ぼし、アルミニウムの量は、上記又は以下に定義される本粉末中で8wt%を超えるべきではない。一実施形態によれば、Alは、3~7wt%である。別の実施形態によれば、Alは、3.5~6wt%など、4~6wt%などの3~6wt%である。
【0014】
ケイ素(Si)
FeCrAl合金では、ケイ素は、多くの場合、約0.5wt%までのレベルで存在する。したがって、一実施形態によれば、Siは、0.5wt%までのレベルで存在する。しかしながら、Siは、耐酸化性及び耐食性を改善するための重要な役割を果たす可能性がある。したがって、Siは、1~3wt%など、1~2.5wt%など、1.5~2.5wt%などの0.5超~3wt%存在し得る。Siの上限は、長期曝露中の脆いCr3Si及びσ相の形成に対する感受性の増加によるものである。したがって、Siの添加は、Al及びCrの含有量を考慮して行われなければならない。
【0015】
マンガン(Mn)
マンガンは、上記又は以下に定義される粉末中に不純物として存在し得る。マンガンはまた、1100℃超で酸化寿命に悪影響を及ぼし得る。したがって、Mnの最大含有量は、1.0wt%までである。一実施形態によれば、Mnの含有量は、≦0.5重量%である。
【0016】
モリブデン(Mo)
モリブデンは、不純物であってもよいし、合金元素として添加されてもよい。Moが不純物であるとみなされる実施形態では、その最大レベルは、0.5wt%以下である。Moが合金元素とみなされ、固溶体硬化効果を提供するために添加される実施形態では、その最小レベルは、1.0wt%超など、1.0~4.0wt%など、0.5wt%超である。
【0017】
炭素(C)
炭素は、強度を高めるために含まれ得る。高すぎるレベルでは、炭素は、材料の形成を困難にし、耐食性に悪影響を及ぼし得る。したがって、Cは、≦0.05wt%など、≦0.1wt%に制限される。一実施形態によれば、C含有量は、0.001から0.1wt%である。
【0018】
窒素(N)
窒素は、強度を高めるために含まれ得る。窒素はまた、製造プロセスから生じる不可避の不純物として存在し得る。高すぎるレベルでは、窒素は、材料の形成を困難にし、耐食性に悪影響を及ぼし得る。したがって、Nは、≦0.1wt%に制限される。一実施形態によれば、N含有量は、0.001から0.1wt%である。
【0019】
酸素(O)
酸素は、製造プロセスから生じる不純物として存在し得る。したがって、Oは、≦0.1wt%など、≦0.2wt%に制限される。
【0020】
反応性元素(RE)
本開示の定義によれば、反応性元素は、炭素、窒素及び酸素と高度に反応性である。酸化特性を向上させるために、イットリウム(Y)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ランタン(La)、Ce(セリウム)、及びこれらの元素を添加してもよい。
【0021】
本開示によれば、これらの元素は、本粉末中、したがって粉末から作られた物体中で以下の含有量を有する。
Ti ≦1.7wt%、
Y ≦3.0wt%、
Nb ≦3.3wt%、
Zr ≦3.3wt%、
V ≦1.8wt%、
Ta+Hf ≦6.5wt%、
La ≦1.0wt%、
Ce ≦1.0wt%。
【0022】
一実施形態によれば、上記又は以下に定義されるFeCrAl粉末は、以下の重量(wt%)でこれらの元素を有し得る。
Ti ≦0.5、
Y ≦1.0、
Nb ≦0.5、
Zr ≦0.5、
V ≦0.5、
Ta+Hf ≦1.0、
La ≦0.5、
Ce ≦0.5。
【0023】
一実施形態によれば、印刷可能なFeCrAl粉末組成物は、重量%で、
Cr 18~24、
Al 4~6、
Mn ≦0.5、
Si ≦0.5又は0.5超~3、
Mo ≦0.5、
Ti ≦0.5、
Y ≦1.0、
Nb ≦0.5、
Zr ≦0.5、
V ≦0.5、
Ta+Hf ≦1.0、
La ≦0.5、
Ce ≦0.5
残部Fe及び不可避不純物からなり、Cが≦0.1重量%であるか、又はCが≦0.05重量%である。
【0024】
別の実施形態によれば、印刷可能なFeCrAl粉末組成物は、重量%で、
Cr 18~24、
Al 4~6、
Mn ≦0.5、
Si ≦0.5又は0.5超~3、
Mo 1~4、
Ti ≦0.5、
Y ≦1.0、
Nb ≦0.5、
Zr ≦0.5、
V ≦0.5、
Ta+Hf ≦1.0、
La ≦0.5、
Ce ≦0.5
残部Fe及び不可避不純物からなり、Cが≦0.1重量%であるか、又はCが≦0.05重量%である。
【0025】
鉄(Fe)及び不可避不純物は、どちらも上記又は以下に定義される粉末又は物体の残部を構成する。
【0026】
不可避不純物の例であるがこれに限定されないのは、低融点相を形成する金属であるが、なぜならこれらの低融点相が亀裂抵抗特性に影響を及ぼすことが示されているからである。
【0027】
したがって、FeCrAl粉末中の特定の合金元素を除去することによって、優れた高温耐食性及びクリープ強度を有するがこれらに限定されない製品を達成することが可能であることが見出された。そのような元素の例は、コバルト、銅、亜鉛及びマグネシウムである。
【0028】
実施形態によれば、粉末粒度分布は、4~200μm、10~120μm、10~90μmから選択され得る。
【0029】
上記又は以下に定義されるフェライトFeCrAl粉末を使用して製造された積層造形された物体は、1350℃までの動作温度で良好に機能する。さらに、本物体は、顕著な高温耐食性、並びに酸化、硫化及び炭化に対する高い耐性を有する。さらに、積層造形された物体は、従来的に製造された物体と比較して、顕著な高温クリープ強度及び高い形状安定性及び高い電気抵抗率を有する。
【0030】
上記又は以下に記載する積層造形方法は、生成されたデータをハードウェアにリンクもするソフトウェアを使用することによって2Dの薄いスライスに分解される、印刷される3D成形物体のコンピュータ援用設計を使用する。
【0031】
本開示の一実施形態によれば、粉末床溶融結合積層造形方法が使用される。別の実施形態によれば、粉末床溶融結合造形方法は、選択的レーザ溶融(SLM)又は電子ビーム溶融(EBM)から選択される。これらの方法の両方で粉末床が使用される。粉末層は、エネルギー源に曝露され、それによって溶融又は少なくとも部分的に溶融される。新しい粉末層が提供され、これは、所望の物体が得られるまで続く。SLMでは、エネルギー源は、エネルギー源連続レーザビーム又はパルスレーザビームなどの1つ又は複数のレーザビームであり、EBMでは、エネルギー源は、電子ビームである。
【0032】
SLMは、アルゴン又は窒素雰囲気などの不活性雰囲気中で行われる。さらに、方法は、例えば、小さな角度を補強するために必要なときに支持体を使用する場合があり、支持体は、その後除去される。さらに、SLM印刷は、遊離の粉末層上に直接行われる。
【0033】
EBMでは、各粉末層は、電子ビームによって局所的に溶融される前に予熱されてもよい。この方法は、真空及び高温で行われる。さらに、EBMでは、粉末層の実際の印刷が開始される前に、各新しい粉末層が最初に電子ビームで予備焼結される。
【0034】
一実施形態によれば、粉末層の厚さは、10~250μmである。例えば、SLMでは、層厚さは、10~80μmとすることができ、EBMでは、層厚さは、10μm~250μmとすることができる。
【0035】
さらなる一実施形態によれば、印刷時のエネルギー源の力は、レーザビームが使用される場合、80~400Wであり、電子ビームが使用される場合、300~1000Wである。任意選択で、複数のレーザビームが使用されてもよく、各ビームは、本明細書に記載の力を有する。
【0036】
一実施形態によれば、エネルギー源のエネルギー密度は、1~6J/mm2の範囲内である。エネルギー密度は、印刷中の粉末層の単位面積当たりにエネルギー源によって送達されるエネルギーである。
【0037】
一実施形態によれば、使用される積層造形方法は、指向性エネルギー堆積(DED)である。このタイプの方法では、エネルギー源を使用して、局所溶融プールを作製する。金属粉末は、充填材料としてこの溶融プールに供給される。溶融プールの位置は、固化材料によって3次元物体が作製されるように絶えず移動している。エネルギー源は、レーザビーム又はプラズマアークのいずれかとすることができる。一実施形態によれば、DEDでは、レーザ源の力は、50~2000Wであり得る。
【0038】
一実施形態によれば、DED方法は、溶融プールを保護する不活性遮蔽ガス雰囲気で実行される。一実施形態によれば、材料供給角度は、所定の成形物体が何であるかに応じて変更されてもよい。
【0039】
一実施形態によれば、DEDによって製造された物体は、応力軽減され得る。応力軽減温度は、650~1200℃からの範囲であり、製造された物体の体積に依存する。応力軽減時間は、15分などの非常に短い時間から数時間などのより長い時間まで変化する。一実施形態によれば、予備酸化は、印刷後の応力軽減と同時に実行されてもよい。予備酸化の目的は、酸化アルミニウム表面層を形成することである。一実施形態によれば、前記酸化アルミニウム層は、少なくとも0.5μmの厚さを有する。
【0040】
上記又は以下に言及されるメソッド/方法のいずれかから得られた積層造形された物体は、後処理されてもよい。
【0041】
本開示の実施形態は、以下の例に関連してより詳細に開示される。例は、例示的であり、限定的な実施形態ではないと考えられるべきである。
【実施例】
【0042】
実施例1
SLMによる印刷
ガスアトマイゼーションを使用して、表1によるwt%での化学組成を有する3つの粉末(粉末1~3)を作製し、次いで、粉末1及び粉末3及び力4が10~45μm以内の粒径を有し、粉末2が1~45μm以内の粒径を有するように、適切な画分にふるい分けした。
【0043】
異なる粉末のいくつかの試料を以下のように印刷した。
【0044】
上記の粉末は、粉末送達システムに添加することによってSLM機に供給した。印刷プロセスの間、粉末を機械の粉末送達システムから供給し、スクレーパで構築プレート上に粉末の層を広げた。次いで、レーザは、提供された3D図面に従って粉末の層の上を通過し、それによって粉末層は、レーザビームに曝され、したがって溶融された。粉末の層が溶融された後、3D図面に従って所望の試料が形成されるまで新しい層を提供した。
【0045】
粉末層の厚さは、20~30μmであった。印刷を、アルゴンを用いて不活性雰囲気中で行った。走査速度は、500~800mm/秒であった。エネルギー源の力は、80~200Wであった。
【0046】
試料を不活性雰囲気中で室温に冷却した。印刷された試料の粉末を除去し、次いで、試料を含む構築プレートを機械から取り出した。試料を有する構築プレートを650~1200℃で0.5~3時間熱処理した。次いで、構築プレート及び試料を室温まで冷却し、次いで、構築プレートから試料を除去するために機械加工(切断)した。
【0047】
実施例2
DEDによる印刷
ガスアトマイゼーションを使用して、表2による組成を有する2つの粉末を製造し、次いで、45~90μmの粒径以内の粉末が得られるように適切な画分にふるい分けした。
【0048】
立方体ブロックの形態のこれらの粉末からのいくつかの試料を以下のように印刷した。
【0049】
レーザ源を使用して、局所溶融プールを作製した。粉末を、溶融プールに供給し、急速に固化させた。粉末を、集束粉末流を用いてプールに添加した。レーザを予め設計された経路に沿って移動させ、固化した基材の層(X-Y平面)を作製した。次いで、レーザを上に移動させ(Z軸)、前の基材の表面上に溶融プールを作製し始め、特定の経路に沿って新しい層を作製した。これにより、3次元物体を作製した。
【0050】
粉末層高さは、0.3~2mmであった。印刷を、アルゴン雰囲気を使用して、又は使用せずに行った。堆積速度は、1000mm/分~2500mm/分であった。粉末供給は、4g/分~25g/分であった。レーザ源の力は、50~2000Wであった。
【0051】
図3には、粉末5のDED印刷構造物の顕微鏡写真が開示されている。構造物は、非常に緻密であり、クラッキング、欠陥又は多孔性の兆候を示さない。ライカ立体顕微鏡を使用した。
【0052】
実施例3-試験
図1は、従来的に作製されたFeCrAl(CP1)合金を含有する試料と、SLM(SLM1)を使用して積層造形によって製造された試料と、(SLM2)を使用して積層造形によって製造された試料とのクリープ強度の比較を示す。
【0053】
従来の試料を、鋳造及び圧延によって作製し、直径、d0、4mm及び元のゲージ長さ、L0、20mmでS.S.EN ISO 6892-2:2018「Cylindrical test pieces with threaded gripping ends」に従って調製した。
【0054】
【0055】
積層造形試料を、印刷後、標準S.S.EN ISO 6892-2:2018に機械加工し、端部を把持(回転)し、直径、d
0、4mm、元のゲージ長さは、L
0、20mmであった。積層造形試料(SLM1及びSLM2)は、以下の仕様に従った組成を有した。
【0056】
試料に死荷重を負荷した。クリープ速度を、一定の荷重及び温度での経時的な試料の長さの変化百分率として計算した。印刷試料の試験を、1100℃及び1200℃で行った。従来の作製された試料(CP1)を900℃及び1100℃で試験した。
【0057】
印刷された材料は、異方性であることが分かる。
図1に示すクリープ結果は、試料が印刷方向に平行に負荷された材料のより強い方向に関するものである。さらに、
図1から分かるように、積層造形された試料は、従来的に作製された試料と比較して、はるかに低いクリープ速度を有する。従来的に作製された試料をより低い温度で試験したけれども、クリープ速度が低く、印刷された試料のクリープ強度は、なおより高かった。さらに、印刷された試料は、破断までの時間が長く、これは、そのような製品の寿命がより長くなることを意味する。
【0058】
図2は、表1の粉末4から作られた積層造形された試料及び粉末4と同様の組成を有する従来的に製造された試料についての1100℃での時間に対する質量増加曲線を示す。質量増加重量を100時間間隔で確認した。質量増加曲線は、積層造形された試料が従来的に製造された試料よりも良好な酸化特性を有することを示し、したがって、それは高温用途に優れ、より長い耐用年数を有することを意味する。
【国際調査報告】