(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】溶液中の粒子同定のシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/65 20060101AFI20221215BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20221215BHJP
G01N 33/49 20060101ALI20221215BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20221215BHJP
C12N 1/14 20060101ALN20221215BHJP
C12N 1/16 20060101ALN20221215BHJP
C12N 1/20 20060101ALN20221215BHJP
C12N 5/09 20100101ALN20221215BHJP
C12N 7/00 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
G01N21/65
G01N33/483 C
G01N33/49 K
C12Q1/02
C12N1/14 A
C12N1/16 G
C12N1/20 A
C12N5/09
C12N7/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523599
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-06-16
(86)【国際出願番号】 US2020055755
(87)【国際公開番号】W WO2021080845
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】サレ, アムル エー. イー.
(72)【発明者】
【氏名】ディオンヌ, ジェニファー エー.
(72)【発明者】
【氏名】クリ-ヤクブ, ブトルス ティー.
(72)【発明者】
【氏名】バナエイ, ニアズ
【テーマコード(参考)】
2G043
2G045
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
2G043AA04
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(57)【要約】
溶液中の汚染物質を検出するための方法およびその用途が、説明される。概して、溶液が、基板上に印刷され、次いで、汚染物質に由来する信号を検出するために利用され得る、ラマン分光法を介して撮像される。本発明の種々の実施形態によるシステムおよび方法が、溶液中の粒子同定を可能にする。多くの実施形態は、溶液中の粒子を同定するために光学分光法を組み込むための方法を提供する。多くの実施形態では、環境サンプルの汚染物が、検出されることができる。いくつかの実施形態では、(溶液中の、または溶液中に希釈される)環境サンプルが、汚染物質を検出するために分析される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の粒子を同定するための方法であって、
源からサンプルを取得することと、
前記サンプルと溶液を混合することと、
前記混合されたサンプル溶液を、プリンタを用いて基板上に微小液滴に印刷することと、
光学分光法を用いて前記基板を撮像することと、
光学スペクトルを分析し、前記光学スペクトルから粒子固有の特徴を同定することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記サンプルは、環境サンプルであり、前記源は、水源、廃水、食品、または土壌である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルは、個人から抽出される生物学的サンプルであり、前記生物学的サンプルは、血液、血漿、リンパ液、唾液、粘液、汗、尿、大便、または細胞溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプル中の粒子は、細菌駆除剤、抗生物質、またはマイクロプラスチックである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプル中の粒子は、病原体であり、前記病原体は、細菌、ウイルス、真菌、微生物、酵母菌、循環腫瘍細胞、エキソソーム、細胞外小胞、または、バイオマーカである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記溶液は、プラズモンナノ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶液は、金プラズモンナノ粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記プラズモンナノ粒子は、ナノシェル、ナノフラワー、ナノロッド、またはナノスターから成る群から選択される形状を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記微小液滴は、直径がおよそ15ミクロン~およそ300ミクロンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記微小液滴は、直径がおよそ25ミクロン~およそ280ミクロンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記微小液滴は、直径がおよそ15ミクロン~およそ50ミクロンである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記微小液滴は、少なくとも1つの細胞を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記プリンタは、インクジェットプリンタまたは音響インクジェットプリンタである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記音響インクジェットプリンタは、微小電気機械音響インクジェットプリンタである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記音響インクジェットプリンタは、トランスデューサを有し、前記トランスデューサは、およそ100MHz~およそ200MHzの周波数を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記トランスデューサ周波数は、およそ5MHz、およそ15MHz、またはおよそ45MHzである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記光学分光法は、ラマン分光法である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ラマン分光法は、表面増強ラマン分光法である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ラマン分光法は、ブラッグチューナブルフィルタを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記光学スペクトルからの特徴は、細胞型、細菌株、または生体分子を同定する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
細菌血流感染を診断するための方法であって、
個人から血液サンプルを取得することと、
前記血液サンプルと溶液を混合することであって、前記溶液は、プラズモンナノ粒子を含む、ことと、
前記混合された血液サンプル溶液を、プリンタを用いて基板上に微小液滴に印刷することと、
表面増強ラマン分光法を用いて前記基板を撮像することと、
ラマンスペクトルから細菌種を同定することと
を含む、方法。
【請求項22】
前記プラズモンナノ粒子は、金を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記プラズモンナノ粒子は、ナノシェル、ナノフラワー、ナノロッド、またはナノスターから成る群から選択される形状を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記ナノスターおよびナノロッドプラズモンナノ粒子は、少なくとも10E6のピーク表面増強ラマン散乱増強を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記微小液滴は、直径がおよそ15ミクロン~およそ300ミクロンである、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記微小液滴は、直径がおよそ25ミクロン~およそ280ミクロンである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記微小液滴は、直径がおよそ15ミクロン~およそ50ミクロンである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記微小液滴は、少なくとも1つの細胞を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記プリンタは、インクジェットプリンタまたは音響インクジェットプリンタである、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記音響インクジェットプリンタは、微小電気機械音響インクジェットプリンタである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記音響インクジェットプリンタは、トランスデューサを有し、前記トランスデューサは、およそ100MHz~およそ200MHzの周波数を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記トランスデューサ周波数は、およそ5MHz、およそ15MHz、またはおよそ45MHzである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記表面増強ラマン分光法撮像は、液体セル内で行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
前記表面増強ラマン分光法は、ブラッグチューナブルフィルタを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項35】
前記細菌種の同定は、1時間未満を要する、請求項21に記載の方法。
【請求項36】
抗生物質感受性試験を実施するための方法であって、
個人から血液サンプルを取得することと、
前記血液サンプルと溶液を混合することであって、前記溶液は、プラズモンナノ粒子を含む、ことと、
前記混合された血液サンプル溶液を、プリンタを用いて基板上に微小液滴に印刷することと、
表面増強ラマン分光法を用いて前記基板を撮像し、第1のラマンスペクトルを取得することと、
前記基板に抗生物質を添加することと、
前記表面増強ラマン分光法を用いて前記基板を撮像し、第2のラマンスペクトルを取得することと、
前記第1および第2のラマンスペクトルのラマンシグネチャの差異を比較し、抗生物質感受性を同定することと
を含む、方法。
【請求項37】
前記プラズモンナノ粒子は、金を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記プラズモンナノ粒子は、ナノシェル、ナノフラワー、ナノロッド、またはナノスターから成る群から選択される形状を有する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記ナノスターおよびナノロッドプラズモンナノ粒子は、少なくとも10E6のピーク表面増強ラマン散乱増強を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記微小液滴は、直径がおよそ15ミクロン~およそ300ミクロンである、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記微小液滴は、直径がおよそ25ミクロン~およそ280ミクロンである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記微小液滴は、直径がおよそ15ミクロン~およそ50ミクロンである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記微小液滴は、少なくとも1つの細胞を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項44】
前記プリンタは、インクジェットプリンタまたは音響インクジェットプリンタである、請求項36に記載の方法。
【請求項45】
前記音響インクジェットプリンタは、微小電気機械音響インクジェットプリンタである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記音響インクジェットプリンタは、トランスデューサを有し、前記トランスデューサは、およそ100MHz~およそ200MHzの周波数を有する、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記トランスデューサ周波数は、およそ5MHz、およそ15MHz、またはおよそ45MHzである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記表面増強ラマン分光法撮像は、液体セル内で行われる、請求項36に記載の方法。
【請求項49】
前記表面増強ラマン分光法は、ブラッグチューナブルフィルタを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項50】
抗生物質感受性試験は、1時間未満を要する、請求項36に記載の方法。
【請求項51】
病原性感染症を患う個人に治療薬を投与する方法であって、
個人から生物学的サンプルを抽出するかまたは抽出しておくことと、
前記生物学的サンプルのラマンシグネチャを明らかにするために前記生物学的サンプルに対して表面増強ラマン分光法を実施するかまたは実施しておくことと、
前記生物学的サンプルのラマンシグネチャを利用して、前記生物学的サンプル中の病原体感染症を検出するかまたは検出しておくことと、
前記病原体感染症を治療するために前記個人に薬剤を投与することと
を含む、方法。
【請求項52】
前記生物学的サンプルは、血液、血漿、リンパ液、唾液、粘液、汗、尿、大便、または細胞溶液である、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記病原体は、細菌であり、前記個人は、抗生物質を投与される、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記抗生物質は、バンコマイシン、セフトリアキソン、ペニシリン、ダプトマイシン、メロペネム、シプロフロキサシン、ピペラシリン・タゾバクタム(TZP)、またはカスポファンギンである、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
個人に抗生物質を投与する方法であって、
個人から生物学的サンプルを抽出するかまたは抽出しておくことと、
前記生物学的サンプルのラマンシグネチャを明らかにするために前記生物学的サンプルに対して表面増強ラマン分光法を実施するかまたは実施しておくことと、
前記生物学的サンプルのラマンシグネチャを利用して、前記生物学的サンプル中の抗生物質感受性を検出するかまたは検出しておくことと、
感受性病原体を治療するために前記個人に前記抗生物質を投与することと
を含む、方法。
【請求項56】
前記生物学的サンプルは、血液、血漿、リンパ液、唾液、粘液、汗、尿、大便、または細胞溶液である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記病原体は、細菌である、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記抗生物質は、バンコマイシン、セフトリアキソン、ペニシリン、ダプトマイシン、メロペネム、シプロフロキサシン、ピペラシリン・タゾバクタム(TZP)、またはカスポファンギンである、請求項55に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年10月25日に出願され、「Systems and Methods of Particle Identification in Solution」と題された、米国仮特許出願第62/926,271号の35 U.S.C. Section 119(e)(米国特許法第119条(e))下の利益および優先権を主張する。米国仮特許出願第62/926,271号の開示は、あらゆる目的のために、参照することによって、その全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、溶液中の粒子同定のシステムおよび方法に関し、より具体的には、溶液中の粒子を同定するために光学分光法を組み込む、システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ラマン分光法は、光を利用し、分子の振動モードを決定する、技法である。検出された振動モードに基づいて、それぞれが、撮像される分子に一意である、構造的シグネチャが、産生されることができる。ラマン分光法は、顕微鏡分析にとっていくつかの利点をもたらす。これは、光散乱技法であるため、試料は、固定または切片化される必要がない。ラマンスペクトルは、非常に小体積(直径が、<1μm、奥行きが、<10μm)から集光されることができ、これらのスペクトルは、その体積内に存在する種の同定を可能にする。水は、概して、ラマンスペクトル分析を妨害するものではない。したがって、ラマン分光法は、鉱物、ポリマー、生体細胞、および生体分子の顕微鏡検査のために好適である。
【0004】
細菌感染および抗生物質感受性試験の迅速かつ正確な同定は、患者の予後を改良し、流行病を含有する感染性疾患の発散を減速させ、抗生物質の誤用を軽減させるために不可欠である。これは、特に、毎年世界中の数千万人の患者に影響を及ぼし、AIDS、乳癌、および前立腺癌の組み合わせられた数より多くの死につながる、細菌血流感染(BSI)に当てはまる。改良された速度、感受性、および特異性を伴う、細菌血流感染検出方法を開発する必要性が、存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の種々の実施形態によるシステムおよび方法が、溶液中の粒子同定を可能にする。多くの実施形態は、溶液中の粒子を同定するために光学分光法を組み込むための方法を提供する。多くの実施形態では、環境サンプルの汚染物が、検出されることができる。いくつかの実施形態では、(溶液中の、または溶液中に希釈される)環境サンプルが、汚染物質を検出するために分析される。分析され得るサンプルは、(限定ではないが)水源、廃水、食品、および土壌を含む。検出されるべき汚染物質は、(限定ではないが)細菌駆除剤、抗生物質、およびマイクロプラスチックを含む。いくつかの実施形態では、種々のプラスチックが、汚染物選別または再生利用プログラムにおいて有用であり得る、ポリマー型の同定に対して分析されることができる。
【0006】
いくつかの実施形態が、光学分光法を用いた病原体同定を実装する。いくつかの実施形態が、病原体の検出、同定、および抗生物質感受性試験を1つのステップに組み合わせる。いくつかの実施形態が、無培養病原体診断および無標識病原体診断ならびに抗生物質感受性試験を可能にする。いくつかの実施形態が、光学分光法のための溶液中サンプルを調製するためのインクジェットプリンタを実装する。病原体の実施例は、(限定ではないが)細菌、ウイルス、真菌、および微生物を含む。光学分光法の実施例は、(限定ではないが)ラマン分光法、吸光分光法、振動分光法を含む。機械学習プロセスを組み込む、多くの実施形態は、病原体を分類することができる。いくつかの実施形態は、細菌血流感染(BSI)を同定することができる。いくつかの実施形態は、病原体の抗生物質感受性を診断する。いくつかの実施形態は、最小阻止濃度(MIC)を決定することが可能である。多くの実施形態は、病原体を同定するための単一細胞感受性を達成することができる。いくつかの実施形態では、病原体を同定するための時間が、数日から数分まで短縮されることができる。いくつかの実施形態は、1時間未満で溶液中の病原体を同定することが可能である。
【0007】
本発明の一実施形態は、サンプル中の粒子を同定するための方法であって、源からサンプルを取得するステップと、サンプルと溶液を混合するステップと、混合されたサンプル溶液を、プリンタを用いて基板上に微小液滴に印刷するステップと、光学分光法を用いて基板を撮像するステップと、光学スペクトルを分析し、光学スペクトルから粒子固有の特徴を同定するステップとを含む、方法を含む。
【0008】
さらなる実施形態では、サンプルは、環境サンプルであり、源は、水源、廃水、食品、または土壌である。
【0009】
別の実施形態では、サンプルは、個人から抽出される、生物学的サンプルであり、生物学的サンプルは、血液、血漿、リンパ液、唾液、粘液、汗、尿、大便、または細胞溶液である。
【0010】
なおもさらなる実施形態では、サンプル中の粒子は、細菌駆除剤、抗生物質、またはマイクロプラスチックである。
【0011】
さらに別の実施形態では、サンプル中の粒子は、病原体であり、病原体は、細菌、ウイルス、真菌、微生物、酵母菌、循環腫瘍細胞、エキソソーム、細胞外小胞、または、バイオマーカである。
【0012】
さらにさらなる実施形態では、溶液は、プラズモンナノ粒子を含む。
【0013】
再びさらにさらなる実施形態では、溶液は、金プラズモンナノ粒子を含む。
【0014】
再び別の実施形態では、プラズモンナノ粒子は、ナノシェル、ナノフラワー、ナノロッド、またはナノスターから成る群から選択される形状を有する。
【0015】
さらなる付加的実施形態では、微小液滴は、直径がおよそ15ミクロン~およそ300ミクロンである。
【0016】
別の付加的実施形態では、微小液滴は、直径がおよそ25ミクロン~およそ280ミクロンである。
【0017】
なおもさらにさらなる実施形態では、微小液滴は、直径がおよそ15ミクロン~およそ50ミクロンである。
【0018】
なおもさらに別の実施形態では、微小液滴は、少なくとも1つの細胞を含む。
【0019】
再びなおもさらなる実施形態では、プリンタは、インクジェットプリンタまたは音響インクジェットプリンタである。
【0020】
再びさらに別の実施形態では、音響インクジェットプリンタは、微小電気機械音響インクジェットプリンタである。
【0021】
なおもさらなる付加的実施形態では、音響インクジェットプリンタは、トランスデューサを有し、トランスデューサは、およそ100MHz~およそ200MHzの周波数を有する。
【0022】
さらなる実施形態では、トランスデューサ周波数は、およそ5MHz、およそ15MHz、またはおよそ45MHzである。
【0023】
さらに別の実施形態では、光学分光法は、ラマン分光法である。
【0024】
さらにさらなる実施形態では、ラマン分光法は、表面増強ラマン分光法である。
【0025】
別の付加的実施形態では、ラマン分光法は、ブラッグチューナブルフィルタを含む。
【0026】
再びなおもさらなる実施形態では、光学スペクトルからの特徴は、細胞型、細菌株、または生体分子を同定する。
【0027】
さらに別の付加的実施形態は、細菌血流感染を診断するための方法であって、個人から血液サンプルを取得するステップと、血液サンプルと溶液を混合するステップであって、溶液は、プラズモンナノ粒子を含む、ステップと、混合された血液サンプル溶液を、プリンタを用いて基板上に微小液滴に印刷するステップと、表面増強ラマン分光法を用いて基板を撮像するステップと、ラマンスペクトルから細菌種を同定するステップとを含む、方法を含む。
【0028】
さらに別の実施形態では、プラズモンナノ粒子は、金を含む。
【0029】
さらにさらなる実施形態では、プラズモンナノ粒子は、ナノシェル、ナノフラワー、ナノロッド、またはナノスターから成る群から選択される形状を有する。
【0030】
別のさらなる実施形態では、ナノスターおよびナノロッドプラズモンナノ粒子は、少なくとも10E6のピーク表面増強ラマン散乱増強を有する。
【0031】
さらに別の実施形態では、微小液滴は、直径がおよそ15ミクロン~およそ300ミクロンである。
【0032】
別のさらに付加的実施形態では、微小液滴は、直径がおよそ25ミクロン~およそ280ミクロンである。
【0033】
なおもさらに別のさらなる実施形態では、微小液滴は、直径がおよそ15ミクロン~およそ50ミクロンである。
【0034】
さらなる実施形態では、微小液滴は、少なくとも1つの細胞を含む。
【0035】
再びなおもさらなる実施形態では、プリンタは、インクジェットプリンタまたは音響インクジェットプリンタである。
【0036】
再び別の実施形態では、音響インクジェットプリンタは、微小電気機械音響インクジェットプリンタである。
【0037】
さらなる付加的実施形態では、音響インクジェットプリンタは、トランスデューサを有し、トランスデューサは、およそ100MHz~およそ200MHzの周波数を有する。
【0038】
別の付加的実施形態では、トランスデューサ周波数は、およそ5MHz、およそ15MHz、またはおよそ45MHzである。
【0039】
なおもさらにさらなる実施形態では、表面増強ラマン分光法撮像は、液体セル内で行われる。
【0040】
なおもさらに別の実施形態では、表面増強ラマン分光法は、ブラッグチューナブルフィルタを含む。
【0041】
再びなおもさらなる実施形態では、細菌種の同定は、1時間未満を要する。
【0042】
再び別のさらなる実施形態は、抗生物質感受性試験を実施するための方法であって、個人から血液サンプルを取得するステップと、血液サンプルと溶液を混合するステップであって、溶液は、プラズモンナノ粒子を含む、ステップと、混合された血液サンプル溶液を、プリンタを用いて基板上に微小液滴に印刷するステップと、表面増強ラマン分光法を用いて基板を撮像し、第1のラマンスペクトルを取得するステップと、基板に抗生物質を添加するステップと、表面増強ラマン分光法を用いて基板を撮像し、第2のラマンスペクトルを取得するステップと、第1および第2のラマンスペクトルのラマンシグネチャの差異を比較し、抗生物質感受性を同定するステップとを含む、方法を含む。
【0043】
なおもさらなる実施形態では、プラズモンナノ粒子は、金を含む。
【0044】
さらにさらなる実施形態では、プラズモンナノ粒子は、ナノシェル、ナノフラワー、ナノロッド、またはナノスターから成る群から選択される形状を有する。
【0045】
さらに別の実施形態では、ナノスターおよびナノロッドプラズモンナノ粒子は、少なくとも10E6のピーク表面増強ラマン散乱増強を有する。
【0046】
再びさらなる実施形態では、微小液滴は、直径がおよそ15ミクロン~およそ300ミクロンである。
【0047】
再び別の実施形態では、微小液滴は、直径がおよそ25ミクロン~およそ280ミクロンである。
【0048】
なおもさらにさらなる実施形態では、微小液滴は、直径がおよそ15ミクロン~およそ50ミクロンである。
【0049】
別の付加的実施形態では、微小液滴は、少なくとも1つの細胞を含む。
【0050】
再びなおもさらなる実施形態では、プリンタは、インクジェットプリンタまたは音響インクジェットプリンタである。
【0051】
なおもさらなる付加的実施形態では、音響インクジェットプリンタは、微小電気機械音響インクジェットプリンタである。
【0052】
再びさらに別の実施形態では、音響インクジェットプリンタは、トランスデューサを有し、トランスデューサは、およそ100MHz~およそ200MHzの周波数を有する。
【0053】
さらなる実施形態では、トランスデューサ周波数は、およそ5MHz、およそ15MHz、またはおよそ45MHzである。
【0054】
再びなおもさらなる実施形態では、表面増強ラマン分光法撮像は、液体セル内で行われる。
【0055】
別の実施形態では、表面増強ラマン分光法は、ブラッグチューナブルフィルタを含む。
【0056】
さらに別の実施形態では、抗生物質感受性試験は、1時間未満を要する。
【0057】
さらに別の付加的実施形態は、病原性感染症を患う個人に治療薬を投与する方法であって、個人から生物学的サンプルを抽出する、または抽出しておくステップと、生物学的サンプルのラマンシグネチャを明らかにするために生物学的サンプルに対して表面増強ラマン分光法を実施する、もしくは実施しておくステップと、生物学的サンプルのラマンシグネチャを利用して、生物学的サンプル中の病原体感染を検出する、または検出しておくステップと、病原体感染を治療するために個人に薬剤を投与するステップとを含む、方法を含む。
【0058】
なおもさらなる実施形態では、生物学的サンプルは、血液、血漿、リンパ液、唾液、粘液、汗、尿、大便、または細胞溶液である。
【0059】
さらに別の実施形態では、病原体は、細菌であり、個人は、抗生物質を投与される。
【0060】
なおもさらにさらなる実施形態では、抗生物質は、バンコマイシン、セフトリアキソン、ペニシリン、ダプトマイシン、メロペネム、シプロフロキサシン、ピペラシリン・タゾバクタム(TZP)、またはカスポファンギンである。
【0061】
再びさらにさらなる実施形態は、個人に抗生物質を投与する方法であって、個人から生物学的サンプルを抽出する、または抽出しておくステップと、生物学的サンプルのラマンシグネチャを明らかにするために生物学的サンプルに対して表面増強ラマン分光法を実施する、もしくは実施しておくステップと、生物学的サンプルのラマンシグネチャを利用して、生物学的サンプル中の抗生物質感受性を検出する、または検出しておくステップと、感受性病原体を治療するために個人に抗生物質を投与するステップとを含む、方法を含む。
【0062】
なおもさらにさらなる実施形態では、生物学的サンプルは、血液、血漿、リンパ液、唾液、粘液、汗、尿、大便、または細胞溶液である。
【0063】
再びさらに別の実施形態では、病原体は、細菌である。
【0064】
なおもさらなる実施形態では、抗生物質は、バンコマイシン、セフトリアキソン、ペニシリン、ダプトマイシン、メロペネム、シプロフロキサシン、ピペラシリン・タゾバクタム(TZP)、またはカスポファンギンである。
【0065】
付加的な実施形態および特徴が、部分的に、続く説明において記載される、部分的に、本明細書の考察の結果、当業者に明白な状態になる、または本開示の実践によって習得され得る。本開示の性質および利点のさらなる理解が、本開示の一部を形成する、本明細書ならびに図面の残りの部分を参照することによって実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0066】
説明は、本発明の例示的実施形態として提示され、本発明の範囲の完全な列挙として解釈されるべきではない、以下の図を参照してより完全に理解されるであろう。本特許または出願ファイルが、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含有することに留意されたい。カラー図面を伴う本特許または特許出願公開文書の複写物が、要求および必要な手数料の支払に応じて、特許庁によって提供されるであろう。
【0067】
【
図1】
図1は、本発明のある実施形態による、粒子同定プロセスを図示する。
【0068】
【
図2】
図2は、本発明のある実施形態による、血液中の病原体同定プロセスを図示する。
【0069】
【
図3】
図3は、本発明のある実施形態による、表面増強ラマン散乱(SERS)微小液滴技法を使用して病原体を決定するためのプロセスを図示する。
【0070】
【
図4】
図4A-4Bは、本発明のある実施形態による、SERS増強のためのプラズモンナノ粒子を図示する。
【0071】
【
図5】
図5A-5Bは、本発明のある実施形態による、液体セル内のラマン散乱信号を改良する、金ナノロッドを図示する。
【0072】
【
図6】
図6は、本発明のある実施形態による、微小液滴を印刷する音響射出プラットフォームを図示する。
【0073】
【
図7】
図7A-7Cは、本発明のある実施形態による、異なる液体粘度における音響射出印刷を図示する。
【0074】
【
図8】
図8A-8Cは、本発明のある実施形態による、異なるトランスデューサ周波数における音響射出印刷を図示する。
【0075】
【
図9】
図9は、本発明のある実施形態による、寒天プレート上における、印刷された個々の微小液滴から増殖する大腸菌の細菌コロニーを図示する。
【0076】
【
図10A】
図10A-10Bは、本発明のある実施形態による、SERS活性化多細胞微小液滴の音響射出印刷アレイを図示する。
【
図10B】
図10A-10Bは、本発明のある実施形態による、SERS活性化多細胞微小液滴の音響射出印刷アレイを図示する。
【0077】
【
図11】
図11は、本発明のある実施形態による、全血からのSERS活性化細胞微小液滴の音響射出印刷アレイを図示する。
【0078】
【
図12】
図12は、本発明のある実施形態による、広視野ラマン検出器プラットフォームを図示する。
【0079】
【
図13】
図13は、本発明のある実施形態による、ラマン分光法によって検出され得る一意の分子組成を伴う大腸菌細胞を図示する。
【0080】
【
図14A】
図14Aは、本発明のある実施形態による、単一細胞ラマン照会のために使用される、共焦点ラマン設定を図示する。
【0081】
【
図14B】
図14Bは、本発明のある実施形態による、30種類の細菌種のラマンスペクトルを図示する。
【0082】
【
図15】
図15は、本発明のある実施形態による、ニューラルネットワークを用いた株レベル同定に関する性能内訳を図示する。
【0083】
【
図16】
図16は、本発明のある実施形態による、抗生物質感受性に基づいてラマンスペクトルを弁別するための訓練された畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の正確度結果を図示する。
【0084】
【
図17】
図17は、本発明のある実施形態による、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)のラマンスペクトルを弁別するための訓練されたCNNの正確度結果を図示する。
【0085】
【
図18A】
図18Aは、本発明のある実施形態による、血清および/または血漿中のラマン測定のための液体チャンバを図示する。
【0086】
【
図18B】
図18Bは、本発明のある実施形態による、乾燥されたサンプルとの比較を伴う、血漿中の大腸菌および緑膿菌からのラマン信号を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0087】
詳細な説明
ここで図面およびデータに目を向けると、光学分光法を利用して溶液中の粒子を検出するための方法ならびにシステムが、提供される。多くの実施形態では、(溶液中の、または溶液中に希釈される)環境サンプルの汚染物が、検出されることができる。分析され得るサンプルは、(限定ではないが)水源、廃水、食品、および土壌を含む。検出されるべき汚染物質は、(限定ではないが)細菌駆除剤、抗生物質、およびマイクロプラスチックを含む。いくつかの実施形態では、種々のプラスチックが、汚染物選別または再生利用プログラムにおいて有用であり得る、ポリマー型の同定に対して分析されることができる。
【0088】
多くの実施形態では、(溶液中の、または溶液中に希釈される)生物学的サンプルが、分析され、病原体を検出することができる。多くの実施形態が、病原体の検出、同定、および抗生物質感受性試験を1つのステップに組み合わせる。いくつかの実施形態は、1時間未満での完全な細菌血流感染(BSI)診断を可能にし得る。いくつかの実施形態は、無培養かつ無標識のBSI診断および抗生物質感受性試験を可能にする。
【0089】
大部分のBSI診断が、100年前の培養方法に依拠する。着目すべきこととして、血液が、採取されることができ、細菌が、それらが検出可能な状態になるまで増大し、増殖することを可能にされることができ、そのため、プロセスが、自然に緩慢になり、先進的な設備においても数日を要し得る。血液培養物が、陽性である場合、典型的には、付加的な12~24時間を要求する、付加的な診断試験が、細菌種、株、および抗生物質感受性を同定するために必要とされ得る。検査結果が、入手可能になるまで、患者は、経験的ガイドラインに基づいて広域スペクトル抗生物質治療が実施される。BSI症状を呈する患者の90%超が、陰性血液培養物を有し得、したがって、抗生物質を用いて不必要に治療される、または不適切なタイプの投薬が行われ得る。可能性として無駄な治療と関連付けられるリスクの増大および入院期間の延長の経済的負担以外に、そのような広域スペクトル抗生物質の使用が、抗生物質耐久性細菌の新しい株の進化を助長する。
【0090】
単一ステップの検出、同定、および抗生物質感受性試験は、未解決課題のままである。細菌血流感染を検出するステップの改良された速度、感受性、および特異性の必要性を認識することによって、いくつかの技術が、病原体同定ならびに抗生物質感受性試験(AST)のための牽引力を獲得している場合がある。有望な技術は、マトリクス支援レーザ脱離イオン化-飛行時間質量分析法(MALDI-TOF MS)、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、および磁気ビーズ標識を含む。
【0091】
MALDI-TOF MSは、現在、多くの病院において使用され、病原体の質量分析に依拠する。質量分析によって取得されたプロテオームプロファイルを病原体由来の小型リボソームタンパク質のデータベースと相関させることによって、BSIは、正確かつ迅速に同定されることができる。しかしながら、本技法は、陽性の血液培養物に依拠し、抗生物質感受性および病原体の抗生物質の最小阻止濃度(MIC)についての情報を提供することはできない。抗生物質試験のMICは、MALDI-TOFの後に行われ、付加的な12~24時間を要し得る。同様に、PCRもまた、病原体の特異的ゲノム配列を検出し、増幅させることによって、陽性血液培養物から病原体を同定する。PCRはまた、2つの部類の抗生物質に関して単性抗菌薬耐性を引き起こすことが公知である、ある遺伝子を検出し、抗生物質感受性に関する洞察を提供することができる。いくつかのFDA承認PCRプラットフォームが、陽性血液培養物からMRSA/MSSAを同定し、98%の感受性および99.9%の特異性で、合計で27種類の病原体、ならびにメチシリン耐性、バンコマイシン耐性、ならびにカルバペネム耐性に関わる3種類の抗生物質耐性遺伝子を同定することができる。しかしながら、検出され得る病原菌株の数は、所与のプラットフォーム内の利用可能なPCRプライマの数によって限定され得る。加えて、MICおよび最適化された抗生物質治療についての情報が、提供されることができない。
【0092】
サンプル培養を回避するために、磁性粒子標識を使用し、全血から直接病原体を検出するプラットフォームが、開発されている。ここでは、病原体同定が、標的化された病原体の存在によって開始される磁気ナノ粒子のクラスタリングから生じる、サンプル培地の磁気的性質の変化を検出することによって、達成されることができる。本技術の臨床試験は、89.5%の感受性および98.4%の特異性を示している。しかしながら、本技術は、BSIを除外することができず、検出された病原体の抗生物質感受性またはそのMICのいずれも同定することができない。これはまた、特定の病原体に関する磁気標識の可用性によっても限定される。
【0093】
したがって、BSIの検出、同定、およびASTにおける大部分の技術は、数日を要し得る。多くの実施形態は、病原体の検出、同定、および抗生物質感受性試験を1つのステップに組み合わせることができる。そのような組み合わせが、いくつかの実施形態に従って、1時間未満での完全なBSI診断を可能にし得る。ある実施形態は、無培養かつ無標識のBSI診断および抗生物質感受性試験を行うことが可能である。
【0094】
多くの実施形態では、溶液サンプルが、無標識プロセスを使用して調製されることができる。いくつかの実施形態は、非結合プラズモンナノ粒子と混合することによって溶液サンプルを調製する。溶液サンプルの実施例は、(限定ではないが)生物流体、唾液、汗、リンパ液、粘液、尿、大便、全血、血漿、細胞溶液、咽頭綿棒液体培養物、水源、廃水を含むことができる。溶液中の病原体の実施形態は、(限定ではないが)細菌、ウイルス、真菌、微生物、酵母菌、循環腫瘍細胞、エキソソーム、細胞外小胞、およびバイオマーカを含む。いくつかの実施形態は、基板上で溶液サンプルを調製するためのインクジェットタイプ印刷を組み込む。ある実施形態は、微小液滴中の溶液サンプルをインクジェット印刷することができる。いくつかの実施形態は、光学分光法を用いて基板上の印刷されたサンプルの撮像を実施する。光学分光法の実施例は、(限定ではないが)ラマン分光法、吸光分光法、振動分光法を含む。多数の実施形態では、光学スペクトルシグネチャが、溶液サンプル中の病原体を決定および/または弁別するために使用されることができる。多くの実施形態は、病原体同定において単一細胞感受性を達成することができる。いくつかの実施形態は、細胞型、細菌株、および/または生体分子を同定ならびに特性評価することができる。いくつかの実施形態は、BSIを診断することができる。多くの実施形態では、病原体同定プロセスは、数日から数時間に短縮されることができる。いくつかの実施形態は、1時間未満で病原体を同定することが可能である。
【0095】
多くの実施形態は、病原体の検出、同定、および抗生物質感受性試験を単一の診断ステップに組み合わせ、培養の必要性を排除する。いくつかの実施形態は、表面増強ラマン散乱(SERS)を組み込み、病原体同定における単一分子感受性を実現する。病原体の細胞膜の一意の分子構造のため、各細菌種は、同定のために使用され得る、特異的なSERSシグネチャを有する。多くの実施形態では、SERSは、無標識であり、全てのタイプの細菌、ウイルス、および真菌病原体に対して一般化可能であることができる。いくつかの実施形態では、病原体のSERSシグネチャが、病原菌株およびその抗生物質感受性ならびに/もしくは耐性についての両方の情報を伝達することができる。いくつかの実施形態では、抗生物質暴露に応じたSERSシグネチャに対する変化が、細胞膜構造および細胞生存率に対する変化を監視し、リアルタイムの抗生物質感受性試験を促進するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、SERSは、個人化、標的化、および最適化された抗生物質治療に関する試験管内抗生物質感受性試験を用いることなく、具体的な病原体に関する抗生物質のMICの決定を可能にし得る。
【0096】
種々の実施形態は、生物学的サンプル中の病原体を検出することを対象とする。いくつかの実施形態では、生物学的サンプルが、個人から抽出され、処理され、微小液滴を利用して基板上に印刷されることができ、これは、次いで、ラマン分光法を利用して撮像される。多くの実施形態では、生物学的サンプルが、非結合プラズモンナノ粒子と混合されることができる。いくつかの実施形態では、混合された溶液サンプルが、インクジェットタイプ生体印刷を使用して、微小液滴に分割されることができる。各微小液滴は、いくつかの実施形態に従って、1つの細胞と、ナノ粒子の均一な分散体とを含有し得る。ナノ粒子は、細胞からの散乱を増強し、大面積SERSカメラを用いた高速かつ高感度のスペクトル撮像を可能にすることができる。多くの実施形態では、数百万個の液滴が、同時に撮像されながら、機械学習アルゴリズムが、細菌の存在または不在、ならびに任意の潜在的な病原体の種、株、抗生物質感受性、およびMICを同定することができる。多くの実施形態では、溶液が、微小液滴を利用して基板の上に印刷され、これは、次いで、ラマン分光法を利用して撮像される。いくつかの実施形態では、ラマンスペクトルシグネチャが、溶液中の汚染物質を決定および/または弁別するために使用される。
【0097】
本発明の種々の実施形態による、光学分光法を使用して溶液中の病原体を決定および同定するためのシステムならびに方法が、さらに下記に議論される。
粒子同定プロセス
【0098】
多くの実施形態が、(限定ではないが)インクジェット印刷を含む、印刷技法、および(限定ではないが)ラマン分光法を含む、光学分光法を利用し、(限定ではないが)溶液サンプル中の細菌、ウイルス、真菌、微生物、細胞、殺虫剤、抗生物質、ならびにマイクロプラスチックを含む、粒子を同定する。本発明のある実施形態による、粒子を決定するための方法が、
図1に図示される。プロセス100が、溶液サンプルを取得することによって開始することができる(101)。いくつかの実施形態は、生物学的サンプルは、溶液サンプルとして、(限定ではないが)生物流体、全血、血漿、リンパ液、唾液、粘液、尿、大便、咽頭綿棒液体培養物、および/または細胞溶液を含む、生物学的サンプルを含む。いくつかの実施形態では、サンプルは、環境サンプルである。環境サンプルは、(限定ではないが)水源、廃水、食品、および土壌を含む。いくつかの実施形態では、個人から抽出された生物学的サンプルが、使用される。いくつかの実施形態では、サンプルが、溶液の中に投入される、またはさらに液体中で希釈される。いくつかの実施形態では、サンプルが、部分的に処理される(例えば、遠心分離、濾過等)。いくつかの実施形態では、サンプルが、源から抽出されたままで使用される。容易に理解され得るように、種々の溶液サンプルのうちのいずれも、本発明の種々の実施形態に従って、具体的な用途の要件に対して適宜、利用されることができる。
【0099】
サンプルが、溶液と混合することによって調製されることができる(102)。いくつかの実施形態では、ナノ粒子が、サンプル溶液に添加されることができる。溶液中に存在するナノ粒子が、溶液中の汚染物質の光学スペクトルシグネチャを増強し得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、プラズモンナノ粒子であることができる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、金ナノ粒子である。ある実施形態では、ナノ粒子が、(限定ではないが)球体、ロッド、コアシェル、フラワー、およびスターを含む、種々の幾何学形状において提供されることができる。多くの実施形態では、サンプルは、汎用細菌標識と混合されることができる。いくつかの実施形態による細菌標識は、細菌種に特異的に標識することができるが、サンプル中の他の哺乳類細胞に標識することはできない。容易に理解され得るように、種々の混合溶液のうちのいずれも、具体的な用途の要件に対して適宜、利用されることができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、混合された溶液が、プリンタに装填されることができる(103)。いくつかの実施形態では、プリンタは、インクジェットプリンタである。
【0101】
いくつかの実施形態では、サンプルが、基板に印刷され、固定される(104)。種々の実施形態では、液体プリンタが、2次元基板上に微小液滴のアレイを提供する。いくつかの実施形態では、音響印刷が、利用されることができる。多くの実施形態は、音響インクジェット印刷技法を実装する。いくつかの実施形態では、微小電気機械(MEMS)音響インクジェット機械が、液体サンプルを基板上に送達するための手段を提供する。
【0102】
多くの実施形態では、サンプルが、溶液中にあり、インクジェットプリンタが、基板上にサンプルの液滴を形成するために利用されることができる。いくつかの実施形態では、液滴のサイズが、各液滴が、1つまたは少数の汚染物質のみを有するように制御されることができる。いくつかの実施形態では、各液滴は、少なくとも1つの細胞を含有する。いくつかの実施形態では、液滴中の少なくとも1つの細胞は、ナノ粒子の分散体中にある。いくつかの実施形態では、液滴は、基板上で液体の形態のままであることができる。いくつかの実施形態では、サンプルは、固定されるように基板上で乾燥される。基板の実施例は、(限定ではないが)スライドガラス、シリコンウエハ、金コーティングされたスライド、紙を含む。いくつかの実施形態は、具体的な金属および/または誘電体ナノパターンを伴う基板を実装する。いくつかの実施形態によるナノパターンが、印刷された粒子からの光学シグネチャを増強することができる。いくつかの実施形態では、光学増強は、広帯域および/またはある波長に特異的であることができる。容易に理解され得るように、種々の印刷技法のうちのいずれも、本発明の種々の実施形態に従って、具体的な用途の要件に対して適宜、利用されることができる。
【0103】
基板上にサンプルが固定された状態で、サンプルが、光学スキャナを利用して、光学的に撮像され、特性評価されることができる(105)。いくつかの実施形態では、スキャナが、印刷された細胞および/または細菌のサイズおよび形状の両方ならびにスペクトルシグネチャを捕捉することができる。光学撮像システムが、いくつかの実施形態に従って、低コストCMOSセンサと統合されることができる。多くの実施形態は、光学スキャナとしてラマン分光法を実装する。いくつかの実施形態では、スペクトル撮像が、基板全体が撮像されるように、実施される。いくつかの実施形態では、ライン走査が、基板を撮像するために実施され、繰り返される。ラマン分光法を実施するために、いくつかの実施形態では、共焦点ラマンスキャナが、基板を撮像するために利用される。いくつかの実施形態では、広視野ハイパースペクトルラマン撮像システムが、基板を撮像するために利用される。いくつかの実施形態では、ブラッグチューナブルフィルタが、高透過効率を伴う高スループットを達成するために利用される。いくつかの実施形態では、積分場分光法が、高スペクトル分解能を達成するために利用される。いくつかの実施形態では、溶液中の汚染物質を検出および/または弁別するために必要である、スペクトルのある帯域のみが、撮像される。スペクトルのサブセットを撮像することによって、基板を撮像するために要求される時間が、短縮されることができる。加えて、撮像結果を分析するための時間および労力も、低減されることができる。容易に理解され得るように、種々の光学撮像および/または走査技法のうちのいずれも、本発明の種々の実施形態に従って、具体的な用途の要件に対して適宜、利用されることができる。
【0104】
撮像結果に基づいて、サンプル中の汚染物質が、それらのスペクトルシグネチャによって同定されることができる(106)。種々の汚染物質が、一意のシグネチャを有するため、汚染物質が、それらのシグネチャによって同定されることができる。走査システムによって集光されたスペクトル情報が、いくつかの実施形態に従って、リアルタイムで処理され、病原体および細胞の光学シグネチャのライブラリに対して分析されることができる。いくつかの実施形態では、クラスタリング技法が、汚染物質を弁別するために利用される。クラスタリング技法は、(限定ではないが)主成分分析(PCA)を含む。いくつかの実施形態では、特に、交絡シグネチャが弁別される必要があるシナリオでは、機械学習モデルが、種々の汚染物質を弁別し、特異的に同定するために利用される。機械学習モデルは、(限定ではないが)ニューラルネットワーク、回帰、またはサポートベクタマシン(SVM)を含む。
【0105】
サンプル中の汚染物質を同定する種々のプロセスが、
図1を参照して上記に説明されるが、プロセスの種々のステップを含む、プロセスのうちのいずれも、本発明の種々の実施形態に従って、異なる順序において実施されることができ、そのあるステップが、随意であり得る。したがって、本プロセスの種々のステップが、具体的な用途の要件に対して適宜、使用され得ることが、明確であるはずである。さらに、所与の用途の要件に対して適切な、サンプル中の汚染物質を同定するための種々のプロセスのうちのいずれも、本発明の種々の実施形態に従って、利用されることができる。本発明の種々の実施形態による、溶液中の所望の病原体を同定するためのプロセスが、さらに下記に議論される。
血液サンプル中の病原体同定プロセス
【0106】
多くの実施形態が、インクジェット印刷技法および表面増強ラマン分光法(SERS)を利用し、(限定ではないが)血液サンプル中の細菌、ウイルス、真菌、微生物、循環腫瘍細胞、ならびに細胞を含む、病原体を同定する。いくつかの実施形態では、SERS微小液滴プロセスが、1時間未満で病原体を同定および診断することができる。本発明のある実施形態による、病原体を決定するための方法が、
図2に図示される。プロセス200が、血液サンプルを取得することによって開始することができる(201)。いくつかの実施形態では、血液サンプルが、個人から収集されることができる。種々のサンプルが、処理される、または抽出されたままで使用されることができる。いくつかの実施形態では、サンプルが、溶液の中に投入される、またはさらに液体中で希釈される。いくつかの実施形態では、サンプルが、部分的に処理される(例えば、遠心分離、濾過等)。いくつかの実施形態では、サンプルが、源から抽出されたままで使用される。例えば、血液サンプルが、分析が、血漿に関して実施されるように、遠心分離されることができる。代替として、全血が、処理を伴わず、直接使用されることができる。容易に理解され得るように、種々の血液サンプルのうちのいずれも、本発明の種々の実施形態に従って、具体的な用途の要件に対して適宜、利用されることができる。
【0107】
サンプルが、ナノ粒子を含有する溶液と混合することによって調製されることができる(202)。溶液中に存在するナノ粒子が、溶液中の病原体のラマンスペクトルシグネチャを増強し得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、プラズモンナノ粒子であることができる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、金ナノ粒子である。ある実施形態では、ナノ粒子が、(限定ではないが)球体、ロッド、コアシェル、フラワー、およびスターを含む、種々の幾何学形状において提供されることができる。容易に理解され得るように、種々のナノ粒子溶液のうちのいずれも、具体的な用途の要件に対して適宜、利用されることができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、混合された溶液が、インクジェットプリンタに装填されることができる(203)。いくつかの実施形態では、サンプルが、基板に印刷され、固定される(204)。種々の実施形態では、液体プリンタが、2次元基板上に微小液滴のアレイを提供する。いくつかの実施形態では、音響印刷が、利用されることができる。多くの実施形態は、音響インクジェット印刷技法を実装する。いくつかの実施形態では、微小電気機械(MEMS)音響インクジェット機械が、液体サンプルを基板上に送達するための手段を提供する。
【0109】
多くの実施形態では、血液サンプルが、溶液中にあり、インクジェットプリンタが、基板上にサンプルの微小液滴を形成するために利用されることができる。いくつかの実施形態では、液滴のサイズが、各液滴が、1つまたは少数の汚染物質のみを有するように制御されることができる。いくつかの実施形態では、各微小液滴は、少なくとも1つの細胞を含有する。いくつかの実施形態では、微小液滴中の少なくとも1つの細胞は、ナノ粒子の分散体中にある。いくつかの実施形態では、液滴は、基板上で液体の形態のままであることができる。いくつかの実施形態では、サンプルは、固定されるように基板上で乾燥される。容易に理解され得るように、種々のインクジェット印刷技法のうちのいずれも、本発明の種々の実施形態に従って、具体的な用途の要件に対して適宜、利用されることができる。
【0110】
基板上に血液サンプルが固定された状態で、サンプルが、ラマン分光法を利用して、光学的に撮像され、特性評価されることができる(205)。いくつかの実施形態では、スキャナが、印刷された細胞および/または細菌のサイズおよび形状の両方ならびにスペクトルシグネチャを捕捉することができる。光学撮像システムが、いくつかの実施形態に従って、低コストCMOSセンサと統合されることができる。いくつかの実施形態では、スペクトル撮像が、基板全体が撮像されるように、実施される。いくつかの実施形態では、ライン走査が、基板を撮像するために実施され、繰り返される。いくつかの実施形態では、共焦点ラマンスキャナが、基板を撮像するために利用される。いくつかの実施形態では、広視野ハイパースペクトルラマン撮像システムが、基板を撮像するために利用される。いくつかの実施形態では、ブラッグチューナブルフィルタが、高透過効率を伴う高スループットを達成するために利用される。いくつかの実施形態では、積分場分光法が、高スペクトル分解能を達成するために利用される。いくつかの実施形態では、溶液中の汚染物質を検出および/または弁別するために必要である、ラマンスペクトルのある帯域のみが、撮像される。スペクトルのサブセットを撮像することによって、基板を撮像するために要求される時間が、短縮されることができる。加えて、撮像結果を分析するための時間および労力も、低減されることができる。容易に理解され得るように、種々のラマン走査技法のいずれも、本発明の種々の実施形態に従って、具体的な用途の要件に対して適宜、利用されることができる。
【0111】
撮像結果に基づいて、サンプル中の病原体が、それらのスペクトルシグネチャによって同定されることができる(206)。種々の病原体が、一意のシグネチャを有するため、病原体が、それらのシグネチャによって同定されることができる。ラマン走査システムによって集光されたSERSスペクトル情報が、いくつかの実施形態に従って、リアルタイムで処理され、病原体および細胞の光学シグネチャのライブラリに対して分析されることができる。いくつかの実施形態では、クラスタリング技法が、病原体を弁別するために利用される。クラスタリング技法は、(限定ではないが)主成分分析(PCA)を含む。いくつかの実施形態では、特に、交絡シグネチャが弁別される必要があるシナリオでは、機械学習モデルが、種々の病原体を弁別し、特異的に同定するために利用される。機械学習モデルは、(限定ではないが)ニューラルネットワーク、回帰、またはサポートベクタマシン(SVM)を含む。
【0112】
本発明のある実施形態による、SERS微小液滴技法を使用して粒子を決定するための方法が、
図3に図示される。診断および治療の前の時間が、従来的な培養技法を使用した、3~7日と比較して、いくつかの実施形態に従って、SERS微小液滴技法を用いて、30~60分まで短縮されることができる。
【0113】
血液サンプル中の病原体を同定する種々のプロセスが、
図2および3を参照して上記に説明されるが、プロセスの種々のステップを含む、プロセスのうちのいずれも、本発明の種々の実施形態に従って、異なる順序において実施されることができ、そのあるステップが、随意であり得る。したがって、本プロセスの種々のステップが、具体的な用途の要件に対して適宜、使用され得ることが、明確であるはずである。さらに、所与の用途の要件に対して適切な、サンプル中の病原体を同定するための種々のプロセスのうちのいずれも、本発明の種々の実施形態に従って、利用されることができる。本発明の種々の実施形態による、溶液サンプルを調製するためのプロセスが、さらに下記に議論される。本発明の種々の実施形態による、微小液滴サンプルを調製するためのプロセスも、さらに下記に議論される。
微小液滴サンプルの調製
【0114】
従来的SERS基板が、信号を百万倍超増幅させ、携帯電話を使用した単一分子検出も可能にすることが示されている。しかしながら、病原体の検出のためのSERSの幅広い採用が、2つの主な限界、すなわち、1)再現性および2)検出の限界(LOD)によって妨げられている。再現性に関して、SERS基板(典型的には、粗面化された金属表面またはナノ粒子コーティング)の形態学の変動が、SERSスペクトルの高い変動性を生じさせ得る。また、所与の病原体からのSERS信号の再現性もまた、病原体とSERS基板との間の特異的結合の変動のため、厄介である。第2に、細菌BSIの早期検出を提供するために、それらの濃度が、1CFU/mLと同程度に低いときも、血液中の病原体を検出することが可能であるべきである。そのような低濃度においては、病原体の直接的SERS検出は、病原体を7桁上回る、赤血球からの著しい散乱のため、実現可能ではない場合がある。血液から病原体を分離するための、血液の優先溶解およびオンチップ電気泳動等のいくつかの方策が、研究されている。しかしながら、そのような技法は、依然として、実践的なラマンベースの同定を達成するために、サンプルの事前培養を要求する。
【0115】
これらの課題に対処するために、多くの実施形態が、従来的SERS基板を、それぞれが、プラズモンナノ粒子の分散体中に単一細胞を含有する、SERS活性化微小液滴に置き換える。いくつかの実施形態による、本アーキテクチャは、SERSナノ粒子が細胞の表面積をより完全にサンプリングし、再現性およびより特異的な同定を提供することを可能にすることができる。いくつかの実施形態は、細菌株および耐性レベルまでの検出感受性を達成することができる。ある実施形態は、音響生体印刷を使用し、単一細胞レベルにおける血液のラマン選別を可能にするために、SERS活性化細胞微小液滴への全血の迅速な分割を促進する。ある実施形態では、改良されたSERS幾何学形状が、改良された分類を可能にすることができる。
【0116】
多くの実施形態は、金属ナノ構造によって可能にされる、単一分子感受性を伴う非弾性光子散乱を利用する、表面増強ラマン散乱(SERS)を実装する。原体の細胞膜の一意の分子構造のため、各細菌種は、同定のために使用され得る、特異的なSERSシグネチャを有する。SERSは、無標識であり、全てのタイプの細菌、ウイルス、および真菌病原体に対して一般化可能である。
【0117】
いくつかの実施形態は、粒子検出のための溶液サンプルを調製することを対象とする。多くの実施形態では、環境サンプルの粒子が、検出されることができる。分析され得るサンプルは、(限定ではないが)水源、廃水、食品、および土壌を含む。いくつかの実施形態では、生物学的サンプルの病原体が、検出されることができる。分析され得るサンプルは、(限定ではないが)生物流体、唾液、汗、リンパ液、粘液、尿、大便、全血、血漿、細胞溶液を含む。いくつかの実施形態では、(溶液中の、または溶液中に希釈される)環境サンプルならびに/もしくは生物学的サンプルが、分析され、病原体を検出する。
【0118】
サンプルが、いくつかの実施形態では、溶液と混合することによって調製されることができる。ある実施形態は、SERS性能を増強し得る、サンプル調製を組み込む。いくつかの実施形態では、ナノ粒子が、サンプル溶液に添加されることができる。溶液中に存在するナノ粒子が、溶液中の汚染物質の光学スペクトルシグネチャを増強し得る。特定の形状および具体的光学共鳴を伴う金属ナノ構造粒子が、細胞のラマンシグネチャを桁違いに増強し、サンプルの迅速な光学照会を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、プラズモンナノ粒子であることができる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、(限定ではないが)金ナノ粒子を含む、金属ナノ構造粒子である。ある実施形態では、ナノ粒子が、(限定ではないが)球体、ロッド、コアシェル、フラワー、およびスターを含む、種々の幾何学形状において提供されることができる。多くの実施形態では、ナノ粒子は、SERS性能を少なくとも106まで増強することができる。
【0119】
多くの実施形態は、ナノ粒子と細胞の相互作用を調査し、細胞生存率を確実にし、ラマンスペクトルシグネチャ増強を追求する。いくつかの実施形態は、乾燥された細菌サンプル上に粒子を分散させることによって、最大限の粒子単分散度、細胞生存率、共振波長、およびラマン増強のためにナノ粒子のサイズ、形状、ならびに界面活性剤を最適化する。いくつかの実施形態は、単一細胞微小液滴に最適化されたナノ粒子を実装する。(限定ではないが)共焦点ラマン分光法を含む光学分光法を使用して、いくつかの実施形態は、ラマンシグネチャがナノ粒子の幾何学形状、濃度に伴って、および抗生物質添加剤に伴って変動する方法を照会する。いくつかの実施形態では、散乱信号が、病原体、その抗生物質感受性、およびそのMICを同定する、機械学習アルゴリズムによって分析されることができる。
【0120】
多くの実施形態は、(限定ではないが)サイズ、形状および材料組成、微小液滴体積、その体積中のナノ粒子濃度を含む、ナノ粒子設計を最適化する。いくつかの実施形態は、最小積分時間で信号対雑音比を最大限化することを目的とする。いくつかの実施形態は、微小流体チップを使用して、単一細胞大腸菌微小液滴を産生することができる。多くの実施形態では、球体、ロッド、およびコアシェルを含む、種々のプラズモンナノ粒子幾何学形状が、開発される。全視野電磁シミュレーションを使用すると、いくつかの実施形態は、種々のナノ粒子幾何学形状のSERS増強を追究する。
図4Aは、本発明のある実施形態による、異なるナノ粒子幾何学形状を伴う、SERS性能のある実施例を提供する。
図4Bでは、ナノシェル、ナノフラワー、ナノロッド、およびナノスターが、試験される。ナノロッド404およびナノスター403は、およそ10
2ならびに10
3のSERS増強伴う、ナノシェル401およびナノフラワー402と比較して、およそ約10
6のピークSERS増強を伴う、より高い増強をもたらす。ナノロッドは、405に示されるように、両端において二重の増強を呈する一方、ナノスターの先端は、406に示されるように、複数のラマン「ホットスポット」を保有する。多くの実施形態は、全体細胞ラマン増にとっての利点を提供し得る、幾何学形状を追求する。それらのサイズおよびアスペクト比を調整することによって、ナノロッドならびにナノスターは両方とも、病原体のラマン分光法に関して最も関連性のある共振波長を横断して、完全に調整可能であることができる。いくつかの実施形態は、ナノロッドの長さおよびスターの先端の長さが、粒子の共鳴をより長い波長に偏移させ、これが、生物学的材料からの背景自己蛍光を低減させることの利点であり得ることを示す。
【0121】
多くの実施形態は、種々のサイズおよび(限定ではないが)HEPESならびにCTAB-NaOLを含む界面活性剤コーティングを伴う、コロイド状に合成されたナノ球体、ナノロッド、ナノフラワー、およびナノスターを実装する。
図4Bは、種々の形状のコロイド状に合成されたAuナノ粒子、すなわち、410のナノ球体、420のナノフラワー、430のナノスター、および440のナノロッドの透過電子顕微鏡法(TEM)顕微鏡写真を図示する。
【0122】
多くの実施形態では、ナノロッド寸法が、液体セル中のラマン散乱を最大限化するために最適化されることができる。いくつかの実施形態は、照明レーザから青色偏移した波長を伴うナノロッドが、種々のタイプの細菌からの強力な信号を与え得ることを示す。いくつかの実施形態では、液体セル中に導入された抗生物質への細菌のリアルタイムの応答が、それらのラマンスペクトル特徴の変化を観察することによって、監視されることができる。本発明のある実施形態による、液体セル中のラマン散乱信号を改良する、金ナノロッドのある実施例が、
図5Aおよび5Bに提供される。
図5Aは、細菌(502)および金ナノロッド(501)の異なるタイプの混合されたサンプルを撮像する、青色偏移した波長を伴う照明レーザ(503)を図示する。
図5Bは、細菌サンプル中の金ナノロッドの存在に伴って信号増強を示す、ラマンスペクトルを図示する。金ナノロッド信号が、550に示される。540は、霊菌が存在している状態の金ナノロッドを示す。530は、大腸菌が存在している状態の金ナノロッドを示す。520は、黄色ブドウ球菌が存在している状態の金ナノロッドを示す。510は、表皮ブドウ球菌が存在している状態の金ナノロッドを示す。
【0123】
単一細胞微小液滴設計の具体的な実施例が、
図4および5に説明されているが、当業者は、本発明のいくつかの実施形態による、SERSナノ粒子を最適化する種々のアプローチが、可能性として考えられることを理解することができる。さらに、所与の用途の要件に対して適切なラマン信号を最適化するための種々のプロセスのうちのいずれも、本発明の種々の実施形態に従って、利用されることができる。
【0124】
多くの実施形態が、圧電トランスデューサおよび集束音響レンズを使用して、血漿ならびに全血から単一細胞微小液滴を発生させることが可能である。いくつかの実施形態では、音響周波数および集束強度が、各射出される微小液滴中の細胞の数を制御しながら、同時に、細胞生存率を維持することができる。調製された生物学的サンプルを利用して、微小液滴が、各液滴が1つまたはいくつかの細胞のみを含有するように、基板上にアレイに形成されることができる。任意の適切な液滴技法が、利用され、1つまたはいくつかの細胞を伴う液滴サイズを達成することができる。いくつかの実施形態では、SERSナノ粒子が、血液から最適化されたSERS活性化微小液滴を発生させるように組み込まれることができる。いくつかの実施形態が、高速かつ低コストにおけるSERSによって最適化された血液印刷を可能にする、音響射出器の統合されたアレイを加工することができる。インクジェットカートリッジが、いくつかの実施形態による滅菌または使い捨て可能部を介して再利用可能であることができる。
【0125】
多くの実施形態が、全血サンプルを迅速に印刷するためのバイオプリンタを開発している。いくつかの実施形態が、統合型微小電気機械(MEMS)音響インクジェット技術および単一細胞株音響印刷を組み合わせる。いくつかの実施形態では、生体印刷スキームが、数ミリリットルの流体を数秒で処理することができる。いくつかの実施形態では、集束音ビームが、微小液滴のサイズおよび指向性の精密な制御に伴って開放表面液体から微小液滴を射出するために使用されることができる。本発明のある実施形態による、細胞音響射出プラットフォームのある実施例が、
図6に図示される。全血およびSERSナノ粒子の混合物(610)が、使い捨て可能サンプルウェルプレート(601)の中に装填されることができる。それらの音響波が液体/空気界面に集束されている、音響射出器のアレイ(602)を使用して、細胞微小液滴(604)が、ウェルから同時に射出されることができる。結合培地(603)が、音響射出器とサンプルウェルプレートとの間に配置されることができる。
【0126】
多くの実施形態では、音響波は、微小液滴を射出するだけではなく、混合物の持続的な混合を可能にすることも行い、凝集およびサンプルを回避することができる。いくつかの実施形態は、音響波が、音響レンズを用いて形を整えられ、射出部位への細胞の効率的な送達を可能にし得ることを含む。音響レンズを組み込む、いくつかの実施形態は、サイズ選択的射出を可能にし得る。
【0127】
多くの実施形態は、音響射出が、細胞サンプルの迅速な印刷を可能にすることを示す。多くの実施形態では、音響射出プロセスは、ノズルを伴わず、無閉塞印刷を可能にする。いくつかの実施形態は、音響射出の液滴体積が、細胞カプセル化のために好適である、数ピコリットル(pL)の範囲内であり得ることを示す。いくつかの実施形態では、音響射出は、数十ミリリットの流体を数分で処理することが可能である。ある実施形態による、血液および血漿と同等の粘度液体の音響射出のある実施例が、
図7A-7Cに提供される。
図7Aは、およそ1cPの粘度、すなわち、血漿に類似する粘度を伴う液体の45MHzトランスデューサを用いた音響射出を図示する。
図7Bは、およそ2cPの粘度を伴う液体の45MHzトランスデューサを用いた音響射出を図示する。
図7Cは、およそ3cPの粘度、すなわち、血液に類似する粘度を伴う液体の45MHzトランスデューサを用いた音響射出を図示する。
【0128】
いくつかの実施形態は、種々の粘度を伴う液体からの音響射出を研究するために、カスタマイズされた圧電トランスデューサを伴う。いくつかの実施形態では、トランスデューサの特性評価は、(限定ではないが)インピーダンス特性評価、トランスデューサ音響放射の水中聴音器マッピング、およびトランスデューサ焦点距離測定のためのパルスエコー測定を含む。いくつかの実施形態は、ストロボスコピック撮像設定を使用し、射出安定性および射出された微小液滴のサイズ均一性ならびに速度を特性評価および最適化し得る。
【0129】
多くの実施形態では、音響インクジェットプリンタのトランスデューサ周波数が、異なるサイズの微小液滴を生産するように調整されることができる。射出された微小液滴のサイズおよび指向性が、音響波周波数ならびにエネルギーによって決定されることができる。ある実施形態は、音響インクジェット印刷が、直径がおよそ15μm~およそ300μmの微小液滴サイズの範囲で射出することが可能であることを示す。いくつかの実施形態では、音響プリンタが、直径がおよそ25μm~およそ280μmの微小液滴を射出することが可能である。いくつかの実施形態が、トランスデューサ周波数が高いほど、微小液滴のサイズがより小さくなることを実証する。高圧電トランスデューサ(約100~200MHz)を用いた音響波が、適切に定寸された微小液滴を形成するために利用されることができる。いくつかの実施形態が、およそ150MHzにおけるトランスデューサ周波数を用いて、血液サンプルから直径がおよそ15μm~50μmの微小液滴を印刷することが可能である。ある実施形態による、異なるトランスデューサ周波数における音響射出のある実施例が、
図8A-8Cに提供される。
図8A-8Cは、血液と同等の粘度を伴う水/グリセリン混合物からの微小液滴の印刷を図示する。これらの液滴を発生させるために、トランスデューサ周波数が、およそ5MHz(
図8A)からおよそ15MHz(
図8B)、およびおよそ43MHz(
図8C)まで変動され、それぞれ、300μm(
図8A)、84μm(
図8B)、ならびに44μm(
図8C)のサイズにおける微小液滴を射出する。
【0130】
多くの実施形態が、異なる音響圧力下で射出された細胞の細胞生存率を研究している。ある実施形態は、異なる細胞原液濃度および粘度からの微小液滴あたりの射出された細胞の数を含む。いくつかの実施形態は、異なるサイズの細胞に関する印刷パラメータを最適化する。いくつかの実施形態は、細胞の混合物からの音響射出を実施することが可能である。音響インクジェット印刷は、いくつかの実施形態に従って、液滴サイズ、印刷部位を制御し、生存率を維持する、優れた制御を提供することができる。さらに細胞の音響射出を特性評価するために、いくつかの実施形態は、サッカロミケス・セレビシエ酵母菌細胞原液からの音響射出を調査する。ある実施形態による、寒天プレート上の大腸菌印刷の音響射出のある実施例が、
図9に提供される。示されるコロニー(901)は、指定される場所において15MHzトランスデューサを使用して、堆積された個々の微小液滴から増殖している。
図9は、発生された液滴位置の可制御性および印刷された細胞の生存率の両方を示す。
【0131】
ある実施形態による、45MHz音響トランスデューサを用いて印刷されるSERS活性化多細胞微小液滴のアレイのある実施例が、
図10A-10Bに提供される。
図10Aは、45MHz音響トランスデューサを用いて基板上に印刷される、SERS活性化微小液滴のアレイを図示する。
図10Bは、45MHz音響トランスデューサを用いて印刷される、金ナノロッド(1001)と、カンジダ・グラブラータ(1002)とを含有する、SERS活性化微小液滴を図示する。
【0132】
ある実施形態による、45MHz音響トランスデューサを使用して全血から印刷されるラマン活性化細胞微小液滴のアレイのある実施例が、
図11に提供される。1101は、赤血球を図示する。
【0133】
微小液滴の音響射出の具体的実施例が、
図6-11に説明されているが、当業者は、本発明のいくつかの実施形態による、音響射出プロセスを最適化する種々のアプローチが、可能性として考えられることを理解することができる。さらに、所与の用途の要件に対して適切な、微小液滴印刷を最適化するための種々のプロセスのうちのいずれも、本発明の種々の実施形態に従って利用されることができる。本発明の種々の実施形態による、光学分光法撮像を実施するためのプロセスが、さらに下記に議論される。
光学分光法撮像の実施
【0134】
多くの実施形態が、基板上の微小液滴サンプルを走査および撮像するために、光学分光法を利用する。いくつかの実施形態では、光学スペクトルは、粒子の一意の特徴を含むことができ、粒子を同定するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、ラマン分光法が、基板上の微小液滴を走査するために使用されることができる。微小液滴中の潜在的病原体が、いくつかの実施形態に従って、ラマン分光法によって走査され、それらの一意のスペクトルを取得することができる。
【0135】
約1mLの患者サンプルに関して、各印刷物は、およそ50億個の細胞を含有し得る。フレームあたり1cm2の撮像面積である場合、約11,000個のスペクトルスナップ写真が、要求されるであろう。処理時間を30分以内に保つために、各フレームは、約1.5秒以内に処理されるであろう。そのような高速の入手は、従来の共焦点ラマンスキャナを用いては厄介である。故に、多くの実施形態が、広視野ハイパースペクトルラマン撮像システムを実装する。高速ハイパースペクトルラマン撮像は、ブラッグチューナブルフィルタを使用して実現されている。チューナブル液晶フィルタおよび音響光学フィルタとは異なり、ブラッグチューナブルフィルタは、約80%の透過効率を伴う高スループットを達成し得る。本スキームは、従来のラマン共焦点撮像システムより約30倍より高速であることができる。ブラッグチューナブルフィルタを用いたラマン撮像は、ほぼ回折限定された空間分解能、すなわち、約8cm-1未満のスペクトル分解能および約25の信号対雑音比を伴って、約130μm×130μmの面積を走査することができる。いくつかの実施形態は、より高い撮像効率を達成するために、SERSを用いたブラッグチューナブルフィルタを組み込む。いくつかの実施形態は、個々の細胞位置を分解するために、約10μm×10μmの空間分解能を使用し得る。いくつかの実施形態では、照会時間は、高感度のSERS撮像および約4の信号対雑音比を伴う高分類正確度を組み合わせて、1cm2あたり1.5秒未満であることができる。
【0136】
ある実施形態による、広視野ハイパースペクトルラマン撮像システムのある実施例が、
図12に図示される。
図12は、広視野ラマン検出器の概略図を図示する。音響射出器(1201)が、基板上に単一またはいくつかの細胞を含有する、微小液滴を印刷することができる。2次元基板上に印刷される微小液滴のアレイ(1202)が、ラマン分光法によって撮像されることができる。各SERS活性化微小液滴(1205)は、プラズモンナノ粒子と、単一またはいくつかの細胞とを含む。プラズモンナノ粒子は、SERS信号を増強し、高感度撮像を達成することができる。一意の分子シグネチャを含有するSERSスペクトル(1203)が、微小液滴毎に取得されることができる。カメラが、各ピクセル内にエンコードされた高分解能スペクトル情報を伴う細胞印刷物の2次元(2D)画像を捕捉する。SERSスペクトルが、分析されることができ、分子シグネチャが、(限定ではないが)細菌株、抗生物質感受性を含め、病原体を同定するために使用されることができる。
【0137】
いくつかの実施形態は、広視野分光法撮像のための積分場分光法(IFS)を組み込む。いくつかの実施形態では、光ファイバの2Dマトリクス(典型的には、およそ400~500本のファイバ)が、ある面積から画像を収集するために使用され、次いで、従来の分光写真機の入口スリットにおいて、1Dアレイにおいて配列されることができる。スペクトル分解能がフィルタ線幅によって決定される、チューナブルフィルタとは異なり、光ファイバIFSスペクトル分解は、分光写真機によって決定されることができる。その結果、非常に高いスペクトル分解能が、ある実施形態に従って、取得されることができる。
【0138】
多くの実施形態では広視野ラマンラインスキャナが、RenishawTM inVia顕微鏡と比較して、10分の1の時間において5cm×5cmの面積を撮像することができる。いくつかの実施形態では、ラインスキャナが、既知の病原体濃度および位置を伴う、微小液滴の2Dアレイを撮像するために使用されることができる。これらの測定は、いくつかの実施形態に従って、最小ピクセルサイズ(すなわち、液滴間の間隔)、最大走査速度、および光学照明電力を決定し、病原体を正確に同定し得る。いくつかの実施形態は、同定の感受性、正確度、および速度を最大限化するために、撮像条件を決定する。多くの実施形態は、最適化された撮像条件を利用し、広視野ラマンのためのブラッグチューナブルフィルタおよびファイバ束IFSの両方を実装する。
【0139】
光学撮像システムの具体的実施例が、
図12に説明されているが、当業者は、本発明のいくつかの実施形態による、撮像品質を最適化する種々の撮像システムが、可能性として考えられることを理解することができる。さらに、所与の用途の要件に対して適切な光学撮像を最適化するための種々の方法のうちのいずれも、本発明の種々の実施形態に従って、利用されることができる。本発明の種々の実施形態による、光学スペクトルを処理するためのプロセスが、さらに下記に議論される。
光学スペクトルの処理
【0140】
いくつかの実施形態では、サンプルシグネチャを伴う光学スペクトルが、同定のために取得されることができる。いくつかの実施形態では、ラマン分光法が、基板上に印刷される生物学的サンプルのシグネチャを取得するために使用されることができる。病原体の細胞膜の一意の分子構造のため、各細菌種は、同定のために使用され得る、特異的なラマンスペクトルシグネチャを有する。いくつかの実施形態では、病原体のSERSシグネチャが、病原菌株および抗生物質感受性ならびに/もしくは耐性の両方についての情報を伝達することができる。いくつかの実施形態では、抗生物質暴露に応じたSERSシグネチャに対する変化が、細胞膜構造および細胞生存率に対する変化を監視し、リアルタイムの抗生物質感受性試験を促進するために使用されることができる。
【0141】
いくつかの実施形態は、サンプルのためのラマンシグネチャを発生させ、サンプル中の汚染物質を検出することを対象とする。いくつかの実施形態では、ラマンシグネチャが、生物学的サンプルのために発生される。生物学的サンプルは、(限定ではないが)血液、血漿、リンパ液、唾液、粘液、尿、および大便を含む。生物学的サンプル中で検出するための汚染物質は、(限定ではないが)病原体、循環腫瘍細胞、バイオマーカを含む。病原体は、(限定ではないが)細菌、ウイルス、菌類、藻類、原虫、および他の感染症微生物を含む。
【0142】
本発明のある実施形態による、同定のために使用され得る大腸菌固有のSERSシグネチャのある実施例が、
図13に提供される。
図13では、1301は、大腸菌細胞を図示する。1302は、大腸菌に一意である、大腸菌細胞膜構造および分子組成を図示する。1303は、大腸菌細胞を同定するために使用され得る、ラマンスペクトルを図示する。
【0143】
多くの実施形態は、個々の細菌細胞を照会するために共焦点分光法を実装する。異なる細菌表現型が、それらの対応するラマンスペクトルの微妙な差につながる、一意の分子組成によって特性評価される。本発明のある実施形態による、臨床的に関連のある細菌種の単一細胞ラマンスペクトルのある実施例が、
図14A-14Bに提供される。多くの実施形態は、22種類の種に由来する、31種類の細胞株を試験する。ラマンスペクトルのデータベースが、各スペクトルが大まかに、レーザの焦点内にある単一細胞から生じるように、細菌の単分子層を金コーティングされた顕微鏡スライド上に広げ、共焦点ラマン顕微鏡を使用してスペクトルを測定することによって、集光されることができる。
図14Aは、単一細胞ラマン照会のために使用される共焦点ラマン設定の概略図を図示する。単一の細菌細胞(1401)が、回折限定された焦点(1402)に設置されることができる。レーザビーム(1404)が、対物レンズ(1403)を通して通過し、細菌細胞に焦点を当てる。ラマンスペクトルが、具体的な細菌細胞に関して記録されることができる。
図14Bは、およそ4.1のSNRを伴う、1秒の積分時間を伴う、30種類の細菌種のラマンスペクトルを図示する。スペクトルは、抗生物質治療に従って、色で群化される。30種類の株の単一細胞細菌スペクトルが、一意の特徴を示す。見られ得るように、いくつかのスペクトル信号が、他のものからより容易に弁別され、いくつかのスペクトル信号が、類似し得る。いくつかの実施形態では、溶液中の汚染物質を同定および/または弁別するために必要である、スペクトルのある帯域のみが、撮像される。スペクトルのサブセットを撮像することによって、基板を撮像するために要求される時間が、短縮されることができる。加えて、撮像結果を分析するための時間および労力も、低減されることができる。
【0144】
種々の実装に関して、ある帯域のみが、同定および弁別され得る、シグネチャを取得するために必要であり得る。いくつかの事例では、(限定ではないが)ニューラルネットワーク、回帰、SVMを含む、機械学習モデルが、シグネチャを同定および/または弁別するために利用されることができる。さらに、いくつかの事例では、(限定ではないが)ニューラルネットワーク、回帰、SVMを含む、機械学習モデルが、抗生物質感受性を同定するために利用されることができ、これは、病原性感染症を患う個人を治療するために使用されることができる。
【0145】
スペクトルが容易に弁別される場合では、主成分分析(PCA)等のクラスタリング技法が、スペクトルを同定および弁別するために利用される。単純なクラスタリング技法がスペクトルを弁別しない状況では、機械学習モデルが、スペクトルをより良好に弁別するように訓練される。利用され得る機械学習モデルは、ニューラルネットワークと、回帰と、SVMとを含む。いくつかの実施形態では、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が、利用される。
【0146】
ラマンスペクトルからのいくつかのピークが、異なる株と異なる種との間で類似し得る。異なるように見えるものが、いくつか存在するが、差異は、微妙であり得る。多くの実施形態が、高い同定正確度に到達するために、高い信号対雑音比(SNR)を取得する。いくつかの実施形態は、分離株、経験的治療、および抗生物質耐性によってノイズの多い細菌スペクトルを分類するように、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練する。いくつかの実施形態では、CNNアーキテクチャは、25個の1次元の(1D)畳み込み層と、残存接続部とを含み、2次元の画像の代わりに、これは、入力として1次元のスペクトルを取り込む。いくつかの実施形態は、画像分類からスペクトルデータまでのCNN技法を統合する。
【0147】
多くの実施形態では、機械学習モデルが、細菌株のラマンスペクトルを弁別するように訓練される。ある実施形態に従って、31種類の細菌株のラマンスペクトルを弁別するように訓練されたCNNの正確度結果を表示する、混乱ネットワークのある実施例が、
図15に提供される。平均の株レベル正確度は、少なくとも82.4%である。ロジスティック回帰およびSVM機械学習モデルは、それぞれ、75.7%ならびに74.9%の正確度における、類似しているが、あまり正確ではない結果を提供した。大部分の誤分類が、株間のものであり、種間のものではなかった。また、
図15に示されるものは、最も有益に投与されるであろう抗生物質に基づいて株を群化する、ボックスである。見られ得るように、大部分の誤分類が、依然として、同一の抗生物質を投与されるであろう。
【0148】
多くの実施形態では、機械学習モデルが、抗生物質感受性に基づいてラマンスペクトルを弁別するように訓練される。ある実施形態に従って、抗生物質感受性に基づいてラマンスペクトルを弁別するように訓練されたCNNの正確度結果を表示する、混乱ネットワークのある実施例が、
図16に提供される。平均の抗生物質感受性正確度は、少なくとも97.0%である。ロジスティック回帰およびSVM機械学習モデルが、それぞれ、93.3%ならびに92.2%の正確度における、類似しているが、あまり正確ではない結果を提供する。
【0149】
多くの実施形態が、抗生物質耐性の無培養検出を実装する。いくつかの実施形態では、組み合わせられたラマン/CNNシステムが、細菌の検出、同定、および抗生物質感受性試験を単一細胞感受性を伴う単一のステップに結合することが可能である。多くの実施形態では、機械学習モデルが、ラマンスペクトルを単一の種の抗生物質耐久性細菌株と抗生物質感受性細菌株との間で弁別するように訓練される。ある実施形態に従って、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)およびメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)のラマンスペクトルを弁別するように訓練されたCNNの正確度結果を表示する、混乱ネットワークのある実施例が、
図17に提供される。モデルは、少なくとも89.1%の同定正確度を達成する。
【0150】
機械学習モデルの種々の実施形態が、用途に対する必要に応じて改変されることができる。モデルの感受性および特異性が、改変されることができ、これは、種々の用途において有益であり得る。例えば、特異性を犠牲にして、細菌の抗生物質耐久性株を検出するためにより高い感受性を有することが、有益であり得る。
【0151】
多数の実施形態はまた、個人の生物学的サンプルから撮像されるラマンスペクトルを用いて訓練されたモデルを利用することも対象とする。故に、種々の実施形態は、ラマンスペクトルを発生させるために生物学的サンプルを利用し、汚染物質が生物学的サンプル中に存在する場合、これは、検出および/または弁別されることができる。多くの実施形態では、生物学的サンプルのラマンスペクトルが、本明細書に説明されるように、訓練されたモデルであって、細菌株、抗生物質感受性を検出および弁別するためのモデルと、MSSAからMRSAを弁別するための二元モデルとを含む、モデル内で利用される。任意の適切な訓練されたモデルが、個人から抽出される生物学的サンプル中の汚染物質を検出および/または弁別するために利用され得ることを理解されたい。訓練されたモデルによって決定されるような、生物学的サンプルに由来するラマンスペクトル内の汚染物質または治療薬感受性の検出に基づいて、治療薬が、故に、投与され得る。
【0152】
細菌株が、環境要因、季節、地域性、患者個体群、または他の要因に基づいて進化ならびに/もしくは分化するにつれて、訓練されたモデルが、個人の生物学的サンプルによって提供される、入手されたラマンスペクトルデータを利用して、訓練され続けることができる。モデルは、サンプル毎に継続的に更新または改良されることができる。
【0153】
多くの実施形態では、組み合わせられたラマン/CNNアプローチが、ASTおよびMIC分類タスクに適用されることができる。異なる濃度の抗生物質とともに共培養された細菌分離株からのラマンシグネチャが、いくつかの実施形態に従って、集光されることができる。いくつかの実施形態は、抗生物質を用いて事前培養されている、乾燥された細菌分離株上に集束する。いくつかの実施形態では、CNNは、異なる抗生物質感受性およびMICを伴う、細菌株を弁別することができる。いくつかの実施形態は、血清と、血漿とを含む、液体中の単一の細菌細胞のラマン収集のための液体チャンバを実装する。いくつかの実施形態は、血漿に対する細菌スパイクインが、乾燥されたサンプルからのものに類似するスペクトルをもたらすことを示す。いくつかの実施形態は、血漿中の病原体種間の差異が、血漿ドナー間の差異を上回り得ることを示す。ある実施形態による、ラマン分光法のための液体チャンバのある実施例が、
図18A-18Bに図示される。
図18Aは、血清および/または血漿中のラマン測定のための液体チャンバの概略図を図示する。
図18Bは、乾燥されたサンプルとの比較、ならびに2人の異なる代表的ドナーからの血漿のラマン信号間の比較を伴う、血漿中の大腸菌および緑膿菌からのラマン信号を示す。
【0154】
多くの実施形態では、抗生物質暴露の増大に伴う、スペクトルおよびそれらの変化の顕著な特徴を抽出する、ニューラルネットワークが、開発される。いくつかの実施形態による、共培養毎の二元分類器が、抗生物質濃度が、病原体が生存中または死滅しているかどうかに基づいて、効果的である、もしくは効果的ではないかどうかを決定することができる。いくつかの実施形態は、ラマンスペクトルが、試験管内での抗生物質暴露を伴わず、抗生物質感受性およびMICに関する情報を提供し得ることを示す。ある実施形態は、陽性血液培養物の数秒から数分以内のMIC結果を可能にする。
【0155】
いくつかの実施形態は、試験管内での抗生物質暴露を伴わず、MICを取得するために調査する。いくつかの実施形態は、それらの感受性プロファイルのみによって、すなわち、最初に二元の耐久性/感受性で、続いて、MICを決定するためにマルチクラスフォーマットにおいて細菌のラマンスペクトルを分類する。可能性として考えられる抗生物質選定および濃度が、広い範囲にわたるため、従来的な分類スキームは、要求される多数の部類に起因して、扱いにくい状態になる。多くの実施形態は、二元およびマルチクラスフォーマットの両方に関して、マルチタスク学習を実装する。抗生物質毎に感受性試験のマルチタスクを並行して実施するように1つのCNNを設計することが、全て単一のラマン測定からの一度の、複数の抗生物質に関する完全な抗生物質感受性プロファイルを可能にするであろう。
用途および治療
【0156】
種々の実施形態が、生物学的サンプル中の病原体の検出に基づいて、治療を行うことを対象とする。本明細書に説明されるように、病原体が、ラマン分光法を利用して生物学的サンプル中に検出されることができる。検出された病原体に基づいて、個人が、抗生物質を用いて治療されることができる。いくつかの実施形態では、抗生物質感受性が、(精密な病原体を決定するステップの有無にかかわらず)ラマン分光法を利用して決定され、したがって、個人が、決定された抗生物質を用いて治療される。
【0157】
いくつかの抗生物質が、検出された病原体または抗生物質感受性に関して、適宜、投与されることができる。抗生物質は、(限定ではないが)バンコマイシン、セフトリアキソン、ペニシリン、ダプトマイシン、メロペネム、シプロフロキサシン、ピペラシリン・タゾバクタム(TZP)、およびカスポファンギンを含む。
均等論
【0158】
上記の説明は、本発明の多くの具体的な実施形態を含有するが、これらは、本発明の範囲に対する限界としてではなく、むしろ、それらの一実施形態のある実施例として解釈されるべきである。故に、本発明の範囲は、例証される実施形態によってではなく、添付の請求項およびそれらの均等物によって決定されるべきである。
【国際調査報告】