(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】静圧タービン及びそのためのタービン・ランナ
(51)【国際特許分類】
F03B 3/12 20060101AFI20221215BHJP
【FI】
F03B3/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523611
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(85)【翻訳文提出日】2022-06-13
(86)【国際出願番号】 CA2020050974
(87)【国際公開番号】W WO2021077203
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522159749
【氏名又は名称】アドキャニン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホター - イシャイ、オン
【テーマコード(参考)】
3H072
【Fターム(参考)】
3H072AA02
3H072AA26
3H072BB31
3H072CC43
(57)【要約】
回転可能なシャフト、及び回転可能なシャフトによって保持される少なくとも1つの静圧ブレードを備える静圧タービン・ランナであって、少なくとも1つの静圧ブレードが、上流面と静圧タービン・ランナに対する流れ方向との間で測定される迎え角θを有し、0<θ<35°であり、少なくとも1つの静圧ブレードが、翼幅及びコード長を有し、コード長と迎え角θの正弦との積として定義される、縦方向係合範囲LEEを有し、少なくとも1つの静圧ブレードに関して、LEEを翼幅で割った値が、0.75より大きく、静浮力及び液体の流れによって駆動される、液体の流れと交差する少なくとも1つの静圧ブレードの運動によって液体から抽出される全エネルギーが、液体の流れのみから利用可能な運動エネルギーの66%に等しい量を超える、静圧タービン・ランナ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なシャフト、及び
前記回転可能なシャフトによって保持される少なくとも1つの静圧ブレード
を備える静圧タービン・ランナであって、
前記少なくとも1つの静圧ブレードが、前記静圧タービン・ランナに対する流れ方向に関して上流面、及び前記静圧タービン・ランナに対する前記流れ方向に関して下流面を有し、
前記少なくとも1つの静圧ブレードが、前記上流面と前記静圧タービン・ランナに対する前記流れ方向との間で測定される迎え角θを有し、0<θ≦35°であり、
前記少なくとも1つの静圧ブレードが、前記静圧タービン・ランナに対する前記流れ方向に垂直に測定される、前記シャフトに対して前記静圧ブレードの最も内側の縁部と前記シャフトに対して前記静圧ブレードの最も外側の縁部との間の、翼幅を有し、
前記少なくとも1つの静圧ブレードが、前記静圧タービン・ランナに対する前記流れ方向に平行に測定される、前記静圧ブレードの最も前方の前縁と前記静圧ブレードの最も後方の後縁との間の距離として定義される、コード長を有し、
前記少なくとも1つの静圧ブレードが、前記コード長と前記迎え角θの正弦との積として定義される、縦方向係合範囲(LEE)を有し、
前記少なくとも1つの静圧ブレードに関して、前記LEEを前記翼幅で割った値が、0.75より大きく、
液体が前記静圧タービン・ランナの前記流れ方向に前記静圧タービン・ランナを通過して流れる場合に、圧力勾配が、前記少なくとも1つの静圧ブレードの前記上流面と前記下流面との間にでき、前記上流面の上流圧力が、前記下流面の下流圧力を超え、
それによって、前記圧力勾配が、前記液体の前記流れに実質的に垂直に、前記少なくとも1つの静圧ブレードの前記上流面へ静浮力を加え、
前記静浮力及び前記液体の前記流れが各々、前記少なくとも1つの静圧ブレードへそれぞれの力を加えて、前記液体の前記流れに実質的に垂直に、前記液体の前記流れと交差する前記少なくとも1つの静圧ブレードを駆動して、前記回転可能なシャフトを回転させ、
前記静浮力及び前記液体の前記流れによって駆動される、前記液体の前記流れと交差する前記少なくとも1つの静圧ブレードの運動によって前記液体から抽出される全エネルギーが、前記液体の前記流れのみから利用可能な運動エネルギーの66%に等しい量を超える、
静圧タービン・ランナ。
【請求項2】
各静圧ブレードに関して、前記LEEを前記翼幅で割った前記値が、0.85より大きい、請求項1に記載の静圧タービン・ランナ。
【請求項3】
各静圧ブレードに関して、前記LEEを前記翼幅で割った前記値が、1より大きい、請求項1に記載の静圧タービン・ランナ。
【請求項4】
各静圧ブレードに関して、前記LEEを前記翼幅で割った前記値が、1.5より大きい、請求項1に記載の静圧タービン・ランナ。
【請求項5】
請求項1に記載の静圧タービン・ランナを組み込む、静圧タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、平地を流れる河川及び他の水力発電での適用から水力を発生させるためのタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
流れ込み式水力発電は、古代から人類に知られており、現代においても依然として一般的に使用されている。用語「流れ込み式水力」は、通常は平地を流れる河川で使用される、水流への最小限の干渉で水力を引き出すために使用される水力設備を指す。流れ込み式水力発電の最も単純な方法は、タービン・ランナを流れに浸し、流れの運動エネルギーを水力に変換することに基づく。タービン・ランナは、古代の単純な水車から、今日の精巧な水力発電タービンにおいて見られるものまでに及ぶ。流れ込み式水力は、環境に優しく、費用対効果が高いことで知られている。地表の75%超が平地であるので、平地を流れる河川からの水力発電の潜在的能力は、非常に大きい。
【0003】
平地を流れる河川は、河床に沿うより小さい傾斜によって特徴付けられる。したがって、それらは、エネルギー抽出のための非常に限定される「水頭」を提供する(「水頭」は、放出面レベルからの、設備に投入された液体の上面の高さとして測定される、液圧システムにおける静圧の尺度である)。最新のタービン技術の現在認知される動作効率の上限は、タービンを通過する流れの運動エネルギーの60%未満であると知られている。その動作効率の上限は、ドイツ人物理学者Alfred Betzによって1919年に確立された。それは、理論物理学及び実践による検討の両方に基づく。その立案者の名に由来するベッツの法則は、流れから運動エネルギーを抽出する上限を、エネルギーを抽出する装置を通過する全運動エネルギーの0.593(59.3%)とする、実験結果によって支持される理論物理学の法則である。ベッツの法則は、現在、新たなフロー水力タービンの設計を評価する場合の基準とみなされる。流れのエネルギーの抽出においてタービンの効率を高めることは、タービン設計の主な目的のうちの1つである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、流れの静圧、並びにその運動エネルギーのより小さい一部を主に利用することによって、大規模に水力を引き出すように設計される静圧タービン・ランナを対象とする。理論によって制限されることなく、及びどのような特定の実用も保証することなく、本発明の態様による静圧タービン・ランナが、少なくともいくつかの場合において、動作効率の上限としてベッツの法則によって確立された水力の量を超える量の、水力を引き出すことができると考えられる。
【0005】
そのより高いエネルギー抽出率は、その運動エネルギーを抽出することに注力するのではなく、流れの位置エネルギーを利用することによって達成される。ベッツの法則が、流れの運動エネルギーの抽出の上限を決定するが、一方で、任意の流れはまた、その流れによって保有される運動エネルギーの量にかかわらず抽出され得る、位置エネルギーを保有する。
【0006】
流体の位置エネルギーは、流体の静圧によって具体的に表される(例えば、ベルヌーイの法則)。流れの静圧は、流れ方向に垂直な方向で測定される流体圧力であるが、一方で、動圧は、流れの動きの方向に測定される流れの流体圧力である。
【0007】
本開示による静圧タービン・ランナは、流れからの運動エネルギーの抽出を最大化するのではなく、流体の静圧を最大限利用するために設計される。新規の設計は、現行の流れ込み式タービン・ランナ技術と比較して、流れのより小さい運動エネルギーを水力に変換する。しかしながら、本開示による静圧タービン・ランナは、実質的により大きい位置エネルギーを水力に変換する。結果として、水力に変換されるエネルギーの全体量は、従来の流れ込み式タービン・ランナの設計から利用可能な水力より非常に大きく、どのような特定の実用も保証することなく、ベッツの法則によって定義される変換エネルギーの上限を上回ることが可能であり得る。流れ込み式に関連して、主に変換位置エネルギーである、変換エネルギーの全体量は、タービン・ランナによって係合される流れの運動エネルギーの量を上回り得る。加えて、流れ込み式タービン・ランナと比較して、本開示による静圧タービン・ランナは、エネルギーを抽出するために流れの速さを実質的に低下させない。現行のタービン・ランナは、その運動エネルギーを抽出するために、必然的に水流が遅くなる。
【0008】
一態様では、流れる流体から位置エネルギーを抽出するための方法が、説明される。方法は、少なくとも1つの静圧ブレードを液体に浸すことを含み、その結果、各静圧ブレードが、液体の流れに関して上流面、及び液体の流れに関して下流面を有し、それによって、上流面の上流圧力が下流面の下流圧力を超える、圧力勾配が、各静圧ブレードの上流面と下流面との間にできる。圧力勾配は、液体の流れに実質的に垂直に、各静圧ブレードの上流面へ静浮力を加える。静浮力及び液体の流れは各々、各静圧ブレードへそれぞれの力を加えて、液体の流れに実質的に垂直に、液体の流れと交差する各静圧ブレードを駆動して、各静圧ブレードが機械的に連結される、動力抽出機構の従動シャフトを回転させる。液体の流れと交差する各静圧ブレードを駆動する全体の力に対する静浮力の寄与率は、液体の流れと交差する各静圧ブレードを駆動する全体の力の10パーセント(10%)を超える。
【0009】
好ましくは、流れと交差する各静圧ブレードを駆動する全体の力に対する静浮力の寄与率は、流れと交差する各静圧ブレードを駆動する全体の力の15%を超え、より好ましくは、全体の力に対する静浮力の寄与率は、20%を超え、さらにより好ましくは、30%、なおより好ましくは、40%、なおさらにより好ましくは、50%、なおさらにより一層好ましくは、60%、なおさらにより一層増して好ましくは、70%を超える。全体の力に対する静浮力の寄与率が、80%を超えることが特に好ましく、最も好ましくは、90%を超える。
【0010】
いくつかの実施例では、静浮力及び液体の流れによって駆動される、液体の流れと交差する各静圧ブレードの運動によって液体から抽出される全エネルギーは、液体の流れのみから利用可能な運動エネルギーの60%に等しい量を超える。
【0011】
別の態様では、静圧タービン・ランナは、回転可能なシャフト、及び回転可能なシャフトによって保持される少なくとも1つの静圧ブレードを備え、各静圧ブレードが、静圧タービン・ランナに対する流れ方向に関して上流面、及び静圧タービン・ランナに対する流れ方向に関して下流面を有する。各静圧ブレードは、上流面と静圧タービン・ランナに対する流れ方向との間で測定される迎え角θを有し、迎え角θは、ゼロではなく、35°未満又はそれに等しい(0<θ≦35°)。
【0012】
好ましくは、迎え角θは、30度未満又はそれに等しく(0<θ≦35°)、さらにより好ましくは、25度未満又はそれに等しく(0<θ≦25°)、なおさらにより好ましくは、20度未満又はそれに等しい(0<θ≦20°)。
【0013】
静圧タービンは、上記の静圧タービン・ランナを組み込み得る。
【0014】
さらに別の態様では、静圧タービン・ランナは、回転可能なシャフト、及び回転可能なシャフトによって保持される少なくとも1つの静圧ブレードを備え、各静圧ブレードが、静圧タービン・ランナに対する流れ方向に関して上流面、及び静圧タービン・ランナに対する流れ方向に関して下流面を有する。各静圧ブレードは、静圧タービン・ランナに対する流れ方向に垂直に測定される、シャフトに対して静圧ブレードの最も内側の縁部とシャフトに対して静圧ブレードの最も外側の縁部との間の、翼幅を有する。各静圧ブレードは、上流面と静圧タービン・ランナに対する流れ方向との間で測定される迎え角θを有する。各静圧ブレードは、静圧タービン・ランナに対する流れ方向に平行に測定される、静圧ブレードの最も前方の前縁と静圧ブレードの最も後方の後縁との間の距離として定義される、コード長を有する。各静圧ブレードは、コード長と迎え角θの正弦との積として定義される、縦方向係合範囲(LEE:longitudinal engagement extent)を有し、各静圧ブレードに関して、LEEを翼幅で割った値は、0.75より大きい。
【0015】
好ましくは、LEEを翼幅で割った値は、0.85より大きく、より好ましくは、1より大きい。
【0016】
上記の静圧タービン・ランナが、静圧タービンに組み込まれ得る。
【0017】
さらに、さらなる態様では、流れる流体から位置エネルギーを抽出するための方法が、説明される。方法は、少なくとも1つの静圧ブレードを液体に浸すことを含み、その結果、各静圧ブレードが、液体の流れに関して上流面、及び液体の流れに関して下流面を有し、それによって、上流面の上流圧力が下流面の下流圧力を超える、圧力勾配が、各静圧ブレードの上流面と下流面との間にできる。圧力勾配は、液体の流れに実質的に垂直に、各静圧ブレードの上流面へ静浮力を加える。静浮力及び液体の流れは各々、各静圧ブレードへそれぞれの力を加えて、液体の流れに実質的に垂直に、液体の流れと交差する各静圧ブレードを駆動して、各静圧ブレードが機械的に連結される、動力抽出機構の従動シャフトを回転させる。静浮力及び液体の流れによって駆動される、液体の流れと交差する各静圧ブレードの運動によって液体から抽出される全エネルギーは、液体の流れのみから利用可能な運動エネルギーの60%に等しい量を超える。
【0018】
好ましくは、静浮力及び液体の流れによって駆動される、液体の流れと交差する各静圧ブレードの運動によって液体から抽出される全エネルギーは、液体の流れのみから利用可能な運動エネルギーの66%に等しい量を超える。
【0019】
さらに、さらなる態様では、静圧タービン・ランナは、回転可能なシャフト、及び回転可能なシャフトによって保持される少なくとも1つの静圧ブレードを備える。各静圧ブレードは、静圧タービン・ランナに対する流れ方向に関して上流面、及び静圧タービン・ランナに対する流れ方向に関して下流面を有する。各静圧ブレードは、上流面と静圧タービン・ランナに対する流れ方向との間で測定される、ゼロではない迎え角θを有し、迎え角θは、35°未満又はそれに等しい(0<θ≦35°)。各静圧ブレードは、静圧タービン・ランナに対する流れ方向に垂直に測定される、シャフトに対して静圧ブレードの最も内側の縁部とシャフトに対して静圧ブレードの最も外側の縁部との間の、翼幅を有する。各静圧ブレードは、静圧タービン・ランナに対する流れ方向に平行に測定される、静圧ブレードの最も前方の前縁と静圧ブレードの最も後方の後縁との間の距離として定義される、コード長を有する。各静圧ブレードは、コード長と迎え角θの正弦との積として定義される、縦方向係合範囲(LEE)を有する。各静圧ブレードに関して、LEEを翼幅で割った値は、0.75より大きい。液体が静圧タービン・ランナの流れ方向に静圧タービン・ランナを通過して流れる場合に、上流面の上流圧力が、下流面の下流圧力を超える、圧力勾配が、各静圧ブレードの上流面と下流面との間にできる。圧力勾配は、液体の流れに実質的に垂直に、各静圧ブレードの上流面へ静浮力を加える。静浮力及び液体の流れは各々、各静圧ブレードへそれぞれの力を加えて、液体の流れに実質的に垂直に、液体の流れと交差する各静圧ブレードを駆動して、回転可能なシャフトを回転させる。静浮力及び液体の流れによって駆動される、液体の流れと交差する各静圧ブレードの運動によって液体から抽出される全エネルギーは、液体の流れのみから利用可能な運動エネルギーの66%に等しい量を超える。
【0020】
これら及び他の特徴が、添付の図面を参照する以下の説明から、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1A】本開示の態様による、静圧ブレードの翼形を示す概略図である。
【
図1B】本開示の態様による、静圧ブレードの翼形を示す概略図である。
【
図2A】本開示の態様による、凹型に湾曲したその上流面及び凸型に湾曲したその下流面を有する静圧ブレードを示す図である。
【
図2B】本開示の態様による、凹型に湾曲したその上流面及び凸型に湾曲したその下流面を有し、その後縁にフラップを有する静圧ブレードを示す図である。
【
図2C】本開示の態様による、凹型に湾曲したその上流面及び凸型に湾曲したその下流面を有し、その前縁にフラップを有する静圧ブレードを示す図である。
【
図3A】本開示による、例示的な静圧ブレードの斜視図を示し、所与の静圧ブレードによって発生する水力の量に影響を与えるパラメータを要約する概略説明図である。
【
図3B】本開示による、例示的な静圧ブレードの側面図を示し、所与の静圧ブレードによって発生する水力の量に影響を与えるパラメータを要約する概略説明図である。
【
図4】本開示の態様による、例示的な半没水型静圧タービン・ランナを示す図である。
【
図5】本開示の態様による、例示的な分割型静圧タービン・ランナを示す図である。
【
図6A】本開示の態様による、静圧ブレードの迎え角を変化させるためのある特定の例示的な手法を示す図である。
【
図6B】本開示の態様による、静圧ブレードの迎え角を変化させるためのある特定の例示的な手法を示す図である。
【
図6C】本開示の態様による、静圧ブレードの迎え角を変化させるためのある特定の例示的な手法を示す図である。
【
図7】本開示の態様による、例示的な内包型静圧タービン・ランナを示す図である。
【
図7A】一連の間隔を空けて設けられたリングによって相対位置に固定された、例示的な静圧タービン・ランナを示す図である。
【
図8A】本開示の態様による、静圧ブレードへの様々な改変を示す図である。
【
図8B】本開示の態様による、静圧ブレードへの様々な改変を示す図である。
【
図8C】本開示の態様による、静圧ブレードへの様々な改変を示す図である。
【
図8D】本開示の態様による、静圧ブレードへの様々な改変を示す図である。
【
図8E】本開示の態様による、静圧ブレードへの様々な改変を示す図である。
【
図8F】本開示の態様による、静圧ブレードへの様々な改変を示す図である。
【
図9A】本開示の態様による、静圧タービン・ランナから動力抽出機構へ動力を伝えるための伝達配置の実例を示す図である。
【
図9B】本開示の態様による、静圧タービン・ランナから動力抽出機構へ動力を伝えるための伝達配置の実例を示す図である。
【
図9C】本開示の態様による、静圧タービン・ランナから動力抽出機構へ動力を伝えるための伝達配置の実例を示す図である。
【
図9D】本開示の態様による、静圧タービン・ランナから動力抽出機構へ動力を伝えるための伝達配置の実例を示す図である。
【
図9E】本開示の態様による、静圧タービン・ランナから動力抽出機構へ動力を伝えるための伝達配置の実例を示す図である。
【
図10】本開示の態様による、動力抽出機構が静圧タービン・ランナのシャフト内に設けられる、自律式没水型静圧タービンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の態様に関連する、ある特定の原理の簡潔な理論的概説を提供する目的で、
図1A及び
図1Bをここで参照する。
図1A及び
図1Bは、それぞれ、参照符号100a及び100bによって総体的に指示され、左から右への矢印104によって指示される流れ方向を有する流れる液体102(例えば、平地を流れる河川)に浸される、静圧ブレードの翼形を示す概略図である。用語「静圧ブレード」は、本明細書で使用される場合、流れ104と交差する各静圧ブレード100a、100bを駆動する全体の力の大きな割合が静浮力によって賄われるように、流れる液体の静圧から動力を引き出すために特別に適合される、タービン・ランナのためのブレードを指す。浸されると、静圧ブレード100a、100bは、液体102の流れ104に関して上流面106a、106b、及び液体102の流れ104に関して下流面108a、108bを有する。
図1Aは、上流面106a及び下流面108aが両方とも実質的に平面状である、静圧ブレード100aを示し、一方で、
図1Bは、上流面106bが実質的に平面状であるが、下流面108bが非対称の凸型形状を有する、静圧ブレード100bを示す。
【0023】
図1A及び
図1Bに見られるように、静圧ブレード100a、100bは、上流面106a、106bと流れ方向104との間で測定される、ゼロではない迎え角θを有する。十分に認知された物理法則によると、これらの条件下で、流れ104には、静圧ブレード100a、100bの上流面106a、106bと下流面108a、108bとの間に圧力勾配が発生する。より詳細には、上流面106a、106bの上流圧力が、下流面108a、108bの下流圧力を超え、それによって、圧力勾配が、静圧ブレード100a、100bの上流面106a、106bと下流面108a、108bとの間にできる。その圧力勾配は、圧力勾配と静圧ブレード100a、100bの表面積との積に等しい、矢印Pによって表示される静浮力を加える。したがって、静圧ブレード300の表面積が大きいほど、より大きい静浮力Pが加えられる。静浮力Pは、河川102の流れ104に実質的に垂直に、各静圧ブレード100a、100bの上流面106a、106bへ加えられる。静圧ブレード100a、100bが、回転軸が流れ104に実質的に平行であり、静圧ブレード100a、100bが流れ方向104に移動するのを防ぐ、回転可能な支持体へ固定される場合に、静圧ブレード100a、100bは、その静浮力Pによって押されて、流れと交差して、すなわち流れ方向104に垂直に回転する。この配置によって、例えば、静圧ブレード100a、100bが機械的に連結される動力抽出機構の従動シャフトを回転させることによって、発生する理論的な水力は、静圧ブレード100a、100bに加えられる静浮力Pと、流れ104と交差する静圧ブレード100a、100bの速度との積である。
【0024】
位置エネルギー及び運動エネルギーの両方は、いずれの水力発電配置においても役割を果たす。河川102の流れ104によって静圧ブレード100a、100bへ加えられる力は、流れ104の方向に垂直に作用する流体の静圧(すなわち、静浮力P)、及び流れ104の方向に作用する流体の動圧という、2種の異なる別の物理現象によって発生する。静圧ブレード100a、100bに、ブレード106a、106bの上流面106a、106bに実質的に垂直に作用する、その合力は、河川102の流れ104と交差する静圧ブレード100a、100bを駆動する。静圧ブレード100a、100bが、回転可能な支持体によって、いずれの他の方向にも移動するのを防がれるので、この運動は、河川102の流れ104に実質的に垂直である。
【0025】
従来の流れによって駆動されるタービン・ランナは、一般的に、利用可能な最大限の運動エネルギーを抽出するように設計される。しかしながら、重要なことに及び実際に重大に、本開示による静圧タービン・ランナは、流れと交差する各静圧ブレードを駆動する全体の力の大きな割合が静浮力によって賄われる点で、従来の流れによって駆動されるタービン・ランナと区別される。これにより、水の位置エネルギーを大規模に利用することが可能になる。したがって、「静圧タービン・ランナ」は、流れる液体の静圧から動力を引き出すために適合される迎え角で位置付けられる静圧ブレードを組み込み、その結果、流れと交差する各静圧ブレードを駆動する全体の力の大きな割合が静浮力によって賄われる、タービン・ランナを指す。
【0026】
本開示による静圧タービン・ランナにおいて、流れと交差する各静圧ブレードを駆動する全体の力に対する静浮力の寄与率は、流れと交差する各静圧ブレードを駆動する全体の力の10%を超える。好ましくは、流れと交差する各静圧ブレードを駆動する全体の力に対する静浮力の寄与率は、流れと交差する各静圧ブレードを駆動する全体の力の15%を超え、より好ましくは、全体の力に対する静浮力の寄与率は、20%を超え、さらにより好ましくは、30%、なおより好ましくは、40%、なおさらにより好ましくは、50%、なおさらにより一層好ましくは、60%、なおさらにより一層超えて好ましくは、70%を超える。全体の力に対する静浮力の寄与率が、80%を超えることが特に好ましく、最も好ましくは、90%を超える。静圧ブレードが、動力抽出機構の従動シャフトへ機械的に連結される場合に、いくつかの実施例では、静浮力及び流れからの運動エネルギーの組合せによって駆動される、流れと交差する各静圧ブレードの運動によって抽出される(例えば、河川102から)全エネルギーは、60%に等しい量を超え、好ましくは、流れのみから利用可能な運動エネルギーの66%に等しい量を超える。したがって、いくつかの実施例では、本開示の態様による静圧タービン・ランナによって発生する水力の量は、ベッツの法則によって確立される、従来の流れによって駆動されるタービン・ランナにおける動作効率の上限を超え得る。
【0027】
上述のように、
図1Aは、上流面106a及び下流面108aが両方とも実質的に平面状である、静圧ブレード100aを示し、一方で、
図1Bは、上流面106bが実質的に平面状であるが、下流面108bが非対称の凸型形状を有する、静圧ブレード100bを示す。後者の形状は、航空機翼の翼形に幾分か類似して、流れ104からの圧力勾配の増加をもたらす。したがって、同じ条件下で、
図1Bにおける静圧ブレード100bは、
図1Bに示されるより大きい矢印Pによって指示されるように、
図1Aにおける静圧ブレード100aより大きい静浮力Pを受ける。等速度で流れ104と交差して移動しながら、
図1Bにおける静圧ブレード100bは、
図1Aにおける静圧ブレード100aより大きいエネルギーを発生させる。
【0028】
本開示による静圧ブレードの性能は、いくつかの例示的な実例が
図2Aから
図2Cに示される、その翼形への様々な改変によって、及びさらなる構造的要素の追加によって、さらに向上され得る。
【0029】
図2Aは、その上流面206a及びその下流面208bの両方が湾曲した、静圧ブレード200aを示す。上流面206aが凹型に湾曲し、一方で、下流面208bが凸型に湾曲する。
図2B及び
図2Cは各々、その上流面206b、206cが凹型に湾曲し、その下流面208b、208cが凸型に湾曲し、ブレードの翼形がフラップ212、214によってさらに改良された、静圧ブレード200b、200cを示す。フラップ212、214は、例えば、コードB(
図3Aを参照)を増加させること、曲率を改変することなどによって、静圧ブレード200b、200cの翼形の選択的改変を可能にする、可動式機械装置である。フラップ212、214は、流れの変動する条件に応じて、適した機械的仕組みを通して、展開又は収納されるように、及びそれらの相対角度が変更されるように構成され得る。
図2Bにおける静圧ブレード200bは、その後縁にフラップ212を有し、
図2Cにおける静圧ブレード200cは、その前縁にフラップ214を有する。本開示による静圧ブレードが、前縁及び後縁の両方にフラップを含み得ることもまた企図される。
【0030】
静圧ブレードに要求される最適な曲率を定めることは、多くの技術的要因に、並びに流れの特性に依存し、そのようなことは、本開示によってここで知識を得た当業者が行い得る範疇にある。
【0031】
静圧ブレードの性能は、
図8E及び
図10に示されるように、その縁部に補助翼を追加し、それによって、静圧ブレードの2つの面の間の圧力の漏れを低減することによって、又は
図8Aから
図8D及び
図8Fに示されるように、特定の形状を有する縁部を形成することによって、なおさらに向上され得る。
図2B及び
図2Cに示されるようなフラップもまた、使用され得る。したがって、静圧ブレードには、形成された補助翼、成形された縁部、及び機械的フラップのうちのいずれか1つ、又はこれらの任意の組合せが設けられ得る。用語「補助翼」は、本明細書で使用される場合、その動作上の流体力学的特性を改変する(例えば、改良する)ために適合される、静圧ブレードの縁部における水力工学的要素を指す。用語「フラップ」は、本明細書で使用される場合、その動作上の流体力学的特性を改変する(例えば、改良する)ために適合される、液圧ブレードの前縁又は後縁における可動式展開部を指す。
【0032】
液体の流れ(例えば、平地を流れる河川)に浸され、一方で、静圧ブレードが流れ方向に実質的に垂直にのみ移動するのを可能にする、機器(例えば、回転可能なシャフト)によって支持され場合の、所与の静圧ブレードによって静圧から発生する水力の量に影響を与える様々なパラメータを要約する概略説明図を提示する、
図3A及び
図3Bをここで参照する。
【0033】
図3A及び
図3Bは、上流面306が実質的に平面状であり、下流面308が非対称の凸型形状を有する、静圧ブレード300を示す。
図3Aは斜視図を示し、
図3Bは側面図を示す。静圧ブレード300は、通常、静圧タービン・ランナの一部として、回転可能なシャフトから延びる。
図3A及び
図3Bでは、例示を簡潔にするために、静圧ブレード300のみが示される。
図3A及び
図3Bでは、参照符号Sは、流れ304の方向を指示する矢印304によって表示される流れの速さを表す。
【0034】
図3Aに見られるように、参照符号Aは、静圧ブレード300の翼幅を表示する。静圧ブレード300の翼幅Aは、静圧タービン・ランナ(
図3A及び
図3Bでは示されない)に対する流れ方向304に垂直に測定される、シャフト(
図3A及び
図3Bでは示されない)に対して静圧ブレードの最も内側の縁部316とシャフトに対して静圧ブレード300の最も外側の縁部318との間で測定される寸法である。
【0035】
図3Aを続けて参照して、参照符号Bは、静圧ブレード300のコードを表示する。コード長は、静圧タービン・ランナに対する流れ方向304に実質的に平行に測定される、静圧ブレード300の最も前方の前縁320と静圧ブレード300の最も後方の後縁322との間の距離として定義される。
【0036】
さらに
図3Aを参照して、矢印Pは、静圧ブレード300に流れ304の総合圧力勾配からもたらされる、静浮力を表す。総合圧力勾配は、静圧ブレード300の上流面306及び下流面308における流圧の均衡である。
【0037】
ここで
図3Bを参照して、静圧ブレード300は、静圧ブレード300の上流面306と静圧タービン・ランナ(
図3Bには示されない)に対する流れ方向304との間で測定される、ゼロではない迎え角θを有する。上述のように、本開示による静圧タービン・ランナは、それらが水又は他の流体の位置エネルギーを大規模に利用する点で、従来の流れによって駆動されるタービン・ランナと区別される。迎え角θを適切に選択することは、位置エネルギーが利用され得るように、流れ304と交差する静圧ブレード300を駆動する全体の力の大きな割合が静浮力Pによって賄われるようにすることに、非常に大きく寄与する。これを達成するために、迎え角θは、好ましくは、35度未満又はそれに等しく(0<θ≦35°)、より好ましくは、30度未満又はそれに等しく(0<θ≦30°)、さらにより好ましくは、25度未満又はそれに等しく(0<θ≦25°)、なおさらにより好ましくは、20度未満又はそれに等しい(0<θ≦20°)。現行の流れ込み式タービン・ランナの設計は、通常は、水流の運動エネルギーの抽出を最大化する比較的に大きい迎え角を適用する。本開示の態様による静圧タービン・ランナにおいて、迎え角θは、従来の流れによって駆動されるタービン・ランナにおけるものより大幅に小さい。この比較的に小さい迎え角θは、流れ304の運動エネルギーを抽出するそのようなタービン・ランナの能力を低減するが、同時に、それにより、そのようなタービン・ランナが、圧力勾配からもたらされる静浮力Pによる、流れ304に沿った位置エネルギーのより大部分を抽出することが可能になる。比較的小さい迎え角θにより、各静圧ブレード300が、より大きい迎え角を有する従来の流れによって駆動されるタービン・ランナにおけるものより、非常に長いコードBを有することが可能になる。通常は、各静圧ブレード300の翼幅Aは、河川の深さによって制限されるが、各静圧ブレード300のコードAの長さの範囲への制限はより少ない。コードAの範囲は、河川の長さ及び河川の経路の曲率によってのみ制限される。これにより、さらに、各静圧ブレード300が、比較的に大きい表面積を有することができるようになる。
【0038】
比較的に小さい迎え角θによりまた、比較的に長い縦方向係合範囲(LEE)が可能になり、それにより、流れ304に沿って静圧Pをより良好に利用することができるようになる。縦方向係合範囲は、コード長Bを迎え角θの正弦で掛けた積として定義される。
(1)LEE=B×sinθ
【0039】
縦方向係合範囲は、所与の時点で静圧ブレード300によって係合される、流れ方向に測定される、流れ304の長さとして概念的に説明され得る。
【0040】
従来の流れ込み式タービン・ランナは、短い縦方向係合範囲を有する。タービンのブレードは、流れの運動エネルギーをより良好に抽出するために、より大きい迎え角で位置付けられるので、ブレードのコードとその迎え角の正弦との積である、それらの縦方向係合範囲は、通常は比較的に短い(角度が増加すると、その角度の正弦は減少する)。より短い縦方向係合範囲により、ブレードの全体的抗力が減少し、タービン・ランナがより大きな運動エネルギーを抽出するのを可能にする。同時に、より短い縦方向係合範囲により、ブレードによる抽出のために任意で利用可能な位置エネルギーの量が制限される。
【0041】
利用可能な位置エネルギーの大きな量を抽出することは、静圧ブレードの大きい表面積と組み合わされる、小さい迎え角θを使用することによって達成される。流れ込み式での適用におけるブレードの翼幅は、通常は、河川の深さによって制限されるので、静圧ブレードの表面積を増加させることは、そのコード長Bを増加させることによって達成され得る。小さい迎え角θと長いコード長Bとの組合せは、定義上、より長い縦方向係合範囲を暗に示し、それは、本発明の静圧タービン・ランナのブレード設計の重要な特性である。所与の翼幅を有するブレードに関して、抽出のために任意で利用可能な位置エネルギーは、その縦方向係合範囲に比例する。本開示による静圧ブレードに関して、縦方向係合範囲を翼幅で割った値(LEE/A)は、好ましくは0.75より大きく、より好ましくは、0.85より大きく、さらにより好ましくは、1より大きい。
【0042】
図3Bを続けて参照して、静圧ブレード300に作用する主要な力が、ここで説明される。
【0043】
Fpによって表示される力は、そのコードBに垂直に、静圧ブレード300の表面に作用する全体の力である。全体の力Fpは、静浮力Pと、静圧ブレード300の上流面306に垂直である流体動力学的な力の成分とのベクトル和である。
【0044】
F
xによって表示される力は、静圧ブレード300を流れ方向304に実質的に垂直な運動に制限する支持体(例えば、
図3Bには示されない、その回転軸が流れ方向304に実質的に垂直に位置付けられて、それによって、静圧ブレード300が下流に移動するのを防止する、回転可能なタービン・ランナ・シャフト)によって加えられる。これらのF
p及びF
xのベクトル和は、流れ方向304に実質的に垂直な、Fによって表示される最終的なベクトルの力である。その結果、静圧ブレード300は、流れ方向304に実質的に垂直に、矢印Vによって表示される所与の速度で流れと交差して押される。利用可能な動力は、力Fと速度Vと積である。
【0045】
したがって、本開示による静圧タービン・ランナは、小さい迎え角θで配置される、長いコードBを有する静圧ブレードを利用し、それによって、従来の流れ込み式タービン・ランナの設計より大幅に長い縦方向係合範囲(LEE)を得る。河川の地形が許容する場合に、静圧ブレードのコードBは、空気による動力発生での適用における多くの従来の風車ブレードの翼幅と同等に、100メートル以上延び得る。
【0046】
平地を流れる河川において使用するための、本開示の態様による第1の例示的な静圧タービン・ランナ440を示す、
図4をここで参照する。静圧タービン・ランナ400は、回転可能なシャフト442、及びシャフト442によって保持され、それから半径方向外側に延びる複数の静圧ブレード400を備える。示されるような静圧ブレード400の各々は、流れ方向404に関して、実質的に平面状の上流面406、及び非対称の凸型形状を有する下流面408を有するが、任意の適した形状を有してもよい。静圧ブレード400は、シャフト442へ直接的に又は間接的に取り付けられてもよく、シャフト442は、中空又は中実であってもよく、断面が円形であるか、又は任意の他の適した断面形状を有してもよい。シャフト442は、動力抽出機構(例えば、発電機)の一部を形成するか、又はそれへ機械的に連結され得る。したがって、各静圧ブレード400は、動力抽出機構へ機械的に連結される。好ましくは、静圧ブレード400は、シャフト442を中心に周方向に等しく離隔される。
【0047】
図4に示される静圧タービン・ランナ440は、静圧タービン・ランナ440の下側部分のみが河川446の表面444下に浸され、シャフト442が表面444上にある、半没水型の実施例である。静圧タービン・ランナ440は、静圧ブレード400の翼幅Aに実質的に等しい深さへ浸され、シャフト442と静圧ブレード400との間に延びる機械的連結(例示を簡潔にするために示されない)によって支持される。したがって、静圧ブレード400は、シャフト442から半径方向外側に離隔される。機械的連結は、好ましくは、河川446の表面444上で保たれる。
【0048】
シャフト442は、その軸が流れ方向404に実質的に平行で位置付けられる。静圧ブレード400がシャフト442によって保持されるので、静圧ブレード400は、他の方向(例えば、下流)の運動が防がれて、流れ方向402と交差する、すなわちそれに実質的に垂直な運動に制限される。同時に、シャフト442が回転可能であるので、流れ方向402と交差する静圧ブレード400の運動は、トルク450をシャフト442へ伝え、その軸を中心としたシャフト442の回転をもたらす。トルク450の大きさは、力F(
図3Bを参照)と、シャフト442の軸からのトルクのベクトルの垂直距離との積によって決定される。例示される実施例では、トルク450は、示されるように時計回りである。
【0049】
本開示の態様による分割型静圧タービン・ランナ540を示す、
図5をここで参照する。
図5に示される静圧タービン・ランナ540は、それが、回転可能なシャフト542、及びシャフト542によって保持され、それから半径方向外側に延びる、複数の周方向に等しく離隔される静圧ブレード500を備える点で、
図4に示されたものと同様である。静圧ブレード500は各々、流れ方向504に関して上流面506及び下流面508を有する。上流面506及び下流面508は両方とも、例示を簡易にするために平面状に示されるが、任意の適した形状を有してもよい。前述のように、シャフト542は、動力抽出機構(例えば、発電機)の一部であるか、又はそれへ機械的に連結され得る。分割型静圧タービン・ランナ540において、静圧ブレード500は、一連の縦方向に離隔される分割部分又はモジュール548に配置される、すなわち、静圧ブレード500のセットは、間隙552によって分離されて、シャフト542に縦方向に連なり配置される。シャフト542は、一体式構造のものである場合があり、又はそれ自体が連結される分割部分で形成される場合もある。
図5に示される種類の分割型静圧タービン・ランナ540は、例えば、河川における地形的特徴に適応する、又はシャフト542に対する構造的支持体を収容する一方で、より大きい累積の縦方向係合範囲を提供し得る。
図5に示される種類の分割型静圧タービン・ランナ540に関して、分割型静圧タービン・ランナ540における全縦方向係合範囲は、個別の分割部分548の全ての縦方向係合範囲の合算であり、間隙552の範囲は、縦方向係合範囲に含まれない。静圧タービン・ランナ540は、半没水型又は完全没水型であり得る。
【0050】
隣接する各分割部分548の静圧ブレード500が、互いに対してそれらの半径方向の相対位置でオフセットされるように、様々な分割部分548が配置され得る。分割部分548はまた、それらのそれぞれの静圧ブレード500における迎え角が異なり得る。個別の分割部分548の各々の静圧ブレード500の性能は、同一である必要がなく、個別の分割部分548の各々の静圧ブレード500は、本明細書で述べられるような様々な性能向上手段を適用することによって向上され得る。
【0051】
さらに、本開示による静圧タービン・ランナにおいて、迎え角は、固定的である必要がなく、その代わりに、変化され得る。静圧ブレードの迎え角を変化させるためのある特定の例示的な手法を示す、
図6Aから
図6Cをここで参照する。迎え角を変化させることは、流れの条件における変動、例えば、季節的変動に適応するために有利であり得る。
【0052】
図6Aをまず参照して、例示的な静圧タービン・ランナ640において、静圧ブレード600aの各々は、回転可能なピボット・アーム652を介してシャフト642へ取り付けられる。ピボット・アーム652は、シャフト642の軸から実質的に垂直に、及びシャフト542の翼幅Aに実質的に平行に延びる。ピボット・アーム652をそれらの軸を中心に回転させることによって、矢印654aによって示されるように、流れ方向604に対する静圧ブレード600の迎え角が調整され得る。
【0053】
迎え角が静圧ブレード600を捻ることによって変化され得る配置を例示する、
図6B及び
図6Cをここで参照する。この配置において、静圧ブレード600cは、可撓性材料から製作され、シャフト642によって保持される一組の剛性の星形取付けフレーム656を介して、シャフト642へ取り付けられる。星形取付けフレーム656は各々、複数の外側に延びる棘状突起658を備え、静圧ブレード600cは各々、棘状突起658の対向する組の間に延びる。星形取付けフレーム656のうちの少なくとも1つは、矢印654cによって示されるように、シャフト642の軸を中心に回転可能である。星形取付けフレーム656のうちの一方を他方に対して回転させることによって、静圧ブレード600を形成する可撓性材料が、捻られて、それによって、迎え角を変更することができる。
【0054】
したがって、静圧ブレードの迎え角は、固定されるか又は変更可能であり得る。ランナの静圧ブレードは、例えば、両側平面状、捻り形状(螺旋状)、片側が曲面状で反対側が平面状、又はその曲面が同一又異なり得る両側曲面状であり得る。他の構成もまた可能である。
【0055】
図7は、本開示の態様による、没水型静圧タービン・ランナ740を示す図である。この実施例では、静圧タービン・ランナ740の回転可能なシャフト742は、中空管の形態をとり、複数の静圧ブレード700は、シャフト742によって保持され、管状シャフト742の内面758から内側に延びる。したがって、この実施例では、シャフト742は、静圧ブレード700の全体を一周し、静圧ブレード700と共に回転し、液体は、シャフト742の内部を通って、静圧ブレード700を通過して流れることができる。
【0056】
代替的な実施例では、シャフトは、連続したシャフトではなく、途切れたシャフトであり、構造的一体性が静圧ブレードによって少なくとも部分的にもたらされる。例えば、
図7に示されるような静圧ブレードを囲む連続した管状シャフトの代わりに、
図7Aは、静圧ブレード700aが、静圧ブレード700aと共に回転する、一連の間隔を空けて設けられたリング759によって相対位置に固定される、没水型静圧タービン・ランナ740aを示す。
図7Aは一組のリング759を示すが、他の実施例では、より多数のリングがあり得る。
図7Aに示される静圧ブレード700Aは、
図4に示される静圧ブレード400と形状において同様であるが、任意の適した形状を有してもよい。静圧ブレード700aの外縁760aは、リング759へ連結され、静圧ブレード700aの内縁762aは、互いに半径方向に離隔される。
【0057】
別の実施例では、静圧ブレードが中央シャフトから外側に延びる、静圧タービン・ランナは、シャフトの直径と静圧ブレードの翼幅との合計よりわずかに大きい直径を有する、固定された管によって囲まれ、環状の間隙を作り出し、静圧タービン・ランナが固定された管の内側で回転することが可能になり得る。これにより、本開示の態様による静圧タービン・ランナを、その中の液体の流れを動力として利用するように、パイプ又はトンネル内に設置することができるようになる。
【0058】
図8Aから
図8Fは、本開示の態様による、静圧ブレードへの様々な改変を示し、特定の条件下で性能を向上させるための位置的最適化を表す。改変は、例示の目的で個別に示されるが、2つ以上の改変が、単一の静圧ブレードに組み込まれ得る。流れ方向が、矢印804によって示される。
【0059】
図8Aは、静圧ブレード800aの外縁860a(中央シャフト842aから最も遠いもの)が、その内縁862a(シャフト842aに最も近いもの)より長い、静圧タービン・ランナ840aを示す。これにより、傾斜した前縁864aがもたらされる。
図8Bは、静圧ブレード800bの外縁860bが、その内縁862bより長いが、前縁864bが、中央シャフト842bから外側に凹型に湾曲する、類似の静圧タービン・ランナ840bを示す。
図8Cは、静圧ブレード800cの外縁860cが、内縁862cより短く、また、傾斜した前縁864cをもたらすが、
図8Aに示されたものと反対方向である、静圧タービン・ランナ840cを示す。
図8Dは、前縁864dが、静圧ブレード800dの外縁860dに向かって中央シャフト842dから外側に凸型に湾曲する、静圧タービン・ランナ840dを示す。各場合において、後縁866a、866b、866c、866dは、シャフト842a、842b、842c、842dに垂直に保たれる。加えて又は代わりに、後縁の翼形は、同じ又は異なる角度若しくは曲率を用いて、前縁について示されたものと同様の方式で変更され得る。
【0060】
図8Eは、先が細くなった管状補助翼870が、静圧ブレード800eの外縁860eに備え付けられ、静圧ブレード800eの前縁864e及び後縁866eを超えて延びる、静圧タービン・ランナ840eを示す。
【0061】
図8Fは、静圧ブレード800fの後縁866f及び前縁864fの両方が、シャフト842fに実質的に垂直であるが、後縁866fが前縁864fより長い、静圧タービン・ランナ840fを示す。これにより、シャフト864fに実質的に平行ではなく、角度がつけられた、静圧ブレード800fの直線状の外縁860fがもたらされる。この構成は、静圧タービン・ランナ840fが、一方の端部が他方より高く上げられて流れに浸される場合(以下で説明される
図9Cを参照)に有用である。
【0062】
上述のように、いくつかの実施例では、静圧ブレードのコードBは、100メートル以上延びることができ、翼幅Aもまた、大きくなり得る。静圧タービン・ランナが著しく大きいこと、及びそれが水又は他の液体の表面下に少なくとも部分的に沈められるということを理由に、動力抽出機構(例えば、発電機)は、表面上に位置付けられ得る。例えば、静圧タービン・ランナが河川に設けられる場合に、動力抽出機構は、浮遊式バージ(例えば、河岸へ係留された)に位置付けられるか、又は河床に固定された支持体へ取り付けられるか、又は河岸に設けられ得る。固定された支持体の場合に、機械装置が、静圧タービン・ランナの高さを調整して、水位の季節的変化に適応するために使用され得る。
【0063】
静圧タービン・ランナの回転によって発生する動力は、動力抽出機構へ伝えられる必要がある。動力抽出機構の好ましい位置は、静圧タービン・ランナの下流側であるが、動力抽出機構の上流位置もまた企図される。
【0064】
図9Aから
図9Cは、静圧タービン・ランナから発電機などの動力抽出機構へ動力を伝えるための伝達配置のいくつかの非限定な実例を示す。
【0065】
図9Aは、伝達ギヤボックス972を介して動力抽出機構970aへ連結される、静圧タービン・ランナ940aを示す。類似の配置は、ギヤボックス972の代わりに、チェーン又はベルト伝達ケースを使用し得る。例示される実施例では、ギヤボックス972は、静圧タービン・ランナ940aのシャフト942a及び流れ方向904aへ実質的に垂直であるが、これは厳密には必須ではない。
【0066】
図9Bは、傾斜して繋げられる駆動シャフト974を通した直接的伝達を介して、動力抽出機構970bへ連結される静圧タービン・ランナ940bを示す。他の実施例では、繋げられる駆動シャフトが2つの平角伝達トランスミッション・ギヤを使用する場合に、動力抽出機構ユニットは、静圧タービン・ランナの端部上に、直接的に位置付けられ得る。
【0067】
図9Cは、シャフト942cが水面944に対して傾斜される、静圧タービン・ランナ940cを示す。この傾斜にもかかわらず、シャフト942cは、水平面で測定される場合に、水流方向904に平行に維持される(すなわち、水面944へのシャフト942cの垂直投影は、流れ方向904に平行である)。シャフト942cは、静圧ブレード900cの十分に下流に延び、水面944上に置かれる動力抽出機構970cへ直接的に連結され得る。
図9Cに示される実施例では、静圧ブレード900は、好ましくは、後縁966が前縁964より長い、台形の形態を有し、その結果、最も下側の静圧ブレード900cの外縁960cは、河床に実質的に平行である。
【0068】
図9D及び
図9Eは各々、静圧ブレード700aが、静圧ブレード700aと共に回転する、一連の間隔を空けて設けられたリング759によって相対位置に固定される、
図7Aに示された種類の静圧タービン・ランナ740aからトルクを伝達するための配置を示す。
図9Dでは、リング759のうちの下流のものは、動力抽出機構へトルクを伝達するための別のギヤ982と嵌合する、ギヤ面980を形成する。
図9Eでは、ベルト984が、トルクを伝達するために使用されるが、チェーンも同様に使用され得る。
【0069】
したがって、静圧タービン・ランナは、任意の適したトルクを伝える装置を通して動力抽出機構器へ連結され得、よって、
図9Aから
図9Eは、本開示の態様による静圧タービン・ランナを組み込むタービンの様々な実施例を示す。静圧タービン・ランナから動力抽出機構への動力の水力工学的伝達もまた、企図される。よって、用語「静圧タービン」は、流れる液体の静圧から動力を引き出すために適合される静圧タービン・ランナを組み込み、その結果、流れと交差する各静圧ブレードを駆動する全体の力の大きな割合が静浮力によって賄われる、タービンを指す。
【0070】
上記の図に示される例示的な静圧タービン・ランナは各々、6つの静圧ブレードを有するが、これは単なる例示であり、本開示による静圧タービン・ランナは、設置法に応じてより多い又はより少ない静圧ブレードを有し得る。ブレードの数は、静圧ブレードの翼幅を収容し、流体の流れの速さに適応するために利用可能な空間などの、設計パラメータによって影響を受ける。
【0071】
図10は、動力抽出機構1070が静圧タービン・ランナ1040のシャフト1042内に設けられる、自律式没水型静圧タービン1080を示す。流れ方向が、矢印1004によって示される。シャフト1042は、流線形端部キャップ1082(例えば、円錐形又は類似のもの)を用いて、動力抽出機構1070を収容するために拡大される。端部キャップ1082は、バージなどから垂れ下がる、例えば河床上などの、支持体へ固定され得る。シャフト1042は、端部キャップ1082に対して回転することができ、動力抽出機構1070は、回転子として機能する、シャフト1042内に設けられる固定子を備える。この配置は、適した工学的改変を用いて逆転され得る。その後、電気ケーブルにより、動力抽出機構1070を、例えば、電力網へ接続することができる。示される実施例では、静圧タービン・ランナ1040の3つの静圧ブレード1000は、静圧ブレード1000の上流側1006と下流側1008との間の静圧の漏れを制限するために、それらの外縁1060に補助翼1084を含む。補助翼は、条件に応じて様々な形状及び形態を有し得る。別の実施例では、動力抽出機構は、シャフトに組み込まれるのではなく、静圧タービン・ランナの端部へ直接的に連結され得る。
【0072】
したがって、静圧タービン・ランナは、全体的に又は部分的に流面下に沈められるが、動力抽出機構は、流面上に固定されるか、又は流面下に沈められ得る。
【0073】
ある特定の例示的な実施例が、実例として説明されてきた。いくつかの変形及び改変が、請求項において定義される本発明の範囲から逸脱することなく行われ得ることが、当業者には明らかであろう。
【0074】
用語説明
以下の用語説明は、参照のために便宜的にのみ提供される。
「補助翼」は、その動作上の流体力学的特性を改変する(例えば、改良する)ために適合される、静圧ブレードの縁部における水力工学的要素を指す。
「迎え角」(θ)は、静圧ブレードの上流面と静圧タービン・ランナに対する流れ方向との間で測定される。
ベッツの法則は、流れから運動エネルギーを抽出する上限を、エネルギーを抽出する装置を通過する全運動エネルギーの0.593(59.3%)とする、実験結果によって支持される理論物理学の法則である。
「コード」及び「コード長」は、静圧タービン・ランナに対する流れ方向に実質的に平行に測定される、静圧ブレードの最も前方の前縁と静圧ブレードの最も後方の後縁との間の距離として定義される。
「フラップ」は、その動作上の流体力学的特性を改変する(例えば、改良する)ために適合される、液圧ブレードの前縁又は後縁における可動式展開部を指す。
「水頭」は、放出面レベルからの、設備に投入された液体の上面の高さとして測定される、液圧システムにおける静圧の尺度である。
流れの「動圧」は、流れの動きの方向に測定される流れの流体圧力である。
流れの「静圧」は、流れ方向に垂直な方向で測定される流体圧力である。
「静圧ブレード」は、流れと交差する各静圧ブレードを駆動する全体の力の大きな割合が静浮力によって賄われるように、流れる液体の静圧から動力を引き出すために特別に適合される、タービン・ランナのためのブレードを指す。
「静圧タービン」は、流れる液体の静圧から動力を引き出すために適合される静圧タービン・ランナを組み込み、その結果、流れと交差する各静圧ブレードを駆動する全体の力の大きな割合が静浮力によって賄われる、タービンを指す。
「静圧タービン・ランナ」は、流れる液体の静圧から動力を引き出すために適合される迎え角で位置付けられる静圧ブレードを組み込み、その結果、流れと交差する各静圧ブレードを駆動する全体の力の大きな割合が静浮力によって賄われる、タービン・ランナを指す。
「縦方向係合範囲」又は「LEE」は、コード長を迎え角の正弦で掛けた積として定義される。
「流れ込み式水力」は、通常は平地を流れる河川で使用される、水流への最小限の干渉で水力を引き出すために使用される水力設備を指す。
静圧ブレードの「翼幅」は、静圧タービン・ランナに対する流れ方向に垂直に測定される、シャフトに対して静圧ブレードの最も内側の縁部とシャフトに対して静圧ブレードの最も外側の縁部との間で測定される寸法である。
【国際調査報告】