(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】アルロースを含有する焼成製品用組成物
(51)【国際特許分類】
A21D 2/18 20060101AFI20221215BHJP
A21D 10/00 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D10/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523806
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 US2020056029
(87)【国際公開番号】W WO2021080871
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512035620
【氏名又は名称】コーンプロダクツ ディベロップメント インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】アイバーソン-バート、クレア
(72)【発明者】
【氏名】イコズ、ディデム
(72)【発明者】
【氏名】パーク、マシュー
【テーマコード(参考)】
4B032
【Fターム(参考)】
4B032DB01
4B032DB05
4B032DB06
4B032DB13
4B032DB22
4B032DK01
4B032DK03
4B032DK05
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4B032DK24
4B032DK31
4B032DK32
4B032DK47
4B032DL20
(57)【要約】
アルロースと膨張酸とを含有するアルロース含有焼成製品用組成物、及びそれから作製される焼成製品、並びにそのような組成物及び焼成製品を製造する方法が、本明細書において記載され、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有組成物は、それから作製されたアルロース含有焼成製品中のアルロースによって生じる褐変を低減させる。本明細書に記載のアルロース含有焼成製品は、アルロースが、全砂糖焼成製品に含有される少なくとも一部の栄養甘味料(例えば、砂糖)を置換する結果として、添加される砂糖が低減され、カロリー量が低減されており、有益なことに、アルロースを含ませた結果起こり得る色及び/又は風味の望ましくない変化に対処しつつ、かつテクスチャ特性に悪影響を及ぼすことがない。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルロース含有焼成製品用組成物であって、
(v)約1重量%~約25重量%のアルロース(乾燥基準)と、
(vi)約0.3重量%~約3重量%の膨張酸であって、前記膨張酸は、酒石英、クエン酸、グルコノデルタラクトン、リン酸一カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、リン酸アルミニウムナトリウム、又はそれらの混合物である、膨張酸と、
(vii)前記アルロースによって少なくとも部分的に置換される栄養甘味料と、
(viii)粉、卵及び/又は卵由来の製品、牛乳及び/又は他の乳製品若しくは非乳製品、油及び/又は脂肪を含む、少なくとも3つの焼成用材料の組み合わせと、を含む、アルロース含有焼成製品用組成物。
【請求項2】
前記アルロースは、少なくとも約85%のアルロース並びに約15%の他の単糖類及び/若しくは二糖類、少なくとも約90%のアルロース並びに約10%の他の単糖類及び/若しくは二糖類、又は少なくとも約95%のアルロース並びに約5%の他の単糖類及び/若しくは二糖類を含む液体シロップである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アルロースは、乾燥基準で、前記組成物の約2重量%~約25重量%、約5重量%~約15重量%、又は約10重量%~約15重量%を構成する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記膨張酸は、(i)酒石英であり、前記組成物の約0.5重量%~約2.5重量%を構成する、(ii)グルコノデルタラクトンであり、前記組成物の約0.3重量%~約1.8重量%、若しくは約0.85重量%~約1.8重量%を構成する、(iii)クエン酸であり、前記組成物の約0.5重量%~約2重量%を構成する、(iv)リン酸一カルシウムであり、前記組成物の約0.31重量%~約0.85重量%を構成する、(v)酸性ピロリン酸ナトリウムであり、前記組成物の約0.3重量%~約1.8重量%を構成する、又は(vi)リン酸アルミニウムナトリウムであり、前記組成物の約0.3重量%~約1.8重量%を構成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
膨張剤を更に含み、前記膨張剤は、前記組成物の約0.5重量%~約1.5重量%の量の重曹である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記栄養甘味料は、スクロースである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記焼成用材料は、前記組成物の約30重量%~約70重量%を構成する、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
塩、水、他のデンプン質成分、非栄養甘味料、部分栄養甘味料、アルコール、風味付けリカー、安定化剤、増量剤、着色剤、風味剤、スパイス、果物、果物由来製品、野菜、野菜由来製品、豆果、豆果由来製品、堅果、堅果由来製品、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、乳化剤、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、及びミネラルから選択される1つ以上の追加的焼成用材料を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、全砂糖焼成製品用組成物と比較して、少なくとも10%の砂糖低減、20%の砂糖低減、25%の砂糖低減、30%の砂糖低減、40%の砂糖低減、50%の砂糖低減、75%の砂糖低減、又は少なくとも100%の砂糖低減を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は、全砂糖焼成製品用組成物と比較して、少なくとも1%のカロリー低減、少なくとも5%のカロリー低減、少なくとも10%のカロリー低減、少なくとも15%のカロリー低減、少なくとも20%のカロリー低減、又は少なくとも25%のカロリー低減を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物は、ケーキ用組成物、クッキー用組成物、ロールケーキ用組成物、パイ用組成物、ペイストリー用組成物、タルト用組成物、トルテ用組成物、菓子パン用組成物、甘味ビスケット用組成物、又はマフィン用組成物である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、ケーキ用組成物である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物を含むアルロース含有焼成製品であって、前記アルロース含有焼成製品は、(i)最小で-13の「デルタL」を有するL色測定値であって、「L」は、黒から白への色の変化を表す、L色測定値、(ii)最大で+6.5である「デルタa」及び/若しくは最大で+2.5である「デルタb」のうちの少なくとも1つを有する、「a」色測定値及び/若しくは「b」色測定値であって、前記「デルタ」測定値は、試料値から全砂糖対照値を引いた値であり、「a」は、緑から赤への色の変化を表し、「b」は、青から黄への色の変化を表す、「a」色測定値及び/若しくは「b」色測定値、又は(iii)(i)及び(ii)の組み合わせ、によって測定される際に、栄養甘味料を含有する組成物を含む全砂糖焼成製品と同等の褐変を有する、アルロース含有焼成製品。
【請求項14】
栄養甘味料を含有する組成物を含む全砂糖焼成製品と同等の褐変を有するアルロース含有焼成製品を生成するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
アルロース含有焼成製品の前記褐変を低減するための方法であって、
(i)焼成製品用組成物中の栄養甘味料の少なくとも一部を、アルロースで置換することと、
(ii)酒石英、クエン酸、グルコノデルタラクトン、リン酸一カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、及びリン酸アルミニウムナトリウムから選択される1つ以上の膨張酸を、前記組成物に添加することと、
(iii)前記組成物を焼成することと、
(iv)前記アルロース含有焼成製品を得ることと、を含む、方法。
【請求項16】
前記アルロース含有焼成製品は、(i)最小で-13の「デルタL」を有するL色測定値であって、「L」は、黒から白への色の変化を表す、L色測定値、(ii)最大値が+6.5である「デルタa(」及び/若しくは最大値が+2.5である「デルタb」のうちの少なくとも1つを有する、「a」色測定値及び/若しくは「b」色測定値であって、前記「デルタ」測定値は、試料値から全砂糖対照値を引いた値であり、「a」は、緑から赤への色の変化を表し、「b」は、青から黄への色の変化を表す、「a」色測定値及び/若しくは「b」色測定値、又は(iii)(i)及び(ii)の組み合わせ、によって測定される際に、栄養甘味料を含有する組成物を含む全砂糖焼成製品と同等の褐変を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アルロース含有焼成製品は、ケーキ、クッキー、ロールケーキ、パイ、ペイストリー、タルト、トルテ、菓子パン、甘味ビスケット、又はマフィンである、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記アルロース含有焼成製品は、ケーキである、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
アルロースと、酒石英、クエン酸、及びグルコノデルタラクトンから選択される1つ以上の膨張酸と、を含む食品用材料系。
【請求項20】
栄養甘味料、部分栄養甘味料、及び/又は非栄養甘味料、並びに任意選択的に重曹を更に含む、請求項19に記載の系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年10月22日出願の米国特許仮出願第62/924669号の優先権を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
アルロース含有焼成製品用組成物及びそれから作製されたアルロース含有焼成製品、並びにそのような組成物及び焼成製品を作製する方法が、本明細書に記載されている。より具体的には、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物は、アルロース及び膨張酸を含み、そのような組成物で作製されたアルロース含有焼成製品は、アルロースによって引き起こされる過剰な褐変の低減を示す。また、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物を含み、全砂糖焼成製品用組成物で達成された褐変度と同等の褐変度も含む、アルロース含有焼成製品が、本明細書に記載されている。有益なことには、アルロース含有焼成製品は、アルロースが全砂糖焼成製品に含有される栄養甘味料(例えば、砂糖)の少なくとも一部を置換する結果として、添加される砂糖の量を低減させ、かつカロリー量を低減させた。本明細書に記載されるアルロース含有焼成製品用組成物に膨張酸を含ませることによって、褐色化が一層進展したり、褐変による風味が強まったりするなどの、全砂糖焼成製品用組成物に含有される栄養甘味料(例えば、砂糖)の少なくとも一部をアルロースで置換した結果生じる配合上の課題が克服される。膨張酸はまた、予想外なことに、褐変反応を低減する。
【0003】
栄養甘味料(例えば、スクロース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ(高フルクトースコーンシロップを含む)、ハチミツ、アガベシロップなど)は、例えば、焼成製品などの食品のカロリー量に寄与することがよく知られている。天然甘味料及び合成甘味料(すなわち、人工甘味料)は、所望の味特性、加えて、著しくカロリー量が低い他の機能的性質を提供するため、栄養甘味料の代替物である。そのような甘味料としては、強力甘味料又は高甘味度甘味料(例えば、スクラロース、ステビアなど)、糖アルコール又はポリオール(例えば、キシリトール、ソルビトールなど)、希少糖などが挙げられ得る。アルロースは、例えば、天然には、レーズン及びイチジクにおいて、非常に少量だけ見出されるため、希少糖の一例とされる。アルロースは、D-アルロース、プシコース、又はD-プシコースとも呼ばれ、スクロースのカロリーの10%のみのカロリー(約0.4kcal/g)でありながら、スクロースの甘味の約70%の甘味を提供する。
【0004】
カロリーの低減と、全砂糖量/添加砂糖量の低減との両方を実現するために、種々の食品製品、特に甘味焼成製品において、栄養甘味料の摂取量を減らすことが、現在継続して好まれている。したがって、甘味焼成製品の組成物を含む、食品用組成物中の代替甘味料の使用が増加してきている。アルロースは、様々な食品及び飲料製品に配合されている甘味料の一例である。例えば、多量のアルロースを含有する食品製品が作製され、栄養甘味料により従来付与されてきた、所望のかさ高さ、甘み、及び機能的性質を示す食品製品を提供しようと試みられてきた。例えば、国際公開第2015/075473号を参照のこと。製パン用途では、アルロースは、高温の焼成条件下で焼成された甘味焼成製品に典型的であるメイラード褐変反応に寄与し、スクロースと比較して、より濃い褐色とより強い褐変による風味とを生成する。
【0005】
栄養甘味料をアルロースで置換することに関連する甘味焼成製品の色、テクスチャ、及び/又は風味の変化を克服するための解決法は、まだ特定されてはいない。米国特許出願公開第2016/032463号は、アルロース含有焼成製品が、最適化される必要のある物理的特性、例えば、中身部分の構造、褐変度、保持水分量などを含む特性の変化を示すことを開示している。しかしながら、米国特許出願公開第2016/032463号は、これらの物理的特性のうちのいずれかを克服するため解決策として、全ての成分の量をできるだけ変更し、かつ潜在的に焼成条件を変更するという解決策を超えるものを一つとして提供してはいない。結果として、米国特許出願公開第2016/032463号は単に、アルロース含有砂糖低減焼成製品用組成物から作製した甘味焼成製品に、消費者及び食品製造業者が求める物理的特性のうちの1つ以上を示すこともできないアルロース含有砂糖削減焼成製品用組成物を提供しているに過ぎない。
【0006】
したがって、アルロース含有焼成製品用組成物と、そのような組成物から作製されたアルロース含有焼成製品と、組成物及びそれからの焼成製品を製造する方法と、が本明細書において開示され、そのような組成物は、アルロースを含有する甘味焼成製品において一般的に見られる過剰な褐変を低減する使用量レベルで、アルロースを膨張酸と組み合わせて含有する(すなわち、全砂糖焼成製品と同等の褐変を有する甘味焼成製品を提供する)。アルロースに起因する焼成に関する諸課題を克服し、その一方で、許容可能な製品品質を達成し(例えば、バランスが崩れたりしない)、また有益なことに、全砂糖焼成製品用組成物から作製された全砂糖焼成製品と比較して、砂糖含有量及びカロリー量を低減することが望まれる。
【発明の概要】
【0007】
一実施形態は、アルロース含有焼成製品用組成物を対象とし、その組成物は、それから生成されたアルロース含有焼成製品の味、構造、及び/又はテクスチャに悪影響を及ぼすことなく、アルロースが褐色の色及び褐変による風味に対して及ぼす様々な影響を克服する。別の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物は、約1重量%~約25重量%のアルロース(乾燥基準)と、約0.3重量%~約3重量%の膨張酸であって、膨張酸は、酒石英、クエン酸、グルコノデルタラクトン、リン酸一カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、リン酸アルミニウムナトリウム、又はそれらの混合物である、膨張酸と、アルロースによって少なくとも部分的に置換される栄養甘味料と、粉、卵及び/又は卵由来製品、牛乳及び/又は他の乳製品若しくは非乳製品、並びに油及び/又は脂肪を含む少なくとも3つの焼成用材料の組み合わせと、を含む。また別の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物を含む1つ以上のアルロース含有焼成製品は、(i)最低で-13の「デルタL」を有するL色測定値であって、「L」は、黒から白への色の変化を表す、L色測定値、(ii)最大で+6.5である「デルタa」及び/若しくは最大で+2.5である「デルタb」のうちの少なくとも1つを有する、「a」及び/若しくは「b」色測定値であって、「デルタ」測定値は、試料値から全砂糖対照値を引いた値であり、「a」は、緑から赤への色の変化を表し、「b」は、青から黄への色の変化を表す、「a」色測定値及び/若しくは「b」色測定値、又は(iii)(i)及び(ii)の組み合わせ、によって測定される際に、栄養甘味料を含有する組成物を含む全砂糖焼成製品と同等の褐変を有する。
【0008】
また更なる実施形態は、栄養甘味料を含有する組成物を含む全砂糖焼成製品と同等の褐変を有するアルロース含有焼成製品を生成するために、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物を使用することを対象とする。
【0009】
なおもまた更なる実施形態は、アルロース含有焼成製品の褐変を低減するための方法を対象とし、その方法は、(i)焼成製品用組成物中の栄養甘味料の少なくとも一部をアルロースで置換することと、(ii)組成物に、酒石英、クエン酸、グルコノデルタラクトン、リン酸一カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、及びリン酸アルミニウムナトリウムから選択される1つ以上の膨張酸を添加することと、組成物を焼成することと、アルロース含有焼成製品を得ることと、を含む。なおも更なる実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の方法は、(i)最低で-13の「デルタL」を有するL色測定値であって、「L」は、黒から白への色の変化を表す、L色測定値、(ii)最大値が+6.5である「デルタa」及び/若しくは最大値が+2.5である「デルタb」のうちの少なくとも1つを有する、「a」及び/若しくは「b」色測定値であって、「デルタ」測定値は、試料値から全砂糖対照値を引いた値であり、「a」は、緑から赤への色の変化を表し、「b」は、青から黄への色の変化を表す、「a」色測定値及び/若しくは「b」色測定値、又は(iii)(i)及び(ii)の組み合わせ、によって測定される際に、栄養甘味料を含有する組成物を含む全砂糖焼成製品と同等の褐変を有する、アルロース含有焼成製品を生成する。
【0010】
更に別の実施形態は、アルロースと、酒石英、クエン酸、グルコノデルタラクトン、リン酸一カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、及びリン酸アルミニウムナトリウムから選択される1つ以上の膨張酸と、を含む、食品材料系を対象とする。また更なる実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の食品材料系は、栄養甘味料、部分栄養甘味料、及び/又は非栄養甘味料を更に含む。
【0011】
本発明の種々の実施形態が、図面を参照して詳細に説明され、複数の図面を通して、同一の参照番号は同一の部分を表す。そして、複数の実施形態が本明細書で開示されるものの、更に他の実施形態が、例示的実施形態を示し説明する以下の詳細の説明から、当業者には明らかとなろう。結果的に、種々の実施形態への参照は、本発明の範囲を限定するものではない。更に、本明細書で示す図は、本発明に従った種々の実施形態の限定ではなく、本発明の例示的図解として示される。したがって、図面及び詳細の説明は、限定的な性質のものではなく、例示的な性質のものと見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1A~
図1Eは、酒石英を含有する完成したケーキの断面の写真であり、対照(
図1A)、陰性対照(
図1B)、並びに対照における範囲を超えるレベルで、0.85%(
図1C)、1.2%(
図1D)、及び1.8%(
図1E)の酒石英を含むものである。
【
図2】
図2A~
図2Dは、完成したケーキの断面の写真であり、対照(
図2A)、陰性対照(
図2B)、並びに0.57%のクエン酸を元の重曹量(0.69%)と共に含むもの(
図2C)、及び0.57%のクエン酸をより多量の重曹(1.00%)と共に含むもの(
図2D)である。
【
図4】
図4A~
図4Eは、完成したケーキの断面の写真であり、対照(
図4A)、陰性対照(
図4B)、並びにクエン酸を増加したレベルの重曹と共に含むもの(
図4C)、酒石英を含むもの(
図4D)、及びグルコノ-デルタラクトンを含むもの(
図4E)である。
【
図5】は、実施例4で評価した、色の測定値としての、皮部分及び中身部分の平均L
*a
*b
*値のグラフである。
【
図6】実施例4で評価した、ケーキの平均高さのグラフである。
【
図7】実施例4で評価した、ケーキ中平均水分量のグラフである。
【
図8】実施例4で評価した、ケーキ中平均水分活性のグラフである。
【
図9】
図9A~
図9Eは、実施例5で評価した、酒石英を含む完成したケーキの断面の写真であり、対照(
図9A)、陰性対照(
図9B)、並びに対照の範囲を超えるレベルで、0.85%(
図9C)、1.2%(
図9D)、及び1.8%(
図9E)の酒石英を含むものである。
【
図10】実施例5で評価した、表13のL
*a
*b
*の平均値のグラフである。
【
図11】実施例5で評価した、ケーキの平均高さのグラフである。
【
図12】実施例5で評価した、ケーキ中平均水分量のグラフである。
【
図13】実施例5で評価した、ケーキ中平均水分活性のグラフである。
【
図15】実施例6で評価した、表16のL
*a
*b
*の平均値のグラフである。
【
図16】実施例6で評価した、ケーキの平均高さのグラフである。
【
図17】実施例6で評価した、ケーキ中平均水分量のグラフである。
【
図18】実施例6で評価した、ケーキ中平均水分活性のグラフである。
【
図19】実施例7で評価した、対照及び陰性対照と比較した、様々な膨張酸を含有する完成したケーキの断面の写真である。
【
図22】実施例9で評価した、表28のL
*a
*b
*の平均値のグラフである。
【
図23】実施例9で評価した、ケーキの平均高さのグラフである。
【
図24】実施例9で評価した、ケーキ中平均水分量のグラフである。
【
図25】実施例9で評価した、ケーキ中平均水分活性のグラフである。
【
図27】実施例10で評価した、表35のL
*a
*b
*の平均値のグラフである。
【
図28】実施例10で評価した、ケーキの平均高さのグラフである。
【
図29】実施例10で評価した、ケーキ中平均水分量のグラフである。
【
図30】実施例10で評価した、ケーキ中平均水分活性のグラフである。
【0013】
本明細書中で使用される全ての専門用語は、特定の実施形態を記載する目的のためだけのものであり、任意の様式又は範囲に限定するものとは意図されない。例えば、本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確にそうでないことを示さない限り、複数を含むことができる。更に、全ての単位、接頭辞、及び記号は、SIが認可したその形式で記載することができる。本明細書で引用される数値範囲は、画定される範囲内の数を含む。本開示全体を通して、種々の態様が範囲の形式で提示される。範囲の形式での記載は単に、便宜上、かつ簡便化のためと理解されるべきであり、本発明の範囲の、柔軟性を欠く限定と解釈してはならない。したがって、範囲の記載は、具体的に開示された起こり得る全ての部分範囲、及びその範囲内の個別の数値を有するものと考えるべきである(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。
【0014】
本明細書に記載の実施形態をより容易に理解するために、特定の用語は、以下に記載されるように最初に定義される。別様に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明の実施形態が関連する当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載するものに類似する、それから改変された、又はそれに等価な多くの方法及び材料を、実施形態の実施において、過度な実験をすることなく使用することができる。
【0015】
本明細書で使用する場合、「約」という用語は、例えば、典型的な測定及び取扱い操作を通して、これらの操作における故意ではない誤りを通して、成分の製造、源、又は純度の違いなどを通して生じる可能性がある、数量の変化を意味する。「約」という用語による修飾に関わらず、特許請求の範囲には量の等価物が含まれる。
【0016】
本明細書で使用する場合、「重量%(「weight percent」、「wt-%」、「percent by weight」、「% by weight」)という用語、及びこれらの変形形態とは、組成物の総重量で除して100を掛けた、物質の重量としての、物質の濃度を意味する。本明細書で使用する場合、「パーセント」、「%」などは、「重量%(「weight percent」、「wt-%」)」などと同義であることが意図されると理解される。
【0017】
方法及び組成物は、本明細書に記載する構成成分及び成分、加えて、他の成分を含むことができる、これらから本質的になることができる、又はこれらからなることができる。本明細書で使用する場合、「から本質的になる」とは、方法及び組成物が追加の工程、構成成分、又は成分を、当該追加の工程、構成成分、又は成分が、特許請求した方法及び組成物の基本的、かつ新規の特徴を実質的に変更しない場合に限り、含むことができることを意味する。
【0018】
アルロース含有焼成製品用組成物
アルロースを、スクロースなどの栄養甘味料の完全置換又は部分的置換として含む、1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物が、本明細書に記載されている。一実施形態は、アルロース含有焼成製品用組成物を対象とし、その組成物は、アルロースと、酒石英、クエン酸、グルコノデルタラクトン、リン酸一カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、及びリン酸アルミニウムナトリウムから選択される1つ以上の膨張酸と、アルロースによって少なくとも部分的に置換される栄養甘味料と、粉、卵及び/又は卵由来製品、牛乳及び/又は他の乳製品若しくは非乳製品、並びに油及び/又は脂肪を含む少なくとも3つの焼成用材料の組み合わせと、を含む。例示的なアルロース含有焼成製品用組成物を表1A~表1Gに示す。
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
いくつかの実施形態では、アルロースは、全砂糖焼成製品用組成物に含有されている栄養甘味料の少なくとも一部を置換して、その結果、全砂糖焼成製品用組成物に含有されている栄養甘味料の量を、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%低減させる。他の実施形態では、アルロースは、全砂糖焼成製品用組成物に含有される栄養甘味料、例えば、スクロース、グルコース、フルクトース、コーンシロップ、高フルクトースコーンシロップなどの量を置換するか又は実質的に低減させて、その結果、全砂糖焼成製品用組成物に含有される栄養甘味料の量を、少なくとも約5%、10%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%低減させる。例示的な栄養甘味料としては、例えば、スクロース、グルコース、フルクトース、高フルクトースコーンシロップ、デキストロース、様々なDEコーンシロップ、ビート糖又はケーン糖、糖蜜、マルトース、ハチミツ、及びカエデ糖が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
焼成した際に、ケーキ、クッキー、パンなどが挙げられるが、それらに限定されない焼成製品で発生するきつね色及び褐変による風味は、メイラード褐変反応の結果である。非酵素的褐変としても知られるメイラード褐変反応は、還元糖の反応性カルボニル基とアミノ酸の求核性アミノ基との間の、熱の存在下での化学反応である。より高いpH条件(塩基性)は、アミノ基が脱プロトン化されて、より多くそれらを、還元糖と反応するために利用可能にするため、メイラード褐変反応を増強する。同様に、より低いpH条件(酸性)は、この反応を低減する。特定の作用機序によって限定されるものではないが、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物中でアルロース及び1つ以上の膨張酸を組み合わせることによって、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物で作製されていないアルロース含有焼成製品と比較して、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物で作製されたアルロース含有焼成製品における過剰な褐変が低減する。
【0028】
本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物を含むアルロース含有焼成製品の過剰な褐変の低減は、アルロース含有焼成製品が、栄養甘味料を含有する焼成製品用組成物を含む全砂糖焼成製品と同等の褐変を有するかどうかを評価するための、色定量化によって測定され得る。一実施形態では、「a」及び/又は「b」の色測定値は、デルタ値、すなわち、最大+6.5の「デルタa」及び/又は最大+2.5若しくは好ましくは最大+1.5の「デルタb」のうちの少なくとも1つの測定値を通じて、全砂糖対照焼成製品と比較され、「デルタ」測定値は、試料値から全砂糖対照値を引いた値であり、「a」は、緑から赤への色の変化を表し、「b」は、青から黄への色の変化を表す。別の実施形態では、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物を含むアルロース含有焼成製品は、最低-13、又は-11、又は-10を有する「デルタL」を有するL色測定値によって更に測定されるように、栄養甘味料を含有する焼成製品用組成物を含む全砂糖焼成製品と同等の褐変を有し、「L」は、黒から白への色の変化を表す。
【0029】
追加の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物と、それから生成されたアルロース含有焼成製品は、全砂糖焼成製品用組成物及び/又はそれから生成された全砂糖焼成製品中に含有される栄養甘味料の少なくとも一部をアルロースに置換することによって、有益なことに、砂糖含有量が少なくとも10%低減している。また追加の実施形態では、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物及びそれから生成されるアルロース含有焼成製品は、有益なことに、全砂糖焼成製品用組成物及び/又はそれから生成された全砂糖焼成製品に含有される砂糖含有量の少なくとも20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%が低減している。
【0030】
更なる実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物及びそれから生成されるアルロース含有焼成製品は、全砂糖焼成製品用組成物及び/又はそれから生成された全砂糖焼成製品に含有される栄養甘味料の少なくとも一部をアルロースに置換することによって、有益なことに、カロリー量が低減している。追加の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物及びそれから生成されるアルロース含有焼成製品は、全砂糖焼成製品用組成物及び/又はそれから生成された全砂糖焼成製品に含有される栄養甘味料をアルロースに置換することによって、有益なことに、カロリー量の少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は少なくとも50%が低減している。
【0031】
アルロース
一実施形態は、アルロースを含む、例えば、ケーキ又はクッキー用組成物などの、アルロース含有焼成製品用組成物を対象とする。アルロースは、以下の構造を有する市販の単糖類であり、D-フルクトースのC3エピマーである。
【0032】
【0033】
アルロースは、結晶形態で、又は、アルロースを含むシロップの形態で入手可能である。一実施形態では、シロップ形態は、アルロースを、様々な固形分割合量(一般には約60重量%~約90重量%)で含む。
【0034】
例示的なアルロース源は、ASTRAEA(登録商標)液体アルロースの商品名にて入手可能であり、95%の純度(乾燥固形分基準、ds又はDS)を有し、固形分は74%である。更なるアルロース源は、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、若しくは少なくとも99.9%の純度(アルロース源の総重量を基準として、アルロースの重量%として表現)、又は100%純粋なアルロースを有することができる。更なるアルロース源は、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、又はそれ以上の固形分割合を有し得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、アルロースは、アルロースの純度レベルに従い決定される、アルロースと、追加の単糖類及び二糖類との混合物である。いくつかの実施形態では、アルロースは、アルロースと、フルクトースなどの1種以上の他の糖類との混合物である。他の実施形態では、アルロースは、シロップの乾燥物含有量を基準にして、約85重量%~約95重量%のアルロースと、約5重量%~約15重量%の単糖類及び二糖類と、を含むシロップである。
【0036】
いくつかの実施形態では、アルロースは、全砂糖焼成製品用組成物及び/又はそれから作製された全砂糖焼成製品に含まれる栄養甘味料(例えば、スクロース)を置換する(部分的に置換するか又は完全に置換するかのいずれかを行う)ための単一の成分としての使用に好適である。いくつかの実施形態では、アルロースは、全砂糖焼成製品用組成物及び/又はそれから作製される全砂糖焼成製品に含有される栄養甘味料の90%~100%を置換し、その結果、栄養甘味料が、アルロース含有焼成製品用組成物及び/又はそれから作製されるアルロース含有焼成製品に残存しないようにし、これにより、有益なことに、アルロース含有焼成製品用組成物及び/又はそれから作製されるアルロース含有焼成製品の砂糖含有量及び/又はカロリー量を、全砂糖焼成製品用組成物及び/又はそれから作製される全砂糖焼成製品よりも低減する。
【0037】
更なる実施形態では、アルロースは、アルロース含有焼成製品用組成物の約1重量%~約50重量%、アルロース含有焼成製品用組成物の約5重量%~約50重量%、アルロース含有焼成製品用組成物の約5重量%~約20重量%、アルロース含有焼成製品用組成物の約5重量%~約15重量%、又はアルロース含有焼成製品用組成物の約10重量%~約15重量%を構成する。
【0038】
更なる実施形態では、アルロースは、乾燥基準で、アルロース含有焼成製品用組成物の約1重量%~約50重量%、アルロース含有焼成製品用組成物の約2重量%~約20重量%、アルロース含有焼成製品用組成物の約2重量%~約15重量%、又はアルロース含有焼成製品用組成物の約5重量%~約10重量%を構成する。
【0039】
膨張酸
更なる実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物は、膨張酸を更に含む。膨張酸は、アルロースと組み合わされて、主に単糖であり、還元糖として作用するアルロースによって引き起こされる褐変反応を克服するものである。いくつかの実施形態では、膨張酸は、酒石英、クエン酸、他の食用酸、グルコノデルタラクトン、リン酸一カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、リン酸アルミニウムナトリウム、及びそれらの混合物から選択される。他の実施形態では、膨張酸は、酒石英、クエン酸、グルコノデルタラクトン、リン酸一カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、リン酸アルミニウムナトリウム、及びそれらの混合物から選択される。また更なる実施形態では、膨張酸は、アルロース含有焼成製品用組成物の約0.3重量%~約3重量%、アルロース含有焼成製品用組成物の約0.5重量%~約3重量%、アルロース含有焼成製品用組成物の約0.8重量%~約3重量%、又はアルロース含有焼成製品用組成物の約0.8重量%~約2重量%を構成する。
【0040】
一実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物は、膨張酸として酒石英を更に含む。酒石英は、結晶性の酸性化合物であり、酒石酸又は重酒石酸カリウム(又は酒石酸水素カリウム)としても知られる一般的に使用される膨張剤である。本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物が、膨張酸として酒石英を含む場合、酒石英は、全砂糖焼成製品用組成物及び本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物の両方と比較して、より大きな重量%で含まれて、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物から作製されるアルロース含有焼成製品において、アルロースが引き起こす過剰な褐変を低減する。いくつかの実施形態では、酒石英は、アルロース含有焼成製品用組成物の約0.5重量%~約2.5重量%、アルロース含有焼成製品用組成物の約0.85重量%~約1.8重量%、アルロース含有焼成製品用組成物の約0.9重量%~約1.8重量%、又はアルロース含有焼成製品用組成物の約1重量%~約1.8重量%を構成する。
【0041】
更に他の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物は、膨張酸としてクエン酸を更に含む。また他の実施形態では、クエン酸は、アルロース含有焼成製品用組成物の約0.3重量%~約2重量%、アルロース含有焼成製品用組成物の約0.5重量%~約2重量%、又はアルロース含有焼成製品用組成物の約0.5重量%~約1重量%を構成する。
【0042】
更に他の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物は、膨張剤としてクエン酸及び重曹を更に含む。また更に他の実施形態は、膨張剤としてクエン酸及び重曹を更に含む本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物を含む、アルロース含有焼成製品を対象とし、アルロース含有焼成製品は、全砂糖焼成製品と同等のテクスチャを有する。また更なる実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物は、膨張剤としてクエン酸及び重曹を更に含み、重曹の量は、アルロース含有焼成製品用組成物の約0重量%~約2重量%、アルロース含有焼成製品用組成物の約1重量%~約2重量%、又はアルロース含有焼成製品用組成物の約1重量%~約1.5重量%の範囲である。
【0043】
別の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物は、膨張酸としてグルコノデルタラクトンを更に含む。グルコノデルタラクトンは、D-グルコン酸のラクトンであるため、グルコノラクトンとしても知られており、結晶性粉末である。いくつかの実施形態では、グルコノデルタラクトンは、アルロース含有焼成製品用組成物の約0.3重量%~約1.8重量%、アルロース含有焼成製品用組成物の約0.85重量%~約1.8重量%、又はアルロース含有焼成製品用組成物の約1重量%~約1.8重量%を構成する。
【0044】
更に他の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物は、膨張酸として追加の食用酸を更に含む。また他の実施形態では、追加の食用酸は、リン酸二カルシウム脱水物(DCPD)、酸性ピロリン酸ナトリウム(SAPP)、リン酸一カルシウム一水和物(MCP)、無水リン酸一カルシウム(AMCP)、リン酸アルミニウムナトリウム(SALP)、硫酸アルミニウムナトリウム(SAS)、及びそれらの混合物から選択される。1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物が、膨張酸としてリン酸一カルシウム一水和物を含む実施形態では、リン酸一カルシウム一水和物は、アルロース含有焼成製品用組成物の約0.31重量%~約0.85重量%未満、又はアルロース含有焼成製品用組成物の約0.31重量%~約0.5重量%未満を構成する量で含まれる。1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物が、膨張酸として酸性ピロリン酸ナトリウムを含む実施形態では、酸性ピロリン酸ナトリウムは、アルロース含有焼成製品用組成物の約0.3重量%~約1.8重量%、又はアルロース含有焼成製品用組成物の約0.85重量%~約1.8重量%を構成する量で含まれる。1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物が、膨張酸としてリン酸アルミニウムナトリウムを含む実施形態では、リン酸アルミニウムナトリウムは、アルロース含有焼成製品用組成物の約0.3重量%~約1.8重量%、又はアルロース含有焼成製品用組成物の約0.85重量%~約1.8重量%を構成する量で含まれる。
【0045】
栄養甘味料及び部分栄養甘味料
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物は、栄養甘味料(例えば、スクロース)(及び/又は部分栄養甘味料)を更に含み、(i)全砂糖焼成製品用組成物に含有される栄養甘味料(及び/又は部分栄養甘味料)の少なくとも一部は、アルロースによって置換されるか、又は(ii)アルロースは、全砂糖焼成製品用組成物に含有される栄養甘味料(及び/又は部分栄養甘味料)を少なくとも部分的に置換する。
【0046】
いくつかの実施形態では、栄養甘味料は、スクロース、ケーン糖、フルクトース、グルコース、グルコースーフルクトースシロップ、メープルシロップ、ハチミツ、糖蜜、エリスリトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、ロイクロース、トレハロース、ガラクトース、ラムノース、シクロデキストリン(例えば、α-シクロデキストリン、P-シクロデキストリン、及びy-シクロデキストリン)、リブロース、トレオース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、マンノース、イドース、ラクトース、マルトース、転化糖、イソトレハロース、ネオトレハロース、パラチノース又はイソマルツロース、エリスロース、デオキシリボース、グロース、イドース、タロース、エリトルロース、キシルロース、プシコース、ツラノース、セロビオース、グルコサミン、マンノサミン、フコース、フクロース、グルクロン酸、グルコン酸、グルコノラクトン、アベクオース、ガラクトサミン、キシロオリゴ糖(キシロトリオース、キシロビオースなど)、ゲンチオオリゴ糖(ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオースなど)、ガラクトオリゴ糖、ソルボース、ケトトリオース(デヒドロキシアセトン)、アルドトリオース(グリセルアルデヒド)、ニゲロオリゴ糖、フルクトオリゴ糖(ケストース、ニストースなど)、マルトテトラオース、マルトトリオール、四糖、マンナンオリゴ糖、マルトオリゴ糖(マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオースなど)、デキストリン、ラクツロース、メリビオース、ラムノース、リボース、異性化された液糖(例えば、高フルクトースコーン/デンプンシロップ(HFCS/HFSS))(例えば、HFCS55、HFCS42、又はHFCS90)、カップリング糖、大豆オリゴ糖、グルコースシロップ、並びに前述のいずれかの組み合わせから選択される。
【0047】
他の実施形態では、部分栄養甘味料(すなわち、低カロリー甘味料)は、ポリオールである。「ポリオール」という用語は、本明細書で使用する場合、2個以上のヒドロキシル基を含有する分子を指す。ポリオールは、それぞれ2個、3個、又は4個のヒドロキシル基を含有するジオール、トリオール、又はテトラオールであってもよい。ポリオールはまた、それぞれ5個、6個、又は7個のヒドロキシル基を含有するペンタオール、ヘキサオール、ヘプタオールなどの、5個以上のヒドロキシル基を含有してもよい。加えて、ポリオールはまた、糖アルコール、多価アルコール、又は炭水化物の還元形態であるポリアルコールであってもよく、カルボニル基(アルデヒド又はケトン、還元糖)は、一級又は二級ヒドロキシル基に還元されている。いくつかの実施形態では、ポリオールは、エリトリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、イソマルト、プロピレングリコール、グリセロール(グリセリン)、トレイトール、ガラクチトール、パラチノーゼ、還元イソマルトオリゴ糖、還元キシロオリゴ糖、還元ゲンチオオリゴ糖、還元マルトースシロップ、還元グルコースシロップ、糖アルコール、甘味料組成物の味に悪影響を及ぼさない還元可能な任意の他の炭水化物、及びそれらの混合物から選択される。また他の実施形態では、部分栄養甘味料は、D-タガトースである。
【0048】
更に他の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物は、栄養甘味料及び/又は部分栄養甘味料を、アルロース含有焼成製品用組成物の約0重量%~約40重量%、約1重量%~約35重量%、約1重量%~約30重量%、約1重量%~約25重量%、約1重量%~約20重量%、約5重量%~約20重量%、約5重量%~約15重量%、又は約10重量%~約15重量%の量で更に含む。
【0049】
更に他の実施形態では、全砂糖焼成製品用組成物に含有される栄養甘味料は、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物のうちの1つ以上においては、少なくとも部分的に、最大で完全に、アルロースで置換される。
【0050】
焼成用材料
更なる実施形態では、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物は、例えば、粉及び/又は他のデンプン、卵、牛乳、油及び/又は脂肪などの1つ以上の焼成用材料を更に含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物のうちの1つ以上は、粉、卵、卵由来製品、牛乳、他の乳製品又は非乳製品、油及び脂肪から選択される少なくとも3つの焼成用材料を更に含む。
【0051】
例示的な実施形態では、粉は、穀粒、豆、根、ナッツ、及び/又は種子を粉砕して得られるものを含む。小麦粉は、焼成で最も一般的に使用され、中力粉、セルフライジングフラワー、薄力粉、及び/又は漂白粉を含むことができる。他の種類の粉としては、トウモロコシ、ライ麦、及び高い割合でデンプンを含有する他の穀物の粉が挙げられる。
【0052】
例示的な実施形態では、卵及び/又は卵由来製品としては、全卵、卵白、卵黄、低温殺菌された液体卵などが挙げられる。
【0053】
例示的な実施形態では、牛乳及び/又は他の乳製品若しくは非乳製品には、例えば、生クリーム(例えば、ヘビークリーム)、全乳、低脂肪乳、無脂肪乳(例えば、脱脂乳)、乳固形分、コンデンスミルク、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられる。乳製品は、一般に、ある量の乳プロテイン(例えば、β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミン、又は血清アルブミンを含有するホエータンパク質)などを含む。いくつかの実施形態では、乳製品は、ある量の非乳製品成分、例えば、大豆乳、大豆タンパク質、アーモンドミルク、ココナツミルク、及びそれらの任意の組み合わせなどで置換され得る。乳製品及び非乳製品は、その中に含まれる脂肪の量について、全脂肪から低脂肪、更には無脂肪(すなわち、脂肪ゼロ)までの多様な製品を含み得る。
【0054】
例示的な実施形態では、油及び/又は脂肪としては、バター、ギー、ショートニング、亜麻仁油、クルミ油、マカデミアナッツ油、キャノーラ油、パームコーン油、大豆油、オリーブ油、マーガリン、植物油、ココナツ油、ラード、獣脂などが挙げられる。
【0055】
いくつかの実施形態では、焼成用材料は、アルロース含有焼成製品用組成物の約30重量%~約70重量%、約35重量%~約70重量%、約40重量%~約70重量%、約45重量%~約70重量%、約45重量%~約65重量%、又は約45重量%~約60重量%を構成する。
【0056】
任意選択の追加的成分
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物のうちの1つ以上は、任意選択的に、追加的成分を更に含む。追加的成分の存在は、アルロース含有焼成製品の種類に基づいて多様となる。例示的な追加的成分としては、例えば、追加的甘味料(非栄養甘味料及び部分栄養甘味料を含む)、水、塩、他のデンプン質成分、追加的膨張剤(例えば、重曹、イーストなど)、アルコール及び/若しくはフレーバーリキュール、安定化剤、増量剤(例えば、マルトデキストリン、ポリデキストロース、キサンタンガム、グアーガム、任意の種類のグルコースシロップ、任意の種類の可溶性繊維、任意の種類のデンプン、任意の種類のオリゴ糖など)、天然及び/若しくは人工着色料、天然及び/若しくは人工風味料(例えば、バニラ)、ココナツ及び/若しくはココナツ由来製品、スパイス、果物(例えば、全果実、サイコロ状カット、マッシュ、ピューレ、濃縮物など)及び/若しくは果物由来製品、野菜及び/若しくは野菜由来製品、豆果及び/若しくは豆果由来製品、堅果及び/若しくは堅果由来製品、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、乳化剤、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、ミネラルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
いくつかの実施形態では、任意選択の追加的成分は、アルロース含有焼成製品用組成物の最大50重量%、45重量%、40重量%、35重量%、30重量%、25重量%、20重量%、15重量%、10重量%、又は5重量%を構成する。
【0058】
非栄養甘味料
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物のうちの1つ以上は、任意選択的に非栄養甘味料を、アルロースと組み合わせて更に含み得る。非栄養甘味料(例えば、強力甘味料)は、(アルロースは、スクロースの甘味の70%であるため)アルロースの添加時に失われる甘味を少し補って増加させるのを助けるために、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物に含まれ得る。上記の甘味の損失は、配合物中の他の成分及び総砂糖置換レベルに基づくと、典型的な消費者によって知覚される場合もあり得るか、又は知覚されない場合もあり得る。例示的な非栄養甘味料(すなわち、ゼロカロリー甘味料)としては、強力甘味料を含む天然甘味料及び人工甘味料が挙げられる。
【0059】
例示的な天然非栄養甘味料としては、自然界において見出され、それらは、生のまま、抽出された状態、精製された状態、又は(例えば、発酵、バイオ変換を介した)任意の他の形態であってもよく、単独で、又はそれらを組み合わせて用いられてもよく、特徴的なことにそれらは、スクロース、フルクトース、又はグルコースよりも大きい甘味効能を有し得る。天然ゼロカロリー非栄養甘味料の非限定的な例としては、レバウジオシドA(Reb A)、レバウジオシドB(Reb B)、レバウジオシドC(Reb C)、レバウジオシドD(Reb D)、レバウジオシドD2(Reb D2)、レバウジオシドD4(Reb D4)、レバウジオシドE(Reb E)、レバウジオシドF(Reb F)、レバウジオシドG(Reb G)、レバウジオシドH(Reb H)、レバウジオシドI(Reb I)、レバウジオシドJ(Reb J)、レバウジオシドK(Reb K)、レバウジオシドL(Reb L)、レバウジオシドM2(Reb M2)、レバウジオシドM(Reb M)(REB Xとしても知られる)、レバウジオシドN(Reb N)、レバウジオシドO(Reb O)、レバウジオシドS(Reb S)、レバウジオシドT(Reb T)、レバウジオシドU(Reb U)、レバウジオシドV(Reb V)、レバウジオシドW(Reb W)、レバウジオシドZl(Reb Z1)、レバウジオシドZ2(Reb Z2)、及び酵素でグルコシル化されたステビオールグリコシドを含む、ステビオールグリコシド、アミノ酸、トリプトファン、ステビオールモノシド、ステビオールビオシド、ズルコシドA、ズルコシドB、ルブソシド、ステビア、ステビオシド、モグロシド、モグロシドIV、モグロシドV、モグロシドVI、イソモグロシドV、グロスモモシド、ネオモグロシド、シアメノシド、羅漢果甘味料、羅漢果、シアメノシド、モナチン及びその塩類(モナチンSS、RR、RS、SR)、クルクリン、グリチルリジン酸及びその塩類、ソウマチン、モネリン、マビンリン、ブラゼイン、ヘルナンズルシン、フィロズルチン、グリシフィリン、フロリドジン、トリロバチン、バイユノシド、オスラジン、ポロポドシドA、プテロカリオシドA、プテロカリオシドB、ムクロジオシド、フロミソシドI、ペリアンドリンI、アブルソシドA、並びにシクロカリオシドIが挙げられる。天然強力甘味料としては、改質された天然強力甘味料も挙げられる。
【0060】
追加の例示的な合成ゼロカロリー(すなわち、強力)甘味料の非限定的な例としては、スクラロース、アセスルファムカリウム(アセスルファムK)、アスパルテーム、アリテーム、サッカリン、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、シクラメート、ネオテーム、アドバンテーム、N-[N-[3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)プロピル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニンI-メチルエステル、N-[N-[3-(3-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-3-メチルブチル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニンI-メチルエステル、N-[N-[3-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロピル]-L-α-アスパルチル]-L-フェニルアラニンI-メチルエステル、これらの塩などが挙げられる。合成強力甘味料はまた、改質された合成強力甘味料を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物のうちの1つ以上は、アルロース含有焼成製品用組成物の約10重量%未満、約5重量%未満、約1重量%未満、約0.1重量%未満、又は約0.01重量%未満、又は0重量%を含む。
【0062】
例示的なアルロース含有焼成製品用組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物を含む焼成製品としては、焼成製品に含有される栄養甘味料(例えば、スクロースを含む)を完全に置換するか、又は焼成製品に含有される栄養甘味料の一部を部分的に置換することから利益を得ることができる焼成製品が挙げられる。有益なことに、アルロース含有焼成製品用組成物は、アルロース含有焼成製品をそれから作製するために、そのような焼成製品を作製するための既知のプロセスを介して、いかなる追加の又は広範な加工工程もなしで継続して使用され得る。更に、いくつかの実施形態では、全砂糖焼成製品を作製するための焼成条件(例えば、時間及び温度)に修正を加える必要なく、本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物からアルロース含有焼成製品を作製する。
【0063】
本明細書に記載の1つ以上のアルロース含有焼成製品用組成物から作製することができる例示的なアルロース含有焼成製品には、例えば、ケーキ、クッキー、ロールケーキ、パイ、ペイストリー、タルト、トルテ、菓子パン類、甘味ビスケット、マフィンなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、アルロース含有焼成製品は、イエローケーキ、シュガークッキー、ブロンディブラウニーなどから選択される。別の実施形態では、アルロース含有焼成製品は、ケーキ又はクッキーである。
【0064】
膨張酸及びアルロース系
また更なる実施形態は、アルロース含有焼成製品の褐変を低減するための食品材料系を対象とする。一実施形態では、食品材料系は、アルロースと、酒石英、クエン酸、グルコノデルタラクトン、リン酸一カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、及びリン酸アルミニウムナトリウムから選択される1つ以上の膨張酸と、を含む。別の実施形態では、本明細書に記載の食品材料系は、栄養(又は部分栄養)甘味料、非栄養甘味料、及び/又は重曹を更に含む。有益なことには、本明細書に記載の食品材料系は、全砂糖焼成製品と同等の褐変を有する砂糖及び/又はカロリー低減焼成製品を得ながら、全砂糖焼成製品用組成物に含有される栄養甘味料をアルロースに部分的又は完全に置換することが望まれる焼成製品組成物に添加するために、すぐに使用できる単一供給源材料として提供され得る。
【0065】
アルロース含有焼成製品における過剰な褐変の低減
更に他の実施形態は、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物のうちの1つ以上を使用して、栄養甘味料を含有する組成物を含む全砂糖焼成製品と同等の褐変を有するアルロース含有焼成製品を生成することを対象とする。
【0066】
更に、砂糖代替物(又は砂糖含有量及び/若しくはカロリー量を低減するための手段)としてのアルロースと、アルロース含有焼成製品用組成物における褐変を低減するための膨張酸と、の使用が、本明細書に開示される。
【0067】
追加の実施形態では、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物のうちの1つ以上は、それから作製されたアルロース含有焼成製品の褐変(色及び風味の変化)を軽減又は低減し、加えて、膨張酸の添加の結果として望ましくない風味発生が生じないことを確実にする。
【0068】
追加の実施形態では、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物のうちの1つ以上は、中身部分の褐変の低減もまた実現する一方で、それから作製された、膨らんだ(すなわち、焼成された)アルロース含有焼成製品の形状に悪影響を及ぼさない。
【0069】
追加の実施形態では、本明細書に記載のアルロース含有焼成製品用組成物のうちの1つ以上は、中身部分の褐変の低減もまた実現する一方で、それから作製されたアルロース含有焼成製品の風味に悪影響を及ぼさない。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアルロース含有組成物を含むアルロース含有焼成製品は、アルロースを含まない全砂糖対照の焼成製品(又はアルロースを含む組成物を含むが、本明細書に記載の1つ以上の膨張酸を含まない焼成製品)よりも、中身部分が、よりふわふわで軽くなる。
【0071】
本開示によって企図される主題は、以下の付番した実施形態に記載される。
1.アルロース含有焼成製品用組成物であって、
(i)約1重量%~約25重量%のアルロース(乾燥基準)と、
(ii)約0.3重量%~約3重量%の膨張酸であって、膨張酸は、酒石英、クエン酸、グルコノデルタラクトン、リン酸一カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、リン酸アルミニウムナトリウム、又はそれらの混合物である、膨張酸と、
(iii)アルロースによって少なくとも部分的に置換される栄養甘味料と、
(iv)粉、卵及び/又は卵由来の製品、牛乳及び/又は他の乳製品若しくは非乳製品、油及び/又は脂肪を含む、少なくとも3つの焼成用材料の組み合わせと、を含む、アルロース含有焼成製品用組成物。
2.アルロースは、少なくとも約85%のアルロース並びに約15%の他の単糖類及び/若しくは二糖類、少なくとも約90%のアルロース並びに約10%の他の単糖類及び/若しくは二糖類、又は少なくとも約95%のアルロース並びに約5%の他の単糖類及び/若しくは二糖類を含む液体シロップである、実施形態1に記載の組成物。
3.アルロースは、乾燥基準で、組成物の約2重量%~約25重量%、約5重量%~約15重量%、又は約10重量%~約15重量%を構成する、実施形態1又は2に記載の組成物。
4.膨張酸は、(i)酒石英であり、組成物の約0.5重量%~約2.5重量%を構成する、(ii)グルコノデルタラクトンであり、組成物の約0.3重量%~約1.8重量%、若しくは約0.85重量%~約1.8重量%を構成する、(iii)クエン酸であり、組成物の約0.5重量%~約2重量%を構成する、(iv)リン酸一カルシウムであり、組成物の約0.31重量%~約0.85重量%を構成する、(v)酸性ピロリン酸ナトリウムであり、組成物の約0.3重量%~約1.8重量%を構成する、又は(vi)リン酸アルミニウムナトリウムであり、組成物の約0.3重量%~約1.8重量%を構成する、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
5.膨張剤を更に含み、膨張剤は、組成物の約0.5重量%~約1.5重量%の量の重曹である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の組成物。
6.栄養甘味量は、スクロースである、実施形態1~5のいずれか1つに記載の組成物。
7.焼成用材料は、組成物の約30重量%~約70重量%を構成する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
8.塩、水、他のデンプン質成分、非栄養甘味料、部分栄養甘味料、アルコール、風味付けリカー、安定化剤、増量剤、着色剤、風味剤、スパイス、果物、果物由来製品、野菜、野菜由来製品、豆果、豆果由来製品、堅果、堅果由来製品、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、乳化剤、タンパク質、アミノ酸、ビタミン、及び鉱物から選択される1つ以上の追加的焼成用材料を更に含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の組成物。
9.組成物は、全砂糖焼成製品用組成物と比較して、少なくとも10%の砂糖低減、20%の砂糖低減、25%の砂糖低減、30%の砂糖低減、40%の砂糖低減、50%の砂糖の低減、75%の砂糖低減、又は少なくとも100%の砂糖低減を実現する、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
10.組成物は、全砂糖焼成製品用組成物と比較して、少なくとも1%のカロリー低減、少なくとも5%のカロリー低減、少なくとも10%のカロリー低減、少なくとも15%のカロリー低減、少なくとも20%のカロリー低減、又は少なくとも25%のカロリー低減を実現する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組成物。
11.組成物は、ケーキ用組成物、クッキー用組成物、ロールケーキ用組成物、パイ用組成物、ペイストリー用組成物、タルト用組成物、トルテ用組成物、菓子パン用組成物、甘味ビスケット用組成物、又はマフィン用組成物である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の組成物。
12.組成物は、ケーキ用組成物である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の組成物。
13.実施形態1~12のいずれか1つに記載の組成物を含むアルロース含有焼成製品であって、アルロース含有焼成製品は、(i)最小で-13の「デルタL」を有するL色測定値であって、「L」は、黒から白への色の変化を表す、L色測定値、(ii)最大値が+6.5である「デルタa」及び/若しくは最大値が+2.5である「デルタb」のうちの少なくとも1つを有する、「a」色測定値及び/若しくは「b」色測定値であって、「デルタ」測定値は、試料値から全砂糖対照値を引いた値であり、「a」は、緑から赤への色の変化を表し、「b」は、青から黄への色の変化を表す、「a」色測定値及び/若しくは「b」色測定値、又は(iii)(i)及び(ii)の組み合わせ、によって測定される際に、栄養甘味料を含有する組成物を含む全砂糖焼成製品と同等の褐変を有する、アルロース含有焼成製品。
14.栄養甘味料を含有する組成物を含む全砂糖焼成製品と同等の褐変を有するアルロース含有焼成製品を生成するための、実施形態1~12のいずれか1つに記載の組成物の使用。
15.アルロース含有焼成製品の褐変を低減するための方法であって、
(i)焼成製品用組成物中の栄養甘味料の少なくとも一部を、アルロースに置換することと、
(ii)酒石英、クエン酸、グルコノデルタラクトン、リン酸一カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、及びリン酸アルミニウムナトリウムから選択される1つ以上の膨張酸を、組成物に添加することと、
(iii)組成物を焼成することと、
(iv)アルロース含有焼成製品を得ることと、を含む、方法。
16.アルロース含有焼成製品は、(i)最小で-13の「デルタL」を有するL色測定値であって、「L」は、黒から白への色の変化を表す、L色測定値、(ii)最大値が+6.5である「デルタa」及び/若しくは最大値が+2.5である「デルタb」のうちの少なくとも1つを有する、「a」色測定値及び/若しくは「b」色測定値であって、「デルタ」測定値は、試料値から全砂糖対照値を引いた値であり、「a」は、緑から赤への色の変化を表し、「b」は、青から黄への色の変化を表す、「a」色測定値及び/若しくは「b」色測定値、又は(iii)(i)及び(ii)の組み合わせ、によって測定される際に、栄養甘味料を含有する組成物を含む全砂糖焼成製品と同等の褐変を有する、実施形態15に記載の方法。
17.アルロース含有焼成製品は、ケーキ、クッキー、ロールケーキ、パイ、ペイストリー、タルト、トルテ、菓子パン類、甘味ビスケット、又はマフィンである、実施形態15又は16に記載の方法。
18.アルロース含有焼成製品は、ケーキである、実施形態15~17のいずれか1つに記載の方法。
19.アルロースと、酒石英、クエン酸、グルコノデルタラクトン、リン酸一カルシウム、酸性ピロリン酸ナトリウム、及びリン酸アルミニウムナトリウムから選択される1つ以上の膨張酸と、を含む食品材料系。
20.栄養甘味料、部分栄養甘味料、及び/又は非栄養甘味料、並びに任意選択で重曹を更に含む、実施形態19に記載の系。
【0072】
実施例
上に記載した実施形態を、以下の非限定的実施例で更に定義する。これらの実施例は、本発明の様々な実施形態を記載するものの、例示の目的のみで提供されていることが理解されるべきである。上記議論及びこれらの実施例より、当業者は本発明の本質的な特徴を確認することができ、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の実施形態を変更及び修正し、実施形態を種々の使用及び条件に適応させることができる。したがって、本明細書に記載の実施形態の種々の修正が、本明細書にて示し、かつ記載するものに加えて、前述の記載から当業者には明らかとなろう。そのような修正は、本明細書に添付される特許請求の範囲によって包含されることも意図される。本明細書に記載の説明及び実施例、又は以下の特許請求の範囲、又は添付図面に、具体的な形態で、又は開示した機能、若しくは開示した結果を得るための方法若しくはプロセスを適宜実施するための手段の観点から表現した特徴は、個別に、又はそのような特徴の任意の組み合わせで、様々な形態において、本発明を実現するために利用することができる。
【0073】
重曹及びベーキングパウダーの両方を含むイエローケーキ配合物をケーキモデルとして使用して、全ての膨張酸が配合物中において変更可能であることを可能にした。しかしながら、ベーキングパウダー(重曹と酒石英との組み合わせ)は、追加の重曹と、ベーキングパウダー配合物中の膨張酸として一般的に使用されるいくらかの酒石英で置換された。全砂糖対照及び陰性対照を、過剰な褐変の低減に対する影響を評価するために、膨張剤に対する様々な変更との比較の基準として使用した。
【0074】
イエローケーキ配合物で使用されたアルロースは、ASTRAEA(登録商標)液体アルロース(純度95%、固形分約74%)であった。この配合物におけるアルロースの使用は、砂糖を約40%低減させ、及びカロリーを約10%低減させる(全砂糖対照について320カロリー/100g、全てのアルロース含有試料について290カロリー/100g)。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
ケーキは、以下のプロセスに従って作製した。
1.ミキサーボウルで、砂糖とショートニングを混ぜ合わせる。速度1で2分間ブレンドし、1分経った時点で1回、ボウルの中身をスクレーパーで掻き取る。
2.残りの乾燥材料を別のボウルで混ぜ合わせる。
3.乾燥材料をショートニングと砂糖との混合物に添加し、速度1で1~2分間ブレンドしてよく混ぜ合わせ、次いで、ボウルの中身をスクレーパーで掻き取る。
4.湿潤材料を混ぜ合わせ、次いで、ミキサーボウルに添加する。パドルアタッチメントを使用して、湿潤材料を乾燥材料に混ぜ込んで約30秒間、速度#1でブレンドする。
5.ミキサーを停止し、ボウルの中身をスクレーパーで十分に掻き取る。
6.速度#2で混合を再開し、2~3分間ブレンドする。
7.植物油スプレーで調製した直径8インチのケーキ型に500g分のバッターを入れ、従来型オーブン中、350°Fで30分間焼成する。
【0080】
実施例1
酒石英膨張酸の評価
褐変の色及び風味の発生を軽減することを調査するために、膨張酸の酒石英(酒石酸又は重酒石酸カリウム)を選択した。添加された酸の重量パーセントは、水又は粉の重量パーセントの変更によって補償された。
【0081】
表3(上)に示されるケーキ配合物に、酒石英を、対照及び陰性対照の配合物に見られるレベル(表2に示すように0.31%)を超えて増加させた濃度範囲(0.85%、1.20%、1.80%)で含有させた。
図1A~
図1Eは、対照(
図1A)及び陰性対照(
図1B)と比較して、対照及び陰性対照におけるレベルを超える酒石英を含む完成したケーキの断面の写真(
図1C~
図1E)を示す。
【0082】
試験は、過剰な褐変が、スクロースの代替物としてアルロースを含む場合に問題であることを実証しており、評価されたイエローケーキなどの明るい色の甘味焼成製品において明確により明らかである。この色/風味の発生を緩和することは、
図1A~
図1Eに示されるように添加された膨張酸の種類及びレベルを修正することによって可能である。特に、アルロース及び追加的酒石英を用いて作製されたイエローケーキは、褐変の低減について、0.85%以上1.80%以下の範囲で好ましい結果を示し、皮部分及び中身部分の両方で明らかである。
【0083】
実施例2
クエン酸膨張酸の評価
褐変の色及び風味の発生を軽減することを調査するために、膨張酸のクエン酸を選択した。添加された酸の重量パーセントは、水又は粉の重量パーセントの変更によって補償された。表4(上記)に示されるケーキ配合物は、0.57%のクエン酸を元の重曹量(0.69%)と共に含有するように、また、0.57%のクエン酸をより多量の重曹(1.00%)と共に含有するように作製した。クエン酸を、対照配合物(0.31%)中に元から存在する酒石英の代わりに、0.57%のレベルで添加した。クエン酸は、増量した重曹(対照における0.69%の代わりに1%)と共に同様に使用され、中身部分の褐変に改善をもたらした。
図2A~
図2Dは、対照(
図2A)及び陰性対照(
図2B)と比較して、クエン酸及び重曹を含む完成したケーキの断面の写真(
図2C~
図2D)を示す。この試験は、クエン酸が皮部分/中身部分における褐変の低減に役立つことができることを実証している。追加の重曹が添加されると、ケーキは、全体的な外観が改善される。褐変低減も同様に改善される。
【0084】
実施例3
グルコノデルタラクトン膨張酸の評価
褐変の色及び風味の発生を軽減することを調査するために、膨張酸のグルコノデルタラクトンを選択した。添加された酸の重量パーセントは、水又は粉の重量パーセントの変更によって補償された。表5(上記)に示されるケーキ配合物は、あるレベルの範囲(0.31%、0.85%、1.20%、1.80%)のグルコノデルタラクトンを含有する。
【0085】
グルコノデルタラクトンは、酒石英と同様の中和値を有し、最初は、同様のレベル(酒石英の対照及び陰性対照と同じレベルの0.31%)で使用した。0.31%のレベルでは、色の外観の改善はわずかであるが、陰性対照とは依然としてかなり異なっている。0.85%では、皮部分及び中身部分の両方で、褐変についていくらかの改善が示されている。1.20%では、中身部分の褐変及び皮部分の褐変に対してより顕著な改善がみられる。1.80%では中身部分の色が良好に維持されるが、上部の皮部分で淡い色の部分を劇的に増加させる。
【0086】
これらの結果を
図3A~
図3Fに示し、対照(
図3A)及び陰性対照(
図3B)と比較した、完成したケーキの断面の写真が提供される。図に示されるように、グルコノデルタラクトンは、ケーキに関して酒石英のケーキと同様の結果をもたらし、中身部分の褐変が著しく緩和されている。より好ましい結果は、0.85%以上1.80%以下の使用量範囲で見られた(
図3D~
図3F)。
【0087】
実施例4
イエローケーキにおける、色測定値、ケーキの高さ、水分レベル、及び水分活性のために理想的な膨張酸の範囲
全砂糖対照、アルロース(陰性対照)、及び本明細書に記載の初期試験に基づいた好ましい膨張酸レベルのものを、再度焼成した。
【0088】
表6は、これらの配合物を示す。全砂糖対照配合物は、23.89%の砂糖(スクロース)を使用する。アルロースを乾燥基準で10%のレベルで使用して、ケーキの砂糖/カロリーの低減を試みた。
【0089】
【0090】
これらの結果を
図4A~
図4Eに示し、対照(
図4A)及び陰性対照(
図4B)と比較した、完成したケーキの断面の写真が提供される。図に示されるように、酒石英を用いて作製されたケーキ(
図4D)及びグルコノ-デルタラクトンを用いて作製されたケーキ(
図4E)は、対照と比較してわずかに高く膨らむことを示した。グルコノデルタラクトンを用いて作製されたケーキ(
図4E)は、より高くまで膨らんだが、半球形状を有しなかった。しかも中央部分には若干の凹みを有していた。クエン酸及び増量したレベルの重曹を用いたケーキ(
図4C)は、対照と比較して膨らみが低く、皮部分は、全ての試料の中でもより暗い色となった。これらの結果は、ケーキの高さ及び他の属性について、以下で更に評価される。
【0091】
ケーキの色の定量化
ケーキの色(L*a*b*値として表される)を、Konica Minolta製手持ち式測色計を使用して評価して、褐変の減少の定量的尺度を得た。色評価は、ケーキの頂部の皮部分及び中身部分を、縁部から約1.5~2インチ及びケーキの中心のスライスの中央で測定し、皮部分の2つの測定値及び中身部分の2つの測定値を得た。表7に測定値を示す。
【0092】
【0093】
次いで、皮部分及び中身部分の値を平均化した。表8は、皮部分及び中身部分の両方の平均(5個の異なる試料の平均)として測定された値を示す。対照の値からの差を計算し、「デルタ」値(試料値から全砂糖対照の値を引いた値)として列挙する。
【0094】
【0095】
図5は、表8のL
*a
*b
*値をグラフで示す。グラフは、左側に対照(全砂糖)を、右端にアルロース(陰性対照)を示す。膨張酸を変更した評価対象配合物が、これらの間に示されて、それらの間にL
*a
*b
*値が示されている。特に、「a」は、緑から赤を測定する(正の/より高い値は、より赤色が強いことを示し、「褐変」の増加の指標となる)。「b」は、青から黄を測定する(正の/より高い値は、より黄色が強いことを示す)。「L」値は、明度、すなわち黒から白を表す(より高い値が、より明るい色を示す)。これらの全体的な組み合わせ(より高いa、より高いb、及びより低いL)は、イエローケーキを含む、甘味焼成製品における褐変の指標である。表8はまた、L
*a
*及びb
*の「デルタ」値(試料値から全砂糖対照値を引いた値)を示す。表は、アルロース及び膨張酸が、以下の最大「デルタ)」値によって定量化された、過剰な褐変の低減を達成することを示す。「デルタa」の最大値は+6.5、「デルタb」の最大値は+1.5、かつ/又は任意選択的に、「デルタL」の最小値は-10。表8に示すように、アルロース単独(陰性対照)は、全砂糖対照と比較して過剰な褐変が存在するため、L
*a
*及びb
*について測定された「デルタ」値を満たさない。
【0096】
ミリメートル単位でのケーキの高さ
ケーキの高さは、デジタルキャリパーを使用して、ケーキの円直径にわたって、両側から約1.5~2インチ及び中心の3箇所で測定された。表9は、各ケーキの高さの平均測定値を示す。
【0097】
【0098】
図6は、表9のデータについて標準偏差エラーバーと共に平均値を示し、酒石英及びグルコノデルタラクトンを用いて作製されたケーキが他の試料よりもわずかにより高くまで膨らんだことを示している。クエン酸及び重曹を用いたケーキは、他の全ての試料よりも膨らみがわずかにより低くなっていることが示された。全ての結果は、全砂糖対照の許容範囲内である。
【0099】
ケーキの水分レベル
ケーキの水分は、直径に沿ってケーキのスライスを切断し、それを破砕し、次いで、Sartorius製MA35水分分析装置を使用して、水分含有量をパーセンテージで測定した。各試料について3回繰り返し測定を行った。表10は、各ケーキの平均水分値を示す。
【0100】
【0101】
図7は、表10のデータを、標準偏差エラーバーと共にグラフで示し、水分含有量が、対照と全ての変形形態との間で非常に類似していることを示す。
【0102】
ケーキの水分活性
ケーキの水分活性は、直径に沿ってケーキのスライスを切断し、それを破砕し、次いでRotronic製Hygrolab v4_11ベンチトップインジケータを使用して、水分活性を得ることによって測定した。表11は、各ケーキの水分活性を示す。
【0103】
【0104】
図8は、表11のデータをグラフで示し、水分活性が、対照と全ての変形形態との間で非常に類似していることを示す。
【0105】
ケーキの感覚認知
全てのケーキに対する官能評価が、8人のテイスターのグループによって実行され、異なる膨張酸を有する試料における、対照及び陰性対照(アルロース)からの違いを識別した。以下は、各サンプルに対して与えられたコメントの要約である。
- アルロース陰性対照:トーストされた、少し焦げたアロマを有し、対照よりも高密度であり、アルロースが過剰な褐変及び風味の変化をもたらすことを実証している。
- クエン酸及び増量した重曹を含むアルロース:褐変にはいくらかの視覚的/分析的改善があるが、他の2つの試料と比較して、改善は比較的少ない。また、アルロース陰性対照のような、より高密度のテクスチャも有した。
- 酒石英を含むアルロース:褐色の外観及び褐変による風味が対照に最も近いと認知されるが、テクスチャ全体にわたり、わずかにより柔らかく、かつわずかによりふわふわである。
- グルコノデルタラクトンを含むアルロース:視覚的に魅力的な色を有した。全体として、セット内においては最も柔らかな試料であった。より「クリーンな」甘味及び良好なバニラケーキ風味を有した、より甘味があるとして知覚された。
- 3つの膨張酸試料のいずれも、これらの膨張酸の使用によりいかなるバランスの崩れ/異味も有さなかった。いずれの試料も、イエローケーキの一般的な特徴から許容できないということはなかった。
【0106】
実施例5
追加の色評価、並びにケーキの高さ、水分量、及び水分活性の測定に対する酒石英膨張酸の評価
酒石英を増加させて追加のケーキを焼成して、色、特に0.85%及び1.8%の使用量レベルの特徴を把握した。表3(上記)に示される同じケーキ配合物は、酒石英を、対照及び陰性対照の配合物に見られるレベル(表2に示すように0.31%)を超えて増加させたレベル範囲(0.85%、1.20%、1.80%)で含有するように作製した。
図9A~
図9Eは、対照(
図9A)及び陰性対照(
図9B)比較して、対照及び陰性対照における酒石英のレベルを超える酒石英を含有する完成したケーキの断面の写真(
図9C~
図9E)を示す。対照、陰性対照、並びに0.85%、1.2%、及び1.8%の酒石英レベルについて2つのケーキを異なる時点で焼成して測定し、各変数のデータを平均した。このデータ及び情報は、(実施例4に記載されているように)対照、陰性対照、及び1.2%の使用量レベルの初期分析データと組み合わされ、データは、ここでは、それらの試料の平均を反映し、実施例4のデータと比較したL、a、b、及びデルタL、デルタa、デルタb値に対するわずかな差違を説明する。
【0107】
ケーキの色(L*a*b*値として表される)を、Konica Minolta製手持ち式測色計を使用して評価して、褐変の減少の定量的尺度を得た。色評価は、ケーキの頂部の皮部分及び中身部分を、縁部から約1.5~2インチ及びケーキの中心のスライスの中央で測定し、皮部分の2つの測定値及び中身部分の2つの測定値を得た。表12は、測定された値を示し、表13は、全体平均を示す。
【0108】
【0109】
【0110】
図10は、表13のL
*a
*b
*値をグラフで示す。グラフは、左側に対照(全砂糖)を、右端にアルロース(陰性対照)を示す。酒石英膨張酸のレベルを増加させた評価対象ケーキ配合物がこれらの間に示されて、それらの間にL
*a
*b
*値を示す。示されるように、アルロース陰性対照は、皮部分及び中身部分の両方において、対照よりもより低いL
*値及びより高いa
*値を有した。アルロースと、0.85%、1.2%、及び1.8%の酒石英と、を有するケーキは、それぞれの使用量の増加によってL
*値をわずかに増加させ、a
*値をわずかに減少させ、それにより、より高い使用量レベルの結果は、対照に近づくことになる。
【0111】
表14はまた、L*a*及びb*の「デルタ」値(試料値から全砂糖対照値を引いた値)を示す。各ケーキの変数について、皮部分及び中身部分の全ての値を平均して、デルタ値計算で使用する値を得た。
【0112】
【0113】
酒石英を(0.85%、1.2%、及び1.8%の使用量レベルで)追加して作製されたケーキの全てのデルタ値は、デルタL*値が-10より大きく、デルタa*値が6.5未満であり、デルタb*値が最大+2.5、又は好ましくは最大+1.5未満であるという基準によれば、褐変における改善をもたらす。これは、陰性対照のデルタa*値及びデルタb*値とは対照的であり、それらは必要とされるこれらの標準には準拠していない。特に、陰性対照は、デルタL*値について特許請求の範囲(表8のクエン酸及び重曹の値)にほとんど準拠しない。この試験は、スクロースの代替としてアルロースを含む場合、過剰な褐変が問題であることを更に実証するものである。この色変化の緩和は、皮部分及び中身部分内の両方で明らかに褐変を低減させるために、0.85%以上1.80%以下の範囲内で酸性膨張剤の酒石英を変更することによって達成される。
【0114】
表3のケーキ配合物のケーキの高さは、デジタルキャリパーを使用して、ケーキの円直径にわたって、両側から約1.5~2インチ及び中心の3箇所で測定された。表15は、各ケーキの高さの平均測定値を示す。
【0115】
【0116】
図11は、表15のデータについて標準偏差エラーバーと共に平均値を示し、酒石英を用いて作成されたケーキが平均して、より高く膨らんだことを示すが、平均して膨らみの低い1.8%酒石英のケーキを除いて、対照の標準偏差範囲内にあることを示している。全ての結果は、全砂糖対照の許容範囲内である。
【0117】
ケーキの水分レベル
ケーキの水分は、直径に沿ってケーキのスライスを切断し、それを破砕し、次いで、Sartorius製MA35水分分析装置を使用して、水分含有量をパーセンテージで測定した。各試料について3回繰り返し測定を行った。表16は、各ケーキの平均水分値を示す。
【0118】
【0119】
図12は、表16のデータを、標準偏差エラーバーを用いてグラフで示し、水分含有量が、対照と全ての変形形態との間で非常に類似していることを示す。
【0120】
ケーキの水分活性
ケーキの水分活性は、直径に沿ってケーキのスライスを切断し、それを破砕し、次いでRotronic製Hygrolab v4_11ベンチトップインジケータを使用して、水分活性を得ることによって測定した。表17は、各ケーキの水分活性を示す。
【0121】
【0122】
図13は、表17のデータをグラフで示し、水分活性が、対照と全ての変形形態との間で非常に類似していることを示す。
【0123】
実施例6
追加の色評価、ケーキの高さ、水分、及び水分活性についてのグルコノデルタラクトン膨張酸の評価
グルコノデルタラクトンを増加させて追加のケーキを焼成して、色、特に0.85%及び1.8%の使用量レベルの特徴を把握した。表5(上記)に示される同じケーキ配合物は、グルコノデルタラクトンを、対照及び陰性対照の配合物に見られるレベル(表2に示すように0.31%)を超えて増加させたレベル範囲(0.85%、1.20%、1.80%)で含有するように作製した。
図14A~
図14Eは、対照(
図14A)及び陰性対照(
図14B)比較して、対照及び陰性対照におけるグルコノデルタラクトンのレベルを超えるグルコノデルタラクトンを含む完成したケーキの断面の写真(
図14C~
図14E)を示す。アルロース及びグルコノデルタラクトンを含有する全てのケーキは、アルロース陰性対照よりも、中身部分の褐変が少ないことを示しているが、0.85%では、下縁部/角に少量の褐変が依然として存在する。これらのケーキはまた、一般により大きい気泡を有して、わずかに多くの連続気泡構造を示し、対照又は陰性対照よりも密度が低いように見える。
【0124】
ケーキの色(L*a*b*値として表される)を、Konica Minolta製手持ち式測色計を使用して評価して、褐変の減少の定量的尺度を得た。色評価は、ケーキの頂部の皮部分及びケーキの中身部分を、縁部から約1.5~2インチ及びケーキの中心のスライスの中央で測定し、皮部分の2つの測定値及び中身部分の2つの測定値を得た。表18は、測定された値を示し、表19は、全体的な平均を示す。対照、陰性対照、並びに0.85%、1.2%、及び1.8%のグルコノデルタラクトンレベルについて2つのケーキを異なる時点で焼成して測定し、各変数のデータを平均した。このデータ及び情報は、(実施例4に記載されているように)対照、陰性対照、及び1.2%の使用量レベルの初期分析データと組み合され、データは、ここでは、それらの試料の平均を反映し、実施例4のデータと比較して、L、a、b、及びデルタL、デルタa、デルタb値へのわずかな差異を説明する。
【0125】
【0126】
【0127】
図15は、表16の、L
*a
*b
*の値をグラフで示す。グラフは、左側に対照(全砂糖)を、右端にアルロース(陰性対照)を示す。グルコノデルタラクトン(GDL)膨張酸のレベルを増加させた評価対象ケーキ配合物がこれらの間に示されて、それらの間にL
*a
*b
*値が示されている。示されるように、アルロース陰性対照は、皮部分及び中身部分の両方において、対照よりもより低いL
*値及びより高いa
*値を有した。アルロースと、0.85%、1.2%、及び1.8%のグルコノデルタラクトンと、を有するケーキは、それぞれの使用量の増加によってL
*値をわずかに増加させ、a
*値をわずかに減少させ、それにより、より高い使用量レベルの結果は、対照に近づくことになる。
【0128】
表20はまた、L*a*及びb*の「デルタ」値(試料値から全砂糖対照値を引いた値)を示す。各ケーキの変数について、皮部分及び中身部分の全ての値を平均して、デルタ値計算で使用する値を得た。
【0129】
【0130】
0.85%、1.2%、及び1.8%の使用量レベルでグルコノデルタラクトンを用いて作製されたケーキのデルタa*値及びデルタb*値は、褐変の改善を提供する。デルタa*値は+6.5未満であり、デルタb*値は最大+2.5未満又は好ましくは最大+1.5未満である。本明細書に記載されるように、1.2%及び1.8%のグルコノデルタラクトンを用いて作製されたケーキは、デルタL*値が-10より大きく、より少ない量のGDL(0.85%のグルコノデルタラクトン)を用いて作製されたケーキのデルタL*値は、-10より大きいという標準をわずかに超える。特に、陰性対照もまた同様に、デルタL*値にほぼ準拠しているが、デルタa*及びデルタb*の要求値には準拠していない。この試験は、スクロースの代替としてアルロースを含む場合、過剰な褐変が問題であることを更に実証するものである。この色変化の緩和は、皮部分及び中身部分内の両方で明らかに褐変を低減させるために、0.85%以上1.80%以下の範囲内で酸性膨張剤のGDLを変更することによって達成される。
【0131】
表5のケーキ配合物のケーキの高さは、デジタルキャリパーを使用して、ケーキの円直径にわたって、両側から約1.5~2インチ及び中心の3箇所で測定された。表21は、各ケーキの高さの平均測定値を示す。
【0132】
【0133】
図16は、表21のデータについて標準偏差スラーバーと共に平均値を示し、0.85%及び1.2%のグルコノデルタラクトンを用いて作製されたケーキが、対照及び陰性対照よりもわずかにより高く膨らんだことを示し、1.8%のグルコノデルタラクトンを用いたケーキは、対照とほぼ同じ高さであったことを示している。
【0134】
ケーキの水分レベル
ケーキの水分は、直径に沿ってケーキのスライスを切断し、それを破砕し、次いで、Sartorius製MA35水分分析装置を使用して、水分含有量をパーセンテージで測定した。各試料について3回繰り返し測定を行った。表22は、各ケーキの平均水分値を示す。
【0135】
【0136】
図17は、表22のデータを、標準偏差エラーバーを用いてグラフで示し、水分含有量が、対照と全ての変形形態との間で非常に類似していることを示す。
【0137】
ケーキの水分活性
ケーキの水分活性は、直径に沿ってケーキのスライスを切断し、それを破砕し、次いでRotronic製Hygrolab v4_11ベンチトップインジケータを使用して、水分活性を得ることによって測定した。表23は、各ケーキの水分活性を示す。
【0138】
【0139】
図18は、表23のデータをグラフで示し、水分活性が、対照と全ての変形形態との間で非常に類似していることを示す。
【0140】
実施例7
膨張及び褐変低減のための追加膨張酸の評価
追加の酸のリン酸一カルシウム、リン酸アルミニウムナトリウム、及び酸性ピロリン酸ナトリウムを評価して、それらが酒石英及びグルコノデルタラクトンに類似した褐変の低減効果を有するかどうかを判定した。リン酸一カルシウム、リン酸アルミニウムナトリウム、及び酸性ピロリン酸ナトリウムを、対照配合物中の酒石英と同じレベル(0.31%)で評価して、褐変を低減させる機能があるかどうかと併せて、膨張させる機能について初期に確認した。配合物を表24に示す。
【0141】
【0142】
図19は、対照及び陰性対照と比較した、評価対象の膨張酸を含有する完成したケーキの断面の写真(それぞれ
図19に標識されている)を示す。各膨張酸についての対照のレベル(0.31%)でのこの初期評価は、対照及び陰性対照における同じ使用量レベルでは酒石英と同様に機能し、効果的に膨らませ、褐変の低減にもわずかに影響を及ぼすことが確認される。
【0143】
実施例8
リン酸一カルシウム膨張酸の評価
表25は、対照及び陰性対照の配合物に見られるレベル(0.31%)を超えて増加させた、0.85%のリン酸一カルシウムを含有する配合物を示す。
【0144】
【0145】
図20A~
図20Cは、対照(
図20A)及び陰性対照(
図20B)と比較した、完成したケーキの断面の写真を示す。
図20Cに示されるように、リン酸一カルシウム膨張酸の増加は、皮部分及び中身部分の褐変を確かに低減したものの、ケーキが潰れて、密な、かつ/又はガム状の中身部分になった。作用機序に限定されるものではないが、リン酸一カルシウムの反応速度はより高速であるため、配合物中の含有量には、約0.85%未満、好ましくは、0.31%超0.5%未満などの0.31%超0.85%未満の下限を必要とし得る。
【0146】
実施例9
ケーキの高さ、水分、及び水分活性に対する酸性ピロリン酸ナトリウム膨張酸の評価
表26は、対照及び陰性対照の配合物に見られるレベル(0.31%)を超えて増加させた、0.85%、1.20%、及び1.80%の濃度レベル範囲の酸性ピロリン酸ナトリウム(SAPP)を含有する配合物を示す。
【0147】
【0148】
図21A~
図21Eは、対照(
図21A)及び陰性対照(
図21B)と比較して、対照及び陰性対照における酸性ピロリン酸ナトリウムのレベルを超えるグルコノデルタラクトンを含む完成したケーキの断面の写真(
図21C~
図21E)を示す。アルロース及び酸性ピロリン酸ナトリウムを含有する全てのケーキは、アルロースの陰性対照よりも、中身部分の褐変が少ないことを示しているが、その低減は、全ての使用量レベルで劇的に少ないのではなく、しかもケーキの角の中身部分は、最も高いレベルのSAPPを用いたケーキでもわずかに暗く見えるようであり、SAPPを有するケーキの頂部の皮部分は一般に、かなりよく褐変された状態のままである。特に、酸性ピロリン酸ナトリウムを用いて作製されたケーキは、陰性対照よりも半球形状が形成されておらず、1.8%の酸性ピロリン酸ナトリウムを用いたケーキは、ケーキの表面全体で比較的水平であった。膨張酸は、過剰な褐変を低減するのに有効であった。
【0149】
ケーキの色は、Konica Minolta製手持ち式測色計を使用して評価し、ケーキの頂部の皮部分及びケーキの中身部分を、縁部から約1.5~2インチ及びケーキの中心のスライスの中央で測定し、皮部分の2つの測定値及び中身部分の2つの測定値を得た。表27は測定値を示し、表28は全体平均を示し、
図22はこれらの値をグラフで示す。
【0150】
【0151】
【0152】
図22に示すように、アルロースと、0.85%、1.2%、及び1.8%のリン酸アルミニウムナトリウムと、を含むケーキは、それぞれの使用量の増加によってL
*値をわずかに増加させ、a
*値をわずかに減少させ、それにより、より高い使用量レベルの結果は、対照に近づくことになる。中身部分の褐変化は低減されているが、皮部分の褐変は持続するようであり、L
*値を平均して下げている。
【0153】
表29はまた、L*a*及びb*の「デルタ」値(試料値から全砂糖対照値を引いた値)を示す。各ケーキの変数について、皮部分及び中身部分の全ての値を平均して、デルタ値計算で使用する値を得た。
【0154】
【0155】
0.85%の使用量レベルでSAPPを用いて作製されたケーキのデルタL*、デルタa*、及びデルタb*値は、全測定値によれば褐変の改善を提供する。1.2%及び1.8%のSAPP使用量レベルは、デルタL*値が-10よりも大きい一方で、褐変並びにデルタa*値及びデルタb*値の改善を提供する。ここで示されるように、1.2%、及び1.8%量のSAPPを用いて作製されたケーキのデルタL*値は、-13よりも大きいデルタL*値を有する。
【0156】
ケーキの高さ
表26のケーキ配合物のケーキの高さは、デジタルキャリパーを使用して、ケーキの円直径にわたって、両側から約1.5~2インチ及び中心の3箇所で測定された。表30は、各ケーキの高さの平均測定値を示す。
【0157】
【0158】
図23は、表30のデータについて標準偏差エラーバーとともに平均値を示し、酸性ピロリン酸ナトリウムを用いて作製されたケーキが平均して、対照よりほんのわずかにより高くまで膨らんだことを示している。
【0159】
ケーキの水分レベル
ケーキの水分は、直径に沿ってケーキのスライスを切断し、それを破砕し、次いで、Sartorius製MA35水分分析装置を使用して、水分含有量をパーセンテージで測定した。各試料について3回繰り返し測定を行った。表31は、各ケーキの平均水分値を示す。
【0160】
【0161】
図24は、表31のデータを標準偏差エラーバーと共に示すグラフであり、酸性ピロリン酸ナトリウムを有するケーキが、対照及び陰性対照よりもわずかに低いがそれと同等の水分含有量を有することを実証する。
【0162】
ケーキの水分活性
ケーキの水分活性は、直径に沿ってケーキのスライスを切断し、それを破砕し、次いでRotronic製Hygrolab v4_11ベンチトップインジケータを使用して、水分活性を得ることによって測定した。表32は、各ケーキの水分活性を示す。
【0163】
【0164】
図25は、表36のデータをグラフで示し、水分活性が、対照と全ての変形形態との間で非常に類似していることを示す。
【0165】
実施例10
ケーキの高さ、水分、及び水分活性に対するリン酸アルミニウムナトリウム膨張酸評価
表33は、対照及び陰性対照の配合物に見られるレベル(0.31%)を超えて増加させた、0.85%、1.20%、及び1.80%のレベル範囲のリン酸アルミニウムナトリウム(SAP)を含有する配合物を示す。
【0166】
【0167】
図26A~
図26Eは、対照(
図26A)及び陰性対照(
図26B)と比較して、対照及び陰性対照におけるリン酸アルミニウムナトリウムのレベルを超えるリン酸アルミニウムナトリウムを含む完成したケーキの断面の写真(
図26C~
図26E)を示す。アルロース及びリン酸アルミニウムナトリウムを含有する全てのケーキは、アルロース陰性対照よりも、中身部分の褐変が少ないことを示しているが、0.85%では、下縁部/角に少量の褐変が依然として存在する。1.8%のリン酸アルミニウムナトリウムを用いたケーキは、著しく明るい頂部の皮部分を有した。しかし、全体として、褐変を低減することに成功しており、中身部分の構造及びテクスチャに対して、有意な影響を及ぼしていない。
【0168】
ケーキの色は、Konica Minolta製手持ち式測色計を使用して評価し、ケーキの頂部の皮部分及びケーキの中身部分を、縁部から約1.5~2インチ及びケーキの中心のスライスの中央で測定し、皮部分の2つの測定値及び中身部分の2つの測定値を得た。表34は測定値を示し、表35は全体平均を示し、
図27はこれらの値をグラフで示す。
【0169】
【0170】
【0171】
図27に示すように、アルロースと、0.85%、1.2%、及び1.8%のリン酸アルミニウムナトリウムと、を含むケーキは、それぞれの使用量の増加によってL
*値をわずかに増加させ、a
*値をわずかに減少させ、それにより、より高い使用量レベルの結果は、陰性対照のケーキの値よりも対照のケーキの値に近づくことになる。
【0172】
表36はまた、L*a*及びb*の「デルタ」値(試料値から全砂糖対照値を引いた値)を示す。各ケーキの変数について、皮部分及び中身部分の全ての値を平均して、デルタ値計算で使用する値を得た。
【0173】
【0174】
追加のリン酸アルミニウムナトリウム(使用量レベルは、0.85%、1.2%、及び1.8%)を用いて作製されたケーキの全てのデルタ値は、本特許に記載されている褐変改善の標準に準拠するものである。すなわち、デルタL*値は、-10よりも大きく、デルタa*値は、+6.5未満であり、デルタb*値は、+1.5未満である。これは、陰性対照のデルタa*値及びデルタb*値とは対照的であり、それらは必要とされるこれらの標準には適合していない。
【0175】
ケーキの高さ
表33のケーキ配合物のケーキそれぞれの高さは、デジタルキャリパーを使用して、ケーキの円直径沿いに、両側から約1.5~2インチ及び中心の3箇所で測定された。表37は、各ケーキの高さの平均測定値を示す。
【0176】
【0177】
図28は、表37のデータについて標準偏差エラーバーと共に平均値を示し、リン酸アルミニウムナトリウムを用いて作製されたケーキが、対照及び陰性対照よりも概ねより高くまで膨らんだことを示している。
【0178】
ケーキの水分レベル
ケーキの水分は、直径に沿ってケーキのスライスを切断し、それを破砕し、次いで、Sartorius製MA35水分分析装置を使用して、水分含有量をパーセンテージで測定した。各試料について3回繰り返し測定を行った。表38は、各ケーキの平均水分値を示す。
【0179】
【0180】
図29は、表38のデータを、標準偏差スラーバーと共にグラフであり、リン酸アルミニウムナトリウムを有するケーキが、対照よりもわずかに低い水分含有量を有することを実証する。
【0181】
ケーキの水分活性
ケーキの水分活性は、直径に沿ってケーキのスライスを切断し、それを破砕し、次いでRotronic製Hygrolab v4_11ベンチトップインジケータを使用して、水分活性を得ることによって測定した。表39は、各ケーキの水分活性を示す。
【0182】
【0183】
図30は、表39のデータをグラフで示し、水分活性が、対照と全ての変形形態との間で非常に類似していることを示す。
【国際調査報告】