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特表2022-553375オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)構築物およびそれを使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)構築物およびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/54 20060101AFI20221215BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 47/30 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 38/43 20060101ALI20221215BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20221215BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20221215BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20221215BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221215BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221215BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221215BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221215BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221215BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
C12N15/54 ZNA
A61P3/00
A61P7/00
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K31/7088
A61K9/51
A61K9/14
A61K9/127
A61K9/107
A61K47/46
A61K47/30
A61K47/24
A61K47/28
A61K38/43
C12N15/12
C12N15/86 Z
C12N15/88 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523854
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(85)【翻訳文提出日】2022-06-07
(86)【国際出願番号】 US2020056890
(87)【国際公開番号】W WO2021081225
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】62/924,567
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522162266
【氏名又は名称】ジェネバント サイエンシズ ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】522162277
【氏名又は名称】プリーブ メアリー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】プリーブ メアリー
(72)【発明者】
【氏名】デーリー オーウェン
(72)【発明者】
【氏名】ラム キーウ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイズ ジェイムス
(72)【発明者】
【氏名】ホランド リチャード
(72)【発明者】
【氏名】エサウ クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】ヤウォルスキ エド
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B050CC03
4B050DD11
4B050LL01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA86X
4B065AA87X
4B065AA87Y
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA27
4B065CA44
4C076AA17
4C076AA19
4C076AA31
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC21
4C076CC29
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE01
4C076EE23
4C076EE56
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA13
4C084BA44
4C084CA53
4C084DC01
4C084MA05
4C084MA22
4C084MA24
4C084MA38
4C084MA41
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC211
4C084ZC212
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA22
4C086MA24
4C086MA38
4C086MA41
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZA51
4C086ZB21
4C086ZC21
(57)【要約】
本開示は特に、ポリヌクレオチド構築物、組成物、ならびに、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症を処置する方法であって、それを必要とする対象に、5' UTRとオルニチントランスカルバミラーゼをコードするコドン最適化されたmRNAと3' UTRとを含むポリヌクレオチド構築物を含む組成物を投与する段階を含む、該方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5'から3'に向かって、
(a) SEQ ID NO: 2の配列を含む5' UTR;
(b) 機能的なヒトオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むmRNA配列であって、ORFが、SEQ ID NO: 1と少なくとも約95%同一であるコドン最適化された配列を含む、該mRNA配列;および
(c) SEQ ID NO: 3の配列を含む3' UTR
を含む、ポリヌクレオチド構築物。
【請求項2】
機能的なヒトオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むmRNA配列を含むポリヌクレオチド構築物であって、該mRNA配列が、SEQ ID NO: 4とは異なる5個以下の核酸を有する配列を含む、該ポリヌクレオチド構築物。
【請求項3】
5'から3'に向かって、
(a) 5' UTR;
(b) 前記OTCをコードするORFを含むmRNA配列;および
(c) 3' UTR
を含む、請求項2に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項4】
前記5' UTRがSEQ ID NO: 2の配列を含む、請求項3に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項5】
前記3' UTRがSEQ ID NO: 3の配列を含む、請求項3または4に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項6】
前記機能的なOTCがSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項7】
OFR配列がSEQ ID NO: 1を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項8】
前記mRNA配列が、SEQ ID NO: 4とは異なる4個以下、3個以下、2個以下、または1個以下の核酸を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項9】
SEQ ID NO: 4の配列を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項10】
5'末端キャップをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項11】
前記5'末端キャップがCap1である、請求項10に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項12】
ポリAテールをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項13】
前記ポリAテールが核酸80~1000個の長さである、請求項12に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項14】
前記ポリAテールが核酸100~500個の長さである、請求項12に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項15】
前記mRNAが、少なくとも1つの化学修飾ウリジンを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項16】
前記ウリジンの少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%が化学修飾されている、請求項15に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項17】
前記化学修飾ウリジンが、シュードウリジン(Ψ)、N1-メチルシュードウリジン(N1-me-Ψ)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項15または16に記載のポリヌクレオチド構築物。
【請求項18】
(a) 請求項1~17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド構築物;および
(b) 送達作用物質
を含む、組成物。
【請求項19】
前記送達作用物質が、脂質ナノ粒子(LNP)、リポソーム、重合体、ミセル、プラスミド、ウイルス、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記LNPが、PEG2000-C-DMA:13-B43:コレステロール:DSPC、PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC、PEG2000-S:18-B6:コレステロール:DSPC、およびPEG750-C-DLA:18-B6:コレステロール:DSPCからなる群より選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポリヌクレオチド構築物が前記LNP中に封入されている、請求項19または20に記載の組成物。
【請求項22】
前記ポリヌクレオチド構築物が前記LNP中に完全に封入されている、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
前記ポリヌクレオチド構築物の少なくとも95%が前記LNP中に封入されている、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項18~23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
細胞においてOTCの発現量を増加させるための方法であって、
該細胞に、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド構築物を含む組成物、または請求項18~24のいずれか一項に記載の組成物を投与する段階を含む、該方法。
【請求項26】
前記細胞が肝細胞である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTCD)に関連する症状を処置するかまたは低減させるための方法であって、
それを必要とする対象に、治療的有効量の、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド構築物を含む組成物、または請求項18~24のいずれか一項に記載の組成物を投与する段階を含む、該方法。
【請求項28】
OTCDを有する対象において高アンモニア血症を処置するかまたは高アンモニア血症のリスクを低下させるための方法であって、
それを必要とする対象に、治療的有効量の、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド構築物を含む組成物、または請求項18~24のいずれか一項に記載の組成物を投与する段階を含む、該方法。
【請求項29】
SEQ ID NO: 8に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む、発現カセット。
【請求項30】
プロモーターをさらに含む、請求項29に記載の発現カセット。
【請求項31】
前記プロモーターがT7プロモーターである、請求項30に記載の発現カセット。
【請求項32】
請求項29~31のいずれか一項に記載の発現カセットを含む、プラスミド。
【請求項33】
請求項29~31のいずれか一項に記載の発現カセットを含むかまたは請求項32に記載のプラスミドを含む、宿主細胞。
【請求項34】
それを必要とする対象においてOTCDを処置するための医薬を製造するための、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド構築物または請求項18~24のいずれか一項に記載の組成物または請求項29~31のいずれか一項に記載の発現カセットまたは請求項32に記載のプラスミドまたは請求項33に記載の宿主細胞の使用。
【請求項35】
OTCDを有する対象において高アンモニア血症を処置するかまたは高アンモニア血症のリスクを低下させるための医薬を製造するための、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド構築物または請求項18~24のいずれか一項に記載の組成物または請求項29~31のいずれか一項に記載の発現カセットまたは請求項32に記載のプラスミドまたは請求項33に記載の宿主細胞の使用。
【請求項36】
核酸のインビボ送達のための方法であって、
哺乳動物対象に、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド構築物または請求項18~24のいずれか一項に記載の組成物または請求項29~31のいずれか一項に記載の発現カセットまたは請求項32に記載のプラスミドまたは請求項33に記載の宿主細胞を投与する段階を含む、該方法。
【請求項37】
それを必要とする哺乳動物対象において疾患または異常を処置するための方法であって、
該哺乳動物対象に、治療的有効量の、請求項1~17のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド構築物または請求項18~24のいずれか一項に記載の組成物または請求項29~31のいずれか一項に記載の発現カセットまたは請求項32に記載のプラスミドまたは請求項33に記載の宿主細胞を投与する段階を含む、該方法。
【請求項38】
前記疾患または異常が尿素サイクル異常症である、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月22日に提出された米国特許仮出願第62/924,567号の優先権を主張するものであり、該仮出願の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本出願とともに提出されたASCIIテキストファイル(ファイル名:4170_021PC01_Seqlisting_ST25;サイズ:13,467バイト;および作成日:2020年10月21日)内の、電子的に提出された配列表の内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
背景
オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTC欠損症またはOTCD)は、機能的なオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)酵素の完全なまたは部分的な欠如によって特徴付けられる、X染色体連鎖性の遺伝子疾患であり、該欠如は、典型的にはOTC遺伝子における変異によって引き起こされる。OTC遺伝子における変異は、カルバモイルリン酸(CP)およびオルニチン(Orn)からのシトルリン(Cit)およびリン酸(Pi)の合成(肝臓および小腸において)を触媒するというOTC酵素の能力を、消失または減少させる可能性がある。尿素サイクルのこの機能不全は、過剰なアンモニアをもたらし得、アンモニアは血中に蓄積し得(高アンモニア血症)、かつ神経系へと移動し得、結果として、OTC欠損症に関連する諸症状を引き起こす。
【0004】
OTC欠損症は、尿素サイクル異常症のうちの最も多いタイプである。ヒトOTCにおいては、数百種類の変異が報告されている。同一家系内であっても、および/または同一の原因変異であっても、OTC欠損症の重症度および発症年齢は人によって異なる。該異常症の重症型は、生後すぐに一部の子どもに、典型的には男性に、影響を及ぼす。該異常症の軽症型は、乳児期後期に一部の子どもに影響を及ぼす。小児期にOTC欠損症の症状を発症する可能性は、男性および女性の両方にある。
【0005】
現在、肝臓移植以外には、OTC欠損症を有する人々を治癒させる方法はなく、かつ長期にわたる治療法は、タンパク質摂取の生涯にわたる制限、ならびに窒素スカベンジャー療法(たとえば、フェニル酢酸ナトリウムもしくはフェニル酪酸ナトリウム、および/または安息香酸ナトリウム)を伴う。肝臓移植もまた、重症の新生児期発症OTC欠損症を有する患者において、または高頻度の高アンモニア血症エピソードを有する患者において、検討され得る。
【0006】
RNA分子は、インビトロおよびインビボにおける遺伝子発現に対し、強力な調節剤として作用する能力を有しており、かつしたがって、核酸ベースの薬剤としての潜在性を有している。これらの分子は、細胞のタンパク質との特異的な相互作用か、または他のRNA分子との塩基対形成相互作用のいずれかを利用するいくつかの機構を通じて、機能を発揮し得る。タンパク質産生が不十分であるかまたは問題があるという点によって特徴付けられる異常に関し、治療用mRNAは、欠損しているかまたは問題があるという当該タンパク質を産生するようにリボソームに指示を送ることについて、潜在性を有している。RNA治療薬は、血流内で迅速に分解および排出される傾向があり、かつ細胞膜を自由に通過できるわけではないために、これらの治療薬の効率が良くかつ効果的な細胞内送達は、困難である。
【0007】
たとえばRNAなどの外来のポリヌクレオチド、および他の膜不透過性化合物の、生細胞内への送達は、細胞の複雑な膜系によって大幅に制限されている。典型的には、アンチセンス療法および遺伝子療法に使用される分子は、巨大で、負に荷電しており、かつ親水性である、分子である。これらの特徴は、それらの分子が細胞膜を通過して細胞質へと直接的に拡散することを、妨げ得る。したがって、遺伝子の発現を調節するためのポリヌクレオチドを治療目的で使用することに対する主な障壁は、該ポリヌクレオチドの、細胞質への送達である。トランスフェクション剤は、典型的にはペプチド、重合体、およびカチオン性脂質を含むとともに、ナノ粒子およびマイクロ粒子をも含む。これらのトランスフェクション剤は、インビトロ反応において成功裏に使用されている。しかしながらインビボにおいては、有効性および毒性に関して課題が存在する。さらに、これらの系の陽イオン電荷は、血清の成分との相互作用を引き起こし得、これは、ポリヌクレオチドとトランスフェクション試薬との相互作用を不安定にさせ、かつ、バイオアベイラビリティおよび標的化を不十分なものにしてしまう。インビボで核酸をトランスフェクトする場合、送達作用物質は、細胞外での予定より早い分解から、たとえばヌクレアーゼから、核酸ペイロードを保護する必要がある。さらに、送達作用物質は、適応免疫系によって認識される(免疫原性である)ものであってはならず、かつ急性の免疫応答を刺激するものであってはならない。
【発明の概要】
【0008】
概要
本開示はポリヌクレオチド構築物を提供し、該構築物は、5'から3'に向かって以下を含む:SEQ ID NO: 2の配列を含む5' UTR;機能的なヒトオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むmRNA配列であって、ORFが、SEQ ID NO: 1と少なくとも約95%同一であるコドン最適化された配列を含む、mRNA配列;およびSEQ ID NO: 3の配列を含む3' UTR。
【0009】
ある局面において、本開示は、機能的なヒトオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むmRNA配列を含むポリヌクレオチド構築物を提供し、該mRNA配列は、SEQ ID NO: 4とは異なる5個以下の核酸を有する配列を含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、5'から3'に向かって以下を含む:5' UTR;OTCをコードするORFを含む、mRNA配列;および3' UTR。ある局面において、5' UTRはSEQ ID NO: 2の配列を含み、かつ/または3' UTRはSEQ ID NO: 3の配列を含む。いくつかの局面において、機能的なOTCはSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含む。いくつかの局面において、ORF配列はSEQ ID NO: 1を含む。
【0010】
いくつかの局面において、mRNA配列は、SEQ ID NO: 4とは異なる、4個以下、3個以下、2個以下、または1個以下の核酸を有する。ある局面において、ポリヌクレオチド構築物はSEQ ID NO: 4の配列を含む。
【0011】
いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、5'末端キャップ、たとえばCap1を、さらに含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、ポリAテールをさらに含む。ある局面において、ポリAテールは、核酸80~1000個の長さ、たとえば核酸100~500個の長さである。
【0012】
いくつかの局面において、mRNAは少なくとも1つの化学修飾ウリジンを含む。ある局面において、ウリジンの少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または約100%は、化学修飾されている。いくつかの局面において、化学修飾ウリジンは、シュードウリジン(Ψ)、N1-メチルシュードウリジン(N1-me-Ψ)、および/またはそれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0013】
本開示のある局面は、組成物を指向しており、該組成物は以下を含む:本開示のポリヌクレオチド構築物;および送達作用物質。いくつかの局面において、送達作用物質は、脂質ナノ粒子(LNP)、リポソーム、重合体、ミセル、プラスミド、ウイルス、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0014】
ある局面において、LNPは、LNP1(PEG2000-C-DMA:13-B43:コレステロール:DSPC)、LNP2(PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC、またはPEG2000-S:18-B6:コレステロール:DSPC)、およびLNP3(PEG750-C-DLA:18-B6:コレステロール:DSPC)の群のうちの組成物からなる群より選択される。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物はLNP中に封入されている。いくつかの局面において、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物はLNP中に完全に封入されている。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物の少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより多くは、LNPに封入されている。
【0015】
本開示のある局面は、細胞においてOTCの発現量を増加させるための方法を指向しており、該方法は、細胞に、本開示のポリヌクレオチド構築物を含む組成物、または本開示の組成物を投与する段階を含む。いくつかの局面において、細胞は肝細胞である。
【0016】
本開示のある局面は、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTCD)に関連する症状を処置するかまたは低減させるための方法を指向しており、該方法は、それを必要とする対象に、治療的有効量の、本開示のポリヌクレオチド構築物を含む組成物、または本開示の組成物を投与する段階を含む。
【0017】
本開示のある局面は、OTCDを有する対象において高アンモニア血症を処置するかまたは高アンモニア血症のリスクを低下させるための方法を指向しており、該方法は、それを必要とする対象に、治療的有効量の、本開示のポリヌクレオチド構築物を含む組成物、または本開示の組成物を投与する段階を含む。
【0018】
本開示のある局面は、SEQ ID NO: 8に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するDNA配列を含む発現カセットを指向する。いくつかの局面において、発現カセットはプロモーター、たとえばT7プロモーターを、さらに含む。本開示のいくつかの局面は、本開示の発現カセットを含むプラスミドを指向する。いくつかの局面において、発現カセットは、本開示のmRNA(たとえば、SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 4を含むmRNA)を転写する。本開示のいくつかの局面は、本開示の発現カセットを含むかまたは本開示のプラスミドを含む、宿主細胞を指向する。
【0019】
本開示のある局面は、それを必要とする対象においてOTCDを処置するための医薬を製造するかまたはOTCDを有する対象において高アンモニア血症を処置するもしくは高アンモニア血症のリスクを低下させるための医薬を製造するための、本開示のポリヌクレオチド構築物または本開示の組成物または本開示の発現カセットまたは本開示のプラスミドまたは本開示の宿主細胞の使用を指向する。
【0020】
本開示のある局面は、核酸のインビボ送達のための方法を指向しており、該方法は、哺乳動物対象に、本開示のポリヌクレオチド構築物、または本開示の組成物、または本開示の発現カセット、または本開示のプラスミド、または本開示の宿主細胞を投与する段階を含む。
【0021】
本開示のある局面は、それを必要とする哺乳動物対象において疾患または異常を処置するための方法を指向しており、該方法は、哺乳動物対象に、治療的有効量の、本開示のポリヌクレオチド構築物、または本開示の組成物、または本開示の発現カセット、または本開示のプラスミド、または本開示の宿主細胞を投与する段階を含む。いくつかの局面において、疾患または異常は尿素サイクル異常症である。
【0022】
これらの局面および他の局面は、以下の詳細な説明を読むことにより明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
いくつかの例において、本開示は、本開示のさまざまな局面の、以下の詳細な説明を、以下の添付の図面と組み合わせて検討することにより、より完全に理解することができる。
図1】異なるポリ(A)テール長(ヌクレオチド80個、161個、208個、262個、322個、または440個)を有するコドン最適化されたOTC構築物(OTC mRNA)を封入しているLNPの投与を受けたラットにおける、PBS対照と比較した、1回目の投薬から6時間後のMCP-1の誘導を示す。ヌクレオチド80個のポリ(A)はコードされているものであり、かつ他の試験ポリ(A)は酵素によるものであった(enz)。
図2A】異なるポリ(A)テール長(ヌクレオチド80個、161個、208個、262個、322個、または440個)を有するコドン最適化されたOTC構築物(OTC mRNA)を封入しているLNPの投与を受けたラットにおける、PBS対照と比較した、それぞれ第0日、第7日、および第14日における1回目、2回目、および3回目の投薬から6時間後の、MCP-1の誘導を示す。ヌクレオチド80個のポリ(A)はコードされているものであり、かつ他の試験ポリ(A)は酵素によるものであった(enz)。
図2B】異なるポリ(A)テール長(ヌクレオチド80個、161個、208個、262個、322個、または440個)を有するコドン最適化されたOTC構築物(OTC mRNA)を封入しているLNPの投与を受けたラットにおける、PBS対照と比較した、それぞれ第0日、第7日、および第14日における1回目、2回目、および3回目の投薬から6時間後の、IP-1の誘導を示す。ヌクレオチド80個のポリ(A)はコードされているものであり、かつ他の試験ポリ(A)は酵素によるものであった(enz)。
図3A】異なるポリ(A)テール長(ヌクレオチド80個、161個、208個、262個、322個、または440個)を有するコドン最適化されたOTC構築物(OTC mRNA)を封入しているLNPの単回投与後の、PBS対照と比較した、ラットの肝臓におけるhOTCタンパク質の発現を示す。ヌクレオチド80個のポリ(A)はコードされているものであり、かつ他の試験ポリ(A)は酵素によるものであった(enz)。
図3B】異なるポリ(A)テール長(ヌクレオチド80個、161個、208個、262個、322個、または440個)を有するコドン最適化されたOTC構築物(OTC mRNA)を保持するLNPの単回投与後 対 複数回投与後の、PBS対照と比較した、ラットの肝臓におけるhOTCタンパク質の発現を示す。ヌクレオチド80個のポリ(A)はコードされているものであり、かつ他の試験ポリ(A)は酵素によるものであった(enz)。
図4】PsU、N1MePsU、または5MoUという異なる修飾を有するOTC構築物(OTC mRNA)を封入しているLNP1かまたはLNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)の投与を受けた群のマウスにおける、PBS対照と比較した、1回目の投薬から6時間後のMCP-1の誘導を示す。
図5】PsU、N1MePsU、またはSMoUという異なる修飾を有するOTC構築物を封入しているLNP1かまたはLNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)の投与を受けた群のマウスにおける、PBS対照と比較した、投薬の24時間後のhOTCの発現を示す。
図6A】コドン最適化されたOTC構築物(OTC mRNA)を封入している異なるLNP(LNP1、LNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)、LNP2(イオン化可能な脂質:18-B6)、またはLNP3)の投与を受けた群のラットにおける、EPOペイロードおよびLucペイロードと比較した、抗PEG IgG抗体応答を示す。
図6B】コドン最適化されたOTC構築物(OTC mRNA)を封入している異なるLNP(LNP1、LNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)、LNP2(イオン化可能な脂質:18-B6)、またはLNP3)の投与を受けた群のラットにおける、EPOペイロードおよびLucペイロードと比較した、抗PEG IgM抗体応答を示す。
図7】第0日、第7日、および第14日における、コドン最適化されたOTC構築物(OTC mRNA)を封入している異なるLNP(LNP1、LNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)、LNP2(イオン化可能な脂質:18-B6)、またはLNP3)の投与を受けた群のラットにおいて6時間の時点での、EPOペイロードおよびLucペイロード、ならびにPBSと比較した、MCP-1の誘導を示す。
図8】コドン最適化されたOTC構築物(OTC mRNA)を封入している異なるLNP(LNP1、LNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)、LNP2(イオン化可能な脂質:18-B6)、またはLNP3)の投与を受けた群のラットにおける、1回目の投薬後および3回目の投薬後のOTCタンパク質の発現を示す。
図9】コドン最適化されたOTC構築物(OTC mRNA)を封入している異なるLNP(LNP1、LNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)、LNP2(イオン化可能な脂質:18-B6)、またはLNP3)の投与を受けた後の群のラットの肝臓における、1回目の投薬後および3回目の投薬後の脂質の濃度(クリアランス)を示す。
図10A】コドン最適化されたOTC構築物(OTC mRNA)を封入している異なるLNP(LNP1、LNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)、LNP2(イオン化可能な脂質:18-B6)、またはLNP3)の投与を受けた後の群のラットにおける、1回目の投薬後および3回目の投薬後のALTレベルを示す。
図10B】コドン最適化されたOTC構築物(OTC mRNA)を封入している異なるLNP(LNP1、LNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)、LNP2(イオン化可能な脂質:18-B6)、またはLNP3)の投与を受けた後の群のラットにおける、1回目の投薬後および3回目の投薬後のASTレベルを示す。
図11A】コドン最適化されたOTC構築物を封入しているLNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物の投与に続くものである、週1回の反復投与後のサイトカイン応答を示す。図11Aは、投薬の6時間後のMCP-1の誘導を示す。
図11B】コドン最適化されたOTC構築物を封入しているLNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物の投与に続くものである、週1回の反復投与後のサイトカイン応答を示す。図11Bは、投薬の6時間後のIP-10の誘導を示す。
図11C】コドン最適化されたOTC構築物を封入しているLNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物の投与に続くものである、週1回の反復投与後のサイトカイン応答を示す。図11Cは、投薬の6時間後のMIP-1aの誘導を示す。
図12】PBS対照と比較した、コドン最適化されたOTC構築物を封入しているLNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)の投与に続くものである、週1回の反復投与後の抗PEG IgM抗体応答を示す。
図13】PBS対照と比較した、コドン最適化されたOTC構築物を封入しているLNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物の投与に続くものである、週1回の反復投与後の抗PEG IgG抗体応答を示す。
図14】PBS対照と比較した、コドン最適化されたOTC構築物を封入しているLNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物の投与に続くものである、週1回の反復投与後の抗OTC IgM抗体応答を示す。
図15】PBS対照と比較した、コドン最適化されたOTC構築物を封入しているLNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物の投与に続くものである、週1回の反復投与後の抗OTC IgM抗体応答を示す。
図16】コドン最適化されたOTC構築物を封入しているLNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物の投与を受けたラットにおける、週1回の反復投与後のOTCタンパク質の発現を示す。
図17図17A~17Bは、コドン最適化されたOTC構築物を封入しているLNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物の投与を受けたラットの、(A) 肝臓および(B) 血漿におけるヒトOTC mRNA(hOTC mRNA)を示す。
図18A】コドン最適化されたOTC構築物を封入している、LNP1組成物、LNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物、またはLNP2(イオン化可能な脂質:18-B6)組成物の投与を受けたラットの肝臓における、投薬の24時間後の平均のALTレベルを示す。
図18B】コドン最適化されたOTC構築物を封入している、LNP1組成物、LNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物、またはLNP2(イオン化可能な脂質:18-B6)組成物の投与を受けたラットの肝臓における、投薬の24時間後の平均のASTレベルを示す。
図18C】コドン最適化されたOTC構築物を封入している、LNP1組成物、LNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物、またはLNP2(イオン化可能な脂質:18-B6)組成物の投与を受けたラットの肝臓における、投薬の24時間後の、個々の(R1、R2、またはR3)および平均のALTレベルを示す。
図18D】コドン最適化されたOTC構築物を封入している、LNP1組成物、LNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物、またはLNP2(イオン化可能な脂質:18-B6)組成物の投与を受けたラットの肝臓における、投薬の24時間後の、個々の(R1、R2、またはR3)および平均のAST1レベルを示す。
図19図19A~19Dは、コドン最適化されたOTC構築物を封入している、LNP1組成物、LNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物、またはLNP2(イオン化可能な脂質:18-B6)組成物の投与を受けたラットにおける、投薬の24時間後の(A) 平均のGGTレベル、(B) 総ビリルビンレベル、(C) 個々の(R1、R2、またはR3)および平均のGGTレベル、ならびに(D) 個々の(R1、R2、またはR3)および平均の総ビリルビンレベルを示す。
図20図20A~20Cは、コドン最適化されたOTC構築物を封入している、LNP1組成物、LNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物、またはLNP2(イオン化可能な脂質:18-B6)組成物の投与を受けたラットにおける、投薬の24時間後の(A) 好中球レベル、(B) 単球レベル、および(C) 血小板レベルを示す。
図21図21A~21Cは、コドン最適化されたOTC構築物を封入している、LNP1組成物、LNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物、またはLNP2(イオン化可能な脂質:18-B6)組成物の投与を受けたラットにおける、投薬の6時間後の(A) MCP-1レベル、(B) MIP-1aレベル、および(C) IP-10レベルを示す。
図22】コドン最適化されたOTC構築物を封入している、LNP1組成物またはLNP2(イオン化可能な脂質:13-B43)組成物の投与を受けたラットにおける、投薬の24時間後のOTCの発現を示す。
図23図23A~23Cは、0.25 mg/kg、1 mg/kg、および3 mg/kgで、コドン最適化されたOTC mRNA構築物を封入しているLNP1の投与を受けた非ヒト霊長類の肝臓における、(A) ヒトOTC(hOTC)、(B) MCP-1、および(C) IL-6のタンパク質発現レベルを示す。hOTCタンパク質の発現は、内因性のものに対する%として示され、かつMCP-1およびIL-6のタンパク質発現は、0 mg/kgである対照と比較して示される。
【発明を実施するための形態】
【0024】
詳細な説明
本開示は、改善されたポリヌクレオチド(たとえばmRNA)、組成物、および細胞においてオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)の機能的な酵素を発現させるための方法、ならびにそのようなポリヌクレオチド、組成物の使用、およびOTC欠損症を有する対象を処置するための方法を指向する。別途定義されない限り、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、記載される方法および組成物に関連する技術分野の当業者によって通常理解されるものと、同じ意味を有する。本明細書において提供される定義は、本明細書において頻繁に使用されるいくつかの用語の理解を支援するためのものである。
【0025】
本明細書、および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形の、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、内容が明確に他を示していない限り、複数形の指示対象を有する局面を包含する。
【0026】
本明細書において使用される場合、「核酸」との用語は、広義で、たとえばホスホジエステル結合を介して、ポリヌクレオチド鎖に組み込まれているか、またはポリヌクレオチド鎖に組み込まれることが可能である、任意の化合物および/または物質を指す。いくつかの局面において、「核酸」とは、個々の核酸残基(たとえばヌクレオチドおよび/またはヌクレオシド)を指す。いくつかの局面において、「核酸」とは、個々の核酸残基を含むポリヌクレオチド鎖を指す。いくつかの局面において、「核酸」とは、RNA、たとえばmRNAを包含し、かつ一本鎖および/もしくは二本鎖のDNA、ならびに/または一本鎖および/もしくは二本鎖のcDNAをも包含する。
【0027】
本明細書において使用される場合、「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」との用語は、7~20,000個のヌクレオチド単量体単位(すなわち、7個のヌクレオチド単量体単位から20,000個のヌクレオチド単量体単位までが包含される)を含む、重合体を指す。ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)、またはそれらの誘導体を含み、かつDNAとRNAとの組み合わせを含む。たとえば、DNAは以下の形であり得る:cDNA、インビトロで重合させたDNA、プラスミドDNA、プラスミドDNAの一部、発現ベクター、発現カセット、キメラ配列、組み換えDNA、染色体DNA、またはそれらの任意の誘導体。さらなる例において、RNAは以下の形であり得る:メッセンジャーRNA(mRNA)、インビトロで重合させたRNA、組み換えRNA、トランスファーRNA(tRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、リボソームRNA(rRNA)、キメラ配列、組み換えRNA、またはそれらの任意の誘導体。加えて、DNAおよびRNAは、一本鎖、二本鎖、三本鎖、または四本鎖であり得る。
【0028】
本明細書において使用されるポリヌクレオチドのさらなる例は、一本鎖mRNAを含むが、これに限定されず、該一本鎖mRNAは、修飾されていてよく、または未修飾であってもよい。修飾mRNAは、少なくとも2つの修飾、および1つの翻訳可能な領域を有するものを含む。修飾は、核酸分子のバックボーンおよび/またはヌクレオシドに位置し得る。修飾は、ヌクレオシドおよびバックボーン結合の両方に位置し得る。
【0029】
本明細書において使用される場合、「メッセンジャーRNA(mRNA)」との用語は、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリリボヌクレオチドを指す。mRNAとは、本明細書において使用される場合、修飾RNAおよび未修飾RNAの両方を包含する。mRNAは、1つまたは複数のコーディング領域、および1つまたは複数のノンコーディング領域を含み得る。mRNAを、天然の供給源から精製すること、組み換え発現系を用いて産生し、そして任意で精製すること、インビトロで転写させること、化学合成することなどが、可能である。たとえば化学合成された分子の場合など、適切である場合には、mRNAはヌクレオシドアナログを含み得、これはたとえば、化学修飾された塩基または糖、バックボーン修飾等を有するアナログなどである。別途指定されない限り、mRNA配列は、5'から3'に向かう方向で表示される。いくつかの局面において、mRNAは、以下であるか、または以下を含む:天然のヌクレオシド(たとえば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン);ヌクレオシドアナログ(たとえば、2-アミノアデノシン、2-チオチミジン、イノシン、ピロロ-ピリミジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5 プロピニル-シチジン、C-5 プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C5-ブロモウリジン、C5-フルオロウリジン、C5-ヨードウリジン、C5-プロピニル-ウリジン、C5-プロピニル-シチジン、C5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-デアザアデノシン、7-デアザグアノシン、8-オキソアデノシン、8-オキソグアノシン、O(6)-メチルグアニン、および2-チオシチジン);化学修飾された塩基;生物学的に修飾された塩基(たとえば、メチル化された塩基);インターカレートされている塩基;修飾された糖(たとえば、2'-フルオロリボース、リボース、2'-デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソース);ならびに/または修飾されたリン酸基(たとえばホスホロチオアートおよび5'-N-ホスホロアミダイト結合)。
【0030】
本明細書において使用される場合、核酸配列の「発現」とは、ポリヌクレオチド、たとえばmRNAの、ポリペプチドへの翻訳、複数のポリペプチドの、インタクトなタンパク質(たとえば酵素)への組み立て、および/または、ポリペプチドもしくは完全に組み立てられたタンパク質(たとえば酵素)の、翻訳後修飾を指す。本開示においては、「発現」および「産生」との用語、ならびに文法上の同義語は、互換性をもって使用される。
【0031】
本明細書において使用される場合、「アミノ酸」との用語は、広義で、ポリペプチド鎖へと組み込まれ得る、任意の化合物および/または物質を指す。いくつかの局面において、アミノ酸は、H2N-C(H)(R)-COOHという一般構造を有する。ペプチド中のカルボキシ末端および/またはアミノ末端のアミノ酸を含め、アミノ酸は、メチル化によって、アミド化によって、アセチル化によって、保護基によって、および/または、ペプチドの活性に不利な影響を及ぼすことなく、ペプチドの循環半減期を変化させることが可能な他の化学基での置換によって、修飾され得る。アミノ酸は、ジスルフィド結合に関与し得る。アミノ酸は、1つまたは複数の翻訳後修飾を含み得、これはたとえば、1つまたは複数の化学的エンティティ(たとえばメチル基、アセタート基、アセチル基、リン酸基、ホルミルモエティ、イソプレノイド基、硫酸基、ポリエチレングリコールモエティ、脂質モエティ、炭水化物モエティ、ビオチンモエティ、等)との結合などである。「アミノ酸」との用語は、「アミノ酸残基」との用語と互換性をもって使用され、かつ遊離のアミノ酸、および/またはペプチドのアミノ酸残基を指し得る。該用語が遊離のアミノ酸を指すのか、またはペプチドの残基を指すのかは、該用語が使用されている文脈から明らかであろう。
【0032】
「ポリペプチド」とは、天然で産生されたものであっても、合成により産生されたものであってもよい、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸残基の重合体である。
【0033】
本明細書において使用される場合、「ペプチド」との用語は、2~100個のアミノ酸単量体を有するポリペプチドを指す。
【0034】
「タンパク質」とは、1つまたは複数のポリペプチド鎖を含む高分子である。タンパク質はまた、非ペプチド性の構成要素をも含み得、これはたとえば炭水化物基である。炭水化物の、および他の非ペプチド性の置換基は、タンパク質へと、該タンパク質を産生する細胞によって付加され得、かつ該置換基は、細胞のタイプによって変化し得る。本明細書において、いくつかのタンパク質は、それらのアミノ酸バックボーン構造の観点から定義される。
【0035】
本明細書において使用される場合、「機能的」な生物学的分子、たとえばタンパク質とは、該分子を特徴付ける特性および/または活性を発揮する形態にある、生物学的分子である。
【0036】
本明細書において使用される場合、「送達」との用語は、局所への送達および全身への送達の両方を包含する。たとえば、ポリヌクレオチド、たとえばmRNAの送達は、ポリヌクレオチドが標的組織へと送達され、そしてコードされるタンパク質が、標的組織内で発現し、そして保持される、という状況(「局所での分布」または「局所への送達」とも称される)を包含する。他の例示的な状況は、ポリヌクレオチドが標的組織へと送達され、そしてコードされるタンパク質が発現し、そして患者の循環系(たとえば血清)へと分泌され、そして全身に分布しそして他の組織によって取り込まれる、という状況(「全身での分布」または「全身への送達とも称される)を含む。他の例示的な状況において、ポリヌクレオチドは全身へと送達され、そしてインビボで、多様な細胞および組織において取り込まれる。いくつかの例示的な状況において、送達は、静脈内送達、筋肉内送達、または皮下送達である。
【0037】
本明細書において使用される場合、「インビトロ」との用語は、多細胞生物の中ではなくて、人工的な環境、たとえば、試験管内または反応容器内、細胞培養物内等の人工的な環境において生じるイベントを指す。
【0038】
本明細書において使用される場合、「インビボ」との用語は、多細胞生物内、たとえばヒトおよび非ヒト動物などの多細胞生物内で生じるイベントを指す。細胞ベースの系の環境において、該用語は、生きている細胞内で生じるイベントを指すために(たとえば、インビトロ系の対語として)使用され得る。
【0039】
「薬学的に許容される」との表現は、本明細書において、理にかなった医学的判断の範囲内で、妥当な利益/リスクの比に見合っていて、過剰な毒性も、刺激も、アレルギー応答も、他の問題または合併症も引き起こさずに、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適している、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために、使用される。
【0040】
本明細書において使用される場合、「処置する」との用語は、処置されている疾患または異常のいずれか1つの、病理学的特徴または症状のいずれか1つまたは複数のうちの一部または全てを、消失させるか、緩和するか、それらの進行を阻害するか、またはそれらの進行を逆転させる、送達作用物質および核酸の投与を指す。そのような疾患はオルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTCD)を含むが、これに限定されない。
【0041】
「治療的に有効」との表現は、本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチドもしくは薬学的組成物の量、または併用療法の場合の有効成分の総量を特定することが、意図される。この量または総量は、関連する疾患または異常の処置についての目標を達成する。
【0042】
本明細書において使用される場合、「対象」との用語は、ヒト、または任意の非ヒト動物(たとえば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、もしくは霊長類)を指す。ヒトは、出生前および出生後のヒトを含む。多くの局面において、対象はヒトである。対象は患者であり得、ここで患者とは、疾患の診断または処置のために、医療提供者に引き合わせられるヒトを指す。本明細書において「対象」との用語は、「個体」または「患者」との用語と、互換性をもって使用され得る。対象は、疾患または異常に苦しめられている対象であり得、または疾患または異常に感受性の対象であるが、該疾患または異常の症状を示している可能性も、示していない可能性もある。
【0043】
「脂質」との用語は、脂肪酸のエステルであり、かつ水に不溶性であるが、多くの有機溶媒に可溶性であることによって特徴付けられる、有機化合物の一群を指す。脂質は通常、少なくとも3種類のクラスに分類される:(1) 脂肪および油、ならびにろうを含む「単純脂質」;(2) リン脂質および糖脂質を含む「複合脂質」;(3) たとえばステロイドなどの「誘導脂質」。
【0044】
「両親媒性脂質」との用語は、脂質物質のうちの疎水性部分が疎水性の相を指向し、一方で親水性の部分が水性の相を指向する、任意の適切な物質を指すことがある。両親媒性脂質は通常、脂質LNPの主要な構成要素である。親水性の特徴は、極性基または荷電基の存在に由来しており、これはたとえば、炭水化物基、ホスファト基、カルボキシル基、スルファト基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトロ基、ヒドロキシ基、および他の類似の基である。疎水性は、無極性基を包含することによって付与され得、該無極性基は以下を含むが、これらに限定されない:長鎖飽和脂肪族炭化水素基および長鎖不飽和脂肪族炭化水素基、ならびにそのような基であって、1つまたは複数の、芳香族基、脂環基、または複素環基によって置換されている、基。両親媒性化合物の例は、リン脂質、アミノ脂質、およびスフィンゴ脂質を含むが、これらに限定されない。リン脂質の代表的な例は以下を含むが、これらに限定されない:ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、またはジリノレオイルホスファチジルコリン。リンを欠く他の化合物、たとえば、スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質ファミリー、ジアシルグリセロール、およびβ-アシルオキシ酸などもまた、両親媒性脂質として称される一群の範囲内にある。加えて、上述の両親媒性脂質は、トリグリセリドおよびステロイドを包含する、他の脂質と混合され得る。
【0045】
「アニオン性脂質」との用語は、生理的pHにおいて負に荷電している任意の脂質を指す。アニオン性脂質は以下を含むが、これらに限定されない:ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N-ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N-スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N-グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リシルホスファチジルグリセロール、および中性脂質に結合している、他のアニオン性の修飾基。
【0046】
「カチオン性脂質」との用語は、選択的なpHにおいて、たとえば生理的pHなどにおいて、正味の正電荷を保持するいくつかの脂質種の、任意のものを指す。そのような脂質は以下を含むが、これらに限定されない:N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(「DODAC」);N-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTMA」);N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」);N-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」);3-(N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(「DC-Chol」)、およびN-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」)。加えて、本開示において使用され得る、いくつかのカチオン性脂質調製物が市販されている。これらは、たとえば以下を含む:LIPOFECTIN(登録商標)(DOTMAおよび1,2-ジオレオイル-sn-3-ホスホエタノールアミン(「DOPE」)を含むカチオン性リポソームであり、GIBCO/BRL, Grand Island, N.Y., USAから市販されている);LIPOFECTAMINE(登録商標)(N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N-(2-(スペルミンカルボキサミド)エチル)-N,N-ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート(「DOSPA」)、および(「DOPE」)を含むカチオン性リポソームであり、GIBCO/BRLから市販されている);ならびにTRANSFECTAM(登録商標)(エタノール中にジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(「DOGS」)を含むカチオン性脂質であり、Promega Corp., Madison, Wis., USAから市販されている)。以下の脂質はカチオン性であり、かつ生理的pH未満で正の電荷を有する:DODAP、DODMA、DMDMA等。
【0047】
「脂質ナノ粒子」との用語は、化合物(たとえばポリヌクレオチド構築物)を送達するために使用され得る、任意の脂質組成物を指し、該脂質組成物は以下を含むが、これらに限定されない:水性の一定量が、両親媒性の脂質二重層によって封入されている、リポソーム;もしくは、脂質が、巨大分子である成分を含む、たとえばプラスミドなどを含む、内側部分を、縮小されている水性の内側部分でコートしている、リポソーム;または封入されている成分が、比較的無秩序な脂質混合物中に含まれている、脂質凝集体もしくはミセル。
【0048】
本明細書において使用される場合、「脂質に封入されている」または「脂質封入」とは、完全に封入されているか、部分的に封入されているか、またはそれらの両方である化合物(たとえばポリヌクレオチド構築物)をもたらす、脂質製剤を指し得る。本明細書において「完全な封入」または「完全に封入されている」とは、脂質製剤中の化合物(たとえばポリヌクレオチド構築物)の少なくとも90%が、脂質(たとえばLNP)に封入されていることを意味すると理解される。いくつかの局面において、脂質製剤中の化合物(たとえばポリヌクレオチド構築物)の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより多くが、脂質(たとえばLNP)に封入されている。
【0049】
ポリヌクレオチド構築物
本明細書において開示されるポリヌクレオチド構築物は、細胞(インビトロまたはインビボ)におけるOTCタンパク質のレベルを、本明細書において開示されるポリヌクレオチド構築物の非存在下で得られる、および/または観察されるレベルよりも高いレベルへと増大させるための治療剤として、使用され得る。
【0050】
ある局面において、ポリヌクレオチド構築物は、核酸配列、たとえばmRNA配列を含み、該核酸配列は、機能的なヒトオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。ORFは、全長のOTCタンパク質か、またはその機能的断片をコードし得る。いくつかの局面において、ORFは、SEQ ID NO: 7に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を、コードする。いくつかの局面において、全長のOTCはSEQ ID NO: 7のアミノ酸配列を含む。
【0051】
いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、コドン最適化されたORFを含むmRNA配列を含む。いくつかの局面において、ORFは、SEQ ID NO: 1に対して少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。いくつかの局面において、ORFはSEQ ID NO: 1の核酸配列を含む。
【0052】
いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は5' UTRを含む。5' UTRは、SEQ ID NO: 2の配列を含み得る。
【0053】
いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は3' UTRを含む。3' UTRは、SEQ ID NO: 3の配列を含み得る。
【0054】
いくつかの局面において、本開示のポリヌクレオチド構築物は、5'から3'に向かって以下を含む:(i) たとえばSEQ ID NO: 2の配列を含む、5' UTR;(ii) 機能的なヒトオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含み、ORFが、SEQ ID NO: 1と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、または100%同一である配列を含む、核酸配列、たとえばmRNA;およびSEQ ID NO: 3の配列を含む、3' UTR。
【0055】
いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、SEQ ID NO: 4とは5個以下の核酸が異なる配列を含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、SEQ ID NO: 4と比べて5個、4個、3個、2個、または1個のヌクレオチドの差異を有する配列を含む。いくつかの局面において、核酸の差異は、SEQ ID NO: 4の2番目~1221番目のヌクレオチドの範囲に存在し得る。ポリヌクレオチド構築物は、SEQ ID NO: 4の配列を含み得る。
【0056】
ポリヌクレオチド構築物は、ポリAテールをさらに含み得る。いくつかの局面において、ポリAテールは、核酸80個、81個、82個、83個、84個、85個、86個、87個、88個、89個、90個、91個、92個、93個、94個、95個、96個、97個、98個、99個、100個、110個、115個、120個、125個、130個、135個、140個、145個、または150個よりも長い。いくつかの局面において、ポリAテールは、核酸80~1000個、85~1000個、90~1000個、95~1000個、100~1000個、105~1000個、110~1000個、115~1000個、120~1000個、125~1000個、130~1000個、135~1000個、140~1000個、145~1000個、150~1000個、155~1000個、160~1000個、80~800個、85~800個、90~800個、95~800個、100~800個、105~800個、110~800個、115~800個、120~800個、125~800個、130~800個、135~800個、140~800個、145~800個、150~800個、155~800個、または160~800個の長さである。いくつかの局面において、ポリAテールは、核酸100個~500個の長さである。
【0057】
いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、ORFの5'末端において開始コドンを含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、ORFの3'末端において終止コドンを含む。
【0058】
ある局面において、ポリヌクレオチド構築物は修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、機能的なヒトオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むmRNA配列を含み、該mRNA配列は、修飾ヌクレオチドを含む。いくつかの局面において、修飾ヌクレオチドはウリジンである。いくつかの局面において、ウリジンの少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、または100%は、化学修飾されている。
【0059】
いくつかの局面において、化学修飾ウリジンは、シュードウリジン(Ψ)、N1-メチルシュードウリジン(N1-me-Ψ)、5-メトキシウリジン(5moU)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。いくつかの局面において、化学修飾ウリジンは、シュードウリジン(Ψ)、N1-メチルシュードウリジン(N1-me-Ψ)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される。ある局面において、ORF、たとえばSEQ ID NO: 1を含むORFは、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または約100%の修飾ウリジン、たとえば、シュードウリジン(Ψ)修飾またはN1-メチルシュードウリジン(N1-me-Ψ)修飾を含む。
【0060】
ある局面において、ポリヌクレオチド構築物は、SEQ ID NO: 8に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む発現カセットを用いて、調製され得る。いくつかの局面において、発現カセットはプロモーター、たとえばT7プロモーターを、さらに含む。いくつかの局面において、T7プロモーターは、5'から3'に向かう以下の配列を含む:TAATACGACTCACTATA(SEQ ID NO: 9)。いくつかの局面において、発現カセットの5' UTRは、プロモーター、たとえばT7プロモーターのすぐ下流に、アデニン(A)を含む。いくつかの局面は、発現カセットを含むプラスミドを指向する。いくつかの局面において、プラスミドは、抗生物質耐性遺伝子をさらに含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、インビトロ転写を用いて調製される。
【0061】
OTCの例示的なアミノ酸配列およびそれをコードするヌクレオチド配列は、本明細書において表1に示される。
【0062】
(表1)ポリヌクレオチド構築物に関連する配列
【0063】
いくつかの局面において、本開示のポリヌクレオチド構築物は、送達作用物質、たとえばLNPとともに、製剤化される。
【0064】
送達作用物質
本明細書において開示される送達作用物質は、本明細書において開示されるポリヌクレオチド構築物、カセット、およびmRNAを、インビトロおよびインビボで、細胞内へと効果的に輸送し得る。
【0065】
ある局面において、送達作用物質は、脂質ナノ粒子、リポソーム、重合体、ミセル、プラスミド、ウイルス性送達作用物質、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0066】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、本明細書において開示されるポリヌクレオチド構築物、発現カセット、および/またはmRNAの、送達作用物質による輸送は、細胞のサイトゾルへの、ポリヌクレオチド構築物の送達を介して生じ得る。遺伝子の発現、およびmRNAの翻訳が、細胞のサイトゾルにおいて生じる場合、標的遺伝子を効果的に調節するためには、または輸送されたmRNAを効果的に翻訳するためには、ポリヌクレオチドはサイトゾルに入らなければならない。ポリヌクレオチドがサイトゾルに入らない場合、それらは分解されるか、または細胞外の領域にとどまり続けるかのいずれかである可能性が高い。
【0067】
生物学的に活性なポリヌクレオチドを標的細胞へと細胞内送達するための方法の例は、該細胞が哺乳動物中にある場合の方法を含み、該哺乳動物は、たとえば、ヒト、げっ歯類、ネズミ、ウシ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウマ、およびサルである哺乳動物を含む。いくつかの局面において、細胞内送達の標的細胞は、肝細胞である。
【0068】
いくつかの局面において、送達作用物質は脂質ナノ粒子(LNP)である。本開示のポリヌクレオチド構築物は、LNP中に製剤化され得る。ある局面において、ポリヌクレオチド構築物はLNP中に封入されている。本明細書において使用される場合、「封入されている」とは、分子、たとえばポリヌクレオチドを、LNPの内部空間に封じ込めることを指す。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物(たとえば、mRNAを含む構築物)を送達作用物質の中に、たとえばLNPなどの中に封入することによって、核酸(たとえば、本開示のポリヌクレオチド構築物)は、核酸および/もしくは系を分解する酵素もしくは化学物質を含んでいる可能性のある、または核酸の迅速な排出を引き起こす受容体を含んでいる可能性のある環境から、保護され得る。脂質ナノ粒子は、典型的には、イオン化可能な脂質(たとえばカチオン性脂質)、非カチオン性脂質(たとえば、コレステロールおよびリン脂質)、ならびにPEG脂質(たとえばコンジュゲートPEG脂質)を含み、これらは、関心対象のペイロードとともに、たとえば本明細書において開示されるポリヌクレオチド構築物とともに、製剤化され得る。本開示のポリヌクレオチド構築物、たとえばmRNAは、脂質粒子中に封入され得、それにより、該ポリヌクレオチド構築物は、酵素による分解から保護される。いくつかの局面において、分子(たとえばポリヌクレオチド構築物)は、LNPに完全に封入されている。いくつかの局面において、脂質製剤中の分子(たとえばポリヌクレオチド構築物)の少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれより多くは、LNPに封入されている。
【0069】
ある局面は、組成物を指向しており、該組成物は以下を含む:本開示のポリヌクレオチド構築物;および送達作用物質。送達作用物質はLNPを含み得、これはたとえば、LNP1(PEG2000-C-DMA:13-B43:コレステロール:DSPC)、LNP2(PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC、もしくはPEG2000-S:18-B6:コレステロール:DSPC)、またはLNP3(PEG750-C-DLA:18-B6:コレステロール:DSPC)の群のうちのLNP組成物である。
【0070】
いくつかの局面において、本開示のLNPは、PEG2000-C-DMA、PEG2000-S、およびPEG750-C-DLAからなる群より選択されるPEG脂質を含む。いくつかの局面において、LNPは、PEG2000-C-DMAであるPEG脂質を含む。いくつかの局面において、LNPは、PEG2000-SであるPEG脂質を含む。いくつかの局面において、LNPは、PEG750-C-DLAであるPEG脂質を含む。
【0071】
いくつかの局面において、本開示のLNPは、13-B43かまたは18-B6である、イオン化可能な脂質を含む。
【0072】
いくつかの局面において、イオン化可能な脂質は、式13-B43の化合物、またはその塩である。そのような脂質は、たとえば、WO 2013/126803(PCT/US2013/027469)に記載されている。
【0073】
いくつかの局面において、イオン化可能な脂質は、式18-B6の化合物、またはその塩である。
【0074】
いくつかの局面において、本開示のLNPは非カチオン性脂質を含む。いくつかの局面において、非カチオン性脂質は、コレステロールか、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)か、またはそれらの組み合わせである。いくつかの局面において、LNPはコレステロールを含む。いくつかの局面において、LNPはジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)を含む。いくつかの局面において、LNPは、コレステロールおよびジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)を含む。
【0075】
いくつかの局面において、本開示のLNPは以下を含む:(a) PEG脂質(たとえば、PEG2000-C-DMA、PEG2000-S、またはPEG750-C-DLA);(b) イオン化可能な脂質(13-B43または18-B6);(c) コレステロール;および(d) ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)。
【0076】
ある局面において、本開示のLNPは、LNPの0.1~4モル%;0.5~4モル%、2~3.5モル%、0.1~2モル%;0.5~2モル%、または1~2モル%の量の、PEG脂質を含む。ある局面において、LNPは、LNPの50~85モル%;50~65モル%、または50~60モル%の量の、イオン化可能な脂質を含む。ある局面において、LNPは、45~50モル%の量か、または最大で約50モル%の量の、非カチオン性脂質を含む。ある局面において、LNPは、LNPの30~40モル%または30~35モル%の量の、コレステロールを含む。ある局面において、LNPは、LNPの3~15モル%または6~12モル%の量の、DSPCを含む。
【0077】
いくつかの局面において、本開示のLNPは以下を含む:(a) 1~4モル%のPEG脂質(たとえば、PEG2000-C-DMA、PEG2000-S、またはPEG750-C-DLA);(b) 50~60モル%のイオン化可能な脂質(13-B43または18-B6);および(c) 45~50モル%の非カチオン性脂質。
【0078】
いくつかの局面において、本開示のLNPは以下を含む:(a) 1~4モル%のPEG脂質(たとえば、PEG2000-C-DMA、PEG2000-S、またはPEG750-C-DLA);(b) 50~60モル%のイオン化可能な脂質(13-B43または18-B6);(c) 30~35モル%のコレステロール;および(d) 6~12モル%のジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)。
【0079】
いくつかの局面において、LNPのサイズは直径で約50~200 nmである。いくつかの局面において、LNPの粒子サイズは、約50~150 nm、約50~100 nm、約50~120 nm、または約50~90 nmの範囲にわたる。
【0080】
LNPの調製
当業者は、以下の説明が例示のみを目的としていることを理解するであろう。本開示のプロセスは、脂質ナノ粒子の、広範囲にわたるタイプおよびサイズに適用可能である。さらなる粒子は、ミセル、脂質-核酸粒子、ビロソーム等を含む。当業者は、本開示のプロセスおよび装置にとって適切である他の脂質LNPを理解するであろう。
【0081】
1つの局面において、本開示のポリ核酸構築物を封入する本方法は、脂質溶液を提供し、これはたとえば、医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準(Good Manufacturing Practice)(GMP)の下で合成された臨床グレードの脂質が、その後、有機性溶液(たとえばエタノール)中に溶解されているという、脂質溶液などである。同様に、治療用の産物、たとえば核酸または他の作用物質などの治療用の活性物質もまた、GMPの下で調製される。その後、治療剤溶液(たとえばmRNA)含有緩衝液(たとえば、クエン酸塩またはエタノール)は、低級アルカノール中に溶解されている脂質溶液と混合されて、リポソーム製剤を形成する。本開示の好ましい局面において、リポソームの形成と実質的に同時に、治療剤はリポソーム中に「受動的に内包化される」。しかしながら当業者は、LNPの形成後の、リポソームへの能動的な内包化または装填に対し、本開示のプロセスおよび装置が等しく適用可能であることを認識するであろう。
【0082】
本開示のプロセスおよび装置にしたがって、混合を行う環境へと、たとえば混合チャンバーなどへと、脂質溶液および緩衝溶液を連続的に導入する機構は、緩衝溶液による脂質溶液の連続的な希釈を引き起こし、それにより、混合時にリポソームが実質的に瞬時に産生される。本明細書において使用される場合、「緩衝溶液による脂質溶液の連続的な希釈」との表現(および変化形)は、概して、LNP産生を引き起こすのに十分な力で、水和プロセスにおいて十分に迅速に、脂質溶液が希釈されることを意味する。水性溶液を、脂質の有機性溶液と混合することによって、緩衝溶液(水性溶液)の存在下で、脂質の有機性溶液が連続的に段階希釈されて、リポソームが産生される。
【0083】
複数の溶液が調製された後で、たとえば、脂質溶液、および治療剤(たとえばポリヌクレオチド構築物)の水性溶液が調製された後で、それらの溶液は、たとえばペリスタルティックポンプミキサーを用いて、ともに混合される。1つの局面において、複数の溶液は、実質的に等しい流速で、混合を行う環境へとポンプで注入される。ある局面において、混合を行う環境は、「T」字型のコネクター、または混合チャンバーを含む。この例においては、流体のライン、およびしたがって流体のフローは、互いに対しおよそ180度で対向するフローとして、「T」字型のコネクター内の狭い開口部において接触することが好ましい。導入のための他の相対角度も使用され得、これはたとえば、27度~90度、および90度~180度などである。混合を行う環境において、溶液フローを接触および混合させると、脂質LNPが実質的に瞬時に形成される。溶解している脂質を含む有機性溶液と、水性溶液(たとえば緩衝液)とが、同時にかつ連続的に混合される際に、脂質LNPが形成される。有利なことに、かつ驚くべきことに、水性溶液を脂質の有機性溶液と混合することによって、脂質の有機性溶液が連続的に段階希釈されて、リポソームが実質的に瞬時に産生される。ポンプ機構は、高アルカノール環境において脂質LNPを作り出す、混合を行う環境に向かう、脂質溶液および水性溶液の等しい流速または異なった流速をもたらすように、構成され得る。
【0084】
有利なことに、本明細書において提供される、脂質溶液および水性溶液を混合するためのプロセスおよび装置は、リポソームの形成と実質的に同時に、少なくとも90~95%の封入効率で、形成されるリポソーム中への治療剤の封入を行う。本明細書において論じられる、さらなる処理段階は、望ましい場合には、試料を濃縮または希釈することによって特定のmRNA濃度へと導くために、使用され得る。
【0085】
いくつかの局面において、LNPは、約150 nm未満(たとえば約50~90 nm)の平均直径を有するように形成され、これは、高エネルギーのプロセスによる、たとえば膜からの押し出し、超音波処理、またはマイクロ流体化などによる、さらなるサイズ削減を必要としない。
【0086】
ある局面において、有機溶媒(たとえばエタノール)中に溶解している脂質が、水性溶液(たとえば緩衝液)との混合によって段階的な様式で希釈される際に、LNPは形成される。この制御された段階希釈は、開口部において、たとえばTコネクターなどにおいて、水性の流れと脂質の流れとをともに混合することによって、達成される。結果的に得られる脂質、溶媒、および溶質の濃度は、LNP形成プロセス全体を通して一定に維持され得る。
【0087】
1つの局面において、本開示のプロセスを使用して、勾配無しの2ステージ型の段階希釈によって、LNPは調製される。たとえば、1回目の段階希釈において、高アルカノール(たとえばエタノール)環境(たとえば約30%~約50% v/v エタノール)においてLNPは形成される。これらのLNPはその後、アルカノール(たとえばエタノール)の濃度を約25% v/v以下へと、たとえば約17% v/v~約25% v/vなどへと、段階的な様式で低下させることによって、安定化され得る。好ましい局面において、水性溶液中または脂質溶液中に存在する治療剤を用いて、治療剤は、リポソーム形成と同時に封入される。
【0088】
ある局面において、脂質のストックは100%エタノール中に調製され得、そしてその後、Tコネクターを介して、mRNA LNP含有酢酸塩緩衝液と混合され得る。脂質のストックおよびmRNAのストックは、PBSを含む回収容器につながるTコネクターにおいて、400 mL/分の流速で混合され得る。いくつかの局面において、脂質は、約40% v/v~約90% v/vの、より好ましくは約65% v/v~約90% v/vの、および最も好ましくは約80% v/v~約90% v/vのアルカノール環境において、最初に溶解される (A)。次に、水性溶液と混合することによって、脂質溶液は段階希釈され、約37.5~50%のアルカノール(たとえばエタノール)濃度において、LNPの形成が引き起こされる (B)。水性溶液を脂質の有機性溶液と混合することによって、脂質の有機性溶液は連続的に段階希釈されて、リポソームが産生される。さらに、LNPを約25%以下のアルカノール濃度へと、好ましくは約15~25%のアルカノール濃度へと、追加的に段階希釈することによって、脂質LNPはさらに安定化され得る (C)。
【0089】
いくつかの局面において、両方の段階希釈(A→BおよびB→C)に関して、結果的に得られるエタノール、脂質、および溶質の濃度は、収集容器内で一定のレベルに維持される。最初の混合段階後に、これらの高いエタノール濃度にあると、脂質単量体の、二重層への再構成は、より低いエタノール濃度での希釈により形成されるLNPと比較して、より秩序立った様式で進行する。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、これらの高いエタノール濃度は、核酸の、二重層中のカチオン性脂質との会合を促進すると考えられる。ある局面において、核酸の封入は、22%を上回るアルカノール(たとえばエタノール)濃度の範囲内において生じる。
【0090】
ある局面において、脂質LNPが形成された後で、それら脂質LNPは、別の容器に、たとえばステンレススチール製の容器に、回収される。1つの局面において、2回目の段階希釈は、たとえば約100~200 mL/分の速度で実施され得る。
【0091】
1つの局面において、混合段階の後で、脂質の濃度は約1~10 mg/mL(たとえば約7 mg/mL)であり、かつ治療剤(たとえばmRNA)の濃度は約0.1~4 mg/mLである。
【0092】
混合段階の後で、脂質LNP懸濁液が任意で希釈される場合に、治療剤(たとえば核酸)の封入の度合いは増大し得る。たとえば、希釈段階の前に、治療剤の内包化が約30~40%である場合、これは、希釈段階に続くインキュベーション後に約70~80%へと増加し得る。同様に、たとえば緩衝液(たとえばPBS)などといった、水性溶液と混合することによって、リポソーム製剤は、約10%~約40%アルカノールへと、好ましくは約20%アルカノールへと、希釈される。そのようなさらなる希釈は、好ましくは緩衝液を用いて達成される。ある局面において、リポソーム溶液のそのようなさらなる希釈は、連続的な段階希釈である。希釈された試料はその後、任意で室温でインキュベートされる。
【0093】
任意の希釈段階の後で、約70~80%かまたはそれより多い治療剤(たとえば核酸)が、脂質LNP内に内包化される。ある局面において、陰イオン交換クロマトグラフィーが使用される。
【0094】
いくつかの例において、リポソーム溶液は、たとえば限外ろ過(たとえばタンジェンシャルフロー透析)を用いて、約2~6倍に、好ましくは約4倍に、任意で濃縮される。1つの局面において、試料は、限外ろ過システムのフィードリザーバーへと移され、そして緩衝液が除去される。緩衝液は、さまざまなプロセスを用いて、たとえば限外ろ過などによって、除去され得る。
【0095】
いくつかの局面において、濃縮された製剤はその後、アルカノールを除去するためにダイアフィルトレーションされる。段階の完了時のアルカノール濃度は、約1%未満である。好ましくは、脂質の濃度および治療剤(たとえば核酸)の濃度は変化しないままであり、かつ治療剤の内包化のレベルもまた一定のままである。
【0096】
アルカノールが除去された後で、水性溶液(たとえば緩衝液)はその後、別の緩衝液に対するダイアフィルトレーションによって置換される。好ましくは、脂質濃度の治療剤(たとえば核酸)濃度に対する比は変化しないままであり、かつ核酸の内包化のレベルはほぼ一定である。いくつかの例において、試料の収量は、濃縮された試料の約10%の量の緩衝液でカートリッジをすすぐことによって、改善され得る。ある局面において、このすすぎ液はその後、濃縮された試料に添加される。
【0097】
ある局面において、試料の無菌ろ過が、任意で実施され得る。ある局面において、ろ過は、カプセルフィルター、および加熱ジャケットを有する加圧された分注容器を用いて、約40 psi未満の圧力で実施される。試料をわずかに加熱すると、ろ過のしやすさが改善され得る。
【0098】
無菌充填の段階は、従来のリポソーム製剤のためのプロセスを用いて実施され得る。いくつかの局面において、本開示のプロセスは、最終産物において、約50~60%の治療剤(たとえば核酸)のインプットをもたらす。いくつかの好ましい局面において、最終産物の、治療剤の脂質に対する比は、およそ0.04~0.07である。
【0099】
封入されているLNP調製物はその後、無菌条件下でろ過され得、分注され得、そして-80度で保管され得る。
【0100】
共重合体
いくつかの局面において、本開示の組成物は共重合体をさらに含む。いくつかの局面において、本明細書において開示される共重合体は、「膜不安定化重合体(membrane destabilizing polymer)」または「膜破壊性重合体(membrane disruptive polymer)」である。膜不安定化重合体または膜破壊性重合体は、たとえば細胞膜構造物における、たとえばエンドソーム膜などにおける、たとえば透過性の変化などといった変化を、たとえば、作用物質が、たとえばオリゴヌクレオチドもしくは共重合体、またはそれらの両方が、そのような膜構造物を通過することが可能になるように、直接的または間接的に誘発し得る。いくつかの局面において、膜破壊性重合体は、細胞性小胞の溶解を直接的または間接的に誘発し得、またはあるいは、たとえば、細胞膜の集合物の実質的な画分に関して観察されるように、細胞膜を直接的または間接的に破壊し得る。
【0101】
本明細書において開示される送達作用物質、共重合体、および組成物は、本開示のポリヌクレオチド構築物を標的細胞へと細胞内送達するための方法において有用であり得、ここで標的細胞は、インビトロにある標的細胞、エクスビボにある標的細胞、およびインビボにある標的細胞を含む。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物、たとえばmRNAを含むポリヌクレオチド構築物を、標的細胞へと送達する方法は、細胞のサイトゾルへの送達を含む。
【0102】
組成物
本明細書において開示される送達作用物質は、インビトロおよびインビボの両方において、ポリヌクレオチド構築物を細胞内へと効果的に輸送することが可能である。いくつかの局面において、本開示のポリヌクレオチド構築物は、送達作用物質、たとえばLNPとともに、製剤化される。いくつかの局面において、組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。
【0103】
本開示のある局面は、細胞においてOTCタンパク質の量を増加させるための、組成物または方法を指向する。いくつかの局面において、機能的なヒトオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むコドン最適化されたmRNA配列を含む核酸配列を含むポリヌクレオチド構築物は、LNPおよび/または共重合体とともに、組成物へと製剤化される。ある局面において、mRNA分子は、SEQ ID NO: 7に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むOTCタンパク質を、コードする。コードされているOTCタンパク質を、細胞のミトコンドリアに指向させるために、OTCタンパク質をコードするmRNA分子は、ミトコンドリアを標的とするシグナルペプチドをコードする配列(本明細書においては、「ミトコンドリアリーダー配列」とも称される)を含み得る。ミトコンドリアリーダー配列は、天然のOTCタンパク質のもの(たとえば、SEQ ID NO: 7の1~32番目の残基(天然のヒトミトコンドリアリーダー配列)を含むもの、であってよく、またはミトコンドリアを標的とするシグナルペプチドを含む別のタンパク質に由来してよく、または新たに合成してもよい。細胞におけるタンパク質分解性のプロセシングに対して最適化するために、ポリペプチドの、ミトコンドリアリーダー配列と残余の部分との間のジャンクションに、人工的な切断部位を含有させてよい。ミトコンドリアリーダー配列は、成熟OTCタンパク質をコードするmRNA配列に、機能的に連結されている、すなわち、2つの配列は、正しいリーディングフレーム内で連結されており、かつ新しく合成されるポリペプチドが細胞のミトコンドリアを指向するように、配置されている。ミトコンドリアリーダー配列は、通常、タンパク質のアミノ末端に位置する。特定のバリエーションにおいて、ミトコンドリアリーダー配列を有する、コードされるOTCタンパク質は、SEQ ID NO: 7に記載のアミノ酸配列を有する。SEQ ID NO: 7のOTCタンパク質をコードする適切なmRNA配列、および本開示の組成物へと製剤化され得る該mRNA配列は、SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 4に示される配列を含み得る。SEQ ID NO: 7のOTCタンパク質をコードする適切なmRNA配列、および、本開示の組成物へと製剤化され得る該mRNA配列は、SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 4に示される配列を含み得る。本開示における製剤のための、OTCをコードするmRNAは、典型的には、その3'末端にポリ(A)をさらに含み(たとえば、80個より長いアデニン残基、たとえば100~800個のアデニン残基である、ポリAテール)、該ポリ(A)は、周知の遺伝子工学技術(たとえばPCRを介して、または酵素によるポリAテール)を用いて、構築物に付加され得る。例示的なDNA配列は、本開示のポリヌクレオチド構築物を産生および調製するための適切なDNAベクターへと挿入するために使用され得る。
【0104】
使用方法
本開示のある局面は、本明細書において開示されるポリヌクレオチド構築物と、薬学的に許容される希釈剤または担体とを含む組成物に、細胞を接触させることによって、細胞においてオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)の量を増加させることを指向する。いくつかの局面において、ポリヌクレオチド構築物は、本明細書において開示されるLNPとともに製剤化される。さらなる局面において、ポリヌクレオチドは、共重合体とともに製剤化され得る。
【0105】
いくつかの局面は、細胞においてOTCの発現量を増加させるための方法を指向しており、該方法は、細胞に、本開示のポリヌクレオチド構築物を含む組成物を投与する段階を含む。細胞は、肝細胞であり得る。
【0106】
オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTCD)を処置するための方法であって、それを必要とする対象に、治療的有効量の、本開示のポリヌクレオチド構築物を含む組成物を投与する段階を含む、方法。
【0107】
OTCDを有する対象において高アンモニア血症を処置するかまたは高アンモニア血症のリスクを低下させるための方法であって、それを必要とする対象に、治療的有効量の、本開示のポリヌクレオチド構築物を含む組成物を投与する段階を含む、方法。
【0108】
本開示の他の局面は、それを必要とする対象においてOTCDを処置するための医薬を製造するための、または、OTCDを有する対象において高アンモニア血症を処置するかもしくは高アンモニア血症のリスクを低下させるための医薬を製造するための、本開示のポリヌクレオチド構築物または本開示の組成物または本開示のベクターまたは本開示の宿主細胞の使用を指向する。
【0109】
本明細書において開示される方法によって処置可能である、対象における欠陥のある遺伝子の発現および/または活性に関連する疾患または異常は、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTCD)を含む。
【0110】
ある局面において、欠陥のある遺伝子の発現に関連する疾患または異常は、機能的なポリペプチドの欠損によって特徴付けられる疾患(本明細書においては「タンパク質の欠損に関連する疾患」とも称される)である。本開示の送達作用物質、たとえばLNPは、タンパク質の欠損をもたらす遺伝子の欠陥に対応するタンパク質をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)分子を含む組成物へと、製剤化され得る。タンパク質の欠損に関連する疾患の処置に関して、ポリ核酸構築物の製剤、たとえばmRNAを含むポリ核酸構築物の製剤は、mRNAを適切な標的組織へと送達するために、対象(たとえば、マウス、非ヒト霊長類、またはヒトなどの、哺乳動物)に投与され得、該標的組織においては、タンパク質合成の間にmRNAが翻訳され、そしてコードされているタンパク質が、疾患を処置するのに十分な量で産生される。
【0111】
対象における、たとえば哺乳動物における、欠陥のある遺伝子の発現および/または活性に関連する疾患または異常を処置する方法の一例は、たとえば、それを必要とする哺乳動物に、LNPおよび/または共重合体とともに組成物へと製剤化されている、機能的なヒトオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むコドン最適化されたmRNA配列を含む核酸配列を含むポリヌクレオチド構築物の治療的有効量を、投与する段階を含む。ある局面において、mRNA分子は、SEQ ID NO: 7に対して少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むOTCタンパク質を、コードする。コードされているOTCタンパク質を、細胞のミトコンドリアに指向させるために、OTCタンパク質をコードするmRNA分子は、ミトコンドリアを標的とするシグナルペプチドをコードする配列(本明細書においては、「ミトコンドリアリーダー配列」とも称される)を含み得る。ミトコンドリアリーダー配列は、天然のOTCタンパク質のもの(たとえば、SEQ ID NO: 7の1~32番目の残基(天然のヒトミトコンドリアリーダー配列)を含むもの、であってよく、またはミトコンドリアを標的とするシグナルペプチドを含む別のタンパク質に由来してよく、または新たに合成してもよい。細胞におけるタンパク質分解性のプロセシングに対して最適化するために、ポリペプチドの、ミトコンドリアリーダー配列と残余の部分との間のジャンクションに、人工的な切断部位を含有させてよい。ミトコンドリアリーダー配列は、成熟OTCタンパク質をコードするmRNA配列に、機能的に連結されている、すなわち、2つの配列は、正しいリーディングフレーム内で連結されており、かつ新しく合成されるポリペプチドが細胞のミトコンドリアを指向するように、配置されている。ミトコンドリアリーダー配列は、通常、タンパク質のアミノ末端に位置する。特定のバリエーションにおいて、ミトコンドリアリーダー配列を有する、コードされるOTCタンパク質は、SEQ ID NO: 7に記載のアミノ酸配列を有する。SEQ ID NO: 7のOTCタンパク質をコードする適切なmRNA配列、および本開示の組成物へと製剤化され得る該mRNA配列は、SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 4に示される配列を含み得る。SEQ ID NO: 7のOTCタンパク質をコードする適切なmRNA配列、および、本開示の組成物へと製剤化され得る該mRNA配列は、SEQ ID NO: 1またはSEQ ID NO: 4に示される配列を含み得る。本開示における製剤のための、OTCをコードするmRNAは、典型的には、その3'末端にポリ(A)をさらに含む(たとえば、80個超、たとえば100~800個のアデニン残基の、ポリAテール)。
【0112】
欠陥のある遺伝子の発現に関連する疾患または異常を処置するための方法の、さらなる例は、機能的なポリペプチドの欠損症を有する対象を処置する方法を含み、該方法は、対象に、機能的なポリペプチドをコードする少なくとも1種類のmRNA分子の少なくとも一部分を含む組成物を投与する段階であって、投与後に、機能的なポリペプチドの発現が投与前よりも増大する、段階を含む。いくつかの局面において、mRNAは、機能的なオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質をコードする。
【0113】
特定のバリエーションにおいて、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)タンパク質をコードするmRNAを含む組成物は、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症(OTCD)を処置する方法において使用される。OTCDは、高アンモニア血症を引き起こし得る尿素サイクル異常症の1つであり、脳へのダメージをもたらすか、昏睡をもたらすか、または死の原因にすらなる、生命を脅かす病気である。これは、尿素サイクルにおいて重要な酵素の1つであるOTCの、活性の欠損に起因しており、ここで尿素サイクルは、主に肝臓で働いていて、かつ身体からアンモニアを除去する役割を有している。アンモニアは、タンパク質の摂取から産生されるとともに、体内におけるタンパク質の分解からも産生される。肝臓においてこのアンモニアは、尿素サイクル内の酵素によって尿素へと変換される。尿素は非毒性であり、かつ通常は、腎臓を通じて尿として容易に排出される。しかしながらOTC酵素が欠損している場合、血中のアンモニアレベルは上昇し、そしてこれは、脳への重いダメージをもたらし得る。重症のOTC欠損症を有する患者は、ほとんどの場合、生後2~3日で同定され、該期間に患者は血中のアンモニアレベルの顕著な上昇を有し、そして最終的に昏睡に至る。軽症のOTC欠損症を有する患者は、ストレスがあるときに危機的状況に陥る可能性があり、これは、昏睡をももたらし得る、上昇したアンモニアレベルを引き起こす。現行の治療法は、高アンモニア血症を有する患者において使用するための、アンモニアスカベンジャー薬(ブフェニール、ラビクティ)を含む。
【0114】
OTC遺伝子は、X染色体連鎖性である。該疾患は、1本の変異体対立遺伝子を有する男性において、および変異体対立遺伝子をホモ接合型またはヘテロ接合型のいずれかで有する女性において、引き起こされる。最重症のOTC欠損症を有する男性患者は、典型的には出生直後に見いだされる。血中のアンモニアレベルの上昇に加えて、尿のオロト酸レベルもまた上昇する。重症のOTC欠損症を有する患者においては、OTC酵素の活性は、正常レベルの<2%である。軽症のOTC欠損症を有する患者においては、OTC酵素の活性は、正常レベルの、最大で30%である。
【0115】
本開示のポリヌクレオチド構築物を用いる、またはOTCをコードする本開示のmRNAを含む組成物を用いる、OTCDを処置するための方法は、概して、OTCDを有する対象に、治療的有効量の組成物を投与する段階を含み、それによって、OTCをコードするmRNAは肝細胞へと送達され、そしてタンパク質合成の間に翻訳されて、OTCタンパク質を産生する。OTCをコードするmRNAは、組成物に関して上述したような、または細胞においてOTCタンパク質を増加させるための方法に関して上述したような、mRNAであり得る。
【0116】
疾患を処置するためのmRNA組成物の有効性は、疾患の動物モデルにおいてインビボで評価され得る。たとえば、OTCDを処置するためのmRNA組成物の有効性を評価するための、適切な動物モデルは、肝臓においてOTC酵素が欠損している、公知のマウスモデルを含む。そのようなマウスモデルの1つである、Otcspf-ash(疎毛ならびに異常な皮膚および被毛(sparse fur and abnormal skin and hair))マウスは、OTCタンパク質のレベルの減少を引き起こすR129H変異を含んでおり、かつ肝臓において、正常レベルの酵素活性のわずか5~10%しか有さない(Hodges et al., PNAS 86:4142-4146, 1989を参照されたい)。別のモデルであるOtcspfマウスは、H117N変異を含んでおり、該変異は、酵素活性を正常なレベルの5~10%に減少させる(Rosenberg et al., Science 222:426-428, 1983を参照されたい)。これらのマウスモデルの両方は、それらの野生型同腹仔マウスと比較して、尿のオロト酸レベルが上昇している。OTC欠損症の第3のモデルは、OtcspfマウスまたはOtcspf-ashマウスにおいて、高アンモニア血症を誘導することである(Cunningham et al., Mol Ther 19(5): 854-859, 2011)。これらのマウスを、OTC siRNAで、またはAAV2/8ベクター/OTC shRNAで処置して、残存する内因性OTCの発現および活性をノックダウンする。血漿のアンモニアレベルが上昇し、そしてマウスはおよそ2~14日で死亡する。
【0117】
特定の分析物が検出されることにより、診断可能性が狭まったら、確認試験として、欠損している酵素の活性が、リンパ球または培養線維芽細胞においてアッセイされる。多くの経路に関し、単一の酵素アッセイでは、診断を確定させることはできない。他に、相補性試験などの試験を行う必要がある。
【0118】
ある局面において、治療の目標は、生化学的および生理学的なホメオスタシスを復活させることである。新生児は緊急診断を必要とし得、かつ特定の生化学的障害に、代謝阻害の位置に、および毒性化合物の影響に、応じた処置を必要とし得る。処置戦略は以下を含む:(1) 前駆体アミノ酸の食事制限、および(2) (a) 毒性代謝物を処理するための、または(b) 欠損している酵素の活性を増大させるための、補助的な化合物の使用。肝臓移植は、罹患している少数の個人において成功を収めている。現行の臨床管理アプローチを用いてさえも、有機酸血症を有する個人は感染リスクがより大きく、かつ膵炎の発生率がより高く、これらは致死的なものになり得る。
【0119】
ある局面において、本開示のポリヌクレオチド構築物および組成物は、対象における欠陥のある遺伝子の発現および/または活性に関連する疾患または異常を処置するための医薬の調製において有用である。
【0120】
本開示のポリヌクレオチド構築物および組成物は、多様な投与経路で投与され得、これはたとえば、非経口、経口、局所、直腸、吸入等の経路である。製剤は、選択された投与経路に応じて変化し得る。いくつかの局面において、投与の経路は、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内、または腹腔内の経路である。
【0121】
特定の状態にとって適切である投薬量の決定は、当技術分野における技量の範囲内である。本開示の組成物の有効用量は、多くの異なる因子に応じて変化し、該因子は以下を含む:投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるかまたは動物であるか、施される他の治療、ならびに、組成物それ自体の特異的な活性、および個体において所望の応答を誘発するその能力。通常、患者はヒトであるが、いくつかの疾患に関しては、患者は非ヒト哺乳動物であり得る。
【実施例
【0122】
実施例1. OTCポリヌクレオチド構築物の調製
SEQ ID NO: 4の配列を含むOTCポリヌクレオチド構築物は、プラスミドDNA構築物を用いるインビトロ転写(IVT)によって調製された。プラスミドDNA構築物は、5'UTR、ORF、および3'UTRについての指示を含んでいた、一方で化学修飾(たとえばシュードウリジン)は、所望のヌクレオチドをIVT反応へと添加することによって行われた。最初に、1 ugのプラスミドDNAあたり5ユニットの制限酵素XbaIを用いて、プラスミドDNAは線状化された。37度での一晩のインキュベーション後、DNAは、フェノール/クロロホルム抽出によって精製された。同時転写のキャッピング(たとえばCap1)をともなうIVT反応が、T7ポリメラーゼおよびCleanCapを用いて、3時間にわたり37度で実施された。IVT反応後、結果として得られたmRNA産物は、DNアーゼ処理と、それに続く透析ろ過によって精製された。精製されたmRNAにおいてはその後、1 mgのRNAあたり300ユニットのポリAポリメラーゼを用いて、酵素によるポリアデニル化が行われ、その際、所望のポリAテール長に応じて15~60分間インキュベートされた。mRNA産物はその後、ダイアフィルトレーションおよびHPLCによって精製され、その後で所望の濃度に調節され、無菌ろ過され、そして分注された。
【0123】
実施例2. 有効性および忍容性に対するポリ(A)テール長の影響
実施例1に記載されるOTC mRNA構築物は、長さが可変であるポリ(A)テールを有するように調製された。第1の実験において、OTC mRNAは転写され、そして粗転写物は、あらかじめ保温しておいたかまたは冷却されているポリAポリメラーゼを用いた反応のための鋳型として使用された。第2の実験において、OTC mRNAは転写され、精製され、そして精製された転写物は、あらかじめ保温しておいたかまたは冷却されているポリAポリメラーゼを用いた反応のための鋳型として使用された。第3の実験において、正しいポリAテール長を生じさせるための反応時間が決定された。
【0124】
ポリA実験の1および2は、生じたポリAテールの長さに対して、有意な差異をもたらすことはなかった。加えて、酵素の温度は、実験のパフォーマンスに影響を及ぼさなかった。実験1および実験2において、反応時間は30分であった。実験3において、45分、60分、および75分という反応時間が試験された。60分および75分の反応時間により、ヌクレオチド(nt)300個超の長さのポリAテールを産生することが可能であった。反応時間がより長いと、より長いテールが産生されたが、反応時間は、産物の純度にも影響を及ぼした。
【0125】
有効性および忍容性に対する、異なるポリ(A)テール長(コードされているもの、または酵素によるもの)の影響を評価するため、ラットにおける反復投与試験が実施された。LNP2(PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC)中に封入された、異なるポリ(A)テール長(ヌクレオチド80個、161個、208個、262個、322個、または440個)を有するmRNAを含むOTC構築物は、第0日、第7日、および第14日に、雄のスラグ・ドーリー(Srague Dawley)ラット(7~8週齢)に投与された(表2A)。実験は、第1日(投薬の24時間後)か、第15日(最終投薬の24時間後)に終了させた。投与された各製剤のZ-Avg、PDI、および封入%は、表2Bに提供される。すべての製剤は、自社のLALアッセイにより、エンドトキシンに関して試験された。すべての製剤は、0.5 mg/mLである場合に2 EU/mL未満であった。
【0126】
(表2A)LNP2製剤の用法および用量
【0127】
(表2B)LNP2製剤の特徴
【0128】
1回目の投薬から6時間後の、単球走化性タンパク質タンパク質-1(MCP-1)の誘導レベルが、さまざまなポリA構築物に関して解析された、そして結果が図1に示される。
【0129】
反復投与の際の、さまざまなポリAテール長を有するmRNAを含むOTC構築物とともに製剤化されたLNPの投与に対する免疫応答の誘導を解析するため、それぞれの投薬日において、投薬の6時間後に尾の穿刺が実施され、そしてラットのサイトカイン誘導が定量された。投薬から6時間後(第0日、第7日、および第14日)の、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)の誘導レベルが解析された(図2A)。ヌクレオチド80個である、コードされているポリ(A)を有するOTC mRNAは、ヌクレオチド161個か、208個か、262個か、322個か、または440個である、酵素によるポリ(A)テールを有するOTC mRNA構築物と比較して、MCP-1のより高い誘導レベルをもたらした。MCP-1の誘導レベル、およびインターフェロンγ誘導性タンパク質10(IP-10)の誘導レベルは、第0日、第7日、および第14日において、投薬の6時間後に解析された(図2B)。すべての応答は、PBS対照群と比較された。ヌクレオチド80個である、コードされているポリ(A)テールを有するOTC mRNA構築物は、ヌクレオチド80個よりも長い、酵素によるポリ(A)テールを有する試験されたOTC mRNA構築物と比較して、MCP-1(図2A)およびIP-10(図2B)のより強い誘導を示した。
【0130】
OTCタンパク質の発現を解析するため、ラットの肝臓試料が、最終投薬の24時間後に採取され、そして急速凍結された。ヌクレオチド80個である、コードされているポリ(A)を有するOTC構築物は、ヌクレオチド80個よりも長い、酵素によるポリ(A)テールを有するOTC構築物と比較して、肝臓におけるhOTCタンパク質の発現は最も低かった(図3Aおよび図3B)。
【0131】
実施例3. 修飾OTC mRNA構築物
有効性および忍容性に対する化学修飾の影響を評価するため、マウスにおける試験が実施された。実施例1において調製されたOTC mRNA(およそ180~480ヌクレオチドの範囲の長さのポリAテールを有する)は、TriLink法を使用して、シュードウリジン(PsU)、N1-メチル-シュードウリジン(N1MePsU)、または5-メトキシウリジン(5-methoxyduridine)(5MoU)のいずれかを用いて化学修飾された(表3A)。
【0132】
化学修飾mRNAは、LNP1か、またはLNP2(PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC)のいずれか中に製剤化され(表3B)、そしてマウスに投与された(0.5 mg/kg)(表3C)。
【0133】
(表3A)mRNAの化学修飾
【0134】
(表3B)化学修飾mRNAのLNP製剤
【0135】
(表3C)化学修飾mRNAの投与
【0136】
修飾OTC mRNA製剤の投与後に、MCP-1のレベルが解析された(図4)。試験された、OTC mRNAの異なる化学修飾の間で、MCP-1応答において有意な差異はなかった。LNP2(PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC)は、LNP1と比較して、わずかにより刺激性であった。
【0137】
次に、ヒトOTCの発現が、ELISAによって解析された(図5)。両方のLNPにおいて、OTC mRNAのPsU修飾とN1MePsU修飾との間で、OTCの発現レベルは同様であった。最も低いOTCの発現は、OTC mRNA 5MoU-LNPで処置された動物において検出された。OTC mRNA N1MePsU-LNP1で処置された動物は、OTC mRNA PsU-LNP1で処置された動物よりも高いOTCの発現を有していた。OTC mRNA PsU-LNP2で処置された動物は、OTC mRNA N1MePsUで処置された動物よりも高いOTCの発現を有していた。
【0138】
実施例4. ラットにおけるOTC mRNA-LNPの忍容性およびOTCの発現
OTC mRNA-PsUの有効性および忍容性は、ラットでの反復投与試験において評価された。OTC mRNA-PsU(0.25 mg/kg)は、LNP1(PEG2000-C-DMA:13-B43:コレステロール:DSPC)、LNP2(PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC、もしくはPEG2000-S:18-B6:コレステロール:DSPC)、またはLNP3(PEG750-C-DLA:18-B6:コレステロール:DSPC)のいずれかの中に製剤化され、そして第0日、第7日、および第14日においてマウスに投与された(表4A)。EPOおよびLUCがLNP1中に保持され、そして対照として投与された。
【0139】
(表4A)OTC mRNA構築物-PsUの用法および用量
【0140】
投与された各製剤のZ-Avg、PDI、および封入%は、表4Bに提供される。インプットバッチサイズは、3 mgであった。LNPは、100 mM 酢酸塩、pH5を用いて製剤化され、そしてTFUが実施された。アリコートは-80度で保管され、かつ試験物は、それぞれの投薬日に調製された。
【0141】
(表4B)LNP1製剤、LNP2製剤、およびLNP3製剤の特徴
【0142】
PEG抗体のレベルを調べるため、それぞれの投薬日(第0日、第7日、および第14日)において、投薬前に血液が採取された。抗PEG IgG抗体応答(図6A)および抗PEG IgM抗体応答(図6B)の両方が定量された。抗PEG抗体は、LNP1で処置されたラットのみにおいて観察された。試験されたOTC mRNA構築物は、EPOペイロードおよびLUCペイロードよりも低い免疫原性を有していた。LNP1による抗PEG抗体の産生は、反復投与の際に、血中からの急速なクリアランス、および有効性の喪失をもたらした(データは示さない)。
【0143】
MCP-1の誘導を調べるため、それぞれの投薬の6時間後に血液が採取された。OTC mRNA構築物含有LNPの反復投与時に、MCP-1の増加はほとんどないかまたは全くなかった、これは免疫原性がより低いことと相関する(図7)。
【0144】
OTCの発現レベルを調べるため、それぞれの投薬日において投薬前に血液が採取された。LNP2製剤は有効性が最も高く、一方でLNP1製剤は有効性が最も低かった(図8)。OTCタンパク質の最大の蓄積は、LNP2製剤によって生じた。このデータは、抗体が産生されなかったこと、および血中からの急速なクリアランスが生じなかったことを示す免疫原性データを、支持するものである。OTC mRNA構築物-LNP2組成物もまた、反復投与時に低いMCP-1レベルを有していた。
【0145】
脂質のクリアランスは、質量分析法によって、投薬の24時間後に定量された。LNP1およびLNP2(13-B43)は、投薬の14日後に存在していたが、一方でLNP2(18-B6)およびLNP3は、投薬の6時間後までに急速に消失したことが、単回投与試験により示された(データは示さない)。OTC mRNA構築物-LNP1またはOTC mRNA構築物-LNP2(13-B43)の反復投与は、肝臓における脂質の蓄積を引き起こした(図9)。反復投与した場合であっても、OTC mRNA構築物-LNP2(18-B6)とOTC mRNA構築物-LNP3の蓄積は観察されなかった(すべてのレベルは、500 ng/gのLLOQ未満)。
【0146】
肝臓に対するダメージについてのマーカーを解析するため、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルが定量化された。血清は、最初の投薬日、および最終の投薬日から24時間の時点において採取された。反復投与した場合に、ALT/ASTレベルにおいて有意な変化はなかった(0.25 mg/kgを週1回、3回投与;全量は0.75 mg/kg)(図10Aおよび10B)。3回目の投薬後に、LNP1製剤群およびLNP2(13-B43)製剤群は両方とも、LNP2(18-B6)製剤群およびLNP3製剤群と比較して、相対的に高いASTを有する。
【0147】
実施例5. ラットにおける単回投与 対 反復投与の際の脂質クリアランス
OTC mRNA構築物-LNPの、単回投与後および反復投与後の脂質クリアランスが評価された。OTC mRNAは、LNP2(PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC)中に製剤化され、そして1回量につき0.25 mg/kgでラットに投与された。単回投与に関し、ラットは、第0日に製剤の投与を受け、そして終了時点は、投与の30分後、1時間後、3時間後、6時間後、および24時間後であった(表5A)。最大量の単回投与(2 mg/kg)は第0日に投与され、そして終了時点は第1日であった。反復投与に関し、ラットは、7日ごとに1回、最大で49日にわたり、製剤の投与を受けた(第7日、第14日、第21日、第28日、第35日、第42日、および第49日)。8回目の処置(第49日)が終わってから、投薬の30分後、1時間後、3時間後、6時間後、および24h時間後(第50日)の終了時点で回収された。PBSは、対照として(5 mL/kg)、第0日、第7日、第14日、第21日、第28日、第35日、第42日、および第49日に投与された。投与された各製剤のZ-Avg、PDI、および封入%は、表5Bに提供される。
【0148】
(表5A)OTC mRNA構築物-LNP2の単回投与および反復投与
【0149】
(表5B)OTC mRNA構築物-LNP2(13-B43)製剤の特徴
【0150】
サイトカイン応答を測定するため、すべての終了時点において血液が採取された。測定されたサイトカインは、MCP-1、IP-10、およびマクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP-1α)であった。0.25 mg/kgの用量の週1回の反復投与によって、サイトカイン応答が引き起こされることはなかった(図11A~11C)。2 mg/kgの用量の単回投与の際にも、有意なサイトカイン応答はなかった。
【0151】
PEG抗体およびOTC抗体のレベルを調べるため、それぞれの投薬の前に血液が採取された。反復投与によって抗PEG IgMのレベルが増大していく、という傾向はなかった(図12)。同様に、OTC mRNA構築物-LNP2の反復投与による、抗PEG IgGレベルの増大はなかった(図13)。反復投与した場合に、抗OTC IgM抗体が検出されることはなかった(図14)。同様に、OTC mRNA構築物-LNP2を反復投与した場合に、抗OTC IgG抗体が検出されることはなかった(図15)。
【0152】
hOTCもまた、投薬の24時間後に、肝臓において毎回検出された(図16)。肝臓および血漿におけるOTC mRNAのレベルは、1回目の処置、または8回目の処置(第49日)の後で、経時的に定量された(30分、1時間、3時間、6時間、および24時間)(図17Aおよび17B)。
【0153】
実施例6. SDラットにおける単回投与の用量範囲探索試験
次に、OTC mRNA構築物とともに製剤化された、LNP1(PEG2000-C-DMA:13-B43:コレステロール:DSPC)、LNP2(PEG2000-S:13-B43:コレステロール:DSPC)、およびLNP2(PEG2000-S:18-B6:コレステロール:DSPC)の有効性および忍容性が、SDラットを用いた用量反応試験において評価された。ラットは、さまざまな濃度(0.5 mg/kg、1 mg/kg、または1.5 mg/kg)でOTC mRNA構築物-LNP2の投与を受け、そして6時間で、または24時間で解析された(表6A)。対照として、数匹のラットは、5 mL/kg PBS、1.5 mg/kg LNP1、または1.5 mg/kg LNP2の投与を受けた。投与された各製剤のZ-Avg、PDI、および封入%は、表6Bに提供される。
【0154】
(表6A)LNP1およびLNP2の用量反応試験
【0155】
(表6B)用量範囲試験のためのLNP製剤
【0156】
肝臓に対するダメージを解析するため、最終投薬の24時間後に肝臓試料が採取され、そしてALT、AST、GGT、および総ビリルビンレベルが解析された。ALT/ASTレベルは、空のLNPと比較したmRNA LNPで比較して、より上昇する(図18A~18Dおよび表7)。LNP1、LNP2(13-B43)、またはLNP2(18-B6)の投薬量を増加させると、ALT/ASTレベルが増大するという傾向が存在していた。1.5 mg/kgのLNP2(13-B43)の投与は、同量のLNP1よりも高いレベルのALT/ASTを誘導した。
【0157】
(表7)異なる量のLNP2の投与を受けたラットにおけるALTおよびASTのレベル
【0158】
GGTおよび総ビリルビンのレベルは、最終投薬の24時間後に採取された試料において解析された。LNP1の、またはLNP2のOTC mRNA製剤の投薬量を増加させると、GGTおよび総ビリルビンのレベルが増大するという傾向が存在していた(図19A~19D)。1.5 mg/kgのOTC mRNA構築物-LNP2(13-B43)の投与は、同量のOTC mRNA構築物-LNP1と比較して、同様のレベルのGGTを誘導した。1.5 mg/kgのOTC mRNA構築物-LNP2の投与は、同量のOTC mRNA構築物-LNP1と比較して、より高いレベルの総ビリルビンを誘導した。
【0159】
全血球計算は、最終投薬の24時間後に採取された血液から取得された。1.5 mg/kgのOTC mRNA構築物-LNP1の投与を受けたラットは、1.5 mg/kgのOTC mRNA構築物-LNP2(13-B43)の投与を受けたラットと比較して、同様の数の好中球、単球、および血小板を有していた(図20A~20C)。OTC mRNA構築物-LNP2の投薬量を増加させると、単球の量は増加したが、単球および血小板の量は減少した。
【0160】
サイトカインのレベルを調べるため、投薬の6時間後に血液が採取され、そしてMCP-1、MIP-1α、およびIP-10のレベルが定量された。MCP-1レベルおよびMIP-1αレベルにおいて、空の組成物とOTC mRNA構築物-LNP組成物との間で、有意な差異はなかった(図21A~21C)。LNP1およびLNP2のOTC mRNA製剤は、空の製剤と比較して、より高いレベルのIP-10を誘導した。OTC mRNA構築物-LNP2(13-B43)の投与にともなう、用量依存性のサイトカインレベルの増大もみられた。
【0161】
最終投薬の24時間後に、ウェスタンブロッティングにより、hOTCの発現が調べられた。OTC mRNA構築物-LNP2(13-B43)の投薬量の増加にともなう、用量依存性のOTC発現の増加がみられた(図22)。1.5 mg/kgのOTC mRNA構築物-LNP2(13-B43)は、1.5 mg/kgのOTC mRNA構築物-LNP1と比較して、OTCのより高い発現をもたらした。
【0162】
実施例7. 非ヒト霊長類の用量範囲試験
OTC mRNA構築物とともに製剤化されたLNP1(PEG2000-C-DMA:13-B43:コレステロール:DSPC)の有効性は、非ヒト霊長類(NHP)での用量反応試験において評価された。OTC mRNA構築物は、SEQ ID NO: 4の、5'、オープンリーディングフレーム、および3'の配列と、ヌクレオチド80個~ヌクレオチド440個のポリAテール長(すなわち、ヌクレオチド284個)とを有するヌクレオチド配列を含んでおり、かつシュードウリジン(Ψ)で修飾されていた。非ヒト霊長類は、連続しない3日(第1日、第8日、および第15日)に、さまざまな濃度(0.25 mg/kg、1 mg/kg、3 mg/kg、または5 mg/kg)の一回量の、OTC mRNA構築物-LNP1の投与を受けた(表8)。結果は、第16日に解析された。対照としては、非ヒト霊長類は、5 mg/kgの空のLNP1の投与を受けた。
【0163】
(表8)非ヒト霊長類の用量範囲試験のためのLNP製剤
【0164】
ヒトOTCの発現は、非ヒト霊長類の肝臓試料において、第16日に解析された。内因性の発現と比較して、OTCの最小の発現は、0.25 mg/kgの用量で検出され、かつ最大の発現は、3 mg/kgの用量で検出された(図23A)。最初の標的としてのhOTC発現(8%)は、最小の用量(0.25 mg/kg)で達成された。
【0165】
サイトカインのレベルを調べるため、第1日において1回目の投薬の6時間後に試料が採取され、そしてMCP-1およびIL-6のレベルが解析された(図23Bおよび23C)。MCP-1およびIL-6は、0.25 mg/kgの用量においては検出されなかった。MCP-1およびIL-6の一過性の上昇は、3 mg/kgの用量において観察された。
【0166】
これらの結果は、hOTCが強く発現しているが、免疫刺激は弱いことを示した。
【0167】
このように、さまざまな局面が開示されている。上述した実施内容および他の実施内容は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある。当業者は、開示されるもの以外の局面を用いて本開示を実施可能であることを理解するであろう。開示される局面は、限定ではなく例示の目的のために提示されており、かつ本開示は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図18D
図19A
図19B
図19C
図19D
図20A
図20B
図20C
図21A
図21B
図21C
図22
図23A
図23B
図23C
【配列表】
2022553375000001.app
【国際調査報告】