(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】真菌による腐敗を制御するための細菌組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20221215BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20221215BHJP
A23C 9/123 20060101ALI20221215BHJP
A23C 19/00 20060101ALI20221215BHJP
A23C 19/032 20060101ALI20221215BHJP
A23C 17/02 20060101ALI20221215BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20221215BHJP
C12N 15/31 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
C12N1/20 E ZNA
A23L33/135
A23C9/123
A23C19/00
A23C19/032
A23C17/02
A23L5/00 J
C12N15/31
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524017
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(85)【翻訳文提出日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 EP2020079555
(87)【国際公開番号】W WO2021078764
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503260310
【氏名又は名称】セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】アニスハ ゴエル
(72)【発明者】
【氏名】スィスィーリェ ルゲ マルビ ニルスン
(72)【発明者】
【氏名】ヘレ スコウ グルエーヤ
(72)【発明者】
【氏名】スィールヤ カイ ディマ
(72)【発明者】
【氏名】カーアン リーセ ベスタゴー アナスン
【テーマコード(参考)】
4B001
4B018
4B035
4B065
【Fターム(参考)】
4B001AC31
4B001BC14
4B001EC99
4B018LB07
4B018MD86
4B018ME09
4B018MF13
4B035LC05
4B035LG44
4B035LG50
4B035LP42
4B065AA30X
4B065AA30Y
4B065AC20
4B065BB02
4B065BC11
4B065BD11
4B065CA42
(57)【要約】
本発明は、食品を発酵させ、前記食品中の真菌の成長を阻害するか、または遅延させるためのマンガントランスポーターを含む乳酸菌を含む、ダイレクトバットセットスターター培養物組成物であって、前記組成物が最大600ppmのマンガンを含む、組成物に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を発酵させ、前記食品中の真菌の成長を阻害するか、または遅延させるためのマンガントランスポーターを含む乳酸菌を含む、ダイレクトバットセットスターター培養物組成物であって、
前記組成物が、最大600ppmのマンガンを含み、
前記乳酸菌の濃度が、少なくとも1E+10コロニー形成単位/gのものであり、
場合により、前記乳酸菌が、スーパーオキシドディスムターゼを含まず、好ましくはマンガンスーパーオキシドディスムターゼを含まない、組成物。
【請求項2】
最大400ppmのマンガン、好ましくは最大300ppmのマンガン、より好ましくは最大250ppm、さらにより好ましくは最大200ppmを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
30~600ppm、好ましくは35~600ppm、または40~400ppm、または40~300ppm、または40~250ppmを含み、より好ましくは40~200ppmまたは45~200ppmのマンガンを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記乳酸菌の前記濃度が、2.0E+10~6.5E+11、好ましくは6.0E+10~6.4E+11、より好ましくは1.3E+11~5.6E+11コロニー形成単位/gのものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、凍結ダイレクトバットセット(F-DVS)またはフリーズドライバットセット(FD-DVS)である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、FD-DVS形態の重量当たりの添加剤の乾燥重量として測定される2%~70%の添加剤、好ましくは3%~50%の添加剤、より好ましくは4%~40%の添加剤、さらにより好ましくは10%~30%の添加剤または20~30%の添加剤を含むフリーズドライダイレクトバットセット(FD-DVS)組成物であり、好ましくは、前記添加剤が、マンガンを含まないか、または実質的にマンガンを含まないか、あるいは前記組成物が、F-DVS形態の重量当たりの添加剤の重量として測定される2%~70%の添加剤、好ましくは3%~50%の添加剤、より好ましくは4%~40%の添加物、さらにより好ましくは10~40%の添加剤または20~35%の添加剤を含む凍結ダイレクトバットセット(F-DVS)であり、好ましくは、前記添加剤が、マンガンを含まないか、または実質的にマンガンを含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
カゼイン酸ナトリウム、イノシトール、グルタミン酸一ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、スクロース、マルトデキストリン、イノシン一リン酸(IMP)、イノシン、ポリソルベート80、グルタミン酸、リジン、グルタミン酸ナトリウム、モルト抽出物、ホエイパウダー、酵母抽出物、グルテン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、ケラチン、アルブミン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
カゼイン酸ナトリウム、イノシトール、グルタミン酸一ナトリウム、およびアスコルビン酸ナトリウムを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記乳酸菌が、配列番号1~3のうちのいずれか1つの配列と少なくとも55%、例えば、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するマンガントランスポーターを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記乳酸菌が、スーパーオキシドディスムターゼを含まず、好ましくはマンガンスーパーオキシドディスムターゼを含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記乳酸菌が、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、およびラクトバチルス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記真菌が、酵母および/またはカビであり、好ましくは、前記真菌が、トルラスポラ属(Torulaspora spp.)、クリプトコックス属(Cryptococcus spp.)、サッカロミケス属(Saccharomyces spp.)、ヤロウィア属(Yarrowia spp.)、デバリオミセス属(Debaryomyces spp.)、カンジダ属(Candida spp.)、およびロドトルラ(Rhodoturola)からなる群から選択される酵母であり、好ましくは、デバロミセス属(Debaromyces spp.)が、デバリオミセス・ハンセニイ(Debaromyces hansenii)であり、かつ/または前記真菌が、アスペルギルス属(Aspergillus spp.)、クラドスポリウム属(Cladosporium spp.)、ディディメラ属(Didymella spp.)、またはペニシリウム属(Penicillium spp.)からなる群から選択されるカビであり、好ましくは、ペニシリウム属(Penicillium spp.)が、ペニシリウム・クラストサム(Penicillium crustosum)、ペニシリウム・パネウム(Penicillium paneum)、ペニシリウム・カルネウム(Penicillium carneum)、またはペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)である、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物を含む、食品。
【請求項14】
前記食品が、発酵食品、好ましくは高温性発酵食品または中温性発酵食品、より好ましくはヨーグルトまたはチーズである、請求項1~13のいずれか一項に記載の食品。
【請求項15】
食品中の真菌の成長を阻害するための、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物の使用であって、好ましくは、前記食品が、発酵食品、より好ましくは高温性発酵食品または中温性発酵食品、より好ましくはヨーグルトまたはチーズである、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学防腐剤などの防腐剤に頼ることなく真菌による腐敗を制御するための高濃度のスターター培養物組成物およびその調製に関する。したがって、本発明は、加工が少なく防腐剤を含まない食品の需要に寄与すると同時に、酵母およびカビの成長を管理するための効果的な解決策を提供することに寄与する。本発明はまた、前記組成物を含む食品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品産業における主要な問題は、不要な微生物による腐敗である。食糧農業機関(Food and Agriculture Organization:FAO)によると、ヒトが消費することを目的としたカロリーの4分の1は、最終的にヒトによって消費されていない。8億超の人々が飢餓に苦しむ食糧不足の時代に、食品廃棄物の問題は、世界的な政策立案者および食品メーカーにとって優先事項となっている。社会に対する社会的および経済的悪影響に加えて、廃棄食品は、不必要な温室効果ガスの排出ならびに水および土地などの稀少資源の非効率的な使用など、関連する多くの環境影響をもたらす。
【0003】
酵母およびカビは、食品を腐敗させるのに非常に効率的であり、大半の食品メーカーにとって問題である。酵母およびカビに起因する腐敗は、食品の表面上にカビの斑点または変色としてはっきりと見えるので、消費する前に食品を処分することができる。酵母は、プランクトンの形態で食料および飲料マトリックス内で成長する傾向があり、糖を発酵させ、嫌気性条件下でよく成長する傾向がある。対照的に、カビは、細胞で構成された目に見える菌糸の形状で製品の表面上で成長する傾向がある。
【0004】
食料のバイオプリザベーションのための抗真菌性微生物剤の使用は知られており、例えば、Salas et al.“Antifungal microbial agents for food biopreservation-a review.”
Microorganisms 5.3(2017):37に記載されている。
【0005】
特に乳製品分野において、欧州では毎年2,900万トンの乳製品が廃棄されている。乳製品を新鮮に保つための主な課題のうちの1つは、特に生産から消費者の食卓までのコールドチェーンが崩壊している場合、いたるところに天然に存在する酵母およびカビによる汚染を管理することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
経済的および環境的な理由から、酵母およびカビの汚染を制御するのに効果的な新規または改良された方法が常に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
マンガンは、ヒトの健康に不可欠であり、したがって必須の微量元素であると考えられてきた。マンガンは、マンガンスーパーオキシドディスムターゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼなどの多くの細胞酵素の機能に必要であり、キナーゼ、デカルボキシラーゼ、トランスフェラーゼ、およびヒドロラーゼのような他の多くの酵素を活性化させるのに役立つことができるため、ヒトと動物の両方の適切な機能に不可欠である。
【0008】
マンガンは、葉物野菜、堅果、穀物、および動物性食品を含む多くの食料源中に天然に見ることができる。一般的な食料中のマンガン濃度の典型的な範囲は、例えば、穀物製品では0.4~40ppm、肉、鶏肉、魚、および卵では0.1~4ppm、野菜製品では0.4~7ppm、均質乳では0.03ppmである。
【0009】
栄養補助食品であることに加えて、マンガンは、乳中のビフィズス菌の成長を増強するための有効成分として発酵製品に添加されることがある(例えば、国際公開第2017/021754号、ジェルベ・ダノン社、フランスを参照)。
【0010】
最近、マンガンが食品中の真菌の成長にとって重要な成長制約物質であることが発見された。したがって、マンガン捕捉細菌などのマンガン捕捉剤を食品に適用して、遊離マンガンを巡って真菌と競合させることが可能である。これにより、この栄養素が枯渇し、結果として、真菌の成長が阻害されるか、または遅延される。このような細菌は、発酵食品のスターター培養物として使用できる。本発明は、工業用途のためのそのような抗真菌性細菌の調製に関する。
【0011】
本発明は、当該分野で一般的な慣行であるアップスケーリングプロセス中のスターター培養物の調製において高レベルのマンガンが使用される場合、細菌が後で食品に適用されると、真菌の成長を阻害するか、または遅延させる効果が低くなるという驚くべき発見に部分的に基づいている。したがって、アップスケーリングプロセス中の細菌は、高レベルのマンガンにさらされるべきではない。その理由は、そのようなレベルがその抗真菌活性に悪影響を与えるからである。換言すると、本発明者らは、細菌組成物に含有されるマンガンレベルがその抗真菌活性と密接に関連していることを発見した。
【0012】
本発明は、酵母またはカビの成長を阻害する単一または複数の乳酸菌株を含む高濃度のバイオマス組成物に関する。バイオマス組成物は、成長培地中で細菌を培養し、細菌を濃縮することによって調製することができる。
【0013】
市販のスターター培養物は、通常、凍結またはフリーズドライ(FD)培養物として販売され得る。高濃度の培養物は、中間移動することなく乳に直接接種できるため、商業的に非常に興味深いものである。高濃度の培養物は、ダイレクトバットセット(DVS)培養物と呼ばれることがある。
【0014】
市販の高濃度のDVSスターター培養物は、粉末の形態でフリーズドライまたは凍結乾燥培養物として使用されることがある。この形態では、スターターは、冷蔵することなく出荷できる。
【0015】
乳酸菌は通常、バルクスターター増殖用の凍結もしくはフリーズドライ培養物として、またはバルクスターターの調製を必要としない、発酵容器への直接接種を目的としたいわゆる「ダイレクトバットセット」(DVS)培養物、もしくは発酵乳製品およびチーズなどの乳製品を生産するためのバットとして、乳製品業界などの食品業界に供給される。
【0016】
ダイレクトバットセットスターター培養物は、バットに直接添加される高濃度のバイオマス(通常は1010~1012cfu/g)である。利点としては、ファージ攻撃リスクの低減、使用の柔軟性、混合株および種の培養物が利用可能であること、および増殖施設を必要としないことが挙げられる。フリーズドライ培養物は、通常、-18℃で保存されるが、凍結培養物は、輸送中ドライアイスで冷却し、-45℃で保存する必要がある。
【0017】
スターター培養物の典型的な生産プロセスは、以下の工程:(a)接種材料の取り扱い、(b)培地の調製、(c)pH制御下での発酵槽における培養物の増殖、(d)濃縮、(e)凍結、(f)乾燥、ならびに(g)包装および保存を含む。スターター培養物の生産における工程は、培養物製品の望ましい同一性、純度、および品質を得るために重要である。直接接種材料として使用される培養物は無菌条件下で調製され、移動は最小限に抑えられる。
【0018】
培養物を生産するための成長培地は、選択された乳成分を含有してもよく、酵母抽出物、ビタミン、およびミネラルなどの様々な栄養素が成長培地に補充されてもよい。培養物成長培地は超高温に加熱され、中温性または高温性培養の場合にはそれぞれ30℃または40℃に冷却される。培養物の接種の後、NaOHまたはNH4OHなどのアルカリを添加することによって、中温性培養物の場合にはpHを6.0~6.3に維持し、高温性培養物の場合にはpHを5.5~6.0に維持することにより、成長が最適化される。
【0019】
発酵槽内の温度、攪拌速度、およびヘッドスペースガスなどの加工パラメーターは、バルクスターターよりもはるかに濃縮された細胞懸濁液を生産するように調整される。通常10,000~40,000Lの容量の容器でのバッチ発酵である発酵の後、内容物を冷却し、バイオマスを回収することにより、細胞濃度がさらに10~20倍になる。セパレーター装置は、通常、水性液体を分離して細菌を収集するために使用される。
【0020】
費用有効性および効率のために、バイオマスのより高い収量が常に必要とされている。DVSを使用するには、細菌培養物をできるだけ濃縮させると同時に、細胞の回収率をできるだけ高くすることが望ましい。
【0021】
十分な細菌を含むために、商業的に関連する高濃度の培養物は、一般に、高レベルのマンガンを有する。マンガンが細菌、特に乳酸菌の成長を増強することは当該技術分野で知られている。これは、バイオマスの収量が主な関心事であるスターター培養物メーカーにとって重要な経済的考慮事項である(Raccach,M.“Manganese and lactic acid bacteria.”Journal of food protection 48.10(1985):895-898)。
【0022】
欧州特許第2119766号は、マンガンが乳酸菌の成長収量を増加させることができることを開示している。
【0023】
欧州特許第0130228号は、マンガン塩が乳酸菌の迅速な発酵に使用できることを開示している。マンガンは、例えば、細胞成長を増強するのに適切な量で食品グレードのマンガン塩の形態で常套的に添加されてきた。
【0024】
最終的な濃縮培養物は、しばしば、高レベルのマンガンを含有する。使用できる食品グレードのマンガン塩の例としては、塩化マンガン、酸化マンガン、硫酸マンガン、クエン酸マンガン、グリセロリン酸マンガン、グルコン酸マンガンなどが挙げられる。マンガン塩は、細菌を接種する前に、または前記接種と同時に発酵培地に添加することができる。
【0025】
本発明は、一般に、食品などの製品への添加を目的とした乳酸菌を含む組成物に関する。細菌組成物は、食品用のスターター培養物組成物として使用することができる。この組成物は、食品に添加されるか、または食品を発酵させ、同時に真菌の成長を管理するために添加されてもよい。この組成物は、マンガンの含有レベルが低いかまたは低減されていることを特徴とする。本文脈で使用される場合、「スターター培養物」という用語は、1つ以上の細菌の培養物が食品を酸性化させることができることを指す。
【0026】
第1の態様において、本出願は、乳酸菌と、低レベルのマンガン(例えば、最大600ppmのマンガン)と、を含むスターター培養物組成物を提供する。この組成物は、それ以外の場合には製品中の酵母(複数可)またはカビ(複数可)のために利用可能な遊離マンガンを取り込むために使用することができる。本発明者らは、一般的な酵母およびカビが、開示されるような組成物によって阻害されることを示した。
【0027】
Archibald et al.1984では、L.plantarum 14917によるマンガンの取り込みが調査された(Archibald et al.“Manganese acquisition by Lactobacillus plantarum.”Journal of bacteriology 158.1(1984):1-8)。開示されているように、L.plantarum 14917の高いマンガン含有量が、特定の高親和性かつ高速取り込みシステムによって生成された。しかしながら、この研究は、食品中の汚染酵母および/またはカビの成長阻害には関係していない。また、凍結ダイレクトバットセット(F-DVS)またはフリーズドライバットセット(FD-DVS)などの高濃度のダイレクトバットセットスターター培養物の調製についても何ら開示されていない。
【0028】
一態様において、本発明は、食品を発酵させ、前記食品中の真菌の成長を阻害するか、または遅延させるための1つ以上の抗真菌性乳酸菌を含むダイレクトバットセットスターター培養物組成物であって、組成物が最大600ppmのマンガンを含み、乳酸菌の濃度が少なくとも1E+10コロニー形成単位/gである、組成物を提供する。
【0029】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供されるのは、食品を発酵させ、前記食品中の真菌の成長を阻害するか、または遅延させるためのマンガントランスポーターを含む乳酸菌を含む凍結ダイレクトバットセット(F-DVS)またはフリーズドライバットセット(FD-DVS)スターター培養物組成物であって、組成物が最大600ppmのマンガンを含み、乳酸菌の濃度が少なくとも1E+10コロニー形成単位/gである、組成物を提供する。
【0030】
好ましくは、スターター培養物組成物中の細菌の濃度は、少なくとも1E+10コロニー形成単位(CFU)/gである。
【0031】
微生物による腐敗の問題に対抗するために、本発明は、さらなる態様において、食品中の真菌の成長を阻害するか、または遅延させるための、少なくとも1E+10CFU/gを含む細菌スターター組成物であって、組成物が最大600ppmのマンガンを含む、組成物を提供する。好ましくは、細菌組成物は、フリーズドライダイレクトバットセット(FD-DVS)または凍結ダイレクトバットセット(F-DVS)である。この組成物は、好ましくは、1つ以上の乳酸菌株を含む。
【0032】
また、本明細書で提供されるのは、乳ベース製品中の真菌の成長を阻害するか、もしくは遅延させるためのスターター培養物組成物、または乳ベース食品を発酵させ、前記食品中の真菌の成長を阻害させるか、もしくは遅延させるためのスターター培養物組成物であって、組成物が乳酸菌を含み、組成物が最大600ppmのマンガンを含み、乳酸菌のコロニー形成単位/gの濃度が、少なくとも1E+10であり、好ましくは、乳酸菌が、乳、ワイン、茶、植物および/または肉マトリックスを発酵させる、組成物である。
【0033】
組成物、好ましくはフリーズドライDVS(FD-DVS)または凍結DVS(F-DVS)は、最大550ppmのマンガン、最大500ppmのマンガン、最大450ppmのマンガン、最大400ppmのマンガン、最大350ppmのマンガン、最大300ppmのマンガン、最大250ppmのマンガン、最大200ppmのマンガン、最大150ppmのマンガン、最大100ppmのマンガン、最大70ppmのマンガン、最大50ppmのマンガン、最大40ppmのマンガンを含んでもよい。
【0034】
組成物は、10~600ppmのマンガン、30~600ppmのマンガン、35~600ppmのマンガン、40~600ppmのマンガン、45~600ppmのマンガン、50~600ppmのマンガン、60~550ppm、100~500ppmのマンガン、150~450ppmのマンガン、190~400ppmのマンガン、200~350ppmのマンガン、250~300ppmのマンガンを含んでもよい。好ましくは、組成物は、40~250ppmのマンガンを含んでもよく、より好ましくは、組成物は、45~200ppmのマンガンを含んでもよい。
【0035】
組成物は、1E+10~5E+12、好ましくは2.0E+10~6.5E+11、より好ましくは6.0E+10~6.4E+11、さらにより好ましくは1.3E+11~5.6E+11のコロニー形成単位/gの菌体を有する乳酸菌を含んでもよい。
【0036】
好ましい実施形態では、現在開示されている組成物は、フリーズドライバットセット(FD-DVS)または凍結ダイレクトバットセット(F-DVS)であってもよく、特に、組成物は、マンガンを含まないか、もしくは実質的に含まない添加剤または凍結防止剤を含有するフリーズドライダイレクトバットセット(FD-DVS)であってもよく、あるいは組成物は、マンガンを含まないか、もしくは実質的にマンガンを含まない添加剤または凍結防止剤を含有する凍結ダイレクトバットセット(F-DVS)であってもよい。好ましくは、組成物は、フリーズドライダイレクトバットセット(FD-DVS)であり、カゼイン酸ナトリウム、イノシトール、グルタミン酸一ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、スクロース、マルトデキストリン、イノシン一リン酸(IMP)、イノシン、ポリソルベート80、グルタミン酸、リジン、グルタミン酸Na、モルト抽出物、ホエイパウダー、酵母抽出物、グルテン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、ケラチン、アルブミン、カルボキシレート、もしくはそれらの混合物からなる群から選択される添加剤(または凍結防止剤)をさらに含んでもよい。好ましくは、添加剤(または凍結防止剤)は、マンガンを含まないか、もしくは実質的にマンガンを含まない。
【0037】
組成物は、さらなる成分として、酵母抽出物、糖およびビタミン(例えば、ビタミンA、C、D、K、もしくはビタミンBファミリーのビタミン)などの栄養素を含む凍結防止剤ならびに/または従来の添加剤をさらに含有してもよい。本発明の組成物に添加してもよい好適な凍結防止剤は、マンニトール、ソルビトール、トリポリリン酸ナトリウム、キシリトール、グリセロール、ラフィノース、マルトデキストリン、エリスリトール、トレイトール、トレハロース、グルコースおよびフルクトースなどの微生物の耐寒性を改善する成分である。他の添加物としては、例えば、炭水化物、フレーバー、ミネラル、酵素(例えば、レンネット、ラクターゼおよび/またはホスホリパーゼ)が挙げられる。
【0038】
一実施形態では、組成物は、マンガンを含まないか、もしくはマンガンを実質的に含まない添加剤または凍結防止剤を、F-DVS形態の重量当たり10~40重量%の凍結防止剤、またはF-DVS形態の重量当たり20~35重量%の凍結防止剤、例えばF-DVS形態の重量当たり31重量%の凍結防止剤の濃度で含有する凍結ダイレクトバットバットセット(F-DVS)であってもよい。
【0039】
好ましい実施形態では、組成物は、添加剤として炭水化物を含むフリーズドライバットセット(FD-DVS)であり、好ましくは、添加剤(または凍結防止剤)は、マンガンを含まない。好適な例としては、ペントース(例えば、リボース、キシロース)、ヘキソース(例えば、フルクトース、マンノース、ソルビトール)、二糖(例えば、デュクロース(ducrose)、ドレハロース(drehalose)、メリビオース、ラクツロース)、オリゴ糖(例えば、ラフィノース)、オリゴフルトース(例えば、アクティライト、フリブロロース)、多糖(例えば、マルトデキストリン、キサンタンガム、ペクチン、アルギネート、微結晶セルロース、デキストラン、ポリエチレングリコール、および糖アルコール(ソルビトール、マンニトール))からなる群から選択されるものが挙げられる。好ましい炭水化物は、二糖、好ましくはトレハロース、スクロース、および/またはマルトデキストリンである。
【0040】
好ましい実施形態では、組成物は、凍結状態にあるとき、DVS形態の重量当たりの添加剤の重量として測定される2%~70%の添加剤(または凍結防止剤)、より好ましくはDVS形態の重量当たりの添加剤の重量として測定される3%~50%の添加剤(または凍結防止剤)、さらにより好ましくはDVS形態の重量当たりの添加剤の重量として測定される4%~40%の添加剤(または凍結防止剤)、および最も好ましくはDVS形態の重量当たりの添加剤の重量として測定される10%~35%の添加剤(または凍結防止剤)を含んでもよい。好ましくは、添加剤は、マンガンを含まないか、または実質的にマンガンを含まない。
【0041】
本発明の文脈において、添加剤または凍結防止剤は、マンガンを含まないか、または実質的にマンガンを含まないとは、前記添加剤または凍結防止剤中に10ppm未満の濃度のマンガンが存在する場合である。さらに、本発明の文脈において、「添加剤」、「凍結防止剤(cryoprotectant)」または「凍結防止剤(cryoprotectant agent)」は、互換的に使用される。
【0042】
発酵後の単離された生菌(バイオマス)への添加剤(または凍結防止剤)の添加は、例えば、好適な温度で30分間、固体凍結防止剤をバイオマスと混合することによって行ってもよい。凍結防止剤が、例えばスクロースである場合、好適な温度は室温であってもよい。あるいは、添加剤(または凍結防止剤)の滅菌溶液をバイオマスと混合してもよい。スクロースの場合、好適な滅菌溶液は、50%(w/w)スクロース溶液から作製してもよい。トレハロースの場合、好適な滅菌溶液は、40%(w/w)溶液から作製してもよい。
【0043】
好ましい実施形態では、組成物は、10~600ppmのマンガン、30~600ppmのマンガン、35~600ppmのマンガン、40~600ppmのマンガン、45~600ppmのマンガン、50~600ppmのマンガン、60~550ppm、100~500ppmのマンガン、150~450ppmのマンガン、190~400ppmのマンガン、200~350ppmのマンガン、250~300ppmのマンガンを含むフリーズドライDVSである。好ましくは、組成物は、40~250ppmのマンガンを含むフリーズドライDVSであり、より好ましくは、組成物は、45~200ppmのマンガンを含むフリーズドライDVSである。さらに、前記好ましいフリーズドライDVS組成物は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、およびラクトバチルス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)からなる群から選択される、好ましくはラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)および/またはラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)から選択される乳酸菌を含んでもよく、乳酸菌は、2E+10、3E+10、4E+10、5E+10、6E+10、7E+10、8E+10、9E+10CFU/g、例えば、2.0E+10~6.5E+11、好ましくは6.0E+10~6.4E+11、より好ましくは1.3E+11~5.6E+11を含む、少なくとも1E+10のCFU/gを有し、かつ/またはフリーズドライDVSは、マンガンを含まないか、もしくはマンガンを実質的に含まない添加剤または凍結防止剤を、FD-DVS形態の重量当たり10~30%の乾燥重量の凍結防止剤またはFD-DVS形態の重量当たり20~30%の乾燥重量の凍結防止剤、例えば、FD-DVS形態の重量当たり27%の乾燥重量の凍結防止剤の濃度で有する。
【0044】
好ましい実施形態において、本発明は、食品中の真菌の成長を阻害するか、もしくは遅延させるための組成物、または乳ベース製品中の真菌の成長を阻害するか、もしくは遅延させるための組成物、または乳ベース食品を発酵させ、前記食品中の真菌の成長を阻害するか、もしくは遅延させるための組成物であって、乳酸菌が、配列番号1~3のうちのいずれか1つの配列と少なくとも55%、例えば少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%の配列同一性を有するマンガントランスポーターを含む、組成物を提供し得る。
【0045】
好ましい実施形態において、本発明は、食品中の真菌の成長を阻害するか、もしくは遅延させるための組成物、または乳ベース製品中の真菌の成長を阻害するか、もしくは遅延させるための組成物、または乳ベース食品を発酵させ、前記食品中の真菌の成長を阻害するか、もしくは遅延させるための組成物であって、乳酸菌が、スーパーオキシドディスムターゼを含まず、好ましくはマンガンスーパーオキシドディスムターゼを含まない、組成物を提供し得る。
【0046】
マンガンスーパーオキシドディスムターゼなどのスーパーオキシドディスムターゼが研究されており、例えば、とりわけ、Kehres et al.,“Emerging themes in manganese transport,biochemistry and pathogenesis in bacteria.”FEMS microbiology reviews 27.2-3(2003):263-290、Culotta V.C”Superoxide dismutase,oxidative stress,and cell metabolism”Curr.Top.Cell Regul.36,117-132(2000)、またはWhittaker J.W”Manganese superoxide dismutase”Met.Ions Biol.Syst.37,587-611(2000)に記載されている。
【0047】
本発明の文脈において、「含まない」という用語は、1つ以上の菌株のゲノムがスーパーオキシドディスムターゼをコードする遺伝子を提示しないこと、あるいは1つ以上の菌株のゲノムがスーパーオキシドディスムターゼをコードする遺伝子を提示する場合でも、この遺伝子が1つ以上の菌株によって発現されないことを意味する。
【0048】
好ましい実施形態において、本発明は、食品中の真菌の成長を阻害するか、もしくは遅延させるための組成物、または乳ベース製品中の真菌の成長を阻害するか、もしくは遅延させるための組成物、または乳ベース食品を発酵させ、前記食品中の真菌の成長を阻害するか、もしくは遅延させるための組成物であって、乳酸菌が、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、およびラクトバチルス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)からなる群から選択される、組成物を提供し得る。
【0049】
好ましい実施形態において、本発明は、食品中の真菌の成長を阻害するか、もしくは遅延させるための組成物、または乳ベース製品中の真菌の成長を阻害するか、もしくは遅延させるための組成物、または乳ベース食品を発酵させ、前記食品中の真菌の成長を阻害するか、もしくは遅延させるための組成物であって、真菌が、酵母および/またはカビであり、好ましくは、真菌が、トルラスポラ属(Torulaspora spp.)、クリプトコックス属(Cryptococcus spp.)、サッカロミケス属(Saccharomyces spp.)、ヤロウィア属(Yarrowia spp.)、デバリオミセス属(Debaryomyces spp.)、カンジダ属(Candida spp.)、およびロドトルラ(Rhodoturola)からなる群から選択される酵母であり、好ましくは、デバロミセス属(Debaromyces spp.)が、デバロミセス・ハンセニイ(Debaromyces hansenii)であり、かつ/または真菌が、アスペルギルス属(Aspergillus spp.)、クラドスポリウム属(Cladosporium spp.)、ディディメラ属(Didymella spp.)、またはペニシリウム属(Penicillium spp.)からなる群から選択されるカビであり、好ましくは、ペニシリウム属(Penicillium spp.)が、ペニシリウム・クラストサム(Penicillium crustosum)、ペニシリウム・パネウム(Penicillium paneum)、ペニシリウム・カルネウム(Penicillium carneum)、またはペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)である、組成物を提供し得る。
【0050】
さらなる態様において、本発明はまた、本明細書に開示される組成物を含む食品を提供する。一実施形態では、食品は、発酵食品、好ましくは高温性発酵食品または中温性発酵食品であってもよく、より好ましくは、食品は、ヨーグルトまたはチーズであってもよい。
【0051】
第3の態様では、本発明はまた、食品中の真菌の成長の阻害剤としての本明細書に開示される組成物の使用であって、好ましくは、食品が、発酵食品、より好ましくは高温性発酵食品または中温性発酵食品、より好ましくはヨーグルトまたはチーズである、使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】
図1は、スターター培養物(参照)を用いて生産されるか、あるいはスターター培養物およびF-DVS形態のL.ラムノサス(L.rhamnosus)株1(1E+7CFU/g)を用いて生産され、前記F-DVS形態が約30ppmのマンガン、もしくは約195ppmのマンガン、もしくは約625ppmのマンガンを有するか、あるいはスターター培養物およびFD-DVS形態のL.パラカゼイ(L.paracasei)およびL.ラムノサス(L.rhamnosus)株3を用いて生産され、前記F-DVS形態が約275ppmのマンガンを有する、ヨーグルト(1.5%脂肪)。ヨーグルトに、ペニシリウム(Penicillium)(P.)クラストサム(crustosum)(X)、P.カルネウム(P.carneum)(Y)、およびP.ロックフォルティ(P.roqueforti)(Z)(各500胞子)をスパイクし、22℃で7日間保存した。
【0053】
【
図2】
図2は、スターター培養物(参照)を用いて生産されるか、あるいはスターター培養物およびF-DVS形態のL.ラムノサス(L.rhamnosus)株1(1E+7CFU/g)を用いて生産され、前記F-DVS形態が約30ppmのマンガン、または約195ppmのマンガン、または約625ppmのマンガンを有するヨーグルト(1.5%脂肪)に接種するために、50CFU/gのトルラスポラ(Torulaspora)(T.)デルブルエッキイ(delbrueckii)を使用する場合の、T.デルブルエッキイ(T.delbrueckii)の成長。ヨーグルトは、7℃で23日間保存した。
【0054】
【
図3】
図3は、スターター培養物(参照)を用いて生産されるか、あるいはスターター培養物およびF-DVS形態のL.ラムノサス(L.rhamnosus)株1(1E+7CFU/g)を用いて生産され、前記F-DVS形態が約30ppmのマンガン、または約195ppmのマンガン、または約625ppmのマンガンを有するヨーグルト(1.5%脂肪)に接種するために、50CFU/gのD.ハンセニイ(D.hansenii)を使用する場合の、D.ハンセニイ(D.hansenii)の成長。ヨーグルトは、7℃で23日間保存した。
【0055】
【
図4】
図4は、スターター培養物(参照)を用いて生産されるか、あるいはスターター培養物およびF-DVS形態のL.ラムノサス(L.rhamnosus)株2を用いて生産され、前記F-DVS形態が約45ppmのマンガンを有するか、あるいはスターター培養物ならびにF-DVS形態のL.ラムノサス(L.rhamnosus)株1および2を用いて生産され、F-DVS形態が約65ppmのマンガンを有するか、あるいはスターター培養物および約845ppmのマンガンを有するFD-DVS形態のベンチマーク組成物Aを用いて生産されるか、あるいはスターター培養物および約630ppmのマンガンを有するFD-DVS形態のベンチマーク組成物Bを用いて生産されるか、あるいはスターター培養物および約870ppmのマンガンを有するFD-DVS形態のベンチマーク組成物Cを用いて生産されるヨーグルト(1.5%脂肪)に接種するために、50CFU/gのD.ハンセニイ(D.hansenii)を使用する場合の、D.ハンセニイ(D.hansenii)の成長。ヨーグルトは、7℃で32日間保存した。
【0056】
【
図5】
図5は、スターター培養物(参照)を用いて生産されるか、あるいはスターター培養物およびF-DVS形態のL.ラムノサス(L.rhamnosus)株2(1E+7CFU/g)を用いて生産され、F-DVS形態が約45ppmのマンガンを有するか、またはF-DVS形態のL.ラムノサス(L.rhamnosus)株1および2(1E+7CFU/g)を用いて生産され、F-DVS形態が約65ppmのマンガンを有するか、あるいは約845ppmのマンガンを有するFD-DVS形態のベンチマーク組成物A(1E+7CFU/g)を用いて生産されるか、あるいは約630ppmのマンガンを有するFD-DVS形態のベンチマーク組成物B(1E+7CFU/g)を用いて生産されるか、あるいは約870ppmのマンガンを有するFD-DVS形態のベンチマーク組成物C(1E+7CFU/g)を用いて生産される、ヨーグルト(1.5%脂肪)。ヨーグルトにP.カルネウム(P.carneum)、P.パネウム(P.paneum)、P.ロックフォルティ(P.roqueforti)(各500胞子)をスパイクし、7℃で24日間保存した(上段)か、または25℃で6日間保存した(下段)。プレート上のペニシリウム(Penicillium)種の構成は、P.カルネウム(P.carneum)の代わりにP.パネウム(P.paneum)を使用したことを除いて、
図1と同じである。
【0057】
【
図6】
図6は、スターター培養物(参照)を用いて生産されるか、あるいはスターター培養物ならびにFD-DVS形態のL.パラカゼイ(L.paracasei)およびL.ラムノサス(L.rhamnosus)株3を用いて生産され、前記FD-DVS形態の形態が約275ppmのマンガンを有するか、あるいはスターター培養物およびFD-DVS形態のL.ラムノサス(L.rhamnosus)株2(1E+7CFU/g)を用いて生産され、前記FD-DVS形態が約200ppmのマンガンを有し、FD-DVS形態を得るために使用される凍結防止剤(標準凍結防止剤)に脱脂粉乳(SMP)を添加したか、または添加しなかったヨーグルト(1.5%脂肪)に接種するために、50CFU/gのD.ハンセニイ(D.hansenii)を使用する場合の、D.ハンセニイ(D.hansenii)の成長。ヨーグルトは、7℃で27日間保存した。
【0058】
【
図7】
図7は、スターター培養物およびFD-DVS形態のL.ラムノサス(L.rhamnosus)株2(1E+7CFU/g)を用いて生産され、前記FD-DVS形態が約200ppmのマンガンを有し、FD-DVS形態を得るために使用される凍結防止剤に様々な濃度のマンガン(1、5、10、20、および40ppm)を添加したヨーグルト(脂肪1.5%)。ヨーグルトにP.クラストサム(P.crustosum)、P.カルネウム(P.carneum)、およびP.ロックフォルティ(P.roqueforti)(各500胞子)をスパイクし、22℃で12日間保存した。プレート上のペニシリウム(Penicillium)種の構成は、
図1と同じである。
【0059】
【
図8】
図8は、スターター培養物およびFD-DVS形態のL.ラムノサス(L.rhamnosus)株2(1E+7CFU/g)を用いて生産され、前記FD-DVS形態が約200ppmのマンガンを有し、FD-DVS形態を得るために使用される凍結防止剤に様々な濃度のマンガン(1および40ppm)を添加したヨーグルト(脂肪1.5%)に接種するために、50CFU/gのD.ハンセニイ(D.hansenii)を使用する場合の、D.ハンセニイ(D.hansenii)の成長。ヨーグルトは、7℃で27日間保存した。
【発明を実施するための形態】
【0060】
食料ロスは世界中で大きな懸念事項である。ヒトが消費するために生産された全食料の約3分の1が捨てられる(lost)か、廃棄されている。この大規模で世界的な食料ロスの理由は様々であるが、官能的な製品品質(外観、食感、味、および香り)に影響を与える微生物による腐敗が大きな役割を果たしている。真菌は、様々な、さらには過酷な環境で成長することができるため、食料加工チェーンのすべての段階で見られる主要な腐敗微生物である。したがって、真菌汚染を制御することによって食料ロスを減らすことが重要である。
【0061】
この要求に応えて、本発明は、食品中の真菌の成長を阻害するか、または遅延させるための新規組成物を提供する。マンガンは、自然界および多くの消費財に微量に存在する。低レベルの遊離マンガン濃度が酵母および/またはカビの成長の制限要因としての役割を果たす可能性があることが最近発見された。したがって、所与の製品中の遊離マンガンの濃度を操作することにより、微生物による腐敗を効果的に管理することができる。このような腐敗防止戦略は、食品だけでなく、飼料製品、生物学的製品、ヘルスケア製品、医薬品など、一般に微生物汚染を受けやすい他の製品にも適用可能である。
【0062】
多くの細菌は、環境から必須金属を捕捉するための高度な取得システムを発現している。したがって、マンガン捕捉細菌を適用して、製品に遊離マンガンを取り込むことができる。さらに、本発明者らは、アップスケーリングプロセスにおいて細菌を調製する際に、より低いマンガンレベルが好ましいことをさらに最近発見した。
【0063】
本発明は、第1の態様において、乳ベース食品中の真菌の成長を阻害するか、もしくは遅延させるためのスターター培養物組成物、または乳ベース食品を発酵させ、前記食品中の真菌の成長を阻害させるか、または遅延させるためのスターター培養物組成物であって、組成物が乳酸菌を含み、組成物が最大600ppmのマンガンを含み、乳酸菌コロニー形成単位/gの濃度が、少なくとも1E+10であり、好ましくは、乳酸菌が、乳、ワイン、茶、植物および/または肉マトリックスを発酵させる、組成物を提供する。
【0064】
一般に、阻害は、細胞または微生物の機能および活性の部分的または全体的な低減を意味する。本明細書で使用される場合、酵母およびカビに関して「阻害する(to inhibit)」および「阻害する(inhibiting)」という用語は、酵母およびカビの成長、数、もしくは濃度が同じであるか、または低減されていることを意味する。これは、微生物学の分野で知られている任意の方法で測定できる。阻害は、製品中または製品上の真菌の成長、数、または濃度を対照と比較することによって観察することができる。対照は、同じ製品であることができるが、組成物を含まない。
【0065】
一般に、「遅延させる」という用語は、何かを通常よりもゆっくりと停止させる、延期させる、妨害させる、または発生させる行為を意味する。本明細書で使用される場合、「真菌の成長を遅延させる」とは、真菌の成長を延期させる行為を指す。これは、真菌が所与のレベルまで成長するのに必要な時間を2つの製品間で比較することによって観察することができ、一方の製品は開示されるような組成物を含み、他方の製品は含まない。
【0066】
いくつかの実施形態では、「真菌の成長を阻害するか、または遅延させる」とは、7日、例えば、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、30日、35日、40日、45日、50日、55日、60日遅延させることを指す。
【0067】
「抗真菌性」という用語は、本出願では、乳ベース製品などの食品中の真菌の成長の遅延を阻害する能力として理解されるべきである。
【0068】
本明細書で使用される場合、「食料マトリックス」という用語は、食料の組成および構造を指す。これは、栄養素が連続培地に含有されているという概念に基づいている。
【0069】
本明細書で使用される場合、「肉マトリックス」という用語は、肉の組成および構造を指す。これは、栄養素が連続培地に含有されているという概念に基づいている。
【0070】
マンガン
【0071】
マンガンは、多くの重要な生物学的プロセスに関与しており、すべての生物に遍在的に見られる。マンガンはまた、酸化ストレスからの保護に寄与し、活性酸素種の触媒解毒にも寄与することができる。多くの細菌は、キレート化されたまたは遊離金属用の低親和性および高親和性輸送システムを使用して、環境から必須金属を捕捉するための高度な取得システムを発現している。細菌によって取り込まれたマンガンは、タンパク質内で透析不可能なポリホスフェート-タンパク質凝集体の大きな複合体を形成し、非常に高い細胞内濃度に達する場合がある。
【0072】
本出願による「マンガン」は、食品中の真菌の成長を阻害するか、または遅延させるための組成物中に存在するマンガンを指す。本発明の文脈において、「マンガン」は、細胞内および細胞外に見られるマンガンを含む。
【0073】
本明細書で使用される場合、「菌株」という用語は、微生物学の分野におけるその一般的な意味を有し、細菌の遺伝的変異体を指す。
【0074】
本明細書で使用される場合、マンガン濃度またはマンガンレベルは、重量/重量基準で計算された百万分率(「ppm」)で表される。製品または組成物中のマンガンをある値未満の濃度にすることは、製品全体または組成物全体中のマンガンの重量濃度が所与の値未満になるように、製品またはその一部にマンガンを有することを意味する。マンガンなどの微量元素を測定する方法は、当該技術分野で知られており、例えば、Nielsen,S.Suzanne,ed.Food analysis.Vol.86.Gaithersburg,MD:Aspen Publishers,1998に記載されている。
【0075】
低濃度のマンガンを測定する方法は、当業者によく知られている。このような方法としては、原子吸光分析、原子発光分光法、質量分析、中性子放射化分析、およびX線蛍光分析が挙げられる(例えば、Williams et al.“Toxicological profile for manganese.”(2012)を参照)。
【0076】
好ましくは、マンガン濃度は、欧州標準化機構が発行した欧州規格EN13805:2014の「食品-微量元素の測定-圧力分解(Foodstuffs - Determination of trace elements - Pressure digestion)」に記載されるような、または国際標準化機構が発行したISO11885:2007の「水質-誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)による選択された元素の測定(Water quality - Determination of selected elements by inductively coupled plasma optical emission spectrometry)」に記載されている標準手順に従って測定される。
【0077】
F-DVS製品またはFD-DVS製品のいずれかである最終組成物中に存在するマンガンレベルは、株の抗真菌活性に影響を与える主要なパラメーターのうちの1つであり、高レベルのMnはより低い抗真菌活性を与え、低レベルのMnは、高い抗真菌活性を与える。
【0078】
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)からのカドミウムおよびマンガン取り込み遺伝子は、以前に研究されている。ここで、Hao等は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum) ATCC 14917における2つのカドミウム取り込みシステムを開示した。1つは、Mn2+の枯渇とは無関係であるが、親和性が低く、もう1つは親和性が高く、Mn2+の枯渇によって誘導されるが、Mn2+の存在下では阻害される。後者の場合、Mn2+およびCd2+は互いの競合阻害剤であり、Cd2+に対するその親和性は、Mn2+に対するその親和性よりも高い(Hao et al.“Cloning, expression, and characterization of cadmium and manganese uptake genes from Lactobacillus plantarum.“Applied and Environmental Microbiology 65.11(1999):4746-4752、およびHao et al “Characterization of cadmium uptake in Lactobacillus plantarum and isolation of cadmium and manganese uptake mutants.“Applied and environmental microbiology 65.11(1999):4741-4745)。これらの論文は、直接接種用の高バイオマス細胞培養物とは無関係である。それらは、本出願の発見を教示も示唆もしていない。
【0079】
当業者は、培地中のマンガンレベルを調整して、所望のマンガンレベルを含有する最終製品を得ることができる。例えば、成長培地中のマンガンレベルが低い場合、マンガンは濃縮プロセスにおいて保持されると予想されるため、最終的な組成物は低レベルのマンガンを有するであろう。他方、成長培地中のマンガンレベルが高い場合、最終的な組成物はそれに応じて高レベルのマンガンを有するであろう。
【0080】
真菌
【0081】
真菌は、真菌界に属するメンバーである。真菌の成長は、当業者に知られている様々な方法で測定することができる。例えば、真菌の成長は、真菌の種類および方法が適用される製品に応じて、コロニーの密度またはサイズ、細胞数、菌糸体の質量変化、胞子の生産、菌糸の成長、コロニー形成単位(CFU)などによって測定することができる。真菌の成長は、二酸化炭素の放出および酸素の取り込みなど、栄養素または代謝物の濃度の変化を測定することによっても観察できる。
【0082】
「真菌の成長の阻害」または「真菌の成長を阻害する」という用語は、真菌細胞増殖の阻害を指す。
【0083】
「真菌の成長の遅延」または「真菌の成長を遅延させる」という用語は、真菌細胞増殖の減速を指す。これは、例えば、真菌の成長を測定し、それを対照と比較することによって観察することができる。そのような対照は、例えば、現在開示されている組成物を使用せずに調製された製品であってもよい。真菌成長の阻害または遅延を決定する方法は、当業者に知られている。
【0084】
一実施形態において、現在開示されている組成物は、カンジダ属(Candida spp.)、メイエロザイマ属(Meyerozyma spp.)、クリベロミセス属(Kluyveromyces spp.)、ピキア属(Pichia spp.)、ガラクトミセス属(Galactomyces spp.)、トリコスポロン属(Trichosporon spp.)、スポリディオボラス属(Sporidiobolus spp.)、トルラスポラ属(Torulaspora spp.)、クリプトコックス属(Cryptococcus spp.)、サッカロミケス属(Sacharomyces spp.)、ヤロウィア属(Yarrowia spp.)、デバリオミセス属(Debaryomyces spp.)、およびロドトルラ属(Rhodoturola spp.)などの酵母の成長を阻害する。好ましくは、真菌は、トルラスポラ属(Torulaspora spp.)、クリプトコックス属(Cryptococcus spp.)、サッカロミケス属(Sacharomyces spp.)、ヤロウィア属(Yarrowia spp.)、デバリオミセス属(Debaryomyces spp.)、カンジダ属(Candida spp.)、およびロドトルラ属(Rhodoturola spp.)からなる群から選択される酵母である。より好ましくは、真菌は、トルラスポラ・デルブルエッキイ(Torulaspora delbrueckii)、クリプトコックス・フラジコラ(Cryptococcus fragicola)、サッカロミケス・セレビシエ(Sacharomyces cerevisiae)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、デバリオミセス・ハンセニイ(Debaryomyces hansenii)、およびロドトルラ・ムシラギノーサ(Rhodoturola mucilaginosa)からなる群から選択される酵母である。
【0085】
一実施形態において、現在開示されている組成物は、カビの成長を阻害する。好ましくは、真菌は、アスペルギルス属(Aspergillus spp.)、クラドスポリウム属(Cladosporium spp.)、ディディメラ属(Didymella spp.)、またはペニシリウム属(Penicillium spp.)からなる群から選択されるカビである。より好ましくは、真菌は、ペニシリウム・ブレビコンパクタム(Penicillium brevicompactum)、ペニシリウム・クラストサム(Penicillium crustosum)、ペニシリウム・ソリタム(Penicillium solitum)、ペニシリウム・カルネウム(Penicillium carneum)、ペニシリウム・パネウム(Penicillium paneum)、およびペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)からなる群から選択されるカビである。
【0086】
乳酸菌(LAB)
【0087】
「乳酸菌」は、糖を発酵させ、主に生産される酸として乳酸を含む酸を生産する、グラム陽性、微小好気性または嫌気性菌を指す。食品は、典型的には、約3.5~約6.5、例えば、約4~約6、例えば、約4.5~約5.5、例えば約5のpHを有する。
【0088】
好ましい実施形態では、現在開示されている組成物は、マンガン輸送システムを有する乳酸菌を含んでもよい。これらのマンガン輸送システムは研究されており、例えば、Kehres et al.,“Emerging themes in manganese transport,biochemistry and pathogenesis in bacteria.”FEMS microbiology reviews 27.2-3(2003):263-290に記載されている。
【0089】
本出願に有用な乳酸菌株は、マンガン取り込み活性を有する。常套的な実験により、当業者は、マンガン取り込み活性を有する細菌を選択することができる。そのような細菌は、例えば、細菌のMn2+トランスポーターを含んでもよい。Mn2+トランスポーターは、ABCトランスポーター(例えば、SitABCDおよびYfeABCD)、または輸送分類データベース(Transport Classification Database)によって与えられるトランスポーター分類システムにおいてTC#3.A.1.15およびTC#2.A.55として示されたファミリーに属するプロトン依存性のNramp関連輸送システムであってもよい(M.Saier;U of CA,San Diego,Saier MH,Reddy VS,Tamang DG,Vastermark A.(2014))。TCシステムは、酵素分類のための酵素委員会(EC)システムに類似した輸送タンパク質の分類システムである。トランスポーター分類(TC)システムは、国際生化学分子生物学連合(International Union of Biochemistry and Molecular Biology)によって承認された輸送タンパク質分類のための命名法のシステムである。TCDBは、http://www.tcdb.orgにおいて無料でアクセスでき、階層分類への段階的なアクセス、配列またはTC番号による直接検索、および全文検索など、データにアクセスするためのいくつかの異なる方法を提供する。
【0090】
好ましい実施形態において、乳酸菌株は、TC#3.A.1.15として示されたファミリー(マンガンキレート取り込みトランスポーター(MZT)ファミリー)(すなわちTC#3.A.1.15.6、TC#3.A.1.15.8、TC#3.A.1.15.14)に属するタンパク質またはその機能的変異体を含んでもよい。
【0091】
ABCトランスポーターは主により高いpHで活性であるが、プロトン駆動トランスポーターは酸性条件下でより活性を示す場合がある。したがって、一実施形態において、現在開示されている組成物は、TC#2.A.55として示されたファミリー(金属イオン(Mn2+-鉄)トランスポーター(Nramp)ファミリー)に属するタンパク質またはその機能的変異体を含む菌株を含んでもよい。より好ましくは、トランスポーターは、TC#2.A.55.2として示されたサブファミリーまたはTC#2.A.55.3として示されたサブファミリーに属する。
【0092】
例えば、本明細書に開示される組成物は、TC#2.A.55.3.1、TC#2.A.55.3.2、TC#2.A.55.3.2、TC#2.A.55.3.3、TC#2.A.55.3.4、TC#2.A.55.3.5、TC#2.A.55.3.6、TC#2 .A.55.3.7、TC#2.A.55.3.8もしくはTC#2.A.55.3.9として示された金属イオン(Mn2+-鉄)トランスポーター(Nramp)またはそれらの機能的変異体を有する、好ましくはTC#2.A.55.2.6またはその機能的変異体を有する、乳酸菌を含んでもよい。
【0093】
「機能的変異体」という用語は、実質的に同様の生物学的活性、すなわちマンガン取り込み活性を有するタンパク質変異体である。
【0094】
本明細書で使用される場合、「変異体」は、タンパク質の特定の核酸またはアミノ酸配列と少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を共有するタンパク質の変異体形態を指す。
【0095】
本開示はさらに、本発明を実施するための、乳酸中に存在し得るマンガントランスポーターのポリペプチド配列を提供する。
【0096】
好ましい実施形態において、乳酸菌株は、配列番号1の配列(MASEDKKSKREHIIHFEDTPSKSLDEVNGSVEVPHNAGFWKTLAAYTGPGILVAVGYMDPGNWITSIAGGASFKYSLLSVILISSLIAMLLQAMAARLGIVTGRDLAQMTRDHTSKAMGGFLWVITELAIMATDIAEIIGSAIALKLLFNMPLIVGIIITTADVLILLLLMRLGFRKIEAVVATLVLVILLVFAYEVILAQPNVPELLKGYLPHADIVTNKSMLYLSLGIVGATVMPHDLFLGSSISQTRKIDRTKHEEVKKAIKFSTIDSNLQLTMAFIVNSLLLILGAALFFGTSSSVGRFVDLFNALSNSQIVGAIASPMLSMLFAVALLASGQSSTITGTLAGQIIMEGFIHLKMPLWAQRLLTRLMSVTPVLIFAIYYHGNEAKIENLLTFSQVFLSIALPFAVIPLVLYTSDKKIMGEFANRAWVKWTAWFISGVLIILNLYLIAQTLGFVK)を有するポリペプチドまたはその機能的変異体を含む。
【0097】
他の実施形態において、乳酸菌株は、配列番号1の配列と少なくとも55%、例えば、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0098】
表1は、配列番号1の機能的変異体をコードする例示的な配列および配列番号1とのそれらの配列同一性を示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0099】
好ましい実施形態において、乳酸菌株は、配列番号2の配列(MARPDERLTVQREKRSLDDINRSVQVPSVYESSFFQKFLAYSGPGALVAVGYMDPGNWLTALEGGSRYHYALLSVLLMSILVAMFMQTLAIKLGVVARLDLAQAIAAFIPNWSRICLWLINEAAMMATDMTGVVGTAIALKLLFGLPLMWGMLLTIADVLVVLLFLRFGIRRIELIVLVSILTVGIIFGIEVARADPSIGGIAGGFVPHTDILTNHGMLLLSLGIMGATIMPHNIYLHSSLAQSRKYDEHIPAQVTEALRFGKWDSNVHLVAAFLINALLLILGAALFYGVGGHVTAFQGAYNGLKNPMIVGGLASPLMSTLFAFALLITGLISSIASTLAGQIVMEGYLNIRMPLWERRLLTRLVTLIPIMVIGFMIGFSEHNFEQVIVYAQVSLSIALPFTLFPLVALTNRRDLMGIHVNSQLVRWVGYFLTGVITVLNIQLAISVFV)を有するポリペプチドまたはその機能的変異体を含む。
【0100】
他の実施形態において、乳酸菌株は、配列番号2の配列と少なくとも55%、例えば、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0101】
表2は、配列番号2の機能的変異体をコードする例示的な配列および配列番号2とのそれらの配列同一性を示す。
【表2-1】
【表2-2】
【0102】
好ましい実施形態において、乳酸菌株は、配列番号3の配列(MSDDHKKRHPIKLIQYANGPSLEEINGTVEVPHGKGFWRTLFAYSGPGALVAVGYMDPGNWSTSITGGQNFQYLLISVILMSSLIAMLLQYMAAKLGIVSQMDLAQAIRARTSKKLGIVLWILTELAIMATDIAEVIGAAIALYLLFHIPLVIAVLVTVLDVLVLLLLTKIGFRKIEAIVVALILVILLVFVYQVALSDPNMGALLKGFIPTGETFASSPSINGMSPIQGALGIIGATVMPHNLYLHSAISQTRKIDYKNPDDVAQAVKFSAWDSNIQLSFAFVVNCLLLVMGVAVFKSGAVKDPSFFGLFQALSDSSTLSNGVLIAVAKSGILSILFAVALLASGQNSTITGTLTGQVIMEGFVHMKMPLWARRLVTRIISVIPVIVCVMLTARDTPIQQHEALNTLMNNSQVFLAFALPFSMLPLLMFTNSKVEMGDRFKNTGWVKVLGWISVLGLTGLNLKGLPDSIAGFFGDHPTATQTNMANIIAIVLIVAILALLAWTIWDLYKGNQRYEAHLAAVADEKEAKADVDEQ)を有するポリペプチドまたはその機能的変異体を含む。
【0103】
他の実施形態において、乳酸菌株は、配列番号3の配列と少なくとも55%、例えば、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するポリペプチドを含む。
【0104】
表3は、配列番号3の機能的変異体をコードする例示的な配列および配列番号3とのそれらの配列同一性を示す。
【表3-1】
【表3-2】
【0105】
本発明の目的のために、2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」の程度は、EMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000,Trends Genet.16:276-277)、好ましくはバージョン3.0.0以降、のNeedleプログラムに実装されているようなNeedleman-Wunschアルゴリズムを使用して決定される(Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48:443-453)。使用される任意選択的なパラメーターは、ギャップオープンペナルティ10、ギャップエクステンションペナルティ0.5、およびEBLOSUM62(BLOSUM62のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。「最長同一性」(nobriefオプションを使用して取得)というラベルの付いたNeedleの出力は、パーセント同一性として使用され、次のように計算される:
(同一の残基×100)/(アラインメントの長さ-アラインメントのギャップ総数)。
【0106】
本発明の目的のために、2つのデオキシリボ核酸配列間の「配列同一性」の程度は、EMBOSSパッケージ(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice et al.,2000、前掲)、好ましくはバージョン3.0.0以降、のNeedleプログラムに実装されているようなNeedleman-Wunschアルゴリズムを使用して決定される(Needleman and Wunsch,1970、前掲)。使用される任意選択的なパラメーターは、ギャップオープンペナルティ10、ギャップエクステンションペナルティ0.5、およびEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックスである。「最長同一性」(nobriefオプションを使用して取得)というラベルの付いたNeedleの出力は、パーセント同一性として使用され、次のように計算される:
(同一のデオキシリボ核酸×100)/(アラインメントの長さ-アラインメントのギャップ総数)。
【0107】
一実施形態において、乳酸菌株は、配列番号1~3のうちのいずれか1つの配列と少なくとも55%、例えば、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有するマンガントランスポーターを含む。決定は、菌株の配列決定または既知の配列データベースにおけるブラスト検索に基づくことができる。
【0108】
本開示の実施例のセクションで使用される乳酸菌は、コードされた配列番号1~3としてのマンガントランスポーターまたはその機能的変異体を有する。
【0109】
好ましい実施形態において、乳酸菌は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、およびラクトバチルス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)からなる群から選択されてもよい。
【0110】
ダイレクトバットセット(DVS)
【0111】
一態様において、本発明は、食品を発酵させ、前記食品中の真菌の成長を阻害するか、または遅延させるための乳酸菌を含む凍結ダイレクトバットセット(F-DVS)スターター培養物組成物であって、組成物が最大600ppmのマンガンを含み、乳酸菌の濃度が少なくとも1E+10コロニー形成単位/gである、組成物を提供する。
【0112】
別の実施形態において、本発明は、食品を発酵させ、前記食品中の真菌の成長を阻害するか、または遅延させるための乳酸菌を含むフリーズドライバットセット(FD-DVS)スターター培養物組成物であって、組成物が最大600ppmのマンガンを含み、乳酸菌の濃度が少なくとも1E+10コロニー形成単位/gである、組成物を提供する。
【0113】
いくつかの実施形態において、乳酸菌は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・アリメンタリウス(Lactobacillus alimentarius)、ペディオコッカス・アシディラクティシ(Pediococcus acidilactici)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、およびラクトバチルス・ケフィリ(Lactobacillus kefiri)である。好ましくは、乳酸菌は、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)またはラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)である。
【0114】
フリーズドライまたは凍結細菌培養物を調製する調製は、例えば、US9848615に開示されているように、当該技術分野で知られている。
【0115】
商業的に関連する高濃度の凍結培養物は、一般に、少なくとも1E+9CFU/gの細菌濃度を有する。好ましい実施形態では、本発明による組成物中の細菌は、2E+10、3E+10、4E+10、5E+10、6E+10、7E+10、8E+10、9E+10CFU/gを含む、少なくとも1E+10CFU/gの濃度を有する。他の実施形態では、組成物中の細菌は、2E+10、3E+10、4E+10、5E+10、6E+10、7E+10、8E+10、9E+10CFU/gを含む、少なくとも1E+11CFU/gの濃度を有する。これを得るためには、より長い発酵時間が必要になる場合がある。
【0116】
製品
【0117】
いくつかの実施形態では、製品は、食品、化粧品、ヘルスケア製品、または医薬品である。「食料」および「食品」は、これらの用語の共通の意味を有する。「食品」は、ヒトまたは動物による消費に適した食料または飼料製品を指す。食品は、生鮮食品または腐敗しやすい食品、ならびに保存食品または加工食品であることができる。食品としては、果物および野菜(由来製品を含む)、穀物および穀物由来製品、乳製品、肉、鶏肉、および魚介類を含むが含まれるが、これらに限定されない。より好ましくは、食品は、ヨーグルト、クワルク(tvarog)、サワークリーム、チーズなどの肉製品または乳製品である。食品はまた、植物ベースの製品またはサラダなどのすぐに食べられる製品であってもよい。
【0118】
一実施形態では、本明細書に記載の組成物は、非発酵食品または発酵食品に添加することができる。非発酵製品は、一般に、発酵食品よりも高いpHを有する。発酵食品は、微生物の作用により生産または保存された食品である。発酵は、微生物の作用により炭水化物をアルコールまたは酸に変換することを意味する。発酵は、通常、酵母を使用して糖を発酵させてアルコールにすることを指す。しかしながら、発酵はまた、乳糖から乳酸への変換を伴ってもよい。例えば、発酵は、ヨーグルト、チーズ、サラミ、ザワークラウト、キムチ、ピクルスなどの食料を作製するために使用されてもよい。
【0119】
本発明は、乳製品中の真菌の成長を阻害するか、または遅延させるのに特に有用である。そのような製品では、酵母およびカビによる汚染が一般的であり、そのような製品の貯蔵寿命を制限する。「乳製品」としては、乳に加えて、クリーム、アイスクリーム、バター、チーズ、およびヨーグルトなどの乳由来製品、ならびに乳清およびカゼインなどの二次製品、および調合乳などの乳または乳成分を主成分として含有する任意の調理済み食料が挙げられる。1つの好ましい実施形態において、乳製品は、発酵乳製品である。「乳」という用語は、牛、羊、山羊、水牛、またはラクダなどの任意の哺乳動物から搾乳することによって得られる乳汁分泌物として理解される。好ましい実施形態では、乳は牛乳である。乳という用語には、植物材料、例えば豆乳、から作製されるタンパク質/脂肪溶液も含まれる。
【0120】
一実施形態では、食品は、高温性菌による発酵によって調製された製品、すなわち高温性発酵食品である。「高温性菌」という用語は、43℃を超える温度で最もよく繁殖する微生物を指す。工業的に最も有用な好熱性細菌としては、ストレプトコッカス属(Streptococcus spp.)およびラクトバチルス属(Lactobacillus spp.)が挙げられる。本明細書における「高温性発酵」という用語は、約35℃を超える温度、例えば、約35℃~約45℃の温度での発酵を指す。「高温性発酵食品」は、高温性スターター培養物の高温性発酵によって調製された発酵食品を指す。このような製品としては、たとえばヨーグルト、スキル、レブネ、ラッシー、アイラン、ドゥーなどが挙げられる。
【0121】
一実施形態では、食品は、中温性菌による発酵によって調製された製品、すなわち中温性発酵食品である。「中温性菌」という用語は、中程度の温度(15℃~40℃)で最もよく繁殖する微生物を指す。工業的に最も有用な中温性細菌としては、ラクトコッカス属(Lactococcus spp.)およびロイコノストック属(Leuconostoc spp.)が挙げられる。本明細書における「中温性発酵」という用語は、約22℃~約35℃の温度での発酵を指す。「中温性発酵食品」は、中温性スターター培養物の中温性発酵によって調製された発酵食品を指す。このような製品には、例えば、バターミルク、サワーミルク、発酵乳(cultured milk)、スメタナ、サワークリーム、ならびにクォーク、クワルク、およびクリームチーズなどのフレッシュチーズが含まれる。
【0122】
発酵製品の調製
【0123】
本明細書の組成物は、高温性および中温性発酵乳製品、例えばヨーグルト製品などの発酵乳製品における酵母および/またはカビの成長を阻害させるか、または遅延させるのに特に有用である。「発酵乳製品」という用語は、関連する公的規制に従って一般的に定義されている用語であり、基準はこの分野でよく知られている。例えば、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)およびラクトバチルス・デルブルエッキイ・亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)の共生培養物は、ヨーグルトのスターター培養物として使用されるが、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)は、アシドフィルス乳の作製に使用される。他の中温性乳酸菌は、クォークまたはフロマージュ・フレを生産するのに使用される。
【0124】
「発酵乳製品」という表現は、食料または飼料製品を意味し、食料または飼料製品の調製は、乳酸菌による乳ベースの発酵を伴う。本明細書で使用される「発酵乳製品」としては、高温性発酵乳製品(例えば、ヨーグルト)および中温性発酵乳製品(例えば、サワークリームおよびバターミルク、ならびに発酵ホエイ、クォークおよびフロマージュ・フレ)などの製品が挙げられるが、これらに限定されない。発酵乳製品としては、コンチネンタルタイプチーズ、フレッシュチーズ、ソフトチーズ、チェダー、マスカルポーネ、パスタフィラータ、モッツァレッラ、プロヴォローネ、ホワイトブラインチーズ、ピザチーズ、フェタ、ブリー、カマンベール、カッテージチーズ、エダム、ゴーダ、ティルジッター(Tilsiter)、ハバティ(Havarti)またはエメンタール、スイスチーズ、およびマースダム(Maasdamer)などのチーズが挙げられる。
【0125】
「ヨーグルト」という用語は、その通常の意味を有し、関連する公的規制に従って一般的に定義され、基準はこの分野でよく知られている。ヨーグルトの作製に使用されるスターター培養物は、少なくとも1つのラクトバチルス・デルブルエッキイ・亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)株と、少なくとも1つのストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)株と、を含む。興味深いことに、マンガントランスポーターは、L.デルブルエッキイ・亜種ブルガリクス(L.delbrueckii subsp.bulgaricus)には存在せず、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)でのみ低い発現を示し(これら2つの株はヨーグルトのスターター培養物中に見られる)、真菌による腐敗の影響を特に受けやすくする。したがって、ヨーグルトに存在する遊離マンガンを捕捉するために、他の菌株(複数可)を含めることが好ましい。
【0126】
食品加工の間、化学防腐剤は、伝統的に真菌による腐敗を回避するために使用されてきた。しかしながら、加工が少なく防腐剤を含まない食品に対する強い社会的需要を考慮して、本発明は、最大600ppmのマンガンと、少なくとも2E+10のコロニー形成単位/gの菌体を含む乳酸菌と、を含む、食品を発酵させ、前記食品中の真菌の成長を阻害するか、または遅延させるための組成物を使用することにより、酵母およびカビの成長を管理するための効果的な解決策を提供することに寄与する。
【0127】
現在開示されている組成物の場合、当業者は、本開示で提供される例、ならびに水活性、栄養素、天然に存在するマンガンのレベル、貯蔵寿命、保存条件、パッキングなどの食品の特性を考慮して、所望の結果を達成するために、pH、温度、および前記組成物の量などの様々なパラメーターを調整することができる。
【0128】
現在開示されている組成物は、所与の製品の発酵前、発酵開始時、または発酵中に添加されてもよく、前記製品は、酵母およびカビとの接触をさらに制限するためにさらに包装されてもよく、かつ/あるいは貯蔵寿命の延長を助けるために低温(15℃未満)で保存することができる。
【0129】
現在開示されている組成物は、所与の発酵乳製品の発酵前、発酵開始時、または発酵中に添加されてもよい。発酵乳製品を作製するために、食品基質は乳ベースである。「乳ベース」は、本出願では、スターター培養物の成長および発酵のための媒体として使用することができる乳または乳成分に基づく組成物を指すために広く使用されている。「乳」とは、一般に、牛、羊、山羊、水牛、またはラクダなどの任意の哺乳動物の搾乳によって得られる乳汁分泌物を指す。乳ベースは、任意の生および/または加工乳材料から、ならびに還元粉乳から得ることができる。乳ベースは、植物ベース、すなわち、植物材料、例えば豆乳、から調製することもできる。牛の乳または乳成分から調製された乳ベースが好ましい。
【0130】
乳ベースとしては、全乳または低脂肪乳、脱脂乳、バターミルク、還元粉乳、練乳、ドライミルクなどのタンパク質を含む任意の乳または乳様製品の溶液/懸濁液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
乳ベースは、消費者のニーズに応じて乳糖を低減することもできる。低乳糖乳は、ラクターゼ酵素による乳糖のグルコースおよびガラクトースへの加水分解、またはナノ濾過、電気透析、イオン交換クロマトグラフィー、および遠心分離を含む、当技術分野で知られている任意の方法に従って生産することができる。
【0132】
乳ベースを発酵させるために、食品グレードの微生物が添加される。
【0133】
スターター培養物である現在開示されている組成物を添加して、乳ベースを好適な条件にさらした後、発酵プロセスが始まり、一定期間継続する。当業者は、温度、酸素、炭水化物の添加、微生物(複数可)の量および特徴、ならびにかかるプロセス時間などの好適なプロセス条件を選択する方法を知っている。このプロセスには、3時間、4時間、5時間、6時間またはそれ以上かかる場合がある。
【0134】
これらの条件としては、特定のスターター培養物株に適した温度の設定が含まれる。例えば、スターター培養物が中温性乳酸菌を含む場合、温度は約30℃に設定することができ、培養物が高熱性乳酸菌株を含む場合、温度は約35℃~50℃、例えば40℃~45℃の範囲に保たれる。発酵温度の設定はまた、当業者によって容易に決定され得る発酵に添加される酵素(複数可)に依存する。本発明の特定の実施形態において、発酵温度は、35℃~45℃、好ましくは37℃~43℃、より好ましくは40℃~43℃である。別の実施形態において、発酵温度は、15℃~35℃、好ましくは20℃~35℃、より好ましくは30℃~35℃である。
【0135】
発酵は、当技術分野で知られている任意の方法を使用して終了させることができる。一般に、プロセスの様々なパラメーターに応じて、乳ベースをスターター培養物の株(複数可)の成長に適さないものとすることで発酵を終了させることができる。例えば、目標pHに達したときに、発酵乳製品を急速に冷却することにより、終了させることができる。発酵中に酸性化が起こり、カゼインのクラスターおよび鎖からなる三次元ネットワークが形成されることが知られている。「目標pH」という用語は、発酵工程が終了するpHを意味する。目標pHは、得られる発酵乳製品に依存し、当業者によって容易に決定することができる。
【0136】
本発明の特定の実施形態では、発酵は、少なくとも5.2のpHに達するまで、例えば、5.1、5.0、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.4、4.3、4.2、4.1、4.0、3.9、3.8、または3.7のpHに達するまで実施される。好ましくは、発酵は、4.0~5.0、より好ましくは4.0~4.6の目標pHに達するまで実施される。好ましい実施形態において、発酵は、4.6未満の目標pHに到達するまで実施される。
【0137】
好ましい実施形態では、発酵食品は、クォーク、クリームチーズ、フロマージュ・フレ、ギリシャヨーグルト、スキル、レブネ、バターミルク、サワークリーム、サワーミルク、発酵乳、ケフィア、ラッシー、アイラン、クワルク(twarog)、ドゥー、スメタナ、ヤクルト、およびダヒからなる群から選択される。
【0138】
別の実施形態では、発酵食品は、コンチネンタルタイプチーズ、フレッシュチーズ、ソフトチーズ、チェダー、マスカルポーネ、パスタフィラータ、モッツァレッラ、プロヴォローネ、ホワイトブラインチーズ、ピザチーズ、フェタ、ブリー、カマンベール、カッテージチーズ、エダム、ゴーダ、ティルジッター、ハバティ(Havarti)またはエメンタール、スイスチーズ、およびマースダムなどのチーズである。
【0139】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図と併せて以下の説明を読めば明らかになろう。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明を説明する文脈での(特に以下の特許請求の範囲の文脈での)「a」および「an」および「the」という用語および同様の指示対象の使用は、本書で別段の指示がない限り、または文脈によって明確に矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を含むと解釈される。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含有する(containing)」という用語は、特に断りのない限り、制限のない用語(すなわち、「含むが、これらに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書におけるある範囲の値の列挙は、本明細書に別段の記載がない限り、範囲内にある各別個の値を個別に参照する略記方法として役立つことを単に意図し、各別個の値は、本明細書に個別に記載されているかのように明細書に組み込まれる。本明細書に記載されているすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。特に明記しない限り、本明細書で提供されるすべての正確な値は、対応する近似値の代表例である(例えば、特定の因子または測定に対して提供されるすべての正確な例示的値は、適切な場合は、「約」により修飾される、対応する近似測定値を提供すると考えることができる)。本明細書で提供される任意かつすべての例または例示的言語(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をより明らかにすることを意図しており、特許請求の範囲に特段の記載がない限り、本発明の範囲に限定を課すものではない。明細書中のいかなる語句も、特許請求の範囲に記載されていないいかなる要素も本発明の実施に必須であることを示すものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0140】
本明細書に記載され、特許請求される本発明は、本明細書に開示される特定の態様によって範囲が限定されない。なぜならば、これらの態様は、本発明のいくつかの態様の例示として意図されているからである。同等の態様はいずれも、本発明の範囲内にあることが意図されている。実際、本明細書に示され、記載されたものに加えて、本発明の様々な変更が、前述の説明および以下の実施例から当業者には明らかになるであろう。このような変更も、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。矛盾する場合は、定義を含む本開示が優先される。
【0141】
マンガンの定量
【0142】
本明細書に開示される各組成物について、特にマイクロ波支援分解を実行した後、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)を使用して、マンガン濃度を測定した。成長後に細胞培養物を収集し、標準的な手順に供して、F-DVS形態またはFD-DVS形態のいずれかを得た。さらに、CFU/gも測定した。当業者は、誘導結合プラズマ質量分析を実行する方法およびCFU/gを測定する方法を知っている。
【0143】
得られた結果を表4に示す。
【0144】
【0145】
発酵乳サンプルの調製
【0146】
本開示で使用される発酵乳サンプルを、以下のように調製した。均質乳、特に低脂肪(1.5%w/v)均質乳を、90±1℃で20分間熱処理し、直ちに冷却した。均質乳中にすでに存在するマンガン濃度は、約0.03ppmであるとあらかじめ測定されていた。市販のスターター培養物(ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)およびラクトバチルス・デルブルエッキイ・亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)を3Lバケツまたは200ml瓶に0.02%(v/w)で接種した。第1のバケツには、L.ラムノサス(L.rhamnosus)株(株1)および約30ppmのマンガンを、1E+7CFU/gの合計濃度で含む組成物を接種した。第2のバケツには、L.ラムノサス(L.rhamnosus)株(株1)および約195ppmのマンガンを、1E+7CFU/gの合計濃度で含む組成物を接種した。第3のバケツには、L.ラムノサス(L.rhamnosus)株(株1)および約625ppmのマンガンを、1E+7CFU/gの合計濃度で含む組成物を接種した。第4のバケツには、L.ラムノサス(L.rhamnosus)株(株3)およびL.パラカゼイ(L.paracasei)株ならびに約275ppmのマンガンを、1E+7CFU/gの合計濃度で含む組成物を接種した。第4のバケツは、参照として使用され、スターター培養物のみを接種した。すべてのバケツを43±1℃の水槽でインキュベートし、pH4.60±0.1に達するまでこれらの条件で発酵させた。発酵乳製品を200mLの瓶に分け、冷却した。
【0147】
発酵乳サンプルのすべての部分を40℃の温度まで加温し、溶融して60℃に冷却した5%滅菌寒天溶液40mlを添加した。次に、この発酵乳および寒天の溶液を滅菌ペトリ皿に注ぎ、プレートをLAFベンチで30分間乾燥させた。これらのプレートは、カビを使用した負荷試験、および酵母を使用した負荷のために使用し、スコアリングによって成長を評価した。
【0148】
カビを使用した負荷試験
【0149】
本開示では、カビを用いた負荷試験を以下のように実施した。様々な標的汚染物質(P.クラストサム(P.crustosum)、P.ロックフォルティ(P.roqueforti)、およびP.パネウム(P.paneum)、またはP.カルネウム(P.carneum))を、各500胞子/スポットの濃度で添加した。選択した温度および時間でプレートをインキュベートし、カビの成長を定期的に調べた。
【0150】
酵母を使用した負荷試験
【0151】
本開示では、酵母を用いた負荷試験を以下のように実施した。様々な標的汚染物質(T.デルブルエッキイ(T.delbrueckii)、D.ハンセニイ(D.hansenii)、C.フラジオラ(C.fragiola)、Y.リポリティカ(Y.lipolytica))の成長または成長スコアを、ヨーグルトなどの発酵乳サンプルに各標的汚染物質を約50CFU/g接種することによって試験した。
【0152】
実施例1:乳酸菌および様々なマンガン濃度を含む組成物を含む発酵乳製品におけるカビの阻害
【0153】
本実施例は、様々なカビに対する阻害効果に対するマンガンの影響を実証している。発酵乳製品の製造プロセスおよび生産に似た寒天アッセイを使用した。ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)およびラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)株を使用した。
【0154】
図1は、スターター培養物(参照)によるか、またはさらに乳酸菌および様々なマンガン濃度を含む組成物、つまり乳酸菌および約30ppmのマンガン、もしくは約195ppmのマンガン、もしくは約275ppmのマンガン、もしくは約625ppmのマンガンを含む組成物により発酵させた乳から調製したプレート上での3つの異なるカビ(P.クラストサム(P.crustosum)、P.カルネウム(P.carneum)、およびP.ロックフォルティ(P.roqueforti))の成長を示している。3つの標的汚染物質を、500胞子/スポットの濃度で添加した。プレートを22±1℃で7日間インキュベートした。
【0155】
図1は、乳酸菌および低濃度のマンガンを含む組成物、つまり約30、約195ppm、または約275ppmのマンガンを使用した場合に、被験カビの阻害がより顕著になることを実証している。乳酸菌および約625ppmのマンガンを含む組成物は、やはりP.クラストサム(P.crustosum)(X)およびP.カルネウム(P.carneum)(Y)の成長を阻害することができるが、P.ロックフォルティ(P.roqueforti)(Z)の成長を阻害することはできない。さらに、そのような組成物を使用しない場合、被験カビが増殖し、発酵乳製品の腐敗を引き起こす。
【0156】
図7は、スターター培養物(参照)によるか、またはさらに乳酸菌を含むフリーズドライ(FD-DVS)DVS組成物により発酵させた乳から調製したプレート上での3つの異なるカビの成長を示しており、FD-DVS形態は、約200ppmのマンガンを有し、使用した凍結防止剤にはさらに様々な濃度のマンガン(1、5、10、20、および40ppm)を補充した。ヨーグルトにP.クラストサム(P.crustosum)、P.カルネウム(P.carneum)、およびP.ロックフォルティ(P.roqueforti)(各500胞子)をスパイクし、22℃で12日間保存した。
【0157】
図7は、マンガンが豊富な状態に対して、マンガンが不十分な状態に供する場合に、被験カビの成長が障害されることを実証している。したがって、マンガンを凍結防止剤に添加すると、マンガンが被験カビの成長を促進し、食品の腐敗を引き起こす。よって、
図7は、驚くべきことに、マンガンが除去された、特に組成にマンガンを有する凍結防止剤が除去された、現在開示されているFD-DVS形態の組成物(脱脂粉乳など)の必要性を示している。
【0158】
結論として、すべての被験カビは、スターター培養物(参照)のみにより発酵させた乳から作製された寒天プレート上で非常によく成長した。したがって、乳酸菌およびマンガンを含む組成物を使用しない場合、被験カビが増殖し、発酵乳製品の腐敗を引き起こす可能性がある。さらに、
図1は、発酵乳製品を、乳酸菌および様々な濃度のマンガンを含む組成物に供する場合に、様々な被験カビの阻害が可能であることを実証しており、この効果は、使用するマンガンの濃度がより低い場合により顕著になる。したがって、乳酸菌および低レベルのマンガン、例えば、600ppm未満のマンガン、より好ましくは275ppm未満、さらにより好ましくは200ppm未満、例えば約30~約200ppmまたは約45ppm~約200ppmのマンガンを含む組成物を使用すると、発酵乳製品の腐敗が回避される。
【0159】
実施例2:従来技術に対する、乳酸菌および様々なマンガン濃度を含む組成物を含む発酵乳製品におけるカビの阻害
【0160】
本発明の組成物と先行技術との比較も実施した。
【0161】
図5は、スターター培養物のみ(参照)によるか、またはさらに乳酸菌(株2もしくは1+2)と、低レベルのマンガン(例えば、45または65ppmのマンガン)とを組み合わせて含む組成物により、またはさらにはベンチマーク組成物(A、B、またはC)により発酵させた乳から調製されたプレート上での3つの異なるカビ(P.クラストサム(P.crustosum)、P.パネウム(P.paneum)、およびP.ロックフォルティ(P.roqueforti))の成長を示している。ベンチマーク組成物Aは、845ppmのマンガンを有するHoldbac(登録商標)XPMである。ベンチマーク組成物Bは、630ppmのマンガンを有するHoldbac(登録商標)YM-BPlusである。ベンチマーク組成物Cは、870ppmのマンガンを有するHoldbac(登録商標)YM-Cである。
【0162】
図5は、乳酸菌および低濃度のマンガン、例えば、約600ppm未満の濃度のマンガン、好ましくは約40~600ppmの濃度のマンガン、または約45~600ppmの濃度のマンガン、より好ましくは40~70ppmの濃度のマンガンを含む組成物が、発酵乳サンプルの保存に使用される条件(例えば、7±1℃で24日間対25±1℃で11日間)とは関係なく、食品の腐敗を回避する役割を果たすことを実証している。
【0163】
実施例3:乳酸菌および様々なマンガン濃度を含む組成物を含む発酵乳製品における酵母の阻害
【0164】
本実施例は、スターター培養物のみ(参照)によるか、またはさらに乳酸菌(例えば、L.ラムノサス(L.rhamnosus)株1、L.ラムノサス(L.rhamnosus)株2、L.ラムノサス(L.rhamnosus)株3、L.パラカゼイ(L.paracasei))および約30ppmのマンガン、もしくは約195ppmのマンガン、もしくは約275ppmのマンガン、もしくは約625ppmのマンガンを含む組成物により発酵させた発酵乳製品に摂取した場合に、トルラスポラ(Torulaspora)またはデバリオミセス(Debaryomyces)などの様々な酵母が直面する成長負荷を実証している。成長負荷を、7±1℃で23日間(
図2~3)または27日間(
図6)維持した。
【0165】
図2および3は、スターター培養物によるか、またはさらに乳酸菌および約30ppmのマンガン、もしくは約195ppmのマンガン、もしくは約625ppmのマンガンを含む組成物により発酵させた発酵乳製品に接種した場合の、様々な酵母(トルラスポラ(Torulaspora)およびデバリオミセス(Debaryomyces))の成長障害を示している。この障害は、約30ppmのマンガンを含む組成物の場合に、より劇的かつ長期化した(
図2~3)。しかしながら、約195ppmのマンガンまたは約625ppmのマンガンを有する組成物は、やはり試験酵母の成長障害の原因であったが、程度は低く、このように、乳酸菌および低濃度のマンガンを含む組成物が、真菌の成長およびその結果として食品の腐敗に影響を与えることを示している。
【0166】
図6はさらに、乳酸菌および約275ppmのマンガンを含む組成物が、デバリオミセス(Debaryomyces)などの酵母の成長を大幅に減少させる役割を果たすことを示している。使用される凍結防止剤の組成は、カゼインナトリウム、イノシトール、グルタミン酸一ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウムおよび水であり、好ましくは、マンガンを除く。すべての値は、w(成分)/w(凍結防止剤溶液)%で示される。例えば、カゼインナトリウム:5.55、イノシトール:3.75、グルタミン酸一ナトリウム:3.75、アスコルビン酸ナトリウム:5.65、および水:81.3であり、好ましくはマンガンを除く。すべての値は、w(成分)/w(凍結防止剤溶液)%で示される。
【0167】
図8はさらに、スターター培養物のみ(参照)によるか、またはさらに乳酸菌(例えば、L.ラムノサス(L.rhamnosus)株2)を含むフリーズドライDVS組成物を接種した乳発酵製品上でのデバリオミセス(Debaryomyces)の成長を示しており、FD-DVS形態は、約200ppmのマンガンを有し、さらに様々な濃度のマンガン(1および40ppm)を補充した。したがって、
図8は、驚くべきことに、マンガンが除去された、特に組成にマンガンを有する凍結防止剤が除去された、FD-DVS形態の組成物(脱脂粉乳など)の必要性を示している。
【0168】
実施例4:従来技術に対する、乳酸菌および様々なマンガン濃度を含む組成物を含む発酵乳製品における酵母の阻害
【0169】
本明細書に開示された組成物と先行技術との比較も実施した。
【0170】
図4は、発酵乳製品が、スターター培養物のみ(参照)を有するか、あるいはさらに乳酸菌(L.ラムノサス(L.rhamnosus)株2もしくはL.ラムノサス(L.rhamnosus)株1+2)と、低レベルのマンガン(例えば、約45または約65ppm)とを組み合わせて含む組成物、またはさらにベンチマーク組成物(A、B、もしくはC)を有する場合の、前記製品におけるデバリオミセス(Debaryomyces)の成長を示している。ベンチマーク組成物Aは、843ppmのマンガンを有するHoldbac(登録商標)XPMである。ベンチマーク組成物Bは、630ppmのマンガンを有するHoldbac(登録商標)YM-BPlusである。ベンチマーク組成物Cは、870ppmのマンガンを有するHoldbac(登録商標)YM-Cである。
【0171】
図4は、600ppmを超えるマンガンを含むベンチマーク組成物に対して、乳酸菌および低濃度のマンガン(例えば、45ppmまたは65ppm)を含む組成物に供した場合に、発酵乳製品上でデバリオミセス(Debaryomyces)の成長が有意に障害されることを実証している。
【配列表】
【国際調査報告】