(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】グリセロールカーボネート(メタ)アクリレートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 317/36 20060101AFI20221215BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20221215BHJP
【FI】
C07D317/36
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524023
(86)(22)【出願日】2020-10-02
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2020077612
(87)【国際公開番号】W WO2021078492
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マルツェル トレスコフ
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター グレフ
(72)【発明者】
【氏名】マイク カスパリ
(72)【発明者】
【氏名】トアベン シュッツ
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン クリル
【テーマコード(参考)】
4H039
【Fターム(参考)】
4H039CA66
4H039CD90
(57)【要約】
本発明は、ジルコニウムアセチルアセトネート触媒の存在下でのメチル(メタ)アクリレートとグリセロールカーボネートとのエステル交換により、グリセロールカーボネート(メタ)アクリレートを製造する方法であって、触媒を、該触媒の量を基準として2重量%~25重量%の水で前処理する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウムアセチルアセトネート触媒の存在下での、メチル(メタ)アクリレートとグリセロールカーボネートとのエステル交換により、グリセロールカーボネート(メタ)アクリレートを製造する方法であって、前記触媒を、前記触媒の量を基準として2重量%~25重量%の水で前処理することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記触媒を、いずれの場合も前記触媒の量を基準として、8重量%~20重量%の水、好ましくは9重量%~18重量%の水で前処理することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記触媒の水による前処理が、メチル(メタ)アクリレートの存在下で、かつ任意で少なくとも1種の安定剤の存在下で行われることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記触媒の水による前処理が、70℃~110℃の間の温度範囲内で行われることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
脱水工程が、前記エステル交換の開始前に行われることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記触媒が、前記混合物の総重量を基準として1.0重量%~5.0重量%の量で使用されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
反応混合物中のグリセロールカーボネートとメチル(メタ)アクリレートとの比が、1:6~1:12の間の比に設定されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記反応混合物中のグリセロールカーボネートとメチル(メタ)アクリレートとの比が、1:10に設定されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記反応混合物中のグリセロールカーボネートとメチル(メタ)アクリレートとの比が、1:6に設定されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記エステル交換の間に形成されたメタノールが、共沸混合物としてメチル(メタ)アクリレートと一緒に留去され、メチル(メタ)アクリレートは、共沸留出物の0.7~1.3倍に相当する量で前記反応混合物に連続的に添加されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記エステル交換の間に形成されたメタノールが、共沸混合物としてメチル(メタ)アクリレートと一緒に留去され、メチル(メタ)アクリレートは、前記共沸留出物と同量で前記反応混合物に連続的に添加されることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記反応混合物が、少なくとも1種の安定剤を含有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記反応混合物が、0.005重量%~0.5重量%の安定剤含有量を有することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1種のヒドロキノン系重合禁止剤が、任意に溶存酸素との組み合わせで、エステル交換の間、存在することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1種のヒドロキノン系重合禁止剤が、ヒドロキノンモノメチルエーテル(HQME)であることを特徴とする、請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明が属する技術分野
本発明は、ジルコニウムアセチルアセトネートを触媒として使用して、グリセロールカーボネートとメチル(メタ)アクリレートとからグリセロールカーボネート(メタ)アクリレートを製造する方法に関する。
【0002】
従来技術
コーティングおよび接着剤産業では、(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート(「グリセロールカーボネート(メタ)アクリレート」)は、フィルムの硬化または後処理に用いられるよく利用されている樹脂成分である。
【0003】
グリセロールカーボネートメタクリレートの様々な製造方法は、すでに従来技術に記載されている。
【0004】
特開2001/018729号公報では、グリセロールカーボネートを、アクリロイルクロリドと反応させている。発生する塩化物廃棄物は、相当な環境負荷である。国際公開第2000/031195号では、グリシジルメタクリレートを、CO2と反応させている。このプロセスは、高圧で行われる。これに必要なプロセス装置は、精巧で高価である。独国特許第3937116号明細書では、環状カーボネート構造を有するアルコールを、高温かつ酸触媒の存在下でカルボン酸と反応させている。所望の生成物は、蒸留により75.5%の純度で得られる。収率は、使用される酸に応じて25.5~83%の間で変動する。ここで達成される純度は75.5%しかないため、この生成物を多くの用途で使用することは不可能である。
【0005】
ジルコニウムアセチルアセトネート(Zr(acac)4)の存在下でグリセロールカーボネートとメチル(メタ)アクリレートとからグリセロールカーボネート(メタ)アクリレートを製造する場合、所望の目的物だけでなく、グリセロールジ(メタ)アクリレートやグリセロールトリ(メタ)アクリレートなどの望ましくない架橋剤も形成されるので、2.5%を超える濃度では、コーティングまたは接着剤の製造での生成物の使用が妨げられる。
【0006】
国際公開第2005/058862号には、触媒としてジルコニウムアセチルアセトネートを使用したグリセロールカーボネートメタクリレートの製造方法が記載されている。反応は、無水条件下で行われ、反応混合物は、触媒の添加前に脱水される。この方法論により、1.8%~2.3%の間の架橋剤含有量を有するグリセロールカーボネートメタクリレートが得られる。しかしながら、これらの架橋剤含有量は、例えばコーティング分野において、架橋剤に対して特に敏感な一部の用途にはなお高すぎる。
【0007】
したがって、本発明の課題は、良好な収率および高い生成物純度を依然として達成しながら、架橋剤含有量をさらに低減することができる、グリセロールカーボネート(メタ)アクリレートを製造するための改善された方法を提供することであった。架橋剤含有量は、1.5%未満、理想的には1.0%未満であるべきである。
【0008】
発明の概要
上記の課題は、ジルコニウムアセチルアセトネート触媒の存在下でのメチル(メタ)アクリレートとグリセロールカーボネートとのエステル交換により、グリセロールカーボネート(メタ)アクリレートを製造する方法であって、触媒を、該触媒の量を基準として2重量%~25重量%の水で前処理する、方法によって達成される。
【0009】
発明の詳細な説明
本発明の基礎となる研究において、驚くべきことに、ジルコニウムアセチルアセトネート触媒の存在下での、グリセロールカーボネートおよびメチル(メタ)アクリレートからのグリセロールカーボネート(メタ)アクリレートの製造が、触媒を水(触媒の量を基準として、2重量%~25重量%、好ましくは8重量%~20重量%、より好ましくは9重量%~18重量%)で前処理することにより行われる場合、不要な副生成物として形成される架橋剤が著しく減少することが見出された。さらに、この副反応の抑制により生成物の純度が向上する。この観察は特に驚くべきことである。なぜならば、水は触媒毒として作用し得るだけでなく、カーボネートの開裂(開環、グリセロールの遊離)も引き起こし得るからである。架橋剤の形成がないことに関して最適な選択性は、15重量%の水濃度でZr(acac)4により達成される。架橋剤含有量が大幅に減少すると、生成物は、特に、コーティング配合物において樹脂成分として使用することができる。
【0010】
上記によれば、本発明は、ジルコニウムアセチルアセトネート触媒の存在下でのメチル(メタ)アクリレートとグリセロールカーボネートとのエステル交換によりグリセロールカーボネート(メタ)アクリレートを製造する方法であって、触媒は、該触媒の量を基準として、2重量%~25重量%の水、好ましくは8重量%~20重量%の水、より好ましくは9重量%~18重量%の水で前処理される、方法に関する。
【0011】
本発明による方法により、1.5%未満の架橋剤含有量を有するグリセロールカーボネート(メタ)アクリレートが得られる。
【0012】
水による触媒の前処理は、反応混合物中で、すなわち、反応物のメチル(メタ)アクリレートまたはグリセロールカーボネートの存在下で(かつ任意で少なくとも1種の安定剤の存在下で)直接行われ得る。前処理に必要な水は、例えばグリセロールカーボネートと共に反応混合物に導入され得る。しかしながら、水による触媒の前処理は、エステル交換の開始前でかつメチル(メタ)アクリレート(および任意の安定剤)のみの存在下で、しかしながら、グリセロールカーボネートの非存在下で行われることが好ましい。
【0013】
この前処理工程は、混合物を、例えば70℃~110℃の温度範囲内で加熱することにより行われ得る。
【0014】
エステル交換自体は、反応物のメチル(メタ)アクリレートとグリセロールカーボネートとを接触させる場合に開始する。好ましくは、反応混合物は、触媒の前処理の後であるが、エステル交換反応の開始前に脱水される。
【0015】
本発明の特定の実施形態では、最初に、メチル(メタ)アクリレート、水、および任意の安定剤が装入され、最後に、エステル交換が、グリセロールカーボネートの添加により開始される。グリセロールカーボネートは、好ましくは、理想的には70℃~110℃の間の温度で滴加される。
【0016】
混合物は、好ましくは、グリセロールカーボネートの添加前(すなわち、エステル交換の開始前)に脱水される。例えば、脱水は、メチル(メタ)アクリレートとの共沸混合物として水を留去することにより行われ得る。
【0017】
触媒は、好ましくは、混合物の総重量を基準として1.0~5.0重量%の量で使用される。
【0018】
反応混合物中のグリセロールカーボネートとメチル(メタ)アクリレートとの比は、好ましくは1:6以上の比に、好ましくは1:6~1:12の間の比に設定され得る。
【0019】
本発明の一実施形態では、反応混合物中のグリセロールカーボネートとメチル(メタ)アクリレートとの比は、1:10に設定される。
【0020】
代替的な実施形態では、反応混合物中のグリセロールカーボネートとメチル(メタ)アクリレートとの比は、1:6に設定される。
【0021】
平衡をシフトさせるために、遊離したメタノールは、メチル(メタ)アクリレートとの共沸混合物として留去され得る。純粋な共沸混合物だけを除去するために、その除去に使用されるカラムは、カラムの塔頂温度が共沸混合物の正確な沸点を有するように十分な還流で最適に操作されている。反応が進むにつれて、反応速度は徐々に低下し、その結果、反応の終わり頃に、まだ少量の共沸混合物しか得られていない。この時点で、塔頂温度に対する制限を解消することが最適である。その結果、メタノールはより少なく留去され、メチル(メタ)アクリレートはより多く留去される。
【0022】
本発明の基礎となる研究では、驚くべきことに、メチル(メタ)アクリレートが、グリセロールカーボネートに対して不十分な過剰量で存在する場合、このことは、塔頂温度の解消時、架橋剤形成に著しく悪影響を及ぼすことが見出された。
【0023】
共沸留出物の0.7~1.3倍に相当する量のメチル(メタ)アクリレートを連続添加するか、または共沸留出物と同量のメチル(メタ)アクリレートを連続添加すると、前述の効果を打ち消し、さらに、空時収量を著しく高めることができる。反応終了時に残っている過剰のメチル(メタ)アクリレートは、架橋剤含有量を実質的に増加させることなく、より低い温度および減圧下で除去され得る。
【0024】
したがって、反応混合物中の最初に設定されたグリセロールカーボネートとメチル(メタ)アクリレートとの比は、好ましくは、反応の全期間にわたって一定に維持されている。本発明の一実施形態では、グリセロールカーボネートとメチル(メタ)アクリレートとの比は、反応の全期間にわたって一定の1:6のままである。
【0025】
望ましくない重合を防ぐために、重合禁止剤/安定剤が、反応(ならびに精製および貯蔵の間)に使用されてもよい。「禁止剤」および「安定剤」という用語は、本発明の文脈において同義的に使用されている。これらの化合物、例えば、ヒドロキノン、ヒドロキノンエーテル、例えば、ヒドロキノンモノメチルエーテルまたはジ-tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、N,N’-(ジフェニル)-p-フェニレンジアミン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、p-フェニレンジアミン、メチレンブルーまたは立体障害フェノールは、工業的に非常に広く使用されている。これらの化合物は、個別にまたは混合物の形で使用することができ、概して市販されている。安定剤の作用様式は、通常、それらが重合で発生するフリーラジカルのフリーラジカル捕捉剤として作用することである。さらなる詳細は、関連する技術文献、特にRoempp-Lexikon Chemie; 編集者: J. Falbe, M. Regitz; Stuttgart, New York; 第10版 (1996年); キーワード“Antioxidantien”[酸化防止剤]およびその中で引用された文献に記載されている。
【0026】
反応混合物全体の重量を基準として、安定剤の含有量は、個別にまたは混合物のいずれかとして、概して0.005%~0.5%(重量/重量)である。
【0027】
これらの重合禁止剤は、反応の前または開始時に反応混合物に添加され得る。加えて、使用する重合禁止剤のうち、わずかな割合がエステル交換中に導入され得る。本明細書において特に興味深いのは、重合禁止剤の一部をカラム還流中に添加するプロセスである。とりわけ、メチル(メタ)アクリレート、ヒドロキノンモノメチルエーテルおよび4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシルを含む混合物を使用することが特に有利である。この手段によって、特に、蒸留塔内での望ましくない重合を回避することが可能になる。
【0028】
これに加えて、溶存酸素が、安定化のために使用され得る。この溶存酸素は、例えば、空気の形であってもよく、好ましくは、反応混合物より上にある気相中の含有量が、爆発限界値を下回ったままであるような量で導入される。同様に、不活性ガス/酸素混合物、例えば窒素/酸素またはアルゴン/酸素混合物を使用することが可能である。
【0029】
本発明の特定の実施形態では、溶解酸素とヒドロキノンモノメチルエーテル(HQME)との組み合わせが安定化のために使用され得る。
【0030】
反応は、標準圧力、減圧または高圧で行われ得る。本発明の特に有利な変更では、エステル交換は、200~2000ミリバールの範囲内、特に500~1300ミリバールの範囲内、好ましくは800~1050ミリバールの範囲内の圧力で行われ得る。
【0031】
反応温度は、特に圧力に応じて、同様に広い範囲内にあり得る。本発明の特定の実施形態では、これは、60℃~150℃、特に70℃~140℃、好ましくは90℃~135℃の範囲内の温度で実施され得る。
【0032】
エステル交換は、別の溶媒を使用せずに行われ得る。代替的に、これは不活性溶媒を使用することも可能である。このような溶媒としては、とりわけベンゼン、トルエン、n-ヘキサン、シクロヘキサンおよびメチルイソブチルケトン(MIBK)およびメチルエチルケトン(MEK)が挙げられる。
【0033】
遊離したアルコールは、続いて蒸留により、任意にメチル(メタ)アクリレートとの共沸混合物として反応混合物から除去され得る。アルコールは、また、n-ヘキサンまたはシクロヘキサンとの共沸混合物としても除去され得る。
【0034】
反応は、好ましくは撹拌しながら行われてもよく、その場合、撹拌機速度は、反応のスケールに従って調整されなければならない。例えば、撹拌機速度は、20~5000rpmの範囲内、好ましくは50~2000rpmの範囲内、より好ましくは100~500rpmの範囲内にあり得る。
【0035】
反応時間は、とりわけ、圧力および温度などの選択されたパラメータに依存する。しかしながら、それらは、概して1~24時間、好ましくは5~20時間、より好ましくは6~18時間の範囲内である。
【0036】
エステル交換反応の完了時(または反応の終了時)に、触媒は、(例えば、希リン酸を用いる)沈殿およびろ過によって除去され得る。粗生成物の精製は、必要に応じて、通常の方法で行われ得る。
【0037】
本発明による方法は、好ましくは、バッチプロセスとして実行される。これが行われる場合、過剰のメチル(メタ)アクリレートが、反応の終わり頃に蒸留により除去され得る。これは、さらに精製することなく次のバッチで再利用され得る。
【0038】
グリセロールカーボネート(メタ)アクリレートは、コーティングおよび接着剤用のコポリマーにおいて官能性モノマーとして使用することができ、それにより、コーティング配合物中での二官能性アミンによる架橋を含む、その後のポリマー類似反応が可能となる。これはまた、バッテリ電解質、押出樹脂、および金属の抽出にも使用され得る。
【0039】
以下の実施例により、本発明による方法を説明するが、これは当該実施例に限定されるものではない。
【0040】
実施例1:モル比1:10、15%の水の添加
【化1】
混合物:
1200g 12.0モル メチルメタクリレート(MMA)
0.13g 100ppm(混合物を基準として) ヒドロキノンモノメチルエーテル(HQME)
26.0g 1.9%(混合物を基準として) Zr(acac)
4
3.9g 15%(触媒を基準として) H
2O
142g 1.2モル グリセロールカーボネート
【0041】
手順:
空気流入口、滴下漏斗、機械撹拌機、50cmの銀付きの充填カラム(d=29mm、8×8ラシヒリングで充填)、自動カラムヘッド、冷却器および温度測定センサを底部およびカラムヘッドに備えた2Lの四ツ口丸底フラスコに、Zr(acac)4、ヒドロキノンモノメチルエーテル(HQME)、水およびメチルメタクリレート(MMA)を装入した。この混合物を還流下で沸騰させ、得られた水/MMA共沸混合物を最後に取り出した。次に、グリセロールカーボネートを、約1時間かけて95~105℃の間の底部温度で滴下した。これに伴って塔頂温度が次第に低下し、70℃未満の塔頂温度で、得られたMMA/メタノール混合物を、1:50の還流比で取り出した(取り出し/還流)。塔頂温度が75℃を下回らなくなったらすぐに、塔頂温度をそれ以上制限することなく、1:50の安定した還流比で、塔頂温度が一定の99~100℃になるまで、得られた留出物を取り出した。全反応時間は、約12時間であった。次に、触媒を、85℃で70gの10%リン酸を用いて沈殿させ、混合物を15分間撹拌した。固体をろ過した後、ろ液を120℃の油浴温度で、ロータリーエバポレーターで20ミリバールに濃縮した。
【0042】
これにより、193g(理論値の86.5%)の透明な黄色の生成物が得られた。
【0043】
分析:(GC、面積百分率の値)
88.6% グリセロールカーボネートメタクリレート
2.5% グリセロールカーボネート
0.6% グリセロールモノメタクリレート
0.3% グリセロールジメタクリレート
0.6% グリセロールトリメタクリレート
【0044】
実施例2:モル比1:10、10%の水の添加
混合物:
1200g 12.0モル MMA
0.13g 100ppm(混合物を基準として) HQME
26.0g 1.9%(混合物を基準として) Zr(acac)4
2.6g 10%(触媒を基準として) H2O
142g 1.2モル グリセロールカーボネート
【0045】
手順:
実施例1を参照されたい。
【0046】
これにより、198g(理論値の88.8%)の透明な黄色の生成物が得られた。
【0047】
分析:(GC、面積百分率の値)
88.3% グリセロールカーボネートメタクリレート
3.6% グリセロールカーボネート
0.8% グリセロールモノメタクリレート
0.4% グリセロールジメタクリレート
0.5% グリセロールトリメタクリレート
【0048】
実施例3:モル比1:10、20%の水の添加
混合物:
1200g 12.0モル MMA
0.13g 100ppm(混合物を基準として) HQME
26.0g 1.9%(混合物を基準として) Zr(acac)4
5.2g 20%(触媒を基準として) H2O
142g 1.2モル グリセロールカーボネート
【0049】
手順:
実施例1を参照されたい。
【0050】
これにより、201g(理論値の90.1%)の透明な黄色の生成物が得られた。
【0051】
分析:(GC、面積百分率の値)
88.0% グリセロールカーボネートメタクリレート
3.4% グリセロールカーボネート
0.4% グリセロールモノメタクリレート
0.3% グリセロールジメタクリレート
0.5% グリセロールトリメタクリレート
【0052】
実施例4:モル比1:6、10%の水の添加、留去MMAの添加
混合物:
1200g 12.0モル MMA
0.14g 100ppm(混合物を基準として) HQME
43.1g 3.0%(混合物を基準として) Zr(acac)4
4.3g 10%(触媒を基準として) H2O
236g 2.0モル グリセロールカーボネート
200g 2.0モル MMA(さらなる添加)
【0053】
手順:
実施例1を参照されたい。しかしながら、この場合、200gのMMAを、取り出したMMA/メタノール混合物に従って反応の過程で添加した。
【0054】
これにより、333g(理論値の89.5%)の透明な黄色の生成物が得られた。
【0055】
分析:(GC、面積百分率の値)
89.7% グリセロールカーボネートメタクリレート
3.5% グリセロールカーボネート
0.5% グリセロールモノメタクリレート
0.5% グリセロールジメタクリレート
0.9% グリセロールトリメタクリレート
【0056】
実施例1~3は、1:10のグリセロールカーボネートとMMAとのモル比で、触媒を最初に一定量の水で処理した際に、架橋剤の少ない生成物が生成され得ることを示す。実施例4では、実施例1~3と比較して空時収量の増加は、モル比を1:6に低下させることにより達成された。得られた生成物を依然として本発明に従ったものにするには、ここで適切なさらなる量のMMAを添加する必要がある。
【0057】
比較例1:モル比1:10、水の添加なし
混合物:
1200g 12.0モル MMA
0.13g 100ppm(混合物を基準として) HQME
26.0g 1.9%(混合物を基準として) Zr(acac)4
142g 1.2モル グリセロールカーボネート
【0058】
手順:
水を添加しない以外は、実施例1を参照されたい。反応時間は、わずか6時間であった。
【0059】
これにより、203g(理論値の91.0%)の透明な黄色の生成物が得られた。
【0060】
分析:(GC、面積百分率の値)
90.3% グリセロールカーボネートメタクリレート
2.1% グリセロールカーボネート
1.3% グリセロールモノメタクリレート
0.5% グリセロールジメタクリレート
2.1% グリセロールトリメタクリレート
【0061】
比較例2:モル比1:6、水の添加なし
混合物:
1200g 12.0モル MMA
0.13g 100ppm(混合物を基準として) HQME
43.1g 3.0%(混合物を基準として) Zr(acac)4
236g 2.0モル グリセロールカーボネート
【0062】
手順:
水を添加しない以外は、実施例1を参照されたい。
【0063】
これにより、333g(理論値の89.5%)の透明な黄色の生成物が得られた。
【0064】
分析:(GC、面積百分率の値)
88.9% グリセロールカーボネートメタクリレート
2.1% グリセロールカーボネート
0.8% グリセロールモノメタクリレート
0.4% グリセロールジメタクリレート
3.0% グリセロールトリメタクリレート
【0065】
比較例3:モル比1:6、水を添加し、MMAを添加しない
混合物:
1200g 12.0モル MMA
0.14g 100ppm(混合物を基準として) HQME
43.1g 3.0%(混合物を基準として) Zr(acac)4
4.3g 10%(触媒を基準として) H2O
236g 2.0モル グリセロールカーボネート
【0066】
手順:
実施例1を参照されたい。
【0067】
これにより、330g(理論値の88.7%)の透明な黄色の生成物が得られた。
【0068】
分析:(GC、面積百分率の値)
89.0% グリセロールカーボネートメタクリレート
3.0% グリセロールカーボネート
0.6% グリセロールモノメタクリレート
0.6% グリセロールジメタクリレート
1.2% グリセロールトリメタクリレート
【0069】
比較例4:
混合物:
1200g 12.0モル MMA
0.13g 100ppm(混合物を基準として) HQME
26.0g 1.9%(混合物を基準として) Zr(acac)4
3.9g 30%(触媒を基準として) H2O
142g 1.2モル グリセロールカーボネート
【0070】
手順:
実施例1を参照されたい。
【0071】
これにより、181g(理論値の81.1%)の透明な黄色の生成物が得られた。
【0072】
分析:(GC、面積百分率の値)
79.1% グリセロールカーボネートメタクリレート
12.8% グリセロールカーボネート
0.4% グリセロールモノメタクリレート
0.4% グリセロールジメタクリレート
0.2% グリセロールトリメタクリレート
【0073】
比較例1および2は、開始時に水を添加しないと架橋剤の少ない生成物が製造できないことを示す。一方で、比較例3は、留去されたMMAを添加せずに、より低いモル比(1:6)の効果を示す。これにより、比較例1および2と比較して架橋剤含有量が大幅に減少するが、その含有量は依然として必要以上に高い。比較例4は、反応開始時の水の量が多すぎると、もはや反応は完了まで進行せず、反応時間の終了時に出発物質のグリセロールカーボネートの12.8%が依然として存在していることを示す。
【国際調査報告】