(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】植物成長促進微生物を送達するための生体材料ベースの組成物
(51)【国際特許分類】
A01C 1/06 20060101AFI20221215BHJP
C07K 14/435 20060101ALI20221215BHJP
A01H 5/10 20180101ALI20221215BHJP
【FI】
A01C1/06 Z
C07K14/435
A01H5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524065
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(85)【翻訳文提出日】2022-06-20
(86)【国際出願番号】 US2020056551
(87)【国際公開番号】W WO2021081018
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591177277
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスチテュート オブ テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】MASSACHUSETTS INSTITUTE OF TECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】マレリ,ベネデット
(72)【発明者】
【氏名】ズビナバシェ,オーガスティン
【テーマコード(参考)】
2B030
2B051
4H045
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AD06
2B051AA01
2B051AB01
2B051BA06
2B051BB14
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
(57)【要約】
除草剤、殺虫剤、および合成肥料の代わりに、生物肥料の使用を微生物と組み合わせて使用することができる。シルクおよびトレハロースドライフィルムを種子コーティングとして使用して、植物微生物の送達を局在化および定量化して、植物ストレスおよび土壌塩分を軽減することができる。同様の微生物を、同じ技術を使用して送達することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二糖と構造タンパク質とを含む、生体材料ベースの種子コーティング組成物。
【請求項2】
前記構造タンパク質対二糖の比が、約5:1~約1:5である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記構造タンパク質対二糖の比が、約3:1~約1:3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記構造タンパク質対二糖の比が、約1:3である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記二糖が、トレハロースである、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
多型構造タンパク質が、シルクフィブロインである、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記シルクフィブロインが、Bombyx moriの繭から抽出される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
植物成長促進根圏細菌(PGPR)をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記細菌が、Rhizobium株およびPhaseolus株からなる群から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記細菌が、Rhizobium tropici CIAT899である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記細菌が、Phaseolus vulgarisである、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
ヒドロゲルをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記ヒドロゲルが、ペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、またはペクチンとCMCとの混合物を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
シルクフィブロインとトレハロースとを含む、生体材料ベースの種子コーティング組成物であって、シルクフィブロイン対トレハロースの比が、約3:1~約1:3である、組成物。
【請求項15】
ヒドロゲルをさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
植物成長促進根圏細菌(PGPR)をさらに含む、請求項14または15に記載の組成物。
【請求項17】
生体材料ベースの種子コーティング組成物であって、
a.二糖と構造タンパク質とを含む第1の層と、
b.前記第1の層をコーティングするヒドロゲルを含む第2の層と、を含む、組成物。
【請求項18】
前記構造タンパク質対二糖の比が、約3:1~約1:3である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記二糖が、トレハロースである、請求項17または18に記載の組成物。
【請求項20】
多型構造タンパク質が、シルクフィブロインである、請求項17~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記ヒドロゲルが、ペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、またはペクチンとCMCとの混合物を含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
植物成長促進根圏細菌(PGPR)をさらに含む、請求項17~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
生体材料ベースの種子コーティング組成物であって、
a.シルクフィブロインとトレハロースとを含む第1の層と、
b.前記第1の層をコーティングするヒドロゲルを含む第2の層と、を含む、組成物。
【請求項24】
シルクフィブロイン対トレハロースの比が、約3:1~約1:3である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記ヒドロゲルが、ペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、またはペクチンとCMCとの混合物を含む、請求項23または24に記載の組成物。
【請求項26】
植物成長促進根圏細菌(PGPR)をさらに含む、請求項23~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物でコーティングされた、植物種子。
【請求項28】
浸漬コーティングまたは噴霧乾燥を実施することによって、請求項1~26のいずれか一項に記載の組成物を植物種子の表面に適用する方法。
【請求項29】
植物成長を改善する方法であって、前記方法が、請求項1~7、12~15、17~21、および23~25のいずれか一項に記載の生体材料を植物微生物と組み合わせて種子の表面に適用し、次いで、改善された植物成長のために前記種子を発芽させることを含む、方法。
【請求項30】
前記植物微生物が、植物成長促進根圏細菌(PGPR)である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記細菌が、前記Rhizobium株および前記Phaseolus株からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記細菌が、Rhizobium tropici CIAT899である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記細菌が、Phaseolus vulgarisである、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
植物ストレスおよび土壌塩分を軽減する、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年10月22日に出願された米国仮出願第62/924,483号および2020年6月8日に出願された米国仮出願第63/036,088号の利益を主張するものである。先の出願の教示はすべて、参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
人口増加および気候パターンの変化に対応しようと努めるこの世の中においては、投入量を最小限に抑え、かつ環境へのそれらの影響を軽減しながら、農業生産高を向上させるための新技術を開発する必要に迫られている。人口増加、土壌劣化、および農薬の誤用は、世界的な食料生産の増加する需要に対処するために、農業が今後数十年間に立ち向かう必要のある主な課題である。この場面において、種子強化技術は、劣化した環境での種子の発芽、収穫量の増加、および発芽時間の短縮を可能にすることによって、食料安全保障を支える上で極めて重要な役割を果たすであろう。これまで、異なる環境に適応することができ、かつ土壌の塩分、暑さ、および干ばつなどの非生物ストレス要因の存在下で発芽することができる植物を設計することに多大な尽力がなされてきた。本明細書に記載されている技術は、種子の発芽を促進することおよび非生物ストレス要因を軽減することができる生物肥料を封入、保存、および正確に送達することで種子の微小環境をエンジニアリングすることによって、食料安全性に対処する。
【0003】
世界の食料生産は、現在食料安全保障外で生活している8億人に支援を提供し、2050年までに97億人と予測される人口に対処するために、今後数十年で増加すると予測されている(1)。同時に、土地の劣化、過度の真水消費、および農薬の誤用は、農作業において非効率性を引き起こし、その一方で、気候パターンの変化や、越境的な害虫および病気の拡大から、非生物および生物学ストレス要因への迅速な作物の適応が必要とされる。これらすべての課題に対応するために、水および農薬などの投入量を最小限に抑え、かつ環境への影響を軽減しながら作物の生産を増加させることを主な目標として、食料生産をより効率的にするための高度な技術の使用としての精密農業が登場した(2~4)。結果として、農業は、ますます技術的かつより持続可能になり、ビッグデータ分析、ジオローカリゼーション、機械設備および検知システムの近代化が、過去数年間に農薬製剤、天気予測、育種および種子エンジニアリングにおける改善の利益の大部分を受けてきたセクターにおけるイノベーションの主な推進力となっている。
【0004】
種子は、最も付加価値の高い農産物であり、食料源を表すのみならず、農作業における最も重要な資源でもある(5)。病気、害虫、種子列における肥料の過剰使用、不適切な播種深さ、浸透圧、霜、および干ばつを含む、苗の最適ではない発芽および死亡率についての理由は多くある(6)。その後、種蒔きを管理し、かつ発芽を補助するための精密ツールの使用は、スペースに対する生産高の点での効率を保証するのに最重要である。ここ数年で、特定の条件付けおよび状態に曝露することによって種子の性能を改善する種子強化技術が登場した(7)。種子表面の性質を制御し、栄養素で土壌を局所的に豊かにし、かつ種子の水取り込みに影響を与えるために、種子コーティングが開発された(5、8)。しかしながら、ペイロードを封入および送達するために使用される材料よりも、土壌特性および種子の種類に応じて種子の発芽を促進するために使用されるペイロードの調査に注目が集中している。このアプローチでは、生物肥料などの有益であるが不安定な化合物を封入する、すなわち、合成肥料および殺虫剤の環境副作用を軽減しながら植物の根との相互作用中に栄養素および植物ホルモンの利用可能性を増加させる植物成長促進根圏細菌(PGPR)を封入する種子コーティングの製剤化が制限されている(9~11)。人工種子コートに接種源を組み込むと、実際には、コーティングされた種子を長期間保存することができないため、微生物の生存能が失われる可能性がある(12)。合成種子コートは、通常、主に浸透圧および乾燥ストレスを理由に、PGPRにとって敵対的な環境であり、保護剤である化合物が存在する場合、それらの生物学的活性は、共生細菌の生存に脅威をもたらす可能性がある。薬物送達の分野から採用される生体材料は、種子の発芽を促進し、かつストレス要因を軽減することができるペイロードの封入、保存、および制御放出と生分解を組み合わせた高度な種子コーティング技術を開発する技術的機会を表す。
【0005】
窒素を固定し、かつ土壌の塩分を軽減することができる植物成長促進根圏細菌(PGPR)の保存および送達を通じて種子の微小環境をエンジニアリングするための生体材料に基づくアプローチが本明細書に記載されている。PGPRは、播種時に細菌保存および送達のメリットを提供するシルク-トレハロースコーティングに封入されている。生体材料の選択は、タンパク質と二糖類との組み合わせが乾眠の鍵であるという最近の発見から着想を得ている。この技術は、種子の発芽を促進し、かつ土壌の塩分を軽減するのに効果的である。
【発明の概要】
【0006】
この要約は、詳細な説明において以下にさらに説明される簡略化された形態の概念の選択を紹介するものである。この要約は、特許請求の範囲の主題の主要または本質的な特徴を特定するものでも、その範囲を制限するものでもない。
【0007】
本明細書には、構造タンパク質と二糖とを含む生体材料ベースの種子コーティング組成物であって、植物成長促進根圏細菌(PGPR)と混合され、種子の表面に適用されて、種子コーティング、すなわち浸漬コーティングに、または噴霧乾燥に現在使用されている技術を改造することができる、組成物が記載されている。マイクロメートル厚の透明で堅牢なコーティングは、材料アセンブリによって形成される。非生物ストレス要因を耐えるために生物系によって使用される多型タンパク質と二糖との組み合わせは、土壌外および無水条件下での非胞子形成根圏細菌の生存にとって有益な環境を提供する。コーティングの分解を通じて土壌に送達される根圏細菌は、苗の根に感染し、根の結節を形成し、収率を向上させ、発芽を促進し、かつ土壌の塩分を軽減する。特定の実施形態では、細菌は、Rhizobium tropici CIAT899およびPhaseolus vulgarisを含む。
【0008】
ここに記載されている生体材料種子コーティングには、先の植物成長の利益のために、除草剤、殺虫剤、および合成肥料の代わりに、植物微生物が生体肥料として使用される。種子コーティングとしてのシルクおよびトレハロースドライフィルムの使用は、植物ストレスおよび土壌の塩分を軽減することができる植物微生物の送達を局所化および定量化するために使用され得る。同じ技術を使用して、いくつかの異なる種類の微生物を送達することができる。
【0009】
本発明は、微生物増殖用の二層生体ポリマーリザーバを提供する。微生物の成長のための微小環境をエンジニアリングすることによって、感染微生物の量および健康を増大させる微生物リザーバ/発生器を設計した。微生物を保存するための本明細書に記載されている種子コーティングを使用して、微生物保護剤をさらに開発した。ペクチン/CMCヒドロゲルを合成し、構造タンパク質および二糖の初期微生物層をコーティングするために使用する。ヒドロゲルは、微生物の成長および増殖のための媒体として機能する。ヒドロゲル層は、結果的に、早期の苗の成長の間の水ストレスを軽減するために使用され得る水分を提供する。
【0010】
以下の詳細な説明は、本出願の一部を形成し、かつ例示として特定の例示的な実施態様を示す、添付の図面を参照している。他の実施態様は、本発明の範囲から逸脱することなく行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の前述および他の対象、特徴、および利点は、添付の図面に示されるように、本発明の好ましい実施形態の以下のより具体的な説明から明らかとなり、ここで、同様の参照符号は、異なる図全体を通して同じ部分を指す。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、本発明の原理を例示することに重点が置かれる。
【
図1】種子コーティング用のフィルムを製造するために使用されるシルクフィブロイン、トレハロース、およびそれらの混合物の特性評価を示す(
図1A、
図1B、
図1C、
図1D、および
図1Eを含む)。
図1Aは、水(黒点)、ならびに水およびトレハロース溶媒マトリックス(赤点)に曝露したときのシルクフィブロインのMDシミュレーションを示し、平均二乗偏差(RMSD)は、原子間の平均距離を測定する。3つの挿絵は、異なる培地における弛緩後およびシミュレーション終了時(40ns)のシルクフィブロイン構造を表す。
図1Bは、シルクフィブロイン(S)、ならびにシルクフィブロインとトレハロースとの混合物(ST)の懸濁液の円二色性(CD)を示す。二糖は、水懸濁液におけるタンパク質ランダムコイル形態に影響を及ぼさない。
図1Cは、トレハロース濃度の関数としての水中でのシルクフィブロインナノミセル凝集の動的光散乱(DLS)分析を示す。シルクナノミセルの平均直径は、水懸濁液におけるトレハロース濃度の影響を受けなかった。
図1Dは、シルクフィブロイン(S)、トレハロース(T)、およびそれらの混合物(ST)のドロップキャスティングによって得られたフィルムのFTIRスペクトルを示す。アミドIおよびアミドIIIの領域におけるアミド結合のランダムコイル優位共鳴ピークは、トレハロースの存在によって影響を受けなかった。これは、二糖が、ゾル-ゲル-固体転移中にタンパク質多型に影響を及ぼさないことを示す。右側のパネルにおいて、FTIRスペクトルは、1621cm-1でのピークの出現によって証明されるように、シルクフィブロインの多型ランダムコイルからβシートへの転移が、水アニーリングでのフィルム形成後に誘導され得ることを示す。
図1Eは、ナノインデンテーションで調査した、シルクフィブロイン、トレハロース、およびそれらの混合物によって構成されるフィルムの機械的特性を示す。トレハロース濃度および水アニーリング後のプロセスによって、硬度および見かけの弾性率の増加がもたらされ、より脆いフィルムの形成がもたらされた。
【
図2】コーティング製造、接種剤封入、および材料分解を示す(
図2A、
図2B、
図2C、および
図2Dを含む)。
図2Aは、浸漬コーティングおよび噴霧乾燥技術での種子モデルとして使用されるガラスビーズのシングルポットコーティングを示す。GFP改変CIAT899によって、ガラスビーズ上での細菌分布を視覚化することが可能になった。
図2Bは、浸漬コーティングによって得られた、(i)シルク(S)、(ii)シルク-トレハロース3:1ST(3:1)、(iii)ST(1:1)、および(iv)ST(1:3)コーティングの断面を示すSEM顕微鏡写真を表す。得られた膜厚は、約5μmであった。
図2Cは、浸漬コーティングプロセス中の細菌封入の有効性の調査を示す。浸漬コーティング後のビーズ1つ当たりの細菌の量は、コロニー計数によって定量化した。すべてのコーティング溶液は、同様の乾燥物濃度、細菌の数、および粘度を有していた。
図2Dは、GFP-CIAT899を封入するコーティングフィルムの分解を示す。薄いフィタゲル上にフィルムを配置し、これを透明な人工土壌として使用した。フィルムの分解を時間の関数として調査した。蛍光光を透過させたフィルムの上面図を、ChemiDoc MPイメージングを使用して撮影した。スケールバーは、1cmである。
【
図3】シルク、トレハロース、およびそれらの混合物におけるCIAT899の保存を示す(
図3Aおよび
図3Bを含む)。23℃および25%(
図3A)、50%(
図3B)の相対湿度で保存したサンプルについて、1、2、および4週目にデータを収集した。上側のパネルでは、生存率は、アラマーブルー分析によって調査されるような、代謝活性であり無傷の膜を有していた細菌のパーセンテージを示す。下側のパネルでは、生存率を、コロニーへと培養可能な細菌のパーセンテージとして測定した(コロニー計数分析)。データは、10個のサンプルおよび単一因子Anova試験にわたる、複製n=7のプールされた平均±SDである。S=シルク、T=トレハロース、ST=シルク:トレハロース、x:xは、2つの生体ポリマー間の相対重量比を示し、A=アニーリング6時間、MC=メチルセルロース、PVP=ポリビニルピロリドンである。
【
図4】トレハロースとCIAT899との間の相互作用を示す(
図A4および
図4Bを含む)。
図4Aでは、細菌を1%の乾燥重量%のトレハロース溶液中で1時間培養し、外因性トレハロースの細胞取り込みを測定した。二糖の固有のレベルは、対照(0.09乾燥重量%のNaCl溶液)と比較した場合、統計的に有意差はないと見出された(p>0.05)。データは、n=7のプールされた平均±SDであり、単一因子Anova試験が使用された。
図4Bでは、CIAT899およびCNF42を、0.4%の最小スクロース溶液および0.4%の最小トレハロース溶液中で培養した。CIAT899の成長プロファイルは、トレハロースを移送および代謝し、炭素源として使用する能力を示す。データは、n=7のプールされた平均±SDである。
【
図5】種子コーティング、植物根コロニー形成、および塩類土壌環境の軽減を示す(
図5A、
図5B、および
図5Cを含む)。
図5Aは、一般的な豆の種子コーティングによる接種を通じて根の感染を誘発するCIAT899を保存および送達するために使用される手順の概略図を示す。
図5Bは、非塩類(4ds/m)および塩類(8ds/m)条件での2週間にわたる発芽率および茎成長を示す。
図5Cは、根の結節形成の巨視的写真および蛍光顕微鏡画像から、GFP-CIAT899によるコロニー形成が確認されたことを示す。根の画像のスケールバーは、1cmである。条件ごとに植え付けられたP.vulgaris、n=15。
【
図6】モロッコの塩類土壌(50mM)に植えられた種子を示す。コーティングされた種子は左側であり、対照種子は右側である。
【
図7】乾燥シルクフィルム、スクロースフィルム、およびそれらの混合フィルムの物理分析を示す(
図7A、
図7B、
図7C、
図7D、
図7E、および
図7Fを含む)。
図7Aは、空気乾燥フィルムのCDを示す。
図7Bは、DLS強度平均直径を示す。
図7Cは、DLSサイズ分布を示す。
図7Dは、フィルムのFTIRスペクトルを示す。
図7Eは、ナノインデンテーションを使用したフィルムの機械的特性を示す。
図7Fは、溶液の接触角および粘度の表を示す。S=シルク、C=スクロース、SC(3:1)=シルク:スクロース=3:1。
【
図8】乾燥シルクフィルム、トレハロースフィルム、およびそれらの混合フィルムの物理分析を示す(
図8Aおよび
図8Bを含む)。
図8Aは、溶液の粘度および接触角を示す。
図8Bは、DLSサイズ分布を示す。S=シルク、T=トレハロース、ST(3:1)=シルク:トレハロース=3:1の相対乾燥重量濃度。
【
図9】
図9Aは、GFP-CIAT899でコーティングされたガラスビーズのセットアップを示す(
図9Aおよび
図9Bを含む)。
図9Bは、人工土壌(フィタゲル)中のST(1:3)フィルムに埋め込まれたCIAT899の拡散を表すビデオのフレームワークを示す。
【
図10】23℃、湿度25%で4週間保管した後の、シルクフィルム、トレハロースフィルム、およびそれらの混合フィルム中のCIAT899の安定性に関する選択された寒天コロニー数を示す。
【
図11】23℃、湿度50%で4週間保管した後の、シルクフィルム、トレハロースフィルム、およびそれらの混合フィルム中のCIAT899の安定性に関する選択された寒天コロニー数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発芽を促進し、かつ土壌の塩分のような非生物ストレス要因を軽減することができる種子コーティングをエンジニアリングするための生体材料ベースのアプローチが本明細書に記載されている。発芽を促進し、かつ土壌の塩分を軽減するために、種子を生物肥料でコーティングし、これらを土壌中で放出することができる生体材料製剤が本明細書に提示されている。バイオインスパイアされたアプローチは、乾眠において主要な役割を果たす二糖と、機械的堅牢性、製造の容易さ、接着性、適合性、および制御された生分解性を提供する構造タンパク質とを組み合わせる。
【0013】
本生体材料は、投入量を最小限に抑え、かつ環境への影響を軽減しながら食料生産を増強するために、精密農業に使用することができる。本生体材料は、種子の微小環境をエンジニアリングし、栄養素、ホルモン、および有益な生体分子を苗に正確に送達するために使用することができ、肥料および殺虫剤のより持続可能かつ効果的な送達のための道を開く。種子コーティングによって、塩類土壌の存在下でより速くかつより強く成長する植物が得られた。
【0014】
詳細には、この生体材料は、構造タンパク質と二糖との組み合わせをベースとする。この組み合わせを、根圏細菌と混合し、種子の表面に適用して、浸漬コーティングなどの種子コーティングに、または噴霧乾燥に現在使用されている技術を改造することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、構造タンパク質は、不規則二次構造および三次構造を形成するアミノ酸鎖の非反復領域が交互になった規則構造(例えば、ベータシート)を形成する反復単位からなるタンパク質である。いくつかの実施形態では、構造タンパク質は、シルクフィブロイン、サッケリン(suckerin)、またはケラチンから選択される。いくつかの実施形態では、構造タンパク質は、シルクフィブロインである。いくつかの実施形態では、シルクフィブロインは、Bombyx moriの繭から抽出される。
【0016】
シルクフィブロインは、テキスタイルへのその用途について周知である、再生医療、薬物送達、埋め込み可能なオプトエレクトロニクス、および食品コーティングでの用途で天然由来の技術材料として再発明された、構造タンパク質である(13、14)。カオトロピックイオンをLiBrとして使用して、シルクフィブロイン分子を繊維内に架橋する分子間および分子内水素結合を破壊する、水ベースのプロセスを使用して、構造タンパク質を繭から水懸濁液中に精製する(15)。透析を介してイオンを除去すると、シルクフィブロインは、濃度、pH、および分子量に応じて数日から数ヶ月の範囲の期間にわたって安定な、水懸濁液中のナノミセルの形態を有する(16、17)。材料アセンブリは、水の除去と、新たな分子内および分子間水素結合の形成とによって推進される。このプロセスは、腐敗性の作物の貯蔵寿命を延ばすために使用された透明で堅牢な膜を含むいくつかの材料形式を得るようにエンジニアリングすることができる(18)。ジブロックコポリマーに似た構造と、親水性負電荷非反復配列によって間隔が空けられた疎水性反復アミノ酸配列との組み合わせは、タンパク質をランダムコイルまたはベータシートリッチ構造で得ることができるため、シルクフィブロインを多型にして、それぞれ水溶性または水不溶性であるシルク材料の製造を可能にする(19、20)。シルクフィブロイン構造はまた、酸化ストレスを軽減し、十分な水和を提供し、かつ無水条件下で生体分子の構成を維持することによって、抗生物質から成長因子、酵素、およびウイルスまでにわたる不安定な化合物を保存することが可能な独特の環境を提供する(21)。
【0017】
いくつかの実施形態では、二糖は、トレハロース、スクロース、ラクトース、またはマルトースから選択される。いくつかの実施形態では、二糖は、トレハロースである。
【0018】
トレハロースは、2つのグルコース単位がα,α-(1,1)-グリコシド結合を介して連結している非還元性二糖である。この二糖は、植物、動物、真菌、酵母、古細菌、および細菌を含むあらゆる領域の生命体から単離されたものである(22)。トレハロースはまた、食品、化粧品、および製薬業界で使用されることから、工業的にも生産される。この二糖は、シグナリング分子、炭水化物貯蔵、および様々なストレス(例えば、干ばつ、寒さ、および塩ストレス)に対する保護剤としてなど、細胞において重要かつ異なる役割を果たし得る(23)。トレハロースの蓄積は、細胞内および細胞外の両方で起こる(22、24、25)。トレハロースによって推進される細胞保護のメカニズムに関しては、競合するが互いに排他的ではない2つの仮説がある;(i)ガラス化仮説は、トレハロースが細胞内でガラス状のマトリックスを形成し、タンパク質の変性、タンパク質の凝集、および膜融合を物理的に防止することを提示しており、(ii)水置換仮説は、水と細胞成分との間の水素結合が、細胞が乾燥するにつれてトレハロースに置き換えられ、それによって、タンパク質の変性、凝集、および膜融合も防止され得ると仮定している(26)。
【0019】
最近では、天然変性タンパク質(IDP)として知られる特定のクラスのタンパク質もまた、乾眠に寄与することが示されている。例えば、水素結合リッチな水溶性タンパク質と二糖類との混合物は、緩歩動物などの無水生物が乾燥から生き延びるように進化したという成功戦略である(27)。
【0020】
本明細書に提示されるのは、発芽を促進し、かつ土壌の塩分などの非生物ストレス要因を軽減することができる種子コーティング技術を開発するための、根圏細菌における浸透圧および乾燥ストレスからの二糖の保護能力とともに、構造タンパク質のコーティング形成、ペイロード封入、保存、および生分解能力を相乗的に使用する、生体材料製剤である。
【0021】
いくつかの実施形態では、生体材料ベースの種子コーティング組成物は、約10:1~約1:10の構造タンパク質対二糖の比を含む。いくつかの実施形態では、構造タンパク質対二糖の比は、約5:1~約1:5である。いくつかの実施形態では、構造タンパク質対二糖の比は、約3:1~約1:3である。いくつかの実施形態では、構造タンパク質対二糖の比は、約3:1である。いくつかの実施形態では、構造タンパク質対二糖の比は、約1:1である。いくつかの実施形態では、構造タンパク質対二糖の比は、約1:3である。
【0022】
本発明はさらに、微生物増殖のための二層生体ポリマーリザーバに関する。微生物の成長のための微小環境をエンジニアリングすることによって、感染微生物の量および健康を増大させる微生物リザーバ/発生器を設計した。本明細書に記載されているような種子コーティングを使用して微生物を保存し、微生物保護剤をさらに開発した。ペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、またはペクチンとCMCとの混合物を含むものなどのヒドロゲルを合成し、この構造タンパク質/二糖コーティング初期微生物層をコーティングするために使用した。ヒドロゲルは、微生物の成長および増殖のための媒体として機能する。ヒドロゲル層は、結果的に、早期の苗の成長の間の水ストレスを軽減するために使用され得る水分を提供する。
【0023】
構造タンパク質-二糖生体材料の製剤化
Liおよび共同研究者は、最近、シルクフィブロイン製剤における生体分子の保存が、糖ベースの乾燥製剤のように、マトリックスβ緩和と相関していることを報告した(28)。また、スクロースのような糖をシルクフィブロインベースの材料に含めることによって、タンパク質安定化性能が向上することが見出された。というのも、これらの材料は、β緩和を抑制して分解速度を減速させる抗可塑剤として作用することができるからである。
図1では、構造タンパク質(例えば、シルクフィブロイン)マトリックスに対する二糖(例えば、トレハロース)の効果が報告されている。分子力学シミュレーションを使用して、水中または水トレハロース混合物中に懸濁されたときの、ベータシート構成で組織化された18(GAGSGA)2ペプチドによって作製された、シルクフィブロインのような系の分子移動性を調査した(
図1A)。元の形態からの原子位置の平均二乗偏差(RMSD)の時間評価によって、トレハロースが、18個のペプチドの系の動態を低減することと、糖がタンパク質の周りにマトリックスを形成してタンパク質の動態を減速させることによって元の形態でこれらを固定するという一般的な知識と相関することとが示された。トレハロースは、シルクフィブロイン懸濁液へのその添加が、シルクフィブロインによって想定されるランダムコイル構造にいかなる変更も付与せず、またタンパク質アセンブリを推進することもないため、シルクフィブロインアセンブリに干渉しない。シルクフィブロイン(S)およびシルクフィブロイン-トレハロース(ST)水懸濁液の円二色性(CD)スペクトルは、このタンパク質が、75乾燥重量%までのトレハロースの濃度増加に曝露されたときにランダムコイル構造を維持することを表していた(
図1B)。動的光散乱(DLS)を使用して、SおよびST水懸濁液におけるシルクフィブロインナノミセルの流体力学半径を測定した(
図1C)。トレハロース濃度を増加させて測定したナノセルの直径に統計的有意差(p>0.05)は見出されず、これは、トレハロースが水中のシルクフィブロイン分子のアセンブリに影響を及ぼさないことを示していた。減衰全反射フーリエ変換赤外線分光法(ATRFTIR)を使用して、乾燥時のシルクフィブロイン多型に対するトレハロースの効果を評価した(
図1D)。増加していく濃度のトレハロースを使用して得られたシルクフィブロインフィルムのスペクトルはすべて、1647cm-1を中心にアミドI共鳴を有し、これは、シルクフィブロイン分子の構造がトレハロースの影響を受けず、ランダムコイル配置を有することを示していた。
【0024】
アセンブリされたシルクフィブロイン分子においてランダムコイルをベータシート転移に至らせるために一般的に使用される水アニーリングなどの方法は、高濃度のトレハロースでのシルクフィブロインの結晶化においてなおも効果的であった。この現象は、シルクフィブロイン分子と水との間の水素結合を分子間および分子内水素結合で置き換えることが、トレハロースの存在下でさえ熱力学的に有利であり得ることと、タンパク質が、タンパク質のトレハロース誘導ガラス化にもかかわらず、構造再構成、水損失および体積変化を受け得ることとを示唆している。増加していく濃度のトレハロースを含有するシルクフィブロインフィルムについて実行されたナノインデンテーション機械試験は、トレハロース濃度の増加に伴い、フィルムの硬度およびヤング率が増加することを示した。多量(75重量%まで)の二糖を含むことによって、抗可塑性効果が付与され、これは、混合物の規則に従い、特に>50乾燥重量%のトレハロース濃度で、より脆い最終材料をもたらした(
図1E)。しかしながら、フィルムのβシート含有量を増強するために水アニーリング後処理を適用した場合、ST材料の硬度およびヤング率は、混合物の規則に従わなかった。硬度は、25乾燥重量%までのトレハロース濃度では増加し(すなわち、ST3:1)、次いで、50および75乾燥重量%のトレハロース含有量を有するフィルムでは低下した(すなわち、それぞれ、ST1:1およびST1:3)。ST材料のヤング率は、ST3:1フィルムでは増加し、次いで、より大きなトレハロース含有量では平坦化した。
【0025】
図7は、シルクフィブロインとスクロースとを混合することによって得られたフィルムを特性評価したものである。CD、DLS、およびATR-FTIR分析から、トレハロースについて見出されたものと同様に、スクロースがシルクフィブロインの折り畳みおよびアセンブリ挙動を変更しないことが示された(
図7A~D)。しかしながら、ナノインデンテーション測定から、スクロースがシルクフィブロイン材料に組み込まれるときに、さらには水アニーリングが適用されるときであっても、混合物の規則によって機械的特性を予測することができると示された。これらのデータは、トレハロースおよびスクロースがシルク材料に与えるガラス化の効果の違いを示唆しており、トレハロースは、スクロース
【数1】
と比較してより高いガラス転移温度
【数2】
を有しており、タンパク質とより均質なネットワークを形成し得る(26、29)。結果として、トレハロース脆性マトリックスは、シルクフィブロインランダムコイルによって破壊されて、水アニーリング中にベータシート構造変化を引き起こし、25乾燥重量%超のトレハロース濃度では、より弱い材料が得られる。それにもかかわらず、ST材料は、現在利用可能な種子コーティングのオーダー(10-1-101のヤング率)で機械的特性を示した(30)。
【0026】
コーティングアセンブリおよび生物肥料の封入および剥離性能
シルクフィブロインアセンブリは、水蒸気によって推進され、透明な材料をもたらすゾル-ゲル-固体転移プロセスを生じさせる。得られたフィルムは、数ナノメートルの粗さ(平らなフィルム上のAFMによって測定)と、溶液レオロジーパラメータを変更することによって制御可能な厚さとを有する(31)。一定の固形物含有量では、シルクフィブロイン懸濁液にトレハロースを含めると溶液粘度が低下する(
図8)が、これは、10
-3Pa・sオーダーにとどまり、それによって、種子コーティングで一般的に使用される既存の技術を改造することで、スフェロイドなどの複雑な形状へのST懸濁液の適用が可能になる。接触角(q)測定はまた、二糖の親水性がシルクフィブロインと比較して高いことを考慮すると、より高いトレハロース濃度でqが低下することを示した(
図8)。5mmの直径を有するホウケイ酸ガラスビーズを種子のモデルとして使用する場合、ST溶液の浸漬コーティングおよび噴霧乾燥によって、水に曝露されると生分解するマイクロメートル厚のコーティングの形成を介して、PGPRなどのペイロードの封入および送達が可能になった(
図2)。シルク材料の透明性を考慮して、緑色蛍光タンパク質(GFP)産生PGRP、例えば、GFP修飾Rhizobiun tropici CIAT899(GFP-CIAT899)を使用して、根圏細菌の封入、保存、および送達を評価した。CIAT899は、広範な宿主範囲の根粒菌株であり、Phaseolus vulgarisの最も成功した共生体である(32、33)。CIAT899は、高温、酸性、および塩分などの環境ストレスに対する高い耐性を提供し、したがって、生物肥料としてのその使用は、非常に探し求められているものであるが、コーティング形成および接種で使用される乾燥および再水和ステップ中のグラム陰性細菌の生存率が低い点が問題となっている(12、34)。
図2Aは、浸漬コーティングおよび噴霧乾燥技術を使用してST材料でコーティングされたガラスビーズの蛍光画像を示す。陰性対照と比較すると、ガラスビーズが青色光で励起された際に蛍光を発したとき、GFP-CIAT899がコーティング材料中にどのように正常に封入されたかが分かる。走査型電子顕微鏡法(SEM)を使用して、シルクフィブロインマトリックス中のトレハロースの相対濃度の増加の関数として得られるコーティング厚さを評価した(すなわち、乾燥質量は一定のままであった)。SEM顕微鏡写真は、コーティング厚さが数マイクロメートルのオーダー(5±2μm)であることを明らかにし、ガラス化ポリマーマトリックス中の細菌の存在を表していた(
図2B)。次いで、ST混合物コーティング材料の関数(すなわち、トレハロースの相対含有量が増加していく)としてのガラスビーズ上のGFP-CIAT899の正常な封入および放出を、プレート計数法を使用して、アガロースゲル上での蘇生細菌の画線を介して評価した(
図2C)。コーティング厚さ(t)、基質の球状の幾何学的形状(r)、コーティング溶液中の既知の細菌濃度(Cb)を考慮して、ならびに細菌の均質な分散および均質なコーティングの形成を考慮して、Cbにコーティングの球状シェル(V)の体積を乗じることによって、コーティング(N)中に封入される細菌の数を推定することが可能である:
【0027】
【数3】
式中、R=(r+t)および4+.34は、内側の球の表面積にシェルの厚さtを掛けたものとして得られる薄い球状シェルの体積の近似値である。R=0.25cm、t=0.0005cm、およびCb=10
10/cm
3、次いで、
【数4】
を使用し、これは、コーティングおよび蘇生手順中にGFP-CIAT899の培養能が1対数低下したことを示した(
図2Cに示されるように、約3・10
5CIAT899をSTコーティングから蘇生した)。容量に近い土壌水分含有量についてのモデルとしてフィタゲルを使用して、GFP-CIAT899のSTフィルム生分解および放出を、ChemiDoc MPイメージングシステムを使用して調査した。材料のタイムラップ画像は、トレハロースで加速された材料の相対的な含有量の増加が材料の再膨張を加速し、構造的完全性が10分以内に失われたことを示していた。さらに、GFP-CIAT899を封入するST材料でコーティングされたガラスビーズ上で撮影された蛍光顕微鏡画像は、材料が人工土壌に接触した数分後のフィタゲルにおける細菌放出を示していた(
図9)。
【0028】
シルクフィブロイン-トレハロースコーティングにおけるCIAT899の保存
CIAT899のようなPGPRは、土壌外での生存率が限られた非胞子形成細菌であり、乾燥から良好に生き延びることはない(35)。種子コーティングにおける根圏細菌の長期保管は、農作業におけるこれらの生物肥料の大規模な使用を妨げる主要なボトルネックのうちの1つである(36、37)。
【0029】
土壌おけるPGPRの直接の適用および生きた細菌の取り扱いには、実際には、ほとんど利用できないツールおよび専門知識が関与しており、それによって、種子コーティングにおけるPGPRの正常な封入は、生物肥料の有益な効果をベンチからフィールドに変換するための重要なステップであると捉えられている。PGPRを封入、保存、および送達するための種子コーティング技術としてのST材料の潜在的な使用を評価するために、T=23℃かつ相対湿度(RH)25%および50%で、4週間までにわたって、シルク、トレハロース、およびそれらの混合物に埋め込まれたCIAT899について、生存能および培養能試験を実行した。GFP-CIAT899は塩化ナトリウム中で保存し、メチルセルロース(MC)およびポリビニルピロリドン(PVP)として市販の種子コーティングにおいて使用されるポリマーを対照として使用した。保管結果は、
図3に示されており、ST材料が、GFP-CIAT899の保存において、シルク、トレハロース、MC、およびPVPを上回ったことを示す。興味深いことに、シルクおよびST材料(
図3のサンプル名の最後にAとして示される)の水アニーリングは、抗生物質、酵素、および成長因子などの生体分子について以前に報告されたように、保存性を向上させるのではなく、有害であるように思われた(38、39)。ランダムコイルからβシートへの遷移は熱力学的に有利であるため、シルクフィブロインフィルムは、室内条件および非常に高いRHで放置されると、水不溶性材料にアニーリングする(40)。このプロセスは、一般に水アニーリングと呼ばれ、材料の部分的な再水和および2回目の乾燥をもたらし、それによって、GFP-CIAT899にストレスおよび損傷が与えられ得る。アラマーブルー染色で得られた生存率測定(
図3上段)は、ST(1:3)が、考慮される両方のRHレベルでGFP-CIAT899の保存のための最良の環境を提供することを示した。特に、フィルム形成後4週目において、ST(1:3)フィルムに封入されたGFP-CIAT899の25%超が、RH=25%で保存されたときに代謝活性があると見出された。より高い湿度レベルでは、4週目に生存率が約5%に低下し、これは、コーティング性能が、使用される材料の吸湿性によって阻害されていることを示す。アラマーブルーは、蘇生後に生きていた(すなわち、代謝し、無傷の膜を有していた)GFP-CIAT899細菌を示した。しかしながら、根圏のような競争環境で生き延び、宿主植物と結節を形成するためには、PGPRがコロニーを形成可能である必要がある。保管材料、時間、およびRHに応じたアガロースゲル上での蘇生細菌のストライキングによって、GFPCIAT899の再培養能を調査した(
図3下段、
図10、および
図11)。栄養培地中の経路は、培地中の回復時間が発生しないであろう土壌条件をより良好にシミュレートするために使用しなかった。GFP-CIAT899コロニー計数によって、アラマーブルー代謝活性アッセイで得られた結果と比較して生存レベルがより低いことが示され、これは、大量のGFP-CIAT899が生存可能であるが培養不可能であること(VBNC)を示唆していた。PGPRにおけるVBNC状態は、ニトロセルロースフィルタを含むいくつかの封入マトリックスを使用した乾燥の副作用としてこれまでに記載されており、ここで、生存率は、RH=22%で、1週間後に4.0%に、4週間後に2%未満に低下した(41)。本明細書に記載されている実験では、シルク、トレハロース、およびST混合物は、種子コーティング製剤に商業的に使用されるPVPおよびMCよりも統計的に有意により高い生存率を提供した。さらに、ST(1:3)は、他のST混合物よりも良好に、かつ純粋なトレハロースと同様の性能で、GFP-CIAT899を保存し、これは、二糖が、乾燥後の細菌の再培養能を保証するための、シルクフィブロイン-トレハロース混合物における重要な成分であることを示していた。それにもかかわらず、材料製造時点でのシルクフィブロインのアニーリングは、将来的に、蘇生からタンパク質の生分解の時間までの培養培地中でのGFP-CIAT899の放出と、結果として生じる、環境中でのPGPRの放出とを遅らせるために使用され得る。
【0030】
内因性対外因性トレハロース
Rhizobium Etliのようないくつかのrhizobium種は、トレハロースを合成、取り込み、および分解すると報告されている(42)。二糖は、otsAB、treS、およびtreZY合成経路を介した培地の浸透圧の上昇に応答して浸透圧保護剤として細胞内に蓄積し、その一方で、内部移送は、トレハロース輸送および利用(thu)オペロン(thuEFGK)によってコードされたトレハロースマルトースABCトランスポーターなどのパーミアーゼタンパク質によって調節される(42)。CIAT899については、トレハロース合成が浸透圧調節されることが報告されており(43)、これは、この株の浸透圧耐性におけるトレハロースの関与を示唆している。しかしながら、ソルビトール/マンニトールABCトランスポーターについてのエビデンスのみが報告されているため、CIAT899が、トレハロースを移送することができるABCトランスポータータンパク質を有するかどうかは、まだ不明である(43)。ST材料におけるCIAT899の安定化を支えるメカニズムをさらに調べるために、1乾燥重量%のトレハロース溶液および0.09乾燥重量%のNaCl溶液中で1時間インキュベートしたCIAT899の固有のトレハロース含有量を測定した。1時間の時点を使用して、溶液の取り扱いおよびコーティング形成中にCIAT899がST材料と接触する時間を模倣した。この研究は、1時間以内に、CIAT899固有のトレハロース濃度が、形成されるST材料中に存在する外因性トレハロースによって影響を受けなかったことを示した(
図4A)。この発見は、STコーティングによって誘導される安定化プロセスが、トレハロースの細胞内移送によって進められるのではなく、ガラス化などの細胞外現象を利用して、固有の浸透圧保護を提供することを示唆する。CIAT899における外因性トレハロースと内因性トレハロースとの間の相互作用をさらに調査するために、トレハロースを移送および代謝する能力を、トレハロースを移送および利用することができるthuオペロンを有することが周知であるRhizobium etli CNF42などのrhizobium株と比較して測定した(
図4B)(44)。この研究は、炭素源としてのトレハロースと陽性対照としてのスクロースとを使用して、最小培地中でCIAT899およびCNF42を培養することによって実行した。光学測定値(OD600)は、CIAT899が、CNF42と同様に、トレハロースの最小培地で増殖できることを示し、これは、CIAT899がトレハロースを移送および代謝する能力を示し、将来的に、トレハロースへのより長い事前曝露が保存性能を向上させ得ることを示唆していた。
【0031】
Phaseolus vulgarisの発芽促進および塩類土壌条件の軽減
P.vulgaris種子を、CIAT899を封入するST(1:3)で浸漬コーティングし、乾燥させ、植え付け前に24時間保管した(
図5A)。調査したすべての材料のうち、ST(1:3)混合比を、機械的特性、溶液粘度、およびCIAT899保存の観点でのそのより優れた性能を考慮して使用した。コーティング処理は、生物肥料の方針決定機関によって一般的に課される仕様に従って、各種子を107CIAT899細菌でコーティングするように設計されていた(45)。CIAT899でコーティングされたP.vulgarisを、CIAT899を含まないST(1:3)でコーティングされた種子を対照として使用して、塩類(8ds/m)および非塩類(4ds/m)土壌中で2週間にわたって成長させた。表土にNaClを添加して塩類土壌を得た。CIAT899でコーティングされたP.vulgaris種子は、対照種子と比較して、4ds/mおよび8ds/mの土壌における発芽率が統計的に有意に改善されていた。調査した2週間にわたって、CIAT899でコーティングされたP.vulgaris種子は、対照種子と比較して、より背の高い、かつより長いより屈曲した根を有する苗に成長した(
図5B)。目視検査および蛍光顕微鏡法を使用して、結節形成を評価した。
図5Bの右側のパネルは、強力なGFP誘導蛍光を有する結節の存在によって示されるように、GFP-CIAT899でコーティングされたP.vulgaris種子が、GFP-CIAT899によってコロニー形成された植物においてどのように発芽したかを表す。興味深いことに、発芽促進および収率のより強力な苗におけるCIAT899-ST(1:3)コーティングの有効性は、発芽が8ds/mの土壌で起こったときよりも明らかであった。
【0032】
本明細書で使用されるrhizobium株は、生体材料コーティング中での封入から生き延び、経時的に保存され、土壌中で正常に放出されて、宿主の根と共生結節を形成した。
【0033】
図12に示されるコーティング設計の模式図。種子は、シルク/トレハロースなどの生体材料でコーティングされる。生体材料は、根圏細菌などの細菌を含み得る。シルク層は、ペクチン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、またはペクチンとCMCとの混合物を含むものなどのヒドロゲルでコーティングされる。
【0034】
図13は、動作メカニズムを示す。第1の層は、乾燥状態の微生物を保存するシルク/トレハロース基層を含む。第2の層は、微生物を蘇生し、かつ乾いた乾燥条件での発芽を改善する、ペクチン/CMC層などのヒドロゲルを含む。ヒドロゲルは、超吸収性であり得る。ヒドロゲルは、水分を吸収して水和し、発芽を開始する。微生物ベースコーティングは溶解し、微生物が(超吸収性)ヒドロゲル層に拡散する。ヒドロゲル層の糖は、蘇生および増殖のための栄養素を提供する。これは、微生物を徐々に局所的に制御して放出することを提供する。種子は、滲出液を放出して、rhizobium tropiciを化学誘引する。根および皮質の亀裂は、微生物によってコロニー形成される。コーティングは、徐々に生分解し、根系に浸透する。
【実施例】
【0035】
材料および方法
MDシミュレーション-UCSF ChimeraおよびModellerを使用してドデカペプチド配列をポリ(Gly-Ala)bシートの構造(タンパク質データバンク識別コード2slk)にスレッディングすることによって、(GAGSGA)2オリゴマーの初期モデルを構築した。次いで、系を、移動可能な分子間電位3P(TIP3P)明示的ウォーターボックス内で平衡化させた。GROMACSを使用して、定温(300K)および圧力(1bar)で2fsの時間ステップで40nsにわたってシミュレーションを実行した。使用されたフォースフィールドは、GROMOS53a6であった。アルファ,アルファ-トレハロース構造は、University of Queensland、QLD,AustraliaのMolecular Dynamics Groupから入手可能なAutomated Topology Builder(ATB)and Repositoryによって提供した。Βシートアセンブリの安定性は、水素結合動力学と、分子動力学の軌道から得られた平均二乗偏差(RMSD)データとから検証した。
【0036】
材料の製造-生体ポリマーの保存メカニズムを調査するために、フィルムをドロップキャスティングおよび噴霧乾燥によって製造した。懸濁液を、シルクフィブロイン、トレハロース、またはシルクフィブロイン-トレハロース(ST)混合物と混合したグラム陰性PGPR(Rhizobium tropici CIAT899 Martinez-Romero等-ATCC49672)で作製した。NaCl溶液を陰性対照として使用した。アラマーブルー代謝アッセイおよび寒天画線を使用して、蘇生後の細菌生存率を評価した。この原稿全体にわたる一貫性のために、溶液濃度1乾燥重量%の生体ポリマー溶液を調製した。シルクフィブロイン水性懸濁液を、“Materials fabrication of Bombxy silk”に記載されるように調製した。トレハロース(TCI America、Portland,OR,USA)、ポリビニルピロリドン(PVP、30kDa)(Sigma Aldrich、St Louis,MO,USA)、メチルセルロース(Sigma Aldrich、St Louis,MO)、およびNaCl(Sigma Aldrich、St Louis,MO)をすべてH2Oに溶解させた。しかしながら、メチルセルロースについては、H2Oを4℃で冷却して混合する必要があった。細菌の取り扱いおよび培養のために、500mlのH2Oを7.5gのBDTMトリプシンソイブロス(ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト培地)(Becton Dickinson、Franklin Lakes,NJ,USA)と混合することによって、50%のトリプシンソイブロス(Becton Dickinson、Franklin Lakeses,NJ,USA)を生成した。培地を121℃で60分間オートクレーブした。CIAT899を供給し、200rpmおよび30℃で、0.7のOD600測定値までシェーカーインキュベーター内で培養した。細菌が0.7のOD600に達したら、細菌ブロス溶液11mlを4300rpmで20分間遠心分離した。細菌がペレットを形成し、上清みを廃棄した。濃縮された細菌懸濁液を作製し、ペレット化した細菌株に1.1mlの生体ポリマーをピペッティングし、上下に入念にピペッティングすることによって均一に混合した。これを、使用したすべての生体ポリマーについて実行した。これらは、生きたサンプルとして分類した。陰性対照として使用される死んだサンプルについては、細菌ペレットを70%(w/v)のイソプロパノールと混合し、60分間インキュベートした。60分後に、細菌溶液を先のように遠心分離し、上清みを廃棄した。濃縮された細菌懸濁液を作製し、ペレット化した細菌に1.1mlの生体ポリマーをピペッティングし、上下に入念にピペッティングすることによって均一に混合した。これを、使用したすべての生体ポリマーについて実行した。各時点で、100μlの生きたサンプルおよび死んだサンプルを5回繰り返し生成した。細菌-生体ポリマー懸濁液を1インチ×1インチのPDMSスラブ上にドロップキャスティングし、空気乾燥させた。次いで、フィルムをペトリ皿にて一定期間室温で保存した。水アニーリングにかけたサンプルを、H2Oを有する真空チャンバに入れ、6時間密封してアニーリングし、除去し、ペトリ皿に入れた。
【0037】
ライブデッドアッセイ-アラマーブルーアッセイ(レサズリン)の較正曲線を作成するために、以下の手順に従った:(i)OD600=0.7細菌溶液を収集および遠心分離した。(ii)陰性対照(死んだ細菌)については、遠心分離された細菌を1mlの70%イソプロパノール(Sigma Aldrich、St Louis,MO,USA)に60分間再懸濁し、次いで、遠心分離し、1mlのNaClに再懸濁した。(iii)(i)の時点で得られた細菌懸濁液を遠心分離し、NaCl(生きた細菌)中に再懸濁した。(iv)死んだ細菌および生きた細菌を、以下の比率:100%の生菌、80:20の生菌:死菌、50:50の生菌:死菌、20:80の生菌:死菌、および100%の死菌を形成するように相対的に増加していく濃度で混合し、相対的なOD600を測定した。(v)100μlの先の懸濁液を96ウェルプレートに添加し、生存率を測定した。生存率を測定するために、アラマーブルーアッセイを製造元の手順に従って実施した。励起波長は570nm、発光波長は585nmであった。サンプルを暗所で調製し、ホイル紙の下に60分間保持し、それから、分析を実施した。アラマーブルーアッセイマイクロプレートリーダー(Tecan Safire 2、Mannedorf,Switzerland)のゲインを、実施したすべての実験について一定に保った。
【0038】
フィルム分解-GFP-CIAT899を封入する生体ポリマーフィルムを1cmの薄いフィタゲルフィルム(人工土壌)と接触させ、時間依存分解をGFP放出および励起でChemiDoc MP Imager(Bio-rad、Hercules,CA)によって調べた。Sigma Aldrichの手順に従って、2g/lのフィタゲルおよび1.5%のCaCl2を水溶液に混合することによって、ゲルであるフィタゲル(Sigma Aldrich、St Louis,MO)を作製した。さらに、蛍光顕微鏡法でフィルム分解を調べ、録画した(動画S1)。フィタゲルフィルムを空気乾燥フィルムの上方に配置した。
【0039】
DLS-動的光散乱(DLS)測定を、DynaPro NanoStar Light Scatterer(Wyatt Technology)で実施した。0.1mg/mlのサンプルをプラスチックキュベット(UVette、Eppendorf)内で測定した。レーザーを658nmに設定した。各データ点の取得時間は5秒であり、サンプルごとに10個のデータ点を取得した。
【0040】
CD-円二色性(CD)スペクトルを、JASCO J-1500分光計を使用して185~260nmで記録し、各スペクトルを3回の連続スキャンから平均した。0.1mg/ml超の濃度のサンプルを対応する緩衝液で0.1mg/mlに希釈し、1mmの経路長の石英キュベット内で測定した(Starna Cells,Inc.)。
【0041】
FTIR-減衰全反射(ATR)ゲルマニウム結晶を通して、Thermo Fisher FTIR6700フーリエ変換赤外分光計を使用して、ドロップキャストフィルムを分析した。各サンプルについて、64回のスキャンを、4000~650cm-1の波数で、4cm-1の解像度で共追加(coadded)した。バックグラウンドスペクトルを同じ条件下で収集し、各サンプルについてスキャンから差し引いた。
【0042】
SEM-ドロップキャストフィルムを、液体窒素中に浸した後に凍結割断(freeze cracked)し、Zeiss Merlin高解像度走査型電子顕微鏡で分析した。調製されたサンプルは電荷を帯びなかったため、金めっきまたはサンプルの調製は実施されなかった。1.00kvのEHTを100pAのプローブで使用した。
【0043】
ナノインデンテーション-ナノインデンテーションの測定は、ナノDMAトランスデューサ(Bruker)を有するHysitron TriboIndenterで実施した。500μNのピーク力と標準的な負荷ピーク保持アンロード機能とを有する負荷制御モードでサンプルを窪ませた。減少した弾性率を、Oliver-Pharr法を使用してアンロードデータをフィッティングすることによって計算し(上限値および下限値は、それぞれ95%および20%)、すべてのサンプルについてポアソン比を0.33と仮定してヤング率に換算した。各種類のサンプルを調製し、トリプレットで窪ませて、良好な製造再現性を確実にした。各サンプルについて、合計49点(7×7のグリッド、両方向に20μmの増加)でインデンテーションを実施し、弾性率測定の統計的信頼性を確実にした。
【0044】
粘度-レオロジー測定を、60mm、2°のコーンおよびプレート固定、25℃で、TA Instruments(New Castle、DE,USA)応力制御AR-G2レオメータを使用して、6乾燥重量%の生体ポリマー懸濁液について実施した。0.1000 1/s~1000 1/sのステップフローを実行する前に、溶液をレオメータ上で平衡化させた。
【0045】
接触角測定-高解像度CCDカメラと高性能デジタイズアダプタとを有するビデオ測定システムを備えた光学接触角装置Rame-hartゴニオメータ(Succasunna,NJ,USA)を使用して、接触角分析を実施した。SCA 20ソフトウェア(Data Physics Instruments GmbH、Filterstadt,Germany)をデータ取得に使用した。ソーダ石灰ガラススライドを固定し、分析全体を通して平坦に維持した。シルクフィブロイン、トレハロース、およびそれらの混合物の接触角を、いわゆるピックアップ手順に従って、5μlの生体ポリマー懸濁液の液滴を種子表面に穏やかに配置することで、液滴法によって測定した。すべての液滴を表面の上方1cmの高さから放出し、各測定値間の一貫性を確実にした。接触角(θ、液滴のベースラインと液滴境界の接線との間の角度)は、ソフトウェア支援の画像処理手順を使用して監視した。左側および右側の両方で考慮される異なる生体ポリマー製剤について5つの液滴を調べ、得られた平均θ値を使用した。
【0046】
種子コーティング-Phaseolus vulgaris種子を50%の漂白剤で3分間表面殺菌し、H2Oで3回濯ぎ、空気乾燥させた。GFP-CIAT899を1.80mlのGFP-CIAT899のOD600測定値になるまで一晩増殖させ、Eppendorf(Hamburg,Germany)遠心分離機5910R内で4200rpmで遠心分離した。上清みを廃棄し、6乾燥重量%のシルクフィブロイン-トレハロース(1:3)懸濁液8mlをスピンダウンされたGFP-CIAT899に添加した。次いで、空気乾燥させた種子をこの溶液に120秒間浸漬し、取り出し、乾燥させた。乾燥後に、種子を24時間の標点で植え付けた。水アニーリング後処理を適用した場合、種子を、H2Oを有する真空チャンバに配置し、6時間密封して、アニーリングし、24時間の点で植え付けた。
【0047】
種子モデルにおける細菌の封入-ホウケイ酸ガラスビーズ(直径=5mm、VWR、Radnor,PA,USA)によって作製された50個の種子モデルをコーティングし、空気乾燥させた。コーティングを乾燥させたら、ガラスビーズを、1Xリン酸緩衝液(Thermo Fisher Scientific、Waltham,MA,USA)20mlを有する測定管内に落とした。この溶液を混合し、希釈し、コロニー計数のために寒天プレート上に載せた。ガラスビーズ蛍光イメージングの場合、ビーズを紫外線下でイメージングし、ガラスビーズを以下の条件について蛍光イメージングした:未コーティング、シルクフィブロインで浸漬コーティング、シルクフィブロインおよびGFP-CIAT899で浸漬コーティング、ならびにシルクフィブロインおよびGFP-CIAT899で噴霧乾燥。ガラスビーズを空気乾燥させた。
【0048】
植え付け-実験の実施ごとに12個の正方形のポットを使用し、ポットごとに2つの種子を植え付けた。対照(表面殺菌種子)およびGFP-CIAT899でコーティングされた種子を用いて、4回の実験を実行した。非塩類(4ds/m)および塩類(8ds/m)の2つの条件を使用した。1.2リットルの水に12gのNaClを添加することによって人工塩分を作製し、次いで、これを650gの土壌と混合した。塩分計を用いて塩分を測定した。次いで、3日おきに植物に水を与えた。次いで、発芽後1週目および2週目に植物の高さおよび根の長さを記録した。
【0049】
蛍光顕微鏡法-根の結節を、Nikon Eclipse TE2000-Eを用いてGFP蛍光下でイメージングし、GFP-CIAT899の根の結節を確認した。
【0050】
添付の特許請求の範囲に定義されている主題は、必ずしも上記の特定の実施態様に限定されないと理解されるべきである。上記の具体的な実施態様は、単に例として開示されている。
【0051】
書誌事項
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