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特表2022-553412粘膜又は皮膚における炎症状態の治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】粘膜又は皮膚における炎症状態の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/047 20060101AFI20221215BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221215BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221215BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
A61K31/047
A61P17/00
A61P29/00
A61P1/02
A61K9/70 401
A61K9/06
A61K9/20
A61K9/12
A61K47/32
A61K47/38
A61K47/12
A61K9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524135
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 SE2020051027
(87)【国際公開番号】W WO2021080500
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】1951224-3
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522164444
【氏名又は名称】ムココルト アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リッケ、ジーン
(72)【発明者】
【氏名】ヘッドナー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ヨンテル、マッツ
(72)【発明者】
【氏名】イサクソン、オロフ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA24
4C076AA36
4C076AA72
4C076BB01
4C076BB22
4C076BB31
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC18
4C076DD41
4C076EE09
4C076EE16
4C076EE31
4C076FF04
4C076FF68
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA05
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA42
4C206MA48
4C206MA52
4C206MA55
4C206MA72
4C206MA77
4C206MA83
4C206NA05
4C206NA10
4C206NA12
4C206ZA08
4C206ZA67
4C206ZA89
4C206ZB11
(57)【要約】
本発明は、唯一の抗炎症剤として0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールと、少なくとも1種の生体接着性ポリマーとを含む医薬組成物に関する。医薬組成物は、対象の粘膜又は皮膚の炎症状態の改善、予防又は治療、及び/あるいはそのような5つの炎症状態に関連する疼痛の治療に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の粘膜又は皮膚における炎症状態の改善、予防又は治療における使用のための医薬組成物であって、
0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールと、少なくとも1種の生体接着性ポリマーとを含み、かつ
プロパン-1,2-ジオール以外の抗炎症剤を欠いている、医薬組成物。
【請求項2】
対象の粘膜又は皮膚における炎症状態に関連する疼痛の治療における使用のための医薬組成物であって、
0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールと、少なくとも1種の生体接着性ポリマーとを含み、かつ
プロパン-1,2-ジオール以外の抗炎症剤を欠いている、医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が、0.01~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールを含む、請求項1又は2に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物が、0.5~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールを含む、請求項3に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬組成物が、0.5~1.5%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、好ましくは0.5~1.25%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、より好ましくは0.5~1.0%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、例えば0.6~1.0%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、又は0.7~0.9%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、例えば約0.8%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールを含む、請求項4に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が、50~99%(w/v)の前記少なくとも1種の生体接着性ポリマーを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が、前記少なくとも1種の生体接着性ポリマーを60~99%(w/v)、好ましくは70~99%(w/v)又は80~99%(w/v)、より好ましくは90~99%(w/v)含む、請求項6に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の生体接着性ポリマーが少なくとも1種の粘膜接着性ポリマーである、請求項1から7のいずれか一項に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の粘膜接着性ポリマーがポリ(アクリル酸)(PAA)である、請求項8に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項10】
前記PAAが、ブルックフィールド粘度計で測定した、pH7.3~最大7.8、0.5重量%水溶液の25℃での平均粘度が29,400~39,400cPであるPAA、ブルックフィールド粘度計で測定した、pH7.3~最大7.8、0.5重量%水溶液の25℃での平均粘度が4,000~11,000cPであるPAA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が、微結晶セルロース、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の賦形剤を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物が、2.5~15%(w/w)、好ましくは5~10%(w/w)、より好ましくは7~9%(w/w)又は7~8%(w/w)、例えば約7.9%(w/w)の量の微結晶セルロースを含む、請求項11に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が、0.01~5%(w/w)、好ましくは0.01~1%(w/w)、より好ましくは0.05~0.5%(w/w)、例えば約0.1%(w/w)の量のポビドンを含む、請求項11又は12に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物が、0.01~5%(w/w)、好ましくは0.01~2.5%(w/w)、より好ましくは0.1~1%(w/w)、例えば約0.5%(w/w)の量のステアリン酸マグネシウムを含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項15】
前記炎症状態が前記対象の口腔粘膜における炎症状態である、請求項1から14のいずれか一項に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項16】
前記炎症状態が再発性アフタ性口内炎(RAS)である、請求項15に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物が局所適用のために製剤化される、請求項1から16のいずれか一項に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物が、パッチ、フィルム、錠剤、クリーム、軟膏、ゲル、フォーム及びスプレーからなる群から選択される剤形である、請求項1から17のいずれか一項に記載の、使用するための医薬組成物。
【請求項19】
前記剤形が粘膜接着性パッチである、請求項18に記載の、使用のための医薬組成物。
【請求項20】
前記粘膜接着性パッチが、粘膜接着性錠剤、粘膜接着性フィルム及び粘膜接着性ゲルからなる群から選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
対象の粘膜又は皮膚における炎症状態を改善、予防又は治療する方法であって、医薬組成物を前記対象に投与することを含み、
前記医薬組成物は、0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールと、少なくとも1種の生体接着性ポリマーとを含み、かつ
前記医薬組成物は、プロパン-1,2-ジオール以外の抗炎症剤を欠いている、方法。
【請求項22】
対象の粘膜又は皮膚における炎症状態に関連する疼痛を治療する方法であって、医薬組成物を前記対象に投与することを含み、
前記医薬組成物は、0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールと、少なくとも1種の生体接着性ポリマーとを含み、かつ
前記医薬組成物は、プロパン-1,2-ジオール以外の抗炎症剤を欠いている、方法。
【請求項23】
0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール及び50~99%(w/v)のポリ(アクリル酸)(PAA)を含む抗炎症性医薬組成物。
【請求項24】
前記抗炎症性医薬組成物が、0.01~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、好ましくは0.5~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、より好ましくは0.8~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールを含む、請求項23に記載の抗炎症性医薬組成物。
【請求項25】
前記抗炎症性医薬組成物が、60~99%(w/v)、例えば70~99%(w/v)又は80 99%(w/v)、好ましくは90~99%(w/v)のPAAを含む、請求項23又は24に記載の抗炎症性医薬組成物。
【請求項26】
前記PAAが、ブルックフィールド粘度計で測定した、pH7.3~最大7.8、0.5重量%水溶液の25℃での平均粘度が29,400~39,400cPであるPAA、ブルックフィールド粘度計で測定した、pH7.3~最大7.8、0.5重量%水溶液の25℃での平均粘度が4,000~11,000cPであるPAA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23から25のいずれか一項に記載の抗炎症性医薬組成物。
【請求項27】
微結晶セルロース、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の賦形剤をさらに含む、請求項23から26のいずれか一項に記載の抗炎症性医薬組成物。
【請求項28】
2.5~15%(w/w)、好ましくは5~10%(w/w)、より好ましくは7~9%(w/w)又は7~8%(w/w)、例えば約7.9%(w/w)の量の微結晶セルロースをさらに含む、請求項27に記載の抗炎症性医薬組成物。
【請求項29】
0.01~5%(w/w)、好ましくは0.01~1%(w/w)、より好ましくは0.05~0.5%(w/w)、例えば約0.1%(w/w)の量のポビドンをさらに含む、請求項27又は28に記載の抗炎症性医薬組成物。
【請求項30】
0.01~5%(w/w)、好ましくは0.01~2.5%(w/w)、より好ましくは0.1~1%(w/w)、例えば約0.5%(w/w)の量のステアリン酸マグネシウムをさらに含む、請求項27から29のいずれか一項に記載の抗炎症性医薬組成物。
【請求項31】
前記抗炎症性医薬組成物が、プロパン-1,2-ジオール以外の抗炎症剤を欠いている、請求項23から30のいずれか一項に記載の抗炎症性医薬組成物。
【請求項32】
医薬品としての使用のための、請求項23から31のいずれか一項に記載の抗炎症性組成物。
【請求項33】
対象の粘膜又は皮膚の炎症状態の改善、予防又は治療における使用のための、請求項23から31のいずれか一項に記載の抗炎症性組成物。
【請求項34】
対象の粘膜又は皮膚の炎症状態に関連する疼痛の治療における使用のための、請求項23から31のいずれか一項に記載の抗炎症性組成物。
【請求項35】
対象の粘膜又は皮膚における炎症状態を改善、予防又は治療する方法であって、請求項23から31のいずれか一項に記載の抗炎症性医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項36】
対象の粘膜又は皮膚における炎症状態に関連する疼痛を治療する方法であって、請求項23から31のいずれか一項に記載の抗炎症性医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の粘膜又は皮膚の炎症状態を改善、予防又は治療するために使用される医薬組成物、及びそのような炎症状態に関連する疼痛の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
創傷治癒は、一連のプロセス-炎症反応、組織回復に導く増殖過程、そして最終的に組織の再構築-が重なり合って生じる複雑なプロセスである。創傷治癒過程は、創傷部位における成長因子及びサイトカインなどの生理活性化合物であり得る様々な細胞要素によって大きく影響され調節される。
【0003】
創傷治癒過程の最初の炎症期は、血液凝固及び止血、並びに創傷修復のための増殖応答を開始する、抗微生物因子及びサイトカインの放出を含む様々な機能を有する白血球及び炎症細胞の浸潤を含む細胞事象を特徴とする血管応答を含む。一部の著者らは、さらなる段階を加え、第1段階を止血としたまま、血管応答の重要性を強調している。増殖期の間、創傷表面を覆うための上皮の形成があり、それに付随して、創傷空間を満たすための肉芽組織の成長がある。肉芽組織は、線維芽細胞の増殖、コラーゲン及び他の細胞外マトリックスの沈着、並びに新しい血管の発達の開始に関わる。新しい組織要素が創傷内で生成されると、組織の構造的完全性及び機能的能力を回復させるための再構築期が始まる。典型的な創傷修復の諸段階は、通常、単純な線形事象ではなく、むしろ複雑で時間的に重なり合っている。
【0004】
細胞要素が創傷部位に現れると、それらは活性化され、マクロファージは、肉芽及び組織の形成に影響を及ぼすいくつかの成長因子及びサイトカインを放出し始める。
【0005】
創傷ケアにおける新規かつ効果的な介入の開発は、依然としてさかんに研究されている分野である。様々な炎症細胞、血管作用性アミン、セロトニン、凝固因子、アラキドン酸代謝物、フリーラジカル、血小板因子、サイトカイン、ケモカイン及び遺伝子調節の役割は、炎症プロセスに関連する影響に関してさかんに研究されている。多くの科学的発見及び進歩にもかかわらず、正常及び異常な創傷治癒に関与するメカニズム及び経路の理解はいまだに乏しい。したがって、特定の炎症状態の管理を改善する余地は大いにある。
【0006】
米国特許第8,513,225号は、再発性潰瘍性口内炎に罹患している患者の前駆病変(prodermal lesion)に適用される80%プロピレングリコールを含むヒドロゲルを開示している。疼痛は鎮静したが、病変は消えなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
粘膜又は皮膚の炎症状態の治療を提供することが全体的な目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的及び他の目的は、本明細書に開示される実施形態によって満たされる。
【0009】
本発明は、独立項に定義されている。本発明のさらなる実施形態は、従属項に定義されている。
【0010】
簡潔には、本発明は、対象の粘膜又は皮膚における炎症状態の改善、予防又は治療に使用するため、及び/あるいは対象の粘膜又は皮膚におけるそのような炎症状態に関連する疼痛の治療における使用のための、医薬組成物に関する。医薬組成物は、0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール及び少なくとも1種の生体接着性ポリマーを含む。医薬組成物は、プロパン-1,2-ジオール以外の抗炎症剤を含まない。
【0011】
本発明の医薬組成物は、炎症プロセスに関与する2つのサイトカインである腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)及びインターロイキン2(IL-2)の量を有意に減少させることができる。本発明は、炎症状態を治療し、またそのような炎症状態及び病変に関連する疼痛及び不快感を軽減することが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】リポ多糖(LPS)で刺激した4人の患者の末梢血単核細胞(PBMC)によるTNF-α産生に対するプロパン-1,2-ジオール、すなわちプロピレングリコール(PG)の濃度依存的効果を示す。プロパン-1,2-ジオール100mMで、TNF-α濃度の強い阻害が得られた。
図1B】リポ多糖(LPS)で刺激した4人の患者の末梢血単核細胞(PBMC)によるTNF-α産生に対するプロパン-1,2-ジオール、すなわちプロピレングリコール(PG)の濃度依存的効果を示す。プロパン-1,2-ジオール100mMで、TNF-α濃度の強い阻害が得られた。
図1C】リポ多糖(LPS)で刺激した4人の患者の末梢血単核細胞(PBMC)によるTNF-α産生に対するプロパン-1,2-ジオール、すなわちプロピレングリコール(PG)の濃度依存的効果を示す。プロパン-1,2-ジオール100mMで、TNF-α濃度の強い阻害が得られた。
図1D】リポ多糖(LPS)で刺激した4人の患者の末梢血単核細胞(PBMC)によるTNF-α産生に対するプロパン-1,2-ジオール、すなわちプロピレングリコール(PG)の濃度依存的効果を示す。プロパン-1,2-ジオール100mMで、TNF-α濃度の強い阻害が得られた。
図2】PBMC(12人の患者のバフィーコート)をLPSで刺激したときのTNF-α阻害についてのプロパン-1,2-ジオール100mMの効果を示す。
図3】フィトヘマグルチニン(PHA)濃度を増加させた後のIL-2産生を示す。
図4】2人の異なる患者の1μg/ml PHA刺激PBMCによるIL-2産生に対する異なる濃度のプロパン-1,2-ジオールの効果を示す。
図5A】水又はプロピレングリコール溶液と接触させた後の、粘膜組織重量とその含水量との差を示す。
図5B】水又はプロピレングリコール溶液と接触させた後の、粘膜組織重量とその含水量との差を示す。
図6】TNFR1のシグナル伝達経路を示す。
図7】異なる濃度のプロパン-1,2-ジオールにおけるPBMCの細胞死率を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、対象の粘膜又は皮膚の炎症状態を改善、予防又は治療するために使用される医薬組成物、及びそのような炎症状態に関連する疼痛の治療に関する。
【0014】
驚くべきことに、プロパン-1,2-ジオールは、対象の粘膜及び皮膚の炎症状態を改善、予防及び/又は治療するのに有用であることが分かった。
【0015】
一般にプロピレングリコール(PG)と呼ばれるプロパン-1,2-ジオールは、化学式Cを有する合成ジオールアルコールである。この化合物は、β-プロピレングリコールとして知られる異性体プロパン-1,3-ジオールと区別するために、α-プロピレングリコールと呼ばれることがある。他の代替名としては、1,2-プロパンジオール、1,2-ジヒドロキシプロパン、メチルエチルグリコール(MEG)及びメチルエチレングリコールが挙げられる。
【0016】
プロパン-1,2-ジオールは、水、アセトン及びクロロホルムと混和性であり吸湿性である無味無臭かつ無色透明の液体である。プロパン-1,2-ジオールは、例えばポリマーの製造を含む多くの用途を有する。また、食品加工において、及び低温熱交換用途におけるプロセス流体としても、使用することができる。プロパン-1,2-ジオールは、化粧品及び医薬組成物において、ポリマーフィルム中の溶媒、共溶媒、保湿剤、可塑剤として、及び透過増強剤として使用されることが知られている。
【0017】
長い間、プロパン-1,2-ジオールは不活性有機溶媒と考えられてきた(Seidenfeld and Hanzlik(1932)J.Pharmac.Exp.Ther.44,109-121;Braun and Cartland(1936)J.Am.Pharm.Ass.25,746-749;Weatherby and Haag(1938)J.Am.Pharm.Assoc.27,466-471)。しかし、プロパン-1,2-ジオールの局所、経口、及び静脈内投与後に、有害作用が発生している(Glascow,et al.(1983)Pediatrics 72(3),353-355)。プロパン-1,2-ジオールに関連する有害作用には、中枢神経系(CNS)毒性、高浸透圧、溶血、心不整脈、及び乳酸アシドーシスが含まれる。これらの有害作用にもかかわらず、細菌、真菌及び/又はウイルスを死滅させるために、様々な皮膚病変に対して高濃度(15~100%)で局所投与使用するよう提唱されてきた(米国特許第8,513,225号)。しかし、低濃度のプロパン-1,2-ジオールは、生物に有害な影響を及ぼすことは示されていない。
【0018】
本明細書に提示される実験データは、低濃度のプロパン-1,2-ジオールであっても、粘膜又は皮膚の炎症状態に対して、特に腫瘍壊死因子α(TNF-α)及びインターロイキン-2(IL-2)の有意な減少を引き起こすことによって、治療効果を有することを示す。
【0019】
TNF-αは、カケキシン又はカケクチンとも呼ばれ、哺乳動物組織における全身性炎症に関与するサイトカインである。TNF-αは、免疫系の細胞成分の調節において主要な役割を果たす。TNF-αは主要な炎症促進性メディエーターとして知られており、TNF-αの過剰発現は、結果として生じる活性化B細胞の核因子κ軽鎖エンハンサー(NF-κB)の過剰活性化と共に、様々な炎症状態の進行及び維持における重要な要素であると考えられている。TNF-αは、発熱、アポトーシス細胞死、悪液質、炎症を誘発し、IL-1及びIL-6を産生する細胞を介して敗血症に応答するように作用し得る。
【0020】
TNF-αは、マクロファージ(Olszewski et al.(2007)Journal of Immunology 178,5701-5709)、リンパ系細胞、内皮細胞、心筋細胞、脂肪組織細胞及び線維芽細胞などの様々な細胞型によって主に産生されることが知られている。リポ多糖(LPS)、他の細菌産物、及びIL-1に応答して、大量のTNF-αが放出される。皮膚において、肥満細胞はTNF-αの主要な供給源であり、TNF-αは炎症性刺激、例えばLPS(Walsh et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.88(10),4220-4224)に対して放出され得る。
【0021】
TNF-αは、主に、安定なホモ三量体を形成する233アミノ酸長のII型膜貫通タンパク質として産生され、ADAM17とも呼ばれるメタロプロテアーゼTNF-α変換酵素(TACE)によるタンパク質分解的切断を介して放出される。分泌型及び膜結合型は両方とも生物学的に活性である(Palladino et al.(2003)Nature Reviews Drug Discovery 2(9),736-746)。TNF-αは2つの受容体、すなわちCD120a又はp55/60とも呼ばれるTNF受容体1型(TNFR1)、及びCD120b又はp75/80とも呼ばれるTNFR2、に結合することができる。TNFR1はほとんどの組織で発現され、膜結合型TNF-α及び可溶性三量体型TNF-αの双方によって完全に活性化され得るのに対して、TNFR2は典型的には免疫系の細胞内に見られ、膜結合型のTNF-αホモ三量体に応答する。リガンドと接触すると、TNF受容体結合により、(1)NF-κBの活性化、(2)マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路の活性化、又は(3)デスシグナル伝達の誘導が起こり得る。したがって、TNF-α活性化は、様々な組織においてこれらの経路によって媒介される複雑でしばしば相反する効果をもたらし得る。
【0022】
図6は、TNFR1シグナル伝達経路を示す。TNF-αがTNFR1に結合すると、TNF受容体関連因子2(TRAF2)、受容体相互作用タンパク質(RIP)、及びデスドメインを有するFas関連タンパク質(FADD)が、アダプタータンパク質TRADDを介してTNFR1に動員される。TRAF2及びRIPは、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼキナーゼキナーゼ(MAP3K)並びにc-JunN末端キナーゼ(JNK)及びp38MAPKの活性化を介して転写因子アクチベータタンパク質1(AP-1)の活性化をもたらす。TRAF2及びRIPはまた、キナーゼIκBキナーゼ(IKK)の活性化を介して転写因子NF-kBを活性化する。IkBのリン酸化により、後者のプロテアソーム分解及び活性化NF-kBの核移行が起こる。NF-kB及びAP-1によって転写される遺伝子の多くは、抗アポトーシス性又は発癌性である。FADDは、アポトーシス促進性カスパーゼ8を動員して活性化する。TNF-αのシグナル伝達及び発現は、TNF-α前駆体からTNF-αへのタンパク質分解を標的化することによって、又は下流のMAP3K及びNF-kBカスケードを妨害することによって、阻害することができる。TNF-α発現はまた、IRAK4シグナル伝達経路に沿って分子を標的化する化合物か、アデニル酸シクラーゼを活性化する化合物か、又はTNF-α前駆体メッセンジャーリボ核酸(mRNA)がTNF-α前駆体へと翻訳されるのを妨げる化合物によっても、阻害することができる。TNF-αの発現はまた、ホスホジエステラーゼ4(PDE4)がNF-kBによるTNF-αの転写に必要であるため、環状アデノシン一リン酸(cAMP)をアデノシン一リン酸(AMP)に変換するホスホジエステラーゼPDE4を妨げる化合物によっても、阻害することができる。図6の図は、Folmer et al.(2012)Current Topics in Medicinal Chemistry 12,1392-1407からの引用である。
【0023】
TNF-αが放出された後の複雑なシグナル伝達によって確実に、このサイトカインが放出されるときは常に、非常に多様な機能及び状態を有する多種多様な細胞が、粘膜又は皮膚の様々な解剖学的位置に存在し得る若しくは進行し得る炎症反応を生じさせるであろうことは明らかである。TNF-α関連症状には、例えば、乾癬及びアトピー性皮膚炎などの皮膚が関与するいくつかの疾患、並びに再発性アフタ性口内炎(RAS)、炎症性腸疾患(IBD)及び口腔扁平苔癬(Mozaffari et al.(2017)Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol.124(3),e183-e189)などの粘膜の疾患が含まれる。TNF-αは、このような状態における重要なサイトカインとして示唆されている。
【0024】
特に、TNF-αは、アフタ性口内炎又は口内炎とも呼ばれる新しいRAS病変の進行において重要な役割を果たすと考えられており、罹患患者の唾液中で2~5倍増加することが分かっている(Chaudhuri et al.(2018)J Dent Res Dent Clin Dent Prospect 12(1),45-48)。RASの進行におけるTNF-αの会合は、サリドマイド及びペントキシフィリンなどの免疫調節薬がRASの治療において有効であることが分かっているという事実に起因して信頼性を獲得する(Natah et al.(2000)Int J Oral Maxillofac Surg 29,375-80;Sampaio et al.(1991)J Exp Med;173,699-703)。
【0025】
IL-2はサイトカインであり、免疫系における最も重要なシグナル伝達分子の1つである。IL-2は、抗原によって活性化されたばかりの、クローン増殖するナイーブT細胞によって分泌される。IL-2は、IL-2が作用するのと同じ細胞によって分泌される自己分泌メッセンジャーである。IL-2はT細胞を刺激して有糸分裂させ、特定のT細胞の量が増加して病原体を排除する。IL-2はまた、ナチュラルキラー(NK)細胞及びB細胞の強力な活性化シグナルである。加えて、IL-2は、感染などの刺激が排除されたときに免疫応答をオフにするように調節性T細胞を刺激する。
【0026】
IL-2はサイトカインファミリーのメンバーであり、その各メンバーは4つのαヘリックスバンドルを有する。このファミリーには、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15及びIL-21も含まれる。IL-2は、α(CD25)、β(CD122)及びγ(CD132)と呼ばれる3本の鎖からなる複合体であるIL-2受容体を介してシグナル伝達する。全てのサイトカインファミリーメンバーは、γ鎖を共有する。
【0027】
IL-2シグナルが3つの異なるシグナル伝達経路、すなわちヤヌスキナーゼ-シグナル伝達・転写タンパク質活性化因子(JAK-STAT)、ホスホイノシチド3-キナーゼ/プロテインキナーゼB/ラパマイシンの哺乳動物標的(PI3K/Akt/mTOR)及びMAPK/細胞外シグナル調節キナーゼ(MAPK/ERK)経路、を介して伝達され得るという事実によって、IL-2の多面的効果は可能になる。IL-2がその受容体に結合した後、CD122及びCD132の細胞質ドメインはヘテロ二量体化し、ヤヌスキナーゼJAK1及びJAK3の活性化を引き起こし、続いて、CD122上のTyr-338をリン酸化する。このリン酸化は、STAT転写因子、主にSTAT5を動員し、STAT転写因子は二量体化して細胞核に移動し、そこでデオキシリボ核酸(DNA)に結合する。
【0028】
IL-2は、主にT細胞に対するその直接的な影響を介して、免疫系、寛容及び免疫の重要な機能において本質的な役割を有する。T細胞が成熟する胸腺では、それは特定の未成熟T細胞の調節性T細胞への分化を促進することによって自己免疫疾患を予防し、調節性T細胞は、さもなければ体内の正常な健康な細胞を攻撃するようにプライミングされる他のT細胞を抑制する。IL-2は、活性化誘導性細胞死(AICD)を増強する。IL-2はまた、初期T細胞が抗原によっても刺激される場合、T細胞のエフェクターT細胞及びメモリーT細胞への分化を促進し、こうして身体が感染と戦うのを助ける。他の極性化サイトカインと共に、IL-2はナイーブCD4+T細胞のTh1リンパ球及びTh2リンパ球への分化を刺激する一方で、Th17リンパ球及び濾胞性Thリンパ球への分化を妨げる。
【0029】
IL-2の発現及び分泌は厳密に調節され、免疫応答の開始及び抑制における一過性の正及び負双方のフィードバックループの一部として機能する。抗原選択T細胞クローンの数及び機能の拡大に依存するT細胞免疫記憶の発達におけるその役割を通して、IL-2は細胞媒介性免疫の維持において重要な役割を果たす。
【0030】
明らかに、IL-2が放出された後の複雑なシグナル伝達によって確実に、このサイトカインが放出されるときは常に、非常に多様な機能及び状態を有する多数の多様な細胞が、粘膜又は皮膚の様々な解剖学的位置に存在し得る若しくは進行し得る炎症反応を生じさせるだろう。
【0031】
IL-2関連症状には、乾癬及びアトピー性皮膚炎などの皮膚に関連するいくつかの疾患、並びにRAS、IBD及び口腔扁平苔癬などの粘膜の疾患が含まれる。概説として、Vasovic,et al.(2016)Cent Eur J Immunol.41(3),302-310を参照されたい。IL-2は、このような状態における重要なサイトカインとして示唆されている。IL-2はまた、新しいRAS病変の進行において重要な役割を果たすと考えられている(Kalpana et al.(2014)J Oral Maxillofac Pathol.18(3),361-364;Bhosale et al.(2018)J Contemp Dent Pract.19(10),1242-1245)。IL-2はさらに、IBDの進行(Ebrahimpour,(2017)J Biol Regul Homeost Agents.31(2),279-287)並びに口腔扁平苔癬(Qian et al.(2018)Med Sci Monit.24:8716-8721)に関与するとも考えられている。
【0032】
本発明のプロパン-1,2-ジオールは、少量で投与してもTNF-α及びIL-2の量を有意に減少させることができる。したがって、プロパン-1,2-ジオールを使用して、例えばTNF-α及び/又はIL-2の減少を誘導することによって、粘膜又は皮膚の炎症状態を改善、予防又は治療することができる。
【0033】
本発明の一態様は、対象の粘膜又は皮膚における炎症状態の改善、予防又は治療における使用のための医薬組成物に関する。医薬組成物は、0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール及び少なくとも1種の生体接着性ポリマーを含む。医薬組成物は、プロパン-1,2-ジオール以外の抗炎症剤を含まない。
【0034】
それにより、本発明の医薬組成物は、比較的少量の、すなわち最大2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールと、少なくとも1種の生体接着性ポリマーとを含む。米国特許第8,513,225号によって提示されるような先行技術が少なくとも15%のプロパン-1,2-ジオールを必要とし、80%のプロパン-1,2-ジオールを含むヒドロゲルを開示したときに、この少量のプロパン-1,2-ジオールが治療効果を有することができることは非常に驚くべきことであった。しかし、このような高濃度のプロパン-1,2-ジオールは、CNS毒性、高浸透圧、溶血、心不整脈、及び乳酸アシドーシスを含む、局所、経口、及び静脈内投与後の有害作用と関連している(Glascow et al.(1983)Pediatrics 72(3),353-355)。さらに、高濃度のプロパン-1,2-ジオールの局所投与は、さらに以下の表1に示すように有害な脱水効果を有する。
【0035】
以下では、医薬組成物中のプロパン-1,2-ジオールの量は、質量体積%(w/v)として定義される。医薬組成物の多くの実際の適用では、%w/vは重量%(w/w)と実質的に同じである。したがって、いくつかの実施形態では、%w/vとして表される医薬組成物中のプロパン-1,2-ジオールの濃度は、%w/wで表される医薬組成物中のプロパン-1,2-ジオールの対応する濃度も包含する。
【0036】
少なくとも1種の生体接着性ポリマーにより、医薬組成物は粘膜又は皮膚に付着し、それにより粘膜又は皮膚へのプロパン-1,2-ジオールの局所投与及び放出を達成することが可能になる。したがって、少なくとも1種の生体接着性ポリマーにより、治療期間にわたって医薬組成物は、粘膜又は皮膚の病変又は炎症領域を覆うことが可能となる。
【0037】
本発明の医薬組成物によって改善、予防又は治療される炎症状態は、対象の粘膜又は皮膚における炎症状態である。一実施形態では、炎症状態は、粘膜又は皮膚の炎症性病変である。
【0038】
粘膜は、例えば、気管支粘膜、子宮の粘膜(子宮内膜)、食道粘膜、胃粘膜、腸粘膜、鼻粘膜、嗅粘膜、口腔粘膜、舌小帯、舌の粘膜、陰茎粘膜、膣粘膜、肛門管の粘膜、及び眼瞼結膜を含む、対象の体内の任意の粘膜であってよい。特定の実施形態では、粘膜は口腔粘膜である。
【0039】
一実施形態では、炎症状態は、粘膜の炎症状態又は障害であり、例えば、口内炎、粘膜炎、再発性アフタ性口内炎(アフタ性口内炎又は口炎とも呼ばれるRAS)、小アフタ、大アフタ、再発性アフタ性潰瘍(RAU)、疱疹状アフタ、水疱性びらん又は潰瘍性病変、天疱瘡ファミリー障害、類天疱瘡ファミリー障害、線状免疫グロブリンA(IgA)障害、疱疹状皮膚炎、円板状エリテマトーデス、放射線治療性粘膜炎、化学療法性粘膜炎、又は口腔扁平苔癬が挙げられる。一実施形態において、粘膜における炎症状態は、口腔粘膜における炎症状態であり、好ましくはRASである。
【0040】
一実施形態では、炎症状態は、皮膚の炎症状態、例えば、湿疹、脂漏性湿疹、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、魚鱗癬、乾燥肌、UV皮膚炎、水疱、座瘡、乾癬、ヘルペス、褥瘡、糖尿病性潰瘍、蕁麻疹、多汗症、酒さ、毛状角化症、光線性角化症、疣贅、真菌感染症(例えば白癬、水虫)、例えば単純ヘルペス、帯状疱疹、水痘又は麻疹由来のウイルス疾患発疹、及び膿痂疹又は癰などの細菌感染症である。
【0041】
一実施形態では、医薬組成物は、0.001%~最大2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールを含む。別の実施形態では、医薬組成物は、0.001%~最大2%(w/v)未満のプロパン-1,2-ジオールを含む。
【0042】
一実施形態では、医薬組成物は、0.01%~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールを含む。別の実施形態では、医薬組成物は、0.01%~最大2%(w/v)未満のプロパン-1,2-ジオールを含む。
【0043】
一実施形態では、医薬組成物は、0.5%~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールを含む。別の実施形態では、医薬組成物は、0.5%~最大2%(w/v)未満のプロパン-1,2-ジオールを含む。
【0044】
別の実施形態では、医薬組成物は、0.5~1.5%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、好ましくは0.5~1.25%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、より好ましくは0.5~1.0%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、例えば0.6~1.0%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、又は0.7~0.9%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、例えば約0.8%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールを含む。
【0045】
医薬組成物中のプロパン-1,2-ジオールの好ましい濃度は0.001~2%(w/v)であるが、医薬組成物の実施形態はまた、最大2.75%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、例えば最大2.5%(w/v)又は最大2.25%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールを含んでもよい。
【0046】
本発明の医薬組成物に含まれるプロパン-1,2-ジオールの量は、本明細書に開示されているような医学的効果を有するが、米国特許第8,513,225号明細書に開示されているような著しく高濃度のプロパン-1,2-ジオールを含む医薬組成物で見られる有害作用はない。本発明の医薬組成物は有害な水和効果を持たないが、より高濃度のプロパン-1,2-ジオールを含む組成物は脱水性がある。したがって、多量のプロパン-1,2-ジオールを含む組成物、例えば15%超、50%超又はそれ以上、例えば80%を含む組成物を適用すると、組成物が適用される組織を脱水してしまう。
【0047】
さらに、本明細書に提示される実験データは、本発明に従った量のプロパン-1,2-ジオールが有意な毒性作用を持たず、有意な細胞死を誘導しないことを示す。しかし、既に5%(w/v)の濃度では、プロパン-1,2-ジオールは有意な細胞死を誘導し、したがって末梢血単核細胞に対して毒性であった。
【0048】
したがって、本発明の医薬組成物は、とりわけ、TNF-α及び/又はIL-2の有意な阻害に見られるような医学的効果を有するが、とりわけ、より高濃度のプロパン-1,2-ジオールについて見られるような脱水及び毒性の面で悪影響がない。
【0049】
一実施形態では、医薬組成物は、50~99%(w/v)の少なくとも1種の生体接着性ポリマー、好ましくは60~99%(w/v)、例えば70~99%(w/v)又は80~99%(w/v)、より好ましくは90~99%(w/v)の少なくとも1種の生体接着性ポリマーを含む。
【0050】
少なくとも1種の生体接着性ポリマーは、医薬組成物が適用される生体組織に付着することができる。したがって、少なくとも1種の生体接着性ポリマーは、好ましくは、対象の粘膜及び/又は皮膚に付着することができる。
【0051】
一実施形態では、少なくとも1種の生体接着性ポリマーは、少なくとも1種の粘膜接着性ポリマー、すなわち粘膜に付着することができる少なくとも1種のポリマーである。
【0052】
一実施形態では、少なくとも1種の粘膜接着性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)(PAA)である。
【0053】
PAAは、その商品名カルボマーとも呼ばれ、アクリル酸の合成高分子量ポリマーである。PAAは、アクリル酸のホモポリマーであってもよいし、あるいはペンタエリスリトールのアリルエーテル、スクロースのアリルエーテル又はプロピレンのアリルエーテルで架橋されていてもよい。中性pHの水溶液中では、PAAはアニオン性ポリマーである、すなわち、PAAの側鎖の多くはプロトンを失い、負電荷を獲得する。これにより、PAAは、水を吸収して保持し、元の体積の何倍も膨潤する能力を有する高分子電解質になる。PAAの医薬用途は、薬局方(BP93)及びUSP23に記載されている。一般に、経口及び粘膜適用を意図したカルボマー樹脂は、“P”によって示される(934P、974P、971P)。
【0054】
PAAは、ポリマー中のカルボン酸基の割合が高いため、水中で膨潤可能である。水中に分散すると、PAA分子は部分的に膨潤し、粘度が上昇する。水溶性塩基で中和すると、PAA分子は完全に膨潤し、粘度が劇的に増加する。アルカリ性環境では、PAAのカルボキシル基は解離する。負に帯電したカルボキシル基同士の間の静電反発により、PAA分子がほどけて膨張する。こうしてポリマーが膨潤し、ゲルが形成される。ゲルは、pHの上昇と共にどんどん膨潤する、密に充填された膨潤粒子から構成される。
【0055】
PAAは、生理的に不活性であり、消化管から全身循環へと吸収されないので、生体接着性ポリマーとして有利である。PAAは、良好な粘膜接着性を有する。プロパン-1,2-ジオールの担体として使用したところ、PAAポリマーは、プロパン-1,2-ジオールをその吸収部位に局在化させることによって、投与部位でのプロパン-1,2-ジオール濃度を増加させることができた。このように、吸収が増強され、バイオアベイラビリティは増すであろう。さらに、PAA製剤は、医薬組成物に持続放出特性を提供し得る。模擬胃液及び腸液の両方の下で、PAAは、他の放出制御(CR)系よりも低い濃度でCRを提供する。さらに、PAAは、下にある細胞層を保護し、その連続的な架橋及びそれが水不溶性であるという事実によって、細胞を環境から分離する厚いバリアを形成する。錠剤剤形の場合、PAAは良好な崩壊剤であり、直接圧縮可能なビヒクルである。PAAは、ある範囲の圧縮力にわたって優れた硬度及び摩損度を有する錠剤を製造する。
【0056】
特定の実施形態では、PAAは、ブルックフィールド粘度計(ブルックフィールドRVT、20rpm、スピンドル#6)で測定した、pH7.3~最大7.8、0.5重量%水溶液の25℃での平均粘度が29,400~39,400cPであるPAA、ブルックフィールド粘度計(ブルックフィールドRVT、20rpm、スピンドル#5)で測定した、pH7.3~最大7.8、0.5重量%水溶液の25℃での平均粘度が4,000~11,000cPであるPAA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。このようなPAAは、それぞれカーボポール974P NF、カーボポール971P NF及びカーボポール71G NFとして市販されている。
【0057】
カーボポール71G NFポリマーは、直接圧縮製剤における使用のための、カーボポール971P NFポリマーの自由流動性粒状形態である。これは、カーボポール971P NFポリマーをローラー圧縮することによって製造され、添加剤を含まない化学的に同じ製品である。得られた顆粒は自由流動性であり、嵩密度が増加し、粉末ポリマーと比較して発塵及び/又は静電気付着(static adherence)を引き起こす可能性がある最小量の非常に小さな粒子を含有する。
【0058】
本発明に従って使用することができる生体接着性ポリマーの他の例としては、アルギナートポリマーが挙げられる。アルギン酸の塩であるアルギナートは、茶色の海藻(ラミナリア(Laminaria)を含むファエオンフィセ(Phaeonphyceae))によって天然に生成される線状多糖類である。アルギナートは、可撓性の鎖として互いに連結された多数のモノマー残基、典型的には100~3,000個のモノマーから構成される。これらの残基は、主にβ-(1→4)結合D-マンヌロン酸(M)残基及びβ-(1→4)結合L-グルロン酸(G)残基である。これら2つの残基はエピマーであり、C5でのみ異なる。ポリマー鎖において、それらは、非常に異なる立体配座を生じ、式Iに示されるように、任意の2つのD-マンヌロン酸残基は、-ジエクアトリアリー(diequatorially)結合である一方で、L-グルロン酸残基にいずれかを連結する結合は、-ジアクシアリー(diaxially)結合である。
【化1】

残基は、一般に、同一又は厳密に交互の残基のブロック、例えばMMMMMM...、GGGGGG...、又はGMGMGM...に編成される。
【0059】
アルギナートポリマーは、一価カチオンの存在下で、溶解性固体粒子を形成する。これは、アルギナートポリマーが代わりにCa2+などの二価カチオンと接触している場合とは明らかに対照的である。二価カチオンは、異なるアルギナートポリマー間に連結を形成し、それによってアルギナートポリマー間を架橋する。次いで、この架橋により、一般に溶解できないか、又は少なくとも湿った環境で溶解するのが困難なアルギナート膜が形成される。
【0060】
使用することができる適切な一価カチオンには、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)及びアンモニウムイオン(NH )、好ましくはNaが含まれる。
【0061】
一実施形態では、医薬組成物は、プロパン-1,2-ジオール及び少なくとも1種の生体接着性ポリマーに加えて、少なくとも1種の賦形剤を含む。このような賦形剤の非限定的であるが例示的な例としては、付着防止剤、結合剤、コーティング、着色剤、崩壊剤、香味剤、流動促進剤、潤滑剤、保存剤、吸着剤、溶媒、緩衝剤、安定剤、アジュバント、希釈剤、湿潤剤、界面活性剤、浸透圧剤、甘味料及びビヒクルが挙げられる。特定の実施形態では、少なくとも1種の賦形剤は、微結晶セルロース、ポビドン(ポリビニルピロリドン(PVP)とも呼ばれる)、ステアリン酸マグネシウム及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0062】
一実施形態では、医薬組成物は、2.5~15%(w/w)、好ましくは5~10%(w/w)、より好ましくは7~9%(w/w)又は7~8%(w/w)、例えば約7.9%(w/w)の量の微結晶セルロースを含む。
【0063】
一実施形態では、医薬組成物は、0.01~5%(w/w)、好ましくは0.01~1%(w/w)、より好ましくは0.05~0.5%(w/w)、例えば約0.1%(w/w)の量のポビドンを含む。本明細書で使用されるポビドンは、ポビドンヨードを含まない。一実施形態では、本明細書で使用されるポビドンは、1-エテニルピロリジン-2-オンである。
【0064】
一実施形態では、医薬組成物は、0.01~5%(w/w)、好ましくは0.01~2.5%(w/w)、より好ましくは0.1~1%(w/w)、例えば約0.5%(w/w)の量のステアリン酸マグネシウムを含む。
【0065】
一実施形態では、医薬組成物は、炎症領域又は病変への局所適用のために製剤化される、すなわち適した形に変えられる。好ましい実施形態では、医薬組成物は、局所適用又は投与のために製剤化される。そのような局所適用には、炎症領域又は病変の部位に応じて、皮膚、粘膜、舌下、頬側、鼻腔内、眼、直腸、又は膣内適用が含まれ得る。
【0066】
医薬組成物は、一実施形態では、パッチ、フィルム、錠剤、クリーム、軟膏、フォーム、ゲル及びスプレーからなる群から選択される剤形である。
【0067】
例えば、パッチは、皮膚パッチ又は粘膜接着性口内パッチなどの粘膜接着性パッチの形態であってもよい。そのようなパッチは、炎症領域又は病変を覆うように成形されてもよく、少なくとも1種の粘膜接着性ポリマーなどの少なくとも1種の生体接着性ポリマーが存在することにより、治療期間を通して炎症領域又は病変に付着し得る。
【0068】
粘膜接着性パッチは、医薬組成物の特定の成分及び濃度に応じて、粘膜接着性錠剤、粘膜接着性フィルム又は粘膜接着性ゲルの形態を含む様々な実施形態に従って製造することができる。
【0069】
フィルム、クリーム、軟膏、フォーム又はゲルの場合、フィルム、クリーム、軟膏、フォーム又はゲルは、好ましくは粘膜及び/又は皮膚に付着することができる、すなわち、好ましくは皮膚フィルム、粘膜接着性頬側フィルムなどの粘膜接着性フィルムである。医薬組成物中に少なくとも1種の生体接着性ポリマーが存在すれば、フィルム、クリーム、軟膏、フォーム又はゲルは、粘膜及び/又は皮膚の炎症領域又は病変に付着することができる。したがって、そのようなフィルム、クリーム、軟膏、フォーム又はゲルは、炎症領域又は病変を覆うための「医療用包帯」又はパッチとして使用され、同時に治癒過程を促進するためにプロパン-1,2-ジオールを放出することができる。
【0070】
錠剤として製剤化される医薬組成物は、好ましくは、皮膚又は粘膜接着性錠剤、すなわち、対象の皮膚又は粘膜に付着することができるそのような錠剤の形態である。そのような錠剤は、プロパン-1,2-ジオール及び少なくとも1種の生体接着性ポリマーに加えて、微結晶セルロース(MCC)などの増量剤、ポビドンなどの結合剤、及びステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤を含み得る。少なくとも1種の生体接着性ポリマーが存在することにより、形成された錠剤に粘膜接着性などの接着性が与えられ、このことは、粘膜又は皮膚の炎症領域又は病変部と錠剤が接触すると、錠剤がそれに付着して、プロパン-1,2-ジオールが炎症領域又は病変部へと連続的に放出されることを意味する。
【0071】
スプレー形態の医薬組成物もまた、少なくとも1種の生体接着性ポリマーが存在することにより接着性を有する。スプレーは、好ましくは、粘膜又は皮膚の炎症領域又は病変に噴霧される。噴霧製剤の吸湿性及び/又は粘度特性は、医薬組成物の粘度及び/又は吸湿性を調整する様々な賦形剤を含めることによって調整することができる。
【0072】
一般に、医薬組成物のガレノス特性は、デキストラン、デンプン-アクリロニトリルコポリマー、大豆タンパク質/ポリ(アクリル酸)超吸収性ポリマー、ポリアクリレート/ポリアクリルアミドコポリマー、ポリアクリルアミドコポリマー、エチレン無水マレイン酸コポリマー、架橋カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールコポリマー、架橋ポリエチレンオキシド、及び/又はポリアクリロニトリルのデンプングラフト共重合体などの成分によって調整することができる。
【0073】
医薬組成物は、アプリケータによって炎症領域又は病変に適用されてもよい。そのような実施形態では、手持ち式アプリケータを使用して、クリーム、軟膏、フォーム及びゲルなどの局所製剤の便利で衛生的な分注及び均一なのびを可能にし、経口パッチ製剤を簡単に塗布することができる。アプリケータは、医薬組成物を口腔内の所望の粘膜部位に経口送達するために使用することができる。アプリケータが使用される場合、アプリケータは、アプリケータバレル、送達される医薬組成物を保持するための先端部、及びプランジャの3つの主要な構成要素を含むことができる。実際の使用では、医療用製剤を先端部に配置することができる。医療介入の形状に適合する先端部は、サイズ又は体積に応じて医薬組成物をしっかりと把持する又は包み込む。次いで、アプリケータは、所望の適用部位に挿入されるか、又はその上にあてがわれる。配置されたら、プランジャを押し下げ、医薬組成物を所望の解剖学的部位に適用する。
【0074】
粘膜付着は、ポリマー鎖の湿潤、吸着及び相互浸透を伴う複雑な現象である。このメカニズムを薬学に関連づけると、粘膜付着は、医薬組成物と粘液又は粘膜との間の引力を表す。
【0075】
粘膜付着プロセスは、2つの一般的な工程:接触段階及び固化段階を含む。接触段階は、医薬組成物と粘膜との間で生じる初期湿潤である。これは、粒子が吸入によって鼻腔内に堆積されるときのように、2つの表面を一緒にすることによって、又は身体系を介して、機械的に起こり得る。粘膜付着の固化段階は、強力な又は長期の付着を強化するための付着の相互作用の確立を含む。水分が存在すると、粘膜接着性材料が活性化され、系が可塑化される。この刺激により、粘膜接着性分子は分離し、弱いファンデルワールス結合及び水素結合によって結合するように進行しながら遊離することが可能となる。固化段階を説明する複数の粘膜付着理論が存在し、その主な2つの理論は高分子相互浸透及び脱水に焦点を当てている。
【0076】
本発明の医薬組成物で治療される対象は、好ましくはヒト対象である。しかし、医薬組成物は、対象が動物、好ましくはネコ、イヌ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ヤギ、ウサギ、モルモット、ラット、マウスなどの非ヒト哺乳動物である、獣医学的用途にも適用され得る。
【0077】
本発明によれば、医薬組成物は、プロパン-1,2-ジオール以外の抗炎症剤を欠いている。したがって、プロパン-1,2-ジオールは、医薬組成物中の唯一の活性な抗炎症剤である。
【0078】
一実施形態では、医薬組成物は、プロパン-1,2-ジオールに加えて、活性剤又は活性成分を含まず、特に抗炎症効果を有する活性剤又は活性成分を含まない。したがって、医薬組成物の任意の追加成分は、1種以上の生体接着性ポリマー及び1種以上の賦形剤である。これらの1種以上の賦形剤及び1種以上の生体接着性ポリマーは、医薬組成物中の活性剤又は活性成分と見なされない。
【0079】
本発明の医薬組成物は、本明細書に開示される炎症状態を改善、予防又は治療するために使用することができるだけではない。医薬組成物は、それに加え又はその代わりに、対象の粘膜又は皮膚の炎症状態に関連するか又はそれによって引き起こされる疼痛の治療に使用することもできる。そのような場合、医薬組成物は、0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール及び少なくとも1種の生体接着性ポリマーを含む。医薬組成物は、プロパン-1,2-ジオール以外の抗炎症剤を欠いている。
【0080】
したがって、医薬組成物は、皮膚又は粘膜の炎症状態、特にRASなどの口腔の炎症状態によって引き起こされる不快感及び疼痛を軽減する。
【0081】
本発明の関連する態様は、対象の粘膜又は皮膚の炎症状態を改善、予防又は治療する方法、あるいは対象の粘膜又は皮膚の炎症状態に関連する疼痛を治療する方法を含む。これらの方法は、本発明の医薬組成物、すなわち、0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールと、少なくとも1種の生体接着性ポリマーとを含み、プロパン-1,2-ジオール以外の抗炎症剤を欠いている医薬組成物、を投与することを含む。
【0082】
医薬組成物は、好ましくは、本明細書に開示される粘膜又は皮膚の炎症領域又は病変に局所的に添加されるなどして、炎症領域又は病変に局所的に投与される。
【0083】
本明細書で使用される炎症状態の治療又は炎症状態に関連する疼痛の治療は、炎症状態の阻害又は炎症状態に関連する疼痛の阻害も包含する。本明細書で使用される炎症状態又は炎症状態に関連する疼痛の阻害とは、必ずしも100%の治療又は治癒が起こらなくても、本発明の医薬組成物によって状態の症状及び影響が減少することを意味する。
【0084】
本発明のさらなる関連する態様は、対象の粘膜又は皮膚の炎症状態を改善、予防又は治療するため、あるいは対象の粘膜又は皮膚の炎症状態に関連する疼痛を治療するための医薬品を製造するための、本発明の医薬組成物、すなわち、0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール及び少なくとも1種の生体接着性ポリマーを含み、プロパン-1,2-ジオール以外の抗炎症剤を欠いている医薬組成物の使用を含む。
【0085】
本発明の別の態様は、0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール及び50~99%(w/v)のポリ(アクリル酸)(PAA)を含む抗炎症性医薬組成物に関する。
【0086】
一実施形態では、抗炎症性医薬組成物は、0.01~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、好ましくは0.5~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、より好ましくは0.8~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオールを含む。
【0087】
一実施形態では、抗炎症性医薬組成物は、60~99%(w/v)、例えば70~99%(w/v)又は80 99%(w/v)、好ましくは90~99%(w/v)のPAAを含む。
【0088】
一実施形態では、PAAは、ブルックフィールド粘度計によって測定した、pH7.3~最大7.8、0.5重量%水溶液の25℃での平均粘度が29,400~39,400cPであるPAA、ブルックフィールド粘度計によって測定した、pH7.3~最大7.8、0.5重量%水溶液の25℃での平均粘度が4,000~11,000cPであるPAA、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0089】
一実施形態では、抗炎症性医薬組成物は、微結晶セルロース、ポビドン、ステアリン酸マグネシウム及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の賦形剤を含む。
【0090】
特定の実施形態では、抗炎症性医薬組成物は、2.5~15%(w/w)、好ましくは5~10%(w/w)、より好ましくは7~9%(w/w)又は7~8%(w/w)、例えば約7.9%(w/w)の量の微結晶セルロースを含む。別の特定の実施形態では、抗炎症性医薬組成物は、その代わりに若しくはそれに加えて、0.01~5%(w/w)、好ましくは0.01~1%(w/w)、より好ましくは0.05~0.5%(w/w)、例えば約0.1%(w/w)の量のポビドンを含む。さらなる特定の実施形態では、抗炎症性医薬組成物は、その代わりに若しくはそれに加えて、0.01~5%(w/w)、好ましくは0.01~2.5%(w/w)、より好ましくは0.1~1%(w/w)、例えば約0.5%(w/w)の量のステアリン酸マグネシウムを含む。
【0091】
一実施形態では、抗炎症性医薬組成物は、プロパン-1,2-ジオール以外の抗炎症剤を欠いている。
【0092】
一実施形態では、抗炎症性医薬組成物は、0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール及び50~99%(w/v)のPAAからなる。別の特定の実施形態では、抗炎症性医薬組成物は、0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール、50~99%(w/v)のPAA、及び2.5~15%(w/w)の量の微結晶性セルロース、0.01~5%(w/w)の量のポビドン、及び0.01~5%(w/w)の量のステアリン酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種の賦形剤からなる。これらの実施形態では、抗炎症性医薬組成物中の全ての成分の量は合計100%になる。
【0093】
本発明のさらなる態様は、医薬としての使用のための、対象の粘膜又は皮膚の炎症状態の改善、予防又は治療における使用のための、及び/あるいは対象の粘膜又は皮膚の炎症状態に関連する疼痛の治療における使用のための、抗炎症性組成物を含む。
【0094】
本発明の関連する態様は、対象の粘膜又は皮膚の炎症状態を改善、予防又は治療する方法、あるいは対象の粘膜又は皮膚の炎症状態に関連する疼痛を治療する方法を含む。これらの方法は、0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール及び50~99%(w/v)のPAAを含む抗炎症性医薬組成物を投与することを含む。
【0095】
抗炎症性医薬組成物は、好ましくは、本明細書に開示される粘膜又は皮膚の炎症領域又は病変に局所的に添加されるなどして、炎症領域又は病変に局所的に投与される。
【0096】
本発明はまた、対象の粘膜又は皮膚の炎症状態の改善、予防又は治療における使用のための、及び/あるいは対象の粘膜又は皮膚の炎症状態に関連する疼痛の治療における使用のための医薬品を製造するための、0.001~2%(w/v)のプロパン-1,2-ジオール及び50~99%(w/v)のPAAを含む抗炎症性医薬組成物の使用にも関する。
【0097】
本発明のさらなる態様は、粘膜接着性頬側錠剤などの粘膜接着性錠剤に関する。粘膜接着性錠剤は、本発明による医薬組成物又は本発明による抗炎症性医薬組成物を含む。
【0098】

例1:ヒトPBMCのインビトロ培養
ヒト静脈血をサンプリングし、ヘパリン処理したバイアルに収集し、チューブを穏やかに数回反転させることによってよく混合した。Ficoll-Histopaque(登録商標)を用いた勾配遠心分離によって、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を単離した。
【0099】
細胞を滅菌リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄した(400×gで10分間遠心分離)。PBSを廃棄し、細胞ペレットを滅菌ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に再懸濁した。次いで、白血球(W.B.C.)希釈液を使用して血球計によって細胞を計数した:15μlの細胞懸濁液を15μlのトリパンブルーに添加し、十分に混合した。細胞懸濁液を血球計に載せ、細胞を計数した。1%のペニシリン-ストレプトマイシン溶液及び5%のヒト血清を補充したDMEMを用いて、細胞濃度を2×10細胞/mlに調整した。細胞のおおよその収量は、10~10細胞/mlの間で変動した。
【0100】
24ウェル培養プレートに1mlの細胞懸濁液を播種した。DMEMで希釈した1mlのプロパン-1,2-ジオールを様々な濃度(0~100mM)で添加した。フィトヘマグルチニン(PHA)15μlを添加して最終濃度1μg/mlとした。異なる濃度のPHAの効果を調べる際(図1)、使用した範囲は0~25μg/mlであった。プレートを+37℃及び5%COで24時間インキュベートした。次いで、さらに分析するまでプレートを-20℃で凍結した。試料を解凍した後、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を製造業者の仕様に従って実施した。
【0101】
例2:インビトロでのヒトPBMCにおけるTNF-α産生の阻害
アフタ性口内炎の免疫病理発生は、T細胞媒介性であると考えられている。この例の目的は、プロパン-1,2-ジオールを使用する効果に特に重点を置いて、PBMCのサイトカインプロファイルを特徴付けることであった。リポ多糖(LPS)刺激PBMCでのサイトカイン腫瘍壊死因子-α(TNF-α)の産生を分析した。
【0102】
ヒトPBMCのインビトロ培養を上記例1のように行った。手短に言えば、1mlのプロパン-1,2-ジオールを1mlのPBMCに添加して、30の最終濃度範囲(0~100mM)を得た。15μlのLPSを最終濃度100nMまで添加し、細胞懸濁液を37℃、5%COで24時間インキュベートした。次いで、ELISA分析までプレートを-20℃で凍結した。
【0103】
ELISAにより、製造業者の仕様に従った手順(BioSite、スウェーデン;Art No.:EA102165)を用いてTNF-α産生を決定した。
【0104】
結果(図1A図1D)は、PBMCをLPSで刺激したときのTNF-αの濃度依存的阻害を示す。予想通り、4人の異なる個体からPBMCを得たため、曲線は幾分異なっていた。TNF-αの最大阻害は、100mMプロパン-1,2-ジオールで得られた。
【0105】
図2は、12人の異なる個体から得たLPS刺激PBMCを用いた100mMプロパン-1,2-ジオールによるTNF-αの阻害を示す。12人全ての個体で阻害が観察された。
【0106】
例3:インビトロでのヒトPBMCにおけるIL-2産生の阻害
アフタ性口内炎の免疫病理発生は、T細胞媒介性であると考えられている。この例の目的は、プロパン-1,2-ジオールを使用する効果に特に重点を置いて、PBMCのサイトカインプロファイルを特徴付けることであった。PHA刺激PBMCでのサイトカイン、インターロイキン-2(IL-2)の産生を分析した。
【0107】
ヒトPBMCのインビトロ培養を上記例1のように行った。手短に言えば、1mlのプロパン-1,2-ジオールを1mlのPBMCに添加して、ある範囲の最終濃度(0~100mM)を得た。15μlのPHAを最終濃度1μg/mlまで添加し、細胞懸濁液を+37℃、5%COで24時間インキュベートした。次いで、ELISA分析までプレートを-20℃で凍結した。
【0108】
ELISAにより、製造業者の仕様に従った手順(BioSite、スウェーデン;Art.No.:EA102165)を用いて、IL-2産生を決定した。
【0109】
図3は、PHA濃度を増加させた後のIL-2産生を示す。実験は、IL-2 PBMCの産生に対するプロパン-1,2-ジオール濃度の増加の効果を研究するために使用されるべき最適下限濃度を確立するために行われた。
【0110】
図4は、2人の異なる患者から得た1μg/ml PHA刺激PBMCによるIL-2産生に対する異なる濃度のプロパン-1,2-ジオールによる効果を示す。IL-2産生は、プロパン-1,2-ジオール100mMで、患者Aでは53%、患者Bでは64%減少した。
【0111】
例4:調製物の浸透効果
プロパン-1,2-ジオールの濃度と口腔粘膜に対するその脱水効果との間の関係を実証するために研究を行った。新鮮なブタ口腔粘膜(300~700mg)を室温、相対湿度(RH)40%で平衡化し、秤量し、調査した溶液5mlに室温(RT、約20~25℃)で20時間浸漬した。組織を溶液から取り出し、ブロッティングによって乾燥させ、秤量した。最後に、+40℃で24時間乾燥させた。
【0112】
表1は、調査した溶液の算出された浸透圧及び粘膜組織を溶液に24時間浸漬した後に観察された脱水効果を示す。
【表1】
【0113】
表1及び図5に示す結果から、以下の結論を導き出すことができる。
-濃度1%及び5%のプロパン-1,2-ジオール溶液については脱水効果は示されなかった。
-濃度50%、80%及び100%のプロパン-1,2-ジオール溶液で脱水効果が明らかであり、水又はグリセロール(85%)との混合物間に差はなかった。
-脱水効果を得るために必要なプロパン-1,2-ジオールの濃度は、TNF-α産生抑制効果(例2)及びIL-2産生抑制効果(例3)を得るために十分な濃度(100mM;0.8%w/v相当)を超えている。したがって、例2及び例3に示される抑制効果は、脱水効果によるものではなかった。
【0114】
例5:組成物の調製
組成物は、以下の例によって示される標準的な方法に従って調製することができる。
【0115】
バッチ1
プロパン-1,2-ジオール(プロピレングリコール)を含む溶液及びゲルの調製及び試験。次いで、局所使用のための粘膜スプレー又は液体(1a)及びゲル(1b)を、以下に提供される組成に従って調製した。これらのプロパン-1,2-ジオール配合物は、完全に許容可能な芳香性及びわずかな甘味を有していた。
【0116】
液体、スプレー及びゲルに関して、pHは6.0~6.5に有利に調整され、防腐剤が添加されてもよい。
【0117】
(1a)局所使用のための粘膜スプレー又は液体
-プロパン-1,2-ジオール0.8g
-カルボマー又はヒドロキシエチルセルロース0.5g
-グリセロール5.0g、及び
-水を加えて100.0gに。
【0118】
(1b)局所使用のための粘膜接着性ゲル
-プロパン-1,2-ジオール0.8g
-カルボマー又はカルメロースナトリウム1.0g
-グリセロール5.0g、及び
-水を加えて100.0gに。
【0119】
バッチ2
粘膜接着性パッチの調製及び試験。パッチは円形であり、直径約1cmであった。このパッチは0.8%のプロパン-1,2-ジオールを含有し、パッチ投与部位の潰瘍組織に十分な量を可能にした。これは、構成成分であるプロパン-1,2-ジオール、カーボポール974P NF、及び以下に記載される配合に従って追加の構成成分を混合した後、乾燥、すなわち水なしで圧縮することによって製造された。
【0120】
(2a)粘膜使用のための粘膜接着性パッチ製剤
カルボマーとしてカーボポール974P NF(Lubrizol、ベルギー国ブリュッセル)99.0%
プロパン-1,2-ジオール(プロピレングリコール)(POCH、ポーランド国グリヴィツェ)0.8%
メントール0.2%
着色料E131及びE132
【0121】
外観及び製造の詳細:
直径:11mm
厚み:1.40mm
重量:0.85~0.90mg
圧縮:300kg
【0122】
バッチ3
試験のための粘膜接着性パッチの調製。パッチは、カルボマー、カーボポール71G NFポリマー(Lubrizol)を含有していた。パッチは円形であり、直径約1cmであった。以下に記載の通り、構成成分であるプロパン-1,2-ジオール、カーボポール、71G NF、微結晶セルロース、ポビドン及びステアリン酸マグネシウムを混合した後、圧縮によって製造した。
【0123】
(3a)プロピレングリコール(プロパン-1,2-ジオール)を含む粘膜接着性口腔錠剤の形態の粘膜接着性パッチ。
【表2】
【0124】
製造工程:
1.湿式造粒:
乾燥賦形剤:微結晶セルロース(Vivapur101)-10.0g
結合溶液:2.5gの5%コリドン30溶液及び2.5gのプロピレングリコール
手順:乳鉢での湿式混合、湿式ふるい分け(0.6mm)、乾燥(30分/50℃)、乾式ふるい分け(0.5mm)
2.カーボポールG71との乾式混合
3.ステアリン酸マグネシウム(0.5%)潤滑剤との混合
4.Gamlen Dシリーズ実験室プレスを用いた圧縮、300kgの圧縮荷重で7mmフラットパンチ、圧縮速度120mm/分。
錠剤重量:50mg
錠剤の厚み:1.2mm
【0125】
(3b)プロピレングリコール(プロパン-1,2-ジオール)を含む粘膜接着性口腔錠剤の形態の粘膜接着性パッチ。
【表3】
【0126】
製造は、(3a)粘膜接着性パッチについて上記に記載したように行った。
錠剤重量:50mg
錠剤の厚み:1.2mm
【0127】
例6:RASの治療又は予防
様々な重症度及び分布のアフタ性潰瘍を管理するためのゲル又はパッチ製剤の特性を例示するために、患者の事例を記載する。さらに、様々な製剤の粘膜接着特性、並びにパッチ又はゲル付着の持続時間、及び忍容性の態様を実証するために、健康な健常志願者への頬粘膜へのパッチ又はゲル製剤の適用について記載する。
【0128】
対象1は、様々な標準的な治療の有無にかかわらず、治癒するのに決まって最大2週間を必要とする再発性アフタ性口内炎(RAS)の痛みを年間5~6回経験する25歳の女性であった。口内炎が出現した翌日、プロパン-1,2-ジオールを含有する粘膜接着性頬側ゲル(例5ではバッチ1b)を塗布し、1時間そのまま放置した。これにより、RAS病変から疼痛が即時軽減された。この患者がプロパン-1,2-ジオールを含有するパッチを体験したところ、局所コルチコステロイドによる治療と同様の効果があった。
【0129】
対象2は、下唇及び舌のアフタ性潰瘍からの重度の疼痛及び炎症を経験している34歳の男性であった。患者はまた、下唇の右側で前駆症状も経験した。プロパン-1,2-ジオールを含有するパッチ(例5のバッチ2a)を下唇の両側に適用した。3日後のフォローアップ訪問時に、患者は下唇の左側から症状を報告しなかったが、この位置に小さなアフタ性潰瘍があり、目に見える炎症は最小限であった。下唇の右側にアフタ性潰瘍の進行はなかった。舌上の未治療潰瘍は残り、治癒は観察されなかった。
【0130】
対象3は、RAS潰瘍が進行している徴候のない66歳の男性であった。プロパン-1,2-ジオールを含有する粘膜接着性パッチ(例5のバッチ2a)を本発明に従って調製し、正常な頬粘膜に適用した。対象は、パッチが粘膜組織に直ちに強く付着し、少なくとも60分間、所定の位置に留まったことを体験した。有害反応はなく、対象は、パッチが頬粘膜上の所定の位置にある間、有害な影響を受けなかった。60分後、頬側パッチは完全に溶解した。
【0131】
対象4は、再発性アフタ性潰瘍の病歴を有する65歳の男性であったが、本発明に従って調製したプロパン-1,2-ジオールを含有する粘膜接着性ゲル(例5のバッチ1b)を試験した時点では潰瘍はなかった。口腔内右側の頬粘膜にゲルを塗布した。アプリケータデバイスを使用して、2mlの粘膜接着性ゲルを塗布した。対象は、ゲルが粘膜上に粘膜接着層を形成し、また、ゲルが40~60分間粘膜表面上の適所に留まり、その後、ゲルが完全に溶解したことを体験した。有害事象は対象によって報告されなかった。
【0132】
対象5は74歳の男性であり、試験時に口腔アフタ性病変の病理も徴候もなかった。プロパン-1,2-ジオールを含有するパッチ(例5のバッチ2a)を本発明に従って調製し、口腔の右側の頬粘膜に適用した。対象は、パッチが粘膜にしっかりと付着し、貼付後約1時間で完全に溶解したことを報告した。対象は有害事象を報告しなかった。
【0133】
例7
この例では、例2におけるTNF-α及び/又は例3におけるIL-2の阻害がPBMCの細胞死に起因するかどうかを調べた。
【0134】
例1に記載されるようにPBMCを1人のドナーから単離し、24ウェルプレート中の12個のウェルに2×10PBMC細胞1mlを添加した。1mlの2,000mMプロパン-1,2-ジオールを2つのウェルに添加して、最終濃度1,000mMとした(8%プロパン-1,2-ジオール)。同じ手順を用いて、プロパン-1,2-ジオール(500mM(4%プロパン-1,2-ジオール)、250mM(2%プロパン-1,2-ジオール)、125mM(1%プロパン-1,2-ジオール)、62.5mM(0.5%プロパン-1,2-ジオール))というように濃度を低くしていった。37℃及び5%COで24時間インキュベートした後、各細胞培養物15μlを15μlのトリプタンブルーと混合し、100個の細胞のうちの死細胞を光学顕微鏡下で計数した。
【0135】
図7に示す結果から分かるように、プロパン-1,2-ジオール濃度が1%までは、対照と比較して有意な毒性効果を有さず、PBMCの有意な細胞死を引き起こさなかった。濃度2%のプロパン-1,2-ジオールは軽微又は軽度の毒性効果を有したが、より高濃度のプロパン-1,2-ジオールはPBMC中で有意な細胞死を引き起こし、したがって毒性であった。
【0136】
上記の実施形態は、本発明のいくつかの例示的な例として理解されるべきである。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態に様々な修正、組み合わせ、及び変更を加えることができることを理解するであろう。特に、異なる実施形態における異なる部分の解決策は、技術的に可能な場合、他の構成で組み合わせることができる。しかしながら、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
【国際調査報告】