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特表2022-553436永久磁石モーターの制御方法、装置、動力システム及び電気自動車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】永久磁石モーターの制御方法、装置、動力システム及び電気自動車
(51)【国際特許分類】
   H02P 23/04 20060101AFI20221215BHJP
   B60L 58/25 20190101ALI20221215BHJP
   H02P 25/024 20160101ALI20221215BHJP
   H02P 27/08 20060101ALI20221215BHJP
   H02P 23/14 20060101ALI20221215BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20221215BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20221215BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20221215BHJP
   H01M 10/667 20140101ALI20221215BHJP
【FI】
H02P23/04
B60L58/25
H02P25/024
H02P27/08
H02P23/14
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/667
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022537768
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 CN2020121300
(87)【国際公開番号】W WO2021253694
(87)【国際公開日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】202010540328.8
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522010668
【氏名又は名称】ジアンス・コンテンポラリー・アンプレックス・テクノロジー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】黄 孝▲鍵▼
(72)【発明者】
【氏名】左 希▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】但 志▲敏▼
(72)【発明者】
【氏名】李 宝
【テーマコード(参考)】
5H031
5H125
5H505
【Fターム(参考)】
5H031HH06
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB02
5H125BC19
5H125EE25
5H505AA16
5H505BB04
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE49
5H505EE56
5H505HB01
5H505JJ03
5H505LL40
5H505LL44
5H505LL50
(57)【要約】
永久磁石モーター(30)の制御方法、装置、動力システム(100)及び電気自動車を提供する。永久磁石モーター(30)の共振帯域幅及び永久磁石モーター(30)の固定子固有周波数などのシステムパラメータを取得し、永久磁石モーター(30)の通電周波数を設定し、パワーバッテリー(10)が自己加熱条件を満たすと、通電周波数の交流電力を使用して永久磁石モーター(30)に給電することで、パワーバッテリー(10)の自己加熱過程でモーターによって発生するノイズを低減させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石モーターの制御方法であって、
前記永久磁石モーターのシステムパラメータを取得するステップであって、前記システムパラメータは前記永久磁石モーターの共振帯域幅及び前記永久磁石モーターの固定子固有周波数を含むステップと、
前記システムパラメータに応じて前記永久磁石モーターの通電周波数を設定するステップと、
パワーバッテリーが自己加熱条件を満たすと、前記通電周波数の交流電力を使用して前記永久磁石モーターに給電するステップと、を含み、
前記通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域外にあり、前記共振周波数帯域は永久磁石モーターの固定子固有周波数及び共振帯域幅に応じて決定されることを特徴とする永久磁石モーターの制御方法。
【請求項2】
前記通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域外にあることは、
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の下限以下であること、又は
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の上限以上であることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の下限以下であることは、具体的には、
【数1】
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の上限以上であることは、具体的には、
【数2】
【数3】
【数4】
Bは前記永久磁石モーターの固定子の共振帯域幅の1/2、Mは前記永久磁石モーターの固定子固有周波数の最高次数、kは正の整数であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
M=4であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記パワーバッテリーのセル温度及び前記永久磁石モーターの動作状態を取得するステップをさらに含み、
これに対応して、前記パワーバッテリーが自己加熱条件を満たすことは、
前記セル温度が所定の温度閾値未満であること及び前記動作状態が停止状態であることを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
デューティサイクルを取得するステップをさらに含み、
これに対応して、前記通電周波数の交流電力を使用して前記永久磁石モーターに給電するステップは、具体的には、
前記通電周波数及び前記デューティサイクルに応じて、前記永久磁石モーターに前記通電周波数の交流電力を供給するためのパルス幅変調信号を生成するステップを含むことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
永久磁石モーターの制御装置であって、
前記永久磁石モーターのシステムパラメータを取得することに用いられ、前記システムパラメータは前記永久磁石モーターの共振帯域幅及び前記永久磁石モーターの固定子固有周波数を含む取得モジュールと、
前記システムパラメータに応じて前記永久磁石モーターの通電周波数を設定することに用いられる決定モジュールと、
パワーバッテリーが自己加熱条件を満たすと、前記通電周波数の交流電力を使用して前記永久磁石モーターに給電することに用いられる制御モジュールと、を備え、
前記通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域外にあり、前記共振周波数帯域は永久磁石モーターの固定子固有周波数及び共振帯域幅に応じて決定されることを特徴とする永久磁石モーターの制御装置。
【請求項8】
前記通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域外にあることは、
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の下限以下であること、又は
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の上限以上であることを含むことを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の下限以下であることは、具体的には、
【数5】
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の上限以上であることは、具体的には、
【数6】
【数7】
【数8】
Bは前記永久磁石モーターの固定子の共振帯域幅の1/2、Mは前記永久磁石モーターの固定子固有周波数の最高次数、kは正の整数であることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
M=4であることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
取得モジュールはさらに、
前記パワーバッテリーのセル温度及び前記永久磁石モーターの動作状態を取得することに用いられ、
これに対応して、前記パワーバッテリーが自己加熱条件を満たすことは、
前記セル温度が所定の温度閾値未満であること及び前記動作状態が停止状態であることを含むことを特徴とする請求項7~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
取得モジュールはさらに、
デューティサイクルを取得することに用いられ、
これに対応して、制御モジュールは具体的には、
前記通電周波数及び前記デューティサイクルに応じて、前記永久磁石モーターに前記通電周波数の交流電力を供給するためのパルス幅変調信号を生成することに用いられることを特徴とする請求項7~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
動力システムであって、パワーバッテリー、インバーター、永久磁石モーター及びモーターコントローラを備え、前記モーターコントローラは請求項1~6のいずれか一項に記載の永久磁石モーターの制御方法を実行することに用いられることを特徴とする動力システム。
【請求項14】
電気自動車であって、動力システムを備え、前記動力システムはパワーバッテリー、インバーター、永久磁石モーター及びモーターコントローラを備え、前記モーターコントローラは請求項1~6のいずれか一項に記載の永久磁石モーターの制御方法を実行することに用いられることを特徴とする電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年06月15日に中国特許局に提出された、出願番号が202010540328.8、出願の名称が「永久磁石モーターの制御方法、装置、動力システム及び電気自動車」の中国特許出願の優先権を主張し、その全内容が援用により本願に組み込まれている。
【0002】
技術分野
本願は電気自動車の分野に関し、より具体的には、永久磁石モーターの制御方法、装置、動力システム及び電気自動車に関する。
【背景技術】
【0003】
電気自動車とは、パワーバッテリーによって動力を提供する自動車である。パワーバッテリーの材料が制限されており、定格環境温度でしか最適な性能を安定的に発揮できないため、環境温度が低い地区で電気自動車を使用する場合、パワーバッテリーを定格環境温度に加熱する必要がある。
【0004】
従来のパワーバッテリー加熱方式は間接加熱及び直接加熱に分けられてもよい。間接加熱とは、パワーバッテリーの外部に熱源を置いて加熱を行うことである。直接加熱とは、パワーバッテリーの内部でパワーバッテリーを加熱することである。一般的な直接加熱方式はモーターによる加熱である。具体的には、パワーバッテリーはインバーターを介してモーターに接続され、モーターの回転子は固定して回転しない。パワーバッテリーと固定子巻線は閉じた回路を形成し、固定子巻線は電力を貯蔵する。パワーバッテリーの内部抵抗が低温環境で大きいため、パワーバッテリー巻線がパワーバッテリーに交番電流励起を印加し、パワーバッテリーがその内部抵抗を使用して加熱を行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モーターを使用してパワーバッテリーを加熱する過程ではノイズが大きすぎる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、パワーバッテリーの自己加熱過程におけるノイズを低減させることができる永久磁石モーターの制御方法、装置、動力システム及び電気自動車を提供する。
【0007】
第1態様によれば、本願は、
永久磁石モーターのシステムパラメータを取得するステップであって、システムパラメータは永久磁石モーターの共振帯域幅及び永久磁石モーターの固定子固有周波数を含むステップと、
システムパラメータに応じて永久磁石モーターの通電周波数を設定するステップと、
パワーバッテリーが自己加熱条件を満たすと、通電周波数の交流電力を使用して永久磁石モーターに給電するステップと、を含み、
通電周波数の偶数倍は共振周波数帯域外にあり、共振周波数帯域は永久磁石モーターの固定子固有周波数及び共振帯域幅に応じて決定される永久磁石モーターの制御方法を提供する。
【0008】
選択可能に、通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域外にあることは、
通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域の下限以下であること、又は
通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域の上限以上であることを含む。
【0009】
選択可能に、通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域の下限以下であることは、具体的には、
【数1】
通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域の上限以上であることは、具体的には、
【数2】
【数3】
【数4】
Bは永久磁石モーターの固定子の共振帯域幅の1/2、Mは永久磁石モーターの固定子固有周波数の最高次数、kは正の整数である。
【0010】
選択可能に、M=4である。
【0011】
上記発明の一実施例は以下の有益な効果を有する。モーター振動が主にラジアル電磁力周波数によってモーター固定子の前の4次の共振周波数帯域内で引き起こされることを考慮して、固定子巻線の通電周波数を変更することで、通電周波数の偶数倍が固定子の前の4次の共振周波数帯域を回避し、主振動を除去し、制御の困難性を軽減する。
【0012】
選択可能に、方法は、
パワーバッテリーのセル温度及び永久磁石モーターの動作状態を取得するステップをさらに含み、
これに対応して、パワーバッテリーが自己加熱条件を満たすことは、
セル温度が所定の温度閾値未満であること及び動作状態が停止状態であることを含む。
【0013】
上記発明の一実施例は以下の有益な効果を有する。パワーバッテリーのセル温度が所定の温度閾値未満であり、及びモーターの動作状態が停止状態である場合、通電周波数が共振周波数帯域外にある交流電力を永久磁石モーターに注入することで、モーターの巻線がエネルギー貯蔵素子としてパワーバッテリーに交番電流を供給することによって振動が発生するという問題を回避することができる。
【0014】
選択可能に、方法は、
デューティサイクルを取得するステップをさらに含み、
これに対応して、通電周波数の交流電力を使用して永久磁石モーターに給電するステップは、具体的には、
通電周波数及びデューティサイクルに応じて、永久磁石モーターに通電周波数の交流電力を供給するためのパルス幅変調信号を生成するステップを含む。
【0015】
上記発明の一実施例は以下の有益な効果を有する。通電周波数及びデューティサイクルに応じてインバーターを制御する信号を生成することで、通電周波数が共振周波数帯域外にある交流電力を永久磁石モーターに注入し、発生するラジアル電磁力の周波数がモーターの固定子固有周波数を回避し、ラジアル電磁力共振によるノイズを低減させる。
【0016】
第2態様によれば、本願は、
永久磁石モーターのシステムパラメータを取得する取得モジュールであって、システムパラメータは永久磁石モーターの共振帯域幅及び永久磁石モーターの固定子固有周波数を含む取得モジュールと、
システムパラメータに応じて永久磁石モーターの通電周波数を設定することに用いられる決定モジュールと、
パワーバッテリーが自己加熱条件を満たすと、通電周波数の交流電力を使用して永久磁石モーターに給電することに用いられる制御モジュールと、を備え、
通電周波数の偶数倍は共振周波数帯域外にあり、共振周波数帯域は永久磁石モーターの固定子固有周波数及び共振帯域幅に応じて決定される永久磁石モーターの制御装置を提供する。
【0017】
選択可能に、通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域外にあることは、
通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域の下限以下であること、又は
通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域の上限以上であることを含む。
【0018】
選択可能に、通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域の下限以下であることは、具体的には、
【数5】
通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域の上限以上であることは、具体的には、
【数6】
【数7】
【数8】
Bは永久磁石モーターの固定子の共振帯域幅の1/2、Mは永久磁石モーターの固定子固有周波数の最高次数、kは正の整数である。
【0019】
選択可能に、M=4である。
【0020】
選択可能に、取得モジュールはさらに、
パワーバッテリーのセル温度及び永久磁石モーターの動作状態を取得することに用いられ、
これに対応して、パワーバッテリーが自己加熱条件を満たすことは、
セル温度が所定の温度閾値未満であること及び動作状態が停止状態であることを含む。
【0021】
選択可能に、取得モジュールはさらに、
デューティサイクルを取得することに用いられ、
これに対応して、制御モジュールは具体的には、
通電周波数及びデューティサイクルに応じて、永久磁石モーターに通電周波数の交流電力を供給するためのパルス幅変調信号を生成することに用いられる。
【0022】
第3態様によれば、本願は、パワーバッテリー、インバーター、永久磁石モーター及びモーターコントローラを備え、モーターコントローラは第1態様及び選択可能な解決手段に係る永久磁石モーターの制御方法を実行することに用いられる動力システムを提供する。
【0023】
第4態様によれば、本願は、動力システムを備え、動力システムはパワーバッテリー、インバーター、永久磁石モーター及びモーターコントローラを備え、モーターコントローラは第1態様及び選択可能な解決手段に係る永久磁石モーターの制御方法を実行することに用いられる電気自動車を提供する。
【0024】
本願の永久磁石モーターの制御方法、装置、動力システム及び電気自動車は、ラジアル電磁力の周波数が固定子巻線の通電周波数の偶数倍関係であることを使用して、固定子巻線の通電周波数を変更することで、通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域外にあり、発生するラジアル電磁力の周波数がモーターの固定子固有周波数を回避し、ラジアル電磁力の共振によるノイズを低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本願に係る電気自動車の動力システムの構造模式図である。
図2】本願に係るパワーバッテリーの構造模式図である。
図3】本願の実施例1に係る永久磁石モーターの制御方法のフローチャートである。
図4】本願の実施例3に係る永久磁石モーターの制御装置の構造模式図である。
図5】本願の実施例4に係る制御機器の構造模式図である。
図6】本願の実施例5に係る電気自動車の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本願の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、本願の図面を参照しながら本願の技術的解決手段を明確かつ完全に説明し、明らかなように、説明される実施例は本願の一部の実施例であり、すべての実施例ではない。本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をせずに得るほかの実施例はすべて本願の保護範囲に属する。
【0027】
電気自動車とは、パワーバッテリーによって動力を提供する自動車である。図1に示すように、電気自動車の動力システム100はパワーバッテリー10、インバーター20、モーター30及びモーターコントローラ(Motor Controller Unit、略称:MCU)40を備える。パワーバッテリー10の陽陰極はインバーター20の直流側に接続され、インバーター20の交流側はモーター30の固定子巻線に接続される。パワーバッテリー10はインバーター20を介してモーターに給電する。MCU 40は、複数の入力端子が設けられ、モーター動作状態データ、及びモーター制御命令を受信することに用いられる。MCU40はモーター制御命令、モーター動作状態データ及びパワーバッテリーの動作状態データに応じて、パルス幅変調(Pulse Width Modulation、略称:PWM)信号を生成し、インバーターがモーター30に供給する電圧及び電流の大きさを制御し、モーターの回転数を制御し、それによって自動車の走行速度の制御を実現する。
【0028】
図2に示すように、パワーバッテリー10は電池モジュール101、電池管理システム(Battery Management System、略称:BMS)102、及び補助構造103を備える。電池モジュール101は複数のパワーセルを直並列してなり、パワーセルはパワーバッテリーのコア部材であり、パワーバッテリーが電力を供給するソースである。電池管理システム102の主な機能は充放電管理、高電圧制御、電池状態評価、電池データ収集、電池保護及び電池熱管理を行うことである。補助構造103は通常、外部フレーム、電気接続装置及び絶縁部材などを備える。外部フレームは電池モジュールなどを保護及び支持する作用を発揮し、電気接続装置はたとえばインバーターのようなほかの電力消費機器と接続する作用を発揮し、絶縁部材は絶縁保護作用を発揮する。
【0029】
電池管理システム102では、熱管理機能はパワーバッテリーが適切な温度範囲内で動作することを確保することに用いられる。熱管理機能は主に電池温度の正確な測定及び監視を実現し、電池パックの温度が高すぎると効果的に放熱し、低温条件では急速加熱を行い、及び電池パックの温度場の均一な分布を確保する。低温条件での急速加熱とは、セル温度が低い地区で使用する場合、パワーバッテリーを定格セル温度に加熱する必要があり、それによってパワーバッテリーが最適な性能を安定的に発揮する。
【0030】
従来のパワーバッテリー加熱方式は間接加熱及び直接加熱に分けられてもよい。間接加熱とは、パワーバッテリーの外部に熱源を置いて加熱を行うことである。間接加熱方法は空気による加熱、液体による加熱及び加熱膜による加熱などであってもよい。異なる加熱源によって、電池の加熱速度もある程度異なる。外部熱源によって電池を加熱するため、伝熱媒体で熱損失が発生し、従って、間接加熱の効率は低い。
【0031】
直接加熱とは、内部でパワーバッテリーを加熱することである。一般的な直接加熱方式は内部抵抗による加熱であり、具体的には、モーター回転子を固定し、インバーターの制御端子にPWM信号を入力し、パワーバッテリーと固定子巻線は閉じた回路を形成し、固定子巻線は電力を貯蔵する。固定子巻線のインダクタンス特性によって、固定子巻線が電池に交番電流を供給し、パワーバッテリーは交番電流がその内部抵抗を流れることで加熱を行う。パワーバッテリーの内部抵抗が低温環境で大きいため、パワーバッテリーの加熱効率が高い。
【0032】
しかしながら、従来のパワーバッテリーの内部抵抗による加熱方式は、モーターがパワーバッテリーに加熱電流を供給する時、固定子巻線をエネルギー貯蔵素子として使用し、バス電流の交番を実現し、上記方式はモーターの通常動作時における磁場分布を変更し、モーター内部で受ける力を不平衡にし、モーターの振動及びノイズを引き起こしやすく、その結果、電気自動車のNVHという3つの指標は標準に達していない。NVHはNoise、Vibration及びHarshnessの略称であり、それぞれノイズ、振動及びハーシュネスを示し、自動車の快適性を推し量る重要な指標である。
【0033】
本願は、永久磁石モーターの制御方法、装置、動力システム及び電気自動車を提供し、上記問題を解決することを目的とする。本願の発明構想は、永久磁石モーターのシステムパラメータに応じて永久磁石モーターの共振周波数を決定し、永久磁石モーターの通電周波数の偶数倍を共振周波数帯域外に制御することで、永久磁石モーターの振動周波数を永久磁石モーターの回転子共振周波数から遠くし、モーターの振動を減少させ、さらに振動によるノイズを減少させ、ユーザーが自動車に乗る時の快適性を向上させる。
【0034】
以下、実施例を参照しながら本願に係る永久磁石モーターの制御方法を重点的に説明し、該制御方法の実行主体はMCUであり、図3は本願の実施例1に係る永久磁石モーターの制御方法のフローチャートであり、図3に示すように、本願に係る永久磁石モーターの制御方法は以下のステップを含む。
【0035】
S201、MCUは永久磁石モーターのシステムパラメータを取得する。
【0036】
永久磁石モーターのシステムパラメータは永久磁石モーターの共振帯域幅及び永久磁石モーターの固定子固有周波数を含む。
【0037】
S202、MCUはシステムパラメータに応じて永久磁石モーターの通電周波数を設定する。
【0038】
システムパラメータに応じて永久磁石モーターの通電周波数を設定するステップは、具体的には、永久磁石モーターの固定子固有周波数及び共振帯域幅に応じて共振周波数帯域を決定し、共振周波数帯域に応じて通電周波数を決定し、永久磁石モーターの通電周波数の偶数倍を共振周波数帯域外に設定するステップを含む。
【0039】
S203、MCUはパワーバッテリーが自己加熱条件を満たすと、通電周波数の交流電力を使用して永久磁石モーターに給電する。
【0040】
パワーバッテリーが自己加熱条件を満たすことは、パワーバッテリーのセル温度が所定の温度閾値未満であること及び永久磁石モーターの動作状態が停止状態であることを含む。停止状態とは、回転子が静止する又は回転子が拘束状態にあることである。
【0041】
本願の実施例に係る制御方法では、固定子固有周波数及び共振帯域幅に応じて固定子の共振周波数帯域を決定し、通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域外にある交流電力を永久磁石モーターに注入することで、パワーバッテリーの自己加熱過程におけるノイズを低減させる。
【0042】
以下、本願の実施例2に係る永久磁石モーターの制御方法を説明し、本願に係る永久磁石モーターの制御方法は以下のステップを含む。
【0043】
S301、MCUは永久磁石モーターのシステムパラメータを取得する。
【0044】
永久磁石モーターのシステムパラメータは永久磁石モーターの共振帯域幅及び永久磁石モーターの固定子固有周波数を含む。固定子固有周波数を取得する時、一実施形態として、永久磁石モーターに対して振動テストを行うことによって、永久磁石モーターの固定子固有周波数を測定する。別の実施形態として、さらに永久磁石モーターの構造パラメータを計算することによって行ってもよく、構造パラメータは固定子の質量分布、固定子の剛性などを含む。前の数次の固定子固有周波数内で共振する振動振幅が高次の固定子固有周波数内で振動する振動振幅よりも遥かに大きいため、前の数次の固定子固有周波数を選択して通電周波数設定を行うことで、MCUの制御複雑度を低減させ、好適には、前の4次の固定子固有周波数を選択して通電周波数設定を行うことで、主振動を除去し、制御の困難性を軽減する。
【0045】
S302、MCUはシステムパラメータに応じて永久磁石モーターの通電周波数を設定する。
【0046】
永久磁石モーターの固定子固有周波数及び共振帯域幅に応じて共振周波数帯域を決定するステップは、具体的には、
【0047】
永久磁石モーターの固定子固有周波数を
【数9】
(i=1、2、…、N、iは固有周波数の次数を示し、Bは永久磁石モーターの固定子の共振帯域幅の1/2である)で示すと、共振周波数帯域を
【数10】
【数11】
【数12】
【0048】
これに対応して、永久磁石モーターの通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域外にあることは、具体的には、通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域の下限以下であること、又は通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域の上限以上であることを含む。つまり、永久磁石モーターの通電周波数は以下の関係を満たす。
【0049】
【数13】
Mは永久磁石モーターの固定子固有周波数の最高次数、kは正の整数である。
【0050】
S303、MCUはパワーバッテリーのセル温度及び永久磁石モーターの動作状態を取得する。
【0051】
パワーバッテリーのセル温度を取得する時、パワーバッテリーの内部に設置されたセンサによってパワーバッテリーのセル温度を検出する。永久磁石モーターの動作状態を取得する時、永久磁石モーターに設置されたセンサによって回転子の運動状態を検出する。
【0052】
S304、MCUはパワーバッテリーが自己加熱条件を満たすと、通電周波数の交流電力を使用して永久磁石モーターに給電する。
【0053】
パワーバッテリーのセル温度が所定の温度閾値未満であり、且つ永久磁石モーターの動作状態が停止状態である場合、通電周波数の交流電力を使用して永久磁石モーターに給電することで、モーターの巻線がエネルギー貯蔵素子としてパワーバッテリーに交番交流を供給することによって振動が発生するという問題を回避することができる。
【0054】
通電周波数の交流電力を使用して永久磁石モーターに給電する場合、MCUは通電周波数及び予め設定されたデューティサイクルに応じてPWM信号を生成し、インバーターの制御端子はPWM信号を受信し、周波数が通電周波数の交流電力を出力し、周波数が通電周波数の交流電力を永久磁石モーターの巻線に注入し、通電周波数の偶数倍が固定子共振周波数帯域外にあり、ラジアル電磁力の周波数が固定子巻線通電周波数の偶数倍である関係によって、ラジアル電磁力の周波数が共振周波数帯域を回避し、さらにラジアル電磁力による共振を減少させ、モーター振動の問題を軽減することを達成する。
【0055】
以下、三相永久磁石同期モーターを例として本実施例に係る制御方法の実行可能性を説明する。モーター本体の振動ノイズの主なソースはラジアル電磁力、タンジェンシャル電磁力、不平衡磁気吸引力、不平衡機械力及びヒステリシス伸縮力に分けられてもよい。電気自動車に最も一般的に使用されている8極48スロットモーターを例とし、モーターのラジアル電磁力は振幅が一般的にほかの4つのノイズの主なソースよりも遥かに高く、電気自動車のノイズの主なでもある。従って、ラジアル電磁力を除去することで、ノイズをノイズ閾値範囲内に効果的に抑制することができる。
【0056】
モーター固定子を、珪素鋼板を積層してプレスして製造された1つの円筒に等価してみなすことができ、固定子の振動形状が固有であるため、固定子は異なる次数の振動形状を対応付けて有し、且つ振動形状のそれぞれは1つの固有周波数に対応する。
【0057】
モーターの振動について、ラジアル電磁力の空間に沿う分布形状及び周波数は2つの重要な要素である。まず、モーターのラジアル電磁力の空間に沿う分布が固定子の前の4次のうちのいずれか1次の固定子の振動形状に一致する場合、このとき共振周波数に達していないとしても、その強制振動の振幅は不一致時よりも遥かに大きい。次に、固定子の振動次数ごとに対応する固有周波数の大きさがラジアル電磁力の周波数の大きさに一致すると共振が発生し、このとき、ラジアル電磁力の振幅も大幅に向上する。ラジアル電磁力の空間に沿う分布はモーターの構造を変更する必要があり、従って、ラジアル電磁力の周波数を変更することで共振周波数を回避することは最も効果的な方法である。
【0058】
以下、ラジアル電磁力周波数の算出を説明する。モーターの正常動作条件で固定子巻線に発生する円形回転磁場とは異なり、電池自己加熱技術によってモーター固定子に発生するのは1つのパルス起磁力であり、このとき、モーターのエアギャップ磁束密度の高調波成分がさらに高く、それによってより多くの低次低周波のラジアル電磁力が発生する。このとき、電磁力を計算し、モーターのエアギャップ形状を円形として計算してはならず、楕円形として等価処理を行う必要がある。具体的な楕円変形量が固定子巻線の通電周波数及び電流の大きさに関連し、通電周波数が高く、電流の大きさが大きいほど、楕円の変形量が大きい。
【0059】
有限要素シミュレーションによって固定子の変形をシミュレートしたところ、得たラジアル電磁力の分布から以下の結論を得た。電池自己加熱制御戦略では、ラジアル電磁力波の主高調波成分はある程度減少するが、付加的な時空高調波成分は発生し、これらの付加的な高調波成分は多くの低次低周波のラジアル電磁力波の成分を発生させ、それによりモーターの電磁振動により大きな影響を与える。つまり、電池自己加熱条件では、ラジアル電磁力の空間次数が変化し、多くの低次の電磁力が発生するが、新しい電磁力周波数が発生することはない。このとき、ラジアル電磁力の周波数はモーターの通常動作条件での式に従って計算され得る。
【0060】
モーターのラジアル電磁力はモーターの固定子磁場と回転子磁場との相互作用により引き起こされ、モーターの構造及び巻線の配線方式などの理由のため、固定子高調波磁場と回転子高調波磁場、固定子基本磁場、固定子高調波磁場と回転子基本磁場、回転子高調波磁場を引き起こし、従って、ラジアル電磁力は固定子基本磁場と回転子基本磁場との相互作用によるものであるだけでなく、固定子と回転子の同次高調波磁場の相互作用、固定子高調波磁場の相互作用も異なる周波数のラジアル電磁力を発生させる。従って、固定子に三相対称交流電力を注入する場合、ラジアル電磁力の周波数の計算過程は以下の通りである。
【数14】
【数15】
Bsは固定子の磁束密度、BR は回転子の磁束密度、μ0は空気の透磁率を示す。
【0061】
【数16】
【数17】
式(2)、(3)では、
【数18】
αはエアギャップの円周に沿う角度であり、tは時間を示し、F1は三相対称固定子巻線によって発生する起磁力を示し、F2は回転子永久磁石によって発生する起磁力を示す。
【0062】
【数19】
【数20】
【0063】
式(4)、(5)では、vは固定子の高調波次数を示し、μは回転子の高調波次数を示し、ωは固定子の角周波数であり、Fmvは固定子のv次高調波起磁力の振幅であり、Fmμは回転子のμ次高調波起磁力の振幅であり、ωμは回転子のμ次高調波起磁力の電気角周波数であり、電池加熱制御戦略では、0であり、φμは回転子のμ次高調波起磁力と初期位置との夾角であり、pは極対数である。
【0064】
式(2)~(5)を式(1)に代入し、積和公式を使用してラジアル電磁力周波数、回転子磁場の高調波及び固定子磁場の高調波を得ることができる。以下、固定子磁場及び回転子磁場の前の13次の高調波によって発生するラジアル電磁力と周波数との関係を例として説明を行う。表1に示す通りである。
【表1】
【0065】
表1からわかるように、ラジアル電磁力の周波数は常に巻線通電周波数と偶数倍の関係を持つ。表からラジアル電磁力の周波数と通電周波数の関係(μ±1)fを導出することができ、fは巻線の通電周波数を示す。本願の実施例に係る制御方法は、ラジアル電磁力の周波数が固定子巻線の通電周波数の偶数倍である関係を使用して、MCUはインバーターに通電周波数の偶数倍が固定子の共振周波数帯域外にある交流電力を出力させ、モーターによって発生するラジアル電磁力の周波数がモーターの固定子固有周波数を回避し、ラジアル電磁力の共振によるノイズを低減させる。
【0066】
図4は本願の実施例3に係る永久磁石モーターの制御装置の構造模式図であり、永久磁石モーターの制御装置400は上記実施例に係る永久磁石モーターの制御方法を実行することに用いられる。図4に示すように、本願の実施例3に係る永久磁石モーターの制御装置400は、
永久磁石モーターのシステムパラメータを取得することに用いられ、システムパラメータは永久磁石モーターの共振帯域幅及び永久磁石モーターの固定子固有周波数を含む取得モジュール401と、
システムパラメータに応じて永久磁石モーターの通電周波数を設定することに用いられる決定モジュール402と、
パワーバッテリーが自己加熱条件を満たすと、通電周波数の交流電力を使用して永久磁石モーターに給電することに用いられる制御モジュール403と、を備え、
通電周波数の偶数倍は共振周波数帯域外にあり、共振周波数帯域は永久磁石モーターの固定子固有周波数及び共振帯域幅に応じて決定される。
【0067】
選択可能に、通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域外にあることは、
通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域の下限以下であること、又は
通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域の上限以上であることを含む。
【0068】
選択可能に、通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域の下限以下であることは、具体的には、
【数21】
通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域の上限以上であることは、具体的には、
【数22】
【数23】
【数24】
Bは永久磁石モーターの固定子の共振帯域幅の1/2、Mは永久磁石モーターの固定子固有周波数の最高次数、kは正の整数である。
【0069】
選択可能に、M=4である。
【0070】
選択可能に、取得モジュール401はさらに、
パワーバッテリーのセル温度及び永久磁石モーターの動作状態を取得することに用いられ、
これに対応して、パワーバッテリーが自己加熱条件を満たすことは、
セル温度が所定の温度閾値未満であること及び動作状態が停止状態であることを含む。
【0071】
選択可能に、取得モジュール401はさらに、デューティサイクルを取得することに用いられ、
これに対応して、制御モジュール403は具体的には、
通電周波数及びデューティサイクルに応じて、永久磁石モーターに通電周波数の交流電力を供給するためのPWM信号を生成することを含む。
【0072】
図5は本願の実施例4に示す制御機器の構造模式図である。図5に示すように、本実施例に係る制御機器500はメモリ501、及びプロセッサ502を備える。
【0073】
メモリ501は、コンピュータ実行命令を記憶することに用いられ、
プロセッサ502は、メモリに記憶されたコンピュータ実行命令を実行して、上記実施例における永久磁石モーターの制御方法で実行される各ステップを実現することに用いられる。具体的には、上記永久磁石モーターの制御方法の実施例についての関連説明を参照すればよい。
【0074】
選択可能に、上記メモリ501は独立したものであってもよく、プロセッサ502と一体に集積されてもよい。
【0075】
メモリ501が独立して設置される場合、該制御機器は、メモリ501とプロセッサ502とを接続することに用いられるバスをさらに備える。
【0076】
本願の実施例はコンピュータ読み取り可能記憶媒体をさらに提供し、コンピュータ読み取り可能記憶媒体にコンピュータ実行命令が記憶され、プロセッサはコンピュータ実行命令を実行すると、制御機器が実行する永久磁石モーターの制御方法を実現する。
【0077】
本願の実施例は、動力システムをさらに提供し、パワーバッテリー、インバーター、永久磁石モーター及びモーターコントローラを備え、モーターコントローラは上記実施例に係る永久磁石モーターの制御方法を実行することに用いられる。
【0078】
図6に示すように、本願の実施例は電気自動車をさらに提供し、上記実施例の動力システム100を備え、動力システム100はパワーバッテリー10、インバーター20、永久磁石モーター30及びモーターコントローラMCU 40を備え、MCU 40は上記実施例に係る永久磁石モーターの制御方法を実行することに用いられる。
【0079】
自動車全体の快適性に対するモーター振動の影響をさらに減少させるために、引き続け図6に示すように、車両に1つの音響パッケージ604及び1つのアクティブノイズリダクションシステム600を取り付ける。
【0080】
防音及び吸音効果を持つ音響パッケージ604でモーターを包むことで、モーターのノイズを減少させることができる。アクティブノイズリダクションシステム600は検出ユニット601、出力ユニット602及び制御ユニット603を備える。検出ユニット601及び出力ユニット602はそれぞれ制御ユニット603に接続される。以下、図6を参照してアクティブノイズリダクションシステムの動作原理を説明する。検出ユニット601はエンジン室内に位置し、検出ユニット601はモーターによるノイズを収集し、モーターによるノイズを制御ユニット603に伝送することに用いられる。制御ユニット603はアルゴリズムによって、ノイズとの位相差が180°で且つ振幅が同じである1つの音波を出力する。出力ユニット602は該音波を出力し、さらにモーターのノイズを相殺する。検出ユニット601はマイクロホン、出力ユニット602はプレーヤーであってもよい。出力ユニット602はエンジン室に位置してもよく、車室に位置してもよく、乗員の快適性を向上させる。
【0081】
MCUの制御周波数を変更することで振動を減少させ、さらに音響パッケージ及びアクティブノイズリダクション手段と組み合わせることによって、電池自己加熱技術によるモーターの振動を効果的に低減させることができるとともに、既存の技術よりもモーターの振動をさらに最適化することができる。モーター振動の要件が低い場合、任意の2種のノイズリダクション手段の組み合わせもモーター振動を低減させる作用を発揮でき、電気自動車のNVHという3つの指標を標準に達させる。
【0082】
最後になお、以上の各実施例は単に本願の技術的解決手段を説明するためのものであり、それを限定するものではなく、上記各実施例を参照しながら本願を詳細に説明したが、当業者が理解できるように、上記各実施例に記載の技術的解決手段を変更したり、その一部又はすべての技術的特徴を同等置換したりすることができ、これらの変更や置換によって対応する技術的解決手段の趣旨が本願の各実施例の技術的解決手段から逸脱することはない。
【符号の説明】
【0083】
10 パワーバッテリー
20 インバーター
30 モーター
40 MCU
100 動力システム
101 電池モジュール
102 電池管理システム
103 補助構造
400 永久磁石モーターの制御装置
401 取得モジュール
402 決定モジュール
403 制御モジュール
500 制御機器
501 メモリ
502 プロセッサ
600 アクティブノイズリダクションシステム
601 検出ユニット
602 出力ユニット
603 制御ユニット
604 音響パッケージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石モーターの制御方法であって、
前記永久磁石モーターのシステムパラメータを取得するステップであって、前記システムパラメータは前記永久磁石モーターの共振帯域幅及び前記永久磁石モーターの固定子固有周波数を含むステップと、
前記システムパラメータに応じて前記永久磁石モーターの通電周波数を設定するステップと、
パワーバッテリーが自己加熱条件を満たすと、前記通電周波数の交流電力を使用して前記永久磁石モーターに給電するステップと、を含み、
前記通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域外にあり、前記共振周波数帯域は永久磁石モーターの固定子固有周波数及び共振帯域幅に応じて決定され永久磁石モーターの制御方法。
【請求項2】
前記通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域外にあることは、
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の下限以下であること、又は
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の上限以上であることを含請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の下限以下であることは、具体的には、
【数1】
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の上限以上であることは、具体的には、
【数2】
【数3】
【数4】
Bは前記永久磁石モーターの固定子の共振帯域幅の1/2、Mは前記永久磁石モーターの固定子固有周波数の最高次数、kは正の整数であ請求項2に記載の方法。
【請求項4】
M=4であ請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記パワーバッテリーのセル温度及び前記永久磁石モーターの動作状態を取得するステップをさらに含み、
これに対応して、前記パワーバッテリーが自己加熱条件を満たすことは、
前記セル温度が所定の温度閾値未満であること及び前記動作状態が停止状態であることを含請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
デューティサイクルを取得するステップをさらに含み、
これに対応して、前記通電周波数の交流電力を使用して前記永久磁石モーターに給電するステップは、具体的には、
前記通電周波数及び前記デューティサイクルに応じて、前記永久磁石モーターに前記通電周波数の交流電力を供給するためのパルス幅変調信号を生成するステップを含請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
永久磁石モーターの制御装置であって、
前記永久磁石モーターのシステムパラメータを取得することに用いられ、前記システムパラメータは前記永久磁石モーターの共振帯域幅及び前記永久磁石モーターの固定子固有周波数を含む取得モジュールと、
前記システムパラメータに応じて前記永久磁石モーターの通電周波数を設定することに用いられる決定モジュールと、
パワーバッテリーが自己加熱条件を満たすと、前記通電周波数の交流電力を使用して前記永久磁石モーターに給電することに用いられる制御モジュールと、を備え、
前記通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域外にあり、前記共振周波数帯域は永久磁石モーターの固定子固有周波数及び共振帯域幅に応じて決定され永久磁石モーターの制御装置。
【請求項8】
前記通電周波数の偶数倍が共振周波数帯域外にあることは、
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の下限以下であること、又は
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の上限以上であることを含請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の下限以下であることは、具体的には、
【数5】
前記通電周波数の偶数倍が前記共振周波数帯域の上限以上であることは、具体的には、
【数6】
【数7】
【数8】
Bは前記永久磁石モーターの固定子の共振帯域幅の1/2、Mは前記永久磁石モーターの固定子固有周波数の最高次数、kは正の整数であ請求項8に記載の装置。
【請求項10】
M=4であ請求項9に記載の装置。
【請求項11】
取得モジュールはさらに、
前記パワーバッテリーのセル温度及び前記永久磁石モーターの動作状態を取得することに用いられ、
これに対応して、前記パワーバッテリーが自己加熱条件を満たすことは、
前記セル温度が所定の温度閾値未満であること及び前記動作状態が停止状態であることを含請求項7~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
取得モジュールはさらに、
デューティサイクルを取得することに用いられ、
これに対応して、制御モジュールは具体的には、
前記通電周波数及び前記デューティサイクルに応じて、前記永久磁石モーターに前記通電周波数の交流電力を供給するためのパルス幅変調信号を生成することに用いられ請求項7~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
動力システムであって、パワーバッテリー、インバーター、永久磁石モーター及びモーターコントローラを備え、前記モーターコントローラは請求項1~6のいずれか一項に記載の永久磁石モーターの制御方法を実行することに用いられ動力システム。
【請求項14】
電気自動車であって、動力システムを備え、前記動力システムはパワーバッテリー、インバーター、永久磁石モーター及びモーターコントローラを備え、前記モーターコントローラは請求項1~6のいずれか一項に記載の永久磁石モーターの制御方法を実行することに用いられ電気自動車。
【国際調査報告】