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特表2022-553440フッ素化アイオノマーの熱分解によるフルオロオレフィンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】フッ素化アイオノマーの熱分解によるフルオロオレフィンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/367 20060101AFI20221215BHJP
   C08F 8/50 20060101ALI20221215BHJP
   C08F 214/18 20060101ALI20221215BHJP
   C07C 21/185 20060101ALI20221215BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
C07C17/367
C08F8/50
C08F214/18
C07C21/185
C07C21/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022538714
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(85)【翻訳文提出日】2022-06-22
(86)【国際出願番号】 IB2020062145
(87)【国際公開番号】W WO2021130626
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】62/952,582
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ツァラー,アルン
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド-ロデンキルシェン,アキーム
(72)【発明者】
【氏名】ムギリ,マーク ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ミエルデル,コンスタンティン
(72)【発明者】
【氏名】ヒンツァー,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ゲルデス,トーステン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥチェスン,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ダルケ,グレッグ ディー.
【テーマコード(参考)】
4H006
4J100
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC91
4H006BA91
4H006BC10
4H006EA03
4J100AE38P
4J100AE39Q
4J100BA15P
4J100BA56P
4J100CA03
4J100GC29
4J100JA07
4J100JA43
4J100JA45
(57)【要約】
プロセスは、スルホン酸基、カルボン酸基、又はこれらの塩のうちの少なくとも1つを有するフッ素化コポリマーからフッ素化オレフィンを製造する。プロセスは、フッ素化コポリマーを450℃以下の第1の温度で加熱して、スルホン酸基、カルボン酸基、又はこれらの塩のうちの少なくとも1つを分解して、部分的に熱分解された中間体を形成することと、続いて、部分的に熱分解された中間体を少なくとも550℃の第2の温度で加熱して、フッ素化オレフィンを生成することと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸基、カルボン酸基、又はこれらの塩のうちの少なくとも1つを含むフッ素化コポリマーからフッ素化オレフィンを生成するためのプロセスであって、
前記フッ素化コポリマーを450℃以下の第1の温度で加熱して、スルホン酸基、カルボン酸基、又はこれらの塩のうちの少なくとも1つを分解して、部分的に熱分解された中間体を形成することと、
続いて、前記部分的に熱分解された中間体を少なくとも550℃の第2の温度で加熱して、前記フッ素化オレフィンを生成することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記第1の温度が、300℃~450℃の範囲であり、前記第2の温度が、600℃~700℃の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記フッ素化コポリマーが、スルホン酸基又はカルボン酸基のうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記フッ素化コポリマーが、
式-[CF-CF]-で表される二価の単位と、
独立して式:
【化1】
【化2】
又はこれらの組み合わせで表される二価の単位
[式中、a及びpは、それぞれ独立して0~2であり、各b及びqは独立して2~8であり、各c及びrは独立して0~2であり、各e及びsは独立して1~8であり、Z及びZ’は、それぞれ独立して、水素、アルカリ金属カチオン、又は第4級アンモニウムカチオンである]
と、を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
Z及びZ’が、それぞれ水素である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記フッ素化コポリマーを無機酸と組み合わせることを更に含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記フッ素化コポリマーが、式
【化3】
で表される二価の単位
[式中、aは0又は1であり、bは2又は3であり、cは0又は1であり、eは2~4である]
を含む、請求項4~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記フッ素化コポリマーが、式
【化4】
で表される少なくとも1つの二価の単位
[式中、Rfは、1個~8個の炭素原子を有し、任意に1つ以上の-O-基が介在している直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキル基であり、zは0、1又は2であり、各nは独立して1、2、3又は4であり、mは0、1又は2である]を更に含む、請求項4~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記コポリマーが、500~2000の範囲の-SOZ又は-COZ’当量を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記フッ素化オレフィンが、テトラフルオロエチレン又はヘキサフルオロプロピレンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
加熱又は後続の加熱のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的にマイクロ波照射で実施される、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記フッ素化コポリマー又は前記部分的に熱分解された中間体のうちの少なくとも1つを、マイクロ波活性粒子と接触させる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記フッ素化コポリマーが、触媒インク、ポリマー電解質膜、触媒層、ガス拡散層、バイポーラプレート、又は電解セルのうちの少なくとも1つを含むデバイスの構成要素である、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記デバイスを粉砕すること又は細断することと、前記フッ素化コポリマーを同時に加熱しながら前記デバイスを加熱することとの少なくとも1つを更に含む、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記フッ素化オレフィンを生成した後に金属を回収することを更に含む、請求項13又は14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記金属が、金、銀、白金、又はパラジウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
加熱又は後続の加熱のうちの少なくとも1つが、流動床反応器、撹拌反応器、又はロータリーキルン中で実施される、請求項1~16のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項18】
加熱又は後続の加熱のうちの少なくとも1つが、窒素、水蒸気、又は希ガスのうちの少なくとも1つを含むキャリアガスの存在下で実施される、請求項1~17のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年12月23日に出願された米国特許仮出願第62/952,582号の優先権を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[背景技術]
フッ素化オレフィン、特にテトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene、TFE)は、フルオロポリマーの調製に重要な原材料である。TFEは一般に、例えば大気中のオゾン層破壊への潜在的影響のために環境上懸念があるフッ素及び塩素含有出発物質(例えば、R-22=CHClF)から調製される。したがって、TFEを生成する代替的な方法が必要とされる。
【0003】
TFE及び他のフッ素化オレフィンは、ポリテトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマーの熱分解(thermal decomposition)(熱分解(pyrolysis))から誘導可能であることが知られている。
【0004】
フルオロポリマーを熱分解するためのいくつかの技術、例えば蒸気による熱分解(米国特許第3,832,411号(Arklesら))、無線周波による熱分解(米国特許第6,797,913号(Van der Waltら))、又は電気アークによる熱分解(米国特許第7,252,744号(Van der Waltら))が記載されてきた。米国特許第8,212,091号(Van der Waltら)は、第1の反応域及び任意に第2の反応域を有する円筒型反応器中でフルオロポリマーを解重合するためのプロセスを開示している。米国特許第8,344,190号(Hintzerら)は、マイクロ波粒子と接触している熱分解フルオロポリマーを開示している。
【発明の概要】
【0005】
フッ素化アイオノマーは、多くの用途:燃料電池中の膜電極接合体(membrane electrode assembly)、レドックスフロー電池、及びNaCl/HCl電解セルにおいて広範に用いられる。これらのデバイスが使用される多くの産業(例えば、自動車産業)では、価値のあるフッ素化化合物及び他の材料(例えば、貴金属)を可能な限り回収するための実行可能なリサイクル技術を確立することが望ましい。
【0006】
本開示は、フッ素化アイオノマーからフッ素化オレフィンを生成するためのプロセスを提供し、いくつかの実施形態では、他の熱分解プロセスよりも予想外に高い収率をもたらす。このプロセスは、例えば、様々なデバイスからアイオノマーをリサイクルするために有用であり得る。
【0007】
一態様では、本開示は、スルホン酸基、カルボン酸基、又はこれらの塩のうちの少なくとも1つを有するフッ素化コポリマーからフッ素化オレフィンを生成するためのプロセスを提供する。プロセスは、フッ素化コポリマーを450℃以下の第1の温度で加熱して、スルホン酸基、カルボン酸基、又はこれらの塩のうちの少なくとも1つを分解して、部分的に熱分解された中間体を形成することと、続いて、部分的に熱分解された中間体を少なくとも550℃の第2の温度で加熱して、フッ素化オレフィンを生成することと、を含む。
【0008】
本願において、
「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、具体例を例示するために用いることができる一般的な種類を含む。「a」、「an」及び「the」の用語は、「少なくとも1つ」という用語と互換可能に使用される。
【0009】
列挙が後に続く、「のうちの少なくとも1つを含む」という語句は、列挙中の項目のうちのいずれか1つ、及び列挙中の2つ以上の項目の任意の組み合わせを含むことを指す。列挙が後に続く、「のうちの少なくとも1つ」という語句は、列挙中の項目のうちのいずれか1つ、又は列挙中の2つ以上の項目の任意の組み合わせを指す。
【0010】
「アルキル基」及び接頭辞「アルキ(alk-)」は直鎖及び分枝鎖の両方の基、並びに環状基を含む。特に指定しない限り、本明細書におけるアルキル基は最大20個の炭素原子を有する。環状基は単環であっても多環であってもよく、いくつかの実施形態では、3個~10個の環炭素原子を有してもよい。
【0011】
本明細書で使用するとき、「アリール」及び「アリーレン」という用語は、例えば、1、2又は3つの環を有し、最大4個の炭素原子を有する1つ以上のアルキル基(例えば、メチル又はエチル)、最大4個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロ基(すなわち、フルオロ、クロロ、ブロモ若しくはヨード)、ヒドロキシ基、又はニトロ基を含む、任意に最大5つの置換基で置換されている環内に、任意に少なくとも1個のへテロ原子(例えば、O、S又はN)を含有する、炭素環式芳香環又は環系を含む。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フルオレニル、並びにフリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、イソインドリル、トリアゾリル、ピロリル、テトラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、及びチアゾリルが挙げられる。
【0012】
「アルキレン」は、上記定義の「アルキル」基の、多価(例えば、二価又は三価)の形態である。「アリーレン」は、上記定義の「アリール」基の、多価(例えば、二価又は三価)の形態である。
【0013】
「アリールアルキレン」は、アリール基が結合している「アルキレン」部分を指す。「アルキルアリーレン」は、アルキル基が結合している「アリーレン」部分を指す。
【0014】
「ペルフルオロ」及び「ペルフルオロ化」という用語は、すべてのC-H結合がC-F結合によって置き換えられている基を指す。
【0015】
例えばペルフルオロアルキル又はペルフルオロアルキレン基に関する、「少なくとも1つの-O-基が介在している」という語句は、その-O-基の両側にペルフルオロアルキル又はペルフルオロアルキレンの一部を有することを指す。例えば、-CFCF-O-CF-CF-は、1つの-O-が介在しているペルフルオロアルキレン基である。
【0016】
すべての数値範囲は、特に記述されない限り、これらの範囲の端点、及び端点同士の間の非整数値を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)の熱分解に有用であると報告されたプロセスを用いたフッ素化アイオノマーの熱分解が、硫黄含有化合物を含む複数の副産物とともに、収率が約20%のみのテトラフルオロエチレン(TFE)及びヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene、HFE)しか生成しないことを見出した。したがって、このプロセスを使用してアイオノマーをリサイクルすることは望ましくない。本開示は、フッ素化アイオノマーからフッ素化オレフィンを生成するためのプロセスを提供し、いくつかの実施形態では、他の熱分解プロセスよりも予想外に高い収率をもたらす。
【0018】
本開示は、スルホン酸基、カルボン酸基、又はこれらの塩のうちの少なくとも1つを有するフッ素化コポリマーからフッ素化オレフィンを生成するためのプロセスを提供する。そのようなフッ素化コポリマーは、典型的には、アイオノマーと呼ばれる。いくつかの実施形態では、本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーは、スルホン酸(すなわち、-SOH)基又はカルボン酸(-COOH)基を有する。いくつかの実施形態では、本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーは、-SOH基を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーは、式-[CF-CF]-で表される二価の単位を含む。いくつかの実施形態では、フッ素化コポリマーは、二価の単位の総モル数を基準として、少なくとも60モル%の式-[CF-CF]-で表される二価の単位を含む。いくつかの実施形態では、フッ素化コポリマーは、二価の単位の総モル数を基準として、少なくとも65、70、75、80、又は90モル%の、式-[CF-CF]-で表される二価の単位を含む。式-[CF-CF]-で表される二価の単位は、テトラフルオロエチレン(TFE)を含む成分を共重合させることによって、フッ素化コポリマーに組み込まれる。いくつかの実施形態では、重合させる成分は、重合させる成分の総モル数を基準として、少なくとも60、65、70、75、80、又は90モル%のTFEを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーは、独立して式:
【化1】
で表される少なくとも1つの二価の単位を含む。
【0021】
この式において、aは0~2であり、bは2~8の数であり、cは0~2の数であり、eは1~8の数である。いくつかの実施形態では、aは0又は1である。いくつかの実施形態では、bは2~6又は2~4の数である。いくつかの実施形態では、bは2である。いくつかの実施形態では、eは1~6又は2~4の数である。いくつかの実施形態では、eは2である。いくつかの実施形態では、eは4である。いくつかの実施形態では、cは0又は1である。いくつかの実施形態では、cは0である。いくつかの実施形態では、cは0であり、eは2又は4である。いくつかの実施形態では、cは0であり、eは3~8、3~6、3~4、又は4である。いくつかの実施形態では、cのうちの少なくとも1つは1若しくは2であるか、又はeは3~8、3~6、3~4、若しくは4である。いくつかの実施形態では、a及びcが0である場合、eは3~8、3~6、3~4、又は4である。いくつかの実施形態では、bは3であり、cは1であり、eは2である。いくつかの実施形態では、bは2又は3であり、cは1であり、eは2又は4である。いくつかの実施形態では、a、b、c、及びeは、2個超、少なくとも3個、又は少なくとも4個の炭素原子をもたらすように選択され得る。C2b及びC2eは、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。いくつかの実施形態では、C2eは、(CFと表記する場合があり、これは直鎖ペルフルオロアルキレン基を指す。cが2である場合、2つのC2b基におけるbは、独立して選択され得る。しかしながら、C2b基内では、bは独立して選択されないことを当業者は理解するであろう。これらの実施形態のうちのいずれかでは、各Zは独立して、水素、最大4、3、2、若しくは1個の炭素原子を有するアルキル、アルカリ金属カチオン、又は第4級アンモニウムカチオンである。第4級アンモニウムカチオンは、水素及びアルキル基の任意の組み合わせで置換されていてもよく、いくつかの実施形態では、アルキル基は独立して1個~4個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、Zはアルカリ金属カチオンである。いくつかの実施形態では、Zは、ナトリウム又はリチウムカチオンである。いくつかの実施形態では、Zはナトリウムカチオンである。いくつかの実施形態では、Zは水素である。
【0022】
この式で表される二価の単位を有するフッ素化コポリマーは、例えば、式CF=CF(CF-(OC2b-O-(C2e)-SOX’’で表される、少なくとも1つのポリフルオロアリルオキシ又はポリフルオロビニルオキシ化合物[式中、a、b、c、及びeは、それらの実施形態のいずれかにおいて上に定義したとおりであり、各X’’は独立して、-F又は-OZである]を含む成分を、共重合させることによって調製することができる。-SOF基を有するコポリマーを、アルカリ性水酸化物(例えば、LiOH、NaOH、又はKOH)溶液で加水分解することによって-SOZ基をもたらし、続いてこれを酸性化してSOH基をもたらしてもよい。-SOF基を有するコポリマーを水及び水蒸気で処理することにより、SOH基を形成することができる。好適なポリフルオロアリルオキシ及びポリフルオロビニルオキシ化合物としては、CF=CFCF-O-CF-SOX’’、CF=CFCF-O-CFCF-SOX’’、CF=CFCF-O-CFCFCF-SOX’’、CF=CFCF-O-CFCFCFCF-SOX’’、CF=CFCF-O-CFCF(CF)-O-(CF-SOX’’、CF=CF-O-CF-SOX’’、CF=CF-O-CFCF-SOX’’、CF=CF-O-CFCFCF-SOX’’、CF=CF-O-CFCFCFCF-SOX’’、及びCF=CF-O-CF CF(CF)-O-(CF-SOX’’が挙げられる。いくつかの実施形態では、式CF=CF(CF-(OC2b-O-(C2e)-SOX’’で表される化合物は、CF=CFCF-O-CFCF-SOX’’、CF=CF-O-CFCF-SOX’’、CF=CFCF-O-CFCFCFCF-SOX’’、又はCF=CF-O-CFCFCFCF-SOX’’である。式CF=CF(CF-(OC2b-O-(C2e)-SOX’’で表される化合物は、公知の方法によって製造することができる。
【0023】
いくつかの実施形態では、本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーは、独立して式:
【化2】
で表される少なくとも1つの二価の単位[式中、pは0~2であり、qは2~8であり、rは0~2であり、sは1~8であり、Z’は、水素、アルカリ金属カチオン、又は第4級アンモニウムカチオンである]を含む。いくつかの実施形態では、pは0又は1である。いくつかの実施形態では、qは2~6又は2~4の数である。いくつかの実施形態では、qは2である。いくつかの実施形態では、sは1~6又は2~4の数である。いくつかの実施形態では、sは2である。いくつかの実施形態では、sは4である。いくつかの実施形態では、rは0又は1である。いくつかの実施形態では、rは0である。いくつかの実施形態では、rは0であり、sは2又は4である。いくつかの実施形態では、qは3であり、rは1であり、sは2である。C2q及びC2sは、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。いくつかの実施形態では、C2sは、(CFと表記する場合があり、これは直鎖ペルフルオロアルキレン基を指す。rが2である場合、2つのC2q基におけるqは、独立して選択され得る。しかしながら、C2q基内では、qは独立して選択されないことを当業者は理解するであろう。各Z’は独立して、水素、最大4、3、2、若しくは1個の炭素原子を有するアルキル、アルカリ金属カチオン、又は第4級アンモニウムカチオンである。第4級アンモニウムカチオンは、水素及びアルキル基の任意の組み合わせで置換されていてもよく、いくつかの実施形態では、アルキル基は独立して1個~4個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、Z’はアルカリ金属カチオンである。いくつかの実施形態では、Z’は、ナトリウム又はリチウムカチオンである。いくつかの実施形態では、Z’はナトリウムカチオンである。いくつかの実施形態では、Z’は水素である。この式で表される二価の単位を有するフッ素化コポリマーは、例えば、式CF=CF(CF-(OC2q-O-(C2s)-COOZ’で表される、少なくとも1つのポリフルオロアリルオキシ又はポリフルオロビニルオキシ化合物[式中、p、q、r、s、及びZ’は、それらの実施形態のいずれかにおいて上に定義したとおりである]を含む成分を、共重合させることによって調製することができる。
【0024】
本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーは、最大2000、1900、1800、又は1750の-SOZ又は-COZ’当量を有し得る。いくつかの実施形態では、コポリマーは、少なくとも500、600、700、800、900、950、又は1000の-SOZ又は-COZ’当量を有する。いくつかの実施形態では、コポリマーは、500~2000、800~2000、950~2000、又は1000~2000の範囲の-SOZ又は-COZ’当量を有する。一般に、コポリマーの-SOZ又は-COZ’当量は、1モルの-SOZ基又は-COZ’基を含有するコポリマーの重量を指す[式中、Z及びZ’は実施形態のいずれかにおいて上に定義したとおりである]。いくつかの実施形態では、コポリマーの-SOZ又は-COZ’当量は、1当量の塩基を中和するコポリマーの重量を指す。いくつかの実施形態では、コポリマーの-SOZ又は-COZ’当量は、1モルのスルホネート基(すなわち、-SO )又はカルボキシレート基(すなわち、-CO )を含有するコポリマーの重量を指す。コポリマーの-SOZ又は-COZ’当量を低下させると、コポリマーのプロトン伝導率は増加する傾向にあるが、その結晶化度は低下する傾向にあり、これは、コポリマーの機械的特性(例えば、引張強度)を損なう場合がある。したがって、本開示のプロセスにおいて有用なコポリマーの-SOZ又は-COZ’当量は、典型的かつ有利には、コポリマーの電気的及び機械的特性についての要件のバランスを提供する。
【0025】
本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーは、二価の単位の総量を基準として、式
【化3】
【化4】
で表される、二価の単位を最大30モルパーセント有することができる。いくつかの実施形態では、コポリマーは、これらの二価の単位の総量を基準として、最大25又は20モルパーセントの、これらの二価の単位を含む。いくつかの実施形態では、コポリマーは、これらの二価の単位の総量を基準として、少なくとも2、5、又は10モルパーセントの、これらの二価の単位を含む。コポリマーは、共重合させる成分の総量を基準として、最大30モルパーセントの、上記のそれらの実施形態のうちのいずれかで、式CF=CF(CF-(OC2b-O-(C2e)-SOX’’、又はCF=CF(CF-(OC2q-O-(C2s)-COOZ’で表される少なくとも1つの化合物を含む成分を共重合させることによって調製することができる。
【0026】
本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーのいくつかの実施形態では、フッ素化コポリマーは、式
【化5】
で表される二価の単位を含む。この式において、Rfは、1個~8個の炭素原子を有し、任意に1つ以上の-O-基が介在している直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキル基であり、zは0、1又は2であり、各nは独立して1~4であり、mは0~2である。いくつかの実施形態では、mは0又は1である。いくつかの実施形態では、nは1、3若しくは4、又は1~3、若しくは2~3、若しくは2~4である。いくつかの実施形態では、zが2である場合、1つのnは2であり、他方のnは1、3又は4である。いくつかの実施形態では、上記の式のいずれかにおいてaが1である場合、例えば、nは、1~4、1~3、2~3、又は2~4である。いくつかの実施形態では、nは1又は3である。いくつかの実施形態では、nは1である。いくつかの実施形態では、nは3ではない。zが2である場合、2つのC2n基におけるnは、独立して選択され得る。しかしながら、C2n基内では、nは独立して選択されないことを当業者は理解するであろう。C2nは、直鎖であっても、分枝鎖であってもよい。いくつかの実施形態では、C2nは分枝鎖であり、例えば、-CF-CF(CF)-である。いくつかの実施形態では、C2nは、(CFと表記する場合があり、これは直鎖ペルフルオロアルキレン基を指す。これらの場合、この式の二価の単位は式
【化6】
で表される。いくつかの実施形態では、C2nは、-CF-CF-CF-である。いくつかの実施形態では、(OC2nは、-O-(CF1-4-[O(CF1-40-1で表される。いくつかの実施形態では、Rfは、1個~8個(又は1個~6個)の炭素原子を有し、任意に最大4、3、又は2つの-O-基が介在している直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキル基である。いくつかの実施形態では、Rfは、任意に1つの-O-基が介在している、1個~4個の炭素原子を有する、ペルフルオロアルキル基である。いくつかの実施形態では、zは0であり、mは0であり、Rfは、1個~4個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキル基である。いくつかの実施形態では、zは0であり、mは0であり、Rfは、3個~8個の炭素原子を有する分枝鎖ペルフルオロアルキル基である。いくつかの実施形態では、mは1であり、Rfは、3個~8個の炭素原子を有する分枝鎖ペルフルオロアルキル基、又は5個~8個の炭素原子を有する直鎖ペルフルオロアルキル基である。いくつかの実施形態では、Rfは、3個~6個又は3個~4個の炭素原子を有する分枝鎖ペルフルオロアルキル基である。m及びzが0である、これらの二価の単位が由来する有用なペルフルオロアルキルビニルエーテル(perfluoroalkyl vinyl ether、PAVE)の例は、イソ-PPVEとも呼ばれるペルフルオロイソプロピルビニルエーテル(CF=CFOCF(CF)である。他の有用なPAVEとしては、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、及びペルフルオロプロピルビニルエーテルが挙げられる。
【0027】

【化7】
で表される二価の単位[式中、mは0である]は、典型的には、ペルフルオロアルコキシアルキルビニルエーテルから生じる。好適なペルフルオロアルコキシアルキルビニルエーテル(perfluoroalkoxyalkyl vinyl ether、PAOVE)としては、式CF=CF[O(CFORf、及びCF=CF(OC2nORfで表されるもの[式中、n、z、及びRfは、それらの実施形態のいずれかにおいて上に定義したとおりである]が挙げられる。好適なペルフルオロアルコキシアルキルビニルエーテルの例としては、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFOCFCF、CF=CFOCFCFOCF、CF=CFOCFCFCFOCF、CF=CFOCFCFCFCFOCF、CF=CFOCFCFOCFCF、CF=CFOCFCFCFOCFCF、CF=CFOCFCFCFCFOCFCF、CF=CFOCFCFOCFOCF、CF=CFOCFCFOCFCFOCF、CF=CFOCFCFOCFCFCFOCF、CF=CFOCFCFOCFCFCFCFOCF、CF=CFOCFCFOCFCFCFCFCFOCF、CF=CFOCFCF(OCFOCF、CF=CFOCFCF(OCFOCF、CF=CFOCFCFOCFOCFOCF、CF=CFOCFCFOCFCFCF、CF=CFOCFCFOCFCFOCFCFCF、CF=CFOCFCF(CF)-O-C(PPVE-2)、CF=CF(OCFCF(CF))-O-C(PPVE-3)、及びCF=CF(OCFCF(CF))-O-C(PPVE-4)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルコキシアルキルビニルエーテルは、CF=CFOCFOCF、CF=CFOCFOCFCF、CF=CFOCFCFOCF、CF=CFOCFCFCFOCF、CF=CFOCFCFCFCFOCF、CF=CFOCFCFCFOCFCF、CF=CFOCFCFCFCFOCFCF、CF=CFOCFCFOCFOCF、CF=CFOCFCFOCFCFCFOCF、CF=CFOCFCFOCFCFCFCFOCF、CF=CFOCFCFOCFCFCFCFCFOCF、CF=CFOCFCF(OCFOCF、CF=CFOCFCF(OCFOCF、CF=CFOCFCFOCFOCFOCF、及びこれらの組み合わせから選択される。これらのペルフルオロアルコキシアルキルビニルエーテルの多くは、米国特許第6,255,536号(Wormら)、及び同第6,294,627号(Wormら)に記載されている方法によって調製することができる。いくつかの実施形態では、PAOVEは、ペルフルオロ-3-メトキシ-n-プロピルビニルエーテルである。いくつかの実施形態では、PAOVEは、ペルフルオロ-3-メトキシ-n-プロピルビニルエーテル以外である。
【0028】

【化8】
で表される二価の単位[式中、mは1である]は、典型的には、少なくとも1つのペルフルオロアルコキシアルキルアリルエーテルに由来する。好適なペルフルオロアルコキシアルキルアリルエーテルとしては、式CF=CFCF(OC2nORfで表されるもの[式中、n、z、及びRfは、それらの実施形態のいずれかにおいて上に定義したとおりである]が挙げられる。好適なペルフルオロアルコキシアルキルアリルエーテルの例としては、CF=CFCFOCFCFOCF、CF=CFCFOCFCFCFOCF、CF=CFCFOCFOCF3、CF=CFCFOCFOCFCF、CF=CFCFOCFCFCFCFOCF、CF=CFCFOCFCFOCFCF、CF=CFCFOCFCFCFOCFCF、CF=CFCFOCFCFCFCFOCFCF、CF=CFCFOCFCFOCFOCF、CF=CFCFOCFCFOCFCFOCF、CF=CFCFOCFCFOCFCFCFOCF、CF=CFCFOCFCFOCFCFCFCFOCF、CF=CFCFOCFCFOCFCFCFCFCFOCF、CF=CFCFOCFCF(OCFOCF、CF=CFCFOCFCF(OCFOCF、CF=CFCFOCFCFOCFOCFOCF、CF=CFCFOCFCFOCFCFCF、CF=CFCFOCFCFOCFCFOCFCFCF、CF=CFCFOCFCF(CF)-O-C、及びCF=CFCF(OCFCF(CF))-O-Cが挙げられる。いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルコキシアルキルアリルエーテルは、CF=CFCFOCFCFOCF、CF=CFCFOCFCFCFOCF、CF=CFCFOCFOCF、CF=CFCFOCFOCFCF、CF=CFCFOCFCFCFCFOCF、CF=CFCFOCFCFOCFCF、CF=CFCFOCFCFCFOCFCF、CF=CFCFOCFCFCFCFOCFCF、CF=CFCFOCFCFOCFOCF、CF=CFCFOCFCFOCFCFOCF、CF=CFCFOCFCFOCFCFCFOCF、CF=CFCFOCFCFOCFCFCFCFOCF、CF=CFCFOCFCFOCFCFCFCFCFOCF、CF=CFCFOCFCF(OCFOCF、CF=CFCFOCFCF(OCFOCF、CF=CFCFOCFCFOCFOCFOCF、CF=CFCFOCFCFOCFCFCF、CF=CFCFOCFCFOCFCFOCFCFCF、及びこれらの組み合わせから選択される。これらのペルフルオロアルコキシアルキルアリルエーテルの多くは、例えば、米国特許第4,349,650号(Krespan)及び国際特許出願公開第2018/211457号(Hintzerら)に記載されている方法によって調製することができる。
【0029】
本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーは、これらのビニルエーテル及びアリルエーテルに由来する二価の単位を、任意の有用な量で、いくつかの実施形態では、二価の単位の総モル数を基準として、最大20、15、10、7.5、若しくは5モルパーセント、少なくとも3、4、4.5、5、若しくは7.5モルパーセント、又は3~20、4~20、4.5~20、5~20、7.5~20、若しくは5モルパーセント~15モルパーセントの範囲の量で含むことができる。いくつかの実施形態では、本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーは、式
【化9】
で表される二価の単位を含まない。
【0030】
本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーのいくつかの実施形態では、コポリマーは、独立して式C(R)=CF-Rfで表される少なくとも1つのフッ素化オレフィンに由来する、二価の単位を含む。これらのフッ素化された二価の単位は、式-[CR-CFRf]-で表される。式C(R)=CF-Rf及び-[CR-CFRf]-において、Rfはフッ素、又は1個~8個の、いくつかの実施形態では1個~3個の炭素原子を有するペルフルオロアルキルであり、各Rは独立して、水素、フッ素又は塩素である。重合の成分として有用なフッ素化オレフィンのいくつかの例としては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロクロロエチレン(trifluorochloroethylene、CTFE)、並びに部分フッ素化オレフィン(例えば、フッ化ビニリデン(vinylidene fluoride、VDF)、テトラフルオロプロピレン(R1234yf)、ペンタフルオロプロピレン、及びトリフルオロエチレン)が挙げられる。いくつかの実施形態では、フッ素化アイオノマーは、クロロトリフルオロエチレンに由来する二価の単位、又はヘキサフルオロプロピレンに由来する二価の単位のうちの少なくとも1つを含む。式-[CR-CFRf]-で表される二価の単位は、フッ素化コポリマー中に、任意の有用な量で、いくつかの実施形態では、二価の単位の総モル数を基準として、最大10、7.5、又は5モルパーセントの量で存在してもよい。
【0031】
本開示のプロセスに有用なフッ素化コポリマーは、式XC=CY-(CW-(O)-R-(O)-(CW-CY=CXで表されるビスオレフィンに由来する単位を含むこともできる。この式において、X、Y、及びWの各々は独立して、フルオロ、水素、アルキル、アルコキシ、ポリオキシアルキル、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシ、又はペルフルオロポリオキシアルキルであり、w及びzは独立して0~15の整数であり、x及びyは独立して0又は1である。いくつかの実施形態では、X、Y、及びWはそれぞれ独立して、フルオロ、CF、C、C、C、水素、CH、C、C、Cである。いくつかの実施形態では、X、Y、及びWは各々フルオロである(例えば、CF=CF-O-R-O-CF=CF、及びCF=CF-CF-O-R-O-CF-CF=CFの場合)。いくつかの実施形態では、n及びoは1であり、ビスオレフィンは、ジビニルエーテル、ジアリルエーテル、又はビニル-アリルエーテルである。Rは、直鎖又は分枝鎖の、ペルフルオロアルキレン若しくはペルフルオロポリオキシアルキレン、又はフッ素化されていなくてもフッ素化されていてもよいアリーレンを表す。いくつかの実施形態では、Rは、1個~12個、2個~10個、又は3個~8個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンである。アリーレンは、5個~14個、5個~12個、又は6個~10個の炭素原子を有してもよく、置換されていなくてもよく、又は1つ以上の、フルオロ以外のハロゲン、ペルフルオロアルキル(例えば、-CF及び-CFCF)、ペルフルオロアルコキシ(例えば、-O-CF、-OCFCF)、ペルフルオロポリオキシアルキル(例えば、-OCFOCF、-CFOCFOCF)、フッ素化、ペルフッ素化、若しくは非フッ素化フェニルあるいはフェノキシで置換されていてもよく、フェニル若しくはフェノキシは、1つ以上の、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシ、ペルフルオロポリオキシアルキル基、1つ以上のフルオロ以外のハロゲン、又はこれらの組み合わせで置換されていてもよい。いくつかの実施形態では、Rは、エーテル基がオルト、パラ又はメタ位に結合した、フェニレン又はモノ、ジ、トリ若しくはテトラフルオロフェニレンである。いくつかの実施形態では、Rは、CF、(CF[式中、qは2、3、4、5、6、7、又は8である]、CF-O-CF、CF-O-CF-CF、CF(CF)CF、(CF-O-CF(CF)-CF、CF(CF)-CF-O-CF(CF)CF、又は(CF-O-CF(CF)-CF-O-CF(CF)-CF-O-CFである。ビスオレフィンは、米国特許出願公開第2010/0311906号(Lavalleeら)に記載されているように、長鎖分枝鎖を導入することができる。上記のビスオレフィンは、それらの実施形態のうちのいずれかで、フッ素化コポリマーを作製するために、重合させる成分中に、任意の有用な量で、いくつかの実施形態では、重合性成分の総量を基準として、最大2、1、又は0.5モルパーセントの量、かつ少なくとも0.1モルパーセントの量で存在してもよい。
【0032】
本開示のプロセスに有用なフッ素化コポリマーは、非フッ素化モノマーに由来する単位も含むことができる。好適な非フッ素化モノマーの例としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、エチルビニルエーテル、安息香酸ビニル、エチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、ノルボルナジエン、クロトン酸、クロトン酸アルキル、アクリル酸、アクリル酸アルキル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル、及びヒドロキシブチルビニルエーテルが挙げられる。これらの非フッ素化モノマーの任意の組み合わせが有用であり得る。いくつかの実施形態では、重合させる成分は、アクリル酸又はメタクリル酸を更に含み、本開示のコポリマーは、アクリル酸又はメタクリル酸に由来する単位を含む。
【0033】
本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーは、典型的には、公知の方法を使用してフリーラジカル重合(例えば、ラジカル水性乳化重合懸濁重合)によって調製される。
【0034】
本開示のプロセスによって作製されるフッ素化オレフィンは、一般式:CF=CF-R
[式中、R は、F又は1個~10個(いくつかの実施形態では1個~5個)の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基を表す]に対応するオレフィンを含む。いくつかの実施形態では、プロセスによって作製されるフッ素化オレフィンは、テトラフルオロエチレン(TFE)又はヘキサフルオロプロピレン(HFP)のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、TFE及びHFPの両方が作製される。
【0035】
本開示のプロセスでは、スルホン酸基、カルボン酸基、又はこれらの塩のうちの少なくとも1つを含むフッ素化コポリマーの、フッ素化オレフィンへの熱分解は、分解反応に必要な温度を発生させることができる任意の好適な反応器中で実施することができる。例えば、熱分解は、ロータリーキルン反応器中で実施することができる。ロータリーキルン反応器は、例えば、欧州特許出願第1,481,957号(Ichidaら)に記載されている。分解はまた、押出機タイプの反応デバイス、例えば、米国特許第8,212,091号(Van der Waltら)に記載のデバイス及び撹拌反応器中で実施することもできる。これらのデバイスの動作に、キャリアガス又はガス状反応媒体などのガス流を使用しても使用しなくてもよい。いくつかの実施形態では、分解は、流動床反応器内(例えば、J.R.Howard、「Fluidized Bed Technology,Principles and Applications」、Adam Hingler,New York、1989)で実施される。典型的には、ガス又はガス混合物を流動媒体として使用する。キャリアガス又はガス状流動媒体若しくは反応媒体は、典型的には、水蒸気、窒素、希ガス(例えば、Xe、Ar、Ne、及びHe)などの非反応性ガス(すなわち、反応器内の分解条件下で反応しないガス)、並びにこれらの混合物を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、キャリアガス及び/又は媒体はまた、反応性ガス、すなわち反応器内の条件下で分解し得、TFE及び/又はHFPにも変換され得るフッ素含有ガスも含有し得る。本開示のプロセスは、バッチプロセス又は連続プロセスとして実行され得る。
【0036】
キャリアガス及び/又は反応媒体若しくは流動媒体は、別々のガス流として反応器内に導入することができる。キャリアガス又は媒体の最適な流量は、反応器の構成、反応及び/又はプロセス条件に依存する。典型的な流量は、約0.01~約1,000の反応器容積/分、いくつかの実施形態では、約0.1~約100の反応器容積/分の範囲にある。プロセスは、約0.01バール~約5バール又は大気圧(1バール)の圧力で実行され得る。分解が行われる条件が達成される反応器のゾーンは、本明細書では反応器の「分解ゾーン」と称される。いくつかの実施形態では、ガス流(例えば、キャリアガス流又は流動ガス流)は、反応器の分解ゾーンに導入される前に予熱される。予熱は、分解温度に等しい温度又は分解温度より50℃~200℃低い温度に実施することができる。
【0037】
本開示のプロセスは、フッ素化コポリマーを450℃以下の第1の温度で加熱して、スルホン酸基、カルボン酸基、又はこれらの塩のうちの少なくとも1つを分解して、部分的に熱分解された中間体を形成することを含む。いくつかの実施形態では、第1の温度は、440℃、430℃、425℃、420℃、410℃、又は400℃以下である。いくつかの実施形態では、第1の温度は、300℃~450℃、350℃~450℃、350℃~425℃、又は375℃~425℃の範囲である。本開示のプロセスは、続いて、部分的に熱分解された中間体を少なくとも550℃の第2の温度で加熱して、フッ素化オレフィンを作製することを更に含む。いくつかの実施形態では、第2の温度は、550℃~900℃、いくつかの実施形態では、600℃~900℃、600℃~800℃、又は600℃~700℃の範囲である。第1及び第2の温度は、例えば、フッ素化コポリマーの組成物、反応器が動作される圧力、フッ素化コポリマーが反応器を通して供給される流量、及びフッ素化コポリマーが分解ゾーンに残る時間に基づいて調整することができる。
【0038】
フッ素化コポリマーは、スルホン酸基、カルボン酸基、これらの塩、又はこれらの組み合わせを分解するために任意の好適な期間の間、第1の温度で加熱され得る。いくつかの実施形態では、フッ素化コポリマーは、最大2時間、90分、又は1時間、第1の温度で加熱される。部分的に熱分解された中間体は、任意の好適な期間の間、第2の温度で加熱されて、フッ素化オレフィンを生成することができる。いくつかの実施形態では、部分的に熱分解された中間体は、最大1時間又は45、30、20、10、若しくは5分間、第2の温度で加熱される。部分的に熱分解された中間体が、非常に短時間の間、第2の温度で加熱される場合、フッ素化オレフィンの収率は上昇され得る可能性があり、これは、例えば、流動床反応器中で又はフッ素化材料を短時間で分解ゾーンに通して送達するためのガス流を使用した反応器中で達成され得る。第2の温度での短い保持時間は、それぞれのガス流の高い流量によって達成することができる。いくつかの実施形態では、部分的に熱分解された中間体は、第2の温度で少なくとも5秒間、最大1分間加熱される。
【0039】
いくつかの実施形態では、第1の温度で加熱されるフッ素化コポリマーは、スルホン酸基(-SOH)又はカルボン酸基(-COH)のうちの少なくとも1つを含む。(例えば、NaCl電解槽由来の)フッ素化コポリマーの塩は、硫酸、塩酸、又はHFのうちの少なくとも1つなどの酸で処理することによって酸形態に変換することができる。これは典型的には、第1の温度で加熱する間の官能基の分解を促進させる。
【0040】
第1の温度での加熱、及び後続の第2の温度での加熱は、同じ反応器中で行っても異なる反応器中で行ってもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1の温度での加熱又は後続の第2の温度での加熱のうちの少なくとも1つは、少なくとも部分的にマイクロ波照射を用いて実施される。分解温度は、マイクロ波照射のみによって、又はマイクロ波加熱と従来の加熱(例えば、熱交換、燃焼、若しくは抵抗加熱)との組み合わせによって発生させることができる。したがって、いくつかの実施形態では、反応器は、マイクロ波照射を発生させるための1つ以上のマイクロ波発生器を含む。マイクロ波生成反応器は、当技術分野において公知である。マイクロ波は、例えば、ダイオード、マグネトロン、ジャイロトロン、進行波管、クライストロン、ユービトロン、及びアンプリトロンのようなデバイスによって生成することができる。典型的には、マイクロ波発生器は、反応器の内側に位置する。反応器の内側は、マイクロ波の加熱効果を高める材料で作製されていてもよく、又は該材料でコーティングされていてもよい。本明細書に記載されるマイクロ波照射は、約30cm~約3mmの波長及び/又は約300MHz~約300GHz、いくつかの実施形態では約915MHz~約2.45GHzの周波数帯を有する電磁波の照射を意味する。
【0042】
いくつかの実施形態では、フッ素化コポリマー又は部分的に熱分解された中間体のうちの少なくとも1つを、例えば、マイクロ波照射で少なくとも部分的に加熱しながら、マイクロ波活性粒子と接触させる。フッ素化アイオノマー又は部分的に熱分解された中間体を、熱分解する直前にマイクロ波活性粒子と接触させることもできる。典型的には、粒子は、例えば、粒子をキャリアガス流によって分解ゾーンに供給することによって、反応媒体中に、又は流動床反応器の流動床中に存在する。マイクロ波による照射時に、例えばマイクロ波の吸収によって、マイクロ波活性粒子が加熱される。典型的には、マイクロ波活性材料は、1gのマイクロ波活性材料を周囲条件で0.7kWのマイクロ波照射に5分間供するとき、少なくとも10℃、少なくとも20℃、又は少なくとも30℃加熱する。
【0043】
いくつかの実施形態では、有用なマイクロ波活性粒子は、第1の温度及び/又は第2の温度で固体である。いくつかの実施形態では、マイクロ波活性粒子は、少なくとも800℃、少なくとも1,000℃、又は少なくとも1,500℃の融点又は分解点を有する。好適なマイクロ波活性粒子の例としては、炭素、黒鉛、炭化物、ケイ化物、ホウ化物、窒化物、金属酸化物、金属水酸化物、金属ハロゲン化物(例えば、金属塩化物及び金属フッ化物)、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、ケイ化モリブデン、ホウ化チタン、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、フッ化コバルト、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好適なマイクロ波活性粒子の更なる例としては、Ni、Pt、Coなどの金属;Pt;Pt/Cu、Pt/Re合金などの金属合金;クロメート、チタネート;及びこれらの組み合わせが挙げられる。異なるマイクロ波活性粒子の組み合わせ又はブレンドは、本開示のプロセスにおいて有用であり得る。マイクロ波活性粒子は、反応混合物と反応してマイクロ波活性が損失されないように選択することができる。
【0044】
粒子の最適なサイズ及び量は、フッ素化コポリマーの特定の組成、反応器の構成、及びプロセス条件に適合され得る。典型的には、粒子は、約100μm~約5mm、又は約250μm~約2mmの平均粒径(数平均)を有する。粒子は、球状であっても非球状であってもよい。球状又は実質的に球状の粒子の場合、平均サイズは平均直径を測定することによって決定される。例えば、針状粒子などの非球状の場合、最長寸法(ここでは長さ)が、粒径を決定するために使用される。
【0045】
マイクロ波活性粒子の、分解されるフッ素化コポリマーに対する比は、反応器のタイプ、寸法、及び構成に依存する。いくつかの実施形態では、マイクロ波活性粒子のフッ素化コポリマーに対する重量比は、約1:1,000~約1:0.1、又は約1:10~約1:1である。
【0046】
マイクロ波活性粒子は、例えば、キャリアガス、反応媒体、又は流動床中に存在し得る。これは、マイクロ波活性粒子が、第1の加熱及び/又は第2の加熱中に移動相にあることを意味する。それらは、フッ素化コポリマーと同時に又は非同時に、補助ガス流を通して反応器に導入してもよいが、フッ素化コポリマーを反応器に導入する前に反応器中に存在させてもよい。マイクロ波活性粒子はまた、フッ素化コポリマーを反応器(又はより具体的には分解ゾーン)に供給する前、供給する間、又は供給した後に、フッ素化コポリマーに添加され得る。あるいは、マイクロ波活性粒子はまた、例えば、触媒床と同じ又は同様の方法で、第1及び/又は第2の加熱中に不動相中に存在し得る。一部のマイクロ波粒子は、例えばキャリアガスによって反応器から除去してもよく、第1の加熱又は第2の加熱のうちの少なくとも1つの間に交換され得る。これは、連続供給又は不連続供給によって行うことができる。
【0047】
反応器の分解ゾーン中のマイクロ波活性粒子の存在は、反応混合物中にホットスポットを発生させ、反応器から反応混合物への熱伝導を促進する。これは、熱交換、燃焼、又は電気抵抗を通して加熱された反応器などのマイクロ波照射によって加熱されない反応器と比較して、反応混合物へのより速い熱伝導及び/又は反応混合物中のより均一な熱分配をもたらし得る。マイクロ波活性粒子の存在は、プロセスのより高いエネルギー効率での実行も可能にできる。また、例えば、未反応材料若しくは過剰供給による重合材料によって、流動床の崩壊によって、並びに/又は分解反応を中断若しくは停止する結果として、及び/又は反応器を運転停止する結果として引き起こされる、閉塞された反応器をより容易にクリアすることも可能にする。
【0048】
本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーは、燃料電池又は他の電解セル中の触媒インク又はポリマー電解質膜に含まれ得る。膜電極接合体(MEA)は、水素燃料電池などのプロトン交換膜燃料電池の中心的要素である。燃料電池は、水素などの燃料と酸素などの酸化剤とを触媒的に組み合わせることによって使用可能な電気を生み出す、電気化学セルである。典型的なMEAは、固体電解質として機能するポリマー電解質膜(polymer electrolyte membrane、PEM)(イオン伝導膜(ion conductive membrane、ICM)としても知られる)を含む。PEMの一方の面はアノード電極層と接触し、反対側の面はカソード電極層と接触する。各電極層には、典型的には白金金属を含む、電気化学的触媒が含まれる。ガス拡散層(gas diffusion layer、GDL)が、アノード及びカソード電極材料との間を出入りするガス輸送を促進して、電流を伝導する。GDLはまた、流体輸送層(fluid transport layer、FTL)又は拡散体/集電体(diffuser/current collector、DCC)と呼ばれることもある。アノード及びカソード電極層を、触媒インクの形態でGDLに適用してもよく、得られるコーティングされたGDLはPEMで挟まれ、5層MEAを形成する。あるいは、アノード及びカソード電極層を、触媒インクの形態でPEMの両側に適用してもよく、得られる触媒コーティング膜(catalyst-coated membrane、CCM)は、2層のGDLで挟まれ、5層MEAを形成する。触媒インクの調製及び膜接合体におけるそれらの使用に関する詳細は、例えば、米国特許公開第2004/0107869号(Velamakanniら)において見出すことができる。典型的なPEM燃料電池においては、プロトンが、水素の酸化によってアノードで形成され、PEMを越えてカソードに輸送されて酸素と反応し、電極同士を接続する外部回路に電流を流れさせる。PEMは、反応物質であるガスの間に、耐久性のある、非多孔性で非導電性の機械的障壁を形成するが、それでもなおHイオンを容易に通過させる。
【0049】
触媒インク組成物は、触媒粒子(例えば、金属粒子又は炭素担持金属粒子)と組み合わせたその実施形態のいずれかにおいて上述したようなフッ素化コポリマーを含むことができる。様々な触媒が有用であり得る。典型的には、炭素担持触媒粒子が使用される。典型的な炭素担持触媒粒子は、50重量%~90重量%の炭素と、10重量%~50重量%の触媒金属とであり、触媒金属は、典型的には、カソードについては白金、並びにアノードについては2:1の重量比における白金及びルテニウムを含む。しかしながら、他の金属、例えば、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、バナジウム、及びこれらの合金が有用である場合もある。MEA又はCCMを作製するために、任意の好適な手段によって触媒をPEMに適用してもよく、これには手動方法及び機械的方法の両方が含まれ、ハンドブラッシング、ノッチバーコーティング、流体ベアリングダイコーティング、巻線ロッドコーティング、流体ベアリングコーティング、スロット供給ナイフコーティング、3ロールコーティング、又はデカール転写が挙げられる。コーティングは、1回の適用で達成してもよく、又は複数回の適用で達成してもよい。触媒インクをPEM若しくはGDLに直接適用してもよく、又は触媒インクを転写基材に適用し、乾燥させた後、PEM若しくはFTLに対してデカールとして適用してもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、触媒インクは、上記のフッ素化コポリマーを、触媒インクの総重量を基準として、少なくとも10、15、又は20重量パーセント、かつ最大30重量パーセントの濃度で含む。いくつかの実施形態では、触媒インクは触媒粒子を、触媒インクの総重量を基準として、少なくとも10、15、又は20重量パーセント、かつ最大50、40、又は30重量パーセントの量で含む。触媒粒子は、フルオロポリマー分散体に添加されて触媒インクを作製することができる。得られた触媒インクは、例えば加熱しながら混合され得る。触媒インク中の固体の割合は、例えば、望ましいレオロジー特性を得るように選択され得る。触媒インクに含むことについて有用な、好適な有機溶媒の例としては、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール)、ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン)、ジグリム、ポリグリコールエーテル、酢酸エーテル、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide、DMSO)、N,Nジメチルアセトアミド(N,N-dimethylformamide、DMA)、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、N,N-ジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide、DMF)、N-メチルピロリジノン(N-methylpyrrolidinone、NMP)、ジメチルイミダゾリジノン、ブチロラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミド(hexamethylphosphoric triamide、HMPT)、イソブチルメチルケトン、スルホラン、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、触媒インクは、0重量%~50重量%の低級アルコール、及び0重量%~20重量%のポリオールを含有する。加えて、インクは、0%~2%の好適な分散剤を含有してもよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーは、ポリマー電解質膜に含まれる。コポリマーは、注型、鋳造、及び押出を含めた任意の好適な方法によって、ポリマー電解質膜に形成され得る。典型的には、膜は、フルオロポリマー分散体から注型し、次いで乾燥させ、アニールし、又はその両方を行う。コポリマーは、懸濁液から注型してもよい。バーコーティング、スプレーコーティング、スリットコーティング、及びブラシコーティングを含めた、任意の好適な注型方法を使用してよい。形成後、膜は、典型的には120℃以上、より典型的には130℃以上、最も典型的には150℃以上の温度でアニールされ得る。ポリマー電解質膜は、フルオロポリマーの分散体中のコポリマーを得ること、任意にイオン交換精製によって分散体を精製すること、及び分散体を濃縮して膜を作製することによって調製することができる。典型的には、フルオロポリマー分散体を使用して膜を形成する場合、コポリマーの濃度は、有利には高い(例えば、少なくとも20、30、又は40重量パーセント)。多くの場合、フィルム形成を促進するために、水混和性有機溶媒を添加する。水混和性溶媒の例としては、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール)、ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン及びジオキサン)、酢酸エーテル、アセトニトリル、アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,Nジメチルアセトアミド(DMA)、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルイミダゾリジノン、ブチロラクトン、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)、イソブチルメチルケトン、スルホラン、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0052】
ポリマー電解質膜は、セリウム、マンガン若しくはルテニウムのうちの少なくとも1つの塩、又は1つ以上の酸化セリウム若しくは酸化ジルコニウム化合物を含み、これらは、膜形成の前に、コポリマーの酸形態に対して添加される。典型的には、セリウム、マンガン若しくはルテニウムの塩、及び/又は酸化セリウム若しくは酸化ジルコニウム化合物を、コポリマーとよく混合し、又はコポリマー中に溶解させ、実質的に均一な分散を達成する。セリウム、マンガン、又はルテニウムの塩は、塩化物イオン、臭化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン、スルホン酸イオン、酢酸イオン、リン酸イオン、及び炭酸イオンを含めた、任意の好適なアニオンを含み得る。2種以上のアニオンが存在してもよい。他の金属カチオン又はアンモニウムカチオンを含む塩を含めて、他の塩が存在してもよい。遷移金属塩と酸形態のアイオノマーとの間でカチオン交換が起こったら、遊離したプロトンと元の塩のアニオンとの組み合わせによって形成される酸を除去することが望ましい場合がある。したがって、揮発性又は可溶性の酸を生成するアニオン、例えば塩化物イオン又は硝酸イオンを使用することが有用であり得る。マンガンカチオンは、Mn2+、Mn3+、及びMn4+を含めた任意の好適な酸化状態であってもよいが、最も典型的にはMn2+である。ルテニウムカチオンは、Ru3+及びRu4+を含めた任意の好適な酸化状態であってもよいが、最も典型的にはRu3+である。セリウムカチオンは、Ce3+及びCe4+を含めた任意の好適な酸化状態であってもよい。理論によって束縛されることを意図するものではないが、セリウム、マンガン、又はルテニウムカチオンは、ポリマー電解質のアニオン基に由来するHイオンと交換されて、これらのアニオン基と会合するため、ポリマー電解質中に留まると考えられる。更に、多価のセリウム、マンガン、又はルテニウムカチオンは、ポリマー電解質のアニオン基同士の間で架橋を形成して、ポリマーの安定性を更に高め得ると考えられる。いくつかの実施形態では、塩は、固体形態で存在してもよい。カチオンは、溶媒和カチオン、ポリマー電解質膜の結合アニオン基と会合したカチオン、及び塩沈殿物に結合したカチオンを含めた、2つ以上の形態の組み合わせで存在してもよい。塩の添加量は、典型的には、ポリマー電解質中に存在する酸官能基のモル量を基準として、0.001電荷当量~0.5電荷当量、より典型的には0.005~0.2、より典型的には0.01~0.1であり、より典型的には0.02~0.05である。アニオン性コポリマーと、セリウム、マンガン、又はルテニウムカチオンとの組み合わせに関する更なる詳細は、各々、Freyらの、米国特許第7,575,534号及び同第8,628,871号において見出すことができる。
【0053】
ポリマー電解質膜はまた、酸化セリウム化合物を含み得る。酸化セリウム化合物は、(IV)酸化状態、(III)酸化状態、又はこれら両方のセリウムを含有していてもよく、結晶質であっても非晶質であってもよい。酸化セリウムは、例えば、CeOであってもCeであってもよい。酸化セリウムは、金属セリウムを実質的に含まなくてもよく、あるいは金属セリウムを含有してもよい。酸化セリウムは、例えば、金属セリウム粒子上の薄い酸化反応生成物であってもよい。酸化セリウム化合物は、他の金属元素を含有しても含有しなくてもよい。酸化セリウムを含む混合金属酸化物化合物の例としては、ジルコニア-セリアなどの固溶体、及びセリウム酸バリウムなどの多成分酸化物化合物が挙げられる。理論によって束縛されることを意図するものではないが、酸化セリウムは、キレート化及び結合したアニオン基同士の間での架橋の形成によって、ポリマーを強化し得ると考えられる。酸化セリウム化合物の添加量は、典型的には、コポリマーの総重量を基準として、0.01重量パーセント~5重量パーセント、より典型的には0.1重量パーセント~2重量パーセントであり、より典型的には0.2重量パーセント~0.3重量パーセントである。酸化セリウム化合物は、典型的には、ポリマー電解質膜の総体積に対して1体積%未満、より典型的には0.8体積%未満の量で存在し、より典型的には0.5体積%未満の量で存在する。酸化セリウムは、任意の好適なサイズの、いくつかの実施形態では、1nm~5000nm、200nm~5000nm、又は500nm~1000nmの粒子であってもよい。酸化セリウム化合物を含むポリマー電解質膜に関する更なる詳細は、米国特許第8,367,267号(Freyら)において見出すことができる。
【0054】
ポリマー電解質膜は、いくつかの実施形態では、最大90ミクロン、最大60ミクロン、又は最大30ミクロンの厚みを有してもよい。膜が薄いほど、イオンが通過する際の抵抗が少なくなり得る。燃料電池において使用する場合、この結果として、動作がより低温となり、使用可能なエネルギーの出力が大きくなる。より薄い膜は、使用中の構造的完全性を維持する材料で作製しなければならない。
【0055】
いくつかの実施形態では、フッ素化コポリマーは、典型的には最大90ミクロン、最大60ミクロン、又は最大30ミクロンの厚さを有する薄い膜の形態で、多孔質支持体マトリックスに同化(imbibed)されてもよい。過剰圧力、減圧、ウィッキング(wicking)、及び液浸を含めた、任意の好適な、支持体マトリックスの細孔にコポリマーを同化する方法を使用することができる。いくつかの実施形態では、コポリマーは、架橋の際にマトリックスに埋め込まれる。任意の好適な支持体マトリックスを使用することができる。典型的には、支持体マトリックスは非導電性である。典型的には、支持体マトリックスはフルオロポリマーで構成され、これはより典型的にはペルフルオロ化されている。典型的なマトリックスとしては、二軸延伸PTFEウェブなどの多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が挙げられる。別の実施形態では、膜を補強するために、充填剤(例えば、繊維)をポリマーに添加してもよい。
【0056】
MEAを作製するために、任意の好適な手段によって、CCMのいずれかの側にGDLを適用してもよい。任意の好適なGDLを、本開示の実践において使用してもよい。典型的には、GDLは、炭素繊維を含むシート材料で構成される。典型的には、GDLは、織布及び不織布炭素繊維構造から選択される炭素繊維構造である。本開示の実践において有用であり得る炭素繊維構造としては、東レ(商標)カーボンペーパー、SpectraCarb(商標)カーボンペーパー、AFN(商標)不織布カーボンクロス、及びZoltek(商標)カーボンクロスを挙げることができる。GDLは、様々な材料によってコーティング又は含浸することができ、炭素粒子コーティング、親水化処理、及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によるコーティングなどの疎水化処理などが挙げられる。
【0057】
使用する際、MEAは、典型的に、分配プレートとして知られ、バイポーラプレート(bipolar plate、BPP)又はモノポーラプレートとしても知られる2つの剛性プレートの間に挟まれる。GDLと同様に、分配プレートは、典型的には導電性である。分配プレートは、典型的には、炭素複合体、金属、又はめっき金属材料で作製される。分配プレートは、反応物質又は生成物の流体を、典型的には、MEAに面する表面に刻まれたか、フライス処理されたか、成型されたか、又は型打ちされた1つ以上の流体伝導チャネルを通じてMEA電極表面に、かつMEA電極表面から分配する。これらのチャネルは、ときとして、流動場と呼ばれる。分配プレートは、スタック中の2つの連続的なMEAに、かつそれらから流体を分配することができ、一方の面が燃料を第1のMEAのアノードに導く一方で、他方の面は酸化剤を次のMEAのカソードに導く(かつ生成水を取り除く)ため、「バイポーラプレート」という用語で称される。あるいは、分配プレートは、一方の側にのみチャネルを有して、その側においてのみMEAに又はMEAから流体を分配することができ、これは「モノポーラプレート」と称されることがある。典型的な燃料電池スタックは、バイポーラプレートと交互に積層された複数のMEAを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーは、それらの実施形態のいずれかで上述したような触媒インク、ポリマー電解質膜、触媒層、ガス拡散層、又はバイポーラプレートのうちの少なくとも1つを含むデバイスの構成要素である。したがって、本開示のプロセスは、これらのデバイスのいずれかで実施することができる。
【0059】
別の種類の電気化学的デバイスは電解セルであり、これは電気を使用して化学変化又は化学エネルギーを生み出すものである。電解セルの一例は、クロルアルカリ膜電池であり、ここでは、塩化ナトリウム水溶液が、アノードとカソードとの間の電流によって電解される。電解質は、厳しい条件に曝される膜によって、アノード液部分とカソード液部分とに分離される。クロルアルカリ膜電池においては、腐食性の水酸化ナトリウムがカソード液部分に集まり、水素ガスがカソード部分で生じ、塩素ガスがアノードの塩化ナトリウムリッチなアノード液部分から生じる。本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーは、例えば、クロルアルカリ膜電池又は他の電解セルで使用するための触媒インク又は電解質膜の成分とすることができる。
【0060】
本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーはまた、他の電気化学セル(例えば、リチウムイオンバッテリー)における電極のためのバインダーの成分にもなり得る。電極を作製するために、粉末化した活性成分を、コポリマーとともに溶媒中に分散させてよく、金属箔基材又は集電体上にコーティングしてもよい。得られた複合体電極は、金属基材に接着されたポリマーバインダー中に粉末化した活性成分を含有する。負極の作製のために有用な活性材料としては、典型元素の合金及び黒鉛などの導電性粉末が挙げられる。負極の作製のために有用な活性材料の例としては、酸化物(酸化スズ)、炭素化合物(例えば、人工黒鉛、天然黒鉛、土状黒鉛、膨張黒鉛、及び鱗状黒鉛)、炭化ケイ素化合物、酸化ケイ素化合物、硫化チタン、及び炭化ホウ素化合物が挙げられる。正極の作製のために有用な活性材料としては、リチウム化合物、例えばLi4/3Ti5/3、LiV、LiV、LiCo0.2Ni0.8、LiNiO、LiFePO、LiMnPO、LiCoPO、LiMn、及びLiCoOなどが挙げられる。また、電極は、導電性希釈剤及び接着促進剤を含むこともできる。
【0061】
電気化学セルは、電解質中に、正極及び負極の各々を少なくとも1つ配置することによって作製することができる。典型的には、ミクロ多孔性のセパレータが、負極と正極が直接接触することを防止するために使用され得る。電極同士が外部で接続されると、リチウム化及び脱リチウム化が電極において起こり、電流が生成され得る。リチウムイオン電池では、様々な電解質を採用することができる。代表的な電解質は、1つ以上のリチウム塩と、固体、液体又はゲルの形態の電荷輸送媒体とを含有する。リチウム塩の例としては、LiPF、LiBF、LiClO、リチウムビス(オキサレート)ボレート、LiN(CFSO、LiN(CSO、LiAsF、LiC(CFSO、及びこれらの組み合わせが挙げられる。固体電荷輸送媒体の例としては、ポリマー性媒体、例えばポリエチレンオキシド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素含有コポリマー、ポリアクリロニトリル、これらの組み合わせ、及び当業者によく知られるであろう他の固体媒体が挙げられる。液体電荷輸送媒体の例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、メチルジフルオロアセテート、エチルジフルオロアセテート、ジメトキシエタン、ジグリム(ビス(2-メトキシエチル)エーテル)、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、これらの組み合わせ、及び当業者によく知られるであろう他の媒体が挙げられる。電荷輸送媒体ゲルの例としては、米国特許第6,387,570号(Nakamuraら)、及び同第6,780,544号(Noh)に記載されているものが挙げられる。電解質は、他の添加剤(例えば、共溶媒又はレドックス化学シャトル)を含んでもよい。
【0062】
電気化学セルは、充電式バッテリーとして有用であり得、携帯型コンピュータ、タブレット型ディスプレイ、携帯情報端末、携帯電話、モータ駆動デバイス(例えば、個人用又は家庭用の機器及び車両)、装置、照明デバイス(例えば、懐中電灯)、及び加熱デバイスを含めた、様々なデバイスに使用することができる。1つ以上の電気化学セルを組み合わせて、バッテリーパックを提供することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、本開示のプロセスにおいて有用なフッ素化コポリマーは、それらの実施形態のいずれかで上述したようなバインダー、電解セル、又はバッテリーのうちの少なくとも1つを含むデバイスの構成要素である。したがって、本開示のプロセスは、これらのデバイスのいずれかで実施することができる。
【0064】
フッ素化コポリマーが、触媒インク、ポリマー電解質膜、触媒層、ガス拡散層、バイポーラプレート、電解セル、又はレドックスフロー電池のうちの少なくとも1つを含むデバイスの構成要素である場合、本開示のプロセスは、デバイスを粉砕(例えば、ミリング若しくはグラインディング)すること、又は細断することの少なくとも1つ更に含み得る。デバイス(例えば、微粒子形態又は細断された形態)はまた、同時にフッ素化コポリマーを加熱しながら、加熱することもできる。
【0065】
触媒インク、ポリマー電解質膜、触媒層、ガス拡散層、バイポーラプレート、電解セル、又はレドックスフロー電池のうちの少なくとも1つを含むデバイスの構成要素としてのフッ素化コポリマーは、塩形態であり得る。すなわち、スルホネート基及び/又はカルボキシレート基は、塩形態であってもよい。いくつかの実施形態では、フッ素化コポリマーは、塩の代わりにスルホン酸基又はカルボン酸基を含むことが有用である。いくつかの実施形態では、本開示のプロセスは、フッ素化コポリマー(例えば、上記のデバイスのいずれかの存在下又は不在下で)を、無機酸(例えば、HF、塩酸、又は硫酸)で処理して、フッ素化コポリマーをその酸形態、すなわち、スルホン酸基又はカルボン酸基を含む形態に変換することを更に含む。
【0066】
本開示のプロセスを実施するのに有用な反応器は、プラズマが生成されるプラズマゾーンを含有し得る、又はそれに接続され得る。プラズマゾーンは、典型的には、分解ゾーンに又はその後に位置する。プラズマは、分解反応を増進し得る。分解ゾーンの後に使用される場合、プラズマは、フルオロカーボン粒子の沈殿及び再重合を防止又は低減し得る。プラズマは、ガスのイオン化を伴う。プラズマの内部には、負に及び正に帯電した化合物が、実質的に等しい量で存在する。プラズマは、例えば、マイクロ波照射を通して、例えば、プラズマ状態に達して安定化されるまで、マイクロ波照射のエネルギーを増加させることによって生成され得る。プラズマはまた、例えば、米国特許第7,252,744号(Van der Waltら)に記載されるような電気アークによって、又はコロナ処理によって生成され得る。プラズマゾーンのエネルギーレベルは、典型的には、プラズマを安定化するために最適化されるが、フッ素化オレフィンの分解を最小限に抑えることによってフルオロカーボン粒子の沈殿を防止又は低減するために最適化される。プラズマの生成及び安定化に必要なエネルギーレベルは、生成物ガスの組成及び量、並びに(存在する場合)キャリアガス又はガス状反応媒体に依存し得る。
【0067】
本開示のプロセスを実施するのに有用な反応器はまた、クエンチングゾーンを含有してもよく、又はそれに接続され得る。クエンチングゾーンは、分解ゾーンの後に位置し、プラズマゾーンが分解ゾーンの後に位置する場合、クエンチングゾーンは、典型的には、プラズマゾーンの後に位置する。フッ素化コポリマーの第1の加熱及び第2の加熱によって生成され、フッ素化オレフィンを含有する高温生成物ガスは、新たに形成されたフッ素化オレフィンを安定化させ、再重合を防止又は低減するために急速に冷却(すなわち、クエンチ)され得る。典型的には、クエンチングは、ガスを、少なくとも550℃、いくつかの実施形態では、約600℃~約700℃の温度から250℃未満の温度に、5秒未満又は1秒未満で冷却することを要する。任意の好適なクエンチングシステム、例えば、生成物ガスの膨張、低温の別のガスを手段としたガスクエンチング、クエンチプローブ(例えば、米国特許第7,252,744号(Van der Waltら)のもの)、又はこれらの組み合わせを使用してもよい。
【0068】
様々なフッ素化オレフィン並びに他のフッ素化及び非フッ素化生成物が、本開示のプロセスから形成され得、生成物ガス中に存在し得る。所望のフッ素化オレフィン(例えば、TFE又はHFPのうちの少なくとも1つ)は、従来のガス分離システム、例えば、縮合、膨張、及び蒸留によって分離され得る。したがって、いくつかの実施形態では、本開示のプロセスは、生成物ガスからTFE及び/又はHFPを分離することを更に含む。
【0069】
固体材料は、典型的には、反応器の底部に留まるか、又はクエンチングシステムから検出/回収することができる。回収するのに望ましい固体材料としては、例えば、触媒インク由来の金属(例えば、貴金属)又はバイポーラプレート由来の触媒層黒鉛からの金属(例えば、貴金属)が挙げられる。いくつかの実施形態では、本開示のプロセスは、フッ素化オレフィンを生成した後に金属を回収することを更に含む。金属は、貴金属(例えば、金、銀、白金、又はパラジウム)であり得る。
【0070】
以下の実施例に示されるように、1100の当量を有するアイオノマーで実施される本開示のプロセスは、収率82%のTFE及びHPFを生成した。対照的に、この材料を一段階工程において620℃で熱分解したとき、収率20%のTFE/HFPが観察された。
【0071】
本開示がより十分に理解され得るように、以下の実施例を記載する。これらの実施例は単に例示を目的とするものであり、いかなる方法でも本開示を限定すると解釈してはならないことを理解すべきである。
【実施例
【0072】
以下の実施例では、TFE/HFP収率は、理論上可能なTFE/HFP量をクエンチング後に測定されたガス体積から引いて計算した。収率は、ガスクロマトグラフィー(gas chromatography、GC)による熱分解ガスの分析の結果で補正した。
【0073】
参照例1
850μmの平均粒径を有する自由流動性焼結PTFE材料を、垂直流動床反応器(高さ58mm、直径35mm)に連続的に供給した(2グラム/分)。反応器は、SiC粒子を含み、流動床は、過熱蒸気を反応器に供給することによって生成された。反応器内の温度を620℃に維持した。高温の熱分解ガスをNaOH水溶液でクエンチした。熱分解収率は90%であり、94%のTFE、5%のHFP及び1%のC-シクロブタンが生成された。
【0074】
比較例2
Na形態で1100の当量及び1mmの粒径を有する乾燥アイオノマー(TFE及びCF=CF-O-(CF-SONaを基準とする)を、実施例1に記載されるように熱分解した。TFE/HFP収率は21%であり、TFE及びHFPの比は、67%のTFE及び33%のHFPだった。GC分析によって観察されたように、多くの不特定ガスが生成された。
【0075】
実施例3
SOH形態のEW1100を有する比較例2に類似のアイオノマー(500グラム)を、395℃で1時間、連続蒸気流下、4Lの撹拌式床反応器中で処理した。アイオノマー材料は、12%の重量損失を示し、SOH基が除去されたことを示した。
【0076】
次いで、過熱蒸気の流れの下、温度を600℃まで上昇させ、熱分解ガスを水性KOHでクエンチした。3時間後のTFE/HFP熱分解収率(前処理したアイオノマーを基準とする)は83%であり、89%のTFE及び11%のHFPが生成された。対照例2においてGCによって観察された不特定の生成物は、実施例3では観察されなかった。
【0077】
この実施例では、別のオーブン内にて395℃で1時間処理した試料の重量損失を測定した。2つの工程の間に中断はなかった。
【0078】
別の実験では、撹拌反応器中の反応を、395℃の1時間の処理後に停止し、残りの材料を秤量して損失を計算した。実施例3と同様の結果が得られた。
【0079】
本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者によって本開示の様々な修正及び変更を行うことができ、本発明は、本明細書に記載される例示的な実施形態に不当に限定されるものではない点を理解するべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン酸基、カルボン酸基、又はこれらの塩のうちの少なくとも1つを含むフッ素化コポリマーからフッ素化オレフィンを生成するためのプロセスであって、
前記フッ素化コポリマーを450℃以下の第1の温度で加熱して、スルホン酸基、カルボン酸基、又はこれらの塩のうちの少なくとも1つを分解して、部分的に熱分解された中間体を形成することと、
続いて、前記部分的に熱分解された中間体を少なくとも550℃の第2の温度で加熱して、前記フッ素化オレフィンを生成することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記第1の温度が、300℃~450℃の範囲であり、前記第2の温度が、600℃~700℃の範囲である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記フッ素化コポリマーが、スルホン酸基又はカルボン酸基のうちの少なくとも1つを含む、請求項1記載のプロセス。
【請求項4】
前記フッ素化コポリマーが、
式-[CF-CF]-で表される二価の単位と、
独立して式:
【化1】
【化2】
又はこれらの組み合わせで表される二価の単位
[式中、a及びpは、それぞれ独立して0~2であり、各b及びqは独立して2~8であり、各c及びrは独立して0~2であり、各e及びsは独立して1~8であり、Z及びZ’は、それぞれ独立して、水素、アルカリ金属カチオン、又は第4級アンモニウムカチオンである]
と、を含む、請求項1記載のプロセス。
【請求項5】
Z及びZ’が、それぞれ水素である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記フッ素化コポリマーが、式
【化3】
[式中、aは0又は1であり、bは2又は3であり、cは0又は1であり、eは2~4である]、又は
【化4】
[式中、Rfは、1個~8個の炭素原子を有し、任意に1つ以上の-O-基が介在している直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキル基であり、zは0、1又は2であり、各nは独立して1、2、3又は4であり、mは0、1又は2である]
の少なくとも一つで表される二価の単位含む、請求項4記載のプロセス。
【請求項7】
加熱又は後続の加熱のうちの少なくとも1つが、少なくとも部分的にマイクロ波照射で実施され、且つ、任意選択で、前記フッ素化コポリマー又は前記部分的に熱分解された中間体のうちの少なくとも1つを、マイクロ波活性粒子と接触させる、請求項1記載のプロセス。
【請求項8】
前記フッ素化コポリマーが、触媒インク、ポリマー電解質膜、触媒層、ガス拡散層、バイポーラプレート、又は電解セルのうちの少なくとも1つを含むデバイスの構成要素である、請求項1記載のプロセス。
【請求項9】
前記デバイスを粉砕すること又は細断することと、前記フッ素化コポリマーを同時に加熱しながら前記デバイスを加熱することとの少なくとも1つを更に含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記フッ素化オレフィンを生成した後に金属を回収することを更に含み、且つ、任意選択で、前記金属が、金、銀、白金、又はパラジウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項に記載のプロセス。
【国際調査報告】