(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-22
(54)【発明の名称】ガス拡散層、その製造方法、膜電極アセンブリ及び燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/88 20060101AFI20221215BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20221215BHJP
【FI】
H01M4/88 C
H01M4/86 B
H01M4/86 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022541015
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(85)【翻訳文提出日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2020139969
(87)【国際公開番号】W WO2021136148
(87)【国際公開日】2021-07-08
(31)【優先権主張番号】201911414606.9
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522264663
【氏名又は名称】上海嘉資新材料科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沈 星 漢
【テーマコード(参考)】
5H018
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018BB01
5H018BB08
5H018EE08
5H018EE11
5H018EE16
5H018EE19
5H018HH03
(57)【要約】
【課題】燃料電池におけるガス移送バランスを確保することができるガス拡散層、その製造方法、膜電極アセンブリ及び燃料電池を提供する。
【解決手段】ガス拡散層、その製造方法、膜電極アセンブリ及び燃料電池。ガス拡散層は、ガス拡散層基材とガス拡散層基材の表面に塗布された微多孔質層スラリーからなっている。微多孔質層スラリーに、カテコールを含むまたはカテコール構造化合物を含む添加剤を加えられ、特にこの添加剤は、塩酸ドパミンである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に用いられるガス拡散層であって、前記ガス拡散層が、ガス拡散層基材と、前記ガス拡散層基材上に塗布された微多孔質層スラリーとからなり、前記微多孔質層スラリーが、カテコールまたはピロカテコール化合物を含有する添加剤を添加することを特徴とするガス拡散層。
【請求項2】
前記ガス拡散層の微多孔質層製造工程に使用されるスラリーに、塩酸ドパミンを添加することを特徴とする請求項1に記載のガス拡散層。
【請求項3】
前記ガス拡散層の微多孔質層製造工程で使用されるスラリーが、導電性材料、孔形成剤、疎水剤及び分散剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のガス拡散層構造。
【請求項4】
前記ガス拡散層の微多孔質層製造工程で使用するスラリーが、カーボンブラックである導電材料を含有することを特徴とする請求項1に記載のガス拡散層構造体。
【請求項5】
前記ガス拡散層の微多孔質層製造工程で使用するスラリーが、炭酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、炭酸リチウムの1種または2種からなる孔形成剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のガス拡散層構造。
【請求項6】
前記ガス拡散層の微多孔質層の製造工程で使用するスラリーが、疎水剤を含有し、前記疎水剤が、カテコールまたはピロカテコール化合物を含む添加剤を添加したポリテトラフルオロエチレン水分散液であることを特徴とする請求項1に記載のガス拡散層構造。
【請求項7】
前記ガス拡散層の微多孔質層製造工程で使用するスラリーが、アルコール類である分散剤を含有することを特徴とする請求項1に記載のガス拡散層構造。
【請求項8】
前記ガス拡散層の厚さが、10μm~500μmであることを特徴とする請求項1に記載のガス拡散層構造。
【請求項9】
請求項1に記載のガス拡散層構造において、
請求項1~8のいずれか1項に記載のガス拡散層を製造するガス拡散層製造方法であって、
導電性材料、孔形成剤、疎水剤及び分散剤を均一に混合、分散して含有する微多孔質層スラリーを製造する工程、
ガス拡散層基材表面を疎水化処理した後に、前記微多孔質層スラリーを直接塗布またはスクリーン印刷で塗布する工程、及び
前記微多孔質層スラリーを塗布したガス拡散層を焙焼処理する工程
を行うことを特徴とするガス拡散層製造方法。
【請求項10】
前記基材が、カーボン紙またはカーボン布であることを特徴とする請求項9に記載のガス拡散層製造方法。
【請求項11】
前記ガス拡散層に使用する前記微多孔質層スラリーに、塩酸ドパミンを加えることを特徴とする請求項9に記載のガス拡散層の製造方法。
【請求項12】
前記ガス拡散層に使用する前記微多孔質層スラリーが、導電性材料、孔形成剤、疎水剤及び分散剤を含有することを特徴とする請求項9に記載のガス拡散層の製造方法。
【請求項13】
前記ガス拡散層の微多孔質層製造工程で使用するスラリー中の前記導電性材料が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項9に記載のガス拡散層の製造方法。
【請求項14】
前記孔形成剤が、炭酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、炭酸リチウムからの1種または2種を含むことを特徴とする請求項9に記載のガス拡散層の製造方法。
【請求項15】
前記疎水剤が、カテコールまたはピロカテコール化合物を含有する添加剤を添加したポリテトラフルオロエチレン水性分散液であることを特徴とする請求項9に記載のガス拡散層の製造方法。
【請求項16】
前記分散剤が、アルコール類であることを特徴とする請求項9に記載のガス拡散層の製造方法。
【請求項17】
前記ピロカテコール化合物を含有する前記添加剤が、塩酸ドパミンであることを特徴とする請求項15に記載のガス拡散層の製造方法。
【請求項18】
前記ガス拡散層の厚さが、10μm~500μmであることを特徴とする請求項9に記載のガス拡散層の製造方法。
【請求項19】
カソード側ガス拡散層、カソード側触媒層、プロトン交換膜、アノード側触媒層及びアノード側ガス拡散層が順次積層されてなる膜電極アセンブリであって、
前記カソード側ガス拡散層が、請求項1から18のいずれか1項に記載のガス拡散層の微多孔質層であり、
前記アノード側ガス拡散層が、請求項1~18のいずれか1項に記載のガス拡散層を含んでいることを特徴とする膜電極アセンブリ。
【請求項20】
請求項19に記載の膜電極アセンブリを含む燃料電池スタック、ポーラプレート、コレクタープレート、絶縁プレート、シーリング構造及びエンドプレートからなることを特徴とする燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の技術分野に係り、より詳細には、ガス拡散層、その製造方法、膜電極アセンブリ及び燃料電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
代替エネルギー技術として、燃料電池は、起動の容易さ、高エネルギー密度、ゼロエミッション、そして高いエネルギー変換効率などから広く注目され、研究開発が続けられており、自動車、通信基地局、携帯電動工具などの電源として広く利用されてきた。燃料電池は、バックアップ電源、乗用車、貨物輸送車、潜水艦などの用途のように商業用電源として使用されるために、長寿命と高エネルギー密度など優れた利点を有していなければならない。
【0003】
プロトン交換膜型燃料電池(PEMFC)は、最も開発が進んでおり、最も実用化に近い。ガス拡散層は、PEMFCの膜電極において、5つの大きな役割を担っている。
第1に、プロトン交換膜と触媒層の支持、第2に、流路内のアノードとカソードの反応ガスを分子拡散とクヌーセン拡散により触媒表面に移動させること、第3に、触媒層で生成した電子をポーラプレートへ移動させること、第4に、触媒層で生成した水を、流路に移動させ、ガス拡散層内での毛細管現象と濃度拡散等によって排出し、物質移動分極を回避すること、第5に、例えば、触媒層をガス拡散層表面に直接設けられるように、ガス拡散層が触媒層の機能を担うことである。
【0004】
一般的に使用されているガス拡散層は、炭素繊維で作られている。湿式抄造法または乾式不織布の方法でベース紙を製造し、次いで炭化及び黒鉛化してガス拡散層用ベース紙とする。炭素繊維の表面は親水性または僅かに疎水性であるために、燃料電池で生成した水または流入した水は、ガス拡散層内に溜まり排出し難く、反応ガスが触媒表面にタイミングよく移動せず、重大な物質移動分極が生じて電池性能の低下となることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の説明から、燃料電池の性能を確保するために、燃料電池内のガス移動バランスを如何にして確保するかは、燃料電池の分野では緊急の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の技術的解決策は、燃料電池におけるガス移送バランスを確保することができるガス拡散層、その製造方法、膜電極アセンブリ及び燃料電池を提供することである。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決策を提供する。
燃料電池に用いるガス拡散層であって、このガス拡散層の微多孔質層製造工程で用いる組成物のスラリー中に、カテコールまたはピロカテコール化合物、特に塩酸ドパミンを含む添加剤を加える。また、このガス拡散層の微多孔質層製造工程で用いるスラリーに、塩酸ドパミンを加える。
【0008】
このガス拡散層の微多孔質層製造工程で用いるスラリーは、導電性材料、孔形成剤、疎水剤及び分散剤からなる。また、ガス拡散層の微多孔質層製造工程で用いるスラリーは、導電性材料、孔形成剤、疎水剤及び分散剤を含む。
【0009】
ガス拡散層の微多孔質層製造工程で用いるスラリー中の導電性材料がカーボンブラックであり、孔形成剤は、炭酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、炭酸リチウムのうちの1種または2種を含み、疎水剤は、カテコールまたはピロカテコール化合物を含む添加剤、特に塩酸ドパミンを加えたポリテトラフルオロエチレン水分散液である。分散剤は、アルコール類である。
【0010】
ガス拡散層の厚さは、10μm~500μmである。
【0011】
本発明は、またガス拡散層の製造方法を開示しており、この製造方法は以下の工程(ステップ)を有している。
導電性材料、孔形成剤、疎水剤と分散剤を均一に混合、分散して含む微多孔質層スラリーを製造する工程、
ガス拡散層基材表面を疎水化処理した後、この表面に、微多孔質層スラリーを直接塗布あるいはスクリーン印刷で塗布する工程、及び
微多孔質層スラリーを塗布したガス拡散層を焙焼処理する工程を含む。
【0012】
ガス拡散層の微多孔質層製造工程で用いるスラリーに塩酸ドパミンを加える。ガス拡散層の微多孔質層製造工程で用いるスラリーは、導電性材料、孔形成剤、疎水剤及び分散剤を含む。
【0013】
ガス拡散層の微多孔質層製造工程で使用するスラリー中の導電性材料は、カーボンブラックであり、孔形成剤は、炭酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、炭酸リチウムのうちの1種または2種を含み、疎水剤は、カテコールまたはピロカテコール化合物(特に、塩酸ドパミン)を加えたポリテトラフルオロエチレン水性分散液である。分散剤は、アルコール類である。
【0014】
ガス拡散層の厚さは、10μm~500μmである。
【0015】
本発明は、さらに、膜電極アセンブリも含み、この膜電極アセンブリは、カソード側ガス拡散層、カソード側触媒層、プロトン交換膜、アノード側触媒層及びアノード側ガス拡散層を順次積層してなり、カソード側ガス拡散層は、本発明のガス拡散層微多孔質層処理工程によって製造され、アノード側ガス拡散層は、本発明のガス拡散層微多孔質層処理工程によって製造されることを特徴とする。
【0016】
本発明は、燃料電池をも含み、この燃料電池スタックは、膜電極集アセンブリ、ポーラプレート、コレクタープレート、絶縁プレート、シール構造、エンドプレートからなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
以下に、本発明の実施形態または先行技術における技術的解決策をより明確に説明するために、実施形態または先行技術の説明に用いる図面である。以下の説明中の図面は、本発明の実施形態にすぎず、当業者にとっては、創意工夫なく、提供された図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【0018】
【
図2】本発明の膜電極アセンブリの構造を示す模式図である。
【
図3】本発明の製造した単電池と、従来の解決策により製造した単電池のテスト性能結果の比較曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態による技術的解決策を、実施形態の図面を用いて明確かつ完全に説明する。説明された実施形態は、本発明の実施形態の一部に過ぎず、その全てでないことは明らかである。当業者が本発明の実施形態に基づいて創意工夫することなく得られる他の全ての実施形態は、本発明の保護範囲に含まれる。
【0020】
一般に、プロトン交換膜式燃料電池、すなわちPEMFCの基本構成要素は、ポーラプレート、ガス拡散層、触媒層、及びプロトン交換膜である。
【0021】
ポーラプレートは、シングルポーラプレートとバイポーラプレートがあり、その機能は、スタック内の個々の単電池を分離し、燃料と酸素を流路を通してガス拡散層に送ることである。同時に、電流を外部に流すために比較的高電気伝導性を持つことが必要である。
【0022】
ガス拡散層、触媒層、プロトン交換膜は、膜電極アセンブリを構成している。触媒層とポーラプレートの間に位置するガス拡散層は、PEMFCにおける主要部材の一つであり、膜電極アセンブリの最外層である。ガス拡散層は、膜電極アセンブリとポーラプレートの間に接して、反応物を触媒層に送り、反応生成物、すなわち水を電極表面から離して電極と流路との間を流す。
【0023】
以上の要件から、現在の燃料電池に満足に使用されるガス拡散層は、カーボン紙(例えば、炭素繊維紙)やカーボン布(例えば炭素繊維布)などの多孔質炭素材料であり、その一表面を多孔質層にしている。ガス拡散層を通過する反応ガスと液体の水の移動を改善するために、通常、カーボン紙やカーボン布を疎水化して、疎水性気相流路を構築する。
【0024】
通常、ガス拡散層の表面に炭素粉末層を作って、多孔質構造を向上させている。この機能は、触媒層とガス拡散層との間の接触抵抗を下げて、多孔質構造と撥水性を改善し、ガスと水を再分布させ、電極触媒層の“フラッディング”を防いでいる。微多孔質層内の疎水剤と微多孔質の毛細管現象により、微多孔質層に優れた疎水性と排水性を与え、これにより、燃料電池内の反応に安定したガスと水の流路を提供し、微多孔質層中の導電性カーボンブラックが、微多孔質層における優れた電子流路を提供することができる。この添加により、流れ領域と触媒層の間で反応ガスと反応生成水を再分配し、電気伝導度を上げ、電極性能を向上させ、電池の動作安定性を向上させ、動作寿命を延すのに重要な役割を果たす。
【0025】
従来の燃料電池の微多孔質層構造は、水-蒸気の透過性が高い微多孔質層と水-蒸気の透過性が低い微多孔質層を、空気の流れ方向に対して垂直配向に順次に積層している。そのため、空気の流れ方向に沿って、水-蒸気の透過性が高い微多孔質層の厚みを増し、水-蒸気の透過性が低い微多孔質層の厚みを薄くして微多孔質層構造の総厚さは変わらないようにしている。
【0026】
しかしながら、親水性である炭素繊維表面を、疎水性であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)スラリーと組み合わせることは容易でない。従来のスラリー製造方法は、ガス拡散層材料の疎水性の問題を解決するが、ポリテトラフルオロエチレンが炭素繊維表面に不均一に分布して塊状に集まり易い。特に、燃料電池スタック、特に自動車用燃料電池スタックの長期運転では、運転寿命が数万時間、湿潤-乾燥サイクルが数万回、そして熱ショックを経るなど、運転条件が非常に複雑で過酷である。
【0027】
燃料電池スタックの中核部品である膜電極の故障解析では、ガス拡散層において微多孔質層と基材層との間に剥離による大きな隙間が生じ、そこに液体の水が溜まって局所的なフラッディングとなり、反応ガスが触媒表面に拡散するのを阻害し、物質移動分極と局所的に逆極性となり、最終的に膜電極の電圧低下、あるいはパーフォレーション事故となる。一般に、燃料電池スタックが氷点下となると、ガス拡散層に残っている液体の水が凍結して容積が増え、温度が上昇するとその氷が解ける。この繰り返しで隙間はどんどん大きくなっていくと考えられている。特に、微多孔質層が基材層と接している部分では、2つの材料間の差異により液体の水が溜まり易く、先ずそれにより故障する。
【0028】
本発明で選ばれる微多孔質層スラリーに、カテコールまたはピロカテコール化合物、特に塩酸ドパミンを含む添加剤を加える。この物質の分子内にある芳香環官能基は、π-π共役構造を持つユニットであり、高温黒鉛化後の炭素繊維表面の炭素-炭素化学結合構造に類似し、接触が良く、分散する。一方、芳香環自体のo-ヒドロキシル構造は、微多孔質層の導電性を向上させる良好な導電性を有し、ポリテトラフルオロエチレン分子鎖と良好に接触することができ、また、ポリテトラフルオロエチレン溶液中のアルコール溶媒とよく混和する。
【0029】
特に、カテコール構造をもつ塩酸ドパミンは、アミノ酸構造の官能基も有し、ポリテトラフルオロエチレン溶液と炭素繊維の結合をさらに高めることができる。アミノ酸官能基は、その後の工程である高温処理で自然に分解し、生成ガスとして放出され、一方、これは孔形成剤でもあり、ガス拡散層材料の空隙率を高める。実際に、カテコール基の付着能力の知見は、貝類の海洋生物の触手に分泌される物質から始まったもので、この触手は、分泌する粘着性タンパク質にカテコール基が存在するために様々な表面に付着することができる。カテコール基を含む化合物は、貝の魔法のような接着能力を模倣しているため、ポリテトラフルオロエチレンをガス拡散層中の炭素繊維の表面に密着させることができる。
【0030】
本発明の上述の目的、特徴及び利点をより明白かつ理解し易くするため、本発明を、図面及び詳細な実施形態と合わせて、以下に詳述する。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態により提供される燃料電池ガス拡散層の製造方法のフロー図であり、
図1に示すように、この製造方法は、以下からなっている。
ステップS11:導電性材料、孔形成剤、疎水剤及び分散剤を均一に混合、分散させて微多孔質層スラリーを作る。
この導電性材料は、カーボンブラック、好ましくはバルカンXC-72(R)またはアセチレンブラックである。孔形成剤は、炭酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、炭酸リチウムの一種又は二種で、好ましくはシュウ酸アンモニウムである。疎水剤は、カテコールまたはピロカテコール化合物、特に塩酸ドパミンを含む添加剤を加えたポリテトラフルオロエチレン水性分散液である。分散剤は、アルコール類であり、エタノール、イソプロパノール及びエチレングリコールのうちの1種又は2種であり、好ましくはイソプロパノールである。
【0032】
ステップS12:ガス拡散層基材の表面を、疎水化処理した後に、スラリーを直接塗布またはスクリーン印刷で塗布する。ここで、基材は、カーボン紙またはカーボン布であることができる。
ステップS13:微多孔質層スラリーを塗布したガス拡散層を、乾燥炉中で焙焼する。
【0033】
ステップS11で使用される微多孔質層スラリーは、導電性材料、孔形成剤、疎水剤及び分散剤を均一に混合して分散させたものである。
【0034】
上記実施形態に基づいて、本発明の別の実施形態は、
図2に示すような膜電極アセンブリも提供する。
図2は、本発明により製造されたガス拡散層により組み立てられた燃料電池膜電極アセンブリの各構成要素の説明図である。1はプロトン交換膜、21はアノード側触媒層、31はアノード側ガス拡散層微多孔質層、41はアノード側ガス拡散層基材部分、22はアノード側触媒層、32はアノード側ガス拡散層微多孔質層、42はアノード側ガス拡散層基材部分である。
【0035】
上記の実施形態に基づいて、本発明の別の実施形態は、上記の実施形態に記載した膜電極アセンブリを備えた燃料電池を提供する。
【0036】
以下の具体的な設計パラメータと組み合わせて、本願の技術的解決策に記載した微多孔質層構造を有する燃料電池(サンプル1)の性能を、従来技術により製造された燃料電池(サンプル2)と比較する。
【0037】
サンプル1:本発明の実施形態に記載した技術的解決により製造した微多孔質層構造;
1)バルカン(Vulcan)XC-72(R)3.2g、シュウ酸アンモニウム2.5gを含む水溶液60ml、20%ポリテトラフルオロエチレン希釈液8g、塩酸ドパミン0.08gを一定量のイソプロパノールに注ぎ、よく撹拌して粘度が300cpのスラリーとする、
2)カーボン紙(東レH060カーボン紙)を疎水化処理した後、カーボン紙上に上記スラリーを塗布する、
3)スラリーで塗布したガス拡散層をマッフル炉に入れ、昇温速度5℃/分で最終的に340℃とし60分間焙焼する。炉を室温に戻し、ガス拡散層を取り出し、微多孔質層の製造完了とする。
【0038】
以下の微多孔質層の空隙率テスト方法により、この実施形態により製造されたガス拡散層の空隙率が53.1%、厚さが223μmであると測定された。
【0039】
比較サンプル(サンプル2):従来の技術的解決により生成した微多孔質層構造;
1)バルカンXC-72(R)3.2g、シュウ酸アンモニウム2.5gを含む水溶液60ml、20%ポリテトラフルオロエチレン希釈液8gを一定量のイソプロパノールに注ぎ、よく撹拌して粘度が300cpのスラリーとする、
2)カーボン紙(東レH060カーボン紙)を疎水性処理した後、カーボン紙上に上記のスラリーを塗布する、
3)このスラリーで塗布したガス拡散層をマッフル炉に入れ、昇温速度5℃/分で最終的に340℃とし60分間焙焼する。炉を室温に戻し、ガス拡散層を取り出し、微多孔質層の製造完了とする。
サンプルの空隙率は,後述の微多孔質層の空隙率試験法に従って,48.2%,厚さ219μmと測定された。
【0040】
本発明の本実施形態において、微多孔質層の空隙率を測定するのに、含浸法を採用する。
まず、面積a、厚さb1の疎水化処理されたガス拡散層基材の重量をε1とし、重量が一定になるまでデカンに浸漬する(デカンは、湿潤液として用い、表面エネルギーが低いことから拡散層の基層の全ての孔に入り込む)。浸漬後のガス拡散層基材の重量ε2を求める。
次いで、同じ面積a、厚さb2で製造したガス拡散層(ガス拡散基材と微多孔質層を含む)の重量をε3として秤量し、デカン中に重量が一定になるまで浸漬する。浸漬後のガス拡散層(ガス拡散基材層と微多孔質層を含む)の重量をε4とし、以下の式を用いて微多孔質層の空隙率φを計算する。
【0041】
【0042】
上記2つのサンプルを、活性領域面積200cm
2のPEMFCに組み込み、ここで、サンプル1は
図3に示すように、ガス拡散層の組立て、カソードとアノードのガスの流れ方向を同じにして作製して、電池の電気化学性能を試験して比較した。
【0043】
図3のデータのテスト環境は、カソード入口圧力がアノード入口圧力と同じ、アノード入口ガスの湿度50%、カソード入口ガスの湿度50%、その他の運転条件は全て同じである。その結果によると、電流密度が1.0A/cm
2以上では、サンプル1で製造した電池の電圧は安定していたが、サンプル2で製造した電池の電圧は明らかに低下しており、物質移動分極が見られた。
【0044】
図3は、横軸に電流密度、縦軸に電圧を示している。本願発明の技術的解決策によって製造した燃料電池は、自己加湿効果が比較的良好で、電池性能がすばらしいことが分かる。
【0045】
工程条件は、必要に応じて調整して種々の厚さのガス拡散層を製造することができ、例えば、ガス拡散層の厚さを10μmと500μmの間にすることができる。上に開示した実施形態の説明で、当業者は、本発明を実施または利用することができる。これらの実施形態に対しての様々な変更は、当業者には明らかであり、本明細書で定義された一般原理は、本発明の精神または範囲から逸脱することなく他の実施形態で実施することが可能である。したがって、本発明は、ここに示したこれらの実施形態に限定されるものではなく、ここに開示した原理及び新規な特徴と整合する最も広い範囲に従うものとする。
【0046】
本発明は、下記の例によって実施できる。
例1:燃料電池に用いられるガス拡散層であって、このガス拡散層が、ガス拡散層基材と、ガス拡散層基材上に塗布された微多孔質層スラリーとからなり、そのスラリーにカテコールまたはピロカテコール化合物を含む添加剤を加えることを特徴とするガス拡散層。
【0047】
例2:ガス拡散層の微多孔質層製造工程に使用されるスラリーに、塩酸ドパミンを加えることを特徴とする例1のガス拡散層。
例3:ガス拡散層の微多孔質層製造工程で使用されるスラリーが、導電性材料、孔形成剤、疎水剤及び分散剤を含有することを特徴とする例1のガス拡散層構造。
例4:ガス拡散層の微多孔質層製造工程で使用するスラリーが、カーボンブラックである導電材料を含有することを特徴とする例1のガス拡散層構造。
例5:ガス拡散層の微多孔質層製造工程で使用するスラリーが、炭酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、炭酸リチウムの1種または2種からなる孔形成剤を含有することを特徴とする例1のガス拡散層構造。
【0048】
例6:ガス拡散層の微多孔質層の製造工程で使用するスラリーが、カテコールまたはピロカテコール化合物を含む疎水剤を加えたポリテトラフルオロエチレン水分散液を含有することを特徴とする例1のガス拡散層構造。
例7:ガス拡散層の微多孔質層製造工程で使用するスラリーが、アルコール類である分散剤を含有することを特徴とする例1のガス拡散層構造。
例8:ガス拡散層の厚さが、10μm~500μmであることを特徴とする例1のガス拡散層構造。
【0049】
例9:例1に記載のガス拡散層構造において、
例9:例1~8のいずれか1例に記載のガス拡散層を製造するガス拡散層製造方法であって、
導電性材料、孔形成剤、疎水剤及び分散剤を均一に混合、分散して含有する微多孔質層スラリーを製造する工程、
ガス拡散層基材表面を疎水化処理した後に、微多孔質層スラリーを、直接塗布またはスクリーン印刷で塗布する工程、及び
前記微多孔質層スラリーを塗布したガス拡散層を焙焼処理する工程を行うことを特徴とするガス拡散層製造方法。
【0050】
例10:基材が、カーボン紙またはカーボン布であることができることを特徴とする例9に記載のガス拡散層製造方法。
例11:ガス拡散層に使用する微多孔質層スラリーに、塩酸ドパミンを加えることを特徴とする例9のガス拡散層の製造方法。
例12:前記ガス拡散層に使用する前記微多孔質層スラリーが、導電性材料、孔形成剤、疎水剤及び分散剤を含有することを特徴とする例9のガス拡散層の製造方法。
例13:ガス拡散層の微多孔質層製造工程で使用するスラリー中の導電性材料が、カーボンブラックであることを特徴とする例9のガス拡散層の製造方法。
例14:孔形成剤が、炭酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、炭酸リチウムのうちの1種または2種を含むことを特徴とする例9のガス拡散層の製造方法。
【0051】
例15:疎水剤が、カテコールまたはピロカテコール化合物を含む疎水剤を加えたポリテトラフルオロエチレン水性分散液であることを特徴とする例9のガス拡散層の製造方法。
例16:分散剤が、アルコール類であることを特徴とする例9のガス拡散層の製造方法。
例17:ピロカテコール化合物を含有する添加剤が、塩酸ドパミンであることを特徴とする例15のガス拡散層の製造方法。
例18:ガス拡散層の厚さが、10μm~500μmであることを特徴とする例9のガス拡散層の製造方法。
【0052】
例19:カソード側ガス拡散層、カソード側触媒層、プロトン交換膜、アノード側触媒層及びアノード側ガス拡散層が順次積層されてなる膜電極アセンブリであって、
前記カソード側ガス拡散層が、例1から18のいずれか1例のガス拡散層の微多孔質層であり、アノード側ガス拡散層が、例1から18のいずれか1例のガス拡散層を、含んでいることを特徴とする膜電極アセンブリ。
【0053】
例20:例19に記載の膜電極アセンブリを含む燃料電池スタック、ポーラプレート、コレクタープレート、絶縁プレート、シーリング構造及びエンドプレートからなることを特徴とする燃料電池。
【符号の説明】
【0054】
1 プロトン交換膜
21 アノード側触媒層
22 アノード側触媒層
31 アノード側ガス拡散層微多孔質層
32 アノード側ガス拡散層微多孔質層
41 アノード側ガス拡散層基材部分
42 アノード側ガス拡散層基材部分
【国際調査報告】