IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ノバルティス アーゲーの特許一覧

特表2022-553493患者におけるヒトウイルス関連障害を予防するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-23
(54)【発明の名称】患者におけるヒトウイルス関連障害を予防するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20221216BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221216BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20221216BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221216BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221216BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221216BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20221216BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20221216BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20221216BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20221216BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221216BHJP
   C07H 15/04 20060101ALN20221216BHJP
   C07D 498/18 20060101ALN20221216BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20221216BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20221216BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K45/00
A61P31/12
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 D
A61P43/00 121
A61K38/16
A61K31/706
A61K31/436
A61K9/19
A61K9/08
C07H15/04 B
C07D498/18
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022515685
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(85)【翻訳文提出日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 IB2019057658
(87)【国際公開番号】W WO2021048595
(87)【国際公開日】2021-03-18
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)公開日: 平成30年10月30日~31日(2)集会の名前と場所:2018 BioSafe European Annual General Membership Meeting(スイス国 バーゼル リヒトシュトラーセ 35シーエイチ4056) (3) 公開者: ルービック-シュナイダー,ティナ (4) 公開された発明の内容: ルービック-シュナイダー,ティナが、2018 BioSafe European Annual General Membership Meetingにおいて、ルービック-シュナイダー,ティナ、トラジアイ,エリザベッタおよびウルリッヒ,ペーターが発明した、本願発明の一部を含む、「Anti-CD40 does not impair EBV control invitro」を公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100196966
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 渉
(72)【発明者】
【氏名】ルービック-シュナイダー,ティナ
(72)【発明者】
【氏名】トラジアイ,エリザベッタ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ,ペーター
【テーマコード(参考)】
4C057
4C072
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057DD02
4C057JJ03
4C072AA03
4C072BB03
4C072CC01
4C072CC12
4C072DD07
4C072EE09
4C072FF15
4C072GG07
4C072HH01
4C072UU01
4C076AA11
4C076AA30
4C076CC27
4C076CC35
4C076FF01
4C076FF11
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA25
4C084BA44
4C084DA11
4C084MA02
4C084MA16
4C084MA44
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZB33
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086EA04
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA07
4C086MA16
4C086MA44
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB33
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、ヒトウイルス関連障害、特にEBV関連障害を予防する方法及び対象、特に固形臓器移植患者のようなかかる障害を発症するリスクがある対象におけるEBV負荷を制御する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるEBV関連障害を予防する方法であって、治療有効量のCD40アンタゴニストを前記対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記対象は、小児患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象は、臓器又は組織移植を受けることになる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象は、EBV血清陽性ドナーから臓器を受けるEBV血清陰性移植患者である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者は、肝移植患者である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記対象は、免疫抑制されている、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記EBV関連障害は、癌又はリンパ増殖性疾患である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
対象がEBV関連障害を発症する可能性を低減する方法であって、治療有効量のCD40アンタゴニストを前記対象に投与することを含む方法。
【請求項9】
前記患者は、小児患者である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記対象は、臓器又は組織移植を受けることになる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象は、EBV陽性ドナーから臓器を受けるEBV血清陰性移植患者である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記患者は、肝移植患者である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記対象は、免疫抑制されている、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記EBV関連障害は、癌又はリンパ増殖性疾患である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
移植後リンパ増殖性疾患の可能性を低減する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
固形臓器を、それを必要とする患者に移植する方法であって、CD40アンタゴニストを前記対象に投与することを含む方法。
【請求項17】
前記患者は、小児患者である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記対象は、EBV陽性ドナーから臓器を受けるEBV血清陰性移植患者である、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記患者は、肝移植患者である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記対象は、免疫抑制されている、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
対象におけるEBV感染を制御する方法であって、治療有効量のCD40アンタゴニストを前記対象に投与することを含む方法。
【請求項22】
前記患者は、小児患者である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記対象は、臓器又は組織移植を受けることになる、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
前記対象は、EBV陽性ドナーから臓器を受けるEBV血清陰性移植患者である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記患者は、肝移植患者である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記対象は、免疫抑制されている、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記CD40アンタゴニストは、抗CD40抗体である、請求項1、8、16又は21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記CD40アンタゴニストは、ASKP1240、BI655064及びFFP104からなる抗CD40抗体の群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体は、ADCC活性が抑制された抗CD40抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記抗体は、
e.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
f.配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
g.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む抗CD40抗体、及び
h.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号14のFc領域とを含む抗CD40抗体
からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体は、配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列又は配列番号11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項28又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記抗体は、CFZ533である、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体CFZ533は、CsA、タクロリムス又はエベロリムスなどのmTor阻害剤と組み合わせて使用される、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染のリスクがある個体におけるウイルス関連障害を予防するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エプスタイン・バーウイルス(EBV)は、成人集団の90%超が持続感染した、ヒトにおいて最も成功した病原体の1つである(Cesarman 2014,Cohen 2015)。免疫不全個体におけるEBV感染は、すべての種類の疾患、例えば悪性腫瘍、例えば癌(胃若しくは鼻咽頭)又はリンパ腫(例えば、ホジキンリンパ腫)に関連し得る。末期臓器不全を有する患者の場合、移植は、選択される治療である。しかし、移植の成功は、臓器拒絶反応を予防するための免疫抑制薬に依存する。EBV関連移植後リンパ増殖性障害(PTLD)は、EBV一次感染又は再活性化に関連する。免疫適格個体では、抗ウイルスT細胞応答は、感染を制御するが、EBVは、メモリーB細胞及び他のいくつかの細胞型において潜伏したままである。移植患者では、現行の免疫抑制療法は、抗EBV T細胞応答を弱め、EBV誘導B細胞増殖を制御不能状態にする。EBV血清陽性ドナーから臓器を受けるEBV移植患者、特にEBVナイーブ患者は、EBV関連移植後リンパ増殖性障害(PTLD)を発症するリスクがある。さらに、EBV陽性レシピエントは、かかる重篤な障害を発症する増加したリスクをたとえ小さいとしても有する。別のウイルス、JCウイルスは、進行性多巣性白質脳症(PML)の恐るべき合併症に関与する。EBVの場合、JCウイルス感染細胞は、抗ウイルス性のT細胞制御を受ける。T細胞機能に影響する現行の免疫抑制剤は、EB及びJCのような潜伏ウイルスの活性化についてのリスクを増加させる。腎移植後の良好な短期結果にもかかわらず、中期結果では、残念ながら、主にシクロスポリンA(CsA)又はタクロリムス毒性のようなカルシニューリン阻害剤(CNI)に起因して患者の30%が5年目、50%が10年目にその腎機能を失う。市場化されている1つのCNIフリーのレジメンは、ベラタセプト(抗CTLA-4 Ig)とミコフェノール酸との組み合わせ投与である。ベラタセプトは、CD80/CD86を遮断し、それによりT細胞共刺激、したがってT細胞活性化を阻害する(Larsen 2005,Vincenti 2005)。ベラタセプトの使用は、移植後リンパ増殖性障害(PTLD)のリスクが増加することから、EBV血清陰性移植患者では禁忌である(Hardinger et al.,International Journal of Nephrology and Renovascular Disease 2016:9 139-150)。タクロリムスを置換(CNIフリー)又は還元(CNI相乗効果)することで、新しいレジメンは、より優れた安全性特性及びより優れた長期移植片生存とともに標準治療の有効性を提供し得る。したがって、EBV又はJCV感染のようなウイルス感染及び関連疾患を調節、予防又は阻害する、特にEBV陽性又はEBVナイーブ移植患者におけるPTLD又はJCウイルス(JC virus)によって引き起こされるPMLを発症する可能性を予防又は低減する新規な治療法が緊急に求められている。
【発明の概要】
【0003】
移植後リンパ増殖性障害(PTLD)のようなエプスタイン・バーウイルス(EBV)関連障害は、EBV一次感染又は再活性化に関連する。免疫適格性個体では、抗ウイルスT細胞応答は、感染を制御するが、EBVは、B細胞及びいくつかの他の細胞型において潜伏したままである。移植患者であれば、免疫抑制は、抗EBV T細胞応答を弱め、EBV誘導B細胞増殖を制御不能状態にし得る。本発明者らは、CD40アンタゴニストが、EBV関連障害の、かかる障害を発症するリスクがある対象における予防にとって好適な治療であることを見出した。シクロスポリンA(CsA)、CTLA4-Ig融合タンパク質(ベラタセプト)及び抗CD40 mAb(CFZ533/イスカリマブ)を試験するEBV制御アッセイでは、本発明者らは、意外にも、CD40アンタゴニストが、CsA及びベラタセプトと対照的に、インビトロでEBV制御を損なわないことを見出した。したがって、CD40アンタゴニスト、特にCFZ533/イスカリマブのような抗CD40抗体の使用は、リンパ増殖性障害(PTLD)のようなEBV関連移植後障害のリスクを低減する新しい移植方法のための基盤を提供する。本明細書で開示される本発明は、EBV血清陽性ドナーから臓器を受けるEBVナイーブ移植患者がPTLDのようなEBV関連疾患を発症するリスクを低減するという長年にわたる要求に対する解決策を提供する。
【0004】
本開示の第1の態様によると、ヒトウイルス関連障害を、かかる障害を発症するリスクがある対象において予防する方法であって、CD40アンタゴニストを前記対象に投与することを含む方法が提供される。
【0005】
本開示の第1の態様の一実施形態では、ウイルスは、EBV若しくはサイトメガロウイルス(CMV)のようなヒトヘルペスウイルス又はジョンカニンガムウイルス(JCV)のようなベータポリオーマウイルスである。
【0006】
本開示の第1の態様によると、EBV関連障害を、かかる障害を発症するリスクがある対象において予防する方法であって、CD40アンタゴニストを前記対象に投与することを含む方法が提供される。
【0007】
本開示の第2の態様は、固形臓器を、それを必要とするEBV血清陰性患者に移植する方法であって、CD40アンタゴニストを対象に投与することを含む方法に関する。
【0008】
第3の態様では、本開示は、対象におけるEBV感染を制御する方法であって、治療有効量のCD40アンタゴニストを前記対象に投与することを含む方法に関する。
【0009】
一実施形態では、本開示の上記の第1、第2又は第3の態様のいずれかに従う方法は、対象がEBV関連障害を発症する可能性を低減する方法であって、CD40抗体を対象に投与することを含む方法である。
【0010】
別の実施形態では、本開示の上記の第1、第2又は第3の態様のいずれかに従う上記実施形態のいずれかに従う方法は、EBV関連障害を発症するリスクがある対象が臓器又は組織移植を受けることになる、方法である。
【0011】
一実施形態では、本開示の第1、第2又は第3の態様の上記実施形態のいずれかに従う方法は、対象が、(i)EBV血清陽性ドナーから臓器を受けるEBVナイーブ血清陰性移植患者、又は(ii)EBVナイーブドナーから臓器を受けるEBVナイーブ患者、又は(iii)EBV血清陽性若しくは血清陰性ドナーから臓器を受けるEBV血清陽性患者である、方法である。
【0012】
さらなる実施形態では、本開示の第1、第2又は第3の態様の上記実施形態のいずれかに従う方法は、患者が小児患者である、方法である。別の実施形態では、小児患者は、肝移植患者である。
【0013】
別の実施形態では、本開示の第1、第2又は第3の態様の上記実施形態のいずれかに従う方法は、EBV関連疾患を発症するリスクがある対象が免疫抑制されているか又は免疫調節薬を受けている、方法である。
【0014】
一実施形態では、本開示の第1、第2又は第3の態様の上記実施形態のいずれかに従う方法は、EBV関連障害が癌又はリンパ増殖性疾患である、方法である。
【0015】
本開示の第1、第2又は第3の態様のさらなる実施形態、例えばそのすべての上記実施形態では、方法は、移植後リンパ増殖性疾患を発症する可能性を低減する。
【0016】
さらなる実施形態では、本開示の第1、第2又は第3の態様、例えばそのすべての上記実施形態に従う方法は、EBV血清陽性ドナーからEBV血清陰性レシピエントへの固形臓器の移植を含む。
【0017】
別の実施形態では、本開示の第1、第2又は第3の態様、例えばそのすべての上記実施形態に従う方法は、EBV関連障害を発症するリスクがある対象が臓器又は組織移植を受けることになる、方法である。
【0018】
一実施形態では、本開示の第1、第2又は第3の態様、例えばそのすべての上記実施形態に従う方法は、対象が、EBV陽性ドナーから臓器を受けるEBVナイーブ血清陰性移植患者である、方法である。
【0019】
さらなる実施形態では、本開示の第1、第2又は第3の態様、例えばそのすべての上記実施形態に従う方法は、患者が小児患者である、方法である。別の実施形態では、小児患者は、肝移植患者である。
【0020】
別の実施形態では、本開示の第1、第2又は第3の態様、例えばそのすべての上記実施形態に従う方法は、対象が免疫抑制されている、方法である。
【0021】
本開示の第4の態様では、上記態様のいずれか、例えばそのすべての実施形態に従う方法は、CD40アンタゴニストが抗体である、方法である。一実施形態では、CD40抗体は、例えば、米国特許第8568725B2号明細書に記載のASKP1240、例えば米国特許第8591900号明細書に記載のBI655064、例えば米国特許第8669352号明細書に記載のFFP104又はMEDI4920である。
【0022】
本開示の上記の第4の態様の一実施形態では、抗CD40抗体は、ADCC活性が抑制された抗体である。
【0023】
別の実施形態では、本開示の第4の態様の上記実施形態のいずれかに従う方法において使用される抗体は、
a.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
b.配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
c.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む抗CD40抗体、及び
d.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号14のFc領域とを含む抗CD40抗体
からなる群から選択される。
【0024】
一実施形態では、上記態様のいずれか1つ、例えばそのすべての実施形態に従う方法で使用するための抗体は、配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列又は配列番号11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含む抗体からなる群から選択される。
【0025】
本発明の一態様では、上記態様のいずれか1つ、例えばそのすべての実施形態に従う方法において使用される抗体は、CFZ533である。
【0026】
本開示の第5の態様では、上記態様のいずれか1つ、例えばそれらのすべての実施形態に従う方法で使用するための、治療有効量のCD40抗体、例えばCFZ533及び1つ以上の薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物が提供される。
【0027】
本開示の第5の態様の一実施形態では、CD40抗体、例えばCFZ533を含む医薬組成物の投与経路は、皮下若しくは静脈内又は皮下若しくは静脈内の組み合わせであり、用量は、抗体の血漿又は血清濃度が少なくとも40μg/mLであるように調節され得る。
【0028】
第5の態様に従う別の実施形態、例えばそのすべての実施形態では、CD40抗体、例えばCFZ533を含む医薬組成物は、ヒト対象の1kgあたり3mgを超える活性成分(mg/kg)、例えば10mg/kg以上、11mg/kg以上、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、21mg/kg、22mg/kg、23mg/kg、24mg/kg、25mg/kg、26mg/kg、27mg/kg、28mg/kg、29mg/kg又は30mg/kgであり得る用量で投与される。
【0029】
第5の態様に従う別の実施形態、例えばそのすべての実施形態では、CD40抗体を含む医薬組成物の投与される用量は、ヒト対象の1kgあたり約3mg~約30mgの活性成分、例えば静脈内投与時(IV)で約3mg~約30mgの活性成分/kgである。
【0030】
第5の態様のさらなる実施形態、例えばそのすべての実施形態では、CD40抗体、例えばCFZ533を含む医薬組成物の投与される用量は、ヒト対象の1kgあたり約10mgの活性成分、例えばIVで約10mgの活性成分/kgである。
【0031】
第5の態様の一実施形態、例えばそのすべての実施形態では、CD40抗体、例えばCFZ533を含む医薬組成物の投与される用量は、約150mg~約600mgの活性成分、例えば皮下投与時(SC)で約150mg~約600mgである。
【0032】
第5の態様の一実施形態、例えばそのすべての実施形態では、CD40抗体、例えばCFZ533を含む医薬組成物の投与される用量は、約300mg又は約450mgの活性成分、例えばSCで約300mg又は約450mgである。
【0033】
第5の態様のさらなる実施形態、例えばそのすべての実施形態では、CD40抗体、例えばCFZ533は、最初に負荷投与レジメン、続いて維持投与レジメンを通して投与される。
【0034】
第5の態様の一実施形態、例えばそのすべての実施形態は、CD40抗体、例えばCFZ533を含む医薬組成物の負荷投与が初回用量の1週、2週、3週又は4週ごとの静脈内又は皮下注射からなり、且つ維持投与が2回目用量の毎週又は隔週の皮下注射からなり、初回用量が2回目用量よりも高い、方法に関する。
【0035】
第5の態様の別の実施形態、例えばそのすべての実施形態は、CD40抗体、例えばCFZ533を含む医薬組成物の初回用量が約300mg~約600mgであり、且つ2回目用量が約300mg、約450mg又は約600mgである、方法に関する。
【0036】
第5の態様の一実施形態、例えばそのすべての実施形態では、CD40抗体、例えばCFZ533を含む医薬組成物の負荷投与は、初回用量の1又は2の静脈内投与からなり、且つ維持投与は、2回目用量の毎週又は隔週の皮下注射からなる。
【0037】
第5の態様の別の実施形態、例えばそのすべての実施形態では、CD40抗体、例えばCFZ533を含む医薬組成物の初回用量は、約10mg/kg又は約30mg/kgであり、且つ2回目用量は、約300mg~約600mgである。
【0038】
本開示のさらなる第6の態様は、EBV関連障害を、かかる障害を発症するリスクがある対象において予防するための薬剤の製造における、抗CD40抗体であって、
a.第1の負荷投与レジメンで静脈内又は皮下に投与され;及び
b.続いて第2の維持投与レジメンで投与され、維持用量は、負荷用量と異なり、前記抗CD40抗体は、
i.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインを含む抗CD40抗体;
ii.配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される超可変領域を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される超可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体;
iii.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む抗CD40抗体;
iv.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号14のFc領域とを含む抗CD40抗体;
v.サイレントFc IgG1領域を含む抗CD40抗体:及び
vi.配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列又は配列番号11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含む抗CD40抗体
からなる群から選択される、抗CD40抗体を含む液体医薬組成物の使用に関する。
【0039】
第6の態様のさらなる実施形態、例えばそのすべての実施形態は、移植後リンパ増殖性疾患の可能性を低減するための薬剤の製造における、抗CD40抗体を含む液体医薬組成物の使用に関する。
【0040】
第6の態様の別の実施形態、例えばそのすべての実施形態は、固形臓器を、それを必要とするEBV血清陰性患者に移植する方法で使用するための薬剤の製造における、抗CD40抗体を含む液体医薬組成物の使用に関する。別の実施形態では、本開示の第6の態様は、EBV血清陽性ドナーからの固形臓器をEBV血清陰性レシピエントに移植する方法で使用するための薬剤の製造における、抗CD40抗体の使用に関する。
【0041】
第7の態様では、本開示は、上記態様のいずれか、例えばそのすべての実施形態に従う使用のための抗CD40抗体、例えばCFZ533に関し、ここで、抗CD40抗体治療は、移植後に実施され、抗体は、抗体の血漿又は血清濃度が少なくとも40μg/mLであるように投与される。
【0042】
一実施形態では、本開示は、第7の態様、例えばそのすべての実施形態に従う使用のためのCFZ533に関し、ここで、抗体は、ヒト対象の1kgあたり約3mg~約30mgの活性成分の用量として投与される。
【0043】
一実施形態では、本開示は、第7の態様、例えばそのすべての実施形態に従う使用のためのCFZ533に関し、ここで、抗体の用量は、ヒト対象の1kgあたり約10mgの活性成分である。
【0044】
別の実施形態では、本開示は、第7の態様、例えばそのすべての実施形態に従う使用のためのCFZ533に関し、ここで、抗体は、約150mg~約600mgの活性成分の用量として投与される。
【0045】
第7の態様の一実施形態では、本開示は、上記態様のいずれか1つ、例えばそのすべての実施形態に従う使用のためのCFZ533に関し、ここで、用量は、約300mg、約450mg又は約600mgの活性成分である。代わりに、用量は、300mg、450mg又は600mgの活性成分である。
【0046】
第7のものの一実施形態では、本開示は、上記態様のいずれか1つ、例えばそのすべての実施形態に従う使用のためのCFZ533に関し、ここで、抗体は、負荷投与及び維持投与で投与される。
【0047】
第7の態様の一実施形態では、本開示は、上記態様のいずれか1つ、例えばそのすべての実施形態に従う方法で使用するためのCFZ533に関し、ここで、負荷投与は、初回用量の1週、2週、3週又は4週ごとの皮下注射(複数)からなり、且つ維持投与は、2回目用量の毎週又は隔週の皮下注射からなり、初回用量は、2回目用量よりも高い。
【0048】
第7の態様の別の実施形態では、本開示は、上記態様のいずれか1つ、例えばそのすべての実施形態に従う方法で使用するためのCFZ533に関し、ここで、初回用量は、約300mg~約600mgであり、且つ2回目用量は、約300mg、約450又は約600mgである。代わりに、用量は、300mg~600mgであり、且つ2回目用量は、300mg、450又は600mgである。
【0049】
加えて、第7の態様の一実施形態では、本開示は、第5及び第6の上記態様のいずれか1つ、例えばそのすべての実施形態に従う方法で使用するためのCFZ533に関し、ここで、負荷投与は、初回用量の1、2、3又は4回の静脈内投与(複数)からなり、且つ維持投与は、2回目用量の毎週の皮下注射からなる。
【0050】
第7の態様の別の実施形態では、本開示は、第5及び第6の上記態様のいずれか1つ、例えばそのすべての実施形態に従う方法で使用するためのCFZ533に関し、ここで、初回用量は、約10mg/kgであり、且つ2回目用量は、約300mg、約450又は約600mgの活性成分である。代わりに、初回用量は、10mg/kgであり、且つ2回目用量は、300mg、450又は600mgの活性成分である。
【0051】
第8の態様では、本開示は、上記態様のいずれか1つ、例えばそのすべての実施形態に従う使用のためのCFZ533に関し、ここで、固形臓器移植は、腎移植、肝移植、心臓移植、肺移植、膵移植、腸移植、複合組織移植、骨髄移植又は同種造血幹細胞移植である。
【0052】
本開示の第9の態様によると、JCV関連障害を、かかる障害を発症するリスクがある対象において予防する方法であって、CD40アンタゴニストを前記対象に投与することを含む方法が提供される。
【0053】
本開示の第10の態様は、固形臓器を、それを必要とするJCV血清陰性患者に移植する方法であって、CD40アンタゴニストを対象に投与することを含む方法に関する。
【0054】
第11の態様では、本開示は、対象におけるJCV感染を制御する方法であって、治療有効量のCD40アンタゴニストを前記対象に投与することを含む方法に関する。
【0055】
一実施形態では、本開示の上記の第9、第10又は第11の態様のいずれかに従う方法は、対象がJCV関連障害を発症する可能性を低減する方法であって、CD40抗体を対象に投与することを含む方法である。
【0056】
別の実施形態では、上記実施形態9、10又は11のいずれかに従う方法は、JCV関連障害を発症するリスクがある対象が臓器又は組織移植を受けることになる、方法である。
【0057】
一実施形態では、本開示の第9、第10又は第11の態様の上記実施形態のいずれかに従う方法は、対象が、JCV陽性ドナーから臓器を受けるEBVナイーブ血清陰性移植患者である、方法である。
【0058】
さらなる実施形態では、本開示の第9、第10又は第11の態様の上記実施形態のいずれかに従う方法は、患者が小児患者である、方法である。別の実施形態では、小児患者は、肝移植患者である。
【0059】
別の実施形態では、本開示の第9、第10又は第11の態様の上記実施形態のいずれかに従う方法は、JCV関連疾患を発症するリスクがある対象が免疫抑制されている、方法である。
【0060】
一実施形態では、本開示の第9、第10又は第11の態様の上記実施形態のいずれかに従う方法は、JCV関連障害が進行性多巣性白質脳症(PML)である、方法である。
【0061】
本開示の第9、第10又は第11の態様のさらなる実施形態、例えばそのすべての上記実施形態では、方法は、PMLを発症する可能性を低減する。
【0062】
さらなる実施形態では、本開示の第9、第10又は第11の態様、例えばそのすべての上記実施形態に従う方法は、JCV血清陽性ドナーからJCV血清陰性レシピエントへの固形臓器の移植を含む。
【0063】
別の実施形態では、本開示の第9、第10又は第11の態様、例えばそのすべての上記実施形態に従う方法は、JCV関連障害を発症するリスクがある対象が臓器又は組織移植を受けることになる、方法である。
【0064】
一実施形態では、本開示の第9、第10又は第11の態様、例えばそのすべての上記実施形態に従う方法は、対象が、JCV陽性ドナーから臓器を受けるJCVナイーブ血清陰性移植患者である、方法である。
【0065】
さらなる実施形態では、本開示の第9、第10又は第11の態様、例えばそのすべての上記実施形態に従う方法は、患者が小児患者である、方法である。別の実施形態では、小児患者は、肝移植患者である。
【0066】
別の実施形態では、本開示の第9、第10又は第11の態様、例えばそのすべての上記実施形態に従う方法は、対象が免疫抑制されている、方法である。
【0067】
本開示の第12の態様では、第9、第10又は第11の態様、例えばそのすべての実施形態のいずれかに従う方法は、CD40アンタゴニストが本明細書中の上記の抗体である、方法である。
【0068】
別の実施形態では、第12の態様に従う抗体は、第4の上記態様に記載の抗体の群から選択される。本発明の一態様では、第9、第10又は第11の態様のいずれか1つ、例えばそのすべての実施形態に従う方法において使用される抗体は、CFZ533である。
【0069】
本開示の第13の態様では、第9、第10又は第11の態様のいずれか1つ、例えばそのすべての実施形態に従う方法で使用するための、治療有効量のCD40抗体、例えばCFZ533及び1つ以上の薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物が提供される。
【0070】
本開示の第13の態様の一実施形態では、CD40抗体、例えばCFZ533を含む医薬組成物の投与経路は、上記のように第5の態様、例えばそのすべての実施形態における皮下若しくは静脈内又は皮下若しくは静脈内の組み合わせである。
【0071】
本開示の第14の態様は、JCV関連障害を、かかる障害を発症するリスクがある対象において予防するための薬剤の製造における、抗CD40抗体を含む液体医薬組成物の使用に関し、ここで、抗CD40抗体は、上記の本発明の第6の態様に記載の抗体である。
【0072】
第15の態様では、本開示は、第9~第14の態様のいずれか、例えばそのすべての実施形態に従う使用のための抗CD40抗体、例えばCFZ533に関し、ここで、抗CD40抗体治療は、移植後に実施され、抗体は、抗体の血漿又は血清濃度が少なくとも40μg/mLであるように投与される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1-1】代表的なフローサイトメトリー分析フローサイトメトリーによるCD3T細胞及びCD19B細胞におけるゲーティング方法。細胞は、CD3及びCD19抗体で染色され、フローサイトメトリーにより分析された。第1に、前方散乱(FCS)/側方散乱(SSC)で得られた全細胞がドットプロットにプロットされ、次にCD3T細胞又はCD19B細胞のいずれかでさらにゲーティングされた(紫色の丸)。1名の代表的ドナーから、異なる条件が示される((第1列:PBMC+培地-EBV(左プロット)、PBMC+培地+EBV(右プロット);第2列:PBMC+0.1μM CsA+EBV(左プロット)、PBMC+50μg/mLのベラタセプト+EBV(右プロット);第3列:PBMC+50μg/mLのhIgG1+EBV(左プロット)、PBMC+50μg/mLのCFZ533+EBV(右プロット))。
図1-2】(上記の通り。)
図1-3】(上記の通り。)
図2】4名の異なるドナーからのCD3T細胞数:培養14日後のPBMC退行アッセイからのCD3T細胞数がフローサイトメトリーにより測定された。抗体(μg/mL単位)及びCsA(μM単位)がEBV上清と組み合わせて投与された(陰性対照=EBVを有しない培地を除く)。点線は、「培地+EBV」条件に対して設けられた。データは、平均+SEM(n=4)で示される。
図3】4名の異なるドナーからのCD19B細胞数:培養14日後のPBMC退行アッセイからのCD19B細胞数がフローサイトメトリーにより測定された。抗体(μg/mL単位)及びCsA(μM単位)がEBV上清と組み合わせて投与された(陰性対照=EBVを有しない培地を除く)。点線は、「培地+EBV」条件に対して設けられた。データは、平均+SEM(n=4)で示される。
図4】試験開始前に予めシミュレートされた薬物動態特性を示すグラフである。
図5-1】フローサイトメトリーによるT細胞増殖に対するゲーティング方法を示す。細胞は、生存度マーカーを含むCD3、CD4及びCD8について染色され、T細胞増殖についてフローサイトメトリーにより分析された。第1列を左から右に:得られた全細胞がFCS/SSCドットプロットで示され、全生細胞(生存度マーカー)に対してヒストグラムプロットでゲーティングされる。生細胞からCD3T細胞が選択され、T細胞増殖がCell Tracer Violet陽性細胞に対するゲーティングにより同定された。第2列:全生細胞から象限が設けられ、CD4及びCD8T細胞が同定され、Cell Tracer Violetの標識について分析された。
図5-2】(上記の通り。)
図5-3】(上記の通り。)
図5-4】(上記の通り。)
図6】インビトロEBV-B細胞/T細胞共培養モデルを概説する。共培養モデルは、2相:「プライミング」相(7日培養)及び「リコール」相(さらに4日培養)からなる。EBV-B細胞又は一次B細胞が自己T細胞と一緒に使用され、4つの異なる濃度(10、50、100及び200μg/mL又は培地)のIgG1アイソタイプ、抗CD40(CFZ533)又は抗CTL-A4抗体(ベラタセプト)のいずれかとともにインキュベートされた。培地又は抗体は、「プライミング」相、「リコール」相又は両方の相(「プライミング及びリコール」)のいずれかで添加された。11日の共培養後、細胞は、T細胞増殖に対してフローサイトメトリーにより、またIFNγ産生に対してELISAにより分析された。
図7-1】CD3T細胞増殖データを、フローサイトメトリーにより測定された、培養11日後の、EBV血清陽性EBV B細胞及び自己T細胞を使用する、対応する共培養物の対照に対する比として表したものを提示する。抗体(μg/mL)は、「プライミング」相(左側)、「リコール」相(中央部)又は「プライミング及びリコール」相(左側)のいずれかで投与された。点線は、1つ(陰性対照;0μg/mL)に対して設けられた。データは、平均+SEMで示される(n=3~10)。各カラムの上の数は、試験個体の総数を表す。
図7-2】(上記の通り。)
図7-3】(上記の通り。)
図8-1】CD4T細胞増殖データを、フローサイトメトリーにより測定された、培養11日後の、EBV血清陽性EBV B細胞及び自己T細胞を使用する、対応する共培養物の対照に対する比として表したものを提示する。抗体(μg/mL)は、「プライミング」相(左側)、「リコール」相(中央部)又は「プライミング及びリコール」相(左側)のいずれかで投与された。点線は、1つ(陰性対照;0μg/mL)に対して設けられた。データは、平均+SEMで示される(n=3~10)。各カラムの上の数は、試験個体の総数を表す。
図8-2】(上記の通り。)
図8-3】(上記の通り。)
図9】CD8T細胞増殖データを、フローサイトメトリーにより測定された、培養11日後の、EBV血清陽性EBV B細胞及び自己T細胞を使用する、対応する共培養物の対照に対する比として表したものを提示する。抗体(μg/mL)は、「プライミング」相(左側)、「リコール」相(中央部)又は「プライミング及びリコール」相(左側)のいずれかで投与された。点線は、1つ(陰性対照;0μg/mL)に対して設けられた。データは、平均+SEMで示される(n=3~10)。各カラムの上の数は、試験個体の総数を表す。
図10】CD3T細胞増殖データを、フローサイトメトリーにより測定された、培養11日後の、EBV血清陰性EBV B細胞及び自己T細胞を使用する、対応する共培養物の対照に対する比として表したものを提示する。抗体(μg/mL)は、「プライミング」相(左側)、「リコール」相(中央部)又は「プライミング及びリコール」相(左側)のいずれかで投与された。点線は、1つ(陰性対照;0μg/mL)に対して設けられた。データは、平均+SEMで示される(n=3~7)。各カラムの上の数は、試験個体の総数を表す。
図11】EBV血清陰性ドナーの細胞から調製された培養物におけるCD4T細胞増殖データを提示する。CD8T細胞増殖を分析すると(図12)、ベラタセプトは、10及び50μg/mLで「リコール」のみ及び「プライミング及びリコール」条件に限って減少効果を有した一方、100及び200μg/mLは、媒体対照(0μg/mL)とされた。興味深いことに、ベラタセプトが「プライミング」相に限って添加されたとき、ベラタセプトは、100及び200μg/mLの用量でCD8T細胞増殖を増加させた。CFZ533は、CD4T細胞増殖について認められた、10μg/mL(「プライミング」のみ及び「プライミング及びリコール」条件)及び50μg/mL(「リコール」のみの条件)での媒体対照(0μg/mL)と比較してのわずかな有意でない増加を除いて、CD8T細胞増殖に対してそれほど効果を有しなかった。
図12】EBV血清陰性ドナーの細胞から調製された培養物におけるCD8T細胞増殖データを提示する。CD8T細胞増殖データを、フローサイトメトリーにより測定された、培養11日後の、EBV血清陰性EBV B細胞及び自己T細胞を使用する、対応する共培養物の対照に対する比として表したものを提示する。抗体(μg/mL)は、「プライミング」相(左側)、「リコール」相(中央部)又は「プライミング及びリコール」相(左側)のいずれかで投与された。点線は、1つ(陰性対照;0μg/mL)に対して設けられた。データは、平均+SEMで示される(n=3~7)。各カラムの上の数は、試験個体の総数を表す。
図13】EBV血清陽性ドナーの細胞から調製された培養物におけるIFNγサイトカインレベルを提示する。インキュベーション11日後の、EBV血清陽性EBV-B細胞/自己T細胞共培養上清のIFNγサイトカインレベルは、対応する対照に対する比として表される。抗体は、「プライミング」相(左側)又は「リコール」相(中央部)又は両方の相(「プライミング及びリコール」;左側)のいずれかで投与された。抗体濃度は、μg/mLで使用された。点線は、陰性対照(0μg/mL)に対して設けられた。データは、平均+SEMで示される(n=3~9)。各カラムの上の数は、試験個体の総数を表す。
図14】EBV血清陰性ドナーの細胞から調製された培養物におけるIFNγサイトカインレベルを提示する。インキュベーション11日後の、EBV血清陰性EBV-B細胞/自己T細胞共培養上清のIFNγサイトカインレベルは、対応する対照に対する比として表される。抗体は、「プライミング」相(左側)又は「リコール」相(中央部)又は両方の相(「プライミング及びリコール」;左側)のいずれかで投与された。抗体濃度は、μg/mLで使用された。点線は、陰性対照(0μg/mL)に対して設けられた。データは、平均+SEMで示される(n=3~6)。各カラムの上の数は、試験個体の総数を表す。
図15】フローサイトメトリーにより測定された、培養14日後のPBMC退行アッセイからのCD3T細胞数を提示する。抗体(μg/mL単位)及びCsA(μM単位)がEBV上清と組み合わせて投与された(陰性対照=EBVを有しない培地を除く)。水平点線は、「培地+EBV」条件に対して設けられた。データは、平均+SEM(n=4)で示される。
図16】フローサイトメトリーにより測定された、培養14日後のNK細胞枯渇PBMC退行アッセイからのCD3T細胞数を提示する。抗体(μg/mL単位)及びCsA(μM単位)がEBV上清と組み合わせて投与された(陰性対照=EBVを有しない培地を除く)。水平点線は、「培地+EBV」条件に対して設けられた。データは、平均+SEM(n=4)で示される。
図17-1】フローサイトメトリーにより測定された、培養14日後のPBMC退行アッセイからのCD19B細胞数を提示する。抗体(μg/mL単位)及びCsA(μM単位)がEBV上清と組み合わせて投与された(陰性対照=EBVを有しない培地を除く)。水平点線は、「培地+EBV」条件に対して設けられた。データは、平均+SEM(n=4)で示され;培養14日後のNK細胞枯渇PBMC退行アッセイからのCD19B細胞数がフローサイトメトリーにより測定される。抗体(μg/mL単位)及びCsA(μM単位)がEBV上清と組み合わせて投与された(陰性対照=EBVを有しない培地を除く)。水平点線は、「培地+EBV」条件に対して設けられた。データは、平均+SEM(n=4)で示される。
図17-2】(上記の通り。)
【発明を実施するための形態】
【0074】
一般的定義
本明細書で使用する場合、CD40は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー5とも呼ばれる表面抗原分類40を指す。用語CD40は、別段の記述がない限り、配列番号19において定義される通りのヒトCD40を指す。
【0075】
数値xに関する用語「約」は、例えば、+/-10%を意味する。数値範囲又は数の列挙の前に使用される場合、用語「約」は、系列内のそれぞれの数に適用される。例えば、表現「約1~5」は、「約1~約5」と解釈されるべきであるか、又は例えば、表現「約1、2、3、4」は、「約1、約2、約3、約4など」と解釈されるべきである。
【0076】
単語「実質的に」は、「完全に」を排除しない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まない可能性がある。必要に応じて、単語「実質的に」は、本開示の定義から省くことができる。
【0077】
用語「含む」は、「包含する」並びに「からなる」を包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、専らXのみからなる可能性があるか、又は何らかの追加のものが含まれる(例えば、X+Y)可能性がある。
【0078】
本明細書で使用される用語「抗体」又は「抗CD40抗体」などは、CD40と(例えば、結合、立体障害、安定化/不安定化、空間分布によって)相互作用する抗体全体を指す。天然起源の「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖とを含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVと略される)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVと略される)及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLからなる。V及びV領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存される領域に割り込まれた、相補性決定領域(CDR)と称される高頻度可変性の領域にさらに細分化することができる。各V及びVは、アミノ末端からカルボキシ末端まで以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配列される3つのCDR及び4つのFRからなる。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(Clq)を含めた宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。用語「抗体」には、例えば、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ抗体又はキメラ抗体が含まれる。抗体は、あらゆるアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はサブクラスのもの、好ましくはIgG、最も好ましくはIgG1であり得る。例示的な抗体としては、表1に記述した通り、CFZ533(本明細書ではmAb1とも称される)及びmAb2が挙げられる。
【0079】
軽鎖及び重鎖の両方は、構造的及び機能的相同性の領域に分けられる。用語「定常」及び「可変」は、機能に関して使用される。この点に関して、軽(VL)鎖部分と重(VH)鎖部分との両方の可変ドメインが抗原認識及び特異性を決定することを理解されたい。逆に、軽鎖(CL)及び重鎖(CH1、CH2又はCH3)の定常ドメインは、分泌、経胎盤移動性、Fc受容体結合、補体結合などの重要な生物学的性質を与える。慣例により、定常領域ドメインの付番は、抗体の抗原結合部位又はアミノ末端から遠位になるにつれて増加する。N末端は、可変領域であり、C末端は、定常領域であり、CH3及びCLドメインは、それぞれ重鎖及び軽鎖のカルボキシ末端を事実上含む。具体的には、用語「抗体」には、特にIgG-scFv型が含まれる。
【0080】
さらに、Fv断片の2つのドメイン、V及びVは、別の遺伝子によってコードされるが、これらが単一のタンパク質鎖(ここで、V領域とV領域とが対合して、一価の分子(一本鎖Fv(scFv)として公知;例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883を参照されたい)を形成する)として振る舞うことを可能にする合成のリンカーにより、組換え方法を使用してこれらを連結することができる。
【0081】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、単一分子組成の抗体分子の調製を指す。用語「ヒト抗体」には、本明細書で使用する場合、そのフレームワークもCDR領域もヒト起源の配列に由来する可変領域を有する抗体が含まれることが意図される。「ヒト抗体」は、ヒト、ヒト組織又はヒト細胞によって産生される必要はない。本開示のヒト抗体は、ヒト配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム又は部位特異的変異誘発により、抗体遺伝子の組換え中のインビボでのジャンクションでのN-ヌクレオチド付加により、又はインビボでの体細胞変異により導入される変異)を含むことができる。
【0082】
「Fc領域」という用語は、本明細書で用いられるとき、抗体の定常ドメインのCH3、CH2及びヒンジ領域の少なくとも一部を含むポリペプチドを指す。任意選択的に、Fc領域は、一部の抗体クラス中に存在するCH4ドメインを含み得る。Fc領域は、抗体の定常ドメインのヒンジ領域全体を含み得る。一実施形態では、本発明の方法において使用される結合分子は、抗体のFc領域及びCH1領域を含む。一実施形態では、本発明の方法において使用される結合分子は、抗体のFc領域CH3領域を含む。別の実施形態では、本発明の方法において使用される結合分子は、抗体の定常ドメインからのFc領域、CH1領域及びCカッパ/ラムダ領域を含む。一実施形態では、本発明の方法において使用される結合分子は、定常領域、例えば重鎖定常領域を含む。
【0083】
本明細書で使用する場合、用語「ADCC」又は「抗体依存性細胞傷害」活性は、細胞枯渇活性を指す。ADCC活性は、当業者に周知のADCCアッセイによって測定することができる。
【0084】
本明細書で使用する場合、用語「サイレント」抗体は、ADCCアッセイにおいて測定された場合にADCC活性を呈さないか又は低いADCC活性を呈する抗体を指す。
【0085】
一実施形態では、用語「ADCC活性なし又は低いADCC活性」は、サイレント抗体が、標準のADCCアッセイにおいて測定された場合に50%未満の特異的細胞溶解、例えば10%未満の特異的細胞溶解であるADCC活性を呈することを意味する。「ADCC活性なし」は、サイレント抗体が、1%未満であるADCC活性(特異的細胞溶解)を呈することを意味する。
【0086】
エフェクター機能の抑制は、抗体のFc領域内の変異によって得ることができ、当技術分野において記載されている:LALA及びN297A(Strohl,W.,2009,Curr.Opin.Biotechnol.vol.20(6):685-691);並びにD265A(Baudino et al.,2008,J.lmmunol.181:6664-69;Strohl,W.,上記)。サイレントFc IgG1抗体の例は、IgG1 Fcアミノ酸配列内のL234A及びL235A変異を含む、いわゆるLALA変異体を含む。サイレントIgG1抗体の別の例は、D265A変異を含む。別のサイレントIgG1抗体は、グリコシル化/非グリコシル化抗体をもたらすN297A変異を含む。
【0087】
「治療」又は「治療する」という用語は、例えば、本発明に従う抗CD40抗体若しくはタンパク質、例えばmAb1若しくはmAb2抗体の対象への適用若しくは投与、又は前記抗CD40抗体を含む医薬組成物の、対象から単離された組織若しくは細胞株への適用若しくは投与として本明細書で定義され、ここで、その目的は、EBV感染を制御すること又はEBV感染を予防することである。
【0088】
「治療」は、例えば、mAb1若しくはmAb2抗体を含む医薬組成物の対象への適用若しくは投与、又は前記抗CD40抗体を含む医薬組成物の、対象から単離された組織若しくは細胞株への適用若しくは投与も意図され、ここで、対象は、EBV関連疾患を発症するリスクがある。
【0089】
本明細書で用いられるとき、対象は、かかる対象がかかる治療から生物学的に、医学的に又は生活の質において恩恵を受ける場合、治療「を必要とする」。「対象」という用語は、本明細書で用いられるとき、哺乳動物、例えば霊長類、好ましくは高級霊長類、例えばヒト(例えば、移植患者のような、本明細書に記載の障害を有するか又は有するリスクがある患者)であり得る。
【0090】
本明細書で用いられるとき、対象化合物の「投与」又は「投与すること」という用語は、CD40アンタゴニスト、例えばCFZ533を、治療を必要とする対象に提供することを意味する。1つ以上のさらなる治療薬「と組み合わせた」投与は、任意の順序における且つ任意の投与経路での同時(併用)及び連続投与を含む。
【0091】
本明細書で用いられるとき、「治療有効量」は、EBV感染を制御すること又はEBV感染を予防することを目的とする、患者(ヒトなど)への単回又は複数回用量投与時に有効である、CD40アンタゴニスト、例えば抗CD40抗体又はその抗原結合断片、例えばmAb1の量を指す。
【0092】
単独投与される個別の活性成分(例えば、抗CD40抗体、例えばmAb1)に適用されるとき、この用語は、その成分単独を指す。組み合わせに適用されるとき、この用語は、組み合わせ投与、連続投与又は同時投与にかかわらず、治療効果をもたらす活性成分の組み合わせ量を指す。
【0093】
「治療レジメン」という語句は、疾病を治療するか又は病状若しくは疾患の発症を予防するために使用されるレジメン、例えばEBV負荷又はEBV関連疾患の発症を低減するための、EBV感染の予防中に使用される投与を意味する。治療レジメンは、誘導レジメン、負荷レジメン及び維持レジメンを含み得る。
【0094】
「負荷レジメン」又は「負荷期間」という語句は、疾患の初期治療に使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。いくつかの実施形態では、開示される方法、使用、キット、プロセス及びレジメン(例えば、固形臓器移植における移植片喪失を予防する方法)では、負荷レジメンが用いられる。いくつかの場合、負荷期間は、最大有効性の達成に至る期間である。負荷レジメンの一般的目標は、治療レジメンの初期期間中に高レベルの薬剤を患者に提供することである。誘導レジメンでは、(部分的又は全体的に)「負荷レジメン」又は「負荷投与」が用いられ得、誘導レジメンは、医師が維持レジメン中に用いる場合よりも高い用量の薬剤を投与すること、医師が維持レジメン中に薬剤を投与する場合よりも頻繁に薬剤を投与すること又は両方を含み得る。用量漸増は、誘導レジメン中又は後に実施され得る。
【0095】
表現「維持レジメン」又は「維持期間」は、病気の治療中の患者の維持のため、例えば患者を誘導期間後に長期間(数か月又は数年)、寛解状態に維持するために使用される治療レジメン(又は治療レジメンの一部)を指す。いくつかの実施形態では、開示した方法、使用及びレジメンは、維持レジメンを用いる。維持レジメンは、継続療法(例えば、一定の間隔で、例えば毎週、毎月[4週おき]、毎年などで薬物を投与すること)又は間欠療法(例えば、断続的治療、間欠治療、再発時の治療又は特定のあらかじめ定められた基準の到達[例えば、疼痛、疾患顕在化など]時の治療)を用いることができる。用量漸増は、維持レジメン中に行うことができる。
【0096】
表現「投与するための手段」は、限定はされないが、プレフィルドシリンジ、バイアル及びシリンジ、ペン型注射器、自己注射器、点滴静注バッグ、ポンプ、パッチ式ポンプなどを含めた、患者に薬物を全身的に投与するためのあらゆる利用可能な道具を示すために使用される。こうしたものを用いて、患者が薬物を自己投与する(すなわち薬物を自分自身のために投与する)ことができるか、又は医師が薬物を投与することができる。
【0097】
エプスタイン・バーウイルス(EBV)は、ヒトヘルペスウイルス4(human herpesvirus 4)(HHV4)であり、ガンマヘルペスウイルスのサブファミリー中のリンホクリプトウイルス属(Lymphocryptovirus)に属する。これらのウイルスは、それらの宿主細胞の潜伏感染を樹立し、潜伏感染細胞の増殖を誘導する(Roizman B.Herpesviridae:general description,taxonomy and classification.In:Roizman B,editor.The herpesviruses.London:Plenum Press,1996:1_/23.でレビュー)。EBVは、急性及び慢性炎症性疾患からリンパ系及び上皮悪性腫瘍に及ぶ、さらに拡大する臨床的障害のスペクトルに関連する。エプスタイン・バーウイルスは、T細胞、B細胞又はナチュラルキラー(NK)細胞のようなリンパ系細胞の異なるタイプがエプスタイン・バーウイルスに感染される疾患タイプのリンパ増殖性疾患に関連する。感染細胞は、過剰に分裂し、様々なリンパ増殖性障害(LPD、非癌性、前癌性及び癌性)を発症する。これらのLPDは、感染性単核球症、したがってその後、発症することがある障害を含む。EBV関連疾患を除く非LPDは、悪性腫瘍、肉腫、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、鼻咽頭癌、胃癌、平滑筋肉腫及び「不思議の国のアリス症候群」を含む(Middeldorp et al.,Critical Reviews in Oncology/Hematology 45(2003)1-/36 2003)。
【0098】
本発明は、CD40アンタゴニストが、CsA及びベラタセプトと対照的に、インビトロでEBV制御を損なわないという驚くべき知見に基づく。CD40アンタゴニストは、現在、移植臓器拒絶の阻害及び自己免疫疾患の治療のために臨床開発中である。したがって、免疫抑制性CD40アンタゴニストがEBV制御を損なわないという驚くべき知見は、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)のようなEBV関連疾患を発症するリスクがある患者における、臓器移植についての方法のような治療方法の開発における前提条件及び基盤である。したがって、本開示は、EBV関連障害を予防する方法及び対象、特にかかる障害を発症するリスクがある対象におけるEBV負荷を制御する方法であって、治療有効量のCD40アンタゴニストを前記対象に投与することを含む方法に関する。
【0099】
「EBV制御」又は「EBV感染を制御する」という用語は、本明細書で用いられるとき、治療有効量の本明細書で開示されるようなCD40アンタゴニスト(例えば、CFZ533)による、対象の治療、特に患者、より特徴的には免疫抑制を必要とする患者、さらにより特徴的には臓器又は組織移植を受ける患者の治療の転帰を指し、ここで、EBV制御は、以下の基準:(i)患者におけるEBV潜伏0状態(Ruf et al.,Transplantation&Volume 97,Number 9,May 15,2014)、(ii)EBV潜伏I状態、又は(iii)活性EBV感染の血清学的証拠がない(例えば、特異抗体を使用し、EBV抗体又は発現されたEBVタンパク質が検出されない)ことのいずれかが満たされる場合に達成される。好ましい実施形態では、上に列挙されたEBV制御基準(i)、(ii)及び/又は(iii)/潜伏状態は、移植が実施されてから少なくとも6か月の期間、又は少なくとも9か月の期間、又は少なくとも12か月の期間、又は少なくとも15か月の期間、又は少なくとも18か月の期間、又は少なくとも21か月の期間、又は少なくとも24か月の期間、又は少なくとも3年の期間、又は少なくとも4年の期間、又は少なくとも5年の期間、又は少なくとも6年の期間、又は少なくとも7年の期間、又は少なくとも8年の期間又はそれを超えて維持される。
【0100】
EBV制御又はEBV感染を制御するという用語は、治療対象の全血中のEBV負荷がEBVゲノムの5000コピー/μg DNA未満、又は4500コピー/μg DNA未満、又は4000コピー/μg DNA未満、又は3500コピー/μg DNA未満、又は3000コピー/μg DNA未満、又は2500コピー/μg DNA未満、又は2000コピー/μg DNA未満、又は1500コピー/μg DNA未満、又は1000コピー/μg DNA未満である、上記治療の転帰も指す。好ましい実施形態では、全血中の上記EBV負荷は、移植が実施されてから少なくとも6か月の期間、又は少なくとも9か月の期間、又は少なくとも12か月の期間、又は少なくとも15か月の期間、又は少なくとも18か月の期間、又は少なくとも21か月の期間、又は少なくとも24か月の期間、又は少なくとも3年の期間、又は少なくとも4年の期間、又は少なくとも5年の期間、又は少なくとも6年の期間、又は少なくとも7年の期間、又は少なくとも8年の期間又はそれを超えて維持される。
【0101】
EBV制御又はEBV感染を制御するという用語は、血漿中のEBV負荷が3000コピー/100μl未満、又は2500コピー/100μl未満、又は2000コピー/100μl未満、又は1500コピー/100μl未満、又は1000コピー/100μl未満である、上記治療の転帰も指す。好ましい実施形態では、血漿中の上記EBV負荷は、移植が実施されてから少なくとも6か月の期間、又は少なくとも9か月の期間、又は少なくとも12か月の期間、又は少なくとも15か月の期間、又は少なくとも18か月の期間、又は少なくとも21か月の期間、又は少なくとも24か月の期間、又は少なくとも3年の期間、又は少なくとも4年の期間、又は少なくとも5年の期間、又は少なくとも6年の期間、又は少なくとも7年の期間、又は少なくとも8年の期間又はそれを超えて維持される。
【0102】
さらに、EBV制御又はEBV感染を制御するという用語は、本明細書で用いられるとき、対象の治療の転帰も指し、特に、対象は、患者、より特徴的には免疫抑制を必要とする患者、さらにより特徴的には治療有効量の本明細書で開示されるようなCD40アンタゴニスト(例えば、CFZ533)とともに臓器又は組織移植を受ける患者であり、ここで、転帰は、免疫抑制を必要とする患者、より特徴的には臓器又は組織移植を受けたが、本明細書で開示される方法に従って治療されていない患者と比較して減少したEBV力価、又はEBV負荷、又はEBV感染状態であり、EBV負荷(例えば、EBV DNA負荷)は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は90%超低減される。好ましい実施形態では、減少したEBV負荷は、移植が実施されてから少なくとも6か月の期間、又は少なくとも9か月の期間、又は少なくとも12か月の期間、又は少なくとも15か月の期間、又は少なくとも18か月の期間、又は少なくとも21か月の期間、又は少なくとも24か月の期間、又は少なくとも3年の期間、又は少なくとも4年の期間、又は少なくとも5年の期間、又は少なくとも6年の期間、又は少なくとも7年の期間、又は少なくとも8年の期間又はそれを超えて維持される。
【0103】
「予防する」又は「予防すること」という用語は、一般に予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)治療を指し;それに関連する疾患、障害及び/又は症状の発症を遅延させること又は発症を予防することに関与する。「EBV関連疾患を予防する」という用語は、本明細書で用いられるとき、対象の治療の転帰を指し、特に、対象は、患者、より特徴的には免疫抑制を必要とする患者、さらにより特徴的には治療有効量の本明細書で開示されるようなCD40アンタゴニスト(例えば、CFZ533)とともに臓器又は組織移植を受ける患者であり、ここで、患者は、EBV関連疾患を発症せず、特に、患者は、リンパ増殖性障害(LPD、非癌性、前癌性及び癌性、例えば感染性単核球症、したがってその後、発症することがある障害又はEBV関連疾患を除く非LPD、例えば悪性腫瘍、肉腫、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、移植後リンパ増殖性疾患及び「不思議の国のアリス症候群」を発症しない。「EBV関連疾患を予防する」という用語は、上記のような対象の治療の転帰も指し、ここで、臓器又は組織移植後の患者は、本明細書に記載のようなEBV関連疾患を少なくとも12か月の期間、又は少なくとも18か月の期間、又は少なくとも24か月の期間、又は少なくとも3年の期間、又は少なくとも4年の期間、又は少なくとも5年の期間又は少なくとも6年の期間、又は少なくとも7年の期間、又は少なくとも8年の期間又はそれを超えて発症しない。「EBV関連疾患を予防する」という用語は、臓器移植後の患者が移植後リンパ増殖性疾患を少なくとも12か月の期間、又は少なくとも18か月の期間、又は少なくとも24か月の期間、又は少なくとも3年の期間、又は少なくとも4年の期間、又は少なくとも5年の期間又は少なくとも6年の期間、又は少なくとも7年の期間、又は少なくとも8年の期間又はそれを超えて発症しない状況も指す。
【0104】
EBV関連疾患の予防の効果を、従来技術のアッセイ及び技術を用いて、医師及び他の当業者によって実施される標準的な通常の健康診断により評価することで、EBV関連疾患を診断及び監視することが可能である。当業者は、上記目的に適用可能な各々の従来技術の診断技術を理解している。EBVウイルス負荷測定は、PTLDが高リスクである移植レシピエントを監視するための通常の検査になっている。PTLD患者は、ほぼ常に全血中及び血漿中に高レベルのEBV DNAを有する(Gulley M.L.,Tans W.,CLINICALMICROBIOLOGY REVIEWS,Apr.2010,p.350-366;Wagner,H.J et al.,2001.Patients at risk for development of posttransplant lymphoproliferative disorder:plasma versus peripheral blood mononuclear cells as material for quantification of Epstein-Barr viral load by using real-time quantitative polymerase chain reaction.Transplantation 72:1012-1019)。実際に、高い循環EBVレベルは、治療中に監視可能な腫瘍量の尺度として役立つ(Green,M.2001.Management of Epstein-Barr virus-induced post-transplant lymphoproliferative disease in recipients of solid organ transplantation.Am.J.Transplant.1:103-108;Tsai,D.E.et al.,2008.EBV PCR in the diagnosis and monitoring of posttransplant lymphoproliferative disorder:results of a two-arm prospective trial.Am.J.Transplant.8:1016-1024)。徴候及び症状の発症前でも、高いEBVレベルは、切迫しているPTLDの前兆として役立ち、したがって予防的介入により疾病を予防し、疾患進行を停止させることが可能である。
【0105】
EBV力価、EBV負荷又はEBV感染状態は、例えば、EBV DNA負荷を測定することにより分析可能であり、ここで、EBV DNAの定量化は、全血、血漿及び/又はB細胞において分析可能である(Ruf et.al.,Transplantation&Volume 97,Number 9,May 15,2014)。当業者は、患者におけるEBV負荷及び感染状態を分析するための技術を理解している。EBV DNA負荷は、EBV遺伝子LMP2、LMP1、EBNA2及び/又はBZLF1の発現を分析することにより評価可能である。LMP2の発現分析は、B細胞又は全血におけるウイルス負荷とLMP2との間に最も強い相関が認められたために好ましい(Ruf et.al.,Transplantation&Volume 97,Number 9,May 15,2014)。
【0106】
この20年にわたり、いくつかの試験では、移植患者におけるEBV遺伝子発現が分析された(Qu L,Rowe DT.Epstein-Barr virus latent gene expression in uncultured peripheral blood lymphocytes.J Virol 1992;66:3715.9;Qu L,Green M,Webber S,et al.Epstein-Barr virus gene expression in the peripheral blood of transplant recipients with persistent circulating virus loads.J Infect Dis 2000;182:1013.;Gotoh K,Ito Y,Ohta R,et al.Immunologicandvirologicanalysesinpediatriclivertransplantrecipientswithchronic high Epstein-Barr virus loads.J Infect Dis 2010;202:461.;Kasztelewicz B,Jankowska I,Pawlowska J,et al.Epstein-Barr virus gene expression and latent membrane protein 1 gene polymorphism in pediatric liver transplant recipients.J Med Virol 2011;83:2182.)。
【0107】
一実施形態では、本開示は、対象における移植後リンパ増殖性疾患を予防する方法であって、治療有効量のCD40アンタゴニスト(例えば、CFZ533のようなCD40抗体)を前記対象に投与することを含む方法に関し、ここで、対象は、臓器移植を受けており、前記患者は、移植後リンパ増殖性疾患を少なくとも12か月の期間、又は少なくとも18か月の期間、又は少なくとも24か月の期間、又は少なくとも3年の期間、又は少なくとも4年の期間、又は少なくとも5年の期間又は少なくとも6年の期間、又は少なくとも7年の期間、又は少なくとも8年の期間又はそれを超えて発症しない。
【0108】
別の実施形態では、本開示は、対象における移植後リンパ増殖性疾患を予防する方法であって、治療有効量のCD40アンタゴニスト(例えば、CFZ533のようなCD40抗体)を前記対象に投与することを含む方法に関し、ここで、対象は、腎移植、肝移植、心臓移植、肺移植、膵移植、腸移植、骨髄移植又は同種造血幹細胞移植を受けており、前記患者は、移植後リンパ増殖性疾患を少なくとも12か月の期間、又は少なくとも18か月の期間、又は少なくとも24か月の期間、又は少なくとも3年の期間、又は少なくとも4年の期間、又は少なくとも5年の期間又は少なくとも6年の期間、又は少なくとも7年の期間、又は少なくとも8年の期間又はそれを超えて発症しない。
【0109】
本開示は、対象がEBV関連障害を発症する可能性を低減する方法であって、治療有効量のCD40アンタゴニストを対象に投与することを含む方法にさらに関する。「可能性を低減する」という用語は、EBV関連障害の発症との関連で本明細書において用いられるとき、対象の治療の転帰を指し、特に、対象は、患者、より特徴的には免疫抑制を必要とする患者、さらにより特徴的には治療有効量の本明細書で開示されるようなCD40アンタゴニスト(例えば、CFZ533のようなCD40抗体)とともに臓器又は組織移植を受ける患者であり、ここで、患者は、EBV関連障害を発症する低下したリスクを有し、低下したリスクは、免疫抑制を必要とする患者、より特徴的には臓器又は組織移植を受けたが、本明細書で開示される方法に従って治療されていない患者と比較して減少したEBV力価、又はEBV負荷、又はEBV感染状態を特徴とし、(例えば、EBV力価、又はEBV負荷、又はEBV感染状態のEBV DNA負荷に基づく)EBV力価、又はEBV負荷、又はEBV感染状態は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は90%超減少する。好ましい実施形態では、上記の減少したEBV負荷は、移植が実施されてから少なくとも6か月の期間、又は少なくとも9か月の期間、又は少なくとも12か月の期間、又は少なくとも15か月の期間、又は少なくとも18か月の期間、又は少なくとも21か月の期間、又は少なくとも24か月の期間、又は少なくとも3年の期間、又は少なくとも4年の期間、又は少なくとも5年の期間、又は少なくとも6年の期間、又は少なくとも7年の期間、又は少なくとも8年の期間又はそれを超えて維持される。
【0110】
本明細書で開示される方法に従って治療されている患者を、同じ治療を受けていない患者と比較し、EBV関連障害を発症するリスクの低下を評価するため、当業者は、EBV関連障害を発症する移植患者に対して、本明細書で開示される方法に従う治療の転帰を利用可能な臨床統計学と比較することに何らの問題も有しないであろう。前記臨床統計学は、個別のEBV関連疾患の発生率を、より大きい集団における移植後リンパ増殖性疾患を予防するように概説する。前記疾患の平均発生率及びタイムリーな発症は、本明細書で開示される治療方法の転帰と比較され得る。
【0111】
上記方法は、特に臓器又は組織移植を受けることになる対象に適する。好ましい実施形態では、臓器又は組織移植は、固形臓器の移植である。一実施形態では、固形臓器は、腎臓である。別の実施形態では、固形臓器は、肝臓である。さらなる実施形態では、固形臓器は、心臓、肺、膵臓又は腸である。好ましい組織移植は、複合組織移植である。
【0112】
EBV血清陽性ドナーから臓器を受けているEBV血清陰性の腎移植患者は、高リスク患者と考えられ、グローバルアウトカムガイドライン(Kidney Disease:Improving Global Outcomes(KDIGO)Transplant Work Group.KDIGO clinical practice guideline for the care of kidney transplant recipients.Am J Transplant.2009;9(Suppl3):S1-S155)は、増加するEBVウイルス負荷を有するEBV血清陰性患者において免疫抑制薬を低減することを推奨している。したがって、本明細書で開示される方法は、特にEBVナイーブである患者に適し、ここで、固形臓器ドナーは、EBV血清陽性である。EBV陰性、EBVナイーブ及びEBV血清陰性という用語は、本明細書で互換可能に用いられる。
【0113】
免疫抑制又は免疫抑制されているとは、計画的に誘導された免疫系の低下を指す。免疫抑制は、移植患者における臓器拒絶反応を低減するために実施される。免疫抑制剤は、免疫介在性疾患及び移植の治療において広範に使用される。当業者は、利用可能な方法及び技術を十分に理解している(Wiseman A.,Clin J Am Soc Nephrol 11:332-343.Feb,2016)。意図されない結果は、移植患者におけるEBV感染を抑制できず、EBV関連疾患の発症をもたらすことである。したがって、本明細書で開示される方法は、特に免疫抑制剤を受けている患者に適し、当業者にとって周知である。
【0114】
PTLDの発生率は、腎移植を有する成人において1%であり、認められたより高いEBV血清陰性状態を有する小児患者においてより高い(それぞれ49%対8%(Srivastava T,Zwick DL,Rothberg PG,Warady BA.Posttransplant lymphoproliferative disorder in pediatric renal transplantation.Pediatr Nephrol.1999;13:748-54)。したがって、本明細書で開示される方法は、特に小児患者に適する。
【0115】
抗CD40抗体
CD40は、B細胞及び抗原提示細胞(APC)、例えば単球、マクロファージ及び樹状細胞(DC)で構成的に発現される膜貫通糖タンパク質である。CD40は、血小板でも発現され、特定の条件下において、好酸球及び活性化された実質細胞で発現され得る。B細胞上のCD40のライゲーションは、下流シグナル伝達をもたらし、増強されたB細胞生存及び重要なエフェクター機能、例えばクローン増殖、サイトカイン分泌、分化、胚中心形成、メモリーB細胞の発生、親和性成熟、免疫グロブリン(Ig)アイソタイプスイッチング、抗体産生及び抗原提示の延長をもたらす。さらに、抗原提示細胞(APC)のCD154媒介性活性化は、サイトカイン分泌の誘導並びにCD4ヘルパーT細胞及びCD8T細胞のクロスプライミング及び活性化の調節に関与するCD69、CD54、CD80及びCD86を含む表面活性化分子の発現をもたらす。
【0116】
CD154は、2つの形態、膜結合型及び可溶型で存在する。膜結合型CD154は、活性化されたCD4、CD8及びTリンパ球、マスト細胞、単球、好塩基球、好酸球、ナチュラルキラー(NK)細胞、活性化された血小板で発現される膜貫通糖タンパク質であり、B細胞上で報告されている。それは、血管内皮細胞でも低レベルで発現され、局所炎症中に上方制御されることがある。可溶性CD154(sCD154)は、膜結合型CD154のタンパク質加水分解後に形成され、細胞活性化後にリンパ球及び血小板から放出される。放出されると、sCD154は、機能性を維持し、CD40受容体に結合するその能力を保持する。
【0117】
インビボでのCD40/CD154相互作用の決定的役割は、最適には、CD40又はそのリガンドにおける機能欠失突然変異の結果として高免疫グロブリンM(HIGM)に罹患している患者により例示される。HIGMを有する患者は、T細胞依存性抗体応答の重度の障害、メモリーB細胞の欠如及び皆無又はそれに近い循環IgG、IgA又はIgEを呈する。CD40シグナル伝達における突然変異を有する患者では、類似表現型及び疾患提示について記載がなされている(van Kooten and Banchereau 2000)。
【0118】
本開示の一実施形態では、(本明細書で開示される異なる態様、例えばそのすべての実施形態において記載される)本明細書で開示される方法において使用されるCD40アンタゴニストは、CD40抗体である。特に好ましい実施形態では、CD40抗体は、ADCC活性が抑制された抗体である。
【0119】
ADCC活性が抑制された抗CD40 mAbは、特許米国特許第8828396号明細書及び米国特許第9221913号明細書(それらの全体が参照により本明細書に援用される)で開示されている。ADCC活性が抑制された抗CD40 mAbは、他の抗CD40抗体と比較して改善された安全性特性を有することが予測される。CD40抗体は、固形臓器移植における移植片拒絶の予防、特に腎移植又は肝移植における移植片拒絶の予防に適することが知られている。本明細書で開示される抗CD40抗体は、固形臓器移植における移植片拒絶の予防、特に腎移植、肝移植、心臓移植、肺移植、膵移植、腸移植又は複合組織移植における移植片拒絶の予防に適し、同時に本明細書で開示される方法において使用されることに適する。
【0120】
本発明者らの拘束力のない仮説によると、特許米国特許第8828396号明細書及び米国特許第9221913号明細書からの、mAb1及びmAb2と名付けられた2つのmAbは、本明細書で開示される、EBV関連障害を予防する方法又はEBV負荷を制御する方法において使用されることに適する。CFZ533とも称される抗体mAb1が特に好ましい。
【0121】
当業者が本発明を実施することを可能にするために、mAb1及びmAb2のアミノ酸及びヌクレオチド配列が以下の表1に提示される。
【0122】
本明細書に記載される方法に応じて使用可能である、当技術分野で公知の別の抗CD40 mAbは、例えば、参照により本明細書に援用される米国特許第8568725B2号明細書に記載されている、Astellas Pharma/Kyowa Hakko Kirin Co製のASKP1240である。
【0123】
当技術分野で公知のさらに別の抗CD40 mAbは、例えば、参照により本明細書に援用される米国特許第8591900号明細書に記載されている、Boehringer Ingelheim製のBI655064である。
【0124】
当技術分野で公知のさらなる抗CD40 mAbは、例えば、参照により本明細書に援用される米国特許第8669352号明細書に記載されている、Fast Forward PharmaceuticalsによるFFP104である。
【0125】
上記抗体と同じ作用様式を有する抗体、いわゆるバイオシミラーも、当業者によって理解される通り本開示により包含される。
【0126】
【表1】
【0127】
【表2】
【0128】
【表3】
【0129】
【表4】
【0130】
【表5】
【0131】
【表6】
【0132】
一実施形態では、開示される方法で使用するために提供される抗CD40抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメイン及び配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインを含む。
【0133】
一実施形態では、開示される方法で使用するために提供される抗CD40抗体は、配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む。
【0134】
一実施形態では、開示される方法で使用するために提供される抗CD40抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む。
【0135】
一実施形態では、開示される方法で使用するために提供される抗CD40抗体は、配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号14のFc領域とを含む。
【0136】
一実施形態では、開示される方法で使用するための上記の抗CD40抗体は、サイレントFc IgG1領域を含む。
【0137】
好ましい実施形態では、mAb1と称される抗CD40抗体が、開示される方法で使用するために提供される。具体的には、mAb1は、配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列を含み、且つmAb2は、配列番号11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0138】
CFZ533/イスカリマブは、CD40L(CD154)誘導CD40シグナル伝達を遮断し、且つ抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)又は補体依存性細胞傷害性(CDC)を媒介する能力がない完全ヒトモノクローナルFcサイレント、非枯渇性抗CD40抗体(IgG1/κ)である。現在、CFZ533/イスカリマブは、移植臓器拒絶の阻害及び自己免疫疾患の治療のために臨床開発中である。
【0139】
さらなる実施形態では、本開示は、mAb1/CFZ533又はmAb2をCsA、(Neoral(登録商標)、Novartis)と組み合わせて使用する、EBV関連障害を予防する方法又はEBV負荷を制御する方法を提供する。
【0140】
別のさらなる実施形態では、本開示は、mAb1/CFZ533又はmAb2をタクロリムス(Tac、FK506、Prograf(登録商標)、Astellas)と組み合わせて使用する、EBV関連障害を予防する方法又はEBV負荷を制御する方法を提供する。
【0141】
さらなる実施形態では、本開示は、mAb1/CFZ533又はmAb2をエベロリムス(Zortress(登録商標)、Certican(登録商標)、NovartisなどのmTor阻害剤と組み合わせて使用する、EBV関連障害を予防する方法又はEBV負荷を制御する方法を提供する。
【0142】
1.発現系
軽鎖及び重鎖の発現のために、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターを標準の技術によって宿主細胞に遺伝子導入させる。様々な形式の用語「遺伝子導入」は、外来性DNAの原核生物又は真核生物宿主細胞への導入のために一般に使用される非常に様々な技術、例えば電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラン遺伝子導入などを包含することが意図される。本発明の方法で使用される抗体を原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞のいずれかにおいて発現させることは、理論的に可能である。真核細胞、例えば哺乳類宿主細胞、酵母又は糸状菌における抗体の発現が論じられている。なぜなら、こうした真核細胞、特に哺乳類の細胞が、適切にフォールディングされた免疫学的に活性な抗体を構築及び分泌する可能性は、原核細胞よりも高いからである。
【0143】
具体的には、クローニング又は発現ベクターは、好適なプロモーター配列に動作可能なように連結される、以下のコード配列(a)~(b):
(a)mAb1の全長重鎖及び軽鎖をそれぞれコードする配列番号15及び配列番号16、又は
(b)mAb2の全長重鎖及び軽鎖をそれぞれコードする配列番号17及び配列番号18
のいずれかの少なくとも1つを含むことができる。
【0144】
本発明の方法で使用される組換え抗体を発現させるための哺乳類宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、R.J.Kaufman及びP.A.Sharp,1982 Mol.Biol.159:601-621に記載されている通りのDH FR選択可能マーカーとともに使用される、Urlaub及びChasin,1980 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220に記載されているdhfr-CHO細胞が含まれる)、CHOK1 dhfr+細胞株、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞が含まれる。特に、NSO骨髄腫細胞との使用のために、別の発現系は、PCT公報国際公開第87/04462号パンフレット、国際公開第89/01036号パンフレット及び欧州特許第0338841号明細書に示されているGS遺伝子発現系である。
【0145】
抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳類宿主細胞に導入する場合、抗体は、宿主細胞における抗体の発現又は宿主細胞が成長する培養培地への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間、宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準のタンパク質精製方法を使用して培養培地から回収することができる(例えば、Abhinav et al.2007,Journal of Chromatography 848:28-37を参照されたい)。
【0146】
宿主細胞は、mAb1又はmAb2の発現及び産生に適した条件下で培養することができる。
【0147】
2.医薬組成物
治療用抗体は、典型的には、直ちに投与可能な水性の形態又は投与前の好適な希釈剤での再構成のための凍結乾燥物として製剤化される。抗CD40抗体は、凍結乾燥物として又は例えばプレフィルドシリンジに入れた水性の組成物として製剤化することができる。
【0148】
好適な製剤は、再構成して、患者への送達のための高濃度の抗体活性成分且つ低レベルの抗体凝集を伴う溶液を与えることができる、水性の医薬組成物又は凍結乾燥物を提供することができる。高濃度の抗体は、これにより、患者に送達されなければならない材料の量が減るために有用である。投薬体積の低下により、患者に一定用量を送達するためにかかる時間が最小限になる。高濃度の抗CD40抗体を含む水性組成物は、皮下投与に特に適している。
【0149】
抗CD40抗体は、薬学的に許容できる担体と組み合わせた場合、医薬組成物として使用することができる。こうした組成物は、mAb1又はmAb2などの抗CD40抗体に加えて、担体、種々の希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤及び当技術分野で周知の他の材料を含有することができる。担体の特性は、投与経路に依存する。開示した方法に使用するための医薬組成物は、標的とされる特定の障害の治療のための追加の治療薬も含有することができる。
【0150】
ある具体的実施形態では、本明細書において開示される方法で使用される組成物は、6.0のpHを有し、且つ
(i)150mg/mL mAb1又はmAb2、
(ii)270mMスクロース(安定剤として)、
(iii)30mM L-ヒスチジン(緩衝剤として)、及び
(iv)0.06%ポリソルベート20(界面活性剤として)
を含む、水性製剤から調製される凍結乾燥製剤である。
【0151】
別の具体的実施形態では、本明細書において開示される方法で使用される医薬組成物は、6.0のpHを有し、且つ
(i)150mg/mL mAb1又はmAb2、
(ii)270mMスクロース(安定剤として)、
(iii)30mM L-ヒスチジン(緩衝剤として)、及び
(iv)0.06%ポリソルベート20(界面活性剤として)
を含む、水性医薬組成物である。
【0152】
別の具体的な実施形態では、本明細書で開示される方法において使用される組成物は、
(i)mAb1又はmAb2、
(ii)スクロース(安定剤として)、
(iii)L-ヒスチジン(緩衝剤として)、及び
(iv)ポリソルベート20(界面活性剤として)と、シクロスポリン(例えば、CsA、Neoral(登録商標)、Novartis)若しくはタクロリムス(例えば、Tac、FK506、Prograf(登録商標)、Astellas)などのカルシニューリン阻害剤(CNI)、ミコフェノール酸(例えば、MPA;Myfortic(登録商標)、Novartis)若しくはミコフェノール酸モフェチル(例えば、MMF;CellCept(登録商標)、Roche)などのリンパ球増殖阻害剤又はエベロリムス(例えば、Zortress(登録商標)、Certican(登録商標)、Novartis)若しくはシロリムス(例えば、Rapamune(登録商標)、Pfizer)などの増殖シグナル阻害剤又はベラタセプト(例えば、Nulojix(登録商標)、BMS)などのT細胞同時刺激遮断剤からなる群から選択される少なくとも1つの追加の活性医薬成分と
を含む凍結乾燥又は液体製剤である。
【0153】
3.投与経路
典型的には、抗体又はタンパク質は、注射により、例えば静脈内、腹腔内又は皮下に投与される。この投与を実行するための方法は、当業者に公知である。局所的若しくは経口的に投与することができるか、又は粘膜を透過する能力がある可能性がある組成物を得ることも可能である。当業者によって理解されるであろう通り、選択された特定の投与経路に対して適切であるような、投与するのに適したあらゆる手段を使用することができる。
【0154】
可能な投与経路の例としては、非経口(例えば、静脈内(i.v.若しくはI.V.又はiv若しくはIV)、筋肉内(IM)、皮内、皮下(s.c.若しくはS.C.又はsc若しくはSC)又は注入)、経口及び肺内(例えば、吸入)、経鼻、経皮(局所)、経粘膜及び直腸内投与が挙げられる。非経口、皮内又は皮下適用のために使用される液剤又は懸濁剤は、以下の構成成分を含むことができる:無菌の希釈剤、例えば注射用水、生理食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒、抗菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン、酸化防止剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム、キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸、緩衝液、例えば酢酸、クエン酸又はリン酸及び張度の調整のための薬剤、例えば塩化ナトリウム又はデキストロース。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基を用いて調整することができる。非経口調製物は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器又は反復投与バイアルに封入することができる。
【0155】
抗CD40療法は、任意選択的に、本発明の方法で使用される抗体又はタンパク質の「負荷用量/レジメン」を、抗CD40療法を必要としている対象に投与することによって開始することができる。「負荷用量/レジメン」は、対象に投与される、本発明の方法で使用される抗CD40抗体又はタンパク質の初回用量/レジメンを意図し、ここで、投与される、本発明の方法で使用される抗体又はタンパク質の用量は、より高い投薬範囲(すなわち約10mg/kg~約50mg/kg、例えば約30mg/kg)の範囲内にある。「負荷投与/レジメン」は、完全な「負荷投与/レジメン」が約24時間期間内(又は疾患の重症度に基づいて複数の静脈内投与が必要である場合には初月以内)に実施される限り、単回投与、例えば抗体若しくはその抗原結合断片がIV投与される単回注入として又は複数回投与、例えば抗体若しくはその抗原結合断片がIV投与される複数回注入として実施され得る。次いで、「負荷用量/レジメン」の施与後、1種又は複数の追加の治療有効用量の抗CD40抗体を対象に投与する。その後の治療有効用量は、例えば、毎週の投薬スケジュールに従って又は2週に1回(隔週)、3週に1回若しくは4週に1回投与することができる。こうした実施形態では、その後の治療有効用量は、一般に、より低い投薬範囲(すなわち約0.003mg/kg~約30mg/kg、例えば約10mg/kg、例えば10mg/kg)の範囲内にある。
【0156】
代わりに、いくつかの実施形態では、「負荷用量/レジメン」後、その後の治療有効用量の抗CD40抗体が、「維持スケジュール」(ここで、治療有効用量のCD40抗体は、毎週、隔週又は1か月に1回、6週に1回、2か月に1回、10週に1回、3か月に1回、14週に1回、4か月に1回、18週に1回、5か月に1回、22週に1回、6か月に1回、7か月に1回、8か月に1回、9か月に1回、10か月に1回、11か月に1回若しくは12か月に1回投与される)に従って投与される。こうした実施形態では、抗CD40抗体の治療有効用量は、特に、その後の用量がより高頻度の間隔、例えば2週に1回~1か月に1回投与される場合、より低い投薬範囲(すなわち約0.003mg/kg~約30mg/kg、例えば約10mg/kg、例えば10mg/kg)の範囲内にあるか、又は特にその後の用量がより低頻度の間隔で投与される場合、例えばその後の用量が1か月~12か月離れて投与される場合、より高い投薬範囲(すなわち10mg/kg~50mg/kg、例えば30mg/kg)の範囲内にある。
【0157】
投薬のタイミングは、一般に、「ベースライン」としても公知である、活性な化合物(例えば、mAb1)の第1の投与の日から測定される。しかし、異なる医療提供者が異なる命名規則を使用する。
【0158】
特に、第0週は、医療提供者によって第1週とみなされる可能性がある一方、第0日は、医療提供者によって第1日とみなされる可能性がある。したがって、異なる医師が、同じ投薬スケジュールを指すのに、例えば3週中/第21日、3週中/第22日、4週中/第21日、4週中/第22日にある用量が与えられると称する可能性がある。一貫性を保つために、投薬の最初の週は、本明細書では第0週とみなすこととするのに対して、投薬の最初の日は、第1日とみなすこととする。しかし、この命名規則は、単に一貫性を保つために使用され、限定的なものと解釈されるべきではなく、すなわち医師が特定の週を「第1週」と呼ぶか「第2週」と呼ぶかにかかわらず、毎週の投薬は、抗CD40抗体(例えば、mAb1)の毎週の用量の規定であることが当業者によって理解されるであろう。本明細書に記述する投薬計画の例は、図1及び2において参照される。ある用量が厳密な時点で提供される必要はないことが理解されるであろう。例えば、およそ第29日の予定である用量は、これが適切な週に提供されるのであれば、例えば第24日~第34日、例えば第30日に提供される可能性がある。
【0159】
本明細書で使用する場合、表現「[指定された用量]の送達を可能にするのに十分な量の抗CD40抗体を有する容器」は、所与の容器(例えば、バイアル、ペン(pen)、シリンジ)が、所望される用量を提供するために使用することができる、(例えば、医薬組成物の一部としての)ある体積の抗CD40抗体をその中に配置していることを意味するために使用される。一例としては、所望される用量が500mgである場合、臨床医は、250mg/mlの濃度を有する抗CD40抗体製剤を含有する容器からの2ml、500mg/mlの濃度を有する抗CD40抗体製剤を含有する容器からの1ml、1000mg/mlの濃度を有する抗CD40抗体製剤を含有する容器からの0.5mlなどを使用することができる。こうした各場合において、これらの容器は、所望される500mg用量の送達を可能にするのに十分な量の抗CD40抗体を有する。
【0160】
本明細書で使用する場合、表現「[指定された用量]の[投与経路]送達を可能にするための投薬量で製剤化される」は、所与の医薬組成物が、指定された投与経路(例えば、SC又はIV)を介して、所望される用量の抗CD40抗体、例えばmAb1を提供するために使用できることを意味するために使用される。一例として、所望される皮下用量が500mgである場合、臨床医は、250mg/mlの濃度を有する抗CD40抗体製剤の2ml、500mg/mlの濃度を有する抗CD40抗体製剤の1ml、1000mg/mlの濃度を有する抗CD40抗体製剤の0.5mlなどを使用することができる。こうした各場合において、これらの抗CD40抗体製剤は、抗CD40抗体の皮下送達を可能にするのに十分に高い濃度である。皮下送達は、典型的には、約1mL以上(例えば、2mL)の体積の送達を必要とする。しかし、例えばパッチ/ポンプ機構を使用して、時間をかけてより高い体積を送達することができる。
【0161】
患者におけるEBV関連障害を予防するため又はEBV負荷を制御するための薬剤の製造における抗CD40抗体(例えば、mAb1)の使用が本明細書で開示され、ここで、薬剤は、各容器が、単位用量あたり少なくとも約75mg、150mg、300mg又は600mgの抗CD40抗体又はその抗原結合断片(例えば、mAb1)の送達を可能にするのに十分な量の抗CD40抗体を有するような容器を含むように製剤化される。
【0162】
EBV関連障害を予防するため又はEBV負荷を制御するための薬剤の製造における抗CD40抗体(例えば、mAb1)の使用が本明細書で開示され、ここで、薬剤は、単位用量あたり75mg、150mg、300mg又は600mgの抗CD40抗体又はその抗原結合断片(例えば、mAb1)の全身送達(例えば、IV又はSC送達)を可能にする用量で製剤化される。
【0163】
ある具体的実施形態では、EBV関連障害の予防又はEBV負荷の制御のための医薬品の製造のための、a)抗CD40抗体、緩衝液、安定剤及び可溶化剤を含む液体医薬組成物、及びb)抗CD40抗体を、移植患者に皮下投与するための手段の使用が提供され、ここで、抗CD40抗体は、
i)ヒト対象の1キログラムあたり約3~約30mg、例えば10mgの活性成分の用量で1週おきに1回を3回、患者に皮下投与され、
ii)その後、ヒト対象の1キログラムあたり約3~約30mg、例えば10mgの活性成分の毎月の用量として患者に皮下投与され、ここで、前記抗CD40抗体は、
a)配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
b)配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
c)配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む抗CD40抗体、
d)配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号14のFc領域とを含む抗CD40抗体、
e)サイレントFc IgG1領域を含む抗CD40抗体、及び
f)配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列又は配列番号11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含む抗CD40抗体
からなる群から選択される。
【実施例
【0164】
実施例2.薬理学
1.第1の薬理学
mAb1は、ヒトCD40と高親和性(0.3nMのK)で結合する。しかし、これは、Fcγ受容体(CD16が含まれる)と結合せず、又は抗体依存性細胞傷害若しくは補体依存性細胞傷害を媒介しない。mAb1は、ヒト白血球の組換えCD154(rCD154)誘導性の活性化を阻害するが、単球由来樹状細胞(DC)によるPBMC増殖又はサイトカイン産生を誘発しない。mAb1は、非常に類似の親和性でヒト及び非ヒト霊長類CD40と結合する。
【0165】
mAb1は、インビボで一次及び二次T細胞依存性抗体反応(TDAR)を阻止し、非ヒト霊長類における腎臓同種移植片の生存を延長させることができる(Cordoba et al 2015)。さらに、mAb1は、構築された胚中心(GC)をインビボで崩壊させることができる。
【0166】
CD40受容体占有率と機能活性を、ヒト全血培養を使用してインビトロで同時に評価した。機能活性は、CD20陽性細胞(B細胞)上のCD69(活性化マーカー)のCD154誘導性の発現を介して定量化し、CD40占有は、蛍光標識したmAb1を使用して観察した。rCD154誘導性のCD69発現の十分な阻害のために、mAb1によるほぼ完全なCD40占有が必要であった。
【0167】
2.第2の薬理学
血小板機能及び止血に対するmAb1の効果を研究し、mAb1が血小板凝集反応を誘発せず、むしろ、高濃度で血小板凝集に対するある種の穏やかな抑制効果を呈することが示された。
【0168】
実施例3.非臨床の毒性学及び安全性薬理学
mAb1を用いる毒性研究は、抗CD154 mAbを用いる臨床試験において報告された場合に血栓塞栓症の証拠がなかったことを含めて、いずれの有意な臓器毒性も示さなかった(Kawai et al 2000)。13週のGLPアカゲザル研究(10、50及び150mg/kgでの毎週の投薬)では、5/22匹の動物において、進行中の感染症に起因すると考えられるリンパの細胞充実性の増大が認められ、観察結果は、mAb1の薬理学と一致していた。50mg/kgの2匹の動物の腎臓及び肺において炎症性病変が認められ、2匹の動物のうちの1匹では眼及び気管における病変も認められた。腎臓及び肺に対するmAb1の直接的影響は、排除することができないが、日和見病原体の確認を含めた証拠の重みは、これらの所見が、mAb1介在性の免疫抑制に続発する可能性が高く、感染症由来のものであることを示唆する。これらの炎症所見を考慮して、13週の毒性研究についての無毒性量(NOAEL)を10mg/kgに設定した。カニクイザルにおける26週の慢性毒性研究では、有害なmAb1関連の所見は発見されなかった。これらのデータに基づいてNOAELを150mg/kg(26週)に設定した。平均(全動物)Cmax,ssは、1、50及び150(NOAEL)mg/kg(S.C.、毎週)でそれぞれ44、3235及び9690μg/mLであった。26週のカニクイザル研究から得られたNOAELは、臨床投薬レジメンを裏付けるために最も適切であると考えられる。
【0169】
死後の組織学的及び免疫組織学的評価は、脾臓の皮質B細胞領域及びリンパ組織におけるGCの低下を示した。回復動物は、正常なT細胞領域及び増大したB細胞領域を伴うリンパ節細胞充実性の増大といういくつかの症例を示し、これは、退薬後のGCの再構成と一致していた。回復動物は、mAb1の血中濃度が、十分な受容体占有に必要な濃度未満に低下した直後に、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に対する一次TDARを開始することができた。
【0170】
T細胞依存性抗体反応(TDAR)の完全な阻害が原因で、KLH、すなわちmAb1に対する抗薬物抗体(ADA)の形成が期待されず、したがってmAb1の濃度が継続的に薬理学的レベルに維持される場合、ADA関連の副作用はなさそうであると考えられる。
【0171】
組織交差反応性研究は、CD40が、免疫細胞上に存在するだけでなく、様々な組織内にも存在することを示した。これは、主として、内皮及び上皮細胞(ここで、CD40は、創傷治癒プロセスに反応することなどのシグナル伝達、ウイルス防御の上方調節及び炎症関連メディエーターに関与する)上でのその発現に起因する。mAb1のような拮抗性の抗CD40モノクローナル抗体は、炎症プロセスに寄与することが期待されず、これは、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を使用するインビトロ研究によって確認された。
【0172】
実施例4.非臨床の薬物動態及び薬力学
1.薬物動態(PK)
IgG免疫グロブリンに典型的であるが、mAb1の排除の主要な経路は、血漿と平衡状態にある部位で起こるタンパク質分解性の異化作用を介する可能性が高い。さらに、mAb1-CD40複合体の結合及び内在化は、迅速な飽和性のクリアランス経路をもたらした。これは、約10~20μg/mLでの屈曲点を示す非線形のmAb1血清中濃度-時間プロフィールによって示された。クリアランス全体に対するCD40介在性のクリアランスの寄与は、CD40発現、内在化及び受容体代謝回転速度のレベルとともにmAb1濃度に依存する。mAb1>10~20μg/mLの血清中濃度について線形の動態が予想されるのに対して、より低い濃度では非線形動態が明らかになる。
【0173】
2.薬力学(PD)
カニクイザルにおけるPK/PD研究では、PKプロフィールにおける屈曲点(約10μg/mL)は、独立したリンパ球標的飽和アッセイにおいて決定される場合のCD40飽和の低下と関係があった。したがって、この屈曲点は、CD40の飽和のレベルについてのマーカー及び標的エンゲージメントを示す証拠とみなされる。
【0174】
CD40占有率と薬力学的活性との関連を、KLHで免疫を受けたアカゲザルにおいてさらに実証した。サルは、KLHで3回免疫を受けた(1回目は、投薬の約3週前であり、2回目は、mAb1投与の2週後であり、3回目は、mAb1の完全なウォッシュアウト後であった)。第2のKLHワクチン接種時の血漿中濃度>40μg/mLのmAb1によるCD40占有は、リコール抗体反応を完全に予防した。mAb1がなくなると、すべての動物は、第3のKLHに対する十分なメモリー抗体反応を開始した。これらの結果は、既存のメモリーB細胞の機能が影響を受けなかったことを示唆する。mAb1の完全な排除後、破傷風トキソイド(TTx)での免疫化は、治療されていない動物と同様の抗TTx-IgG/IgM力価をもたらし、mAb1排除後に十分なTDARが回復したことを実証した。
【0175】
実施例5.ヒト安全性及び忍容性データ
mAb1の安全性、忍容性、PK及びPD活性は、健康な対象及び関節リウマチ(RA)を患う患者における、mAb1の進行中の、無作為化された、二重盲検の、プラセボ対照の単一用量漸増研究において評価されている。合計48人の対象が登録されている:最大3mg/kg(IV又はS.C.)の単一用量のmAb1を受けた36人の健康な対象及びRAを有する12人の患者(そのうちの6人は、10mg/kg(IV)の単一用量のmAb1を受けた)。全体的に見ると、健康なボランティアにおける最大3mg/kg mAb1までの単一用量及びRA患者における単一の10mg/kg mAb1は、安全且つ良好な耐容性を示しており、重篤な有害事象の疑い(SAE)は発生していない。30mg/kg(IV)用量の研究は、RA患者において進行中である。この研究は、依然として進行中であるため、すべての臨床データは、事実上、予備的であり、RA患者において最大10mg/kgの用量で行われた中間解析に基づいている。
【0176】
実施例6.ヒト薬物動態及び薬力学(健康なボランティア及び関節リウマチ患者)
単回IV又はSC投与後の、健康な対象並びに関節リウマチを患う患者では、CFZ533 PKプロフィールは、標的介在性の消失と一致しており、CD40受容体占有率がおよそ90%未満に低下した場合、非線形PKプロフィール及びより急速なクリアランスがもたらされた。
【0177】
中国人対象からのPKプロフィールにおけるいくらかの個人間の変動性はあるものの、中国人対象におけるCFZ533の消失は、概して、非中国人対象と同様であり、3mg/kg(IV)CFZ533後の標的エンゲージメントも同様(約4週)であった。この用量レベルにおいて、血漿中の遊離CFZ533プロフィール、遊離CD40及び総CD40を測定する末梢B細胞上のCD40占有率並びに血漿中の総CD40濃度を通して同様のPK/PDプロフィールが示された。
【0178】
健康な対象におけるSC投与後、CFZ533は、急速に吸収され、ヒトにおける典型的なIgG1抗体について予測されるものと一致して分配された。3mg/kg(SC)では、CFZ533は、概して、投与後3日(2人の対象について7日)でピークになり、投薬の1週後、血漿中濃度は、IV後と同じ範囲であった。3mg/kg(SC)では、標的エンゲージメントの期間は、やはり約4週であった。
【0179】
関節リウマチを患う10mg/kg(IV)の患者では、投与前平均と比較される全血B細胞上の遊離CD40及び血漿中の総sCD40プロフィールによって測定された場合、十分なCD40占有は、概して、8週間維持された。30mg/kg(IV)では、PK及び血漿中の総sCD40プロフィールは、16週の標的エンゲージメントの期間と一致していた。
【0180】
健康な対象では、CFZ533によるCD40エンゲージメントは、B細胞上の遊離CD40によって測定される場合のB細胞上のCD40占有率を追跡すると、概して、末梢B細胞上の総CD40の約50%の減少をもたらした。これは、CFZ533への結合時の膜結合型CD40の内在化及び/又はシェディングに起因する可能性が高い。関節リウマチを患う患者では、末梢B細胞上の総CD40の減少は確認されなかった。
【0181】
血漿中のCFZ533と、全血B細胞上のCD40占有率(B細胞上の遊離CD40)との関係が明らかにされ、0.3~0.4μg/mLのCFZ533濃度は、全血B細胞上の十分な(≧90%と定義される)CD40占有と関係があった。
【0182】
より一般的には、CFZ533について、非特異的及び特異的な排除経路が特定されている。FcRn受容体によって介在される非特異的な高容量の経路は、一般に、内在性IgGによって共有される。CFZ533の特異的な標的介在性の消失は、(その後のリソソーム分解を伴って)部分的に内在化され、且つ/又は膜からシェディングされるCFZ533-CD40複合体の形成をもたらした。標的介在性のプロセスは、CFZ533の飽和性の及び非線形消失をもたらした。CFZ533-CD40複合体の形成は、用量/濃度-依存性であり、高濃度のCFZ533で飽和が生じた。
【0183】
全体的に見ると、CFZ533の消失は、CFZ533のクリアランス全体に対する、特異的な(標的介在性の)及び非特異的な排除経路の相対的寄与に依存する。CFZ533濃度が標的の濃度よりも低い場合、非線形PK挙動が観察されたのに対して、CD40受容体が飽和しているより高い濃度では非特異的経路が優勢であり、CFZ533の排除が線形であった。
【0184】
膜結合型受容体を標的にし、且つ標的介在性の消失を示す典型的なIgG1抗体について予測される通り、CFZ533の曝露の程度(AUClast)は、用量の増大よりも大きく(比例を超えて)増大した。したがって、これは、より高い用量でのCFZ533の分布容積及びクリアランスの低下と関係があることが予測される。
【0185】
3mg/kg(IV及びSC)の単一用量のCFZ533は、十分な(≧90%)受容体占有率に相当するCFZ533濃度において、第1のKLH免疫化に対する抗KLH反応を一時的に抑制した(約3~4週間)。抗KLH一次反応は、CFZ533濃度としてすべての対象において検出され、それに伴って受容体占有率が低下した。すべての対象は、第2のKLH免疫化(受容体占有の喪失が予測された後に投与される)に対するリコール反応を開始することができた。
【0186】
データは、CFZ533によるCD40エンゲージメントがヒト全血における組換え型ヒトCD154(rCD154)介在性のB細胞活性化を防止することを示唆する。B細胞上のrCD154誘導性CD69発現は、概して、B細胞上の十分なCD40占有に相当する期間中に抑制された。CD40占有が不完全であった場合、rCD154の機能活性は回復した。
【0187】
ヒトにおいて確認される安全性及び忍容性:単一用量漸増(0.03~30mg/kg)のCFZ533(i.v.)及び3mg/kg(s.c.)を試験する第1相研究(CCFZ533X2101)が完了し、試験された最大用量(10mg/kg(i.v.))まで、安全上の大きい懸念は示されなかった。今までの臨床経験に基づくと、10mg/kg(i.v.)の投薬レジメンは、安全であり且つ移植患者において容認できると予測される。
【0188】
前臨床毒性学的研究から得られる適切な安全域:これまでのGLP毒性研究は、(i)アカゲザルにおける10、50及び150mg/kg(s.c.及びi.v.)での13週間の毎週のs.c.投薬、並びに(ii)カニクイザルにおける1、50及び150mg/kgでの26週間の毎週のs.c.投薬でCFZ533を試験している。これらの研究は、12週又は24週間の提案された静脈内レジメンでのCFZ533の使用を妨げることになるいかなる主要所見も示さなかった。カニクイザルにおける26週の毒性研究では、定常状態で、150mg/kg(NOAEL)での毎週の投薬後、8300μg/mL(Cav,ss)の平均濃度が得られた。1か月の期間にわたる相当する全身曝露(AUC、定常状態条件)は、232400日*μg/mLであろう。これは、最初の1か月にわたる予測される全身的血漿曝露よりも約57倍高い(AUC0-28日;図3)。26週の毒性研究では、NOAELで、Cmax,ssは、9495μg/mLであった。これは、移植患者における提案された静脈内レジメンについての予測されるCmax(約400μg/mL)よりも24倍高い(図4)。
【0189】
図4は、10mg/kgで静脈内に与えられるCFZ533(コホート2)についての予測される平均血漿中濃度-時間プロフィールを示す。研究第1日、15日、29日及び57日(プラセボ対照期間)並びに研究第85日、99日、113日及び141日(非盲検期間)に与えられる10mg/kg(i.v.)CFZ533についての平均PKプロフィールをシミュレートした。健康な対象におけるFIH研究CCFZ533X2101からのコホート5(3mg/kg(i.v.))PKデータの予備的モデルに基づく集団分析から得られたパラメータを使用して、ミカエリスメンテンモデルを適用した。抗CD40遮断剤を用いた以前の経験は、ヒトtxに存在せず、また健康な対象とtx患者との間のCD40(発現、ターンオーバー)の生物学のいかなる潜在的な違いも不明であった。提案されたi.v.レジメンは、治療期間全体を通して、tx患者における標的組織におけるCD40発現の増大について予測するための、40μg/mLを超えて維持される血漿中濃度を提供することが期待された。40μg/mLでの水平な点線は、標的組織における十分なCD40占有及び経路遮断が期待される濃度を超える血漿中濃度を表している(カニクイザル-1mg/kg用量群における26週の毒性研究からのPDデータに基づく)。最初の1か月(より高い投薬頻度)中の予測される全身曝露は、4087日*μg/mLであり(カニクイザル-毎週の150mg/kgのNOAELにおける26週の毒性研究における定常状態での1か月にわたって観察された全身的血漿曝露よりも57倍低い)、予測されるCmaxは、約400μg/mLである。
【0190】
非ヒト霊長類における組織における関連するPD効果:26週の毒性学的研究(1mg/kg用量群)では、平均の定常状態血漿中濃度が≧38μg/mLである動物は、リンパ節の皮質B細胞領域における胚中心の完全な抑制を有していた。10mg/kg(i.v.)レジメンは、治療期間全体(プラセボ対照及び非盲検、図3を参照されたい)を通して、tx患者における、より高いCD40発現について予測するための、40μg/mLを超えて維持される血漿中濃度並びに標的飽和の喪失に起因する標的組織における不完全なPD効果を提供することが期待された。
【0191】
材料及び方法
【0192】
【表7】
【0193】
【表8】
【0194】
【表9】
【0195】
【表10】
【0196】
【表11】
【0197】
抗体
【0198】
【表12】
【0199】
化合物
【0200】
【表13】
【0201】
機器及び補足材料
【0202】
【表14】
【0203】
【表15】
【0204】
培地、緩衝液及び試薬
細胞培地:425mLのRPMI-1640培地、5mLのピルビン酸ナトリウム(最終1mM)、5mLのPen/Strep(1×)、5mLのカナマイシン(1×)、5mLのMEM-NEAA(最終1mM)、5mLのL-グルタミン(最終2mM)、0.5mLのβメルカプトエタノール(最終50μM)、50mLのFBS(Hyclone;最終10%);EBV培地:15mLの細胞培地、15mLのEBV上清(最終25%)、0.6mLのトランスフェリン(最終30ng/mL;ストック6μg/mL);FACS緩衝液:500mLのDPBS、10mLのFBS(最終2%)、2mLのEDTA(最終2mM);ブロッキング緩衝液:13.5mLのFACS緩衝液、1.5mLのヒト血清(最終10%)。
【0205】
「完全培地」(上記を参照されたい)を、最終濃度が2.5μg/mLのCpG2006、30ng/mLのトランスフェリン及び30%EBV上清と混合することにより、B細胞不死化培地を作製した。自家作製したEBV-B細胞株及び細胞共培養物を、10%Hyclone-FBS、1×ペニシリン/ストレプトマイシン、1×カナマイシン、1×NEAA、1×ピルビン酸ナトリウム及び50μMのβメルカプトエタノールを添加したRPMI-1640培地(=完全培地)中で維持した。凍結培地は、10%DMSO及び90%FBSからなった。MACS緩衝液は、0.5%BSA(MACS BSA保存液をautoMACSリンス液で1:20に希釈した)及び2mM EDTAを添加したPBSからなった。1mg/mLのDNAseをPBSで希釈し、10μg/mLの最終濃度(ストック濃度)を得て、0.22μmのフィルターを通して濾過し、アリコートし、-20℃で貯蔵した。1mLの完全培地あたり10μLのストック濃度を使用した。1.2mgの凍結乾燥した組換えヒト(rh)IL-2を1.2mLの細胞培養グレード水で希釈した(ストック濃度:1mg/mL=18MIO IU/1.2mL=15MIO IU/mL)。一定分量を作成し、-20℃で貯蔵した。各実験では、新規の一定分量を解凍し、実験期間中に4℃で維持した。1つのCFSEバイアルを18μLのDMSOで希釈した(ストック濃度:5mM)。実験手順では、PBS中、1:5000を使用した(最終濃度:1μM)。1つのCell Trace Violetバイアルを20μLのDMSOで希釈した(ストック濃度:5mM)。実験手順では、PBS中、1:2000を使用した(最終濃度:2.5μM)。
【0206】
バフィーコートからのヒトドナーの選択:140の健常ボランティアからのバフィーコートは、インフォームドコンセントに署名後、Blutspendezentrum Bernから入手した。NBC(NIBR),Basel,Switzerlandにより、これらのドナーからの末梢血単核球(PBMC)及び血漿を単離し、貯蔵した。実験を開始する前に、血漿中のエプスタイン・バーウイルス(EBV)に対するIgGクラス抗体を、ヒト抗EBV IgG ELISAキット(EBV-EBNA)を製造業者の使用説明書に従って使用し、測定することにより、すべてのドナーを分析した。
【0207】
EBV-B細胞株の作製:EBV-B細胞株の作製は、EBV血清陽性(1回目:ドナー88、153及び139;2回目:ドナー90、125及び171;3回目:ドナー633、648、638、652、637及び660)及びEBV血清陰性(1回目:ドナー73、111及び173;2回目:ドナー289及び437;3回目:ドナー670、624、583及び635)である選択されたドナーのPBMCを使用することにより実施した。
【0208】
まず、EasySepヒトB細胞濃縮カクテルを使用し、製造業者のプロトコルに従い、B細胞を選択されたPBMCから精製し、無希釈EBV上清(E.Traggiai,NBC,Novartisから入手)中で1×106個の細胞/mLに調節した。遠心分離(425×g、3時間、37℃)後、感染B細胞の上清を慎重に除去し、1×106個の細胞/mLのB細胞不死化培地にペレットを懸濁した(3.5)。並行して、支持細胞を非自家ドナーから調製した。したがって、PBMCを単離し、50グレイで照射し、使用するまで4℃で維持した。遠心分離(425×g、10分、4℃)後、上清を慎重に除去し、細胞を完全培地中で1×106個の細胞/mLに調整した。1mLの支持細胞及び1mLの感染B細胞を12ウェルプレート内においてウェルごとに分布させた(最終2×106個の細胞/ウェル/2mL)。次に、その細胞を37℃、5%CO2で培養した。拡大のため、細胞を完全培地により1:2に分割した。細胞を最初に6ウェルプレート、次いでT-75フラスコに移したとき、培地が黄色になった。感染EBV-B細胞は、凍結培地でさらに使用するために凍結した。
【0209】
EBV-B細胞又はB細胞及びT細胞の共培養:本発明者らの調査のために自家でのEBV-B細胞/T細胞共培養モデルを確立するため、本発明者らは、Andorsky et al.(Andorsky 2011)によって公表されたプロトコルを改良した。ここで、本発明者らは、EBV-B細胞又は一次B細胞及び自己T細胞を使用し、4つの異なる濃度(10、50、100及び200μg/mL又は媒体対照)でのIgG1アイソタイプ、抗CD40(CFZ533)又は抗CTL-A4抗体(ベラタセプト)のいずれかとともにその細胞をインキュベートした。共培養モデルは、2相:「プライミング」相(7日培養)及び「リコール」相(さらに4日培養)からなった。抗体は、「プライミング」相、「リコール」相又は両方の相(「プライミング及びリコール」)のいずれかで添加した。11日の共培養後、T細胞増殖に対してフローサイトメトリー及びIFNγ産生に対してELISAにより細胞を分析した。
【0210】
EBV-B細胞株の解凍:EBV-B細胞を作製し、十分な拡大後に凍結した。実験開始の1~2週前に凍結バイアルを37℃の水槽又は手での穏やかな撹拌により解凍した。内容物の解凍直後、70%エタノールを使用することでバイアルの外表面を除染した。解凍細胞を15mLのファルコンチューブに移し、DNaseを含有する完全培地3mLを徐々に添加した(最終10μg/mL)。その後、細胞を遠心分離し(365×g、5分、RT)、上清を廃棄し、6mLの完全培地を添加した。次に、6mLの細胞を6ウェルプレートの1ウェルに入れ、37℃、5%CO2で培養した。新しい培地を添加するか、又は6ウェルプレートのいくつかのウェルで継代するか、又は培地を2~3日ごとに交換することにより培養物を維持したとき、培地が橙黄色に変化した。実験では、EBV-B細胞をCD3、CD19及びCD20表面発現についてフローサイトメトリーにより分析した。
【0211】
ポジティブ選択による全B細胞の単離:実験装置において、EBV-B細胞と並行して一次B細胞も使用した。したがって、ヒトCD19マイクロビーズキットを製造業者の使用説明書に従って使用し、磁気自動MACSセパレータを使用することでCD19陽性B細胞を単離した。単離後、細胞を遠心分離し(300×g、5分、RT)、上清を廃棄し、ペレットを完全培地に再懸濁した。次に、B細胞を計数し、T-25フラスコ内において4℃で維持し、照射した。
【0212】
EBV-B細胞及び一次B細胞の照射:T-25フラスコ内で維持したEBV-B細胞及び単離した一次B細胞をX-Ray RS-2000照射装置により30グレイですべて同時に照射した。照射により、一次B細胞及びEBV-B細胞がこれらの共培養物中で分離することが阻止される。これにより、T細胞のみが刺激に応答して分離していることが保証され、APC(ここでは一次B細胞又はEBV-B細胞)は、抗原を提示し、培養物中で数日後に死滅することになる。
【0213】
ポジティブ選択による全T細胞の単離:B細胞単離からの非標識細胞により、EasySepヒトT細胞濃縮キットを製造業者の使用説明書に従って使用し、T細胞を単離した。単離後、細胞を遠心分離し(300×g、5分、RT)、上清を廃棄し、ペレットを完全培地に再懸濁した。その後、T細胞を計数し、使用するまで4℃で貯蔵した。
【0214】
7日間のT細胞のプライミング:単離したT細胞(2×105個/50μL/ウェル)を96ウェルU底プレート内において、10IU/mLのrhIL-2を含有する完全培地に分散した。その後、2×104個の照射したEBV-B細胞又は一次B細胞(50μL/ウェル)を各ウェルに添加した。陰性対照条件(B細胞のみ、EBV-B細胞のみ及びT細胞のみ)を50μLの完全培地で満たした。次に、100μLの異なる抗体及び濃縮物(下記を参照されたい)を細胞の上面に載せ、37℃、5%CO2で7日間インキュベートし、ここでは、2日ごとに150μLの古い培地を慎重に除去し、10IU/mLのrhIL-2を添加した新しい完全培地150μLを上部に添加した。IgG1、ベラタセプト及びCFZ533において使用した濃度は、10、50、100及び200μg/mL又は媒体対照であった。
【0215】
CellTrace CFSE及びCellTrace Violet標識:最初に、適合ドナーからのPBMCを解凍し、EasySepヒトB細胞濃縮キットを製造業者の使用説明書に従って使用し、一次B細胞をネガティブ選択により単離した。次に、一次B細胞及び維持したEBV-B細胞培養物をCellTrace CFSE試薬で標識した。すなわち、細胞を遠心分離し(365×g、7分、RT)、上清を廃棄し、ペレットを5mLのPBS/1%FBSに再懸濁し、遠心分離した(365×g、7分、RT)。次に、細胞を2mLのPBS/1%FBSに再懸濁し、PBSで希釈した1μMのCellTrace CFSE試薬2mL(最終濃度0.5μM)を細胞に添加し、インキュベートした(8分、37℃、暗所)。その後、均等な体積(ここでは4mL)の予備加温したFBSを添加し、蛍光をクエンチし、穏やかに混合した。細胞を遠心分離し(365×g、10分、RT)、上清を廃棄し、ペレットを5mLの完全培地に再懸濁し、遠心分離した(365×g、10分、RT)。次に、ペレットを4mLの完全培地に再懸濁し、インキュベートし(1時間、37℃、暗所)、6mLの完全培地で満たした。細胞を再び遠心分離し(365×g、10分、RT)、上清を廃棄し、ペレットを5mLの完全培地に再懸濁した。計数後、染色単離した一次B細胞及びEBV-B細胞をT-25フラスコに入れ、上記のように照射した。さらに、少ない一定分量を採取し、十分なCFSE標識についてフローサイトメトリーにより細胞を分析した。
【0216】
培養したT細胞に対して同じことを実施した。7日培養後、すべての細胞を滅菌した96ウェルV底プレートに移し、遠心分離し(1000×g、5分、RT)、ペレットを200μLの完全培地に再懸濁した。各条件から5μLを採取し、CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20の発現並びに十分なCFSE染色についてフローサイトメトリーにより分析した。残存細胞を遠心分離し(1000×g、5分、RT)、上清を廃棄し、ペレットを2.5μMのCellTrace Violet試薬100μLに再懸濁し、インキュベートした(20分、37℃)。次に、細胞を遠心分離し(365×g、10分、RT)、上清を廃棄し、100μLの予備加温したFBSを添加し、蛍光をクエンチし、穏やかに混合した。その後、細胞をインキュベートし(30分、37℃)、150μLの完全培地を添加し、遠心分離し(365×g、10分、RT)、上清を廃棄し、ペレットを200μLの完全培地に再懸濁した。すべての細胞を計数し、各ドナーから一定分量を採取し、十分なCFSE染色についてFACSにより点検した。
【0217】
4日間の共培養のリコール:すべての条件について、2通りの96ウェルU底プレートを使用した。2×104個のCellTrace Violet標識T細胞(50μL/ウェル)を各ウェルに添加し、2×104個の照射したCellTrace CFSE標識EBV-B細胞又は一次B細胞(50μL/ウェル)を上面に添加した。異なる濃度の抗体を含有する100μLの完全培地(4.3.5を参照されたい)を添加し、4日間培養した(37℃、5%CO2)。
【0218】
退行アッセイ
健常ボランティア6名(18-001~18-006)からのバフィーコートをBlutspendezentrum Bernから入手した。LeucoSepチューブを製造業者の使用説明書に従って使用し、末梢血単核球(PBMC)を単離し、TC20で計数し、細胞培地(培地、緩衝液及び試薬)中で調節した。すべての条件(表3-2を参照されたい)は、96ウェルU底プレート内で5回実行し、2×105個の細胞/ウェルを含有した。PBMCを37℃で10~15分間インキュベートしてから、EBV上清及びトランスフェリンを含有する細胞培地(培地、緩衝液及び試薬を参照されたい)を添加した。ベラタセプトを2つの異なる濃度(10μg/mL、50μg/mL)において、アイソタイプhIgG及びCFZ533を4つの異なる濃度(10μg/mL、50μg/mL、100μg/mL、200μg/mL)において、且つCsAを4つの異なる濃度(0.1μM、1μM、10μM、20μM)において試験した。プレートは、いかなる補充物も添加することなく、14日間インキュベートした(37℃、5%CO2)。14日後、細胞を96ウェルV底プレートに移し、RT、1000×gで5分間遠心分離し、さらなる分析のため、得られた上清(200μL)を-80℃で貯蔵した。細胞ペレットを染色し、フローサイトメトリー(FACS染色法)により分析した。
【0219】
FACS染色法
退行アッセイからの細胞ペレットをFACS緩衝液で洗浄し、4℃で20分間、ブロッキング緩衝液でブロッキングした。洗浄なしにCD3-PE及びCD19-APCからなる抗体カクテルを添加し、4℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、100μLのFACS緩衝液に再懸濁し、65μLの細胞懸濁液をFortessaX20でプレート(HTSリーダー)内において得て、FlowJoソフトウェアを用いて分析した。異なる時点で、CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20のような表面発現マーカー並びに十分なCellTrace CFSE又はCellTrace Violet標識について、フローサイトメトリーにより細胞を分析した。さらに、共培養時間の終了時、生存度マーカーのCD3、CD4及びCD8を用いてT細胞増殖について細胞を分析した。したがって、細胞を採取し、96ウェルV底プレートに入れ、200μLのFACS緩衝液で洗浄した。次に、細胞を遠心分離し(1000×g、5分、RT)、異なる抗体(補償のための単一又は異なる抗体カクテル)で4℃において30分間染色した。2つの洗浄及び遠心分離ステップ後、細胞を50μLのFACS緩衝液で再懸濁し、Micronicsチューブに移し、BD LSRFortessa(商標)細胞アナライザで得た。
【0220】
結果:
ヒトドナーの選択:共培養を開始する前に、前述の通り、ELISAを用いてEBV血清型について試験した。本発明者らは、10名のEBV血清陽性ドナー(ドナー88、90、125、139、153、171、633、637、652及び660)及び8名のEBV血清陰性ドナー(ドナー73、111、289、437、583、624、635及び670)を同定した。これらのドナーから、EBV-B細胞株を上記のように作製し、異なる細胞を単離し、共培養アッセイに使用した。
【0221】
FACS結果I
細胞共培養モデルにおいて、本発明者らは、EBV-B細胞又は一次B細胞及び自己T細胞を使用し、その細胞を4つの異なる濃度(10、50、100及び200μg/mL又は媒体対照)のIgG1アイソタイプ、抗CD40(CFZ533)又は抗CTL-A4抗体(ベラタセプト)のいずれかとともにインキュベートした。目的の抗体を「プライミング」相、「リコール」相又は「プライミング及びリコール」相のいずれかで前述のような細胞に添加した。11日の共培養後、T細胞増殖に対してフローサイトメトリーにより、またIFNγ産生に対してELISAにより細胞を分析した。
【0222】
共培養物が一次B細胞及び自己T細胞から構成された実験では、顕微鏡的に観察され、フローサイトメトリーにより得られた細胞生存度及び増殖又は細胞集団形成は、低かった(EBV血清陽性及びEBV血清陰性)。したがって、結果は、不確定であったが、この報告では示さない。さらに、これは、すべての条件が検出限界を下回るIFNγサイトカインレベルでも認められた。したがって、T細胞増殖(図7図12)及びIFNγサイトカインレベル結果(図13及び図14)は、EBV-B細胞及び自己T細胞を含有する共培養物の場合に限り示す。
【0223】
FACS結果II
全体的に、6名の異なるドナーを使用し、分析した。本発明者らは、2つの最高CsA濃度(10μM及び20μM)を、細胞に対して毒性であったことから分析から除外した。さらに、2名のドナー(18-003及び18-005)を分析から除外した。なぜなら、CsA(本発明者らの陽性対照を担う)がT及びB細胞増殖に対するいかなる効果も示さなかったからである。
【0224】
他の4名のドナーについて、記載のゲーティング方法(CD3T細胞及びCD19B細胞分析及び図1におけるゲーティング方法)を用いることで実施した分析の結果を図2及び図3に示す。
【0225】
T細胞増殖に対するゲーティング方法:11日の共培養後、細胞を、生存度マーカーを含むCD3、CD4、CD8、CD19及びCD20について染色し、T及びB細胞増殖についてフローサイトメトリーにより分析した。図6-1では、EBV-B細胞/T細胞共培養物を使用する、T細胞増殖に対するゲーティング方法を示す。最初に、前方散乱(FCS)/側方散乱(SSC)で得られた全細胞をドットプロットにプロットし、次に全生細胞(生存度マーカー)に対してヒストグラムプロットでゲーティングした。生細胞ゲートからCD3T細胞を選択し、Cell Tracer Violet陽性細胞に対するゲーティングによりT細胞増殖を同定した(第1列、左から右)。次に、全生細胞から象限を設け、CD4及びCD8T細胞を同定し、Cell Tracer Violet標識を有する増殖について分析した(第2列)。
【0226】
CD3T細胞及びCD19B細胞分析におけるゲーティング方法
14日後、細胞をCD3及びCD19抗体で染色し、CD3T細胞及びCD19B細胞についてフローサイトメトリーにより分析した。図1にゲーティング方法を示す。最初に、前方散乱(FCS)/側方散乱(SSC)で得られた全細胞をドットプロットにプロットし、次にCD3T細胞(上の紫色の丸)又はCD19B細胞(右の紫色の丸)のいずれかに対してドットプロットにおいてさらにゲーティングした。1名の代表的ドナーからの異なる条件を示す((第1列:PBMC+培地-EBV(左プロット)、PBMC+培地+EBV(右プロット);第2列:PBMC+0.1μMのCsA+EBV(左プロット)、PBMC+50μg/mLのベラタセプト+EBV(右プロット);第3列:PBMC+50μg/mLのhIgG1+EBV(左プロット)、PBMC+50μg/mLのCFZ533+EBV(右プロット))。
【0227】
EBV血清陽性EBV-B細胞/T細胞共培養物のT細胞増殖:インビトロ試験の全体設計を図6に示す。全CD3T細胞(図7)、CD4T細胞(図8)及びCD8T細胞(図9)のT細胞増殖を検討するため、異なる濃度(0、10、50、100又は200μg/mL)のCFZ533又はベラタセプトを、指定された相(「プライミング」、「リコール」、「プライミング及びリコール」)のEBV血清陽性EBV-B細胞/T細胞共培養物に投与し、培地又はアイソタイプ対照のような対応する対照に対する比として分析した。3つすべての実験条件において、EBV-B細胞は、T細胞単独の条件と比較してCD3、CD4及びCD8T細胞増殖を誘導した(グラフ内で「0μg/mL」として示した)。ベラタセプトは、抗体を共培養物に2回投与するとき(「プライミング及びリコール」相)に最も強いEBV-B細胞の存在下において、「プライミング」及び「リコール」のみの条件と比較してEBV駆動T細胞増殖を減少させた。さらに、10及び50μg/mLのベラタセプトは、3つすべての条件で100及び200μg/mLのベラタセプトよりもやや強力であるが、有意でない抑制パターンを示していた。加えて、100及び200μg/mLのベラタセプトは、T細胞増殖に対する減少効果を「プライミング及びリコール」相に限って有したが、専ら「プライミング」相又は「リコール」相での添加時に有しなかった。それに対して、CFZ533は、4つすべての試験濃度でCD3T細胞増殖に対する減少効果を有しなかった。
【0228】
CD4T細胞増殖を詳細に分析すると(図8)、ベラタセプトは、やはり抗体を「プライミング及びリコール」相で投与するときに最も強いEBV-B細胞の存在下において、「プライミング」及び「リコール」のみの条件と比較してEBV駆動T細胞増殖を減少させた。加えて、10及び50μg/mLのベラタセプトは、3つすべての条件で100及び200μg/mLのベラタセプトよりもやや強力であるが、有意でないCD4T細胞増殖に対する抑制パターンを誘導していた。さらに、100及び200μg/mLのベラタセプトは、「プライミング及びリコール」相でT細胞増殖に対する強力な減少効果を有し、「プライミング」又は「リコール」のみの相ではより少ない程度で有した。興味深いことに、両方とも、高い用量では、CD3T細胞増殖の結果と異なり、T細胞増殖をやはり低減することが可能であった。再び以前に認めた通り、CFZ533は、4つすべての試験濃度において、「プライミング」のみの相におけるわずかな低下を除き、CD4T細胞増殖に対する減少効果を有しなかった。
【0229】
CD8T細胞増殖を分析すると(図9)、ベラタセプト及びCFZ533は、以前にCD3T細胞増殖において認められた場合と同様の効果を有した(図7)。EBV血清陰性EBV-B細胞/T細胞共培養物のT細胞増殖である。同じ手法を使用し、EBV血清陰性ドナーからの全CD3T細胞(図10)、CD4T細胞(図11)及びCD8T細胞(図12)のT細胞増殖を分析した。EBV血清陽性ドナーに関して、3つすべての条件において、EBV-B細胞は、T細胞単独の条件と比較してCD3、CD4及びCD8T細胞増殖を誘導した(グラフ内で「0μg/mL」として示した)。CD3T細胞増殖(図10)の場合、ベラタセプトは、抗体を共培養物に2回投与するとき(「プライミング及びリコール」相)に最も強いEBV-B細胞の存在下において、「プライミング」及び「リコール」のみの条件と比較してEBV駆動T細胞増殖を減少させた。さらに、10及び50μg/mLのベラタセプトは、3つすべての条件で100及び200μg/mLのベラタセプトよりもやや強力であるが、有意でない抑制パターンを示していた。加えて、100及び200μg/mLのベラタセプトは、T細胞増殖に対する減少効果を「プライミング及びリコール」条件に限って有し、「プライミング」又は「リコール」のみの条件ではわずかにすぎなかった。それに対して、CFZ533は、4つすべての試験濃度でCD3T細胞増殖に対する減少効果を有しなかった。
【0230】
CD4T細胞増殖を詳細に評価すると(図11)、ベラタセプトは、3つすべての異なる条件で同様に強力であり、且つEBV血清陽性ドナーの場合よりも強力であるEBV-B細胞の存在下でEBV駆動T細胞増殖を減少させた。興味深いことに、EBV血清陽性ドナーの場合に観察された通り、4つの用量(10、50、100及び200μg/mL)間で明確な差異は認められなかった。それに対して、CFZ533は、10μg/mL(「プライミング」のみ及び「プライミング及びリコール」条件)及び50μg/mL(「リコール」のみの条件)での有意でないわずかな増加を除き、CD4T細胞増殖に対する効果を有しなかった。
【0231】
CD4T細胞増殖を詳細に評価すると(図11)、ベラタセプトは、3つすべての異なる条件で同様に強力であり、且つEBV血清陽性ドナーの場合よりも強力であるEBV-B細胞の存在下でEBV駆動T細胞増殖を減少させた。興味深いことに、EBV血清陽性ドナーの場合に観察された通り、4つの用量(10、50、100及び200μg/mL)間で明確な差異は認められなかった。それに対して、CFZ533は、10μg/mL(「プライミング」のみ及び「プライミング及びリコール」条件)及び50μg/mL(「リコール」のみの条件)での有意でないわずかな増加を除き、CD4T細胞増殖に対する効果を有しなかった。
【0232】
異なる刺激を用いたCD3T細胞及びCD19B細胞増殖に対する効果
全CD3T細胞(図2)及びCD19B細胞(図3)の増殖を検討するため、異なる濃度としてhIgG1若しくはCFZ533(10μg/mL、50μg/mL、100μg/mL又は200μg/mL)、ベラタセプト(10μg/mL又は50μg/mL)又はCsA(0.1μM又は1μM)を使用した。既に上記の通り、10μM及び20μMのCsAは、細胞に対して毒性であったことから、分析から除外した。「EBVを有しない培地」を除くすべての条件をEBV上清及び各々の化合物又は抗体とともにインキュベートした。図2に示す通り、PBMCをEBV上清とともにインキュベートしたとき、PBMCを培地のみ(EBVを有しない培地)とともにインキュベートしたときと比較してCD3T細胞数に明らかな増加が認められた。さらに、予想通り、0.1μM及び1μMのCsAの場合、それが本発明者らの陽性対照を担うことから、対照条件(培地+EBV)と比較してCD3T細胞数における強力な減少が認められた。ベラタセプト(10μg/mL及び50μg/mL)の場合に同じことを認めることができたが、CsAの場合よりも低い程度であった。CFZ533及び対応するアイソタイプ対照hIgG1は、4つすべての試験濃度においてCD3T細胞数に対する効果を全く有しなかった。CD19B細胞増殖に注目すると(図3)、PBMCをEBV上清とともにインキュベートしたとき、PBMCを培地のみ(EBVを有しない培地)と培養したときと比較してCD19B細胞数における明らかな増加が認められた。さらに、予測通り、0.1μM及び1μMのCsAの場合、対照条件(培地+EBV)と比較してCD19B細胞数における強力な増加が認められた。ベラタセプト(10μg/mL及び50μg/mL)がCD19B細胞数の増加をもたらした一方、アイソタイプ対照hIgG1は、4つすべての試験濃度において効果を全く有しなかった。それに対して、CFZ533は、14日後、おそらく間接的なNK細胞媒介性抗体依存性細胞傷害性(ADCC)に起因してCD19B細胞数における減少を示した。Ristovらの公表(Ristov 2018)では、CFZ533とともに3日間インキュベートされた全血培養物中でADCCが認められず、Cordobaらの公表(Cordoba 2015)では、CFZ533は、実験期間にわたり有意な末梢性B細胞枯渇を示さなかった(非ヒト霊長類における腎移植から100日後、13及び26週毒性試験)。CD19減少の観点で認められた差異は、異なる実験設定により説明することができた。EBV退行アッセイでは、NK細胞がEBVにより明らかに活性化され、実験期間がそれらの拡大を可能にする一方、特定の活性化を全く伴わない3日アッセイでは、ADDCのレベルは、無視できる。NK細胞の潜在的関与を検討するため、NK細胞が細胞培養モデルにおいて維持されるか又は枯渇されるかのいずれかである新たな実験セットを実施した。本発明者らは、HCD122、枯渇CD40 mAbを陽性対照としてさらに含めた。完全又はNK細胞枯渇PBMC培養物中のCD19B細胞数を分析したとき、同様の結果が得られた。予想通り、HCD122はB細胞を実際に枯渇させた。再び、CFZ533は、PBMC培養物中のNK細胞と独立のアイソタイプ対照と比較してCD19B細胞数における減少を示した。したがって、本発明者らは、NK細胞媒介性ADCCを排除することができる。実際に、CD40-CD40L相互作用がインビボでのEBV-B細胞リンパ腫の樹立にとって決定的であることが示されている(Ma et al.,2015)。
【0233】
エプスタイン・バーウイルス(EBV)関連の移植後リンパ増殖性障害(PTLD)は、EBV一次感染又は再活性化に関連する。免疫適格性個体では、抗ウイルスT細胞応答は、感染を制御するが、EBVはB細胞及びいくつかの他の細胞型において潜伏したままである。移植患者であれば、免疫抑制は、抗EBV T細胞応答を弱め、EBV誘導B細胞増殖を制御不能状態にし得る。本発明者らは、EBV-B細胞のT細胞駆動制御、したがってB細胞増殖に対する抗CD40 mAbの効果について試験した。そのため、本発明者らは、抗CD40 mAb(CFZ533/イスカリマブ)との比較において、シクロスポリンA(CsA)、CTLA4-Ig融合タンパク質(ベラタセプト)とともにインキュベートした末梢血単核球を使用し、EBV退行アッセイを実施した。さらに、本発明者らは、T細胞増殖及びIFN産生に対してCD40又はCTLA-4を遮断する効果を、T細胞のEBV-B細胞(血清陽性及び血清陰性)又は一次B細胞との自家共培養物を使用することで評価した。抗CD40 mAbイスカリマブを除くベラタセプト及びCsAは、T細胞活性を低下させ、インビトロ不死化細胞の異常増殖をもたらした。さらに、イスカリマブを除くベラタセプトは、共培養系を使用したEBV-B細胞の存在下でのEBV媒介性T細胞増殖及びIFNγ分泌を低減した。結論として、イスカリマブは、CsA及びベラタセプトと異なり、インビトロでEBV制御を損なわず、イスカリマブを投与した移植患者がPTLDの低下したリスクを有することが示唆される。
【0234】
EBV B細胞/T細胞共培養モデルでは、CFZ533/イスカリマブを除くベラタセプトは、EBV-B細胞の存在下でのEBV媒介性T細胞増殖及びIFNγ分泌を低減した。ベラタセプトの阻害効果は、組み合わされた「プライミング」及び「リコール」培養において、またCD4T細胞に対して最も顕著であった。
【0235】
CFZ533/イスカリマブを除くベラタセプト及びCsAは、T細胞活性を低下させ、インビトロ不死化B細胞の異常増殖をもたらした。これらの結果は、イスカリマブが、腎臓器官移植レシピエントにおいて、ベラタセプトと比較して改善された安全性特性を有することを示す。CFZ533/イスカリマブは、ベラタセプトと異なり、インビトロでEBV制御を損なわず、CFZ533/イスカリマブを投与した移植患者がPTLDの低下したリスクを有することが示唆される。EBV退行アッセイに基づき、CsA/CNIについて同様の結論を引き出すことができる。これらの結果は、EBV感染の発生率増加が認められなかったCNIフリーの治療法としてイスカリマブを使用する現在の臨床腎移植データに一致するように思われる。
【0236】
参考文献
Cesarman E(2014).Gammaherpesviruses and lymphoproliferative disorders.Annu Rev Pathol,9(349-372).
Cohen JI(2015).Primary Immunodeficiencies Associated with EBV Disease.Curr Top Microbiol Immunol,390(Pt 1):241-265.
Cordoba,F.,Wieczorek,G.,Audet,M.et al.(2015).A novel,blocking,Fc-silent anti-CD40 monoclonal antibody prolongs nonhuman primate renal allograft survival in the absence of B cell depletion.Am J Transpl,15,2825-2836.
Larsen CP,Pearson TC,Adams AB et al.(2005).Rational development of LEA29Y(belatacept),a high-affinity variant of CTLA4-Ig with potent immunosuppressive properties.Am J Trans,5(3):443-453.
Ristov J,Espie P,Ulrich P et al.(2018).Characterization of the in vitro and in vivo properties of CFZ533,a blocking and non-depleting anti-CD40 monoclonal antibody.Am J Transplant,18(12):2895-2904.
Vincenti F,Larsen C,Durrbach A et al.(2005).Costimulation blockade with belatacept in renal transplantation.NEJM,353(8):770-781.
Ma SD,Xu X,Plowshay J et al.(2015).LMP1-deficient Epstein-Barr virus mutant requires T cells for lymphomagenesis.J Clin Invest,125(1):304-315.
Andorsky DJ,Yamada RE,Said J et al.(2011)Programmed death ligand 1 is expressed by non-hodgkin lymphomas and inhibits the activity of tumor-associated T cells.Clin Cancer Res,Jul 1;17(13):4232-4244.
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
【配列表】
2022553493000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-09-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるEBV関連障害を予防するための組成物であって、治療有効量のCD40アンタゴニストを含組成物
【請求項2】
前記対象は、小児患者である、請求項1に記載の組成物
【請求項3】
前記対象は、臓器又は組織移植を受けることになる、請求項1又は2に記載の組成物
【請求項4】
前記対象は、EBV血清陽性ドナーから臓器を受けるEBV血清陰性移植患者である、請求項3に記載の組成物
【請求項5】
前記患者は、肝移植患者である、請求項3に記載の組成物
【請求項6】
前記対象は、免疫抑制されている、請求項3に記載の組成物
【請求項7】
前記EBV関連障害は、癌又はリンパ増殖性疾患である、請求項3に記載の組成物
【請求項8】
対象がEBV関連障害を発症する可能性を低減するための組成物であって、治療有効量のCD40アンタゴニストを含組成物
【請求項9】
前記患者は、小児患者である、請求項8に記載の組成物
【請求項10】
前記対象は、臓器又は組織移植を受けることになる、請求項8又は9に記載の組成物
【請求項11】
前記対象は、EBV陽性ドナーから臓器を受けるEBV血清陰性移植患者である、請求項10に記載の組成物
【請求項12】
前記患者は、肝移植患者である、請求項10に記載の組成物
【請求項13】
前記対象は、免疫抑制されている、請求項10に記載の組成物
【請求項14】
前記EBV関連障害は、癌又はリンパ増殖性疾患である、請求項10に記載の組成物
【請求項15】
移植後リンパ増殖性疾患の可能性を低減する、請求項14に記載の組成物
【請求項16】
固形臓器を、それを必要とする患者に移植するための組成物であって、CD40アンタゴニストを含組成物
【請求項17】
前記患者は、小児患者である、請求項16に記載の組成物
【請求項18】
前記対象は、EBV陽性ドナーから臓器を受けるEBV血清陰性移植患者である、請求項16又は17に記載の組成物
【請求項19】
前記患者は、肝移植患者である、請求項18に記載の組成物
【請求項20】
前記対象は、免疫抑制されている、請求項18に記載の組成物
【請求項21】
対象におけるEBV感染を制御するための組成物であって、治療有効量のCD40アンタゴニストを含組成物
【請求項22】
前記患者は、小児患者である、請求項21に記載の組成物
【請求項23】
前記対象は、臓器又は組織移植を受けることになる、請求項21又は22に記載の組成物
【請求項24】
前記対象は、EBV陽性ドナーから臓器を受けるEBV血清陰性移植患者である、請求項23に記載の組成物
【請求項25】
前記患者は、肝移植患者である、請求項24に記載の組成物
【請求項26】
前記対象は、免疫抑制されている、請求項24に記載の組成物
【請求項27】
前記CD40アンタゴニストは、抗CD40抗体である、請求項1、8、16又は21のいずれか一項に記載の組成物
【請求項28】
前記CD40アンタゴニストは、ASKP1240、BI655064及びFFP104からなる抗CD40抗体の群から選択される、請求項27に記載の組成物
【請求項29】
前記抗体は、ADCC活性が抑制された抗CD40抗体である、請求項27に記載の組成物
【請求項30】
前記抗体は、
e.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
f.配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
g.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む抗CD40抗体、及び
h.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号14のFc領域とを含む抗CD40抗体
からなる群から選択される、請求項27に記載の組成物
【請求項31】
前記抗体は、配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列又は配列番号11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含む、請求項28又は30に記載の組成物
【請求項32】
前記抗体は、CFZ533である、請求項27に記載の組成物
【請求項33】
前記抗体CFZ533は、CsA、タクロリムス又はエベロリムスなどのmTor阻害剤と組み合わせて使用される、請求項32に記載の組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0235
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0235】
CFZ533/イスカリマブを除くベラタセプト及びCsAは、T細胞活性を低下させ、インビトロ不死化B細胞の異常増殖をもたらした。これらの結果は、イスカリマブが、腎臓器官移植レシピエントにおいて、ベラタセプトと比較して改善された安全性特性を有することを示す。CFZ533/イスカリマブは、ベラタセプトと異なり、インビトロでEBV制御を損なわず、CFZ533/イスカリマブを投与した移植患者がPTLDの低下したリスクを有することが示唆される。EBV退行アッセイに基づき、CsA/CNIについて同様の結論を引き出すことができる。これらの結果は、EBV感染の発生率増加が認められなかったCNIフリーの治療法としてイスカリマブを使用する現在の臨床腎移植データに一致するように思われる。

本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.対象におけるEBV関連障害を予防する方法であって、治療有効量のCD40アンタゴニストを前記対象に投与することを含む方法。
2.前記対象は、小児患者である、上記1に記載の方法。
3.前記対象は、臓器又は組織移植を受けることになる、上記1又は2に記載の方法。
4.前記対象は、EBV血清陽性ドナーから臓器を受けるEBV血清陰性移植患者である、上記3に記載の方法。
5.前記患者は、肝移植患者である、上記3に記載の方法。
6.前記対象は、免疫抑制されている、上記3に記載の方法。
7.前記EBV関連障害は、癌又はリンパ増殖性疾患である、上記3に記載の方法。
8.対象がEBV関連障害を発症する可能性を低減する方法であって、治療有効量のCD40アンタゴニストを前記対象に投与することを含む方法。
9.前記患者は、小児患者である、上記8に記載の方法。
10.前記対象は、臓器又は組織移植を受けることになる、上記8又は9に記載の方法。
11.前記対象は、EBV陽性ドナーから臓器を受けるEBV血清陰性移植患者である、上記10に記載の方法。
12.前記患者は、肝移植患者である、上記10に記載の方法。
13.前記対象は、免疫抑制されている、上記10に記載の方法。
14.前記EBV関連障害は、癌又はリンパ増殖性疾患である、上記10に記載の方法。
15.移植後リンパ増殖性疾患の可能性を低減する、上記14に記載の方法。
16.固形臓器を、それを必要とする患者に移植する方法であって、CD40アンタゴニストを前記対象に投与することを含む方法。
17.前記患者は、小児患者である、上記16に記載の方法。
18.前記対象は、EBV陽性ドナーから臓器を受けるEBV血清陰性移植患者である、上記16又は17に記載の方法。
19.前記患者は、肝移植患者である、上記18に記載の方法。
20.前記対象は、免疫抑制されている、上記18に記載の方法。
21.対象におけるEBV感染を制御する方法であって、治療有効量のCD40アンタゴニストを前記対象に投与することを含む方法。
22.前記患者は、小児患者である、上記21に記載の方法。
23.前記対象は、臓器又は組織移植を受けることになる、上記21又は22に記載の方法。
24.前記対象は、EBV陽性ドナーから臓器を受けるEBV血清陰性移植患者である、上記23に記載の方法。
25.前記患者は、肝移植患者である、上記24に記載の方法。
26.前記対象は、免疫抑制されている、上記24に記載の方法。
27.前記CD40アンタゴニストは、抗CD40抗体である、上記1、8、16又は21のいずれかに記載の方法。
28.前記CD40アンタゴニストは、ASKP1240、BI655064及びFFP104からなる抗CD40抗体の群から選択される、上記27に記載の方法。
29.前記抗体は、ADCC活性が抑制された抗CD40抗体である、上記27に記載の方法。
30.前記抗体は、
e.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
f.配列番号1、配列番号2及び配列番号3として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号4、配列番号5及び配列番号6として記述される高頻度可変領域を含む免疫グロブリンVLドメインとを含む抗CD40抗体、
g.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号13のFc領域とを含む抗CD40抗体、及び
h.配列番号7のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVHドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を含む免疫グロブリンVLドメインと、配列番号14のFc領域とを含む抗CD40抗体
からなる群から選択される、上記27に記載の方法。
31.前記抗体は、配列番号9の重鎖アミノ酸配列及び配列番号10の軽鎖アミノ酸配列又は配列番号11の重鎖アミノ酸配列及び配列番号12の軽鎖アミノ酸配列を含む、上記28又は30に記載の方法。
32.前記抗体は、CFZ533である、上記27に記載の方法。
33.前記抗体CFZ533は、CsA、タクロリムス又はエベロリムスなどのmTor阻害剤と組み合わせて使用される、上記32に記載の方法。
【国際調査報告】