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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-23
(54)【発明の名称】出力格子を有する流体レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20221216BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20221216BHJP
   G02B 3/14 20060101ALI20221216BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B26/08 H
G02B3/14
G02C7/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022518658
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(85)【翻訳文提出日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 US2020058753
(87)【国際公開番号】W WO2021091925
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/930,797
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/081,157
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】515046968
【氏名又は名称】メタ プラットフォームズ テクノロジーズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】META PLATFORMS TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】弁理士法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンス, ロバート エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ジャコビー, トーマス ノーマン リン
【テーマコード(参考)】
2H006
2H141
2H199
【Fターム(参考)】
2H006BD03
2H141MA12
2H141MB37
2H141MB43
2H141MB56
2H141MC01
2H141MC02
2H141MG04
2H199CA12
2H199CA25
2H199CA29
2H199CA30
2H199CA34
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA50
2H199CA54
2H199CA67
2H199CA68
2H199CA73
2H199CA93
2H199CA94
2H199CA95
2H199CA96
2H199CA97
(57)【要約】
実施例によっては、拡張現実または仮想現実デバイスなどの、デバイスは、1つまたは複数の導波路ディスプレイと、調整可能流体レンズなどの、1つまたは複数の調整可能レンズとを含み得る。実施例によっては、デバイスは、拡張現実光のための負の屈折力を合同でもたらす導波路ディスプレイと後方レンズアセンブリとを含む。前方レンズアセンブリ、導波路ディスプレイ、および後方レンズアセンブリは現実世界光のためのおよそゼロの屈折力を合同でもたらし得る。実施例によっては、負の屈折力を有する眼側の光学要素は導波路ディスプレイからの光の焦点をずらし得る。例示的なデバイスは、調整可能レンズ(またはレンズ群)が、低減された質量および/またはより高速な応答時間を有することを可能にし得る。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学構成を備えるデバイスであって、前記光学構成が、
前方調整可能レンズを含む前方レンズアセンブリと、
拡張現実光を提供するように構成された導波路ディスプレイアセンブリと、
後方調整可能レンズを含む後方レンズアセンブリと、
を含み、
前記導波路ディスプレイアセンブリが前記前方レンズアセンブリと前記後方レンズアセンブリとの間に配置されており、
前記導波路ディスプレイアセンブリおよび前記後方レンズアセンブリの組み合わせが前記拡張現実光のための負の屈折力をもたらし、
前記デバイスが、現実世界画像内において前記拡張現実光を用いて形成された拡張現実画像を提供するように構成されている、デバイス。
【請求項2】
前記現実世界画像が、前記前方レンズアセンブリによって受光された現実世界光によって形成され、前記現実世界光が、その後、前記導波路ディスプレイアセンブリおよび前記後方レンズアセンブリの少なくとも一部分を通過する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
ユーザによって着用されたときに、
前記前方レンズアセンブリが、前記現実世界画像を形成するために用いられる現実世界光を受光し、
前記後方レンズアセンブリが前記ユーザの眼の近位に配置される
ように構成されている、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記負の屈折力が前記現実世界画像と前記拡張現実画像との間の輻輳調節矛盾(VAC)を補正するように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記導波路ディスプレイアセンブリが前記拡張現実光のための前記負の屈折力の少なくとも一部分をもたらす、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記導波路ディスプレイアセンブリが導波路ディスプレイおよび負レンズを含み、ならびに/または好ましくは、前記導波路ディスプレイアセンブリがおよそ-1.5D~-2.5Dの負の屈折力を有し、ここで、Dはディオプターを表す、請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記導波路ディスプレイアセンブリが導波路ディスプレイを含み、前記導波路ディスプレイが前記負の屈折力の前記少なくとも一部分をもたらし、および/または好ましくは、前記導波路ディスプレイアセンブリが格子を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記前方調整可能レンズが、前方基板、前方膜、および前記前方基板と前記前方膜との間に配置された前方レンズ流体を有する前方調整可能流体レンズを含み、ならびに/または好ましくは、前記後方調整可能レンズが、後方基板、後方膜、および前記後方基板と前記後方膜との間に配置された後方レンズ流体を有する後方調整可能流体レンズを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記後方レンズアセンブリが前記負の屈折力の少なくともいくらかをもたらす、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記前方レンズアセンブリが正の屈折力を有し、好ましくは、前記正の屈折力と前記負の屈折力とは大きさがほぼ等しい、請求項1から9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記後方レンズアセンブリが前記後方調整可能レンズおよび補助負レンズを含み、ならびに/または好ましくは、
前記後方調整可能レンズが基板を含み、
前記基板が凹状の外面を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
現実世界光が前記デバイスによって前記前方レンズアセンブリを通して受光され、前記導波路ディスプレイアセンブリおよび前記後方レンズアセンブリを通過して前記現実世界画像を形成し、
前記拡張現実光が前記導波路ディスプレイアセンブリによって提供され、前記後方レンズアセンブリを通過して前記拡張現実画像を形成し、
前記負の屈折力が前記現実世界画像と前記拡張現実画像との間の輻輳調節矛盾を低減する、請求項1から11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記デバイスが拡張現実ヘッドセットである、請求項1から12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前方レンズアセンブリを通して現実世界光を受光し、前記現実世界光を、導波路ディスプレイおよび後方レンズアセンブリを通して案内することによって現実世界画像を生成することと、
拡張現実光を、前記導波路ディスプレイから前記後方レンズアセンブリを通して案内し、拡張現実画像を形成することと、
を含み、
前記導波路ディスプレイおよび前記後方レンズアセンブリが前記拡張現実光のための負の屈折力を協働的にもたらし、
前記前方レンズアセンブリ、前記導波路ディスプレイ、および前記後方レンズアセンブリが前記現実世界光のためのおよそゼロの屈折力を協働的にもたらす、方法。
【請求項15】
前記導波路ディスプレイが拡張現実光源からの前記拡張現実光を受光し、格子を用いて前記拡張現実光を前記導波路ディスプレイ外へ案内する、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、調整可能液体レンズを含む、流体または液体レンズを含むデバイスに関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明の第1の態様によれば、光学構成を備えるデバイスであって、光学構成が、前方調整可能レンズを含む前方レンズアセンブリと、拡張現実光を提供するように構成された導波路ディスプレイアセンブリと、後方調整可能レンズを含む後方レンズアセンブリと、を含み、導波路ディスプレイアセンブリが前方レンズアセンブリと後方レンズアセンブリとの間に配置されており、導波路ディスプレイアセンブリおよび後方レンズアセンブリの組み合わせが拡張現実光のための負の屈折力をもたらし、デバイスが、現実世界画像内において拡張現実光を用いて形成された拡張現実画像を提供するように構成されている、デバイスが提供される。
【0003】
実施形態によっては、現実世界画像は、前方レンズアセンブリによって受光された現実世界光によって形成され得、現実世界光は、その後、導波路ディスプレイアセンブリおよび後方レンズアセンブリの少なくとも一部分を通過する。
【0004】
実施形態によっては、デバイスは、ユーザによって着用されたときに、前方レンズアセンブリが、現実世界画像を形成するために用いられる現実世界光を受光し、後方レンズアセンブリがユーザの眼の近位に配置される、ように構成され得る。
【0005】
実施形態によっては、デバイスは、負の屈折力が現実世界画像と拡張現実画像との間の輻輳調節矛盾(VAC:vergence-accommodation conflict)を補正するように構成され得る。
【0006】
実施形態によっては、導波路ディスプレイアセンブリは拡張現実光のための負の屈折力の少なくとも一部分をもたらし得る。
【0007】
実施形態によっては、導波路ディスプレイアセンブリは導波路ディスプレイおよび負レンズを含み得る。
【0008】
実施形態によっては、導波路ディスプレイアセンブリはおよそ-1.5D~-2.5Dの負の屈折力を有し得、ここで、Dはディオプターを表す。
【0009】
実施形態によっては、導波路ディスプレイアセンブリは導波路ディスプレイを含み得、導波路ディスプレイは負の屈折力の少なくとも一部分をもたらす。
【0010】
実施形態によっては、導波路ディスプレイアセンブリは格子を含み得る。
【0011】
実施形態によっては、前方調整可能レンズは、前方基板、前方膜、および前方基板と前方膜との間に配置された前方レンズ流体を有する前方調整可能流体レンズを含み得る。
【0012】
実施形態によっては、後方調整可能レンズは、後方基板、後方膜、および後方基板と後方膜との間に配置された後方レンズ流体を有する後方調整可能流体レンズを含み得る。
【0013】
実施形態によっては、後方レンズアセンブリは負の屈折力の少なくともいくらかをもたらし得る。
【0014】
実施形態によっては、前方レンズアセンブリは正の屈折力を有し得る。
【0015】
実施形態によっては、正の屈折力と負の屈折力とは大きさがほぼ等しいものであり得る。
【0016】
実施形態によっては、後方レンズアセンブリは後方調整可能レンズおよび補助負レンズを含み得る。
【0017】
実施形態によっては、後方調整可能レンズは基板を含み得、基板は凹状の外面を有し得る。
【0018】
実施形態によっては、現実世界光はデバイスによって前方レンズアセンブリを通して受光され得、導波路ディスプレイアセンブリおよび後方レンズアセンブリを通過して現実世界画像を形成し、拡張現実光は導波路ディスプレイアセンブリによって提供され得、後方レンズアセンブリを通過して拡張現実画像を形成し、負の屈折力は現実世界画像と拡張現実画像との間の輻輳調節矛盾を低減し得る。
【0019】
実施形態によっては、デバイスは拡張現実ヘッドセットである。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、前方レンズアセンブリを通して現実世界光を受光し、現実世界光を、導波路ディスプレイおよび後方レンズアセンブリを通して案内することによって現実世界画像を生成することと、拡張現実光を、導波路ディスプレイから後方レンズアセンブリを通して案内し、拡張現実画像を形成することと、を含み、導波路ディスプレイおよび後方レンズアセンブリが拡張現実光のための負の屈折力を協働的にもたらし、前方レンズアセンブリ、導波路ディスプレイ、および後方レンズアセンブリが現実世界光のためのおよそゼロの屈折力を協働でもたらす、方法が提供される。
【0021】
実施形態によっては、導波路ディスプレイは拡張現実光源からの拡張現実光を受光し得、格子を用いて拡張現実光を導波路ディスプレイ外へ案内する。
【0022】
本明細書において、本発明の1つまたは複数の態様または実施形態に組み込むのに適するものとして説明される特徴は、本開示のありとあらゆる態様および実施形態にわたって一般化可能であることを意図されていることは理解されるであろう。
【0023】
添付図面は、いくつかの例示的実施形態を例証するものであり、本明細書の一部である。以下の説明と併せて、これらの図面は、本開示の様々な原理を実証し説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】例示の流体レンズを示す図である。
図1B】例示の流体レンズを示す図である。
図1C】例示の流体レンズを示す図である。
図2A】例示の流体レンズおよび流体レンズの屈折力の調整を示す図である。
図2B】例示の流体レンズおよび流体レンズの屈折力の調整を示す図である。
図2C】例示の流体レンズおよび流体レンズの屈折力の調整を示す図である。
図2D】例示の流体レンズおよび流体レンズの屈折力の調整を示す図である。
図2E】例示の流体レンズおよび流体レンズの屈折力の調整を示す図である。
図2F】例示の流体レンズおよび流体レンズの屈折力の調整を示す図である。
図2G】例示の流体レンズおよび流体レンズの屈折力の調整を示す図である。
図3】一例の眼科デバイスを示す図である。
図4A】支持リングを含む膜アセンブリを有する流体レンズを示す図である。
図4B】支持リングを含む膜アセンブリを有する流体レンズを示す図である。
図5】非円形流体レンズの変形を示す図である。
図6】例えば、1つまたは複数の調整可能レンズを含む拡張現実デバイス内における、輻輳距離および調節距離を示す図である。
図7】例えば、1つまたは複数の調整可能レンズを含む拡張現実デバイス内における、輻輳距離および調節距離を示す図である。
図8】例えば、1つまたは複数の調整可能レンズを含む拡張現実デバイス内における、輻輳距離および調節距離を示す図である。
図9A】前方レンズアセンブリ、導波路ディスプレイ、および後方レンズアセンブリを含む光学構成を示す図である。
図9B】前方レンズアセンブリ、導波路ディスプレイ、および後方レンズアセンブリを含む光学構成を示す図である。
図10】眼形のアウトラインおよび中立円を示す図である。
図11】例示の光学構成の様々な表面と関連付けられた屈折力を示す図である。
図12】例示の光学構成の様々な表面と関連付けられた屈折力を示す図である。
図13A】例示の光学構成に対する導波路ディスプレイの屈折力の関数としてのレンズ厚および流体質量を示す図である。
図13B】例示の光学構成に対する導波路ディスプレイの屈折力の関数としてのレンズ厚および流体質量を示す図である。
図14】例示の光学構成の様々な表面と関連付けられた屈折力を示す図である。
図15】例示の光学構成の様々な表面と関連付けられた屈折力を示す図である。
図16A】例示の光学構成に対する導波路ディスプレイの屈折力の関数としてのレンズ厚および流体質量を示す図である。
図16B】例示の光学構成に対する導波路ディスプレイの屈折力の関数としてのレンズ厚および流体質量を示す図である。
図17】拡張現実デバイスを動作させる例示の方法を示す図である。
図18】例示的な制御システムを示す図である。
図19】例示的な表示デバイスを示す図である。
図20】例示的な導波路ディスプレイを示す図である。
図21】本開示のいくつかの実施形態に関連して用いられ得る例示的な人工現実ヘッドバンドの図である。
図22】本開示のいくつかの実施形態に関連して用いられ得る例示的な拡張現実眼鏡の図である。
図23】本開示のいくつかの実施形態に関連して用いられ得る例示的な仮想現実ヘッドセットの図である。
図24】本開示のいくつかの実施形態に関連して用いられ得る例示的な触覚デバイスの図である。
図25】本開示のいくつかの実施形態に係る例示的な仮想現実環境の図である。
図26】本開示のいくつかの実施形態に係る例示的な拡張現実環境の図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面全体を通じて、同一の参照符号および説明は、同様であるが、必ずしも同一とは限らない要素を示す。本明細書において説明される例示的な実施形態は様々な変更形態および代替形態の余地があるが、特定の実施形態が例として図面に示されており、本明細書において詳細に説明される。しかし、本明細書において説明される例示的な実施形態は、開示される特定の形態に限定されることを意図されない。本開示は、添付の特許請求の範囲に含まれる全ての変更形態、均等物、および代替物を含む。
【0026】
本開示は、全体として、調整可能な液体レンズを含む、流体レンズまたは液体レンズを含むデバイスを対象とする。流体レンズは様々な用途に有用である。したがって、かかるデバイスの性能の改善は、様々な用途において有益であろう。更に詳細に後述するように、本開示の実施形態は、流体レンズを含むデバイスおよびシステム、デバイス製造の方法、ならびにデバイス操作の方法を対象としてもよい。例によっては、かかるデバイスは、眼鏡、サングラス、ゴーグル、バイザー、眼保護デバイス、拡張現実デバイス、仮想現実デバイスなどのアイウェアデバイスを含んでもよい。本開示の実施形態はまた、1つまたは複数の流体レンズ、および導波路ディスプレイアセンブリを有する、デバイスを含んでもよい。
【0027】
調整可能流体レンズは、眼科デバイス、仮想現実(VR)デバイス、および拡張現実(AR)デバイスに有用である。例示のARおよび/またはVRデバイスによっては、1つまたは複数の流体レンズは、輻輳調節矛盾(VAC)として一般に知られるものの補正に用いられてもよい。本明細書において説明される例は、VACを補正するための流体レンズを含む、かかるデバイスを含んでもよい。本明細書に開示する例はまた、流体レンズ、膜アセンブリ(膜、および例えば、支持リングもしくは周辺ガイドワイヤなどの周辺構造を含んでもよい)、ならびに拡張現実画像要素を提供するように構成された、1つまたは複数の流体レンズおよび導波路ディスプレイアセンブリを含むデバイスを含んでもよい。
【0028】
本明細書において説明される実施形態は、少なくとも部分的にレンズエンクロージャを封入する、基板および膜を含む、調整可能流体レンズを含んでもよい。レンズエンクロージャは、以下、簡潔にするため、「エンクロージャ」と呼ばれることもある。エンクロージャは、レンズ流体(簡潔にするため、本明細書では「流体」と呼ばれる場合がある)を封入してもよく、エンクロージャの内面は、レンズ流体に近接または隣接してもよい。
【0029】
以下、図1図26を参照して、かかるデバイス、流体レンズ、光学構成、方法などの詳細な説明を提供する。図1図5は例示の流体レンズを示す。図6図8は、例えば、調整可能レンズを有する拡張現実デバイス内における、輻輳距離および調節距離を示す。図9Aおよび図9Bは、前方レンズアセンブリ、導波路ディスプレイ、および後方レンズアセンブリを含む光学構成を示す。図10は、眼形のアウトラインおよび中立円を示す。図11図12および図14図15は、例示の光学構成の様々な表面と関連付けられた屈折力を示す。図13A図13Bおよび図16A図16Bは、導波路ディスプレイの屈折力の関数としての例示のレンズ厚および流体質量を示す。図17は、例えば、拡張現実デバイスを動作させる一例の方法を示す。図18は一例の制御システムを示す。図19は一例のディスプレイデバイスを示す。図20は一例の導波路ディスプレイを示す。図21図26は、本開示の実施形態による1つまたは複数の流体レンズを含んでもよい、例示の拡張現実デバイスおよび/または仮想現実デバイスを示す。
【0030】
本明細書において説明される実施形態のいずれかによる特徴は、本明細書において説明される一般原理にしたがって、互いに組み合わせて用いられてもよい。これらおよび他の実施形態、特徴、ならびに利点は、詳細な説明を添付図面および特許請求の範囲と併せ読むことによって、より十分に理解されるであろう。
【0031】
図1Aは、いくつかの例による、流体レンズを通る断面を示す。この例で示される流体レンズ100は、基板102、基板コーティング104、膜106、流体108(破線の水平線によって示される)、エッジシール110、ガイド面114をもたらす支持構造112、および膜アタッチメント116を含む。この例では、基板102は、(図示される)下側の外面、および基板コーティング104がその上で支持される内面を有する、全体的に剛性の平面基板である。しかしながら、基板の一方または両方の面は、球状であるか、球面円柱であるか、または眼科レンズにおいて一般的に見出される種類の、より複雑な表面形状(例えば、累進、逆進(digressive)、二焦点など)で形成されてもよい。この例では、基板コーティング104の内面120は流体108と接触している。膜106は、(図示される)上側の外面、および流体108の境界となる内面122を有する。基板コーティング104は任意であり、省略されてもよい。
【0032】
流体108は、ここでは流体108が中に配置されるエンクロージャ118を協働的に画定する、基板102(基板コーティング104に沿っている)、膜106、およびエッジシール110によって少なくとも部分的に画定される、エンクロージャ118内に封入される。エッジシール110は、エンクロージャ118の周囲の周りに延在し、エンクロージャ118の封入された流体容積内に(基板および膜と協働して)流体を保持してもよい。例によっては、エンクロージャはキャビティまたはレンズキャビティと呼ばれることがある。
【0033】
この例では、膜106は湾曲した輪郭で示されているので、エンクロージャは、レンズの中央において、エンクロージャの(例えば、エッジシール110に隣接する)周囲よりも厚い厚さを有する。膜の輪郭は、流体レンズ100の屈折力を調整することが可能になるように、調整可能であってもよい。例によっては、流体レンズは、平面が基板102によってもたらされ、凸面が膜106によってもたらされる、平凸レンズであってもよい。平凸レンズは、レンズの中央の周りにレンズ流体のより厚い層を有してもよい。例によっては、膜の外面は凸面をもたらし、内面はレンズ流体に実質的に隣接してもよい。
【0034】
支持構造112(この例では、膜アタッチメント116が中を通って延在するガイドスロットを含んでもよい)は、基板102の周囲の周り(または周辺領域内)に延在してもよく、膜を基板に付着させてもよい。支持構造は、ガイド経路、この例ではガイド面114をもたらしてもよく、該ガイド面に沿って膜アタッチメント116(例えば、膜のエッジ部分内に配置される)が摺動してもよい。膜アタッチメントは膜の制御点をもたらしてもよく、それによって膜アタッチメントのためのガイド経路が、それぞれの制御点に対して対応するガイド経路をもたらしてもよい。
【0035】
流体レンズ100は、レンズの周囲の周りに配置されてもよく、支持構造112の一部であるかまたは該支持構造に機械的に結合されてもよい、1つまたは複数のアクチュエータ(図1Aには図示せず)を含んでもよい。アクチュエータは、膜表面の曲率を、またしたがって、焦点長、非点収差補正、表面曲率、円筒度、または他の任意の制御可能な光学特性など、レンズの少なくとも1つの光学特性を調整するために用いられてもよい、膜アタッチメント116によってもたらされる力など、制御可能な力を1つまたは複数の制御点で膜に対して働かせてもよい。例によっては、膜アタッチメントは、膜のエッジ部分に、または膜の周囲の周りに延在する周辺構造(周辺ガイドワイヤ、もしくはガイドリングなど)に付着されてもよく、膜の曲率を制御するために用いられてもよい。
【0036】
例によっては、図1Aは、円形レンズを通る断面を表すことがあるが、例示の流体レンズは、更に以下で説明するような非円形レンズを含むこともある。
【0037】
図1Bは、図1Aがその断面であってもよい流体レンズを示す。図面は、基板102、膜106、および支持構造112を含む、流体レンズ100を示す。この例では、流体レンズ100は円形流体レンズであってもよい。図面は、膜アタッチメント116を、ガイドスロット130によって画定されるガイド経路およびガイド面114(図1Aに図示)の輪郭に沿って移動可能なものとして示す。十字を形成する破線は、膜106の全体的な外面輪郭を示す視覚ガイドである。この例では、膜の輪郭は平凸レンズに対応してもよい。
【0038】
図1Cは、他の点では図1Bの流体レンズ100に類似してもよく、類似の構成を有してもよい、非円形レンズ150を示す。非円形レンズ150は、基板152、膜156、および支持構造162を含む。レンズは、ガイドスロット180によって画定されるガイド経路に沿って移動可能な、膜アタッチメント166と類似した構成を有する。ガイド経路の輪郭は、支持構造162の表面輪郭によって画定されてもよく、該輪郭を通してガイドスロットが形成される。レンズの断面は図1のものと相似であってもよい。膜156上に十字を形成する破線は、膜156の全体的な外面輪郭を示す視覚ガイドである。この例では、膜の輪郭は平凸レンズに対応してもよい。
【0039】
図2A図2Dは、いくつかの例による、流体レンズ202を含む眼科デバイス200を示す。図2Aは、流体レンズ202を支持する周辺構造210(ガイドワイヤまたは支持リングを含んでもよい)の部分を含む、眼科デバイス200の部分を示す。
【0040】
例によっては、レンズはフレームによって支持されてもよい。眼科デバイス(例えば、眼鏡、ゴーグル、保護眼鏡、バイザーなど)は、一対の流体レンズを含んでもよく、フレームは、例えば、ユーザの鼻および/または耳と相互作用する(例えば、鼻および/または耳の上に載る)構成要素を用いて、眼科デバイスをユーザの頭部上で支持するように構成された構成要素を含んでもよい。
【0041】
図2Bは、図2Aに示されるようなA-A’に沿った、眼科デバイス200の断面を示す。図面は、周辺構造210および流体レンズ202を示す。流体レンズ202は、膜220、レンズ流体230、エッジシール240、および基板250を含む。この例では、基板250は、ほぼ平面の剛性層を含む。図面は、流体レンズが、平面対平面の構成を有してよく、例によっては平凹および/または平凸レンズ構成となるように調整されてもよいことを示す。基板250は、例によっては、固定の屈折力を有する非平面の光学面を含んでもよい。
【0042】
本明細書に開示する例によっては、基板の一方または両方の表面が凹面または凸面を含んでもよく、また例によっては、基板は、トロイダルまたは自由形状の光学累進面もしくは逆進面など、非球面を有してもよい。例によっては、基板は、凹状または凸状の基板外面、および流体に実質的に隣接する内面を有してもよい。様々な例では、基板は、平凹、平凸、両凹、両凸、もしくは凹凸(メニスカス)レンズ、または他の任意の好適な光学素子を含んでもよい。例によっては、基板の一方または両方の表面が湾曲していてもよい。例えば、流体レンズは、基板(例えば、凹状の基板外面および凸状の基板内面を有する全体的に剛性の基板)、レンズ流体、ならびに凸状の膜外形を有するメニスカスレンズであってもよい。基板の内面は、流体に隣接するか、または流体と接触しているコーティング層に隣接してもよい。
【0043】
図2Cは、対応する要素が図2Aに関連して上記で説明したのと同じ番号付けを有する、図2Bに示されるデバイスの概略分解図を示す。この例では、エッジシールは、基板250の上に延在する中央シール部分242と接合される。
【0044】
例によっては、中央シール部分242およびエッジシール240は一体要素であってもよい。他の例では、エッジシールは別個の要素であってもよく、中央シール部分242は省略されるか、または基板上に形成されるコーティングに置き換えられてもよい。例によっては、コーティングはシール部分および/またはエッジシールの内面上に堆積されてもよい。例によっては、レンズ流体は、エッジシール、膜、および中央シール部分を含んでもよい、可撓性のエンクロージャ(バッグと呼ばれる場合がある)内に封入されてもよい。例によっては、中央シール部分は、剛性基板構成要素に接着されてもよく、基板の一部とみなされてもよい。例によっては、コーティングは、エンクロージャ表面の少なくとも部分(例えば、エンクロージャの内面)上に堆積されてもよい。エンクロージャは、少なくとも部分的に、基板、エッジシール、膜、バッグ、または他のレンズ構成要素のうちの1つもしくは複数によってもたらされてもよい。コーティングは、例えば、レンズ組立て前、最中、または後に、1つもしくは複数のレンズ構成要素(例えば、基板の内面、膜、エッジシール、バッグなど)に対して、レンズ製造の任意の好適な段階で、エンクロージャ表面の少なくとも部分に塗布されてもよい。例えば、コーティングは、レンズ組立て前(例えば、レンズ構成要素の製造中もしくは後)に、レンズ組立て中に、レンズ構成要素の組立て後であるが流体をエンクロージャに導入する前に、またはコーティング材料を含む流体をエンクロージャに導入することによって、形成されてもよい。例によっては、コーティング材料(コーティング前駆体など)は、エンクロージャに導入される流体中に含まれてもよい。コーティング材料は、流体に隣接するエンクロージャ表面の少なくとも部分上にコーティングを形成してもよい。
【0045】
図2Dは、例えば、アクチュエータを用いて膜に対する力を調整することによる、デバイス構成の調整を示す。図示されるように、デバイスは、平凸流体レンズ構成で構成されてもよい。一例の平凸レンズ構成では、膜220は、中央部分で基板250から離れる方向に延在する傾向がある。
【0046】
例によっては、レンズはまた、膜が中央部分で基板に向かって内向きに湾曲する傾向がある、平凹構成で構成されてもよい。
【0047】
図2Eは、図2Bに類似するデバイスを示し、要素の番号付けは同様である。しかしながら、この例では、図2Bの例の基板250が第2の膜221に置き換えられ、第2の周辺構造(第2の支持リングなど)211がある。本明細書に開示する例によっては、膜220および/または第2の膜221はエッジシール240と一体化されてもよい。
【0048】
図2Fは、両凹構成である図2Eの二重膜流体レンズを示す。例えば、レンズ流体230に対する負圧の印加が、両凹構成を引き起こすのに用いられてもよい。例によっては、膜220および第2の膜221は類似の特性を有してもよく、レンズ構成は全体的に対称であってもよく、例えば、(例えば、対称的な両凸または両凹レンズのように)膜および第2の膜は類似の曲率半径を有する。例によっては、レンズは、少なくとも膜の中央部分内、または円形レンズ内で、レンズの光学軸を中心にして回転対称を有してもよい。例によっては、2つの膜の特性は(例えば、厚さ、組成、膜張力の1つもしくは複数において、または他の任意の関連する膜パラメータにおいて)異なってもよく、ならびに/あるいは曲率半径は異なってもよい。これらの例では、膜輪郭は、凹状の曲率に対応する負の曲率を有する。膜輪郭は膜の外形状に関連してもよい。負の曲率は、(例えば、レンズの中央からの半径距離によって決定されるような)レンズの周辺部分よりも光学中心に近い膜の中央部分を有してもよい。
【0049】
図2Gは、対応する要素番号を有する、両凸構成である図2Eの二重膜流体レンズを示す。
【0050】
例によっては、アイウェアデバイスなどの眼科デバイスは、1つまたは複数の流体レンズを含む。一例のデバイスは、アイグラスフレームによって支持される少なくとも1つの流体レンズを含む。例によっては、眼科デバイスは、一対の流体レンズなど、1つまたは複数の流体レンズを支持する、アイグラスフレーム、ゴーグル、あるいは他の任意のフレームまたはヘッドマウント構造を含んでもよい。
【0051】
図3は、いくつかの例による、一対の流体レンズを含む眼科デバイス、この例ではアイウェアデバイスを示す。アイウェアデバイス300は、フレーム310(アイグラスフレームと呼ばれることもある)によって支持される、一対の流体レンズ(306および308)を含んでもよい。一対の流体レンズ306および308はそれぞれ、(ユーザの視点から見て)左レンズおよび右レンズと呼ばれることがある。
【0052】
例によっては、アイウェアデバイス(図3のアイウェアデバイス300など)は、眼科デバイス(アイグラスまたは眼鏡など)、スマートグラス、仮想現実ヘッドセット、拡張現実デバイス、ヘッドアップデバイス、バイザー、ゴーグル、他のアイウェア、他のデバイスなどを含んでもよい。かかるアイウェアデバイスでは、流体レンズ306、308は、使用中はユーザの視野内に位置付けられる、主要な視力補正または調整レンズを形成してもよい。眼科デバイスは、例えば、検眼によって決定されるような処方に対応する、光学特性(屈折力、非点収差補正、円筒度、または他の光学特性など)を有する、流体レンズを含んでもよい。レンズの光学特性は、例えば、ユーザによってまたは自動システムによって、調整可能であってもよい。流体レンズの光学特性に対する調整は、ユーザの活動、被観察物までの距離、または他のパラメータに基づいてもよい。例によっては、アイウェアデバイスの1つまたは複数の光学特性は、ユーザの識別情報に基づいて調整されてもよい。例えば、ARヘッドセットおよび/またはVRヘッドセット内の1つもしくは複数のレンズの光学特性は、自動的に(例えば、網膜スキャンを用いて)またはユーザ入力によって決定されてもよい、ユーザの識別情報に基づいて調整されてもよい。
【0053】
例によっては、デバイスは、電池、電源もしくは電源接続、他の屈折レンズ(追加の流体レンズを含む)、回折素子、ディスプレイ、アイトラッキング構成要素およびシステム、モーショントラッキングデバイス、ジャイロスコープ、コンピューティング要素、健康モニタリングデバイス、カメラ、ならびに/あるいは音声記録および/または再生デバイス(マイクロフォンおよびスピーカーなど)のいずれかのうちの1つもしくは複数を含むか、あるいはいずれかのうちの1つもしくは複数を別の形でサポートしてもよい、フレーム(アイグラスフレームなど)を含んでもよい。フレームは、デバイスをユーザの頭部上で支持するように構成されてもよい。
【0054】
図4Aは、流体レンズ402をほぼ取り囲み得る周辺構造410を含む、例示の流体レンズ400を示す。周辺構造410(この例では、支持リング)は、流体レンズ402の膜に対する制御点の位置に対応してもよい、膜アタッチメント412を含む。膜アタッチメントは作動点であってもよく、該作動点で、レンズが変位によって(例えば、アクチュエータがz軸に沿って作用することによって)作動するか、またはヒンジ点(例えば、膜アタッチメントの位置が基板からおおよそ固定の距離「z」であってもよい)を中心にして移動してもよい。例によっては、周辺構造およびしたがって膜の境界は、隣り合う制御点の間で自由に屈曲してもよい。ヒンジ点は、例によっては、周辺構造(例えば、支持リング)が曲がって、エネルギー的には好都合であるが望ましくない形状になるのを防ぐために用いられてもよい。
【0055】
剛性の支持リングなど、剛性の周辺構造は、膜の制御点の調整を限定することがある。例によっては、非円形レンズなど、変形可能または可撓性の周辺構造、ガイドワイヤまたは可撓性の支持リングなどが用いられてもよい。
【0056】
図4Bは、(例えば、図4Aに示されるA-A’に沿った)例示の流体レンズ400の断面を示す。流体レンズは、膜420、流体430、エッジシール440、および基板450を含む。エッジシール440は、可撓性および/または折畳み可能であってもよい。例によっては、周辺構造410は、流体レンズ402の膜420を取り囲み、該膜に取り付けられてもよい。周辺構造は、膜のための制御点を提供してもよい、膜アタッチメント412を含んでもよい。膜アタッチメントの(例えば、フレーム、基板、または互いに対する)位置は、1つまたは複数のアクチュエータを用いて調整され、例えば、レンズの屈折力を調整するために用いられてもよい。アクチュエータによって調整された位置を有する膜アタッチメントは、作動点、または制御点と呼ばれることもある。膜アタッチメントはまた、ヒンジ点などの非作動点を含んでもよい。
【0057】
例によっては、アクチュエータ460は、アクチュエータ支持体462に取り付けられてもよく、アクチュエータは、例えば、膜アタッチメントを関連するガイド経路に沿って押しやることによって、膜アタッチメントと基板との間の距離を変更するために用いられてもよい。例によっては、アクチュエータは、膜アタッチメントをはさんで基板とは反対側に配置されてもよい。例によっては、アクチュエータは、膜アタッチメントおよび/または支持構造に対して全体的に径方向の力を働かせるように配置されて、例えば、膜アタッチメントをレンズの中央に向かって、またはレンズの中央から離れる方向に押しやる力を働かせてもよい。
【0058】
例によっては、1つまたは複数のアクチュエータは、それぞれのアクチュエータ支持体に取り付けられてもよい。例によっては、アクチュエータ支持体は1つまたは複数のアクチュエータに取り付けられてもよい。例えば、アクチュエータ支持体は、弧状、円形、または他の形状の部材を含んでもよく、該部材に沿ってアクチュエータが間隔を空けて配置される。アクチュエータ支持体は、基板に、または例によっては、フレームなど別のデバイス構成要素に取り付けられてもよい。例によっては、アクチュエータは、膜アタッチメントと基板との間に配置されてもよく、または別の好適な位置に配置されてもよい。例によっては、アクチュエータによって働かされる力は、全体的に、基板に垂直な方向に沿って、または基板に対して非垂直方向における方向に沿ってなど、別の方向に沿って向けられてもよい。例によっては、力の少なくとも一成分は基板にほぼ平行であってもよい。膜アタッチメントの経路は、ガイド経路に基づいてもよく、また例によっては、アクチュエータによって加えられる力は、ガイド経路に沿って向けられる少なくとも感知できるほどの成分を有してもよい。
【0059】
図5は、ここでは、複数の膜アタッチメント512を含み、膜520の周囲の周りに延在する支持リングの形態の、周辺構造510を含む一例の流体レンズ500を示す。膜アタッチメントは、1つまたは複数の作動点、および場合により1つまたは複数のヒンジ点を含んでもよい。膜アタッチメントは、膜520の関連する制御点のためのガイド経路を各々がもたらす、1つもしくは複数の支持構造を含むか、または該支持構造と相互作用してもよい。流体レンズの作動は、例えば、支持構造によってもたらされるガイド経路に沿って、膜の1つまたは複数の制御点の位置を調整してもよい。作動は、図示される膜アタッチメントなど、周辺構造上の離散的な地点において加えられてもよい。例によっては、周辺構造は可撓性であってもよく、例えば、それによって、周辺構造は単一の面内にあるように制約されなくてもよい。
【0060】
例によっては、流体レンズは、膜、支持構造、基板、およびエッジシールを含む。支持構造は、膜のエッジ部分(膜アタッチメントによってもたらされる制御点など)に対するガイド経路をもたらすように構成されてもよい。一例の膜アタッチメントは、膜および支持構造を機械的に相互接続するように構成された、インターフェースデバイスとして機能してもよく、膜が弾性力を支持構造に対して働かせるのを可能にしてもよい。膜アタッチメントは、(膜のエッジ部分に配置されてもよい)膜の制御点が、ガイド経路に沿って自由に移動するのを可能にするように構成されてもよい。
【0061】
調整可能流体レンズは、膜輪郭の調整(例えば、膜曲率の調整)が、膜の弾性エネルギーにおいて感知できるほどの変化をもたらさないが、レンズの光学特性の修正(例えば、焦点長の調整)は可能であるように、構成されてもよい。この構成は、例によっては、それぞれのガイド経路に沿った、少なくとも1つの制御点などの少なくとも1つの膜エッジ部分の調整は、膜の歪みエネルギーを感知できるほど変化させないので、「ゼロ歪み」デバイス構成と呼ばれることがある。例によっては、「ゼロ歪み」デバイス構成は、従来の支持ビームタイプの構成と比較したとき、必要な作動力を1桁分低減させることがある。従来の流体レンズは、例えば、作動距離1mmに対して1N超過の作動力を要することがある。「ゼロ歪み」デバイス構成を用いると、作動力は、準静的作動の場合、1mmの作動に対して0.1N以下であってもよい。作動力のこの大幅な低減は、より小さくよりスピード効率が良いアクチュエータを流体レンズにおいて用いることができるようにし得、よりコンパクトで効率的な形状因子がもたらされる。かかる例では、「ゼロ歪み」デバイス構成において、膜は実際には感知できるほど歪むことがあるが、レンズが調整されるので、膜の総歪みエネルギーは感知できるほど変化しないことがある。これは、有利には、流体レンズを調整するために用いられる力を大幅に低減し得る。
【0062】
例によっては、流体レンズは、例によっては、膜における歪みエネルギーが全ての作動状態に対しておおよそ等しいこと、および例によっては、膜エッジにおける反力がガイド経路に対して垂直であることのうち、一方または両方の特徴を有するように構成されてもよい。したがって、例によっては、膜の歪みエネルギーは、レンズの屈折力からおおよそ独立していてもよい。例によっては、膜エッジにおける反力は、ガイド経路のいくつかまたは全ての位置について、ガイド経路に対して垂直であってもよい。
【0063】
例によっては、ガイド経路に沿った膜のエッジ部分の移動は、膜の弾性エネルギーにおける感知できるほどの変化をもたらさないことがある。この構成は、例によっては、ガイド経路に沿った膜エッジ部分の調整は膜の歪みエネルギーを感知できるほど変化させないので、「ゼロ歪み」ガイド経路と称されることがある。
【0064】
例によっては、本開示の流体レンズは、アイウェアにおける主要レンズとして用いられてもよい。本明細書において説明されるように、例えば、ユーザが1つまたは複数のレンズを含むヘッドマウントデバイスを着用しているとき、ユーザがレンズを通して見るべき物体または画像を見るように、かかるレンズは、ユーザの眼の前方に位置付けられてもよい。レンズは、本明細書において説明されるように、視力補正または操作のために構成されてもよい。本開示の実施形態は、レンズ流体中における泡形成の可能性を低減するように制御(例えば、低減)され得る、ガス含量、またはヘンリーの法則による低減されたガス溶解度を有する、レンズ流体を含む流体レンズを含んでもよい。
【0065】
図6は、仮想現実デバイスなどのアイウェアデバイス600における輻輳調節一致を示す。図面は、左導波路ディスプレイ610Lおよび右導波路ディスプレイ610R、ならびに左調整可能流体充填レンズ602Lおよび右調整可能流体充填レンズ602Rを示す、水平面断面図である。要素の文字の接尾辞LおよびRはそれぞれ、左および右の要素を示すのに用いられる。右レンズ602Rなどの各流体レンズは、膜620、レンズ流体630、側壁640、および基板650を含む。膜、側壁、および基板は、少なくとも部分的に、レンズ流体630を含むエンクロージャを協働的にもたらす。導波路ディスプレイ610Lおよび610Rは、立体視仮想物体606をユーザの右眼604などの眼の中に投影する。導波路ディスプレイからの光線は、導波路ディスプレイから眼まで延在する実線として示され、仮想光線(即ち、光線が来た見かけの方向)は破線によって示される。図面はまた、輻輳角θ、対応する輻輳距離、調節角θ、および対応する調節距離を示す。
【0066】
アイウェアデバイス600は、適切に調整された流体レンズ602Lおよび602Rを有する。仮想物体606までの輻輳距離および調節距離はおおよそ等しく、輻輳調節矛盾はない。この例では、導波路ディスプレイ610L、610Rはそれぞれ、対応する負の屈折力のレンズ602L、602Rによってデフォーカス(発散)される、平行な光線を出力する。輻輳調節矛盾(VAC)の低減は、これが、吐き気、頭痛など、アイウェアデバイスのユーザに対して起こり得るVAC関連の悪影響を防ぐ助けとなるので、非常に有用である。本開示の例は、例えば、導波路ディスプレイアセンブリおよび/または後方レンズアセンブリによって提供される負の屈折力を用いて、VACの低減、大幅な回避、または有効な排除を可能にする。
【0067】
図7は、不適正に調整されて、仮想物体706の調節距離が立体視からの輻輳距離と合致しておらず、この例では、調節距離が輻輳距離よりも感知できるほど短い、左流体レンズ702Lおよび右流体レンズ702Rを有するアイウェアデバイス700を示す。この構成では、ユーザはVACの不快感を感じることがある。各流体レンズは、膜720、側壁740、および基板750を含む。膜、側壁、および基板は、少なくとも部分的に、レンズ流体730を含むエンクロージャを協働的にもたらす。導波路ディスプレイ710Lおよび710Rは、立体視仮想物体706(例えば、拡張現実画像要素)を右眼704などユーザの眼の中に投影する。
【0068】
図8は、適正に調整されたアイウェアデバイス800、例えば拡張現実デバイスを示す。このデバイスは、図6の仮想現実デバイスと類似していてもよい。導波路ディスプレイ810Lおよび810Rからの光をデフォーカスするための、眼側の調整可能レンズ870Lおよび870Rに加えて、デバイスは、眼804などユーザの眼を用いて現実物体808を見るために、レンズ870Lおよび870Rを補う、前方調整可能レンズ880Lおよび880R(例えば、前方調整可能流体レンズ)を含む。例によっては、880Lおよび880Rの屈折力は等しく、870Lおよび870Rに対向する。一例の前方レンズの屈折力は、大きさが、後方レンズアセンブリの屈折力と(または、導波路ディスプレイアセンブリ810と組み合わせた後方レンズアセンブリの屈折力と)等しくてもよい。例えば、レンズ870Rが-2Dの屈折力を有する場合、レンズ880Rは屈折力+2Dを有してもよい。現実物体808からの光線は実線として示され、仮想物体806の見かけの位置に対する仮想線は破線として示される。各前方調整可能レンズは、前方膜820、前方レンズ流体830、および前方基板850を含んでもよい。各後方調整可能レンズは、後方基板860、後方側壁862、後方膜864、および後方レンズ流体866を含んでもよい。前方レンズアセンブリおよび後方レンズアセンブリはそれぞれ、前方調整可能レンズおよび後方調整可能レンズ、ならびにフレームもしくはフレームの構成要素、アクチュエータ、および/またはその他など、任意の所望の関連する構成要素を含んでもよい。導波路ディスプレイアセンブリ810は、前方レンズアセンブリと後方レンズアセンブリとの間に配置される。
【0069】
図9Aは、例えば、拡張現実デバイスのための、一例の光学構成の概略図を示す。デバイスは、導波路ディスプレイ900、後方調整可能レンズ920、および前方調整可能レンズ930を含む。任意の第2の後方レンズ910が含まれてもよく、ここでは下付き文字hhrで示される。この例では、光学構成は、左から右へ、第1のレンズまたは基板926(ハードレンズもしくは他の調整不能レンズなどの調整不能レンズ、または基板を含んでもよい)、後方調整可能レンズ920、任意の第2の後方レンズ910(ハードレンズもしくは他の調整不能レンズなど調整不能レンズであってもよい)、格子904を含む導波路ディスプレイ900、前方基板932(湾曲面もしくは平面を有してもよい)、および前方調整可能レンズ930(前方基板932を含んでもよい)を含む。調整可能レンズは、基板、レンズ流体、および膜を含んでもよい、本明細書で説明するものなどの流体レンズを含んでもよい。膜は、例えば、924および934で示されるように、調整可能な湾曲面を提供してもよい。これらの例は、単に例証目的のものであり、様々な符号を規定するために用いられてもよい。例証は縮尺通りではなく、明瞭にするため、光学素子の厚さおよび分離の点で拡大して示されることがある。
【0070】
この例では、調整可能レンズは、膜を意味する下付き文字mで示される調整可能光学面(または調整可能面)、および硬質を意味する下付き文字hで示される調整不能光学面(または調整不能面)を有してもよい。更に以下で説明するように、下付き文字m(膜)およびh(硬質)は、下付き文字f(前方)およびr(後方)と、また場合によっては、第1の作動状態または第2の作動状態をそれぞれ表す下付き文字1または2と組み合わされてもよい。これらの下付き文字は、それぞれの表面の屈折力をラベル付けするために用いられてもよい。この文脈では、「硬質」という用語は、ほぼ調整不能な面、つまり曲率におけるいかなる変化も分析の際に合理的に無視されることがある、表面を指してもよい。屈折力は、Φで示されてもよく、場合によっては「D」と省略されるディオプター単位で与えられてもよい。下付き文字fおよびrはそれぞれ、デバイスの前方(世界側)および後方(眼側)に関する。下付き文字vは仮想コンテンツを指し、下付き文字1および2は、第1の作動状態および第2の作動状態を指す。例によっては、例証目的で、硬質面は、2つの作動状態の間でわずかな横方向変位を有するものとして示されることがあるが、表面の屈折力は不変であってもよい。下付き文字gは、導波路ディスプレイにおける出力格子の屈折力を指し、格子屈折力はΦで示される。様々な湾曲面と関連付けられた屈折力に関して、後方調整不能面922は屈折力Φhrを有し、第1の作動状態における後方調整可能面924は屈折力Φmr1を有し、任意の第2の後方レンズ910の調整不能面912は屈折力Φhhrを有し、前方基板932の前方調整不能面は屈折力Φhfを有し、前方調整可能膜表面934は第1の作動状態において屈折力Φmf1を有する。この例では、前方基板932は平面を有してもよいが、例によっては、前方基板932の一方または両方の平面は、湾曲面(例えば、調整不能湾曲面または調整可能湾曲面)に置き換えられてもよい。例によっては、例証される調整不能面の1つまたは複数は、調整可能湾曲面などの調整可能面に置き換えられてもよい。
【0071】
図9Bは、図9Aと同じ光学構成を示し、後方調整可能レンズおよび前方調整可能レンズは第2の作動状態にある。第2の作動状態では、後方調整可能レンズ920の屈折力はΦmr2によって示され、(前方調整可能レンズ930の)前方調整可能膜表面934と関連付けられた屈折力はΦmf2によって示される。簡潔にするため、前方調整可能レンズ930は前方レンズと呼ばれることがあり、後方調整可能レンズ920は後方レンズと呼ばれることがある。
【0072】
例によっては、格子屈折力は、調整不能であってもよく、ディスプレイによって投影される光線にのみ当てはまってもよく、例えば、Φは、現実世界ではなく仮想コンテンツのユーザ視界にのみ影響してもよい。
【0073】
以下の式は、図9に示される構成または類似の構成にも適用されてもよく、例えば、より多数の、より少数の、または異なる光学構成要素を有する例示の光学アセンブリを含む、他の光学アセンブリに適合されてもよい。
【0074】
正味屈折力0の例では、現実世界の式は次式の通りである。
Φhr+Φmr1+Φhhr+Φhf+Φmf1=0 (式1)
Φhr+Φmr2+Φhhr+Φhf+Φmf2=0 (式2)
【0075】
式1および2は、格子力に関する項を含まない。また、これらの式は、例えば現実世界画像がなくてもよい、仮想現実デバイスには当てはまらないことがある。
【0076】
等価の仮想世界の式は次式の通りである。
Φhr+Φmr1+Φhhr+Φ=Φv1 (式3)
Φhr+Φmr2+Φhhr+Φ=Φv2 (式4)
式中、Φv1およびΦv2は、例えば、光学設計によって予め定められてもよい、最近接仮想画像投影力(projection power)および最遠仮想画像投影力である。
【0077】
一例の設計はΦv1=-3.5DおよびΦv2=-0.5Dを用いてもよい。これは、仮想画像が、29cm~2mの輻輳調節アライメントであってもよいことを提示する。
【0078】
様々の可能な設計パラメータがあり、該設計パラメータの1つまたは複数が光学構成の設計に用いられてもよい。一例の設計は、光学構成要素間に最小の遊び(例えば、隣接する構成要素の外面間に最小間隔)を含んでもよい。例えば、設計は、構成要素間に少なくともおよそ0.1mmの遊びがあるという条件を含んでもよい。一例の設計は、調整不能基板などのいずれかの基板、または調整不能レンズに関して、最小厚さを含んでもよい。例えば、基板は少なくともおよそ0.5mm厚であってもよい。例によっては、導波路ディスプレイは、およそ1.5mmなど、少なくとも1mmの厚さを有してもよい。
【0079】
一例の設計は、球状光学部品または非球状光学部品を用いてもよい。例によっては、レンズ流体は、一般的な動作条件下で屈折率およそ1.59および密度およそ1.09g/ccを有してもよい、ペンタフェニルトリメチルトリシロキサンを含んでもよい。
【0080】
図10は、一例の設計の眼形(実線)を示し、光学中心は示される座標系の原点にある。眼形および光学中心の結果、図10に破線として示される中立円(半径r)のサイズおよび位置が得られる。球状光学部品の場合、中立円は、レンズ流体の非圧縮性による容積保存の要件を所与として、異なる作動状態に対する様々な膜表面輪郭の交点を表す。例えば、図9Aに関して上記で説明した例に関して、膜は、第1の作動状態1および第2の作動状態2で中立円と、また中間状態ではこれらの位置の間で交差し得る。
【0081】
例によっては、デバイスは、図9Aに示されるものと類似の光学構成を含むが、任意の第2の後方レンズ910は省略される。上記で説明した式1~式4は次に、Φhhr=0でこの光学構成に適用されてもよい。例示の設計パラメータは、レンズ流体の圧力が気圧を上回るように、正の膜曲率を含んでもよい。最小膜曲率+0.5Dが評価のために選ばれた。レンズ流体に印加される正圧は、泡形成を阻害し得る。また、流体レンズの調整中に曲率の符号が変化しないことは、膜の片面制御を容易にし得、平面膜状態と関連付けられた眼を遮る鏡面反射を低減する助けとなり得る。例えば、平面膜状態は、流体レンズが正の(凸状)膜構成と負の(凹状)膜構成との間で調整されると、例えば基板が平面の場合に、起こることがある。例によっては、流体レンズはディスプレイと一体化されなくてもよい。
【0082】
例によっては、格子屈折力は、調整不能であってもよく、導波路ディスプレイによって投影される光線のみに当てはまってもよい。例えば、格子屈折力(Φ)は、現実世界画像ではなく仮想コンテンツ(拡張現実画像要素を含んでもよい)のユーザ視界にのみ影響してもよい。
【0083】
図11は、例えば、図9A図10に関して上記に説明した例による構成を用いる、拡張現実レンズ構成の表面プロットを示す。レンズ構成は、後方レンズ920、導波路ディスプレイ900、および前方レンズ930を含んでもよい。この例では、前方レンズ930は、基板932によって提供される調整不能面、および膜934によって提供される調整可能面を有してもよい。レンズ構成は、導波路ディスプレイに関して0屈折力を含む(Φ=0)。表面輪郭は、図9Aおよび図9Bに関して上記に説明した屈折力ラベルで図示され表される。第1の状態および第2の状態を有する調整可能レンズの膜輪郭に関して、これらの輪郭は中立円で交差する。表面屈折力の項は、式1~式4で用いられるとき、図面に示される様々な表面輪郭にラベル付けするために用いられる。この例では、レンズ構成厚さはおよそ9mmであってもよく、(例えば、シリコーンオイルの)流体質量は5.4gであってもよい。
【0084】
図11では、様々な表面の屈折力Φは、場合によっては「D」と省略されるディオプターで与えられ、下付き文字fおよびrはそれぞれ、デバイスの前方(世界側)および後方(眼側)に関する。下付き文字vは仮想コンテンツを指し、下付き文字1および2は、例えば液体レンズの、第1の作動状態および第2の作動状態を指す。図面は、後方調整可能レンズ(920)、導波路ディスプレイ(900)、および場合によっては「前方レンズ」と呼ばれる前方調整可能レンズ(930)に対する表面屈折力を示し、要素の数は、図9Aに示される光学構成に類似した光学構成に関する。例証される屈折力は、後方流体レンズの後方調整不能面(Φhr)、第1の作動状態における後方流体レンズの膜表面(Φmr1)および第2の作動状態における後方流体レンズの膜表面(Φmr2)、導波路ディスプレイ(Φ)、前方流体レンズの調整不能面(Φhf)、ならびに前方流体レンズの第1の作動状態における前方流体レンズの膜(Φmf1)および第2の作動状態における前方流体レンズの膜(Φmf2)に関する。この例では、前方流体レンズの調整不能面は平面であるが、例によっては、これは調整不能(または調整可能)湾曲面に置き換えられてもよい。例によっては、例証される調整不能面の1つまたは複数は、調整可能湾曲面などの調整可能面に置き換えられてもよい。例によっては、前方流体レンズの配向は、調整不能面が外面であるように、反転されてもよい。
【0085】
図12は、図11に関連して上記に説明したものと類似のレンズ系を示す。図11に関連して上記に説明したように、レンズ系は、後方レンズ920、導波路ディスプレイ900、および前方レンズ930を含んでもよい。前方レンズ930は、基板932によって提供される調整不能面、および膜934によって提供される調整可能面を有してもよい。しかしながら、この例では、導波路ディスプレイは出力格子力-2.0Dを有する。後方基板の曲率は、(図11の例に対して)-4.0Dから-2.0Dに変更され、前方基板曲率は0Dから-2.0Dに変更される。この例では、レンズ構成厚さはおよそ8mmに低減されてもよく、流体質量は3.2gに低減されてもよい。厚さおよび質量の低減は、図11に関連して上記に説明した構成に関する。
【0086】
導波路ディスプレイと関連付けられた屈折力(例えば、格子屈折力)を導入することで、図12の例示の光学構成において、質量の感知できるほどの低減、光学構成の厚さの感知できるほどの低減、流体レンズの応答時間の感知できるほどの増加、ならびに/あるいは製造の複雑性の低減(例えば、前方流体レンズおよび後方流体レンズの基板が実質的に同一であることを可能にすることによる)のうち1つまたは複数など、様々な改善の1つまたは複数が可能になる。図12のモデル化システムに関して決定された例示の改善は、レンズ系の質量の2.2g減少(基板の質量の変化が、流体容積の低減による質量の変化と比較して無視できる程度であるため)、パッケージング厚さの1.1mm減少、および応答時間を感知できるほど改善することができる、後方調整可能レンズの最小中央厚さの増加を含む。また、この例示の構成では、前方レンズおよび後方レンズは同一であってもよく、そのことによってデバイス製造の効率が改善される。したがって、格子屈折力を光学構成に導入することによって、利用可能な多数の様々な利点がある。
【0087】
図13Aおよび図13Bは、格子力(ディオプター単位のΦ)の関数としての、光学アセンブリ全体の厚さ(図13A)および流体質量(図13B)のプロットを示す。図面は、厚さおよび重量が最小限であるかまたは感知できるほど低減される、格子力の範囲を特定する。例えば、格子屈折力が-1.6D~-2.4Dの範囲にわたる場合、厚さおよび流体質量は最低値である。しかしながら、この範囲外の格子屈折力を有するデバイスと比較して(例えば、0格子力(Φ=0)と比較して)改善されたデバイスパラメータが得られ得る、他の格子屈折力範囲がある。例示の範囲(ディオプター単位)は、非限定的に、-1.5~-2.5、-1.4~-2.6、-1.3~-2.7、-1.2~-2.8、-1.1~-2.9、-1~-3、-0.5~-3.5、および-0.1~-3.9を含む。-0.8~-3.2など、他の可能な範囲が図面から明らかである。例えば、範囲限界の合計はおよそ-4であってもよく、格子力の範囲限界は、(-1.6+x)~(-2.4-x)の形態であってもよく、式中、xは、例えば0.1の倍数など、1.5以下の値の正値であってもよい。例によっては、格子屈折力はおよそ-2であってもよく、格子力の範囲限界は、(-2+x)~(-2-x)の形態であってもよく、式中、xは、0.1の倍数など、1.9以下の正値であってもよい。
【0088】
例によっては、異なる光学構成を用いるなど、格子屈折力はおよそ-Aであってもよく、格子屈折力の範囲限界は、(-A+x)~(-A-x)の形態であってもよく、式中、xは、0.1の倍数など、(A-0.1)などの値以下の正値であってもよい。
【0089】
例によっては、膜曲率(または流体圧)は負または正であってもよい。例によっては、デバイスは、膜曲率が、ゼロディオプター(0D)状態とも称されることがある、平面状態を通過しないように、構成されてもよい。これは、膜の制御を容易にし得、平面膜表面からの鏡面反射を低減し得る。例によっては、後方膜曲率は+0.5D~+3.5Dの間で調整されてもよい。例によっては、格子屈折力は負値であってもよい。
【0090】
例によっては、1つまたは複数の膜は、例えば、デバイス外部からの機械的外乱に晒されない。例によっては、デバイスは、流体レンズの調整不能基板、調整不能レンズ(固定レンズと称されることもある)、またはウィンドウ、あるいは類似のものなど、デバイスに対する保護ももたらす前方要素を含んでもよい。デバイスの1つまたは複数の要素の表面は、反射防止面および/または耐擦傷面を有してもよい。例によっては、1つまたは複数の流体レンズ(例えば、膜および基板を含む)は、膜面が内向きに面し、基板が外向きに面するように構成されてもよい。例えば、図9Aの光学構成に関して、前方調整可能レンズ930の配向は、レンズの膜側が導波路ディスプレイ902に面するように、膜934が(図示される)左側にあり、前方基板932が(図示される)右側にあるように、反転されてもよい。基板は、アイウェアデバイスの光学構成の外面など、デバイスの外面を提供してもよい。基板はまた、更に以下で説明するように、湾曲されて、1つまたは2つの湾曲面を有してもよい。
【0091】
例によっては、流体レンズの基板または固定レンズの外面の曲率半径など、前方要素の曲率半径は、固定であってもよい。前方外面は、例えば、100mm~200mm、例えば125~175mm、例えばおよそ145mmなど、50mm~250mmの範囲の曲率半径(本明細書では、より簡潔に「曲率」と呼ばれる場合がある)を有してもよい。これは、例えば、移動する光学外面は消費者にとって望ましくないことがあるため、美観的な決定であってもよく、この曲率は、一般的なアイグラスの曲率と類似していてもよい(例えば、屈折率1.5に対しておよそ3.5D)。
【0092】
例によっては、光学構成は、図9Aに示されるものと類似であってもよいが、任意の第2の後方(調整不能)レンズ910は省略されてもよい。
【0093】
例によっては、前方流体レンズ(例えば、図9Aの前方調整可能レンズ930)などの流体レンズは、導波路ディスプレイ(例えば、図9Aの導波路ディスプレイ900)と一体化されてもよい。例えば、格子構造は、流体レンズの基板を提供してもよい(例えば、図9Aの前方基板932は省略されてもよく、前方レンズの基板は導波路ディスプレイ900によって提供されてもよい)。例によっては、導波路ディスプレイは、レンズ流体との湾曲した界面を有する基板を提供してもよい。しかしながら、例によっては、流体レンズおよび導波路ディスプレイは別個の構成要素であってもよい。
【0094】
図14は、導波路ディスプレイが0屈折力を有する光学構成を示す。湾曲面の表現は、図9Aに図示される表面に関連して上記で導入した用語を用いて、関連する屈折力でラベル付けされる。光学構成は、導波路ディスプレイ900、後方調整可能レンズ920、および前方調整可能レンズ930(例えば、図9Aに示されるような)を含んでもよい。図14は、図9Aと類似のラベル付けスキームを用いる。この例では、Φ=0であり、レンズ厚はおよそ11mmであってもよく、流体質量は5.4gであってもよい。
【0095】
図15は、格子屈折力Φ=-1.6Dを有する光学構成を示す。湾曲面の表現は、図9Aに関連して導入した用語を用いて、関連する屈折力でラベル付けされ、上記で説明した図14のものと類似している。この例では、図14の構成に対して、厚さはおよそ10mmに低減されてもよく、流体質量は3.2gに低減されてもよい。したがって、負の格子力を含むことで、光学アセンブリの厚さおよび/または質量を低減することが可能になる。
【0096】
図16Aおよび図16Bは、格子力(ディオプター単位のΦ)の関数として、全体厚さ(図16A)および流体質量(図16B)のプロットを示す。図面は、厚さおよび重量が最小限であるかまたは感知できるほど低減される、格子力の範囲を特定する。例えば、格子屈折力が-1.6D~-2.4Dの範囲にわたる場合、厚さおよび流体質量は最低値である。しかしながら、この範囲外の格子屈折力を有するデバイスと比較して改善されたデバイスパラメータが得られてもよい、他の格子屈折力範囲があり、これらの範囲は、図13Aおよび図13Bに関して上記に説明したものと類似していてもよい。
【0097】
図17は、拡張現実デバイスを用いる方法など、デバイスを動作させる一例の方法1700を示す。方法は、前方レンズアセンブリ、導波路ディスプレイアセンブリ、および後方レンズアセンブリを含む光学構成を提供すること(1710)と、前方レンズアセンブリ、導波路ディスプレイアセンブリ、および後方レンズアセンブリを通過する現実世界光を用いて、現実世界画像を(例えば、ユーザに)提供すること(1720)と、導波路ディスプレイアセンブリによって(例えば、ユーザに)提供され、後方レンズアセンブリを通過する拡張現実光を用いて、拡張現実画像を生成すること(1730)と、を含んでもよい。例によっては、格子アセンブリは、拡張現実画像を提供し、かつ現実世界および/または拡張現実光に負の屈折力を提供する。
【0098】
例によっては、前方レンズアセンブリは、(正の曲率を有する)膜、および(負の曲率を有する)基板を有する、流体レンズを含んでもよく、後方レンズアセンブリは、(例えば、正もしくは凸状の外面曲率を有する)膜、および(負の曲率を有する)基板を有する、流体レンズを含んでもよく、格子アセンブリは、負の曲率を有する表面を含んでもよい。例によっては、後方流体レンズなどの流体レンズの基板は、凹状の外面を有してもよく、基板は負の屈折力を提供してもよい。この文脈では、外面はレンズから外向きに面してもよく、実質的に隣接する空気であってもよい。例によっては、前方レンズアセンブリは正の屈折力を有してもよい。例によっては、前方レンズアセンブリの正の屈折力は、後方レンズアセンブリと組み合わせた導波路ディスプレイアセンブリの負の屈折力におおよそ等しくてもよい。
【0099】
例によっては、デバイスは、ユーザの眼の各々の前方にある導波路ディスプレイ、および片眼ごとに1つまたは複数の調整可能レンズを有する、拡張現実デバイスまたは仮想現実デバイスを含んでもよい。調整可能レンズは、眼の焦点を改善すること、遠方視または近接視、あるいは輻輳調節矛盾を補正することといった目的のうち1つもしくは複数のために調整されてもよい。調整可能レンズの1つまたは複数は流体充填レンズであってもよい。ディスプレイからの光をデフォーカスする、追加の眼側光学素子が提供されてもよく、それにより、調整可能なレンズ(1つもしくは複数)は、より薄くより軽量であり得、より高速の応答時間を有し得る。追加の眼側光学素子は、回折レンズを含んでもよく、および/または導波路タイプディスプレイの出力格子上に屈折力として提供されてもよい。
【0100】
本開示の例示の実施形態は、薄く軽量で低出力のデバイスを含む、輻輳調節矛盾が低減されるかまたは実質的に排除されたデバイスを含む。デバイス設計は、厚さ、重量、または応答時間の低減もしくは最小化を含んでもよい。例によっては、流体レンズの応答時間は、厚さおよび/または重量と引き換えにされてもよい。
【0101】
例によっては、デバイスは、前方レンズアセンブリ、導波路ディスプレイアセンブリ、および後方レンズアセンブリを含む光学構成を含む。導波路ディスプレイアセンブリは、拡張現実画像要素を現実世界画像内で提供するように構成されてもよく、前方レンズアセンブリと後方レンズアセンブリとの間に配置されてもよい。例によっては、導波路ディスプレイアセンブリは、導波路ディスプレイアセンブリによって提供される拡張現実光に対して、負の屈折力を有する要素を含む。前方レンズアセンブリは、現実世界画像を形成するために用いられる現実世界光を受光してもよい。現実世界光は、ユーザがデバイスを着用しているとき、前方レンズアセンブリに入って通過し、導波路ディスプレイアセンブリを通過し、次に後方レンズアセンブリを通過して、ユーザの眼に達し得る。
【0102】
この文脈では、「前方」という用語は、デバイスの通常使用中の、導波路ディスプレイアセンブリの世界側を指してもよく、「後方」という用語は、導波路ディスプレイの眼側を指してもよい。前方レンズアセンブリは、前方流体レンズなどの前方調整可能レンズを含んでもよい。後方レンズアセンブリは、後方流体レンズなどの後方調整可能レンズを含んでもよい。前方レンズアセンブリおよび/または後方レンズアセンブリは更に、1つもしくは複数のアクチュエータ、アイリング、または他の構成要素など、レンズ制御構成要素を含んでもよい。膨張性膜、ハードレンズ、回折素子、導波路ディスプレイ、または他の光学素子などの光学素子の配列は、光学素子のシーケンスと称されることがある。基板の前側(ユーザの眼に対して)に膜を有する流体レンズは、前方にレンズを有し後側に膜を有する流体レンズとは異なるシーケンスを表してもよく、両方とも同じ範囲の屈折力を有してもよい。
【0103】
例によっては、前方調整可能レンズは、前方基板、前方膜、および前方基板と前方膜との間に配置された前方レンズ流体を含み得る、前方流体レンズを含む。後方調整可能レンズは、後方基板、後方膜、および後方基板と後方膜との間に配置された後方レンズ流体を含み得る、後方流体レンズを含んでもよい。例によっては、前方基板は、前方凹状輪郭、および関連する前方の負の屈折力を有してもよい。例によっては、後方基板は、後方凹状輪郭、および関連する後方の負の屈折力を有してもよい。前方の負の屈折力は、後方の負の屈折力におおよそ等しくてもよい。
【0104】
例によっては、現実世界画像は、前方レンズアセンブリ、導波路ディスプレイアセンブリの少なくとも一部分、および後方レンズアセンブリを通過する現実世界光によって形成されてもよい。
【0105】
例によっては、拡張現実光は、導波路ディスプレイアセンブリによって提供されてもよい。導波路ディスプレイアセンブリは導波路ディスプレイを含んでもよい。導波路ディスプレイは、導波路ディスプレイを出てユーザの眼に向かう光を結合するように構成された、取出し(out-coupling)構成要素を含んでもよい。取出し構成要素は格子を含んでもよい。
【0106】
導波路ディスプレイアセンブリは、例えば拡張現実光に対して、負の屈折力を有してもよい。例によっては、導波路ディスプレイアセンブリは、導波路ディスプレイ、および負レンズを含んでもよい(負レンズは負の屈折力を有する)。負レンズは、導波路ディスプレイと後方レンズアセンブリとの間に配置されてもよい。導波路ディスプレイアセンブリおよび/または後方レンズアセンブリは、補助負レンズ(例えば、平凹レンズ、もしくは両凹レンズ)を含んでもよい。
【0107】
例によっては、導波路ディスプレイは、導波路ディスプレイから発散光を取り出すように構成されてもよい。例によっては、格子出力面は空間的に可変のブレーズ角を有してもよい。
【0108】
例によっては、導波路ディスプレイは、格子によって導波路ディスプレイから取り出された拡張現実光を発散するように構成された、1つまたは複数の湾曲面を含んでもよい。例によっては、格子は、放物面または球面など、湾曲面上に配設されてもよい。例によっては、例えば導波路ディスプレイの対向面上の、1つまたは複数のリフレクタは、湾曲されるか、または湾曲面の上にアレンジされるかであってもよい。
【0109】
例によっては、デバイスは、ユーザによって着用されるように構成された、アイウェアデバイスであっても(または該デバイスを含んでも)よい。デバイスは、現実世界画像を形成する現実世界光が、前方レンズアセンブリ、導波路ディスプレイアセンブリ、および後方レンズアセンブリを通過する、現実世界画像、ならびに拡張現実画像が導波路ディスプレイアセンブリによって提供され、後方レンズアセンブリを通過する、拡張現実画像を提供するように構成されてもよい。後方レンズアセンブリは、後方調整可能流体レンズを含んでもよい。
【0110】
例によっては、デバイスは更に、レンズ構成を支持するように構成されたフレーム、1つもしくは複数のストラップ、または(例えば、デバイスをユーザの頭部上で支持するための)他の好適な支持体などの、支持体を含んでもよい。デバイスはアイウェアデバイスを含んでもよい。デバイスは拡張現実ヘッドセットを含んでもよい。
【0111】
例によっては、デバイスは、導波路ディスプレイアセンブリが負の屈折力を有し、負の屈折力が、現実世界画像と拡張現実画像との間の輻輳調節矛盾を補正するように構成されてもよい。
【0112】
例によっては、方法は、光学構成が、前方レンズアセンブリ、導波路ディスプレイアセンブリ、および後方レンズアセンブリを含む、光学構成を提供することと、前方レンズアセンブリ、導波路ディスプレイアセンブリ、および後方レンズアセンブリを通過する現実世界光を用いて、現実世界画像を提供することと、導波路ディスプレイアセンブリによって提供される拡張現実光を用いて、拡張現実画像を生成することと、を含む。拡張現実光は、後方レンズアセンブリを通過してもよい。導波路ディスプレイアセンブリは、拡張現実画像を提供してもよく、また拡張現実光に対して負の屈折力を提供してもよい。ディスプレイアセンブリは、拡張現実光を拡張現実光源から受光し、拡張現実光を、格子を用いて光路内に結合することによって、拡張現実画像を提供してもよく、導波路ディスプレイアセンブリは、拡張現実光に対して負の屈折力を提供する。例によっては、導波路ディスプレイアセンブリは発散する拡張現実光を提供する。方法はまた、拡張現実デバイスを動作させる方法を含んでもよい。
【0113】
本明細書に開示する例は、流体レンズ、膜アセンブリ(膜、および例えば、支持リングもしくは周辺ワイヤなどの周辺構造を含んでもよい)、ならびに1つまたは複数の流体レンズを含むデバイスを含んでもよい。例示のデバイスは、眼科デバイス(例えば、眼鏡)、拡張現実デバイス、仮想現実デバイスなどを含んでもよい。例によっては、デバイスは、光学デバイスの一次レンズとして、例えばユーザの眼に入る光に対する一次レンズとして構成された、流体レンズを含んでもよい。
【0114】
例によっては、流体レンズは、支持リングなどの周辺構造、または周辺ワイヤを含んでもよい。周辺構造は、流体レンズにおける膨張性膜の周辺に固着された支持部材を含んでもよい。周辺構造は、レンズ周囲とほぼ同じ形状を有してもよい。例によっては、非円形流体レンズは、面、例えば、円レンズの場合は膜周囲に対応する面に対して垂直に曲がってもよい、周辺構造を含んでもよい。周辺構造は、膜周囲に対して接線方向に曲がってもよい。
【0115】
流体レンズは、膨張性膜などの膜を含んでもよい。膜は、薄いシートまたはフィルム(幅もしくは高さ未満の厚さを有する)を含んでもよい。膜は、調整可能流体レンズの変形可能光学面を提供してもよい。膜は、膜の表面張力であってもよい線張力下にあってもよい。膜張力はN/mの単位で表現されてもよい。
【0116】
例によっては、デバイスは、膜、膜のエッジ部分に対するガイド経路をもたらすように構成された支持構造と、膜を、または膜の周囲の周りに配設された周辺構造を支持構造に接続し、膜がガイド経路に沿って自由に移動するのを可能にする界面デバイスと、基板と、エッジシールとを含む。例によっては、支持構造は、剛性または半剛性であってもよい。
【0117】
例によっては、調整可能流体レンズは膜アセンブリを含んでもよい。膜アセンブリは、膜(例えば、線張力を有する)、および膜の周りに延在するワイヤまたは他の構造(例えば、周辺ガイドワイヤ)を含んでもよい。流体レンズは、膜アセンブリ、基板、およびエッジシールを含んでもよい。例によっては、膜線張力は支持リングによって支持されてもよい。これは、支持リング上の1つもしくは複数の位置における静的制約および/またはヒンジ点によって拡張されてもよい。
【0118】
例によっては、流体レンズは、膜、膜のエッジ部分に対するガイド経路をもたらすように構成された支持構造、および基板を含んでもよい。流体レンズは更に、膜を支持構造に接続し、膜のエッジ部分がガイド経路に沿って自由に移動するのを可能にするように構成された界面デバイスと、基板と、エッジシールとを含んでもよい。例によっては、流体レンズは、エラストマー性または別の変形可能な要素(膜など)と、基板と、流体とを有するレンズを含んでもよい。例によっては、例えば、膜アタッチメントがガイド経路に沿って移動することによって決定されるような、膜の制御点の移動は、流体レンズの光学特性を調整するために用いられてもよい。
【0119】
例示の実施形態は、流体レンズに関連する装置、システム、および方法を含む。例によっては、「流体レンズ」という用語は、調整可能液体充填レンズなどの調整可能流体充填レンズを含んでもよい。
【0120】
例によっては、調整可能流体レンズなどの流体レンズは、流体容積を少なくとも部分的に封入する予歪みを与えられた可撓性膜、流体容積内に封入された流体、および流体容積の周囲を画定する可撓性エッジシール、ならびにレンズの屈折力を修正できるように膜のエッジを制御するように構成された作動システムを含んでもよい。流体容積は、エンクロージャと呼ばれることもある。
【0121】
膜のエッジを制御するには、膜を変形させるエネルギー、および/または支持リング、もしくはワイヤ(例えば、非円形レンズの場合)などの周辺構造を変形させるエネルギーを必要とすることがある。例によっては、流体レンズ構成は、例えば、レンズの特性の変化に伴う、膜に蓄えられた弾性エネルギーの変化が、例えば摩擦力を克服するために必要なエネルギーよりも少なくてもよいように、レンズの度数を低値に変更するために必要なエネルギーを低減させるように構成されてもよい。
【0122】
例によっては、焦点調整可能流体レンズは、基板および膜(例えば、弾性膜)を含み、レンズ流体は膜と基板との間で保持される。膜は張力下にあってもよく、膜の張力を区画で適用または保持するための機械的システムは、膜エッジに沿って、または膜エッジの部分において提供されてもよい。機械的システムは、区画の位置を、高さおよび径方向距離の両方で制御可能に変更するのを可能にしてもよい。この文脈では、高さは、局所的基板表面に垂直な方向に沿った、基板からの距離を指し得る。例によっては、高さは、レンズの光学中心を通って延在し、光学軸に直交する面からの距離を指してもよい。径方向距離は、レンズの中心からの距離を、例によっては、光軸に垂直な方向に沿った光軸からの距離を指してもよい。例によっては、区画のうち少なくとも1つの高さを変更することによって、膜の曲率を変化させ得、制約の径方向距離は、膜張力の増加を低減するように変更され得る。
【0123】
例によっては、機械的システムは、摺動メカニズム、回動メカニズム、屈曲メカニズム、もしくは動的機械的システム、またはこれらメカニズムの組み合わせを含んでもよい。例によっては、機械的システムは、1つまたは複数のアクチュエータを含んでもよく、1つまたは複数のアクチュエータは、区画のうち1つもしくは複数の高さおよび/または径方向距離の両方(もしくはどちらか)を制御するように構成されてもよい。
【0124】
焦点調整可能流体レンズは、基板、張力下にある膜、流体、および膜張力を制約する周辺構造を含んでもよく、周辺構造は膜の周囲の周りに延在し、例によっては、周辺構造の長さおよび/または周辺構造の空間的構成が制御されてもよい。膜の円周を制御することで、流体レンズの屈折力が変更されたときに膜張力を制御可能に維持し得る。
【0125】
第1の度数から第2の度数にレンズの屈折力を変更することで、膜円周が変化しない場合の膜張力の第1の変化をもたらし得る。しかしながら、膜円周の変化によって、おおよそ0、または少なくとも+/-1%、2%、3%、もしくは5%の膜張力の変化を可能にし得る。例によっては、負荷オフセットまたは負のばね力がアクチュエータに加えられてもよい。
【0126】
流体レンズの1つまたは複数の構成要素は、一部または全ての動作構成内に歪みエネルギーを有してもよい。例によっては、流体レンズは、伸長されたときに歪みエネルギーを有し得る、エラストマー膜を含んでもよい。膜を調整するときにアクチュエータによって提供されるものなど、外力によって行われる仕事は、膜内に蓄えられる歪みエネルギーの増加につながることがある。例によっては、膜の1つまたは複数のエッジ部分は、膜内に蓄えられる歪みエネルギーが大幅に変更されないように、または低減された量だけ変更されるように、ガイド経路に沿って調整される。
【0127】
アクチュエータによって提供される力などの力は、力の方向における作用点の変位があるとき、仕事を実施し得る。例によっては、流体レンズは、ガイド経路の方向において感知できるほどの弾性力がないように構成される。かかる構成では、ガイド経路に沿った膜のエッジ部分の変位は、弾性力に関して仕事をする必要がなくてもよい。しかしながら、摩擦および他の比較的軽微な作用を克服するために必要な仕事があり得る。
【0128】
例によっては、流体レンズは支持リングを含む。支持リングは、流体レンズの膨張性膜の周囲に固着された部材を含んでもよい。支持リングは、レンズとおおよそ同じ形状であってもよい。円形レンズの場合、支持リングは、球状光学部品に対してほぼ円形であってもよい。非円形レンズの場合、支持リングは、膜によって画定される面に垂直に曲がってもよい。しかしながら、剛性の支持リングは、制御点の位置調整に対して制約を課すことがあり、例によっては、ワイヤは膜の周囲の回りに位置付けられる。例によっては、支持リングは、リングの面から外れて屈曲するのを可能にしてもよい。例によっては、支持リング(または周辺ワイヤ)は円形でなくてもよい。
【0129】
例によっては、流体レンズは1つまたは複数の膜を含んでもよい。一例の膜は、レンズ半径、またはレンズの他の横方向範囲よりもはるかに薄い膜厚を有する、薄いポリマー膜を含んでもよい。例えば、膜厚はおよそ1mm未満であってもよい。レンズの横方向範囲は、少なくともおよそ10mmであってもよい。膜は、調整可能液体充填レンズなど、流体レンズの変形可能光学面を提供してもよい。流体レンズは基板も含んでもよい。基板は対向しあう面を有してもよく、基板の一方の面は、膜によって提供されるレンズ面の反対側の、調整可能流体レンズの一方のレンズ面を提供してもよい。一例の基板は、剛性ポリマー層などの剛性層、または剛性レンズを含んでもよい。例によっては、1つまたは複数のアクチュエータは、膨張性膜の線張力を制御するために用いられてもよく、線張力は、N/mの単位で表現されてもよい。基板は、剛性光学ポリマーなどの剛性ポリマーを含んでもよい。例によっては、流体レンズは、流体をレンズ内で保持するように構成された、エッジシール、例えばポリマー膜などの変形可能構成要素を含んでもよい。エッジシールは、膜の周辺部分を基板の周辺部分に接続してもよく、薄い可撓性ポリマー膜を含んでもよい。
【0130】
例によっては、膜は1つまたは複数の制御点を含んでもよい。制御点は、膜の周囲に近接する位置を含んでもよく、制御点の移動は、流体レンズの1つまたは複数の光学特性を制御するために用いられてもよい。例によっては、制御点の移動は、支持構造によって決定される軌道(またはガイド経路)に沿った膜アタッチメントの移動によって決定されてもよい。例によっては、制御点は、アクチュエータによって調整される位置を有してもよい、作動点、例えば、膜アタッチメントなどの周辺構造上の位置によって提供されてもよい。例によっては、作動点は、アクチュエータに対する機械的結合によって制御される(例えば、基板に対する)位置を有してもよい。膜アタッチメントは、支持構造と機械的に相互作用してもよく、例えば、支持構造によって(例えば、スロットもしくは他のガイド構造によって)決定される、軌道(またはガイド経路)に沿って移動可能であってもよい。制御点は、例えば、アクチュエータ、または他のメカニズムを用いて移動させられ得る、膜のエッジ部分内の位置を含んでもよい。例によっては、アクチュエータは、例えば、流体レンズの1つまたは複数の光学特性を調整するため、支持構造によって提供されるガイド経路に沿って膜アタッチメント(および、例えば、対応する制御点)を移動させるのに用いられてもよい。例によっては、膜アタッチメントは、場合により他のタイプの接続に加えて、1つまたは複数の位置で支持構造にヒンジ接続されてもよい。膜と支持構造との間のヒンジ接続は、ヒンジ点と呼ばれることもある。
【0131】
流体レンズは、例によっては、膜における歪みエネルギーが全ての作動状態に対しておおよそ等しいという特徴、および例によっては、膜エッジにおける反力がガイド経路に対して垂直であるという特徴のうち、一方または両方を有するように構成されてもよい。したがって、例によっては、膜の歪みエネルギーは、レンズの屈折力からおおよそ独立していてもよい。例によっては、膜エッジにおける反力は、ガイド経路のいくつかまたは全ての位置について、ガイド経路に対して垂直である。
【0132】
例によっては、ガイド経路は、ピボット、屈曲部、スライド、ガイドスロット、ガイド面、ガイドチャネル、ヒンジ、または他のメカニズムのうち1つもしくは複数を含む、支持構造によって提供されてもよい。支持構造は、完全に流体容積外、完全に流体容積内、または部分的に流体容積内であってもよい。
【0133】
例によっては、流体レンズ(流体充填レンズと称されることもある)は、比較的剛性の基板および可撓性ポリマー膜を含んでもよい。膜は、膜周囲の周りの制御点で支持構造に取り付けられてもよい。可撓性エッジシールは、流体を封入するために用いられてもよい。レンズ度数は、例えば、1つまたは複数のアクチュエータを用いて、ガイド軌道に沿って制御点の位置を移動させることによって、調整することができる。制御点位置をガイド経路に沿って移動させたときに膜の一貫した弾性変形エネルギーを維持する、ガイド経路(制御点の可能な軌道に対応してもよい)が決定されてもよい。ガイドデバイスは、基板に付着されても(または基板の一部として形成されても)よい。
【0134】
弾性エネルギー源は、フープ応力(方位角方向の張力)および線歪みを含んでもよく、弾性エネルギーは、膜が調整されるときにフープ応力と線歪みとの間で交換されてもよい。例によっては、制御点位置を調整するために用いられる力方向は、膜から支持構造に対する弾性力に垂直であってもよい。このアプローチに対して、アクチュエータのサイズおよび出力要件の大幅な低減、ならびに粘性および摩擦作用によってのみ制約され得る、より高速のレンズ応答を含む、大きな利点をもたらす可能性がある。
【0135】
例によっては、流体レンズの1つまたは複数の光学パラメータは、少なくとも部分的に、膜の物理的輪郭によって決定されてもよい。例によっては、流体レンズは、膜における弾性歪みエネルギーの大幅な変化なしに、レンズの1つまたは複数の光学パラメータが調整されてもよいように、構成されてもよい。例えば、膜における弾性歪みエネルギーは、レンズが調整されたとき、20%未満変化してもよい。例によっては、レンズの1つまたは複数の光学パラメータは、膜における弾性歪み力の方向に垂直である、調整力、例えばアクチュエータによって加えられる力を用いて、調整されてもよい。例によっては、ガイド経路は、レンズの調整中の弾性歪み力に対して、調整力が少なくともおおよそ垂直であってもよいように、構成されてもよい。例えば、調整力と弾性歪み力との間の角度は、垂直の5度以内、例えば垂直の3度以内であってもよい。例によっては、レンズの調整中の流体運動は、例えば、流体の粘性を低減することがあり、その流れは、流体中の粒子または分子の間の相互作用を妨害することがあり、その妨害が粒子および/または分子の凝集を妨害することがある。
【0136】
例によっては、流体レンズは、流体、基板、および膜を含み、基板および膜は、流体を少なくとも部分的に封入する。流体レンズ内の流体は、「レンズ流体」、または場合によっては簡潔にするために「流体」と呼ばれることがある。レンズ流体は、フェニル化シリコーンオイルなどのシリコーンオイルなど、オイルなどの液体を含んでもよい。例によっては、レンズ流体はポリフェニルエーテル(PPE)を含んでもよい。例によっては、レンズ流体はポリフェニルチオエーテルを含んでもよい。
【0137】
例によっては、レンズ流体は、透明流体であっても(または含んでも)よい。この文脈では、透明流体は、動作波長範囲にわたって、視覚的に知覚可能な可視波長吸収をほとんど有さないか、または実質的に有さなくてもよい。しかしながら、流体レンズはまた、UV(紫外)およびIR(赤外)で用いられてもよく、例によっては、用いられる流体は、所望の用途の波長範囲においてほぼ非吸収性であってもよく、可視波長範囲の一部または全てにわたって透明でなくてもよい。例によっては、膜は透明、例えば、可視波長において光学的に明澄であってもよい。
【0138】
例によっては、レンズ流体は光学オイルなどのオイルを含んでもよい。例によっては、レンズ流体は、シリコーン、チオール、またはシアノ化合物のうち1つもしくは複数を含んでもよい。流体は、場合によってはシリコーンオイルと呼ばれることがある、シリコーンベースの流体を含んでもよい。例示のレンズ流体は、フェニル化シロキサン、例えばペンタフェニルトリメチルトリシロキサンなど、芳香族シリコーンを含んでもよい。例示のレンズ流体は、フェニルエーテルまたはフェニルチオエーテルを含んでもよい。例示のレンズ流体は、ポリフェニル化合物(例えば、ポリフェニルエーテルまたはポリフェニルチオエーテル)など、複数の芳香環を含む分子を含んでもよい。
【0139】
例によっては、流体レンズは、例えば、流体を少なくとも部分的に封入する膜を含む。流体は、ガス、ゲル、液体、懸濁液、エマルション、ベシクル、ミセル、コロイド、液晶、または他の流動性もしくは別の形で変形可能な相のうち、1つもしくは複数であるかまたは1つもしくは複数を含んでもよい。例えば、流体は、ナノ粒子など、粒子のコロイド状懸濁液を含んでもよい。
【0140】
例によっては、レンズ流体は、例えば、眼の保護用途または視力改善のための、視覚的に知覚可能な色または吸収を有してもよい。例によっては、レンズ流体は、UV吸収染料および/または青色吸収染料を有してもよく、流体レンズは、わずかに黄みがかった色合いを有してもよい。例によっては、レンズ流体は、特定の波長、例えばレーザーゴーグルの例ではレーザ波長を吸収するように選択された、染料を含んでもよい。例によっては、流体レンズを含むデバイスは、サングラスとして構成されてもよく、レンズ流体は、光吸収体および/またはフォトクロミック材料を含んでもよい。例によっては、流体レンズは、眼まで通った光強度を低減する、または特定の波長もしくは波長帯に対して眼を保護するように構成された光吸収層など、別個の層を含んでもよい。低減された泡形成は、レーザ放射の散乱を低減することによって、およびデバイスの低吸収部分を低減することによって、レーザ保護デバイスの効率を大幅に向上させ得る。
【0141】
流体レンズは、ポリマー膜などの変形可能要素、または他の変形可能要素を含んでもよい。ポリマー膜は、エラストマーポリマー膜であってもよい。膜厚は、3ミクロン~500ミクロン、例えば5ミクロン~100ミクロンなど、1ミクロン~1mmの範囲であってもよい。一例の膜は、可撓性、光学的に透明、非透水性、および/またはエラストマー性のうち1つもしくは複数であってもよい。膜は、1つまたは複数の熱可塑性エラストマーなど、1つまたは複数のエラストマーを含んでもよい。膜は、ポリウレタン(熱可塑性ポリウレタン(TPU)、熱可塑性芳香族ポリウレタン、芳香族ポリエーテルポリウレタン、および/または架橋ウレタンポリマー)、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーンエラストマー、ポリオレフィン、多脂環式ポリマー、ポリエーテル、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリイミド、ビニルポリマー(例えば、ポリ塩化ビニリデン)、ポリスルホン、ポリチオウレタン、環状オレフィンおよび脂肪族または脂環式ポリエーテルのポリマー、フルオロポリマー(例えば、ポリフッ化ビニル)、別の好適なポリマー、ならびに/あるいは1つもしくは複数のかかるポリマーのブレンド、誘導体、または類似体のうち1つまたは複数など、1つまたは複数のポリマーを含んでもよい。膜はエラストマー膜であってもよく、膜は1つまたは複数のエラストマーを含んでもよい。
【0142】
例によっては、エンクロージャの内面の少なくとも一部は、レンズ流体中に泡を形成させる核生成部位の数を低減するか、実質的に排除するか、または例によっては大幅に増加させる、コーティングを有してもよい。コーティングは、レンズ流体とエンクロージャの内面(膜および/または基板の内面を含んでもよい)との間に配置されてもよい。例によっては、コーティングは、それでなければ膜の光学特性および/または物理特性を低下させる(例えば、膜を曇らせる、膨張させる、および/または張力を失わせることによる)ことがある、光学オイルなどのレンズ流体の、膜への浸透を防ぐことがある。例によっては、コーティングは、泡形成を感知できるほど低減させ、ならびに膜内への流体拡散を感知できるほど低減させることがある(例えば、類似の条件下における未コーティングの膜と比較して、膜内への流体拡散率を少なくとも50%低減することによる)。
【0143】
例によっては、流体レンズは基板を含んでもよい。基板は、比較的剛性であってもよく、例えば、流体の内圧および/または膜における張力を調整することにより、視覚的に知覚可能な変形を示さないことがある。例によっては、基板はほぼ透明な平面シートであってもよい。基板は、1つまたは複数の基板層を含んでもよく、基板層は、ポリマー、ガラス、光学フィルムなどを含んでもよい。例示のガラスは、ホウケイ酸ガラスなどのケイ酸ガラスを含んでもよい。例によっては、基板は、アクリレートポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリウレタン(芳香族ポリウレタンなど)、または他の好適なポリマーなど、1つまたは複数のポリマーを含んでもよい。例によっては、基板の1つまたは複数の面は、平面、球状、円筒状、球面円柱、凸状、凹状、放物面、二焦点、累進、逆進であるか、または自由形状表面曲率を有してもよい。基板の1つまたは複数の面は、ユーザの処方に近似してもよく、膜輪郭の調整は、例えば、読書、遠方視、または他の使用のための、改善された処方を提供するために用いられてもよい。実施形態によっては、レンズ流体は、基板材料の屈折率に類似した屈折率を有してもよく、基板の外面は説明された種類の形状を有してもよい。基板の一方または両方の面は、ユーザの処方に近似してもよく、膜輪郭の調整(例えば、膜曲率の調整による)は、例えば、読書、遠方視、または他の使用のための、改善された処方を提供するために用いられてもよい。例によっては、基板は、例えば、平行な平面を有することによって、顕著な屈折力を有さなくてもよい。
【0144】
膜変形は、基板または他の光学素子の、例えば基板の一方または両方の面の、比較的固定された表面曲率によって決定される中心値付近で、焦点長などの光学パラメータを調整するために用いられてもよい。
【0145】
例によっては、基板は、エラストマーを含んでもよく、例によっては、調整可能な輪郭(膜によってもたらされるよりも小さい範囲の調整を有してもよい)を有してもよく、また例によっては、基板は省略されてもよく、流体は一対の膜または他の可撓性エンクロージャ構成によって封入されてもよい。
【0146】
例によっては、流体レンズは1つまたは複数のアクチュエータを含んでもよい。1つまたは複数のアクチュエータは、膜の弾性張力を修正するために用いられてもよく、したがって膜を含む流体レンズの光学パラメータを修正してもよい。膜は、例えば接続アセンブリを用いて、膜の周囲の周りで基板に接続されてもよい。接続アセンブリは、アクチュエータ、ポスト、ワイヤ、または他の接続ハードウェアの1つもしくは複数を含んでもよい。例によっては、1つまたは複数のアクチュエータは、膜の曲率を、したがって流体レンズの光学特性を調整するために用いられてもよい。
【0147】
例によっては、流体レンズを含むデバイスは、眼科用眼鏡(ophthalmic glasses)、ゴーグル、バイザーなど、フレームによって支持される1つまたは複数の流体レンズを含んでもよい。本明細書において説明されるデバイスまたは方法の用途は、流体レンズ、ならびにアイウェアデバイス(例えば、眼鏡、拡張現実デバイス、仮想現実デバイスなど)、双眼鏡、望遠鏡、カメラ、内視鏡、または任意の撮像デバイスなど、1つもしくは複数の流体レンズを含んでもよいデバイスを含む。
【0148】
例によっては、膜、基板、エッジシール、または他のレンズ構成要素には、流体レンズ組立ての前または後に提供されてもよい、表面処理が施されてもよい。例によっては、ポリマーは、ポリマーコーティング、例えばフルオロポリマーコーティングなど、膜に適用されてもよい。フルオロポリマーコーティングは、ポリテトラフルオロエチレン、またはポリテトラフルオロエチレンの類似体、ブレンド、もしくは誘導体など、1つまたは複数のフルオロポリマーを含んでもよい。
【0149】
用途はまた、光学機器および光学デバイス、ならびに流体レンズの他の用途を含んでもよい。加えて、用途は、眼科レンズ、光学部品、および他の流体レンズ用途など、任意のレンズ用途を含んでもよい。流体レンズは、アイウェアデバイス(例えば、眼鏡)、双眼鏡、望遠鏡、カメラ、内視鏡、および/または撮像デバイスなど、様々な異なるデバイスに組み込まれてもよい。本明細書において説明される原理は、流体レンズのいずれかの形態と関連して適用されてもよい。流体レンズはまた、アイグラスのようなウェアラブル光学デバイス、拡張現実ヘッドセットもしくは仮想現実ヘッドセット、および/または他のウェアラブル光学デバイスなど、アイウェアに組み込まれてもよい。本明細書において説明されるこれらの原理により、これらのデバイスは、低減された厚さ、低減された重量、改善された広角/視野光学部品(例えば、所与の重量に対する)、および/または改善された美観を示し得る。
本明細書において説明される流体レンズは、例えば、拡張現実デバイスまたは仮想現実デバイスを用いている間のユーザの不快感を指し得る、VACに対する補正に用いられてもよい。VACは、立体視に基づいた仮想コンテンツの見かけの距離(眼輻輳に関する)に一致しない、仮想コンテンツの焦点面(眼調節に関する)によって引き起こされ得る。本明細書において説明される例は、VACの補正を可能にする一方で、導波路ディスプレイと関連付けられた負の屈折力を用いて、1つまたは複数の流体レンズの質量の低減を可能にし得る、1つまたは複数の流体レンズを含むデバイスを含む。例によっては、デバイスは、前方レンズアセンブリ(例えば、前方調整可能レンズを含む)および/または導波路ディスプレイアセンブリの負の屈折力が、現実世界画像と拡張現実画像との間のVACを補正する(例えば、低減するかまたは実質的に排除する)ように、構成されてもよい。
【0150】
拡張現実画像(仮想画像と称されることもある)が現実世界画像と重畳して見える拡張現実デバイスでは、本明細書において説明される種類の一対の流体レンズ(内側レンズは、ディスプレイによって投影される仮想画像の焦点面を調整し、外側レンズは、外側から両方のレンズを通過する光が、ユーザの視力を補正するための可能な固定の処方とは別に、焦点の正味の変化が実質的に起こらないように内側レンズを補う)は、中間透明ディスプレイとともに用いられてもよい。
【0151】
例によっては、他の光学デバイスにおけるレンズの質量および/または複雑性に対して、類似のアプローチが用いられてもよい。本開示の用途は、例えば、流体が、液体、懸濁液、ガス、または他の流体のうち1つもしくは複数を含む、流体充填レンズを含む。
【0152】
本開示は、コンピュータ実装方法など、様々な方法を見込むかまたは含んでもよい。方法ステップは、任意の好適なコンピュータ実行可能コードおよび/またはコンピューティングシステムによって実施されてもよく、仮想現実システムおよび/または拡張現実システムの制御システムによって実施されてもよい。例示の方法のステップは各々、構造が複数のサブステップを含んでもよい、および/または複数のサブステップによって表されてもよい、アルゴリズムを表してもよい。
【0153】
例によっては、本開示によるシステムは、少なくとも1つの物理的プロセッサと、物理的プロセッサによって実行されると、物理的プロセッサに、本明細書において説明されるように実質的に流体レンズの光学特性を調整させる、コンピュータ実行可能命令を含む、物理的メモリとを含んでもよい。
【0154】
例によっては、本開示による非一時的コンピュータ可読媒体は、コンピューティングデバイスの少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、コンピューティングデバイスに、本明細書において説明されるように実質的に流体レンズの光学特性を調整させる、1つまたは複数のコンピュータ実行可能命令を含んでもよい。
【0155】
例によっては、流体レンズ(例えば、液体レンズ)は、基板、可撓性膜、および基板と膜との間に形成されるエンクロージャとともに配置される流体を含む。レンズ流体内の泡形成は、レンズの光学的品質および美観を低減させることがある。用途によっては、(例えば、負の屈折力の場合、凹状レンズ面を得るため)低減された圧力が印加されることがあり、これは、基板および膜の内面における泡形成を誘発することがある。
【0156】
例によっては、内面(例えば、レンズ流体に隣接する表面)は、流体レンズの流体中における泡形成を低減または実質的に排除するように処理されてもよい。泡形成に関する核生成部位の数は、表面コーティングおよび/または他の処理を用いて低減されてもよい。表面コーティングは、エンクロージャに流体を充填する前に、エンクロージャの内面に形成されてもよく、例によっては、流体に加えられる構成要素を用いて充填後に行われてもよい。例えば、表面は、ポリマー層で(例えば、表面モノマー層の重合化によって)、またはレンズ流体と不混和性である流体、ゲル、もしくはエマルション層でコーティングされてもよい。コーティングは、アクリレートポリマー、シリコーンポリマー、エポキシ系ポリマー、またはフルオロポリマーなど、様々な材料の1つまたは複数を含んでもよい。例によっては、コーティングは、パーフルオロヘプチルアクリレートなどのフルオロアクリレートポリマー、または他のフルオロアルキル化アクリレートポリマーを含んでもよい。
【0157】
本明細書において説明されるデバイスの眼科用途は、平坦な前方(または他の湾曲)基板、および調整可能な眼側の凹状膜表面または凸状膜表面を有する、眼鏡を含む。用途は、光学部品、および拡張現実ヘッドセットまたは仮想現実ヘッドセットを含む流体レンズの他の用途を含む。
【0158】
例示的実施形態
実施例1。一例のデバイスは、光学構成を含んでもよく、光学構成は、前方調整可能レンズを含む前方レンズアセンブリと、拡張現実光を提供するように構成された導波路ディスプレイアセンブリと、後方調整可能レンズを含む後方レンズアセンブリと、を含み、導波路ディスプレイアセンブリは前方レンズアセンブリと後方レンズアセンブリとの間に配置され、導波路ディスプレイアセンブリおよび後方レンズアセンブリの組み合わせは拡張現実光のための負の屈折力をもたらし、デバイスは、現実世界画像内において拡張現実光を用いて形成された拡張現実画像を提供するように構成されている。
【0159】
実施例2。現実世界画像が、前方レンズアセンブリによって受光された現実世界光によって形成され、現実世界光が、その後、導波路ディスプレイアセンブリおよび後方レンズアセンブリの少なくとも一部分を通過する、実施例1に記載のデバイス。
【0160】
実施例3。ユーザによって着用されたときに、前方レンズアセンブリが、現実世界画像を形成するために用いられる現実世界光を受光し、後方レンズアセンブリがユーザの眼の近位に配置されるように構成されている、実施例1または2に記載のデバイス。
【0161】
実施例4。負の屈折力が現実世界画像と拡張現実画像との間の輻輳調節矛盾(VAC)を補正するように構成されている、実施例1から3のいずれかに記載のデバイス。
【0162】
実施例5。導波路ディスプレイアセンブリが拡張現実光のための負の屈折力の少なくとも一部分をもたらす、実施例1から4のいずれかに記載のデバイス。
【0163】
実施例6。導波路ディスプレイアセンブリが導波路ディスプレイおよび負レンズを含む、実施例1から5のいずれかに記載のデバイス。
【0164】
実施例7。導波路ディスプレイアセンブリがおよそ-1.5D~-2.5Dの負の屈折力を有し、ここでDはディオプターを表す、実施例1から6のいずれかに記載のデバイス。
【0165】
実施例8。導波路ディスプレイアセンブリが導波路ディスプレイを含み、導波路ディスプレイが負の屈折力の少なくとも一部分をもたらす、実施例1から7のいずれかに記載のデバイス。
【0166】
実施例9。導波路ディスプレイアセンブリが格子を含む、実施例1から8のいずれかに記載のデバイス。
【0167】
実施例10。前方調整可能レンズが、前方基板、前方膜、および前方基板と前方膜との間に配置された前方レンズ流体を有する前方調整可能流体レンズを含む、実施例1から9のいずれかに記載のデバイス。
【0168】
実施例11。後方調整可能レンズが、後方基板、後方膜、および後方基板と後方膜との間に配置された後方レンズ流体を有する後方調整可能流体レンズを含む、実施例1から10のいずれかに記載のデバイス。
【0169】
実施例12。後方レンズアセンブリが負の屈折力の少なくともいくらかをもたらす、実施例1から11のいずれかに記載のデバイス。
【0170】
実施例13。前方レンズアセンブリが正の屈折力を有する、実施例1から12のいずれかに記載のデバイス。
【0171】
実施例14。正の屈折力と負の屈折力とは大きさがほぼ等しい、実施例13に記載のデバイス。
【0172】
実施例15。後方レンズアセンブリが後方調整可能レンズおよび補助負レンズを含む、実施例1から14のいずれかに記載のデバイス。
【0173】
実施例16。後方調整可能レンズが基板を含み、基板が凹状の外面を有する、実施例1から15のいずれかに記載のデバイス。
【0174】
実施例17。現実世界光がデバイスによって前方レンズアセンブリを通して受光され、導波路ディスプレイアセンブリおよび後方レンズアセンブリを通過して現実世界画像を形成し、拡張現実光が導波路ディスプレイアセンブリによって提供され、後方レンズアセンブリを通過して拡張現実画像を形成し、負の屈折力が現実世界画像と拡張現実画像との間の輻輳調節矛盾を低減する、実施例1から16のいずれかに記載のデバイス。
【0175】
実施例18。デバイスが拡張現実ヘッドセットである、実施例1から17のいずれかに記載のデバイス。
【0176】
実施例19。一例の方法は、前方レンズアセンブリを通して現実世界光を受光し、現実世界光を、導波路ディスプレイおよび後方レンズアセンブリを通して案内することによって現実世界画像を生成することと、拡張現実光を、導波路ディスプレイから後方レンズアセンブリを通して案内し、拡張現実画像を形成することと、を含んでもよく、導波路ディスプレイおよび後方レンズアセンブリは拡張現実光のための負の屈折力を協働的にもたらし、前方レンズアセンブリ、導波路ディスプレイ、および後方レンズアセンブリは現実世界光のためのおよそ0の屈折力を協働的にもたらす。
【0177】
実施例20。導波路ディスプレイが拡張現実光源からの拡張現実光を受光し、格子を用いて拡張現実光を導波路ディスプレイ外へ案内する、実施例19の方法。
【0178】
図18は、拡張現実システムなどの例示的なニアアイディスプレイシステムを示す。システム1800は、互いに通信可能に結合され得るニアアイディスプレイ(NED:near-eye display)1810および制御システム1820を含み得る。ニアアイディスプレイ1810は、レンズ1812、電気活性デバイス1814、ディスプレイ1816、およびセンサ1818を含み得る。制御システム1820は制御要素1822、力ルックアップ表1824、および拡張現実論理部1826を含み得る。
【0179】
拡張現実論理部1826は、いかなる仮想オブジェクトが表示されるべきか、および仮想オブジェクトが投影されるべき現実世界の位置を決定し得る。したがって、拡張現実論理部1826は、ディスプレイ1816内に表示された右および左側画像の整列が、所望の現実世界の位置に向けた眼球輻輳を生じさせるように、ディスプレイ1816によって表示される画像ストリーム1828を生成し得る。
【0180】
制御要素1822は、ニアアイディスプレイ内に配置された1つまたは複数の調整可能レンズ、例えば、流体要素を制御するように構成され得る。レンズ調整は仮想オブジェクト(拡張現実画像要素など)までの所望の知覚距離に基づき得る。
【0181】
制御要素1822は、拡張現実論理部1826によって決定された同じ位置付け情報を力ルックアップ表(LUT:force lookup table)1824と組み合わせて用い、本明細書において説明されるとおりの、電気活性デバイス1814(例えば、アクチュエータ)によってレンズ1821に印加されるべき力の量を決定し得る。電気活性デバイス1814は、制御要素1822に応じて、ディスプレイ1816内に表示される仮想画像の見掛けの調節距離を、仮想画像の見掛けの輻輳距離に一致するように調整するために適切な力をレンズ1821に印加し得、これにより、輻輳調節矛盾を低減または解消する。制御要素1822は、調整可能レンズの状態を測定し得る、センサ1818と通信し得る。センサ1818から受光されたデータに基づいて、制御要素1822は電気活性デバイス1814を(例えば、閉ループ制御システムとして)調整し得る。
【0182】
実施形態によっては、表示システム1800は複数の仮想オブジェクトを一度に表示し得、ユーザがどの仮想オブジェクトを観視しているのか(または観視している可能性があるのか)を決定し、見掛けの調節距離を補正するべき仮想オブジェクトを識別し得る。例えば、システムは、制御要素1822が関連仮想オブジェクトの位置を選択することを可能にするための情報を制御要素1822に提供する視標追跡システム(図示せず)を含み得る。
【0183】
加えて、または代替的に、拡張現実論理部1826は、(例えば、空間的もしくは時間的近接性、運動、および/または仮想オブジェクトに付加された意味的重要度メトリックに基づいて)どの仮想オブジェクトが最も重要であり、および/またはユーザの注意を引き付ける可能性が最も高いかに関する情報を提供し得る。実施形態によっては、拡張現実論理部1826は複数の潜在的に重要な仮想オブジェクトを識別し、潜在的に重要な仮想オブジェクトのグループの仮想距離を近似する見掛けの調節距離を選択し得る。
【0184】
制御システム1820は、調整可能レンズ1821に対する調整を管理するための任意の好適なハードウェア、ソフトウェア、またはこれらの組み合わせを表し得る。実施形態によっては、制御システム1820はシステムオンチップ(SOC:system on a chip)を表し得る。それゆえ、制御システム1820の1つまたは複数の部分は1つまたは複数のハードウェアモジュールを含み得る。加えて、または代替的に、制御システム1820の1つまたは複数の部分は、コンピューティングデバイスのメモリ内に記憶され、コンピューティングデバイスのハードウェアプロセッサによって実行されたときに、本明細書において説明されるタスクのうちの1つまたは複数を遂行する1つまたは複数のソフトウェアモジュールを含み得る。
【0185】
制御システム1820は、概して、ヘッドマウンテッドディスプレイのための表示データ、拡張現実データ、および/または拡張現実論理を提供するための任意の好適なシステムを表し得る。実施形態によっては、制御システム1820は、グラフィック処理装置(GPU:graphics processing unit)、および/またはグラフィック処理を最適化するように設計された任意の他の種類のハードウェアアクセラレータを含み得る。
【0186】
制御システム1820は、(例えば、リムを用いて)フレームに結合された1つまたは複数の調整可能集束レンズをさらに含み得る、拡張現実眼鏡などの、様々な種類のシステム内で実施され得る。実施形態によっては、制御システムはアイウェアデバイスのフレーム内に統合され得る。代替的に、制御システムの全てまたは部分はアイウェアから遠隔のシステム内にあり、例えば、有線または無線通信を介してアイウェア内の電気活性デバイス(例えば、アクチュエータ)を制御するように構成され得る。実施例によっては、単一のディスプレイが、仮想画像要素(拡張現実画像要素など)をユーザの一方または両方の眼内に提供するために用いられ得る。
【0187】
図19は、いくつかの実施形態に係る、表示デバイス1900の斜視図を示す。表示デバイス1900はNEDの構成要素(例えば、導波路ディスプレイアセンブリ、または導波路の一部)であり得る。実施形態によっては、表示デバイス1900は、何らかの他のNED、または表示画像光を特定の位置へ案内する別のシステムの一部であり得る。実施形態および実装形態に応じて、表示デバイス1900は導波路ディスプレイおよび/または走査ディスプレイとも称され得る。しかし、実施形態によっては、表示デバイス1900は走査ミラーを含まなくてもよい。例えば、表示デバイス1900は、導波路ディスプレイを通して、ただし、走査ミラーを用いずに、光を画像フィールド上に投影する発光体のマトリックスを含み得る。実施形態によっては、発光体の2次元マトリックスによって放射された画像は、光が導波路またはスクリーンに到来する前に光学アセンブリ(例えば、レンズ)によって拡げられ得る。
【0188】
例えば、導波路ディスプレイを含む光学構成を含む、いくつかの実施形態のために、表示デバイス1900は、光源アセンブリ1910、出力導波路1920、およびコントローラ1930を含み得る。表示デバイス1900は画像を両方の眼のため、または単一の眼のために提供し得る。例示の目的のために、図19は、単一の眼1922に関連付けられた表示デバイス1900を示す。表示デバイス1900から分離された(または部分的に分離された)、別の表示デバイス(図示せず)が画像光をユーザの別の眼に提供し得る。部分的に分離されたシステムでは、1つまたは複数の構成要素が眼ごとの表示デバイスの間で共有され得る。
【0189】
本実施例において、光源アセンブリ1910は画像光1955を生成する。光源アセンブリ1910は光源1940および光学系1945を含み得る。光源1940は、マトリックス内に配列された複数の発光体を用いて画像光を生成する光学構成要素を含み得る。各発光体は単色光を放射し得る。光源1940は、限定するものではないが、赤色画像光、青色画像光、緑色画像光、赤外線画像光等を含む画像光を生成する。本開示では、RGB(赤色-緑色-青色(red-green-blue))がしばしば議論されるが、本明細書において説明される実施形態は、赤色、青色、および緑色を原色として用いることに限定されない。他の色も、表示デバイスの原色として用いられることが可能である。また、一実施形態に係る表示デバイスは3色を超える原色を用い得る。
【0190】
光学系1945は、限定するものではないが、集束、結合、コンディショニング、および走査プロセスを含む、光学プロセスのセットを、光源1940によって生成された画像光に対して遂行し得る。
【0191】
実施形態によっては、光学系1945は、結合アセンブリ、光コンディショニングアセンブリ、および走査ミラーアセンブリを含み得る。光源アセンブリ1910は画像光1955を生成し、出力導波路1920の結合要素1950へ出力し得る。本文脈において、出力導波路は、本開示の他所で説明される様々な実施例における導波路ディスプレイを提供する。
【0192】
本実施例では、出力導波路1920は、画像光をユーザの眼へ出力する光導波路であり、拡張表示画像要素を提供するために用いられ得る。出力導波路1920は画像光1955を1つまたは複数の結合要素1950において受光し、受光された入力画像光を1つまたは複数の減結合要素1960へ誘導し得る。結合要素1950は、例えば、回折格子、ホログラフィ格子、画像光1955を出力導波路1920内へ結合する何らかの他の要素、またはこれらの何らかの組み合わせであり得る。例えば、結合要素1950が回折格子である実施形態では、回折格子のピッチは、内部全反射が生じ、画像光1955が減結合要素1960に向かって内部伝搬するように選定される。回折格子のピッチは300nmから600nmの範囲内にあり得る。
【0193】
減結合要素1960は、内部全反射された画像光を出力導波路1920から減結合し得る。減結合要素1960は、例えば、回折格子、ホログラフィ格子、画像光を出力導波路1920外へ減結合する何らかの他の要素、またはこれらの何らかの組み合わせであり得る。例えば、減結合要素1960が回折格子である実施形態では、回折格子のピッチは、入射画像光を出力導波路1920から出ていかせるように選定され得る。出力導波路1920から出ていく画像光の向きおよび位置は、結合要素1950に入ってくる画像光1955の向きおよび位置を変化させることによって制御され得る。実施例によっては、回折格子のピッチは300nmから600nmの範囲内にあり得る。
【0194】
出力導波路1920は、画像光1955の内部全反射を促進する1種または複数種の材料を含み得る。出力導波路1920は、例えば、シリコン、プラスチック、ガラス、もしくはポリマー、またはこれらの何らかの組み合わせを含み得る。出力導波路1920は比較的小さいフォームファクタを有し得る。例えば、出力導波路1920は、およそ、X次元に沿って幅50mm、Y次元に沿って長さ30mm、およびZ次元に沿って厚さ0.5~1mmであり得る。
【0195】
コントローラ1930は光源アセンブリ1910の画像レンダリング動作を制御し得る。コントローラ1930は、少なくとも、1つまたは複数の表示命令に基づいて、光源アセンブリ1910のための命令を決定し得る。表示命令は、1つまたは複数の画像をレンダリングするための命令を含み得る。実施形態によっては、表示命令は画像ファイル(例えば、ビットマップデータ)を含み得る。表示命令は、例えば、VRシステムのコンソール(ここでは図示せず)から受信され得る。走査命令は、光源アセンブリ1910によって、画像光1955を生成するために用いられる命令を表し得る。走査命令は、例えば、画像光のソースの種類(例えば、単色性、多色性)、走査レート、走査装置の向き、1つもしくは複数の照明パラメータ、またはこれらの何らかの組み合わせを含み得る。コントローラ1930は、本開示の他の態様を不明瞭にしないようここでは示されていない、ハードウェア、ソフトウェア、および/またはファームウェアの組み合わせを含み得る。
【0196】
実施形態によっては、電子ディスプレイは、マイクロLEDなどの、1つまたは複数の発光ダイオードを含み得る、発光体を含み得る。実施形態によっては、マイクロLEDはおよそ10nmからおよそ20ミクロンの間のサイズ(例えば、マイクロLEDの放射面の直径)を有し得る。実施形態によっては、マイクロLEDの配列はおよそ10nmからおよそ20ミクロンの間のピッチ(例えば、2つのマイクロLEDの間の間隔)を有し得る。ピッチは、隣接したマイクロLEDの間の間隔であり得る。実施例によっては、ピッチはマイクロLEDの中心間間隔であり得、放射面の直径に基づく下限を有する範囲内にあり得る。実施形態によっては、他の種類の発光体が用いられ得る。実施形態によっては、光コンバイナは、導波路、および本明細書において説明されるとおりの1つまたは複数の追加の光学構成要素を含み得る。
【0197】
実施形態によっては、導波路ディスプレイアセンブリは、画像光(例えば、電子ディスプレイから投影された拡張現実画像光)を、射出瞳と呼ばれ得るものを通してユーザの眼へ案内するように構成され得る。導波路ディスプレイアセンブリは1種または複数種の材料(例えば、プラスチック、ガラス、および同様のもの)を含み得、様々な光学構成要素は、1つもしくは複数の屈折率、または、実施形態によっては、勾配屈折率を有し得る。導波路ディスプレイアセンブリは、重量を効果的に低減し、NEDの視野(FOV:field of view)を広くするように構成され得る。実施形態によっては、NEDは導波路ディスプレイアセンブリと眼との間の1つまたは複数の光学要素を含み得る。例えば、光学要素は、導波路ディスプレイアセンブリから放射された画像光を拡げ、および/または導波路ディスプレイアセンブリから放射された画像光の他の光学調整を提供するように構成され得る。例えば、光学要素の構成は、開口、フレネルレンズ、凸レンズ、凹レンズ、フィルタ、または例えば、導波路ディスプレイアセンブリから放射された画像光における収差を補正するように構成された、任意の他の好適な光学要素のうちの1つまたは複数を含み得る。実施形態によっては、導波路ディスプレイアセンブリは瞳複製を作り出し、アイボックス領域へ案内し得る。射出瞳は、ユーザが、NEDを含むデバイスなどの、デバイスを着用したときに、眼がアイボックス領域内に位置付けられる位置を含み得る。実施形態によっては、デバイスは、デバイスを、ユーザの頭など身体上で支持するように構成されたフレーム、アイウェア眼鏡(本明細書において単に眼鏡とも称される)のフレームを含み得る。実施形態によっては、例えば、導波路ディスプレイアセンブリを含む第2の光コンバイナが、画像光をユーザの別の眼に提供するために用いられ得る。
【0198】
実施形態によっては、電子ディスプレイ(表示デバイスとも呼ばれ得る)は、プロジェクタアレイなどの、複数などの、1つまたは複数の単色発光体アレイを含み得る。アレイのうちの1つまたは複数は、他のアレイと比べて、低減された数の発光体を含み得、これにより、低減された数を有するアレイに関連付けられた色チャネルは、他の色チャネルと比べて、低減された解像度を有する。異なるアレイの発光体によって放射された光は、導波路などの光学構成要素によって、異なる色の光が各画像ピクセルの位置において空間的に重なり合うように収斂させられ得る。表示デバイスは、低減された解像度を有する1つまたは複数の色チャネルに関してユーザによって知覚される任意の視覚効果を低減するために複数の畳み込み核を含み得るアンチエイリアスフィルタを適用する画像処理ユニットを含み得る。実施形態によっては、デバイスは、ユーザによって着用されるように構成され得、デバイスは、拡張現実画像要素が、光コンバイナを通過した後にユーザの眼に向けて投影されるように構成され得る。実施形態によっては、拡張現実画像要素は複数の色チャネルを含み、電子ディスプレイは色チャネルごとの別個のプロジェクタアレイを含み、各プロジェクタアレイは、1つまたは複数の導波路を含み得る、光コンバイナ内へ結合され得る。実施例によっては、電子ディスプレイは複数のプロジェクタアレイを含み、複数のプロジェクタアレイの各プロジェクタアレイは色チャネルを提供し、各色チャネルは光コンバイナ内へ結合され得る。各プロジェクタアレイは、マイクロLEDアレイ、例えば、およそ5ミクロン未満、例えば、およそ2ミクロン未満だけ離間されたマイクロLEDを有するマイクロLEDアレイを含み得る。配列(アレイなど)内のマイクロLEDは、およそ10nmからおよそ20ミクロンの間のサイズ(例えば、LEDデバイスの放射面の直径)および/またはピッチ(例えば、2つの最も近いマイクロLEDの縁部もしくは中心の間の間隔)を有し得る。中心間ピッチ範囲の下限は、少なくとも部分的に、放射面の直径によって決定され得る。実施例によっては、アレイなどの、マイクロLED配列は、およそ10nmからおよそ20ミクロンの間のマイクロLEDの間の間隔(例えば、縁部間距離)を有し得る。
【0199】
実施形態によっては、光源アセンブリは、光学系によって、画像フィールド上に投影され得る画像光を生成するために光学的に処理され得る光を放射するように構成された光源を含み得る。光源は、駆動回路によって、コントローラまたは画像処理ユニットから送信されたデータに基づいて駆動され得る。実施形態によっては、駆動回路は、光源の1つまたは複数の発光体に接続し得、それらを機械的に保持し得る回路パネルを含み得る。駆動回路および光源の組み合わせは、時として、表示パネルまたはLEDパネル(例えば、発光体が何らかの形態のLEDを含む場合には、後者)と称され得る。
【0200】
光源は、空間的にコヒーレントな、または部分的に空間的にコヒーレントな画像光を生成し得る。光源は複数の発光体を含み得る。発光体は、垂直エンクロージャ面発光レーザ(VCSEL:vertical enclosure surface emitting laser)デバイス、発光ダイオード(LED:light emitting diode)、マイクロLED、波長可変レーザ、および/または何らかの他の発光デバイスであることができる。一実施形態では、光源は発光体のマトリックスを含む。実施形態によっては、光源は、各セットが色によってグループ化され、マトリックスの形態で配列された、発光体の複数のセットを含む。光源は可視帯域内の(例えば、約390nmから700nmの)光を放射する。光源は、コントローラによって設定され、場合によっては、画像処理ユニットおよび駆動回路によって調整された1つまたは複数の照明パラメータに応じた光を放射する。照明パラメータは、光源によって、光を生成するために用いられる命令であり得る。照明パラメータは、例えば、ソース波長、パルスレート、パルス振幅、ビームタイプ(連続もしくはパルス状)、放射光に影響を及ぼす他のパラメータ、またはこれらの何らかの組み合わせを含み得る。光源はソース光を放射し得る。実施形態によっては、ソース光は、赤色光、緑色光、および青色光、またはこれらの何らかの組み合わせの複数のビームを含み得る。
【0201】
光学系は、光を光学的に調整し、場合によっては、光源から向け直す1つまたは複数の光学構成要素を含み得る。光の例示的な調整の一形態は、光をコンディショニングすることを含み得る。光源からの光をコンディショニングすることは、例えば、拡大すること、コリメートすること、1つもしくは複数の光学誤差(例えば、像面湾曲、色収差等)を補正すること、光の何らかの他の調整、またはこれらの何らかの組み合わせを含み得る。光学系の光学構成要素は、例えば、レンズ、ミラー、開口、格子、またはこれらの何らかの組み合わせを含み得る。光学系から放射された光は画像光と称され得る。
【0202】
光学系はその1つまたは複数の反射および/または屈折部分を介して画像光を、画像光が出力導波路に向けて特定の向きで投影されるように向け直し得る。画像光がどこに向けて向け直されるかは、1つまたは複数の反射および/または屈折部分の特定の向きに基づき得る。実施形態によっては、光学系は、少なくとも2つの次元において走査する単一の走査ミラーを含む。実施形態によっては、光学系は、互いに直交した方向に各々走査する複数の走査ミラーを含み得る。光学系は、ラスタ走査(水平もしくは鉛直)、双共振走査(biresonant scan)、またはこれらの何らかの組み合わせを遂行し得る。実施形態によっては、光学系は、特定の発振周波数を有する水平および/または鉛直方向に沿った制御された振動を遂行し、2つの次元に沿って走査し、ユーザの眼に呈示されるメディアの2次元投影線画像を生成し得る。実施形態によっては、光学系はまた、1つまたは複数の走査ミラーと同様の、または同じ機能を果たすレンズを含み得る。
【0203】
実施形態によっては、光学系はガルバノミラーを含み得る。例えば、ガルバノミラーは、1つまたは複数のミラーを用いて画像光のビームを偏向させることによってそれが電流を感知したことを示す任意の電気機械計器を表し得る。ガルバノミラーは少なくとも1つの直交次元において走査し、画像光を生成し得る。ガルバノミラーからの画像光は、ユーザの眼に呈示されるメディアの2次元線画像を表し得る。
【0204】
実施形態によっては、光源アセンブリは光学系を含まなくてもよい。実施形態によっては、光源によって放射された光は導波路内へ直接投影され得る。実施例によっては、光源の出力光学系は負レンズを含み得る。
【0205】
コントローラは、光源、および、場合によっては、光学系の動作を制御し得る。実施形態によっては、コントローラは表示デバイスのグラフィック処理装置(GPU)であり得る。実施形態によっては、コントローラは1つまたは複数の異なる、または追加のプロセッサを含み得る。コントローラによって遂行される動作は、表示のためのコンテンツを取得し、コンテンツを個別の区分に分割することを含み得る。コントローラは、光源に、ユーザに最終的に表示される画像内のそれぞれの行に対応する発光体を用いて個別の区分を順次に呈示するように命令し得る。コントローラは光学系に、光を調整するように命令し得る。例えば、コントローラは光学系を、呈示された個別の区分を出力導波路の結合要素の異なる区域へ走査するように制御し得る。したがって、出力導波路の射出瞳において、各個別の部分は異なる位置において呈示され得る。各個別の区分は異なる時に呈示されるが、個別の区分の呈示および走査は、ユーザの眼が異なる区分を単一の画像または一連の画像に統合するよう、十分高速に行われ得る。コントローラはまた、光源の個々のソース要素に対応するアドレス、および/または個々のソース要素に印加される電気バイアスを含む走査命令を光源に提供し得る。
【0206】
画像処理ユニットは、汎用プロセッサ、および/または本明細書において説明される特徴を遂行することに特化した1つまたは複数の特定用途向け回路であり得る。一実施形態では、汎用プロセッサは、プロセッサに、本明細書において説明される特定のプロセスを遂行させるソフトウェア命令を実行するためにメモリデバイスに結合され得る。実施形態によっては、画像処理ユニットは、特定の特徴を遂行することに特化した1つまたは複数の回路を含み得る。画像処理ユニットは、コントローラおよび駆動回路とは別個のものである独立型ユニットであり得るが、実施形態によっては、画像処理ユニットはコントローラまたは駆動回路のサブユニットであり得る。換言すれば、それらの実施形態では、コントローラまたは駆動回路は画像処理ユニットの様々な画像処理手順を遂行する。画像処理ユニットは画像処理回路とも称され得る。
【0207】
図20は、いくつかの実施形態に係る、画像、および瞳複製と称され得る画像の複製を形成するための導波路構成を例示する図である。表示デバイスの光源は3つの異なる発光体アレイに分離され得る。原色は、赤色、緑色、および青色、または赤色、黄色、および青色などの他の好適な原色の別の組み合わせであり得る。実施形態によっては、各発光体アレイ内の発光体の数は、画像フィールド内のピクセル位置の数に等しいものであり得る。走査プロセスを用いる代わりに、各発光体は、画像フィールド内のそれぞれのピクセルの位置において画像を生成することに特化したものであり得る。実施形態によっては、本明細書において議論される構成が組み合わせられ得る。
【0208】
図20に描かれている実施形態は、多くの画像複製(例えば、瞳複製)の投影、または単一の点における単一の画像投影の減結合を提供し得る。したがって、開示されるNEDの追加の実施形態は単一の減結合要素を提供し得る。単一の画像をアイボックスに向けて出力することは、結合された画像光の強度を保存し得る。単一の点における減結合を提供するいくつかの実施形態は出力画像光の操向をさらに提供し得る。このような瞳操向式NEDは、ユーザの注視を監視するための視標追跡のためのシステムをさらに含み得る。本明細書において説明されるとおりの、瞳複製を提供する導波路構成のいくつかの実施形態は1次元複製を提供し得、その一方で、いくつかの実施形態は2次元複製を提供し得る。簡潔にするために、図20には1次元瞳複製が示されている。2次元瞳複製は、光を図20の平面内および外へ案内することを含み得る。図20は、単純化されたフォーマットで呈示されている。ユーザの検出された注視は、発光体アレイの位置および/もしくは向きを個々に、または光源2070の位置および/もしくは向きを全体的に調整するため、ならびに/あるいは導波路構成の位置および/もしくは向きを調整するために用いられ得る。
【0209】
図20では、導波路構成2040が、支持体2064(例えば、プリント回路板または別の構造)に固定された1つまたは複数の単色発光体アレイ2080を含み得る、光源2070と連携して配設され得る。支持体2064は、フレーム(例えば、拡張現実眼鏡もしくはゴーグルのフレームなど)または他の構造に結合され得る。導波路構成2040は、距離D1を有する空隙によって光源2070から分離され得る。距離D1は、実施形態によっては、およそ50μmからおよそ500μmの範囲内にあり得る。光源2070から投影された単色画像または画像群は導波路構成2040に向かって空隙を通過し得る。本明細書において説明される光源の実施形態のうちの任意のものが光源2070として利用され得る。
【0210】
導波路構成は、ガラスまたはプラスチック材料から形成され得る、導波路2042を含み得る。導波路2042は、結合区域2044、ならびに実施形態によっては、上面2048A上の減結合要素2046Aおよび下面2048B上の減結合要素2046Bによって形成された減結合区域を含み得る。減結合要素2046Aおよび2046Bの間の導波路2042内の区域は、光源2070から受光され、結合区域2044内に含まれる結合要素によって導波路2042内へ結合された光画像が導波路2042内で横方向に伝搬し得る、伝搬区域2050と考えられ得る。
【0211】
結合区域2044は、所定の波長の光、例えば、赤色、緑色、または青色光を結合するように構成され、寸法設定された結合要素2052を含み得る。白色発光体アレイが光源2070内に含まれるときには、所定の波長に収まる白色光の部分は結合要素2052の各々によって結合され得る。実施形態によっては、結合要素2052は、所定の波長の光を結合するように寸法設定された、ブラッグ格子などの、格子であり得る。実施形態によっては、各結合要素2052の格子は、特定の結合要素2052が導波路2042内へ結合することになる所定の波長の光に関連付けられた格子間の分離距離を呈し得、結合要素2052ごとに異なる格子分離距離をもたらす。したがって、各結合要素2052は、含まれるときには、白色発光体アレイからの白色光のうちの限定された部分を結合し得る。他の例では、格子分離距離は結合要素2052ごとに同じであり得る。実施形態によっては、結合要素2052は多重カプラであるか、または多重カプラを含み得る。
【0212】
図20に示されるように、赤色画像2060A、青色画像2060B、および緑色画像2060Cが結合区域2044の結合要素によって伝搬区域2050内へ結合され得、導波路2042内を横方向に横断し始め得る。一実施形態では、図20における異なる破線によって各々表現された、赤色画像2060A、青色画像2060B、および緑色画像2060Cは、収斂し、実線によって表現された全体画像を形成し得る。簡潔にするために、図20は単一の矢印によって画像を示し得るが、各矢印は、画像が形成される画像フィールドを表現し得る。実施形態によっては、赤色画像2060A、青色画像2060B、および緑色画像2060Cは異なる空間的位置に対応し得る。
【0213】
光の部分は、1次元瞳複製については光が減結合要素2046Aと接触した後に、ならびに2次元瞳複製については光が減結合要素2046Aおよび減結合要素2046Bの両方と接触した後に、導波路2042外へ投影され得る。2次元瞳複製の実施形態では、光は、減結合要素2046Aのパターンが減結合要素2046Bのパターンと交差する位置において導波路2042外へ投影され得る。
【0214】
減結合要素2046Aによって導波路2042外へ投影されない光の部分は減結合要素2046Bから反射され得る。減結合要素2046Bは、図示のように、全ての入射光を減結合要素2046Aに向けて後方反射し得る。したがって、導波路2042は、赤色画像2060A、青色画像2060B、および緑色画像2060Cを、多色瞳複製であり得る、瞳複製2062と称され得る、多色画像インスタンスに組み合わせ得る。瞳複製2062は、ユーザの眼に関連付けられたアイボックスに向けて投影され得、眼は瞳複製2062をフルカラー画像(例えば、赤色、緑色、および青色以外の色を含む画像)として解釈し得る。導波路2042は数千の瞳複製を作り出し得るか、または単一の瞳複製を作り出し得る。
【0215】
実施形態によっては、導波路構成は、図20に示される構成とは異なり得る。例えば、結合区域が異なり得る。格子を結合要素2052として含むのではなく、代替的実施形態は、受光された画像光を反射し、屈折させ、画像光を減結合要素2046Aに向けて案内するプリズムを含み得る。
【0216】
図20は、概して、支持体2064に結合された発光体アレイ2080を含む光源2070を示している。実施例によっては、光源2070は、導波路構成の周りの不同の位置に配置された別個の単色放射体アレイ(例えば、導波路構成の上面付近に配置された1つまたは複数の放射体アレイ、および導波路構成の下面付近に配置された1つまたは複数の放射体アレイ)を含み得る。
【0217】
また、図20には、3つの発光体アレイのみが示されているが、一実施形態はより多数またはより少数の発光体アレイを含み得る。例えば、一実施形態では、表示デバイスは、2つの赤色アレイ、2つの緑色アレイ、および2つの青色アレイを含み得る。1つの事例では、放射体パネルの余分のセットは同じピクセルの位置のための冗長な発光体を提供する。別の事例では、赤色、緑色、および青色パネルの1つのセットは、ピクセルの位置のための色データセットの最上位ビットに対応する光を生成することを担当し、その一方で、パネルの別のセットは、色データセットの最下位ビットに対応する光を生成することを担当する。
【0218】
実施形態によっては、表示デバイスは、画像を形成するため、および、実施例によっては、複数の瞳複製を形成するために、回転ミラーおよび/または導波路の両方を用い得る。
【0219】
実施形態によっては、各ソースプロジェクタ(R、G、B)は、関連付けられたそれぞれの導波路を、例えば、複数の色チャネル、例えば、赤色、緑色、青色、および/または他の色チャネルを組み合わせたより大きな導波路スタックの一部として有し得る。実施形態によっては、第1の導波路が2つの色チャネルを扱ってもよく、その一方で、第2の導波路が第3の色チャネルを扱ってもよい。例えば、1つの導波路が2つの色チャネルを扱ってもよく、第2の導波路が第3のものを扱ってもよい、他の順列も可能である。実施形態によっては、2つ、3つ、4つ、または5つの色チャネル、あるいは1つまたは複数の色チャネル、および輝度チャネル、もしくは他のチャネルの組み合わせが存在してもよく、これらのチャネルは複数の導波路の間で任意の所望の順列で分割され得る。実施例によっては、光コンバイナは複数の色チャネルの各々のための別個の導波路を含む。
【0220】
実施形態によっては、電子ディスプレイは、第1の色の光を放射するように各々構成された複数の第1の発光体、第2の色の光を放射するように構成された複数の第2の発光体、および任意選択的に、第3の色の光を放射するように各々構成された複数の第3の発光体を含み得る。実施形態によっては、光コンバイナは、例えば、様々な発光体からの光を空間的位置内で重ね合わせることによって拡張現実画像を形成するために、様々な発光体から放射された光を収斂する、または他の様態で案内するように構成された1つまたは複数の導波路を含み得る。実施形態によっては、発光体は、赤色、緑色、または青色などの原色に対応し得る、おおよそ単色性の色の光を各々放射し得る。実施形態によっては、発光体は、任意の特定の適用物において望まれるとおりの、波長色の帯域または組み合わせを放射するように構成され得る。実施形態によっては、発光体は、UV(または青色もしくは紫色光)をフォトクロミック層に向けて放射し、例えば、フォトクロミック層内における局所的または大域的調光を誘起するように構成され得る。局所的および/または大域的調光の程度は、例えば、周囲光の明るさの平均および/またはピーク値に基づいて制御され得る。
【0221】
実施形態によっては、表示システム(例えば、NED)は導波路構成の対を含み得る。各導波路は、画像をユーザの眼に投影するように構成され得る。実施形態によっては、画像を両方の眼に投影するために十分に広い単一の導波路構成が用いられ得る。導波路構成は減結合区域を各々含み得る。導波路構成を通して画像をユーザの眼に提供するために、複数の結合区域が導波路構成の導波路の上面内に提供され得る。結合区域は、第1および第2の発光体アレイセットによってそれぞれ提供された光画像とインターフェースをとるための複数の結合要素を含み得る。発光体アレイセットの各々は、例えば、本明細書において説明されるとおりの、複数の単色発光体アレイを含み得る。実施形態によっては、発光体アレイセットは、赤色発光体アレイ、緑色発光体アレイ、および青色発光体アレイを各々含み得る。一部の発光体アレイセットは、白色発光体アレイ、または何らかの他の色、もしくは色の組み合わせを放射する発光体アレイをさらに含み得る。
【0222】
実施形態によっては、右眼の導波路は、1つまたは複数の結合区域(そのうちの全てもしくは部分はまとめて結合区域と称され得る)、および対応する数の発光体アレイセット(そのうちの全てもしくは部分はまとめて発光体アレイセットと称され得る)を含み得る。したがって、右眼の導波路は2つの結合区域および2つの発光体アレイセットを含み得るが、いくつかの実施形態は(各々を、または両方を)より多数またはより少数含み得る。実施形態によっては、発光体アレイセットの個々の発光体アレイは減結合区域の周りの異なる位置に配設され得る。例えば、発光体アレイセットは、減結合区域の左側に沿って配設された赤色発光体アレイ、減結合区域の上側に沿って配設された緑色発光体アレイ、および減結合区域の右側に沿って配設された青色発光体アレイを含み得る。したがって、発光体アレイセットの発光体アレイは、減結合区域に対して、全部まとめて、対で、または個々に配設され得る。
【0223】
左眼の導波路は、実施形態によっては、右眼の導波路と同じ数および構成の結合区域および発光体アレイセットを含み得る。実施形態によっては、左眼の導波路および右眼の導波路は異なる数および構成(例えば、位置および向き)の結合区域および発光体アレイセットを含み得る。実施形態によっては、異なる色発光体から形成された瞳複製区域は異なる区域を占有し得る。例えば、発光体アレイセットの赤色発光体アレイは赤色画像の瞳複製を、限定された区域内に作り出し得、緑色および青色光についても同様である。限定された区域は単色発光体アレイごとに異なり得、これにより、限定された区域の重なり合う部分のみが、アイボックスに向けて投影される、フルカラー瞳複製を提供することが可能であり得る。実施形態によっては、異なる色発光体から形成された瞳複製区域は同じ区域を占有し得る。
【0224】
実施形態によっては、異なる導波路部分がブリッジ導波路によって接続され得る。ブリッジ導波路は、発光体アレイセットからの光が1つの導波路部分から別の導波路部分内へ伝搬することを許し得る。実施形態によっては、ブリッジ導波路部分は減結合要素を全く含まなくてもよく、これにより、全ての光は導波路部分内で内部全反射する。実施形態によっては、ブリッジ導波路部分は減結合区域を含み得る。実施形態によっては、ブリッジ導波路は、複数の導波路部分からの光を得、得られた光を、例えば、導波路部分の間の画像ずれを検出するために、検出器(例えば、光検出器)に結合するために用いられ得る。
【0225】
実施形態によっては、コンバイナ導波路は、赤色、緑色、および青色光などの、異なる画像色成分のための入力格子を有する単一の層であり得る。実施形態によっては、コンバイナ導波路は、各層が1つまたは複数の色チャネルのための入力格子を含み得る(例えば、緑色のための第1の層、ならびに青色および赤色のための第2の層、または他の構成)、層のスタックを含み得る。実施例によっては、1つまたは複数の導波路を含み得る、調光要素および光コンバイナが単一の構成要素に統合され得る。実施例によっては、調光要素は別個の構成要素であり得る。実施例によっては、デバイスは、デバイスがユーザによって着用されたときに調光要素が光コンバイナとユーザの眼との間に配置されるように構成され得る。
【0226】
出力格子は、我々のレコードの計画とは反対である任意の所望の方向に光をアウトカップリングするように構成され得る。例えば、図20を参照すると、出力格子は、図に示されるものとは反対の方向に(例えば、マイクロLEDプロジェクタの同じ側に向けて)光を出力するように構成され得る。実施形態によっては、調光要素は導波路のどちらかまたは両方の側に層を含み得る。
【0227】
実施形態によっては、外部光は、導波路ディスプレイを通過する前に、眼用レンズなどの、レンズを通過し得る。例えば、デバイスは、眼用レンズ(1つまたは複数の処方レンズおよび/または調整可能レンズなど)を含み得、これらは、外部光が、導波路を通過する前に1つまたは複数の眼用レンズを通過するように配置され得る。実施形態によっては、デバイスは、例えば、1つもしくは複数のレンズ、または1つもしくは複数の湾曲した導波路面を用いて、拡張現実画像要素のための画像補正を提供するように構成され得る。実施形態によっては、外部光が導波路を通過し得、次に、外部光および投影された拡張現実光が両方とも1つまたは複数のレンズ(眼用レンズおよび/または調整可能レンズなど)を通過し得る。実施形態によっては、デバイスは、耐擦傷性ガラスまたは耐擦傷性表面コーティングを含み得る、外部光が最初に通過する外側光学要素(例えば、レンズまたは窓)を含み得る。実施形態によっては、瞳複製は別の方向に(例えば、発光体が配置されている位置に向けて)アウトカップリングされ得る。実施例によっては、第1および第2の導波路ディスプレイが、仮想画像要素をユーザの第1および第2の眼(例えば、左および右眼)内へそれぞれ投影するために用いられ得る。実施例によっては、単一の導波路ディスプレイが、仮想画像要素を両方の眼内へ投影するために用いられ得る(例えば、導波路ディスプレイのある部分が、一方の眼内へ投影するために用いられ得、導波路ディスプレイの別の部分が、他方の眼内へ投影するために用いられ得る)。
【0228】
本開示の実施形態は、様々な種類の人工現実システムを含むか、または様々な種類の人工現実システムと連動して実施され得る。人工現実感は、例えば、仮想現実感、拡張現実感、複合現実感、ハイブリッド現実感、またはこれらの何らかの組み合わせおよび/もしくは派生物を含み得る、ユーザへの呈示前に何らかの仕方で調整された現実感の一形態である。人工現実コンテンツは、完全に生成されたコンテンツ、または取り込まれた(例えば、現実世界)コンテンツと組み合わせられた生成されたコンテンツを含み得る。人工現実コンテンツは、映像、音声、触覚フィードバック、またはこれらの何らかの組み合わせを含み得、これらはいずれも、単一のチャネル内、または複数のチャネル(観視者への3次元効果を作り出す立体映像など)内で呈示され得る。加えて、実施形態によっては、人工現実感はまた、例えば、人工現実感におけるコンテンツを制作するために用いられる、および/または人工現実感において(例えば、活動を遂行するために)他の仕方で用いられる、アプリケーション、製品、付属品、サービス、またはこれらの何らかの組み合わせに関連付けられ得る。
【0229】
人工現実システムは種々の異なるフォームファクタおよび構成で実施され得る。一部の人工現実システムは、ニアアイディスプレイ(NED)を用いずに機能するように設計され得、その一例は、図21に示される拡張現実システム2100である。他の人工現実システムは、現実世界内への視認性をも提供するか(例えば、図22における拡張現実システム2200)、またはユーザを人工現実内に視覚的に没入させる(例えば、図23における仮想現実システム2300)NEDを含み得る。一部の人工現実デバイスは自己完結型システムであり得るが、他の人工現実デバイスは、人工現実体験をユーザに提供するために外部デバイスと通信および/または連係し得る。このような外部デバイスの例としては、ハンドヘルドコントローラ、モバイルデバイス、デスクトップコンピュータ、ユーザによって着用されるデバイス、1人もしくは複数人の他のユーザによって着用されるデバイス、および/または任意の他の好適な外部システムが挙げられる。
【0230】
図21を参照すると、拡張現実システム2100は、概して、ユーザの身体部位(例えば、頭部)の周りに適合するように寸法設定されたウェアラブルデバイスを表す。図21に示されるように、システム2100は、フレーム2102、およびフレーム2102に結合されており、局所環境を観測することによって局所環境に関する情報を集めるように構成されたカメラアセンブリ2104を含み得る。拡張現実システム2100はまた、出力音声トランスデューサ2108(A)および2108(B)ならびに入力音声トランスデューサ2110などの、1つまたは複数の音声デバイスを含み得る。出力音声トランスデューサ2108(A)および2108(B)は音声フィードバックおよび/またはコンテンツをユーザに提供し得、入力音声トランスデューサ2110はユーザの環境内の音声を取り込み得る。
【0231】
図示のように、拡張現実システム2100は、必ずしも、ユーザの眼の前方に位置付けられたNEDを含まなくてもよい。NEDを有しない拡張現実システムは、ヘッドバンド、帽子、ヘアバンド、ベルト、腕時計、リストバンド、アンクルバンド、指輪、ネックバンド、ネックレス、チェストバンド、アイウェアフレーム、および/または任意の他の好適な種類もしくは形態の装置などの、種々の形態を取り得る。拡張現実システム2100はNEDを含まなくてもよいが、拡張現実システム2100は、他の種類のスクリーンまたは視覚フィードバックデバイス(例えば、フレーム2102の側部内に統合された表示スクリーン)を含み得る。
【0232】
本開示において議論される例示的な実施形態は、1つまたは複数のNEDを含む拡張現実システムにおいて実施され得る。例えば、図22に示されるように、拡張現実システム2200は、左側表示デバイス2215(A)および右側表示デバイス2215(B)をユーザの眼の前方において保持するように構成されたフレーム2210を有するアイウェアデバイス2202を含み得る。表示デバイス2215(A)および2215(B)は、画像または一連の画像をユーザに呈示するために、協力して、または独立して作動し得る。拡張現実システム2200は2つのディスプレイを含むが、本開示の実施形態は、単一のNEDまたは2つを超えるNEDを有する拡張現実システムにおいて実施され得る。
【0233】
実施形態によっては、拡張現実システム2200は、センサ2240などの、1つまたは複数のセンサを含み得る。センサ2240は、拡張現実システム2200の動きに応じて測定信号を生成し得、フレーム2210の実質的に任意の部分上に配置され得る。センサ2240は、位置センサ、慣性計測装置(IMU:inertial measurement unit)、深度カメラアセンブリ、またはこれらの任意の組み合わせを表し得る。実施形態によっては、拡張現実システム2200はセンサ2240を含み得るか、もしくは含まなくてもよく、または1つを超えるセンサを含み得る。センサ2240がIMUを含む実施形態では、IMUはセンサ2240からの測定信号に基づいて校正データを生成し得る。センサ2240の例としては、限定するものではないが、加速度計、ジャイロスコープ、磁力計、動きを検出する他の好適な種類のセンサ、IMUの誤差補正のために用いられるセンサ、またはこれらの何らかの組み合わせを挙げることができる。
【0234】
拡張現実システム2200はまた、まとめて音響トランスデューサ2220と称される、複数の音響トランスデューサ2220(A)~2220(J)を有するマイクロフォンアレイを含み得る。音響トランスデューサ2220は、音波によって誘起される空気圧変動を検出するトランスデューサであり得る。各音響トランスデューサ2220は、音を検出し、検出された音を電子フォーマット(例えば、アナログまたはデジタルフォーマット)に転換するように構成され得る。図2におけるマイクロフォンアレイは、例えば、10個の音響トランスデューサ:ユーザの対応する耳の内側に設置されるように設計され得る、2220(A)および2220(B)、フレーム2210上の様々な位置に位置付けられ得る、音響トランスデューサ2220(C)、2220(D)、2220(E)、2220(F)、2220(G)、および2220(H)、ならびに/または対応するネックバンド2205上に位置付けられ得る、音響トランスデューサ2220(I)および2220(J)を含み得る。
【0235】
実施形態によっては、音響トランスデューサ2220(A)~(F)のうちの1つまたは複数は出力トランスデューサ(例えば、スピーカ)として用いられ得る。例えば、音響トランスデューサ2220(A)および/または2220(B)は、イヤフォン、または任意の他の好適な種類のヘッドフォンもしくはスピーカであり得る。
【0236】
マイクロフォンアレイの音響トランスデューサ2220の構成は変わり得る。拡張現実システム2200は、図22において、10個の音響トランスデューサ2220を有するように示されているが、音響トランスデューサ2220の数は10個超または未満であり得る。実施形態によっては、より多数の音響トランスデューサ2220を用いることは、収集される音声情報の量ならびに/または音声情報の感度および精度を増大させ得る。対照的に、より少数の音響トランスデューサ2220を用いることは、コントローラ2250によって、収集された音声情報を処理するために必要とされる計算能力を減少させ得る。加えて、マイクロフォンアレイの各音響トランスデューサ2220の位置は変わり得る。例えば、音響トランスデューサ2220の位置は、ユーザ上の規定の位置、フレーム2210上の規定の座標、各音響トランスデューサに関連付けられた向き、またはこれらの何らかの組み合わせを含み得る。
【0237】
音響トランスデューサ2220(A)および2220(B)は、耳介の背後、または外耳もしくは窩内など、ユーザの耳の異なる部位上に位置付けられ得る。あるいは、外耳道の内側の音響トランスデューサ2220に加えて、耳上の、または耳を包囲する追加の音響トランスデューサが存在し得る。ユーザの外耳道のそばに位置付けられた音響トランスデューサを有することは、マイクロフォンアレイが、音がどのように外耳道に到来するのかに関する情報を収集することを可能にし得る。音響トランスデューサ2220のうちの少なくとも2つをユーザの頭部の両側に(例えば、バイノーラルマイクロフォンとして)位置付けることによって、拡張現実システム2200は両耳聴を模擬し、ユーザの頭部の周りの3D立体音場を取り込み得る。実施形態によっては、音響トランスデューサ2220(A)および2220(B)は有線接続2230を介して拡張現実システム2200に接続され得、他の実施形態では、音響トランスデューサ2220(A)および2220(B)は無線接続(例えば、Bluetooth接続)を介して拡張現実システム2200に接続され得る。さらに他の実施形態では、音響トランスデューサ2220(A)および2220(B)は全く拡張現実システム2200と連動して用いられなくてもよい。
【0238】
フレーム2210上の音響トランスデューサ2220は、テンプルの長さに沿って、ブリッジを横切って、表示デバイス2215(A)および2215(B)の上方もしくは下方に、またはこれらの何らかの組み合わせで位置付けられ得る。音響トランスデューサ2220は、マイクロフォンアレイが、拡張現実システム2200を着用したユーザを包囲する広範囲の方向の音を検出することができるように指向させられ得る。実施形態によっては、マイクロフォンアレイ内の各音響トランスデューサ2220の相対的位置付けを決定するために拡張現実システム2200の製造の間に最適化プロセスが遂行され得る。
【0239】
実施例によっては、拡張現実システム2200は、ネックバンド2205などの、外部デバイス(例えば、ペアリングされたデバイス)を含むか、または外部デバイスに接続され得る。ネックバンド2205は、概して、任意の種類または形態のペアリングされたデバイスを表す。それゆえ、ネックバンド2205の以下の議論は、充電ケース、スマートウォッチ、スマートフォン、リストバンド、他のウェアラブルデバイス、ハンドヘルドコントローラ、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、および他の外部計算デバイス等などの、様々な他のペアリングされたデバイスにも当てはまり得る。
【0240】
図示のように、ネックバンド2205は1つまたは複数のコネクタを介してアイウェアデバイス2202に結合され得る。コネクタは有線式または無線式であり得、電気的および/または非電気的(例えば、構造的)構成要素を含み得る。場合によっては、アイウェアデバイス2202およびネックバンド2205はそれらの間に有線または無線接続を全く有することなく独立して動作し得る。図22はアイウェアデバイス2202およびネックバンド2205の構成要素をアイウェアデバイス2202およびネックバンド2205上の例示的な位置に例示しているが、構成要素はアイウェアデバイス2202および/またはネックバンド2205上において他所に配置され、および/または異なって分布していてもよい。実施形態によっては、アイウェアデバイス2202およびネックバンド2205の構成要素は、アイウェアデバイス2202、ネックバンド2205、またはこれらの何らかの組み合わせとペアリングされた1つまたは複数の追加の周辺デバイス上に配置され得る。さらに、
【0241】
ネックバンド2205などの、外部デバイスを拡張現実アイウェアデバイスとペアリングすることは、アイウェアデバイスが、1組の眼鏡のフォームファクタを達成し、その一方で、拡大された能力のために十分な電池および計算パワーを依然として提供することを可能にし得る。拡張現実システム2200の電池パワー、計算リソース、および/または追加の特徴の一部または全ては、ペアリングされたデバイスによって提供されるか、またはペアリングされたデバイスとアイウェアデバイスとの間で共有されてもよく、それゆえ、アイウェアデバイス全体の重量、熱プロファイル、およびフォームファクタを低減し、その一方で、所望の機能性を依然として保つ。例えば、ユーザは、肩の上の方が、頭の上で耐えるであろうよりも重い重量負荷に耐え得るため、ネックバンド2205は、さもなければアイウェアデバイス上に含まれるであろう構成要素がネックバンド2205内に含まれることを可能にし得る。ネックバンド2205はまた、熱を周囲環境に拡散および放散させる、より大きい表面積を有し得る。それゆえ、ネックバンド2205は、さもなければ独立型アイウェアデバイス上で可能になり得たよりも高い電池および計算能力を可能にし得る。ネックバンド2205において支えられる重量は、アイウェアデバイス2202において支えられる重量よりもユーザに対する侵襲性が低くなり得るため、ユーザは、ユーザが重い独立型アイウェアデバイスを着用することに耐えるであろうよりも、より長時間にわたって、より軽いアイウェアデバイスを着用し、ペアリングされたデバイスを携行または着用することに耐え得、これにより、ユーザが人工現実環境を自分の日常活動により完全に組み込むことを可能にする。
【0242】
ネックバンド2205は、アイウェアデバイス2202と、および/または他のデバイスに通信可能に結合され得る。これらの他のデバイスは特定の機能(例えば、追跡、位置特定、深度マッピング、処理、記憶等)を拡張現実システム2200に提供し得る。図22の実施形態では、ネックバンド2205は、マイクロフォンアレイの一部である(または場合によっては、それら独自のマイクロフォン部分アレイを形成する)2つの音響トランスデューサ(例えば、2220(I)および2220(J))を含み得る。ネックバンド2205はまた、コントローラ2225および電源2235を含み得る。
【0243】
ネックバンド2205の音響トランスデューサ2220(I)および2220(J)は、音を検出し、検出された音を電子フォーマット(アナログまたはデジタル)に転換するように構成され得る。図22の実施形態では、音響トランスデューサ2220(I)および2220(J)はネックバンド2205上に位置付けられ得、これにより、ネックバンド音響トランスデューサ2220(I)および2220(J)と、アイウェアデバイス2202上に位置付けられた他の音響トランスデューサ2220との間の距離を増大させる。場合によっては、マイクロフォンアレイの音響トランスデューサ2220の間の距離を増大させることは、マイクロフォンアレイを介して遂行されるビームフォーミングの精度を改善し得る。例えば、音が音響トランスデューサ2220(C)および2220(D)によって検出され、音響トランスデューサ2220(C)および2220(D)の間の距離が、例えば、音響トランスデューサ2220(D)および2220(E)の間の距離よりも大きい場合には、検出された音の決定された音源の位置は、音が音響トランスデューサ2220(D)および2220(E)によって検出された場合よりも正確になり得る。
【0244】
ネックバンド2205のコントローラ2225は、2205および/または拡張現実システム2200上のセンサによって生成された情報を処理し得る。例えば、コントローラ2225は、マイクロフォンアレイによって検出された音を記述するマイクロフォンアレイからの情報を処理し得る。検出された音ごとに、コントローラ2225は到来方向(DOA:direction-of-arrival)推定を遂行し、検出された音がマイクロフォンアレイに到来した方向を推定し得る。マイクロフォンアレイが音を検出するのに従い、コントローラ2225は音声データセットを情報で埋め得る。拡張現実システム2200が慣性計測装置を含む実施形態では、コントローラ2225はアイウェアデバイス2202上に配置されたIMUから全ての慣性および空間的計算値を計算し得る。コネクタが、拡張現実システム2200とネックバンド2205との間、および拡張現実システム2200とコントローラ2225との間で情報を伝え得る。情報は、光データ、電気的データ、無線データの形式、または任意の他の伝送可能なデータ形式のものであり得る。拡張現実システム2200によって生成された情報の処理をネックバンド2205へ移動させることは、アイウェアデバイス2202における重量および熱を低減し得、アイウェアデバイス2202をユーザにとってより快適にする。
【0245】
ネックバンド2205内の電源2235は電力をアイウェアデバイス2202に、および/またはネックバンド2205に提供し得る。電源2235は、限定するものではないが、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、一次リチウム電池、アルカリ電池、または任意の他の形態の電力貯蔵機構を含み得る。場合によっては、電源2235は有線電源であり得る。電源2235をアイウェアデバイス2202上の代わりにネックバンド2205上に含むことは、電源2235によって生成される重量および熱をよりうまく分散させることを助け得る。
【0246】
上述されたように、一部の人工現実システムは、人工現実感を実際の現実感と融合する代わりに、現実世界のユーザの感覚知覚のうちの1つまたは複数を仮想体験と実質的に置換し得る。この種のシステムの一例は、ユーザの視野を大部分または完全に覆う、図23における仮想現実システム2300などの、頭部着用型表示システムである。仮想現実システム2300は、ユーザの頭部の周りに適合するように形状設定された前方硬質本体2302およびバンド2304を含み得る。仮想現実システム2300はまた、出力音声トランスデューサ2306(A)および2306(B)を含み得る。さらに、図23には示されていないが、前方硬質本体2302は、1つもしくは複数の電子ディスプレイ、1つもしくは複数の慣性計測装置(IMU)、1つもしくは複数の追跡用放射体もしくは検出器、および/または人工現実体験を生み出すための任意の他の好適なデバイスもしくはシステムを含む、1つまたは複数の電子要素を含み得る。
【0247】
人工現実システムは様々な種類の視覚フィードバック機構を含み得る。例えば、拡張現実システム2300および/または仮想現実システム2300内の表示デバイスは、1つまたは複数の液晶ディスプレイs(LCD:liquid crystal display)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機LED(OLED:organic LED)ディスプレイ、および/または任意の他の好適な種類の表示スクリーンを含み得る。人工現実システムは両方の眼のための単一の表示スクリーンを含み得るか、または可変焦点調整のため、もしくはユーザの屈折異常を補正するためのさらなる柔軟性を可能にし得る、眼ごとの表示スクリーンを提供し得る。一部の人工現実システムはまた、ユーザが表示スクリーンを観視し得る1つまたは複数のレンズ(例えば、従来の凹または凸レンズ、フレネルレンズ、調整可能流体レンズ等)を有する光学サブシステムを含み得る。
【0248】
表示スクリーンを用いることに加えて、またはその代わりに、一部の人工現実システムは1つまたは複数の投影システムを含み得る。例えば、拡張現実システム2200および/または仮想現実システム2300内の表示デバイスは、光を(例えば、導波路を用いて)、周囲光が通過することを可能にするクリアコンバイナレンズなどの、表示デバイス内へ投影するマイクロLEDプロジェクタを含み得る。表示デバイスは、投影された光をユーザの瞳に向けて屈折させ得、ユーザが人工現実コンテンツおよび現実世界の両方を同時に観視することを可能にし得る。人工現実システムはまた、任意の他の好適な種類または形態の画像投影システムを有するように構成され得る。
【0249】
人工現実システムはまた、様々な種類のコンピュータビジョン構成要素およびサブシステムを含み得る。例えば、拡張現実システム2100、拡張現実システム2200、および/または仮想現実システム2300は、2次元(2D)もしくは3次元(3D)カメラ、飛行時間深度センサ、シングルビームもしくは掃引レーザ測距器、3D LiDARセンサ、および/または任意の他の好適な種類もしくは形態の光センサなどの、1つまたは複数の光センサを含み得る。人工現実システムは、これらのセンサのうちの1つまたは複数からのデータを、ユーザの位置を識別し、現実世界をマッピングし、ユーザに現実世界の周辺環境に関するコンテクストを提供し、および/または種々の他の機能を遂行するために処理し得る。
【0250】
人工現実システムはまた、1つまたは複数の入力および/または出力音声トランスデューサを含み得る。図21および図23に示される実施例では、出力音声トランスデューサ2108(A)、2108(B)、2306(A)、および2306(B)は、ボイスコイルスピーカ、リボンスピーカ、静電型スピーカ、圧電型スピーカ、骨伝導トランスデューサ、軟骨伝導トランスデューサ、および/または任意の他の好適な種類もしくは形態の音声トランスデューサを含み得る。同様に、入力音声トランスデューサ2110は、コンデンサマイクロフォン、ダイナミックマイクロフォン、リボンマイクロフォン、および/または任意の他の種類もしくは形態の入力トランスデューサを含み得る。実施形態によっては、単一のトランスデューサが音声入力および音声出力の両方のために用いられ得る。
【0251】
図21図23には示されていないが、人工現実システムは、ヘッドウェア、グローブ、ボディスーツ、ハンドヘルドコントローラ、環境デバイス(例えば、椅子、フロアマット等)、および/または任意の他の種類のデバイスもしくはシステム内に組み込まれ得る、力覚(すなわち、触覚)フィードバックシステムを含み得る。触覚フィードバックシステムは、振動、力、牽引、質感、および/または温度を含む、様々な種類の皮膚フィードバックを提供し得る。触覚フィードバックシステムはまた、動きおよびコンプライアンスなどの、様々な種類の運動感覚フィードバックも提供し得る。触覚フィードバックは、モータ、圧電アクチュエータ、流体システム、および/または種々の他の種類のフィードバック機構を用いて実施され得る。触覚フィードバックシステムは、他の人工現実デバイスと独立して、他の人工現実デバイス内で、および/または他の人工現実デバイスと連動して実施され得る。
【0252】
触覚感覚、可聴コンテンツ、および/もしくは視覚コンテンツを提供することによって、人工現実システムは完全な仮想体験を生み出すか、または種々のコンテクストおよび環境内におけるユーザの現実世界の体験を向上させ得る。例えば、人工現実システムは特定の環境内におけるユーザの知覚、記憶、または認知を支援または拡張し得る。一部のシステムは現実世界内における他の人々とのユーザの相互作用を向上させ得るか、または仮想世界内における他の人々とのより没入感のある相互作用を可能にし得る。人工現実システムはまた、教育目的のために(例えば、学校、病院、政府組織、軍隊組織、企業等における教授もしくは訓練のために)、娯楽目的(例えば、ビデオゲームをする、音楽を聴く、ビデオコンテンツを見る等のために)、ならびに/またはアクセシビリティ目的のために(例えば、補聴器、補視器等として)用いられ得る。本明細書において開示される実施形態は、これらのコンテクストおよび環境のうちの1つもしくは複数における、ならびに/または他のコンテクストおよび環境におけるユーザの人工現実体験を可能にする、または向上させ得る。
【0253】
上述されたように、本明細書において説明される人工現実システムは、より説得力のある人工現実体験を提供するために種々の他の種類のデバイスと共に用いられ得る。これらのデバイスは、触覚フィードバックを提供し、および/または環境とのユーザの相互作用に関する触覚情報を収集するトランスデューサを用いた触覚インターフェースであり得る。本明細書において開示される人工現実システムは、力覚フィードバック(例えば、皮膚フィードバックとも称され得る、ユーザが皮膚内の神経を介して検出するフィードバック)、ならびに/または運動感覚フィードバック(例えば、ユーザが、筋肉、関節、および/もしくは腱内に配置された受容体を介して検出するフィードバック)を含む、様々な種類の触覚情報を検出する、または伝える様々な種類の触覚インターフェースを含み得る。
【0254】
触覚フィードバックは、ユーザの環境(例えば、椅子、テーブル、床等)内に位置付けられたインターフェース、および/またはユーザによって着用もしくは携行され得る物品(例えば、グローブ、リストバンド等)上のインターフェースによって提供され得る。一例として、図24は、ウェアラブルグローブ(触覚デバイス2410)およびリストバンド(触覚デバイス2420)の形態の振動力覚システム2400を例示する。触覚デバイス2410および触覚デバイス2420は、ユーザの手および手首に接触するような位置付けのためにそれぞれ形状設定され、構成された可撓性ウェアラブルテキスタイル材料2430を含むウェアラブルデバイスの例として示されている。本開示はまた、指、腕、頭、胴、足、または脚などの、他の人間の身体部位に接触するような位置付けのために形状設定され、構成され得る振動力覚システムも含む。例として、限定ではなく、本開示の様々な実施形態に係る振動力覚システムはまた、他の可能性の中でもとりわけ、グローブ、ヘッドバンド、アームバンド、袖、被り物、靴下、シャツ、またはズボンの形態のものであり得る。実施例によっては、用語「テキスタイル」は、織布、不織布、皮革、布、可撓性ポリマー材料、複合材料等を含む、任意の可撓性のウェアラブル材料を含み得る。
【0255】
1つまたは複数の振動力覚デバイス2440は、振動力覚システム2400のテキスタイル材料2430内に形成された1つまたは複数の対応するポケット内に少なくとも部分的に位置付けられ得る。振動力覚デバイス2440は、振動感覚(例えば、触覚フィードバック)を振動力覚システム2400のユーザに提供するための位置内に位置付けられ得る。例えば、振動力覚デバイス2440は、図24に示されるように、ユーザの指、親指、または手首に接触するように位置付けられ得る。振動力覚デバイス2440は、実施例によっては、ユーザの対応する身体部位に順応するか、またはそれと共に曲がるよう十分に可撓性を有し得る。
【0256】
電圧を振動力覚デバイス2440にその活動化のために印加するための電源2450(例えば、電池)が、導電配線2452を介するなどして、振動力覚デバイス2440に電気結合され得る。実施例によっては、振動力覚デバイス2440の各々は個々の活動化のために電源2450に独立して電気結合され得る。実施形態によっては、プロセッサ2460が電源2450に動作可能に結合されており、振動力覚デバイス2440の活動化を制御するように構成され(例えば、プログラムされ)得る。
【0257】
振動力覚システム2400は種々の仕方で実施され得る。実施例によっては、振動力覚システム2400は、他のデバイスおよびシステムと独立した動作のための不可欠のサブシステムおよび構成要素を有する独立型システムであり得る。別の例として、振動力覚システム2400は別のデバイスまたはシステム2470との相互作用のために構成され得る。例えば、振動力覚システム2400は、実施例によっては、信号を受信し、および/または他のデバイスもしくはシステム2470へ信号を送信するための通信インターフェース2480を含み得る。他のデバイスまたはシステム2470は、モバイルデバイス、ゲーミングコンソール、人工現実(例えば、仮想現実、拡張現実、複合現実)デバイス、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、ネットワークデバイス(例えば、モデム、ルータ等)、ハンドヘルドコントローラ等であり得る。通信インターフェース2480は、無線(例えば、Wi-Fi、Bluetooth、セルラー、ラジオ等)リンクまたは有線リンクを介した振動力覚システム2400と他のデバイスまたはシステム2470との間の通信を可能にし得る。存在する場合には、通信インターフェース2480は、振動力覚デバイス2440のうちの1つまたは複数を活動化または非活動化するための信号をプロセッサ2460に提供するなどするために、プロセッサ2460と通信し得る。
【0258】
振動力覚システム2400は、タッチ感知パッド2490、圧力センサ、動きセンサ、位置センサ、照光要素、および/またはユーザインターフェース要素(例えば、オン/オフボタン、振動制御要素等)などの、他のサブシステムおよび構成要素を任意選択的に含み得る。使用中、振動力覚デバイス2440は、ユーザインターフェース要素とのユーザの相互作用、動きまたは位置センサからの信号、タッチ感知パッド2490からの信号、圧力センサからの信号、他のデバイスまたはシステム2470からの信号等に応じるなど、種々の異なる理由で活動化されるように構成され得る。
【0259】
図24において、電源2450、プロセッサ2460、および通信インターフェース2480は、触覚デバイス2420内に位置付けられているように例示されているが、本開示はそのように限定されない。例えば、電源2450、プロセッサ2460、または通信インターフェース2480のうちの1つまたは複数は、触覚デバイス2410内、または別のウェアラブルテキスタイル内に位置付けられ得る。
【0260】
図24に示され、それに関連して説明されるものなどの、触覚ウェアラブルは様々な種類の人工現実システムおよび環境において実施され得る。図25は、1つのヘッドマウンテッド仮想現実ディスプレイおよび2つの触覚デバイス(すなわち、グローブ)を含む例示的な人工現実環境2500を示し、他の実施形態では、任意の数および/または組み合わせのこれらの構成要素および他の構成要素が人工現実システム内に含まれ得る。例えば、実施形態によっては、関連付けられた触覚デバイスを各々有する複数のヘッドマウンテッドディスプレイが存在し得、各ヘッドマウンテッドディスプレイおよび各触覚デバイスは、同じコンソール、ポータブルコンピューティングデバイス、または他のコンピューティングシステムと通信する。
【0261】
ヘッドマウンテッドディスプレイ2502は、概して、図23における仮想現実システム2300などの、任意の種類または形態の仮想現実システムを表す。触覚デバイス2504は、概して、自分が仮想オブジェクトと物理的に関わり合っているという知覚をユーザに与えるための触覚フィードバックをユーザに提供し、人工現実システムのユーザによって着用される、任意の種類または形態のウェアラブルデバイスを表す。実施形態によっては、触覚デバイス2504は、振動、動き、および/または力をユーザに印加することによって触覚フィードバックを提供し得る。例えば、触覚デバイス2504はユーザの運動を制限または増強し得る。具体例を与えると、触覚デバイス2504は、ユーザの手が前方へ運動するのを制限し得、これにより、ユーザは、自分の手が仮想的な壁と物理的に接触したという知覚を有する。この具体例では、触覚デバイス内の1つまたは複数のアクチュエータが、流体を触覚デバイスの膨張式ブラダ内へポンプで送り込むことによって物理運動の抑制を達成し得る。実施例によっては、また、ユーザが触覚デバイス2504を用いてアクション要求をコンソールへ送信してもよい。アクション要求の例としては、限定するものではないが、アプリケーションを開始する、および/もしくはアプリケーションを終了するための要求、ならびに/またはアプリケーション内で特定のアクションを遂行するための要求が挙げられる。
【0262】
触覚インターフェースは、図25に示されるように、仮想現実システムと共に用いられ得るが、触覚インターフェースはまた、図26に示されるように、拡張現実システムと共に用いられてもよい。図26は、ユーザ2610が拡張現実システム2600と相互作用する斜視図である。本実施例では、ユーザ2610は、1つまたは複数のディスプレイ2622を有し、触覚デバイス2630とペアリングされた1組の拡張現実眼鏡2620を着用し得る。触覚デバイス2630は、複数のバンド要素2632、およびバンド要素2632を互いに接続する緊張機構2634を含むリストバンドであり得る。
【0263】
バンド要素2632のうちの1つまたは複数は、触覚フィードバックを提供するのに適した任意の種類または形態のアクチュエータを含み得る。例えば、バンド要素2632のうちの1つまたは複数は、振動、力、牽引、質感、および/または温度を含む、様々な種類の皮膚フィードバックのうちの1つまたは複数を提供するように構成され得る。このようなフィードバックを提供するために、バンド要素2632は様々な種類のアクチュエータのうちの1つまたは複数を含み得る。一例では、バンド要素2632の各々は、様々な種類の触覚感覚のうちの1つまたは複数をユーザに提供するために、一致して、または独立して振動するように構成された振動触覚器(例えば、振動力覚アクチュエータ)を含み得る。代替的に、単一のバンド要素またはバンド要素の部分セットのみが振動触覚器を含んでもよい。
【0264】
触覚デバイス2410、2420、2504、および2630は任意の好適な数および/または種類の触覚トランスデューサ、センサ、および/またはフィードバック機構を含み得る。例えば、触覚デバイス2410、2420、2504、および2630は、1つまたは複数の機械的トランスデューサ、圧電トランスデューサ、および/または流体トランスデューサを含み得る。触覚デバイス2410、2420、2504、および2630はまた、ユーザの人工現実体験を向上させるよう、協力して、または独立して機能する異なる種類および形態のトランスデューサの様々な組み合わせを含み得る。一例では、触覚デバイス2630のバンド要素2632の各々は、様々な種類の触覚感覚のうちの1つまたは複数をユーザに提供するために、一致して、または独立して振動するように構成された振動触覚器(例えば、振動力覚アクチュエータ)を含み得る。
【0265】
以上において詳述されたように、本明細書において説明および/または例示されるコンピューティングデバイスおよびシステムは、本明細書において説明されるモジュール内に包含されるものなどの、コンピュータ可読命令を実行する能力を有する任意の種類または形態のコンピューティングデバイスまたはシステムを広範に表す。それらの最も基本的な構成では、これらのコンピューティングデバイスは少なくとも1つのメモリデバイスおよび少なくとも1つの物理プロセッサを各々含み得る。
【0266】
実施例によっては、用語「メモリデバイス」は、概して、データおよび/またはコンピュータ可読命令を記憶する能力を有する任意の種類または形態の揮発性または不揮発性記憶デバイスまたは媒体を指す。一実施例では、メモリデバイスは、本明細書において説明されるモジュールのうちの1つまたは複数を記憶、ロード、および/または維持し得る。メモリデバイスの例としては、限定するものではないが、ランダムアクセスメモリ(RAM:Random Access Memory)、リードオンリーメモリ(ROM:Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ(HDD:Hard Disk Drive)、ソリッドステートドライブ(SSD:Solid-State Drive)、光ディスクドライブ、キャッシュ、これらのうちの1つもしくは複数の変形または組み合わせ、あるいは任意の他の好適な記憶メモリが挙げられる。
【0267】
実施例によっては、用語「物理プロセッサ」は、概して、コンピュータ可読命令を解釈し、および/または実行する能力を有する任意の種類または形態のハードウェア実施処理ユニットを指す。一実施例では、物理プロセッサは、上述のメモリデバイス内に記憶された1つまたは複数のモジュールにアクセスし、および/またはモジュールを変更し得る。物理プロセッサの例としては、限定するものではないが、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、ソフトコアプロセッサを実施するフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field-Programmable Gate Array)、特定用途向け集積回路(ASIC:Application-Specific Integrated Circuit)、これらのうちの1つもしくは複数の部分、これらのうちの1つもしくは複数の変形または組み合わせ、あるいは任意の他の好適な物理プロセッサが挙げられる。
【0268】
別個の要素として例示されているが、本明細書において説明および/または例示されるモジュールは単一のモジュールまたはアプリケーションのうちの部分を表し得る。加えて、特定の実施形態では、これらのモジュールのうちの1つまたは複数は、コンピューティングデバイスによって実行されたときに、コンピューティングデバイスに1つまたは複数のタスクを遂行させ得る1つまたは複数のソフトウェアアプリケーションまたはプログラムを表し得る。例えば、本明細書において説明および/または例示されるモジュールのうちの1つまたは複数は、本明細書において説明および/または例示されるコンピューティングデバイスまたはシステムのうちの1つまたは複数で記憶されて実行されるように構成されたモジュールを表し得る。これらのモジュールのうちの1つまたは複数はまた、1つまたは複数のタスクを遂行するように構成された1つまたは複数の専用コンピュータのうちの全てまたは部分を表し得る。
【0269】
加えて、本明細書において説明されるモジュールのうちの1つまたは複数は、データ、物理デバイス、および/または物理デバイスの表現を1つの形態から別のものに変換し得る。例えば、本明細書に記載されるモジュールのうちの1つまたは複数は、変換されるべきデータを受信し、データを変換し、機能を遂行するために変換の結果を出力し、機能を遂行するために変換の結果を用い、機能を遂行するために変換の結果を記憶し得る。加えて、または代替的に、本明細書に記載されるモジュールのうちの1つまたは複数は、コンピューティングデバイス上で実行し、データをコンピューティングデバイス上で記憶し、および/またはコンピューティングデバイスと他の仕方で相互作用することによって、プロセッサ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、および/または物理的コンピューティングデバイスの任意の他の部分を1つの形態から別のものに変換し得る。
【0270】
実施形態によっては、用語「コンピュータ可読媒体」は、概して、コンピュータ可読命令を記憶または運搬する能力を有する任意の形態のデバイス、担体、または媒体を指す。コンピュータ可読媒体の例としては、限定するものではないが、搬送波などの、伝送型媒体、ならびに磁気記憶媒体(例えば、ハードディスクドライブ、テープドライブ、およびフロッピーディスク)、光記憶媒体(例えば、コンパクトディスク(CD:Compact Disk)、デジタルビデオディスク(DVD:Digital Video Disk)、およびブルーレイディスク)、電子記憶媒体(例えば、ソリッドステートドライブおよびフラッシュ媒体)、および他の配布システムなどの、非一時型媒体が挙げられる。
【0271】
本明細書において説明および/または例示されるプロセスパラメータ、およびステップのシーケンスは単なる例として与えられているにすぎず、所望に応じて変更することができる。例えば、本明細書において例示および/または説明されるステップは特定の順序で示されるか、または議論される場合があるが、これらのステップは、必ずしも例示または議論される順序で遂行される必要はない。本明細書において説明および/または例示される様々な例示的な方法はまた、本明細書において説明または例示されるステップのうちの1つまたは複数を省略するか、または、開示されるものに加えて追加のステップを含んでもよい。
【0272】
上述の説明は、他の当業者が、本明細書において開示される例示的な実施形態の様々な態様を最もうまく利用することを可能にするために提供された。この例示的な説明は、網羅的であることも、開示されたいかなる厳密な形に限定されることも意図されていない。特許請求の範囲から逸脱することなく多くの変更および変形が可能である。本明細書において開示される実施形態は、全ての点において、例示と考えられるべきであり、限定と考えられるべきではない。本開示の範囲の決定においては、添付の特許請求の範囲およびその均等物が参照され得る。
【0273】
特に記載しない限り、用語「~に接続される(connected to)」および「~に結合される(coupled to)」(ならびにそれらの派生形)は、本明細書および特許請求の範囲で使用するとき、直接的な、および間接的な(すなわち、他の要素または構成要素を介した)接続の両方を許すものとして解釈されるべきである。加えて、用語「a」または「an」は、本明細書および特許請求の範囲で使用するとき、「~のうちの少なくとも1つ(at least one of)」を意味するものとして解釈されるべきである。最後に、使用しやすくするために、用語「含む(including)」および「有する(having)」(ならびにそれらの派生形)は、本明細書および特許請求の範囲で使用するとき、単語「備える(comprising)」と交換可能であり、それと同じ意味を有する。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
【国際調査報告】