(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-23
(54)【発明の名称】車輪軸受シール装置および車両
(51)【国際特許分類】
F16C 33/78 20060101AFI20221216BHJP
F16C 35/07 20060101ALI20221216BHJP
F16C 19/36 20060101ALI20221216BHJP
F16J 15/3232 20160101ALI20221216BHJP
F16J 15/3276 20160101ALI20221216BHJP
【FI】
F16C33/78 C
F16C35/07
F16C19/36
F16J15/3232 201
F16J15/3276
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521730
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2019077854
(87)【国際公開番号】W WO2021073722
(87)【国際公開日】2021-04-22
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】サンドラセカラン,ラマチャンドラン
【テーマコード(参考)】
3J006
3J043
3J117
3J216
3J701
【Fターム(参考)】
3J006AE12
3J006AE23
3J006AE28
3J006AE30
3J006AE34
3J006AE41
3J006AE42
3J006CA01
3J043AA16
3J043CA02
3J043CB13
3J043CB20
3J043FB20
3J043HA01
3J117AA02
3J117DA01
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3J117DB03
3J216AA03
3J216AA14
3J216AB03
3J216BA30
3J216CA05
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3J216CC03
3J216CC14
3J216CC25
3J216CC33
3J216CC41
3J701AA16
3J701AA25
3J701AA43
3J701AA54
3J701AA62
3J701BA73
3J701FA13
3J701GA03
(57)【要約】
車両の車輪軸受用の車輪軸受シール装置が提供され、車両の中央長手軸線から離れる方に面するように意図されたアウトボード周縁部と車両の中央長手軸線の方に面するように意図されたインボード周縁部とを有し、第1の案内溝形成部と第1の案内溝形成部を囲む第2の案内溝形成部とを有するアウトボード軸受と、第1の案内溝形成部と反対部との間に配置されるアウトボードシールと、第1の案内溝形成部のアウトボード周縁部に対して押圧される安全ワッシャと、を含み、アウトボードシールは、安全ワッシャに対して押圧されて直接接触するシール部分を含む。そういった車輪軸受シール装置を含む車両も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)用の車輪軸受シール装置(20、40、50)であって、
前記車両の中央長手軸線から離れる方に面するように意図されたアウトボード周縁部(24)と、前記車両の前記中央長手軸線の方に面するように意図されたインボード周縁部(26)と、を有するアウトボード軸受(20)であって、前記アウトボード軸受が第1の案内溝形成部(30)と前記第1の案内溝形成部を囲む第2の案内溝形成部(32)とを有する、アウトボード軸受(20)と、
前記第1の案内溝形成部(30)および反対部(42)間に配置されるアウトボードシール(40)と、
前記第1の案内溝形成部の前記アウトボード周縁部に対して押圧される安全ワッシャ(50)と、
を含み、
前記アウトボードシールは、前記安全ワッシャに対して押圧されて直接接触するシール部分(54)を含むことを特徴とする、車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項2】
前記第1の案内溝形成部(30)は、
前記インボード周縁部(26)に隣接して、ころ要素(38)を収容する案内溝部分(34)と、
前記アウトボード周縁部(24)に隣接して、前記アウトボードシール(40)を収容する保持部分(44)と、を含む、請求項1に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項3】
前記アウトボードシール(40)は、前記シール部分(54)を支持する支持部分(56)を含み、
前記シール部分(54)は、前記支持部分(56)から離れる方に突出するリップ(64)を含み、
前記リップは、前記安全ワッシャ(50)とシール接触する、請求項1または2に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項4】
前記車輪軸受シール装置は、幾何学的中心軸線を有し、
前記リップ(64)は、前記幾何学的中心軸線から離れる方にラジアル方向に延びる、請求項3に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項5】
前記リップ(64)は、U形状の断面を有し、
前記U形状の一方の脚部は、前記安全ワッシャ(50)にシール接触し、
前記U形状の他方の脚部は、前記支持部分(56)に取り付けられる、請求項3または4に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項6】
前記安全ワッシャ(50)は、前記第1の案内溝形成部(30)に回転不能に接触する、請求項1から5のいずれか1項に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項7】
前記アウトボードシール(40)は、前記安全ワッシャ(50)に回転自在に接触する、請求項1から6のいずれか1項に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項8】
前記シール部分(54)は、第1のシール部分(54)であり、
前記アウトボードシール(40)は、前記第1の案内溝形成部(30)に対してシール押圧される第2のシール部分(58)を更に含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項9】
前記第1のシール部分(54)は、前記第2のシール部分(58)とは別々の実体である、請求項8に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項10】
前記第1のシール部分(54)および前記第2のシール部分(58)は、相互に離隔される、請求項9に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項11】
前記アウトボードシールは、前記反対部(42)に対してシール押圧される第3のシール部分(62)を更に含む、請求項8から10のいずれか1項に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項12】
前記第1のシール部分(54)は、前記第3のシール部分(62)とは別々の実体である、請求項11に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項13】
前記第1のシール部分(54)および前記第3のシール部分(62)は、相互に離隔される、請求項12に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)を含む車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の車輪軸受シール装置に関する。また、本発明は、このような車輪軸受シール装置を含む車両に関する。
【0002】
本発明は、トラック、バスおよび建設機械などの重作業用の車両に適用できる。本発明は、トラックに関して説明されるであろうが、本発明は、この特定の車両に限定されず、乗用車などの他の車両に同じく使用できる。
【背景技術】
【0003】
トラックなどの車両の車輪は、それぞれの車輪端部ハブに通常接続される。次に、車輪端部ハブは回転自在な車輪車軸に接続され、それによって車輪車軸の回転が車輪の回転に伝えられる。車輪端部ハブは、一般に車輪軸受に同軸的に取り付けられ、車輪軸受は車輪車軸のまわりに同軸的に取り付けられている。各車輪軸受は、内側リングおよび外側リングを有し、それらの間には、軸受要素が設けられ、内側リングおよび外側リング間の相対回転を可能にする。車輪端部ハブは、前記リングの一方、典型的には外側リング、に固定式に接続され、それと共に回転する。内側リングおよび外側リング間の相対回転を容易にする目的で、潤滑剤は軸受に提供される。潤滑剤が周囲環境に漏れるのを防止するために、通常はシールが設けられる。
【0004】
車輪軸受は、好適には、回転する車輪車軸と同軸であるスピンドルのまわりに配置され得る。ナットは、軸受を定位置に固定するために、軸受に対して安全ワッシャを押圧するように締め付けられる。起き得る課題は、車軸オイルが車輪端部に蓄積するかもしれないことであり、その後に、車輪軸受のアウトボード側で軸受要素の中にオイルが進入するリスクが存在する。車輪軸受はアウトボードシールを備えているが、溜まった油は、安全ワッシャの上やまわりに飛散し、アウトボードシールを過ぎて軸受要素の中へ進入することさえある。そういったオイルの進入は、車輪軸受を損傷する可能性がある。特に、オイルの進入は、軸受内のグリスを汚染する。オイルがグリスと共にインボードシールから軸受の外に漏れてしまい、そのため、軸受が潤滑不足になって、故障する可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、先行技術の欠点を緩和することである。この目的および次で明らかになるであろう他の目的は、添付の独立請求項に規定されたような車輪軸受シール装置および車両によって達成される。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、目的は、車両の車輪軸受用の車輪軸受シール装置によって達成され、
車両の中央長手軸線から離れる方に面するように意図されたアウトボード周縁部と、車両の中央長手軸線の方に面するように意図されたインボード周縁部と、を有するアウトボード軸受であって、アウトボード軸受が第1の案内溝形成部(a first race-forming part)と第1の案内溝形成部を囲む第2の案内溝形成部(a second race-forming part)とを含む、アウトボード軸受と、
第1の案内溝形成部および反対部間に配置されるアウトボードシールと、
第1の案内溝形成部のアウトボード周縁部に対して押圧される安全ワッシャと、
を含み、
アウトボードシールは、安全ワッシャに対して押圧されて直接接触するシール部分を含む。
【0007】
安全ワッシャに対して押圧されて直接接触するシール部分を設けることによって、アウトボード軸受の中へのオイルの進入のリスクは、低減される。特に、安全ワッシャを通り抜けてアウトボード軸受まで到達する、オイルの飛散のリスクが、低減される。例えば、第1の案内溝形成部に対してシールするように意図される別のシール部分も設けられる場合、係る別のシール部分は、オイルの飛散にさらされることが少なくなるため、アウトボード軸受の中へのオイルの進入を防ぐ能力を延ばすことができるであろう。
【0008】
上述した車両の長手軸線は、車両のロール軸と呼ばれることもある。念のために記すと、他の車両方向は、横(またはピッチ)軸および垂直(またはヨー)軸に沿っている。その上、幾何学的中心軸線は、車輪軸受シール装置のために規定される。車両が直線的に(または非旋回車輪のために)進むとき、車輪軸受シール装置の幾何学的中心軸線は、車両の長手軸線に垂直(および車両の横軸に平行)になるであろう。したがって、理解されるべきは、用語「アウトボード(outboard)」および「インボード(inboard)」が幾何学的中心軸線に沿って分離される構成要素を規定できるということである。例えば、上述したアウトボード周縁部およびインボード周縁部は、幾何学的中心軸線に沿って離隔される。
【0009】
安全ワッシャは、様々な様式で第1の案内溝形成部のアウトボード周縁部に対して押圧される。少なくとも幾つかの例示的な実施形態では、安全ワッシャは、ハブナットと第1の案内溝形成部のアウトボード周縁部との間に配置され、ハブナットが締め付けられることで、安全ワッシャが前記アウトボード周縁部に対して押圧される。
【0010】
上述したように、アウトボードシールは、第1の案内溝形成部と反対部との間に配置される。反対部は、第1の案内溝形成部に通常面するであろうし、好適には、アウトボードシールは、両部分に堅固に接触する。例えば、それは、反対部に固定取付けられる。アウトボード軸受に特定の設計および構成に応じて、反対部の異なった代替の実施形態が存在する。少なくとも幾つかの例示的な実施形態によれば、反対部は、車輪端部ハブの内面でもよい。したがって、アウトボードシールは、第1の案内溝形成部から車輪端部ハブの内面まで延びるように配置される。したがって、少なくとも幾つかの例示的な実施形態では、車輪端部ハブは、車輪軸受シール装置の一部を形成する。他の例示的な実施形態では、反対部は、第2の案内溝形成部であってもよい。したがって、アウトボードシールは、第1の案内溝形成部から第2の案内溝形成部まで延びるように配置される。
【0011】
第1の案内溝形成部は、アウトボード軸受の内側リングであってもよいし、或いは、アウトボード軸受の内側リングを含んでもよい。同様に、第2の案内溝形成部は、アウトボード軸受の外側リングであってもよいし、或いは、アウトボード軸受の外側リングを含んでもよい。
【0012】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、第1の案内溝形成部は、
インボード周縁部に隣接して、ころ要素を収容する案内溝部分と、
アウトボード周縁部に隣接して、アウトボードシールを収容する保持部分と、
を含む。
案内溝部分および保持部分の双方を有することによって、2重の機能性は、それぞれの機能性について別々の構成要素を有する代わりに、1つの構成要素について達成される。
少なくとも幾つかの例示的な実施形態では、第2の案内溝形成部は、同じく、
インボード周縁部に隣接して、ころ要素を収容する案内溝部分と、
アウトボード周縁部に隣接して、アウトボードシールを収容する保持部分と、
を含む。
しかしながら、他の例示的な実施形態では、第2の案内溝形成部分は、案内溝部分だけを含み、その場合に、車輪端部ハブの内面は、アウトボードシールを収容する保持部分を提供し得る。
【0013】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、アウトボードシールは、シール部分を支持する支持部分を含み、シール部分は、支持部分から離れる方に突出するリップを含み、リップは、安全ワッシャとシール接触する。リップ付きシール部が突出する、支持部を有することで、堅固なシールが得られる。
【0014】
上述したように、車輪軸受シール装置は、幾何学的中心軸線を有することができる。これは、少なくとも1つの例示的な実施形態において反映されており、それによれば、車輪軸受シール装置は、幾何学的中心軸線を有し、前記リップは、幾何学的中心軸線から離れる方にラジアル方向に延びる。これは利点であり、その理由は、オイルの飛散が、通常、安全ワッシャの外側の周縁部まわりに、すなわちラジアル方向外方の位置に来て、第1の案内溝形成部に沿って通行することによってアウトボード軸受内へ侵入し得るからである。ラジアル方向外方に延びるリップは、ラジアル方向内方に落ちるオイルの飛散に対してより高い抵抗度を提供する。
【0015】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、リップは、U形状の断面を有し、U形状の一方の脚部は、安全ワッシャにシール接触し、U形状の他方の脚部は、支持部分に取り付けられる。これは、頑丈なシールを提供し、そうでなければ劣等な飛散保護をもたらす可能性のあるリップがラジアル方向内方に曲がるのを困難にする。
【0016】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、安全ワッシャは、第1の案内溝形成部に回転不能に接触している。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、安全ワッシャは、幾何学的中心軸線に対して回転不能に、車輪軸受シール装置に取り付けられる。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、第1の案内溝形成部は、幾何学的中心軸線に対して回転不能に、車輪軸受シール装置に取り付けられる。他方では、第2の案内溝形成部および/またはアウトボードシールは、好適には、幾何学的中心軸線に対して回転自在に取り付けられて、好適には、車輪端部ハブと共に回転してもよい。
【0017】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、アウトボードシールは、安全ワッシャに回転自在に接触する。例えば、安全ワッシャが幾何学的中心軸線に対して回転自在に固定され、アウトボードシールが幾何学的中心軸線に対して回転自在にされる場合、相対回転がアウトボードシールおよび安全ワッシャ間に存在するであろう。
【0018】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、前記シール部分は、第1のシール部分であり、アウトボードシールは、第1の案内溝形成部に対してシール押圧される第2のシール部分を更に含む。第2のシール部分は主たるシール部分になり得るが、こうして、飛散保護の第1のシール部分によるオイルの進入の抵抗における特別の支援を得るであろう。
【0019】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、第1のシール部分は、第2のシール部分とは別々の実体である。これは利点であり、その理由は、シール部分が別々の構成要素として、好適にはゴムで、容易に製造され、それぞれ支持部分に取り付けられ得るからである。支持部分は、例えば、金属シートで形成されまたは構成でき、シール部分は、支持部分に成形され得る。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、第1のシール部分および第2のシール部分は、相互に離隔される。
【0020】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、アウトボードシールは、前記反対部に対してシール押圧される第3のシール部分を更に含む。前述したように、少なくとも幾つかの例示的な実施形態では、車輪軸受シール装置は、車輪端部ハブを含む。係る実施形態では、前記反対部は、車輪端部ハブの内側面部分であり得、第3のシール部分は車両端部ハブの内側面部分に対して押圧される。他の例示的な実施形態では、反対部は、第2の案内溝形成部の保持部分にでき、第3のシール部分は、第2の案内溝形成部の前記保持部分に対してシール押圧されるであろう。
【0021】
少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、第1のシール部分は、第3のシール部分とは別々の実体である。少なくとも1つの例示的な実施形態によれば、第1のシール部分および第3のシール部分は、相互に離隔される。これは、アウトボードシールの単純な製造を可能にする。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、目的は、第1の態様に係る車輪軸受シール装置を含む車両によって達成される。
【0023】
第2の態様の利点は、第1の態様の利点に大部分が類似する。
【0024】
本発明の更なる利点および有利な特徴は、次の説明および従属請求項に開示される。
【0025】
添付図面を参照して、以下は、例として引用される本発明の実施形態のより詳細な説明に追従する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態に従って車両を例証する図である。
【
図2】本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態に従って車輪軸受シール装置の断面を例証し、前記断面の拡大詳細も例証する図である。
【
図4】本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態に係る車輪軸受シール装置の一部を形成する安全ワッシャを例証する図である。
【
図5】本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態に係る車輪軸受シール装置の一部を形成するアウトボードシールの部分的に断面した詳細斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態に従った車両1を例証する。車両1は、トラックの形式で例証されているが、バス、建設設備、トレーラまたは乗用自動車などの他のタイプの車両が本発明に従って提供されてもよい。
【0028】
トラック(車両)は、キャブ2を含み、そこで運転者は、車両1を操作し得る。車両1は、幾つかのロード車輪4を含み、ここでは2対の車輪として例証されているが、他の実施形態では、3対、4対またはそれより多くなどの種々の数の車輪が存在することもある。車輪4の回転は、車輪軸受(
図1に示さず)によって容易化される。車両1は、車輪軸受シール装置を含み、それにはそういった車輪軸受が含まれ、車輪軸受シール装置は、次において更に議論されるであろう。
【0029】
図2は、本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態に従って車輪軸受シール装置の断面を例証し、同じく前記断面の拡大詳細図を例証する。車輪軸受は、スピンドル10のまわりに同軸的に設けられ、それはそれで車輪車軸12を同軸的に囲む。車輪車軸12は、それのアウトボード端部14で、車輪端部ハブ16に、ボルト18などの好適な締結体によって固定される。車輪端部ハブ16は、ロード車輪(図示せず)を受容して保持するように構成される。車輪車軸12の回転は、こうして、車輪端部ハブ16およびロード車輪に伝えられ、それによって、このパーツ組立体が設けられた車両は、前進方向または後退方向に移動させられ得る。
【0030】
車輪軸受は、アウトボード軸受20およびインボード軸受22を含む。2つのうちの、それはインボード軸受22であり、車両の中央長手軸線に最近接して位置するように構成される。逆に2つのうちの、それはアウトボード軸受20であり、車輪車軸のアウトボード端部に最近接して位置するように構成される。
【0031】
アウトボード軸受は、車両の中央長手軸線から離れる方に面するように意図されたアウトボード周縁部24と、車両の中央長手軸線の方に面するように意図されたインボード周縁部26と、を有する。アウトボード軸受20は、第1の案内溝形成部30と、第1の案内溝形成部30を囲む第2の案内溝形成部32と、を含む。インボード周縁部26に隣接して、第1の案内溝形成部30は、案内溝部分34を有する。第2の案内溝形成部32は、同じく案内溝部分36を有する。ころ要素38は、第1および第2の案内溝形成部30、32の案内溝部分34、36間に収容される。ころ要素38は、各ころ要素用の個々の穴を有する保持器によって、好適には、周方向に相互分離されてもよい。第1および第2の案内溝形成部30、32の相対運動によって、要素38が非常に小さい転がり抵抗で転動する。第1の案内溝形成部30は、内側リングと呼ばれることもあり、第2の案内溝形成部32は、外側リングと呼ばれることがある。
【0032】
アウトボードシール40は、第1の案内溝形成部30と、この例証された例示的な実施形態では車輪端部ハブ16の内側面42である反対部と、の間に配置される。したがって、アウトボード周縁部24に隣接して、第1の案内溝形成部30は、アウトボードシール40を収容するために保持部分44(案内溝部分34に隣り合う)を有する。他の例示的な実施形態では、第2の案内溝形成部32は、それの案内溝部分36に隣り合う保持部分を構成することになるように、より大きく/より長く作製されてもよく、この場合、アウトボードシール40は、第1の案内溝形成部30と、第2の案内溝形成部32(即ち、第2の案内溝形成部は、上述した反対部になるであろう)と、の間に配置され得る。
【0033】
安全ワッシャ50は、第1の案内溝形成部30のアウトボード周縁部24に対して押圧される。例証された例示的な実施形態では、ハブナット52は、第1の案内溝形成部30のアウトボード周縁部24に対して安全ワッシャ50を押圧するためにスピンドル10まわりに締めこまれる。アウトボードシール40は、安全ワッシャ50に対して押圧されて直接接触するシール部分54を含む。このシール部分54は、ころ要素38への飛散誘導されるオイルの進入のリスクを低減する。
【0034】
こうして、車輪軸受シール装置は、アウトボード軸受20と、アウトボードシール40と、安全ワッシャ50と、本実施形態では同じく車輪端部ハブ16の内側面42と、を含む。他の例示的な実施形態では、アウトボードシール40が代わりにアウトボード軸受20の第1および第2の案内溝形成部30、32間に延在し得るので、車輪端部ハブ16の内側面42は車輪軸受シール装置に含まれない。
【0035】
例証された例示的な実施形態では、安全ワッシャ50に対して押圧されるシール部分54は、支持部分56によって支持される。支持部分56は、この例示的な実施形態では、
図5で最良に理解されるように、他のシール部分、より具体的には、2つの他のシール部分を同じく支持している。シール部分54は、安全ワッシャ50に対して押圧されており、第1のシール部分54と呼ばれることがある。
【0036】
第2のシール部分58は、第1の案内溝形成部30に対して(より具体的には、第1の案内溝形成部30の保持部分44に対して)シール押圧されるように構成される。
図5で理解されるように、金属リング60は、第1の案内溝形成部30に対して第2のシール部分58を締め付けるために設けられる。第1のシール部分54は、好適には、第2のシール部分58とは別々の実体であり、また、好適には、相互に個別に製造されてもよい。
図5に例証されたように、第1のシール部分54および第2のシール部分58は、好適には、相互に離隔されてもよい。
【0037】
第3のシール部分62(
図5参照)は、車輪端部ハブ16の内側面42にシール接触(または、他の実施形態では、第2の案内溝形成部32にシール接触)するように構成される。好適には、第1のシール部分54は、第3のシール部分62とは別々の実体であり、それらは、個別に製造される。
図5に例証されたように、第1のシール部分54および第3のシール部分62は、相互に離隔されてもよい。
【0038】
支持部分56は、好適には、金属シートであってもよく、他方、第1、第2、および第3のシール部分54、58、62は、好適には、ゴムで作製されてもよいが、他の材料の選択も可能である。
【0039】
図5で最良に理解されるように、第1のシール部分54は、支持部分56から離れる方に突出するリップ64を含んでもよく、リップ64は、安全ワッシャ50とシール接触するように構成される。車輪軸受シール装置は車輪車軸12の細長い延長部と一致する幾何学的中心軸線を有し、リップ64は幾何学的中心軸線からラジアル方向に離れる方に延びてもよい。リップ64は好適にはU形状の断面を有してもよく、U形状の一方の脚部は安全ワッシャにシール接触するように構成され、U形状の他方の脚部は
図5に視られるように支持部分に取り付けられてもよい。例証された第1のシール部分54は、幾何学的中心軸線に沿ったかなり短い延長部を有するが、他の構成や取り付け装置が考えられる。例えば、少なくとも幾つかの例示的な実施形態では、第1のシール部分54は、幾何学的中心軸線に沿ったより長い延長部を有してもよい。例えば、第1のシール部分54は、支持部分56に沿って、支持部56のラジアル方向内方に、前記幾何学的中心軸線と同軸に延びるように、支持部分56に取り付けられてもよい。
【0040】
図4は、本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態に係る車輪軸受シール装置の一部を形成し得る安全ワッシャ50を例証する。例証された例示的な実施形態では、安全ワッシャ50の内側周縁部66はノッチ68および突起70を有する部分を有し、ノッチ68および突起70はスピンドル10の受容輪郭形状と雌雄嵌合するように設計され、安全ワッシャ50およびハブナット52はスピンドル10のまわりに取り付けられている。このことは、部分的に断面の斜視図を例証する
図3で最もよく表れている。この断面図では、アウトボードシール40は、安全ワッシャ50の後ろに僅かに見えている。
【0041】
図2の例示的な実施形態を参照すると、次の構成要素は、車輪車軸12が回転するとき、幾何学的中心軸線のまわりを回転するであろう。それら(前記構成要素)は、
車輪端部ハブ16と、
アウトボード軸受20の第2の案内溝形成部32(そして、勿論、インボード軸受22の対応する第2の案内溝形成部も)と、
ころ要素38ところ要素をアウトボード軸受20の第1および第2の案内溝形成部30、32間に保持する任意の保持器(そして、勿論、インボード22軸受22の対応するころ要素および任意の保持器も)と、
アウトボードシール40である。
【0042】
図2の例示的な実施形態を参照すると、次の構成要素は、車輪車軸12が回転するとき、幾何学的中心軸線のまわりを回転しないであろう。それら(前記構成要素)は、
安全ワッシャ50と、
ハブナット52と、
スピンドル10と、
アウトボード軸受20の第1の案内溝形成部30(そして、勿論、インボード軸受22の対応する第1の案内溝形成部も)である。
【0043】
こうして、上のことから、当然に明らかなのは、少なくとも幾つかの例示的な実施形態において、安全ワッシャ50が第1の案内溝形成部30と回転不能に接触するということである。その上、アウトボードシール40は、好適には、安全ワッシャ50に回転自在に接触する。アウトボードシール40が回転不能な第1の案内溝形成部30に対して回転すると、第2のシール部分58は、車輪車軸12の端部や車輪端部ハブ16に溜まったオイルのせいで、オイルの進入を打ち消すのに長期的には十分でないことがある。車輪端部ハブ16内の安全ワッシャ50に乗り上げる第1のシール部分54が設けられることによって、特別な保護が達成される。より具体的には、安全ワッシャ50のまわりを通行するオイルの飛散は、第2のシール部分58および第1の案内溝形成部30間の界面にそれほど容易に到達しないであろうが、その理由は、リップ64付きの第1のシール部分54が飛散バリアを形成するからである。こうして、オイルの進入のリスクが低減され或いは少なくとも進入が起こるまでの時間が引き延ばされる。
【0044】
理解されるべきは、本発明が上で説明され図面に例証された実施形態に限定されないことであり、寧ろ、当業者が認識するであろうことは、多くの変更および修正が添付の特許請求の範囲の範囲内で行うことができるということである。
【手続補正書】
【提出日】2022-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)用の車輪軸受シール装置(20、40、50)であって、
前記車両の中央長手軸線から離れる方に面するように意図されたアウトボード周縁部(24)と、前記車両の前記中央長手軸線の方に面するように意図されたインボード周縁部(26)と、を有するアウトボード軸受(20)であって、前記アウトボード軸受が第1の案内溝形成部(30)と前記第1の案内溝形成部を囲む第2の案内溝形成部(32)とを有する、アウトボード軸受(20)と、
前記第1の案内溝形成部(30)および反対部(42)間に配置されるアウトボードシール(40)と、
前記第1の案内溝形成部の前記アウトボード周縁部に対して押圧される安全ワッシャ(50)と、
を含み、
前記アウトボードシール
(40)は、前記安全ワッシャに対して押圧されて直接接触するシール部分(54)を含
み、
前記アウトボードシール(40)は、前記シール部分(54)を支持する支持部分(56)を含み、
前記シール部分(54)は、前記支持部分(56)から離れる方に突出するリップ(64)を含み、
前記リップ(64)は、前記安全ワッシャ(50)とシール接触し、
前記車輪軸受シール装置は、幾何学的中心軸線を有し、
前記リップ(64)は、前記幾何学的中心軸線から離れる方にラジアル方向に延びることを特徴とする、車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項2】
前記第1の案内溝形成部(30)は、
前記インボード周縁部(26)に隣接して、ころ要素(38)を収容する案内溝部分(34)と、
前記アウトボード周縁部(24)に隣接して、前記アウトボードシール(40)を収容する保持部分(44)と、を含む、請求項1に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項3】
前記リップ(64)は、U形状の断面を有し、
前記U形状の一方の脚部は、前記安全ワッシャ(50)にシール接触し、
前記U形状の他方の脚部は、前記支持部分(56)に取り付けられる、請求項
1または2に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項4】
前記安全ワッシャ(50)は、前記第1の案内溝形成部(30)に回転不能に接触する、請求項
1から3のいずれか1項に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項5】
前記アウトボードシール(40)は、前記安全ワッシャ(50)に回転自在に接触する、請求項
1から4のいずれか1項に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項6】
前記シール部分(54)は、第1のシール部分(54)であり、
前記アウトボードシール(40)は、前記第1の案内溝形成部(30)に対してシール押圧される第2のシール部分(58)を更に含む、請求項
1から5のいずれか1項に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項7】
前記第1のシール部分(54)は、前記第2のシール部分(58)とは別々の実体である、請求項
6に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項8】
前記第1のシール部分(54)および前記第2のシール部分(58)は、相互に離隔される、請求項
7に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項9】
前記アウトボードシールは、前記反対部(42)に対してシール押圧される第3のシール部分(62)を更に含む、請求項
6から8のいずれか1項に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項10】
前記第1のシール部分(54)は、前記第3のシール部分(62)とは別々の実体である、請求項
9に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項11】
前記第1のシール部分(54)および前記第3のシール部分(62)は、相互に離隔される、請求項
10に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)。
【請求項12】
請求項
1から11のいずれか1項に記載の車輪軸受シール装置(20、40、50)を含む車両(1)。
【国際調査報告】