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▶ アストラゼネカ・アクチエボラーグの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-23
(54)【発明の名称】吸入器
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20221216BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522703
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2020079199
(87)【国際公開番号】W WO2021074372
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】62/916,412
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】ドゥッセ,ルーネ
(57)【要約】
薬剤を吸入によって送達するための吸入器(10)が開示される。吸入器(10)は、薬剤のキャニスタ(50)を受け入れるためのキャニスタ駆動部(22)と、付勢手段(20)と、トリガー機構とを含む駆動機構を含む。トリガー機構はラッチ(35)を含む。ラッチ(35)は、ラッチ(35)がキャニスタ駆動部(22)に接触してキャニスタ駆動部(22)の直線移動を防止し付勢手段(20)を荷重印加構成に保持する係止位置と、ラッチ(35)がキャニスタ駆動部(22)から係合解除されて付勢手段(20)を荷重印加構成から解放しキャニスタ駆動部(22)を静止位置から作動位置に駆動する係止解除位置とを有する。トリガー機構は阻止体(32)を含む。阻止体(32)は、阻止体(32)がラッチ(35)に接触して係止位置から係止解除位置へのラッチ(35)の移動を阻止する阻止位置と、阻止体(32)がラッチ(35)から係合解除されて係止位置から係止解除位置へのラッチ(35)の移動を可能にする回転位置とを有する。阻止体(32)は、阻止体(32)に加えられた力に応答して回転可能である。吸入器(10)の動作方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を吸入によって送達するための吸入器であって、前記吸入器は、
薬剤のキャニスタを受け入れるためのキャニスタ駆動部と、付勢手段と、トリガー機構とを含む駆動機構を含み、
前記トリガー機構は、
前記キャニスタ駆動部に接触して前記キャニスタ駆動部の直線移動を防止し前記付勢手段を荷重印加構成に保持する係止位置と、
ラッチであって、
前記ラッチが前記キャニスタ駆動部から係合解除されて前記付勢手段を前記荷重印加構成から解放し前記キャニスタ駆動部を静止位置から作動位置に駆動する係止解除位置と
を有するラッチと、
阻止体であって、
前記ラッチに接触して前記係止位置から前記係止解除位置への前記ラッチの移動を阻止する阻止位置と、
前記阻止体が前記ラッチから係合解除されて前記係止位置から前記係止解除位置への前記ラッチの移動を可能にする回転位置と
を有する阻止体と
を含み、
前記阻止体は、前記阻止体に加えられた力に応答して回転可能である、
吸入器。
【請求項2】
前記阻止体はフラップを含み、前記フラップは、前記吸入器内の圧力降下に応答して回転可能であり、且つ/又は前記吸入器は、前記阻止体を前記阻止位置から前記回転位置に移動させるためのボタンをさらに含む、請求項1に記載の吸入器。
【請求項3】
前記駆動機構を収納するための外ハウジングをさらに含み、前記ボタンは、好ましくは、より変形可能な材料と前記外ハウジングの残り部分を形成するより剛性の高い材料とを同時成形することによって形成された、前記外ハウジングの撓み可能部分を含む、請求項2に記載の吸入器。
【請求項4】
前記吸入器は、前記阻止体を前記阻止位置に付勢するための阻止体ばねをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項5】
前記キャニスタ駆動部、前記付勢手段、前記ラッチ、及び前記阻止体のうちの少なくとも1つ又は複数を少なくとも部分的に受け入れるためのシャーシをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項6】
前記阻止体ばねは、前記シャーシと一体に形成され、好ましくは、前記シャーシに取り付けられた一端部と、前記阻止体ばねの自由端部が曲がることを可能にするために前記シャーシから自由な他端部とを備えた細長い突起を含み、前記自由端部は、前記阻止体の一部分に当接するように構成されている、請求項4に従属する場合の請求項5に記載の吸入器。
【請求項7】
前記ラッチは、前記係止位置と前記係止解除位置との間で回転可能であり、前記キャニスタ駆動部のレッジに当接するように構成された棚をさらに含み、前記レッジは、前記キャニスタ駆動部から突出し、前記ラッチが前記係止位置にあるときに前記付勢手段の荷重下で前記棚に載るように付勢され、且つさらに、前記係止解除位置への前記ラッチの回転によって、前記棚が傾斜し、前記レッジが前記棚から係合解除されて前記キャニスタ駆動部を解放する、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項8】
前記キャニスタ駆動部内に受け入れられるキャニスタの位置決めを制御するための少なくとも1つの整列ガイドをさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項9】
前記少なくとも1つの整列ガイドは、前記キャニスタ駆動部の一体形成部分を含む、請求項8に記載の吸入器。
【請求項10】
前記整列ガイドは、前記キャニスタ駆動部内に受け入れられたキャニスタを少なくとも部分的に取り囲み、好ましくは、前記キャニスタを前記キャニスタ駆動部内に案内又は支持するために前記キャニスタとの締り嵌めをもたらす、請求項8又は9に記載の吸入器。
【請求項11】
複数の整列ガイドを含み、各ガイドは、前記キャニスタ駆動部内に受け入れられたキャニスタの一部分を少なくとも部分的に取り囲み、前記整列ガイドは、前記キャニスタの周囲に少なくとも部分的な円周リングを実質的に形成する、請求項10に記載の吸入器。
【請求項12】
前記駆動機構をリセットするためのリセット機構であって、前記付勢手段をリロードして前記トリガー機構を前記係止位置にリセットするために前記キャニスタ駆動部を移動させて前記静止位置に戻すように構成されている、リセット機構をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項13】
前記リセット機構は、前記カバーの回転中に前記キャニスタ駆動部を駆動して前記静止位置に戻すように構成された回転可能なカバーを含み、前記静止位置に向かう前記キャニスタ駆動部の移動によって、前記キャニスタ駆動部のレッジ又は前記レッジが前記ラッチ上のリセット用突起と係合し、前記ラッチを移動させて前記係止位置に戻す、請求項12に記載の吸入器。
【請求項14】
前記キャニスタ駆動部内に受け入れられたキャニスタを発射位置から発射準備完了位置に戻すための復帰機構であって、前記復帰機構はダンピングシステムを含み、前記ダンピングシステムは、前記荷重印加構成からの前記付勢手段の解放から測定した所定時間内に前記発射位置から前記発射準備完了位置に前記キャニスタが自動的に戻ることを可能にするように構成されている、前記復帰機構をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項15】
前記キャニスタ駆動部が前記作動位置から前記静止位置に移動した回数を計数するための計数機構をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の吸入器。
【請求項16】
前記計数機構は、前記計数機構を駆動するための押し子を含み、前記押し子は、前記キャニスタ駆動部の相補形状箇所によって係合され、前記静止位置から前記作動位置への前記キャニスタ駆動部の移動によって、前記相補形状箇所が移動し、前記吸入器の完了した作動を計数するように前記押し子が押される、請求項15に記載の吸入器。
【請求項17】
吸入器から薬剤を分与する方法であって、前記吸入器は、薬剤のキャニスタを受け入れるためのキャニスタ駆動部と、付勢手段と、トリガー機構とを含む駆動機構を含み、前記方法は、
前記トリガー機構のラッチによって前記付勢手段を荷重印加構成に保持することであって、係止位置では、前記ラッチが前記キャニスタ駆動部に接触して前記キャニスタ駆動部の直線移動を防止し前記付勢手段を保持する、保持することと、
前記付勢手段を前記荷重印加構成から解放して前記キャニスタ駆動部を静止位置から作動位置に駆動するために前記ラッチの係止解除位置において前記ラッチを前記キャニスタ駆動部から係合解除することと
を含み、
前記トリガー機構は阻止体をさらに含み、前記ラッチを前記キャニスタ駆動部から係合解除する前記ステップは、前記阻止体が前記ラッチに接触して前記係止位置から前記係止解除位置への前記ラッチの移動を阻止する阻止位置から前記阻止体が前記ラッチから係合解除されて前記係止位置から前記係止解除位置への前記ラッチの移動を可能にする回転位置まで、前記阻止体に加えられた力に応答して前記阻止体を回転させることを含む、
方法。
【請求項18】
前記阻止体はフラップを含み、前記方法は、前記吸入器内の圧力降下に応答して前記フラップを回転させることを含み、且つ/又は前記吸入器はボタンをさらに含み、前記方法は、前記ボタンを押して前記阻止体を前記阻止位置から前記回転位置に移動させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
好ましくは、より変形可能な材料と外ハウジングの残り部分を形成するより剛性の高い材料とを同時成形することによって形成された、前記吸入器の前記外ハウジングの撓み可能部分を撓ませることをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
阻止体ばねを用いて前記阻止体を前記阻止位置に付勢することをさらに含む、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記係止位置と前記係止解除位置との間で前記ラッチを回転させることをさらに含み、且つ前記ラッチは、前記キャニスタ駆動部のレッジに当接するように構成された棚を含み、前記レッジは、前記キャニスタ駆動部から突出し、前記ラッチが前記係止位置にあるときに前記付勢手段の荷重下で前記棚に載るように付勢され、前記ラッチを前記係止解除位置まで回転させることによって、前記棚が傾斜し、前記レッジが前記棚から係合解除されて前記キャニスタ駆動部を解放する、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記キャニスタ駆動部内に受け入れられるキャニスタの位置決めを少なくとも1つの整列ガイドを用いて制御することをさらに含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの整列ガイドは、前記キャニスタ駆動部の一体形成部分を含み、好ましくは、1つ又は複数の整列ガイドは、前記キャニスタ駆動部内に受け入れられたキャニスタを少なくとも部分的に取り囲み、好ましくは、前記キャニスタを前記キャニスタ駆動部内に案内又は支持するために前記キャニスタとの締り嵌めをもたらす、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記吸入器は、複数の整列ガイドを含み、各ガイドは、前記キャニスタ駆動部内に受け入れられたキャニスタの一部分を少なくとも部分的に取り囲み、前記整列ガイドは、前記キャニスタの周囲に少なくとも部分的な円周リングを実質的に形成する、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項25】
好ましくは計数機構を駆動するための押し子を含む前記計数機構によって、前記キャニスタ駆動部が前記静止位置から前記作動位置に移動した回数を計数することをさらに含み、前記押し子は、前記キャニスタ駆動部の相補形状箇所によって係合され、前記静止位置から前記作動位置への前記キャニスタ駆動部の移動によって、前記相補形状箇所が移動し、前記吸入器の完了した作動を計数するように前記押し子が押される、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤を吸入によって送達するための吸入器及びその動作方法に関し、特に、薬剤用量を分与するための吸入器の機構と、用量の分与を起動するための及び用量の分与を制御するための構成要素とに関する。本発明はまた、吸入器から薬剤を分与する方法に関し、特に、吸入器から薬剤用量を分与する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば治療計画又はその他の一部として特に複数の薬剤用量を提供することが望ましい場合に、患者又は薬剤の他の対象服用者に薬剤用量を提供するための多くの手法が存在する。肺又は他の状態を処置するための薬剤などの多くの薬剤は、適切な吸入器を用いた吸入によって服用者に送達/分与される。一般に使用されている、有効な種類の複数回投与吸入器の1つは、吸入器内の薬剤を収容するキャニスタが例えば押し込みによって作動され、マウスピースを介して使用者に定量の薬剤を送達/分与する加圧式定量噴霧吸入器(pMDI:pressurised metered dose inhaler)である。特に使いやすい種類のそのような吸入器は、薬剤用量を自動的に送達/分与するように構成されており、起動されるとキャニスタを作動させる作動機構を有する。作動機構は、典型的には、呼吸作動式、すなわち、マウスピースを介した使用者の吸入によって起動される。これにより、使用者が吸入している間に薬剤用量が分与されることを確実にする。これは、薬剤用量の分与が用量の吸入と協調し、患者の吸気(又は吸息)の同期が、口及び咽頭内の沈着による損失を最小限にした気道内の標的部位へのエアロゾル剤の最適な送達を確実にするので特に有利である。複数回投与吸入器では、次の用量を必要な時に分与できるようにするために、起動機構及び分与機構は毎回作動させた後にリセットしなければならない。
【0003】
例示的な呼吸作動式pMDIは、特許文献1に記載されている。この吸入器の作動機構は、使用者による吸入に応答して定量の薬剤を送達するために、薬剤を収容するキャニスタを押し込むように動作可能である。作動機構は、キャニスタを押し込むためのばねと、用量が分与されるまでばねがキャニスタを押し込むことを防止するためのトリガー機構とを含む。使用者がマウスピースを介して吸入すると、トリガー機構はばねを解放し、ばねは、次いで、キャニスタを押し込み、キャニスタの弁を通してマウスピース内に薬剤用量を送達する。リセット機構は、閉鎖位置へのカバーの移動がばねをリセットするように、マウスピースの回転カバーすなわちキャップと相互作用する。
【0004】
本出願に開示される吸入器は複数の連続する用量を使用者に分与するのに効果的であり且つ信頼性が高いが、この構成のトリガー機構は、数多くの製造及び組み立てステップを必要とし且つ極めて厳しい公差を有する数個の構成要素を含み、いくつかの構成要素は、互いに取り付けられ、例えば溶着されなければならない全く異なる材料で作られる。それゆえ、先行技術の吸入器のトリガー機構は、望ましいものよりも堅牢でなく、製造公差の影響をより強く受ける可能性があり、結果として吸入器の信頼性に影響を及ぼす可能性があることが見込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2013/038170号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、吸入器の寿命を通じての及び吸入器の製造バッチ全体にわたる信頼性及び一貫性が向上した、薬剤を吸入によって送達するための吸入器及び吸入器から薬剤を分与する方法が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の広義の態様による、本発明によれば、薬剤を吸入によって送達するための吸入器であって、吸入器は、
薬剤のキャニスタを受け入れるためのキャニスタ駆動部と、付勢手段と、トリガー機構とを含む駆動機構を含み、トリガー機構は、ラッチがキャニスタ駆動部に接触してキャニスタ駆動部の直線移動を防止し付勢手段を荷重印加構成に保持する係止位置と、ラッチがキャニスタ駆動部から係合解除されて付勢手段を荷重印加構成から解放しキャニスタ駆動部を静止位置から作動位置に駆動する係止解除位置とを有するラッチと、阻止体がラッチに接触して係止位置から係止解除位置へのラッチの移動を阻止する阻止位置と、阻止体がラッチから係合解除されて係止位置から係止解除位置へのラッチの移動を可能にする回転位置とを有する阻止体を含み、
阻止体は、阻止体に加えられた力に応答して回転可能である、吸入器が提供される。
【0008】
請求される吸入器は、先行技術の欠点の少なくとも1つを克服する。例えば、荷重がかけられた付勢手段からの力の下での移動のためにキャニスタ駆動部を確実に解放して、キャニスタ駆動部内に受け入れられたキャニスタから薬剤用量を分与するためのトリガー機構を、先行技術と比較して、少ない数の構成要素が形成する、吸入器が提供される。先行技術と比較してこの機能を果たす構成要素がより少ないことによって、製造の容易さ、時間及びコストが改善されるだけでなく、故障する及び/又は誤組み付けされる可能性のある部品がより少なく、公差が改善されるので、先行技術の構成よりも信頼性が高く且つ堅牢であり得る。先行技術、例えば国際公開第2013/038170号パンフレットに開示されている複数の構成要素と比較して、この構成では2つのみの構成要素がトリガー機構を形成する簡単な機構が、ラッチをキャニスタ駆動部及び阻止体と係合させることによって提供され、任意選択的に、これらの構成要素は、比較的剛性が高く且つ堅牢な材料(例えば成形プラスチック)から形成することができ、その一方で、先行技術のより複雑なトリガー機構は、使用前に別個のアセンブリを必要とする2つの全く異なる材料(金属及びプラスチック)を含む1つの構成要素を含む、多くの異なる材料から作られた複数の構成要素を必要とする。
【0009】
さらに、構成要素の数が少ないトリガー機構を有することで、先行技術の機構の多くの構成要素と比較して、構成要素を異なる位置に配置できるようにもなる。例えば、阻止体は、吸入器がほぼその使用時位置(例えば、キャニスタがキャニスタ本体の下の弁とほぼ整列した状態)に保持されたときにトリガー機構の最下部の構成要素であってもよい。そのような構成では、阻止体は、吸入器のマウスピースにより近接していてもよく、したがって、マウスピースと阻止体との間の流路は、先行技術の構成と比較して短い。これは、阻止体がフラップを含み且つフラップが吸入器内の圧力降下に応答して回転可能である構成において特に有利であり得る。流路をより短くすることによって、より信頼性の高いトリガー機構が提供されてもよい。
【0010】
フラップを含む阻止体に加えて、又はその代替として、吸入器は、阻止体を阻止位置から回転位置に移動させるためのボタンを含んでもよい。ボタンは、使用者によって作動可能であり、例えば、指などからの圧力によって手動で作動可能であり、且つ阻止体を回転位置に移動させるように作動させる(例えば押される又は押圧される)と阻止体及び/又はラッチと相互作用する、任意の適切な手段を含んでもよい。いくつかの構成では、ボタンは、吸入器の別の構成要素内に又はこの別の構成要素によって形成される。例えば、吸入器は、駆動機構を収納するための外ハウジングをさらに含んでもよく、ボタンは、外ハウジングを貫通する突起又は外ハウジングの撓み可能部分を含む。いくつかの構成では、ボタンは、より変形可能な材料と外ハウジングの残り部分を形成するより剛性の高い材料とを同時成形することによって形成された、外ハウジングの撓み可能部分である。したがって、堅牢な外ハウジングが提供されるが、外ハウジングは、トリガー機構を作動させ、吸入器から用量を分与するために、使用者によって容易に撓ませることができる、例えば手動で撓ませることができる部分を有する。阻止体がフラップを含む構成では、ボタンは、ラッチ及び/又はフラップに接触してフラップをラッチから係合解除されるように回転位置に押すように手動で撓ませることができる、例えば、外ハウジングの内部表面から突出する突起を含んでもよい。外ハウジングと同時成形される材料によってボタンが形成される場合、これは、先行技術の構成における隙間から吸入器内への塵埃又はごみの侵入がハウジングの同時成形部分によって防止され、同時成形された外ハウジング及びボタン構成が、複数の別個の構成要素を必要とする先行技術のボタン構成と比較して組み立てが簡単であり得るので、先行技術のボタン機構と比較して有利であり得る。
【0011】
阻止体は、任意の適切な手段によって回転位置から阻止位置に戻ってもよい。例えば、阻止体は、重力の影響などによって、力が除去された時点で阻止位置に戻ってもよい。いくつかの構成では、阻止体は、阻止位置に付勢され、阻止体がこの位置に戻ってトリガー機構をリセットすることを確実にする。例えば、いくつかの構成では、トリガー機構は、阻止体を阻止位置に付勢するための阻止体ばねをさらに含んでもよい。阻止体ばねは、任意の適切な方法で吸入器内に組み付けられた別個の構成要素であってもよく、又は吸入器の既存の構成要素の一部として形成されてもよい。例えば、阻止体に当接する別個のばねが、吸入器内の適切な位置に設けられてもよい。いくつかの構成では、吸入器は、キャニスタ駆動部、付勢手段、ラッチ、及び阻止体のうちの少なくとも1つ又は複数を少なくとも部分的に受け入れるためのシャーシをさらに含み、シャーシは、阻止体ばね又は他の付勢手段を含んでもよく、好ましくは、阻止体ばね又は他の付勢手段は、シャーシと一体に形成される。このような構成は、別個の構成要素を有する構成よりも組み立てが容易であるだけでなく、簡単に製造でき且つ堅牢である。いくつかの構成では、付勢手段は、シャーシに取り付けられた一端部と、阻止体ばねの自由端部が曲がることを可能にするためにシャーシから自由な他端部とを備えた細長い突起を含み、自由端部は、阻止体の一部分に当接して阻止体を阻止位置に付勢するように構成されている。シャーシと一体に形成された細長い可撓性の突起すなわちフィンガを有することは、突起すなわちフィンガの付勢を克服して阻止体を回転位置まで回転させるのに十分な力が(例えば、ボタンの手動作動によって又は使用者による吸入中の圧力降下によって)阻止体に加えられるまで所要量の付勢を提供して阻止体を阻止位置に保持するように突起すなわちフィンガの長さを構成できるため、特に有利であると考えられる。力が除去又は低減された時点で、突起すなわちフィンガは、少なくともこの点において、阻止体を付勢して阻止位置に戻し、トリガー機構をリセットする。それゆえ、阻止体をリセットするための堅牢で信頼性の高い機構が、そのような構成内に設けられる。
【0012】
上記のように、ラッチは、係止位置においてキャニスタ駆動部に接触し、係止解除位置においてキャニスタ駆動部から係合解除されるように構成されている。これは、任意の適切な方法で達成することができる。いくつかの構成では、ラッチは、係止位置と係止解除位置との間で回転可能である。いくつかの構成では、ラッチは、キャニスタ駆動部のレッジに当接するように構成された棚を含み、レッジは、キャニスタ駆動部から突出し、ラッチが係止位置にあるときに付勢手段の荷重下で棚に載るように付勢され、且つさらに、係止解除位置へのラッチの回転によって、棚が傾斜し、レッジが棚から係合解除されてキャニスタ駆動部を解放する。このような構成は、特に堅牢であると考えられ、キャニスタ駆動部のレッジが棚の上部に下向きに押し付けられたときに(吸入器がそのほぼ直立した使用時位置にあるときに)付勢手段の荷重下での移動に抗してキャニスタ駆動部を確実に保持する。ラッチがその係止解除位置まで回転したときにのみ、棚は、レッジの真下から離れる方向に移動し、付勢手段がその荷重を解放したときにキャニスタ駆動部が下向きに移動することを可能にする。
【0013】
キャニスタ駆動部が付勢手段によって静止位置から作動位置に駆動されたときに、キャニスタ駆動部内に受け入れられたキャニスタもまた、その静止位置からその作動位置にキャニスタ駆動部の移動によって駆動されて、当技術分野で周知のように、キャニスタの弁から薬剤用量を放出する。キャニスタ駆動部は概してキャニスタを駆動し案内し得るが、あらゆる作動でキャニスタが所望通りに完全に整列しないことがあり得る。例えば、特に付勢手段の荷重は概して極めて大きいので、キャニスタがその作動位置への移動中(すなわち、下降行程中)に傾斜し得る可能性があり、この傾斜は、キャニスタ弁の軸に対するキャニスタの押し込み及び/又は弁が時間をリセットするのにかかる時間に影響を及ぼし得、これらは両方とも、薬剤の投与レベルに影響を及ぼし得るため不利である。それゆえ、いくつかの構成では、吸入器は、キャニスタがキャニスタ駆動部によって作動位置に駆動されたとき及び/又はキャニスタが静止位置に戻ったときなどに、キャニスタ駆動部内に受け入れられるキャニスタの位置決めを制御するための少なくとも1つの整列ガイドをさらに含む。キャニスタを運動中に案内することによって、キャニスタのより良好な整列が確実に行われ、より信頼性の高い投与及び/又はリセットが達成されてもよい。
【0014】
いくつかの構成では、少なくとも1つの整列ガイドは、キャニスタ駆動部の一体形成部分を含む。この構成は、キャニスタ駆動部が、駆動されるときのキャニスタの整列を確実にするだけでなく、キャニスタを駆動するので、特に有利であると考えられる。例えば、1つ又は複数の整列ガイドは、キャニスタ駆動部内に受け入れられたキャニスタを少なくとも部分的に取り囲み、好ましくは、キャニスタをキャニスタ駆動部内に案内又は支持するためにキャニスタとの締り嵌めをもたらしてもよい。整列ガイドは、キャニスタ駆動部と一体に形成することができ、例えば、キャニスタ駆動部の成形部とすることができる。整列ガイドが複数ある場合、各ガイドは、キャニスタ駆動部内に受け入れられたキャニスタの一部分を少なくとも部分的に取り囲んでもよく、整列ガイドは、キャニスタの周囲に少なくとも部分的な円周リングを実質的に形成する。そのような構成は、整列ガイドが極めて小さなものであり得、いずれかの方向へのキャニスタの移動時にキャニスタを把持又は抱持するように配置されるので、デバイスの重量を大幅に増加させることなくキャニスタを整列した状態に保持できるため、特に有利であると考えられる。
【0015】
整列ガイドは、それ自体で有利であると考えられる。それゆえ、本発明のさらなる広義の態様による、薬剤を吸入によって送達するための吸入器であって、薬剤のキャニスタを受け入れるためのキャニスタ駆動部と、キャニスタがキャニスタ駆動部によって作動位置に駆動されるとき及び/又はキャニスタが静止位置に戻るときなどに、キャニスタ駆動部内に受け入れられるキャニスタの位置決めを制御するための少なくとも1つの整列ガイドとを含む駆動機構を含む吸入器が提供される。
【0016】
上述のように、トリガー機構は、キャニスタ駆動部を解放し、キャニスタガイドと、キャニスタガイド内に収容された任意のキャニスタとを作動位置に駆動して、薬剤用量を分与するように構成されている。複数回投与吸入器では、次の用量を分与する準備の整ったトリガー機構をリセットする必要がある。それゆえ、いくつかの構成では、吸入器は、駆動機構をリセットするためのリセット機構であって、付勢手段をリロードしてトリガー機構をその係止位置にリセットするためにキャニスタ駆動部を移動させて静止位置に戻すように構成されている、リセット機構をさらに含む。例えば、トリガー機構は、リセット機構によって移動させて及び/又は付勢されてそのラッチ係止位置及び阻止体阻止位置に戻されてもよい。いくつかの構成では、リセット機構は、カバーの回転中にキャニスタ駆動部を駆動して静止位置に戻すように構成された回転可能なカバーを含み、静止位置に向かうキャニスタ駆動部の移動によって、キャニスタ駆動部のレッジがラッチ上のリセット用突起と係合し、ラッチを移動させて係止位置に戻す。この構成は、使用者が操作する簡単な機構であり、キャップの閉鎖によって吸入器のマウスピースが覆われ、リセット用突起を有することでラッチが所定の位置に押し戻され、その間、阻止体復帰ばねが阻止体を付勢してその阻止位置に戻すので、操作が自然に行われるため、特に有利であると考えられる。
【0017】
上記の構成のいくつかにおいて記載されている複数回投与吸入器では、吸入器の使用及び信頼性を改善するために1つ又は複数のさらなる機構を有することが有利である可能性がある。それゆえ、いくつかの構成では、吸入器は、キャニスタ駆動部内に受け入れられたキャニスタを作動位置又は発射位置から静止位置又は発射準備完了位置に戻すための復帰機構であって、復帰機構はダンピングシステムを含み、ダンピングシステムは、荷重印加構成からの付勢手段の解放から測定した所定時間内に発射位置から発射準備完了位置にキャニスタが自動的に戻ることを可能にするように構成されている、復帰機構をさらに含む。これらの構成では、吸入器の使用者が吸入器をその発射前の構成に戻すためにリセット機構を起動するかどうかにかかわらず、吸入器は、キャニスタ弁が完全に所定時間内にその補充点に戻され、次の用量のために補充されるように、キャニスタをこの時間内に作動位置から静止位置に自動的に戻す。ダンピング機構はキャニスタの復帰があまりに迅速に起こらないようにするように構成されているため、これは、弁が現在の用量の全部を分与するのに十分な時間にわたって行われる。すなわち、弁は用量を分与するために十分な時間にわたって開いたままにされ、弁は、弁が完全に補充できるようにするために適切な速度で戻されるが、弁は、これらの動作の確実な実施に必要であるよりも長く開放構成に維持されない。さらに、弁はその閉鎖位置に十分に素早くリセットされ、使用者は吸入器をまだ直立姿勢に維持しているため、弁はキャニスタの下に位置する。これらの構成では、ロッドなどのダンピングシステムの少なくとも一部分は、キャニスタ駆動部及びキャニスタと相互作用してもよく、キャニスタ駆動部の解放によって同時にロッドが駆動され、ロッドが、キャニスタを発射準備完了位置から発射位置に押す。
【0018】
キャニスタのリセットは単一工程として全時間にわたって1つの速度で実施され得るが、任意選択的に、ダンピングシステムは、所定時間が第1の時間区分及び第2の時間区分を含むように構成されており、作動位置から静止位置へのキャニスタの移動は第2の時間区分中よりも第1の時間区分中により遅くなる。この構成は、弁がその発射点未満で開いたままにされる時間(以下、発射点未満の時間(TBF:Time Below Fire)と呼ぶ)を最適化するので全用量を効果的に分与するが、キャニスタ弁がその補充点(以下、補充時間(TTR:Time To Refill)と呼ぶ)に到達する前の時間も最小限にする。上述のように、これは自動であり且つダンピング機構によって制御されるため、これは全て使用者がいかなる行動を取る必要もなく行われる。いくつかの実施形態では、第1の時間区分中、キャニスタは作動位置に維持され(すなわち、移動はない)、第2の時間区分中、キャニスタは作動位置から静止位置に戻る。
【0019】
所定時間は他の時間区分を含む可能性があるが、任意選択的に、ダンピングシステムは、第2の時間区分が第1の時間区分の直後であるように構成されているため、キャニスタの移動は遅い復帰又は実質的に移動なしから、速い又はより速い復帰に、それらの間にいかなる休止又は遅延もなく即座に移行する。
【0020】
本発明の実施形態による吸入器で使用するためのキャニスタはほぼ一貫したプロファイル及び構成を有するが、公差に起因するキャニスタ間の差が予想されるべきであり、また、同一のキャニスタが異なる条件下では異なるように動作する場合がある。寿命開始(BOL)に比べるとキャニスタの寿命終了(EOL)にかけて、時間の経過とともに低下し得る復帰力のばらつきなどの他の課題に遭遇する可能性がある。それゆえ、ダンピングシステムは、任意選択的に、本発明の実施形態の吸入器における公差及び性能のばらつきに対処するように構成されている。任意選択的に、第1の時間区分は、約0.05~2.00秒の範囲内、任意選択的に約0.10~1.75秒の範囲内、任意選択的に約0.20~1.50秒の範囲内、任意選択的に約0.30~1.25秒の範囲内、任意選択的に約0.40~1.20秒の範囲内である。性能のばらつきへの対処において、並びにまた、キャニスタ及びキャニスタのバッチなどの間の公差及び差への対処において、これら範囲のうちの1つ以上の範囲内の時間区分が適切であることが見出された。任意選択的に、第1の時間区分は、少なくとも約0.20秒、任意選択的に少なくとも約0.30秒、任意選択的に少なくとも約0.40秒である。これら最小時間は、毎回の作動で弁内の全用量を確実に分与するのに最適であることが見出された。
【0021】
任意選択的に、第2の時間区分は、約0.10~2.00秒の範囲内、任意選択的に約0.30~1.80秒の範囲内、任意選択的に約0.40~1.70秒の範囲内、任意選択的に約0.60~1.60秒の範囲内、任意選択的に約0.80~1.50秒の範囲内、任意選択的に約1.00~1.40秒の範囲内である。この場合も、性能のばらつきへの対処において、並びにまた、キャニスタ及びキャニスタのバッチなどの間の公差及び差への対処において、これら範囲のうちの1つ以上の範囲内の時間区分が適切であることが見出された。任意選択的に、第2の時間区分は、約2.0秒未満、任意選択的に約1.75秒未満、任意選択的に約1.50秒未満、任意選択的に約1.25秒未満、任意選択的に約1.20秒である。これら最大時間は、弁が素早く且つ完全に補充するのを確実にするのに最適であることが見出された。上述のように、弁は、キャニスタがほぼ直立姿勢に維持されている間に、すなわち吸入器が使用者の口からまだ取り出されていない使用者の使用時間枠内に完全に補充されると特に有利であると考えられる。任意選択的に、第1の時間区分と第2の時間区分との合計は、合計時間約2.5秒未満、任意選択的に約2.00秒未満、任意選択的に約1.75秒未満、任意選択的に約1.50秒未満である。これは、弁が分与及び補充するための十分な時間を提供するが、弁補充の質に不利に影響するほど、又は使用者が吸入器を、それが使用されている直立姿勢から大きく位置変更できるほど長時間ではない。
【0022】
上述のように、吸入器は、減衰した移動を所定時間中に提供するためのダンピングシステムを含む。任意選択的に、ダンピングシステムはロータリーダンパーを含む。このようなダンパーは入手可能であり、複数回の使用にわたって確実に動作し、本発明の実施形態での使用に適している。このようなデバイスの例は、ACE Controls International/Inc.又はACE Stossdaempfer GmbHなどによって販売されているようなロータリーダンパーである。
【0023】
任意選択的に、ダンピングシステムはロッドを含み、ロッドはロータリーダンパーのシャフトと結合されており、ロッドはシャフトとともに回転し、ロッドの回転は、シャフトの少なくとも第1の回転方向の回転によって制御される。したがって、ロッドの移動はダンパーによって制御される。任意選択的に、ロッドはシャフトに対して軸方向に移動可能である。任意選択的に、可動構成要素はカムフォロアを含み、ロッドはカムフォロアを受け入れるためのカムトラックを含み、カムトラック及びカムフォロアは、カムフォロアがカムトラックの縁部に当接し、可動構成要素が第1の位置から第2の位置に移動するときにロッドに軸方向移動力を加えるように構成されている。したがって、ロッドが少なくとも1つ及び任意選択的に2つの方向に回転的に及び/又は軸方向に移動することができる機械的構成が提供される。任意選択的に、カムトラック及びカムフォロアは、カムフォロアによってカムトラックの縁部に加えられる軸方向移動力がロッドをシャフトから離れる方向に軸方向に移動させ、それによりロッドはキャニスタに駆動力を加え、キャニスタを静止位置から少なくとも作動位置に駆動するように構成されている。任意選択的に、カムトラックは少なくとも第1のセクション及び第2のセクションを含み、第1のセクションはロッドの軸線と実質的に整列し、第2のセクションは、ロッドの外部表面の一部分の周りでトラックの第1のセクションから実質的に離れる方向に湾曲している。したがって、ロッドの2つの速度の移動が提供される。トラックの第1のセクションは、カムフォロアに対するロッドの軸方向移動を可能にするように構成されており、トラックの第2のセクションは、カムフォロアに対するロッドの軸方向移動及び回転移動を可能にするように構成されている。ロッドの回転移動は回転ダンパーによって減衰され、ロッドの軸方向移動は回転ダンパーによって減衰されないため、例えば、ロッドの回転移動と軸方向移動とを組み合わせると制御され且つ遅くなり、カムフォロアがトラックの軸方向部分に到達すると、軸方向におけるロッドのより迅速な移動が可能になる。任意選択的に、トラックの第2のセクションはロッドの外部表面の一部分の周りで実質的に螺旋状である。これにより、カムフォロアの滑らか且つ制御された移動を提供する。任意選択的に、制御のバランスを取り且つ制御を向上させるために、ロッドは、ロッドの外部表面上で対称位置に対向する一対のカムトラックを含み、任意選択的に、カムトラックの第2のセクションは螺旋状であり、螺旋は、両方とも右巻き又は両方とも左巻きのいずれかである。
【0024】
上述のように、任意選択的に、カムトラックは、キャニスタが作動位置から静止位置に最初は第1の速度で自動的に戻ることをダンピングシステムが可能にするようにカムトラックの第1のセクションが構成されるように構成されており、キャニスタが所定時間内の後の時間に作動位置から静止位置に第2の速度で自動的に戻ることをダンピングシステムが可能にするようにさらに構成されている。これにより、適切な時間内にキャニスタ弁の効率的な用量分与及び補充を可能にする。代替的な実施形態では、キャニスタがその作動位置に到達したときにヨークはキャップの一部分に当接するその停止位置に到達していないため、カムトラックは、ダンピングシステムによってヨークが移動し続けることを可能にし、ヨークの移動中、キャニスタがその作動位置に維持されるように構成されており、カムトラックは、ダンピングシステムによってキャニスタが、ヨークの移動が停止した後の、所定時間内の後の時間に、作動位置から静止位置に自動的に戻ることを可能にするようにさらに構成されている。これにより、適切な時間内にキャニスタ弁の効率的な用量分与及び補充を可能にする。
【0025】
吸入器の起動前、吸入器はかなりの時間にわたって閉鎖構成に維持されている場合があり、例えば、1日に1回又は2回しか使用されない場合がある。それゆえ、いくつかの実施形態では、吸入器の特定の構成要素に対する応力を低減又は回避するために付勢手段の荷重を解放することが有用である。任意選択的に、吸入器は、キャニスタが吸入器本体内に受け入れられているとき、可動構成要素及びダンピングシステムの少なくとも一部のうちの少なくとも1つを、可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部がキャニスタに接触しない離隔した位置で支持するように構成された荷重解放機構をさらに含む。したがって、荷重がかけられた付勢手段によって吸入器の構成要素に与えられていた可能性のある応力が低減される又はそうでなければ緩和される。任意選択的に、荷重解放機構は、キャニスタが吸入器本体内に受け入れられているとき、可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部を解放し、それにより可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部を付勢手段の荷重下でキャニスタに接触させるように構成されている。これは、直接的、又は吸入器の別の構成要素若しくは機構を介して間接的であってもよい。
【0026】
任意選択的に、ロッドがキャニスタに、キャニスタを静止位置から少なくとも作動位置に駆動するための駆動力を加えることが可能となるように、荷重解放機構は、キャニスタが吸入器本体内に受け入れられているとき、可動構成要素を解放し、それによりダンピングシステムのロッドを付勢手段の荷重下でキャニスタに接触させるように構成されている。したがって、ロッドは、付勢力がキャニスタに加えられようとしているときにだけキャニスタに接触し、吸入器が使用される予定にないときのロッドの摩耗の可能性を低下させる。任意選択的に、荷重解放機構は、荷重解放機構が可動構成要素及び/又はダンピングシステムの一部を支持しているとき、カムフォロアがカムトラックの縁部に当接しないように構成されている。この場合も、これにより、例えば、カムフォロアとトラックの縁部との間に発生していた可能性のあるあらゆる応力又は摩耗を軽減する。
【0027】
いくつかの構成では、どれくらい用量が残っているかを判断できるように複数回投与吸入器から分与された用量の数を監視することが望ましい。それゆえ、いくつかの構成では、吸入器は、キャニスタ駆動部が静止位置から作動位置に(又は代替的な構成では、作動位置から静止位置に)移動した回数を計数するための計数機構をさらに含む。計数機構は、任意の適切な構成によって作動されてもよい。例えば、計数機構は、計数機構を駆動するための押し子を含んでもよく、押し子は、キャニスタ駆動部の相補形状箇所によって係合され、静止位置から作動位置へのキャニスタ駆動部の移動によって、相補形状箇所が移動し、吸入器の完了した作動(又は代替的な構成では吸入器の完了したリセット)を計数するように押し子が押される。この計数器を駆動する方法は、計数器がキャニスタ駆動部の移動によって直接駆動され、したがって、信頼性の高い計数が達成されるはずであるため、特に有利であると考えられる。
【0028】
さらなる広義の態様による、本発明によれば、吸入器から薬剤を分与する方法であって、吸入器は、薬剤のキャニスタを受け入れるためのキャニスタ駆動部と、付勢手段と、トリガー機構とを含む駆動機構を含み、方法は、トリガー機構のラッチによって付勢手段を荷重印加構成に保持することであって、係止位置では、ラッチがキャニスタ駆動部に接触してキャニスタ駆動部の直線移動を防止し付勢手段を保持する、保持することと、付勢手段を荷重印加構成から解放してキャニスタ駆動部を静止位置から作動位置に駆動するためにラッチの係止解除位置においてラッチをキャニスタ駆動部から係合解除することとを含み、トリガー機構は阻止体をさらに含み、ラッチをキャニスタ駆動部から係合解除するステップは、阻止体がラッチに接触して係止位置から係止解除位置へのラッチの移動を阻止する阻止位置から阻止体がラッチから係合解除されて係止位置から係止解除位置へのラッチの移動を可能にする回転位置まで、阻止体に加えられた力に応答して阻止体を回転させることを含む、方法が提供される。
【0029】
任意選択的に、阻止体はフラップを含み、方法は、吸入器内の圧力降下に応答してフラップを回転させることを含み、且つ/又は吸入器はボタンをさらに含み、方法は、ボタンを押して阻止体を阻止位置から回転位置に移動させることを含む。
【0030】
任意選択的に、方法は、好ましくは、より変形可能な材料と外ハウジングの残り部分を形成するより剛性の高い材料とを同時成形することによって形成された、吸入器の外ハウジングの撓み可能部分を撓ませることをさらに含む。
【0031】
任意選択的に、方法は、阻止体ばねを用いて阻止体を阻止位置に付勢することをさらに含む。
【0032】
任意選択的に、方法は、係止位置と係止解除位置との間でラッチを回転させることをさらに含み、且つラッチは、キャニスタ駆動部のレッジに当接するように構成された棚を含み、レッジは、キャニスタ駆動部から突出し、ラッチが係止位置にあるときに付勢手段の荷重下で棚に載るように付勢され、ラッチを係止解除位置まで回転させることによって、棚が傾斜し、レッジが棚から係合解除されてキャニスタ駆動部を解放する。
【0033】
任意選択的に、方法は、キャニスタ駆動部内に受け入れられるキャニスタの位置決めを少なくとも1つの整列ガイドを用いて制御することをさらに含む。任意選択的に、少なくとも1つの整列ガイドは、キャニスタ駆動部の一体形成部分を含み、好ましくは、1つ又は複数の整列ガイドは、キャニスタ駆動部内に受け入れられたキャニスタを少なくとも部分的に取り囲み、好ましくは、キャニスタをキャニスタ駆動部内に案内又は支持するためにキャニスタとの締り嵌めをもたらす。任意選択的に、吸入器は、複数の整列ガイドを含み、各ガイドは、キャニスタ駆動部内に受け入れられたキャニスタの一部分を少なくとも部分的に取り囲み、整列ガイドは、キャニスタの周囲に少なくとも部分的な円周リングを実質的に形成する。
【0034】
任意選択的に、方法は、好ましくは計数機構を駆動するための押し子を含む計数機構によって、キャニスタ駆動部が静止位置から作動位置に(又は作動位置から静止位置に)移動した回数を計数することをさらに含み、押し子は、キャニスタ駆動部の相補形状箇所によって係合され、静止位置から作動位置へのキャニスタ駆動部の移動によって、相補形状箇所が移動し、吸入器の完了した作動を計数するように押し子が押される。
【0035】
ここで、本発明の好ましい態様及び実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照しながら記載する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1A】先行技術の吸入器の斜視図である。
図1B図1Aの先行技術の吸入器の分解図である。
図2】本発明の実施形態による吸入器の分解図である。
図3A】本発明の実施形態によるトリガー機構を強調表示した、図2の吸入器の一部分の側面図である。
図3B】吸入器の薬剤送達構成要素を強調表示した、図2の吸入器の一部分の側面図である。
図3C】吸入器の用量計数機構を強調表示した、図2の吸入器の一部分の側面図である。
図3D】吸入器を通る流路を強調表示した、図2の吸入器の一部分の側面図である。
図4図1A及び図1Bの先行技術の吸入器の側面図である。
図5】本発明の実施形態による吸入器の側面図である。
図6A-6G】追加の吸入器構成要素が図5と比較して示され、トリガー機構の動作段階を示す、図5の吸入器の他の側面図である。
図6H図6A図6Gのトリガー機構のフラップ及びラッチの拡大図を示す。
図7A】本発明の実施形態による吸入器の外ハウジングの後面斜視図である。
図7B図7Aの外ハウジングの内部を示す。
図8】外ハウジングとトリガー機構とに着目して、本発明の実施形態による吸入器の構成要素を示す。
図9】本発明の実施形態で使用するためのキャニスタ及びマウスピース構成を示す。
図10A図9のキャニスタを整列させるための整列ガイドを有する本発明の実施形態によるキャニスタ駆動部の正面図を示す。
図10B】さらなる整列ガイドを備えた、図10Aのキャニスタ駆動部の後面図を示す。
図11】本発明の実施形態による計数機構の構成要素を示す。
図12】先行技術の吸入器のレバーと相互作用する先行技術の計数機構のセクションである。
図13】本発明による実施形態のキャニスタ駆動部との図11の計数機構の相互作用を示す。
図14図11の計数機構の計数ホイールの回転を制御するための本発明の実施形態による機構を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施形態による吸入器及び吸入器を動作させる方法が図に示される。
【0038】
図1A及び図1Bを参照すると、この図では、呼吸起動式機構32、34を備えた呼吸起動吸入器10である、吸入器10が示される。図1A及び図1Bの吸入器10は、国際公開第2013/038170号パンフレットの先行技術の吸入器と同様であるが、キャニスタ50の復帰を減衰するために、この以前の公報と比較して追加の構成要素を備える。
【0039】
図1A及び図1Bの吸入器10は、吸入器10の構成要素のほとんどを収容する外ハウジングすなわちシェル12を有する。シェル12の基部に、シェル12に対して旋回し、吸入器10のマウスピース16を露出させる又は覆う可動マウスピースカバーすなわちキャップ14がある。閉鎖構成(例えば図1Aに見られるような)にあるとき、シェル12及びキャップ14は吸入器10の正面プレートすなわち板18と組み合わせると吸入器10の全構成要素を完全に取り囲む。
【0040】
吸入器10の内部に、薬剤を収容するキャニスタ50がある。先行技術で周知のように、キャニスタ50の弁54は薬剤の1回量を測定するための測定チャンバを有する。薬剤用量を分与するために、キャニスタ50は押し込まれ、マウスピース16のシート内に着座した弁54の軸がキャニスタ50内に強制的に入れられ、これにより弁54を開放し、加圧された薬剤用量が使用者による吸入のためにマウスピース16内に放出される。キャニスタ50は主ばね20(図1Bの吸入器10の分解図に示す)によって(後述されるように他の構成要素を介して間接的に)押し込まれる。主ばね20は、キャニスタ50の上方で荷重がかけられた状態に維持され、吸入器10内で下向きに伸長するように解放される。ここで、上向きに、下向きに、側方に、上部、下部、上方、下方などのような相対用語は単に参照を容易にするためのものであり、限定を意図するものでは一切なく、吸入のためのその直立姿勢にある吸入器10(ほとんどの図に示すように、先行技術の吸入器と本発明の実施形態の吸入器の両方)に対して用いられることに留意されたい。
【0041】
解放されたばね20は吸入器10のヨーク22を下向きに押す。ヨーク22は荷重がかけられていないばね20によってその第1の発射前位置から駆動され、第2の発射位置に迅速に移動する。第2の発射位置は、吸入器10の別の部分に接触するヨーク22の最下部分によって決定される。図示される吸入器においては、ヨーク22の脚25は、駆動されて、開放されたキャップ14の支え面15に接触し、ヨーク22の下向きの移動を停止する、足23を有する。
【0042】
典型的には、ばね20は圧縮されたときに例えば約35~60Nの範囲内の力を有し、それゆえ、解放されたときにヨーク22をその発射位置に迅速に、例えば約4msなどのわずか数ミリ秒で駆動する。ヨーク22がその発射位置に移動する際、ヨーク22は吸入器10のダンピングシステムと相互作用し、ロッド120を下向きに駆動する。ロッド120は、マウスピース16のシート内に保持された弁軸53をキャニスタ50内に駆動するために十分な力でキャニスタ50を下向きに押し(したがってキャニスタを静止位置から作動位置に駆動し)、このようにして弁を開放し、弁54の測定チャンバ内の薬剤用量をマウスピース16内に放出することを可能にする。
【0043】
吸入器10は、使用者が吸入器10の使用直後にキャップ14を閉鎖するかどうかとは無関係に、現在の用量が分与された後すぐにキャニスタ50をその静止位置に戻すことによって弁54の閉鎖を自動化するための機構を含む。さらに、弁54の自動閉鎖は所定時間内に且つ用量の分与後十分にすぐに行われ、使用者が吸入器10をその直立姿勢から向き変更することはなさそうである又は不可能でさえある(すなわち、弁54の閉鎖は十分に素早く行われるため使用者は弁54が閉鎖される前に大きく反応しないので、弁54は、使用者が吸入器10をなお使用時のその直立姿勢にしている間に閉鎖する)。図1Bに示すように、キャニスタ50及び弁54のリセットを自動化するための機構は、ロータリーダンパー112と、ロータリーダンパー112から突出するシャフト110とを含むダンピングシステムを含む。ロータリーダンパー112は回転移動を少なくとも1つの方向に制御(減衰)し、シャフト110の回転も少なくとも1つの方向に制御(減衰)する。それゆえ、シャフト110に作用する力は、シャフト110をダンパー112によって決定された速度でのみ回転させる。ダンパー112のシャフト110はロッド120と相互作用する。ロッド120は概ね細長く、その中心軸線に沿って、ロータリーダンパー112のシャフト110を受け入れるための内部ボアを有する。シャフト110とロッド120とが、少なくとも、ロッド120及びシャフトの中心軸線を中心とした回転方向に動かないよう互いに固定されるように、内部ボアの表面はシャフトとの係止嵌合(locking fit)を提供するように構成された形状を有する。ロッド120の内部ボアの表面はダンパーシャフト110に対するロッド120の軸方向移動を妨げない。それゆえ、ロッド120はシャフトを上下して直線軸方向に摺動することができる。参照を容易にするために、(図1を参照すると、図示するように吸入器10が直立のとき)上方向の移動は先端側方向の移動と定義され、下方向の移動は基端側方向の移動と定義される。したがって、ダンピングシステム112においては、これはキャニスタ50に対するものである(例えば、ダンパー112はロッド120と比べるとキャニスタ50に対して先端側にある)、又は概して、先端側及び基端側はマウスピース16に対して定義される。
【0044】
ダンピングシステム112は、吸入器10内で、キャニスタ50上方の吸入器10の概ね先端側部分に位置する。ダンピングシステム112はカバー36によって所定の位置に保持され、カバー36は、吸入器10の各種部品をシェル12又は吸入器10の他の部品に対して適所に保持するように構成されたシャーシ11に取り付けられている。ロッド120はダンピングシステム112から基端側に延び、ロータリーダンパー110のシャフト上に受け入れられる。ロッド120はヨークプレートを通過し、ヨークプレートの歯は、ロッド120の外部表面におけるトラック内に突出する。ヨークプレートはその先端部がヨーク22内、ヨーク22のカラー内で固定されている。ヨーク22はシャーシ11によって案内されるが、シャーシ11に対して先端側方向及び基端側方向の両方に移動することができる。主ばね20がカバー36とヨーク22のカラーとの間に位置し、主ばね20は、荷重印加構成から解放されたときにヨーク22及びヨークプレートを下向きに押し、ヨーク22及びヨークプレートを基端側方向に移動させる。
【0045】
トリガー機構がヨーク22を解放すると、ヨーク22の移動によってロッド120も移動し、ロッド120が、キャニスタ50を下向きに押し、キャニスタ50を発射位置に移動させる。静止位置から発射位置への構成要素の移動は迅速であり、数ミリ秒以内などの非常に短時間で起こり得る。それゆえ、使用者は吸入器10のマウスピース16を通して吸入し始めた後非常に素早く薬剤用量を受け入れる。吸入器10が発射された後、ダンパー112は、キャニスタ50をリセットし(キャニスタ50を作動位置又は発射位置から静止位置に戻るように移動させる)、キャニスタ弁軸53をその閉鎖位置に移動させるために、キャニスタ50の底面に対するロッド120の下向きの力を制御された状態で解放するように構成されている。キャニスタ弁54は弁軸53が閉じる際にその測定チャンバを補充する。発射及び/又は補充が不十分又は不完全になることを回避するために、キャニスタ50に対するキャニスタ弁軸53の移動(すなわち、弁54の発射及びその後の補充及びリセット)を、過度に短くも長くもない所定の時間にわたって制御することが重要である。
【0046】
当該技術分野で周知の吸入器10では、吸入器10のリセットは、キャップ14を閉鎖することによって達成される。キャップ14の支え面15は、マウスピース16を覆うために使用者がキャップ14をその閉鎖位置まで回転させるとヨーク22の足23に上向きの力を与えるカムである。その後、ラッチ機構34は係合してばね20をその圧縮された状態に保持し、次の作動に備える。図1Bにおける先行技術の構成のラッチ機構34は有効であるが、異なる材料で作られた複数の構成要素を含み、いくつかの構成要素は、吸入器10に組み付ける前に部分的な組み立てを必要とする。非常に多くの構成要素を有することによって、組み立て中又は使用中に信頼性及び堅牢性のいくつかの問題が起こる可能性があり得る。さらに、異なる材料の複数の構成要素を有することによって、製造と組み立てに費用が嵩む可能性がある。
【0047】
それゆえ、本発明の実施形態による吸入器10は、ばね20などの付勢手段によって荷重がかかった状態での移動に抗してキャニスタ駆動部22を保持するための、及びキャニスタ駆動部22を解放して薬剤用量を分与するための、及び分与後にリセットされてさらなる用量をすぐに分与できる、改良されたトリガー機構を含む。別段の指定がない限り、先行技術との関連で記載された構成要素は、本発明の実施形態による構成要素と同じであってもよい。
【0048】
図2図3図5図6及び図8に、本発明の実施形態のトリガー機構が示される。図2を参照すると、トリガー機構は、ラッチ35と阻止体32とを含み、阻止体32は、図2では、フラップ32に力が加えられたときに回転可能なフラップすなわち羽根である。マウスピース16を通して吸入する使用者によって力が加えられてもよく、それにより、流路(図3に示される)内に圧力降下を生じさせ、フラップ32の軸線32aを中心にフラップ32を旋回させる。代替的又は追加的に、フラップ32に向かって内側に撓むボタン30b(図7A及び図7Bに示す)の作動によって力が加えられてもよく、ボタン30bの突起は、以下にさらに記載されるように、フラップ32がその回転位置まで回転するようにフラップ32を押す。
【0049】
図3A図3Dを参照すると、吸入器10は、説明を容易にするために異なる図中に強調表示された様々な構成要素とともに示される。図3Aは、ラッチ35とフラップ32とを含む、赤色で強調表示されたトリガー機構を示す。この図では、吸入器10が閉鎖されており、キャニスタ駆動部22の足23(図示せず)が、閉鎖されたキャップ14の支え面15によって支持されている。したがって、主ばね20の荷重はキャニスタ駆動部22の脚25を介して支え面15によって支持され、キャニスタ駆動部22はこのような荷重に耐えるように設計されている。キャニスタ駆動部22は、図6A図6Hとの関連で後述するように、キャップ14が開放された時点で、下向きに移動し、ラッチ35と係合する。
【0050】
図3Bは、薬剤用量を分与するための構成要素、詳細には、複数の薬剤用量を収容するキャニスタ50と、その弁軸53と、マウスピース16とを示し、このマウスピース16を通して、使用者は、分与された用量を吸入する。
【0051】
図3Cは、計数器機構40及びその押し子42の位置を示し、押し子42は、図11図14との関連で後述するように、キャニスタ駆動部22と相互作用する。
【0052】
図3Dは、流路(及びまたフラップ32)を画定し且つ外ハウジングすなわちシェル12とその同時成形部分13とを含む吸入器10の構成要素を示し、同時成形部分13は、図7及び図8を参照してさらに詳述される。
【0053】
ここで図4及び図5に移ると、先行技術のトリガー機構と本発明の実施形態の吸入器10の改良されたトリガー機構との違いが示される。図4では、先行技術のトリガー機構が、キャニスタ駆動部すなわちヨーク22をその荷重印加構成に保持するための、ヨーク22を解放するための及び用量分与後にヨーク22に再係合するための6つの構成要素を必要とすることが分かる。先行技術のトリガー機構の構成要素は、ヨーク22に係合してシャーシ11内の旋回軸を中心に回転するレバー34aを含む。先行技術のレバー34aは、どの段階でもヨーク22から係合解除されずに、ヨーク22に対して回転するのみである。レバー34aは、回転しないように係止部材34bによって係止され、この係止部材34bもまた、係止部材34bがレバー34aの回転を停止する位置と、係止部材34bがヨーク22上のレバー34aの旋回軸線を中心とするレバー34aの回転を可能にする位置との間で回転する。係止部34bは、図に示すようにその静止位置にあるときに、板ばね34cによって静止位置に付勢され、この板ばね34cは、組み立てに前に係止部34bに超音波溶接しなければならない。機構は、ここでもまた係止部34bを保持又は解放するために2つの位置の間で旋回する、羽根32をさらに含む。しかしながら、羽根32を係止部34bと係合させるために、ドロップリンク34dである(及び係止部34bの一体部であり得る)中間部材がさらに必要とされる。最後に、羽根32が位置決めされる位置への流路を画定するための追加の構成要素が必要とされ、この構成要素は、一体型の押しボタン30aを備えた、ダクトカバー31である。使用者にとってボタン30aが利用可能であるように、開口がシェル12を貫通して設けられ、この開口を通して、ボタンを押圧することができる。
【0054】
対照的に、図5に示すように、本発明の実施形態は、トリガー機構を形成するために、2つのみの構成要素又は後述されるいくつかの実施形態では、3つのみの構成要素を必要とする。キャニスタ駆動部(すなわちヨーク)22と直接係合するラッチ35が提供される。係合のさらなる詳細については、図6A図6Hとの関連で述べられる。ラッチ35は、ばね20(図示せず)の荷重下でキャニスタ駆動部22が直線的に(概ね下向きに)移動できるようにするために、キャニスタ駆動部22から係合解除されるように構成されている。トリガー機構の第2の構成要素、阻止体すなわちフラップ32は、ラッチ35と係合して、ラッチ35がキャニスタ駆動部22から係合解除されるのを阻止する。フラップがその旋回点32aを中心に回転すると、この旋回点の領域でフラップ32に当接するラッチ35の端部が、フラップ32、32aの上部の上を通過するように解放され、したがって、ラッチ35の上端部は、キャニスタ駆動部22から離れる方向に回転し、キャニスタ駆動部22から係合解除される。したがって、本発明の実施形態に従って、簡略化された信頼性の高いトリガー機構が提供される。さらに、本発明の実施形態のフラップ32の位置は、流路が先行技術の構成と比較して短くなるようにマウスピース16により近接しており、より一層信頼性の高い起動機構を提供する。
【0055】
図6A図6Hを参照すると、本発明の実施形態による吸入器10は、作動準備完了状態から、用量の分与、デバイスのリセット、並びに以下に記載されるようにデバイスを静止及び閉鎖状態に戻すまでの、異なる作動状態で示される。
【0056】
図6Aは、マウスピース16を露出させるためにキャップ14を開放位置まで回転させた使用準備完了構成にある吸入器10を示す。キャップ14は、キャニスタ駆動部22の足23がもはやキャップ14の支え面15に載っていないので、キャップ14が開いているときにはキャニスタ駆動部22を支持していない。それゆえ、ばね20の荷重によってキャニスタ駆動部22が下向きに付勢されるが、キャニスタ駆動部22は、キャニスタ駆動部22の一部分に当接する、ラッチ35によってばね20の荷重下での移動が防止される。ラッチ35は、フラップ32によってキャニスタ駆動部22からの係合解除が防止され、このフラップの上端部32aは、ラッチ35に当接して、ラッチ35がキャニスタ駆動部22との係合から外れて回転するのを防止する。図6Aに見られるように、この構成では、トリガー機構は、第3の構成要素と、フラップ32をその阻止位置に付勢するシャーシばね33(図6Dに示す)とを含む。シャーシばね33は、シャーシの上端部に取り付けられた(一体に形成された)、吸入器10のシャーシの一体形成された細長い部分であって、フラップ32の上縁部における突起32bに当接する自由な可撓性下側先端を有する細長い部分である。したがって、吸入器10は、簡単で且つ信頼性の高いトリガー機構によって発射準備完了位置に係止される。
【0057】
キャニスタ50から薬剤用量を分与するために、使用者は、マウスピース16を通して吸入し、図6Bに示すようにフラップ32をその静止(阻止)位置(図6Aに示す)から回転(非阻止)位置まで回転させる圧力降下を流路内に生じさせる。シャーシばね33は、フラップ32が回転することを可能にするために使用者の通常の吸入によってシャーシばね33の付勢力が容易に克服されるように構成されている。フラップ32が回転すると、旋回点32aにおけるその上縁部が回転し、フラップ32が十分な程度まで回転したときに摺動してフラップ32の上を通過するように(図示しない、ばね20によって間接的に)付勢される、ラッチ35が、フラップ32の上縁部の上を通過する。したがって、ラッチ35はその旋回点を中心に回転し、ラッチ35の上部分は、キャニスタ駆動部22から離れる方向に移動する。図6Bでは、ラッチ35は、フラップの上縁部32aの上を通過している最中であり、まだキャニスタ駆動部22に対して係合解除されていない。この係合解除は図6Cにおいて行われ、図6Cでは、レッジ21が棚37から係合解除されてキャニスタ駆動部22がばね20(図示せず)の荷重下で下向きに自由に移動できるように、図6Bではキャニスタ駆動部22のレッジ21の真下にあった、ラッチ35の棚37(図6Hに最も良く示す)が、ここでは十分遠くに離れたところであることが分かる。また、これにより、キャニスタ50が下向きに移動し、弁軸54がマウスピース16に押し込まれ、用量がマウスピース16内に分与される。使用者はこの時点ではまだ吸入しているので、使用者の吸入による助けを受けて用量が適切に分与される。
【0058】
図6Dは、用量が分与されて使用者が吸入を停止した後の吸入器を示す。シャーシばね33は、フラップ32を付勢してその初期位置に戻すが、この段階ではラッチ35を戻すばね又は他の付勢手段がないので、ラッチ35は係止解除位置に留まる。ラッチ35をリセットするために、ラッチ35の端部は、フラップ32の上縁部の上を越えて押し戻され、ここで、フラップ32はその阻止位置に戻っている。これは、キャップ14を閉鎖することによって達成され、その結果、キャップ14の支え面15が回転し、キャニスタ駆動部22の足23を上向きに押し、キャニスタ駆動部22をその荷重印加位置に向けて押し戻し、駆動部22が上向きに移動するときにばね20に荷重をかける。図6E及び図6Fにおける段階で示すように、キャニスタ駆動部22の上向きの移動が、キャニスタ駆動部22のレッジ21とラッチ35のリセット用突起すなわちレッジ38との係合によってラッチ35をその係止位置に押し戻す(図6Hにおいて最も良く分かる)。レッジ21がリセット用レッジ38を上向きに押すと、ラッチ35が回転し、フラップ32の上部を越えて押し戻される。図6Fに示すように、ラッチ35がフラップ32を押して通り過ぎると、ラッチ35にかかる力が、シャーシばね33の付勢を克服するのに十分にフラップ32を押すので、フラップ32が回転して一時的に非阻止位置又は回転位置に戻る。ラッチ35がフラップ32を通過するとすぐに、フラップ32は、シャーシばね33の力の下で回転してフラップ32の阻止位置に戻る。(図6Aに示すように)その後の吸入のためにマウスピース16を露出させるためにキャップ14を回転させて開放位置に戻すまで、この閉鎖位置にあるばね20の荷重が、キャニスタ駆動部22の足23とキャップ14の支え面15との当接によって保持されているので、キャニスタ駆動部22のレッジ21がラッチ35の棚に載っていないが、ラッチ35はその係止位置に戻される。
【0059】
上述のように、いくつかの構成では、吸入器10は、ラッチ35及び/又はフラップ32を作動させて用量の分与を起動するように、使用者によって、例えば指で押されることによって手動で操作可能なボタン30bを含む。図7A図7B及び図8に示すボタン構成は、ごみなどが吸入器10に侵入し得る開口を有しない手動で作動可能なボタン30bを提供するので、それ自体で有利であると考えられる。図7Aに見られるように、外ハウジングすなわちシェル12は、同時成形部分13と一体に形成されたボタン30bを有する同時成形部分13を含む。同時成形部分13は、ラッチ35及び/又はフラップ32を押圧してフラップ32を回転(非阻止)位置まで回転させるためにボタン30bが内側に押し込まれることを可能にする、ゴム又はシリコーン又は他の適切なポリマーなどの、可撓性材料から作られる。この構成は、同時成形部分13がシェル12の内部表面から突出して流路を封止するのに役立つ軟質シール39を形成するので、さらに有利である。これは、図7B及び図8において最も明確に分かる。
【0060】
上述のように、本発明の実施形態の吸入器10は、薬剤のキャニスタ50を受け入れるためのキャニスタ駆動部22を含む。図9は、弁軸53がマウスピース16に挿入されたキャニスタ50を示す。キャニスタ50は、有利には、本発明の吸入器10と共に使用するために構成されており、複数回投与に対する改善された性能のために、弁軸53を取り囲む乾燥パック61を圧着するアルミニウム製カラー55を備えている。Oリング57はカラー55を封止する。
【0061】
吸入器10の動作中に、特にキャニスタ駆動部22によってキャニスタ50を下向きに駆動して薬剤用量を分与する間に、キャニスタ50の軸線に平行な角度以外の角度で弁軸54が押し込まれることを回避するために、キャニスタ50をマウスピース16に対して可能な限り正確に整列させることが望ましい。弁軸54がマウスピース16内に保持される位置に対してキャニスタ50が少しでも傾斜している場合、この傾斜は、軸54に対するキャニスタの押し込み及び/又は弁がリセットするのにかかる時間に悪影響を及ぼす可能性があり、投与に影響を及ぼす可能性があることが考えられる。それゆえ、図10A及び図10Bに示すように、いくつかの構成の吸入器10は、キャニスタ50がキャニスタ駆動部22によって作動位置に駆動されたとき及び/又はキャニスタ50が静止位置に戻ったときなどに、キャニスタ駆動部22内に受け入れられるキャニスタ50の位置決めを制御するための少なくとも1つの整列ガイド90a、90b、90c、90dを含む。キャニスタ50を運動中に案内することによって、キャニスタ50のより良好な整列が確実に行われ、より信頼性の高い投与及び/又はリセットが達成されてもよい。
【0062】
図10A及び図10Bに示すように、いくつかの構成では、キャニスタ駆動部22と一体に形成された複数の整列ガイド90a、90b、90c、90dが提供される。この構成は、キャニスタ駆動部22が、駆動されるときのキャニスタ50の整列を確実にするだけでなく、キャニスタ50を駆動するので、特に有利であると考えられる。図示の実施形態では、整列ガイド90a、90b、90c、90dは、協働して、キャニスタ駆動部22内に受け入れられたキャニスタ50を部分的に取り囲む。したがって、整列ガイド90a、90b、90c、90dは、キャニスタ50の周囲に部分的な円周リングを実質的に形成する。他の構成では、整列ガイド90a、90b、90c、90dは、キャニスタ50の周囲に完全な円周リングを実質的に形成する。図示の構成では、キャニスタ駆動部22は、前側における2つの対向する整列ガイド90a、90bと後側における2つの対向する整列ガイド90c、90dとを含み、したがって、4つの部分を有する部分的な円周リングを形成する。より少数又は多数の整列ガイドの他の組み合わせも想定される。そのような構成は、整列ガイド90a、90b、90c、90dが小さく、いずれかの方向へのキャニスタ50の移動時にキャニスタ50を支持又は案内するように配置されるので、吸入器10の重量を大幅に増加させることなくキャニスタ50が整列した状態に保持されるため、特に有利であると考えられる。
【0063】
当技術分野で周知のように、多くの吸入器10は、吸入器10からどれくらい用量が分与されたか(ひいてはどれくらい用量が残っているか)を判断し、そのような用量の計数を使用者に対して行うための機構を有することが望ましい。図11は、本発明の実施形態による計数機構40を示す。先行技術の機構と同様に、計数器40は、計数器シャーシ41と、十位ホイール43と、十位ホイール43とユニットホイール44との間に中間ホイール45を有するユニットホイール44と、必要に応じてホイールを回転させるための押し子42とを含む。しかしながら、図11の計数器の押し子42は、図13に示すように、キャニスタ駆動部22によって直接駆動されるのに対して、先行技術の計数器は、例えば、図12に示すように、キャニスタ駆動部のヨーク22上で旋回するレバー34aによって、間接的に駆動される。これによって、先行技術と比較して計数器40が簡略化され、信頼性及び堅牢性が改善される可能性があり、計数器40が小型化され、したがって吸入器10全体が小型化される可能性がある。先行技術の計数器40からのさらなる改善は、図14に示すように、ホイール、特にユニットホイール44の正回転と逆回転の両方を制御するための単一の構成要素、ばねアーム46が設けられたことである。これにより、より小型且つ薄型の計数器40を提供できるようになる。
【0064】
それゆえ、本発明の実施形態による吸入器は、先行技術の欠点の少なくとも1つに対処し、小型で堅牢な起動機構及び/又はキャニスタ案内手段を提供し、吸入器の性能並びにデバイスの寿命全体にわたる用量間のその信頼性及び均一性を向上させる。
図1A-B】
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】