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特表2022-553526電気駆動システムのための2速変速機、およびそのような2速変速機を含む駆動システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-23
(54)【発明の名称】電気駆動システムのための2速変速機、およびそのような2速変速機を含む駆動システム
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/66 20060101AFI20221216BHJP
   F16D 23/06 20060101ALI20221216BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
F16H3/66
F16D23/06 D
B60L15/20 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522810
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2020079280
(87)【国際公開番号】W WO2021074428
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】102019128160.1
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522152061
【氏名又は名称】ホーン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】ホーン べルント ロバート
【テーマコード(参考)】
3J056
3J528
5H125
【Fターム(参考)】
3J056AA03
3J056AA12
3J056BE07
3J056CA03
3J056CC03
3J056DA04
3J056GA05
3J056GA12
3J528EA21
3J528EA25
3J528EB63
3J528EB67
3J528EB74
3J528FB03
3J528FC13
3J528FC24
3J528FC42
3J528FD11
3J528GA08
3J528HA23
3J528HB06
5H125AA01
5H125BA00
5H125BE05
5H125EE08
(57)【要約】
【解決手段】2つの同期ドグクラッチを有するコンパクトで高速変速の2速変速機であって、第1および第2のギヤを係合させるための摺動スリーブが単一のアクチュエータを使用して作動可能であり、実質的に負荷遮断のない変速が同期における摩擦係合を介して実現される。無負荷遮断シフトのために構成されたこのような2速変速機を有する駆動システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の電気駆動システムのための変速機であって、
ハウジング(G)と、
前記ハウジング(G)において回転軸(X)を中心として回転可能に支持された入力シャフト(E)と、
前記ハウジング(G)において前記回転軸(X)を中心として回転可能に支持された出力シャフト(A)と、
前記回転軸(X)と同軸上に隣接して配置され、互いにギヤ比が異なる第1の遊星変速機(10)および第2の遊星変速機(12)であって、前記第1の遊星変速機(10)および前記第2の遊星変速機(12)が、共通の遊星キャリア(S)を含み、前記共通の遊星キャリアが、前記回転軸(X)を中心として回転可能に前記ハウジング(G)に支持され、前記出力シャフト(A)に接続され、前記第1の遊星変速機(10)が、前記回転軸(X)を中心として回転可能に前記ハウジング(G)に支持された第1のリングギヤ(14)を含み、前記第2の遊星変速機(12)が、前記回転軸(X)を中心として回転可能に前記ハウジング(G)に支持された第2のリングギヤ(16)を含む、第1の遊星変速機および第2の遊星変速機と、
前記第1のリングギヤ(14)または前記第2のリングギヤ(16)が前記ハウジング(G)に選択的にロック可能であるロック装置(2)であって、前記第1のリングギヤ(14)がロックされると、第1のギヤ比で前記入力シャフト(E)から前記第1の遊星変速機(10)を介して前記出力シャフト(A)にトルクが伝達可能であり、前記第2のリングギヤ(16)がロックされると、第2のギヤ比で前記入力シャフト(E)から前記第2の遊星変速機(12)を介して前記出力シャフト(A)にトルクが伝達可能である、ロック装置(2)と、を含み、
前記ロック装置(2)が、
前記回転軸(X)に沿って軸方向に移動可能でありながら、前記ハウジング(G)に対して回転不能に前記ハウジング(G)内に配置され、内部ギヤ装置(20)を有する摺動スリーブ(18)と、
前記第1のリングギヤ(14)に堅固に接続されるか、または前記第1のリングギヤと一体的に形成され、前記摺動スリーブ(18)を前記回転軸(X)に沿って第1の位置に移動させることによって前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)と係合することができるように構成された外部ギヤ装置(24)を有する第1のシンクロナイザー本体(22)、および前記第2のリングギヤ(16)に堅固に接続されるか、または前記第2のリングギヤと一体的に形成され、前記摺動スリーブ(18)を前記回転軸(X)に沿って第2の位置に移動させることによって前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)と係合することができるように構成された外部ギヤ装置(28)を有する第2のシンクロナイザー本体(26)と、
アクチュエータを有する変位装置(46)であって、それを使用して前記摺動スリーブ(18)が前記第1の位置と前記第2の位置との間で前記回転軸(X)に沿って変位可能である、変位装置と、を含み、
前記第1のシンクロナイザー本体(22)が、前記第2のシンクロナイザー本体(26)に面する側に摩擦領域(30)を有し、前記第2のシンクロナイザー本体(26)が、前記第1のシンクロナイザー本体(22)に面する側に摩擦領域(32)を有し、
第1のシンクロナイザーリング(34)が、前記アクチュエータを使用して前記摺動スリーブ(18)を前記回転軸(X)に沿って移動させることによって前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)と係合することができるように構成された外部ギヤ装置(36)を有し、前記第1のシンクロナイザー本体(22)の前記摩擦領域(30)に当接するように構成された摩擦領域(38)を有して設けられ、
第2のシンクロナイザーリング(40)が、前記アクチュエータを使用して前記摺動スリーブ(18)を前記回転軸(X)に沿って移動させることによって前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)と係合することができるように構成された外部ギヤ装置(42)を有し、前記第2のシンクロナイザー本体(26)の前記摩擦領域(32)に当接するように構成された摩擦領域(44)を有して設けられ、
前記ロック装置が、前記回転軸(X)に沿った移動において、前記摺動スリーブ(18)が、前記アクチュエータを使用して、前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)が前記2つのシンクロナイザー本体(22、26)の前記外部ギヤ装置(24、28)と係合しておらず、同時に、前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)が双方のシンクロナイザーリングの前記外部ギヤ装置(36、42)と少なくとも部分的に係合しており、好ましくは、対応する前記シンクロナイザー本体(22、26)が前記一方のシンクロナイザーリング(34、40)との前記摩擦係合によって制動可能であるように、前記摺動スリーブ(18)によって前記回転軸(X)の方向に前記シンクロナイザーリング(34、40)の一方に力が加えられる同期位置になることができるように構成され、
前記第2のシンクロナイザーリング(40)の前記摩擦領域(44)および前記第2のシンクロナイザー本体(26)の前記摩擦領域(32)が、それらのトルク容量が、前記摺動スリーブ(18)が前記第1の位置から前記第2の位置に移動するときにトルクが前記同期位置において前記出力シャフト(A)に伝達可能であるのに十分に高いように寸法決めされる、変速機。
【請求項2】
前記摺動スリーブ(18)が、前記アクチュエータを使用して、前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)が前記シンクロナイザー本体(22、26)の前記外部ギヤ装置(24、28)と係合しておらず、同時に、前記シンクロナイザーリング(34,40)のうちの1つのみの前記外部ギヤ装置(36,42)と係合する中立位置になることができるように、前記ロック装置(2)がさらに構成されている、
請求項1に記載の変速機。
【請求項3】
前記ロック装置(2)が、前記アクチュエータを使用して、前記摺動スリーブ(18)が、前記回転軸(X)に沿った移動において、前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)が前記2つのシンクロナイザー本体(22、26)の前記外部ギヤ装置(24、28)と係合しておらず、同時に前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)が前記シンクロナイザーリング(34、40)の一方のみの前記外部ギヤ装置(36、42)と係合し、同時に前記摺動スリーブ(18)が、前記摺動スリーブ(18)に対して回転不能に設けられたロック支柱(39)を前記シンクロナイザーリング(34、40)の他方に対して軸方向に当接させ、前記シンクロナイザーリング(34、40)の他方を対応するシンクロナイザー本体に対して押圧し、それによって他方のシンクロナイザーリングが前記摺動スリーブに対して相対的に回転してロック位置になり、前記摺動スリーブ(18)および前記他方のシンクロナイザーリングの前記ギヤ装置が、互いに対して相対的に回転される、前同期位置になることができるように構成されている、
請求項1または2に記載の変速機。
【請求項4】
前記ロック装置が、前記第1の遊星変速機(10)を介したトルク伝達が、前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)が前記第1のシンクロナイザー本体(22)の前記外部ギヤ装置(24)と係合すると同時に前記第2のシンクロナイザー本体(26)および前記第2のシンクロナイザーリング(40)の前記外部ギヤ装置(28、42)と係合しない第1のギヤ位置に前記アクチュエータを使用して前記回転軸(X)に沿って前記摺動スリーブをもたらすことによって実現され、前記第2の遊星変速機(12)を介したトルク伝達が、前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)が前記第2のシンクロナイザー本体(26)の前記外部ギヤ装置(28)と係合し、同時に、前記第1のシンクロナイザー本体(22)および前記第1のシンクロナイザーリング(34)の前記外部ギヤ装置(24、36)と係合しない第2のギヤ位置に前記アクチュエータを使用して前記回転軸(X)に沿って前記摺動スリーブ(18)をもたらすことによって実現されるように構成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項5】
前記回転軸(X)の方向における前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)の幅が、前記回転軸(X)の方向における前記シンクロナイザーリング(34、40)の前記外部ギヤ装置(36、42)の間隔よりも大きく、前記回転軸(X)の方向におけるそれぞれの他方の前記シンクロナイザーリング(40、34)の前記外部ギヤ装置に対する前記シンクロナイザー本体(22、26)の一方の前記外部ギヤ装置(24、28)の距離よりも小さい、
請求項1から4のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項6】
前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)の直径が、前記より小さいリングギヤ(14、16)の前記内部ギヤ装置の直径よりも大きい、すなわち、好ましくは、前記リングギヤの壁厚に対して前記内部ギヤ装置のルート円よりも大きい、
請求項1から5のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項7】
前記第1の遊星変速機(10)が、前記入力シャフト(E)に一体回転可能に設けられた第1の太陽ギヤ(1´)と、前記遊星キャリア(S)に回転可能に支持され、前記第1の太陽ギヤ(1´)および前記第1のリングギヤ(14)に噛合する第1の遊星ギヤ(6´)と、を含み、
前記第2の遊星変速機(12)が、前記入力シャフト(E)に一体回転可能に設けられた第2の太陽ギヤ(1)と、前記遊星キャリア(S)に回転可能に支持され、前記第2の太陽ギヤ(1)および前記第2のリングギヤ(16)に噛合する第2の遊星ギヤ(6)と、を含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項8】
前記第1の遊星変速機(10)が、前記遊星キャリア(S)に回転可能に支持され、前記第1のリングギヤ(14)と噛合する第1の遊星ギヤ(6´)を含み、前記第2の遊星変速機(12)が、前記遊星キャリア(S)に回転可能に支持され、前記第2のリングギヤ(16)と噛合する第2の遊星ギヤ(6)を含み、
前記第1の遊星ギヤ(6´)および前記第2の遊星ギヤ(6)が、互いに固定的に接続され、
太陽ギヤ(1)と前記入力シャフト(E)とが一体回転するように、前記第1または第2の遊星ギヤ(6´、6)が、前記入力シャフト(E)に設けられた前記太陽ギヤ(1)と噛合し、
好ましくは、互いに固定的に接続された前記2つの遊星ギヤ(6´、6)が、一方の段のみが前記太陽ギヤ(1)と噛合する段付き遊星ギヤとして構成されている、
請求項1から6のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項9】
前記変位装置(46)が、
前記アクチュエータ(48)によって駆動可能なウォームシャフト(50)と、
前記摺動スリーブ(18)と同軸上に配置され、前記回転軸(X)に垂直な径方向において前記回転軸(X)から見て、前記摺動スリーブ(18)がウォームギヤ(52)と少なくとも部分的に重なり且つ前記ウォームシャフト(50)によって前記回転軸(X)を中心として回転可能であるように、前記摺動スリーブに対して外周側に配置されたウォームギヤ(52)と、
前記摺動スリーブ(18)に設けられ、径方向外側に突出するガイドピン(56)と、を含み、
前記ウォームギヤ(52)には、前記ガイドピン(56)を受け入れるためのガイド溝(54)が設けられ、前記ガイド溝(56)が、前記ウォームギヤ(52)が角度(β)だけ回転する間に、距離(x)に沿った前記摺動スリーブ(18)の変位が生じるように、周方向に対して角度(α)で延在し、
前記アクチュエータが、電気モータとして構成されている、
請求項1から8のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項10】
前記摺動スリーブ(18)が、その外側に外部ギヤ装置を有し、この外部ギヤ装置を使用して、前記ハウジング(G)内の内部ギヤ装置において前記回転軸(X)に沿って案内可能である、
請求項1から9のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項11】
前記リングギヤ(14、16)が、前記遊星ギヤ(6´、6)上に径方向に支持され、軸受が、前記リングギヤの間、および互いに反対側を向く側面と前記ハウジングとの間に軸方向支持のためにそれぞれ配置される、
請求項1から10のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項12】
前記入力シャフト(E)が、軸受を介して前記遊星キャリア(S)内に支持され、または
前記遊星キャリア(S)が、前記入力シャフト(E)上に支持される、
請求項1から11のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項13】
前記同期位置において、前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)が、前記シンクロナイザーリング(40)の一方の前記外部ギヤ装置(42)と部分的に係合して、前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)およびこのシンクロナイザーリング(40)の前記外部ギヤ装置(42)の歯頭および歯トラフが互いに対してある角度だけ相対的に回転するように、このシンクロナイザーリング(40)に軸方向力を加え、前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)および前記他方のシンクロナイザーリング(34)の前記外部ギヤ装置(36)の歯頭および歯トラフが互いに対して相対的に回転されないように、前記内部ギヤ装置(20)の前記歯頭および歯トラフが前記他方のシンクロナイザーリング(34)の前記外部ギヤ装置(36)と同時に係合し、それにより、この歯の係合を介してこの他方のシンクロナイザーリング(34)に軸方向力が加えられない、
請求項1から12のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項14】
変速機であって、
ハウジング(G)と、
ロック装置(2)と、を含み、
前記ロック装置(2)が、
前記ハウジング内に移動軸に沿って移動可能に支持され、中心軸が前記移動軸と同軸に設けられた内部ギヤ装置(20)を有する摺動スリーブ(18)と、
前記摺動スリーブ(18)と同軸に配置され、前記摺動スリーブ(18)を前記移動軸に沿って移動させることによって前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)と係合することができる外部ギヤ装置(24)を有し、好ましくは前記第1のシンクロナイザー本体(22)の前記外部ギヤ装置(24)に対して前記移動軸に向かって一方側に向かって径方向内側に軸方向に形成された摩擦領域(30)を有する、第1のシンクロナイザー本体(22)と、
前記摺動スリーブ(18)と同軸に、且つ前記第1のシンクロナイザー本体(22)の前記摩擦領域(30)の側に配置され、前記摺動スリーブ(18)を前記移動軸に沿って移動させることによって前記内部ギヤ装置(20)と係合することができる外部ギヤ装置(28)を有し、好ましくは径方向内側に形成され、且つ前記第1のシンクロナイザー本体(22)の側で前記第2のシンクロナイザー本体(26)の前記外部ギヤ装置(28)に対して軸方向に変位する摩擦領域(32)を有する、第2のシンクロナイザー本体(26)と、
前記摺動スリーブ(18)を前記移動軸に沿って移動させることによって前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)と係合することができる外部ギヤ装置(36)を有し、前記第1のシンクロナイザー本体(22)の前記摩擦領域(30)に当接するように構成された摩擦領域(38)を有する第1のシンクロナイザーリング(36)と、
前記摺動スリーブ(18)を前記移動軸に沿って移動させることによって前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)と係合することができる外部ギヤ装置(42)を有し、前記第2のシンクロナイザー本体の前記摩擦領域(32)に当接するように構成された摩擦領域(44)を有する第2のシンクロナイザーリング(40)と、を含み、
前記ロック装置が、
前記摺動スリーブ(18)が、前記摺動スリーブの前記内部ギヤ装置(20)が前記第1のシンクロナイザー本体(22)の前記外部ギヤ装置(24)と係合しておらず、前記第2のシンクロナイザー本体(26)の前記外部ギヤ装置(28)と係合しておらず、前記シンクロナイザーリング(34、40)の一方のみの前記外部ギヤ装置(36、42)と同時に係合する中立位置になることができ、
前記回転軸(X)に沿った移動において、前記摺動スリーブ(18)が、前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)が前記2つのシンクロナイザー本体(22、26)の前記外部ギヤ装置(24、28)と係合しておらず、同時に前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)が前記シンクロナイザーリング(40)のうちの一方の前記外部ギヤ装置(42)と部分的に係合して、前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)およびこのシンクロナイザーリング(40)の前記外部ギヤ装置(42)の歯頭および歯トラフが、対応する前記シンクロナイザー本体(26)が前記摩擦係合を介してこのシンクロナイザーリング(40)と同期可能であるように互いに対してある角度だけ相対的に回転されるように、前記シンクロナイザーリング(40)に軸方向力を加える同期位置になることができ、前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)および前記他方のシンクロナイザーリング(34)の前記外部ギヤ装置(36)の前記歯頭および歯トラフが互いに対して相対的に回転されないように、前記他方のシンクロナイザーリング(34)の前記外部ギヤ装置(36)と係合しており、それにより、この歯の係合を介してこの他方のシンクロナイザーリング(34)に軸方向力が加えられないように構成されている、変速機。
【請求項15】
前記回転軸(X)に沿った移動において、前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)が前記2つのシンクロナイザー本体(22、26)の前記外部ギヤ装置(24、28)と係合しておらず、同時に、前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)が前記シンクロナイザーリング(34、40)の一方のみの前記外部ギヤ装置(36、42)と係合しており、同時に、前記摺動スリーブ(18)が、前記摺動スリーブ(18)に対して回転不能に設けられたロック支柱(39)を前記シンクロナイザーリング(34、40)の他方に対して軸方向に当接させ、前記シンクロナイザーリング(34、40)の他方を前記対応するシンクロナイザー本体に対して押圧し、それによって、前記他方のシンクロナイザーリングが前記摺動スリーブ(18)に対して相対的に回転して、前記摺動スリーブ(18)の前記ギヤ装置と前記他方のシンクロナイザーリングの前記ギヤ装置とが、相対的に回転するロック位置になるように、前記摺動スリーブ(18)が前同期位置になる
ようにさらに構成されている、請求項14に記載の変速機。
【請求項16】
請求項5、6、および10の少なくとも一項の特性づける特徴によってさらに展開される、請求項14または15のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項17】
前記摺動スリーブ(18)を前記回転軸(X)に沿って変位させることができるアクチュエータを有する変位装置(46)
をさらに含む、請求項14から16のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項18】
前記ハウジング(G)において回転軸(X)を中心として回転可能に支持された入力シャフト(E)と、
前記ハウジング(G)において前記回転軸(X)を中心として回転可能に支持された出力シャフト(A)と、
前記回転軸(X)と同軸上に隣接して配置され、互いにギヤ比が異なる第1の遊星変速機(10)および第2の遊星変速機(12)であって、前記第1の遊星変速機(10)および前記第2の遊星変速機(12)が、共通の遊星キャリア(S)を有し、前記共通の遊星キャリア(S)が、前記回転軸(X)を中心として回転可能に前記ハウジング(G)に支持され、前記出力シャフト(A)に接続され、前記第1の遊星変速機(10)が、前記回転軸(X)を中心として回転可能に前記ハウジング(G)に支持された第1のリングギヤ(14)を含み、前記第2の遊星変速機(12)が、前記回転軸(X)を中心として回転可能に前記ハウジング(G)に支持された第2のリングギヤ(16)を含む、第1の遊星変速機および第2の遊星変速機と、をさらに含み、
前記ロック装置(2)を使用して、前記第1のリングギヤ(14)または前記第2のリングギヤ(16)が前記ハウジング(G)に選択的にロック可能であり、それにより、前記第1のリングギヤ(14)がロックされているとき、第1のギヤ比で前記入力シャフト(E)から前記第1の遊星変速機(10)を介して前記出力シャフト(A)にトルクが伝達可能であり、前記第2のリングギヤ(16)がロックされているとき、第2のギヤ比で前記入力シャフト(E)から前記第2の遊星変速機(12)を介して前記出力シャフト(A)にトルクが伝達可能である、
請求項14から17のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項19】
請求項4および7、8、9、11、および12の少なくとも一項の特性づける特徴によってさらに展開される、請求項17に従属する請求項18に記載の変速機。
【請求項20】
前記摺動スリーブ(18)の前記内部ギヤ装置(20)の幅が、前記シンクロナイザー本体(22、26)のうちの1つの前記外部ギヤ装置(24、28)の、それぞれの対向するシンクロナイザーリング(40、34)までの距離よりも1%から10%小さい、請求項1から19のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項21】
前記第1のギヤ比が、前記第2のギヤ比よりも大きい、請求項1から20のいずれか一項に記載の変速機。
【請求項22】
車両の電気駆動システムであって、
電気駆動機械(EM)と、
請求項1から21のいずれか一項に記載の変速機と、を含み、
前記駆動システムが、前記摺動スリーブ(18)が前記第1の位置から前記第2の位置に移動されるシフトプロセスにおいて、前記第2のシンクロナイザーリング(40)の前記摩擦領域(44)が前記第2のシンクロナイザー本体(26)の前記摩擦領域(32)に当接することを介して、前記同期位置の前記摩擦領域(44)と前記摩擦領域(32)との間でトルクが伝達可能であり、このトルクが、最大回転速度(nmax)において前記電気駆動機械(EM)によって最大に送達可能な前記電気駆動機械(EM)の最大回転速度トルクの30%よりも大きい、ように構成されている、電気駆動システム。
【請求項23】
摺動スリーブ(18)が前記第1の位置から前記第2の位置に移動されるシフトプロセスにおいて、前記摩擦領域(44、32)を介して前記同期位置において伝達されるトルクが実質的に一定のままであり、または
前記摺動スリーブ(18)が前記第1の位置から前記第2の位置に移動する前記シフトプロセスにおいて、前記摩擦領域(44、32)を介して前記同期位置において伝達される前記トルクが、前記同期中に前記出力シャフト(A)において一定の動力が伝達されるように、および/または前記同期中に前記出力シャフト(A)において伝達される前記動力が、前記摺動スリーブ(18)が前記第1の位置から前記第2の位置に移動する直前に前記出力シャフト(A)において出力されていた前記動力に対応するように、前記電気駆動機械の回転速度の低下に伴って増加される、
請求項22に記載の電気駆動システム。
【請求項24】
前記摺動スリーブ(18)が前記第1の位置から前記第2の位置に移動される前記シフトプロセスが、前記シフト中の前記出力シャフト(A)の実質的に一定の回転速度において、前記シフト後の前記電気駆動機械の回転速度が前記一定の出力範囲に収まるように設定されたシフト回転速度でトリガされる、
請求項22または23に記載の電気駆動システム。
【請求項25】
前記摺動スリーブ(18)が前記第1の位置から前記第2の位置に移動される前記シフトプロセスが、前記電気駆動機械(EM)の最大回転速度(nmax)でトリガされる、
請求項22から24のいずれか一項に記載の電気駆動システム。
【請求項26】
前記摩擦領域(44、32)を介して前記同期位置において伝達される前記トルクが、前記最大回転速度トルクに対応し、および/または前記同期中に一定のままであり、その結果、前記シフトプロセスの直前に前記出力シャフト(A)において供給される動力が、前記シフトプロセス中に前記電気駆動機械の回転速度が低下するにつれてゆっくりとしか連続的に低下しない、または
前記摩擦領域(44、32)を介して前記同期位置において伝達される前記トルクが、前記最大回転速度トルクよりも少なくとも一時的に低くもしくは高く、および/または前記同期中に減少もしくは増加し、その結果、前記シフトプロセスの直前に前記出力シャフト(A)において供給される動力が、前記同期中に一定のままであるか、または連続的にのみ変化し、不規則に変化しない、
請求項22から25のいずれか一項に記載の電気駆動システム。
【請求項27】
前記駆動システムが、前記摺動スリーブ(18)が前記第1の位置から前記第2の位置へ移動する間、前記出力シャフトにおいて利用可能なトルクが方向を変えず、推進力が連続的に伝達可能であるように構成されている、
請求項22から26のいずれか一項に記載の電気駆動システム。
【請求項28】
前記駆動システムが、前記摺動スリーブ(18)が前記第1の位置から前記第2の位置へ移動する間、前記電気駆動機械が前記摩擦領域(44、32)による制動に加えて前記同期位置において電気的に制動されるように構成されている、
請求項22から27のいずれか一項に記載の電気駆動システム。
【請求項29】
前記摺動スリーブ(18)が前記第1の位置から前記第2の位置へ移動されるシフトプロセスにおいて、前記第2のリングギヤ(16)のトルクが前記摩擦領域(44、32)によって前記同期位置に支持され、その結果、負荷遮断を低減または防止するために前記出力シャフト(A)にトルクがもたらされる、
請求項22から28のいずれか一項に記載の電気駆動システム。
【請求項30】
前記摺動スリーブ(18)が前記第1の位置から前記第2の位置へ移動する間の前記シフトプロセスにおいて、前記同期位置において前記第2のリングギヤ(16)に作用するトルクが、前記アクチュエータによって前記摺動スリーブに加えられる軸方向力に依存する、
請求項22から29のいずれか一項に記載の電気駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気駆動システムのための2速変速機、およびそのような2速変速機を有する電気駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動車両の駆動システムにおいて通常使用されるような電気モータの特性は、電気駆動機械が停止状態から特定の公称回転速度まで高いほぼ一定のトルクを出力し、トルクが、公称回転速度を超える回転速度で回転速度が増加するにつれて著しく低下するということである。電気モータの出力は、回転速度の増加に対応して増加し、通常、公称回転速度の範囲内のその最高点に到達する。公称回転速度を超えて最大回転速度までの回転速度においても、公称回転速度の範囲におけるこの最大出力は、最大回転速度に到達するまでは大きく維持されるか、または僅かしか減少しない。車両用の電気駆動システムに使用される電気モータは、通常、車両の所定の最大速度で、電気モータがその最大回転速度の範囲内で動作し、そこでもほぼ最大の動力を供給するように設計される。この目的のために必要とされる、電気モータの回転速度とそれによって駆動される車輪との間のギヤ比は、特に例えば勾配において、十分な加速または十分なトルクでの始動をもたらすことができる。加えて、ギヤ比の変更は、電気モータがそれによってより良好な効率で動作する場合、通常の駆動動作においても有利であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2013 225 519号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽ギヤを形成する入力シャフトを有する遊星変速機と、互いに固定して接続された第1の組の遊星ギヤおよび第2の組の遊星ギヤを担持する遊星キャリアと、第1の組の遊星ギヤに関連する第1のリングギヤと、第2の組の遊星ギヤに関連する第2のリングギヤとを含む電気自動車用の駆動システムが、独国特許出願公開第10 2013 225 519号明細書から知られている。リングギヤのそれぞれは、1つのロック手段によってロックされ、それによって2つの異なるギヤ比が設定される。本開示の特別な特徴は、双方のリングギヤを同時にロックすることによって、追加の構成要素なしでパーキングロックが実現される2速変速機が提案されることである。この目的のために、2つのリングギヤのための2つのロック手段が互いに独立して作動可能であることが必要である。したがって、ロック手段には2つの独立したアクチュエータが必要である。
【0005】
本発明の根底にある目的は、コンパクトで簡単な構造で、電気モータと被駆動車輪との間の2つの迅速にシフト可能なギヤ比段を可能にする、車両用の電気駆動システムのための2速変速機を提供することであり、第1のギヤから第2のギヤへのシフトは、少なくとも僅かな負荷遮断のみで行われる。さらにまた、それを使用して少なくとも僅かな負荷遮断のみで迅速に第1のギヤから第2のギヤにシフトされることができ、コンパクトである、対応する電気駆動システムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1または14に記載の変速機によって達成される。さらにまた、この目的は、請求項22に記載の電気駆動システムによって達成される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0007】
摺動スリーブが双方向に移動可能である単一のアクチュエータのみを設けることが好ましいため、制御の複雑さ、誤差に対する感受性、設置スペース、および最終的にはコストが低減する。あるいは、複数のアクチュエータが設けられることができる。
【0008】
本明細書に開示される変速機では、好ましくは、2つのリングギヤの一方のみが、ロック装置を使用してハウジングにそれぞれロック可能であり、すなわち、好ましくは、双方のリングギヤがロック装置を使用して同時にロック可能ではない。ロックは、同期した歯の係合によって行われることが好ましい。ロック装置は、同期クラッチ(同期ドグクラッチ)を含むことが好ましい。同期のための摩擦領域は、好ましくは、それらのトルク容量が、シフト段階または同期段階(例えば、1→2へのシフト中の入力回転速度の減少)の間でさえも、出力において、好ましくは中断することなく、または僅かな中断/減少だけで、実質的に一定のトルクを維持するのに十分高いように十分に大きく寸法決めされる。したがって、2つのリングギヤに直接接続されたトラック変速機からの同期クラッチが使用されることが好ましい。同期の摩擦領域は、好ましくは、2つのリングギヤのうちの小さい方の直径よりも大きい直径を有する。
【0009】
さらに、変速機は、非常にコンパクトに構成されることができ、利用可能な設置スペースまたは他の要件に応じて、例えば、車両の駆動軸に平行に、駆動シャフトに沿って、または車両長手方向に配置されることができる。
【0010】
ロック装置での使用に適したギヤ形状は、好ましくは、従来のように構成された(面取りされた歯を有する/有しない)同期クラッチのものに対応する。したがって、例えば、摺動スリーブの内部ギヤ装置およびシンクロナイザーリングの外部ギヤ装置、ならびに任意にシンクロナイザー本体は、平歯化され、一般的に知られている面取りされた歯が設けられる。「面取りされた歯」とは、特に、ここでは、歯の端部が、好ましくはそれぞれ軸方向に点に収束するか、または三角形の形状に収束し、それにより、外部ギヤ装置と内部ギヤ装置との係合の第1の段階において、2つの傾斜面が互いに対向することができることを意味する。軸方向力は、同時のトルク伝達によってこれらの傾斜面を介して伝達されることができる。摺動スリーブに対するシンクロナイザーリングのこの相対回転位置は、ロック位置とも呼ばれる。円錐上のトルクが十分に低い場合にのみ、軸方向力がさらに維持されている間に傾斜面が互いに滑り落ち、これは、歯の位置合わせをもたらし、この歯は、係合の第2の段階において最終的にシンクロナイザー本体の面取りされた歯に完全に係合する(完全係合位置)。摺動スリーブに対するシンクロナイザーリングのこの相対回転位置は、解放位置とも呼ばれる。
【0011】
摺動スリーブの中立位置では、一方ではシンクロナイザー本体のいずれも摺動スリーブと係合しておらず、他方では摺動スリーブと係合しているシンクロナイザーリングが軸方向力を実質的に受けずに保持され、その結果、摩擦領域を介してトルクが実質的にもたらされない(制動がもたらされない)ため、リングギヤのいずれもハウジングに対してロックされないことが好ましい。したがって、それによってニュートラルギヤが実現されることが好ましく、すなわち、この位置では、入力シャフトから出力シャフトにトルクが伝達されることができないことが好ましい。そのような中立位置を実現するために、摺動スリーブの内部ギヤ装置の幅は、好ましくは、自由に回転するシンクロナイザーリング(摺動スリーブと係合しておらず、好ましくは軸方向力なしに支持されるシンクロナイザーリング)の外部ギヤ装置と、この(すなわち、他方)シンクロナイザーリングに対向するシンクロナイザー本体の外部ギヤ装置との間の間隔よりも小さくなるように構成されなければならない。内部ギヤ装置の幅は、この間隔よりも公差に応じて0.01mmから0.2mm小さいことが好ましく、それにより、一方では、係合状態に位置するシンクロナイザーリングに関連付けられたシンクロナイザー本体との係合が、摺動スリーブの非常に短い移動だけで直立位置から実現可能である。特に、完全係合のために、摺動スリーブは、好ましくは、シンクロナイザー本体の歯幅に、摺動スリーブの内部ギヤ装置が中立位置にあるシンクロナイザー本体の外部ギヤ装置に対して有する(好ましくは非常に小さい)間隔を加えた距離だけ移動する必要がある。同時に、駆動中に一方のギヤから他方のギヤにシフトする間、中立位置は、非常に小さい領域でのみ形成され、ほぼ負荷遮断のないシフトを可能にする。
【0012】
本開示にかかる変速機の設計のために、車両の運転中に、第1のギヤから他方の(第2の)ギヤに、およびその逆にシフトするために、摺動スリーブの以下の追加の位置が好ましくは設定されることができる。
【0013】
(特に運転中に)第1のギヤから第2のギヤにシフトするために、摺動スリーブは、(第1のシンクロナイザー本体との係合が解除される)中立位置を超えて第1のシンクロナイザー本体との係合位置から他方のシンクロナイザー本体に向かって移動され、最終的に、第2のシンクロナイザー本体の制動またはロックが達成される同期を介して第2のシンクロナイザー本体と係合されなければならない。第2のギヤから第1のギヤへのシフトも同様に行われる。
【0014】
中立位置では、好ましくは、第1のシンクロナイザーリングのみが依然として摺動スリーブと係合しており、すなわち、第1のシンクロナイザー本体は、もはや係合しておらず、(軸方向力の欠如のために)第1のシンクロナイザーリングによってももはや制動されていない。したがって、摺動スリーブのこの位置では、第1のシンクロナイザー本体は、自由に回転し始めることができ、これにより、少なくとも最終回転速度に到達してから、第1の遊星変速機を介してこれ以上トルクが伝達されることができない。中立位置では、好ましくは、シンクロナイザー本体が係合していないため、摺動スリーブが所定の持続時間を超えて中立位置に留まる場合、負荷遮断が実際に起こり得る。滞留時間が短い場合、特に、その慣性に起因して、対応するリングギヤを有する現在解放されている第1のシンクロナイザー本体が依然として最終回転速度までの加速におけるトルクを支持するため、負荷遮断は実質的に起こらない。この時間をできるだけ短くするために、摺動スリーブの内部ギヤ装置は、好ましくはシンクロナイザーリングの外部ギヤ装置の軸方向間隔よりもシンクロナイザーリングの厚さ分だけ広い最小幅を有する。
【0015】
中立位置から第2のギヤにシフトするために、第2のシンクロナイザー本体は、停止状態にされなければならず、摺動スリーブの内部ギヤ装置とシンクロナイザー本体の外部ギヤ装置とが係合しなければならない。この目的のために、摺動スリーブによって固定シンクロナイザーリングに軸方向力が好ましくは加えられ、シンクロナイザーリングは、円錐摩擦係合を介して第2のシンクロナイザー本体に押し込まれ、それによって静止状態に制動される、すなわち同期される。停止中、摺動スリーブは、次に、シンクロナイザー本体と係合することができる(係合位置)。同期、すなわち制動が行われる摺動スリーブの位置は、同期位置と呼ばれる。
【0016】
この同期位置において第2のシンクロナイザーリングに軸方向力を加えることは、好ましくは、摺動スリーブの面取りされた歯の傾斜面(面取り面)をシンクロナイザーリングの面取りされた歯の傾斜面(面取り面)に当接させることによって行われる。したがって、摺動スリーブおよびシンクロナイザーリングの歯頭および歯トラフは、互いに対して角度だけ相対的に回転される。この相対回転位置では、シンクロナイザーリングは、摺動スリーブに対してロック位置に配置される。歯が(互いに対して相対回転せずに)位置合わせされると、実質的な軸方向力の印加または伝達は不可能である。代わりに、摺動スリーブは、その後、大きな軸方向力を伝達することなくシンクロナイザーリング上に押し込まれ、それによってシンクロナイザーリングと完全に係合する。摺動スリーブに対するシンクロナイザーリングのこの曲がった位置は、解放位置と呼ばれる。
【0017】
シンクロナイザーリングと摺動スリーブとの間のこのロック位置(相対回転)を設定するために、外周ギヤ装置に加えて、シンクロナイザーリングは、好ましくは、それぞれの他のシンクロナイザーリングに面する側に、摺動スリーブの内周側に設けられた前同期溝において、摺動スリーブの位置とは無関係に軸方向に案内される少なくとも1つの径方向外側に突出する前同期突起を有する。ここで、前同期突起および前同期溝は、ロック位置と解放位置との間の相対回転が可能であり、少なくともロック位置においてリミットストップが実現されるように構成される。摺動スリーブに対するシンクロナイザーリングのさらなる回転が防止される。
【0018】
さらに、好ましくは、シンクロナイザーリング間に保持されるロック支柱が設けられ、ロック支柱は、前同期位置において摺動スリーブによって第2のシンクロナイザーリングに対して押圧可能である。この目的のために、摺動スリーブは、内周側に、好ましくは面取りされた肩部(傾斜当接面)を有する。ロック支柱の対応する外周側肩部(傾斜当接面)は、ロック支柱に当接されることができる。回転する第2のシンクロナイザー本体に対するシンクロナイザーリングの軸方向力によって引き起こされる円錐摩擦係合により、制動トルクがシンクロナイザー本体に作用し(シンクロナイザー本体を静止状態にすることなく)、このトルクは、摺動スリーブに対してシンクロナイザーリングをロック位置に回転させる。それにより、ロック支柱は、例えばばねによってシンクロナイザーリング間に保持され、それにより、摺動スリーブが前同期位置から同期位置にさらに移動する際に、面取りされた肩部が好ましくは再び係合から外れ、好ましくはロック支柱を介して大きな軸方向力がシンクロナイザーリングにもはや作用しないようになっている。
【0019】
同期位置では、摺動スリーブは、好ましくは双方のシンクロナイザーリングと係合しており、そのうちの一方は、ロック位置にはないが、完全な歯の係合であるか、またはギヤ装置が互いに対して位置合わせされているため、軸方向力がないことが好ましい。
【0020】
シンクロナイザーリングの外部ギヤ装置(面取りされた歯の傾斜面にわたる逆相対回転)が摺動スリーブの内部リングと位置合わせされている間に、シンクロナイザー本体を静止状態に制動した後、摺動スリーブが第2のシンクロナイザー本体に向かってさらに移動されることができる。摺動スリーブのさらなる移動において、摺動スリーブは、第2のギヤが完全に係合されるように、第2のシンクロナイザー本体の外部ギヤ装置とも係合する(任意に、摺動スリーブ18およびシンクロナイザー本体の面取りされた歯によってさらに位置合わせされる)。
【0021】
第2のギヤから第1のギヤへのシフトバックは、同様の方法で行われる。ここでは、第2のシンクロナイザーリングのみが係合する対応する方法で中立位置が最初に生じ、次いで摺動スリーブの移動とともに、第1のシンクロナイザーリングとの前同期のためのロック支柱の変位が生じ、続いてシンクロナイザー本体の同期が生じる。
【0022】
同期は、好ましくは、シンクロナイザーリング上だけでなくシンクロナイザー本体上の円錐摩擦領域/摩擦面によって達成される。代替的または追加的に、追加の摩擦ライニングが軸方向端面に設けられることができる。単一円錐同期に加えて、複数の円錐形中間リングがシンクロナイザー本体とシンクロナイザーリングとの間に設けられる複数円錐同期も提供されることができる。
【0023】
1つ以上のロック支柱が設けられることができる。1つまたは好ましくは複数、好ましくは3つの前同期突起および溝を設けることができる。
【0024】
軸方向に変位可能でありながらハウジングに対して回転不能であるようにハウジング内に支持された摺動スリーブの代わりに、一般に、従来のシンクロナイザーサブアセンブリと同様に、軸方向に変位可能でありながらハウジングに対して回転不能であるように出力シャフトまたは入力シャフト上に支持された摺動スリーブが設けられることもできる。摺動スリーブを使用して、シャフトに回転自在に支持された第1のギヤまたはシャフトに回転自在に支持された第2のギヤのいずれかが、第1のギヤまたは第2のギヤを摺動スリーブに係合させることによって、摺動スリーブに対して回転不能に摺動スリーブに接続されることができる。
【0025】
シンクロナイザー本体の外部ギヤ装置は、好ましくは同じ直径を有する。しかしながら、異なる直径が代わりに使用されることができ、摺動スリーブは、それに対応して階段状に構成される。
【0026】
摺動スリーブの内部ギヤ装置の幅に関する特定の要件は、特に新たに製造された変速機に適用されることが好ましい。さらにまた、変速は、それらが摩耗限界(シンクロナイザーリングの摩擦円錐が摩耗しており、シンクロナイザーリングとシンクロナイザー本体との間の距離が、ここに描かれている初期位置よりも小さい)における変速にも適用されるように設計されることが好ましく、この場合、シンクロナイザーリングは、同期位置においてより外側に位置する。
【0027】
摺動スリーブが、摺動スリーブの内部ギヤ装置がシンクロナイザー本体の外部ギヤ装置と係合していないと同時にシンクロナイザーリングの一方のみの外部ギヤ装置と係合する中立位置への軸方向移動によって回転可能であるようにロック装置が構成されるという特徴は、好ましくは双方のシンクロナイザーリングに等しく適用される(すなわち、1つのシンクロナイザーリングを有する1つの中立位置への移動、ならびにそれぞれの他のシンクロナイザーリングを有する別の中立位置への移動)。
【0028】
また、摺動スリーブが、好ましくは中立位置において測定される、シンクロナイザーリングの外部ギヤ装置の間隔よりも大きい幅を有するという特徴に関して、摺動スリーブは、好ましくは一方のシンクロナイザーリングと係合する中立位置および他方のシンクロナイザーリングと係合する中立位置に適用される。あるいは、上記のように、特徴は、シンクロナイザーリングのうちの1つにのみ適用することができる。
【0029】
第1のギヤ比は、第2のギヤ比よりも大きいことが好ましい。
【0030】
電気駆動システムも指定され、電気駆動システムでは、第1のギヤから第2のギヤに、実質的に負荷遮断のない方法で、すなわち、負荷遮断なしでまたは僅かな負荷遮断のみでシフトされることができることが好ましい。駆動システムは、好ましくは、この実質的に負荷遮断のないシフトプロセスが、特に運転者による最大動力需要において実現されるように構成される。
【0031】
電気駆動機械(電気モータ)は、最初はモータ回転速度の増加とともにほぼ増加する動力を有し、この動力は、公称回転速度から最大回転速度まで実質的に一定(一定の動力範囲)のままである。したがって、それぞれの最大出力トルクは、回転速度に対して最初は一定であり、公称回転速度から始まって、(双曲線の形状で)最大回転速度まで回転速度をさらに増加させながら低下する。したがって、最大回転速度では、電気駆動機械は、最大回転速度での最大出力トルクである最大回転速度トルクを有する。
【0032】
電気駆動機械の最大回転速度において、第1の最大出力回転速度は、(第1のギヤにおいて駆動されることができる)第1のギヤ比を使用して実現され、第1のギヤ比は、第1の遊星変速機によって実現される。この出力回転速度をさらに増加させるために、第2のギヤにシフトすることができ、これを使用して、第2の最大出力回転速度は、最大回転速度で達成されることができる(利用可能な動力を考慮して依然として達成されることができる場合)。
【0033】
駆動システムは、最大回転速度の第1のギヤから実質的に一定のまたは僅かに増加する出力回転速度の第2のギヤへのシフト中に、第2のギヤのギヤ比が、電気駆動機械の一定の出力の範囲内に入る電気駆動機械の回転速度をもたらすようにさらに構成されることが好ましい。この回転速度は、好ましくは公称回転速度よりも大きい。第2のギヤのギヤ比は、好ましくは、一定の出力回転速度において、第2のギヤの係合後の電気駆動機械の回転速度が、公称回転速度に最大回転速度と公称回転速度との差の4分の1を加えたものよりも大きくなるように選択される。さらにより好ましくは、第2のギヤの回転速度は、公称回転速度と最大回転速度との間の中間にある。第2のギヤへのシフト後に、電気駆動機械がその最適効率の範囲で動作するように、第2のギヤのギヤ比が選択されることがさらに好ましい。
【0034】
可能な限り均一な加速度を達成するために、シフト前の電気モータから出力される動力は、好ましくは、シフト後の動力出力に実質的に対応するべきである。第1のギヤから第2のギヤへのシフト後も、電気駆動機械の回転速度が定出力域であれば、シフト後もシフト前と同じ動力が出力されることができる。唯一の相違点は、電気駆動機械がより低い回転速度で回転するが、より高いトルクで回転することである。
【0035】
変速機出力を維持するために、シフト中であっても、可能な限り一定である出力トルクを維持するために、変速機は、上記で提供されたように、一方では、好ましくは、摺動スリーブが第1のギヤの完全係合位置から第2のギヤの同期位置まで変位しなければならない距離が最小であるために、中立設定を「トラバース」するためのシフト時間が非常に短くなるように構成される。実際に、第1のギヤから第2のギヤへのシフト中、双方のリングギヤが自由に回転可能であるため、遊星変速機のうちの1つを介した電気駆動機械からの直接的なトルク伝達は、この中立位置では短時間発生しない。しかしながら、第1のリングギヤは、中立位置に到達したときにのみ解放されるため、リングギヤの慣性質量およびリングギヤの加速度によって第1の変速機に支持トルクが発生する。リングギヤのこの「加速トルク」がその方向を変えない限り、完全な負荷遮断も発生しない。しかしながら、トルクは、リングギヤの慣性質量および駆動モータの駆動シャフトのトルクの双方に依存する。駆動モータの駆動トルクが符号変化しない限り、中立位置においても推進力を発生させるために同方向(シフト前と同様)の出力トルクが発生する。摺動スリーブが第1の位置から同期位置に移動可能である速度は、中立位置が短時間だけ存在するように設定される。
【0036】
中立位置とは異なり、摺動スリーブのその後の同期位置では、電気駆動機械の駆動トルクが再び第2の遊星変速機を介して直接出力シャフトに伝達される。これにより、第2のリングギヤの制動中に摩擦領域を介して伝達されるトルクは、第2の遊星変速機を介して伝達される。これは、摩擦領域の寸法と、摩擦領域が摺動スリーブによって互いに押し付けられる接触力とに依存する。摩擦領域および摺動スリーブ、ならびに摺動スリーブを移動させるアクチュエータは、ともに摩擦クラッチを形成する。摩擦クラッチにおいて通常のように、摩擦領域のサイズ、互いに対するそれらの位置、および接触力は互いに調整される。特に、それらは、最大クラッチトルクが摩擦領域を介して持続可能に伝達可能であるように、特定の用途のために互いに調整される。このクラッチトルクは、摩擦領域間の摩擦係合中に、したがって最終的に第2のシンクロナイザー本体に伝達されるトルクである。
【0037】
最大クラッチトルクは、最大回転速度トルク(最大回転速度における最大トルク)に対応するように設定されることが好ましい。この場合、このクラッチトルクは、第2のリングギヤが0に制動されるまで同期位置において常に伝達され、それによって、同期中に伝達される動力は、最終的に、回転速度の低下に起因して僅かに減少する。同期および第2のリングギヤの係合(完全係合位置に対応する第2の位置への摺動スリーブの移動)の終わりに、電気駆動機械の出力トルクは、その後、対応するより低い回転速度で、最大回転速度トルクに対してここで増加されるトルクまで増加されることができる。上述したように、第2のギヤのギヤ比は、モータ回転速度が一定の出力範囲に位置するように選択されることが好ましいため、トルクは、好ましくは、対応するより低い回転速度で電気駆動機械の最大出力トルクまで増加されることができ、その結果、動力出力は、再び実質的にシフト前に出力された動力とすることができる。したがって、同期の領域では、運転者は、僅かな動力低下を経験するが、その後すぐに持ち上がる。
【0038】
同期に要する時間を短縮し、摩擦クラッチ(摩擦領域)を解放するために、同期中に電気駆動機械の出力トルクが能動的に制御されることが好ましい。特に、同期中、電気駆動機械は、好ましくは能動的(電気的)に制動され、したがって摩擦クラッチによる制動を支援する。能動的(電気的)制動は、好ましくは、それにもかかわらず所望のクラッチトルク(上記の場合、最高の最大回転速度)がクラッチによって伝達されるが、制動のために著しく短い時間で行われる。
【0039】
この構成では、電気駆動機械の最大動力の伝達に関して、摩擦クラッチによって伝達されるトルクは、少なくとも同期の開始時に最小化され、電気駆動機械の公称トルクをはるかに下回ることが特に有利である。したがって、摩擦クラッチは、特にコンパクトに構成されることができる。さらにまた、摩擦クラッチは、アクチュエータが規定の一定の接触力を実現することのみを必要とするため、簡易に構成されることができる。
【0040】
さらに好ましい設計では、最大クラッチトルクは、最大回転速度トルクに対して増加される、第2のギヤへのシフト後の電気駆動機械の最大出力トルクに対応するように設定されることができる。この場合、摩擦クラッチは、好ましくは、同期中であっても実質的に同じ(最大)動力が連続的に伝達されるように、同期中に摩擦領域の互いに対する接触力をアクチュエータによって増加させることができるようにさらに設計されることができる。したがって、カップリングによって伝達されるトルクは、好ましくは、同期回転速度における最大出力トルクまで、回転速度の減少とともに増加する電気駆動機械の最大出力トルクに対応するように連続的に増加される。したがって、この設計では、同期全体の間、およびその後、シフト前と同じ動力が出力される。したがって、場合によっては中立位置を除いて負荷遮断は行われない。
【0041】
この設計でも、最大クラッチトルクは、電気駆動機械の公称トルクをはるかに下回り、同期全体の間に連続的に伝達される駆動機械の最大出力に対して最小化される。ここで、アクチュエータの接触力は、同期中にクラッチトルクを増加させるように制御/調整されなければならない。
【0042】
後者の場合も、クラッチトルクの伝達を維持しながらクラッチを解放するために、電気駆動機械が能動的に電気的に制動されることが好ましい。
【0043】
さらに、駆動システムは、多種多様な方法で変更されることができる。これにより、クラッチトルクは、最大回転速度トルクよりも低くされることができる。この場合、シフト前およびシフト中に、電気駆動機械の出力トルクは、クラッチトルクまで低減されることができ、その結果、シフトは、実質的に負荷遮断なしに再び発生することができる。クラッチトルクは、最終的には常に、同期中の最大伝達可能トルクを決定する。
【0044】
同期中の電気駆動機械の能動的な電気制動を使用して、摩擦クラッチによって伝達される動力を低減することができる。摩擦クラッチのスリップ段階中に摩擦クラッチに発生するエネルギー損失(=熱)は、より短いシフト時間によって低減される。設計に応じて、能動制動は省略されることができ、または電気駆動機械はまた、同期中に正のトルクを供給することもできる。対応する設計では、摩擦クラッチは、最終的に加速ブースタとして使用されることもできる。
【0045】
さらなる設計では、第1のギヤから第2のギヤへのシフトはまた、電気駆動機械の最大回転速度よりも低いシフト回転速度においても行うことができる。シフト回転速度は、それがシフトされる固定回転速度とすることができ、または運転者による動力需要に、または代替もしくは追加のパラメータに依存する方法で動的に設定されることができる。クラッチは、実質的に負荷遮断のないシフトに必要な特定のトルクに適合させることができる。
【0046】
上記から明らかなように、本開示では、第1のギヤから第2のギヤへの変速機の変速に関連して、「実質的に負荷遮断のない」または僅かなまたは負荷遮断のない、または同様の用語は、好ましくは、第1のギヤおよび第2のギヤからのシフト中に出力シャフトで利用可能な動力(またはトルク)が好ましくは正、連続的に、または好ましくは短い遮断でのみであるか、またはその符号が変化せず、したがって好ましい連続的であるが必ずしも常に強い推進を可能にしない変速機または駆動システムを備えるべきである。推進はまた、好ましくは実質的に一定である。
【0047】
駆動システムは、好ましくは、中立位置において、第1のギヤから第2のギヤへのシフトプロセスにおいて、電気駆動機械の最大回転速度トルク(最大回転速度における最大トルク)の10%から95%の間、さらにより好ましくは20%から80%の間、さらにより好ましくは25%から75%の間に入るトルクが好ましくは伝達可能である(および/または(所定の動作状態において)伝達される)ように構成され、このトルク伝達による中立位置が発生している時間は、好ましくは1ms(ミリ秒)から100ms、さらにより好ましくは、例えば5msまたは8msなど、3msから10msである。さらにまた、駆動システムは、好ましくは、(同期中の)同期位置において第1のギヤから第2のギヤへのシフトプロセスにおいて、最大回転速度トルクの好ましくは30%から300%、好ましくは50%から250%、さらにより好ましくは、例えば90%、100%、130%、または180%など、80%から200%のトルクが少なくとも一時的に伝達可能である(および/または(所定の動作状態において)伝達される)ように構成される。伝達可能なトルクは、同期中に一定とすることができるか、または所定の関数にしたがって変化することができる。同期の終了時に、シフトプロセスにおいて摩擦クラッチから伝達される最大トルクが存在することが好ましい。同期の持続時間は、好ましくは10msから2000ms、より好ましくは50msから500ms、さらにより好ましくは、例えば150ms、200ms、または250msなど、100msから300msである。短い同期時間は、特に電気駆動機械の能動制動によって達成されることが好ましい。制動は、好ましくは電気的に行われ、それによってエネルギーが回収可能である。したがって、駆動システムは、良好な効率を有する。さらにまた、電気駆動機械は、シフト直前に最大回転速度トルクを出力する。
【0048】
さらにまた、駆動システムは、好ましくは、運転者が、シフト速度(好ましくは、最大回転速度)において、可能な最大出力(およびそれに関連する最大回転速度トルク)の一部のみを必要とする場合、ここでは、第1のギヤから第2のギヤへのシフトもまた、シフト速度((好ましくは、最大回転速度)に到達すると開始されるように構成される。それによって生成された軸方向力を使用して、アクチュエータは、シンクロナイザーリングを摩擦円錐に押し付け、軸方向力に比例するトルクを生成する。シフトプロセス中、これは一定とすることができるか、またはトルクの増加を伴うことができる。トルクの増加に伴うシフトは、シフトプロセス中に動力が一定のままであり、したがって顧客の要求に直接したがうという利点を有する。一定のトルクでのシフトは、シフトプロセス中(約0.3秒のシフト時間)にアクチュエータを調整する必要がないという利点を有する。
【0049】
さらにまた、駆動システムは、運転者が例えばシフト中に動力要求を低減する場合、同期中に摩擦クラッチを介して伝達されるトルクが低減され、その結果、出力トルクがシフト後および/またはシフト中に低減されるように構成されることができる。
【0050】
電気駆動機械の「最大回転速度トルク」、「最大出力」などの用語は、好ましくは、連続動作について、製造業者によって指定されたそれぞれの特性値に基づいて理解されなければならない。
【0051】
さらにまた、摺動スリーブの同期位置では、内部ギヤ装置は、シンクロナイザー本体の外部ギヤ装置のいずれとも係合しておらず、対応するシンクロナイザー本体の制動のための軸方向力は、好ましくは、シンクロナイザーリングの1つのみに加えられる。これは、軸方向力が加えられる特定のシンクロナイザーリングを摺動スリーブに対してロック位置に配置することによって、およびそれぞれの他のシンクロナイザーリングをロック位置に配置せず、むしろ完全に係合して配置することによって実現され、ここで、歯トラフは、歯頭と位置合わせされ、すなわち、それらはそれぞれ共通線上にある。
【0052】
本発明は、例として、概略図を用いてさらなる詳細とともに以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1】第1の実施形態にかかる変速機を有する電気駆動システムの概略図を示している。
図2】第2の実施形態にかかる変速機を有する電気駆動システムの概略図を示している
図3】中立位置にある第2の実施形態にかかる変速機の第1の断面図の詳細断面図を示している。
図4】中立位置にある第2の実施形態にかかる変速機の変位装置の詳細図を示している。
図5】第1のギヤが係合されている、第2の実施形態にかかる変速機の第1の断面図の詳細断面図を示している。
図6】第1のギヤが係合されている状態の第2の実施形態にかかる変速機の変位装置の詳細図を示している。
図7】第2のギヤの前同期位置にある第2の実施形態にかかる変速機の第2の断面図の詳細断面図を示している。
図8】第2のギヤの同期位置にある第2の実施形態にかかる変速機の第1の断面図の詳細断面図を示している。
図9】第2のギヤの同期位置にある第2の実施形態にかかる変速機の変位装置の詳細図を示している。
図10】第2のギヤの同期位置にある第2の実施形態にかかる変速機の第2の断面図の詳細断面図を示している。
図11】第2のギヤが係合されている、第2の実施形態にかかる変速機の第1の断面図の詳細断面図を示している。及び
図12】第2のギヤが係合されている状態における第2の実施形態にかかる詳細図を示している。
図13】第1のギヤの前同期位置にある第2の実施形態にかかる変速機の第2の断面図の詳細断面図を示している。
図14】第1のギヤから第2のギヤへのシフトのための例示的なスイッチングプロセスを有する電気駆動機械の理想化された特性曲線における様々な可能なシフトプロセスを示している。
【発明を実施するための形態】
【0054】
電気駆動機械(Eモータ)EMと、太陽ギヤの駆動装置として機能する共通の入力シャフトE上に設けられた2つの異なるサイズの太陽ギヤ1´および1を有する第1の実施形態にかかる2速変速機とを有する電気駆動システムの概略図が図1に示されている。入力シャフトEは、回転軸Xと同軸に配置され、ハウジングG内に支持されている。ハウジング内では、2つのリングギヤ14、16が、さらに回転軸と同軸に、且つ回転軸を中心として回転可能に支持されている。さらにまた、異なるサイズのリングギヤ14、16のそれぞれを制動するために設けられるロック装置2が設けられている。さらにまた、共通のブリッジSに回転自在に支持された第1の遊星ギヤ6´および第2の遊星ギヤ6が設けられている。ブリッジSは、回転軸を中心として回転するように順次支持される。ブリッジSの一端は、回転軸Xと同軸に構成され、出力シャフトAまたは出力として機能する。複数のこのような遊星ギヤ6´および6は、好ましくは、遊星ギヤセットとして円周の周りに分布している。遊星ギヤ6´、6は、リングギヤ14、16および太陽ギヤ1´、1と噛合している。最も単純な設計の逆変速機は、それぞれ、太陽ギヤ、ブリッジに支持された遊星セット、およびリングギヤからなる群によってそれぞれ形成される。合計で、互いに隣接して配置された2つの遊星変速機10、12(特に、最も単純な設計の逆変速機)が設けられ、個々のギヤの歯数/直径が異なるため、入力シャフトEと出力シャフトAとの間に互いに異なる2つのギヤ比を提供する。次いで、2つの逆変速機10、12のそれぞれは、トルクを支持するための特定のリングギヤがロック装置2によってハウジングGに対してロック(停止)されたときにのみ、入力Eから出力Aにトルクを伝達することができる。これにより、第1の遊星変速機10(入力シャフトE、太陽1´、遊星ギヤ6´、ブリッジS、リングギヤ14)は、ロック装置2を用いて第1のリングギヤ14をロックした状態でのみトルクを伝達することができる。第2の遊星変速機12は、第2のリングギヤ16をロックすることにより、対応する態様でトルクを伝達することができる。
【0055】
図2は、第2の実施形態にかかる電気駆動機械(Eモータ)EMおよび2速変速機を有する電気駆動システムの概略図を示している。図1に示す変速機とは対照的に、入力シャフトE上に固定して配置された単一の太陽ギヤ1のみが設けられている。遊星ギヤセットごとに、第1の遊星変速機に属する遊星ギヤ6は、第2の遊星変速機に属する遊星ギヤ6´にそれぞれ堅固に接続される。これらの接続された遊星ギヤは、ブリッジの周りで回転可能であるようにブリッジ上に一緒に支持される。特に、遊星ギヤ6´および6は、それらが一緒に回転するように互いに接続されており、一部品の段付き遊星ギヤとして構成されることもできる。第1および第2のギヤの異なるギヤ比はまた、ここでは、ロック装置2を使用してリングギヤ14および16の一方をロックすることによって、図1と全く同様に生じる。双方の変速機について、出力は、共通ブリッジSであり、これはまた、逆変速機の場合と同様に、最高のトルクを伝達する。
【0056】
以下は、図1にかかる変速機に適用される。
第1のギヤのギヤ比i1st gear=i1´S(第1のリングギヤ14のロック)は、第1の逆変速機10の静的ギヤ比i1´14から生じる。
1´14=dH14/d1´
1´S=1-i1´14であり、
H14=第1のリングギヤ14の直径
1´=太陽ギヤ1´の直径
【0057】
第2のギヤのギヤ比i2nd gear=i1S(第2のリングギヤ16のロック)は、第2の逆変速機の静的ギヤ比i1 16から生じる。
1 16=dH16/d
1S=1-i1-16であり、
H16=第2のリングギヤ16の直径
=太陽1の直径
【0058】
以下は、図2にかかる変速機に適用される。
第1のギヤのギヤ比i1st Ggear=i1S(第1のリングギヤ14のロック)は、第1の逆変速機の静的ギヤ比i1 14から生じる。
1 14=(dH14/d6´)*(d/d)、
1S=1-i1 14であり、
H14=第1のリングギヤ14の直径
=太陽1の直径
6´=より小さい遊星ギヤ6´の直径
=より大きい遊星ギヤ6の直径
【0059】
第2のギヤのギヤ比i2nd gear=i1S(第2のリングギヤ16のロック)は、第2の逆変速機の静的ギヤ比i1 16から生じる。
1 16=dH16/d
1S=1-i1 16であり、
H16=第2のリングギヤ16の直径
=太陽1の直径
【0060】
2つの変速機の差は、達成可能なギヤ比範囲にある。例として、ギヤ比範囲i2nd Ggear≒+2およびi1st gear≒+5の場合、図1からの変速機が使用され、ギヤ比範囲i2nd Ggear≒+8の場合、および
1st gear≒+15、図2からの変速機が使用される。
【0061】
図1のギヤ比の場合、ギヤ比i1Sは、2つの単純な逆変速機i1´14およびi1 16から生じる。
【0062】
上述した2つの実施形態から開始して、2つの変速機に共通のロック装置2が、さらなる図を参照して図2の第2の実施形態に基づいて説明される。ここで、図1および図2は、それぞれ、個々の構成要素の実際の配置、それらの寸法などが全ての態様において必ずしもしたがうとは限らない、またはしたがわない概略図にすぎないことに留意されたい。図3から図10は、この点においてより正確であるが、可能な実際の設計の概略図を表すが、縮尺どおりではない。特に、図面は、部分的に互いに異なる倍率で示されており、おそらく互いに対して完全に厳密ではない。
【0063】
他に示されていない場合、同一の参照番号は、同じそれぞれの構成要素が意図されていることを意味する。全ての参照番号が全ての図に示されているわけではなく、むしろ特に関連する参照番号のみが示されている。したがって、他の図で参照番号が付けられている個々の図で指定されていない構成要素は、別段の指示がない限り変更されない。
【0064】
ロック装置2の詳細に加えて、ハウジングGの一部およびリングギヤ14、16の一部が図3図5図8および図11に示されている。回転軸Xは、それぞれの下方に位置し、図示されていない。
【0065】
ロック装置2を使用して、第1のリングギヤ14または第2のリングギヤ16は、ハウジングGに選択的にロック可能であり、その結果、第1のリングギヤ14がロックされると、第1の遊星変速機10を介して入力シャフトEから出力シャフトAにトルクが伝達可能であり、第2のリングギヤ16がロックされると、第2の遊星変速機12を介して入力シャフトEから出力シャフトAにトルクが伝達される。
【0066】
図3の第1の断面図に示すように、ロック装置2は、以下のように構成される:
ハウジングGには、回転軸と同軸の円筒状の摺動スリーブ18が、ハウジングGに対して回転不能且つ回転軸Xに沿って軸方向に移動可能に設けられている。この目的のために、摺動スリーブ18は、外側にギヤ装置を含み、ハウジングGは、内側にギヤ装置(例えば、スプライン19)を含む。摺動スリーブは、内部ギヤ装置20をさらに含む。
【0067】
円筒形の第1のシンクロナイザー本体22は、第1のリングギヤ14と堅固に接続されている(例えば、圧入)か、またはそれと一部品で(一体的に)形成されており、リングギヤの外周に設けられている。第1のシンクロナイザー本体22は、回転軸と同軸であるように構成された外部ギヤ装置24を有し、この外部ギヤ装置24は、摺動スリーブ18を回転軸Xに沿って移動させることによって摺動スリーブ18の内部ギヤ装置20と係合することが可能であるように構成されている。したがって、摺動スリーブ18の内部ギヤ装置20の直径は、より小さい第1のリング14の外径よりも大きい。円筒形の第2のシンクロナイザー本体26は、第2のリングギヤ16と堅固に接続されている(例えば、圧入)か、またはそれと一部品で(一体的に)形成されている。特に、第2のリングギヤ16は、一体的に形成されていない場合には、それらが一体的に回転するように、外側で円筒形接続構成要素17に接続されている。接続構成要素は、径方向内側に段付き部分を有して第1のシンクロナイザー本体22に向かって軸方向に延在する。第2のシンクロナイザー本体26は、径方向内側の段付き部分の軸方向端部突起に設けられている。これにより、第2のリングギヤ16がロック装置の部分よりも大きな直径を有することが可能になる。さらにまた、これは、第2のリングギヤ16をロック装置2に実質的に隣接して配置することを可能にする。したがって、変速機の径方向の設置スペースが最適化されることができる。
【0068】
第2のシンクロナイザー本体26は、回転軸Xと同軸になるように構成された外部ギヤ装置28を有し、この外部ギヤ装置28は、摺動スリーブ18を回転軸Xに沿って移動させることによって摺動スリーブ18の内部ギヤ装置20と係合することができるように構成されている。第1のシンクロナイザー本体22は、第2のシンクロナイザー本体26に面する側に、第2のシンクロナイザー本体26に向かって円錐状に先細りする摩擦領域30として形成された軸方向突起を有する。第2のシンクロナイザー本体26は、第1のシンクロナイザー本体22に面する側に、第1のシンクロナイザー本体26に向かって円錐状に先細りする摩擦領域32として形成された軸方向突起を有する。第1および第2のシンクロナイザー本体22、26、またはそれらが取り付けられているリングギヤ14および16は、実質的に軸方向に変位不能に支持されている。摩擦領域は、一体的にまたはコーティングとして形成されることができる。
【0069】
さらにまた、回転軸と同軸上に配置された第1のシンクロナイザーリング34が設けられている。第1のシンクロナイザーリング34は、摺動スリーブ18を回転軸Xに沿って移動させる(径方向に重なり合う)ことによって摺動スリーブ18の内部ギヤ装置20と係合することができるように構成された外部ギヤ装置36を有する。また、第1のシンクロナイザーリング34は、第2のシンクロナイザー本体26に面する側に、第2のシンクロナイザー本体26に向かって内周側に円錐状に先細りする摩擦領域38を含む突出領域を有する。摩擦領域38は、第1のシンクロナイザーリング34に第1のシンクロナイザー本体22に向かう方向に軸方向力が加えられたときに、摩擦領域38が第1のシンクロナイザー本体22の摩擦領域38と摩擦係合を形成することができるように構成されている。
【0070】
第1のシンクロナイザーリング34は、第2のシンクロナイザー本体26に面する外部ギヤ装置36の側に、少なくとも1つの径方向外側に突出する前同期突起をさらに有する。前同期突起は、図3の第1の断面図には示されていないが、同期変速のために通常どおりに構成される。これに対応して、摺動スリーブ18は、その内周側に、同じく図示されていないが通常どおりに構成された前同期溝を有する。前同期突起および前同期溝を介して、第1のシンクロナイザーリング34は、好ましくは、摺動スリーブの軸方向位置とは無関係に(すなわち、全ての位置において)摺動スリーブ内で径方向に支持される。前同期突起および前同期溝は、ロック位置と解放位置との間の所定の角度だけ摺動スリーブ18に対する第1のシンクロナイザーリング34の相対回転が可能であるようにさらに構成される。摺動スリーブ18に対する第1のシンクロナイザーリング34のさらなる回転が防止される。解放位置は、第1のシンクロナイザーリング34の歯が摺動スリーブ18の歯と位置合わせされる相対回転位置、すなわち摺動スリーブ18が、内部ギヤ装置20が第1のシンクロナイザーリング34の外部ギヤ装置36と係合していない位置から係合位置へと自由に変位可能である相対回転位置として定義される。逆に、ロック位置は、シンクロナイザーリング34の歯頭の軸方向の前端が摺動スリーブの歯底に対して周方向にオフセットされる相対回転位置として定義される。すなわち、位置合わせされた位置に対して相対的に回転される。
【0071】
第1のシンクロナイザーリング34は、摺動スリーブ内に軸方向に変位可能に径方向に支持され、軸方向位置に応じて、その円錐摩擦領域38を介して第1のシンクロナイザー本体22の円錐摩擦領域30上にも支持される。第1のシンクロナイザーリング34が第1のシンクロナイザー本体22の外部ギヤ装置24に向かって変位すると、摩擦領域が互いに対向する接触圧力が増加し、これはまた、第1のシンクロナイザー本体22と第1のシンクロナイザーリング34との間の摩擦の増加をもたらす。この接触圧力はまた、この方向の移動を制限する。第1のシンクロナイザーリング34が第1のシンクロナイザー本体22の外部ギヤ装置24から離れるように反対方向に移動すると、接触圧力が低下し、その結果、摩擦も減少する。外部ギヤ装置24から離れる動きは、例えば、図3図5図8および図11の第1の断面図には示されていないロック支柱39などによって制限されることができる。したがって、第1のシンクロナイザーリング34は、第1のシンクロナイザー本体22に移動可能に(境界を持って)支持されている。
【0072】
さらに、好ましくは回転軸に垂直な第1および第2のシンクロナイザー本体の間の対称面に対して対称に形成された第2のシンクロナイザーリング40が設けられ、第1のシンクロナイザーリング40は、回転軸と同軸に配置される。第2のシンクロナイザーリング40は、摺動スリーブ18を回転軸Xに沿って移動させることにより摺動スリーブ18の内部ギヤ装置20と噛合するように構成された外部ギヤ装置42を有する。第2のシンクロナイザーリング40は、第1のシンクロナイザー本体22に面する側に突出領域をさらに有し、この突出領域は、第1のシンクロナイザー本体22に向かって内周側で円錐状に先細りする摩擦領域44を含む。摩擦領域44は、第2のシンクロナイザー本体26の摩擦領域32と摩擦係合を形成することができるように構成されている。第2のシンクロナイザーリング40および第1のシンクロナイザーリング34は、対応して構成された前同期溝に保持され、第1のシンクロナイザーリング34と同様にロック位置と解放位置との間で相対回転可能な図示しない前同期突起を有する。接触圧力の支持および増加または減少は、第1のシンクロナイザーリング34に類似している(ただし、鏡像反転している)。
【0073】
第1のシンクロナイザー本体22の外部ギヤ装置24は、好ましくは、第2のシンクロナイザー本体26の外部ギヤ装置28に対して実質的に対称であり、第1のシンクロナイザーリング34の外部ギヤ装置36は、好ましくは、第2のシンクロナイザーリング40の外部ギヤ装置42に対してそれぞれ、それらの間にある対称面に対して実質的に対称である。
【0074】
さらにまた、回転軸Xに沿って摺動スリーブ18の位置を変位させるために、やはり特に図4により詳細に示されている変位装置46が設けられている。
【0075】
変位装置46は、ウォームシャフト50を駆動する電気モータ48を含む。双方ともハウジングGに支持されている。ウォームシャフト50を使用して、ウォームギヤに設けられた外部ギヤ装置を介してウォームギヤ52が駆動される。ウォームギヤ52は、摺動スリーブ18と同軸に配置され、回転軸Xを中心として摺動スリーブ18に対して相対回転可能である。ウォームギヤ52は、摺動スリーブに対して外周側に設けられ、摺動スリーブに接触しないか、または摺動スリーブを中心として少なくとも基本的に自由に回転可能である。ウォームギヤ52は、ハウジング内に軸方向に変位不能に支持されている。ウォームギヤ52は、2つのハウジング部品間で軸方向に案内され、径方向に支持され、仕切り平面(2つのハウジング部品間の接触面)は図示されておらず、ウォームギヤの幅b2内で設計者によって自由に選択可能である。
【0076】
ウォームギヤ52は、周方向に沿って所定の長さにわたって直線状に延在するが、それに対して角度αだけ傾斜した複数のガイド溝54をさらに含む。ここで、周方向の長さは、一端位置と他端位置との間のウォームギヤ52の回転角度をβとし、ウォームギヤの半径をrとすると、ラジアン単位でr*βである。ガイド溝54は、少なくとも内周側に形成されているか、ウォームギヤ52を深さ方向に貫通している。
【0077】
さらにまた、径方向外側に突出する複数のガイドピン56が摺動スリーブ18に設けられ、ガイドピン56は、例えば圧入によって摺動スリーブにしっかりと設けられることが好ましい。ここで、ガイドピン56およびガイド溝54、または摺動スリーブ18およびウォームギヤ52の配置は、変速機の組み立てられた状態で、ガイドピン56のそれぞれがガイド溝54のうちの1つに案内されるように構成される。既に上述したように、摺動スリーブ18は、ギヤ装置19に沿って内側の外部ギヤ装置を介してハウジングG内において、軸方向に変位可能に径方向に支持される。摺動スリーブ18の軸方向の変位および案内は、ガイドピン56を使用して達成される。これらは、ウォームギヤ52を回転させることによって摺動スリーブ18の位置が軸方向に変位可能であるように、ガイド溝54内に案内される。特に、摺動スリーブ18の所望の移動距離xTotal=xaxial1+xaxial2図4を参照)、および円周方向に対するガイド溝の所定の傾斜αから出発して、ウォームギヤの以下の回転角度βTotal(ラジアン単位)が得られる。
βTotal=(xaxial1+xaxial2)/tan α*r
【0078】
ここで、総移動距離xTotal=xaxial1+xaxial2は、摺動スリーブ18が第1のシンクロナイザー本体22との完全係合から第2のシンクロナイザー本体26との完全係合まで軸方向に移動しなければならない距離に対応する。傾斜角αを使用して、同期を確立するために摺動スリーブを使用して軸方向力を加えるための力の比が設定されることができる。
【0079】
さらにまた、摺動スリーブ18は、軸方向(=双方のシンクロナイザーリングが係合する位置がある)におけるシンクロナイザーリング34、40の外部ギヤ装置36、42の間隔よりも大きく、(他方のシンクロナイザー本体に関連する)それぞれの対向するシンクロナイザーリング34、40に対するシンクロナイザー本体22、26の一方の外部ギヤ装置24、28の軸方向(同期位置において、対向するシンクロナイザー本体は、もはや係合していない)の距離よりも小さい幅を有するように構成される。
【0080】
第1のギヤから第2のギヤへのシフト中に互いに係合するギヤ装置、すなわち、シンクロナイザー本体22、26の外部ギヤ装置24、28、シンクロナイザーリング34、40の外部ギヤ装置36、42、および摺動スリーブ18の内部ギヤ装置20は、上述した面取りされた歯を有し、軸方向の歯の端部は、点に収束するか、または三角形の形状に収束する。
【0081】
好ましくは、段付き遊星6、6´を支持するための追加の軸受58および60と、リングギヤ14および16の軸方向支持を提供する軸受62とがある。
【0082】
さらにまた、図3図5図8および図11の第1の断面図とは異なる図7図10および図13の第2の断面図から分かるように、ロック支柱39が設けられ、これを使用して、シンクロナイザーリング34、40をロック位置に変位させるためのいわゆる前同期が達成可能である。ロック支柱39は、摺動スリーブ18によって外周側に画定され、シンクロナイザーリング34、40の摩擦領域38、44の外周側によって内周側に画定され、シンクロナイザーリング34、40の径方向外側に突出する外部ギヤ装置36、42によって軸方向に画定される空間内に配置される。ロック支柱39は、摺動スリーブ18の内側に周方向に配置され取り付けられたばね39aによって、摺動スリーブ18の内周側に形成された対応するロック支柱収容領域に対して径方向外側に予荷重される。ロック支柱39は、軸方向の端部において、中央部よりも外周側が切り欠かれており、2つの傾斜当接面39bを有している。シンクロナイザーリング34、40の中心径方向外側において、ロック支柱収容領域は、凹部を含み、したがって、当接面39bに対応する2つの傾斜当接面39cを有する。ロック支柱収容領域の傾斜当接面39cは、ロック支柱39の傾斜当接面39bよりも軸方向に近接して配置されている。したがって、ロック支柱は、双方の当接面39bを同時に有する凹部に挿入可能ではない。
【0083】
全体として、その当接面39bを有するロック支柱39、およびその当接面39cを有するロック支柱収容領域は、少なくとも以下の関連する位置が達成されることができるように構成される:ロック支柱39は、摺動スリーブ18に平行に配置され、当接面のいずれも互いに接触しない(図10を参照)。この位置において、ロック支柱39の当接面39bは、例えば、摺動スリーブ18の当接面39cの軸方向前後に配置される。あるいは、ロック支柱39の当接面39bの一方が対応する当接面39cと係合するように、ロック支柱39は、軸方向に変位し、周方向に対して垂直に傾斜する(図7および図13を参照)。後者の場合にのみ、摺動スリーブ18によってロック支柱39に軸方向力が加えられることができる。合計で、好ましくは少なくとも3つのロック支柱39が設けられる。
【0084】
以下では、変速機の個々の動作状態および位置について説明する。
【0085】
図3および図4は、例えば、車両が静止している摺動スリーブ18の中立位置を示している。モータ(入力シャフト、駆動機械)が回転している場合であっても、摺動スリーブ18の内部ギヤ装置20は、シンクロナイザーリング(ここでは、第1のシンクロナイザーリング34の)のうちの一方の外部ギヤ装置36とのみ係合しており、軸方向力がないため、第1のシンクロナイザーリング34も第1のシンクロナイザー本体22と摩擦係合していないため、トルクを伝達することができない。摺動スリーブ18が第1のシンクロナイザー本体22に向かって移動されることになったとしても、第1のシンクロナイザーリング34の外部ギヤ装置36との完全な歯の係合により、摺動スリーブ18の内部ギヤ装置20を介して第1のシンクロナイザーリング34に軸方向力は実質的に及ぼされない。したがって、同期は行われない。したがって、車両が静止しているときに第1のギヤと係合するために、モータは、この中立位置から開始して停止されなければならない。
【0086】
中立位置から開始して、モータおよび車両が静止しているとき、第1のギヤは、変位装置46を使用して摺動スリーブ18を第1のシンクロナイザー本体22(図3を参照)に向かって距離xaxial,1だけ移動させることによって係合されることができる。第1のギヤが完全に係合されているときの摺動スリーブの位置が、図5および図6に示されている。全トルク伝達のために、シフトスリーブ18の内部ギヤ装置20は、第1のギヤ位置において第1のシンクロナイザー本体22の外部ギヤ装置24と全歯係合する。「全歯係合」は、ここでは、外部ギヤ装置24の全幅が内部ギヤ装置20と係合することを意味する。したがって、摺動スリーブ18の内部ギヤ装置20と第2のシンクロナイザーリング40または第2のシンクロナイザー本体26との歯の係合または接触は存在しない。図6から分かるように、第1のギヤ位置では、ガイドピン56は、ガイド溝の一端位置に配置されている。
【0087】
したがって、第1のギヤを係合させるために、摺動スリーブ18は、短い距離xaxial,1だけ移動する必要があり、この距離は、第1のシンクロナイザー本体22の外部ギヤ装置24の幅に実質的に対応する(実際には、距離は、中立位置にある第1のシンクロナイザー本体22の外部ギヤ装置24に対して内部ギヤ装置20が有する幅に間隔を加えたものに対応する)。
【0088】
ここで、モータが回転して車両が走行している間に、より低いギヤ比を有する第2のギヤへのシフトが生じる場合、摺動スリーブ18は、第1のリングギヤ14の回転を解放して回転している第2のリングギヤ16を停止またはロックするために、第1のギヤ位置から開始して第2のシンクロナイザー本体26に向かう方向にシフト装置46によって移動される。この移動では、第1のシンクロナイザーリング34のみが摺動スリーブ18と係合している図3および図4に示す中立位置が最初に再び横断される。
【0089】
遅くとも摺動スリーブ18の中立位置への移動時には、第1のシンクロナイザーリング34に対向するロック支柱39の当接面39bのみが前同期溝に没入し、その結果、ロック支柱39は、軸方向に対して傾斜した位置になる。
【0090】
さらなる移動において、摺動スリーブ18は、中立位置から開始して、摺動スリーブ18の当接面39cおよびロック支柱39の当接面39bが当接することにより、ロック支柱が第2のシンクロナイザーリング40に向かって押される、図7に示す前同期位置に到達する。これにより、ロック支柱39は、第2のシンクロナイザーリング40に当接し、第2のシンクロナイザー本体26に向かって変位する。
【0091】
この前同期位置では、第2のシンクロナイザーリング40と第2のシンクロナイザー本体26との間に第1の摩擦係合が生じ、これにより第2のシンクロナイザーリング40にトルクが生じる。このトルク(第2のリングギヤの回転方向)により、第2のシンクロナイザーリング40が摺動スリーブ18に対してロック位置(相対回転位置)となり、ギヤ装置が互いに向かって変位する。
【0092】
摺動スリーブ18の同期位置(図8から図10を参照)へのさらなる移動において、摺動スリーブ18のギヤ装置の軸方向端部(面取りされた歯)は、第2のシンクロナイザーリング40のギヤ装置の軸方向端部(面取りされた歯)に衝突し、それによってより高い軸方向力が第2のシンクロナイザーリング40に加えられる。これにより、摩擦係合が強化され、その結果、第2のシンクロナイザー本体26と第2のシンクロナイザーリング40との間のトルク伝達(制動トルク)が増加する。これにより、摺動スリーブ18の第2のシンクロナイザー本体26へのさらなる移動は、位置合わせされていないギヤ装置によって阻止される。
【0093】
図10に示すように、摺動スリーブ18がその前同期位置からその同期位置へと移動する際に、ばね39aによって保持されたロック支柱39は、当接面39b、39cが互いに滑るため、それ自体を摺動スリーブに平行な向きに相対的に回転させる。図10に示す同期位置から開始して、摺動スリーブ18の第2のシンクロナイザー本体26へのさらなる移動は妨げられない。
【0094】
同期位置では、第1のシンクロナイザーリング34の外部ギヤ装置36は、依然として摺動スリーブ18の内部ギヤ装置20と係合している。第1のシンクロナイザーリング34と第1のシンクロナイザー本体22との間では、第1のシンクロナイザー本体22に向かう軸方向力がないため、シンクロナイザー本体22に摩擦トルクは実質的に作用しない。第1のシンクロナイザー本体22は、第2のシンクロナイザー本体26の制動に伴って加速される。同時制動および加速のために、シンクロナイザーリングのトルクから生じるトルクは、依然として出力シャフト、すなわちブリッジSに伝達される。
【0095】
図9から分かるように、同期位置では、ガイドピン56は、上記中立位置よりも僅かに下方のガイド溝54内に位置している。
【0096】
第2のシンクロナイザー本体26が停止するとすぐに、摺動スリーブ18および第2のシンクロナイザーリング40のギヤ装置の面取り面(軸方向の歯端)を介して第2のシンクロナイザーリング40に伝達されるトルクは減少する(追加のトルクはもはや存在しない)。摺動スリーブ18が第2のシンクロナイザー本体26に向かってさらに移動すると、摺動スリーブ18およびシンクロナイザーリング40のギヤ装置の傾斜面が互いに滑り、それによって第2のシンクロナイザー本体26が摺動スリーブ18と位置合わせする。摺動スリーブ18の内部ギヤ装置20は、第1のシンクロナイザーリング34の外部ギヤ装置36との係合から実質的に同時に外れる。
【0097】
図11および図12は、第2のギヤが係合される摺動スリーブ18の端部位置(第2のギヤ位置)を示している。第1のギヤ位置と同様に、摺動スリーブ18の内部ギヤ装置20は、第1のシンクロナイザー本体26の外部ギヤ装置28の全幅にわたって第1のシンクロナイザー本体26の外部ギヤ装置28と係合している。図10から分かるように、第2のギヤ位置では、ガイドピン56は、ガイド溝54の反対側の端部位置に配置されている。
【0098】
したがって、第2のギヤを係合させるために、中立位置から出発して、摺動スリーブ18は、距離xaxial,2だけを実質的に移動する必要があり、この距離は、第2のシンクロナイザー本体26の外部ギヤ装置28の幅に第2のシンクロナイザーリング40の外部ギヤ装置42の幅を加えたものに実質的に対応する(実際には、この距離は、外部ギヤ装置の幅に、中立位置にある第2のシンクロナイザーリング40の外部ギヤ装置42に対する内部ギヤ装置20の距離を加えたものに、第2のシンクロナイザー本体26と第2のシンクロナイザーリング40の外部ギヤ装置間の間隔を加えたものに対応する)。特に、少なくとも同期位置の到達から始まると、出力において再び高いトルクがあり、その結果、負荷遮断は、たとえあったとしても、中立位置および前同期位置を通る移動の領域でのみ発生するが、この負荷遮断は、これらの位置の短い時間および距離持続時間ならびに他方のシンクロナイザー本体の加速トルクのために非常に短いことにさらに留意されたい。
【0099】
上記のシーケンスは、第2のギヤから第1のギヤへのシフト中に方向を変えて行われる。別の中立位置が最初に横断され、第2のシンクロナイザーリング40のみが摺動スリーブ18と係合する。この位置では、ロック支柱39もまた、上述した位置から離れて傾斜しており、すなわち、第2のシンクロナイザー本体に面する当接面39bが前同期溝に没入されている。摺動スリーブのさらなる移動において、ロック位置において摺動スリーブ18に対して第1のシンクロナイザーリング34を位置合わせするための前同期位置が、同様の方法で達成される(図13を参照)。その後、第1のシンクロナイザー本体22の制動は、第1のギヤ用のさらなる同期位置で行われる(図示せず)。
【0100】
摺動スリーブ18の内部ギヤ装置20の幅は、シンクロナイザー本体22、26の一方の外部ギヤ装置24、28のそれぞれの対向する(それぞれの他のシンクロナイザー本体に関連する)シンクロナイザーリング40、34までの距離よりも、好ましくは10%小さい、さらに好ましくは5%小さい、さらに好ましくは1%小さい。
【0101】
図示されていないさらなる第3の実施形態を以下に説明する。
【0102】
特に明記しない限り、第1および第2の実施形態の全ての特徴および位置は、第3の実施形態にも適用される。
【0103】
変速機は、駆動軸が支持されるハウジングを含む。摺動スリーブは、それらが一緒に回転するように駆動シャフト上に支持されるが、摺動スリーブは、移動軸に沿って移動可能である。摺動スリーブは、駆動シャフトに対して径方向の間隔を有する内部ギヤ装置を有する。駆動シャフトには、摺動スリーブの一方側に、摺動スリーブを移動軸に沿って移動させることによって摺動スリーブの内部ギヤ装置と噛合可能な外歯ギヤ領域を有し、且つ径方向内側に外歯ギヤ領域に対して摺動スリーブ側に軸方向に変位する摩擦領域を有する第1のシンクロナイザー本体が設けられている。摺動スリーブの他方の側には、摺動スリーブを移動軸に沿って移動させることによって摺動スリーブの内部ギヤ装置と係合することができる外歯ギヤ領域を有し、且つ径方向内側に形成され、外歯ギヤ領域に対して摺動スリーブに向かって軸方向に変位する摩擦領域を有する第2のシンクロナイザー本体が駆動シャフト上に設けられている。さらにまた、第1のシンクロナイザーリングは、摺動スリーブを移動軸に沿って移動させることによって摺動スリーブの内部ギヤ装置と係合することができる外部ギヤ装置と、第1のシンクロナイザー本体の摩擦領域上で支持および摩擦係合するように構成された摩擦領域とを備える。同様に、第2のシンクロナイザーリングは、摺動スリーブを移動軸に沿って移動させることによって摺動スリーブの内部ギヤ装置と係合することができる外部ギヤ装置と、第2のシンクロナイザー本体の摩擦領域を支持して摩擦係合するように構成された摩擦領域とを備える。それにより、変速機は、摺動スリーブが中立位置になることができ、摺動スリーブの内部ギヤ装置がシンクロナイザー本体の外歯ギヤ領域と係合しておらず、同時にシンクロナイザーリングのうちの1つのみの外部ギヤ装置と係合するように構成されている。同時に、摺動スリーブは、別の位置において、第1および第2のシンクロナイザーリングと同時に係合するが、同時にシンクロナイザー本体の外部ギヤ装置とは係合しないように構成されている。摺動スリーブ、シンクロナイザー本体、およびシンクロナイザーリングは、ロック装置を形成する。
【0104】
シンクロナイザー本体は、ギヤと一体に形成されているか、またはそれらが一緒に回転するように形成されている。ギヤは、別のシャフト上のギヤ(入力シャフトまたは出力シャフト)と噛合するように構成された、またはこれに取り付けられた別の外部ギヤ装置を有する。(例えば、上述した変位装置を使用して)摺動スリーブを一方のシンクロナイザー本体または他方のシンクロナイザー本体との係合(ロック)の間で変位させることによって、異なるギヤ比が実現されることができる。第1および第2の実施形態とは対照的に、同期位置では、歯車は、回転摺動スリーブの速度に制動または加速される。摺動スリーブ内の1つ以上のロック支柱およびシンクロナイザーリングの支持は、他の実施形態に関するものとして説明される。
【0105】
摺動スリーブを変位させるための変位装置は、上記の例示的な実施形態のように、または任意の他の方法(油圧作動式、リニアモータ作動式など)で、特に従来はシフトフォークを介して構成されることができる。
【0106】
図14は、電気駆動機械(Eモータ)の理想化されたトルク特性曲線および動力特性曲線における様々なシフトプロセス、ならびにEモータ(機械の種類に応じて、同期または非同期機械)の最適効率範囲ηoptE-Motorを示している。Tmaxは、公称トルク(最大トルク)を示している。Tnmaxは、最大回転速度トルクを示している。Pmaxは、最大動力を示している。ここで説明する実施形態では、第1のギヤから第2のギヤへのシフトは、電気駆動機械EMの最大回転速度nmaxで係合する。燃焼機関と比較して、定出力での非常に高い回転速度範囲(定出力範囲)のために、一方では大きなギヤステップを受け入れることができる。一方、第1のギヤから第2のギヤへのシフトが開始されるとき、第2のギヤへのシフト後の終点が依然として回転速度に関して機械の最大出力範囲を超えない限り、原則として重要ではない。摩擦クラッチ(同期式クラッチ)の設計上、可能な限り低いトルクで同期(第2のリングギヤの制動)することが推奨される。これは、Eモータが最大回転速度nmaxまで加速される場合であり、この時点でのみ(電気駆動機械の最大出力に対する最低トルク)シフトが開始される(図14のポイント1を参照)。摩擦クラッチの寸法設定は、通常、トルクに応じて行われる。シフトが一般に(図示のように)好ましい回転速度nmaxでのみ開始される場合、摩擦装置のサイズは最小化され、構造は単純化される。第1のギヤから第2のギヤへのシフトは、2つの方法で可能である。同期が調整されない場合(摺動スリーブが(アクチュエータによって)一定の力で第2のリングギヤに向かって移動される場合)、トルクは同期中に一定であり、ポイント2に到達する。ここで、ドグクラッチが係合され(摺動スリーブがシンクロナイザー本体と係合する)、トルクは、顧客の要求に応じて電気駆動機械によって調整されることができる。この場合、摩擦クラッチの同期トルク(クラッチトルク)は一定である。この場合、アクチュエータが調整される必要はない。あるいは、クラッチトルクは、電気駆動機械の回転速度(図14のポイント1とポイント3との間の曲線)に応じて、クラッチトルクがそれぞれの回転速度に対する電気駆動機械の最大出力トルクに対応するように、アクチュエータによってシフト中に調整されることができる。この場合、シフト中に出力において一定の動力が可能である。ポイント4から5および4から6によって示される部分負荷範囲におけるシフトについても同じことが当てはまる。これは、駆動機械の最大回転速度に到達するときに最大出力が要求されない場合に常に当てはまる(これは通常の動作の場合の方がはるかに多い)。部分負荷範囲でのシフトのために、アクチュエータは、負荷遮断を低減または回避するために、顧客の動力需要(ガスペダル位置)に応じて対応して制御される。nmax/nG2のギヤ比は、手動変速機のステップジャンプに相当する。クラッチトルクを調整するために、ここでは図示せず、より詳細には説明しない通常のトルクセンサが摩擦クラッチに設けられることができる。あるいは、クラッチトルクは、経験的に予め決定された経験値によって制御されることができる。
【0107】
本開示のさらなる態様:
【0108】
既に上で示したように、車両用の電気駆動システムのための変速機における特定の用途に加えて、本教示は、少なくとも2つの速度を有する他の全てのシフト可能な変速機においても使用可能である。したがって、この教示は、回転速度なしで回転する第1の回転ギヤまたは第1の回転速度が、シフトプロセスの前に、第2のギヤ(またはシャフト)の第2の回転速度まで加速または制動され、その後、摺動スリーブを介して第2のギヤに固定的に結合される従来のシンクロナイザー群(同期クラッチまたはロック式同期クラッチ)に適用可能である。
【0109】
一般的に言えば、本開示はまた、以下を備える:
態様1:変速機用のシフトサブアセンブリであって、
ハウジングと、
ハウジング内に移動軸に沿って移動可能に支持され、中心軸が移動軸と同軸に設けられた内部ギヤ装置を有する摺動スリーブと、
摺動スリーブと同軸上に配置され、摺動スリーブを移動軸に沿って移動させることによって摺動スリーブの内部ギヤ装置と係合することができる外歯ギヤ領域を有し、好ましくは径方向内側に、外歯ギヤ領域に対して移動軸に向かって軸方向一方側に形成された摩擦領域を有する第1の第1のシンクロナイザー本体と、
摺動スリーブと同軸上且つ第1のシンクロナイザー本体の摩擦領域の側に配置され、摺動スリーブを移動軸に沿って移動させることによって摺動スリーブの内部ギヤ装置と係合することができる外歯ギヤ領域を有し、好ましくは第1のシンクロナイザー本体の側の外歯ギヤ領域に対して径方向内側に形成され且つ軸方向に変位する摩擦領域を有する第2の第2のシンクロナイザー本体と、
摺動スリーブを移動軸に沿って移動させることによって摺動スリーブの内部ギヤ装置と係合することができる外部ギヤ装置を有し、第1のシンクロナイザー本体の摩擦領域に当接するように構成された摩擦領域を有する第1のシンクロナイザーリングと、
摺動スリーブを移動軸に沿って移動させることによって摺動スリーブの内部ギヤ装置と係合することができる外部ギヤ装置を有し、第2のシンクロナイザー本体の摩擦領域に当接するように構成された摩擦領域を有する第2のシンクロナイザーリングと、を含み、
シフトサブアセンブリが、摺動スリーブが、摺動スリーブの内部ギヤ装置がシンクロナイザー本体の外歯ギヤ領域と係合しておらず、同時にシンクロナイザーリングのうちの1つのみの外部ギヤ装置と係合する中立位置になることができるように構成されている、シフトサブアセンブリ。
【0110】
態様2:態様1に記載のシフトサブアセンブリは、回転軸に沿った移動において、摺動スリーブの内部ギヤ装置が2つのシンクロナイザー本体の外歯ギヤ領域と係合しておらず、同時に、摺動スリーブの内部ギヤ装置がシンクロナイザーリングの一方のみの外部ギヤ装置と係合しており、同時に、摺動スリーブが、摺動スリーブに対して回転不能に設けられたロック支柱をシンクロナイザーリングの他方に対して軸方向に当接させ、シンクロナイザーリングの他方を対応するシンクロナイザー本体に対して押圧し、それによって、他方のシンクロナイザーリングが摺動スリーブに対して相対的に回転して、摺動スリーブのギヤ装置と他方のシンクロナイザーリングのギヤ装置とが相対的に回転するロック位置になるように、摺動スリーブが前同期位置になるようにさらに構成されている。
【0111】
態様3:態様1または2に記載のシフトサブアセンブリは、回転軸に沿った移動において、摺動スリーブが、摺動スリーブの内部ギヤ装置がシンクロナイザー本体の外歯ギヤ領域と係合しておらず、同時に、摺動スリーブの内部ギヤ装置が双方のシンクロナイザーリングの外部ギヤ装置と少なくとも部分的に係合しており、対応するシンクロナイザー本体が摩擦係合を介して対応するシンクロナイザーリングと同じ回転速度になる(トルクがシンクロナイザー本体に作用する)ように、摺動スリーブによって回転軸の方向においてシンクロナイザーリングの一方に力が好ましくは加えられる同期位置になることができるようにさらに構成されている。
【0112】
さらなる態様:
4.車両用の電気駆動システムのための変速機であって、
ハウジング(G)と、
ハウジング(G)において回転軸(X)を中心として回転可能に支持された入力シャフト(E)と、
ハウジング(G)において回転軸(X)を中心として回転可能に支持された出力シャフト(A)と、
回転軸(X)と同軸上に隣接して配置され、互いにギヤ比が異なる第1の遊星変速機(10)および第2の遊星変速機(12)であって、第1の遊星変速機(10)および第2の遊星変速機(12)が、回転軸(X)を中心として回転可能にハウジング(G)に支持され且つ出力シャフト(A)に接続された共通の遊星キャリア(S)を含み、第1の遊星変速機(10)が、回転軸(X)を中心として回転可能にハウジング(G)に支持された第1のリングギヤ(14)を含み、第2の遊星変速機(12)が、回転軸(X)を中心として回転可能にハウジング(G)に支持された第2のリングギヤ(16)を含む、第1の遊星変速機および第2の遊星変速機と、
第1のリングギヤ(14)または第2のリングギヤ(16)がハウジング(G)に選択的にロック可能であり、それにより、第1のリングギヤ(14)がロックされると、第1のギヤ比で入力シャフト(E)から第1の遊星変速機(10)を介して出力シャフト(A)にトルクが伝達可能であり、第2のリングギヤ(16)がロックされると、第2のギヤ比で入力シャフト(E)から第2の遊星変速機(12)を介して出力シャフト(A)にトルクが伝達可能であるロック装置(2)と、を含み、
ロック装置(2)が、
摺動スリーブ(18)がハウジング(G)に対して回転不能であり且つ回転軸(X)に沿って軸方向に移動可能であるようにハウジング(G)内に配置され、内部ギヤ装置(20)を有する摺動スリーブ(18)と、
第1のリングギヤ(14)と堅固に接続されるか、または一体的に形成され、摺動スリーブ(18)を回転軸(X)に沿って第1の位置に移動させることによって摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)と係合することができるように構成された外部ギヤ装置(24)を有する、第1のシンクロナイザー本体(22)、および第2のリングギヤ(16)と堅固に接続されるか、または一体的に形成され、摺動スリーブ(18)を回転軸(X)に沿って第2の位置に移動させることによって摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)と係合することができるように構成された外部ギヤ装置(28)を有する、第2のシンクロナイザー本体(26)と、
アクチュエータを有する変位装置(46)であって、それを使用して摺動スリーブ(18)が第1の位置と第2の位置との間で回転軸(X)に沿って変位可能である、変位装置と、を含む、変速機。
【0113】
5.第1のシンクロナイザー本体(22)が、第2のシンクロナイザー本体(26)に面する側に摩擦領域(30)を有し、第2のシンクロナイザー本体(26)が、第1のシンクロナイザー本体(22)に面する側に摩擦領域(32)を有し、
アクチュエータを使用して摺動スリーブ(18)を回転軸(X)に沿って移動させることによって摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)と係合可能に構成された外部ギヤ装置(36)を有し、第1のシンクロナイザー本体(22)の摩擦領域(30)と当接するように構成された摩擦領域(38)を有する、第1のシンクロナイザーリング(34)が設けられ、アクチュエータを使用して摺動スリーブ(18)を回転軸(X)に沿って移動させることによって摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(18)と係合可能に構成された外部ギヤ装置(42)を有し、第2のシンクロナイザー本体(26)の摩擦領域(32)と当接するように構成された摩擦領域(44)を有する、第2のシンクロナイザーリング(40)が設けられる、
態様4に記載の変速機。
【0114】
6.ロック装置(2)が、アクチュエータを使用して、摺動スリーブ(18)が、摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)がシンクロナイザー本体(22、26)の外部ギヤ装置(24、28)と係合していないと同時に、シンクロナイザーリング(34、40)のうちの1つのみの外部ギヤ装置(36、42)と係合する中立位置になることができるようにさらに構成されている、
態様5に記載の変速機。
【0115】
7.ロック装置(2)が、アクチュエータを使用して、摺動スリーブ(18)が、回転軸(X)に沿った移動において、摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)が2つのシンクロナイザー本体(22、26)の外部ギヤ装置(24、28)と係合しておらず、同時に摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)がシンクロナイザーリング(34、40)の一方のみの外部ギヤ装置(36、42)と係合し、同時に摺動スリーブ(18)が、摺動スリーブ(18)に対して回転不能に設けられたロック支柱(39)をシンクロナイザーリング(34、40)の他方に対して軸方向に当接させ、シンクロナイザーリング(34、40)の他方を対応するシンクロナイザー本体に対して押圧し、それによって他方のシンクロナイザーリングが摺動スリーブに対して相対的に回転してロック位置になり、摺動スリーブ(18)および他方のシンクロナイザーリングのギヤ装置(20)が、互いに対して相対的に回転される、前同期位置になることができるように構成されている、
態様5または6に記載の変速機。
【0116】
8.ロック装置が、アクチュエータを使用して、回転軸(X)に沿った移動において、摺動スリーブ(18)が、摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)が2つのシンクロナイザー本体(22、26)の外部ギヤ装置(24、28)と係合しておらず、同時に摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)が双方のシンクロナイザーリングの外部ギヤ装置(36、42)と少なくとも部分的に係合しており、摺動スリーブ(18)によって回転方向(X)においてシンクロナイザーリング(34、40)の一方に力が加えられ、対応するシンクロナイザー本体(22、26)が一方のシンクロナイザーリング(34、40)との摩擦係合によって制動可能である同期位置になることができるように構成されている、
態様5から7のいずれか1つに記載の変速機。
【0117】
9.ロック装置が、第1の遊星変速機(10)を介したトルク伝達が、摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)が第1のシンクロナイザー本体(22)の外部ギヤ装置(24)と係合すると同時に第2のシンクロナイザー本体(26)および第2のシンクロナイザーリング(40)の外部ギヤ装置(28、42)と係合しない第1のギヤ位置にアクチュエータを使用して回転軸(X)に沿って摺動スリーブをもたらすことによって実現され、第2の遊星変速機(12)を介したトルク伝達が、摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)が第2のシンクロナイザー本体(26)の外部ギヤ装置(28)と係合し、同時に、第1のシンクロナイザー本体(22)および第1のシンクロナイザーリング(34)の外部ギヤ装置(24、36)と係合しない第2のギヤ位置にアクチュエータを使用して回転軸(X)に沿って摺動スリーブ(18)をもたらすことによって実現されるように構成されている、
態様5から8のいずれか1つに記載の変速機。
【0118】
10.回転軸(X)の方向における摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)の幅が、回転軸(X)の方向におけるシンクロナイザーリング(34、40)の外部ギヤ装置(36、42)の間隔よりも大きく、回転軸(X)の方向におけるそれぞれの他方のシンクロナイザーリング(40、34)の外部ギヤ装置に対するシンクロナイザー本体(22、26)の一方の外部ギヤ装置(24、28)の距離よりも小さい、
態様5から9のいずれか1つに記載の変速機。
【0119】
11.摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)の直径が、より小さいリングギヤ(14、16)の内部ギヤ装置の直径よりも大きい、
態様4から10のいずれか1つに記載の変速機。
【0120】
12.第1の遊星変速機(10)が、入力シャフト(E)に一体回転可能に設けられた第1の太陽ギヤ(1´)と、遊星キャリア(S)に回転可能に支持され、第1の太陽ギヤ(1´)および第1のリングギヤ(14)に噛合する第1の遊星ギヤ(6´)と、を含み、
第2の遊星変速機(12)が、入力シャフト(E)に一体回転可能に設けられた第2の太陽ギヤ(1)と、遊星キャリア(S)に回転可能に支持され、第2の太陽ギヤ(1)および第2のリングギヤ(16)に噛合する第2の遊星ギヤ(6)と、を含む、
態様4から11のいずれか1つに記載の変速機。
【0121】
13.第1の遊星変速機(10)が、遊星キャリア(S)に回転可能に支持され、第1のリングギヤ(14)と噛合する第1の遊星ギヤ(6´)を含み、第2の遊星変速機(12)が、遊星キャリア(S)に回転可能に支持され、第2のリングギヤ(16)と噛合する第2の遊星ギヤ(6)を含み、
第1の遊星ギヤ(6´)および第2の遊星ギヤ(6)が、互いに固定的に接続され、
太陽ギヤ(1)と入力シャフト(E)とが一体回転するように、第1または第2の遊星ギヤ(6´、6)が、入力シャフト(E)に設けられた太陽ギヤ(1)と噛合し、
好ましくは、互いに固定的に接続された2つの遊星ギヤが、一方の段のみが太陽ギヤ(1)と噛合する段付き遊星ギヤとして構成されている、
態様4から12のいずれか1つに記載の変速機。
【0122】
14.変位装置(46)が、
アクチュエータ(48)によって駆動可能なウォームシャフト(50)と、
摺動スリーブ(18)と同軸上に配置され、回転軸(X)を中心として回転軸(X)に垂直な径方向から見て、摺動スリーブ(18)がウォームギヤ(52)と少なくとも部分的に重なり且つウォームシャフト(50)によって回転軸(X)を中心として回転可能であるように、摺動スリーブに対して外周側に配置されたウォームギヤ(52)と、
摺動スリーブ(18)に設けられ、径方向外側に突出するガイドピン(56)と、を含み、
ウォームギヤ(52)には、ガイドピン(56)を受け入れるためのガイド溝(54)が設けられ、ガイド溝(56)が、ウォームギヤ(52)が角度(β)だけ回転する間に、距離(x)に沿った摺動スリーブ(18)の変位が生じるように、周方向に対して角度(α)で延在し、
アクチュエータが、電気モータとして構成されている、
態様4から13のいずれか1つに記載の変速機。
【0123】
15.摺動スリーブ(18)が、その外側に外部ギヤ装置を有し、この外部ギヤ装置を使用して、ハウジング(G)内の内部ギヤ装置において回転軸(X)に沿って案内可能である、
態様4から14のいずれか1つに記載の変速機。
【0124】
16.リングギヤ(14、16)が、遊星ギヤ(6´、6)上に径方向に支持され、軸受が、リングギヤの間、および互いに反対側を向く側面とハウジングとの間に軸方向支持のためにそれぞれ配置される、
態様4から15のいずれか1つに記載の変速機。
【0125】
17.入力シャフト(E)が、軸受を介して遊星キャリア(S)内に支持され、または
遊星キャリア(S)が、入力シャフト(E)上に支持される、
態様4から16のいずれか1つに記載の変速機。
【0126】
18.変速機であって、
ハウジング(G)と、
ロック装置(2)と、を含み、
ロック装置(2)が、
ハウジング内に移動軸に沿って移動可能に支持され、中心軸が移動軸と同軸に設けられた内部ギヤ装置(20)を有する摺動スリーブ(18)と、
摺動スリーブ(18)と同軸に配置され、摺動スリーブ(18)を移動軸に沿って移動させることによって摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)と係合することができる外部ギヤ装置(24)を有し、好ましくは径方向内側に、第1のシンクロナイザー本体(22)の外部ギヤ装置(24)に対して移動軸に向かって軸方向一方側に形成された摩擦領域(30)を有する、第1のシンクロナイザー本体(22)と、
摺動スリーブ(18)と同軸に、且つ第1のシンクロナイザー本体(22)の摩擦領域(30)の側に配置され、摺動スリーブ(18)を移動軸に沿って移動させることによって内部ギヤ装置(20)と係合することができる外部ギヤ装置(28)を有し、好ましくは径方向内側に形成され、且つ第1のシンクロナイザー本体(22)の側で第2のシンクロナイザー本体(26)の外部ギヤ装置(28)に対して軸方向に変位する摩擦領域(32)を有する、第2のシンクロナイザー本体(26)と、
摺動スリーブ(18)を移動軸に沿って移動させることによって摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)と係合することができる外部ギヤ装置(36)を有し、第1のシンクロナイザー本体(22)の摩擦領域(30)に当接するように構成された摩擦領域(38)を有する、第1のシンクロナイザーリング(38)と、
摺動スリーブ(18)を移動軸に沿って移動させることによって摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)と係合することができる外部ギヤ装置(42)を有し、第2のシンクロナイザー本体(26)の摩擦領域(32)に当接するように構成された摩擦領域(44)を有する、第2のシンクロナイザーリング(40)と、を含み、
ロック装置が、
摺動スリーブ(18)が、摺動スリーブの内部ギヤ装置(20)が第1のシンクロナイザー本体(22)の前記外部ギヤ装置(24)と係合しておらず、第2のシンクロナイザー本体(26)の外部ギヤ装置(28)と係合しておらず、同時にシンクロナイザーリング(34、40)のうちの1つのみの外部ギヤ装置(36、42)と係合する中立位置になるように構成されている、変速機。
【0127】
19.回転軸(X)に沿った移動において、摺動スリーブ(18)が、摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)が2つのシンクロナイザー本体(22、26)の外部ギヤ装置(24、28)と係合しておらず、同時に、摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)がシンクロナイザーリング(34、40)の一方のみの外部ギヤ装置(36、42)と係合しており、同時に、摺動スリーブ(18)が、摺動スリーブ(18)に対して回転不能に設けられたロック支柱(39)をシンクロナイザーリング(34、40)の他方に対して軸方向に当接させ、シンクロナイザーリング(34、40)の他方を対応するシンクロナイザー本体に対して押圧し、それによって、他方のシンクロナイザーリングが摺動スリーブ(18)に対して相対的にロック位置に回転し、摺動スリーブ(18)のギヤ装置と他方のシンクロナイザーリングのギヤ装置とが互いに対して相対的に回転される前同期位置になり、および/または
回転軸(X)に沿った移動において、摺動スリーブ(18)が、摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)が2つのシンクロナイザー本体(22、26)の外部ギヤ装置(24、28)と係合しておらず、同時に、摺動スリーブ(18)の内部ギヤ装置(20)が双方のシンクロナイザーリングの外部ギヤ装置(36、42)と少なくとも部分的に係合しており、好ましくは、対応するシンクロナイザー本体(22、26)が摩擦係合を介して一方のシンクロナイザーリング(34、40)と同期可能であるように、摺動スリーブ(18)によって一方のシンクロナイザーリング(34、40)に回転軸(X)の方向に力が加えられる同期位置になることができる、
ようにさらに構成されている、態様18に記載の変速機。
【0128】
20.請求項7、8、および12の少なくとも一項の特性づける特徴によってさらに展開される、態様18または19に記載の変速機。
【0129】
21.
摺動スリーブ(18)を回転軸(X)に沿って変位させることができるアクチュエータを有する変位装置(46)
をさらに含む、態様18から20のいずれか1つに記載の変速機。
【0130】
22.
ハウジング(G)において回転軸(X)を中心として回転可能に支持された入力シャフト(E)と、
ハウジング(G)において回転軸(X)を中心として回転可能に支持された出力シャフト(A)と、
回転軸(X)と同軸上に隣接して配置され、互いにギヤ比が異なる第1の遊星変速機(10)および第2の遊星変速機(12)であって、第1の遊星変速機(10)および第2の遊星変速機(12)が、共通の遊星キャリア(S)を有し、共通の遊星キャリア(S)が、回転軸(X)を中心として回転可能にハウジング(G)に支持され、出力シャフト(A)に接続され、第1の遊星変速機(10)が、回転軸(X)を中心として回転可能にハウジング(G)に支持された第1のリングギヤ(14)を含み、第2の遊星変速機(12)が、回転軸(X)を中心として回転可能にハウジング(G)に支持された第2のリングギヤ(16)を含む、第1の遊星変速機および第2の遊星変速機と、をさらに含み、
ロック装置(2)を使用して、第1のリングギヤ(14)または第2のリングギヤ(16)がハウジング(G)に選択的にロック可能であり、それにより、第1のリングギヤ(14)がロックされているとき、第1のギヤ比で入力シャフト(E)から第1の遊星変速機(10)を介して出力シャフト(A)にトルクが伝達可能であり、第2のリングギヤ(16)がロックされているとき、第2のギヤ比で入力シャフト(E)から第2の遊星変速機(12)を介して出力シャフト(A)にトルクが伝達可能である、
態様18から21のいずれか1つに記載の変速機。
【0131】
23.態様9および態様12、態様13、態様14、態様16、および態様17のうちの少なくとも1つの特性づける特徴によってさらに展開される、態様21に従属する態様22に記載の変速機。
【0132】
そのようなシフトサブアセンブリを有する変速機も本教示に含まれることは自明である。
【0133】
添付の従属請求項は、上記の態様と自由に組み合わせることができ、「ロック装置」という用語は、「シフトサブアセンブリ」と同義であり、「シンクロナイザー本体の外部ギヤ領域」という用語は、「シンクロナイザー本体の外歯ギヤ装置」と同義である。
【0134】
明細書および/または特許請求の範囲に開示された特徴の全ては、当初開示の目的のために、ならびに実施形態および/または特許請求の範囲における特徴の組み合わせとは無関係に、特許請求される発明を限定する目的のために、互いに別個且つ独立であると見なされるべきであることが明確に強調される。当初開示の目的のために、および特許請求される発明を限定する目的のために、特に範囲仕様の限界としても、全ての範囲仕様または単位のグループの仕様が可能な全ての中間値または単位のサブグループを開示することが明示的に述べられている。
【0135】
図面は、純粋に概略的であると見なされるべきである。同じ実施形態の異なる状態およびビューを示す図は、異なる詳細度で実施形態の詳細を表すこともできる。機能的および構造的な説明は、関連するままである。
【0136】
本明細書で使用される「おおよそ」、「約」、「およそ」、「実質的に」、または「一般的に」という用語は、例えばパラメータ、量、形状、持続時間などの測定可能な値に関連して使用され、それぞれの値またはそれぞれの値から±10%以下、好ましくは±5%以下、さらに好ましくは±1%以下、さらに好ましくは±0.1%の偏差または変動を含むが、これらの偏差は、開示された発明の実施において実際に技術的に依然として有用であることを条件とする。最終的に、構成要素の長手方向または寸法公差は、パラメータの偏差または変動を決定する。「およそ」という用語が指す値は、そのように明示的且つ具体的に開示されていることが明示的に示されている。初期値および最終値による範囲の指示は、それぞれの範囲によって囲まれるそれらの値およびそれらの値の一部ならびにその初期値および最終値の全てを含む。
【符号の説明】
【0137】
EM 電気駆動機械(Eモータ)
E 入力シャフト
A 出力シャフト
X 回転軸
G ハウジング
S ブリッジ
α ウォームギヤの溝の傾斜角
β 溝の周方向角度(「長さ」)
1´ 第1の太陽ギヤ
1 第2の太陽ギヤ
2 ロック装置
6´ 第1の遊星ギヤ
6 第2の遊星ギヤ
10 第1の遊星変速機
12 第2の遊星変速機
14 第1のリングギヤ
16 第2のリングギヤ
17 段付き接続構成要素
18 摺動スリーブ
20 摺動スリーブの内部ギヤ装置
22 第1のシンクロナイザー本体
24 第1のシンクロナイザー本体の外部ギヤ装置
26 第2のシンクロナイザー本体
28 第2のシンクロナイザー本体の外部ギヤ装置
30 第1のシンクロナイザー本体の摩擦領域
32 第2のシンクロナイザー本体の摩擦領域
34 第1のシンクロナイザーリング
36 第1のシンクロナイザーリングの外部ギヤ装置
38 第1のシンクロナイザーリングの摩擦領域
39 ロック支柱
39a ばね
39b ロック支柱の当接面
39c 摺動スリーブの当接面
40 第2のシンクロナイザーリング
42 第2のシンクロナイザーリングの外部ギヤ装置
44 第2のシンクロナイザーリングの摩擦領域
46 変位装置
48 電気モータ
50 ウォームシャフト
52 ウォームギヤ
54 ウォームギヤのガイド溝
56 摺動スリーブ内のガイドピン
58 段付き遊星の第1の軸受
60 段付き遊星の第2の軸受
62 リングギヤ間の軸方向軸受
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】