(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-23
(54)【発明の名称】慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予防または治療用の組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/5377 20060101AFI20221216BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221216BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20221216BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20221216BHJP
A61K 31/5375 20060101ALI20221216BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20221216BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20221216BHJP
A61K 31/551 20060101ALI20221216BHJP
A61K 31/4427 20060101ALI20221216BHJP
A61K 31/4453 20060101ALI20221216BHJP
A61K 31/4525 20060101ALI20221216BHJP
A61K 31/445 20060101ALI20221216BHJP
A61K 31/4025 20060101ALI20221216BHJP
A61K 31/397 20060101ALI20221216BHJP
A61K 31/40 20060101ALI20221216BHJP
A61K 31/553 20060101ALI20221216BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61P11/00
A61K31/496
A61K31/454
A61K31/5375
A61K31/495
A61K31/4439
A61K31/551
A61K31/4427
A61K31/4453
A61K31/4525
A61K31/445
A61K31/4025
A61K31/397
A61K31/40
A61K31/553
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523982
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(85)【翻訳文提出日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 IB2020059919
(87)【国際公開番号】W WO2021079300
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0132501
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514052597
【氏名又は名称】チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ヨンイル
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ニナ
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ドンヒョン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC02
4C086BC07
4C086BC17
4C086BC21
4C086BC37
4C086BC42
4C086BC50
4C086BC54
4C086BC73
4C086BC75
4C086BC82
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA10
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA59
(57)【要約】
本発明は、化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む慢性閉塞性肺疾患の予防または治療用の薬学的組成物、前記化合物または組成物を用いた慢性閉塞性肺疾患の予防または治療方法、および慢性閉塞性肺疾患を治療するための薬剤の製造における前記化合物または組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する慢性閉塞性肺疾患の予防または治療用の医薬組成物:
【化1】
前記式中、
Aは
【化2】
であり、
XaおよびXbは各々独立にCHまたはNであり、
L
1およびL
2は各々独立に水素、ハロゲン、-CF
3、または-C
1-3の直鎖または分岐鎖アルキルであり、
QはC(=O)、S(=O)
2、S(=O)またはC(=NH)であり、
Yは下記グループから選択され
【化3】
、
MはC、N、O、SまたはS(=O)
2であり(この際、MがCである場合、lおよびmは1であり、MがNである場合、lは1であり、mは0であり、MがO、SまたはS(=O)
2である場合、lおよびmは0である)、
R
a1およびR
a2は各々独立に水素;ヒドロキシ;非置換または一つ以上のハロゲンで置換された-C
1-4の直鎖または分岐鎖アルキル;-C
1-4の直鎖または分岐鎖アルコール;ベンズヒドリル;N、O、Sのうち1~3個のヘテロ原子を環員として含む飽和または不飽和の5~7員複素環式化合物で置換された-C
1-4の直鎖または分岐鎖アルキル(この際、複素環式化合物は、非置換または一つ以上の水素が任意にOH、OCH
3、CH
3、CH
2CH
3、またはハロゲンで置換されてもよい);N、O、Sのうち1~3個のヘテロ原子を環員として含む飽和または不飽和の5~7員複素環式化合物(この際、複素環式化合物は、非置換または一つ以上の水素が任意にOH、OCH
3、CH
3、CH
2CH
3、またはハロゲンで置換されてもよい);非置換または一つ以上の水素がハロゲン、C
1-4アルコキシ、C
1-2アルキルまたはヒドロキシで置換されたフェニル;非置換または一つ以上の水素がハロゲン、C
1-4アルコキシ、C
1-2アルキルまたはヒドロキシで置換されたベンジル;-S(=O)
2CH
3;ハロゲン;-C
1-6の直鎖または分岐鎖アルコキシ;-C
2-6アルコキシアルキル;-C(=O)R
x、ここで、R
xは直鎖または分岐鎖のC
1-3アルキルまたはC
3-10のシクロアルキルである;
【化4】
、ここで、R
cおよびR
dは独立に水素、C
1-3の直鎖または分岐鎖アルキルである;
【化5】
または
【化6】
であり、
nは0、1または2の整数であり、
R
bは水素;ヒドロキシ;非置換または一つ以上の水素がハロゲンで置換された-C
1-6の直鎖または分岐鎖アルキル;-C(=O)CH
3;-C
1-4の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル;-C
1-6の直鎖または分岐鎖アルコキシ;-C
2-6の直鎖または分岐鎖アルコキシアルキル;-CF
3;ハロゲン;または
【化7】
であり、
R
eおよびR
fは各々独立に水素または-C
1-3の直鎖または分岐鎖アルキルであり、かつ
Zは下記のグループから選択され
【化8】
、
P
aおよびP
bは各々独立に
【化9】
;水素;ヒドロキシ;非置換または一つ以上の水素がハロゲンで置換された-C
1-4の直鎖または分岐鎖アルキル;ハロゲン;-CF
3;-OCF
3;-CN;-C
1-6の直鎖または分岐鎖アルコキシ;-C
2-6の直鎖または分岐鎖アルキルアルコキシ;-CH
2F;または-C
1-3のアルコールであり、
ここで、
【化10】
はフェニル、ピリジン、ピリミジン、チアゾール、インドール、インダゾール、ピペラジン、キノリン、フラン、テトラヒドロピリジン、ピペリジンまたは下記グループから選択された環であり
【化11】
、
x、yおよびzは各々独立に0または1の整数であり、
R
g1、R
g2およびR
g3は各々独立に水素;ヒドロキシ;-C
1-3アルキル;-CF
3;-C
1-6の直鎖または分岐鎖アルコキシ;-C
2-6の直鎖または分岐鎖アルキルアルコキシ;-C(=O)CH
3;-C
1-4の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル;-N(CH
3)
2;ハロゲン;フェニル;-S((=O)
2)CH
3;または下記グループから選択される
【化12】
。
【請求項2】
前記化学式Iで表される化合物は、下記化学式Iaで表される化合物である、請求項1に記載の医薬組成物:
【化13】
前記式中、
Yは下記グループから選択され
【化14】
、
この際、M、l、m、n、R
a1、R
a2、およびR
bは各々請求項1で定義されたものと同様であり、
Zは
【化15】
であり、
P
aおよびP
bは各々独立に水素;ヒドロキシ;非置換または一つ以上の水素がハロゲンで置換された-C
1-4の直鎖または分岐鎖アルキル;ハロゲン;-CF
3;-OCF
3;-CN;-C
1-6の直鎖または分岐鎖アルコキシ;-C
2-6の直鎖または分岐鎖アルキルアルコキシ;-CH
2F;または-C
1-3のアルコールである。
【請求項3】
Yは下記グループから選択され
【化16】
、
この際、nおよびR
bは各々請求項1で定義されたものと同様であり、
Zは
【化17】
であり、
P
aおよびP
bは各々独立に水素;ハロゲン;-CF
3;または-C
1-6の直鎖または分岐鎖アルコキシである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記化学式Iで表される化合物は、下記表に記載された化合物である、請求項1に記載の医薬組成物:
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【請求項5】
前記化学式Iで表される化合物は、下記表に記載された化合物である、請求項1に記載の医薬組成物:
【表2】
【請求項6】
前記医薬組成物は、経口投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩の治療学的に有効な量を個体に投与するステップを含む、慢性閉塞性肺疾患の予防または治療方法。
【請求項8】
慢性閉塞性肺疾患を予防または治療するための、請求項1に記載の化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項9】
慢性閉塞性肺疾患を治療するための薬剤の調製における、請求項1に記載の化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む慢性閉塞性肺疾患の予防または治療用の医薬組成物、前記化合物または組成物を用いた慢性閉塞性肺疾患の予防または治療方法、および慢性閉塞性肺疾患を治療するための薬剤の製造における前記化合物または組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)は、気道および肺実質炎症による細気管支および肺実質の病理学的変化によって発生する疾病であり、閉塞性細気管支炎および肺気腫(肺実質破壊)を特徴とする。慢性閉塞性肺疾患の種類としては、慢性閉塞性気管支炎(chronic
obstructive bronchitis)、慢性細気管支炎(chronic
bronchiolitis)および肺気腫(emphysema)などが挙げられる。
【0003】
喫煙は、COPDの最も重要な原因であると考えられている。喫煙は、肺組織内で強い毒性物質として作用して、酸化物質、前炎症性因子および化学走化性因子の生成を促進し、これは、好中球のような炎症細胞の過度なマイグレーションを促進することになる。肺組織内に移動した炎症細胞は、多くの炎症性媒介物質を分泌し、肺組織内の炎症をさらに悪化させることになる。かかる炎症反応を促進する媒介物質としてはTNF-αなどが主に知られており、タバコ煙による炎症反応時に重要なマーカーとして活用されている。
【0004】
最近の研究において、上皮間葉転換(epithelial-to-mesenchymal trasition;EMT)が慢性閉塞性疾患の病原性機構(pathogenic mechanisms)の一つであり得ることが報告され(Courtney JM、et al.Cells Tissues Organs.2017;203(2):99-104)、また、細胞外マトリックス(extracellular matrix;ECM)の主要タンパク質の一つであるFN-EDA(extra domain-A-containing fibronectin)がCOPD患者の気道で発見されることが報告された(Annoni R、et al.Eur Respir J.2012;40(6):1362-73)。
【0005】
現在、慢性閉塞性肺疾患の治療に用いられる物質は、肺組織内の炎症を改善することを重点的に開発してきており、主にステロイド製剤、抗炎剤などが用いられている。しかし、かかる物質は、免疫抑制および耐性などのさまざまな副作用をもたらすため、長期間の治療が必要な慢性閉塞性肺疾患患者には適していない。そこで、COPDを効果的に治療できる薬剤を開発することが急務である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2014-0128886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、慢性閉塞性肺疾患の予防または治療用の医薬組成物を提供する。
本発明は、前記 医薬組成物を個体に投与するステップを含む、慢性閉塞性肺疾患の予
防または治療方法を提供する。
本発明は、慢性閉塞性肺疾患を予防または治療するための薬剤の製造における前記組成物の使用を提供する。
【0008】
本発明は、化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩の治療学的に有効な量を個体に投与するステップを含む、慢性閉塞性肺疾患の予防または治療方法を提供する。
本発明は、慢性閉塞性肺疾患を予防または治療するための、化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
本発明は、慢性閉塞性肺疾患の予防または治療用の薬剤を製造するための、化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような背景下、本発明者らは、慢性閉塞性肺疾患の治療剤を開発するために鋭意努力研究した結果、本発明に係る化合物がCOPD誘導マウスにおいて、免疫細胞の浸潤抑制、炎症細胞の浸潤抑制、および肺組織内の炎症性サイトカインの発現抑制効果を示すだけでなく、TGF-β1-誘導EMTの抑制効果および主要ECMタンパク質であるFN-EDAの発現抑制効果を示すことを確認し、本発明を完成するに至った。
【0010】
これを具体的に説明すれば次のとおりである。一方、本発明に開示された各々の説明および実施形態は、各々に対する他の説明および実施形態にも適用 できる。すなわち、本
発明に開示されたさまざまな要素の全ての組み合わせが本発明の範囲に属する。また、下記に記述された具体的な記載により本発明の範囲が限定されるとは限らない。
【0011】
本発明は、下記化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む、慢性閉塞性肺疾患の予防または治療用の医薬組成物を提供する:
【化1】
前記式中、
Aは
【化2】
であり、
XaおよびXbは各々独立にCHまたはNであり、
L
1およびL
2は各々独立に水素、ハロゲン、-CF
3、または-C
1-3の直鎖または分岐鎖アルキルであり、
QはC(=O)、S(=O)
2、S(=O)またはC(=NH)であり、
Yは下記グループから選択され
【化3】
、
MはC、N、O、SまたはS(=O)
2であり(この際、MがCである場合、lおよびmは1であり、MがNである場合、lは1であり、mは0であり、MがO、SまたはS(=O)
2である場合、lおよびmは0である)、
【0012】
R
a1およびR
a2は各々独立に水素;ヒドロキシ;非置換または一つ以上のハロゲンで置換された-C
1-4の直鎖または分岐鎖アルキル;-C
1-4の直鎖または分岐鎖アルコール;ベンズヒドリル;N、O、Sのうち1~3個のヘテロ原子を環員として含む飽和または不飽和の5~7員複素環式化合物で置換された-C
1-4の直鎖または分岐鎖アルキル(この際、複素環式化合物は、非置換または一つ以上の水素が任意にOH、OCH
3、CH
3、CH
2CH
3、またはハロゲンで置換されてもよい);N、O、Sのうち1~3個のヘテロ原子を環員として含む飽和または不飽和の5~7員複素環式化合物(この際、複素環式化合物は、非置換または一つ以上の水素が任意にOH、OCH
3、CH
3、CH
2CH
3、またはハロゲンで置換されてもよい);非置換または一つ以上の水素がハロゲン、C
1-4アルコキシ、C
1-2アルキルまたはヒドロキシで置換されたフェニル;非置換または一つ以上の水素がハロゲン、C
1-4アルコキシ、C
1-2アルキルまたはヒドロキシで置換されたベンジル;-S(=O)
2CH
3;ハロゲン;-C
1-6の直鎖または分岐鎖アルコキシ;-C
2-6アルコキシアルキル;-C(=O)R
x、ここで、R
xは直鎖または分岐鎖のC
1-3アルキルまたはC
3-10のシクロアルキルである;
【化4】
、ここで、R
cおよびR
dは独立に水素、C
1-3の直鎖または分岐鎖アルキルである;
【化5】
または
【化6】
であり、
nは0、1または2の整数であり、
【0013】
R
bは水素;ヒドロキシ;非置換または一つ以上の水素がハロゲンで置換された-C
1-6の直鎖または分岐鎖アルキル;-C(=O)CH
3;-C
1-4の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル;-C
1-6の直鎖または分岐鎖アルコキシ;-C
2-6の直鎖または分岐鎖アルコキシアルキル;-CF
3;ハロゲン;または
【化7】
であり、
R
eおよびR
fは各々独立に水素または-C
1-3の直鎖または分岐鎖アルキルであり、かつ
Zは下記のグループから選択され
【化8】
、
P
aおよびP
bは各々独立に
【化9】
;水素;ヒドロキシ;非置換または一つ以上の水素がハロゲンで置換された-C
1-4の直鎖または分岐鎖アルキル;ハロゲン;-CF
3;-OCF
3;-CN;-C
1-6の直鎖または分岐鎖アルコキシ;-C
2-6の直鎖または分岐鎖のアルキルアルコキシ;-CH
2F;または-C
1-3のアルコールであり、
【0014】
ここで、
【化10】
はフェニル、ピリジン、ピリミジン、チアゾール、インドール、インダゾール、ピペラジン、キノリン、フラン、テトラヒドロピリジン、ピペリジンまたは下記グループから選択された環であり
【化11】
、
x、yおよびzは各々独立に0または1の整数であり、
R
g1、R
g2およびR
g3は各々独立に水素;ヒドロキシ;-C
1-3アルキル;-CF
3;-C
1-6の直鎖または分岐鎖アルコキシ;-C
2-6の直鎖または分岐鎖アルキルアルコキシ;-C(=O)CH
3;-C
1-4の直鎖または分岐鎖ヒドロキシアルキル;-N(CH
3)
2;ハロゲン;フェニル;-S((=O)
2)CH
3;または下記グループから選択される
【化12】
。
【0015】
本発明において、前記化学式Iで表される化合物は、下記化学式Iaで表される化合物であってもよい:
【化13】
前記式中、
Yは下記グループから選択され
【化14】
、
この際、M、l、m、n、R
a1、R
a2、およびR
bは各々前記化学式Iで定義されたものと同様であり、
Zは
【化15】
であり、
P
aおよびP
bは各々独立に水素;ヒドロキシ;非置換または一つ以上の水素がハロゲンで置換された-C
1-4の直鎖または分岐鎖アルキル;ハロゲン;-CF
3;-OCF
3;-CN;-C
1-6の直鎖または分岐鎖アルコキシ;-C
2-6の直鎖または分岐鎖アルキルアルコキシ;-CH
2F;または-C
1-3のアルコールである。
本発明の一実施態様によれば、
Yは下記グループから選択され
【化16】
、
この際、nおよびR
bは各々前記化学式Iで定義されたものと同様であり、
Zは
【化17】
であり、
P
aおよびP
bは各々独立に水素;ハロゲン;-CF
3;または-C
1-6の直鎖または分岐鎖アルコキシである。
【0016】
本発明において、「ハロゲン」はF、Cl、BrまたはIを示す。
本発明の具体例によれば、前記化学式Iで表される化合物は、下記表に記載された化合物であってもよい。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【0017】
本発明の具体例によれば、前記化学式Iで表される化合物は、下記表に記載された化合物であってもよい。
【表2】
【0018】
本発明において、前記化学式Iで表される化合物は、大韓民国公開特許公報第2014-0128886号に開示された方法により製造されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明の用語、「薬学的に許容される」とは、生理学的に許容され、個体に投与される際、通常、胃腸障害、めまいのようなアレルギー反応またはそれと類似した反応を起こさないことを意味する。
本発明の薬学的に許容される塩は、当業界の通常の技術者に公知された通常の方法により製造されてもよい。
【0020】
本発明の薬学的に許容される塩は、例えば、カルシウム、カリウム、ナトリウム、マグネシウムなどから製造された無機イオン塩、塩酸、硝酸、リン酸、臭素酸、ヨウ素酸、過塩素酸、硫酸、ヨウ化水素酸などから製造された無機酸塩、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸、マンデル酸、プロピオン酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、カルボン酸、バニリン酸などから製造された有機酸塩、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などから製造されたスルホン酸塩、グリ
シン、アルギニン、リジンなどから製造されたアミノ酸塩、およびトリメチルアミン、トリエチルアミン、アンモニア、ピリジン、ピコリンなどから製造されたアミン塩などが挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明における好ましい塩は、塩酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、臭素酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、酒石酸を含む。
【0021】
本発明の用語、「慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)」は、不可逆的な気道の閉塞を伴い、気道および肺実質炎症による細気管支および肺実質の病理学的変化によって発生する疾患を意味し、慢性閉塞性気管支炎、慢性細気管支炎および肺気腫(肺実質破壊)などを全て含む。
【0022】
本発明の用語、「予防」は、本発明の化学式Iの化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩の投与により、疾患の発病を抑制または遅延させる全ての行為を意味する。
本発明の用語、「治療」は、本発明の化学式Iの化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩の投与により、疾患の疑いおよび発病個体の症状が好転または有益に変更される全ての行為を意味する。
【0023】
本発明の化学式Iで表される化合物、その光学異性体、またはその薬学的に許容される塩は、慢性閉塞性肺疾患の予防または治療に有用に使用することができる。
【0024】
本発明の化学式Iで表される化合物、その光学異性体、またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含む医薬組成物は、慢性閉塞性肺疾患の予防または治療に有用に使用することができる。
【0025】
これに関し、本発明の具体的な一実施形態においては、本発明の化学式Iで表される化合物、その光学異性体、またはその薬学的に許容される塩が免疫細胞の浸潤を抑制し(
図2)、総細胞、マクロファージ、および好中球の数を減少させて炎症細胞の浸潤を抑制し(
図3)、炎症性サイトカイン、具体的にはIL-6、IFN-γ、MCP-1、およびTNF-αの発現を減少させることを確認した(
図4)。
【0026】
また、上皮マーカータンパク質であるE-Cadの発現を顕著に増加させ、間葉マーカータンパク質であるN-Cadの発現を顕著に減少させてTGF-β1誘導EMTを抑制し(
図5)、主要ECMタンパク質であるFN-EDAの発現を減少させることを確認した(
図6)。
【0027】
本発明の医薬組成物は、従来の周知のCOPD治療用組成物と類似または実質的に同一であると見られるレベルまたはさらに優れたレベルの慢性閉塞性肺疾患の予防または治療効果を示すことができる。
【0028】
本発明の医薬組成物は、前記化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩の他に、薬学的に許容される担体を1種以上さらに含むことができる。薬学的に許容される担体は、当業界で通常用いられるものとして、具体的に、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリジン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ミネラル、またはオイルであってもよいが、これに限定されるものではない。本発明の医薬組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、分散剤、安定化剤などをさらに含むことができる。また、本発明の薬学的組成
物は、薬学的に許容可能な担体および賦形剤を用いて錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤、懸濁液、エマルション、内用液剤、乳剤、シロップなどの経口用剤形、外用剤、坐剤または滅菌注射溶液の形態に製剤化して単位用量の形態に製造されるか、または多用量容器内に入れて製造されてもよい。製剤は、当業界で製剤化に用いられる通常の方法またはRemington’s Pharmaceutical Science(19th
ed.、1995)に開示された方法により製造することができ、各疾患または成分に応じてさまざまな製剤に製剤化することができる。
【0029】
本発明の医薬組成物を用いた経口投与用製剤の非限定的な例としては、錠剤、トローチ剤(troches)、ロゼンジ(lozenge)、水溶性懸濁液、油性懸濁液、調製粉末、顆粒、エマルション、ハードカプセル、ソフトカプセル、シロップまたはエリキシル剤などが挙げられる。本発明の医薬組成物を経口投与用に製剤化するために、ラクトース、サッカロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アミロペクチン、セルロースまたはゼラチンなどのような結合剤;ジカルシウムホスフェートなどのような賦形剤;トウモロコシデンプンまたはサツマイモデンプンなどのような崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリルフマル酸ナトリウムまたはポリエチレングリコールワックスなどのような潤滑油などを用いることができ、甘味剤、芳香剤、シロップ剤なども用いることができる。さらに、カプセル剤の場合は、上記で言及した物質の他に、脂肪油のような液体担体などをさらに用いることができる。
【0030】
本発明の医薬組成物を用いた非経口用製剤の非限定的な例としては、注射液、坐剤、呼吸器吸入用粉末、スプレー用エアロゾル剤、軟膏、塗布用パウダー、オイル、クリームなどが挙げられる。本発明の医薬組成物を非経口投与用に製剤化するために、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、外用剤などを用いることができ、前記非水性溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性オイル、エチルオレエートのような注射可能なエステルなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0031】
本発明の医薬組成物は、目的とする方法に応じて経口投与(oral administration)または非経口投与(parenteral administration)してもよく、好ましくは経口投与してもよいが、これに限定されるものではない。
【0032】
本発明の化学式Iで表される化合物、その光学異性体、薬学的に許容可能な塩の1日投与量は、具体的には、約0.1~約10,000mg/kg、約1~約8,000mg/kg、約5~約6,000mg/kg、または約10~約4,000mg/kgであってもよく、より具体的には、約50~約2,000mg/kgであってもよいが、これに限定されるものではなく、1日に1回~数回に分けて投与されてもよい。
【0033】
本発明の医薬組成物の薬学的有効量、有効投与量は、薬学的組成物の製剤化方法、投与方式、投与時間および/または投与経路などに応じて様々であり、薬学組成物の投与により達成しようとする反応の種類と程度、投与対象となる個体の種類、年齢、体重、一般的な健康状態、疾病の症状や程度、性別、食餌、排泄、当該個体に同時または異時にともに用いられる薬物、その他の組成物の成分などをはじめとする種々の因子および医薬分野で周知の類似因子に応じて さまざまであり、当該技術分野で通常の知識を有する者であれ
ば、目的とする治療に効果的な投与量を容易に決めて処方することができる。
【0034】
本発明の医薬組成物の投与は、1日に1回投与されてもよく、数回に分けて投与されてもよい。本発明の医薬組成物は、個別治療剤として投与されるか、または他の治療剤と併用して投与されてもよく、従来の治療剤とは順次または同時に投与されてもよい。前記要素を全て考慮して副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量で投与することがで
き、これは、本発明が属する技術分野の通常の技術者により容易に決定できるものである。
【0035】
本発明の医薬組成物は、単独で用いても優れた効果を発揮することができるが、治療効率を増加させるために、さらにホルモン治療、薬物治療などの様々な方法と併用して用いてもよい。
【0036】
本発明は、前記医薬組成物を個体に投与するステップを含む、慢性閉塞性肺疾患の予防または治療方法を提供する。
【0037】
本発明は、化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩の治療学的に有効な量を個体に投与するステップを含む、慢性閉塞性肺疾患の予防または治療方法を提供する。
【0038】
前記用語、「慢性閉塞性肺疾患」、「予防」、および「治療」は、前述したものと同様である。
【0039】
本発明の用語、「投与」は、適切な方法により個体に所定の物質を導入することを意味する。
本発明の用語、「個体」は、慢性閉塞性肺疾患が発病したかまたは発病し得る、ヒトを含むネズミ、マウス、家畜などの全ての動物を意味し、具体的に、ヒトを含む哺乳動物であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0040】
本発明の慢性閉塞性肺疾患の予防または治療方法は、前記医薬組成物を治療学的に有効な量で投与するものであってもよい。
【0041】
本発明の用語、「治療学的に有効な量」とは、医学的治療に適用できる合理的な受恵/リスクの比で疾患を治療するのに十分であり、且つ、副作用を起こさない程度の量を意味し、これは、患者の性別、年齢、体重、健康状態、疾病の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感受性、投与方法、投与時間、投与経路、排出比率、治療期間、配合または同時に用いられる薬物を含む要素およびその他の医学分野で周知の要素に応じて当業者により決定できるものである。特定の患者に対する具体的な治療的有効量は、達成しようとする反応の種類と程度、場合によっては他の製剤が用いられるか否かをはじめとする具体的な組成物、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食餌、投与時間、投与経路および組成物の分泌率、治療期間、具体的な組成物とともに用いられるかまたは同時に用いられる薬物をはじめとするさまざまな因子と医薬分野で周知の類似因子に応じて異に適用することが好ましい。
【0042】
本発明の慢性閉塞性肺疾患の予防または治療方法は、前記化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩を投与することにより、兆候の発現前に疾病自体を扱うだけでなく、その兆候を阻害するかまたは避けることも含む。疾患の管理において、特定の活性成分の予防的または治療学的用量は、疾病または状態の特性と深刻度、そして活性成分が投与される経路に応じてさまざまである。用量および用量の頻度は、個別患者の年齢、体重および反応に応じてさまざまである。好適な用量用法は、かかる因子を当然考慮する、この分野の通常の知識を有する者により容易に選択することができる。また、本発明の慢性閉塞性肺疾患の予防または治療方法は、前記化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩とともに、疾患の予防または治療に役立つさらなる活性製剤の治療学的に有効な量の投与をさらに含むことができ、さらなる活性剤制は、前記化学式Iの化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩とともに相乗効果または相加効果を示すことができる。
【0043】
本発明は、慢性閉塞性肺疾患を予防または治療するための、化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0044】
本発明は、慢性閉塞性肺疾患の予防または治療用の薬剤を製造するための、化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩の使用を提供する。
【0045】
本発明は、慢性閉塞性肺疾患を予防または治療するための薬剤の製造における本発明の薬学的組成物の使用を提供する。
【0046】
前記用語、「慢性閉塞性肺疾患」、「予防」、および「治療」は、前述したものと同様である。
【0047】
薬剤を製造するために、本発明の化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩に薬学的に許容される補助剤、希釈剤、担体などを混合することができ、その他の活性製剤とともに複合製剤に製造されて相乗作用を有してもよい。
【0048】
本発明の医薬組成物、治療方法および使用で言及された事項は、互いに矛盾しない限り、同様に適用される。
【発明の効果】
【0049】
本発明の化学式Iで表される化合物、その光学異性体またはその薬学的に許容される塩は、COPD誘導マウスにおいて、優れた免疫細胞の浸潤抑制、炎症細胞の浸潤抑制、および抗炎症効果を示すだけでなく、TGF-β1-誘導EMTの抑制効果および主要ECMタンパク質であるFN-EDAの発現抑制効果を示すので、慢性閉塞性肺疾患の予防または治療に有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】肺組織の細胞浸潤程度を判別するための参考画像を示す図である。
【
図2】比較の組成物と実施例の組成物を各々投与したグループの細胞浸潤程度を観察して測定されたスコアを示すグラフである。
【
図3】比較の組成物と実施例の組成物を各々投与したグループの総細胞(total cells)、マクロファージ(macrophage)、および好中球(neutrophil)の数を示すグラフである。
【
図4】比較の組成物と実施例の組成物を各々投与したグループの炎症性サイトカイン(IL-6、IFN-γ、MCP-1、およびTNF-α)の発現程度を示すグラフである。
【
図5】比較の組成物と実施例の組成物を各々処理したグループの上皮マーカータンパク質(E-Cad)および間葉マーカータンパク質(N-Cad)の発現程度を示すグラフである。
【
図6】比較の組成物と実施例の組成物を各々処理したグループの主要ECMタンパク質(FN-EDA)の発現程度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではないことは、当業界で通常の知識を有する者にとって自明である。
【0052】
製造例1.N-(4-(ヒドロキシカルバモイル)ベンジル)-N-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)モルホリン-4-カルボキサミドの合成[化合物374]
[ステップ1]メチル4-((3-(トリフルオロメチル)フェニルアミノ)メチル)ベンゾエート)の合成
【化18】
3-(トリフルオロメチル)ベンゼンアミン(0.30g、1.84mmol)および炭酸カリウム(0.76g、5.53mmol)をジメチルホルムアミド(DMF)(5mL)に溶かした後、メチル4-(ブロモメチル)ベンゾエート(0.42g、1.84mmol)を入れた。常温で1日間反応し、エチルアセテートで希釈した。反応物を水および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥濾過し減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(二酸化ケイ素;エチルアセテート/ヘキサン=20%)で精製して表題化合物(0.37g、65%)を得た。
【0053】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.93 (d, 2 H, J = 8.3 Hz), 7.49 (d, 2 H, J = 8.3 Hz), 7.24 (t, 1 H, J = 7.9 Hz), 6.88-6.78 (m, 4 H), 4.42 (d, 2 H, J = 6.1 Hz), 3.83 (s, 3H), MS (ESI) m/z 310 (M+ + H)。
【0054】
[ステップ2]メチル4-((((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)(3-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)メチル)ベンゾエートの合成
【化19】
メチル4-((3-(トリフルオロメチル)フェニルアミノ)メチル)ベンゾエート(0.26g、0.82mmol)および4-ニトロフェニルカルボノクロリデート(0.33g、1.65mmol)をアセトニトリル(10mL)に溶かし、炭酸カリウム(0
.34g、2.47mmol)を入れた。常温で1日間反応し、エチルアセテートで希釈した。反応物を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過し減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(二酸化ケイ素;エチルアセテート/ヘキサン=20%)で精製して無色オイルの表題化合物(0.35g、89%)を得た。
【0055】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.20 (d, 2 H,
J = 10.2 Hz), 8.01 (d, 2 H, J = 7.8 Hz), 7.56-7.46 (m, 3H), 7.35 (d, 3 H, J = 8.0 Hz), 7.26 (d, 2 H, J = 8.1 Hz), 5.01 (bs, 2H), 3.90 (s, 3H)。
【0056】
[ステップ3]メチル4-((N-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)モルホリン-4-カルボキシアミド)メチル)ベンゾエートの合成
【化20】
メチル4-((((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)(3-(トリフルオロメチル)フェニル)アミノ)メチル)ベンゾエート(0.29g、0.60mmol)をジメチルホルムアミド(10mL)に溶かし、炭酸カリウム(0.25g、1.81mmol)およびモルホリン(0.05mL、0.60mmol)を入れた。60℃で2日間反応させた後、飽和塩化アンモニウム溶液で希釈した。エチルアセテートで抽出した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過し減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(二酸化ケイ素;エチルアセテート/ヘキサン=50%)で精製して表題化合物(0.15g、60%)を得た。
【0057】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.97 (d, 2 H, J = 8.2 Hz), 7.43-7.32 (m, 5H), 7.20 (d, 1 H, J = 8.0 Hz), 4.94 (s, 2H), 3.90
(s, 3H), 3.50 (t, 4 H, J = 4.8 Hz), 3.25 (t, 4 H, J = 4.8 Hz); MS (ESI) m/z 423
(M+ + H)。
【0058】
[ステップ4]N-(4-(ヒドロキシカルバモイル)ベンジル)-N-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)モルホリン-4-カルボキサミドの合成
【化21】
メチル4-((N-(3-(トリフルオロメチル)フェニル)モルホリン-4-カルボキシアミド)メチル)ベンゾエート(0.15g、0.36mmol)をメタノール(5mL)に溶かし、ヒドロキシルアミン水溶液(50wt%、1mL)および水酸化カリウム(0.10g、1.81mmol)を入れて一晩撹拌した。反応終了後、メタノールを減圧蒸留して除去し、エチルアセテートおよび水を用いて抽出(work up)した。無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過し減圧濃縮した。残渣をジエチルエーテルにおいて撹拌して固体生成物を作り、濾過した後に乾燥して白色固体の表題化合物(0.082g、54%)を得た。
【0059】
1H NMR (400 MHz, MeOD-d3) δ 11.14 (brs,
1 H), 8.99 (brs, 1 H), 7.85 (d, 2 H, J = 8.0 Hz), 7.66-7.27 (m, 6 H), 4.94 (s, 2 H), 3.41 (s, 2 H), 3.15 (s, 2 H)。 MS (ESI) m/z 424 (M+ + H)。
【0060】
製造例2.N-(2,4-ジフルオロフェニル)-N-(4-(ヒドロキシカルバモイル)ベンジル)モルホリン-4-カルボキサミドの合成[化合物413]
[ステップ1]メチル4-((2,4-ジフルオロフェニルアミノ)メチル)ベンゾエートの合成
【化22】
2,4-ジフルオロベンゼンアミン(3.0g、23.2mmol)およびメチル4-ホルミルベンゾエート(3.81g、23.2mmol)をメタノール(500mL)に溶かした後、室温で2時間撹拌した後、酢酸(1.33mL、23.2mmol)およびナトリウムシアノボロヒドリド(1.46g、23.2mmol)を添加して1日間撹拌
した。メタノールをエアーにより若干除去すると固体が析出され、それをフィルタ乾燥して表題化合物(2.9g、45%)を白色固体として得た。
【0061】
[ステップ2]メチル4-(((2,4-ジフルオロフェニル)((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)アミノ)メチル)ベンゾエートの合成
【化23】
メチル4-((2,4-ジフルオロフェニルアミド)メチル)ベンゾエート(2g、7.21mmol)および4-ニトロフェニルクロロホルメート(1.45g、7.21mmol)をジクロロメタン(50mL)に溶かした後、3日間室温で撹拌した後に水を添加し、有機層を抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで水分を除去した後に減圧下で濃縮した。残渣を乾燥して表題化合物(2.5g、78%)を黄色オイルとして得た。
【0062】
[ステップ3]メチル4-((N-(2,4-ジフルオロフェニル)モルホリン-4-カルボキシアミド)メチル)ベンゾエートの合成
【化24】
メチル4-(((2,4-ジフルオロフェニル)((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)アミノ)メチル)ベンゾエート(0.50g、1.13mmol)およびモルホリン(0.098mL、1.13mmol)をジメチルホルムアミド(10mL)に溶かし、60℃で2日間加熱撹拌を行った。ジメチルホルムアミドを減圧除去し、反応混合物に水を注ぎ、エチルアセテートで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで水分を除去した後に減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー法(二酸化ケイ素;エチルアセテート/ヘキサン=30%)で精製および濃縮して表題化合物(0.44g、98%)を無色オイルとして得た。
【0063】
[ステップ4]N-(2,4-ジフルオロフェニル)-N-(4-(ヒドロキシカルバモイル)ベンジル)モルホリン-4-カルボキサミドの合成
【化25】
メチル4-((N-(2,4-ジフルオロフェニル)モルホリン-4-カルボキシアミド)メチル)ベンゾエート(0.10g、0.256mmol)をメタノール(20mL
)に溶かした後、ヒドロキシルアミン塩酸(0.089g、1.28mmol)および水酸化カリウム(0.144g、2.56mmol)を添加し撹拌した後、ヒドロキシルアミン(50wt%水溶液;0.329mL、5.12mmol)を滴加した後、3時間室温撹拌を行った。反応終了後、メタノールを減圧除去し、反応混合物に水を注ぎ、エチルアセテートで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで水分を除去した後に減圧下で濃縮した。その後、ジクロロメタンに溶かした後にヘキサンを添加して固体を析出させ、それをフィルタ乾燥して表題化合物(0.076g、76%)を薄い黄色固体として得た。
【0064】
1H NMR (400 MHz, MeOD-d3) δ 7.65 (d, 2 H, J = 8.3 Hz), 7.41 (d, 2 H, J = 8.2 Hz), 7.27 - 7.25 (m, 1 H), 7.04 - 6.96 (m,
2 H), 4.80 (s, 2 H), 3.46 - 3.43 (m, 4 H), 3.22 - 3.19 (m, 4 H); MS (ESI) m/z 392.1 (M+ + H)。
【0065】
製造例3.N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-N-(4-(ヒドロキシカルバモイル)ベンジル)モルホリン-4-カルボキサミドの合成[化合物458]
[ステップ1]メチル4-((3-クロロ-4-フルオロフェニルアミノ)メチル)ベンゾエートの合成
【化26】
3-クロロ-4-フルオロベンゼンアミン(2.0g、13.7mmol)およびメチル4-ホルミルベンゾエート(2.26g、13.7mmol)をメタノール(500mL)に溶かした後、室温で3時間撹拌した後、酢酸(0.786mL、13.7mmol)およびナトリウムシアノボロヒドリド(0.86g、13.7mmol)を添加して1日間撹拌した。メタノールをエアーにより若干除去すると固体が析出され、それをフィルタ乾燥して表題化合物(2.9g、72%)を灰色固体として得た。
【0066】
[ステップ2]メチル4-(((3-クロロ-4-フルオロフェニル)((4-ニトロ
フェノキシ)カルボニル)アミノ)メチル)ベンゾエートの合成
【化27】
メチル4-((3-クロロ-4-フルオロフェニルアミド)メチル)ベンゾエート(2.5g、8.51mmol)および4-ニトロフェニルクロロホルメート(2.06g、10.2mmol)をジクロロメタン(50mL)に溶かした後、3日間室温で撹拌した後に水を添加し、有機層を抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで水分を除去した後に減圧下で濃縮した。残渣を乾燥して表題化合物(2.5g、64%)を紫色オイルとして得た。
【0067】
[ステップ3]メチル4-((N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)モルホリン-4-カルボキシアミド)メチル)ベンゾエートの合成
【化28】
メチル4-(((3-クロロ-4-フルオロフェニル)((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)アミノ)メチル)ベンゾエート(0.20g、0.436mmol)およびモルホリン(0.038mL、0.436mmol)をジメチルホルムアミド(10mL)に溶かし、60℃で12時間加熱撹拌を行った。ジメチルホルムアミドを減圧除去し、反応混合物に水を注き、エチルアセテートで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで水分を除去した後に減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー法(二酸化ケイ素;エチルアセテート/ヘキサン=20%)で精製および濃縮して表題化合物(0.022g、12%)を無色オイルとして得た。
【0068】
[ステップ4]N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-N-(4-(ヒドロキシカルバモイル)ベンジル)モルホリン-4-カルボキサミドの合成
【化29】
メチル4-((N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)モルホリン-4-カルボキシアミド)メチル)ベンゾエート(0.050g、0.123mmol)をメタノール(5mL)に溶かした後、ヒドロキシルアミン塩酸(0.043g、0.614mmol)および水酸化カリウム(0.069g、1.23mmol)を添加し撹拌した後、ヒドロキシルアミン(50wt%水溶液;0.158mL、2.46mmol)を滴加した後、3時間室温撹拌を行った。反応終了後、メタノールを減圧除去し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を添加すると固体が形成され、それをフィルタ乾燥して表題化合物(0.017g、34%)を白色固体として得た。
【0069】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.63 (d, 2 H, J = 8.2 Hz), 7.44 - 7.42 (m, 1 H), 7.33 - 7.29 (m, 3 H), 7.15 - 7.11 (m, 1 H), 4.84 (s, 2 H), 3.41 - 3.40 (m, 4 H), 3.14 - 3.12 (m, 4 H); MS (ESI) m/z 408.1 (M+ + H)。
【0070】
製造例4.N-(4-(ヒドロキシカルバモイル)ベンジル)-N-(3-メトキシフェニル)モルホリン-4-カルボキサミドの合成[化合物484]
[ステップ1]メチル4-(((3-メトキシフェニル)アミノ)メチル)ベンゾエートの合成
【化30】
m-アニシジン(3.23g、26.2mmol)、メチル4-(ブロモメチル)ベンゾエート(5.00g、21.8mmol)をアセトニトリル(50mL)に溶かした後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(5.80mL、32.7mmol)を添加し、室温で16時間撹拌した。反応が終結すれば、エチルアセテートおよび飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に濾過した。濾液を減圧濃縮した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(二酸化ケイ素;エチルアセテート/ヘキサン=5%)で精製および濃縮して表題化合物(5.14g、87%)を明るい黄色液体として得た。
【0071】
[ステップ2]メチル4-(((3-メトキシフェニル)((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)アミノ)メチル)ベンゾエートの合成
【化31】
メチル4-(((3-メトキシフェニル)アミノ)メチル)ベンゾエート(5.14g、18.9mmol)、4-ニトロフェニルクロロホルメート(4.20g、20.8mmol)をアセトニトリル(100mL)に溶かした後、炭酸カリウム(3.93g、2
8.4mmol)を添加し、室温で3時間撹拌した。反応が終結すれば、エチルアセテートおよび飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で抽出した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に濾過した。濾液を減圧濃縮した後、残渣をカラムクロマトグラフィー法(二酸化ケイ素;エチルアセテート/ヘキサン=20%)で精製および濃縮して表題化合物(5.88g、71%)を黄色液体として得た。
【0072】
[ステップ3]メチル4-((N-(3-メトキシフェニル)モルホリン-4-カルボキシアミド)メチル)ベンゾエートの合成
【化32】
メチル4-(((3-メトキシフェニル)((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)アミノ)メチル)ベンゾエート(5.88g、13.5mmol)をジメチルホルムアミド(50mL)に溶かした後、モルホリン(2.35g、27.0mmol)、炭酸カリウム(5.60g、40.5mmol)を添加し、60℃で16時間撹拌した。反応が終結すれば、エチルアセテートおよび飽和塩化アンモニウム水溶液で抽出した後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後に濾過した。濾液を減圧濃縮した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(二酸化ケイ素;エチルアセテート/ヘキサン=30%)で精製および濃縮して表題化合物(3.69g、71%)を黄色固体として得た。
【0073】
[ステップ4]N-(4-(ヒドロキシカルバモイル)ベンジル)-N-(3-メトキシフェニル)モルホリン-4-カルボキサミドの合成
【化33】
メチル4-((N-(3-メトキシフェニル)モルホリン-4-カルボキシアミド)メチル)ベンゾエート(0.180g、0.468mmol)をメタノール(10mL)に溶かし、室温でヒドロキシルアミン(50.0wt%水溶液;1.43mL、23.4mmol)を添加し、次いで、水酸化カリウム(0.263g、4.68mmol)を添加した後、同じ温度で30分間撹拌した。その後、反応混合物を減圧下で溶媒を除去した。得られた濃縮物に飽和塩化アンモニウム水溶液を注ぎ、エチルアセテートで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウムで洗浄し、無水硫酸マグネシウムで水分を除去した後に減圧下で濃縮した。残渣を室温でジクロロメタン(2mL)およびヘキサン(10mL)で結晶化して表題化合物(0.140g、78%)を白色固体として得た。
【0074】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.63 (d, 2 H, J = 8.1 Hz), 7.32 (m, 2 H), 7.19 (t, 1 H, J = 8.4 Hz), 6.69 - 6.67 (m, 2 H), 6.62 (m, 1 H), 4.84 (s, 2 H), 3.69 (s, 3
H), 3.39 - 3.36 (m, 4 H), 3.15 - 3.12 (m, 4 H)。 MS (ESI) m/z 386 (M+ + H)。
【0075】
製造例5.(N-(3-フルオロフェニル)-N-(4-ヒドロキシカルバモイル)ベンジル)モルホリン-4-カルボキサミドの合成[化合物530]
[ステップ1]メチル4-((3-フルオロフェニルアミノ)メチル)ベンゾエートの合成
【化34】
メチル4-ホルミルベンゾエート(1.47g、8.99mmol)をメタノール(50mL)に溶かした後、3-フルオロベンゼンアミン(1.0g、8.99mmol)を入れる。常温で3時間反応し、ナトリウムシアノボロヒドリド(NaCNBH
3)(0.56g、8.99mmol)および酢酸(1.03mL、17.99mmol)を入れる。反応物を常温で1日間反応した後、反応溶媒を減圧して除去し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を注ぎ、エチルアセテートで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで水分を除去した後に減圧下で濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(二酸化ケイ素;エチルアセテート/ヘキサン=20%)で精製して表題化合物(1.84g、79%)を得た。
【0076】
[ステップ2]メチル4-(((3-フルオロフェニル)((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)アミノ)メチル)ベンゾエートの合成
【化35】
メチル4-((3-フルオロフェニルアミノ)メチル)ベンゾエート(2.7g、10.4mmol)および4-ニトロフェニルクロロホルメート(4.20g、20.8mmol)をアセトニトリル(100mL)に溶かし、炭酸カリウム(4.32g、31.2mmol)を入れる。常温で1日間反応し、エチルアセテートで希釈する。反応物を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過し減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(二酸化ケイ素;エチルアセテート/ヘキサン=20%)で精製して無色オイルの表題化合物(2.65g、60%)を得た。
【0077】
[ステップ3]メチル4-((N-(3-フルオロフェニル)モルホリン-4-カルボキシアミド)メチル)ベンゾエートの合成
【化36】
メチル4-(((3-フルオロフェニル)((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)アミノ)メチル)ベンゾエート(0.32g、0.75mmol)をジメチルホルムアミド(5mL)に溶かし、炭酸カリウム(0.31g、2.24mmol)およびモルホリン(0.13mL、1.49mmol)を入れる。60℃で1日間反応させた後、飽和塩化アンモニウム溶液で希釈する。エチルアセテートで抽出した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過し減圧濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(二酸化ケイ素;エチルアセテート/ヘキサン=30%)で精製して表題化合物(0.13g、45%)を得た。
【0078】
[ステップ4]N-(3-フルオロフェニル)-N-(4-ヒドロキシカルバモイル)ベンジル)モルホリン-4-カルボキサミドの合成
【化37】
メチル4-((N-(3-フルオロフェニル)モルホリン-4-カルボキシアミド)メチル)ベンゾエート(0.108g、0.290mmol)をメタノール(10mL)に溶かし、室温でヒドロキシルアミン(50.0wt%水溶液;1.19mL、19.4mmol)を添加し、次いで、水酸化カリウム(0.156g、2.78mmol)を添加した後、同じ温度で16時間撹拌した後、反応混合物を減圧下で溶媒を除去して得られた濃縮物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を注ぎ、エチルアセテートで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで水分を除去した後に減圧下で濃縮した。析出された固体を濾過し乾燥して表題化合物(0.062g、57%)を白色固体として得た。
【0079】
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 11.14 (brs,
1 H), 8.99 (brs, 1 H), 7.65 (d, 2 H, J = 7.0 Hz), 7.38-7.30 (m, 3H), 7.05-6.85 (m, 3H), 4.89 (s, 1H), 3.44-3.42 (m, 4H), 3.18-3.15 (m, 4H), 2.08 (s, 3H)。 MS (ESI) m/z 374 (M+ + H)。
【0080】
製造例6.N-(3-フルオロフェニル)-N-(4-ヒドロキシカルバモイル)ベンジル)-1,4-オキサゼパン-4-カルボキサミドの合成[化合物652]
[ステップ1]メチル4-((N-(3-フルオロフェニル)-1,4-オキサゼパン-4-カルボキシアミド)メチル)ベンゾエートの合成
【化38】
製造例5のステップ2で得られたメチル4-(((3-フルオロフェニル)((4-ニトロフェノキシ)カルボニル)アミノ)メチル)ベンゾエート(0.290g、0.683mmol)、1,4-オキサゼパン(0.188g、1.367mmol)、および炭酸カリウム(0.283g、2.050mmol)をDMF(10mL)に溶かした反応溶液を60℃で1日間撹拌した後、反応混合物に飽和NaHCO
3水溶液を注ぎ、エチルアセテートで抽出した。有機層を飽和塩酸ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで水分を除去した後に減圧下で濃縮した。濃縮物をカラムクロマトグラフィー(二酸化ケイ素、15gカートリッジ;エチルアセテート/ヘキサン=20%→50%)で精製および濃縮して表題化合物(0.116g、43.9%)を無色液体として得た。
【0081】
[ステップ2]N-(3-フルオロフェニル)-N-(4-ヒドロキシカルバモイル)ベンジル)-1,4-オキサゼパン-4-カルボキサミドの合成
【化39】
メチル4-((N-(3-フルオロフェニル)-1,4-オキサゼパン-4-カルボキシアミド)メチル)ベンゾエート(0.116g、0.3mmol)をメタノール(10mL)に溶かし、ヒドロキシルアミン水溶液(50wt%、1mL)および水酸化カリウム(0.168g、3.01mmol)を入れて一晩撹拌した。反応終了後、メタノールを減圧蒸留して除去し、エチルアセテートおよび水を用いて抽出(work up)した。抽出物を無水硫酸ナトリウムで乾燥濾過し減圧濃縮した後、残渣をジエチルエーテルにおいて撹拌して固体生成物を作り、濾過した後に乾燥して表題化合物(0.032g、27.5%)を白色固体として得た。
【0082】
<実施例1>COPD誘導動物モデルでの治療効果の分析
<実施例1-1>COPD誘導動物モデル(喫煙+Poly I:C COPDモデル)の準備
C57BL/6マウス(雌、7週齢)を密閉された喫煙ボックスに入れ、タバコ煙に一定時間露出させてCOPD疾患を誘導した。具体的に、マウスを喫煙ボックスに入れ、タバコに火をつけた後、陰圧がかかっているチューブにタバコフィルタ部分を結合させ、タバコ煙が継続的に出てくるようにした後、喫煙ボックスを遮断して、マウスが呼吸時にタバコ煙を吸い込むようにした。マウスが総4週間喫煙をするようにし、最初の1週の1日目、2日目、および3日目には各々1本、2本、および4本のタバコを1回露出させ、4日目および5日目には4本のタバコを各々2回および3回露出させた。その後、残りの3週間は4本のタバコを3回露出させており、喫煙誘導中に3週目および4週目に週2回Poly I:C (polyinocinic:polycytidylic acid)を、麻酔したマウスの鼻腔内に投与して、喫煙+Poly I:C COPD(chr
onic obstructive pulmonary disease)モデルを誘導した。
【0083】
本発明に係る化合物の薬物投与効果を確認するために、COPD疾患誘導マウスを1グループ当たりに6匹ずつ分け、各グループを投与物質[ビヒクル(vehicle;Veh)、化合物374(SM+1)、または化合物458(SM+2)]、投与経路[経口投与(P.O.)]、および投与周期[毎日(Q.D.)]に応じて下記表1のように分類した。
【表3】
【0084】
<実施例1-2>免疫細胞の浸潤評価
本発明に係る化合物の慢性閉塞性肺疾患の予防または治療効果を確認するために、免疫細胞の浸潤程度を評価した。各グループのマウスから肺を摘出した後、肺組織切片にH&E染色をし、病理学的分析を行った。
図1の参考画像に従って細胞の浸潤程度を0~3のスコアで判別し、各グループ別にスライドを観察してスコアを測定した[
図1;0-なし(none)、1-軽い(mild)、2-中等度(moderate)、および3-重症(severe)]。
【0085】
その結果、
図2に示すように、本発明に係る化合物を投与したグループ(SM+1およびSM+2)は、喫煙+Poly I:Cグループ(SM+no drug)と比べて細胞浸潤スコアが減少した。よって、本発明に係る化合物は、免疫細胞の浸潤抑制効果を示しており、これにより慢性閉塞性肺疾患の予防または治療に有用に使用可能であることが分かった。
【0086】
<実施例1-3>気管支肺胞洗浄液(Bronchoalveolar lavage
fluid;BAL fluid)の分析
本発明に係る化合物の慢性閉塞性肺疾患の予防または治療効果を確認するために、気管支肺胞洗浄液(Bronchoalveolar lavage fluid;BAL fluid)を分析した。各グループのマウスから気管支肺胞洗浄液2mLを分離して遠心分離した。その後、それをリン酸塩緩衝液(Phosphate buffer solution;PBS)に懸濁し、総細胞(total cell)数をカウントし、2×105の細胞をサイトスピン(cytospin)によりスライドに付けた。ディフ-クイック染色キット(Diff-quick stain kit)を用いて染色した後、染色された細胞の特徴に基づいてマクロファージ(macrophage)、好中球(neutrophil)などを区分してこれらの和300個をカウントした後、総細胞数値に対して各々の細胞比率を計算してグループ間比較をした。
【0087】
その結果、
図3に示すように、本発明に係る化合物を投与したグループ(SM+1およびSM+2)は、喫煙+Poly I:Cグループ(SM+no drug)と比べて総細胞、マクロファージ、および好中球の数が減少した。よって、本発明に係る化合物は、
炎症細胞の浸潤抑制効果を示しており、これにより慢性閉塞性肺疾患の予防または治療に有用に使用可能であることが分かった(*P<0.05、**P<0.01、および***P<0.001)。
【0088】
<実施例1-4>肺組織内の炎症性サイトカインの発現分析
本発明に係る化合物の慢性閉塞性肺疾患の予防または治療効果を確認するために、肺組織内の炎症性サイトカインの発現を分析した。各グループのマウスから肺を摘出した後、肺組織からRNAを分離した。各RNAを逆転写酵素(reverse transcriptase)を用いてcDNA合成後、real-time PCRにより炎症性サイトカインマーカーであるIL-6、IFN-γ、MCP-1、およびTNF-αの発現を分析し、グループ間の炎症誘発程度を比較した。この際、実験に用いたプライマーの塩基配列は、下記表2に示すとおりである(*P<0.05、**P<0.01、および***P<0.001)。
【表4】
【0089】
その結果、
図4に示すように、本発明に係る化合物を投与したグループ(SM+1およびSM+2)は、喫煙+Poly I:Cグループ(SM+no drug)と比べてIL-6、IFN-γ、MCP-1、およびTNF-αの発現が減少した。よって、本発明に係る化合物は、抗炎症効果を示しており、これにより慢性閉塞性肺疾患の予防または治療に有用に使用可能であることが分かった。
【0090】
<実施例2>TGF-β1-誘導EMTの抑制効果
本発明に係る化合物の慢性閉塞性肺疾患の予防または治療効果を確認するために、上皮マーカータンパク質(E-Cad)および間葉マーカータンパク質(N-Cad)の発現を分析した。A549細胞を10%ウシ胎児血清(fetal bovine serum;FBS)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン(penicillin-streptomycin;P/S)を含むRPMI-1640培地で培養した。1.5×105細胞を6-ウェルプレート(6-well plates)にプレートし、一晩インキュベーションした。細胞を5ng/mLの組み換えヒト形質転換成長因子β1(tra
nsforming growth factor beta 1;TGF-β1)とともに培養し、上皮間葉転換(epithelial-to-mesenchymal transition;EMT)を誘導した。TGF-β1をRPMI-1640(1% FBS、1% P/S)で希釈し、48時間細胞とともにインキュベーションした。500μLの培養培地を遠心分離フィルタ(AmiconR Ultra-0.5mL)上にロードし、14,000×gで10分間遠心分離した。増菌した培養培地は、15μLの4Xサンプルバッファとともに100℃で5分間沸騰した後、ウェスタンブロットを用いて分析した。プロテアーゼ阻害剤カクテル(cocktail)およびホスファターゼ阻害剤カクテルを含むRIPAバッファを用いて細胞を溶解した。溶解物は3分間氷でインキュベーションし、13,000×g、4℃で20分間遠心分離した。BCAタンパク質分析キットを用いて上澄液を定量し、ウェスタンブロットで分析した。製造されたサンプルをNuPAGE Novex 4-12% Bis-Trisゲルにロードし、120Vで分解した。iBlot machineを用いてタンパク質をニトロセルロースメンブレインに移した。製造会社の指針に従い、EzBlock Chemiを用いてメンブレインを遮断した。E-cadherin(E-Cad)、N-cadherin(N-cad)、Fibronectin-EDA(FN-EDA)などの抗体を用いた。HRP(horseradish peroxidase)-結合二次抗体で反応した後、AmershamTM ECL selectTMウェスタンブロット検出試薬を用いて免疫反応性タンパク質を視覚化し、ChemiDocTM MPイメージングシステムにより検出した。ImageJソフトウェアでバンドの強度(intensity)を定量化し、β-アクチン(β-actin)に正規化した。
【0091】
その結果、
図5に示すように、本発明の化合物を処理したグループ(374、458、413、484、530および652)は、Vhcl(TGF-β1)と比べて、上皮マーカータンパク質であるE-Cadの発現は顕著に増加し、間葉マーカータンパク質であるN-Cadの発現は顕著に減少した。
したがって、本発明に係る化合物は、TGF-β1誘導EMTの抑制効果を示しており、これにより慢性閉塞性肺疾患の予防または治療に有用に使用可能であることが分かった(*P<0.05、**P<0.01、および***P<0.001)。
【0092】
<実施例3>FN-EDAタンパク質の減少効果
本発明に係る化合物の慢性閉塞性肺疾患の予防または治療効果を確認するために、主要細胞外マトリックス(ECM)タンパク質であるFN-EDAの発現を分析した。前記実施例2に記載された方法と同様の方法により行った。
【0093】
その結果、
図6に示すように、本発明の化合物を処理したグループ(374、458、413、484、530および652)は、Vhcl(TGF-β1)と比べて、主要ECMタンパク質であるFN-EDAの発現が顕著に減少した。
したがって、本発明に係る化合物は、主要ECMタンパク質であるFN-EDAの減少効果を示しており、これにより慢性閉塞性肺疾患の予防または治療に有用に使用可能であることが分かった(*P<0.05、**P<0.01、および***P<0.001)。
【0094】
<実施例4>統計分析
Graph Pad Prism 5.0ソフトウェア(post hoc:Dunnett)を用いてunpaired T-testで行い、全てのデータは平均±SEMで示した。P<0.05は統計的に有意であると見なした。
【0095】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な記述は単に好ましい実施形態にすぎず、これにより本発明の範囲
が限定されないことは明白である。よって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項およびその等価物によって定義されるといえる。
【配列表】
【国際調査報告】