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特表2022-553591マイクロワイヤ又はナノワイヤの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】マイクロワイヤ又はナノワイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20221219BHJP
   H01L 33/30 20100101ALI20221219BHJP
   H01L 33/24 20100101ALI20221219BHJP
【FI】
H01L21/205
H01L33/30
H01L33/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021577636
(86)(22)【出願日】2020-06-26
(85)【翻訳文提出日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 EP2020068139
(87)【国際公開番号】W WO2020260658
(87)【国際公開日】2020-12-30
(31)【優先権主張番号】1907109
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515113307
【氏名又は名称】アルディア
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】デュポン,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】ナピエラーラ,ジェローム
【テーマコード(参考)】
5F045
5F241
【Fターム(参考)】
5F045AA04
5F045AB14
5F045AC01
5F045AC05
5F045AC08
5F045AC09
5F045AC12
5F045AC15
5F045AC18
5F045AC19
5F045AD12
5F045AD13
5F045AD14
5F045AE21
5F045AE23
5F045AE25
5F045AE29
5F045AE30
5F045AF03
5F045BB08
5F045CA10
5F045DA52
5F045DA55
5F045DB02
5F241AA31
5F241CA40
5F241CA65
5F241CA77
5F241CB36
(57)【要約】
【解決手段】本明細書は、III-V 族化合物を含むマイクロメートルサイズ又はナノメートルサイズのワイヤ(22)を備えたデバイスを製造する方法に関する。この方法では、V 族元素の第1のガス前駆体と、III 族元素の第2のガス前駆体と、ワイヤの一部が均一なドーパント濃度を有する場合にワイヤの一部に5×1019 atoms/cm3、例えば1×1020 atoms/cm3より高いドーパント濃度を与えるガスの、III-V 族化合物のドーパントである追加の元素の第3のガス前駆体とを反応器に注入することを含む有機金属気相エピタキシの工程により、ワイヤ毎にワイヤの少なくとも一部(24)を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
III-V 族化合物を含むマイクロメートルサイズ又はナノメートルサイズのワイヤ(22)を備えたデバイスを製造する方法であって、
V 族元素の第1のガス前駆体、III 族元素の第2のガス前駆体、及びIII-V 族化合物のドーパントである追加の元素の第3のガス前駆体を、前記追加の元素の第3のガス前駆体の流量対前記III 族元素の第2のガス前駆体の流量の比が3×10-4より高い状態で反応器に注入することを含む有機金属気相エピタキシの工程により、ワイヤ毎に前記ワイヤの少なくとも一部(24)を形成して、前記ワイヤの一部が均一なドーパント濃度を有する場合に、前記ワイヤの一部に5×1019 atoms/cm3、例えば1×1020 atoms/cm3より高いドーパント濃度を得る、方法。
【請求項2】
前記ワイヤの一部の表面における前記ドーパント濃度は1×1020 atoms/cm3より高い、及び/又は、前記ワイヤの一部を、前記III-V 族化合物とは異なり前記追加の元素を含む材料の層で覆う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のガス前駆体の流量対前記第3のガス前駆体の流量の比は1,000 以下であり、例えば130 である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記一部(24)を形成する工程での前記反応器内の温度は950 ℃以上である、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記一部(24)を形成する工程での前記反応器内の温度は1,000 ℃以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記一部(24)を形成する工程でのV/III 比は100 以下である、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記一部(24)を形成する工程での前記V/III 比は50以下であり、例えば5である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
中性ガスを反応器に注入し、
前記一部(24)を形成する工程での前記中性ガスの流量対前記第2のガス前駆体の流量の比は100 未満であり、例えば10である、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記第3のガス前駆体の流量対前記第2のガス前駆体の流量の比は1,000 未満であり、例えば130 である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第3のガス前駆体の流量対前記中性ガスの流量の比は1,000,000 未満であり、例えば1,300 である、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
V 族元素の第1のガス前駆体、III 族元素の第2のガス前駆体、及び前記ワイヤの第1の部分を形成することができるガスの、III-V 族化合物のドーパントである追加の元素の第3のガス前駆体を前記反応器に注入することを含む有機金属気相エピタキシの工程により、少なくとも前記ワイヤの第1の部分(24)及び前記ワイヤの第2の部分(26)を連続的に形成して、前記ワイヤの第1の部分が均一なドーパント濃度を有する場合に前記第1の部分に5×1019 atoms/cm3、例えば1×1020 atoms/cm3より高いドーパント濃度を得て、前記第2の部分を形成するために前記第3のガス前駆体の流れを減少させる又は止める、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、半導体材料で形成されているデバイス、及びこのデバイスを製造する方法に関する。本発明は、より具体的には、ナノメートルサイズ又はマイクロメートルサイズの三次元半導体素子、特にマイクロワイヤ又はナノワイヤを備えたデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体材料を含むマイクロワイヤ又はナノワイヤの例として、III 族元素及びV 族元素を主に含む化合物(例えば窒化ガリウムGaN )(以下III-V 族化合物と称する)で形成されているマイクロワイヤ又はナノワイヤがある。このようなマイクロワイヤ又はナノワイヤによって、光電子デバイスなどの半導体デバイスを製造することが可能になる。光電子デバイスという用語は、電気信号を電磁放射線に又はその逆に変換することができるデバイス、特には電磁放射線の検出、測定又は放出のためのデバイス、或いは光起電力用途のためのデバイスを意味すべく使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体材料のマイクロワイヤ/ナノワイヤを製造する方法は、各マイクロワイヤ/ナノワイヤの幾何学的構造、位置及び結晶学的特性を正確且つ均一に制御してマイクロワイヤ/ナノワイヤを製造可能とすべきである。
【0004】
米国特許第9245948 号明細書には、有機金属化学蒸着法(MOCVD) によってIII-V 族化合物で形成されたマイクロワイヤ/ナノワイヤを製造する方法が記載されている。この方法は、各マイクロワイヤ/ナノワイヤの幾何学的構造、位置及び結晶学的特性を十分制御してマイクロワイヤ/ナノワイヤを製造することが可能であるが、支持体上でマイクロワイヤ/ナノワイヤが占める表面積対支持体の全表面積の比に相当するマイクロワイヤ/ナノワイヤの密度が20%未満であり、特に10%未満である状態でV 族元素の極性を有するマイクロワイヤ/ナノワイヤのみを製造することが可能である。
【0005】
従って、実施形態の目的は、III-V 族化合物で形成されたマイクロワイヤ/ナノワイヤを製造する前述した方法の不利点を少なくとも部分的に克服することである。
【0006】
実施形態の別の目的は、マイクロワイヤ/ナノワイヤの密度を10%未満にし得ることである。
【0007】
実施形態の別の目的は、各マイクロワイヤ/ナノワイヤをV 族元素の極性又はIII 族元素の極性で形成し得ることである。
【0008】
実施形態の別の目的は、各マイクロワイヤ/ナノワイヤが単結晶構造を実質的に有することである。
【0009】
別の実施形態は、各マイクロワイヤ/ナノワイヤの位置、幾何学的構造及び結晶学的特性を正確且つ均一に制御する可能性を提供する。
【0010】
実施形態の別の目的は、マイクロワイヤ/ナノワイヤを工業規模且つ低コストで製造し得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態は、III-V 族化合物を含むマイクロメートルサイズ又はナノメートルサイズのワイヤを備えたデバイスを製造する方法であって、V 族元素の第1のガス前駆体と、III 族元素の第2のガス前駆体と、ワイヤの一部が均一なドーパント濃度を有する場合にワイヤの一部に5×1019 atoms/cm3、例えば1×1020 atoms/cm3より高いドーパント濃度を得ることができるガスの、III-V 族化合物のドーパントである追加の元素の第3のガス前駆体とを反応器に注入することを含む有機金属気相エピタキシの工程により、ワイヤ毎に前記ワイヤの少なくとも一部を形成する、方法を提供する。
【0012】
実施形態によれば、前記ワイヤの一部の表面における前記ドーパント濃度は1×1020atoms/cm3より高い、及び/又は、前記ワイヤの一部を、前記III-V 族化合物とは異なり前記追加の元素を含む材料の層で覆う。
【0013】
実施形態によれば、前記第1のガス前駆体の流量対前記第3のガス前駆体の流量の比は1,000 以下であり、例えば130 である。
【0014】
実施形態によれば、前記一部を形成する工程での前記反応器内の温度は950 ℃以上である。
【0015】
実施形態によれば、前記一部を形成する工程での前記反応器内の温度は1,000 ℃以上である。
【0016】
実施形態によれば、前記一部を形成する工程でのV/III 比は100 以下である。
【0017】
実施形態によれば、前記一部を形成する工程での前記V/III 比は50以下であり、例えば5である。
【0018】
実施形態によれば、前記方法では、中性ガスを反応器に注入し、前記一部を形成する工程での前記中性ガスの流量対前記第2のガス前駆体の流量の比は100 未満であり、例えば10である。
【0019】
実施形態によれば、前記第3のガス前駆体の流量対前記第2のガス前駆体の流量の比は1,000 未満であり、例えば130 である。
【0020】
実施形態によれば、前記第3のガス前駆体の流量対前記中性ガスの流量の比は1,000,000 未満であり、例えば1,300 である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
前述及び他の特徴及び利点は、添付図面を参照して本発明を限定するものではない実例として与えられる以下の特定の実施形態に詳細に記載されている。
【0022】
図1】ナノワイヤ又はマイクロワイヤを備えたデバイスを製造する方法の実施形態の工程で得られた構造を示す部分的な断面略図である。
図2】この方法の別の工程で得られた構造を示す断面図である。
図3】この方法の別の工程で得られた構造を示す断面図である。
図4】走査電子顕微鏡によって得られた、ナノワイヤ又はマイクロワイヤを備えたデバイスの画像を示す図である。
図5】走査電子顕微鏡(SEM) によって得られた、ナノワイヤ又はマイクロワイヤを備えたデバイスの別の画像を示す図である。
図6】ナノワイヤ又はマイクロワイヤを備えたデバイスの別のSEM 画像を示す図である。
図7】ナノワイヤ又はマイクロワイヤを備えたデバイスの別のSEM 画像を示す図である。
図8】ナノワイヤ又はマイクロワイヤを備えたデバイスの別のSEM 画像を示す図である。
図9】ナノワイヤ又はマイクロワイヤを備えたデバイスの別のSEM 画像を示す図である。
図10】ナノワイヤ又はマイクロワイヤを備えたデバイスの別のSEM 画像を示す図である。
図11】ナノワイヤ又はマイクロワイヤを備えたデバイスの別のSEM 画像を示す図である。
図12】ナノワイヤ又はマイクロワイヤを備えたデバイスの別のSEM 画像を示す図である。
図13】ナノワイヤ又はマイクロワイヤを備えたデバイスの別のSEM 画像を示す図である。
図14】マイクロワイヤ又はナノワイヤを備えた光電子デバイスの実施形態を示す部分的な断面略図である。
図15】マイクロワイヤ又はナノワイヤを備えた光電子デバイスの別の実施形態を示す部分的な断面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
同様の特徴が、様々な図面で同様の参照符号によって示されている。特に、様々な実施形態で共通の構造的特徴及び/又は機能的特徴は同一の参照符号を有する場合があり、同一の構造特性、寸法特性及び材料特性を有する場合がある。明瞭化のために、本明細書に記載されている実施形態の理解に有用なステップ及び要素のみが示されて詳細に記載されている。
【0024】
以下の記載では、「前」、「後ろ」、「最上部」、「底部」、「左」、「右」などの絶対位置、若しくは「上方」、「下方」、「上側」、「下側」などの相対位置を限定する用語、又は「水平方向」、「垂直方向」などの方向を限定する用語を参照するとき、この用語は図面の向き又は通常の使用位置にあるデバイスを指す。特に指定されていない場合、「約」、「略」、「実質的に」及び「程度」という表現は、該当する値の10%の範囲内、好ましくは5%の範囲内を表す。「約」、「略」、「実質的に」及び「程度」という表現を方向に関連して使用するとき、これらの表現は、該当する値の10%の範囲内、好ましくは5%の範囲内を意味する。更に本明細書では、「絶縁」及び「導電」という用語は「電気絶縁」及び「電気導電」を夫々意味するとみなされる。
【0025】
本発明は、ナノメートルサイズ又はマイクロメートルサイズの三次元素子、特にマイクロワイヤ又はナノワイヤの製造に関する。
【0026】
「マイクロワイヤ」又は「ナノワイヤ」という用語は、所望の方向に細長い形状を有する三次元構造を表し、三次元構造は、5nm~5μmの範囲、好ましくは50nm~2μmの範囲、より好ましくは50nm~1.5 μmの範囲の小寸法と称される少なくとも2つの寸法と、小寸法の内の最大値以上であり、好ましくは最大値の3倍以上であり、より好ましくは最大値の5倍以上である大寸法又は高さと称される第3の寸法とを有する。ある実施形態では、各マイクロワイヤ又はナノワイヤの高さは500 nm以上であってもよく、好ましくは1μm~50μmの範囲内であってもよい。以下の記載では、「ワイヤ」という用語は「マイクロワイヤ」又は「ナノワイヤ」を意味すべく使用されている。
【0027】
ワイヤの断面形状は異なってもよく、例えば楕円形、円形又は多角形、特に三角形、矩形、正方形若しくは六角形であってもよい。ワイヤの断面に関連して使用される「平均直径」という用語は、例えばワイヤの断面と同一の表面積を有する円盤の直径に相当する、この断面におけるワイヤの表面積に関連付けられる量を表す。
【0028】
ワイヤは、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上の少なくとも1つのIII-V 族化合物、例えばIII-N 化合物を主に含んでいる。III 族元素の例として、ガリウム(Ga)、インジウム(In)又はアルミニウム(Al)がある。III-N 化合物の例として、GaN 、AlN 、InN 、InGaN 、AlGaN 又はAlInGaN がある。他のV 族元素、例えばリン又はヒ素を更に使用してもよい。一般に、III-V 族化合物内の元素は異なるモル分率で組み合わせられてもよい。ワイヤの半導体材料は、ドーパント、例えばIII-N 化合物のN型ドーピングを保証するシリコン、又はIII-N 化合物のP型ドーピングを保証するマグネシウムを含んでもよい。
【0029】
III-V 族化合物がIII 族元素の極性又はV 族元素の極性を有するということは、材料が所望の結晶方向に成長することを意味し、最後の原子面、例えば成長が底部から最上部に生じるときの最も高い面が、III 族元素の極性の場合にはIII 族元素の原子又はV 族元素の極性の場合にはV 族元素の原子を基本的に含むことを意味する。
【0030】
図1~3は、III-V 族化合物で形成されたワイヤを備えた光電子デバイスを製造する方法の実施形態の連続的な工程で得られた構造を示す。
【0031】
図1は、
- 例えば共形の化学蒸着法(CVD) 又は物理蒸着法(PVD) のタイプの方法によって、基板10の表面12にシード層14を形成する工程、
- 例えばCVD によってシード層14上に成長パッシベーション層16を形成する工程、及び
- 例えば異方性エッチング、特に反応性イオンエッチング、つまりRIE 、誘導結合プラズマエッチング、つまりICP エッチング又は化学エッチングによって、成長パッシベーション層16に開口部18(図1~3には例として3つの開口部18が示されている)を形成する工程
の後に得られた構造を示す。
【0032】
開口部18の断面は、ワイヤ22の所望の断面に相当してもよく、又は得られるワイヤの断面とは異なってもよい。ワイヤ22の平均直径は開口部18の平均直径以上であってもよい。
【0033】
基板10はモノブロック構造に相当してもよく、又は別の材料で形成された支持体を覆う層に相当してもよい。基板10は、半導体基板、例えば、シリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、GaN 若しくはGaAsなどのIII-V 族化合物で形成された基板、又はZnO 基板であることが好ましい。基板10は単結晶シリコン基板であることが好ましい。基板は、マイクロエレクトロニクスで実施される製造方法と適合する半導体基板であることが好ましい。基板10は、SOI とも称されるシリコン・オン・インシュレータタイプの多層構造に相当してもよい。変形例として、基板は絶縁性を有してもよく、例えばサファイア又はスピネルで形成されてもよい。
【0034】
シード層14は、ワイヤの成長を有利にする材料で形成される。例として、シード層14を形成する材料は、元素の周期表のIV列、V 列又はVI列の遷移金属の窒化物、炭化物又はホウ化物、或いはこれらの化合物の組合せであってもよい。例として、シード層14は、窒化アルミニウム(AlN) 、ホウ素(B) 、窒化ホウ素(BN)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN) 、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN) 、ハフニウム(Hf)、窒化ハフニウム(HfN) 、ニオブ(Nb)、窒化ニオブ(NbN) 、ジルコニウム(Zr)、ホウ化ジルコニウム(ZrB2)、窒化ジルコニウム(ZrN) 、炭化シリコン(SiC) 、炭窒化タンタル(TaCN)、MgxNyの形態の窒化マグネシウム(ここでxは約3であり、yは約2であり、例えばMg3N2の形態の窒化マグネシウム)、窒化マグネシウムガリウム(MgGaN) 、タングステン(W) 、窒化タングステン(WN)、又はこれらの組合せで形成されてもよい。シード層14は単層構造を有してもよく、又は、例えば前述した材料の1つで夫々形成された少なくとも2つの層の積層体に相当してもよい。
【0035】
実施形態によれば、シード層14は設けられなくてもよい。別の実施形態によれば、シード層14は、例えば開口部18に形成されたシードパッドに取り替えられてもよい。
【0036】
シード層14を形成する材料は、III 族元素の極性に応じたワイヤの成長又はV 族元素の極性に応じたワイヤの成長を有利にする材料で形成されてもよい。
【0037】
成長パッシベーション層16は、誘電体材料、例えば酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(SixNy、ここでxは約3であり、yは約4であり、例えばSi3N4)、(特に一般的な式SiOxNyの)酸窒化シリコン(例えばSi2ON2)、酸化アルミニウム(Al2O3) 、酸化ハフニウム(HfO2)又はダイヤモンドで形成されてもよい。成長パッシベーション層16は単層構造を有してもよく、又は2若しくは3以上の層の積層体に相当してもよい。成長パッシベーション層16が少なくとも2つの層の積層体に相当する場合、積層体の上層は絶縁性を有し、例えば誘電体材料で形成されている。シード層14と絶縁性の上層との間の積層体の一又は複数の下層は誘電体材料で形成されてもよい。例として、一又は複数の下層は、半導体又は金属材料、例えば窒化アルミニウム(AlN) 、ホウ素(B) 、窒化ホウ素(BN)、チタン(Ti)、窒化チタン(TiN) 、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN) 、ハフニウム(Hf)、窒化ハフニウム(HfN) 、ニオブ(Nb)、窒化ニオブ(NbN) 、ジルコニウム(Zr)、ホウ化ジルコニウム(ZrB2)、窒化ジルコニウム(ZrN) 、炭化シリコン(SiC) 、炭窒化タンタル(TaCN)、タングステン(W) 又は窒化タングステン(WN)で形成されてもよい。
【0038】
図2は、例えばMOCVD によって、ワイヤと同一のIII-V 族化合物で形成されたシード20をシード層14と接触させて開口部18内で成長させた後に得られた構造を示す。
【0039】
図3は、シード20からワイヤ22を成長させた後に得られた構造を示し、各ワイヤ22は、基板10から開口部18の1つを通って延びている。各ワイヤ22は、表面12に実質的に垂直な実質的に直線の軸芯Aに沿って延びている。
【0040】
各ワイヤ22は、基板10に最も近く上側部分26に延びている下側部分24を有してもよい。下側部分24は、第1の導電型、例えばN型のドーパントでドープされたIII-V 族材料を含むコア28と、場合によってはIII 族元素又はV 族元素と共に30重量%以上のドーパントを含んでコア28の側壁を覆う層30とを有している。上側部分26は、非意図的にドープされたIII-V 族材料で形成されている。実施形態によれば、上側部分26は設けられなくてもよい。ワイヤ22の下側部分24は第1の成長段階で形成され、ワイヤ22の上側部分26は第2の成長段階で形成される。
【0041】
シード20及びワイヤ22を成長させる方法は、有機金属気相エピタキシ(MOVPE) 法としても知られているMOCVD 法である。シード20の成長条件はワイヤ22の成長条件とは異なり、シード20の成長条件は、特定の成長方向を有利にすることなく、シード層14上でのIII-V 族化合物の成長を有利にする。別の実施形態によれば、シード20を成長させる工程はなく、ワイヤ22を開口部18内でシード層14上に直接形成する。
【0042】
例として、本方法では、III 族元素の前駆体及びV 族元素の前駆体を反応器に注入してもよい。III 族元素の前駆体の例として、トリメチルガリウム(TMGa)、トリエチルガリウム(TEGa)、トリメチルインジウム(TMIn)又はトリメチルアルミニウム(TMAl)がある。V 族元素の前駆体の例として、アンモニア(NH3) 、第三ブチルホスフィン(TBP )、アルシン(AsH3)又は非対称ジメチルヒドラジン(UDMH)がある。
【0043】
実施形態によれば、シード20の成長中の反応器内の温度は1,000 ℃以下であり、好ましくは820 ℃以下である。
【0044】
実施形態によれば、シード20を形成するための、V 族元素前駆体ガスの流量対III 族元素前駆体ガスの流量の比、つまりV/III 比は、1,000 以上であり、好ましくは5,000 以上である。
【0045】
シード20を形成する工程での反応器内の温度は、ワイヤ22を形成する工程での反応器内の温度より低いことが好ましい。シード20を形成する工程でのV/III 比は、ワイヤ22を形成する工程でのV/III 比より高いことが好ましい。
【0046】
実施形態によれば、ワイヤ22を形成する工程での反応器内の温度は、950 ℃以上であり、好ましくは1,000 ℃以上であり、より好ましくは1,050 ℃以上であり、例えば略1,095 ℃である。
【0047】
実施形態によれば、ワイヤ22を形成する工程でのV/III 比は100 以下であり、好ましくは50以下であり、より好ましくは20以下であり、より好ましくは10以下であり、例えば略5である。
【0048】
実施形態によれば、ワイヤ22を形成する工程での反応器内の圧力は、666 Pa(5Torr)~199,984 (1,500 Torr)の範囲内である。
【0049】
本発明の実施形態によれば、少なくともIII-V 族化合物のワイヤ22を成長させる第1段階で、III-V 族化合物の前駆体に加えて追加の元素の前駆体を過剰に追加する。追加の元素は珪素(Si)であってもよい。珪素の前駆体の例として、シラン(SiH4)、ジシラン(S2H6)及びジクロロシラン(SiH2Cl2)がある。
【0050】
本発明の実施形態によれば、V 族元素のガス前駆体の流量対追加の元素のガス前駆体の流量の比は1,000 以下であり、好ましくは500 以下であり、より好ましくは200 以下であり、例えば略140 である。実施形態によれば、追加の元素のガス前駆体の流量対III 族元素のガス前駆体の流量の比は3×10-4より高い。ガス前駆体の流量は、全てのドーパントがワイヤ22の下側部分24のコア28に組み込まれる場合、ワイヤ22の下側部分24のコア28に5×1019 atoms/cm3より高く、好ましくは1020 atoms/cm3より高いドーパント濃度を得ることができる流量である。しかしながら、下側部分24の成長段階により、かなりの割合のドーパントを含む層30が形成されるので、実際に得られるコア28のドーパント濃度は1020 atoms/cm3未満である。
【0051】
実施形態によれば、シード20及びワイヤ22の成長中、反応器に至るまで有機金属前駆体を拡散させることを保証するキャリアガスを使用してもよい。キャリアガスは、中性ガス、又は中性ガスの混合物、特に窒素(N2)及び水素(H2)の混合物を含んでもよい。キャリアガスは、バブラ内に有機金属前駆体と共に充填されてもよい。実施形態によれば、キャリアガス中の水素の体積濃度は0%~100 %の範囲内であり、例えば略20%である。
【0052】
キャリアガスの流量対III 族元素の前駆体ガスの流量の比は100 未満であり、例えば10である。追加の元素の前駆体ガスの流量対キャリアガスの流量の比は、1,000,000 未満であり、例えば1,300 である。
【0053】
前駆体ガスとしてシランが存在することにより、シリコンがGaN 化合物内に取り込まれる。更にこのため、ワイヤ22の下側部分24の成長中に、最上部を除いて下側部分24の周囲を覆う窒化シリコンの層30が形成される。
【0054】
上側部分26を成長させるために、MOCVD 反応器内のシランの流れが例えば10分の1以下に減少するか止まることを別にすれば、MOCVD 反応器の上述した動作条件が一例として維持される。シランの流れが止まる場合でも、隣接する不動態化された部分から生じるドーパントのアクティブ部分への拡散又はGaN の残留ドーピングにより、このアクティブ部分がN型にドープされてもよい。
【0055】
試験を行った。第1の基板、第2の基板又は第3の基板を使用した。第1の基板は、金属極性に応じてGaN の成長を有利にする、GaN で覆われたサファイア支持体に相当する。第2の基板は、金属極性に応じてGaN の成長を有利にする、AlN シード層で覆われたシリコン支持体に相当する。第3の基板は、窒素極性に応じてGaN の成長を有利にする基板に相当する。成長パッシベーション層16は、厚さ80nmのSi3N4層及び厚さ50nmのSiO2層の積層体を含んだ。開口部18の断面は円形であった。開口部18は行及び列に配置された。異なるパラメータの3つのMOCVD 法を行った。特に示されていない場合、以下の試験では、方法のパラメータの値は以下の表1に示されている値である。
【0056】
【表1】
【0057】
比較方法P1
方法P1は、低流量法、つまりLF法と称される既知のナノワイヤ形成法に相当する。この方法は、Ga極性のGaN ワイヤのみを形成することができるMOCVD 法である。従って、方法P1の実行中、シード層14はGa極性のワイヤの成長を有利にする。
【0058】
図4は、各ワイヤ22の平均直径が350 nmであったとき、及び同一行の隣り合う2つの開口部18間の間隔が800 nmであったときに方法P1に従って製造したワイヤ22の、走査電子顕微鏡によって得られた画像を示す。第3の基板を使用した。図4に示されているように、得られたワイヤ22の大きさ、特に平均直径及び高さは均一ではない。
【0059】
図5図6及び図7は夫々、開口部18の平均直径が夫々100 nm、150 nm及び200 nmであったとき、並びに同一行の隣り合う2つの開口部18間の間隔が夫々400 nm、330 nm及び800 nmであったときに方法P1に従って製造したワイヤ22の、走査電子顕微鏡によって得られた平面図である。第1の基板を使用した。図面に示されているように、開口部18の平均直径が増加すると、欠陥の数が増加する。
【0060】
図8は、各ワイヤ22の平均直径が420 nmであったとき、及び同一行の隣り合う2つの開口部18間の間隔が800 nmであったときに方法P1に従って製造したワイヤ22の、走査電子顕微鏡によって得られた画像を示す。第2の基板を使用した。図8に示されているように、網目間隔が増加すると、GaN のブロック32が生じる。
【0061】
図9及び図10は夫々、開口部18の平均直径が夫々100 nmであったとき、同一行の隣り合う2つの開口部18間の間隔が300 nmであったとき、及び処理時間が夫々2分及び30分であったときに方法P1に従って製造したワイヤ22の、走査電子顕微鏡によって得られた図である。第1の基板を使用した。図9及び図10に示されているように、5分程度の所与の時間を超えると、ワイヤ22の長さがほとんど増加せず、GaN のブロック32が生じる。従って、方法P1により、800 nmを超える高さのワイヤを得ることができない。
【0062】
比較方法P2
方法P2は、米国特許第9245948 号明細書に記載されている方法のような既知のナノワイヤ形成法に相当する。方法P2は、N極性のGaN ワイヤのみを形成することができるMOCVD 法である。第3の基板を使用した。従って、シード層は、N極性のワイヤ22の成長を有利にする。方法P2は、特に5%未満の低密度のワイヤ22に関して満足のいく結果を与えるが、より高いワイヤ密度には適合されない。方法P2に関して、追加の元素の前駆体、ここではSiH4の流量は、下側部分24が均一な組成を有する場合、ワイヤ22の下側部分24に1019atoms/cm3のSiドーパントの濃度を得るように選択されている。
【0063】
図11は、各ワイヤの平均直径が350 nmであったとき、及び同一行の隣り合う2つの開口部18間の間隔が、略20%のワイヤの目標とする密度に対応する800 nmであったときに方法P2に従って得られたワイヤの、走査電子顕微鏡によって得られた画像を示す。図11に示されているように、多くの開口部18でワイヤ22が成長していない。50%未満の充填率が得られる。
【0064】
方法P3
方法P3は、本発明に係る方法の実施形態に対応する。
【0065】
図12は、第1の基板を使用したときに方法P3で得られたワイヤの走査電子顕微鏡画像を示す。第1の基板は、Ga極性のワイヤの成長を有利にする。各ワイヤの平均直径は220 nmであり、同一行の隣り合う2つの開口部18間の間隔は400 nmであった。目に見える欠陥はない。
【0066】
図13は、第3の基板、ひいてはN極性のワイヤの成長を有利にする基板を使用したときに方法P3で得られたワイヤの走査電子顕微鏡画像を示す。各ワイヤの平均直径は540 nmであり、同一行の隣り合う2つの開口部18間の間隔は略800 nmであった。目に見える欠陥はほとんどなく、各開口部で成長したワイヤの数に対応する成長率が95%を超えている。
【0067】
前述のワイヤを備えたデバイスの適用例として、光電子デバイスがある。光電子デバイスの例として、発光ダイオードを備えた光電子デバイス、電磁放射線の検出又は測定のためのデバイス、或いは光起電力用途のためのデバイスがある。
【0068】
図14は、発光ダイオードを備えた光電子デバイス35の実施形態を示す部分的な断面略図である。
【0069】
図14は、下から上に、
- 半導体基板10と、
- ワイヤの成長を促す材料で形成されて表面12に配置されているシード層14と、
- シード層14を覆って、シード層14の一部を露出させる開口部18を有する成長パッシベーション層16と、
- 開口部18の1つから夫々突出しているワイヤ22(1つのワイヤが示されている)と、
- ワイヤ22毎にワイヤ22の側面及び上面を覆う半導体層の積層体を有するシェル40と、
- シェル40の下側部分の側面及びワイヤ22間の成長パッシベーション層16上に延びている絶縁層42と、
- 各シェル40を覆って絶縁層42上を更に延びている電極を形成する層44と
を有する構造を示す。
【0070】
各ワイヤ22及び関連付けられたシェル40によって形成された集合体が発光ダイオードを形成する。シェル40は、特にアクティブ層46及び接合層48を含む複数の層の積層体を含んでもよい。アクティブ層は、発光ダイオードDEL による放射光の大部分が放射される層である。例によれば、アクティブ層46は多重量子井戸などの閉込め手段を有してもよい。接合層は、ワイヤ22と同一のIII-V 族材料であるが、反対の導電型の半導体層の積層体を含んでもよい。
【0071】
図15は、発光ダイオードを備えた光電子デバイス50の実施形態を示す部分的な断面略図であり、この実施形態では、図14に示されている光電子デバイス35と比較して、シェル40及び電極44はワイヤ22の最上部のみに設けられている。
【0072】
様々な実施形態及び変形例が記載されている。当業者は、これらの様々な実施形態及び変形例のある特徴を組み合わせることができると理解し、他の変形例が当業者に想起される。最後に、記載されている実施形態及び変形例の実際の実施は、上述した機能的な表示に基づく当業者の技能の範囲内である。
【0073】
本特許出願は、参照によって本明細書に組み込まれる仏国特許出願第19/07109 号明細書の優先権を主張している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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図12
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図14
図15
【国際調査報告】