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▶ マブウェル (シャンハイ) バイオサイエンス カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2022-553645抗ヒトTrop-2抗体およびその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】抗ヒトTrop-2抗体およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/08 20060101AFI20221219BHJP
   C12N 15/06 20060101ALI20221219BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20221219BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C12P21/08 ZNA
C12N15/06 100
C07K16/30
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521211
(86)(22)【出願日】2020-10-12
(85)【翻訳文提出日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 CN2020120277
(87)【国際公開番号】W WO2021068949
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】201910962965.1
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519187241
【氏名又は名称】マブウェル (シャンハイ) バイオサイエンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ワン シュアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ロンジュアン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ シャシャ
(72)【発明者】
【氏名】チャン チャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ゼン ダディ
(72)【発明者】
【氏名】チャン チンチャオ
【テーマコード(参考)】
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA20
4B064CC24
4B064DA01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ヒト腫瘍関連カルシウムシグナルセンサー2(Trop-2)タンパク質またはその断片に結合する抗体、および疾患の予防または治療における当該抗体またはその断片の使用を提供する。本発明の抗体またはその断片は、ヒトTrop-2タンパク質に効果的に結合しかつ内在化活性を有することができ、当該内在化活性は、ADC薬物標識後に増強され、マウスモデルのインビボでの効果および安全性は、対照抗体を下回っていない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)免疫原として組換えTrop-2タンパク質を用いて動物を免疫することによって、ハイブリドーマ細胞を調製する工程;
(2)被覆抗原として組換えTrop-2タンパク質を使用して、抗Trop-2モノクローナル抗体を分泌する陽性ハイブリドーマ細胞をスクリーニングする工程;
(3)細胞膜表面上のTrop-2について陽性の細胞を使用して、工程(2)で得られた陽性ハイブリドーマ細胞を再スクリーニングする工程
を含む、抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法であって、
抗Trop-2モノクローナル抗体が、Trop-2細胞外ドメインの天然エピトープを特異的に認識してそれに結合する方法。
【請求項2】
工程(3)の細胞膜表面上のTrop-2について陽性の細胞が、工程(1)でハイブリドーマ細胞を調製する際に免疫した動物と同じ種に由来する組換え動物細胞である、請求項1記載の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法。
【請求項3】
工程(1)において、ハイブリドーマ細胞が、マウスを免疫することによって調製され、工程(3)において、細胞膜表面上のTrop-2について陽性の細胞が、外因性Trop-2タンパク質を発現する組換えマウス細胞である、請求項2記載の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法。
【請求項4】
工程(2)において、抗Trop-2モノクローナル抗体を分泌する陽性ハイブリドーマ細胞が、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用してスクリーニングされ;工程(3)において、再スクリーニングする工程が、Trop-2細胞外ドメインの天然エピトープを特異的に認識してそれに結合する抗体を分泌するハイブリドーマを得るために、フローサイトメトリー(FACS)分析によって行われる、請求項1記載の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法。
【請求項5】
工程(4):
Trop-2細胞外ドメインの天然エピトープを特異的に認識してそれに結合する抗体を同定する工程
をさらに含み、同定する工程が、親和性同定および特異性同定を含む、請求項1記載の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法。
【請求項6】
工程(4)において、ヒトTrop-2およびカニクイザルTrop-2に対して特異的結合能を有するがマウスTrop-2に対しては有しないモノクローナル抗体が選択される、請求項5記載の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項記載の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法によって得られた、抗Trop-2モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体が、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-10M未満または5×10-10M未満のKD値で測定される親和性で組換えヒトTrop-2細胞外ドメインに結合する、請求項7記載の抗Trop-2モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項9】
以下からなる群より選択されるCDRの組合せ(HCDR1、HCDR2、HCDR3;およびLCDR1、LCDR2、LCDR3)を含む重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む、抗体またはその断片:
【請求項10】
重鎖可変領域が、SEQ ID NO:1~17のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、もしくは示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:18~36のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、もしくは示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項9記載の抗体またはその断片。
【請求項11】
前記抗体またはその断片によって含まれる重鎖可変領域および軽鎖可変領域が、以下のうちの1つを含む、請求項9または10記載の抗体またはその断片:
(1)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(2)SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:19に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:19に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(3)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(4)SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(5)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(6)SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(7)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(8)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(9)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(10)SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(11)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(12)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(13)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(14)SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(15)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(16)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(17)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(18)SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(19)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(20)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(21)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(22)SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(23)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(24)SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:30に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:30に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(25)SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:31に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:31に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(26)SEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(27)SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(28)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(29)SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(30)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(31)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(32)SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(33)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに
(34)SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列。
【請求項12】
任意の形態、例えば、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、ナノボディ、完全もしくは部分的にヒト化された抗体、またはキメラ抗体などであり、あるいは、半抗体、または半抗体の抗原結合断片、例えば、scFv、BsFv、dsFv、(dsFv)2、Fab、Fab’、F(ab’)2またはFvであり、
好ましくは、ヒトまたはマウスの定常領域、好ましくはヒトまたはマウスの軽鎖定常領域(CL)および/または重鎖定常領域(CH)をさらに含み、
より好ましくは、IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgEからなる群より選択される重鎖定常領域、ならびに/またはκ型もしくはλ型軽鎖定常領域を含む、
請求項1~11のいずれか一項記載の抗体またはその断片。
【請求項13】
前記抗体が、モノクローナル抗体、好ましくはマウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体であり、好ましくは、前記モノクローナル抗体の重鎖定常領域がIgG1またはIgG4サブタイプであり、前記モノクローナル抗体の軽鎖定常領域がκ型であり、
好ましくは、前記モノクローナル抗体の重鎖定常領域が、SEQ ID NO:37に示されるアミノ酸配列、または示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記モノクローナル抗体の軽鎖定常領域が、SEQ ID NO:38に示されるアミノ酸配列、または示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項1~12のいずれか一項記載の抗体またはその断片。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその断片をコードするまたは前記抗体もしくはその断片に含まれる重鎖CDR、軽鎖CDR、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項15】
請求項14記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項16】
請求項14記載の核酸分子および/もしくは請求項15記載のベクターを含むか、または請求項14記載の核酸分子および/もしくは請求項15記載のベクターによって形質転換もしくはトランスフェクトされた、宿主細胞。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその断片、請求項14記載の核酸分子、請求項15記載のベクター、または請求項16記載の宿主細胞、および任意で、薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項18】
薬学的組成物が、抗体ベースのさらなる薬物を含み、
好ましくは、前記抗体ベースのさらなる薬物が、マクロファージ関連免疫チェックポイントに対する抗体、より好ましくは抗CD47抗体である、
請求項17記載の薬学的組成物。
【請求項19】
医薬品の製造における、請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその断片、請求項14記載の核酸分子、請求項15記載のベクター、請求項16記載の宿主細胞、および/または請求項17もしくは18記載の薬学的組成物の使用であって、
好ましくは、前記医薬品が、Trop-2高発現癌を治療するための医薬品であり、
好ましくは、Trop-2高発現癌が、胃癌、膵癌、腸癌、卵巣癌、扁平上皮肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、尿路上皮癌、トリプルネガティブ乳癌または子宮頸癌である、
使用。
【請求項20】
請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその断片、請求項14記載の核酸分子、請求項15記載のベクター、請求項16記載の宿主細胞、または請求項17もしくは18記載の薬学的組成物を含む、キット。
【請求項21】
請求項1~13のいずれか一項記載の抗体またはその断片を含む融合タンパク質。
【請求項22】
請求項1~13のいずれか一項記載の抗体またはその断片と、それにコンジュゲートされた薬物とを含むコンジュゲートであって、該薬物が細胞傷害剤である、コンジュゲート。
【請求項23】
前記コンジュゲートが、式:
(請求項1~13のいずれか一項記載の抗体またはその断片)-(リンカー)-(細胞傷害剤)
によって表される抗体薬物コンジュゲート(ADC)であり、
好ましくは、該細胞傷害剤が、チューブリン阻害剤(例えば、パクリタキセル、ドセタキセルなど)またはDNA複製阻害剤(例えば、イリノテカンまたはその活性代謝物SN-38など)である、
請求項22記載のコンジュゲート。
【請求項24】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)の製造における、請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその断片、請求項14記載の核酸分子、請求項15記載のベクター、または請求項16記載の宿主細胞の使用であって、
好ましくは、ADCが、Trop-2高発現癌を治療するためのADCであり、
好ましくは、Trop-2高発現癌が、胃癌、膵癌、腸癌、卵巣癌、扁平上皮肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、尿路上皮癌、トリプルネガティブ乳癌または子宮頸癌である、
使用。
【請求項25】
その必要がある対象に、請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその断片、請求項14記載の核酸分子、請求項15記載のベクター、請求項16記載の宿主細胞、請求項17もしくは18記載の薬学的組成物、請求項21記載の融合タンパク質、または請求項22もしくは23記載のコンジュゲート、および任意で、他の薬物または手段を投与する工程を含む、疾患を予防および/または治療する方法であって、
好ましくは、該疾患がTrop-2高発現癌であり、
好ましくは、Trop-2高発現癌が、胃癌、膵癌、腸癌、卵巣癌、扁平上皮肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、尿路上皮癌、トリプルネガティブ乳癌または子宮頸癌である、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年10月11日に出願された中国特許出願第201910962965.1号の優先権恩典を主張し、その全体を参照により本明細書に組み入れる。
【0002】
技術分野
本発明は、生物医学の分野に属し、新規な抗ヒトTrop-2抗体またはその機能的断片に関する。本発明はまた、抗体またはその機能的断片の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
腫瘍関連カルシウムシグナル伝達物質(TACSTD2)、上皮糖タンパク質-1抗原(EGP-1)、消化管腫瘍関連抗原1(GA733-1)としても知られるヒト栄養膜細胞表面抗原Trop-2は、TACSTD2遺伝子によってコードされる細胞表面糖タンパク質である。Trop-2は、細胞外ドメインが3つの領域からなる、323アミノ酸の全長を有し、二量体で存在することが確認されている。
【0004】
Trop-2は、膜貫通糖タンパク質であり、他の癌原遺伝子とは異なり、Trop-2は変異を有さず、これは、過剰発現をもたらす遺伝子構成変化がないことを意味する。Trop-2は、ERK/MAPK経路およびサイクリンD1経路を介して細胞増殖を刺激し、それによって、腫瘍浸潤、血管新生、腫瘍進行、薬物耐性および他の機構を促進する。Trop-2は、様々な腫瘍、特に、トリプルネガティブ乳癌、非小細胞肺癌などでは高度に発現することが見出されており、予後と関連している。対照的に、正常組織では、Trop-2は発現が極めて低く、ADC医薬品にとって理想的な標的である。
【0005】
Trop-2を標的とする現在開発されている抗体薬物は、主に抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。不完全な統計によれば、3つ超が臨床的に検討されており、小分子薬物は、イリノテカン誘導体およびチューブリン阻害剤を主に含む。現在、トポイソメラーゼ阻害剤の新規かつ低毒性の代謝物であるSN-38を使用することが望ましいと考えられている。SN-38は、既存の微小管阻害剤およびDNAアルキル化剤とは腫瘍の阻害機構が異なり、不均一性が高く、多剤耐性機構を有する腫瘍、例えば、トリプルネガティブ乳癌(three-negative breast cancer)、膵癌、胃癌などに特に適している。臨床で最も急速に進展しているADCは、Immunomedicsによって開発されたIMMU-132であり、これは、再発性および転移性トリプルネガティブ乳癌の治療のための第III相臨床試験(ASCENT-Study)、単独で、またはカルボプラチンと組み合わせたトリプルネガティブ乳癌の治療のための第II相臨床試験(NCT02161679)、尿路上皮癌の治療のための第II相臨床試験(NCT03547973)、胃癌、子宮頸癌、小細胞肺癌を含む固形腫瘍の治療のための第I相/第II相臨床試験(NCT01631552)などに加わっている。同様の技術を伴う他の抗体-薬物コンジュゲートは、Daiichi Sankyo Company Limited、Pfizer Inc.、およびADC開発の基礎を有する他の製薬会社によって開発されたものである。
【0006】
現在、臨床的に検討されている抗Trop-2抗体はあまりない。したがって、当技術分野において、ADCの開発に特に適した新たな抗Trop-2抗体を見出すことが依然として必要とされている。Trop-2は、初期の研究では、腫瘍治療標的としての良好な応用見込みを示している。しかし、Trop-2ではエピトープ配列の構造および生物学的機能は明らかにされていないため、抗Trop-2モノクローナル抗体薬物の開発では、初期のインビトロスクリーニングで得られた高親和性モノクローナル抗体は、インビボ試験では低い腫瘍標的化活性および劣った細胞毒素送達能力を示すことが多く、これにより、抗Trop-2モノクローナル抗体薬物がこれまで臨床有効性試験を完了していないという状況に直接至っている。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、先行技術における腫瘍治療の標的としてTrop-2を使用する機構、および抗Trop-2抗体薬物の臨床試験の進歩に基づいて、抗Trop-2抗体が前臨床試験および臨床試験では理論的に予測される効果を得ない理由が、単にTrop-2に対する親和性が不十分であることだけでなく、抗体によって結合される最良のエピトープが、典型的には、その天然立体構造のTrop-2ではなく組換えTrop-2タンパク質またはその断片にあるという事実にあることを、深遠な研究および分析を通じて見出した。したがって、Trop-2に対する高親和性抗体をインビトロでスクリーニングし、得ることができるが、天然立体構造のTrop-2細胞外ドメインをインビボで標的とするためのそれらの効果的な親和性は依然として不十分である。
【0008】
一方、組換えタンパク質を免疫原および被覆抗原として使用する場合、免疫原の容易な精製、外因性抗原の単一構造、および組換えタンパク質を目的とするモノクローナル抗体の容易なスクリーニングという多くの利点がある。ただし、組換え発現されたタンパク質の修飾(例えばグリコシル化)、フォールディングパターンなどは、組換え発現系による影響を受けることが多い。哺乳動物発現系を採用したとしても、精製された遊離組換えTrop-2またはその細胞外ドメインは、天然立体構造の細胞膜表面に結合したTrop-2細胞外ドメインとは異なる。タンパク質の立体構造または空間構造のこの差は、免疫化によって産生される抗体の特異性に、およびインビボでのTrop-2細胞外ドメインの天然立体構造に対する抗体の効果的な親和性に差をもたらす。
【0009】
一方、細胞膜表面上のTrop-2について陽性の細胞を免疫原およびスクリーニング抗原として使用すると、Trop-2細胞外ドメインが天然立体構造を有し、インビトロでTrop-2細胞外ドメインに対して高い親和性を有するモノクローナル抗体が、インビボで天然立体構造のTrop-2細胞外ドメインに対して高い親和性を有することが予測されるという利点がある。しかし、細胞膜表面上のTrop-2について陽性の細胞は、それ自体が複雑すぎ、免疫原としてそのような細胞を使用すると、Trop-2細胞外ドメインの免疫原性が遮蔽されやすい。さらに、スクリーニング抗原として細胞膜表面上のTrop-2について陽性の細胞を用いてフローサイトメトリーに基づくスクリーニングを行うと、コストが高く、スクリーニング効率が低い。
【0010】
これまでの研究報告に基づいて、組換えTrop-2タンパク質およびTrop-2陽性細胞を使用してモノクローナル抗体を調製するための様々な技術的経路の長所と短所とを熟考し、本発明では、動物を免疫してハイブリドーマ細胞を調製するための免疫原として組換えTrop-2タンパク質を使用することにより、複雑な抗原を免疫原として使用した場合のTrop-2に対する遮蔽作用を回避し、組換えTrop-2タンパク質を被覆抗原として使用し、ELISAスクリーニングを通して一次スクリーニングを行うため、スクリーニングがハイスルーアウトであり、膜表面上のTrop-2について陽性の細胞を使用して、一次スクリーニングで陽性であるハイブリドーマを再スクリーニングして、得られた陽性抗体が天然立体構造のTrop-2細胞外ドメインに結合することができることを確実にする新たな技術的経路を提案する。
【0011】
本発明はさらに、動物試験の前臨床段階における抗Trop-2モノクローナル抗体の性能をどのようにしてヒトの体内での実際のインビボ試験結果に近づけるかという技術的課題を解決することを目的とする。この目的のために、本開示で提案する技術的経路では、ヒトTrop-2細胞外ドメインとカニクイザルTrop-2細胞外ドメインとの共通構造に基づく種交差反応性スクリーニングによって、ヒトTrop-2細胞外ドメインとカニクイザルTrop-2細胞外ドメインとの共通構造に特異的に結合することができるモノクローナル抗体が得られ、抗Trop-2 mabの高い特異性を確保するために、マウスTrop-2細胞外ドメインに対する特異的結合能を有する抗体は除外される。
【0012】
上記の技術的課題に対して、本開示は、ハイブリドーマスクリーニングおよびヒト化技術によって、ヒトTrop-2に対する高い親和性と、癌細胞に対する特異的殺傷効果とを有しながら、高い内在化能力を有し、ADC薬物の開発に特に適している抗Trop-2抗体を提供する。
【0013】
具体的には、本開示は、以下の技術的解決策を提供する。
【0014】
一局面では、本開示は、
(1)免疫原として組換えTrop-2タンパク質を用いて動物を免疫することによって、ハイブリドーマ細胞を調製する工程;
(2)被覆抗原として組換えTrop-2タンパク質を使用して、抗Trop-2モノクローナル抗体を分泌する陽性ハイブリドーマ細胞をスクリーニングする工程;
(3)細胞膜表面上のTrop-2について陽性の細胞を使用して、工程(2)で得られた陽性ハイブリドーマ細胞を再スクリーニングする工程
を含む、抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法であって、
抗Trop-2モノクローナル抗体が、Trop-2細胞外ドメインの天然エピトープを特異的に認識してそれに結合する方法
を提供する。
【0015】
好ましくは、本開示による抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法では、工程(3)の細胞膜表面上のTrop-2について陽性の細胞は、工程(1)でハイブリドーマ細胞を調製する際に免疫した動物と同じ種に由来する組換え動物細胞である。
【0016】
より好ましくは、本開示による抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法では、工程(1)において、ハイブリドーマ細胞は、マウスを免疫することによって調製され、工程(3)において、細胞膜表面上のTrop-2について陽性の細胞は、外因性Trop-2タンパク質を発現する組換えマウス細胞である。
【0017】
好ましくは、本開示による抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法では、工程(2)において、抗Trop-2モノクローナル抗体を分泌する陽性ハイブリドーマ細胞は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用してスクリーニングされ、工程(3)において、再スクリーニングする工程は、Trop-2細胞外ドメインの天然エピトープを特異的に認識してそれに結合する抗体を分泌するハイブリドーマを得るために、フローサイトメトリー(FACS)分析によって行われる。
【0018】
好ましくは、本開示による抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法は、工程(4):Trop-2細胞外ドメインの天然エピトープを特異的に認識してそれに結合する抗体を同定する工程をさらに含み、同定する工程は、親和性同定および特異性同定を含む。
【0019】
好ましくは、本開示による抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法では、工程(4)において、ヒトTrop-2およびカニクイザルTrop-2に対して特異的結合能を有するがマウスTrop-2に対しては有しないモノクローナル抗体が選択される。
【0020】
別の局面では、本開示は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む抗体またはその断片を提供し、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)は、以下からなる群より選択されるCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3;およびLCDR1、LCDR2、LCDR3)の組合せを含む。
【0021】
抗体またはその断片は、ヒトTrop-2に結合する。
【0022】
好ましくは、重鎖可変領域は、SEQ ID NO:1~17のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、もしくは示される該アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:18~36のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、もしくは示される該アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0023】
本開示の特定の態様によれば、本開示の抗体またはその断片によって含まれる重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、以下のうちの1つを含む:
【0024】
(1)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(2)SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:19に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:19に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(3)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(4)SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(5)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(6)SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(7)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(8)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(9)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(10)SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(11)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(12)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(13)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(14)SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(15)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(16)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(17)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(18)SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(19)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(20)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(21)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(22)SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(23)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(24)SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:30に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:30に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(25)SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:31に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:31に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(26)SEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(27)SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(28)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(29)SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(30)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(31)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(32)SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(33)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに
(34)SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列。
【0025】
典型的には、抗体またはその断片は、任意の形態、例えば、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、ナノボディ、完全もしくは部分的にヒト化された抗体、またはキメラ抗体などであり、あるいは、抗体またはその断片は、半抗体(half-antibody)、または半抗体の抗原結合断片、例えば、一本鎖可変断片(scFv)、二価一本鎖可変断片(BsFv)、ジスルフィド安定化Fv断片(dsFv)、(ジスルフィド安定化Fv断片)2(dsFv)2、抗原結合断片(Fab)、Fab’断片、F(ab’)2断片または可変断片(Fv)であり、抗体またはその断片は、マウス、ラット、ヒトまたは任意の他の起源のものであり得る。
【0026】
好ましくは、抗体またはその断片は、ヒトまたはマウスの定常領域、好ましくはヒトまたはマウスの軽鎖定常領域(CL)および/または重鎖定常領域(CH)をさらに含み、より好ましくは、抗体またはその断片は、IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgEからなる群より選択される重鎖定常領域、ならびに/またはκ型もしくはλ型軽鎖定常領域を含む。
【0027】
本開示の特定の態様によれば、抗体は、モノクローナル抗体、好ましくはマウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体であり、より好ましくは、モノクローナル抗体の重鎖定常領域はIgG1またはIgG4サブタイプであり、モノクローナル抗体の軽鎖定常領域はκ型である。
【0028】
本開示の特定の態様によれば、モノクローナル抗体の重鎖定常領域は、SEQ ID NO:37に示されるアミノ酸配列、または示される該アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、モノクローナル抗体の軽鎖定常領域は、SEQ ID NO:38に示されるアミノ酸配列、または示される該アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0029】
本開示では上記の少なくとも75%の同一性とは、75%以上の任意のパーセント同一性、例えば、少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらになお好ましくは少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%またはさらには99%の同一性である。
【0030】
本開示の抗体またはその断片に基づいて、さらなる局面では、本開示は、本開示による抗体またはその断片に含まれる重鎖CDR、軽鎖CDR、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖または軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。
【0031】
さらに別の局面では、本開示は、本開示の核酸分子を含むベクターを提供する。ベクターは、真核生物発現ベクター、原核生物発現ベクター、人工染色体、ファージベクターなどであり得る。
【0032】
本開示のベクターまたは核酸分子は、宿主細胞を形質転換もしくはトランスフェクトするために使用されてもよいか、または、いかなる方法によっても、抗体の保存もしくは発現などのために宿主細胞に侵入してもよい。
【0033】
したがって、さらなる局面では、本開示は、本開示による核酸分子および/もしくはベクターを含む宿主細胞、または本開示による核酸分子および/もしくはベクターによって形質転換もしくはトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞、例えば、細菌細胞または昆虫細胞、真菌細胞、植物細胞または動物細胞であり得る。
【0034】
本態様の開示によれば、本開示によって提供される抗体もしくはその断片、核酸分子、ベクターおよび/または宿主細胞は、当技術分野において公知の任意の従来の技術を使用して得ることができる。本開示によって提供される抗体もしくはその断片、核酸分子、ベクターおよび/または宿主細胞は、薬学的組成物、さらに具体的には薬学的調製物に含有されて、実際に必要に応じて様々な用途のために使用され得る。
【0035】
したがって、なおさらなる局面では、本開示はまた、本開示による抗体もしくはその断片、核酸分子、ベクターおよび/または宿主細胞、ならびに任意で、薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物を提供する。
【0036】
本開示の抗体またはその断片は、マクロファージによる食作用を誘導することができる、抗体ベースの他の薬物と組み合わせて使用され得る。したがって、好ましくは、抗体ベースの薬物は、細胞の表面上に発現されたタンパク質への結合を通じて、マクロファージによる細胞の食作用を促進する。したがって、本開示によって提供される薬学的組成物は、抗体ベースのさらなる薬物、好ましくは、マクロファージ関連免疫チェックポイントに対する抗体を含むことができる。本開示の特定の態様によれば、抗体は抗CD47抗体である。
【0037】
本開示はまた、ヒトTrop-2またはその任意の部分に結合する抗体による、上記の主題の関連する使用を提供する。
【0038】
特に、さらなる局面では、本開示は、好ましくはTrop-2高発現癌を治療するための医薬品の製造における抗体もしくはその断片、核酸分子、ベクター、宿主細胞および/または薬学的組成物の使用を提供する。好ましくは、Trop-2高発現癌は、胃癌、膵癌、腸癌、卵巣癌、扁平上皮肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、尿路上皮癌、トリプルネガティブ乳癌または子宮頸癌である。
【0039】
この点で、使用は、医薬品の製造における上記の抗体ベースの他の薬物と組み合わせた、本開示の抗体またはその断片の使用を包含する。
【0040】
本開示によって提供される抗体またはその断片はまた、他の部分に融合またはコンジュゲートされ得る。例えば、本開示は、本開示による抗体またはその断片を含む融合タンパク質またはコンジュゲートを提供する。
【0041】
融合タンパク質に関して、融合タンパク質は、本開示の抗体またはその断片を修飾する任意の他の部分、例えば、アミノ酸、ポリペプチドまたはタンパク質を含み得る。
【0042】
コンジュゲートに関して、コンジュゲートは、本開示の抗体またはその断片と、それにコンジュゲートされた薬物とを含み得、薬物は、例えば、細胞傷害剤である。
【0043】
好ましくは、コンジュゲートは、式:(本開示による抗体またはその断片)-(リンカー)-(細胞傷害剤)によって表される抗体薬物コンジュゲート(ADC)であり、好ましくは、細胞傷害剤は、チューブリン阻害剤(例えば、パクリタキセル、ドセタキセルなど)またはDNA複製阻害剤(例えば、イリノテカンまたはその活性代謝物SN-38など)である。
【0044】
本開示の特定の態様によれば、コンジュゲートは、「抗TROP-2抗体-リンカー-SN-38抗体薬物コンジュゲート」である。
【0045】
本開示はまた、好ましくはTrop-2高発現癌を治療するための抗体薬物コンジュゲート(ADC)の製造における抗体もしくはその断片、核酸分子、ベクター、宿主細胞および/または薬学的組成物の使用を提供する。好ましくは、Trop-2高発現癌は、胃癌、膵癌、腸癌、卵巣癌、扁平上皮肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、尿路上皮癌、トリプルネガティブ乳癌または子宮頸癌である。
【0046】
さらに、本開示は、その必要がある対象に、本開示による抗体もしくはその断片、核酸分子、ベクター、宿主細胞、薬学的組成物、融合タンパク質またはコンジュゲート、および任意で、他の薬物または手段を投与する工程を含む、疾患を予防および/または治療する方法を提供する。任意の他の薬物または手段とは、本開示の抗体もしくはその断片、核酸分子、ベクター、宿主細胞、薬学的組成物、融合タンパク質またはコンジュゲートと組み合わせて投与され得る他の薬物または手段、例えば、小分子薬物、標的薬物、組換えタンパク質薬物、例えば、抗体、ワクチン、ADC、腫瘍溶解性ウイルス、遺伝子療法薬または核酸療法薬および放射線療法を指す。2つの同時投与は、同時に、連続的にまたは間隔を置いて、を含む任意の方法であり得る。
【0047】
好ましくは、疾患は、Trop-2高発現癌であり、さらに好ましくは、Trop-2高発現癌は、胃癌、膵癌、腸癌、卵巣癌、扁平上皮肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、尿路上皮癌、トリプルネガティブ乳癌または子宮頸癌である。対象は哺乳動物であり、好ましくは、対象はヒトである。
【0048】
別段示されない限り、用語「免疫グロブリン配列」は、フルサイズ抗体、その個々の鎖、およびそのあらゆる部分、そのドメインまたは断片(限定されることなく、抗原結合ドメインまたは断片、例えば、それぞれ、VHHドメインまたはVH/VLドメインを含む)を包含する一般用語として使用される。
【0049】
用語「抗体」は、2つの免疫グロブリン重鎖および2つの免疫グロブリン軽鎖(すなわち、「完全抗体分子」)ならびにその抗原結合断片を含む抗体分子を包含すると理解される。本明細書において使用される抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などの用語は、抗原に特異的に結合して複合体を形成する任意の天然に存在する、酵素的に得られる、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を包含する。本明細書において使用される抗体の「抗原結合断片」または「抗体断片」という用語は、Trop-2に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1つまたは複数の断片を指す。抗体断片は、Fab断片、F(ab’)2断片、Fv断片、dAb断片、CDRを含む断片、または単離されたCDRを含み得る。抗体の抗原結合断片は、例えば、任意の好適な標準的技術、例えば、抗体の可変ドメインおよび(任意で)定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を含むタンパク質消化技術または組換え遺伝子操作技術を使用して、完全抗体分子から誘導され得る。そのようなDNAは、公知であり、および/または例えば、商業的供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、もしくは合成され得る。DNAは、例えば、1つもしくは複数の可変ドメインおよび/もしくは定常ドメインを好適な構成に配置するために、またはコドンを導入するために、システイン残基を生成するために、アミノ酸を修飾、付加もしくは欠失させるために、化学的に、または分子生物学技術を使用することによって配列決定および操作され得る。
【0050】
抗原結合断片の非限定的な例には、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAb断片、および(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基、または拘束性FR3-CDR3-FR4ペプチドからなる最小認識単位が挙げられる。他の操作された分子、例えば、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメイン(shark variable IgNAR domain)も、本明細書において使用される「抗原結合断片」という表現に包含される。
【0051】
抗体の抗原結合断片は、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含む。可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成であってよく、一般に、1つまたは複数のフレームワーク配列に隣接するかまたはそれとインフレームである少なくとも1つのCDRを含む。VLドメインに関連するVHドメインを有する抗原結合断片では、VHドメインおよびVLドメインは、任意の好適な配置で互いに対して位置し得る。例えば、可変領域は、二量体であり得、VH-VH二量体、VH-VL二量体またはVL-VL二量体を含み得る。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体VHまたはVLドメインを含み得る。
【0052】
ある態様では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合した少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。本開示による抗体の抗原結合断片内に見られ得る可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的な例示的構成には、(i)VH-CH1、(ii)VH-CH2、(iii)VH-CH3、(iv)VH-CH1-Ch2、(v)VH-CH1-CH2-CH3、(vi)VH-CH2-CH3、(vii)VH-CL、(viii)VL-CH1、(ix)VL-CH2、(x)VL-CH3、(xi)VL-CH1-CH2、(xii)VL-CH1-CH2-CH3、(xiii)VL-CH2-CH3および(xiv)VL-CLが含まれる。上記の例示的構成のいずれかを含む可変ドメインおよび定常ドメインの任意の構成では、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接連結されていてもよいか、または完全もしくは部分的なヒンジ領域もしくはリンカー領域によって連結されていてもよい。ヒンジ領域は、少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれ以上)のアミノ酸からなり得、これにより、単一のポリペプチド分子内の隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメイン間に柔軟なまたは半柔軟な連結がもたらされる。さらに、本開示の抗体の抗原結合断片は、互いにおよび/または1つもしくは複数の単量体VHもしくはVLドメインと(例えば、ジスルフィド結合によって)非共有結合で会合した上記の可変ドメイン構成および定常ドメイン構成のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含み得る。
【0053】
完全抗体分子と同様に、抗原結合断片は、単一特異性または多重特異性(例えば二重特異性)であり得る。抗体の多重特異性抗原結合断片は、典型的には、各可変ドメインが別個の抗原に、または同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる少なくとも2つの異なる可変ドメインを含む。本明細書において開示される例示的な二重特異性抗体形式を含む任意の多重特異性抗体形式は、当技術分野において利用可能な常用的な技術を使用して、本開示による抗体の抗原結合断片の状況での使用に適合させることができる。
【0054】
用語「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域、CDRまたはその一部)が異なるもしくは変化したクラス、エフェクター機能および/もしくは種の定常領域に連結されるように、定常領域もしくはその一部が変化、置換もしくは交換されているか、または(b)可変領域もしくはその一部が、異なる抗原特異性もしくは変化した抗原特異性を有する可変領域(例えば、異なる種由来のCDRおよびフレームワーク領域)によって変化、置換もしくは交換されている抗体を指す。キメラ抗体は、可変領域断片、例えば、2つのFab領域もしくはFv領域またはscFvを含む組換え抗体を含むことができる。上記のように、キメラ抗体はまた、結合したFv領域とは異なる供給源由来のFc領域を含むことができる。場合によっては、キメラ抗体は、Fv領域内にキメラ領域を含む。そのようなキメラ抗体の例には、FvおよびCDRが異なる供給源に由来するヒト化抗体がある。
【0055】
用語「ヒト化抗体」は、非ヒト抗体のVH領域およびVL領域から得られた抗原結合ループ、すなわちCDRがヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を指す。ヒト化、すなわち、ヒト抗体の対応する配列に対する非ヒトCDR配列の置換は、例えば、米国特許第5,545,806号、米国特許第5,569,825号、米国特許第5,633,425号、米国特許第5,661,016号、Riechmann et al.,Nature 332:323-327(1988);Marks et al,Bio/Technology 10:779-783(1992);Morrison,Nature 368:812-13(1994);およびFishwild et al.,Nature Biotechnology 14:845-51(1996)に記載されている方法に従って行うことができる。米国特許第6,673,986号に開示されているように、トランスジェニックマウス、または他の哺乳動物などの他の生物を使用して、ヒト化抗体またはヒト抗体を発現させてもよい。
【0056】
本明細書において使用される場合、用語「パーセント(%)同一性」は、最大パーセント同一性を達成するために配列をアラインメントさせ、必要に応じてギャップを導入した後(すなわち、最適なアラインメントのために候補配列および参照配列の一方または両方にギャップを導入することができ、比較のために非相同配列を無視することができる)、参照配列のアミノ酸残基(または核酸塩基)と同一である候補配列、例えば、本開示の単離された抗Trop-2抗体のアミノ酸残基(または核酸塩基)の割合を指す。パーセント同一性を決定するためのアラインメントは、標準的な設定のBLAST 2.0ソフトウェアを使用して達成することができる。アラインメントは、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するように行うことができる。いくつかの態様では、所与の参照配列への、所与の参照配列との、または所与の参照配列に対する所与の候補配列(これは、あるいは、所与の参照配列への、所与の参照配列との、または所与の参照配列に対する特定のパーセントアミノ酸(または核酸)配列同一性を有するか、またはそれを含む所与の候補配列と言い表すことができる)のパーセントアミノ酸(または核酸)配列同一性は、以下のように計算される:
100×(A/Bの割合)
式中、Aは、候補配列と参照配列とのアラインメントにおいて同一であるとスコア化されたアミノ酸残基(または核酸塩基)の数であり、Bは、参照配列内のアミノ酸残基(または核酸塩基)の総数である。候補配列の長さが参照配列の長さに等しくないいくつかの態様では、参照配列に対する候補配列のパーセントアミノ酸(または核酸)配列同一性は、候補配列に対する参照配列のパーセントアミノ酸(または核酸)配列同一性に等しくない。
【0057】
特定の態様では、候補配列と比較するためにアラインメントされた参照配列は、候補配列が候補配列の全長、または候補配列の連続するアミノ酸残基(または核酸塩基)の選択された部分にわたって50%~100%の同一性を示すことを示し得る。比較のためにアラインメントされた候補配列の長さは、参照配列の長さの少なくとも30%、例えば、少なくとも40%、例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%である。候補配列内の位置が、参照配列内の対応する位置と同じアミノ酸残基(または核酸塩基)によって占められている場合、分子はその位置で同一である。
【0058】
本明細書において使用される用語「抗原」、「免疫原」、「抗体標的」、「標的分析物」などは、抗体によって認識される、すなわち、抗体によって特異的に結合され得る分子、化合物または複合体を指す。これらの用語は、抗体によって特異的に認識され得る任意の分子、例えば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、炭水化物、脂質、化学的部分またはそれらの組合せ(例えば、リン酸化ポリペプチドまたはグリコシル化ポリペプチドなど)を指すことができる。当業者であれば、これらの用語が、分子があらゆる状況において免疫原性であることを示すのではなく、抗体によって標的とされ得ることを単に示すことを理解するであろう。
【0059】
本明細書において使用される場合、用語「単離された」は、人工的な手段によって天然の状態から得られた状態を指す。特定の「単離された」物質または成分が自然界に存在する場合、その自然環境が変化するか、もしくは該物質が自然環境から単離されるか、またはその両方であるため、それは可能である。例えば、特定の非単離ポリヌクレオチドまたは非単離ポリペプチドは、特定の生きている動物の体内に天然に存在し、そのような天然の状態から単離された同じ高純度のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されたポリヌクレオチドまたはポリペプチドと呼ばれる。用語「単離された」は、混合された人工の物質もしくは合成された物質、または単離された物質の活性に影響を及ぼさない他の非純粋な物質を排除しない。
【0060】
用語「宿主細胞」は、限定されることなく、大腸菌(Escherichia coli)細胞などの原核細胞、酵母細胞などの真菌細胞、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(S2)細胞もしくはヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(Sf9)細胞などの昆虫細胞、または線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞もしくはヒト細胞などの動物細胞などを含む、ベクターを導入することができる細胞を指す。
【0061】
用語「KD」は、抗体と抗原との間の結合親和性を記載するために使用される、特異的抗体-抗原相互作用の平衡解離定数(KD)を指す。平衡解離定数が小さいほど、抗体-抗原結合が近くなり、抗体と抗原との間の親和性が高くなる。一般に、抗体は、例えば、BIACORE装置における表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合、約10-5M未満、例えば、約10-6M未満、約10-7M未満、約10-8M未満、約10-9M未満もしくは約10-10M未満またはそれ以下の平衡解離定数で抗原に結合する。例えば、細胞との抗体の親和性は、KINEXA法を使用してKINEXA 400装置を用いて検出される。
【0062】
用語「特異的結合」は、抗体が抗原の1つまたは複数の抗原決定基と反応するが、他のポリペプチドと反応しないか、または非常に低い親和性(Kd>10-6)で他のポリペプチドに結合することを意味する。抗体には、限定されることなく、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、dAb(ドメイン抗体)、一本鎖、Fab、Fab’およびF(ab’)2断片、Fv、scFvおよびFab発現ライブラリーが含まれる。モノクローナル抗体(mAb)とは、モノクローナル細胞株から得られる抗体であり、細胞株は、真核細胞株、原核細胞株またはファージクローン細胞株に限定されない。モノクローナル抗体またはその抗原結合断片は、例えば、ハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージディスプレイ技術、およびCDRグラフティングなどの合成技術、または他の公知の技術を使用する組換えによって得ることができる。
【0063】
用語「Trop-2」は、TROP2を指し、TROP2は、TACSTDファミリーに属し、TACSTD2遺伝子によってコードおよび発現される細胞表面糖タンパク質である。これは、腫瘍関連カルシウムシグナル伝達物質2(TACSTD2)、表皮糖タンパク質1(EGP-1)、消化管腫瘍関連抗原(GA733-1)および表面マーカー1(M1S1)としても知られている。Trop-2は、様々な悪性腫瘍内で過剰発現され、悪性腫瘍の発生、浸潤および転移に関連する発癌遺伝子である。
【0064】
Trop-2遺伝子は、第1染色体の短腕に位置する。具体的な位置は1p32.1である。遺伝子の全長は9072bpであり、イントロンはなく、ただ1つのエクソンである。ヒト相同遺伝子配列に対するマウスTrop-2の類似性は87.4%であった。Trop-2タンパク質の一次構造は、単一の膜貫通表面糖タンパク質である、323アミノ酸からなる36kDaのポリペプチドである。Trop-2は、疎水性前駆体ペプチド(AA1-26)、細胞外ドメイン(AA27-274)、1つの膜貫通ドメイン(AA275-297)および1つの細胞質尾部(AA298-323)から構成される。Trop-2タンパク質のN末端は細胞外ドメイン(ECD)であり、細胞外ドメイン(ECD)は、一方向膜貫通ヘリックス(TM)によって細胞内の短い尾部(IC)に連結され、それによって、膜上に固定化されている。Trop-22の細胞質尾部は、高度に保存されたホスファチジルイノシトール4,5-ビスホスフェート(PIP2)結合配列を含み、PIP2がTrop-2のシグナル伝達に重要な役割を果たすことが示唆される。Trop-22の細胞質尾部は、PIP2結合モチーフに加えて、保存されたチロシンリン酸化部位およびセリンリン酸化部位も含む。303位のセリン残基の変異は、腫瘍増殖を刺激するTrop-2の能力を無効にした。この残基のリン酸化は、プロテインキナーゼC(PKC)の役割である。
【0065】
用語「抗体-薬物コンジュゲート(ADC)」は、生物学的に活性な小分子薬物が、標的細胞への小分子薬物の輸送を標的とするための担体として作用するモノクローナル抗体に化学リンカーを介して連結されているコンジュゲートを指す。
【0066】
ADC薬物内の抗体分子は、通常、ヒト化モノクローナル抗体であり、その断片結晶化可能(Fc)領域は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)などを減少させるように修飾される。第1に、抗体分子は生物学的高分子であるため、抗体分子には、一般に生物学的高分子の毒性リスク、例えば、免疫原性および免疫毒性、ならびにモノクローナル抗体の場合、場合によってはADCC、CDCおよび腎臓基底膜免疫複合体沈着が存在する。第2に、ADC薬物では、抗体分子の最も重要な役割は、標的化、すなわち、抗原-抗体結合部位への小分子化合物の標的送達である。抗体の選択性が低い場合、または抗原が正常組織に存在する場合、細胞傷害性薬物は正常細胞に送達され、標的化毒性をもたらす。第3に、標的化毒性に加えて、循環中の小分子の排出は、ある程度のオフターゲット毒性をもたらし得る。抗体分子内のFcは、免疫細胞上のFc受容体、例えばFcγR/FcRNに結合する活性を有する場合、免疫細胞に容易に結合し、それによって免疫細胞の死滅を引き起こす。最後に、外因性生体高分子としてのADC薬物も循環に取り込まれ、飲作用を介して細胞に入り、細胞死をもたらし得る。
【0067】
ADC薬物に一般的に使用されるリンカーには、ヒドラゾン結合、ジスルフィド結合およびペプチド結合が主に含まれる。ヒドラゾン結合は、酸性条件下で加水分解を受ける比較的不安定な結合である。ヒドラゾンリンカーは、Mylotarg(登録商標)に使用されており、研究者らは、ヒドラゾンリンカーがMylotarg(登録商標)の失敗の重要な原因であると考えている。ジスルフィド結合は、細胞内の高濃度のグルタチオンによって加水分解され、細胞外で容易に分解されない。ペプチド結合は、最も密接な結合であり、リソソームのタンパク質分解酵素によってのみ切断される。リンカーの安定性は、細胞傷害性薬物の意図しない解離に直接影響を及ぼし、切断は、インビボでの小分子細胞傷害性薬物の曝露、すなわち、オフターゲット毒性をもたらす。
【0068】
ADC薬物に一般的に使用される細胞傷害性薬物は、臨床で従来使用されている化学療法薬であり、ADC薬物の主な毒性作用プロファイルを決定する。これらの薬物は臨床的に広く使用されているため、一般に明確な毒性特性を有する。毒性のリスクは、薬物の種類、例えば、チューブリン重合阻害剤またはDNA損傷剤/DNA複製阻害剤に応じて十分に確認することができる。薬物の中でも、チューブリン阻害剤は、そのドラスタチン誘導体およびオーリスタチン誘導体(MMAE、MMAFおよびMMAD)、メイタンシン誘導体およびメイタンシノイド誘導体(DM1、DM2、DM3およびDM4)、パクリタキセルおよびパクリタキセル誘導体(ドセタキセル)、ドセタキセル、ビンクリスチンなどを含み、DNA損傷剤/DNA複製阻害剤は、イリノテカンまたはその活性代謝物SN-38などを含む。
【0069】
「任意の(optional)」、「任意で(optionally)」、「任意の(any)」または「任意の1つ(any one)」は、以下の事象または状況が必ずしも発生しなくてもよいが、発生してもよいことを意味し、その記載は、その事象または状況が発生するかまたは発生しない場合を含む。例えば、「任意で1つの抗体重鎖可変領域を含む」は、特定の配列を有する抗体重鎖可変領域が存在し得るが、必ずしも存在しなくてもよいことを意味する。
【0070】
用語「薬学的組成物」は、他の化学成分、ならびに生理学的に/薬学的に許容される担体および賦形剤などの他の成分とともに、本開示の1つもしくは複数の化合物またはその生理学的に/薬学的に許容される塩もしくはプロドラッグを含有する混合物を指す。薬学的組成物は、生物への投与を容易にし、活性成分の吸収を促進して生物学的活性を発揮するために使用される。治療用組成物は、一般に、製造および貯蔵の条件下で無菌かつ安定であるべきである。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高い抗体濃度に適した他の秩序構造として製剤化することができる。滅菌注射液は、活性化合物(すなわち、抗体または抗体部分)を上記の1つの成分または成分の組合せを含む適切な溶媒中に必要量で組み込み、必要に応じて滅菌のために濾過することによって調製することができる。
【0071】
本開示による方法、組成物および併用療法は、他の活性剤または治療方法と組み合わせることができる。該方法は、任意で、PD-1抗体、PD-L1抗体、PD-L2抗体、LAG-3抗体、CTLA-4抗体またはTim-3抗体(免疫療法)または他の腫瘍治療抗体、例えば、Her-2抗体、EGFR抗体、VEGF抗体、VEGFR抗体など、ならびにADC(T-DM1などの抗体薬物コンジュゲート)、二重特異性抗体、化学療法薬などから選択される1つまたは複数の阻害剤と組み合わせて、疾患(例えば癌)の治療または予防に有効な量の本開示の抗Trop-2抗体分子を対象に投与することを含む。該方法はまた、追加の活性剤の投与を含むか、または単独で(例えば、単剤療法として)使用される各活性剤の量もしくは用量よりも高いか、低いか、もしくはそれと等しい量もしくは用量でいずれも投与され得る。追加の活性剤またはそれらの全部の投与量または用量は、単独で(例えば、単剤療法として)使用される各活性剤の量または用量よりも低い(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%または少なくとも50%)。
【0072】
本開示は、良好な生物学的活性を有する、ヒトTrop-2に対する新規抗体を提供する:本開示によって提供される抗体(キメラ抗体およびヒト化抗体を含む)は、対照抗体サシツズマブと同様に、細胞の表面に発現された組換えTrop-2タンパク質またはTrop-2抗原の両方に効果的に結合することができる。一方、本開示によって提供される抗体は、ヒトTrop-2に対して高い親和性を有する:本開示のヒト化抗体は、対照抗体サシツズマブと比較して、ヒトTrop-2タンパク質に特異的なさらに高い結合能と、サシツズマブよりも高い親和性とを示した。したがって、本開示の抗体は、良好な治療効果を有する。
【0073】
実験により、本開示の抗体は良好な内在化能力を有することが証明された:ヒト化抗体は、対照抗体サシツズマブと同様の内在化率を有し、ADCに調製した場合、それらの内在化能力は顕著に増強された。したがって、本開示の抗体は、ADC薬物を開発するための可能性を有する。本開示の抗Trop-2抗体はまた、他の抗体との相乗効果を有し得る。例えば、本開示の抗体は、マクロファージによる腫瘍細胞の食作用をさらに促進するために、抗CD47抗体と組み合わせて使用することができる。
【0074】
さらに、本開示の抗体は、良好なインビボ治療効果を有することが実証されている。本開示の抗体を用いてADCを調製したところ、抗Trop2-ADCは、腫瘍増殖に対する用量依存的阻害効果を有し、高投与量(10mg/kg)では、各ADCの治療効果は、対照抗体サシツズマブの治療効果と同等であった。ADC内の小分子SN38の明らかな毒性作用は観察されず、各実験群の動物の体重は、対照との明らかな差を伴わず着実に増加した。
【図面の簡単な説明】
【0075】
本発明の態様は、添付の図面を参照して以下に詳細に説明される。
【0076】
図1】CHO細胞の表面上のTrop-2への陽性ハイブリドーマ上清の結合のスクリーニング結果を示す。
図2】CHO細胞の表面上のTrop-2への陽性ハイブリドーマ上清の結合のスクリーニング結果を示す。
図3】陽性ハイブリドーマ上清と、異なる種の組換えTrop-2タンパク質との交差反応性のELISAによる検出結果を示す。
図4A】組換えTrop-2タンパク質に対する抗ヒトTrop-2キメラ抗体の結合活性のELISAによる検出結果を示す。パネル4A:ch3-11;パネル4B:ch4-3;パネル4C:ch23-12;パネル4D:ch11-4;パネル4E:ch17-1。
図4B図4Aの説明を参照されたい。
図4C図4Aの説明を参照されたい。
図4D図4Aの説明を参照されたい。
図4E図4Aの説明を参照されたい。
図5A】細胞の表面上の組換えTrop-2タンパク質に対する抗ヒトTrop-2キメラ抗体の結合活性のFACSによる検出結果を示す。パネル5A:ch3-11;パネル5B:ch23-12;パネル5C:ch11-4;パネル5D:ch4-3;パネル5E:ch17-1。
図5B図5Aの説明を参照されたい。
図5C図5Aの説明を参照されたい。
図5D図5Aの説明を参照されたい。
図5E図5Aの説明を参照されたい。
図6A】Trop-2に対する抗ヒトTrop-2抗体の種特異的結合のELISAによる検出結果を示す。パネル6A:h23-12;パネル6B:h4-3;パネル6C:サシツズマブ。
図6B図6Aの説明を参照されたい。
図6C図6Aの説明を参照されたい。
図7A】組換えヒトTrop-2細胞外ドメインに対する抗ヒトTrop-2抗体の親和性の分析結果を示す。パネル7A:サシツズマブ;パネル7B:h23-12;パネル7C:h4-3。
図7B図7Aの説明を参照されたい。
図7C図7Aの説明を参照されたい。
図8】N87細胞の表面上のTrop-2に結合した後の抗Trop-2ヒト化抗体の内在化の観察結果を示す。
図9】ヌードマウスに対する抗Trop-2ヒト化抗体の単回用量後の薬物濃度対時間曲線を示す(Trop-2により検出)。パネル9A:h23-12;パネル9B:h4-3。
図10】細胞増殖に対する抗Trop-2-ADCの阻害率を示す。
図11A】N87胃癌のマウスモデルにおける、腫瘍を担持するBALB/c nuマウスの体重の変化の曲線を示す。パネル11A:ch4-3-SN38の投与後;パネル11B:h23-12-SN38の投与後;パネル11C:アイソタイプ対照抗体の投与後;パネル11D:ch4-3-SN38およびh23-12-SN38の高投与量投与後。
図11B図11Aの説明を参照されたい。
図11C図11Aの説明を参照されたい。
図11D図11Aの説明を参照されたい。
図12A】N87胃癌のマウスモデルにおける、腫瘍を担持するBALB/c nuマウスの腫瘍体積の変化の曲線を示す。パネル12A:ch4-3-SN38の投与後;パネル12B:h23-12-SN38の投与後;パネル12C:アイソタイプ対照抗体の投与後;パネル12D:ch4-3-SN38およびh23-12-SN38の高投与量投与後。
図12B図12Aの説明を参照されたい。
図12C図12Aの説明を参照されたい。
図12D図12Aの説明を参照されたい。
図13】抗Trop-2抗体および抗CD47抗体の同時投与による、SKOV3皮下異種移植マウスモデルにおけるマウスの体重の変化の曲線を示す。
図14】抗Trop-2抗体および抗CD47抗体の同時投与による、SKOV3皮下異種移植マウスモデルにおけるマウスの腫瘍体積の変化の曲線を示す。
図15】NCI-N87胃癌の皮下異種移植マウスモデルにおける、腫瘍を担持するBALB/c nuマウスの腫瘍体積の変化の曲線を示す。
図16】NCI-N87胃癌の皮下異種移植マウスモデルにおける、腫瘍を担持するBALB/c nuマウスの体重の変化の曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
好ましい態様の詳細な説明
具体例を参照して、本発明を以下に説明する。これらの実施例は本発明の単なる例示であり、本発明の範囲を決して限定するものではないことが当業者によって理解されるであろう。
【0078】
以下の実施例における実験手順は、特に明記しない限り、いずれも従来のものである。以下の実施例で使用する原料および試薬は、特に明記しない限り、いずれも市販品である。
【実施例
【0079】
実施例1 抗ヒトTrop-2抗体を分泌するハイブリドーマ細胞の調製
免疫化:組換えヒトTrop-2タンパク質(アクセッション番号:NP_002344.2、AA 1-274)を用いてBalb/cマウスを免疫し、組換えヒトTrop-2-hisタンパク質(アクセッション番号:NP_002344.2、AA 1-274)をコーティングした96ウェルELISAプレート内でELISAを介して血清力価を検出した。次の工程の細胞融合のために、細胞融合のための要件を満たす血清力価を有するマウスを使用した。
【0080】
細胞融合およびハイブリドーマ調製:必要な力価を有するマウスを選択して、ラッシュ免疫化(rush immunization)を行い、3日後にマウスから脾臓を無菌的に採取した。Bリンパ球懸濁液を調製し、4:1の比でSP2/0骨髄腫細胞と混合して、細胞をPEGの存在下で融合させた。融合した細胞をHAT培地に再懸濁し、96ウェル細胞培養プレートに接種し、37℃、5%CO2のインキュベーター内で培養した。
【0081】
実施例2 抗ヒトTrop-2抗体を分泌する陽性ハイブリドーマ細胞株のスクリーニング
1. 陽性ハイブリドーマの結合のスクリーニング
融合の10~14日後、ELISAプレートを組換えヒトTrop-2-hisタンパク質(アクセッション番号:NP_002344.2、AA 1-274)(20ng/ml)によって4℃で一晩コーティングした。PBSを用いて3回洗浄し、プレートを4%脱脂粉乳-PBSを用いて室温で1時間ブロッキングした。次いで、プレートをPBSを用いて3回洗浄し、ハイブリドーマクローンの培養上清をプレートに加え、室温で1時間インキュベートした。以下のような対照を設定した:(1)陽性対照(PC):免疫化後のマウス由来の血清(PBSで1:1000希釈);(2)陰性対照(NC):細胞増殖を伴わない融合ウェル。プレートをPBST(0.05%Tween-PBS)を用いて3回洗浄し、PBSを用いて2回洗浄し、次いで、HRP-ヤギ抗マウスIgG(Fcγ)をプレートに加え、37℃で0.5時間インキュベートした。その後、プレートを再びPBST(0.05%Tween 20-PBS)を用いて3回洗浄し、TMB基質を加え、暗所で15~30分間発色させた。次いで、ELISA停止溶液を加えて反応を停止させた。マイクロプレートリーダーを使用してA450値を読み取った。
【0082】
クローンを最も高い読み取り値から最も低い読み取り値まで順序付けし、高い読み取り値を有する上位95個のクローンをELISAによるダブルチェックのために選択し、抗体を分泌する25個の陽性細胞のプールを限界希釈によってサブクローニングした。プレーティングの10日後、モノクローナル細胞の培養上清を、上記のように行ったELISAによる陽性クローンのその後のスクリーニングのために選択した。クローンを最も高い読み取り値から最も低い読み取り値まで再度順序付けし、次の工程であるFACSによる結合のスクリーニングのために、高い読み取り値を有する上位21個のクローン、すなわち、m1-1、m3-11、m4-3、m5-5、m6-6、m7-13、m11-4、m12-2、m12-4、m13-2、m14-2、m15-3、m16-7、m17-1、m18-4、m19-5、m20-4、m21-1、m22-1、m23-12およびm24-3を選択した。
【0083】
2. CHO細胞の表面上のTrop-2への陽性ハイブリドーマの結合のスクリーニング
Trop-2 cDNAを含むベクター(カタログ:HG10428-M、Beijing Yiqiao Shenzhou Science and Technology Co.,Ltd.)からPCRによってTrop-2遺伝子のリーディングフレームをクローニングし、酵素消化によって、グルタミン合成酵素(GS)遺伝子を含む安定発現ベクターにクローニングし、スクリーニングした。懸濁培養したCHO-K1細胞を電気トランスフェクト(electrotransfected)し(Nucleofector IIb、Lonza)、50μM MSX(カタログ:M5379、Sigma)を含有するCD CHO AGT(商標)培地(カタログ:12490-025、Gibco)に、トランスフェクトした細胞を移し、96ウェル細胞培養プレートに接種した。37℃、5%CO2で2~3週間静置した後、MSX圧力スクリーニングによるプレスクリーニングを介して細胞を含む22ウェルを得、24ウェル細胞培養プレート内で細胞を増殖させ、最後にフローサイトメトリー(FACS)分析を介してクローンNo. 1-T-21(CHO/Trop-2細胞)を選択した。クローンのスケールアップ培養を行い、細胞を凍結保存し、FACS検出に使用した。
【0084】
上記のELISAの結果によれば、選択した21個のハイブリドーマクローンの上清を100倍希釈し、構築したCHO細胞(CHO/Trop-2細胞)の懸濁液とともに37℃で30分間インキュベートした。以下のような対照を設定した:(1)陽性対照(PC):サシツズマブ、マウスIgG定常領域を有するバージョン、1μg/ml;(2)陰性対照(NC):無関係のマウス抗体、1μg/ml。細胞をPBSを用いて3回洗浄し、ヤギ抗マウスIgG-FITC(カタログ:F9006、Sigma)の1:200希釈物を細胞に加え、次いで、これを30分間インキュベートした。次いで、細胞をPBSを用いて3回洗浄し、細胞の平均蛍光強度(MFI)をフローサイトメーター(モデル番号B49007AD、SNAW31211、BECKMAN COULTER)によって測定して、各ハイブリドーマによって分泌された抗体がCHO細胞の表面上のTrop-2に結合することができるかどうかを確認した。結果を図1に示す。
【0085】
図1および細胞の状態に基づいて、クローンm1-1、m3-11、m4-3、m6-6、m7-13、m11-4、m12-2、m12-4、m13-2、m14-2、m16-7、m17-1、m19-5、m21-1およびm23-12を選択し、それらのハイブリドーマの上清をProAアフィニティークロマトグラフィーカラムを介して精製し、精製したマウス抗体の結合を再度確認した。抗体をそれぞれ13nMおよび0.66nMに希釈し、次いで、ヒトTrop-2を組換え発現するCHO細胞(CHO/Trop-2細胞)の懸濁液とともに37℃で30分間インキュベートした。以下のような対照を設定した:(1)陽性対照(PC):サシツズマブ、マウスIgG定常領域を有するバージョン、1μg/ml;(2)陰性対照(NC):無関係のマウス抗体、1μg/ml。細胞をPBSを用いて3回洗浄し、ヤギ抗マウスIgG-FITC(カタログ:F9006、Sigma)の1:200希釈物を細胞に加え、次いで、これを30分間インキュベートした。次いで、細胞をPBSを用いて3回洗浄し、細胞の平均蛍光強度(MFI)をフローサイトメーター(モデル番号B49007AD、SNAW31211、BECKMAN COULTER)によって測定して、各ハイブリドーマによって分泌された抗体がCHO細胞の表面上のTrop-2に結合することができるかどうかを確認した。図2に示すように、15個のクローンの上清由来の抗体はいずれも、CHO細胞の表面上のTrop-2によく結合した。
【0086】
その後のスクリーニングのための候補クローンとして、クローンm3-11、m4-3、m11-4、m17-1およびm23-12を選択した。
【0087】
3. 陽性ハイブリドーマクローンの交差反応性のELISAによるスクリーニング
各タンパク質のコーティング濃度をそれぞれ0.2および1μg/mlとした、それぞれ組換えヒトTrop-2-hisタンパク質(アクセッション番号:NP_002344.2、AA 1-274)、組換えカニクイザルTrop-2-hisタンパク質(アクセッション番号:UniProtKB-A0A2K5UE71、AA 1-272)および組換えマウスTrop-2-hisタンパク質(カタログ:50922-M08H、Beijing Yiqiao Shenzhou Science and Technology Co.,Ltd.)によって、プレートを4℃で一晩コーティングした。PBSを用いて3回洗浄し、プレートを、加えた5%BSA PBSを用いて37℃で60分間ブロッキングし、次いで、PBSTを用いて3回洗浄した。15個の精製したマウス抗体をPBSで1μg/mlに希釈した。以下のような対照を設定した:(1)陽性対照(PC):サシツズマブ(WHO Drug Information(Vol. 31,No. 1,2017)、SEQ ID NO:39およびSEQ ID NO:40)、マウスIgG定常領域を有するバージョン、1μg/ml;(2)陰性対照(NC):無関係のハイブリドーマ由来の抗体、1μg/ml;(3)ブランク対照:PBS。37℃で60分間インキュベートした後、プレートをPBSTを用いて4回洗浄した。HRP-ヤギ抗マウスIgG(Fcγ)(カタログ:115-035-071;Jackson ImmunoResearch)の1:5000希釈物をプレートに加え、37℃で30分間インキュベートした。その後、プレートをPBSTを用いて4回洗浄し、TMB基質を加え、37℃で10分間発色させた。次いで、2M HClを加えて反応を停止させた。450nmおよび630nm(参照波長として)での吸光度を読み取り、プレート内のウェルのA450nm~630nmの値を記録した。クローンm12-4、m17-1、m19-5およびm21-1由来の抗体がマウスTrop-2との交差反応性を示したことを除いて、他の抗体はマウスTrop-2との交差反応性を示さなかった。ハイブリドーマの抗体はいずれも、組換えヒトTrop-2および組換えカニクイザルTrop-2に特異的に結合することができた(図3)。
【0088】
実施例3 マウス抗ヒトTrop-2抗体の配列決定
抗ヒトTrop-2抗体を分泌するハイブリドーマm3-11、m4-3、m11-4、m17-1およびm23-12の増殖培養後、Mouse Monoclonal Antibody IgG Subclass Test Card(カタログ:A12403、VicNovo)およびMouse Monoclonal Antibody Light/Heavy Chain Test Card(カタログ:A12401、VicNovo)を試薬プロトコルに従って使用して、抗体のサブタイプを検出した。サブタイプを以下のように同定した:抗体は、重鎖についてはIgG1であり、軽鎖についてはκであった。結果により、m3-11、m4-3、m11-4、m17-1およびm23-12由来の抗体の遺伝子クローニングの基礎が提供された。
【0089】
説明書に記載された工程に従ってTRIzol(カタログ:15596026、Invitrogen)を使用して、ハイブリドーマ細胞m3-11、m4-3、m11-4、m17-1およびm23-12から全RNAを抽出した。M-MuLV逆転写酵素(カタログ:M0253S、NEB)を使用して、ハイブリドーマ細胞の全RNAをcDNAに逆転写した。縮重プライマー(Zhiwei DONG and Yan Wang,Antibody Engineering(2nd Edition),Peking University Medical Press,2001,pages 313-314を参照)およびPhusionキット(カタログ:E0553L、NEB)を使用して、抗体の軽鎖可変領域IgVL(κ)および重鎖可変領域VHの配列を増幅した。ゲル抽出キット(カタログ:AP-GX-250、Axygen)を用いてPCR産物を精製し、Tベクタークローニングキット(カタログ:ZC205、Beijing Zoman Biotechnology Co.,Ltd.)の説明書に従って、精製したPCR産物をTベクターにライゲーションし、次いで、得られたベクターでコンピテントな大腸菌細胞を形質転換し、増幅した。次いで、DNA配列決定のためにプラスミドを抽出して、モノクローナル抗体の可変領域配列を得た。
【0090】
配列決定の結果により以下が示された:
クローンm3-11由来のマウス抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(DNA)は、SEQ ID NO:41に示す通りであり、該ヌクレオチド配列から推定されるクローンm3-11由来のマウス抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示す通りである。クローンm3-11由来のマウス抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(DNA)は、SEQ ID NO:42に示す通りであり、該ヌクレオチド配列から推定されるクローンm3-11由来のマウス抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:18に示す通りである。
【0091】
クローンm4-3由来のマウス抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(DNA)は、SEQ ID NO:43に示す通りであり、該ヌクレオチド配列から推定されるクローンm4-3由来のマウス抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:2に示す通りである。クローンm4-3由来のマウス抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(DNA)は、SEQ ID NO:44に示す通りであり、該ヌクレオチド配列から推定されるクローンm4-3由来のマウス抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:19に示す通りである。
【0092】
クローンm11-4由来のマウス抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(DNA)は、SEQ ID NO:47に示す通りであり、該ヌクレオチド配列から推定されるクローンm11-4由来のマウス抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:5に示す通りである。クローンm11-4由来のマウス抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(DNA)は、SEQ ID NO:48に示す通りであり、該ヌクレオチド配列から推定されるクローンm11-4由来のマウス抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:24に示す通りである。
【0093】
クローンm17-1由来のマウス抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(DNA)は、SEQ ID NO:51に示す通りであり、該ヌクレオチド配列から推定されるクローンm17-1由来のマウス抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11に示す通りである。クローンm17-1由来のマウス抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(DNA)は、SEQ ID NO:52に示す通りであり、該ヌクレオチド配列から推定されるクローンm17-1由来のマウス抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:30に示す通りである。
【0094】
クローンm23-12由来のマウス抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(DNA)は、SEQ ID NO:53に示す通りであり、該ヌクレオチド配列から推定されるクローンm23-12由来のマウス抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:12に示す通りである。クローンm23-12由来のマウス抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(DNA)は、SEQ ID NO:54に示す通りであり、該ヌクレオチド配列から推定されるクローンm23-12由来のマウス抗体の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:31に示す通りである。
【0095】
実施例4 抗ヒトTrop-2キメラ抗体および対照抗体の調製
対照抗体(サシツズマブ)の軽鎖配列および重鎖配列全体を合成し、真核生物一過性発現ベクターにそれぞれクローニングして、対照抗体の軽鎖および重鎖を発現する発現プラスミドを得た。増幅のために発現プラスミドで大腸菌細胞を形質転換し、プラスミド回収によって、対照抗体の軽鎖および重鎖をそれぞれ含む多数のプラスミドを得た。次いで、組換え発現のために、製造者の説明書に従って、293フェクチン(カタログ:12347019、Gibco)トランスフェクション試薬を使用して、対照抗体の軽鎖および重鎖を含むプラスミドをHEK293細胞にそれぞれトランスフェクトした。細胞トランスフェクションの5~6日後、培養上清を採取し、ProAアフィニティークロマトグラフィーカラムを通して精製して、対照抗体を得た。対照抗体サシツズマブのアミノ酸配列は、WHO Drug Information(Vol. 31,No. 1,2017)から得た。重鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:39に示す通りであり、軽鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:40に示す通りである。
【0096】
PCRによって制限酵素の切断部位を導入した、上記のクローンから得られたマウス抗体3-11、4-3、11-4、17-1および23-12の軽鎖可変領域遺伝子および重鎖可変領域遺伝子を、真核生物一過性発現ベクターに保有されたヒト-κ軽鎖定常領域をコードする遺伝子の上流、およびヒトIgG1重鎖定常領域をコードする遺伝子の上流にそれぞれクローニングした。増幅のために、得られたヒト-マウスキメラ軽鎖を発現する発現プラスミド(pKN019-ch3-11L、pKN019-ch4-3L、pKN019-ch11-4L、pKN019-ch17-1L、pKN019-ch23-12L)と、ヒト-マウスキメラ重鎖を発現する発現プラスミド(pKN 041-ch3-11H、pKN019-ch4-3H、pKN019-ch11-4H、pKN019-ch17-1H、pKN019-ch23-12H)とで大腸菌細胞を形質転換し、プラスミド回収によって、ヒト-マウスキメラ軽鎖およびヒト-マウスキメラ重鎖をそれぞれ含む多数のプラスミドを得た。次いで、組換え発現のために、製造者の説明書に従って、293フェクチン(カタログ:12347019、Gibco)トランスフェクション試薬を使用して、キメラ抗体ch3-11、ch4-3、ch11-4、ch17-1およびch23-12の軽鎖および重鎖を含むプラスミドをHEK293細胞にそれぞれトランスフェクトした。細胞トランスフェクションの5~6日後、培養上清を採取し、ProAアフィニティークロマトグラフィーカラムを通して精製して、キメラ抗体ch3-11、ch4-3、ch11-4、ch17-1およびch23-12を得た。
【0097】
実施例5 組換えTrop-2タンパク質に対する抗ヒトTrop-2キメラ抗体の結合活性のELISAによる検出
プレートを0.2μg/mlの濃度の組換えヒトTrop-2-hisタンパク質(アクセッション番号:NP_002344.2、AA 1-274)によって4℃で一晩コーティングし、次いで、5%BSAを用いて37℃の恒温インキュベーター内で60分間ブロッキングした。キメラ抗体ch3-11、ch4-3、ch17-1、ch11-4およびch23-12ならびに対照抗体サシツズマブ(初期濃度2μg/mlの溶液を3倍段階希釈することによって得られた合計8種の濃度の段階希釈物)をプレートに加え、次いで、37℃の恒温インキュベーター内で60分間インキュベートした。PBSTを用いてプレートを4回洗浄し、HRP-抗ヒトFc(カタログ:109-035-098、Jackson ImmunoResearch)の1:5000希釈物をプレートに加え、45分間反応させた。TMB(カタログ:ME142、GalaxyBio、Beijing)基質を加え、15分間発色させた後、2M HClを加えて反応を停止させた。450nmおよび630nm(参照波長として)での吸光度を読み取り、プレート内のウェルのA450nm~630nmの値を記録した。
【0098】
組換えヒトTrop-2タンパク質に対するch3-11、ch4-3、ch17-1、ch11-4およびch23-12ならびに対照抗体サシツズマブの各々の結合能をELISAによって決定したところ、抗体の結合に関する50%効果濃度(EC50)値は、それぞれ0.3147nM、0.3195nM、0.3278nM、0.2366nM、0.4581nMおよび0.271nM(図4)であり、ほぼ同等であった。結果から、キメラ抗体ch3-11、ch4-3、ch17-1、ch11-4およびch23-12が組換えヒトTrop-2タンパク質に対して高い親和性を有したこと、および、マウス抗体3-11、4-3、11-4、17-1および23-12の配列が正確にクローニングされたことが示された。
【0099】
実施例6 CHO細胞の表面上の組換えヒトTrop-2タンパク質に対する抗ヒトTrop-2キメラ抗体の結合活性のFACSによる検出
ヒトTrop-2を組換え発現するCHO細胞(CHO/Trop-2細胞)の懸濁液をキメラ抗体ch3-11、ch4-3、ch17-1、ch11-4およびch23-12(30μg/mlおよび10μg/mlの濃度での希釈物、ならびに初期濃度5μg/mlの溶液を3倍段階希釈することによって得られた9種の濃度の段階希釈物、合計11の濃度)とともに37℃で30分間インキュベートした。以下のような対照を設定した:(1)陽性対照(PC):対照抗体サシツズマブ;(2)陰性対照(NC):IgG1アイソタイプ対照抗体NC-IgG1。細胞をPBSを用いて3回洗浄し、ヤギ抗ヒトIgG-FITC(カタログ:F9512、Sigma)の1:100希釈物を細胞に加え、次いで、これを30分間インキュベートした。次いで、細胞をPBSを用いて再度3回洗浄し、細胞の平均蛍光強度(MFI)をフローサイトメーター(モデルB49007AD、SNAW31211、BECKMAN COULTER)によって測定して、CHO細胞の表面上のヒトTrop-2に対するキメラ抗体の結合能を検出した。
【0100】
CHO細胞の表面上の組換えヒトTrop-2タンパク質に対するch3-11、ch4-3、ch17-1、ch11-4およびch23-12ならびに対照抗体サシツズマブの各々の結合能をFACSによって決定したところ、抗体の結合に関する50%効果濃度(EC50)値は、それぞれ0.993nM、3.326nM、2.918nM、1.154nM、2.748nMおよび2.316nMであった(図5)。対照抗体サシツズマブと比較して、ch3-11およびch11-4がより良好な結合活性を有し、ch4-3、ch17-1およびch23-12は同様の結合活性を有した。結果から、抗ヒトTrop-2キメラ抗体ch3-11、ch4-3、ch17-1、ch11-4およびch23-12が、CHO細胞の表面上の組換えヒトTrop-2タンパク質に効果的に結合することができることが示された。
【0101】
実施例7 細胞の表面上のTrop-2に対する抗ヒトTrop-2キメラ抗体の内在化活性
キメラ抗体ch3-11、ch4-3、ch11-4、ch23-12および陽性対照抗体サシツズマブをそれぞれ含むチューブに、BxPC-3ヒト膵癌細胞を5×105細胞/チューブの量で加え、各抗体を10μg/mlに希釈した。各抗体について4つの群を設定し(それぞれ1時間、3時間および5時間インキュベートした実験群、ならびに対照群)、各群に2つのチューブを含めた。実験群を37℃の電気加熱恒温インキュベーターに入れ、それぞれ1時間、3時間および5時間インキュベートし、次いで、氷上に置いた。対照群を陰性対照として常に氷上でインキュベートした。全試料のインキュベーションが完了すると、1,500rpmで4℃で3分間遠心分離を行い、上清を廃棄した。細胞ペレットを氷冷PBSを用いて1回洗浄し、二次抗体である抗ヒトIgG(Fc特異的)-FITC抗体(カタログ:F9512、Sigma)を細胞に加え、次いで、これを氷上で30分間インキュベートした。その後、遠心分離を1,500rpmで3分間行い、上清を廃棄した。細胞ペレットを氷冷PBSを用いて洗浄し、200μlの氷冷PBSに再懸濁した後、FACSを行って、平均蛍光強度(MFI)を検出した。内在化効率は、下記式によって計算した:
%MFI tx = 37℃でインキュベートした試料のMFI / 4℃でインキュベートした対照試料のMFI × 100;および
内在化率(%tx) = 100 - %MFI tx。
【0102】
結果を表1に示し、示されているように、ch4-3およびch23-12は、対照抗体サシツズマブと同様の内在化率を有したが、ch3-11およびch11-4では明らかな内在化は観察されなかった。
【0103】
(表1)細胞の表面上のTrop-2によって媒介される抗ヒトTrop-2キメラ抗体の内在化率
【0104】
実施例8 破壊に対する抗ヒトTrop-2キメラ抗体の不耐性の安定性
キメラ抗体ch3-11、ch4-3、ch11-4およびch23-12を、PBS、10%N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)(カタログ:ARK2190、Shanghai Feibo Chemical Technology Co.,Ltd.)を含有するPBS、および20%DMAを含有するPBS中に、それぞれ5mg/mlの濃度で、37℃で2時間置いた。その後、緩衝液交換に使用したPBSを含む限外濾過遠心管を使用して、試料からDMAを除去した。G3000WXL液体クロマトグラフィーカラム(カタログ:SEC-0046、Tosoh Corporation)を使用するサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(SEC-HPLC)によって、純度について試料を分析した。純度の分析結果を表2に示す。
【0105】
結果から、4つの抗体がいずれもDMAに十分に耐えることができ、純度が10%DMAではあまり明らかに低下せず、20%DMAではわずかに低下したことが示され、抗体がおそらくその後のADCコンジュゲーションプロセスに十分に耐えるであろうことが示唆された。
【0106】
(表2)DMA処理前後のHPLCによって分析した抗体の純度
【0107】
実施例9 抗ヒトTrop-2モノクローナル抗体のヒト化および組換え発現
1. マウスモノクローナル抗体23-12のヒト化
(1)CDRグラフティング
最初に、マウス抗体の重鎖配列を包括的に分析し、抗原結合の主な原因となる抗体の相補性決定領域(CDR)と、抗体の保存された三次元立体構造を支持する抗体のフレームワーク領域とを決定した。続いて、相同性アラインメントの結果に基づいて、ヒト抗体生殖系列ライブラリー(http://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/alignments2.php#VHEX)において最も類似するヒト鋳型を検索し、重鎖CDR3の配列特性と組み合わせて全配列BLASTの結果に従ってCDRグラフティングを行い、マウス抗体23-12の重鎖可変領域(VH)をフレームワーク領域内で完全にヒト化した。相同性アラインメントの結果に基づいて、ヒト抗体生殖系列ライブラリー(http://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/alignments2.php#VHEX)において最も類似するヒト鋳型を検索し、軽鎖CDR3の配列特性と組み合わせて全配列BLASTの結果に従ってCDRグラフティングを行い、マウス抗体23-12の軽鎖可変領域(VL)をフレームワーク領域内で高度にヒト化した。
【0108】
CDRグラフト抗体23-12のヒト化重鎖可変領域(h23-12_VH1)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:55およびSEQ ID NO:13に示される通りである。CDRグラフト抗体23-12のヒト化軽鎖可変領域(h23-12_VL1)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:56およびSEQ ID NO:32に示される通りである。
【0109】
(2)CDRにおける変異設計
マウス抗体23-12の配列特性に従って、CDRグラフトヒト化軽鎖可変領域およびCDRグラフトヒト化重鎖可変領域内のCDR配列の変異を設計した。変異部位を表3に示す。
【0110】
(表3)マウス抗体23-12のヒト化配列の設計
注記:Kabatナンバリングシステムに従って、アミノ酸残基位置をナンバリングした。
【0111】
2. ヒト化モノクローナル抗体23-12の組換え発現
CDRグラフト抗体23-12の軽鎖可変領域および重鎖可変領域(h23-12_VL1およびh23-12_VH1)遺伝子を全合成した。酵素消化によって、ヒトIgG1の重鎖定常領域のコード遺伝子の上流で真核生物一過性発現ベクターpKN041にヒト化h23-12_VH1遺伝子をクローニングした。重鎖定常領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:59およびSEQ ID NO:37に示す通りである。酵素消化によって、ヒトCκ軽鎖のコード遺伝子の上流で真核生物一過性発現ベクターpKN019にヒト化h23-12_VL1遺伝子をクローニングした。軽鎖定常領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:60およびSEQ ID NO:38に示す通りである。このように、CDRグラフト抗体23-12の軽鎖および重鎖を含む発現プラスミドを構築し、増幅のために、軽鎖(pKN019-h23-12L1)および重鎖(pKN019-h23-12H1)を発現する得られた発現プラスミドで大腸菌細胞を形質転換し、CDRグラフト抗体23-12の軽鎖h23-12L1および重鎖h23-12H1を発現するプラスミドを単離し、得た。
【0112】
表3に示す変異設計に従って、StarMut gene Site-directed Mutagenesis Kit(カタログ:T111-01、GenStar)を使用して、軽鎖(pKN019-h23-12L1)および重鎖(pKN019-h23-12H1)をそれぞれ発現する発現プラスミドで部位特異的変異誘発を行った。増幅のために変異プラスミドで大腸菌細胞を形質転換し、表3に示すマウス抗体23-12のヒト化配列に対応する、CDR変異を有するヒト化モノクローナル抗体の軽鎖および重鎖(h23-12H2...h23-12H7;h23-12L2...h23-12L7)を発現する発現プラスミドを得た。マウス抗体23-12の様々なヒト化重鎖配列およびヒト化軽鎖配列を含む全プラスミドを表4に示すように組み合わせ、組換え発現のために、製造者の説明書に従って、293フェクチン(カタログ:12347019、Gibco)トランスフェクション試薬を使用して、HEK293細胞にトランスフェクトした。
【0113】
(表4)マウス抗体23-12のヒト化重鎖配列およびヒト化軽鎖配列の組合せ
注記:表4は、マウス抗体23-12に由来する様々な重鎖および軽鎖の組合せから得られた抗体を示す。例えば、h23-12-1は、マウス抗体23-12のヒト化軽鎖h23-12L1およびヒト化重鎖h23-12H1から構成される抗体を指すなど。
【0114】
細胞トランスフェクションの5~6日後、培養上清をProAアフィニティークロマトグラフィーカラムを通して精製して、様々なヒト化抗体を得た。Fortebio製のOctet QKeシステム装置を使用して、抗ヒトIgG Fc捕捉(AHC)バイオセンサーによって抗体のFc断片を捕捉することを含むアッセイによって、得られた抗体の親和性を決定した。アッセイのために、各ヒト化抗体および対照抗体サシツズマブをPBSで4μg/mlに希釈し、AHCバイオセンサー(カタログ:18-0015、PALL)の表面に120秒間流した。組換えヒトTrop-2-hisタンパク質(アクセッション番号:NP_002344.2、AA 1-274)を移動相として使用し、その濃度は60nMであった。結合時間は100秒であり、解離時間は300秒であった。アッセイが終了すると、ソフトウェアを使用して、ブランク対照の応答値を差し引いたデータを1:1 Langmuir結合モデルにフィッティングし、次いで、抗原-抗体結合の動力学定数を計算した。
【0115】
組換えヒトTrop-2-hisタンパク質に対するマウス抗体23-12、キメラ抗体ch23-12および対照抗体サシツズマブの変異体の組合せから得られた抗体の親和性をForteBioによって決定した(表5)。
【0116】
(表5)組換えヒトTrop-2細胞外ドメインに対する抗体の親和性の検出結果
【0117】
5.02E-10MのKD値で測定された親和性を有する抗体h23-12-25を選択し、h23-12と命名し、これをその後の機能検証に使用した。抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:57およびSEQ ID NO:14に示される通りである。抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:58およびSEQ ID NO:33に示される通りである。
【0118】
3. マウスモノクローナル抗体4-3のヒト化
(1)CDRグラフティング
最初に、マウス抗体の重鎖配列を包括的に分析し、抗原結合の主な原因となる抗体の相補性決定領域(CDR)と、抗体の保存された三次元立体構造を支持する抗体のフレームワーク領域とを決定した。続いて、相同性アラインメントの結果に基づいて、ヒト抗体生殖系列ライブラリー(http://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/alignments2.php#VHEX)において最も類似するヒト鋳型を検索し、重鎖CDR3の配列特性と組み合わせて全配列BLASTの結果に従ってCDRグラフティングを行い、マウス抗体4-3の重鎖可変領域(VH)をフレームワーク領域内で完全にヒト化した。相同性アラインメントの結果に基づいて、ヒト抗体生殖系列ライブラリー(http://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/alignments2.php#VHEX)において最も類似するヒト鋳型を検索し、軽鎖CDR3の配列特性と組み合わせて全配列BLASTの結果に従ってCDRグラフティングを行い、マウス抗体4-3の軽鎖可変領域(VL)をフレームワーク領域内で完全にヒト化した。
【0119】
CDRグラフト抗体4-3のヒト化重鎖可変領域(h4-3_VH1)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:3に示される通りである。CDRグラフト抗体4-3のヒト化軽鎖可変領域(h4-3_VL1)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:46およびSEQ ID NO:20に示される通りである。
【0120】
(2)CDRにおける変異設計
マウス抗体4-3の配列特性に従って、CDRグラフトヒト化軽鎖可変領域およびCDRグラフトヒト化重鎖可変領域内のCDR配列の変異を設計した。変異部位を表6に示す。
【0121】
(表6)マウス抗体4-3のヒト化配列の設計
注記:Kabatナンバリングシステムに従って、アミノ酸残基位置をナンバリングした。
【0122】
4. ヒト化モノクローナル抗体4-3の組換え発現
CDRグラフト抗体4-3の軽鎖可変領域および重鎖可変領域(h4-3_VL1およびh4-3_VH1)遺伝子を全合成した。酵素消化によって、ヒトIgG1の重鎖定常領域のコード遺伝子の上流で真核生物一過性発現ベクターpKN041にヒト化h4-3_VH1遺伝子をクローニングした。重鎖定常領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:59およびSEQ ID NO:37に示す通りである。酵素消化によって、ヒトCκ軽鎖のコード遺伝子の上流で真核生物一過性発現ベクターpKN019にヒト化h4-3_VL1遺伝子をクローニングした。軽鎖定常領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:60およびSEQ ID NO:38に示す通りである。このように、CDRグラフト抗体4-3の軽鎖および重鎖を含む発現プラスミドを構築し、増幅のために、軽鎖(pKN019-h24-3L1)および重鎖(pKN019-h4-3H1)を発現する得られた発現プラスミドで大腸菌細胞を形質転換し、CDRグラフト抗体4-3の軽鎖h4-3L1および重鎖h4-3H1を発現するプラスミドを単離し、得た。
【0123】
表6に示す変異設計に従って、StarMut gene Site-directed Mutagenesis Kit(カタログ:T111-01、GenStar)を使用して、軽鎖(pKN019-h4-3L1)および重鎖(pKN019-h4-3H1)をそれぞれ発現する発現プラスミドで部位特異的変異誘発を行った。増幅のために変異プラスミドで大腸菌細胞を形質転換し、表6に示すマウス抗体4-3のヒト化配列に対応する、CDR変異を有するヒト化モノクローナル抗体の軽鎖および重鎖(h4-3H2…h4-3H4;h4-3L2…h4-3L5)を発現する発現プラスミドを得た。マウス抗体4-3の様々なヒト化重鎖配列およびヒト化軽鎖配列を含む全プラスミドを表7に示すように組み合わせ、組換え発現のために、製造者の説明書に従って、293フェクチン(カタログ:12347019、Gibco)トランスフェクション試薬を使用して、HEK293細胞にトランスフェクトした。
【0124】
(表7)マウス抗体4-3のヒト化重鎖配列およびヒト化軽鎖配列の組合せ
注記:表7は、マウス抗体4-3に由来する様々な重鎖および軽鎖の組合せに由来する抗体を示す。例えば、h4-3-1は、マウス抗体4-3のヒト化軽鎖h4-3L1およびヒト化重鎖h4-3H1から構成される抗体を指すなど。
【0125】
細胞トランスフェクションの5~6日後、培養上清をProAアフィニティークロマトグラフィーカラムを通して精製して、様々なヒト化抗体を得た。Fortebio製のOctet QKeシステム装置を使用して、抗ヒトIgG Fc捕捉(AHC)バイオセンサーによって抗体のFc断片を捕捉することを含むアッセイによって、得られた抗体の親和性を決定した。アッセイのために、各ヒト化抗体および対照抗体サシツズマブをPBSで4μg/mlに希釈し、AHCバイオセンサー(カタログ:18-0015、PALL)の表面に120秒間流した。組換えヒトTrop-2-hisタンパク質(アクセッション番号:NP_002344.2、AA 1-274)を移動相として使用し、その濃度は60nMであった。結合時間は100秒であり、解離時間は300秒であった。アッセイが終了すると、ソフトウェアを使用して、ブランク対照の応答値を差し引いたデータを1:1 Langmuir結合モデルにフィッティングし、次いで、抗原-抗体結合の動力学定数を計算した。
【0126】
組換えヒトTrop-2-hisタンパク質に対するマウス抗体23-12、キメラ抗体ch4-3および対照抗体サシツズマブの変異体の組合せから得られた抗体の親和性をForteBioによって決定した(表8)。
【0127】
(表8)組換えヒトTrop-2細胞外ドメインに対する抗体の親和性の検出結果
【0128】
3.04E-10MのKD値で測定された親和性を有する抗体h4-3-1を選択し、h4-3と命名し、これをその後の機能検証に使用した。抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:45およびSEQ ID NO:3に示される通りである。抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:46およびSEQ ID NO:20に示される通りである。
【0129】
5. マウスモノクローナル抗体11-4のヒト化
(1)CDRグラフティング
最初に、マウス抗体の重鎖配列を包括的に分析し、抗原結合の主な原因となる抗体の相補性決定領域(CDR)と、抗体の保存された三次元立体構造を支持する抗体のフレームワーク領域とを決定した。続いて、相同性アラインメントの結果に基づいて、ヒト抗体生殖系列ライブラリー(http://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/alignments2.php#VHEX)において最も類似するヒト鋳型を検索し、重鎖CDR3の配列特性と組み合わせて全配列BLASTの結果に従ってCDRグラフティングを行い、マウス抗体11-4の重鎖可変領域(VH)をフレームワーク領域内で完全にヒト化した。相同性アラインメントの結果に基づいて、ヒト抗体生殖系列ライブラリー(http://www2.mrc-lmb.cam.ac.uk/vbase/alignments2.php#VHEX)において最も類似するヒト鋳型を検索し、軽鎖CDR3の配列特性と組み合わせて全配列BLASTの結果に従ってCDRグラフティングを行い、マウス抗体11-4の軽鎖可変領域(VL)をフレームワーク領域内で完全にヒト化した。
【0130】
CDRグラフト抗体11-4のヒト化重鎖可変領域(h11-4_VH1)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:49およびSEQ ID NO:50に示される通りである。CDRグラフト抗体4-3のヒト化軽鎖可変領域(h11-4_VL1)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:50およびSEQ ID NO:25に示される通りである。
【0131】
(2)CDRにおける変異設計
マウス抗体11-4の配列特性に従って、CDRグラフトヒト化軽鎖可変領域およびCDRグラフトヒト化重鎖可変領域内のCDR配列の変異を設計した。変異部位を表9に示す。
【0132】
(表9)マウス抗体11-4のヒト化配列の設計
注記:Kabatナンバリングシステムに従って、アミノ酸残基位置をナンバリングした。
【0133】
6. ヒト化モノクローナル抗体11-4の組換え発現
CDRグラフト抗体11-4の軽鎖可変領域および重鎖可変領域(h11-4_VL1およびh11-4_VH1)遺伝子を全合成した。酵素消化によって、ヒトIgG1の重鎖定常領域のコード遺伝子の上流で真核生物一過性発現ベクターpKN041にヒト化h11-4_VH1遺伝子をクローニングした。重鎖定常領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:59およびSEQ ID NO:37に示す通りである。酵素消化によって、ヒトCκ軽鎖のコード遺伝子の上流で真核生物一過性発現ベクターpKN019にヒト化h11-4_VL1遺伝子をクローニングした。軽鎖定常領域のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれSEQ ID NO:60およびSEQ ID NO:38に示す通りである。このように、CDRグラフト抗体11-4の軽鎖および重鎖を含む発現プラスミドを構築し、増幅のために、軽鎖(pKN019-h11-4L1)および重鎖(pKN019-h11-4H1)を発現する得られた発現プラスミドで大腸菌細胞を形質転換し、CDRグラフト抗体11-4の軽鎖h11-4L1および重鎖h11-4H1を発現するプラスミドを単離し、得た。
【0134】
表9に示す変異設計に従って、StarMut gene Site-directed Mutagenesis Kit(カタログ:T111-01、GenStar)を使用して、軽鎖(pKN019-h11-4L1)および重鎖(pKN019-h11-4H1)をそれぞれ発現する発現プラスミドで部位特異的変異誘発を行った。増幅のために変異プラスミドで大腸菌細胞を形質転換し、表9に示すマウス抗体4-3のヒト化配列に対応する、CDR変異を有するヒト化モノクローナル抗体の軽鎖および重鎖(h11-4H2…h11-4H7;h11-4L2…h11-4L5)を発現する発現プラスミド。マウス抗体11-4の様々なヒト化重鎖配列およびヒト化軽鎖配列を含む全プラスミドを表10に示すように組み合わせ、組換え発現のために、製造者の説明書に従って、293フェクチン(カタログ:12347019、Gibco)トランスフェクション試薬を使用して、HEK293細胞にトランスフェクトした。
【0135】
(表10)マウス抗体11-4のヒト化重鎖配列およびヒト化軽鎖配列の組合せ
注記:表10は、マウス抗体11-4に由来する様々な重鎖および軽鎖の組合せから得られた抗体を示す。例えば、h11-4-1は、マウス抗体11-4のヒト化軽鎖h11-4L1およびヒト化重鎖h11-4H1から構成される抗体を指すなど。
【0136】
細胞トランスフェクションの5~6日後、培養上清をProAアフィニティークロマトグラフィーカラムを通して精製して、様々なヒト化抗体を得た。Fortebio製のOctet QKeシステム装置を使用して、抗ヒトIgG Fc捕捉(AHC)バイオセンサーによって抗体のFc断片を捕捉することを含むアッセイによって、得られた抗体の親和性を決定した。アッセイのために、各ヒト化抗体および対照抗体サシツズマブをPBSで4μg/mlに希釈し、AHCバイオセンサー(カタログ:18-0015、PALL)の表面に120秒間流した。組換えヒトTrop-2-hisタンパク質(アクセッション番号:NP_002344.2、AA 1-274)を移動相として使用し、その濃度は60nMであった。結合時間は100秒であり、解離時間は300秒であった。アッセイが終了すると、ソフトウェアを使用して、ブランク対照の応答値を差し引いたデータを1:1 Langmuir結合モデルにフィッティングし、次いで、抗原-抗体結合の動力学定数を計算した。
【0137】
組換えヒトTrop-2-hisタンパク質に対するマウス抗体11-4、キメラ抗体ch11-4および対照抗体サシツズマブの変異体の組合せから得られた抗体の親和性をForteBioによって決定した(表11)。
【0138】
(表11)組換えヒトTrop-2細胞外ドメインに対する抗体の親和性の検出結果
【0139】
実施例10 Trop-2に対する抗Trop-2ヒト化抗体の種特異的結合のELISAによる検出
各タンパク質のコーティング濃度をそれぞれ1μg/mlとした、それぞれ組換えヒトTrop-2-hisタンパク質(アクセッション番号:NP_002344.2、AA 1-274)、組換えカニクイザルTrop-2-hisタンパク質(アクセッション番号:UniProtKB-A0A2K5UE71、AA 1-272)および組換えマウスTrop-2-hisタンパク質(カタログ:50922-M08H、Beijing Yiqiao Shenzhou Science and Technology Co.,Ltd.)によって、プレートを4℃で一晩コーティングした。PBSを用いて3回洗浄し、プレートを、加えた5%BSA PBSを用いて37℃で60分間ブロッキングし、次いで、PBSTを用いて3回洗浄した。異なる濃度のh23-12(初期濃度10μg/mlの溶液を3倍段階希釈することによって得られた14種の濃度の段階希釈物)、h4-3(初期濃度3μg/mlの溶液を3倍段階希釈することによって得られた12種の濃度の段階希釈物)およびサシツズマブ(初期濃度3μg/mlの溶液を3倍段階希釈することによって得られた12種の濃度の段階希釈物)をプレートに加え、各濃度を並列ウェルに提供した。プレートを37℃で60分間インキュベートし、次いで、PBSTを用いて4回洗浄した。HRP抗ヒトFc(カタログ:109-035-098、Jackson ImmunoResearch)の1:5000希釈物をプレートに加え、37℃で30分間インキュベートした。その後、プレートをPBSTを用いて4回洗浄し、TMB基質を加え、37℃で10分間発色させた。次いで、2M HClを加えて反応を停止させた。450nmおよび630nm(参照波長として)での吸光度を読み取り、プレート内のウェルのA450nm~630nmの値を記録した。
【0140】
実験結果から、h23-12、h4-3および対照抗体サシツズマブは、組換えヒトTrop-2およびカニクイザルTrop-2に特異的に結合することができるが、マウスTrop-2に対する結合活性を有しないことが示され(図6および表12)、これにより、ヒト化抗体の薬理学的実験および毒性学的実験の基礎が提供された。
【0141】
(表12)異なる種のTrop-2に対する抗Trop-2ヒト化抗体の結合のEC50
【0142】
実施例11 抗ヒトTrop-2ヒト化抗体の親和性の分析
Fortebio製のOctet QKeシステム装置を使用して、抗ヒトIgG Fc捕捉(AHC)バイオセンサーによって抗体のFc断片を捕捉することを含むアッセイによって、抗体の親和性を決定した。
【0143】
アッセイのために、各抗体(h23-12、h4-3および対照抗体サシツズマブ)をPBSで4μg/mlに希釈し、AHCバイオセンサー(カタログ:18-0015、PALL)の表面に120秒間流した。組換えヒトTrop-2-hisタンパク質(アクセッション番号:NP_002344.2、AA 1-274)を移動相として使用した。Trop-2-hisタンパク質を、様々な抗体に対応する以下の濃度で使用した:h23-12の場合、Trop-2を23、30、45および75nMの濃度で使用した。h4-3の場合、23、30、45および60nMの濃度で使用した。サシツズマブの場合、23、30、45および75nMの濃度で使用した。結合時間は100秒であり、解離時間は300秒であった。アッセイが終了すると、ソフトウェアを使用して、ブランク対照の応答値を差し引いたデータを1:1 Langmuir結合モデルにフィッティングし、次いで、抗原-抗体結合の動力学定数を計算した。
【0144】
h23-12、h4-3および対照抗体サシツズマブと組換えヒトTrop-2タンパク質との反応曲線を図7に示す。曲線をフィッティングし、親和性を計算したところ、h23-12は6.40E-10MのKD値で測定される親和性を有し、h4-3は5.45E-10MのKD値で測定される親和性を有し、サシツズマブは9.41E-10MのKD値で測定される親和性を有することが示された。動力学的パラメーターを表13に詳細に示す。結果から、h23-12およびh4-3が、ヒトTrop-2に対して、対照抗体サシツズマブと同等の高い親和性を有し、h23-12が、サシツズマブよりも優れた解離値を有することが示された。
【0145】
(表13)組換えヒトTrop-2細胞外ドメインに対する抗ヒトTrop-2ヒト化抗体の親和性の検出結果
【0146】
実施例12 細胞の表面上のTrop-2に結合する抗ヒトTrop-2ヒト化抗体の内在化活性
ヒトTrop-2を天然に発現するNCI-N87ヒト胃癌細胞を2×103細胞/ウェルの密度で96ウェル細胞培養プレートに接種し、24時間培養した。細胞をPBSを用いて1回洗浄し、上清を廃棄した。Mix-n-Stain(商標)CF(商標)488A(カタログ:MX488AS100、Sigma)によって標識したh23-12および対照抗体サシツズマブをRPMI 1640(10%FBSを含有)を用いて15μg/mlに希釈し、NCI-N87細胞に加えた。プレートを2つの群に分け、一方の群を37℃の電気加熱恒温インキュベーターに入れ、一方の群を陰性対照として4℃の冷蔵庫に入れた。陰性対照としてのプレートを30分間インキュベートし、PBSを用いて3回洗浄し、蛍光顕微鏡を用いて観察および写真撮影した。実験群のプレートを37℃で5時間インキュベートし、次いで、蛍光顕微鏡を用いて観察および写真撮影した。
【0147】
実験結果(図8)から、ヒト化h23-12および対照抗体サシツズマブの両方が、Trop-2媒介エンドサイトーシスによってエンドサイトーシスされ、細胞質内にスポットとして分布され得ることが示され、抗体ヒト化後に内在化活性が維持されることが示唆された。
【0148】
実施例7に記載される手順を使用して、FACSによって、3時間の時点でのBxPC細胞上の内在化率を測定した。ヒト化後の内在化率がサシツズマブの内在化率とほぼ同等であることを示唆する結果を表14に示す。
【0149】
(表14)BxPC細胞の表面上のTrop-2によって媒介される、抗ヒトTrop-2抗体の内在化率
【0150】
実施例13 単回用量を投与したBalb/Cヌードマウスを対象とした薬物動態試験
健康な雌の5週齢Balb/Cヌードマウスを各群2匹ずつ群分けした。マウスに単回用量のh23-12(15mg/kg)を1回腹腔内注射し、血清をそれぞれ5時間、25時間、48時間、96時間、168時間および240時間の時点で収集し、-20℃で保存した。対照群を設定し、対照群のマウスに、比較のためにh23-12と同じ投与量の対照抗体サシツズマブを腹腔内注射した。抗体の薬物動態学的特性を観察した。
【0151】
健康な雌の5週齢Balb/Cヌードマウスを各群4匹ずつ群分けした。マウスに単回用量のh4-3(20mg/kg)を1回腹腔内注射し、血清をそれぞれ4時間、8時間、24時間、48時間、96時間、144時間、192時間および240時間の時点で収集し、-20℃で保存した。抗体の薬物動態学的特性を観察した。
【0152】
被覆ヒトTrop-2-his(アクセッション番号:NP_002344.2、AA 1-274)を使用して、ELISAによって血清中の薬物濃度を測定した。その間に、標準曲線を確立した。OD値(X軸)に対して標準抗体の濃度(Y軸)をプロットすることによって直線曲線をフィッティングし、検出した血清のOD値を式に代入することによって血清中の抗体の含有量を求め、式T1/2=|0.693/k|に従って抗体薬物の半減期T1/2を計算した。
【0153】
薬物濃度対時間曲線の結果から、h23-12、h4-3および対照抗体サシツズマブがいずれも比較的長い半減期を有しかつ同等の薬物代謝半減期を示したことが示され(パネル9A、パネル9Bおよび表15)、これにより、抗体が、インビボで明らかな不活性化現象を有さず良好な構造安定性を有することが示唆された。抗体の代謝は、モノクローナル抗体薬物の基本的な特性を満たし、T1/2は約170時間である。
【0154】
(表15)単回用量を投与したヌードマウスにおける抗Trop-2抗体の薬物動態パラメーター
【0155】
実施例14 抗Trop-2裸抗体およびそのADCの親和性の分析
Fortebio製のOctet QKeシステム装置を使用して、抗ヒトIgG Fc捕捉(AHC)バイオセンサーによって抗体のFc断片を捕捉することを含むアッセイによって、抗体の親和性を決定した。
【0156】
最初に、ADC薬物に使用するSN38によって標識した抗体を調製した。20当量のジチオスレイトール(DTT)を使用して、抗体をリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0±0.5中で2時間還元し、還元された抗体を限外濾過遠心管を使用して精製して過剰のDTTを除去し、リン酸ナトリウム緩衝液、pH7.0±0.5に交換した。共溶媒として7~15%(v/v)DMSOを使用して、還元された抗体をCL2A-SN-38とともに周囲温度で30分間インキュベートした。最後に、過剰な小分子を限外濾過遠心管を通して除去した。得られた抗体-薬物コンジュゲートの分子量を質量分析によって分析し、抗体-薬物比(DAR)値を計算した。1つの抗体に7.5個のSN38分子が連結していることが最終的に確認された。
【0157】
アッセイのために、上記のように調製したSN38標識抗体:h23-12-SN38、ch4-3-SN38、ch11-4-SN38および陽性対照抗体サシツズマブ-SN38、ならびに裸抗体h23-12、ch4-3、ch11-4および陽性対照抗体サシツズマブをPBSで4μg/mlに希釈し、AHCバイオセンサー(カタログ:18-0015、PALL)の表面に120秒間流した。組換えヒトTrop-2-hisタンパク質(アクセッション番号:NP_002344.2、AA 1-274)を移動相として使用し、その濃度は60nMであった。結合時間は300秒であり、解離時間は300秒であった。アッセイが終了すると、ソフトウェアを使用して、ブランク対照の応答値を差し引いたデータを1:1 Langmuir結合モデルにフィッティングし、次いで、抗原-抗体結合の動力学定数を計算した。
【0158】
表16に示すように、抗体をSN38によって標識し、それによってADCを形成した場合、抗体が裸である場合の親和性と比較して、抗体の親和性の顕著な変化は観察されなかった。
【0159】
(表16)抗Trop-2裸抗体およびそのADCの親和性の検出結果
【0160】
実施例15 BXPC-3細胞によって媒介される抗Trop-2裸抗体およびそのADCの内在化のFACSによる検出。
実施例7に記載の手順に従って、BXPC-3ヒト膵癌細胞およびNCI-N87ヒト胃癌細胞に対する内在化率をそれぞれ検出した。検出する抗体には、ADC薬物、すなわち、上記のように調製したSN38標識抗体:h23-12-SN38、ch4-3-SN38、ch11-4-SN38、陽性対照抗体サシツズマブ-SN38、ならびに裸抗体h32-12、ch4-3、ch11-4、陽性対照抗体サシツズマブおよび陰性アイソタイプ対照抗体NC-IgG1を含め、各々10μg/mlとした。
【0161】
表17および表18に示すように、裸のh23-12と、SN38によって標識され、それによってADCを形成するh23-12とは、同様の内在化率を有し、これは、対照抗体の内在化率と類似していた。ch4-3およびch11-4は、ADCを形成するためにSN38によって標識された場合、それらが裸である場合よりも高い内在化率を有した。
【0162】
(表17)NCI-N87細胞の表面上のTrop-2によって媒介される、抗ヒトTrop-2抗体の内在化率
【0163】
(表18)BXPC-3細胞の表面上のTrop-2によって媒介される、抗ヒトTrop-2抗体の内在化率
【0164】
実施例16 抗Trop-2-ADCの細胞殺傷活性の検出
BxPC-3ヒト膵癌細胞を96ウェル細胞培養プレートに2×103/ウェルで接種し、37℃、5%CO2のインキュベーター内で一晩培養した。その後、異なる濃度のSN38標識抗Trop-2抗体の試料(各濃度を2つの並列ウェルに提供した)を表19に従ってプレートに加え、細胞のみを含むブランクウェル(いかなる処理も行わず)を設定した。細胞を37℃、5%CO2のインキュベーター内で3時間インキュベートし、次いで、培養培地を新鮮な完全培地と交換した。翌日、処理を前日のように繰り返した。連続4日間の処理後、Cell Counting Kit-8(CCK-8)を使用して、SN38標識抗Trop-2抗体の細胞殺傷活性を検出した。
【0165】
(表19)抗Trop-2-ADCおよびその実際の濃度
【0166】
結果から、各抗Trop-2 ADCが標的細胞を特異的に殺傷し、対照抗体サシツズマブ-SN38からの殺傷活性に有意差がないことが示された(図10および表20)。
【0167】
(表20)細胞増殖に対する抗Trop-2 ADCの阻害活性
【0168】
実施例17 N87皮下異種移植腫瘍モデルを対象とした抗Trop-2-ADCの薬力学的評価
5週齢の雌BALB/cヌードマウスに、3×106個のヒト胃癌細胞(NCI-N87)を皮下接種し、腫瘍が約150mm3に増殖した際に、マウス6匹/群で無作為に群分けした。各群の群分けならびに投与量および投与頻度を表21に示す。各群に週2回静脈内注射し、同時に各マウスの腫瘍体積および体重を測定した。マウスの体重が15%を超えて減少した場合、または動物の腫瘍体積が3000mm3を超えた場合、または動物群全体の平均腫瘍体積が2000mm3を超えた場合、実験を中止し、マウスを安楽死させた。
【0169】
(表21)ヌードマウスの群分けならびに投与量および投与頻度
【0170】
図11および図12に示すように、抗Trop-2-ADCは腫瘍増殖に対して用量依存的阻害効果を有し、高投与量(10mg/kg)のADC間で効果の差は観察されなかった。ADC内の小分子SN38の顕著な毒性作用は観察されず、各実験群の動物の体重は、対照との有意差を伴わず着実に増加した。
【0171】
実施例18 SKOV3皮下異種移植腫瘍モデルを対象とした抗Trop-2抗体および抗CD47抗体の同時投与の薬力学的評価
5週齢の雌BALB/cヌードマウスの各々の右側腹部に、3×106個のSKOV3ヒト卵巣癌細胞を皮下接種し、腫瘍が約150mm3に増殖した際に、マウス6匹/群で無作為に群分けした。各群の群分けならびに投与量および投与頻度を表22に示す。各群に週2回、合計5回静脈内注射し、同時に各マウスの腫瘍体積および体重を測定した。マウスの状態を観察し、最後の投与後、マウスを安楽死させた。使用した抗CD47抗体は、特許出願公報US2015/0183874、すなわち、ヒト化5F9、バージョン2に記載されている。
【0172】
(表22)ヌードマウスの群分けならびに投与量および投与頻度
【0173】
図13および図14に示すように、h23-12+抗CD47抗体の同時投与群は、陰性対照hIgG4と比較して腫瘍に対して一定の阻害活性を示し、抗CD47抗体群およびh23-12群は、腫瘍に対して有意な阻害効果を示さなかった。したがって、本開示の抗Trop-2抗体、および抗CD47抗体は、マクロファージによる腫瘍細胞の食作用を相乗的に促進し、腫瘍に対して相乗的な阻害効果を有することができることが分かる。
【0174】
実施例19 N87皮下異種移植腫瘍モデルを対象とした抗Trop-2-ADCの薬力学的評価
5週齢の雌BALB/cヌードマウスに、3×106個のヒト胃癌細胞(NCI-N87)を皮下接種し、腫瘍が約100mm3に増殖した際に、マウス6匹/群で無作為に群分けした。各群の群分けならびに投与量および投与頻度を表23に示す。各群に週2回静脈内注射し、同時に各マウスの腫瘍体積および体重を測定した。マウスの体重が15%を超えて減少した場合、または動物の腫瘍体積が3000mm3を超えた場合、または動物群全体の平均腫瘍体積が2000mm3を超えた場合、実験を中止し、マウスを安楽死させた。
【0175】
(表23)ヌードマウスの群分けならびに投与量および投与頻度
【0176】
図15および図16に示すように、抗Trop-2-ADCは、腫瘍増殖に対して用量依存的阻害効果を有し、5mg/kgの投与量のADC ch3-11-SN38およびch11-4-SN38は、サシツズマブ-SN38よりもわずかに良好な効果を有した。ADC内の小分子SN38の顕著な毒性作用は観察されなかった。
【0177】
本発明の態様の上記の説明は、本発明を限定することを意図するものではなく、当業者であれば、本発明の趣旨から逸脱することなく、本発明に様々な変更および修正を加えることができ、それらは添付の特許請求の範囲内に含まれるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2022-07-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)免疫原として組換えTrop-2タンパク質を用いて動物を免疫することによって、ハイブリドーマ細胞を調製する工程;
(2)被覆抗原として組換えTrop-2タンパク質を使用して、抗Trop-2モノクローナル抗体を分泌する陽性ハイブリドーマ細胞をスクリーニングする工程;
(3)細胞膜表面上のTrop-2について陽性の細胞を使用して、工程(2)で得られた陽性ハイブリドーマ細胞を再スクリーニングする工程
を含む、抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法であって、
抗Trop-2モノクローナル抗体が、Trop-2細胞外ドメインの天然エピトープを特異的に認識してそれに結合する方法。
【請求項2】
工程(3)の細胞膜表面上のTrop-2について陽性の細胞が、工程(1)でハイブリドーマ細胞を調製する際に免疫した動物と同じ種に由来する組換え動物細胞である、請求項1記載の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法。
【請求項3】
工程(1)において、ハイブリドーマ細胞が、マウスを免疫することによって調製され、工程(3)において、細胞膜表面上のTrop-2について陽性の細胞が、外因性Trop-2タンパク質を発現する組換えマウス細胞である、請求項2記載の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法。
【請求項4】
工程(2)において、抗Trop-2モノクローナル抗体を分泌する陽性ハイブリドーマ細胞が、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用してスクリーニングされ;工程(3)において、再スクリーニングする工程が、Trop-2細胞外ドメインの天然エピトープを特異的に認識してそれに結合する抗体を分泌するハイブリドーマを得るために、フローサイトメトリー(FACS)分析によって行われる、請求項1記載の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法。
【請求項5】
工程(4):
Trop-2細胞外ドメインの天然エピトープを特異的に認識してそれに結合する抗体を同定する工程
をさらに含み、同定する工程が、親和性同定および特異性同定を含む、請求項1記載の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法。
【請求項6】
工程(4)において、ヒトTrop-2およびカニクイザルTrop-2に対して特異的結合能を有するがマウスTrop-2に対しては有しないモノクローナル抗体が選択される、請求項5記載の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項記載の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法によって得られた、抗Trop-2モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項8】
前記モノクローナル抗体が、1×10-8M未満、5×10-9M未満、1×10-10M未満または5×10-10M未満のKD値で測定される親和性で組換えヒトTrop-2細胞外ドメインに結合する、請求項7記載の抗Trop-2モノクローナル抗体またはその断片。
【請求項9】
以下からなる群より選択されるCDRの組合せ(HCDR1、HCDR2、HCDR3;およびLCDR1、LCDR2、LCDR3)を含む重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む、抗体またはその断片:
【請求項10】
重鎖可変領域が、SEQ ID NO:1~17のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、もしくは示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:18~36のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、もしくは示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項9記載の抗体またはその断片。
【請求項11】
前記抗体またはその断片によって含まれる重鎖可変領域および軽鎖可変領域が、以下のうちの1つを含む、請求項9または10記載の抗体またはその断片:
(1)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(2)SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:19に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:19に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(3)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(4)SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(5)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(6)SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(7)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(8)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(9)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(10)SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(11)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(12)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(13)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(14)SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(15)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(16)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(17)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(18)SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(19)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(20)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(21)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(22)SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(23)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(24)SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:30に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:30に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(25)SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:31に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:31に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(26)SEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(27)SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(28)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(29)SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(30)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(31)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(32)SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(33)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに
(34)SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列。
【請求項12】
任意の形態、例えば、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、ナノボディ、完全もしくは部分的にヒト化された抗体、またはキメラ抗体などであり、あるいは、半抗体、または半抗体の抗原結合断片、例えば、scFv、BsFv、dsFv、(dsFv)2、Fab、Fab’、F(ab’)2またはFvであり、
好ましくは、ヒトまたはマウスの定常領域、好ましくはヒトまたはマウスの軽鎖定常領域(CL)および/または重鎖定常領域(CH)をさらに含み、
より好ましくは、IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgEからなる群より選択される重鎖定常領域、ならびに/またはκ型もしくはλ型軽鎖定常領域を含む、
請求項1~11のいずれか一項記載の抗体またはその断片。
【請求項13】
前記抗体が、モノクローナル抗体、好ましくはマウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体であり、好ましくは、前記モノクローナル抗体の重鎖定常領域がIgG1またはIgG4サブタイプであり、前記モノクローナル抗体の軽鎖定常領域がκ型であり、
好ましくは、前記モノクローナル抗体の重鎖定常領域が、SEQ ID NO:37に示されるアミノ酸配列、または示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記モノクローナル抗体の軽鎖定常領域が、SEQ ID NO:38に示されるアミノ酸配列、または示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
請求項1~12のいずれか一項記載の抗体またはその断片。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその断片をコードするまたは前記抗体もしくはその断片に含まれる重鎖CDR、軽鎖CDR、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項15】
請求項14記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項16】
請求項14記載の核酸分子および/もしくは請求項15記載のベクターを含むか、または請求項14記載の核酸分子および/もしくは請求項15記載のベクターによって形質転換もしくはトランスフェクトされた、宿主細胞。
【請求項17】
請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその断片、請求項14記載の核酸分子、請求項15記載のベクター、または請求項16記載の宿主細胞、および任意で、薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項18】
薬学的組成物が、抗体ベースのさらなる薬物を含み、
好ましくは、前記抗体ベースのさらなる薬物が、マクロファージ関連免疫チェックポイントに対する抗体、より好ましくは抗CD47抗体である、
請求項17記載の薬学的組成物。
【請求項19】
医薬品の製造における、請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその断片、請求項14記載の核酸分子、請求項15記載のベクター、請求項16記載の宿主細胞、および/または請求項17もしくは18記載の薬学的組成物の使用であって、
好ましくは、前記医薬品が、Trop-2高発現癌を治療するための医薬品であり、
好ましくは、Trop-2高発現癌が、胃癌、膵癌、腸癌、卵巣癌、扁平上皮肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、尿路上皮癌、トリプルネガティブ乳癌または子宮頸癌である、
使用。
【請求項20】
請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその断片、請求項14記載の核酸分子、請求項15記載のベクター、請求項16記載の宿主細胞、または請求項17もしくは18記載の薬学的組成物を含む、キット。
【請求項21】
請求項1~13のいずれか一項記載の抗体またはその断片を含む融合タンパク質。
【請求項22】
請求項1~13のいずれか一項記載の抗体またはその断片と、それにコンジュゲートされた薬物とを含むコンジュゲートであって、該薬物が細胞傷害剤である、コンジュゲート。
【請求項23】
前記コンジュゲートが、式:
(請求項1~13のいずれか一項記載の抗体またはその断片)-(リンカー)-(細胞傷害剤)
によって表される抗体薬物コンジュゲート(ADC)であり、
好ましくは、該細胞傷害剤が、チューブリン阻害剤(例えば、パクリタキセル、ドセタキセルなど)またはDNA複製阻害剤(例えば、イリノテカンまたはその活性代謝物SN-38など)である、
請求項22記載のコンジュゲート。
【請求項24】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)の製造における、請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその断片、請求項14記載の核酸分子、請求項15記載のベクター、または請求項16記載の宿主細胞の使用であって、
好ましくは、ADCが、Trop-2高発現癌を治療するためのADCであり、
好ましくは、Trop-2高発現癌が、胃癌、膵癌、腸癌、卵巣癌、扁平上皮肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、尿路上皮癌、トリプルネガティブ乳癌または子宮頸癌である、
使用。
【請求項25】
その必要がある対象に、請求項1~13のいずれか一項記載の抗体もしくはその断片、請求項14記載の核酸分子、請求項15記載のベクター、請求項16記載の宿主細胞、請求項17もしくは18記載の薬学的組成物、請求項21記載の融合タンパク質、または請求項22もしくは23記載のコンジュゲート、および任意で、他の薬物または手段を投与する工程を含む、疾患を予防および/または治療する方法であって、
好ましくは、該疾患がTrop-2高発現癌であり、
好ましくは、Trop-2高発現癌が、胃癌、膵癌、腸癌、卵巣癌、扁平上皮肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、尿路上皮癌、トリプルネガティブ乳癌または子宮頸癌である、
前記方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
別の局面では、本開示は、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む抗体またはその断片を提供し、重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)は、以下からなる群より選択されるCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3;およびLCDR1、LCDR2、LCDR3)の組合せを含む。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0074
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0074】
さらに、本開示の抗体は、良好なインビボ治療効果を有することが実証されている。本開示の抗体を用いてADCを調製したところ、抗Trop2-ADCは、腫瘍増殖に対する用量依存的阻害効果を有し、高投与量(10mg/kg)では、各ADCの治療効果は、対照抗体サシツズマブの治療効果と同等であった。ADC内の小分子SN38の明らかな毒性作用は観察されず、各実験群の動物の体重は、対照との明らかな差を伴わず着実に増加した。
[本発明1001]
(1)免疫原として組換えTrop-2タンパク質を用いて動物を免疫することによって、ハイブリドーマ細胞を調製する工程;
(2)被覆抗原として組換えTrop-2タンパク質を使用して、抗Trop-2モノクローナル抗体を分泌する陽性ハイブリドーマ細胞をスクリーニングする工程;
(3)細胞膜表面上のTrop-2について陽性の細胞を使用して、工程(2)で得られた陽性ハイブリドーマ細胞を再スクリーニングする工程
を含む、抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法であって、
抗Trop-2モノクローナル抗体が、Trop-2細胞外ドメインの天然エピトープを特異的に認識してそれに結合する方法。
[本発明1002]
工程(3)の細胞膜表面上のTrop-2について陽性の細胞が、工程(1)でハイブリドーマ細胞を調製する際に免疫した動物と同じ種に由来する組換え動物細胞である、本発明1001の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法。
[本発明1003]
工程(1)において、ハイブリドーマ細胞が、マウスを免疫することによって調製され、工程(3)において、細胞膜表面上のTrop-2について陽性の細胞が、外因性Trop-2タンパク質を発現する組換えマウス細胞である、本発明1002の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法。
[本発明1004]
工程(2)において、抗Trop-2モノクローナル抗体を分泌する陽性ハイブリドーマ細胞が、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用してスクリーニングされ;工程(3)において、再スクリーニングする工程が、Trop-2細胞外ドメインの天然エピトープを特異的に認識してそれに結合する抗体を分泌するハイブリドーマを得るために、フローサイトメトリー(FACS)分析によって行われる、本発明1001の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法。
[本発明1005]
工程(4):
Trop-2細胞外ドメインの天然エピトープを特異的に認識してそれに結合する抗体を同定する工程
をさらに含み、同定する工程が、親和性同定および特異性同定を含む、本発明1001の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法。
[本発明1006]
工程(4)において、ヒトTrop-2およびカニクイザルTrop-2に対して特異的結合能を有するがマウスTrop-2に対しては有しないモノクローナル抗体が選択される、本発明1005の抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法。
[本発明1007]
本発明1001~1006のいずれかの抗Trop-2モノクローナル抗体を調製するための方法によって得られた、抗Trop-2モノクローナル抗体またはその断片。
[本発明1008]
前記モノクローナル抗体が、1×10 -8 M未満、5×10 -9 M未満、1×10 -10 M未満または5×10 -10 M未満のKD値で測定される親和性で組換えヒトTrop-2細胞外ドメインに結合する、本発明1007の抗Trop-2モノクローナル抗体またはその断片。
[本発明1009]
以下からなる群より選択されるCDRの組合せ(HCDR1、HCDR2、HCDR3;およびLCDR1、LCDR2、LCDR3)を含む重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)を含む、抗体またはその断片:

[本発明1010]
重鎖可変領域が、SEQ ID NO:1~17のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、もしくは示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、および/または軽鎖可変領域が、SEQ ID NO:18~36のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、もしくは示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本発明1009の抗体またはその断片。
[本発明1011]
前記抗体またはその断片によって含まれる重鎖可変領域および軽鎖可変領域が、以下のうちの1つを含む、本発明1009または1010の抗体またはその断片:
(1)SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(2)SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:19に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:19に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(3)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(4)SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(5)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(6)SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:21に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(7)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(8)SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(9)SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(10)SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(11)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(12)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(13)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(14)SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(15)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(16)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(17)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(18)SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(19)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(20)SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(21)SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(22)SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(23)SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:29に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(24)SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:30に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:30に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(25)SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:31に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:31に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(26)SEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(27)SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:32に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(28)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(29)SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:33に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(30)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:34に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(31)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:35に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(32)SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;
(33)SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;ならびに
(34)SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列;およびSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NO:36に示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列。
[本発明1012]
任意の形態、例えば、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、ダイアボディ、単一ドメイン抗体、ナノボディ、完全もしくは部分的にヒト化された抗体、またはキメラ抗体などであり、あるいは、半抗体、または半抗体の抗原結合断片、例えば、scFv、BsFv、dsFv、(dsFv) 2 、Fab、Fab’、F(ab’) 2 またはFvであり、
好ましくは、ヒトまたはマウスの定常領域、好ましくはヒトまたはマウスの軽鎖定常領域(CL)および/または重鎖定常領域(CH)をさらに含み、
より好ましくは、IgG、IgA、IgM、IgDおよびIgEからなる群より選択される重鎖定常領域、ならびに/またはκ型もしくはλ型軽鎖定常領域を含む、
本発明1001~1011のいずれかの抗体またはその断片。
[本発明1013]
前記抗体が、モノクローナル抗体、好ましくはマウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体またはヒト化モノクローナル抗体であり、好ましくは、前記モノクローナル抗体の重鎖定常領域がIgG1またはIgG4サブタイプであり、前記モノクローナル抗体の軽鎖定常領域がκ型であり、
好ましくは、前記モノクローナル抗体の重鎖定常領域が、SEQ ID NO:37に示されるアミノ酸配列、または示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくは、前記モノクローナル抗体の軽鎖定常領域が、SEQ ID NO:38に示されるアミノ酸配列、または示される前記アミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、
本発明1001~1012のいずれかの抗体またはその断片。
[本発明1014]
本発明1001~1013のいずれかの抗体もしくはその断片をコードするまたは前記抗体もしくはその断片に含まれる重鎖CDR、軽鎖CDR、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、重鎖もしくは軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
[本発明1015]
本発明1014の核酸分子を含むベクター。
[本発明1016]
本発明1014の核酸分子および/もしくは本発明1015のベクターを含むか、または本発明1014の核酸分子および/もしくは本発明1015のベクターによって形質転換もしくはトランスフェクトされた、宿主細胞。
[本発明1017]
本発明1001~1013のいずれかの抗体もしくはその断片、本発明1014の核酸分子、本発明1015のベクター、または本発明1016の宿主細胞、および任意で、薬学的に許容される賦形剤を含む、薬学的組成物。
[本発明1018]
薬学的組成物が、抗体ベースのさらなる薬物を含み、
好ましくは、前記抗体ベースのさらなる薬物が、マクロファージ関連免疫チェックポイントに対する抗体、より好ましくは抗CD47抗体である、
本発明1017の薬学的組成物。
[本発明1019]
医薬品の製造における、本発明1001~1013のいずれかの抗体もしくはその断片、本発明1014の核酸分子、本発明1015のベクター、本発明1016の宿主細胞、および/または本発明1017もしくは1018の薬学的組成物の使用であって、
好ましくは、前記医薬品が、Trop-2高発現癌を治療するための医薬品であり、
好ましくは、Trop-2高発現癌が、胃癌、膵癌、腸癌、卵巣癌、扁平上皮肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、尿路上皮癌、トリプルネガティブ乳癌または子宮頸癌である、
使用。
[本発明1020]
本発明1001~1013のいずれかの抗体もしくはその断片、本発明1014の核酸分子、本発明1015のベクター、本発明1016の宿主細胞、または本発明1017もしくは1018の薬学的組成物を含む、キット。
[本発明1021]
本発明1001~1013のいずれかの抗体またはその断片を含む融合タンパク質。
[本発明1022]
本発明1001~1013のいずれかの抗体またはその断片と、それにコンジュゲートされた薬物とを含むコンジュゲートであって、該薬物が細胞傷害剤である、コンジュゲート。
[本発明1023]
前記コンジュゲートが、式:
(本発明1001~1013のいずれかの抗体またはその断片)-(リンカー)-(細胞傷害剤)
によって表される抗体薬物コンジュゲート(ADC)であり、
好ましくは、該細胞傷害剤が、チューブリン阻害剤(例えば、パクリタキセル、ドセタキセルなど)またはDNA複製阻害剤(例えば、イリノテカンまたはその活性代謝物SN-38など)である、
本発明1022のコンジュゲート。
[本発明1024]
抗体薬物コンジュゲート(ADC)の製造における、本発明1001~1013のいずれかの抗体もしくはその断片、本発明1014の核酸分子、本発明1015のベクター、または本発明1016の宿主細胞の使用であって、
好ましくは、ADCが、Trop-2高発現癌を治療するためのADCであり、
好ましくは、Trop-2高発現癌が、胃癌、膵癌、腸癌、卵巣癌、扁平上皮肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、尿路上皮癌、トリプルネガティブ乳癌または子宮頸癌である、
使用。
[本発明1025]
その必要がある対象に、本発明1001~1013のいずれかの抗体もしくはその断片、本発明1014の核酸分子、本発明1015のベクター、本発明1016の宿主細胞、本発明1017もしくは1018の薬学的組成物、本発明1021の融合タンパク質、または本発明1022もしくは1023のコンジュゲート、および任意で、他の薬物または手段を投与する工程を含む、疾患を予防および/または治療する方法であって、
好ましくは、該疾患がTrop-2高発現癌であり、
好ましくは、Trop-2高発現癌が、胃癌、膵癌、腸癌、卵巣癌、扁平上皮肺癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、尿路上皮癌、トリプルネガティブ乳癌または子宮頸癌である、
前記方法。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2022553645000001.app
【国際調査報告】