(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】改良されたウリカーゼ及びそれを使用した高尿酸血症の治療方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/53 20060101AFI20221219BHJP
C12N 9/06 20060101ALI20221219BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20221219BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20221219BHJP
A61K 38/44 20060101ALI20221219BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20221219BHJP
【FI】
C12N15/53 ZNA
C12N9/06 A
C12N15/62 Z
A61P19/06
A61K38/44
A61K47/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521317
(86)(22)【出願日】2020-10-10
(85)【翻訳文提出日】2022-06-06
(86)【国際出願番号】 CN2020120133
(87)【国際公開番号】W WO2021068925
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】201910964325.4
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】320000850
【氏名又は名称】上海君▲実▼生物医▲薬▼科技股▲分▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】519301559
【氏名又は名称】▲蘇▼州君盟生物医▲薬▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄国▲鋒▼
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼朋
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼思
(72)【発明者】
【氏名】李▲鉄▼
(72)【発明者】
【氏名】李瑞▲勝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼静
(72)【発明者】
【氏名】周岳▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼洪川
(72)【発明者】
【氏名】姚盛
【テーマコード(参考)】
4B050
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4B050CC04
4B050DD02
4B050GG03
4B050HH01
4B050LL01
4C076AA11
4C076BB13
4C076CC17
4C076EE59
4C076FF67
4C084AA01
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA37
4C084DC23
4C084MA66
4C084NA06
4C084ZC311
4C084ZC312
(57)【要約】
改良されたウリカーゼ、その高尿酸血症の治療の方法及び対応する医薬組成物を提供する。
【課題】この改良されたウリカーゼは、SEQ ID NO:1に対して少なくとも約90%の同一性を有するとともに、SEQ ID NO:1ではないアミノ酸配列を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するとともに、SEQ ID NO:1ではないアミノ酸配列を含む、ウリカーゼ。
【請求項2】
SEQ ID NO:1の配列に比べ、前記ウリカーゼのアミノ酸配列に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21又は22個のアミノ酸残基の追加、欠失又は置換を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のウリカーゼ。
【請求項3】
前記ウリカーゼは、N末端及び/又はC末端で切断されて酵素活性を保持したSEQ ID NO:1の断片であり、
好ましくは、前記切断は、N末端の17個以内のアミノ酸残基の切断及び/又はC末端の5個以内のアミノ酸残基の切断であり、任意選択的に、N末端が切断された後、8個以内のアミノ酸残基を追加する、
ことを特徴とする請求項2に記載のウリカーゼ。
【請求項4】
前記切断は、N末端でMTATAETSTGTKVVLGQという17個のアミノ酸を切断することであり、
前記追加は、MTNIILGK又はMANIILGKのアミノ酸配列を追加することであり、又は
前記切断は、C末端でIAGFCという5個のアミノ酸を切断することである、
ことを特徴とする請求項3に記載のウリカーゼ。
【請求項5】
SEQ ID NO:1に比べ、前記ウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1の第175位、第178位及び第258位に対応する位置の少なくとも1つの位置に置換変異を有し、
好ましくは、第175位の置換後のアミノ酸残基は、プロリン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン又はメチオニンであり、
好ましくは、第178位の置換後のアミノ酸残基は、グルタミン酸又はアスパラギン酸であり、
好ましくは、第258位の置換後のアミノ酸残基は、セリン、グルタミン酸、トレオニン、チロシン、アスパラギン又はグルタミンである、
ことを特徴とする請求項1に記載のウリカーゼ。
【請求項6】
前記ウリカーゼ配列に変異によって1~6個の表面露出したシステイン残基が導入され、且つ任意選択的に、第205位及び/又は第208位に置換変異が存在し、位置番号はSEQ ID NO:1又は3に対するものである、ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項に記載のウリカーゼ。
【請求項7】
前記ウリカーゼは、第35位、第82位、第142位、第194位、第216位、第287位及び第288位のうちの1~6個の位置にシステイン残基を含み、位置番号はSEQ ID NO:1又は3に対するものであり、
好ましくは、前記ウリカーゼは、第35位、第82位、第142位、第194位、第216位、第287位及び第288位のうちの2つの位置にシステイン残基を含み、位置番号はSEQ ID NO:1又は3に対するものであり、
より好ましくは、前記ウリカーゼは、第142位と第216位、第35位と第288位、第35位と第142位、第216位と第288位、第35位と第194位、又は第82位と第287位の2つの位置にシステイン残基を含み、位置番号はSEQ ID NO:1又は3に対するものである、
ことを特徴とする請求項6に記載のウリカーゼ。
【請求項8】
前記ウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3、4、5、6、7又は8に示され、又はそのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の配列の第142位と第216位、第35位と第288位、第35位と第142位、第216位と第288位、第35位と第194位、又は第82位と第287位の2つの位置にシステインを含むアミノ酸配列であり、且つ任意選択的に、SEQ ID NO:3の第205位及び/又は第208位に置換変異が存在し、好ましくは、前記置換変異は、SEQ ID NO:3の第205位のSがD又はEに置換され、第208位のGがR、K又はSに置換されることである、ことを特徴とする請求項1に記載のウリカーゼ。
【請求項9】
前記ウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の配列の第142位と第216位、第35位と第288位、第35位と第142位、第216位と第288位、第35位と第194位、又は第82位と第287位の2つの位置にシステインを含むアミノ酸配列であり、且つ任意選択的に、S205D及び/又はG208Rの置換変異を含む、ことを特徴とする請求項8に記載のウリカーゼ。
【請求項10】
前記ウリカーゼのアミノ酸配列は、
SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第142位と第216位のアミノ酸残基は何れもCであり、又は
SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第288位のアミノ酸残基は何れもCであり、又は
SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第142位のアミノ酸残基は何れもCであり、又は
SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第216位と第288位のアミノ酸残基は何れもCであり、又は
SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第194位のアミノ酸残基は何れもCであり、又は
SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第82位と第287位のアミノ酸残基は何れもCであり、又は
SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第142位と第216位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRであり、又は
SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第288位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRであり、又は
SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第142位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRであり、又は
SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第216位と第288位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRであり、又は
SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第194位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRであり、又は
SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第82位と第287位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRである、
ことを特徴とする請求項9に記載のウリカーゼ。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載のウリカーゼと、当該ウリカーゼと共有結合又は融合発現して合成したポリマーとを含有する、コンジュゲート。
【請求項12】
前記ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ホスホリルコリンポリマー、反復ペプチド又は「X-TEN」配列のポリマーと炭水化物に基づくポリマーから選ばれる、ことを特徴とする請求項11に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
前記ポリマーは、前記ウリカーゼのN末端及び/又はC末端と融合発現するか、又は前記ウリカーゼに存在するシステイン残基によって共有結合する、ことを特徴とする請求項12に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
請求項1~10の何れか1項に記載のウリカーゼ又は請求項11~13の何れか1項に記載のコンジュゲート、及び薬学的に許容されるベクターを含有する、医薬組成物。
【請求項15】
哺乳動物の体液と組織中の尿酸レベルを低下させるか又は高尿酸血症を治療する医薬品の製造における、請求項1~10の何れか1項に記載のウリカーゼ、請求項11~13の何れか1項に記載のコンジュゲート又は請求項14に記載の医薬組成物の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良されたウリカーゼ及び/又はPEG-ウリカーゼ、及びそれを使用した高尿酸血症の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
痛風と高尿酸血症は、現在人々の健康に危害を及ぼすよく見られる疾患であり、統計によると、高尿酸血症の発症率は既に人口の10%に達している。痛風は、血中尿酸レベルが高すぎることによって尿酸塩結晶が関節に沈殿する急性関節炎である。人々の食生活と生活習慣の変化に伴い、高タンパク質と高プリン食品の摂取が増加し、痛風患者の数は年々増加している一方、一部の悪性腫瘍、特に白血病やリンパ腫の患者において、放射線療法や化学療法後に短期間で大量の尿酸が腎臓に沈着し、急性腎不全を引き起こす。ここ数十年以来、多くの科学者は、他の種に由来するウリカーゼをヒトの高尿酸血症関連疾患の治療に使用することに力を入れてきた。但し、異種タンパク質を人体に適用する際の最大な問題の1つは、タンパク質の免疫原性によって引き起こされる抗タンパク質反応とアレルギー反応である。その後、科学者はポリエチレングリコール(PEG)を用いてタンパク質に共有結合修飾を行い、それによって、タンパク質の免疫原性を低下させ、タンパク質の溶解度を増加させ、タンパク質の半減期を延長できることを証明した。
【0003】
現在、臨床的に承認されたウリカーゼ類医薬品は2種類あり、その1つはKrystexxaであり、もう1つはElitekである。Krystexxa(ペグロティカーゼ(pegloticase))は、通常の治療法で治療しにくい成人患者の慢性痛風を治療するための承認されたペグ化ウリカーゼであり、それが高度ペグ化豚とヒヒウリカーゼ配列のキメラタンパク質であり、静脈内注射により2時間以内に投与することができる。Krystexxaは、アナフィラキシー反応及び輸液反応に対するブラックボックス警告を含有する。一方、Elitek(ラスブリカーゼ)は、白血病、リンパ腫及び固形悪性腫瘍に罹患した小児及び成人患者の血漿尿酸レベルを初期管理するために使用されるように指示される、修飾された組換えアスペルギルス・フラブスウリカーゼであり、これらの患者は、腫瘍溶解及びその後の血漿尿酸の上昇が予想される抗癌治療を受ける。但し、Elitekは、体内で16~21時間の半減期を有し、静脈内注入により毎日投与する必要がある。同様に、Elitekもアナフィラキシー反応と溶血に対するブラックボックス警告を有する。
【0004】
上記状況に鑑み、当分野では、高尿酸血症を治療するために、より安全で、より便利で、且つより低い免疫原性を有する医薬品を開発することが切望されている。
【発明の概要】
【0005】
従来技術におけるウリカーゼ類医薬品の既知の副作用を克服し、より安全で、より便利で、より低い免疫原性を有するウリカーゼ類医薬品を得るために、本発明に記載の技術的解決手段が検討される。
【0006】
本発明の第1態様は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するとともに、SEQ ID NO:1ではないアミノ酸配列を含む、改良されたウリカーゼの配列を提供する。
【0007】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と約1個~約22個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21又は22個のアミノ酸)の差異を有する。
【0008】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と22個のアミノ酸の差異を有する。
【0009】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と21個のアミノ酸の差異を有する。
【0010】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と20個のアミノ酸の差異を有する。
【0011】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と19個のアミノ酸の差異を有する。
【0012】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と18個のアミノ酸の差異を有する。
【0013】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と17個のアミノ酸の差異を有する。
【0014】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と16個のアミノ酸の差異を有する。
【0015】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と15個のアミノ酸の差異を有する。
【0016】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と14個のアミノ酸の差異を有する。
【0017】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と13個のアミノ酸の差異を有する。
【0018】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と12個のアミノ酸の差異を有する。
【0019】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と11個のアミノ酸の差異を有する。
【0020】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と10個のアミノ酸の差異を有する。
【0021】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と9個のアミノ酸の差異を有する。
【0022】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と8個のアミノ酸の差異を有する。
【0023】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と7個のアミノ酸の差異を有する。
【0024】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と6個のアミノ酸の差異を有する。
【0025】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と5個のアミノ酸の差異を有する。
【0026】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と4個のアミノ酸の差異を有する。
【0027】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と3個のアミノ酸の差異を有する。
【0028】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と2個のアミノ酸の差異を有する。
【0029】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、SEQ ID NO:1と1個のアミノ酸の差異を有する。
【0030】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、アミノ酸配列に1個又は複数個のアミノ酸残基の追加、欠失又は置換を含むことにより、SEQ ID NO:1と異なることができる。
【0031】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、N末端及び/又はC末端で切断されて酵素活性を保持したSEQ ID NO:1の断片である。
【0032】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のSEQ ID NO:1の断片は、N末端で1~17個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17)が切断された断片である。
【0033】
幾つかの好ましい実施形態において、本発明に記載のウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のN末端で17個のアミノ酸が切断された配列である。
【0034】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のN末端で約1~17個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17)が切断され、且つ約1~8個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8)に置換された配列である。
【0035】
幾つかの好ましい実施形態において、本発明に記載のウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のN末端で17個のアミノ酸が切断され、且つ約1~8個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8)に置換された配列である。
【0036】
幾つかの好ましい実施形態において、本発明に記載のウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のN末端で17個のアミノ酸が切断され、且つ8個のアミノ酸に置換された配列である。
【0037】
幾つかの具体的な実施形態において、本発明に記載のウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のN末端で17個のアミノ酸(MTATAETSTGTKVVLGQ)が切断され、且つMTNIILGK又はMANIILGKアミノ酸に置換された配列である。
【0038】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のC末端で約1~5個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4又は5)が切断された配列である。
【0039】
幾つかの好ましい実施形態において、本発明に記載のウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のC末端で5個のアミノ酸が切断された配列である。
【0040】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のN末端で約1~17個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17)が切断され、且つC末端で約1~5個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4又は5)が切断された配列である。
【0041】
幾つかの具体的な実施形態において、本発明に記載のウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のN末端で17個のアミノ酸が切断され、且つC末端で5個のアミノ酸が切断された配列である。
【0042】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のN末端で約1~17個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17)が切断され、約1~8個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8)に置換され、且つC末端で約1~5個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4又は5)が切断された配列である。
【0043】
幾つかの好ましい実施形態において、本発明に記載のウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のN末端で17個のアミノ酸が切断され、8個のアミノ酸に置換され、且つC末端で5個のアミノ酸が切断された配列である。
【0044】
幾つかの具体的な実施形態において、本発明に記載のウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のN末端で17個のアミノ酸(MTATAETSTGTKVVLGQ)が切断され、M(T/A)NIILGKアミノ酸に置換され、且つC末端で5個のアミノ酸が切断された配列である。
【0045】
別の実施形態において、前記切断されたウリカーゼは、約1~約13個の更なるアミノ酸変化(例えば、追加、欠失又は置換)を含有する。
【0046】
幾つかの実施形態において、タンパク質の半減期を延長し、及び/又は免疫原性を軽減するために、ウリカーゼの配列は、合成又は生物合成のポリマーと融合発現又は共有結合する。本発明に用いられる例示的なポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ホスホリルコリンポリマー、反復ペプチド又は「X-TEN」配列のポリマー、又は炭水化物に基づくヒドロキシエチルデンプンのようなポリマーである。
【0047】
幾つかの実施形態において、タンパク質の半減期を延長し、及び/又は免疫原性を軽減するために、合成又は生物合成のポリマーは、ウリカーゼのN末端及び/又はC末端と融合発現する。
【0048】
幾つかの実施形態において、共有結合に用いられる1~6(例えば、1、2、3、4、5又は6)個の表面露出部位を産生するために、ウリカーゼ配列を修飾する。例えば、幾つかの実施形態において、ウリカーゼ配列は、1、2、3、4、5又は6個の表面接触可能なシステイン残基を含有するように修飾され、ポリマー(例えば、PEG)はこれらのシステイン残基と共有結合することができる。
【0049】
幾つかの実施形態において、薬物動態学的挙動を変えることができるポリマー又はポリペプチドの部位特異的共有結合を形成するために、追加、欠失及び/又は置換によって天然に存在するウリカーゼ配列の所望の位置に新しいシステインを導入する。
【0050】
幾つかの実施形態において、どのアミノ酸残基が表面したかを確定するために、ウリカーゼの結晶構造を分析することによってCys置換に用いられる適切なアミノ酸の選択を指導する。その後、1個又は複数個の表面露出したアミノ酸を選択して、それをシステインに修飾する。
【0051】
幾つかの実施形態において、最終的に修飾されたウリカーゼ配列におけるこれらのシステインは、表面露出した位置にあり、このように、これらのシステインをペグ化させることができる。
【0052】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、約1~約7個のシステイン残基、特に約1、2、3、4、5、6又は7個のシステイン残基を含む。幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、約2個のシステイン残基を含む。
【0053】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、1個又は複数個のシステイン残基に付加するPEG部分を含む。システイン残基の数と位置に対する制御は、PEG付加部位の数及び抱合体の最適性質(生物と物理的属性及び酵素活性を含む)を制御することによって達成可能である。
【0054】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、第35位、第194位のうちの少なくとも1つの位置にシステインを含み、位置番号はSEQ ID NO:1に対するものである。
【0055】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、第35位、第194位のうちの少なくとも1つの位置にシステインを含み、位置番号はSEQ ID NO:3に対するものである。
【0056】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、第35位、第82位、第142位、第194位、第216位、第287位と第288位のうちの少なくとも1つの位置にシステインを含み、位置番号はSEQ ID NO:1に対するものである。
【0057】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、第35位、第82位、第142位、第194位、第216位、第287位と第288位のうちの少なくとも1つの位置にシステインを含み、位置番号はSEQ ID NO:3に対するものである。幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、第142位と第216位、第35位と第288位、第35位と第142位、第216位と第288位、第35位と第194位、又は第82位と第287位の2つの位置にシステインを含み、位置番号はSEQ ID NO:3に対するものである。
【0058】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、第142位と第216位、第35位と第288位、第35位と第142位、第216位と第288位、第35位と第194位、又は第82位と第287位の2つの位置にシステインを含み、且つ第205位及び/又は第208位に置換変異が存在し、位置番号はSEQ ID NO:3に対するものである。
【0059】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、第142位と第216位、第35位と第288位、第35位と第142位、第216位と第288位、第35位と第194位、又は第82位と第287位の2つの位置にシステインを含み、且つ第205位にS205D又はS205Eの置換変異が存在し、及び/又は第208位にG208R、G208K又はG208Sの置換変異が存在し、位置番号はSEQ ID NO:3に対するものである。
【0060】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼは、第142位と第216位、第35位と第288位、第35位と第142位、第216位と第288位、第35位と第194位、又は第82位と第287位の2つの位置にシステインを含み、且つS205D及び/又はG208Rの置換変異が存在し、位置番号はSEQ ID NO:3に対するものである。
【0061】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3、4、5、6、7又は8に示される。
【0062】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第142位と第216位のアミノ酸残基は何れもCである。
【0063】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第288位のアミノ酸残基は何れもCである。
【0064】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第142位のアミノ酸残基は何れもCである。
【0065】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第216位と第288位のアミノ酸残基は何れもCである。
【0066】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第194位のアミノ酸残基は何れもCである。
【0067】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第82位と第287位のアミノ酸残基は何れもCである。
【0068】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第142位と第216位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRである。
【0069】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第288位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRである。
【0070】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第142位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRである。
【0071】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第216位と第288位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRである。
【0072】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第194位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRである。
【0073】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第82位と第287位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRである。
【0074】
本発明の第2様態は、本発明に記載のウリカーゼを含む医薬組成物、及び本発明に記載の組成物を利用して哺乳動物の体液中の尿酸レベルを低下させる方法を提供する。好ましい実施形態として、前記医薬組成物は、上記に言及された任意のPEG-ウリカーゼ、及び薬学的に許容されるベクターを含む。
【0075】
本発明の第3様態は、哺乳動物の体液と組織中の尿酸レベルを低下させる方法を提供する。好ましい実施形態として、前記方法は、哺乳動物に、尿酸レベルを効果的に低下させることができる量である有効量のPEG-ウリカーゼを投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】各種のウリカーゼの酵素比活性の比較である。
【
図3】各種のウリカーゼの熱安定性研究である。3a:タンパク質分子の4℃でのPR-HPLC分析、3b:タンパク質分子の4℃でのSEC-HPLC分析。
【
図4】PEG化修飾されたウリカーゼの酵素活性動態学的研究評価である。
【
図5】PEG化修飾されたウリカーゼの熱安定性評価である。
【
図6】PEG化修飾されたウリカーゼの体内薬力評価である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本発明は、改良されたウリカーゼ配列に関し、ここで複数の異なるウリカーゼ配列を含む。前記ウリカーゼは、SEQ ID NO:1に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するとともに、SEQ ID NO:1ではないアミノ酸配列を含むことができる。本発明は、更に、上記改良されたウリカーゼのPEG化物及び上記PEG-ウリカーゼの医薬組成物を提供する。これらの改良されたウリカーゼ又はPEG-ウリカーゼは、
(1)タンパク質の熱安定性、溶解性及び酵素活性を向上させ、
(2)分子間の高重合を避け、
(3)PEGが、存在可能な抗原エピトープをカバーし、存在している免疫原性を低下させ、血液における半減期を延ばし、
(4)野生型ウリカーゼに比べ、類似する又はより高い酵素活性を有する。
【0078】
用語
本発明を理解しやすくために、以下、一部の技術用語を具体的に定義する。本明細書の他の部分で明確に説明しない限り、本明細書で使用される技術用語は、何れも当業者に通常理解される意味を有する。
【0079】
尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ)
尿酸オキシダーゼ(ウリカーゼ)は尿酸の酸化を触媒する酵素であり、酸化生成物はより溶解しやすいアラントインである。アラントインはより排泄しやすいプリン代謝物に属する。これは、4つの同じ34KDaサブユニットで構成されるホモ四量体酵素であり、この酵素は一連の反応を開始させる開始剤として、尿酸をより溶解しやすく排泄しやすい生成物(アラントイン)に転換し、即ち、ウリカーゼは、尿酸(UA)とO2とH2Oの反応を触媒して5-ヒドロキシイソ尿酸(HIU)を形成し、H2O2を放出する。HIUは、非酵素加水分解によって2-オキソ-4-ヒドロキシ-5-ウレイドイミダゾリン(OHCU)を生成し、その後、自発的に脱炭酸してラセミ体のアラントインを形成する不安定な生成物である。機能性ウリカーゼを含有する種に2種類の更なる酵素(HIU加水分解酵素とOHCU脱炭酸酵素)を発現させ、この2種類の更なる酵素はこれらの反応をより速く触媒して(S)-アラントインを生成することができる。機能性ウリカーゼは、例えば、古細菌、細菌及び真核生物などの様々な生体において発見された。但し、ヒト及び一部の霊長類動物ではウリカーゼは発現しない。これは、コドン33の位置、コドン187の位置でのナンセンス変異、及びイントロン2におけるスプライス受容部位での変異に起因するものである。要するに、ヒトにおけるウリカーゼ発現の欠如により高い全身UAレベルをもたらし、痛風や腫瘍溶解症候群などの高尿酸血症の発生をもたらす場合もある。保守的な推定によると、中国の既存の高尿酸血症患者は1.2億に達し、高尿酸血症は既に高血圧、高血糖、高血脂に次ぐ4番目に多くなっている。痛風は、血清UAレベルが体液中のUA溶解度を超える炎症性関節炎であると定義され、6.8mg/dLを超える血清UAレベルは、組織中のUA結晶の形成をもたらし、これによって急性炎症反応を引き起こす。痛風は、慢性的な痛み、仕事や家庭生活の機能障害及び健康に関連する生活品質の低下などを引き起こす。腫瘍溶解症候群(TLS)とは、腫瘍細胞が短期間に大量に溶解して細胞内の代謝産物を放出することによって引き起こされる、高尿酸血症、高カリウム血症、高リン血症、低カルシウム血症と急性腎不全を主な症状とする臨床症候群を指す。
【0080】
ポリエチレングリコール(PEG)
それは、構造H-(O-CH2-CH2)n-OHを有するポリエーテル化合物である。タンパク質の共有結合に最も一般的に使用されるPEG試薬は、構造CH3-O-(CH2-CH2-O)n-Xを有するモノメトキシポリ(エチレングリコール)誘導体であり、ここで、Xは線形リンカー及び反応性官能基(線形PEG)を含有し、nは110~18200の整数である。場合によって、Xは分岐要素を含有することができ、これによってPEG試薬が1つの反応性官能基と複数のPEGポリマー鎖(分岐PEG)又は複数の反応性官能基とPEGポリマー鎖(フォーク状PEG)を含有するようになる。PEG試薬は、約5、10、20、40、60と80KDaの総PEGポリマーを含むことができる。
【0081】
幾つかの実施例において、チオール反応性PEGは、少なくとも1つのシステインのチオール基と反応するために用いることができる。例えば、PEG-マレイミド、PEG-オルトピリジルジスルフィド、PEG-ビニルスルホン及びPEG-ヨードアセトアミドを使用することができる。他の実施形態において、チオール反応性PEGは、単一のチオール反応性部分を有する直鎖又は分岐鎖構造であってもよく、又は、各PEG分子が2個以上の反応性基を有するフォーク構造であってもよい。
【0082】
当分野において、ウリカーゼにおける1つ又は複数のシステインをPEG化可能な方法は多く知られている。全て本発明に用いることができる。
【0083】
「有効量」は、医学的な障害の症状又は徴候を改善又は予防するために十分な量を意味する。有効量は、診断を可能又は容易にするために十分な量をも意味する。特定の患者又は獣医対象に対する有効量は、例えば治療される病勢、患者の全体的な健康状況、投与の方法や経路、用量や副作用の重症度などの要因に応じて変化可能である。有効量は、明らかな副作用又は毒性作用を回避できる最大用量又は投与計画であり得る。結果として、診断測定又はパラメータは、少なくとも5%、通常少なくとも10%、より一般的には少なくとも20%、最も一般的には少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%、望ましくは少なくとも70%、より望ましくは少なくとも80%、最も望ましくは少なくとも90%改良でき、ここで、100%は、正常な受検者で見られる診断パラメータとして定義される(例えば、Maynardら(1996)A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice,Interpharm Press,Boca Raton,FL;Dent(2001)Good Laboratory and Good Clinical Practice,Urch Publ.,London,UKを参照)。
【0084】
「同一性」とは、2個のポリヌクレオチド配列の間又は2個のポリペプチド配列の間の配列の類似性を指す。2個の配列間の同一性百分率は、2個の配列に共通される、配列が一致するか又は同じである位置の数を、比較される位置の数で割って100をかけた関数である。例えば、配列に対して最適比較を行う場合、2個の配列の10個の位置のうち6個が一致するか又は同じである場合、2個の配列の同一性は60%である。一般的には、2個の配列を比較する場合、最大百分率の同一性を得るために比較を行う。
【0085】
本明細書で使用される「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」は、一般的に、オリゴヌクレオチドプライマーを設計できるように、標的領域の末端又はそれ以外の配列情報が必ず入手可能である必要があり、これらのプライマーは、増幅されるテンプレートの反対鎖の配列と同じであるか又は類似してよい。2個のプライマーの5’末端ヌクレオチドは増幅材料の末端と一致してよい。PCRにより、特定のRNA配列、全ゲノムDNAからの特定のDNA配列及び細胞からの全RNA、ファージ又はプラスミド配列で転写されたcDNAなどを増幅することができる。一般的には、Mullisら(1987)Cold Spring Harbor Symp Quant. Biol. 51: 263; Erlich編(1989)PCR TECHNOLOGY (Stockton Press, N.Y)を参照する。本明細書で使用されるPCRは、(一意ではない)核酸試料を増幅するための核酸ポリメラーゼ反応方法の一例として見なされ、当該方法は、プライマーである既知の核酸と核酸ポリメラーゼを用いて特定の核酸断片を増幅又は産生することを含む。
【0086】
改良されたウリカーゼ
本発明は、全体的に、改良されたウリカーゼ、PEG-ウリカーゼ、及びその哺乳動物の高尿酸血症の治療における用途に関する。より具体的には、本発明は、SEQ ID NO:1に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するとともに、SEQ ID NO:1ではないウリカーゼアミノ酸配列、PEG-ウリカーゼ及びその用途を提供する。
【0087】
本発明により提供されるウリカーゼは、SEQ ID NO:1と約1個~約20個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のアミノ酸)の差異を有し、即ち、約1~約20個のアミノ酸がSEQ ID NO:1と異なる。
【0088】
1つ又は複数の実施形態において、本発明により提供されるウリカーゼは、アミノ酸配列に1個又は複数個のアミノ酸残基(例えば1~20個)の追加、欠失又は置換を含むことにより、SEQ ID NO:1と異なることができる。アミノ酸配列にアミノ酸の追加、欠失及び置換を導入するために用いられる方法は、当分野で周知のものである。例えば、幾つかの実施形態において、本発明により提供されるウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のN末端及び/又はC末端で切断されて酵素活性を保持した配列である。幾つかの実施形態において、本発明により提供されるウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のN末端で約1~17個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17)が切断された配列である。幾つかの実施形態において、本発明により提供されるウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のN末端で約1~17個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17)が切断され、且つ約1~8個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8)に置換された配列である。幾つかの実施形態において、本発明により提供されるウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のC末端で約1~5個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4又は5)が切断された配列である。幾つかの実施形態において、本発明により提供されるウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のN末端で約1~17個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17)が切断され、且つC末端で約5個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4又は5)が切断された配列である。幾つかの実施形態において、本発明により提供されるウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のN末端で約1~17個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17)が切断され、約1~8個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8)に置換し、且つC末端で約5個のアミノ酸(例えば、約1、2、3、4又は5)が切断された配列である。幾つかの実施形態において、N末端で切断後にアミノ酸配列MTNIILGK又はその断片により置換される。幾つかの実施形態において、当該MTNIILGK配列における2番目のアミノ酸残基Tは、任意選択的に、その他のアミノ酸残基、例えば、アラニン、又は、プロリン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファンとメチオニンのような、アラニンと同じように非極性アミノ酸に属するその他のアミノ酸により置換可能である。
【0089】
幾つかの実施形態において、本発明により提供されるウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1の第175位、第178位及び第258位の少なくとも1つの位置に置換変異を有する配列である。好ましくは、第175位の置換後のアミノ酸残基は、プロリン、又は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファンとメチオニンのような、プロリンと同じように非極性アミノ酸に属するその他のアミノ酸である。好ましくは、第178位の置換後のアミノ酸残基は、グルタミン酸、又は、アスパラギン酸のような、グルタミン酸と同じように極性電荷アミノ酸に属するその他のアミノ酸である。好ましくは、第258位の置換後のアミノ酸残基は、セリン、又は、グルタミン酸、トレオニン、チロシン、アスパラギンとグルタミンなどの、セリンと同じように極性無電荷アミノ酸に属するその他のアミノ酸である。好ましくは、前記アミノ酸置換は、少なくとも第175位と第178位のアミノ酸置換を含み、任意選択的に第258位のアミノ酸置換を更に含む。より好ましくは、本発明にかかるウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1の配列のうちの第175位がPであり、且つ第178位がEであり、任意選択的に第258位がSである配列であり、更に好ましくは、又は任意選択的に、当該ウリカーゼのN末端及び/又はC末端は、更に上記任意の形態に記載の切断及び/又は置換を有する。好ましくは、本発明は、ここの前記置換変異を有するウリカーゼ配列に対して少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するアミノ酸配列も含み、且つこのような配列の少なくとも第175位、第178位及び第258位のアミノ酸残基は、本発明に記載の変異後の残基であり、例えば、それぞれP、E及びSである。幾つかの実施形態において、本発明により提供されるウリカーゼの配列は、更に又は独立してSEQ ID NO:1の第205位及び/又は第208位に置換変異が存在する。幾つかの実施形態において、本発明にかかるウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1の第205位と第208位の少なくとも1つの位置に置換変異を有する配列である。好ましくは、第205位の置換後のアミノ酸残基は、アスパラギン酸又はアスパラギン酸と同じように極性負電荷アミノ酸に属するグルタミン酸であり、第208位の置換後のアミノ酸残基は、アルギニン又はアルギニンと同じように極性正電荷アミノ酸に属するリジン又はヒスチジンである。
【0090】
幾つかの実施形態において、タンパク質の半減期を延長し、及び/又は免疫原性を軽減するために、本発明は、本明細の任意の実施形態に記載のウリカーゼ配列を、合成又は生物合成のポリマーと共有結合又は組換え発現させ、本発明に用いられる例示的なポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ホスホリルコリンポリマー、反復ペプチド又は「X-TEN」配列のポリマー、又は炭水化物に基づくヒドロキシエチルデンプンのようなポリマーである。幾つかの実施形態において、共有結合に用いられる1~6(例えば、1、2、3、4、5又は6)個の表面露出部位を産生するために、本発明により提供されるウリカーゼ配列を修飾する。例えば、幾つかの実施形態において、ウリカーゼ配列は、1、2、3、4、5又は6個の表面露出したシステイン残基を含有するように修飾され、ポリマー(例えば、PEG)はこれらのシステイン残基と共有結合することができる。幾つかの実施形態において、本発明により提供されるウリカーゼは、第35位、第82位、第142位、第194位、第216位、第287位と第288位のうちの少なくとも1つの位置にシステインを含み、位置番号はSEQ ID NO:1に対するものである。幾つかの実施形態において、本発明により提供されるウリカーゼは、第35位、第82位、第142位、第194位、第216位、第287位と第288位のうちの2つの位置にシステインを含み、位置番号はSEQ ID NO:1又はSEQ ID NO:3に対するものである。好ましくは、本発明により提供されるウリカーゼは、第142位と第216位、第35位と第288位、第35位と第142位、第216位と第288位、第35位と第194位、又は第82位と第287位の2つの位置にシステインを含み、特に好ましくは、第35位、第142位、第194位、第216位と第288位から選ばれる任意の2つの位置にシステインを含む。幾つかの実施形態において、前記システイン変異を有するウリカーゼは、SEQ ID NO:1を基に、第35位、第82位、第142位、第194位、第216位、第287位と第288位のうちの少なくとも1つの位置にシステインを含むウリカーゼであり、位置番号はSEQ ID NO:1に対するものである。好ましい実施形態において、このようなウリカーゼの配列は、SEQ ID NO:1のC末端で5個以内のアミノ酸残基が切断された配列を基に、上記1つ又は複数の位置にシステイン変異を有するウリカーゼである。幾つかの実施形態において、このようなウリカーゼ配列は、上記システイン変異を導入するほか、更に第205位及び/又は第208位に上記任意の実施形態に記載の置換変異が存在し、好ましい置換変異は、S205D及び/又はG208Rである。幾つかの実施形態において、このようなウリカーゼ配列は、SEQ ID NO:1のC末端で5個以内のアミノ酸残基が切断された配列であり、上記任意の実施形態に記載のシステインの変異(特に第35位、第142位、第194位、第216位と第288位から選ばれる任意の2つの位置にシステインを含む)を導入し、且つ第205位及び/又は第208位に上記任意の実施形態に記載の置換変異(好ましくは、S205D及び/又はG208Rである)が存在する配列である。
【0091】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第142位と第216位のアミノ酸残基は何れもCである。
【0092】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第288位のアミノ酸残基は何れもCである。
【0093】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第142位のアミノ酸残基は何れもCである。
【0094】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第216位と第288位のアミノ酸残基は何れもCである。
【0095】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第194位のアミノ酸残基は何れもCである。
【0096】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第82位と第287位のアミノ酸残基は何れもCである。
【0097】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第142位と第216位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRである。
【0098】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第288位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRである。
【0099】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第142位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRである。
【0100】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第216位と第288位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRである。
【0101】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第35位と第194位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRである。
【0102】
幾つかの実施形態において、本発明に記載のウリカーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:3の変異体であり、SEQ ID NO:3に比べ、前記変異体の第82位と第287位のアミノ酸残基は何れもCであり、第205位のアミノ酸残基はDであり、第208位のアミノ酸残基はRである。
【0103】
ここで、SEQ ID NO:1は野生型ミクロコッカス属ウリカーゼの配列であり、それはNCBI登録番号がD0VWQ1.1であるウリカーゼである。
【0104】
ウリカーゼの酵素活性を測定するための方法は当分野で周知のものであり、且つ当分野で周知の任意の好適な方法は何れも本発明に記載のウリカーゼの酵素活性を測定するために用いられる。
【0105】
疾患及びその治療又は予防
本発明は、更に、本発明の改良されたウリカーゼ又はPEG-ウリカーゼを使用して哺乳動物の体液又は組織中の高尿酸血症を治療又は予防する方法を提供する。当該方法は、通常、治療又は予防有効量の本発明の何れか1つの実施形態に記載の改良されたウリカーゼ又はPEG-ウリカーゼ、又は前記改良されたウリカーゼ又はPEG-ウリカーゼを含有する医薬組成物を、これを必要とする対象に投与することを含む。実際の状況に応じて、経口投与、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、動脈内投与、吸入、エアロゾル送達を含むが、これらに限定されない適切な投与方式を選択することができる。
【0106】
受検者は、通常、尿酸の上昇に関連する疾患、即ち尿酸の低下により改善できる疾患に罹患している。通常、尿酸の上昇に関連する疾患は、例えば痛風と腫瘍溶解症候群のような高尿酸血症を含む。
【0107】
キット
本発明は、更に、本発明の改良されたウリカーゼ又はPEG-ウリカーゼを含む、キット形態を呈するキットを提供する。本発明のキットは、1種又は複数種の成分を含み、本明細書に記載の改良されたウリカーゼ又はPEG-ウリカーゼ及び1種又は複数種のその他の成分を含むが、これらに限定されず、本明細書に記載の薬学的に許容されるベクターを含むが、これらに限定されない。前記改良されたウリカーゼ又はPEG-ウリカーゼを組成物とし、又は医薬組成物において薬学的に許容されるベクターと組み合わせることができる。
【0108】
一実施形態において、キットは、容器(例えば、滅菌ガラス又はプラスチックバイアル)にある本発明の改良されたウリカーゼ又はPEG-ウリカーゼ又はその医薬組成物を含む。
【0109】
キットは、キットに収納された医薬組成物と剤形の情報を含む薬品の取扱書を含んでもよい。このような情報は、一般的に患者や医者が付属の医薬組成物及び剤形を効果的且つ安全に使用することに役立つ。例えば、薬品の取扱書において、薬物動態学、薬力学、臨床研究、効果パラメータ、適応症と使用方法、禁忌症、警告事項、予防措置、副作用、過剰使用、適切な用量と投与、供給仕様、適切な保管条件、参照、メーカー/卸売業者情報、特許情報といった本発明の併用薬に関する情報を提供することができる。
【0110】
医薬組成物及び用量
本発明は、本明細書に記載の何れか1つの改良されたウリカーゼ又はPEG-ウリカーゼを含有する医薬組成物も含む。本明細書で使用される用語「医薬組成物」は、ある特定の目的を達成するために一緒に組み合わせられる少なくとも1つの医薬品と、任意選択的に薬学的に使用可能なベクター又は補助材料との組み合わせを意味する。幾つかの実施形態において、本発明の目的を達成するために協働し得る限り、前記医薬組成物は、時間的及び/又は空間的に分離された組み合わせを含む。例えば、前記医薬組成物に含まれる成分(例えば、本発明による何れか1つの改良されたウリカーゼ又はPEG-ウリカーゼ)は、全体として対象に投与し、又は別々に対象に投与することができる。前記医薬組成物に含まれる成分が別々に対象に投与される場合、前記成分は同時又は順次に対象に投与することができる。好ましくは、前記薬学的に使用可能なベクターは、水、緩衝水溶液、PBS(リン酸塩緩衝液)などの等張食塩溶液、例えばグルコース、マンニトール、デキストロース、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、炭酸マグネシウム、0.3%グリセリン、ヒアルロン酸、エタノール又はポリプロピレングリコール、トリグリセリドなどのポリアルキレングリコールである。使用される薬学的に使用可能なベクターのタイプは、特に、本発明による組成物が経口投与、経鼻投与、皮内投与、皮下投与、筋内投与又は静脈投与のために調製されたか否かによって決まる。本発明による組成物は、湿潤剤、乳化剤又は緩衝液物質を添加剤として含むことができる。
【0111】
本発明の何れか1つの改良されたウリカーゼ又はPEG-ウリカーゼの医薬組成物又は無菌組成物を製造するために、当該ウリカーゼ又はPEG-ウリカーゼと薬学的に許容されるベクター又は賦形剤とを混合することができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S.Pharmacopeia:National Formulary,Mack Publishing Company,Easton,PA(1984)を参照する。
【0112】
本発明の医薬組成物を当分野で周知の各種の適切な投与剤形に製造することができ、この剤形には、凍結乾燥粉末、膏剤、水溶液剤又は懸濁剤などが含まれるが、これらに限定されない。許容されるベクター、賦形剤又は安定剤と混合することにより、例えば凍結乾燥粉末、膏剤、水溶液剤又は懸濁剤の形態の治療剤と診断剤の剤形を製造することができる(例えば、Hardmanら(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw-Hill,New York,NY;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,NY;Avisら(編)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Liebermanら(編)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;Weiner及びKotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NYを参照する)。
【0113】
使用
本発明は、尿酸の上昇に関連する疾患の治療又は予防における、本明細書の何れか1つの実施形態に記載の改良されたウリカーゼ又はPEG-ウリカーゼの使用を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、尿酸の上昇に関連する疾患の治療又は予防に用いられる何れか1つの実施形態に記載の改良されたウリカーゼ又はPEG-ウリカーゼを提供する。
【0114】
略語
本発明の明細書及び実施例において、以下の略語を使用する。
IPTG イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド
Tm値 融解温度
DTT ジチオスレイトール
【0115】
以下の実施例によって本発明について更に説明するが、前記実施例は本発明を制限するものとして解釈すべきではない。本願全体に引用される全ての参照文献の内容は引用により本明細書に明確に組み込まれる。
【実施例】
【0116】
本発明の幾つかの好ましい実施形態及び態様を証明し、更に解釈するために以下の実施例を提供するが、本発明の範囲を制限するものとして解釈すべきではない。
【0117】
実施例1:ウリカーゼの調製
ウリカーゼ発現ベクターの構築
ウリカーゼヌクレオチドの配列(蘇州金唯智生物科技有限公司)を合成してPET28a発現ベクターに構築する。この構築された標的遺伝子の5’酵素切断部位はNcoIであり、3’酵素切断部位はXhoIである。
【0118】
AG-2C13分子の構築を例として、コドン最適化後のヌクレオチド配列は以下の通りである。
【0119】
atgaccgcgaccgccgaaaccagcacgggtaccaaagttgttctgggccagaaccagtacggcaaagccgaagttcgtctggttaaggttacccgcaacacgtgccgccatgagattcaagatctgaatgtgaccagccagctccgcggcgatttcgaagccgcgcataccgccggtgataatgcccatgttgttgcgacggacacgcagaaaaacacggtttacgccttcgcccgcgatggtttcgcgaccaccgaagaatttctgctccgtctgggcaaacacttcaccgaaggttttgactgggttaccggtggtcgttgggccgcccagcagtttttctgggaccgcatcaacgaccacgaccacgcctttagccgcaataaaagcgaggtgcgtacggccgttctggaaatcagcggtagcgaacaagccatcgtggccggcattgaaggtctgaccgttctgaagagcaccggcagcgaatttcatggcttcccgcgcgacaagtacacgacgctgccagaaaccgaggatcgcattctggccaccgatgtgagtgcccgttggcgctataacacggtggaggtggatttcgatgccgtttacgcgagcgttcgcggtctgctgctgaaagcgtttgccgaaacccatagtctggcgctgcagcagaccatgtacgaaatgggtcgcgcggttatcgagacgcacccggaaatcgacgagatcaagatgagtctgccgaacaagcaccactttctggttgatctgagcccgttcggccaagataatccgaacgaggttttttacgcggccgatcgcccgtacggtctgatcgaggccaccatccagcgcgaaggctgctaa(SEQ ID NO:9)。
【0120】
ウリカーゼの発現:
大腸菌BL21(DE3)(Merck)転換実験により、LB/Kanaプレートに転換後のモノクローナルコロニーを選び出す。ウリカーゼ発現ベクターを含有する大腸菌を5mlのLB液体培地(50um/mlのカナマイシンを含有する)にて37℃で一晩培養し、上記種子液を200mlのLB液体培地を含有する振とうフラスコに接種し、接種比率が3%であり、37℃で培養する。菌体はOD 600が0.6~0.8になるまで成長した後、培養温度を25℃に下げる。IPTGを加えてその最終濃度が0.3mMになるようにし、標的ウリカーゼタンパク質の発現を誘導する。
【0121】
ウリカーゼの精製:
菌体を高圧均質化法又は超音波法で粉砕し、遠心分離処理後、アニオン交換の方法で更に精製し、純度>95%のタンパク質を得て、後続の特性分析を行う。DNA配列決定により、プロテアーゼのアミノ酸配列を得る。
【0122】
AG-00を例として、それが最適化後のDNA配列と一致することが検証され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:1であり、以下の通りである。
【0123】
MTATAETSTG TKVVLGQNQY GKAEVRLVKV TRNTARHEIQ DLNVTSQLRG DFEAAHTAGD
NAHVVATDTQ KNTVYAFARD GFATTEEFLL RLGKHFTEGF DWVTGGRWAA QQFFWDRIND
HDHAFSRNKS EVRTAVLEIS GSEQAIVAGI EGLTVLKSTG SEFHGFPRDK YTTLQETTDR
ILATDVSARW RYNTVEVDFD AVYASVRGLL LKAFAETHSL ALQQTMYEMG RAVIETHPEI
DEIKMSLPNK HHFLVDLQPF GQDNPNEVFY AADRPYGLIE ATIQREGSRA DHPIWSNIAG
FC
【0124】
対照ウリカーゼの合成
上記と類似する方法で対照ウリカーゼMEDI4945を合成し、そのアミノ酸配列はSEQ ID NO:2である。MEDI4945は、国際出願番号PCT/US2016/032415に開示されたウリカーゼであり、そのアミノ酸配列は、以下の通りである。
【0125】
MATAETSTGCKVVLGQNQYGKAEVRLVKVTRCTARHEIQDLNVTSQLSGDFEAAHTAGDNAHVVATDTQKNTVYAFARDGFATTEEFLLRLGKHFTEGFDWVTGGRWAAQQFFWDRINDHDHAFSRNKSEVRTAVLEISGSEQAIVAGIEGLTVLKSTGSEFHGFPRDKYTTLQETTDRILATDVSARWRYNTVEVDFDAVYASVRGLLLKAFAETHSLALQQTMYEMGRAVIETHPEIDEIKMSLPNKHHFLVDLQPFGQDNPNEVFYAADRPYGLIEATIQREGSRAD
【0126】
実施例2:ミクロコッカス属ウリカーゼの配列の進化
A.C末端の最適化
C末端Cysを除去するために、SEQ ID NO:1に対してC末端の5個のアミノ酸を切断することにより、SEQ ID NO:3を生成する。即ち、実施例1と類似する方法によって、DNA特異的プライマーを設計し、AG-00配列をテンプレートとして、PCR増幅によってそのC末端の第298~302位のアミノ酸を削除し、且つ構築された生成物に対してDNA配列決定を行って検証し、得られた分子をAG-00-1と命名し、配列は以下の通りである。
【0127】
MTATAETSTG TKVVLGQNQY GKAEVRLVKV TRNTARHEIQ DLNVTSQLRG DFEAAHTAGD
NAHVVATDTQ KNTVYAFARD GFATTEEFLL RLGKHFTEGF DWVTGGRWAA QQFFWDRIND
HDHAFSRNKS EVRTAVLEIS GSEQAIVAGI EGLTVLKSTG SEFHGFPRDK YTTLQETTDR
ILATDVSARW RYNTVEVDFD AVYASVRGLL LKAFAETHSL ALQQTMYEMG RAVIETHPEI
DEIKMSLPNK HHFLVDLQPF GQDNPNEVFY AADRPYGLIE ATIQREGSRA DHPIWSN
【0128】
B.N末端アミノ酸の置換
15種を超える比較されるウリカーゼデータベースを使用し、SEQ ID NO:1における第1~17位は、同じ属のウリカーゼと比べて高度に保存されていないことが発見されたため、実施例1と類似する方法によって、特異的プライマーを設計し、AG-00をテンプレートとして、PCR増幅によってアミノ酸配列(MTNIILGK)でAG-00ウリカーゼ分子の第1~17位のアミノ酸を置換し、且つ構築された生成物に対してDNA配列決定を行って検証し、SEQ ID NO:4を生成し、分子をAG-00-2と命名し、配列は以下の通りである。
【0129】
MTNIILGKNQ YGKAEVRLVK VTRNTARHEI QDLNVTSQLR GDFEAAHTAG DNAHVVATDT
QKNTVYAFAR DGFATTEEFL LRLGKHFTEG FDWVTGGRWA AQQFFWDRIN DHDHAFSRNK
SEVRTAVLEI SGSEQAIVAG IEGLTVLKST GSEFHGFPRD KYTTLQETTD RILATDVSAR
WRYNTVEVDF DAVYASVRGL LLKAFAETHS LALQQTMYEM GRAVIETHPE IDEIKMSLPN
KHHFLVDLQP FGQDNPNEVF YAADRPYGLI EATIQREGSR ADHPIWSN
【0130】
C.部位特異的変異
実施例1と同じ方法によって、AG-00配列を基に、DNA特異的プライマーを設計し、ブリッジPCR技術によって第258位のグルタミン(Q)をセリン(S)に変異させ、且つ構築された生成物に対してDNA配列決定を行って検証し、SEQ ID NO:5を生成し、AG-01と命名し、配列は以下の通りである。
【0131】
MTATAETSTG TKVVLGQNQY GKAEVRLVKV TRNTARHEIQ DLNVTSQLRG DFEAAHTAGD
NAHVVATDTQ KNTVYAFARD GFATTEEFLL RLGKHFTEGF DWVTGGRWAA QQFFWDRIND
HDHAFSRNKS EVRTAVLEIS GSEQAIVAGI EGLTVLKSTG SEFHGFPRDK YTTLQETTDR
ILATDVSARW RYNTVEVDFD AVYASVRGLL LKAFAETHSL ALQQTMYEMG RAVIETHPEI
DEIKMSLPNK HHFLVDLSPF GQDNPNEVFY AADRPYGLIE ATIQREGSRA DHPIWSNIAG
FC
【0132】
類似する方法を採用し、第175位のグルタミン(Q)をプロリン(P)に変異させ、第178位のトレオニン(T)をグルタミン酸(E)に変異させ、且つ構築された生成物に対してDNA配列決定を行って検証し、SEQ ID NO:6を生成し、AG-02と命名し、配列は以下の通りである。
【0133】
MTATAETSTG TKVVLGQNQY GKAEVRLVKV TRNTARHEIQ DLNVTSQLRG DFEAAHTAGD
NAHVVATDTQ KNTVYAFARD GFATTEEFLL RLGKHFTEGF DWVTGGRWAA QQFFWDRIND
HDHAFSRNKS EVRTAVLEIS GSEQAIVAGI EGLTVLKSTG SEFHGFPRDK YTTLPETEDR
ILATDVSARW RYNTVEVDFD AVYASVRGLL LKAFAETHSL ALQQTMYEMG RAVIETHPEI
DEIKMSLPNK HHFLVDLSPF GQDNPNEVFY AADRPYGLIE ATIQREGSRA DHPIWSNIAG
FC
【0134】
類似する方法を採用し、第175位のグルタミン(Q)をプロリン(P)に変異させ、第178位のトレオニン(T)をグルタミン酸(E)に変異させ、第258位のグルタミン(Q)をセリン(S)に変異させ、且つ構築された生成物に対してDNA配列決定を行って検証し、SEQ ID NO:7を生成し、AG-05と命名し、配列は以下の通りである。
【0135】
MTATAETSTG TKVVLGQNQY GKAEVRLVKV TRNTARHEIQ DLNVTSQLRG DFEAAHTAGD
NAHVVATDTQ KNTVYAFARD GFATTEEFLL RLGKHFTEGF DWVTGGRWAA QQFFWDRIND
HDHAFSRNKS EVRTAVLEIS GSEQAIVAGI EGLTVLKSTG SEFHGFPRDK YTTLPETEDR
ILATDVSARW RYNTVEVDFD AVYASVRGLL LKAFAETHSL ALQQTMYEMG RAVIETHPEI
DEIKMSLPNK HHFLVDLSPF GQDNPNEVFY AADRPYGLIE ATIQREGSRA DHPIWSNIAG
FC
【0136】
D.N末端の最適化
周知のように、タンパク質が大腸菌において発現する時、N末端のメチオニンはMetアミノペプチダーゼによって除去されることができ、これはメチオニンの次の第2位のアミノ酸残基のサイズにより決められ、第2位がより小さい残基であれば典型的な分解が発生し、第2位が体積のより大きい残基であれば分解が発生せず、又は第2位の残基が体積の大きいものでもなく特に小さいものでもない場合、Metアミノペプチダーゼは部分的に分解でき、これによって不均一性が発生する。そのため、原核生物の発現による第1位のアミノ酸の完全でない剪断を無くすために、SEQ ID NO:4のアミノ酸配列における第2位のトレオニン(T)をアラニン(A)に変異させ、SEQ ID NO:8を生成し、AGー00-2Aと命名する。
【0137】
SEQ ID NO:8
MANIILGKNQ YGKAEVRLVK VTRNTARHEI QDLNVTSQLR GDFEAAHTAG DNAHVVATDT
QKNTVYAFAR DGFATTEEFL LRLGKHFTEG FDWVTGGRWA AQQFFWDRIN DHDHAFSRNK
SEVRTAVLEI SGSEQAIVAG IEGLTVLKST GSEFHGFPRD KYTTLQETTD RILATDVSAR
WRYNTVEVDF DAVYASVRGL LLKAFAETHS LALQQTMYEM GRAVIETHPE IDEIKMSLPN
KHHFLVDLQP FGQDNPNEVF YAADRPYGLI EATIQREGSR ADHPIWSN
【0138】
E.修飾されたミクロコッカス属ウリカーゼの酵素活性の評価
Tris-HCl緩衝系(pH8.5)を使用し、まず試験管に0.25mLの尿酸溶液と0.375mLのTris-HCl緩衝液を加え、37℃の水浴において10min保温し、0.125mlの適切に希釈された上記ウリカーゼ溶液(0.004mg/mL)を試験管に加え、正確に10min反応させた後、0.05mLの20%KOHを加えて反応を終了する。残りの尿酸の292nmにおける吸光度を測定し、修飾されたミクロコッカス属ウリカーゼの酵素活性を評価し、結果を
図1に示し、点変異の導入によってウリカーゼの酵素活性に影響を与えなかったことが分かる。
【0139】
尿酸オキシダーゼの活性は次のように定義される。37℃、pH8.5で1分間あたりに1umolの尿酸の分解を触媒するために必要な酵素の量が1つの酵素活性単位として定義される。
【0140】
F.修飾されたミクロコッカス属ウリカーゼの熱安定性の評価
修飾された上記ウリカーゼ分子を50℃、60℃、70℃の条件で水浴において30分間放置する。37℃の条件で、20分間平衡化し、その後、20ulの0.004mg/mlウリカーゼ溶液を加えた後、マイクロプレートリーダーを使用して直ちに数値を読取り、10分間反応させる。ウリカーゼの残りの酵素活性を測定し、結果は吸光度の差で反映される。4℃で放置されたウリカーゼの酵素活性に正規化処理を行い、結果を
図2に示す。活性測定体系:50ulの濃度800uMの尿酸、30ulの緩衝液である。
【0141】
AG-00は60℃で30分間熱処理された後、酵素活性が47%に保持されたが、AG-01、AG-02とAG-05は同じ条件で処理され、酵素活性保持率がそれぞれ60%、75%と78%であった。70℃の条件で処理され、AG-00の酵素活性は6%に保持され、ウリカーゼAG-01、AG-02とAG-05の酵素活性保持率がそれぞれ17%、20%と15%であった。点変異の導入によって酵素活性の熱安定性を向上させたことが分かる。
【0142】
G.修飾されたミクロコッカス属ウリカーゼのTm値の評価
タンパク質Thermo Shift検出試薬キットを使用してタンパク質分子のTm値を評価する。緩衝液(Na2HPO42.34g/L;NaH2PO4・H2O0.48g/L;ショ糖75.31g/L;Tween80 0.2g/L;pH7.6±2)を使用して、上記ウリカーゼを0.5715mg/mLに希釈し、試薬キットにおける1000×蛍光色素を超純水で8×蛍光色素に希釈し、70μLの0.5715mg/mLウリカーゼを10μLの8×蛍光色素と1.5mLのEPチューブで均一に混合してから、8ストリップのPCRチューブ又は96ウェルのPCRプレートに分注し、分注体積は30μLであり、合計で2つのウェルに分注する。また、空白対照試料として、70μLの製剤緩衝液と10μLの8×蛍光色素とを混合してなるものを使用し、8ストリップのPCRチューブ又は96ウェルのPCRプレートに分注し、分注体積は30μLであり、合計で2つのウェルに分注する。また、システム空白対照として、70μLの超純水と10μLの8×蛍光色素とを混合してなるものを使用し、8ストリップのPCRチューブ又は96ウェルのPCRプレートに分注し、分注体積は30μLであり、合計で2つのウェルに分注する。
【0143】
測定モード 融解曲線
蛍光団の検出 ROX
チューブ/ウェルあたりの試料の体積 30μL
25℃での平衡化段階の時間 2分間
昇温段階の速度 1%
99℃での平衡化段階の時間 2分間
結果を以下の表1に示す。
【0144】
AG-01、AG-02、AG-05及びAG-00-2のTm D値(最初のタンパク質変性の温度)は何れも野生型ウリカーゼ分子AG-00及び対照MEDI4945より高いことが分かる。点変異の導入によってウリカーゼの熱安定性を向上させたことが分かる。
【0145】
【0146】
実施例3:特異性PEG化
ポリエチレングリコール(PEG)により修飾された治療性タンパク質は、選択されたタンパク質残基(例えばリジン側鎖)にランダムに付加可能であり、又は特定の部位に対して特異性を有する。特定の部位に対する特異的PEG化によって、確定した生理活性を有する高度に均一であるペグ化生成物をよりよく制御して生成することができる。部位特異的付加に用いられる方法では、ペアリングされていないシステイン残基と結合することは最も広く使用され、これはタンパク質配列に1つ又は複数の遊離したシステイン残基を導入する必要がある。C末端で切断されたAG-00-1分子配列(SEQ ID NO:3)にシステインが含有されないため、アミノ酸変異によってシステインを導入することができる。
【0147】
Cys変異の導入
AG-00-1配列におけるCys残基を導入する潜在的な部位を選択するために、以下の幾つかの要因を考慮する。
【0148】
(1)活性に影響を与えるリスクを避けるために、部位は酵素活性部位から離れる必要がある。
(2)立体障害により隣接するCysがPEG化されにくいことを避けるために、部位は互いに接近してはいけない。
(3)チオール反応性PEG試薬との有効な反応を確実に発生させるために、部位はタンパク質の表面に位置しなければならない。
(4)部位はドメイン又は保存領域に位置してはいけない。
【0149】
分析を経て、上記要求を満たす部位は、A35、F82、S142、T194、E216、G287及びS288を含むことが分かる。従って、上記幾つかの部位をCys変異の部位として選択する。
【0150】
実施例1と類似する方法を採用してCys変異を導入し、AG-2C12、AG-2C13、AG-2C16、AG-2C17、AG-1C13-1、AG-2C01、AG-2C05-1、AG-2C01-1及びAG-2C12-1といった分子を調製する。
【0151】
タンパク質安定性の研究
各種の改良されたウリカーゼをリン酸塩緩衝液において、pH7.0、1mMのDTT、4℃の条件で放置し、SEC-HPLCとRP-HPLCを使用して各タンパク質の放置安定性を比較し、結果を
図3aと3bに示す。
【0152】
RP-HPLC(
図3a)の結果により、AG-2C13、AG-2C13-1、AG-2C12、AG-2C01-2の純度が高いことが示される。SEC-HPLC(
図3b)の結果により、AG-2C13、AG-2C17、AG-2C12、AG-2C01-2の純度が高いことが示される。SEC-HPLCとRP-HPLCの結果をまとめて、AG-2C13、AG-2C12、AG-2C01-2分子を好ましいものとする。
【0153】
ウリカーゼPEGの修飾方法:
2mgのウリカーゼ(100mMのPBS緩衝液、pH=7.0、150mMのNaCl)に順次にTCEP.HCl(0.5mg、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩)、M-MAL-PEG-10K(27.5mg、マレイミドポリエチレングリコール、分子量10000Da)を加え、室温で2時間反応させる。反応液をイオン交換クロマトグラフィーで精製すれば、ペグ化ウリカーゼが得られる。
【0154】
ウリカーゼの活性測定方法:リン酸塩緩衝系(pH7.3)を使用する。活性測定系は、上記方法(実施例2)を参照し、残りの尿酸の292nmにおける吸光度を測定する。
【0155】
上記選択したCys変異部位に対して、2つずつ組み合わせてPEG化修飾とウリカーゼ活性の評価を行う。結果を表2に示す。
【0156】
【表2】
*注記:AG-2C13、AG-2C01-2とAG-2C12に比べ、AG-2C13-1、AG-2C01-1とAG-2C12-1は、それぞれS205DとG208Rの変異を更に含む。
【0157】
表2に示される分子に導入された2個のシステインは、何れもPEGにより好適に修飾され、この導入部位が分子表面に露出していることが証明された。また、ウリカーゼの単一のサブユニットがmPEGにより二重修飾された後、酵素活性保持率は44%から113%まで変化する。更に、第205位と第208位に変異を導入することで酵素活性を更に向上させることができる。
【0158】
実施例4:PEG化修飾されたウリカーゼ活性の評価
A.PEG化ウロキナーゼの酵素活性動態学的研究
Tris-HCl緩衝系(pH8.5)を使用し、ウリカーゼ作業液の母液は2mM尿酸であり、4℃で保存する。酵素活性の測定過程:
温度を37度に設定する。
基質(尿酸)濃度勾配は、600μmol、500μmol、400μmol、200μmol、100μmol、50μmol、25μmol、12.5μmolとされる。
【0159】
まず、50ulの上記尿酸溶液と30ulの上記Tris-HCl緩衝液を96ウェルのプレートに加え、37℃で20min保温し、その後、20ulの適切に希釈されたウリカーゼ溶液(0.004mg/mL)を96ウェルのプレートに迅速に加える。プロセスの設定:10min反応させ、20sおきに一回データを読取り、反応をスタートする。結果を
図4と表3に示す。
【0160】
結果により、ウリカーゼ分子の最大反応速度は、順次にAG-2C01-2-PEG、AG-2C12-PEG、AG-2C13-PEG及びMEDI4945であることが示される。
【0161】
【表3】
注記:Km:ミカエリス定数、Vmax:最大反応速度、Kcat:転換数、単一の酵素分子が1秒内に転換した基質の量を指す。
【0162】
B.PEG修飾されたウロキナーゼの加速安定性の評価(37℃)
PEG修飾されたウリカーゼを37℃の恒温箱に入れ、緩衝系はリン酸緩衝液系であり、pHは7.0である。SEC-HPLCの結果を
図5に示す。37℃の条件で、AG-2C01-2-PEGの安定性はAG-2C12-PEGとAG-2C13-PEGより優れることが分かる。
【0163】
実験例6:体内薬力学的研究
単回静脈注射(i.v.)の投与方式により、外因性尿酸を腹腔内注射(i.p.)することで誘導された高尿酸血症マウスモデルで受検物の血清尿酸レベルに対する影響を評価する。120匹の正常のマウス(ICR-male)をランダムに6群に分け、1群に20匹である。第1群、第2群はそれぞれ空白対照と溶媒対照として溶媒を投与し、第3群は陽性対照としてMEDI4945を0.1mg/kg投与し、第4、5、6群は治療群として、それぞれ0.1mg/kg用量のAG-2C13-PEG、AG-2C01-2-PEG及びAG-2C12-PEGを投与する。投与後の翌日に、空白対照群を除き、他の各群の実験マウスに全て尿酸を腹腔内注射してモデリングし(250mg/kg、10ml/kg)、各群の1~10番の動物に対して、モデリング後の30minと3hに採血し、11~20番の動物に対して1.5hと6hに採血する。
【0164】
結果を
図6に示す。0.1mg/kg用量のAG-2C13-PEG、AG-2C01-2-PEG及びAG-2C12-PEG治療群の動物の血清尿酸レベルは、モデリング後の0.5h~6hの各時点に何れも溶媒対照群(p<0.01)より明らかに低く、モデリング後の0.5h~1.5hに、3つの治療群の動物の血清尿酸レベルは何れも検出下限より低い(AG-2C13-PEG群は除外され、1.5hに8.35μmol/lであった)。測定用量(0.1mg/kg)で、AG-2C13-PEG、AG-2C01-2-PEG及びAG-2C12-PEGを単回注射投与した後、外因性尿酸を腹腔内注射することで誘導されたICRマウスの高尿酸血症モデルで血清尿酸レベルに対して明らかな低下作用を有する。この用量で、ウロキナーゼAG-2C13-PEG、AG-2C01-2-PEG及びAG-2C12-PEGは、モデリング後の各時点に効果上の明らかな差異がなく、3h後の薬力が何れもMEDI4945より優れる。
【配列表】
【国際調査報告】