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特表2022-553649がんの治療用のオキシアザホスホリンの誘導体を含む新規の治療の組合せ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】がんの治療用のオキシアザホスホリンの誘導体を含む新規の治療の組合せ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/664 20060101AFI20221219BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221219BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221219BHJP
   C07F 9/6584 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61K31/664
A61K45/00
A61K39/395 U
A61K39/395 D
A61P35/02
A61P35/00
C07F9/6584
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521449
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(85)【翻訳文提出日】2022-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2020078458
(87)【国際公開番号】W WO2021069686
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】19306332.8
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516365507
【氏名又は名称】アンスティテュ・ギュスターヴ・ルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンジェロ・パシ
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー・チャプト
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-リュク・ペルフェッチーニ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリア・ドゥラウース
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZB27
4C085AA13
4C085BB11
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA35
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB28
(57)【要約】
本発明は、がんの治療又は予防のためのオキシアザホスホリン誘導体及び免疫チェックポイントモデュレーターを含む、新規の治療の組合せに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫チェックポイントモデュレーターと組み合わせた、がんの治療又は予防における使用のための、式(I):
【化1】
[式中、
- Aは、O、O-O、S、NH、NR5(式中、R5は、アルキル基、好ましくは、C1~C3アルキル基である)、又は分子量が500g.mol-1までの、より好ましくは、400g.mol-1より低いリンカー基であり、
- R1、R2及びR3は、独立に、-H、-CH(CH3)-CH2-X及び-(CH2)2-Xからなる群から選択され、Xは、ハロゲン原子、好ましくは、Cl、Br又はI、より好ましくは、Br又はClであり、
- R4は、H又は場合によっては、1個若しくは数個のヘテロ原子、例えば、S、O及びNHにより中断され、場合によっては、独立に、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、CN、CF3、OH、C1~C6アルキル、C1~C6ヒドロキシアルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6アミノアルキル、C1~C6ハロゲノアルキル、-C2~C6アルコキシアルキル、-C(O)OR、-OC(O)R、-OC(O)OR、-C(O)R、-NHC(O)-NH-R、-NH-C(O)-R、-C(O)-NH-R、-NRR'、-C(O)NRR'、-NC(O)R、-NRC(O)R'、及び-SR(式中、R及びR'は、独立に、H及びC1~C6アルキルから選択される)からなる群から選択される1つ又は複数の置換基により置換される2~30個の炭素原子の飽和若しくは不飽和鎖である]のオキシアザホスホリン誘導体、及び薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物。
【請求項2】
オキシアザホスホリン誘導体が、式(Ia):
【化2】
[式中、
- nは、0~3、好ましくは、1又は2の整数であり、
- A、R1、R2及びR3は、請求項1に記載の式(I)の化合物について定義される通りである]のもの並びに薬学的に許容されるその塩及び溶媒和物である、請求項1に記載の使用のためのオキシアザホスホリン誘導体。
【請求項3】
- nが、1又は2であり、
- Aが、O、O-O、S、及び-NH-の群から選択される、又は
- 天然若しくは非天然アミノ酸、ジペプチド、及びそれらの誘導体;
- 好ましくは、2~6個のモノマー、例えば、2、3、又は4個のモノマーを含む、ポリエーテル基、例えば、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール;
- 例えば、式-CR7=N-NH-C(O)-(式中、R7は、H又はC1~C6、好ましくは、C1~C3アルキルである)のヒドラゾンリンカー、
- -O-(C=S)-S-、-ONR7-、-NR7O-(式中、R7は、H又はC1~C6であり、好ましくは、C1~C3アルキルである)、
- Y1-(CH2)n-Y2(式中、nは、1~8の整数であり、Y1及びY2は、独立に、-O-、-S-、-OC(O)-、-C(O)O-,-OC(O)-O-、-C(O)NR7-、NR7C(O)-、-OC(S)S-、-SC(S)O- -NR7-、-ONR7-、-NR7O-、NR7C(S)S-、-SC(S)NR7-から選択される)
及び
【化3】
[式中、R7は、H及びC1~C6、好ましくは、C1~C3アルキルの群から選択され、pは、0~8、好ましくは、1、2又は3の整数である]からなる群から選択されるスペーサー部分を含み、若しくはそれからなり、
- R1、R2及びR3が、R1、R2及びR3のうちの1つが、Hであり、他の残りの2つの基が、独立に、-CH(CH3)-CH2-X及び-(CH2)2-X(式中、Xは、好ましくは、Cl又はBrである)から選択されるようなものである、請求項2に記載の使用のためのオキシアザホスホリン誘導体。
【請求項4】
Aが、O-O、O、S又はNHであり、又は
- -O-(C=S)-S-、-ONR7-、-NR7O-(式中、R7は、H又はC1~C3アルキル、好ましくは、CH3である)
- シトルリン、リジン、オルニチン、アラニン、フェニルアラニン、システイン、グリシン、バリン、ロイシン及びそれらのジペプチド、例えば、バリン-シトルリン等、
- Y1-(CH2)n-Y2、及び
- Y1-(CH2-CH2-O)a-CH2-CH2-Y2
[式中、Y1及びY2は、上記で定義される通りであり、好ましくは、独立に、O、NR7、S、OC(O)、C(O)O、NHCO、CONHから選択され、R7は、H又はC1~C3アルキルであり、好ましくは、-CH3であり、nは、1~8、好ましくは、1、2、3、又は4の整数であり、aは、1~3の整数である]からなる群から選択される部分である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用のためのオキシアザホスホリン誘導体。
【請求項5】
R1、R2及びR3が、独立に、-H、及び-CH(CH3)-CH2-X[式中、Xは、ハロゲン原子、好ましくは、Cl、Br又はI、より好ましくは、Br又はClである]からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のためのオキシアザホスホリン誘導体。
【請求項6】
R1、R2及びR3が、独立に、-H、及び-CH2-CH2-X[式中、Xは、ハロゲン原子、好ましくは、Cl、Br又はI、より好ましくは、Br又はClである]からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の使用のためのオキシアザホスホリン誘導体。
【請求項7】
前記オキシアザホスホリン誘導体が、式(IIa)及び式(IIb):
【化4】
[式中、
- nは、1又は2であり、
- Rは、H又はCH3であり、
- Xは、Cl又はBrであり、
- Aは、O、S、-NH-、システアミンリンカー、バリン-シトルリンリンカー及びシステインリンカーからなる群から選択される]の化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の使用のためのオキシアザホスホリン誘導体。
【請求項8】
オキシアザホスホリンが、
【化5】
並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物からなる群から選択される、請求項1に記載の使用のためのオキシアザホスホリン誘導体。
【請求項9】
免疫チェックポイントモデュレーターが、CTLA-4、PD-1、LAG-3、TIM-3、TIGIT及び2B4/CD244免疫チェックポイント経路から選択される免疫チェックポイント経路の阻害剤である、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のためのオキシアザホスホリン誘導体。
【請求項10】
免疫チェックポイントモデュレーターが、抗-PD1抗体、抗-PD-L1抗体、抗-CTLA4抗体、抗-TIGIT抗体、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の使用のためのオキシアザホスホリン誘導体。
【請求項11】
免疫チェックポイントモデュレーターが、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、スパルタリズマブ、ティスレリズマブ、ピディリズマブ、JS001、アベルマブ、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、デュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、BMS936559、MDX-1105、KN305、イピリムマブ、トレメリムマブ、ティラゴルマブ、ビボストリマブ、それらの変異体、それらの抗原結合断片及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の使用のためのオキシアザホスホリン誘導体。
【請求項12】
免疫チェックポイントモデュレーターが、OX40アゴニストである、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のためのオキシアザホスホリン誘導体。
【請求項13】
オキシアザホスホリン誘導体が、ゲラニルオキシ-IFOであり、免疫チェックポイントモデュレーターが、PD1阻害剤及びPD-L1阻害剤から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の使用のためのオキシアザホスホリン誘導体。
【請求項14】
免疫チェックポイントモデュレーターが、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、それらの変異体、それらの抗原結合断片及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項13に記載の使用のためのオキシアザホスホリン誘導体。
【請求項15】
オキシアザホスホリン誘導体及び免疫チェックポイントモデュレーターが、同時に、連続的に又は別々に、同じ投与経路により又は異なる投与経路により対象に投与される、請求項1から14のいずれか一項に記載の使用のためのオキシアザホスホリン誘導体。
【請求項16】
がんが、慢性白血病、急性リンパ性白血病、ホジキン病、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、肺のがん、三種陰性乳がんを含む乳がん、泌尿生殖器がん、例えば、前立腺、膀胱、精巣、子宮頚部又は卵巣のがん、肉腫、例えば、骨肉腫及び小児軟部組織肉腫を含む軟部組織肉腫等、神経芽細胞腫、骨髄腫、メルケル細胞癌及びメラノーマからなる群から選択される、請求項1から15のいずれか一項に記載の使用のためのオキシアザホスホリン誘導体。
【請求項17】
好ましくは、請求項1から8のいずれか一項に規定のオキシアザホスホリン誘導体、及び好ましくは、請求項9から14のいずれか一項に規定の免疫チェックポイントモデュレーターを含む、がんの治療又は予防における使用のための医薬組成物。
【請求項18】
- 好ましくは、請求項1から8のいずれか一項に規定のオキシアザホスホリン誘導体を含む、第1の成分、及び
- 好ましくは、請求項9から14のいずれか一項に規定の免疫チェックポイントモデュレーターを含む第2の成分を含む、がんの治療又は予防における使用のための医薬用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんの治療のために有用な新規の治療の組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
オキシアザホスホリンは、軟部組織腫瘍からリンパ腫までのがんのいくつかのタイプを治療するためにルーチン的な診療において広範に用いられているアルキル化剤に属する。それらは、依然として、いくつかの多剤化学療法プロトコールの礎石である。オキシアザホスホリンには、イホスファミド(IFO)、シクロホスファミド(CPA)及びトロホスファミドが含まれ、これは、窒素原子に結合された1、2又は3つのクロロエチル基を含む異性体構造を有する。プロドラッグとして、これらの化合物は、特異的肝チトクロムP450(CYP)により遂行される代謝活性化を要する。この活性化によって、開環機構により実薬を遊離するヒドロキシル化中間体、すなわち、DNA架橋により細胞毒性を示すナイトロジェンマスタードが生成される。IFOの主な活性化経路は、CYP3A4により行われ、C-4炭素原子に対して酸化反応を行い、4-ヒドロキシ-イホスファミド(4-HO-IFO)をもたらす。4-HO-IFOは、互変異性平衡及びレトロ-マイケルプロセスを通して、アクロレインと同時にアルキル化マスタードを生じる。アクロレインは、出血性膀胱炎により特徴付けられる泌尿器毒性の原因となる。更に、オキシアザホスホリンは、チトクロム、特に、CYP2B6の作用によって、分子の側鎖の酸化により生成される代謝物であるクロロアセトアルデヒドの放出により、神経毒性及び腎毒性をも引き起こしうる。患者に投与されるIFOの10~50%のみが、所望のアルキル化マスタードに転換され、投与されるIFOの50%~90%は、腎毒性の及び神経毒性のクロロアセトアルデヒド(CAA)を放出することが評価される(Goren、Lancet、1986、2(8517):1219~20頁;Ben Abid、Oncologie、2007、9(11):751~7頁)。オキシアザホスホリンの毒性が、高用量設定プロトコールにおいて増加することが観察された。例えば、Le Cesneらによって、高用量投与(累積用量12000mg/m2)におけるIFOが、進行性抵抗性軟部組織を有する患者において有効であったが、主要な毒性をもたらしたことが示された(Le Cesne、JClinOncol、1995、13(7):1600~8頁)。これはまた、小児患者における症例である。以前に従来型化学療法で治療された骨肉腫を伴う小児において行われた臨床試験では、高用量(累積用量14000mg/m2)でIFOを投与すると、患者の30%において、無病生存期間が改善されたが、患者の4分の1に重度の腎毒性があったことが示された(Berrak、Pediatr Blood Cancer、2005、44(3):215~9頁)。したがって、オキシアザホスホリンの治療係数の増加は、重要な臨床的な問題である。
【0003】
いくつかの調査チームは、毒性オキシアザホスホリンを回避する方法を探求している。
【0004】
メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムの同時投与は、アクロレインに基づいた毒性を弱毒化するために提案される。他方、オキシアザホスホリンのファーマコモデュレーション(pharmacomodulation)は、これらの毒性を回避することがやはり検討されている。C-4炭素中心の化学酸化は、チトクロムP450による代謝を行わずにアルキル化マスタードを放出することが可能な前活性化させた類似体を生成するために提案されている。多くの誘導体は、4-メトキシ誘導体等、既に調製されているが(Paciら、2001、Bioorg Med Chem Lett、11、1347~1349頁)、それらの大部分は、あまりに不安定であるため更に開発することができない又はIFOの使用に対して利点がないことが判明した。
【0005】
特許出願WO2012/076824では、C-4炭素においてスクアレノイル基を含む、SQ-IFO及びSQ-チオ-IFOを含めて、いくつかのイホスファミド誘導体が開示されている。これらの化合物は、いくつかの癌性の細胞に対して細胞毒性を示し、その長い疎水性の末端から、ナノ粒子に自己組織化することが可能であるということが示された。特許出願WO2015/173367では、C-4炭素でゲラニル基を含む、オキシアザホスホリンの誘導体、例えば、ゲラニルオキシ-イホスファミド(ゲラニルオキシ-IFO、G-IFO)が開示している。この化合物は、in vitroで腫瘍細胞の大パネルに対して細胞毒性があること、及び横紋筋肉腫のマウスモデルにおいて腫瘍増殖を防止することが示された。マウスにおいて静脈内経路により注射した場合、ゲラニルオキシ-IFOは、アルキル化マスタードを自発的に放出する、4-ヒドロキシ-イホスファミド代謝物に急速に変換されたことがやはり示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許出願WO2012/076824
【特許文献2】特許出願WO2015/173367
【特許文献3】WO2011066389
【特許文献4】WO200705874
【特許文献5】WO200114556
【特許文献6】US20110271358
【特許文献7】US8217149
【特許文献8】US20120039906
【特許文献9】US20140044738
【特許文献10】US8779108
【特許文献11】WO200989149
【特許文献12】EP3209778
【特許文献13】特許出願WO00/37504
【特許文献14】特許出願WO2018/036473
【特許文献15】WO1991/10682
【特許文献16】WO2015/138920
【特許文献17】WO2017/053748
【特許文献18】WO2017/030823
【特許文献19】特許出願WO2006121810
【特許文献20】米国特許第7,959,925号
【特許文献21】米国特許第6,312,700号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Goren、Lancet、1986、2(8517):1219~20頁
【非特許文献2】Ben Abid、Oncologie、2007、9(11):751~7頁
【非特許文献3】Le Cesne、JClinOncol、1995、13(7):1600~8頁
【非特許文献4】Berrak、Pediatr Blood Cancer、2005、44(3):215~9頁
【非特許文献5】Paciら、2001、Bioorg Med Chem Lett、11、1347~1349頁
【非特許文献6】Hodi、NEJM、2010、363(8):711~723頁
【非特許文献7】Zielinski、Annals of Oncology、2013、24(5):1170~9頁
【非特許文献8】Darvinら、Experimental & Molecular Medecine(2018)50:165頁
【非特許文献9】Sharma and Allison、Cell、2015、161、205~2014頁
【非特許文献10】Triebel F,ら、J.Exp.Med.1990;171:1393~1405頁
【非特許文献11】Workman C T,ら、J.Immunol.2009;182(4):1885~9頁1
【非特許文献12】Heら(Onco Targets Ther.2018;11:7005~7009頁)
【非特許文献13】Dasら(Immunol.Rev.2017;276(1):97~111頁)
【非特許文献14】Dollis、Chem Biol.2008年7月21日;15(7):675~682頁
【非特許文献15】Weinbergら J Immuother、2006、26、575~585頁
【非特許文献16】Morris、2007、Mol Immunol、44(2)、3112~3121頁
【非特許文献17】Ghiringhelli、Cancer Immunol Immunother、2007、56:461~648頁
【非特許文献18】Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Lippincott Williams & Wilkins;第21版、2005)
【非特許文献19】Handbook of Pharmaceuticals Excipients、American Pharmaceutical Association(Pharmaceutical Press;改訂第6版、2009)
【非特許文献20】Sharbek(Journal of Medecinal Chemistry、2015、58(2):705~17頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、がんの治療のための新たな治療方法の必要性がやはりある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、がんを治療する又は予防するために免疫チェックポイントモデュレーター(immune checkpoint modulator)と組み合わせた、式(I):
【0010】
【化1】
【0011】
[式中、
- Aは、O、O-O、S、NH、NR5(式中、R5は、アルキル基、好ましくは、C1~C3アルキル基である)、又は分子量が500g.mol-1までの、より好ましくは、400g.mol-1より低いリンカー基であり、
- R1、R2及びR3は、独立に、-H、-CH(CH3)-CH2-X及び-(CH2)2-X(式中、Xは、ハロゲン原子、好ましくは、Cl、Br又はI、より好ましくは、Br又はClである)からなる群から選択され、
- R4は、H又は場合によっては1個若しくは複数個のヘテロ原子、例えば、S、O及びNHにより中断され、場合によっては独立に、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、CN、CF3、OH、C1~C6アルキル、C1~C6ヒドロキシアルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6アミノアルキル、C1~C6ハロゲノアルキル、-C2~C6アルコキシアルキル、-C(O)OR、-OC(O)R、-OC(O)OR、-C(O)R、-NHC(O)-NH-R、-NH-C(O)-R、-C(O)-NH-R、-NRR'、-C(O)NRR'、-NC(O)R、-NRC(O)R'、及び-SR(式中、R及びR'は、独立に、H及びC1~C6アルキルから選択される)からなる群から選択される1つ又は複数の置換基により置換される2~30個の炭素原子の飽和若しくは不飽和鎖である]のオキシアザホスホリン誘導体及び薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物の使用に関する。
【0012】
いくつかの実施形態では、オキシアザホスホリン誘導体は、式(Ia):
【0013】
【化2】
【0014】
[式中、
- nは、0~3、好ましくは、1又は2の整数であり、
- A、R1、R2及びR3は、請求項1に記載の式(I)の化合物について定義される通りである]のもの
及び薬学的に許容されるその塩及び溶媒和物である。
【0015】
更なるいくつかの実施形態では、オキシアザホスホリン誘導体は、式(Ia)の化合物であり、
- nは、1又は2であり、
- Aは、O、O-O、S、及び-NH-の群から選択される、又は
- 天然若しくは非天然アミノ酸、ジペプチド、及びそれらの誘導体;
- 好ましくは、2~6個のモノマー、例えば、2、3、又は4個のモノマーを含む、ポリエーテル基、例えば、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール;
- 例えば、式-CR7=N-NH-C(O)-(式中、R7は、H又はC1~C6、好ましくは、C1~C3アルキルである)のヒドラゾンリンカー、
- -O-(C=S)-S-、-ONR7-、-NR7O-(式中、R7は、H又はC1~C6であり、好ましくは、C1~C3アルキルである)、
- Y1-(CH2)n-Y2(式中、nは、1~8の整数であり、Y1及びY2は、独立に、-O-、-S-、-OC(O)-、-C(O)O-,-OC(O)-O-、-C(O)NR7-、NR7C(O)-、-OC(S)S-、-SC(S)O--NR7-、-ONR7-、-NR7O-、NR7C(S)S-、-SC(S)NR7-から選択される)
及び
【0016】
【化3】
【0017】
[式中、R7は、H及びC1~C6、好ましくは、C1~C3アルキルの群から選択され、pは、0~8、好ましくは、1、2又は3の整数である]からなる群から選択されるスペーサー部分を含み、若しくはそれからなり、
- R1、R2及びR3は、R1、R2及びR3のうちの1つが、Hであり、他の残りの2つの基が、独立に、-CH(CH3)-CH2-X及び-(CH2)2-X(式中、Xは、好ましくは、Cl又はBrである)から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態では、式(I)又は(Ia)のオキシアザホスホリンは、AがO、O-O、S又はNHである、又は:
- -O-(C=S)-S-,-ONR7-、-NR7O-(式中、R7は、H又はC1~C3アルキル、好ましくは、CH3である)
- シトルリン、リジン、オルニチン、アラニン、フェニルアラニン、システイン、グリシン、バリン、ロイシン及びそれらのジペプチド、例えば、バリン-シトルリン等、
- Y1-(CH2)n-Y2、及び
- Y1-(CH2-CH2-O)a-CH2-CH2-Y2
[式中、Y1及びY2は、上記で定義される通りであり、好ましくは、独立に、O、NR7、S、OC(O)、C(O)O、NHCO、CONHから選択され、R7は、H又はC1~C3アルキルであり、好ましくは、-CH3であり、nは、1~8、好ましくは、1、2、3、又は4の整数であり、aは、1~3の整数である]からなる群から選択される部分であるものである。
【0019】
いくつかの他の実施形態では、式(I)又は(Ia)のオキシアザホスホリンは、R1、R2及びR3が、独立に、-H、及び-CH(CH3)-CH2-X[式中、Xは、ハロゲン原子、好ましくは、Cl、Br又はIであり、より好ましくは、Br又はClである]からなる群から選択されるようなものである。
【0020】
他の実施形態では、式(I)又は(Ia)のオキシアザホスホリンは、R1、R2及びR3が、独立に、-H、及び-CH2-CH2-X[式中、Xは、ハロゲン原子、好ましくは、Cl、Br又はIであり、より好ましくは、Br又はClである]からなる群から選択されるようなものである。
【0021】
いくつかの実施形態では、オキシアザホスホリン誘導体は、式(IIa)及び式(IIb):
【0022】
【化4】
【0023】

[式中、
- nは、1又は2であり、
- R4は、H又はCH3であり、
- Xは、Cl又はBrであり、
- Aは、O、S、-NH-、システアミンリンカー、バリン-シトルリンリンカー及びシステインリンカーからなる群から選択される]の化合物、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物の群から選択することができる。
【0024】
例えば、オキシアザホスホリン誘導体は、
【0025】
【化5】
【0026】
並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物からなる群から選択される。
【0027】
免疫チェックポイントモデュレーターは、抑制性免疫チェックポイント経路の免疫チェックポイントモデュレーターでありうる。例えば、免疫チェックポイントモデュレーターは、CTLA-4、PD-1、LAG-3、TIM-3、TIGIT及び2B4/CD244免疫チェックポイント経路から選択される免疫チェックポイント経路の阻害剤、好ましくは、CTLA4免疫チェックポイント経路及びPD1免疫チェックポイント経路の阻害剤でありうる。
【0028】
例えば、免疫チェックポイントモデュレーターは、抗-PD1抗体、抗-PD-L1抗体、抗-CTLA4抗体、抗-TIGIT及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。かかる免疫チェックポイントモデュレーターの例は、それだけに限らないが、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、セミプリマブ(Liptayo(登録商標))、カムレリズマブ、シンチリマブ(sintilimab)、スパルタリズマブ、ティスレリズマブ、ピディリズマブ、JS001、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、デュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、BMS936559、MDX-1105、KN305、イピリムマブ(Yervoy(登録商標))、トレメリムマブ、ティラゴルマブ(tiragulomab)、ビボストリマブ、それらの変異体、それらの抗原結合断片及びそれらの組合せを包含する。
【0029】
別の実施形態では、免疫チェックポイントモデュレーターは、OX40アゴニストである。
【0030】
更なる実施形態では、免疫チェックポイントモデュレーターは、LAG3阻害剤及びTIM-3阻害剤、例えば、抗-LAG3抗体及び抗-TIM-3抗体から選択される。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態では、オキシアザホスホリン誘導体は、ゲラニルオキシ-IFOであり、免疫チェックポイントモデュレーターは、PD1阻害剤及びPD-L1阻害剤から選択される。例えば、免疫チェックポイントモデュレーターは、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、それらの変異体、それらの抗原結合断片及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0032】
オキシアザホスホリン誘導体及び免疫チェックポイントモデュレーターは、対象に、同時に、連続的に又は別々に、同じ投与経路により又は異なる投与経路により対象に投与することができる。
【0033】
がんは、任意のタイプのものでありえ、慢性白血病、急性リンパ性白血病、ホジキン病、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、肺のがん、三種陰性乳がんを含む乳がん、泌尿生殖器がん、例えば、前立腺、膀胱、精巣、子宮頚部又は卵巣のがん等、肉腫、例えば、骨肉腫及び小児軟部組織肉腫を含む軟部組織肉腫、神経芽細胞腫、骨髄腫、メルケル細胞癌及びメラノーマからなる群から選択することができる。
【0034】
本発明はまた、上記で定義したオキシアザホスホリン誘導体、好ましくは、上記で定義した免疫チェックポイントモデュレーターを含む、がんの治療又は予防における使用のための医薬組成物に関する。
【0035】
本発明の更なる目的は、がんの治療又は予防における使用のための医薬用キットであり、このキットは、好ましくは、上記で定義したオキシアザホスホリン誘導体を含む第1の成分、及び上記で定義した免疫チェックポイントモデュレーターを含む第2の成分を含む。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】in vivoにおけるIFO及びG-IFOの代謝を示す図である。
図2】低用量のG-IFO(ゲラニルオキシ-IFO)によって、マウスにおけるT細胞免疫が促進され、腫瘍-増殖が遅延された図である。MCA205腫瘍-形成マウスを、G-IFO(当量100mg/kg)又はCPA(100mg/kg)又はビヒクル(DMSO/Tween80/NaCl0.9%(5/5/90、v/v/v))の単回i.p.注射で治療した。(A)7日後、マウスを屠殺し、脾臓を収集した。リンパ球を、フローサイトメトリー法を用いて機械により解離した後、脾臓中で検出した。脾細胞、T細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞及びTreg細胞の絶対数。グラフは、1回の実験から得られたデータを示す(n=3~4マウス/群)。四分位による中央値が示される。(B)7日後、マウスを屠殺し、腫瘍を収集した。リンパ球を、フローサイトメトリー法を用いて機械により解離した後、腫瘍中で検出した。脾細胞、T細胞、CD8+T細胞、CD4+T細胞、Treg細胞の絶対数及びCD8+T細胞/Treg比。グラフは、1回の実験から得られたデータを示す(n=6マウス/群)。四分位による中央値が示される。(C)治療の7日後、マウスを屠殺し、脾臓を収集した。脾細胞を37℃で48h、抗-CD3εでインキュベートした。上澄みを採取し、(左パネル)IFNγ、(中央パネル)IL-17A及び(右パネル)IL-6の濃度を、ELISAにより分析した。グラフは、1回の実験から得られたデータを示す(n=6マウス/群)。四分位による中央値を示す。(D)腫瘍体積を、2~3日置きに測定し、VTDiは、治療開始の日の腫瘍体積に対応し、VTDxは、腫瘍体積に対応する。VTDx対VTDi比(VTDx/VTDi)は、1回の実験(n=6マウス/群)から示される。グラフは、平均値±SEMを示す。(A、B、C)クラスカル-ウォリス検定を用いた統計解析では、95%CIで有意差が示された。(D).二元配置ANOVA検定を用いた統計解析では、95%CIで有意差が示された。(A、B、C、D)これらの解析の探索的な成分のため、多重比較についての調整をしなかった。*は、p<0.05;**は、p<0.01;***は、p<0.001;****は、p<0.0001である。
図3】抗-PD1 mAbs及びG-IFO併用療法では、強力な抗腫瘍効果を誘導した。MCA205腫瘍-形成マウスに、低用量(150mg/kg)又は高用量(300mg/kg)のIFO150、低用量(当量100mg/kg)のG-IFO又はビヒクルの単回i.p.注射を用いて注射した。抗-PD1 Mabs又はそのアイソタイプ対照IgG2との組合せは、マウス当たり200又は250μgで、3回のi.p.注射を用いて行っている。灰色の矢印は、ビヒクル又は化学療法注射を表し;黒色の矢印は、IgG2又は抗-PD1注射を表す。腫瘍体積を、2~3日置きに測定した。VTDxは、X日目の腫瘍体積に対応する。方法において記載される通り、腫瘍体積が境界点に達したとき、マウスを屠殺した。(A)アイソタイプ対照IgG2又は抗-PD1 mAbsと組み合わせて治療した群の場合、平均値±SEM(1群当たりのマウスn=6)としてのVTDx対VTDi比(VTDx/VTDi)を示すグラフである。(上部パネル)動力学的腫瘍増殖及び(下部パネル)VTD23/VTDiを示す。二元配置ANOVA検定を用いた統計解析では、95%CIで有意差が示された。これらの解析の探索的な成分のため、多重比較についての調整をしなかった。*は、p<0.05;**は、p<0.01;***は、p<0.001;****は、p<0.0001である。(B)初回体積の5倍に達する時間を示すグラフである。四分位による中央値が示される。マンホイットニー検定を用いた統計解析では、95%CIで有意差が示された。*は、p<0.05;**は、p<0.01;***は、p<0.001;****は、p<0.0001である。
図4】IFO、CPA又はG-IFOで治療した腫瘍-形成マウスの脾臓における用量依存的なB細胞除去を示す図である。C57Bl/6は、IFO(150mg/kg)又はCPA(CPM100mg/kg)又はG-IFO(eg.100又は150mg/kg)又はビヒクル(DMSO/Tween80/NaCl0.9%(5/5/90、v/v/v)の単回i.p.注射を用いて注射した。7日後、マウスを屠殺し、脾臓を収集した。B細胞を検出し、フローサイトメトリー法を用いて機械により解離した後、脾臓において定量化した。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、がんを治療する又は予防するための、オキシアザホスホリン誘導体及び免疫チェックポイントモデュレーターによる新たな併用療法に関する。
【0038】
実施例セクションにおいて示す通り、本発明者らは、オキシアザホスホリン誘導体、例えば、ゲラニルオキシ-IFO(G-IFO)が、低用量で用いたとき、in vivoにおける免疫調節活性を示すことができるということを実証した(図2)。より正確に言えば、本発明者らは、低用量のG-IFOが、腫瘍-形成マウスにおいてTh1極性化を助け、T細胞-依存性抗腫瘍効果を誘導したことを示した。
【0039】
更に、本発明者らは、本発明のオキシアザホスホリン誘導体が、かかる免疫療法に対して反応が乏しいことが知られる、MCA205腫瘍モデルにおける免疫チェックポイント免疫療法の有効性を有意に増強したことを示した。
【0040】
より正確に言えば、本発明者らは、G-IFOが、抗-PD1 mAbsと組み合わせて用いたとき、腫瘍増殖を大いに低下させたことを示した(図3)。更に、初回体積が5倍に達する時間は、G-IFO当量100mg/kg単独及び抗PD1 mAb単独と比較して、G-IFO当量100mg/kg+抗-PD1 mAbsで大いに遅延した。全体的に見て、これらの結果は、腫瘍増殖に対する抗-PD1抗体とのG-IFOの相乗効果を明らかに実証する(図3B)。注目すべきことに、かかる相乗効果は、イホスファミド(IFO)の抗-PD1抗体との治療の組合せの場合観察されなかった(図3)。
【0041】
本発明者らは、マウスにおけるG-IFOのi.p.注射後、免疫修飾を更に精査した。B細胞母集団は、B細胞の高い感受性を明確に示す低用量のG-IFO(当量100mg/kg)でも、オキシアザホスホリンにより非常に影響を受けたと思われた。かかるB細胞の減少は、免疫チェックポイント免疫療法によって頻繁に観察された免疫関連有害事象(irAE)を防止する又は減少させることにより、免疫チェックポイント阻害剤と共に本発明のオキシアザホスホリン誘導体を用いたとき、利点でありうる。
【0042】
したがって、本発明の第1の目的は、がんを予防する又は治療するための、免疫チェックポイントモデュレーターと組み合わせた、オキシアザホスホリン誘導体の使用である。
【0043】
本発明はまた、オキシアザホスホリン誘導体が、免疫チェックポイントモデュレーターと組み合わせて、対象に投与される対象においてがんを治療する又は予防するための方法に関する。
【0044】
本発明は、更に、薬物が、免疫チェックポイントモデュレーターと組み合わせて投与される、がんを治療する又は予防するための薬物の調製におけるオキシアザホスホリン誘導体の使用に関する。
【0045】
本発明はまた、がんを治療する又は予防するための薬物の調製における、オキシアザホスホリン誘導体及び免疫チェックポイントモデュレーターの使用に関する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「併用療法」又は「他と組み合わせた薬物の使用」とは、対象が、単一の疾患を治療するために、2種以上の治療薬を用いて投与される、治療を意味する。更に以下に記載される通り、2種以上の治療薬の投与は、同時に、別々に、継続的に、付随的に、又は連続的に行うことができる。2種以上の治療薬の効果は、同時に及び/又はまったく同じ期間中、正確に効果をもたらす必要はない。治療薬の効果は、組み合わせてそれらの使用により探索される、合わせた治療活性を発揮するのに十分な期間重複することのみに必要とされる。
【0047】
したがって、併用療法は、単一の医薬組成物において、同じ医薬剤形で及び/又は同じ投与経路により同時に投与される治療薬を求める必要はない。
【0048】
本明細書で使用される場合、「がん」という用語は、アップレギュレートされた細胞増殖を伴い、悪性度により特徴付けられた哺乳動物における障害を意味する。がんは、任意のタイプのものでありうる。がんは、固形腫瘍又は造血器がんでありうる。
【0049】
好ましくは、がんは、癌、肉腫、リンパ腫、白血病、胚細胞腫瘍、芽細胞腫及びメラノーマからなる群から選択される。例えば、がんは、それだけに限らないが、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)、ホジキン病、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、有棘細胞癌、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、胃腸がん、腎がん(renal cancer)、卵巣がん、肝臓がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん(kidney cancer)、前立腺がん、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵臓がん、多形成グリア芽細胞腫、子宮頚がん、胃がん(stomach cancer)、膀胱がん、悪性肝細胞癌、乳がん、結腸癌、及び頭頚部がん、胃がん(gastric cancer)、胚細胞腫瘍、小児肉腫、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、骨肉腫、軟部組織肉腫、副鼻腔NK/T-細胞リンパ腫、骨髄腫、メラノーマ、メルケル細胞癌(MCC)、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、又は慢性リンパ球性白血病から選択することができる。
【0050】
いくつかの好ましい実施形態では、がんは、慢性白血病、急性リンパ性白血病、ホジキン病、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫、肺のがん、三種陰性乳がんを含む乳がん、泌尿生殖器がん、例えば、前立腺、膀胱、精巣、子宮頚部又は卵巣のがん等、肉腫、例えば、骨肉腫及び小児軟部組織肉腫を含む軟部組織肉腫、神経芽細胞腫、骨髄腫、メルケル細胞癌及びメラノーマからなる群から選択することができる。
【0051】
より好ましくは、がんは、骨肉腫及び軟部組織肉腫を含めた肉腫、三種陰性乳がんを含む乳がん、胃腸がん、泌尿生殖器がん及び非小細胞肺癌及び小細胞肺癌を含めた肺がんから選択される。
【0052】
いくつかの実施形態では、がんは、以前の抗がん治療、例えば、スタンドアロンとしての化学療法、分子標的療法若しくは免疫療法又は化学療法プラス免疫療法治療による治療等に対してがん抵抗性でありうる。したがって、本発明の治療の組合せは、対象におけるがんの二次治療として用いられる。
【0053】
いくつかの他の実施形態では、治療の組合せは、対象におけるがんの一次治療として用いられる。
【0054】
別の実施形態では、がんは、対象における再発がんでありうる。
【0055】
対象は、非ヒト又はヒト、好ましくは、人間でありうる。対象は、任意のジェンダー及び/又は任意の年齢の対象でありうる。いくつかの実施形態では、対象は、小児である。他の実施形態では、対象は、成人である。
【0056】
本明細書で使用される場合、「がんの治療」又は「がんを治療する」には、腫瘍増殖の進行を含めた、がんの進行を治癒する、遅延させる、緩和する又は遅らせること並びに対象におけるがんの症状のうちの1つ又は複数の予防、減弱、緩徐化、逆戻り又は消失が含まれる。これはまた、対象における腫瘍を根絶するという事実を包含する。用語「がんの治療」とは、対象における「全生存期間」及び/又は「無増悪生存期間」を改善するという事実をやはり包含する。
【0057】
排除されないが、「がんを治療する」という表現は、がん又はそれに伴う症状が、対象において完全に排除されることを意味するものではない。
【0058】
「無増悪生存期間」の改善は、対象が、悪化せずに、がんと共に生存する、がんの治療中及び治療後の時間の長さが増加することを意味する。「全生存期間」とは、患者がまだ生きている、がんの治療の開始からの時間の長さを意味する。「無増悪生存期間」及び「全生存期間」の数値は、適切なサイズの臨床試験から決定された平均値として通常決定される。
【0059】
「がんの予防」には、がん又は上記がんに伴う1種若しくは複数の症状の開始を予防する、又は遅延させることが含まれる。「がんの予防」はまた、患者の健康状態を寛解させることを目的とした任意の行為、例えば、疾患の療法、予防及び遅延及び/又は患者が疾患により苦しめられないようにすることを目的とした任意の行為をも意味する。いくつかの実施形態では、本用語はまた、本発明の治療の組合せを投与されていない患者と比較した通り、上記がんを患う患者についてのリスク(又は確率)を最小限にすることを意味する。
【0060】
- オキシアザホスホリン誘導体
本明細書で使用される場合、オキシアザホスホリン誘導体は、部分(M):
【0061】
【化6】
【0062】
を含む化合物を意味する。
【0063】
本発明と関連して、目的とするオキシアザホスホリン誘導体は、その環の炭素C-4において置換基を含むものである。かかるオキシアザホスホリン誘導体は、例えば、特許出願WO2015/173367及びWO2012/076824に記載され、その内容を参照により本明細書に組み込む。
【0064】
本発明と関連して、目的とするオキシアザホスホリン誘導体は、式(I):
【0065】
【化7】
【0066】
[式中、
- Aは、O-O、O、S、NH、NR5(式中、R5は、アルキル基、好ましくは、C1~C3アルキル基である)、又は好ましくは分子量が500g.mol-1までの、より好ましくは、400g.mol-1より低いリンカー基であり、
- R1、R2及びR3は、独立に、-H、-CH(CH3)-CH2-X及び-(CH2)2-X(式中、Xは、ハロゲン原子、好ましくは、Cl、Br又はI、より好ましくは、Br又はClである)からなる群から選択され、
- R4は、H又は場合によっては1個若しくは複数個のヘテロ原子、例えば、S、O及びNHにより中断され、場合によっては独立に、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、CN、CF3、OH、C1~C6アルキル、C1~C6ヒドロキシアルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6アミノアルキル、C1~C6ハロゲノアルキル、-C2~C6アルコキシアルキル、-C(O)OR、-OC(O)R、-OC(O)OR、-C(O)R、-NHC(O)-NH-R、-NH-C(O)-R、-C(O)-NH-R、-NRR'、-C(O)NRR'、-NC(O)R、-NRC(O)R'、及び-SR(式中、R及びR'は、独立に、H及びC1~C6アルキルから選択される)からなる群から選択される1つ又は複数の置換基により置換される2~30個の炭素原子の飽和若しくは不飽和鎖である]のもの、及び薬学的に許容されるその塩又は溶媒和物である。
【0067】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、対象の組織との接触に適した、又は過度の毒性若しくは妥当な利益/危険比での他の合併症もなく、対象に投与することができる、組成物、化合物、塩等を意味する。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「溶媒和物」又は「薬学的に許容される溶媒和物」とは、本発明の化合物の1個又は複数の分子の溶媒の1個又は複数の分子との会合から形成された、溶媒和物を意味する。用語溶媒和物には、水和物、例えば、半-水和物、一水和物、二水和物、三水和物、四水和物等が含まれる。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に許容される塩」とは、一般に、本発明のオキシアザホスホリン誘導体を、適当な有機酸又は無機酸と接触させることにより調製することができる、非毒性塩を意味する。例えば、医薬用塩は、それだけに限らないが、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩(benzonate)、炭酸水素塩、重硫酸塩、酒石酸水素塩、臭化物、酪酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二リン酸塩、フマル酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩等でありうる。
【0070】
本明細書で使用される場合、「リンカー基」とは、化合物がin vivoでアルキル化マスタードを放出する能力を損なわずに、R4基をオキシアザホスホリン骨格と接続させるのに適した、任意の化学基を意味する。例えば、リンカーは、
- 天然及び非天然アミノ酸;
- 2~10種、好ましくは、2~5種のアミノ酸及びそれらの誘導体を含むペプチド;
- -N(R6)-[式中、R6は、アルキル基、特に、C1~C3アルキルである]、
- -OH、C1~C4アルキル及びC1~C4アルキルオキシ基から選択される、1つ又は複数の置換基により場合によっては置換される、且つ/又は場合によっては、
○1個若しくは複数個のヘテロ原子、例えば、NH、S及びO等;及び/又は
○1つ若しくはいくつかの化学基、例えば、-NHC(O)-、-OC(O)-、OC(O)O、-NH-C(O)-NH-、-S-S-、及び-CR7=N-NH-C(O)-、-ONH-、-ONR7--O-C(=S)-S-、-C(=S)-S-[式中、R7は、H又はC1~C6アルキルである]、及び/又は
○1つ若しくは複数のヘテロアリール又はアリール基、及び/又は
○好ましくは、4~6個の原子を含み、-OH、C1~C4アルキル及びC1~C4アルキルオキシ基から選択される、1つ若しくは複数の置換基により場合によっては置換される、1つ又は複数の脂肪族環(aliphatic cycle)又は複素環を含む、C1~C10炭化水素鎖からなる群から選択することができる。
【0071】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、Aが、O、S、及び-NH-の群から選択される、又は
- 天然若しくは非天然アミノ酸、ジペプチド、及びそれらの誘導体;
- 好ましくは、2~6個のモノマー、例えば、2、3、又は4個のモノマーを含む、ポリエーテル基、例えば、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール;
- 例えば、式-CR7=N-NH-C(O)-(式中、R7は、H又はC1~C6、好ましくは、C1~C3アルキルである)のヒドラゾンリンカー、
- -O-(C=S)-S-、-ONR7-、-NR7O-(式中、R7は、H又はC1~C6であり、好ましくは、C1~C3アルキルである)、
- Y1-(CH2)n-Y2(式中、nは、1~8の整数であり、Y1及びY2は、独立に、-O-、-S-、-OC(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-O-、-C(O)NR7-、NR7C(O)-、-OC(S)S-、-SC(S)O- -NR7-、-ONR7-、-NR7O-、NR7C(S)S-、-SC(S)NR7-から選択される)
及び
【0072】
【化8】
【0073】
[式中、R7は、H及びC1~C6、好ましくは、C1~C3アルキルの群から選択され、pは、0~8、好ましくは、1、2又は3の整数である]からなる群から選択されるスペーサー部分を含む、若しくはそれからなるようなものである。
【0074】
別の実施形態では、Aは、
- O、O-O、S、-O-(C=S)-S-、-ONR7-、-NR7O-[式中、R7は、H又はC1~C3アルキル、好ましくは、CH3である]
- シトルリン、リジン、オルニチン、アラニン、フェニルアラニン、システイン、グリシン、バリン、ロイシン及びそれらのジペプチド、例えば、バリン-シトルリン等、
- Y1-(CH2)n-Y2、及び
- Y1-(CH2-CH2-O)a-CH2-CH2-Y2
[式中、Y1及びY2は、上記で定義される通りであり、好ましくは、独立に、O、NR7、S、OC(O)、C(O)O、NHCO、CONHから選択され、R7は、H又はC1~C3アルキルであり、好ましくは、-CH3であり、nは、1~8、好ましくは、1、2、3、又は4の整数であり、aは、1~3の整数である]からなる群から選択される部分からなる、又はそれを含む。
【0075】
式Y1-(CH2)n-Y2のリンカーの例は、システアミン並びに次の部分、すなわち、
【0076】
【化9】
【0077】
[式中、R7は、H又はC1~C3アルキルであり、X1は、O又はSであり、mは、0~7、好ましくは、1、2又は3の整数である]を包含する。
【0078】
更なるいくつかの実施形態では、Aは、O-O、O、S、-NH-システアミンリンカー(すなわち、-C(O)NH-CH2-CH2-S-)、バリン-シトルリンリンカー及びシステインリンカーからなる群から選択される。
【0079】
いくつかの実施形態では、R1、R2及びR3のうちの1つは、Hであり、他の残りの2つの基は、独立に、-CH(CH3)-CH2-X及び-(CH2)2-X[式中、Xは、好ましくは、Cl又はBrである]から選択される。
【0080】
更なる実施形態では、式(I)の化合物は、R1が、Hであり、R2及びR3が、独立に、-CH(CH3)-CH2-X及び-(CH2)2-Xから選択されるようなものである。好ましくは、R2及びR3は、同一である。
【0081】
別の実施形態では、式(I)の化合物は、R2が、Hであり、R2及びR3が、独立に、-CH(CH3)-CH2-X及び-(CH2)2-Xから選択されるようなものである。好ましくは、R1及びR3は、同一である。
【0082】
詳細な実施形態では、式(I)の化合物は、R1、R2及びR3のうちの1つが、Hであり、他の残りの2つの基が、-CH(CH3)-CH2-X[式中、Xは、好ましくは、Cl又はBrである]であるようなものである。
【0083】
別の実施形態では,、式(I)の化合物は、R1、R2及びR3のうちの1つが、Hであり、他の残りの2つの基が、-(CH2)2-X[式中、Xは、好ましくは、Cl又はBrである]であるようなものである。
【0084】
更なる実施形態では、R1、R2及びR3は、独立に、-CH(CH3)-CH2-X及び-(CH2)2-Xから選択される。好ましくは、R1、R2及びR3は、同一である。
【0085】
例えば、R1、R2及びR3は、-CH(CH3)-CH2-X[式中、Xは、好ましくは、Cl又はBrである]である。
【0086】
別の例として、R1、R2及びR3は、-CH2-CH2-X及び-(CH2)2-X[式中、Xは、好ましくは、Cl又はBrである]である。
【0087】
いくつかの実施形態では、R4は、Hでありうる。R4がHである場合、Aは、好ましくは、O又は-O-O-である。
【0088】
或いは、R4は、1個又は複数(例えば、1~10個、例えば、1、2、3、4又は5個)の不飽和を含むことができ、これは、二重結合及び/又は三重結合でありうる。いくつかの実施形態では、R4は、その主鎖中の1~10個、好ましくは、1~5個の、二重結合を含む。
【0089】
いくつかの実施形態では、R4は、3~25個又は5~10個(例えば、5、5、7、8、9、10個)の炭素原子を含むことができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、R4は、独立に、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、-CN、OH、CF3、C1~C3アルキル、C1~C3ヒドロキシアルキル、C1~C3アルキルオキシ、C1~C3アミノアルキル、C1~C3ハロゲノアルキル、-C2~C4アルコキシアルキル、-C(O)OR、-OC(O)R、-OC(O)OR、-C(O)R、-NHC(O)-NH-R、-NH-C(O)-R、-C(O)-NH-R、-NRR'、-C(O)NRR'、-NC(O)R、-NRC(O)R'、及び-SR[式中、R及びR'は、独立に、H及びC1~C6、好ましくは、C1~C3アルキルから選択される]からなる群から選択される、1つ又は複数の置換基により場合によっては置換される、2~30個の炭素原子の飽和又は不飽和の、炭化水素鎖である。
【0091】
いくつかの他の実施形態では、R4は、独立に、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、-CN、C1~C3アルキル、C1~C3ヒドロキシアルキル、及びC1~C3アルキルオキシからなる群から選択される、好ましくは、-OH、-F、Cl、Br、I、-OCH3及びCH3からなる群から選択される、1つ又は複数の置換基により場合によっては置換される、2~30個の炭素原子の飽和又は不飽和の、炭化水素鎖である。
【0092】
式(I)の好ましい化合物は、R4が、上記に記載された不飽和鎖の群から選択されるものである。いくつかの詳細な実施形態では、R4は、独立に、ハロゲン(例えば、F、Cl、Br、I)、-CN、C1~C3アルキル、C1~C3ヒドロキシアルキル、及びC1~C3アルキルオキシからなる群から選択される、好ましくは、-OH、-F、Cl、Br、I、-OCH3及びCH3、より好ましくは、-OH、-OCH3及び-CH3からなる群から選択される1つ又は複数の置換基により場合によっては置換される、3~30個、好ましくは、5~30個、例えば、5~20個又は5~10個の炭素原子を含む、不飽和炭化水素鎖である。
【0093】
本発明の詳細な実施形態では、R4は、1個又は複数のイソプレン単位を含む。例えば、R4は、非環式テルペン部分で構成することができる又はそれを含むことができる。例えば、R4は、ゲラニル基、ファルネシル基及びスクアレニル基:
【0094】
【化10】
【0095】
【化11】
【0096】
【化12】
【0097】
から選択される化学部分を含むことができる、又はそれで構成することができる。
【0098】
スクアレニル基を含む、目的とする化合物は、WO2012/076824に記載されているもの、例えば:
【0099】
【化13】
【0100】
(以下、SQ-FOという)
及び
【0101】
【化14】
【0102】
(以下、チオ-SQ-IFOという)である。
【0103】
好ましい態様では、本発明は、がんを治療する又は予防するために、免疫チェックポイントモデュレーターと組み合わせた、オキシアザホスホリン誘導体の治療用途を意味し、オキシアザホスホリン誘導体は、式(Ia):
【0104】
【化15】
【0105】
[式中、
- nは、0~3、好ましくは、1又は2の整数であり、
- A、R1、R2及びR3は、式(I)の化合物について定義された通りである]のもの
及び薬学的に許容されるその塩及び溶媒和物である。
【0106】
いくつかの実施形態では、式(Ia)の化合物は、
- nは、1又は2であり、
- Aが、O-O、O、S、及び-NH-、好ましくは、O、S及びNHの群から選択される、又は
- 天然若しくは非天然アミノ酸、ジペプチド、及びそれらの誘導体;
- 好ましくは、2~6個のモノマー、例えば、2、3、又は4個のモノマーを含む、ポリエーテル基、例えば、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール;
- 例えば、式-CR7=N-NH-C(O)-(式中、R7は、H又はC1~C6、好ましくは、C1~C3アルキルである)のヒドラゾンリンカー、
- -O-(C=S)-S-、-ONR7-、-NR7O-(式中、R7は、H又はC1~C6であり、好ましくは、C1~C3アルキルである)、
- Y1-(CH2)n-Y2(式中、nは、1~8の整数であり、Y1及びY2は、独立に、-O-、-S-、-OC(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-O-、-C(O)NR7-、NR7C(O)-、-OC(S)S-、-SC(S)O- -NR7-、-ONR7-、-NR7O-、NR7C(S)S-、-SC(S)NR7-から選択される)
及び
【0107】
【化16】
【0108】
[式中、R7は、H及びC1~C6、好ましくは、C1~C3アルキルの群から選択され、pは、0~8、好ましくは、1、2又は3の整数である]からなる群から選択されるスペーサー部分を含み、若しくはそれからなり、
- R1、R2及びR3は、R1、R2及びR3のうちの1つが、Hであり、他の残りの2つの基が、独立に、-CH(CH3)-CH2-X及び-(CH2)2-X(式中、Xは、好ましくは、Cl又はBrである)から選択されるようなものである。詳細な態様では、オキシアザホスホリン誘導体は、R1、R2及びR3のうちの1つがHであり、他の残りの2つの基が、-(CH2)2-X[式中、Xは、好ましくは、Cl又はBrである]である、式(Ia)のものである。別の態様では、オキシアザホスホリン誘導体は、R1、R2及びR3のうちの1つが、Hであり、他の残りの2つの基が、-CH(CH3)-CH2-X[式中、Xは、好ましくは、Cl又はBrである]である式(Ia)のものである。
【0109】
他の実施形態では、式(Ia)の化合物は、
- nが、1又は2、好ましくは、1であり、
- Aが、O、S又はNHである、又は
- -O-(C=S)-S-、-ONR7-、-NR7O-(式中、R7は、H又はC1~C3アルキル、好ましくは、CH3である)
- シトルリン、リジン、オルニチン、アラニン、フェニルアラニン、システイン、グリシン、バリン、ロイシン及びそれらのジペプチド、例えば、バリン-シトルリン等、
- Y1-(CH2)n-Y2、及び
- Y1-(CH2-CH2-O)a-CH2-CH2-Y2
[式中、Y1及びY2は、上記で定義される通りであり、好ましくは、独立に、O、NR7、S、OC(O)、C(O)O、NHCO、CONHから選択され、R7は、H又はC1~C3アルキルであり、好ましくは、-CH3であり、nは、1~8、好ましくは、1、2、3、又は4の整数であり、aは、1~3の整数である]からなる群から選択される部分であり、
- R1、R2及びR3が、R1、R2及びR3のうちの1つが、Hであり、他の残りの2つの基が、同一であり、-CH(CH3)-CH2-X及び-(CH2)2-X[式中、Xは、好ましくは、Cl又はBrである]から選択されるようなものであるようなものである。詳細な態様では、R1、R2及びR3のうちの1つは、Hであり、他の残りの2つの基は、-(CH2)2-X[式中、Xは、好ましくは、Cl又はBrである]である。別の態様では、R1、R2及びR3のうちの1つは、Hであり、他の残りの2つの基は、-CH(CH3)-CH2-X[式中、Xは、好ましくは、Cl又はBrである]である。
【0110】
詳細な実施形態では、式(Ia)の化合物は、
- nが、1又は2、好ましくは、1であり、
- Aが、O、S、-NH-システアミンリンカー(すなわち、-C(O)NH-CH2-CH2-S-)、バリン-シトルリンリンカー及びシステインリンカーからなる群から選択され、
- R1、R2及びR3は、
R1がHであり、R2及びR3が同一であり、
-CH(CH3)-CH2-X及び-(CH2)2-X[式中、Xは、Br又はClである]からなる群から選択され;又は
R2がHであり、R1及びR3が同一であり、
-CH(CH3)-CH2-X及び-(CH2)2-X[式中、Xは、Br又はClである]からなる群から選択されるようなものであるようなものである。
【0111】
式(Ia)の好ましい化合物は、以下に示される式(IIa)及び(IIb)
【0112】
【化17】
【0113】
[式中、
- nは、1又は2であり、
- Rは、H又はCH3であり、
- Xは、Cl又はBrであり、
- Aは、O、S、-NH-、システアミンリンカー、バリン-シトルリンリンカー及びシステインリンカーからなる群から選択される]のもの、並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物である。
【0114】
詳細な態様では、オキシアザホスホリン誘導体は、
- nが1であり、AがOであり、XがClであり、RがHである、式(IIa)の化合物、
- nが1であり、AがOであり、XがClであり、RがCH3である、式(IIa)の化合物、
- nが1であり、AがOであり、XがBrであり、RがHである、式(IIa)の化合物、
- nが1であり、AがOであり、XがBrであり、RがCH3である、式(IIa)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがClであり、RがHである、式(IIa)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがClであり、RがCH3である、式(IIa)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがBrであり、RがHである、式(IIa)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがBrであり、RがCH3である、式(IIa)の化合物、
- nが1であり、AがOであり、XがClであり、RがHである、式(IIb)の化合物、
- nが1であり、AがOであり、XがClであり、RがCH3である、式(IIb)の化合物、
- nが1であり、AがOであり、XがBrであり、RがHである、式(IIb)の化合物、
- nが1であり、AがOであり、XがBrであり、RがCH3である、式(IIb)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがClであり、RがHである、式(IIb)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがClであり、RがCH3である、式(IIb)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがBrであり、RがHである、式(IIb)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがBrであり、RがCH3である、式(IIb)の化合物、
並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物からなる群から選択される。
【0115】
例えば、オキシアザホスホリン誘導体は、
- nが1であり、AがOであり、XがClであり、RがCH3である、式(IIa)の化合物、
- nが1であり、AがOであり、XがBrであり、RがCH3である、式(IIa)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがClであり、RがCH3である、式(IIa)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがBrであり、RがCH3である、式(IIa)の化合物、
- nが1であり、AがOであり、XがClであり、RがCH3である、式(IIb)の化合物、
- nが1であり、AがOであり、XがBrであり、RがCH3である、式(IIb)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがClであり、RがCH3である、式(IIb)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがBrであり、RがCH3である、式(IIb)の化合物、
並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物からなる群から選択される。
【0116】
別の例として、オキシアザホスホリン誘導体は、
- nが1であり、AがOであり、XがClであり、RがHである、式(IIa)の化合物、
- nが1であり、AがOであり、XがBrであり、RがHである、式(IIa)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがClであり、RがHである、式(IIa)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがBrであり、RがHである、式(IIa)の化合物、
- nが1であり、AがOであり、XがClであり、RがHである、式(IIb)の化合物、
- nが1であり、AがOであり、XがBrであり、RがHである、式(IIb)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがClであり、RがHである、式(IIb)の化合物、
- nが2であり、AがOであり、XがBrであり、RがHである、式(IIb)の化合物、
並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物からなる群から選択される。
【0117】
更に詳細な実施形態では、オキシアザホスホリン誘導体は、
- nが1であり、AがOであり、XがClであり、R4がHである、式(IIa)の化合物、
【0118】
【化18】
【0119】
(以下、ゲラニルオキシ-IFOという)、
- nが1であり、AがOであり、XがBrであり、R4がCH3である、式(IIa)の化合物、
【0120】
【化19】
【0121】
(以下、メチル化ゲラニルオキシ-IFO)、
並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物から選択される。
【0122】
別の実施形態では、オキシアザホスホリン誘導体は、
- nが1であり、AがOであり、XがClであり、R4がHである、式(IIb)の化合物、
【0123】
【化20】
【0124】
(以下、ゲラニルオキシ-CPAという)、
- nが1であり、AがOであり、XがBrであり、R4がCH3である、式(IIb)の化合物、
【0125】
【化21】
【0126】
(以下、メチル化ゲラニルオキシ-CPA)、
並びに薬学的に許容されるそれらの塩及び溶媒和物から選択される。
【0127】
式(I)、(Ia)、(IIa)及び(IIb)の化合物を調製するための方法は、周知である。当業者は、標準的な手順を参照してもよい。当業者は、特許出願WO2012/076824及びWO2015/173367に記載された合成方法のうちのいずれか1つを参照してもよい。
【0128】
本発明によるいくつかのオキシアザホスホリン誘導体、特に、C-4位で直鎖状テルペン部分(例えば、ファルネシル、スクアレニル及びゲラニル基)を有するもの、好ましくは、式(Ia)の化合物は、ナノ粒子に自己組織化することが可能である。ナノ粒子への上記自己集合は、本化合物の生物活性、例えば、その細胞毒性を高め、癌性の細胞へのその送達を改善することができる。更に、ナノ粒子の形態の本化合物は、保管中のその遊離型と比較した通り、安定性を改善させることができる。いくつかの実施形態では、オキシアザホスホリン誘導体は、ナノ粒子の形態となる。
【0129】
したがって、本発明の詳細な実施形態では、オキシアザホスホリン誘導体は、ナノ粒子の形態で患者に投与される。そのような実施形態では、オキシアザホスホリン誘導体は、構成物として、より好ましくは、ナノ粒子の主な成分として存在し、それにおけるオキシアザホスホリン誘導体が、ナノ粒子の総質量のうち、質量50%超、例えば、質量で、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、又は99.5%超を占めることができることを意味する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、式(I)、好ましくは、式(Ia)のオキシアザホスホリン誘導体の分子の自己形成、例えば、式(IIa)及び(IIb)のものにより形成される。
【0130】
本発明のかかるナノ粒子の平均水力学的直径は、通常、10~800nm、好ましくは、30~500nm、特に、50~400nmである。例えば、ナノ粒子は、平均水力学的直径が、70nm~200nm、例えば、100nm~250nmでありうる。平均水力学的直径は、20℃で動的光散乱法により、例えば、Nanosizer ZS(Malvern Instrument社、France)を用いることにより、好ましくは決定される。オキシアザホスホリン誘導体のナノ粒子は、有機溶媒、例えば、アセトン又はエタノールに、この誘導体を溶解し、次いで、撹拌しながら水性相にこの混合物を加え、界面活性剤を用いて又は用いずに、ナノ粒子を形成させることによりうることができる。界面活性剤には、例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、ラウリル硫酸ナトリウム、リン脂質誘導体及びポリエチレングリコールの親油性誘導体が含まれる。
【0131】
いくつかの実施形態では、オキシアザホスホリン誘導体は、コロイド系、好ましくは、水性媒体中に存在するナノ粒子の形態で、対象に投与される。
【0132】
- 免疫チェックポイントモデュレーター
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント経路」とは、自己免疫寛容を維持する及び免疫応答の持続時間及び振幅を調節する責任を負う免疫系の調節経路を意味する。
【0133】
腫瘍細胞は、抗腫瘍免疫応答を抑制する免疫チェックポイント経路の活性化により免疫学的監視を回避することができるということが示された。特に、腫瘍細胞は、免疫寛容性があるランドスケープを確立する免疫チェックポイントについて、リガンド、例えば、PD-L1等の発現によって、免疫回避のメディエーターを提供しうるということが示された。免疫チェックポイントモデュレーター、例えば、抗-PD-1、抗-PD-L1及び抗-CTLA-4モノクローナル抗体等は、多くの腫瘍、例えば、メラノーマ及び小細胞肺がんに有効であることが示された(Hodi、NEJM、2010、363(8):711~723頁、Zielinski、Annals of Oncology、2013、24(5):1170~9頁)。
【0134】
本発明と関連して、免疫チェックポイントモデュレーターとは、免疫学的監視からの腫瘍細胞の回避を防止する又は減少させることが可能な、例えば、免疫応答、好ましくは、抗-腫瘍応答、より好ましくは、T-細胞によって媒介される抗-腫瘍免疫応答の非活性化を誘導する、増進する、持続する、回復する、活性化する又は防止することが可能な、任意の治療薬を意味する。
【0135】
免疫チェックポイント経路は、免疫チェックポイントタンパク質により調節される。
【0136】
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイントタンパク質」は、タンパク質、通常、免疫応答の程度を調整する又は調節する、受容体(例えば、CTLA4又はPD-1)又はリガンド(例えば、PD-L1又はPD-L2)である。免疫チェックポイントタンパク質は、抑制性でも刺激性でもよい。特に、免疫チェックポイントタンパク質は、免疫応答の活性化に対して抑制性でありうる。したがって、抑制性免疫チェックポイントタンパク質の阻害は、免疫応答、例えば、T細胞活性化及び増殖を刺激する又は活性化するために作用する。同様に、刺激性免疫チェックポイントタンパク質の活性化は、免疫応答を刺激する又は活性化するために作用する。
【0137】
本発明と関連して、標的免疫チェックポイントタンパク質は、それだけに限らないが、PD1(プログラム死-1)並びにそのリガンドPD-L1及びPD-L2、CTLA4(細胞傷害性Tリンパ球抗原-4)、LAG-3、TIM-3、TIGIT、2B4/CD244並びにOX40を包含する。
【0138】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモデュレーターとは、抑制性免疫チェックポイント経路を阻害する又は遮断することが可能な治療薬を意味する。そのような場合では、免疫チェックポイントモデュレーターは、免疫チェックポイント遮断薬(ICB)としても公知の免疫チェックポイント阻害剤である。
【0139】
いくつかの詳細な実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PD-1、LAG-3、TIM-3、TIGIT又は2B4/CD244免疫チェックポイント経路を阻害する薬剤である。いくつかの好ましい実施形態では、標的タンパク質は、LAG-3、PD1、リガンドPD-L1、CTLA、TIM-3、TIGIT及び2B4/CD244から選択される。いくつかの他の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、2B4/CD244阻害剤及びそれらの組合せから選択され、より好ましくは、PD1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIGIT阻害剤及びそれらの組合せから選択され、更により好ましくは、PD1阻害剤、PD-L1阻害剤、及びCTLA-4阻害剤から選択される。
【0140】
本明細書で使用される場合、阻害剤は、目的とするタンパク質標的に結合し、その活性を抑制する(例えば、遮断する又は低下させる)ことが可能な治療薬を意味する。例えば、免疫チェックポイント阻害剤は、目的とする免疫チェックポイントタンパク質を結合する及び/又は遮断することにより、抑制性経路を遮断することができる。阻害剤は、競合的でも非競合的でもよく、例えば、立体でもアロステリックでもよい。
【0141】
いくつかの他の実施形態では、免疫チェックポイントモデュレーターとは、例えば、刺激性免疫チェックポイント受容体を結合する及び活性化することにより、刺激性免疫チェックポイント経路を活性化することが可能な治療薬を意味する。例えば、かかる免疫チェックポイントモデュレーターは、OX40免疫経路、通常、OX40受容体のアゴニストを活性化する薬剤である。
【0142】
詳細な実施形態では、免疫チェックポイントモデュレーターは、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、TIGIT阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、OX-40アゴニスト及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0143】
本発明と関連して、免疫チェックポイントモデュレーターは、任意のタイプのものでありえ、小型の合成化学薬品、タンパク質、例えば、リガンド及び融合タンパク質、抗体及びそれらの断片、ペプチド及び核酸、例えば、アプタマー及びアンチセンスオリゴヌクレオチドから選択することができる。
【0144】
本明細書で使用される場合、「アプタマー」(核アプタマーとも呼ばれる)は、通常、長さ20~150ヌクレオチドを含み、高親和性の標的分子と結合することが可能な合成の一本鎖ポリヌクレオチドを意味する。アプタマーは、それらの標的分子とのそれらの相互作用において最重要な役割を果たしうる三次元の高次構造により特徴付けられる。
【0145】
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、水素結合によって標的核酸にハイブリダイゼーションを行うことが可能な核酸を意味する。アンチセンス化合物の例には、一本鎖及び二本鎖の化合物、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAs、shRNA、snoRNA、miRNA、メロデュプレックス(meroduplex)(mdRNA)及びサテライト反復等が含まれる。
【0146】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」とは、免疫グロブリン又はその断片若しくは誘導体を意味し、in vitro又はin vivoで産生されるか否かにかかわらず、抗原結合領域を含む、任意のポリペプチドを包含する。本用語には、それだけに限らないが、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、多特異性(例えば、二重特異性)、ヒト化、単鎖、キメラ、合成、組換え、ハイブリッド、変異、及び移植抗体が含まれる。用語「抗体」には、抗体断片、例えば、Fab、F(ab')2、Fv、scFv、Fd、dAb等、及び抗原結合機能、すなわち、それらの標的に特異的に結合する能力を保持する他の抗体断片(例えば、単鎖抗体から得られたVHH)もやはり含まれる。通常、かかる断片は、抗原結合領域を含むはずである。
【0147】
用語「抗原結合領域」、又は「抗原結合断片」とは、抗体及び抗原の間の特異的結合の原因となるアミノ酸を含む抗体分子の一部を意味する。抗原が大型である場合、抗原結合領域は、抗原の一部に結合することができるにすぎない。抗原結合領域との特異的な相互作用の原因となる抗原分子の一部は、「エピトープ」又は「抗原決定基」と称される。抗原結合領域は、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)を含むことができる。しかしながら、これは、必ずしも両方を含まない(例えば、単鎖の抗体及びVHH断片の抗原結合領域を参照のこと)。通常、抗原結合断片又は領域は、抗原結合部位(例えば、1種又は複数のCDR、一般に、すべてのCDR)を形成し、したがって、抗-免疫チェックポイントタンパク質抗体の結合特異性及び/又は活性を保持するのに十分な抗体の可変領域(重鎖及び軽鎖)の少なくとも一部を含有する。
【0148】
免疫チェックポイント経路(例えば、抗-CTLA-4、抗-PD-L1、抗-TIGIT、抗-LAG3、抗-TIM-3又は抗-PD-1抗体)のタンパク質標的に対して方向づけられた抗体の変異体はまた、本発明に含まれ、ただし、それらは、それらの標的を特異的に結合する及びこの標的に対して要求される作用を発揮する(例えば、標的を阻害する又は遮断する)能力を保持する。かかる変異体は、ルーチン的な技法を用いることにより従来技術に記載の抗体の配列に由来しうる。
変異体は、1種又は数種(例えば、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50 60、またそれ以上)のアミノ酸突然変異によってその親ポリペプチドが異なる。アミノ酸突然変異は、アミノ酸の置換、アミノ酸の欠失又は(of)アミノ酸の付加を包含する。本明細書で使用される場合、親ポリペプチドの変異体はまた、1種又は数種の糖鎖付加修飾によってその親ポリペプチドと異なるポリペプチドを包含する。ポリペプチド変異体は、その親ポリペプチドとのアミノ酸配列同一性を少なくとも70%、好ましくは、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%有しうる。
【0149】
例えば、抗体変異体の場合では、アミノ酸の置換、欠失、又は付加は、目的とする抗体のFR(フレームワーク)及び/又はCDR(相補性決定領域)においてなされうる。FRの変化は、通常、抗体の安定性及び免疫原性を改善するために設計され、CDRの変化は、通常、その標的に対して抗体の親和性を高めるために設計される。別の例として、アミノ酸突然変異は、その半減期を増加させる(したがって、そのクリアランスを減少させる)又は、それを使用する場合、そのエフェクター機能を調節する(例えば、補体依存性細胞毒性(CDC)、抗体依存性細胞毒性(ADCC)又は抗体依存性細胞の食作用(ADCP)を高める又は下げる)ように、抗体のFc領域に導入することができる。本発明の抗体の誘導体及び変異体は、組換え及び合成方法、類似の混合を含めた、当技術分野において周知の様々な技法又はコンビナトリアル技法、ランダム突然変異誘発を含めた、突然変異誘発等によって生成することができる。
【0150】
本発明における使用のための抗体は、別の機能分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質(アルブミン、別の抗原結合領域等)、薬物、腫瘍へのその送達を強化するためのリガンド、放射性核種又は標識、例えば、蛍光標識に連結することができる。抗体は、例えば、それらの循環半減期(circulating half-life)を増加させるために、合成ポリマー、例えば、ポリエチレングリコールと結合することもできる。抗体は、糖鎖付加パターンを変更することもでき、例えば、1つ又は複数の炭水化物部分は、欠失した及び/又は元の抗体に加えた1種又は複数の糖鎖付加部位でありうる。
【0151】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモデュレーターは、完全長抗体、好ましくは、モノクローナル完全長抗体、その変異体又はその結合領域断片並びにそれらのバイオシミラー抗体である。
【0152】
本明細書で使用される場合、「完全長抗体」(本明細書中で、Igの免疫グロブリンとも呼ばれる)とは、可変及び定常領域を含めた、抗体の天然の生物学的形態を構成する構造を有するタンパク質を意味する。「完全長抗体」は、モノクローナル及びポリクローナル完全長抗体を包含し、野生型完全長抗体、キメラ完全長抗体、ヒト化完全長抗体をも包含するが、本リストに限定されるものではない。ヒト及びマウスを含めた、ほとんどの哺乳動物では、完全長抗体の構造は、一般に、四量体である。上記四量体は、ポリペプチド鎖の2本の同一の対からなり、各対は、1本の「軽」鎖(通常、分子量は約25kDaである)及び1本の「重」鎖(通常、分子量は約50~70kDaである)を有する。ヒト免疫グロブリンの場合では、軽鎖は、κ及びλ軽鎖に分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、又はεに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEと定義する。IgGは、それだけには限らないが、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む、いくつかのサブクラスを有する。したがって、本明細書で使用される場合、「アイソタイプ」は、それらの定常領域の化学及び抗原特徴によって定義される免疫グロブリンのクラスのうちのいずれかを意味する。公知のヒト免疫グロブリンアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM1、IgM2、IgD、及びIgEである。
【0153】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモデュレーターは、完全-ヒトIg、ヒト化Ig、キメラIg及びそれらの変異体、好ましくは、アイソタイプIgG又はIgA、例えば、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4並びにそれらの変異体からなる群から選択される。
【0154】
「免疫チェックポイント標的に特異的に結合するアプタマー/抗体」とは、アプタマー又は抗体が、標的分子に対して高親和性を示すことを意味する。その標的分子についてのアプタマー又は抗体の解離定数(Kd)は、通常、10-6Mより低い、好ましくは、10-8Mより低い、例えば、10-9~10-12Mである。用語「特異的に結合する」は、アプタマー又は抗体が、in vitroでその標的を認識し、それと特異的に相互作用し、サンプル中に存在しうる他の分子との比較的小さい検出可能な反応性を有する能力を示すために本明細書中で用いられる。Kdは、任意の従来の方法、例えば、ELISA-型アッセイにより又は表面プラズモン共鳴(SPR)により決定することができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモデュレーターは、PD1、PD-L1、TIGIT又はCTLA4、より好ましくは、PD1、PD-L1又はCTLA4を標的とする、免疫チェックポイント阻害剤である。かかる阻害剤、特に、抗体タイプのものは、文献に記載されており、それらの一部は、臨床試験中であり、更に、いくつかのがんの治療においてすでに承認されている。本件についての総説について、Darvinら、Experimental & Molecular Medecine(2018)50:165頁を参照することができ、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0156】
いくつかの好ましい実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗-PD1抗体、抗-PD-L1抗体、抗-CTLA4抗体、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0157】
詳細な実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、第1の治療薬が、抗-PD1抗体及び抗-PD-L1抗体から選択され、第2の治療薬が、抗-CTLA4抗体から選択される治療の組合せ自体である。目的とする治療の組合せの別の例は、抗-PD-L1抗体及び抗-TIGIT抗体を含む。
【0158】
a) PD1若しくはそのリガンドPD-L1又はPD-L2に対して方向づけられた免疫チェックポイント阻害剤
PD1は、PDCD1、CD279、PD-1、PD1、hPD-1、SLEB2h、SLE1及びプログラム細胞死1としても知られる。PD1は、活性化T細胞及びプロB細胞において発現した、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの膜貫通細胞表面受容体である。PD1は、そのリガンドにより活性化された場合、T-細胞活性化及びエフェクター機能を負に調節する。ヒトにおいて、PD1は、PDCD1遺伝子(NCBI遺伝子ID:5133)によってコードされ、好ましくは、Uniprotデータベース(例えば、2007年4月17日のUniprot受託番号Q15116.3)に記載の配列を有する。その内因性リガンドは、PD-L1及びPD-L2を包含する。
【0159】
PD-L1は、CD274、B7-H;B7H1;PDL1;hPD-L1;PDCD1L1又はPDCD1LGとしても知られる。
【0160】
PD-L1は、造血及び非造血細胞、例えば、T細胞及びB細胞並びに腫瘍細胞の様々なタイプにより発現される免疫抑制性受容体リガンドである。コードされたタンパク質は、免疫グロブリンV-様及びC-様領域を有するI型膜貫通タンパク質である。このリガンドのその受容体PD1との相互作用は、T-細胞活性化及びサイトカイン産生を抑制する。ヒトにおいて、PD1は、CD274遺伝子(NCBI遺伝子ID:29126)によってコードされ、好ましくは、Uniprotデータベース(例えば、2000年10月01日のUniprot受託番号Q9NZQ7.1)に記載の配列を有する。
【0161】
プログラム細胞死1リガンド2、B7DC、又はPDL2としても知られる、PD-L2は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、PD1-非依存性の方式でT-細胞増殖及びIFNG産生に必須の共刺激シグナルに関与する。PD-L2は、ヒトにおける、PDCD1LG2遺伝子(NCBI遺伝子ID:80380)によってコードされ、好ましくは、Uniprotデータベース(例えば、1999年11月01日のUniprot受託番号Q9WUL5.1)に記載の配列を有する。
【0162】
PD1及びその内因性リガンドは、宿主免疫からの腫瘍回避において重要な役割を果たす、目的とする免疫チェックポイントタンパク質である。これらの細胞表面-結合リガンド-受容体対は、免疫応答を鈍らせて、免疫系の過剰反応を防ぐ。正常組織の感染又は炎症中、PD1及びそのリガンドの間の相互作用は、T-細胞活性化及びサイトカイン産生の抑制によって、免疫応答のホメオスタシスを維持することにより、自己免疫を予防するために重要である。腫瘍微小環境では、この相互作用は、細胞傷害性T細胞の不活性化による腫瘍細胞についての免疫回避を示す。がん細胞は、エフェクターCD8T細胞上でPD1に結合し、それにより、T細胞が、腫瘍への免疫応答を開始しないようにするリガンドPD-L1を過剰発現することにより、正常なPD-L1-PD1免疫チェックポイント機構をしばしば乗っ取ることが示された。PD-L1は、幅広いがんにおいて発現することが示された。
【0163】
本発明のいくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PD1及び/又はPDL-1を標的とする。PD1間のそのリガンドPD-L1及び/又はPD-L2との結合を遮断する抗体が、PD-1及びその下流シグナル伝達経路の活性化を防ぐことが示された。かかる抗体は、T細胞及びT-細胞によって媒介される免疫応答の腫瘍細胞に対する活性化によって、免疫機能を回復することができる。
【0164】
したがって、いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、受容体PD1のそのリガンドPD-L1及び/又はPD-L2への結合を予防することが可能な実体である。いくつかの他の又は追加の実施形態では、上記免疫チェックポイント阻害剤は、PD-L1、PD-L2、又はPD1のアンタゴニストから選択される。詳細な実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗-PD-L1アプタマー、抗-PD1アプタマー、抗-PD-L1抗体及び抗-PD1抗体からなる群から選択され、好ましくは、遮断抗-PD1又は抗-PDL1抗体から選択される。
【0165】
本明細書で使用される場合、「抗-PD-L1抗体」、「抗-PD1抗体」、又は「抗-PD-L2抗体」とは、それぞれ、PD-L1ポリペプチド、PD1ポリペプチド若しくはPD-L2ポリペプチド、又はその可溶性断片に選択的に結合する抗体を意味する。好ましくは、上記抗体は、PD1のそのリガンドPD-L1及び/又はPD-L2への結合を防止するために、より正確に言えば、遮断することが可能である。換言すれば、上記抗体は、好ましくは、遮断抗体である。
【0166】
いくつかの実施形態では、抗-PD1及び抗-PD-L1抗体は、モノクローナル抗体、例えば、完全-ヒト、ヒト化、移植又はキメラモノクローナル抗体及びそれらの抗原結合断片である。
【0167】
抗-PD1及び抗-PD-L1抗体は、従来技術において記載されており、例えば、次の特許出願及び特許WO2011066389、WO200705874、WO200114556、US20110271358、US8217149、US20120039906、US20140044738、US8779108、WO200989149及びEP3209778を参照のこと。
【0168】
いくつかの抗-PD1及び抗-PD-L1抗体は、いくつかのがん、特に、抵抗性及び再発がんの治療のために承認されている、又は臨床試験中である(上記のDarvinら、2018年)。
【0169】
抗-PD1抗体の例は、それだけに限らないが、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、REGN2810(セミプリマブとしても公知である)、カムレリズマブ(SHR-1210としても公知である)、シンチリマブ(IBI308-Tyvyt(登録商標)としても公知である)、スパルタリズマブ(PDR001)、ティスレリズマブ(BGB-A317としても公知である)、ピディリズマブ及びJS001を包含する。
【0170】
抗-PD-L1抗体の例は、それだけに限らないが、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、デュルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、BMS936559、MDX-1105、及びKN305を包含する。
【0171】
免疫チェックポイント阻害剤は、上記で(hereabove)引用した抗-PD1抗体及び抗-PD-L1抗体並びにそれらの変異体、それらの結合-領域断片及びそれらのバイオシミラーから選択することができる。
【0172】
b) CTLA-4に対して方向づけられた免疫チェックポイント阻害剤
CTLA-4は、CD;GSE;GRD4;ALPS5;CD152;CTLA-4;IDDM12;CELIAC3及び細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4としても公知である。ヒトにおいて、CTLA-4は、CTLA4遺伝子(NCBI遺伝子ID:1493)によってコードされ、Uniprotデータベースにおいて、例えば、受託番号P16410.3(日付:2003年01月10日)で示されるアミノ酸配列を有しうる。
【0173】
CTLA-4は、V領域、膜貫通領域、及び細胞質側末端を含む、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。CTLA-4は、制御性T細胞(Treg)、ヘルパーT細胞及びCD8+T細胞において発現される。CTLA-4は、TCR会合後のナイーブ及びメモリーT細胞の早期活性化の振幅を調節すること及び抗腫瘍免疫及び自己免疫に影響を与える中心の抑制経路の一部であることが示された。そのリガンドCD80(B7.1)及びCD86(B7.2)の発現は、抗原提示細胞、T細胞、及び他の免疫媒介細胞に主に限定される。CTLA-4は、CD28よりも親和性が高いCD80及びCD86を結合し、したがって、それによって、そのリガンドについてのCD28を打ち負かし、T細胞に抑制シグナルを伝達することが可能になる。
【0174】
遮断抗-CTLA-4抗体は、T細胞活性化を高めることが報告されている。
【0175】
いくつかの抗-CLA4抗体は、従来技術において記載されている。例えば、特許出願WO00/37504及びEP3209778を参照することができる。
【0176】
いくつかの実施形態では、抗-CTLA4抗体は、モノクローナル抗体、例えば、完全-ヒト、ヒト化、移植又はキメラモノクローナル抗体及びそれらの抗原結合断片から選択される。
【0177】
いくつかの抗-CTLA-4抗体は、いくつかのがん、特に、抵抗性及び再発がんの治療のために承認されている、又は臨床試験中である(上記のDarvinら、2018年)。
【0178】
抗-CTLA4抗体の例は、それだけに限らないが、イピリムマブ(Yervoy(登録商標))、トレメリムマブ、Fc-改変IgG1抗-CTLA-4ヒトモノクローナル抗体(AGEN1181)(Agenus社)及び非-フコシル化抗-CTLA-4(BMS-986218)を包含する。
【0179】
本発明のいくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、トレメリムマブ、それらの変異体、そのバイオシミラー抗体、それらの抗原結合断片及びそれらの組合せから選択される。
【0180】
目的とする他の免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA4及びPD1に対して方向づけられた二重特異性抗体を包含する。かかる二重特異性抗体は、例えば、特許出願WO2018/036473に記載される。
【0181】
c) 目的とする他の免疫チェックポイント標的
いくつかの他の免疫チェックポイント標的は、その中でもとりわけ、LAG3(リンパ球活性化遺伝子3)、TIM-3、VISTA、TIGIT、2B4/CD244並びにICOS、OX40及び4-1BBを含めた、共刺激分子が同定されている(Sharma and Allison、Cell、2015、161、205~2014頁)。
【0182】
したがって、目的とする免疫チェックポイントモデュレーターは、LAG3阻害剤、TIM-3阻害剤、VISTA阻害剤、TIGIT阻害剤、2B4/CD244阻害剤、ICOSアゴニスト、OX40アゴニスト、及び4-1Bアゴニストから選択することができる。
【0183】
かかる治療薬は、従来技術において記載されている(例えば、上記のSharma and Allisonを参照のこと)。
【0184】
これらの標的の中でもとりわけ、LAG3、TIM-3、TIGIT及びOX-40を、特に目的とする。
【0185】
用語「LAG3」又は「リンパ球活性化遺伝子3」又はCD223は、活性化CD4+及びCD8+T細胞の細胞表面並びにNK及び樹状細胞のサブセットに発現されるI型膜貫通タンパク質である(Triebel F,ら、J.Exp.Med.1990;171:1393~1405頁;Workman C T,ら、J.Immunol.2009;182(4):1885~91頁)。LAG3は、4つの細胞外Ig-様領域を有し、それらのリガンド、それらの機能活性のための主要組織適合抗原(MHC)クラスIIに結合することを要する。模範的なヒトLAG3のアミノ酸配列は、UniProt受託番号P18627下で見出すことができる。いくつかの抗-LAG3抗体は、当技術分野における現状(the state in the art)において、例えば、WO1991/10682及びWO2015/138920に記載されている。
【0186】
抗-LAG3抗体の例として、本発明者らは、臨床試験評価中であるレラトリマブ(BMS社)、IMP321又はエフチラギモドα(Immutep社)、GSK2831781(GSK社)、BMS-986016(BMS社)、イエラミリマブ又はLAG525(Novartis社)、REGN3767(Regeneron Pharmaceuticals社)を引用することができる。
【0187】
用語「TIM-3」又はHAVCR2としても公知である「T-細胞免疫グロブリンムチン-3」は、重要ながん免疫チェックポイントである。TIM-3は、T細胞、制御性T細胞(Tregs)、樹状細胞(DCs)、B細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー(nature killer)(NK)細胞、及び肥満細胞を含めた、免疫細胞の異なるタイプにおいて検出される。これは、I型膜タンパク質であり、281個のアミノ酸からなる。模範的なヒトTIM-3のアミノ酸配列は、UniProt受託番号Q8TDQ0下で見出すことができる。いくつかの抗-TIM-3抗体は、当技術分野における現状において、例えば、Heら(Onco Targets Ther.2018;11:7005~7009頁)、Dasら(Immunol.Rev.2017;276(1):97~111頁)に記載されている。
【0188】
抗-TIM-3抗体の例として、本発明者らは、MBG453(Novartis社)、TSR-022(Tesaro社)、LY3321367(Ely Lilly社)、MBG453(Novartis社)を引用することができる。
【0189】
用語「TIGIT」又は「Ig及びITIM領域を有するT-細胞免疫受容体」は、活性化T細胞及びNK細胞に主として発現される免疫調節受容体である。腫瘍の免疫学的監視におけるTIGITの役割は、腫瘍の免疫抑制においてPD-1/PD-L1軸に類似する。その構造は、1個の細胞外免疫グロブリン領域、1型膜貫通領域及び2個のITIMモチーフを示す。模範的なヒトTIGITのアミノ酸配列は、UniProt受託番号Q495A1下で見出すことができる。いくつかの抗-TIGIT抗体は、当技術分野における現状において、例えば、WO2017/053748及びWO2017/030823に記載されている。
【0190】
抗-TIGIT抗体の例として、本発明者らは、臨床試験評価中であるティラゴルマブ(Roche社)、モノクローナル抗体BMS-986207(BMS社);ビボストリマブ(MK-7684);OMP-313M32(OncoMed Pharmaceuticals社);MTIG7192A(Genentech社);BGB-A1217(BeiGene社)を引用することができる。
【0191】
本発明のいくつかの実施形態では、免疫モデュレーターチェックポイントは、遮断抗-LAG3抗体、遮断抗-TIM-3抗体及び遮断抗-TIGIT抗体から選択され、好ましくは、上記抗体から選択される。
【0192】
OX40は、TNF受容体スーパーファミリーメンバー4遺伝子、ACT35;CD134;IMD16;及びTXGP1Lとしても知られている。ヒトにおいて、OX40は、TNFRSF4遺伝子(NCBI遺伝子ID:7293)によってコードされ、Uniprotデータベースにおいて受託番号P47741.1(日付:1996年2月1日)に示されるアミノ酸配列を有しうる。OX40は、主として、活性化CD4+及びCD8+T細胞、制御性T細胞(Treg)、及びナチュラルキラー(NK)細胞において見出される腫瘍壊死因子受容体(TNFR)である。活性化CD4+及びCD8+T細胞におけるOX40を通したシグナル伝達によって、サイトカイン産生の増大、グランザイム及びパーフォリン放出、並びにエフェクター及びメモリーT細胞プールの拡大をもたらす。更に、Treg細胞におけるOX40シグナル伝達は、Tregの拡大を抑制し、Tregの誘導を停止させ、Treg-抑制機能を遮断する。したがって、OX40受容体のアゴニストは、本発明による免疫チェックポイントモデュレーターとして用いてもよい。本明細書で使用される場合、OX40受容体のアゴニストは、OX40受容体を活性化することが可能な任意の治療薬を意味する。OX40のアゴニストは、部分及び完全アゴニストを包含し、全OX40リガンド(腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー4である、OX40lとしても公知である)、可溶性OX40l並びに変異体、融合タンパク質及びそれらの断片を含めた、任意のタイプのものでありうる。OX40lは、Uniprotデータベースにおいて受託番号P43488.1下で示されるアミノ酸配列を有しうる。したがって、本発明に包含されるOX40lの融合タンパク質、変異体及び断片は、OX40を結合し、活性化することが可能である。目的とする融合タンパク質は、例えば、特許出願WO2006121810並びに米国特許第7,959,925号及び第6,312,700号に記載されている。一例として、OX40アゴニストは、OX40LがIgG4P Fcと融合される、MEDI6383と名付けられた、融合タンパク質でありうる。
【0193】
目的とするOX40受容体のアゴニストはまた、アゴニストアプタマー及びアゴニスト抗体を包含する。アゴニストOX40アプタマー又は抗体は、それぞれ、OX40を特異的に結合し、活性化することが可能なアプタマー又は抗体を意味する。
【0194】
アゴニストOX40アプタマーは、例えば、Dollis、Chem Biol.2008年7月21日;15(7):675~682頁に記載されている。
【0195】
アゴニストOX40抗体はまた、従来技術、例えば、Weinbergら J Immuother、2006、26、575~585頁、Morris、2007、Mol Immunol、44(2)、3112~3121頁又はEP3209778に記載されている。
【0196】
いくつかの実施形態では、アゴニストOX40抗体は、モノクローナル抗体、例えば、完全-ヒト、ヒト化、移植又はキメラモノクローナル抗体及び抗原結合断片から選択される。
【0197】
例えば、GSK3174998は、異なるタイプのがんの治療において、単剤としての又はKeytruda(登録商標)と組み合わせた、現在臨床試験中のアゴニストOX40抗体である。抗-OX40抗体の他の例は、MEDI6469(Medimmune社)及びBMS986178(BMS社)である。
【0198】
本発明の治療の組合せの例
いくつかの詳細な態様では、本発明は、がんを治療する又は予防することにおける使用のための、免疫チェックポイントモデュレーターと組み合わせたオキシアザホスホリン誘導体に関し、
- オキシアザホスホリン誘導体は、上記に記載した式(Ia)のものであり、
- 免疫チェックポイントモデュレーターは、PDL1阻害剤、PD1阻害剤、CTLA4阻害剤、TIGIT阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、OX40アゴニスト及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0199】
別の詳細な実施形態では、本発明は、がんを治療する又は予防するための免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせた使用のためのオキシアザホスホリン誘導体に関し、
- オキシアザホスホリン誘導体は、上記に記載した式(IIa)又は(IIb)のものであり、
- 免疫チェックポイント阻害剤は、PDL1阻害剤、PD1阻害剤、及びCTLA4阻害剤、及びそれらの組合せ、好ましくは、PDL1阻害剤、PD1阻害剤及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0200】
例えば、オキシアザホスホリン誘導体は、式(IIa)又は(IIb)の化合物から選択することができ、nは1であり、且つ/又は免疫チェックポイント阻害剤は、抗-PD1抗体、抗-PD-L1抗体、抗-CTLA4抗体、それらの変異体、それらの抗原結合領域及びそれらの組合せから選択することができる。
【0201】
詳細な実施形態では、オキシアザホスホリン誘導体は、上記に記載した式(IIa)又は(IIb)のものであり、nは1であり、免疫チェックポイント阻害剤は、抗-PDL1抗体、抗-PD1抗体、それらの変異体、それらの抗原結合領域及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0202】
詳細な実施形態では、本発明の治療の組合せは、
- オキシアザホスホリン誘導体が、ゲラニルオキシ-CPA、メチル化ゲラニルオキシ-CPA、ゲラニルオキシ-IFO、メチル化ゲラニルオキシ-IFO、薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物;好ましくは、ゲラニルオキシ-IFO、メチル化ゲラニルオキシ-IFO、薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物から選択され;且つ/又は
- 免疫チェックポイント阻害剤が、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、スパルタリズマブ、ティスレリズマブ、ピディリズマブ、JS001、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、KN305、イピリムマブ、トレメリムマブ、それらの変異体、それらの抗原結合断片及びそれらの組合せからなる群から選択され、好ましくは、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、カムレリズマブ、シンチリマブ、スパルタリズマブ、ティスレリズマブ、ピディリズマブ、JS001、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、及びKN305、より好ましくは、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、それらの変異体、及びそれらの抗原結合断片からなる群から選択されることを特徴とする。
【0203】
詳細な実施形態では、本発明の治療の組合せは、
- オキシアザホスホリン誘導体が、RがCH3である、上記に記載した式(IIa)又は(IIb)のものであり;
- 免疫チェックポイント阻害剤が、PD1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIGIT阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤及びOX-40アゴニスト、より好ましくは、抗-PD1抗体、抗-PD-L1抗体、抗-TIGIT抗体及び抗-CTLA-4抗体、更により好ましくは、抗-PD1抗体及び抗-PD-L1抗体からなる群から選択されることを特徴とする。
【0204】
別の実施形態では、本発明の治療の組合せは、
- オキシアザホスホリン誘導体が、RがHである、上記に記載した式(IIa)又は(IIb)のものであり;
- 免疫チェックポイント阻害剤が、PD1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIGIT阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤及びOX-40アゴニスト、より好ましくは、抗-PD1抗体、抗-PD-L1抗体、抗-TIGIT抗体及び抗-CTLA-4抗体、更により好ましくは、抗-PD1抗体及び抗-PD-L1抗体からなる群から選択されることを特徴とする。
【0205】
別の実施形態では、本発明の治療の組合せは、
- オキシアザホスホリン誘導体が、RがCH3であり、nが1である、上記に記載した式(IIa)又は(IIb)のものであり;
- 免疫チェックポイント阻害剤が、PD1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIGIT阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤及びOX-40アゴニスト、より好ましくは、抗-PD1抗体、抗-PD-L1抗体、抗-TIGIT抗体及び抗-CTLA-4抗体、更により好ましくは、抗-PD1抗体及び抗-PD-L1抗体からなる群から選択されることを特徴とする。
【0206】
別の実施形態では、本発明の治療の組合せは、
- オキシアザホスホリン誘導体が、RがHであり、nが、1である、上記に記載した式(IIa)又は(IIb)のものであり;
- 免疫チェックポイント阻害剤が、PD1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、TIGIT阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤及びOX-40アゴニスト、より好ましくは、抗-PD1抗体、抗-PD-L1抗体、抗-TIGIT抗体及び抗-CTLA-4抗体、更により好ましくは、抗-PD1抗体及び抗-PD-L1抗体からなる群から選択されることを特徴とする。
【0207】
更なる実施形態では、本発明の治療の組合せは、
- オキシアザホスホリン誘導体が、ゲラニルオキシ-IFO、メチル化ゲラニルオキシ-IFO、薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物から選択され;
- 免疫チェックポイント阻害剤が、抗-PD1又は抗-PD-L1抗体であることを特徴とする。
【0208】
- 本発明の併用療法の実行
オキシアザホスホリン誘導体及び免疫チェックポイントモデュレーターは、任意の好都合な経路により投与することができる。オキシアザホスホリン誘導体の投与の経路及び免疫チェックポイントモデュレーターの投与の経路は、同じでもよく異なっていてもよい。投与経路は、局所、非経口、又は経腸的でありうる。実際、本発明の治療薬は、それだけには限らないが、経口、口腔、舌下、直腸、静脈内、筋肉内、皮下、骨内、真皮、経皮、粘膜、経粘膜的、関節内、心臓内、大脳内、腹腔内、腫瘍内、鼻腔内、肺、眼内、膣、又は経皮経路を含めた、任意の好都合な経路により投与することができる。
【0209】
オキシアザホスホリン誘導体の投与経路及び免疫チェックポイントモデュレーターの投与経路は、上記治療薬(特に、そのバイオアベイラビリティ)、治療するがん、及びがんにより苦しめられる患者の臓器又は組織の特性に応じて変わりうる。いくつかの実施形態では、オキシアザホスホリン誘導体は、経口経路若しくは静脈内経路、例えば、ボーラス注射により又は連続的な注入により投与される。免疫チェックポイントモデュレーター、特に抗体、例えば、OX40抗体、抗-PD1抗体、抗-PD-L1抗体、抗-TIGIT抗体、抗-LAG-3抗体、抗-TIM-3抗体、及び抗-CTLA4抗体等は、非経口経路により、好ましくは、静脈内経路により、例えば、注射又は注入により投与することができる。
【0210】
本発明の治療の組合せの用量レジメンは、対象の詳細な特徴、すなわち、対象の年齢、性別、人種集団、体重、健康及び身体状態、病歴、がんのタイプ及びそのステージ、以前のありうる抗がん治療、特異的なバイオマーカーの存在(例えば、腫瘍細胞中のPD-L1発現レベル)、及び他の関連する特徴を考慮して、当業者により決定し、適合することができる。
【0211】
免疫チェックポイントモデュレーター及びオキシアザホスホリン誘導体は、有効な治療用量で、対象に投与される。本明細書で使用される場合、「治療有効量又は用量」とは、目的とする疾患を予防する、除去する、減速させる又は対象において上記疾患により引き起こされる又はそれに伴う1種若しくは数種の症状又は障害を軽減する若しくは遅延させる治療薬の量を意味する。用量は、1種、2種若しくはそれ以上の大量瞬時投与、錠剤又は注射で投与することができる。いくつかの実施形態では、治療薬は、長時間(例えば、1~24時間)にわたって、単回の注射により又は注入より投与される。
【0212】
通常、患者に投与されようとするオキシアザホスホリン誘導体の量は、体重約0.01mg/kg~500mg/kg、好ましくは、体重0.1mg/kg~300mg/kg、例えば、25~300mg/kgの範囲でありうる。
【0213】
いくつかの実施形態では、オキシアザホスホリン誘導体は、有意なリンパ球減少症を誘導せずに、患者における免疫調節の効果、例えば、Th1極性化、したがって、T細胞-依存性抗腫瘍効果を達成することが可能になる治療用量で投与される。
【0214】
この治療用量は、患者に応じて、特に、患者の年齢、健康状態及び免疫状態に応じて変わる。免疫調節の効果を示すオキシアザホスホリン誘導体の1日治療用量は、誘導体の漸増する低用量を患者(又はがんの同じタイプに罹患している代表的な患者の群)に投与する及びリンパ球母集団(例えば、B細胞、ナチュラルキラーT細胞、T細胞及びTregs)に対する投与される用量の効果及び免疫応答の極性化をモニタリングすることにより評価することができる。例えば、当業者は、Ghiringhelli、Cancer Immunol Immunother、2007、56:461~648頁)に記載されるプロトコールに適合することができる。
【0215】
オキシアザホスホリン誘導体は、連続数日にわたって、例えば、連続2~10日、好ましくは、連続2~6日の間、毎日1回投与として、例えば、注射により投与することができる。或いは、オキシアザホスホリン誘導体は、連続数時間にわたって、例えば、6h~48hの間、例えば、12~24hの間注入することができる。上記治療は、1、2若しくは3週間に1回又は1、2若しくは3カ月に1回反復することができる。例えば、オキシアザホスホリン誘導体による治療は、3週間に1回又は6週間に1回反復することができる。
【0216】
治療は、年当たり1回又は数回反復することができる。
【0217】
患者に投与されようとする免疫チェックポイントモデュレーターの量は、体重1kg当たり約0.001mg~100mgの範囲でありうる。免疫チェックポイントモデュレーターが抗体である場合、治療の単一サイクルにわたって患者に投与される累積用量は、10mg~1g、例えば、100mg~600mgの範囲でありうる。上記治療薬は、例えば、注射又は注入により、毎日1回投与として、又は例えば、やはり注射若しくは注入により、長期間にわたって、例えば、1~12週間、例えば、1~8週間にわたって、複数回の用量で投与することができる。投与の回数は、1カ月に1回、2週間に1回、1週間に1回、2日に1回又は1日1回投与することができる。
【0218】
上記治療は、年当たり1回又は数回反復することができる。
【0219】
前述の通り、免疫チェックポイントモデュレーターの投与及びオキシアザホスホリン誘導体の投与は、同時に、別々に、継続的に、付随的に、又は連続的に行うことができる。併用療法は、単一の医薬組成物において、同じ医薬剤形で及び/又は同じ投与経路により同時に投与される治療薬を求める必要はない。本発明の治療薬は、任意の順序で患者に投与することができる。
【0220】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイントモデュレーターの投与及びオキシアザホスホリン誘導体の投与は、同じ月、同じ週、更に同じ日内で患者に行われる。いくつかの詳細な実施形態では、オキシアザホスホリン誘導体の投与は、免疫チェックポイントモデュレーターの投与の1カ月前、2週間前若しくは1週間前又は1カ月後、2週間後若しくは1週間後に行われる。更なる例として、オキシアザホスホリン誘導体は、免疫チェックポイントモデュレーターの投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14若しくは15日前又は免疫チェックポイントモデュレーターの投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14若しくは15日後に患者に投与することができる。いくつかの実施形態では、治療薬の投与は、薬物の薬物動態及びクリアランスに基づいた期間中に、対象の両方の治療薬への曝露をもたらすように行われる。
【0221】
いくつかの実施形態では、治療薬の投与は、3週間に1回又は6週間に1回反復される。オキシアザホスホリン誘導体の投与及び免疫チェックポイントモデュレーターの投与は、同じ日に行ってもよく、1、2、3、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15日開けてもよい。
【0222】
いくつかの他の又は追加の実施形態では、免疫チェックポイントモデュレーターの数回(例えば、1、2、3、4又は5回)の投与は、オキシアザホスホリン誘導体の連続2回の投与の間で行われる。更なるいくつかの実施形態では、オキシアザホスホリン誘導体の数回(例えば、1、2、3、4又は5回)の投与は、免疫チェックポイントモデュレーターの連続2回の投与の間で行われる。
【0223】
オキシアザホスホリン誘導体及び免疫チェックポイントモデュレーターは、同じ医薬組成物内で又は異なる医薬組成物で、患者に投与することができる。
【0224】
本発明の治療薬、すなわち、オキシアザホスホリン誘導体及び/又は免疫チェックポイントモデュレーターは、標準的な方法による任意の適切な医薬組成物、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Lippincott Williams & Wilkins;第21版、2005)に記載されているもので配合することができる。
【0225】
用いることができる薬学的に許容される添加剤は、特に、Handbook of Pharmaceuticals Excipients、American Pharmaceutical Association(Pharmaceutical Press;改訂第6版、2009)に記載されている。通常、治療薬は、所望の医薬形態を得られるような、1種又は数種の添加剤と混合される。
【0226】
適切な添加剤の例には、それだけには限らないが、溶媒、例えば、水又は水/エタノール混合物、充てん剤、担体、賦形剤、結合剤、固化防止剤、可塑剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、緩衝剤、安定剤、着色料、染料、酸化防止剤、抗-接着剤(anti-adherent)、軟化剤、保存剤、界面活性剤、ワックス、乳化剤、湿潤剤、及び流動促進剤が含まれる。賦形剤の例には、それだけに限らないが、結晶セルロース、デンプン、加工デンプン、リン酸二カルシウム二水和物、硫酸カルシウム三水和物、硫酸カルシウム二水和物、炭酸カルシウム、単糖又は二糖、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ガラクトース及びソルビトール、キシリトール及びそれらの組合せが含まれる。結合剤の例には、それだけに限らないが、デンプン、例えば、バレイショデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン;ゴム、例えば、トラガカントゴム、アカシアゴム及びゼラチン等;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ポリビニルピロリドン、コポビドン、ポリエチレングリコール及びそれらの組合せが含まれる。滑沢剤の例には、それだけに限らないが、脂肪酸及びそれらの誘導体、例えば、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、又はステアリン酸、又はポリアルキレングリコール、例えば、PEG等が含まれる。流動促進剤は、コロイドケイ酸、二酸化ケイ素、タルク等の中から選択することができる。崩壊剤の例は、それだけに限らないが、クロスポビドン、クロスカルメロース塩、例えば、クロスカルメロースナトリウム、デンプン及びそれらの誘導体を包含する。界面活性剤の例は、それだけに限らないが、シメチコン、トリエタノールアミン、ポリソルベート(les polysorbate)及びそれらの誘導体、例えば、tween(登録商標)20又はtween(登録商標)40、ポロクサマー、脂肪族アルコール、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、リン脂質等及びアルキル硫酸塩、例えば、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)等を包含する。特に、凍結乾燥のために有用な安定剤の例は、安定剤を包含し、通常、糖類、例えば、マンニトール、スクロース、デキストロース及
びトレハロース等、アミノ酸、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及び血清アルブミンを包含する。乳化剤の例は、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル又はこれらの物質の混合物を包含する。保存剤は、それだけに限らないが、ベンザルコニウム塩化物、安息香酸、ソルビン酸及びそれらの塩を包含する。抗酸化剤は、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、トコフェロール及びそれらの組合せを包含する。緩衝剤の例は、リン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(TRIS.HCl)、4-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-エタンスルホン酸(HEPES)、PIPES、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-2,2',2"-ニトリロトリエタノール(BIS-TRIS)、トリス-グリシン、ビシン、トリシン、TAPS、TAPSO、MES、クエン酸、ホウ酸、クエン酸/リン酸、炭酸水素、グルタル酸、コハク酸、それらの塩及びそれらの組合せを包含する。
【0227】
目的とする治療薬と合わせようとする添加剤が、(i)上記治療薬の安定性を含めた、物理的-化学的特性、(ii)上記治療薬を探索した薬物動態学的プロフィール及び/又は放出プロフィール、(iii)剤形及び(iv)投与の経路を考慮して選択することができるということは言うまでもない。
【0228】
医薬組成物は、任意のタイプのものでありうる。例えば、医薬組成物は、固形経口剤形、液状剤形、例えば、静脈内経路のための懸濁液、局所適用のための剤形、例えば、クリーム剤、軟膏剤、ゲル等、パッチ、例えば、経皮パッチ、粘膜付着性パッチ又は錠剤、特に、絆創膏又は包帯、坐剤、鼻腔内又は肺投与用のエアロゾルでありうる。いくつかの詳細な実施形態では、医薬組成物は、凍結乾燥物又はフリーズドライされた粉末でもよい。粉末は、緩衝剤、凍結乾燥安定剤、酸化防止剤、界面活性剤及びそれらの組合せから選択される1種又は数種の添加剤と合わせた、本発明の治療薬(すなわち、免疫チェックポイントモデュレーター及び/又はオキシアザホスホリン誘導体)を含むことができる。上記粉末は、例えば、静脈内経路により(例えば、ボーラス注射又は注入により)又は経口経路により、患者に投与する直前に、適切なビヒクル、例えば、水に溶解しても懸濁してもよい。
【0229】
追加の態様では、本発明の治療の組合せ(例えば、オキシアザホスホリン誘導体及び免疫チェックポイントモデュレーター)は、追加の治療薬と組み合わせて対象に投与することができる。追加の治療薬は、抗がん剤でありうる。限定しない例には、特に、インターフェロン、シスプラチン、ブレオマイシン、フルオロウラシル、メトトレキサート、ビンクリスチン、アクチノマイシン、ビノレルビン、タキサン類、例えば、パクリタキセル及びドセタキセル等、又はアントラサイクリンが含まれる。更に、投与することができるアクロレインの潜在的な毒性を中和するための有効成分は、特に、メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムである。追加の治療薬は、免疫チェックポイントモデュレーター及び/又はオキシアザホスホリン誘導体に対して、同時に、別々に、又は連続的に、同じ経路により又は異なる経路により、患者に投与することができる。
【0230】
本発明の治療の組合せはまた、放射線治療と同時処置された患者において用いてもよい。
【0231】
更なる態様では、本発明は、有効成分としての免疫チェックポイントモデュレーター及びオキシアザホスホリン誘導体を含む、好ましくは、がんの治療又は予防における使用のための医薬組成物に関する。免疫チェックポイントモデュレーター及びオキシアザホスホリン誘導体が、上記に記載した通りであることは言うまでもない。
【0232】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、
- オキシアザホスホリン誘導体0,01質量%~45質量%、
- 免疫チェックポイントモデュレーター0,01質量%~45質量%、及び
- 1種又は数種の医薬添加剤50質量%~99,98質量%を含む。
【0233】
1種又は数種の医薬添加剤は、任意のタイプのものでありえ、担体、賦形剤、結合剤、界面活性剤、安定剤、抗酸化剤、保存剤、崩壊剤及びそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0234】
医薬組成物は、上記に記載した通り、任意のタイプのものでありうる。例えば、静脈内経路による、非経口注射に適した医薬組成物は、好ましいこともある。
【0235】
追加の態様では、本発明は、好ましくは、がんの治療又は予防における使用のための医薬用キットを意味し、上記キットは、少なくとも2種の成分、すなわち、
- 上記に記載した少なくとも1種のオキシアザホスホリン誘導体を含む第1の成分、及び
- 上記に記載した少なくとも1種の免疫チェックポイントモデュレーターを含む第2の成分を含む。
【0236】
好ましいオキシアザホスホリン誘導体及び免疫チェックポイントモデュレーターは、上記で記載したものである。例えば、少なくとも1種のオキシアザホスホリン誘導体は、上記に記載した式(Ia)、(IIa)及び(IIb)の化合物から選択することができ、且つ/又は免疫チェックポイントモデュレーターは、PD1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA4阻害剤及びそれらの組合せ、好ましくは、抗-PD1抗体、抗-PD-L1抗体、抗-CTLA4抗体及びそれらの組合せから選択することができる。
【0237】
詳細な実施形態では、医薬用キットは、少なくとも3種の成分、すなわち、
- 上記に記載した式(Ia)、(IIa)、及び(IIb)の化合物から選択される少なくとも1種のオキシアザホスホリン誘導体を含む、第1の成分、
- 抗-PD1又は抗-PD-L1抗体を含む、第2の成分、及び
- 抗-CTLA4抗体を含む、任意選択の第3の成分を含む。
【0238】
通常、上記成分は、上記に記載された医薬組成物の形態となる。医薬組成物は、無菌の容器に包装することができる。かかる容器は、箱、アンプル、びん、バイアル、管、バッグ、小袋、ブリスター包装、又は当技術分野で公知の他の適当な容器の形態でありうる。かかる容器は、プラスチック、ガラス、積層加工紙、金属箔、又は医薬を保持するのに適した他の材料で作ることができる。
【0239】
医薬用キットは、更なる要素、例えば、緩衝液、成分を投与するための手段(例えば、ボーラス注射又は注入により投与するための手段、例えば、注射筒、針、カテーテル等)、及び使用のための指示を含めたラベルを備えることができる。
【0240】
本発明の他の態様は、次の例において例証され、これらは、性質上例示的なものにすぎないが、本出願の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0241】
材料及び方法
化学薬品及び試薬
シクロホスファミド(CPA)(Endoxan(登録商標);Baxter社)及びイホスファミド(IFO)(Holoxan(登録商標);Baxter社)は、Gustave Roussy Cancer Campus Grand Parisにより提供された。ゲラニルオキシ-IFO(G-IFO)を、Sharbek(Journal of Medecinal Chemistry、2015、58(2):705~17頁)において以前に記載された通り、99%純度で合成した。in vivo試験のために、CPA及びIFOを、NaCl0.9%又はDMSO/Tween80/NaCl0.9%(5/5/90、v/v/v)に溶解した。G-IFOを、DMSO/Tween80/NaCl0.9%(5/5/90、v/v/v)に溶解した。in vivo実験用のモノクローナル抗-CD4(GK1.5)、抗-CD8α(53-6.72)、抗-PD1(RMP1-14)及びそれらのアイソタイプ対照rIgG2a(2A3)を、BioXCell社(West Lebanon、NH、USA)から購入し、リン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解した。フローサイトメトリー及び免疫組織化学分析のために用いたモノクローナル抗体(mAbs)を、表S1に記載する。
【0242】
マウス及び腫瘍細胞系
7~8週齢雌C57BL/6マウス(平均体重、20g)を、Harlan Laboratories社(Gannat、France)から購入した。動物を、病原体を含まない条件で用いた。MCA205線維肉腫腫瘍細胞系(C57Bl/6マウスと同質遺伝子的)を、Dr Yamazaki Takahiro(INSERM U1015、Gustave Roussy、Villejuif、France)が親切にも提供してくださった。それらを、10%ウシ胎児血清(Paisley社、UK)及び2mML-グルタミン(Invitrogen社、USA)を補充したGibco(商標)RPMI1640培地(Paisley社、UK)中で、CO25%下で37℃で採取した。すべての動物実験を、フランス及び欧州の法律及び規制に従って並びにCEEA26倫理委員会及び国民教育・高等教育・研究省(the ministry of national education, higher education and research)により行い、欧州共同体により確立した条件下で実施した(指令2010/63/2015-038)。
【0243】
マウスにおける腫瘍モデル及び腫瘍接種
8.105腫瘍細胞を、D0にC57Bl/6マウスの右側腹部の皮下に接種した(s.c.)。腫瘍体積が50~500mm3(V(mm3)=幅2(mm2)×長さ(mm)/2)の間のサイズに達する場合、マウスに、100mg/kgでCPA、100、150、200又は300mg/kgでIFO、IFO50、100又は150mg/kgの等モル用量でビヒクル又はG-IFOの単回の腹腔内(i.p.)注射を投与した。T細胞除去のために、マウスに、-3日目(D)、D0、D+3で、次いで、週1回、抗-CD8α(クローン53-6.72)及び/又は抗-CD4(クローンGK1.5)又はそれらのアイソタイプ対照Rat IgG2a(クローン2A3)のi.p.注射をマウス当たり200μg投与し、D7にIFO又は対照を投与した。
【0244】
化学療法(IFO)及び抗-PD1 mAbsの間の組合せの場合、D7にIFO又はビヒクルをマウスに投与し、次いで、D9、D12及びD15に、抗-PD1 mAbs(クローンRMP1-14)又はそのアイソタイプ対照Rat IgG2a(クローン2A3)のi.p.注射をマウス当たり250μg投与した。化学療法(G-IFO)及び抗-PD1 mAbsの間の組合せについての試験に関して、D9にG-IFO又はビヒクルをマウスに投与し、次いで、D12、D15及びD19に、抗-PD1 mAbs(クローンRMP1-14)又はそのアイソタイプ対照Rat IgG2a(クローン2A3)のi.p.注射をマウス当たり200μg投与した。ノギスを用いて、長さ及び幅を測定することにより、腫瘍体積を、1週間に3回経過観察した。毎日の腫瘍測定を正規化するために、VTDx対VTDi(VTDx/VTDi)比を算出し;VTDiは、治療開始日の腫瘍体積に対応し、VTDxは、各マウスについての各測定日における腫瘍体積に対応する。
【0245】
フローサイトメトリー分析
7~8週の雌C57BL/6マウスを、異なる治療群にランダムに割り付けた。ビヒクルを投与する未治療対照群並びにIFO100、150、200及び300mg/kg用量及びCPA100mg/kgを用いた4~5つの治療群を含めた、6つの群のマウスを評価した。両方の薬物を、NaCl0.9%の溶液に溶解した。IFO50、100及び150mg/kgの等モル用量でG-IFOで治療した群を加えることにより、ビヒクル、CPA、IFO及びG-IFOを、DMSO/Tween80/NaCl0.9%(5/5/90、v/v/v)の溶液に溶解した。G-IFO群を加える場合、体積が20mL/kg又は10mL/kgである、単回i.p.注射により投与を行った。治療7日後、マウスを屠殺し、脾臓及び腫瘍を収集した。赤血球を塩化アンモニウムで溶解した後、脾臓の生細胞を、Vi-CELL XR(Beckman Coulter社)によりトリパンブルーで定量化した。
【0246】
簡単に言うと、ADNase(260913、Millipore)及びリガーゼ(5401127001、Sigma)を加えた後、GentleMACS(商標)Dissociatorにより腫瘍分離を行って、腫瘍を秤量し切断した。腫瘍細胞を、37℃で40分間撹拌しながらインキュベートし、次いで、Vi-CELL XR(Beckman Coulter社)によりトリパンブルーで定量化した。染色する前に、Fcγ-受容体を、抗-CD16/32機能グレード(functional grade)精製抗体(eBioscience社、Paris、France)を用いて、4℃で15分間遮断した。細胞を、細胞表面染色のために抗体を用いて4℃で30分間インキュベートした。FoxP3染色のために、細胞を、FoxP3キットプロトコール(eBioscience社、Paris、France)に従って、細胞表面染色後に固定し、透過させた。サンプルを、10-colors Gallios cytometer(Beckman Coulter社、Villepinte、France)で取得した。分析を、Kaluzaソフトウェア1.3(Beckman Coulter社)を用いて行った。異なる2種のパネルを用いて、免疫細胞を同定した。第1の白血球を、FITC-結合型抗-マウスCD45の使用により同定した。Tリンパ球及びBリンパ球を、APC-Cy7-結合型抗-マウスCD3及びBV421-結合型抗-マウスCD19をそれぞれ用いて同定した。CD3陽性細胞の中でも、PE-Cy7-結合型抗-マウスCD4及びAPC-R700-結合型抗-マウスCD8a染色をそれぞれ用いて、CD4+及びCD8+T細胞を分離した。Treg細胞を、CD3+CD4+T細胞(Table 1(表1))の間でAPC-結合型抗-マウスFoxP3染色を用いて染色した。
【0247】
【表1】
【0248】
サイトカインアッセイ
脾臓細胞懸濁液から、ウェル当たり全2.105細胞を、抗-CD3ε mAbs(クローン145-2C11、10μg/mL);eBioscience社)及び/又は抗-CD28 mAbs(クローン37.57、2μg/mL;BD Pharmingen)で予めコーティングされた(precoated)、96穴Nunc MaxiSorp(登録商標)プレート(eBioscience社)でインキュベートした。サイトカイン濃度を用いて、CO2 5%下で37℃でインキュベーションの48時間後に、上澄みをアッセイし、Bio-Plex(商標)Mouse Cytokine Standard 23-Plex、Group Iアッセイ(bio rad社、M60009RDPD)を用いて上澄みで定量化した。パネルは、次のサイトカイン及びケモカイン、すなわち、エオタキシン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロンγ(IFNγ)、インターロイキン(IL)-1α(IL-1α)、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-12p40、IL-12p70、IL-13、IL-17A、ケラチノサイト化学誘引物質(KC)、マクロファージ化学誘引タンパク質-1(MCP-1)、マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)-1α(MIP-1α)、MIP-1β、ランテス(RANTES:Regulated on Activation Normal T cell Expressed and Secreted)及び腫瘍壊死因子-α(TNF-α)からなった。結果を、Bio-Plex Manager ソフトウェアV 6.1(Bio-Rad Laboratories社、Hercules、CA、USA)を用いて分析した。マウスにおいてIFO治療後に有意に調節されたサイトカイン及びケモカインを選択することによって、本発明者らは、IFNy、IL-17A及びIL-6へのモニタリングを減らすことが可能である。次いで、これらの3種のサイトカインを、マウスIL-17A ELISA Ready-SET-Go(登録商標)(eBiosciences社)、マウスIFNy ELISAセット(BD Biosciences社)及びマウスIL-6 ELISAセット(BD Biosciences社)を用いて定量化した。
【0249】
統計解析
Microsoft Excel(登録商標)(Microsoft社、Redmont、WA、USA)、Prism(商標)5.0及び8.0ソフトウェア(GraphPad社San Diego、CA、USA)を用いて、データを分析した。すべての結果を、四分位を有する平均値又は中央値の平均値±標準誤差として表す。2つより多い独立な群を比較するためのノンパラメトリックマンホイットニー検定又はノンパラメトリッククラスカル-ウォリス検定、反復測定における球面性の違反の修正のためのガイサー-グリーンハウス(Geisser-Greenhouse)と結合する2つの独立変数を有する群を比較するための二元配置ANOVA検定を用いて、統計的な有意差を分析した。これらの解析の探索的な成分のため、小さい母集団(n≦6)で、多重比較による調整がなされなかった。0.05より小さいp-値は、統計学的に有意であると考えられた。有意なp値に、次の通り注釈を付けた。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【0250】
結果
- IFO及びゲラニルオキシ-IFOの免疫調節の効果
抗腫瘍応答及び免疫応答に対するIFOの漸増用量の効果を探索した。以前の研究では、100mg/kgでその免疫介在性抗腫瘍応答が実証されたため、CPA(シクロホスファミド)を100mg/kgで用いた。
【0251】
免疫担当性MCA205を有するC57Bl/6マウスにおけるIFO(100、150、200及び300mg/kg)又はCPA(100mg/kg)の漸増する単回i.p.注射の抗腫瘍活性を、評価した。腫瘍増殖の有意な減少は、100mg/kgのCPAの場合に観察され;IFOの場合では、低用量(100及び150mg/kg)からより高用量(200及び300mg/kg)まで腫瘍増殖の遅延がやはり観察された。
【0252】
ナイーブマウスにおいて、IFNγ、IL-17A及びIL-6は、治療後に有意に増加した。予想通り、ビヒクルでは、弱いサイトカイン分泌が示された。100mg/kgのCPAで治療したマウスにおいて、TCR-駆動型IFNγ(TCR-driven IFNγ)、IL-17A及びIL-6は、先に発表した通り、有意に増加した。IFO群(100、150及び200mg/kg)に関して、TCR-駆動型IFNγ、IL-17A及びIL-6の有意な増加は、CD3ε+CD28刺激後にやはり観察された。
【0253】
ナイーブマウスに関して、本発明者らは、MCA205腫瘍-形成マウスにおけるTCR会合後T細胞の極性化を調べた。IFOの公知の細胞毒性の用量、すなわち、300mg/kgを、腫瘍-形成マウスにおける実験に加え;IFO 200及び300mg/kgでは、IL-17A及びIFNγ TCR-駆動型サイトカインを誘導することに失敗し、TCR-駆動型IL-6のみが、依然として大いに分泌した。これらの結果は、T細胞数の減少並びにより高用量で観察されたT細胞の割合の低下を連想させる。T細胞数の減少が腫瘍-形成マウスにおいて観察されなかった100及び150mg/kgにおけるIFOの場合、CD3ε後及びCD28同時刺激後に、TCR-駆動型IL-17A、IFNγ及びIL-6の有意な分泌を検出した。予想外に、IFO150mg/kgは、CPA100mg/kgよりもTCR-駆動型IL-17及びIL-6を誘導した。
【0254】
低用量のIFOについて、抗腫瘍活性におけるT細胞の関与を確認するために、補足的試験を行った。MCA205を有するマウスにおいて、CD4+及びCD8+T細胞を除去し、150mg/kgのIFOの単回i.p.注射で治療した。腫瘍増殖の有意な減少が、除去されていないマウスの場合に観察された。CD4+T細胞及びCD8+T細胞除去マウスについて、本発明者らは、抗腫瘍効果の低下を観察した。最後に、IFO150mg/kgの抗腫瘍有効性は、CD4+及びCD8+T細胞を除去したマウスにおいて完全に消失した。全体的に見て、これらのデータから、低用量のIFO(150mg/kg)で、T細胞が、抗腫瘍免疫介在性効果を観察するのに必須であることが示された。
【0255】
IFOの免疫介在性抗腫瘍応答に関するこれらの結果から、本発明者らは、低毒性のオキシアザホスホリン誘導体、G-IFOにおける免疫調節特性を試験した。
【0256】
本明細書に記載された実験において、G-IFOの用量を、IFOの等価なモル用量(当量Xmg/kg)と定義する。例えば、モル質量は、G-IFOが419g/molである場合IFOが261g/molであるため、G-IFO40mg/kgは、IFO25mg/kgに等しい。
【0257】
本発明者らは、免疫能(immune competent)MCA205を有するC57Bl/6において、当量100mg/kgのG-IFOの単回i.p.注射の抗腫瘍活性を評価した。G-IFOのより高用量(当量150mg/kg)と比較した脾臓(図2A)及び腫瘍(図2B)において、当量100mg/kgのG-IFOの用量では、T細胞母集団における細胞毒性を示さなかった。図2Dに示す通り、腫瘍増殖の有意な遅延が、3種の分子の場合に観察され、CPA100mg/kgと比較して、G-IFOの腫瘍増殖の遅延が低下した。これらのデータによって、G-IFOは、単回の低用量でも腫瘍増殖を遅延させることが可能であるということが示唆される。
【0258】
本発明者らはまた、漸増G-IFOの用量について、MCA205を有するマウスにおけるTCR-駆動型サイトカインの放出を検討した。図2Bに示す通り、当量150mg/kgのG-IFOでは、高レベルのIL-6を誘導したが、IFNγの分泌は乏しく、当量100mg/kgのG-IFOでは、IFNγ分泌、すなわち、Th1極性化を助けた。有意なIL-17分泌は、G-IFOを用いたこれらの実験において観察することはできなかった。
【0259】
全体的に見て、これらの結果から、当量150mg/kgのG-IFOでは、Th1蓄積を制限する可能性があるT細胞除去を誘導したことが示され、当量100mg/kgのG-IFOでは、抗腫瘍活性が、T細胞の数に影響を与えず、IFNγ及びIL-6分泌の増加を実証したことが示された。したがって、当量100mg/kgのG-IFOを、免疫調節性用量として選択した。
【0260】
抗-PD1抗体、オキシアザホスホリン及び前活性化させたオキシアザホスホリン(X-Oxaza;すなわち、G-IFO)間の相乗作用
図3(A~B)に示す通り、抗-PD1 mAbsは、単独で投与した場合、MCA205腫瘍モデルにおいて腫瘍増殖を減少させることができなかった。
【0261】
IFOが抗-PD1 mAbsに会合する場合、細胞毒性の高用量(300mg/kg)又は免疫調節性用量(150mg/kg)のIFOで抗腫瘍有効性の改善は、観察されなかった(図4)。一方、本発明のオキシアザホスホリン誘導体、低用量のゲラニルオキシ-IFO(G-IFO当量100mg/kg)は、抗-PD1 mAbsと組み合わせて、抗腫瘍有効性を大いに増強することが示された(図3)。全腫瘍退縮は、マウス3)の17%で観察された。
【0262】
最後に、初回体積が5倍に達する時間は、G-IFO当量100mg/kg単独及び抗-PD1 mAb単独と比較して、G-IFO当量100mg/kg+抗-PD1 mAbsで大いに遅延し、腫瘍増殖に対するG-IFOの抗-PD1抗体との組合せの相乗効果を示している(図3B)。
【0263】
結論
MCA205は、スタンドアロン治療として抗-PD-1 mAbsに対する応答が乏しかった。図4に示す通り、当量100mg/kgのG-IFOの単回の注射を抗-PD1 mAbs治療に加えることにより、抗腫瘍有効性が改善した。興味深いことに、強力な相乗作用は、抗-PD1 mAbsが、G-IFO当量100mg/kgと関連した場合観察された。したがって、低用量のG-IFOは、抗-PD-1 mAbs活性を利用することと直接関係するように思われた。かかる効果は、高用量及び低用量のIFOで観察されなかった。
【0264】
本発明者らは、マウスにおけるG-IFOのi.p.注射後、免疫修飾を更に精査した。B細胞母集団は、以前に報告した通り、これらの細胞傷害性薬剤による直接の死滅に対するB細胞の高い感受性を明確に示す低用量のG-IFO(当量100mg/kg)(図4)でもG-IFOにより非常に影響を受けたと思われた。かかるB細胞の減少は、オキシアザホスホリン誘導体を免疫チェックポイント阻害剤と共に用いる場合、利点でありうる。実際には、免疫チェックポイント阻害剤、例えば、抗-PD-1、抗-PD-L1及び抗-CTLA-4抗体は、頻回の免疫関連有害事象(irAE)を有する。これらのirAEのいくつかは、自己抗体の誘導及び/又は増加の結果である。現今では、この場合のほとんどで、コルチコイド投与は、免疫療法を妨害する重篤なirAEのための主な治療である。したがって、免疫チェックポイントモデュレーターを、本発明のオキシアザホスホリン誘導体と組み合わせることによって、自己反応性B細胞の再活性化の頻度が少なくなり、したがって、自己免疫関連有害事象がより少なくなりうる。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4
【国際調査報告】