IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アド アドヴァンスト ドラッグ デリヴァリー テクノロジーズ リミテッドの特許一覧

特表2022-553653高親油性生理活性物質の放出制御製剤
<>
  • 特表-高親油性生理活性物質の放出制御製剤 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】高親油性生理活性物質の放出制御製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/16 20060101AFI20221219BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20221219BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K47/38
A61K47/04
A61K31/05
A61K31/352
A61P25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521684
(86)(22)【出願日】2020-10-16
(85)【翻訳文提出日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2020079248
(87)【国際公開番号】W WO2021074403
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】19203580.6
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521446381
【氏名又は名称】アド アドヴァンスト ドラッグ デリヴァリー テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ADD ADVANCED DRUG DELIVERY TECHNOLOGIES LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク,ジェイ ジェスコ
(72)【発明者】
【氏名】グラーヴェ,アネット
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンツラフ,モニカ
(72)【発明者】
【氏名】バルトルト,サラ
(72)【発明者】
【氏名】ゴイゲリン,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD29
4C076DD29H
4C076EE31A
4C076EE32
4C076EE32H
4C076FF02
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF23
4C076FF31
4C076GG17
4C086AA01
4C086AA10
4C086BA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA36
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086NA12
4C086ZA02
4C206AA01
4C206AA10
4C206CA19
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA56
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA12
4C206ZA02
(57)【要約】
本発明は、1つまたは複数の高親油性生理活性物質と、1つまたは複数の水溶性結合剤と、全成分の重量に対して20重量%以下の他の賦形剤とを有するマトリックスを含む固形製剤に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の高親油性生理活性物質と、1つまたは複数の水溶性結合剤と、全成分の重量に基づき20重量%以下の他の賦形剤とを有するマトリックスを含み、生理活性物質は4以上のlogPを有する場合に高親油性である、固形製剤。
【請求項2】
前記高親油性生理活性物質として、1つまたは複数の高親油性医薬活性成分が含まれる、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記高親油性活性成分として、1つまたは複数のカンナビノイドが含まれる、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
以下の一般式(1)、(3)または(4)の化合物:
【化1】
[式中、Rは、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、またはC~C20アルキニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する];
カンナビノイド、またはナビキシモルス(nabiximols)などの大麻(ヘンプ)抽出物のカンナビノイド混合物;および
ナビロン(nabilone)または1-ナフチル-(1-ペンチルインドール-3-イル)メタノンなどの合成カンナビノイド;
から選択される1つまたは複数のカンナビノイドが含まれる、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
前記カンナビノイドが、2-[1R-3-メチル-6R-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール;(6aR,10aR)-6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6a,7,8,10a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[c]クロメン-1-オール、またはそれらの混合物である、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記水溶性結合剤として、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
前記HPMCが、6mPa・s以下の20℃で2%水溶液での粘度を有する、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
前記結合剤が、高親油性生理活性物質の総量に対して、0.3~10重量%の総比率、好ましくは0.5~8重量%の総比率、特に1~6重量%の総比率で含まれる、請求項1~7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
顆粒、マトリックスペレットまたはマトリックス錠剤の形態で提供されるか、またはこれらの形態のいずれかを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
マトリックスペレットを含む、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記マトリックスペレットが、30μm~1800μmの範囲の、ふるい分析によって決定されるサイズを有する、請求項9に記載の製剤。
【請求項12】
含まれる生理活性物質の30重量%超でかつ80重量%未満が2時間以内に放出される、請求項1~11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
含まれる生理活性物質の40重量%超でかつ90重量%未満が3時間以内に放出される、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
含まれる生理活性物質の50重量%超でかつ95重量%未満が4時間以内に放出される、請求項13に記載の製剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高親油性生理活性物質の製剤、特に放出制御製剤、ならびにそれらの製造に関する。高親油性生理活性物質は、例えば医薬活性成分である。高親油性医薬活性成分の例は、カンナビノイドである。
【背景技術】
【0002】
多くの生理活性物質は高親油性特性を有し、すなわち、比較的高いlogP、例えば4以上のlogPを有し、logPはn-オクタノール/水分配係数の常用対数である。
【0003】
そのような生理活性物質を含む製剤、特に経口製剤の提供は、特に生理活性物質の放出制御(または制御放出)を達成すべき場合に、特別な課題を示す。
【0004】
高親油性特性を有する生理活性物質には、カンナビノイドが含まれる。
【0005】
カンナビノイドは、いわゆるカンナビノイド受容体と親和性を有する不均質な薬理活性物質の群である。カンナビノイドには、例えば、テトラヒドロカンナビノール(THC)および非精神活性カンナビジオール(non-psychoactive cannabidiol)(CBD)が含まれる。
【0006】
カンナビノイドは、薬物として著しく関心が高まっている。カンナビノイドが、痛み、炎症、てんかん、睡眠障害、多発性硬化症の症状、食欲不振、および統合失調症を含む多くの臨床状態を処置するのに有益であり得ることを示す証拠がある(非特許文献1)。
【0007】
しかしながら、カンナビノイドは非常に低い水溶性(2~10μg/ml)を有する高親油性分子(logP6~7)であるため、適切な剤形の提供は困難である。
【0008】
したがって、カンナビノイドの低い経口バイオアベイラビリティにより、経皮投与、鼻腔内投与および経粘膜投与の提案がなされた。
【0009】
加えて、カンナビノイドの高親油性のせいで、塩形成(すなわち、pH調整)、共溶媒和(例えば、エタノール、プロピレングリコール、PEG400)、ミセル形成(例えば、ポリソルベート80、Cremophor-ELP)、マイクロエマルション形成およびナノエマルション形成を含む、エマルション化(乳化)、複合体形成(例えば、シクロデキストリン)、および脂質ベース製剤(例えば、リポソーム)中への封入が、従来技術において製剤戦略の中で検討されている。ナノ粒子系も提案されている(非特許文献1)。
【0010】
様々な経口固形製剤が、例えば特許文献1および2などの特許文献において提案されている。これらの文献は、放出挙動に関するデータを含まないため、カンナビノイドの投与のために提案された形態の実際の適合性は不明なままである。
【0011】
非特許文献3は、カンナビジオールに加えて、乳糖およびショ糖脂肪酸モノエステルを含む圧縮錠剤について記載する。
【0012】
ドロナビノール(Dronabinol)(Δ9-THC)は、カプセル形態(Marinol(登録商標))、および経口溶液(Syndros(登録商標))として市販されている。Marinol(登録商標)カプセルは、ゴマ油中に活性成分を含むソフトゼラチンカプセルである。
【0013】
ナビキシモルス(nabiximols)を含有する最終医薬Sativex(登録商標)は、頬の内側に噴霧される口腔スプレーである。
【0014】
特定の形態のてんかんを処置するための最近承認された製剤であるエピディオレックス(Epidiolex)は、活性成分であるカンナビジオールに加えて、賦形剤である無水エタノール、ゴマ油、ストロベリー香料、およびスクラロースを含む経口溶液の形態で提供される。
【0015】
しかしながら、これら提案の全てにかかわらず、高親油性生理活性物質、例えばカンナビノイドなどの医薬活性成分の、特に経口固形製剤のための改良された剤形に対するニーズが依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2008/024490号
【特許文献2】国際公開第2018/035030号
【特許文献3】国際公開第2015/065179号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】N. Bruni et al., Cannabinoid Delivery Systems for Pain and Inflammation Treatment. Molecules 2018, 23, 2478
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、生理活性物質(単数または複数)を放出し、かつ簡単な方法で調製することができる、カンナビノイドなどの高親油性生理活性物質のための固形製剤(solid dosage form)、特に経口固形製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、1つまたは複数の高親油性生理活性物質と、1つまたは複数の水溶性結合剤と、全成分の重量に基づき20重量%以下のさらなる賦形剤とを有するマトリックスを含む固形製剤を提供することによって達成され、ここで生理活性物質は、4以上のlogPを有する場合に高親油性である。
【0020】
驚くべきことに、高親油性物質(単数または複数)の量に対する水溶性結合剤の量によって放出を制御することができる、高親油性生理活性物質の固形製剤、特に経口固形製剤を提供することができることが見いだされた。1つまたは複数の水溶性結合剤の使用は、生理活性物質(単数または複数)を含むマトリックスの形成を可能にするのみならず、放出の制御にも役立つ。特に、水溶性結合剤は、水に非常に僅かにしか溶解しない高親油性物質の放出を促進する。結合剤によって初めて、これらは十分な量および速度で放出される。
【0021】
さらなる目的およびその解決手段は、以下の本発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0022】
以下において、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】活性物質としての2-[1R-3-メチル-6R-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール、および低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、3種類のペレット製品からのin vitro放出を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明により提供される製剤は、1つまたは複数の高親油性生理活性物質を含む。
【0025】
物質は、logPが4以上である場合に高親油性である。logPは、n-オクタノール/水分配係数の常用対数である。分配係数は実験的に求めることができる。値は、典型的には、室温(25℃)での値を指す。分配係数は、分子構造からおおよそに計算することもできる。
【0026】
本発明によるペレットは、5以上のlogPを有する生理活性物質に特に適しており、特に6以上のlogPを有する生理活性物質に適している。
【0027】
用語「生理活性物質」は、ヒトまたは動物に投与されてヒトまたは動物の体内において効果を発揮する物質を指す。生理活性物質は、例えば、ヒトまたは動物用の医薬品または栄養補助食品の医薬活性物質であってよい。
【0028】
本発明により使用することができる高親油性医薬活性物質の例は、カンナビノイドである。
【0029】
カンナビノイドは、フィトカンナビノイドおよび合成カンナビノイドの両方であってよい。
【0030】
フィトカンナビノイドは、約70種のテルペンフェノール化合物の群である(V.R. Preedy (ed.), Handbook of Cannabis and Related Pathologies (1997))。これらの化合物は、典型的には、フェノール環に結合したモノテルペン基を含み、フェノール性ヒドロキシル基に対してメタ位にあるC~Cアルキル鎖を有する。
【0031】
カンナビノイドの好ましい群は、以下の一般式(1)のテトラヒドロカンナビノールである:
【化1】
式中、Rは、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、またはC~C20アルキニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0032】
上記の一般式(1)の化合物のさらに好ましい群において、Rは、C~C10アルキル、またはC~C10アルケニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0033】
特に、式(1)において、Rは式C11のアルキル基である。
【0034】
一般式(1)の化合物は、立体異性体の形態で存在してもよい。好ましくは、中心6aおよび10aはそれぞれR立体配置を有する。
【0035】
テトラヒドロカンナビノールは、特に化学名(6aR,10aR)6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6a,7,8,10a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[c]クロメン-1-オールを有するΔ9-THCである。その構造は以下の式(2)で表される:
【化2】
【0036】
カンナビノイドの別の好ましい群は、以下の一般式(3)のカンナビジオールである:
【化3】
式中、Rは、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、またはC~C20アルキニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0037】
上記の一般式(3)の化合物のさらなる好ましい群において、Rは、C~C10アルキル、またはC~C10アルケニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0038】
特に、式(3)において、Rは式C11のアルキル基である。
【0039】
カンナビジオールは、特に、2-[1R-3-メチル-6R-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオールである。
【0040】
本発明によれば、活性成分として、Δ9-THC((6aR,10aR)-6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6a,7,8,10a-テトラヒドロ-6H-ベンゾ[c]クロメン-1-オール)およびCBD(2-[1R-3-メチル-6R-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール)の組み合わせを使用することもできる。
【0041】
カンナビノイドのさらに好ましい群は、以下の一般式(4)のカンナビノールである:
【化4】
式中、Rは、C~C20アルキル、C~C20アルケニル、またはC~C20アルキニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0042】
上記の一般式(4)の化合物のさらなる好ましい群において、Rは、C~C10アルキル、またはC~C10アルケニルから選択され、任意選択で1つまたは複数の置換基を有する。
【0043】
特に、式(4)において、Rは式C11のアルキル基である。
【0044】
カンナビノールは、特に、6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6H-ジベンゾ[b,c]ピラン-1-オールである。
【0045】
本発明によれば、大麻(ヘンプ)抽出物のカンナビノイドまたはカンナビノイド混合物も使用することができる。
【0046】
例えば、ナビキシモルス(Nabiximols)は、標準化された含有量のテトラヒドロカンナビノール(THC)およびカンナビジオール(CBD)を含む、大麻草(カンナビス・サティバ (Cannabis sativa L.))の葉および花の薬物として使用される植物エキス混合物である。
【0047】
合成カナビノイドも使用することができる。
【0048】
それらには、3-(1,1-ジメチルヘプチル)-6,6a,7,8,10,10a-ヘキサヒドロ-1-ヒドロキシ-6,6-ジメチル-9H-ジベンゾ[b,d]ピラン-9-オンが含まれる。この化合物は、2つのキラル中心を含む。薬物ナビロン(nabilone)は、(6aR,10aR)形態と(6aS,10aS)形態の1:1混合物(ラセミ体)である。ナビロンは、本発明による好ましいカンナビノイドである。
【0049】
合成カンナビノイドのさらなる例は、JWH-018(1-ナフチル-(1-ペンチルインドール-3-イル)メタノン)である。
【0050】
本発明によると、1つまたは複数の高親油性生理活性物質、例えばカンナビノイドなどの1つまたは複数の医薬活性成分は、マトリックス中に含まれる。マトリックスは、好ましくは、他のいずれの生理活性物質も含まない。
【0051】
マトリックスは、1つまたは複数の水溶性結合剤を含む。これら結合剤は、ポリマーフィルム形成物質(polymeric film-forming substance)である。
【0052】
好適な水溶性フィルム形成剤の例は、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(Na-CMC)およびポリビニルピロリドン(PVP)である。
【0053】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、特に、20℃で2%(w/w)水溶液の粘度が6mPa・s以下であるHPMCのような、低粘度HPMCであることが好ましい。
【0054】
商品名Pharmacoat(登録商標)603で市販されているような、20℃で2%(w/w)水溶液の粘度が3mPa・sであるHPMCが特に好ましい。
【0055】
1つまたは複数の高親油性生理活性物質および1つまたは複数の水溶性結合剤を含むマトリックスは、1つまたは複数の充填剤または担体などの他の慣用されている賦形剤を含むことができる。本発明によれば、さらなる賦形剤の量は、全成分の重量に基づき20重量%以下に制限される。好ましくは、全成分の重量に基づき10質量%以下のさらなる賦形剤が含まれる。
【0056】
特に好ましい実施形態において、マトリックスは、高親油性生理活性物質(単数または複数)および結合剤(単数または複数)からなり、例えば、カンナビノイド(単数または複数)および結合剤(単数または複数)からなる。
【0057】
マトリックスは、高親油性生理活性物質の総量に対して、0.1~10重量%の総比率で、好ましくは0.5~8重量%の総比率で、特に1~6重量%の総比率で、1つまたは複数の水溶性結合剤を含有する。
【0058】
結合剤の量が少なすぎると、放出は非常にゆっくりとかつ不完全にしか行われないと考えられる。特定された範囲内の比率を選択することにより、生理活性物質の放出を調整することができる。例えば、経口製剤からの放出は、生理活性物質が胃腸通過の通常の時間にわたって放出されるように調節することができる。
【0059】
本発明による経口固形製剤は、1つまたは複数の高親油性生理活性物質を有するマトリックスを含み、任意の形態で提供および使用することができる。例えば、製剤は、顆粒、マトリックスペレットまたはマトリックス錠剤の形態で提供することができ、あるいはこれらの形態のいずれかを含んでいてよい。
【0060】
調製は、それ自体既知の方法で実施することができる。
【0061】
好ましい実施形態において、製剤はマトリックスペレットを含む。
【0062】
マトリックスペレットは、典型的には、30μm~1800μmの範囲のサイズを有し、サイズは、ふるい分析によって決定することができる。
【0063】
マトリックスペレットは、例えば、サシェ(sachet)で提供することができ、またはそれらをさらに加工してもよい。
【0064】
例えば、マトリックスペレットには、1つまたは複数のさらなるコーティングを設けてもよい。これは、放出の追加の制御を可能にする。
【0065】
好ましい一実施形態では、放出を制御するコーティングは設けられない。
【0066】
マトリックスペレットを使用して、多粒子製剤(multiparticulate dosage form)を得ることができる。それらを、カプセル中に充填することができ、または錠剤中に組み込むことができる。
【0067】
異なる放出プロファイルを有するマトリックスペレットを、1つの剤形(カプセル/錠剤/サシェ)中において組み合わせることができる。
【0068】
本発明による経口製剤は、その中に含まれる高親油性生理活性物質、または2種以上の高親油性生理活性物質が含まれる場合には含まれる全ての高親油性生理活性物質を、摂取後に消化管で放出する。製剤は、特に放出制御のために使用される。特に、それらは、含まれる生理活性物質の30重量%超でかつ80重量%未満を2時間以内に放出する。さらに、それらは、特に、含まれる生理活性物質の40重量%超でかつ90重量%未満を3時間以内に放出する。さらに、それらは、含まれる生理活性物質の50重量%超でかつ95重量%未満を4時間以内に放出する。2種以上の生理活性物質が含まれる場合、その情報は含まれる全ての物質に関連する。
【0069】
各場合において、放出は、37℃で、0.4%のTween(登録商標)80を添加した1000mlのリン酸緩衝液(pH6.8)中において、ブレードスターラー装置で決定する。
【実施例
【0070】
以下の実施例は、水溶性フィルム形成物質を用いて高親油性生理活性物質の放出を制御できることを示す。
【0071】
実施例1:ペレットの製造
以下の表1に示す量の成分を使用してペレットを作製した。
【0072】
この目的のために、2-[1R-3-メチル-6R-(1-メチルエテニル)-2-シクロヘキセン-1-イル]-5-ペンチル-1,3-ベンゼンジオール(Canapure PH)を96%エタノールに溶解させた。この活性成分は、約6.1のlogPを有する。
【0073】
HPMC(Pharmacoat(登録商標)603)を水に溶解させて別の溶液を調製した。
【0074】
次いで、HPMC溶液をカンナビジオール溶液に徐々に添加した。
【0075】
次いで、非晶質(アモルファス)二酸化ケイ素(Syloid(登録商標)244 FP)を添加した。
【0076】
混合物をプロペラスターラーで撹拌した。
【0077】
得られた噴霧液を微結晶セルロース(Cellets(登録商標)500)で作られたスターターコアに噴霧(スプレー)した。
【0078】
これは、ウルスターインサート(Wurster insert)を有するMini-Glat流動層システムで行った。空気入口空気温度は40℃であった。平均噴霧速度は0.5g/分であった。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
実施例2:放出
実施例1から得られたペレット製品からの放出を、特に37℃で、0.4%Tween(登録商標)80を添加した1000mlのリン酸緩衝液(pH6.8)中においてブレードスターラー装置を用いて調べる。

図1
【国際調査報告】