IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】医療装置用クレードル
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20221219BHJP
【FI】
A61M5/142 522
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521708
(86)(22)【出願日】2020-10-14
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2020078821
(87)【国際公開番号】W WO2021074176
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】19203682.0
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】コンヤ,アフメット
(72)【発明者】
【氏名】ビーガント,ローラント・ハンス
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD11
4C066EE11
4C066GG20
4C066KK19
4C066LL16
(57)【要約】
医療装置(2)用のクレードル(1)であって、クレードル(1)が、内側クレードル側面(11D)および対向する外側クレードル側面(11P)であって、外側クレードル側面(11P)が、外側クレードル側面(11P)の少なくとも一部が患者の皮膚に面する状態で患者の皮膚に取り付けるように適合されている、内側クレードル側面および対向する外側クレードル側面と、医療装置連結構造(14a、14b)であって、医療装置(2)の一部が内側クレードル側面(11D)に面するように医療装置(2)をクレードル(1)に連結するように適合されている、医療装置連結構造と、を有し、クレードル(1)が、内側クレードル側面(11D)を外側クレードル側面(11P)と流体的に連結する排出構造をさらに備える、クレードルが本明細書で開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療装置(2)用のクレードル(1)であって、
内側クレードル側面(11D)および対向する外側クレードル側面(11P)であって、前記外側クレードル側面(11P)が、前記外側クレードル側面(11P)の少なくとも一部が患者の皮膚に面する状態で前記患者の皮膚に取り付けるように適合されている、内側クレードル側面(11D)および対向する外側クレードル側面(11P)と、
医療装置連結構造(14a、14b)であって、前記医療装置(2)の一部が前記内側クレードル側面(11D)に面するように前記医療装置(2)を前記クレードル(1)に連結するように適合されている、医療装置連結構造(14a、14b)と、を有し、
前記クレードル(1)が、前記内側クレードル側面(11D)を前記外側クレードル側面(11P)と流体的に連結する排出構造をさらに備える、クレードル(1)。
【請求項2】
前記排出構造が、前記内側クレードル側面(11D)を前記外側クレードル側面(11P)と流体的に連結する少なくとも1つの貫通孔(13)を備える、請求項1に記載のクレードル(1)。
【請求項3】
前記クレードル(1)が、クレードルベース(11)および壁(12)を含み、前記壁(12)が、前記クレードルベース(11)から突出し、2つの対向する壁側面を備え、前記2つの対向する壁側面の一方が、前記外側クレードル側面(11P)の少なくとも一部によって少なくとも部分的に形成され、前記2つの対向する壁側面の他方が、前記内側クレードル側面(11D)の少なくとも一部によって少なくとも部分的に形成され、前記外側クレードル側面(11P)の前記少なくとも一部および前記内側クレードル側面(11D)の少なくとも一部によってそれぞれ少なくとも部分的に形成された前記2つの対向する壁側面が、前記排出構造によって互いに流体的に連結されている、請求項1または2に記載のクレードル(1)。
【請求項4】
前記排出構造の前記少なくとも1つの貫通孔(13)が、前記壁(12)の自由端に配置される、請求項3に記載のクレードル(1)。
【請求項5】
前記排出構造の前記少なくとも1つの貫通孔(13)が、前記壁(12)の中断部を形成する、請求項3または4に記載のクレードル(1)。
【請求項6】
前記排出構造の前記少なくとも1つの貫通孔(13)が、前記壁(12)および前記クレードルベース(11)の移行部に配置され、それによって前記壁(12)から前記クレードルベース(11)内に延在している、請求項3から5のいずれか一項に記載のクレードル(1)。
【請求項7】
前記壁(12)が境界ストリップを形成し、前記境界ストリップが前記クレードルベース(11)の周方向長さの少なくとも半分にわたって延在している、請求項3から6のいずれか一項に記載のクレードル(1)。
【請求項8】
前記排出構造の前記少なくとも1つの貫通孔(13)が、長孔、スロット、矩形孔または円形孔を形成する、請求項2から7のいずれか一項に記載のクレードル(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの貫通孔の断面積が、0.01mmよりも大きく5mm未満である、請求項2から8のいずれか一項に記載のクレードル(1)。
【請求項10】
前記クレードル(1)が、前記内側クレードル側面(11D)から所定の距離に医療装置を配置するためのスペーサを含み、前記スペーサが前記内側クレードル側面(11D)から突出している、請求項1から9のいずれか一項に記載のクレードル(1)。
【請求項11】
前記排出構造が、前記内側クレードル側面(11D)に配置された少なくとも1つの溝を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載のクレードル(1)。
【請求項12】
前記外側クレードル側面(11P)が疎水性である、請求項1から11のいずれか一項に記載のクレードル(1)。
【請求項13】
医療システム(1、2)であって、
請求項1から12のいずれか一項に記載のクレードル(1)と、
クレードル連結構造(24a、24b)を含む医療装置(2)であって、前記クレードル連結構造(24a、24b)が、前記クレードル(1)の前記医療装置連結構造(14a、14b)と相補的であり、前記医療装置(2)が、近位医療装置側面(2P)をさらに含み、前記医療装置(2)が前記クレードル(1)に連結される構成では、前記近位医療装置側面(2P)が、前記内側クレードル側面(11D)に面する、医療装置(2)と、
を含む、医療システム(1、2)。
【請求項14】
前記医療装置(2)が前記クレードル(1)に連結される構成では、前記近位医療装置側面(2P)および前記内側クレードル側面(11D)が、前記排出構造と流体的に連結された中空空間を画定する、請求項13に記載の医療システム(1、2)。
【請求項15】
医療装置(2)とクレードル(1)との間の空間を通気する方法であって、
請求項13または14に記載の医療システムを提供するステップと、
前記近位医療装置側面(2P)が前記内側クレードル側面(11D)に面するように、前記医療装置(2)の前記クレードル連結構造(24a、24b)を前記クレードル(1)の前記医療装置連結構造(14a、14b)と係合させるステップと、
前記排出構造によって前記空間から水、湿度、または空気を除去することを可能にすることによって、前記医療装置(2)と前記クレードル(1)との間の空間(G)を通気するステップであって、前記排出構造が、前記医療装置(2)と前記クレードル(1)との間の前記空間(G)に流体的に連結される、前記医療装置(2)と前記クレードル(1)との間の空間(G)を通気するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療装置を患者の身体に一時的に連結するために使用されるクレードルに関する。本発明は、さらに、クレードルおよび医療装置を含む医療システムに関する。本発明は、さらに、クレードルを介して医療装置を患者の皮膚に連結する方法に関する。本発明はまた、クレードルと医療装置との間の空間を通気する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には数週間またはさらには数ヶ月までの日数の連続適用期間にわたって患者の身体に直接取り付けられる医療装置がますます多く使用される。例えば、真性糖尿病の治療に利用可能ないくつかのインスリンポンプは、患者の皮膚に接着して取り付けられ、基礎注入スケジュールおよび必要に応じたインスリンボーリにしたがって連続的なインスリン供給を提供するように設計されている。同様に、連続グルコース測定装置は、典型的には電気化学センサを使用して、実質的に連続的なグルコース測定を提供するために、インスリン注入ポンプと組み合わせて、または別々に使用される。皮膚に取り付けるように設計されたこのような医療装置は、パッチデバイスとも呼ばれる。全体的な設計およびシステムアーキテクチャに応じて、それらは、装置の近位側または底部側の接着剤層によって患者の皮膚に直接取り付けられてもよく、または患者の皮膚と医療装置との間に配置されたクレードルを介して間接的に取り付けられてもよい。典型的には、クレードルは、クレードルのそれぞれ近位側の底面から突出する注入カニューレおよび/または経皮センサ要素などの皮膚接触または皮膚穿刺要素を担持する。クレードルが取り付けられると、クレードルは皮膚に対して固定位置を有し、したがって、医療装置と皮膚穿刺要素とのその後の連結のためのプラットフォームを提供する。クレードルは、全適用時間にわたって患者の皮膚に取り付けられたままであってもよく、医療装置自体は、必要に応じてクレードルに取り付けられ、クレードルから一時的に取り外されてもよい。
【0003】
しかしながら、先に説明したようなクレードルおよび医療装置の別個の提供は、湿度および水などの液体の存在に関して重要である。典型的には、医療装置のハウジングとクレードルとの間には、いくつかの隙間または一般に空間が存在する。そのような隙間または空間には、例えば水泳またはシャワー時の水接触から生じる液体が存在することがある。典型的には、そのような水は、さらに、皮膚刺激を引き起こす可能性があるか、または1つ以上の皮膚穿刺要素の近接性を考慮して重要である実質的な量のほこり、汚れ、微生物、細菌などを運ぶ。この状況は、結果として生じる毛細管効果が液体を所定の位置に保持する傾向があるため、クレードルと医療装置ハウジングとの間の狭い隙間の典型的な場合に特に重要である。前に説明したように湿度および液体の長期的な存在に起因し得る潜在的な問題を安全に防止するために、建設的な対策を講じなければならず、および/またはクレードルおよび医療装置は、水への曝露後に患者によって分離および乾燥されなければならないが、これは面倒であり、しばしば省略される。
【0004】
欧州特許出願公開第3251585号明細書は、医療用アセンブリを受け入れるように適合され、底面を有するハウジング部分を備え、さらに、ハウジング部分に接続され、底面が身体に面するようにハウジング部分を患者の身体に取り付けるように適合された締結手段を備え、流体案内構成要素が、身体から発する流体をハウジング部分の周囲に案内するためにハウジング部分の底面に構成される、身体装着型装置、特に医療用アセンブリ用のパッチを開示している。これは、ハウジング部分の下の湿気および汗などの液体の除去を可能にするが、ハウジング部分(クレードルに対応する)と医療装置との間の湿気または液体の問題に対処しない。逆に、クレードルのハウジング部分は、流体に対して不透過性である壁をその底面に有する。したがって、医療用アセンブリと収容部クレードルとの間の領域から液体を除去することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3251585号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の全体的な目的は、クレードルおよびクレードルおよび医療装置を有する医療システムの設計に関する最新技術を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によれば、全体的な目的は、医療装置用クレードルによって達成される。クレードルは、使用状況において患者の皮膚と医療装置との間に配置されるインターフェース装置である。クレードルは、外側クレードル側面と、対向する内側クレードル側面とを有している。外側クレードル側面は、外側クレードル側面の少なくとも一部が患者の皮膚に面する状態で患者の皮膚に取り付けるように適合されている。クレードルは、医療装置連結構造をさらに含む。医療装置連結構造は、医療装置の一部が内側クレードル側面を向くように医療装置をクレードルに連結するように適合されている。クレードルは、内側クレードル側面を外側クレードル側面と流体的に連結する排出構造をさらに備える。
【0008】
使用時、すなわちクレードルが患者の皮膚に取り付けられた状態では、医療装置がクレードルを介して患者の皮膚に取り付けられる。排水構造により、医療装置と内側クレードル側面との間に溜まる可能性のある水や湿度などがクレードルの外部に導かれることができる。排出構造は、医療装置と内側クレードル側面との間の空間を通気するのに役立ち、したがって、前述したように、そうでなければ湿度、汚染、および液体の長期的な存在に起因し得る潜在的な問題を低減するのに役立つ。
【0009】
実施形態では、排出構造は、内側クレードル側面を外側クレードル側面と流体的に連結する少なくとも1つの貫通孔を備える。貫通孔は、水、湿度または空気がクレードルを内側クレードル側面から外側クレードル側面に、およびその逆に通過することができるように、クレードルの材料を貫通する通路を形成する。排出構造は、クレードル上に広げられた複数の貫通孔を備えることができる。複数の貫通孔の一部または全部は、1つ以上の溝、チャネル、またはガイドによって互いに流体的に連結されてもよい。
【0010】
さらなる態様によれば、全体的な目的は、医療システムによって達成される。医療システムは、上述したおよび/またはさらに後述する任意の実施形態にかかるクレードルを含む。医療システムは、医療装置をさらに含む。医療装置は、クレードル連結構造を含み、クレードル連結構造は、クレードルの医療装置連結構造と相補的である。医療装置は、近位医療装置側面をさらに含み、医療装置がクレードルに連結される構成では、近位医療装置側面は、内側クレードル側面に面する。
【0011】
方向表現「近位」および「遠位」は、使用構成において患者の身体の皮膚に関して言及される。「近位」は、患者の皮膚に向かう方向を指し、「遠位」は、患者の皮膚からの方向を指す。「周辺」という表現は、「近位」および「遠位」によって定義される方向に横断する側方境界を指す。「複数」という表現は、1よりも大きい任意の自然数、すなわち、2、3、4・・・を指す。
【0012】
実施形態では、クレードルは、クレードルベースおよび壁を含み、壁は、クレードルベースから突出し、2つの対向する壁側面を備える。2つの対向する壁側面の一方は、外側クレードル側面の少なくとも一部によって少なくとも部分的に形成され、2つの対向する壁側面の他方は、内側クレードル側面の少なくとも一部によって少なくとも部分的に形成される。それぞれ外側クレードル側面の少なくとも一部および内側クレードル側面の少なくとも一部によって少なくとも部分的に形成される2つの対向する壁側面は、排出構造によって互いに流体的に連結される。したがって、水、湿度、および/または空気は、排出構造によってクレードルの壁を通過することができる。使用時には、クレードルベースの一部が患者の皮膚に面するように、クレードルを患者の身体に取り付けるためにクレードルベースの一部が使用されることができる。壁がクレードルベースから突出しているため、壁内または壁に配置された排出構造は、通常、患者の皮膚によって覆われない。したがって、排出構造を通って流れる流体が患者の皮膚によって妨げられる可能性は低い。
【0013】
例えば、排出構造の少なくとも1つの貫通孔は、壁の自由端、すなわち、クレードルベースに接続された壁の端部とは反対側の壁の端部に配置されることができる。好ましくは、壁およびクレードルベースは、壁および/またはクレードルを損傷することなく壁およびクレードルベースが分離されることができないように、一体部品を形成する。クレードルベースおよび壁は、単一の材料から作製されることができる。
【0014】
排出構造の少なくとも1つの貫通孔は、壁の中断部を形成することができ、すなわち、少なくとも1つの貫通孔は、壁の自由端から、クレードルベースに接続された壁の端部まで延在する。したがって、壁は、クレードルベースの円周に沿って離間した複数の壁要素によって形成される。壁の中断部を備える排出構造は、医療装置とクレードルの壁との間の空間を通気するのに役立つ。そのような実施形態では、少なくとも1つの貫通孔は、特に、クレードルベースから壁の自由端まで壁内に延在するスリットによって形成されてもよい。スリットは、スリット幅、すなわちそれぞれのスリットによって分離された2つの隣接する壁要素間の距離よりも大きい、クレードルベースから離れるように突出する方向の長さを有することができる。
【0015】
実施形態では、スリットは、クレードルの周方向長さの半分以下の幅を有する。特に、スリットは、クレードルの周方向長さの少なくとも30%の幅を有することができる。したがって、2つの壁要素は、クレードルの周方向長さの30%を超えて50%以下のクレードルの周に沿った方向に互いに変位されることができる。
【0016】
実施形態では、1つ以上の壁要素は、クレードルの周方向長さの50%未満および/またはクレードルの周方向長さの5%以上であるクレードルの周方向長さを有する。
【0017】
壁は、少なくとも2つの壁要素から構成されてもよく、好ましくは、壁は、少なくとも3つの壁要素から構成され、2つの隣接する壁要素は、貫通孔によってクレードルの周方向に互いに分離される。
【0018】
実施形態では、排出構造の少なくとも1つの貫通孔は、壁およびクレードルベースの移行部に配置され、それによって壁からクレードルベース内に延在する。したがって、排出構造は、医療装置とクレードルベースとの間の空間、ならびに医療装置とクレードルの壁との間の空間の排出を可能にする。さらに、壁およびクレードルベースの移行部に配置された少なくとも1つの貫通孔は、壁の自由端までさらに延在してもよい。あるいは、貫通孔は、壁の自由端まで延在していなくてもよく、それによって壁の自由端に境界を有してもよい。境界またはステーは、それぞれ、壁の自由端からクレードルベースまで延在する貫通孔を有する実施形態と比較して、壁および/またはクレードルの変形抵抗を増加させるのに役立つ。
【0019】
実施形態では、壁は、クレードルベースの周方向長さの少なくとも半分にわたって延在する境界ストリップを形成する。したがって、境界ストリップは、クレードルベースを少なくとも部分的に取り囲む。別の実施形態では、境界ストリップは、クレードルベースの周方向長さ全体にわたって延在する。
【0020】
必ずしもそうとは限らないが、典型的には、壁は、クレードルベースから壁の自由端まで、すなわち遠位方向に測定したときに一定または実質的に一定の高さを有する。さらに、必ずしもそうとは限らないが、典型的には、壁は、それぞれ近位方向または遠位方向に横切る一定または実質的に一定の厚さを有することができる。
【0021】
周壁およびクレードルベースは、例えばプラスチック材料から一体的に形成されてもよい。医療装置連結構造は、完全にまたは部分的に壁と一体的に形成されてもよい。
【0022】
医療装置とクレードルとの連結状態では、医療装置は、医療装置の周囲がそれぞれ壁の内側に少なくとも部分的に接触するように、周壁によって周方向に区切られた内部に完全にまたは部分的に収容されることができる。
【0023】
排出構造の少なくとも1つの貫通孔は、長孔、スロット、矩形孔、または円形孔を形成することができる。
【0024】
排出構造は、クレードル、存在する場合には壁、および/または存在する場合にはクレードルベース全体に分散された複数の貫通孔を備えることができる。
【0025】
実施形態では、排出構造の少なくとも1つの貫通孔の内側断面積は、0.01mmよりも大きく130mm未満である。実施形態では、排出構造の少なくとも1つの貫通孔の内側断面積は、65mm未満、好ましくは30mm未満である。
【0026】
実施形態では、外側クレードル側面は疎水性である。外側クレードル側面は、疎水性コーティングを含むことができ、および/または疎水性材料から作製される。実施形態では、クレードルは、その後に疎水性コーティングによってコーティングされたコア材料から形成されてもよい。
【0027】
疎水性材料の存在および排出構造の存在は、組み合わせて、医療装置とクレードルとの間の任意の容積または隙間が環境に排出されるのに役立ち、それによって、湿度および/または水などの液体が蒸発することができ、および/または外部、特に排出構造を介してクレードルの周囲の周りの領域に移送されることを確実にする。疎水性の内側クレードル側面を設けることは、そうでなければ近位医療装置側面と内側クレードル側面との間の空間からの水、湿度および/または空気の除去を妨げる毛細管力に対して作用することを可能にする。
【0028】
任意に、クレードルのさらなる要素、特に先に説明したような壁は、完全にまたは部分的に疎水性コーティングを有してもよい。特に、内側クレードル側面はまた、疎水性コーティングを有してもよい。実施形態では、クレードルは、疎水性材料から作製され、および/またはクレードルの全表面は、疎水性コーティングによってコーティングされる。
【0029】
さらに、いくつかの実施形態では、医療装置、特に近位医療装置側面は疎水性であり、それによって疎水性の内側クレードル側面の効果にさらに寄与する。この目的のために、医療装置の近位ハウジング壁などの近位医療装置側面、または医療装置のハウジング全体は、疎水性材料から作製されてもよく、および/または疎水性コーティングを有してもよい。
【0030】
実施形態では、外側クレードル側面および内側クレードル側面は、実質的に同一平面上にあるが、内側および外側クレードル側面のいずれかまたは双方にリブ、突出部、チャネルまたは凹部などの構造要素を有することができる。実施形態では、クレードルベースは、実質的に板状である。外側クレードル側面は、患者の皮膚表面とのぴったりした接触に寄与するように湾曲し、特に凹状であってもよい。
【0031】
外側クレードル側面は、クレードルを患者の皮膚に取り外し可能に取り付けるための接着層を備えることができる。接着剤は、外側クレードル側面全体を覆っていてもよく、またはその1つ以上の部分のみを覆っていてもよい。さらなる実施形態では、クレードルは、接着剤に追加的または代替的に、ベルトまたはベルト連結構造などのさらなる皮膚取り付け要素を備えてもよい。
【0032】
実施形態では、クレードル、特にクレードルベースは、機能インターフェースを備え、機能インターフェースは、医療装置と患者の身体、それぞれ患者の皮膚との動作可能な連結を可能にする。そのような機能的インターフェースは、例えば、注入カニューレおよび/または分析物センサ要素などの穿刺要素が外側クレードル側面を越えて突出し、患者の皮膚を穿刺するかまたは患者の皮膚と接触することができるクレードル内の機能的連結開口部を含むことができる。穿刺要素連結構造は、任意に、機能インターフェースの一部として設けられてもよい。穿刺要素連結構造は、穿刺要素と係合するように設計される。さらなる実施形態では、クレードルは、外側クレードルベース側面から近位方向に突出する一体型穿刺要素を含む。
【0033】
実施形態では、クレードルベースおよび周壁は、連続的な流体容積を少なくとも部分的に画定する。連続的な流体容積は、排出構造に流体的に連結される。医療装置がクレードルに連結されている場合、前記流体容積は、近位医療装置側面によってさらに画定される。そのような設計は、クレードルとベースとの間の位置に存在する水などの湿度または液体がそれぞれ外部に排出されることができることを保証する。
【0034】
実施形態では、クレードルは、スペーサを含み、スペーサは、内側クレードル側面から、好ましくは使用時に患者の皮膚から離れる方向に突出する。そのようなスペーサは、例えば、クレードルベースから突出するポストによって実現されることができる。そのようなポストは、近位医療装置側面において医療装置ハウジングを支持する。代替的または追加的に、スペーサは、内側クレードル側面に延在するリブによって実現されてもよく、それによってクレードル剛性を高める。そのようなリブは、クレードルと医療装置との間の流体容積全体を排出構造と流体的に連結することを確実にするために、必要に応じて横方向通気開口部を有することができる。したがって、リブは、医療装置とクレードルとの間の隔離された流体区画の形成を防止するのに役立つ。実施形態では、医療装置がクレードルに連結されている構成では、近位医療装置側面と内側クレードル側面との間に連続的な流体容積が存在する。あるいは、医療装置とクレードルとの間にいくつかの区画が存在してもよく、各区画は、排出構造によって外部と別々に流体的に連結される。
【0035】
実施形態では、近位医療装置側面および内側クレードル側面は、医療装置とクレードルとが連結された構成において、少なくとも部分的に互いに平行である。
【0036】
医療装置は、医療装置の側面が医療装置ハウジングの外面を指すように、医療装置ハウジングを有することができる。特に、「近位医療装置側面」という表現は、使用中に患者の身体の近位にある医療装置の外壁を指す。
【0037】
実施形態では、クレードル連結構造および医療装置連結構造は、解放可能な係合のために設計され、医療装置および/またはクレードルを損傷することなくクレードルおよび医療装置が分離されることを可能にする。クレードルの医療装置連結構造および医療装置のクレードル連結構造は、組み合わせて、例えばラッチキャッチ構成を形成してもよく、および/またはスナップ嵌合構成を形成してもよい。医療装置は、クレードルと比較してより長い寿命を有することができるため、医療装置、特にそのクレードル連結構造を損傷することなく分離を可能にすることが必要とされることができる。したがって、医療装置は、次々と多数のクレードルによって再使用されることができる。クレードル、特にその医療装置連結構造は、分離時に損傷されても損傷されなくてもよい。代替的な実施形態では、クレードル装置連結構造および医療装置連結構造は、クレードル装置連結部を破壊することなく、それぞれ切り離されることができない恒久的な連結のために設計されてもよい。
【0038】
実施形態では、医療装置は、注入装置および連続分析物測定装置のうちの少なくとも一方を含む。注入装置は、例えば、時間可変基本スケジュールにしたがって連続的または準連続的にインスリンを注入し、さらにオンデマンドでインスリンボーリを注入するように設計されたインスリン注入装置であってもよい。連続分析物測定装置は、例えば、電気化学センサを介して血液または間質組織中などにおけるグルコース濃度を判定するように設計された連続グルコースメータであってもよい。
【0039】
さらなる態様によれば、全体的な目的は、クレードルを介して医療装置を患者の皮膚に連結する方法によって達成される。本方法は、上述したおよび/またはさらに後述する任意の実施形態にかかる医療システムを提供することを含む。本方法は、クレードルを患者の皮膚に連結することをさらに含む。本方法は、医療装置連結構造とクレードル連結構造との間に係合を確立することによって医療装置をクレードルに連結することをさらに含む。
【0040】
全体的な目的は、医療装置とクレードルとの間の空間を通気する方法によってさらに達成される。本方法は、上述したおよび/または後述する任意の実施形態にかかる医療装置およびクレードルを提供するステップを含む。本方法は、近位医療装置側面が内側クレードル側面に面するように、医療装置のクレードル連結構造をクレードルの医療装置連結構造と係合させるステップをさらに含む。本方法は、排出構造によって空間の水、湿度または空気の除去を可能にすることによって医療装置とクレードルとの間の空間を通気するステップをさらに含み、排出構造は、医療装置とクレードルとの間の空間に流体的に連結される。
【0041】
実施形態では、医療装置とクレードルとの間の空間を通気する方法において、クレードルの排出構造は、互いに流体的に連結された少なくとも2つの貫通孔を備え、少なくとも2つの貫通孔のそれぞれは、内側クレードル側面と外側クレードル側面とを流体的に連結する。本方法は、外側クレードル側面から貫通孔の1つに空気またはガスを吹き込み、それによって提供された空気またはガスの流れによって排出構造を排気するステップをさらに含むことができる。水および/または湿度は、少なくとも1つの貫通孔のうちの1つに導入され、少なくとも1つの貫通孔のうちの別の1つから導入される空気またはガスの流れによって、排出構造から引き出される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1a】遠位から近位に向かって平面図においてクレードルの例示的な実施形態を示している。
図1b図1aのクレードルを平面斜視図で示している。
図1c図1cのクレードルを斜視底面図で示している。
図2a】本開示にかかる医療システムを概略側面図で示している。
図2b】本開示にかかる医療システムを概略平面図で示している。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下では、図面をさらに参照して、例示的な実施形態がより詳細に説明される。
【0044】
図1a、図1b、および図1cは、本開示にかかるクレードル1の例示的な実施形態を異なるビューで示している。図1aは、内側クレードル側面の平面図を示し、図1bは、内側クレードル側面の平面斜視図を示し、図1cは、外側クレードル側面の斜視図を示している。
【0045】
図示の実施形態では、クレードル1は、一般に、射出成形によって単一のプラスチック材料片から一体的に形成される。クレードル1は、外側クレードル側面11Pおよび内側クレードル側面11Dを有するクレードルベース11を備える。外側クレードル側面11P(図1cにおいて最もよくわかる)は、皮膚適合性接着コーティングによってコーティングされており、それを介してクレードル1は患者の皮膚にそれぞれ取り付け可能である。使用時、すなわち医療装置がクレードルに連結された状態では、内側クレードル側面11D(図1a、図1bにおいて最もよく見える)は、医療装置に面する。
【0046】
クレードルベース11からは、周壁12が遠位方向に突出している。壁12は、対向する2つの壁側面を備え、2つの壁側面の一方は、外側クレードル側面11Pの少なくとも一部によって少なくとも部分的に形成される。2つの対向する壁側面の他方は、内側クレードル側面11Dの少なくとも一部によって少なくとも部分的に形成される。周壁12は、クレードル外周部16の略全体に沿って延在している。図1aおよび図1bに示すように、周壁12によって囲まれた領域は内部Iと呼ばれ、外側領域は外部Eと呼ばれる。内部Iは、周壁12が少なくともその近位領域において医療装置のハウジングを取り囲むように、使用状況において医療装置が配置される領域を画定する。
【0047】
複数の貫通孔13は、それぞれ、外側クレードル側面11Pの少なくとも一部および内側クレードル側面11Dの少なくとも一部によって少なくとも部分的に形成される2つの対向する壁側面が排出構造によって互いに流体的に連結されるように、周壁12に配置される。貫通孔13は、クレードル1の周方向において壁部12を中断するスリットである。貫通孔13は、壁12の自由端からクレードルベース11内に延在している。したがって、貫通孔13は、壁12の自由端に配置されるだけでなく、壁12およびクレードルベース11の移行部にも配置される(図1cにおいて最もよく見える)。この例では、排出開口部13は、周壁12に沿って実質的に均等に分布している。しかしながら、他の構成も同様に使用されることができる。
【0048】
周壁12には、医療装置連結構造14a、14bが一体に形成されている。医療装置連結構造14a、14bは、クレードル1の両側に要素を含む。クレードル1を医療装置に連結するとき、医療装置連結構造14a、14bの各要素は、(図2a、図2bに示すように)医療装置に設けられたクレードル連結構造24a、24bの対応する対要素と係合する。要素14bは、フラップとして設計されている。フラップ14bを基端方向に移動させることにより、医療装置連結構造14a、14bと医療装置のクレードル装置連結構造24a、24bとの係合が解除されることができる。
【0049】
機能インターフェース15は、内側クレードル側面11Dから外側クレードル側面11Pに向かって延在する管状要素の形態で提供され、そこで機能インターフェース開口部151(図1a、図1cにおいて最もよくわかる)に開口している。機能インターフェース15は、注入カニューレおよび/または経皮センサ要素などの皮膚穿刺要素を受け入れるように設計される。
【0050】
外側クレードル側面11Dは、疎水性コーティング(個別に参照されない)をさらに備える。しかしながら、周壁12の内側もまた、疎水性コーティングを含んでもよい。クレードル1の他の領域またはその表面全体も、任意にコーティングされてもよい。変形例では、コーティングは設けられないが、クレードル1は、全体として疎水性材料から形成される。
【0051】
以下では、図2aおよび図2bをさらに参照する。図2aは、それぞれ、近位方向および遠位方向に横切る医療システム、すなわち本開示にかかるクレードル1および医療装置2のキットを概略側面図で示している。図2bは、内側クレードル側面11Dの概略平面図で医療システム2を示している。図2aおよび図2bにかかる医療システムのクレードル1は、図1aから図1cに示すクレードルと同様である。
【0052】
医療装置2およびクレードル1は、クレードル1の医療装置連結構造14a、14bと、医療装置2のクレードル連結構造24a、24bを形成する相補的な対応部との係合を介して解放可能に連結される。
【0053】
図2aでは、医療装置2の近位側とクレードルベース11との間に、それぞれ内側クレードル側面(図2aでは個別に参照されていない)に隙間Gが存在する。隙間Gは、排出構造を介して外部Eと流体連通する中空空間を形成する。貫通孔13は、内側クレードル側面11Dから外側クレードル側面11Dへ湿度、水および/または気体を流通可能な通路を形成する。したがって、使用時、すなわち医療装置2がクレードル1に連結された状態において、排出構造は、医療装置2とクレードル1とを分離することなく中空空間Gの通気を可能にする。
【0054】
図2bと同様に、医療装置1とクレードル1との間に隙間Gが存在する。より正確には、隙間Gは、医療装置1と、周壁12の一方の壁側面を少なくとも部分的に形成する内側クレードル側面11Dとの間に配置される。この場合も、貫通孔13は、内側クレードル側面11Dと外側クレードル側面11Pとを流体的に連結し、それによって空間Gの効率的な換気を可能にする。
【0055】
図2aおよび図2bの双方において、隙間Gの幅は、明確にするために著しく誇張されていることに留意されたい。
【符号の説明】
【0056】
1 クレードル
11 クレードルベース
11D 内側クレードル側面
11P 外側クレードル側面
12 周壁
13 排出構造の貫通孔
14a,14b 医療装置連結構造
15 機能インターフェース
151 機能インターフェース開口部
16 クレードル外周部
2 医療装置
24a,24b クレードル連結構造
D 遠位方向
E 外部
I 内部
G 隙間
P 近位方向
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
【国際調査報告】