(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】複合材料
(51)【国際特許分類】
C08L 1/08 20060101AFI20221219BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20221219BHJP
C08K 7/16 20060101ALI20221219BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C08L1/08
C08K7/02
C08K7/16
C08L67/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522667
(86)(22)【出願日】2020-10-21
(85)【翻訳文提出日】2022-05-31
(86)【国際出願番号】 FI2020050692
(87)【国際公開番号】W WO2021079028
(87)【国際公開日】2021-04-29
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519440777
【氏名又は名称】ウッドリー オイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120857
【氏名又は名称】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】アシカイネン マルッタ
(72)【発明者】
【氏名】アンッティラ ウピ
(72)【発明者】
【氏名】ヴオリネン トンミ
(72)【発明者】
【氏名】カンカーンパー ヤリ-ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】ニガルド ミルヤ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB021
4J002AH003
4J002BB033
4J002BB123
4J002CF033
4J002CF182
4J002CF192
4J002DA036
4J002DA076
4J002DA106
4J002DA116
4J002DE236
4J002DJ046
4J002DL006
4J002FA043
4J002FA046
4J002FA083
4J002FA086
4J002FD013
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD040
4J002FD203
4J002FD206
4J002GC00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、均質なポリマー混合物に基づく連続マトリクスである成分Aと、固体粒子及び/又は繊維を含む成分Bとを含む熱可塑性複合材料に関する。さらには、本発明は、熱可塑性複合材料の製造方法及び熱可塑性複合材料の使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性複合材料であって、
セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、並びにポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリプロピレンサクシネート(PPS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、並びにジカルボン酸としてセバシン酸及び/又はアゼライン酸及び/又はドデカン二酸を単独で若しくはテレフタル酸と組み合わせて含有する任意のポリエステル、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される第2のポリマーを含むポリマー組成物を含む均質なポリマー混合物に基づく連続マトリクスである成分Aと、
前記連続マトリクス内に分散した固体粒子及び/又は繊維を含む成分Bと
を、前記熱可塑性複合材料の総重量の少なくとも80重量%の量で組み合わせて含み、
前記熱可塑性複合材料は、前記熱可塑性複合材料の総重量に基づいて少なくとも1重量%の成分Bを含むことを特徴とする熱可塑性複合材料。
【請求項2】
前記固体粒子及び/又は繊維が、木粉、木材粒子、熱処理済み木材粒子、木屑、木質繊維、セルロース繊維、ナノセルロース、リグニン繊維、炭素繊維、金属粒子、ガラス繊維、テキスタイル繊維及び熱可塑性ポリマー繊維、並びに及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性複合材料。
【請求項3】
前記熱可塑性複合材料の総重量に基づいて、25~99重量%の成分Aと、1~75重量%の成分Bとを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項4】
前記成分Aが、前記均質なポリマー混合物の重量の総重量に基づいて少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%の量のCAP及び前記第2のポリマーを含む均質なポリマー混合物であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項5】
前記成分Bが、前記固体粒子及び/又は繊維の総重量に基づいて少なくとも80重量%、典型的には少なくとも90重量%の前記固体粒子及び/又は繊維を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項6】
成分Bにおいて、前記固体粒子のふるい粒子サイズが1μm~5000μm、又は1μm~3000μm、典型的には5~2000μmであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項7】
成分Bの前記固体粒子及び/又は繊維が、木粉、木材粒子、熱処理済み木材粒子、木屑、木質繊維及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、ふるい粒子サイズが100~3000μm、典型的には200~2000μmの範囲にあることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項8】
前記熱可塑性複合材料の総重量に基づいて、30~99重量%の成分Aと、1~70重量%の成分Bとを含むことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項9】
成分Bが、前記第1のマトリクスに非混和性の繊維である熱可塑性ポリマー繊維、例えばポリプロピレン、及び/又はポリエチレンを含むことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項10】
成分Bが、銅、亜鉛、及びタングステン、並びにこれらの任意の組み合わせからからなる群から選択される金属粒子から選択されることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項11】
成分Bが、タルク、CaCO
3、カーボンブラック及びカオリン、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の熱可塑性複合材料。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の熱可塑性複合材料から製造された物品。
【請求項13】
包装材料、デッキ材、自動車部品、羽目板、サイディング、フェンス材、技術部品、家具、消費財、例えば台所用品、カトラリー、食器類、まな板、トレイ、皿、又は美容用品、例えば櫛、ヘアブラシ、メイクアップブラシ及び/若しくはそれらの持ち手、装飾品、玩具、ホルダー、保持具、容器、花瓶、ポット、ケース、箱、フレーム、釣り具、ペン及び/又は鉛筆、電子機器の筐体及びカバー、例えばスピーカの筐体、ラジオのカバー、携帯電話のカバー、他の筐体及び/若しくはカバーからなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載の物品。
【請求項14】
熱可塑性複合材料の製造方法であって、
セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、並びにポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリプロピレンサクシネート(PPS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、並びにジカルボン酸としてセバシン酸及び/又はアゼライン酸及び/又はドデカン二酸を単独で若しくはテレフタル酸と組み合わせて含有する任意のポリエステル、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される第2のポリマーを含むポリマー組成物を含む成分Aを含む均質なポリマー混合物を得る工程と、
成分Aを含む得られた前記均質なポリマー混合物並びに固体粒子及び/又は繊維を含む成分Bをコンパウンダーに供給して混合し、成分Bが成分A内に分散した熱可塑性複合材料を得る工程と、
得られた熱可塑性複合材料を冷却する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
成分Aを含む均質なポリマー混合物を得る工程が溶融混合によって行われ、前記溶融混合が200℃~300℃、好ましくは200℃~270℃、より好ましくは210℃~250℃、さらにより好ましくは210℃~230℃の温度で行われることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記固体粒子が、木粉、木材粒子、熱処理済み木材粒子、木屑、木質繊維、セルロース繊維、ナノセルロース、リグニン繊維、炭素繊維、金属粒子、ガラス繊維、テキスタイル繊維、及び熱可塑性繊維、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記熱可塑性複合材料が請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の熱可塑性複合材料であることを特徴とする請求項14、請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
得られた熱可塑性複合材料を、射出成形、射出ブロー成形、射出延伸成形、3D印刷、深絞り成形、回転成形、及び熱成形、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される方法を用いて物品へと加工する工程をさらに含むことを特徴とする請求項14から請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
成分Aを含む前記均質なポリマー混合物が、成分Bとともに前記コンパウンダーに供給する前に、造粒物に成形されることを特徴とする請求項14から請求項18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
熱可塑性複合材料を得るために、前記コンパウンダーにおける成分A及び成分Bの混合が、少なくとも180℃、又は少なくとも200℃の温度で行われることを特徴とする請求項14から請求項19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
包装材料、デッキ材、自動車部品、羽目板、サイディング、フェンス材、技術部品、家具、消費財、例えば台所用品、カトラリー、食器類、まな板、トレイ、皿、又は美容用品、例えば櫛、ヘアブラシ、メイクアップブラシ及び/若しくはそれらの持ち手、装飾品、玩具、ホルダー、保持具、容器、花瓶、ポット、ケース、箱、フレーム、釣り具、ペン及び/又は鉛筆、電子機器の筐体及びカバー、例えばスピーカの筐体、ラジオのカバー、携帯電話のカバー、他の筐体及び/若しくはカバーからなる群から選択される物品の製造における、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の熱可塑性複合材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材料に関する。とりわけ、ポリマー組成物を含む均質なポリマー混合物に基づく連続マトリクスと、この連続マトリクス内に分散した固体粒子及び/又は繊維とを含む熱可塑性複合材料が開示される。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、異なる物理的又は化学的特性を持つ2種以上の物質又は材料から、単独のどの材料とも異なる性能を持つように作られた材料である。
【0003】
バイオコンポジットは、少なくとも1つの成分がバイオベースであるか又は生分解性である複合材料である。熱可塑性バイコンポジットは、熱可塑性マトリクスと繊維又は固体フィラーとを含有する。熱可塑性マトリクス又はフィラーのいずれかが、バイオベースであるか又は生分解性であることが可能である。熱可塑性マトリクスがバイオベースであるか又は生分解性である場合、フィラーはバイオベース資源に由来してもよいし、又はフィラーはガラス繊維若しくは炭素繊維等の合成繊維であることができ、若しくは金属を含むことさえできる。
【0004】
バイオコンポジットの用途は多岐にわたるが、最も重要なものはデッキ材(敷板材)、自動車、サイディング、及びフェンスである。また、技術部品、家具、及び消費財も生産されている。バイオコンポジットは、台所用品(カトラリー、食器類、皿、及び容器)、ヘアブラシ及びメイクアップブラシの櫛又は持ち手等の美容用品等、様々な種類の消費財に応用されている。バイオコンポジットは、装飾品、玩具及び鉛筆の素材としても利用できる。また、スピーカ又はラジオのカバー等、電子機器の筐体もバイオコンポジットで作られている。
【0005】
バイオコンポジットは、射出成形、押出成形、熱成形等の技術でこれらの品目に加工されることが多い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
この要約は、概念の一部を簡略化して紹介するために提供されている。この概念は以降の発明を実施するための形態でさらに説明される。この要約は、請求項に係る主題の重要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図しておらず、請求項に係る主題の範囲を限定するために使用することも意図していない。
【0007】
本発明は、熱可塑性複合材料であって、
セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、並びにポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリプロピレンサクシネート(PPS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヒドロキシアルカノエート(ポリヒドロキシアルカン酸)(PHA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、並びにジカルボン酸としてセバシン酸及び/又はアゼライン酸及び/又はドデカン二酸を単独で若しくはテレフタル酸と組み合わせて含有する任意のポリエステル、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される第2のポリマーを含むポリマー組成物を含む均質なポリマー混合物に基づく連続マトリクスである成分Aと、
上記連続マトリクス内に分散した(分布する)固体粒子及び/又は繊維を含む成分Bと
を組み合わせて含む熱可塑性複合材料に関する。
【0008】
当該熱可塑性複合材料は、成分A及び成分Bを当該熱可塑性複合材料の総重量の少なくとも80重量%の量で組み合わせて含む。
【0009】
当該熱可塑性複合材料は、熱可塑性複合材料の総重量に基づいて少なくとも1重量%の成分Bを含む。
【0010】
さらに、本発明は、当該熱可塑性複合材料から製造された物品に関する。
【0011】
本発明は、熱可塑性複合材料の製造方法にも関する。当該方法は、以下の
セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、並びにポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリプロピレンサクシネート(PPS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、並びにジカルボン酸としてセバシン酸及び/又はアゼライン酸及び/又はドデカン二酸を単独で若しくはテレフタル酸と組み合わせて含有する任意のポリエステル、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される第2のポリマーを含むポリマー組成物を含む成分Aを含む均質なポリマー混合物を得る工程と、
成分Aを含む得られた上記均質なポリマー混合物並びに固体粒子及び/又は繊維を含む成分Bをコンパウンダー(混練機)に供給して混合し、成分Bが成分A内に分散した熱可塑性複合材料を得る工程と、
得られた熱可塑性複合材料を冷却する工程と
を含む。
【0012】
さらに、本発明は、包装材料、デッキ材、自動車部品、羽目板(パネル材)、サイディング、フェンス材、技術部品、家具、消費財、例えば台所用品、カトラリー、食器類、まな板、トレイ、皿、又は美容用品、例えば櫛、ヘアブラシ、メイクアップブラシ及び/若しくはそれらの持ち手、装飾品、玩具、ホルダー、保持具、容器、花瓶、ポット(鍋)、ケース、箱、フレーム、釣り具、ペン及び/又は鉛筆、電子機器の筐体及びカバー、例えばスピーカの筐体、ラジオのカバー、携帯電話のカバー、他の筐体及び/若しくはカバーからなる群から選択される物品の製造における上記熱可塑性複合材料の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
実施形態のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、様々な実施形態を示すものである。
【0014】
【
図1】
図1は、ポリマーマトリクス中のポリプロピレンのその場で生成されたウェブを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、並びにポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリプロピレンサクシネート(PPS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、並びにジカルボン酸としてセバシン酸及び/又はアゼライン酸及び/又はドデカン二酸を単独で若しくはテレフタル酸と組み合わせて含有する任意のポリエステル、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される第2のポリマーを含むポリマー組成物を含む均質なポリマー混合物を連続マトリクスとして使用して、高品質の複合材料を得ることができるとの知見に基づく。
【0016】
本発明に係る熱可塑性複合材料では、成分Bがポリマーマトリクスである成分Aを補強し、得られる複合材料は衝撃強度等の機械的特性に優れる。
【0017】
本発明は、再生可能な材料を主成分とする熱可塑性複合材料を提供することができ、この複合材料は、様々な物品を製造するために使用することができる。この複合材料から製造することができる物品は、純粋に化石資源に基づく材料と比較して、同等以上の特性を有する。この新しい複合材料及びそれから製造された物品は、純粋に化石原料に基づく材料に取って代わることができよう。従って、本発明の複合材料、及びそれから製造された物品は、食料雑貨店及び消費者により持続可能な材料の選択肢を提供する。
【0018】
本発明に係る熱可塑性複合材料は、いくつかの利点を有する。
・均質なポリマー組成物のみを使用する場合と比較して、耐衝撃性が著しく向上する。
とりわけ、木質チップ及び/又はポリプロピレンのいずれかの組み合わせでは、少量、たとえ1重量%でも使用すれば十分である。
・衝撃強度は非常に高く、ABS等の工業用プラスチックに匹敵する。
【0019】
複合材を製造する場合、耐衝撃性が低下するのはごく普通のことである。従って、本発明の複合材料は驚くべき利点を示す。
【0020】
さらなる利点は、本発明に係る複合材料は、従来のプラスチックと同じ機械及び方法によって加工できることである。製品範囲も広い。
【0021】
本発明に係る複合材料は、射出成形用途における加工性を向上するという利点も持つ。
【0022】
本発明の複合材料に基づく新規な典型的な製品は、約40重量%の木質チップ等の木質系成分Bと約60重量%の成分Aとを含むことができる。この場合、製品は50重量%を十分に超える木質系となってもよく、それでも非常にコンパクトで安定であることが示されている。
【0023】
本発明は、熱可塑性複合材料であって、
セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、並びにポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリプロピレンサクシネート(PPS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、並びにジカルボン酸としてセバシン酸及び/又はアゼライン酸及び/又はドデカン二酸を単独で若しくはテレフタル酸と組み合わせて含有する任意のポリエステル、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される第2のポリマーを含むポリマー組成物を含む均質なポリマー混合物に基づく連続マトリクスである成分Aと、
上記連続マトリクス内に分散した固体粒子及び/又は繊維を含む成分Bと
を組み合わせて含む熱可塑性複合材料を提供する。
【0024】
当該熱可塑性複合材料は、成分A及び成分Bを組み合わせて当該熱可塑性複合材料の総重量の少なくとも80重量%の量で含む。
【0025】
当該熱可塑性複合材料は、熱可塑性複合材料の総重量に基づいて少なくとも1重量%の成分Bを含む。かなり少ない量の成分Bであっても、高い衝撃強度等の改善された特性を与えるのに十分である。
【0026】
「均質なポリマー混合物」は、2種以上の熱可塑性ポリマーを含むブレンドである。この均質なポリマー混合物は、1つの相のみを有する。均質なポリマー混合物は、純粋な状態の混合物の成分ポリマーと比較して、異なる物理的特性を有することもできる。1つの非常に具体的な実施形態によれば、均質なポリマー混合物中の第2のポリマーはPBSである。CAP及びPBSは、均質なポリマー混合物を形成し、これは、これらのポリマーとそれぞれ比較して異なる特性を有する。
【0027】
本発明の1つの実施形態によれば、上記固体粒子は、木粉、木材粒子、熱処理済み木材粒子、木屑、木質繊維、セルロース繊維、ナノセルロース、リグニン繊維、炭素繊維、金属粒子、ガラス繊維、テキスタイル繊維及び熱可塑性ポリマー繊維、並びに及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。これらの異なる粒子及び繊維のすべてが、本発明の熱可塑性複合材料に異なる特性及び利点を与える。
【0028】
本発明の1つの実施形態によれば、当該複合材料は、熱可塑性複合材料の総重量に基づいて、25~99重量%の成分A、及び1~75重量%の成分Bを含む。
【0029】
本発明の1つの実施形態によれば、成分Aは、均質なポリマー混合物であって、この均質なポリマー混合物の重量の総重量に基づいて少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%の量のCAP及び第2のポリマーを含む均質なポリマー混合物である。
【0030】
本発明の1つの実施形態によれば、成分Bは、上記固体粒子及び/又は繊維の総重量に基づいて少なくとも80重量%、典型的には少なくとも90重量%の上記固体粒子及び/又は繊維を含む。成分Bは、当該複合材料の最終用途に必要な特性に応じて、顔料、フィラー、添加剤等の他の材料も含んでよい。
【0031】
本発明の1つの実施形態によれば、成分Bにおいて、上記固体粒子及び/又は繊維のふるい粒子サイズ(ふるい粒子径)は、1μm~3000μmである。粒子の材料によっては、ふるい粒子サイズはさらに大きく、例えば、1μm~5000μmであってもよい。典型的には、ふるい分け後の粒子サイズは5~2000μmの範囲にある。粒子サイズは、当該複合材料にどのような固体粒子を使用するかによって決まる。ふるい分け後の粒子サイズは、10~1800μm、50~1500μm、100~1000μm、又は例えば200~800μmの範囲にあってもよい。
【0032】
本発明の1つの実施形態によれば、成分Bの固体粒子及び/又は繊維は、木粉、木材粒子、熱処理済み木材粒子、木屑、木質繊維、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、ふるい粒子サイズは100~3000μm、典型的には200~2000μmの範囲にある。
【0033】
本発明の1つの実施形態によれば、当該複合材料は、熱可塑性複合材料の総重量に基づいて、30~99重量%の成分Aと、1~70重量%の成分Bとを含む。これらの量は、複合材料の改善された特性を得るためにとりわけ適切であることが示されている。当該複合材料は、熱可塑性複合材料の総重量に基づいて、例えば、35~95重量%の成分A及び5~65重量%の成分B、又は40~90重量%の成分A及び10~60重量%の成分Bを含んでもよい。
【0034】
本発明の1つの実施形態によれば、成分Bは、上記連続マトリクスに非混和性の繊維である熱可塑性ポリマー繊維を含む。熱可塑性ポリマー繊維は、例えば、ポリプロピレン及び/又はポリエチレン繊維であってよい。とりわけ、ポリプロピレンは、当該複合材料の衝撃強度を向上させることが示されており、ポリエチレン繊維も同様に作用することが期待される。
【0035】
本発明の1つの実施形態によれば、成分Bは、銅、亜鉛及びタングステン、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属粒子から選択される。
【0036】
1つの実施形態によれば、成分Bは、タルク、CaCO3、カーボンブラック及びカオリン、並びにこれらの任意の組み合わせ又は混合物からなる群から選択される。従って、当該複合材料は、定義された群から選択される無機フィラー、又は他の一般的に使用される無機フィラーを含んでもよい。さらに、1つの実施形態によれば、当該複合材料は、無機フィラーと木材粒子又は金属粒子等の成分Bとしての別の材料との組み合わせを含む。
【0037】
1つの実施形態によれば、上記均質なポリマー混合物は、上記ポリマー組成物の総重量に基づいて、5~95重量%、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%の量のCAP、及び5~95重量%、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%の量の第2のポリマーを含む。
【0038】
1つの実施形態によれば、CAP及び第2のポリマーの合計量は、上記ポリマー組成物の総重量に基づいて少なくとも85重量%、好ましくは少なくとも90重量%であり、残りは他のポリマー並びに/又は軟化剤、顔料、安定剤及び/若しくはプラスチック組成物に用いるための他の添加剤等の添加物である。
【0039】
1つの実施形態によれば、上記均質なポリマー混合物は、少なくとも1種の軟化剤、例えばクエン酸トリエチル(TEC)を含む。
【0040】
1つの具体的な実施形態によれば、上記第2のポリマーはPBSであり、30,000~100,000Da、典型的には50,000~80,000Da、より典型的には60,000~70,000Daの範囲内の数平均モル質量を有する。
【0041】
1つの非常に具体的な実施形態によれば、上記均質なポリマー混合物は、55~80重量%の量、典型的には60~75重量%、又は65~75重量%の量のCAPを含む。その実施形態では、第2のポリマーは好ましくはPBSであり、その場合、その混合物は20~40重量%、典型的には25~40重量%、又は25~35重量%の量のPBSを含む。重量%は、組成物の総重量に基づく。任意に、この混合物は、軟化剤、顔料、安定剤及び/又はプラスチック組成物に用いるための他の添加剤等の少なくとも1種の添加剤を含む。CAPとPBSとの組み合わせは、本発明に関連して行われた試験で良好な結果を示した。
【0042】
1つの実施形態によれば、均質なポリマー混合物は、組成物の総重量に基づいて、55~80重量%、好ましくは60~75重量%、より好ましくは65~75重量%の量のCAPと、20~40重量%、好ましくは25~40重量%、より好ましくは25~35重量%の量の第2のポリマーと、任意に、軟化剤、顔料、色素、安定化剤及び/又はプラスチック組成物に用いるための他の添加剤等の少なくとも1種の添加剤とを含む。
【0043】
1つの非常に具体的な実施形態によれば、上記均質なポリマー混合物は、組成物の総重量に基づいて、60~80重量%、典型的には60~75重量%、又は65~75重量%の量のセルロースアセテートプロピオネートと、20~40重量%、典型的には25~40重量%又は25~35重量%の量のPBSと、任意に、軟化剤、顔料、染料、安定剤及び/又はプラスチック組成物に用いるための他の添加剤等の少なくとも1種の添加剤とからなる。
【0044】
1つの実施形態によれば、CAPは、30,000~110,000Da、好ましくは50,000~100,000Da、より好ましくは65,000~95,000Daの数平均モル質量を有する。
【0045】
1つの実施形態によれば、CAPは、0.8~2.0重量%、より好ましくは1.0~1.5重量%のアセチル含量、及び/又は30~51重量%、より好ましくは40~50重量%のプロピオニル含量、及び/又は1.0~2.5重量%、より好ましくは1.5~2.0重量%のヒドロキシル含量を有する。
【0046】
好適には、CAPポリマーの数平均モル質量は、20,000Da超である。1つの実施形態によれば、この数平均モル質量は、30,000~110,000Da、典型的には50,000~100,000Da、又は65,000~95,000Daである。この数平均モル質量は、85,000~95,000Da、又は85,000~91,000Da、例えば90,000Da、91,000Da又は92,000Daであってもよい。上記規定された範囲内の数平均モル質量は、加工に耐える機械的特性を有する弾力性のある材料を提供する可能性がある。
【0047】
本発明に関連して実施されたすべての数平均モル質量測定は、数平均モル質量測定のためのクロロホルム溶離液を使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて測定された。SEC測定は、プレカラムとともにStyragel HR 4及び3カラムを用いて、クロロホルム溶離液(0.6ml/分、T=30℃)で実施された。溶出曲線はWaters(ウォーターズ) 2414屈折率検出器を用いて検出された。モル質量分布(MMD)は、Waters Empower 3ソフトウェアを用いて、10種のPS(580~3040000g/mol)標品に対して算出された。
【0048】
セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステルの異なるグレードが、いくつかの供給者から商業的に入手可能である。開示された均質なポリマー混合物において、ポリマー原料は、形成された混合物の特性に影響を与える。換言すれば、本発明に係る複合材料用の組成物を形成する際に、複数のポリマーの複合特性を評価する必要がある。例えば、ポリマーの1つが90,000Da又は70,000Da等の高い数平均モル質量を有する場合、このポリマーをより低い数平均モル質量を有する別のポリマーと組み合わせることが適切となる可能性がある。代替的に、又は追加的に、高いモル質量を有するポリマーとともに、より高い量の軟化剤が使用されてもよい。適切な数平均モル質量は、組成物の最終用途に依存し、すなわち、最も適切なセルロースエステルグレードは、意図された最終用途に応じて異なってもよい。セルロースエステルは、異なる置換のグレードを有してもよい。本発明の複合材に適したCAPは、好適には、0.8~2.0重量%、典型的には1.0~1.5重量%、例えば1.3重量%のアセチル含量を有する。本発明の複合材に適したCAPは、好適には、30~51重量%のプロピオニル含量を有する。典型的には、プロピオニル含量は40~50重量%であってよい。非常に具体的な例は、48重量%である。本発明の複合材に適したCAPは、好適には、1.0~2.5重量%、典型的には1.5~2.0重量%、例えば1.7重量%のヒドロキシル含量を有する。加えて、ガラス転移温度は、好適には140~155℃、典型的には142~152℃、例えば147℃である。
【0049】
1つの実施形態によれば、上記第2のポリマーはPBSであり、本発明の複合材に適したPBSは、30,000~100,000Daの範囲内、典型的には50,000~80,000Da、又は60,000~70,000Daの数平均モル質量を有する。PBSの数平均モル質量は、例えば65,000~70,000Da、例えば68,000Da、69,000Da又は70,000Daであってよい。
【0050】
メルトフローインデックス(又はメルトフローレート)は、熱可塑性ポリマー又は熱可塑性プラスチックの溶融物の流れやすさを表す指標である。メルトフローインデックスは、ポリマー又はポリマー混合物を特性評価するために使用することができる。ポリオレフィン、すなわちポリエチレン(PE、190℃)及びポリプロピレン(PP、230℃)の場合、MFIは一般にその溶融粘度の大きさを示すために使用される。標準的なMFI測定装置では、一定の圧力によってせん断応力が発生し、このせん断応力により溶融プラスチックが金型を通して押し出される。通常、MFIは分子量に反比例する。本発明の解決手段における均質なポリマー混合物について、MFIは、2つの温度215℃及び240℃で測定された。1つの非常に具体的な実施形態によれば、この均質なポリマー混合物は、荷重2.16kg、215℃で測定した場合、6~8g/10分、好適には約7g/10分、又は6.9g/10分、及び/又は荷重2.16kg、240℃で測定した場合、約26~28g/10分、27g/10分、又は27.1g/10分のメルトフローインデックスを有する。
【0051】
1つの実施形態によれば、本発明に係る解決手段に適した均質ポリマー混合物は、CAP及び第2のポリマーに加えて別の成分を含み、この別の成分は、セルロースアセテート又はセルロースアセテートブチレート(CAB)等のセルロースエステル、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)又はポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)等の脂肪族又は脂肪族芳香族ポリエステル、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリ乳酸(PLA)等のポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、及びポリカプロラクトン(PCL)からなるリストから選択される。1つの実施形態によれば、上記均質なポリマー混合物は、CAP及び第2のポリマー、例えばPBS、と相溶性のある他の類似のポリマーも含む。
【0052】
上記均質なポリマー混合物は、プラスチックに典型的に使用される添加剤等の他の成分も含んでよい。これらの添加剤は、例えば軟化剤若しくは可塑剤、フィラー、助剤、顔料、安定剤又は他の薬剤である。典型的には、これらの添加剤の量は、本発明で使用される均質なポリマー組成物の重量に基づいて0.01~10重量%の間で変動する。1つの添加剤の量は、例えば、組成物の重量に基づいて0.1~5重量%であってよい。
【0053】
本発明は、記載された実施形態のいずれか1つに係る熱可塑性複合材料から製造された物品にも関する。
【0054】
本発明の1つの実施形態によれば、当該物品は、包装材料、デッキ材、自動車部品、羽目板、サイディング、フェンス材、技術部品、家具、消費財、例えば台所用品、カトラリー、食器類、まな板、トレイ、皿、又は美容用品、例えば櫛、ヘアブラシ、メイクアップブラシ及び/若しくはそれらの持ち手、装飾品、玩具、ホルダー、保持具、容器、花瓶、ポット、ケース、箱、フレーム、ペン及び/又は鉛筆、釣り具、電子機器の筐体及びカバー、例えばスピーカの筐体、ラジオのカバー、携帯電話のカバー、他の筐体及び/若しくはカバーからなる群から選択される。亜鉛、銅及び/又はタングステン等の金属粒子を含む本発明に係る複合材料は、鉛を含む材料をより環境に優しい代替物に置き換える必要がある釣り用ルアー、自動車用途等の用途に好適に使用される可能性がある。
【0055】
本発明は、熱可塑性複合材料の製造方法にも関する。当該方法は、以下の
セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、並びにポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリプロピレンサクシネート(PPS)、ポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリブチレンアジペート(PBA)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリエチレンフラノエート(PEF)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネートテレフタレート(PBST)、並びにジカルボン酸としてセバシン酸及び/又はアゼライン酸及び/又はドデカン二酸を単独で若しくはテレフタル酸と組み合わせて含有する任意のポリエステル、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される第2のポリマーを含むポリマー組成物を含む成分Aを含む均質なポリマー混合物を得る工程と、
成分Aを含む得られた上記均質なポリマー混合物並びに固体粒子及び/又は繊維を含む成分Bをコンパウンダーに供給して混合し、成分Bが成分A内に分散した熱可塑性複合材料を得る工程と、
得られた熱可塑性複合材料を冷却する工程と
を含む。
【0056】
上記規定された方法の代替案として、成分Aを含む均質なポリマー混合物を別途得ることなく、熱可塑性複合材料のすべての構成要素を一度に混合することも可能である。
【0057】
1つの実施形態によれば、コンパウンダーにおける成分A及び成分Bの混合は、成分Bが成分A内に分散した熱可塑性複合材料を得るために、少なくとも180℃、又は少なくとも200℃の温度で行われる。
【0058】
得られた熱可塑性複合材料は、上述した実施形態のいずれか1つに係る熱可塑性複合材料であってもよい。
【0059】
本発明の1つの実施形態によれば、成分Aを含む均質なポリマー混合物を得る工程は、溶融混合によって行われ、この溶融混合は、200℃~300℃の温度で行われる。典型的には、この温度は200℃~270℃である。この温度は、210℃~250℃、又は210℃~230℃であってもよい。
【0060】
本発明の1つの実施形態によれば、上記固体粒子は、木粉、木材粒子、熱処理済み木材粒子、木屑、木質繊維、セルロース繊維、ナノセルロース、リグニン繊維、炭素繊維、金属粒子、ガラス繊維、テキスタイル繊維、及び熱可塑性繊維、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0061】
本発明の1つの実施形態によれば、成分Aを含む上記均質なポリマー混合物は、成分Bとともにコンパウンダーに供給する前に、造粒物に成形される。
【0062】
本発明の1つの実施形態によれば、当該方法は、得られた熱可塑性複合材料を、射出成形、射出ブロー成形、射出延伸成形、3D印刷、深絞り成形、回転成形及び熱成形、並びにこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される方法を用いて物品へと加工する工程をさらに含む。
【0063】
本発明の1つの実施形態によれば、成分Aを含む上記均質なポリマー混合物は、成分Bとともにコンパウンダーに供給する前に、造粒物に成形される。
【0064】
本発明は、包装材料、デッキ材、自動車部品、羽目板、サイディング、フェンス材、技術部品、家具、消費財、例えば台所用品、カトラリー、食器類、まな板、トレイ、皿、又は美容用品、例えば櫛、ヘアブラシ、メイクアップブラシ及び/若しくはそれらの持ち手、装飾品、玩具、ホルダー、保持具、容器、花瓶、ポット、ケース、箱、フレーム、釣り具、ペン及び/又は鉛筆、電子機器の筐体及びカバー、例えばスピーカの筐体、ラジオのカバー、携帯電話のカバー、他の筐体及び/若しくはカバーからなる群から選択される物品の製造における、上記の実施形態のいずれか1つに係る熱可塑性複合材料の使用にも関する。
【0065】
本発明に係る熱可塑性複合材料は、顔料、フィラー、添加剤等の他の材料も含んでもよい。必要な又は好ましい他の材料は、複合材料の意図された最終用途に依存する。
【0066】
熱可塑性複合材料又はそれから製造された物品は、種々の組成物でコーティングされてもよい。このコーティングは、バリア特性、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性等の新しい有益な特性を物品に与えてもよい。
【0067】
バイオコンポジットは、様々な用途でプラスチックを削減するための解決手段となりうる。バイオコンポジットは、必要な性能及び加工性を提供することができる。本発明に係る複合材料又はバイオコンポジットの利点の1つは、射出成形、押出成形又は付加製造(3D印刷)のいずれであっても、製造された造粒物を大きい変更なしに既存の機械で加工することができることである。さらには、改善された機械的特性を得ることができる。
【実施例】
【0068】
次に、様々な実施形態について詳細に言及する。それらの実施形態の一例は添付の図面に示されている。
【0069】
以下の説明は、当業者が本開示に基づいて実施形態を利用することができる程度に詳細に、いくつかの実施形態を開示する。それらの実施形態のすべての工程又は特徴が詳細に論じられているわけではないが、それは、工程又は特徴の多くは、本明細書に基づいて当業者にとって明らかであるためである。
【0070】
簡略化の理由から、以下の例示的な実施形態では、構成要素が繰り返される場合、項目番号が維持される。
【0071】
図1は、実施例2からの試料10、及びマトリクス中のポリプロピレンのその場で生成されたウェブを示す。
【0072】
表1及び表2に規定する以下の原料を実施例において使用した。
【0073】
【0074】
セルロースアセテートプロピオネートは、
・アセチル含量 1.2重量%、
・プロピオニル含量 48重量%、
・ヒドロキシル含量 1.7重量
の置換度を有していた。
【0075】
【0076】
数平均モル質量(Mn)の測定は、クロロホルム溶離液を使用するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いて行った。数平均モル質量測定では、試料(エントリー1~4)を、クロロホルム(濃度1mg/ml)を用いて一晩溶解した。試料は、測定前にフィルター(0.45μm)で濾過した。
【0077】
SEC測定は、プレカラムとともにStyragel HR 4及び3カラムを用いて、クロロホルム溶離液(0.6ml/分、T=30℃)で実施した。溶出曲線はWaters 2414屈折率検出器を用いて検出した。モル質量分布(MMD)は、Waters Empower 3ソフトウェアを用いて、10種のPS(580~3,040,000g/mol)標品に対して算出した。
【0078】
使用した木材粒子は、耐熱性の高い熱処理済み木材であった。この木材粒子は微細なダスト状であり、熱処理済み木材を機械的に処理して得た。
【0079】
使用したポリプロピレンは、8.8g/10分(230℃及び2.16kgの場合)のMFI(メルトフローインデックス)を有していた。
【0080】
実施例1:熱可塑性マトリクス(成分A)としてCAP及びPBSのポリマーブレンドを、フィラー(成分B)として木粉を用いたバイオコンポジット
熱可塑性マトリクス(成分A)のポリマー混合物は、溶融混合によって製造した。混合は、二軸コンパウンダーを用いて210~220℃の温度で行った。熱可塑性マトリクス(成分A)の均質なポリマー混合物及び木粉(成分B)を二軸コンパウンダーに供給し、205~220℃で混練した。木粉の重量%は、全複合材混合物からの重量%である。
【0081】
複合材の衝撃強度は、試料2が著しく高く、これは、熱可塑性樹脂マトリクス中の木粉の補強効果を示す。
【0082】
試験に使用した木材1粉末(成分B)の粒子は、約1mmの典型的な粒子長を有していた。この粒子は、扁平な形状及び細長い形態を有していた。しかしながら、平均長さが数マイクロメートルから数センチメートルまでばらついていたため、木材粒子のサイズと形状は不均一であった。ほとんどの粒子は、サイズの区分が1mmであった。
【0083】
【0084】
実施例2:ポリプロピレン強化コンポジット
CAP及びPBSのポリマーブレンドを熱可塑性マトリクス(成分A)とし、ポリプロピレンが強化繊維(成分B)を形成しているバイオコンポジットを調製した。
【0085】
ポリプロピレン繊維は、加工中にその場で生成された。このポリプロピレンフィラーは、CAP及びPBSの均質なポリマーブレンドによって形成される熱可塑性マトリクスに均質にブレンドされず、代わりに、このポリプロピレンは、CAP及びPBSのブレンド内部に繊維構造を形成する(
図1、試料10のSEM画像)。
【0086】
比較的少量のポリプロピレン(成分B)を、CAP及びPBSからなるバイオプラスチックブレンド(成分A)とともに溶融状態で混錬(コンパウンディング)した。ポリプロピレンの含有量は、1~5重量%であった。ポリプロピレンは、混錬温度においてPPのメルトフローインデックスがCAP-PBSブレンドのメルトフローインデックスとほぼ等しくなるように選択した。
【0087】
ポリプロピレンを5%含む複合材の衝撃強度は、純粋なCAP-PBSブレンド及び純粋なPPと比較して大きく向上していることが示された。複合材の断面から取得したSEM画像は、ポリプロピレンがCAP-PBSブレンドの内部でマイクロファイバーのネットワークを形成していることを示した。繊維は配向していないため、ネットワークを形成し、このネットワークは、突然の衝撃に対してマトリクスと強化繊維の間の機械的連動(インターロック)を強固にしている。
【0088】
複合材料の衝撃強度は試料10で顕著に高くなり、これは、熱可塑性マトリクス中のポリプロピレン繊維の補強効果を示す。
【0089】
【0090】
実施例3:他のフィラーを用いた複合材
熱可塑性マトリクス(成分A)としてのCAP及びPBSのポリマーブレンド、並びに様々なフィラー(成分B)を用いたバイオコンポジットを調製した。成分Bとして、Vitacel小麦繊維、Arbocel高純度セルロース、Arbocelセルロース、タルク及びCaCO3を含む複合材を調製した。成分Bの量は5重量%であった(表5)。
【0091】
成分Bを5%含有する複合材の衝撃強度の値を測定した。その結果は、良好な複合材料が形成されていることを示した。とりわけ、試料11~15では、複合材のモジュラス(弾性率)が著しく高く、これは、熱可塑性マトリクス中の様々なフィラーの補強効果を示す。
【0092】
【0093】
技術の進歩に伴い、基本的な考え方を様々な形で実施してもよいことは、当業者にとって自明である。従って、実施形態は、上述した例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内で変わってもよい。
【0094】
本明細書に記載された実施形態は、互いに任意の組み合わせで使用されてもよい。実施形態のうちのいくつかを組み合わせて、さらなる実施形態が形成されてもよい。本明細書に開示される物、システム、方法、又は使用は、本明細書に記載される実施形態のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。上述した利益及び利点は、1つの実施形態に関連してもよいし、複数の実施形態に関連してもよいことが理解されよう。実施形態は、記載された課題のいずれか若しくはすべてを解決するもの、又は記載された利点及び優位点のいずれか若しくはすべてを有するものに限定されるものではない。「ある」項目への言及は、その複数の項目の1つ以上を指すことがさらに理解されよう。用語「含む」は、本明細書において、1つ以上の追加の特徴又は行為の存在を排除することなく、用語「含む」の前に記載された特徴(複数可)又は行為(複数可)を備えることを意味するために使用される。
【国際調査報告】