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特表2022-553664高色域フォトルミネッセンス波長変換白色発光デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】高色域フォトルミネッセンス波長変換白色発光デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20221219BHJP
   H01L 33/08 20100101ALI20221219BHJP
   C09K 11/59 20060101ALI20221219BHJP
   C09K 11/88 20060101ALI20221219BHJP
   C09K 11/70 20060101ALI20221219BHJP
   F21V 9/32 20180101ALI20221219BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20221219BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALN20221219BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20221219BHJP
【FI】
H01L33/50
H01L33/08
C09K11/59
C09K11/88
C09K11/70
F21V9/32
F21S2/00 439
G02F1/13357
F21Y115:10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522733
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 US2020057226
(87)【国際公開番号】W WO2021081455
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】62/924,747
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506358764
【氏名又は名称】インテマティックス・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTEMATIX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】リ イ-チュン
【テーマコード(参考)】
2H391
3K244
4H001
5F142
5F241
【Fターム(参考)】
2H391AA03
2H391AA13
2H391AB04
2H391AB06
2H391AB34
2H391AB40
2H391AC13
2H391AC23
2H391AC25
2H391AC27
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3K244CA03
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3K244GA02
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5F142GA12
5F142GA14
5F241CA05
5F241CA40
5F241CB21
(57)【要約】
白色発光デバイス(バックライト)は、多重量子井戸(MQW)二重波長LEDと、約620nm~約660nmのピーク放射波長を有する赤色光を生成する狭帯域フォトルミネッセンス材料と、を含む。MQW二重波長LEDは、440nm~470nmのドミナント波長を有する青色光を生成する少なくとも1つの第1の量子井戸(QW)、および520nm~540nmのドミナント波長を有する緑色光を生成する少なくとも1つの第2の量子井戸(QW)を含む。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重量子井戸二重波長LEDと、
約620nm~約660nmのピーク放射波長を有する赤色光を生成する狭帯域フォトルミネッセンス材料と、
を含む、白色発光デバイスであって、前記多重量子井戸二重波長LEDが、440nm~470nmのドミナント波長を有する青色光を生成する少なくとも1つの第1の量子井戸、および520nm~540nmのドミナント波長を有する緑色光を生成する少なくとも1つの第2の量子井戸を含む、白色発光デバイス。
【請求項2】
前記多重量子井戸二重波長LEDが、複数の第1の量子井戸および複数の第2の量子井戸を含む、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項3】
前記青色光および緑色光が、約15nm~約45nmの半値全幅の放射強度を有する、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項4】
前記青色光および緑色光のうちの少なくとも1つが、約25nm~約45nmの半値全幅の放射強度を有する、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項5】
前記青色光および緑色光のうちの少なくとも1つが、約15nm~約25nmの半値全幅の放射強度を有する、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項6】
前記狭帯域フォトルミネッセンス材料が、マンガン賦活フッ化物蛍光体を含む、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項7】
前記マンガン賦活フッ化物蛍光体が、KSiF:Mn4+、KTiF:Mn4+、およびKGeF:Mn4+のうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の発光デバイス。
【請求項8】
前記狭帯域フォトルミネッセンス材料が、ユーロピウム賦活硫化物系蛍光体を含む、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項9】
ユーロピウム賦活硫化セレン系蛍光体が、MSe1-x:Euに基づく一般組成を有し、式中、Mは、Mg、Ca、Sr、BaおよびZnのうちの少なくとも1つであり、0<x<1.0である、請求項8に記載の発光デバイス。
【請求項10】
前記狭帯域フォトルミネッセンス材料が、量子ドット材料を含む、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項11】
前記量子ドット材料が、硫化カドミウムセレンCdSeS、およびリン化インジウムInPからなる群から選択される、請求項10に記載の発光デバイス。
【請求項12】
前記狭帯域フォトルミネッセンス材料が、前記多重量子井戸二重波長LED上に配置されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項13】
前記狭帯域フォトルミネッセンス材料が、前記多重量子井戸二重波長LEDに対して遠隔に位置されたフォトルミネッセンス層を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項14】
前記狭帯域フォトルミネッセンス材料が、光透過性媒体中に組み込まれている、請求項1~13のいずれか一項に記載の発光デバイス。
【請求項15】
前記光透過性媒体が、ジメチルシリコーンまたはフェニルシリコーンを含む、請求項14に記載の発光デバイス。
【請求項16】
前記狭帯域フォトルミネッセンス材料が、マンガン賦活フッ化物蛍光体を含み、前記デバイスが、NTSCのRGB色空間規格の少なくとも90%、およびDCI-P3のRGB色空間規格の少なくとも90%のうちの少なくとも1つである色域を有するスペクトルを有する光を生成する、請求項1に記載の発光デバイス。
【請求項17】
前記青色光および前記緑色光が、それぞれのピークを含み、前記青色光の前記ピーク放射強度に対する前記緑色光の前記ピーク放射強度の比が、30%~60%である、請求項1に記載の発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年10月23日に出願された米国仮特許出願第62/924,747号の優先権の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の実施形態は、フォトルミネッセンス波長変換白色発光デバイスに関する。より具体的には、排他的ではないが、実施形態は、カラー液晶ディスプレイ(LCD)のための高色域デバイスを対象とする。
【背景技術】
【0003】
しばしば「白色LED」と称される、フォトルミネッセンス波長変換白色発光デバイスは、典型的には、青色LEDを含み、LEDによって放射された青色光の一部分を吸収し、異なる色(波長)の光を再放射する、1つ以上のフォトルミネッセンス材料(典型的には、無機蛍光体材料)を含む。そのような白色LEDは、青色のポンピングされた(励起された)フォトルミネッセンス波長変換白色LEDと称される。蛍光体材料によって吸収されていない、LEDによって生成された青色光の一部分が、蛍光体によって放射された光と組み合わされて、目に白色のように見える光を提供する。一般的な照明およびカラーLCD用のバックライトの場合、白色LEDは、典型的には、黄色から緑色および赤色を放射するフォトルミネッセンス材料の組み合わせを含む。その長い作動耐用期間(>50,000時間)、および高い発光効率(1ワット当たり100ルーメン以上)により、白色LEDは、一般的な照明用途における従来の蛍光灯、コンパクト蛍光灯、および白熱灯に急速に取って代わりつつある。
【0004】
カラーLCDは、テレビ、コンピュータモニタ、ラップトップ、タブレットコンピュータ、およびスマートフォンを含む様々な電子デバイスにおいて用途を見出す。既知のように、ほとんどのカラーLCDは、液晶(LC)ディスプレイパネルと、ディスプレイパネルを作動するための白色発光バックライトとを含む。色純度および色域(例えば、National Television System Committee NTSC colorimetry 1953(CIE 1931)RGB色空間規格)は、LCDディスプレイの色品質にとって最も重要なパラメータのうちの2つであり、バックライトにて使用される白色LEDおよびディスプレイのRGB(赤緑青)カラーフィルタによって生成された光のスペクトルによって決定される。現在、LCDバックライトにて使用される白色LEDの大部分は、青色のポンピングされた波長変換白色LEDである。高色域ディスプレイの理想的な白色光スペクトルは、ディスプレイのRGBカラーフィルタに対応するピーク放射波長を有する狭帯域赤色、狭帯域青色および狭帯域緑色の放射ピークで構成されている。過去15年間にわたり、LCDバックライト用に使用される白色LEDは、a)LEDによって生成された狭帯域青色放射ピーク、ならびに緑色ケイ酸塩および赤色窒化物などの蛍光体によって生成された広帯域緑色および広帯域赤色放射ピーク、またはb)LEDによって生成された狭帯域青色放射ピーク、およびYAGなどの黄色蛍光体によって生成された単一の広帯域黄色放射ピークからなるスペクトルを有する。近年、バックライトの白色LEDのために、約631nmにおける狭帯域赤色放射ピークを有するマンガン賦活フッ化物蛍光体が採用されている。しかしながら、狭帯域緑色放射を有し、40nm未満の半値全幅(FWHM)を伴う好適な蛍光体は、高色域ディスプレイを実現するために利用できない。
【0005】
本発明は、少なくとも部分的に、既存のバックライトの限界および欠点を克服し、LCDディスプレイ用のバックライトの色域を改善するための試みから生じたものである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の実施形態は、狭帯域青色発光および狭帯域緑色発光の両方を生成する多重量子井戸(MQW)二重波長発光ダイオード(LED)を含む、フォトルミネッセンス波長変換発光デバイスに関する。本特許明細書において、MQW二重波長LEDは、青色および緑色光に対応する2つ(二重)の異なる色(波長)の光を生成する単一のLEDダイ(またはチップ)として定義される。LEDダイは、モノリシック構造であることができ、ダイは、単一のチップに一体化されたそれぞれの青色および緑色光を生成する量子井戸、または青色および緑色光の両方を生成するために組み合わせた青色/緑色光を生成する量子井戸を含む単一のLED構造を含み得る。青色または緑色光を生成する量子井戸の一方または両方は、それ自体(それら自体)、複数の(多重の)青色または緑色量子井戸を含み得、すなわち、青色または緑色量子井戸の一方または両方は、MQW構造を構成し得る。
【0007】
実施形態によれば、MQW二重波長LEDと、約620nm~約660nmのピーク放射波長(λpe)を有する赤色光を生成する狭帯域フォトルミネッセンス材料と、を含む、発光デバイス(バックライト)が提供され、MQW二重波長LEDは、440nm~470nmのドミナント波長(λd1)を有する青色光を生成するための少なくとも1つの第1の量子井戸(QW)、および520nm~540nmのドミナント波長(λd2)を有する緑色光を生成するための少なくとも1つの第2のQWを含む。MQW二重波長LEDは、狭帯域青色および狭帯域緑色発光を生成し、狭帯域フォトルミネッセンス材料は、狭帯域赤色発光を生成するため、本発明のデバイスは、既知のデバイスおよび構造体と比較して優れた色域を有する光を生成するように作動可能である。
【0008】
実施形態では、多重量子井戸二重波長LEDは、複数の第1の量子井戸および複数の第2の量子井戸のうちの少なくとも1つを含み得、すなわち、青色または緑色光を生成する量子井戸の一方または両方は、MQW構造を構成する。青色および緑色のMQW構造は、単一のチップ(モノリシックデバイス)のそれぞれの別個の領域で、または青色および緑色の量子井戸構造がチップの同じ領域で組み立てられる単一の青色/緑色のMQW構造として、例えば、介在された(例えば、交互に)青色および緑色のQWの積み重ねを含むMQW構造層として組み立てることができる。
【0009】
実施形態では、青色光および/または緑色光は、例えば、約15nm~約45nm、約25nm~45nm、または約15nm~約25nmのFWHM放射強度を有し得る。二重波長LEDによって生成された青色光のFWHM放射強度は、LEDの第1のQWのインジウムドープ濃度、幅、数およびドミナント波長間隔を構成することによって選択することができる。同様に、二重波長LEDによって生成された緑色光のFWHM放射強度は、第2のQWのインジウムドープ濃度、幅、数およびドミナント波長間隔を構成することによって選択することができる。
【0010】
実施形態では、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、例えば、約5nm~約30nm、または約10nm~約25nmのFWHM放射強度を有し得る。狭帯域フォトルミネッセンス材料は、約620nm~約640nmのピーク放射波長(λpe)を有する赤色光を生成することができる。狭帯域フォトルミネッセンス材料は、無機および/または有機蛍光体材料、量子ドット(QD)材料、色素、ならびにそれらの組み合わせを含み得る。
【0011】
実施形態では、青色および緑色光は、それぞれのピークを含み、青色光ピークのピーク放射強度に対する緑色光ピークのピーク放射強度の比は、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、30%~60%、30%~50%、30%~40%、40%~50%、40%~60%、または50%~60%である。
【0012】
いくつかの実施形態では、フォトルミネッセンス材料は、マンガン賦活フッ化物蛍光体を含む。MQW二重波長LEDと組み合わせてマンガン賦活フッ化物蛍光体を含む発光デバイスは、特に優れた色域を有する光を生成することが見出される。狭帯域フォトルミネッセンス材料がマンガン賦活フッ化物蛍光体、特にKSiF:Mn4+を含む実施形態では、デバイスは、NTSC(National Television System Committee NTSC colorimetry 1953(CIE 1931))RGB色空間規格および/またはDCI-P3(Digital Cinema Initiative)RGB色空間規格の面積の少なくとも90%である色域を有するスペクトルを有する光を生成し得る。実施形態では、マンガン賦活フッ化物のフォトルミネッセンス材料は、約630nm~約632nmのドミナントピーク放射波長を有する赤色光を生成するKSiF:Mn4+を含み得る。実施形態では、マンガン賦活フッ化物のフォトルミネッセンス材料は、KTiF:Mn4+を含み得る。実施形態では、マンガン賦活フッ化物のフォトルミネッセンス材料は、KGeF:Mn4+を含み得る。マンガン賦活フッ化物のフォトルミネッセンス材料はまた、KSnF:Mn4+、NaTiF:Mn4+、NaZrF:Mn4+、CsSiF:Mn4+、CsTiF:Mn4+、RbSiF:Mn4+、RbTiF:Mn4+、KZrF:Mn4+、KNbF:Mn4+、KTaF:Mn4+、KGdF:Mn4+、KLaF:Mn4+、およびKYF:Mn4+からなる群から選択される一般組成を含み得る。
【0013】
実施形態では、狭帯域フォトルミネッセンス材料は、MSe1-x:Euに基づく一般組成のIIA/IIB族の硫化セレン化物系蛍光体材料などのユーロピウム賦活硫化物蛍光体を含み得、式中、Mは、Mg、Ca、SrおよびBaのうちの少なくとも1つである。そのような蛍光体材料の一例は、硫化カルシウムセレン「CSS」蛍光体(CaSe1-x:Eu)である。信頼性を向上させるために、ユーロピウム賦活硫化セレン蛍光体材料の粒子は、1つ以上の酸化物、例えば、酸化アルミニウム(Al)、酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ホウ素(B)、または酸化クロム(CrO)を用いてコーティングすることができる。
【0014】
実施形態では、狭帯域フォトルミネッセンス材料は、量子ドット(QD)材料を含み得る。好ましい実施形態では、量子ドット材料は、セレン化カドミウム(CdSe-FWHM
【数1】

20~30nm)、硫化カドミウムセレン(CdSe1-x-FWHM
【数2】

20~30nm)、リン化インジウム(InP-FWHM
【数3】

45nm)、またはリン化インジウムガリウム(InGaP-FWHM
【数4】

45nm)を含む。そのような量子ドット材料は、MQW二重波長LEDと組み合わせて、NTSCおよびDCI-P3のRGB色空間規格の面積の90%を超える特に優れた色域を有する光を生成することが見出される。
【0015】
いくつかの実施形態では、発光デバイスは、フォトルミネッセンス材料がMQW二重波長LED上に配置されているパッケージ化配置を含む。例えば、フォトルミネッセンス材料は、限定されないが、表面実装デバイス(SMD)パッケージ配置を含み、LEDを含有するパッケージに配置され得る。代替的に、フォトルミネッセンス材料は、チップスケールパッケージ(CSP)配置で、個別のLEDダイ上に直接的に堆積され得る。
【0016】
他の実施形態では、発光デバイスは、遠隔フォトルミネッセンス(例えば、遠隔蛍光体)配置を含み、ここで、フォトルミネッセンス材料は、LEDに対して遠隔に位置された、例えば、フォトルミネッセンスシートなどのフォトルミネッセンス層を含む。本特許明細書において、「遠隔に」とは、離隔されたまたは分離された関係にあることを意味する。分離は、空気間隙であり得、またはLEDとフォトルミネッセンス層/シートとの間に光透過性媒体を含み得る。そのような遠隔蛍光体の配置は、ディスプレイバックライトにおいて特定の用途を見出すことができ、フォトルミネッセンス層は、ディスプレイの層を含み得る。
【0017】
様々な実施形態では、フォトルミネッセンス材料は、光透過性媒体中に分散することができる。光透過性媒体は、ジメチルシリコーンまたはフェニルシリコーンを含み得る。フォトルミネッセンス材料の屈折率とのより良好な一致のために、使用されるフォトルミネッセンス材料の組成物に基づいて、フェニルシリコーン(屈折率約1.54)またはジメチルシリコーン(屈折率1.41)を選択することができる。例えば、KSiF:Mn4+(屈折率1.4)はジメチルシリコーン中に分散してもよく、一方で、KTiF:Mn4+(屈折率>1.5)はフェニルシリコーン中に分散してもよい。
【0018】
本発明の発光デバイスは、カラーLCD用のバックライトに関して生じたものであるが、MQW二重波長LEDおよび赤色フォトルミネッセンス材料を含む発光デバイスは、一般的な照明用途にも有用性を見出すことができる。一般的な照明用途では、例えば、MQW二重波長LEDは、500nm~560nmのドミナント波長、およびより広い半値全幅(FWHM)の放射強度、例えば、約15nm~約60nm、約25nm~約60nm、または約45nm~約60nmを有する青色光および/または緑色光を生成するように構成され得る。一般的な照明用途では、例えば、赤色フォトルミネッセンス材料は、600nm~660nmのピーク放射強度の波長を有し得、これは、可視スペクトルのオレンジ色から赤色の領域内にある。赤色フォトルミネッセンス材料は、一般組成CaAlSiN:Eu(CASN)または(Sr,Ca)AlSiN:Eu(SCASN)のカルシウムアルミニウム窒化ケイ素系蛍光体などのユーロピウム賦活窒化物系フォトルミネッセンス材料などの広帯域赤色フォトルミネッセンス材料を含み得る。加えて、フォトルミネッセンス材料は、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料を含み得る。発光デバイスは、パッケージ化配置、例えば、SMDパッケージ配置、チップオンボード(COB)、LEDフィラメント-チップオンガラス(COG)、およびチップスケールパッケージ(CSP)配置、または遠隔蛍光体配置を含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明のこれらのおよび他の態様および特色は、添付の図面と併せて本発明の特定の実施形態の以下の説明を検討することにより、当業者に明らかになるであろう。
【0020】
図1】本発明の実施形態による、パッケージ化フォトルミネッセンス波長変換白色発光デバイスの断面側面図である。
図2図2A、2B、および2Cは、例示的な多重量子井戸(MQW)二重波長LEDチップ構造の概略図である。
図3図3Aおよび3Bは、それぞれ、本発明の実施形態による、チップオンボード(COB)パッケージ化白色発光デバイスの(a)平面図、および(b)A-Aを通る断面側面図である。
図4】本発明の実施形態による、フリップチップ二重波長LEDダイを利用するチップスケールパッケージ(CSP)の白色発光デバイスの概略図である。
図5】本発明の実施形態による、横方向チップ(lateral-chip)二重波長LEDダイを利用するチップスケールパッケージ化(CSP)白色発光デバイスの概略図である。
図6】本発明の実施形態による、垂直方向チップ(vertical-chip)二重波長LEDダイを利用するチップスケールパッケージ化(CSP)白色発光デバイスの概略図である。
図7図7Aおよび7Bは、それぞれ、本発明の実施形態による、遠隔フォトルミネッセンス白色発光デバイスの(a)平面図、および(b)B-Bを通る断面側面図である。
図8図8Aおよび8Bは、それぞれ、(a)本発明の実施形態による、エッジ照明液晶ディスプレイ、および(b)本発明の実施形態による、ディスプレイバックライトの断面側面図である。
図9】本発明の実施形態による、直接照明バックライトの概略断面図である。
図10】本発明の実施形態による、直接照明バックライトの概略断面図である。
図11】本発明の実施形態による、遠隔蛍光体フィルムを利用する直接照明バックライトの概略断面図である。
図12】一般組成KSiF:Mn4+のマンガン賦活ヘキサフルオロケイ酸カリウム蛍光体(KSF)の放射スペクトルを示す。
図13】異なる比のS/Se(硫黄/セレン)についてのCSS蛍光体(CSS604、CSS615、CSS624、CSS632、およびCSS641で示される)の正規化された放射スペクトルを示す。
図14】多重量子井戸(MQW)二重波長LEDのための、強度対波長の測定された放射スペクトル。
図15】本発明の実施形態による、パッケージ化発光デバイス(バックライト)のための、強度対波長の測定された放射スペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明するが、これらは当業者による本発明の実行を可能にするために、本発明の例示の実施例として提供するものである。特に、以下の図および実施例は、本発明の範囲を単一の実施形態に限定することを意図していないが、説明または例示した要素のうちのいくつかまたはすべてを交換することにより他の実施形態が可能である。さらに、既知の構成要素を使用して本発明のある特定の要素を部分的または完全に実施することができる場合、本発明を理解するために必要なそのような既知の構成要素のそれらの部分のみを説明し、本発明を曖昧にしないように、そのような既知の構成要素の他の部分の詳細な説明を省略する。本明細書において、単数の構成要素を示す実施形態は、限定的であるとみなされるべきではなく、むしろ本発明は、本明細書に明示的に別段の記載がない限り、複数の同じ構成要素を含む他の実施形態、およびその逆を包含することが意図される。さらに、出願人らは、明示的にそのような記載がない限り、明細書または特許請求の範囲内のいかなる用語も、一般的ではない、または特別な意味に帰属されることを意図していない。さらに、本発明は、例示として本明細書で参照される既知の構成要素に対する現在および将来の既知の等価物を包含する。本明細書全体を通して、図番号の前に付された同様の参照番号は、同様の(等価物の)部品を示すために使用される。
【0022】
本発明の実施形態は、青色および緑色発光を生成するMQW二重波長LEDを含む、フォトルミネッセンス波長変換発光デバイスに関する。上述のように、MQW二重波長LEDは、2つ(二重)の異なる色(波長)の青色および緑色光を生成する単一のLEDダイ(またはチップ)として定義される。
【0023】
パッケージ化白色発光デバイス/バックライト
ここで、本発明の実施形態による、パッケージ化フォトルミネッセンス波長変換白色発光デバイス110を、発光デバイス110の断面側面図を示す図1を参照して説明する。発光デバイス110は、例えば、表面実装デバイス(SMD)2835LEDパッケージ(リードフレーム)112を含むパッケージタイプのデバイスである。SMDパッケージ112は、概ね長方形のベース114、およびベース114の対向するエッジ部から上向きに延びる側壁116a、116bを含む。側壁116a、116bの内面は、示されるように、ベースから垂直方向に外向きに傾斜し、ベース114の内面とともに、角錐の逆錐台の形状の空洞118を画定する。
【0024】
この実施形態では、空洞118は、1つ以上の二重波長LEDダイ120(図1には1つのみを図示する)、および空洞118を満たす赤色放射フォトルミネッセンス材料を含むフォトルミネッセンス層122を含有する。赤色フォトルミネッセンス材料は、620nm~660nmの範囲のピーク放射波長(λpe)を有する赤色光を生成するように作動可能である。
【0025】
LEDダイ120は、空洞118の床上のそれぞれのボンディングパッド124上に実装されている。このまたは各LEDダイ120は、その上面の対向する端部にn電極126aおよびp電極126bを含む。ボンドワイヤ128a、128bは、n電極126aおよびp電極126bを、空洞118の床上に実装されている対応する接触パッド130a、130bに接続する。接触パッド130a、130bは、ベース114の下面の外部接触パッド132aおよび132bに電気的に接続される。
【0026】
フォトルミネッセンス層122は、典型的には、例えば、シリコーン材料などの光透過性光学封入体(媒体)中に分散される粒子の形態における蛍光体材料によって構成され得る。フォトルミネッセンス層122は、図示されるようにLEDダイ120と接触し、示されるように空洞118を満たすことができる。デバイス用途に応じて、フォトルミネッセンス材料は、広帯域(約25nm~約60nmのFWHM放射強度)または狭帯域(約5nm~約25nmのFWHM放射強度)のデバイス用途に応じる材料であり得る。広帯域および狭帯域の赤色フォトルミネッセンス材料の例を以下に説明する。
【0027】
MQW二重波長LED
本発明によれば、MQW二重波長LEDダイ120は、a)440nm~470nmのドミナント波長(λd1)を有する青色光を作動中に生成する1つ以上の第1の量子井戸(QW)、およびb)520nm~540nmのドミナント波長(λd2)を有する緑色光を作動中に生成する1つ以上の第2のQWを含む、InGaN/GaN(窒化インジウムガリウム/窒化ガリウム)MQW二重波長LEDダイを含み得る。典型的には、MQW二重波長LEDは、複数の第1および第2の量子井戸を含み、すなわち、第1および第2のQW自体は各々、それぞれのMQW構造を含む。
【0028】
図2A図2Bおよび図2Cは、本発明で使用可能なMQWの例示的な二重波長LED構造の概略図である。本発明における使用に好適な他の好適なMQWのLED構造が存在することが理解されよう。図2Aおよび2Bは、それらが単一のチップとして組み立てられたそれぞれの青色および緑色のMQWのLED構造を本質的に含むという点で、モノリシックデバイスと称される場合もあり、一方で、図2Cは、青色および緑色光を生成することができる単一のMQWのLED構造を含む。
【0029】
図2Aを参照すると、LEDチップ220は、順に、サファイア基板220a、第1のnドープGaN(n-GaN)層220b、ドミナント波長λd2の緑色光を生成するための第2のInGaNのMQW構造層220c、第1のpドープGaN(p-GaN)層220d、バリア層220e、第2のnドープGaN(n-GaN)層220f、ドミナント波長λd1の青色光を生成するための第1のInGaNのMQW構造層220g、および第2のpドープGaN(p-GaN)層220hを含む、層状構造を含む。n電極226aおよびp電極226bは、それぞれ、第1のn-GaN層220bおよび第2のp-GaN層220hに電気的に接続される。MQW構造の220cおよび220gによって生成された光のドミナント波長λは、QWのインジウム(In)ドープ、QW層の幅、ならびにQWの数およびドミナント波長λ間隔に依存し得る。層220b~220dを含む構造は、緑色光を生成するそれぞれの緑色のMQWのLED構造(p-n接合ダイオード)を構成し、一方で層220f~220hを含む構造は、青色光を生成するそれぞれの青色のMQWのLED構造を構成することが理解されよう。緑色および青色のMQWのLED構造は、直列に電気的に接続されている。用途に応じて、青色(第1の)および緑色(第2の)QWの数およびドミナント波長λ間隔は、約15nm~約45nmの半値全幅(FWHM)の放射強度を有する青色光および/または緑色光を生成するように構成され得る。例えば、一般的な照明用途において、青色および/または緑色光は、一般的に、より広いFWHM放射強度、例えば、約25nm~約645nmを有する。ディスプレイバックライト用途では、青色光および/または緑色光は、一般に、より狭いFWHM放射強度、例えば、約15nm~約25nmを有する。
【0030】
図2Aの配置では、青色(第1の)および緑色(第2の)MQW層220gおよび220cは、垂直配置で互いに積み重ねられている。他の実施形態では、青色および緑色のQWは、単一の層内に横方向に位置することができる。図2Bを参照すると、LEDチップ220は、順に、サファイア基板220a、nドープGaN(n-GaN)層220b、ドミナント波長λd1の青色光とドミナント波長λd2の緑色光とをそれぞれ生成するための第1および第2のInGaNのMQW構造220g、220c、ならびにpドープGaN(p-GaN)層220hを含む、層状構造を含む。図2Bに示されるように、第1および第2のMQW構造の220g、220cは、単一の層内に横方向に位置し、バリア層220eによって分離され得る。n電極126aおよびp電極126bは、それぞれ、n-GaN層220bおよびp-GaN層220hに電気的に接続される。層220b、220gおよび220hを含む構造は、青色光を生成するそれぞれの青色のMQWのLED構造(p-n接合ダイオード)を構成し、一方で層220b、220cおよび220hを含む構造は、緑色光を生成するそれぞれの緑色のMQWのLED構造を構成することが理解されよう。青色および緑色のMQWのLED構造は、並列に電気的に接続されている。青色および緑色のMQW構造によって生成された光のドミナント波長λは、インジウム(In)ドープ、QW層の幅、ならびにQWの数およびドミナント波長λ間隔に依存し得る。用途に応じて、青色(第1の)および緑色(第2の)QWの数およびドミナント波長λ間隔は、約15nm~約45nmの半値全幅(FWHM)の放射強度を有する青色光および/または緑色光を生成するように構成され得る。例えば、一般的な照明用途において、青色および/または緑色光は、一般的に、より広いFWHM放射強度、例えば、約25nm~約45nmを有する。ディスプレイバックライト用途では、青色光および/または緑色光は、一般に、より狭いFWHM放射強度、例えば、約15nm~約25nmを有する。
【0031】
図2Cは、青色および緑色光の両方を生成することができる単一のMQWのLED構造の概略である。図2Cを参照すると、LEDチップ220は、順に、サファイア基板220a、nドープGaN(n-GaN)層220b、ドミナント波長λd2の緑色光を生成するための第2のInGaNのMQW構造層220c、ドミナント波長λd1の青色光を生成するための第1のInGaNのMQW構造層220g、およびaドープGaN(p-GaN)層220hを含む、層状構造を含む。n電極226aおよびp電極226bは、それぞれ、n-GaN層220bおよびp-GaN層220hに電気的に接続される。青色および緑色のMQW構造によって生成された光のドミナント波長λは、QWのインジウム(In)ドープ、QW層の幅、ならびにQWの数およびドミナント波長λ間隔に依存し得る。層220b、220c、220gおよび220hを含む構造は、青色および緑色光の両方を生成する単一のMQWのLED構造(p-n接合ダイオード)を構成することが理解されよう。用途に応じて、青色(第1の)および緑色(第2の)QWの数およびドミナント波長λ間隔は、約15nm~約60nmの半値全幅(FWHM)の放射強度を有する青色光および/または緑色光を生成するように構成され得る。例えば、一般的な照明用途において、青色および/または緑色光は、一般的に、より広いFWHM放射強度、例えば、約25nm~約60nmを有する。ディスプレイバックライト用途では、青色光および/または緑色光は、一般に、より狭いFWHM放射強度、例えば、約15nm~約25nmを有する。図示されるように、緑色(第2の)MQW構造220cは、n-GaN層220bに隣接して配置され得、青色(第1の)InGaNのMQW構造層220gは、青色のInGaN構造層220gの頂部に配置され、p-GaN層220hに隣接して配置される。他の構成では、青色および緑色のMQW構造層の位置は、n-GaN層220bに隣接して位置する青色(第1の)MQW構造220g、およびp-GaN層220hに隣接して位置する緑色(第2の)MQW構造層220cと転置することができる。さらに、MQW構造層220cおよび220gは、互いに積み重ねられたそれぞれのMQW構造を含むように図示されているが、第1および第2のMQWは、単一の構造、例えば、介在された(例えば、交互に)青色および緑色のQWの積み重ねを含む単一のMQW構造層として一体化され得る。
【0032】
図1を参照すると、作動中に、二重波長LEDダイ120からの青色光の一部は、フォトルミネッセンス層122内のフォトルミネッセンス材料によって赤色光に変換される。二重波長LEDダイ120によって生成された緑色光、フォトルミネッセンス材料によって生成された赤色光、および二重波長LEDダイによって生成された未変換の青色光の組み合わせは、白色発光生成物を生成する。フォトルミネッセンス材料の励起スペクトル(特性)に応じて、二重波長LEDダイによって生成された緑色光の一部もまた、フォトルミネッセンス材料によって赤色光に変換され得る可能性がある。
【0033】
ここで、本発明の実施形態の310による、チップオンボード(COB)パッケージ化白色発光デバイス310を、図3Aおよび3Bを参照して説明する。デバイス310は、基板314上に配置された多重(12個)MQW二重波長LEDダイ320、およびLEDダイ320上に配置されたフォトルミネッセンス材料322を含む。より具体的には、図3Aは、COB白色発光デバイス310の平面図を示し、図3Bは、(図3Aの)A-Aを通る断面側面図を示す。基板314は、平面的かつ正方形の形状であり、金属コアプリント回路基板(MCPCB)であり得る。12個の二重波長LEDダイ320は、円形アレイの形態で基板314上に均等に分配される。デバイス310は、基板314のおよそ全体の周囲を含み、LEDダイ320のアレイを囲み、基板314の表面と併せて円形空洞318を画定する環状壁316を含む。LEDダイ320は、440nm~470nmのドミナント波長λd1を有する青色光、および520nm~540nmのドミナント波長λd2を有する緑色光を生成するように作動可能である。
【0034】
赤色フォトルミネッセンス材料322は、壁316内部の基板314上に堆積され、LEDダイ320を完全に覆い、空洞318を満たす。赤色フォトルミネッセンス材料322は、620nm~660nmのピーク放射波長λpeを有する赤色光を生成するように作動可能である。
【0035】
作動中、LEDダイ320によって生成された青色光の一部は、フォトルミネッセンス材料によって赤色光に変換される。LEDダイ320によって生成された緑色光、フォトルミネッセンス材料によって生成された赤色光、およびLEDダイによって生成された未変換の青色光の組み合わせは、白色発光生成物を生成する。
【0036】
任意選択的に、白色発光デバイス310は、拡散層334(図3Bの破線によって示される)を含み得る。拡散層は、白色発光デバイス310による発光の色の均一性を改善し得る。拡散層は、フォトルミネッセンス材料322と直接接触してもよい。拡散層は、光透過性材料および光散乱粒子を含むことができる。強化された色の均一性は、デバイスが大型ビーム光学系で使用されるときに特に有利であり得る。光散乱粒子を含む拡散層は、青色励起光をフォトルミネッセンス材料322に戻すことによって、フォトンがフォトルミネッセンス光の生成をもたらす確率を増加させる。したがって、より多くの青色励起光が拡散層によりフォトルミネッセンス光に変換されるため、所与の色温度の光を生成するために必要なフォトルミネッセンス材料の量を減少させることができる。さらに、フォトルミネッセンス材料の量を減少させることは、特に、KSFなどの高価なマンガン賦活フッ化物蛍光体を使用する場合に、白色発光デバイス310を製造するより費用対効果の高い様式を提供する。
【0037】
ここで、図4を参照すると、本発明の実施形態による、フリップチップLEDダイ420を利用するチップスケールパッケージ(CSP)の白色発光デバイスの概略図が示されている。
【0038】
CSP白色発光デバイス410は、MQW二重波長LEDフリップチップLEDダイ420を含み、その発光面(典型的には、頂部および4つの側面)の各々に赤色フォトルミネッセンス材料のコーティング層422を有する。LEDダイ422は、440nm~470nmのドミナント波長λd1を有する青色光、および520nm~540nmのドミナント波長λd2を有する緑色光を生成するように作動可能である。赤色フォトルミネッセンス材料422は、620nm~640nmのピーク放射波長λpeを有する赤色光を生成する。LEDダイ420は、そのベース436にn電極426aおよびp電極426bを含む。n電極426aおよびp電極426bは、対応する2つのボンディングパッド430a、430bにフリップチップボンディング434aおよび434bによって電気的に接続される。接触パッド430a、430bは、平面基板414上に実装されている。
【0039】
図5を参照すると、本発明の実施形態による、横方向チップ二重波長LEDダイ520を利用するCSP白色発光デバイスの概略図が示されている。
【0040】
発光デバイス510は、MQW二重波長LEDダイ520を含み、その上部538bおよびすべての側面538a、538c上に赤色フォトルミネッセンス材料522がコーティングされている。LEDダイ520は、そのベース536にボンディングパッド524を有する。LEDダイ520は、MQW構造を含み、440nm~470nmのドミナント波長λd1を有する青色光、および520nm~540nmのドミナント波長λd2を有する緑色光を生成するように作動可能である。赤色フォトルミネッセンス材料522は、620nm~640nmのピーク放射波長λpeを有する赤色光を生成する。LEDダイ520は、その上面538bの対向する端部にn電極526aおよびp電極526bを含む。ボンドワイヤ528a、528bは、n電極524aおよびp電極524bを、平面基板514上に実装されている対応する接触パッド530a、530bに接続する。
【0041】
図6を参照すると、本発明の実施形態による、垂直方向チップ二重波長LEDダイ620を利用するCSP白色発光デバイスの概略図が示されている。
【0042】
発光デバイス610は、MQW二重波長LED垂直方向チップLEDダイ620を含み、その上面638bのみに赤色フォトルミネッセンス材料622がコーティングされている。より具体的には、垂直方向チップはその上面のみから光を放射するため、側面638a、638cは、フォトルミネッセンス材料がコーティングされていない。LEDダイ620は、MQW構造を含み、440nm~470nmのドミナント波長λd1を有する青色光、および520nm~540nmのドミナント波長λd2を有する緑色光を生成するように作動可能である。ダイ620は、そのベース626にn電極626aを含み、n電極626aは、ボンディングパッド632上に着座する。順次、ボンディングパッド632は、接触パッド630a上に着座し、接触パッド630aは、平面基板614上に実装される。LEDダイ620は、その上面638bの一端にp電極624bを含む。ボンドワイヤ624は、p電極624bを、平面基板614に実装されている対応する接触パッド630bに接続する。赤色フォトルミネッセンス材料622は、620nm~660nmのピーク放射波長λpeを有する赤色光を生成するように作動可能である。
【0043】
遠隔フォトルミネッセンス白色発光デバイス
本発明は、パッケージ化白色発光デバイスと同様に、フォトルミネッセンス材料がLEDダイに対して遠隔に位置するフォトルミネッセンス層を含む、遠隔フォトルミネッセンス(例えば、遠隔蛍光体)配置においても有用性を見出す。本特許明細書において、「遠隔に」とは、離隔されたまたは分離された関係にあることを意味する。分離は、空気間隙によるものであり得、またはLEDダイとフォトルミネッセンス層との間に光透過性媒体を含み得る。
【0044】
ここで、本発明の実施形態による、遠隔フォトルミネッセンス波長変換白色発光デバイスの配置710を、図7Aおよび7Bを参照して説明する。より具体的には、図7Aは、遠隔フォトルミネッセンス白色発光デバイス710の部分断面平面図を示し、図7Bは、(図7Aの)B-Bを通る断面側面図を示す。
【0045】
デバイス710は、単独で使用してもよく、またはダウンライトもしくは他の照明配置の一部を含んでもよい。デバイス710は、円形の円盤形状のベース742、中空の円筒形の壁部分744、および取り外し可能な環状頂部746で構成された中空の円筒形の本体740を含む。熱の散逸を助けるために、ベース742は、アルミニウム、アルミニウムの合金、または高い熱伝導率を有する任意の材料から作製され得る。
【0046】
デバイス710は、円形形状MCPCB(金属コアプリント回路基板)748と熱的に連通するように実装されている複数の(図1Aおよび1Bの例では5つの)パッケージ化MQW二重波長LED720をさらに含む。光の放射を最大化するために、デバイス710は、MCPCB748の面および円筒形の壁744の内側曲面をそれぞれ覆う光反射表面750および752をさらに含むことができる。LED720の各々は、MQW構造を含み、440nm~470nmのドミナント波長(λd1)を有する青色光、および520nm~540nmのドミナント波長を有する緑色光を生成するように作動可能である。
【0047】
デバイス710は、LED720に対して遠隔に位置し、LED720によって生成された青色/緑色励起光の一部を吸収し、それをフォトルミネッセンスのプロセスによって異なる波長の光に変換するように作動可能である、赤色フォトルミネッセンス材料を含有するフォトルミネッセンス波長変換構成要素722をさらに含む。赤色フォトルミネッセンス材料722は、620nm~640nmのピーク放射波長(λpe)を有する赤色光を生成するように作動可能である。デバイス710の放射生成物は、LED720によって生成された青色および緑色光と、フォトルミネッセンス波長変換構成要素722によって生成されたフォトルミネッセンス光との組み合わせを含む。フォトルミネッセンス波長変換構成要素は、赤色フォトルミネッセンス材料722を組み込んだ光透過性材料(例えば、ポリカーボネート、アクリル材料、シリコーン材料など)から形成され得る。さらに、実施形態では、フォトルミネッセンス波長変換構成要素は、赤色フォトルミネッセンス材料を用いてコーティングされている光透過性基板から形成され得る。波長変換構成要素722は、LED720に対して遠隔に配置され、励起源から空間的に分離される。本特許明細書において、「遠隔に」および「遠隔」とは、離隔されたまたは分離された関係にあることを意味する。典型的には、波長変換構成要素および励起源は、空気によって分離されるが、他の実施形態では、それらは、例えば、光透過性シリコーンまたはエポキシ材料などの好適な光透過性媒体によって分離され得る。波長変換構成要素722は、デバイスによって放射されたすべての光が波長構成要素722を通過するように、ハウジング開口部を完全に覆うように構成される。示されるように、波長変換構成要素722は、頂部748を使用して壁部分744の頂部に取り外し可能に実装され得、ランプの構成要素および放射色を容易に変更することを可能にする。
【0048】
液晶ディスプレイおよびディスプレイバックライト
前述の白色発光デバイスは、一般的な照明用途に関して説明され得るが、本発明の実施形態によるデバイスは、液晶ディスプレイ用のバックライトとして有用性を見出す。上述のように、バックライト用途のために、MQWのLEDダイは、より狭いFWHM放射強度、例えば、約15nm~約30nmまたは約15nm~約25nmを有する青色光および/または緑色光を生成するように構成される。同様に、赤色フォトルミネッセンス材料は、狭帯域材料(約10nm~約30nmまたは約15nm~約25nmのFWHM放射強度)を含み得る。
【0049】
図8Aおよび図8Bは、それぞれ、(a)光透過性エッジ照明のカラー液晶ディスプレイ(LCD)860の断面図、および(b)本発明の実施形態によるディスプレイバックライトの拡大した断面図を示す。カラーLCD860は、LC(液晶)ディスプレイパネル862およびディスプレイバックライト864を含む。バックライト864は、LCディスプレイパネル862を作動させるための白色光を生成するように作動可能である。
【0050】
LCディスプレイパネル862は、透明(光透過性)フロント(光/画像放出)プレート866、透明バックプレート868、およびフロントプレートとバックプレート866、868との間の容積を満たす液晶(LC)870を含む。
【0051】
フロントプレート866は、ガラスプレート872を含み、その上面に、すなわち、ディスプレイの表示面を含むプレートの面に、第1の偏光フィルタ層(シート)874を有し得る。任意選択的に、フロントプレートの最も外側の表示表面は、反射防止層876をさらに含むことができる。その下側、すなわち、液晶(LC)870に面するフロントプレート866の面において、ガラスプレート872は、カラーフィルタプレート878および光透過性共通電極プレート880(例えば、透明な酸化インジウムスズ、ITO)をさらに含むことができる。
【0052】
カラーフィルタプレート878は、それぞれ、赤色(R)、緑色(G)、および青色(B)光の透過を可能にする、異なるカラーのサブピクセルフィルタ素子R、G、Bのアレイを含む。ディスプレイの各単位ピクセルは、3つのサブピクセルフィルタ素子R、G、Bのグループを含み、各RGBのサブピクセルは、サブピクセルのカラーのみに対応する光の通過を可能にする、それぞれのカラーフィルタ顔料、典型的には有機色素を含む。
【0053】
バックプレート868は、ガラスプレート882を含み、その上面(LCに面する表面)にTFT(薄膜トランジスタ)層884を有し得る。TFT層884は、TFTのアレイを含み、そこには、各単位ピクセルの各個別の色のサブピクセルR、G、Bに対応するトランジスタが存在する。各TFTは、その対応するサブピクセルへの光の通過を選択的に制御するように作動可能である。ガラスプレート882の下面には、第2の偏光フィルタ層(シート)886が設けられている。2つの偏光フィルタ874および886の偏光方向は、互いに直交に(垂直に)整列される。
【0054】
バックライト864は、LCディスプレイパネル862を作動させるために、フロント発光面(ディスプレイパネルの後部に面する上面)から白色光を生成し、放射させるように作動可能である。図8Bに示されるように、バックライト864は、ライトガイド888の1つ以上のエッジに沿って位置する1つ以上のパッケージ化MQW二重波長LED820を有するライトガイド(導波路)888を含む、エッジ照明配置を含み得る。各MQWのLED820は、440nm~470nmのドミナント波長(λd1)を有する青色光、および500nm~540nmのドミナント波長を有する緑色光を生成するように作動可能である。示されるように、ライトガイド888は平面であり得るが、いくつかの実施形態では、ライトガイドのフロント発光面(ディスプレイパネルに面する上面)からの励起光のより均一な放射を促進するためにテーパー状(くさび形状)であり得る。LED820は、作動中に、ライトガイド888の1つ以上のエッジに連結され、次いで、内部全反射によって、ライトガイドの容積全体にわたってガイドされ、最後に、ライトガイド888のフロント面(ディスプレイパネル862に面する上面)から放射される、青色/緑色の励起光890を生成するように構成される。図8Bに示されるように、かつバックライト864からの光の逃げを防止するために、ライトガイド888の後面(示されるような下面)は、3M(商標)からのVikuiti(商標)ESR(Enhanced Spectral Reflector)フィルムなどの光反射層(表面)892を含み得る。
【0055】
ライトガイド888のフロント発光面(示されるような上面)には、フォトルミネッセンス波長変換層822および輝度強化フィルム(BEF)894が設けられている。実施形態では、フォトルミネッセンス層は、例えば、BEF894またはライトガイド888上に堆積される別個のシート/フィルムまたは層を含み得る。本発明の実施形態によれば、フォトルミネッセンス層は、620nm~640nmのピーク放射波長(λpe)を有する赤色光を生成する赤色フォトルミネッセンス材料を含む。フォトルミネッセンス材料は、LED820から分離され、それに対して遠隔のそれぞれの層822内に提供されるため、バックライトは、励起源およびフォトルミネッセンス材料が光学媒体(ライトガイド888)によって分離される、遠隔フォトルミネッセンス配置を構成することが理解されよう。作動中、フォトルミネッセンス層822は、LCディスプレイパネル862を作動させるために、(場合によっては、フォトルミネッセンス材料の励起スペクトルに応じて緑色光でもある)青色励起光の一部を白色光898に変換する。ディスプレイの効率および色域を最適化するために、青色光λd1および緑色光λd2のドミナント波長および赤色フォトルミネッセンス材料のピーク放射波長λpeは、それらの対応するカラーフィルタ素子RGBの最大透過特性に実質的に対応するように選択される。
【0056】
プリズムシートとしても既知の輝度強化フィルム(BEF)は、精密マイクロ構造化光学フィルムを含み、固定角度(典型的には、70度)内でバックライトからの光の放射を制御し、それによってバックライトの発光効率を増加させる。典型的には、BEFは、フィルムの発光面上にマイクロプリズムのアレイを含み、輝度を40~60%増加させることができる。BEF894は、単一のBEFまたは複数のBEFの組み合わせを含むことができ、後者の場合、さらにより大きな輝度の増加を達成することができる。好適なBEFの例には、3M(商標)からのVikuiti(商標)BEF IIまたはMNTechからのプリズムシートを含む。いくつかの実施形態では、BEF894は、プリズムシートを拡散フィルムと一体化する多機能プリズムシート(MFPS)を含むことができ、通常のプリズムシートよりも優れた発光効率を有することができる。いくつかの実施形態では、BEF894は、MNTechから入手可能なものなどのマイクロレンズフィルムプリズムシート(MLFPS)を含むことができる。
【0057】
前述の実施形態では、バックライトは、ディスプレイの全面積にわたって光を分配させるためのライトガイドを利用するエッジ照明配置であったが、本発明の様々な実施形態は、LEDのアレイがLCディスプレイパネルの表面上に構成される直接照明バックライトにおいて有用性を見出す。図9は、パッケージ化発光デバイス910、例えば、図1~6のパッケージ化発光デバイスのアレイが、光反射性エンクロージャー9102の床9100上に設けられている直接照明バックライト配置964を図示する。典型的には、発光デバイスは、示されるMCPCB948上に実装されている)。図示されるように、発光デバイス910は、図1のパッケージ化配置を含み得る。ディスプレイパネルの均一な照明を確実にするために、バックライトは、光反射性エンクロージャー9102とBEF994との間に配置された光拡散性層(ディフューザー)9104をさらに含み得る。
【0058】
図10は、本発明の実施形態による、さらなる直接照明バックライト1064の概略断面図である。この実施形態では、CSPパッケージ化発光デバイス1010のアレイは、光反射性エンクロージャー10100の床のMCPCB1048上に設けられている。図示されるように、発光デバイス1010は、図4のCSPパッケージ化配置を含み得る。発光デバイスは、アレイとして構成され、ディスプレイの全表面積を覆う。ディスプレイパネルの均一な照明を確実にするために、バックライトは、光反射性エンクロージャー10100とBEF1094との間に配置された光拡散性層(ディフューザー)10104をさらに含み得る。
【0059】
図11は、本発明の実施形態による、さらなる直接照明バックライトの概略断面図である。この実施形態では、フォトルミネッセンス材料は、MQW二重波長LED1120に対して遠隔に位置される層1122(蛍光体フィルム)として提供される。MQW二重波長LEDチップ1120、例えば、LEDフリップチップのアレイは、光反射性エンクロージャー11102の床のMCPCB1148上に設けられている。MQW二重波長LEDチップ1120は、アレイとして構成され、ディスプレイの全表面積を覆う。図示されるように、フォトルミネッセンス材料の層1122は、光反射性エンクロージャー11102を覆うように配置され得る。ディスプレイパネルの均一な照明を確実にするために、バックライトは、フォトルミネッセンス層1122とBEF1194との間に配置された光拡散性層(ディフューザー)11104をさらに含み得る。別個の遠隔の層1122内にフォトルミネッセンス材料を位置させることが特に有利となるのは、それが非常に小さい「マイクロ」LEDフリップチップの使用を可能にすることであり、そうでなければ、それらの小さな寸法により、赤色フォトルミネッセンス材料を個別にコーティングすることは困難であるか、または不可能である。典型的には、マイクロLEDチップの寸法は、50μm以下である。
【0060】
赤色フォトルミネッセンス材料
本発明の実施形態では、赤色フォトルミネッセンス材料は、少なくとも青色光によって励起可能であり、可視スペクトルの赤色領域内である約620nm~約660nmのピーク放射波長(λpe)を有する光を放射するように作動可能な、約5nm超および約80nm未満の半値全幅(FWHM)の放射強度を有する任意の狭帯域または広帯域赤色フォトルミネッセンス材料を含み得る。典型的には、赤色フォトルミネッセンス材料は、粒子状形態の蛍光体を含み、例えば、狭帯域マンガン賦活フッ化物蛍光体、狭帯域ユーロピウム賦活のIIA/IIB族の硫化セレン化物系蛍光体、または一般的な照明の場合、ユーロピウム賦活窒化ケイ素系蛍光体などの広帯域赤色蛍光体を含み得る。代替的に、赤色フォトルミネッセンス材料は、量子ドット材料を含み得る。
【0061】
狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料
本特許明細書において、狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、620nm~640nmのピーク放射波長(λpe)および約5nm~約60nmの半値全幅の放射強度を有する赤色光を生成する材料を指す。狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、蛍光体および/または量子ドット(QD)材料を含み得る。
【0062】
狭帯域赤色蛍光体:マンガン賦活フッ化物蛍光体
狭帯域赤色蛍光体は、マンガン賦活フッ化物蛍光体を含み得る。マンガン賦活フッ化物蛍光体の一例は、一般組成KSiF:Mn4+のマンガン賦活ヘキサフルオロケイ酸カリウム蛍光体(KSF)である。そのような蛍光体の一例は、約632nmのピーク放射波長(λpe)を有するIntematix Corporation、Fremont California,USAからのNR6931 KSF蛍光体である。図12は、NR6931 KSF蛍光体の放射スペクトルを示す。KSF蛍光体は、青色励起光によって励起可能であり、約5nm~約10nmのFWHMとともに、約631nm~約632nmのピーク放射波長(λpe)(測定する方法に依存する:すなわち、幅は、メイン放射ピークまたはメインおよびサテライト放射ピーク(ダブルピーク、図12)を考慮に入れるかどうか)を有する赤色光を生成する。他のマンガン賦活蛍光体には、KGeF:Mn4+、KTiF:Mn4+、KSnF:Mn4+、NaTiF:Mn4+、NaZrF:Mn4+、CsSiF:Mn4+、CsTiF:Mn4+、RbSiF:Mn4+、RbTiF:Mn4+、KZrF:Mn4+、KNbF:Mn4+、KTaF:Mn4+、KGdF:Mn4+、KLaF:Mn4+、およびKYF:Mn4+を含むことができる。
【0063】
狭帯域赤色蛍光体:IIA/IIB族の硫化セレン化物系蛍光体
狭帯域赤色蛍光体には、IIA/IIB族の硫化セレン化物系蛍光体も含み得る。IIA/IIB族の硫化セレン化物系蛍光体材料の第1の例は、一般組成MSe1-x:Euを有し、式中、Mは、Mg、Ca、Sr、BaおよびZnのうちの少なくとも1つであり、0<x<1.0である。この蛍光体材料の特定の例は、セレン化硫化カルシウム「CSS」蛍光体(CaSe1-x:Eu)である。CSS蛍光体の詳細は、2016年9月30日に出願された同時係属中の米国特許出願公開第2017/0145309号に提供され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。米国特許公開第2017/0145309号に記載されているCSSの狭帯域赤色蛍光体は、本発明にて使用することができる。図13は、異なる比のS/Se(硫黄/セレン)についてのCSS蛍光体(CSS604、CSS615、CSS624、CSS632、CSS641で示される)の正規化された放射スペクトルを示す。本特許明細書において、表記CSS#は、蛍光体のタイプ(CSS)に続き、ナノメートルにおけるピーク放射波長(#)を表す。例えば、CSS624は、624nmのピーク放射波長λpeを有するCSS蛍光体を示す。CSS蛍光体のピーク放射波長は、組成物中のS/Se比を変化させることによって600nm~650nmに調整することができ、約48nm~約60nmの範囲のFWHMを有する狭帯域赤色放射スペクトルを示す(より長いピーク放射波長は、典型的には、より大きなFWHM値を有する)。xは、図13に示される組成物について、約0.05~約0.8の範囲にわたって変動することに留意されたい。これは、xのより大きな値に対応するより高いピーク波長であり、すなわち、Sの量が増加するにつれて、発光ピークをより高い波長に移行させる。
【0064】
CSS蛍光体の粒子は、精製されたCaSeOおよびCaSOから、穏やかなH(ガス)環境(例えば、約5%のH/N)中で合成することができる。
【0065】
狭帯域赤色蛍光体:コーティングされたCSS蛍光体
信頼性を向上させるために、CSS蛍光体の粒子は、1つ以上の酸化物、例えば、酸化アルミニウム(Al)、酸化ケイ素(SiO)、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ホウ素(B)、または酸化クロム(CrO)を用いてコーティングすることができる。代替的かつ/または追加的に、狭帯域赤色蛍光体の粒子は、1つ以上のフロウリド(flouride)、例えば、フッ化カルシウム(CaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化亜鉛(ZnF)、フッ化アルミニウム(AlF)またはフッ化チタン(TiF)を用いてコーティングされ得る。コーティングは、単一の層、または上記のコーティングの組み合わせを有する多層であり得る。組み合わせコーティングは、第1の材料と第2の材料との間の急激な遷移を有するコーティングであってもよく、または第1の材料から第2の材料に徐々に/滑らかな遷移があるコーティングであってもよく、このため、コーティングの厚さを介して変動する混合組成を有するゾーンを形成する。
【0066】
コーティングするCSS蛍光体の粒子の詳細は、2019年4月9日に発行された米国特許第10,253,257号に提供され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。US10,253,257に記載されているように、粒子は、流動床反応器内のCVDプロセスによってコーティングすることができる。コーティングの厚さは、数マイクロメートルであり得る。例えば、典型的には、1μm~2μmである。
【0067】
コーティングされたCSS狭帯域赤色蛍光体は、典型的には、約1μmの非晶質アルミナ(Al)を用いてコーティングされている。アルミナコーティングの場合、コーティングは、ピンホールがない(ピンホールフリー)、すなわち、水不透過性コーティングがない、CSS蛍光体の粒子表面上の高密度である非晶質酸化物コーティング層を含む。
【0068】
典型的なコーティングプロセスでは、蛍光体粉末サンプルを反応器に充填し、Nガス流下で100~250℃、好ましくは200℃まで加熱した。酸化物コーティングが堆積される場合、トリメチルアルミニウム(TMA)、四塩化チタン(TiCl)、四塩化ケイ素(SiCl)、またはジメチル亜鉛(DMZ)などの金属有機酸化物前駆体MOを、バブラーを介してNキャリアガスによる入口を介して反応器に導入した。HO蒸気もまた、さらなる入口を介して反応器内に導入して金属酸化物前駆体と反応させ、蛍光体の粒子上に酸化物コーティング層を形成した。すべての蛍光体の粒子の均質なコーティングを確実にするには、いかなるデッドスペースもなく、(ガス流の最適化などから)コーティングされている粒子を完全に流動化させることが重要である。250gの蛍光体の粒子を充填した反応器について200℃で実施された典型的なコーティングでは、コーティングは、4時間、1~10g/時間の供給速度で金属酸化物前駆体により生成され、HOを速度2~7g/時間で供給した。これらの条件により、高密度かつピンホールフリーのコーティングを生成することができ、これらの条件は、95%、97%、および99%を超える理論化された固体空間パーセンテージ(嵩密度のパーセンテージ)を有する、均一な厚さの高密度である実質的にピンホールフリーのコーティングを生成することができる。本特許明細書において、固体空間のパーセンテージ=(コーティングの嵩密度/単一粒子内の材料の密度)×100である。固体空間のパーセンテージ(固体空間%)は、ピンホールから生じるコーティングの多孔性の尺度を提供することが理解されるであろう。
【0069】
狭帯域赤色フォトルミネッセンス材料:赤色量子ドット(QD)
量子ドット(QD)は、その励起子が、放射線エネルギーによって励起されて特定の波長または波長範囲の光を放射することができる、3つの空間次元すべてに閉じ込められている物質(例えば、半導体)の一部である。QDによって生成された光の色は、QDのナノ結晶構造に伴う量子閉じ込め効果によって、可能となる。各QDのエネルギーレベルは、QDの物理的なサイズに直接関係する。例えば、赤色QDなどのより大きなQDは、比較的低いエネルギー(すなわち、比較的長い波長)を有する光子を吸収し、放出することができる。一方、サイズがより小さい青色QDは、比較的高いエネルギー(より短い波長)の光子を吸収して放出することができる。QDは、20nm~45nmのFWHM放射強度を有する光を生成する。
【0070】
QD材料は、タマネギ様構造中に異なる材料を含有するコア/シェルナノ結晶を含み得る。例えば、上述の例示的な材料は、コア/シェルナノ結晶のためのコア材料として使用され得る。1つの材料中のコアナノ結晶の光学特性は、別の材料のエピタキシャル型シェルを成長させることによって変化させることができる。要件に応じて、コア/シェルナノ結晶は、単一のシェルまたは複数のシェルを有し得る。シェル材料は、バンドギャップエンジニアリングに基づいて選択することができる。例えば、シェル材料はコア材料よりも大きなバンドギャップを有することができ、これにより、ナノ結晶のシェルは、光学活性なコアの表面を、その周囲媒体から分離することができる。カドミウム系QD、例えばCdSe QDの場合、コア/シェル量子ドットは、CdSe/ZnS、CdSe/CdS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS/ZnS、またはCdSe/ZnSe/ZnSの式を使用して合成することができる。同様に、CuInS量子ドットについては、コア/シェルナノ結晶は、CuInS/ZnS、CuInS/CdS、CuInS/CuGaS、CuInS/CuGaS/ZnSなどの式を使用して合成することができる。
【0071】
QDは、異なる材料を含むことができ、赤色QD組成物の例を表1に示す。
【表1】
【0072】
図14 カラーLCD用のMQW二重波長LEDのための、強度対波長の測定された放射スペクトル。MQW二重波長LEDは、複数の青色および緑色量子井戸を含み、約455nmのドミナント波長(λd1)および約18nmのFWHMを有する青色光14110を生成し、約530nmのドミナント波長(λd2)および約30nmのFWHMを有する緑色光14120を生成する。青色放射に対する緑色放射のピーク放射強度の比、すなわち、青色放射ピークのピーク放射強度に対する緑色放射ピークのピーク放射強度の比は、約40%である。測定された試験データは、30%~60%の青色放射に対する緑色放射のピーク放射強度の比は、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、30%~50%、30%~40%、40%~50%、40%~60%、または50%~60%であり得るが、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%であり、典型的には30%~50%であり得ることを実証する。特定のディスプレイカラーフィルタ(赤色、緑色、および青色フィルタ)のための、特定の白色の色点およびNTSC目標を満たすために、青色および緑色放射のドミナント波長を、活性GaN層内のインジウムドープ濃度によって調節することができ、青色放射に対する緑色放射のピーク強度の比を、MQW構造中の量子井戸の数および位置によって調節することができる。
【0073】
図15 図14のMQW二重波長LEDおよび狭帯域マンガン賦活KSF蛍光体を有するSMDパッケージ(例えば、図1のパッケージ)を含む、本発明の実施形態によるバックライトのための、測定された放射スペクトル、強度対波長。この特定の例では、色域は、CIE(0.277、0.243)の白色の色点で、NTSC RGB色空間規格の面積の90%よりも大きいと計算される。さらなる試験結果は、本発明により形成されたバックライトが、DCI-P3 RGB色空間規格の面積の少なくとも90%である色域を有する光を生成することができることを示す。
【0074】
一般的な照明用途のための発光デバイス
本発明は、カラーLCD用のバックライト用途のための特定の有用性を見出すが、その有用性はまた、一般的な照明用途にも拡張され得る。一般的な照明用途では、例えば、MQW二重波長LEDは、500nm~560nmのドミナント波長、およびより広いFWHM放射強度、例えば、約15nm~約60nm、約25nm~約60nm、または約45nm~約60nmを有する青色光および/または緑色光を生成するように構成され得る。一般的な照明用途では、例えば、赤色フォトルミネッセンス材料は、600nm~660nmのピーク放射強度の波長を有し得、これは、可視スペクトルのオレンジ色から赤色の領域内にある。一般的な照明用途では、例えば、フォトルミネッセンス材料は、広帯域赤色フォトルミネッセンス材料を含み得る。広帯域赤色フォトルミネッセンス材料(蛍光体)の例を、表2に示す。いくつかの実施形態では、広帯域赤色フォトルミネッセンス材料は、ユーロピウム賦活窒化ケイ素系赤色蛍光体を含み、一般式CaAlSiN:Eu2+のカルシウムアルミニウム窒化ケイ素蛍光体(CASN)を含む。CASN蛍光体は、ストロンチウム(Sr)などの他の元素とドープされ、一般式(Sr,Ca)AlSiN:Eu2+(SCASN)であることができる。CASN蛍光体は、約620nm~約660nmのピーク放射波長(λpe)を有し、約70nm~約80nmの半値全幅の放射強度を有する。
【0075】
一実施形態では、赤色蛍光体は、「Red-Emitting Nitride-Based Calcium-Stabilized Phosphors」と題される米国特許第8,597,545号に教示されるような赤色放射蛍光体を含むことができ、その全体が本明細書に組み込まれる。そのような赤色放射蛍光体は、化学式MSrSiAlEuで表される窒化物系組成物を含み、式中、Mは、Caであり、0.1≦a≦0.4;1.5<b<2.5;4.0≦c≦5.0;0.1≦d≦0.15;7.5<e<8.5;および0<f<0.1、ここで、a+b+f>2+d/v、およびvは、Mの価数である。
【0076】
代替的に、赤色蛍光体は、「Red-Emitting Nitride-Based Phosphors」と題される米国特許第8,663,502号に教示されるような赤色発光窒化物系蛍光体を含み、その全体が本明細書に組み込まれる。窒化物系組成物を含むそのような赤色放射蛍光体は、化学式M(x/v)M’Si5-xAl:REで表され、式中、Mは、価数vを有する少なくとも1つの一価、二価、または三価の金属であり、M’は、Mg、Ca、Sr、Ba、およびZnのうちの少なくとも1つであり、REは、Eu、Ce、Tb、Pr、およびMnのうちの少なくとも1つであり、xは、0.1≦x<0.4を満たし、該赤色放射蛍光体は、M’Si:REの一般結晶構造を有し、Alは、該一般結晶構造中のSiの代わりに置換され、Mは、実質的に格子間部位にある該一般結晶構造中に位置する。そのような赤色窒化物蛍光体の例は、Intematix Corporation、Fremont California,USAからのXRシリーズの蛍光体である。
【表2】
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】