(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】マルチ・グラジエントの発泡ポリマー材料の製品を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/04 20060101AFI20221219BHJP
C08J 9/12 20060101ALI20221219BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20221219BHJP
B29C 44/12 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B29C44/04
C08J9/12 CER
C08J9/12 CEZ
B29C44/36
B29C44/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522962
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(85)【翻訳文提出日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 IB2020059090
(87)【国際公開番号】W WO2021074729
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】102019000019310
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520404171
【氏名又は名称】マテリアス・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】MATERIAS S.r.l.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ディ マイオ,エルネスト
(72)【発明者】
【氏名】ニコライス,ルイージ
(72)【発明者】
【氏名】エッリキエッロ,ファブリツィオ
【テーマコード(参考)】
4F074
4F214
【Fターム(参考)】
4F074AA32
4F074BA32
4F074BA33
4F074BA35
4F074CA23
4F074DA33
4F074DA36
4F074DA37
4F074DA38
4F074DA53
4F074DA57
4F214AA13
4F214AB02
4F214AC01
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4F214AD17
4F214AG20
4F214UA21
4F214UB01
4F214UB11
4F214UB22
4F214UC40
4F214UF04
4F214UG22
4F214UG26
4F214UG27
4F214UG29
(57)【要約】
以下の工程を含む、発泡ポリマー材料から形成される製品を製造するための方法。
ソフトウェアを介して、固体の発泡性のポリマー材料から製造される製品のバーチャル・モデル(M)を作成する工程、
相対密度が異なる複数の領域を有する最適化されたバーチャル・モデル(MO)を得るために、ソフトウェアを介して、バーチャル・モデル(M)のトポロジーの最適化を行う工程、
前記発泡性のポリマー材料を準備する工程、ならびに、この材料をモールド(1)に入れる工程、
前記モールド(1)に配置された前記発泡性のポリマー材料に少なくとも1つの発泡剤を加圧下で可溶化させる工程であって、このとき、前記トポロジーの最適化の関数として、時間および/または空間に基づいて変化し得る前記発泡剤の圧力プロファイルを用いる、工程、
上記の相対密度が異なる複数の領域を有する発泡ポリマー材料から形成される製品(S)を得るために圧力を解放する工程、
前記発泡ポリマー材料から形成される製品(S)を前記モールド(1)から除去する工程。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチ・グラジエントの発泡ポリマー材料から形成される製品を製造するための方法であって、以下の工程i~vii:
工程i ソフトウェアを介して、固体の発泡性のポリマー材料から製造される製品のバーチャル・モデル(M)を作成する工程、
工程ii 相対密度が異なる複数の領域および/またはモルホロジーが異なる複数の領域を有する最適化されたバーチャル・モデル(MO)を得るために、用途によって求められるコンストレイントおよび/またはロードを与える工程ならびにソフトウェアを介して前記バーチャル・モデル(M)のトポロジーの最適化を行う工程、
工程iii 前記固体の発泡性のポリマー材料を準備する工程、
工程iv 前記固体の発泡性のポリマー材料をモールド(1)に入れる工程、
工程v 前記モールド(1)に配置された前記固体の発泡性のポリマー材料に少なくとも1つの発泡剤を加圧下で可溶化させる工程であって、前記トポロジーの最適化の関数として、時間および/または空間に基づいて変化し得る前記少なくとも1つの発泡剤の圧力プロファイルを用いる、工程、
工程vi 前記相対密度が異なる複数の領域および/または前記モルホロジーが異なる複数の領域を有する発泡ポリマー材料から形成される製品(S)を製造するために、圧力を解放する工程、および
工程vii 前記発泡ポリマー材料の製品(S)を前記モールド(1)から除去する工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程iiiが、前記固体の発泡性のポリマー材料からプリフォーム(P)を製造することを含み、工程ivが、前記プリフォーム(P)を前記モールド(1)に配置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも工程vよりも前に、前記モールド(1)に配置された前記プリフォーム(P)が前記モールド(1)を部分的に満たして、工程viの間に前記固体の発泡性のポリマー材料の膨張が可能になるようにエンプティ・ボリューム(4)を設ける、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ソフトウェアを介して、前記最適化されたバーチャル・モデル(MO)から前記プリフォーム(MP)のバーチャル・モデルを作成すること、および、前記プリフォーム(MP)のバーチャル・モデルから前記プリフォーム(P)を製造することを含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
固体ポリマーから得られる、すなわち発泡していないポリマーから得られる前記プリフォーム(MP)のバーチャル・モデルの質量が、前記最適化されたバーチャル・モデル(MO)の質量に等しくなるまで、段階的に、前記最適化されたバーチャル・モデル(MO)から、より低い密度で、体積を仮想的に減らすことによって、前記プリフォーム(MP)のバーチャル・モデルが作成される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記プリフォーム(P)の製造が、前記プリフォームを成形することを含み、必要に応じて、射出成形または圧縮成形を含み、ブロー成形または回転成形によって、前記プリフォームを製造することを含む、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
可溶化を促進させるために、前記モールド(1)の前記エンプティ・ボリューム(4)に、同じ発泡性のポリマー材料のインコヒーレントの材料、必要に応じて粒または球の材料を部分的に充填することを含む、請求項3~7(ただし、請求項4および6については請求項3に従属する場合)のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記発泡性のポリマー材料において前記少なくとも1つの発泡剤の可溶化を局所的に制限または防止するために、前記モールド(1)に配置される前記プリフォーム(P)の一部または全部をマスキングすることを含む、請求項2~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記プリフォーム(P)の一部または全部をマスキングすることが、前記プリフォーム(P)の該当部分にフィルムを適用することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記発泡性のポリマー材料における前記発泡剤の可溶化を局所的に制限または防止するような方法で前記インコヒーレントの材料およびその量を選択することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
工程ivおよび/または工程vおよび/または工程viの間において、必要に応じて熱プロファイルに基づいて、前記モールド(1)を加熱すること、
必要に応じて、工程viの前および/または工程viの後および工程viiの前に前記モールド(1)を冷却すること
を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記圧力プロファイルが、時間に基づいて、周期的または非周期的に変化する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記圧力プロファイルが、大気圧に等しい最小の圧力から、最大の300バールまで変化し、必要に応じて大気圧から250バールまで変化し、必要に応じて大気圧から200バールまで変化する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程vが、前記モールド(1)に配置された前記発泡性のポリマー材料に複数の発泡剤を加圧下で可溶化させることを含み、必要に応じて、前記発泡剤を次々と連続して可溶化させることを含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの発泡剤が、気体、必要に応じて窒素および/または二酸化炭素、ならびに、置換または非置換の脂肪族炭化水素(直鎖、分枝または環状であってよい)であって3個~8個の炭素原子を有するものからなる群から選択される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記発泡性のポリマー材料が、熱可塑性または熱硬化性のポリマー材料からなる群から選択される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
加圧下で可溶化させる工程vが、前記発泡性のポリマー材料を含む前記モールド(1)において加圧下で前記発泡剤を導入し、前記発泡剤が前記発泡性のポリマー材料を飽和させて、前記発泡剤の圧力が解放されるとき、前記発泡性のポリマー材料が発泡するようになることを含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記発泡ポリマー材料から形成される製品(S)が、車両、ボート、航空機、建築構造物(必要に応じて防音用の建築構造物)、衣服または服飾アクセサリ、医療デバイス、単独の防護具または集合的な防護具、家具、スポーツ用品、あるいはこれらの一部である、請求項1~17の少なくとも1項に記載の方法に従って製造される発泡ポリマー材料から形成される製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、マルチ・グラジエント(又はマルチ勾配)の発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)の製品(すなわち、材料の密度および/または孔径分布(又は細孔径分布又はポア・サイズ・ディストリビューション)(モルホロジー(又は形態))に関して、様々な複数の領域(又は異なる複数の領域又は差異化された複数の領域)を有する製品)を形成(又は製造)するための方法(又は処理又はプロセス)に関する。特に、当該方法によって、最適化された製品(構造および/または機能(例えば、剛性、強度、弾力性、衝撃吸収性能、断熱性能、吸音性能)に関して、最適化された製品)を形成(又は製造)することができる。かかる方法によって、製品に厳密に必要な部分のみに材料を分布(又は配分又は分配)させることが可能になる。このような目的のために、トポロジーの最適化のソフトウェアを使用する。これは、マルチ・グラジエントの密度および/またはモルホロジー(又は形態)を形成(又は製造)することができる発泡ポリマー材料を製造するための手順を伴う。このような手順は、物理的な発泡剤の可溶化を包含する。発泡剤は、上記の材料を発泡させるために必要なものである。このような手順は、時間および/または空間に基づいて(又は時間および/または空間とともに)変化しる条件(又はコンディション)によって特徴付けられ(又はキャラクタリゼーションされ)、なおかつ、前もって作成(又は形成)されたトポロジーの最適化の関数(又は予備的なプリフォームのトポロジーの最適化の関数(又はファンクション))によって特徴付けられる(又はキャラクタリゼーションされる)ものである。より詳細には、可溶化の工程(又はステップ)の時間および/または空間に基づいて(又は時間および/または空間とともに)変化し得る条件(又はコンディション)によって、ポリマーにおいて、物理的な発泡剤の濃度の均一でないプロファイルが作成(又は形成又は生成)され、膨張時に、製品において均一でない密度およびモルホロジー(又は形態)が作成(又は形成又は生成)される。これは、トポロジーの最適化で規定されるものに対応するものである。
【背景技術】
【0002】
(技術の現状)
近年、「グラジエント(又は勾配)」を有する発泡材料(又は発泡した材料)に関心が集まっている。その構造および機能の特性は、セルの密度および/またはモルホロジー(又は形態)について、均一な構造によって特徴付けられる発泡材料の特性よりも向上している。このことは、近年の科学的な研究によって、理論的な数値および実験の両方において、実証されている。科学的な文献には、このような層状の発泡構造(物)、すなわちモルホロジー(又は形態)および/または密度の勾配(又はグラジエント)を有する発泡構造(物)を製造するための方法(又は処理又はプロセス)ならびにこのような発泡構造(物)を得るための方法が記載されている。
【0003】
例えば、Zhou C.らは、「Fabrication of functionally graded porous polymer via supercritical CO2 foaming」,Composites: Part B 42 (2011) 318-325において、「発泡剤の濃度の非平衡のプロファイル(non-equilibrium profiles of the concentration of the foaming agent)」の使用を検討している。この方法では、可溶化の工程(又はステップ)を通して、発泡剤によって、被発泡材料(又は発泡され得る材料)が、部分的に飽和している。これは、発泡剤の均一な濃度に達するのに必要な時間よりも短い時間にわたって、一定の圧力および一定の温度で起こるものである。この場合、サンプル(被発泡サンプル)のより遠い部分(又はより離れた部分)(加圧下で発泡剤と接触する自由表面に関して、より遠い部分(又はより離れた部分)、すなわち、より内側の部分)が、当該表面に隣接する部分(より外側の部分)と比べて、より低い濃度の発泡剤を含んで成る。ここで、発泡剤の濃度は、発泡剤の外圧と簡単に平衡状態に達する。
【0004】
その結果、サンプルの内側の部分(又は内部)は、発泡が少ないか、あるいは非発泡となる。その一方で、外側の部分(又は外部)は、完全に発泡することになる。このようなタイプの構造(物)の設計は、ポリマー中の発泡剤の拡散係数が知られているものと仮定したものであり、多くのポリマー/発泡剤のシステム(又は系)で利用可能となっている。
【0005】
記載の方法は、達成するために、シンプルであったとしても、かなり制限されている。なぜなら、サンプルの内部での発泡層が少なく、外側に発泡層が多いという特徴を有する単一のグラジエント(又は勾配)を有する発泡材料(又は発泡した材料)の製造のみが可能だからである。
【0006】
M. Trofa, E. Di Maio, P.L. Maffettoneは、“Multi-graded foams upon time-dependent exposition to blowing agent”, Chemical Engineering Journal 362 (2019) 812-817において、発泡技術を用いることで、グラジエント(又は勾配)を有する層状のポリマー発泡体(又はポリマー・フォーム)の生成(又は形成)の可能性を示している。この技術は、発泡性のポリマー材料において、1以上の発泡剤を加圧下で可溶化することを包含する。このとき、上記の1以上の発泡剤の圧力プロファイルを用いる。かかる圧力プロファイルは、時間に基づいて変化し得るものである(又は時間とともに又は経時的に変化し得るものである)。すなわち、発泡性のポリマー材料において、ガス吸着の工程(又はステップ)の時間に基づいて変化し得る条件(又はコンディション)(又は時間とともに又は経時的に変化し得る条件)を導入することによるものである。
【0007】
また、現在では、トポロジーの最適化のソフトウェアが知られている。このようなソフトウェアは、コンピュータ・エイデッド・プロダクション・エンジニアリング(computer-aided production engineering)(CAE)の領域で達成されたものであり、アディティブ・マニュファクチャリング(additive manufacturing)の領域で大きく発展した。アディティブ・マニュファクチャリングとは、コンピュータで作成した3Dモデル(又は3次元モデル)から目的物(又は物体又はオブジェクト)を製造し、それによって、材料を結合(又はジョイント)する方法(又は処理又はプロセス)である。例えば、学術論文である“Strutture leggere: ottimizzazione topologica e stampa 3D” [“Lightweight structures: topology optimization and 3D printing”] by N. Manfredi, Universita Degli Studi di Pavia, Facolta di Ingegneria, Corso di Laurea Magistrale in Ingegneria Civile, anno accademico 2014-2015 [University of Pavia, Faculty of Engineering, Civil Engineering graduate program, academic year 2014-2015]では、格子材料(又はラティス・マテリアル)で作成された構造(物)のトポロジーの最適化のコードと、3Dプリンティングによって最適化された当該構造(物)の製造とについて記載されている。このような論文によると、発泡体(又はフォーム)は、「格子材料とは異なって」、最適化プロセスには適していないことが明らかに記載されている。なぜなら、発泡体(又はフォーム)は、セルの分布、寸法および形状における高い偶然性によって、特徴付けられるからである。
【0008】
また、今日では、例えば、剛性の異なる様々な材料の積層を採用することによって、部品(又は成分又はコンポーネント)に要求される性能(又はパフォーマンス)を得ることができることが知られている。その一方で、様々な材料を使用することは、部品のリサイクルを非常に困難にする(ただし、不可能ではない)。
【0009】
(定義)
表現「ポリマー材料」とは、ホモポリマーまたはコポリマーを含んで成るポリマー材料を指す。かかるポリマー材料は、熱可塑性または熱硬化性である。
【0010】
表現「発泡性のポリマー材料(又は発泡可能なポリマー材料)」とは、特定の温度および加圧下で発泡剤を吸収することができ、その圧力が解放されると泡(又はバブル)の核を形成することができ、なおかつ、複数の泡(又はバブル(bubbles))の成長中に延伸ストレスに耐えることができ、その後に固化することができるポリマー材料を指す。
【0011】
表現「発泡剤」とは、ポリマー材料において、複数の泡(又はバブル(bubbles))を形成することによって、ポリマー材料の膨張を引き起こすことができる物質を指す。
【0012】
用語「密度」とは、所定の体積(又は容積又はボリューム)を有するポリマー材料の重量と、その体積(又は容積又はボリューム)との比を指す。
【0013】
用語「モルホロジー(又は形態)」とは、発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)において形成される複数の泡(又はバブル(bubbles))の形状(又はシェイプ)、寸法(又はサイズ)、および単位体積あたりの数(泡の密度)、ならびに、泡の壁(又はウォール)と柱(又はピラー)との間のポリマーの局所的な分布(又は配分又は分配)を指す。
【0014】
用語「発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)」とは、ポリマー材料であって、その内部に発泡剤によって形成された複数の泡(又はバブル(bubbles))を含むものを指す。
【0015】
従って、発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)の密度は、上記の発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)内に形成された複数の泡(又はバブル(bubbles))のモルホロジー(又は形態)ならびにかかる泡の数にも依存する。
【0016】
本明細書の範囲および添付の特許請求の範囲において、「相対密度」とは、所定の体積を有する発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)の密度と、同じ体積を有する同じ固体のポリマー材料(すなわち、発泡していない材料であって、泡(又はバブル)が存在しないもの)の密度との比を意図する。
【0017】
用語「トポロジーの最適化(又はトポロジカル最適化又はトポロジカル・オプティマイゼーション(topological optimization))」という用語は、研究を定義するものであり、ソフトウェアによって行われるものであり、この研究によって、部品(又は成分又はコンポーネント)において、質量の分布(又は配分又は分配)をミリメートル(mm)またはマイクロメートル(μm)のスケール(又は単位)で再定義することができ、肉眼で見える形状(又はジオメトリー)を変更することなく維持することができる。従って、部品(又は成分又はコンポーネント)の軽量化が可能となる。すなわち、その具体的な性能(又はパフォーマンス)を向上させることができる。トポロジーの最適化によって、有機的な様式(又は方法又はマナー)で、使用する質量の組み合わせ(又はセット)を利用することができる。これは、部品(又は成分又はコンポーネント)の性能(又はパフォーマンス)とともに、相乗的に協同するものである。
【0018】
この方法によって、部品(又は成分又はコンポーネント)の外側の形状(又はシェイプ)を維持することができる。この方法は、生産性の制約(又はコンストレイント)を尊重するものであり、使用時(又は役割時)の重量を減らし、なおかつ、初期の機械的な性能(又はイニシャル・メカニカル・パフォーマンス)を確保するものである。トポロジーの最適化によって、制約のある設計空間において、材料の最適な分布(又は配分又は分配)が検討される。本明細書の範囲および添付の特許請求の範囲において、「発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)のトポロジーの最適化」とは、上記の発泡ポリマー材料における構造(物)の質量の分布(又は配分又は分配)を再定義することができるソフトウェアによる計算を意図するものである。その結果、構造(物)を軽くすることができる。発泡ポリマー材料の構造(物)のトポロジーの最適化によって、上記の発泡材料の密度勾配(又は密度グラジエント)(すなわち、泡(又はバブル)の形状(又はシェイプ)、寸法(又はサイズ)および単位体積あたりの数)を定義することが可能になる。高性能(又はハイ・パフォーマンス)で、持続可能(又はサステイナブル)で、軽量(又はライト)な構造(物)を得るためである。設計(又はデザイン)の工程(又はステップ)は、構造(物)の体積(又は容積又はボリューム)の設計(又はデザイン)、応力(又はストレス)の定義、発泡性のポリマー材料(固体であって、まだ多孔性ではない材料)の特性(又はプロパティ)、および制約(又はコンストレイント)の条件(又はコンディション)を包含する。その後、トポロジーの最適化を開始する。仮想的な想構造(物)(又はバーチャル・ストラクチャ)(同じ形状および体積を有するが、異なるモルホロジー(又は形態)および密度を有するもの、すなわち、発泡したポリマー材料のモルホロジー(又は形態)および密度勾配(又は密度グラジエント)を有するもの)を得るためである。
【0019】
用語「バーチャル」とは、構造(物)に関するものであり、コンピュータでシミュレーションした構造(物)を意図している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
(発明の要旨)
出願人は、先行技術の方法で得られ得る製品と比較して、より複雑(又はコンプレックス)で、より高性能(又はハイ・パフォーマンス)で、より持続可能(又はサステイナブル)で、より軽量(又はライト)なポリマー・フォーム(又はポリマー発泡体)の製品を作製(又は形成)する必要性を感じていた。
【0021】
特に、出願人は、上記の特性を備えるポリマー・フォーム製品(又はポリマー発泡体製品)を製造(又は形成)するための方法(又は処理又はプロセス)を提案することを目的として設定している。また、この方法(又は処理又はプロセス)は、迅速かつ比較的に安価である。
【0022】
また、出願人は、ポリマー・フォーム製品(ただし、互いにとても異なっており、なおかつ、様々な分野に属するものであり、同じ原理を用いることで多様化されているもの)を製造することを目的として設定している。
【0023】
従って、出願人は、ポリマー・フォーム製品を製造するための方法(又は処理又はプロセス)(ただし、フレキシブル(又は柔軟性)であり、材料の使用(又は用途)を最適化するもの)を提案することを目的として設定している。
【課題を解決するための手段】
【0024】
出願人は、マルチ・グラジエントのポリマー・フォームを得るために、トポロジーの最適化のソフトウェアを特定の技術と組み合わせて使用することによって、上記の目的および、さらなる他の目的が実質的に達成できることを見出した。マルチ・グラジエントのポリマー・フォームでは、孔(又は細孔又は気孔又はポア)の配向(又はオリエンテーション)とともに、モルホロジー(又は形態)および密度勾配(又は密度グラジエント)が上記のトポロジーの最適化のソフトウェアを用いることによって設計(又はデザイン)されている。
【0025】
特に、出願人は、添付の1以上の請求項に従う方法(又は処理又はプロセス)および/または以下の1以上の態様に従う方法(又は処理又はプロセス)によって、上記の目的および、さらなる他の目的が、実質的に達成され得ることを見出した。
【0026】
第1の態様によれば、本発明は、マルチ・グラジエントの発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)の製品(又はプロダクト)を製造するための方法(又は処理又はプロセス)に関する。
【0027】
当該方法(又は処理又はプロセス)は、以下の工程(i)~(vii)を包含する。
工程(i) ソフトウェアを介して、固体の発泡性(又は発泡可能又はフォーマブル(foamable))のポリマー材料(すなわち、発泡していないポリマー材料)から製造され得る製品のバーチャル・モデル(又は仮想モデル)を作成する工程、
工程(ii) 相対密度が異なる複数の領域および/またはモルホロジーが異なる複数の領域を有する最適化されたバーチャル・モデルを得るために、用途(又は使用)によって求められる(又は規定される)コンストレイント(又は制約(constraints))および/またはロード(又は負荷(loads))を与える(又は割り当てる)工程ならびにソフトウェアを介して上記バーチャル・モデルのトポロジーの最適化を行う工程、
工程(iii) 上記固体の発泡性のポリマー材料を準備する工程、
工程(iv) 上記固体の発泡性のポリマー材料をモールド(又は型又は金型又は鋳型)に入れる工程、
工程(v) 上記モールドに配置された上記固体の発泡性のポリマー材料に少なくとも1つの発泡剤を加圧下で可溶化させる工程であって、上記トポロジーの最適化の関数(又はファンクション)として、時間(又はタイム)および/または空間(又はスペース)に基づいて変化し得る(又は時間および/または空間とともに変化し得る)上記少なくとも1つの発泡剤の圧力プロファイル(又はプレッシャー・プロファイル)を用いる、工程、
工程(vi) 上記相対密度が異なる複数の領域および/または上記モルホロジーが異なる複数の領域を有する発泡ポリマー材料の製品を得るために、圧力を解放する工程、および
工程(vii) 上記発泡ポリマー材料の製品を上記モールドから除去する(又は取り出す又は取り外す)工程。
【0028】
第2の態様によると、本発明は、第1の態様の方法(又は処理又はプロセス)に従って、そして/または、本明細書の以下に列挙される1以上の態様に従って製造される発泡ポリマー材料から形成(又は製造)される製品に関する。
【0029】
「ポリマー材料において発泡剤を加圧下で可溶化させる工程(又は可溶化又はソリュービライゼーション(solubilization))」とは、発泡剤(このような発泡剤は、すでに、発泡性のポリマー材料を含むモールドに加圧下で導入さている)がポリマー材料に浸透して、このようなポリマー材料を飽和させること(すなわち、発泡性のポリマー材料が発泡剤を吸収すること)を意図しており、そうすることで、発泡剤の圧力を解放させると、ポリマー材料において、複数の泡(又はバブル(bubbles))が形成されて、成長して、その後、発泡するようになる。
【0030】
「時間(又はタイム)および/または空間(又はスペース)に基づいて変化し得る(又は時間および/または空間とともに変化し得る)少なくとも1つの発泡剤の圧力プロファイル(又はプレッシャー・プロファイル)」とは、予め規定されたプロファイル(例えば、具体的な発泡製品のために設計(又はデザイン)されたプロファイル)に従って、発泡剤(このような発泡剤は、モールド内に導入されて、発泡性のポリマー材料に作用するものである)の圧力を時間に基づいて(又は時間とともに)変化させることができるようになっていることを意図している。さらに、発泡性のポリマー材料の表面部分の関数として、空間(又はスペース)に基づいて変化し得る値(又は空間とともに変化し得る値)を同じ圧力によって仮定(又は推測)することができる。発泡剤の圧力プロファイル(単数または複数)は、前もって行われたトポロジーの最適化の結果からスタート(又は出発)して計算され、発泡性のポリマー材料において形成される複数の泡(又はバブル(bubbles))の形状(又はシェイプ)、寸法(又はサイズ)および単位体積あたりの数を決定する。従って、発泡性のポリマー材料の局所的な密度を決定する。発泡ポリマー材料の密度は、設計段階(又はデザイン・フェーズ)において、領域ごと(又は面積ごと又はエリアごと)、あるいは点ごと(又はポイントごと)に規定することができる。
【0031】
出願人は、本発明に従う方法(又は処理またはプロセス)によって、密度勾配(又は密度グラジエント)および/またはモルホロジー(又は形態)が提供された発泡ポリマー材料から形成された製品が製造できることを実証している。そうすることで、性能(又はパフォーマンス)を最大化し、重量を最小化するようにしている。換言すると、可溶化および発泡の工程(又はステップ)によると、発泡したポリマー材料は、1よりも低い平均相対密度(すなわち、スタート(又は出発)の固体の発泡性のポリマー材料の密度よりも低い平均相対密度)と、密度勾配(又は密度グラジエント)または形態勾配(又はモルホロジー勾配又はモルホロジー・グラジエント)(相対密度が均一であり、1よりも小さい)、あるいは密度勾配および形態勾配の両方を有する。
【0032】
出願人は、本開示において、密度および/または形態(又はモルホロジー)が異なる同一のポリマーを使用することによって、剛性が異なる層が結合するという同様の結果が得られること、リサイクル性(又はリサイクル可能性(recyclability))を確保することを実証している。なぜなら、これは単一の材料だからである。
【0033】
また、出願人は、本発明に従う方法(又は処理又はプロセス)によって、上記の特性を有する複雑な製品を製造することができることを実証している。
【0034】
また、出願人は、本発明に従う方法(又は処理又はプロセス)によって、そのような製品を比較的に簡単かつ迅速な様式(又は方法又はマナー)で製造することができることを実証している。
【0035】
また、出願人は、本発明に従う方法(又は処理又はプロセス)によって、とても互いに異なる分野で適用可能であることを実証している(例えば、家具、船舶、自動車、衣類、建築など)。
【0036】
本発明のさらなる態様を以下に列挙する。
【0037】
1つの態様において、工程(i)(ソフトウェアを介して、固体の発泡性のポリマー材料から製造され得る製品のバーチャル・モデルを作成する工程)は、ソフトウェア計算プログラムによって実行される(例えば、Autodesk(登録商標)によるAutocad(登録商標)またはAnsys(登録商標)による3D design)。
【0038】
1つの態様において、工程(ii)(相対密度が異なる複数の領域を有する最適化されたバーチャル・モデルを得るために、ソフトウェアを介して、バーチャル・モデルのトポロジーの最適化を行う工程)は、以下のことを包含する。
発泡性のポリマー材料の特性と、製造され得る製品のストレス(又は応力)およびコンストレイント(又は拘束)の条件(又はコンディション)とを規定すること、
発泡性のポリマー材料の特性と、ストレス(又は応力)と、コンストレイント(又は拘束)の条件(又はコンディション)との関数として、製造され得る製品の質量の分布(又は配分又は分配)を再規定すること。
【0039】
1つの態様において、固体の発泡性のポリマー材料から製造され得る製品のバーチャル・モデルと、相対密度が異なる複数の領域および/またはモルホロジー(又は形態)が異なる複数の領域を有する最適化されたバーチャル・モデルとは、同じ形状を有するものであり、なおかつ、同じ体積(又は容積又はボリューム)を占有するものである。固体の発泡性のポリマー材料から製造され得る製品のバーチャル・モデルの相対密度は、どこにおいても1に等しい。最適化されたバーチャル・モデル(相対密度が異なる複数の領域と、場合によってはモルホロジー(又は形態)が異なる複数の領域とを有する)は、空間に基づいて変化し得る(又は空間とともに変化し得る)相対密度(密度勾配(又は密度グラジエント))を有する。相対密度が異なる複数の領域を有する最適化されたバーチャル・モデルの相対密度は1よりも小さい。また、必要に応じて、1に等しい。必要に応じて、この相対密度は、0.01と1との間に含まれる。
【0040】
1つの態様において、工程(iii)(発泡性のポリマー材料を準備する工程)は、以下を包含する。
固体の発泡性のポリマー材料からプリフォームを製造すること。
【0041】
1つの態様において、プリフォームの製造は、以下を包含する。
プリフォームを射出成形すること、あるいは、他の技術(例えば、圧縮成形(又はコンプレッション・モールディング)、ブロー成形(又はブローイング)、回転成形(又はロト・モールディング)など)を使用すること。
【0042】
1つの態様では、工程(iv)(発泡性のポリマー材料をモールドに入れること(又は挿入すること))は、以下を包含する。
プリフォームをモールドに配置すること、より正確には、モールドの内部チャンバに配置すること。
【0043】
1つの態様では、モールドは、発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)の製品の最終的な形状を有する。
【0044】
1つの態様では、プリフォームは、発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)の製品の体積(又は容積又はボリューム)よりも小さい体積(又は容積又はボリューム)を有する。
【0045】
1つの態様として、プリフォームは、発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)の製品の最終的な形状とは異なる形状を有する。
【0046】
1つの態様では、プリフォームは、トポロジーの最適化によって得られる形状と同様の形状を有する。特に、1に等しい相対密度を有する複数の領域に関して、トポロジーの最適化によって得られる形状と同様の形状を有する。
【0047】
1つの態様では、モールドは、少なくとも1つのインレット(又は入口)と、少なくとも1つのアウトレット(又は出口)とを有し、これらは、チャンバと流体連通するものであり、少なくとも1つの発泡剤を導入または放出するためのものである。
【0048】
1つの態様では、モールドは、その内部において区画されている。すなわち、モールドのチャンバが、内部セパレータを有していて、これによって、サブチャンバにチャンバを分割している。
【0049】
1つの態様では、異なる発泡剤(同一の圧力プロファイルまたは異なる圧力プロファイルを有するもの)または同一の発泡剤(異なる圧力プロファイルを有するもの)が、異なるサブチャンバに導入される。
【0050】
1つの態様では、サブチャンバが、それぞれ、インレット(又は入口)およびアウトレット(又は出口)を備え、それらは、それぞれ、発泡剤(単数または複数)をそれぞれ導入または放出するためのものである。
【0051】
1つの態様では、少なくとも工程(v)(モールドに配置された発泡性のポリマー材料において少なくとも1つの発泡剤を加圧下で可溶化させる工程であって、トポロジーの最適化の関数(又はファンクション)として、時間(又はタイム)および/または空間(又はスペース)に基づいて変化し得る(又は時間および/または空間とともに変化し得る)少なくとも1つの発泡剤の圧力プロファイル(又はプレッシャー・プロファイル)を用いる工程)よりも前に、モールドに配置されたプリフォームがモールドを部分的に満たして、エンプティ・ボリューム(又は空の体積(又は容積又はボリューム)又は空体積)を残す(又は設ける又は形成する)。工程(vi)(相対密度が異なる複数の領域を有する発泡ポリマー材料の製品を得るために圧力を解放する工程)の間に発泡性のポリマー材料の膨張を可能にするためである。換言すると、プリフォーム(最終的な製品を得ることが望まれる固体のポリマー(すなわち発泡していないもの)によって構成されている)は、最終的なモールドに部分的にしか充填されておらず、エンプティ・ボリューム(又は空の体積(又は容積又はボリューム)又は空体積)を残す(又は設ける又は形成する)。後続の発泡工程によってのみ、このようなエンプティ・ボリューム(又は空の体積(又は容積又はボリューム)又は空体積)が発泡したポリマーの泡で満たされる。
【0052】
1つの態様では、最適化されたバーチャル・モデルにおいて、仮想的に暗くした複数の領域が提供される(ただし、相対密度は1よりも小さい)。そして、相対密度が1に等しい複数の領域のみをはっきりと目で見えるように残している(又は設けている又は形成している)。ここで、製造されるプリフォームは、目で見えるように残した(又は目で見えるように設けた又は形成した)複数の領域(相対密度が1に等しい)と、発泡すると異なる相対密度(1よりも小さい)の複数の領域を生成(又は形成)するように分布(又は配分又は分配)された追加の材料とを含んで成る。
【0053】
1つの態様では、最適化されたバーチャル・モデルからスタート(又は出発)して、ソフトウェアを介して、プリフォームのバーチャル・モデルを作成(又は形成)すること、および、プリフォームのバーチャル・モデルからスタート(又は出発)して、固体の発泡性のポリマー材料からプリフォームを製造することを包含する。
【0054】
1つの態様において、最適化されたバーチャル・モデルからスタート(又は出発)して、この最適化されたバーチャル・モデルから、より低い密度で体積(又は容積又はボリューム)を仮想的に減らす(又は除去する)ことによって(ただし段階的である)、プリフォームのバーチャル・モデルを得る。このとき、生成したプリフォーム(固体ポリマーのプリフォーム、すなわち発泡していないポリマー)のバーチャル・モデルの質量が、最適化されたバーチャル・モデルの質量に等しくなるまで行う。すなわち、プリフォームのバーチャル・モデルの体積が、最適化されたモデルのポリマー材料によって実際に占有される体積(まるで発泡していないように泡がないもの)と等しくなる。
【0055】
1つの態様において、プリフォームのバーチャル・モデルは、最適化されたバーチャル・モデルの複数の領域を仮想的に圧縮することによって作成(又は形成)される。ただし、相対密度は1未満である。最大で1に等しい相対密度の領域までもってくる。
【0056】
1つの態様において、プリフォームのバーチャル・モデルは、最適化されたバーチャル・モデルの体積よりも小さい体積を有し、なおかつ、最適化されたバーチャル・モデルの質量に等しい質量を有する。
【0057】
1つの態様において、発泡性のポリマー材料は、熱可塑性または熱硬化性のポリマー材料からなる群から選択される。
【0058】
1つの態様において、熱可塑性のポリマー材料は、ポリオレフィン(類)、ポリウレタン(類)、ポリエステル(類)を含んで成る群から選択される。
【0059】
1つの態様において、熱硬化性のポリマー材料は、ポリウレタン(類)、ポリエステル樹脂(類)、エポキシ樹脂(類)、シアノアクリル樹脂(類)、ポリフェノール、ビニルエステル(類)、メラミン(類)、ポリジシクロペンタジエンおよびポリイミド(類)を含んで成る群から選択される。
【0060】
1つの態様では、工程(v)(モールドに配置された発泡性のポリマー材料において少なくとも1つの発泡剤を加圧下で可溶化させる工程であって、トポロジーの最適化の関数(又はファンクション)として、時間(又はタイム)および/または空間(又はスペース)に基づいて変化し得る(又は時間および/または空間とともに変化し得る)少なくとも1つの発泡剤の圧力プロファイル(又はプレッシャー・プロファイル)を用いる工程)は、刊行物(M. Trofa, E. Di Maio, P.L. Maffettone, "Multi-graded foams upon time-dependent exposition to blowing agent", Chemical Engineering Journal 362 (2019) 812-817)に示す方法に従って行われる。すなわち、少なくとも1つの条件(膨張の前の可溶化の工程の時間に基づく変動性の条件(又はコンディション))を用いるポリマー中の発泡剤の物質輸送(又はマストランスポート)における平衡でない(又は非平衡)の少なくとも1つの工程(又はステップ)を含んで成る方法に従って行われる。
【0061】
1つの態様では、工程(v)は、以下を包含する。
モールドに配置される発泡性のポリマー材料に複数の発泡剤を加圧下で可溶化させること。
【0062】
1つの態様において、工程(v)は、以下を包含する。
発泡剤を次々と連続して可溶化させること。
【0063】
1つの態様において、少なくとも1つの発泡剤は、2以上の発泡剤の混合物を含んで成る。
【0064】
1つの態様において、少なくとも1つの発泡剤が気体(又はガス)である。
【0065】
1つの態様において、少なくとも1つの発泡剤が、不活性ガスならびに置換または非置換の脂肪族炭化水素(直鎖、分枝または環状であってよい)であって3個~8個の炭素原子を有するものからなる群から選択される。
【0066】
1つの態様において、少なくとも1つの発泡剤が、窒素、二酸化炭素、n-ブタン、iso-ブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(Freon R-134a)、1,1-ジフルオロエタン(Freon R-152a)、ジフルオロメタン(Freon R-32)およびペンタフルオロエタン、六フッ化硫黄(又はサルファー・ヘキサフルオリド)からなる群から選択される。
【0067】
1つの態様において、圧力プロファイルは、時間に基づいて(又は時間とともに)、周期的または非周期的に変化する。
【0068】
様々な発泡剤の分圧を用いる加圧プログラムによって、プリフォームを構成するポリマーにおいて、異なる濃度の発泡剤を可溶化させる。
【0069】
1つの態様において、圧力プロファイルは、最小の圧力(大気圧に等しい)から、最大の300バールまで変化する。必要に応じて、大気圧から250バールまで変化する。必要に応じて、大気圧から200バールまで変化する。
【0070】
1つの態様において、圧力を解放する工程(vi)は、即時、すなわち、0.1MPa/s~1000MPa/s、必要に応じて1MPa/s~10MPa/sの圧力の減少の速度で行われる。
【0071】
1つの態様において、様々な工程を最適化するために、工程(iv)および/または工程(v)および/または工程(vi)の間において、熱プロファイルをポリマー材料に対して設定する。
【0072】
換言すると、まず、可溶化の工程の間および圧力解放の直前において、様々な工程を最適化するために、系(又はシステム)の温度を制御する。
【0073】
1つの態様において、孔(又は細孔又は気孔又はポア)の複雑なマルチ・グラジエントの系(又はシステム)を形成(又は生成又は作成)するために、可溶化の工程と連動して、熱プロファイルを設定することができる。
【0074】
1つの態様において、可溶化の工程(v)を20℃よりも高い温度まで作動させる。
【0075】
1つの態様において、工程(iv)(挿入)および/または工程(v)(可溶化)および/または工程(vi)(解放)の間において、モールド(ひいてはポリマー材料)を加熱することを包含する。
【0076】
1つの態様において、モールドを熱プロファイル(必要に応じて、時間および/または空間に基づいて変化し得る熱プロファイル(又は時間および/または空間とともに変化し得る熱プロファイル))に従って加熱する。
【0077】
1つの態様において、50℃~350℃の間に含まれる温度、必要に応じて250℃までモールドを加熱する。
【0078】
1つの態様において、工程(vi)(解放)の後なおかつ工程(vii)(除去)の前において、モールド(ひいてはポリマー材料)を冷却することを包含する。これによって、発泡体を固化することができ、なおかつ、達成されたマルチ・グラジエントの発泡構造(物)を安定化させることができる。
【0079】
1つの態様において、工程(vi)(解放)の前にモールドを冷却することを包含する。そうすることで、発泡剤の可溶化の温度から、固化/解放の温度へと移行させる。1つの態様において、5℃~150℃の間に含まれる温度まで、必要に応じて100℃までモールドを冷却する。
【0080】
1つの態様において、工程(v)(可溶化)は、数分または数十分のオーダーで可溶化の時間にわたって作動させる。
【0081】
1つの態様において、モールドのエンプティ・ボリュームにインコヒーレントの材料(又はコヒーレントでない材料又は非干渉性の材料又は密着しない材料又は粘着しない材料又はインコヒーレント・マテリアル(incoherent material))(発泡性のポリマー材料)を、必要に応じて、粒(又は顆粒又はグラニュウ)または球(又はボール)の形態で部分的に充填することを包含する。
【0082】
1つの態様において、インコヒーレントの材料は、プリフォームと同一の発泡性のポリマー材料であるか、または異なる材料である。
【0083】
1つの態様において、インコヒーレントの材料は、結晶化度の程度および/または構造の順序(又は順番又は秩序又はオーダー)がプリフォームのものとは異なる。
【0084】
1つの態様において、インコヒーレントの材料およびその量を選択することを包含する。そうすることで、発泡性のポリマー材料において発泡剤の可溶化を局所的に制限または防止(又は抑制)するようになる。従って、上記のインコヒーレントの材料は、以下の2つの機能(又は二重の機能又はダブル・ファンクション)を行う。
可溶化の工程(v)の時間を短縮すること、および
複雑なマルチ・グラジエントの密度の製品の作製(又は形成又は製造)に貢献すること
【0085】
1つの態様において、エンプティ・ボリュームを部分的に充填させることは、工程(iv)(モールドに発泡性のポリマー材料を入れる(又は挿入する)工程)の後に行われる。
【0086】
1つの態様において、インコヒーレントの材料の球(又はボール)または粒(又は顆粒又はグラニュウ)は、ミリメートル(μm)のオーダーの寸法(又は径又はサイズ)を有する。必要に応じて、球(又はボール)は、0.01mm~3mmの間に含まれる径(又は直径)を有する。
【0087】
プリフォームをモールドに部分的に充填することに加えて、必要に応じて、より遠く(又はより離れた)領域(又は部分)でモールドを充填するために、インコヒーレントの材料(ポリマー)を含ませることによって、可溶化の工程(v)の時間を減少させることができる。球(又はボール)/粒(又は顆粒又はグラニュウ)の大きさ(又は次元又はディメンション)を小さくすることで、処理時間を短く維持することができる。この手段によって、可溶化の工程(又はステップ)を数分のオーダーで短縮することができる。
【0088】
1つの態様において、モールドに配置されるプリフォームの1以上の部分を部分的または全体的にマスクすることを包含する。発泡性のポリマー材料において、少なくとも1つの発泡剤の可溶化を局所的に制限または防止(又は抑制)するためである。これは、代替の手段であり、このような手段は、ポリマー材料の複雑なマルチ・グラジエントの密度の製品を作製(又は形成又は製造)するのに貢献する。
【0089】
1つの態様において、プリフォームの1以上の部分を部分的または完全にマスキングすることは、以下を包含する。
プリフォームの一部(単数または複数)にフィルムを適用(又は塗布)すること(ここで、フィルムは、発泡剤の通過を防止(又は抑制)または制限するように構成されている)。
【0090】
1つの態様において、フィルムを適用(又は塗布)することは、以下を包含する。
ポリマーの水溶液を適用(又は塗布)することであって、このポリマーは、プリフォームの表面の一部(単数または複数)において、発泡剤に対して、バリア特性を有するものである。それによって、フィルムを得るために、溶液の水(又は水分)を蒸発(又はエバポレート)させることができる。あるいは、蒸発(又はエバポレート)させる。
【0091】
1つの態様において、発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)の製品は、密度の不連続性を有していない(又は連続している)。換言すると、発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)の製品は、密度勾配(又は密度グラジエント)を有する(高い勾配であってもよい)。すなわち、密度は一定ではない。しかし、緩やかなに変化して、不連続性を有していない(又は連続している)。
【0092】
1つの態様において、製品は、様々な分野に属することができる物品/要素(又は構成要素又は成分又はエレメント)である。また、分離/自立している物品/要素(又は構成要素又は成分又はエレメント)である。あるいは、より複雑な組立品(又はアセンブリ)の一部(又は部品)であってもよい。
【0093】
1つの態様において、当該製品は、車両、ボート(例えば、ボートの船体)、航空機、建築構造物(必要に応じて防音用の建築構造物)、衣服または服飾アクセサリ(又は衣類の付属品)、医療デバイス(又は医療装置又は医療機器又は医療器具)、単独(又は個人)の防護具(又は防護器具又は防護装置又は防護機器又は防護デバイス又はプロテクション・デバイス)(例えば、ヘルメット)または集合的な防護具(又は集団の防護具)、家具(一部)(例えば、テーブル)、スポーツ用品(一部)、あるいはこれらの一部である。
【0094】
さらなる特徴および利点は、本発明にかかる発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)の製品を製造するための方法(又は処理又はプロセス)の好ましい実施形態(ただし、排他的ではない)の詳細な説明から明らかである。
【0095】
(図面の説明)
非限定的な例としてのみ提供される添付の図面を参照しながら、このような説明を以下の開示にて明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1A】
図1Aは、本発明に係る方法(又は処理又はプロセス)に従う仮想的な工程(又はバーチャル・ステップ)を示す。
【
図1B】
図1Bは、本発明に係る方法(又は処理又はプロセス)に従う仮想的な工程(又はバーチャル・ステップ)を示す。
【
図1C】
図1Cは、本発明に係る方法(又は処理又はプロセス)に従う仮想的な工程(又はバーチャル・ステップ)を示す。
【
図2A】
図2Aは、本発明に係る方法(又は処理又はプロセス)に従う製造の工程(又はステップ)を示す。
【
図2B】
図2Bは、本発明に係る方法(又は処理又はプロセス)に従う製造の工程(又はステップ)を示す。
【
図2C】
図2Cは、本発明に係る方法(又は処理又はプロセス)に従う製造の工程(又はステップ)を示す。
【
図2D】
図2Dは、本発明に係る方法(又は処理又はプロセス)に従う製造の工程(又はステップ)を示す。
【
図3】
図3は、本発明に係る方法(又は処理又はプロセス)を例示するフロー図である。
【
図4】
図4E~
図4Fは、テーブルを製造するための本発明に係る方法(又は処理又はプロセス)に従う工程(又はステップ)を示す。
【
図5A】
図5Aは、ヘルメットのキャップを製造するための本発明に係る方法(又は処理又はプロセス)に従う工程(又はステップ)を示す。
【
図5B】
図5Bは、ヘルメットのキャップを製造するための本発明に係る方法(又は処理又はプロセス)に従う工程(又はステップ)を示す。
【
図5C】
図5Cは、ヘルメットのキャップを製造するための本発明に係る方法(又は処理又はプロセス)に従う工程(又はステップ)を示す。
【
図6】
図6は、本発明に係る方法(又は処理又はプロセス)の一部として、ヘルメット・キャップの仮想的な画像(又はバーチャル・イメージ)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0097】
(本発明の実施形態の詳細な説明)
図1A、1B、1C、2A、2B、2C、2Dならびに
図3のフロー図は、本発明に係る発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)の製品を製造するための方法(又は処理又はプロセス)の例を模式的に示す。かかる実施例において、図示された製品は、当該方法(又は処理又はプロセス)を説明するために例示のみを目的とする二次元的に表現された一種のポータルとして示されるものであり、実際の製品を表すことは意図していない。
【0098】
ソフトウェア計算プログラム(例えば、Autodesk
(登録商標)によるAutocad
(登録商標)またはAnsys
(登録商標)による3D design)によって、まず、最初に、製造され得る製品のバーチャル・モデル(又は仮想モデル)Mを作成(又は形成又は生成)する。また、そのために、使用する発泡性のポリマー材料(又は発泡可能なポリマー材料)を決定(又は規定又は定義)する(
図1A)。例えば、このような発泡性のポリマー材料は、熱可塑性のポリマー材料(例えば、ポリスチレン)または熱硬化性のポリマー材料(例えば、ポリウレタン(類)、ポリエステル樹脂(類)、エポキシ樹脂(類)、シアノアクリル樹脂(類)、ポリフェノール、ビニルエステル(類)、メラミン(類)、ポリジシクロペンタジエンおよびポリイミド(類))である。バーチャル・モデルMの発泡性のポリマー材料は、固体である(すなわち、多孔性ではなく、気泡も存在しないものである)。すなわち、これは、密(又はコンパクト)で非発泡性(又は発泡しない)のコンフォメーション(又は形状又は形態)を有するものである。
【0099】
トポロジーの最適化ソフトウェアプログラム(例えば、Autodesk
(登録商標)によるFusion 360またはAnsys
(登録商標)のTopology Optimization)(また、これは、バーチャル・モデルMを形成するために使用するものと同一のソフトウェアであっても、異なるソフトウェアであってもよい)によって、典型的なロード(又は負荷)およびコンストレイント(又は制約(constraints))(発泡ポリマー材料(又は発泡したポリマー材料)の製品が、その操作寿命(又はオペレーティング・ライフタイム)の間において受けるロードおよびコンストレイント))が決定(又は規定又は定義)されると、バーチャル・モデルMの質量分布を再び決定(又は規定又は定義)する(又は再規定又は再定義する)。このとき、バーチャル・モデルMと同じ形状および同じ体積(又はボリューム)を維持する。このような典型的なロードおよびコンストレイントの関数として、トポロジーの最適化ソフトウェアによって、バーチャル・モデルMの様々な部品(又はパーツ)の密度を再計算する。そうすることで、例えば、製品構造の全体的な剛性を維持し、材料自体の閾値を超える応力点を防止(又は抑制)し、このような構造(物)を軽くする。通常、このソフトウェアによって、様々な最適化の目標(又はターゲット)を入れる(又は挿入する)ことができる(例えば、ロードに対する抵抗(又は耐性又はレジスタンス)を最大化すること、および/または、質量を特定の割合(又はパーセンテージ)にまで減らすこと)。トポロジーの最適化によって、最適化されたバーチャル・モデルMOが作成(又は形成又は生成)される。この最適化されたバーチャル・モデルMOは、相対密度が異なる複数の領域(又は部分)を有している。
図1Aは、バーチャル・モデルMを示す。このバーチャル・モデルMは、固体のポリスチレンであり、その密度は均一である。
図1Bは、最適化されたバーチャル・モデルMOを示す。この最適化されたバーチャル・モデルMOでは、より高い密度の領域Aと、より低い密度の領域Bとを見ることができる。観察され得る通り、製品(つまり、固体の発泡性のポリマー材料から製造することができる製品)のバーチャル・モデルMおよび最適化されたバーチャル・モデルMO(相対密度が異なる複数の領域を有するもの)は、同じ形状を有し、なおかつ、同じ体積を占めている。製品(つまり、固体の発泡性のポリマー材料から製造することができる製品)のバーチャル・モデルMの相対密度は、全体的に(又はどこにおいても)、1に等しい。最適化されたバーチャル・モデルMOの領域Aの相対密度は、例えば、0.9に等しい。ここで、相対密度とは、所定の体積を有する発泡したポリマー材料の密度と、それと同じ体積を有する同じ固体のポリマー材料(すなわち、発泡していない材料であって、気泡が存在しない材料)の密度との比によって与えられる相対的な密度である。最適化されたバーチャル・モデルMOの領域Bの相対密度は、例えば、0.6に等しい。
図1Bでは、記載を明確にすることだけを目的として、領域Aと領域Bとの間を明確に区別して図示していた。しかし、当該方法(又は処理又はプロセス)は、密度の急激な変動を避けることを目的としているものである。
【0100】
この時点で、最適化されたバーチャル・モデルMOの領域Aおよび領域Bを仮想的に圧縮するために、常にソフトウェアを介して、最適化されたバーチャル・モデルMOを処理する。そうすることで、相対密度が1よりも低くなり(ただし、これら2つの領域の相対密度は最大で1に等しくなる)、プリフォームMPのバーチャル・モデルが得られる(
図1C)。プリフォームMPは、体積が、最適化されたバーチャル・モデルMOの体積よりも小さい。また、その質量は、最適化されたバーチャル・モデルMOの質量に等しい。また、プリフォームMPのバーチャル・モデルは、最適化されたバーチャル・モデルMOとは異なる形状を有することができる。
【0101】
実際のプリフォームPは、固体の発泡性のポリマー材料(ここに記載する例では、発泡していないポリスチレン)から構成されるものであり、プリフォームMPのバーチャル・モデルからスタートして、例えば、射出成形、または他の技術によって達成される。
【0102】
あるいは、最適化されたバーチャル・モデルからスタートして、プリフォームの形状を計算する。相対密度が1より低い領域を暗くして、相対密度が1に等しい領域のみを見えるように残す(又は設ける又は形成する)。上述の相対密度が1に等しい領域に、相対密度が1に等しい追加の材料を供給(又は分配又は配分又は分布)する。この追加材料は、発泡すると、最終的な発泡ポリマー材料の製品において、1よりも小さい異なる相対密度(又は差異化された相対密度)を有する領域(複数)を形成(又は生成)するものである。
【0103】
様々な選択肢(又は代替案)によると、最適化されたバーチャル・モデルMOからスタートして、生成されたプリフォームMPのバーチャル・モデルの質量(固体ポリマー、すなわち発泡していない状態での質量)が、最適化されたバーチャル・モデルMOの質量に等しくなるまで(すなわち、プリフォームMPのバーチャル・モデルの体積(又は容積又はボリューム)は、最適化されたモデルMPのポリマー材料が実際に占める体積(又は容積又はボリューム)(まるで発泡していないように泡がない状態である)と同一である)、当該最適化されたバーチャル・モデルMOから、より低い密度で体積(又は容積又はボリューム)を段階的に仮想的に減らす(又は除去する)ことによって、プリフォームMPのバーチャル・モデルを得る。プリフォームMPのバーチャル・モデルの体積(又は容積又はボリューム)および形状は、最適化されたバーチャル・モデルMOから導出される。このとき、ポリマー材料の質量は一定に維持される。
【0104】
次に、モールド(又は型又は金型又は鋳型)1のチャンバにプリフォームPを収容する(
図2A)。モールド1は、製品(発泡したポリマー材料から製造され得る製品)の最終的な形状の逆の像(又はリバース・イメージ)を再現(又は複製)している。
【0105】
モールド1は、そのチャンバ内において、発泡剤(例えば、ガス(例えば、N2))が注入できるように構成されている。発泡剤は、加圧下での1段階以上の可溶化によって、プリフォームPの発泡性のポリマー材料を飽和させるように設計(又は構成)されている。従って、モールド1は、インレット(又は入口)2を備えている。インレット2は、1以上のポンプ(例えば、容積ポンプ)に接続されている。かかるポンプは、電子制御ユニットによって駆動されるものであり、かかる電子制御ユニットは、このようなポンプ(単数または複数)を制御し、なおかつ、様々なプログラム(発泡剤の注入、発泡剤の圧力管理のプログラム)を作動させるためのものである。また、モールド1は、発泡剤の排出を可能とするために、アウトレット(又は出口)3を備える。アウトレット3は、バルブによって管理されるものであり、かかるバルブは、制御ユニットに接続されている。
【0106】
モールド1のチャンバは、プリフォームPの体積(又は容積又はボリューム)よりも大きな体積(又は容積又はボリューム)を有する。そうすることで、
図2Aに見られるように、モールド1に配置されたプリフォームPは、当該モールドを部分的にのみ充填する。それによって、エンプティ・ボリューム(又は空の体積(又は容積又はボリューム)又は空体積)4を設ける(又は形成する又は残す)。
図2Aに示す概略的な例において、エンプティ・ボリューム4は、プリフォームPの上および横の外表面と、モールド1のチャンバの下および横の内表面との間で囲まれている。
【0107】
電子制御ユニットは、以前に実行されたトポロジーの最適化の関数(又はファンクション)としてプログラムされている。なおかつ、この電子制御ユニットは、ポンプを駆動させる。そうすることで、かかるポンプによって、1以上の圧力プロファイルで発泡剤がモールド1に導入されるようになる。ここで、圧力プロファイルは、時間および/または空間に基づいて変動し得るものである(又は時間および/または空間とともに変動し得るものである)。発泡剤は、モールド1に導入され、プリフォームPの発泡性のポリマー材料に作用するものである。発泡剤の圧力は、予め決められたプロファイルに従って、時間に基づいて(又は時間とともに)、変動させる。例えば、圧力プロファイルは、周期的または非周期的に、時間に基づいて(又は時間とともに)、変化させる。さらに、発泡剤の圧力は、調整することができ、そうすることで、プリフォームPの表面の様々な部分において、様々な値をとるようになる。このような目的のために、例えば、モールド1は、内部セパレータを備えることができる。内部セパレータによって、サブチャンバにチャンバを分割する。例えば、サブチャンバのそれぞれにインレット2を設ける。それぞれの圧力プロファイルで発泡剤をそれぞれ導入するためである。例えば、圧力プロファイルは、大気圧に等しい最小の圧力から、300バール(bar)の最大の圧力まで、変動させる。
【0108】
プリフォームPの発泡性のポリマー材料に発泡剤を可溶化させる。そして、プリフォームPを構成するポリマーの様々な領域において、様々な濃度の発泡剤を達成する。
図2Bに示す模式的な例において、プリフォームPのより内側の領域(自由表面からの距離がより大きい領域A’)ほど、発泡剤の濃度がより低くなる。その一方で、プリフォームPのより外側の領域(自由表面からの距離がより小さい領域B’)ほど、発泡剤の濃度がより高くなる。その後の圧力解放の工程(又はステップ)(ここでは、アウトレット3にあるバルブを開放することによって、モールド1のチャンバのほぼ即時(又は瞬間)の減圧が可能になる)において、プリフォームPのより外側の領域B’が、より内側の領域A’と比較して、より多く発泡する。それによって、発泡したポリマー材料の製品Sが形成されることになる。製品Sは、上記の相対密度が異なる複数の領域を有する。製品Sは、最適化されたバーチャル・モデルMOに対応するものである。観察され得るように、圧力解放の工程(又はステップ)の間において、発泡したポリマーの泡によって、エンプティ・ボリューム4が満たされる。
【0109】
発泡剤の圧力プロファイル(単数または複数)は、制御ユニットのコントロール下でポンプ(単数または複数)によって形成(又は生成)されるものであり、以前に実行されたトポロジーの最適化の結果からスタート(又は出発)して計算され、発泡したポリマー材料内に形成される気泡(又はバブル)の形状(又はシェイプ)、寸法(又はサイズ)および数(単位体積あたりの数)を決定する(モルホロジー(又は形態)を決定する)。そして、それ故、この発泡したポリマー材料の局所的な密度を決定する。発泡したポリマー材料は、密度勾配(又は密度グラジエント)(高い場合もある)を有する。ただし、不連続性(又はディスコンティニュイティ)は有していない(又は連続している)。
【0110】
次いで、発泡したポリマー材料の製品(S)は、モールド1から除去することができる(又は取り出す又は取り外すことができる)(
図2D)。このような発泡ポリマー材料の製品(S)は、最適化されたバーチャル・モデルMOの特徴(又は特性)を反映している。観察され得るように、プリフォームPは、発泡したポリマー材料の製品Sの体積よりも小さい体積と、発泡したポリマー材料の製品(S)の最終的な形状とは異なる形状を有する。
【0111】
本発明に従う方法(又は処理又はプロセス)の変形例(又はバリアント)において、可溶化(又は溶解化又はソリュービライゼーション)の工程(又はステップ)は、モールド1のチャンバに連続して注入される複数の発泡剤を使用すること、あるいは発泡剤の混合物を使用することによって行われる。
【0112】
当該方法(又は処理又はプロセス)の変形例(又はバリアント)において、試薬(又は試剤又は薬剤)または発泡剤(単数または複数)は、以下からなる群から選択されてよい:不活性ガス、および置換または非置換の脂肪族の炭化水素類(直鎖、分岐または環状であってよい)であって3個~8個の炭素原子を有するもの。例えば、発泡剤は、窒素、二酸化炭素、n-ブタン、iso-ブタン、n-ペンタン、iso-ペンタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(Freon R-134a)、1,1-ジフルオロエタン(Freon R-152a)、ジフルオロメタン(Freon R-32)、ペンタフルオロエタン、六フッ化硫黄(又はサルファー・ヘキサフルオリド)であってよい。
【0113】
本発明に従う方法(又は処理又はプロセス)の変形例(又はバリアント)において、プリフォームPをモールド1のチャンバ内に配置した後、発泡剤の可溶化(又は溶解化又はソリュービライゼーション)を促進するために、発泡性のポリマー材料(例えば、プリフォームと同一の発泡性のポリマー材料)のインコヒーレントの材料(又はコヒーレントでない材料又は非干渉性の材料又は密着しない材料又は粘着しない材料又はインコヒーレント・マテリアル(incoherent material))(例えば、粒(又は顆粒又はグラニュウ)または球(又はボール)をモールド1のエンプティ・ボリューム(又は空の体積(又は容積又はボリューム)又は空体積)4に完全にまたは部分的に充填することを包含する。この場合、必要に応じて、プリフォームPの発泡性のポリマー材料だけでなく、同じくモールドに含まれるこのような協力的(又はコンプライアント)な材料(compliant material)の粒/球においても、発泡剤は可溶化される。このようにして、この可溶化の工程(又はステップ)は、数十分から数分のオーダーで短縮させることができる。また、このような球(又はボール)を選択することができる(例えば、材料、数および寸法)。そうすることで、発泡性のポリマー材料中の発泡剤の可溶化を局所的に制限するようになる。したがって、さらにより複雑なマルチ・グラジエント(multi-gradient)の製品が得られる。
【0114】
本発明に従う方法(又は処理又はプロセス)の変形例(又はバリアント)において、ポリマー材料のマルチ・グラジエントの密度を有する複雑な製品(又は複合製品又はコンプレックス・プロダクト)を製造するために、プリフォームPの1以上の部分を部分的または完全にマスクする(又は覆う又は被覆する)ことを包含する。その後、プリフォームPをモールド1に配置する。このようにして、プリフォームPをモールド1に配置すると、発泡性のポリマー材料において、発泡剤の可溶化を局所的に制限または防止(又は抑制)することができる。このような目的のために、例えば、ポリマーの水溶液を適用(又は塗布)することができる(例えば、ポリビニルアルコール(PVA))。このポリマーによって、発泡剤(例えば、CO2)に対するバリア特性をプリフォームPの表面の一部(単数または複数)に提供する。水の蒸発によってPVAフィルムが得られる。かかるPVAフィルムは、CO2を可溶化する工程(又はステップ)を局所的に条件付ける(又はコンディショニングする)ことができる。
【0115】
本発明に従う方法(又は処理又はプロセス)の変形例(又はバリアント)において、まず、様々な工程(又はステップ)を最適化するために、可溶化(又は溶解化又はソリュービライゼーション)の工程(又はステップ)の間および圧力解放の直前において、システム(又は系)の温度を制御する。例えば、可溶化の工程(v)は、20℃よりも高い温度で作動(又は動作又は運転又は操作)する。あるいは、ポリマー材料の密度とともに、複雑なマルチ・グラジエントのシステム(又は系)を達成するためには、可溶化の工程に関連して、時間および/または空間に基づいて変化し得る熱プロファイル(又は時間および/または空間とともに変化し得る熱プロファイル)を設定(又はセット)することができる。例えば、モールド1を50℃~350℃の間に含まれる温度まで加熱する。また、可能であれば、工程(vi)(解放)の後かつ工程(vii)(除去)の前において、例えば、5℃~150℃の間に含まれる温度まで、モールド1を冷却することができる。これにより、発泡体を固化させることができ、得られるマルチ・グラジエントの発泡構造(物)を安定化させることができる。
【0116】
方法(又は処理又はプロセス)の変形(又はバリアント)において、圧力および/または温度および/または発泡剤の種類を制御することによって、1よりも低い平均の相対密度(すなわち、出発の固体の発泡性のポリマー材料よりも低い相対密度)を有し、密度勾配(又は密度グラジエント)または形態勾配(又はモルホロジー・グラジエント)を有する(ただし、相対密度は、均一であり、1よりも小さい)か、あるいは、密度勾配および形態勾配の両方を有する製品を製造することができる。
【0117】
図4A~
図4Fは、異なる例を図示するものである。これは、ポリスチレンのスツール(又は椅子又はテーブル)5を形成(又は製造)するための例である。
図4Aは、作成(又は製造)され得るスツール(又は椅子又はテーブル)を図示するものである。
図4Bは、スツール5のバーチャル・モデルMを図示するものである。ここでは、スツール5に適用(又は付与)されるロード(又は負荷)Fをスツール5のシートに対して垂直方向で記載している。
図4Cは、最適化されたバーチャル・モデルMOを図示するものである。ここでは、色がより濃い領域(又は部分)は、より高い密度を有する部分を表している。色がより薄い領域(又は部分)は、より低い密度を有する部分を示す。
【0118】
図4Dは、ポリスチレンのプリフォームPを図示するものである。これは、上記のように計算されるものであり、射出成形(又はインジェクション・モールディング)によって形成されて成る。観察され得る通り、このプリフォームPは、4本のより長いレッグ(又は脚又は脚部)6と、4本のより短いアーム(又は腕又は腕部)7とを有して成る。4本のアーム7は、4本のレッグ6の上方の部分(又は上部)と共に、スツールのシート8を形成するように構成されている(その前に、可溶化および発泡が行われている)。4本のレッグ6の下方の部分(又は下部)は、スツール5のレッグ9を形成するために構成されている。
【0119】
プリフォームPをモールド1に入れる(又は挿入又は配置する)(
図4E)。このモールド1は、最終的なスツールの形状を有して成る。プリフォームPは、モールド1を部分的に充填する。そうすることで、エンプティ・ボリューム(又は空の体積(又は容積又はボリューム)又は空体積)を設ける(又は形成する又は残す)。後続の発泡工程(又は発泡ステップ)によってのみ、このようなエンプティ・ボリュームが発泡体(又は泡又はフォーム)で充填される。このようなエンプティ・ボリュームにおいて、工程時間を短く維持するために、ポリスチレンの球(又はボール)(直径=数ミリメートル(数mm))を恐らく充填することができる。
【0120】
可溶化は、第1の加圧工程(又は加圧)を包含する。ここでは、100barの窒素(N2)(ポリスチレンへの溶解度がより低いことを特徴として有している)を使用する。その後、二酸化炭素(CO2)(ポリスチレンへの溶解度がより高いことを特徴として有する)による洗浄(又はウォッシング)が100barで行われる。このとき、N2がCO2で置換される。プリフォームPのより内側の領域(自由表面からの距離がより長い(又は遠い)ところ)は、発泡剤の濃度がより低くなる。発泡剤に曝されたプリフォームPの部分(又は一部)は、その後の発泡のときに、その内部に向かって増加する密度プロファイルによって特徴付けられる。それによって、外側では密度がより低くなり、内側では密度がより高くなる。この例では、当該方法(又は処理又はプロセス)の全ての工程(又はステップ)において、モールド1は、100℃で維持される。
【0121】
図4Fは、スツール5を図示するものであり、これは、モールド1内の圧力を解放し、なおかつ、ポリスチレンを発泡させた後に得られるものである。最適化されたバーチャル・モデルMOに従って、図の色がより濃い領域(又は部分)は、密度がより大きい部分を表す。色がより薄い領域(又は部分)は、密度がより小さい部分である。
【0122】
図5A、
図5B、
図5Cおよび
図6は、他の例を図示している。これは、ポリスチレンのヘルメットのキャップ10を形成(又は製造)するための例である。
図5Aは、プリフォームPを図示している。
図5Bは、モールド内のプリフォームを図示している。
図5Cは、発泡したポリマー材料(又は発泡ポリマー材料)の最終的な製品(S)を図示している。観察され得るように、プリフォームPは、半球状の外側の部分11と、複数の突起物(excrescences)12とを有して成る。なお、複数の突起物12は、半球状の外側の部分(又は半球状の外部)11の内側に向かって、半径方向(又は放射線状)に伸長している(又は延在している)。可溶化と、その後の発泡の後、複数の突起物11は、キャップ10の内側の部分(又は内部)を形成する。
図6は、最適化されたバーチャル・モデルMO(キャップのMO)を図示するものである。最適化されたバーチャル・モデルMO(キャップのMO)は、相対密度が異なる複数の領域を有している。ここでは、色がより暗い領域(又は部分)は、密度がより大きい部分を表す。色がより薄い領域(又は部分)は、密度がより小さい部分を表している。
【0123】
本発明に従う方法(又は処理又はプロセス)で得ることができる製品は、多様(又はマルチプル)であり、様々な分野(又は異なる分野)に関するものである。当該製品は、例えば、車両、ボート、航空機、建築構造物(必要に応じて防音用の建築構造物)、衣服または服飾アクセサリ(又は衣類の付属品)、医療デバイス(又は医療装置又は医療機器又は医療器具)、単独(又は個人)の防護具(又は防護器具又は防護装置又は防護機器又は防護デバイス又はプロテクション・デバイス)(例えば、上記のヘルメット)または集合的な防護具(又は集団の防護具)、家具(一部)(例えば、上記の小型テーブル)、スポーツ用品(一部)、あるいはこれらの一部である。
【国際調査報告】