(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】燃料高圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
F02M 59/46 20060101AFI20221219BHJP
F16K 17/04 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
F02M59/46 W
F02M59/46 C
F16K17/04 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523959
(86)(22)【出願日】2020-09-24
(85)【翻訳文提出日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2020076701
(87)【国際公開番号】W WO2021078464
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】102019216314.9
(32)【優先日】2019-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ライナー コアンハース
(72)【発明者】
【氏名】ラース ゴナーマン
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヴェーア
【テーマコード(参考)】
3G066
3H059
【Fターム(参考)】
3G066BA29
3G066BA46
3G066BA54
3G066BA61
3G066CA20T
3G066CD14
3G066CE16
3H059AA08
3H059BB13
3H059BB24
3H059CD05
3H059EE01
3H059FF13
(57)【要約】
内燃機関の燃料噴射システム用の燃料高圧ポンプ(10)であって、ポンプハウジング(12)と、該ポンプハウジング(12)内に配置された穴部(26)とを備え、該穴部(26)内に圧力制限弁(22)が配置されており、該圧力制限弁(22)は、弁ボディ(34)と弁部材(40)と保持部材(42)と少なくとも1つの弁ばね(50)とを含み、保持部材(42)は、弁部材(40)と弁ばね(50)との間に配置されている、燃料高圧ポンプ(10)において、保持部材(42)は、穴部(26)内に真っ直ぐに案内されるように構成されていることが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃料噴射システム用の燃料高圧ポンプ(10)であって、ポンプハウジング(12)と、該ポンプハウジング(12)内に配置された穴部(26)とを備え、該穴部(26)内に圧力制限弁(22)が配置されており、該圧力制限弁(22)は、弁ボディ(34)と、弁部材(40)と、保持部材(42)と、少なくとも1つの弁ばね(50)と、を含み、前記保持部材(42)は、前記弁部材(40)と前記弁ばね(50)との間に配置されている、燃料高圧ポンプ(10)において、
前記保持部材(42)は、前記穴部(26)内に真っ直ぐに案内されるように構成されていることを特徴とする、内燃機関の燃料噴射システム用の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項2】
前記保持部材(42)は、前記弁部材(40)のための収容部(45)を有し、該収容部(45)は、当付け面(46)と、少なくとも1つの壁(48)と、を有することを特徴とする、請求項1記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項3】
前記当付け面(46)と前記壁(48)とは互いに対して、前記弁部材(40)のための、円筒状のまたは少なくとも部分的に球面状の収容室を形成するように配置されていることを特徴とする、請求項2記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項4】
前記保持部材(42)は、前記弁ボディ(34)に面した側と、前記弁ボディ(34)とは反対の側との間に、少なくとも1つの流体接続部(44)を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項5】
前記流体接続部(44)は、前記保持部材(42)を貫通した少なくとも1つの孔を含むことを特徴とする、請求項4記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項6】
前記流体接続部(44)は、結合リブを備えた環状の通過部を含むことを特徴とする、請求項4または5記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項7】
前記弁部材(40)は、球形に形成されていることを特徴とする、請求項1から6までの少なくともいずれか1項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項8】
前記保持部材(42)は、少なくとも1つの突出部(52)を有し、該突出部(52)は、少なくとも部分的に前記弁ばね(50)のばねガイドとして形成されていることを特徴とする、請求項1から7までの少なくともいずれか1項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項9】
前記圧力制限弁(22)は、弁ばね案内部材(54)を有し、該弁ばね案内部材(54)は、少なくとも部分的に前記弁ばね(50)の、前記保持部材(42)とは反対の側の端部の領域に配置されていて、前記弁ばね(50)の、前記保持部材(42)とは反対の側の端部の領域が前記弁ばね案内部材(54)によって案内されるように構成されていることを特徴とする、請求項1から8までの少なくともいずれか1項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項10】
前記保持部材(42)は、粉末射出成形により製造された構成部分または旋削加工部分であることを特徴とする、請求項1から9までの少なくともいずれか1項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、請求項1の前提部に記載の、内燃機関の燃料噴射システム用の燃料高圧ポンプに関する。
【0002】
燃料高圧ポンプは、公知先行技術に基づき知られている。このような燃料高圧ポンプは圧力制限弁(プレッシャリリーフバルブ)を有し、この圧力制限弁は、開弁された状態において、流出側の高圧領域を、燃料高圧ポンプの圧送室に接続する。圧力制限弁は、流出側の高圧領域と燃料高圧ポンプの圧送室との間の圧力差が所定の限界値を上回ったときに開弁する。すなわち、圧力制限弁によって、流出側の高圧領域における圧力が許容し得ない程高くなることが阻止される。
【0003】
発明の開示
本発明の根底を成す問題は、請求項1の特徴部に記載の特徴を有する燃料高圧ポンプにより解決される。本発明の有利な改良形は、各従属請求項に記載されている。さらに、本発明にとって重要な特徴は、以下の説明および図面に開示されている。この場合、これらの特徴は、それぞれ単独の形であっても、多種多様に組み合わされた形であっても、本発明にとって重要となり得る。
【0004】
内燃機関の燃料噴射システム用の本発明による燃料高圧ポンプは、燃料を高い圧力にまで圧縮し、この燃料を噴射装置に圧送する。噴射装置はこの燃料を内燃機関に設けられたそれぞれ対応する燃焼室内に直接に噴射する。燃料高圧ポンプは、ポンプハウジングと、このポンプハウジング内に配置された穴部とを有し、この穴部内に圧力制限弁が配置されており、この圧力制限弁が、弁ボディと弁部材と保持部材と少なくとも1つの弁ばねとを含み、保持部材は、弁部材と弁ばねとの間に配置されていて、穴部内に真っ直ぐに案内されるように構成されている。
【0005】
この圧力制限弁により、燃料高圧ポンプの流出側の高圧領域内の圧力は、最大に許容可能な値に制限される。この流出側の高圧領域に生ぜしめられる圧力が圧力制限弁の開弁圧を上回ると、弁部材が弁ばねの力に抗して動かされるので、燃料は高圧領域から圧送室および/または燃料高圧ポンプ内の低圧領域に流れ戻ることができる。
【0006】
弁部材と弁ボディとの間の面においても、弁部材と保持部材との間の面においても、望ましくない摩耗やキャビテーションエロージョンが生じるおそれがある。目下の知識水準によれば、摩耗はとりわけ保持部材の軸方向および半径方向の動きが原因となって生ぜしめられる。キャビテーションエロージョンは、圧力制限弁の開弁時に保持部材の動きが原因となって生ぜしめられ、さらに燃料高圧ポンプの吸込み段階において発生する蒸気が原因となって生ぜしめられる。保持部材の動きは、燃料高圧ポンプの圧送室内での圧力脈動と、弁ばねの軸方向および半径方向の振動とが原因となって生ぜしめられる。本発明における保持部材の真っ直ぐな案内に基づき、保持部材は特に開弁時および閉弁時に信頼性良く真っ直ぐに保持され、これにより摩耗もキャビテーションエロージョンも低減され、したがって圧力制限弁の寿命は延長され、ひいては圧力制限弁と共に燃料高圧ポンプの寿命も延長される。
【0007】
「真っ直ぐな案内」とは、保持部材が、たいていは円筒状の直線状に延在している穴部内で、直線状に動くように、つまりたとえば穴部の長手方向軸線に対して相対的に傾倒し得ないように、または長手方向軸線に対して横方向にずれ動かないように案内されていることを意味する。すなわち、穴部内部での保持部材の真っ直ぐな案内により、保持部材の半径方向の動きが低減される。なぜならば、保持部材が穴部内にぴたりと嵌合するように配置されて、(滑り嵌め式に)案内されているからである。言い換えれば、保持部材の外径は穴部の内径よりも最小限に小さく形成されているので、穴部内部での保持部材の、直径方向における動きが阻止される、または少なくとも最小限に抑えられるからである。
【0008】
さらに、保持部材の軸方向の動きも、つまり穴部の長手方向における動きも、減衰される。これは、穴部と、この穴部内に案内された保持部材との間の摩擦に基づいて行われる。所望の安定化機能を達成し得るようにするためには、穴部の内側に接触している保持部材の外側が、軸方向における所定の最小延在長さを有しなければならないことが明らかである。言い換えれば、保持部材は、軸方向に延び、かつ保持部材の最大直径を有する円筒状の区分を有する。こうして、穴部内部での保持部材の傾倒が生じることなしに真っ直ぐな案内が保証され得る。
【0009】
1つの改良形では、保持部材が、弁部材のための収容部を有し、この収容部が、当付け面と少なくとも1つの壁とを有することが提案される。すなわち、収容部は一種の凹部として形成されている。このような当付け面は、好適には保持部材の軸方向に対して直角に向けられており、つまり圧力制限弁の穴部の長手方向延在長さに対しても直角に向けられている。このような当付け面を備えた収容部は、弁部材を保持部材の軸方向において収容し、半径方向において保持し、かつ均一な面圧を加えるための構造的にできるだけ単純な手段を成す。
【0010】
これに関連した改良形では、当付け面と壁とが、互いに対して、弁部材のための円筒状の、または少なくとも部分的に球面状の収容室を形成するように配置されていることが提案される。壁は、保持部材の半径方向における弁部材の動きを制限するか、もしくは保持部材の半径方向において弁部材を位置固定することが望ましい。それにもかかわらず、弁部材は壁による位置固定部の内部に、ある程度の遊びを有していてもよい。半径方向における弁部材の位置固定もしくは制限に基づき、弁座(つまり弁部材と弁ボディとの間の面もしくは弁部材と保持部材との間の面)からの弁部材の離脱が回避され、ひいては弁ボディと保持部材との間に弁部材が挟まってひっかかることも回避され得る。
【0011】
円筒状の収容室を有する収容部の場合、当付け面と壁とは、少なくとも部分的に互いに直角に配置されている。これにより、構造的に極めて簡単に弁部材は保持部材の半径方向においても軸方向においても収容され得る。このような収容部は、たとえば保持部材に設けられた盲孔状の孔によって実現され得る。
【0012】
別の改良形では、保持部材が、弁ボディに面した側と、弁ボディとは反対の側との間に、少なくとも1つの流体接続部を有することが提案される。この場合、流体接続部は特に、できるだけ多くの燃料(流体/液体)が保持部材を貫流し得るように配置されている。規定された量の燃料が保持部材を通って流れなければならない場合、燃料の流速は、できるだけ大きな流体接続部、つまりできるだけ大きな流れ横断面を有する流体接続部によって、もしくは全体的にできるだけ大きな流れ横断面を生ぜしめる、できるだけ多数の流体接続部によって減じられて比較的低く保持される。低い流速により、保持部材の動きは低減され、かつ液体の迅速な流動時に発生するキャビテーション効果は低減される、またはそれどころか完全に消滅する。これによって、弁座、つまり弁部材と弁ボディとの間の面もしくは弁部材と保持部材との間の面から燃料高圧ポンプの圧送室への「連通」が改善され、このことはキャビテーションエロージョンの一層の低減をもたらす。
【0013】
これに関連した改良形では、流体接続部が、保持部材を貫通した少なくとも1つの孔を含むことが提案される。これにより、たとえば保持部材を旋盤で旋削加工部分として製作することが可能となる。このような製作方法は、別の製作方法に比べて有利になり、たとえばより廉価になり得る。
【0014】
これに関連した択一的な別の改良形または付加的な改良形では、流体接続部が、複数の結合リブを備えた、全体的に実質的に環状の通過部を含むことが提案される。好ましくは半径方向に延びる結合リブは、半径方向内側の材料区分と、半径方向外側の材料区分とを結合する。これらの結合リブは周方向で好適には均一に分配されて配置されている。好適にはこのような結合リブは、すべて同じ幾何学的形状および大きさを有し、保持部材の長手方向軸線からそれぞれ同じ半径方向間隔を有し、かつたとえば保持部材の長手方向軸線に関して対称的に配置されている、または既に述べたように周方向で均一に分配されて配置されている結合リブである。これによって、最小限の材料使用だけで、弁部材が半径方向における最大限の保持もしくは最大限の位置固定を受けることが保証され得る。保持部材を実現するために比較的少量の材料しか使用されないことに基づき、やはり弁座から燃料高圧ポンプの圧送室への「連通」が改善される。言い換えれば、流体接続部の流れ横断面は比較的大きいので、燃料(流体)の流速は比較的低くなり、ひいてはキャビテーション効果も小さくなる。
【0015】
別の改良形では、弁部材が球形に形成されていることが提案される。このような弁部材は極めて簡単に製造可能で、かつ容易に取扱い可能であり、これにより製造コストは低く保持され得る。さらに、円筒状の収容室を有する収容部との組合せにおいては、球形の弁部材が当付け面に唯一点で接触し、かつ最大でもその周面で壁に線状に接触することが得られる。これにより、保持部材と弁部材との間の接触面は最小限に抑えられる。好適には、球形の弁部材は圧力制限弁の閉弁された状態では壁に接触しない。圧力制限弁の閉弁された状態では、球形の弁部材の半径方向のセンタリングは弁ボディに設けられた弁座を介して行われる。壁は、圧力制限弁の開弁された状態において、もしくは圧力制限弁の開閉時にボール離脱防止のために働く。
【0016】
さらに別の改良形では、保持部材が、少なくとも1つの突出部を有し、この突出部が、少なくとも部分的に弁ばねのばねガイドとして形成されていることが提案される。この突出部は、たとえばばねの内部に延びる、凸設された円筒状の突出部の形に形成されている。この突出部は、好ましくは軸方向において、弁ばねのばね巻き条の約2条分の長さにわたり延びていてもよい。これにより、保持部材における弁ばねの特に良好で、かつ信頼性の良い座着が保証され得る。さらに、この少なくとも部分的なばねガイドにより、弁ばねの軸方向および半径方向の振動が回避される、または少なくとも低減される。このことは、やはり保持部材の軸方向および半径方向の動きを低減させ、ひいては冒頭で述べた摩耗を低減させる。
【0017】
さらに別の改良形では、圧力制限弁が、弁ばね案内部材を有することが提案される。この弁ばね案内部材は、少なくとも部分的に弁ばねの、保持部材とは反対の側の端部の領域に配置されている。弁ばね案内部材は、弁ばねの、保持部材とは反対の側の端部の領域がこの弁ばね案内部材によって案内されるように構成されている。好適には、突出部は、保持部材が辛うじてなお信頼性良く十分な開弁運動を実施し得る程度にまで保持部材の方向に延びている。
【0018】
このようなばね案内部材により、弁ばねの軸方向および半径方向の振動が回避され得る、または少なくとも低減され得る。このことは、やはり保持部材の軸方向および半径方向の動きの低減をもたらす。
【0019】
さらに別の改良形では、保持部材が、粉末射出成形により製造された構成部分であることが提案される。しかし、保持部材は旋削加工部分としても製造され得る。粉末射出成形によって、比較的複雑な形状、特に湾曲させられた通路等も製造され得る。それに対して、旋削加工部分としての製造は比較的に廉価である。
【0020】
以下に、本発明の実施形態を図面につき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】圧力制限弁を備えた本発明による燃料高圧ポンプの断面図である。
【
図2】
図1に示した圧力制限弁の長手方向断面図である。
【
図3】
図1に示した圧力制限弁の領域の断面の斜視図である。
【
図4】
図1に示した圧力制限弁の保持部材の断面図である。
【
図5】
図1に示した保持部材を、側方と上方と下方とから見た図である。
【
図6】
図1に示した保持部材ならびに弁部材を、斜めと上方と下方とから見た図である。
【
図7】圧力制限弁の別の実施形態を示す、
図2と同様の長手方向断面図である。
【
図8】
図7に示した圧力制限弁の保持部材を示す2つの斜視図である。
【
図9】
図7に示した保持部材ならびに弁部材を上方から見た図である。
【
図10】圧力制限弁のさらに別の実施形態を示す、
図2と同様の長手方向断面図である。
【
図11】
図10に示した圧力制限弁の保持部材を示す2つの斜視図である。
【
図12】
図10に示した保持部材ならびに弁部材を上方から見た図である。
【
図13】圧力制限弁のさらに別の実施形態を示す、
図2と同様の長手方向断面図である。
【
図14】
図13に示した圧力制限弁の保持部材を示す2つの斜視図である。
【
図15】
図13に示した保持部材ならびに弁部材を上方から見た図である。
【0022】
以下に挙げる図面中、機能的に等価の構成要素および領域は、互いに異なる実施形態においても同じ符号で示されている。
【0023】
図1には、内燃機関(詳しくは図示しない)用の燃料高圧ポンプ全体が符号10で示されている。この燃料高圧ポンプ10は、全体的に実質的に円筒状のポンプハウジング12を有し、このポンプハウジング12には、高圧燃料ポンプ10の主要コンポーネントが内蔵されている、または取り付けられている。すなわち、燃料高圧ポンプ10は流入-/量制御弁14と、圧送室16内に配置された、駆動シャフト(図示しない)により往復運動にもたらされる圧送ピストン18と、流出弁20と、圧力制限弁22とを有する。
【0024】
ハウジング12内には、第1の通路24が設けられており、この第1の通路24は圧送室16と圧送ピストン18とに対して同軸に延びている。第1の通路24は、圧送室16から第2の通路に通じており、この第2の通路は、全体的に実質的に円筒状の穴部26の形に形成されている。この穴部26は、第1の通路24に対して90°の角度を成して配置されており、この穴部26内に圧力制限弁22が収容されている。
図1には、ポンプハウジング12の長手方向軸線が全体的に符号28で示されており、穴部26の長手方向軸線が符号29で示されている。
【0025】
作動時では、長手方向軸線28に対して平行に往復運動する圧送ピストン18によって、吸込み行程の際に燃料、たとえばガソリンまたはディーゼル燃料が、流入-/量制御弁14を介して圧送室16内に吸い込まれる。圧送行程の際には、圧送室16内に存在する燃料が圧縮されて、流出弁20を介して、たとえば高圧領域30内へ、たとえば燃料集合管路(「レール」)に吐出され、この燃料集合管路において燃料は高い圧力下に貯えられる。高圧領域30は、流出管片32を介して燃料高圧ポンプ10に接続されている。この場合、圧送行程の際に吐出される燃料量は、電磁式に操作される流入-/量制御弁14によって調節される。高圧領域30内に許容し得ない過圧が生ぜしめられると、圧力制限弁22が開弁し、これにより燃料は高圧領域から圧送室16内へ流れることができる。
【0026】
圧力制限弁22は、上で述べたように、開弁された状態において高圧領域30を燃料高圧ポンプ10の圧送室16に接続する。この場合、圧力制限弁22は、流出側の高圧領域30と燃料高圧ポンプ10の圧送室16との間の圧力差が所定の限界値を上回ったときに開弁する。すなわち、圧力制限弁22によって、流出側の高圧領域30内の圧力が許容し得ない程高くなることが阻止される。
【0027】
図2には、
図1に示した圧力制限弁22の断面図が示されている。圧力制限弁22には、まずスリーブ状の弁ボディ34が所属しており、この弁ボディ34は穴部26内に圧入されている。弁ボディ34内には、弁ボディ34の長手方向29に延びる段状の通路36が設けられている。通路36の、
図2で見て右側の端部では、弁ボディ34に弁座38が形成されており、この弁座38は弁ボールの形の弁部材40と協働する。弁部材40の、弁座38とは反対の側には、保持部材42が配置されている。
【0028】
保持部材42は、実質的に円筒状に形成されていて、本実施形態では3つの流体接続部44と、1つの当付け面46と、3つの壁48とを有する(
図5および
図6も参照)。壁48は、保持部材42の、
図2で見て左側の、弁ボディ34に面した側に配置されている3つの突出部の、半径方向内方の各内側によって形成される。保持部材42は穴部26内で、保持部材42の円筒状の形状に基づいて滑り嵌め式に真っ直ぐに案内される。すなわち、保持部材42は、穴部26の内部で長手方向軸線29に対して平行に直線状に動く。穴部26内での保持部材42のこのような案内により、保持部材の半径方向の動きは阻止され得る、または少なくとも低減され得る。保持部材42の、ぴたりと嵌合する円筒状の形状に基づき、圧力制限弁22の開弁時もしくは閉弁時における軸方向、つまり長手方向軸線29に対して平行な方向での往復運動の際に保持部材42が傾倒してひっかかることが回避される、または少なくとも低減される。保持部材42は、圧力制限弁22の閉弁された状態においても真っ直ぐに保持される。
【0029】
保持部材42と、穴部26の、
図2で見て右側の端部との間には、圧縮ばねとして形成された弁ばね50が配置されているか、もしくは緊定されている。すなわち、弁部材40は、弁ばね50によって保持部材42を介して弁座38に向かって付勢される。弁部材40は、当付け面46と弁座38とによって保持部材42と長手方向軸線29とに対して相対的にセンタリングされる。
【0030】
図3には、
図1に示した圧力制限弁22の断面の一部を示す斜視図が図示されている。弁ボディ34と、弁部材40と、保持部材42と、弁ばね50の一部とが看取され得る。
【0031】
図4には、
図1に示した保持部材42の断面図が示されている。この場合、当付け面46と壁48との間に90°の角度が形成されることが特に明りょうに判る。
【0032】
図5には、
図1に示した保持部材42を、側方と上方と下方とから見た図が示されている。この場合、3つの流体接続部44がどのように延在しているのかが明確に判る。これらの流体接続部44は全体的に見ると、実質的に環状の1つの通過部を形成しており、この場合、この通過部は3つの結合リブ(符号なし)を備えていて、これらの結合リブは弁ボディ34の方向への突出部として形成されている。結合リブの突出部の、長手方向軸線29寄りの側、つまり半径方向内方の側(内側)は、それぞれ1つの壁48を形成している。壁48は軸方向の当付け面46と共に弁部材40のための収容部45を形成している。
【0033】
図6には、
図1に示した保持部材42ならびに弁部材40を、斜めと上方と下方とから見た図が示されている。3つの図からは、弁部材40が保持部材42もしくは収容部45内に嵌め込まれている状態が判る。球形の弁部材40と保持部材42との間の接触は、当付け面46に関しては実質的に点状であり、壁48に関しては線状である。弁部材40と保持部材42との間の線状もしくは点状の接触により、弁座から圧送室16への比較的直接的な「連通」が提供される。このような直接的な「連通」は、保持部材42の前後に比較的小さな圧力差をもたらし、かつ保持部材42に作用する力の低減をもたらし、このことは最終的には保持部材42の摩耗減少をもたらす。
【0034】
弁部材40と保持部材42の当付け面46との間の点接触に基づき、保持部材42から弁部材40への横方向力/モーメントの伝達が阻止される、または少なくとも低減される。このことは、少なくとも実質的に横方向力フリー/モーメントフリーの弁座をもたらし、ひいては均一な面圧をもたらす。その結果、摩耗低減が得られる。
【0035】
さらに、弁部材40と保持部材42の当付け面46との間の十分な点接触に基づき、保持部材42の、軸方向で加圧される受圧面が小さく保持される。これによって、保持部材42に作用するハイドロリック力は小さく保持され、ひいては保持部材42の軸方向の動きが低減される。このことは摩耗低減をもたらす。
【0036】
上で説明した手段により、弁座では同じくキャビテーションエロージョンが低減される。すなわち、弁座から圧送室16への、より直接的な「連通」により、燃料高圧ポンプ10での吸込み段階における蒸気発生に基づいたキャビテーションエロージョンが低減される。保持部材42の軸方向の動きの低減(摩耗参照)により、圧力制限弁22の開弁動作が少なくなり、このことはやはりキャビテーションエロージョンの低減をもたらす。保持部材42の半径方向の動きの低減および弁部材40への横方向力/モーメントの伝達阻止により、比較的均一な面圧が生ぜしめられ、ひいては圧力制限弁22の開弁動作が少なくなり、したがってやはりキャビテーションエロージョンの低減がもたらされる。
【0037】
保持部材42は、たとえば金属粉末射出成形(MIM)法で構成部分として製造され得る。
【0038】
図7には、圧力制限弁22の別の実施形態の断面図が示されている。この実施形態は、保持部材42の、弁ばね50に面した側が3つの突出部52を有する点で、前出の実施形態とは異なる。これらの突出部52は、少なくとも部分的に弁ばね50のためのガイドとして働く。さらに、この圧力制限弁22は弁ばね案内部材54を有する。この弁ばね案内部材54により、弁ばね50は少なくとも部分的に軸方向に、つまり長手方向29に対して平行に、案内される。したがって、弁ばね50は少なくとも部分的に突出部52と弁ばね案内部材54とによって軸方向に真っ直ぐに案内される。これにより、半径方向における弁ばね50の望ましくない振動が回避され得る、または少なくとも低減され得る。
【0039】
図8に示した保持部材42の両斜視図と、
図9に示した保持部材42ならびに弁部材40を上方から見た図とからは、
図7に示した実施形態による保持部材42が良く判る。
【0040】
図10には、圧力制限弁22のさらに別の実施形態の断面図が示されている。この実施形態は、流体接続部44が、軸方向に延びる、つまり長手方向29に対して平行に延びる、保持部材42を貫通した孔として形成されている点で、前出の実施形態とは異なる。したがって、この保持部材42を旋盤によって旋削加工部分として製造することが可能である。さらに、保持部材42は3つの突出部52を有し、これらの突出部52は、圧力制限弁22の前出の実施形態に比べて少しだけ長尺に形成されている。その結果、弁ばね50の、
図10で見て左側の端部の領域における弁ばね50の一層良好な案内が得られる。
【0041】
図11に示した保持部材42の両斜視図と、
図12に示した保持部材42ならびに弁部材40を上方から見た図とからは、
図10に示した実施形態による保持部材42が良く判る。
【0042】
図13には、圧力制限弁22のさらに別の実施形態の断面図が示されている。この実施形態は、保持部材42が、凹設部内に設置された弁部材40を備えた旋削加工部分として形成されている点で、前出の実施形態とは異なる。この場合、壁48は、上で説明した実施形態とは異なり突出部により実現されるのではなく、球形の弁部材40に対して実質的に相補的な、中央の球面状の凹部により実現される。さらに、この圧力制限弁22は、弁ばね案内部材54を有しない。
【0043】
当然ながら、旋削加工部分として説明した保持部材42を、別の方法、たとえば金属粉末射出成形(MIM)によっても製造することができる。
【0044】
図14に示した保持部材42の両斜視図と、
図15に示した保持部材42ならびに弁部材40を上方から見た図とからは、
図13に示した実施形態による保持部材42が良く判る。
【国際調査報告】