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特表2022-553730粘弾性挙動を示すタンパク質ベースの生体材料、それを取得するためのプロセスおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】粘弾性挙動を示すタンパク質ベースの生体材料、それを取得するためのプロセスおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/50 20060101AFI20221219BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221219BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61L27/50
A61L27/22
A61K45/00
A61L27/54
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524058
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 EP2020079901
(87)【国際公開番号】W WO2021078946
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】19306387.2
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500262120
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ストラスブール
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE STRASBOURG
(71)【出願人】
【識別番号】504007888
【氏名又は名称】センター ナショナル デ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】511074305
【氏名又は名称】インセルム(インスティチュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ リシェルシェ メディカル)
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アロウイ,エヤ
(72)【発明者】
【氏名】デ ジョルジ,マルセラ
(72)【発明者】
【氏名】フリッシュ,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ラヴァル,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シャーフ,ピエール
【テーマコード(参考)】
4C081
4C084
【Fターム(参考)】
4C081AB01
4C081AB11
4C081CD111
4C081CD112
4C081CD171
4C081CD172
4C081CE02
4C084AA17
4C084NA12
4C084NA20
(57)【要約】
本発明は、生体材料を調製するプロセスに関し、プロセスは、a)約10mg/mLと同等以上の水への溶解度を有する少なくとも1つのタンパク質、及び約500mg/mLと同等以上の水への溶解度を有する少なくとも1つの塩を含む溶液を調製する工程と、b)工程a)で得た溶液を、そのままで、工程a)で得た前記溶液を発泡させることによって得る泡として、又はそれらの混合物として、2つの非混和性相が形成されるまで、又は実質的に乾燥した固体が得られるまで、大気圧で4~50℃からなる温度で、又は真空下にてより低い温度で、又は大気圧よりも低い圧力で蒸発させる工程と、を含み、それによって生体材料を得る。本発明はまた、プロセスによって得られる生体材料、及びインビトロ組織工学の支持体として、及び/又はインビトロ細胞培養およびインビトロ増殖のための、及び/又は移植可能な医療機器として、又は薬物としての生体材料の使用に関する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体材料を調製するプロセスであって、前記プロセスは、
a)約10mg/mLと同等以上の水への溶解度を有する少なくとも1つのタンパク質、および約500mg/mLと同等以上の水への溶解度を有する少なくとも1つの塩を含む溶液を調製する工程と、
b)工程a)で得た前記溶液を、そのままで、工程a)で得た前記溶液を発泡させることによって得る泡として、またはそれらの混合物として、2つの非混和性相が形成されるまで、または実質的に乾燥した固体が得られるまで、大気圧で4~50℃からなる温度で、または真空下でより低い温度で、または大気圧よりも低い圧力で蒸発させる工程と、を含み、
それによって生体材料を得る、プロセス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの塩が、NaBr、NaI、KI、CaCl、MgCl、KCおよびNHHCOの中から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程b)で得られた前記乾燥した固体が、前記少なくとも1つの塩の少なくとも90重量%が除去されるまで洗浄される、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記少なくとも1つのタンパク質が、アルブミンまたはグロブリンなどの血清タンパク質の中から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記アルブミンが、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ブタ血清アルブミン、オバルブミン、植物性アルブミン、または組換えアルブミンの中から選択される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
工程a)および/または工程b)の間に少なくとも1つの添加剤が添加される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記少なくとも1つの添加剤が、ポリマー、特に非帯電、正帯電、負帯電および双性イオン性ポリマー、非イオン性アミノ酸および粒子の中から選択される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記少なくとも1つのタンパク質および前記少なくとも1つの塩が、100~3000で構成されるモル比(塩/タンパク質)にある、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に定義されているプロセスによって入手可能な生体材料。
【請求項10】
前記タンパク質の二次構造のパーセンテージが、IR分析または小角X線散乱によって測定された場合、対応する天然タンパク質と少なくとも同じであることを特徴とする、請求項9に記載の生体材料。
【請求項11】
少なくとも1つの有効成分と関連していることを特徴とする、請求項9または10に記載の生体材料。
【請求項12】
前記少なくとも1つの活性成分が、抗癌物質、抗炎症剤、免疫抑制剤、免疫調節剤、細胞増殖阻害剤、抗凝固剤、抗血栓剤、酵素を含む細胞-細胞外マトリックス相互作用のモジュレーター、阻害剤、鎮痛剤、抗増殖剤、抗真菌物質、細胞静止物質、成長因子、酵素、ホルモン、ステロイド、非ステロイド性物質、および抗ヒスタミン剤の中から選択され
る、請求項9~11に記載の生体材料。
【請求項13】
インビトロ組織工学の支持体として、および/またはインビトロ細胞培養およびインビトロ増殖のために、および/または移植可能な医療機器としての、請求項9~12のいずれか一項に記載の生体材料の使用。
【請求項14】
薬物として使用するための、請求項9~12のいずれか一項に定義されている生体材料。
【請求項15】
欠陥組織の置換を必要とする対象における欠陥組織を置換するため、または薬物放出システムにおける、請求項9~12に記載の生体材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体材料の調製プロセス、そのプロセスによって得られる生体材料、ならびに組織工学の支持体としての、細胞培養または増殖のための、移植可能な医療機器としての、および薬物としての生体材料の使用に言及する。
【0002】
したがって、本発明は、医療分野、特に組織工学、薬物送達、創傷被覆材および移植において有用性を有する。
【0003】
以下の説明では、括弧([])内の参照は、テキストの最後にある参照のリストを言及している。
【背景技術】
【0004】
生体材料は、組織工学、薬物送達、創傷被覆材、移植などのさまざまな治療用途で広く使用されている。
【0005】
合成、生体またはハイブリッド、それらは数十年ですべての治療分野:心臓血管、外科および整形外科、歯科、眼科、皮膚科、泌尿器科、腎臓科、神経学、内分泌学にて、特に組織の機能を再生または改善するために増えている。
【0006】
生体材料にはいくつかの種類があるが、生体材料の4つの主要なカテゴリーを想定することができる。
金属および金属合金、
広義の陶磁器、
ポリマーとソフトマター、
植物または動物の有機体から抽出されたサンゴまたは他の成分、例えばキチン、アルギン酸塩、ヘパリン、フコイダン、セルロース、コラーゲンまたはフィブリンなどの天然由来の材料。
【0007】
天然由来の材料は一般に自然に生体適合性があり、生分解性であるため、この最後のカテゴリーの生体材料は特に興味深いものである。
【0008】
天然由来の材料に基づいて、熱凝集または架橋を含む複数の技術が生体材料を調製するために使用されてきた。しかし、高温と架橋剤の使用は、不可逆的な変性と材料の構造の変化を引き起こし、その生物学的特性を失い、炎症反応を引き起こす可能性のある新しい抗原部位を明らかにする可能性がある。
【0009】
したがって、これらの欠点を持たず、より天然の生体材料のニーズを満たす、天然由来の材料に基づく代替の生体材料の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0010】
広範な研究により、出願人は、水、酸性溶液、および細胞培養培地において、顕著な機械的特性と優れた安定性を示す新しい生体材料を開発した。
【0011】
驚くべきことに、得られた生体材料は固体のような挙動を示し、組織工学または細胞培養の支持体として適している。
【0012】
本開示は、おそらく完全に独特のタイプのタンパク質、または生体材料の調製プロセス中に変性されないいくつかの選択されたタンパク質で作られた最初の生体材料を報告する。これは、本発明の生体材料が対象において炎症反応を誘発する可能性が低いことを意味する。さらに、この生体材料は細胞毒性がなく、細胞接着およびコロニー形成に有利である。
【0013】
それはタンパク質でできているため、本発明の生体材料は完全に生分解性である。
【0014】
出願人によって開発された調製プロセスは、化学的または過酷な/変性剤の配合条件なしで生体材料を得ることを可能にする。また、生体材料の特性、特に機械的および固有の特性を調整し、新しい特性を備えた機能化された生体材料を取得することもできる。したがって、出願人は、目標とされる治療用途の要件に適応するように特性を調節することができる用途の広い生体材料を提供する。
【0015】
したがって、第1の態様では、本発明は、以下の工程を含む生体材料の調製プロセスを提供する。
a)約10mg/mLと同等以上の水への溶解度を有する少なくとも1つのタンパク質、および約500mg/mLと同等以上の水への溶解度を有する少なくとも1つの塩を含む溶液を調製する工程。
b)工程a)で得た溶液を、そのままで、工程a)で得た溶液を発泡させることによって得る泡として、またはそれらの混合物として、2つの非混和性相が形成されるまで、または実質的に乾燥した固体が得られるまで、大気圧で4~50℃を含む温度で、または真空下でより低い温度で、または大気圧よりも低い圧力で蒸発させ、それによって生体材料を得る工程。
【0016】
本発明のプロセスは、共有結合架橋または熱凝集工程を使用しないという重要な利点を有し、それにより、非変性タンパク質を有する生体材料を得ることができる。
【0017】
工程a)で使用される少なくとも1つのタンパク質は、20℃の温度で約10mg/mLと同等以上、例えば、20mg/mL、40mg/mL、または50mg/mLと同等以上の水への溶解度を有する任意のタンパク質であり得る。例えば、このタンパク質は、約10mg/mL~1000mg/mLで構成される溶解度を有し得る。このタンパク質の水への溶解度は、当技術分野で知られている任意の方法、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、減衰全反射(ATR)-FTIR分光法、ラマン分光法、または集束ビーム反射モード(FBRM)測定によって測定することができる。そのようなタンパク質は、例えば、アルブミンまたはグロブリン、特にγ-グロブリンなどの血清タンパク質の中から選択され得る。アルブミンは、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ブタ血清アルブミン、オバルブミン、植物性アルブミン、および組換えアルブミン、例えば、天然のヒト血清アルブミンと構造的に同等であり、米で産生される組換えヒトアルブミンの中から特に選択され得る。アルブミンはまた、アルブミンナノ粒子であり得る。上に示したように、「少なくとも1つの」タンパク質を本発明のプロセスで使用することができ、これは、1つ、2つ、または3つ、または4つ、またはそれ以上の異なるタンパク質を工程a)の溶液で使用できることを意味する。好ましくは、1~3つの異なるタンパク質が使用され得る。工程a)の溶液中のタンパク質の濃度は、塩との混合を可能にする任意の濃度であり得る。例えば、10mg/mL~500mg/mLの範囲を含む。当業者は、塩の性質および塩濃度に応じて、溶液中のタンパク質の濃度を適応させることができる。ただし、以下で詳しく説明するように、目的の機能を備えた生体材料を得るには、タンパク質濃度よりも塩とタンパク質のモル比がより重要である。
【0018】
工程a)の少なくとも1つの塩は、20℃の温度で約500mg/mLと同等以上、例
えば、700mg/mL、または900mg/mL、または1200mg/mLと同等以上の水への溶解度を有する任意の塩であり得る。例えば、この塩は、約500mg/mL~3000mg/mLの間で構成される溶解度を有し得る。この塩の水への溶解度は、約20℃の温度、pH7、大気圧で測定することができる。塩の水への溶解度は、例えば、当業者によって知られている任意の方法、例えば、イオンクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、酸塩基滴定、電位差滴定、容積測定、秤量またはラマン分光法によって測定することができる。少なくとも1つの塩は、例えば、NaBr、NaI、KI、CaCl、MgCl、KCおよびNHHCOの中から選択され得る。上に示したように、「少なくとも1つの」塩を本発明のプロセスで使用することができ、これは、1つ、2つ、または3つ、または4つ、またはそれ以上の異なる塩を使用できることを意味する。好ましくは、それは1~3つの塩が使用され得る。例えば、少なくとも1つの塩は、例えば、100/100/100、200/200/200、または300/300/300のモル比で、NaBrおよびNaI、NaBrおよびCaCl、KIおよびCaCl、またはNaBr/CaCl/MgClを含み得る。工程a)の溶液中の塩の濃度は、タンパク質との混合を可能にする任意の濃度であり得る。それは、例えば、0.01M~40Mを含み得る。当業者は、タンパク質の性質およびタンパク質濃度に応じて、溶液中の塩の濃度を適応させることができる。ただし、以下で詳しく説明するように、目的の機能を備えた生体材料を得るには、塩とタンパク質のモル比が塩濃度よりも重要である。
【0019】
好ましくは、少なくとも1つのタンパク質および少なくとも1つの塩は、工程a)において、タンパク質の性質および生体材料を得るための塩の性質に依存するモル比であり得る。生体材料の形成は、タンパク質と塩の両方の濃度の対の効果に依存することが出願人によって実証されているため、塩/タンパク質のモル比は、膜形成を評価するためのより適切で信頼できるパラメータである。これを知っていると、モル比は、当業者が、彼の一般的な知識および不溶性生体材料の所望の特性、特にその堅さを考慮して、過度の負担なしに決定することができる。例えば、モル比は、100~4000、例えば、100~3000、または300~2500、または400~2000、または600~1500、または650~1000を含み得、塩と工程a)で使用されるタンパク質に依存する。例えば、NaBrとアルブミンの混合物のモル比は664であり得る。
【0020】
工程a)の溶液は、非変性条件において、適合された溶媒または溶媒の混合物中で少なくとも1つのタンパク質および少なくとも1つの塩を混合することによって実現され得る。この溶媒は、当業者が一般的な知識および塩およびタンパク質の性質を考慮して、過度の負担なしに選択することができる。例えば、この溶媒は、水、酢酸緩衝液などの緩衝液、水と緩衝液の混合物、およびエタノール、メタノール、アセトン、DMFまたはDMSOなどの別の水混和性溶媒の中から選択することができる。工程a)中の溶液の温度は、5℃~40℃であり得る。
【0021】
工程a)は、当業者によって知られているタンパク質の変性を回避する任意のpHで実施することができる。好ましくは、工程a)は、3.0~9.0を含むpHで実施され、3.0の値は、任意選択で除外される。pHは、例えば、4.0~9.0、または4.0~8.0であり得る。
【0022】
混合物は、そのような混合物を受け入れるように適合された任意の容器または支持体上で実現され得るか、または移送され得る。それは、例えば、ガラスまたはシリコーンの型、顕微鏡またはマイクロアレイ基質、細胞および組織培養皿またはマイクロウェルプレート、または生体材料がその周りで形を成すことができるポリマー支持体であり得る。有利には、支持体は、得られるべき生体材料の所望の表面積、形状および厚さを考慮して選択され得る。この目的において、容器に注がれる混合物の量は、支持体の表面積および/ま
たは生体材料の所望の厚さに応じて選択され得る。生体材料は、任意の形状、例えば、膜、完全または中空の円柱、円錐、球、舗石を有し得る。参考までに、以下に例示するように、製剤に使用されるタンパク質の初期重量と容器の面積との間の比であるM/S比は、10mg/cm~400mg/cm、例えば、20mg/cm~400mg/cmを含み得る。
【0023】
蒸発の工程b)は、工程a)で得られた溶液そのままで実行され得る。この場合、工程b)は、工程a)の直後、または工程a)で得られた溶液の性質または物理的構造を変えない中間工程の後に実行される。
【0024】
あるいは、工程b)は、工程a)で得られた溶液を発泡させることによって得られた泡に対して実施され得る。泡は、例えば、工程a)で得られた溶液に機械的作業を適用して、溶液の表面積を増加させることによって得ることができる。これは、当業者に知られている任意の方法、例えば、攪拌、工程a)で得られた溶液への大量のガスの分散、または工程a)で得られた溶液へのガスの注入によって実施することができる。
【0025】
別の実施形態では、工程b)は、工程a)で得られた溶液と、工程a)で得られた溶液を発泡させることによって得られた泡との混合物に対して実施することができる。この場合、工程a)で得られた溶液の一部を取り、別の容器で発泡させることができる。得られた泡は、そのまま蒸発させるか、または溶液と一緒に戻し、それと混合し、次に工程b)のように蒸発させることができる。好ましくは、泡を保存するために穏やかに混合が行われる。泡の蒸発により、多孔性の高い生体材料が生成される。
【0026】
工程b)の蒸発は、2つの非混和性相の形成を可能にするために、または実質的に乾燥した固体を得るために行われる。有利には、それは、溶液、発泡体またはそれらの混合物中に存在するタンパク質の変性を回避することを可能にする条件下で実施される。この目的で、この目標を達成するために、温度と圧力を決定し、相互に調整することができる。当業者は、タンパク質または塩の種類に応じて、および当業者の一般的な知識に従って、これらのパラメータを決定することができる。例えば、温度は大気圧で4~50℃、例えば4℃~20℃、または10℃~50℃、または15℃~50℃、または20℃~50℃、または25~40℃、または25~35℃、または20~30°Cを含み得る。真空下の低温または大気圧よりも低い圧力で工程b)を実施することも可能である。この場合、温度は、例えば、1℃~20℃、または2℃~15℃、または5℃~10℃であり得、圧力は、1~100kPaであり得る。いずれの場合も、蒸発は、2つの非混和性相が形成されるまで、または実質的に乾燥した固体が得られるまで実行される。これは、例えば、生体材料の表面に薄層の塩が堆積するとき、または20重量%未満の水、例えば10%未満の水を含む固体が得られるときに実行される。2つの非混和性相または実質的に乾燥した固体の形成は視覚的に認識することができる。参考までに、重量分析による水分の測定により、任意に検証することができる。
【0027】
蒸発段階の持続時間は、当業者の一般的な知識に従って、過度の負担なしに当業者が決定することができる。これは、タンパク質や塩の種類、プロセスを実行するために選択された温度と圧力、蒸発する溶液の量、または容器の形状の関数であり得る。例えば、蒸発は、10時間~30日、例えば、1日~20日、または2日~30日で実施することができる。より長い期間で実行することも可能であるが、それは生体材料の技術的特徴に改善がないことが多い。
【0028】
工程b)は、当業者によって知られているタンパク質の変性を回避する任意のpHで実施することができる。例えば、工程b)は、3.0~9.0を含むpHで実行することができ、3.0の値は、任意選択で除外される。タンパク質の種類に応じて、pHは例えば
4.0~9.0、または4.0~8.0であり得る。
【0029】
蒸発は、上記の基準を満たす任意の手段、例えばオーブンまたは真空オーブンによって実施することができる。
【0030】
本発明のプロセスは、本発明の生体材料を得ることを可能にするため、上記のような工程a)およびb)からなり得る。この場合、プロセスには他の工程はなく、生体材料は、実質的に乾燥した固体、または工程b)で得られた2つの非混和性相の固相である可能性があるため、工程b)の最後に直接得ることができる。
【0031】
あるいは、本発明のプロセスは、本発明の生体材料を得ることを可能にする追加の工程を含み得る。追加の工程は、工程a)の前、および/または工程a)とb)の間、および/または工程b)の後に実行することができる。この場合、生体材料は、これらの追加の工程の実施後に取得することができる。
【0032】
例えば、工程b)で得られた固相または乾燥固体を洗浄して、塩の少なくとも一部を除去し、それによって生体材料を得ることができる。好ましくは、工程b)で得られた固相または乾燥固体は、少なくとも1つの塩の少なくとも90重量%が除去されるまで洗浄され得、それにより生体材料が得られる。洗浄は、例えば、前記少なくとも1つの塩の少なくとも95%、または少なくとも99重量%が除去されるまで実施され得る。洗浄は、当業者が知っている任意の手段、例えば蒸留水または水性緩衝液を用いて実施することができる。得られる塩濃度の制御は、以下に示すように、例えば、BCAまたは微量分析による任意の既知の方法で実施することができる。
【0033】
工程b)で得られた固相または乾燥固体の浸漬の工程は、例えば、洗浄後に実施することができる。浸漬すると、生体材料に水分を補給させることができる。浸漬は、当業者が知っている任意の手段によって、例えば、蒸留水または緩衝液を用いて、室温で48時間実施することができる。
【0034】
工程a)および/または工程b)の間、または上記の任意の追加の工程の間に、少なくとも1つの添加剤を加えることも可能である。添加剤は、生体材料の特性を所望に応じて調節することを可能にする任意の物質であり得る。添加物はまた、場合によっては、生体材料から塩またはその一部を除去することを可能にし得る。添加剤は、当業者が一般的な知識および生体材料の所望の特性に従って選択することができる。それらは、例えば、ポリマー、特に非荷電、正荷電、負荷電および双性イオン性ポリマー、非イオン性アミノ酸および粒子の中から選択され得る。ポリマーは、多糖類、タンパク質、ペプチドおよびポリヌクレオチド、ならびに/または合成および半合成ポリマーから選択される任意の天然ポリマーであり得る。例えば、ポリマーには、ポリペプチド、ホモポリペプチド、キトサン、ヒアルロン酸、ヘパリン、アルギン酸塩、コンドロイチン硫酸塩、ポリアルギニン、ポリリジン、ε-ポリリジン、DEAEデキストラン、ポリシクロデキストリン、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリエチレンイミン、キサンタンガム、ポリアクリル酸、ポリペプチドグリコール、デンプン、セルロースとその誘導体、コラーゲン、インスリン、フィブリノーゲン、カゼイン、ゼラチン、グリアジン、グルテン、エラスチン、グロブリン、およびヘモグロビンが含まれるが、これらに限定されない。アミノ酸は、すべての適切なアミノ酸の中から、好ましくはアルギニン、オルニチン、リジンおよびシステインの中から選択することができる。粒子は、任意の適切な粒子であり得、例えば、ナノ粒子、例えば、カーボンナノチューブまたはグラフェン、微粒子、細菌およびウイルスベクターの中から選択され得る。添加剤は、当業者に知られている任意の手段によって組み込むことができる。例えば、それは、工程a)で得られた溶液に前記添加剤を直接溶解および/または懸濁することによって、または前記添加剤を水混和性溶媒に溶解および/または懸濁するこ
とによって、その後工程a)で得られた溶液に混合物を加えることによって、工程a)で得られた溶液に組み込むことができる。さらに、または代わりに、添加剤は、工程b)で得られた生体材料に、溶媒に溶解および/または懸濁された前記添加剤を吸着させることによって、工程b)で得られた生体材料に組み込まれ得る。添加剤の量は、タンパク質および生体材料の所望の特性に適合させることができ、したがって、当業者は、当業者の一般的な知識に従って決定することができる。例えば、添加剤のパーセンテージは、生体材料中のタンパク質からの総量に対して、0~20重量%、例えば、1~18重量%、または2~15重量%、または3~12重量%であり得る。
【0035】
さらに、または代わりに、少なくとも1つの有効成分を、工程a)で得られた溶液および/または工程b)で得られた生体材料に組み込むことができる。これにより、生体材料の機能化が可能になり得る。有効成分は、当業者に知られている任意の手段によって組み込むことができる。例えば、それは、工程a)で得られた溶液に前記活性成分を直接溶解および/または懸濁することによって、または水混和性溶媒に前記活性成分を溶解および/または懸濁し、次に、工程a)で得られた溶液に混合物を加えることによって、工程a)で得られた溶液に組み込むことができる。追加的または代替的に、有効成分は、工程b)で得られた生体材料への溶媒に溶解および/または懸濁された前記有効成分の吸着によって、工程b)で得られた生体材料に組み込まれ得る。この場合、溶媒は、水、有機溶媒、または水と水混和性溶媒との混合物の中から選択することができる。有利なことに、膜形成を阻害したり、調製された材料の特性を大幅に変更したりすることなく、タンパク質/塩溶液に最大30%(v/v)の有機溶媒を添加できるため、水不溶性の有効成分を組み込むことができる。例えば、タンパク質と溶媒の性質に応じて、合計1%、または2%、または3%、または4%、または5%、または6%、または7%、または8%、または9%、または10%、または11%、または12%、または13%、または14%、または15%、または16%、または17%、または18%、または19%または20%または21%または22%、または23%、または24%、または25%、または26%、または27%、または28%、または29%、または30%(v/v)の有機溶媒になり得る。例えば、最大15%のエタノール、10%のDMSO、または30%のアセトニトリルまたはジクロロメタンであり得る。当業者は、日常的な実験を行うことにより、タンパク質、塩、および溶媒の機能にこの量を適応させることができる。有利なことに、膜形成を阻害したり、調製された材料の特性を大幅に変更したりすることなく、最大30%(v/v)の有機溶媒をBSA/塩溶液に添加することが可能であり、したがって、水不溶性活性物質を組み込むことができる。
【0036】
有効成分は、生体材料に興味深い特性を与えることを可能にする任意の物質であり得る。有効成分は、当業者の一般的な知識および生体材料の所望の特性に従って、当業者が選択することができる。それは、ゴセレリン、ロイプロリド、カルムスチン、パクリタキセル、ヒストレリンまたはゲムシタビン、ジクロフェナクなどの抗炎症剤、アザチオプリンまたはメトトレキサートなどの免疫抑制剤、シクロスポリンなどの免疫調節剤、細胞外細胞の調節剤、イマチニブまたはアキシチニブなどの細胞増殖阻害剤、リバロキサバンまたはエドキサバンなどの抗凝固剤、クロピドグレルなどの抗血栓剤、酵素阻害剤、モルフィンまたはヒドロコドンなどの鎮痛剤、抗増殖剤、抗真菌物質、細胞静止物質、エリスロポイエチンなどの増殖因子を含むマトリックス相互作用トロンボポイエチン、酵素、ホルモン、ヒドロコルチゾンやプレドニゾロンなどのステロイド、非ステロイド性物質、およびジフェンヒドラミンやフェキソフェナジンなどの抗ヒスタミンなどの抗癌物質から選択され得るが、これらに限定されない。有効成分の量は、タンパク質および生体材料の所望の特性に適合させることができ、したがって、当業者は、当業者の一般的な知識に従って決定することができる。例えば、有効成分のパーセンテージは、生体材料中のタンパク質の総量に対して、0~30重量%であり得、例えば、0~25%重量、または1~25%重量、または1~20重量%、または1~18重量%、または2~15重量%、または3~
12重量%であり得る。
【0037】
いずれの場合でも、本発明のプロセスによって得られる生体材料は、生体材料の総重量に対して、少なくとも50重量%、例えば、少なくとも55%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、さらには100%のタンパク質を含み得る。
【0038】
調製プロセスの実施によって得られる生体材料は、本発明の第2の目的である。
【0039】
上で説明したように、その視覚的外観を含む生体材料の特性は、調製プロセスのパラメータの1つ以上、特に塩の種類および塩/タンパク質の比率を変更することによって調整することができ、それによって生体材料の特性を必要に応じて調整する可能性を提供する。
【0040】
生体材料の硬さに関しては、それは、発泡体からヒドロゲルを含むコンパクトな材料に至るまで、固体の不溶性生体材料であり得る。
【0041】
生体材料の形状に関して、それは、想定される用途および生体材料を調製するために使用される容器に応じて、任意の所望の形状であり得る。それは、膜、チューブ、シリンダー、パッド、リングであり得るが、このリストは限定的なものではない。生体材料はまた、所望の形状またはサイズを得るために、プロセスの実施後に切断され得る。
【0042】
生体材料は、生体材料を粉砕することにより、微粒子を含む任意の所望のサイズにすることができる。
【0043】
生体材料の視覚的側面は、半透明から不透明であり得る。
【0044】
上記のように、本発明の生体材料の主な利点の1つは、生体材料を調製するために使用されるタンパク質が、本発明の調製プロセス中に変性されないことである。調製は非変性条件で行われ、タンパク質の形状および/または二次構造は、工程a)で得られた溶液および工程b)で得られた生体材料で分析することができる。「変性されない」とは、本発明によれば、工程a)で得られた溶液中の前記タンパク質の二次構造のパーセンテージが、同様の濃度で調製された対応する天然タンパク質の対照溶液または対照の乾燥天然タンパク質粉末のものと少なくとも同等であり、かつ工程b)で得られた生体材料中の前記タンパク質の二次構造のパーセンテージが、対応する天然タンパク質と比較して、少なくとも実質的なβ-ターンおよび分子間β-シートの増加、ならびに、不規則構造の大幅な減少を示すことを意味する。生体材料中のタンパク質の二次構造の形状およびパーセンテージは、以下に示されるように、当業者によって知られている任意の方法、例えば、IR分析またはSAXS(小角X線散乱)によって、制御され得る。
【0045】
本発明の生体材料は、経時的に特に安定している。有利には、それは、水溶液中で、酸性、中性および塩基性のpHにおいて、および/またはエタノールなどの有機溶媒中で、少なくとも2日間、好ましくは少なくとも7日間安定である。これは、水素結合とジスルフィド架橋の破壊による構造の変化、および20%未満の質量損失が観察されたとしても、この期間中に生体材料の溶解が実質的にないことを意味する。例えば、質量損失は、塩基性溶液で最大20%、水、エタノール、酸性溶液で最大10%になり得る。生体材料の質量損失は、以下の実施例で示すように計算することができる。
【0046】
上で説明したように、生体材料はタンパク質、特に非変性タンパク質のみでできている可能性があり、これは優れた生体適合性を意味する。有利には、生体材料は、その生物学
的特性を改善するために、前に例示されたように、少なくとも1つの有効成分と関連付けられ得る。
【0047】
したがって、本発明の別の目的は、インビトロでの組織工学および/またはインビトロでの細胞培養および増殖および/または移植可能な医療機器のための支持体としての本発明の生体材料の使用に関する。実際、本発明の生体材料は、細胞増殖に必要な構造的および生化学的支持を提供し、それらは三次元である可能性があるため、それらは細胞培養および薬物/細胞送達に特に適している。
【0048】
本発明の別の目的は、薬物として使用するための生体材料の使用に関する。本発明の生体材料は生物学的システムと相互作用することができるため、例えば、診断目的の装置、組織または器官の代用物、または機能的代用の装置の構成に使用することができる。したがって、本発明の生体材料は、特に欠陥組織を置き換えることを必要とする対象の欠陥組織を置き換えるために、または薬物放出システムのために、移植可能な医療機器としてインビボで使用され得る。言い換えれば、本発明はまた、本発明の生体材料を含む移植可能な医療装置を記載する。有利には、本発明の生体材料を含むデバイスまたは薬物は、生体材料の性質に応じて、一定期間後に生体内に吸収され得る。例えば、期間は、生体に挿入されてから20日後、または30日後、または60日を超える場合がある。
【0049】
本発明は、添付の図面に関して、以下の実施例によってさらに説明されるが、限定として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】塩の存在下での蒸発によるアルブミンベースの生体材料の調製を表している。選択した製剤のNaBr/BSA(ウシ血清アルブミン)のモル比は664である。蒸発は、生体材料が完全に乾燥するまで、大気圧下のオーブン(37℃)で7日間続けられる。過剰な塩は、生体材料の表面に薄い層を形成する。蒸発後、洗浄と浸漬の工程を適用して塩を除去し、水に不溶性のアルブミンベースの生体材料を残す。
図2】BSA/NaBr664膜の形成(37℃での蒸発、pH=6、M/S=105mg/cm)の経時的な追跡を表している。一度洗浄すると、膜は透明になる。型の底は焦げ付き防止のシリコンディスクで覆われている。右上隅にある不規則性は、気泡によるものである。
図3】NaBrの濃度を上げた場合(pH=6)のアルブミンの表面電荷滴定を表している。
図4】振動プロトコル(周波数ランプ:100Hz~0.01Hz、せん断応力制御:1Pa)によるアルブミンベースの膜のレオロジー特性を表している。弾性成分のせん断弾性率(Pa)は実線で表され、粘性成分のせん断弾性率(Pa)は破線で表される。
図5】さまざまな溶解培地(左から右へ:水、生理食塩水、NaCl溶液1M、NaBr溶液1M、酸性溶液pH3、塩基性溶液pH10、エタノールおよびトリプシン0.125mg/mL)における、BSA/NaBr664膜(37℃およびpH=6での蒸発)の安定性を表している。各溶解培地について、膜を25mLの培地に入れた。実験は37℃で7日間攪拌しながら実施した。
図6】蒸留水
【化1】

、2-メルカプトエタノール
【化2】

および尿素の溶液
【化3】

でインキュベートしたBSA/NaBr664膜(37℃およびpH=6での蒸発)のレオロジー特性を表している。溶液の場合、2つの膜のバッチを30mLの培地に入れた。実験は室温で24時間行った。膜のレオロジー特性は、振動プロトコル(周波数ランプ:100Hz~0.01Hz、せん断応力制御:1Pa)によって評価した。
図7A】BSA溶液(100mg/mL、DO中)に存在するアルブミンのミッドIバンドのフィッティングと、各二次構造のサブバンドの識別(フィッティング曲線と元のミッドIバンドスペクトルは重複している、残留RMSエラー<0.005)を表している。
図7B】BSA対照溶液(100mg/mL、DO、実線)とBSA/NaBr664溶液(BSA:100mg/mL、NaBr:1M、DO、破線)におけるBSAの中間Iバンドの比較を表している。
図7C】BSA対照粉末(実線)とBSA/NaBr664膜(破線)におけるBSAの中間Iバンドの比較を表している。
図7D】BSA対照液(100mg/mL、DO、実線)とBSA対照粉末(破線)におけるBSAの中間Iバンドの比較を表している。
図7E】BSA/NaBr664溶液(BSA:100mg/mL、NaBr:1M、DO、実線)とBSA/NaBr664膜(破線)におけるBSAの中間Iバンドの比較を表している。
図8A】BSA溶液(溶液2、40重量%HO)の散乱曲線、および、3v03PBD原子座標(50高調波、排除体積8.7104、デフォルト値他のパラメータ)からの単量体BSAタンパク質を使用してCRYSOLを用いて測定された理論強度を表す。スケール係数を適用して理論曲線にデータを合わせた。
図8B】(a)BSAの乾燥粉末、(b、c)BSAの溶液((b)24.21重量%HOを含む溶液1、(c)39.09重量%HOを含む溶液2)、(d)NaBrの乾燥粉末(は111、200、および220のブラッグ反射を示す)、(e)BSA/NaBr664膜のX線散乱曲線。わかりやすくするために、データは垂直方向にシフトされている。
図9A】選択した条件下(37℃での蒸発およびpH=6)で、664のNaBr/BSAのモル比で配合されたあるアルブミンベース膜のSEM分析を表している。観察前に試料を金属化した。膜の表面。
図9B】選択した条件下(37℃での蒸発およびpH=6)で、664のNaBr/BSAのモル比で配合されたあるアルブミンベース膜のSEM分析を表している。観察前に試料を金属化した。膜の断面。
図10】膜抽出物(12.5%、25%、50%、100%のBSA/NaBr400、BSA/NaBr664およびBSA/CaCl700、)で処理されたBalbc 3T3線維芽細胞の細胞生存率を表している。間接的な細胞毒性は、BSA/NaBr400、BSA/NaBr664、およびBSA/CaCl700抽出物と接触して24時間培養されたBalbc 3T3細胞の正規化された代謝活性を、陽性対照(Ctl+)の正規化された代謝活性と比較することによって推定された。()治療群と陽性対照(Ctl+)の間に有意差が観察された(p<0.05)。生物学的複製=1、技術的複製の合計=4。
図11】アルブミン膜と直接接触して培養されたBalbc 3T3線維芽細胞の細胞生存率を表している。直接的な細胞毒性は、BSA/NaBr400
【化4】

、BSA/NaBr664
【化5】

およびBSA/CaCl
【化6】

(M/S=25mg/cm)と接触して24時間培養されたBalbc 3T3細胞の正規化された代謝活性を、陽性対照(Ctl+)の正規化された代謝活性と比較することによって推定された。Ctl+
【化7】

グループと処理されたグループの間に有意差は観察されなかった。生物学的複製=4、技術的複製の合計=20。
図12A】BSA/NaBr膜と接触して24時間培養されたBalbc 3T3マウス線維芽細胞の顕微鏡検査を表している。線維芽細胞が、生体材料の周囲に見られた。
図12B】BSA/NaBr膜と接触して24時間培養されたBalbc 3T3マウス線維芽細胞の顕微鏡検査を表している。線維芽細胞が、生体材料の上部に見られた。
図13】培地を除去した後、空の未使用ウェルに新たに移した、アルブミン膜(BSA/NaBr400、BSA/NaBr664、およびBSA/NaCl700、それぞれ、
【化8】

上で測定されたBalbc 3T3線維芽細胞の正規化された代謝活性を表している。細胞接着は、処理グループと未処理グループの間でBalbc 3T3細胞の正規化された代謝活性を比較することによって推定される。()治療群と陽性対照(Ctl+、
【化9】

)の間に有意差が観察された(p<0.05)。(**)治療群間で有意差が観察された(p<0.05)。生物学的複製=3、技術的複製の合計=12。
図14A】BSA膜と接触して37℃で48時間培養されたRAWマクロファージを表している(M/S=25mg/cm、左から右へ:BSA/NaBr400、BSA/NaBr664、BSA/CaCl700、BSA/NaBr400LPS、BSA/NaBr664LPS、BSA/CaCl700LPS)。マクロファージの活性化と炎症反応を評価するために、亜硝酸塩の濃度を測定した。未処理群(NT)は、膜なしおよびLPSなしで培養された。LPSは、LPS処理対照群(TLPS)およびLPS活性化群(LPS)の培地(50ng/mL)に24時間後に添加された。()治療群とNT群の間に有意差が観察された(p<0.05)。(**)治療群とT(LPS)群の間に有意差が観察された(p<0.05)。生物学的複製=3、技術的複製の合計=12。
図14B】BSA膜と接触して37℃で48時間培養されたRAWマクロファージを表している(M/S=25mg/cm、左から右へ:BSA/NaBr400、BSA/NaBr664、BSA/CaCl700、BSA/NaBr400LPS、BSA/NaBr664LPS、BSA/CaCl700LPS)。マクロファージの活性化と炎症反応を評価するために、TNF-αの濃度を測定した。未処理群(NT)は、膜なしおよびLPSなしで培養された。LPSは、LPS処理対照群(TLPS)およびLPS活性化群(LPS)の培地(50ng/mL)に24時間後に添加された。()治療群とNT群の間に有意差が観察された(p<0.05)。(**)治療群とT(LPS)群の間に有意差が観察された(p<0.05)。生物学的複製=3、技術的複製の合計=12。
図15A】水和(水中)BSA/NaBr膜に対して0.5Hzの固定周波数、0.01~100%の範囲のひずみ、および室温で実行された振幅スイープ試験を表している。貯蔵(G´、Pa)および損失(G”、Pa)弾性率は、振幅(ひずみ、%)の関数として表される。3つの連続した振幅掃引試験を実行した。
図15B】水和(水中)BSA/NaBr膜に対して0.5Hzの固定周波数、0.01~100%の範囲のひずみ、および室温で実行された振幅スイープ試験を表している。損失弾性率(G”、Pa)は、振幅(ひずみ、%)の関数として表される。G”弾性率が最大に達する(ペイン効果)。3つの連続した振幅掃引試験を実行した。
図15C】水和(水中)BSA/NaBr膜に対して0.5Hzの固定周波数、0.01~100%の範囲のひずみ、および室温で実行された振幅スイープ試験を表している。貯蔵弾性率(G´、Pa)は時間(秒)で表される。3つの連続した振幅掃引試験を実行した。
図16】SEMを使用したBSA/NaBr膜の断面の評価を表している。
図17】熱処理(80℃、72時間)BSA/NaBr材料(実線)と対照BSA/NaBr材料(点線)のアミドIバンドの中央のFT-IRスペクトルを表している。
図18A】制御された真空(200、600、および800mbar)下でのBSA/NaBr膜の生成を表している。対照は大気圧で調製された。調製したBSA/NaBr膜の視覚的側面。
図18B】制御された真空(200、600、および800mbar)下でのBSA/NaBr膜の生成を表している。対照は大気圧で調製された。調製したBSA/NaBr膜の相対収率(%、白)、吸水率(%、斑点)および初期膨張(%、ハッチング)。
図19】BSA/NaBr膜の相対収率(%、白色)、吸水率(%、斑点)、および初期膨張(%、斑点)に関する、37℃で蒸発する前のBSA/NaBr溶液に対する、有機溶媒(エタノール(%、v/v)、DMSO(%、v/v)、アセトニトリル(%、v/v)、およびジクロロメタン(%、v/v))の影響の調査を表している。対照バッチは、0%溶媒(体積比溶媒/溶液)で調製した。
図20】CaClとNaBrの塩のさまざまな組み合わせで調製されたアルブミン膜の相対収率(%、白)、吸水率(%、斑点)、および初期膨張(%、斑点)を表している。モル比CaCl/BSAを400に設定し、モル比NaBr/BSAを100~1000で変化させた。対照は、BSA/CaClのみで調製した。
図21】アルブパッド材料(すなわち、本発明による生体材料)におけるドキソルビシン(DOX)のプレロードを表す。
図22】0.25~1mg/膜(膜の質量が約400mg、厚さが約500μm)の範囲のさまざまな量のドキソルビシン(DOX)が事前に充填されたBSA/NaBrおよびBSA/CaCl膜のCLSM画像を表している。無充填の膜(0)を対照として使用した。矢印は試料の下部を指している。
図23A】BSA/NaBr(黒)およびBSA/CaCl(白)膜からリンスプロセス中に除去されたドキソルビシン(DOX)の定量化を、0、250、500、750および1000の初期DOX質量/膜(μg)の関数として表している。すすぎ液で除去されたDOXの質量(μg)。
図23B】BSA/NaBr(黒)およびBSA/CaCl(白)膜からリンスプロセス中に除去されたドキソルビシン(DOX)の定量化を、0、250、500、750および1000の初期DOX質量/膜(μg)の関数として表している。すすぎプロセス中に除去されたDOXのパーセンテージ。
図24A】37℃の水中で35日後のBSA/NaBr(μg)膜からのドキソルビシン(DOX)放出を表している。最初に0.25mg(十字)、0.5mg(三角形)、0.75mg(円)、および1mg(実線)のDOXを充填した膜(400mg)を試験した。
図24B】37℃の水中で35日後のBSA/NaBr(%)膜からのドキソルビシン(DOX)放出を表している。最初に0.25mg(十字)、0.5mg(三角形)、0.75mg(円)、および1mg(実線)のDOXを充填した膜(400mg)を試験した。
図24C】37℃の水中で35日後のBSA/CaCl(μg)膜からのドキソルビシン(DOX)放出を表している。最初に0.25mg(十字)、0.5mg(三角形)、0.75mg(円)、および1mg(実線)のDOXを充填した膜(400mg)を試験した。
図24D】37℃の水中で35日後のBSA/CaCl(%)膜からのドキソルビシン(DOX)放出を表している。最初に0.25mg(十字)、0.5mg(三角形)、0.75mg(円)、および1mg(実線)のDOXを充填した膜(400mg)を試験した。
図25】0.25mgのFITCインスリン(INS-FITC)を事前に充填したBSA/NaBrおよびBSA/CaCl膜(膜の質量≒400mg、厚さ≒500μm)のCLSM画像を表している。無充填の膜(0)を対照として使用した。矢印は試料の下部を指している。
図26A】すすぎプロセス中(μg)の、37℃の水中で35日間後のFITC-インスリン(INS-FITC)の定量化を表している。膜(400mg)には、最初に0.25mgのINS-FITCを充填した。INS-FITC放出。無充填の膜(0)を対照として使用した。
図26B】すすぎプロセス中(%)の、37℃の水中で35日間後のFITC-インスリン(INS-FITC)の定量化を表している。膜(400mg)には、最初に0.25mgのINS-FITCを充填した。INS-FITC放出。無充填の膜(0)を対照として使用した。
図26C】BSA/NaBr(黒)およびBSA/CaCl(白)膜からの放出中(%)の、37℃の水中で35日間後のFITC-インスリン(INS-FITC)の定量化を表している。膜(400mg)には、最初に0.25mgのINS-FITCを充填した。INS-FITC放出。無充填の膜(0)を対照として使用した。
図27A】生体内評価用に準備された移植片BSA/NaBr、BSA/CaCl、HSA/NaCl、HSA/CaCl、およびHSA/GLUの視覚的側面を表している。
図27B】生体内評価用に準備された移植片BSA/NaBr、BSA/CaCl、HSA/NaCl、HSA/CaCl、およびHSA/GLUの水分摂取量を表している。
図28A】犠牲後にヌードマウスに移植された材料(BSA/NaBr、BSA/CaCl、HSA/NaBr、HSA/CaCl、およびHSA/GLU)の組織学的評価を表している。Gomori染色で染色された周囲組織を伴う移植片(矢印でマーク)の組織学的カットの代表的な倍率。
図28B】犠牲後にヌードマウスに移植された材料(BSA/NaBr、BSA/CaCl、HSA/NaBr、HSA/CaCl、およびHSA/GLU)の組織学的評価を表している。GomoriおよびPicroSinius染色で染色された周囲組織を伴う移植片(矢印でマーク)の組織学的カットの代表的な倍率。
【実施例
【0051】
実施例1:蒸発および塩支援圧縮によって生成されたアルブミンベースの生体材料の調製
【0052】
材料
【0053】
化学試薬
ウシ血清アルブミン(フラクションV、≧96%)は、Acros Organicsから購入した。ヒト血清アルブミン(≧96%)、オボアルブミン(≧98%)、およびウシ血液由来のガンマグロブリン(≧99%)は、Sigma-Aldrichから購入した。
【0054】
臭化ナトリウム(NaBr)、塩化カリウム(KCl)、酢酸カリウム(KC)はSigma-Aldrichから購入した。塩化ナトリウム(NaCl)はVWR
Chemicalsから購入した。臭化カリウム(KBr)はAcros Organicsから購入した。ヨウ化ナトリウム(NaI)とリン酸二カリウム(KHPO)はProlaboから入手した。ヨウ化カリウム(KI)はCarbo Erba Reagentsから購入した。塩化マグネシウム(MgCl、無水)およびギ酸アンモニウム(NHHCO)はFlukaから購入した。塩化カルシウム(CaCl、2HO)はMerckから購入した。炭酸カリウム(KCO)はAlfa Aesarから購入した。
【0055】
BCAアッセイ試薬(ビシンコニン酸溶液および硫酸銅(II)五水和物)はSigma-Aldrichから購入した。重水(DO)はSigma-Aldrichから購入した。
【0056】
生物学的試薬
37℃、5%CO、95%湿度で、Balbc 3T3マウス線維芽細胞(クローンA31 ATCC(登録商標)CCL-163)を、安定化グルタミンおよびピルビン酸ナトリウム(Dutscher)を含有し、10%(v/v)のウシ胎児血清(Dutscher)、および1%(v/v)のペニシリン-ストレプトマイシン溶液100X(Dutscher)(最終濃度:それぞれ0.06mg/mLおよび0.1mg/mL)を
補った、ダルベッコ改変イーグル中高グルコース(DMEM)で培養した。トリプシン(0.5g/L)-EDTA(0.2g/L)(Dutscher)を使用して37℃で5分間細胞を採取した。チアゾリルブルーテトラゾリウムブロミド(MTT)はSigma-Aldrichから購入した。CellTiter Glo生存率アッセイはPromegaから購入した。
【0057】
37℃、5%CO、95%湿度で、RAW264.7マウスマクロファージ(ATCC(登録商標)TIB-71)を、安定化グルタミン(Sigma-Aldrich)を含有し、5%(v/v)の熱不活化ウシ胎児血清(Gibco)、ペニシリン(100U/mL)(Sigma-Aldrich)およびストレプトマイシン(0.1mg/mL)(Sigma-Aldrich)を補った、ダルベッコ改変イーグル中高グルコース(DMEM)で培養した。トリプシン(0.5g/L)-EDTA(0.2g/L)(Sigma-Aldrich)を使用して、37℃で5分間細胞を採取した。大腸菌(K12)のリポ多糖(LPS)はInvivogenから購入した。ELISA試験用の精製抗マウスTNF-α抗体クローン1F3F3D4およびビオチン化抗マウスTNF-α抗体クローンXT3/XT22は、eBioscience/ThermoFisher Scientificから購入した。西洋ワサビペルオキシダーゼアビジン(アビジンHRP)はジャクソンから購入した。sigmaから購入したP-アミノベンゼンスルホンアミドと酢酸。N-(1-ナフチル)エチレンジアミン二塩酸塩はAcros Organicsから購入した。
【0058】
方法
【0059】
調製(一般的な手順)
pH6の酢酸ナトリウム緩衝液(0.2M)中にBSA(100mg/mL)およびNaBr1M(モル比NaBr/BSA=664)の溶液を調製した。この溶液を型に入れ(底を非粘着性のシリコンディスクで覆った)、37℃で7日間蒸発させた。得られた乾燥生体材料を洗浄して塩を除去し、蒸留水に室温で48時間浸した。次に、水不溶性膜(BSA/NaBr664)を回収し、特性を評価した。
【0060】
初期特性評価
塩/アルブミンのモル比(式1)およびM/S比(式2)を使用して、製剤にラベルを付けた。相対収率(式3)、吸水率(式4)、および初期膨張(式5)を使用して、調製された膜を比較した。材料の密度(式6)は、材料を室温の蒸留水に浸すことによって評価した。WBSAは、製剤に使用されるアルブミンの初期重量を表す。Aは、蒸発プロセス中に使用されるコンテナの面積を表す。Wは、蒸留水で48時間洗浄し、37℃のオーブンで一晩乾燥させた後の最終乾燥膜の重量を表す。Vは、室温で蒸留水に材料を浸して測定した乾燥膜の体積である。Wは、蒸留水に24時間浸漬し、濾紙を使用して過剰な表面水を除去した後の平衡状態にある水和膜の重量を表す。Aは、電子デジタルノギス(TACKLIFE-DC01、精度±0.2mm)を使用して直径を測定した後に計算された、水和膜の表面の面積である。
【0061】
【数1】
【0062】
標準化された誘導電位(SIP)測定
滴定溶液を、BSAを1mg/mLの濃度でmQ水に溶解して調製した。滴定溶液を、NaBrを60mg/mLの濃度でmQ水に溶解することによって調製した。次に、NaBr溶液を使用して、ストリーミング電流検出を使用して誘導電位を測定することにより、タンパク質の表面電荷を滴定した。Muetek PCD 02検出器を使用した。10mLのBSA溶液を検出器タンクに移した。次に、5分間の平衡化時間の後、30μl/分の頻度で生理食塩水NaBr溶液の連続添加を行った。測定された電位がプラトーに達したときにアッセイを停止した。
【0063】
BCAアッセイ
BSA/NaBr664膜(初期BSA濃度=200mg/mL、M/S=105mg/cm、n=3)を、それぞれ4.5mLの超純水(2×1.5mL(2×30分)、次に1x15mL(2時間))で洗浄した。次に、各すすぎ液について、メスフラスコを使用して容量を5mLに調整した。次に、標準範囲(20μg/mL~1000μg/mL)を使用したBCA試験により、製剤に使用した初期溶液、およびリンス溶液のアルブミン濃度を測定した。アッセイを96ウェルプレートで実施した。試薬(ビシンコニン酸/CuSO)を溶液に加えた(200μLの試薬から25μLのタンパク質溶液)。次に、プレートを37℃で30分間インキュベートした。SAFAS Xenius XM分光蛍光光度計(SAFAS Monaco)を使用して、560nmでの吸光度の読み取りを室温で行った。膜中のアルブミンの量を計算した後、NaBrの量を推定した。
【0064】
微量分析
電子励起X線微量分析は、10kVの加速電子電圧(出現角度=35°、取得時間=100秒、処理時間=7.68μs)で動作するQuanta 250 ESEM(FEI
Company、Eindhoven、The Netherlands)を使用して、試料のランダムに選択された領域で実行した。4つのBSA/NaBr膜を分析した:BSA/NaBr400、BSA/NaBr664、BSA/NaBr700、およびBSA/NaBr1400(M/S=113mg/cm)。NaBrの量は、試料中の臭化ナトリウムの原子百分率を使用して推定した。
【0065】
レオロジー的挙動と圧縮アッセイ
レオロジー特性評価と圧縮アッセイを、直径2cmの平面可動装置を備えたMalvern Kinexusウルトラ+レオメーターを使用して実行した。水和BSA/NaBr664膜(M/S=105mg/cm、厚さ=1.7mm)を使用した。振動プロトコルでは、試料に1Paの制御されたせん断応力をかけ、25℃で100Hzから0.01Hzの範囲の振動周波数ランプに従って測定を実行した。圧縮アッセイでは、25℃で0.5Nから40N(0.04mm/s)のフォースランプを試料に適用した。各試料の弾性率(E)は、ひずみ(ε)-応力(σ)曲線の弾性領域内で計算した(式7)。
σ=E×ε (7)
【0066】
トラクションアッセイ
トラクションアッセイを、100Nの力センサーを搭載したInstron ElectroPuls E3000を使用して実行した。6つの水和BSA/NaBr664膜(M/S比110.9mg/cm)のバッチを使用した。試料をパンチで切断して、標準化された寸法(初期有効長L=40mm、有効初期幅l=10mm、初期厚さe=1.74±0.079mm)の6つの試験片を形成した。次に、引張試験を、室温で、0.1mm/秒の引張速度で実施した。弾性率(E)は、ひずみ(ε)-応力(σ)曲線の弾性領域内で計算した(式7)。
【0067】
水溶液中での安定性
BSA/NaBr664膜(M/S=105mg/cm)を、3つのバッチで次の溶解培地25mLに入れた:蒸留水、生理食塩水(0.9% NaCl)、酸性培地(pH3、カラーインジケーター:ブロモチモールブルー)、塩基性培地(pH10、カラーインジケーター:ブロモチモールブルー)、1M NaClの食塩水、1M NaBrの食塩水、エタノールおよびトリプシン溶液(PBSバッファーで希釈した0.125mg/mL)。次に、膜を含む培地を37℃で振とう(180rpm)しながら7日間インキュベートした。その後、膜を水で洗浄してから、質量損失の特性を調べた(式8)。
【0068】
【数2】
【0069】
IR分析
重水素化硫酸トリグリシン検出器(RTDLaTGS)およびKBrビームスプリッターを備えたVERTEX 70 FTIR分光計(Bruker、Germany)を赤外線測定に使用した。DO溶液を使用して、約1650cm-1の水のアミドIバンドと強い吸収バンドの間のスペクトルの重複を回避した。すべての試料は、2つのCaFウィンドウの間に配置した。試料のFTIRスペクトルは、室温にて、4000~800cm-1、公称分解能2cm-1で記録され、スペクトルあたり128スキャンを累積し、スキャンレートは10kHzで、DOスペクトルをバックグラウンドとして使用した。液体試料(BSA、BSA/NaBr400およびBSA/NaBr664の溶液)は、100mg/mLのBSA濃度で、DOで調製した。固体試料(BSA/NaBr400およびBSA/NaBr664の膜)をDOで水和した。
【0070】
スペクトル分析は、分光計ソフトウェアOPUS7.5(Bruker、Germany)を使用して実行した。二次構造解析では、デコンボリューションされたスペクトルのアミドI領域(1700~1600cm-1)に対してカーブフィッティング法を実行した。カーブフィッティングの前に、低波数(1600cm-1)側と高波数(1700cm-1)側の最小値を使用して、アミドIバンドのスペクトルをベースライン補正した。デコンボリューションは、ガウス線形状を使用した最小二乗反復曲線あてはめプログラム(Levenberg-Marquardt)に従って実行した。サブバンドの数とその位置は、デコンボリューションされたスペクトルと、スペクトルの2次および4次導関数から決定した。最終的な適合では、残留RMSエラーを可能な限り減らすために(0.005未満)、これらのパラメータの少なくとも1つを毎回変更させずに、すべてのバンドの高さ、幅、および位置を調整した。最後に、元の曲線と近似曲線の2次導関数を比較して、曲線近似の精度を確認した。取り付けられたコンポーネントの分数領域を使用して、さまざまな二次構造要素(αヘリックス、βシート、βターン、およびランダムコイル)のパーセンテージを計算した。
【0071】
SAXS ICS
小角および広角X線散乱分析(SAXSおよびWAXS)は、乾燥BSA/NaBr664膜と、凍結乾燥BSAの乾燥粉末およびBSAの2つの溶液(溶液1:113.69mgBSA+36.31mgHO、溶液2:119.39mgBSA+79.61mgHO)の3つの対照で実行した。測定は、40kV、30mAで動作するマイクロフォーカス回転アノードジェネレーター(Micromax-007HF)に取り付けられたRigaku回折計で実行した。ビームは単色化され(波長λ=1.54Å)、共焦点Max-FluxOptics(Osmics、Inc.)と3つのピンホールコリメーションシステムで集束された。散乱強度は、散乱ベクトルq(式9)の大きさの関数として測定し、式中、θは散乱角である。大きな散乱ベクトル範囲をカバーするために、2つの異なる構成を使用した。
【0072】
低いq範囲は、試料位置からd=0.81mに配置された2Dマルチワイヤ検出器で調査された(0.01Å-1<q<0.33Å-1)。より高いq値は、試料の近くに挿入されたFujiイメージングプレートを使用して測定した(d=0.1m、0.1Å-1<q<3Å-1)。散乱パターンは、等方性散乱の通常の手順に従って処理した。強度は放射状に統合され、電子バックグラウンド、検出器効率、試料透過率、および試料厚さに対して補正された。BSA溶液の場合、純粋な溶媒と容器からの散乱も測定し、差し引いた。強度は、キャリブレーションされたルポレン標準を使用して絶対スケールに変換した。散乱ベクトルは、ベヘン酸銀粉末の回折ピークを使用して較正した。
【0073】
【数3】
【0074】
走査型電子顕微鏡(SEM)
走査型電子顕微鏡の評価を、10kVの加速電子電圧で動作するQuanta 250
ESEM(FEI Company、Eidhoven、The Netherlands)を使用して実行した。BSA/NaBr664膜(M/S比=105mg/cm)を37℃で48時間乾燥させた。次に、Hummer Jrスパッタリング装置(Technics、Union City、CA、USA)を使用して、試料を金-パラジウム合金でコーティングした。表面と断面を調べた。
【0075】
抽出物の細胞毒性試験
間接的な細胞毒性評価については、ISO規格(ISO10993-5(2009))に従った。この試験中に使用された膜は、BSA/NaBr400、BSA/NaBr664、およびBSA/CaCl700であった。膜を、25mg/cmのM/S比で調製した。膜をエタノール70%で洗浄し、次に滅菌PBS1Xで洗浄し、UV光下で15分間滅菌した。次に、それらをさらに使用するまで滅菌PBS1Xに保存した。各膜を12ウェルプレートに移し、1.5mLの培地(DMEM+FBS(10%)+PS(1%))で、37℃で72時間撹拌しながら抽出した。次に、12.5%、25%、50%、および100%(v/v)の抽出物を含む希釈液を調製した。Balbc 3T3マウス線維芽細胞(クローンA31 ATCC(登録商標)CCL-163)を96ウェルプレートでウェルあたり8000細胞(培地:DMEM+FBS(10%)+PS(1%))で37℃で24時間培養した。翌日、各ウェルの培地を100μLの希釈抽出物と交換した。陽性対照および陰性対照を、それぞれ培地のみと20%のDMSOを含む培地で調製した。次にプレートを37℃で24時間インキュベートした。インキュベートした後、各ウェルの培地を、新鮮な培地(1mg/mL)で希釈したMTTの溶液100μLと交換し、プレートを37℃で2時間インキュベートした。次に、ホルマザン結晶を80μLのDMSOに可溶化し、室温で15分間平衡化した後、SAFAS装置を使用して560nmでの吸光度を測定した。陽性対照の代謝活性を使用して、各グループの生細胞のパーセンテージを決定した。
【0076】
直接細胞毒性試験
この試験中に使用された膜は、BSA/NaBr400、BSA/NaBr664、およびBSA/CaCl700であった。膜を、非粘着性シリコーン型で25mg/cmのM/S比で調製した。水和した膜を円形パンチを使用して切断し、小さなディスク(直径=5mm、厚さ=0.7mm)を得た。ディスクをエタノール70%で洗浄し、次に滅菌PBS1Xで洗浄し、UV光下で15分間滅菌した。次に、それらをさらに使用するまで滅菌PBS1Xに保存した。直接的な細胞毒性評価のために、滅菌されたディスクを黒い壁の96ウェルプレートに移した。次に、Balbc 3T3マウス線維芽細胞(クローンA31 ATCC(登録商標)CCL-163)を、生体材料のディスク上にウェルあたり8000細胞(培地:DMEM+FBS(10%)+PS(1%))でプレートに直接添加した。陽性対照および陰性対照を、それぞれ培地のみと20%のDMSOを含む培地に添加した。次に、プレートを37℃で24時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを室温で30分間平衡化した。培地を排除した。各ウェルに、50μLの新しい培地を加え、続いて50μLのCellTiter-Glo試薬を加えた。次に、SAFAS装置および以下のプロトコルを使用して生物発光を測定した。生物発光を測定する前に、プレートを2分間撹拌し、次に10分間平衡化させた。陽性対照の代謝活性を使用して、各グループの生細胞のパーセンテージを決定した。
【0077】
マクロファージ活性化アッセイ
この試験中に使用された膜は、BSA/NaBr400、BSA/NaBr664、およびBSA/CaCl700であった。膜を、非粘着性シリコーン型で25mg/cmのM/S比で調製した。水和した膜を円形パンチを使用して切断し、小さなディスク(直径=5mm、厚さ=0.7mm)を得た。ディスクをエタノール70%で洗浄し、次に滅菌PBS1Xで洗浄し、UV光下で15分間滅菌した。次に、それらをさらに使用する
まで滅菌PBS1Xに保存した。マクロファージ活性化アッセイでは、滅菌したディスクを96ウェルプレートに移した。次に、RAW264.7マクロファージをウェルあたり100000細胞でプレートに直接添加した(培地:DMEM+FBS(5%)+PS(1%))。37℃で24時間培養した後、LPSをLPS処理グループに添加して、各ウェルの最終濃度を50ng/mLにした。次に、プレートを37℃でさらに24時間インキュベートした。陽性対照および陰性対照を、それぞれ培地のみと、50ng/mLのLPSを含む培地で調製した。次に、細胞の形状を顕微鏡で評価し、NOおよびTNF-αの産生を次のように評価した。
【0078】
NO産生の評価
細胞上清中の亜硝酸塩の濃度を、Griess試験によって評価した(n=3)。60μLのGriess試薬(30%酢酸中の58.1mMp-アミノベンゼンスルホンアミドと60%酢酸中の3.9mMN-(1-ナフチル)エチレンジアミン二塩酸塩のv/v混合物)を40μLの上清に添加し、543nmでの吸光度を測定し、亜硝酸ナトリウムの検量線と比較した。
【0079】
TNF-α産生の評価
細胞上清中のTNF-α濃度を、市販の試薬を使用し、製造元の指示に従ってELISA(n=3)によって評価した。捕捉抗体を0.05M pH9.6炭酸塩/重炭酸塩バッファーで1μg/mLに希釈し、4℃で1晩コーティングした後、PBS 0.05%
Tween(登録商標)20 1% BSA(1時間、37℃)でブロッキングした。次に、試料を培地で希釈し、捕捉抗体(2時間、37℃)でインキュベートした後、PBS 0.05% Tween(登録商標)20 1% BSAで0.5μg/mLに希釈した検出抗体を添加した(1時間、37℃)。次に、アビジンHRPを導入し(45分、37℃)、1.25mMテトラメチルベンジジンおよび13.05mM Hの溶液を0.1M pH5クエン酸バッファーに添加して顕色した。最後に、1M HClを添加して顕色を停止し、450nmで吸光度を測定した。
【0080】
統計分析
データを、R(バージョン3.6.1、R Foundation for Statistics Computing、Vienna、Austria)を使用して分析した。分布の正規性は、シャピロ-ウィルク検定で決定した。分散の同等性は、F検定で決定した。データが正規分布しており、試料の分散が等しい場合、t検定(両側検定)を使用して2つの平均を比較した。これらの2つの条件が当てはまらない場合は、代わりにマンホイットニー検定を実行した。値は、p<0.05で統計的に有意であると見なされた。
【0081】
結果と考察
【0082】
処方パラメータスクリーニング
水溶液へのアルブミンの溶解度とその熱およびpH安定領域を徹底的に研究した。以前の研究では、アルブミンは3~9のpH範囲で安定していることが示されていた。また、変性温度はpHに依存し、低いpH値(pH7.4では62℃、pH3.5では46.8℃)で低下することが示された。この作業では、アルブミンの本来の構造を可能な限り維持するために、蒸発温度を37℃、pHを6に設定した。次に、操作条件の徹底的なスクリーニングを実施して、興味深い生体材料の形成を可能にする条件を特定した。制御されたpH(pH=6)で処方されたアルブミン溶液(タンパク質のみまたは塩を含む)を、残留物が完全に乾燥するまで37℃のオーブンで蒸発させた(図1を参照)。その後、残留物を洗浄して過剰の塩とタンパク質を除去し、次に蒸留水に48時間浸して、それらの水溶性を評価した。水不溶性材料を生成する配合物のみが選択された。生体材料分野での
潜在的な用途では、優れた取り扱い性を示す水不溶性膜が最も有望である。
【0083】
105mg/cmのM/Sが配合された材料の場合、68~69時間後に固体材料が得られた(図2を参照)。69時間後、残留水が蒸発するにつれて、過剰な塩の薄い白い層が材料の表面に形成される。洗浄後、塩の層は急速に除去され、半透明の膜が得られる(図2を参照)。材料の形成と圧縮を可能にするために、M/Sが105mg/cmの膜には7日間の蒸発期間が最適であることがわかった。
【0084】
第1のパラメータ:塩
最初に、塩なしで調製されたアルブミン残留物の溶解度を検証し、アルブミン膜の処方における塩の重要性を確認した。次に、3つの異なる濃度(0.5M、1M、および2M)で多くの塩の徹底的なスクリーニングを実行した。前述のように、蒸留水中で48時間後の乾燥残留物の水溶性を使用して、膜形成を可能にする塩を特定した。
【0085】
ホフマイスターシリーズによると、イオンが異なれば、タンパク質の安定性と溶解性に異なる影響を及ぼす。リオトロピック効果は、イオンのサイズ、電荷密度、分極率に関連している。高濃度の塩とタンパク質を含む溶液を扱う場合は、溶媒分子、塩のイオン、およびタンパク質間の相互作用の影響を考慮する必要がある。この実験では、さまざまな陰イオンと陽イオンのカップルを持つ12の塩が試験された:KCl、KBr、KI、NaCl、NaBr、NaI、CaCl、MgCl、KC、NHHCO、KCO、KHPO。この実験の結果は、アルブミン膜の形成が塩の種類とその濃度の両方に依存していることを示唆している。KCl、NaCl、またはKBrの存在下では、アルブミン分子は膜に組織化されず、乾燥残留物は結晶化した塩と乾燥タンパク質の混合物であり、完全に水溶性である。さらに、二価の陰イオン(KCOおよびKHPO)を含む塩で調製された初期溶液中のアルブミンの早期凝集は、膜形成を防ぐ。水不溶性膜は、12の塩のうち7つで得られた:NaBr、KI、NaI、CaCl、MgCl、KCおよびNHHCO。NaBrを使用すると、試験した3つの濃度すべてで膜が得られた。ただし、他の6つの塩では、特定の濃度でのみアルブミン膜が得られた。これらの膜の物理的側面と特性(吸水、初期膨張、取り扱い性)は、使用する塩の種類とその濃度によって大幅に異なる。
【0086】
BSA/NaBr664膜(初期塩濃度=1M)は、優れた機械的強度と取り扱い性を示した。これらの膜(M/S=105mg/cm)は、87.6%±4.1%の相対収率で製造され、吸水率と初期膨張はそれぞれ123.1%±6.8%と121.6%±4.7%と推定され(n=8)、そしてそれらの密度は1.29±0.02g/cmであった。この製剤は、アルブミンベースの膜形成のパラメータの特定およびこれらの材料の特性評価のための参照として選択された。
【0087】
第2のパラメータ:塩/アルブミンのモル比
塩濃度が膜形成に影響を与えることが以前に示された。ただし、塩の濃度を独立したパラメータと見なす必要があるのか、特定の溶液中のアルブミンの濃度と組み合わせる必要があるのかは不明である。膜の形成に対するBSAとNaBrの初期濃度の影響を、2つのアッセイで得られた膜を比較することによって評価した。第1のアッセイでは、一定濃度のNaBrと可変濃度のBSA、したがって可変モル比の塩/アルブミンが使用された。一方、第2のアッセイでは、モル比の塩/アルブミンを変更せずに、両方の濃度を同時に変更する必要があった。第1のアッセイでは、100mg/mL、200mg/mL、300mg/mL、および400mg/mLのBSAの溶液を1M NaBrで調製した。NaBr/BSAのモル比はそれぞれ664、332、221、166であった。モル比を下げると、製剤の収率が著しく低下し(それぞれ86.4%、77.2%、62.7%、0%)、得られた膜は視覚的側面と吸水率の点で大幅に異なった。さらに、400m
g/mLのアルブミン濃度(モル比の塩/アルブミン=166)で溶液を蒸発させた後に得られた残留物は完全に水溶性であった。第2のアッセイでは、調製した溶液にそれぞれ次の濃度のBSAとNaBrが含まれていた:1Mで100mg/mL、2Mで200mg/mL、3Mで300mg/mL、4Mで400mg/mL。NaBr/BSAのモル比はすべての溶液で664であった。第1のアッセイとは異なり、第2のアッセイのすべての溶液が膜形成をもたらした。得られた膜は同じ視覚的側面を共有し、同様の特性を示した。したがって、膜形成に対する塩濃度の影響は、初期溶液中のアルブミン濃度と組み合わせずに評価することはできない。膜の形成は、塩とアルブミンの両方の濃度の対の効果に依存するため、塩/アルブミンのモル比は、アルブミン膜の形成を評価するためのより適切で信頼できるパラメータであることを証明する。
【0088】
次の工程は、膜を形成できるNaBr/BSAのモル比の範囲を特定することである。BSA溶液を、設定された濃度のアルブミン(100mg/m)と50~2000のモル比NaBr/BSAで調製した。これらの溶液を蒸発させ、得られた材料を前述のように48時間水に浸した。完全に形成された膜は、モル比100~3000の範囲内で、特に200~2000以内で得られた。この範囲の最低および最高のモル比の場合、得られた膜は堅牢性が低く、取り扱い中に破損および劣化しやすいが、許容できる。
【0089】
アルブミン表面電荷の影響
アルブミン膜の形成における初期溶液のイオン含有量の十分に確立された含意のために、膜形成につながるイオン現象のより良い理解を提供するために、アルブミンの表面電荷を評価する必要がある。アルブミンの表面電荷は、初期溶液のpHとそのイオン強度に依存する。
【0090】
膜の形成に対するpHの影響を評価するために、664のモル比NaBr/BSAのアルブミンとNaBrの溶液を、4、5、6、7、および8のpH値で調製した。等電点が4.7、等電点が5.2の場合、BSAはpH6、7、8で正味の負電荷を持ち、pH4で正味の正電荷を持ち、pH5付近で双性イオンになる。試験したすべてのpH値でアルブミン膜が得られた。これらの膜は、同様の視覚的側面と配合収量を共有したが、それらの吸水率と初期膨張は大幅に異なっていた。最高のpH値で調合された膜は、より高い吸水率と初期膨張を示す。したがって、pHは膜の形成に中程度の影響を与えるようである。さらに、pH6でのアルブミン表面電荷の研究により、塩を添加することにより、タンパク質と塩の陽イオンとの間の相互作用により、タンパク質の全体的な表面電荷が増加することが明らかになった。実際、測定された誘導電位は、プラトーに達する前に塩濃度を上げることによって大幅に増加する(図3を参照)。アルブミンの表面電荷の増加は、分子間の静電反発力の減少をもたらし、それらの凝集を促進してアルブミン膜を形成することができる。
【0091】
残留塩分
生物学的評価を見越して、配合された材料の最終的な組成と残留塩分を十分に特徴づける必要がある。したがって、BSA/NaBr664膜の最終的な組成を決定し、残留NaBrを定量化するために、2つの補完的な方法が使用された。まず、BCAアッセイを使用して、BSA/NaBr664膜の洗浄に使用したすすぎ水でアルブミンを定量した。すすぎ溶液を蒸発させた後、乾燥残留物を秤量し、洗浄プロセスによって除去されたNaBrの量を計算し、膜を形成するために最初に使用したNaBrの量と比較した。洗浄されたBSA/NaBr664膜の残留NaBr含有量は、1%(重量%)未満と推定された。これらの結果を検証し、特に臭素含有量をターゲットにするために、BSA/NaBr664膜の最終組成を微量分析によって直接分析した。微量分析は乾燥した膜で直接行われ、試験された膜の臭素含有量は分析された領域で検出できなかったことが明らかになった(分析された領域=1180μm2、試料の厚さ=1mm)。さらに、BSA/N
aBr膜の分析X線回折(図8を参照)では、膜に結晶性NaBrの痕跡は検出されなかった。結論として、アルブミンベースの生体材料の処方のために溶液に最初に添加されたNaBrは、洗浄プロセス中に排除される。
【0092】
機械的性質
選択されたアルブミンベースの生体材料の粘弾性挙動を、水で飽和した後に研究した。保存係数(G´)は、損失係数(G´´)よりも高いことがわかった(図4を参照)。さらに、ゾル-ゲル転移は観察されなかった。したがって、試験された周波数の範囲内で、膜は固体のような挙動を示す。
【0093】
圧縮アッセイ中に、モル比664のBSAとNaBrで配合された膜の弾性率は0.7MPaであることがわかった。さらに、引張試験を、同じ方法で配合されたアルブミン膜のバッチ(n=6)で実行した。トラクションアッセイ後に計算された膜の弾性率は0.87±0.12MPaである。したがって、どちらのアッセイでも同様の結果が得られる。生体材料の破壊を引き起こした最大応力は、0.19±0.03MPaと推定された。
【0094】
以下の表1は、トラクションと圧縮の結果の比較を示している。使用した膜は、選択した条件下(37℃での蒸発およびpH=6)で、BSA(ウシ血清アルブミン)およびNaBrを664のモル比NaBr/BSAで配合した。試験は、水和生体材料で実施した。
【0095】
【表1】
【0096】
水溶液中での安定性
生体液と接触して使用される生体材料は、水性培地中で良好な安定性を有することが重要である。組織再生のための移植または足場の処方などの用途では、生体材料は水に不溶性であるか、分解プロセスが非常に遅い必要がある。したがって、膜BSA/NaBr664の水溶液中での安定性が試験された。膜の生分解性もトリプシン溶液で試験した(図5を参照)。
【0097】
トリプシン溶液と接触してインキュベートされた膜は完全に分解され、緩衝液に溶解した。プロテアーゼなしで、37℃で7日間インキュベートした膜については、17%損失した塩基性溶液でインキュベートした膜を除いて、膜の各バッチは各溶解培地でそれらの初期質量の10%未満しか失われなかった。さらに、製剤化されたアルブミンベースの膜は水性培地に不溶性であり、37℃でそれらの培地で7日以上のインキュベーションの間無傷のままである。実際、これらの膜は少しも変質を見せることなく蒸留水中で最大1か月間保存することができる。さらに、これらの生体材料は酸性および塩基性のpHに対して耐性を示す。水とエタノールで観察された質量損失は、主に、攪拌中のチューブの側面
に対する摩擦によって引き起こされた膜の侵食によって説明できる。したがって、これらのアルブミンベースの膜は水溶液中で非常に安定しており、完全に生分解性である。
【0098】
尿素(2M、4M、および8M)および2-メルカプトエタノール(0.1M)の溶液中のBSA/NaBr664膜の安定性も試験した。尿素と2-メルカプトエタノールは、それぞれ水素結合とジスルフィド架橋を切断することによってタンパク質のアンフォールディングを誘発することができる、よく知られている変性剤である。試験したアルブミンベースの膜は壊れたり溶解したりすることはなかったが、水和膜の直径(Ah)は大幅に増加し、初期膨張(E%)が増加したことを示し、複素弾性率(G)が減少すると、それらの弾性率(E)の減少を示す(図6を参照)。さらに、水素結合とジスルフィド架橋の破壊は、膜の構造を変化させたが、それらの分解はさせなかった。
【0099】
アルブミンのコンフォメーションの評価
【0100】
IR分析。
フーリエ変換赤外分光法(FTIR)は、タンパク質の二次構造を評価するために使用される確立された方法である。タンパク質の赤外スペクトルは、それぞれアミド領域およびCH領域として知られる吸収スペクトルの一連の吸収領域によって特徴付けられる。二次構造に関する情報は、主にアミドI領域(1700~1600cm-1)およびアミドII領域(1600~1500cm-1)のスペクトルから取得できる。アミドI領域は、主にペプチドグループのC=O伸縮振動を反映しており、タンパク質の二次構造に関する情報を提供する。さらに、この技術により、高濃度の溶液や固体材料に含まれるタンパク質の二次構造を調べることができ、水和物または乾燥物のいずれかを使用することができる。FTIRを使用して、BSA/NaBr膜のアルブミンの構造を評価した。この実験では、HOバンドが同じ吸収範囲にあるアミドIバンドに干渉するのを防ぐために、DOを使用して、すぐに利用できるBSA/NaBr664膜を水和し、2つの対照溶液を調製した:BSA(100mg/mL)の溶液およびBSA/NaBr664膜の調製に使用したものに匹敵するBSAとNaBrとの溶液(BSA濃度=100mg/mL、BSA/NaBr比=1:664)。
【0101】
アミドIバンドの逆重畳積分したスペクトルの分析により、科学文献ですでに利用可能なデータを使用して識別された複数のサブバンドの存在が明らかになった。試験された試料のアミドIバンドには、6つのサブバンドが見つかった:α-ヘリックス(1655cm-1)、β-シート(1612、1629、1678cm-1)、β-ターン(1669cm-1)、ランダムコイル(1643cm-1)サブバンド(図7を参照)。次に、これらの二次構造のパーセンテージを計算した(残留RMSエラー<0.005)。BSAおよびBSA/NaBr664の溶液中に存在するアルブミンについて、非常に類似したパーセンテージのβシート、βターン、αヘリックス、およびランダムコイルが得られた。したがって、確立された実験条件では、NaBrはアルブミンの二次構造を変更しない。しかし、BSA/NaBr664膜では、βシートおよびβターンで増加し、α-ヘリックスおよびランダムコイルで減少しているようである(表2)。タンパク質の展開は、組織化されていない二次構造であるランダムコイルの増加を特徴としている。膜の処方において、アルブミンは、これらのいくつかの組織化されていない構造では、β組織化された構造に有利のように思われる。
【0102】
以下の表2は、BSA溶液(100mg/mL、DO中)、BSA/NaBr664溶液(BSA濃度=100mg/mL、DO)およびBSA/NaBr664膜(残留RMSエラー<0.005)に存在するアルブミンのアミドIバンドで識別された各二次構造のパーセンテージの分析を示している。BSA溶液(BSA100mg/mL 80℃ DO)を80℃で一晩インキュベートし、変性タンパク質の基準として使用した。
【0103】
【表2】
【0104】
結晶学SAXS ICS
小角および広角X線散乱測定(SAXS、WAXS)は、試料内の原子間距離を調査する。溶液中のタンパク質の場合、高分子の階層構造レベルが明らかになる。したがって、別個の散乱ベクトルドメインは、4次および3次構造(分子の形状とサイズ、q<≒0.2Å-1)、ドメイン間相関(≒0.2<q<≒0.5Å-1)、ドメイン内組織(≒0.5<q<≒0.8Å-1)および二次構造(≒1.1<q<≒1.9Å-1))などの分子の特徴的な構成にリンクされる。WAXSは構造の乱れや変動に非常に敏感であり、高分子組織の小さな変化を証明することができる。ただし、データの解釈は非常に複雑であり、結晶学的結果に基づく理論計算との比較が必要になることがよくある。分子間相関がない希薄な領域では、散乱測定は分子内の特性(フォームファクター)のみを反映する。濃度が増加するか、バルク膜の特性では、これはもはや当てはまらず、分子間相関が散乱強度に深く寄与する。
【0105】
BSA/NaBr664膜の構造組織を、SAXSとWAXSによって調査した。洗浄および乾燥した膜を測定し(e、図2.S8B)、天然BSAと比較した(a、図2.S8B)。異なる濃度で調製された2つのBSA溶液(bおよびc、図2.S8B)(溶液124.2重量%HO、溶液240重量%HO)も、散乱パターンの解釈の基準となると見なされた。実験強度を図2.S8A(溶液2)に示し、CRYSOLで計算され、モノマーBSA(PDB原子座標3v03)の結晶学的記述に基づいて計算された理論曲線と比較した。0.1~1Å-1の間では、実験曲線と理論曲線の両方がよく対応している。小さな偏差は確かに溶液中のタンパク質内の動的変動と無秩序を反映している。0.1Å-1未満では、0.084Å-1付近にピークが観察された。これは、計算では考慮されていない静電反発力から生じるBSA間の空間相関に関連している。タンパク質濃度を上げると(溶液1)、分子の重心間の距離が短くなるため、このピークはより高いq値(0.09Å-1)にシフトする。高いq値(>1Å-1)では、1.5Å-1付近に大きな最大値が観察された。この領域では、モデルの精度は低くなるが、これはプログラムの許容可能なq範囲外である(約0.5Å-1)。したがって、CRYSOLは、ソリューション内のBSAのデータの主な特性を説明することができる。タンパク質は主に結晶秩序状態のα-ヘリックスを含んでいるため(計算で使用)、約0.2Å-1(d=2π/q 約30Å)で観察される予測されたショルダーはおそらくαドメイン間の相関に関連しているが、0.4~0.7Å-1の間の3つの寄与(9→15Å)は、ドメインの内部構造、より具体的にはα-ヘリックスパッキングに関連している。理論的に正しく記述されていない1.5Å-1前後の広い最大値(約4Å)はすべてのタンパク質に見られ、内部組織の主な特徴(α-ヘリックスまたはβ-シート)に対する感度が低くなっている
【0106】
凍結乾燥粉末BSAの散乱パターンを図2.S8B(a)に示す。このアモルファス試料は、未溶媒のネイティブBSAの基準として使用される。強度は、単純なBSA溶液と比較して大幅に変更されている。分子内および分子間相関が散乱強度に寄与するため、データの解釈はより複雑になる。障害、分子間相関、または特定の再配列は、溶液と固体状態の間の散乱曲線の潜在的な変化を説明し得る。タンパク質の形状とサイズを決定することはもはや不可能であり、内部構造または分子間相関に関連するより短い長さのスケールのみが測定可能である。最初に、非常に低いqで大きな上昇が観察された。この動作は特定の組織とは関係がなく、単に試料の粉末の性質(ポロド散乱)の結果である。そのような寄与がない場合、強度は一定の低い値になる傾向がある(q→0)。0.1→0.3Å-1の範囲で、0.19Å-1(33Å)付近に小さな最大値が観察された。このピークは、溶液中の「球状」BSA分子で観察された相関ピークの高濃度限界に関連している可能性がある。しかし、接触しているタンパク質間の平均距離(33Å)は回転半径に非常に近いため(Rg=28.7±1.5Å)、これはありそうにない。この最大値は、タンパク質ドメイン間の相関(分子内および分子間寄与を含む)に関連している可能性が高く、BSA溶液で以前に観察された約0.2Å-1の肩に相当する(純粋な分子内寄与)。したがって、α-ドメインはまだ固体状態で存在している。他の変化は0.3~1Å-1の間で観察される。BSA溶液の構造化された山塊は、0.66Å-1に近い単一の寄与に減少した。この最大値は、9.5Åの特徴的なパッキング距離(この種の組織の古典的な値)を持つBSAドメインのα-ヘリックスに関連付けられた単一の平均距離を示している。最後に、1.42Å-1付近で依然として大きな寄与が観察された。BSA溶液と比較して、最大値の幅が狭くなり、その位置が小さいq値にシフトした。この観察結果は、4.7Åのストランド間距離を特徴とする固体BSAのβシート含有量の増加に関連している可能性がある。したがって、粉末BSAの散乱パターンは、無秩序な固体状態での内部構造のわずかな変化を示している。
【0107】
BSA/NaBr664膜の散乱曲線を図2.S8B(e)に示す。0.04Å-1未満で観察された上昇は、膜の多孔性(ポロド散乱)に関連している。ブラッグピークは現れておらず、膜に結晶性NaBrが存在しないことを示している(純粋なNaBr塩回折図を比較のために図2.S8B(d)に示す)。純粋なアモルファスBSA粉末と比較して、小さいが重要な変更のみが観察された。ドメイン間相関に関連する第1のピークは、より低いq値(0.19Å-1~0.17Å-1)にシフトし、タンパク質ドメイン間の距離が大きい(33.1Å~37.9Å)ことを示している(内部および相互寄与)。この挙動は解釈が困難であるが、α-ドメインの縮小などの三次構造のわずかな変化に起因している。α-ヘリックスパッキングに関連する0.65Å-1付近のピークはまだ存在しているが、純粋なBSAよりも強度が低くなっている。これは、膜のらせん組織の変更と一致している。BSA粉末と比較して、1.4Å-1付近の大きな最大値の形状も変化している。これは、1.37Å-1(4.58Å)でさらに鋭い寄与を示し、強い非対称プロファイルにつながっている。これは、分子内または分子間起源のβシート含有量の増加と互換性がある。結論として、BSAの二次構造は、α/β構造比をわずかに変更して調製された材料に保存される。これらの発見は、アミドIバンド分析の中でFTIRによって得られた結果を裏付けている。
【0108】
SEM表面分析
NaBr(モル比NaBr/BSA=664)で製造された膜の表面トポグラフィーを研究し、それらの多孔性を評価するために、膜を、SEMを使用して分析した。膜の表面は、多くの細孔および細孔様の下部構造を有し非常に粗く見える(A、図9)。この同じ膜のスライス(断面)を観察すると、生体材料の内部に小さな細孔が存在することがわかる。しかし、表面の観察から想像するほど多くはないようにみられる(B、図9)。表面
の凹凸は、主に配合に使用される蒸発によるものである。
【0109】
その他のアルブミンタンパク質
開発された製剤手順では、再現性の高いBSAを使用してアルブミンベースの膜が製造する。これらの膜の実現可能性を研究するために、他のアルブミンタンパク質を用いた製剤化が行われた。ウシ血清アルブミンと非常によく似た構造を持つヒト血清アルブミン(hSA)と、他の2つのタンパク質とは構造と分子量が異なるオボアルブミン(OVA)の2つのアルブミンが選択された。hSAとOVAの両方で興味深い膜が得られた。これらはBSA膜とは異なる形態を有している。さらに、それらは水和しやすく、より高い水分含有量と初期の腫れをもたらす。結論として、確立された製剤プロセスは、タンパク質の由来に関係なく、アルブミンベースの膜の調製することができる。ただし、このタンパク質のコストが低く、ヒトのものと非常に類似しているため、この研究ではBSAベースの膜のみがさらに特徴づけられた。
【0110】
他の膜製剤は、γ-グロブリンなどの異なるタンパク質で試験した。主な制約は、タンパク質の水への溶解度である。実際、アルブミンは水への比類のない溶解度を持っており、非常に高濃度の溶液の調製を可能にする。タンパク質の溶解度のしきい値のためにタンパク質濃度を下げる必要がある場合は、膜の取り扱いに適合する最小の厚さに達するために必要な量を増やして、蒸発処理を大幅に延長する必要がある。γ-グロブリンの膜(20℃≒20mg/mLでの水への溶解度)は、ウシγ-グロブリンとNaBrの溶液を蒸発させることによってうまく処方された(モル比塩/タンパク質=664、M/S=35mg/cm)。したがって、この作業で開発された製剤手順は、タンパク質ベースの膜の製剤に有望であることを証明する。
【0111】
生物学的アッセイ
【0112】
細胞毒性と細胞接着
BSA/NaBr664膜の生物学的特性を研究した。比較基準を持つために、他の2つの興味深い膜、BSA/NaBr400およびBSA/CaCl700をこれらの実験に含めた。まず、膜浸出性成分の細胞毒性を、膜抽出物中でBalbc 3T3マウス線維芽細胞をインキュベートすることによって評価した。この細胞株の場合、代謝活性を測定することで細胞生存率を推定できる。次に、各抽出物で培養された細胞の正規化された代謝活性を、未処理の細胞(陽性対照)の代謝活性と比較した。この実験では、抽出物を希釈して、用量依存的な効果を明らかにした。得られたデータの統計分析は、未処理のグループとBSA/NaBr膜抽出物のさまざまな希釈で処理されたグループの代謝活性の間に有意差はないと結論付けた(図10を参照)。さらに、前に示したように、アルブミンの非細胞毒性および最終膜におけるNaBrの欠如は、BSA/NaBr膜の浸出性成分の観察された非細胞毒性と一致する。次に、Balbc 3T3細胞をこれらの膜と直接インキュベートすることにより、直接的な細胞毒性を評価した。この実験では、比較的薄い膜(平均厚さ約0.7mm)を使用して、顕微鏡による細胞と材料間の相互作用の追跡を可能にした(図11を参照)。データの統計分析では、未処理の細胞と試験した膜で培養した細胞の代謝活性に有意差は見られなかった(図10を参照)。さらに、顕微鏡検査により、線維芽細胞が膜の周囲および膜の上に広がっていることが明らかになった(図12を参照)。膜への細胞の付着を定量化するために、Balbc 3T3細胞を膜とともに24時間インキュベートした。次に、培地を除去し、膜を空のウェルに移し、各膜上の細胞の代謝活性を測定した。BSA/NaBr664、BSA/NaBr400、およびBSA/CaCl700グループの間に有意差が観察された(p<0.05)。播種された線維芽細胞の約45%(44.55%±10.67%)がBSA/NaBr664膜に付着した。推定パーセンテージは、BSA/NaBr400膜(27.36%±11.22%)で低く、BSA/CaCl700膜(77.62%±20.26%)で高
かった(図13を参照)。したがって、最初の製剤溶液は、洗浄プロセス中に塩が完全に除去されるにもかかわらず、細胞と膜との相互作用に大きな影響を与えるようである。結論として、製剤化されたアルブミンベースの生体材料は細胞毒性がなく、細胞接着とコロニー形成に有利である。
【0113】
マクロファージの活性化
マクロファージの活性化に対するアルブミン膜の効果を、亜硝酸塩とTNF-αの濃度を測定することによって評価した。NOおよびTNF-αは、炎症反応を開始および維持するために活性化されたマクロファージによって産生される。生マクロファージを、試験した膜で24時間培養した。その後、LPSをLPS活性化グループのウェルに直接導入してマクロファージを活性化し、細胞をさらに24時間インキュベートした。未処理グループ(NT)と比較して、亜硝酸塩の生成は、試験された膜の存在下でわずかに増加する(p<0.05)。LPSの活性化は、培地中の亜硝酸塩濃度の大幅な増加を引き起こす。ただし、LPS処理対照(TLPS)と比較して、マクロファージをアルブミン膜で培養した場合、亜硝酸塩の生成は大幅に低下するようである(p<0.05)。TNF-αの産生は、不活化グループと同様の傾向をたどった。ただし、BSA/NaBrグループとT LPSグループのTNF-α産生に有意差はなく、TNF-α産生の有意な低下を示したBSA/CaCl700グループとは異なる(p<0.05)。したがって、試験したアルブミンベースの膜は、マクロファージを活性化することによって炎症反応を効率的に誘発することはない。
【0114】
結論
これらの試験では、NaBr、NaI、KI、CaCl、MgCl、酢酸カリウム、ギ酸アンモニウムの塩を使用して、いくつかの興味深い生体材料モデルが開発された。これらの膜の特性は、配合パラメータを変更することによって調整することができる。重要な2つのパラメータを特定した:塩の存在と塩/アルブミンのモル比。また、三成分系の塩1/塩2/アルブミンまたは塩/アルブミン/ポリマーを有する膜を得ることが可能であり、これらを調製することができた。これらのシステムは、膜の特性(機械的および固有の特性)を調整し、新しい特性を備えた機能化された生体材料を取得することを可能にする。塩の存在下での蒸発によって調製されたアルブミンベースの生体材料は、目標とする治療用途の要件に適応するようにその特性を調節することができる、用途の広いモデルを形成する。
【0115】
実施例2:技術の多様性の物理化学的調査と評価、活性物質の充填、および生体適合性と生体内での生分解性の予備評価
【0116】
2.1技術の多様性の物理化学的調査と評価
以下の実験では、酢酸ナトリウム緩衝液(pH=6)中で調製したBSA(初期濃度=100mg/mL)およびNaBr(初期濃度=62mg/mL)の溶液を、乾燥した材料が形成されるまで37°Cで蒸発させることによって、BSA/NaBr材料を調製した。BSA/CaCl材料については、酢酸ナトリウム緩衝液(pH=6)中で調製したBSA(初期濃度=100mg/mL)およびCaCl(初期濃度=155mg/mL)の溶液を、乾燥した材料が形成されるまで37℃で蒸発させることによって調製した。
【0117】
有機溶媒中での安定性。活性物質の大部分が親油性分子である有機溶媒は、生体材料への可溶化と充填に非常に役立つ。さらに、容易に形成される材料への薬物の充填(後充填)には、薬物を可溶化するために使用される溶媒中での材料の安定性が必要である。有機溶媒中のAlbupad材料(すなわち、本発明による生体材料)の安定性を、エタノール、DMSO、アセトニトリル、およびジクロロメタンの溶媒で評価した。BSA/Na
BrおよびBSA/CaCl膜を、室温で72時間各溶媒に入れた。それらの安定性は、それらの質量損失を比較することによって評価した。72時間のインキュベート後、試験したすべての溶媒中で膜は質量損失を示さなかった。さらに、それらの物理的側面は、目に見える劣化の兆候を示さず、それらの水和特性も維持された。したがって、Albupad材料は、エタノール、DMSO、アセトニトリル、およびジクロロメタン中で安定している。
【0118】
BSA/NaBr膜のレオロジー評価。この研究では、粘弾性挙動を研究するために、水和(水中)BSA/NaBr膜(n=4)で振幅掃引試験を実施した。G´は弾性または回復可能な成分を表し、G´´は粘性成分である。各試験中、周波数は0.5Hzに設定し、ひずみを0.01から100%に増加させた。試験した試料のいずれにも目立った損傷はなく、10%のひずみを超えると強い滑り効果が観察され、データが使用できなくなった(省略)。1%ひずみ下の線形粘弾性領域(LVE)では、G´(59.6±5.1kPa)はG´´(7.7±0.8kPa)よりも高くなる(図15A)。したがって、この範囲では、材料は固体弾性材料として挙動する。1%のひずみの後、G´´が増加し、1.79±0.07%のひずみで最大に達するとペイン効果が識別される(図15B)。この効果は、2つの相で構成される材料の特徴であり、より硬い粒子が浮遊しているマトリックスで、特定の変形でより大きなエネルギー散逸を引き起こす。この効果は、主にカーボンブラック粒子が充填されたゴムエラストマーで説明されており、材料の微細構造の変形によって引き起こされる変化に起因する。したがって、BSA/NaBr材料は、より硬い粒子を含むマトリックスで構成される。しかしながら、洗浄プロセス中に塩が除去されたと判断された。したがって、粒子は、より柔らかいアルブミンマトリックスに囲まれたアルブミン凝集体/粒子である可能性がある。この結果は、BSA/NaBr材料のセクションのMEB分析によって確認され、これらの材料を形成する粒子構造が明らかになった(図16)。材料が複数の連続した振幅スイープ試験にかけられると(図15C)、G´は初期値を回復し、実験中に材料の凝集力が変化しなかったことを証明する。BSA/CaCl膜などの他のいくつかの配合物でも同様の観察が行われ、これらのレオロジー所見がAlbupad材料に特有の特性であることを示している。
【0119】
BSA/NaBr膜の接触角。接触角の測定を、BSA/NaBr膜の乾燥試料の表面にmilliQ水(5μL)のマイクロドロップを堆積させることによって実行した(堆積速度=2μl/秒)。画像を100秒間記録した(1.4 FPS)。これらの試験中に、90°~100°で変化する接触角が測定された。膜の水和および材料への液滴の沈下の速度論は遅く(>30分)、したがってこれらの測定中に観察することができなかった。したがって、乾燥したBSA/NaBr膜の表面は、水和速度が遅く、表面粗さが高いため、適度に親水性である(以前の試験のSEM分析によって観察された)。
【0120】
BSA/NaBr膜の加速劣化。乾燥したBSA/NaBr膜を80℃のオーブンに3日間入れた。次に、熱処理された膜のアミドIスペクトルを、FT-IRを使用して分析し、対照膜と比較した。熱処理された膜のアミドIバンドは、未処理のコントロールのものと同様であった(図17)。したがって、膜内のアルブミンの二次構造は、試験条件での加熱によって変化しなかった。
【0121】
制御された真空下での製造。真空下での蒸発によるAlbupad材料の製造は、蒸発に必要な時間を短縮するための有用なツールを提供することができる。したがって、制御された圧力下での配合の実現可能性を、真空オーブンを使用して実行した。BSA/NaBrの溶液(BSAの初期濃度=100mg/mL、NaBrの初期濃度=1M)を真空オーブン内で37℃で24時間蒸発させ、次の圧力値を試験した:800、600、および200mbar。次に、それらの安定性を評価するために、乾燥した材料を洗浄し、水に48時間浸した。さらに、物理的外観、相対収量、吸水率、および初期膨張値を使用し
て、制御された真空下で形成された材料を特徴付け、大気圧下で調製された制御バッチと比較した。試験したすべての圧力値で制御された真空下でBSA/NaBr溶液を蒸発させた後、取り扱い可能で水に不溶性の材料が得られた。形成された膜は、対照バッチと同様の物理的側面および取り扱い性を有していた。ただし、膜形成中の溶液からの可溶性ガスの除去により、膜構造に気泡が閉じ込められ、200および600mbarで大きな細孔が形成される(図18A)。したがって、例えば蒸発の前に溶液を脱気する工程を追加することによって、これらの細孔の形成を制御または防止するために、配合の最適化が必要である。さらに、真空下での製剤の相対収率(60%~70%)は、対照バッチ(>90%)よりも比較的低くなっている(図18B)。次に、600mbarで調製された膜の機械的およびレオロジー特性を評価した。圧縮アッセイを、平行平板測定システムのレオメーターを使用して、水和したBSA/NaBr600mbarの水和(水中)膜で実行した。膜の弾性率は0.76MPaであり、対照バッチの弾性率および以前にBSA/NaBr材料で測定された弾性率と同様であった。水和(水中)BSA/NaBr膜(n=4)で振幅掃引試験を実施し、それらのレオロジー特性を研究した。各試験中、周波数は0.5Hzに設定し、ひずみを0.01から100%に増加させた。これらの実験により、600mbarの制御された真空下で配合されたBSA/NaBr膜は、大気圧下で配合されたBSA/NaBr膜と同様のレオロジー特性を持っていることが明らかになった。したがって、制御された真空下で調製することは、特性を変えることなくアルブパッド材料の形成することを可能にする。
【0122】
溶剤調査。エタノール、DMSO、アセトニトリルなどの有機溶媒を使用すると、水溶性の低い活性物質をアルブミンと塩の溶液に組み込むための興味深いツールが提供され、よってこれらの分子をAlbupad材料に事前充填する方法を提供する。有機溶媒は、蒸発工程(エタノールなどの揮発性溶媒の場合)または洗浄工程(DMSOなどの水混和性溶媒の場合)で容易に除去される。したがって、混合有機溶媒/アルブミン溶液におけるAlbupad材料の配合の実現可能性の研究が試験された。この調査では、エタノール、DMSO、アセトニトリル、ジクロロメタンの4つの溶媒を選択した。溶媒は、2.5、5、10、15、20、25、および30%v/vの溶媒/溶液の体積比に従って、BSA/NaBr溶液に直接添加した。次に、溶媒/溶液混合物を37℃で7日間蒸発させた。続いて、乾燥材料を蒸留水で48時間洗浄した。配合された材料の相対収率、吸水率、および初期膨張を、有機溶媒なしで配合された対照バッチと比較した(体積比=0%)。試験したすべての比率で、4つの溶媒の存在下で安定した水不溶性の膜が形成された。これらの材料は取り扱い可能であり、対照バッチと同様の物理的側面を共有していた。エタノールの存在下で配合された材料の場合、2.5%~15%の範囲の体積比で調製された膜は、対照バッチの値と比較して、同様の相対収率(85~88%)、吸水率(238~250%)、および初期膨張(137~145%)を有した(図19)。20%~30%の範囲の体積比で調製された膜は、対照バッチと比較した場合、相対収率(80~82%)の低下、ならびに吸水率(304~346%)および初期膨張(147~154%)の増加を示した(図19)。DMSOの存在は、製剤の相対的収率または材料の初期膨張値に影響を与えなかった。2.5%~10%の範囲の体積比で調製された膜の吸水値は、対照バッチと同等であったが、15%~30%の範囲の体積比で調製された膜の吸水値はより高かった(194~345%)(図19)。試験された非水混和性溶媒(アセトニトリル、ジクロロメタン)に関しては、調製されたすべての膜は、同様の相対収率、吸水率、および初期膨張値を共有していた(図19)。結論として、最大30%(v/v)の有機溶媒の存在は、膜の形成を妨げず、取り扱い可能な材料の調製を可能にする。最大15%のエタノール、10%のDMSO、および30%のアセトニトリルまたはジクロロメタンの対照バッチと比較して、これらの材料の特性の変化は観察されなかった。同様の結果が、BSA/CaCl膜、ならびにBSA/NaBrおよびBSA/CaClスポンジの場合にも得られた。
【0123】
塩の組み合わせ。塩は、Albupadテクノロジーを使用してアルブミン材料を配合するための重要なパラメータであり、塩の種類とその濃度は、材料の特性を調整するための適切なツールである。さらに、塩の組み合わせは、材料特性のより良い調整のための追加のツールを提供し、Albupad材料プラットフォームが潜在的なアプリケーションの要件に応じてより柔軟に適応できるようにする。したがって、Albupad技術の適用性を、塩の組み合わせを使用したアルブミン材料の配合のために調査した。これらの実験では、2つの異なる塩のさまざまな組み合わせを試験した:一次塩(S1)および二次塩(S2)。S1の塩/アルブミンのモル比を設定し、S2の塩/アルブミンのモル比を100~1000まで変化させた。次の塩の組み合わせを試験した:NaBr400/CaCl、CaCl400/NaBr、NaBr400/MgCl、NaBr50/NaCl、NaBr400/NaCl、CaCl400/MgClおよびNaCl400/KCl。取り扱い可能な膜を、NaBr400/CaCl、CaCl400/NaBr、NaBr400/MgCl、NaBr400/NaCl、CaCl400/MgClの組み合わせで取得し、すべてをS2モル比で試験した。試験された塩の中で、塩NaBr、CaCl、およびMgClgが、取り扱い可能で安定したアルブミン材料の形成を可能にする。実際のところ、塩の組み合わせが、膜形成を可能にする少なくとも1つの塩を含み、この塩の塩/アルブミンのモル比が十分である(>100)場合、アルブミン膜が得られた。材料の特性に対する二次塩の影響を評価するために、相対収率、吸水率、および初期膨張を使用して、形成された材料を特徴付けした。図20は、CaCl400/NaBrの組み合わせで配合された膜を表している。100~1000の範囲のNaBrモル比を試験し、塩/アルブミンのモル比が400のCaClおよびBSAのみで調製し対照を調製した。配合物へのNaBrの添加は、配合物の相対的収率を変化させなかった。しかし、それは吸水率の顕著な増加を生み出した。膜特性の変化は、他の組み合わせでも認められた。さらに、3つの塩の組み合わせによる製剤の実現可能性も試験した。これらの実験は、安定で扱いやすい膜がNaBr/CaCl/MgClの組み合わせで製造できることを示した(試験されたモル比:100/100/100、200/200/200、300/300/300)。結論として、複数の塩を使用しても膜の形成が妨げられることはなく、Albupadの材料特性を微調整するための適切なツールを提供する。
【0124】
タンパク質調査。ヒト血清アルブミン(HSA)の4つのバッチを試験した:HSAFAF(脂肪酸フリー)、HSALFP(低葉酸粉末)、HSARGP(試薬グレード粉末)およびrHSA(米からの組換えHSA)。さらに、2つの球状タンパク質、γ-グロブリン(ヒト由来)とヘモグロビン(ヒト由来)を試験した。タンパク質の溶解度はAlbupadテクノロジーの適用性の主要な基準であり、これらの球状タンパク質は、水溶性が適切であるため選択された。各タンパク質を、NaBr、NaCl、CaClの塩で試験した(塩/タンパク質のモル比:0~2000)。タンパク質と塩の溶液を37℃のオーブンで7日間蒸発させた。次に、乾燥した材料を洗浄し、水に48時間浸して塩を除去し、水不溶性材料を選択した。水不溶性膜は、NaBrおよびCaClを含むすべてのヒトアルブミンタンパク質で得られた。これらの膜は安定していて扱いやすいものであった。γ-グロブリンベースの膜は、NaBrで適切に形成された。したがって、Albupadテクノロジーを使用して、ヒト血清アルブミン、組換えヒトアルブミン、およびヒトγ-グロブリンを使用して、安定した取り扱い可能な材料を製造することができる。
【0125】
2.2活性物質の装填
様々な物質を充填するアルブミンの生来の能力のために、アルブミンベースの材料は、薬物送達および徐放のために有望である。さらに、Albupadテクノロジーにより、初期溶液での材料の形成前(プレロード)に活性物質を装填すること、および形成後(ポストロード)に活性物質を材料に装填することができる。予備調査により、Albupa
d材料には、ピロキシカムやフルチカゾンなどの親油性物質、および水溶性分子であるクロルヘキシジンを事前に装填できることが明らかになった。この調査では、安定した取り扱い可能な材料が形成され、この装填戦略のAlbupadテクノロジーへの適用性を検証するに至った。さらに、概念実証を確立し、この物質の経時的な放出を研究するために、抗腫瘍薬であるドキソルビシン(DOX)、および糖尿病の治療に使用されるペプチドであるインスリン(INS)もAlbupad材料に装填した。これらの物質の装填を、蛍光イメージングによって評価した。水中での薬物放出の定量化を、経時的な蛍光滴定によって実行した。
【0126】
Albupad膜に事前装填されたDOXの装填とリリース。BSA/NaBrおよびBSA/CaCl膜には、図21に示すように、蒸発前にDOXを溶液に直接組み込むことにより、DOXを事前に装填した。異なる量のDOXが次のように溶液に組み込まれた:膜あたり0.25、0.5、0.75および1mgのDOX(膜の質量≒約400mg)。溶液を蒸発させた後、取り扱い可能な膜を得た。調製された膜は、DOXの存在により着色されたように見えた。さらに、膜の着色の強度は、充填されたDOXの充填量に比例した。膜内のDOXの存在を視覚化するために、CLSMイメージングを実行した(図22)。BSA/NaBr膜では、DOXの蛍光が膜のマトリックス内に均一に分布しており(厚さ=500μmの厚さ)、活性物質が材料に正常に充填されたことを示している(図22)。BSA/CaCl膜に関しては、材料の不透明性により、材料マトリックス内に充填されたDOXの観察が妨げられた。しかし、DOX蛍光がそれらの表面で観察され、これらの膜へのDOXのローディングも成功したことが明らかになった(図22)。
【0127】
次に、塩を除去するために膜を水で洗浄した。BSA/NaBr膜を水(3×20mL)で2時間洗浄した。BSA/CaCl膜を水(4×20mL)で2時間洗浄した。すすぎ溶液を収集し、除去されたDOXの量を485nmでの蛍光分光法によって測定した(図23)。除去されたDOXは、BSA/NaBr膜では20%~30%、BSA/CaCl膜では35%~50%であった。したがって、最初に充填されたDOXの50%~70%は、洗浄後も膜に存在した。
【0128】
膜からのDOX放出を、37℃の水中で35日間撹拌しながら調べた。35日間にわたる上澄みのDOX滴定により、Albupad材料からのこの活性物質の放出プロファイルが遅く、バースト効果が制限されて制御されていることが明らかになった(図24)。さらに、存在するDOXの10~50%は、製剤に応じて35日後に未放出のままであり、薬物送達のための材料の可能性を示している。
【0129】
Albupad膜に事前装填されたINS-FITCの充填と放出。
BSA/NaBrおよびBSA/CaCl膜には、蒸発前にINS-FITCを溶液に直接組み込むことにより、INS-FITCを事前に充填した。溶液に組み込まれたINS-FITCの量は、膜あたり0.25mgであった(膜の質量は約400mg)。溶液を蒸発させた後、取り扱い可能な膜を得た。膜内のINS-FITCの存在を視覚化するために、CLSMイメージングを実行した。BSA/NaBr膜では、INS-FITCの蛍光が膜のマトリックス内に均一に分布しており(厚さ=500μmの厚さ)、有効成分が材料に正常に充填されたことを示している(図25)。BSA/CaCl膜に関しては、材料の不透明性により、材料マトリックス内に充填されたINS-FITCの観察が妨げられた。しかし、蛍光がそれらの表面で観察され、これらの膜へのDOXの充填も成功したことが明らかになった(図25)。
【0130】
次に、塩を除去するために膜を水で洗浄した。BSA/NaBr膜を水(3x20mL)で2時間洗浄した。BSA/CaCl膜を水(4x20mL)で2時間洗浄した。す
すぎ溶液を収集し、除去されたINS-FITCの量を495nmでの蛍光分光法によって測定した(図2.7AおよびB)。BSA/NaBrおよびBSA/CaCl膜の場合、それぞれ充填されたINS-FITCの8%および1%が洗浄プロセス中に除去された。したがって、洗浄プロセス後、INS-FITCの90%超が膜に存在した。続いて、膜からのINS-FITCの放出を、37℃の水中で30日間撹拌しながら調べた。DOXで得られた結果によると、30日間にわたる上清のINS-FITC滴定により、Albupad材料からのこの活性物質の放出プロファイルが遅く、バースト効果が制限されて制御されていることが明らかになった(図26C)。さらに、利用可能なINS-FITCの60~80%は、製剤に応じて30日後に未放出のままであり、この活性物質の徐放のための可能性を示している。
【0131】
結論として、実行されたすべての実験を考慮すると、プレロード法を使用して材料を充填することの実現可能性が証明された。さらに、ゲンタマイシンなどの他の活性物質も、30%(wt/wt)の高い充填率でAlbupad膜に正常に充填された。さらに、最大充填率は、活性物質の溶解度およびそのアルブミンとの相互作用に依存する。したがって、さらなる調査により、標的となる活性物質の充填の研究と最適化が可能になるはずである。さらに、放出培地中のプロテアーゼの存在は、膜からの物質放出の増加を可能にするはずである。
【0132】
2.3生体適合性とインビボでの生分解性の予備評価
【0133】
電子ビーム照射を使用したAlbupad材料の滅菌の最適化。アルブパッド材料のインビボ移植の前に、材料との適合性を検証するために電子ビーム照射を使用する滅菌を試験しており、したがって、その特性またはそれを構成するアルブミンの構造の劣化または有意な変化を引き起こさない。そのため、BSA/NaBrおよびBSA/CaClの2種類の膜を用意した。以下の条件における照射下での安定性を試験するために、これらの試料の照射をグループに分けた:放射線防護剤(ビタミンC)の存在下または非存在下、および乾燥または水和(水中)膜の形態。5、10、25、25kGyの4つの照射線量を試験した。照射された膜の物理的側面、質量損失および水分摂取を、照射されていない対照バッチと比較した。さらに、アルブミンの二次構造の変化を検出するために、照射された膜のIRスペクトルを対照のIRスペクトルと比較した。これらの実験は、材料の照射がすべての試験された照射線量でそれらの分解を引き起こさなかったこと、および放射線防護剤としてのビタミンCの使用が必要でないことを明らかにした。照射された試料と対照バッチとの比較は、それらの照射後の材料の特性の有意な変化を示さなかった。さらに、FT-IR分析では、材料の照射がアミドIバンドの中で変化せず、したがって、乾燥試料および水和試料でアルブミンの二次構造に損傷を与えないことが示された。結論として、電子ビーム照射による滅菌はAlbupad材料と互換性があり、インビボ評価の前にこれらの材料を滅菌するために25kGyで効率的に使用することができる。
【0134】
マウスへの移植製剤、滅菌および皮下移植。インビボでのアルブパッド材料の生体分解性および生体適合性の予備調査を実施するために、以下のバッチの円筒形移植片を調製した:BSA/NaBr(BSAの初期濃度=300mg/mL、NaBrの初期濃度=1.8M、n=5)、BSA/CaCl(BSAの初期濃度=200mg/mL、CaClの初期濃度=2.1M、n=10)、HSA/NaBr(HSAの初期濃度=300mg/mL、NaBrの初期濃度=1.8M、n=5)およびHSA/CaCl(HSAの初期濃度=200mg/mL、CaClの初期濃度=2.1M、n=10)。移植片の対照バッチを、グルタルアルデヒドの存在下でHSAを架橋することによって調製した(HSA/GLU、n=5)。次に、移植片を完全に洗浄し、推奨サイズ(長さ≒1cm、直径≦5mm)に合うようにカットした(図27A)。これらの材料の吸水率を使用して、BSAおよびHSAで調製されたバッチを比較した。BSA/NaBrおよびHS
A/NaBrが同様の視覚的側面と吸水率の値(それぞれ、124±3%および127±21%)を有し、BSA/CaClおよびHSA/CaClが同様(それぞれ224±52%および220±10%)であった(図27B)。次に、移植片を24ウェルプレートで、37℃で24時間乾燥させた。次に移植片の乾燥バッチを、選択した方法(電子ビーム、25kGy)を使用して滅菌した。
【0135】
次に、滅菌された移植片をマウスの皮下移植に使用した。移植片をPBSで4℃で6時間再水和し、移植前にPBSですすいだ。スイスマウスには、BSA/CaCl、HSA/CaCl、およびHSA/GLU移植片を移植した(移植片の種類ごとに3匹のマウス)。ヌードマウスには、BSA/NaBr、BSA/CaCl、HSA/NaBrおよびHSA/CaCl移植片を移植した。BSA/GLU材料を移植した対照グループで急性毒性が観察され、このグループのマウスを犠牲にした。Albupad材料を移植されたマウスは、実験中(28日間)、有意な体重変動(±5~10%の体重変動)なしに生存していた。移植片の体積は、ノギスを使用して皮膚を通して測定された。スイスマウスグループでは、BSA/CaCl移植片は17日間の移植後に完全に分解され、一方で、HSA/CaCl移植片は、28日後の実験終了までに完全に分解はされず、平均して体積の50%が失われた。ヌードマウスでは、BSA/NaBr、HSA/NaBr、BSA/CaCl、HSA/CaClの分解は、28日間の埋め込み後に、それぞれ体積の23%、35%、53%、43%を失った。28日目にマウスを犠牲にした後、ゴモリおよびピクロシニウス染色後の顕微鏡検査により、移植片およびその周辺組織の切断物に対する組織学的評価を実行した。調製されたカットの観察は、移植片が断片化されていないことを明らかにし、それらの生分解が進行性であり、大きな断片の形成をもたらさないことを示している(図28A)。移植片を取り巻く組織の表現型は正常であり、コラーゲン線維の形成と配向は天然組織で観察されたものと同様であることが観察された(図28B)。材料との接触では線維増殖は観察されなかった。したがって、試験された移植片は周囲の組織またはマウスに対して無毒であり、移植片のタイプに応じた速度にて生体内において生分解性であることが証明された。
実験セクション
【0136】
化学試薬。ウシ血清アルブミン(フラクションV、≧96%)は、Acros Organicsから購入した。Sigma-Aldrichから、ヘモグロビン(ヒト)、ウシ血液からのγ-グロブリン(99%以上)、組換えヒトアルブミン(rHSA、米で発現)、臭化ナトリウム(NaBr)、塩化カリウム(KCl)、ドキソルビシン(DOX)、FITCに結合したインスリン(INS-FITC)および酸化重水素(DO)を購入した。塩化ナトリウム(NaCl)はVWR Chemicalsから購入した。塩化マグネシウム(MgCl、無水)はFlukaから購入した。塩化カルシウム(CaCl、2HO)はMerckから購入した。SeraCareから、次のヒト血清アルブミン(HSA)を購入した:HSA試薬グレード粉末(RGP)、HSA低葉酸粉末(LFP)、およびHSA脂肪酸フリー(FAF)。
【0137】
配合(一般的な手順)。pH6の酢酸ナトリウム緩衝液(0.2M)中にBSA(100mg/mL)およびNaBr1Mの溶液を調製した。この溶液をシリコーン型に入れ、乾燥するまで37℃で蒸発させた。得られた乾燥生体材料を洗浄して塩を除去し、蒸留水に室温で48時間浸した。次に、水不溶性膜(BSA/NaBr)を収集し、特性を評価した。
【0138】
初期の特徴づけ。相対収率(式S1)、吸水量(式S2)、および初期膨張(式S3)を使用して、配合された膜を比較した。WBSAは、製剤に使用されるアルブミンの初期質量を表す。Aは、蒸発プロセス中に使用される円形容器の面積を表す。Wは、蒸留水で48時間洗浄し、37°Cのオーブンで一晩乾燥させた後の最終乾燥膜の質量を表す
。Vは、室温で蒸留水に材料を浸して測定した乾燥膜の体積である。Wは、蒸留水に24時間浸漬し、濾紙を使用して過剰な表面水を除去した後の平衡状態にある水和膜の質量を表す。Aは、電子デジタルノギス(TACKLIFE-DC01、精度±0.2mm)を使用して直径を測定した後に計算された、蒸留水に24時間浸漬した後の平衡状態にある水和膜の表面の面積である。
【0139】
【数4】
【0140】
走査型電子顕微鏡(SEM)。走査型電子顕微鏡および微量分析の評価は、10kVの加速電子電圧で動作するQuanta 250 FEG SEM(FEICompany、Eindhoven,TheNetherlands)を使用して実行した。SEM実験では、BSA/NaBr664膜を乾燥させた後、HummerJrスパッタリングデバイス(Technics、UnionCity、CA、USA)を使用して金-パラジウム合金でコーティングした。
【0141】
有機溶媒中での安定性。BSA/NaBr膜を5mLの次の有機溶媒に入れた:DMSO、アセトニトリル、およびジクロロメタン。次に、膜を含む培地を、撹拌しながら室温で72時間インキュベートした。その後、膜を水で洗浄してから、質量損失の特性を調べた(式S4)。
【0142】
【数5】
【0143】
膜の機械的性質。圧縮試験は、レオメーターKinexus ultra+(Malvern、United Kingdom)を平行板構成(直径20mm)で使用して実施した。3つの水和物のバッチ(蒸留水中)BSA/NaBr膜(厚さ=0.7mm)を使用した。弾性率(E)を、ひずみ(ε)-応力(σ)曲線の弾性領域内で計算した(式S5)。
σ=E×ε (S5)
【0144】
レオロジー測定。BSA/NaBr膜(厚さ=0.7mm)の粘弾性挙動は、平行板構成(直径20mm)のレオメーターKinexusultra+(Malvern、United Kingdom)を使用して評価した。膜を事前に蒸留水で24時間水和した。BSA/NaBrディスクをプレート間にロードし、試料が両方のプレートと良好に接触するまでギャップを閉じた(法線力<1N)。実験の開始時および実験の合間に、試料を5分間平衡化した。この間、垂直抗力はすべての試料で0.1N未満の値に減少した。振幅掃引試験を、25℃で0.5Hzの固定周波数で、0.01~100%のせん断ひず
みで実施した。せん断弾性率G(ω)=σ(ω)/γ(ω)は、応力(σ)とひずみ振幅(γ)の比率から得られる。G(ω)=G´+iG”は、弾性貯蔵弾性率(G´)と粘性損失弾性率(G”)の複素数である。せん断弾性率の絶対値|G|を、|G|=(G´+G”0.5を使用して計算した。
【0145】
接触角の測定。Attension Theta張力計よびBiolin Scientific(Sweden)のOneAttensionソフトウェアを使用した。実験は、乾燥したBSA/NaBr膜上の水の静的接触角を測定するための「液滴」モードで実施した。ハミルトンマイクロシリンジ(針の直径=0.7mm)を使用して、水滴を分配した。各測定は、5μLのmilliQ水(液滴速度=2μl/s)の液滴を使用して行われ、各試料に対して3回繰り返した。内蔵カメラは、材料との交差点での液滴による接線角度を測定しながら、固着液滴(フレームレート=14FPS)の一連の画像をキャプチャした。平均接触角(左右の接触角の平均)を、液滴が安定するのに十分な時間である10秒後に記録した。
【0146】
IR分析。FTIR実験を、DTGS検出器を使用してVertex70分光計(Bruker、Germany)で実行した。スペクトルを、Blackman-Harrisの3項アポダイゼーションとBruker OPUS/IRソフトウェア(バージョン7.5)を使用して、2cm-1解像度で128干渉画像を800~4000cm-1に平均化することによって、単一反射diamondATRを使用してAttenuated Total Reflection(ATR)モードで記録した。準備が整ったBSA/NaCl膜(乾燥)を細かく粉砕し、スペクトルを記録した。アミドIバンド領域(1700~1600cm-1)を分解するために、OPUS7.5ソフトウェア(Bruker Optik GmbH)を使用してデータ処理を実行した。カーブフィッティングの前に、スペクトルはアミドIバンド領域でベースライン補正し、正規化の「最小-最大」法を使用して正規化した。サブバンドの数とその位置を、スペクトルの4次導関数から決定した。デコンボリューションは、ガウス線形状を使用した最小二乗反復曲線あてはめプログラム(Levenberg-Marquardt)に従って実行した。最終的な適合では、残留RMSエラーを可能な限り減らすために(0.005未満)、これらのパラメータの少なくとも1つを毎回変更させずに、すべてのバンドの高さ、幅、および位置を調整した。最後に、元の曲線と近似曲線の2次導関数を比較して、曲線近似の精度を確認した。適合したコンポーネントの分数領域を使用して、文献に従って識別した後、さまざまな二次構造要素(α-ヘリックス、β-シート、β-ターン、およびランダムコイル)のパーセンテージを計算した。
【0147】
プレロード配合。BSA溶液(100mg/mL)を、pH6の酢酸緩衝液(0.2M)で調製し、NaBr(NaBr/BSAモル比=400)またはCaCl(CaCl/BSAモル比=700)塩と混合した。ドキソルビシン(DOX)のプレロードでは、蒸発前に次の量のDOXを初期溶液に添加した:膜あたり0.25、0.5、0.75、および1mg(膜質量=400mg)。インスリン(INS-FITC)のプレロードでは、蒸発前に、膜あたり0.25mgのINS-FITC(膜の質量=400mg)を初期溶液に添加した。溶液を粘着性のないシリコーン型に入れ、37℃で48時間蒸発させた。得られた乾燥生体材料を、塩を除去するために、BSA/NaBr膜の場合は3×20mLの水で、BSA/CaCl膜の場合は4×20mLの水で完全に洗浄した。
【0148】
共焦点レーザー走査型顕微鏡の特性評価(CLSM)。事前装填された膜内のDOXまたはINS-FITCの存在を視覚化するために、ZEISS LSM710共焦点顕微鏡を使用してCLSMイメージングを実行した。膜イメージングの励起/発光波長は、事前装填されたDOXとINS-FITCの材料の両方で450/515nmに固定した。
【0149】
放出実験。DOXまたはINS-FITCのプレロードされた膜の放出を、Genius XC分光蛍光光度計(SAFAS、Monaco)で監視した。放出実験は、HO(膜あたり10mL)中、37℃で実施した。各上清を回収した後、新鮮な10mLの水を添加した。上澄みを分光蛍光光度計で分析した。DOXおよびINS-FITCの励起および発光の波長は、それぞれλex/λem=485nm/595nmおよびλex/λem=495nm/520nmであった。
【0150】
統計分析。データを、R(バージョン3.6.1、R Foundation for
Statistics Computing、Vienna、Austria)を使用して分析した。分布の正規性は、シャピロ-ウィルク検定で決定した。分散の同等性は、F検定で決定した。データが正規分布しており、試料の分散が等しい場合、t検定(両側検定)を使用して2つの平均を比較した。これらの2つの条件が当てはまらない場合は、代わりにマンホイットニー検定を実行した。値は、p<0.05で統計的に有意であると見なされた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図24A
図24B
図24C
図24D
図25
図26A
図26B
図26C
図27A
図27B
図28A
図28B
【国際調査報告】