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特表2022-553742多層構造体、スタンドアップパウチ及びそれらの方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】多層構造体、スタンドアップパウチ及びそれらの方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20221219BHJP
   B32B 1/02 20060101ALI20221219BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20221219BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B1/02
B65D65/40 D
B65D30/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524140
(86)(22)【出願日】2020-10-22
(85)【翻訳文提出日】2022-06-21
(86)【国際出願番号】 IB2020020066
(87)【国際公開番号】W WO2021079197
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】62/924,657
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514091253
【氏名又は名称】ブラスケム・エス・エー
(71)【出願人】
【識別番号】522164558
【氏名又は名称】テクノソリューションズ・アセーソリア・エルティーディーエー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン・アンドラデ・パドゥアン
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・オーガスト・マイア・ファリア
【テーマコード(参考)】
3E064
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E064AB25
3E064AB26
3E064BA26
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC18
3E064EA02
3E064GA01
3E064HN05
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC15
3E086AD01
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA29
3E086BB62
3E086CA35
4F100AK05B
4F100AK05C
4F100AK06A
4F100AK07
4F100AK41
4F100AK46E
4F100AK63A
4F100AK63B
4F100AK63C
4F100AK69E
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100DA01A
4F100DA01B
4F100DA01C
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4F100DA01E
4F100EH20
4F100GB16
4F100JA04
4F100JB14D
4F100JC00A
4F100JC00B
4F100JC00C
4F100JD01E
4F100JK08D
4F100JK09D
4F100JK10
4F100JL12A
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
多層構造体は:ポリエチレン系ポリマーフィルムであって、封止層と;少なくとも1つの中間層と;印刷層と;を含む、ポリエチレン系ポリマーフィルムと;前記ポリエチレン系ポリマー基板の前記印刷層上に硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスの外層と、を含むことができ、前記多層構造体が、2秒以下のシーリングのサイクルで、且つポリエチレンの融解温度に相当する温度で、シーリングバーが前記ポリエチレン系ポリマーフィルムに適用されたときに、前記シーリングバーがポリマーを含まないままである熱表面抵抗を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造体であって:
ポリエチレン系ポリマーフィルムであって:
封止層と;
少なくとも1つの中間層と;
印刷層と;
を含む、ポリエチレン系ポリマーフィルムと;
前記ポリエチレン系ポリマーフィルムの前記印刷層上に硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスの外層と、
を含み、
前記多層構造体は、2秒以下のシーリングのサイクルで、且つ前記ポリエチレン系ポリマーフィルムの融解温度に相当する温度で、シーリングバーが前記ポリエチレン系ポリマーフィルムに適用されたときに、前記シーリングバーがポリマーを含まないままである、熱表面抵抗を有する、多層構造体。
【請求項2】
前記封止層が、5~40重量%の低密度ポリエチレン及び50~95重量%の直鎖状低密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
前記少なくとも1つの中間層が、50重量%までの直鎖状低密度ポリエチレン及び50~100重量%の高密度ポリエチレンを含む、請求項1又は2に記載の多層構造体。
【請求項4】
前記印刷層が、50重量%までの直鎖状低密度ポリエチレン及び50~100%の高密度ポリエチレンを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項5】
前記ポリエチレン系ポリマーフィルムが、少なくとも2つの中間層の間にバリア層をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項6】
前記バリア層が、エチレンビニルアルコール又はポリアミドを含む、請求項5に記載の多層構造体。
【請求項7】
前記硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスが、前記多層構造体の10%以上の伸び時に目に見える亀裂を示す伸び度を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項8】
前記ポリエチレン系ポリマーフィルムの少なくとも一部が、少なくとも50%の、ASTM D6866-18法Bで測定したバイオベースの炭素含有量を示す、請求項1から7のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項9】
前記封止層、前記少なくとも1つの中間層、及び前記印刷層が、一緒に共押出される、請求項1から8のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項10】
前記封止層、前記少なくとも1つの中間層、及び前記印刷層が、一緒に積層される、請求項1から9のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項11】
前記紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスがその上で硬化された前記ポリマー基板が、以下の基準のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1から10のいずれか一項に記載の多層構造体:
-ASTM D5264に従って測定した低温摩擦試験サイクルにおいて、その上に硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスを有さないポリエチレン系フィルムよりも印刷面摩擦試験に少なくとも30%以上耐える;又は
-24時間の浸漬試験において、大豆油、水中濃度50%のエチルアルコール又はポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテルのうちの1つ以上による直接接触を耐える化学的耐性。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の多層構造体を含むスタンドアップパウチ。
【請求項13】
スタンドアップパウチであって:
複数のパネルであって、各パネルが他のパネルに対してシールされており:
ポリマー基板と;
前記ポリマー基板の表面に硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスの外層と;
を含む、複数のパネル;
を含み、
前記紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスをその上に硬化された前記ポリマー基板が、以下の基準のうちの少なくとも1つを満たす、スタンドアップパウチ:
-2秒以下のシーリングサイクルで、且つ前記ポリマー基板の融解温度に相当する温度で、シーリングバーが前記複数のパネルに適用されたときに、前記シーリングバーがポリマーを含まないままである熱表面抵抗;
-ASTM D5264に従って測定した低温摩擦試験サイクルにおいて、その上に硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスを有さないポリマー基板よりも印刷面摩擦試験に少なくとも30%以上耐える;又は
-24時間の浸漬試験において、大豆油、水中濃度50%のエチルアルコール又はポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテルのうちの1つ以上による直接接触を耐える化学的耐性。
【請求項14】
前記硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスが、前記多層構造体の10%以上の伸び時に目に見える亀裂を示す伸び度を有する、請求項13に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項15】
前記硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスが、前記多層構造体の10%未満の伸び時に目に見える亀裂を示す伸び度を有する、請求項13に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項16】
硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性ワニスが、水系又は溶剤系インク上に塗布される、請求項13~15のいずれかに記載のスタンドアップパウチ。
【請求項17】
前記紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスが、前記多層構造体の少なくともシール領域に塗布される、請求項13~16のいずれかに記載のスタンドアップパウチ。
【請求項18】
前記ポリマー基板が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、又はエチレンビニルアルコールコポリマーから選択される単一材料から形成される、請求項13~17のいずれかに記載のスタンドアップパウチ。
【請求項19】
前記スタンドアップパウチが、少なくとも70重量%の少なくとも1つのポリエチレン、及び30重量%以下の少なくとも1つのポリプロピレンを含む、請求項12~17のいずれかに記載のスタンドアップパウチ。
【請求項20】
前記スタンドアップパウチが、少なくとも70重量%の少なくとも1つのポリプロピレン、及び30重量%以下の少なくとも1つのポリエチレンを含む、請求項12~17のいずれかに記載のスタンドアップパウチ。
【請求項21】
前記少なくとも1つのポリエチレン及び少なくとも1つのポリプロピレンが、層内で一緒にブレンドされている、請求項19又は20に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項22】
前記少なくとも1つのポリエチレン及び少なくとも1つのポリプロピレンが、別個の層にある、請求項19又は20に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項23】
前記スタンドアップパウチが、別個のバリア層中に少なくとも90重量%の少なくとも1つのポリエチレン、及び10重量%以下の少なくとも1つのエチレンビニルアルコールを含む、請求項12~17のいずれか一項に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項24】
前記ポリマー基板が、一緒に共押出された少なくとも2つの層を含む、請求項13~23のいずれか一項に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項25】
前記ポリマー基板が、一緒に積層された少なくとも2つの層を含む、請求項13~23のいずれか一項に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項26】
前記ポリマー基板が、以下を含むポリエチレン系ポリマーフィルムである、請求項13~25のいずれかに記載のスタンドアップパウチ:
封止層と;
少なくとも1つの中間層と;
印刷層と。
【請求項27】
前記封止層が、5~40重量%の低密度ポリエチレン及び50~95重量%の直鎖状低密度ポリエチレンを含む、請求項26に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項28】
前記少なくとも1つの中間層が、50重量%までの直鎖状低密度ポリエチレン及び50~100重量%の高密度ポリエチレンを含む、請求項26または27に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項29】
前記印刷層が、50重量%までの直鎖状低密度ポリエチレン及び50~100%の高密度ポリエチレンを含む、請求項26から28のいずれか一項に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項30】
前記ポリエチレン系ポリマーフィルムが、少なくとも2つの中間層の間にバリア層をさらに含む、請求項26~29のいずれか一項に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項31】
前記バリア層が、エチレンビニルアルコール又はポリアミドを含む、請求項30に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項32】
前記ポリエチレン系ポリマーフィルムの少なくとも一部が、少なくとも50%の、ASTM D6866-18法Bで測定したバイオベースの炭素含有量を示す、請求項13から31のいずれか一項に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項33】
前記多層構造体が、少なくとも20 kGvの電子ビーム照射を受けない同じ多層構造体と比較して、少なくとも10%の引張強度の改善を有する、請求項12~32のいずれか一項に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項34】
前記多層構造体が、少なくとも20 kGyの電子ビーム照射を受けない同じ多層構造体と比較して、破断点伸びが少なくとも5%減少する、請求項12~33のいずれか一項に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項35】
前記多層構造体が、ASTM D3418に従って測定した融解温度が90~135℃の範囲である、請求項12~34のいずれか一項に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項36】
前記多層構造体が、ASTM D3418に従って測定したシーリング温度が90~135℃の範囲である、請求項12~35のいずれか一項に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項37】
前記多層構造体が、ASTM D1709-01に従って測定した自由落下ダート法による耐衝撃性が80 gfを超える、請求項12~36のいずれか一項に記載のスタンドアップパウチ。
【請求項38】
多層構造体を形成する方法であって:
封止層と;
少なくとも1つの中間層と;
印刷層と;
を含むポリエチレン系ポリマーフィルムを形成するステップと;
前記印刷層上に紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスを塗布するステップと;
前記紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスに紫外線又は電子ビーム放射を照射して、請求項1から11のいずれか一項に記載の多層構造体を形成するステップと;
を含む、方法。
【請求項39】
前記ポリエチレン系ポリマーフィルムの前記封止層の一部を別のポリエチレン系ポリマーフィルムの前記封止層にシールして、スタンドアップパウチを形成するステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
スタンドアップパウチを形成する方法であって:
紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスをポリマー基板上に塗布するステップと;
前記紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスに紫外線又は電子ビーム放射を照射して、多層構造体を形成するステップと;
前記多層構造体を少なくとも1つの他の多層構造体にシールして、請求項12~37のいずれか一項に記載のスタンドアップパウチを形成するステップと;
を含む方法。
【請求項41】
前記照射ステップが、20 kGv~100 kGvの強度を有する電子ビーム放射を照射するステップを含む、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 消耗品のような製品のためのフレキシブル包装の使用は、そのような包装が提供する独特のマーケティング利益及び資源効率のために、近年増加している。例えば、従来の瓶、缶、箱等と比較して、フレキシブル包装は、消費者に独特の魅力を提供し、消費者は、箱又は他の包装内の製品よりも、中に含まれる製品を選択する傾向がある。さらに、フレキシブル包装は従来の包装よりも資源効率が高い。
【背景技術】
【0002】
[0002] このようなフレキシブル包装の例は、消費財用包装としてますます広く商業的に使用されるようになっているスタンドアップパウチである。これらのパウチは消費者にとって魅力的であり、適切に設計された場合、パッケージを調製するために最小量のポリマー材料を非常に効率的に使用する。
【0003】
[0003] 例えば、スタンドアップパウチは、従来の包装方法よりもはるかに高い製品対包装比を有する。従って、製造業者は、小売製品(例えば、消耗品)の包装に関連する資源及びコストを削減することができ、同時に、環境意識のある消費者にアピールするために、それらの包装を「グリーン」として宣伝することができる。しかしながら、従来のスタンドアップパウチは、ポリエチレンテレフタレート(PET)の層とポリエチレン(PE)の層との積層体を使用しており、構成材料が異なるため、パウチのリサイクルが困難である。
【0004】
[0004] 従来のスタンドアップパウチはまた、従来の包装方法及び材料に対してある種の欠点を有する。そのような欠点の1つは、スタンドアップパウチがそれらの瓶、缶、又は箱の対応物に対して示す安定性の低下である。例えば、特に硬く幅の狭い製品の場合、スタンドアップパウチは、棚上の直立位置に製品を保持するのに適切な安定性を示さないことがある。従って、このような製品にスタンドアップパウチを使用すると、製品が棚の上に直立して載置されないか、さらに悪いことには完全に転倒し、消費者に対する包装及び/又は製品の視認性が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005] 従って、改善された安定性を示しながら、スタンドアップパウチのマーケティング及び環境に優しい利益を示すスタンドアップパウチに対する継続的な必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[0006] このまとめは、以下の詳細な説明においてさらに説明される概念の選択を導入するために提供される。このまとめは、クレームされた主題事項の主要な又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、また、クレームされた主題事項の範囲を限定する補助として使用されることを意図するものでもない。
【0007】
[0007] 1つの態様において、本明細書に開示された実施形態は、多層構造体に関するものであり、前記多層構造体は、ポリエチレン系ポリマーフィルムであって:封止層と;少なくとも1つの中間層と;印刷層と;を含む、ポリエチレン系ポリマーフィルムと;前記ポリエチレン系ポリマーフィルムの前記印刷層上に硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスの外層と、を含み、前記多層構造体が、2秒以下のシーリングのサイクルで、且つポリエチレン系ポリマーフィルムの融解温度に相当する温度で、シーリングバーが前記ポリエチレン系ポリマーフィルムに適用されたときに、前記シーリングバーがポリマーを含まないままである熱表面抵抗を有する。
【0008】
[0008] 別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、多層構造体を含むスタンドアップパウチに関するものであり、前記多層構造体は、ポリエチレン系ポリマーフィルムであって:封止層と;少なくとも1つの中間層と;印刷層と;を含む、ポリエチレン系ポリマーフィルムと;前記ポリエチレン系ポリマーフィルムの前記印刷層上に硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスの外層と、を含み、前記多層構造体が、2秒以下のシーリングのサイクルで、且つポリエチレン系ポリマーフィルムの融解温度に相当する温度で、シーリングバーが前記ポリエチレン系ポリマーフィルムに適用されたときに、前記シーリングバーがポリマーを含まないままである熱表面抵抗を有する。
【0009】
[0009] 別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、スタンドアップパウチに関するものであり、前記スタンドアップパウチは、複数のパネルであって、各パネルが別のパネルにシールされており:ポリマー基板と;前記ポリマー基板の表面に硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスの外層と;を含む、複数のパネル;を含み、前記紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスをその上に硬化された前記ポリマー基板が、少なくとも1つの以下の基準を満たす、スタンドアップパウチ:
-2秒以下のシーリングサイクルで、且つ前記ポリマー基板の融解温度に相当する温度で、シーリングバーが前記複数のパネルに適用されたときに、前記シーリングバーがポリマーを含まないままである熱表面抵抗;
-ASTM D5264に従って測定した低温摩擦試験サイクルにおいて、その上に硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスを有さないポリマー基板よりも印刷面摩擦試験に少なくとも30%以上耐える;又は
-24時間の浸漬試験において、大豆油、水中濃度50%のエチルアルコール又はポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテルのうちの1つ以上による直接接触を耐える化学的耐性。
【0010】
[0010] 別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、多層構造体を形成する方法に関するものであり、前記方法は:封止層と;少なくとも1つの中間層と;印刷層と;を含むポリエチレン系ポリマーフィルムを形成するステップと;前記印刷層上に紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスを塗布するステップと;前記紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスに紫外線又は電子ビーム放射を照射して、封止層と;少なくとも1つ中間層と;印刷層と;を含む:ポリエチレン系ポリマーフィルムと;前記ポリエチレン系ポリマーフィルムの前記印刷層上に硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスの外層;とを含む多層構造体を形成するステップと;を含み、前記多層構造体が、2秒以下のシーリングのサイクルで、且つポリエチレン系ポリマーフィルムの融解温度に相当する温度で、シーリングバーが前記ポリエチレン系ポリマーフィルムに適用されたときに、前記シーリングバーがポリマーを含まないままである熱表面抵抗を有する。
【0011】
[0011] さらに別の態様では、本明細書に開示される実施形態は、スタンドアップパウチを形成する方法に関するものであり、紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスをポリマー基板上に塗布するステップと;前記紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスに紫外線又は電子ビーム放射を照射して、多層構造体を形成するステップと;前記多層構造体を少なくとも1つの他の多層構造体にシールして、スタンドアップパウチを形成するステップであって、前記スタンドアップパウチが、複数のパネルであって、各パネルが他のパネルにシールされており、ポリマー基板と;前記ポリマー基板の表面に硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスの外層と;を含む、複数のパネルを含む、ステップと;を含み、前記紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスをその上に硬化された前記ポリマー基板が、少なくとも1つの以下の基準を満たす:
-2秒以下のシーリングサイクルで、且つ前記ポリマー基板の融解温度に相当する温度で、シーリングバーが前記多層構造体に適用されたときに、前記シーリングバーがポリマーを含まないままである熱表面抵抗;
-ASTM D5264に従って測定した低温摩擦試験サイクルにおいて、その上に硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスを有さないポリマー基板よりも印刷面摩擦試験に少なくとも30%以上耐える;又は
-24時間の浸漬試験において、大豆油、水中濃度50%のエチルアルコール又はポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテルのうちの1つ以上による直接接触を耐える化学的耐性。
【0012】
[0012] 特許請求された主題の他の態様及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[0013]本開示の1つ以上の実施形態によるスタンドアップパウチの様々な図を示す。
図2】本開示の1つ以上の実施形態によるスタンドアップパウチの様々な図を示す。
図3】本開示の1つ以上の実施形態によるスタンドアップパウチの様々な図を示す。
図4】[0014]種々の電子ビーム線量による低密度ポリエチレンの引張強度への影響を示す。
図5】[0015]種々の電子ビーム線量による低密度ポリエチレンの破断点伸びへの影響を示す。
図6】[0016]種々の電子ビーム線量による低密度ポリエチレンの熱変形への影響を示す。
図7】[0017]本開示の1つ以上の実施形態による電子の吸収を示す。
図8】[0018]本開示の1つ以上の実施形態による熱の吸収を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0019] 1つの態様において、本明細書に開示される実施形態は、スタンドアップパウチなどの包装に使用される多層構造体を含むフィルムに関する。特に、フィルム及び多層構造体は、その表面上に硬化された紫外線及び/又は電子ビーム硬化性インク又はワニスを有することができ、これは、材料の外表面に画像又は仕上げを提供するだけでなく、構造体の耐熱性、機械的耐性、及び化学的耐性を増加させ、それによって、例えば、スタンドアップパウチとして機能させる特性を材料に提供することができる。
【0015】
[0020] スタンドアップパウチ
[0021] スタンドアップパウチは様々な形態を有することができるが、典型的な形態例が図1図3に示されており、例のスタンドアップパウチの側面図、上面図及び底面図がそれぞれ示されている。スタンドアップパウチ100は、前面パネル110、背面パネル120、及び前面パネル110と背面パネル120との間に設けられた底部ガセット130を含む複数の多層構造体から形成することができる。前面パネル110及び背面パネル120は、シール領域A及びCに沿って一緒にシールされてもよく、前面パネル110及び背面パネル120のそれぞれは、シール領域Bにおいて底部ガセット130にシールされてもよい。
【0016】
[0022] 当業者には理解されるように、スタンドアップパウチ100は、図1に示すような実質的に平坦な状態(すなわち、スタンドアップパウチ100が内部に製品を含まない)と、スタンドアップ状態(スタンドアップパウチが内部に製品を含む場合)との間を移動するように構成されている。実質的に平坦な状態では、底部ガセット130は、その中心に沿って折り曲げられ得、前面パネル110と背面パネル120との間に挟まれ得る。
【0017】
[0023] 前面パネル110、背面パネル120及び底部ガセット130は、スタンドアップパウチ100の周囲に沿って互いにシールされ、開く閉鎖された内部を形成する。従って、スタンドアップパウチ100は、実質的に平坦な状態とスタンドアップ状態との間を移動するように構成されており、スタンドアップ状態にあるときには、開く閉鎖された内部に製品を収容することができる。具体的には、スタンドアップパウチ100は、シールされた部分A、B、Cと、シールされていない部分(図1に空白で示す)とを備える。
【0018】
[0024] シールされた部分A、B、Cは、閉鎖された開く内部とスタンドアップパウチ100の外部との間に頑丈な気密及び/又は液密シールを形成するのに十分な厚さを有することができる。シールされた部分A、B、Cは、同じ寸法を有してもよいし、又は種々の寸法を有してもよいことが想定される。
【0019】
[0025] 例えば、1つ以上の実施形態において、製品(例えば、消耗品)を開く閉鎖された内部に配置した後、前面パネル110及び背面パネル120の上側を互いにシールすることができる。そのような実施形態では、ユーザ(例えば消費者)は、最終的にこの上部シールを引き裂いて、内部の製品にアクセスすることができる。ノッチ(例えば、「V」形状の引き裂きノッチ)又は他の引き裂きガイドを片側又は両側に提供して、ユーザがパウチを引き裂いて開くのを助けることができる。
【0020】
[0026] さらに、1つ以上の実施形態において、スタンドアップパウチは、再シール可能なジッパーなどと、スタンドアップパウチ100の上側にあるシールとの両方を含むことができる。例えば、スタンドアップパウチ100は、上側に沿ってシールされてもよく、その結果、消費者は、上述したように、開く閉鎖された内部にアクセスするために上部シールを引き裂かなければならない。しかしながら、スタンドアップパウチ100は、消費者が上部シールを取り外すことによって、開く閉鎖された内部に最初にアクセスした後に、消費者が再シール可能なジッパーを使用してスタンドアップパウチ100を繰り返し開閉することができるように、上部シールの下に配置された再シール可能なジッパー(例えば、上部シールよりも底部側に近く配置された)をさらに含むことができる。当業者は、本開示の利点を考慮して、本開示の範囲から逸脱することなく、スタンドアップパウチの上側をシール又は取り外し可能にシールするのに適した他の多くの形態を認識するであろう。また、スタンドアップパウチは、パウチの上部に又は前面パネル若しくは背面パネル上に配置された剛性ノズルのような他の特徴を組み込むことができ、それを通してパウチの内容物を空にすることができることも想定される。さらに、前述の図は互いにシールされた別個のパネルを示しているが、単一パネルの2つ以上の部分を交互に一緒にシールしてフレキシブルパッキング構造体を形成することも考えられる。
【0021】
[0027] フィルム及び多層構造体
[0028] スタンドアップパウチ又は他のフレキシブル包装のパネルは、フィルム又は多層構造体から形成することができ、この構造体は、ポリマー基板と、ポリマー基板の少なくとも一部に塗布されたインク又はワニスの硬化層とを含む。特に、本開示のインク又はワニスは、包装材料を形成するために(別のパネルと)一緒にシールされる表面とは反対側の表面上の外層であってもよい。特に、インク又はワニスは、その上に塗布(又は積層)される従来の保護ポリエステル層のような保護層を有さない外部印刷であってもよい。1つ以上の実施形態において、本明細書に記載されるインク又はワニスは、少なくとも、スタンドアップパウチの例に関連して上述したもののような、一緒にシールされるポリマー基板の部分(領域)に、ただし、シールされる表面とは反対側の基板の表面に塗布することができる。1つ以上の実施形態において、インク又はワニスは、ポリマー基板の露出表面全体に塗布することができる。このようなインク又はワニスは、任意にパッケージに画像又は仕上げを提供することができ、従って、パネルの全て、実質的に全て又は大部分をインク又はワニスの外部印刷でコーティングすることが望ましい場合がある。有利には、これらのインク又はワニスはまた、高温耐性外部ポリエステルフィルムを使用して従来達成されているような耐熱性及びシール強度に適応するために異なる融点を有する2つの材料を積層する必要なしに、ポリマー基板が包装に使用するのに好適であることを可能にする耐熱性、機械的耐性、又は化学的耐性を下にあるポリマー基板に提供することができる。
【0022】
[0029] 紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニス
[0030] 本開示の実施形態は、ポリマー基板の少なくとも一部(少なくとも、シーリング部分のような機械的応力及び熱応力に曝され得る領域)上に塗布及び硬化された紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスを使用することができる。
【0023】
[0031] 1つ以上の実施形態において、紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスは、高い耐熱性を有する熱硬化性材料であってもよく、これは、インク又はワニスが塗布される溶融温度の低いポリマー基板を、材料を構築して包装にシールする際に経験することがある機械的応力及び熱応力に対して保護するのに役立ち得る。紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスは、(積層接着剤とは異なり)材料のリサイクル性を損なわず、また(従来は印刷インク上に高抵抗フィルムを積層することによって生じる)構造保護又は印刷インクの保護のために高い耐熱性及び機械的耐性フィルムを必要としない非エラストマーフィラーとして挙動することができる。
【0024】
[0032] 本明細書に記載のインク又はワニスに使用することができるオリゴマーの例としては、ビスフェノールA[4 EO]ジアクリレート、ポリエチレングリコール200ジアクリレート(PEG200DA)、ポリエチレングリコール400ジアクリレート(PEG400DA)、ポリエチレングリコール600ジアクリレート(PEG600DA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ビスフェノールA[4 EO]ジアクリレート、ネオペンチルグリコール[2 PO]ジアクリレート(NPGPODA)、ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)、ヘキサンジオール[2 EO]ジアクリレート(HD2EODA)、ヘキサンジオール[2 PO]ジアクリレート(HD2PODA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパン[3 PO]トリアクリレート(TMP3POTA)、トリメチロールプロパン[3 EO]トリアクリレート(TMP3EOTA)、トリメチロールプロパン[6 EO]トリアクリレート(TMP9EOTA)、トリメチロールプロパン[9 EO]トリアクリレート(TMP9EOTA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトール[5 EO]テトラアクリレート(PPTTA)、ペンタエリスリトール[5 EO]テトラアクリレート(PPTTA)及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPPA)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0025】
[0033] 他のオリゴマーの例としては、アクリル化エポキシ大豆油(ESBOA)、ビスフェノールAエポキシジアクリレート、アミン変性エポキシアクリレート、ポリエステルジアクリレート、ポリエステルトリアクリレート、ポリエステルテトラアクリレート、脂肪酸変性ポリエステルアクリレート、アミン変性ポリエーテルアクリレート、脂肪族ウレタンジアクリレート、脂肪族ウレタントリアクリレート、脂肪族ウレタンテトラアクリレート、芳香族ウレタンジアクリレート、芳香族ウレタントリアクリレート、及び芳香族ウレタンテトラアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
[0034] 紫外線硬化性インク又はワニスを使用する実施形態では、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、ビス-アシルホスフィンオキシド(BAPO)、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4'-モルホリノブチロフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(TPO)、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィン酸塩(TPO液体)、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、4,4'ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、ピペラジノ(Piparazino)ベースのアミノアルキルフェノン、ポリマー性ベンゾイルぎ酸メチル、ポリ(エチレングリコール)ビス(p-ジメチルアミノベンゾエート)又はエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートのような光開始剤が存在してもよい。
【0027】
[0035] 1つ以上の実施形態において、湿潤剤などの添加剤や、アクリレートシリコンや、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、炭酸カルシウム、カオリンのようなフィラーを使用することができる。また、摩擦係数を改善するために添加されるポリエチレンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス等のワックスも使用することができる。
【0028】
[0036] さらに、インクを対象とする実施形態では、顔料を存在させてインクに色特性を与えることができる。例えば、インクは、C.Iピグメントイエロー12、C.Iピグメントイエロー13、C.Iピグメントイエロー14、C.Iピグメントイエロー110、C.Iピグメントイエロー150、C.Iピグメントイエロー151、C.Iピグメントイエロー155、CIピグメントレッド48、C.Iピグメントレッド48.1、C.Iピグメントレッド48.2、C.Iピグメントレッド48.3、C.Iピグメントレッド48.4、C.Iピグメントレッド57.1、C.Iピグメントレッド122、C.Iピグメントレッド168、C.Iピグメントレッド184、C.Iピグメントブルー15.3、C.Iピグメントブルー15.4、C.Iピグメントブラック7、C.I.ピグメントブラック32、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントバイオレット23、二酸化チタンなどの有機顔料のような成分を含み得る。さらに、1つ以上の実施形態において、分散剤、顔料相乗剤などは、インク配合物中に存在し得る他の添加剤の中のものである。
【0029】
[0037] パッケージ内に高度の剛性が望まれる特定の実施形態では、インク内の剛性(stiffness)又は剛性(rigidity)が望まれ得る。そのような実施形態では、構造体が10%の最大伸び(伸びは任意の方向である)を受けたときに目に見える亀裂又は割れ目を有し得る剛性の熱硬化性インク又はワニスを使用することができる。そのようなインク又はワニスの例としては、アクリル化エポキシ大豆油(ESBOA)、ビスフェノールAエポキシジアクリレートのような高Tg低フレキシブルエポキシオリゴマー、又はTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)、TPGDA(トリプロピレングリコールジアクリレート)のようなモノマーが挙げられ得る。1つ以上の実施形態において、インク又はワニスは少なくとも30℃のTgを有することができる。
【0030】
[0038] 一方、包装の1つ以上の実施形態は、審美的に許容できない欠陥を生じることなく、より大きな柔軟性(及びより大きな伸びに耐える能力)を望む場合がある。さらに、ノズル又はジッパーのような特徴を組み込んだ包装では、これらの特徴の周囲をシールするパネルに不規則性が存在する可能性があり、パネルをシールする際に、これらの特徴はシール領域においてより大きな伸び及び収縮をもたらす可能性がある。従って、1つ以上の実施形態において、硬化性インク又はワニスは、構造体の10%以上の伸び(伸びは任意の方向である)で目に見える割れ目又は亀裂のみを示すフレキシブル熱硬化性インク又はワニスを含むことができる。このようなフレキシブルインクは、20%、40%又は60%までの伸びに対して、裂け目、割れ目又は亀裂なしで耐えることができる。そのようなインク又はワニスの例としては、ポリエステル系オリゴマー、脂肪族ウレタンジアクリレート又は脂肪族ウレタントリアクリレートのようなポリウレタン系オリゴマー、及び/又は、TMP3EOTA(トリメチロールプロパン[3 EO]トリアクリレート)、TMP9EOTA(トリメチロールプロパン[9 EO]トリアクリレート)、TMP3POTA(トリメチロールプロパン[3 PO]トリアクリレート)のようなエトキシル化又はプロポキシル化モノマーが挙げられる。1つ以上の実施形態において、インク又はワニスは30℃未満のTgを有することができる。
【0031】
[0039] インク又はワニス組成物の他の例示的な配合物としては、例えば、米国特許第9,238,740号、第9,404,000号及び第8,729,147号に記載されているものが挙げられ、これらの各々はその全体が参照により組み込まれる。
【0032】
[0040] 1つ以上の実施形態において、水系又は溶剤系インク(UV又は電子ビーム硬化性でない)をポリマー基板上に塗布し、次いで紫外線又は電子ビーム硬化性ワニスの層をインクの上に塗布し、続いて硬化させることができる。この実施形態において、単一印刷層を使用する他の実施形態と同様に、塗布されるワニスは、光沢ワニス、つや消しワニス、テクスチャワニス又はソフトタッチワニスを含み得ることが想定される。
【0033】
[0041] 1つ以上の実施形態において、フレキソ印刷、オフセット印刷又は輪転グラビア印刷プロセスは、紫外線又は電子ビーム乾燥システムに適合して、インク又はワニスを塗布し、次いで硬化させることができる。特定の実施形態において、輪転グラビア印刷は、水系インク又は溶剤系インクを用いて印刷し、続いて電子ビーム硬化性ワニスを用いてニス塗りする場合に使用することができる。
【0034】
[0042] 硬化性インク又はワニスの硬化をトリガするために、20 kGv~100 kGvの電子ビーム又は25 mJ~400 mJの紫外線放射を使用することができる。1つ以上の実施形態において、電子ビームの強度は、20、30、40、50、又は60 kGvのいずれかの下限、及び40、50、60、70、80、90、又は100 kGvのいずれかの上限を有することができ、任意の下限は、いずれかの上限と組み合わせて使用することができる。1つ以上の実施形態において、紫外線放射は、25、50、75、100、150、又は200 mJのいずれかの下限、及び200、250、300、350、又は400 mJのいずれかの上限を有することができ、いずれかの下限は、いずれかの上限と組み合わせて使用することができる。
【0035】
[0043] ポリマー基板
[0044] 前述したように、従来の包装では複数のタイプの材料を使用することがあり、リサイクル性に欠ける材料をもたらし得る。しかしながら、本開示の1つ以上の実施形態において、ポリマー基板は、そのうえにインク又はワニスが塗布される単一材料(又は単一材料の異なるタイプの組み合わせ、すなわち、他の特性のうち分子量、密度、メルトインデックス、シーリング温度、融解温度、結晶化度などの異なる物理的、化学的又は光学的特性を有する1つ以上のポリエチレンなど)から少なくとも実質的に形成されてよく、それにより、特性を犠牲にせずに構造体のリサイクル性を向上させることが可能である。1つ以上の実施形態において、ポリマー基板は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(ポリ乳酸などが挙げられるが、これらに限定されない)、ポリアミド、又はエチレンビニルアルコールコポリマーから選択され得る。
【0036】
[0045] しかし、ポリマー基板は、ポリオレフィンのブレンド、例えば、少なくとも70重量%の少なくとも1つのポリエチレンを30重量%までの少なくとも1つのポリプロピレンとブレンドしたもの、又は少なくとも70重量%の少なくとも1つのポリプロピレンを30重量%までの少なくとも1つのポリエチレンとブレンドしたものなどを含むことができると考えられる。1つ以上のポリエチレンの層及び1つ以上のポリプロピレンの層を有する多層フィルムを、このような70/30又は30/70重量%で使用してもよいことも想定される。他の実施形態では、10重量%までの又は5重量%までの少なくとも1つのエチレンビニルアルコールの多層フィルムと組み合わされた、少なくとも90重量%又は少なくとも95重量%の少なくとも1つのポリエチレンの多層フィルムの、多層フィルムを使用することができる。この多層フィルムは、(オイルのような酸素に敏感な食品の酸化を防止する)高い酸素バリアも有する一方で、リサイクル可能であり得る。例えば、このような実施形態では、リサイクル性を維持しながら、エチレンビニルアルコールのバリア層を1つ以上のポリエチレン層と組み合わせて使用することができる。一実施形態では、少なくとも1つのポリエチレンの1つ以上の層と組み合わせて使用されるポリアミドのバリア層を使用してもよいことがさらに想定される。
【0037】
[0046] 1つ以上の実施形態において、本開示で使用される少なくとも1つのポリエチレンは、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び/又は直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、又はこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0038】
[0047] 1つ以上の実施形態では、ポリマー基板中に石油化学HDPE、LDPE、及び/又はLLDPE樹脂を使用することができるが、1つ以上の特定の実施形態では、ポリエチレンバージン樹脂はバイオベースであってもよい。
【0039】
[0048] 本開示によるバイオベースのエチレンポリマー(HDPE、LDPE、及び/又はLLDPE)は、生物学的由来のモノマーの重量%を含有するポリオレフィンを含むことができる。天然物に由来するバイオベースのエチレンポリマー及びモノマーは、化石燃料源から得られるポリマー及びモノマー(石油ベースのポリマーとも呼ばれる)とは区別され得る。バイオベースの材料は、大気中のCO2を積極的に削減する源から得られるか、そうでなければ製造時のCO2排出量が少ない源から得られるため、このような材料はしばしば「グリーン」又は再生可能とみなされている。化石資源から得られるものとは対照的に、天然資源に由来する製品の使用は、大気中の二酸化炭素濃度の増加を減少させ、温室効果の拡大を効果的に制限する有効な手段として、ますます広く好まれるようになってきた。このようにして天然原料から得られた製品は、化石起源の製品と比較して、再生可能な炭素含有量に違いがある。この再生可能な炭素含有量は、技術ASTM D 6866-18 Norm「放射性炭素分析を用いた固体、液体及び気体サンプルのバイオベース含有量を決定するための標準試験法」に記載されている方法論によって証明することができる。再生可能な天然原料から得られる製品は、それらのライフサイクルの終わりに焼却することができ、非化石起源のCO2のみを生成するという付加的な特性を有する。
【0040】
[0049] バイオベースのエチレン系ポリマーの例としては、サトウキビ及びテンサイ、カエデ、ナツメヤシ、サトウキビ、モロコシ、アメリカ竜舌蘭、デンプン、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、モロコシ、コメ、ジャガイモ、キャッサバ、サツマイモ、藻類、果物、柑橘類、セルロースを含む材料、ワイン、ヘミセルロースを含む材料、リグニンを含む材料、セルロース類、リグノセルロース(lignocelluosics)、木材、木質植物、わら、サトウキビバガス、サトウキビ葉、トウモロコシ茎葉、木材残渣、紙、ペクチン、キチン、レバン、プルランなどの多糖類、及びそれらの任意の組み合わせなどの天然源に由来するエチレンから生成されたポリマーが挙げられ得る。
【0041】
[0050] バイオベースの材料は、サトウキビからエタノールを製造し、続いてエタノールをエチレンに脱水するなど、エチレンを製造するための任意の適切な方法によって処理することができる。また、発酵によりエタノールに加えて高級アルコールの副生成物が生成されることも理解される。脱水の際に高級アルコール副生成物が存在する場合には、エタノールと共に高級アルケン不純物が生成され得る。従って、1つ以上の実施形態において、エタノールは、高級アルコール副生成物を除去するために脱水の前に精製され得、一方、他の実施形態において、エチレンは、脱水の後に高アルケン不純物を除去するために精製され得る。
【0042】
[0051] エチレン製造に使用されるバイオエタノールとして知られる生物学的に供給されたエタノールは、サトウキビやビートなどの培養物に由来する、又はトウモロコシなどの他の材料と関連する加水分解デンプンに由来する糖の発酵によって得ることができる。また、バイオベースのエチレンは、セルロース及びヘミセルロースからの加水分解ベースの生成物から得ることができ、これらはわら及びサトウキビの皮のような多くの農業副生成物中に見出され得ることも想定される。この発酵は多様な微生物の存在下で行われ、その中で最も重要なのは酵母Saccharomyces cerevisiaeである。それから生じるエタノールは、通常300℃以上の温度で触媒反応によってエチレンに変換することができる。高比表面積γ-アルミナのような多種多様な触媒をこの目的に使用することができる。他の例としては、米国特許第9,181,143号及び第4,396,789号に記載された教示が挙げられ、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
[0052] 1つ以上の実施形態において、天然材料から得られたバイオベース製品は、技術基準ASTM D 6866-18「放射性炭素分析を用いて固体、液体及び気体サンプルのバイオベース含有量を決定するための標準試験法」に記載されている方法論に従って、それらの再生可能な炭素含有量に関して認証することができる。
【0044】
[0053] 本開示によるバイオベース樹脂(バイオベースHDPE、バイオベースLDPE、及びバイオベースLLDPEを含む)は、少なくとも5%のASTM D6866-18方法Bによって測定されるバイオベース炭素含有量を有するか、又は5%、10%、15%、25%、40%及び50%のいずれかの下限と、60%、75%、90%、98%及び100%のいずれかから選択される上限とを有するエチレン含有樹脂を含むことができ、この場合、いずれかの下限はいずれかの上限と組み合わせることができる。さらに、1つ以上の実施形態で使用することができる再生可能資源由来の別のポリマーはポリ乳酸であり、再生可能資源から形成されることに加えてコンポスト化も可能であることにも留意されたい。
【0045】
[0054] 1つ以上の実施形態において、1つ以上のエチレン系ポリマー組成物は、ASTM D1238に従って190℃/2.16 kgで測定したメルトインデックスが0.5~2 g/10分の範囲であるHDPE及び/又はLDPE及び/又はLLDPE(それぞれ任意にバイオベースであってもよい)を含む。特に、メルトインデックスは、0.25、0.5、又は0.75 g/10分のいずれかの範囲の下限から0.4、0.5、1、又は2 g/10分のいずれかの範囲の上限までの範囲を有することができ、ここで、いずれかの下限は、いずれかの上限と組み合わせて使用することができる。
【0046】
[0055] 1つ以上の実施形態において、1つ以上のエチレン系ポリマー組成物は、ASTM D 792に従って測定された密度が0.950~0.965 g/cm3の範囲であるHDPE(任意にバイオベースであってもよい)を含む。特に、密度は、0.940、0.950、0.955 g/cm3のいずれかの下限から、0.955、0.960、0.965、0.970 g/cm3のいずれかの上限までの範囲であり、いずれかの下限はいずれかの上限と組み合わせて使用することができる。
【0047】
[0056] 1つ以上の実施形態において、1つ以上のエチレン系ポリマー組成物は、ASTM D 792に従って測定された密度が0.910~0.930 g/cm3の範囲であるLDPE及び/又はLLDPE(任意にバイオベースであってもよい)を含む。特に、密度は、0.910、0.916及び0.920 g/cm3のいずれかの下限から、0.920、0.925、0.930、0.935及び0.940 g/cm3のいずれかの上限までの範囲であり得、ここで、任意の下限は、任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0048】
[0057] 1つ以上の実施形態が単層ポリマー基板を使用してもよいが、2、3、5、又は7層などの複数の層を使用してもよいことも想定される。多層ポリマー基板を使用する場合、1つ以上の実施形態は、共押出多層基板を使用することができ、一方、他の実施形態は、積層多層基板を使用することができ、積層多層基板は、水系接着剤、溶剤系接着剤又は無溶剤接着剤を使用して積層することができる。1つ以上の実施形態において、ポリマー基板は積層されてもよいが、ポリマー基板上に塗布され硬化されるインク又はワニスは、それに適用されるさらなる積層又はフィルムなしの、外層である。80マイクロメートル未満の厚さを有する実施形態では、第1の層を、紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスが既にその上に硬化されている第2の層に積層することができる積層構造体が特に望ましい。そのような実施形態では、第1の層は少なくとも封止層を形成し、第2の層は少なくとも印刷層を形成する。
【0049】
[0058] 特定の実施形態において、ポリマー基板は、少なくとも3つの層を有する多層フィルムを含むことができる:封止層(別のフィルムにシーリングするため)、中間層、及び印刷層(その上にインク又はワニスが塗布され硬化される)。例えば、1つ以上の実施形態において、封止層は、ポリマー基板の全厚さの10~30%を形成することができ、60~95重量%のLLDPE(具体的には、例えば、メタロセンLLDPE)及び5~40重量%のLDPEから形成することができる。中間層は、ポリマー基板の全厚さの40~80%を形成することができ、50~100重量%のHDPE及び50重量%までのLLDPE(具体的には、例えばメタロセンLLDPE)から形成することができる。印刷層は、ポリマー基板の全厚さの10~30%を形成することができ、50~100重量%のHDPE及び50重量%までのLLDPE(具体的には、例えばメタロセンLLDPE)から形成することができる。本段落に示す重量%は、多層フィルム構造体中の各層の総重量に基づく。
【0050】
[0059] 1つ以上の実施形態において、ポリマー基板は、少なくとも5つの層を有する多層フィルムを含むことができる:封止層(別のフィルムにシーリングするため)、第1の中間層、バリア層、第2の中間層、及び印刷層(その上にインク又はワニスが塗布され硬化される)。例えば、1つ以上の実施形態において、封止層は、ポリマー基板の全厚さの10~20%を形成することができ、60~95重量%のLLDPE(具体的には、例えば、メタロセンLLDPE)及び5~40重量%のLDPEから形成することができる。第1の中間層は、ポリマー基板の全厚さの15~30%を形成することができ、50~100重量%のHDPE及び50重量%までのLLDPE(具体的には、例えば、メタロセンLLDPE)から形成することができる。バリア層は、ポリマー基板の全厚さの5~20%を形成することができ、エチレンビニルアルコールから形成することができる、又はより特定の実施形態では5~10重量%を形成することができる。第2の中間層は、ポリマー基板の全厚さの15~30%を形成することができ、50~100重量%のHDPE及び50重量%までのLLDPE(具体的には、例えば、メタロセンLLDPE)から形成することができる。印刷層は、ポリマー基板の全厚さの10~20%を形成することができ、50~100重量%のHDPE及び50重量%までのLLDPE(具体的には、例えば、メタロセンLLDPE)から形成することができる。本段落に示す重量%は、多層フィルム構造体中の各層の総重量に基づく。
【0051】
[0060] さらに、ポリマー基板は、加工助剤、潤滑剤、帯電防止剤、清澄化剤、核剤、β-核剤、スリップ剤、酸化防止剤、相溶化剤、制酸剤、HALSのような光安定剤、IR吸収剤、白色化剤、無機フィラー、有機及び/又は無機染料、抗ブロッキング剤、加工助剤、加工助剤、難燃剤、可塑剤、殺生物剤、接着促進剤、金属酸化物、鉱物フィラー、グリダント、オイル、酸化防止剤、オゾン防止剤、促進剤、及び加硫剤のような1つ以上のポリマー添加剤を含む、ブレンド中にポリマー組成物に添加されたときに種々の物理的及び化学的特性を改変するフィラー及び添加剤を含むポリマー組成物から形成することができる。
【0052】
[0061] 多層構造体特性
[0062] 1つ以上の実施形態において、多層構造体は、50~250マイクロメートルの範囲の厚さを有することができ、例えば、50、60、70、80、又は100マイクロメートルのいずれかの下限、及び120、150、200、又は250マイクロメートルのいずれかの上限を有することができ、いずれかの下限をいずれかの上限と組み合わせて使用することができる。特定の実施形態において、スタンドアップパウチは、70~250マイクロメートルの範囲の厚さを有する多層構造体のパネルから構成され得る。さらに、積層構造体を使用する実施形態では、積層フィルムは50~100マイクロメートルの範囲の厚さを有することができる。
【0053】
[0063] 上述したように、ポリマー基板の表面への紫外線又は電子ビーム硬化性インク又はワニスの塗布及び硬化は、硬化されたインク又はワニスのないポリマー基板と比較して、表面の耐熱性、機械的耐性、及び/又は化学的耐性の改善をもたらすことができる。1つ以上の実施形態において、その上の硬化されたインク又はワニスは、ポリマー基板の厚さにわたって特性の差を生じさせることができ、その結果、ポリマー基板の印刷表面は、特にシール表面に対して改善された特性を示すことができる。
【0054】
[0064] 例えば、多層基板又はフィルムのパネルを互いにシールする際に、耐熱性の増加を示すことができる。このようなシール操作の間に、シーリングバーを使用してパネルを一緒に加熱してシールすることができる。シーリングバーは、ポリマー基板が溶融し始める(及び一緒にシールし始める)温度までポリマー基板を加熱することができるが、熱硬化性インク又はワニスの外部印刷層(少なくともシーリングバーの位置に相当する領域において)は、フィルムの印刷表面の熱特性を変化させて、インク又はワニスが、シーリングバーが溶融ポリマーによって汚染されるのを防止することができる。1つ以上の実施形態において、UV又はEB硬化性インク又はワニス(一旦ポリマー基板上に硬化される)によって与えられる耐熱性は、ポリマー基板の耐熱性又は保護を十分な程度まで増大させることができ、その結果、UV又はEB硬化されていないポリマー基板と比較して、2分間までのシーリングサイクルにおいて、シーリングバー上にポリマーが融解することなく、シーリングバーをポリマー基板と接触させたままにすることができる(すなわち、シーリングバーはポリマーを含まないままである)。
【0055】
[0065] 1つ以上の実施形態において、熱安定性は、スタンドアップパウチを形成するプロセス中のポリマー基板の耐熱性の増加であってもよく、これにより、その上でインク又はワニスが硬化されていないポリマー基板の融解温度よりも少なくとも20℃、少なくとも40℃、又は少なくとも60℃だけ処理温度を上昇させることができる。
【0056】
[0066] 同様に、熱硬化性インク又はワニスの存在は、耐引っかき性及び耐摩擦性を増大させることによって、多層構造体又はフィルムを引っかきから保護するのにも役立ち得る。1つ以上の実施形態において、硬化されたインク又はワニスは、多層構造体又はフィルムが、その上で硬化されたインク又はワニスのないポリマー基板と比較して、ASTM D5264に従って測定される低温摩擦試験の少なくとも30%以上のサイクルの摩擦試験に耐えるように表面抵抗を増加させることができる。より特定の実施形態では、硬化されたインク又はワニスをその上に有する本フィルムは、30、50、70、又は100%より多いサイクルのいずれかの下限、又は100、125、150、175、又は200%より多いサイクルのいずれかの上限に耐えることができ、いずれかの下限は、いずれかの上限と組み合わせて用いることができる。
【0057】
[0067] EB硬化は、ポリマー分子上で重合又は3D網状化又は切断を引き起こす。1つ以上の実施形態において、ポリマーは、分子サイズが増大し、その結果、いくつかの特性が改善されて網状になることがあり、その結果、融点、シーリング温度、引張強度が増大し、同時に、伸び、破断点伸び及び柔軟性が低下することがある。この効果は、特にポリエチレンを使用して存在し得る。ポリエチレンはそれ自体が加熱されるよりも物理的状態変換を受けるためにより多くのエネルギーを必要とする。これらの2つの異なる熱状態は、顕熱(温度上昇を起こして感じる熱)と潜熱(温度変化なしに物理状態の変化を促進するために消費される熱)として認識されている。例として、ポリエチレンの顕熱は1.55 J/g℃であり、潜熱は164 J/gである。したがって、1グラムのPEを25℃から中密度PEの平均融点約130℃まで加熱するためには約162.75 Jを消費する。しかし、これを超えて、もし熱が供給されたままであれば、断熱環境下で164J/gまでは温度変化は観測されないが、物理状態は固体から液体(粘性)に変化する。
【0058】
[0068] 次に図4~6を参照すると、図4~6は、低密度ポリエチレンサンプルの機械的特性、特に引張強度及び破断点伸びに及ぼす電子ビーム照射の影響を例示するものであり、これらはいずれもASTM D638に従って測定される。図4に示すように、図4は、0 kGvと100 kGvの間で1kGV当たり約0.4 kgf/cm2の割合で、電子ビーム線量と引張強度の増加との相関関係を示している。フィルム上へのEB放射による3D重合によって引き起こされるポリエチレンの機械的耐性のこの改善はまた、スタンドアップパウチサイクル形成中の包装全体の安定性に対する利益を提供し得る。
【0059】
[0069] 図5を参照すると、図5は、LDPEの破断点伸びが0 kGyから100 kGyまでの間に線量1 kGy当たり1.33%近くの割合で570%から437%まで減少し、全伸びの総変動が23%であることを示している。破断点伸びはポリエチレンの弾性に関係する特性である。弾性は高温でさらに顕著であり、EB放射がPEの弾性を減少させる傾向は、より低い弾性が製造中のスタンドアップパウチの寸法安定性を保存するので、スタンドアップパウチの製造プロセスにとって非常に有益である。
【0060】
[0070] 次に図6を参照すると、図6は、EB線量によるLDPEの熱変形を示す。熱変形試験では、厚さ3.0×1.5 cm×2 mmのLDPEのサンプルを、120℃のオーブンで1 kgの牽引力を加え、重量を加える前に30分、及び重量を加えた後にさらに30分の予備加熱の合計で行う。厚さの変化(%)は熱変形と考えられる。非照射LDPEの値は標準100%であり、線量増加に伴う厚さの減少は非常に顕著であった。従って、本発明者らは、電子ビームを照射することにより、図4~6に示す低密度ポリエチレンのようなポリマー基板の熱強度耐性を著しく改善できることを見出した。
【0061】
[0071] 図7に示すように、インク又はワニスの電子ビーム硬化中に、電子はポリマー基板に吸収されるが、吸収が減少するにつれてポリマー基板の深部に進行する。その電子ビーム放射は、ポリエチレンのようなポリマー基板の融解温度、シーリング温度及び引張強度を増加させることができる。電子ビーム放射は、分子の重合及び架橋によりポリエチレンの融点を高くすることができるが、室温からポリエチレンの融点に到達するために必要な総熱量と、融解温度でポリエチレンを溶融させるために必要な総熱量は非常に近い。本発明者らは、これら2つの特性の和が、ポリエチレンが電子ビーム放射によって処理されるときに独特の特性を生成することを見出した。すなわち、印刷表面におけるフィルムの最初のマイクロメートルがその融解温度を上昇させ、その結果として、入ってくる熱の消費がフィルムの最初の部分で低減され、シーリングプロセスが行われるフィルムのより深い部分の熱を節約する。具体的には、図8に示すように、電子吸収は表面で最も高いが、熱吸収は深さが深くなるにつれて大きくなる。この結果は、基板の上部における融解温度の上昇によるものであり、したがって、熱は基板のより深いところで吸収され、そこで構造のシールが起こる。
【0062】
[0072] 従って、紫外線又は電子ビームはインクを硬化させ、ポリマー基板の耐熱性を増加させるだけでなく、EB放射を受けたポリマー基板は、単に引張強度の増加及び破断点伸びの減少から生じるだけでなく、エネルギー集中がシーリングに隣接するポリマー基板のより深いところで生じ、構造体の印刷側の亀裂を回避するのにも役立つため、より大きな機械的安定性を有することができる。
【0063】
[0073] 従って、1つ以上の実施形態において、インク又はワニスは、硬化時に、本明細書に記載のインク又はワニスを含まない同じポリマー表面と比較して、ASTM D5264による低温摩擦試験において、印刷面x印刷面摩擦試験に少なくとも30%以上のサイクルに耐える機械的強度をポリマー基板表面に提供することができる。1つ以上の実施形態において、フィルムは、インク及びワニス保護なしの同じポリマーよりも、低温摩擦試験において少なくとも50%、100%及び200%多いサイクルに耐えることができる。
【0064】
[0074] したがって、1つ以上の実施形態において、EB照射後、本明細書に記載したフィルムは、EB照射前の同じ構造体よりも少なくとも10%以上高い引張強度を有することができる。1つ以上の実施形態において、構造体は、15%、20%、25%及び30%の引張強度の増加を有することができる。
【0065】
[0075] 従って、1つ以上の実施形態において、EB照射後、本明細書に記載されるフィルムは、EB照射前の同じ構造体よりも少なくとも5%低い破断点伸びの減少を有することができる。1つ以上の実施形態において、構造体は、EB照射前の同じ構造体と比較して、引張強度が10%、15%、15%、20%及び25%低下してもよい。
【0066】
[0076] さらに、構造体が包装に使用されることが想定される場合、構造体はまた、その中に包装される製品に対して耐性でなければならない。1つ以上の実施形態において、インク又はワニスは、硬化時に、ポリマー基板に対して化学的耐性を提供することができ、その結果、機械的な脱メッキ、フレーキング、変色又は脆化を示すことなく、低温24時間製品浸漬試験において、包装される製品との直接接触に耐えることができる。このような試験は従来、スタンドアップパウチによって運ばれる最終製品に対して実施されているが、本開示によれば、浸漬試験は例示的な製品に対して実施することができる。具体的には、そのような浸漬試験は、UV又はEB硬化されたインク又はワニスのサンプルをポリマー基板に浸漬し、25℃で24時間浸漬浴することを含むことができる。サンプルは、大豆油、水中50%濃度のエチルアルコール、又は液体洗剤、具体的にはポリオキシエチレン(9)ノニルフェニルエーテル(商品名IGEPAL(登録商標)CO-630として販売されている)のうちの1つ以上の浴中で試験することができる。24時間後、サンプルを目視検査する。「合格」は、サンプルが3つの浴のいずれにおいても機械的な脱メッキ、フレーキング、変色又は脆化を示さない場合に指定することができる。1つ以上の実施形態において、本明細書に記載されるフィルムのサンプルは、これら3つの浴のそれぞれにおける浸漬試験に「合格」してもよい(1浴につき1サンプル)。
【0067】
[0077] 1つ以上の実施形態において、フィルムは、ASTM D2457に従って測定した45°の角度で、5(マット)ポイントから100(光沢)ポイントまでの範囲の光沢を有することができる。
【0068】
[0078] 1つ以上の実施形態において、フィルムは、ASTM D 1922に従って測定した、機械方向(MD)で30 gFより大きく、横断方向(TD)で100 gFより大きいエルメンドルフ引裂強度を有することができる。
【0069】
[0079] 1つ以上の実施形態において、フィルムは、ASTM D 882に従って測定した1%セカントで、機械方向(MD)で350 MPaを超え、横断方向(TD)で400 MPaを超える引張弾性率を有することができる。
【0070】
[0080] 1つ以上の実施形態において、フィルムは、ASTM D 882に従って測定した、機械方向で8 MPaを超え、横断方向で8 MPaを超える降伏引張強度を有することができる。
【0071】
[0081] 1つ以上の実施形態において、フィルムは、ASTM D 882に従って測定した、機械方向(MD)で40 MPaを超え、横断方向(TD)で30 MPaを超える破断点引張強度を有することができる。
【0072】
[0082] 1つ以上の実施形態において、フィルムは、ASTM D1709-01に従って測定された自由落下ダート法によるプラスチックフィルムの耐衝撃性が80 gfを超えることができる。
【0073】
[0083] いくつかの例示的な実施形態のみを詳細に説明したが、当業者は、本発明から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの修正が可能であることを容易に理解するであろう。従って、全てのそのような修正は、特許請求の範囲に定義されるように、本開示の範囲内に含まれることが意図される。特許請求の範囲において、ミーンズ・プラス・ファンクション条項は、列挙された機能を実行するものとして本明細書に記載された構造体をカバーすることを意図しており、構造的同等物だけでなく同等の構造体もカバーする。従って、釘とねじは、釘が円筒面を使用して木製部品を一緒に固定するのに対してねじは螺旋面を使用するという点で構造的に等価ではないが、木製部品を固定する環境では、釘とねじは等価構造であり得る。本明細書中のクレームのいずれかの限定について35 U.S.C.§112(f)を援用しないことは、出願人の明白な意図である。ただし、クレームが関連する機能と共に「のための手段」という語を明示的に使用しているものは除く。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】