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特表2022-553744がん細胞の成長を阻害するアミド誘導体を含む医薬調製物およびそれを含有する医薬品
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  • 特表-がん細胞の成長を阻害するアミド誘導体を含む医薬調製物およびそれを含有する医薬品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】がん細胞の成長を阻害するアミド誘導体を含む医薬調製物およびそれを含有する医薬品
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/517 20060101AFI20221219BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61K31/517
A61P35/00
A61K9/16
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/12
A61K9/20
A61K47/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524152
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 KR2020014577
(87)【国際公開番号】W WO2021080375
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】10-2019-0132809
(32)【優先日】2019-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0137829
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515022445
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンイル
(72)【発明者】
【氏名】クォン,テクォン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ホテク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンイル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC27
4C076DD38
4C076DD41C
4C076EE16
4C076EE30
4C076EE31
4C076FF04
4C076GG12
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC46
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含む顆粒と、希釈剤と、を含む医薬調製物に関する。医薬調製物は、優れた打錠特性、摩損度、および質量均一性により該調製物の高い生産性を有する。医薬調製物は、不純物低い生成量および高い安定性を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1:
【化1】

の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含む顆粒と、前記顆粒と混合される希釈剤と、を含む医薬調製物。
【請求項2】
前記化学式1の化合物または前記その薬学的に許容できる塩が、前記医薬調製物の総重量に基づき、2.0重量%以上および20重量%未満の量で前記医薬調製物中に含まれる、請求項1に記載の医薬調製物。
【請求項3】
前記希釈剤が、前記医薬調製物の総重量に基づき、20重量%~50重量%の量で前記医薬組成物中に含まれる、請求項1に記載の医薬調製物。
【請求項4】
前記希釈剤が、マンニトール、結晶セルロース、またはそれらの混合物である、請求項1に記載の医薬調製物。
【請求項5】
前記希釈剤が、マンニトールと結晶セルロースとの重量比0.5:1~3.2:1の混合物である、請求項4に記載の医薬調製物。
【請求項6】
滑剤をさらに含む、請求項1に記載の医薬調製物。
【請求項7】
前記滑剤が、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、安息香酸ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の医薬調製物。
【請求項8】
前記滑剤が、前記医薬調製物の総重量に基づき、0.5重量%~1.5重量%の量で前記医薬組成物中に含まれる、請求項6に記載の医薬調製物。
【請求項9】
請求項1に記載の医薬調製物を調製する方法であって、
1)化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩を薬学的に許容できる添加剤と混合し、その後、造粒を行って顆粒を調製するステップと;
2)前記顆粒を薬学的に許容できる添加剤と混合し、その後、希釈剤を添加して、混合された顆粒を調製するステップと;
3)前記混合された顆粒を製剤化するステップと、
を含む、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の医薬調製物が、パッケージング材料にパッケージングされている、医薬品。
【請求項11】
前記パッケージング材料の材料が、ガラス、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリオレフィン(PO)、アルミニウム(Al)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記パッケージング材料の形状が、ボトル、ブリスター、およびパウチからなる群から選択される、請求項10に記載の医薬品。
【請求項12】
前記パッケージング材料が、吸湿剤を含む、請求項10に記載の医薬品。
【請求項13】
前記吸湿剤が、酸化カルシウムまたはシリカゲルである、請求項12に記載の医薬品。
【請求項14】
前記シリカゲルが、125ml HDPEボトルに基づき2~5gの量で前記パッケージング材料に含まれる、請求項13に記載の医薬品。
【請求項15】
請求項1に記載の医薬調製物を調製することを含む不純物の形成を低減することにより医薬調製物の安定性を改善する方法であって、
1)化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩を薬学的に許容できる添加剤と混合し、その後、造粒を行って顆粒を調製するステップと;
2)前記顆粒を薬学的に許容できる添加剤と混合し、その後、希釈剤を添加して、混合された顆粒を調製するステップであって、前記希釈剤がマンニトールと結晶セルロースとの0.50:1~3.2:1の重量比の混合物である、ステップと;
3)前記混合された顆粒を製剤化するステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の医薬調製物の治療有効量を投与することを含む、対象におけるがんを処置する方法であって、前記対象が、1つまたは複数のEGFRまたはHER2活性化突然変異を有することが決定されている、方法。
【請求項17】
前記対象が、S310F/Y、I655V、V659E、R678Q、V697L、T733I、L755X、I767M、D769H/N/Y、V773M、V777L/M、L786V、V842I、およびL869Rからなる群から選択される1つまたは複数のHER2活性化突然変異を有することが決定されている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記対象が、EGFRvIII、R108K、R222C、A289T、P596L、G598V、Exon20挿入、E709K、G719X、V742I、E746_A750del、S768I、V769M、V774M、R831C、R831H、L858R、L861Q、およびA864Vからなる群から選択される1つまたは複数のEGFR活性化突然変異を有する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、がん細胞の成長を阻害するアミド誘導体を含む医薬調製物およびそれを含有する医薬品に関する。具体的には本発明は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含む顆粒と、希釈剤と、を含む医薬調製物、およびそれを含有する医薬品に関する。
【0002】
本出願は、2019年10月24日出願の韓国特許出願第10-2019-0132809号および2020年10月22日出願の韓国特許出願第10-2020-0137829号に基づく優先権の利益を主張するのもであり、これらの韓国特許出願の参考資料に開示された全内容は、本出願の一部として全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
背景技術
上皮成長因子受容体(EGFR)は、4種のサブタイプ受容体EGFR/ErbB1、Her-2/ErbB2、Her-3/ErbB3、および Her-4/ErbB4として存在することが知られ、ほとんどの固形がん細胞において異常に過剰発現される。加えて、リガンドによる受容体の活性化が、細胞シグナル伝達系を活性化して、がん細胞の成長、分化、血管新生、転移、および抵抗性発現を誘導することは公知である(Wells A., Int J Biochem Cell Biol., 1999, 31, 637-643)。それゆえ、上皮成長因子受容体を通したがん細胞のシグナル伝達が遮断されれば、抗がん効果が優れているであろうという予測に従い、上皮成長因子受容体をターゲットとする抗がん剤を開発するための研究が、積極的に進められている。
【0004】
上皮成長因子受容体をターゲットとするこれらの抗がん剤は、受容体の細胞外領域をターゲットとするモノクローナル抗体薬と、細胞内チロシンキナーゼをターゲットとする低分子薬と、に分類される。モノクローナル抗体薬は、上皮成長因子受容体への選択的結合により、副作用をほとんど示さず、優れた有効性を示すという利点を有する。しかしこれらの薬物は、高価なだけでなく、注射の形態で用いられなければならないという欠点を有する。対照的に、チロシンキナーゼをターゲットとする低分子薬は、相対的に安価であり、経口投与されてもよく、上皮成長因子受容体のサブタイプ(EGFR、Her-2、Her-3、およびHer-4)に対して選択的に、または同時に作用することによるり優れた有効性を有する。
【0005】
上皮成長因子受容体をターゲットとする低分子薬としては、EGFRの選択的阻害剤であるIressa(登録商標)(成分名:ゲフィチニブ;AstraZeneca)、Tarceva(登録商標)(成分名:エルロチニブ;Roche)、およびEGFRとHer-2を同時に遮断する二重阻害剤であるTykerv(登録商標)(成分名:ラパチニブ;GlaxoSmithKline)が挙げられ、これらはそれぞれ、肺がんおよびHer-2ポジティブの進行乳がん用の治療薬として用いられており、他の固形がんの処置に向けて適応を拡大する臨床試験が進行中である。
【0006】
これに関して、韓国特許出願公開第10-2008-0107294号は、がん細胞の成長と、EGFRおよびその突然変異により誘発される薬物への抵抗性と、を選択的かつ効果的に阻害しながら、少ない副作用を有する以下の化学式1の化合物を開示する:
【化1】
【0007】
しかし、この化合物を含む医薬組成物に関連して、当業者は、錠剤およびカプセルなどの調製物を調製する際に生産性および安定性の問題に遭遇した。特に、従来の生産ステップによって調製されたそのような組成物は、典型的には均一な純度、予測可能な安定性、および保存可能期間の問題を抱える。その上そのような組成物は多くの場合、製造時に著しいキャッピングおよびスカッフィングの一貫性がないという問題を抱え、患者が最適以下の用量を投与され得る状況に置かれる。したがってより適した調製物を開発して、患者の転帰を改善するために、この化合物を含む医薬組成物への研究が、引き続き行われている。
[先行技術文献]
[特許文書]
[特許文献1]韓国特許出願公開第10-2008-0107294号
【発明の概要】
【0008】
発明の開示
技術的課題
上記の化学式1を含む医薬調製物に関連して、改善された打錠特性、摩損度および質量均一性による高い生産性と、過酷な条件下でも不純物の生成量が低いことによる高い安定性と、を有する医薬調製物を提供することが意図される。
【0009】
課題の解決
本発明は、先行技術の短所に取り組む。
【0010】
本発明の第一の態様によれば、本発明は、以下の化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含む顆粒と、希釈剤と、を含む医薬調製物を提供する:
【化2】
【0011】
本発明の一実施形態において、化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩は、医薬調製物の総重量に基づき、2.0重量%以上および20重量%未満の量で医薬調製物中に含まれる。
【0012】
本発明の一実施形態において、希釈剤は、医薬調製物の総重量に基づき、20重量%~50重量%の量で医薬組成物中に含まれる。
【0013】
本発明の一実施形態において、希釈剤は、マンニトール、結晶セルロース(microcrystalline cellulose)、またはそれらの混合物である。
【0014】
本発明の一実施形態において、希釈剤は、マンニトールと結晶セルロースとの重量比0.50:1~3.2:1の混合物である。
【0015】
本発明の一実施形態において、医薬調製物は、滑剤をさらに含む。
【0016】
本発明の一実施形態において、滑剤は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、安息香酸ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0017】
本発明の一実施形態において、滑剤は、医薬調製物の総重量に基づき、0.5重量%~1.5重量%の量で医薬組成物中に含まれる。
【0018】
本発明の第二の態様によれば、本発明は、前述の医薬調製物を調製する方法であって、1)化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩を薬学的に許容できる添加剤と混合し、その後、造粒して顆粒を調製するステップと;2)顆粒を薬学的に許容できる添加剤と混合し、その後、希釈剤を添加して、混合された顆粒を調製するステップと;3)混合された顆粒を製剤化するステップと、を含む、方法を提供する。
【0019】
本発明の第三の態様によれば、本発明は、式1の化合物を含有する顆粒を薬学的に許容できる量の少なくとも2種の希釈剤と適切な比率で混合すること、およびそのような組み合わせを錠剤形態に打錠すること、により式1の化合物を含む医薬調製物中の不純物を低減する方法を提供し、式2の化合物(本明細書では不純物IVとも称される)を含むそのような不純物の量は、調製物の総重量の1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.2%未満であろう。
【化3】
【0020】
本発明の第四の態様によれば、本発明は、前述の医薬調製物がパッケージング材料にパッケージングされた医薬品を提供する。
【0021】
本発明の一実施形態において、パッケージング材料の材料は、ガラス、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリオレフィン(PO)、アルミニウム(Al)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、パッケージング材料の形状は、ボトル、ブリスター、およびパウチからなる群から選択される。
【0022】
本発明の一実施形態において、パッケージング材料は、吸湿剤を含む。
【0023】
本発明の一実施形態において、吸湿剤は、酸化カルシウムまたはシリカゲルである。
【0024】
本発明の一実施形態において、シリカゲルは、125ml HDPEボトルに基づき2~5gの量でパッケージング材料に含まれる。
【0025】
本発明の第五の態様によれば、本発明は、それを必要とする対象においてがんを処置するための方法を提供する。
【0026】
本発明の一実施形態において、対象は、1つまたは複数のEGFRまたはHER2活性化突然変異を有することが決定されている。
【0027】
本発明の一実施形態において、腫瘍を処置するための方法は、本発明に従って、以下の化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含む顆粒と、希釈剤とを含む医薬調製物の治療有効量を投与することを含む。
【0028】
本発明の一実施形態において、がんは、肺がん、乳がん、大腸がん、胃がん、脳がん、子宮頸がん、膀胱がん、胆管がん、卵巣がん、膵臓がん、および精巣がんからなる群から選択される。
【0029】
本発明の一実施形態において、がんは、転移性である。
【0030】
発明の有利な効果
本発明による医薬調製物は、化学式1の化合物を含む医薬調製物であり、化学式1の化合物を活性成分として含む顆粒と、特定の希釈剤とを添加することにより、優れた打錠特性、摩損度および質量均一性による調製物の高い生産性を有する。
【0031】
加えて本発明は、医薬調製物中で用いられる金属塩滑剤を指定すること、および医薬調製物を特定のパッケージング材料によってパッケージングすること、により不純物の低い生成量および高い安定性を有する医薬品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実験実施例6による不純物IVの生成量を示したグラフである。実施例1ならびに比較実施例7および8の錠剤を、Formpack(登録商標)Dessiflex Blister(入手元:Amcor)にパッケージングして、それぞれ40℃/75%RHの加速条件下で1、2、および4週間放置し、その後、液体クロマトグラフィーにより化学式2の不純物IVについて測定した。
図2図2は、実験実施例7による不純物IVの生成量を示したグラフである。上記の実施例6~9および比較実施例9の錠剤のそれぞれを、Formpack(登録商標)Dessiflex Blister(入手元:Amcor)にパッケージングし、比較実施例11のHM781-36Bを、HDPEボトルにパッケージングし、その後、これらを過酷な条件である60℃の温度で1、2および4週間貯蔵した。化学式2の不純物IVを、実験実施例6の分析条件に従って上記の期間貯蔵された試料について測定した。
図3図3は、実験実施例8による不純物IVの生成量を示したグラフである。実施例1による錠剤のそれぞれを、Al-Alブリスター、Al-PO+CaO-AlブリスターまたはHDPEボトルのいずれかにパッケージングし(シリカゲル0.5、2.0、3.0、4.0または5.0gのいずれかおよびポリプロピレンキャップを含む、それぞれがポリプロピレンキャップを取り付けた5種の異なるパッケージング)、TEKNILID(登録商標)1207(Tekniplex)をAl-Alブリスターに用い、Formpack(登録商標)Dessiflex Blister(Amcor)をAl-PO+CaO-Alブリスターに用い、BTH-250(Ewha Engineering)をHDPEボトルに用い、ポリプロピレンキャップ(シリカゲルを含む)はまた、商標名MH-Cap(0.5g)、MH-Cap(2.0g)、MH-Cap(3.0g)、MH-Cap(4.0g)およびMH-Cap(5.0g)でEwha Engineeringからも得た。パッケージングされた製品をそれぞれ40℃/75%RH加速条件下で1、2、および4週間放置し、その後、実験実施例6の分析条件に従って化学式2の不純物IVについて測定した。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明を実施する最良の形態
本明細書の以降に、本発明をより詳細に記載する。
【0034】
以下の化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩は、それ自体は非常に安定しているが、それを含む医薬調製物は、過酷な条件下で非常に不安定なプロファイルを呈する。不安定性の問題は、パッケージング材料の改善を通して一部改善されたが、医薬調製物の根本的安定性は、改善されなかった。
【化4】
【0035】
したがって、本発明における上記の化学式1を含む医薬調製物に関連して、改善された打錠特性、摩損度および質量均一性による高い生産性と、過酷な条件下(60℃で1か月)でも式2の構造を有する不純物などの不純物の低い生成量による高い安定性と、を有する医薬調製物を提供することが意図される。
【0036】
本発明は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含む顆粒と、その顆粒に混合される希釈剤と、を含む医薬調製物を提供する。
【0037】
化学式1の化合物(本明細書では以降、コード名HM781-36Bと称される)は、韓国特許出願公開第10-2008-0107294号に記載される通り、がん細胞の成長と、EGFRおよびその突然変異により誘発される薬物への抵抗性と、を選択的かつ有効に阻害しながら少ない副作用を有する化合物である。
【0038】
化学式1の化合物の薬学的に許容できる塩は、無機または有機酸由来の薬学的に許容できる塩の形態で用いられ得る。塩の例は、塩酸、硫酸、二硫酸、硝酸、リン酸、過塩素酸、臭素酸および同様のものなどの無機酸での塩;またはギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、コハク酸、安息香酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、ゲスティシック酸(gestysic acid)、フマル酸、ラクトビオン酸、サリチル酸、フタル酸、エンボン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、カムシル酸(camsylic acid)、ベシル酸もしくはアセチルサリチル酸(アスピリン)などの有機酸での塩であってもよい。加えて、薬学的に許容できる塩は、カルシウム、ナトリウム、マグネシウム、ストロンチウム、カリウムおよび同様のものなどのアルカリ金属との反応により得られた金属塩の形態であってもよい。
【0039】
化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩は、医薬調製物の総重量に基づき1.5重量%以上および25重量%未満、2.0重量%以上および20重量%未満、2.5重量%以上および20重量%未満、または5重量%以上および20重量%未満、好ましくは3.5重量%~15重量%、より好ましくは5重量%~8重量%の量で含まれ得る。
【0040】
化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩が、2.0重量%未満の量で含まれる場合、打錠特性および溶解速度は優れているが、安定性は非常に乏しく、不純物を急速に生成し、それが20重量%以上の量で含まれる場合、錠剤の総含量が減少して、打錠が不可能な質量(70mg未満)に達し、したがって打錠が不可能であるという問題が起こる。
【0041】
加えて、化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩は、0.1~100mg、好ましくは0.5~50mgの量で含まれ得る。
【0042】
医薬調製物は、例えば粉末、錠剤、丸薬、カプセル、液体、懸濁液、エマルジョン、シロップまたは顆粒の形態であってもよく、好ましくは錠剤またはカプセルであってもよいが、それらに限定されない。
【0043】
医薬調製物は、希釈剤、結合剤、崩壊剤および滑剤を薬学的に許容できる添加剤としてさらに含んでもよい。幾つかの実施形態において、希釈剤は、少なくとも2種の異なる希釈剤の組み合わせであってもよい。
【0044】
本発明の実施形態において、医薬調製物は、顆粒の形態で調製された、化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含み得る。顆粒は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩を希釈剤と混合し、その後それを、結合剤を精製水に溶解させた結合剤溶液中で湿式造粒することにより調製され得る。
【0045】
希釈剤は、マンニトール、結晶セルロース、ラクトースおよびリン酸カルシウムからなる群から選択される1種または複数であってもよく、好ましくはマンニトール、結晶セルロース、またはそれらの混合物であってもよい。加えて希釈剤は、顆粒の総重量に基づき50重量%~99重量%、好ましくは60重量%~95重量%、より好ましくは70重量%~90重量%の量で含まれ得る。幾つかの実施形態において、希釈剤は、マンニトールと結晶セルロースとの組み合わせであってもよい。
【0046】
結合剤は、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコールおよびカルボキシメチルセルロースからなる群から選択される1種または複数であってもよく、好ましくはポビドンであってもよいが、それらに限定されない。結合剤は、顆粒の総重量に基づき0.5重量%~10重量%、好ましくは1重量%~7重量%、より好ましくは2重量%~5重量%の量で顆粒に含まれ得る。
【0047】
顆粒は、追加の希釈剤と混合され、その後、精製されて医薬調製物を調製してもよい。顆粒と混合される希釈剤は、顆粒の調製に用いられた希釈剤から物理的に分離され、異なる機能性を有し、したがってそれは互いに分離され、独立して用いられる。顆粒と混合される希釈剤は、好ましくはマンニトール、結晶セルロース、またはそれらの混合物であってもよく、より好ましくはマンニトールと結晶セルロースとの混合物であってもよい。マンニトールと結晶セルロースとの混合物は、0.25:2~4:1.5、0.75:1.25~3.5:1.25、または0.50:1~3.2:1、好ましくは1:1~2:1の重量比でのマンニトールと結晶セルロースとの混合物であってもよい。顆粒と混合される希釈剤は、医薬調製物の総重量に基づき20重量%~50重量%、好ましくは30重量%~40重量%の量で含まれてもよい。顆粒と混合される希釈剤の選択は、医薬調製物の生産性に実際に影響を及ぼし得る。具体的には、前述の希釈剤を選択することにより、錠剤の打錠特性および摩損度が、改善され得、均一な質量を有する錠剤を得ることができる。
【0048】
少なくとも1つの実施形態において、顆粒と混合される希釈剤は、2つのタイプの希釈剤を含んでもよい。幾つかの実施形態において、第一のタイプの希釈剤は、ラクトース、マンニトール、硫酸カルシウム、スクロース、デキストロース、ソルビトール、マルチトール、およびデンプンからなる群から選択され、一方で第二の希釈剤は、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよび同様のものなどののセルロース誘導体である。
【0049】
少なくとも1つの実施形態において、第一の希釈剤は、マンニトールであり、第二の希釈剤は、結晶セルロースであり、マンニトールの結晶セルロースに対する重量比は、0.25:2~4:1.5;もしくは0.75:1.25~3.5:1.25;または好ましくは0.50:1~3.2:1の範囲内である。
【0050】
幾つかの実施形態において、顆粒は、前述の希釈剤と共に崩壊剤と混合され、その後、精製されて医薬調製物を調製してもよい。崩壊剤は、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、およびデンプングリコール酸ナトリウムからなる群から選択される1種または複数、好ましくはクロスポビドンであってもよいが、これらに限定されない。崩壊剤は、医薬調製物の総重量に基づき1重量%~10重量%、好ましくは3重量%~7重量%の量で含まれ得る。
【0051】
幾つかの実施形態において、滑剤が、精製の前に医薬調製物に添加されてもよい。本発明の一実施形態によれば、滑剤は、金属塩滑剤であってもよい。滑剤は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、および安息香酸ナトリウムからなる群から選択される1種または複数であってもよく、好ましくはステアリン酸マグネシウムであってもよい。滑剤は、医薬調製物の総重量に基づき0.5重量%以上および5重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは0.5重量%~1.6重量%の量で含まれ得る。化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩は、金属塩の形態の滑剤が用いられる場合には、乏しい安定性を有し得るが、医薬調製物の安定性は、滑剤を0.5重量%以上および5重量%未満の量で含むことにより改善され得る。
【0052】
幾つかの実施形態において、本発明は、酢酸、アジピン酸、クエン酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、乳酸、プロピオン酸、酒石酸、フマル酸、ギ酸、シュウ酸、カムシル酸、リンゴ酸、マレイン酸、エジシル酸(edisylic acid)、パルミチン酸、ステアリン酸または二酸化ケイ素などのいかなる酸性添加剤も実質的に含まない(1重量%未満)。幾つかの実施形態において、本発明の医薬調製物は、任意のそのような酸性添加剤を0.25重量%未満含有する。幾つかの実施形態において、医薬調製物は、いかなる酸性添加剤も含まない。
【0053】
加えて、医薬調製物は、取り扱い時の薬理活性成分とヒトの手または皮膚との直接の接触を予防するために、即時放出性膜形成剤、腸溶性コーティング基剤、および持続放出性コーティング基剤からなる群から選択される1種のコーティング基剤でコーティングされた外面を有してもよい。
【0054】
即時放出性膜形成剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、およびポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトポリマーからなる群から選択される1種または複数であってもよく、腸溶性コーティング基剤は、(メタ)アクリル酸コポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、および酢酸フタル酸セルロースからなる群から選択される1種または複数であってもよく、持続放出性コーティング基剤は、酢酸セルロース、エチルセルロース、およびポリ酢酸ビニルからなる群から選択される1種または複数であってもよいが、これらに限定されない。
【0055】
コーティング基剤は、医薬調製物の総重量に基づき1重量%~10重量%、好ましくは2重量%~5重量%の量で含まれ得る。特定の実施形態において、コーティング層は、製剤の総重量の約0.5重量%~約5重量%であり、コーティング層は、18重量%未満の二酸化チタンおよび25重量%以下のポリビニルアルコール、そして場合により25重量%以下のラクトースまたはタルクを有する。
【0056】
幾つかの実施形態において、コーティング基剤は、任意の分子量のポリビニルアルコールのみからなるポリ酢酸ビニル基板であってもよく、またはコポリマー、例えばKollicoat(登録商標)IR(BASF、米国ニュージャージー州)に含有されてもよく、または商品名Opadry(登録商標)(Colorcon、米国ペンシルベニア州)、例えばOpadry II(登録商標)85Fシリーズ、Opadry(登録商標)II 89FシリーズもしくはOpadry(登録商標)whiteとして入手できる様々な膜コーティング製品などのポリビニルアルコール基剤のコーティング系の一部として含有されてもよい。
【0057】
本発明の医薬調製物は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩と、薬学的に許容できる担体と、を含み、化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩は、医薬調製物の総重量に基づき5重量%以上および20重量%未満の量で含まれ得る。少なくとも1つの驚くべき観察は、改善された安定性、特に、打錠特性および溶解速度に影響を及ぼすことなく過酷な条件下で不純物の生成を抑制することによる、医薬調製物の安定性である。幾つかの実施形態において、過酷な条件としては、40℃および75%RH加速条件下での1、2、4週間、または2、3、4、5、もしくは6か月の期間の貯蔵を挙げることができる。特定の実施形態において、貯蔵条件としては、30℃および55%RHの下での6~12か月の期間の貯蔵を挙げることができる。
【0058】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態における安定性は、式1の化合物の初期値からの5%を超えるアッセイの変動、または意図する用途のために生物学的もしくは免疫学的手順で使用される場合の効力の許容基準に適合不能であること、不純物の存在など許容基準を超える任意の分解産物、または色、相分離、ケーキング、最終調製物の硬度などの物理的属性、機能試験に適合不能であること、に基づいて評定される。
【0059】
幾つかの実施形態において、本発明の医薬調製物は、適切な設備を用いることにより4~20kp、または好ましくは6~17kpの硬度を有する錠剤の形態である。
【0060】
本発明は、前述の医薬調製物を調製する方法を提供する。該方法は、1)化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩を薬学的に許容できる添加剤と混合し、その後、造粒して顆粒を調製するステップと;2)顆粒を薬学的に許容できる添加剤と混合し、その後、希釈剤を添加して、混合された顆粒を調製するステップと;3)混合された顆粒を製剤化するステップと、を含む。調製方法の各ステップは、前述の医薬調製物の内容物に従って指定される。
【0061】
本発明は、前述の医薬調製物がパッケージング材料にパッケージングされた医薬品を提供する。パッケージング材料は、光、熱、水分および同様のものから調製物を保護するためのものであり、パッケージング材料の材料は、ガラス、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリオレフィン(PO)、アルミニウム(Al)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。パッケージング材料は、前述の材料を有してもよく、ボトル、ブリスター、およびパウチからなる群から選択される形態で調製されてもよい。本発明の実施形態によれば、ボトルは、HDPEで作製されたボトルであってもよく、ブリスターは、PVC、PVDC、PCTFE、PP、PE、COP、COC、PO、Al、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1種または2種以上の材料を含む上部プレートと、Al材料を含む下部プレートと、で作製されてもよい。上部プレートおよび/または下部プレートは、単一構造または二重以上の構造を有してもよい。
【0062】
本発明で用いられるガラス、HDPE、PP、PVC、PVDC、PCTFE、COP、COC、PO、およびAlは、医薬分野の医薬品のパッケージングで共通して用いられるものであってもよい。例えばHDPEは、約50,000~150,000の重量平均分子量および約0.941g/cm~0.965g/cmの密度を有してもよい。PPは、約200,000~600,000の重量平均分子量を有してもよく、PVCは、約1.7~2.0の分子量分布(Mw/Mn)および約1.16g/cm~1.35g/cmの密度を有してもよい。PVDCは、約0.65g/cm~1.72g/cmのの密度を有してもよく、PCTFEは、約2.12の比重を有してもよく、PO、COPおよびCOCは、約1.02g/cm以下の密度を有してもよい。
【0063】
本発明によるパッケージング材料は、吸湿剤を含んでもよい。吸湿剤は、パッケージング材料内部の水分を制御することにより医薬調製物の安定性を上昇させる機能を有する。吸湿剤は、関係する技術分野で一般に用いられる限り、限定なく用いられてもよく、好ましくは酸化カルシウムまたはシリカゲルが、本発明の活性成分に関連して用いられ得る。吸湿剤は、パッケージング材料の材料と混合されて、様々な形態でパッケージング材料に適用されてもよい。本発明の実施形態によれば、シリカゲルを吸湿剤として用いる場合、シリカゲルは、好ましくは2~5g、好ましくは3~5gの量でパッケージング材料に含まれてもよい。シリカゲルの含量は、活性成分(HM781-36B)約480mgを含む調製物をパッケージングするためのパッケージング材料、または約125ml容量のHDPEボトルに基づいて設定された値である。シリカゲルの含量が、2g未満である場合、パッケージング材料内部の医薬調製物の安定性は、パッケージング材料内部の水分を適度に制御することができないため低下する場合があり、シリカゲルの含量が、5gを超える場合、医薬調製物の溶解速度は、医薬調製物そのものの水分に影響を与えることにより低下する場合がある。
【0064】
本発明はまた、それを必要とする対象におけるがんを処置するための方法を提供する。幾つかの実施形態において、がんを処置するための方法は、本発明により、以下の化学式1の化合物またはその薬学的に許容できる塩を含む顆粒と、希釈剤とを含む医薬調製物の治療有効量を投与することを含む。幾つかの実施形態において、医薬調製物は、不純物IVを実質的に含まない。
【0065】
幾つかの実施形態において、がんは、肺がん、乳がん、大腸がん、胃がん、脳がん、子宮頸がん、膀胱がん、胆管がん、卵巣がん、膵臓がん、および精巣がんからなる群から選択される。幾つかの実施形態において、がんは、転移性である。
【0066】
幾つかの実施形態において、対象は、1つまたは複数のEGFRまたはHER2活性化突然変異を有することが決定されている。幾つかの実施形態において、対象は、フーリン様細胞外領域、膜貫通ドメイン、およびキナーゼドメインからなる群から選択される1つまたは複数の部位に1つまたは複数のHER2活性化突然変異を有することが決定されている。
【0067】
幾つかの実施形態において、対象は、S310F/Y、I655V、V659E、R678Q、V697L、T733I、L755X、I767M、D769H/N/Y、V773M、V777L/M、L786V、V842I、およびL869Rから選択される1つまたは複数のHER2活性化突然変異を有することが決定されている。
【0068】
幾つかの実施形態において、対象は、EGFR活性化突然変異を有する固形腫瘍を有することが決定されており、対象は、NSCLCまたは高悪性度膠芽腫を有してもよく、または有していなくてもよい。幾つかの実施形態において、例えばEGFRvIII、R108K、R222C、A289T、P596L、G598Vを含むEGFR活性化突然変異が、細胞外および/または膜貫通領域に位置する。幾つかの実施形態において、例えばEGFRvIII、R108K、R222C、A289T、P596L、G598V、Exon20挿入、E709K、G719X、V742I、E746_A750del、S768I、V769M、V774M、R831C、R831H、L858R、L861Q、A864Vを含むEGFR活性化突然変異が、キナーゼドメインに位置する。幾つかの実施形態において、対象は、がんの処置のために化学療法、生物製剤、免疫療法、HER2標的化治療、根治的放射線療法を受けたことがない。
【0069】
本明細書において以降、好ましい実施例が、本発明の理解を助けるために提供されるが、以下の実施例は、本発明を限定するためではなく、本発明の理解を容易にするために提供されている。
【実施例
【0070】
実施例1
以下の表1に記載された組成に従って、化学式1の化合物(本明細書では以降、「HM781-36B」と称され、Dongwoo Syntech Co., Ltd.により製造)を活性成分として含む錠剤を、調製した。
【0071】
具体的にはHM781-36BおよびD-マンニトール(Roquetteにより製造)を、高剪断ミキサーを利用して湿式造粒して、湿式造粒物を、No.35ふるい(500μm)を用いてHM781-36BをD-マンニトールと分配しながらふるいにかける。その後、適当量の精製水に溶解したポビドン(BASFにより製造)をそれに添加して、顆粒部分を調製した。湿式造粒を通して得られた顆粒を、No.20ふるい(850μm)を用いてふるいにかけ、その後、流動層乾燥機(流動層造粒装置)を用いて乾燥させた。乾燥減量の数値を測定することにより約0.5%以下の結果が得られるまで、上記の工程を繰り返した。
【0072】
上記の工程を通して調製された顆粒分を、マンニトールと結晶セルロース(Mingtai Chemicalにより製造)との混合物およびクロスポビドン(BASFにより製造)と混合し、その後、ステアリン酸マグネシウム(オランダのPeter Grevenにより製造)をそれに添加して、最終の混合を行った。得られた最終混合物を、打錠機(Sejongにより製造)を用いて従来の方法により約5~10kpの硬度を有する錠剤に調製した。
【0073】
実施例2~5
以下の表1に記載された組成に従ってHM781-36Bを活性成分として含む錠剤を、実施例1と同様の手法で調製した。
【表1】
【0074】
数値の単位は、mg/錠であり、精製水は工程の間に除去される。
【0075】
比較実施例1~8
以下の表2に記載された組成に従ってHM781-36Bを活性成分として含む錠剤を、実施例1と同様の手法で調製した。以下の表2において、JRS PHARMAからのPruv(登録商標)フマル酸ステアリルナトリウム、Lian yungang Debang Fine Chemicalからの二塩基性リン酸カルシウム、およびRoquetteからのアルファー化デンプンを用いた。
【表2】
【0076】
数値の単位は、mg/錠であり、精製水は工程の間に除去される。
【0077】
実施例6~9および比較実施例9~10
錠剤を実施例1の通り調製し、その後、Opadary(登録商標)03F180000を用いて錠剤をコーティングし、HM781-36Bまたはその薬学的に許容できる塩を含むコーティング錠を最終的に調製した。実施例6~9ならびに比較実施例9および10の組成を、以下の表3に示す。
【表3】
【0078】
数値の単位は、mg/錠であり、精製水は工程の間に除去される。上記の実施例6~9ならびに比較実施例9および10のHM781-36Bは、医薬調製物の総重量に基づいてそれぞれ5.6重量%、7.7重量%、7.8重量%、7.8重量%、1.9重量%および20重量%の量で含まれた。
【0079】
実験実施例
実験実施例1:実施例1~5および比較実施例1~6の打錠特性の評価
上記の実施例1~5および比較実施例1~6では、打錠前の最終的な顆粒の流動性(式H=ρ/ρにより計算されるハウスナー比、ここでρは、粉末の自由沈降の嵩密度(g/mL)であり、ρは、粉末のタップ嵩密度(g/mL)である)、ならびに打錠ステップ後の100錠のキャッピングおよびスティッキングの特性を決定して、結果を以下の表4に示す。
【0080】
打錠前の最終的な顆粒の流動性は、錠剤がどれほど良好に流動するかの表示であり、流動性が良好であるほど工程における流動性が高く、このことは容易な生産性を示すことにより確認され得る。これは一般に、医薬の指標であり、ハウスナー比と呼ばれる値を用いて評価され、それが1に近いほど、良好な流動性が表され得る。
【0081】
ハウスナー比での自由沈降の嵩密度(g/mL)は、最終的な顆粒約10gを秤量して、それらを50mLメスシリンダーに入れて容量を測定することにより計算し、タップ嵩密度(g/mL)は、自由沈降の嵩密度を測定して床の上のメスシリンダーをタッピングして容量がもはや減少しくなった場合の容量を測定することにより計算した。
【0082】
錠剤の特性は、最終的な顆粒を用いて各錠剤を打錠した後に100錠の各錠剤についてキャッピングおよびスティッキングウが起こるかどうかを視覚的に決定することにより試験した。
【表4】
【0083】
上記の表4によれば、ポストミキシングの間にマンニトール、結晶セルロース、またはそれらの混合物を用いた場合(実施例1~5および比較実施例1~3)、キャッピングまたはスティッキング現象は起こらず、他の希釈液を用いた場合(比較実施例4~6)、キャッピングまたはスティッキング現象が起こることが確認され得る。特に、二塩基性リン酸カルシウムまたはアルファー化デンプンを用いた場合(比較実施例5および6)、約10%~30%のキャッピングまたはスティッキング現象が起こり、それによってより望ましくない結果をもたらした。
【0084】
加えて、ラクトース、二塩基性リン酸カルシウムまたはアルファー化デンプン(比較実施例4~6)および結晶セルロース(比較実施例3)の希釈剤が、単一成分として単独で用いられた場合に、予期せぬ流動度損失が、ハウスナー比1.26以上で調製された錠剤で観察されることが決定された。
【0085】
実験実施例2:実施例6~9ならびに比較実施例9および10の打錠特性
ハウスナー比、キャッピングおよびスティッキングを、実験実施例1と同様の手法で確認した。
【表5】
【0086】
上記の表5の結果から、実施例6~9ならびに比較実施例9および10の全てが1.26以下のハウスナー比を有することが測定され、したがって優れた流動性を有することが確認され得る。
【0087】
加えて、錠剤に打錠した後、実施例6~9および比較実施例9の錠剤のキャッピングおよびスティッキングは、視覚的に観察されなかった。しかし比較実施例10の場合、錠剤の総質量が80mgで、これは同じHM781-36Bを含む実施例9に比較して40%の重量であり、したがって錠剤を調製するのに必要となる最終的な顆粒の最小量に不適切であることが確認された。それゆえ比較実施例10は、打錠が不可能な最終混合物であり、したがって顆粒の評価以外の他の評価を実施しなかった。
【0088】
上記の結果から、驚くべきことに、医薬調製物中に含まれるHM781-36Bの含量を増加させても、錠剤の特性は、顆粒の流動性および打錠を許容できる程度に影響を受けないことが観察された。
【0089】
実験実施例3:実施例1~5および比較実施例1~4の摩損度の評価
上記の実施例1~5および比較実施例1~4による65錠に関して、摩損度を摩損度試験器(ERWEKAにより製造されたTAR200。条件:25rpm、4分)で測定し、結果を以下の表6に示す。
【表6】
【0090】
上記の実施例6によれば、実施例1~5および比較実施例1~4に従う錠剤の全てが、1%以下の摩損度を示したが、ポストミキシングを行った場合にマンニトール、結晶セルロース、またはそれらの混合物を用いた場合には(実施例1~5および比較実施例1~3)、より優れた摩損度を呈することが確認され得る。
【0091】
実験実施例4:実施例1~5および比較実施例1~4の質量偏差試験
実施例1~5および比較実施例1~4に従う10錠について、質量偏差を測定し、結果を以下の表7に示す。
【表7】
【0092】
上記の表7によれば、希釈剤として重量比1:1~2:1のマンニトールと結晶セルロースとの混合物を用いた場合(実施例1~5)、均一な重量を有する錠剤を得ることができたことが確認され得る。
【0093】
実験実施例5:実施例6~9および比較実施例9の溶解評価
上記の実施例6~9および比較実施例9の表を、以下の溶解条件および分析法を利用して溶解について評価した。評価結果を、以下の表8に示す。
【0094】
<溶解条件>
溶解溶液:pH1.2の緩衝溶液900mL中に錠剤2錠を取り、試験した。
- pH1.2の緩衝溶液:HCl 7.0mLおよび水をNaCl 2.0gに溶解して1000mLにした。
デバイス:USP<711>溶解項目のうちの装置2の方法(パドル法)
溶解温度:37±0.5℃
回転速度50±2rpm
【0095】
<HPLC分析条件>
検出器:紫外吸収分光光度計(測定波長:254nm)
カラム:Inertsil ODS-2、4.6×150nm、5μm、または同等のカラム
移動相:アセトニトリル:リン酸緩衝溶液(pH2.5)=40:60
(pH2.5のリン酸緩衝溶液:NaClO 7.0gおよびKHPO 1.7gを精製水1Lに溶解して、リン酸でpH2.5に調整することにより調製した。)
分析時間:10分間
カラム温度:30℃
流速:1.0mL/分
注入容量:50μL
【表8】
【0096】
上記の表8の結果から、pH1.2の上記の実施例6~9および比較実施例9の錠剤の溶解パターンを観察すると、実施例6~9のHM781-36Bの含量が、比較実施例9の含量より高い場合であっても、溶解パターンおよび最終溶解速度が影響を受けなかったことが、確認され得る。
【0097】
実験実施例6:パッケージングされた錠剤の安定性試験(実施例1ならびに比較実施例7および8)
実施例1ならびに比較実施例7および8の錠剤を、Formpack(登録商標)Dessiflex Blister(入手元:Amcor)でパッケージングして、それぞれ40℃/75%RHの加速条件下で1、2、および4週間放置し、その後、液体クロマトグラフィーにより以下の化学式2で示される不純物IVについて測定し(以下の分析条件を参照)、結果を図1および表9に示す。
【0098】
<分析条件>
検出器:紫外吸収分光光度計(測定波長:254nm)
カラム:XTerra RP18、4.6×150nm、3.5μm、または同等のカラム
移動相:A - アセトニトリル:リン酸緩衝溶液(pH2.5)=40:60
B - アセトニトリル:リン酸緩衝溶液(pH2.5)=70:30
カラム温度:30℃
分析時間:45分間
流速:1.0mL/分
注入容量:50μL
【化5】

【表9】
【0099】
図1および表9によれば、ステアリン酸マグネシウムの滑剤を2重量%以上の量で用いた場合(比較実施例7)、不純物IVの量が、加速条件下で放置された時間に比例して着実に増加することが決定された。加えて、別の金属塩滑剤であるフマル酸ステアリルナトリウムを1重量%の量で用いた場合(比較実施例8)、不純物IVの量が、加速条件下で放置された時間に比例して着実に増加することが決定された。具体的には、40℃/75%RHの加速条件下で4週間放置された場合、不純物IVの量が、それぞれ実施例1の錠剤に比較して比較実施例7および8の錠剤では4倍以上増加することが決定された。
【0100】
上記の結果から、驚くべきことに、医薬調製物に含まれる滑剤のタイプおよび含量が、不純物IVの量に影響を与え得ることが観察された。
【0101】
実験実施例7:パッケージングされた錠剤のための安定性試験(実施例6~9ならびに比較実施例9および11)
上記の実施例6~9および比較実施例9の錠剤の安定性を評価した。加えて安定性を、比較実施例11としてHM781-36Bそのものを用いて評価した。
【0102】
具体的には、上記の実施例6~9および比較実施例9の錠剤のそれぞれを、Formpack(登録商標)Dessiflex Blister(入手元:Amcor)でパッケージングし、比較実施例11のHM781-36BをHDPEボトルにパッケージングし、その後、これらを過酷な条件である60℃の温度で1、2、および4週間貯蔵した。安定性評価を、実験実施例6の分析条件に従って上記の期間貯蔵された試料について実施した。安定性評価は、以下の化学式2で示される不純物IVを測定することであり、結果を図2および表10に示す。
【表10】
【0103】
図2および表10によれば、比較実施例11は、HM781-36Bのみを含むため、過酷な条件下で4週間の非常に安定した結果を示した。
【0104】
しかし、HM781-36Bを薬学的に許容できる担体と混合することにより調製された実施例6~9および比較実施例9の錠剤は、上記の化学式2の不純物を生成することが決定された。
【0105】
具体的には、比較実施例9は、医薬調製物の総重量に基づき2.0重量%未満の量のHM781-36Bを含み、したがって上記の化学式2の不純物の生成量が、安定したパッケージング材料にパッケージングされたとしても、時間の経過とともに有意に増加することが決定された。即ち、安定性が、パッケージング材料によりわずかに上昇したとしても、HM781-36Bそのものの安定性を改善しない結果が示された。
【0106】
しかし、医薬組成物の総重量に基づき5重量%以上および20重量%未満の量のHM781-36Bを含む実施例6~9は、上記の化学式2の不純物の生成量が有意に増加しないことを示した。
【0107】
具体的には、60℃の過酷な条件下で4週間放置した場合、不純物IVの量がそれぞれ実施例6~9の錠剤に比較して比較実施例9の錠剤で3.5倍以上増加することが決定された。
【0108】
上記の結果から、驚くべきことに、医薬調製物に含まれるHM781-36Bの含量が不純物IVの量に影響を及ぼし得ることが観察された。
【0109】
実験実施例8:実施例1による錠剤の各パッケージング材料のための安定性試験
実施例1による錠剤のそれぞれを、Al-Alブリスター、Al-PO+CaO-AlブリスターまたはHDPEボトルのいずれかにパッケージングし(シリカゲル0.5、2.0、3.0、4.0または5.0gのいずれかおよびポリプロピレンキャップを含む、それぞれがポリプロピレンキャップを取り付けた5種の異なるパッケージング)、TEKNILID(登録商標)1207(Tekniplex)をAl-Alブリスターに用い、Formpack(登録商標)Dessiflex Blister(Amcor)をAl-PO+CaO-Alブリスターに用い、BTH-250(Ewha Engineering)をHDPEボトルに用い、ポリプロピレンキャップ(シリカゲルを含む)もまた、商標名MH-Cap(0.5g)、MH-Cap(2.0g)、MH-Cap(3.0g)、MH-Cap(4.0g)およびMH-Cap(5.0g)でEwha Engineeringから得た。パッケージングされた製品をそれぞれ40℃/75%RH加速条件下で1、2、および4週間放置し、その後、液体クロマトグラフィーにより上記の化学式2で示される不純物IVについて測定して(実験実施例6の分析条件を参照)、結果を図3および表11に示す。
【表11】
【0110】
図3および表11によれば、パッケージング材料としてAl-Alブリスターではなくむしろ吸湿剤であるCaOを含むAl-PO+CaO-Alブリスターを用いた場合、加速条件下で放置された時間に比例した不純物IVの増加量が減少することが、確認され得る。特に、Al-PO+CaO-Alブリスターのパッケージング材料では、不純物IVの増加量が、加速の2週間後に顕著に減少した。加えて、HDPEボトルを使用した場合、吸湿剤であるシリカゲルの量がキャップ中で増加するにつれ、加速条件下で放置された時間に比例した不純物IVの増加量が減少することが確認され得る。特にシリカゲル2g以上を含むキャップを用いたHDPEボトルのパッケージング材料において、不純物IVの経時的な増加量が、顕著に減少した。
【0111】
実験実施例9:加速条件下で4週間放置した後の溶解試験
実験実施例5の溶解条件および分析条件の下、実験実施例8に従って加速条件下で4週間放置された錠剤の溶解速度をそれぞれ測定し、結果を表12に示す。
【表12】
【0112】
上記の表12によれば、シリカゲル5.0gを含むキャップを用いたHDPEパッケージング材料を用いた場合、加速条件下で4週間放置された錠剤が緩やかな初期崩壊、およびより低い溶解速度を有したことが確認され得る。しかし、約60分の期間の後、各錠剤の溶解速度の差は、大きくなかった。
【0113】
本発明の簡単な改変および変更の全てが、本発明の範囲内であり、保護される本発明の具体的範囲が、添付の特許請求の範囲により定義されることは、察知されるべきである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】