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特表2022-553751ロイシン及びトリロイシンを含む乾燥粉末製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】ロイシン及びトリロイシンを含む乾燥粉末製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20221219BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20221219BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K9/14
A61K47/18
A61K47/26
A61K47/40
A61K47/36
A61K47/22
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/14
A61K47/10 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022524163
(86)(22)【出願日】2020-10-27
(85)【翻訳文提出日】2022-04-25
(86)【国際出願番号】 EP2020080203
(87)【国際公開番号】W WO2021083910
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】62/926,832
(32)【優先日】2019-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008951
【氏名又は名称】アストラゼネカ・アクチエボラーグ
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】マニクワル,プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】レチューガ-バレステロス,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ホゥ,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,ケリサ ベス
(72)【発明者】
【氏名】ドゥサ,デクスター ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ガズビニ,サバ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA95
4C076BB27
4C076CC50
4C076DD09
4C076DD26Z
4C076DD41Z
4C076DD43Z
4C076DD51
4C076DD51Z
4C076DD58Z
4C076DD67
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE39
4C076EE41
4C076FF68
4C076GG05
4C085AA14
4C085BB18
4C085BB41
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG10
(57)【要約】
本技術は、全体として、肺への送達に適した、ロイシン及びトリロイシンを特定の比率で含む乾燥粉末製剤に関する。同様に提供されるのは、この乾燥粉末製剤を調製する方法、及び投与の方法、及びこの乾燥粉末製剤を使用する処置である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤であって、前記微粒子は、
a.ロイシン;
b.重量で約0.5%~約10%のトリロイシン;
及び
c.活性剤
を含み、
前記ロイシン及び前記トリロイシンは、重量で約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの比で存在する、
乾燥粉末製剤。
【請求項2】
前記乾燥粉末製剤は、圧縮かさ密度が約0.4~約1.0g/cmである、請求項1に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項3】
ガラス安定剤をさらに含む請求項1又は2に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項4】
前記ガラス安定剤は、非晶質糖類又は緩衝剤である、請求項3に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項5】
前記ガラス安定剤は、非晶質糖類及び緩衝剤を含む、請求項3に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項6】
前記非晶質糖類は、トレハロース、スクロース、ラフィノース、イヌリン、デキストラン、マンニトール、及びシクロデキストリンからなる群から選択される、請求項4又は5に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項7】
前記緩衝剤は、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、グリシン緩衝剤、酢酸緩衝剤、及び酒石酸緩衝剤からなる群から選択される、請求項4~6のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項8】
前記非晶質糖類は、トレハロースである、請求項4~7のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項9】
前記活性剤は、抗体又はその抗原結合断片である、請求項1~8のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項10】
前記ロイシン:トリロイシンの比は、重量で約1:1~約12:1であり、任意選択的には重量で約1:1~約7:1であり、任意選択的には重量で約5.25:1である、請求項1~9のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項11】
重量で約8%~約11%のロイシン及び重量で約2%~約4%のトリロイシンを含む請求項1~10のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項12】
重量で約10.5%のロイシン及び重量で約2%のトリロイシンを含む請求項1~11のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項13】
界面活性剤をさらに含み、前記界面活性剤は、ポリソルベート-20(PS-20)、ポリソルベート-40(PS-40)、ポリソルベート-60(PS-60)、ポリソルベート-80(PS-80)、及びポロクサマー-188から任意選択的に選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項14】
前記界面活性剤は、PS-80であり、任意選択的に、PS-80は、約0.27重量%~約2.7重量%の範囲の濃度で存在し、任意選択的に約0.67重量%~約1.33重量%の範囲の濃度で存在する、請求項13に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項15】
前記PS-80は、約1.1重量%の濃度で存在する、請求項14に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項16】
前記圧縮かさ密度は、約0.5g/cm~約0.8g/cmである、請求項2~15のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項17】
複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤であって、前記微粒子は、重量で約10.5%のロイシン、重量で約2%のトリロイシン、重量で約8.5%のクエン酸緩衝剤、重量で約1%~約40%の活性剤、約1.1重量%のポリソルベート-80、及び合計100%となる重量の量のトレハロースを含む、乾燥粉末製剤。
【請求項18】
前記活性剤は、抗体又はその抗原結合断片である、請求項17に記載の乾燥粉末製剤。
【請求項19】
乾燥粉末製剤を調製する方法であって、
a.液体原料を調製することであって、前記液体原料は、
i.ロイシン;
ii.約0.1mg/mL~約6mg/mLのトリロイシン;
iii.活性剤;
及び
iv.液体溶媒
を含み、
前記ロイシン及び前記トリロイシンは、約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの濃度比で存在する、調製すること;
b.前記液体原料を噴霧すること;
並びに
c.前記噴霧された液体原料を乾燥させて複数の微粒子を形成すること
を含む方法。
【請求項20】
前記液体原料は、ガラス安定剤をさらに含み、任意選択的に、前記ガラス安定剤は、非晶質糖類又は緩衝剤を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記非晶質糖類は、トレハロース、スクロース、ラフィノース、イヌリン、デキストラン、マンニトール、及びシクロデキストリンからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記緩衝剤は、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、グリシン緩衝剤、酢酸緩衝剤、及び酒石酸緩衝剤からなる群から選択される、請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記活性剤は、抗体又はその抗原結合断片である、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程(a)は、前記液体原料に界面活性剤を添加することであって、前記界面活性剤は、ポリソルベート-20(PS-20)、ポリソルベート-40(PS-40)、ポリソルベート-60(PS-60)、ポリソルベート-80(PS-80)、及びポロクサマー-188から任意選択的に選択される、添加することをさらに含む、請求項19~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記界面活性剤は、PS-80であり、任意選択的に、前記PS-80は、約0.02重量%~約0.2重量%の範囲の濃度で前記液体原料中に存在する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記原料中におけるロイシン:トリロイシンの濃度比は、約1:1~約12:1であり、任意選択的に、前記原料中におけるロイシン:トリロイシンの濃度比は、約5.25:1である、請求項19~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
圧縮かさ密度が約0.4~約1.0g/cmである複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤を調製する方法であって、
前記乾燥粉末製剤に、ロイシン及びトリロイシンを、重量で約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの比にて組み込むこと
を含む方法。
【請求項28】
基準製剤と比較して肉眼で見ることができない粒子の数が少ない複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤を調製する方法であって、
i.前記乾燥粉末製剤に、ロイシン及びトリロイシンを、重量で約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの比にて組み込み、
ii.前記乾燥粉末製剤に、約0.27重量%~約2.7重量%の範囲の濃度で界面活性剤を組み込み、例えばPS-80を組み込む
ことを含む方法。
【請求項29】
前記基準製剤は、前記方法により調製されているが但し前記界面活性剤を含まない製剤と同等である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
哺乳類患者の肺への乾燥粉末製剤の送達の方法であって、エアロゾル形態の、請求項1~18のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤を、吸入により前記哺乳類患者に投与することを含む方法。
【請求項31】
哺乳類患者の医学的状態を処置する方法であって、エアロゾル形態の、請求項1~18のいずれか一項に記載の乾燥粉末製剤を、吸入により前記哺乳類患者に投与することを含む方法。
【請求項32】
前記乾燥粉末製剤を、乾燥粉末吸入器(DPI)により投与する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
処置の方法での使用のための請求項1~18のいずれか一項に記載の製剤であって、吸入により投与される製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、概して、肺送達に適した乾燥粉末製剤に関する。同様に提供されるのは、乾燥粉末製剤を調製する方法、並びにこの乾燥粉末製剤を使用する投与及び処置の方法である。
【背景技術】
【0002】
活性剤の肺送達の利点として、患者の自己投与の利便性、薬物副作用の低減の可能性、吸入による送達の容易さ、針の排除、及び同類のものが挙げられる。タンパク質、ペプチド、DNA、及び低分子の吸入を伴う多くの臨床研究により、肺内及び全身の両方で有効性が達成され得ることが実証されている。しかしながら、送達に高いペイロードを必要とする多くの分子(特に生体分子)は、吸入可能な製剤の開発に問題となっている。製剤は、生物学的ペイロードに安定性を付与し且つスケーラブルな製造性を有していなければならず、さらに、患者の肺中への送達を促進するために所望の物理的特性も維持する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
上記を考慮して、本明細書で提供されるのは、複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤であって、この微粒子は、ロイシン;重量で約0.5%~約10%のトリロイシン;及び活性剤を含み、ロイシン及びトリロイシンは、重量で約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの比で存在する、乾燥粉末製剤である。ある特定の実施形態では、この乾燥粉末製剤は、圧縮かさ密度が約0.4~1.0g/cmである。
【0004】
同様に本明細書で提供されるのは、乾燥粉末製剤を調製する方法であって、液体原料を調製することであり、この液体原料は、ロイシン;約0.1mg/mL~約6mg/mLのトリロイシン;活性剤;及び液体溶媒を含み、ロイシン及びトリロイシンは、約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの濃度比で存在する、調製すること;この液体原料を噴霧すること、この噴霧された液体原料を乾燥させて複数の微粒子を形成することを含む。
【0005】
さらなる実施形態では、本明細書で提供されるのは、圧縮かさ密度が約0.4~約1.0g/cm3の複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤を調製する方法であって、この乾燥粉末製剤に、ロイシン及びトリロイシンを、重量で約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの比で組み込むことを含む方法である。
【0006】
同様に本明細書で提供されるのは、比表面積が約5~約10m/gである複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤を調製する方法であって、この乾燥粉末製剤に、ロイシン及びトリロイシンを、重量で約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの比で組み込むことを含む方法である。
【0007】
さらなる実施形態では、本明細書で提供されるのは、複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤を調製する方法であって、この微粒子の質量中央空気動力学的直径(mass median aerodynamic diameter)(MMAD)は、エアロゾル形態で提供される場合には、約2μm~約4μmであり、この方法は、この乾燥粉末製剤に、ロイシン及びトリロイシンを、重量で約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの比で組み込むことを含む、方法である。
【0008】
さらなる実施形態では、本明細書で提供されるのは、哺乳類患者の肺への乾燥粉末製剤の送達の方法であって、エアロゾル形態の、本明細書で提供される乾燥粉末製剤を、吸入により哺乳類患者に投与することを含む方法である。
【0009】
同様に本明細書で提供されるのは、哺乳類患者の医学的状態を処置する方法であって、エアロゾル形態の、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤を、吸入により哺乳類患者に投与することを含む方法である。
【0010】
追加の実施形態では、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤を処置方法で使用し得、この製剤を吸入により投与する。
【0011】
本技術の上記の及び他の特徴及び態様は、実施形態の下記の説明から、及び添付の図面に例示されているように、よりよく理解され得る。本明細書に組み込まれ且つ本明細書の一部を構成する添付の図面は、本技術の原理を説明するのにさらに役立つ。図面は、必ずしも縮尺どおりではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る乾燥粉末製剤からの微粒子を示す。
図2A】乾燥粉末製剤中におけるロイシン及びトリロイシンの関数としての圧縮かさ密度の結果を示す。
図2B】本明細書で説明されている乾燥粉末製剤によるカプセルの充填を示す。
図3】実施形態に係る乾燥粉末製剤の微粒子に関する、BETを使用して測定した比表面積の結果(m/g)を示す。
図4】水分含有量とロイシン濃度との間接的な相関関係を示す。
図5A-D】SEMにより検出した場合の微粒子の表面粗さを示す。
図6】微粒子割合(fine particle fraction)(FPF)とロイシン及びトリロイシンのwt%値との相関関係を示す。
図7】デバイス堆積とロイシン及びトリロイシンのwt%値との相関関係を示す。
図8】微粒子割(FPF)とロイシン及びトリロイシンのwt%値との相関関係を示す。
図9A-B】様々なロイシン及びトリロイシンの濃度の組み合わせでモデル化された飽和速度を示す。
図10A】40%(w/w)のFab及び様々な濃度のポリソルベート-80(PS-80)を含む製剤の30mg/mlのFabの溶液濃度への再構成後の肉眼で見ることができない粒子の数を示す(図中、「≧」は、サイズ上限200μmを含む)。
図10B】40%(w/w)のFab及び様々な濃度のPS-80を含む製剤の2.5mg/mlのFabの溶液濃度への再構成後の肉眼で見ることができない粒子の数を示す(図中、「≧」は、サイズ上限200μmを含む)。
図11A】40%(w/w)のFab及び様々な濃度のポロクサマー-188を含む製剤の30mg/mlのFabの溶液濃度への再構成後の肉眼で見ることができない粒子の数を示す(図中、「≧」は、サイズ上限200μmを含む)。
図11B】40%(w/w)のFab及び様々な濃度のポロクサマー-188を含む製剤の2.5mg/mlのFabの溶液濃度への再構成後の肉眼で見ることができない粒子の数を示す(図中、「≧」は、サイズ上限200μmを含む)。
図12A】40℃及び75%の相対湿度(40/75)での1ヶ月及び3ヶ月並びに25℃及び60%の相対湿度(25/60)での3ヶ月にわたる貯蔵後の、40%(w/w)のFab及び1.1%のPS-80を含む製剤の水分含有量%を示す。
図12B】40℃及び75%の相対湿度(40/75)での1ヶ月及び3ヶ月並びに25℃及び60%の相対湿度(25/60)での3ヶ月にわたる貯蔵後の、40%(w/w)のFab及び1.1%のPS-80を含む製剤の粒径分布(PSD)を示す。
図12C】40℃及び75%の相対湿度(40/75)での1ヶ月及び3ヶ月並びに25℃及び60%の相対湿度(25/60)での3ヶ月にわたる貯蔵後の、40%(w/w)のFab及び1.1%のPS-80を含む製剤の粒子形態を示す。
図13A】40℃及び75%の相対湿度(40/75)での1ヶ月又は3ヶ月並びに25℃及び60%の相対湿度(25/60)での3ヶ月にわたる貯蔵後の、1%(w/w)のFab及び1.1%のPS-80を含む製剤の水分含有量%を示す。
図13B】40℃及び75%の相対湿度(40/75)での1ヶ月又は3ヶ月並びに25℃及び60%の相対湿度(25/60)での3ヶ月にわたる貯蔵後の、1%(w/w)のFab及び1.1%のPS-80を含む製剤の粒径分布(PSD)を示す。
図13C】40℃及び75%の相対湿度(40/75)での1ヶ月又は3ヶ月並びに25℃及び60%の相対湿度(25/60)での3ヶ月にわたる貯蔵後の、1%(w/w)のFab及び1.1%のPS-80を含む製剤の粒子形態を示す。
図14A】1ヶ月又は3ヶ月にわたる40/75及び3ヶ月にわたる25/60での貯蔵後の、40%のFab及び1.1%のPS-80(w/w)を含む製剤の30mg/mlのFabの溶液濃度への再構成後の肉眼で見ることができない粒子の数を示す。
図14B】1ヶ月又は3ヶ月にわたる40/75及び3ヶ月にわたる25/60での貯蔵後の、1%のFab及び1.1%のPS-80(w/w)を含む製剤の0.75mg/mlのFabの溶液濃度への再構成後の肉眼で見ることができない粒子の数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で示されており且つ説明されている特定の実施は実施例であり、如何なる形であれ他の方法で本出願の範囲を限定することを意図するものではないことを理解すべきである。
【0014】
本明細書で言及されている公開特許、特許出願、ウェブサイト、会社名、及び科学文献は、それぞれが参照により組み込まれることが具体的に且つ個別に示されていたのと同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で引用されている任意の参考文献と本明細書の特定の教示との間に矛盾があれば、後者を優先して解決されるものとする。同様に、当該技術分野で理解される単語又は語句の定義と、本明細書で具体的に教示されている単語又は語句の定義との間の矛盾は、後者を優先して解決されるものとする。
【0015】
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a、an)」及び「その(the)」は、内容が明確に他のことを指示しない限り、具体的に、それらが指す用語の複数形も包含する。「約(about)」という用語は、本明細書では、おおよそ、~の辺り、大体、又はおよそを意味するために使用される。「約」という用語が数値範囲と共に使用される場合には、記載されている数値の上下の限界を拡張することによってその範囲が変更される。一般に、「約」という用語は、本明細書では、数値を、記述値の上下に10%の相違だけ変更するために使用される。
【0016】
本明細書で使用される科学技術用語は、別途定義されない限り、本出願が属する分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書では、当業者に既知の様々な方法及び材料について言及する。
【0017】
本明細書で説明されているように、乾燥粉末製剤は、医薬活性剤の安定化及び送達のために提供される。好適には、乾燥粉末製剤は、肺送達(例えば、乾燥粉末吸入器(DPI)を介した吸入による肺送達)用に製剤化されている。
【0018】
本明細書で使用される場合、「乾燥粉末製剤」は、好適には約20%未満の水分を含み、より好適には、10%未満の水分、約5~6%未満の水分、又は約3%未満の水分を含む粉末組成物中に複数の固体微粒子を含む製剤を指す。本明細書で説明されているように、乾燥粉末製剤を、患者への吸入による送達に利用し得る。他の実施形態では、乾燥粉末製剤を、液状に再構成して、経口、静脈内、非経口等により投与し得る。本明細書で説明されているように、提供される乾燥粉末製剤の利点は、製造性の改善のためのスループットの増加である。さらなる利点は、本明細書で説明されている製剤プラットフォームが高い圧縮かさ密度を提供することである。このことは、1つの送達単位当たりに(例えばカプセル内に)より多くの質量の粉末が包装され得ることを意味する。このことは、対象に、1回の単位送達当たりに高用量の活性剤を送達し得ることを意味する。この驚くべき利点により、服用する必要がある単位用量の数が減少して患者コンプライアンスが改善され得る。加えて、高い圧縮かさ密度により、より高い用量の活性剤を送達することが可能となり得、投与される用量の範囲の上限が上昇する。これにより、これまで不可能であった治療上有効な用量での活性剤の送達が可能となり得る。
【0019】
「微粒子」は、本明細書で使用される場合、サイズ質量平均直径(size mass mean diameter)(MMD)が20μm未満である固体粒子を指す。質量平均直径は、微粒子の平均粒径の尺度であり、好適な方法(例えば、遠心沈降、電子顕微鏡法、光散乱、レーザー回折等)を使用して測定される。
【0020】
本明細書で説明されている乾燥粉末製剤は、好適には、複数の微粒子を含む。本明細書で使用される場合、「複数」は、2つ以上の物品を指し、好適には、5個以上、10個以上、50個以上、100個以上、500個以上、1000個以上等を指す。
【0021】
実施形態では、本乾燥粉末製剤は、複数の微粒子を含み、この微粒子は、好適には、ロイシン;重量で約0.5%~約10%のトリロイシン;及び活性剤を含む。図1は、本明細書で提供される例示的な乾燥粉末製剤の微粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す。さらなる実施形態では、複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤は、好適には、約1%~約25%のロイシン;約1%~約10%のトリロイシン;及び活性剤を含む。
【0022】
本明細書で使用される場合、「ロイシン」は、単一のアミノ酸として存在するかペプチドのアミノ酸成分として存在するかにかかわらず、アミノ酸ロイシン(C13NO)を指し、このアミノ酸ロイシンは、ラセミ混合物であり得るか、又はそのD型又はL型のいずれかであり得、及びロイシンの改変形態(即ち、ロイシンの1つ又は複数の原子が、別の原子又は官能基で置換されている)であり得る。ロイシンの化学構造を、下記に示す。
【化1】
【0023】
「トリロイシン」は、本明細書で用いられる場合、3つのロイシン分子がロイシン-ロイシン-ロイシン(Leu-Leu-Leu)、C1835としてペプチド状に互いに連結されている化合物を指す。トリロイシンの化学構造を、下記に示す。
【化2】
【0024】
本明細書で提供されるロイシン及びトリロイシンの量は、別途述べられない限り、本製剤の重量百分率(wt%)として示される。本乾燥粉末製剤は、たとえあったとしても水を実質的にごくわずかしか含まないことから、この乾燥粉末製剤の重量成分は、最終製剤の乾燥重量百分率である。
【0025】
ロイシン;トリロイシン;及び活性剤を含む製剤の実施形態では、ロイシン及びトリロイシンは、本明細書で説明さている改善された圧縮かさ密度特性をもたらし、さらには貯蔵及び送達の改善を可能にする所望の微粒子特性をもたらす所望の比の範囲に維持される。実施形態では、微粒子中のロイシン及びトリロイシンの重量比(即ち、ロイシン:トリロイシン)は、約0.05:1~約40:1であり、より好適には、ロイシン及びトリロイシンは、約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの重量比で存在する。さらなる実施形態では、ロイシン及びトリロイシンは、約0.1:1~約25:1、約0.5:1~約20:1、約1:1~約20:1、約1:1~約15:1、約1:1~約12:1、約1:1~約10:1、約1:1~約7:1、約1:1~約6:1、又は約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約5.1:1、約5.2:1、約5.25:1、約5.3:1、約5.4:1、約5.5:1、約5.75:1、又は約6:1のロイシン:トリロイシンの重量比で存在する。
【0026】
別途述べられない限り、本明細書で説明されている比は、重量%比(w/w-「重量比」とも称される)で表されており、即ち、本明細書で説明されている製剤中におけるロイシンの重量:トリロイシンの重量で表されている。この比は、原料中にロイシン及びトリロイシンの所望のmg/mL濃度を提供し、次いで、乾燥させて原料溶媒を除去して、出発濃度比(mg/mLで表される)が重量でのロイシン:トリロイシンの最終比として維持されている噴霧された微粒子を得ることにより達成される。
【0027】
この比を達成するために本乾燥粉末製剤中で用いられ得るロイシン及びトリロイシンの例示的な重量百分率は、本明細書で説明されている。好適には、本乾燥粉末製剤は、約5%~約15%のロイシン、及び約1%~約5%のトリロイシンを含む。実施形態では、本乾燥粉末製剤は、約8%~約11%のロイシン、及び約2%~約4%のトリロイシンを含み、実施形態では、本乾燥粉末製剤は、約10.5%のロイシン、及び約2%のトリロイシンを含む。
【0028】
例示的な実施形態では、本乾燥粉末製剤は、重量で約0.5%~約10%のトリロイシンを含み、より好適には、重量で約1%~約10%、1%~約9%、約1%~約8%、約1%~約7%、約1%~約6%、約1%~約5%、約2%~約10%、約2%~約9%、約2%~約8%、約2%~約7%、約2%~約6%、約2%~約5%、約2%~約4%、又は約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、又は約6%のトリロイシンを含む。
【0029】
例示的な実施形態では、本乾燥粉末製剤は、重量で約1%~約25%のロイシンを含み、より好適には、重量で約2%~約20%、約3%~約20%、約4%~約20%、約5%~約20%、約5%~約15%、約7%~約12%、約8%~約11%、約9%~約11%、約10%~約11%、又は約5%、約6%、約7%、約8%、約8.5%、約9%、約10%、約10.5%、約11%、約11.5%、約12%、約12.5%、又は約13%のロイシンを含む。
【0030】
好適な実施形態では、本乾燥粉末製剤は、重量で約8%~約11%のロイシン及び約2%~約4%のトリロイシンを含み、より好適には、重量で約9%~約11%のロイシン及び約2%~約3%のトリロイシンを含む。例示的な実施形態では、本乾燥粉末製剤は、重量で約10.5%のロイシン及び約2%のトリロイシンを含む。
【0031】
本明細書で説明されているように、驚くべきことに、乾燥粉末製剤中でのロイシン及びトリロイシンの組み合わせの使用により、これらの成分の内の一方のみを含む乾燥粉末製剤と比較して、微粒子を調製するのに必要なロイシン及びトリロイシンの全体量の減少が可能となり、さらには所望の安定性が依然としてもたらされることが発見されている。ある特定の実施形態では、本明細書で説明されている製剤は、当該技術分野の製剤と比較して圧縮かさ密度が増加しており、これにより、吸入後に患者の肺へのより高濃度の活性剤の送達が可能となり得る。この特性の改善は、微粒子中へのロイシン及びトリロイシンの組み込みに関係していると思われる。
【0032】
実施形態に係る乾燥粉製剤を調製する例示的なプロセスを、下記のように行ない得る。この乾燥粉末製剤の所望の最終成分を含む液体原料を、噴霧器を使用して、微細な霧状に噴霧する。次いで、この霧を、本明細書で説明されているように乾燥させる。噴霧された液滴は、溶解した成分を、最初は液滴として含む。この液滴が乾燥すると、この製剤の様々な成分が飽和して様々な速度で析出し始める。本明細書で説明されているように、この乾燥粉末製剤の微粒子の外表面の周囲に殻が生じ始める。この殻は、好適には、この殻の外表面にロイシン成分及びトリロイシン成分を含む。ロイシン及びトリロイシンは微粒子の外表面に優先的に位置するようになるが、少量のロイシン及びトリロイシンも微粒子全体にわたり見出され得ることに留意すべきである。実施形態では、より高濃度のロイシン及びトリロイシンは、好適には、微粒子の中心付近ではなくて微粒子の表面又はこの表面付近で見出される。実施形態では、微粒子の中心は、本明細書で説明されている他の添加剤成分と共に、活性剤の相当量を含み、好適には非晶質形態で含む。本明細書で使用される場合、活性剤の「相当量」は、活性剤(即ち、製剤中の総活性剤)の少なくとも約60%が、微粒子の中心又はこの中心付近に位置しており、好適には活性剤の少なくとも約70%、より好適には活性剤の少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、一実施形態では活性剤の約95%~100%が、微粒子の中心又はこの中心付近に位置していることを意味する。
【0033】
さらなる実施形態では、微粒子は、この微粒子全体に実質的に位置するロイシン及びトリロイシンを含むが、この微粒子の表面又はこの表面付近の量がより多い。本明細書で使用される場合、「微粒子全体に実質的に」は、ロイシン及び/又はトリロイシンが、この微粒子の外表面からこの微粒子の中心に向かう勾配で位置するが、好適には、中心に向かうにつれてロイシン及び/トリロイシンの量が減少しており、実施形態では、微粒子の中心にはロイシン又はトリロイシンが見出されないが活性剤が位置していることを意味する。他の実施形態では、ロイシン及びトリロイシンの量は、微粒子の断面全体にわたり実質的に均一であり得る。
【0034】
実施形態では、本乾燥粉末製剤の微粒子の実質的な各々は、ロイシン及びトリロイシンを含む。即ち、好適には、この微粒子の少なくとも約60%はロイシン及びトリロイシンを含むか、又はこの微粒子の少なくとも約70%、より好適には、少なくとも75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、実施形態では約95%~100%は、ロイシン及びトリロイシンを含む。実施形態では、本乾燥粉末製剤の微粒子の各々は、ロイシン及びトリロイシンを含む。
【0035】
追加の実施形態では、本乾燥粉末製剤中にロイシン及び/トリロイシンが見出され得るが、この製剤の微粒子に含まれていないか、又はこの微粒子と関連していない。そのため、実施形態では、この乾燥粉末製剤中に、微粒子と関連していない遊離ロイシン及び/又は遊離トリロイシンが見出され得る。しかしながら、一般には、遊離ロイシン及び/又は遊離トリロイシン(即ち、微粒子と関連していないロイシン及び/又はトリロイシン)の量は、この製剤中のロイシン及び/又はトリロイシンの総量の約10%未満、約5%未満、約1%未満、より好適には約0.1%未満のオーダーである。
【0036】
例示的な実施形態では、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤は、多量の活性剤の送達を可能にする圧縮かさ密度を有する。「圧縮かさ密度」は、下記の条件下で測定した場合での粉末の単位体積当たりの質量(好適にはg/cm)を指す。圧縮かさ密度(cBD又はCBD)を測定するのに好適なアッセイは、実施例で説明されている(例えば実施例1を参照されたい)。好適には、粉末の圧縮かさ密度(CBD)を、密度分析計(例えば、GeoPyc(登録商標)Model 1360密度分析計(Micromeritics,Norcross,GA)を使用して測定する。粉末サンプルを、好適には低湿度環境(<5%RH)下で調製した後、窒素ガスでパージされている密度分析計のサンプルチャンバーに移す。この粉末サンプルの正味重量を記録し、次いで1秒当たり250~350回の圧密工程(好適には1秒当たり300回の圧密工程)の速度にて、プランジャーにより、このサンプルに10~14N(好適には12N)の圧縮力を印加する。各圧密工程でプランジャーが移動した直線距離を、粉末サンプルの体積変位に変換する。次いで、各圧密工程からの測定値の平均を、乾燥粉末製剤の算出されたかさ密度値(g/cmで表される)に変換する。
【0037】
ある特定の実施形態では、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤の圧縮かさ密度は、少なくとも0.4g/cmであり、好適には約0.4g/cm~約1.0g/cmであり、より好適には、約0.4~0.9gm/cm、約0.4~0.8gm/cm、約0.5~0.8gm/cm、約0.6~0.8gm/cm、又は約0.4gm/cm、約0.5gm/cm、約0.6gm/cm、約0.7gm/cm、又は約0.8gm/cmである。ある特定の実施形態では、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤の圧縮かさ密度は、約0.4gm/cm~約0.9gm/cmである。ある特定の実施形態では、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤の圧縮かさ密度は、約0.5gm/cm~約0.8gm/cmである。
【0038】
図2Aは、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤中におけるロイシン及びトリロイシンの関数としての圧縮かさ密度の結果を示す。列の各々は、この製剤中のトリロイシンの量を表す。各列内では、ロイシンの量は、約1%から約20%へと増加している。示されているように、トリロイシンの量が増加すると圧縮かさ密度が低くなり、各群内でのロイシンの増加によっても圧縮かさ密度が低下する。約0.5g/cm~約0.8g/cmの圧縮かさ密度を達成するためには、トリロイシンの量を4重量%未満で維持すべきである。
【0039】
様々な活性剤を、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤に製剤化し得る。本明細書で使用される場合、「活性剤」は、ヒト等の哺乳類患者の所望の標的に作用して、この患者の症状、疾患、感染、状態等を処置するか、改善するか、寛解させるか、又は治癒する薬学的に活性な有機化合物又は無機化合物を指す。
【0040】
本乾燥粉末製剤中に含まれる活性剤の量は、好適には重量で約10%~80%の範囲であり、より好適には、約20%~70%、約30%~50%、又は約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%等である。
【0041】
例示的な活性剤として、低分子が挙げられる。本明細書で使用される場合、「低分子」という用語は、一般的に分子量が約10kD未満であり、好適には約5000ダルトン未満であり、より好適には約1000ダルトン未満であり、例えば、約100~約900ダルトン、約200~約800ダルトン、約300~約700ダルトン、約400~約600ダルトン、又は約500ダルトンである、化学的に合成された低分子量の医薬品、治療薬、及び/又は診断薬(後者の例は、マーカー、染料等である)、並びにそのような化合物の塩、エステル、及び他の薬学的に許容される形態を指す。
【0042】
追加の実施形態では、活性剤は、生物製剤であり得る。本明細書で使用される場合、「生物製剤」は、単離されたか又は合成により生成された天然物(例えば、核酸、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質)を指し、好適には、抗体、抗原結合断片、及び同類のものが挙げられる。
【0043】
「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合により互いに連結されているアミノ酸のポリマーを含む分子を指す。ポリペプチドには、タンパク質(例えば、50個超のアミノ酸を有するタンパク質)及びペプチド(例えば、2~49個のアミノ酸)等の任意の長さのポリペプチドが含まれる。ポリペプチドには、任意の活性、機能、又はサイズのタンパク質及び/又はペプチドが含まれ、且つ分泌タンパク質、膜アンカータンパク質、又は細胞内タンパク質が含まれる。
【0044】
例示的なポリペプチド及び組換えポリペプチドとして、酵素(例えば、プロテアーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ)、受容体、輸送体、殺菌性及び/又はエンドトキシン結合性タンパク質、構造ポリペプチド、膜結合ポリペプチド、糖タンパク質、球状タンパク質、免疫ポリペプチド、毒素、抗生物質、ホルモン、成長因子、血液因子、ワクチン、又は同類のものが挙げられる。ポリペプチドは、ペプチドホルモン、インターロイキン、組織プラスミノーゲン活性化因子、サイトカイン、免疫グロブリン(抗体又はその機能的な抗原結合断片若しくはバリアントを含む)、及びFc融合タンパク質であり得る。ポリペプチドはまた、抗体の重鎖若しくは軽鎖等のポリペプチドのサブユニット若しくはドメイン、又はその機能的断片若しくは誘導体であり得る。
【0045】
実施形態では、ポリペプチドは、免疫グロブリン分子であり、好適には、抗体又はそのサブユニット若しくはドメイン(例えば、抗体の重鎖若しくは軽鎖)である。「抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ジスルフィド結合により接続されている少なくとも2つの重鎖及び2つの軽鎖を含むタンパク質を指す。「抗体」という用語には、天然に存在する抗体、並びに全ての組換え型の抗体(例えば、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、及びキメラ抗体)が含まれる。各重鎖は、通常、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(CH)で構成されている。各軽鎖は、通常、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)で構成されている。しかしながら、「抗体」という用語にはまた、他のタイプの抗体(例えば、単一ドメイン抗体、重鎖抗体、即ち、1つ又は複数(特に2つ)の重鎖のみで構成されている抗体、及びナノボディ、即ち、単一の単量体可変ドメインのみで構成されている抗体)も含まれる。抗体の断片又は誘導体の例として、下記が挙げられる:(i)各重鎖及び軽鎖の可変領域及び第1の定常ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結されている2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)2断片;(iii)重鎖の可変領域及び第1の定常ドメインCH1からなるFd断片;(iv)抗体の単一アームの重鎖及び軽鎖可変領域からなるFv断片;(v)単一ポリペプチド鎖からなるFv断片であるscFv断片;(vi)互いに共有結合的に連結されている2つのFv断片からなる(Fv)2断片;(vii)重鎖可変ドメイン;並びに(viii)重鎖可変領域と軽鎖可変領域との結合が分子内ではなく分子間でのみ生じ得るように互いに共有結合的に連結されている重鎖可変領域及び軽鎖可変領域からなるマルチボディー(multibody)。
【0046】
活性剤の例として、任意の疾患状態に罹患しているか又は罹りやすい患者の処置に有用な低分子又は生物製剤が挙げられ、この疾患状態として下記が挙げられるが、これらに限定されない:癌(例えば、乳癌、子宮癌、卵巣癌、前立腺癌、精巣癌、肺癌、白血病、リンパ腫、結腸癌、胃腸癌、膵癌、膀胱癌、腎癌、骨癌、神経癌、頭頸部癌、皮膚癌、肉腫、腺腫、癌腫、及び骨髄腫);感染性疾患(例えば、細菌性疾患、真菌性疾患、寄生虫疾患、及びウイルス性疾患(例えば、ウイルス性肝炎、心臓作用性ウイルスにより引き起こされる疾患;HIV/AIDS、flu、SARS、及び同類のもの));遺伝性障害(例えば、貧血症、好中球減少症、血小板減少症、血友病、低身長症、及び重症複合免疫不全症(「SCID」);炎症性障害及び自己免疫障害(例えば、乾癬、全身性エリテマトーデス、及び関節リウマチ、喘息、例えば、重症喘息、中等度喘息、又は軽度喘息、慢性障害肺疾患、アトピー性皮膚炎、及び特発性肺線維症)、並びに神経変性障害(例えば、多発性硬化症の様々な形態及びステージ、クロイツフェルト・ヤコブ病、アルツハイマー病、及び同類のもの)。ある特定の実施形態では、活性剤は、好酸球性喘息又は非好酸球性喘息、任意選択的な低好酸球性喘息等の重度の喘息の処置での使用のためのものである。
【0047】
本明細書で説明されている乾燥粉末製剤に含まれ得る例示的な活性剤として下記が挙げられるが、これらに限定されない:吸入コルチコステロイド薬(ICS)、長時間作用性ベータ作用薬(LABA)、ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)、長時間作用性抗ムスカリン薬(LAMA)、クロモン、短時間作用性ベータ作用薬(SABA)、サイトカイン、例えば、インターロイキン、ホルモン、インターフェロン、組織増殖因子、内皮増殖因子、ホスホジエステラーゼ(PDE)化合物、VLA-4阻害剤、ビスホスホネート、マクロライド、抗生物質、フルオロキノロン、アミノグリコシド、ポリミキシン、抗真菌剤、カルバペネム等、並びに適用可能な場合には、上記の類似体、アゴニスト、アンタゴニスト、阻害剤、及び薬学的に許容される塩形態。
【0048】
ペプチド及びタンパク質に関して、合成形態、天然形態、グリコシル化形態、非グリコシル化形態、ペグ化形態、並びにこれらの生物学的に活性な断片及び類似体を包含することが意図されている。活性剤として、さらに下記が挙げられる:裸の核酸分子としての核酸、ベクター、関連ウイルス粒子、プラスミドDNA若しくはRNA、又は細胞のトランスフェクション若しくは形質転換に適した(即ち、遺伝子治療に適した)タイプの他の核酸構築物、例えば、アンチセンス、siRNA、miRNA等。さらに、活性剤は、ワクチンとしての使用に適した生ウイルス、弱毒化ウイルス、又は死滅ウイルスを含み得る。
【0049】
実施形態では、活性剤は、抗TSLP抗体又は抗体バリアントであり、好適には、その抗TSLP抗原結合断片である。胸腺間質性リンパ球新生因子(TSLP)は、アレルギー性炎症の開始に関与する上皮細胞由来サイトカインである。本明細書で説明されている抗TSLP抗原結合断片(Fab1と称される)は、喘息の処置に有用であり得る。例示的なFab1配列として、下記が挙げられる。
【0050】
HCDR1 FAB1
Thr Tyr Gly Met His(配列番号1)
【0051】
HCDR2 FAB1
Val Ile Trp Tyr Asp Gly Ser Asn Lys His Tyr Ala Asp Ser Val Lys Gly(配列番号2)
【0052】
HCDR3 FAB1
Ala Pro Gln Trp Glu Leu Val His Glu Ala Phe Asp Ile(配列番号3)
【0053】
重鎖VH FAB1
【化3】
【0054】
LCDR1 FAB1
Gly Gly Asn Asn Leu Gly Ser Lys Ser Val His(配列番号5)
【0055】
LCDR2 FAB1
Asp Asp Ser Asp Arg Pro Ser(配列番号6)
【0056】
LCDR3 FAB1
Gln Val Trp Asp Ser Ser Ser Asp His Val Val(配列番号7)
【0057】
軽鎖VL FAB1
【化4】
【0058】
FAB1可変重鎖
【化5】
【0059】
FAB1可変軽鎖
【化6】
【0060】
好適な実施形態では、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤は、この製剤の安定化(特に、活性剤の安定化)に役立つガラス安定剤をさらに含む。「ガラス安定剤」は、好適には乾燥中に活性剤表面で水と置き換わることによるか又は他の方法で分解プロセスを妨げることにより、乾燥粉末製剤中の活性剤(好適にはポリペプチド)を安定化させ、この活性剤を含む非晶質固体を形成する添加剤を指す。ガラス安定剤の例として、非晶質糖類、高分子糖、緩衝剤、塩類、又は合成ポリマー(例えばポリ-L-グリコール酸)、及びそのような化合物の混合物が挙げられる。好適な実施形態では、ガラス安定剤は、非晶質糖類である。追加の実施形態では、ガラス安定剤は、緩衝剤である。さらなる実施形態では、本明細書で説明されている製剤は、非晶質糖類及び緩衝剤の両方を含み得、これらは、一緒に又は別々に、ガラス安定剤として作用し得る。
【0061】
本明細書で説明されている製剤での使用のための例示的な非晶質糖類として下記が挙げられるが、これらに限定されない:トレハロース、スクロース、ラフィノース、イヌリン、デキストラン、マンニトール、及びシクロデキストリン。好適には、非晶質糖類は、乾燥粉末製剤の約30%~約70%(重量百分率)で存在する。さらなる実施形態では、非晶質糖類は、約30%~約65%、約35%~約65%、約35%~約60%、約40%~約60%、約30%~約50%、又は約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、若しくは約60%で存在する。好適には、非晶質糖類はトレハロースであり、乾燥粉末製剤の重量の約30%~60%でこの製剤中に存在し、より好適には、約35%~55%、又は約35%、約40%、約45%、若しくは約50%でこの製剤中に存在する。
【0062】
本乾燥粉末製剤に(好適にはガラス安定剤として)含まれ得る例示的な緩衝剤として、下記が挙げられる:様々なクエン酸緩衝剤(例えばクエン酸ナトリウム)、リン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、グリシン緩衝剤、酢酸緩衝剤、及び酒石酸緩衝剤、並びにそのような緩衝剤の組み合わせ。本乾燥粉末製剤に含まれ得る緩衝剤の量は、約0.1%~約20%の範囲であり得、より好適には、約0.5%~約15%、約1%~約10%、約2%~約8%、約3%~約7%、又は約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、若しくは約10%の範囲であり得る。
【0063】
緩衝剤はまた、本乾燥粉末製剤のpHもコントロールし、好適には、約pH5~約8(例えば、約pH5~約pH6、約pH5.5~約pH6.5、約pH6~約pH7、約pH6.5~約pH7.5、又は約pH7~約pH8)のpHを維持する。
【0064】
追加の実施形態では、約30%~50%のトレハロース、約10%~11%のロイシン、約1%~3%のトリロイシン、約8%~9%のクエン酸緩衝剤、及び活性剤を含み、より好適には、約39%のトレハロース、約10.5%のロイシン、約2%のトリロイシン、約8.5%のクエン酸緩衝剤、及び活性剤を含む乾燥粉末製剤が提供される。
【0065】
追加の実施形態では、約30%~50%の非晶質糖類、ロイシン、約0.5%~約10%のトリロイシン、約1%~約10%の緩衝剤、及び活性剤から本質的になる乾燥粉末製剤であって、ロイシン及びトリロイシンが、約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの濃度比で存在する、乾燥粉末製剤が提供される。追加の実施形態では、約30%~50%の非晶質糖類、約8%~約11%のロイシン、約2%~約4%のトリロイシン、約1%~約10%の緩衝剤、及び活性剤から本質的になる乾燥粉末製剤が提供される。約35%~45%のトレハロース、約9%~約11%のロイシン、約2%~約3%のトリロイシン、約2%~約85のクエン酸緩衝液、及び活性剤から本質的になる追加の乾燥粉末製剤が提供される。さらなる実施形態では、本乾燥粉末製剤は、約39%のトレハロース、約10.5%のロイシン、約2%のトリロイシン、約8.5%のクエン酸緩衝剤、及び活性剤から本質的になる。
【0066】
列挙されている成分から「本質的になる(consist essentially)」組成物及び製剤では、そのような組成物及び製剤は、列挙された成分と、特許請求されている製剤の基本的な及び新規の特性に実質的に影響を及ぼさないものとを含む。特許請求されている製剤の基本的な及び新規の特性に実質的に影響を及ぼさない成分とは、ロイシン及びトリロイシンの本乾燥粉末製剤を安定化させる能力を制限しないもののことである。好適には、列挙されている成分から本質的になる組成物及び製剤は、他のアミノ酸又はトリペプチドアミノ酸を特に除外するが、追加の糖、緩衝剤等を含み得る。
【0067】
例示的な実施形態では、約30~50%のトレハロース、約10%~11%のロイシン、約1%~3%のトリロイシン、約8%~9%のクエン酸緩衝剤、及び約30~50%の抗TSLP抗体抗原結合断片を含み、より好適には、約39%のトレハロース、約10.5%のロイシン、約2%のトリロイシン、約8.5%のクエン酸緩衝剤、及び約40%の抗TSLP抗体抗原結合断片を含む乾燥粉末製剤が提供される。ある特定の実施形態では、この抗TSLP抗体抗原結合断片は、Fab1である。
【0068】
さらに例示的な実施形態では、約30~50%のトレハロース、約10%~11%のロイシン、約1%~3%のトリロイシン、約8%~9%のクエン酸緩衝剤、及び約30~50%の抗TSLP抗体抗原結合断片から本質的になり、より好適には、約39%のトレハロース、約10.5%のロイシン、約2%のトリロイシン、約8.5%のクエン酸緩衝剤、及び約40%の抗TSLP抗体抗原結合断片から本質的になる乾燥粉末製剤が提供される。
【0069】
本明細書で説明されている乾燥粉末製剤を構成する微粒子は、好適には、エアロゾル形態で提供される場合に、特定の質量中央空気動力学的直径(MMAD)を有する。この微粒子はまた、特定の光学体積平均直径(optical volume mean diameter)(oVMD)も有し得る。oVMDはまた、粒径分布(PSD又はpPSD)とも称され得る。
【0070】
本明細書で使用される場合、「質量中央空気動力学的直径」又は「MMAD」は、分散された微粒子の空気動力学的サイズの尺度である。空気動力学的直径は、エアロゾル化された粉末をその沈降挙動の観点から説明するために使用され、微粒子と同一の空気中での沈降速度を有する単位密度球体の直径である。空気動力学的直径は、微粒子の粒子形状、密度、及び物理的サイズを包含する。本明細書で使用される場合、MMADは、別途示されない限り、カスケードインパクションにより決定されたエアロゾル化粉末の空気動力学的粒径分布の中点又は中央値を指す。好適には、本明細書で提供される乾燥粉末製剤の微粒子は、質量中央空気動力学的直径(MMAD)が、少なくとも1μm以上であり、より好適には、約1μm~約10μm、約2μm~約8μm、約2μm~約7μm、約2μm~約6μm、約2μm~約5μm、約2μm~約4μm、約3μm~約7μm、約4μm~約7μm、約3μm~約6μm、又は約2μm、約3μm、約4μm、約5μm、約6μm、又は約7μmである。
【0071】
好適には、微粒子割合(本明細書で説明されている乾燥粉末製剤の5μm未満の空気動力学的直径を有する、吸入デバイスから放出された粒子の割合)は、50%以上であり、より好適には60%以上である。この微粒子割合(FPF)は、患者への送達後に乾燥粉末製剤の20%未満(好適には、15%未満、10%未満、又は5%未満)がデバイス中に残存する低デバイス保持の一因となり得る。
【0072】
追加の実施形態では、微粒子は、好適には等価光学体積平均直径(equivalent optical volume mean diameter)が約0.5μm~約7μmである。等価光学体積平均直径(oVMD)は、適切な光学技術を使用して測定した場合に、微粒子と光との特定の光学的相互作用に最も近似する球体の平均直径を指し、ここで、微粒子の半分は、より小さい同等の球体により最も近似されており、且つ微粒子の半分は、平均より大きい同等の球体により最も近似されている。例示的な実施形態では、微粒子は、等価光学体積平均直径(oVMD)が約0.5μm~約6μm、又は約1μm~約5μm、又は約1μm~約4μm、又は約2μm~約4.5μm、又は約2.5μm~約4μm、又は約2μm~約4μm、又は約2μm~約3μm、又は約2μm~約3.5μm、又は約1μm、約1.5μm、約2μm、約2.5μm、約3μm、約3.5μm、約4μm、約4.5μm、又は約5μmである。
【0073】
本明細書で説明されているように、高い圧縮かさ密度により、同一の送達量を用いて、より多量の活性剤の送達が可能になる。ある特定の生物学的製剤は、効果的な処置のために、50mg/用量以上の送達ペイロードが必要となる場合がある。図2Bに例示されているように、ロイシン及びトリロイシンの組み合わせにより、かさ密度がより高い乾燥粉末製剤を得ることができ、従って、同量の充填重量の場合に、体積が実質的により少ない。
【0074】
図2Bに示されている例示的なプラットフォーム製剤を、下記に示す。LTCは、トリロイシン(TLeu)を含まないが、ロイシン、トレハロース、及びクエン酸緩衝剤を含む製剤を示し;TTCは、ロイシン(Leu)を含まないが、トリロイシン、トレハロース、及びクエン酸緩衝剤を含む製剤を示し;TLTCは、ロイシン及びトリロイシンの両方、並びにトレハロース及びクエン酸緩衝剤の含有を示す。Citは、クエン酸緩衝剤を指す。Treは、トレハロースを指す。
【0075】
【表1】
【0076】
各製剤のカプセル(サイズ3のカプセル)を、図2Bに、それぞれの充填重量で示す。示されているように、TLTC製剤の場合には、トリロイシン及びロイシンの組み合わせにより、乾燥粉末製剤100mgのカプセルへの充填が可能となり、さらに、このカプセル中に、ある程度の残りの空間が依然として維持される。他の製剤は、約70~80mgを超える充填重量を充填し得なかった。このことは、高い圧縮かさ密度を有する製剤を調製するためのロイシン及びトリロイシンの併用により劇的な改善がもたらされ、高い充填重量が可能になることを表す。
【0077】
本明細書で説明されているように、本乾燥粉末製剤中でのロイシン及びトリロイシンの使用により、所望のサイズ(MMAD)、並びに所望の比表面積(SSA)及び粗さを有する微粒子も得られ、結果として、様々な吸入プラットフォームを使用して適切に流れて肺に送達され得る微粒子が得られる。
【0078】
微粒子の比表面積(SSA)は、単位質量当たりの微粒子の総表面積と定義される(好適には、単位m/g)。SSAを測定する方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、相対圧力の関数として測定される窒素吸着による材料の比表面積評価を使用するBrunauer-Emmett-Teller(BET)測定が挙げられる。この表面積は、微粒子の表面上の単分子層に対応する吸着ガスの量を算出することにより決定される。この技術は、外部面積及びあらゆる細孔面積の評価を測定して、総比表面積を決定する。BETを測定するための機器は、当該技術分野で既知である。
【0079】
実施形態では、本乾燥粉末製剤の微粒子の比表面積(SSA)は、約3m/g~約8m/gである。好適な実施形態では、複数の微粒子のSSAは、約3.5m/g~7.5m/g、又は約4m/g~7m/g、又は約4.5m/g~7m/g、又は約5m/g~7m/g、又は約4.5m/g~6m/g、又は約5m/g~6m/g、又は約4m/g、約4.5m/g、約5m/g、約5.5m/g、約6m/g、約6.5m/g、若しくは約7m/gである。
【0080】
図3は、BETを使用して測定した比表面積の結果(m/g)を示す。図3内の各列は、製剤中の様々な量のトリロイシンを表す。各列内では、ロイシンの量は、約1%から約20%へと増加している。挿入された顕微鏡写真は、SSAが低い微粒子(左下)及びSSAがより高い微粒子(右上)の物理的外観を示す。示されているように、より低いwt%のトリロイシンでは、SSAは、約5m/g未満にとどまるが、ロイシンが増加すると増加する。約1%超のトリロイシンでは、SSAは、3.0m/g超まで増加し、ロイシンの割合が増加すると同様に増加する。5.5m/g超であり7.0m/gに近いSSA値は、約4%を超えるトリロイシンの量で達成される。約4~7m/gの比表面積の所望の範囲は、約1~6%のトリロイシン及び約1~20%のロイシンの量を使用することにより容易に達成され得る。示されているように、約6%未満のトリロイシンの量を用いることにより、ロイシンの量を10未満%未満に保ち得、さらには5%未満に保ち得、且つ所望のSSA、及び表面粗さを有する微粒子を依然として維持する。左上の顕微鏡写真は、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤の微粒子の形状を示しており、所望のサイズ、比表面積、及び表面粗さを示す。
【0081】
ある特定の実施形態では、本乾燥粉末製剤は、圧縮かさ密度が約0.4~1.0g/cmである。好適には、この乾燥粉末製剤の圧縮かさ密度は、約0.5~0.8g/cmである。実施形態では、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤の圧縮かさ密度は、約0.4~0.9gm/cm、約0.4~0.8gm/cm、約0.5~0.8gm/cm、約0.6~0.8gm/cm、又は約0.4gm/cm、約0.5gm/cm、約0.6gm/cm、約0.7gm/cm、又は約0.8gm/cmである。ある特定の実施形態では、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤の圧縮かさ密度は、約0.4gm/cm~約0.9gm/cmである。ある特定の実施形態では、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤の圧縮かさ密度は、約0.5gm/cm~約0.8gm/cmである。
【0082】
本乾燥粉末製剤は、好適には、本明細書で説明されているガラス安定剤(例えば、非晶質糖類若しくは緩衝剤、又は非晶質糖類及び緩衝剤の両方の使用)を含む。例示的な非晶質糖類として、本明細書で説明されているものが挙げられ、例えば、トレハロース、スクロース、ラフィノース、イヌリン、デキストラン、及びシクロデキストリンが挙げられる。好適には、非晶質糖類は約30%~約70%で存在し、実施形態では、(好適には約35%~60又は35%~55%で存在する)トレハロースである。
【0083】
本乾燥粉末製剤中での使用のため例示的な緩衝剤は、本明細書で説明されており、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、及び酒石酸緩衝剤が挙げられる。好適には、緩衝剤は約1%~約10%で存在し、実施形態では、クエン酸緩衝剤である。ある特定の実施形態では、クエン酸緩衝剤のpHは、約pH5.5~約pH6.5であり、例えば、約pH5.5、約pH5.6、約pH5.7、約pH5.8、約pH5.9、約pH6.0、約pH6.1、約pH6.2、約pH6.3、約pH6.4、又は約pH6.5である。ある特定の実施形態では、クエン酸緩衝剤のpHは、約pH6.4である。
【0084】
ある特定の実施形態では、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤は、界面活性剤を含む。本明細書で定義される場合、「界面活性剤」は、粒子の凝集、カプセル、容器の壁、又は吸入可能な送達デバイスのバルブ構成要素の表面への粒子の付着を減少させる分子又は化合物を指す。界面活性剤は、製剤の再構成時に、肉眼で見ることができない粒子(SVP)の形成を減少させることも分かっている。SVPの形成を除去するか又は減少させることにより、製造中にSVPの形成を追跡する負担が除かれることから、製剤の分析的キャラクタリゼーションが簡略化される。SVPの分析的キャラクタリゼーションは、品質管理目的でSVPを同定して定量するための直交技術の開発を伴う場合がある。そのため、SVPを除去するか又は許容可能なレベルまで減少させることにより、製造プロセスからこのキャラクタリゼーション工程が不要となり、製造が効率化される。また、SVPからの薬物放出の動態が不明であることから、SVPの除去により用量範囲がより予測可能になり得る。さらに、SVPの除去により、再構成後の薬理活性に関与するために利用可能な活性剤の量が増加する可能性があり、これは、より高い送達用量を達成し得るだけでなく、より正確な送達用量の予測を算出し得ることも意味し得る。より高い送達用量はまた、例えば、薬理学的利益を引き出すために送達されなければならない用量の数又は頻度を潜在的に減少させることにより、患者に利益ももたらし得る。
【0085】
「肉眼で見ることができない」(「SVP」)とは、約1μm~約200μmという、裸眼で見えない粒子のことである。肉眼で見ることができない粒子の存在は、再構成された液体が濁ることにより、乾燥粉末製剤の再構成時に推測され得る。SVPの存在の正確な決定を、マイクロフローイメージングのような技術を使用して確認し得る。マイクロフローイメージング(即ちMFI)は、マイクロ流体フロー顕微鏡と、高分解能撮像粒子分析とを組み合わせて、SVP数を定量する。MFIは、例えば、約1~約200μm、約2μm~約200μm、約5μm~約200μm、約10μm~約200μm、及び約25μm~約200μmのサイズ範囲で粒子数をビン化することにより、粒径範囲にわたりSVP数をビン化し得る)。実施例は、界面活性剤の含有により、界面活性剤が存在していないコントロール製剤と比較して各粒径範囲におけるSVPの存在が減少することを示す(図10Aを参照されたい)。従って、ある特定の実施形態では、本明細書で開示されている乾燥粉末製剤は界面活性剤を含み、再構成時に、この製剤中の肉眼で見ることができない粒子の数が減少している。いくつかの実施形態では、肉眼で見ることができない粒子の数は、界面活性剤を含まない同等の製剤と比較して減少している。
【0086】
ある特定の実施形態では、サイズが約25μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり30,000個未満の粒子まで減少しており、例えば、1ml当たり25,000個の粒子、1ml当たり20,000個の粒子、1ml当たり15,000個の粒子、1ml当たり10,000個の粒子、又は1ml当たり5,000個の粒子まで減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約25μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり1,000個未満の粒子まで減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約25μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり1,000個未満の粒子まで減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約25μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり100個未満の粒子まで減少している。
【0087】
ある特定の実施形態では、サイズが約10μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり100,000個未満の粒子まで減少しており、例えば、1ml当たり90,000個の粒子、1ml当たり80,000個の粒子、1ml当たり70,000個の粒子、1ml当たり60,000個の粒子、1ml当たり50,000個の粒子、1ml当たり40,000個の粒子、又は1ml当たり30,000個の粒子まで減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約10μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり10,000個未満の粒子まで減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約10μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり1,000個未満の粒子まで減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約10μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり100個未満の粒子まで減少している。
【0088】
ある特定の実施形態では、サイズが約5μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり200,000個未満の粒子まで減少しており、例えば、1ml当たり180,000個の粒子、1ml当たり170,000個の粒子、1ml当たり160,000個の粒子、1ml当たり150,000個の粒子、又は1ml当たり140,000個の粒子まで減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約5μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり50,000個未満の粒子まで減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約5μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり10,000個未満の粒子まで減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約5μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり2,000個未満の粒子まで減少している。
【0089】
ある特定の実施形態では、サイズが約2μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり1×10個未満の粒子まで減少しており、例えば、1ml当たり0.8×10個の粒子、1ml当たり0.7×10個の粒子、1ml当たり0.6×10個の粒子、又は1ml当たり0.5×10個の粒子まで減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約2μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり100,000個未満の粒子まで減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約2μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり50,000個未満の粒子まで減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約2μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり10,000個未満の粒子まで減少している。
【0090】
ある特定の実施形態では、サイズが約1μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり2×10個未満の粒子まで減少し、例えば、1ml当たり1.8×10個の粒子、1ml当たり1.7×10個の粒子、1ml当たり1.6×10個の粒子、又は1ml当たり1.5×10個の粒子まで減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約1μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり200,000個未満の粒子まで減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約1μm~約200μmのSVPの数は、1ml当たり150,000個未満の粒子まで減少している。
【0091】
ある特定の実施形態では、サイズが約25μm~約200μmのSVPの数は、基準コントロールと比較して、再構成時に2倍超減少しており、例えば、3倍超、4倍超、5倍超、6倍超、7倍超、8倍超、又は9倍超減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約25μm~約200μmのSVPの数は、基準コントロールと比較して、再構成時に10倍超減少している。
【0092】
ある特定の実施形態では、サイズが約10μm~約200μmのSVPの数は、基準コントロールと比較して、再構成時に2倍超減少しており、例えば、3倍超、4倍超、5倍超、6倍超、7倍超、8倍超、又は9倍超減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約10μm~約200μmのSVPの数は、基準コントロールと比較して、再構成時に10倍超減少している。
【0093】
ある特定の実施形態では、サイズが約5μm~約200μmのSVPの数は、基準コントロールと比較して、再構成時に2倍超減少しており、例えば、3倍超、4倍超、5倍超、6倍超、7倍超、8倍超、又は9倍超減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約5μm~約200μmのSVPの数は、基準コントロールと比較して、再構成時に10倍超減少している。
【0094】
ある特定の実施形態では、サイズが約2μm~約200μmのSVPの数は、基準コントロールと比較して、再構成時に2倍超減少しており、例えば、3倍超、4倍超、5倍超、6倍超、7倍超、8倍超、又は9倍超減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約2μm~約200μmのSVPの数は、基準コントロールと比較して、再構成時に10倍超減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約2μm~約200μmのSVPの数は、基準コントロールと比較して、再構成時に100倍超減少している。
【0095】
ある特定の実施形態では、サイズが約1μm~約200μmのSVPの数は、基準コントロールと比較して、再構成時に2倍超減少しており、例えば、3倍超、4倍超、5倍超、6倍超、7倍超、8倍超、又は9倍超減少している。ある特定の実施形態では、サイズが約1μm~約200μmのSVPの数は、基準コントロールと比較して、再構成時に10倍超減少している。
【0096】
ある特定の実施形態では、基準コントロールは、界面活性剤を欠いている同等の製剤である。いくつかの実施形態では、この製剤は、水で再構成されている。いくつかの実施形態では、この製剤は、30mg/mlの活性剤濃度に再構成されている。いくつかの実施形態では、この製剤は、2.5mg/mlの活性剤濃度に再構成されている。いくつかの実施形態では、SVPの数は、マイクロフローイメージング(MFI)により決定されている。
【0097】
本明細書で説明されている乾燥粉末製剤での使用に適した例示的な界面活性剤として、ポリソルベート-20(PS-20)、ポリソルベート-40(PS-40)、ポリソルベート-60(PS-60)、ポリソルベート-80(PS-80)、及びポロクサマー-188が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、本明細書で説明されている製剤は、PS-80を含み、好適には、約0.27重量%~約2.7%重量、好適には約0.27重量%~約1.33重量%、好適には約0.67重量%~約1.33重量%の範囲の濃度でPS-80を含む。ある特定の実施形態では、この製剤は、約0.3重量%~約3重量%の範囲の濃度でPS-80を含む。ある特定の実施形態では、この製剤は、約0.3重量%~約2.5重量%の範囲の濃度でPS-80を含む。ある特定の実施形態では、この製剤は、約0.5重量%~約2.5重量%の範囲の濃度でPS-80を含む。ある特定の実施形態では、この製剤は、約0.5重量%~約2重量%の範囲の濃度でPS-80を含む。ある特定の実施形態では、この製剤は、約0.5重量%~約1.5重量%の範囲の濃度でPS-80を含む。
【0098】
例示的な実施形態では、本製剤は、約0.67%~約1.33%の範囲の濃度でPS-80を含む。
【0099】
例示的な実施形態では、本製剤は、約0.7%(w/w)、約0.8%(w/w)、約0.9%(w/w)、約1.0%(w/w)、約1.1%(w/w)、約1.2%(w/w)、又は約1.3%(w/w)の濃度でPS-80を含む。いくつかの実施形態では、この製剤は、約1.1%(w/w)の濃度でPS-80を含む。
【0100】
例示的な実施形態では、本組成物は、0.7%±0.35(w/w)、約0.8%±0.4(w/w)、約0.9%±0.45(w/w)、約1.0%±0.5(w/w)、約1.1%±0.55(w/w)、約1.2%±0.6(w/w)、又は約1.3%±0.65(w/w)の濃度でPS-80を含む。いくつかの実施形態では、この製剤は、1.1%±0.55(w/w)の濃度でPS-80を含む。
【0101】
例示的な実施形態では、本組成物は、0.7%±0.35(w/w)、約0.8%±0.4(w/w)、約0.9%±0.45(w/w)、約1.0%±0.5(w/w)、約1.1%±0.55(w/w)、約1.2%±0.6(w/w)、約1.3%±0.65(w/w)、約1.4%±0.7(w/w)、約1.5%±0.75(w/w)、約1.6%±0.8(w/w)、又は約1.7%±0.75(w/w)の濃度でPS-80を含む。
【0102】
ある特定の実施形態では、本明細書で説明されている製剤は、ポロクサマー-188を含み、好適には、約1重量%~約10重量%の範囲の濃度でポロクサマー-188を含む。例示的な実施形態では、この製剤は、約0.67%~約2.67%の範囲の濃度でポロクサマー-188(P188)を含む。から選択される。ある特定の実施形態では、この製剤は、約0.3重量%~約3重量%の範囲の濃度でP188を含む。ある特定の実施形態では、この製剤は、約0.3重量%~約2.5重量%の範囲の濃度でP188を含む。ある特定の実施形態では、この製剤は、約0.5重量%~約2.5重量%の範囲の濃度でP188を含む。ある特定の実施形態では、この製剤は、約0.5重量%~約2重量%の範囲の濃度でP188を含む。ある特定の実施形態では、この製剤は、約0.5重量%~約1.5重量%の範囲の濃度でP188を含む。
【0103】
例示的な実施形態では、本製剤は、約0.67%~約1.67%の範囲の濃度でP188を含む。
【0104】
例示的な実施形態では、本製剤は、約0.7%(w/w)、約0.8%(w/w)、約0.9%(w/w)、約1.0%(w/w)、約1.1%(w/w)、約1.2%(w/w)、約1.3%(w/w)、約1.4%(w/w)、約1.5%(w/w)、約1.6%(w/w)、又は約1.7%(w/w)の濃度でP188を含む。
【0105】
例示的な実施形態では、本乾燥粉末製剤は、約39%のトレハロース、約10.5%のロイシン、約2%のトリロイシン、約8.5%のクエン酸緩衝剤、及び活性剤を含む。
【0106】
例示的な活性剤は、本明細書全体を通して説明されており、低分子、並びに生物製剤、例えば抗体及びその抗原結合断片が挙げられる。
【0107】
本乾燥粉末製剤の微粒子の好適なサイズは、本明細書で説明されており、実施形態では、複数の微粒子は、エアロゾル形態で提供された場合に質量中央空気動力学的直径(MMAD)が約2μm~約4μmである。この微粒子の好適な比表面積(SSA)は、本明細書で説明されており、例えば、約4~7m/gの比表面積が挙げられる。好適には、この微粒子は、等価光学体積平均直径(oVMD)が約1μm~約5μmである。
【0108】
さらなる実施形態では、本明細書で提供されるのは、乾燥粉末製剤を調製する方法である。実施形態では、この方法は、好適には、ロイシン、約0.1mg/mL~約6mg/mLのトリロイシン、活性剤を含み、好適にはガラス安定剤をさらに含む液体原料を調製することを含む。本明細書で説明されているガラス安定剤は、必要に応じて乾燥粉末製剤から省略され得る。この液体原料はまた、界面活性剤も含み得る。これらの成分を液体溶媒中で組み合わせて、これらの成分の各々が溶解している原料を作製することにより、この液体原料を調製する。望まし場合には又は必要に応じて加熱して、この液体原料を形成する様々な成分の溶解度を高め得る。例示的な液体溶媒として、水、例えば脱イオン水、及び水によるアルコールの希釈溶液が挙げられる。実施形態では、活性剤を、好適には、原料の残余の成分の添加及び溶解の後に液体原料に添加する。
【0109】
この調製方法の好適な実施形態では、ロイシン及びトリロイシンは、液体原料中に、約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの濃度比で存在する。本明細書で説明されているように、液体原料を調製する場合には、ロイシン及びトリロイシンは、mg/mLの量で提供される。そのため、そのような実施形態では、規定の体積の液体原料中における約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの濃度比は、この液体原料中における重量でのロイシン:トリロイシンの比に対応する。さらなる実施形態では、ロイシン及びトリロイシンは、液体原料中において、約0.1:1~約25:1、約0.5:1~約20:1、約1:1~約20:1、約1:1~約15:1、約1:1~約12:1、約1:1~約10:1、約1:1~約7:1、約1:1~約6:1、又は約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約5:1:1:、約5.2:1、約5.25:1、約5.3:1、約5.4:1、約5.5:1、約5.75:1、若しくは約6:1のロイシン:トリロイシンの濃度比で存在する。
【0110】
次いで、この液体原料を噴霧し得る。ある特定の実施形態では、この液体原料を、噴霧する前にろ過する。ある特定の実施形態では、この液体原料を、0.22ミクロンフィルタに通してろ過する。ある特定の実施形態では、ロイシン及びトリロイシンを含む液体原料を、活性剤の添加前にろ過する。ある特定の実施形態では、この液体原料を、噴霧する前の活性剤の添加後にろ過する。噴霧することは、好適には加圧ガス(例えば、CO又は不活性ガス)を使用して、液体原料を微細な液滴に変換することを指す。噴霧された液体原料を製造するための例示的なデバイスは、当該技術分野で既知あり、所望のサイズ及びフロー特性を有する様々な噴霧ノズルの使用が挙げられる。噴霧するための例示的なパラメータとして、約50℃~90℃(好適には、約60℃~80℃又は約70℃)の出口温度;約8~15ml/分(好適には、約9~14ml/分、約10~13ml/分、又は約12ml/分)の原料の供給速度;約9~15kg/時間(hr又はh)(好適には、約10~14kg/hr、約12~14kg/hr、又は約13kg/hr)の噴霧器のガス供給速度;及び約60~100kg/hr(好適には、約60~90kg/hr、約70~90kg/hr、又は約80kg/hr)の乾燥ガスの供給速度が挙げられる。
【0111】
次いで、好適には、加熱下で、及び乾燥を助けるために流動空気と組み合わせて、噴霧された液体原料を乾燥させ得る。この乾燥の結果、複数の微粒子が得られる。乾燥温度は、典型的には、約50℃~100℃、又は約60℃~100℃、又は約70℃~90℃の範囲であり、空気の流量は、約10~40m/時間のオーダーであり得る。
【0112】
例示的なガラス安定剤(例えば、非晶質糖類及び緩衝剤)は、このガラス安定剤の好適な量と同様に、本明細書で説明されている。ロイシン及びトリロイシンの好適な量も、同様に全体を通して記載されている。最終の乾燥粉末製剤は、列挙された量のロイシン及びトリロイシン(並びに他の成分)を含むべきであることから、そのような量も液体原料で使用される。噴霧後の乾燥プロセスの結果、あらゆる液体溶媒が除去され、そのため、成分の元々の乾燥重量の全量が、乾燥粉末製剤中の成分の最終乾燥重量に対応する。例示的な活性剤も、本明細書で説明されている。
【0113】
本明細書で説明されている乾燥粉末製剤を調製する方法により、好適には、言及した所望の物理的特性(例えば、所望の圧縮かさ密度、比表面積、及びサイズ)を有する微粒子が得られる。例示的なサイズは、例示的なSSAと同様に、本明細書で説明されており、約10m/g未満(好適には約4~7m/g)の比表面積が挙げられる。好適には、この方法により、本明細書で説明されているように、等価光学体積平均直径(oVMD)が約1μm~約5μmであり;エアロゾル形態で提供される場合に質量中央空気動力学的直径(MMAD)が約2μm~約4μmであり;圧縮かさ密度が約0.4g/cm~0.8g/cmである複数の微粒子が得られる。
【0114】
本明細書で説明されている乾燥粉末製剤を調製する方法のさらなる利点は、このプロセスの高スループット性に関する。例えば、噴霧の供給速度が20ml/分で設定される場合には、下記のスループット(グラム/時間)が決定された。
【0115】
【表2】
【0116】
記載されているように、5mg/mLの最大トリロイシン濃度にて、原料中でトリロイシンのみを使用すると、最大固形物負荷は25mg/mLに達した(最大溶解度に関連する)。これにより、スループットは30g/時間となる。20mg/mLの最大ロイシン濃度での60%のロイシンのみにより、最大固形物負荷は33mg/mLに達し、スループットは40g/時間に達した。単独でのロイシン及びトリロイシンの使用のさらなる結果も示す。対照的に、ロイシン及びトリロイシンの両方を含む、調べた3種の原料の場合には、8%のロイシン及び2%のトリロイシンのみを使用して、最大固形物負荷が250mg/mLに達し、スループットが300g/時間に達した。このことは、比較的少量のロイシン及びトリロイシンを使用して分散性粒子を得ることができ、さらには多量のスループットも可能になるという、本明細書で開示されている方法及び製剤の利点の予想外で予測不能な発見であった。そのような高スループットは、多量の製剤が必要とされる、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤の製造をスケールアップする能力に大きな影響を及ぼす。
【0117】
本明細書で説明されている方法及び製剤により、カプセル、ブリスターパック等、及び乾燥粉末製剤に適した他の容器の製造が可能になる。そのような容器を、10~200mgの乾燥粉末により製造し得、好適には、10~100mg、又は25~75mg、又は50mgの乾燥粉末製剤により製造し得る。そのような容器は、好適には、患者の肺に0.1~10mgの乾燥粉末製剤を送達し得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている方法の使用により、吸入デバイスでの使用に必要なカプセルの総数を減少させ得る乾燥粉末製剤が得られる。例えば、50~100mgの活性剤を送達するのに必要な量を、2つのより大きな00カプセルから単一のサイズ3のカプセルへと減少させ得る。
【0119】
本明細書で説明されている方法はまた、複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤の圧縮かさ密度及び比表面積を増加させる機構も提供する。この乾燥粉末製剤にロイシン及びトリロイシンを組み込むことにより、約0.4~1.0g/cm(好適には約0.5~0.8g/cm)の圧縮かさ密度を容易に達成し得る。加えて、約5~10m/g(好適には約5m/g~約7m/g)の比表面積も達成し得る。追加の実施形態では、微粒子のサイズを、本明細書で説明されている範囲内で形成し得る(例えば、エアロゾル形態で提供される場合に質量中央空気動力学的直径(MMAD)が約2μm~約4μmである微粒子)。
【0120】
実施形態では、圧縮かさ密度が約0.4~約1.0g/cmである複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤を調製する方法が提供され、この方法は、この乾燥粉末製剤に、ロイシン及びトリロイシンを、重量で約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの比にて組み込むことを含む。
【0121】
さらなる実施形態では、比表面積が約5~約10m/gである複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤を調製する方法が提供され、この方法は、この乾燥粉末製剤に、ロイシン及びトリロイシンを、重量で約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの比にて組み込むことを含む。
【0122】
さらなる実施形態では、複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤を調製する方法であって、この微粒子の質量中央空気動力学的直径(MMAD)は、エアロゾル形態で提供される場合に約2μm~約4μmである、方法が提供され、この方法は、この乾燥粉末製剤に、ロイシン及びトリロイシンを、重量で約0.1:1~約30:1のロイシン及びトリロイシンの比にて組み込むことを含む。
【0123】
圧縮かさ密度を増加させ、乾燥粉末製剤の比接触面積を得、及び/又は特定の質量中央空気動力学的直径を得るための方法で利用され得る好適な量のロイシン及びトリロイシンは、本明細書で説明されており、約5%~約15%のロイシン及び約1%~約5%のトリロイシンを組み込むことが挙げられ、好適には、約8%~約11%のロイシン及び約2%~約4%のトリロイシンを組み込むことが挙げられる。実施形態では、この方法は、約10.5%のロイシン及び約2%のトリロイシンを組み込むことを含む。
【0124】
本明細書で同様に提供されるのは、哺乳類患者の肺への本明細書で説明されている乾燥粉末製剤の送達の方法である。好適には、そのような方法は、エアロゾル形態の乾燥粉末製剤の吸入を含む。この乾燥粉末製剤が投与され得る哺乳類患者として、ヒト、及び他の哺乳類、例えば、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ウシ、霊長類等が挙げられる。
【0125】
乾燥粉末製造のエアロゾル形態を製造する方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、乾燥粉末吸入器(DPI)(例えば、PLASTIAPE(Osnago,Italy)のMonodose RS01 DPI)等の吸入器デバイスの使用が挙げられる。本明細書で説明されている乾燥粉末製剤は、受動的吸入デバイス又は能動的吸入デバイスのいずれかによりガス流中に分注され得、且つ微粒子の一部が肺に達するように微粒子の少なくとも一部が患者により吸入されるのに十分な時間にわたり、ガス中に懸濁されたままであり得る。
【0126】
本明細書で同様に提供されるのは、哺乳類患者の医学的状態を処置する方法であって、本明細書で説明されている乾燥粉末製剤を、吸入により(例えば乾燥粉末吸入器により)患者に投与することを含む方法である。
【0127】
本明細書で説明されている方法を使用して処置され得る医学的状態として、神経系、内分泌系、筋肉系、心血管系、消化器系、呼吸器系(特に肺)、ホルモン系、免疫系、生殖系等に影響を及ぼすものが挙げられる。
【0128】
追加の例示的実施形態
実施形態1は、複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤であって、微粒子は、ロイシン、重量で約0.5%~約10%のトリロイシン、及び活性剤を含み、ロイシン及びトリロイシンは、重量で約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの比で存在する、乾燥粉末製剤である。
【0129】
実施形態2は、乾燥粉末製剤は、圧縮かさ密度が約0.4~約1.0g/cm3である、実施形態1に記載の乾燥粉末製剤である。
【0130】
実施形態3は、ガラス安定剤をさらに含む実施形態1又は2に記載の乾燥粉末製剤である。
【0131】
実施形態4は、ガラス安定剤が、非晶質糖類又は緩衝剤である、実施形態3の乾燥粉末製剤である。
【0132】
実施形態5は、ガラス安定剤が、非晶質糖類及び緩衝剤を含む、実施形態3の乾燥粉末製剤である。
【0133】
実施形態6は、非晶質糖類が、トレハロース、スクロース、ラフィノース、イヌリン、デキストラン、マンニトール、及びシクロデキストリンからなる群から選択される、実施形態4又は5に記載の乾燥粉末製剤である。
【0134】
実施形態7は、緩衝剤が、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、グリシン緩衝剤、酢酸緩衝剤、及び酒石酸緩衝剤からなる群から選択される、実施形態4~6のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0135】
実施形態8は、非晶質糖類が、重量で約30%~約70%にて存在する、実施形態4~7のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0136】
実施形態9は、非晶質糖類が、トレハロースである、実施形態4~8のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0137】
実施形態10は、トレハロースが、重量で約30%~65%にて存在する、実施形態9の乾燥粉末製剤である。
【0138】
実施形態11は、緩衝剤が、重量で約1%~約10%にて存在する、実施形態4~10のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0139】
実施形態12は、活性剤が、低分子である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0140】
実施形態13は、活性剤が、生物製剤である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0141】
実施形態14は、生物製剤が、抗体又はその抗原結合断片である、実施形態13の乾燥粉末製剤である。
【0142】
実施形態15は、ロイシン:トリロイシンの比が、重量で約1:1~約12:1である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0143】
実施形態16は、ロイシン:トリロイシンの比が、重量で約1:1~約7:1である、実施形態1~15のいずれか1つに記載の粉末乾燥製剤である。
【0144】
実施形態17は、ロイシン:トリロイシンの比が、重量で約5.25:1である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0145】
実施形態18は、重量で約1%~約10%(任意選択的に約5%)のトリロイシンを含む実施形態1~17のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0146】
実施形態19は、重量で約8%~約11%のロイシン、及び重量で約2%~約4%のトリロイシンを含む実施形態1~18のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0147】
実施形態20は、重量で約10.5%のロイシン、及び重量で約2%のトリロイシンを含む実施形態1~19のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0148】
実施形態21は、界面活性剤をさらに含み、界面活性剤が、ポリソルベート-20(PS-20)、ポリソルベート-40(PS-40)、ポリソルベート-60(PS-60)、ポリソルベート-80(PS-80)、及びポロクサマー-188から任意選択的に選択される、実施形態1~20のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0149】
実施形態22は、界面活性剤が、PS-80であり、任意選択的に、PS-80が、約0.27重量%~約2.7重量%の範囲の濃度で存在する、実施形態21に記載の乾燥粉末製剤である。
【0150】
実施形態23は、PS-80が、約1.1重量%の濃度で存在する、実施形態22に記載の乾燥粉末製剤である。
【0151】
実施形態23は、界面活性剤が、ポロクサマー188であり、任意選択的に、ポロクサマー-188が、約1重量%~約10重量%の範囲の濃度で存在する、実施形態21に記載の乾燥粉末製剤である。
【0152】
実施形態25は、ポロクサマー-188が、約0.67重量%~約1.0重量%の範囲の濃度で存在する、請求項23に記載の乾燥粉末製剤である。
【0153】
実施形態26は、複数の微粒子は、等価光学体積平均直径(oVMD)が約1μm~約5μmである、実施形態1~25のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0154】
実施形態27は、複数の微粒子は、エアロゾル形態で提供された場合には、質量中央空気動力学的直径(mass median aerodynamic diameter)(MMAD)が約2μm~約4μmである、実施形態1~26のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0155】
実施形態28は、圧縮かさ密度が約0.5g/cm3~約0.8g/cm3である、実施形態2~27のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0156】
実施形態29は、約39%のトレハロース、約10.5%のロイシン、約2%のトリロイシン、及び約8.5%のクエン酸緩衝剤を含む実施形態1~28のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0157】
実施形態30は、複数の微粒子は、比表面積が約10m2/g未満である、実施形態1~29のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤である。
【0158】
実施形態31は、複数の微粒子は、比表面積が約4mg2/g~約7m2/gである、実施形態30に記載の乾燥粉末製剤である。
【0159】
実施形態32は、複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤であって、微粒子が、重量で約10.5%のロイシン、重量で約2%のトリロイシン、重量で約8.5%のクエン酸緩衝剤、重量で約1%~約40%の活性剤、約1.07重量%のポリソルベート-80、及び合計100%となる重量の量のトレハロースを含む、乾燥粉末製剤である。
【0160】
実施形態33は、活性剤が、生物製剤である、実施形態32に記載の乾燥粉末製剤である。
【0161】
実施形態34は、生物製剤が、抗体又はその抗原結合断片である、実施形態33に記載の乾燥粉末製剤である。
【0162】
実施形態35は、乾燥粉末製剤を調製する方法であって、i.ロイシン、約0.1mg/mL~約6mg/mLのトリロイシン、活性剤、及び液体溶媒を含む液体原料を調製する工程であり、ロイシン及びトリロイシンが、約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの濃度比で存在する、調製する工程、ii.液体原料を噴霧する工程、並びにiii.噴霧乾燥された液体原料を乾燥させて、複数の微粒子を形成する工程を含む方法である。
【0163】
実施形態36は、液体原料がガラス安定剤をさらに含む、実施形態35に記載の方法である。
【0164】
実施形態37は、ガラス安定剤が、非晶質糖類又は緩衝剤である、実施形態36に記載の方法である。
【0165】
実施形態38は、ガラス安定剤が、非晶質糖類及び緩衝剤を含む、実施形態37に記載の方法である。
【0166】
実施形態39は、非晶質糖類が、トレハロース、スクロース、ラフィノース、イヌリン、デキストラン、マンニトール、及びシクロデキストリンからなる群から選択される、実施形態37又は38に記載の方法である。
【0167】
実施形態40は、緩衝剤が、クエン酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、グリシン緩衝剤、酢酸緩衝剤、及び酒石酸緩衝剤からなる群から選択される、実施形態37~39のいずれか1つに記載の方法である。
【0168】
実施形態41は、非晶質糖類が約30%~約70%で存在する、実施形態39又は40に記載の方法である。
【0169】
実施形態42は、非晶質糖類がトレハロースである、実施形態39~41のいずれか1つに記載の方法である。
【0170】
実施形態43は、トレハロースが約30%~約65%で存在する、実施形態42に記載の方法である。
【0171】
実施形態44は、緩衝剤が約1%~約10%で存在する、実施形態37~43のいずれか1つに記載の方法である。
【0172】
実施形態45は、活性剤が、低分子である、実施形態35~44のいずれか1つに記載の方法である。
【0173】
実施形態46は、活性剤が、生物製剤である、実施形態35~44のいずれか1つに記載の方法である。
【0174】
実施形態47は、生物製剤が、抗体又はその抗原結合断片である、実施形態46に記載の方法である。
【0175】
実施形態48は、工程(a)が、液体原料に界面活性剤を添加することであって、界面活性剤は、ポリソルベート-20(PS-20)、ポリソルベート-40(PS-40)、ポリソルベート-60(PS-60)、ポリソルベート-80(PS-80)、及びポロクサマー-188から任意選択的に選択される、添加することをさらに含む、実施形態35~47のいずれか1つに記載の方法である。
【0176】
実施形態49は、界面活性剤が、PS-80であり、任意選択的に、PS-80が、約0.02重量%~約0.2重量%の範囲の濃度で液体原料中に存在する、実施形態48に記載の方法である。
【0177】
実施形態50は、界面活性剤が、ポロクサマー-188であり、ポロクサマー-188が、約0.75重量~約7.5重量%の範囲の濃度で液体原料中に存在する、実施形態48に記載の方法である。
【0178】
実施形態51は、原料中のロイシン:トリロイシンの濃度比が約1:1~約12:1である、実施形態35~450のいずれか1つに記載の方法である。
【0179】
実施形態52は、原料中のロイシン:トリロイシンの濃度比が約1:1~約7:1である、実施形態35~50のいずれか1つに記載の方法である。
【0180】
実施形態53は、原料中のロイシン:トリロイシンの濃度比が約5.25:1である、実施形態35~50のいずれか1つに記載の方法である。
【0181】
実施形態54は、原料が、約1mg/mL~約1.7mg/mLのトリロイシンを含む、実施形態53に記載の方法である。
【0182】
実施形態55は、原料が、約1%~約5%のトリロイシンを含む、実施形態35~54のいずれか1つに記載の方法である。
【0183】
実施形態56は、原料が、約8%~約11%のロイシン、及び約2%~約4%のトリロイシンを含む、実施形態35~55のいずれか1つに記載の方法である。
【0184】
実施形態57は、原料が、約10.5%のロイシン、及び約2%のトリロイシンを含む、実施形態35~56のいずれか1つに記載の方法である。
【0185】
実施形態58は、複数の微粒子は、等価光学体積平均直径(oVMD)が約1μm~約5μmである、実施形態35~57のいずれか1つに記載の方法である。
【0186】
実施形態59は、複数の微粒子は、エアロゾル形態で提供された場合には、質量中央空気動力学的直径(MMAD)が約2μm~約4μmである、実施形態35~58のいずれか1つに記載の方法である。
【0187】
実施形態60は、複数の微粒子は、圧縮かさ密度が約0.4g/cm3~0.8g/cm3である、実施形態35~59のいずれか1つに記載の方法である。
【0188】
実施形態61は、複数の微粒子は、比表面積が約10m2/g未満である、実施形態35~60のいずれか1つに記載の方法である。
【0189】
実施形態62は、複数の微粒子は、比表面積が約4m2/g~約7m2/gである、実施形態61に記載の方法である。
【0190】
実施形態63は、液体溶媒が、水である、実施形態35~62のいずれか1つに記載の方法である。
【0191】
実施形態64は、圧縮かさ密度が約0.4~約1.0g/cm3である複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤を調製する方法であって、乾燥粉末製剤に、ロイシン及びトリロイシンを、重量で約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの比で組み込むことを含む方法である。
【0192】
実施形態65は、比表面積が約5~約10m2/gである複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤を調製する方法であって、乾燥粉末製剤に、ロイシン及びトリロイシンを、重量で約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの比で組み込むことを含む方法である。
【0193】
実施形態66は、複数の微粒子を含む乾燥粉末製剤を調製する方法であって、微粒子の質量中央空気動力学的直径(MMAD)は、エアロゾル形態で提供された場合には、約2μm~約4μmであり、この方法は、乾燥粉末製剤に、ロイシン及びトリロイシンを、重量で約0.1:1~約30:1のロイシン:トリロイシンの比で組み込むことを含む、方法である。
【0194】
実施形態67は、重量で約1%~約5%のトリロイシンを組み込むことを含む実施形態64~66のいずれか1つに記載の方法である。
【0195】
実施形態68は、約8%~約11%のロイシン及び約2%~約4%のトリロイシンを組み込むことを含む実施形態64~67のいずれか1つに記載の方法である。
【0196】
実施形態69は、約10.5%のロイシン及び約2%のトリロイシンを組み込むことを含む実施形態64~68のいずれか1つに記載の方法である。
【0197】
実施形態70は、圧縮かさ密度が約0.4g/cm3~約0.8g/cm3である、実施形態64~69のいずれか1つに記載の方法である。
【0198】
実施形態71は、比表面積が約5m2/g~約7m2/gである、実施形態64~70のいずれか1つに記載の方法である。
【0199】
実施形態72は、哺乳類患者の肺への乾燥粉末製剤の送達の方法であって、エアロゾル形態の、実施形態1~34のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤を、吸入により哺乳類患者に投与することを含む方法である。
【0200】
実施形態73は、乾燥粉末製剤を、乾燥粉末吸入器(DPI)により投与する、実施形態72に記載の方法である。
【0201】
実施形態74は、哺乳類患者の医学的状態を処置する方法であって、エアロゾル形態の、実施形態1~34のいずれか1つに記載の乾燥粉末製剤を、吸入により哺乳類患者に投与することを含む方法である。
【0202】
実施形態75は、乾燥粉末製剤を、乾燥粉末吸入器(DPI)により投与する、実施形態74に記載の方法である。
【0203】
実施形態76は、処置の方法での使用のための実施形態1~34のいずれか1つに記載の製剤であって、吸入により投与される製剤。
【実施例
【0204】
実施例1:ロイシン及びトリロイシンを含む噴霧乾燥製剤の物理的特性の評価
下記の方法により、粒子特性への乾燥粉末製剤中のトリロイシン及びロイシンの比率の影響を評価する。
【0205】
トリロイシン、ロイシン、及びトレハロース(TLT)のwt%が異なる合計24種の粉末を、10%の総原料固形物濃度にて、同一のプロセスパラメータを使用するパイロット規模の噴霧乾燥機で噴霧乾燥した。原料を10%(100mg/mL)の総固形物濃度で調製したことから、この研究での全てのwt%値もまた、濃度値(mg/mL)と同じである。各粒子添加剤の濃度値の範囲、表3に示す。
【0206】
【表3】
【0207】
これらの添加剤を水に溶解させることにより、各原料(表4)を調製した。全ての添加剤が完全に溶解した時点で、原料を、下記のプロセスパラメータを使用して噴霧乾燥させた:出口温度、70℃;原料の供給速度、12ml/分;噴霧器のガス流量、13kg/hr;及び乾燥ガスの流量、80kg/hr。これらのパラメータを、吸入用の乾燥粉末製剤の粒子特性及びエアロゾル特性を達成するように選択した。24種の製剤のそれぞれを、キャラクタリゼーション及び製品性能評価に十分な粉末を得るために18gバッチサイズで製造した。バッチを無作為に割り当て、2日かけて製造した。
【0208】
【表4】
【0209】
全ての製剤に関して、下記の物理的な粉末特性を試験した。
【0210】
【表5】
【0211】
粉末の圧縮かさ密度(CBD)を、GeoPyc(登録商標)Model 1360密度分析計(Micromeritics,Norcross,GA)を使用して測定した。粉末サンプルを低湿度環境(<5%RH)で調製した後、窒素ガスでパージされている密度分析計のサンプルチャンバーに移した。この粉末サンプルの正味重量を記録し、次いで1秒当たり300回の圧密工程の速度にて、プランジャーにより、このサンプルに12Nの圧縮力を印加した。各圧密工程でプランジャーが移動した直線距離を、粉末サンプルの体積変位に変換した。次いで、各圧密工程からの測定値の平均を、算出されたかさ密度値(g/cmで表す)に変換した。
【0212】
結果は、ロイシン及びトリロイシンの含有量が粒子特性に有意に影響を及ぼすことが分かったことを示す。トリロイシンを、最も大きな影響を及ぼす第一因子であると同定し、ロイシンを、同様に顕著な影響を及ぼす第二因子であると同定した。この結果の概要を、表6にまとめる。
【0213】
【表6】
【0214】
実施例2-ロイシン/トリロイシン製剤のエアロゾル性能特性
下記の実施例により、乾燥粉末吸入器デバイス中における、ロイシン及びトリロイシンを含む製剤のエアロゾル性能を評価する。表4で列挙されている24種の製剤の内の20種に対して、表7で列挙されているエアロゾル性能アウトプットを試験した。全ての製品性能キャラクタリゼーションを、サイズ3のカプセルと共にMonodose RS01デバイスを使用して完了した。Next Generation Impactor(NGI)分析を、60L/分の流速で実施した。
【0215】
USP<601>に従ってカスケードインパクション試験を実施して、乾燥粉末吸入器デバイスから送達され場合の噴霧乾燥製剤のエアロゾル性能を測定した。使用したカスケードインパクター装置は、Next Generation Impactor(NGI;USP41,Chapter<601>)であった。これらの実施例で行なったエアロゾル測定に関して、USP方法論に従って、60L/分で引かれた真空下で、噴霧乾燥粉末製剤が入った1つのサイズ3のHPMCカプセルを、噴霧乾燥吸入器デバイスから分散させてNGIに送達した。NGIの各ステージからサンプルを回収し、280nmでのUV吸収によりタンパク質含有量に関してアッセイした。これらの測定値から算出された主要なエアロゾル性能パラメータは、a)微粒子割合<5μm(FPF<5μm)(空力学的粒径が<5μmであると測定されている、デバイスから放出された粉末の割合と定義される)、及びb)中央質量空力学的直径MMADであった。
【0216】
【表7】
【0217】
エアロゾル分析の結果の概要を、表8にまとめる。
【0218】
【表8】
【0219】
実施例3-飽和速度のモデリング
実施例1の結晶化度の結果を理解するために、モデリングを実行して、噴霧乾燥機中での予想される粒子形成プロセス中におけるロイシン及びトリロイシンの飽和速度を評価した。このモデリングにより、表面でのロイシン結晶化は2種の添加剤の濃度比に大きく依存することが明らかになった。
【0220】
3.8のロイシン:トリロイシン濃度比では、両方の添加剤に関する飽和曲線が重複し、粒子形成中に共飽和が起こる(図9A~9B)。これにより、ロイシンが高濃度で存在する場合であっても、ロイシンの結晶化が阻害される。ロイシン濃度が約>15mg/mLと高く且つトリロイシン濃度が約<1mg/mLと低い粒子製剤は、粒子の結晶化度の増加を示した。
【0221】
実施例4-ロイシン/トリロイシン製剤の物理特性への原料因子の影響の評価
ロイシン:トリロイシン製剤の第2のセットを生成して、様々な原料濃度にわたり、緩衝剤wt%の影響を評価し、総ロイシン:トリロイシンwt%の影響を評価し、且つ3.8(ロイシン:トリロイシン)の設定比での様々な濃度のロイシン/トリロイシンの影響を評価した。
【0222】
トリロイシン、ロイシン、トレハロース、及びトレハロースwt%が異なる合計27種の粉末を生成した。3種の因子を3つのレベルで評価して、表9で概説されている完全因子研究デザインを作成した。3種の因子は、クエン酸緩衝剤のwt%、総原料濃度、及び総トリロイシン及びロイシン濃度であった。全ての製剤を、3.8のロイシン対トリロイシンの比で一定に保持した。
【0223】
【表9】
【0224】
使用した27種の原料を、表10に示す。各原料を、添加剤であるトレハロース、クエン酸三ナトリウム、ロイシン、及びトリロイシンを水に溶解させることにより調製した。全ての添加剤が完全に溶解した時点で、原料を、下記のプロセスパラメータを使用して噴霧乾燥させた:出口温度、70℃;原料の供給速度、18ml/分;噴霧器のガス流量、13kg/h;及び乾燥ガスの流量、155kg/hr。これらのパラメータを、吸入用の乾燥粉末製剤の目標の粒子特性及びエアロゾル特性を達成するように選択した。27種の製剤のそれぞれを、キャラクタリゼーションに十分な粉末を得るために65gバッチサイズで製造した。バッチを無作為に割り当て、数日かけて製造した。
【0225】
【表10】
【0226】
27種全ての製剤に関して、下記の物理的な粉末特性を試験した。
【0227】
【表11】
【0228】
結果は、ロイシン及びトリロイシンの総濃度及びwt%が粒子特性に最も有意に影響を及ぼすことを示し、原料濃度は二次的な要因であると思われた。この結果の概要を、表12にまとめる。
【0229】
【表12】
【0230】
実施例5-抗インターロイキン4抗体結合断片(Fab)を含む吸入可能なロイシン/トリロイシン製剤の生成
下記の実施例により、生物学的に活性な成分が、上記で説明されているロイシン/トリロイシン製剤システムに含まれて、吸入送達に適した生成物が作製され得たかどうかを調べる。ここで説明されているのは、IL-4に特異的に結合するIgG1モノクローナルの可変抗原結合領域である抗インターロイキン-4抗体結合断片(Fab)の使用である。抗IL-4 Fabを、表13で概説されている質量濃度に従って、吸入送達用の噴霧乾燥粉末として製剤化した。
【0231】
【表13】
【0232】
抗IL-4 fabを、最初に、105mMのトレハロース、30mMのクエン酸、pH6.0で、約50mg/mLの濃度にて液体製剤化した。ロイシン、トリロイシン、トレハロース、及びクエン酸を、別個の水溶液へと溶解させ、次いで、抗IL-4 Fab溶液に添加して、噴霧乾燥用のバルク液体原料溶液を作製した。表14に、目標の粉末製剤組成物を生成するために調製した原料組成物の概要をまとめる。次いで、液体原料溶液を、下記のプロセスパラメータを使用して噴霧乾燥させた:出口温度、70℃;原料の供給速度、12ml/分;噴霧器のガス流量、13kg/hr;及び乾燥ガスの流量、130kg/hr(これらを、吸入用の乾燥粉末製剤の目標の粒子特性及びエアロゾル特性を達成するように選択した)。
【0233】
【表14】
【0234】
噴霧乾燥製剤の粉末及びエアロゾルの性能キャラクタリゼーションの結果の概要を、表15にまとめる。指定の方法論に従って、粉末及びエアロゾルのキャラクタリゼーションを実施した。14.5w/w%及び40w/w%の抗IL-4 Fab噴霧乾燥製剤のエアロゾル性能を、65mg及び50mgの粉末で試験し、これらの粉末を、サイズ3のHPMCカプセルに充填し、乾燥粉末吸入器デバイスから分散させた。
【0235】
【表15】
【0236】
結果から、5.25:1の比でロイシン及びトリロイシンを含む噴霧乾燥製剤は、2種の異なる用量の抗IL-4 Fabに関して目標の粉末特性を達成するのに有効であったことが示されている。高い粉末CBD(0.59g/cm)が観察され、低い比表面積(4.52m/g)も観察され、同時に、非常に高い粉末分散性(MMAD 3.0~3.1μm;約60~70%のFPF<5μm)も達成された。
【0237】
実施例6-抗TSLP抗体結合断片(Fab)を含む吸入可能なロイシン/トリロイシン製剤の生成
別のFabを含む別の製剤の特性を試験した。TSLP(胸腺間質性リンホポエチン)に特異的に結合するヒトIgG1モノクローナル抗体に由来する抗TSLP Fabを使用した(本明細書で提供される配列番号1~8に記載されている配列を参照されたい)。表16で概説されている質量濃度を含む別個の製剤を生成した。
【0238】
【表16】
【0239】
抗TSLP Fabを、最初に、105mMのトレハロース、30mMのクエン酸、pH6.0を含む液体緩衝剤で受け取った。ロイシン、トリロイシン、トレハロース、及びクエン酸を、別個の水溶液へと溶解させ、次いで、抗TSLP Fab溶液に添加して、噴霧乾燥用のバルク液体原料溶液を作製した。表17に、目標の粉末製剤組成物を達成するために調製した原料組成物の概要をまとめる。次いで、液体原料溶液を、表18に列挙するプロセスパラメータを使用して噴霧乾燥させた。このパラメータを、吸入用の乾燥粉末製剤の目標の粒子特性及びエアロゾル特性を達成するように選択した。
【0240】
【表17】
【0241】
【表18】
【0242】
噴霧乾燥製剤の粉末及びエアロゾルの性能キャラクタリゼーションの結果の概要を、表19にまとめる。エアロゾル性能の測定の場合には、3種全ての製剤を、サイズ3のHPMCカプセルに充填されて乾燥粉末吸入器デバイスから分散される噴霧乾燥粉末20mgで試験した。
【0243】
【表19】
【0244】
特に注目すべきことは、粉末の高いかさ密度に起因する、単一のサイズ3のHPMCカプセルへの製剤#3 50mgの充填の成功である。高い圧縮かさ密度(CBD)により、単一のカプセルからの非常に高いペイロードの送達が可能になった(約14mgのFPM<5μm、82%のFPF、2.4μmのMMAD)。
【0245】
加えて、製剤#3は、抗IL-4 Fab製剤#2(cBD=0.59g/cm3、SSA=4.5m2/g)と同様のCBD(0.58g/cm3)及びSSA(4.6m2/g)を示し、このことは、この粉末特性が、同クラスの分子とは異なる活性成分を含む医薬製剤間で変換可能であることを示唆する。
【0246】
実施例7-3種のバッチサイズでの噴霧乾燥された抗TSLP製剤の粉末及びエアロゾル特性
この実施例は、非GLP及びGLPの吸入毒性試験を可能にするためにより大きいバッチサイズを使用する抗TSLP Fabロイシン/トリロイシン製剤の粉末及びエアロゾル特性の分析を提供する。スケールアップには、システムを通過する熱及び質量の増加と、長時間の処理実行の必要性とを考慮して、代替スケールの噴霧乾燥機装置の使用、及び噴霧乾燥プロセスパラメータの調整が必要である。
【0247】
噴霧乾燥させた抗TSLP Fab製剤の3つのバッチを、バッチサイズを増加させて製造した。バッチは下記を含んでいた:抗TSLP Fab 40w/w%、トレハロース 39w/w%、ロイシン 10.5w/w%、トリロイシン 2w/w%、及びクエン酸pH6.0 8.5w/w%。各バッチ用に選択したプロセスパラメータを、表20に示す。
【0248】
【表20】
【0249】
バッチ#1のエアロゾル性能試験を、サイズ3のHPMCカプセル中の50mgの粉末充填質量で実施し、バッチ#2及び#3を、20mgの充填質量で試験した。バッチサイズがバッチサイズ8.5gから1.2kgへと増加すると、oVMDがわずかに増加する。バッチ3の場合には、0.45~0.85g/cmの圧縮かさ粉末密度(cBD)が達成された。カプセルベースの吸入器デバイスからの抗TSLP Fabの高いペイロード送達により、粉末のエアロゾル性能も、バッチサイズに依存することなく維持された。このことにより、噴霧乾燥機プロセスへの最小限の調整による製剤のスケーラビリティが実証されている。粉末キャラクタリゼーション及びエアロゾル性能試験の全ての結果の概要を、表21にまとめる。
【0250】
【表21】
【0251】
実施例8 界面活性剤を含むロイシン/トリロイシン製剤のさらなるキャラクタリゼーション
PS-80の様々な量を含むトリロイシン/ロイシン製剤の追加のバッチを生成した。製剤の組成、及び各バッチの生成用のプロセスパラメータを、表22に示す。それ以外は、実施例6で説明されているように製剤を生成した。
【0252】
【表22】
【0253】
表22中の製剤のエアロゾル特性を、実施例7で開示されている方法を使用して分析した。この分析の結果を、表23に示す。
【0254】
【表23】
【0255】
先の実施例で説明されている方法を使用して、凝集物含有量、oVMD、残留水分含有量、Tg、cBD、及びSSAも測定した。粉末特性分析の結果を、表24に示す。
【0256】
【表24】
【0257】
この分析から、PS-80の%(w/w)量に関係なく、粉末特性はコントロール製剤とほぼ同等であることが示されている。
【0258】
次に、表22で説明されている製剤を、肉眼で見ることができない粒子(SVP)の含有量に関して分析した。肉眼で見ることができない粒子(SVP)の含有量を、micro-flow imaging technology (MFI)を使用して測定した。MFIは、マイクロ流体フロー顕微鏡と、高分解能撮像粒子分析とを組み合わせて、SVP数を定量し、粒径範囲にわたりこの数をビン化(bin)する。試験前に、粉末サンプルを水に溶解させ、緩やかに旋回させて粒子を確実に均一に分散させ、次いでProtein Simple MFI 5200(CA,USA)にロードした。結果を、1ml当たりの様々な粒径(≦1μm、≦2μm、≦5μm、≦10μm、及び≦25μm)の数として報告した。図10Aは、乾燥粉末製剤への0.27%(w/w/)のPS-80の含有により、再構成時に1ml当たりのSVPの絶対数が減少することを示す。このSVP数の減少は、PS-80の濃度が増加により低下する。0.67%(w/w)のPS-80の添加時にSVPの有意な減少が見られ、粒径が5μm超であるSVPは無視できる量であった。この傾向を、製剤を30mg/mlのFAB又は2.5mg/mlのFABの濃度に再構成した場合に観察した(図10B)。
【0259】
製剤のキャラクタリゼーション及びSVPの分析を、第2の添加剤含有製剤に関して上記で説明したように実行した。この研究では、添加剤として、PS-80ではなくポロクサマー188を使用した。
【0260】
複数のw/w%量のポロクサマー188を検討した。製剤の組成、及び各製剤バッチの生成用のプロセスパラメータは、PS-80含有製剤に関して表22で説明されている通りであった。トレハロースの量を変更して、ポロクサマー188の可変量を補った。
【0261】
先の実施例で説明されている方法を使用して、凝集物含有量、oVMD、残留水分含有量、Tg、cBD、及びSSAも測定した。粉末特性分析の結果を、表25に示す。
【0262】
【表25】
【0263】
実施例7で開示されている方法を使用して、ポロクサマー-188製剤のエアロゾル特性も分析した。結果を表26に示す。
【0264】
【表26】
【0265】
P188製剤を、上記で説明されている方法を使用して、SVP含有量に関して分析した。図11Aは、乾燥粉末製剤への0.67%(w/w)のP188の含有により、再構成時に1ml当たりのSVPの絶対数が減少することを示す。この傾向を、製剤を30mg/mlのFAB図11A)又は2.5mg/mlのFAB図11B)の濃度に再構成した場合に観察した。
【0266】
実施例9 1.1%(w/w)のPS-80を含むロイシン/トリロイシン製剤のキャラクタリゼーション
この実施例では、1%又は40%(w/w)のFab及び1.1%(w/w/)のPS-80を含む乾燥粉末製剤の粉末特性を分析した。製剤の完全な組成を、表27に示す。製剤を、実施例6で説明されているように製造した。
【0267】
【表27】
【0268】
40℃及び75%の相対湿度(40/75)又は25℃及び60%の相対湿度(25/60)での1ヶ月又は3ヶ月にわたる貯蔵後に、製剤の安定性を分析した。粒径分布、水分含有量、及び表面粗さを試験した。図12A及び12Bは、40%(w/w)のFabを含む製剤に関して、水分含有量尾及び粒径分布が経時的に安定したままであったことを示す。図12Cは、粒子の形態が経時的に一定のままであることを示す。図13A及び13Bは、1%(w/w)のFabを含む製剤に関して、水分含有量及び粒径分布が経時的に安定したままであったことを示す。図13Cは、粒子の形態が経時的に一定のままであることを示す。
【0269】
1ヶ月若しくは3ヶ月にわたる40/75又は3ヶ月にわたる25/60での貯蔵後の再構成時でのSVPの形成を分析した。分析を、実施例9で説明されているように実行した。図14Aは、40%(w/w)のFab製剤の30mg.mlのFab濃度への再構成時に各条件下で生じるSVPの量が変化しないことを示す。図14Bは、1%(w/w)のFab製剤0.75mg/mlのFab濃度への再構成時に各条件下で生じるSVPの量が変化しないことを示す。
【0270】
貯蔵後に、エアロゾル特性も試験した。結果を、表28及び29に示す。
【0271】
【表28】
【0272】
【表29】
【0273】
各条件下での各製剤の貯蔵後に、送達用量(DD)パーセントも明らかにした。結果を、表28及び29に示す。
【0274】
1ヶ月若しくは3ヶ月にわたる40/75又は3ヶ月にわたる25/60での貯蔵後に、表27で説明されている製剤のそれぞれにおけるFabの効力も試験した。
【0275】
効力を、ホモジニアス時間分解蛍光測定法(HTRF)を使用して決定した。HTRFは、蛍光共鳴エネルギー移動技術(FRET)と時間分解測定(TR)とを組み合わせる。2種のフルオロフォア(ドナー及びアクセプター)が互いに接近する場合には、ドナーの励起によりアクセプターへのエネルギー移動が促進され、そのためFRETシグナルが生じる。このアッセイでは、ビオチン化ヒトTSLPに結合したストレプトアビジン-ユーロピウムクリプテートがドナーであり、d2標識抗TSLP mAbがアクセプターである。FABは、ヒトTSLPに結合し、標識mAbの結合を防止する。次に、これにより、ドナーフルオロフォアとアクセプターフルオロフォアとの間の距離が増加し、FRETシグナルが減少する。
【0276】
基準標準物質とアッセイコントロールとの間の平行性又は基準標準物質と試験サンプルとの間の平行性を評価した後、制約付きの4パラメータロジスティック(4PL)曲線フィットを実施し、基準標準物質のIC50値をアッセイコントロール又は各試験サンプルのIC50値で除算して100%を乗算することにより、FABアッセイコントロール及び試験サンプルの相対抗力を算出する。
【0277】
Fabの抗力レベルは、同等の製剤から再構成された直後(即ち、t=0)のFabの抗力の85~110%であった。
【0278】
本明細書ではある特定の実施形態が例示されており且つ説明されているが、特許請求の範囲は、説明されており且つ図示されている特定の形態又は要素の配置に限定されないことを理解されたい。本明細書では、例示的な実施形態が開示されており、特定の用語が使用されているが、それらは、一般的な且つ説明的な意味でのみ使用され、限定目的ではない。上記の教示に照らして、実施形態の修正及び変形は可能である。従って、実施形態は、具体的に説明されているものとは別の方法で実施され得ることを理解されたい。
【0279】
様々な実施形態が上記で説明されているが、それらは、本技術の例示及び例として提示されているだけであり、限定としてではないことを理解すべきである。関連技術の技術者には、本技術の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細の様々な変更を行ない得ることが明らかであろう。そのため、本技術の広さ及び範囲は、上記の実施形態のいずれによっても制限されるべきではなく、添付の特許請求の範囲及びその等価物に従ってのみ規定されるべきである。また、本明細書で説明されている各実施形態及び本明細書で引用されている各参考文献の各特徴は、任意の他の実施形態の特徴と組み合わせて使用され得ることも理解されるだろう。本明細書で議論されている全ての特許及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図14A
図14B
【配列表】
2022553751000001.app
【国際調査報告】