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特表2022-553796チタンビフェニルフェノール重合触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】チタンビフェニルフェノール重合触媒
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/64 20060101AFI20221219BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C08F4/64
C08F10/00 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525570
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 US2020058804
(87)【国際公開番号】W WO2021091959
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/930,432
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ベイリー、レット、エー.
(72)【発明者】
【氏名】クールマン、ロジャー、エル.
(72)【発明者】
【氏名】スペンサー、リアム、ピー.
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA01
4J128AB01
4J128AC08
4J128AE06
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC25A
4J128BC25B
4J128CA28A
4J128CA28B
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB09
4J128EC02
4J128FA04
4J128FA07
4J128FA08
4J128FA09
4J128GA01
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA07
(57)【要約】
本開示の実施形態は、式(I)のチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒であって、
【化1】
式中、RおよびRの各々が、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキルまたは水素であり、
およびR10の各々が、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキル、ハロゲン化物、または水素であり、
およびR13の各々が、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキル、または水素であり、
15およびR16の各々が、2,7-二置換カルバゾールまたは3,6-二置換カルバゾールであり、
Lが、Lが共有結合している2つの酸素原子の間に、それぞれ2炭素橋、3炭素橋、または4炭素橋を形成するC~Cアルキレンであり、
、R、R、R、R、R11、R12、およびR14の各々が、独立して、ハロゲン化物または水素であり、
各Xが、独立して、ヒドロカルビル、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、ヒドロキシ基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、または水素であり、少なくとも1つのXが、ヒドロカルビルではない、式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒。
【請求項2】
およびRの各々が、Cアルキルであるか、またはRおよびRの各々が、水素である、請求項1に記載のプレ触媒。
【請求項3】
およびR10の各々が、ジアルキルまたはトリアルキル置換シリルである、請求項1または2に記載のプレ触媒。
【請求項4】
およびR10の各々が、オクチルジメチルシリルである、請求項3に記載のプレ触媒。
【請求項5】
およびR10の各々が、フッ素である、請求項1または2に記載のプレ触媒。
【請求項6】
およびR13の各々が、1,1-ジメチルエチルである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプレ触媒。
【請求項7】
15およびR16の各々が、2,7-ジ-t-ブトリカルバゾールまたは3,6-ジ-t-ブトリカルバゾールである、請求項1~6のいずれか一項に記載のプレ触媒。
【請求項8】
Lが、飽和Cアルキレンである、請求項1~7のいずれか一項に記載のプレ触媒。
【請求項9】
各Xが、塩素である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプレ触媒。
【請求項10】
活性化剤を含まないシリカ担体をさらに含み、前記活性化剤を含まないシリカ担体が、前記触媒を担持する、請求項1~9のいずれか一項に記載のプレ触媒。
【請求項11】
チタンビフェニルフェノール重合触媒を作製する方法であって、活性化条件下で、請求項1~10のいずれか一項に記載の式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒を活性化剤と接触させて、前記式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒を活性化し、それにより、前記チタンビフェニルフェノール重合触媒を作製すること、を含む、方法。
【請求項12】
アルカン溶媒に溶解した前記式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒の活性化剤を含まない溶液を、上に噴霧乾燥させた活性化剤を含有するシリカ担体と接触させて、シリカ担体上に前記チタンビフェニルフェノール重合触媒を作製することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の方法によって作製されるチタンビフェニルフェノール重合触媒。
【請求項14】
ポリエチレンを作製する方法であって、
請求項13に記載のチタンビフェニルフェノール重合触媒の存在下で、単一の気相重合反応器においてオレフィンモノマーを重合して、ポリエチレン組成物を作製することを含む、方法。
【請求項15】
前記重合ステップの前に、
前記チタンビフェニルフェノール重合触媒を作製することと、
前記チタンビフェニルフェノール重合触媒を前記単一の気相重合反応器に供給することと、をさらに含む、請求項14に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、チタンビフェニルフェノール重合触媒、より具体的には、式Iのチタンビフェニルフェノール重合触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーは、特に、フィルム、繊維、不織布および/または織布、押出物品、および/または成形品などの多くの製品に用いられ得る。ポリマーは、重合触媒の存在下で、重合反応において1種類以上のモノマーを反応させることによって形成され得る。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒を含む様々な実施形態を提供し、
【化1】
【0004】
式中、RおよびRの各々は、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキル、または水素であり、RおよびR10の各々は、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキル、ハロゲン化物、または水素であり、各RおよびR13は、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキル、または水素であり、R15およびR16の各々は、2,7-二置換カルバゾール-9-イルまたは3,6-二置換-カルバゾール-9-イルであり、Lは、Lが共有結合している2つの酸素原子の間に、それぞれ2炭素橋、3炭素橋、または4炭素橋を形成するC~Cアルキレンであり、R、R、R、R、R、R11、R12、およびR14の各々は、独立して、ハロゲン化物または水素であり、各Xは、独立して、ヒドロカルビル、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、ヒドロキシ基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、または水素であり、少なくとも1つのXが、ヒドロカルビルではない。本明細書で使用される場合、プレ触媒は、活性化剤に曝露される前の触媒化合物である。
【0005】
チタンビフェニルフェノール重合触媒を作製する方法であり、この方法は、活性化条件下で、式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒を活性化剤と接触させて、式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒を活性化し、それにより、チタンビフェニルフェノール重合触媒を作製することと、
【0006】
チタンビフェニルフェノール重合触媒と、
【0007】
ポリエチレンを作製する方法であって、本明細書に記載されるように、チタンビフェニルフェノール重合触媒の存在下で単一の気相重合反応器においてオレフィンモノマーを重合して、ポリエチレン組成物を作製する、方法と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書のチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒は、式Iによって表すことができ、
【化2】
式中、RおよびRの各々は、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキルまたは水素であり、
およびR10の各々は、独立して、C~C20のアルキル、アリール、アラルキル、ハロゲン化物、または水素であり、
およびR13の各々は、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキル、または水素であり、
15およびR16の各々は、2,7-二置換カルバゾールまたは3,6-二置換カルバゾールであり、
Lは、Lが共有結合している2つの酸素原子の間に、それぞれ2炭素橋、3炭素橋、または4炭素橋を形成するC~Cアルキレンであり、
、R、R、R、R、R11、R12、およびR14の各々は、独立して、ハロゲン化物または水素であり、
各Xは、独立して、ヒドロカルビル、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、ヒドロキシ基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、または水素であり、少なくとも1つのXが、ヒドロカルビルではない。
【0009】
驚くべきことに、本開示のチタンビフェニルフェノール重合前駆体を使用して作製された重合触媒は、本明細書に詳述されるように、同様の重合条件で他の(非発明的)重合触媒で作製されたポリマーと比較して、より低分子量のポリマーを生成することができる。いくつかの用途では、より低い分子量のポリマーが望ましい。
【0010】
加えて、驚くべきことに、本開示のチタンビフェニルフェノール重合触媒は、本明細書に詳述されるように、同様の重合条件で他の重合触媒よりも低い触媒生産性を有し得る。いくつかのプロセスでは、より低い触媒生産性が望ましい。
【0011】
さらに、驚くべきことに、本開示のチタンビフェニルフェノール重合触媒は、本明細書に詳述されるように、同様の重合条件で他の重合触媒で作製されたポリマーと比較して、より少ないコモノマーを組み込むポリマーを生成することができる。いくつかの用途では、より少ないコモノマーを組み込むことが望ましい。
【0012】
さらに、驚くべきことに、本開示のチタンビフェニルフェノール重合触媒は、本明細書に詳述されるように、改善された反応器操作性を提供することができる。
【0013】
前述のように、式Iに示されるようなRおよびRの各々は、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキル、または水素であり得る。1つ以上の実施形態は、RおよびRの各々が、水素であることを条件とする。1つ以上の実施形態は、RおよびRの各々が、Cアルキル、例えば、メチルであることを条件とする。
【0014】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、水素が1つ欠乏した線状、分岐状、および環式パラフィン基を含む。したがって、例えば、CH基(「メチル」)およびCHCH基(「エチル」)は、アルキルの例である。
【0015】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、フェニル、ナフチル、ピリジル、および分子がベンゼン、ナフチレン、フェナントレン、アントラセンなどに特徴的な環構造を有する他のラジカルを含む。「アリール」は、C~C20アリールであってもよいことが理解される。例えば、C-芳香族構造は、「フェニル」であり、-C-芳香族構造は、「フェニレン」である。
【0016】
本明細書で使用される場合、「アリールアルキル」とも呼ばれ得る「アラルキル」は、そこからぶら下がるアリールを有するアルキルである。「アラルキル」基は、C~C20アラルキル基であり得ることが理解される。「アルキルアリール」は、そこからぶら下がる1つ以上のアルキルを有するアリールである。
【0017】
前述のように、式Iに示されるようなRおよびR10の各々は、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキル、ハロゲン化物、または水素であり得る。本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」は、水素が1つ欠乏した水素および炭素を含む脂肪族、環式、オレフィン、アセチレンおよび芳香族基(すなわち炭化水素基)を含む。1つ以上の実施形態は、RおよびR10の各々の各々が、ジアルキルまたはトリアルキル置換シリルであることを条件とする。1つ以上の実施形態は、RおよびR10の各々が、オクチルジメチルシリルであることを条件とする。1つ以上の実施形態は、RおよびR10の各々が、ハロゲン化物であることを条件とする。1つ以上の実施形態は、RおよびR10の各々が、フッ素であることを条件とする。
【0018】
前述のように、式Iに示されるようなRおよびR13の各々は、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキル、または水素であり得る。1つ以上の実施形態は、RおよびR13の各々が、1,1-ジメチルエチルであることを条件とする。
【0019】
前述のように、式Iに示されるようなR15およびR16の各々は、独立して、2,7-二置換カルバゾール-9-イルまたは3,6-二置換カルバゾール-9-イルであり得る。本明細書で使用される場合、「二置換カルバゾール-9-イル」は、5員窒素含有環のいずれかの側に融合された2つの6員ベンゼン環を含む多環芳香族炭化水素を指し、2つの6員ベンゼン環は、各々置換され、窒素(カルバゾール環の9位)が結合点である。例えば、1つ以上の実施形態は、R15およびR16の各々が、2,7-ジ-t-ブトリカルバゾール-9-イルまたは3,6-ジ-t-ブトリカルバゾール-9-イルであることを条件とする。
【0020】
前述のように、式Iに示されるように、Lは、Lが共有結合している2つの酸素原子間に、それぞれ2炭素橋、3炭素橋、または4炭素橋を形成するC~Cアルキレンである。1つ以上の実施形態は、Lが、飽和Cアルキルであることを条件とする。
【0021】
前述のように、式Iに示されるようなR、R、R、R、R、R11、R12、およびR14の各々は、独立して、ハロゲン化物または水素であり得る。1つ以上の実施形態は、R、R、R、R、R、R11、R12、およびR14の各々が、水素であることを条件とする。
【0022】
前述のように、式Iに示されるような各Xは、独立して、ヒドロカルビル、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、ヒドロキシ基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、または水素であり得、少なくとも1つのXが、ヒドロカルビルではなく、独立して。1つ以上の実施形態は、各Xが、塩素であることを条件とする。本明細書で使用される場合、擬ハロゲン化物は、ハロゲン化物ではないが、その電荷および反応性においてハロゲン化物類似体である化合物を指す。擬ハロゲン化物の例には、アジド、シアノ、イソシアノ、スルファニド、チオシアノ、トリフラート、トシル、およびトシレートが含まれる。
【0023】
式Iに示されるように、中心原子は、チタン(Ti)である。
【0024】
本明細書に記載されるような式IのR基(R~R16)およびXの各々は、独立して、置換または非置換され得る。本明細書で使用される場合、「置換された」は、その用語に続く基が、任意の位置の1つ以上の水素の代わりに少なくとも1つの部分を保有することを示し、その部分は、ハロゲンラジカル、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミン基、ホスフィン基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル基、C~C20アルキル基、C~C10アルケニル基、およびそれらの組み合わせから選択される。「二置換された」とは、任意の位置に2つ以上の置換基が存在することを指し、その部分は、ハロゲンラジカル、ヒドロキシル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミン基、ホスフィン基、アルコキシ基、フェニル基、ナフチル、C~C20アルキル基、C~C10アルケニル基、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0025】
式Iのチタンビフェニルフェノール重合触媒は、本明細書に記載の反応物を用いて作製され得る。式Iのチタンビフェニルフェノール重合触媒は、例えば、既知の触媒を作製するために用いられるいくつかのプロセス、例えば、従来の溶媒、反応条件、反応時間、および単離手順によって作製され得る。
【0026】
1つ以上の実施形態は、重合触媒を提供する。重合触媒は、本明細書に記載されるような活性化条件下で、本明細書に記載されるような式i、ii、iii、iv、および/またはvのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒を活性化剤と接触させることによって作製され得、活性化されたチタンビフェニルフェノール重合触媒を提供することができる。活性化条件は、当該技術分野において周知である。
【0027】
本明細書で使用される場合、「活性化剤」は、例えば触媒成分のカチオン種を生成することによって、錯体または触媒成分を活性化させることができる、担持されたまたは担持されていない任意の化合物または化合物の組み合わせを指す。例えば、これには、複合体/触媒成分の金属中心、例えば、式Iの金属錯体のからの、少なくとも1つの脱離基、例えば、本明細書に記載の「X」基の引抜きが含まれ得る。活性化剤は、「共触媒」とも称され得る。本明細書で使用される場合、「脱離基」は、金属原子に結合し、活性化剤による引抜きが可能であり、したがってオレフィン重合に対して活性な種を生成することができる1つ以上の化学部分を指す。
【0028】
活性化剤は、ルイス酸または非配位性イオン性活性剤またはイオン化活性剤、またはルイス塩基、アルミニウムアルキル、および/または従来型助触媒を含む任意の他の化合物を含むことができる。上述のメチルアルミノキサン(「MAO」)および修飾メチルアルミノキサン(「MMAO」)に加えて、例示的な活性化剤としては、これらに限定されないが、アルミノキサンもしくは修飾アルミノキサン、および/またはイオン化化合物、中性もしくはイオン性、例えば、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラキス(3,5-(CFフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(3,5-(CFフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロナフチル)アルミネート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロナフチル)アルミネート、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)アルミネート、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペルフルオロナフチル)アルミネート、トリス(ペルフルオロフェニル)ホウ素、トリス(ペルフルオロナフチル)ホウ素、トリス(ペルフルオロフェニル)アルミニウム、トリス(ペルフルオロナフチル)アルミニウム、あるいはそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。
【0029】
アルミノキサンは、-Al(R)-O-サブユニット(式中、Rは、アルキル基である)を有するオリゴマーアルミニウム化合物として記載され得る。アルミノキサンの例としては、メチルアルミノキサン(「MAO」)、修飾メチルアルミノキサン(「MMAO」)、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、それらに限定されない。アルミノキサンは、それぞれのトリアルキルアルミニウム化合物の加水分解によって生成することができる。MMAOは、トリメチルアルミニウムと、トリイソブチルアルミニウムなどの高級トリアルキルアルミニウムの加水分解によって生成することができる。アルミノキサンおよび修飾アルミノキサンを調製するための様々な既知の方法がある。アルミノキサンには、修飾メチルアルミノキサン(「MMAO」)タイプ3A(米国特許第5,041,584号で考察される修飾メチルアルミノキサンタイプ3Aの商品名でAkzo Chemicals,Inc.から市販されている)が含まれ得る。MAO源は、例えば、約1重量%~約50重量%のMAOを有する溶液であり得る。市販のMAO溶液としては、Albemarle Corporation(Baton Rouge、La)から入手可能な10重量%および30重量%のMAO溶液を挙げることができる。
【0030】
1つ以上のアルキルアルミニウム化合物などの1つ以上の有機アルミニウム化合物を、アルミノキサンと組み合わせて使用することができる。アルキルアルミニウム化合物の例としては、限定されないが、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、およびそれらの組み合わせが挙げられる。他のアルキルアルミニウム化合物、例えばトリアルキルアルミニウム化合物の例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム(「TEAL」)、トリイソブチルアルミニウム(「TiBAl」)、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒から作製されたチタンビフェニルフェノール重合触媒を用いて、ポリマーを作製することができる。例えば、チタンビフェニルフェノール重合触媒は、ポリマー、例えば、ポリオレフィンポリマーを作製するための重合条件下でオレフィンと接触させることができる。
【0032】
本明細書で使用されるとき、「ポリマー」は、1つ以上の異なるモノマー、例えばホモポリマー、コポリマー、ターポリマーなどから誘導される2つ以上の同じまたは異なるポリマー単位を有する。「ホモポリマー」は、同じポリマー単位を有するポリマーである。「コポリマー」は、互いに異なる2つ以上のポリマー単位を有するポリマーである。「ターポリマー」は、互いに異なる3つのポリマー単位を有するポリマーである。ポリマー単位に言及する際、「異なる」とは、ポリマー単位が、互いに少なくとも1つの原子だけ異なるか、または異性体的に異なることを示す。したがって、本明細書で使用されるコポリマーの定義は、ターポリマーなどを含む。本明細書で使用される場合、「重合プロセス」は、ポリマーを形成するために用いられるプロセスである。
【0033】
実施形態は、ポリマーがポリオレフィンポリマーであり得ることを条件とする。本明細書中で使用されるとき、「アルケン」と称され得る「オレフィン」は、炭素および水素を含み、そして少なくとも1つの二重結合を有する直鎖状、分枝状、または環状の化合物を指す。本明細書で使用される場合、ポリマーまたはコポリマーがオレフィンを含む(例えば、オレフィンから作製される)と言われる場合、このようなポリマーまたはコポリマー中に存在するオレフィンは、オレフィンの重合形態である。例えば、コポリマーが75重量%~85重量%のエチレン含有量を有すると言われる場合、コポリマー中のポリマー単位は重合反応においてエチレンから誘導され、誘導単位はポリマーの総重量に基づいて75重量%~85重量%で存在すると理解される。高級α-オレフィンとは、3つ以上の炭素原子を有するα-オレフィンを意味する。
【0034】
ポリオレフィンとしては、エチレンなどのオレフィンモノマーから作製されたポリマー、すなわちポリエチレン、および3~20個の炭素原子を含有する直鎖状または分枝状の高級α-オレフィンモノマーが挙げられる。高級α-オレフィンモノマーの例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、および3,5,5-トリメチル-1-ヘキセンが挙げられるが、それらに限定されない。ポリオレフィンの例としては、特に、エチレン-1-ブテン、エチレン-1-ヘキセンおよびエチレン-1-オクテンコポリマーなどの少なくとも50重量%のエチレンを有するエチレン系ポリマーが挙げられる。用いられ得る他のオレフィンとしては、例えば、エチレン性不飽和モノマー、4~18個の炭素原子を有するジオレフィン、共役または非共役ジエン、ポリエン、ビニルモノマーおよび環状オレフィンが挙げられる。モノマーの例としては、ノルボルネン、ノルボルナジエン、イソブチレン、イソプレン、ビニルベンゾシクロブタン、スチレン、アルキル置換スチレン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、およびシクロペンテンが挙げられ得るが、これらに限定されない。多くの実施形態において、エチレンのコポリマーが製造され、ここでは、エチレンと、4~15個の炭素原子、好ましくは4~12個の炭素原子、および最も好ましくは4~8個の炭素原子を有する少なくとも1つのα-オレフィンを有するコモノマーが溶液法で重合され得る。別の実施形態において、エチレンおよび/またはプロピレンは、ターポリマーを作製するために、少なくとも2つの異なるコモノマーと重合することができ、任意で、そのうちの1つは、ジエンであり得る。
【0035】
1つ以上の実施形態は、ポリマーが、ポリマーの総重量に基づいて、1~100重量%のエチレン由来の単位を含むことができることを条件とする。1~100重量%のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、ポリマーは、ポリマーの総重量に基づいて、1、5、10、30、40、50、60、または70重量%の下限のエチレン由来の単位から、100、99、95、90、または85重量%の上限までのエチレン由来の単位を含むことができる。
【0036】
前述のように、驚くべきことに、式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒から作製された重合触媒は、同様の重合条件で、他の重合触媒で作製されたポリマーと比較して、望ましい(より低い)生産性を有し得る。例えば、式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒から作製された重合触媒は、35~5,000,000gPE/g触媒/時間の範囲の生産性(gPE/g触媒/時間)を有する。35~5,000,000gPE/g触媒+活性化剤/時間のすべての個々の値および部分範囲が含まれる。例えば、生産性は、両方の重合が同じ水素濃度および/または同じコモノマー対モノマー比などの同じ重合温度および条件で起こる場合に、他の重合触媒で作製されたポリマーと比較して、35~5,000,000、35~100,000、35~50,000、35~10,000、35~5000、35~3500、500~3200、または500~2300gPE/g触媒/時間の範囲にあり得る。理論に拘束されることを望まないが、より低い生産性は、同様の条件で生産性が高く、気相重合反応器における操作性の問題をもたらし得る触媒と比較して、熱エクスカーションによる反応器の汚れを軽減し得、触媒の劣化を軽減し得、かつ/またはそうでなければ操作性を向上させ得、望ましいと考えられている。
【0037】
さらに、前述のように、驚くべきことに、式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒は、同様の重合条件で他の重合触媒で作製されたポリマーと比較して、改善された、すなわち、より低い分子量を有するポリマーを提供するのを補助することができる。例えば、本開示のチタンビフェニルフェノール重合触媒は、両方の重合が同じ水素濃度および/または同じコモノマー対モノマー比などの同じ重合温度および条件で起こる場合に、他の重合触媒で作製されたポリマーと比較して、分子量が減少したポリマーを提供するのを補助することができる。実施形態は、ポリマーが60,000~350,000のMw(重量平均分子量)を有し得ることを条件とする。60,000~350,000のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、ポリマーは、60,000、100,000、102,000、または105,000の下限から、350,000、336,000、286,000、273,000、203,000、または110,000の上限のMwを有し得る。Mwは、以下で説明されるGPCによって決定され得る。理論に束縛されることを望まないが、低分子量ポリマーは、溶融相の粘度がより低いため、高分子量ポリマーよりも処理が容易であると考えられている。
【0038】
実施形態は、ポリマーが、0.001g/10分~1000g/10分の範囲で、D1238(190℃、2.16kgの負荷で)によって測定されるメルトインデックス(I)を有し得ることを条件とする。0.001g/10分~1000g/10分までのすべての個々の値および部分範囲が含まれる。例えば、ポリマーは、0.001g/10分~1000g/10または500g/10分、0.1g/10分~100g/10分、または0.005g/10分~1.9g/10分のメルトインデックスを有し得る。
【0039】
実施形態は、ポリマーが、0.001g/10分~1000g/10分の範囲で、D1238(190℃、5kgの負荷で)によって測定されるメルトインデックス(I)を有し得ることを条件とする。0.001g/10分~1000g/10分までのすべての個々の値および部分範囲が含まれる。例えば、ポリマーは、0.02g/10分~5g/10分のメルトインデックス(I)を有し得る。
【0040】
実施形態は、ポリマーが、0.001g/10分~1000g/10分の範囲で、D1238(190℃、21kgの負荷で)によって測定されるメルトインデックス(I21)を有し得ることを条件とする。0.001g/10分~1000g/10分までのすべての個々の値および部分範囲が含まれる。例えば、ポリマーは、0.001g/10分~53g/10分のメルトインデックス(I21)を有し得る。
【0041】
実施形態は、ポリマーが5,000~98,000のMn(数平均分子量)を有し得ることを条件とする。5,000~98,000のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、ポリマーは、5,000、6,000、16,000、または28,000の下限から、98,000、75,000、69,000、55,000、45,000、または35,000の上限のMnを有し得る。Mnは、当該技術分野において既知であるように、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定することができる。
【0042】
実施形態は、ポリマーが、Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)として決定される、2.90~21.00の分子量分布を有し得ることを条件とする。2.90~21.00のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、ポリマーは、2.90、3.00、3.50、4.00、または4.50の下限から21.00、20.00、8.00、7.50、7.00、または6.50の上限のMw/Mnを有し得る。いくつかの実施形態において、Mw/MNは、2.90~約4.00の範囲にあり得る。Mw/Mnは、以下に説明されるように、GPC分析によって決定することができる。
【0043】
実施形態は、ポリマーが100~165℃の融解温度を有し得ることを提供する。100~165℃のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、ポリマーは、100、105、または110℃の下限から165、160、または155℃の上限までの融解温度を有し得る。融解温度は、ASTM D3418-08に従って示差走査熱量測定によって決定できる。
【0044】
実施形態は、ポリマーが、0.890g/cm~0.970g/cmの密度を有し得ることを条件とする。0.890~0.970g/cmのすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、ポリマーは、0.890、0.900、0.910、または0920g/cmの下限から、0.970、0.960、0.950、または0.940g/cmの上限までの密度を有し得る。密度は、ASTM D-792-13、変位によるプラスチックの密度および比重(相対密度)のための標準試験方法、方法B(水以外の液体中、例えば、液体2-プロパノール中の固体プラスチックを試験するため)に従って決定され得る。結果は1立方センチメートル当たりのグラム数(g/cm)の単位で報告する。
【0045】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)試験法:重量平均分子量試験法:高温ゲル浸透クロマトグラフィー装置(HTGPC、Polymer Laboratories)で得られたクロマトグラムを使用して、M、数平均分子量(M)、およびM/Mを決定する。HTGPCは、移送ライン、示差屈折率検出器(DRI)、および3つのPolymer Laboratories PLgel 10μm Mixed-Bカラムを備え、それらをすべて160℃に維持したオーブンに収容する。方法は、1.0ミリリットル/分(mL/min.)の公称流量、300マイクロリットル(μL)の公称注入量で、BHTで処理されたTCBからなる溶媒を使用する。6グラムのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、抗酸化剤)を4リットル(L)の試薬グレードの1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)に溶解し、得られた溶液を0.1マイクロメートル(μm)のテフロンフィルターで濾過して溶媒を得ることにより溶媒を調製する。溶媒がHTGPC装置に入る前に、インラインデガッサで溶媒を脱気する。一連の単分散ポリスチレン(PS)標準物を用いてカラムを較正する。別個に、既知の体積の溶媒中の既知の量の試験ポリマーを160℃で2時間連続的に振とうしながら加熱して溶液を得ることによって、溶媒に溶解させた既知の濃度の試験ポリマーを調製する。(すべての量を重量測定で測定する。)試験ポリマーの目標溶液濃度cは、1ミリリットル溶液当たり0.5~2.0ミリグラムポリマー(mg/mL)で、高分子量ポリマーには低濃度のcが使用される。各試料を実行する前に、DRI検出器をパージする。次に、装置内の流量を1.0mL/分に増加させ、最初の試料を注入する前に、DRI検出器を8時間安定させる。カラムキャリブレーションとユニバーサルキャリブレーションの関係を使用して、MおよびMを計算する。各溶出体積におけるMWを、以下の等式を用いて計算する。
【数1】
式中、下付き文字「X」は、試験試料を表し、下付き文字「PS」は、PS標準を表し、PS=0.67、KPS=0.00017であり、およびKは、出版文献から得られる。ポリエチレンの場合、a/K=0.695/0.000579である。ポリプロピレンの場合、a/K=0.705/0.0002288である。結果のクロマトグラムの各ポイントで、次の方程式を使用して、ベースラインを差し引いたDRI信号IDRIから濃度cを計算する:c=KDRIDRI/(dn/dc)、(式中、KDRIはDRIを較正することによって決定される定数で、/は除算を示し、dn/dcはポリマーの屈折率の増分である)。ポリエチレンの場合、dn/dc=0.109である。溶出体積に対する濃度クロマトグラフィーのクロマトグラムの積分面積と、所定の濃度に注入ループ体積を掛けたものに等しい注入質量との比率から、ポリマーの質量回収率を計算する。特に明記しない限り、すべての分子量を1モル当たりのグラム数(g/mol)で報告する。Mw、Mn、MWDを決定する方法に関するさらなる詳細は、US2006/0173123の24~25頁、段落番号[0334]~[0341]に記載されている。y軸上のdW/dLog(MW)をx軸上のLog(MW)に対してプロットして、GPCクロマトグラムを得る(Log(MW)およびdW/dLog(MW)は、上記で定義したとおりである)。
【0046】
ポリマーは、特に、フィルム、繊維、不織布および/または織布、押出物品、および/または成形品などの多くの物品に用いられ得る。
【0047】
また、式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒またはその活性化反応生成物、および式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒またはその活性化反応生成物ではない少なくとも1つのオレフィン重合触媒(第2の触媒)を含む、二峰性触媒系が提供される。そのような第2の触媒は、チーグラー・ナッタ触媒、クロム系触媒(例えば、いわゆるフィリップス触媒)、インデニル環を含有するか、もしくは含まないメタロセン触媒(例えば、非置換および/またはアルキル置換シクロペンタジエニル環を含有するメタロセン触媒)、WO2018/064038A1の段落[0041]~[0046]に記載される第15族の金属含有触媒化合物、またはUS2018/0002464A1の段落[0036]~[0080]に記載されるビフェニルフェノール系触媒化合物であり得る。
【0048】
式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒、ならびに活性化剤および/または追加の重合成分などの本明細書で考察される他の成分は、担体とともに用いられ得る。「キャリア」とも称され得る「担体」は、タルク、無機酸化物、および無機塩化物などの多孔性担体材料を含む任意の担体材料を指す。
【0049】
式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒、ならびに本明細書で考察される他の成分は、同じまたは別個の担体上に担持され得るか、または成分のうちの1つ以上が担持されていない形態で使用され得る。担体を用いることは、当該技術分野において使用される任意の技術によって達成することができる。1つ以上の実施形態は、噴霧乾燥プロセスが用いられることを提供する。噴霧乾燥プロセスは、当該技術分野において周知である。担体は、官能化され得る。
【0050】
担体は、多孔質担体材料、例えば、タルク、無機酸化物、または無機塩化物であり得る。他の担体材料としては、樹脂担体材料、例えばポリスチレン、ポリスチレンジビニルベンゼンポリオレフィンまたはポリマー化合物などの官能化または架橋有機担体、ゼオライト、粘土、または任意の他の有機または無機担体材料など、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0051】
担体材料としては、2、3、4、5、13、または14族の金属酸化物を含む無機酸化物が挙げられる。いくつかの好ましい担体としては、シリカ、ヒュームドシリカ、アルミナ、シリカ-アルミナ、およびそれらの混合物が挙げられる。他のいくつかの担体としては、マグネシア、チタニア、ジルコニア、塩化マグネシウム、モンモリロナイト、フィロケイ酸塩、ゼオライト、タルク、粘土などが挙げられる。また、これらの担体材料の組み合わせ、例えば、シリカ-クロム、シリカ-アルミナ、シリカ-チタニアなどを使用することができる。さらなる担体材料としては、多孔質アクリルポリマー、ナノ複合材料、エアロゲル、球晶、およびポリマービーズが挙げられ得る。
【0052】
担体の一例は、商品名Cabosil(商標)TS-610で入手可能なヒュームドシリカ、またはCabot Corporationから入手可能な他のTSまたはTGシリーズの担体である。ヒュームドシリカは、典型的には、表面ヒドロキシル基の大部分がキャップされるようにジメチルシリルジクロリドで処理された7~30ナノメートルの寸法の粒子を有するシリカである。
【0053】
担体材料は、約10~約700m/gの範囲の表面積、約0.1~約4.0g/cmの範囲の細孔容積、および約5~約500μmの範囲の平均粒径を有し得る。より好ましくは、担体材料の表面積は、約50~約500m/gの範囲であり、細孔容積は、約0.5~約3.5g/cmであり、平均粒径は、約10~約200μmである。最も好ましくは、担体材料の表面積は、約100~約400m/gの範囲であり、細孔容積は、約0.8~約3.0g/cmであり、平均粒径は、約5~約100μmである。キャリアの平均細孔径は、典型的には、10~l000A、好ましくは50~約500A、最も好ましくは75~約350Aの範囲の細孔径を有する。
【0054】
活性化剤中の金属と式Iのビフェニルフェノール重合プレ触媒中の金属とのモル比は、1000:1~0.5:1、300:1~1:1、または150:1~1:1であり得る。任意の2つ以上の成分の組み合わせを容易にするために、1つ以上の希釈剤、例えば、流体を使用することができる。例えば、式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒および活性化剤は、トルエンまたは別の非反応性炭化水素もしくは炭化水素混合物の存在下で一緒に組み合わせることができる。トルエンに加えて、他の好適な希釈剤としては、エチルベンゼン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、他の炭化水素、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。次に、乾燥もしくはトルエンと混合されたかのいずれかの担体を混合物に加えることができるか、またはチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒/活性化剤を担体に加えることができる。スラリーは、重合プロセスのために反応器に供給されてよく、および/またはスラリーは、重合プロセスのために反応器に供給される前に、乾燥(例えば、噴霧乾燥)され得る。
【0055】
重合プロセスは、既知の装置および反応条件、例えば既知の重合条件を使用して用いられ得る。重合プロセスは、いかなる特定のタイプの重合システムにも限定されない。一例として、重合温度は、大気圧、大気圧より低い圧力、または大気圧より高い圧力で約0℃~約300℃の範囲であり得る。実施形態は、ポリオレフィンポリマーを作製する方法を提供し、この方法は、本明細書に記載されるように、重合条件下でオレフィンをチタンビフェニルフェノール重合触媒と接触させて、オレフィンを重合させ、それによって、ポリオレフィンポリマーを作製することを含む。
【0056】
1つ以上の実施形態は、ポリマーが気相重合系を介して、0.07~68.9バール、3.45~27.6バール、または6.89~24.1バールの範囲の超大気圧、および30~130℃、65℃~110℃、75℃~120℃、または80℃~120℃の範囲の温度で作製され得ることを条件とする。1つ以上の実施形態に対して、温度は、80℃、90℃、または100℃であり得る。攪拌および/または流動床気相重合システムが用いられ得る。
【0057】
一般に、従来の気相流動床重合プロセスは、反応条件下で、かつ触媒組成物、例えば、式Iの活性化されたチタンフェニルフェノール重合プレ触媒を含む組成物の存在下で、固体粒子の床を懸濁状態に維持するのに十分な速度にて、1つ以上のオレフィンモノマーを含有する流れを流動床反応器に連続的に通すことによって実施することができる。未反応のモノマーを含む流れは、反応器から連続的に引き出され、圧縮され、冷却され、任意で部分的または完全に凝縮され、反応器に再循環され得る。生成物、すなわちポリマーを反応器から取り出すことができ、置換モノマーを再循環流に加えることができる。触媒組成物および反応体に対して不活性なガスもまた、ガス流中に存在し得る。重合システムは、例えば、単一の反応器または連続した2つ以上の反応器を含み得る。
【0058】
重合プロセスの供給流は、オレフィンモノマー、窒素および/または水素などの非オレフィンガスを含んでよく、さらに、重合プロセスにおいて凝縮可能であり、反応熱を除去するために使用され得る1つ以上の非反応性アルカンを含み得る。例示的な非反応性アルカンとしては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、それらの異性体およびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。供給物は、単一または複数の異なる場所で反応器に入れることができる。
【0059】
重合プロセスにおいて、重合触媒は、連続して反応器に供給され得る。窒素またはアルゴンなどの重合触媒に対して不活性であるガスを使用して、重合触媒を反応器床に運ぶことができる。
【0060】
1つの実施形態において、重合触媒は、鉱油または例えばプロパン、ブタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタンまたはオクタンなどの液体炭化水素または混合物中のスラリーとして提供され得る。スラリーは、例えば、窒素もしくはアルゴンなどのキャリア流体、または例えば、イソペンタンもしくは他のC~Cアルカンなどの液体とともに反応器に送達され得る。
【0061】
重合プロセスに対して、水素は、約0.0~1.0の範囲、0.01~0.7の範囲、0.03~0.5の範囲、または0.005~0.4の範囲にあり得る、反応器内の水素対エチレンのガスモル比で用いられ得る。多くの実施形態は、水素ガスを用いる。いくつかの実施形態において、反応器内の水素対エチレンのガスモル比は、0.0068、0.0016、または0.0011であり得る。
【0062】
本開示のいくつかの態様は、以下のように提供される。
【0063】
態様1は、式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒を提供し、
【化3】
【0064】
式中、RおよびRの各々は、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキル、または水素であり、RおよびR10の各々は、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキル、ハロゲン化物、または水素であり、RおよびR13の各々は、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキル、または水素であり、R15およびR16の各々は、2,7-二置換カルバゾール-9-イルまたは3,6-二置換カルバゾール-9-イルであり、Lは、Lが共有結合している2つの酸素原子の間に、それぞれ2炭素橋、3炭素橋、または4炭素橋を形成するC~Cアルキレンであり、R、R、R、R、R、R11、R12、およびR14の各々は、独立して、ハロゲン化物または水素であり、各Xは、独立して、ヒドロカルビル、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、ヒドロキシ基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、または水素であり、少なくとも1つのXが、ヒドロカルビルではない。
【0065】
態様2は、態様1のプレ触媒を提供し、式中、RおよびRの各々は、Cアルキルであるか、またはRおよびRの各々は、水素である。
【0066】
態様3は、態様1または2のプレ触媒を提供し、式中、RおよびR10の各々は、ジアルキルまたはトリアルキル置換シリルである。
【0067】
態様4は、態様1のプレ触媒を提供し、式中、RおよびR10の各々は、オクチルジメチルシリルである。
【0068】
態様5は、態様1または2のプレ触媒を提供し、式中、RおよびR10の各々は、フッ素である。
【0069】
態様6は、態様1~5のいずれか1つであるプレ触媒を提供し、式中、RおよびR13の各々は、1,1-ジメチルエチルである。
【0070】
態様7は、態様1~6のいずれか1つのプレ触媒を提供し、式中、R15およびR16の各々は、2,7-ジ-t-ブトリカルバゾール-9-イルまたは3,6-ジ-t-ブトリカルバゾール-9-イルである。
【0071】
態様8は、態様1~7のいずれか1つのプレ触媒を提供し、式中、Lは、飽和Cアルキレンである。
【0072】
態様9は、態様1~8のいずれか1つのプレ触媒を提供し、式中、各Xは、塩素である。
【0073】
態様10は、態様1~9のいずれか1つのプレ触媒を提供し、活性化剤を含まないシリカ担体をさらに含み、その活性化剤を含まないシリカ担体は、プレ触媒を担持する。
【0074】
態様11は、チタンビフェニルフェノール重合触媒を作製する方法を提供し、この方法は、活性化条件下で、態様1~10のいずれか1つの式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒を活性化剤と接触させて、式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒を活性化し、それにより、チタンビフェニルフェノール重合触媒を作製することを含む。
【0075】
態様12は、アルカン溶媒に溶解した式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒の活性剤を含まない溶液を、上に噴霧乾燥させた活性剤を含有するシリカ担体と接触させて、シリカ担体上にチタンビフェニルフェノール重合触媒を作製することをさらに含む、態様11の方法を提供する。
【0076】
態様13は、態様11または12の方法によって作製されたチタンビフェニルフェノール重合触媒を提供する。
【0077】
態様14は、ポリエチレンを作製する方法を提供し、この方法は、態様13のチタンビフェニルフェノール重合触媒の存在下で単一の気相重合反応器においてオレフィンモノマーを重合して、ポリエチレン組成物を作製することを含む。
【0078】
態様15は、重合ステップの前に、チタンビフェニルフェノール重合触媒を作製し、チタンビフェニルフェノール重合触媒を単一の気相重合反応器に供給することをさらに含む、態様14の方法を提供する。
【実施例
【0079】
式(i)のチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒を以下のように調製した。グローブボックス内で、40ミリリットル(mL)のオーブンで乾燥させたガラスバイアルに、式Aの配位子(0.500グラム、0.407mmol)、ジエチルエーテル[Et2O](20mL、Fisher Scientificから入手可能)、および磁気攪拌棒を装填した。式Aの配位子(2’,2”-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(3-(3,6-ジ-tert-ブチル-9Hカルバゾール-9-イル)-5’-フルオロ5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)ビフェニル-2-オール)を、WO2012/027,448に記載されるように調製し、WO2012/027,448の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。バイアルの内容物を、式Aの配位子が溶解するまで撹拌し、次に、バイアルの内容物を摂氏約-30度(℃)に冷却した。次に、塩化チタン(IV)[TiCl4](45μL、0.407mmol、Aldrichから入手可能)を配位子の攪拌溶液にゆっくりと加えて、混合物を形成した。すぐに深紅への色の変化が観察され、次に、混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空で除去し、得られた残留物を冷ペンタンに懸濁し、次に、濾過して、赤色の固体を得て、これをペンタンで洗浄した(0.55g、100%収率)。式iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒の存在は、H NMR分析によって確認された。H NMR(400MHz,C)δ8.60(d,J=1.9Hz,2H),8.40(d,J=1.9Hz,2H),7.77-7.57(m,6H),7.49(d,J=2.4Hz,2H),7.40(d,J=8.6Hz,2H),7.22(d,J=2.4Hz,2H),6.91(dd,J=8.5,3.2Hz,2H),6.18-6.03(m,2H),5.78(dd,J=9.4,4.5Hz,2H),3.86(d,J=8.2Hz,2H),3.56-3.39(m,2H),1.54(s,18H),1.49-1.43(m,6H),1.37(s,18H),1.11(s,6H),1.08(s,6H),0.76(s,18H).13C NMR(101MHz,C)δ214.97,192.01,160.72,157.64,152.98,146.21,143.93,143.54,140.88,140.81,131.64,127.12,126.19,126.04,125.79,123.84,123.59,119.12,118.89,117.80,116.76,116.56,111.58,109.82,57.49,38.81,35.36,35.17,34.79,32.83,32.68,32.57,32.44,32.33,32.10,31.29,29.54,23.07,14.62.).19F NMR(376MHz,C)δ-122.45.
【0080】
【化4】
【0081】
式(ii)のチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒を、式iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒と同じ成分および方法論を使用して調製したが、式Aの配位子(0.087g、16%収率)の代わりに式Bの配位子(0.500g、0.398mmol)を使用した。式Bの配位子(2’,2”‘-(プロパン-1,3-ジイルビス(オキシ))ビス(3-(2,7-ジ-tert-ブチル-9H-カルバゾール-9-イル)-5’-フルオロ-3’-メチル-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)-[l,l’-ビフェニル]-2-オール)を、WO2014/105411に記載されるように調製し、WO2014/105411の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。式(ii)のチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒の存在は、H NMR分析によって確認された。H NMR(400MHz,C)δ8.12(dd,J=37.8,8.2Hz,4H),7.93-7.73(m,6H),7.46(ddd,J=21.2,8.2,1.6Hz,4H),7.31(d,J=2.5Hz,2H),6.78(dd,J=8.9,3.2Hz,2H),6.05(dd,J=8.3,3.1Hz,2H),3.86(dt,J=10.4,5.1Hz,2H),3.16(dt,J=11.0,5.6Hz,2H),1.67(d,J=14.5Hz,2H),1.58(s,18H),1.52(d,J=14.5Hz,2H),1.36(s,18H),1.31(2,6H).1.18(s,6H),1.13(s,6H),0.84(s,18H).13C NMR(101MHz,C)δ161.92,159.49,157.44,153.97,153.94,150.79,149.78,149.05,148.03,144.45,142.91,142.58,142.52,134.78,134.69,133.98,133.89,132.75,128.88,127.43,126.72,124.61,121.47,120.72,120.11,119.86,118.71,118.45,118.39,118.23,117.41,117.18,110.27,108.65,76.43,57.94,38.84,35.87,35.81,33.42,33.03,32.74,32.36,32.32,32.16,29.96,29.63,17.71.
【0082】
【化5】
【0083】
式(iii)のチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒は、式iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒と同じ成分および方法を使用して調製したが、式Aの配位子(1.098g、収率26%)の代わりに式Cの配位子(4.000g、2.563mmol)、および溶媒としてのペンタン(Sigma Aldrichから入手可能)を使用した。式Cの配位子を、WO2017/058,981に記載されるように調製し、WO2017/058,981の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。式(iii)のチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒の存在は、H NMR分析によって確認された。H NMR(400MHz,C)δ8.15(d,J=8.2Hz,2H),8.04-7.94(m,4H),7.84(dd,J=14.6,2.1Hz,4H),7.67(d,J=2.5Hz,2H),7.53-7.45(m,4H),7.36(dd,J=8.3,1.6Hz,2H),7.08(d,J=1.6Hz,2H),4.13(dt,J=10.6,5.2Hz,2H),3.43(dt,J=10.9,5.6Hz,2H),1.77(d,J=14.5Hz,2H),1.65(s,6H),1.64(d,J=13.5Hz,2H),1.63-1.58(m,2H),1.61(s,18H),1.37(s,6H),1.32(s,18H),1.44-1.17(m,24H),0.94-0.84(m,4H),0.91(s,18H),0.60(t,J=7.7Hz,4H),0.09(s,6H),0.08(s,6H).13C NMR(101MHz,C)δ158.73,157.86,150.50,147.87,144.02,142.62,142.54,139.05,137.49,137.41,134.32,131.92,131.53,129.05,127.37,126.34,124.61,121.42,120.74,119.91,119.87,118.26,110.29,108.71,76.14,58.12,38.93,35.82,34.40,33.37,32.75,32.71,32.39,32.10,30.31,30.14,30.12,29.78,24.71,23.45,17.88,16.27,14.74,-2.66,-2.75.
【0084】
【化6】
【0085】
本明細書で使用される場合、「Me」は、メチルを指し、「t-Bu」は、tert-ブチルを指す。
【0086】
式(iv)および(v)の比較重合プレ触媒を、WO2017/058981A1に記載されるように調製し、WO2017/058981A1の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【化7】
【0087】
【化8】
【0088】
式i、ii、iii、iv、およびvのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒の活性化は、以下に詳述されるように、方法Iまたは方法IIのいずれかによって実施した。
【0089】
方法I:
【0090】
式Iの活性化されたチタンビフェニルフェノール重合触媒である実施例1(EX1)は、以下のように方法Iに従って調製した。窒素パージされたグローブボックス内で、オーブンで乾燥させたガラス瓶に、75gのトルエン(Aldrichから入手可能)でスラリー化させた2.65グラム(g)の処理済みヒュームドシリカ(CABOSIL TS-610、W.R.Graceから入手可能)、および撹拌棒を装填し、よく分散するまで撹拌した。22gのメチルアルミノキサン(MAO)(W.R.Graceからトルエン中10重量%として入手可能)の10重量%溶液をボトルに加えて、混合物を形成した。混合物を15分間磁気的に撹拌し、次に、構造IIIのビフェニルフェノール重合触媒(0.303g)を加え、混合物を30~60分間撹拌した。混合物を、Buchi Mini Spray Dryer B-290を使用して以下のパラメーターで噴霧乾燥して、実施例1の乾燥した、活性化されたチタンビフェニルフェノール重合触媒を得た。設定温度-185℃、出口温度-100℃(分)、アスピレーター-95、およびポンプ速度-150rpm。
【0091】
実施例2(EX2)は、表1に示されるように、実施例2の触媒が用いられたという変更を伴って、実施例1と同じように調製した。
【0092】
実施例3(EX3)は、表1に示されるように、実施例3の触媒が用いられたという変更を伴って、実施例1と同じように調製した。
【0093】
方法II:
【0094】
式Iの活性化されたチタンビフェニルフェノール重合触媒である実施例4~11(EX4~11)、および比較実施例1~7(CE1~7)の触媒を、以下のように方法IIに従って調製した。
【0095】
実施例4については、ヘキサン(a:1.3mg、0.21mL、0.75μmol Ti、b:2.5mg、0.42mL、1.5μmol、Aldrichから入手可能)中の式iiiのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒の0.9mg/mLの懸濁液を、表1に示される量(例えば、0.0015g)で噴霧乾燥メチルアルミノキサンの形態の活性化剤を含有するボムに、活性化剤を含まない溶液として注入して、実施例4の活性化および担持されたチタンビフェニルフェノール重合触媒を作製した。
【0096】
実施例5~11の活性化されたチタンビフェニルフェノール重合触媒は、表1に示されるように、実施例5~11のそれぞれの触媒および触媒の量が用いられたという変更を伴って、実施例4として調製した。
【0097】
比較実施例1~7の活性化された触媒は、表1に示されるように、比較実施例1~7のそれぞれの触媒および触媒の量が用いられたという変更を伴って、実施例4として調製した。
【0098】
チタンチタン
【0099】
EX1~11、CE1~7のエチレン/1-ヘキセン共重合は、以下のように、機械的攪拌機を備えた2Lセミバッチオートクレーブ重合反応器内で、気相で実施した。反応器を最初に1時間乾燥させ、200gの塩化ナトリウム(NaCl)を装填し、窒素下で100℃にて30分間加熱することにより乾燥させた。乾燥後、5gのシリカ担持メチルアルミノキサン(SMAO)をスカベンジャーとして窒素圧下で導入した。SMAOを添加した後、反応器を密閉し、成分を撹拌した。次に、反応器に水素(各条件について以下に示されるように、Hプレロード)およびヘキセン(各条件について以下に示されるように、C6/C2比)を装填し、次に、エチレン(230psi)で加圧した。システムが定常状態に達したら、実施例1~11および比較実施例1~7の各々について表1で特定されるそれぞれの活性化された触媒(方法IまたはIIによる活性化)の種類および量を、80℃の反応器に装填して、重合を開始した。反応器の温度を90または100℃にし、1時間の運転の間、この温度に維持した。運転は、表1に示され、以下に詳述されるように、条件1、2、3、または4で実施した。運転の終わりに、反応器を冷却し、排気し、開けた。得られた生成物混合物を水およびメタノールで洗浄し、次に、乾燥させた。実施例1~11および比較実施例1~7の結果を表2に示す。
【0100】
生産性(グラムポリマー/グラム触媒/時間)は、反応器に加えられた触媒および活性化剤の量に対する生成されたポリマーの比率として決定した。
【0101】
Mn(数平均分子量)、Mw(重量平均分子量)、z平均分子量(Mz)、およびMw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)は、当該技術分野において既知であるように、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定した。
【0102】
ポリマーに組み込まれたコモノマー含有量(すなわち、1-ヘキセン)(重量%))は、GPC測定で、溶解したポリマーに対する高速FT-IR分光法によって決定した。
【0103】
メルトインデックス(MI、I)は、ASTM D1238(190℃、2.16kg重量)に従って測定することができる。メルトインデックス(MI、I)は、ASTM D1238(190℃、5kg)に従って測定することができる。メルトインデックス(MI、I21)は、ASTM D1238(190℃、21.6kg)に従って測定することができる。
【0104】
条件1:C/C比=0.004、Hプリロード=5.02リットル(L)、H/C比=0.0068、C圧力=230ポンド/平方インチ(psi)、条件2:C/C比=0.004、Hプリロード=1.18L、H/C比=0.0016、C圧力=230psi、条件3:C/C比=0.016、Hプリロード=0.81L、H/C比=0.0011、C圧力=230psi、条件4:C6/C2比=0.016、Hプリロード=0.40L、H/C=0.0011、C圧力=115psi。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
「NT」、試験を実施しなかった。
【0108】
表1および表2に詳述されているように、EX1~11は、チタンビフェニルフェノール重合触媒および好適な特性を有する得られたポリマーを提供する。
【0109】
本開示のチタンビフェニルフェノール重合触媒は、比較触媒からのポリマーよりも低分子量のポリマーを生成することができる。例えば、条件1および触媒添加方法IIでは、CE1およびCE2は、それぞれEX4およびEX5の105,215および102,243のMwと比較して、それぞれ259,109および202,837のMwを有する。すなわち、本開示のチタンビフェニルフェノール重合触媒から得られるポリマーのMwは、比較ポリマーのMwよりも少なくとも40パーセント低くなり得るが、それでも、チタンビフェニルフェノール重合触媒は、他の所望の特性(Mn、Mz、Mw/Mn比、コモノマー取り込みの%、I、I、I21、収率、および/または生産性)を提供する。
【0110】
例えば、本開示のチタンビフェニルフェノール重合触媒は、比較触媒よりも低い生産性を有し得る。表1に詳述されるように、EX4~11はすべて、CE1~7の生産性よりも低い生産性を有する。理論に拘束されることを望まないが、より低い生産性は、生産性が高く、気相重合反応器における操作性の問題をもたらし得る触媒と比較して、触媒の劣化を軽減し得、かつ/またはそうでなければ操作性を向上させ得、望ましいと考えられている。
【0111】
加えて、EX4~11は、本開示のチタンビフェニルフェノール重合触媒の操作性が、触媒添加方法Iの代わりに触媒添加方法IIを採用することによって改善することができることを実証する。条件1および条件2では、EX4~11(方法II)は、同じまたは同様のチタン触媒が方法I(EX1~3)で採用された場合よりも高い収率および/または生産性を提供する。理論に拘束されることを望まないが、方法IIを採用することは、活性化された触媒を作製する方法Iなどの他のアプローチ(例えば、従来の方式で担持された/スラリー)と比較して、触媒劣化を軽減し、これは、混合物中の活性化剤およびプレ触媒を、混合物を噴霧乾燥させる前に接触させるため、一度形成ると、触媒が分解するのにかなりの時間がかかるようになる。別の言い方をすれば、方法IIを採用するEX4~11は、溶液が噴霧乾燥活性化剤などの活性化剤と後に接触するまで活性化剤を含まない(いかなる活性化剤をも含まない)溶液を用いて、活性化された触媒を作製し、これは、次に、気相重合反応器に直接/すぐに供給され得(例えば、トリム触媒として)、いかなる触媒の劣化をも軽減し、それによって、操作性が改善される。例えば、触媒は、本明細書に記載されるように、方法IIによる活性化されたチタンビフェニルフェノール重合触媒の形成の直後に、インライントリム添加または他のメカニズムを介して気相重合反応器に直接供給され得る。
【0112】
本開示のチタンビフェニルフェノール重合触媒は、望ましくは、より少ないコモノマー(1-ヘキセン)を組み込む。例えば、条件3では、CE4およびCE5は、それぞれEX8およびEX9に対する2.98および3.07パーセントのコモノマー取り込みと比較して、それぞれ5.35および6.14のコモノマー取り込みを有する。すなわち、本開示のチタンビフェニルフェノール重合触媒から得られるポリマーのコモノマー取り込みは、同じ条件(条件2、3、および4)および触媒方法で採用される比較触媒のコモノマー取り込みよりも少なくとも65パーセント少なくなり得る。

【手続補正書】
【提出日】2022-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒であって、
【化1】
式中、RおよびRの各々が、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキルまたは水素であり、
およびR10の各々が、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキル、ハロゲン化物、または水素であり、
およびR13の各々が、独立して、C~C20アルキル、アリール、アラルキル、または水素であり、
15およびR16の各々が、2,7-二置換カルバゾールまたは3,6-二置換カルバゾールであり、
Lが、Lが共有結合している2つの酸素原子の間に、それぞれ2炭素橋、3炭素橋、または4炭素橋を形成するC~Cアルキレンであり、
、R、R、R、R、R11、R12、およびR14の各々が、独立して、ハロゲン化物または水素であり、
各Xが、独立して、ヒドロカルビル、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、ヒドロキシ基、アルコキシ基、フェノキシ基、アリールオキシ基、または水素であり、少なくとも1つのXが、ヒドロカルビルではない、式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒。
【請求項2】
およびRの各々が、Cアルキルであるか、またはRおよびRの各々が、水素である、請求項1に記載のプレ触媒。
【請求項3】
およびR10の各々が、ジアルキルまたはトリアルキル置換シリルである、請求項1または2に記載のプレ触媒。
【請求項4】
およびR10の各々が、オクチルジメチルシリルである、請求項3に記載のプレ触媒。
【請求項5】
およびR10の各々が、フッ素である、請求項1または2に記載のプレ触媒。
【請求項6】
およびR13の各々が、1,1-ジメチルエチルである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプレ触媒。
【請求項7】
15およびR16の各々が、2,7-ジ-t-ブトリカルバゾールまたは3,6-ジ-t-ブトリカルバゾールである、請求項1~6のいずれか一項に記載のプレ触媒。
【請求項8】
Lが、飽和Cアルキレンである、請求項1~7のいずれか一項に記載のプレ触媒。
【請求項9】
各Xが、塩素である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプレ触媒。
【請求項10】
活性化剤を含まないシリカ担体をさらに含み、前記活性化剤を含まないシリカ担体が、前記触媒を担持する、請求項1~9のいずれか一項に記載のプレ触媒。
【請求項11】
チタンビフェニルフェノール重合触媒を作製する方法であって、活性化条件下で、請求項1~10のいずれか一項に記載の式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒を活性化剤と接触させて、前記式Iのチタンビフェニルフェノール重合プレ触媒を活性化し、それにより、前記チタンビフェニルフェノール重合触媒を作製すること、を含む、方法。
【請求項12】
アルカン溶媒に溶解した式Iの前記チタンビフェニルフェノール重合プレ触媒の活性化剤を含まない溶液を、上に噴霧乾燥させた活性化剤を含有するシリカ担体と接触させて、シリカ担体上にチタンビフェニルフェノール重合触媒を作製することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の方法によって作製されるチタンビフェニルフェノール重合触媒。
【請求項14】
ポリエチレンを作製する方法であって、
請求項13に記載のチタンビフェニルフェノール重合触媒の存在下で、単一の気相重合反応器においてオレフィンモノマーを重合して、ポリエチレン組成物を作製することを含む、方法。
【請求項15】
前記重合ステップの前に、
前記チタンビフェニルフェノール重合触媒を作製することと、
前記チタンビフェニルフェノール重合触媒を前記単一の気相重合反応器に供給することと、をさらに含む、請求項14に記載の方法。

【国際調査報告】