(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】S1P受容体モジュレーターの固体形態
(51)【国際特許分類】
C07D 498/04 20060101AFI20221219BHJP
A61K 31/4353 20060101ALI20221219BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20221219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C07D498/04 105
C07D498/04 CSP
A61K31/4353
A61P25/28
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525601
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2022-05-30
(86)【国際出願番号】 US2020058269
(87)【国際公開番号】W WO2021087299
(87)【国際公開日】2021-05-06
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522172461
【氏名又は名称】エスケープ・バイオ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ・ロンバールト,ステファーヌ
(72)【発明者】
【氏名】モッロ・サルノ,アナ・ロサリオ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティ,マイケル・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ツィオルコフスキー,エドワード・エル
(72)【発明者】
【氏名】デル・リオ・ガンセード,スサナ
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ジョーセフ・スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】マップ,ルーシー・クリスティナ
(72)【発明者】
【氏名】ピターク,マテウシュ・ボグミウ
(72)【発明者】
【氏名】チャイルズ,スコット・エル
【テーマコード(参考)】
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C072AA01
4C072BB02
4C072CC02
4C072CC11
4C072EE03
4C072FF07
4C072GG01
4C072HH01
4C072HH02
4C072JJ10
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB22
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086NA11
4C086NA20
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZC42
(57)【要約】
本出願は、CNS障害を含む、SIPの活性に関連する疾患または障害の治療に有用である以下の式のSIP受容体モジュレーターの個体形態に関する。化合物1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式を有する化合物1の固体形態であって、
【化1】
前記固体形態が結晶性である、固体形態。
【請求項2】
無水である、請求項1に記載の固体形態。
【請求項3】
水和または溶媒和された、請求項1に記載の固体形態。
【請求項4】
一水和物である、請求項1に記載の固体形態。
【請求項5】
前記固体形態が、形態A、形態B、形態C、形態D、または形態Eを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項6】
前記固体形態が、形態Aを有する、請求項5に記載の固体形態。
【請求項7】
前記固体形態が、約4.7、約9.3、約13.9、約15.8、約18.6、約19.0、約21.5、および約27.4度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項6に記載の固体形態。
【請求項8】
前記固体形態が、約4.7、約9.3、約13.9、約15.8、約18.6、約19.0、約21.5、および約27.4度2θから選択される少なくとも2つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項6に記載の固体形態。
【請求項9】
前記固体形態が、約4.7、約9.3、約13.9、約15.8、約18.6、約19.0、約21.5、および約27.4度2θから選択される少なくとも3つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項6に記載の固体形態。
【請求項10】
前記固体形態が、約4.7、約9.3、約13.9、約15.8、約18.6、約19.0、約21.5、および約27.4度2θから選択される少なくとも4つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項6に記載の固体形態。
【請求項11】
実質的に
図1に示される特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する、請求項6に記載の固体形態。
【請求項12】
約120℃および約252℃の温度で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す、請求項6~11のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項13】
約252℃で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す、請求項6~11のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項14】
実質的に
図2に描写されるDSCサーモグラムを有する、請求項6~11のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項15】
実質的に
図3に描写される熱重量分析(「TGA」)サーモグラムを有する、請求項6~14のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項16】
請求項6~15のいずれか一項に記載の固体形態を調製するためのプロセスであって、DMSO中で化合物1を再結晶化することを含み、前記再結晶化は、DMSO中の化合物1の溶液を90℃以上の温度に加熱することを含む、プロセス。
【請求項17】
前記DMSOが、実質的に水を含まない、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記プロセスが、加熱された前記溶液に化合物1の形態Aシードをシーディングして、シードされた溶液を形成することをさらに含む、請求項16または17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記シードされた溶液を冷却することをさらに含む、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
請求項16~19のいずれか一項に記載のプロセスによって調製された固体形態。
【請求項21】
前記固体形態が、形態Bを有する、請求項5に記載の固体形態。
【請求項22】
前記固体形態が、約8.5、約15.1、約16.5、約21.5、約23.5、約24.6、および約25.5度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項21に記載の固体形態。
【請求項23】
前記固体形態が、約8.5、約15.1、約16.5、約21.5、約23.5、約24.6、および約25.5度2θから選択される少なくとも2つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項21に記載の固体形態。
【請求項24】
前記固体形態が、約8.5、約15.1、約23.5、および約25.5度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項21に記載の固体形態。
【請求項25】
実質的に
図4に示される特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する、請求項21に記載の固体形態。
【請求項26】
約246℃の温度で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す、請求項21~25のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項27】
実質的に
図5に描写されるDSCサーモグラムを有する、請求項21~25のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項28】
実質的に
図6に描写される熱重量分析(「TGA」)サーモグラムを有する、請求項21~27のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項29】
三斜晶系空間群P1ならびに単位格子パラメーター:a=6.43Å、b=8.37Å、c=20.95Å、α=89.7°、β=82.0°、およびγ=69.6°を有する、請求項21~28のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項30】
請求項21~29のいずれか一項に記載の固体形態を調製するためのプロセスであって、水および酢酸の混合物中で化合物1を再結晶化することを含む、プロセス。
【請求項31】
請求項30に記載のプロセスによって調製された固体形態。
【請求項32】
前記固体形態が、形態Cを有する、請求項5に記載の固体形態。
【請求項33】
前記固体形態が、約7.4、約11.0、約22.2、約25.0、約25.4、約28.2、および約29.8度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項32に記載の固体形態。
【請求項34】
前記固体形態が、約7.4、約11.0、約22.2、約25.0、約25.4、約28.2、および約29.8度2θから選択される少なくとも2つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項32に記載の固体形態。
【請求項35】
前記固体形態が、約7.4、約22.2、約25.0、約25.4、および約28.2度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項32に記載の固体形態。
【請求項36】
実質的に
図8に示される特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する、請求項32に記載の固体形態。
【請求項37】
約242℃の温度で発熱ピークを有し、約253℃の温度で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す、請求項32~36のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項38】
実質的に
図9に描写されるDSCサーモグラムを有する、請求項32~36のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項39】
実質的に
図10に描写される熱重量分析(「TGA」)サーモグラムを有する、請求項32~38のいずれか一項に記載の固体形態。
【請求項40】
請求項32~39のいずれか一項に記載の固体形態を調製するためのプロセスであって、DMSOを含む溶媒中で化合物1を再結晶化することを含む、プロセス。
【請求項41】
請求項40に記載のプロセスによって調製された固体形態。
【請求項42】
前記固体形態が、形態Dを有する、請求項5に記載の固体形態。
【請求項43】
実質的に
図11に示される特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する、請求項42に記載の固体形態。
【請求項44】
請求項42または43に記載の固体形態を調製するためのプロセスであって、ジメチルアセトアミドを含む溶媒中で化合物1を再結晶化することを含む、プロセス。
【請求項45】
請求項44に記載のプロセスによって調製された固体形態。
【請求項46】
前記固体形態が、形態Eを有する、請求項5に記載の固体形態。
【請求項47】
前記固体形態が、約8.7、約15.3、約16.2、約18.3、約23.2、約25.5、および約28.2度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項46に記載の固体形態。
【請求項48】
前記固体形態が、約8.7、約15.3、約16.2、約18.3、約23.2、約25.5、および約28.2度2θから選択される少なくとも2つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項46に記載の固体形態。
【請求項49】
前記固体形態が、約8.7、約15.3、約16.2、約23.2、および約25.5度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項46に記載の固体形態。
【請求項50】
実質的に
図12に示される特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する、請求項46に記載の固体形態。
【請求項51】
請求項46~50のいずれか一項に記載の固体形態を調製するためのプロセスであって、化合物1の形態Bを150℃以上の温度に加熱することを含む、プロセス。
【請求項52】
請求項51に記載のプロセスによって調製された固体形態。
【請求項53】
請求項1~15、20~29、31~39、41~43、45~50、および52のいずれか一項に記載の固体形態と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項54】
S1P受容体活性を調節する方法であって、請求項1~15、20~29、31~39、41~43、45~50、および52のいずれか一項に記載の固体形態またはその薬学的に許容される塩をS1P受容体と接触させることを含む、方法。
【請求項55】
S1Pに関連する疾患または障害を治療する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の請求項1~15、20~29、31~39、41~43、45~50、および52のいずれか一項に記載の固形形態またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項56】
CNS障害の治療を必要とする患者においてCNS障害を治療する方法であって、前記患者に、治療有効量の請求項1~15、20~29、31~39、41~43、45~50、および52のいずれか一項に記載の固体形態またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、CNS障害を含む、S1Pの活性に関連する疾患または障害の治療に有用であるS1P受容体モジュレーターの固体形態に関する。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)は、増殖、細胞骨格の組織化および移動、付着およびタイトジャンクションの組み立て、ならびに形態形成など、非常に広範な細胞応答を媒介する生物活性スフィンゴ脂質である。S1Pは、原形質膜に局在するGタンパク質共役型受容体の内皮細胞分化遺伝子ファミリー(EDG受容体)のメンバーと結合することができる。現在までに、このファミリーの5つのメンバーが、異なる細胞型のS1P受容体、S1P1(EDG-1)、S1P2(EDG-5)、S1P3(EDG-3)、S1P4(EDG-6)、およびS1P5(EDG-8)として同定されている。S1Pは、中枢神経系(CNS)および末梢器官系における免疫細胞トラフィッキング、血管恒常性、および細胞コミュニケーションを調節するために、多くの細胞型において細胞骨格再配列を生じさせることができる。
【0003】
S1Pは、血管内皮から分泌され、200~900ナノモルの濃度で血中に存在し、アルブミンおよび他の血漿タンパク質によって結合されることが既知である。これにより、細胞外液の安定したリザーバーおよび高親和性の細胞表面受容体への効率的な送達の両方が提供される。S1Pは、S1P1~5の5つの受容体に低ナノモルの親和性で結合する。さらに、血小板もまたS1Pを含み、局所的に放出されて例えば血管収縮を引き起こし得る。受容体サブタイプS1P1、S1P2、およびS1P3は、広く発現し、心血管系における主要な受容体を表す。さらに、S1P1は、リンパ球の受容体でもある。S1P4受容体は、造血系およびリンパ系にほぼ専ら存在する。S1P5は、主に(専らではないが)中枢神経系で発現する。S1P5の発現は、マウスではオリゴデンドロサイト、脳の髄鞘形成細胞に限定されているようであり、ラットおよびヒトでは、アストロサイトおよび内皮細胞のレベルでの発現が見出されたが、オリゴデンドロサイトでは見出されなかった。
【0004】
S1P受容体モジュレーターは、1つ以上のS1P受容体でアゴニスト(アンタゴニスト)としてシグナルを伝達する化合物である。本発明は、S1P5受容体のモジュレーター、特にアゴニストに関し、好ましくは、望ましくない心血管および/または免疫調節効果に鑑みて、S1P1および/またはS1P3受容体よりも選択性を有するアゴニストに関する。S1P5アゴニストは、認知障害、特に加齢に関連する認知機能低下の治療に使用することができることが見出されている。
【0005】
加齢に関連する認知機能低下および認知症の治療に使用することができる治療法を開発するための研究が進行中である。例えば、化合物(1s,3s)-3-(2-(4-((4-クロロベンジル)オキシ)フェニル)-6,7-ジヒドロオキサゾロ[4,5-c]ピリジン-5(4H)-イル)シクロブタン-1-カルボン酸およびS1P受容体の他の小分子モジュレーターが、例えば、米国特許第8,796,262号に報告されている。したがって、例えば、安全で、効果的で、かつ高品質の医薬品の製造を容易にすることに関連する好適な特性を有する医薬として有用な製剤および剤形を調製するための新しい固体形態のS1P受容体モジュレーターが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第8,796,262号明細書
【発明の概要】
【0007】
(1s,3s)-3-(2-(4-((4-クロロベンジル)オキシ)フェニル)-6,7-ジヒドロオキサゾロ[4,5-c]ピリジン-5(4H)-イル)シクロブタン-1-カルボン酸(「化合物1」)の固体形態が本明細書で提供される。
【0008】
本明細書に記載される固体形態と、1つ以上の薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、医薬組成物も本明細書で提供される。
【0009】
本開示はまた、S1P受容体(例えば、S1P5)活性を調節する方法であって、化合物1またはその固体形態をS1P受容体と接触させることを含む、方法を提供する。本発明は、患者のCNS障害を治療するための方法であって、治療有効量の化合物1の固体形態を患者に投与することを含む、方法をさらに提供する。
【0010】
本開示はまた、本明細書に記載の固体形態を使用する治療方法を提供する。本開示はまた、治療に使用するための医薬の製造における本明細書に記載の固体形態の使用を提供する。本開示はまた、治療に使用するための本明細書に記載の固体形態を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】化合物1の形態AのX線粉末回折(XRPD)パターンを示す。
【
図2】化合物1の形態Aの示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを示す。
【
図3】化合物1の形態Aの熱重量分析(TGA)サーモグラムを示す。
【
図4】化合物1の形態BのXRPDパターンを示す。
【
図5】化合物1の形態BのDSCサーモグラムを示す。
【
図6】化合物1の形態BのTGAサーモグラムを示す。
【
図7】化合物1の形態Bの動的水蒸気吸着(DVS)等温線プロットを示す。
【
図8】化合物1の形態CのXRPDパターンを示す。
【
図9】化合物1の形態CのDSCサーモグラムを示す。
【
図10】化合物1の形態CのTGAサーモグラムを示す。
【
図11】化合物1の形態DのXRPDパターンを示す。
【
図12】化合物1の形態EのXRPDパターンを示す。
【
図13】実施例18Bに記載される、DMSO中で化合物1をゆっくり冷却することから得られた固体のXRPDオーバーレイを示す。
【
図14】実施例19に記載される、スケールアップされた実験から調製された化合物1の形態AのXRPDパターンを示す。
【
図15】実施例19に記載される、スケールアップされた実験から調製された化合物1の形態AのDSCサーモグラムを示す。
【
図16】実施例19に記載される、スケールアップされた実験から調製された化合物1の形態AのTGAサーモグラムを示す。
【
図17】実施例19に記載される、スケールアップされた実験から調製された化合物1の形態Aの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図18】実施例19に記載される、スケールアップされた実験から調製された化合物1の形態AのPLM画像を示す。
【
図19】実施例20に記載される、DVS実験の前後の化合物1の形態AのXRPDオーバーレイを示す。
【
図20A】実施例21の実験21A~21Dに記載される、水分活性研究から得られた固体のXRPDオーバーレイを示す。
【
図20B】実施例21の実験21E~21Hに記載される、水分活性研究から得られた固体のXRPDオーバーレイを示す。
【
図21A】実施例21の実験21I~21Lに記載される、水分活性研究から得られた固体のXRPDオーバーレイを示す。
【
図21B】実施例21の実験21M~21Pに記載される、水分活性研究から得られた固体のXRPDオーバーレイを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、特に、(1s,3s)-3-(2-(4-((4-クロロベンジル)オキシ)フェニル)-6,7-ジヒドロオキサゾロ[4,5-c]ピリジン-5(4H)-イル)シクロブタン-1-カルボン酸(化合物1)の結晶形態およびアモルファス形態を含む固体形態に関する。化合物1の構造を以下に示す。
【化1】
化合物1は、米国特許第8,796,262号に記載されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
化合物1は、1つ以上の固体形態として単離することができる。本明細書に記載の固体形態(例えば、結晶形態)は、特定の利点を有することができ、例えば、それらは、取り扱いの容易性、処理の容易性、貯蔵安定性、および精製の容易性などの望ましい特性を有し得る。さらに、結晶形態は、溶解プロファイル、貯蔵寿命、および生物学的利用能などの医薬品の性能特性を改善するために有用であり得る。
【0014】
本明細書で使用する場合、および別段特定しない限り、「約」という用語は、特定の固体形態を説明するために提供される数値または値の範囲(例えば、融解、脱水、もしくはガラス転移を説明するなどの特定の温度もしくは温度範囲;温度もしくは湿度の関数としての質量変化などの質量変化;例えば質量またはパーセンテージを単位とした溶媒もしくは水分含有量;または例えば13C NMR、DSC、TGA、およびXRPDによる分析などのピーク位置)に関連して使用される場合、特定の固体形態を依然として説明しつつ、値または値の範囲が、当業者に合理的であるとみなされる程度まで逸脱し得ることを示す。具体的には、「約」という用語は、この文脈で使用される場合、数値または値の範囲が、特定の固体形態を依然として説明しつつ、記載された値または値の範囲の5%、4%、3%、2%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、または0.1%変動し得ることを示す。「約」という用語は、度2θ値に関して使用される場合、+/-0.2度2θを指す。
【0015】
本明細書で使用する場合、「固体形態」という句は、アモルファス状態または結晶状態のいずれかの本明細書で提供される化合物(「結晶形態」または「結晶性固体」または「結晶性固体形態」)を指し、それにより、結晶状態の本明細書で提供される化合物は、例えば、溶媒和または水和結晶形態を形成するために、結晶格子内に溶媒または水を任意に含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物は、本明細書に記載される結晶状態にある。
【0016】
本明細書で使用する場合、「ピーク」または「特徴的なピーク」という用語は、最大ピーク高さ/強度の少なくとも約3%の相対高さ/強度を有するXRPD反射を指す。
【0017】
本明細書で使用する場合、「結晶性」または「結晶形態」という用語は、例えば、溶媒和物、水和物、クラスレート、および共結晶を含む、単一成分または多成分結晶形態を含むがこれらに限定されない、化合物の結晶性固体形態を指す。例えば、結晶性とは、規則的に繰り返されおよび/または秩序化された分子配列を有し、識別可能な結晶格子を有することを意味する。「結晶形態」という用語は、結晶性物質の特定の格子構成を指すことを意味する。同じ物質の異なる結晶形態は、典型的には、異なる結晶格子(例えば、単位格子)を有し、典型的には、それらの異なる結晶格子に起因する異なる物理的特性を有し、いくつかの場合では、異なる水または溶媒含有量を有する。異なる結晶格子は、X線粉末回折(XRPD)などの固体状態特性評価法によって同定することができる。示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、動的水蒸気吸着(DVS)などの他の特性評価法は、結晶形態の同定に役立つだけでなく、安定性および溶媒/水分含有量の決定にも役立つ。
【0018】
本明細書に記載の化合物1などの特定の物質の異なる結晶形態は、その物質の無水形態およびその物質の溶媒和/水和形態の両方を含むことができ、無水形態および溶媒和/水和形態のそれぞれは、異なるXRPDパターンまたは他の固体特性評価方法によって互いに区別され、これにより、異なる結晶性格子が示される。いくつかの場合では、単結晶形態(例えば、固有のXRPDパターンによって同定される)は、水または溶媒の変動する含有量を有し、水および/または溶媒に関する組成変動にもかかわらず、格子は実質的に変化しないままである(XRPDパターンも同様である)。
【0019】
反射(ピーク)のXRPDパターンは、典型的には、特定の結晶形態のフィンガープリントとみなされる。XRPDピークの相対強度は、特に、試料調製技術、結晶サイズ分布、使用するフィルター、試料の取り付け手順、および使用する特定の機器によって大きく変動し得ることは周知である。いくつかの場合では、機械の種類および設定(例えば、Niフィルターの使用の有無)に応じて、新しいピークが観測され、または既存のピークが消失し得る。本明細書で使用する場合、「ピーク」という用語は、最大ピーク高さ/強度の少なくとも約3%または少なくとも約4%の相対高さ/強度を有する反射を指す。さらに、機器の変動および他の要因が2θの値に影響を与え得る。したがって、本明細書で報告されるものなどのピークの割り当ては、プラスマイナス約0.2°(2θ)で変動することができ、本明細書のXRPDの文脈で使用される「実質的に」という用語は、上記の変動を包含することを意味する。
【0020】
同様に、DSC、TGA、または他の熱実験に関連する温度の読取りは、機器、特定の設定、試料調製などに応じて約±3℃変動し得る。したがって、図のいずれかに示される「実質的に」DSCサーモグラムを有する本明細書で報告される結晶形態は、そのような変動を受け入れることが理解される。
【0021】
物質の結晶形態は、当該技術分野で既知である多くの方法によって得ることができる。そのような方法には、溶融再結晶化、溶融冷却、溶媒再結晶化、例えばナノポアまたはキャピラリーなどの密閉空間での再結晶化、表面またはテンプレート、例えばポリマー上での再結晶化、添加剤、例えば共結晶カウンター分子の存在下での再結晶化、脱溶媒和、脱水、急速蒸発、急冷、徐冷、蒸気拡散、昇華、湿気への曝露、粉砕、および溶媒滴粉砕が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用する場合、「アモルファス」または「アモルファス形態」という用語は、例えばXRPDによって決定した際に、問題の物質、成分、もしくは生成物が結晶性ではないこと、または問題の物質、成分、もしくは生成物が、例えば、顕微鏡で見た場合には複屈折しない場合を意味することが意図される。例えば、アモルファスとは、規則的に繰り返される分子配列を本質的に有しないか、または結晶の長距離秩序を欠いていることを意味し、すなわち、アモルファスの形態は非結晶である。アモルファス形態は、シャープな最大値を有する定義されたX線回折パターンを示さない。特定の実施形態では、物質のアモルファス形態を含む試料は、他のアモルファス形態および/または結晶形態を実質的に含まなくてもよい。例えば、アモルファス物質は、反射を有していないXRPDスペクトルによって同定することができる。
【0023】
本明細書で使用する場合、「実質的にアモルファス」という用語は、化合物1の試料または調製物の重量の大部分がアモルファスであり、試料の残りが同じ化合物の結晶形態であることを意味する。いくつかの実施形態では、実質的にアモルファスの試料は、約5%未満の結晶化度(例えば、約95%の同じ化合物の非結晶形態)、約4%未満の結晶化度(例えば、約96%の同じ化合物の非結晶形態)、約3%未満の結晶化度(例えば、約97%の同じ化合物の非結晶形態)、約2%未満の結晶化度(例えば、約98%の同じ化合物の非結晶形態)、約1%未満の結晶化度(例えば、約99%の同じ化合物の非結晶形態)、または約0%の結晶化度(例えば、約100%の同じ化合物の非結晶形態)を有する。いくつかの実施形態では、「完全なアモルファス」という用語は、約99%未満または約0%の結晶化度を意味する。
【0024】
化合物1は、バッチ、試料、または調製物と称されるバッチで調製することができる。バッチ、試料、または調製物は、水和および非水和形態を含む本明細書に記載の結晶性または非結晶性形態のいずれかの化合物1、およびそれらの混合物を含むことができる。
【0025】
本明細書で提供される化合物(例えば、化合物1)はまた、中間体または最終化合物で生じる原子のすべての同位体を含むことができる。同位体には、原子番号は同じであるが質量数が異なる原子が含まれる。例えば、水素の同位体には三重水素および重水素が含まれる。本明細書で提供される化合物の1個以上の構成原子は、天然または非天然存在比で原子の同位体に置き換えるか、またはそれで置換することができる。いくつかの実施形態では、化合物は、少なくとも1個の重水素原子を含む。例えば、本開示の化合物中の1個以上の水素原子は、重水素に置き換えるか、またはそれで置換することができる。いくつかの実施形態では、化合物は、2個以上の重水素原子を含む。いくつかの実施形態では、化合物は、1、2、3、4、5、6、7または8個の重水素原子を含む。有機化合物に同位体を含めるための合成方法は、当該技術分野で既知である。
【0026】
いくつかの実施形態では、化合物1は、実質的に単離されている。「実質的に単離された」という用語は、化合物が形成または検出された環境から少なくとも部分的または実質的に化合物が分離されていることを意味する。部分的な分離には、例えば、本明細書で提供される化合物、塩、水和物、溶媒和物、または固体形態が豊富な組成物が含まれ得る。実質的な分離には、本明細書で提供される化合物、塩、水和物、溶媒和物、または固体形態の少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、または少なくとも約99重量%が含まれる。
【0027】
本明細書で使用される「水和物」または「水和の(hydrated)」という用語は、水を含む化合物1の固体形態を指すことを意味する。水和物中の水は、固体中の塩の量に対して化学量論的な量で存在することができ、またはチャネル水和物に関連して見出されるものなどの様々な量で存在することができる。水和物の例には、半水和物、一水和物、および二水和物が含まれる。同様に、「溶媒和物」または「溶媒和の(solvated)」という用語は、溶媒を含む化合物1の固体形態を指す。溶媒は、非水性溶媒であり得る。
【0028】
本明細書で使用する場合、XRPDパターン、DSCサーモグラム、TGAサーモグラムなどの結晶形態の特徴的な図を指す場合の「実質的に」という用語は、対象の図が、本明細書に示される参照とは同じではないが、実験誤差の範囲内にあり、したがって、当業者によって判断されるように、本明細書に開示されるのと同じ結晶形態に由来するとみなされ得る。
【0029】
本明細書で使用する場合、「結晶性」または「実質的に結晶性」という用語は、化合物1の試料または調製物の重量の大部分が結晶性であり、試料の残りが同じ化合物の非結晶形態(例えば、アモルファス形態)であることを意味する。いくつかの実施形態では、実質的に結晶性の試料は、少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%の結晶化度を有する。いくつかの実施形態では、実質的に結晶性の試料は、少なくとも約95%の結晶化度(例えば、約5%の同じ化合物の非結晶形態)、少なくとも約96%の結晶化度(例えば、約4%の同じ化合物の非結晶形態)、少なくとも約97%の結晶化度(例えば、約3%の同じ化合物の非結晶形態)、少なくとも約98%の結晶化度(例えば、約2%の同じ化合物の非結晶形態)、少なくとも約99%の結晶化度(例えば、約1%の同じ化合物の非結晶形態)、または約100%の結晶化度(例えば、約0%の同じ化合物の非結晶形態)を有する。いくつかの実施形態では、「完全な結晶性」という用語は、少なくとも約99%または約100%の結晶化度を意味する。
【0030】
本明細書で使用する場合、「%結晶化度」または「結晶純度」という用語は、同じ化合物のアモルファス形態、もしくは化合物の少なくとも1つの他の結晶形態、またはそれらの混合物などの、他の形態を含み得る調製物または試料中の結晶形態のパーセンテージを意味する。いくつかの実施形態では、結晶形態は、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の結晶純度で単離することができる。いくつかの実施形態では、結晶形態は、約99%超の純度で単離することができる。
【0031】
本明細書で使用する場合、「反応する」という用語は、当該技術分野で既知のように使用され、一般に、分子レベルでのそれらの相互作用が化学的または物理的変換を達成することを可能にするような様式で化学試薬を引き合わせることを指す。いくつかの実施形態では、反応は少なくとも2つの試薬を含み、第1の試薬に対して1モル当量以上の第2の試薬が使用される。いくつかの実施形態では、合成プロセスの反応ステップは、溶媒および/または触媒などの試薬に加えて、1つ以上の物質を含み得る。本明細書に記載のプロセスの反応ステップは、同定された生成物を調製するのに好適な時間および条件下で行うことができる。
【0032】
本明細書で使用する場合、化学反応における中間体または出発試薬もしくは材料の変更に関する「変換」という用語は、中間体または出発試薬もしくは材料を好適な試薬および条件(例えば、温度、時間、溶媒など)に曝露して、特定の変化(例えば、化学結合の切断または形成)を行い、所望の生成物を生成することを指す。
【0033】
化合物1は、例えば、形態A、形態B、形態C、形態D、および形態Eを含む様々な結晶形態で調製することができる。いくつかの実施形態では、化合物1の固体形態は、アモルファスである。
【0034】
化合物1の形態A
後述の実施例で記載される、形態Aと称される結晶性の化合物1の固体形態が本明細書で提供される。形態Aを特徴付けるデータは、無水の結晶形態と一致する。
【0035】
いくつかの実施形態では、形態Aは、約4.7、約9.3、約13.9、約15.8、約18.6、約19.0、約21.5、および約27.4度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Aは、約4.7、約9.3、約13.9、約15.8、約18.6、約19.0、約21.5、および約27.4度2θから選択される少なくとも2つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Aは、約4.7、約9.3、約13.9、約15.8、約18.6、約19.0、約21.5、および約27.4度2θから選択される少なくとも3つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Aは、約4.7、約9.3、約13.9、約15.8、約18.6、約19.0、約21.5、および約27.4度2θから選択される少なくとも4つの特徴的なXRPDピークを有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、形態Aは、約4.7度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Aは、約9.3度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Aは、約13.9度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Aは、約15.8度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Aは、約18.6度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Aは、約19.0度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Aは、約21.5度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Aは、約27.4度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、形態Aは、実質的に
図1に示される特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、形態Aは、実質的に
図14に示される特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する。
【0039】
いくつかの実施形態では、形態Aは、約120℃および約252℃の温度で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す。いくつかの実施形態では、形態Aは、約120℃の温度で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す。いくつかの実施形態では、形態Aは、約252℃の温度で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す。いくつかの実施形態では、形態Aは、実質的に
図2に描写されるDSCサーモグラムを有する。いくつかの実施形態では、形態Aは、実質的に
図15に描写されるDSCサーモグラムを有する。いくつかの実施形態では、形態Aは、実質的に
図3に描写されるTGAサーモグラムを有する。いくつかの実施形態では、形態Aは、実質的に
図16に描写されるTGAサーモグラムを有する。
【0040】
化合物1の形態Aを調製するためのプロセスであって、溶媒中で化合物1を再結晶化することを含む、プロセスも本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、溶媒は、DMSOを含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、DMSOである。いくつかの実施形態では、DMSOは、実質的に水を含まない。いくつかの実施形態では、再結晶化は、溶媒中の化合物1を高温に加熱して、化合物1の溶液を形成することを含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、加熱された溶液に化合物1の形態Aシード(seed)をシーディングし、シードされた溶液を形成することをさらに含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、シードされた溶液をほぼ室温まで冷却すること(例えば、シードされた溶液から再結晶化すること)をさらに含む。いくつかの実施形態では、再結晶化は、再結晶化混合物(例えば、化合物1および溶媒の混合物)に貧溶媒を添加することをさらに含む。いくつかの実施形態では、貧溶媒は、実質的に水を含まない。いくつかの実施形態では、貧溶媒は、エタノールである。いくつかの実施形態では、貧溶媒は、アセトニトリルである。いくつかの実施形態では、再結晶化は、溶媒中の化合物1の溶液(例えば、シードされた溶液)を高温に一定時間加熱することを含む。いくつかの実施形態では、高温は、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、または95℃以上である。特定の実施形態では、期間は、1秒~96時間である。特定の実施形態では、期間は、1分~96時間である。特定の実施形態では、期間は、2分~96時間である。特定の実施形態では、期間は、5分~96時間である。特定の実施形態では、期間は、10分~96時間である。特定の実施形態では、期間は、24時間~96時間である。特定の実施形態では、期間は、48時間~96時間である。いくつかの実施形態では、期間は、24時間超である。いくつかの実施形態では、期間は、48時間超である。いくつかの実施形態では、期間は、72時間超である。いくつかの実施形態では、期間は、約72時間である。
【0041】
いくつかの実施形態では、再結晶化は、溶媒中で化合物1を加熱して化合物1の溶液を形成し、続いて溶液を冷却することを含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、実質的に水を含まない。いくつかの実施形態では、溶媒は、実質的に水を含まないDMSOを含む。いくつかの実施形態では、化合物1の溶液を形成するために使用される化合物1は、実質的に水を含まない。いくつかの実施形態では、加熱は、(大気圧に対して)増加した圧力下で行われる。
【0042】
いくつかの実施形態では、形態Aは、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の結晶純度で単離することができる。いくつかの実施形態では、形態Aは、約99%超の結晶純度で単離することができる。
【0043】
化合物1の形態B
後述の実施例で記載される、形態Bと称される結晶性である化合物1の固体形態が本明細書で提供される。形態Bを特徴付けるデータは、水和した結晶形態と一致する。いくつかの実施形態では、形態Bは一水和物である。
【0044】
いくつかの実施形態では、形態Bは、約8.5、約15.1、約23.5、および約25.5度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Bは、約8.5、約15.1、約23.5、および約25.5度2θから選択される少なくとも2つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Bは、約8.5、約15.1、約23.5、および約25.5度2θから選択される少なくとも3つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Bは、約8.5度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Bは、約15.1度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Bは、約23.5度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Bは、約25.5度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、形態Bは、約8.5、約15.1、約16.5、約21.5、約23.5、約24.6、および約25.5度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Bは、約8.5、約15.1、約16.5、約21.5、約23.5、約24.6、および約25.5度2θから選択される少なくとも2つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Bは、約8.5、約15.1、約16.5、約21.5、約23.5、約24.6、および約25.5度2θから選択される少なくとも3つの特徴的なXRPDピークを有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、形態Bは、約8.5、約15.1、約16.1、約16.5、約17.0、約18.6、約21.3、約21.5、約23.5、約24.6、約25.2、および約25.5度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Bは、約8.5、約15.1、約16.1、約16.5、約17.0、約18.6、約21.3、約21.5、約23.5、約24.6、約25.2、および約25.5度2θから選択される少なくとも2つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Bは、約8.5、約15.1、約16.1、約16.5、約17.0、約18.6、約21.3、約21.5、約23.5、約24.6、約25.2、および約25.5度2θから選択される少なくとも3つの特徴的なXRPDピークを有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、形態Bは、実質的に
図4に示される特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、形態Bは、約246℃の温度で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す。いくつかの実施形態では、形態Bは、実質的に
図5に描写されるDSCサーモグラムを有する。いくつかの実施形態では、形態Bは、実質的に
図6に描写されるTGAサーモグラムを有する。いくつかの実施形態では、形態Bは、実質的に
図7に描写されるDVS等温線プロットを有する。
【0049】
いくつかの実施形態では、形態Bは、約8.5、約15.1、約23.5、および約25.5度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する。形態Bは、約246℃の温度で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す。
【0050】
化合物1の形態Bを調製するためのプロセスであって、溶媒中で化合物1を再結晶化することを含む、プロセスも本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、溶媒は、水を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、酢酸を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、アセトニトリルを含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、DMSOを含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、水および酢酸を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、アセトニトリルおよび酢酸を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、DMSOおよび水を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、水および酢酸の混合物である。いくつかの実施形態では、溶媒は、酢酸およびアセトニトリルの混合物である。いくつかの実施形態では、溶媒は、DMSOおよび水の混合物である。
【0051】
いくつかの実施形態では、再結晶化は、a)第1の溶媒中の化合物1の混合物を高温に加熱して、第1の溶液を形成することと、b)高温で第1の溶液に第2の溶媒を添加して、第2の溶液を形成することと、c)第2の溶液を低温に冷却することと、を含む。いくつかの実施形態では、高温は、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、または75℃以上である。いくつかの実施形態では、低温は、周囲温度である。いくつかの実施形態では、低温は、約25℃である。いくつかの実施形態では、第1の溶媒は、DMSOである。いくつかの実施形態では、第2の溶媒は、水である。いくつかの実施形態では、第2の溶媒は、アセトニトリルである。
【0052】
いくつかの実施形態では、再結晶化は、a)第1の溶媒中の化合物1の溶液を高温に加熱することと、b)第1の期間にわたって高温で第2の溶媒を添加することと、c)第2の期間にわたって低温に冷却することと、を含む。いくつかの実施形態では、高温は、55℃以上、60℃以上、65℃以上、70℃以上、または75℃以上である。特定の実施形態では、第1の期間は、1時間~5時間である。いくつかの実施形態では、第1の期間は、約2時間である。いくつかの実施形態では、低温は、周囲温度である。いくつかの実施形態では、低温は、約25℃である。いくつかの実施形態では、第2の期間は、6時間~18時間である。いくつかの実施形態では、第2の期間は、約12時間である。いくつかの実施形態では、第1の溶媒は、酢酸である。いくつかの実施形態では、第1の溶媒は、DMSOである。いくつかの実施形態では、第2の溶媒は、水である。いくつかの実施形態では、第2の溶媒は、アセトニトリルである。
【0053】
いくつかの実施形態では、形態Bは、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の結晶純度で単離することができる。いくつかの実施形態では、形態Bは、約99%超の結晶純度で単離することができる。
【0054】
化合物1の形態C
後述の実施例で記載される、形態Cと称される結晶性の化合物1の固体形態が本明細書で提供される。形態Cを特徴付けるデータは、無水の結晶形態と一致する。
【0055】
いくつかの実施形態では、形態Cは、約7.4、約22.2、約25.0、約25.4、および約28.2度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Cは、約7.4、約22.2、約25.0、約25.4、および約28.2度2θから選択される少なくとも2つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Cは、約7.4、約22.2、約25.0、約25.4、および約28.2度2θから選択される少なくとも3つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Cは、約7.4度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Cは、約22.2度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Cは、約25.0度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Cは、約25.4度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Cは、約28.2度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。
【0056】
いくつかの実施形態では、形態Cは、約7.4、約11.0、約22.2、約25.0、約25.4、約28.2、および約29.8度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Cは、約7.4、約11.0、約22.2、約25.0、約25.4、約28.2、および約29.8度2θから選択される少なくとも2つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Cは、約7.4、約11.0、約22.2、約25.0、約25.4、約28.2、および約29.8度2θから選択される少なくとも3つの特徴的なXRPDピークを有する。
【0057】
いくつかの実施形態では、形態Cは、約7.4、約11.0、約15.6、約16.5、約17.3、約18.5、約22.2、約25.0、約25.4、約28.2、および約29.8度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Cは、約7.4、約11.0、約15.6、約16.5、約17.3、約18.5、約22.2、約25.0、約25.4、約28.2、および約29.8度2θから選択される少なくとも2つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Cは、約7.4、約11.0、約15.6、約16.5、約17.3、約18.5、約22.2、約25.0、約25.4、約28.2、および約29.8度2θから選択される少なくとも3つの特徴的なXRPDピークを有する。
【0058】
いくつかの実施形態では、形態Cは、実質的に
図8に示される特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する。
【0059】
いくつかの実施形態では、形態Cは、約242℃の温度で発熱ピークを有し、約253℃の温度で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す。いくつかの実施形態では、形態Cは、約242℃の温度で発熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す。いくつかの実施形態では、形態Cは、約253℃の温度で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す。いくつかの実施形態では、形態Cは、実質的に
図9に描写されるDSCサーモグラムを有する。いくつかの実施形態では、形態Cは、実質的に
図10に描写されるTGAサーモグラムを有する。
【0060】
いくつかの実施形態では、形態Cは、約7.4、約22.2、約25.0、約25.4、および約28.2度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する。形態Cは、約246℃の温度で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す。いくつかの実施形態では、形態Cは、約7.4、約22.2、約25.0、約25.4、および約28.2度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する。形態Cは、約242℃の温度で発熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す。
【0061】
化合物1の形態Cを調製するためのプロセスであって、溶媒中で化合物1を再結晶化することを含む、プロセスも本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、溶媒は、水を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、DMSOを含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、DMSOおよび水を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、DMSOである。いくつかの実施形態では、溶媒は、DMSOおよび水の混合物である。
【0062】
いくつかの実施形態では、再結晶化は、a)第1の溶媒中の化合物1の混合物を高温に加熱して、第1の溶液を形成することと、b)第2の溶媒を第1の溶液に添加して、第2の溶液を形成することと、c)第2の溶液を低温に冷却することと、を含む。いくつかの実施形態では、第1の溶媒は、DMSOである。いくつかの実施形態では、第2の溶媒は、水である。いくつかの実施形態では、高温は、65℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上、または85℃以上である。いくつかの実施形態では、低温は、周囲温度である。いくつかの実施形態では、低温は、約25℃である。
【0063】
いくつかの実施形態では、再結晶化は、a)第1の溶媒中の化合物1の溶液を高温に加熱することと、b)溶液に第2の溶媒を添加することと、c)一定期間にわたって低温に冷却することと、を含む。いくつかの実施形態では、第1の溶媒は、DMSOである。いくつかの実施形態では、第2の溶媒は、水である。いくつかの実施形態では、高温は、65℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上、または85℃以上である。特定の実施形態では、期間は、2時間~12時間である。いくつかの実施形態では、第1の期間は、約8時間である。いくつかの実施形態では、第1の期間は、約6時間超である。いくつかの実施形態では、低温は、周囲温度である。いくつかの実施形態では、低温は、約25℃である。
【0064】
いくつかの実施形態では、形態Cは、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の結晶純度で単離することができる。いくつかの実施形態では、形態Cは、約99%超の結晶純度で単離することができる。
【0065】
化合物1の形態D
後述の実施例で記載される、形態Dと称される結晶性の化合物1の固体形態が本明細書で提供される。形態Dを特徴付けるデータは、ジメチルアセトアミド溶媒和結晶形態と一致する。
【0066】
いくつかの実施形態では、形態Dは、実質的に
図11に示される特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する。
【0067】
化合物1の形態Dを調製するためのプロセスであって、溶媒中で化合物1を再結晶化することを含む、プロセスも本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、溶媒は、ジメチルアセトアミドを含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、ジメチルアセトアミドである。いくつかの実施形態では、再結晶化は、a)ジメチルアセトアミド中の化合物1の溶液を高温に加熱することと、b)低温に冷却することと、を含む。いくつかの実施形態では、高温は、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、または90℃以上である。いくつかの実施形態では、低温は、周囲温度である。いくつかの実施形態では、低温は、約25℃である。
【0068】
いくつかの実施形態では、形態Dは、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の結晶純度で単離することができる。いくつかの実施形態では、形態Dは、約99%超の結晶純度で単離することができる。
【0069】
化合物1の形態E
後述の実施例で記載される、形態Eと称される結晶性である化合物1の固体形態が本明細書で提供される。形態Eを特徴付けるデータは、無水の結晶形態と一致する。
【0070】
いくつかの実施形態では、形態Eは、約8.7、約15.3、約16.2、約23.2、および約25.5度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Eは、約8.7、約15.3、約16.2、約23.2、および約25.5度2θから選択される少なくとも2つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Eは、約8.7、約15.3、約16.2、約23.2、および約25.5度2θから選択される少なくとも3つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Eは、約8.7度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Eは、約15.3度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Eは、約16.2度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Eは、約23.2度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Eは、約25.5度2θにおいて特徴的なXRPDピークを有する。
【0071】
いくつかの実施形態では、形態Eは、約8.7、約15.3、約16.2、約18.3、約23.2、約25.5、および約28.2度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Eは、約8.7、約15.3、約16.2、約18.3、約23.2、約25.5、および約28.2度2θから選択される少なくとも2つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Eは、約8.7、約15.3、約16.2、約18.3、約23.2、約25.5、および約28.2度2θから選択される少なくとも3つの特徴的なXRPDピークを有する。
【0072】
いくつかの実施形態では、形態Eは、約8.7、約10.8、約15.3、約16.2、約16.9、約18.3、約21.9、約23.2、約25.5、および約28.2度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Eは、約8.7、約10.8、約15.3、約16.2、約16.9、約18.3、約21.9、約23.2、約25.5、および約28.2度2θから選択される少なくとも2つの特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Eは、約8.7、約10.8、約15.3、約16.2、約16.9、約18.3、約21.9、約23.2、約25.5、および約28.2度2θから選択される少なくとも3つの特徴的なXRPDピークを有する。
【0073】
いくつかの実施形態では、形態Eは、実質的に
図12に示される特徴的なピークを有するXRPDパターンを有する。
【0074】
化合物1の形態Eを調製するためのプロセスであって、化合物1の形態Bを高温に加熱することを含む、プロセスも本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、高温は、100℃以上、125℃以上、145℃以上、150℃以上、または155℃以上である。いくつかの実施形態では、高温は約150℃である。
【0075】
いくつかの実施形態では、形態Eは、少なくとも約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の結晶純度で単離することができる。いくつかの実施形態では、形態Eは、約99%超の結晶純度で単離することができる。
【0076】
使用法
化合物1およびその固体形態は、SIP受容体に対する親和性を示す。特に、本発明の化合物は、S1P1および/またはS1P3受容体よりもS1P5受容体に対して選択的な親和性を示す。
【0077】
化合物1およびその固体形態は、SIP受容体、特に、S1P5受容体のモジュレーターである。より具体的には、本発明の化合物および固体形態は、S1P5受容体アゴニストである。本発明の化合物および固体形態は、S1P受容体(例えば、S1P5)に関連する疾患、または任意のSIP受容体を介した内因性SIPシグナル伝達系の調節が関与する疾患を治療、緩和、および予防するのに有用である。特に、本発明の化合物および固形形態は、神経変性障害、特に、限定するものではないが認知障害(特に加齢に関連する認知機能低下)などのCNS(中枢神経系)障害、ならびに関連する状態、例えば、アルツハイマー病、(血管性)認知症、ニーマン・ピック病、および統合失調症、強迫性行動、大鬱病、自閉症、多発性硬化症、および疼痛における認知機能障害を治療、緩和、または予防するために使用し得る。好ましくは、本発明の化合物および固体形態は、認知障害(特に加齢に伴う認知機能低下)および関連する状態を治療、緩和、または予防するために使用され得る。
【0078】
本明細書で使用する場合、「接触する」という用語は、示された部分が相互作用するのに十分に物理的に近接するように、インビトロ系またはインビボ系で上記部分を引き合わせることを指す。
【0079】
交換可能に使用される「個人」または「患者」という用語は、ヒト、マウス、ラット、他の齧歯動物、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、および霊長類などの哺乳動物を含む任意の動物を指す。いくつかの実施形態では、個人または患者は、ヒトである。
【0080】
「治療有効量」という句は、研究者、獣医、医師、または他の臨床医によって求められる、組織、システム、動物、個人、またはヒトにおいて生物学的または医学的応答を誘発する活性化合物または薬剤の量を指す。
【0081】
本明細書で使用する場合、「治療する」または「治療」という用語は、(1)疾患を阻害すること、例えば、疾患、状態、または障害の病状または症候学を経験しているまたは示している個人の疾患、状態、または障害を阻害すること(すなわち、病状および/または症候のさらなる進行を阻止すること)、(2)疾患を改善すること、例えば、疾患、状態、または障害の病状または症候を経験しているまたは示している個人の疾患、状態、または障害を改善すること(すなわち、病状および/または症候を逆転させること)、例えば、疾患の重症度を低減させること、のうちの1つ以上を指す。
【0082】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、本明細書で言及される疾患のいずれかを発症するリスクを予防または低減するのに有用である。例えば、疾患、状態、または障害の素因を有し得るが、疾患の病状または症候をまだ経験していないまたは示していない個人の疾患、状態、または障害を発症するリスクを予防または低減する。
【0083】
本明細書で使用する場合、「細胞」という用語は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボである細胞を指すことを意味する。いくつかの実施形態では、エクスビボ細胞は、哺乳動物などの生物から切除された組織試料の一部であり得る。いくつかの実施形態では、インビトロ細胞は、細胞培養における細胞であり得る。いくつかの実施形態では、インビボ細胞は、哺乳動物などの生物中で生きている細胞である。
【0084】
「薬学的に許容される」という句は、本明細書では、健全な医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに好適であり、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または他の問題もしくは合併症なしに合理的な利益/リスク比に見合った、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指すために使用される。
【0085】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体または賦形剤」という句は、液体または固体の充填剤、希釈剤、溶媒、またはカプセル化材料などの薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを指す。賦形剤または担体は、一般に安全で、毒性がなく、生物学的またはその他で望ましくないものではなく、獣医およびヒト医薬使用に許容される賦形剤または担体を含む。一実施形態では、各成分は、本明細書で定義されるように「薬学的に許容される」。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st ed.;Lippincott Williams & Wilkins:Philadelphia,Pa.,2005、Handbook of Pharmaceutical Excipients,6th ed.;Rowe et al.,Eds.;The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2009、Handbook of Pharmaceutical Additives,3rd ed.;Ash and Ash Eds.;Gower Publishing Company:2007、Pharmaceutical Preformulation and Formulation,2nd ed.;Gibson Ed.;CRC Press LLC:Boca Raton,Fla.,2009を参照のこと。
【0086】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で記載される本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態で組み合わせて提供され得る(一方、実施形態は、複数従属形式で書かれているかのように組み合わされることが意図される)。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載される本発明の様々な特徴はまた、別個に、または任意の好適なサブコンビネーションで提供することができる。
【0087】
併用療法
S1P受容体関連の疾患、障害、もしくは状態、または本明細書に記載の疾患もしくは状態の治療のために、1つ以上の追加の薬剤または治療方法を化合物1またはその固体形態と組み合わせて使用することができる。薬剤は、単一の剤形で本化合物と組み合わせることができるか、または薬剤は、別個の剤形として同時にもしくは逐次的に投与することができる。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、抗アルツハイマー病薬である。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、抗血管性認知症薬である。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジル、ガランタミン、およびリバスチグミン)、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体アンタゴニスト、メマンチン、ニモジピン、ヒデルギン、ニセルゴリン、CDP-コリン、または葉酸である。
【0088】
いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、抗精神病薬である。いくつかの実施形態では、追加の薬剤は、クロルプロマジン、フルフェナジン、ハロペリドール、ペルフェナジン、アリピプラゾール、アセナピン、ブレキシプラゾール、カリプラジン、クロザピン、ロペリドン、ルラシドン、オランザピン、パリペリドン、クエチアピン、リスペリドン、またはジプラシドンである。
【0089】
製剤および剤形
医薬品として使用される場合、本開示の化合物および固体形態は、医薬組成物の形態で投与することができる。したがって、本開示は、本明細書に記載の化合物もしくは固体形態、特許請求の範囲のいずれかに記載され、かつ、本明細書に記載された化合物もしくは固体形態、またはその実施形態のうちのいずれかと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体とを含む、組成物を提供する。これらの組成物は、製薬分野で周知の様式で調製することができ、局所的または全身的治療が示されるかどうかに応じて、および治療される領域に応じて、様々な経路によって投与することができる。投与は、局所(経皮、表皮、眼、ならびに鼻腔内、膣内、および直腸を含む粘膜への送達を含む)、肺(例えば、噴霧器によることを含む、散剤またはエアロゾルの吸入または吹送による;気管内または鼻腔内)、経口、または非経口であり得る。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内、または注射もしくは注入、または頭蓋内、例えば、髄腔内もしくは脳室内投与が含まれる。非経口投与は、単回ボーラス投与の形態で行うことができ、または、例えば、連続灌流ポンプによるものであり得る。局所投与のための医薬組成物および製剤には、経皮パッチ剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、滴剤、坐剤、スプレー剤、液体、および散剤が含まれ得る。従来の医薬担体、水性、粉末、または油性の基剤、増粘剤などが必要とされ得、または望ましいものであり得る。
【0090】
本発明はまた、活性成分として本開示の化合物または固体形態またはその薬学的に許容される塩を1つ以上の薬学的に許容される担体と組み合わせて含む、医薬組成物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、局所投与に好適である。本発明の組成物を製造する際に、活性成分は、典型的には、賦形剤と混合されるか、賦形剤によって希釈されるか、または例えばカプセル剤、サシェ剤、紙、もしくは他の容器の形態でそのような担体内に封入される。賦形剤が希釈剤として機能する場合、該賦形剤は、活性成分のビヒクル、担体、または媒体として機能する固体、半固体、または液体の材料であり得る。したがって、組成物は、錠剤、丸剤、散剤、トローチ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、乳剤、溶液、シロップ剤、エアロゾル剤(固体または液体媒体として)、例えば最大10重量%の活性化合物を含む軟膏剤、軟ゼラチンおよび硬ゼラチンカプセル剤、座剤、滅菌注射剤溶液、ならびに滅菌パッケージング粉末の形態であり得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、組成物は、本明細書に記載の少なくとも1つの化合物または固体形態またはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、徐放性組成物である。
【0092】
組成物は単位剤形で製剤化することができ、各剤形は約5~約1,000mg(1g)を含む。「単位剤形」という用語は、ヒト対象および他の哺乳動物の単位投与量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、好適な医薬賦形剤と関連して、所望の治療効果を生ずるように計算された所定量の活性物質を含む。
【0093】
活性化合物は、広い投与量範囲にわたって有効であり得、一般に、治療上有効な量で投与される。しかしながら、実際に投与される化合物または固体の量は、通常、治療される状態、選択された投与経路、投与される実際の化合物または固体、個々の患者の年齢、体重、および反応、患者の症状の重症度などを含む関連する状況に従って、医師によって決定されることが理解されよう。
【0094】
本発明の化合物または固体形態の治療投与量は、例えば、治療を行う特定の用途、化合物または固体形態の投与様式、患者の健康および状態、ならびに処方する医師の判断に応じて変動し得る。医薬組成物中の本発明の化合物または固体形態の割合または濃度は、投与量、化学的特性(例えば、疎水性)、および投与経路を含む多くの要因に応じて変動し得る。投与量は、疾患または障害の進行の種類および程度、特定の患者の健康状態全体、選択された化合物または固体形態の相対的な生物学的有効性、賦形剤の製剤化、ならびにそのような投与経路に依存する可能性が高い。有効な用量は、インビトロまたは動物モデル試験システムから得られた用量反応曲線から外挿することができる。
【0095】
本発明の化合物、固体形態、および組成物を経口または注射により投与するために組み込むことができる液体形態には、水溶液、好適に風味付けされたシロップ、水性または油性懸濁液、および綿実油、ゴマ油、ココナッツ油、またはピーナッツ油などの食用油を含む風味付けされた乳濁液、ならびにエリキシルおよび同様のビヒクルが含まれる。
【0096】
吸入または気送用の組成物は、薬学的に許容される水性溶媒もしくは有機溶媒、またはそれらの混合物中の溶液および懸濁液、ならびに散剤を含む。液体または固体組成物は、上記の好適な薬学的に許容される賦形剤を含み得る。いくつかの実施形態では、組成物は、局所的または全身的効果のために経口または鼻呼吸経路によって投与される。組成物は、不活性ガスを使用することによって噴霧することができる。噴霧される溶液は、噴霧装置から直接呼吸され得、または噴霧装置をフェイスマスク、テント、もしくは断続的な陽圧呼吸機器に取り付け得る。溶液、懸濁液、または粉末組成物は、好適な様式で製剤を送達するデバイスから経口または経鼻投与することができる。
【0097】
局所製剤は、1つ以上の従来の担体を含むことができる。いくつかの実施形態では、軟膏剤は、水および1つ以上の疎水性担体を含むことができる。
【0098】
明確にするために、別個の実施形態の文脈で記載される本発明の特定の特徴はまた、単一の実施形態で組み合わせて提供され得る(一方、実施形態は、複数従属形式で書かれているかのように組み合わされることが意図される)。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈で記載される本発明の様々な特徴はまた、別個に、または任意の好適なサブコンビネーションで提供することができる。
【実施例】
【0099】
実施例1A.実験方法
以下の実験方法を実施例1~17で使用した。
【0100】
1.1 XRPD
以下の実施例において、XRPD回折図は、BrukerD8回折計またはPANalytical Empyrean回折計のいずれかで収集した。条件は以下の通りである。
【0101】
Bruker AXSD8 Advance
XRPD回折図は、CuKα放射線(40kV、40mA)およびGeモノクロメーターを備えたθ-2θゴニオメーターを使用したBrukerD8回折計で収集した。入射ビームは、2.0mmの発散スリットを通過し、続いて0.2mmの散乱防止スリットおよびナイフエッジを通過する。回折ビームは、2.5°のSollerスリットを備えた8.0mmの受信スリットを通過し、続いてLynxeye検出器を通過する。データの収集および分析に使用したソフトウェアは、それぞれDiffrac Plus XRD CommanderおよびDiffrac Plus EVAであった。
【0102】
試料は、受け取ったままの粉末を使用して、平板検体として周囲条件下で実施した。研磨されたゼロバックグラウンド(510)シリコンウェーハ上で平らな表面に軽く押し付けるか、またはカットキャビティ(cut cavity)に詰め込むことにより、試料を調製した。試料を自身の平面で回転した。
【0103】
データ収集方法の詳細は以下の通りである。
●角度範囲:2~42°2θ
●ステップサイズ:0.05°2θ
●収集時間:0.5秒/ステップ(総収集時間:6.40分)
【0104】
PANalytical Empyrean
XRPD回折図は、PANalytical Empyrean回折計で、CuKα放射線(45kV、40mA)を使用して透過幾何配置で収集した。0.5°スリット、4mmマスク、および集束ミラーを備える0.04radのSollerスリットを入射ビームについて使用した。回折ビーム上に配置されたPIXcel3D検出器は、受信スリットおよび0.04radのSollerスリットを備えていた。データ収集に使用されたソフトウェアは、X’Pert Operator Interfaceを使用したX’Pert Data Collectorであった。Diffrac Plus EVAまたはHighScore Plusを使用して、データを分析および提示した。
【0105】
試料を、透過モードでの金属ウェルプレートまたはMillipore96ウェルプレートのいずれかで調製および分析した。X線透明フィルムを金属ウェルプレート上の金属シート間に使用し、粉末(約1~2mg)を受け取ったままで使用した。Milliporeプレートを使用して、少量の懸濁液をプレートに直接添加した後、軽度の真空下で濾過することによって懸濁液から固体を単離し、分析した。
【0106】
金属板でのスキャンモードはゴニオスキャン軸を使用し、Milliporeプレートでは2θスキャンを使用した。
【0107】
標準的なスクリーニングデータ収集方法の詳細は以下の通りである。
●角度範囲:2.5~32.0°2θ
●ステップサイズ:0.0130°2θ
●収集時間:12.75秒/ステップ(総収集時間2.07分)
【0108】
必要な場合、データ収集を伴う高解像度方法を使用した。
●角度範囲:2.5~42.0°2θ
●ステップサイズ:0.0130°2θ
●収集時間:36.72秒/ステップ(総収集時間8.32分)
【0109】
非周囲条件
XRPD回折図は、PANalytical Empyrean回折計で、CuKα照射(45kV、40mA)を使用して反射幾何配置で収集した。機器は、グラファイト/Kaptonウィンドウを備えたAnton Paar CHC plus+ステージを備えており、proUmid MHG32 Modular Humidity GeneratorまたはEdwards RV3ポンプを使用した低真空ポンプシステムと組み合わせた空冷を装備している。10mm固定入射ビームマスク、Niフィルター、0.04rad Sollerスリットを備えたプログラム可能な発散スリット(自動モード)を入射ビームについて使用した。回折ビーム上に配置されたPIXcel3D検出器は、プログラム可能な散乱防止スリット(自動モード)および0.04 radのSoller スリットを備えていた。
【0110】
データ収集に使用されたソフトウェアはX’Pert Data Collectorであり、Diffrac Plus EVAまたはHighscore Plusを使用してデータを分析および提示した。
【0111】
可変温度(VT-XRPD)実験では、試料を調製し、シリコンウエハーインサートを備えたAnton Paarクロームメッキ試料ホルダーで分析した。10℃/分の加熱/冷却速度を2分間の等温保持で使用した後、測定を開始した。測定パラメーターは、標準的なスクリーニングデータ収集法(上記で詳述)によるものである。以下の温度:25℃、150℃、および25℃で測定を行った。
【0112】
低真空実験では、試料を調製し、3×103Paの真空を適用してシリコンウエハーインサートを備えたAnton Paarクロームメッキ試料ホルダーで分析した。10℃/分の加熱/冷却速度を使用し、試料を40℃に加熱した。測定を1時間に1回、63時間行った。測定パラメーターは、標準的なスクリーニングデータ収集法(上記で詳述)によるものである。
【0113】
1.2 核磁気共鳴
1H NMRスペクトルは、オートサンプラーを備え、かつ、DRX400コンソールによって制御される、Bruker400MHz装置で収集した。特段明記しない限り、試料をDMSO-d6溶媒中で調製した。Topspinソフトウェア内のICON-NMR構成を使用し、標準的なBrukerロード実験(1H、13C{1H}、DEPT135)を使用して、自動実験値を取得した。ACD Spectrusプロセッサーを使用して、オフライン分析を行った。
【0114】
1.3 示差走査熱量測定(DSC)
TA Instruments Q2000
DSCデータは、50ポジションオートサンプラーを備えたTA Instruments Q2000で収集した。典型的には、ピンホール付きアルミニウムパン内の0.5~3mgの各試料を25℃~300℃まで10℃/分で加熱した。50ml/分の乾燥窒素のパージを試料全体にわたって維持した。
【0115】
機器制御ソフトウェアはAdvantage for Q SeriesおよびThermal Advantageであり、Universal AnalysisまたはTRIOSを使用してデータを分析した。
【0116】
TA Instruments Discovery DSC
DSCデータは、50ポジションオートサンプラーを備えたTA Instruments Discovery DSCで収集した。典型的には、ピンホール付きアルミニウムパン内の0.5~3mgの各試料を25℃~300℃まで10℃/分で加熱した。50ml/分の乾燥窒素のパージを試料全体にわたって維持した。
【0117】
機器制御ソフトウェアはTRIOSであり、TRIOSまたはUniversal Analysisを使用してデータを分析した。
【0118】
1.4 熱重量分析(TGA)
TA Instruments Q500
TGAデータは、16ポジションオートサンプラーを備えたTA Instruments Q500 TGAで収集した。典型的には、5~10mgの各試料を事前に秤量したアルミニウムDSCパンに充填し、周囲温度~350℃まで10℃/分で加熱した。60ml/分の窒素パージを試料全体にわたって維持した。
【0119】
機器制御ソフトウェアはAdvantage for Q SeriesおよびThermal Advantageであり、Universal AnalysisまたはTRIOSを使用してデータを分析した。
【0120】
TA Instruments Discovery TGA
TGAデータは、25ポジションのオートサンプラーを備えたTA Instruments Discovery TGAで収集した。典型的には、5~10mgの各試料を事前に秤量したアルミニウムDSCパンに充填し、周囲温度から350℃まで10℃/分で加熱した。25ml/分の窒素パージを試料全体にわたって維持した。
【0121】
機器制御ソフトウェアはTRIOSであり、TRIOSまたはUniversal Analysisを使用してデータを分析した。
【0122】
1.5 偏光顕微鏡
Leica LM/DM偏光顕微鏡
画像取得用のデジタルビデオカメラを備えたLeica LM/DM偏光顕微鏡で、試料を分析した。イマージョンオイルを使用してまたは使用せずに、少量の各試料をスライドガラス上に置き、スライドガラスで覆った。適切な倍率およびλ偽色フィルターと組み合わせた部分偏光を使用して、試料を見た。StudioCaptureまたはImage ProPlusソフトウェアを使用して、画像を取得した。
【0123】
Nikon LM/DM偏光顕微鏡
DSカメラ制御ユニットDS-L2に接続された画像取得用のデジタルビデオカメラを備えたNikon SMZ1500偏光顕微鏡で、試料を研究した。適切な倍率およびλ偽色フィルターと組み合わせた部分偏光を使用して、試料を見た
【0124】
1.6 重量分析蒸気吸着(GVS)
DVS Intrinsic Controlソフトウェアによって制御されるSSMS DVS Intrinsic水分吸着分析装置を使用して、吸着等温線を取得した。機器の制御により、試料温度を25℃に維持した。200ml/分の総流量で乾燥および湿潤窒素の流れを混合することにより、湿度を制御した。試料の近くに位置する校正されたRotronicプローブ(ダイナミックレンジ1.0~100%RH)により、相対湿度を測定した。RH%の関数としての試料の重量変化(質量緩和)を、微量天秤(精度±0.005mg)によって常にモニタリングした。
【0125】
典型的には、5~30mgの試料を、周囲条件下で秤量したメッシュステンレス鋼バスケットに入れた。40%RHおよび25℃(典型的な室内条件)で、試料を充填し、非充填にした。吸湿等温線は、以下に概説するように行った(1完全サイクル当たり2回のスキャン)。標準等温線は、0~90%RHの範囲で10%RH間隔で25℃で行った。典型的には、2つのサイクル(4スキャン)を行った。DVS Analysis Suiteを使用し、Microsoft Excel内でデータ分析を行った。
【表1】
【0126】
1.7 HPLCによる化学的純度の決定
ダイオードアレイ検出器を備えたAgilent HP1100シリーズシステムで、ChemStationソフトウェアを使用して、純度分析を行った。完全な方法の詳細を以下に示す。
【表2】
【0127】
1.8 カールフィッシャー滴定(KF)による水分決定
各試料の水分含有量は、Metrohm874 Oven Sample Processorで、150℃で、851 Titrano Coulometerを用い、Hydranal Coulomat AGオーブン試薬および窒素パージを使用して測定した。秤量した固体試料を密封した試料バイアルに入れた。1滴定当たり約10mgの試料を使用し、2回の測定を行った。特段明記しない限り、これらの結果の平均が示されている。Tiamoソフトウェアを使用して、データの収集および分析を行った。
【0128】
1.9 イオンクロマトグラフィー(IC)
データは、IC MagicNetソフトウェアを使用して、858Professionalオートサンプラーおよび800Dosino投与単位モニターを備えたMetrohm 930 Compact IC Flexで収集した。正確に秤量した試料を、好適な溶媒中のストック溶液として調製した。分析されるイオンの既知濃度の標準溶液と比較することによって定量を達成した。分析は重複して行われ、特段明記していない限り、値の平均が示される。
【表3】
【表4】
【0129】
1.10 単結晶X線回折(SCXRD)
Rigaku Oxford Diffraction Supernova Dual Source、Cu at Zero、Oxford Cryosystems Cobra冷却装置を備えたAtlas CCD回折計で、データを収集した。実験表に記載されるCuKαまたはMoKα放射線を使用して、データを収集した。Bruker AXS SHELXTL suiteまたはOLEX2結晶学ソフトウェアを使用して、構造を解像および精密化した。特段明記していない限り、炭素に結合した水素原子は、幾何学的に配置され、ライディング(riding)等方性変位パラメーターを使用して精密化することができる。ヘテロ原子に結合した水素原子は、差分フーリエ合成に配置され、等方性変位パラメーターを使用して自由に精密化することができた。結晶構造の参照回折図をMercury(1)を使用して生成した。
【0130】
1.11 Crystal16
Crystal16結晶化システム(Technobis、NL)を使用して、温度の関数として材料の溶解度および準安定領域を決定した。既知量の固体を既知量の冷却溶媒(0.5~1.5ml)に添加し、磁気バーを使用して350rpmで攪拌することにより、異なる全濃度のAPIのスラリーを調製した。0.5℃/分で20℃~90℃までの加熱および冷却サイクルにより、飽和温度を測定した。
【0131】
温度を上げると、固体は完全に溶解し、懸濁液は透明な溶液になり、光透過は最大値に達した。この温度を、飽和温度と一致すると想定される透明点として割り当てた。次いで、溶液を0.5℃/分の速度で冷却することにより、粒子が最初に形成された温度を光透過の低下によって検出した。これを曇り点として割り当てた。この点をファントホッフの式によって適合させ、曇り点と透明的との差がシステムの準安定領域幅(MSZW)であると定義した。機器制御ソフトウェアはCrystallization Systemsであり、Crystal ClearおよびMicrosoft Excelを使用してデータを分析した。
【0132】
実施例1B.追加の機器の方法
以下の機器の方法を実施例18~20に記載された実験に使用した。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0133】
実施例2:化合物1の合成
実施例2に記載する反応は、ガラスまたはガラスライニング鋼装置で行った。生成物を単離し、攪拌フィルター/乾燥機(Hastelloy)で乾燥させた。さらに、任意の固定プレートフィルター(例えば、NutscheまたはAurora)または遠心分離機で分離することができ、トレイドライヤーで乾燥させることができた。
【0134】
ステップ1.tert-ブチル2-(4-((4-クロロベンジル)オキシ)フェニル)-6,7-ジヒドロオキサゾロ[4,5-c]ピリジン-5(4H)-カルボキシレート
アセトニトリル(15.6kg)、続いてtert-ブチル2-(4-ヒドロキシフェニル)-6,7-ジヒドロオキサゾロ[4,5-c]ピリジン-5(4H)-カルボキシレート(1.0kg、限界試薬;米国特許第8,796,262号の第44欄を参照のこと)、p-クロロベンジルブロミド(740g、1.14当量)、および粉末化炭酸カリウム(880g、1.06mol当量)を不活性化容器に充填した。混合物を50±5℃に加熱し、HPLCによって判断した際に出発物質が消費されるまでその温度で攪拌した。混合物を25±5℃に冷却し、この温度時に水(USP精製、40kg)を添加した。1時間攪拌した後、生成物を濾過し、水(USP精製、4kg)で洗浄した。
【0135】
湿った生成物を水(USP精製、15kg)中で周囲温度で少なくとも1時間再スラリー化し、濾過し、水(USP精製、5kg)で洗浄した。生成物を、KFが1%以下になるまで、26in-Hg以上で50±5℃で少なくとも24時間乾燥した。生成物の収量は約1.18kg(85%)であった。
【0136】
ステップ2.2-(4-((4-クロロベンジル)オキシ)フェニル)-4,5,6,7-テトラヒドロオキサゾロ[4,5-c]ピリジン
tert-ブチル2-(4-((4-クロロベンジル)オキシ)フェニル)-6,7-ジヒドロオキサゾロ[4,5-c]ピリジン-5(4H)-カルボキシレート(1.0kg、限定試薬)、続いて塩化メチレン(13.3kg)およびトリフルオロ酢酸(2.64kg、約10当量)を不活性化された容器に充填した。混合物を、25±5℃で、HPLCによって判断した際に出発物質が消費されるまで撹拌し、それは少なくとも16時間であった。反応物を真空下で最小の撹拌可能体積(MSV)まで濃縮し、その後、酢酸エチル(4kg)を添加した。蒸留をMSVまで続け、再び酢酸エチル(4kg)を添加した。反応物を最後にもう一度MSVまで濃縮し、その後、酢酸エチル(7.2kg)を再び添加した。懸濁液が形成された。15分間撹拌した後、水層のpHが7.0~8.5になるまで、水(USP精製、10.45kg)中の重炭酸ナトリウム(1.03kg)を添加した。懸濁液をさらに15分間撹拌し、その後、pHが7.0~8.5であることを確認した。生成物を濾過し、水(USP精製、4.0kg)で洗浄した。
【0137】
湿った生成物を水(USP精製、10kg)中で周囲温度で少なくとも1時間再スラリー化し、濾過し、水(USP精製、10kg)で洗浄した。生成物を、KFが1%以下になるまで、26in-Hg以上で50±5℃で少なくとも24時間乾燥した。収量は約0.696kg(90%)であった。
【0138】
ステップ3.(1s,3s)-3-(2-(4-((4-クロロベンジル)オキシ)フェニル)-6,7-ジヒドロオキサゾロ[4,5-c]ピリジン-5(4H)-イル)シクロブタン-1-カルボン酸
2-(4-((4-クロロベンジル)オキシ)フェニル)-4,5,6,7-テトラヒドロオキサゾロ[4,5-c]ピリジン(1.0kg、限定試薬)、続いてメタノール(12.7kg)および3-オキソ-シクロブタン-1-カルボン酸(0.413kg、1.24当量)を不活性化容器に添加した。得られた混合物を25±5℃で最低2時間撹拌した。次いで、メタノール(2.50kg)中のシアノ水素化ホウ素ナトリウム(0.399kg、2.17mol当量)の溶液を、温度を35℃未満に維持する速度で添加した。添加容器をメタノール(0.74kg)でリンスし、リンスを反応物に添加した。HPLCによって判断した際に、IPTが出発物質およびイミンの濃度の合計が消費されたことを示すまで、加熱(20~35℃)せずに撹拌を続けた。沈殿した生成物を濾過し、メタノール(4.75kg)および水(USP精製、6.03kg)で洗浄した。生成物を、KFが1%以下になるまで、26in-Hg以上で50±5℃で少なくとも24時間乾燥した。粗生成物の収量は約1.09kg(85%)であった。
【0139】
ステップ4.DMSOからの再結晶
ステップ3の粗生成物(1.0kg)、続いてDMSO(26.8kg)を不活性化容器に充填した。混合物を70±5℃に加熱し、その時点で溶液が得られた。混合物を可能な限り20℃近くに冷却した。結晶化した生成物を濾過し、メタノールの3つの部分(各3.2kg)で洗浄した。生成物を50±5℃、26in-Hg以上で乾燥させた。
【0140】
ステップ5.酢酸/水からの再結晶
ステップ4の生成物(1.0kg)、続いて酢酸(6.29kg)を不活性化した容器に充填した。混合物を70~75℃に加熱し、その時点で溶液が得られた。溶液を0.2ミクロンのカートリッジフィルターを通して濾過し、必要に応じて、濾液の温度を70~75℃に再調整した。水(USP精製、0.85kg)、続いて2重量%の化合物1シードを添加した。混合物を70~75℃で約30分間撹拌した。次いで、温度を70~75℃に維持しながら、追加の水(USP精製、0.85kg)を約2時間にわたって添加した。次いで、バッチを約0.6℃/分で20±3℃に冷却し、そこで少なくとも12時間撹拌した。生成物を濾過し、水(USP精製、2.0kg)で洗浄し、残存酢酸のレベルが5000ppm未満になるまで、窒素パージを使用して35±5℃で乾燥させた。次いで、固体生成物を再平衡化して、実施例13で特徴付けされた一水和物の化合物1の形態Bを形成した。
【0141】
あるいは、ステップ3の粗生成物を酢酸/水からの再結晶化に直接使用して、化合物1の形態Bを提供することができる。
【0142】
実施例3:多形の初期調製および分析
化合物1(100mg)を4mlバイアルに分注した。これらにDMSO(25体積)を添加し、500rpmで磁気攪拌しながら懸濁液を80℃に加熱し、透明な溶液を得た。1つの試料にH2O(10体積)を添加し(試料01)、白色沈殿物の形成が観察された。第2の試料には、貧溶媒は添加しなかった(試料02)。試料を0.1℃/分で25℃に冷却し、次いで25℃で8時間等温に保持した。固体を濾過により単離し、陽圧下で乾燥させた後、40℃の真空オーブン中で一晩乾燥させた。
【0143】
別に、化合物1(100mg)を4mlバイアルに分注した。これらに酢酸(10体積)を添加し、500rpmで磁気攪拌しながら懸濁液を80℃に加熱し、透明な懸濁液を得た。1つの試料にH2O(10体積)を添加し(試料03)、白色沈殿物の形成が観察された。試料を0.1℃/分で25℃に冷却し、次いで25℃で8時間等温に保持した。第2の試料(試料04)は透明であることが観察された。これに、濁りが観察されるまでアセトニトリル(30体積)を滴下し、その後、この試料をさらに1時間撹拌した後、遠心分離で単離した。試料03を濾過により単離し、吸引下で乾燥した。両方の試料を40℃の真空オーブン中で一晩乾燥させた。
【0144】
明確にするために、各試料が享受した異なる実験パラメーターを表1に詳述する。
【表13】
【0145】
各実験では、白色固体が成功裏に単離され、固体の分析を表2に詳述する。形態Aが成功裏に単離された実験はなく、代わりに、DMSOを溶媒として使用した実験(試料01および試料02)では、形態Cが観察された。形態Cは化合物1と一致する1H-NMRスペクトルを有し、275℃で熱分解を開始する前のTGAサーモグラムでは質量損失はなかった。材料のDSC分析は、242.4℃で開始した小さな発熱が進行して、252.8℃でシャープな吸熱があったことを示した。
【0146】
酢酸を溶媒として使用した各実験では、形態Bに対応するXRPDパターンを有する材料を単離した。材料の
1H-NMR分析は、供給された材料の構造と一致し、0.04モル当量の酢酸に対応する追加のピークがあった。材料のTGAサーモグラムは、40~140℃で3.5%の質量損失を示し、0.88モル当量の水と一致した。対応するDSCサーモグラムには、244.8℃で開始するシャープな吸熱の前に、40~140℃の広い吸熱が含んでいた。
【表14】
【0147】
纏めると、これらのデータは、形態Bの調製および形態Cの単離が成功したことを示している。重ねると、形態Cおよび形態Bの材料のXRPDパターンは、実施例2から得られた固体生成物のXRPDと一致する。
【0148】
実施例4.化合物1の溶解度
化合物1の溶解度を調べた。そのために、Crystal16を使用して準安定領域幅曲線を得た。化合物の溶解度が非常に高いため、ニートの酢酸を使用した実験は行わなかった。
【0149】
DMACおよびDMSO(1ml)中の化合物1(様々な質量)の溶解度をCrystal16で分析した(DMSOの場合は25~90℃、およびDMACの場合は0~90℃)。すべての試料について、0.5℃/分の加熱/冷却速度および300rpmの攪拌速度を使用した。得られた濁度/温度プロットを分析して、溶解度曲線を得て、準安定領域幅を決定した。任意の沈殿した固体を濾過により単離し、XRPDにより分析した。
【0150】
DMSO中の化合物1の溶解度は、温度の上昇とともに増加した。材料の沈殿が冷却時に観察され、準安定領域幅は約30℃となった。単離された材料のXRPD回折分析は、すべての場合で形態Cに対応することを示した。
【0151】
DMAC中の化合物1の溶解度は、温度の上昇とともに増加する。冷却時に材料の沈殿が観察され、準安定領域幅は約30℃になった。単離された材料のXRPD回折分析は、1つの例を除いてすべての場合に単離された材料が形態Cであることを示した。残りの場合では、単離された材料をまだ湿っている間に分析し、形態Dに対応するXRPDパターンを有することが示された。乾燥すると、形態Dの材料は形態Cに変換された。したがって、形態Dは、準安定DMAC溶媒和物として割り当てられ、これは乾燥すると形態Cに容易に脱溶媒和した。
【0152】
実施例5.形態Bおよび形態Cの相対的な熱力学的安定性
形態Bおよび形態Cの相対的な安定性の決定を行い、どちらの材料がプロセス関連溶媒中でより熱力学的に安定しているかを同定した。DMACを溶媒として使用した実験では溶媒和物と疑われるものが単離されたため、DMSOおよび酢酸のみが好適なプロセス溶媒であると決定された。したがって、これらの溶媒および関連する貧溶媒の組み合わせを、競合スラリー実験のために選択した。実施例2から得られた化合物1は形態BおよびCからなることが示されたので、この材料を出発材料として使用した。
【0153】
化合物1(実施例2のもの)をHPLCバイアルに分配した。その後、これらに1mlの選択された溶媒を添加し、懸濁液を得た。材料を攪拌しながら90℃、50℃、または25℃で500rpmで72時間スラリー化した。その後、遠心分離によって材料を単離し、XRPDによって分析した。
【0154】
競合スラリーの結果を表3に示す。すべての場合で、材料は、実験全体を通してスラリーとして残存した。単離された材料のXRPD分析は、酢酸が溶媒混合物の成分である6つの実験すべてにおいて、72時間のスラリー化後に形態Bが唯一の検出可能な多形であることを示した。この結果は、それぞれの酢酸混合物および調べた温度において、形態Bが形態Cよりも熱力学的に安定していることを示している。
【0155】
残りの実験では、DMSOを高温で溶媒として使用した実験を除いて、72時間のスラリー化後に形態Bが唯一の検出可能な多形であることが見出された。化合物1をDMSO中で90℃で72時間スラリー化した実験から単離された材料は、結晶性の低い形態Aと一致するXRPDパターンを示した。これは、形態AがDMSO中で90℃で最も熱力学的に安定な多形であることを示す。化合物1をDMSO中で50℃で72時間スラリー化した実験から単離された材料は、XRPDによって結晶性が低いことが示され、形態の割り当てができなかった。
【0156】
纏めると、これらの結果は、評価された実験条件の大部分で、形態Bが形態Cよりも熱力学的に安定であり、形態AがDMSO中で90℃で最も熱力学的に安定な多形であることを示している。
【表15】
【0157】
実施例6.形態Bの固体特性評価
化合物1(1g)を20mlバイアルに分注した。これに酢酸(6体積、6ml)を添加し、500rpmで磁気攪拌しながら懸濁液を55℃に加熱して、透明な淡黄色の溶液を得た。H2O(1体積、1ml)を添加し、白色沈殿物の形成が観察された。さらに9体積のH2O(9ml)を1mlのアリコートで添加した。試料を0.3℃/分で25℃に冷却し、次いで25℃で1時間等温に保持した。白色の沈殿物を濾過により単離し、吸引下で30分間乾燥させ、次いで真空オーブン中で40℃で一晩乾燥させた。
【0158】
溶媒として酢酸を使用し、貧溶媒として水を使用して、形態Bを貧溶媒の結晶化から成功裏に単離した。形態Bの固体特性評価の結果を表4に示す。単結晶X線回折実験(実施例11を参照のこと)は、形態Bが一水和物であることを示している。このスケールで単離された材料のXRPD分析は、該材料が100mgスケールで得られたものよりもピークが少ないことを示している(実施例3)。より低いスケールで観察される追加のピークは、乾燥中の形態Bの材料の脱水およびパターンEへの部分的な変換に起因する。3.9%の質量損失が40~150℃のTGAサーモグラムで観察され、これは、0.99当量の水に相当するため、調製された形態Bの材料のTGA分析はこの発見を裏付けている。この結果は、材料が3.95質量%の水(1.0モル当量の水)であることを示すカールフィッシャー分析によってさらに裏付けられている。
【0159】
単離された形態Bの材料は、HPLC(97.9%)によって比較的高純度であり、トランス異性体に対応するピークのない、供給された材料の分子構造と一致する1H-NMRスペクトルを有していた。粒子の得られたPLM画像は、それらが制御されていない貧溶媒の結晶化に典型的なラス(lath)およびより大きな凝集体の混合物であることを示す。0.16モル当量の酢酸に対応するピークが1H-NMRスペクトルに存在する。材料のTGAサーモグラムは、0.14モル当量の酢酸に相当し得る、210~260℃で1.9%の第2の質量損失を示す。対応するDSCサーモグラムから、この質量損失は材料の融解(237.7℃での吸熱)と一致することが明らかである。40℃/75%RHおよび25℃/97%RHの条件で1週間材料を保存したところ、XRPDで測定した際に材料に変化はなかった。
【0160】
材料のGVS分析は、脱着サイクルで、0.51モル当量の水に対応する20~0%RHで2.1%の質量損失を示す。この質量は、水和物の形成を示すヒステリシスの観察にもかかわらず、次の吸着サイクルで回復する。
【0161】
GVS速度論的プロットの検査は、脱着中に材料が完全に平衡化されていないことを示し、脱水が不完全であることを示す。
【0162】
単結晶X線粉末回折データを用いると、このデータセットは、形態Bが一水和物である可能性が高く、これは20%RH超の条件下で安定しており、水分が失われた後も容易に再水和することを示す。
【表16】
【0163】
実施例7.酢酸/水混合物中の形態Bの溶解度曲線の構築および準安定領域の同定
酢酸/水が、様々な酢酸/水混合物中の形態Bの形態B溶解度曲線の結晶化のための適用可能な溶媒系を表すかどうかを決定するために、DynoChemでの溶解度挙動の後続のモデリングを行った。
【0164】
酢酸/水(9:1、3:1、3:2、1:1の体積比、0.5ml)中の形態Bを、Crystal16で、25~90℃で0.5℃/分の加熱/冷却速度および350rpmの攪拌速度で分析した。得られた濁度/温度プロットを分析して、溶解度曲線を得て、準安定領域幅を決定した。単離された固体をXRPDによって分析した。その後、溶解度曲線をDynoChem結晶化ツールボックスに入力して、溶媒組成および温度の関数として形態Bの溶解度をモデル化した。
【0165】
化合物1(1g)を20mlバイアルに分注した。これに5体積の酢酸(5ml)を添加し、500rpmで磁気攪拌しながら懸濁液を60℃に加熱し、透明な溶液を得た。H2O(0.48体積、0.48ml)をシリンジポンプによって90秒間滴下して添加し、溶液は透明なままであった。形態Bシード(20mg)を添加し、持続することを観察した。溶液を30分間撹拌した後、シリンジポンプによって4.36体積(4.36ml)の水を1時間にわたって滴下して添加した。得られた白色懸濁液を0.1℃/分で25℃に冷却し、次いで等温で9時間保持した後、濾過により単離した。得られた白色の固体をH2O(2体積)で洗浄し、吸引下で30分間乾燥させた。
【0166】
4つの異なる酢酸:H2O混合物(体積比9:1、3:1、3:2、および1:1)中の形態Bの溶解度曲線をCrystal16を使用して決定した。形態Bの可溶化が様々な温度で観察され、物質の沈殿は冷却ランプ(ramp)内では9:1の酢酸:H2Oでのみ観察された。すべての場合において、単離された材料はXRPDによって形態Bであることが示された。実験時間枠での物質の沈殿は、システムが比較的大きな準安定領域を示すが、核形成速度論はシーディングなしで結晶化を妨げるほど十分に遅くないことを示す。ファントホッフの式に対応する曲線を各溶媒混合物について得られた溶解度データセットに適合させた。形態Bの溶解度が溶媒組成の関数として変動することは明らかであった。
【0167】
溶解度曲線が得られたら、曲線の値をDynoChem結晶化ツールボックスに入れて、形態Bの溶解度を溶媒組成の関数としてモデル化した。DynoChemモデルからの予測溶解度値と測定溶解度値との間の良好な一致が得られた(R2=0.999、誤差4.8%)。このモデルから、溶液組成と形態Bの溶解度との関係は非線形であり、溶解度は酢酸含有量の増加とともに増加することが明らかであった。
【0168】
溶媒組成の関数としての溶解度のモデル化に成功したら、満足のいく収率が得られる冷却または貧溶媒の結晶化を見つけるために、DynoChemでシミュレーションを行った。
【0169】
酢酸中で化合物1を溶解した後、最初の水の添加を行って、60℃の開始温度で1.1の過飽和比が得られ、貧溶媒の添加および25℃に冷却後に90%の予測収率が得られ、貧溶媒(H
2O)結晶化が同定された。材料の固体状態分析を表5に示す。
【表17】
【0170】
形態Bの材料を84%の収率で単離し、これは、DynoChemの溶解度モデルで予測されたもの(90%)よりも低い。この不一致は、Crystal16の実験で観察された大きな準安定領域幅によって示されるように、形態Bの材料の結晶化速度が遅いことに起因すると考えられる。実施した実験では、シード添加後に溶解は観察されず、これはシステムが準安定であることを示しており、検証をDynoChemモデルに追加し、これはシステムが過飽和であること(過飽和比1.1)を示した。
【0171】
材料の固体状態分析は、これが一水和物であること(TGAおよびカールフィッシャー分析により、0.96モル当量の水)を示した。HPLC分析は、材料が高純度(98.8%)で形成されたことを示し、トランス異性体がないことは1H-NMRペクトルで明らかであった。PLMは、材料がプレートで構成され、いくつかの凝集体が存在することを示し、1H-NMRスペクトルにおける酢酸に対応するピークが減少しており、結晶化手順が制御されていることを示した。この試料のGVSデータと以前に分析した試料のGVSデータとの間に不一致を再度見ることができ、速度論的GVSプロットは、試料が脱着サイクル中に完全に平衡化したことを示しておらず、したがって、質量損失は試料の水含有量を示すとは考えられない。
【0172】
酢酸/H2O中の形態Bの溶解度は、温度および溶媒組成の関数として成功裏にモデル化された。得られたモデルを使用して、90%の予測収率で形態Bを単離するための貧溶媒の結晶化を同定した。この結晶化は、単離された唯一の多形形態である形態Bによって増強された。材料は84%の収率で単離され、残存溶媒含有量は低く、純度は高かった。したがって、得られた結晶化は、最適化された収率および純度で形態B材料を単離するための実験研究の設計として好適なものとみなされた。
【0173】
実施例8.実験計画法アプローチによる酢酸/H2O溶媒混合物中の形態Bの貧溶媒結晶化の最適化
最初のスクリーニング溶解度決定作業は、酢酸/H2O溶媒系がさらなる開発に最も好適であることを示した。その後、形態Bの結晶化の最適化を実験計画法アプローチによって行い、収率および純度の向上が可能かどうかを評価した。
【0174】
予備実験からの観察に基づいて、結晶化プロセスに影響を与える主な要因を調べるために実験設計画法(「DoE」)研究を行った。このスクリーニング目的に最も好適な設計タイプとして、2つのレベルの要因計画を選択した。実施されたDoE研究は、24~8の一部実施要因計画であった。
【0175】
同定されたDOEの変数は、下線付きの太字で示されている。これらの値および試料IDは、明確にするために表6に示している。化合物1(1g)をクロススターラーバーを備えた20mlの沸騰管に充填した。これに酢酸(5ml、5体積)を添加し、500rpmで懸濁磁気攪拌しながら懸濁液を50/70℃に加熱し、HELポリボック(polybock)に透明な溶液を得た。次いで、H2O(様々な体積)を滴下して添加し、1.1/1.3の初期過飽和比を得た。次いで、シード(20mg)を添加し(あり/なし)、30分間撹拌した後、H2O(2.5/4.2ml)を1/3時間にわたって添加した。次いで、懸濁液を0.2/1.0℃/分で15/25℃に冷却し、次いで0.5/16時間等温に保持した後、濾過により単離した。
【0176】
試料をH
2Oでリンスし、次いで吸引下で30分間乾燥させ、次いで40℃の真空オーブン中で乾燥させた。試料をXRPD、カールフィッシャー、
1H-NMRおよびHPLCで分析して、形態、残存溶媒含有量、純度、およびトランス異性体の存在を決定した。所望の過飽和比を得るために添加された水の量を表6に示す。
【表18】
【0177】
供給された化合物1(1g)を、クロススターラーバーを備えた20mlの沸騰管に充填した。これに酢酸(5ml、5体積)を添加し、500rpmで懸濁磁気攪拌しながら懸濁液を50/70℃に加熱して、HELポリボックに透明な溶液を得た。次いで、水(様々な体積)を滴下して添加し、1.2の初期過飽和比を得た。次いで、シード(20mg)を添加し、30分間撹拌した後、水(3.35/6.0体積、3.35/6.0ml)を2時間にわたって添加した。次いで、懸濁液を0.6℃/分で15/25℃に冷却し、次いで等温で16時間保持した後、濾過により単離した。試料をH2Oでリンスし、次いで吸引下で30分間乾燥させ、次いで40℃の真空オーブン中で乾燥させた。
【0178】
試料をXRPD、カールフィッシャー、
1H-NMR、およびHPLCで分析して、形態、残存溶媒含有量、純度、およびトランス異性体の存在を決定した。DOE変数は
下線付きの太字で識別され、これらの値、および溶液に1.2の過飽和比を得るために添加された水の量を表7に詳述する。
【表19】
【0179】
実験パラメーターならびに実験計画法研究のために選択された高値および低値を表8に示す。選択された応答は、収率、トランス異性体含有量、純度、残存酢酸含有量、形態、および残存水分含有量であった。
【表20】
【0180】
酢酸/水系中の形態Bの貧溶媒結晶化を、実験計画法アプローチを使用して調べた。すべての場合において、形態Bは、HPLCによって高純度で単離された唯一の多形であり、1H-NMRによって証明されるように、トランス異性体は存在していなかった。実験計画法モデルは、高い初期温度および高い単離温度によって収率が向上し、残存酢酸含有量が低くなることを示した。この結果は、その後の増強実験で検証された。さらに、貧溶媒含有量の増加は、純度の低下または残存酢酸含有量の増加なしに、収率をさらに増加させることが示された。
【0181】
実施例9.10gスケールへの結晶化のスケールアップ
化合物1(10g)を140mlのHELブロックバイアルに充填した。これに酢酸(5体積、50ml)を添加し、懸濁磁気攪拌しながら(500rpm)試料を70℃に加熱し、透明な溶液を得た。熱濾過を行って試料から任意の残骸を取り除き、濾液を懸濁磁気撹拌しながら140mlのHELバイアル中で70℃に加熱した。H2O(0.85体積、8.5ml)をシリンジポンプで1分間にわたって充填した。シードを試料に添加した(200mg、形態B)。試料を30分間撹拌した後、シリンジポンプによって6体積のH2O(6体積、60ml)を2時間にわたって滴下して添加した。次いで、試料を0.6℃/分で25℃に冷却し、次いで試料を16時間等温に保持した。得られた白色固体を濾過により単離し、H2O(2体積、20ml)でリンスし、次いで吸引下で30分間乾燥させた。次いで試料を40℃の真空オーブン中で一晩乾燥させた。
【0182】
結晶化は10gスケールまで成功裏にスケールアップされた。形態Bが単離された唯一の多形であり、この材料の分析を表9に示す。この物質は83%の収率で単離され、トランス異性体含有量がないことは
1H-NMRによって明らかであった。HPLC分析は、材料が高純度(98.7%)であり、残存酢酸含有量が0.04モル当量であることを示した。1gスケールの実験から単離された収率(88%)と10gスケールの実験との間の不一致は、結晶化の前に行われた熱濾過中の損失に起因すると考えられる。
【表21】
【0183】
したがって、この実験は、多形的に純粋な形態Bの材料を単離するためのこの結晶化手順のスケール拡張を示す。明確にするため、および将来の使用のために、手順を表10に示す。使用した酢酸のカールフィッシャー分析を行って、0.4重量%の水であることが見出されたことに注目すべきである。
【表22】
【0184】
実施例10.形態Bの可変温度および湿度分析
Empyrean XRPDを使用し、25℃の温度で化合物1の形態Bを分析した。次いで、試料を可変温度ステージを使用して10℃/分のランプ速度で150℃にインサイチューで加熱し、2分間等温に保持し、その時点で2回目のXRPD測定を行った。次いで、試料を10℃/分のランプ速度で25℃に冷却し、等温で2分間保持し、その時点で3回目のXRPD測定を行った。
【0185】
Empyrean XRPDを使用して、40℃で化合物1の形態Bを分析した。次いで、試料を40℃で低真空条件に曝露し、XRPDで測定した。試料を回折計から取り出し、25℃、50%RHの条件で48時間放置した。XRPD測定を8、24、および48時間後に行った。24時間後および48時間後の測定を高解像度機器で行い、したがって、回折図は低い信号対雑音比を示した。
【0186】
いくつかの場合では、40℃の真空オーブンから材料を単離した後、得られたXRPDパターンは、形態Bのパターンに対して追加のピークを示した。周囲条件で48時間試料を保存すると、回折図からピークが消失することが観察されたが、これは材料が形態Bに変換されたことを示す。
【0187】
形態Bの材料のGVS分析は、材料の脱水に対応している低相対湿度での質量損失、および相対湿度>20%RHでの再水和を示した。したがって、回折図で観察された追加のピークは、真空オーブンでの保存中の無水物の形成から生じたと考えられた。この仮定を評価するために、真空条件下および高温条件下でインサイチューXRPD実験を行ったが、これは、材料のTGAサーモグラムにおいて、1.0当量の水の損失に伴う質量損失が観察されたためである。
【0188】
試料を150℃に加熱すると、追加のピークから明らかなようにXRPDによる形態が変化した。この新しい形態は形態Eと表記した。冷却後、材料は変化しないままであり、ピーク位置の変化は材料の熱収縮に起因する。加熱時に観察された新しいピークは、真空オーブン中での保存後の形態B試料で観察されたものと一致した。特に、真空オーブン中で保存された材料のXRPDパターンは、不安定な無水形態Eへの完全な変換を示さず、これは真空乾燥中に水の除去が不完全であることを示す。この結果は、結合した水の50%のみが実験時間枠で除去されるGVS分析に対応している。
【0189】
単結晶X線回折実験は、水とAPIとの間の水素結合の長さが短いことを示し、これは強い結合を示す。この情報は、GVS実験および低真空条件下の両方において、形態Bから形態Eへの部分的な変換のみが観察された理由を説明している。
【0190】
実施例11.単結晶実験
化合物1の形態Bの結晶を酢酸/水溶液から蒸発することにより得た。単結晶X線回折による分析に十分なサイズおよび品質の結晶を単離し、寸法は約0.19×0.15×0.01mmであった。
【0191】
化合物1の形態Bの結晶構造を100Kで測定し、すべての構造データの要約は表11に見出すことができる。化合物1の形態Bは、三斜晶系の中心対称空間群P-1であり、最終R1[I>2σ(I)]=3.89%である。
【表23】
【0192】
実施例12.化合物1の形態Aの特性評価
形態Aの形成をもたらす条件は、例えば、実施例5に記載されている。
【0193】
形態AのXRPDパターンを
図1に示す。形態Aは、約252℃の温度で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す。
図2は、化合物1の形態AのDSCサーモグラムを示す。
図3は、化合物1の形態AのTGAサーモグラムを示す。化合物1の形態A(
図3)のTGAサーモグラムは、試料が約43重量%のDMSOを含むことを示す。
【0194】
実施例13.化合物1の形態Bの特性評価
形態Bの調製は、例えば、実施例2、3、9に記載されている。
【0195】
形態BのXRPDパターンを
図4に示し、ピークデータを以下の表12に示す。
【表24】
【0196】
形態Bは、約246℃の温度で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す。
図5は、化合物1の形態BのDSCサーモグラムを示す。
図6は、化合物1の形態BのTGAサーモグラムを示す。
図7は、化合物1の形態Bの動的水蒸気吸着(DVS)等温線プロットを示す。
【0197】
実施例14.化合物1の形態Cの特性評価
形態Cの調製は、例えば、実施例3および4に記載されている。
【0198】
形態CのXRPDパターンを
図8に示し、ピークデータを以下の表13に示す。
【表25】
【0199】
形態Cは、約242℃の温度で発熱ピークを有し、約253℃の温度で吸熱ピークを有するDSCサーモグラムを示す。
図9は、化合物1の形態CのDSCサーモグラムを示す。
図10は、化合物1の形態CのTGAサーモグラムを示す。
【0200】
実施例15.化合物1の形態Dの特性評価
形態Dの形成をもたらす条件は、例えば、実施例4に記載されている。
【0201】
【0202】
実施例16.化合物1の形態Eの特性評価
形態Eの調製は、例えば、実施例10に記載されている。
【0203】
形態EのXRPDパターンを
図12に示し、ピークデータを以下の表14に示す。
【表26】
【0204】
実施例17.水性媒体中の溶解度
以下の表に示すように、異なる水性懸濁液中の化合物1の形態Aおよび化合物1の形態Bについて、室温平衡溶解度を測定した。遠心分離された試料からの上清のHPLC分析によって測定した際に、形態Aは、形態Bと比較して3~6倍高い、試験した様々な水性系中での溶解度を示した。
【表27】
【0205】
実施例18A.化合物1の形態Aシードの調製
一般に、化合物1の形態Aのシード試料は、化合物1の形態BおよびDMSO溶媒から可能な限り多くの水を除去することによって調製した。化合物1の形態Bをオープンバイアル中で約180℃に加熱して、水和水を除去した。試料を高温で約30秒間維持した。500μLの乾燥DMSO(モレキュラーシーブで乾燥)を60mgの試料に添加し、バイアルに蓋をした/密封した。蓋をした/密封したバイアルを圧力下で約120℃に加熱し、固体を溶解した(約1分間)。沈殿物の形成によって示される核形成が起こるまで、音波浴中で超音波処理に曝露しながら、密封したバイアルを室温の水浴中で急速に冷却した。まだ熱くて薄い懸濁液を室温に冷却した。室温で1時間静置した後、固体を濾過により単離し、数ミリリットルの乾燥アセトンで洗浄して、化合物1の形態Aのシードを得た。
【0206】
実施例18B.形態Aの代替調製および特性評価
約30mgの化合物1を撹拌しながら100℃で0.6mlのDMSOに添加し、透明な溶液を得た。約70℃に冷却した後、選択した実験の溶液に、化合物1の形態Aシード(実施例18Aを参照のこと)を添加して、多形の形成を制御した。固体は約1分で沈殿した。次に、約0.6mlのACNまたはEtOHを添加して収率を増加させた。結果を表15および
図13に要約する。
【表28】
【0207】
実施例19.化合物1の形態Aのスケールアップ調製
約18.8gの化合物1の形態Bを撹拌しながら300mlのDMSOに添加した。100℃に加熱後、透明な溶液が得られた。その後、透明な溶液を1℃/分の速度で冷却した。約86℃で、約20mgの化合物1の形態Aシード(実施例18Aを参照のこと)を添加した。約5分後、固体が現れた。懸濁液をさらに0.1℃/分の速度で25℃に冷却し、25℃で約18時間撹拌を維持した。固体を吸引濾過により回収した。得られたウェットケーキを真空下60℃で18時間乾燥させた。約15.2gの化合物1の形態Aがオフホワイト色の固体として約81%の収率で得られた。特性評価の結果を表16~17および
図14~18に要約する。
【表29】
【表30-1】
【表30-2】
【0208】
実施例20.化合物1の形態Aおよび化合物1の形態Bの吸湿性評価
化合物1の形態Aおよび化合物1の形態Bの吸湿性を25℃でDVSによって評価した。DVSの結果に基づくと、化合物1の形態Aは非吸湿性であり、化合物1の形態Bはわずかに吸湿性である。DVS試験後、化合物1の形態Aは形態の変化を示さなかったが、結晶化度が低下してピークが広くなり、これは、化合物1の形態Aの潜在的な不安定性を示している。化合物1の形態Bは、DVS試験後に形態の変化はなかった。DVSプロットで観察された化合物1の形態Aと化合物1の形態Bとの間に形態の変換はなかったが、これは、化合物1の形態Aと化合物1の形態Bとの間の形態変換の速度がバルク状態で遅いことを示唆している。吸湿性評価のためのDVSデータを表18および
図19に要約する。
【表31】
【0209】
実施例21.水分活性研究
約15mgの形態Aおよび15mgの形態Bを異なる水分活性の飽和溶液に添加し、それぞれ25℃および50℃で4日間平衡化した。得られた懸濁液を濾過し、固体部分(ウェットケーキ)をXRPDによって調べて多形を決定した。
【0210】
XRPDの結果によると、
図20A~20Bに示すように、形態Bはメタノール/水中で得られ、25℃で0.1~0.9の範囲の水分活性(a.w.)を有していた。
図21A~21Bに示すように、50℃で、形態Bがメタノール/水中で得られ、a.w.≧0.2であったのに対し、形態Aおよび形態Bの混合物は0.1のa.w.で得られた。これらの結果は、形態Aと形態Bとの間の臨界水分活性が25℃では0.1未満であるが、50℃では0.1~0.2であることを示唆している。形態Bは、周囲条件下で形態Aよりも安定していた。水分活性試験の結果を表19に示す。二成分溶媒系の水分活性をUNIFAC法(UNIQUAC官能基活量係数)に基づいて計算した。
【表32】
【表33】
【0211】
実施例23.固体状態安定性研究
化合物1の2つのロットをHPLC、PLM、XRPD、DSC、TGA、およびKFによって特性評価した。物理的特性評価の結果は、原材料の結晶状態を示唆している。異なる条件での安定性研究によると、化合物の2つの形態は、少なくとも4週間にわたって異なる湿度で実質的に安定し、XRPDパターンの変化および不純物の成長は見出されなかった。表21は、4週間、6週間、および8週間の試験での代表的な安定性データを示す。
【表34-1】
【表34-2】
【0212】
本発明の様々な改変は、本明細書に記載されたものに加えて、前述の記載から当業者に明らかであろう。そのような改変はまた、添付の特許請求の範囲内であることを意図している。本出願で引用されたすべての特許、特許出願、および刊行物を含む各参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】