(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】バリア装置、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20221219BHJP
A61B 17/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61B17/12
A61B17/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525616
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 US2020058833
(87)【国際公開番号】W WO2021091977
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ファブロー、ジョン ティ.
(72)【発明者】
【氏名】ピック、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】スミス、アマンダ エル.
(72)【発明者】
【氏名】ライデッカー、ローレン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンチー、トラビス
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD54
4C160DD62
4C160MM43
(57)【要約】
本開示は、概して、医療装置及び医療装置送達の分野に関する。特に、本開示は、患者の体内管腔、例えばGI管内にバリア装置を送達するための医療装置、システム、及び方法に関する。例えば、バリア装置は自己拡張型の遠位ステントを含み得る。チューブ状バリアは、近位端、遠位端、及びそれらを通って延びるルーメンを有し得る。遠位ステントは、チューブ状バリアの遠位端に配置され得る。自己拡張型の固定ステントは、チューブ状バリアの近位端に配置され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリア装置であって、
該バリア装置は自己拡張型の遠位ステントを備え、
該バリア装置はチューブ状バリアを備え、該チューブ状バリアは、近位端、遠位端、及びそれらを通って延びるルーメンを有し、前記遠位ステントが前記チューブ状バリアの前記遠位端に配置されており、
該バリア装置は自己拡張型の固定ステントを備え、該固定ステントは前記チューブ状バリアの前記近位端に配置される、バリア装置。
【請求項2】
前記バリア装置が、前記チューブ状バリアの前記近位端と前記遠位端との間に少なくとも1つの自己拡張型の中間ステントをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記チューブ状バリアが、前記遠位ステント及び前記固定ステントの実質的に全てを被覆している、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記固定ステントが、胃流出路の解剖学的構造の輪郭を実質的に模倣する拡張形態において、形状記憶を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記遠位ステントが、拡張形態においてリング状の構造を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記チューブ状バリアの前記ルーメンの周りに延びるヘリカルワイヤをさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記チューブ状バリアの壁の全体を通して複数のナノ繊維をさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記固定ステントの外面から延びる固定用突起をさらに備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記チューブ状バリアが半透過性である、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記チューブ状バリアが実質的に不透過性である、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
バリアシステムであって、
該バリアシステムはカテーテルを備え、該カテーテルは外側シース及び内側シースを含み、
該バリアシステムはバリア装置を備え、該バリア装置は送達形態で前記外側シース内に摺動自在に配置されており、該バリア装置は、
近位端及び遠位端を有するチューブ状バリアと、
前記チューブ状バリアの前記近位端に配置される自己拡張型の固定ステントと
を備え、
前記内側シースは、前記送達形態で前記チューブ状バリア内に摺動自在に配置される、バリアシステム。
【請求項12】
前記バリア装置が、前記チューブ状バリアの前記遠位端に配置される自己拡張型の遠位ステントをさらに備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記バリア装置が、前記チューブ状バリアの前記近位端と前記遠位端との間に少なくとも1つの自己拡張型の中間ステントをさらに備える、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの自己拡張型の中間ステントのそれぞれが、拡張形態においてリング状の構造を有する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記内側シースが、前記カテーテルの前記外側シースの直径と実質的に同じ大きさの直径の遠位端を備える、請求項11~14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、医療装置及び医療装置送達の分野に関する。特に、本開示は、胃腸管(「GI管」)の遠い部分又は曲がりくねった部分など、患者の体内管腔内にバリア装置を送達するための医療装置、システム、及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体重に関連するか又は消化に関する健康問題のある患者の治療は、ルーY法、又は開腹手術、管腔内手術、若しくは腹腔鏡手術とし得る他の胃バイパス処置を含み得、これらの処置においては、胃、空腸、及び/又は十二指腸の体積及び/又はそれらの間の経路が縮小される。これらの処置は、GI管が物質を吸収する能力を低下させ得る。ルーY法は、多数の健康上のリスクを伴い得る。リスクを低下させながらも、例えばルーY法と同じ代謝効果をもたらし得る、手術ではない内視鏡装置又は内視鏡処置が必要とされる。
【0003】
それゆえ、様々な好都合な医学的転帰が、本開示の実施形態によって実現され得る。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、患者の体内管腔、例えばGI管内にバリア装置を送達するための医療装置、システム、及び方法に関する。
バリア装置の態様は、自己拡張型の遠位ステントを含み得る。バリア装置は、近位端、遠位端、及びそれらを通って延びるルーメンを有する、チューブ状バリアを含み得る。遠位ステントは、チューブ状部材の遠位端に配置され得る。自己拡張型の固定ステントは、チューブ状バリアの近位端に配置され得る。
【0005】
ここで又は他の箇所で説明される様々な実施形態では、バリア装置は、チューブ状バリアの近位端と遠位端との間に少なくとも1つの自己拡張型の中間ステントを含み得る。チューブ状バリアは、遠位ステント及び固定ステントの実質的に全てを被覆し得る。固定ステントは、胃流出路の解剖学的構造の輪郭を実質的に模倣する拡張形態での形状記憶を有し得る。遠位ステントは、拡張形態においてリング状の構造を有し得る。ヘリカルワイヤが、チューブ状バリアのルーメンの周りに延び得る。チューブ状バリアは、チューブ状バリアの壁の全体にわたって複数のナノ繊維を含み得る。固定用突起が固定ステントの外面から延び得る。チューブ状バリアは半透過性とし得る。チューブ状バリアは実質的に不透過性とし得る。
【0006】
ある態様では、バリアシステムは、外側シース及び内側シースを含む、カテーテルを含み得る。バリア装置は、送達形態で、外側シース内に摺動自在に配置され得る。バリア装置は、近位端及び遠位端を有する、チューブ状バリアを含み得る。自己拡張型の固定ステントが、チューブ状バリアの近位端に配置され得る。内側シースは、送達形態で、チューブ状バリア内に摺動自在に配置され得る。
【0007】
ここで又は他の箇所で説明される様々な実施形態では、バリア装置は、バリア装置の遠位端に自己拡張型の遠位ステントを含み得る。バリア装置は、チューブ状バリアの近位端と遠位端との間に少なくとも1つの自己拡張型の中間ステントを含み得る。少なくとも1つの自己拡張型の中間ステントのそれぞれは、拡張形態においてリング状の構造を有し得る。内側シースは、カテーテルと実質的に同じ大きさの直径の内側シースの遠位端を含み得る。
【0008】
ある態様では、バリア装置を送達するための方法は、バリア装置のチューブ状バリアの遠位端に配置される自己拡張型ステントを患者の体内管腔内に送達することを含み得る。チューブ状バリアの少なくとも一部分は、体内管腔内へ送達され得る。自己拡張型ステント、及びチューブ状バリアのその部分は、蠕動によって、患者の体内管腔に沿って移動され得る。
【0009】
ここで又は他の箇所で説明される様々な実施形態では、チューブ状バリア装置の近位端に配置される自己拡張型の固定ステントが、患者の器官内に位置決めされ得る。体内管腔はGI管とし得、及び器官は胃流出路とし得る。バリア装置は、送達形態で、カテーテルのシース内に拘束され得る。自己拡張型ステントを送達することは、自己拡張型ステントの周りからカテーテルのシースを近位側に引っ込めることを含み得る。GI管内へチューブ状バリアの少なくとも一部分を送達することは、体重減少に影響し得る。
【0010】
本開示の非限定的な実施形態は、添付図面を参照して例として説明され、図面は概略的であり、縮尺通りではない。図面では、示される同一又はほぼ同一の各構成要素は一般に、単一の符号で表される。明瞭にするために、どの図面においても、全ての構成要素に、又は当業者が本開示を理解できるようにするために説明が必須ではない図示の各実施形態の全ての構成要素に符号が付されるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態による拡張形態にあるバリア装置を示す。
【
図2A】本開示の実施形態による、カテーテル内の非拡張形態にあるバリアシステムの部分的な断面図を示す。
【
図2B】自己拡張型の遠位ステントが展開されている状態の、
図2Aのシステムを示す。
【
図3A】本開示の実施形態による、カテーテルがGI管内へ延びている状態の、患者の体内でのバリアシステムを示す。
【
図3B】自己拡張型の遠位ステントが展開されている状態の、
図3Aのバリアシステムを示す。
【
図3C】自己拡張型の中間ステントが展開されている状態の、
図3A及び
図3Bのバリアシステムを示す。
【
図3D】自己拡張型の固定ステントが送達されている状態の、
図3A~3Cのバリアシステムを示す。
【
図4】本開示の実施形態による、ヘリカルワイヤを含むバリア装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、本明細書で説明する特定の実施形態に限定されない。本明細書で使用される用語法は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、添付の特許請求の範囲を超えて限定するものではない。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。
【0013】
本開示の実施形態は、特別な目的のため(例えば、代謝に影響を及ぼし、且つ体重減少に作用するため)にGI管の特定の部分内への医療装置(例えばバリア装置)の送達用の医療装置送達システムの実施形態を具体的に参照して説明するが、そのような実施形態は、様々な異なる目的のために、様々な形態のそのような医療装置を様々な異なる体内管腔及び/又は通路内へ送達するために使用され得、それら目的は、例えば、横行結腸、上行結腸又は回腸への肛門アクセス、ルーY法、空結腸バイパス法、空回腸バイパス法、胃切除法、十二指腸スイッチを伴う胆膵路転換手術(BPD-DS:biliopancreatic diversion with duodenal switch)法、胃空腸吻合法、結腸部分切除法などを含むことが認識されるべきである。
【0014】
本明細書では、文脈上明白に他の意味を示す場合を除き、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形も含むことが意図される。本明細書で使用されるとき、用語「備える/からなる(comprises)」及び/又は「備えている/からなる(comprising)」、又は「含む(includes)」及び/又は「含んでいる(including)」は、述べた特徴、領域、ステップ、要素及び/又は構成要素の存在を特定するが、1つ以上の他の特徴、領域、整数、ステップ、動作、要素、構成要素及び/又はそれらの群の存在又は追加を除外しない。本明細書では、接続詞「及び、並びに、且つ」は、文脈上明白に他の意味を示す場合を除き、そのように等位接続される構造、構成要素、特徴などのそれぞれを含み、及び接続詞「又は、若しくは」は、文脈上明白に他の意味を示す場合を除き、そのように等位接続される構造、構成要素、特徴などの1つ又は他のものを、1つずつ並びに任意の組み合わせ及び数で含む。用語「又は」は、一般的に、文脈上明白に他の意味を示す場合を除き、「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0015】
本開示による様々な実施形態が下記で説明される。本明細書では、「近位端」は、装置を患者の体内に導入しているときに、装置に沿って医療専門家に最も近くにある装置の端を指し、及び「遠位端」は、植込み、位置決め、又は送達を行っている間に、装置に沿って医療専門家から最も離れている装置又は対象物の端を指す。
【0016】
本明細書では、全ての数値が、明白に示されているか否かに関わらず、用語「約(about)」によって修飾されていると想定される。用語「約」は、数値との関連で、一般的に、列挙した値と等価である(すなわち、同じ機能又は結果を有する)と当業者がみなす数字の範囲を指す。多くの場合、用語「約」は、最も近い有効数字に丸められる数字を含み得る。用語「約」の他の使用は(すなわち、数値以外の関連で)、他に特に規定がなければ、本明細書の文脈から理解され且つそれと一致するような、それらの通常の慣例となっている1つ又は複数の定義を有すると想定され得る。端点による数値範囲の列挙は、その範囲内にある全ての数字を含み、端点(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)を含む。
【0017】
本明細書では、「実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」などへの言及は、説明した1つ又は複数の実施形態が、特定の特徴、構造、又は特性を含み得るが、全ての実施形態が必ずしも特定の特徴、構造、又は特性を含むわけではない場合があることに留意されたい。さらに、そのような語句は、必ずしも同じ実施形態に言及するわけではない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性が、ある実施形態に関連して説明されるとき、それとは反対の記載が明白にない限り、明白に説明されるか否かに関わらず、他の実施形態に関連するそのような特徴、構造、又は特性に作用することが当業者の知識内にあるであろう。すなわち、下記で説明される様々な個々の要素は、特定の組み合わせにおいて明白に示されていない場合でも、それでもなお、当業者によって理解されるように、他の追加的な実施形態を形成するために、又は説明した1つ又は複数の実施形態を補完する及び/又は強化するために、互いに組み合わせ可能又は配置可能であるとみなされる。
【0018】
GI管による可消化物質の吸収を低下させ得る及び/又は遅らせ得る医療処置は、可消化物質と吸収に関わる解剖学的構造(例えば、小腸の十二指腸及び/又は空腸の部分)との間にバリア装置を設けることを含み得る。本明細書では、「バリア」は、別段の指示が明白にない限り、不透過性、半透過性、及び透過性の壁、表面、膜など含むことを意図する。バリアは、侵襲的処置によって患者の解剖学的構造を変える必要性を低減させ得るか又はなくし得る。例えば、GI管内のチューブ状バリアは、チューブ状バリアによって占有された腸の部分に沿って、腸組織及び/又は消化酵素や同様の流体との有意な(又は実質的に限定された)接触がない状態で、チューブ状バリア内を通る物質の通過を可能にし得る。物質(例えば、胃の糜粥)とGI管との間の相互作用がそのように制限、限定、又は遅延されることによって、体重(肥満)及び/又は糖尿病性合併症を軽減するか又はそれに少なくとも良い影響を及ぼすように支援し得る。GI管の天然の解剖学的構造は、侵襲的手術を行わずに、代謝効果、例えば十二指腸の長さの全体を通して脂肪及び栄養分の取り込みの防止をもたらす間、維持され得る。
【0019】
図1を参照すると、本開示によるバリア装置100のある実施形態が、拡張形態で示されている。装置100は、自己拡張型の遠位ステント102を含む。拡張形態では、遠位ステント102は、遠位ステント102の周囲に延びるリング105を有する。リング105はリッジとして示されているが、リング105は、例えばリング状の形状、リブ、リッジ、ボーラス様の形状、糜粥様の形状、ボール、又はそれらの組み合わせなど、他の形状としてもよい。様々な実施形態では、ステント102の横断面は、クローバーの葉の形状とし得る。
【0020】
遠位ステント102は、チューブ状バリア104の遠位端104dに配置される。実施形態では、チューブ状バリア104は、長手方向中心軸線に沿って可撓性、例えば、圧縮性及び拡張性とし得る。リング105は、チューブ状バリア104の直径よりも大きい直径を有して示されているが、リング105は、チューブ状バリア104と実質的に等価又はそれよりも小さい直径を有してもよい。自己拡張型の固定ステント106が、チューブ状バリア104の近位端104pに接続される。固定ステント106は、装置100の残りの部分よりも大きな直径のセクションを有し、且つ胃流出路の解剖学的構造の輪郭を実質的に模倣する形状にされているが、その代わりに、固定ステント106がチューブ状バリア104を固定することが意図される解剖学的構造を適切に模倣するように、円錐、錐台、漏斗、半球、フランジ、それらの組み合わせなどの形状としてもよい。自己拡張型の中間ステント108は、チューブ状バリア104の近位端104pと遠位端104dとの間でチューブ状バリア104に接続され、且つ拡張形態ではリング105を含む。1つの自己拡張型の中間ステント108が示されているが、例えば、0、2、3、5、8、10、20個など、任意の数の中間ステント108が用いられてもよい。チューブ状バリア104は、ステント102、106、108の全てを通って延びて、ステント102、106、108がチューブ状バリア104によってまとめられるようにする。代替的に、ステント102、106、108は、チューブ状バリア104によってまとめられていなくてもよく、又はチューブ状バリアによって部分的にコーティングされていてもよい(例えば、ステント102、106、108の内部又は外部に沿ってコーティングされる)。ルーメン109が装置100を通って(すなわち、ステント102、106、108及びチューブ状バリア104を通って)延びている。コーティングという用語は、この点に関し、及び、本明細書全体を通して、チューブ状バリア104の長さ部分に沿ってステントを配置させる(例えば、被覆する、浸漬被覆する、スプレーコーティングを施す、スピンコーティングを施すなどによって)様々な手段を含むことを意図する。装置100は、外側シース110から送達及び/又は展開され得る。
【0021】
図2Aを参照して説明すると、本開示によるバリアシステムの実施形態が示されており、該バリアシステムは、カテーテル内に摺動自在に配置される、非拡張形態にあるバリア装置200を含む。バリア装置200は、チューブ状バリア204、自己拡張型の遠位ステント202、自己拡張型の固定ステント206、及び自己拡張型の中間ステント208を含む。カテーテルは、バリア装置200の周りの外側シース210、及びバリア装置200が送達のためにカテーテル内に入れられているときに、バリア装置200内に摺動自在に配置される内側シース212を含む。他の実施形態では、内側シース212は、バリア装置200内を摺動しなくてもよい。内側シース212は、外側シース210と実質的に同じ大きさの直径を有する遠位端212dを含む。内側シース212の遠位端212dには直径が遠位側に先細るテーパが付けられている。該遠位端212dは、解剖学的構造、例えば、体内管腔の開口を通って、外傷を与えないようにシステムを遠位側に先導するように構成される。内側シース212の遠位端212dは、装置200を、遠位側に外側シース210から滑り出ないように拘束する。遠位端212dは、システムが、体内管腔の曲がりくねった部分の中を通って、外傷を与えないように曲がること又は湾曲することができるようにし得る。この形態において、システムは、装置200が展開されないままの状態で、患者の体内に延び得る。
【0022】
図2Bを参照して説明すると、
図2Aのバリアシステムは、カテーテルの外側シース210が内側シース212の遠位端212dから離れて近位側に移動されている状態で、示されている。内側シース212は、その長さ部分に沿って、半径方向伸張部214を含み、半径方向伸張部の直径は、装填されるバリア装置200の内径よりも小さい。伸張部214は、例えば、装置200の近位側への移動に対する摩擦抵抗をもたらすことによって、標的部位への外側シース210の送達中に、装置200の望ましくない近位側への移動を防止するのを支援し得る。代替的に、この形態は、カテーテルの外側シース210から離れるように遠位端212dを遠位側に移動させることによって達成され得、又は、カテーテルの外側シース210を近位側に、且つ、カテーテルの内側シース212の遠位端212dを遠位側に、互いに離れるように移動させることによって達成され得る。カテーテルの外側シース210が内側シース212の遠位端212dから離された状態で、自己拡張型の遠位ステント202は、外側シース210によって拘束されず、展開される。装置200は、装置200の近傍にあり且つ外側シース210内にあるプッシャ部材(図示せず)によって、遠位側に摺動されて、外側シース210から出る。いくつかの実施形態では、プッシャは、外側シース210が引っ込められるときに、バリア装置200の位置を維持し得る。自己拡張型の遠位ステント202が外側シース210から展開された状態で、遠位ステント202は、リング205を有する拡張形態にあるが、装置200の残りの部分は、非拡張形態にある。遠位ステント202のさらに遠位側への移動(外側シース210に対し、外側シース210を引っ込めることによって及び/又はプッシャを遠位側へ移動させることによって)によって、チューブ状バリア204、固定ステント206、及び中間ステント208を含む、装置200の残りの部分を移動させ、外側シース210から遠位側に展開し得る。装置200は、外側シース210から展開されるにつれて、非拡張形態から拡張形態へ次第に移行することが可能になる。
【0023】
図3Aを参照して説明すると、本開示によるバリアシステムのある実施形態が示されており、これは、カテーテルを含み、該カテーテルは、内視鏡中を通って及び/又は患者の胃324内に延びたガイドワイヤ(図示せず)に被さって送達され得る外側シース310を有する。外側シース310と内側シースの遠位端312dは、当該カテーテルの内側シースの遠位端312dと外側シース310の一部分が、幽門320を通り、且つ、十二指腸322の方へ遠位側に向かい及び/又はその内部に臨んで、全てではないとしてもある程度の距離で延び得るように送達される。バリア装置(図示せず)は、内側シースの遠位端312dの近傍で、外側シース310内に(例えば、摺動自在に)配置される。
【0024】
図3Bを参照して説明すると、
図3Aのバリアシステムが示されている。該バリアシステムは、外側シース310が内側シース312の遠位端312dから離れるように近位側に引っ込められ、自己拡張型の遠位ステント302、及び/又はチューブ状バリア304の一部分が十二指腸322及び/又は腸の他の部位に露出した状態である。医療専門家は、自己拡張型の遠位ステント302が十二指腸322内に全体的に展開されることを保証したい場合がある。例えば、自己拡張型の遠位ステント302が胃324内へ近位側に全体的に又は部分的に移動しないように、幽門320を越えて十二指腸322内へカテーテルの外側シース310及び内側シース312を延ばすことによって、保証したい場合がある。遠位ステント302のリング305は、GI管、例えば十二指腸322の壁に接触し得る。リング305は、胃内容物の塊と同様の形状にされるため、腸322の平滑筋が収縮して蠕動波を生成し、チューブ状バリア304が引かれる状態で、腸322内を通って遠位ステント302を遠位側に移動させ得る。医療専門家は、GI管を移動中の装置を監視し得る。該装置は、例えば、X線透視検査などによって、カテーテルの外側シース310から滑り出る装置の識別可能な部分又はマーキングを観察することによって、内視鏡を通して可視化する。
【0025】
図3Cを参照して説明すると、
図3A及び
図3Bのバリアシステムが示されている。該バリアシステムは、自己拡張型の遠位ステント302が蠕動によって腸322内を通ってさらに遠位側に移動される状態である。内側シース312及び外側シース310は、外側シース310のさらなる近位側への引っ込みによって、自己拡張型の中間ステント308の展開を支援し得るように、自己拡張型の中間ステント308の展開準備のため、十二指腸内へとさらに延ばされ得る。遠位ステント302の遠位側への移動は、外側シース310を部分的に引っ込めることにより、又は引っ込めることなく、接続されたチューブ状バリア304と接続された自己拡張型の中間ステント308とを外側シース310から遠位側に引き出す。追加的に又は代替的に、カテーテルの外側シース310は、中間ステント308の展開を支援するために、近位側に引っ込められ得る。内側シース312の遠位端312dは、装置300が遠位側に移動されるとき、バリア装置300のルーメン309内に存在する。遠位端312dは、装置300の動き及び/又は方向付けを支援するように動作され得るか、又は遠位端312dは、装置300の位置決めにおいて何の役割も果たさなくてもよい。中間ステント308にある追加的なリング305は、腸322内を通って及びさらに外側シース310から遠位側に出るように装置300を移動させるために、蠕動波のための追加的な表面領域を提供し得る。様々な実施形態では、中間リング308は、装置に沿った中心点の周りにあり得るが、装置の中心点に対して著しく近位側又は著しく遠位側にあってもよい。
【0026】
図3Dを参照して説明すると、
図3A~
図3Cのバリアシステムが示されている。該バリアシステムは、展開されている拡張形態で装置300が送達されている状態である。リング305を含む自己拡張型ステント302、308が拡張形態に展開されて、蠕動によって腸322内を通って移動された後、カテーテルの外側シース310は(例えば、引っ込められて)近位側に移動されて、外側シース310の遠位端310dが胃流出路324内に又はその近くになるようにし得る。外側シース310の遠位端310dが胃流出路324の近くにある状態で、リング305に作用する蠕動波は、自己拡張型の固定ステント306を外側シース310から出るように遠位側に引いて、摺動させ得る。追加的に又は代替的に、外側シース310は、近位側に引っ込められて、自己拡張型の固定ステント306を露出させて固定ステント306を展開し、且つそれを拡張できるようにし得る。固定ステント306の外径は、図示の通り、胃流出路324よりも大きく、ステント305、308を遠位側に移動させ得るいずれの蠕動運動も、固定ステント306を胃流出路324と係合させるように引っ張り得るようにする。いくつかの実施形態では、固定ステント306は、幽門320と交差して延び得る。様々な実施形態では、固定ステント306の遠位端は、部分的に又は完全に幽門320と交差して延び得る。固定ステント306は、幽門320が作用できるように、幽門320の遠位側にある十二指腸球部に固定され得る。幽門内へ又は幽門と交差して延びた固定ステント306は、幽門320の領域に可撓性セクションを含み得、それにより、正常な幽門320の機能を維持するのを助け得る。様々な実施形態では、幽門320と交差して延びた固定ステント306の遠位端306dは、幽門320が少なくとも部分的に消化機能を果たせるように、近位アンカー306の残りの部分よりも軟質(例えば、より細い、より少数本のワイヤなど)とし得る。固定ステント306は、胃流出路324との固定ステント306の外面306sの係合のために、胃流出路324の輪郭を実質的に模倣し得る。外面306sは、胃流出路324との係合を改善するために、追加的な固定特徴、例えば接着剤又は1つ以上の突起、例えばバーブ、フック、又は他のファスナーを含み得る。装置300が展開された状態で、内側シースの遠位端312dは、ルーメン309から外側シース310の遠位端310dへ、近位側に引き出され得る。外側シース310(及び使用された場合には、内視鏡又は他の装置)は、患者から引き出されてもよく、及び送達されたバリア装置300は、糜粥などの物質が装置300のチューブ状バリア304のルーメン309中を通って移動するように、患者の体内に残される。チューブ状バリア304は、糜粥を、装置300を通って装置300の遠位側の腸322内へと移動させるための蠕動的な筋肉の動きを可能にする程に十分に弾性とし得、糜粥の吸収及び/又はさらには消化が低下及び/又は遅延されるようにする。様々な実施形態では、リング305は、流体がリング305を通って及びチューブ状バリア304の外表面に沿って流れるように、透過性とし得、それにより、消化酵素が、装置300の遠位端で可消化物質と交わり得るようにする。
【0027】
図4を参照して説明すると、本開示によるバリア装置400の実施形態が示されている。該バリア装置は、チューブ状バリア404が2つの自己拡張型ステント402に両端で接続された状態である。チューブ状バリア404は、装置400のルーメン409の周りに2つのヘリカルワイヤ405、406を含む。ヘリカルワイヤ405、406は、ルーメン409が開いた状態を保っていること及び装置400の全体的な向きを維持することを支援するので、いずれの著しい捻じれや歪みも実質的に防止し得る。2つのヘリカルワイヤ405、406が示されているが、例えば1、2、3、5、10、20本など、任意の本数のワイヤが用いられ得、これらワイヤは、ヘリカル、湾曲、長手方向に直線、円周、それらの組み合わせなどとし得る。
【0028】
本明細書で説明する様々な実施形態、或いは本開示の範囲内において、チューブ状バリアは、弾性材料、例えばシリコーン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ゴム、それらの組み合わせなどを含み得る。チューブ状バリアは、物質が、チューブ状バリアのルーメン中を通過できるようにし得る。チューブ状バリアの展性に起因して、平滑筋は、収縮して蠕動波を生じ、チューブ状バリア中を通して物質を移動させる。チューブ状バリアは透過性とし得、物質の一部分が装置に沿ってバリア中を通ることができるようにする。チューブ状バリアの透過性は、一部の物質の通過を可能にするが、他の物質の通過を制限し得る細孔径によって限定され得る。チューブ状バリアはナノ繊維を含み得、これは、繊維のないバリアと比較してチューブ状バリアの剛性及び/又は弾力性を高め得る。ナノ繊維は、例えば十字などのパターンに方向付けられていてもよい。
【0029】
本明細書で説明する様々な実施形態、或いは本開示の範囲内において、ステントは、形状記憶材料、例えばステンレス鋼、ニチノール、別の合金、ポリマー、それらの組み合わせなどを含み得る。ステントは、露出されていても、ステントのバリア特性を高め得るチューブ状バリアで部分的に被覆されていても、又は完全に被覆されていてもよい。ステント及び/又はバリア装置は、様々な直径、例えば、直径約18ミリメートル~約25ミリメートルを有し得る。装置の長さは、十二指腸又は十二指腸の吸収長に沿って変化し得、例えば、装置の長さは、約0センチメートル超~約150センチメートルとし得、約20センチメートル~約35センチメートルの長さ、約25センチメートル~約30センチメートルの長さなどとし得る。ステントは、編み、編組、レーザカットなどとし得る。ステントは、十分な半径方向力を有して、体内管腔を実質的に詰まっていない状態にさせ得る、例えば、半径方向力は、センチメートル当たり約1.9ニュートンを上回る。様々な実施形態では、ステントは、様々な細孔径、例えば約5ミクロン未満の細孔径を有し得る。
【0030】
様々な実施形態では、装置は、完全に蠕動によって、又は蠕動に支援されて送達され得る。蠕動による装置の展開は、約6時間かかる可能性があり、装置の長さ及びステントの数に依存して変わる。蠕動での移動は、患者によって異なり得る。いくつかの実施形態では、ステント及びアンカーの全てが数分内で展開される可能性があり、及び蠕動によって、装置を処置後の送達された形態へ変形させ得る。装置の長さは、1つ又は複数の体内管腔内でのいずれの長さともし得、例えば約25cm~約200cmとし得る。別の例に関し、装置は、長さが約150cmとし得る。
【0031】
様々な実施形態では、内側シースは、均一な直径、及び/又は可変直径の、中実、中空、伸縮性、圧縮性のワイヤとし得る。内側シースは、送達形態におけるバリア装置に対する内部取り付け支持をもたらし得る。
【0032】
様々な実施形態では、本開示は、胃流出路内に医療装置を固定することに限定されない。例えば、本開示の医療装置は、食道、幽門、小弯、胃洞内などに固定されてもよい。様々な実施形態では、装置、又は1つ以上のステントなどの装置の一部分は、解剖学的構造にステープルで留められても、糊付けされても、粘着されても、縫われても、摩擦嵌めされても、又は他の方法で接着されてもよい。
【0033】
様々な実施形態では、医療専門家がバリア装置を送達するための方法は、装置のチューブ状バリアの遠位端に配置された自己拡張型ステントを、患者の体内管腔内に送達することを含み得る。チューブ状バリアの少なくとも一部分が、体内管腔内に送達され得る。自己拡張型ステント、及びチューブ状バリアの部分は、蠕動によって、患者の体内管腔に沿って移動され得る。チューブ状バリア装置の近位端に配置された自己拡張型の固定ステントが、患者の器官内に位置決めされ得る。体内管腔はGI管とし得、及び器官は胃流出路とし得る。バリア装置は、送達形態で、カテーテルのシース内に拘束され得る。自己拡張型ステントを送達することは、自己拡張型ステントの周りからカテーテルのシースを近位側に引っ込めることを含み得る。患者は肥満であり得、及びGI管内へチューブ状バリアの少なくとも一部分を送達することは、体重減少に作用し得る。
【0034】
本明細書で開示し且つ特許請求する装置及び/又は方法は全て、本開示に照らして、必要以上に実験することなく、製作され且つ実施され得る。本開示の装置及び方法は、好ましい実施形態に関して説明されているが、当業者には、本開示の概念、趣旨及び範囲から逸脱せずに、装置及び/又は方法に、及び本明細書で説明する方法のステップ又は一連のステップにおいて、変形が加えられ得ることが明らかとし得る。当業者に明白な全てのそのような同様の代替例及び修正例は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような本開示の趣旨、範囲及び概念内にあるものとみなされる。
【国際調査報告】