(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】放射冷却性布帛およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
D03D 15/52 20210101AFI20221219BHJP
D03D 15/283 20210101ALI20221219BHJP
D03D 15/20 20210101ALI20221219BHJP
D04B 1/16 20060101ALI20221219BHJP
D04B 21/16 20060101ALI20221219BHJP
D01F 1/10 20060101ALI20221219BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20221219BHJP
A41D 31/04 20190101ALI20221219BHJP
【FI】
D03D15/52
D03D15/283
D03D15/20 100
D04B1/16
D04B21/16
D01F1/10
A41D31/00 502A
A41D31/04 Z
A41D31/00 503H
A41D31/00 503F
A41D31/00 502Q
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525634
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 US2020058810
(87)【国際公開番号】W WO2021091962
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521465315
【氏名又は名称】ライフラボズ デザイン、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラウ、シンディ イー シン
(72)【発明者】
【氏名】ジュ、ペイ
(72)【発明者】
【氏名】タスシア、エリック
【テーマコード(参考)】
4L002
4L035
4L048
【Fターム(参考)】
4L002AA05
4L002AA06
4L002AB02
4L002AC00
4L002AC07
4L002BA00
4L002CA00
4L002EA00
4L002FA01
4L002FA06
4L035AA05
4L035BB31
4L035EE07
4L035JJ05
4L035JJ10
4L035JJ28
4L035KK05
4L048AA15
4L048AA24
4L048AA34
4L048AA56
4L048AB07
4L048AB11
4L048AC00
4L048CA00
4L048CA15
4L048DA00
4L048DA01
4L048DA13
4L048DA27
(57)【要約】
布帛は、1または複数の糸を含む。1または複数の糸のそれぞれは、複数のフィラメントを含む。フィラメントのそれぞれは、布帛が9.5μmの波長において少なくとも37%の赤外放射透過率を有するように、20~50μmの範囲内の平均直径を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の糸を備える布帛であって、
前記1または複数の糸のそれぞれは、複数のフィラメントを含み、
前記複数のフィラメントのそれぞれは、前記布帛が9.5μmの波長において少なくとも37%の赤外線放射(IR)透過率を有するように、20~50μmの範囲内の平均直径を有する、
布帛。
【請求項2】
前記フィラメントは、20~40μmの範囲内の平均直径を有する、請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
前記フィラメントは、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリアミドのうちの1または複数を含む、請求項1または2に記載の布帛。
【請求項4】
前記布帛は、0~12%の範囲内の気孔率を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の布帛。
【請求項5】
前記1または複数の糸は、表面にコーティングを有する少なくとも1つの糸を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の布帛。
【請求項6】
前記1または複数の糸は、染料を含有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の布帛。
【請求項7】
前記1または複数の糸は、紫外線遮断剤を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の布帛。
【請求項8】
前記紫外線遮断剤は、ZnOまたはTiO
2のうちの1または複数を含む、請求項7に記載の布帛。
【請求項9】
前記1または複数の糸は、セラミック充填剤を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の布帛。
【請求項10】
前記1または複数の糸のそれぞれは、最大400μmの平均直径を有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の布帛。
【請求項11】
布帛を備える装置であって、
前記布帛は、1または複数の糸を含み、
前記1または複数の糸のそれぞれは、複数のフィラメントを含み、
前記複数のフィラメントのそれぞれは、前記布帛が9.5μmの波長において少なくとも37%の赤外線放射(IR)透過率を有するように、20~50μmの範囲内の平均直径を有する、
装置。
【請求項12】
前記フィラメントは、20~40μmの範囲内の平均直径を有する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記フィラメントは、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリアミドのうちの1または複数を含む、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記布帛は、0~12%の範囲内の気孔率を有する、請求項11から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記1または複数の糸は、表面にコーティングを有する少なくとも1つの糸を含む、請求項11から14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記1または複数の糸は、染料を含有する、請求項11から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記1または複数の糸は、紫外線遮断剤を含む、請求項11から16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記紫外線遮断剤は、ZnOまたはTiO
2のうちの1または複数を含む、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記1または複数の糸は、セラミック充填剤を含む、請求項11から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記1または複数の糸のそれぞれは、最大400μmの平均直径を有する、請求項11から19のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づき、2019年11月6日に出願された米国仮特許出願第62/931,727号の利益を主張し、これによってその内容全体を本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、概して、アパレル用の布帛に関し、より詳細には、アパレル用の放射冷却性布帛およびそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エネルギー危機および気候変動に関連付けられる問題は、より重大になってきており、対処する必要がある。最近の研究によれば、世界的に消費されているすべての電気の15%は、家屋およびオフィスを冷却するために使用されており、その結果、世界中の温室効果ガス排出を増加させている。したがって、エネルギー需要を低減させる新たな技術の開発が必要である。例えば、冷却設定点温度を2℃上昇させると、世界的にエネルギーの20%超を節約することができる。
【0004】
個人の冷却管理は、エネルギーコストを低減させるのに効果的な方法となる。典型的な室内環境では、人体において皮膚温が33.5℃の場合、中赤外熱放射(7~14μmの波長範囲)で失われる身体の放射熱は、全損失熱の50%超を占める。綿およびポリエステルのような従来の織物のほとんどは、赤外線放射(IR)を通さない材料であるため役に立たない。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、放射冷却性布帛および布帛から作製されたアパレル、ならびに布帛を製造する方法が記述される。
【0006】
1つの態様において、布帛は、1または複数の糸を含む。1または複数の糸のそれぞれは、複数のフィラメントを含む。フィラメントのそれぞれは、布帛が9.5μmの波長において少なくとも37%のIR透過率を有するように、20~50μmの範囲内の平均直径を有する。いくつかの実施形態において、布帛は、PhabrOmeterまたはNu Cybertekのシステムによって測定して、50未満の剛性を有する。
【0007】
いくつかの実施形態において、1または複数の糸のそれぞれは、最大400μmの平均直径を有する。いくつかの実施形態において、1または複数の糸は、表面にコーティングを有する少なくとも1つの糸を含む。1または複数の糸は、染料を含むことにより、異なる色を有し得る。いくつかの実施形態において、1または複数の糸は、紫外線遮断剤を含む。いくつかの実施形態において、紫外線遮断剤は、ZnOまたはTiO2を含む。いくつかの実施形態において、1または複数の糸は、1または複数のセラミック充填剤を含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、布帛は、0~12%の範囲内の気孔率を有する。気孔率は、本開示では、1-カバーファクターと定義される。
【0009】
いくつかの実施形態において、フィラメントは、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリアミドのうちの1または複数を含む。
【0010】
別の態様において、装置は、布帛を含む。布帛は、1または複数の糸を含む。1または複数の糸のそれぞれは、複数のフィラメントを含む。フィラメントのそれぞれは、布帛が9.5μmの波長において少なくとも37%のIR透過率を有するように、20~50μmの範囲内の平均直径を有する。いくつかの実施形態において、装置は、アパレル、履物、テント、または寝袋のうちの1つを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本技術の様々な実施形態の特定の特徴は、添付の特許請求の範囲に具体的に記載される。本技術の特徴および利点のよりよい理解は、本開示の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明と、添付図面とを参照することによって得られるであろう。
【0012】
【
図1】1つの例示的な実施形態による糸製造装置を示す概略図である。
【0013】
【
図2】様々な織布の冷却性能、布帛厚み、およびIR透過率を示す図である。
【0014】
【
図3】1つの例示的な実施形態による、本開示の技法によって形成されたPE布帛の剛性試験データおよび厚みデータを例示する図である。
【0015】
【
図4】従来のPET布帛の剛性試験データおよび厚みデータを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明では、本開示の様々な実施形態が十分に理解されるようにするために、特定の具体的な詳細が記載される。しかしながら、当業者には、本開示がこれらの詳細なしに実施され得ることが理解されよう。さらに、本明細書では本開示の様々な実施形態が開示されるが、当業者の一般的な共通認識に従い、本開示の範囲内で多くの改変および変更を行うことができる。そのような変更には、実質的に同じ手段で同じ結果を実現するために、本開示のいずれかの態様を公知の均等物で代替することが含まれる。
【0017】
文脈上他の解釈が必要な場合を除き、本明細書および請求項の全体において、「備える(comprise)」という言葉、ならびに「備える(comprises)」および「備える(comprising)といったその変形は、オープンで包括的な意味で、すなわち「を含むがこれに限定されない」と解釈されるものとする。本明細書全体における値の数値範囲の記述は、範囲を定義する値を包括する範囲に入る個々の値それぞれを別々に参照する簡略表記として機能することを意図し、個々の値それぞれは、本明細書に別々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。さらに、単数形態の「a」、「an」および「the」には、文脈に明らかに他の規定がない限り、複数の指示物が含まれる。
【0018】
本明細書全体における、「1つの実施形態」または「一実施形態」への参照は、その実施形態との関連で記述される特定の特徴、構造、または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における「1つの実施形態において」または「一実施形態における」という文言の記載は、いくつかの例ではすべて同じ実施形態を参照し得るが、必ずしもとはそうとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1または複数の実施形態において、任意の好適なやり方で組み合わせられ得る。
【0019】
本明細書に記述される様々な実施形態は、個人の身体の冷却を目的とするIR透過性布帛を対象とする。当分野における先行技術は、約1μmまたはそれよりも小さい直径を有する繊維/フィラメントで作製された布帛が赤外線透過に効果的であると提唱した。人体からの赤外線放射の通過を可能にするように小さな直径を有する(例えば、数マイクロメートルまたはそれよりも細い)繊維を作製するべきであることが分かっている。しかしながら、小さな直径の繊維は、通常の生地製作プロセスにおいて脆弱である。本明細書で開示される技法は、少なくとも20μmのかなり大きい直径を有する繊維を使用して、放射冷却性布帛用のより強い糸を作製し、従来の生地材料としての生産品質および速度を著しく向上させる。さらに、本明細書で開示される技法は、赤外透過性の布帛をもたらす。例えば、本開示の布帛は、9.5μmの波長において少なくとも37%のIR透過率を有する。
【0020】
ここで、添付図面を用いて実施形態を説明する。まず、
図1を参照する。
図1は、1つの例示的な実施形態による糸製造装置100を示す概略図である。糸製造装置100は、ポリマー顆粒104を受けるよう構成されたフードホッパ102を含む。ポリマー顆粒104は、糸用の細フィラメントを形成するように選択される1または複数の材料を含む。例えば、材料は、選択されるポリマーおよび他の添加剤を含み得る。いくつかの実施形態において、選択されるポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリアミドのうちの1または複数を含み得る。いくつかの実施形態において、選択される添加剤は、色素剤、紫外線(UV)遮断剤、または他の機能性薬剤を含み得る。
【0021】
糸製造装置100は、ポリマー顆粒104を所定の高温で溶融してポリマーメルト108を発生させる加熱ユニット106をさらに含む。ポリマー糸の作製において使用されるポリマーは、例えば、後続の溶融押出プロセスにおいて適度な易動性をもたらす17~30g/10分の範囲内の粘度(ASTM D1238に基づく)を有する、直鎖状低密度PE(LLDPE)または高密度PE(HDPE)を含み得る。ポンプ110は、ポリマーメルト108を、複数の紡糸口金112-1を含む紡糸口金装置112へ移動させるために用いられる。紡糸口金112-1のそれぞれにより、フィラメント/繊維114が押出/生成され、糸駆動ローラ116によって収集される。紡糸口金装置における紡糸口金112-1の数および材料の流速に応じて、様々なフィラメント数の、異なるフィラメントサイズを得ることができる。いくつかの実施形態において、フィラメント114の平均直径は、20~50μmの範囲内になるよう制御される。いくつかの実施形態において、良好な肌触りを有する冷却性布帛を形成するために、フィラメント114の平均直径は、25~50μm、30~50μm、35~50μm、40~50μm、20~45μm、25~45μm、30~45μm、35~45μm、20~40μm、25~40μm、30~40μm、20~35μm、25~35μm、または20~30μmの範囲内に制御される。
【0022】
フィラメント114が糸駆動ローラ116によって引っ張られる間、フィラメント114は、空気118によって冷却される。いくつかの実施形態において、代替的に、またはさらに、フィラメント114は、冷却された後、その特性を変更するための蒸気処理120に供され得る。いくつかの実施形態において、紡糸されたままのマルチフィラメント糸が、少なくとも2.2:1の延伸比で紡糸口金112-1から延伸され、少なくとも155回/m撚られて、強い糸が形成される。延伸プロセスは、ポリマー糸122の機械的強度、例えばテナシティおよび伸び率を増加させる。例えば、延伸されたPE糸は、少なくとも1.61g/dのテナシティおよび最大111.26%の伸び率を有し得る。フィラメント114は糸駆動ローラ116によって収集されて、糸122が形成され、給送ローラ124へ給送される。次に、糸122がボビン126に巻かれ、布帛を作製する準備ができる。
【0023】
1または複数の糸122から、製織および編成の技法により、個人用冷却性衣服のための布帛が作製される。繊維サイズと糸サイズの両方がIR透過率に影響するため、いくつかの実施形態において、布帛厚みの低減ならびに繊維/フィラメントおよび糸サイズの制御は、衣服の冷却性能に大きな作用を及ぼし得る。特に、許容可能なIR透過に効果的とするためには、糸の繊維サイズは約1μmの直径を有するべきであることが判明している。しかしながら、本明細書で開示される技法を使用すると、糸122の繊維サイズは、当分野の先行技術における冷却性衣服の繊維サイズよりも約20~50倍大きい、20~50μmの範囲内になるよう制御される。本開示の技法は、強度およびIR透過性のある布帛を形成するための、ポリマー材料、繊維のサイズ、および糸のサイズの選択を含む。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリアミドのうちの1または複数が、20~50μm、25~50μm、30~50μm、35~50μm、40~50μm、20~45μm、25~45μm、30~45μm、35~45μm、20~40μm、25~40μm、30~40μm、20~35μm、25~35μm、または20~30μmの範囲内の直径を有する繊維のための許容可能なIR透過率を実現し得る材料に用いられる。
【0024】
IR透過に効果的とするために、糸122の直径は、最大400μmであるよう制御される。いくつかの実施形態において、糸122の直径は、最大350μm、300μm、250μm、または200μmである。いくつかの実施形態において、糸122の直径は、200~400μm、200~350μm、200~300μm、200~250μm、250~400μm、250~350μm、250~300μm、300~400μm、300~350μm、または350~400μmの範囲内である。
【0025】
これらの発見は、布帛が9.5μmの波長において少なくとも37%のIR透過率を有することを可能にする。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される技法によって形成された布帛は、9.5μmの波長において少なくとも38%、40%、42%、45%、または50%のIR透過率を有し得る。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される技法によって形成された布帛は、9.5μmの波長において37~50%、37~45%、37~40%、38~50%、38~45%、40~50%、40~45%、または45~50%の範囲内のIR透過率を有し得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、布帛を形成するための製織および編成のプロセスは、布帛構造に細孔を生じさせ得る。例えば、布帛は、0~12%の範囲内の気孔率を有し得る。細孔は、IR透過率および空気透過性を含む、布帛の特性を変更するために使用され得る。
【0027】
いくつかの実施形態において、糸は、糸に色を与えて布帛にパターンまたは色をもたらすための様々な色素剤を含んで形成され得る。いくつかの実施形態において、糸は、他の機能性薬剤を含んで形成され得る。例えば、より良好なUV遮断機能をもたらす能力を糸に与えるために、1または複数のUV遮断剤が糸に添加されてもよい。いくつかの実施形態において、UV遮断剤は、ZnOおよびTiO2を含み得る。いくつかの実施形態において、機能薬剤は、セラミック充填剤の形態で糸に添加されてもよい。いくつかの実施形態において、添加される機能性薬剤は、最大でも、布帛の(9.5μmの波長における)IR透過率の低下が15%を超えない点まで添加される。
【0028】
図2は、様々な布帛の冷却性能、布帛厚み、およびIR透過率を示す図である。まず、
図2は、本明細書で開示される技法を用いて形成された2枚のPE織布サンプルの冷却性能を、従来のポリエステルおよび綿の織布サンプルと比較して示す。結果の示すところによれば、厚み0.28mmのPE布帛(150D(デニール)/24F(糸当たりのフィラメント数)、糸直径285μm、フィラメント径37μm)では、従来のPET織布帛(厚み0.29mm)および綿ブロードクロス布帛(厚み0.27mm)よりも、皮膚温が夫々2.1および1.9℃冷たいのに対し、厚み0.36mmのPE布帛(150D/50F糸直径285μm、フィラメント径22μm)では、PET織布および綿ブロードクロス布帛よりも、皮膚温が夫々1.8および1.6℃冷たかった。さらに、150D/24FのPE布帛、150D/50FのPE布帛、PET織布、および綿ブロードクロス布帛のIR透過率は、夫々、50%、37%、0%、および0%である。これらの結果は、熱調節における本開示のPE布帛の利点を立証する。
【0029】
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される技法によって形成された布帛は、50未満の剛性を有し得る。
図3は、1つの例示的な実施形態による、本開示の技法によって形成されたPE布帛の剛性試験および厚みデータを例示する図である。
図4は、従来のPET布帛の剛性試験および厚みデータを例示する図である。剛性試験は、米国繊維化学技術・染色技術協会(AATCC)のTM202規格に基づいて実行される。
【0030】
図3に示されるように、150D/24FのPE糸(糸直径285μm、フィラメント径37μm)で作製された、0.26mmの厚みを有する織布が、42.55の剛性を有するのに対し、500D/72FのPE糸(糸サイズ376μm、フィラメント径37μm)で作製された、0.53mmの厚みを有する織布は、49の剛性を有する。150D/24FのPE糸で作製された織布は、500D/72FのPE糸から作製された織布よりも柔らかい感触を有する。より小さな糸サイズは、より良好なドレープ適性を有する、より薄い布帛に寄与するので、この結果は、アパレル用途において糸直径を最大400μmに制御することの追加の利益を示している。
【0031】
図4に示すように、36μmのフィラメント径をもつPET織布サンプル1(厚み0.38mm)が、56.64の剛性を有するのに対し、15μmのフィラメント径をもつPET織布サンプル2(厚み0.41mm)は、44.24の剛性を有する。従来の布帛の場合、許容可能な肌触り(50未満の剛性)を得るためには、フィラメント径が20μm未満(この例においては15μm)である必要がある。
図3を再度参照すると、本明細書で開示される技法から作製された布帛は、37μmのフィラメント径でも許容可能な剛性を実現することができる。
【0032】
まとめると、本開示と一致する布帛は、良好な赤外透過率、良好な冷却性能、および良好なドレープ適性を実現し、そのため、これらはアパレル用途に適切である。布帛は、冷却性布帛を必要とする他の分野で用いることもできる。
【0033】
1つの態様において、本開示の放射冷却性布帛は、例えば、サーマルカメラから収集された透過率データから、9.5μmの波長において少なくとも37%のIR透過率を有する。
【0034】
別の態様において、布帛は、9.5μmの波長において少なくとも38%の赤外線放射透過率を有する材料から作製され得る。材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリアミドを含み得るが、これらに限定されない。
【0035】
なお別の態様において、布帛は、20~50μmの範囲内の平均直径を有するフィラメントを含む糸から作製される。糸は、最大400μmの平均直径を有する。
【0036】
なお別の態様において、延伸されたPE糸によって作製された放射冷却性布帛は、0~12%の気孔率範囲で最大400μmの厚みを有する。
【0037】
なお別の態様では、静電気を回避し、強度を高め、フィラメントの結合を向上させるために、糸を製織または編成の前にサイジング材料でコーティングしてもよい。
【0038】
本開示の前述の説明は、例示および説明の目的で提供されている。包括的であること、または開示されている厳密な形態に本開示を制限することは意図していない。本開示の広がりおよび範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれかによって限定されてはならない。当業者には、多くの変更および変形が明らかであろう。変更および変形は、開示されている特徴の任意の適切な組み合わせを含む。実施形態は、本開示の原理およびその実際の適用を最良に説明するために選択され、記述されており、それにより、他の当業者が、予期される特定の使用に適合した様々な実施形態および様々な変更について本開示を理解することを可能にするものである。本開示の範囲は、続く請求項およびそれらの均等物によって定義されることが意図される。
【国際調査報告】