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特表2022-553821M-タンパク質アッセイおよびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】M-タンパク質アッセイおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20221219BHJP
   G01N 27/62 20210101ALI20221219BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N27/62 V
G01N33/50 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022525780
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(85)【翻訳文提出日】2022-07-01
(86)【国際出願番号】 US2020058927
(87)【国際公開番号】W WO2021092044
(87)【国際公開日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】62/931,063
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】サントキーテ,ラサ
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,ジアニン
(72)【発明者】
【氏名】プイグ,オスカル
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041DA04
2G041DA05
2G041EA04
2G041FA12
2G041GA06
2G041HA01
2G041LA08
2G041MA05
2G045AA26
2G045BB03
2G045CA26
2G045DA36
2G045FB06
(57)【要約】
本開示は、精製された免疫グロブリンを液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することを含む、対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定するための方法を提供する。いくつかの局面において、免疫グロブリンは、免疫捕捉(IC)を使用して精製される。特定の局面において、対象は、形質細胞障害、例えば多発性骨髄腫を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
形質細胞障害を有する対象から得られる試料中のM-タンパク質を測定する方法であって、以下:
(i)免疫捕捉により試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および
(ii)免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用すること
を含む、方法。
【請求項2】
形質細胞障害のための療法後の完全な応答者を決定する際の偽陽性を減少させる方法であって、以下:
(i)免疫捕捉により生体試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および
(ii)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用すること
を含む、方法。
【請求項3】
残存疾患を有する対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することを含む、該対象を同定する方法であって、ここでM-タンパク質が、以下:
(1)免疫捕捉により生体試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および
(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用すること
により測定され;対象が、形質細胞障害を有すると以前に同定された、方法。
【請求項4】
形質細胞障害を処置するための療法に適した対象を同定する方法であって、以下:
(i)対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することであって、ここでM-タンパク質が、以下:
(1)免疫捕捉により生体試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および
(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用すること
により測定される、測定すること
を含む、方法。
【請求項5】
さらに以下:
(ii)形質細胞障害を処置するための療法をM-タンパク質を有すると同定される対象に投与すること
を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
対象が形質細胞障害を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
形質細胞障害を有する対象を処置する方法であって、以下:
(i)対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することであって、ここでM-タンパク質が、以下:
(1)免疫捕捉により生体試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および
(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することにより測定される、測定すること;および
(ii)形質細胞障害のための療法をM-タンパク質を有すると同定される対象に投与すること
を含む、方法。
【請求項8】
形質細胞障害を有する対象を処置する方法であって、以下:
(i)形質細胞障害のための療法を対象に投与すること;
(ii)対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することであって、ここでM-タンパク質が、以下:
(1)免疫捕捉により生体試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および
(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用すること
により測定される、測定すること;および
(iii)形質細胞障害のための追加の療法を対象に投与すること
を含む、方法。
【請求項9】
生物学的試料が尿試料または血清試料である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
形質細胞障害のための療法を形質細胞障害を有する対象に投与することを含む、該対象を処置する方法であって、ここで対象が、血清および/または尿M-タンパク質を有すると同定されており、および血清および/または尿M-タンパク質が、免疫捕捉を使用して精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することにより、対象から得られる生物学的試料中で測定された、方法。
【請求項11】
対象が形質細胞障害を処置するために以前の療法を受けた、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
以前の療法が免疫療法を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
形質細胞障害のための療法が免疫療法を含む、請求項2、4から8、および10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
免疫療法が抗体療法を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
免疫療法がチェックポイント阻害剤の療法を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
抗体が、SLAMF7、PD-1、CTLA-4、LAG3、TIGIT、TIM3、NKG2a、OX40、ICOS、CD137、KIR、TGFβ、IL-10、IL-8、IL-2、CD96、VISTA、B7-H4、Fasリガンド、CXCR4、メソテリン、CD27、GITR、CD40、CD56、CD38、CD229、CD200、CD28、CD19、BCMA、CD317、CD70、B2Mおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるタンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
形質細胞障害のための療法が、抗SLAMF7抗体を含む、請求項2、4から8、および10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
形質細胞障害のための療法が、シクロホスファミド、ドキソルビシン、エトポシド、リポソームドキソルビシン、メルファラン、ビンクリスチン、ボルテゾミブ、レナリドマイド、カルフィルゾミブ、ポマリドマイド、パノビノスタット、サリドマイド、幹細胞移植、CAR-T療法、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項2、4から8、および10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
M-タンパク質が、IgG、IgA、およびIgM、IgD、それらの断片、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
M-タンパク質が、カッパアイソタイプまたはラムダアイソタイプを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
M-タンパク質が、1つまたは複数の遊離軽鎖を含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
MSが、エレクトロスプレー(ESI)飛行時間型(TOF)MSを含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
MSが、レーザー脱離イオン化(MALDI)TOFを含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
MSが、MALDI TOF MSを含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
免疫捕捉が、自動化された免疫捕捉である、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
精製された免疫グロブリンが、軽鎖および重鎖に解離される、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
精製された免疫グロブリンを軽鎖および重鎖に解離することをさらに含む、請求項1から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
精製された免疫グロブリンが、化学的還元により解離される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
精製された免疫グロブリンが、該精製された免疫グロブリンを、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP);TCEP-HClおよびその他のTCEP塩; DTT(2,3ジヒドロキシブタン-1,4-ジチオール)、DTE(2,3ジヒドロキシブタン-1,4-ジチオール);チオグリコレート;亜硫酸塩;亜硫酸水素塩;硫化物;二硫化物;2-メルカプトエタノール;2-メルカプトエタノール-HCl;Bond-Breaker TCEP溶液、中性pH;システイン-HCl;グアニジン-HCl;尿素;およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される試薬と接触させることにより、解離される、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
LCが、超高性能(UC)LCである、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
LCが、MSとオンラインである、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
形質細胞障害が、多発性骨髄腫を含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
多発性骨髄腫が、軽鎖多発性骨髄腫を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
多発性骨髄腫が、形質細胞白血病を含む、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
形質細胞白血病が、一次形質細胞白血病または二次形質細胞白血病を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
抗SLAMF7抗体が、ヒトSLAMF7への結合についてエロツズマブと交差競合する、請求項17から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
抗SLAMF7抗体が、エロツズマブと同じまたは重複するヒトSLAMF7上のエピトープに結合する、請求項17から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
抗SLAMF7抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である、請求項17から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
抗SLAMF7抗体が、エロツズマブである、請求項17から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
抗SLAMF7抗体が、静脈内投与される、請求項17から39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
対象に追加の抗癌剤を投与することをさらに含む、請求項1から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
レナリドマイドを対象に投与することをさらに含む、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
ポマリドミドを対象に投与することをさらに含む、請求項1から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
デキサメタゾンを対象に投与することをさらに含む、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
ジフェンヒドラミンを対象に投与することをさらに含む、請求項1から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
ラニチジンを対象に投与することをさらに含む、請求項1から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
アセトアミノフェンを対象に投与することをさらに含む、請求項1および2から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
残存疾患が、微小残存疾患(MRD)を含む、請求項3、5、9および11から47のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
このPCT出願は、2019年11月5日に出願された米国仮出願第62/931,063号の優先権を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、生物学的試料中のM-タンパク質を測定するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
開示の背景
モノクローナル免疫グロブリン血症は、M-タンパク質として一般に既知である1つまたは複数のモノクローナル免疫グロブリンの異常な産生を特徴とする血液学的障害である。M-タンパク質は骨髄中で急速に分裂するクローン形質細胞により発現され、血流に分泌されるため、血清中のM-タンパク質を測定することにより悪性形質細胞を検出することができる。M-タンパク質は、本質的に多様である:各患者の過剰産生抗体の可変領域は異なる;しかしながら、個人の悪性形質細胞は、元の前駆細胞と同一の分子量で定義された免疫グロブリンを発現する。
【0004】
多発性骨髄腫患者の診断およびモニタリングについて、M-タンパク質の測定が必要である。現在のゲル電気泳動ベースのM-タンパク質アッセイは、感度および特異性が低く、M-タンパク質と共移動する免疫グロブリンまたは他の血清タンパク質の存在のため、非常に低いM-タンパク質濃度で定量的でない。したがって、生物学的試料中のM-タンパク質を測定するための改良された方法が必要である。
【発明の概要】
【0005】
開示の概要
本開示の特定の局面は、形質細胞障害を有する対象から得られる試料中のM-タンパク質を測定する方法であって、以下:(i)免疫捕捉により試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および(ii)免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することを含む方法に向けられる。
【0006】
本開示の特定の局面は、形質細胞障害の療法後の完全な応答者を決定する際の偽陽性を減少させる方法であって、以下:(i)免疫捕捉により生物学的試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および(ii)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することを含む方法に向けられる。
【0007】
本開示の特定の局面は、残存疾患を有する対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することを含む、該対象を同定する方法であって、ここでM-タンパク質が、以下:(1)免疫捕捉により生物学的試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することにより測定され;対象が、形質細胞障害を有すると以前に同定された方法に向けられる。
【0008】
本開示の特定の局面は、形質細胞障害を処置するための療法に適した対象を同定する方法であって、以下:(i)対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することであって、ここでタンパク質が、以下:(1)免疫捕捉により生物学的試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することにより測定される、測定することを含む方法に向けられる。いくつかの局面において、該方法は、(ii)M-タンパク質を有すると同定される対象に形質細胞障害のための療法を投与することをさらに含む。
【0009】
いくつかの局面において、対象は、形質細胞障害を有する。
【0010】
本開示の特定の局面は、形質細胞障害を有する対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することを含む、該対象を処置する方法であって、ここでM-タンパク質が、以下:(1)免疫捕捉により生物学的試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用すること;およびM-タンパク質を有すると同定される対象に形質細胞障害のための療法を投与することにより測定される方法に向けられる。
【0011】
本開示の特定の局面は、形質細胞障害を有する対象を処置する方法であって、以下:(i)形質細胞障害のための療法を対象に投与すること;(ii)対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することであって、ここでM-タンパク質が、以下:(1)免疫捕捉により生物学的試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することにより測定される、測定すること;および(iii)形質細胞障害のための追加の療法を対象に投与することを含む方法に向けられる。
【0012】
いくつかの局面において、生物学的試料は、尿試料または血清試料である。
【0013】
本開示の特定の局面は、形質細胞障害のための療法を形質細胞障害を有する対象に投与することを含む、対象を処置する方法であって、ここで対象が、血清および/または尿M-タンパク質を有すると同定されており、および血清および/または尿M-タンパク質が、免疫捕捉を使用して精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することにより、対象から得られる生物学的試料中で測定された方法に向けられる。
【0014】
いくつかの局面において、対象は、形質細胞障害を処置するために以前の療法を受けた。いくつかの局面において、以前の療法は免疫療法を含む。いくつかの局面において、形質細胞障害のための療法は、免疫療法を含む。いくつかの局面において、免疫療法は、抗体療法を含む。いくつかの局面において、免疫療法は、チェックポイント阻害剤の療法を含む。いくつかの局面において、抗体は、SLAMF7、PD-1、CTLA-4、LAG3、TIGIT、TIM3、NKG2a、OX40、ICOS、CD137、KIR、TGFβ、IL-10、IL-8、IL-2、CD96、VISTA、B7-H4、Fasリガンド、CXCR4、メソテリン、CD27、GITR、CD40、CD56、CD38、CD229、CD200、CD28、CD19、BCMA、CD317、CD70、B2Mおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるタンパク質に特異的に結合する抗体又はその抗体結合部分を含む。いくつかの局面において、形質細胞障害のための療法は、抗SLAMF7抗体を含む。
【0015】
いくつかの局面において、形質細胞障害のための療法は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、エトポシド、リポソームドキソルビシン、メルファラン、ビンクリスチン、ボルテゾミブ、レナリドマイド、カルフィルゾミブ、ポマリドマイド、パノビノスタット、サリドマイド、幹細胞移植、CAR-T療法またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0016】
いくつかの局面において、M-タンパク質は、IgG、IgA、およびIgM、IgD、それらの断片、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの局面において、M-タンパク質は、カッパアイソタイプまたはラムダアイソタイプを含む。いくつかの局面において、M-タンパク質は、1つまたは複数の遊離軽鎖を含む。
【0017】
いくつかの局面において、MSは、エレクトロスプレー(ESI)飛行時間型(TOF)MSを含む。いくつかの局面において、MSは、レーザー脱離イオン化(MALDI)TOFを含む。いくつかの局面において、MSは、MALDI TOF MSを含む。
【0018】
いくつかの局面において、免疫捕捉は、自動化された免疫捕捉である。いくつかの局面において、精製された免疫グロブリンは、軽鎖および重鎖に解離される。いくつかの局面において、該方法は、精製された免疫グロブリンを軽鎖および重鎖に解離することをさらに含む。いくつかの局面において、精製された免疫グロブリンは、化学的還元により解離される。いくつかの局面において、精製された免疫グロブリンは、該精製された免疫グロブリンを、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、TCEP-HClおよびその他のTCEP塩;DTT(2,3ジヒドロキシブタン-1,4-ジチオール)、DTE(2,3ジヒドロキシブタン-1,4-ジチオール);チオグリコレート;亜硫酸塩;亜硫酸水素塩;硫化物;二硫化物;2-メルカプトエタノール;2-メルカプトエタノール-HCl;Bond-Breaker TCEP溶液、中性pH;システイン-HCl;グアニジン-HCl;尿素;およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される試薬と接触させることにより解離される。
【0019】
いくつかの局面において、LCは、超高性能(UC)LCである。いくつかの局面において、LCはMSとオンラインである。
【0020】
いくつかの局面において、形質細胞障害は、多発性骨髄腫を含む。いくつかの局面において、多発性骨髄腫は、軽鎖多発性骨髄腫を含む。いくつかの局面において、多発性骨髄腫は、形質細胞白血病を含む。いくつかの局面において、形質細胞白血病は、一次形質細胞白血病または二次形質細胞白血病を含む。
【0021】
いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体は、ヒトSLAMF7への結合についてエロツズマブと交差競合する。いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体は、エロツズマブと同じまたは重複するヒトSLAMF7上のエピトープに結合する。いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体はエロツズマブである。いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体は静脈内投与される。
【0022】
いくつかの局面において、方法は、追加の抗癌剤を対象に投与することをさらに含む。いくつかの局面において、方法は、対象にレナリドマイドを投与することをさらに含む。いくつかの局面において、方法は、対象にポマリドマイドを投与することをさらに含む。いくつかの局面において、方法は、対象にデキサメタゾンを投与することをさらに含む。いくつかの局面において、方法は、対象にジフェンヒドラミンを投与することをさらに含む。いくつかの局面において、方法は、対象にラニチジンを投与することをさらに含む。いくつかの局面において、方法は、アセトアミノフェンを対象に投与することをさらに含む。
【0023】
いくつかの局面において、残存疾患は、微小残存疾患(MRD)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1は、ヒトから得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定するための免疫捕捉(IC)液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)方法論を示すフローチャートである。
【0025】
図2A-2Iは、以下:正常なヒト血清からの免疫捕捉免疫グロブリン(図2A-2C);第1の多発性骨髄腫患者の血清から得られる血清試料から免疫捕捉される免疫グロブリン(図2D-2F);および第2の多発性骨髄腫患者から得られる血清試料から免疫捕捉される免疫グロブリン(図2G-2I)についての液体クロマトグラフィー(図2A、2D、および2G)、代表的な質量スペクトル(図2B、2E、および2H)、および再構成されたスペクトル(図2C図2F、および2I)による、免疫グロブリンの単純化された分離の結果を示すグラフ表示である。
【0026】
図3は、PHYTIP(登録商標)抗ラムダ/カッパ捕捉アプローチを使用する、M-タンパク質およびモノクローナル治療用抗体(t-mAb)の一貫した高収率の回収率のグラフ表示である。
【0027】
図4は、示されているように、5つの同一でない治療用mAb(t-mAb)についてのデコンボリューションされた軽鎖標準曲線のグラフを示す。
【0028】
図5A-5Iは、ポリクローナルバックグラウンドより上の単一モノクローナル抗体軽鎖の低レベルの定量化を示す。3つの個別のモノクローナル抗を、正常なヒト血清にスパイクし、免疫捕捉IC-LC-MS方法論を使用してテストした。mAb1についての結果を図5A-5Cに、mAb2について図5D-5Fに、およびmAb3について図5G-5Iに示す。各抗体を、1000μg/mL(図5A、5D、および5G)、100μg/mL(図5B、5E、および5H)、および10μg/mL(図5C、5F、および5I)の濃度でテストした。免疫捕捉IC-LC-HRMS方法論についての推定LODは、感度が1000μg/mLの臨床SPEPアッセイのLODの100分の1である。図5J-5Mは、異なるM-タンパク質(IgGK、図5J;IgGL、図5K;IgAK、図5L;およびIgAL、図5M)を健康な血清にスパイクすることにより構成される人工試料中でのIC-LC-MSの検出限界を示す。検出限界は、ポリクローナルバックグラウンドに対するM-タンパク質ピークの比により異なる。
【0029】
図6は、SIFEにより測定可能な最低の段階希釈濃度でIC-LC-MS法により測定されるM-タンパク質MS応答の分布を表すプロットである。推定されるIC-LC-MS方法のLODは、SIFELODの10-100分の1である。
【0030】
図7A-7Nは、IC-LC-MS法アッセイが、M-タンパク質を検出するときに治療用モノクローナル抗体からの干渉を排除することを示す代表的な質量スペクトルである。
【0031】
図8A-8Hは、IC-LC-MSアッセイ(図8Cおよび8G)と比較した標準的な臨床試験(SPEP、図8Aおよび8E;SIFE、図8Bおよび8F;およびsFLC、図8Dおよび8H)の感度を示すグラフ表示である。異なる処置サイクル(1サイクルは28日)で2人の多発性骨髄腫患者(患者1、図8A-8D;患者2、図8E-8H)から収集される血清試料が、この分析のために使用された。
【0032】
図9A-9Fは、C1D1(図9A)、C18D1(図9B)、C8D1(図9C)、C26D1(図9D)、C15D1(図9E)およびC31D1(図9F)についてのIC-LC-MSアッセイによる免疫グロブリンプロファイルのグラフ表示である。多発性骨髄腫患者からの血清試料において、全ての処置時点で22470±1.5Daで検出可能なモノクローナル軽鎖ピークを示す。
【0033】
開示の詳細な説明
本開示は、対象から得られる試料中のM-タンパク質を測定するための方法を提供する。本開示はまた、対象から得られる試料中のM-タンパク質を測定することを含む、形質細胞障害のための療法に適した対象を同定するための方法を提供する。いくつかの局面において、M-タンパク質は、試料中の免疫グロブリンおよび/または遊離軽鎖を精製し、精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することにより測定される。いくつかの局面において、免疫グロブリンおよび/または遊離軽鎖は、免疫捕捉を使用して精製される。いくつかの局面において、該方法は、形質細胞障害のための療法を投与することをさらに含む。いくつかの局面において、該方法は、形質細胞障害を処置するのに有用な抗体またはその抗原結合部分、例えば、ヒトSLAMF7に特異的に結合する抗体(抗SLAMF7抗体)を対象に投与することをさらに含む。
【0034】
I.語
本開示をより容易に理解できるようにするために、特定の語を最初に定義する。本出願で使用される場合、本明細書で明示的に規定されている場合を除き、以下の各語は、以下に記載されている意味を有するものとする。追加の定義は、出願全体で説明される。
【0035】
本明細書で使用される場合、「M-タンパク質」なる語は、対象におけるモノクローナル免疫グロブリン血症、例えば多発性骨髄腫による1つまたは複数のモノクローナル免疫グロブリンの異常な産生の結果である、免疫グロブリンの多様な群を指す。M-タンパク質は、骨髄において急速に分裂するクローン形質細胞により発現され、血流に分泌される。M-タンパク質は本質的に多様である:各患者の過剰産生抗体の可変領域は異なる;しかしながら、個人の悪性形質細胞は、元の前駆細胞と同一の分子量で定義された免疫グロブリンを発現する。重鎖の定常領域に基づいて、M-タンパク質は、IgG、IgA、IgM、またはIgDクラスに属することができる。多発性骨髄腫において、IgGが最も一般的な免疫グロブリンであり、IgAが2番目に一般的であり、IgMは0.5%未満の症例しか含まず、IgDは非常にまれである。軽鎖の定常領域に基づいて、各免疫グロブリンは、カッパおよびラムダのアイソタイプに分けることができる。各M-タンパク質は、インタクトな免疫グロブリン分子および/またはベンスジョーンズタンパク質としても既知である「遊離軽鎖」(FLC)などの免疫グロブリン断片から実質的になるか、またはそれらからなることができる。「遊離軽鎖」は、重鎖に関連しない免疫グロブリンの軽鎖を指す。尿または血清中の遊離軽鎖の存在は、多発性骨髄腫のいくつかのマーカーの1つである。遊離軽鎖は、尿中で低分子量のモノマー、ダイマー、または高分子量のポリマーとして、血清中でテトラマーとして存在することができる。
【0036】
M-タンパク質は典型的に血流中に分泌されるため、悪性形質細胞は、血清中のM-タンパク質を測定することにより検出することができる。「測定すること」または「測定される」または「測定」なる語は、対象から得られる生物学的試料中の測定可能な量のM-タンパク質を決定することを意味する。本明細書で使用される場合、測定することは、質量分析工程を含む方法を使用して達成される。質量分析は、試料中に存在する1つまたは複数の分子の質量電荷比(m/z)を測定するのに役立つ分析ツールである。これらの測定値は、試料成分の正確な分子量を計算するためによく使用されることができる。通常、質量分析計は、分子量の決定により未知の化合物を同定し、既知の化合物を定量化し、および分子の構造および化学的性質を決定するために使用できる。本明細書に開示される方法において、精製および還元された免疫グロブリンは、質量分析計に適用され、生物学的試料中のM-タンパク質を同定する能力を高める。
【0037】
本明細書で使用される「生物学的試料」なる語は、対象から単離される生物学的材料を指す。生物学的試料は、M-タンパク質を含んでもよい任意の生物学的物質を含有することができる。生物学的試料は、例えば、血液、血漿、血清、骨髄生検、および/または尿などの任意の適切な生物学的組織または体液であることができる。一局面において、試料は血清試料である。一局面において、試料は尿試料である。一局面において、試料は骨髄生検である。
【0038】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル免疫グロブリン血症」は、1つまたは複数のM-タンパク質の産生を特徴とする一種の血液学的障害を指す。モノクローナル免疫グロブリン血症は、重要性が不明なモノクローナル免疫グロブリン血症などの良性から、多発性骨髄腫などの癌性までさまざまである。
【0039】
本明細書で使用される場合、「形質細胞障害」は、(時にはリンパ形質細胞様細胞またはBリンパ球に関連する)前悪性または悪性形質細胞のクローンまたは複数のクローンがM-タンパク質を産生して血流中に分泌する。形質細胞障害の非排他的な例は、重要性が不明のモノクローナル免疫グロブリン血症(MGUS)および、多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、および他のB細胞関連新生物を含む血液悪性腫瘍を含む。
【0040】
本明細書で使用される場合、「多発性骨髄腫」または「形質細胞骨髄腫」は、形質細胞の癌を指す。形質細胞は、抗体を産生する白血球の一種である。多発性骨髄腫はさらに、骨髄における癌細胞の蓄積と関連している。癌細胞は、異常なモノクローナル抗体(M-タンパク質)を産生する。
【0041】
「投与すること」は、当技術分野で既知の種々の方法および送達システムのいずれかを使用する、対象への治療薬を含む組成物の物理的導入を指す。投与経路の非限定的な例は、例えば注射または注入による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄または他の非経口投与経路を含む。本明細書で使用される場合、「非経口投与」なる句は、通常は注射による、経腸および局所投与以外の投与様式を意味し、これに限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内、病変内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内の注射および注入、ならびにインビボ電気穿孔を含む。他の非非経口(non-parenteral)経路は、例えば鼻腔内、膣内、直腸、舌下または局所的な、経口、局所、表皮または粘膜の投与経路を含む。投与することはまた、例えば、1回、複数回、および/または1つまたは複数の長期間にわたって実施できる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「有害事象」(AE)は、医学的処置の使用に関連する、好ましくない、一般に意図しない、または望ましくない兆候(異常な検査所見を含む)、症状、または疾患である。例えば、有害事象は、処置に応答した免疫系の活性化または免疫系細胞(例えば、T細胞)の拡大に関連することができる。医学的処置は、1つまたは複数の関連するAEを有することができ、各AEは同じまたは異なるレベルの重症度を有することができる。「有害事象を変える」ことができる方法への言及は、異なる処置レジームの使用に関連する1つまたは複数のAEの発生率および/または重症度を低下させる処置レジームを意味する。
【0043】
「抗体」(Ab)または「免疫グロブリン」は、これに限定されないが、抗原に特異的に結合し、ジスルフィド結合により相互接続された少なくとも2つの重鎖(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質免疫グロブリン、またはその抗原結合部分を含む。各H鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、CH1、CH2、およびCH3の3つの定常ドメインで構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つの定常ドメインCで構成される。VおよびV領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化でき、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する。各VおよびVは、3つのCDRおよび4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、およびFR4の順序で配置されている。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0044】
免疫グロブリンは、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含むがこれに限定されない、一般的に既知のアイソタイプのいずれかに由来することができる。IgGサブクラスも当業者に周知であり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むがこれに限定されない。「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる抗体クラスまたはサブクラス(例えば、IgMまたはIgG1)を指す。ヒトにおいて、免疫グロブリン軽鎖は、免疫グロブリンカッパ遺伝子座および免疫グロブリンラムダ遺伝子座の2つの遺伝子座によりコードされている。このように、ヒト免疫グロブリン軽鎖は、カッパ軽鎖またはラムダ軽鎖のいずれかに分類される。CaptureSelect(登録商標)LC-ラムダおよびLC-カッパナノボディ(THERMOFISHER)、ならびにカッパ軽鎖またはラムダ軽鎖のいずれかに特異的に結合できる種々の市販の抗体が利用可能であり、これは、Beckman Coulter Life SciencesによるKappa-FITC(C15623)、Lambda-PE(C15189)、Lambda-PC7(B90416)、およびKappa-APC(B90420);Abcamによる抗カッパ軽鎖抗体(例えば、ab134083、ab79558、およびab1936)および抗ラムダ軽鎖抗体(例えば、ab124719、ab187370、ab185131、およびab200966);eBioscience(登録商標)によるカッパ軽鎖モノクローナル抗体(TB28-2)、FITC、およびラムダ軽鎖モノクローナル抗体(1-155-2)、APCを含むが、これに限定されない。これらの例は、限定することを意図するものではなく、任意の既知の抗カッパおよび/または抗ラムダ捕捉試薬を、本明細書に開示される方法において使用できる。
【0045】
「捕捉試薬」なる語は、例として、天然に存在する抗体および天然に存在しない抗体の両方、モノクローナルおよびポリクローナル抗体;キメラおよびヒト化抗体;ヒトまたは非ヒト抗体;完全合成抗体;単鎖抗体、ナノボディ、アファマー、その他の分析対象物結合タンパク質およびアプタマー、およびそれらの任意の組み合わせを含む。明示的に述べられていない場合、および文脈が別段の指示をしない限り、「捕捉試薬」なる語はまた、前述の免疫グロブリンのいずれかの抗原結合断片または抗原結合部分を含み、一価および二価の断片または部分、および一本鎖抗体を含む。
【0046】
本明細書で使用される場合、抗体、例えば治療用抗体の抗原結合「部分」または「断片」は、抗原に結合する能力を保持する、全体よりも少ない抗体の一部を指す。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片により実施できることが十分に実証されている。抗体の「抗原結合部分」なる語に含まれる結合断片の例は、以下を含む:(i)Fab断片、V、V、CおよびCH1ドメインからなる一価断片;(ii)F(ab’)断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む2価断片;(iii)VおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単鎖のVおよびVドメインからなるFv断片、または(v)それらの任意の組み合わせ。
【0047】
本明細書で使用される場合、「治療用抗体」は、抗原に結合し、インビボまたはインビトロで効果を誘発することができる抗体またはその抗原結合部分を指す。
【0048】
「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指す(例えば、SLAMF7に特異的に結合する単離された抗体は、SLAMF7以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)が、SLAMF7に特異的に結合する単離された抗体は、異なる種のSLAMF7分子などの他の抗原と交差反応性を有してもよい。さらに、単離された抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まないことができる。
【0049】
「モノクローナル抗体」(mAb)なる語は、単一分子組成の抗体分子、すなわち、一次配列が本質的に同一であり、特定のエピトープに対して単一の結合特異性および親和性を示す抗体分子の天然に存在しない調製物を指す。モノクローナル抗体は、単離された抗体の一例である。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、トランスジェニック、または当技術分野で既知の他の技術により産生することができる。
【0050】
「ヒト抗体」(HuMAb)は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を指す。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もまた、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本開示のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基を含むことができる(例えば、インビトロでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発により、またはインビボでの体細胞突然変異により導入される突然変異)。しかしながら、本明細書で使用される場合、「ヒト抗体」なる語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことを意図しない。「ヒト抗体」および「完全ヒト抗体」なる語は、同義語として使用される。
【0051】
「ヒト化抗体」は、非ヒト抗体のCDRの外側のアミノ酸の一部、ほとんど、または全てが、ヒト免疫グロブリンに由来する対応するアミノ酸で置き換えられている抗体を指す。ヒト化形態の抗体の一局面において、CDR外のアミノ酸の一部、ほとんど、または全てがヒト免疫グロブリン由来のアミノ酸で置き換えられている一方、1つまたは複数のCDR内の一部、ほとんど、または全てのアミノ酸は変化していない。アミノ酸のわずかな追加、欠失、挿入、置換または改変は、特定の抗原に結合する抗体の能力を無効にしない限り、許容される。「ヒト化抗体」は、元の抗体と同様の抗原特異性を保持する。
【0052】
「キメラ抗体」は、可変領域が1つの種に由来し、定常領域が別の種に由来する抗体、例えば可変領域がマウス抗体に由来する抗体および定常領域を指す。領域は、ヒト抗体に由来する。
【0053】
「抗抗原抗体」は、抗原に特異的に結合する抗体を指す。例えば、抗SLAMF7抗体は、SLAMF7に特異的に結合する。
【0054】
「癌」は、体内の異常な細胞の制御されない成長を特徴とする種々の疾患の幅広い群を指す。調節されていない細胞分裂および成長は分裂して成長し、悪性腫瘍の形成をもたらし、また、隣接する組織に侵入し、リンパ系または血流を介して体の離れた部分に転移することができる。
【0055】
「免疫療法」なる語は、免疫応答を誘導、増強、抑制、または他の方法により改変することを含む方法による、疾患に罹患している、または罹患または再発のリスクのある対象の処置を指す。対象の「処置」または「療法」は、症状、合併症または状態、または疾患に関連する生化学的兆候の発症、進行、発達、重症度または再発を逆転、緩和、改良、阻害、減速または予防することを目的として、対象に対して実施される任意のタイプの介入またはプロセス、あるいは活性剤の投与を指す。いくつかの局面において、免疫療法は、対象に治療用抗体を投与することを含む。
【0056】
「シグナル伝達リンパ球活性化分子F7」、「SLAMF7」、「CD319」、または「CS-1」は、ナチュラルキラー(NK)細胞、活性化T細胞、ほとんどのB細胞、および多発性骨髄腫細胞により発現される免疫調節受容体を指す。SH2D1Bを共発現する細胞において、SLAMF7はリン酸化SH2D1Bに依存するメカニズムによりNK細胞の機能を積極的に調節する。SH2D1Bがない場合、SLAMF7はNK細胞の機能を阻害する。本明細書で使用される場合、「SLAMF7」なる語は、ヒトSLAMF7(hSLAMF7)、hSLAMF7の変異体、アイソフォーム、および種相同体、ならびにhSLAMF7と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。完全なhSLAMF7配列は、UniProt No.Q9NQ25下で見出すことができる。
【0057】
「対象」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」なる語は、非ヒト霊長類などの脊椎動物、ヒツジ、イヌ、およびマウス、ラットおよびモルモットなどの齧歯動物を含むがこれに限定されない。好ましい局面において、対象はヒトである。「対象」および「患者」なる語は、本明細書では交換可能に使用される。
【0058】
薬物または治療薬の「治療有効量」または「治療有効投与量」は、単独でまたは別の治療薬と組み合わせて使用される場合に、疾患の発症から対象を保護する任意の量の薬物である。疾患症状の重症度の低下、疾患症状のない期間の頻度および期間の増加、または疾患の苦痛による不調または障害の予防により証明される疾患の退行を促進する。疾患の退行を促進する治療薬の能力は、臨床試験中のヒト対象、ヒトにおける有効性を予測する動物モデルシステムにおけるような熟練した医師に既知の様々な方法を用いて、またはインビトロアッセイにおける薬剤の活性を評価することにより、評価できる。
【0059】
例として、「抗癌剤」は、対象における癌の退行を促進する。好ましい局面において、治療有効量の薬物は、癌を排除する点まで癌の退行を促進する。「癌の退縮を促進する」は、有効量の薬物を単独で、または抗腫瘍剤と組み合わせて投与すると、腫瘍の成長またはサイズの減少、腫瘍の壊死、少なくとも1つの疾患症状の重症度の減少、無症状期間の頻度および期間の増加、または疾患の苦痛による不調または障害の予防をもたらすことを意味する。さらに、処置に関する「有効」および「有効性」なる語は、薬理学的有効性および生理学的安全性の両方を含む。薬理学的有効性は、患者の癌の退行を促進する薬物の能力を指す。生理学的安全性は、薬物の投与に起因する毒性のレベル、または細胞、臓器、および/または生物レベルでの他の有害な生理学的影響(副作用)を指す。
【0060】
「免疫応答」は、当技術分野で理解されている通りであり、一般に、外来物質または異常な、例えば、癌性細胞に対する脊椎動物内の生物学的応答を指し、応答は、これらの因子およびそれらにより引き起こされる疾患から生物を保護する。免疫応答は、侵入する病原体、病原体に感染した細胞または組織、癌性または他の異常な細胞、または自己免疫または病的炎症の場合には正常なヒト細胞または組織の選択的な標的化、それへの結合、それへの損傷、それの破壊、および/またはそれの脊椎動物の体からの排除をもたらす、免疫系の1つまたは複数の細胞(例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好酸球、マスト細胞、樹状細胞または好中球)、およびこれらの細胞のいずれか、または肝臓により生成される可溶性高分子(抗体、サイトカイン、および補体を含む)の作用により媒介される。免疫応答は、例えば、T細胞、例えばエフェクターT細胞、Th細胞、CD4細胞、CD8T細胞、またはTreg細胞の活性化または阻害、または免疫系の他の任意の細胞、例えばNK細胞の活性化または阻害を含む。
【0061】
「免疫関連応答パターン」は、癌特異的免疫応答を誘導することにより、または天然の免疫プロセスを改変することにより抗腫瘍効果を生み出す免疫療法剤で処置される癌患者においてしばしば観察される臨床応答パターンを指す。この反応パターンは、腫瘍量の初期増加または新しい病変の出現に続く有益な治療効果を特徴とし、従来の化学療法剤の評価において、疾患の進行として分類され、薬物の失敗と同義である。したがって、免疫療法剤の適切な評価は、標的疾患に対するこれらの薬剤の効果の長期モニタリングを必要とすることができる。
【0062】
「免疫調節剤」または「免疫制御剤」は、薬剤、例えば、免疫応答の調節、調節、または改変に関与することができるシグナル伝達経路の成分を標的とする薬剤を指す。免疫応答を「調節する」、「制御する」、または「改変する」ことは、免疫系の細胞またはかかる細胞(例えば、Th1細胞などのエフェクターT細胞)の活性における任意の変化を指す。かかる調節は、種々の細胞タイプの数の増加または減少、これらの細胞の活性の増加または減少、または免疫系内で起こることができる他の変化により現れることができる免疫系の刺激または抑制を含む。抑制性および刺激性の両方の免疫調節剤が同定されており、そのうちのいくつかは腫瘍微小環境において機能を強化することができる。いくつかの局面において、免疫調節剤は、T細胞の表面上の分子を標的とする。「免疫調節標的」または「免疫制御標的」は、物質、薬剤、部分、化合物または分子による結合の標的であり、その活性がその結合により変化する分子、例えば細胞表面分子である。免疫調節標的は、例えば、細胞表面上の受容体(「免疫調節受容体」)および受容体リガンド(「免疫調節リガンド」)を含む。
【0063】
「免疫療法」は、免疫系または免疫応答を誘導、増強、抑制、または他の方法で改変することを含む方法による、疾患に罹患している、または罹患または再発のリスクのある対象の処置を指す。特定の局面において、免疫療法は、対象に抗体を投与することを含む。他の局面において、免疫療法は、対象に小分子を投与することを含む。他の局面において、免疫療法は、サイトカインまたはその類似体、変異体、または断片を投与することを含む。
【0064】
治療有効量の薬物は、「予防有効量」を含み、これは、癌を発症するリスクのある対象(例えば、前癌状態を有する対象)または癌の再発を患うリスクのある対象に、単独でまたは抗腫瘍剤と組み合わせて投与された場合に、癌の発症または再発を阻害する薬物の任意の量である。好ましい局面において、予防的に有効な量は、癌の発生または再発を完全に防ぐ。癌の発生または再発を「阻害する」とは、癌の発生または再発の可能性を減らすか、または癌の発生または再発を完全に防ぐことを意味する。
【0065】
代替案(例えば、「または」)の使用は、代替案の一方、両方、またはそれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」または「an」は、記載または列挙された構成要素の「1つまたは複数」を指すと理解されるべきである。
【0066】
「約」または「本質的に~を含む」なる語は、当業者により決定される特定の値または組成物の許容誤差範囲内にある値または組成物を指し、これは、部分的に、価値または組成がどのように測定または決定されるか、すなわち測定システムの限界に依存する。例えば、「約」または「本質的に含む」は、当技術分野における慣行ごとに1以内または1を超える標準偏差を意味することができる。あるいは、「約」または「本質的に~を含む」は、最大10%の範囲を意味することができる。さらに、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、これらの用語は、最大で1桁、または最大で5倍の値を意味することができる。特定の値または組成物が出願および特許請求の範囲で提供される場合、特に明記しない限り、「約」または「本質的に~を含む」の意味は、その特定の値または組成物の許容誤差範囲内にあると想定されるべきである。
【0067】
本明細書に記載される場合、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比範囲または整数範囲は、記載された範囲内の任意の整数の値、および適切な場合、特に明記されていない限り、その分数(整数の10分の1および100分の1など)を含むと理解されるべきである。
【0068】
本開示の様々な局面は、以下のサブセクションにおいてさらに詳細に説明される。
【0069】
II.開示の方法
本開示の特定の局面は、形質細胞障害を有する対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することを含む、該対象を処置する方法であって、ここでM-タンパク質が、以下:(1)免疫捕捉により生物学的試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること;および(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用すること;およびM-タンパク質を有すると同定される対象に治療有効量の免疫療法を投与することにより測定される方法に向けられる。いくつかの局面において、免疫療法は、SLAMF7に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分(「抗SLAMF7抗体」)を含む。
【0070】
本開示のいくつかの局面は、形質細胞障害を有する対象を処置する方法であって、以下:(i)対象に治療有効量の免疫療法を投与すること;(ii)対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することであって、ここでM-タンパク質が、以下:(1)免疫捕捉により生物学的試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)へ適用することにより測定される、測定すること;および(iii)追加の治療有効量の免疫療法を対象に投与することを含む方法に向けられる。いくつかの局面において、免疫療法は、抗SLAMF7抗体を含む。
【0071】
本開示のいくつかの局面は、免疫療法に適した対象を同定する方法であって、以下:(i)対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することであって、ここでM-タンパク質が、(1)免疫捕捉により生物学的試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することにより測定される、測定することを含む方法に向けられる。いくつかの局面において、該方法は、M-タンパク質を有すると同定される対象に治療有効量の免疫療法を投与することをさらに含む。いくつかの局面において、免疫療法は、抗SLAMF7抗体を含む。いくつかの局面において、対象は、形質細胞障害を有する。
【0072】
本開示のいくつかの局面は、残存疾患を有する対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することを含む、該対象を同定する方法であって、ここでM-タンパク質が、以下:(1)免疫捕捉により生物学的試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することにより測定され;対象が、形質細胞障害を有すると以前に同定された方法に向けられる。
【0073】
本開示のいくつかの局面は、対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定する方法であって、以下:(1)免疫捕捉により生物学的試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することを含む方法に向けられる。いくつかの局面において、対象は、形質細胞障害を有する。
【0074】
いくつかの局面において、本明細書に開示される方法は、偽陽性の発生を低減する。多発性骨髄腫を含む形質細胞障害を処置するための処置オプションの中には、抗SLAMF7抗体を含む治療用抗体の使用がある。しかしながら、M-タンパク質を測定するための既存の方法は、形質細胞障害を示すM-タンパク質(多発性骨髄腫など)と、最近処置された衣装の血清中に残る治療用抗体を区別できない。その結果、測定可能なM-タンパク質が残っていない場合でも、対象は誤ってM-タンパク質レベルが陽性であると分類される。これらの偽陽性は、結果を確認するための骨髄生検などのより侵襲的な検査または必要でなくてもよい追加の処置につながることができる。本明細書に開示される方法は、疾患および治療用抗体を示すM-タンパク質の分化を可能にし、偽陽性の発生率を低減する。
【0075】
いくつかの局面において、本明細書に開示される方法は、M-タンパク質を測定する標準的な方法と比較して、対象から得られる試料中のM-タンパク質の早期の検出を可能にする。いくつかの局面において、本明細書に開示される方法は、SPEPアッセイと比較して、対象から得られる試料中のM-タンパク質の早期の検出を可能にする。いくつかの局面において、本明細書に開示される方法は、SIFEアッセイと比較して、対象から得られる試料中のM-タンパク質の早期の検出を可能にする。いくつかの局面において、本明細書に開示される方法は、標準的な方法を使用してsFLC比を測定することと比較して、対象から得られる試料中のM-タンパク質の早期の検出を可能にする。いくつかの局面において、本明細書に開示される方法は、標準的な方法と比較して、少なくとも約10%早い、少なくとも約20%早い、少なくとも約25%早い、少なくとも約30%早い、少なくとも約40%早い少なくとも約50%早い、少なくとも約60%早い、少なくとも約70%早い、少なくとも約80%早い、少なくとも約90%早い、少なくとも約95%早い、M-タンパク質の検出を可能にする。いくつかの局面において、本明細書に開示される方法は、少なくとも標準的な方法より、少なくとも約1サイクル早い、少なくとも約2サイクル早い、少なくとも約3サイクル早い、少なくとも約4サイクル早い、少なくとも約5サイクル早い、少なくとも約6サイクル早い、少なくとも約7サイクル早い、少なくとも約8サイクル早い、少なくとも約9サイクル早い、少なくとも約10サイクル早い、少なくとも約15サイクル早い、少なくとも約20サイクル早い、約25サイクル早い、少なくとも約30サイクル早い、M-タンパク質の検出を可能にする。いくつかの局面において、本明細書に開示される方法は、標準的な方法より少なくとも約10サイクル早いM-タンパク質の検出を可能にする。
【0076】
A.形質細胞障害
本開示の特定の局面は、形質細胞障害を診断、モニター、および/または処置する方法に向けられる。形質細胞障害は、(リンパ形質細胞様細胞またはBリンパ球と関連する場合もある)前悪性または悪性形質細胞のクローンまたは複数のクローンが過剰産生して血流M-タンパク質に分泌される、進行性のより重篤なモノクローナル免疫グロブリン血症のスペクトルを含む。形質細胞障害の非排他的な例は、重要性が不明のモノクローナル免疫グロブリン血症(MGUS)および多発性骨髄腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症、および他のB細胞関連新生物などの血液悪性腫瘍を含む。
【0077】
本開示の特定の局面において、形質細胞疾患はMGUSである。MGUSは、クローン形質細胞増殖の無症候性の前癌段階である。MGUSは、50歳以上の人口の約3-5%において存在する。MGUSを有する対象の約1%は、毎年多発性骨髄腫に進行する。
【0078】
本開示の特定の局面において、形質細胞障害は多発性骨髄腫である。多発性骨髄腫(MM)は、全ての血液癌の10-15%を占めるクローン形質細胞の悪性腫瘍である。MMは、骨髄におけるモノクローナル形質細胞の制御されていない増殖を特徴とし、機能しないインタクトな免疫グロブリンまたは免疫グロブリン鎖(例えば、M-タンパク質)の産生および末端器官の損傷をもたらす。
【0079】
MMは通常、MGUSから1年に約1%の割合で発達する。「くすぶり型多発性骨髄腫」(SMM)と呼ばれる中等度の無症候性のより進行した前癌病変も、MMに進行する前に一部の患者において生じる。
【0080】
MMの標準的な診断は、徹底的な病歴聴取、身体検査、および24時間の尿試料の分析、骨髄生検、および骨格X線撮影を含む種々の臨床検査を含む。MMは、骨髄形質細胞症および骨髄腫関連の末端器官損傷に加えて、患者の血清および尿中にモノクローナルタンパク質(M-タンパク質)が存在することを特徴とする。MM患者において、M-タンパク質の血清レベルは少なくとも30g/Lである。MGUSおよびSMMはまた、血清中にM-タンパク質が存在することを特徴とする。MMのようなSMM患者において、M-タンパク質は少なくとも30g/Lの濃度で血清中に見出される。しかしながら、SMM患者は、尿中にM-タンパク質を有さず、末端器官の損傷を示さない。MGUSは、30g/L未満のM-タンパク質血清濃度を特徴とする。
【0081】
MMのための処置は、個々の患者の年齢、併存症、およびリスクプロファイルに基づく。MM処置の最近の進展により、5年生存率は約50%に上昇した。しかしながら、ほとんどの患者は最終的に致命的な再発を患う。70歳未満のほとんどの患者の標準処置は、自家幹細胞移植である。患者は通常、移植を受ける前に、完全またはほぼ完全な応答を達成することを目的として、2-6サイクルの誘導処置を受ける。移植後、患者は通常、プレドニゾンまたはデキサメタゾン有りまたは無しで、サリドマイドまたはレナリドマイドの維持療法を12か月間受ける。患者が移植について不適格である場合、処置は通常、ステロイド、細胞毒性薬(シクロホスファミドなど)、およびサリドマイド、レナリドマイド、またはボルテゾミブの組み合わせで構成される。
【0082】
最近の開発は5年生存率を増加させたが、これらの進歩は、高リスクのMMまたは再発性のMM患者の生存率を増加させなかった。高リスクMM患者の生存期間中央値は、わずか2-3年である。高リスクおよび再発MM患者の処置における進歩はほとんどない一方、1つの進歩は、腫瘍細胞表面抗原を標的とする免疫療法の使用である。
【0083】
シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM)ファミリー受容体は、免疫療法的MM処置の1つの標的である。SLAM受容体は、癌、特にMMなどの異なる疾患の病因に関与している。エロツズマブは、免疫療法のMM処置として使用されるSLAMF7に対するIgG1ヒト化抗体である。エロツズマブ、レナリドマイド、およびデキサメタゾンの組み合わせは、有意な抗MM活性を示す。レナリドミドおよびデキサメタゾンと組み合わせたエロツズマブの使用は、再発および難治性MMの処置において承認されている。エロツズマブ、レナリドミド、およびデキサメタゾンの組み合わせも、併存疾患または高齢のために高用量療法および自家幹細胞移植の候補者ではない新たに診断されたMM患者における使用について研究されている。
【0084】
本明細書に記載の方法は、任意の既知のタイプの形質細胞疾患を有する対象から得られる試料中のM-タンパク質を測定するために使用することができる。特定の局面において、形質細胞疾患はMMである。いくつかの局面において、MMは軽鎖MMを含む。いくつかの局面において、MMは形質細胞白血病を含む。いくつかの局面において、形質細胞白血病は、一次形質細胞白血病または二次形質細胞白血病を含む。いくつかの局面において、形質細胞疾患はMGUSである。いくつかの局面において、形質細胞疾患はSMMである。
【0085】
いくつかの局面において、生物学的試料は、形質細胞疾患、例えばMMを有する対象から収集される。いくつかの局面において、対象は、形質細胞疾患、例えばMMと以前に診断されていた。いくつかの局面において、対象は寛解している。いくつかの局面において、対象は再発または難治性である。いくつかの局面において、対象は、形質細胞疾患、例えばMMの処置のための標準的な療法の後に再発または難治性である。いくつかの局面において、対象は、対象が以前に形質細胞疾患、例えばMMと診断された残存疾患を有する。
【0086】
いくつかの局面において、対象は、形質細胞障害、例えばMMを処置するために以前の療法を受けた。いくつかの局面において、以前の療法は、形質細胞障害、例えば、MMの処置のためのケア療法の標準であった。いくつかの局面において、以前の療法は、自家幹細胞移植を含む。いくつかの局面において、以前の療法は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法を含む。いくつかの局面において、以前の療法は、ステロイド、細胞毒性剤(例えば、化学療法、例えばシクロホスファミド)、免疫調節剤(例えば、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド)、ボルテゾミブ、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの局面において、以前の療法は免疫療法を含む。いくつかの局面において、免疫療法は、本明細書に開示される任意の免疫療法である。いくつかの局面において、免疫療法は、抗SLAMF7抗体またはその抗原結合部分を含む。いくつかの局面において、免疫療法はエロツズマブを含む。
【0087】
いくつかの局面において、生物学的試料は、対象から得られる組織または流体試料である。いくつかの局面において、生物学的試料は、血液、血漿、血清、または尿試料から選択される。特定の局面において、生物学的試料は血清試料である。特定の局面において、生物学的試料は尿試料である。いくつかの局面において、生物学的試料は骨髄生検である。生物学的試料は、当技術分野で既知の任意の方法により収集することができる。
【0088】
B.病気を診断する方法
本開示の特定の局面は、対象における形質細胞障害を診断する方法に向けられる。多発性骨髄腫などの形質細胞障害の診断のために、M-タンパク質の測定が必要である。しかしながら、ゲル電気泳動ベースのM-タンパク質アッセイを含む現在の方法は、感度および特異性が低く、免疫グロブリンまたはM-タンパク質と共移動する他の血清タンパク質が存在するため、10mg/mL未満のM-タンパク質濃度では定量的でない。さらに、これらの電気泳動ベースのアッセイは、遊離軽鎖(FLC)を分泌する多発性骨髄腫患者にとっては非常に限られた有用性しか有さない。血清FLCは急速に尿中に排泄される。したがって、FLCは、尿タンパク質電気泳動(UPEP)および尿免疫固定電気泳動(UIFE)テストを使用して尿中で測定されている。さらに、SPEPおよびSIFEアッセイにおいて、関与しない免疫グロブリンと呼ばれる通常のポリクローナル免疫グロブリンと、疾患に関連するモノクローナル免疫グロブリンとを十分に区別できない。その結果、多発性骨髄腫患者を診断およびモニターするために、複雑なテストアルゴリズムが必要とされる。
【0089】
本開示のいくつかの局面は、対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することを含む、対象における形質細胞障害を診断する方法であって、ここでM-タンパク質が、以下:(1)免疫捕捉により生物学的試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することにより測定される方法に向けられる。いくつかの局面において、対象は、形質細胞障害を示す1つまたは複数のマーカーを有する。いくつかの局面において、対象は、骨痛(例えば、脊椎または胸部)、悪心、便秘、食欲不振、精神的霧または混乱、倦怠感、頻繁な感染症、体重減少、足における脱力感またはしびれ、過度の喉の渇きから選択される、形質細胞障害、例えば多発性骨髄腫の1つまたは複数の症状を以前に示した。いくつかの局面において、測定M-タンパク質レベルが閾値レベルよりも大きい場合、対象は形質細胞障害を有すると同定される。
【0090】
本開示の特定の局面は、残存疾患、例えば最小残存疾患を有する対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することを含む、該対象を同定する方法であって、ここでM-タンパク質が、以下:(1)免疫捕捉により生物学的試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することにより測定され;対象が、形質細胞障害を有すると以前に同定された方法に向けられる。
【0091】
微小残存病変(MRD)は、処置中、または患者が寛解している(疾患の症状または徴候がない)処置後に人の中に残る少数の癌細胞に与えられる名称である。それは癌の再発の主な原因である。癌処置において、MRD検査はいくつかの重要な役割を有する:処置により癌が根絶されたか、痕跡が残っているかを判断すること、異なる処置の有効性を比較すること、患者の寛解状態をモニターすること、ならびに癌の再発を検出すること、およびそれらのニーズに最適な処置を選択すること。いくつかの局面において、MRDは形質細胞MRDである。
【0092】
いくつかの局面において、対象は、形質細胞障害の処置のために少なくとも1つの以前の療法を受けた。いくつかの局面において、対象は、形質細胞障害の処置のために、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または少なくとも10つの以前の療法を受けた。いくつかの局面において、対象は、形質細胞障害の処置のために8つの以前の療法を受けた。いくつかの局面において、対象は、残存病変を示す他のマーカーを提示しない。いくつかの局面において、測定M-タンパク質レベルが閾値レベルよりも大きい場合、対象は残存疾患を有すると同定される。
【0093】
いくつかの局面において、以前の療法は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、エトポシド、リポソームドキソルビシン、メルファラン、ビンクリスチン、ボルテゾミブ、レナリドマイド、カルフィルゾミブ、ポマリドマイド、パノビノスタット、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド、幹細胞移植、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0094】
いくつかの局面において、以前の療法は、シクロホスファミドを含む。シクロホスファミド(CP)は、他の名前の中でサイトホスファンとしても既知であり、化学療法として、また免疫系を抑制するために使用される薬である。それは、化学療法として、リンパ腫、多発性骨髄腫、白血病、卵巣癌、乳癌、小細胞肺癌、神経芽細胞腫、および肉腫を処置するために使用される。それは、口または静脈への注射により取られる。
【0095】
いくつかの局面において、以前の療法は、ドキソルビシンを含む。とりわけAdriamycinの商品名で販売されているドキソルビシンは、癌を処置するために使用される化学療法薬である。これは、乳癌、膀胱癌、カポジ肉腫、リンパ腫、および急性リンパ性白血病を含む。それはしばしば、他の化学療法剤と併用される。ドキソルビシンは、静脈への注射により与えられる。
【0096】
いくつかの局面において、以前の療法は、エトポシドを含む。とりわけEtopophosなるブランド名で販売されているエトポシドは、多くのタイプの癌を処置するために使用される化学療法薬である。これは、精巣癌、肺癌、リンパ腫、白血病、神経芽細胞腫、および卵巣癌を含む。それは、口または静脈への注射により使用される。
【0097】
いくつかの局面において、以前の療法は、メルファランを含む。メルファランは、とりわけAlkeranの商品名で販売されており、多発性骨髄腫、卵巣癌、ALアミロイドーシス、場合によっては悪性黒色腫を処置するために使用される化学療法薬である。該薬剤は、メラノーマにおいて使用できる可能性のある薬剤として最初に調査されたが、有効であることが見出されなかった。それは、2016年に米国において、多発性骨髄腫(MM)患者における造血前駆(幹)細胞移植前の高用量コンディショニング処置としての使用のために承認された(経口療法のためのMM患者の緩和処置は適切でない)。
【0098】
いくつかの局面において、以前の療法は、ビンクリスチンを含む。ビンクリスチンは、ロイロクリスチンとしても既知であり、とりわけOncovinなるブランド名で販売されており、多くのタイプの癌を処置するために使用される化学療法薬である。これは、とりわけ急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、ホジキン病、神経芽細胞腫、および小細胞肺癌を含む。ビンクリスチンは、種々のタイプの化学療法レジメンにおいて使用するために静脈内注入により送達される。その主な用途は、化学療法レジメンCHOPの一部としての非ホジキンリンパ腫、MOPP、COPP、BEACOPPの一部としてのホジキンリンパ腫、または急性リンパ芽球性白血病(ALL)におけるあまり有名でないスタンフォードV化学療法レジメン、および腎芽細胞腫についての処置にある。それはまた、デキサメタゾンおよびL-アスパラギナーゼでALLの寛解を誘導し、プレドニゾンと併用して小児白血病を処置するために使用される。ビンクリスチンは、例えば、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)または慢性特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の処置において、免疫抑制剤として使用されることがある。
【0099】
いくつかの局面において、以前の療法は、ボルテゾミブを含む。とりわけVelcadeなるブランド名で販売されているボルテゾミブは、多発性骨髄腫およびマントル細胞リンパ腫の処置において使用される抗癌薬である。これは、以前に処置を受けたことがある人および受けていない人における多発性骨髄腫を含む。それは、一般的に他の薬と一緒に使用される。それは注射により与えられる。2つの非盲検試験により、再発/難治性の多発性骨髄腫を有する高度に前処置された人々において、21日サイクルの1、4、8、および11日目に最大8サイクルのボルテゾミブ(デキサメタゾン有りまたは無しで)の有効性が確立された。フェーズIIIは、高用量デキサメタゾンレジメンに対するボルテゾミブの優位性を示した(例えば、TTP中央値6.2月対3.5か月、および1年生存率80%対66%)。
【0100】
いくつかの局面において、以前の療法は、レナリドマイドを含む。レナリドマイドは、とりわけRevlimidなる商品名で販売されており、多発性骨髄腫(MM)および骨髄異形成症候群(MDS)を処置するために使用される薬である。MMについて、それは、少なくとも1回の他の処置の後に、一般的にデキサメタゾンと一緒に使用される。それは、サリドマイドのより強力な分子類似体であり、アポトーシスの誘導を通じて腫瘍血管新生、腫瘍分泌サイトカイン、および腫瘍増殖を阻害する。
【0101】
レナリドマイドは、完全または「非常に良好な部分的」応答を誘導するだけでなく、無増悪生存期間を改良するのに効果的である。骨髄腫に対してレナリドマイドを投与されている人々においてより共通する有害事象は、好中球減少症(白血球数の減少)、深部静脈血栓症、感染症、およびその他の血液悪性腫瘍のリスクの増加であった。二次原発性血液悪性腫瘍のリスクは、再発または難治性の多発性骨髄腫においてレナリドミドを使用することの利点を上回らない。
【0102】
いくつかの局面において、以前の療法は、カルフィルゾミブを含む。カルフィルゾミブ(Onyx Pharmaceuticalsにより開発され、Kyprolisなる商品名で販売)は、選択的プロテアソーム阻害剤として作用する抗癌剤である。化学的には、それは、テトラペプチドエポキシケトンであり、エポキソマイシンの類似体である。米国食品医薬品局(FDA)は、2012年7月20日に、ボルテゾミブおよび免疫調節療法(レナリドマイドなど)による処置を含む、少なくとも2つの前処置を受け、最後の処置の完了時または完了後60日以内に疾患の進行を示した多発性骨髄腫の患者における使用のためにそれを承認した。最初の承認は、応答率に基づいていた。全生存期間(OS)の利点を示すデータは、後にENDEAVOR試験において実証され、FDAにより承認された。
【0103】
いくつかの局面において、以前の療法は、ポマリドマイドを含む。ポマリドマイド(INN;米国においてPomalystとして、EUおよびロシアにおいてImnovidとして販売される)は、Celgeneにより販売されるサリドマイドの誘導体である。それは、抗血管新生であり、免疫調節剤としても機能する。ポマリドマイドは、再発性および難治性の多発性骨髄腫の治療薬として、2013年2月に米国食品医薬品局(FDA)により承認された。それは、レナリドマイドおよびボルテゾミブを含む少なくとも2つの以前の療法を受けており、最後の処置の完了時または完了後60日以内に疾患の進行を示した人々における使用が承認されている。それは、2013年8月に欧州委員会から同様の承認を受けた。
【0104】
いくつかの局面において、以前の療法は、パノビノスタットを含む。パノビノスタット(商品名Farydak)は、種々の癌の処置のためのNovartisによる薬である。それは、ヒドロキサム酸であり、非選択的ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(pan-HDAC阻害剤)として機能する。それは、2015年2月23日に多発性骨髄腫の患者において使用するためのFDA迅速承認を受け、2015年8月28日に同じ使用について欧州医薬品庁により承認された。
【0105】
いくつかの局面において、以前の療法は、サリドマイドを含む。とりわけThalomidなるブランド名で販売されているサリドマイドは、免疫調節薬であり、サリドマイドクラスの薬の原型である。それは、主に特定の癌(多発性骨髄腫)およびハンセン病の合併症の処置として使用される。それは、世界保健機関の必須医薬品リスト上にあり、医療システムにおいて必要とされる最も安全で最も効果的な医薬品である。
【0106】
いくつかの局面において、以前の療法は、造血幹細胞移植を含む。通常、造血幹細胞移植(HSCT)(幹細胞移植)は、骨髄、末梢血、または臍帯血に由来する多能性造血幹細胞の移植である。それは、自家(患者自身の幹細胞が使用される)、同種異系(幹細胞はドナーに由来する)または同系(同一の双子からの)であってもよい。特定の局面において、以前の療法は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法を含む。
【0107】
それは、多発性骨髄腫または白血病などの血液または骨髄の特定の癌を有する患者に対して最も頻繁に実施される。これらの場合、レシピエントの免疫系は通常、移植前に放射線療法または化学療法で破壊される。感染症および移植片対宿主病は、同種造血幹細胞移植の主要な合併症である。
【0108】
いくつかの局面において、生物学的試料中で測定されるM-タンパク質のレベルは、対象が罹患している形質細胞障害のタイプを示している。いくつかの局面において、対象から得られる血清試料が(本明細書に開示される任意の方法を使用して測定されるように)少なくとも約30g/LのM-タンパク質を有すると決定される場合、対象は、形質細胞疾患、例えば多発性骨髄腫を有すると同定される。いくつかの局面において、対象から得られる血清試料が(本明細書に開示される任意の方法を使用して測定されるように)少なくとも約5g/Lから少なくとも約30g/LのM-タンパク質を有すると決定される場合、対象は、形質細胞疾患、例えば多発性骨髄腫のリスクのある候補者として同定される。いくつかの局面において、対象から得られる血清試料が検出限界未満のM-タンパク質レベルを有する場合、対象は、形質細胞疾患、例えば多発性骨髄腫を有していないと同定される。
【0109】
C.形質細胞疾患処置に対する反応性を測定する方法
M-タンパク質の測定は、患者の診断のためだけでなく、処置を受けている多発性骨髄腫患者のモニタリングのためにも必要である。しかしながら、抗SLAMF7抗体などの治療用モノクローナル抗体で処置される多発性骨髄腫患者は、既存の血清タンパク質電気泳動(SPEP)および血清免疫固定電気泳動(SIFE)アッセイを使用して処置応答をモニターする場合、薬物干渉の可能性を有する。現在のM-タンパク質テストは、完全寛解(CR)における患者をモニターすることはできず、これは残りのM-タンパク質が完全な応答未満を示すためである。
【0110】
本開示の特定の局面は、形質細胞障害の処置のための療法に対して完全な応答を有する対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することを含む、該対象を同定する方法であって、ここでM-タンパク質が、以下:(1)免疫捕捉により生物学的試料中の免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を精製すること、および(2)精製された免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)に適用することにより測定される方法に向けられる。特定の局面において、本明細書に開示される方法は、M-タンパク質と治療用抗体とを区別することができる。
【0111】
いくつかの局面において、形質細胞障害の処置のための療法は、シクロホスファミド、ドキソルビシン、エトポシド、リポソームドキソルビシン、メルファラン、ビンクリスチン、ボルテゾミブ、レナリドマイド、カルフィルゾミブ、ポマリドマイド、パノビノスタット、サリドマイド、幹細胞移植、CAR-T細胞療法またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0112】
いくつかの局面において、形質細胞障害の処置のための療法は、シクロホスファミドを含む。いくつかの局面において、形質細胞障害の処置のための療法は、ドキソルビシンを含む。いくつかの局面において、形質細胞障害の処置のための療法は、リポソームドキソルビシンを含む。いくつかの局面において、形質細胞障害の処置のための療法は、エトポシドを含む。いくつかの局面において、形質細胞障害の処置のための療法は、メルファランを含む。いくつかの局面において、形質細胞障害の処置のための療法は、ビンクリスチンを含む。いくつかの局面において、形質細胞障害の処置のための療法は、ボルテゾミブを含む。いくつかの局面において、形質細胞障害の処置のための療法は、レナリドマイドを含む。いくつかの局面において、形質細胞障害の処置のための療法は、カルフィルゾミブを含む。いくつかの局面において、形質細胞障害の処置のための療法は、ポマリドマイドを含む。いくつかの局面において、形質細胞障害の処置のための療法は、パノビノスタットを含む。いくつかの局面において、形質細胞障害の処置のための療法は、サリドマイドを含む。いくつかの局面において、形質細胞障害の処置のための療法は、造血幹細胞移植を含む。いくつかの局面において、形質細胞障害の処置のための療法は、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法を含む。
【0113】
いくつかの局面において、療法は、免疫療法を投与することを含む。いくつかの局面において、療法は、治療用抗体を投与することを含む。形質細胞障害の処置に有用な任意の免疫療法は、本明細書に開示される方法において使用されることができる。いくつかの局面において、療法は、抗SLAMF7抗体を投与することを含む。いくつかの局面において、免疫療法は、チェックポイント阻害剤を含む。当技術分野で既知の任意のチェックポイント阻害剤を、本明細書に開示される方法において使用することができる。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、1つまたは複数のチェックポイントタンパク質の活性を遮断、阻害、または低下させる任意の試薬である。いくつかの局面において、チェックポイントタンパク質は、PD-1、CTLA-4、LAG3、TIGIT、TIM3、NKG2a、OX40、ICOS、CD137、KIR、TGFβ、IL-10、IL-8、IL-2、CD96、VISTA、B7-H4、Fasリガンド、CXCR4、メソテリン、CD27、GITR、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0114】
いくつかの局面において、免疫療法は、PD-1に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分を含む。当技術分野で既知の抗PD-1抗体は、現在記載される組成物および方法において使用することができる。PD-1に高い親和性で特異的に結合する種々のヒトモノクローナル抗体が、米国特許第8,008,449号に開示されている。米国特許第8,008,449号に開示されている抗PD-1ヒト抗体は、以下の特徴の1つまたは複数を示すことが実証されている:(a)Biacoreバイオセンサーシステムを使用した表面プラズモン共鳴により決定されるように、1x10-7M以下のKでヒトPD-1に結合する;(b)ヒトCD28、CTLA-4またはICOSに実質的に結合しない;(c)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖を増加させる;(d)MLRアッセイにおいてインターフェロン-γ産生を増加させる;(e)MLRアッセイにおいてIL-2分泌を増加させる;(f)ヒトPD-1およびカニクイザルPD-1に結合する;(g)PD-L1および/またはPD-L2のPD-1への結合を阻害する;(h)抗原特異的記憶反応を刺激する;(i)抗体反応を刺激する;および(j)インビボで腫瘍細胞の増殖を阻害する。本開示で使用可能な抗PD-1抗体は、ヒトPD-1に特異的に結合し、前述の特徴の少なくとも1つ、いくつかの局面において少なくとも5つを示すモノクローナル抗体を含む。
【0115】
他の抗PD-1モノクローナル抗体は、例えば、それぞれ参照によりその全体が組み込まれる、米国特許第6,808,710号、第7,488,802号、第8,168,757号および第8,354,509号、米国公開番号2016/0272708、およびPCT公開番号WO2012/145493、WO2008/156712、WO2015/112900、WO2012/145493、WO2015/112800、WO2014/206107、WO2015/35606、WO2015/085847、WO2014/179664、WO2017/020291、WO2017/020858、WO2016/197367、WO2017/024515、WO2017/025051、WO2017/123557、WO2016/106159、WO2014/194302、WO2017/040790、WO2017/133540、WO2017/132827、WO2017/024465、WO2017/025016、WO2017/106061、WO2017/19846、WO2017/024465、WO2017/025016、WO2017/132825、およびWO2017/133540に記載されている。
【0116】
いくつかの局面において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標)、5C4、BMS-936558、MDX-1106、およびONO-4538としても既知である)、ペムブロリズマブ(Merck;KEYTRUDA(登録商標)、ランブロリズマブ、MK-3475として既知である;WO2008/156712を参照)、PDR001(Novartis;WO2015/112900を参照)、MEDI-0680(AstraZeneca;AMP-514としても既知である;WO2012/145493を参照)、セミプリマブ(Regeneron;REGN-2810としても既知である;WO2015/112800を参照)、JS001(TAIZHOU JUNSHI PHARMA;トリパリマブとしても既知である;Si-Yang Liu et al., J. Hematol. Oncol. 10:136 (2017)を参照)、BGB-A317(Beigene;Tislelizumabとしても既知である;WO2015/35606およびUS2015/0079109を参照)、INCSHR1210(Jiangsu Hengrui Medicine;SHR-1210としても既知である;WO2015/085847;Si-Yang Liu et al., J. Hematol. Oncol. 10:136 (2017)を参照)、TSR-042(Tesaro Biopharmaceutical;別名ANB011;WO2014/179664を参照)、GLS-010(Wuxi/Harbin GloriaPharmaceuticals;別名WBP3055;Si-Yang Liu et al., J. Hematol. Oncol. 10:136 (2017)を参照)、AM-0001(Armo)、STI-1110(Sorrento Therapeutics;WO2014/194302を参照)、AGEN2034(Agenus;WO2017/040790を参照)、MGA012(Macrogenics、WO2017/19846を参照)、BCD-100(Biocad;Kaplon et al., mAbs 10(2):183-203 (2018)、およびIBI308(Innovent;WO2017/024465、WO2017/025016、WO2017/132825、およびWO2017/133540を参照)からなる群から選択される。
【0117】
いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、LAG3に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、TIGITに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、TIM3に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、NKG2aに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、OX40に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、ICOSに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、CD137に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、KIRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、TGFβに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、IL-10に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、IL-8に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、IL-2に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、CD96に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、VISTAに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、B7-H4に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、Fasリガンドに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、CXCR4に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、メソセリンに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、CD27に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの局面において、チェックポイント阻害剤は、GITRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分である。
【0118】
いくつかの局面において、免疫療法は、CD40、CD56、CD38、CD229、CD200、CD28、CD19、BCMA、CD317、CD70、およびB2Mから選択されるタンパク質に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分を含む。いくつかの局面において、免疫療法は、CD40に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分を含む。いくつかの局面において、免疫療法は、CD56に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分を含む。いくつかの局面において、免疫療法は、CD38に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分を含む。いくつかの局面において、免疫療法は、CD229に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分を含む。いくつかの局面において、免疫療法は、CD200に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分を含む。いくつかの局面において、免疫療法は、CD28に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分を含む。いくつかの局面において、免疫療法は、CD19に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分を含む。いくつかの局面において、免疫療法は、BCMAに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分を含む。いくつかの局面において、免疫療法は、CD317に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分を含む。いくつかの局面において、免疫療法は、CD70に特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分を含む。いくつかの局面において、免疫療法は、B2Mに特異的に結合する抗体またはその抗原結合部分を含む。
【0119】
いくつかの局面において、対象は、単剤療法、例えば抗PD-1単剤療法を投与され、ここで対象は1つまたは複数の追加の抗癌剤を投与されない。いくつかの局面において、対象は、例えば、対象が第1のチェックポイント阻害剤、例えば抗PD-1抗体、および1つまたは複数の追加の抗癌剤を投与される、併用療法を投与される。特定の局面において、対象は、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体を含む併用療法を投与される。
【0120】
本開示の他の局面において、抗PD-L1抗体が抗PD-1抗体の代わりに使用される。特定の局面において、方法は、抗PD-L1抗体を対象に投与することを含む。いくつかの局面において、対象は、抗PD-L1単剤療法を投与される。いくつかの局面において、対象は、抗PD-L1抗体および第2の抗癌剤、例えば抗CTLA-4抗体を含む併用療法を投与される。
【0121】
いくつかの局面において、抗体は、キメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその一部である。
【0122】
いくつかの局面において、療法は、測定の前に投与される。いくつかの局面において、療法は、測定の時点で進行中である。いくつかの局面において、療法は、測定の少なくとも1日前に実施される。いくつかの局面において、療法は、測定の、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、または少なくとも1ヶ月前に投与される。いくつかの局面において、療法は、測定の1週間未満前に投与される。いくつかの局面において、療法は、測定の、6日未満、5日未満、4日未満、3日未満、または2日未満前に投与される。
【0123】
D.免疫グロブリンの精製
本開示の特定の局面において、免疫グロブリンは、LC-MS分析の前に生物学的試料から精製される。免疫グロブリンを精製するための当技術分野で既知の任意の方法を、本明細書に開示される方法において使用することができる。特定の局面において、免疫グロブリンは、リガンド結合技術を使用して生物学的試料から精製される。免疫グロブリンのリガンド結合精製は、標的免疫グロブリンと相互作用して標的免疫グロブリンを濃縮または精製する捕捉試薬の使用を含む。本明細書に開示される方法において、標的免疫グロブリンは、M-タンパク質であり、これは、免疫グロブリンの非常に多様な集団であることができ、M-タンパク質からなり、IgG、IgA、IgMおよび/またはIgDクラス免疫グロブリンに属することができる。さらに、M-タンパク質は、インタクトな免疫グロブリン分子および/またはベンスジョーンズタンパク質としても既知の遊離軽鎖(FLC)などの免疫グロブリン断片を含むことができる。
【0124】
いくつかの局面において、捕捉試薬は、抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの局面において、捕捉試薬は、1つまたは複数のモノクローナル抗体を含む。いくつかの局面において、捕捉試薬は、1つまたは複数のポリクローナル抗体を含む。いくつかの局面において、捕捉試薬は、1つまたは複数のモノクローナル抗体および1つまたは複数のポリクローナル抗体を含む。いくつかの局面において、捕捉試薬は、1つまたは複数のナノボディを含む。いくつかの局面において、捕捉試薬は、抗原、例えば標的免疫グロブリンにより結合されることができるポリペプチドを含む。
【0125】
いくつかの局面において、単一の捕捉試薬は、標的免疫グロブリン(例えば、M-タンパク質)を捕捉および精製するために使用される。いくつかの局面において、複数の捕捉試薬が、標的免疫グロブリン(例えば、M-タンパク質)を精製するために使用される。いくつかの局面において、いくつかの捕捉試薬は、標的免疫グロブリン(例えば、M-タンパク質)を精製するために使用される。いくつかの局面において、捕捉試薬は、免疫グロブリンの標的クラスに特異的である。いくつかの局面において、捕捉試薬は、IgGクラスの免疫グロブリンに特異的である。いくつかの局面において、捕捉試薬は、IgAクラスの免疫グロブリンに特異的である。いくつかの局面において、捕捉試薬は、IgMクラスの免疫グロブリンに特異的である。いくつかの局面において、捕捉試薬は、IgDクラスの免疫グロブリンに特異的である。
【0126】
いくつかの局面において、捕捉試薬は、一般的な捕捉試薬である。本明細書で使用される場合、「一般的な捕捉試薬」は、複数のヒト免疫グロブリンに結合することができるリガンドまたは他の結合剤である。いくつかの局面において、一般的な捕捉試薬は、少なくとも2つのクラスのヒト免疫グロブリンに結合することができる。いくつかの局面において、一般的な捕捉試薬は、少なくとも3つのクラスのヒト免疫グロブリンに結合することができる。いくつかの局面において、一般的な捕捉試薬は、少なくとも4つのクラスのヒト免疫グロブリンに結合することができる。いくつかの局面において、一般的な捕捉試薬は、全ての既知のクラスのヒト免疫グロブリンに結合することができる。いくつかの局面において、一般的な捕捉試薬は、IgG、IgA、IgM、およびIgDクラスの免疫グロブリンに結合することができる。いくつかの局面において、一般的な捕捉試薬は、インタクトな免疫グロブリン分子および免疫グロブリン断片(例えば、遊離軽鎖)の両方に結合することができる。
【0127】
特定の局面において、捕捉試薬は、免疫グロブリン軽鎖に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの局面において、捕捉試薬は、免疫グロブリン軽鎖定常領域に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む。いくつかの局面において、捕捉試薬は、免疫グロブリンラムダ軽鎖に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片(「抗ラムダ抗体」)を含む。当技術分野で既知のヒトラムダ軽鎖に特異的に結合することができる任意の抗ラムダ抗体を、本明細書に開示される方法において使用することができ、これは本明細書に開示される抗ラムダ抗体を含むがこれに限定されない。いくつかの局面において、捕捉試薬は、免疫グロブリンカッパ軽鎖に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片(「抗カッパ抗体」)を含む。当技術分野で既知のヒトカッパ軽鎖に特異的に結合することができる任意の抗カッパ抗体を、本明細書に開示される方法において使用することができ、これは本明細書に開示される抗カッパ抗体を含むがこれに限定されない。いくつかの局面において、捕捉試薬は、抗ラムダ抗体および抗カッパ抗体を含む。
【0128】
いくつかの局面において、抗ラムダ抗体と抗カッパ抗体との比は、約1:1、約1.5:1、約2:1、約2.5:1、約3:1、約3.5:1、約4:1約、約4.5:1、約5:1約、約6:1、約7:1約、約8:1、約9:1約、または約10:1である。いくつかの局面において、抗カッパ抗体と抗ラムダ抗体との比は、約1:1、約1.5:1、約2:1、約2.5:1、約3:1、約3.5:1、約4:1、約4.5:1、約5:1約、約6:1、約7:1約、約8:1、約9:1約、または約10:1である。いくつかの局面において、抗ラムダ抗体と抗カッパ抗体との比は約1:1である。特定の局面において、捕捉試薬は、親和性マトリックスに組み込まれる。いくつかの局面において、親和性マトリックスは、CAPTURESELECT(登録商標)ナノボディ樹脂(THERMOFISHER)を含む。特定の局面において、親和性マトリックスは、抗ラムダ抗体対抗カッパ抗体の1:1の比を含む、CAPTURESELECT(登録商標)ナノボディ樹脂(THERMOFISHER)を含む。
【0129】
本開示のいくつかの局面において、親和性試薬、例えば親和性マトリックスは、カラムにパッケージ化される。いくつかの局面において、カラムは自動化に適している。本明細書に開示される免疫捕捉法によるM-タンパク質の精製の自動化は、アッセイスループットおよび改良されたアッセイ再現性を含むがこれに限定されないいくつかの利点を有する。特定の局面において、カラムは、チップカラムである。特定の局面において、カラムは、PHYTIPカラム(PHYNEXUS)である。特定の局面において、カラムは、少なくとも約10μg、少なくとも約15μg、少なくとも約20μg、少なくとも約25μg、少なくとも約30μg、少なくとも約35μg、少なくとも約40μg、少なくとも約45μg、少なくとも約50μg、少なくとも約55μg、少なくとも約60μg、少なくとも約65μg、少なくとも約70μg、少なくとも約75μg、少なくとも約80μg、少なくとも約85μg、少なくとも約90μg、少なくとも約95μg、少なくとも約100μg、または少なくとも約150μgの免疫グロブリンをロードする能力を有する。特定の局面において、カラムは、少なくとも約10μg、少なくとも約15μg、少なくとも約20μg、少なくとも約25μg、少なくとも約30μg、少なくとも約35μg、少なくとも約40μg、少なくとも約45μg、少なくとも約50μg、少なくとも約55μg、少なくとも約60μg、少なくとも約65μg、少なくとも約70μg、少なくとも約75μg、または少なくとも約80μg、少なくとも約85μg、少なくとも約90μg、少なくとも約95μg、少なくとも約100μg、または少なくとも約150μgのラムダ免疫グロブリンをロードする能力を有する。特定の局面において、カラムは、少なくとも約10μg、少なくとも約15μg、少なくとも約20μg、少なくとも約25μg、少なくとも約30μg、少なくとも約35μg、少なくとも約40μg、少なくとも約45μg、少なくとも約50μg、少なくとも約55μg、少なくとも約60μg、少なくとも約65μg、少なくとも約70μg、少なくとも約75μg、または少なくとも約80少なくとも約85μg、少なくとも約90μg、少なくとも約95μg、少なくとも約100μg、または少なくとも約150μgのカッパ免疫グロブリンをロードする能力を有する。特定の局面において、カラムは、少なくとも約40μgのラムダおよび少なくとも約40μgのカッパ免疫グロブリンをロードする能力を有する。
【0130】
特定の局面において、カラムは、マルチチャネルデバイスにロードされる。いくつかの局面において、マルチチャネルデバイスは、マルチチャネルピペットである。いくつかの局面において、マルチチャネルデバイスは、ロボットデバイスである。いくつかの局面において、マルチチャネルデバイスは、自動化が可能なロボットデバイスである。いくつかの局面において、マルチチャネルデバイスは、Freedom EVO(登録商標)プラットフォームである。いくつかの局面において、Freedom EVO(登録商標)プラットフォームは96チャネルを備えている。
【0131】
いくつかの局面において、カラムは、単一チャネル装置、例えば単一チャネルピペットにロードされる。
【0132】
いくつかの局面において、精製された免疫グロブリンは、軽鎖および重鎖にさらに解離される。いくつかの局面において、精製された免疫グロブリンは、化学的還元により解離される。いくつかの局面において、精製された免疫グロブリンは、変性剤と接触される。いくつかの局面において、精製された免疫グロブリンは、該精製された免疫グロブリンを、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)、TCEP-HClおよびその他のTCEP塩;DTT(2,3ジヒドロキシブタン-1,4-ジチオール)、DTE(2,3ジヒドロキシブタン-1,4-ジチオール);チオグリコレート;亜硫酸塩;亜硫酸水素塩;硫化物;二硫化物;2-メルカプトエタノール;2-メルカプトエタノール-HCl;Bond-Breaker TCEP溶液、中性pH;システイン-HCl;グアニジン-HCl;尿素;またはそれらの任意の組み合わせから選択される還元剤と接触させることにより解離される。いくつかの局面において、精製された免疫グロブリンは、該精製された免疫グロブリンをTCEPと接触させることにより解離される。
【0133】
特定の局面において、精製された免疫グロブリンは、還元剤、例えばTCEPの少なくとも約1mMから少なくとも約100mMの最終濃度での、還元剤、例えばTCEP中でのインキュベーションにより還元される。いくつかの局面において、精製された免疫グロブリンは、還元剤、例えばTCEPの、少なくとも約10mMから少なくとも約100mM、少なくとも約20mMから少なくとも約100mM、少なくとも約30mMから少なくとも約100mM、少なくとも約40mMから少なくとも約100mM、少なくとも約50mMから少なくとも約100mM、少なくとも約2mMから少なくとも約30mM、少なくとも約3mMから少なくとも約30mM、少なくとも約4mMから少なくとも約30mM、少なくとも約5mMから少なくとも約30mM、少なくとも約6mMから少なくとも約30mM、少なくとも約7mM少なくとも約30mM、少なくとも約8mMから少なくとも約30mM、少なくとも約9mMから少なくとも約30mM、少なくとも約10mMから少なくとも約30mM、少なくとも約15mMから少なくとも約30mM、少なくとも約20mMから少なくとも約30mM、少なくとも約10mMから少なくとも約25mM、少なくとも約10mMから少なくとも約20mM、少なくとも約15mMから少なくとも約25mM、または少なくとも約15mMから少なくとも約20mMの最終濃度での、還元剤、例えばTCEP中でのインキュベーションにより還元される。特定の局面において、精製された免疫グロブリンは、還元剤、例えばTCEPの、少なくとも約10mM、少なくとも約mM、少なくとも約11mM、少なくとも約12mM、少なくとも約12mM、少なくとも約13mM、少なくとも約14mM、少なくとも約15mM、少なくとも約16mM、少なくとも約17mM、少なくとも約18mM、少なくとも約19mM、少なくとも約20mM、少なくとも約21mM、少なくとも約22mM、少なくとも約23mM、少なくとも約24mM、少なくとも約25mM、少なくとも約26mM、少なくとも約27mM、少なくとも約28mM、少なくとも約29mM、または少なくとも約30mMの最終濃度での、還元剤、例えばTCEP中でのインキュベーションにより還元される。特定の局面において、精製された免疫グロブリンは、還元剤、例えばTCEPの少なくとも約20mMの最終濃度での、還元剤、例えばTCEP中でのインキュベーションにより還元される。
【0134】
いくつかの局面において、精製された免疫グロブリンは、少なくとも約20℃から少なくとも約30℃、少なくとも約21℃から少なくとも約29℃、少なくとも約22℃から少なくとも約28℃、少なくとも約23℃から少なくとも約27℃、または少なくとも約24℃から少なくとも約26℃でのTCEP中でのインキュベーションにより減少する。いくつかの局面において、精製された免疫グロブリンは、少なくとも約20℃、少なくとも約21℃、少なくとも約22℃、少なくとも約23℃、少なくとも約24℃、少なくとも約24℃、約25℃、少なくとも約26℃、少なくとも約27℃、少なくとも約28℃、少なくとも約29℃、または少なくとも約30℃でのTCEP中でのインキュベーションにより還元される。いくつかの局面において、精製された免疫グロブリンは、約20℃でのTCEP中でのインキュベーションにより還元される。
【0135】
いくつかの局面において、精製された免疫グロブリンは、少なくとも約20から少なくとも約30分、少なくとも約21から少なくとも約30分、少なくとも約22から少なくとも約30分、少なくとも約23から少なくとも約30分、少なくとも約24から少なくとも約30分、少なくとも約25から少なくとも約30分、少なくとも約26から少なくとも約30分、少なくとも約27から少なくとも約30分、少なくとも約28から少なくとも約30分、少なくとも約29から少なくとも約30分、少なくとも約20から少なくとも約29分、少なくとも約20から少なくとも約28分、少なくとも約20から少なくとも約27分、少なくとも約20から少なくとも約26分、少なくとも約20から少なくとも約25分、少なくとも約20から少なくとも約24分、少なくとも約20から少なくとも約23分、少なくとも約20から少なくとも約22分、少なくとも約20から少なくとも約21分、少なくとも約21から少なくとも約29分、少なくとも約22から少なくとも約28分、少なくとも約23から少なくとも約27分、または少なくとも約24から少なくとも約26分の、TCEP中でのインキュベーションにより還元される。溶出した試料は、100mMの緩衝TCEP溶液を最終濃度が20mMになるように添加した後、25℃での30分間のインキュベーションにより、直ちに還元した。
【0136】
いくつかの局面において、精製された免疫グロブリンは、精製の直後に還元される。いくつかの局面において、精製されたタンパク質は、還元される前に一定期間保存される。
【0137】
E.液体クロマトグラフィー-質量分析(LC-MS)
質量分析(MS)は、小分子、高分子、および混合モードの生体高分子試料の定性的および定量的分析の両方を実施する手段である。MSは、創薬、合成反応のモニタリング、およびナノ粒子の特性評価を含むさまざまな異なる適用において使用されている。MSは、試料の完全なサービスを提供し、方法開発、バリデーション、およびテスト試料分析の実行を可能にする。
【0138】
本開示において有用なMSシステムは、一般に、以下の非限定的能力のうちの1つ以上を提供する:正確な質量分析/分子式の検証;LC-UV-MSを使用する試料の純度分析;フローインジェクションまたはUPLC分離による複雑な混合物の正確な質量分析;生物学的または環境試料中の有機化合物の定量;オリゴヌクレオチド分子量の決定;質量分析によるイメージング;臨床薬理学および迅速な薬物動態(PK)分析;またはそれらの任意の組み合わせ。
【0139】
定性的および定量的分析に使用される多くの異なるタイプの高分解能MS機器があり、それらのいずれもが本明細書に開示される方法において使用することができる。MS機器の非限定的な例は、Bruker MaxisまたはImpactシステム、ABSciex TripleTOF 5600/6600、ABSciex X500R、Agilent 6545XT、Waters Xevo(登録商標)G2TOF、または任意の他のモデルを含む。
【0140】
本開示の特定の局面は、試料を液体クロマトグラフィー(LC)に続いてMSに適用することにより、生物学的試料中のM-タンパク質を測定する方法に向けられる。MSおよびLCを組み合わせた技術は、一般にLC-MSとして既知である。LCおよびMSの組み合わせにより、実験誤差が減少し、精度が向上する。いくつかの局面において、LC-MSのLCは、高性能LC(HPLC)を含む。いくつかの局面において、免疫グロブリンは、最初に免疫捕捉により精製され、次いで、精製された免疫グロブリンは化学的還元により解離され、および次いで、精製され、解離された免疫グロブリンはLC-MSに適用される。いくつかの局面において、精製され、解離された免疫グロブリンは、LC-MSに適用される。
【0141】
LC-MSは、それらの物理的および化学的特性に従って混合物を分離し、次いで各ピーク内の成分を同定し、それらの質量スペクトルに基づいて検出する手段を提供する。いくつかの局面において、LC-MSにおいて使用される流量は、HPLCにおいて通常使用されるものよりも少ない。流量をHPLCより低く保つと、完全なイオン化の可能性が高まり、MSの検出感度が維持される。MSの検出感度は200μL/分を超えて低下し始める。いくつかの局面において、LC-MSにおいて使用されるカラムは、より小さな溶媒流量および試料体積に対応するために、HPLCにおいて通常使用されるカラムよりも小さい。いくつかの局面において、シリンジポンプは、LC-MSにおいて使用される。シリンジポンプは、低流量でも非常に正確な供給を可能にする。
【0142】
特定の局面において、LC-MSは、Acquity UPLC H-Class Plus Bio Systemを含む。Acquity UPLC H-Class Plus Bio Systemは、UPLCテクノロジーに通常期待される高分解能、高感度の分離を提供する。さらに、このシステムは、サイズ排除(SEC)または逆相(RP)を含むがこれに限定されない、必要な全てのクロマトグラフィーモードを実行するための柔軟性および堅牢性を可能にする。このシステムは、既存の全てのHPLC、UHPLC、およびUPLC方法をさらに支持する。Acquity UPLC H-Class Plus Bio Systemは、非ステンレス鋼材料で作られたバイオイナート流路を含む。これにより、大きな分子をインタクトで移動させておくことができ、試料の回収率がより良くなり、キャリーオーバーがなくなる。
【0143】
いくつかの局面において、LC-MSは、LCカラムを含む。いくつかの局面において、LCカラムはC3カラムである。いくつかの局面において、LCカラムはC4カラムである。本開示において有用なC4カラムの例は、Acquity Protein BEH C4300Å、1.7μm、2.1mmx100mm(Waters Corporation、MA)、XBridge OBD Prep Column Reversed-Phase 5μm(Waters Corporation)、Aeris WIDEPORE 3.6u C4(Phenomenex);ZORBAX SB-C3、80Å、5μm(Agilent);およびPoroshell 300SB-C3(Agilent)を含むが、これに限定されない。特定の局面において、LC-MSは、C4カラムを備えたAcquity UPLC H-Class Plus Bio Systemを含む。いくつかの局面において、試料は、カラム、例えばC4カラム上に注入され、カラム温度は、約70℃から約90℃、約70℃から約85℃、約70℃から約80°C、約70°Cから約75°C、約75°Cから約90°C、約75°Cから約85°C、約75°Cから約80°C、約80°Cから約90°C、または約85°Cから約90°Cに設定される。いくつかの局面において、カラム温度は、約75℃から約85℃に設定される。いくつかの局面において、カラム温度は、約75℃から約80℃に設定される。いくつかの局面において、カラム温度は、約70℃、約71℃、約72℃、約73℃、約74℃、約75℃、約76℃、約77℃、約78°C、約79°C、約80°C、約81°C、約82°C、約83°C、約84°C、約85°C、約86°C、約87°C、約88°C、約89°C、または約90°Cに設定される。いくつかの局面において、試料は、カラム温度が約75℃に設定された状態で、カラム、例えばC4カラム上に注入される。いくつかの局面において、試料は、カラム温度が約76℃に設定された状態で、カラム、例えばC4カラム上に注入される。いくつかの局面において、試料は、カラム温度が約77℃に設定された状態で、カラム、例えばC4カラム上に注入される。いくつかの局面において、試料は、カラム温度が約78℃に設定された状態で、カラム、例えばC4カラム上に注入される。いくつかの局面において、試料は、カラム温度が約79℃に設定された状態で、カラム、例えばC4カラムに注入される。いくつかの局面において、試料は、カラム温度が約80℃に設定された状態で、カラム、例えばC4カラム上に注入される。
【0144】
いくつかの局面において、移動相は、移動相Aおよび移動相Bを含む。いくつかの局面において、移動相Aは、約0.01%から約1.0%、約0.02%から約0.9%、約0.03%から約0.03%を含む。約0.8%、約0.04%から約0.7%、約0.05%から約0.6%、約0.06%から約0.5%、約0.07%から約0.4%、約0.08%から約0.3%、約0.09%から約0.2%、約0.1%から約0.2%、約0.01%から約0.2%、約0.02%から約0.2%、約0.03%から約0.2%、約0.04%から約0.2%、約0.05%から約0.2%、約0.06%から約0.2%、約0.07%から約0.2%、約0.08%から約0.2%、約0.09%から約0.2%、約0.01%から約0.19%、約0.02%から約0.18%、約0.03 %から約0.17%、約0.04%から約0.16%、約0.05%から約0.15%、約0.06%から約0.14%、約0.07%から約0.18%、約0.08%から約0.12%、約0.09%から約0.11%、約0.05%から約0.1%、または約0.1%から約0.15%の水中のギ酸(FA)を含む。いくつかの局面において、移動相Aは、約0.05%から約0.15%の水中のFAを含む。いくつかの局面において、移動相Aは、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.10%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、または約0.15%の水中のFAを含む。いくつかの局面において、移動相Aは、約0.1%の水中のFAを含む。
【0145】
いくつかの局面において、移動相Bは、約0.01%から約1.0%、約0.02%から約0.9%、約0.03%から約0.8%、約0.04%から約0.7%、約0.05%から約0.6%、約0.06%から約0.5%、約0.07%から約0.4%、約0.08%から約0.3%、約0.09%から約0.2%、約0.1%から約0.2%、約0.01%から約0.2%、約0.02%から約0.2%、約0.03%から約0.2%、約0.04%から約0.2%、約0.05%から約0.2%、約0.06%から約0.2%、約0.07%から約0.2%、約0.08%から約0.2%、約0.09%から約0.2%、約0.01%から約0.19%、約0.02%から約0.18%、約0.03から約0.17%、約0.04%から約0.16%、約0.05%から約0.15%、約0.06%から約0.14%、約0.07%から約0.18%、約0.08%から約0.12%、約0.09%から約0.11%、約0.05%から約0.1%、または約0.1%から約0.15%のアセトニトリル中のギ酸(FA)を含む。いくつかの局面において、移動相Bは、約0.05%から約0.15%のアセトニトリル中のFAを含む。いくつかの局面において、移動相Bは、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.10%、約0.11%、約0.12%、約0.13%、約0.14%、または約0.15%のアセトニトリル中のFAを含む。いくつかの局面において、移動相Bは、約0.1%のアセトニトリル中のFAを含む。
【0146】
いくつかの局面において、勾配分離プログラムは、以下のように使用される:0-1.0分 10%移動相B;1.1-3.0分 10-33%移動相B;3.0-10.0分 33-40%移動相B;10.1-10.5分 40-90%移動相B;90%移動相Bで10.5-3.0分保持;13.0-15.0分 90-10%移動相B;および15.0分での実行停止。勾配分離プログラムは、ユーザーが1つまたは複数の移動相の時間および供給量を設定し、必要な設定で実行し、分析を適切に終了することを可能にする。
【0147】
いくつかの局面において、流量(すなわち、1分あたりの機器により送達される移動相の量(体積))は、約0.025mL/分から約1.0mL/分、約0.05mL/分から約1.0mL/分、約0.075mL/分から約1.0mL/分、約0.025mL/分から約0.9mL/分、約0.025mL/分から約0.8mL/分、約0.025mL/分から約0.7mL/分、約0.025mL/分から約0.6mL/分、約0.025mL/分から約0.5mL/分、約0.1mL/分から約0.9mL/分、0.1mL/分から約0.8mL/分、0.1mL/分から約0.7mL/分、0.1mL/分から約0.6mL/分、0.1mL/分から約0.5mL/分、0.1mL/分から約0.4mL/分、0.1mL/分から約0.3mL/分、0.2mL/分から約0.9mL/分、0.2mL/分から約0.8mL/分、0.2mL/分から約0.7mL/分、0.2mL/分から約0.6mL/分、0.2mL/分から約0.5mL/分、0.2mL/分から約0.4mL/分、0.2mL/分から約0.3mL/分、0.3mL/分から約0.9mL/分、0.3mL/分から約0.8mL/分、0.3mL/分から約0.7mL/分、0.3mL/分から約0.6mL/分、0.3mL/分から約0.5mL/分、または0.3mL/分から約0.4mL/分に設定される。いくつかの局面において、流量は、約0.1mL/分から0.5mL/分に設定される。いくつかの局面において、流量は、約0.025mL/分、約0.05mL/分、約0.075mL/分、約0.1mL/分、約0.2mL/分、約0.25mL/分、約0.26mL/分、約0.27mL/分、約0.28mL/分、約0.29mL/分、約0.30mL/分、約0.31mL/分、約0.32mL/分、約0.33mL/分、約0.34mL/分、または約0.35mL/分に設定される。いくつかの局面において、流量は、約0.3mL/分に設定される。
【0148】
いくつかの局面において、注入体積(すなわち、各実行のために機器に注入される試料の量(体積))は、約1.0μLから約3.0μL、約1.0μLから約2.5μL、約1.0μLから約2.0μL、約1.0μLから約1.5μL、約1.5μLから約3.0μL、約2.0μLから約3.0μL、約2.5μLから約3.0μL、または約1.5μLから約2.5μLである。いくつかの局面において、注入体積は、約1.5μLから約2.5μLである。いくつかの局面において、注入体積は、約1.0μL、約1.5μL、約2.0μL、約2.5μL、または約3.0μLである。いくつかの局面において、注入体積は、約2.0μLである。
【0149】
いくつかの局面において、LCはMSとオンラインである。いくつかの局面において、免疫グロブリンは、高速液体クロマトグラフィーカラム(HPLC)上での分離後、MSにより直接分析される。いくつかの局面において、MSは、飛行時間型MS高分解能機器を含む。いくつかの局面において、MSは、飛行時間型MSを含む。いくつかの局面において、MSは、レーザー脱離イオン化(MALDI)MSを含む。特定の局面において、MSは、MALDI TOF MSを含む。特定の局面において、MSは、Maxis 4G Q-TOF(別名UHR)機器を含む。いくつかの局面において、MSは、MALDI MSを含まない。いくつかの局面において、MSはマイクロフローMSを含まない。いくつかの局面において、Maxis 4G Q-TOFは、標準的なElectrospray(ESI)Apollo-ソース(Bruker Daltonics,Hamburg,Germany)を含む。いくつかの局面において、例えば、ESI-L低濃度チューニングミックス(Agilent Technologies,CA)を注入することにより、各分析の前に機器が較正される。いくつかの局面において、各15分の実行は、廃棄セグメント、ソースセグメント、および追加の廃棄セグメントとしてセグメント化される。いくつかの局面において、各15分の実行は、次のようにセグメント化される:廃棄まで約3分、次いでソースまで約7分、および廃棄まで最後約5分。
【0150】
いくつかの局面において、毛細管電圧(すなわち、エレクトロスプレーに適用される電圧)は、約4000Vから約6000V、約4000Vから約5900V、約4000Vから約5800V、約4000Vから約5700V、4000Vから約5600V、4000Vから約5500V、4000Vから約5400V、4000Vから約5300V、4000Vから約5200V、4000Vから約5100V、4000Vから約5000V、4000Vから約4900V、4000Vから約4800V、4000Vから約4700V、約4000Vから約4600V、約4000Vから約4500V、約4000Vから約4400V、約4000Vから約4300V、約4000Vから約4200V、約4000Vから約4100V、約4100Vから約5000V、約4200Vから約5000V、約4300Vから約5000V、約4400Vから約5000V、約4500Vから約5000V、約4600Vから約5000V、約4700Vから約5000V、約4800Vから約5000V、約4900Vから約5000V、約4100Vから約4900V、約4200Vから約4800V、約4300Vから約4700V、または約4400Vから約4600Vに設定される。いくつかの局面において、毛細管電圧は、約4000V、約4100V、約4200V、約4300V、約4400V、約4500V、4600V、約4600V、約4700V、約4800V、約4900V、または約5000Vに設定される。いくつかの局面において、毛細管電圧は、約4500Vに設定される。
【0151】
いくつかの局面において、ネブライザー(すなわち、液体を微細な霧に変換する装置)は、約1.0バールから約2.2バール、約1.0バールから約2.1バール、約1.0バールから約2.0バール、約1.0バールから約1.9バール、約1.0バールから約1.8バール、約1.0バールから約1.7バール、約1.0バールから約1.6バール、約1.0バールから約1.5バール、約1.0バールから約1.4バール、約1.0バールから約1.3バール、約1.0バールから約1.2バール、約1.0バールから約1.1バール、約1.0バールから約2.2バール、約1.1バールから約2.2バール、約1.2バールから約2.2バール、約1.3バールから約2.2バール、約1.4バールから約2.2バール、約1.5バールから約2.2バール、約1.6バールから約2.2バール、約1.7バールから約2.2バール、約1.8バールから約2.2バール、約1.9バールから約2.2バールバール、約2.0バールから約2.2バール、約2.1バールから約2.2バール、約1.1バールから約2.1バール、約1.2バールから約2.0バール、約1.3バールから約1.9バール、約1.4バールから約1.8バール、約1.5バールから約1.7バール、または約1.5バールから約2.0バールに設定される。いくつかの局面において、ネブライザーは、約1.0バール、約1.1バール、約1.2バール、約1.3バール、約1.4バール、約1.5バール、約1.6バール、約1.7バール、約1.8バール、約1.9バール、2.0バール、約2.1バール、または約2.2バールに設定される。いくつかの局面において、ネブライザーは、約1.6バールに設定される。
【0152】
いくつかの局面において、乾燥ガス(すなわち、高グレード、低水分ガス)は、約7.5L/分から約9.5L/分、約7.6L/分から約9.5L/分、約7.7L/分から約9.5L/分、約7.8L/分から約9.5L/分、約7.9L/分から約9.5L/分、約8.0L/分から約9.5L/分、約8.1L/分から約9.5L/分、約8.2L/分から約9.5L/分、約8.3L/分から約9.5L/分、約8.4L/分から約9.5L/分、約8.5L/分から約9.5L/分、約8.6L/分から約9.5L/分、約7.8L/分から約9.5L/分、約7.9L/分から約9.5L/分、約8.0L/分から約9.5L/分、約8.1L/分から約9.5L/分、約8.2L/分から約9.5L/分、約8.3L/分から約9.5L/分、約8.4L/分から約9.5L/分、約8.5L/分から約9.5L/分、約8.6L/分から約9.5L/分、約8.7L/分から約9.5L/分、約8.8L/分から約9.5L/分、約8.9L/分から約9.5L/分、約9.0L/分から約9.5L/分、約9.1L/分から約9.5L/分、約9.2L/分から約9.5L/分、約9.3L/分から約9.5L/分、約9.4L/分から約9.5L/分、約7.5L/分から約9.4L/分、約7.5L/分から約9.3L/分、約7.5L/分から約9.2L/分、約7.5L/分から約9.1L/分、約7.5L/分から約9.0L/分、約7.5L/分から約8.9L/分、約7.5L/分から約8.8L/分、約7.5L/分から約8.7L/分、約7.5L/分から約8.6L/分、約7.5L/分から約8.5L/分、約7.5L/分から約8.4L/分、約7.5L/分から約8.3L/分、約7.5L/分から約8.2L/分、約7.5L/分から約8.1L/分、約7.5L/分から約8.0、約7.5L/分から約7.9L/分、約7.5L/分から約7.8L/分、約7.5L/分から約7.7L/分、約7.5L/分から約7.6L/分、約7.6L/分から約9.4L/分、約7.7L/分から約9.3L/分、約7.8L/分から約9.2L/分、約7.9L/分から約9.1L/分、約8.0L/分から約9.0L/分、約8.1L/分から約8.9L/分、約8.2L/分から約8.8L/分、約8.3L/分から約8.7L/分、または約8.4L/分から約8.6L/分に設定される。いくつかの局面において、乾燥ガスは、約8.0L/分、約8.1L/分、約8.2L/分、約8.3L/分、約8.4L/分、約8.5L/分、約8.6L/分、約8.7L/分、約8.8L/分、約8.9L/分、または約9.0L/分に設定される。いくつかの局面において、乾燥ガスは、約8.5L/分に設定される。
【0153】
いくつかの局面において、乾燥温度(すなわち、放射線および湿気から遮蔽された気温)は、約175℃から約225℃、約180℃から約225℃、約185℃から約185℃、約225°C、約190°Cから約225°C、約195°Cから約225°C、約200°Cから約225°C、約205°Cから約225°C、約210°Cから約225°C、約215°Cから約225°C、約220°Cから約225°C、約175°Cから約220°C、約175°Cから約215°C、約175°Cから約210°C、約175°Cから約205°C、約175°Cから約200°C、約175°Cから約195°C、約175°Cから約190°C、約175°Cから約185°C、約175°Cから約180°C、約180°Cから約220°C、約185°Cから約215°C、約190°Cから約210°C、または約195°Cから約205°Cに設定される。いくつかの局面において、乾燥温度は、約175℃、約180℃、約185℃、約190℃、約195℃、約200℃、約205℃、約210℃、約215°C、約220°C、または約225°Cに設定される。いくつかの局面において、乾燥温度は、約200℃に設定される。
【0154】
いくつかの局面において、転送ファンネル無線周波数(RF)および/または多重極RFパラメータは、約350Vppから約450Vpp、約360Vppから約450Vpp、約370Vppから約450Vpp、約380Vppから約450Vpp、約390Vppから約450Vpp、約400Vppから約450Vpp、約410Vppから約450Vpp、約420Vppから約450Vpp、約430Vppから約450Vpp、約440Vppから約450Vpp、約350Vppから約440Vpp、約350Vppから約435Vpp、約350Vppから約430Vpp、約350Vppから約420Vpp、約350Vppから約410Vpp、約350Vppから約400Vpp、約350Vppから約390Vpp、約350Vppから約380Vpp、約350Vppから約370Vpp、約350Vppから約360Vpp、約360Vppから約440Vpp、約370Vppから約430Vpp、約380Vppから約420Vpp、または約390Vppから約410Vppに設定される。いくつかの局面において、転送ファンネルRFおよび/または多重極RFパラメータは、約350Vpp、約360Vpp、約370Vpp、約380Vpp、約390Vpp、約400Vpp、約41Vpp、約420Vpp、約430Vpp、約440Vpp、または約450Vppに設定される。いくつかの局面において、転送ファンネルRFおよび/または多重極RFパラメータは、約400Vppに設定される。
【0155】
いくつかの局面において、ソース内衝突誘起解離(isCID)エネルギーが、適用される。いくつかの局面において、isCIDエネルギーは適用されない。isCIDは、気相で選択されたイオンのフラグメンテーションを誘導する質量分析技術である。選択されたイオン(通常は分子イオンまたはプロトン化分子)は通常、電位を適用してイオンの運動エネルギーを増加させることで加速され、中性分子(例えば、ヘリウム、窒素、またはアルゴン)と衝突する。衝突において、運動エネルギーの一部は、内部エネルギーに変換され、これは結合の切断および分子イオンのより小さな断片への断片化をもたらす。
【0156】
いくつかの局面において、イオンクーラー転送時間は、約50μsから約150μs、約60μsから約150μs、約70μsから約150μs、約80μsから約150μs、約90μsから約150μs、約100μsから約150μs、約110μsから約150μs、約120μsから約150μs、約130μsから約150μs、約140μsから約150μs、約50μsから約140μs、約50μsから約130μs、約50μsから約120μs、約50μsから約110μs、約50μsから約100μs、約50μsから約90μs、約50μsから約80μs、約50μsから約70μs、約50μsから約60μs、約60μsから約140μs、約70μsから約130μs、約80μsから約120μs、または約90μsから約110μsである。いくつかの局面において、イオンクーラー転送時間は、約50μs、約60μs、約70μs、約80μs、約90μs、約100μs、約110μs、約120μs、約130μs、約140μs、または約150μsである。いくつかの局面において、イオンクーラー転送時間は、約100μsである。イオンクーラー転送は、分析中に高エネルギーイオンを減速させる手段である。
【0157】
いくつかの局面において、イオンクーラー転送は、約20μsから約30μs、約21μsから約30μs、約22μsから約30μs、約23μsから約30μs、約24μsから約30μs、約25μsから約30μs、約26μsから約30μs、約27μsから約30μs、約28μsから約30μs、約29μsから約30μs、約20μsから約29μs、約20μsから約28μs、約20μsから約27μs、約20μsから約26μs、約20μsから約25μs、約20μsから約24μs、約20μsから約23μs、約20μsから約22μs、約20μsから約21μs、約21μsから約29μs、約22μsから約28μs、約23μsから約27μs、または約24μsから約26μsのプレパルス貯蔵を有する。いくつかの局面において、イオンクーラー転送は、約20μs、約21μs、約22μs、約23μs、約24μs、約25μs、約26μs、約27μs、約28μs、約29μs、または約30μsのプレパルス貯蔵を有する。いくつかの局面において、イオンクーラー転送は、約25μsのプレパルス貯蔵を有する。
【0158】
いくつかの局面において、TOF MSスキャンは、約1.0Hzの取得速度でm/z700-2700から取得される。
【0159】
本明細書に開示される方法について、任意のESI Q-TOF質量分析計を使用することができる。これは、Bruker Maxis、ABSciex TripleTOF 5600/6600、ABSciex X500R、Agilent 6545XT、Waters Xevo(登録商標)G2 TOF分光計または任意の他のモデルを含むがこれに限定されない。
【0160】
F.処置の方法
本開示のいくつかの局面は、形質細胞障害を有する対象を処置する方法に向けられる。本開示の特定の局面は、形質細胞障害を有する対象を処置する方法であって、以下:本明細書に開示される任意の方法を使用して対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定すること、およびM-タンパク質を有すると同定される対象にSLAMF7に特異的に結合する治療有効量の抗体またはその抗原結合部分(「抗SLAMF7抗体」)を投与することを含む方法に向けられる。本開示の他の局面は、形質細胞障害を有する対象を処置する方法であって、以下:(i)治療有効量の抗SLAMF7抗体を対象に投与すること;(ii)本明細書に開示される任意の方法を使用して対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定すること;および(iii)追加の治療有効量の抗SLAMF7抗体を対象に投与することを含む方法に向けられる。本開示のさらに他の局面は、本明細書に開示される任意の方法を使用して対象から得られる生物学的試料中のM-タンパク質を測定することを含む、抗SLAMF7抗体療法に適した対象を同定する方法に向けられる。いくつかの局面において、該方法は、M-タンパク質を有すると同定される対象に治療有効量の抗SLAMF7抗体を投与することをさらに含む。
【0161】
ヒトSLAMF7に特異的に結合する任意の抗体またはその抗原結合部分を、本明細書に開示される方法において使用することができる。いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体は、ヒトSLAMF7への結合についてエロツズマブと交差競合する。いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体は、エロツズマブと同じヒトSLAMF7上のエピトープに結合する。いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体は、エロツズマブとしてヒトSLAMF7上の重複するエピトープに結合する。いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体は、ヒト抗体である。いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体は、キメラ抗体である。特定の局面において、抗SLAMF7抗体は、エロツズマブである。
【0162】
エロツズマブ(BMS-901608およびHuLuc63とも呼ばれる)は、多発性骨髄腫において高度かつ均一に発現される細胞表面糖タンパク質であるSLAMF7(CS-1としても既知である)に対するヒト化モノクローナルIgG1抗体である(米国公開番号US2006/024296、US2010/168397、US2009/246852、US2009/238835、US2012/064067、US2012/070440、US2012/064068、US2012/064083、US2012/064069、US2014/065063、US2016/002335、US2005/025763、US2009/238827、US2008/124332、US2011/165154、US2016/206734、US2008/152646、US2014/322201、US2016/137735、US2017/342150、US2008/095768、US2011/206701、US2013/052158、およびUS2013/058921;およびPCT発行番号WO2004/100898、WO2005/102387、WO2008/019376、WO2008/019378、WO2008/019379、WO2010/051391、WO2011/053321、およびWO2011/053322を参照;これらのそれぞれは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。エロツズマブは、末梢血リンパ球の存在下で、初代多発性骨髄腫細胞に対して有意な抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導する(Tai et al., Blood, 112:1329-1337 (2008))。エロツズマブは、NK細胞を介してADCCを媒介することが既知である(van Rhee, F. et al., Mol. Cancer Ther., 8(9):2616-2624 (2009))。再発または難治性の多発性骨髄腫を有する患者の処置についての、単独で (Zonder et al., Blood, 120(3):552-559 (2012))、ボルテゾミブ(Jakubowiak et al., J. Clin. Oncol., 30(16):1960-1965 (Jun. 1, 2012))、またはレナリドマイドおよび低用量デキサメタゾン(Lonial et al., J. Clin. Oncol., 30:1953-1959 (2012))と組み合わされて投与されるこの薬物の安全性および有効性を評価した3つの研究の結果;および再発性または難治性の多発性骨髄腫を有する患者の処置についてのRichardson et al., Blood (ASH Annual Meeting Abstracts) 116:986 (2010)が、報告されている。3つの組み合わせは全て、管理可能な安全性プロファイルおよび有望な活活性を示した。例えば、再発または難治性の多発性骨髄腫の処置におけるレナリドミドおよび低用量デキサメタゾンの併用によるエロツズマブの安全性および有効性を評価する第I/II相試験は、10mg/kg用量を受ける患者において33か月のPFSおよび92%の応答率を実証した(Lonial et al., J. Clin. Oncol., 31 (2013) (Suppl., Abstr. 8542))。以前に未処置の多発性骨髄腫患者におけるエロツズマブ有りまたは無しでのレナリドミド/デキサメタゾンの第III相臨床試験が進行中であり、一方でファーストライン設定におけるこの同じ組み合わせを評価するように設計される別の第III相試験もまた進行中である。
【0163】
特定の局面において、治療有効量の抗SLAMF7抗体、例えばエロツズマブは、治療有効量の追加の治療薬との併用療法として投与される。いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体、例えばエロツズマブは、追加の治療薬と同時に投与される。いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体、例えばエロツズマブは、追加の治療薬の前に投与される。いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体、例えばエロツズマブは、追加の治療薬の後に投与される。いくつかの局面において、治療薬は抗癌剤である。いくつかの局面において、追加の治療薬は、ボルテゾミブ、レナリドマイド、ポマリドマイド、デキサメタゾン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの局面において、追加の治療薬は、ボルテゾミブ、レナリドマイド、ポマリドマイド、デキサメタゾン、またはそれらの任意の組み合わせから選択される。いくつかの局面において、治療有効量の抗SLAMF7抗体は、治療有効量のボルテゾミブと組み合わせて投与される。いくつかの局面において、治療有効量の抗SLAMF7抗体は、治療有効量のレナリドマイドと組み合わせて投与される。いくつかの局面において、治療有効量の抗SLAMF7抗体は、治療有効量のデキサメタゾンと組み合わせて投与される。いくつかの局面において、治療有効量の抗SLAMF7抗体は、治療有効量のボルテゾミブおよび治療有効量のレナリドマイドと組み合わせて投与される。いくつかの局面において、治療有効量の抗SLAMF7抗体は、治療有効量のボルテゾミブおよび治療有効量のデキサメタゾンと組み合わせて投与される。いくつかの局面において、治療有効量の抗SLAMF7抗体は、治療有効量のレナリドマイドおよび治療有効量のデキサメタゾンと組み合わせて投与される。いくつかの局面において、治療有効量の抗SLAMF7抗体は、治療有効量のボルテゾミブ、治療有効量のレナリドマイド、および治療有効量のデキサメタゾンと組み合わせて投与される。
【0164】
いくつかの局面において、治療有効量の抗SLAMF7抗体は、治療有効量のジフェンヒドラミンと組み合わせて投与される。いくつかの局面において、治療有効量の抗SLAMF7抗体は、治療有効量のラニチジンと組み合わせて投与される。いくつかの局面において、治療有効量の抗SLAMF7抗体は、治療有効量のアセトアミノフェンと組み合わせて投与される。
【0165】
いくつかの局面において、治療有効量の抗SLAMF7抗体は、治療有効量のアゴニストCD137抗体と組み合わせて投与される(参照によりその全体が本明細書に組み込まれるUS 2016/0264670 A1を参照)。いくつかの局面において、治療有効量の抗SLAMF7抗体は、治療有効量のウレルマブと組み合わせて投与される。
【0166】
抗SLAMF7抗体は、任意の経路により投与することができる。いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体は、静脈内、皮下、皮内、腹腔内、筋肉内、またはそれらの任意の組み合わせで投与される。特定の局面において、抗SLAMF7抗体は、静脈内投与される。
【0167】
いくつかの局面において、抗SLAMF7抗体は、本明細書に開示される任意の方法を使用して決定されるように、M-タンパク質を有する対象に投与される。いくつかの局面において、M-タンパク質がM-タンパク質の閾値レベルを超える場合、対象は抗SLAMF7抗体を投与される。いくつかの局面において、M-タンパク質の閾値レベルは、対象から得られる血清試料中の、少なくとも約1g/L、少なくとも約2g/L、少なくとも約3g/L、少なくとも約4g/L、少なくとも約5g/L、少なくとも約10g/L、少なくとも約15g/L、少なくとも約20g/L、少なくとも約25g/L、少なくとも約30g/L、少なくとも約35g/L、少なくとも約40g/L、少なくとも約45g/L、少なくとも約50g/LのM-タンパク質である。特定の局面において、M-タンパク質の閾値レベルは、対象から得られる血清試料中の約30g/LのM-タンパク質である。
【0168】
いくつかの局面において、閾値レベルは、対象が特定のタイプの形質細胞障害を有することを示した。いくつかの局面において、対象から得られる血清試料が(本明細書に開示される任意の方法を使用して測定されるように)少なくとも約30g/LのM-タンパク質を有すると決定される場合、対象はMMを有すると同定される。いくつかの局面において、該方法は、MMを有すると同定される対象に抗SLAMF7抗体を投与することをさらに含む。いくつかの局面において、該方法は、MMを有すると同定される対象から骨髄生検を取得することをさらに含む。
【0169】
いくつかの局面において、対象から得られる血清試料が(本明細書に開示される任意の方法を使用して測定されるように)少なくとも約1g/Lから少なくとも約30g/LのM-タンパク質を有すると決定される場合、対象MMを有するリスクのある候補者として同定される。いくつかの局面において、対象から得られる血清試料が(本明細書に開示される任意の方法を使用して測定されるように)少なくとも約5g/Lから少なくとも約30g/LのM-タンパク質を有すると決定される場合、対象は、MMを有するリスクのある候補者として同定される。いくつかの局面において、対象から得られる血清試料が(本明細書に開示される任意の方法を使用して測定されるように)少なくとも約10g/Lから少なくとも約30g/LのM-タンパク質を有すると決定される場合、対象は、MMを有するリスクのある候補者として同定される。いくつかの局面において、該方法は、MMを有するリスクのある候補として同定される対象から骨髄生検を取得することをさらに含む。特定の局面において、骨髄生検は、MMのマーカーについてさらに分析される。
【0170】
上で引用された全ての参考文献、ならびに本明細書で引用された全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0171】
以下の実施例は、限定としてではなく、例示として提供される。
【0172】
実施例
本実施例は、完全に自動化された免疫捕捉工程、分析フロークロマトグラフィー、および簡略化されたデータ抽出手順を使用してM-タンパク質を検出する免疫捕捉(IC)液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)アッセイを記載する。IC-LC-MSアッセイは、M-タンパク質を検出する際の治療用モノクローナル抗体からの干渉を排除する。
【0173】
材料および方法
1.材料
【0174】
ヒト骨髄腫血漿からの精製免疫グロブリンサブタイプ、緩衝トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)溶液、両性剤3-12、塩酸、HPLCグレードのアセトニトリルおよび2-プロパノールを、Sigma-Aldrich(MO,USA)から入手した。モノクローナル治療用抗体を、Bristol-Myers Squibb Research and Developmentから入手した。ギ酸(SupraPurグレード)を、EMD Chemical(NJ,USA)から購入した。ESI-Dulbeccoのリン酸緩衝生理食塩水を、Lonza Walkersville,Inc.(MD,USA)から入手した。CaptureSelect LC-lambda(Hu)およびCaptureSelect Kappa XL樹脂の1:1混合物を含有するPhyTipカラムを、PhyNexus(CA,USA)によりカスタムメイドした。ヒト血清を、Bioreclamation IVT(NY,USA)により購入した。
【0175】
2.血清試料
【0176】
正常なポリクローナルバックグラウンドを有するヒト血清プールを、4つの正常なヒト血清プールを組み合わせることにより調製した。多発性骨髄腫試料の段階希釈液を、以前に定量化されたM-タンパク質濃度(≧5000.0μg/mLおよび≦35.0μg/mL)の血清から調製した。合計50の多発性骨髄腫血清試料を選択した。30の試料はIgG(カッパ)を含有し;13の試料はIgG(ラムダ)を含有し;および7つの試料はIgAを含有し、4つはカッパ軽鎖を有し、3つはラムダ軽鎖を有した。選択した各M-タンパク質について、血清を通常の血清プールと混合して1000.0μg/mLのM-タンパク質に希釈した後、1000.0μg/mL試料を分析対象物濃度500.0、250.0、100.0、50.0、25.0、および10.0μg/mLに段階希釈した。
【0177】
3.標準および品質制御試料
【0178】
エロツズマブは、多発性骨髄腫の処置のためのヒト化IgG1モノクローナル抗体である。純粋で安定しており、大量に入手できるため、それは、内因性モノクローナル抗体を模倣するのに適した代理分析対象物である。エロツズマブのストック溶液は、プールされたヒト血清を、最終濃度が25mg/mLになるように凍結乾燥したmAbを含有する薬物バイアルに加えることにより調製した。プールされたヒト血清の多くをスクリーニングし、Mスパイクを含有しないものを品質制御(QC)調製のためにプールした。エロツズマブおよびQC試料を、プールされたブランクのヒト血清での段階希釈により、ストック溶液から調製した。
【0179】
4.試料調製
【0180】
血清試料、標準、およびQCをPBSで40倍に希釈し、110μLの希釈試料を免疫捕捉のために使用した。CaptureSelect LC-lambda(Hu)およびCaptureSelect Kappa XL樹脂の1:1混合物を含有するカスタムメイドのPhyTipカラムを、免疫グロブリンの免疫捕捉のために使用した。これらのPhyTipカラムを、96チャネルを備えたFreedom EVO(登録商標)自動化プラットフォーム(TECAN,USA)上で使用した。自動化された免疫捕捉プロセスは、次の工程を含んだ:1)PBSでチップを4サイクル洗浄すること;2)希釈された血清から免疫グロブリンを32サイクル捕捉すること;3)洗浄バッファーI(10mMリン酸、500mM NaClおよび0.1%両性剤、pH7.4)、PBS、および水でチップを合計8サイクル洗浄すること;4)100mM NaClを含有する12mM HClでの10サイクルの溶出。溶出した試料を、100mMの緩衝TCEP溶液を最終濃度が20mMになるように添加した後、25℃で30分間インキュベートすることにより、直ちに還元した。
【0181】
5.LC-MS
【0182】
クロマトグラフィーを、Acquity UPLC H-class Bioシステム(Waters Corporation,MA)上で実施した。試料をC4カラム(Acquity Protein BEH C4 300Å,1.7μm,2.1mmx100mm;Waters Corporation,MA)に注入し、カラム温度を80°Cに設定した。移動相Aは水中の0.1%のギ酸(FA)を含有し、移動相Bはアセトニトリル中の0.1%のFAを含有した。勾配分離プログラムを次のように使用した:0-1.0分 10%B;1.1-3.0分 10-33%B;3.0-10.0分 33-40%B;10.1-10.5分 40-90%B;90%Bで10.5-13.0分保持;13.0-15.0分 90-100%B;および15.0分での実行停止。流量を0.3μL/分に設定し、注入体積は2.0μLであった。
【0183】
UPLCを、標準的なエレクトロスプレー(ESI)アポロソース(Bruker Daltonics,Hamburg,Germany)を備えたMaxis 4G Q-TOF機器を用いてオンラインで行った。質量精度を確保するために、ESI-L低濃度チューニングミックス(Agilent Technologies,CA)を注入することにより、各分析の前に機器をキャリブレーションした。各15分の実行を、次のようにセグメント化した:廃棄まで3分;次いでソースまで7分;および廃棄まで最後5分。キャピラリー電圧を、4500Vに設定した。ネブライザーを、1.6バールに設定した。乾燥ガスを、8.5L/分に設定した。乾燥温度を、200℃に設定した。転送ファンネルRFおよびマルチポールRFパラメータを、400Vppに設定し;isCIDエネルギーを適用しなかった。イオンクーラー転送時間は100μsで、プレパルスストレージは25μsであった。イオン極性は正であり、移動平均がアクティブ化され、2に設定された。TOFMSスキャンを、1.0Hzの取得速度でm/z700-2700から取得した。
【0184】
6.MSデータ分析
【0185】
MSデータファイルを、Compass DataAnalysis 4.3ソフトウェアを使用して処理した。方法の詳細は次のとおりである:テストされた全ての免疫グロブリンがこの保持ウィンドウにおいて共溶出していたため、分析対象物の保持時間(RT)を5.6-6.8分に設定した。MSピークスペクトル抽出ウィンドウは800-2400m/z以内であり;質量スペクトルの平滑化およびベースライン減算は無効になり、最大エントロピーデコンボリューション範囲は20,000-28,000Daであった。デコンボリューションされたスペクトルの積分は、クロマトグラフィーピークの積分に類似していた。Jian et al., 8 Bioanalysis 1679-1691 (2016)。ピーク検出パラメータを上記のように調整し、分析対象物のピーク高さを計算した。軽鎖の分子量およびスペクトルのピーク高さを、mgfファイルに書き出した。その後のモノクローナル軽鎖(LC)の検出を、前処置モノクローナルLCの±1.0Da以内の分子量を有するポリクローナルバックグラウンドより上のピークの存在を検索することにより実行した。軽鎖のピーク高さを、カウントとして記録した。目的の分析対象物に隣接するポリクローナルバックグラウンドのLCのピーク高さも、記録した。バックグラウンドを差し引き、ポリクローナルバックグラウンドにおける差異を説明するために、隣接する軽鎖のピーク高さを分析対象物のピーク高さから差し引いた。軽鎖の非定量的測定について、正確な個々の軽鎖保持時間を使用して質量スペクトルを抽出した。
【0186】
7.血清タンパク質電気泳動
【0187】
SPEPおよびSIFE分析を、製造業者の指示に従って、Helenaラボゲル電気泳動システム(Helena laboratories,TX)上で実施した。負のSIFEを、電気泳動ゲル上の明確なバンドの不在として定義した。
【0188】
結果および考察
1.IC-LC-MSアッセイワークフロー
【0189】
記載されたIC-LC-MSアッセイは、完全に自動化された免疫捕捉工程および単純化されたデータ抽出手順を使用する。TECAN Freedom EVO(登録商標)ロボットプラットフォーム上で抗カッパ/抗ラムダ樹脂混合物を充填したPhynexusチップを使用して、免疫グロブリンおよび遊離軽鎖を血清から精製する。精製工程の後、インタクトな抗体を還元し、軽鎖をLC-MSにより分析する。M-タンパク質のデコンボリューションされたピーク高さの強度を、分析対象物を定量するために便宜上使用する。アッセイワークフローの要約を、図1に提供する。
【0190】
2.LC-MSおよびデータ分析
【0191】
液体クロマトグラフィー工程を使用して、軽鎖を脱塩し、共精製タンパク質から分離し;しかしながら、個々の軽鎖分析対象物のそれぞれを分離しなかった。定義されたクロマトグラムプロファイルは、72秒幅であった。テストされた全てのヒト免疫グロブリン軽鎖は、この保持ウィンドウにおいて溶出していた。分析対象物の相対量の測定のために、各M-タンパク質のデコンボリューションされたスペクトルピーク高さの強度を使用した。図2A-2Iは、正常なヒト血清(図2A-2C)、多発性骨髄腫患者01(図2D-2F)、および多発性骨髄腫患者02(図2G-2I)血清から精製された免疫グロブリンの簡略化されたクロマトグラム、質量スペクトル、およびデコンボリューション/再構成スペクトルを示す。合計イオンクロマトグラム(TIC)は、還元された免疫グロブリンの幅広い1.2分の溶出ピークを表す(図2A、2D、および2G。通常の血清から抽出された質量スペクトル(図2A)は、広範囲の未分解ピークを示す。多発性骨髄腫血清免疫グロブリンから抽出された質量スペクトル(図2Eおよび2H)は、明確に定義された複数の荷電イオンを表す。正常なヒト免疫グロブリンのデコンボリューションされた質量スペクトル(図2C)は、ポリクローナルバックグラウンドより上のピークを有さない複数の低強度ピークを有する。一方で、多発性骨髄腫免疫グロブリンの質量スペクトルのデコンボリューションは、各患者の疾患関連軽鎖を表す単一の高強度ピークを生成する(図2Fおよび2I)。各個人により疾患関連軽鎖の質量は異なり、悪性血漿細胞により過剰産生される異なる免疫グロブリンを表す。質量スペクトル免疫グロブリン精製のために使用される浸出ラムダ/カッパナノボディの割合は、アスタリスクで示される。
【0192】
現在の生物分析の慣行において、多価イオンを、インタクトなタンパク質を定量化するために合計する。これらのイオンを、定量用の抽出イオンクロマトグラム(XIC)を生成するために処理する。しかしながら、各患者のM-タンパク質について個々のm/zイオンを選択するアプローチは、実用的でない。さらに、シグナル強度は広範囲に帯電したイオン間で大幅に希釈され、潜在的な干渉からの分析対象物イオンの分離は非常に困難になる。上記の理由により、デコンボリューションされた軽鎖のピーク高さを定量に使用した。「デコンボリューションされたピーク高さ」アプローチは、定量のためのXICを生成するための複数の荷電イオンの使用より堅牢で感度が高いことが示された。
【0193】
3.免疫グロブリン精製
【0194】
方法の分析感度を改良するために、免疫グロブリンを血清試料から精製する必要がある。分析対象物の多様性のために、全てのヒト免疫グロブリンに良好な親和性で結合する一般的な捕捉試薬が必要とされた。抗体精製に利用できるいくつかの日常的な方法があり;しかしながら、それらのほとんどは特定のクラスの免疫グロブリンにのみ結合する。多発性骨髄腫のM-タンパク質を、重鎖または軽鎖の免疫グロブリンクラスのいずれかに関連付けることができる。したがって、全ての抗体クラスおよび遊離軽鎖に結合する捕捉試薬が、単純で堅牢なアッセイを開発するために求められた。注意深い技術的考察および最初の実験の後、1:1の比で混合された抗ラムダ/抗カッパ捕捉樹脂を選択した。この出願について最高のパフォーマンスを発揮するアフィニティマトリックスは、ThermoFisherから入手可能なCaptureSelect(登録商標)ナノボディ樹脂であった。この樹脂を、自動化に完全に対応できるPhyTips(登録商標)に充填した。選択したPhyTips(登録商標)は、40μgのラムダおよび40μgのカッパ免疫グロブリンをロードする能力を有した。チップの過飽和を防ぎ、全ての内因性免疫グロブリンを捕捉するために、血清試料を40倍に希釈した。免疫捕捉手順を、内因性IgG、IgA、IgM、および治療用モノクローナル抗体を使用してテストした。Sigmaから購入した9つの内因性M-タンパク質、および8つの治療用モノクローナル抗体を使用して免疫捕捉回収率を評価した。免疫捕捉回収率を、ヒト血清から精製された分析対象物のMS応答(ピーク高さ)を、スパイクなしで正常なヒト血清から精製されたポリクローナルバックグラウンドにポストスパイクされた対応する分析対象物のピーク高さと比較することにより評価した。図3に示すように、テストされた全ての抗体の定量的回収率は、一貫して80.0%より高かった。
【0195】
IC-LC-MSアッセイ評価
1.シグナル強度に対する分析対象物不均一性の影響
【0196】
不均一な分析対象物に関する主要な懸念の1つは、MS応答が大きく変化し、分析対象物の濃度だけでなく、その性質に依存することである。異なる軽鎖間のイオン化の違いが重要であるかどうかを調べるために、10.0;25.0;50.0;100.0;250.0;500.0および1000.0μg/mLの濃度で正常血清にスパイクされる5つの同一でないIgGカッパ治療用抗体をテストして、標準のデコンボリューション曲線を作成した。テストした全ての抗体のアッセイLLOQは25.0μg/mLで、LODは10.0μg/mLであった。MS応答は、異なる分析対象物間で20-30%の範囲で変化した。分析対象物およびキャリブレーターが同一になることはめったにないため、バイオマーカー濃度が通常は相対的であることを考慮すると、これは許容できる変動である。5つの同一でない治療用mAbについてのデコンボリューションされた軽鎖標準曲線を図4に示す。
【0197】
2.IC-LC-MSアッセイ感度
【0198】
IC-LC-MSアッセイの感度をテストするために、3つの個々のモノクローナル抗体(A、B、およびC)を正常なヒト血清にスパイクし、免疫捕捉IC-LC-HRMS方法論によりテストした(図5A-5I)。各抗体を、1000μg/mL(図5A、5D、および5G)、100μg/mL(図5B、5E、および5H)、および10μg/mL(図5C、5D、および5I)の濃度でテストした。10μg/mLの分析対象物を検出するために、目的の分析対象物について固有の0.2分のクロマトグラフィーウィンドウから質量スペクトルを抽出した。テストされた抗体の分子量は、テストされた全ての濃度で1.0Da以内の元のピーク質量と一致した。3つのピークは全てシグナル対ノイズ比が低かったが、正確な質量のために高い信頼性で検出できた。このデータに基づくと、免疫捕捉IC-LC-MS方法論の検出LODの推定限界は、感度が1000μg/mLの臨床SPEPアッセイの100分の1である。最大の感度を達成するために、質量スペクトルを、上記のように正確な個々の軽鎖保持時間を使用して抽出した。
【0199】
IC-LC-MSアッセイの検出限界をテストするために、健康血清に異なるM-タンパク質をスパイクした(図5J-5M;表1)。IgGK(10mg/L;図5J)、IgGL(5mg/L;図5K)、IgAK(10mg/L;図5L)、およびIgAL(10mg/L;図5M)に対応するピークは、図5J-5Mにおいて矢印で示される。
【表1】
【0200】
3.SIFEおよびIC-LC-MSアッセイ感度の直接比較
【0201】
LC-MSおよびSIFEアッセイ感度を比較するために、50個の多発性骨髄腫血清を、1000.0から50.0μg/mLの理論的M-タンパク質濃度に連続的に希釈した。全ての希釈試料を2つに分割し、SIFEおよびIC-LC-MSの両方により分析した。SIFE LODを、元の試料の濃度および希釈係数に基づいて計算した。そして、SIFEゲル上に明確なバンドを与える最後の元の試料希釈として決定した。予想どおり、SIFE感度は分析対象物により大きく異なり、250.0-1000.0μg/mLであることがわかった。文献で報告されるSIFE感度よりわずかに低い感度は、全ての多発性骨髄腫血清が、多発性骨髄腫血清よりも高いポリクローナル免疫グロブリン濃度を有する正常なヒト血清プールにおいて希釈されたという事実により説明できる。高いポリクローナルバックグラウンドは、濃く染色されたゲル上に明確なバンドを見る分析者の能力を自然に妨げる。SIFEにより測定可能な最低段階希釈濃度でIC-LC法により測定されたMS応答の分布を表すプロットを、図6に示す。推定されるIC-LC-MS方法のLODは、SIFE LODの10-100分の1である。
【0202】
4.治療用抗体干渉への対処
【0203】
IC-LC-MSアッセイが内因性抗体と治療用抗体とを容易に区別することを示すために内因性モノクローナル抗体濃度を有する50の多発性骨髄腫血清に、この生物学的薬物の薬物動態EC50に相当する濃度である200.0μg/mLのエロツズマブを添加した。49の場合において、内因性抗体はエロツズマブと区別することができる。エロツズマブおよびM-タンパク質の代表的な質量ピークを、図7A-7Nに示す。図7Eは、エロツズマブを含有しないM-タンパク質対照を示す。M-タンパク質軽鎖の分子量を、1つの例を除いて全て正確に同定した。内因性モノクローナル抗体の分子量がエロツズマブの質量ピークを除いて2.0Da未満であったため、血清の1つがエロツズマブ干渉を有すると判断した。エロツズマブピークの存在下での1.0Daを超えるM-タンパク質質量ピークシフトは、これが実際の干渉ケースであることを示した(データは示さず)。
【0204】
5.IC-LC-MSアッセイは、骨髄腫疾患を高感度にモニターし、標準的な方法より早くM-タンパク質の増加を検出することができる。
【0205】
IC-LC-MSアッセイが、標準的なSPEP/SIFE/sFLCテストと比較した場合に、多発性骨髄腫疾患のモニタリングに関してより正確な情報を提供できるかどうかを調査した。各対象についてのM-タンパク質開始の持続的な増加を決定するために、log10スケールでのIC-LC-MS測定および視覚的に同定された明確な変曲点を検査した。非常に良好な部分応答(VGPR)および完全応答(CR)を有する骨髄腫患者の場合、IC-LC-MSはより感度が高かった。M-タンパク質は、本明細書に開示される新規アッセイにより測定された全ての時点で検出可能であった。しかしながら、SPEP/SIFEは、患者1についてのサイクル5-29(図8A-8B)および患者2についてのサイクル8-28(図8E-8F)において陰性であった。IC-LC-MSアッセイは、SPEP/SIFEの両方よりもはるかに早くM-タンパク質の持続的な増加を検出できた。患者1について、持続的な増加をサイクル20において、またはSPEPよりも10サイクル早く検出した(図8C図8Aを比較のこと)。患者2について、持続的な増加をサイクル16において、またはSPEPよりも13サイクル早く検出した(図8G図8Eを比較のこと)。
【0206】
図9A-9Fは、対象における選択された時点のIC-LC-MSプロファイルを示し、ここでM-タンパク質は、アッセイの優れた特異性のために、全ての時点でIC-LC-MSピーク分析アルゴリズムにより検出された。M-タンパク質軽鎖の質量の特徴は、ベースライン試料中で、次いでその後連続試料中で容易に同定できる。このアプローチは、ポリクローナルバックグラウンドより上のM-タンパク質の非常に特異的な追跡を可能にする。
【0207】
本明細書に開示される全ての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願のそれぞれが参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同じ程度に参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図7-4】
図7-5】
図7-6】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
【国際調査報告】