(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】長さが21~30ヌクレオチドのガイド配列を使用したヘテロ接合ELANE遺伝子の対立遺伝子のさまざまなノックアウト
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20221219BHJP
C12N 15/57 20060101ALI20221219BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221219BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20221219BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20221219BHJP
C12N 9/16 20060101ALI20221219BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20221219BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221219BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221219BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221219BHJP
A61K 38/47 20060101ALI20221219BHJP
A61K 47/46 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/57 ZNA
C12N5/10
C12N15/11 Z
C12N15/55
C12N9/16 Z
A61P7/00
A61P43/00 105
A61K48/00
A61K47/26
A61K38/47
A61K47/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022526184
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(85)【翻訳文提出日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 US2020059186
(87)【国際公開番号】W WO2021092227
(87)【国際公開日】2021-05-14
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521476126
【氏名又は名称】エメンドバイオ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】バラム、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】イザール、リオル
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマン、アサエル
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル、ラフィ
(72)【発明者】
【氏名】ロッカー、リアット
(72)【発明者】
【氏名】マルバッハ・バール、ナダブ
(72)【発明者】
【氏名】ゴラン・マシアハ、ミハル
(72)【発明者】
【氏名】ジョージソン、ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4B050DD02
4B050LL01
4B050LL03
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4C076AA95
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4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA511
4C084ZB211
(57)【要約】
重症先天性好中球減少症(SCN)又は周期性好中球減少症(CyN)に関する変異を有する好中球エラスターゼ遺伝子(ELANE遺伝子)の変異体対立遺伝子を細胞内で不活性化する方法であって、細胞は、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合であり、前記方法は、CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び、21~30ヌクレオチドのガイド配列を含む第一のRNA分子を含み、前記CRISPRヌクレアーゼと前記第一のRNA分子の複合体が前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用する組成物を、前記細胞に導入することを含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重症先天性好中球減少症(SCN)又は周期性好中球減少症(CyN)に関する変異を有する好中球エラスターゼ遺伝子(ELANE遺伝子)の変異体対立遺伝子を細胞内で不活性化する方法であって、前記細胞は、rs1683564、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合であり、前記方法は、
CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び、
21~30ヌクレオチドのガイド配列部分を含む第一のRNA分子
を含む組成物を前記細胞に導入することを含み、
ここで、前記CRISPRヌクレアーゼと前記第一のRNA分子の複合体は前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用する、方法。
【請求項2】
前記第一のRNA分子のガイド配列部分は、配列番号2517、2601、2464~2516、2518~2600、2602~2613、1~2463、2614~3751又は1~2953のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続するヌクレオチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細胞は、rs1683564、rs9749274、rs740021、rs199720952、rs28591229、rs71335276、rs3826946、rs10413889、rs3761005、rs10409474、rs3761007、rs17216649、rs10469327、rs8107095、rs10414837及びrs10424470からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記多型部位はrs1683564であり、前記第一のRNA分子のガイド配列部分は、配列番号2517、2601、2464~2516、2518~2600、2602~2613、1~2463、2614~3751のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続するヌクレオチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記CRISPRヌクレアーゼと第一のRNA分子の複合体が前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用し、前記変異体対立遺伝子は、前記1つ以上の多型部位に基づいて前記二本鎖切断の標的となる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列部分を含む第二のRNA分子を導入することを更に含み、前記第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記ELANE遺伝子の第二の二本鎖切断に作用する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第二の二本鎖切断は前記ELANE遺伝子の非コード領域内で生じる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ELANE遺伝子の非コード領域はイントロン4である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第二のRNA分子のガイド配列部分は、配列番号2954~3751のいずれか1つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続するヌクレオチドを含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞はrs10414837又はrs3761005においてヘテロ接合であり、前記第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記ELANE遺伝子のイントロン4の二本鎖切断に作用する、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞はrs1683564においてヘテロ接合であり、前記第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記ELANE遺伝子のイントロン4の二本鎖切断に作用する、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第二のRNA分子は21~30ヌクレオチドのガイド配列部分を含む、請求項6~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
SCN若しくはCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する、及び/又は、SCN若しくはCyNに罹患している対象から、SCN又はCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する細胞を採取することを含み、前記対象は、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
SCN若しくはCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する、及び/又は、SCN若しくはCyNに罹患している対象を最初に選択し、前記対象は、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合であり、前記対象から前記細胞を採取することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
動員及び/又はアフェレーシスにより、前記対象から前記細胞を採取することを含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
骨髄吸引により、前記対象から前記細胞を採取することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物を前記細胞に導入する前に、前記細胞を刺激する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞を培養することを更に含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞を、幹細胞因子(SCF)、IL-3及びGM-CSFの1つ以上と共に培養する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記細胞を、少なくとも1つのサイトカインと共に培養する、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのサイトカインはヒトのサイトカインの組換え体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記細胞は複数の細胞の1つであり、前記第一のRNA分子を含む組成物又は前記第一のRNA分子及び前記第二のRNA分子を含む組成物を、少なくとも前記細胞及び前記複数の細胞の別の細胞に導入し、前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を、少なくとも前記細胞中及び前記複数の細胞の別の細胞中で不活性化し、それによって複数の改変細胞を得る、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記第一のRNA分子を含む組成物を導入すること又は前記第二のRNA分子を導入することは、前記細胞のエレクトロポレーションを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
請求項22又は23に記載の方法によって得られた改変細胞。
【請求項25】
請求項24に記載の細胞を培養して得られた改変細胞。
【請求項26】
前記細胞は生着が可能である、請求項24又は25に記載の改変細胞。
【請求項27】
子孫細胞を産生できる、請求項24~26のいずれか一項に記載の改変細胞。
【請求項28】
生着後に子孫細胞を産生できる、請求項27に記載の改変細胞。
【請求項29】
自己生着後に子孫細胞を産生できる、請求項28に記載の改変細胞。
【請求項30】
生着後少なくとも12月又は少なくとも24月の間、子孫細胞を産生できる、請求項28又は29に記載の改変細胞。
【請求項31】
前記改変細胞は、造血幹細胞及び/又は前駆細胞(HSPC)である、請求項24~30のいずれか一項に記載の改変細胞。
【請求項32】
前記改変細胞は、CD34
+造血幹細胞である、請求項31に記載の改変細胞。
【請求項33】
前記改変細胞は、骨髄細胞又は末梢血単核細胞(PMC)である、請求項24~32のいずれか一項に記載の改変細胞。
【請求項34】
ELANE遺伝子の1つの対立遺伝子の少なくとも一部分が欠損した改変細胞。
【請求項35】
前記改変細胞は、rs7250194、rs397773837、rs759823713、rs12976041、rs55921706、rs2007647、rs7255385、rs351108、rs6510983、rs375312008、rs1234492733、rs8111201、rs3761010、rs11881698、rs17223066、rs74176357、rs201984870、rs141213775、rs111361200、rs3761001、rs55793725、rs55791968、rs953484068、rs56234325、rs4807932、rs9304953、rs71335273、rs868711974及びrs570466264からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合の細胞から改変された、請求項34に記載の改変細胞。
【請求項36】
請求項24~35のいずれか一項に記載の改変細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項37】
請求項36に記載の組成物をin vitro又はex vivoで製造する方法であって、前記細胞と前記薬学的に許容される担体を混合することを含む方法。
【請求項38】
改変細胞を含む組成物をin vitro又はex vivoで製造する方法であって、前記方法は:
(a) SCN若しくはCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する、及び/又は、SCN若しくはCyNに罹患している対象であって、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合である対象から採取した細胞からHSPCを単離し、前記対象から前記細胞を採取する工程;
(b) CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列;及び
21~30ヌクレオチドのガイド配列部分を含む第一のRNA分子
を含む組成物を、工程(a)の細胞に導入し、
前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を1つ以上の細胞内で不活性化して改変細胞を得る工程、
ここで、前記CRISPRヌクレアーゼと前記第一のRNA分子の複合体が、1つ以上の細胞で前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用し、
場合によっては、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列部分を含む第二のRNA分子を前記細胞に導入し、前記第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記1つ以上の細胞で前記ELANE遺伝子の第二の二本鎖切断に作用する;場合によって、
(c) 工程(b)の改変細胞を培養する工程、
ここで、前記改変細胞は生着が可能で、生着後に子孫細胞を産生する、
を含む方法。
【請求項39】
(a) SCN若しくはCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する、及び/又は、SCN若しくはCyNに罹患している対象であって、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合である対象から採取した細胞からHSPCを単離する工程;
(b) CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列;及び
21~30ヌクレオチドのガイド配列部分を含む第一のRNA分子
を含む組成物を、工程(a)の細胞に導入し、
前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を1つ以上の細胞内で不活性化して改変細胞を得る工程、
ここで、前記CRISPRヌクレアーゼと前記第一のRNA分子の複合体が、1つ以上の細胞で前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用し、
場合によっては、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列部分を含む第二のRNA分子を前記細胞に導入し、前記第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記1つ以上の細胞で前記ELANE遺伝子の第二の二本鎖切断に作用する;場合によって、
(c) 工程(b)の細胞を培養する工程、ここで、前記改変細胞は生着が可能で、生着後に子孫細胞を産生する;並びに、
(d) 工程(b)又は工程(c)の細胞を前記対象に投与する工程、
を含む方法によってin vitroで製造された組成物の使用であって、前記対象におけるSCN又はCyNを治療するための使用。
【請求項40】
SCN又はCyNに苦しむ対象を治療する方法であって、請求項24~34のいずれか一項に記載の改変細胞、請求項35に記載の組成物又は請求項36若しくは37に記載の方法で製造した組成物の治療有効量の投与を含む方法。
【請求項41】
SCN又はCyNに関するELANE遺伝子変異を有する対象のSCN又はCyNを治療する方法であって、前記対象は、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合であり、前記方法は、
(a) 前記対象から採取した細胞からHSPCを単離する工程;
(b) CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列;及び
21~30ヌクレオチドのガイド配列部分を含む第一のRNA分子
を含む組成物を、工程(a)の細胞に導入し、
前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を1つ以上の細胞内で不活性化して改変細胞を得る工程、
ここで、前記CRISPRヌクレアーゼと前記第一のRNA分子の複合体が、1つ以上の細胞で前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用し、
場合によっては、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列部分を含む第二のRNA分子を前記細胞に導入し、前記第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記1つ以上の細胞で前記ELANE遺伝子の第二の二本鎖切断に作用する;場合によって、
(c) 工程(b)の細胞を培養する工程、ここで、前記改変細胞は生着が可能で、生着後に子孫細胞を産生する;並びに、
(d) 工程(b)又は工程(c)の細胞を前記対象に投与する工程、
を含み、それにより前記対象におけるSCN又はCyNを治療する方法。
【請求項42】
SCN又はCyNに関するELANE遺伝子変異を有する対象のSCN又はCyNを治療する方法であって、前記対象は、rs7250194、rs397773837、rs759823713、rs12976041、rs55921706、rs2007647、rs7255385、rs351108、rs6510983、rs375312008、rs1234492733、rs8111201、rs3761010、rs11881698、rs17223066、rs74176357、rs201984870、rs141213775、rs111361200、rs3761001、rs55793725、rs55791968、rs953484068、rs56234325、rs4807932、rs9304953、rs71335273、rs868711974及びrs570466264からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合であり、前記方法は、
自己の改変細胞又は自己の改変細胞の子孫を前記対象に投与することを含み、ここで、前記自己修飾細胞は前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断が生じるように修飾されている、
ここで、前記二本鎖切断は、CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列及び第一のRNA分子を含む組成物の前記細胞への導入によって生じ、前記CRISPRヌクレアーゼと前記第一のRNA分子の複合体が前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用して、前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を前記細胞内で不活性化する、
それにより前記対象におけるSCN又はCyNを治療する方法。
【請求項43】
SCN又はCyNと診断された一群の対象から治療を行う対象を選択する方法であって、
(a) 前記一群の対象のそれぞれから細胞を得る工程;
(b) 各対象の細胞をSCN又はCyNに関するELANE遺伝子の変異についてスクリーニングし、SCN又はCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する対象のみを選択する工程;
(c) 工程(b)で選択した対象の細胞を、rs10414837、rs3761005、rs1683564からなる群から選択した1つ以上の多型部位におけるヘテロ接合性について配列決定によりスクリーニングする工程;
(d) 前記1つ以上の多型部位においてヘテロ接合の細胞を有する対象者のみを治療のために選択する工程;
(e) 前記対象の骨髄から、吸引又は末梢血の動員とアフェレーシスにいずれかによって、造血幹及び前駆細胞(HSPC)を得る工程;
(f) 1つ以上のCRISPRヌクレアーゼ又は1つ以上のCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、
前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子上に存在する前記1つ以上の多型部位のヘテロ接合対立遺伝子のヌクレオチド塩基を標的とする、配列番号1~2953のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続するヌクレオチドを有するガイド配列部分を含む第一のRNA分子、及び
前記ELANE遺伝子のイントロン4中の配列を標的とするガイド配列部分を含む第二のRNA分子、ここで場合によっては、前記第二のRNA分子のガイド配列部分は、配列番号2954~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続するヌクレオチドを有する、
を、工程(e)のHSPCに導入する工程;
ここで、前記第一のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記1つ以上のHSPC細胞において前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の第一の二本鎖切断に作用し、前記第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記第一のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体が第一の二本鎖切断に作用した前記1つ以上のHSPC細胞において前記ELANE遺伝子の2つの対立遺伝子のイントロン4の第二の二本鎖切断に作用し、それによって改変細胞を得る、
(g) 工程(f)の改変細胞を前記対象に投与する工程;
を含み、
それによって前記対象のSCN又はCyNを治療する方法。
【請求項44】
配列番号1~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続するヌクレオチドを有するガイド配列部分を含むRNA分子。
【請求項45】
請求項44に記載のRNA分子及びガイド配列部分を含む第二のRNA分子を含む組成物であって、場合によっては前記第二のRNA分子のガイド配列部分は、配列番号2954~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続したヌクレオチドを有する組成物。
【請求項46】
前記第二のRNA分子は、前記ELANE遺伝子の非コード領域を標的とする、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記第二のRNA分子のガイド配列部分のヌクレオチド配列は、前記第一のRNA分子のガイド配列部分の配列と異なるヌクレオチド配列である、請求項45又は46に記載の組成物。
【請求項48】
前記第一のRNA分子及び/又は前記第二のRNA分子は、CRISPRヌクレアーゼに結合する配列を有する部分を更に含む、請求項45~47のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項49】
前記CRISPRヌクレアーゼに結合する配列はtracrRNA配列である、請求項48に記載の組成物。
【請求項50】
前記第一のRNA分子及び/又は前記第二のRNA分子は、tracrメイト配列を有する部分を更に含む、請求項45~49のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項51】
前記第二のRNA分子は、1つ以上のリンカーを更に含む、請求項45~50のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項52】
前記第一のRNA分子及び/又は前記第二のRNA分子の長さは最大で300ヌクレオチドである、請求項45~51のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項53】
1つ以上のCRISPRヌクレアーゼ若しくは前記1つ以上のCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又は1つ以上のtracrRNA分子若しくは前記1つ以上のtracrRNA分子をコードする配列を更に含む、請求項45~52のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項54】
変異型ELANE対立遺伝子を細胞内で不活性化する方法であって、請求項44に記載のRNA分子又は請求項43~51のいずれか一項に記載の組成物を前記細胞に送達することを含む方法。
【請求項55】
SCN又はCyNを治療する方法であって、SCN又はCyNに罹患している対象に、請求項44に記載のRNA分子、請求項43~51のいずれか一項に記載の組成物、請求項44に記載のRNA分子で改変された細胞又は請求項43~51のいずれか一項に記載の組成物を送達することを含む方法。
【請求項56】
前記1つ以上のCRISPRヌクレアーゼ及び/又は前記tracrRNA及び前記RNA分子又はRNA分子は、前記対象及び/又は前記細胞に、同時に又は異なる時に実質的に送達される、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
前記方法は、
(a) 変異体対立遺伝子から、疾患の原因となる変異を含むエクソンを削除すること、ここで、前記第一のRNA分子若しくは前記第一のRNA分子及び前記第二のRNA分子は、エクソンの一部分か前記エクソンに隣接する領域を標的とする;
(b) 複数のエクソン、遺伝子のオープンリーディングフレーム全体若しくは遺伝子全体を削除すること;
(c) 前記第一のRNA分子若しくは前記第一のRNA分子及び前記第二のRNA分子が、変異体対立遺伝子のエクソンとイントロンの間の選択的スプライシングされるシグナル配列を標的とすること;
(d) 前記第二のRNA分子が、変異体対立遺伝子及び機能的対立遺伝子の両者に存在する配列を標的とすること;
(e) 前記第二のRNA分子が、イントロンを標的とすること;又は
(f) 誤りが生じやすい非相同末端結合(NHEJ)のメカニズムによって前記変異体対立遺伝子を挿入若しくは削除し、前記変異体対立遺伝子の配列にフレームシフトを引き起こすこと、
(g) 場合によっては、前記フレームシフトにより、前記変異体対立遺伝子が不活性化若しくはノックアウトされること、
(h) 好ましくは、前記フレームシフトは前記変異体対立遺伝子中に早期終止コドンを形成するか、前記フレームシフトは前記変異体対立遺伝子の転写産物のナンセンスコドン介在的mRNA分解をもたらすこと、
を含む、請求項54~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記不活性化又は治療により、前記変異体対立遺伝子によってコードされる短縮型タンパク質及び前記機能的対立遺伝子によってコードされる機能的タンパク質がもたらされる、請求項54~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
(a) 前記細胞若しくは前記対象はrs10414837若しくはrs3761005においてヘテロ接合で、前記第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記ELANE遺伝子のイントロン4の二本鎖切断に作用する、又は
(b) 前記細胞若しくは前記対象はrs1683564においてヘテロ接合で、前記第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記ELANE遺伝子のイントロン4の二本鎖切断に作用する、請求項54~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
請求項44に記載のRNA分子、請求項36、45~53のいずれか一項に記載の組成物又は請求項37若しくは38に記載の方法で製造した組成物の使用であって、変異型ELANE対立遺伝子を細胞内で不活性化するための使用。
【請求項61】
請求項44に記載のRNA分子、請求項36、45~53のいずれか一項に記載の組成物又は請求項37若しくは38に記載の方法で製造した組成物を含む、細胞内での変異型ELANE対立遺伝子の不活性化に使用するため医薬であって、前記医薬は、前記細胞に、請求項44に記載のRNA分子、請求項36、45~53のいずれか一項に記載の組成物又は請求項37若しくは38に記載の方法で製造した組成物が送達される医薬。
【請求項62】
請求項1~23のいずれか一項に記載の方法、請求項24~35のいずれか一項に記載の改変細胞、請求項36、45~53のいずれか一項に記載の組成物、請求項37若しくは38に記載の方法で製造した組成物又は請求項44に記載のRNA分子の使用であって、SCN若しくはCyNに罹患している又は罹患する危険性のある対象の、SCN又はCyNを治療、軽減又は予防するための使用。
【請求項63】
請求項44に記載のRNA分子、請求項36、45~53のいずれか一項に記載の組成物、請求項37若しくは38に記載の方法で製造した組成物、又は請求項24~35のいずれか一項に記載の改変細胞を含む、SCN又はCyNを治療、軽減又は予防に使用するための医薬であって、前記医薬は、SCN若しくはCyNに罹患している又は罹患する危険性のある対象に、請求項44に記載のRNA分子、請求項36、45~53のいずれか一項に記載の組成物、請求項37若しくは38に記載の方法で製造した組成物、又は請求項24~35のいずれか一項に記載の改変細胞が送達される医薬。
【請求項64】
変異型ELANE対立遺伝子を細胞内で不活性化するためのキットであって、請求項44に記載のRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子若しくは前記tracrRNAをコードする配列;並びに、前記RNA分子を送達するための指示書を含み、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子若しくは前記tracrRNAをコードする配列は、前記変異型ELANE対立遺伝子を前記細胞内で不活性化するために前記細胞に向けられるキット。
【請求項65】
対象のSCN又はCyNを治療するためのキットであって、請求項44に記載のRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子若しくは前記tracrRNAをコードする配列;並びに、前記RNA分子を送達するための指示書を含み、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子若しくは前記tracrRNAをコードする配列は、SCN又はCyNを治療するために、SCN若しくはCyNに罹患している又は罹患する危険性のある対象に向けられるキット。
【請求項66】
変異型ELANE対立遺伝子を細胞内で不活性化するためのキットであって、請求項36、45~53のいずれか一項に記載の組成物、請求項37若しくは38に記載の方法で製造した組成物、又は請求項24~35のいずれか一項に記載の改変細胞、及び前記ELANE遺伝子を前記細胞内で不活性化するために前記細胞に前記組成物を送達するための指示書を含むキット。
【請求項67】
対象のSCN又はCyNを治療するためのキットであって、請求項36、45~53のいずれか一項に記載の組成物、請求項37若しくは38に記載の方法で製造した組成物、又は請求項24~35のいずれか一項に記載の改変細胞、及び請求項36、45~53のいずれか一項に記載の組成物を送達するための指示書を含み、請求項37若しくは38に記載の方法で製造した組成物又は請求項24~35のいずれか一項に記載の改変細胞は、SCN又はCyNを治療するために、SCN若しくはCyNに罹患している又は罹患する危険性のある対象に向けられるキット
【請求項68】
前記CRISPRヌクレアーゼは、21~30ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子と共に使用した場合、切断活性を示す、請求項1~23、38、41、42及び43のいずれか一項に記載の方法、又は請求項64若しくは65に記載のキット。
【請求項69】
前記CRISPRヌクレアーゼは、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、連鎖球菌属sp.(Streptococcus sp.)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、トレポネーマ デンティコラ(Treponema denticola)、ノカルディオプシス ダッソンビレイ(Nocardiopsis dassonvillei)、ストレプトマイセス プリスチナエスピラリス(Streptomyces pristinaespiralis)、ストレプトマイセス ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、ストレプトマイセス ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、ストレプトスポランジウム ロゼウム(Streptosporangium roseum)、ストレプトスポランジウム ロゼウム(Streptosporangium roseum)、アリサイクロバチルス アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)、バチルス シュードマイコイデス(Bacillus pseudomycoides)、バチルス セレニティレデュセンス(Bacillus selenitireducens)、エキシグオバクテリウム シビリクム(Exiguobacterium sibiricum)、ラクトバチルス デルブレッキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ミクロシラ マリナ(Microscilla marina)、バークホルデリア バクテリウム(Burkholderiales bacterium)、ポラロモナス ナフタレニボランス(Polaromonas naphthalenivorans)、ポラロモナス属sp.(Polaromonas sp.)、クロコスファエラ ワトソニー(Crocosphaera watsonii)、シアノテス属sp.(Cyanothece sp.)、ミクロシスティス エルギノーサ(Microcystis aeruginosa)、シネココッカス属sp.(Synechococcus sp.)、アセトハロビウム アラビティカム(Acetohalobium arabaticum)、アンモニフェツクス デゲンシイ(Ammonifex degensii)、カルディセルロシラプター ベッシー(Caldicelulosiruptor becscii)、カンジタートス デスルフォルディス(Candidatus Desulforudis)、クロストリジウム ボツリヌム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム ディフィシル(Clostridium difjicile)、フィネゴルディア マグナ(Finegoldia magna)、ナトロアナエロビウス サーモフィラス(Natranaerobius thermophilus)、ペロトマクルム サーモプロピオニカム(Pelotomaculum thermopropionicum)、アシディチオバチルス カルダス(Acidithiobacillus caldus)、アシディチオバチルス フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferrooxidans)、アロクロマチウム ビノスム(Allochromatium vinosum)、マリノバクター属sp.(Marinobacter sp.)、ニトロソコッカス ハロフィルス(Nitrosococcus halophilus)、ニトロソコッカス ワトソニー(Nitrosococcus watsoni)、シュードアルテロモナス ハロプランクティス(Pseudoalteromonas haloplanktis)、クテドノバクター ラセミファー(Ktedonobacter racemifer)、メタノハロビウム エベスチガータム(Methanohalobium evestigatum)、アナバエナ バリアビリス(Anabaena variabilis)、ノジュラリア スプミゲナ(Nodularia spumigena)、ノストック属sp.(Nostoc sp.)、オーロスピラ マキシマ(Arthrospira maxima)、オーロスピラ プラテンシス(Arthrospira platensis)、オーロスピラ属sp.(Arthrospira sp.)、リングビア属sp.(Lyngbya sp.)、ミクロコレウス クソノプラステス(Microcoleus chthonoplastes)、オスキラトリア属sp.(Oscillatoria sp.)、ペトロトガ モビリス(Petrotoga mobilis)、サーモシフォ アフリカヌス(Thermosipho africanus)、アカリオクロリス マリナ(Acaryochloris marina)、フランシセラ cf.ノビシダFx1(Francisella cf. novicida Fx1)、アリサイクロバチルス アシドテッレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)、オレイフィラス属sp.(Oleiphilus sp.)、バクテリウムCG09_39_24(Bacterium CG09_39_24)及びデルタプロテオバクテリア バクテリウム(Deltaproteobacteria bacterium)のいずれかから誘導される、請求項68に記載の方法又はキット。
【請求項70】
前記CRISPRヌクレアーゼは、以下の特徴:
(a) 切断活性が、20ヌクレオチド以下、及び/又は24ヌクレオチド以上のガイド配列部分を含むRNA分子と共に使用した場合と比較して、21~23ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子と共に使用した場合に大きい;
(b) 切断活性が、20ヌクレオチド以下、及び/又は23ヌクレオチド以上のガイド配列部分を含むRNA分子と共に使用した場合と比較して、21~22ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子と共に使用した場合に大きい;並びに
(c) 切断活性が、22ヌクレオチドのガイド配列部分を含むRNA分子と共に使用した場合に最大である
の1つ以上を有する、請求項1~23、38、41及び42のいずれか一項に記載の方法、又は請求項64若しくは65に記載のキット。
【請求項71】
前記CRISPRヌクレアーゼは、配列番号3789に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するか、前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列は、配列番号3790又は配列番号3791に示すヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項70に記載の方法又はキット。
【請求項72】
前記CRISPRヌクレアーゼを含む組成物は、以下の特徴:
(a) 前記組成物は水溶液中に存在する;
(b) 前記組成物のpHは6~8である;
(c) 前記組成物はRNaseを含まない
の1つ以上を有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法、請求項45~53のいずれか一項に記載の組成物又は請求項64~67のいずれか一項に記載のキット。
【請求項73】
前記第一のRNA分子は、21~22ヌクレオチドのガイド配列部分を含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
前記ガイド配列部分は、配列番号1~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~22の連続するヌクレオチドを有する、請求項44に記載のRNA分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2019年11月6日に出願された米国仮出願第62/931,659号の利益を主張し、その内容はこの明細書に組み込まれる。
【0002】
この出願全体では、括弧内で参照されているものを含め、さまざまな出版物が参照されている。この出願で言及する全ての刊行物全体の開示は、この発明が関係する技術及びこの発明で使用できる技術の特徴を説明するために、この出願に組み込まれる。
【0003】
配列表の参照
この出願には、「201105_91193-A-PCT_Sequence_Listing_AWG.txt」という名称のファイル中のヌクレオチド配列が組み込まれるが、これはファイルのサイズが779KBで、2020年11月5日にMS-Windows(登録商標)とOSの互換性を有するIBM-PC形式のコンピューターで作成され、この出願の一部として2020年11月5日に提出されたテキストファイルに含まれている。
【背景技術】
【0004】
ヒトゲノムには、挿入及び欠失、反復配列のコピー数の差、並びに一塩基多型(SNP)など、いくつかのDNAの変動がある。SNPは、ゲノム内の一塩基(アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)又はグアニン(G))が個人の間又は一対の染色体の間で異なる場合に生じるDNA配列の変動である。さまざまなDNAの変動は、特性や病気の原因を特定する研究のマーカーとして、又は遺伝性疾患の原因として、何年にもわたって研究者が着目してきた。通常、SNPは良性で病気を引き起こさないと考えられている。
【0005】
遺伝性疾患は、ゲノム中の1つ以上の異常によって生じる。遺伝性疾患は、「顕性(dominant)」又は「潜性(recessive)」のいずれかと見なされる場合がある。潜性の遺伝性疾患とは、異常/欠陥遺伝子の2つのコピー(つまり、2つの対立遺伝子)の存在が必要な疾患である。これに対して、顕性の遺伝性疾患は、正常な(機能的な/健康な)の1つ以上の遺伝子に対して顕性を示す1つ以上の遺伝子を含む。したがって、顕性の遺伝性疾患では、その症状を引き起こし、又は、その症状に関与するのに必要な異常な遺伝子は、1コピー(すなわち対立遺伝子)のみである。そのような変異には、例えば、変化した遺伝子産物が新しい分子機能又は遺伝子発現の新しいパターンを示す機能獲得型変異が含まれる。機能獲得型変異は、一般的にドミナントネガティブ変異である。ドミナントネガティブ変異の例は、1つの対立遺伝子が変異してその機能を失い、残った単一の野生型対立遺伝子が特定の細胞機能を生じるには十分なタンパク質を産生しないハプロ不全である。他の例には、野生型対立遺伝子に対し拮抗的に作用する遺伝子産物を生じるドミナントネガティブ変異が含まれる。
【0006】
好中球減少症
好中球減少症は、血中の好中球の絶対数の減少として定義され、通常、末梢血中の好中球絶対数(ANC)を測定することによって診断される。好中球減少症の重症度は、ANCが1000~1500/μLで軽度、ANCが500~1000/μLで中等度、ANCが500/μL未満で重度である(Boxer 2012)。
【0007】
好中球減少症は、先天性(遺伝性)又は後天性のものに分類できる。一般に常染色体顕性遺伝で、先天性の2つの主な型は、周期性好中球減少症(CyN)及び重症先天性好中球減少症(SCN)である。周期性好中球減少症は、好中球数が正常からゼロまで変動することを特徴とし、重症先天性好中球減少症(SCN)は、出生時の非常に低いANC(500/μL)、前骨髄球/骨髄球段階の骨髄における骨髄造血の成熟停止、及び細菌感染症の早期の発症を特徴とする(Carlsson et al. 2012;Horwitz et al. 2013)。
【0008】
SCNは、血中の非常に低いANCを測定し、骨髄穿刺液を調べて骨髄成熟停止を特定することで診断できる(Dale 2017)。SCNは、通常、生後6月より前に診断されるが、CyNは一般に生後2年目以降に診断され、主な臨床症状は再発性の急性口腔疾患である。悪性の造血系疾患を除外し、細胞性であることを決定し、骨髄の成熟を評価し、正確な病因の兆候を検出するために、骨髄検査が必要であることが多く、SCNが疑われる場合は、細胞遺伝学的骨髄検査が重要となる。抗好中球抗体アッセイ、免疫グロブリンアッセイ(Ig GAM)、リンパ球免疫表現型検査、膵臓マーカー(血清トリプシノーゲン及び糞便エラスターゼ)及び脂溶性ビタミン(ビタミンA、E及びD)の量も、SCN及びCyNの評価に関係する(Donadieu 2011を参照)。
【0009】
SCNは、常染色体潜性遺伝(HAX1、G6PC3)、常染色体顕性遺伝(ELANE、GFI1)又はX連鎖(WAS)型の遺伝であるか、散発的に生じる可能性がる(Carlsson et al. 2012;Boxer 2012)。
【0010】
周期性好中球減少症及び先天性好中球減少症は、「好中球エラスターゼ遺伝子」(elastase, neutrophil expressed gene(ELANE遺伝子))の変異によって最も頻繁に引き起こされる。SCN患者の40~55%でELANE遺伝子の変異が確認されており、男性と女性は等しく影響を受ける(Donadieu et al. 2011;Dale 2017)。ELANE遺伝子の変異は、SCNの常染色体顕性及び散発性の症例に関連している(Carlsson et al. 2012)。現在まで、200を超えるさまざまなELANE遺伝子の変異が同定されており、これらは全てのエクソン及びイントロン3とイントロン4にランダムに分布している(Skokowa et al. 2017)。現在、CyN及びSCNに関する120を超える異なるELANE遺伝子の変異が知られており、例えば、C151Y及びG214Rは、特に予後の不良に関連している(Makaryan et al. 2012を参照;CyN及びSCNに関するELANE遺伝子の変異の包括的なリストは、Germeshausen et al 2013も参照)。
【0011】
ELANE遺伝子は、好中球の細胞外トラップ(病原体に結合する繊維のネットワーク)の機能に関与する好中球エラスターゼ(NE)をコードする。いくつかの研究は、変異型ELANE遺伝子の産物が、骨髄での好中球産生を妨害し、好中球減少症を引き起こすように作用することを示唆する。これらの研究は、NEの変異が小胞体ストレス応答(UPR)を開始し、骨髄での好中球形成の過程における細胞の喪失につながることを示す(Makaryan et al. 2017)。
【0012】
現在の治療法
顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)は、SCNの第一選択治療と考えられている(Connelly, Choi, and Levine 2012)。G-CSFは、多くの好中球の産生を刺激し、それらのアポトーシスを遅らせる(Schaeffer and Klein 2007)。SCN患者の10%は依然として重度の細菌感染症又は敗血症で死亡するが、現在、全生存率は、悪性腫瘍を発症している患者を含め、80%を超えると推定されている(Skokowa et al. 2017)。G-CSF療法は敗血症による死亡を防ぐことに成功しているものの、長期治療は、SCN患者で骨髄異形成症候群(MDS)又は白血病を発症するリスクの増加と関係していることが確認された。SCNで最も一般的な白血病はAMLであるが、急性リンパ性白血病(ALL)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、慢性骨髄単球性白血病(CMML)及び多形質性白血病も文献で報告されている(Connelly, Choi, and Levine 2012)。G-CSFに強く反応した患者(用量8μg未満/kg/日)は、15年間のG-CSF投与後にMDS/白血病を発症する累積発生率が15%であるのに対し、高用量であるにもかかわらずG-CSFへの応答が良くない患者では発生率が34%であったとの報告が以前に示された(Rosenberg et al. 2010)。
【0013】
造血幹細胞移植(HSCT)は、G-CSF療法に応答しない患者又はAML/MDSを発症する患者のための代替治療である。しかし、HCTを受ける慢性好中球減少症の患者は、真菌などの感染性合併症や移植片対宿主病を発症するリスクが高くなる(Skokowa et al. 2017)。さらに、HCTは成功させるために一致したドナーが必要であるが、ほとんどの患者には一致したドナーがいない(Connelly, Choi, and Levine 2012)。
【発明の概要】
【0014】
顕性変異体対立遺伝子を破壊する、又は産生されたmRNAを分解することにより、顕性変異体対立遺伝子の発現をノックアウトする方法を開示する。
【0015】
この開示は、疾病の原因となる変異タンパク質をコードする変異を有する対立遺伝子(変異体対立遺伝子)と、機能的タンパク質をコードする対立遺伝子(機能的対立遺伝子)という2つの対立遺伝子を区別/識別するために、少なくとも1つの天然に存在するヘテロ接合のヌクレオチドの差異又は多型(例.一塩基多型(SNP))を利用する方法を提供する。
【0016】
この発明の実施の態様は、細胞又は対象中の顕性変異体対立遺伝子を発現する遺伝子において、少なくとも1つのヘテロ接合SNPを利用する方法を提供する。この発明の実施の態様では、利用するSNPは、疾患の表現型に関係していてもよく、又は関係していなくてもよい。この発明の実施の態様では、ガイド配列を含むRNA分子は、遺伝子の変異体対立遺伝子中のヘテロ接合SNPに存在し、したがって遺伝子の機能的な対立遺伝子とは異なるヌクレオチド塩基を有するヌクレオチド塩基を標的とすることにより、遺伝子の変異体対立遺伝子を標的とする。
【0017】
いくつかの態様では、この方法は、変異タンパク質の発現をノックアウトし、機能的タンパク質の発現を可能にする工程を更に含む。
【0018】
この発明は、重症先天性好中球減少症(SCN)又は周期性好中球減少症(CyN)に関する変異を有する好中球エラスターゼ遺伝子(ELANE遺伝子)の変異体対立遺伝子を細胞内で不活性化する方法であって、その細胞は、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合である方法を提供し、
前記方法は、
CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び、
21~30ヌクレオチドのガイド配列部分を含む第一のRNA分子
を含む組成物を細胞に導入することを含み、
ここで、CRISPRヌクレアーゼと第一のRNA分子の複合体はELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用する。
【0019】
この発明は、この発明の方法によって得られる改変細胞を提供する。
【0020】
この発明は、ELANE遺伝子の1つの対立遺伝子の少なくとも一部分が欠損した改変細胞を提供する。
【0021】
この発明は、改変細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0022】
この発明は、この発明の細胞と薬学的に許容される担体を混合することを含む組成物をin vitro又はex vivoで製造する方法を提供する。
【0023】
この発明は、改変細胞を含む組成物をin vitro又はex vivoで製造する方法を提供し、前記方法は:
a) SCN若しくはCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する、及び/又は、SCN若しくはCyNに罹患している対象であって、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合である対象から採取した細胞からHSPCを単離し、対象から細胞を採取する工程;
b) CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列;及び
21~30ヌクレオチドのガイド配列を含む第一のRNA分子
を含む組成物を、工程a)の細胞に導入し、
前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を1つ以上の細胞内で不活性化して改変細胞を得る工程、
ここで、前記CRISPRヌクレアーゼと前記第一のRNA分子の複合体が、1つ以上の細胞で前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用し、
場合によっては、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列を含む第二のRNA分子を前記細胞に導入し、第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、1つ以上の細胞でELANE遺伝子の第二の二本鎖切断に作用する;場合によって、
c) 工程b)の改変細胞を培養する工程、
ここで、前記改変細胞は生着が可能で、生着後に子孫細胞を産生する、
を含む。
【0024】
この発明は、
a) SCN若しくはCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する、及び/又は、SCN若しくはCyNに罹患している対象であって、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276、and rs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合である対象から採取した細胞からHSPCを単離する工程;
b) CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列;及び
21~30ヌクレオチドのガイド配列を含む第一のRNA分子
を含む組成物を、工程a)の細胞に導入し、
前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を1つ以上の細胞内で不活性化して修飾細胞を得る工程、
ここで、前記CRISPRヌクレアーゼと前記第一のRNA分子の複合体が、1つ以上の細胞で前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用し、
場合によっては、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列を含む第二のRNA分子を前記細胞に導入し、第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、1つ以上の細胞でELANE遺伝子の第二の二本鎖切断に作用する;場合によって、
c) 工程b)の細胞を培養する工程、ここで前記改変細胞は生着が可能で生着後に子孫細胞を産生する;並びに、
d) 工程b)又は工程c)の細胞を対象に投与する工程、
を含む方法
によってin vitroで製造された組成物の、対象におけるSCN又はCyNの治療のための使用を提供する。
【0025】
この発明は、SCN又はCyNに苦しむ対象を治療する方法であって、改変細胞、組成物又はこの発明の方法で製造した組成物の治療有効量の投与を含む方法を提供する。
【0026】
この発明は、SCN又はCyNに関するELANE遺伝子変異を有する対象のSCN又はCyNを治療する方法であって、前記対象は、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合である方法を提供し、
前記方法は、
a) 前記対象から得た細胞からHSPCを単離する工程;
b) CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列;及び
21~30ヌクレオチドのガイド配列を含む第一のRNA分子
を含む組成物を、工程a)の細胞に導入し、
前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を1つ以上の細胞内で不活性化して修飾細胞を得る工程、
ここで、前記CRISPRヌクレアーゼと前記第一のRNA分子の複合体が、1つ以上の細胞で前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用し、
場合によっては、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列を含む第二のRNA分子を前記細胞に導入し、第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、1つ以上の細胞でELANE遺伝子の第二の二本鎖切断に作用する;場合によって、
c) 工程b)の細胞を培養する工程、ここで前記改変細胞は生着が可能で、生着後に子孫細胞を産生する;並びに、
d) 工程b)又は工程c)の細胞を対象に投与する工程、
を含み、
それにより対象のSCN又はCyNを治療する。
【0027】
この発明は、SCN又はCyNに関するELANE遺伝子変異を有する対象のSCN又はCyNを治療する方法であって、対象は、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276、and rs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合である方法を提供し、前記方法は、
自己の改変細胞又は自己の改変細胞の子孫を対象に投与することを含み、ここで、自己修飾細胞はELANE遺伝子の変異体対立遺伝子が二本鎖切断されるように修飾されている、
ここで、二本鎖切断は、CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列及び第一のRNA分子を含む組成物の細胞への導入によって生じ、CRISPRヌクレアーゼと第一のRNA分子の複合体がELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用して、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を細胞内で不活性化し、
それにより対象のSCN又はCyNを治療する。
【0028】
この発明は、SCN又はCyNと診断された一群の対象から治療を行う対象を選択する方法であって、
a) 前記一群の対象のそれぞれから細胞を得る工程;
b) 各対象の細胞をSCN又はCyNに関するELANE遺伝子の変異についてスクリーニングし、SCN又はCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する対象のみを選択する工程;
c) 工程b)で選択した対象の細胞を、rs10414837、rs3761005、rs1683564からなる群から選択した1つ以上の多型部位におけるヘテロ接合性について配列決定によりスクリーニングする工程;
d) 1つ以上の多型部位でヘテロ接合の細胞を有する対象者のみを治療のために選択する工程;
e) 前記対象の骨髄から、吸引又は末梢血の動員とはアフェレーシスによって、造血幹及び前駆細胞(HSPC)を得る工程;並びに
f) 1つ以上のCRISPRヌクレアーゼ又は前記1つ以上のCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、
前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子上に存在する前記1つ以上の多型部位のヘテロ接合対立遺伝子のヌクレオチド塩基を標的とする、配列番号1~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続するヌクレオチドを有するガイド配列を含む第一のRNA分子、及び
前記ELANE遺伝子のイントロン4中の配列を標的とするガイド配列を含む第二のRNA分子、ここで場合によっては、前記第二のRNA分子のガイド配列は21~30ヌクレオチドを含み、場合によっては、21~30の連続したヌクレオチドは、配列番号2954~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む、
を、工程e)のHSPCに導入する工程;
ここで、前記第一のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記1つ以上のHSPC細胞で前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の第一の二本鎖切断に作用し、前記第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記第一のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体が第一の二本鎖切断に作用した前記1つ以上のHSPC細胞で前記ELANE遺伝子の2つの対立遺伝子のイントロン4の第二の二本鎖切断に作用し、それによって改変細胞を得る、
g) 工程f)の改変細胞を前記対象に投与する工程;
を含み、
それによって前記対象のSCN又はCyNを治療する方法を提供する。
【0029】
この発明は、配列番号1~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続するヌクレオチドを有するガイド配列を含むRNA分子を提供する。
【0030】
この発明は、変異型ELANE対立遺伝子を細胞内で不活性化する方法であって、この発明のRNA分子又は組成物を細胞に送達することを含む方法を提供する。
【0031】
この発明は、変異型ELANE対立遺伝子を細胞内で不活性化するための、RNA分子、組成物又はこの発明の方法で製造した組成物の使用を提供する。
【0032】
この発明は、RNA分子、組成物又はこの発明の方法で製造した組成物を含む、細胞内での変異型ELANE対立遺伝子の不活性化に使用するため医薬であって、前記医薬は、前記細胞に、RNA分子、組成物又はこの発明の方法で製造した組成物が送達される医薬を提供する。
【0033】
この発明は、方法、改変細胞、組成物、前記方法で製造した組成物又はこの発明のRNA分子の使用であって、SCN若しくはCyNに罹患している又は罹患する危険性のある対象の、SCN又はCyNを治療、軽減又は予防するための使用を提供する。
【0034】
この発明は、RNA分子、組成物、この発明の方法で製造した組成物又はこの発明の改変細胞を含む、SCN又はCyNを治療、軽減又は予防に使用するための医薬であって、前記医薬は、SCN若しくはCyNに罹患している又は罹患する危険性のある対象に、RNA分子、組成物、この発明の方法で製造した組成物又はこの発明の改変細胞が送達される医薬を提供する。
【0035】
この発明は、変異型ELANE対立遺伝子を細胞内で不活性化するためのキットであって、この発明のRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子若しくは前記tracrRNAをコードする配列;並びに、前記RNA分子を送達するための指示書を含み、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子若しくは前記tracrRNAをコードする配列は、変異型ELANE対立遺伝子を細胞内で不活性化するために細胞に向けられるキットを提供する。
【0036】
この発明は、対象のSCN又はCyNを治療するためのキットであって、この発明のRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子若しくは前記tracrRNA分子をコードする配列;並びに、前記RNA分子を送達するための指示書を含み、CRISPRヌクレアーゼ及び/又はtracrRNAは、SCN又はCyNを治療するために、SCN若しくはCyNに罹患している又は罹患する危険性のある対象に向けられるキットを提供する。
【0037】
この発明は、変異型ELANE対立遺伝子を細胞内で不活性化するためのキットであって、組成物、この発明の方法で製造した組成物又はこの発明の改変細胞、及びELANE遺伝子を細胞内で不活性化するように組成物を細胞に送達するための指示書を含むキットを提供する。
【0038】
この発明は、対象のSCN又はCyNを治療するためのキットであって、組成物、この発明の方法で製造した組成物又はこの発明の改変細胞、及び前記組成物を送達するための指示書を含み、この発明の方法で製造した組成物又はこの発明の改変細胞は、SCN又はCyNを治療するために、SCN若しくはCyNに罹患している又は罹患する危険性のある対象に向けられるキットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】プロモーター領域を上流のSNP位置からイントロン3、イントロン4又は3’UTRまで切除することを示す概略図。一例では、第一のガイド配列は、変異体対立遺伝子の上流の領域におけるヘテロ接合SNP(戦略1a-rs10414837、戦略1b-rs3761005)の配列を標的とし、第二のガイド配列は、遺伝子の2つの対立遺伝子に共通するイントロン4の配列を標的とする。
【
図2】プロモーター領域を上流のSNP位置からイントロン3、イントロン4又は3’UTRまで切除することを示す概略図。一例では、第一のガイド配列は、変異体対立遺伝子の上流の領域におけるヘテロ接合SNP(戦略1a-rs10414837、戦略1b-rs3761005)の配列を標的とし、第二のガイド配列は、遺伝子の2つの対立遺伝子に共通するイントロン3の配列を標的とする。別の例では、第一のガイド配列は、変異体対立遺伝子の上流の領域におけるヘテロ接合SNP(戦略1a-rs10414837、戦略1b-rs3761005)の配列を標的とし、第二のガイド配列は、遺伝子の2つの対立遺伝子に共通する3’UTRの配列を標的とする。
【
図3】イントロン3、イントロン4又は3’UTRから3’UTRの下流の領域までの切除を示す概略図。一例では、第一のガイド配列は、変異体対立遺伝子の上流の領域におけるヘテロ接合SNP(戦略2-rs1683564)の配列を標的とし、第二のガイド配列は、遺伝子の2つの対立遺伝子に共通するイントロン4の配列を標的とする。別の例では、第一のガイド配列は、変異体対立遺伝子の上流の領域におけるヘテロ接合SNP(戦略2-rs1683564)の配列を標的とし、第二のガイド配列は、遺伝子の2つの対立遺伝子に共通するイントロン3の配列を標的とする。さらに、第一のガイド配列は、変異体対立遺伝子の上流の領域におけるヘテロ接合SNP(戦略2-rs1683564)の配列を標的とし、第二のガイド配列は、遺伝子の2つの対立遺伝子に共通するイントロン3’UTRの配列を標的とする。
【
図4】イントロン3、イントロン4又は3’UTRから3’UTRの下流の領域までの切除を示す概略図。この戦略は、健康な対立遺伝子を無傷で残しながら、疾患の原因となる対立遺伝子(変異体対立遺伝子)を特異的にノックアウトするように設計されている。対立遺伝子に特異的な編集は、集団内の比較的高いヘテロ接合性頻度で識別可能な(ヘテロ接合)SNPを標的とするガイド配列を使用することにより行われる。
【
図5】ヘテロ接合体の頻度と選択したヘテロ接合SNPの間の重複/連鎖に基づく集団の予想されるカバレッジ。3種の治療戦略を立案することにより、集団の約80%をカバーすることが可能であるかもしれない。表から集団の80%が1つ以上のヘテロ接合SNPを有していると評価される。表から、集団の33%がヘテロ接合SNPを1つ有し、31%がヘテロ接合SNPを2つ有し、16%がヘテロ接合SNPを3つ有し、20%が表に示されたSNPのいずれも有していない。
【
図6】HeLa細胞を96穴プレート(3K/ウェル)に播種し、24時間後、Turbofect試薬(Thermo Scientific)を使用して、65ngのWT-Cas9又はDead-Cas9と、20ngのgRNAプラスミド(g36からg66として特定、ELANE遺伝子のさまざまな領域及びSNPを標的とする)を導入した。編集の割合(%)は、以下の式で計算した: 100%-(編集されていないバンドの強度/全バンドの強度)×1003回の実験における、Dead-Cas9バックグラウンド活性を引いた後の各gRNAの平均活性±SDを示す。
【
図7】SpCas9-WTのRNA成分と、EMX1(sgEMX1)又はELANE(g35:INT4;g58:rs3761005;g62:rs1683564)のいずれかを標的とするgRNAを、健康なドナーのHSCにヌクレオフェクトした。ヌクレオフェクションの72時間後にgDNAを抽出し、IDAAによって編集量を分析した。2回の実験における平均編集率(%)±SDを示す。
【
図8】ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の特異的ノックアウトは、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子のイントロン4及びエクソン5を切除することによって行われる。これは、イントロン4でDSBを行い、対立遺伝子に特異的なDSBを行うためにSNPであるrs1683564を利用することによって達成される。
【
図9】ヒト細胞における固有忠実度。OMNI-50又はSpCas9ヌクレアーゼを、sgRNA発現プラスミドと共に哺乳類細胞系でDNAトランスフェクションにより発現させた。細胞溶解物を、部位特異的ゲノムDNA増幅及びNGSに使用した。インデルの割合は、ELANEg35_OMNI-50又はELANEg62_OMNI-50(表7参照)を使用したHeLa細胞株でのオンターゲット編集とオフターゲット編集について、明細書で説明するように測定し分析した。いずれの場合についても、図の下部に、下線を引いたPAM配列と共に、ゲノムのオンターゲット配列及びオフターゲット配列を示す。各実験は、3回の独立した実験による。
【
図10A】
図10A~Dは、OMNI-50のRNPとしての活性アッセイである。OMNI-50ヌクレアーゼを過剰発現させ、精製した。精製したタンパク質を合成sgRNAと複合体化しRNPを形成させた。
図10Aのin vitroアッセイでは、RNPを、対応する標的及びPAM配列を有する直鎖状のDNAテンプレートとインキュベートした。直鎖状のテンプレートを切断する能力で活性を確認した。
図10Aは、さまざまなスペーサー長(17~23ヌクレオチド)のガイド35を有するOMNI-50 RNPの活性アッセイ(表4)である。
【
図10B】
図10Bのin vitroアッセイでは、RNPを、対応する標的及びPAM配列を有する直鎖状のDNAテンプレートとインキュベートした。直鎖状のテンプレートを切断する能力で活性を確認した。スペーサー長が20~23ヌクレオチドのRNP(4、2、1.2、0.6及び0.2pmol)の量を減らし、100ngのDNA標的テンプレートとインキュベートした。
【
図10C】
図10Cのin vivoアッセイでは、U2OS細胞にRNPをエレクトロポレーションし、NGSにより活性をインデル頻度として測定した。
図10Cは、U2OS細胞によるOMNI-50のRNPとしての活性アッセイである。U2OS細胞株にスペーサー長が17~23ヌクレオチドのRNPをエレクトロポレーションし、NGSにより編集量(インデル)を測定した。
【
図10D】
図10Dのin vivoアッセイでは、U2OS細胞にRNPをエレクトロポレーションし、NGSにより活性をインデル頻度として測定した。
図10Dは、U2OS細胞によるOMNI-50のRNPとしての活性アッセイである。U2OS細胞株にELANE g35 sgRNAのV1~4を有するRNPをエレクトロポレーションし、NGSにより編集量(インデル)を測定した。
【
図11】iPSCによるOMNI-50のRNPとしての活性アッセイ。iPSC細胞株にスペーサー長が17~23ヌクレオチドのRNP(表4)をエレクトロポレーションし、NGSにより編集量(インデル)を測定した。
【
図12】イントロン4の特徴的でない位置(2つの対立遺伝子の切断)及び3’UTRの下流のヘテロ接合SNPrs1683564の位置(対立遺伝子に特異的な切断)の2つ位置で切断し、対立遺伝子に特異的な欠失が生じるELANE遺伝子の切除戦略を示すスキーム。
【
図13A】ELANE遺伝子変異G221終止(G221ter)を有する患者の造血幹細胞(HSC)は、切除によるレスキュー効果を示す。
図13Aは、実験のフローを示すスキームである。Lonza P3 Cell Line 4D-Nucleofector(登録商標)XキットとDZ100プログラムを使用して、RNPをHSCにエレクトロポレーションし、HSCリッチの培地中で3日間回復させ、増殖と骨髄前駆細胞への分化のために、IL-3、SCF、GMCSF及びGCSFと共に7日間培養し、続いて好中球への分化のためにGCSF中で7日間培養した。14日目に、FACSでCD14
+の単球及びCD66b
+CD14
+の好中球について分析した。
【
図13B】HSCを好中球に分化させ、分化の14日目に健常者及びG221ter患者から得た未処置細胞及び編集した細胞のフローサイトメトリーによる分析。プロットは、健常者と比較して、未治療の患者では、CD66b
+CD14
+の好中球が減少し、CD14
+の単球が増加することを示す。切除された患者のHSCでは、好中球への分化は完全にレスキューされる点に留意されたい。
【
図13C】14日目の健常者及びG221ter患者における細胞組成中の好中球及び単球の割合を表すグラフ。
【
図13D】ddPCRで測定した、5日目及び14日目における、健常者及びrs1683564でホモ接合のG221ter患者の細胞の分化したHSCからのsgRNAコンスタント+sgRNA-564DS-refによる切除効率を示すグラフで、切除は二対立遺伝子と予想される。切除は、ELANE遺伝子のエクソン1及びエクソン5の領域を、それぞれ、FAM及びHEXでラベルしたプローブを使用して増幅することにより決定する。HEX信号とFAM信号の比率を、切除効率に変換する。
【
図14A】ELANE遺伝のS126L変異を有する患者の造血幹細胞(HSC)は、変異した対立遺伝子のさまざまな編集の後に、レスキュー効果を示す。
図14Aは、HSCを好中球に分化させ、分化の14日目に健常者及びS126L患者から得た未処置細胞及び編集した細胞のフローサイトメトリーによる分析である。プロットは、健常者と比較して、未治療の患者では、CD66b
+CD1
+の好中球が減少し、CD14
+の単球が増加することを示す。変異に関連するsgRNAコンスタント+sgRNA-564DS-refを切除した患者のHSCは、好中球の分化を完全にレスキューするのに対し、sgRNAコンスタント+sgRNA-564DS-altでは部分的なレスキュー効果であることに留意されたい。
【
図14B】14日目の健常者及びS126L患者における細胞組成中の好中球及び単球の割合を表すグラフ。
【
図14C】ddPCRで測定した、4日目及び14日目における、健常者及びrs1683564でホモ接合のS126L患者の細胞の分化したHSCからのsgRNAコンスタント+sgRNA-564DS-ref及びsgRNAコンスタント+sgRNA-564DS-altによる切除効率を示すグラフで、切除は対立遺伝子に特異的であると予想される。切除は、ELANE遺伝子のエクソン1及びエクソン5の領域を、それぞれ、FAM及びHEXでラベルしたプローブを使用して増幅することにより決定する。HEX信号とFAM信号の比率を、切除効率に変換する。sgRNA-564DS-ref組成物による切除効率は、sgRNA-564DS-altよりも高くなることに留意されたい。
【
図14D】rs1683564でヘテロ接合である、健常者及びS126L患者の細胞の分化したHSCからddPCRによって測定したsgRNAコンスタント+sgRNA-564DS-ref及びsgRNAコンスタント+sgRNA-564DS-altによる4日目及び14日目の対立遺伝子に特異的な編集を示すグラフ。編集の特異性は、オルタナティブ対立遺伝子に結合するFAMプローブ及びリファレンス対立遺伝子に結合するHEXプローブの2つの競合プローブを使用し、編集された対立遺伝子のシグナルが減少することを測定する。sgRNA-564DS-refで編集した場合のリファレンス対立遺伝子とオルタナティブ対立遺伝子の両者の減少は、sgRNA-564DS-altの場合と比較して特異性が低下していることに留意されたい。ヘテロ接合体の未処置細胞におけるリファレンス対立遺伝子の濃度とオルタナティブ対立遺伝子の濃度の比は1である。グラフは、各gDNA試料について、対照内因性遺伝子RPP30及びSTAT1エクソン3に対して正規化した、リファレンス対立遺伝子(HEX)、オルタナティブ対立遺伝子(FAM)の平均濃度を表す。
【
図14E】処置した全てのELANE遺伝子のmRNAの量は、細胞を好中球に分化させた後、qRT-PCRで評価した。mRNAの量を、編集していない細胞と比較して定量化する。
【
図14F】未処置の細胞と比較した、sgRNAコンスタント+sgRNA-564DS-ref及びsgRNAコンスタント+sgRNA-564DS-altで切除した患者HSCから抽出されたS126L変異を有するエクソン4を標的とするcDNAについてNGSで決定した対立遺伝子特異的転写のIGVスナップショット。sgRNAコンスタント+sgRNA-564DS-ref切除組成物に関する変異体対立遺伝子に特異的なRNAの減少を、WT(Cを青でマーク)/S126L変異(Tを赤でマーク)転写の1:1の比率を示す未処置の細胞と比較して観察したことに留意されたい。全ての試料を3回評価した。
【
図15】OMNI50ヌクレアーゼでELANE g35(sgRNA-コンスタント)部位を標的とするU2OS細胞のGUIDE-seqによって同定されたオフターゲット部位の配列。GUIDE-seqによるシーケンシング読み取り数とヒトhg38リファレンスの標的位置(染色体番号:位置)を右側に示す。オンターゲット部位を黒四角で示す。
【
図16】SpCas9又はOMNI50ヌクレアーゼで処置したU2OS細胞のコンスタントガイド配列パネルにおける編集率(%)を示すグラフ。
【
図17】SpCas9又はOMNI50ヌクレアーゼで処置したU2OS細胞のsgRNA-564DS-refパネルにおける編集の分析。
【
図18】コンスタントガイド配列及びsgRNA-564DS-refを使用して処置した患者の試料を分析するためのコンスタントガイド配列オフターゲットパネルによる編集の分析。
【
図19】コンスタントガイド配列及びsgRNA-564DS-refを使用して処置した患者の試料を分析するためのsgRNA-564DS-refオフターゲットパネルによる編集の分析。
【
図20】コンスタントガイド配列及びsgRNA-564DS-Altを使用して処置した患者の試料を分析するためのsgRNA-564DS-Altオフターゲットパネルによる編集の分析。
【発明を実施するための形態】
【0040】
この発明の実施の態様は、重症先天性好中球減少症(SCN)又は周期性好中球減少症(CyN)に関する変異を有する好中球エラスターゼ遺伝子(ELANE遺伝子)の変異体対立遺伝子を細胞内で不活性化する方法であって、その細胞は、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合であり、前記方法は、
CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び、
21~30ヌクレオチドのガイド配列部分を含む第一のRNA分子
を含む組成物を細胞に導入することを含み、
ここで、CRISPRヌクレアーゼと第一のRNA分子の複合体はELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用する、
方法を提供する。
【0041】
この発明の実施の態様では、第一のRNA分子のガイド配列は、配列番号1~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続するヌクレオチドを含む。
【0042】
この発明の実施の態様では、細胞(又は対象)は、rs9749274、rs740021、rs199720952、rs28591229、rs71335276、rs3826946、rs10413889、rs3761005、rs10409474、rs3761007、rs1683564、rs17216649、rs10469327、rs8107095、rs10414837及びrs10424470からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合であり、第一のRNA分子のガイド配列は、配列番号1~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続するヌクレオチドを含む。
【0043】
いくつかの態様では、多型部位はrs1683564であり、第一のRNA分子のガイド配列は、配列番号2517、2601、2464~2516、2518~2600、2602~2613、1~2463、2614~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続するヌクレオチドを含む。
【0044】
この発明の実施の態様では、CRISPRヌクレアーゼと第一のRNA分子がELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用し、その変異体対立遺伝子は、1つ以上の多型部位に基づいて二本鎖切断の標的となる。
【0045】
この発明の実施の態様では、CRISPRヌクレアーゼと第一のRNA分子がELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用し、その変異体対立遺伝子は、1つ以上の多型部位における変異体対立遺伝子の配列に基づいて二本鎖切断の標的となる。
【0046】
この発明の実施の態様では、CRISPRヌクレアーゼ及び第一のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在する1つ以上の多形部位のヌクレオチド塩基に基づいて、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用する。
【0047】
この発明の実施の態様は、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列を含む第二のRNA分子を導入することを更に含み、第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、ELANE遺伝子の第二の二本鎖切断に作用する。ある態様では、第二のRNA分子は21~30ヌクレオチドのガイド配列を含む。
【0048】
この発明の実施の態様では、組成物は、1、2、3又はそれ以上のCRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列を含んでいてもよい。この発明の実施の態様では、細胞に組成物を導入することは、細胞に1、2、3又はそれ以上の組成物を導入することを含んでいてもよい。この発明の実施の態様では、各組成物は、異なるCRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列又は同じCRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列を含んでいてもよい。2つのRNA分子が関与するこの発明の実施の態様では、第二のRNA分子は、第一のRNA分子と同じCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成してもよく、又は、別のCRISPRヌクレアーゼと複合体を形成してもよい。
【0049】
この発明の実施の態様では、第二の二本鎖切断はELANE遺伝子の非コード領域内で生じる。この発明の実施の態様では、非コード領域はイントロン4にある。
【0050】
この発明の実施の態様では、第一のRNA分子のガイド配列は、配列番号1~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21の連続するヌクレオチドを含む。
【0051】
この発明の実施の態様では、第一のRNA分子のガイド配列は、配列番号1~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む22の連続するヌクレオチドを含む。
【0052】
この発明の実施の態様に応じて、第二のRNA分子のガイド配列は、配列番号1~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続するヌクレオチドを含む。
【0053】
この発明の実施の態様では、第二の二本鎖切断はELANE遺伝子の非コード領域内で生じる。
【0054】
この発明の実施の態様では、細胞はrs10414837又はrs3761005においてヘテロ接合で、第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、ELANE遺伝子のイントロン4の二本鎖切断に作用する。
【0055】
この発明の実施の態様では、細胞はrs1683564においてヘテロ接合であり、第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、ELANE遺伝子のイントロン4の二本鎖切断に作用する。
【0056】
いくつかの態様では、細胞は、ELANE遺伝子中の多型部位rs10414837においてヘテロ接合であり、21~30ヌクレオチドのガイド配列を含む第一のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、ELANE遺伝子の機能的対立遺伝子ではなく、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用する。そのような態様では、第一のRNA分子のガイド配列は、表1に示されたrs10414837を標的とする配列番号のいずれか1つに示された連続するヌクレオチドの配列を含んでいてもよい。
【0057】
いくつかの態様では、細胞はELANE遺伝子中の多型部位rs3761005においてヘテロ接合であり、21~22又は21~30ヌクレオチドのガイド配列を含む第一のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、ELANE遺伝子の機能的対立遺伝子ではなく、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用する。そのような態様では、第一のRNA分子のガイド配列は、表1に示されたrs3761005を標的とする配列番号のいずれか1つに示された連続するヌクレオチドの配列を含んでいてもよい。
【0058】
いくつかの態様では、細胞はELANE遺伝子中の多型部位rs1683564においてヘテロ接合であり、21~22又は21~30ヌクレオチドのガイド配列を含む第一のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、ELANE遺伝子の機能的対立遺伝子ではなく、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用する。そのような態様では、第一のRNA分子のガイド配列は、表1に示されたrs1683564を標的とする配列番号のいずれか1つに示された連続するヌクレオチドの配列を含んでいてもよい。
【0059】
この発明の実施の態様は、SCN若しくはCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する、及び/又は、SCN若しくはCyNに罹患している対象であって、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合である対象から、SCN又はCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する細胞を採取することを含む。
【0060】
この発明の実施の態様は、最初に、SCN若しくはCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する、及び/又は、SCN若しくはCyNに罹患している対象であって、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合である対象を選択し、対象から細胞を採取することを含む。
【0061】
この発明の実施の態様は、動員及び/又はアフェレーシスにより、対象から細胞を採取することを含む。
【0062】
この発明の実施の態様は、骨髄吸引により対象から細胞を採取することを含む。
【0063】
この発明の実施の態様では、細胞は、組成物が細胞に導入される前に刺激される。
【0064】
この発明の実施の態様は、細胞を培養することを含む。
【0065】
この発明の実施の態様では、細胞は、幹細胞因子(SCF)、IL-3及びGM-CSFの1つ以上と共に培養される。
【0066】
この発明の実施の態様では、細胞は、少なくとも1つのサイトカインと共に培養される。
【0067】
この発明の実施の態様では、少なくとも1つのサイトカインはヒトのサイトカインの組換え体である。
【0068】
この発明の実施の態様では、細胞は複数の細胞の中の1つの細胞であり、第一のRNA分子又は第一及び第二のRNA分子を含む組成物は、少なくとも前記細胞及び前記複数の細胞の中の別の細胞に導入され、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子は、少なくとも前記細胞中及び前記複数の細胞の別の細胞中で不活性化され、それによって複数の改変細胞が得られる。
【0069】
この発明の実施の態様では、第一のRNA分子を含む組成物を導入すること又は前記第二のRNA分子を導入すること、1つ以上の細胞のエレクトロポレーションを含む。
【0070】
この発明の実施の態様は、この発明の方法によって得られる改変細胞を提供する。
【0071】
この発明の実施の態様では、改変細胞は更に培養される。
【0072】
この発明の実施の態様では、細胞は生着が可能である。
【0073】
発明の実施の態様では、改変細胞は、患者に注入されると長期間生着でき、注入後少なくとも12月の間、好ましくは少なくとも24月の間、さらにより好ましくは注入後少なくとも30月の間、分化した造血細胞を産生する。別の態様では、改変細胞は、自家移植されると長期間生着できる。別の態様では、改変細胞は、骨髄を破壊していない対象に注入されると長期間生着できる。この発明のある態様では、ヒトに移植した場合、長期間生着させるのに十分な数の改変細胞が対象に送達される。
【0074】
この発明の実施の態様では、改変細胞は子孫細胞を産生できる。
【0075】
この発明の実施の態様では、改変細胞は、生着後に子孫細胞を産生できる。
【0076】
この発明の実施の態様では、改変細胞は、自己生着後に子孫細胞を産生できる。
【0077】
この発明の実施の態様では、改変細胞は、生着後少なくとも12月又は少なくとも24月の間、子孫細胞を産生できる。
【0078】
ある態様では、細胞は幹細胞である。ある態様では、細胞はES細胞である。いくつかの態様では、幹細胞は造血幹/前駆細胞(HSPC)である。
【0079】
この発明の実施の態様では、改変細胞はCD34+造血幹細胞である。
【0080】
この発明の実施の態様では、改変細胞は、骨髄細胞又は末梢血単核細胞(PMC)である。
【0081】
この発明の実施の態様は、ELANE遺伝子の1つの対立遺伝子の少なくとも一部分が欠損した改変細胞を提供する。
【0082】
この発明の実施の態様では、改変細胞は、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合の細胞から改変された。
【0083】
この発明の実施の態様は、改変細胞及び薬学的に許容される担体を含む組成物を提供する。
【0084】
この発明の実施の態様は、この発明の細胞と薬学的に許容される担体を混合することを含む組成物をin vitro又はex vivoで製造する方法を提供する。
【0085】
この発明の実施の態様は、改変細胞を含む組成物をin vitro又はex vivoで製造する方法を提供し、前記方法は:
a) SCN若しくはCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する、及び/又は、SCN若しくはCyNに罹患している対象であって、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合である対象から採取した細胞からHSPCを単離し、対象から細胞を採取する工程;
b) CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列;及び
21~30ヌクレオチドのガイド配列を含む第一のRNA分子、
を含む組成物を、工程a)の細胞に導入し、
前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を1つ以上の細胞内で不活性化して改変細胞を得る工程、
ここで、前記CRISPRヌクレアーゼと前記第一のRNA分子の複合体が、1つ以上の細胞で前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用し、
場合によっては、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列を含む第二のRNA分子を前記細胞に導入し、第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、1つ以上の細胞でELANE遺伝子の第二の二本鎖切断に作用する;場合によって、
c) 工程b)の改変細胞を培養する工程、
ここで、前記改変細胞は生着が可能で、生着後に子孫細胞を産生する、
を含む。
【0086】
この発明の実施の態様は、
a) SCN若しくはCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する、及び/又は、SCN若しくはCyNに罹患している対象であって、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合である対象から採取した細胞からHSPCを単離し;
b) CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列;及び
21~30ヌクレオチドのガイド配列を含む第一のRNA分子
を含む組成物を、工程a)の細胞に導入し、
前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を1つ以上の細胞内で不活性化して改変細胞を得る工程、
ここで、前記CRISPRヌクレアーゼと前記第一のRNA分子の複合体が、1つ以上の細胞で前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用し、
場合によっては、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列を含む第二のRNA分子を前記細胞に導入し、第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、1つ以上の細胞でELANE遺伝子の第二の二本鎖切断に作用する;場合によっては、
c) 工程b)の細胞を培養し、ここで、前記改変細胞は生着が可能で生着後に子孫細胞を産生する;並びに、
工程b)又は工程c)の細胞を対象に投与する工程、
を含む方法
によってin vitroで製造された組成物の、対象におけるSCN又はCyNの治療のための使用を提供する。
【0087】
この発明の実施の態様は、SCN又はCyNに苦しむ対象を治療する方法であって、改変細胞、組成物又はこの発明の方法で製造した組成物の治療有効量の投与を含む方法を提供する。
【0088】
この発明の実施の態様は、SCN又はCyNに関するELANE遺伝子変異を有する対象のSCN又はCyNを治療する方法であって、前記対象は、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合であり、前記方法は、
a) 前記対象から得た細胞からHSPCを単離する工程;
b) CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列;及び
21~30ヌクレオチドのガイド配列を含む第一のRNA分子
を含む組成物を、工程a)の細胞に導入し、
前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を1つ以上の細胞内で不活性化して改変細胞を得る工程、
ここで、前記CRISPRヌクレアーゼと前記第一のRNA分子の複合体が、1つ以上の細胞で前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用し、
場合によっては、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列を含む第二のRNA分子を前記細胞に導入し、第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、1つ以上の細胞でELANE遺伝子の第二の二本鎖切断に作用する;場合によっては、
c) 工程b)の細胞を培養する工程、ここで、前記改変細胞は生着が可能で、生着後に子孫細胞を産生する;並びに、
d) 工程b)又は工程c)の細胞を対象に投与する工程、
を含み、
それにより対象のSCN又はCyNを治療する方法を提供する。
【0089】
この発明の実施の態様は、SCN又はCyNに関するELANE遺伝子変異を有する対象のSCN又はCyNを治療する方法であって、対象は、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合であり、前記方法は、
自己の改変細胞又は自己の改変細胞の子孫を対象に投与することを含み、ここで、自己修飾細胞はELANE遺伝子の変異体対立遺伝子が二本鎖切断されるように修飾されている、
ここで、二本鎖切断は、CRISPRヌクレアーゼ又はCRISPRヌクレアーゼをコードする配列及び第一のRNA分子を含む組成物の細胞への導入によって生じ、CRISPRヌクレアーゼと第一のRNA分子の複合体がELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用して、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を細胞内で不活性化し、
それにより対象のSCN又はCyNを治療する方法を提供する。
【0090】
この発明の実施の態様は、SCN又はCyNと診断された一群の対象から治療を行う対象を選択する方法であって、
a) 前記一群の対象のそれぞれから細胞を得る工程;
b) 各対象の細胞をSCN又はCyNに関するELANE遺伝子の変異についてスクリーニングし、SCN又はCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する対象のみを選択する工程;
c) 工程b)で選択した対象の細胞を、rs10414837、rs3761005、rs1683564からなる群から選択した1つ以上の多型部位におけるヘテロ接合性について配列決定によりスクリーニングする工程;
d) 1つ以上の多型部位でヘテロ接合の細胞を有する対象者のみを治療のために選択する工程;
e) 前記対象の骨髄から、吸引又は末梢血の動員とはアフェレーシスによって、HSPC細胞を得る工程;並びに
f) 1つ以上のCRISPRヌクレアーゼ又は前記1つ以上のCRISPRヌクレアーゼをコードする配列、
前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子上に存在する前記1つ以上の多型部位のヘテロ接合対立遺伝子のヌクレオチド塩基を標的とする、配列番号1~2953のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続するヌクレオチドを有するガイド配列を含む第一のRNA分子、
を、工程e)のHSPCに導入する工程;
ここで、前記第一のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記1つ以上のHSPC細胞で前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の第一の二本鎖切断に作用し、前記第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記第一のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体が第一の二本鎖切断に作用した前記1つ以上のHSPC細胞で前記ELANE遺伝子の2つの対立遺伝子のイントロン4の第二の二本鎖切断に作用し、それによって改変細胞を得る、
g) 工程f)の改変細胞を前記対象に投与する工程;
を含み、
それによって前記対象のSCN又はCyNを治療する方法を提供する。
【0091】
この発明の実施の態様は、配列番号1~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~22又は21~30の連続するヌクレオチドを有するガイド配列を含むRNA分子を提供する。
【0092】
この発明の実施の態様は、ガイド配列を含む第二のRNA分子を更に含む。
【0093】
この発明の実施の態様では、第二のRNA分子は、ELANE遺伝子の非コード領域を標的とする。
【0094】
この発明の実施の態様では、第二のRNA分子のガイド配列のヌクレオチド配列は、第一のRNA分子のガイド配列の配列と異なる。
【0095】
この発明の実施の態様では、第一のRNA分子は、CRISPRヌクレアーゼに結合する配列を有する部分を更に含む。この発明の実施の態様では、第二のRNA分子は、CRISPRヌクレアーゼに結合する配列を有する部分を更に含む。
【0096】
この発明のある態様では、CRISPRヌクレアーゼは、配列番号3789に示すアミノ酸配列に対して少なくとも100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、85%、80%の配列同一性を有する。
【0097】
この発明の実施の態様では、CRISPRヌクレアーゼに結合する配列はtracrRNA配列である。
【0098】
この発明の実施の態様では、第一のRNA分子は、tracrメイト配列を有する部分を更に含む。この発明の実施の態様では、第二のRNA分子は、tracrメイト配列を有する部分を更に含む。
【0099】
この発明の実施の態様では、第一のRNA分子は、1つ以上のリンカーを更に含む。この発明の実施の態様では、第二のRNA分子は、1つ以上のリンカーを更に含む。
【0100】
この発明の実施の態様では、前記第一のRNA分子の長さは、最大で300ヌクレオチドである。この発明の実施の態様では、前記第二のRNA分子の長さは、最大で300ヌクレオチドである。
【0101】
この発明の実施の態様では、組成物は、1つ以上のCRISPRヌクレアーゼ又は前記1つ以上のCRISPRヌクレアーゼをコードする配列を更に含む。この発明の実施の態様では、組成物は、1つ以上のtracrRNA分子若しくは前記1つ以上のtracrRNA分子をコードする配列を更に含む。
【0102】
この発明の実施の態様は、変異型ELANE対立遺伝子を細胞内で不活性化する方法であって、この発明のRNA分子又は組成物を細胞に送達することを含む方法を提供する。
【0103】
この発明の実施の態様では、1つ以上のCRISPRヌクレアーゼ又は前記1つ以上のCRISPRヌクレアーゼをコードする配列及びRNA分子又はRNA分子は、対象及び/又は細胞に、同時に又は異なる時に実質的に送達される。
【0104】
この発明の実施の態様では、tracrRNA分子又は前記tracrRNA分子をコードする配列及びRNA分子又はRNA分子は、対象及び/又は細胞に、同時に又は異なる時に実質的に送達される。
【0105】
この発明の実施の態様では、前記方法は、変異体対立遺伝子から、疾患の原因となる変異を含むエクソンを削除することを含み、ここで、前記第一のRNA分子又は第一及び第二のRNA分子は、エクソンの一部分か前記エクソン全体に隣接する領域を標的とする。
【0106】
この発明の実施の態様では、前記方法は、複数のエクソン、遺伝子のオープンリーディングフレーム全体又は遺伝子全体を削除することを含む。
【0107】
この発明の実施の態様では、第一のRNA分子又は第一及び第二のRNA分子は、変異体対立遺伝子のエクソンとイントロンの間の選択的スプライシングされるシグナル配列を標的とする。
【0108】
この発明の実施の態様では、第二のRNA分子は、変異体対立遺伝子及び機能的対立遺伝子の両者に存在する配列を標的とする。
【0109】
この発明の実施の態様では、第二のRNA分子はイントロンを標的とする。
【0110】
この発明の実施の態様では、前記方法により、誤りが生じやすい非相同末端結合(NHEJ)のメカニズムによって前記変異体対立遺伝子に挿入又は削除が生じ、前記変異体対立遺伝子の配列にフレームシフトを引き起こす。
【0111】
この発明の実施の態様では、フレームシフトにより、変異体対立遺伝子が不活性化又はノックアウトされる。
【0112】
この発明の実施の態様では、フレームシフトは変異体対立遺伝子中に早期終止コドンを形成するか、フレームシフトは変異体対立遺伝子の転写産物のナンセンスコドン介在的mRNA分解をもたらす。
【0113】
この発明の実施の態様では、不活性化又は治療により、変異体対立遺伝子がコードする短縮型タンパク質及び機能的対立遺伝子がコードする機能的タンパク質が得られる。
【0114】
この発明の実施の態様では、細胞又は対象は、rs10414837又はrs3761005においてヘテロ接合で、第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、ELANE遺伝子のイントロン4の二本鎖切断に作用する。
【0115】
この発明の実施の態様では、細胞又は対象はrs1683564においてヘテロ接合で、第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、ELANE遺伝子のイントロン4の二本鎖切断に作用する。
【0116】
この発明の実施の態様は、変異型ELANE対立遺伝子を細胞内で不活性化するための、RNA分子、組成物又はこの発明の方法で製造した組成物の使用を提供する。
【0117】
この発明の実施の態様は、RNA分子、組成物又はこの発明の方法で製造した組成物を含む、細胞内での変異型ELANE対立遺伝子の不活性化に使用するため医薬であって、前記医薬は、前記細胞にRNA分子、組成物又はこの発明の方法で製造した組成物が送達される医薬を提供する。
【0118】
この発明の実施の態様は、方法、改変細胞、組成物、前記方法で製造した組成物又はこの発明のRNA分子の使用であって、SCN若しくはCyNに罹患している又は罹患する危険性のある対象の、SCN又はCyNを治療、軽減又は予防するための使用を提供する。
【0119】
この発明の実施の態様は、RNA分子、組成物、この発明の方法で製造した組成物又はこの発明の改変細胞を含む、SCN又はCyNを治療、軽減又は予防に使用するための医薬であって、前記医薬は、SCN若しくはCyNに罹患している又は罹患する危険性のある対象に、RNA分子、組成物、この発明の方法で製造した組成物又はこの発明の改変細胞が送達される医薬を提供する。
【0120】
この発明の実施の態様は、変異型ELANE対立遺伝子を細胞内で不活性化するためのキットであって、この発明のRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子若しくは前記tracrRNA分子をコードする配列;並びに、前記RNA分子を送達するための指示書を含み、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子若しくは前記tracrRNA分子をコードする配列は、変異型ELANE対立遺伝子を細胞内で不活性化するために細胞に向けられるキットを提供する。
【0121】
この発明の実施の態様は、対象のSCN又はCyNを治療するためのキットであって、この発明のRNA分子、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び/又はtracrRNA分子若しくは前記tracrRNA分子をコードする配列;並びに、前記RNA分子を送達するための指示書を含み、CRISPRヌクレアーゼ若しくは前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列及び/又はtracrRNA若しくは前記tracrRNA分子をコードする配列は、SCN又はCyNを治療するために、SCN若しくはCyNに罹患している又は罹患する危険性のある対象に向けられるキットを提供する。
【0122】
この発明の実施の態様は、変異型ELANE対立遺伝子を細胞内で不活性化するためのキットであって、組成物、この発明の方法で製造した組成物又はこの発明の改変細胞、及びELANE遺伝子を細胞内で不活性化するように組成物を細胞に送達するための指示書を含むキットを提供する。
【0123】
この発明の実施の態様は、対象のSCN又はCyNを治療するためのキットであって、組成物、この発明の方法で製造した組成物又はこの発明の改変細胞、及び前記組成物を送達するための指示書を含み、この発明の方法で製造した組成物又はこの発明の改変細胞は、SCN又はCyNを治療するために、SCN若しくはCyNに罹患している又は罹患する危険性のある対象に向けられるキットを提供する。
【0124】
この発明の実施の態様は、方法又はキットを提供し、この方法又はキットのCRISPRヌクレアーゼの切断活性は、20ヌクレオチド以下、及び/又は24ヌクレオチド以上のガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合と比較して、21~23ヌクレオチドのガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合に大きい。実施の態様では、CRISPRヌクレアーゼの切断活性は、20ヌクレオチド以下、及び/又は23ヌクレオチド以上のガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合と比較して、21~22ヌクレオチドのガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合に大きい。いくつかの態様では、CRISPRヌクレアーゼの切断活性は、22ヌクレオチドのガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合に最大である。いくつかの態様では、CRISPRヌクレアーゼの切断活性は、21ヌクレオチドのガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合に最大である。いくつかの態様では、CRISPRヌクレアーゼの切断活性は、23ヌクレオチドのガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合に最大である。いくつかの態様では、CRISPRヌクレアーゼの切断活性は、24ヌクレオチドのガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合に最大である。
【0125】
この発明の実施の態様では、CRISPRヌクレアーゼの切断活性は、21~22ヌクレオチドのガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合に大きく、前記CRISPRヌクレアーゼは、配列番号3789に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するか、前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列は、配列番号3790又は配列番号3791に示すヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。この発明の実施の態様では、CRISPRヌクレアーゼは、配列番号3789に示すアミノ酸配列に対して少なくとも100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%又は82%の配列同一性を有するか、前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列は、配列番号3790又は配列番号3791に示すヌクレオチド配列に対して少なくとも100%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%又は82%の配列同一性を有する。
【0126】
この発明の実施の態様では、CRISPRヌクレアーゼを含む組成物は、以下の特徴:(a) 前記組成物は水溶液中に存在する;(b) 前記組成物のpHは6~8である;(c) 前記組成物はRNaseを含まない、の1つ以上を有する。
【0127】
定義
特別に定義しない限り、この明細書で使用する全ての技術用語及び/又は学術用語は、この発明に関係する当業者によって一般に理解される意味を有する。この明細書に記載した方法及び材料と類似又は同等の方法及び材料をこの発明の態様の実施又は試験に使用することができ、代表的な方法及び/又は材料を以下に説明する。矛盾する場合は、定義が記載された明細書が優先される。さらに、材料、方法及び実施例は例示であって、必ずしも限定を意図するものではない。
【0128】
この明細書で使用する用語「a」及び「an」は、列挙した構成要素の「1つ以上」を指すことを理解されたい。特に明記しない限り、単数形で記述した場合に複数形を含むことは当業者に明らかである。したがって、この出願では、用語「a」、「an」、及び「少なくとも1つ」は同じ意味で使用される。
【0129】
特別に具体的に言及しない限り、数量、割合又は比率を表す全ての数値、並びに明細書及び特許請求の範囲で使用する数値は、全ての場合において、用語「約」で修飾されているものとして、この教示をよく理解するために、そして教示の範囲を制限するためではなく、理解されるべきである。したがって、反対のことが示されない限り、明細書及び特許請求の範囲に示した数値は近似値であって、取得しようとする所望の特性に応じて変化する可能性がある。ともかく、各数値は、少なくとも、その有効桁数に照らして、通常の端数処理の手法を当てはめて解釈する必要がある。
【0130】
特別に言及しない限り、この発明の態様の1つ以上の条件又は特性を変更する「実質的に」や「約」といった形容詞は、その条件又は特性が、それが意図される用途の許容範囲内に限定されることを意味すると理解される。特別に示さない限り、明細書及び特許請求の範囲における単語「又は」、「若しくは」は、排他的ではなく包括的であると見なされ、それが結びつける項目の少なくとも1つ又は任意の組合せを示す。
【0131】
この出願の明細書及び特許請求の範囲において、動詞「含む(comprise)」、「含有する(include)」及び「有する(have)」並びにそれらの組合せは、動詞の1つ以上の目的語が、1つ又は複数のオブジェクトが、動詞の1つ以上の主語のコンポーネント、要素又は一部分の完全なリストではないことを示すために使用される。この明細書で用いられる他の用語は、当該技術分野において周知の意味で規定されることを意図している。
【0132】
この明細書では、用語「ヘテロ接合一塩基多型」又は「SNP」は、ある集団の一対の染色体の間で異なっているゲノム内の一つの塩基の位置を指す。この明細書では、その位置で最も共通し又は最も一般的なヌクレオチド塩基を、リファレンス(REF)型、野生型(WT)、一般型又は主要な型と呼ぶ。その位置であまり一般的でないヌクレオチド塩基を、オルタナティブ(ALT)型、少数型、まれな型又はバリアント型と呼ぶ。
【0133】
RNA分子の「ガイド配列」は、特定の標的DNA配列とハイブリダイズすることができるヌクレオチドの配列を指し、例えば、ガイド配列は、その長さにわたり標的DNAの配列と完全に相補的であるヌクレオチドの配列である。いくつかの態様では、ガイド配列の長さは21~22ヌクレオチドである。以下により詳しく説明するように、ガイド配列の長さは、例えば、23、24、25、26、27、28、29又は30ヌクレオチドであってもよい。ガイド配列の全長は、その長さにわたり標的DNAの配列と完全に相補的である。ガイド配列は、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成できるRNA分子の一部分であってもよく、CRISPR複合体のDNA標的化部分として機能する。ガイド配列を有するDNA分子がCRISPR分子と同時に存在する場合、RNA分子は、特定の標的DNA配列に対し、CRISPRヌクレアーゼを標的にできる。それぞれの可能性は、別の実施の態様である。RNA分子は、任意の配列を標的とするようにオーダーメードが可能である。
【0134】
この明細書では、用語「標的」は、標的ヌクレオチド配列を有する核酸へのRNA分子のガイド配列の優先的ハイブリダイゼーションを指す。用語「標的」は、標的ヌクレオチド配列を有する核酸の優先的標的化が存在するように、さまざまなハイブリダイゼーション効率を包含するが、オンターゲットハイブリダイゼーションに加え意図しないオフターゲットハイブリダイゼーションも生じる可能性があることが理解される。RNA分子が配列を標的とする場合、RNA分子とCRISPRヌクレアーゼ分子の複合体がヌクレアーゼ活性のために配列を標的とすることが理解される。
【0135】
複数の細胞に存在するDNA配列を標的とする場合、標的化は、RNA分子のガイド配列と1つ以上の細胞中の配列とのハイブリダイゼーションを含み、RNA分子と複数の細胞中の全ての細胞よりも少ない数の標的配列とのハイブリダイゼーションを含むことが理解される。したがって、RNA分子が複数の細胞中の配列を標的とする場合、RNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、1つ以上の細胞の標的配列とハイブリダイズし、全ての細胞よりも少ない数で標的配列とハイブリダイズする可能性があると理解される。したがって、RNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、1つ以上の細胞中の標的配列とのハイブリダイゼーションにより二本鎖切断を導入し、また、全ての細胞よりも少ない数での標的配列とのハイブリダイズにより二本鎖切断を導入する可能性があると理解される。この明細書では、用語「改変細胞」は、標的配列とのハイブリダイゼーション、すなわちオンターゲットハイブリダイゼーションの結果、RNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体によって二本鎖切断がもたらされる細胞を指す。
【0136】
この発明の実施の態様では、RNAガイド分子は、変異体対立遺伝子の多型部位に存在するヌクレオチド塩基に基づいて変異体対立遺伝子を標的とする可能性がある。
【0137】
この発明の実施の態様では、RNA分子は、配列番号1~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~22の連続するヌクレオチドを有するガイド配列を含む。
【0138】
この発明の実施の態様では、RNA分子は、配列番号1~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~25又は21~30の連続するヌクレオチドを有するガイド配列を含む。
【0139】
この発明の実施の態様のいずれかでは、RNA分子のガイド配列は、21~22の連続するヌクレオチドを含んでいてもよく、配列番号1~3751で示される配列のいずれか一つ又は上記配列群からの一つの配列を含むと理解される。
【0140】
この明細書では、配列番号で示される「連続するヌクレオチド」は、介在するヌクレオチドを伴わない、ある配列番号で示されるヌクレオチド配列中の一連のヌクレオチドを指す。
【0141】
この発明の実施の態様では、ガイド配列の長さは21又は22ヌクレオチドであってもよく、配列番号1~3751のいずれか1つに示される配列の21又は22ヌクレオチドからなる。この発明の実施の態様では、ガイド配列の長さは21ヌクレオチド未満であってもよい。例えば、この発明の実施の態様では、ガイド配列の長さは17、18、19又は20ヌクレオチドであってもよい。そのような態様では、ガイド配列は、配列番号1~3751のいずれか1つに示される配列において、それぞれ、17、18、19又は20ヌクレオチドからなってもよい。
【0142】
この発明の実施の態様では、ガイド配列の長さは21ヌクレオチドであってもよく、配列番号1~3751のいずれか1つに示される配列内の連続するヌクレオチドを含む。この発明の実施の態様では、ガイド配列の長さは22ヌクレオチドであってもよく、配列番号1~3751のいずれか1つに示される配列内の連続するヌクレオチドを含む。この発明の実施の態様では、ガイド配列の塩基長は21~30であってもよく、配列番号1~3751のいずれか1つに示される配列内の連続するヌクレオチドを含む。
【0143】
この発明の実施の態様では、ガイド配列の長さは22ヌクレオチドを超えてもよい。例えば、この発明の実施の態様では、ガイド配列の長さは、23、24、25、26、27、28、29又は30ヌクレオチドであってもよい。そのような態様では、ガイド配列は、配列番号1~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~22の連続するヌクレオチド、及び標的配列の3’末端、標的配列の5’末端又は両者に隣接するヌクレオチドかその配列に完全に相補的なヌクレオチドを有する。
【0144】
この発明の実施の態様では、CRISPRヌクレアーゼ及びガイド配列を含むRNA分子は、標的DNA配列に結合して標的DNA配列を切断するCRISPR複合体を形成する。CRISPRヌクレアーゼ(例.Cpf1)は、tracrRNA分子を含まず、CRISPRヌクレアーゼとRNA分子を含むCRISPR複合体を形成してもよい。あるいは、CRISPRヌクレアーゼ(例.Cas9)は、CRISPRヌクレアーゼ、RNA分子及びtracrRNA分子でCRISPR複合体を形成してもよい。
【0145】
この発明の実施の態様では、RNA分子は、tracrRNA分子の配列を更に含んでいてもよい。そのような実施の態様は、RNA分子のガイドとトランス活性化crRNA(tracrRNA)との合成融合物として設計されてもよい(Jinek (2012) Scienceを参照)。この発明の実施の態様は、また、別個のtracrRNA分子及びガイド配列部分を含む別個のRNA分子を利用してCRISPR複合体を形成してもよい。そのような態様では、tracrRNA分子は、RNA分子とハイブリダイズでき、明細書に記載された発明の特定の用途で有利な場合がある。
【0146】
用語「tracrメイト配列」は、塩基対形成を介してtracrRNAにハイブリダイズし、CRISPR複合体の形成を促進するように、tracrRNA分子に十分に相補的な配列を指す(米国特許第8906616号を参照)。この発明の実施の態様では、RNA分子は、tracrメイト配列を有する部分を更に含む。
【0147】
この発明の実施の態様に応じて、RNA分子の長さは、最大で300、290、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110又は100ヌクレオチドであってもよい。それぞれの可能性は、別の実施の態様である。この発明の実施の態様では、RNA分子の長さは、17~300、100~300、150~300、200~300、100~200又は150~250ヌクレオチドであってもよい。それぞれの可能性は、別の実施の態様である。
【0148】
この開示において、「遺伝子」は、遺伝子産物をコードするDNAの領域及び遺伝子産物の産生を調節するDNAの全ての領域を含み、当該調節配列がコード配列及び/又は転写された配列に隣接しているか否かは問わない。したがって、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、リボソーム結合部位及び内部リボソーム侵入部位などの翻訳調節配列、エンハンサー、サイレンサー、インシュレーター、境界要素、複製起点、マトリックス付着部位並びに遺伝子座制御領域が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0149】
「真核生物」細胞には、真菌細胞(酵母など)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞及びヒト細胞が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0150】
この明細書では、用語HSPCは、造血幹細胞及び造血幹前駆細胞の両者を指す。幹細胞の非限定的な例には、骨髄細胞、骨髄前駆細胞、多能性前駆細胞、系統制限前駆細胞(a lineage restricted progenitor cell)が含まれる。
【0151】
この明細書では、「前駆細胞」とは、幹細胞に由来する系統細胞を指し、有糸分裂能及び多能性を保持する(例えば、細胞の成熟した系統の全ての型ではないが、複数の型に分化又は発生する可能性がある)。この明細書では、「造血(hematopoiesis, hemopoiesis)」は、さまざまな種類の血球(例.赤血球、巨核球、骨髄細胞(例.単球、マクロファージ及び好中球)及びリンパ球)及び体内(例.骨髄中)の他の要素の形成及び発生を指す。
【0152】
この明細書では、用語「ヌクレアーゼ」は、核酸のヌクレオチド間のホスホジエステル結合を切断できる酵素を指す。ヌクレアーゼは、天然から単離又は誘導されてもよい。天然のソースはどのような生物であってもよい。あるいは、ヌクレアーゼは、ホスホジエステル結合切断活性を有する修飾タンパク質又は合成タンパク質であってもよい。遺伝子改変は、ヌクレアーゼ、例えば、CRISPRヌクレアーゼを使用して行うことができる。
【0153】
この発明の実施の態様では、RNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在するヘテロ接合の多型部位を標的とするように設計されており、前記RNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在するヘテロ接合の多型部位のヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とする。
【0154】
この開示は、疾病の原因となる変異タンパク質をコードするような変異を有する対立遺伝子(変異体対立遺伝子)と、機能性タンパク質をコードする対立遺伝子(機能性対立遺伝子)という2つの対立遺伝子を区別/識別するために、少なくとも1つの天然に存在するヌクレオチドの差異又は多型(例.一塩基多型(SNP))を利用する方法を提供する。この方法は、変異タンパク質の発現をノックアウトし、機能的タンパク質の発現を可能にする工程を更に含む。いくつかの態様では、この方法は、ドミナントネガティブな遺伝性疾患を治療、軽減又は予防するためのものである。
【0155】
この発明の実施の態様は、特定の細胞又は対象で顕性変異の対立遺伝子を発現する遺伝子において少なくとも1つのヘテロ接合SNPを利用する方法を提供する。この発明の実施の態様では、利用するSNPは、疾患の表現型に関連していてもよく、又は関連していなくてもよい。この発明の実施の態様では、ガイド配列を含むRNA分子は、遺伝子の変異体対立遺伝子中のヘテロ接合SNPに存在するヌクレオチド塩基を標的とし、したがって、遺伝子の機能的対立遺伝子中に異なるヌクレオチド塩基を有することにより、遺伝子の変異体対立遺伝子を標的とする。
【0156】
この発明の実施の態様に応じて、第一のRNA分子は、ELANE遺伝子のエクソン又はプロモーターに存在する第一のヘテロ接合SNPを標的とし、前記第一のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在する第一のSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とし、第二のRNA分子は、ELANE遺伝子の同じ若しくは別のエクソン又はイントロンに存在する第二のヘテロ接合SNPを標的とし、前記第二のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在する第二のSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とするか、第二のRNA分子は、変異体対立遺伝子又は機能的対立遺伝子の両者に存在する非コード領域の配列を標的とする。
【0157】
この発明の実施の態様に応じて、第一のRNA分子又は第一及び第二のRNA分子は、ELANE遺伝子のプロモーター領域、開始コドン又は非翻訳領域(UTR)に存在するヘテロ接合SNPを標的にし、前記RNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在するSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とする。
【0158】
この発明の実施の態様に応じて、第一のRNA分子又は第一及び第二のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子のプロモーター及び/若しくは開始コドンの少なくとも一部分、並びに/又はUTRの一部分を標的とする。
【0159】
この発明の実施の態様に応じて、第一のRNA分子は、プロモーターの一部分、ELANE遺伝子のプロモーターに存在する第一のヘテロ接合SNP、又はELANE遺伝子のプロモーターの上流に存在するヘテロ接合SNPを標的とし、第二のRNA分子は、第一のヘテロ接合性SNPの下流のELANE遺伝子中で、かつ、プロモーター、UTR、又はELANE遺伝子のイントロン若しくはエクソンに存在する第二のヘテロ接合SNPを標的とし、前記第一のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在する第一のSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とし、前記第二のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在する第二のSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とする。
【0160】
この発明の実施の態様に応じて、第一のRNA分子は、プロモーター内部、プロモーターの上流又はELANE遺伝子のUTRに存在するヘテロ接合SNPを標的とし、前記RNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在するSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とし、第二のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子及び機能的対立遺伝子の両者のイントロンに存在する配列を標的とするように設計されている。
【0161】
この発明の実施の態様に応じて、第一のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子及び機能性対立遺伝子の両者に存在するプロモーターの上流の配列を標的とし、第二のRNA分子は、ELANE遺伝子の任意の部位に存在するヘテロ接合SNPを標的とし、前記第二のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在するSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とする。
【0162】
この発明の実施の態様に応じて、変異体対立遺伝子から、疾患の原因となる変異を含むエクソンを削除することを含む方法が提供され、ここで、第一のRNA分子又は第一及び第二のRNA分子は、エクソンの一部分かエクソン全体に隣接する領域を標的とする。
【0163】
この発明の実施の態様に応じて、複数のエクソン、遺伝子のオープンリーディングフレーム全体又は遺伝子全体を削除することを含む方法が提供される。
【0164】
この発明の実施の態様に応じて、第一のRNA分子は、ELANE遺伝子のエクソン又はプロモーターに存在する第一のヘテロ接合SNPを標的とし、かつ、第二のRNA分子は、ELANE遺伝子の同じ若しくは異なるエクソン又はイントロンに存在する第二のヘテロ接合SNPを標的とし、前記第二のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在する第二のSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とするか、第二のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子及び機能性対立遺伝子の両者に存在するイントロンの配列を標的とする。
【0165】
この発明の実施の態様に応じて、第一のRNA分子又は第一及び第二のRNA分子は、変異体対立遺伝子のエクソンとイントロンの間の選択的スプライシングされるシグナル配列を標的とする。
【0166】
この発明の実施の態様に応じて、第二のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子及び機能的対立遺伝子の両者に存在する配列を標的とする。
【0167】
この発明の実施の態様に応じて、第二のRNA分子はイントロンを標的とする。
【0168】
この発明の実施の態様に応じて、誤りが生じやすい非相同末端結合(NHEJ)のメカニズムによって前記変異体対立遺伝子に挿入又は削除が生じ、前記変異体対立遺伝子の配列にフレームシフトを引き起こすことを含む方法が提供される。
【0169】
この発明の実施の態様に応じて、フレームシフトにより、変異体対立遺伝子が不活性化又はノックアウトされる。
【0170】
この発明の実施の態様に応じて、フレームシフトは変異体対立遺伝子中に早期終止コドンを形成する。
【0171】
この発明の実施の態様に応じて、フレームシフトは変異体対立遺伝子の転写産物のナンセンスコドン介在的mRNA分解をもたらす。
【0172】
この発明の実施の態様に応じて、不活性化又は治療により、変異体対立遺伝子によってコードされる短縮型タンパク質及び機能的対立遺伝子によってコードされる機能的タンパク質が生じる。
【0173】
この開示の組成物及び方法は、SCN又はCyNの治療、予防、軽減又は進行を遅らせるために利用してもよい。
【0174】
いくつかの態様では、変異体対立遺伝子は、ELANE遺伝子のプロモーター領域、開始コドン又は非翻訳領域(UTR)に存在するヘテロ接合SNPを標的にするRNA分子を細胞に送達することによって非活性化され、前記RNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在するSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とする。
【0175】
いくつかの態様では、変異体対立遺伝子は、プロモーターの少なくとも一部分の削除、並びに/又は開始コドン及び/若しくはUTRの一部分の削除によって不活性化される。
いくつかの態様では、変異体対立遺伝子を非活性化する方法は、プロモーターの少なくとも一部分の削除を含む。そのような態様では、あるRNA分子は、ELANE遺伝子のプロモーター内又はプロモーターの上流に存在する第一のヘテロ接合SNPを標的とするように設計されてもよく、別のRNA分子は、第一のSNPの下流で、かつ、プロモーター、UTR、又はELANE遺伝子のイントロン若しくはエクソンに存在する第二のヘテロ接合SNPを標的とするように設計されている。あるいは、あるRNA分子は、ELANE遺伝子のプロモーター内、プロモーターの上流、又はUTRに存在するヘテロ接合SNPを標的とするように設計されてもよく、別のRNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子及び機能的対立遺伝子の両者のイントロンに存在する配列を標的とするように設計されている。あるいは、あるRNA分子は、変異体対立遺伝子及び機能的対立遺伝子の両者に存在するプロモーターの上流の配列を標的とするように設計されてもよく、別のガイド配列は、ELANE遺伝子の任意の部位、例えば、ELANE遺伝子のエクソン、イントロン、UTR又はプロモーターの下流に存在するヘテロ接合SNPを標的とするように設計されており、前記RNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在するSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とする。
【0176】
いくつかの態様では、変異体対立遺伝子を非活性化する方法は、変異体対立遺伝子から疾患の原因となる変異を含むエクソンを削除することを含むエクソンスキッピング工程を含む。変異体対立遺伝子中の疾患の原因となる変異を含むエクソンを削除するには、エクソンの一部分かエクソン全体に隣接する領域を標的とする2つのRNA分子が必要である。疾患の原因となる変異を含むエクソンの削除は、野生型の活性の一部又は全てを保持する残りのタンパク質の発現を可能にしながら、タンパク質の疾患の原因となる作用を排除するように設計されてもよい。単一のエクソンスキッピングの代わりに、複数のエクソン、オープンリーディングフレーム全体又は遺伝子全体は、切除したい領域に隣接する2つのRNA分子を使用して切除できる。
【0177】
いくつかの態様では、変異体対立遺伝子を非活性化する方法は、2つのRNA分子を細胞に送達することを含み、一方のRNA分子は、ELANE遺伝子のエクソン又はプロモーターに存在する第一のヘテロ接合SNPを標的とし、前記RNA分子は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在する第一のSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とし、他方のRNA分子は、ELANE遺伝子の同じ若しくは別のエクソン又はイントロンに存在する第二のヘテロ接合SNPを標的とし、前記RNA分子はELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在する第二のSNPのヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とするか、又は前記RNA分子は変異体対立遺伝子又は機能的対立遺伝子の両者に存在するイントロンの配列を標的とする。
【0178】
いくつかの態様では、RNA分子は、CRISPRヌクレアーゼを変異体対立遺伝子のエクソンとイントロンの間の選択的スプライシングされるシグナル配列を標的とするために使用され、それにより、変異体対立遺伝子内の選択的スプライシングされるシグナル配列を破壊する。
【0179】
変異体対立遺伝子を不活性化する上述した戦略のいずれか又は組合せを、この発明で使用してもよい。
【0180】
変異体対立遺伝子を非活性化するために、追加の戦略を使用してもよい。例えば、この発明の実施の態様では、変異体対立遺伝子におけるエラーが発生しやすい非相同末端結合メカニズムによるヌクレオチドの挿入又は削除、及びフレームシフト変異の形成につながる二本鎖切断(DSB)を生じさせるために、RNA分子を使用して、CRISPRヌクレアーゼを変異体対立遺伝子のエクソン又はスプライス部位に誘導する。フレームシフト変異は、(1) 変異体対立遺伝子における早期終止コドンの形成による当該遺伝子の不活性化若しくはノックアウトと、その結果の短縮型タンパク質の生成、又は (2) 変異体対立遺伝子の転写産物のナンセンスコドン介在的mRNA分解、がもたらされる可能性がある。別の態様では、1つのRNA分子は、CRISPRヌクレアーゼを変異体対立遺伝子のプロモーターに向けるために使用される。
【0181】
いくつかの態様では、変異体対立遺伝子を不活性化する方法は、機能性タンパク質を活性化し、活性を高めることができる、タンパク質/ペプチド、タンパク質/ペプチドをコードする核酸、又は化合物などの小分子を提供することなどにより、機能性タンパク質の活性を増強することを更に含む。
【0182】
いくつかの態様に応じ、この開示は目的の遺伝子の変異体対立遺伝子と機能的対立遺伝子(例.ヘテロ接合SNP)との間で異なる少なくとも1つのヌクレオチドを含む配列(すなわち、機能的対立遺伝子に存在しない変異体対立遺伝子の配列)へのRNA誘導型DNAヌクレアーゼに結合し、会合し、及び/又は指向するRNA分子を提供する。
【0183】
いくつかの態様では、この方法は、目的の遺伝子の変異体対立遺伝子を対立遺伝子特異的RNA分子及びCRISPRヌクレアーゼ(例.Cas9タンパク質)と接触させる工程を含み、前記対立遺伝子特異的RNA分子及び前記CRISPRヌクレアーゼ(例.Cas9)は、目的の遺伝子の機能的対立遺伝子のヌクレオチド配列と少なくとも1つのヌクレオチドが異なる、目的の遺伝子の変異体対立遺伝子のヌクレオチド配列と結合し、変異体対立遺伝子を改変又はノックアウトする。
【0184】
いくつかの態様では、対立遺伝子特異的RNA分子及びCRISPRヌクレアーゼは目的の遺伝子をコードする細胞に導入される。いくつかの態様では、目的の遺伝子をコードする細胞は哺乳類の対象中にある。いくつかの態様では、目的の遺伝子をコードする細胞は植物中にある。
【0185】
いくつかの態様では、切断された変異体対立遺伝子は、エラーが生じやすい非相同末端結合(NHEJ)メカニズムによって更に挿入又は削除(インデル)が生じ、変異体対立遺伝子の配列にフレームシフトが生じる。いくつかの態様では、生じたフレームシフトは、変異体対立遺伝子を不活性化又はノックアウトする。いくつかの態様では、生じたフレームシフトは、変異体対立遺伝子に早期終止コドンを形成し、短縮型タンパク質を生成する。そのような態様では、この方法により、変異体対立遺伝子がコードする短縮型タンパク質と、機能的対立遺伝子がコードする機能的タンパク質が産生される。いくつかの態様では、この発明の方法により変異体対立遺伝子中に生じたフレームシフトは、変異体対立遺伝子の転写物のナンセンスコドン介在的mRNA分解をもたらす。
【0186】
いくつかの態様では、変異体対立遺伝子は、「好中球エラスターゼ遺伝子」(elastase, neutrophil expressed gene(ELANE遺伝子))の対立遺伝子である。いくつかの態様では、RNA分子は、SCN又はCyN遺伝性疾患に関連する変異配列と共存する/遺伝的にリンクするELANE遺伝子のヘテロ接合SNPを標的とする。いくつかの態様では、RNA分子はELANE遺伝子のヘテロ接合SNPを標的とし、このSNPのヘテロ接合性は集団において非常に一般的である。この発明の実施の態様では、REFヌクレオチドは変異体対立遺伝子では一般的であるが、治療を受ける対象の機能的対立遺伝子では一般的でない。この発明の実施の態様では、ALTヌクレオチドは変異体対立遺伝子では一般的であるが、治療を受ける対象の機能的対立遺伝子では一般的でない。いくつかの態様では、変異体ELANE対立遺伝子内の疾患の原因となる変異を標的にする。
【0187】
この発明の実施の態様では、ヘテロ接合SNPは、ELANE遺伝子関連疾患の表現型に関係していてもよく、又は関係していなくてもよい。この発明の実施の態様では、ヘテロ接合SNPは、ELANE遺伝子関連疾患の表現型に関係している。この発明の実施の態様では、SNPは、ELANE遺伝子関連疾患の表現型に関係していない。
【0188】
いくつかの態様では、ヘテロ接合SNPは目的の遺伝子のエクソンにある。そのような態様では、RNA分子のガイド配列は、目的の遺伝子のエクソンを標的とするように設計されている。
【0189】
いくつかの態様では、ヘテロ接合SNPは、目的の遺伝子のイントロン又はエクソンにある。いくつかの態様では、ヘテロ接合SNPは、イントロンとエクソンの間のスプライス部位にある。いくつかの態様では、ヘテロ接合SNPは、目的の遺伝子のPAMサイトにある。
【0190】
当業者は、この発明の各実施態様において、この発明のそれぞれのRNA分子は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の目的の標的ゲノムDNA配列と結合するなどヌクレアーゼ(例.CRISPRヌクレアーゼ)と複合体を形成できることを理解する。次いで、ヌクレアーゼは標的DNAを切断し、プロトスペーサー内に二本鎖切断を生じさせる。そのため、この発明の実施の態様では、この発明のガイド配列及びRNA分子は、PAMサイトから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27又は28ヌクレオチド上流又は下流の位置を標的としてもよい。
【0191】
したがって、この発明の実施の態様では、ヌクレアーゼ(例.CRISPRヌクレアーゼ)と複合体を形成したこの発明のRNA分子は、標的部位から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28上流又は下流の遺伝子の対立遺伝子の二本鎖切断に作用してもよい。当業者は、ヘテロ接合の多型部位が存在し、それが標的を明確に定めるために使用される場合、RNA分子は、ヘテロ接合の多型部位のREF又はALTヌクレオチド塩基のみを二本鎖切断の標的とし作用するように設計されてもよいことを理解する。
【0192】
ヘテロ接合の多型部位がPAMサイト内に存在する場合、RNA分子は、PAMサイトから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27又は28ヌクレオチド上流又は下流の配列を標的とするように設計されてもよく、RNA分子とヌクレアーゼの複合体は、PAMサイトのヘテロ接合の多型部位のREF又はALTヌクレオチド塩基の1つのみを標的とし、PAMサイトの切断をもたらすように設計され、例えば、tracrRNAは、ヘテロ接合の多型部位のREF又はALTヌクレオチド塩基の1つを標的とするように設計されることが理解される。
【0193】
この発明の実施の態様では、RNA分子は、ELANE遺伝子に存在するヘテロ接合の多型部位を標的とするように設計されており、RNA分子及び/又はRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子に存在するヘテロ接合の多型部位のヌクレオチド塩基、REF又はALTを標的とする。
【0194】
この発明の実施の態様では、RNA分子、組成物、方法、細胞、キット又は医薬は、ヘテロ接合ELANE遺伝子に起因する疾患の表現型を示す対象の治療に利用される。この発明の実施の態様では、疾患はSCN又はCyNである。そのような態様では、この方法は、疾患の表現型の改善、軽減又は予防をもたらす。
【0195】
この発明の実施の態様では、この発明のRNA分子、組成物、方法、細胞、キット又は医薬は、SCN又はCyNの第2の治療薬と組み合わせて、対象を治療する。この発明の実施の態様では、この発明のRNA分子、組成物、方法、キット又は医薬は、第2の治療薬の投与前、第2の治療薬の投与中、及び/又は第2の治療薬の投与後に投与される。
【0196】
この発明の実施の態様では、この発明のRNA分子、組成物、方法、細胞、キット又は医薬は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)と組み合わせて投与される。
【0197】
上述した実施の態様は、CRISPRヌクレアーゼ、RNA分子及びtracrRNAが、同時に、対象又は細胞で有効であることに関連している。CRISPR、RNA分子及びtracrRNAは、実質的に同時に送達することも、異なる時に送達することもできるが、同時に効果がある。例えば、これは、RNA分子及び/又はtracrRNAが対象又は細胞に実質的に存在する前に、CRISPRヌクレアーゼを対象又は細胞に送達することを含む。
【0198】
この発明の実施の態様に応じて、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を細胞内で不活性化する方法が提供され、前記方法は、
a) SCN又はCyNに関するELANE遺伝子の変異を有し、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択されるELANE遺伝子の1つ以上の多型部位でヘテロ接合である細胞を選択する;
b) CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
21~30ヌクレオチドのガイド配列を含む第一のRNA分子
を含む組成物を前記細胞に導入する、
工程を含み、
ここで、前記CRISPRヌクレアーゼと前記第一のRNA分子の複合体は、前記細胞中のELANE遺伝子の機能的対立遺伝子ではなく、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用する;
それによって、前記細胞中のELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を不活性化する。
【0199】
この発明の実施の態様に応じて、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を細胞内で不活性化する方法が提供され、前記方法は、
a) SCN又はCyNに関するELANE遺伝子の変異を有し、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択されるELANE遺伝子の1つ以上の多型部位でヘテロ接合である細胞を選択する;
b) CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び
21~30ヌクレオチドのガイド配列を含む第一のRNA分子
を含む組成物を前記細胞に導入する、
工程を含み、
ここで、前記CRISPRヌクレアーゼと前記第一のRNA分子の複合体は、前記細胞中のELANE遺伝子の機能的対立遺伝子ではなく、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用し;かつ、
前記方法は、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列を含む第二のRNA分子を導入することを更に含み、前記第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、前記ELANE遺伝子の第二の二本鎖切断に作用する;
それによって、前記細胞中のELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を不活性化する。
【0200】
この発明の実施の態様に応じて、SCN又はCyNに関する変異を有するELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を細胞内で不活性化する方法であって、その細胞はELANE遺伝子中のrs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合である方法が提供され、前記方法は、
CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び、
21~30ヌクレオチドのガイド配列部分を含む第一のRNA分子
を含む組成物を細胞に導入することを含み、
ここで、CRISPRヌクレアーゼと第一のRNA分子の複合体はELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用する;
それによって、細胞中のELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を不活性化する。
【0201】
この発明の実施の態様に応じて、SCN又はCyNに関するELANE遺伝子の変異を有し、ELANE遺伝子中のrs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択される1つ以上の多型部位においてヘテロ接合であるELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を細胞内で不活性化する方法が提供され、前記方法は、
CRISPRヌクレアーゼ又は前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列、及び、
21~30ヌクレオチドのガイド配列部分を含む第一のRNA分子
を含む組成物を前記細胞に導入することを含み、
ここで、前記CRISPRヌクレアーゼと前記第一のRNA分子の複合体は前記ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用し;かつ、
前記方法は、CRISPRヌクレアーゼと複合体を形成することができるガイド配列を含む第二のRNA分子を導入することを更に含み、第二のRNA分子とCRISPRヌクレアーゼの複合体は、ELANE遺伝子の第二の二本鎖切断に作用する;
それによって、前記細胞中のELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を不活性化する。
【0202】
この発明の実施の態様では、CRISPRヌクレアーゼと第一のRNA分子の複合体は、前記細胞中のELANE遺伝子の機能的対立遺伝子ではなく、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の二本鎖切断に作用する。
【0203】
この発明の実施の態様では、細胞は、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択されるELANE遺伝子中の少なくとも1つの追加の多型部位がヘテロ接合である。
【0204】
この発明の実施の態様では、SCN又はCyNに関するELANE遺伝子の変異を有する細胞は、ELANE遺伝子の変異を有する、及び/又はSCN又はCyNに苦しむ対象からのものであってもよい。したがって、ELANE遺伝子の変異を有する細胞を選択することは、ELANE遺伝子変異を有する対象を選択することを含んでいてもよい。この発明の別の態様では、細胞を選択することは、ELANE遺伝子変異を有する対象から細胞を選択することを含んでいてもよい。この発明の実施の態様では、この発明の組成物を細胞に導入することは、この発明の組成物を、ELANE遺伝子の変異に苦しむ対象の細胞に導入することを含んでいてもよい。
【0205】
よって、この発明の実施の態様では、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を対象の細胞内で不活性化する方法が提供され、前記方法は、SCN又はCyNをもたらすELANE遺伝子変異を有し、rs10424470、rs4807932、rs10414837、rs376107533、rs3761010、rs351108、rs3826946、rs10413889、rs3761007、rs10409474、rs3761005、rs351107、rs3761001、rs740021、rs781452480、rs371057361、rs570466264、rs1041904080、rs7250194、rs17216649、rs199720952、rs6510983、rs17223066、rs7255385、rs9749274、rs111361200、rs112639467、rs141213775、rs28591229、rs10469327、rs3834645、rs1683564、rs71335276及びrs8107095からなる群から選択されるELANE遺伝子の1つ以上の多型部位でヘテロ接合である対象を選択する工程を含む。
【0206】
したがって、この発明の実施の態様は、対象又は細胞をELANE遺伝子についてスクリーニングすること含む。当業者は、例えば、合成による配列決定、サンガー配列決定、核型分析、蛍光in situハイブリダイゼーション、及び/又はマイクロアレイによる試験のような限定されない例により、当該技術分野においてELANE遺伝子の変異をスクリーニングする方法を容易に理解する。この発明の実施の態様では、ELANE遺伝子の変異は、エクソンのシーケンシングによってスクリーニングされる。
【0207】
この発明の実施の態様では、対象は、末梢血中の好中球絶対数(ANC)の測定により、SCN又はCyNと診断されるか、診断された。この発明の実施の態様では、SCNは、対象が生後6月に達する前に診断されるか、診断された。この発明の実施の態様では、CyNは、生後12~24月、又は24月の後に診断されるか、診断された。この発明の実施の態様では、SCN又はCyNは、1つ以上の再発性の急性口腔疾患により診断される。この発明の実施の態様では、SCN又はCyNは骨髄検査により診断され、好ましくは、骨髄検査は細胞遺伝学的骨髄検査である。この発明の実施の態様では、SCN又はCyNは、抗好中球抗体アッセイ、免疫グロブリンアッセイ(Ig GAM)、リンパ球免疫表現型検査、膵臓マーカー(血清トリプシノーゲン及び便中エラスターゼ)、脂溶性ビタミン量(ビタミンA、E及びD)の1つ以上により診断される。任意の診断方法は他の任意の診断方法と併用できることが理解される。
【0208】
この発明の実施の態様では、SCN又はCyNと診断された対象は、エクソンのシーケンシングによりスクリーニングされ、ELANE遺伝子の病原性変異が特定される。別の態様では、対象はサンガーシーケンシングによってスクリーニングされ、表1に示された少なくとも1つのSNPのヘテロ接合性を確認する。この発明の実施の態様では、SNPは、rs1683564、rs10414837及びrs3761005の一つである。この発明の実施の態様では、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子上のヘテロ接合SNPのヌクレオチドは、BAC bioを使用して決定される。この発明の実施の態様では、表1に従って、適切なガイド配列が選択される。この発明の実施の態様では、選択されたガイド配列は、対象から得た細胞(例.PBMC)に導入され、細胞内の病原性のELANE遺伝子変異の減少は、例えば、次世代シーケンシングにより測定される。
【0209】
CRISPR/Cas9ゲノム編集システムは、疾患の原因となる変異に対処するために、配列特異的な方法でヌクレアーゼを標的部位に標的化することを可能にすることが理解される。造血幹細胞及び前駆細胞(HSPC)は、自己複製能及び分化能を有しているので、治療の可能性がある(Yu, Natanson and Dunbar 2016)。したがって、この発明の実施の態様は、HSPCにゲノム編集を行う。
【0210】
この発明の実施の態様では、自家療法は、CRISPR/Cas9で編集されたSCN又はCyNと診断された患者の自家CD34+造血幹細胞を利用する。この発明の実施の態様では、患者のアフェレーシス後、CD34+細胞を、骨髄又は末梢血単核細胞(PBMC)から分離する。
【0211】
SCNやCyNといったドミナントネガティブな(又は複合ヘテロ接合の)適応症では、戦略は、ヘテロ接合SNP配列を標的とすることにより変異体対立遺伝子を編集し、非変異体対立遺伝子又は他のオフターゲットでの切断を回避することである。
【0212】
この発明の実施の態様は、以下の工程:
以下の表1に示したSNPの少なくとも1つでヘテロ接合性である特定され、SCN又はCyNと診断された患者の選択。この発明の実施の態様では、対象は、rs10414837、rs3761005又はrs1683564でヘテロ接合である;
候補患者の特定されたヘテロ接合SNP位置に基づく治療戦略の選択;
吸引、又は末梢血の動員とアフェレーシスのいずれかによる、対象の骨髄からのHSPC細胞の取得、ここで、HSPC細胞は場合によって処理(濃縮、刺激、及びその両者)される;
CRISPRヌクレアーゼ又はこれをコードする配列(例.mRNA)、
変異体対立遺伝子の同定されたヘテロ接合SNP位置の特定の配列(REF/ALT配列)を標的とする特徴的なRNA分子、及び
イントロン4の配列を標的とし、変異体対立遺伝子と他の対立遺伝子に共通する特徴的ではないRNA分子
を含む組成物の、HSPC細胞への(例えば、ex vivoエレクトロポレーションによる)導入、
これにより、HSPC細胞を編集して変異ELANE対立遺伝子の発現をノックアウトする;並びに、
編集したHSPCの候補患者への導入;
を含んでいてもよい。
【0213】
この発明の実施の態様では、患者のアフェレーシス後、CD34+細胞を、骨髄又は末梢血単核細胞(PBMC)から分離してもよい。HSPC動員後のアフェレーシスによって、患者から骨髄又はPBMCを採取してもよい。発明の実施の態様では、アフェレーシスの産物を洗浄して血小板を除去し、例えばCliniMACSシステム(Miltenyi Biotec)による精製で、CD34+細胞集団を濃縮してもよい。この発明の実施の態様では、選択された細胞は、ex vivoでヒトサイトカインの組換え体の混合物によって事前に刺激されてもよい。この発明の実施の態様では、細胞はエレクトロポレーションされてもよい。この発明の実施の態様では、エレクトロポレーションの前に、刺激された細胞(例.CD34+細胞)、CRISPRヌクレアーゼmRNA及びgRNAを、定められた条件でプレインキュベートしてもよい。この発明の実施の態様では、細胞は、CRISPRヌクレアーゼmRNA/gRNA混合物又は事前に構築されたRNP(gRNAとCRISPRヌクレアーゼタンパク質のリボヌクレアーゼタンパク質)を用いてex vivoでエレクトロポレーションし、次いで、細胞を洗浄する。この発明の実施の態様では、細胞を懸濁して最終製剤にする。この発明の実施の態様では、細胞は再懸濁してもよい。この発明の実施の態様では、再懸濁した細胞は、注入用バッグに充填してもよい。この発明の実施の態様では、バッグは、温度が制御された冷凍庫で凍結工程により凍結し、及び/又は液体窒素の気体中で保存してもよい。この発明の実施の態様では、製品を、患者の静脈内に(IV)投与してもよい。
【0214】
顕性遺伝性障害
当業者は、ヘテロ接合による任意の遺伝的障害(例.顕性遺伝的障害)を有する全ての対象に、この明細書に記載された方法を適用してもよいことを理解する。ある態様では、この発明を使用して、例えば、SCN又はCyNなどの顕性遺伝性障害に関与する、関連する、又は当該障害の原因となる遺伝子を標的にすることができる。いくつかの態様では、顕性遺伝性障害は、SCN又はCyNである。いくつかの態様では、標的遺伝子は、ELANE遺伝子である(Entrez Gene, gene ID No: 335)。
【0215】
CRISPRヌクレアーゼ及びPAM認識
いくつかの態様では、配列特異的ヌクレアーゼは、CRISPRヌクレアーゼ又はその機能的バリアントから選択される。いくつかの態様では、配列特異的ヌクレアーゼは、RNA誘導型DNAヌクレアーゼである。そのような態様では、RNA誘導型DNAヌクレアーゼ(例.Cpf1)を誘導するRNA配列は、RNA誘導型DNAヌクレアーゼに結合し、及び/又は、RNA誘導型DNAヌクレアーゼを、変異体対立遺伝子とその対応する機能的対立遺伝子との間で異なる少なくとも1つのヌクレオチド(例.SNP)を含む配列に誘導する。いくつかの態様では、CRISPR複合体はtracrRNAを更に含まない。RNA誘導型DNAヌクレアーゼがCRISPRタンパク質である例では、顕性変異体対立遺伝子と機能的対立遺伝子との間で異なる少なくとも1つのヌクレオチドは、RNA分子がハイブリダイズするように設計されている領域内のPAMサイトの内部及び/又はPAMサイトの近傍に存在してもよい。当業者は、当該技術分野で一般的に知られている方法によって、RNA分子がゲノム内の選択された標的に結合するように操作できることを理解する。
【0216】
この発明の実施の態様では、II型CRISPRシステムは、成熟crRNA:tracrRNA複合体を利用して、標的認識の追加要件であるプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の標的DNA上のcrRNAとプロトスペーサー間のワトソンクリック塩基対を介してCRISPRヌクレアーゼ(例.Cas9)を標的DNAに誘導する。次いで、CRISPRヌクレアーゼは標的DNAを切断し、プロトスペーサー内に二本鎖切断を生じさせる。当業者は、この発明の操作された各RNA分子は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の隣の目的の標的ゲノムDNA配列、例えば、限定されない例として、化膿レンサ球菌Cas9 WT(SpCAS9)ではNGG又はNAG(ここで「N」は任意の核酸塩基である)、黄色ブドウ球菌(SaCas9)ではNNGRRT、Jejuni Cas9 WTではNNNVRYM、SpCas9-VQRバリアントではNGAN又はNGNG、SpCas9-VRERバリアントではNGCG、SpCas9-EQRバリアントではNGAG、髄膜炎菌(NmCas9)ではNNNNGATT、又はCpflではTTTVといった、利用されるCRISPRヌクレアーゼの型に関連する配列に一致するPAMと結合するように更に設計されていることを理解する。この発明のRNA分子は、それぞれ、1つ以上の異なるCRISPRヌクレアーゼと組み合わせて複合体を形成するように設計され、利用されるCRISPRヌクレアーゼに対応する1つ以上の異なるPAM配列を利用して目的のポリヌクレオチド配列を標的とするように設計されている。
【0217】
いくつかの態様では、RNA誘導型DNAヌクレアーゼ(例.CRISPRヌクレアーゼ)を使用して、細胞のゲノム内の所望の位置でDNA切断を引き起こしてもよい。最も一般的に使用されるRNA誘導型DNAヌクレアーゼはCRISPRシステムに由来するが、他のRNA誘導型DNAヌクレアーゼもこの明細書に記載されたゲノム編集組成物及び方法での使用が企図されている。例えば、この明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0211023号を参照。
【0218】
この発明の実施において使用してもよいCRISPRシステムは、大きく異なる。CRISPRシステムは、I型、II型、III型、又はV型のシステムであってもよい。適切なCRISPRタンパク質の限定されない例には、Cas3、Cas4、Cas5、Cas5e(又はCasD)、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8al、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9、Casl0、Cas12a、Cas12b、Cas12c、Cas12d、Cas12d、Casl Od、CasF、CasG、CasH、Csyl、Csy2、Csy3、Csel(又はCasA)、Cse2(又はCasB)、Cse3(又はCasE)、Cse4(又はCasC)、Cscl、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmrl、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csbl、Csb2、Csb3,Csxl7、Csxl4、Csxl0、Csxl6、CsaX、Csx3、Cszl、Csxl5、Csfl、Csf2、Csf3、Csf4及びCul966が含まれる(例えばKoonin 2017を参照)。
【0219】
いくつかの態様では、RNA誘導型DNAヌクレアーゼは、II型CRISPRシステム(例.Cas9)に由来するCRISPRヌクレアーゼである。CRISPRヌクレアーゼは、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、連鎖球菌属sp.(Streptococcus sp.)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、トレポネーマ デンティコラ(Treponema denticola)、ノカルディオプシス ダッソンビレイ(Nocardiopsis dassonvillei)、ストレプトマイセス プリスチナエスピラリス(Streptomyces pristinaespiralis)、ストレプトマイセス ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、ストレプトマイセス ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)、ストレプトスポランジウム ロゼウム(Streptosporangium roseum)、ストレプトスポランジウム ロゼウム(Streptosporangium roseum)、アリサイクロバチルス アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)、バチルス シュードマイコイデス(Bacillus pseudomycoides)、バチルス セレニティレデュセンス(Bacillus selenitireducens)、エキシグオバクテリウム シビリクム(Exiguobacterium sibiricum)、ラクトバチルス デルブレッキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ミクロシラ マリナ(Microscilla marina)、バークホルデリア バクテリウム(Burkholderiales bacterium)、ポラロモナス ナフタレニボランス(Polaromonas naphthalenivorans)、ポラロモナス属sp.(Polaromonas sp.)、クロコスファエラ ワトソニー(Crocosphaera watsonii)、シアノテス属sp.(Cyanothece sp.)、ミクロシスティス エルギノーサ(Microcystis aeruginosa)、シネココッカス属sp.(Synechococcus sp.)、アセトハロビウム アラビティカム(Acetohalobium arabaticum)、アンモニフェツクス デゲンシイ(Ammonifex degensii)、カルディセルロシラプター ベッシー(Caldicelulosiruptor becscii)、カンジタートス デスルフォルディス(Candidatus Desulforudis)、クロストリジウム ボツリヌム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム ディフィシル(Clostridium difjicile)、フィネゴルディア マグナ(Finegoldia magna)、ナトロアナエロビウス サーモフィラス(Natranaerobius thermophilus)、ペロトマクルム サーモプロピオニカム(Pelotomaculumthermopropionicum)、アシディチオバチルス カルダス(Acidithiobacillus caldus)、アシディチオバチルス フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferrooxidans)、アロクロマチウム ビノスム(Allochromatium vinosum)、マリノバクター属sp.(Marinobacter sp.)、ニトロソコッカス ハロフィルス(Nitrosococcus halophilus)、ニトロソコッカス ワトソニー(Nitrosococcus watsoni)、シュードアルテロモナス ハロプランクティス(Pseudoalteromonas haloplanktis)、クテドノバクター ラセミファー(Ktedonobacter racemifer)、メタノハロビウム エベスチガータム(Methanohalobium evestigatum)、アナバエナ バリアビリス(Anabaena variabilis)、ノジュラリア スプミゲナ(Nodularia spumigena)、ノストック属sp.(Nostoc sp.)、オーロスピラ マキシマ(Arthrospira maxima)、オーロスピラ プラテンシス(Arthrospira platensis)、オーロスピラ属sp.(Arthrospira sp.)、リングビア属sp.(Lyngbya sp.)、ミクロコレウス クソノプラステス(Microcoleus chthonoplastes)、オスキラトリア属sp.(Oscillatoria sp.)、ペトロトガ モビリス(Petrotoga mobilis)、サーモシフォ アフリカヌス(Thermosipho africanus)、アカリオクロリス マリナ(Acaryochloris marina)、フランシセラ cf.ノビシダFx1(Francisella cf. novicida Fx1)、アリサイクロバチルス アシドテッレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)、オレイフィラス属sp.(Oleiphilus sp.)、バクテリウムCG09_39_24(Bacterium CG09_39_24)、デルタプロテオバクテリア バクテリウム(Deltaproteobacteria bacterium)又は既知のPAM配列を有するCRISPRヌクレアーゼをコードする種に由来するものであってもよい。培養されていない細菌がコードするCRISPRヌクレアーゼも、この発明で使用してもよい(Burstein et al. Nature, 2017を参照)。既知のPAM配列を有するCRIPSRタンパク質のバリアント、例えば、SpCas9 D1335Eバリアント、SpCas9 VQRバリアント、SpCas9 EQRバリアント、又はSpCas9 VRERバリアントも、この発明で使用してもよい。
【0220】
この発明の実施の態様では、CRISPRヌクレアーゼは、21~30又は21~22ヌクレオチドのガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合、切断活性を示し、上述した種に由来するかもしれない。21ヌクレオチドのガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合のCRISPRヌクレアーゼの切断活性は、Mojica, F. J., et al. (1993)に記載されている。22ヌクレオチドのガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合のCRISPRヌクレアーゼの切断活性は、Kim, E. et al. (2017)に記載されている。Mojica, F. J., et al. (1993)及びKim, E. et al. (2017)の全体及び/又はCRISPRヌクレアーゼについての具体的な説明は、この明細書に組み込まれる。そのような態様では、CRISPRヌクレアーゼは操作されていてもよく、及び/又は天然に存在しなくてもよい。
【0221】
したがって、Cas9タンパク質、修飾Cas9若しくはCas9のホモログ若しくはオルソログといったCRISPRシステムのRNA誘導型DNAヌクレアーゼ、又は、Cpf1並びにそのホモログ及びオルソログといった他の型のCRISPRシステムに属する他のRNA誘導型DNAヌクレアーゼは、この発明の組成物で使用してもよい。
【0222】
特定の態様では、CRIPSRヌクレアーゼは、天然のCasタンパク質の「機能的誘導体」であってもよい。天然配列ポリペプチドの「機能的誘導体」は、天然配列ポリペプチドと共通の定性的生物学的特性を有する化合物である。「機能的誘導体」には、対応する天然配列ポリペプチドと共通の生物学的活性を有することが条件で、天然配列の断片、並びに天然配列ポリペプチドの誘導体及びその断片が含まれるが、これらに限定されるものではない。この明細書で企図される生物学的活性は、DNA基質を断片に加水分解する機能的誘導体の能力である。用語「誘導体」は、ポリペプチドのアミノ酸配列バリアント、共有結合修飾物及びそれらの融合物を包含する。Casポリペプチド又はその断片の適切な誘導体には、Casタンパク質又はその断片の変異体、融合物、共有結合修飾物が含まれるが、これらに限定されるものではない。Casタンパク質又はその断片、及びCasタンパク質の誘導体又はその断片を含むCasタンパク質は、細胞から入手してもよく、化学的に合成してもよく、又はこれら2つの方法の組合せであってもよい。細胞は、自然にCasタンパク質を産生する細胞であってもよく、又は、多くの内因性Casタンパク質を産生するように、若しくは、内因性のCasと同じであるか異なるCasをコードする外因的に導入された核酸からCasタンパク質を産生するように遺伝子操作された細胞であってもよい。場合によっては、細胞は自然にCasタンパク質を産生せず、Casタンパク質を産生するように遺伝子操作されている。
【0223】
いくつかの態様では、CRISPRヌクレアーゼはCpf1である。Cpf1は、Tリッチなプロトスペーサー隣接モチーフを利用する単一のRNA誘導型エンドヌクレアーゼである。Cpf1は、付着末端を有するDNA二本鎖切断することによりDNAを切断する。アシダミノコッカス属(Acidaminococcus)及びラクノスピラ科(Lachnospiraceae)の2つのCpf1酵素は、ヒトの細胞で効率的なゲノム編集活性を有することが示されている(Zetsche et al. (2015) Cellを参照)。
【0224】
したがって、Cas9タンパク質、修飾Cas9若しくはCas9のホモログ、オルソログ若しくはバリアントといったII型CRISPRシステムのRNA誘導型DNAヌクレアーゼ、又は、Cpf1並びにそのホモログ、オルソログ若しくはバリアントといった他の型のCRISPRシステムに属する他のRNA誘導型DNAヌクレアーゼは、この発明で使用してもよい。
【0225】
いくつかの態様では、ガイド分子は、新規の又は改善された特性を与える1つ以上の化学修飾(例.分解に対する安定性の改善、ハイブリダイゼーションエネルギーの改善、又はRNA誘導型DNAヌクレアーゼとの結合特性の改善)を含む。適切な化学修飾には、修飾塩基、修飾された糖、又は修飾されたヌクレオシド間結合の1つ以上が含まれるが、これらに限定されるものではない。適切な化学修飾の例には、4-アセチルシチジン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン、2'-O-メチルシチジン、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2'-O-メチルシュードウリジン、「β-D-ガラクトシルケウオシン(galactosylqueuosine)」、2'- O-メチルグアノシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデノシン、1-メチルアデノシン、1-メチルシュードウリジン、1-メチルグアノシン、1-メチルイノシン、「2,2-ジメチルグアノシン」、2-メチルアデノシン、2-メチルグアノシン、3-メチルシチジン、5-メチルシチジン、N6-メチルアデノシン、7-メチルグアノシン、5-メチルアミノメチルウリジン、5-メトキシアミノメチル-2-チオウリジン、「β、D-マンノシルケウオシン(mannosylqueuosine)」、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン、5-メトキシカルボニルメチルウリジン、5-メトキシウリジン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデノシン、N-((9-β-D-リボフラノシル-2-メチルチオプリン-6-イル)カルバモイル)スレオニン、N-((9-β-D-リボフラノシルプリン-6-イル)-N-メチルカルバモイル)スレオニン、ウリジン-5-オキシ酢酸-メチルエステル、ウリジン-5-オキシ酢酸、ワイブトキソシン(wybutoxosine)、ケウオシン(queuosine)、2-チオシチジン、5-メチル-2-チオウリジン、2-チオウリジン、4-チオウリジン、5-メチルウリジン、N-((9-ベータ-D-リボフラノシルプリン-6-イル)-カルバモイル)スレオニン、2'-O-メチル-5-メチルウリジン、2'-O-メチルウリジン、ワイブトシン(wybutosine)、「3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン、(acp3)u」、2'-O-メチル(M)、3'-ホスホロチオエート(MS)、3'-チオPACE(MSP)、シュードウリジン又は1-メチルシュードウリジンが含まれる。それぞれの可能性は、この発明の別の実施の態様である。
【0226】
適切な化学修飾のさらなる限定されない例には、m1A(1-メチルアデノシン);m2A(2-メチルアデノシン);Am(2′-O-メチルアデノシン);ms2m6A(2-メチルチオ-N6-メチルアデノシン);i6A(N6-イソペンテニルアデノシン);ms2i6A(2-メチルチオ-N6イソペンテニルアデノシン);io6A(N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン);ms2io6A(2-メチルチオ-N6-(cis-ヒドロキシイソペンテニル)アデノシン);g6A(N6-グリシニルカルバモイルアデノシン);t6A(N6-スレオニルカルバモイルアデノシン);ms2t6A(2-メチルチオ-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン);m6t6A(N6-メチル-N6-スレオニルカルバモイルアデノシン);hn6A(N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン);ms2hn6A(2-メチルチオ-N6-ヒドロキシノルバリルカルバモイルアデノシン);Ar(p)(2′-O-リボシルアデノシン(リン酸塩));I(イノシン);m1I(1-メチルイノシン);m1Im(1,2′-O-ジメチルイノシン);m3C(3-メチルシチジン);Cm(2′-O-メチルシチジン);s2C(2-チオシチジン);ac4C(N4-アセチルシチジン);f5C(5-ホルミルシチジン);m5Cm(5,2′-O-メチルシチジン);ac4Cm(N4-アセチル-2′-O-メチルシチジン);k2C(リシジン);m1G(1-メチルグアノシン);m2G(N2-メチルグアノシン);m7G(7-メチルグアノシン);Gm(2′-O-メチルグアノシン);m2
2G(N2,N2-ジメチルグアノシン);m2Gm(N2,2′-O-ジメチルグアノシン);m2
2Gm(N2,N2,2′-O-トリメチルグアノシン);Gr(p)(2′-O-リボシルグアノシン(リン酸塩));yW(ワイブトシン);o2yW(パーオキシワイブトシン);OHyW(ヒドロキシワイブトシン);OHyW*(中間体ヒドロキシワイブトシン);imG(ワイオシン);mimG(メチルワイオシン);Q(ケウオシン);oQ(エポキシケウオシン);galQ(ガラクトシル-ケウオシン);manQ(マンノシル-ケウオシン);preQ0(7-シアノ-7-デアザグアノシン);preQ1(7-アミノメチル-7-デアザグアノシン);G+(アルカエオシン);D(ジヒドロウリジン);m5Um(5,2′-O-ジメチルウリジン);s4U(4-チオウリジン);m5s2U(5-メチル-2-チオウリジン);s2Um(2-チオ-2′-O-メチルウリジン);acp3U(3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン);ho5U(5-ヒドロキシウリジン);mo5U(5-メトキシウリジン);cmo5U(ウリジン 5-オキシ酢酸);mcmo5U(ウリジン 5-オキシ酢酸 メチルエステル);chm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン);mchm5U(5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウリジン メチルエステル);mcm5U(5-メトキシカルボニルメチルウリジン);mcm5Um(5-メトキシカルボニルメチル-2′-O-メチルウリジン);mcm5s2U(5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン);nm5S2U(5-アミノメチル-2-チオウリジン);mnm5U(5-メチルアミノメチルウリジン);mnm5s2U(5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン);mnm5se2U(5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン);ncm5U(5-カルバモイルメチルウリジン);ncm5Um(5-カルバモイルメチル-2′-O-メチルウリジン);cmnm5U(5-カルボキシメチルアミノメチルウリジン);cmnm5Um(5-カルボキシメチルアミノメチル-2′-O-メチルウリジン);cmmm5s2U(5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン);ジメチルアデノシン);Im(2′-O-メチルイノシン);m4C(N4-メチルシチジン);m4Cm(N4,2′-O-ジメチルシチジン);hm5C(5-ヒドロキシメチルシチジン);m3U(3-メチルウリジン);cm5U(5-カルボキシメチルウリジン);m6Am(N6,2′-O-ジメチルアデノシン);m6
2Am(N6,N6,O-2′-トリメチルアデノシン);m2′7G(N2,7-ジメチルグアノシン);m2,2,7G(N2,N2,7-トリメチルグアノシン);m3Um(3,2′-O-ジメチルウリジン);m5D(5-メチルジヒドロウリジン);f5Cm(5-ホルミル-2′-O-メチルシチジン);m1Gm(1,2′-O-ジメチルグアノシン);m1Am(1,2′-O-diメチルアデノシン);τm5U(5-タウリノメチルウリジン);τm5s2U(5-タウリノメチル-2-チオウリジン);imG-14(4-デメチルワイオシン);imG2(イソワイオシン);又はac6A(N6-アセチルアデノシン)が含まれる。それぞれの可能性は、この発明の別の実施の態様である(例えば、米国特許第9,750,824号を参照)。
【0227】
この発明の実施の態様では、CRISPRヌクレアーゼの切断活性は、20ヌクレオチド以下、及び/又は24ヌクレオチド以上のガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合と比較して、21~23ヌクレオチドのガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合に大きい。この発明の実施の態様では、CRISPRヌクレアーゼの切断活性は、20ヌクレオチド以下、及び/又は23ヌクレオチド以上のガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合と比較して、21~22ヌクレオチドのガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合に大きい。ある態様では、CRISPRヌクレアーゼの切断活性は、22ヌクレオチドのガイド配列を含むRNA分子と共に使用した場合に最大である。
【0228】
ある態様では、そのようなCRISPRヌクレアーゼは、配列番号3789に示すアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するか、前記CRISPRヌクレアーゼをコードする配列は、配列番号3790又は配列番号3791に示すヌクレオチド配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0229】
変異体対立遺伝子を特異的に標的とするガイド配列
遺伝子は、数千のSNPを含む場合がある。24塩基対のターゲットウィンドウを利用して遺伝子内のそれぞれのSNPを標的とするためには、数十万のガイド配列が必要となる。SNPを標的とする場合のガイド配列は、ガイド配列が分解し、活性が制限され、活性がもたらされず、又はオフターゲット効果を生じる可能性がある。したがって、遺伝子を標的とするためには、適切なガイド配列が必要である。この発明により、変異タンパク質の発現をノックアウトし、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を不活性化し、SCN又はCyNを治療する新規な一組のガイド配列が特定された。
【0230】
この開示は、機能的対立遺伝子を改変せずに残しながら、不活性化のために変異体対立遺伝子を特異的に標的とすることができるガイド配列を提供する。この発明のガイド配列は、変異体対立遺伝子と機能的対立遺伝子とを特異的に区別するように設計されており、区別する可能性が最も高い。不活性化されることが望まれる変異体対立遺伝子を標的とする全ての可能なガイド配列のうち、この明細書に開示される特定のガイド配列は、開示された態様で機能するのに特に有効である。
【0231】
簡単に説明すると、ガイド配列は以下の特性を有していてもよい:(1) 一般の集団、特定の民族の集団又は患者の集団で高保有率であり、1%を超えるヘテロ接合のSNP/挿入/削除/インデルであって、同じ集団でヘテロ接合率が1%を超えるSNP/挿入/欠失/インデルを標的とする;(2) 遺伝子の一部に近接する、例えば、遺伝子の任意の部分(例.プロモーター、UTR、エクソン又はイントロン)から5000塩基以内の、SNP/挿入/欠失/インデルの位置を標的とする;及び (3) 疾患/遺伝子の創始者変異又は一般的な病原性変異を標的とするRNA分子を使用する変異体対立遺伝子を標的とする。いくつかの態様では、一般の集団、特定の民族の集団又は患者の集団におけるSNP/挿入/欠失/インデルの保有率は1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%又は15%を超えており、同じ集団におけるSNP/挿入/欠失/インデルのヘテロ接合率は1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%又は15%を超えている。それぞれの可能性は、別の実施の態様であり、自由に組み合わせることができる。
【0232】
各遺伝子について、SNP/挿入/欠失/インデルにしたがい、以下の戦略のいずれかを使用して、変異体対立遺伝子を非活性化してもよい:(1) 1つのRNA分子によるノックアウト戦略-1つのRNA分子を利用して、CRISPRヌクレアーゼを変異体対立遺伝子に誘導し、二本鎖切断(DSB)を生じさせ、変異体対立遺伝子のエクソン又はスプライス部位領域にフレームシフト変異を形成する;(2) 2つのRNA分子によるノックアウト戦略-最初のRNA分子は、変異体対立遺伝子のプロモーター又は上流の領域を標的とし、別のRNA分子は、変異体対立遺伝子のプロモーター、エクソン又はイントロンにおける最初のRNA分子の下流を標的とする;(3) エクソンスキップ戦略-スプライス部位を破壊するために、1つのRNA分子を使用して、CRISPRヌクレアーゼを、イントロンの5’末端(ドナー配列)又はイントロンの3’末端(アクセプター配列)のいずれかのスプライス部位領域に標的化してもよい。あるいは、第1のRNA分子がエクソンの上流領域を標的とし、第2のRNA分子が第1のRNA分子の下流の領域を標的とし、それによってエクソンを切除するように、2つのRNA分子を利用してもよい。各変異体対立遺伝子について特定されたSNP/挿入/欠失/インデルの位置に基づいて、変異体対立遺伝子を非活性化する上述した方法のいずれか1つ又は組合せを利用してもよい。
【0233】
2つのRNA分子を使用する場合、ガイド配列は、第一のSNPがエクソン1の上流、例えば5’非翻訳領域内、プロモーター内、又は転写開始部位の5’側の最初の2000塩基内にあり、第二のSNPが第一のSNPの下流、例えば、転写開始部位の5’側の最初の2000塩基内、イントロン1、イントロン2若しくはイントロン3内、又はエクソン1、エクソン2若しくはエクソン3内にある、2つのSNPを標的としてもよい。
【0234】
この発明のガイド配列は、標的遺伝子の上流、好ましくは標的遺伝子の最後のエクソンの上流のSNPを標的としてもよい。ガイド配列は、例えば5’非翻訳領域内、プロモーター内又は転写開始部位の5’側の最初の4000~5000塩基内など、エクソン1の上流のSNPを標的としてもよい。
【0235】
この発明のガイド配列は、既知のプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位に非常に近接(例.50塩基対、より好ましくは20塩基対内)したSNPを標的としてもよい。
【0236】
この発明のガイド配列は、(1) 標的遺伝子のヘテロ接合SNP;(2) 当該遺伝子の上流及び下流のヘテロ接合SNP;(3) 一般の集団、特定の民族の集団又は患者の集団におけるSNP/挿入/欠失/インデルの保有率が1%を超えるSNP;(4) グアニン-シトシン含量が30%を超え85%未満である;(5) チミン/ウラシルの繰り返しが4以上でない、又はグアニン、シトシン若しくはアデニンの繰り返しが8以上でない;(6) オフターゲット分析によるオフターゲットが存在しない;及び (7) 好ましくは、イントロンの上流又はSNPの下流ではなく上流にある標的エクソン、を標的としてもよい。
【0237】
この発明の実施の態様では、SNPは遺伝子の上流又は下流にあってもよい。この発明の実施の態様では、SNPは遺伝子の上流又は下流3000塩基対以内にある。
【0238】
変異体対立遺伝子と機能的対立遺伝子との間で異なる少なくとも1つのヌクレオチドは、目的遺伝子の上流、下流又は疾患の原因となる変異の配列内にあってもよい。変異体対立遺伝子と機能的対立遺伝子との間で異なる少なくとも1つのヌクレオチドは、目的遺伝子のエクソン内又はイントロン内にあってもよい。いくつかの態様では、変異体対立遺伝子と機能的対立遺伝子との間で異なる少なくとも1つのヌクレオチドは、目的遺伝子のエクソン内にある。いくつかの態様では、変異体対立遺伝子と機能的対立遺伝子との間で異なる少なくとも1つのヌクレオチドは、目的遺伝子のイントロン又はエクソン内にあり、イントロンとエクソンとの間のスプライス部位に近接(例.スプライス部位の上流又は下流の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド)している。
【0239】
いくつかの態様では、少なくとも1つのヌクレオチドは一塩基多型(SNP)である。いくつかの態様では、変異体対立遺伝子の各SNPのヌクレオチドバリアントを発現させてもよい。いくつかの態様では、SNPは創始者変異又は一般的な病原性変異であってもよい。
【0240】
ガイド配列は、(1) 一般の集団で保有率が高く(例.1%超);かつ、(2) ヘテロ接合性率が高い(例.1%超)SNPを標的としてもよい。ガイド配列は、グローバルに分散しているSNPを標的としてもよい。SNPは創始者変異又は一般的な病原性変異であってもよい。いくつかの態様では、一般の集団における保有率は1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%又は15%を超える。それぞれの可能性は、別の実施の態様である。いくつかの態様では、集団におけるヘテロ接合率は1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%又は15%を超える。それぞれの可能性は、別の実施の態様である。
【0241】
いくつかの態様では、変異体対立遺伝子と機能的対立遺伝子との間で異なる少なくとも1つのヌクレオチドは、疾患の原因となる、集団での保有率の高い変異に関連している/共存している。そのような態様では、「保有率が高い」とは、少なくとも92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%を指す。それぞれの可能性は、この発明の別の実施の態様である。ある態様では、変異体対立遺伝子と機能的対立遺伝子との間で異なる少なくとも1つのヌクレオチドは、疾患に関連する変異である。いくつかの態様では、SNPは集団内で非常に一般的である。そのような態様では、「非常に一般的」とは、集団の少なくとも10%、11%、12%、13%、14%、15%、20%、30%、40%、50%、60%又は70%を指す。それぞれの可能性は、この発明の別の実施の態様である。
【0242】
この発明のガイド配列は、上記基準のいずれか1つを満たしていてもよく、変異体対立遺伝子と対応する機能的対立遺伝子を区別する可能性が最も高い。
【0243】
図5は、ヒトにおけるELANE遺伝子SNP選択の異型遺伝子性を示す。
【0244】
この発明の実施の態様は、プロモーター領域を上流のSNP位置からイントロン4まで切除することを含んでいてもよい。ある態様では、第一のガイド配列は、変異体対立遺伝子の上流の領域におけるヘテロ接合SNP(戦略1a-rs10414837、戦略1b-rs3761005)の配列を標的とし、第二のガイド配列は、遺伝子の2つの対立遺伝子に共通するイントロン4の配列を標的とする(
図1)。
【0245】
この発明の実施の態様は、イントロン4から3’UTRの下流の領域まで切除することを含んでいてもよい。ある態様では、第一のガイド配列は、変異体対立遺伝子の上流の領域におけるヘテロ接合SNP(戦略2-rs1683564)の配列を標的とし、第二のガイド配列は、遺伝子の2つの対立遺伝子に共通するイントロン4の配列を標的とする。
【0246】
この発明の実施の態様は、イントロン4から3’UTRの下流の領域まで切除することを含んでいてもよい(
図4)。この戦略は、健康な対立遺伝子を無傷で残しながら、疾患の原因となる対立遺伝子(変異体対立遺伝子)を特異的にノックアウトするように設計されている。対立遺伝子に特異的な編集は、集団内の比較的高いヘテロ接合性頻度で識別可能な(ヘテロ接合)SNPを標的とするガイド配列を使用することにより行われる。
【0247】
細胞への送達
具現化された方法では、明細書に記載したRNA分子及び組成物は、適切な手段により標的の細胞又は対象に送達されてもよいことが理解される。以下の態様は、この発明のRNA分子及び組成物の送達方法の限定されない例である。
【0248】
いくつかの態様では、この発明のRNA分子の組成物は、哺乳動物細胞又は植物細胞を含む、ドミナントネガティブ対立遺伝子を含む及び/又は発現する細胞を標的としてもよい。例えば、ある態様では、RNA分子は、変異体ELANE対立遺伝子を特異的に標的とし、標的細胞は肝細胞である。
【0249】
この発明の核酸組成物、例えば、RNA分子組成物は、適切なウイルスベクター系を用いて送達してもよい。従来のウイルス及び非ウイルスベースの遺伝子導入法を使用して、核酸及び標的組織を導入することができる。特定の態様では、in vivo又はex vivoでの遺伝子治療で使用するために核酸を投与する。非ウイルスベクター送達系には、裸の核酸、及びリポソーム又はポロキサマーといった送達ビヒクルと複合体を形成した核酸が含まれる。遺伝子治療方法の総説については、Anderson (1992) Science 256:808-813;Nabel & Felgner (1993) TIBTECH 11:211-217;Mitani & Caskey (1993) TIBTECH 11:162-166;Dillon (1993) TIBTECH 11:167-175;Miller (1992) Nature 357:455-460;Van Brunt (1988) Biotechnology 6(10):1149-1154;Vigne (1995) Restorative Neurology and Neuroscience 8:35-36;Kremer & Perricaudet (1995) British Medical Bulletin 51(1):31-44;Haddada et al. (1995) in Current Topics in Microbiology and Immunology Doerfler and Bohm (eds.)及びYu et al. (1994) Gene Therapy 1:13-26を参照。
【0250】
核酸及び/若しくはタンパク質の非ウイルス送達の方法には、エレクトロポレーション、リポフェクション、マイクロインジェクション、遺伝子銃、粒子銃加速、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、脂質ナノ粒子、ポリカチオン又は脂質:核酸コンジュゲート、人工ウイルス粒子、及び薬剤で増強された核酸の取込み、が含まれ、又は、バクテリア若しくはウイルス(例.アグロバクテリウム属、根粒菌sp. NGR234、シノリゾビウム メリロティ(Sinorhizoboiummeliloti)、メソリゾビウム ロティ(Mesorhizobium loti)、タバコモザイクウイルス、ジャガイモウイルスX、カリフラワーモザイクウイルス及びキャッサバ静脈モザイクウイルス)により、植物細胞に届けられる(例えば、Chung et al. (2006) Trends Plant Sci. 11(1):1-4を参照)。例えば、Sonitron 2000 system(Rich-Mar)を用いるソノポレーションも、核酸の送達に使用できる。タンパク質及び/又は核酸のカチオン性脂質媒介送達も、in vivo又はin vitro送達方法として考えられている(Zuris et al. (2015) Nat. Biotechnol. 33(1):73-80を参照;Coelho et al. (2013) N. Engl. J. Med. 369, 819-829;Judge et al. (2006) Mol. Ther. 13, 494-505及びBasha et al. (2011) Mol. Ther. 19, 2186-2200も参照)。
【0251】
他の代表的な核酸送達系には、Amaxa Biosystems(Cologne, Germany)、Maxcyte, Inc.(Rockville, Md.)、BTX Molecular Delivery Systems(Holliston, Mass.)及びCopernicus Therapeutics Inc.が提供するものが含まれる(例えば、米国特許第6,008,336号を参照)。リポフェクチンは、例えば、米国特許第5,049,386号、第4,946,787号及び第4,897,355号に説明されており、リポフェクチンの試薬は市販(例.トランスフェクタム(登録商標)、リポフェクチン(登録商標)及びリポフェクタミン(登録商標)RNAiMAX)されている。ポリヌクレオチドの効率的な受容体認識リポフェクションに適したカチオン性脂質及び中性脂質には、Felgnerのもの、国際公開第91/17424号、国際公開第91/16024号が含まれる。送達は、細胞(ex vivo投与)又は標的組織(in vivo投与)に行うことができる。
【0252】
免疫脂質複合体などの標的化リポソームを含む脂質:核酸複合体の製造は、当業者に周知である(例えば、Crystal (1995) Science 270:404-410;Blaese et al. (1995) Cancer Gene Ther. 2:291-297;Behr et al. (1994) Bioconjugate Chem. 5:382-389;Remy et al. (1994) Bioconjugate Chem. 5:647-654;Gao et al. (1995) Gene Therapy 2:710-722;Ahmad et al. (1992) Cancer Res. 52:4817-4820;米国特許第4,186,183号、第4,217,344号、第4,235,871号、第4,261,975号、第4,485,054号、第4,501,728号、第4,774,085号、第4,837,028号及び第4,946,787号を参照)。
【0253】
追加の送達方法には、送達される核酸をEnGeneIC送達ビヒクル(EDV)内にパッケージングすることが含まれる。これらのEDVは、標的組織に特異性を有するアームとEDVに特異性を有するアームを有する二重特異性抗体により、標的組織に特異的に送達される。抗体はEDVを標的細胞の表面に運び、次いで、EDVはエンドサイトーシスによって細胞内に運ばれる。細胞に入った後、内容物が放出される(MacDiarmid et al (2009) Nature Biotechnology 27(7):643を参照)。
【0254】
核酸を送達するRNA又はDNAウイルスの使用は、ウイルスを体内の特定の細胞に標的化し、ウイルスペイロードを核に輸送する高度に進化した方法を利用する。ウイルスベクターは、患者に直接投与する(in vivo)ことも、in vitroで細胞を処理するために使用して改変細胞を患者に投与する(ex vivo)こともできる。核酸を送達するウイルスによる従来の系には、遺伝子導入のためのレトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス及び単純ヘルペスウイルスベクターが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0255】
レトロウイルスの向性は、外来エンベロープタンパク質を組み込み、標的細胞の潜在的な標的集団を拡大することによって変化させることができる。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞に形質導入又は感染でき、通常、ウイルス力価が高いレトロウイルスベクターである。レトロウイルス遺伝子導入系の選択は、標的組織に依存する。レトロウイルスベクターは、最大で6~10kbの外来配列のパッケージング能力を有するシス作用性の長い末端反復配列で構成されている。最小のシス作用性のLTRは、ベクターの複製及びパッケージングに十分で、治療用遺伝子を標的細胞に統合し、導入遺伝子を恒久的に発現するために使用される。広く使用されているレトロウイルスベクターには、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SIV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)及びそれらの組合せに基づくものが含まれる(例えば、Buchschacher et al. (1992) J. Virol. 66:2731-2739;Johann et al. (1992) J. Virol. 66:1635-1640;Sommerfelt et al. (1990) Virol. 176:58-59;Wilson et al. (1989) J. Virol. 63:2374-2378;Miller et al. (1991) J. Virol. 65:2220-2224;国際出願番号PCT/US94/05700を参照)。
【0256】
少なくとも6種のウイルスベクターが現在、臨床試験における遺伝子導入で利用でき、ヘルパー細胞株に挿入された遺伝子による欠陥のあるベクターの補完を含むアプローチを利用して、形質導入剤を生成する。
【0257】
pLASN及びMFG-Sは、臨床試験で使用されているレトロウイルスベクターの例である(Dunbar et al. (1995) Blood 85:3048-305;Kohn et al.(1995) Nat. Med. 1:1017-102;Malech et al. (1997) PNAS 94:22 12133-12138)。PA317/pLASNは、遺伝子治療の臨床試験で使用された最初の治療用ベクターであった(Blaese et al. (1995))。MFG-Sパッケージベクターでは、50%以上の形質導入効率が観察された(Ellem et al. (1997) Immunol Immunother. 44(1):10-20;Dranoff et al. (1997) Hum. Gene Ther. 1:111-2)。
【0258】
パッケージング細胞は、宿主細胞に感染できるウイルス粒子を形成するのに使用される。このような細胞には、アデノウイルス、AAV及びPsi-2細胞をパッケージ化する293細胞、又はレトロウイルスをパッケージ化するPA317細胞が含まれる。遺伝子治療で使用されるウイルスベクターは、通常、核酸ベクターをウイルス粒子にパッケージ化するプロデューサー細胞株によって生成される。ベクターは、通常、パッケージングと(該当する場合)その後の宿主への組込みに必要な最小限のウイルス配列、発現されるタンパク質をコードする発現カセットによって置き換えられる他のウイルス配列を含む。失われたウイルス機能は、パッケージング細胞株によってトランスで供給される。例えば、遺伝子治療で使用されるAAVベクターは、通常、パッケージング及びホストゲノムへの統合に必要なAAVゲノムの逆方向末端反復(ITR)配列のみを有する。ウイルスDNAは細胞株にパッケージされており、他のAAV遺伝子、すなわちrep及びcapをコードするヘルパープラスミドを含むが、ITR配列を欠く。細胞株は、アデノウイルスにもヘルパーとして感染している。ヘルパーウイルスは、AAVベクターの複製及びヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ITR配列を欠くため、ヘルパープラスミドは大量にパッケージされない。アデノウイルスによる汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVよりも感受性が高い熱処理により低減できる。さらに、AAVはバキュロウイルス系を使用して臨床利用の規模で生産できる(米国特許第7,479,554号を参照)。
【0259】
多くの遺伝子治療用途では、遺伝子治療ベクターは特定の組織に対して高度の特異性で送達されることが望ましい。したがって、ウイルスの外表面にリガンドをウイルス被覆タンパク質との融合タンパク質として発現させることにより、ウイルスベクターを改変して特定の細胞に特異性を持たせることができる。目的の細胞に存在することが知られている受容体と親和性のあるリガンドが選択される。例えば、Han et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:9747-9751は、モロニーマウス白血病ウイルスは、gp70と融合したヒトヘレグリンを発現するように改変でき、組換えウイルスがヒト上皮成長因子受容体を発現するヒト乳がん細胞に感染することを報告した。この原理は、標的細胞が受容体を発現し、ウイルスが細胞表面受容体のリガンドを含む融合タンパク質を発現する、他のウイルス-標的細胞のペアに拡張できる。例えば、繊維状ファージは、事実上選択した細胞受容体に対して特異的な結合親和性を有する抗体断片(例.FAB又はFv)を提示するように操作できる。これらの説明は主にウイルスベクターに適用されるが、同じ原理を非ウイルスベクターにも適用できる。そのようなベクターは、特定の標的細胞による取込みに有利な特定の取込み配列を含むように操作できる。
【0260】
遺伝子治療ベクターは、以下に説明するように、通常、全身投与(例.硝子体内、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下又は頭蓋内注入)又は局所適用によって、個々の患者に投与することによりin vivoで送達できる。あるいは、ベクターは、個々の患者の外植された細胞(例.リンパ球、骨髄穿刺液、組織生検)又はユニバーサルドナー造血幹細胞などの細胞にex vivoで送達でき、次いで、通常、ベクターが組み込まれた細胞を選択した後、患者に再移植される。
【0261】
診断、研究又は遺伝子治療のための(例えば、トランスフェクトされた細胞の宿主生物への再注入による)ex vivo細胞トランスフェクションは、当業者に周知である。好ましい態様では、細胞は、対象生物から単離され、核酸組成物がトランスフェクトされ、そして対象生物(例.患者)に再注入される。ex vivoトランスフェクションに適したさまざまな細胞は、当業者に周知である(例えば、Freshney et al. (1994) Culture of Animal Cells, A Manual of Basic Technique, 3rd ed 及び、患者から細胞を単離し、培養する方法の考察でそこに引用されている文献を参照)。
【0262】
そのような細胞又はそのような細胞から生成された細胞株の限定されない例には、COS、CHO(例.CHO-S、CHO-K1、CHO-DG44、CHO-DUXB11、CHO-DUKX、CHOK1SV)、VERO、MDCK、WI38、V79、B14AF28-G3、BHK、HaK、NSO、SP2/0-Ag14、HeLa、HEK293(例.HEK293-F、HEK293-H、HEK293-T)、perC6細胞、植物細胞(分化又は未分化)、ツマジロクサヨトウ(Spodoptera Frugiperda、Sf)などの昆虫細胞、又はサッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia)及びシゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces)などの真菌細胞が含まれる。特定の態様では、細胞株はCHO-K1、MDCK又はHEK293細胞株である。さらに、初代細胞を単離し、誘導ヌクレアーゼ系(例.CRISPR/Cas)による処置後に治療される対象に再導入するためにex vivoで使用してもよい。適切な初代細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)、及び、限定されるものではないが、CD4+T細胞又はCD8+T細胞といった他の血液細胞が含まれる。適切な細胞には、例えば、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞、造血幹細胞(CD34+)、神経幹細胞及び間葉系幹細胞などの幹細胞も含まれる。
【0263】
ある態様では、幹細胞は、細胞のトランスフェクション及び遺伝子治療のためにex vivoで使用される。幹細胞を使用する利点は、in vitroで他の細胞型に分化できること、又は骨髄に生着する(細胞のドナーなどの)哺乳動物に導入できることである。GM-CSF、IFNγ及びTNFαなどのサイトカインを使用して、in vitroでCD34+細胞を臨床的に重要な免疫細胞に分化させる方法が知られている(例として、Inaba et al., J. Exp. Med. 176:1693-1702 (1992)を参照)。
【0264】
幹細胞は、形質導入及び分化のために既知の方法で単離される。例えば、幹細胞は、不要な細胞(例.CD4+及びCD8+(T細胞)、CD45+(汎B細胞)、GR-1(顆粒球)、Iad(分化した抗原提示細胞))に結合する抗体で骨髄細胞をパンニングすることにより、骨髄細胞から分離される(例として、Inaba et al. (1992) J. Exp. Med. 176:1693-1702を参照)。いくつかの態様では、改変された幹細胞も使用してもよい。
【0265】
通常、細胞は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として投与される。「薬学的に許容される」というフレーズは、過度の毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症がなく、合理的なリスク/ベネフィットバランスに見合った、健全な医学的判断の範囲内でヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適した化合物、材料、組成物及び/又は製剤を指す。「薬学的に許容される担体」というフレーズは、この明細書では、液体又は固体の賦形剤、希釈剤、添加剤又は溶媒封入材料などの、薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクルを意味する。
【0266】
明細書に記載したRNA分子及び組成物は、有糸分裂後の細胞や活発に分裂していない細胞(例.停止細胞)のゲノム編集に適している。この発明のRNA分子及び組成物を使用して編集できる有糸分裂後の細胞の例には、肝細胞が含まれるが、これには限定されない。
【0267】
治療用の核酸組成物を含むベクター(例.レトロウイルス、リポソーム、他)は、in vivoで細胞に形質導入するために生物に直接投与することもできる。投与は、注射、注入、局所適用(例.点眼及びクリーム)及びエレクトロポレーションを含むがこれらには限定されない、分子を最終的に血液又は組織細胞と接触させるために通常使用される経路によって行われる。そのような核酸を投与する適切な方法は、利用可能で当業者に周知であり、そして、複数の経路によって特定の組成物を投与できるが、特定の経路は、しばしば、別の経路よりも迅速で効果的な反応を提供できる。いくつかの態様に応じ、組成物は静脈注射により送達される。
【0268】
免疫細胞(例.T細胞)への遺伝子の導入に適したベクターには、非組込みレンチウイルスベクターが含まれる。例えば、米国特許出願公開第2009/0117617号を参照。
【0269】
薬学的に許容される担体は、一部は、投与される特定の組成物、及び組成物を投与するために使用する方法によって決まる。したがって、以下で説明するように、利用できる医薬組成物のさまざまな適切な製剤がある(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., 1989を参照)。
【0270】
いくつかの態様に従い、目的の遺伝子の変異体対立遺伝子と機能的対立遺伝子で異なる少なくとも1つのヌクレオチド(例.SNP)を含む配列(すなわち、機能的対立遺伝子には存在しない変異体対立遺伝子の配列)に、結合/会合する、及び/又はRNA誘導型DNAヌクレアーゼを前記配列に向けるRNA分子が提供される。配列は疾患に関連する変異の内部に存在してもよい。配列は疾患に関連する変異の上流又は下流に存在してもよい。変異体対立遺伝子と機能的対立遺伝子との間の配列の相違は、この発明のRNAの標的となり、変異体対立遺伝子を不活性化するか、機能的対立遺伝子の活性を維持しながら、その優勢な疾患の原因となる効果を無効にしてもよい。
【0271】
開示された組成物及び方法は、患者の顕性遺伝性障害を治療する医薬の製造に使用してもよい。
【0272】
明細書に開示された態様の作用機序
SCN又はCyNにつながることが実証されたELANE遺伝子の変異は、短縮型N末端タンパク質を生成する代替のインフレームORF(オープンリーディングフレーム)を翻訳し、ER及びタンパク質の誤った折り畳みストレスを引き起こす。
【0273】
理論やメカニズムに拘束されるものではないが、この発明は、変異した病的対立遺伝子の発現の防止、変異した病的対立遺伝子からの短縮型の非病的ペプチドの生成、又は、SCN若しくはCyNの予防、軽減若しくは治療のための変異した病的ELANE対立遺伝子の修復/修正など、機能的ELANE対立遺伝子ではなく変異した病的ELANE対立遺伝子の処理にCRISPRヌクレアーゼを適用するために利用してもよい。
【0274】
ORFの上流及び下流に位置するSNPを利用する別の編集戦略を適用してもよい。戦略には、遺伝子全体の排除、遺伝子のC末端を除外する遺伝子の短縮化、及び遺伝子の発現の減弱が含まれる。
【0275】
いくつかの態様では、2つのガイド配列(例.表1に示したガイド配列)を利用して、遺伝子全体(すなわち、エクソン1、2、3、4及び5)を除去して、変異タンパク質をノックアウトしてもよい。いくつかの態様では、第一のガイドRNAは、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子のORFの上流に位置するSNP/WT配列を標的として、対立遺伝子特異的DSBを引き起こすために利用され、かつ、第二のガイドRNAは、エクソン5若しくはELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の下流に位置するSNP/WT配列で、イントロン4、3’UTR若しくはELANE遺伝子の対立遺伝子の下流に位置する配列で、又は、イントロン4、3’UTR若しくはELANE遺伝子の対立遺伝子の下流に位置するSNP/WT配列で、DSBを引き起こすために、利用されてもよい。
【0276】
エクソン3で翻訳が終止する終止コドンが生じるフレームシフト変異を有する健康な個人がいる。したがって、見込みのある戦略は、多くてもエクソン1から3を含むように、変異した対立遺伝子を短縮することであってもよい。いくつかの態様では、2つのガイド配列(例.表1に示したガイド配列)を利用して、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子のC末端を切除してもよい。いくつかの態様では、第一のガイドRNAは、エクソン5若しくは変異体対立遺伝子の下流のSNP/WT配列を標的として、対立遺伝子特異的DSBを引き起こすために利用されてもよく、かつ、第二のガイドRNAは、ELANE遺伝子のイントロン1、2若しくは3に位置する配列、又はSNP/WT配列でDSBを引き起こすために利用されてもよい。短縮された変異体対立遺伝子によってコードされるペプチド/タンパク質は、病的な効果を示さない可能性がある。あるいは、ナンセンスコドン介在的mRNA分解が誘発され、変異体対立遺伝子の発現がノックアウトされてもよい。結果は、mRNA及びタンパク質の発現を調べることで確認できる。
【0277】
いくつかの態様では、ORFの上流に位置するSNPを利用して、近位のプロモーター及びエンハンサー領域から要素を切除することにより、変異体対立遺伝子の発現を弱めてもよい。例えば、SNPを標的としてエンハンサー領域の大部分を切除することによって、大幅な減少を達成してもよい。
【0278】
ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子を特異的に標的とするRNAガイド配列の例
多数のガイド配列が変異体対立遺伝子を標的とするように設計が可能であるが、この明細書に記載した方法を効果的に実施し、対立遺伝子を効果的に区別するために、配列番号1~3751で特定された以下の表1に示すヌクレオチド配列を具体的に選択した。
【0279】
表1は、上述した態様で記載したように使用するために、変異体ELANE対立遺伝子の配列内のさまざまなSNPと結合するように設計されたガイド配列を示す。各操作されたガイド分子は、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)、例えば、配列NGG又はNAG(Nは任意の核酸塩基)に一致するPAMの隣にある標的ゲノムDNA配列と結合するように更に設計されている。SpCas9WT(PAM配列:NGG)、SpCas9.VQR.1(PAM配列:NGAN)、SpCas9.VQR.2(PAM配列:NGNG)、SpCas9.EQR(PAM配列:NGAG)、SpCas9.VRER(PAM配列:NGCG)、SaCas9WT(PAM配列:NNGRRT)、NmCas9WT(PAM配列:NNNNGATT)、Cpf1(PAM配列:TTTV)又はJeCas9WT(PAM配列:NNNVRYM)を含むがこれらには限定されない1つ以上のCRISPRヌクレアーゼと組み合わせて作動するように設計されている。この発明のRNA分子は、それぞれ1つ以上の異なるCRISPRヌクレアーゼと組み合わせて複合体を形成するように設計され、利用するCRISPRヌクレアーゼそれぞれに対応する1つ以上の異なるPAM配列を利用して、ポリヌクレオチド配列を標的とするように設計される。
【0280】
【0281】
【0282】
【0283】
【0284】
上述した態様について、この明細書で開示した各態様は、他の開示した各態様に適用可能であると考えられる。例えば、この発明のRNA分子又は組成物は、この発明のいずれかの方法で利用可能であることが理解される。
【0285】
この明細書では、全ての見出しは単に整理のためのものであって、開示を限定することを意図するものではない。個々のセクションの内容は、全てのセクションに等しく適用される場合がある。
【0286】
この発明の完全な理解を容易にするために、以下に実施例を示す。以下の実施例は、この発明を実施する代表的なモードを示す。しかし、この発明の範囲は、これらの実施例に開示された特定の態様に限定されず、例示のみを目的としている。
【0287】
さらに、以下の実施例は、SpCas9と前記SpCas9の標的を開示されたSNP位置とするのに適したガイド配列を利用する方法を開示する。実施例は、開示された戦略のフィージビリティを示す。当業者は、同じガイド配列を別のCRISPRヌクレアーゼと共に使用して、開示されたSNPを標的にして、各戦略を適用できることを理解する。さらに、他のCRISPRヌクレアーゼの標的を同じSNPとする別のガイド配列を他のヌクレアーゼと一緒に使用して、各戦略を適用できる。
【実施例】
【0288】
実施例1 SpCas9と組み合わせて作動し、SNPを標的とするのに適したガイド配列及び開示した戦略に準拠する配列のスクリーニング
HeLa細胞を96穴プレート(3K/ウェル)に播種した。24時間後、Turbofect試薬(Thermo Scientific)を使用して、65ngのWT-Cas9又はDead-Cas9と、20ngのg36からg66として特定したgRNAプラスミドを細胞に導入し、ELANE遺伝子のさまざまな領域及びSNPを標的とした。12時間後、新鮮な培地を添加し、導入の72時間後にゲノムDNAを抽出し、Cas9が標的とすると予想される領域を増幅した。産物のサイズは、DNAラダー標準を用い、キャピラリー電気泳動によって分析した。バンドの強度は、Peak Scannerソフトウェアv1.0を使用して分析した。編集の割合(%)は、以下の式で計算した:
100%-(編集されていないバンドの強度/全バンドの強度)×100
図6は、3回の実験における、Dead-Cas9バックグラウンド活性を引いた後の各gRNAの平均活性±SDを表す。
【0289】
【0290】
実施例2 切除戦略のフィージビリティの実証
SpCas9-WT及びRNAのペア(sg35(INT4)と、戦略1aではg39(rs10414837)、戦略1bではg58(rs3761005)、戦略2ではg62(rs1683564))をHeLa細胞に移入した。トランスフェクションの72時間後にgDNAを抽出し、液滴デジタルPCR(ddPCR)キット(10042958及び10031228、Bio-Rad Laboratories)を使用して、エクソン1(戦略1)又はエクソン5(戦略2)のコピー数の減少を測定することにより、切除効率を評価した。さらに、エクソン1を戦略2の切除率の正規化に使用し、エクソン5を戦略1の切除率の正規化に使用した。表3に示した結果は、2回の実験の平均切除%±SD(標準偏差)を表す。
【0291】
【0292】
実施例3 さまざまなsgRNAで編集した対立遺伝子識別の評価
リボヌクレオプロテイン複合体(RNP)は、製造元の指示に従って、リファレンス配列を標的とするgRNAと、Integrated DNA Technology(IDT)で購入したWT-Cas9(#1081058)又はHiFi Cas9(#1081060)から構築した。次いで、4D-Nucleofecor(登録商標)系(Lonza)を使用して、RNPをSNPを含むiPSCにヌクレオフェクトした。72時間後、gDNAを抽出し、SNP領域を増幅し、NGS分析を行った。リファレンス対立遺伝子及びオルタナティブ対立遺伝子で検出された編集率(%)に従い、対立遺伝子の識別を評価した。Cas-Analyzerソフトウェアを使用して、各部位のインデル頻度を計算した。結果を表4にまとめる。
【0293】
【0294】
実施例4 HSCにおける編集効率
SpCas9-WTのRNA成分と、EMX1(sgEMX1)又はELANE(g35:INT4;g58:rs3761005;g62:rs1683564)のいずれかを標的とするgRNAを、健康なドナーのHSCにヌクレオフェクトした。ヌクレオフェクションの72時間後にgDNAを抽出し、アンプリコン分析によるインデル検出(IDAA)で編集量を分析した。
図7は、2回の実験における平均編集率(%)±SDを表す。
【0295】
実施例5 機能成熟アッセイ
編集された細胞における表現型のレスキューを証明するために、患者の人工多能性細胞(iPSC)から始める成熟アッセイが、再プログラムされた体細胞から準備される。細胞は、患者の細胞の再生可能な供給源であり、疾患の表現型を正確に複製する。簡単に説明すると、リプログラミング遺伝子Oct4、Sox2、Nanog、Lin28、L-Myc、Klf4及びSV40LTを発現するエピソームを患者のPBMCに移入する。市販のキット(STEMdiff(登録商標)Hematopoietic Kit, STEMCELL Technologies)を使用して、患者のiPSC及び同じSNP遺伝子型を有する正常なiPSCを造血前駆細胞に分化させる。分化の12日後、細胞における前駆細胞マーカーCD34及びCD45の発現をフローサイトメトリーで分析することによって効率を推定する。正常な前駆細胞及び分化したSCN前駆細胞を遺伝子編集し、幹細胞因子(SCF)、IL-3及び好中球への分化を促進するGM-CSFを含む馴化培地で5日間増殖させる。編集されたSCN細胞は好中球に分化するが、編集されていないSCN由来の細胞は初期の分化段階で停止する。フローサイトメトリーで好中球表面マーカー(例.CD16、CD66b及び汎骨髄性マーカーCD33のアップレギュレーション)を検出することによって、好中球への分化の効率を測定する。
【0296】
実施例6 免疫不全マウスによるin vivoでの予備的な用量の探索及び生体内分布の実験
投与スケジュール、用量及び投与経路を調べ、G-CSF投与後の免疫不全NSGマウスにおける自己複製及び多系統能力を有するHSCの存在と数を決定する。再増殖アッセイを行い、機能的な免疫系を再生し、長期の生着を確立できるHSCの存在と数を決定する。このような検証には、ヒトの生着と造血の再増殖を大いにサポートするNSG系統を使用する。NSGマウスはNOD SCIDマウスで、成熟T細胞、B細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞を欠き、いくつかのサイトカインのシグナル伝達経路が不十分で、自然免疫に多くの欠陥がある。一次移植の16週間後に移植を評価する(移植後12週後の分析)。
【0297】
NSGマウスによる16週間の予備的な生体内分布の実験では、用量と最大期間を調査し、いくつかの細胞用量で行われる。この実験は3つの用量で行い、編集されていないSCN細胞が投与されたマウスも含む。予備的実験の期間は16週間であるが、2つの高用量群のうちの1つは最大で6月継続する。予備的実験ではマウスは6月間生存し、重要な生体内分布実験の期間は6箇月である。実験中、qPCR及び免疫組織化学による発現の持続も調べる。
【0298】
実施例7 免疫不全マウスによる重要な生体内分布実験
重要な生体内分布の実験はNSGマウスを利用し、実施例6の予備的な用量の探索に従う。この実験は、Good Laboratory Practice(GLP)に準拠して行われ、重要な非臨床薬物動態、薬力学及び毒物学の実験である。毒性の評価は、HSC注入後の、死亡率、臨床観察、体重、臓器重量、臨床病理及び病理解剖に基づく。
【0299】
遺伝子編集されたCD34+細胞のNSGマウスへの移植は、内因性の骨髄を枯渇し、ドナー細胞の生着を可能にするための移植前処置が必要である。したがって、臨床状況を模倣するために、ブスルファンによる前処置が採用される。一群当たり10匹のオスとメスのマウスからなる3つの群(遺伝子編集された細胞、編集されていない細胞及びブスルファンのみの対照)を用いる。
【0300】
NSGモデルマウスはヒトの好中球が枯渇した状況と完全には類似していないものの、ex vivoで遺伝子編集された細胞のin vivo注入の前に、マウスはブスルファンで処置されて骨髄の機能が消耗されているので、遺伝子編集したCD34+細胞の生体内分布の実験で使用するモデルの有効性には影響しない。好中球枯渇マウス系統、Lyz2Cre/CreMcl-1flox/flox(Mcl-1ΔMyelo)における骨髄細胞白血病1(Mcl-1)抗アポトーシスタンパク質は、Mcl-1の骨髄特異的欠失が非常に重度の好中球減少症を引き起こすことを示す(Csepregi et al. 2018)。Mcl-1ΔMyeloマウスは繁殖が可能で、特定の病原体が除かれた条件と従来の飼育条件の両者の生存率は正常に近い。しかし、NSGマウスとは対照的に、Mcl-1ΔMyeloモデルマウスの経験は限られている。
【0301】
実施例8 編集の分析
高いオンターゲット活性を有する配列番号1~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続するヌクレオチドを含むガイド配列をスクリーニングする。DNAキャピラリー電気泳動分析によってオンターゲット活性を決定する。
【0302】
配列番号1~3751のいずれか一つに示されるヌクレオチド配列を含む21~30の連続するヌクレオチドを含むガイド配列が、ELANE遺伝子の修正に適していることが、DNAキャピラリー電気泳動分析によって判明している。
【0303】
実施例9 ELANE遺伝子の対立遺伝子特異的ノックアウトの有効性
ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子の特異的ノックアウトは、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子のイントロン4及びエクソン5の切除により行われる。これは、
図8で説明するように、イントロン4でDSBを行い、対立遺伝子に特異的なDSBを行うためにSNPrs1683564を利用することによって達成される。この戦略により、HSCが成熟した機能的な好中球に効果的に分化できることを実証するために、健康なドナーに、イントロン4のそれぞれのSNP(表1を参照)を標的とするg35及びg62を含むRNPを有するHSC(Lonza)でヌクレオフェクトする。陽性対照として編集していない細胞を使用する。ヌクレオフェクションの48時間後、公開されている手順(Zhenwang Jie, et al. Plos One 2017)に従って、HSCを好中球に分化させる。編集した細胞と編集していない細胞の分化効率は、好中球特異的マーカーCD66b及びCD177で染色後、FACSで測定する。
HSC由来の好中球の機能を評価するために、以下の分析を行う:
1.食作用は、EZCell(登録商標)Phagocytosis Assay Kit(BioVision)で分析する。このキットは、フローサイトメトリーによるin vitroでの食作用の迅速かつ正確な検出及び定量化のために、事前に標識されたザイモサン粒子を利用する。
2.殺傷アッセイは、HSC由来の好中球を大腸菌とインキュベートし、細菌を寒天プレートに播種してコロニーを形成させることによって行う。対照として、未処理の細菌又は分化していないHSCとインキュベートした細菌を使用する。殺傷効率を以下の式:
(好中球のコロニー数/対照のコロニー数)×100
で計算する。
3.走化性は、EZCell(登録商標)Cell Migration/Chemotaxis Assay Kit(Biovision)で分析する。
【0304】
実施例10 治療対象の選択
工程1:エクソンのシーケンシングにより、SCN又はCyNと診断された4人の患者A~Dをスクリーニングし、ELANE遺伝子中のELANE病原性変異を特定する。
工程2:変異が特定された対象をサンガーシーケンシングによってスクリーニングし、rs1683564、rs10414837及びrs3761005の少なくとも1つのヘテロ接合性を確認する。
工程3:rs1683564、rs10414837及びrs3761005の少なくとも1つがヘテロ接合であると判断された各対象について、BAC bioにより、ELANE遺伝子の変異体対立遺伝子上のヘテロ接合SNPのヌクレオチドを決定する。
工程4:表5に示した適切なガイド配列を選択する。選択されたガイド配列の長さを、ヘテロ接合SNPを標的とするために使用するヌクレアーゼに基づいて決定する。例えば、SpCas9は、ガイド配列が20ヌクレオチドのRNA分子と組み合わせて使用される。別の例では、OMNI-50ヌクレアーゼは、ガイド配列が22ヌクレオチドのRNA分子と組み合わせて使用される。
【0305】
【0306】
工程5:選択したガイド配列をそれぞれの対象から得たHSCに導入し、次世代シーケンシングによってHSCにおける病原性ELANE遺伝子変異の減少を確かめる。患者A~Dの方法論を以下に示す:
1.工程1の方法で患者Aをスクリーニングし、患者の表現型及び臨床状態と一致する、ELANE遺伝子に既知の病原性変異があることが判明する。工程2の方法で患者AのSNPの近傍をスクリーニングし、3つのSNP(rs10414837、rs1683564及びrs3761005)の全てについてホモ接合であることが判明する。患者Aは治療の条件を満たさないと判断される。
2.既知の病原性ELANE変異について患者Bを確かめる。工程2の方法で患者Bをスクリーニングし、SNPrs1683564及びrs10414837についてホモ接合であることがわる。患者Bは、プロモーター領域のrs3761005についてヘテロ接合であることがわかる。患者Bは治療に適格であると判断される。工程3の方法で、病原性ELANE変異と同じ対立遺伝子(連鎖決定)に存在するSNPのヌクレオチドが決定される。患者Bは、ELANE病原性変異と同じ対立遺伝子上のSNPrs3761005がリファレンス塩基であることがわかる。g58refは、このSNPに完全に相補的で、イントロン4の非コード領域に向けられたg35と組み合わせて選択される。工程4によれば、選択されたガイド組成物は、一組のガイドg58ref及びg35を含む。患者HSCのNGSによる工程5の方法で、選択したガイドの組合せを使用した変異体対立遺伝子の切除の成功を確かめる。
3.患者Cは、幼児期から重度の好中球減少症である。工程Aのスクリーニングでは、ELANE遺伝子に病原性の変異は見られない。患者Cは治療の条件を満たさないと判断される。
4.患者Dは、ELANE遺伝子に既知の病原性変異を有することが確かめられ、工程2によるSNPの遺伝子型判定で、3つのSNPのうち2つでヘテロ接合--rs10414837とrs1683564の両者がヘテロ接合で、rs3761005はホモ接合--であることがわかる。遺伝子操作に使用することが可能な2つのSNPから選択される。選択するために、工程3を行い、SNPと病原性変異の関係を決定、つまり、SNPのどのヌクレオチド(リファレンス又はオルタナティブ)がELANE病原性変異と同じ対立遺伝子に存在するかを決定する(SNPプレゼンテーション)。患者Dのrs10414837はリファレンスと判断され、sg39refは使用に適していると判断される。SNPrs1683564を参照することで、オルタナティブがELANE病原性変異に関連することがわかり、sg62altが使用に適したガイド配列であると判断される。これらの各ガイド配列を、g35と組み合わせて使用する。工程4により、二組のガイド配列:sg39ref+g35及びg62alt+g35を特定する。どちらのガイド配列の組合せが好ましいかを判断するために、編集特性のデータベース並びに各ガイド配列及び一組のガイド配列の編集プロパティと特性を、オフターゲット及び編集効率を決定するために評価する。データベース評価に基づいて一組のガイド配列を選択し、HSCのNGSによる工程5を行う。
【0307】
実施例11 21及び22ヌクレオチドのガイド配列で活性が改善されたヌクレアーゼ
CRISPRリピート(crRNA)、トランス活性型crRNA(tracrRNA)、ヌクレアーゼ及びPAM配列を、環境試料の配列のさまざまなメタゲノムデータベースから予測した。CRISPRリピート、tracRNA配列及びヌクレアーゼ配列が予測された細菌の種/株のリストを表6に示す。
【0308】
【0309】
OMNIヌクレアーゼの構築
同定された潜在的なOMNI候補のオープンリーディングフレームを、大腸菌及びヒト細胞株での発現のためにコドン最適化した。大腸菌に最適化したORFを、細菌プラスミドpb-NNCにクローニングし、ヒトに最適化したものはpmOMNIプラスミドにクローニングした(表7)。
【0310】
【0311】
最適化されたDNA配列によってコードされるOMNIヌクレアーゼの哺乳類細胞における発現
最初に、OMNI-50タンパク質をコードする最適化されたDNA配列の哺乳類細胞における発現を検証した。そのために、Jet-optimus(登録商標)トランスフェクション試薬(ポリプラストランスフェクション)を使用して、P2AペプチドによってmCherryに結合させたHAタグ付きOMNIヌクレアーゼ又は化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9(SpCas9)をコードする発現ベクター(pmOMNI、表7)をHeLa細胞に導入した。P2Aペプチドは、細胞内で組換えタンパク質の切断を誘導できる自己切断ペプチドであり、OMNIヌクレアーゼとmCherryは発現時に分かれ、mCherryは発現ベクターからのOMNIの転写効率の指標として機能する。フローサイトメトリーにより、活性アッセイにおけるOMNI-50の転写量を決定した。
【0312】
内因性のゲノム標的対するヒト細胞の活性
OMNI-50の、ヒト細胞の特定のゲノム位置での編集を促進する能力についても分析した。そのため、OMNI-50を、ヒトゲノムの特定の位置を標的とするように設計されたsgRNAと共にHeLa細胞にトランスフェクトした(pmGuide、表7)。72時間後、細胞を回収し、その半分を、マーカーとしてmCherry蛍光を用いたFACSによるトランスフェクション効率の定量化に使用した。残りの細胞を溶解し、ゲノムDNAの対応する推定ゲノム標的をPCRで増幅した。アンプリコンをNGSにかけ、得られた配列を使用して、各標的部位における編集の割合を計算した。切断部位の周囲の短い挿入又は欠失(インデル)は、ヌクレアーゼによって誘発されたDNA切断後のDNA末端の修復の代表的な結果である。したがって、編集の割合を、各アンプリコン内の配列を含むインデルの割合から推定した。全ての編集の値を、各実験で得たトランスフェクション及び翻訳効率に対して正規化し、mCherry発現細胞の割合から推定した。正規化された値は、ヌクレアーゼを発現した細胞集団内の効果的な編集量を表す。それぞれが異なるゲノム位置を標的とするように設計された11のユニークなsgRNAのパネルを用いて、OMNI-50のゲノム活性を評価した。これらの実験の結果を表8にまとめる。表から理解できるように、OMNI-50は、試験を行った全ての標的部位で、陰性対照と比較して、著しく高い編集量を示す。
【0313】
【0314】
【0315】
ヒト細胞における固有忠実度
ヌクレアーゼの固有忠実度は、その切断特異性の尺度である。高忠実度ヌクレアーゼは、意図していない標的(オフターゲット)の切断を最小限とするか、行わずに、意図された標的(オンターゲット)の切断を促進するヌクレアーゼである。CRISPRヌクレアーゼでは、ガイドRNAのスペーサーに対する配列の相補性に基づいて標的を取得する。オフターゲティングは、意図しない標的とスペーサーの配列の類似性に起因する。ヒト細胞のゲノムレベルでのOMNIの固有忠実度を、オンターゲット領域及び事前に検証済みのオフターゲット領域の両者について、PCR増幅、NGS及びインデル分析に続いて、説明した活性アッセイを行うことにより測定した。OMNI-50の固有忠実度の実測値を
図9に示す。ここでは、個別に2つのガイドRNAを使用してOMNI-50の忠実度を測定し、いずれの場合も、参照としてSpCas9の実測値も示す。第一の部位を、chr19のELANE遺伝子の上流をオンターゲットとし、chr15をオフターゲットとしたELANE g35 gRNA(表8)を使用して標的とした。
図9が示すように、OMNI-50によるオン/オフターゲット編集効率の比は41:0で、SpCas9のオン/オフ比は6.8:1である(それぞれ、40.9%/0%;18.6%/2.7%)。第二の部位を、ELANE g62 gRNA(表8)で標的とした。このgRNAスペーサー配列は、chr19のELANE遺伝子をオンターゲットとし、chr1をオフターゲットとする。この場合、OMNI-50によるオン/オフ比は72:1で、SpCas9では1.7:1の比であった(それぞれ、38.9%/0.6%;43.1%/25.8%)。これらの結果は、OMNI-50がヒトの細胞環境でSpCas9と比較して有意に高い固有忠実度を有することを示す。
【0316】
タンパク質の精製
OMNI-50のオープンリーディングフレームを細菌発現プラスミド(T7-NLS-OMNI-NLS-HA-His-tag、pET9a、表7)にクローニングし、C43細胞(Lucigen)で発現させた。細胞をTB(Terrific Broth)中で対数期中期まで増殖し、温度を18℃に下げた。0.6ODに1mMのIPTGを使用して16~20時間発現を誘導し、細胞を採取して-80℃で凍結した。ペースト状の細胞をEDTAフリーの完全プロテアーゼ阻害剤カクテルセットIII(Calbiochem)を加えた溶解緩衝液(50mMのNaH2PO4、300mMのNaCl、10mMのイミダゾール pH8.0、1mMのTCEP)に再懸濁した。超音波処理により細胞を溶解し、透明な溶解物をNi-NTA樹脂と共にインキュベートした。樹脂を自然落下式カラムに充填し、洗浄緩衝液(50mMのNaH2PO4、300mMのNaCl、50mMのイミダゾール pH8.0、1mMのTCEP)で洗浄し、OMNIタンパク質を100~500mMのイミダゾールを添加した洗浄バッファーで溶出した。OMNIタンパク質を含む画分を集めて濃縮し、セントリコン(Amicon Ultra 15ml 100K、Merck)にロードし、緩衝液をGF緩衝液(50mMのトリス塩酸 pH7.5、500mMのNaCl、10%グリセリン、0.4Mのアルギニン)に交換した。濃縮したOMNIタンパク質を、SEC(HiLoad 16/600 Superdex 200 pgを備えたAKTA Pure(GE Healthcare Life Sciences)で、50mMのトリス塩酸 pH 7.5、500mMのNaCl、10%グリセリン、0.4Mのアルギニンを使用)によって更に精製した。OMNIタンパク質を含む画分を集め、濃縮し、最終保存緩衝液(10mMのトリス塩酸 pH7.5、150mMのNaCl、10%グリセリン及び1mMのTCEP)と共にセントリコン(Amicon Ultra 15ml 100K、Merck)にロードした。精製したOMNIタンパク質を10mg/mlに濃縮し、液体窒素で急速凍結し、-80℃で保存した。
【0317】
RNP活性アッセイによるガイド配列の最適化
OMNI-50の合成sgRNAを、3’及び5’末端に3つの2'-O-メチル3'-ホスホロチオエート(Agilent)を使用して合成した。さまざまなスペーサー長(17~23ヌクレオチド)のガイド35を有するOMNI-50 RNPの活性アッセイ(表9、
図10A)。簡単に説明すると、4pmolのOMNI-50ヌクレアーゼと6pmolの合成ガイド配列を混合した。室温で10分間インキュベートした後、RNP複合体と100ngのオンターゲットのテンプレートを反応させた。スペーサー長が22塩基より大きいもののみが、オンターゲットテンプレートのほぼ完全な切断を示す。さらに、スペーサー長が20~23ヌクレオチドの量を減らしたRNP(4、2、1.2、0.6及び0.2pmol)を100ngのDNA標的テンプレートと反応させた(
図10B)。スペーサー長が22ヌクレオチドのものは、RNPが低濃度であっても優れた切断活性を示す。
【0318】
【0319】
【0320】
【0321】
スペーサー長の最適化を、細胞株でも行った。100μMのヌクレアーゼと120μMのさまざまなスペーサー長(17~23nt、表4)の合成ガイド配列及び100μMのCas9エレクトロポレーションエンハンサー(IDT)と混合することにより、RNPを構築した。室温で10分間インキュベートした後、RNP複合体を200,000個の事前に洗浄したU2OS細胞と混合し、Lonza SE Cell Line 4D-Nucleofector(登録商標)XキットとDN100プログラムを使用し、取扱説明書に従ってエレクトロポレーションした。72時間後に細胞を溶解し、ゲノムDNAの対応する推定ゲノム標的をPCRで増幅した。アンプリコンをNGSにかけ、得られた配列を使用して編集の割合を計算した。
図10Cが示すように、スペーサー長が17~19塩基では編集率は低く、スペーサー長が20塩基では編集率は中程度で、スペーサー長が21~23塩基は編集率が最高である。
【0322】
同じ細胞株を使用して、トレーサーRNA修飾のさまざまなバージョンも試験した(表9)。sgRNAのさまざまなバージョンは、スペーサー長が20塩基で試験を行った。
図10Dが示すように、sgRNAのV1、V2又はV3を使用したRNP構築物の編集率は同程度である。一方、sgRNAのV4を使用したRNP構築物の編集率は大幅に高い。
【0323】
編集効率におけるOMNI-50のガイド配列長の影響もiPS細胞で試験した。さまざまなスペーサー長(17~23nt、表4)のガイド配列を有するOMNI-50 RNP複合体を細胞にヌクレオフェクトした。ヌクレオフェクションの72時間後に細胞を回収し、gDNAを、標的遺伝子内の内因性ゲノム領域を増幅するsg35オンターゲットプライマーを使用する、部位特異的ゲノムDNA増幅とキャピラリーゲル電気泳動分析に使用した。キャピラリーゲル電気泳動のデータは、全編集率の決定に使用した。
図11が示すように、スペーサー長が19ヌクレオチドでは編集率はバックグラウンド(NT)と同様であり、スペーサー長が20ヌクレオチドでは編集率は中程度で、スペーサー長が21~23ヌクレオチドは編集率が最も著しく、上述したin vitroのU2OSを用いた実験と一致する。
【0324】
実施例12 ELANE編集組成物の検証
上述したように、ELANE遺伝子の変異は、主として常染色体顕性障害である重症先天性好中球減少症(SCN)の原因である。以下に、ELANE変異体対立遺伝子を差次的にノックアウトすることによる治療の例を示す。これは、ELANE遺伝子の3’UTRの下流に位置するヘテロ接合のSNPrs1683564を標的とし、エクソン5と3’UTRの切除につながるイントロン4の2つの対立遺伝子の切断し、ELANE変異体対立遺伝子の転写産物を不安定にすることによって達成される(
図15)。
【0325】
患者由来のCD34
+造血幹細胞(HSC)の治療としてのELANE編集組成物を検証するために、分化の手順を確立した。この手順は、健康なボランティアのHSCと好中球にELANE遺伝子変異を有する患者のHSCをin vitroで分化させることによって、好中球減少症の患者で観察される内因性の欠陥を再現する(
図16A)。好中球分化能の障害は、G221終止(G221ter)又はS126LのELANE遺伝子変異を有する治療を行っていない患者のHSCで明らかになり、SCN患者の造血障害と一致して、健康なドナーと比較して、CD14
+単球が4倍増加し、CD66b
+好中球が半分に減少した(
図16B;
図17A左のパネル)。
【0326】
治療用組成物が好中球の分化と成熟の欠陥をレスキューするかどうかを理解するために、G221ter変異を有し、rs1683564でホモ接合の患者のHSCを編集して、ELANE遺伝子の下流領域を切除した。OMNI-50ヌクレアーゼ及びsgRNA-564DS-ref(sg62-REF)+sgRNAコンスタント(sg35)で構築されたRNPを用いて行い、2つの対立遺伝子がノックアウトした。次いで、編集した細胞を好中球に分化させた。切除されたHSCは分化の欠陥がレスキューされ、CD14
+CD66b
+細胞が100%増加し、単球が健康なドナーの正常レベルにまで減少した。分化の5日目及び14日目における切除効率は、健康なドナーが両者の時点において40%で一定であったのとは対照的に、患者では、30%から45%に変化し、50%増加した。これは、修正された細胞にとって好ましい治療上の利点を示唆する(
図16B~D)。
【0327】
次に、治療用組成物について、OMNI-50、rs1683564リファレンスを標的とするsgRNA-564DS-ref又はオルタナティブ配列を標的とするsgRNA-564DS-altで構築されたRNPを、イントロン4を標的とするsgRNAコンスタントと共に用いて、S126L変異を有する患者のHSC及び正常なHSCであって、両者ともrs1683564でヘテロ接合であるHSCで試験した。S126L変異に関連するrs1683564リファレンスを標的とするELANEの単一対立遺伝子をノックアウトする組成物は、ELANE変異体対立遺伝子の欠失をもたらし、観察された分化異常を大幅にレスキューし、CD14
+CD66b
+細胞の100%の増加と単球を正常に減少させることにつながる。特に、rs1683564オルタナティブを標的とするELANEの単一対立遺伝子をノックアウトする組成物は、野生型のELANE対立遺伝子の欠失をもたらし、CD14
+CD66b
+細胞の50%の増加と、単球の50%の減少という中間のレスキュー表現型を示した(
図17A及び17B)。分化の4日目と14日目における切除の割合は、オルタナティブ対立遺伝子よりもリファレンス対立遺伝子で高く、切除効率は、それぞれ、約25%、約40%であった(
図17C)。
【0328】
オルタナティブガイド配列とリファレンスガイド配列の切除効率の不一致を更に理解するために、各ガイド配列の対立遺伝子特異性を試験した。sgRNA-564DS-altは高度な特異性を示したのに対して、sgRNA-564DS-refは、主にリファレンス対立遺伝子の編集とある程度のオルタナティブ対立遺伝子の編集によって表される異なる編集を示した。これは、rs1683564を標的とする2つのガイド配列間の高度な切除効率を説明する(
図17D)。
【0329】
ELANE遺伝子のmRNAの量に対する切除の影響を評価するために、分化した細胞から全RNAを抽出し、切除されなかった領域に対応するプライマーを使用してqRT-PCRによりELANE遺伝子のmRNAの量を測定した。正常細胞及び患者細胞におけるリファレンス切除組成物及びオルタナティブ切除組成物によるRNAの不安定化のため、ELANE遺伝子のmRNAが、未処置の細胞と比較して、50%以上の減少した(
図17E)。加えて、編集された対立遺伝子の減少をNGSで決定した。sgRNA-564DS-refを使用して切除を行った場合、変異体ELANE対立遺伝子のcDNAの読み取りが減少し、sgRNA-564DS-altを使用した場合、野生型ELANE対立遺伝子のcDNAの読み取りが減少した。この結果は、両者の切除が異なる方法でELANE遺伝子の発現を減少することを強調する(
図17F)。
【0330】
【0331】
これらの結果は、切除によるレスキューは、患者由来のHSC中の好中球の分化に影響することを示し、これらの組成物は強力なSCN治療薬として機能することを実証する。
【0332】
実施例13 ELANE遺伝子に関連するSCNの治療に関するsgRNAを用いたOMNI-50のオフターゲットの分析
OMNI-50のオフターゲット活性を明らかにするために、GUIDE-Seq法を用いた。これは、CRISPR/Cas9及び生細胞内の他のRNAがガイドするヌクレアーゼ(RGN)によって引き起こされるDNAのオフターゲットゲノム編集のin vitroでの偏りのない検出を可能にする分子生物学技術である。ヒトの生細胞のゲノムのRNAがガイドするヌクレアーゼ(RGN)である平滑末端CRISPRが誘導するDSBは、NHEJと一致する末端結合工程により、これらの切断部位で、平滑末端二本鎖オリゴデオキシヌクレオチド(dsODN)の組込みによってタグ付けされる。ゲノムDNAのdsODN組込み部位は、偏りのない増幅と大規模なNGSにより、ヌクレオチドレベルで正確にマッピングされる。
【0333】
この実験では、U2OS細胞株を使用し、以下のdsODN配列:
ATACCGTTATTAACATATGACAACTCAATTAAAC(配列番号3831)(100pmol)を組み込んだ。ELANE遺伝子コンスタントガイド配列及びsgRNA-564DS-refガイド配列について試験した。
【0334】
実験は2回行い、大規模な次世代シーケンシングによって配列決定した。GUIDE-Seqライブラリーの調製は、Tsai et al., Nat Biotechnology, 2015を一部改変して行った。シーケンシングの結果は、Tsai et al., Nat Biotechnology (2015)に記載の「GUIDE-Seq analysis」で分析した。GUIDE-Seq読み取り数でソートした、識別されたオフターゲットは、最終的に出力する表で注釈を付ける。
図18に示すように、色分けしたシーケンスグリッドで検出したオフターゲット部位のアラインメントを視覚化する。
【0335】
リピートの結果を一つの表に統合し、rhAmpseqテクノロジー(IDT)で検証するオフターゲットを選択した。rhAmpseqシステムは、イルミナプラットフォームでのシーケンシング用に多重化されたパネルを使用した標的のアンプリコンのシーケンシングを可能にする。
【0336】
rhAmpseqパネルの生成では、GUIDE-seq analysisで得られた最終的なオフターゲット表に以下のフィルターを適用した。
【0337】
【0338】
最終的なパネルには、以下のオフターゲットが存在した。
【0339】
【0340】
ELANE遺伝子コンスタントガイド配列及びsgRNA-564DS-refガイド配列用に生成されたパネルを使用し、IDT rhAmpseqプロトコルによって、オフターゲットを検証した。SpCas9又はOMNI-50ヌクレアーゼを上記RNAガイド配列と共に使用して、U2OS細胞を編集した(
図19及び
図20)。NextSeq PE150シーケンサーでrhAmpseqライブラリーをシーケンシングし、IDTパイプラインで分析した。
【0341】
図19及び20に示した結果は、SpCas9と比較して、OMNI-50はオンターゲット活性及び特異性が高いことを示す。sgコンスタントについて分析した110のオフターゲットについて、OMNI-50は、1つのサイト(OT-2)でのみ編集活性が0.5%を超えたのに対し、SpCas9では、60以上のサイトで超えた。sgRNA-564DS-Refの場合、OMNI-50はSpCas9よりもオンターゲット活性が高く、また、編集率が0.5%を超えたのは、25のオフターゲット部位のうち2つだけであったのに対し、SpCas9では14の部位で編集率が0.5%を超えた。
【0342】
さらに、コンスタントガイド配列若しくはsgRNA-564DS-refで、又はコンスタントガイド配列及びsgRNA-564DS-Altガイド配列で処置した患者由来のHSCのオフターゲットパネルを検証した(
図17で説明する例を参照)。
図15に示すように、これにより、エクソン5及び3’UTRが切除される。検討した110のターゲットにおいて、コンスタントガイド配列ではオフターゲットは確認されなかったことが示された(
図21)。sgRNA-564DS-refガイド配列及びsgRNA-564DS-Altガイド配列では、各パネルで1つのオフターゲットが確認された(
図22及び
図23)。これらの結果は、OMNI-50ヌクレアーゼの高い忠実度を強調する。
【0343】
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【配列表】
【国際調査報告】