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特表2022-553878成形品、特に歯科用成形品を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(54)【発明の名称】成形品、特に歯科用成形品を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 5/77 20170101AFI20221219BHJP
   A61C 8/00 20060101ALI20221219BHJP
   A61C 13/08 20060101ALI20221219BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20221219BHJP
【FI】
A61C5/77
A61C8/00 Z
A61C13/08
A61C13/00 G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022550045
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(85)【翻訳文提出日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2020079503
(87)【国際公開番号】W WO2021078742
(87)【国際公開日】2021-04-29
(31)【優先権主張番号】102019128336.1
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522159521
【氏名又は名称】ヴェーデーテー-ヴォルツ-デンタル-テヒニーク ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】WDT-WOLZ-DENTAL-TECHNIK GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【弁理士】
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【弁理士】
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【弁理士】
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルツ シュテファン
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159AA00
4C159DD01
4C159HH04
4C159HH53
4C159HH55
4C159RR15
4C159RR19
4C159SS01
4C159TT01
4C159TT02
(57)【要約】
本発明は、成形品、特に歯科用成形品(210)に幾何学的に対応するキャビティ(110)と、キャビティ(110)に開口する少なくとも1つの開口部(111、112)とを有する冷間鋳造型(100)を用いて易焼結性混合コンパウンド(200)から成形品、特に歯科用成形品(210)を製造する方法であって、付加材料構築法、特に3Dプリンタを用いた3D印刷法によって出発原料(150)から冷間鋳造型(100)を付加構築し、デジタルデータセットにより、特に患者の口腔の空間モデルに基づいてキャビティ(110)を作製する、方法に関する。本発明の課題は、従来技術と比べて低コストであり、より大量生産に向いた成形品(210)、特に歯科用成形品の製造を可能にすることである。この課題は、冷間鋳造型(100)のキャビティ(110)に、少なくとも1つの開口部(111、112)を介して易焼結性混合コンパウンド(200)を充填することと、易焼結性混合コンパウンド(200)を冷間鋳造型(100)のキャビティ(110)内で硬化および/または固化させることであって、易焼結性混合コンパウンド(200)に含まれかつ/または閉じ込められた気体および/または液体を、少なくとも1つの開口部(111、112)を介してキャビティ(110)から排出させることと、冷間鋳造型(100)を200℃~2500℃の温度範囲の温度で熱的にかつ/または熱化学的に分解することと、易焼結性混合コンパウンド(200)を900℃~2500℃の温度範囲の温度で最終硬度まで、成形品(210)、特に歯科修復物等の歯科用成形品(210)が得られるまで焼結することとによって解決される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品、特に歯科用成形品(210)に幾何学的に対応するキャビティ(110)と、前記キャビティ(110)に開口する少なくとも1つの開口部(111、112)とを有する冷間鋳造型(100)を用いて易焼結性混合コンパウンド(200)から成形品(210)、特に歯科用成形品(210)を製造する方法であって、以下の方法工程:
(1)付加材料構築法、特に3Dプリンタ(300)を用いた3D印刷法によって出発原料(150)から前記冷間鋳造型(100)を製造する工程であって、デジタルデータセットにより、特に患者の口腔の空間モデルに基づいて前記キャビティ(110)を作製する工程と、
(2)前記冷間鋳造型(100)の前記キャビティ(110)に、前記少なくとも1つの開口部(111、112)を介して前記易焼結性混合コンパウンド(200)を充填する工程と、
(3)前記易焼結性混合コンパウンド(200)を前記冷間鋳造型(100)の前記キャビティ(110)内で硬化および/または固化させる工程であって、
特に工程(2)および(3)において、前記易焼結性混合コンパウンド(200)に含まれかつ/または閉じ込められた気体および/または液体を、前記少なくとも1つの開口部(111、112)を介して前記キャビティ(110)から排出させる工程と、
(4)前記冷間鋳造型(100)を200℃~2500℃の温度範囲の温度で熱的にかつ/または熱化学的に分解する工程と、
(5)前記易焼結性混合コンパウンド(200)を900℃~2500℃の温度範囲の温度で最終硬度まで、成形品(210)、特に歯科修復物等の歯科用成形品(210)が得られるまで焼結する工程と
を含む、方法。
【請求項2】
前記混合コンパウンド(200)がスラリーおよび/またはペースト状の物質として存在し、希釈剤(205)、特に水を含み、前記混合コンパウンド(200)を前記冷間鋳造型(100)の前記キャビティ(110)内で乾燥により硬化および/または固化させ、前記混合コンパウンド(200)の液体部分および/または水分を、前記少なくとも1つの開口部(111、112)によって前記冷間鋳造型(100)から排出させ、特に混合コンパウンド(200)から取り去ることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記冷間鋳造型(100)に、前記キャビティ(110)に開口しかつ/または前記キャビティ(110)外へ通じる少なくとも1つの第1の開口部(111)と、前記キャビティ(110)に開口しかつ/または前記キャビティ(110)外へ通じる少なくとも1つの第2の開口部(112)とを付加構築し、前記冷間鋳造型(100)の前記キャビティ(110)を前記第1の開口部(111)を介して充填し、前記易焼結性混合コンパウンド(200)に含まれかつ/または閉じ込められた気体、特に封入空気(208)および/または液体、特に希釈剤(205)を、前記第2の開口部(112)を介して前記キャビティ(110)から排出させることを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記冷間鋳造型(100)の前記キャビティ(110)の境界をなす少なくとも1つの壁(120)に、全体的または部分的に、気体、特に封入空気(208)および/または液体、特に希釈剤(205)の排出のために前記キャビティ(110)に開口しかつ/または前記キャビティ(110)外へ通じ、前記壁(120)を貫通する、複数の第2の開口部(112)を付加構築することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記混合コンパウンド(200)を前記冷間鋳造型(100)の前記キャビティ(110)内にて熱の作用下で硬化および/または固化させ、その際、前記混合コンパウンド(200)を充填した前記冷間鋳造型(100)を乾燥キャビネット、気候キャビネットまたは焼結炉に入れ、30℃~120℃の温度範囲の温度および/または1%~50%の範囲の空気湿度を設定することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記冷間鋳造型(100)の前記キャビティ(110)の幾何学的設計のための特に患者の口腔の空間モデルに基づく前記デジタルデータセットが、前記混合コンパウンド(200)の焼結および/または硬化に起因する体積収縮を含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記冷間鋳造型(100)の付加構築に有機材料、特に有機ポリマーおよび/またはワックスおよび/またはプラスチック、好ましくは40℃~300℃の温度範囲の融点または分解温度を有するものを出発原料(150)として使用することで、前記冷間鋳造型(100)が可塑化可能であり、かつ/または熱的にもしくは熱化学的に分解可能であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記混合コンパウンド(200)が金属粉末(209)、特にCrCo粉末、またはセラミック粉末(209)、特に酸化アルミニウム粉末および/もしくは酸化ジルコニウム粉末、および/またはガラスセラミック粉末、特に二ケイ酸リチウム粉末と、バインダ(206)とを含むことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記冷間鋳造型(100)の融点および/または分解温度が、前記バインダ(206)の融点または分解温度を下回ることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記冷間鋳造型(100)の分解が開始するかまたは完全に行われる前に、前記混合コンパウンド(200)を前記冷間鋳造型(100)の前記キャビティ(110)内で圧粉体硬度まで硬化させることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記混合コンパウンド(200)が最終硬度まで焼結される前に、前記冷間鋳造型(100)の分解を200℃~650℃の温度範囲の温度で熱の作用により開始するかまたは完全に行うことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記冷間鋳造型(100)の融点および/または分解温度が、前記混合コンパウンド(200)、特に前記金属粉末(209)または前記セラミック粉末(209)の焼結温度を下回ることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記冷間鋳造型(100)の熱的および/または熱化学的分解を焼結炉内で行い、その際、前記冷間鋳造型(100)をその中にある前記混合コンパウンド(200)とともに前記焼結炉に入れることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記冷間鋳造型(100)の分解を無酸素条件下で熱的に、特に熱分解的に、または酸素供給下で熱化学的に、特に燃焼により行うことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記冷間鋳造型(100)、特に前記冷間鋳造型(100)の前記キャビティ(110)の境界をなす前記壁(120)を、前記混合コンパウンド(200)を充填する前にコーティング剤(220)でコーティングし、前記冷間鋳造型(100)と前記混合コンパウンド(200)との間の摩擦結合および/または材料結合を回避することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品、特に歯科用成形品に幾何学的に対応するキャビティと、キャビティに開口する少なくとも1つの開口部とを有する冷間鋳造型を用いて易焼結性混合コンパウンドから成形品、特に歯科用成形品を製造する方法であって、付加材料構築法、特に3Dプリンタを用いた3D印刷法によって出発原料から冷間鋳造型を付加構築し、デジタルデータセットにより、特に患者の口腔の空間モデルに基づいてキャビティを作製する、方法に関する。
【0002】
コンピュータ支援法(CAD/CAM)による成形品の製造は、様々な技術分野で知られている。歯科用成形品、特にクラウンおよびブリッジ等の歯科修復物、さらには歯科インプラントおよび義歯、またはブラケット等の歯科矯正に関連するパーツも、既に多くの歯科医院および歯科技工所においてコンピュータ支援法(CAD/CAM)によって製造されている。この場合、初めに患者の口腔のデジタル空間モデルを作成する。必要とされる歯科修復物を、ソフトウェアを用いて設計し、作成されたデータセットを、例えばフライス盤に伝送し、完成歯科修復物をブランクから削り出す。ブランクは一般に、初めに歯科技術に適したセラミック粉末または金属粉末から混合コンパウンドを製造する冷間鋳造法に従って製造される。混合コンパウンドとして、例えばペースト状の物質、スラリー、懸濁液あるいは「乾燥」バルク粉末も使用することができる。歯科用金属粉末から歯科修復物を製造する方法は、欧州特許第2470113号明細書から知られている。この場合、CrCo歯科用金属粉末を混ぜ合わせてスラリーとし、鋳造型に冷間充填し、その中で乾燥させる。スラリーに添加されたバインダにより、乾燥後に十分な保形性が与えられるため、乾燥させたスラリーを圧粉体として冷間鋳造型から取り出し、伝送されたデジタルデータセットに基づき、フライス盤によって所望の空間的形状にフライス加工する。最終(緻密)焼結により、歯科修復物に必要とされる硬度および密度が与えられる。歯科用成形品としての承認に必要とされる材料特性は、国内および/または国際規格によって厳格に規定されている。かかる冷間鋳造法は、ブランクの製造にしか適していない。実際の歯科修復物の微細で複雑な形状は、続いて切削加工によってブランクから削り出される。歯科技術のための金属またはセラミックスラリーについての教示は、従来技術であり、例えば欧州特許第1658018号明細書、欧州特許第1047355号明細書、国際公開第2013007684号、欧州特許第1558170号明細書および欧州特許第1885278号明細書に見ることができ、それらの調整に関する情報は、独国特許発明第102005023727号明細書および独国特許出願公開第19801534号明細書に見ることができる。最後の緻密または最終焼結の実施についても従来技術に十分に説明されており、対応する方法および焼結炉は、欧州特許第2765950号明細書、欧州特許出願公開第2844412号明細書、国際公開第2011020688号に見ることができる。
【0003】
バルク粉末を混合コンパウンドとして使用する場合、十分な保形性を得るためには、一般に、追加の作業工程である静水圧プレス成形の実施が必要とされる。この場合、混合コンパウンドにあらゆる方向から均一に高圧がかけられる。セラミック粉末、例えば酸化ジルコニウムからセラミック歯科修復物を製造する対応する方法も同様に従来技術から十分に知られている。セラミック粉末から歯科パーツを製造する方法が国際公開第2008/114142号に記載されている。
【0004】
口腔のデジタル空間モデルは、プラスチックからの暫間補綴物の製造にも使用される。この場合、歯科修復物のために作成したデータセットを3Dプリンタに転送し、暫間補綴物を付加材料構築法(3D印刷)によってプラスチック出発原料から層状に構築する。
【0005】
付加材料構築法の分野では、プラスチックの他に無機物質も出発原料として用いられ得るようになった。SLM(選択的レーザー溶融)等の付加材料構築法、FDM(溶融堆積成形)およびFFF(溶融フィラメント製造)等の押出法が知られている。同様に、例えばSLAまたはSTL(ステレオリソグラフィー)、DLP(デジタルライトプロセッシング)、LCM(セラミック光造形(Lithography-based Ceramic Manufacturing))等の出発物質の光硬化特性を利用した付加材料構築法が知られている。
【0006】
したがって、付加材料構築法を用いて金属またはセラミックから歯科修復物を製造する最初の試みも既に始まっている。付加材料構築法を用いて歯科用クラウンをジルコニアから製造する方法が国際公開第2018/065856号から知られている。ただし、金属もしくはセラミックの物体用の3Dプリンタは非常に高価であり、かつ/または印刷された成形品は、歯科用途に承認されるための高い材料要件を満たしていない。特に、付加材料構築法では、出発原料中のバインダの割合を非常に高くする必要があるため(約30%)、所要の最終密度または最終硬度を達成することができないか、または達成に極めて高いコストがかかる。セラミックまたは金属から歯科用成形品を印刷することの経済的実現は目処が立っていない。
【0007】
3Dプリンタによる複雑な形状の緻密焼結された歯科修復物のパーツの製造に口腔のデジタル空間データを使用する別の可能性は、国際公開第2019/210285号に開示されている。このためには、歯科修復物ではなく、自壊する鋳造型を3Dプリンタによって印刷するのが望ましい。印刷プロセスの出発原料として、易焼結性アルミナ粉末と熱膨張係数(WAK)が高い粉末状バインダとの2つの成分からなる粉末混合物が使用される。印刷された鋳造型に易焼結性の乾燥ジルコニアバルク粉末を混合コンパウンドとして充填する。続いて、鋳造型を同じ材料から印刷された蓋で密閉し、(2つの部分からなる)鋳造型をその中にあるジルコニアバルク粉末とともに400MPaの圧力で静水圧プレス成形する。この方法において決定的な要因は、均一なプレス成形を可能にするためにバルク粉末がバインダを含まないことである。バルク粉末は、鋳造型とともに圧縮され、続いて鋳造型を取り外すことなく焼結される。焼結時に鋳造型に含まれるバインダが膨張することで鋳造型が破裂する。完成した焼結成形品を鋳造型から外すためには、鋳造型の焼結温度がバルク粉末の焼結温度よりも高くなければならない。開示の方法の不利な点は、一方では、セラミック出発原料の3D印刷および400MPaという極めて高い圧力での静水圧プレス成形に関連した高いコストである。しかしながら、バルク粉末よりも高い焼結温度を有するセラミック出発原料の使用が記載の方法にとって決定的である。他方で、方法の適用可能性も限られている。使用する混合コンパウンドは、均一なプレス成形を達成するためにバインダを含まないものである必要がある。さらに、圧縮プレス法、特に成形品に対して圧力をあらゆる方向から均一に作用させるのが望ましい静水圧プレス成形は、水分含量が7%を超える混合コンパウンドには適していない。液体は、ほぼ非圧縮性である。静水圧プレス成形を行うためには、蓋を閉めた鋳造型の内部にバルク粉末を完全に閉じ込める必要がある。これにより、混合コンパウンドに含まれるいかなる水分も逃げることができない。
【0008】
したがって、本発明の課題は、クラウン、ブリッジ、歯科インプラント(Kieferimplantaten)、アバットメント、義歯等に見られるような複雑な解剖学的形状を有する歯科用成形品の、従来技術と比べて低コストであり、より大量生産に向いた製造を可能にする、付加構築される、特に3D印刷される冷間鋳造型を提供することである。同時に、適用可能性を広げることも望ましい。特に、易焼結性の金属および/またはセラミックの材料からなり、乾燥粉末形態の、またはスラリー、懸濁液もしくはペースト状の物質としての多様な混合コンパウンドの使用が可能である。
【0009】
この課題は、請求項1記載の歯科用成形品を製造する方法によって解決される。
【0010】
冒頭でより詳細に説明したタイプの成形品、特に歯科用成形品を製造する方法は、以下の方法工程を特徴とする:
-冷間鋳造型のキャビティに少なくとも1つの開口部を介して易焼結性混合コンパウンドを充填する工程、
-易焼結性混合コンパウンドを冷間鋳造型のキャビティ内で硬化および/または固化させる工程であって、易焼結性混合コンパウンドに含まれかつ/または閉じ込められた気体および/または液体を、少なくとも1つの開口部を介してキャビティから排出させる工程、
-冷間鋳造型を200℃~2500℃の温度範囲の温度で熱的にかつ/または熱化学的に分解する工程、
-易焼結性混合コンパウンドを900℃~2500℃の温度範囲の温度で最終硬度まで、成形品、特に歯科修復物等の歯科用成形品が得られるまで焼結する工程。
【0011】
このため、本発明によると、成形品、特に歯科用成形品の製造のために、付加構築され、特に3D印刷された、好ましくは一体型の冷間鋳造型を使用することが企図され、この冷間鋳造型は、混合コンパウンドを完成成形品、特に歯科用成形品へと焼結するときに、好ましくは1回の作業工程で熱的にまたは熱化学的に、熱分解または燃焼によって分解または溶解することができる。このようにして、冷間鋳造型の破壊もしくは破裂、または冷間鋳造型への他の力の作用による、壁厚が小さい繊細な構造を有することが多い歯科用成形品の損傷を回避することができる。焼結の終了後に、冷間鋳造型が熱的にもしくは熱化学的に完全にまたはほぼ完全に分解されるため、冷間鋳造型および成形品を互いに分離する必要がある追加の作業工程が回避される。
【0012】
本発明による方法によると、冷間鋳造型のキャビティに、好ましくはその完成後に、易焼結性混合コンパウンドを選択的に圧力の作用下で充填し、冷間鋳造型内で硬化させるか、またはその内部で固化させる。特に充填時および/または硬化もしくは固化時、さらには方法の全過程にわたって、混合コンパウンドに含まれかつ/または閉じ込められた気体および/または液体が、少なくとも1つの開口部を介してキャビティから排出されるか、または逃げることができる。好都合には、このために少なくとも1つの開口部が同様に方法の全過程にわたって密閉されず、または開いたままである。
【0013】
冷間鋳造型の熱的および/または熱化学的分解は、混合コンパウンドの硬化または固化中に既に、あるいは選択的に、混合コンパウンドが完全に、特に圧粉体硬度まで硬化した後に初めて開始することができる。好ましくは、分解は200℃~650℃の温度範囲で始まり、900℃~2500℃の温度範囲の温度で最終焼結中に完了する。
【0014】
キャビティ内での混合コンパウンドの硬化または固化は、様々な方法で、特に化学反応によって行うことができる。化学反応は、特にバインダまたは二成分バインダを用いて実現することができる。バインダの選択に応じて、異なる誘因、例えば光源、特に紫外線源を用いた照射、熱の作用、水分除去等によって反応を開始することができる。
【0015】
方法の有利な変形形態によると、混合コンパウンドは、スラリーおよび/またはペースト状の物質として存在し、希釈剤、特に水を含み、混合コンパウンドを冷間鋳造型のキャビティ内で乾燥により硬化および/または固化させ、混合コンパウンドの液体部分および/または水分を、少なくとも1つの開口部によって冷間鋳造型から排出させ、特に混合コンパウンドから取り去る。
【0016】
特にスラリーまたは湿った/ペースト状の物質を混合コンパウンドとして使用する場合、さらにはバルク粉末についても、方法の有利な設計に従い、キャビティに開口しかつ/またはキャビティ外へ通じる少なくとも1つの第1の開口部と、キャビティに開口しかつ/またはキャビティ外へ通じる少なくとも1つの第2の開口部とが冷間鋳造型に付加構築され、冷間鋳造型のキャビティが第1の開口部を介して充填され、易焼結性混合コンパウンドに含まれかつ/または閉じ込められた気体、特に封入空気および/または液体、特に希釈剤が、第2の開口部を介してキャビティから排出される。
【0017】
したがって、キャビティに混合コンパウンドを充填するために設けられる少なくとも1つの第1の開口部に加えて、少なくとも1つの第2の開口部を形成することができ、これは混合コンパウンドに含まれる流体を排出させるために設けられる。原則として、冷間鋳造型の付加構築が完了した後に、第1の開口部および/または第2の開口部を形成、特に穿設することが考えられる。しかしながら、第1の開口部および/または第2の開口部を付加材料構築の間に直接に形成することで、追加の作業工程を回避することが有利である。少なくとも1つの第2の開口部を形成することで、本発明による方法に従って付加構築される冷間鋳造型を、任意の水分含量を有する混合コンパウンドに使用することができるだけでなく、少なくとも1つの第2の開口部は、バルク粉末を使用する場合の、例えば振盪によって補助することができる排気も可能にする。この設計の発展形態では、冷間鋳造型のキャビティの境界をなす少なくとも1つの壁に、全体的または部分的に、気体、特に封入空気および/または液体、特に希釈剤の排出のためにキャビティに開口しかつ/またはキャビティ外へ通じ、この壁を貫通する、複数の第2の開口部が付加構築される。
【0018】
冷間鋳造型の1つ以上の壁に複数の互いに隣接する第2の開口部を貫通させることで、液体および気体の通過を可能とする一方で固体を保持する篩状の面を形成することができる。好ましくは、それぞれの第2の開口部の直径は、この場合、金属粉末、セラミック粉末またはガラスセラミック粉末等の混合コンパウンドに含まれる粉末の粒径および/または生じる粒子凝集体の大きさよりも小さい。複数の第2の開口部は、壁を貫通する細孔および/または毛細管のようにも形成され得るため、壁は全体的または部分的に多孔性および/または吸湿性を有する。
【0019】
かかる設計は、混合コンパウンドに含まれる水分が、隣接する多孔性および/または吸湿性の壁に取り込まれるか、または吸収され、好ましくは内部から冷間鋳造型を取り巻く雰囲気に向かって排出されるという利点を有する。この効果は、冷間鋳造型を取り巻く周囲の温度を上昇させるか、または周囲の空気湿度を下げるための他の処置によって、より乾燥した周囲空気を生じさせることで補助することができる。
【0020】
したがって、方法の変形形態では、混合コンパウンドを冷間鋳造型のキャビティ内にて熱の作用下で硬化および/または固化させ、その際、混合コンパウンドを充填した冷間鋳造型を乾燥キャビネットまたは焼結炉に入れ、30℃~120℃の温度範囲の温度を設定することが企図される。必要に応じて、周囲の空気湿度も所望の値に設定することができる。慎重で均一であり、同時に迅速な乾燥のためには、1%~最大50%の範囲の空気湿度が有利であることが判明した。
【0021】
熱の作用および必要に応じて空気湿度の低下により、例えば乾燥プロセスの場合の混合コンパウンドの硬化を促進することができる。特に、周囲、すなわち乾燥キャビネットもしくは気候キャビネット、または焼結炉内に存在する雰囲気もしくは周囲空気を乾燥させることで、混合コンパウンドに含まれる水分および/または液体がキャビティから周囲へと迅速に排出される。特に、複数の第2の開口部が細孔および/または毛細管のように貫通する多孔性および/または吸湿性の面によって冷間鋳造型の壁が設計されている場合、この効果は乾燥時間に相当な影響を及ぼす可能性がある。
【0022】
通常、混合コンパウンドの圧縮によって生じる成形品の体積収縮または焼結収縮は、混合コンパウンドの硬化および/または固化時にも、焼結時にも起こる。好ましくは、冷間鋳造型のキャビティの幾何学的設計のための患者の口腔の空間モデルに基づくデジタルデータセットは、混合コンパウンドの焼結および/または硬化に起因する体積収縮を含む。
【0023】
使用する混合コンパウンドに応じて、混合コンパウンドの硬化および/または焼結時の対応する体積収縮を考慮しなければならず、冷間鋳造型のキャビティを相応に適応化された(より大きな)初期形状で形成しなければならない。例えば、セラミック粉末を含有する混合コンパウンドでは25%~50%の範囲の焼結収縮、ゾルおよび酸化ジルコニウムナノ粒子を含有する混合コンパウンドでは50%~95%の範囲、金属粉末を含有する混合コンパウンドでは8%~25%の範囲の焼結収縮を、それぞれ初期形状に対して考慮する必要がある。光および/または乾燥による混合コンパウンドの硬化については、初期形状に対して約2%~20%の体積収縮を考慮する必要がある。冷間鋳造型自体についても、成形品、特に歯科用成形品の製造時に初期形状に対して1%~10%の範囲の体積収縮を考慮することができる。本発明による方法に従って製造される冷間鋳造型は、多様な混合コンパウンドからの成形品、特に歯科用成形品の低コストの製造を可能にする。
【0024】
特に体積収縮の発生時に、成形品、特に歯科用成形品の製造に十分な混合コンパウンドが常に利用可能であることを確実にするために、発展形態では、混合コンパウンドを保持するための少なくとも1つの補償容積部が、場合により充填チャネルを介して冷間鋳造型のキャビティと流体を通すように連結される。好ましくは、補償容積部も冷間鋳造型と一体に付加構築される。特に、含水率がより高い混合コンパウンドを使用する場合、および/または封入空気がある場合に、補償容積部は、或る種のリザーバとして機能し、気体および/または液体が少なくとも1つの第2の開口部を介してキャビティから逃げることによって生じる体積減少を補償するために、混合コンパウンドの流下(Nachlaufen)または滴下(Nachrieseln)を可能にする。
【0025】
冷間鋳造型の付加構築に有機材料、特に有機ポリマー、ワックスまたはプラスチック、好ましくは40℃~300℃の温度範囲の融点または分解温度を有するものを出発原料として使用することで、冷間鋳造型が可塑化可能であり、かつ/または熱的にかつ/もしくは熱化学的に分解可能であれば方法にとって有利である。例えば、ワックスは耐熱性が特に低い材料群である。ワックスを含有する有機材料を使用することで、冷間鋳造型の軟化または可塑化を約35℃の温度で既に達成することができる。
【0026】
ワックスおよび/またはポリマーおよび/またはプラスチック等の有機材料は、付加材料構築法、例えば3D印刷にはるかに簡単に、ひいては低コストで使用することができる。プラスチックの耐熱性は比較的低いため、有機材料から付加構築された冷間鋳造型を可塑化するか、またはさらには熱的にかつ/もしくは熱化学的に、特に熱分解および/もしくは燃焼によって分解することができる。有利には、冷間鋳造型のキャビティの境界をなし、例えばポリマーまたはプラスチックから付加構築される壁よりも、キャビティの境界をなさない、またはそれに直接に接続しない冷間鋳造型の構造および/または壁、特に支持構造、充填チャネル、補償容積部等に融点がより低い出発原料、例えばワックスを使用することができる。このようにして、成形品の損傷を引き起こす恐れがある、冷間鋳造型の可塑化または分解時に、特に熱によって発生する応力を低下させるか、またはさらには完全に回避することができる。水溶性、色、透明度等の冷間鋳造型の他の特性も、異なる出発原料を用いた付加構築、特に3D印刷によって異なる領域で互いに異なるようにすることができる。有機出発原料には無機材料を少量添加してもよい。例えば、プラスチックに無機添加剤を混ぜることが一般的である。しかしながら、有機成分の割合は、常に無機成分の割合を上回る。
【0027】
好ましい方法の設計によると、混合コンパウンドは金属粉末、特にCrCo粉末、またはセラミック粉末、特に酸化アルミニウム粉末および/もしくは酸化ジルコニウム粉末、および/またはガラスセラミック粉末、特に二ケイ酸リチウム粉末と、バインダとを含む。
【0028】
バインダを含有する混合コンパウンドは、加圧せずに乾燥させるだけで冷間鋳造型内で、特に圧粉体硬度まで硬化させることができる。したがって、バインダの使用により、従来技術から既知の高コストの静水圧プレス成形なしで済ませることができる。しかしながら、この場合、同様に従来技術に記載される方法とは対照的に、流体が少なくとも1つの開口部を介して冷間鋳造型のキャビティから排出されるように、混合コンパウンドの硬化を、冷間鋳造型を開けた状態で(「蓋」なしで)行う必要がある。多くのタイプのバインダが従来技術から既知であり、大部分が比較的低い融点をもたらす樹脂、界面活性剤またはワックス等の有機物質からなる。
【0029】
脱バインダを行う前またはバインダが溶融し始める前に混合コンパウンドからの冷間鋳造型の慎重な剥離を実現するために、方法の変形形態によると、冷間鋳造型の耐熱性および/または熱形状安定性、特に冷間鋳造型の融点および/または分解温度は、バインダの融点を下回り、かつ/または混合コンパウンド、特に金属粉末もしくはセラミック粉末の焼結温度を下回る。
【0030】
したがって、冷間鋳造型の分解が開始するかまたは完全に行われる前に、混合コンパウンドを冷間鋳造型のキャビティ内で、さらには特に圧粉体硬度まで硬化させるのが好ましい。
【0031】
一方法構成によると、混合コンパウンドが最終硬度まで焼結される前に、冷間鋳造型の分解を200℃~650℃の温度範囲の温度で熱の作用により開始するか、または完全に行うことができる。
【0032】
好都合には、このために冷間鋳造型の融点および/または分解温度が金属粉末またはセラミック粉末の焼結温度を下回っていてもよい。
【0033】
この方法の発展形態では、冷間鋳造型の付加構築に使用される有機材料が熱の作用により、初めに35℃~300℃の温度範囲の温度で可塑化し、200℃~650℃の温度範囲の温度で熱分解によって熱的に、かつ/または燃焼によって熱化学的に分解されることが企図される。
【0034】
キャビティの境界をなす壁とその中にある混合コンパウンドとの剥離を容易にするために、混合コンパウンドを充填した冷間鋳造型を乾燥キャビネットもしくは気候キャビネット、または焼結炉に入れ、温度を35℃~300℃の温度範囲に設定する。この際に有機材料またはプラスチックの材料特性を利用することができる。冷間鋳造型の融点に達する前に有機材料、特にプラスチックが軟化し始め、冷間鋳造型が可塑化可能または塑性変形可能になる。圧縮空気を適切に吹き込むことで、軟らかく変形しやすい冷間鋳造型を、好ましくは既に(圧粉体硬度まで)硬化した混合コンパウンドから引き離すことができる。
【0035】
有利には、冷間鋳造型の熱的および/または熱化学的分解を焼結炉内で行い、その際、冷間鋳造型をその中にある混合コンパウンドとともに焼結炉に入れる。
【0036】
任意の方法工程では、混合コンパウンドを実際の焼結の前に、特に650℃~1300℃の温度範囲の温度で予備焼結し、成形品を最終硬度まで圧縮する前にバインダ部分を除去することが企図される。
【0037】
この場合、熱的および/または熱化学的分解は、完了するまで、かつ/または900℃~2500℃の焼結温度範囲の高温で継続することができるため、熱の作用による冷間鋳造型の残留物のない、または少なくとも殆ど残留物のない分解が可能である。
【0038】
方法の変形形態によると、冷間鋳造型の分解は、無酸素条件下で熱的に、特に熱分解的に、または酸素供給下で熱化学的に、特に燃焼により行われる。
【0039】
無酸素条件下での冷間鋳造型の熱分解では、冷間鋳造型が、その中に含まれる混合コンパウンドとともに、真空および/または(低酸素または無酸素の)保護雰囲気下での焼結が可能な焼結炉に入れられる。この方法の変形形態は、酸化による成形品の損傷を回避するための、例えばCrCo合金からなる金属の歯科用成形品の製造に特に適している。
【0040】
しかしながら、別の方法の変形形態によると、特にセラミックの成形品、特に歯科用成形品を得るために、酸素供給下で燃焼によっても冷間鋳造型の分解が可能である。
【0041】
最後に、方法の変形形態によると、冷間鋳造型、特に冷間鋳造型のキャビティの境界をなす壁を、混合コンパウンドを充填する前にコーティング剤でコーティングし、冷間鋳造型と混合コンパウンドとの間の摩擦結合および/または材料結合を回避することができる。
【0042】
混合コンパウンドを充填する少し前または直前に冷間鋳造型を有機油性液体、例えば石油の入ったボウルに沈めるか、または代替的には、有機油性液体、例えば石油ですすぐことが考えられる。このようにして、第1および/または第2の開口部を閉じることなく、冷間鋳造型のキャビティの境界をなす壁と混合コンパウンドとの間に耐熱保護層を簡単かつ単純に形成することができる。
【0043】
クラウン、ブリッジ、歯科インプラントパーツおよび/または義歯等の歯科用成形品の場合、繊細な薄肉の構造が必要とされることが多い。特にセラミックまたは金属からの歯科用成形品の製造には、高い焼結温度が必要とされる。冷間鋳造型の熱膨張による成形品の損傷を回避するためには、冷間鋳造型の線熱膨張は、その初期形状に対して有利には最大10%、好ましくは最大3%、特に好ましくは最大0.8%であり、冷間鋳造型の最大熱膨張は、240℃以下、好ましくは200℃以下、さらに好ましくは150℃以下、特に好ましくは100℃以下の温度で達成される。好ましくは、混合コンパウンドの熱膨張係数(WAK値)は、使用する金属、セラミックまたはガラスセラミックの粉末のそれぞれのWAK値を考慮して、高分子電解質およびバインダ(ポリマー)の割合により、冷間鋳造型のWAK値に適合させることができ、冷間鋳造型および混合コンパウンドが同様または同一の熱膨張を受ける。付加的または代替的には、バインダの割合を増加させることによって(圧粉体状態の)混合コンパウンドの機械的安定性を高めることができる。
【0044】
圧力充填方法でも、特に歯科用成形品に必要とされる冷間鋳造型の寸法安定性を達成するためには、冷間鋳造型は、ショア-Aに準拠した少なくとも15および/またはショア-Dに準拠した少なくとも10のショア硬度、ならびに少なくとも5MPaの弾性率を有する。冷間鋳造型のキャビティの境界をなす壁は、好ましくはそれぞれ少なくとも0.01mmの壁厚を有する。ショア硬度は、エラストマーおよびプラスチックの材料パラメーターであり、DIN EN ISO 868、DIN ISO 7619-1およびASTM D2240-00の規格で規定されている。引張係数またはヤング率とも称される弾性率は、プラスチックについては特にDIN EN ISO 527-1:2019-12に準拠して決定される。
【0045】
成形品、特に歯科用成形品の製造に適した本発明による冷間鋳造型の例示的なプロトタイプは、ステレオリソグラフィー3D印刷法に従い、以下の物理的特性、すなわち
ASTM法 特性の説明 メートル法 ヤードポンド法
D638M 引張係数 2100MPa 305000psi
D638M 破断強度 44.9MPa 6500psi
D638M 破断伸び 6.1% 6.1%
D790M 曲げ強さ 74.3MPa 10770psi
D790M 曲げ弾性率 2200MPa 329000psi
D224 硬度(ショアD) 85 85
D256A アイゾッド衝撃強さ 0.23J/cm 0.46ft lb/in
D570-98 吸水率 0.7% 0.7%
D648 0.46MPa(66psi)でのHDT 59℃ 138°F
D648 1.82sMPa(264psi)でのHDT 50℃ 122°F
で製造されている。
【0046】
本発明に基づく更なる詳細、特徴、(下位)特徴の組合せ、利点および効果が本発明の好ましい実施例の以下の説明および図面から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】成形品、ここでは例として歯科用成形品を製造する本発明による方法の例示的な進行の流れ図である。
図2】キャビティが歯科修復物の形状に対応する冷間鋳造型の概略図である。
図3】充填チャネルと補償容積部とを備える冷間鋳造型の実施例の概略斜視図である。
図4図3の冷間鋳造型の断面図である。
図5】2つの充填チャネルを備える本発明による冷間鋳造型の第2の実施例の概略斜視図である。
図6】本発明による冷間鋳造型を用いて製造された成形品の概略斜視図である。
【0048】
図面は単なる例示であり、本発明の理解を助けるためのものにすぎない。同じ要素には同じ参照符号を付しているため、通例、一度しか説明しない。
【0049】
図1は、歯科用成形品210を製造する本発明による方法の例示的な進行の流れ図を示す。この場合、初めに冷間鋳造型100が製造される(1)。冷間鋳造型100は、付加材料構築法によって、例えば3Dプリンタを用いて構築され、冷間鋳造型100は、少なくとも1つの開口部111、112を有するように構築される。出発原料150として、好ましくは熱的にかつ/または熱化学的に分解可能なプラスチックが使用される。任意に、冷間鋳造型100は、混合コンパウンド200を充填する前にコーティング剤220でコーティングしてもよい(1.1)。コーティング剤220としては、例えば石油が適切であり、この場合、冷間鋳造型100は好ましくは石油の入ったボウルに沈められる。続いて、冷間鋳造型100に混合コンパウンド200が充填される(2)。所望の成形品210に応じて、混合コンパウンド200は、歯科用成形品の製造に適したセラミックまたは金属の粉末209を含む。好ましくは、それぞれの粉末209が希釈剤205、例えば水または有機溶媒と混ぜ合わされてスラリーまたはペースト状の物質とされ、バインダ206と混合されて、使用前に調整される。混合コンパウンド200は、少なくとも1つの開口部111、112を介して冷間鋳造型100のキャビティ110に充填される。充填時に既に、混合コンパウンド200に含まれる流体207、特に希釈剤205または封入空気208が少なくとも1つの開口部111、112を介して逃げることができる。充填後に、混合コンパウンド200は冷間鋳造型100の内部、より正確にはそのキャビティ110内で硬化または固化する(3)。硬化または固化を促進するために、冷間鋳造型100は、例えば周囲の所望の空気湿度を調整するための乾燥キャビネットまたは気候キャビネットに置かれ、熱230に曝されることで、混合コンパウンド200の液体成分の迅速な乾燥または蒸発が行われる。この場合、流体207、希釈剤205または封入空気208は、さらに少なくとも1つの開口部111、112を介して逃げることができる。セラミックまたは金属の歯科用成形品210の製造では、冷間鋳造型100内での硬化は、好ましくは圧粉体硬度まで行われる。圧粉体の安定性は、バインダ206の使用によって達成することができる。
【0050】
硬化または固化後に、冷間鋳造型100をその中にある硬化した混合コンパウンド200とともに、好ましくは初めに焼結炉内にて35℃~300℃の範囲の温度で軟化させ、例えば圧縮空気を吹き込むことで「膨らませ」、混合コンパウンド200から剥離させることができる。
【0051】
好都合には、混合コンパウンド200が最終硬度まで硬化する前またはその最中に、冷間鋳造型100が熱的にもしくは熱化学的に分解する(4)。このために、焼結炉内での冷間鋳造型100の熱的分解、すなわち酸素排除下での熱分解、または熱化学的分解、すなわち酸素による燃焼が、出発原料150が完全またはほぼ完全に溶解する200℃~650℃の温度範囲の温度で開始される。混合コンパウンド200を650℃~1300℃の温度範囲の温度で任意に予備焼結してもよく(4.1)、この際、バインダ206が気化する。最後の最終または緻密焼結(5)では、混合コンパウンド200が900℃~2500℃の温度範囲の温度で最終硬度まで圧縮され、完成した歯科用成形品210として焼結炉から取り出すことができる。未だ完全に分解されていない、冷間鋳造型100の存在し得る残留物は、予備または最終焼結の際にも分解される。
【0052】
図2は、冷間鋳造型100が歯科用成形品210の形状に対応するキャビティ110を有する本発明の例示的な実施形態を示す。3Dプリンタ300の印刷ノズル310も図に概略的に示されており、これにより冷間鋳造型100が出発原料150から一体に付加構築される。冷間鋳造型100は、補償容積部131を介して充填チャネル130に流体を通すように接続された第1の開口部111を有する。充填チャネル130を介し、充填手段400、ここでは例示的に注入シリンジ420によって、キャビティ110に混合コンパウンド200が充填される。混合コンパウンド200に含まれる流体207または充填時に生じる封入空気208は、複数の第2の開口部112を介してキャビティ110から排出される。第2の開口部112は、ここでは外壁121の毛細管または細孔として形成されるため、肉眼では認識することができない。複数の第2の開口部112によって、混合コンパウンド200に含まれる流体207または水分をキャビティから外部環境へと導く多孔性または吸湿性の面が生じる。
【0053】
図3および図4はそれぞれ、冷間鋳造型100の実施例を概略斜視図または断面図で示す。冷間鋳造型100は、ここでは例示的に試験片の形態で製作され、そのキャビティ110は、成形品210の壁厚を0.30mm~10mmの範囲とする、歯科用成形品210に典型的な幾何学的特性を有する。冷間鋳造型100のキャビティ110は、冷間鋳造型100の外壁121および内壁122によって画定されるため、完成成形品210、例えばクラウンが、例えばアバットメントの形状に対応する内部空洞211(図6参照)を有し、これによりクラウンをアバットメントに装着することができる。内壁122は、このために円筒形または円錐台形をなす。第1の開口部111が、歯科用成形品210に対して咬合する外壁121の1つを貫通して、キャビティ110に開口する。第1の開口部111を介してキャビティ110に混合コンパウンド200が充填される。内壁122には、例えば混合コンパウンド200に含まれる流体205、207および/または封入空気208を充填時に既に逃がすことを可能にする複数の第2の開口部112が貫通形成される。充填後に、流体205、207、208は任意に、さらに第1の開口部111を介して漏出することができる。複数の第2の開口部112が、ここに例示的に示されているように、キャビティ110の内殻面に篩のように貫通形成されてもよい。代替的には、複数の第2の開口部112を細孔および/または毛細管のように製作し、多孔性および/または吸湿性の面を形成することができる。
【0054】
第1の開口部111には、補償容積部131を有する充填チャネル130が流体を通すように接続される。充填チャネル130には、キャビティ110への混合コンパウンド200の充填を容易にするために、充填手段400、例えば注入シリンジ420、特に低圧注入シリンジ(図2参照)、またはホース410のような導管を接続することができる。補償容積部131は、混合コンパウンド200の或る種のリザーバとして働くため、第2の開口部112から逃げる流体205、207、208の体積減少は、補償容積部131に保持される混合コンパウンド200によって補償され得る。図示した実施例においては、冷間鋳造型100が充填チャネル130および補償容積部131と一体に製造される。
【0055】
図5には、本発明による冷間鋳造型100の第2の実施例の概略斜視図を示す。この冷間鋳造型100は、充填チャネル130が(任意の)補償容積部131なしに形成されており、チャネル状の第2の開口部112が一体的に咬合外壁121に開口していることを除いて、図1および図2に示した第1の実施例に相当する。充填チャネル130は、選択的に一体的に、あるいは冷間鋳造型100の付属部分として実装することができ、その第1の開口部111がキャビティ110に開口する。この変形形態では、第1の開口部111が第2の開口部112を同心円状に貫通する。必要に応じて、別個の補償容積部131を、特に充填手段400の構成要素として充填チャネル130に接続することができる。
【0056】
歯科用成形品210に必要とされる最終硬度まで硬化させた混合コンパウンド200を、試験片として形成した冷間鋳造型100を用いて製造された完成成形品210として図6に見ることができる。成形品210は、0.3mm~10mmの範囲の壁厚を有する。成形品210の下部先端部分には凹部211が形成され、その形状は歯科用成形品210、例えばクラウンを装着するためのアバットメントの形状に対応する。冷間鋳造型100の内壁122を篩様構造で貫通する複数の第2の開口部112により(図4参照)、凹部211の内向きの壁面は、ネップ状の(noppenartigen)表面212を備える。ネップ状の表面212は、歯科用成形品210、例えばクラウンと、例えばアバットメントとの間の保持を改善する。
【符号の説明】
【0057】
100 冷間鋳造型
110 キャビティまたはツール形状
111 第1の開口部
112 第2の開口部
120 壁
121 外壁
122 内壁
130 充填チャネル
131 補償容積部
140 支持構造
150 出発原料
200 混合コンパウンド
205 希釈剤
206 バインダ
207 流体
208 封入空気
209 粉末
210 成形品
211 凹部
220 コーティング剤
230 熱/空気湿度
231 光
300 3Dプリンタ
310 印刷ノズル
400 充填手段
420 注入シリンジ、特に低圧注入シリンジ
方法工程:
1 冷間鋳造型の製造
1.1 冷間鋳造型のコーティング
2 冷間鋳造型への混合コンパウンドの充填
3 冷間鋳造型内の混合コンパウンドの硬化および/または固化
4.冷間鋳造型の熱的または熱化学的分解
4.1 予備焼結
5 焼結/最終焼結
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】