(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-27
(54)【発明の名称】布を高速加工するための装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/382 20140101AFI20221220BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20221220BHJP
B23K 26/046 20140101ALI20221220BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20221220BHJP
【FI】
B23K26/382
B23K26/082
B23K26/046
B23K26/00 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022519431
(86)(22)【出願日】2020-10-03
(85)【翻訳文提出日】2022-05-16
(86)【国際出願番号】 US2020054186
(87)【国際公開番号】W WO2021067900
(87)【国際公開日】2021-04-08
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516232335
【氏名又は名称】エルスナー エンジニアリング ワークス,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】322013959
【氏名又は名称】チェイス、マイケル、カール
(71)【出願人】
【識別番号】322013960
【氏名又は名称】ウルフ、デイブ
(71)【出願人】
【識別番号】322013971
【氏名又は名称】マティー、ジョン、マッデン、ジュニア
(71)【出願人】
【識別番号】322013982
【氏名又は名称】デュ、シンペン
(71)【出願人】
【識別番号】322013993
【氏名又は名称】ユー、シャオミン
(71)【出願人】
【識別番号】322014004
【氏名又は名称】カー、アラヴィンダ
(71)【出願人】
【識別番号】322014015
【氏名又は名称】ラーマン、アリフール
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェイス、マイケル、カール
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ、デイブ
(72)【発明者】
【氏名】マティー、ジョン、マッデン、ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】デュ、シンペン
(72)【発明者】
【氏名】ユー、シャオミン
(72)【発明者】
【氏名】カー、アラヴィンダ
(72)【発明者】
【氏名】ラーマン、アリフール
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD11
4E168CA01
4E168CB04
4E168CB11
4E168DA02
4E168DA47
4E168EA15
4E168JA18
(57)【要約】
非常に幅広である不織布材料を高速でレーザー加工するための装置。本発明は、1つのローラーから別のローラーまで布が高速で通過する間において、ウェブ上の焦点でのビームのフォーカス及び強度を正確に管理することにより、全幅にわたって規則的な又は不規則な空間的間隔で平面的に配置される大きい布材料片に対してレーザー・ビームにより分断、穿孔、及びパターン形成を施すのを可能にする。レーザー加工システムを管理する制御システムが、穿孔パターンの迅速な再構成を可能にする。布は、均一の又は不均一の厚さを有する織布の又は不織布の均質である又は均質ではない材料であってよい。実施されるときのレーザー加工を感知し、レーザー加工性能を実時間で最適化するようにシステム制御装置にフィードバックを提供するための、光学センサが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する材料のウェブのレーザー穿孔のための装置であって、
ビームを放射するレーザーと、
前記レーザーのオペレーションを管理するための制御装置と、
前記ウェブの第1の表面を横断するように前記ビームを方向付けるための可動鏡を有するスキャナであって、前記ウェブが布材料を含み、前記可動鏡の動作が前記制御装置によって管理される、スキャナと、
前記ビームの発散を、前記ウェブの前記第1の表面上の基準位置に対応する公称焦点距離f
0に調整するためのレンズと、
前記ビームが前記基準位置から、調整された焦点距離f
1まで前記スキャナによって前記第1の表面を横断するように偏向されているときに前記ビームの焦点を合わせるための焦点合わせ要素であって、f
1はf
0より大きい、焦点合わせ要素と
を有する装置。
【請求項2】
視認面を視認するように位置決めされた第1の光学センサをさらに有し、前記光学センサは、ウェブ穿孔を示す前記視認面上のビーム位置及びビーム強度を感知して、ビーム位置及び強度を示すフィードバック信号を前記制御装置に伝達し、前記制御装置は、前記フィードバック信号を、ビーム位置及び強度の目標値と比較して、前記ウェブの所望のレーザー穿孔を実施するために前記レーザーのオペレーションを管理する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記視認面は、前記第1の表面の反対側の前記ウェブの第2の表面に隣接して位置決めされた視認基体であり、それにより、前記ウェブ内に形成された前記穿孔を通過する前記ビームが前記視認基体に当たって前記第1の光学センサにより感知される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ウェブの前記第1の表面を視認するように位置決めされた第2の光学センサをさらに有する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記視認面が前記材料のウェブである、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記焦点合わせ要素が平面走査レンズを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記焦点合わせ要素が、前記制御装置に動作可能に接続された動的可変鏡を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記制御装置は、ビーム出力強度を変化させること、前記ビームをパルス化すること、ポンプ電流を変えること、ビーム・パルス周波数を調節すること、レーザー・パルス形状を調節すること、又はそれらの組み合わせによって、レーザー・パワーを管理する、請求項2に記載の装置。
【請求項9】
前記ウェブの前記第1の表面上の前記基準位置での前記ビームの強度が、前記レンズ及び前記焦点合わせ要素のオペレーションにより調整可能である、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
レーザー・パワーが、ウェブ材料の線形吸収領域又は前記材料の非線形吸収領域において前記ウェブにレーザー・ビーム強度を送達するように調整され得る、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記レーザー強度の時間に関する導関数を増大させるようにレーザー・パルス形状を調節し、それにより前記ウェブ内で自己位相変調を生じさせる、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記布材料が不織布である、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
ウェブ加工機械内でフィード・コンベヤに沿って移動させられるときの布材料のウェブのレーザー穿孔のための装置であって、
前記レーザー穿孔装置のオペレーションを管理するための制御装置と、
ビームを放射するレーザーであって、前記制御装置に動作可能に接続されたレーザーと、
前記ウェブの第1の表面を横断するように前記ビームを方向付けるためのスキャナであって、前記制御装置に動作可能に接続されたスキャナと、
前記ビームの発散を、前記ウェブの前記第1の表面上の基準位置に対応する公称焦点距離f
0に調整するためのレンズと、
前記ビームが前記基準位置から、調整された焦点距離f
1まで前記スキャナによって前記第1の表面を横断するように偏向されているときに前記ビームの焦点を合わせるための焦点合わせ要素であって、f
1はf
0より大きい、焦点合わせ要素と
を有し、
前記制御装置はさらに、前記フィード・コンベヤに沿うウェブ移動の速度を管理し、前記移動するウェブを横断するように前記ビームを方向付けるように前記スキャナを管理し、前記フィード・コンベヤに沿って前記ウェブが移動させられているときに前記ウェブ上に所望の穿孔構成を達成するように前記ウェブに穿孔するように前記レーザーを管理する、装置。
【請求項14】
光学センサであって、前記ウェブを通過する前記ビームの部分を観測し、前記ウェブの穿孔を示すビーム位置及びビーム強度を感知し、且つビーム位置及び強度を示すフィードバック信号を前記制御装置に伝達するように位置決めされた光学センサをさらに有し、
前記制御装置は、前記フィードバック信号を、前記所望の穿孔構成を表すビーム位置及び強度の目標値と比較し、それに応じて、前記ウェブの前記所望の穿孔構成を実施するのに必要なレーザー・パワーを変化させるように前記レーザーのオペレーションを管理する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記制御装置は、ビーム出力強度を変化させること、前記ビームをパルス化すること、ポンプ電流を変えること、ビーム・パルス周波数を調節すること、レーザー・パルス形状を調節すること、又はそれらの組み合わせによって、レーザー・パワーを管理する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
レーザー・パワーが、ウェブ材料の線形吸収領域又は前記材料の非線形吸収領域において前記ウェブの前記第1の表面上の前記基準位置にレーザー・ビーム強度を送達するように調整され得る、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
レーザー・パワーが前記ウェブに送達され、前記レーザーが、前記ウェブ材料の線形吸収領域内で所定の波長を有する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記制御装置は、前記レーザー強度の時間に関する導関数を増大させるようにレーザー・パルス形状を調節し、それにより前記ウェブ内で自己位相変調を生じさせる、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記布材料が不織布である、請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年10月4日に出願した米国仮出願第62/910、938号の優先権の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、概して、布(fabric)の高速加工のための方法及び装置に関し、より詳細には、ウェブ加工機械で高速で平行移動する不織布のワイド・ウェブのレーザー加工のための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
材料のワイド・ウェブを通常のサイズ及び/又は構成にするように加工するための変換機械は、一般に、生産効率を達成するためにウェブを高速で移動させることを必要とする。このような機械は、通常、最大3.6m/秒(700ft/分)の速度で機械を通過して移動する、最大110cm(約43in)の範囲の幅の材料のワイド・ウェブを加工する。切断・穿孔オペレーションは、従来、横方向においてウェブの全体に跨って、材料を切断するか又は材料に穿孔を施すためにウェブに接触するロールなどによって実施される。ウェブに沿う穿孔間隔が、6mmから25mmの範囲の間隔において0.5mmから2mmの間のタブ(分断されないウェブの部分)を変化させる穿孔パターンを使用する場合、100mm(4in)に近い値であってよい。機械的な穿孔手段を使用する場合に穿孔パターンを変えることは、穿孔カッター要素を変えるために有意な機械停止時間を必要とする(2時間から4時間のオーダー)。このような停止時間は有意な生産量低下を意味する。
【0004】
レーザーはいくつかの材料に対して特定の加工オペレーションを実施するのに適することが確認されている。レーザーは機械的なカッターのように摩滅することがなく、したがって、定期的な研磨を必要としない。さらに、レーザーは、所望の穿孔パターンを実施するように、又は機械停止時間を最小にしながら多様な材料特性に対応するように、容易に再構成されるという利点を有する。しかし、既知のレーザー加工システムは、一般に、最大0.5m/秒(100ft/分)の加工速度に制限され、これは機械的な穿孔手段を使用する機械の能力をはるかに下回っている。
【0005】
速度に加えて、レーザー・システムでは穿孔品質も問題となっている。レーザーの材料加工では、走査面積が、平面的な被加工物の表面でレーザー・フォーカス(focus)を維持することが可能となる範囲によって制限される。レーザー加工の進歩は、金属、セラミック、ガラス、及び重合体の加工を対象としてきた。その理由は、レーザーが高い順応性、高い精度、及び高い再現性を有するからである。特にはフェムト秒レーザー又はピコ秒レーザーなどの、パルス・レーザーは、被加工物に対して、加工後の熱処理を必要とさせるような熱影響ゾーンを大きくは作らず、無傷の加工品質を作り出し、さらには、良好な物理的再現性を提供する。
【0006】
2つのアプローチが一般に採用される。1つ目のアプローチは、レーザー・ヘッド内の収束レンズの焦点距離のところで高さを固定されて被加工物の上方に配置されるレーザー・ヘッドを利用することである。レーザー・ヘッドは、通常はチェーン/ベルト駆動装置である、機械的手段によって移動させられ、被加工物を横断させるようにレーザー・ビームを掃引させる。この構成は、機械的運動機構を原因として、機械的穿孔装置を使用して可能となる毎分2,100回の穿孔をはるかに下回る程度に制限されることにより、走査において低速となり得る。
【0007】
2つ目のアプローチは、平坦な焦点面を有する被加工物に対してレーザー・ビームを送達するために、一般にfシータ・レンズと称される平面走査レンズ(flat field scanning lens;フラットフィールド走査レンズ)を利用することである。ビーム・スキャナと共に使用される従来の球面レンズ光学素子(spherical lens optics)は、湾曲面上でのみ焦点精度を維持することができる。fシータ・レンズは、平坦面での焦点精度を維持するのを可能にすることにより、球面レンズの制約に対処しているが、しばしば視野を制限してしまう。現在に至るまで、大きい視野に跨っての高い走査速度を達成すること、及び所望の結果を得るのに必要となる焦点スポット・サイズ及びレーザー強度を許容可能な範囲で維持すること、を同時に行うという課題が残っている。
【0008】
既知のレーザー加工システムは、布ウェブの商業生産効率に必要となる許容可能な範囲のビーム焦点精度及び強度の制御を維持することができない。これにより、主として、ビームが材料ウェブの全幅を横断して掃引するときのウェブ材料に対してのレーザーの高精度のフォーカスを維持することにおいて制約が生じる。加工面積を増大させるための、従来のアプローチは、レーザー焦点スポットのサイズを増大させることであり、それに応じて、ビームのピーク強度及び空間分解能が低下する。ビーム掃引速度により、さらには、ビーム・フォーカス及びパワーの高い精度の制御を維持することが不可能であることにより、レーザーにより材料ウェブを加工することが可能となる速度が制限され、したがって生産効率が制限される。
【0009】
レーザー・ビーム波面の収差を動的に補正するために、補償光学素子(adaptive optics)が広く開発されてきた。波面は、波伝播方向に対して垂直である平面上での位相の2Dマップである。まず注目しなければならないこととして、波面収差は、異なるビーム追跡経路間の光路長(OPL:optical path length)の差を原因とするものである。同様に、OPLの変化を導入することにより、収差を補償するように波面も修正され得る。レーザー・ビーム波面にゼルニケ・モードを加えることにより、焦点スポットの軸方向位置(ビーム伝播方向に沿う)が共焦点長(レーリー長の2倍)と比較してより大きい範囲内で整調され得、他方で、調整範囲の全体において横方向のスポット・サイズ(ひいては並びに、ピーク強度及び解像度)が維持される。
【0010】
可変鏡(deformable mirror)が、波面を変えるのに使用される1つの種類の補償光学素子デバイスである。可変鏡は、シフトするように及び/又は傾斜するように独立して制御され得る多数の鏡セグメントから構成される。いかなる波面もゼルニケ・モードとなるように分解され得、各セグメント鏡を直角のシフト・ティルト角(shift and tile angle)に設定することにより低次ゼルニケ・モードが達成され得ることを理由として、すべてのセグメント鏡の重ね合わせによりいかなる波面も達成され得、したがって、それにより、波面歪を補償することができ、また、レーザーをそこに適用することができるところであるウェブのサイズを拡大することができる。
【0011】
ビーム・フォーカス及び強度の高精度の制御を可能にしてそれによりロール・ベースの機械におけるウェブ加工速度を上げるのを可能にする補償光学素子を使用してレーザー・ビームの波面を制御することにより加工面積を広げるようなレーザー・ベースのウェブ加工システムを布材料のウェブ上で使用するのを可能にする方法及び装置を提供することが有利である。多様な穿孔パターンを実施するように、又は多様なウェブ材料に対応するように、容易に再構成され得るレーザー・ベースのウェブ加工システムによって追加の利点が実現されることになる。ウェブ加工の実時間の最適化及び微調整を可能にするためにレーザー加工の光学的フィードバックを組み込むレーザー・ベースのシステムによって別の利点が実現されることになる。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明は、本明細書で説明される実施例のうちの任意の実施例で、以下の利点のうちの1つ又は複数の利点を提供することができる。
【0013】
本発明の目的は、同程度の機械ベースの穿孔加工システムの材料スループットに匹敵する、ウェブ加工機械を通過して高速で移動する不織布材料のウェブに対して穿孔プロセスを実施するためのレーザー・ベースの加工システムを提供することである。
【0014】
さらに、本発明の目的は、不織布材料のウェブに対して穿孔プロセスを実施するためのレーザー・ベースの加工システムを提供することであり、ここでは、機械のオペレーション中に実時間を含めて実時間以下で穿孔特性を容易に再構成するのを可能にする制御装置により、レーザー・オペレーションが管理される。加えて、制御装置にフィードバックを提供するための、並びに、ウェブ特性の変化に対応するように及び最適なウェブ穿孔を実現するようにレーザーの実時間の調整を可能にするための、光学センサが含まれ得る。
【0015】
本発明の別の目的は、ウェブ加工機械を通過して高速で移動する材料のウェブに対してプロセスを実施するためのレーザー・ベースの加工システムを提供することであり、ここでは、ビーム焦点調整機構が、材料ウェブと、ウェブの幅を横断してレーザーが掃引するところであるウェブの平面内のラインとの交点によって画定される経路上でレーザーの焦点を正確に維持する。焦点を調整することにより、ウェブ材料に対してのダメージを最小にするために最適なレーザー・パワーを使用して材料のワイド・ウェブを単一のレーザーが効果的に加工することが可能となる。
【0016】
本発明の別の目的は、ウェブ加工機械を通過して高速で移動する材料のウェブに対してプロセスを実施するためのレーザー・ベースの加工システムを提供することであり、ここでは、ウェブ材料に与えられるレーザー・パワーが、実施されることになるプロセス及びウェブ材料の特性のためにレーザーを最適化するためのレーザーの正確な制御を介して、管理される。
【0017】
本発明の別の目的は、ウェブ加工機械を通過して高速で移動する材料のウェブに対してプロセスを実施するためのレーザー・ベースの加工システムを提供することであり、ここでは、レーザー・ビーム波面内でのパワー分布が、ウェブ材料の性質に基づいてビーム切断効果を最適化するように、調整される。過剰なレーザー・エネルギーにより容易に炭化又は変色してしまう不織布などの材料では、ビーム・パワーの正確な制御が不可欠である。さらに、ビーム・パワー制御により、ホイル又はフィルムなどのより高密度の材料を綺麗に切断するのに十分なエネルギーを送達するようにビームを構成するのを可能にするような調整が可能となる。
【0018】
本発明の別の目的は、ウェブ加工機械を通過して高速で移動する材料のウェブに対してプロセスを実施するためのレーザー・ベースの加工システムを提供することであり、ここでは、ウェブ材料に与えられるレーザー・パワーが、実施されることになるプロセス及びウェブ材料の特性のためにレーザーを最適化するためのレーザー・パルス周波数及びポンプ電流量(pump current)の正確な制御を介して、管理される。
【0019】
本発明は、非常に幅広である不織布材料を高速でレーザー加工するための装置を提供することにより、上記の制約を克服する。本発明は、1つのローラーから別のローラーまで布が高速で通過する間において、ウェブ上の焦点でのビームのフォーカス及び強度を正確に管理することにより、全幅にわたって規則的な又は不規則な空間的間隔で平面的に配置される大きい布材料片に対してレーザー・ビームにより分断、穿孔、及びパターン形成を施すのを可能にする。レーザー加工システムを管理する制御システムが、穿孔パターンの迅速な再構成を可能にする。布は、均一の又は不均一の厚さを有する織布の又は不織布の均質である又は均質ではない材料であってよい。実施されるときのレーザー加工を感知し、レーザー加工性能を実時間で最適化するようにシステム制御装置にフィードバックを提供するための、光学センサが提供される。
【0020】
特には添付図面と併せて、本発明の以下の詳細な開示を考察することにより、本発明の利点が明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】可変鏡の形態の動的フォーカスシステムを有する本発明の第1の実施例を示す図である。
【
図2】fシータ・レンズの形態の動的フォーカスシステムを有する本発明の第2の実施例を示す図である。
【
図3】材料ウェブの幅を横断してビームが掃引させられるときのビーム焦点距離の変化を示す図である。
【
図4】ウェブ移動の方向に対して垂直である穿孔を作り出すのに必要であるビーム掃引経路を示す図である。
【
図5】ウェブの最適な加工を実現するためのレーザー加工システムの調整のための感知の配置構成を示す図である。
【
図6】動的焦点調整装置を使用しての波面の変化を示す図である。
【
図7】本発明と共に使用するための代替のリフレクタ及びビーム集束手段を示す図である。
【
図8】切断線8-8に沿う
図7を示す断面図である。
【
図9】切断線9-9に沿う
図7を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明で利用される固定、接続、プロセス、並びに他の手段及び構成要素の多くは説明される本発明の分野で広く知られており、使用されていることから、本発明を当業者が理解して使用することにおいてこれらの厳密な性質又は種類は必要なく、したがって、これらの厳密な性質又は種類を深く詳細には考察しない。また、「左」又は「右」、「前方」又は「後方」などの用語に対しての本明細書でのいかなる言及も便宜的に使用されるものであり、機械内で材料を加工するときの材料の移動の方向において考察されることによって決定される。「上方」及び「下方」の向きは、「水平」面又は「垂直」面に対してのすべての言及と同様に、地面又は動作面を基準とするものである。さらに、本発明の任意の特定の用途のための本明細書で示されるか又は説明される種々の構成要素は本発明によって見込まれるように変形又は変更され得、任意の要素の特定の用途の実施は既に当業者により広く知られているか又は使用されている可能性があり、したがってこれらの各々も同様に深く詳細には考察しない。図を参照する場合、すべての図において同様の部分が等しく参照符号を付される。
【0023】
本発明の第1の実施例が、ウェブを横断してビームが横方向に掃引させられるときに正確なビーム・フォーカスを維持するために動的焦点調整システムを利用する。この配置構成では、スキャナが、ウェブを横断するようにレーザー・ビームを横方向に掃引させるのに使用され、動的焦点調整システムが、ビーム掃引穿孔中にレーザー・フォーカスの焦点をウェブ表面上に正確に合わせた状態で維持するためにレーザー・フォーカスを常に変えるために適用される。1つの例示の動的焦点調整システムが可変鏡である。ウェブがこのプロセス中に平面的な(平坦な)配置構成で維持される。この実施例の利点は、ウェブ供給経路を平面的な配置構成から変更することなくウェブ上でオペレーションが実施され得ることである。注目すべき欠点には、ウェブ速度及びレーザー・モーションの制御に関連する同期器具の必要性、並びに正確な光学アライメントを維持することの困難さが含まれる。
図1がこの実施例の基本配置構成を示す。
【0024】
動的焦点シフトのアプローチが好ましい。その理由は、動的焦点シフトのアプローチが、所望のウェブ移動速度及びウェブ幅を用いてのオペレーションを可能にするためにビーム掃引速度を十分に高速するのを可能にするからである。他の実施例も考察したが、本デザインの固有の制約に基づき、考慮に入れないことにした。材料を横断するように光学エミッタを横方向に往復させる機械的駆動装置も考察した。このような駆動装置は市場において十分に成熟したものであり、機構の入手及び保守管理が容易なものとなっている。このような駆動装置は非常に小さい焦点を提供し、非常に小さい焦点は、ウェブに対してのレーザーの近接度を理由として、ウェブ上に非常に高いレーザー強度を適用することなり、さらにそれにより、低パワー(低コスト)のレーザーを使用するのを可能にする。往復させるこの実施例の注目すべき欠点には、機械的駆動システムの制約を理由として制限される走査速度(40m/秒である目標の光学ヘッド駆動速度に対して、約4m/秒以下)、機械的駆動装置の故障から個人を保護するための、機械上に必要な追加の安全機構、並びに、材料摩滅及び疲労の問題が含まれる。
【0025】
構成の特性が既知であり、動的焦点調整システムがそれに応じて調整される場合、非平面的な構成でのウェブ材料のレーザー加工も達成され得る。ウェブの幅をレーザーが横切るときの焦点距離の変化を最小にするために動的焦点調整を用いずにスキャナの湾曲した焦点面に適合させるようにレーザー掃引エリア内のウェブを湾曲させる実施例も考察した。これは加工速度に関して動的焦点シフトのアプローチの多くの恩恵を受けることができ、また、動的焦点シフト機構の必要性を排除するが、平坦な幾何学的配置から一様に湾曲する幾何学的配置への高速材料ウェブの移行における及び平坦な幾何学的配置への復帰における困難さによりこれらの利点が相殺されることになり、またこのような困難さにより、一部のウェブ材料によっては、このアプローチが実行不可能となる可能性もある。
【0026】
ビーム光学素子を上下運動で機械的に往復動させるためのデバイスを組み込む実施例も考察した。この実施例では、光学素子の往復動時にウェブを横断させるようにレーザー・ビームを横方向に送達するために、ビームがウェブの上方に位置決めされる傾斜鏡の方向に誘導される。傾斜鏡による反射後にビーム・サイズ及び形状を管理するためにレーザーの波面を調節するための動的焦点調整システムが組み込まれ得る。この実施例の利点は、この実施例が平坦な材料ウェブ上で動作して、コンパクトな光学ヘッド及び焦点変更システムを利用可能にする、ことである。欠点には、傾斜鏡のサイズが必然的に大きくなり、光学品質が上がること、及びウェブ移動速度を補償するのに焦点変更システムが必要になることが含まれる。
【0027】
プロトタイプの試験を通して、レーザー又は光学スキャナ装置を移動させるのに機械的駆動システムの使用を最小にするような、動的焦点変更システムを組み込む実施例が、能力及び経済性の最良のバランスを実現するものでると判断した。
【0028】
動的焦点調整を組み込むビーム送達システムの第1の実施例が
図1に示される。レーザー・ビーム送達システム10が、ビーム200を放射する超高速レーザー(レーザー・ヘッド、電力供給装置、及び冷却装置を有する)20と、信号線302、304、305、308、312を介してレーザー・ビーム送達システムのオペレーションを管理するための制御装置30と、ウェブ100の第1の表面101上の基準位置110に対応する公称焦点距離f
0に合わせてビームの発散を調整するための1つ又は複数のレンズ61、62を有する視準システム60と、電力供給装置、及びビーム源に隣接するところでウェブの第1の表面101を横断させるようにビームを横方向に誘導するための1つ又は複数の可動鏡51、52を有するガルバノ・スキャナ50と、基準位置から調整した焦点距離f
1までウェブ表面を横断するようにスキャナ50により横方向に偏向されるときのビームの焦点を合わせるための可変鏡(鏡組立体及び駆動装置を有する)42の形態である動的焦点調整装置40と、を有する。システムを中に配置することが可能となる空間的制約に適合するようにビームの方向を変えるための追加の鏡70が提供され得る。レーザー・ビーム送達システム10が、材料のウェブ100を加工するためにレーザー・ビーム送達システム10まで送達するための供給経路を有する従来のウェブ加工機械と共に使用されるように適合される。供給経路に沿うウェブの移動が、機械を通るウェブの速度を制御するために電力供給され得るか又は別のやり方で管理され得るフィード・コンベヤ120を有する1つ又は複数のロールによって達成される。フェード・コンベヤ120の速度制御が制御装置30によって管理され、レーザー・ビーム送達システム10のオペレーションと調和する。
【0029】
図4を参照すると、制御装置30がさらに、
図4で方向Vとして示されるウェブ移動の方向に対して横方向である軸105を基準としてビーム掃引軸105aの角度を角度Θで調整することができる。この角度調整は、ウェブの得られるレーザー加工をウェブに対して横方向(垂直)にするように、ビーム掃引の時間間隔中にウェブの移動距離をオフセットするのに必要なものである。この例示の機械では、ウェブが最大3.6m/秒(700ft/分)の速度で供給経路に沿って移動する。ビーム掃引の速度は、約100mm(4in)であるウェブに沿う所望の最小の穿孔間隔に対応するように必然的に高速なものとなり、これは、ウェブを横断するビームの毎分約2,100回の掃引と同等である(約35Hz以上の掃引速度)。
【0030】
レーザー・ビームは、ウェブの融除によりウェブ材料に穿孔を施すための手段である。ビーム・パワー及び強度の正確な制御が必須となる。プロピレン・ベースの不織布などの材料は、過剰なレーザー・エネルギーにより容易に炭化又は変色してしまう。本システムは、ホイル又はフィルムなどのより高密度の材料を綺麗に切断するのに十分なエネルギーを送達することが十分に可能であるべきである。穿孔プロセスの場合、スキャナ50が、成形されてその焦点距離を調整されたレーザー・ビーム240を、ウェブを横方向に横断させるように誘導し、所望の穿孔パターンにおいて分断されないウェブの部分を残すためにビームを一時的に中断する。別法として、所望の穿孔パターンを作り出すために分断されないウェブの部分を残すために、レーザー20のビーム自体が一時的に中断されてもよい(シャッターを閉じられてオフ状態にされる)。通常の穿孔パターンは、6mmから25mmの範囲のタブの間の間隔(ウェブの分断された部分)において0.5mmから2mmの間のタブの幅(分断されないウェブの部分)を変化させる。さらに、レーザー20が、ビーム経路に沿ってウェブを完全に分断するために掃引中に継続的に動作させられ得る。
【0031】
例示のレーザー20は、1027+/-5ナノメートル(nm)であるガウス・ビーム中心波長と、170フェムト秒(fs)であるパルス持続時間と、1kHzである繰返し周波数と、6ワット(W)である最大平均パワーと、を用いて構成される、Light Conversion、UABによって供給されるPHAROSモデルのフェムト秒レーザーである。パルス持続時間及び/又は繰返し周波数の調整により、ウェブに送達されるパワーを管理することが可能となる。本方法で一般に加工される1つのウェブ材料に穿孔を施すための最良の結果は、1.8ワット(W)のウェブに対してのパワー送達を用いて達成される。
【0032】
視準システム60が、可変鏡42から焦点距離を調整されたビーム202を受け取り、スキャナ50まで誘導されるビームを成形し、それにより、焦点距離を調整された成形されたビーム206を作り出す。このステップはビームがウェブの第1の表面101に当たるポイントにおいてビーム形状を改良し、それにより、必要となるビーム強度を提供し、ウェブ切断/穿孔性能を向上させる。視準システム60が、ウェブ100の第1の表面101上の基準位置110に対応する公称焦点距離f0に合わせてビームの発散を調整するための1つ又は複数のレンズ61、62、63を有する。視準を合わせることにより、ビーム内により一様なエネルギー分布を作り出すためにビーム幅を跨ってのエネルギー分布が制御される。その効果は、ウェブ材料のより綺麗な「切断」を実現することである。
【0033】
さらに、オペレーション中の実時間においても、又は好適である、既知のウェブ材料のための初期の機械セットアップ構成中であっても、布又はウェブによるレーザー・エネルギーの吸収を増大させるように、レーザー強度が制御装置30及び/又は視準システム60よって操作され得る。さらに、レーザー強度を操作することにより、低パワーでありしたがってより経済的であるレーザーを所与のプロセス用途で使用することが可能となり得る。不織材料のウェブは一般に非常に薄く、一部の事例では、繊維が非常に疎となるように網状にされており、それによりウェブ媒体内に大きい空隙が得られ、その結果、ウェブによるエネルギー吸収が低減される。理想的な穿孔性能のためのウェブによるレーザー・エネルギーの吸収を増大させることは、ウェブの原子及び分子が複数の光子を同時に又は連続的に吸収するのを可能にするように非常に高い強度でレーザーを動作させることにより、達成され得る。ビーム強度を増大させることにより、低パワーのレーザーを使用するのを可能にしながらウェブの吸収が改善される。この機構はウェブ材料の屈折率を修正し、したがって、元の入射レーザー・ビームの波長をシフトさせる。シフトした波長は異なるかたちでウェブと相互作用し、したがって、操作されないレーザー・ビームよりも多量のエネルギーをウェブ内に与えることができる。さらに、レーザー強度を操作することにより、低パワーでありしたがってより経済的であるレーザーを所与のプロセス用途で使用することが可能となり得る。
【0034】
さらに、パルスの時間的勾配(レーザー強度(l)の時間(t)に関する導関数dl/dt)を十分に増大させるために、レーザー・パルス形状が制御装置30によって調節され得、その結果、ウェブ内で自己位相変調(SPM:Self-Phase Modulation)が起こる。この機構は元の入射レーザー・ビームの波長をシフトさせ、それにより、スペクトルの線形吸収部分からスペクトルの非線形吸収部分までウェブ材料の屈折率を修正する。シフトした波長は異なるかたちでウェブと相互作用し、したがって、元のシフトされていないビーム波長よりもウェブによるエネルギー吸収を増大させる。
【0035】
例示の視準システム60が、-100mmの焦点距離を有するThorlabsモデルLC1120-Bの第1のレンズ61と、+500mmの焦点距離を有するThorlabsモデルLA1908-Bの第2のレンズ62と、+1000mmの焦点距離を有するThorlabsモデルLA1464-Bの第3のレンズ62とを有する。
【0036】
スキャナ50が、初期位置110aから最終位置110bまでのウェブを横断するレーザー・ビームの移動を制御する。穿孔の場合、スキャナ50が、ウェブ上でのビーム衝突位置を示す信号を制御装置30に提供する。次いで、制御装置30が、ビーム掃引中にマーク・モード(オン状態)とジャンプ・モード(オフ状態)との間でレーザー・ビームを繰り返すための信号を始動し、それにより、ウェブ上に所望の穿孔パターンを発生させる。例示のスキャナ50は、SCANLABによって製造されたモデルhurrySCAN(登録商標)20のx-yスキャナである。
【0037】
可変鏡42が、光学素子と、ビームをそこまで誘導するところであるウェブの第1の表面101との間の距離に基づいてレーザー・ビームの波面を補正及び/又は調整するためにその形状を変えることができる光学機械デバイスである。可変鏡42がウェブ幅に跨る複数の位置において較正され得、動的焦点調整プロセスにおける係数を設定するために補間アルゴリズムが適用され得る。可変鏡42が、一般的なスキャナ構成のための予め定められる設定を有することができる(例えば、より高い固定のロケーションからの横方向の平面掃引)。可変鏡42の設定を確立することにより、ウェブ幅を横断してレーザー・ビームが走査するときのレーザー焦点距離を変え、ビーム・フォーカスがウェブの第1の表面101上で正確に位置決めされることが保証される。例示の可変鏡は、Iris AOによって製造されたモデルPTT111である。
【0038】
制御装置30が、システム10のオペレーションを管理するのに必要であるコンプータ・ハードウェア及びソフトウェアを有する。制御装置30が、入力信号を受信するように、並びに、信号線302、304、305、308、312を介して、レーザー20、動的焦点調整装置40、ウェブ・コンベヤ120、及びガルバノ・スキャナ50まで出力信号を誘導するように、動作可能である。制御装置30が、材料ウェブ100を横断してビームが走査させられるときに動的フォーカス調整装置40を使用してレーザー・ビーム・フォーカスを動的に調整する。例示のシステムでは、制御装置30が、LabVIEW(登録商標)及びMATLAB(登録商標)のプログラミング及びシミュレーション・ソフトウェアで作られるカスタム制御アプリケーションを実行する従来のパーソナル・コンピュータを有する。
【0039】
レーザーのオペレーション、フォーカスの調整、並びにスキャナのオペレーション及び同期は、制御装置30を介してソフトウェア制御される。予め開発されたアップロードされたファイルによって入力が提供され得るか、又はシステムとのユーザー・インターフェース(例えば、モニタ及び入力デバイスを有する制御入力ステーション)を使用して制御コンピュータ・システムに直接入力が提供され得る。これにより、レーザー・ビーム送達システム10の構成を容易に入力及び修正することが可能となる。このモジュール型の配置構成により、各サブシステムを個別に構成して試験することが可能となる。所望の穿孔構成を画定する穿孔パラメータ(例えば、穿孔速度、並びに各々の切断箇所及びノッチの位置)、並びに材料性質などが入力ファイルのライブラリ内で予め定められ得、それにより使用者による選択が容易になる。ウェブの幅と、ウェブ加工においてビーム・フォーカスを維持しなければならないその精度とに応じて、可変鏡42が起動又は停止され得る。レーザーの状態が、レーザー・サブシステムに通常組み込まれるパルス・セレクタを通して独立して制御され得る。スキャナが、速度及び位置さらには反復的な進行(iterative progression)のために独立して制御され得る。各モジュールが、システム・セットアップ及びトラブル解決作業を向上させるためのエラー監視を含む。このような入力は、通常、機械をセットアップするときに材料の所与の移動量(run)にわたって提供されるが、本システムは実時間の調整を行うことができる。
【0040】
ビーム波面の制御は、ウェブ上の穿孔品質を維持するために必須である。動的焦点調整装置が存在しない場合、ビームがその共焦点範囲内のみで焦点の合った状態を維持することになる。例示の実施例では、これにより、焦点の制御が被加工物の幅の約4分の1のみに制限される。この範囲の外側ではスポットがフォーカスから外れる。その理由は、ウェブの縁部までの光路長がウェブの中心までの光路長とは異なるからである。ビームがウェブと相互作用するところである各位置において波面を制御するように調整される動的焦点を利用することにより、ウェブの全幅に跨ってのウェブとのビームの相互作用(融除)を一定にすることが可能となる。
【0041】
動的焦点調整装置を使用しての波面の変化を、
図6を参照して説明する。波面モデルが、ウェブとのビーム衝突位置の関数として焦点面の位置を確立し、これが、ゼロ基準点としてウェブの横方向中心線を使用して表される。窪み距離(sag distance)(距離OB)の関数として動的焦点調整装置の曲率変化が、モード4のゼルニケ係数によって決定される。計算した動的焦点調整装置の曲率AOD(実線307)が、球面曲率AOD(破線309)によって近似される。球の曲率半径が点Cのところの中心に配置されるRmである。光学軸(OC)までの縁部ポイントの高さがhである。Zemaxのモデルリングが、所与の像平面位置でレーザー・ビームの焦点を合わせるようにゼルニケ係数を最適化する。最初に、動的焦点調整装置が、基準位置110(
図6の点「O」と等しい)に対応する平坦基準面306に基づいて設定される。位相を変えるようにゼルニケ・モードが設定される場合、表面が非平面となる。例示のシステム内の光学システムの全体が軸対称であり、したがって、ゼルニケ級数の焦点ぼけ(defocus mode)モード(モード4)のみを考察する。円筒座標系でのゼルニケ・モード4 Z4の多項式が以下のようになる:
【数1】
ここで、ρは、口径に対して正規化された半径方向距離である。
【0042】
動的焦点調整装置の湾曲面プロフィールAODが、係数A4によってスケール調整されるゼルニケ・モード4によって表される放物面である。計算した放物面曲率が、点A、O、及びDを通過する球面の曲率によって近似される。球の中心がCのところにあると想定すると、球の曲率半径がRm(ACの長さ)となる。例示の動的焦点調整装置の入口直径が3.5mmである(
図6に示されるようにh=1.75mm)。窪み距離s(OB)に関しては、ρ=0とρ=1との間の長さの差に等しい。
【数2】
【0043】
半径Rmが以下のように直角三角形ABC内で計算され得る:
【数3】
【0044】
窪み距離の平方はhの平行と比較して非常に小さいことから、この計算では省略され得る。
【0045】
例示の動的焦点調整装置の入口での入射波面曲率半径がRi=19mである。レーザー伝播方向と動的焦点調整装置の法線との間の角度が小さいと想定すると、動的焦点調整装置により得られる波面半径Roが以下のように計算され得る:
【数4】
【0046】
結果として、得られる波面の曲率が、モード4の係数A4を設定することによって制御され得る。したがって、像平面位置が、A4を設定することによって調整され得る。
【0047】
像平面位置を変えるためにモード4の係数A4を設定することは、光学システムのモデリングの「順行的な方法(forward method)」である。「逆行的な方法(backward method)」は、像平面位置を設定して、像面上でフォーカスを得るようにA4を決定することである。逆行的な方法がより有利であることが分かっている。その理由は、作動距離の焦点距離が既知であり、事前に設定され得るからである。
【0048】
例示の実施例で、ウェブ100が107センチメートル(42インチ)の幅Wを有し、最大3.6m/秒(700ft/分)の速度Vでウェブ加工機械を通過して移動する。ウェブ100が平面内に配置され、それにより、ウェブを横断してビームが掃引するとき、スキャナ50からウェブの隣接する表面101との衝突点までのビームの長さが変化することになる。ウェブの幅を基準としてスキャナ50を中心に配置することにより、公称焦点距離f
0(
図3では206aによって表される)が最小焦点距離を確立し、ウェブ中心線から変位されるウェブの部分にビームが当たるときの焦点距離に対して調整を行うには、ウェブ中心線110からのビーム衝突位置の変位の増大につれて焦点距離の漸進的増分2061 f
0+d(
図3の206bによって表される)が必要となる。ウェブ中心線110からのビーム衝突位置の変位がウェブの縁部110a、110bのところの最大値に達すると、最大焦点距離値f
1(
図3の206cによって表される)が、公称焦点距離f
0(
図3の206aによって表される)に対しての最大増分2062を必要とする。
【0049】
動的焦点調整を組み込むビーム送達システムの第2の実施例が
図2に示される。レーザー・ビーム送達システム10が、ビームを放射する超高速レーザー(レーザー・ヘッド、電力供給装置、及び冷却装置を有する)20と、レーザーのオペレーションを管理するための制御装置30と、ウェブ100の第1の表面101上の基準位置110に対応する公称焦点距離f
0に合わせてビームの発散を調整するための1つ又は複数のレンズ161、162を有する視準システム160と、電力供給装置、及びビーム源に隣接するところでウェブの第1の表面101を横断させるようにビームを横方向に誘導するための少なくとも1つの可動鏡51、52を有するガルバノ・スキャナ50と、基準位置から調整した焦点距離f
1までウェブ表面を横断するようにスキャナ50により横方向に偏向されるときのビームの焦点を合わせるためのfシータ・レンズと一般に称される平面走査レンズ142の形態である焦点調整装置140と、を有する。システムを中に配置することが可能となる空間的制約に適合するようにビームの方向を変えるための追加の鏡70が提供され得る。
【0050】
平面走査レンズ142の焦点調整装置は、一方の縁部から反対側の縁部までスキャナがビームを掃引させるときに平面(この事例では、隣接する表面101の平面)上でビームの焦点の合った状態を維持するのを可能にする。平面走査レンズ142は、上述した第1の実施例で使用される可変鏡と比較してレーザー・ビーム送達システム10の信頼性及び耐久性を向上させることになる受動的な構成要素である。fシータ・レンズの追加の利点は、平面走査レンズがビーム調整光学素子の一部の役割も果たすことを理由として、視準システム160が単純化され、それにより、可変鏡を使用するシステムと比較して、システム内で必要となる分離したレンズの数が低減される、ことである。
【0051】
例示の第2の実施例では、視準システム160が、-100mmの焦点距離を有するThorlabsモデルLC1120-Bの第1のレンズ161と、+500mmの焦点距離を有するThorlabsモデルLA1908-Bの第2のレンズ162と、を有する。視準システムに存在するビームが、SCANLABによって製造されたモデルhurrySCAN(登録商標)20である例示のガルバノ・スキャナ50を通過するように誘導される。走査偏向ビームがSill Optics Model S4LFT0910/328である平面走査fシータ・レンズ142まで誘導され、平面走査fシータ・レンズ142がビームの最終発散を調整し、公称位置110(焦点距離f0)からウェブの縁部110a、110b(調節された焦点距離f1)の方へのビーム偏向の程度に応じて、ビームの焦点距離を変更する。
【0052】
レーザー・ビーム送達システム10が、ウェブの視認面(viewing surface)を視認するように、及びウェブを通過するレーザー・ビームの部分を検出するように、位置決めされる感知要素82を有する光学センサ80をさらに有する。レーザー・ビームのこの部分は、レーザーがウェブを切断したことを示すものである。視認面は、第1の表面101(表面上でレーザーの衝突を観測する)、隣接する第1の表面101の反対側のウェブの第2の表面102(ウェブを貫通するレーザーを直接視認する)、又はウェブの第2の表面102に隣接して位置決めされる視認基体(viewing substrate;視認基板)130(基体上でレーザー・ビームが反射されるときのウェブを通過するレーザー・ビームの部分を間接的に視認する)であってよい。レーザーが、可視スペクトル又は不可視スペクトルの範囲内にある波長を有するビームを放射することができる。可視スペクトル光が感知要素82により直接視認され得、ビームがウェブ材料を通過するときに輝度閾値が確立される。第2の表面102に隣接するところに視認基体130を配置することにより、可視スペクトル・レーザーが感知要素32によって検出され得る。レーザー・ビームがウェブ材料を貫通するとき、レーザー・ビームが視認基体130と相互作用して光学信号を発生させる。光学信号が感知要素82にとって可視であり、したがって、信号の位置及び輝度を記録するのに使用され得る。光学センサ80の感知要素82が、ビームによって発生するウェブ内の穿孔の程度及び構成を示すビーム位置及びビーム強度を感知するように構成される。次いで、センサ80が穿孔の程度及び構成を示す信号を発生させ、これらのフィードバック信号を制御装置30に伝達する。制御装置30が、フィードバック信号を、使用者によって選択的に入力される目標値と比較し、ウェブの所望のレーザー穿孔を実施するためにレーザーのオペレーションを管理するための出力信号を発生させる。光学センサ80が、穿孔の実施において、レーザーの有効性、つまりウェブ材料によって吸収されるエネルギーを感知する。したがって、レーザー20に対して調整を行うことは、吸収エネルギーを変更することを意図され、レーザー・パルス・レート、又はレーザー・パルス・エネルギー、或いはその組み合わせを変更することによって達成され得る。
【0053】
光学センサ80が、ウェブ材料及び/又は必要とされる加工の種類に基づいてレーザー・ビーム送達システム10を最適化するのを可能にする。光学センサ80が穿孔パターン及び空間的間隔を検出することができ、制御装置30にフィードバックを提供することができ、このフィードバックが、入力される穿孔パラメータと比較され、ウェブ速度、掃引速度、ビーム掃引の角度Θ、又はマーク及びジャンプ状態の制御、などの加工パラメータの実時間の調整を可能にし、その結果、所望の穿孔構成がウェブに最適に適用されるようになる。ビーム出力強度を変化させることにより、ビームをパルス化することにより、又はポンプ電流を変えることにより、レーザー・パワーが制御され得る。ビーム内の連続的なエネルギー・レベルとは異なり、ウェブ材料に入力されるエネルギーをさらに制御するために、ビームがオン状態とオフ状態との間を迅速に繰り返され得る(調節され得る)。入力されるエネルギーの正確な管理が、材料を燃焼又は変色させることなく、ポリプロピレンなどの感熱材料に対して切断を実行するのを可能にする。理想的な切断性能を達成するために、ビーム強度(エネルギー)、パルス周波数、及びパルス持続時間が、単独で又は組み合わせで、変えられ得る。加えて、ウェブを横断するビーム掃引移動のスキャナ制御速度も調整され得、機械を通るウェブ速度で必然的に生じる制約の範囲内で、材料に入力されるエネルギーに影響を与えることができる。これらの変化のすべてが、光学センサ80からの実時間の性能フィードバックを使用して、制御装置30によって管理され得る。
【0054】
図5が、材料ウェブ100の第2の表面102に隣接して視認基体130が配置される光学センサ80の一実施例を示す。レーザー・ビームがウェブ材料を貫通するとき、レーザーのビーム波長が光スペクトルの可視部分の範囲内にない可能性があるにしても、レーザー・ビームが視認基体130と相互作用して光学信号を生成する。視認基体上で生成される光学信号が、感知要素82にとって可視であって感知要素82によって検出されるパターンを作り出す。第2の光学センサ84が、隣接する表面101を視認するように、及び過剰なレーザー・パワーにより起こる可能性があるウェブ材料の変色を検出するように、位置決めされ得る。さらに、感知要素86を有する第2の光学センサ84が制御装置30に動作可能に接続される。制御アルゴリズムが、第1のセンサ80及び第2のセンサ84からの入力を受信するように、並びに両方のフィードバック入力の組み合わせに基づいてレーザーのパワー出力を管理するように、構成され得る。
【0055】
光学センサ80が、視認基体130からビームが反射される場合などにおいて、直接視認される場合であっても又は間接的に視認される場合であっても、レーザー・ビームを感知するように構成される。例示のシステムでは、光学センサ80が、視認基体130に焦点を合わせている、LogitechによるModel C270などの、従来のウェブ・カメラである。レーザーがウェブに穿孔を施して基体に当たるとき、可視光学信号が生成され、センサによって検出される。制御装置30が、レーザー活性化の前に光学センサ80から視認基体130のベースラインのイメージを受信する。次いで、制御装置30が、視認基体に対してレーザーが相互作用するときに光学センサからの信号を比較し、穿孔パターンの表示を達成するためにベースラインのイメージを「取り去る」。次いで、この表示が、制御装置に保存される所望のパターンと比較される。次いで、制御装置が、所望の穿孔パターン及び穿孔品質を達成するために、レーザー20、スキャナ50、及び/又は動的焦点調整装置40を調整することができる。
【0056】
例示の第2の光学センサ84が、LogitechによるModel C270などの、従来のウェブ・カメラをさらに有することができる。第2のセンサ84の目的は、ウェブ材料の燃焼又は炭化を検出することである。好適なウェブ材料は通常は色が白色である。制御装置30が、比較を容易にするために、第2の光学センサ834からの画像信号を、RGBフォーマットからグレー・スケール・フォーマットへ変換するように構成される。燃焼閾値は、レーザー経路に隣接するところのグレー・スケール画素数に関連するものである。次いで、制御装置30がグレー・スケール信号をこの閾値と比較し、ウェブ基材の変色を最小にするために、この比較に応じてレーザー・パワーを調整する。
【0057】
機械に対しての変更状態に反応して制御装置によりビームの公称焦点距離を調整するのを可能にするために、平面走査レンズとの組み合わせで可変鏡が組み込まれ得る。機械の熱膨張(thermal growth)を原因とする光路の変形又はウェブ厚さの変化が、光学センサによって検出される穿孔品質の変化によって検出され得、可変鏡の調整によって補償され得る。各々のビーム掃引において焦点距離を調整するのに可変鏡を使用するような第1の実施例とは異なり、この構成は、経時的に起こる初期の機械較正から変化状態を補償することになる。
【0058】
図7から
図9を参照すると、レーザー・エネルギー吸収を操作するための及びウェブ100との関連でビーム送達システム10を物理的に構成するための代替の手段。この構成では、ビーム操作の最終段階がウェブの第2の側102に隣接して行われ、つまりレーザー源20及びスキャナ50の反対側に隣接して行われる。上で説明した実施例においては視準レンズ63又は平面走査レンズ142によって達成されるものである、最終視準ステップが、この配置構成では、この側からウェブに対して穿孔を施すためにウェブ100を通過して第2の表面102まで通過する低強度のレーザー・ビーム204を反射する、第2の表面102に隣接して位置決めされる反射部材67によって達成される。反射部材67が、
図8に最良に示されるように、第2の表面102に隣接して位置決めされる反射性放物線チャネル68を有する。反射性放物線チャネル68の長さが少なくともウェブ100の幅と同程度である。放射線チャネル68の内向きの表面が鏡面仕上げを施される。放物線チャネル68が、伝えられる低強度のビーム204を反射するための及びウェブの第2の表面102上の焦点を合わせられるスポット209に対してビーム(その焦点距離を調整されて成形されたビーム206)を集めるための焦点距離を有するように構成される。他の実施例と同様に、ウェブに対して穿孔を実施するために、ビームがウェブを横断するように側方に掃引させられる。
図9に示される横軸内の円弧状の湾曲部が、固定位置のスキャナ50からの角度のついた投射を補償する。この放物線チャネルは、金属、セラミック材料又は重合体、及び、鏡面仕上げを適用された薄いフィルム・コーティングで作られ得る。
【0059】
本発明の性質を説明するために記述されて示されてきた、細部、材料、ステップ、及び部品の配置構成の変形形態が、本発明の原理及び範囲の範囲内にある本開示を読んだ当業者によって思い付かれ、当業者によって作られ得る、ことが理解されよう。上記の記述は本発明の好適な実施例を示しているが、本記述に基づいて、本発明の範囲から逸脱することなく他の実施例でも概念が採用され得る。
【国際調査報告】