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特表2022-553918チョコレート製品、原料、方法、及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-27
(54)【発明の名称】チョコレート製品、原料、方法、及び使用
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/00 20060101AFI20221220BHJP
   A23G 1/48 20060101ALI20221220BHJP
   A23G 1/02 20060101ALI20221220BHJP
   A23G 1/40 20060101ALI20221220BHJP
   A23G 1/32 20060101ALI20221220BHJP
【FI】
A23G1/00
A23G1/48
A23G1/02
A23G1/40
A23G1/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022521762
(86)(22)【出願日】2020-10-15
(85)【翻訳文提出日】2022-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2020079081
(87)【国際公開番号】W WO2021074316
(87)【国際公開日】2021-04-22
(31)【優先権主張番号】19203429.6
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20190622.9
(32)【優先日】2020-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002013
【氏名又は名称】ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】アブ-ハーダン, マディアン, オスマン
(72)【発明者】
【氏名】フルーリー レイ, イヴェット
(72)【発明者】
【氏名】ヴァフェイアディ, クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエラ, ジョゼリオ, バティスタ
【テーマコード(参考)】
4B014
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GG06
4B014GG07
4B014GG11
4B014GG14
4B014GG15
4B014GG17
4B014GG18
4B014GK03
4B014GK05
4B014GL01
4B014GP01
4B014GP02
4B014GP12
4B014GP14
4B014GP15
4B014GP23
4B014GP26
4B014GP27
4B014GT02
(57)【要約】
本発明は、テオブロマ属の植物から得ることができる新規組成物と、チョコレート製品の原料としてのその組成物の使用と、を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テオブロマ属の植物由来の材料を製造するための方法であって、
a.テオブロマ属の植物の種子及び/又は種子の一部の、サイズを減少させる工程であって、任意選択で、
i.テオブロマ属の植物のパルプ及び/若しくはパルプ抽出物、及び/又は
ii.テオブロマ属の植物の果実の非パルプかつ非種子部分、の存在下でサイズを減少させるものである、工程と、
b.工程a.においてi.及びii.の両方が存在しない場合、工程aの生成物を、i及び/若しくはiiのいずれか又は両方と混合する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記混合物中のi.及び/又はii.の総量が、前記混合物の重量パーセントとして1.0~80.0である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合物中の種子及び/又は種子の一部の、量が、前記混合物の重量パーセントとして20.0~99.0である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程a.における前記サイズの減少が、粉砕、摩砕、破砕、磨り下ろし、及び/又は粉末化の工程を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a.における前記サイズの減少が、10~500μmのサイズへの減少を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
加工工程a.又はb.が、ペーストを生成し、好ましくはペーストの重量パーセントとして0.5~80の水分含有量を有するペーストを生成する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記種子及び/又は種子の一部が、非焙煎及び/又は未発酵である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記非パルプかつ非種子部分が、珠柄、胎座、内果皮、中果皮、及び/又は内果皮を含む群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程b.の後に前記混合物を発酵させる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記混合物を処理して、前記混合物中の多糖類含有量を低減させる、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記混合物を処理して、前記混合物中の単糖類及び/又は二糖類の含有量を増加させる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記処理が、多糖類含有量を低減させるための酵素、並びに/又は、単糖類及び/若しくは二糖類の含有量を増加させるための酵素による処理を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記処理が、前記混合物中のペクチン、ヘミセルロース、セルロース、及び/又はデンプンの含有量の低減を含み、好ましくは、処理が、ペクチナーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、及び/又はアミラーゼを含む酵素による処理を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記酵素処理が、10℃~80℃で10分~72時間にわたり行われる、請求項12~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項10~14のいずれか一項に記載の処理が、請求項9に記載の発酵の前に、発酵と同時に、及び発酵の後に行われる、請求項9~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記混合物を、好ましくは50℃~200℃の温度で、好ましくは1時間~48時間にわたり、乾燥させて乾燥塊を形成する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記乾燥塊が、重量パーセントとして0.1~10%の水分含有量を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記乾燥塊が、次いで、粉砕、摩砕、破砕、磨り下ろし、及び/又は粉末化の工程によって処理される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
以下の工程:
a.テオブロマ属の植物の種子及び/若しくは種子の一部の、サイズを減少させる工程であって、任意選択で、テオブロマ属の植物由来のパルプの存在下で、サイズを減少させるものである、工程と、
b.工程a.にパルプが存在しない場合、工程a.の生成物をパルプと混合して、混合物を形成する工程と、
c.前記混合物を発酵させる工程と、
d.任意選択で、発酵工程後に前記混合物にパルプを更に添加してもよく、
e.前記混合物を、ペクチナーゼ、キシラナーゼ、セルラーゼ、及び/又はアミラーゼ、並びにそれらの組合せを含む群から選択される酵素によって処理する工程と、
f.前記混合物を乾燥させて、乾燥塊を形成する工程と、
g.前記乾燥塊を、粉砕、摩砕、破砕、磨り下ろし、及び/又は粉末化する工程と、
を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法によって調製された、テオブロマ属の植物に由来する材料。
【請求項21】
前記材料がカカオマスである、請求項19に記載の方法によって調製された請求項20に記載の材料。
【請求項22】
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を含む、チョコレート製品を調製する方法。
【請求項23】
(i)テオブロマ属の植物の種子及び/又は種子の一部と、(ii)テオブロマ属の植物のパルプ及び/又はパルプ抽出物とに由来するペーストであって、
・3.0重量%~20.0重量%の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量と、
・2.0重量%~15.0重量%の総食物繊維含有量、すなわち不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量と、
・20.0重量%~80重量%の水分含有量と、
を含む、ペースト。
【請求項24】
20.0~99.0重量%の前記種子及び/又は種子の一部と、0.0~80.0重量%の非パルプかつ非種子部分と、1.0重量%~80.0の前記パルプ及び/又は前記パルプ抽出物と、を含む、請求項23に記載のペースト。
【請求項25】
(i)テオブロマ属の植物の種子及び/又は種子の一部、並びに(ii)テオブロマ属の植物のパルプ及び/又はパルプ抽出物に由来する乾燥塊であって、8.0重量%~35.0重量%の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量と、18.0重量%~50.0重量%の脂肪含有量と、を含む、乾燥塊。
【請求項26】
総食物繊維含有量が、2.0重量%~40.0重量%、好ましくは4.0重量%~14.0重量%、又は20.0重量%~35.0重量%である、請求項25に記載の乾燥塊。
【請求項27】
請求項20、21、25、又は26のいずれか一項に記載の組成物を含む、チョコレート製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のチョコレート様製品及びチョコレート製品の分野、当該製品で使用するための新規の原料、及び当該新規原料の使用に関する。
【0002】
[背景技術]
カカオ植物は、カカオリカー、カカオバター、及びカカオ粉末を提供するために使用されるカカオ種子を生産するために収穫されることが周知であるが、カカオポッドの他の部分は利用されない。
【0003】
カカオポッドは、外皮、パルプ、及びカカオ豆からなる。パルプは、ポッドを包囲する芳香のある湿潤した塊である。
【0004】
カカオ種子の一次加工では、パルプは、典型的には発酵によって除去され、微生物によって加水分解される。加水分解されたパルプは、業界で「液化物(sweatings)」として知られている。発酵中、パルプは、様々な微生物に基質を提供し、これがチョコレート風味の前駆物質の発生には不可欠であり、前駆物質は後に焙煎過程で完全に展開される。発酵にはパルプが必要であるが、多くの場合、必要以上のパルプが存在する。
【0005】
余剰分のパルプは、カカオゼリー、アルコール及び酢、ナタ、及び加工パルプを製造するために使用されてきた。制御された発酵及び蒸留により、液化物を、40%超のエタノールを含有するアルコールスピリッツにすることができる。生成されたアルコールを更に発酵させて、酢酸を生成することができる。
【0006】
カカオ液化物は、発酵によりナタを製造するのに好適な基質であることが示されており、このナタは、一般的にはココナツ水を発酵させることにより得られる生成物である。
【0007】
加えて、未加工のカカオパルプは、スムージー及びその他のいわゆる「健康」飲料を製造するために使用されている。しかしながら、パルプの組成及び利用可能性は、その商業上の有用性に影響を与えている。
【0008】
本出願人は、この材料を、食品の製造、具体的にはチョコレート製品の製造においてより効果的に利用する手段を、国際公開第WO2019115731号、同第WO2019115735号、及び同第WO2019149909号において提供した。
【0009】
欧州特許第3114939号及び同第3114941号は、カカオパルプを甘味料として用いる可能性について言及している。しかしながら、これらの刊行物は、実施する方法について実際には開示していない。これらの刊行物はまた、以下で論じる組み合わされた方法(combined process)ではなく、従来のチョコレート製造方法の特定の三相分離の変形例に関する。
【0010】
仏国特許第FR2828379号は、栄養組成物に、カカオ豆の中身ではなくカカオ外皮を用いることに関する。
【0011】
米国特許第4331692号は、カカオ豆の残余の部分から一旦分離されたカカオパルプの使用、並びにこの材料を含む食品製品に関する。
【0012】
本発明は、テオブロマ(theobroma)属の植物の果実の別の部分を利用する方法及び製品を提供することを目的とする。これらの製品及び方法により、持続可能性における利点が得られる。更に、本発明は、当該植物中の有望な原料を商業的に有効なものにする方法を提供する。
【0013】
更に、本発明は、新しい感覚特性を付与する完全に新しい製品を提供する。具体的には、処理により、カカオマス代替物の甘味を増加させ、かかる製品のチョコレートへの加工性を維持することができる。
【0014】
本出願はまた、発酵方法及び生産方法における制御可能な工程で種子の一部を組み合わせることによって、これらの新規組成物を用意する際の発酵方法の制御の向上を提供する。
したがって、本発明は、
・個々の豆ではなくペーストを発酵及び/又は酵素加水分解することによる、製品及び方法の一貫性の改善(不十分な発酵豆の低減);
・特定の制御された微生物に対してペーストの制御された発酵を可能にすること;
・カカオシェルを、潜在的な不適切な条件下での発酵及び乾燥に曝露させないことによる、汚染の低減;
・より合理化された方法の一部として制御可能な様式でチョコレート製品の繊維含有量を増加させること;並びに
・方法から個々の豆を除外することによる、より均質な色づき(dying)条件及び焙煎条件;を如何にして提供するかという課題の解決を可能にする。
【0015】
[発明の概要]
本発明は、テオブロマ属に含まれる植物から得ることができる組成物を含む、製品に関する。本発明はまた、テオブロマ属の植物から得ることができる、新規組成物を提供する。
本発明は、
・テオブロマ属の植物に由来し、好ましくはペーストの形態である、材料と、
・上記の材料の、処理された、好ましくは酵素により処理された状態のもの(version)と、
・上記材料の発酵された状態のものと、
・上記材料の乾燥された状態のものと、
・上記材料の焙煎された状態のものと、
・上記材料を調製するための方法と、を提供する。
【0016】
好ましい実施形態では、上記材料は、チョコレート製品組成物の製造における中間製品として使用される。
【0017】
更に、本発明は、テオブロマ由来の材料及び組成物の甘味を増加させるための方法を提供する。
【0018】
具体的には、本発明は、テオブロマ属の植物由来の材料を製造するための方法を提供し、この方法は、
a.テオブロマ属の植物の種子及び/又は種子の一部の、サイズを減少させる工程であって、任意選択で、
i.テオブロマ属の植物のパルプ及び/若しくはパルプ抽出物、及び/又は
ii.テオブロマ属の植物の果実の非パルプかつ非種子部分、
の存在下でサイズを減少させるものである、工程と、
b.工程aにおいてi.及びii.の両方が存在しない場合、工程aの生成物を、i及び/若しくはiiのいずれか又は両方と混合する工程と、を含む。
【0019】
本発明はまた、好ましくは、上記混合物を発酵させる工程を含んでもよい。
【0020】
更に、本発明は、上記方法によって製造される組成物を提供する。
【0021】
本生成物は、テオブロマ属の種子から得られるだけでなく、好ましくはかかる果実のパルプ部分及び/又は非パルプかつ非種子部分に由来する糖も組み込んでいることから、好ましくは従来のカカオマス/リカーの代替物として説明され得る。
【0022】
好ましくは、本発明は、好ましくは糖を無添加であり、本発明の組成物から得ることができる組成物を含む、チョコレート製品を提供する。
【0023】
本発明は、添加糖の低減又は完全な排除に関して有利な特性を提供し、甘味は、カカオポッドのチョコレートの風味に寄与する他の成分も含有することが好ましい天然の原材料から提供される。
【0024】
更に、本発明は、テオブロマ属の果実の成分中の糖含有量を増加させる手段を提供する。
【0025】
したがって、本発明は、カカオマス、カカオバター、及び/又は、カカオ粉末の原材料中に存在する天然糖を提供することによって、添加糖の代替を提供する。
【0026】
更に、本発明は、チョコレート製造方法の、通常であれば廃棄されてしまう副生成物の使用を提供する。したがって、本発明は、持続可能性及び/又は風味の差別化に関して利点を提供する。
【0027】
一実施形態では、混合物内の成分を、好ましくは酵素加水分解して、多糖類含有量を低減させる。一実施形態では、混合物の処理により、単糖類及び/又は二糖類及び/又はオリゴ糖類の含有量を増加させてもよい。
【0028】
酵素を用いる処理により、本発明の組成物を含有するチョコレート製品、好ましくはチョコレートの口当たりが改善され得る。
【0029】
一実施形態では、混合物中のパルプ又はパルプ抽出物を酵素により処理することで、パルプ又はパルプ抽出物の粘度を低下させる。本発明の態様は、組成物を製品に加工することに関して利点を提供し、及び/又は過度に粘性の原材料を使用することにより生じ得る望まれない官能特性を排除する。
【0030】
具体的には、本発明は、特許請求の範囲に記載される組成物、方法、及び使用を提供する。
【0031】
[発明を実施するための形態]
パルプ、種子、及び果実、並びにその後の混合物
好ましくは本発明で使用するためのパルプは、植物、又はテオブロマ属由来の植物から得られる。この植物属は、テオブロマ・アングスティフォリウム(Theobroma angustifolium)、テオブロマ・ビコロール(Theobroma bicolor)(モキャンボ)、テオブロマ・カカオ、テオブロマ・カヌマネンセ(Theobroma canumanense)、テオブロマ・グランディフローラム(Theobroma grandiflorum)(クプアス)、テオブロマ・マンモスム(Theobroma mammosum)、テオブロマ・ミクロカルプム(Theobroma microcarpum)、テオブロマ・オボバツム(Theobroma obovatum)、テオブロマ・シミアルム(Theobroma simiarum)、テオブロマ・スペシオスム(Theobroma speciosum)、テオブロマ・スティプラツム(Theobroma stipulatum)、テオブロマ・サブインカヌム(Theobroma subincanum)、及びテオブロマ・シルベストレ(Theobroma sylvestre)、を含む。好ましくは、パルプは、カカオ、クプアス、及びモキャンボ、並びにこれらの混合物から、好ましくはカカオ(ココア(cocoa))から選択される。
【0032】
以下に記載される実施形態は、好ましい実施形態のカカオに関して言及される場合、他の全てのテオブロマ属の植物由来のパルプにも等しく適用可能である。
【0033】
本発明において、用語「パルプ」は、それぞれの豆の周りにある粘液様コーティングに関する。
【0034】
本発明において、用語「カカオパルプ」はまた、例えば粉末の形態の乾燥されたカカオパルプも包含する。しかし、例えば、用語「乾燥されたカカオパルプ」が使用される場合、カカオパルプは、乾燥されたカカオパルプに限定される。カカオパルプの供給源は特に限定されず、全ての既知の種類のカカオポッドがパルプを提供し得る。しかしながら、カカオパルプの糖の含有量は可能な限り高いことが好ましい。
【0035】
本発明では、用語「抽出物」は、一般的な辞書の意味、すなわち、カカオパルプの一部であって、カカオパルプの1種以上の成分を含んでおり、元のカカオパルプの1種以上の成分が除去されることにより提供されたものである、抽出物を意味する。本発明では、カカオパルプ中に存在する水は抽出物であると解釈されず、すなわち、カカオパルプ抽出物は水ではない。本発明の一実施形態では、カカオパルプ抽出物は粉末の形態であり、すなわち、カカオパルプ抽出物を乾燥させて水を除去している。
【0036】
本発明において、用語「種子」とは、用語の一般的な辞書の意味に関するものであり、すなわち、例えばカカオ豆などの「豆」と呼ばれる果実のポッドの部分を含む。種子の一部は、核(2つの子葉を含有する)、種皮(豆の殻若しくは外皮)、及び胚(胚芽)、又は断片に分解された種子(すなわち、種子丸ごとではない)を包含する。
【0037】
種子の一部はまた、任意選択でカカオニブ及び/又はカカオシェルを含んでもよく、好ましくは、これらの成分は、豆の焙煎、及び破砕/風選によって調製される。
【0038】
本発明において、果実の非パルプかつ非種子部分は、例えば、珠柄(funicle)、胎座(placenta)、内果皮(endocarp)、中果皮(mesocarp)、及び/又は内果皮、特に好ましくは胎座を含む、果実の残余の部分を包含する。
【0039】
一実施形態では、種子/種子の一部、並びに(i)パルプ及び/若しくはパルプの抽出物、並びに/又は(ii)非パルプかつ非種子部分の成分は、果実から個別に抽出され、次いで再度組み合わせされてもよく、又は果実の関連する部分が組み合わされ、次いでサイズを減少されてもよい。
【0040】
例えば、種子は完全に又は部分的にパルプを除去されていてもよく、次いで種子は、必要量のパルプ及び/又はパルプ抽出物と再度組み合わせられてもよい。
【0041】
一実施形態では、請求項1で混合された成分を個別に抽出することによって、任意の必要な前処理を行ってもよい。例えば、種子及び/又は種子の一部は、本発明によって必要とされる他の成分と組み合わせる前に、酸又はアルカリで処理されてもよい。
【0042】
一実施形態では、パルプ及び/又はパルプ抽出物、並びに/又は非パルプかつ非種子部分は、種子及び/若しくは種子の一部と組み合わせる前に、又は種子及び/若しくは種子の部分と組み合わせた後に処理される前に、本明細書に記載の方法によって、多糖類含有量を低減するように、並びに/又は、単糖類及び/若しくは二糖類の含有量を増加させるように処理されてもよい。
【0043】
一実施形態では、成分は、脱水された状態で添加され、水を用いて再構成されてもよい。一実施形態では、パルプは、組み合わせる前に、例えば、濾過、濃縮、低温殺菌、及び/又はデバクテリアライズ(debacterialise)などの任意の標準的な様式で処理されてもよい。
【0044】
一実施形態では、本発明の工程a.又は工程b.で生成された混合物は、1.0~80.0重量%、好ましくは5.0~75.0重量%、好ましくは10.0~70.0重量%、及び好ましくは15.0~65.0重量%の果実パルプ、果実パルプの抽出物、並びに/又は果実の非パルプかつ非種子部分を含む。言及される割合(%)は成分の実際の重量に関するものであり、すなわち、パルプが相当量の水を含有し得ることにより、乾燥ベースではない。
【0045】
一実施形態では、本発明の工程a.又は工程b.で生成された混合物は、0.0~80.0重量%、好ましくは10.0~75.0重量%、好ましくは20.0~70重量%、及び好ましくは25.0~65.0重量%のパルプ及び/又はパルプ抽出物、好ましくはパルプを含む。言及される割合(%)は成分の実際の重量に関するものであり、すなわち、パルプが相当量の水を含有し得ることにより乾燥ベースではない。
【0046】
一実施形態では、本発明の工程a.又は工程b.で生成された混合物は、0.0~80.0重量%、好ましくは5.0~70.0重量%、好ましくは10.0~50.0重量%、及び好ましくは15.0~55.0重量%の果実の非パルプかつ非種子部分を含む。言及される割合(%)は成分の実際の重量に関するものであり、すなわち、乾燥ベースではない。
【0047】
本発明の方法は、豆の種子でなくパルプでもない部分を、他の原料と共に制御及び加工することができる製造方法の位置に組み込み、種子の使用を可能にする。これによりチョコレートの繊維含有量を増加させることができことは消費者の健康の観点から望ましく、更にはチョコレート塊に繊維源を添加する加工の難しさは最小限に抑えられる。製造方法の遅い段階で繊維源を添加することは、粘度及び加工にまつわる問題につながる可能性がある一方で、方法全体を通して早期の添加は、それ以降の加工の際の制御及び選択肢が増えることとなり、添加の影響は最小限に抑えられる。
【0048】
具体的には、以下に述べるように、極めて好ましい実施形態では、本発明の酵素処理は繊維含有量を低減させることで加工性を高めるものの、本発明の方法は、最終的には従来のチョコレートと比較して繊維含有量を増加させる。本発明の複合効果により、加工の困難性を増加させずに繊維含有量を増加させることがより容易になる。
【0049】
一実施形態では、本発明の工程a.又は工程b.で生成された混合物は、20.0~99.0重量%の混合物、好ましくは25.0~95.0重量%、好ましくは30.0~90.0重量%、及び好ましくは35.0~85.0重量%の種子及び/又は種子の一部を含む。言及される割合(%)は成分の実際の重量に関するものであり、すなわち、乾燥ベースではない。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、粉砕(grinding)、摩砕(milling)、破砕(crushing)、磨り下ろし(grating)、及び/又は粉末化(powdering)の工程を含む、工程a.におけるサイズの減少を提供する。このサイズの減少は、加工される混合物の量に応じて好適である、任意の装置によって実行されてもよい。工業的に利用可能なカカオ豆加工機を使用してもよい。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明の方法の工程a.におけるサイズの減少は、10~500μm、任意選択で20~450μm、任意に30~400μm、好ましくは30~250μm、又は40~150μmへのサイズの減少を伴う。
【0052】
一実施形態では、上記の粒子径は、d50(好ましくは、試料中の粒子の質量の50%がその値未満の直径を有する直径)を指す。好ましくは、Malvern社のMastersizer 2000、Method Scirocco2000乾燥アタッチメント、フラウンホーファー回析理論を使用して、レーザー回折により粒子径d50を測定する。
【0053】
本発明の一実施形態では、加工工程a.又はb.は、ペースト、好ましくはペーストの重量パーセントとして0.5~80の水分含有量を有するペーストを用意する。
【0054】
ペーストを形成することにより、本発明は、任意の発酵工程の一貫性を改善し、すなわち、豆のパイルにおける均質性不足をなくし、発酵が不十分な豆の数を低減させる。発酵塊からの全てのカカオシェル汚染物の除去もまた、本発明において利点を提供し、すなわち、外側のシェルの近くで発酵が生じない。更に、制御された環境下でのペーストの生成は、不衛生な場所で発酵を生じさせる何らかの可能性も排除する。更に、ペースト生成は、特定の微生物、加工助剤などの添加の制御を可能にし、すなわちこれらは、発酵豆よりも均質な基質に、制御された様式で添加され得る。このことは、制御された環境下での風味の改変に、より多くの選択肢を提供する。
【0055】
好ましい実施形態では、ペーストは、ペーストの2.5重量%超の水分、好ましくは5重量%超、及び好ましくはペーストの10重量%超の水分を含む。好ましい実施形態では、ペーストは、70重量%未満の量、好ましくは60重量%未満、好ましくは50重量%未満、及び最も好ましくは40重量%未満の量の水を含む。例えば、2.5%~80%、2.5%~70%、又は2.5%~60%、最も好ましくは40%~70%である。
【0056】
好ましい実施形態では、水分含有量、好ましくは水含有量は、カールフィッシャー分析、メタノール:ホルムアミドが2:1であるOrion2Turbo、又はハロゲン水分分析器(例えば、Mettler-Toledo天秤)、又はオーブン中、試料5g、102℃で5時間での重量損失を用いて測定される。
【0057】
好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の混合物、好ましくはペーストは、3.0重量%超、好ましくは5.0重量%超、好ましくは6.0重量%超、及び好ましくは8.0重量%超の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量を有する。好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の混合物、好ましくはペーストは、20.0重量%未満、好ましくは17.5重量%未満、好ましくは15.0重量%未満、及び好ましくは12.0重量%未満の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量を有する。好ましくは、3.0重量%~20.0重量%、又は5.0重量%~15.0重量%である。言及される割合(%)は成分の実際の重量に関するものであり、すなわち、乾燥ベースではない。
【0058】
乾燥重量を基準とすると、好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の混合物、好ましくはペーストは、10.0重量%~40.0重量%、好ましくは15.0重量%~35.0重量%、及び好ましくは17.5重量%~32.5重量%の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量を有する。
【0059】
好ましい実施形態では、糖は、マルトース、スクロース、フルクトース、ガラクトース、及びグルコースを含む群から選択される糖を含む混合物を含み、好ましくは、この混合物はフルクトース及びグルコースを含む。好ましい実施形態では、本発明の糖混合物は、糖混合物の重量に基づいて少なくとも75重量%のグルコースとフルクトースの組合せを含み、好ましくは少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%を含む。好ましい実施形態では、本発明の糖混合物は、糖混合物の重量に基づいて100重量%未満のグルコースとフルクトースの組合せを含み、好ましくは99.5重量%未満、又は99重量%未満、又は少なくとも95重量%未満を含む。好ましくは、75重量%~100重量%、又は85重量%~99重量%である。
【0060】
好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の混合物、好ましくはペーストが、好ましくは本明細書に開示される酵素処理によって多糖類含有量を低減するように処理されている場合、糖含有量は、好ましくは、未処理混合物よりも増加する。
【0061】
好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の処理された混合物、好ましくはペーストは、6.0重量%超、好ましくは7.0重量%超、好ましくは8.0重量%超、好ましくは8.5重量%超、及び好ましくは9.0重量%超の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量を有する。好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の処理された混合物、好ましくはペーストは、20.0重量%未満、好ましくは17.5重量%未満、好ましくは15.0重量%未満、及び好ましくは12.0重量%未満の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量を有する。好ましくは、6.0重量%~20.0重量%、7.0重量%~20.0重量%、又は8.5重量%~15.0重量%である。言及される割合(%)は成分の実際の重量に関するものであり、すなわち、乾燥ベースではない。
【0062】
乾燥重量を基準とすると、好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の処理された混合物、好ましくはペーストは、10.0重量%~40.0重量%、好ましくは15.0重量%~40.0重量%、好ましくは22.0重量%~35.0重量%、及び好ましくは25.0重量%~35.0重量%の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量を有する。
【0063】
好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の混合物、好ましくはペーストは、2.0重量%超、好ましくは3.0重量%超、好ましくは4.0重量%超、及び好ましくは5.0重量%超の総食物繊維含有量、すなわち、不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量を有する。好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の混合物、好ましくはペーストは、15.0重量%未満、好ましくは13.0重量%未満、好ましくは12.0重量%未満、好ましくは10.0重量%未満、好ましくは9.0重量%未満、及び好ましくは8.0重量%未満の総食物繊維含有量、すなわち不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量を有する。好ましくは、2.0重量%~12.0重量%、又は4.0重量%~10.0重量%である。言及される割合(%)は成分の実際の重量に関するものであり、すなわち、乾燥ベースではない。
【0064】
乾燥重量を基準とすると、好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の混合物、好ましくはペーストは、5.0重量%~45.0重量%、5.0重量%~40.0重量%、5.0重量%~30.0重量%、好ましくは10.0重量%~25.0重量%、及び好ましくは12.0重量%~20.0重量%の総食物繊維含有量、すなわち不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量を有する。
【0065】
好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の混合物、好ましくはペーストが、好ましくは本明細書に開示される酵素処理によって多糖類含有量を低減するように処理されている場合、総食物繊維含有量、すなわち不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量は、未処理混合物又はペーストよりも低減される。好ましい実施形態では、不溶性食物繊維含有量は、可溶性食物繊維よりも大幅に低減される。
【0066】
好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の処理された混合物、好ましくはペーストは、2.0重量%超、好ましくは3.0重量%超、好ましくは4.0重量%超、及び好ましくは4.5重量%超の総食物繊維含有量、すなわち、不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量を有する。好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の処理された混合物、好ましくはペーストは、10.0重量%未満、好ましくは8.5重量%未満、好ましくは8.0重量%未満、及び好ましくは7.0重量%未満の総食物繊維含有量、すなわち不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量を有する。好ましくは、2.0重量%~10.0重量%、又は3.0重量%~8.0重量%。言及される割合(%)は成分の実際の重量に関するものであり、すなわち、乾燥ベースではない。
【0067】
乾燥重量を基準とすると、好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の処理された混合物、好ましくはペーストは、8.0重量%~30.0重量%、好ましくは10.0重量%~25.0重量%、及び好ましくは12.0重量%~20.0重量%又は12.0重量%~17.0重量%の総食物繊維含有量、すなわち不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量を有する。
【0068】
好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の未処理混合物、好ましくはペーストは、4.0重量%超、好ましくは5.0重量%超、好ましくは5.5重量%超、及び好ましくは6.0重量%超の総食物繊維含有量、すなわち、不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量を有する。好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の未処理混合物、好ましくはペーストは、15.0重量%未満、好ましくは13.0重量%未満、好ましくは12.0重量%未満、好ましくは10.0重量%未満、好ましくは8.5重量%未満、好ましくは8.0重量%未満、及び好ましくは7.0重量%未満の総食物繊維含有量、すなわち不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量を有する。好ましくは、4.0重量%~15.0重量%、4.0重量%~10.0重量%、又は5.5重量%~8.0重量%である。言及される割合(%)は成分の実際の重量に関するものであり、すなわち、乾燥ベースではない。
【0069】
乾燥重量を基準とすると、好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の未処理混合物、好ましくはペーストは、5.0重量%~45.0重量%、10.0重量%~40.0重量%、12.0重量%~30.0重量%、好ましくは14.0重量%~25.0重量%、及び好ましくは15.5重量%~20.0重量%の総食物繊維含有量、すなわち不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量を有する。
【0070】
好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の処理された混合物、好ましくはペーストは、0.25重量%超、好ましくは0.5重量%超、好ましくは1.0重量%超、及び好ましくは1.5重量%超の不溶性食物繊維含有量を有する。好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の処理された混合物、好ましくはペーストは、6.0重量%未満、好ましくは5.0重量%未満、好ましくは4.0重量%未満、及び好ましくは3.0重量%未満の不溶性食物繊維含有量を有する。好ましくは、0.25重量%~6.0重量%、又は0.5重量%~4.0重量%である。言及される割合(%)は成分の実際の重量に関するものであり、すなわち、乾燥ベースではない。
【0071】
乾燥重量を基準とすると、好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の処理された混合物、好ましくはペーストは、4.0重量%~15.0重量%、好ましくは5.0重量%~12.0重量%、及び好ましくは5.0重量%~10.0重量%の不溶性食物繊維含有量を有する。
【0072】
好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の未処理混合物、好ましくはペーストは、3.0重量%超、好ましくは4.0重量%超、好ましくは4.5重量%超、及び好ましくは5.0重量%超の不溶性食物繊維含有量を有する。好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の未処理混合物、好ましくはペーストは、10.0重量%未満、好ましくは8.0重量%未満、好ましくは7.5重量%未満、及び好ましくは6.0重量%未満の不溶性食物繊維含有量を有する。好ましくは、3.0重量%~10.0重量%、又は4.5重量%~7.5重量%である。言及される割合(%)は成分の実際の重量に関するものであり、すなわち、乾燥ベースではない。
【0073】
乾燥重量を基準とすると、好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の未処理混合物、好ましくはペーストは、8.0重量%~30.0重量%、好ましくは8.0重量%~25.0重量%、好ましくは10.0重量%~20.0重量%、及び好ましくは11.5重量%~17.5重量%の不溶性食物繊維含有量を有する。
【0074】
したがって、極めて好ましい実施形態では、本発明は、
・3.0重量%~20.0重量%の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量と、
・2.0重量%~15.0重量%の総食物繊維含有量、すなわち不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量と、
・20.0重量%~80重量%、好ましくは40.0重量%~70.0重量%の水分含有量と、を含むペーストを提供する。
【0075】
したがって、極めて好ましい実施形態では、本発明は、
・6.0重量%~20.0重量%の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量と、
・2.0重量%~10.0重量%の総食物繊維含有量、すなわち不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量と、
・20.0重量%~80重量%、好ましくは40.0重量%~70.0重量%の水分含有量と、
・好ましくは、0.25重量%~6.0重量%の不溶性食物繊維含有量と、を含む、処理された(好ましくは、以下に記載されるように酵素処理された)ペーストを提供する。
【0076】
したがって、極めて好ましい実施形態では、本発明は、
・3.0重量%~8.5重量%の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量と、
・4.0重量%~10.0重量%、又は4.0重量%~13.0重量%の総食物繊維含有量、すなわち不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量と、
・20.0重量%~80重量%、好ましくは40.0重量%~70.0重量%の水分含有量と、
・好ましくは、3.0重量%~10.0重量%の不溶性食物繊維含有量と、を含む、未処理ペーストを提供する。
【0077】
好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.で生成される混合物は、
・20.0~99.0重量%の種子及び/又は種子の一部、好ましくは30.0~75.0重量%の種子及び/又は種子の一部;
・0.0~80.0重量%、好ましくは0.0~20.0重量%の非パルプかつ非種子部分;及び
・1.0重量%~80.0のパルプ及び/又はパルプ抽出物、好ましくは25.0~70.0重量%のパルプ及び/又はパルプ抽出物を含む。
【0078】
極めて好ましい実施形態では、本発明は、
・20.0~99.0重量%の豆、好ましくは30.0~75.0重量%の豆と、
・好ましくは非パルプかつ非種子部分が胎座である、0.0~30.0重量%、好ましくは2.0~15.0重量%の非パルプかつ非種子部分;
・パルプの10.0重量%~60.0のパルプ/パルプ抽出物、好ましくはパルプの25.0~50.0重量%のパルプを含む、ペーストを提供する。
【0079】
好ましい実施形態では、上記の混合物/ペーストは、ペーストの重量パーセントとして0.5~80%、好ましくは20%~70%、及びより好ましくは40%~65重量%の水分含有量を有する。
【0080】
好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の混合物、好ましくはペーストは、2.0重量%超、好ましくは2.5重量%超、好ましくは3.0重量%超、及び好ましくは4.0重量%超のタンパク質含有量を有する。好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の混合物、好ましくはペーストは、15.0重量%未満、好ましくは12.5重量%未満、好ましくは10.0重量%未満、及び好ましくは8.0重量%未満のタンパク質含有量を有する。好ましくは、2.0重量%~15.0重量%、又は3.0重量%~10.0重量%である。言及される割合(%)は成分の実際の重量に関するものであり、すなわち、乾燥ベースではない。
【0081】
乾燥重量を基準とすると、好ましい実施形態では、工程a.又は工程b.の混合物、好ましくはペーストは、5.0重量%~24.0重量%、好ましくは8.0重量%~18.0重量%、及び好ましくは9.0重量%~15.0重量%のタンパク質含有量を有する。
【0082】
タンパク質含有量は、未処理及び処理混合物、すなわち本発明の全ての実施形態に関する。
【0083】
好ましい実施形態では、本発明で生成される混合物を処理して、多糖類の含有量を低減させる。
【0084】
好ましい実施形態では、本発明で生成される混合物は、単糖類及び/又は二糖類の含有量を増加させるように処理される。この処理は、好ましくは、単糖類、特にフルクトース及びグルコース、好ましくはグルコースの量を好ましくは増加させることによって、混合物の甘味を増加させる。
【0085】
一実施形態では、上述の処理工程は、別々に、個々に、又は一緒に実施されてもよい。これらの処理工程のいずれか又は両方は、酵素を用いて実行されてもよい。一実施形態では、2種以上の酵素を、複数の機能を提供する前記酵素と、任意選択で共に使用してもよい。
【0086】
甘味の増大は、好ましくは、種子、パルプ/パルプ抽出物、並びに/又は非パルプかつ非種子部分に存在する、多糖類、好ましくはデンプン、セルロース、ヘミセルロース、及び/又はペクチンの分解によって提供される。分解は、好ましくは酵素を用いて達成される。
【0087】
本発明の好ましい実施形態では、混合物の処理は、植物性多糖類を基質として使用することができる酵素、好ましくはアミラーゼ、ペクチナーゼ、セルラーゼ、キシラナーゼ、プロテアーゼ、好ましくはECクラス3及びECクラス4、並びにこれらの組合せを含む酵素から選択される酵素による処理を含む。
【0088】
本発明の一実施形態では、本発明は、好ましくは、グルコース(キシロース)イソメラーゼ酵素(例えば、E.C.5.3.1.5)による追加の処理を含む。
【0089】
多糖類という用語は、そのようなポリマーの辞書的定義、すなわち、互いに結合した多数の分子からなる炭水化物を指し、好ましくは多糖類は、8個超の糖単位、10単位超、又は20単位超、及び任意に1000単位未満、又は750単位未満を有する。
【0090】
この用語は、例えば、ヘテロ多糖類及びホモ多糖類、直鎖及び非直鎖の両方を包含する。
【0091】
好ましい実施形態では、多糖類含有量の低減は、元の多糖類の分解を意味し、例えば、ペクチン、セルロースなどの、より小さい多糖類、オリゴマー類、及び/又は二糖類/単糖類への分解を意味する。この分解により、多糖類の分子量分布の変化がもたらされ、すなわち、より大きい多糖類がより小さい化合物へと分解されることによって多糖類の分子量が低減させられる。
【0092】
一実施形態では、混合物は、10℃~80℃での酵素処理を受け、例えば、酵素処理の温度は、20℃~75℃、例えば30℃~65℃、55℃~75℃、又は30℃~55℃である。
【0093】
複数の(すなわち、少なくとも2つの)酵素処理工程が用いられる場合、温度は、各処理工程によって異なってもよく、又は一定のままであってもよい。
【0094】
一実施形態では、混合物は、10分~72時間の間、酵素処理を受ける。例えば、10分~60時間、60分~50時間、100分~40時間、又は200分~35時間である。
【0095】
一実施形態では、混合物は、1時間~7時間、好ましくは2時間~5時間、酵素の混合物で処理される。
【0096】
複数の(すなわち、少なくとも2つの)酵素処理工程が用いられる場合、個々の工程の各々が上記の期間にわたって実行されてもよく、及び/又は処理時間の合計が上記の期間内である。
【0097】
使用される酵素の量は、酵素の状態(例えば、粉末、液体など)、酵素の活性、及び混合物の組成(例えば、水分含有量、種子含有量など)によって異なる。しかしながら、以下の量は、所望の量を示す。
【0098】
一実施形態では、使用される酵素の量は、混合物に対して10mg/L~250mg/L、好ましくは25mg/L~200mg/L、好ましくは50mg/L~150mg/Lである。
【0099】
一実施形態では、使用される酵素の量は、混合物に対して1.0g/L~200g/L、好ましくは2.0g/L~100g/L、好ましくは5.0g/L~50g/Lである。
【0100】
一実施形態では、使用される酵素の量は、混合物に対して0.05mL/kg~200mL/kg、0.1mL/kg~200mL/kg、1.0mL/kg~200mL/kg、好ましくは2.0mL/kg~100mL/kg、好ましくは5.0mL/kg~50mL/kg、より好ましくは5.0mL/kg~20mL/kg、又は0.1mL/kg~10mL/kgである。
【0101】
一実施形態では、使用される酵素の量は、混合物の0.10重量%~20重量%、好ましくは0.20重量%~10重量%、より好ましくは0.5重量%~5.0重量%である。
【0102】
上記の量は、存在する個々の酵素又は全ての酵素、すなわち、適用可能な場合に使用される酵素の総量に関する。
【0103】
一実施形態では、パルプ又はパルプ抽出物は、ペクチナーゼ、例えばEC4.2.2.10(CAS9033-35-6)、EC3.2.1.15(CAS9032-75-1)、EC3.1.1.11(CAS9025-98-3)、EC4.2.2.9又はEC4.2.2.2(CAS9015-75-2)及びこれらの混合物で処理される。
【0104】
ペクチナーゼは、1)ペクチン、ペクチン酸、又はオリゴ-D-ガラクツロン酸が基質であること、2)ランダム切断型(エンド型、液化又は脱重合酵素)又は末端切断型(エキソ型又は糖化酵素)であること、及び3)加水分解又はトランス位脱離により作用するものであるかどうか、といった点で分類される。好ましい実施形態では、使用される酵素は、ペクチンエステラーゼ、ポリメチルガラクツロナーゼ(エキソ型又はエンド型)、ポリガラクツロナーゼ(エキソ型又はエンド型)、ポリメチルガラクツロネートリアーゼ(エキソ型又はエンド型)、ポリガラクツロネートリアーゼ(エキソ型又はエンド型)、及びプロトペクチナーゼ(例えば、エンド-1.5-α-L-アラビナーゼ)及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0105】
一実施形態では、酵素の選択及び反応条件は、処理される基質に対して最適化され得る。例えば、ある種のペクチナーゼは、酸性pHで最適に働き、その他の種類のものはアルカリ性pHで最適に働くことが周知である(例えば、参照により組み込まれる、Pectinases:Enzymes for fruit processing industry,International Food Research Journal21(2):447-453(2014)の表2を参照されたい)。
【0106】
一実施形態では、ペクチナーゼは、パルプ1グラム当たり0.50U~1.50U、例えばパルプ1グラム当たり0.75U~1.25Uの活性を有する。
【0107】
一実施形態では、ペクチナーゼは、パルプ1グラム当たり5.0U~50.0U、例えばパルプ1グラム当たり10.0U~30.0Uの活性を有する。
【0108】
適切な場合、酵素は、1000PGNU/mL~30000PGNU/mL、2000PGNU/mL~10000PGNU/mL、例えば3000PGNU/mL~8500PGNU/mLの活性を有し得る。
【0109】
適切な場合、酵素は、50PTF~500PTF、例えば、60PTF~400PTFの活性を有し得る。
【0110】
適切な場合、酵素は、2000~20000マイクロモル/分/g、例えば、3000~12000マイクロモル/分/gのポリガラクツロナーゼ活性を有し得る。
【0111】
本発明で使用され得る様々なペクチナーゼの活性は、列挙された既知の標準によって規定される。ポリガラクツロナーゼ単位(PGNU)は、標準条件下(酢酸緩衝液、pH4.5、40℃、10分の反応時間、540nm)で1mgのガラクツロン酸ナトリウム塩を生成する酵素の量として定義され、基質1mL当たりで与えられる、又は酢酸緩衝液中、pH4.5、40℃でポリガラクツロン酸から1分間当たり1マイクロモルのガラクツロン酸を放出するのに必要とされる酵素の量として定義され、酵素1mL若しくは1g当たりで与えられる(好ましくは、後者の方法が使用される)。それに対応して、ペクチンエステラーゼ単位(PEU)活性は、標準条件(30℃、pH4.5)下で1分間当たり1マイクロ当量の水酸化ナトリウムを消費する酵素の量である。ペクチンリアーゼ単位(PLU)は、上記の条件で、但し45℃、pH5.5で、1分で1マイクロモルのデルタ-4,5不飽和生成物を生成するよう、結合したエンド-α-1-4ガラクツロノシジル(C6メチルエステル)の分割を触媒する酵素の量である。PTF単位活性は酵素活性に対応し、この活性は、0.5%ペクチン溶液中、pH5.8及び30℃にて1分後に、235nmで0.01の抽出の増加をもたらす。
【0112】
本発明の一実施形態では、本発明の処理方法で使用される酵素は、例えば、Ultrazym(登録商標)AFP-L(例えば、Novo Nordisk Ferment Ltd)、Rohament(登録商標)PL、Rohapect(登録商標)TPL又はPTF(AB Enzymes)、Novozyme(登録商標)33095、Pectinex(登録商標)Ultra AFP、UF、Ultra Colour又はUltra Clear(Novozymes A/S)、Neopectinase PL1(登録商標)(Novozymes A/S)、ペクチンリアーゼ1A(Enzytech)、Depol 793(Biocatalyst)、Rapidase(登録商標)Fibre(DSM)及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0113】
一実施形態では、混合物は、セルラーゼ、例えばEC3.2.1.4、EC3.2.1.91又はEC3.2.1.21、又はEC3.2.1.99及びこれらの混合物で処理される。
【0114】
本発明で使用され得る様々なセルラーゼの活性は、列挙された既知の標準によって規定される。1単位のセルラーゼ単位(U)は、pH4.6及び40℃で1分間当たりに1.25マイクロモルのグルコース当量を放出させる酵素の量として定義される。1単位のセルロース分解ユニット(ACU)は、グアーガム溶液の粘度の低減に基づいて決定される。好ましい実施形態では、活性は、400~3000マイクロモル/分/g、例えば、500~2500マイクロモル/分/gである。
【0115】
本発明の一実施形態では、本発明の処理方法で使用される酵素は、例えば、セルラーゼ13L(Biocatalysts)、セルラーゼCE-3、セルラーゼFG濃縮物(Enzyme Development Corporation)、Cellulosin GMY(HBI Enzymes Inc.)、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0116】
一実施形態では、酵素処理は、少なくとも2種のカルボヒドラーゼ、
任意選択的に、少なくとも3種のカルボヒドラーゼ、任意選択的に少なくとも4種のカルボヒドラーゼ、及び任意選択的に20種未満のカルボヒドラーゼ、又は10種未満のカルボヒドラーゼを使用して実施されてもよい。
【0117】
一実施形態では、酵素の混合物は、60FBGU超、任意選択的に75FBGU超の活性で使用される。任意に、活性は、180FBGU未満、任意に150FBGU未満、及び任意選択的に125FBGU未満である。例えば、60FBGU~180FBGUである。1単位の真菌β-グルカナーゼ単位(FBGU)は、真菌β-グルカンを加水分解し、30℃、pH5.0で1分間当たり1μモルのグルコースに相当する還元糖にする酵素量である。
【0118】
一実施形態では、パルプ又はパルプ抽出物は、アラバナーゼ、セルラーゼ、β-グルカナーゼ、ヘミセルラーゼ、及びキシラナーゼを含む広範なカルボヒドラーゼを含有する多酵素複合体である、Viscozyme L(Novozymes A/S)で処理される。本発明の範囲内において、Viscozyme Lを使用して、存在するヘミセルロースを分解してもよい。
【0119】
その目的で使用され得る他の酵素としては、アミラーゼ(例えば、アミログルコシダーゼ又はグルコアミラーゼ又はα-アミラーゼ、例えば、Novozyme26210、Amylase AD11MP及びAMG1100BG)、プロテアーゼ(Biobake CHW20又はCHW20(キシラナーゼもまた含む)及びNeutrase1.5MG)が挙げられる。
【0120】
本発明の極めて好ましい実施形態では、少なくとも1種のセルラーゼ、少なくとも1種のペクチナーゼ、及び少なくとも1種のアミラーゼを含む、酵素の混合物。
【0121】
極めて好ましい実施形態では、酵素の混合物は、セルラーゼ、ペクチナーゼ、α-アミラーゼ、及びアミログルコシダーゼを含む。
【0122】
一実施形態では、使用される酵素混合物の総量は、基質(好ましくは、上で規定されたペースト)の0.10重量%~20重量%、好ましくは0.20重量%~10重量%、より好ましくは0.5重量%~5.0重量%である。
【0123】
好ましい実施形態では、個々の酵素の各々の量は、基質(好ましくは、上で規定された基質)の0.025重量%~5.0重量%の量、好ましくは0.05重量%~2.5重量%、より好ましくは0.1重量%~1.25重量%の量で、独立して存在する。
【0124】
したがって、極めて好ましい実施形態では、本発明は、少なくとも1種のセルラーゼ、少なくとも1種のペクチナーゼ、及び少なくとも1種のアミラーゼを含む酵素の混合物を利用し、ここで、使用される酵素混合物の総量は基質の0.10重量%~20重量%であり、個々の酵素の各々の量は、基質の重量の0.025重量%~5.0重量%の間の量で独立して存在する。
【0125】
本発明の一実施形態では、好ましくは従来のカカオマス/リカーの代替物である、乾燥塊が提供され、この乾燥塊は増加した糖含有量を含む。糖は、好ましくは、パルプ、パルプ抽出物、非パルプかつ非種子部分、並びに/又は種子/種子の一部の分解(例えば、種子中の酵素を用いるデンプン及び/又はセルロースの分解)、から提供される。
【0126】
一実施形態では、糖は、単糖類(例えば、フルクトース、フコース、ガラクトース、グルコース及び/若しくはラムノース)、二糖類(例えば、ラクトース、マルトース及び/若しくはスクロース)並びに/又はオリゴ糖類(例えば、20糖単位未満、10糖単位未満、又は8糖単位未満)を含み、ここでは糖は「カカオ糖(cocoa sugar)」と定義される。本発明の組成物中に存在する好ましい糖としては、スクロース、グルコース又はフルクトース、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい実施形態では、本発明の糖混合物は、グルコースとフルクトースの組合せの糖混合物の重量に基づいて、少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%、又は少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%を構成する。好ましい実施形態では、本発明の糖混合物は、グルコースとフルクトースの組合せの糖混合物の重量に基づいて、100重量%未満、好ましくは99.5重量%未満、又は99重量%未満、又は少なくとも95重量%未満を構成する。好ましくは、75重量%~100重量%、又は85重量%~99重量%である。
【0127】
一実施形態では、カカオパルプ抽出物の糖は、グルコース、スクロース、及びフルクトース、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される糖を含み、ここではかかる糖は「カカオ糖」と定義される。カカオ糖は、カカオポッドの種類によって、含有量及び性質が異なり得る。
【0128】
好ましい実施形態では、上記の糖含有量は、HPAEC-PAD(パルスドアンペロメトリ検出器を用いた高性能陰イオン交換クロマトグラフィ、High-Performance Anion-Exchange Chromatography with Pulsed Amperometric Detection)を使用して得られる。好ましい分析方法は、実施例の項に定義される。
【0129】
好ましい実施形態では、パルプ及び/又はパルプ抽出物の使用により、混合物に不溶性及び可溶性の食物繊維と、糖及び他の固体とをもたらす。不溶性食物繊維は、セルロース、ヘミセルロース、又はこれらの組合せを含む。好ましい実施形態では、可溶性食物繊維はペクチンを含む。
【0130】
繊維の量の割合(%)は、パルプ及びパルプ抽出物の水分含有量によって異なる。
【0131】
一実施形態では、パルプ及びパルプの抽出物は、重量パーセントとして0.75~50.0重量%、1.0~40重量%、又は1.25~30重量%の重量パーセントの繊維(好ましくはペクチン、ヘミセルロース、及びセルロース)として含む。例えば、0.75~7.5重量%(例えば、高水分含有量、パルプ)又は8.0~50.0重量%(例えば、低水分含有量、乾燥パルプ、又はパルプ抽出物)である。多糖類の低減、好ましくは酵素による低減は、混合物中のこれらの繊維の量を低減する。
【0132】
好ましい実施形態では、種子及び/又は種子の一部は、混合物にデンプン及びセルロース、並びに他の成分をもたらす。一実施形態では、種子及び/又は種子の一部は、2.5~30.0重量%、5.0~25.0重量%、及び10.0~20.0重量%の組み合わされたデンプン及びセルロースを含む。多糖類の低減、好ましくは酵素による低減は、混合物中のこれらの成分の量を低減する。
【0133】
好ましい実施形態では、種子及び/又は種子の一部は、混合物に糖、好ましくは上で規定されたような単糖類及び二糖類、並びに他の成分をもたらす。一実施形態では、種子及び/又は種子の一部は、かかる糖を合計して0.25~10.0重量%、0.5~5.0重量%、及び0.75~3.0重量%含む。多糖類の低減、好ましくは酵素による低減は、混合物中のこれらの成分の量を増加させる。
【0134】
好ましい実施形態では、食物繊維の、好ましくは不溶性成分及び可溶性成分を合わせた平均重合度は、12超、好ましくは20超、好ましくは30超、好ましくは40超である。一実施形態では、食物繊維の平均重合度は、100未満、好ましくは75未満である。例えば、40~75である。一実施形態では、平均重合度は、SEC-MALS(サイズ排除クロマトグラフィ-多角度光散乱検出器)を使用して得られる。例えば、試料はDMSOに部分的に溶解させた。
【0135】
以下に記載されるように、本発明の処理による多糖類の量の低減は、より大きい多糖類をより小さい多糖類、オリゴ糖類(好ましくは3~8糖類又は3~10糖類)、及び/又は二糖類/単糖類に分解するものである。
【0136】
一実施形態では、混合物中の総食物繊維及びその画分は、Journal of AOAC International,Volume102,Number1,January-February2019,pp.196-207(12)に記載されている酵素-重量法であるRapid Integrated Total Dietary Fiber法によって測定される。
【0137】
本発明の一実施形態では、カカオパルプ抽出物は、カカオポッドからカカオパルプを取り出す工程と、熱処理する工程と、任意選択的に濃縮する工程と、カカオパルプを乾燥させる工程とを含む方法によって調製される。
【0138】
一実施形態では、カカオパルプは、例えば、欧州特許第0442421号(Nestle SA)の方法によってカカオポッドから取り出される。本発明の一実施形態においてカカオポッドからカカオパルプを取り出す代替的な手段は、好ましくはブラシを装着した市販のパルパーの使用である。
【0139】
種子は、当該技術分野で一般的に既知の方法によって得てもよい。種子は、果実からいくらかのパルプを保持してもよく、又は必要に応じてパルプ及び/若しくはパルプ抽出物と再度組み合わせてもよい。非種子/非パルプ部分についても同様である。
【0140】
本発明の混合物の調製に使用するための成分は、好ましくは低温殺菌され、好ましくは一旦は一緒に混合されるものの、処理は別々になされてもよい。
【0141】
上記の実施形態では、熱処理工程は、非常に短期間(典型的には200秒以下、及び場合により典型的には50秒超)の高温(典型的には120℃~160℃)での処理に関し、いかなる微生物由来の汚染物質も不活性化して、当該原料をヒトが消費するのに安全なものにする。あるいは、異なる温度、例えば、60℃~100℃、及び異なる時間、例えば10~120秒を用いてもよい。熱処理工程は、製品の分解を伴わずに低温殺菌がなされるのであれば、特に限定されない。
【0142】
カカオパルプが新鮮であるうちに処理することが好ましいが、一実施形態では、カカオパルプを取り出した時点で、その後の処理まで新鮮さを確保するため冷凍してもよい。この凍結は、当該技術分野において既知の、野菜及び果実を凍結させるための標準的な機器によって行われてもよい。本発明の方法における任意の時点で凍結が使用される場合、パルプ又はパルプ抽出物は、その後好ましくは本発明の製品に組み込む前に解凍される。
【0143】
一実施形態では、多糖類含有量を低減し、及び/又は粘度を変更するための処理は、機械的又は物理的に、例えば遠心分離によって、好ましくはデキャンティング遠心分離機で行うことができる。この処理は、パルプ中に存在する多糖類を除去するために使用され得る。
【0144】
一実施形態では、上記の割合は、パルプ又はパルプ抽出物の10%~75%の固形分含有量に基づき、好ましくはカカオパルプの場合、10%~20%の総固形分含有量に基づく。
【0145】
一実施形態では、混合物を処理してpHを上昇させ、例えば、混合物をアルカリ塩又は塩基で処理する。化合物の性質は特に限定されないが、好ましくは食品等級の化合物である。好ましい実施形態では、カカオパルプは、pHを増加させるために、モノ/ジ/トリナトリウム/カリウム/カルシウムホスフェート、モノ/ジアンモニウムホスフェート、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、又は炭酸カリウム、及びこれらの混合物などの化合物で処理される。
【0146】
一実施形態では、アルカリ塩又は塩基は、混合物の0.10重量%超、好ましくは0.15重量%超、及び好ましくは0.20重量%超の量で混合物と混合される。一実施形態では、アルカリ塩又は塩基は、パルプ又はパルプ抽出物の1.25重量%未満、好ましくは1.0重量%未満、好ましくは0.90重量%未満、例えば、0.10重量%~1.25重量%、0.20重量%~0.90重量%又は0.25重量%~0.85重量%の量でパルプ又はパルプ抽出物と混合される。
【0147】
一実施形態では、上述したように、カカオパルプのpHは、2.75~4.0、任意選択的に、3.3~4.0又は3.0~3.7(全て20℃で測定)を超える範囲より高くなるように増加させ、例えば、pHは、4.5超、5.0超、5.5超又は6.0超に増加させる。例えば、pHは増加されるが、8.0を超えては増加されず、7.5以下又は7.0以下又は6.5以下又は6.0以下である。
【0148】
好ましい実施形態では、pHを増加させるための剤を、水溶液又はスラリーとして混合物に添加する。好ましい実施形態では、水中の剤の濃度は、5g/100mL~100g/100mL、又は5g/100mL~50g/100mL、好ましくは10g/100mL~30g/100mLである。好ましくは、水溶液又はスラリーとして剤を添加することにより、高濃度の剤が添加されたときにパルプの粘度を増加させ得る望ましくないゲル化は生じない。
【0149】
一実施形態では、酵素処理は、pHを増加させる処理の後に行われる。代替的な実施形態では、酵素処理は、pH処理の前に実施される。
【0150】
一実施形態では、酵素処理は、パルプのpHが3.3~6.0、好ましくは4.25~5.0であるときに実行される。
【0151】
代替的な実施形態では、pH処理は、透析(イオン交換)を用いて行われる。例えば、欧州特許第0049497号(Nestle SA)に開示されている方法を使用する。
【0152】
本発明は、添加糖の低減又は完全な排除に関して有利な特性を提供し、甘味は天然素材からもたらされ、カカオポッドのチョコレートの風味に寄与する他の成分も含有する。
【0153】
添加糖に関して、一実施形態では、用語「添加糖」は、標準的な栄養規定を有する、加工された糖、例えば白砂糖又はブラウンシュガーを包含する精製糖を指す。好ましくは、Regulation(EC)No 1924/2006に列挙されるように、本発明は糖が添加されていないチョコレート製品に関し、製品は、添加された単糖類若しくは二糖類、又は原料に元々自然に存在する糖以外の甘味特性のために使用される他の食品を含まない。
【0154】
したがって、本発明は、カカオマス、カカオバター、及び/又は、カカオ粉末の原材料中に存在する天然糖を提供することによって、添加糖の代替物を提供する。したがって、本発明は、天然糖を含有しており、糖を無添加であるチョコレート製品を提供する。
【0155】
発酵
本発明の発酵工程は、適切な方法を用いて実施され得る。
【0156】
一実施形態では、発酵は、天然発酵、制御された開放式発酵、又は制御された深部発酵、並びにこれらの方法の組合せからなる群から選択される。
【0157】
一実施形態では、テオブロマ属のポッドは、発酵されていない、不完全発酵である、又は完全発酵である。一実施形態では、上記の用語は、以下のように規定され得る。
【0158】
一実施形態では、発酵期間は、最大10日、例えば2~8日である。発酵は、通常、種類、原材料及びどの風味を供給させるかに応じて、2~6日間行われる。
【0159】
発酵されていないとは、意図的な発酵が起こらないことを意味し、不完全発酵とは発酵が2日未満であることを意味する。
【0160】
発酵は、好ましくは、本発明で調製されたペーストに対して実施される。
【0161】
一実施形態では、発酵は、天然の発酵であり、局所環境(例えば、ペースト中に存在する、周囲空気環境中になどに存在するなど)の酵母、酢酸細菌、及び/又は乳酸細菌を利用する。一実施形態では、発酵の温度プロファイルは制御されないままであり、発酵の段階に影響される。一実施形態では、発酵ペーストは、確実に完全に発酵させるために、必要に応じて定期的に広げられ、回転/混合される。
【0162】
一実施形態では、発酵は、制御された発酵であり、開放式である。発酵は、好ましくは酵母、酢酸細菌、及び/又は乳酸細菌の具体的(specifically)に選択された株の添加によって制御される。添加剤の選択は、発酵の段階に応じて決定されてもよく、天然発酵の初期工程と組み合わせて使用されてもよい。一実施形態では、発酵の温度プロファイルは、選択された微生物に最適な生育条件へと制御される。一実施形態では、選択された微生物に応じて、各工程の発酵効率を改善するために酸調整剤を添加してもよい。一実施形態では、発酵ペーストは、確実に完全に発酵させるために、必要に応じて定期的に広げられ、回転/混合される。あるいは、固定床反応器を使用してもよい。
【0163】
一実施形態では、発酵は、制御された発酵であり、深部式である。一実施形態では、混合物は、閉鎖バイオリアクタ容器(例えば、撹拌タンク)の内部で発酵される。
【0164】
発酵は、好ましくは酵母、酢酸細菌、及び/又は乳酸細菌の具体的的(specifically)に選択された株の添加によって制御される。添加剤の選択は、発酵の段階に応じて決定されてもよく、天然発酵の初期工程と組み合わせて使用されてもよい。一実施形態では、発酵の温度プロファイルは、選択された微生物に最適な生育条件へと制御される。一実施形態では、選択された微生物に応じて、各工程の発酵効率を改善するために酸調整剤を添加してもよい。
【0165】
この実施形態では、発酵持続時間は、最大10日であるが、好ましくは最大96時間、又は最大72時間、又は最大48時間である。一実施形態では、発酵中、発酵ペーストを連続的に撹拌する。一実施形態では、発酵の好気性段階中に、酸素又は圧縮空気が、好ましくは発酵混合物に添加される。
【0166】
発酵は、標準温度、例えば、20~75℃、24~72℃、又は20~55℃で行ってもよい。発酵は、必要に応じて嫌気性又は好気性であるように制御されてもよい。
【0167】
一実施形態では、当該技術分野で既知の種菌を使用して、発酵を開始してもよい。
【0168】
代替的な実施形態では、種子及び/又は種子の一部は、本発明の他の成分と組み合わせる前に発酵される。次いで、混合物は、更なる発酵を受けてもよく、又は更なる発酵を受けなくてもよい。
【0169】
代替的な実施形態では、本発明のチョコレート製品は、焙煎されていない。焙煎されていない(非焙煎)とは、焙煎を行わないプロセスによって組成物が製造されたことを意味し、組成物のカカオ固形物成分(カカオ豆、ニブなど)は、高温(例えば、140℃以上、又は120℃以上)に長時間(例えば、30分以上)にわたって供されてはいない。いかなる機序にも束縛されることを望むものではないが、焙煎を行わないプロセスでは、条件は、温度の高さが不十分である(好ましくは120℃未満、より好ましくは110℃以下、更により好ましくは100℃以下、最も好ましくは90℃以下、例えば80℃以下)及び/又は持続時間が十分に短い(好ましくは30分未満、より好ましくは20分未満、更により好ましくは10分未満、最も好ましくは5分未満であり、例えば4分未満)のどちらかであり、そのため、メイラード反応などの望ましくない化学反応は広範に展開されず、したがって、組成物に強い焙煎ノートを付与し得る相当量の香味活性化合物は生成されないと考えられる。焙煎方法又は工程は、カカオ豆及び/又はニブなどの原材料を、非常に短い期間(典型的には200秒以下)にわたって高温(典型的には120℃~160℃)で処理し、微生物汚染物質を不活性化して、原料をヒトによる消費に安全なものにすることができる、瞬間加熱などの処理と区別される。このような抗菌及び/若しくは脱細菌処理並びに/又は工程は、尚も、焙煎を行わないプロセスの範囲内であると考えられる。
【0170】
リカー/塊生成
本発明は、従来のカカオベースの塊及びリカーの代替物である新規組成物を提供する。
【0171】
したがって、本発明は、種子又は種子の一部が発酵されているか否かにかかわらず、従来のカカオマス/リカーの代替物を提供し得る。
【0172】
同様に、種子及び/又は種子の一部は、本発明の他の成分と組み合わせる前に、焙煎されない、又は焙煎される。次いで、混合物は、乾燥工程で焙煎又は追加の焙煎を受けて、本発明の乾燥塊を提供してもよい。
【0173】
したがって、本発明の方法は、以下の実施形態を提供する。
・パルプを種子及び/又は種子の一部と組み合わせて、混合物を形成する工程と、
・混合物を粉砕して、粒子径を減少させ、ペーストを形成する工程と、
・ペーストを乾燥させ、任意選択的に焙煎して、乾燥塊を形成する工程と、を含む、方法。
【0174】
・パルプを種子及び/又は種子の一部と組み合わせて、混合物を形成する工程と、
・混合物を粉砕して、粒子径を減少させ、ペーストを形成する工程と、
・ペーストを発酵させる工程と、
・ペーストを乾燥させ、任意選択的に焙煎して、乾燥塊を形成する工程と、を含む、方法。
【0175】
好ましい実施形態では、混合物はまた、果実の非パルプかつ非種子部分を含み、例えば、これは、珠柄、胎座、内果皮、中果皮、及び/又は内果皮、特に好ましくは胎座を含む。
【0176】
好ましい実施形態では、乾燥塊は、8.0重量%超、好ましくは10.0重量%超、好ましくは12.0重量%超、及び好ましくは14.0重量%超の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量を有する。好ましい実施形態では、ペーストは、35.0重量%未満、好ましくは30.0重量%未満、好ましくは27.5重量%未満、及び好ましくは25.0重量%未満の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量を有する。好ましくは、8.0重量%~35.0重量%、又は12.0重量%~25.0重量%である。言及される割合(%)は、実際の重量に関連し、すなわち存在する任意の水分を含む。
【0177】
好ましい実施形態では、乾燥塊は、2.0重量%超、好ましくは3.0重量%超、好ましくは4.0重量%超、及び好ましくは5.0重量%超の総食物繊維含有量、すなわち、不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量を有する。好ましい実施形態では、ペーストは、40.0重量%未満、35.0重量%未満、30.0重量%未満、20.0重量%未満、18.0重量%未満、好ましくは16.0重量%未満、好ましくは14.0重量%未満、及び好ましくは13.5重量%未満の総食物繊維含有量、すなわち不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の、含有量を有する。好ましくは、2.0重量%~40.0重量%、2.0重量%~18.0重量%、又は4.0重量%~14.0重量%である。言及される割合(%)は、実際の重量に関連し、すなわち存在する任意の水分を含む。
【0178】
好ましい実施形態では、上記範囲の上端は、未処理塊(好ましくは、非酵素処理塊)に関し、すなわち20.0重量%~40.0重量%、22.5重量%~35.0重量%であり、下端は、処理塊に関し、すなわち2.0重量%~18.0重量%である。処理は総食物繊維含有量を低減させる。
【0179】
好ましい実施形態では、乾燥塊は、18.0重量%超、好ましくは20.0重量%超、好ましくは22.0重量%超、及び好ましくは25.0重量%超の脂肪含有量を有する。
【0180】
好ましい実施形態では、ペーストは、50.0重量%未満、好ましくは45.0重量%未満、好ましくは40.0重量%未満、及び好ましくは35.0重量%未満の脂肪含有量を有する。好ましくは、18.0重量%~50.0重量%、又は22.0重量%~40.0重量%である。言及される割合(%)は、実際の重量に関連し、すなわち存在する任意の水分を含む。
【0181】
したがって、極めて好ましい実施形態では、本発明は、
・8.0重量%~35.0重量%の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量と、
・18.0重量%~50.0重量%の脂肪含有量と、
・0.1重量%~10.0重量%の水分含有量と、を含む、乾燥塊を提供する。
【0182】
更に極めて好ましい実施形態では、本発明は、
・12.0重量%~25.0重量%の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量と、
・18.0重量%~50.0重量%の脂肪含有量と、
・0.1重量%~5.0重量%の水分含有量と、を含む、乾燥塊を提供する。
【0183】
したがって、極めて好ましい実施形態では、本発明は、
・8.0重量%~35.0重量%の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量と、
・2.0重量%~18.0重量%(好ましくは、処理済み)である総食物繊維含有量、又は20.0重量%~40.0重量%(好ましくは、未処理)である総食物繊維含有量と、
・0.1重量%~10.0重量%の水分含有量と、を含む、乾燥塊を提供する。
【0184】
更に極めて好ましい実施形態では、本発明は、
・12.0重量%~25.0重量%の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量と、
・4.0重量%~14.0重量%(好ましくは、処理済み)である総食物繊維含有量、又は20.0重量%~35.0重量%(好ましくは、未処理)である総食物繊維含有量と、
・0.1重量%~5.0重量%の水分含有量と、を含む、乾燥塊を提供する。
【0185】
したがって、極めて好ましい実施形態では、本発明は、
・8.0重量%~35.0重量%の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量と、
・2.0重量%~18.0重量%(好ましくは、処理済み)である総食物繊維含有量、又は20.0重量%~40.0重量%(好ましくは、未処理)である総食物繊維含有量と、
・18.0重量%~50.0重量%の脂肪含有量と、
・0.1重量%~10.0重量%の水分含有量と、を含む、乾燥塊を提供する。
【0186】
更に極めて好ましい実施形態では、本発明は、
・12.0重量%~25.0重量%の糖含有量、好ましくは単糖類及び二糖類の含有量と、
・4.0重量%~14.0重量%(好ましくは、処理済み)である総食物繊維含有量、又は20.0重量%~35.0重量%(好ましくは、未処理)である総食物繊維含有量と、
・18.0重量%~50.0重量%の脂肪含有量と、
・0.1重量%~5.0重量%の水分含有量と、を含む、乾燥塊を提供する。
【0187】
好ましい実施形態では、乾燥塊は、5.0重量%超、好ましくは7.5重量%超、好ましくは9.0重量%超、及び好ましくは10.0重量%超のタンパク質含有量を有する。好ましい実施形態では、乾燥塊は、22.0重量%未満、好ましくは20.0重量%未満、好ましくは17.5重量%未満、及び好ましくは15.0重量%未満のタンパク質含有量を有する。好ましくは、5.0重量%~22.0重量%、又は9.0重量%~17.5重量%である。言及される割合(%)は、実際の重量に関連し、すなわち存在する任意の水分を含む。
【0188】
一実施形態では、乾燥は、好ましくは、噴霧乾燥、真空乾燥、ドラム乾燥、オーブン乾燥、発泡乾燥、トレイ乾燥、流動床乾燥、結晶化乾燥(好ましくは、糖の種晶を使用する)、ローラ乾燥、又は真空凍結乾燥(凍結乾燥)を用いて実施される。
【0189】
一実施形態では、乾燥は、45℃超、好ましくは50℃超、好ましくは55℃超、及び60℃超で行われる。一実施形態では、乾燥は125℃未満、好ましくは100℃未満、好ましくは90℃未満、好ましくは85℃未満又は80℃未満で行われる。好ましい実施形態では、乾燥は、45℃~100℃、より好ましくは45℃~85℃で行われる。
【0190】
一実施形態では、乾燥は、1時間超、好ましくは5時間超、好ましくは10時間超、15時間超又は20時間超で行われる。一実施形態では、乾燥は、100時間未満、好ましくは72時間未満、好ましくは60時間未満、好ましくは50時間未満又は40時間未満で行われる。
【0191】
好ましい実施形態では、乾燥は、45℃~125℃及び1時間~72時間行われる。好ましくは、上記の範囲は、任意選択的に真空を伴う又は伴わない、オーブン乾燥に関する。
【0192】
本発明の一実施形態では、乾燥塊は、10.0重量%未満、好ましくは8.0重量%未満、より好ましくは5.0重量%未満、より好ましくは3.0重量%未満、及びより好ましくは2.0重量%未満の水を含む。一実施形態では、完全な脱水が達成されない可能性があり、したがって、含水量が、任意選択的に、0.1%超、0.5%超又は1.0%超であることに留意する。好ましい実施形態では、上記の含水量は、以下の実施例で使用されるように、オーブン中で、試料5g、102℃にて5時間で、上で指定されたカールフィッシャー分析又はハロゲン分析器の重量損失を用いて測定してもよい。
【0193】
一実施形態では、好ましくは本発明の混合物が発酵及び/又は酵素処理される場合、追加の焙煎工程が存在してもよい。
【0194】
一実施形態では、焙煎は、85℃超、好ましくは100℃超、好ましくは105℃超、好ましくは125℃超、及び150℃超で行われる。一実施形態では、焙煎は、225℃未満、好ましくは210℃未満、好ましくは200℃未満、好ましくは195℃未満、又は180℃未満で行われる。好ましい実施形態では、焙煎は、85℃~225℃、より好ましくは125℃~200℃、又は100℃~150℃で行われる。
【0195】
一実施形態では、焙煎は、10分超、好ましくは20分超、又は好ましくは30分超で行われる。一実施形態では、焙煎は、2時間未満、好ましくは1.5時間未満、及び好ましくは1時間未満で行われる。
【0196】
好ましい実施形態では、焙煎は、85℃~225℃かつ10分間~2時間で行われる。
【0197】
焙煎が存在する場合に、乾燥が単独で用いられるとき、水分含有量は更に低下する。好ましい実施形態では、焙煎された水分含有量は、上記範囲の下限、例えば、0.1%~5.0%又は0.5%~3.5%、又は1.0%~3.0%である。
【0198】
したがって、極めて好ましい実施形態では、本発明は、チョコレート製品中の他の原料(例えば、糖、カカオバター、及び/又は乳ベースの原料)と組み合わされて、現在知られているものの代替となるチョコレート製品を提供する、乾燥塊を提供する。本発明の乾燥塊は、従来使用されているカカオマス/リカーの代替物である。
【0199】
チョコレート製品及びチョコレート様製品
本発明の一般的な製品
本発明は、本発明の材料を含む新規のチョコレート製品及びチョコレート様製品を提供する。
【0200】
用語「チョコレート様」とは、カカオ植物から従来得られる成分が、本発明の方法によって調製されたテオブロマ属の他の植物より生成された類似の材料によって置き換えられている製品を包含する。
【0201】
本発明の材料は、従来のカカオマス/リカーの代替物と、好ましくはチョコレートの製造において典型的に使用される添加糖の一部とを提供する。
【0202】
一実施形態では、本発明の組成物は、有用には(本明細書で定義されるような)チョコレート製品であってもよく、より有用にはチョコレート又はチョコレートコンパウンドであってもよい。用いられ得る任意の他の法的規定とは無関係に、乳原料(粉乳など)と共に、25重量%~35重量%のカカオ固形分含量を含む本発明の組成物を、本明細書では非公式に「ミルクチョコレート」と略記することがある(この用語は、同量のカカオ固形物又はその代替物を含む他の類似のチョコレート製品も含む)。用いられ得る任意の他の法的規定とは無関係に、35重量%超のカカオ固形分含量(最大100%(すなわち、純カカオ固形分))を含む本発明の組成物を、本明細書では非公式に「ダークチョコレート」と略記することがある(この用語は、同量のカカオ固形物又はその代替物を含む他の類似のチョコレート製品も含む)。
【0203】
本明細書中で使用する「チョコレート」という用語は、任意の法域におけるチョコレートの法的規定を満たす任意の製品(及び/又はそれが製品となるものである場合はその成分)を意味し、また、カカオバター(CB)の全て又は一部が、カカオバター同等物(CBE)及び/又はカカオバター代替物(CBR)で置き換えられた製品(及び/又はその成分)も含む。
【0204】
用語「チョコレートコンパウンド」は、いくつかの法域では、存在するカカオ固形分の最小量によって法的に規定され得るが、本明細書で使用するとき(文脈上明らかにそうでないことが示されていない限り)は、任意の量のカカオ固形物(カカオリカー/カカオマス、カカオバター及びカカオパウダーを含む)が存在することを特徴とするチョコレート様類似物を意味する。
【0205】
本明細書で使用するとき、用語「チョコレート製品」は、カカオバター(CB)、カカオバター同等物(CBE)、カカオバター代替物(CBR)及び/又はカカオバター置替物(CBS)を含むチョコレート、コンパウンド及び他の関連材料を意味する。したがって、チョコレート製品は、チョコレート及び/又はチョコレート類似物をベースとした製品を含み、したがって、例えば、ダークチョコレート、ミルクチョコレート、又はホワイトチョコレートをベースとすることができる。
【0206】
文脈からそうでないことが明確に示されない限り、本発明において、任意の1つのチョコレート製品を何らかの他のチョコレート製品の代わりに使用することができ、チョコレートという用語もコンパウンドという用語も本発明の範囲を特定の種類のチョコレート製品に限定するものとみなされるべきではないことが理解されるであろう。好ましいチョコレート製品はチョコレート及び/又はコンパウンドを含み、より好ましいチョコレート製品はチョコレートを含み、最も好ましいチョコレート製品は、主要な法域(ブラジル、EU及び/又は米国など)で法的に規定されるチョコレートを含む。
【0207】
本明細書で使用するとき、用語「チョココーティング」(「チョコシェル」とも呼称する)は、任意のチョコレート製品から作製されたコーティングを意味する。「チョコレートコーティング」及び「コンパウンドコーティング」という用語は、類推によって同様に定義することができる。同様に、用語「チョコ組成物(又は塊)」、「チョコレート組成物(又は塊)」及び「コンパウンド組成物(又は塊)」は、その成分として全体又は一部にチョコレート製品、チョコレート及びコンパウンドをそれぞれ含む組成物(又は塊)を意味する。それらの成分次第では、かかる組成物及び/又は塊の定義は当然重複する可能性がある。
【0208】
本明細書で使用するとき、用語「チョコレート製品菓子」は、チョコレート製品と任意の他の原料とを含む任意の食品を意味し、したがって、チョコレート製品がチョココーティングを構成する、かつ/又は製品の大部分を構成するかどうかにかかわらず、そのような菓子、ウェハース、ケーキ及び/又はビスケットなどの食品を指し得る。チョコレート製品菓子は、例えば、具材を含むもの、層、塊、片及び/又はドロップなどの任意の好適な形態のチョコレート製品を含んでもよい。菓子製品は、例えばクリスピーな具材、例えばシリアル(例えば、膨化米及び/又はトーストされた米)及び/又は乾燥させた果実片などの任意の他の好適な具材を更に含むことができる。
【0209】
本発明のチョコレート製品は、菓子物品をコーティングするため、及び/又はより複雑な菓子製品を作製するために、タブレット及び/又はバーの成形に使用することができる。任意選択的に、チョコレート製品菓子製品の作製に使用する前に、所望のレシピに従う具材をチョコレート製品に添加してもよい。当業者には明らかであるように、場合によっては、本発明の製品は、対応する組成物及び/又は塊と同じレシピ及び原料を有するが、他の場合には、特に具材が添加されるか、又はより複雑な製品の場合には、製品の最終レシピは、その製品を作製するために使用される組成物及び/又は塊のレシピと異なる場合がある。
【0210】
本発明の非常に好ましい一実施形態では、チョコレート製品菓子製品は、実質的に固体の成形されたチョコタブレット、チョコバー、及び/又は相当量のチョコレート製品に覆われた焼成製品を含む。これらの製品は、例えば、成形型にチョコレート製品を実質的に充填し、その中に任意選択的に具材及び/又は焼成製品を加え、チョコレート製品を成形型から外す(いわゆるウェットシェリングプロセス)ことによって作製され、この成形型には、必要に応じて、チョコレート製品が更につぎ足される。本発明のこのような非常に好ましい製品では、チョコレート製品は、製品の実質的な部分若しくは製品の全体的な部分、及び/又は内部の焼成製品(ウェハース及び/又はビスケット積層体など)を取り囲む厚い外層、を形成する。成形型がチョコレートで実質的に充填されるそのような固体製品は、異なる課題を提示する成形された薄いチョコレートシェルを含む製品と対比されるべきである。薄くコーティングされたチョコレートシェルを作製するために、成形型はチョコレートの薄い層でコーティングされ、この成形型は、余剰なチョコレートを除去するために反転され、及び/又はコールドプランジャでスタンピングされて、シェル形状を画定し、成形型はほとんど空になる。このようにして成形型をチョコレートの薄い層でコーティングし、このコーティングに、更なる原料及びフィリングを添加して製品の内部ボディを形成することができる。
【0211】
本明細書で文脈からそうでないことが明確に示されない限り、本明細書で使用されるチョコレート製品菓子という用語は、本出願を通して使用されるチョコレート菓子という用語によって容易に置き換えることができ、かかる用語と同等であり、実際には、本明細書で非公式に使用されるときにこれら2つの用語は互換可能であることが当業者には理解されるであろう。しかし、本明細書に与えられる文脈においてこれらの用語の意味に違いがある場合、チョコレート菓子及び/又はコンパウンド菓子は、本発明のチョコレート製品菓子の好ましい実施形態であり、好ましい実施形態はチョコレート菓子である。
【0212】
好ましいチョコレート製品菓子は、例えば、チョコレート製品、コンパウンド製品、チョコレートコーティング、及び/又はコンパウンドコーティングからなる群から選択される1種以上の原料を含んでもよい。製品は、具材の有無にかかわらずチョコバー及び/若しくはチョコタブレットなどといったコーティングされていない製品、並びに/又はコーティングされたビスケット、ケーキ、ウェハース、及び/若しくは他の菓子物品などといったチョコレート製品でコーティングされた製品、を含んでもよい。より好ましくは、及び/又は代わりに、上記のもののいずれかは、1種以上のカカオバター代替物(CBR)、カカオバター同等物(CBE)、カカオバター置換物(CBS)、及び/又はそれらの任意の好適な混合物を含むことができる。
【0213】
チョコレート製品菓子では、カカオバター(CB)は、他の原材料に由来する脂肪で置き換えてもよい。かかる製品は、概ね、ラウリン酸脂肪(例えばヤシの木の果実の核から得られるカカオバター置換物(CBS));非ラウリン酸植物性脂肪(例えばパーム又は他の特殊脂肪をベースとするもの);カカオバター代替物(CBR);カカオバター同等物(CBE)及び/又はその任意の好適な混合物からなる群から選択される1種以上の脂肪を含むことができる。いくつかのCBE、CBR、及び特にCBSは、主に飽和脂肪及び非常に少量の(健康上の利点を有する)不飽和オメガ3及びオメガ6脂肪酸を含有し得る。したがって、本発明のチョコレート製品菓子の一実施形態では、このような種類の脂肪はCBよりも好ましくない。
【0214】
本発明の一実施形態は、複数の層(好ましくは1つ以上のウェハース及び/若しくはビスケット層、及び/若しくはそれらの間の1つ以上のフィリング層から選択される)を有する焼成食品であって、少なくとも1つのコーティング層がこれらの食品層の周囲に配置され、コーティングは、本発明のチョコレート製品を含むか、又は本発明に従って調製される、焼成食品を任意選択的に含む多層製品を提供する。
【0215】
本発明の更なる実施形態は、チョコレート(又はコンパウンドなどのその同等物)で更にコーティングされたチョコレート製品菓子製品、例えば、プラリネ、チョコレートシェル製品及び/又はチョコレートコーティングされたウェハース若しくはビスケットを提供し、それらのいずれかは層状であってもなくてもよい。チョコレートコーティングは、エンロービング又はモールディング等の任意の好適な手段によって適用又は作り出すことができる。コーティングは、本発明の又は本発明に従って作製されたチョコレート製品を含んでもよい。
【0216】
本発明の別の実施形態は、本発明の及び/又は本発明で使用されるチョコレート製品菓子製品を提供し、これは、例えば、プラリネ、チョコレートシェル製品などの外層によって覆われたフィリングを含む。
【0217】
本発明の別の好ましい実施形態では、食品は、少なくとも1つの層又はコーティングが本発明のチョコレート製品(例えば、チョコレート)であり、フィリングが間に挟まれた、複数の層のウェハース、チョコレート製品、ビスケット及び/又は焼成食品を含む多層コーティングチョコレート製品を含む。最も好ましくは、多層製品は、サンドイッチビスケット、クッキー、ウェハース、マフィン、押出スナック及び/又はプラリネから選択されるチョコレート製品菓子製品(例えば、本明細書に記載される)を含む。このような製品の一例は、フィリングで挟まれ、チョコレートでコーティングされた、焼成ウェハース及び/又はビスケット層の多層ラミネートである。
【0218】
本発明で使用される焼成食品は甘くても、又は風味の効いた(savoury)ものであってもよい。好ましい焼成食品は、焼成された穀物食材を含むことができ、この用語には、シリアル及び/又は豆類を含む焼成食品を含む。焼成シリアル食品は、より好ましく、最も好ましくは、ウェハース及び/又はビスケットなどの焼成された小麦食品である。ウェハースは、平坦であってもよいし、又は(例えば、アイスクリーム用のコーン又はバスケットに)形作られてもよく、並びにビスケットはいろいろな形状を有してもよいが、好ましいウェハース及び/又はビスケットは、本発明の菓子フィリング(及び任意選択的に果実ベースのフィリング)と一緒に有効に重ねることができるように、平坦である。より好ましいウェハースは、風味の効いたものではない(non-savoury)ウェハースであり、例えば、甘い風味又はプレーンな風味を有するウェハースである。
【0219】
本発明のチョコレート製品を含む、及び/又は本発明で使用されるチョコレート組成物を含み得る、これらの可能な焼成食品の非限定的リストは、高脂肪ビスケット、ケーキ、パン、ペストリー及び/又はパイから選択され、例えば以下からなる群から選択される:ANZACビスケット、ビスコッティ、フラップジャック、クラビエ(kurabiye)、レープクーヘン、レケルリ(leckerli)、マカロン(macroon)、バーボンビスケット、バタークッキー、ダイジェスティブ・ビスケット、カスタードクリーム、押し出しスナック、フロランタン、ガリバルディ・ジンジャーブレッド、クロラキア(koulourakia)、コウラビエデス(kourabiedes)、リンツァートルテ、マフィン、オレオ、ナイスビスケット、ピーナツバタークッキー、ポルボロン、ピッツェル、プレッツェル、クロワッサン、ショートブレッド、クッキー、フルーツパイ(例えば、アップルパイ、チェリーパイ)、レモン・ドリズル・ケーキ、バナナブレッド、キャロットケーキ、ピーカンパイ、アップルシュトゥルーデル、バクラヴァ、ベルリーナ、ビション・オ・シトロン(bichon au citron)、及び/又は同様の製品。
【0220】
好ましくは、本発明のチョコレート製品及び/又は本発明により調製されたチョコレート製品は、1つ以上のコーティング及び/又はフィリングとして(成分の全体又は一部に)使用するのに好適であり得る。
【0221】
コーティング及び/又はフィリングは、脂肪、及び/又は水の液相及び/又は気相などの1つ以上の固相及び/又は流体相を例とする複数の相を含んでよく、乳濁液、分散液、クリーム及び/又はフォームなどである。
【0222】
したがって、概して、本発明の更なる態様は、本明細書に記載のチョコレート製品を含む。
【0223】
本発明の尚更なる態様は、チョコレート製品菓子製品として及び/又はフィリングとして及び/又は本明細書に記載される本発明の食品のコーティングとしての、本発明のチョコレート製品又は本発明により調製されたチョコレート製品の使用を広く含む。
本発明の具体的な製品
本発明の一実施形態では、従来知られているチョコレート製品とはカカオマスの代替物が存在することで区別される、チョコレート製品又はチョコレート様製品が得られる。
【0224】
本発明の「塊」とは、本発明の方法の乾燥生成物である。
【0225】
一実施形態では、チョコレート製品は、最終製品に応じて、チョコレート製品の0.5重量%~95重量%の本発明の塊、好ましくは5重量%~85重量%、例えばチョコレート製品の45重量%~80重量%、5重量%未満、又は8重量%~20重量%の塊を含む。
【0226】
本発明の一実施形態では、本発明の塊は、チョコレート製品、好ましくはチョコレート製品、好ましくはチョコレート中のカカオマス/リカーの主な原材料であり、好ましくは、塊は、チョコレート製品、好ましくはチョコレート中のカカオマス/リカーの60重量%超、好ましくは75%超、より好ましくは80%超、より好ましくは85%超、より好ましくは90%超、より好ましくは95%超、より好ましくは100%を構成する。
【0227】
一実施形態では、チョコレート製品は、最終製品に応じて、チョコレート製品の0重量%~35重量%、好ましくは0重量%~30重量%、例えばチョコレート製品の6重量%~20重量%、5重量%未満又は20重量%~35重量%のカカオバターを含む。一実施形態では、カカオバターの添加は、カカオマス中の任意の存在とは独立している。
【0228】
本発明の一実施形態では、チョコレート製品、好ましくはチョコレートは、チョコレート製品、好ましくはチョコレートの5重量%~65重量%、好ましくは10%~65%、より好ましくは15%~60%、より好ましくは20%~60%、例えば20%~55%、20%~40%、34%~58%又は37%~50%の糖を含む。
したがって、好ましい実施形態では、本発明は、
・0.5重量%~95重量%の本発明の塊のチョコレート製品と、
・0重量%~35重量%のカカオバターのチョコレート製品と、
・5重量%~65重量%の糖のチョコレート製品を含む、チョコレート製品を提供し、
・好ましくは、本発明の塊は、チョコレート製品、好ましくはチョコレート中のカカオマス/リカーの主な原材料であり、好ましくは、塊は、60重量%のカカオマス/リカーを構成する。
【0229】
一実施形態では、糖は、スクロースであってもよい。あるいは、糖の一部又は全部は、国際公開第WO2019115731号、同第WO2019115735号、及び同第WO2019149909号に記載されている方法によって提供される、乾燥パルプ又は乾燥されたパルプの抽出物であってもよい。
【0230】
本発明の一実施形態では、チョコレート製品は、ミルクチョコレート及びダークチョコレートからなる群から選択される。
【0231】
一実施形態では、組成物は、カカオマス及びカカオパルプ抽出物のみから本質的になるか、又はカカオマス及び乾燥されたカカオパルプのみから本質的になる。
【0232】
本発明において、用語「のみから本質的になる」は、少なくとも95.0重量%、より好ましくは少なくとも97.5重量%、より好ましくは少なくとも98.0重量%、及びより好ましくは少なくとも99.0重量%、好ましくは最大100.0重量%を意味する。
【0233】
一実施形態では、本発明は、本発明の塊及びカカオパルプ抽出物からなるチョコレートを提供する。
【0234】
したがって、本発明は、
・本発明の乾燥塊を、チョコレート製品、好ましくは糖及び/又はカカオバター中に存在する少なくとも1種の他の原料と組み合わせる工程と、
・調製された組合せを好ましくは精製する工程と、
・チョコレート製品中に存在する他の原料を好ましくは添加する工程と、
・組合せたものを好ましくはコンチングする工程と、を含む、方法を提供する。
【0235】
一実施形態では、組成物は、香味料、乳ベース成分、乳化剤、カカオバター、及び追加の糖からなる群から選択される少なくとも1種の成分、好ましくは乳ベース成分、乳化剤、及びカカオバターからなる群から選択される少なくとも1種の成分を更に含む。
【0236】
一実施形態では、組成物は、乳ベース成分、乳化剤、及びカカオバターからなる群から選択される少なくとも1つの成分、好ましくは乳ベース成分、乳化剤、及びカカオバターからなる群から選択される少なくとも1つの成分を更に含む。
【0237】
一実施形態では、本発明の塊に加えてカカオバターが使用される場合、追加のカカオバターは、チョコレート製品組成物の25重量%未満、好ましくは20重量%未満及び好ましくは2.5重量%超、好ましくは5.0重量%超、例えば2.5重量%~25重量%の量で使用される。
【0238】
本発明の一実施形態では、乳ベース成分は、無脂肪乳固形分、乳粉末(任意選択的に全乳の、脱脂された又は半脱脂された)及び乳脂肪からなる群から選択される。一実施形態では、乳製品は、これらの既知の製品の製造のための標準的なパラメータの範囲内で噴霧乾燥され得る。
【0239】
本発明の一実施形態では、チョコレート製品、好ましくはチョコレートは、チョコレート製品、好ましくはチョコレートの0重量%~60重量%、好ましくは0%~50%、より好ましくは15%~60%、より好ましくは20%~60%、例えば20%~55%、22%~50%又は25%~40%の乳ベース成分を含む。
【0240】
したがって、好ましい実施形態では、本発明は、
・チョコレート製品の0.5重量%~95重量%の本発明の塊と、
・チョコレート製品の0重量%~35重量%のカカオバターと、
・チョコレート製品の5重量%~65重量%の糖と、
・チョコレート製品、好ましくはチョコレートの0%~60重量%の乳ベース成分と、を含むチョコレート製品を提供し、
・好ましくは、本発明の塊は、チョコレート製品、好ましくはチョコレート中のカカオマス/リカーの主な原材料であり、好ましくは、塊は、60重量%のカカオマス/リカーを構成する。
【0241】
一実施形態では、乳化剤は、レシチン、ポリグリセロールポリリシノレエート及びアンモニウムホスファチドからなる群から選択される。一実施形態では、乳化剤の量は、組成物の0.05~1.0重量%、好ましくは0.1重量%~0.5重量%であり得る。あるいは、乳化剤は、存在しなくてもよい。
【0242】
一実施形態では、香味料は、典型的にチョコレートの製造に使用される任意のもの、例えば、バニラベース/バニラ抽出物(例えば、バニリン)又はヘーゼルナッツベース/ヘーゼルナッツ抽出物(例えば、ヘーゼルナッツペースト又はヘーゼルナッツ油)であってもよい。
【0243】
一実施形態において、組成物は具材を含む。具材は、当該技術分野において一般的に使用される任意のもの、例えば、フルーツベースの具材、ナッツベースの具材、穀物ベースの具材及びヨーグルトベースの具材であってもよい。具材は、一般に使用される形態、例えば、チップ、フレークなどの形態をとることができる。具材は、チョコレート製品の重量に基づいて2.5%~25%の量で存在し得る。
【0244】
具体的な非限定的なチョコレートのレシピをここで説明する。以下の全ての実施形態において、百分率は、チョコレート製品全体の重量%に関する。
【0245】
一実施形態において、チョコレート製品組成物は、以下の成分を含む。
45~80%の本発明の塊
10~55%の糖源
0~15%のカカオバター
0.0~1.0%又は0.5%のレシチン
【0246】
一実施形態において、チョコレート製品組成物は、以下の成分を含む。
8~25%の本発明の塊
25~58%の糖源
10~25%のカカオバター
0.0~6.5%の乳脂肪
15~40%の乳粉末
0.0~1.0%又は0.5%のレシチン
【0247】
したがって、本発明は、1つの原材料、すなわちカカオポッドに由来するチョコレート製品、又は本発明の組成物及び他の従来の原料を使用するチョコレート製品を提供し得る。
【0248】
本発明の一実施形態では、全ての原料がカカオポッドに由来するチョコレート製品の製造方法であって、すなわち、チョコレート製品が、カカオポッド由来の原料のみから本質的になる方法が提供される。
【0249】
本発明の一実施形態では、チョコレート製品の製造において、乾燥されたカカオパルプ又はカカオパルプ抽出物は、添加糖が通常導入される時点で他の原料と組み合わされる。
【0250】
本発明の一実施形態では、本発明のカカオマスと、カカオパルプ又はカカオパルプの抽出物とを組み合わせる工程を含む、チョコレート製品の調製方法が提供される。一実施形態では、カカオパルプ又はカカオパルプの抽出物を組み合わせることは、チョコレートの製造に従来使用されるとおりに糖とカカオマスとを組み合わせるために従来使用されている任意の装置によって行われてもよい。
【0251】
一実施形態において、本発明のチョコレート組成物は、適用可能な既知の装置を使用して精製することができる。好ましい実施形態では、チョコレートを精製して、粒感のない質感を確保する。例えば、精製を実行し、50マイクロメートル未満、好ましくは15マイクロメートル~35マイクロメートルの粒径(マルバーンマスターサイザー3000により測定したD90)を達成することができる。
【0252】
一実施形態では、従来のコンチングプロセスを使用してチョコレートを調製する。
【0253】
一実施形態では、コンチング工程における温度は、80℃を超えず、好ましくは75.5℃を超えず、好ましくは70℃を超えない。好ましい実施形態では、温度は、35℃超、好ましくは40℃超、好ましくは45℃超、又は50℃超、又は55℃超である。
【0254】
一実施形態では、コンチングは、5時間超、好ましくは10時間以上、好ましくは15時間以上の期間にわたって行われる。一実施形態では、コンチングは、60時間未満、好ましくは50時間未満の期間にわたって行われる。
【0255】
一実施形態では、コンチングは、40℃~80℃の温度で5時間~60時間の期間にわたって行われる。
【0256】
生成物における糖源がパルプ及び/又はパルプ抽出物から調製される場合、コンチングの温度及び持続時間は、好ましくは、以下のパラメータを満たすように制御される。
【0257】
好ましい実施形態では、コンチング工程における温度は60℃を超えず、好ましくは57.5℃を超えず、好ましくは56℃を超えない。この工程中の温度を制御することにより、パルプのカラメル化が回避され、最終製品の質感に粒感はない。好ましい実施形態では、温度は30℃超、好ましくは35℃超、40℃超又は45℃超である。
【0258】
一実施形態では、コンチングは、1.5時間超、好ましくは2時間以上、好ましくは2.5時間以上の期間にわたって行われる。一実施形態では、コンチングは、8時間未満、好ましくは6時間未満の期間にわたって行われる。
【0259】
一実施形態では、コンチングは、30℃~60℃の温度で1.5時間~8時間の期間にわたって行われる。
【0260】
一実施形態では、コンチング速度は、200rpm~2000rpm、好ましくは400rpm~1600rpmである。
【0261】
好ましい実施形態では、パルプ及び/又はパルプ抽出物はカラメル化されず、例えば、本発明の組成物を生成するために使用される加工工程はカラメル化をもたらさない。
【0262】
一実施形態では、コンチング速度及び/又は温度は、上記の範囲内のコンチング工程にわたって変化し得る。
【0263】
別段の定義がされていない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する当該技術分野の当業者によって通常理解されているものと同じ意味を有し、かつ与えられるべきである。
【0264】
文脈が明確に別のものを示していない限り、本明細書で使用するとき、本明細書の用語の複数形は、単数形を含むと解すべきであり、単数形が使用されるときには複数形も含まれるものと解すべきである。
【0265】
上記に定義された全ての範囲において、端点は、記載された範囲の範囲内に含まれる。加えて、一実施形態における最も広い範囲の端点と、より狭い範囲の端点とが組み合わされてもよい。
【0266】
本明細書に記載のいずれの量についても、百分率としての合計量は、(丸め誤差を許容しつつも)100%を超過し得ないものと理解されよう。例えば、本発明の組成物が含む成分(又はそれらの部分)の合計は、組成物(又はそれらの同じ部分の重量(又は他の)百分率として記載される場合、丸め誤差を許容しつつも、合計100%とすることができる。しかし、成分の列挙が非排除的なものである場合、そのような成分の各々についての百分率の合計は、本明細書において明示的に記載されていない場合のある追加のいずれの成分量に関しても、ある程度の百分率を許容するため、100%未満になり得る。
【0267】
本明細書で使用するとき、用語「実質的に」は、多量又は大きな割合を意味する量又は実体を指し得る。これに関連して、「実質的に」が使用される文脈において、「実質的に」は、(記載の文脈において参照される量又は実体のいずれかに対する)量を意味し、対象とするものの全量の少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、特に少なくとも98%、例えば、約100%の割合を構成する量として理解できる。類似する用語「実質的に含まない」は、同様に、参照される量又は実体が、対象とするものの全量の20%以下、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、とりわけ好ましくは5%以下、特に2%以下、例えば、約0%を構成することを表すことができる。好ましくは、適切な場合(例えば、原料の量において)、そのような百分率は重量基準である。
【0268】
別段の指定がない限り、列挙される百分率は、重量によるものである。
【0269】
本発明は、非限定的な具体例を参照して更に説明される。
【0270】
[実施例]
参考例1
カカオパルプ粉末の調製
種PH16、Salobrinho、及びCCN51のカカオポッドを流水で洗浄した。次にそれらを、200mg/Lの遊離塩素を含む塩素添加水に10分間浸漬した。次にそれらを、5mg/Lの遊離塩素を含む塩素添加水を噴霧することにより洗浄した。
【0271】
ステンレス鋼ナイフを用いて、手作業で果実を割った。次に、パルプ種子を樹皮から取り出した。
【0272】
パルプ化は、ブラシシステムを使用する市販のフルーツパルパーで実施した。パルプを40×50cmのポリプロピレンプラスチック袋に直接回収し、真空下で密封した。パッキング後、-18℃でパルプを凍結し、保存した。
【0273】
実施例A
最初に、パルプを解凍した。次に、酵素処理のために、3.0kgのパルプのバッチをジャケット付き反応器に入れ、恒温槽を用いて温度を42.5℃に上昇させ、温度が達したとき、以下の条件下で酵素(Pectinex(登録商標)Ultra Clear、Novozymes)を添加した:
濃度:1mLの酵素/100gのパルプ
温度:42.5℃
反応時間:60分
回転100rpm
【0274】
酵素処理直後に、90℃で5分間熱処理を行い、20℃で冷却した。冷却された材料を、更なる凍結乾燥処理のために凍結した。
【0275】
実施例B
実施例Aに記載の60分間の酵素反応終了時に、試料を採取し、十分な水酸化カルシウムをパルプに添加してpHをおよそ5.0に調整した。以下の条件を使用した:
各3kgのパルプに12.9gのCa(OH)2を添加した(0.43%)。
【0276】
混合は、ミキサを用いて約15分間、200rpmの速度で実施し、その後、低温殺菌を90℃で5分間実行し、20℃に冷却した。
【0277】
冷却した材料を凍結し、凍結乾燥させた。
【0278】
カカオパルプの凍結乾燥を、Lio Top装置上で2バッチで96時間実施した。各バッチで、2.5~3.0kg/トレイで8枚のトレイを配置した。
【0279】
凍結乾燥プロセスが完了した後、脱水されたパルプの入ったトレイを装置から出した。凍結乾燥したパルプをトレイから取り出し、ロール袋に入れ、次に真空密封し、凍結乾燥カカオパルプ粉末を得た。
【0280】
試験
凍結乾燥の前に、天然パルプ、酵素処理されたパルプ及び二重処理されたパルプのpHは、2組の測定値の平均に基づいて、20℃でそれぞれ3.52±0.32、3.36±0.02及び4.77±0.05であることが判明した。
【0281】
粘度測定は、30℃で60秒間、回転を用いるBrookfields RVDV IIIレオメータを使用して2組の測定値の平均に基づいて行った。
【0282】
見かけ粘度(100rpm)見かけ粘度(250rpm)、天然パルプの場合、611.5±2.12及び322.5±3.53、酵素処理されたパルプの場合、400.0±14.14及び162.5±10.60、並びにpH調整され、酵素処理されたパルプの場合、392.5±12.43及び158±11.32(全ての結果はセンチポアズで報告される)。
【0283】
したがって、本発明の処理により、粘度の低減がもたらされることが分かる。
【0284】
上記の調製例並びに実施例A及び実施例Bからのカカオパルプ粉末を、HPAEC-PADを用いて評価して、以下の手順を用いて糖含有量を測定した。
【0285】
試料を、室温で上記のpHで脱イオン水に溶解し、70℃で27分間加熱し、より低温で遠心分離し、希釈したアリコートを調製する。0.2マイクロメートルの注射器を使用してアリコートを濾過し、溶出剤として水酸化ナトリウム水溶液を用いて陰イオン交換ポリスチレン-ジビニルベンゼンカラムを使用して糖を分離し、溶出した炭水化物をPADを使用して検出する。
【0286】
【表1】

全糖含有量は、例えば、存在し得るオリゴ糖類を全く含めずに測定される糖に関する。
【0287】
更に、Ricaeliから得た凍結パルプを乾燥させ、以下のように評価した。
【0288】
カカオパルプ試料の全糖は、パルスドアンペロメトリ検出器(HPAEC-PAD)を備えた高性能陰イオン交換クロマトグラフィによって測定した。試料から糖を温水で抽出し、HPAEC-PADシステムに注入した。弱酸である中性糖は、高pHで部分的にイオン化され、塩基安定性ポリマーカラム(CarboPac PA20)上の陰イオン交換クロマトグラフィによって分離することができる。糖は、金電極の表面での当該糖の酸化によって生成される電流を測定することにより検出される。
【0289】
カカオパルプ試料中の総食物繊維及びその画分は、Journal of AOAC International,102,Number1,January-February2019,pp.196-207(12)に記載されている酵素-重量法であるRapid Integrated Total Dietary Fiber法によって測定される。
【0290】
タンパク質の含有量は、有機化合物を分解し、硫酸アンモニアとして窒素を遊離させる硫酸消化により構成されるケルダール法によって求めた。続いて、水酸化ナトリウムの存在下で蒸留してアンモニウムをアンモニアに変換する。アンモニア含有量、ひいては窒素含有量は、滴定によって求める。窒素の量は、変換係数6.25を乗じることによってタンパク質に変換される。
【0291】
カカオパルプ中のリグニン含有量をAACC国際法32-25.01で測定した。
【0292】
脂肪含有量は、好ましくはISO8262-1を用いて、酸加水分解を使用して測定される。
【0293】
未加工のカカオパルプは、主に単糖類及び二糖類(79重量%の乾燥物)から構成されており、食物繊維は、試験したこのパルプの6.5%を構成する。高分子量の可溶性食物繊維は、未加工のカカオパルプ中の食物繊維画分の主要成分であり、次に不溶性繊維である。これらの結果は、可溶性食物繊維-高分子量の平均重合度(DP)が12単糖類単位以上であることを考慮すると、カカオパルプ繊維が有意な量のオリゴ糖類を含有しないことを示す(Okhuma et al.,2000.J AOAC Int.Volume83,Number4,Pages1013-1019)。更に、不溶性繊維及び可溶性食物繊維-高分子量を含有する凍結乾燥粉末の試料に、SEC-MALSによる分析を行った。この分析に際し、試料を部分的にDMSOに溶解させたところ、9.5kDaの平均分子量を示した。これはDP50~60と解釈される。
【0294】
【表2】
【0295】
参考例2
実施例1で使用したものと同じ原材料からのカカオパルプ30gを、ラピッド・ビスコ・アナライザ(Rapid Viscosity Analyser:RVA)アルミニウムカップに導入し、50rpmで撹拌しながら40℃で5分間安定化した。次に、酵素形態に応じて、150μLの液体酵素又は150mgの酵素粉末を添加した。撹拌を8秒間960rpmまで上げ、50rpmに戻し、温度は40℃に維持した。温度を40℃で更に45分間維持した後、酵素を不活性化するために10分間90℃まで上昇させた。平均粘度は、各作動の時間、41~49分の間で得られた値の平均を計算した。粘度の低減は、未処理の試料と比較しての粘度の減少に基づいて計算し、百分率で表した。
【0296】
ポリガラクツロナーゼ活性を40℃で測定し、100mMのpH4.5の酢酸緩衝液中5.0g/mLでポリガラクツロン酸(Megazyme P-PGAT)を加水分解した。正確に2分、4分、6分、8分、10分及び12分後に試料を採取し、反応速度曲線を作成した。DNS試薬溶液(1%の3,3-ジニトロサリチル酸+1.6%のNaOH+40%の酒石酸カリウムナトリウム四水和物)を直ちに加えて酵素反応を停止させ、放出された還元末端を発色させ、試料を10分間沸騰させた。最後に、吸光度を540nmで読み取った。ガラクツロン酸を標準として使用して検量線を作成した。
【0297】
酵素アッセイ:Megazymeからの改変エンドセルラーゼCellG5キット手順。1g/Lのウシ血清アルブミンを含有する100mMのpH4.5の酢酸緩衝液中、37℃でセルラーゼ活性を測定した。酵素反応を正確に2分、4分、6分、8分、10分及び12分後に停止して反応速度曲線を作成し、2%のTRIS緩衝液(pH10.0)を添加した。最後に、吸光度を405nmで読み取った。P-ニトロフェノールを標準として使用して検量線を作成した。平均3回の読み取りを行った。
【0298】
【表3】
【0299】
実施例1
未発酵、未焙煎のカカオ豆及びカカオパルプを低温殺菌し、ボウルカッターを用いて真空下で80℃にて20分間混合して、ペーストを形成した。ペーストをトレイに入れ、70℃で45時間乾燥させた。Mettler-Toledo、ハロゲン水分分析器を用いて、以下の含水量、AM重量%の結果を得た。
70℃で22時間後=AM16.66%
70℃で27時間後=AM5.40%
70℃で45時間後=AM1.96%
【0300】
ダークチョコレートは、1.8kgの砂糖、3.9kgの上記の乾燥塊、0.02kgのレシチン、0.6kgのカカオバター、及び0.01kgのバニラを用いて調製し、混合し、コンチングして、チョコレート製品に形成した。
【0301】
ミルクチョコレートは、2.0kgの乳粉末、2.5kgの砂糖、1.2kgの上記の乾燥塊、0.02kgのレシチン、1.2kgのカカオバター、及び0.01kgのバニラを用いて調製し、混合し、コンチングして、チョコレート製品に形成した。
【0302】
具体的には、砂糖及び乾燥カカオを一緒に混合し、粒子径を20マイクロメートルまで減少させるために、Buehler Refiner3シリンダで3回精製した。コンチングは、ミルクチョコレートでは65℃で12時間、ダークチョコレートでは70℃で24時間行った。
【0303】
実施例2
120gの天然パン酵母を、3kgの低温殺菌カカオペーストに添加し、30℃で24時間かまどに入れた。その後、発酵した塊を175℃で40分間焙煎した。
【0304】
ダークチョコレートは、1.8kgの砂糖、3.9kgの上記の乾燥塊、0.02kgのレシチン、0.6kgのカカオバター、及び0.01kgのバニラを用いて調製し、混合し、コンチングして、チョコレート製品に形成した。
【0305】
具体的には、砂糖及び乾燥カカオを一緒に混合し、粒子径を20マイクロメートルまで減少させるために、Buehler Refiner3シリンダで3回精製した。コンチングを70℃で48時間行った。
【0306】
実施例3
未焙煎の発酵し単離されたカカオ豆とRicaeli製のカカオパルプとを合わせ(150g:275g)、フードプロセッサにて最大速度で20分間加工した。300gのペーストを70℃で24時間トレイで乾燥させた。乾燥塊を片に粉砕して粉末を形成した。229.5gの塊を、精製された40.5gのカカオバターと混合し、40℃で7時間コンチングした。
【0307】
実施例4
非酵素処理されたフレーク(non-enzymatically treated flake、CPPフレーク)の調製は、以下の方法に従って実施した。20kgの未発酵パルプ、豆、胎座を、ボウルカッター内で80℃にて20分間粉砕し(pH4.9のペーストを生成した)、次いで、KOHによりpH5.5へとpHを調整した。固形分を、Mettler-Toledoハロゲン水分計を用いて105℃で13分間測定して、72.9%の結果を得た。
【0308】
次いで、ペーストを、75℃又は50℃のオーブン内のトレイで乾燥させて、フレークを得た。
【0309】
【表4】
【0310】
次いで、フレークを焙煎オーブンに移し、120℃(測定された生成物温度)で20分間焙煎した。焙煎時間はフレークの外観及び味によって制御された。最終生成物は、38%の収率、38.83%の脂肪含有量、及び3.97%の水分含有量を有した。
【0311】
実施例5
酵素により処理されたフレーク(CPPフレーク)の調製は、以下の方法に従って実施した。20.8kgの未発酵パルプ、豆、胎座を、ボウルカッター内で80℃にて20分間粉砕した(pH4.9のペーストを生成した)。
【0312】
次いで、ペーストを、ペーストの重量%に基づいて酵素処理した。
【0313】
【表5】
【0314】
100gの各酵素を、3020gの水中に秤量し、ペーストに添加した。混合物を、50℃で2時間低速にて動作するミキサで撹拌したままにした。酵素処理後に粘度が著しく低減し、ペーストが薄く均質な流体に変化した。甘味の増加もまた非常に顕著であった。
【0315】
pHをKOHでpH5.5に調整した。
【0316】
次いで、ペーストを75℃のオーブン内のトレイで19時間乾燥させて、フレークを得た。乾燥方法終了時のフレークの水分は、8.3%であった(105℃で13分間)。
【0317】
次いで、フレークを焙煎オーブンに移し、110℃(測定された生成物温度)で15分間焙煎した。焙煎時間はフレークの外観及び味によって調節した。最終生成物は、32%の収率、36.90%の脂肪含有量、及び5.15%の水分含有量を有した。
【0318】
実施例6
チョコレート塊のレシピは、70%のカカオ固形分(全ての原材料由来、すなわち、パルプ及び胎座を含む)、48%の脂肪を含有し、乳化剤を含有しない、70%のダークチョコレートに基づくものとした。酵素処理あり及びなしで、両方のフレークのバッチを半分に分けて、フレーク毎に、一方がスクロースを含有し、他方がカカオパルプ粉末を含有する、2種類のチョコレート塊変形例を作製した。
【0319】
実施例6a
【表6】
【0320】
実施例6b
【表7】
【0321】
実施例6c
【表8】
【0322】
実施例6d
【表9】
【0323】
コンチング温度を40℃にしたことを除き、実施例1の方法に従ってチョコレートを調製した。
【0324】
カカオパルプ粉末は、国際公開第WO2019149909号の実施例14の方法によって調製した。
【0325】
実施例6a及び実施例6bで使用されるフレークの粒子径は、3本ロールリファイナーで精製した後、Malvern社のマスターサイザー2000、Method Scirocco2000乾燥アタッチメント、フラウンホーファー回析理論を用いて測定した。実施例6aは、16マイクロメートルのD90を有し及び実施例6bは38マイクロメートルのD90を有した。
【0326】
酵素処理はコンチング工程中の粘度を低下させることが示された。しかしながら、全ての試料は均質であった。酵素方法はまた、甘味を増加させることも示された。乾燥及び焙煎方法は、カラメル化及びメイラード反応に起因して、最終糖の量に影響を与え得ることに留意されたい。
【0327】
実施例7
上述のように、本発明の目的は、典型的には77%の外皮、13%の豆、8%のパルプ、及び2%の胎座を含む、カカオ果実の内部成分の全てを使用することである。豆、パルプ、及び胎座で作製したカカオピューレの組成を分析した結果を表10に示す。結果は、およそ8%の糖(1:1に近い割合の90%超のフルクトース及びグルコース混合物)、13%の脂肪、6.5%の繊維(85%の不溶性繊維)、4.5%のタンパク質、及び62%の水分が含まれることを示す。カカオ(coca)ピューレのpHは4.9である。
【0328】
【表10】
【0329】
【表11】
【0330】
【表12】
【0331】
【表13】
【0332】
酵素処理されたCPP及びカカオパルプ粉末を有するチョコレートのレシピに推定される組成を、その原料の組成に基づいて計算した。推定された組成は、分析結果と非常に良好な一致を示す。これはまた、チョコレート組成物が、チョコレート作製方法によって変化しなかったことも示す。
【0333】
実施例8
20kgの湿潤した豆(カカオ豆、パルプ、及び胎座から構成される)を、80℃の目標温度まで加熱して低温殺菌しながら、Stephanミキサ(モデル:UM-60、72L容量)を用いてピューレに摩砕した。
【0334】
低温殺菌(45℃)されたカカオピューレのpHを、水(22℃)により1:1で希釈することによって測定した。低温殺菌されたカカオピューレのpHは28.1℃で5.3であることが分かった。ピューレのpHを15MのKOH溶液によって5.5(+/-0.1)の目標pHに調整した。20kgのカカオピューレでは、約20~25gの15NのKOHを添加して、目標pHを達成した。
【0335】
試料を以下のようにトレイで乾燥させて、フレークを形成した。
【0336】
【表14】
【0337】
次いで、75°及び90℃の乾燥フレークを、105℃又は125℃のいずれかでファンオーブン内で焙煎した。水分含有量はハロゲン水分分析器を用いてモニタリングした。焙煎粉末の焙煎パラメータ、最終水分含有量、及び脂肪含有量を、以下の表に要約する。
【0338】
【表15】
【0339】
ダークチョコレート(上述の70%のチョコレートに基づく)及びミルクチョコレート(18%のカカオバター、5%の乳脂肪、38%の砂糖、17%のフレーク、21.5%の脱脂粉乳、0.6%のレシチン使用)のためのチョコレート塊レシピを調製した。精製は、25マイクロメートルの粒子径(レーザー回折(Malvern製)を介して測定されたD90値)を目標として、キッチンスケールの3ロールリファイナーを用いて行った。低温コンチングは、キッチンスケールのStephanミキサ(約7kg容量)で40℃にて2時間行った。
【0340】
チョコレートをテンパリングし、標準的な手順を用いて成形した。
【0341】
実施例9
上記の方法を用いて上の試料を分析し、結果を以下に示す。
【0342】
【表16】
【0343】
【表17】
【国際調査報告】