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特表2022-553921グラフェンを合成するための装置、方法、およびカーボンピル
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  • 特表-グラフェンを合成するための装置、方法、およびカーボンピル 図1
  • 特表-グラフェンを合成するための装置、方法、およびカーボンピル 図2A
  • 特表-グラフェンを合成するための装置、方法、およびカーボンピル 図2B
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  • 特表-グラフェンを合成するための装置、方法、およびカーボンピル 図6
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  • 特表-グラフェンを合成するための装置、方法、およびカーボンピル 図14
  • 特表-グラフェンを合成するための装置、方法、およびカーボンピル 図15
  • 特表-グラフェンを合成するための装置、方法、およびカーボンピル 図16
  • 特表-グラフェンを合成するための装置、方法、およびカーボンピル 図17
  • 特表-グラフェンを合成するための装置、方法、およびカーボンピル 図18
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-27
(54)【発明の名称】グラフェンを合成するための装置、方法、およびカーボンピル
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/184 20170101AFI20221220BHJP
【FI】
C01B32/184
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022522001
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(85)【翻訳文提出日】2022-06-09
(86)【国際出願番号】 CA2020051368
(87)【国際公開番号】W WO2021068087
(87)【国際公開日】2021-04-15
(31)【優先権主張番号】62/914,240
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522145524
【氏名又は名称】ユニバーサル マター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】マンチェフスキ、ウラジミール
【テーマコード(参考)】
4G146
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB07
4G146AC20A
4G146AC20B
4G146AC22A
4G146AC22B
4G146BA01
4G146BC18
4G146CB09
(57)【要約】
【解決手段】少なくとも2つの導電性表面の間の空間を含み、導電性表面は空間においてカーボンピルを支持するように構成されている、カーボンピルをグラフェンに変換する装置が提供される。この装置はまた、少なくとも2つの導電性表面に電気的に結合された、少なくとも2つの電極を含む。この装置は、カーボンピルをグラフェンに変換するように電極を通じて電流を流すために、電極に接続された電源も含む。ジュール加熱によってグラフェンに合成するための第1の炭素材料を含む、グラフェン変換のためのカーボンピルも提供される。第1の炭素材料は、粉末状から錠剤状に圧縮される。カーボンピルは、第1の炭素材料を粉末状から錠剤状に結合させること、および第1の炭素材料の導電性を向上させることの少なくとも一方を行うための第2の材料を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンピルをグラフェンに変換するための装置であって、
少なくとも2つの導電性表面の間の空間であって、前記導電性表面は、前記空間において少なくとも1つのカーボンピルを支持するように構成されている、空間と、
前記少なくとも2つの導電性表面に電気的に結合された、少なくとも2つの電極と、
前記少なくとも1つのカーボンピルをグラフェンに変換するように、前記電極を通じて電流を流すために前記電極に接続された電源と、を備える、
装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのカーボンピルに接触することなく、前記カーボンピルからそれた粉末を遮断するように構成された、前記空間を囲むように配置されたシールドをさらに備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのカーボンピルに加えられる圧縮力を検出するための力センサをさらに備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つのカーボンピルの電気抵抗を測定するための抵抗センサをさらに備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも2つの導電性表面は、前記少なくとも1つのカーボンピルを前記空間において浮かせるために、前記導電性表面に圧縮力を加える圧縮ばねに結合される、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記導電性円盤は、グラファイト円盤である、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記シールドは、石英製である、
請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記導電性表面は、高温で弾力的である、
請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記導電性表面は、900℃を超える高温で動作する、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのカーボンピルは、複数のカーボンピルである、
請求項1記載の装置。
【請求項11】
請求項1に記載の装置によって製造された、
乱層グラフェン。
【請求項12】
グラフェンを合成するための方法であって、
少なくとも1つのカーボンピルを2つの電極の間において圧縮することであって、前記ピルは、ジュール加熱によってグラフェンを合成するための第1の炭素材料と、前記第1の炭素材料を粉末状から錠剤状に結合させること、および前記第1の炭素材料の導電性を向上させることの少なくとも一方のための第2の材料とを備える、圧縮することと、
前記少なくとも1つのカーボンピルに電流を流すことと、
主に前記第1の炭素材料をグラフェンに変換することと、を含む、
方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのカーボンピルに電流を流すことは、
前記少なくとも1つのカーボンピルから水分および揮発性物質を除去するために、前記カーボンピルに低電圧で電流を流すことと、
前記第1の炭素材料をグラフェンに変換するために、前記カーボンピルに高電圧で別の電流を流すことと、をさらに含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電流は、前記低電圧と前記高電圧との間で連続的に流れる、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記低電圧は、80V~100Vの間である、
請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記低電圧は、400℃~800℃の間の温度に前記カーボンピルを加熱する、
請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記高電圧は、160V~400Vの間である、
請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記電流は、50ミリ秒~約1秒の間流れる、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記高電圧は、2800℃~3000℃の間で前記ピルを加熱する、
請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記カーボンピルは、20N~60Nの間の力で圧縮される、
請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのカーボンピルからそれた粉末を遮断するシールドを配置することをさらに含み、
前記シールドは、前記カーボンピルと物理的に接触しない、
請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記シールドは、石英である、
請求項21記載の方法。
【請求項23】
変換されていない炭素を前記グラフェンから除去することをさらに含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つのカーボンピルは、複数のカーボンピルである、
請求項12に記載の方法。
【請求項25】
請求項12に記載の方法によって製造される、
乱層グラフェン。
【請求項26】
グラフェン変換のためのカーボンピルであって、
ジュール加熱によってグラフェンに合成するための第1の炭素材料であって、前記第1の炭素材料が粉末状から錠剤状に圧縮される、第1の炭素材料と、
前記第1の炭素材料を粉末状から錠剤状に結合させること、および前記第1の炭素材料の導電性を向上させることの少なくとも一方のための第2の材料と、を備える、
カーボンピル。
【請求項27】
前記第2の材料は、前記第1の炭素材料を粉末状から錠剤状に結合させるためのものである、
請求項26に記載のカーボンピル。
【請求項28】
前記第2の材料は、前記第1の炭素材料の導電性を向上させるためのものである、
請求項26に記載のカーボンピル。
【請求項29】
前記第1の炭素材料は、石油コークス、タイヤのカーボンブラック、冶金用コークス、プラスチックの灰、挽いたコーヒーおよび無煙炭からなる群のうちの少なくとも1つを含む、
請求項26に記載のカーボンピル。
【請求項30】
前記第2の材料は、前記第1の炭素材料を粉末状から錠剤状に結合するためのものであり、挽いたコーヒー、トウモロコシのデンプン、松樹皮、ポリエチレンマイクロワックス、ワックス、ケンプレックス690、セルロース、ナフテン油、アスファルテネス、およびギルソナイトからなる群の少なくとも1つを含む、
請求項26のカーボンピル。
【請求項31】
前記第2の材料は、前記第1の炭素材料の導電性を向上させるためのものであり、石油コークス、タイヤのカーボンブラック、カーボンブラック、冶金用コークス、乱層グラフェンおよびカーボンナノチューブからなる群のうちの少なくとも1つを含む、
請求項26に記載のカーボンピル。
【請求項32】
約0.7~1.4g/ccの密度を有する、
請求項26に記載のカーボンピル。
【請求項33】
約16~140mS/mの導電率を有する、
請求項26に記載のカーボンピル。
【請求項34】
前記第1の炭素材料の流動および圧縮を補助するための潤滑性添加材料をさらに含む、
請求項26のカーボンピル。
【請求項35】
前記潤滑性添加剤は、微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、ステアリン酸マグネシウムおよび二酸化ケイ素からなる群のうちの少なくとも1つを含む、
請求項26に記載のカーボンピル。
【請求項36】
前記カーボンピルは、円柱、円盤、長方形、六角形、多角形、ドーナツ状およびそれらの組み合わせの幾何学的群に属する形状を有する、
請求項26に記載のカーボンピル。
【請求項37】
前記形状は、前記カーボンピルの片側を前記ピルの反対側に接続する少なくとも1つの中空構造を含む、
請求項36に記載のカーボンピル。
【請求項38】
前記形状は、中空円柱、中空円盤、中空六角形の群を含む、
請求項37に記載のカーボンピル。
【請求項39】
前記カーボンピルの少なくとも1つの端面は、主に平坦である、
請求項26に記載のカーボンピル。
【請求項40】
前記カーボンピルの少なくとも1つの端面は、凹面および凸面の群に属する、
請求項26に記載のカーボンピル。
【請求項41】
請求項26に記載のカーボンピルから合成された、
乱層グラフェン。
【請求項42】
カーボンピルをグラフェンに変換するための装置であって、
少なくとも2つの電極と、
前記カーボンピルをグラフェンに変換するように前記電極を通じて電流を流すために、前記電極に接続された電源と、を備え、
前記電極は、高温で動作し、
前記電極は、カーボンピルを支持するように構成されている、
装置。
【請求項43】
前記電極は、少なくとも2つの部分を含み、
少なくとも1つの部分が金属であり、少なくとも第2の部分がグラファイトである、
請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記金属の部分は、真鍮、銅、タングステン、チタン、ステンレス鋼、ステンレス鋼合金、モリブデン、タンタル、ニッケル、合金およびそれらの組み合わせからなる群からの高温金属である、
請求項44に記載の装置。
【請求項45】
前記第2の部分は、金属炭化物の高温材料である、
請求項44に記載の装置。
【請求項46】
前記電極は、1000℃を超える温度で動作する、
請求項42に記載の装置。
【請求項47】
前記電極は、円柱、円盤、長方形、六角形、多角形、円錐、平たい円錐およびそれらの組み合わせの幾何学的群に属する形状を有する、
請求項42に記載の装置。
【請求項48】
前記カーボンピルを支持している電極の側面は、主に平坦である、
請求項42に記載の装置。
【請求項49】
前記カーボンピルを支持している前記電極の前記側面は、凹面および凸面の少なくとも一方を含む、
請求項42に記載の装置。
【請求項50】
前記電極は、平坦な表面電極から円筒形の表面電極に、高密度の電流を流すように構成されたクランプをさらに含む、
請求項42に記載の装置。
【請求項51】
前記装置は、筐体内に封入されている、
請求項42に記載の装置。
【請求項52】
前記筐体は、真空下にある、
請求項51に記載の装置。
【請求項53】
前記筐体は、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素およびそれらの組み合わせからなる群からのガスで満たされている、
請求項51に記載の装置。
【請求項54】
前記筐体は、プレキシガラス、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アルミニウムおよびステンレス鋼を含む材料群から作られている、
請求項51に記載の装置。
【請求項55】
グラフェンを合成するための方法であって、
カーボンピルを2つの電極の間で圧縮することであって、前記カーボンピルは、少なくとも1つの炭素材料と、少なくとも1つの粉末結合材料と、少なくとも1つの導電性向上材料とを含む、圧縮することと、
前記ピルに電流を流すことと、
主に前記少なくとも1つの炭素材料をグラフェンに変換することと、を含む、
方法。
【請求項56】
乱層グラフェン材料であって、
前記グラフェンは、カーボンピルをジュール加熱することによって合成されたものである、
乱層グラフェン材料。
【請求項57】
前記カーボンピルは、少なくとも1つの炭素材料および少なくとも1つの結合材料を含む、
請求項56に記載の乱層グラフェン。
【請求項58】
前記カーボンピルは、少なくとも炭素材料および少なくとも1つの導電性向上材料を含む、
請求項56に記載の乱層グラフェン。
【請求項59】
前記カーボンピルは、少なくとも1つの炭素材料、少なくとも1つの結合材料、および少なくとも1つの導電性向上材料を含む、
請求項56に記載の乱層グラフェン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される実施形態は、グラフェンの製造に関し、特に、グラフェンを製造するための方法、装置、およびカーボンピルに関する。
【背景技術】
【0002】
序論
グラフェンは、ジュール加熱による炭素系粉末材料の変換によって製造できる。炭素系粉末は、石英管の小容器に詰められ、金属(銅、銅ウール、真鍮)電極を介して粉末材料の両端に電圧が印加される。しかしながら、粉末の貯蔵、粉末の輸送、および管への粉末の充填(粉末の閉じ込め)は、工業的応用においていくつかの課題を生じさせ、グラフェンの大量生産には実用的でない。
【0003】
さらに、ジュール加熱に使用され得る石英管は、ジュール加熱工程中に炭素粉末が石英と接触すると劣化し汚染されるため、コスト的に非効率である。また、石英管は1回の使用で廃棄しなければならないため、工業規模でグラフェンを製造する場合、コストが大幅に上昇する可能性がある。また、電極として使用する銅ウールもその工程によって劣化するため、グラフェン製造のコストがさらに上昇する。また、グラフェンと直接接触する銅および真鍮などの金属電極を使用すると、生成されるグラフェン粉末に金属汚染物質が添加される可能性がある。
【0004】
したがって、グラフェンを工業的規模で生産するためのコスト効率の高い新たな方法、製品、および装置が必要とされている。合成中に使用される石英を保存するグラフェンを製造する方法、製品、および装置は、コストを削減できる。さらに、グラフェンの製造に必要な材料の貯蔵、輸送、および処理を改善し、それによってグラフェンの低コストでの工業的生産を可能にする製品、方法、および装置が必要である。
【発明の概要】
【0005】
概要
いくつかの実施形態によれば、少なくとも2つの導電性表面の間の空間を含む、カーボンピルをグラフェンに変換するための装置が提供される。導電性表面は、空間において少なくとも1つのカーボンピルを支持するように構成される。この装置は、少なくとも2つの導電性表面に電気的に結合された、少なくとも2つの電極を含む。装置は、少なくとも1つのカーボンピルをグラフェンに変換するように電極に電流を流すために、電極に接続された電源を含む。
【0006】
装置は、少なくとも1つのカーボンピルに接触することなく、カーボンピルからそれた粉末を遮断するように構成された、空間を囲むように配置されたシールドを含んでよい。
【0007】
装置は、少なくとも1つのカーボンピルに加えられる圧縮力を検出するための力センサを備えてよい。
【0008】
装置は、少なくとも1つのカーボンピルの電気抵抗を測定するための抵抗センサを備えてよい。
【0009】
装置は、少なくとも2つの導電性表面は、少なくとも1つのカーボンピルを空間において浮かせるために、導電性表面に圧縮力を加える圧縮ばねに結合されることを提供してよい。
【0010】
装置は、導電性円盤がグラファイト円盤であることを提供してよい。
【0011】
装置は、シールドが石英製であることを提供してよい。
【0012】
装置は、導電性表面が高温で弾力的であることを提供してよい。
【0013】
装置は、導電性表面が900℃を超える高温で動作することを提供してよい。
【0014】
装置は、少なくとも1つのカーボンピルが複数のカーボンピルであることを提供してよい。
【0015】
乱層グラフェンは、本装置によって製造されてよい。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのカーボンピルを2つの電極の間において圧縮することを含む、グラフェンを合成するための方法が提供される。少なくとも1つのカーボンピルは、ジュール加熱によってグラフェンを合成するための第1の炭素材料を含む。また、少なくとも1つのカーボンピルは、第1の炭素材料を粉末状から錠剤状に結合させること、および第1の炭素材料の導電性を向上させることの少なくとも一方のための第2の材料を含む。本方法はまた、少なくとも1つのカーボンピルに電流を流すことを含む。本方法はまた、主に第1の炭素材料をグラフェンに変換することを含む。
【0017】
本方法は、少なくとも1つのカーボンピルに電流を流すことが、少なくとも1つのカーボンピルから水分および揮発性物質を除去するために、少なくとも1つのカーボンピルに低電圧で電流を流すことを含むことを提供してよい。カーボンピルに電流を流すことは、第1の炭素材料をグラフェンに変換するために、カーボンピルに高電圧で別の電流を流すことも含んでよい。
【0018】
本方法は、電流が低電圧と高電圧との間で連続的に流れることを提供してよい。
【0019】
本方法は、低電圧が80V~100Vの間であることを提供してよい。
【0020】
本方法は、低電圧が少なくとも1つのカーボンピルを400℃~800℃の間の温度に加熱することを提供してよい。
【0021】
本方法は、高電圧が160V~400Vの間であることを提供してよい。
【0022】
本方法は、電流が50ミリ秒~約1秒の間流れることを提供してよい。
【0023】
この方法は、高電圧が2800℃~3000℃の間でピルを加熱することを提供してよい。
【0024】
本方法は、少なくとも1つのカーボンピルが20N~60Nの間の力で圧縮されることを提供してよい。
【0025】
本方法は、カーボンピルからそれた粉末を遮断するシールドを配置することを含んでもよく、ここでシールドはカーボンピルと物理的に接触しない。
【0026】
本方法は、シールドが石英であることを提供してよい。
【0027】
本方法は、変換されてない炭素をグラフェンから除去することを含んでよい。
【0028】
本方法は、少なくとも1つのカーボンピルが複数のカーボンピルであることを提供してよい。
【0029】
本方法によって乱層グラフェンが製造されてよい。
【0030】
いくつかの実施形態によれば、ジュール加熱によってグラフェンに合成するための第1の炭素材料を備える、グラフェン変換のためのカーボンピルが提供される。第1の炭素材料は、粉末状から錠剤状に圧縮される。また、カーボンピルは、第1の炭素材料を粉末状から錠剤状に結合させること、および第1の炭素材料の導電性を向上させることの少なくとも一方を行うための第2の材料を備える。
【0031】
カーボンピルは、第2の材料が、第1の炭素材料を粉末状から錠剤状に結合させるためのものであることを提供してよい。
【0032】
カーボンピルは、第2の材料が、第1の炭素材料の導電性を向上させるためのものであることを提供してよい。
【0033】
カーボンピルは、第1の炭素材料が、石油コークス、タイヤのカーボンブラック、冶金用コークス、プラスチックの灰、挽いたコーヒーおよび無煙炭からなる群のうちの少なくとも1つを含むことを提供してよい。
【0034】
カーボンピルは、第2の材料が、第1の炭素材料を粉末状から錠剤状に結合するためのものであり、挽いたコーヒー、トウモロコシのデンプン、松樹皮、ポリエチレンミクロワックス、ワックス、ケンプレックス690、セルロース、ナフテン油、アスファルテネスおよびギルソナイトからなる群のうちの少なくとも1つを含むことを提供してよい。
【0035】
カーボンピルは、第2の材料が第1の炭素材料の導電性を向上させるためのものであり、石油コークス、タイヤのカーボンブラック、カーボンブラック、冶金用コークス、乱層グラフェンおよびカーボンナノチューブからなる群のうちの少なくとも1つを含むことを提供してよい。
【0036】
カーボンピルは、約0.7~1.4g/ccの密度を有してよい。
【0037】
カーボンピルは、約16~140mS/mの導電率を有してよい。
【0038】
カーボンピルは、第1の炭素材料の流動および圧縮を補助するための潤滑性添加材料を含んでよい。
【0039】
カーボンピルは、潤滑性添加剤が、微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、ステアリン酸マグネシウムおよび二酸化ケイ素からなる群のうちの少なくとも1つを含むことを提供してよい。
【0040】
カーボンピルは、カーボンピルが、円柱、円盤、長方形、六角形、多角形、ドーナツ状およびそれらの組み合わせの幾何学的群に属する形状を有することを提供してよい。
【0041】
カーボンピルは、その形状が、カーボンピルの片側をピルの反対側に接続する少なくとも1つの中空構造を含むことを提供してよい。
【0042】
カーボンピルは、その形状が、中空円柱、中空円盤、中空六角形の群を含むことを提供してよい。
【0043】
カーボンピルは、カーボンピルの少なくとも1つの端面が主に平坦であることを提供してよい。
【0044】
カーボンピルは、カーボンピルの少なくとも1つの端面が凹面および凸面の群に属することを提供してよい。
【0045】
乱層グラフェンが、カーボンピルから合成されてよい。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、少なくとも2つの電極を含む、カーボンピルをグラフェンに変換するための装置が提供される。電極は、高温で動作する。電極は、カーボンピルを支持するように構成される。装置は、カーボンピルをグラフェンに変換するように電極を通じて電流を通すために、電極に接続された電源を含む。
【0047】
装置は、電極が少なくとも2つの部分を含むことを提供してよい。少なくとも1つの部分は金属であり、少なくとも第2の部分はグラファイトである。
【0048】
装置は、金属の部分が、真鍮、銅、タングステン、チタン、ステンレス鋼、ステンレス鋼合金、モリブデン、タンタル、ニッケル、合金およびそれらの組み合わせからなる群からの高温金属であることを提供してよい。
【0049】
装置は、第2の部分が金属炭化物の高温材料であることを提供してよい。
【0050】
装置は、電極が1000℃を超える温度で動作することを提供してよい。
【0051】
装置は、電極が、円柱、円盤、長方形、六角形、多角形、円錐、平たい円錐およびそれらの組合せの幾何学的群に属する形状を有することを提供してよい。
【0052】
装置は、カーボンピルを支持している電極の側面が、主に平坦であることを提供してよい。
【0053】
装置は、カーボンピルを支持している電極の側面が、凹面および凸面のうちの少なくとも一方を含むことを提供してよい。
【0054】
本装置は、電極が、平坦な表面電極から円筒形の表面電極に、高密度の電流を流すように構成されたクランプをさらに含むことを提供してよい。
【0055】
装置は、筐体内に封入されていることを提供してよい。
【0056】
装置は、筐体が真空下にあることを提供してよい。
【0057】
装置は、筐体が、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素およびそれらの組み合わせの群からのガスで満たされていることを提供してよい。
【0058】
装置は、筐体が、プレキシガラス、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アルミニウムおよびステンレス鋼を含む材料群から作られることを提供してよい。
【0059】
いくつかの実施形態によれば、カーボンピルを2つの電極の間で圧縮することを含む、グラフェンを合成するための方法が提供される。カーボンピルは、少なくとも1つの炭素材料と、少なくとも1つの粉末結合材料と、少なくとも1つの導電性向上材料とを含む。本方法はまた、ピルに電流を流すことを含む。本方法はまた、主に少なくとも1つの炭素材料をグラフェンに変換することを含む。
【0060】
いくつかの実施形態によれば、乱層グラフェン材料が提供され、乱層グラフェンは、カーボンピルをジュール加熱することによって合成される。
【0061】
乱層グラフェンは、カーボンピルが少なくとも1つの炭素材料および少なくとも1つの結合材料を含むことを提供してよい。
【0062】
乱層グラフェンは、カーボンピルが少なくとも炭素材料および少なくとも1つの導電性向上材料を含むことを提供してよい。
【0063】
乱層グラフェンは、カーボンピルが、少なくとも1つの炭素材料、少なくとも1つの結合材料、および少なくとも1つの導電性向上材料を含むことを提供してよい。
【0064】
他の態様および特徴は、いくつかの例示的な実施形態の以下の説明を検討することにより、当業者にとって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0065】
ここに含まれる図面は、本明細書の物品、方法、および装置の様々な例を説明するためのものである。
【0066】
図1図1は、一実施形態による、第1の炭素材料および第2の材料をプレス工具で圧縮することによって製造されるカーボンピルの透視図である。
【0067】
図2A図2Aは、高アスペクト比のカーボンピルを製造するためのプレス機の一実施形態を示す正面図である。
【0068】
図2B図2Bは、一実施形態によるプレス機の断面図である。
【0069】
図3図3は、一実施形態による、図2Aおよび図2Bのプレス機を用いて30%のバインダーと70%の炭素系材料から作られた、外径15mmのカーボンピル305を示す図である。
【0070】
図4図4は、一実施形態による、カーボンピルを製造するための装置を示す図である。
【0071】
図5図5は、一実施形態による、自動ピルプレス機によって製造されたカーボンピルを上から見た図である。
【0072】
図6図6は、一実施形態による、押し出し工程を通じてカーボンピルを製造するための装置を示す図である。
【0073】
図7図7は、一実施形態による、カーボンピルをグラフェンに変換するための装置を示す側面図である。
【0074】
図8図8は、一実施形態による、力センサおよび抵抗センサを含むカーボンピルをグラフェンに変換するための装置の側面図である。
【0075】
図9図9は、一実施形態による、グラフェンを合成するための方法を示すフローチャートを示す図である。
【0076】
図10図10は、一実施形態による、グラフェンを製造する方法を示すフローチャートである。
【0077】
図11図11は、一実施形態による、カーボンピルをグラフェンに変換する方法を実行する装置を示す図である。
【0078】
図12図12は、一実施形態による、グラファイト円盤を使用せずにカーボンピルをグラフェンに変換する方法を実行する装置を示す図である。
【0079】
図13図13は、一実施形態による、平らなカーボンピルをグラファイト円盤なしでグラフェンに変換する方法を実行する装置を示す図である。
【0080】
図14図14は、一実施形態による、表3のカーボンピルの試料から製造されたグラフェンのラマン分光測定値を示す図である。
【0081】
図15図15は、一実施形態による、ジュール加熱後にカーボンピルをグラフェンに変換するための装置を示す図である。
【0082】
図16図16は、一実施形態による、円柱状のカーボンピルをグラフェンに変換する方法を実行する装置を示す図である。
【0083】
図17図17は、一実施形態による、カバー管なしで円筒形のカーボンピルをグラフェンに変換する方法を実行する装置を示す図である。
【0084】
図18図18は、一実施形態による、カーボンピルをグラフェンに変換するための装置の分解された電極を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
詳細な説明
請求された各実施形態の例を提供するために、様々な装置または工程を以下に説明する。以下に記載される実施形態は、いかなる請求される実施形態も制限せず、いかなる請求される実施形態も、以下に記載されるものとは異なる工程または装置を対象とすることができる。また、請求される実施形態は、以下に説明されるいずれか1つの装置または工程の特徴の全てを有する装置または工程、または以下に説明される複数または全ての装置に共通する特徴に限定されるものではない。
【0086】
本明細書で提供されるものは、一実施形態によれば、容易に保管、輸送および処理でき、閉じ込める必要がないカーボンピルである。カーボンピルは、ジュール加熱し、カーボンピル中の炭素をグラフェンに変換するのに適している。
【0087】
本明細書に提供されるものは、一実施形態によれば、追加の支持および閉じ込めなしにピルを所定の位置に保持し、ピルに電圧を印加し得る熱弾力電極および圧縮ばねを含み、カーボンピルをグラフェンに変換する装置である。
【0088】
本明細書に提供されるのは、一実施形態による、2800~3000℃の温度でピルをジュール加熱することによって、カーボンピルからグラフェンを合成する方法である。カーボンピルからグラフェンを合成する方法は、主に数層の乱層グラフェンを生成する。乱層グラフェンは、互いに対して配向がずれている複数のグラフェン層である。したがって、これらの層は、ABスタックされていない。乱層グラフェンのグラフェン層構成により、グラフェン粉末を液体中に容易に分散させることができる。グラフェンの分散が容易になると、より優れたグラフェン組成物の作製が可能になる。
【0089】
乱層グラフェンとは、グラフェン層間にほとんど秩序がないグラフェンのことである。その他の使用され得る用語としては、ミスオリエンテッド、ツイスト、ローテート、ローテートリーフォールトおよび弱結合などがある。乱層グラフェンの回転積層は、層間結合を緩和し、面間の空間を増加させるため、同程度の重量で比較した場合、競合するグラフェン構造よりも優れた物理的特性をもたらす。隣接する層の積層方向の微妙な違いが、製品性能の重要な違いとして表れる。乱層グラフェンの重要な性能上の利点は、多層グラフェン構造が少数の個別のグラフェン層に分離しやすく、グラフェン層が再カップリングしない傾向があることである。グラフェンの乱層の性質は、ラマン分析によって観察および確認できる。
【0090】
フラッシュジュール加熱合成方法およびその組成物は、2020年3月12日の国際公開日を有する、Tourらの国際公開番号WO2020/051000A1を有する特許協力条約出願に記載されており、その全体は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0091】
例1-グラフェン変換のためのカーボンピル
提供されるものは、ジュール加熱によってグラフェンに合成するための第1の炭素材料を含む、グラフェン変換用のカーボンピルである。この第1の炭素材料は、粉末状から錠剤状に圧縮されている。また、カーボンピルは、第1の炭素材料を粉末状から錠剤状に結合させるため、または第1の炭素材料の導電性を向上させるための第2の材料を含む。
【0092】
表1を参照すると、グラフェン変換のためのカーボンピルの一実施形態のパラメータが示されている。
【表1】
【0093】
第1の炭素材料は、ジュール加熱によってグラフェンに変換され得る物質を含んでよい。ジュール加熱によってグラフェン変換するためのカーボンピルを製造するための第1の炭素材料は、グリーン石油コークス、か焼石油コークス、カーボンブラック、再生タイヤからのカーボンブラック、冶金用コークス、石炭、無煙炭、再生プラスチックからの灰、使用済みコーヒー粒、およびこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つ以上を含む。
【0094】
第1の炭素材料は、他の材料添加物なしで、ダイおよびプレス機の助けによってピルに圧縮され得る。例示的な材料は、グリーンペットコークスおよび使用済みコーヒーかすを含む。したがって、いくつかの材料は、第1の炭素材料および第2の結合材料の両方であってよい。
【0095】
炭素材料の形態によっては、うまくくっつかず、ピルを扱えるような機械的強度を持たない。第1の炭素材料を結合するための第2の材料は、その形態の形成および保持を助けるために、ピルに圧縮する前に炭素粉末に添加されてよい。結合剤は、リグナンまたはコーヒーなどのリグナンを有する材料を含む。
【0096】
第1の炭素材料は、ピルに圧縮され得るが、90Vから600Vの範囲の電圧でジュール加熱するのに十分な電気伝導度を有しておらず、実用的でない高電圧を必要とする場合がある。また、第1の炭素材料の導電性を向上させるための第2の材料を、ピルに圧縮する前に炭素粉末に添加してもよい。導電性添加材料は、カーボンブラック、タイヤのカーボンブラック、か焼石油コークス、冶金用コークス、単層および多層カーボンナノチューブ、グラフェンおよびこれらの任意の組み合わせのいずれか1つ以上を含む。
【0097】
第1の炭素材料がうまくくっつかず、容易にジュール加熱されるのに十分な電気伝導度を有しない場合がある場合、バインダー材料である第2の材料を加えてピルの形成を助け、導電性添加材料である別の材料を加えてピルの電気伝導度を増加させることができる。第1の炭素材料は、プラスチック灰、熱分解されたプラスチック、生粉砕プラスチック粉のうちいずれか1つ以上を含む。
【0098】
改良されたグラフェン材料を形成するために、ドーパント不純物が意図的にピルに添加されてよい。ドーパントは、Fe、Ni、B、またはF(化合物を介して)のうちのいずれか1つ以上を含む。改良された特性の例としては、磁性、熱伝導性および電気伝導性、ならびに機能化が挙げられる。
【0099】
表2を参照すると、ここで提供されるものは、炭素材料、結合剤、および導電性添加剤、ならびにグラフェン変換用カーボンピルにおけるそれらの質量利用率のリストである。
【表2】
【0100】
第1の炭素材料および第2の材料を粉末状でダイ空間に配置することを含む、カーボンピルの製造方法が提供される。この方法はまた、第1の炭素材料および第2の材料を、粉末状から錠剤状にプレス工具で圧縮することを含む。
【0101】
図1を参照すると、そこに図示されているものは、第1の炭素材料および第2の材料をプレス工具で圧縮することによって製造される、一実施形態によるカーボンピル100である。炭素粉末は、ダイとパンチと油圧プレスとの助けによって、ジュール加熱に適した錠剤状に圧縮される。
【0102】
炭素系粉末とバインダーとの比率は、高精度の秤で測定できる。炭素およびバインダーのそれぞれは、まず乳鉢と乳棒とで数分間、個別に、あるいは一緒に粉砕される。大規模の場合、mmから5ミクロンの粒子に粉末を粉砕するために、ボールミルが使用される。粉末は均一になるように混ぜ合わされ、ダイに充填される。その後、ピンがダイに挿入され、そのセットが油圧プレスのヘッドの下に挿入される。油圧プレスは2~10トンの圧力をかけ、その圧力を1秒~5分間保持し、ピルを形成する。その後、カーボンピルは、ダイから排出される。
【0103】
一実施形態では、錠剤状グラフェンの変換は、破砕せずに保管、取り扱い、および移動されることを必要とする。好ましいピルの寸法は、直径10~20mm、長さ4~50mmであってよい。好ましいピルの密度は、約0.7~1.4g/ccであってよい。ピルは、約16~140mS/m(ピルの長さにわたって2~20Ω)の導電性を有してよい。ピルは、それが処理される前に、約2~10kg(20~100N)のクランプ力に耐えてよい。ピルは、崩壊することなく、数秒間、複数回、600℃まで加熱されてよい。
【0104】
ピルのための第1の炭素材料となり得る例示的な炭素粉末は、限定されないが、カーボンブラック、タイヤのカーボンブラック、ペットコークス(グリーンおよび焼成済み)を含む。ピルの第1の炭素材料を結合するための例示的な第2の材料は、限定されないが、コーヒー、松樹皮、グリーンペットコークス、PEマイクロワックス、ワックス、および市販の炭素バインダーChemplex690を含む。
【0105】
100~200ミクロンの粒径の炭素粉末がピルに用いられてよい。ピル組成物は、80%の第1の炭素材料と、第1の炭素材料を結合するための20%の第2の材料とを含んでよい。
【0106】
図2Aを参照すると、そこに示されているのは、高アスペクト比のカーボンピルを製造するためのプレス機200の一実施形態の正面図である。図2Bは、一実施形態によるプレス機200の断面図である。外径20mmのカーボンピル210をプレスするために使用される20mmのダイ205は、外径と長さとのアスペクト比が、1:0.5から1:5までと高い。
【0107】
プレス機200は、第1の炭素材料および第2の材料が配置されるダイ空間215を含む。空間215は、プレスされている間、粉末が逃げるのを防ぐ壁220によって包まれている。ピルは、ピン205とベース225との間で圧縮される。
【0108】
カーボンピル210を作るための圧縮力は、圧縮された面積1cmあたり1トンから12トンの力である。最適な圧縮力は、1cmあたり約5トンの力である。
【0109】
図3を参照すると、そこに図示されているのは、一実施形態による、図2Aおよび2Bのプレス機を用いて30%のバインダーと70%の炭素系材料とから作られた、15mmの外径を有するカーボンピル305である。カーボンピル305は、ピル材料の組成および圧縮力に依存して、約100Ω~1kΩの抵抗を有する。
【0110】
炭素粉末は、ダイとパンチと万力との助けによって、ジュール加熱によるグラフェン変換に適したピルに圧縮されてよい。一例では、カーボンピルを製造するために、薬剤の錠剤製造機で通常使用されるダイおよびパンチのセットが使用された。内径10mmのセットが使用された。セット内のピンは、圧縮されたピルを楕円形にするために、楕円形(球状のカップ)の端部を有する。
【0111】
始めの材料として、トルコ式挽きコーヒーなどの細かく挽いたコーヒーを使用し、コーヒーを作った。その後、使用したコーヒー挽物を400°Fで数時間焼成して、水分を除去してよい。乾燥させたコーヒーに10重量%のカーボンブラックを加え、乳鉢で混合し、微細な混合を行った。
【0112】
図4を参照すると、一実施形態による、カーボンピルを作るための装置400が示されている。粉末状の炭素材料は、ダイ405に注がれ、2本のピン410で塞がれる。組立品は、機械工場の万力415を使用して圧縮される。圧縮の力は、約250kg(2500N)であると推定される。炭素材料および第2の材料の圧縮からカーボンピル420が製造される。材料が200mgの場合、製造されるカーボンピルは、高さ約3.5mm、外径約10mmである。手動で製造されるカーボンピル420は、自動プレス機を使用する場合、ずっと遅い速度で製造される。商業的な生産のために、錠剤を圧縮する機械が使用されてよい。また、直径6mm~25mmのダイのセットが使用されてよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、カーボンピルを圧縮するために、自動化された機械が使用される。自動化された機械は、モータ駆動の単一パンチ機械であり、手動モードおよび1時間当たり2000錠の速度で自動で操作できる。操作は完全に機械的で、上下のカムが上下のピストンを同期して駆動する。電気モータがクランクを回転させるための電力を供給する。ピストンの圧力は、ゼロから5トンまで調整できる。タブレットダイは、深さ6mm、直径最大20mmであってよい。
【0114】
典型的なピル製造工程における粉末材料の分注の間、粉末の流れは重力および揺動によるものであり、非常に効率的である。調剤アームは、充填される穴の上をしっかりとスライドし、前後に移動する。アームが粉末を失うことなく余分な材料を拭い取るため、空間が満たされすぎることはない。
【0115】
材料の流動性および圧縮粘着性は、ピルを製造する際に調整できる粉末特性である。より良い粉末分注のための有利な点は、カスタムCAMを利用して、より多くの粉末振盪を行い、圧縮前にダイが完全に粉末で満たされていることを確認することである。また、エンコーダ付きのステッピングモータを使用してモータを駆動し、既存のCAMを使用してカスタム工程制御を追加することもできる。ステッピングモータを使用することで、非常に機械的なシステムに自動化を追加できる。
【0116】
いくつかの実施形態では、挽いたコーヒーのような新鮮で乾燥した結合剤は、添加物なしで5トンの圧力でタブレットに圧縮されてもよく、上手く扱われてジップロック(登録商標)バッグに保管されて輸送されてよい。コーヒータブレットはまだ多孔質であり、強い手押しで砕け得る。
【0117】
また、環境の水分を多少含んだコーヒーベースのカーボンピルは、添加物を一切使用せずに、5トンの圧力でタブレットに圧縮されてよい。多少の環境の水分を有するコーヒーベースのカーボンピルは、乾燥したコーヒー粉末よりも若干良好に圧縮されるが、ピルがダイに付着することがあり、粉末の流れは乾燥粉末ほど良好ではない。
【0118】
一実施形態では、第1の炭素材料は、粉末中の水分を除去または低減し、より良い粉末の流れを可能にし、したがってより速いピル製造を可能にするように、静止または混合アームと共に、大気中または真空のオーブンで乾燥される粉末である。
【0119】
図5を参照すると、そこに図示されているのは、一実施形態による自動ピルプレス機によって製造されたカーボンピル500である。カーボンピル500は、95%の乾燥されていないコーヒーと5%のカーボンブラックとを使用して、自動ピルプレス機で製造される。カーボンブラックを用いた圧縮は、100%のコーヒー粉末よりも容易である。カーボンブラックの質量%が高いほど、カーボンピルの圧縮を良好に行うことができる。コーヒー100%よりも、コーヒーとカーボンブラックとの粉末の流れが良くなり、より少ない力でコーヒーとカーボンブラックの粉とをピルにプレスできる。カーボンピル500は、直径が10mm、高さが5mmである。各ピルの質量は、0.25gから0.4gの間である。圧縮後のピルの抵抗は、約1.2kΩである。ピルの抵抗は、粉末混合物中のカーボンブラックの重量パーセントを増加させるなど、粉末の導電性を増加させることによって減少させることができる。最適なピルの抵抗は、20Ωから1kΩの間である。
【0120】
自動ピルプレス工程は、グラフェン変換に適した他のあらゆる種類の炭素材料およびそのような材料の任意の組み合わせにも適用できる。さらに、自動ピルプレス工程は、表1に記載された成分の任意の組み合わせに適用できる。
【0121】
食品産業で使用される添加物のような、ピルの流動(潤滑)および圧縮を補助する添加物も、ジュール加熱によるグラフェンの製造のための炭素ベースのピルの製造に使用できる。カーボンピルに使用され得る潤滑性添加材料は、限定されないが、微結晶性セルロース(MCC)、リン酸二カルシウム、ステアリン酸マグネシウムおよび二酸化ケイ素を含む。潤滑性添加剤の組み合わせを使用してもよいし、MCCのような単一の潤滑性添加剤を使用してもよい。また、バインダーおよび潤滑性添加材料として、デンプンを用いてもよい。例えば、5重量%の分は、粉末の流れに添加する潤滑性添加材料とすることができる。
【0122】
粉末中に閉じ込められた空気の圧縮により、ダイに圧力がかかる。ダイへのストレスを避けるために、2つのパンチ機械があり、2つのパンチ機械は、まず粉末を予備圧縮し、予備圧縮された粉末をタブレットに圧縮する。2つのパンチ機械は、圧縮を測定し、予備圧縮および本圧縮のステップを有する。いくつかの実施形態では、2パンチの最大処理能力の機械を使用すると、1時間当たり15,000錠を生産する。
【0123】
二重圧縮でエアポケットを制御し、したがってダイへの応力を低減することによって、いくつかの実施形態では、ステンレス鋼のダイが石英のダイに置き換えられ、したがって炭素系材料のジュール加熱が圧縮中に行われることがある。ジュール加熱のステップは、代替的に、圧縮の後に実行されてよい。
【0124】
高速ピル製造機の一例は、1時間当たり200.000個のカーボンピルを製造できる。機械によって生産される各ピルが0.25gであり、ジュール加熱工程が機械のピルの生産と釣り合う場合、この工程は1時間当たり約50kgのグラフェンを生産できる。
【0125】
図6を参照すると、そこに示されているのは、一実施形態による、押し出し工程を通じてカーボンピルを製造するための装置である。粉末625は、漏斗605に連続的に粉末押出機610に充填される。押出機610は粉末625を圧縮し、所望の寸法でノズル630またはダイを介して材料を排出し、カーボンピル620は回転刃615を使用して特定の長さに切断される。
【0126】
カーボンピルは、カーボン粉末が圧縮された任意の形状であってよい。いくつかの実施形態では、カーボンピルは、円形の断面と平らな端部を有する円筒形である。別の実施形態では、丸薬は、長方形の断面を有する長方形である。別の実施形態では、カーボンピルはレンガ状である。別の実施形態では、カーボンピルは、真ん中に少なくとも1つの穴を有する。別の実施形態では、カーボンピルは、断面を考えて分布した複数の穴を有する。穴の目的は、より均一な熱分布とガスの逃げ道とを可能にすることである。ピルは、例えば、中空の円盤であってよい。ピルの端部は、限定されないが、平坦、凹状、凸状であってよく、あるいは、より良いピルのクランプのために円錐形の終端を有してよい。
【0127】
例2-カーボンピルをグラフェンに変換するための装置
ここでは、少なくとも2つの導電性表面の間に空間を含む、カーボンピルをグラフェンに変換するための装置を提供する。導電性表面は、空間内でカーボンピルを支持するように構成される。この装置は、少なくとも2つの導電性表面に電気的に結合された少なくとも2つの電極を含む。この装置は、カーボンピルをグラフェンに変換するように、電極に電流を流すために電極に接続された電源も含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、装置は、カーボンピルに接触することなく、カーボンピルからそれた粉末を遮断するように構成された、空間を囲むように配置されたシールドも含む。シールドは、石英から作られてよい。装置はまた、カーボンピルに加えられる圧縮力を検出するための力センサと、充填中および処理中の、カーボンピルの電気抵抗を測定するための抵抗センサとを含んでよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、2つの導電性表面は、導電性円盤に圧縮力を加え、空間内にカーボンピルを懸架するために圧縮ばねに結合される。導電性表面は、グラファイト円盤であってよい。
【0130】
この装置は、カーボンピルをジュール加熱することによって、乱層グラフェンを製造するために使用されてよい。
【0131】
いくつかの実施形態では、カーボンピルをグラフェンに変換するための装置は、追加の支持および閉じ込めなしにピルを所定の位置に保持し、ピルに電圧を印加するグラファイトベースの熱弾性電極および圧縮スプリングを含む。本開示はまた、ピルをジュール加熱する助けによって、炭素ベースのピルをグラフェンに変換する工程も開示する。
【0132】
図7を参照すると、ここでは、一実施形態による、カーボンピル715をグラフェンに変換するための装置700が図示されている。カーボンピル715は、高温に耐える優れた電気伝導性を有する2つのバネ圧縮されたグラファイト電極725によって、浮かされている。グラファイト材料は、3000℃という高い温度でも、ジュール加熱中に生成されるグラフェンを汚染しない。グラファイト電極725は、一組のロッドベアリング710、740を通して自由にスライドする真鍮電極730から電力を得る。ロッドベアリング710の一方は接地され、他方のロッドベアリング740はスライドする。一組の圧縮ばね735は、ベアリング710、740を押し退け、真鍮730およびグラファイト電極725を押して、カーボンピル715を圧縮させる。装置700は、カーボンピル715を浮かせるに圧縮ばね735を使用して示されているが、ジュール加熱中にカーボンピルを浮かせるのに十分である任意の機構が使用されてよい。また、この装置は、電気バイスと呼ばれることもある。
【0133】
炭素をグラフェンに変換するジュール加熱工程は1ミリ秒~5秒続き、その間にピーク温度は1~100ミリ秒で3000℃まで到達する。しかしながら、放射冷却により、ピルの熱のほとんどは、ピル715に直接接触しているグラファイト電極725を除いて、周囲環境および装置700の他の構成要素に放散される。装置の他の構成要素は、200℃から1500℃のピーク温度に達する可能性がある。したがって、装置の他の部品は、高温での定格が必要である。
【0134】
電源705は、カーボンピル715をジュール加熱するために、電力を装置700に供給する。装置700はまた、ハーフ石英管であるシールド720を含む。
【0135】
いくつかの実施形態では、装置700の本体は、3Dプリントされたプラスチック部品から作られ、所定の力で1つの電極を他の電極に対して移動させるために、リニアステージを利用する。ピル715のクランプ力は、セットスクリューで調整され、円盤力センサを使用して監視されてよい。装置700はまた、カーボンピル715と接触しない石英管であるシールド720を有し、その目的は、カーボンピル715をグラフェンに変換するジュール加熱工程中に発生する飛散粉を回収することである。
【0136】
保護用石英管はカーボンピル715と接触していないため、石英管は、劣化せず、複数回使用され得る。いくつかの実施形態では、石英管は、ハーフ石英管に置き換えられる。ハーフ石英管は長手方向に切断されており、カーボンピル715から飛散した粉末を下方向にそらせ、回収ビン(図示せず)に入れることができる。カーボンピル715の底部は、回収ビンに対して開放されている。
【0137】
図8を参照すると、ここに図示されているのは、力センサ810および抵抗センサ805を含むカーボンピル715をグラフェンに変換するための一実施形態による装置700である。力センサ810は、限定されないが、滑りベアリング740と圧縮ばね735との間に挟まれた円盤力センサであってよい。滑りベアリング740がバネ735を圧縮しているとき、間にある力センサ810は、カーボンピル715に加えられる力を検出する。
【0138】
ピル715は、20N~100Nの範囲の力で圧縮される。さらに、この装置は、ピル圧縮力の関数としてカーボンピルの715の抵抗を測定する抵抗センサ805を組み込んでいる。いくつかの実施形態では、抵抗センサ805は、高電力から回路を保護するために、手動または自動のスイッチを介して高電力回路から分離される。ピル抵抗は、工程の前、工程ステップの間、およびジュール加熱変換の後に測定され得る。ピル抵抗は、1~500Ωの範囲にある。力センサ810および抵抗センサ805の存在により、装置700を自動化できる。1つの自動化例では、所望の力または抵抗が達成されるまで、モータがベアリング740をスライドさせる。
【0139】
いくつかの実施形態では、カーボンピルは、より大きな質量を作るために一緒に積み重ねられ、したがってグラフェンの生産を速める複数のカーボンピルであってよい。例えば、5つの1gのカーボンピルを積み重ねて、合わせて5gのカーボンピル試料を作ってよい。カーボンピルは互いに接触していてもよいし、間にグラファイト円盤電極を挿入して加熱プロファイルをより分散させるようにしてもよい。
【0140】
カーボンピルのジュール加熱は、大気中、真空チャンバー内、または酸素、窒素、アルゴン、フルオレン、または得られるグラフェンの特性を向上させる他のガスで満たされたガスチャンバー内で行うことができる。
【0141】
例3-グラフェンを合成するための方法
図9を参照すると、そこに示されているのは、一実施形態による、グラフェンを合成するための方法900を示すフローチャートである。方法900は、905において、2つの電極の間においてカーボンピルを圧縮することを含む。カーボンピルは、ジュール加熱によってグラフェンを合成するための第1の炭素材料と、第1の炭素材料を粉末状から錠剤状に結合する、または第1の炭素材料の電気伝導度を改善するための第2の材料とを含む。
【0142】
方法900はまた、910において、カーボンピルに電流を流すことを含む。
【0143】
方法900はまた、925において、主に第1の炭素材料をグラフェンに変換することを含む。
【0144】
方法900は、任意選択的に、915において、カーボンピルから水分および揮発性物質を除去するために、カーボンピルに低電圧で電流を流すことを含んでよい。低電圧の電流を流すことは、915において、すべての水分および揮発性物質がカーボンピルから除去されるまで任意選択で繰り返されてもよい。
【0145】
方法900は、任意選択的に、920において、第1の炭素材料をグラフェンに変換するために、カーボンピルに高電圧で別の電流を流すことを含んでもよい。高電圧の電流を流すことは、920において、すべての炭素材料がグラフェンに変換されるまで、任意選択的に繰り返されてよい。
【0146】
方法900は、任意選択的に、930において、変換されていない炭素をグラフェンから除去することを含んでよい。
【0147】
いくつかの実施形態では、外径15mmおよび長さ5mmの1gのカーボンピルを、20N~60Nのクランプ力および2~100Ωのピル抵抗で、例2の装置に固定する。ピルに印加される電圧は、直流、交流、またはそれらの任意の組み合わせでよい。前処理段階において、80~100Vの低電圧が、500ミリ秒の時間、ピルに印加される。前処理段階は、最初の原料の性質に基づいて、必要に応じて繰り返される。カーボンピルの抵抗により、電圧は電流を誘起し、試料は400℃から800℃の温度まで急速に加熱される。400℃から800℃の温度で、カーボンピルに含まれるほとんどの揮発性物質および水分が除去される。カーボンピルの密度が高すぎると、アウトガスの圧力でカーボンピルが破壊される可能性がある。好ましいカーボンピルでは、カーボンピル内に空隙が存在し、ピルを破壊することなくアウトガスを逃がすことができる。
【0148】
最終工程では、160V~400Vの電圧が、50ミリ秒~1秒の時間、前処理されたカーボンピルに印加される。ピルのジュール加熱の間、抵抗は劇的に低下し、したがってピルを通る電流は1500から3000Aの間に劇的に増加し、ピルの温度は2800℃~3000℃に達し、その間に炭素はグラフェンに変換される。この最終工程は、カーボンピルの組成や大きさによって数回繰り返されてよい。カーボンピルのエネルギーの大部分は、光フラッシュとも呼ばれる放射冷却によって除去され、カーボンピルは室温まで急速に冷却されるが、炭素材料はグラフェンに変換される。場合によっては、グラフェンは変形したピルとして残り、場合によってはピルは崩壊して粉末になる。いくつかの実施形態では、グラフェンは、グラフェンの存在のしるしである薄い灰色を有する。
【0149】
いくつかの実施形態では、前処理ステップおよび最終処理ステップは、電極への電圧を制御することによってジュール加熱の温度プロファイルが制御される、単一のジュール加熱ステップに統合される。カーボンピルは、低温で加熱された後、高温に加熱されるが、すべて1つの連続した加熱工程で行われる。温度プロファイルは、Proportional-Integral-Differential(PID)制御ループを使用して制御でき、入力は、パイロメータによって測定されたピル温度であり、出力は、電極への電圧であり、対応する電流を所定のピル抵抗に対して供給する。この電流はピルのジュール熱を誘発する。PID制御ループは、予測モデルおよび機械学習を用いて最適化されてよい。
【0150】
後工程のステップでは、グラフェンピルまたは粉末をふるいにかけて、グラフェンに変換されていない炭素である可能性のある大きな粒を除去する。いくつかの実施形態では、グラフェン粉末は柔らかく、容易にふるいに押し通されることができ、さらに小さな粒子に容易に粉砕されてよい。ある構成では、粉砕しにくい粒はグラフェンではないので、容易に濾過できる。最終的なグラフェン粒は、炭素材料粒の出発サイズに応じて、1~150ミクロンの範囲にあってよい。
【0151】
図10を参照すると、そこに示されているのは、一実施形態によるグラフェンを製造する方法1000を示すフローチャートである。方法1000は、1005において、カーボンピルを形成することを含む。ピルは、好ましくは、15mmの外径および4~5mmの厚さを有する。カーボンピルは、好ましくは、5トンの圧縮力を用いて形成される。カーボンピルは、好ましくは、カーボンピルをグラフェンに変換するための装置において、20N~60Nの力で締められる。カーボンピルは、好ましくは、2~100Ωの抵抗を有する。
【0152】
方法1000は、1010において、80V~100Vの電圧で電流を500ミリ秒の間カーボンピルに流すことによって、カーボンピルを前処理することを含む。前処理1010は、カーボンピルからすべての水分および揮発性物質が除去されるまで繰り返される。
【0153】
方法1000はまた、1015において、160V~400Vの電圧で電流を0.5~1秒の間カーボンピルに流すことによって、カーボンピルをジュール加熱することを含む。この工程は、すべてのカーボンピルがグラフェンに変換されるまで繰り返される。
【0154】
方法1000はまた、1020において、生成されたグラフェンを#100メッシュでふるい分け、ボールミルでグラフェンを粉砕することによって、グラフェンを後処理することを含む。
【0155】
例2の装置の使用によるカーボンピルからのグラフェン、特に乱層グラフェンの製造は、1日当たり1kgから1日当たり1トンの速度で大量のグラフェンを製造するように修正され得る。
【0156】
図11を参照すると、そこに図示されているのは、一実施形態による、カーボンピル1120をグラフェンに変換する方法を実行する装置1100である。カーボンピル1120は、内径10.5mmの石英管1115内において、真鍮電極1105に接続された2つのグラファイト円盤1110の間で圧縮される。カーボンピル1120と石英管1115の壁との間には、隙間が存在する。また、カーボンピル1120の形状が楕円形であるため、グラファイト円盤1110はピルの接線に接触する。カーボンピル1120は、抵抗が20~40Ωから約1.5Ωに低下するまで、低電圧電流で前処理された。前処理の間、ピルはその形状を維持する。高電圧電流によるジュール加熱の後、カーボンピル1120はグラフェン粉末に分解され、ごく少量の粉末がチューブから漏れた。石英管1115の管内壁に沿って細かい粉が残り、その粉はキムワイプおよびアルコールで洗浄された。最終的なバルクの粉末材料はグラフェンであった。
【0157】
図12を参照すると、そこに示されているのは、グラファイト円盤を使用せずにカーボンピル1205をグラフェンに変換する方法を実行する一実施形態による装置1200である。グラフェン変換の工程は、図11の装置1100と同じであるが、真鍮電極1215は、カーボンピル1205と直接接触する。また、カーボンピル1205と石英管1210の壁との間には、隙間が存在する。ジュール加熱電流は、最大で1459Aである。カーボンピル1205と直接接触しているため、真鍮電極1215は、ジュール加熱中に溶ける可能性がある。
【0158】
図13を参照すると、そこに図示されているのは、平らなカーボンピル1305をグラファイト円盤なしでグラフェンに変換する方法を実行する一実施形態による装置1300である。カーボンピル1305をジュール加熱するための装置1300が示されている。250mgの第1の炭素材料(90%のコーヒーおよび10%のカーボンブラック)を錠剤状にプレスし、ピル抵抗が2Ω以下になるまで前処理を行う。ピル1310は、ジュール加熱後も形状を維持するが、若干の質量を失い、200mgとなる。前処理された200mgは、乳鉢で粉砕され、再びピルとしてプレスされる。このピルは内径10.5mmの石英管1310に入れられ、ピルは真鍮のネジ1315のみに接触する。いくつかの追加の前処理を行った後、炭素のピル1315には損傷がない。ピル1305がジュール加熱された後、ピル1305は、グラフェン粉末に変化し、体積全体にわたって灰色物質を有する。炭素が逃げ出すための空隙がたくさんあるにもかかわらず、フラッシュ中に多くのグラフェンが失われることはない。典型的な最終のグラフェンの質量は、コーヒーベースのカーボンピル1305の場合、96mg(200mgのピルから出発)である。
【0159】
1つの工程例では、サンプルはまずピルとしてプレスされ、次にカーボンピルがグラフェンに変換するための装置に挿入され、ジュール加熱工程の間に、カーボンピルが200℃から1000℃の温度で前処理されて、水分、油分、および他の揮発分が除去されてから、2600℃から3000℃の温度でジュール加熱されて、炭素がグラフェンに変換される。
【0160】
いくつかの実施形態では、カーボンピルはその形状を維持し、前処理中に崩れない。
【0161】
いくつかの実施形態では、第1の炭素材料は、まず、水分、油分、および他の揮発物を除去するために別々に前処理され、次に、前処理された第1の炭素材料が粉砕され、次にピルとしてプレスされる。次のステップでは、前処理された第1の炭素材料からのカーボンピルは、カーボンピルをグラフェンに変換するための装置に挿入され、2600℃~3000℃の温度でジュール加熱されて、炭素がグラフェンに変換される。
【0162】
一実施形態では、ジュール加熱工程によって炭素がグラフェンに変換された後、カーボンピルはその形状を維持し、崩れず、別の変形例では、ピルはグラフェン粉末に変化する。
【0163】
表3を参照すると、いくつかの実施形態のカーボンピルの特性が示されている。2つの異なる組み合わせのカーボンピル組成物が示されている。試料64、65C、68C、70C、71Cおよび72Cは、10%のカーボンブラックおよび90%のコーヒーの組成物を有する。試料73Cおよび74Cは、70%の石油コークスおよび30%の松樹皮の組成物を有する。試料名に「C」が付くものは、直径4mmのピルに圧縮され、内径10mmの石英管内において、ジュール加熱されてグラフェンに変換される。そのため、ピルと石英との間の隙間は3mmである。試料64は圧縮されていないので、参考として使用する。ラマン分光の結果は、2DバンドとGバンドとの比(2D/G)である。したがって、製造されたグラフェンの2D/Gは0.7から1.2まで変化している。これらの結果は、圧縮した浮かされたカーボンピルからグラフェンを作ることが可能であることを裏付ける。
【表3】
【0164】
図14を参照すると、一実施形態にしたがって、そこに示されているのは、表3のカーボンピル試料から製造されたグラフェンのラマン分光測定値である。試料64によって生成されたグラフェンの2D/G比は1である。試料65Cによって生成されたグラフェンの2D/G比は0.7である。試料68Cによって製造されたグラフェンの2D/G比は1.2である。試料70Cによって製造されたグラフェンの2D/G比は1である。試料71Cによって製造されたグラフェンの2D/G比は1である。試料72Cによって製造されたグラフェンの2D/G比は0.4である。試料73Cによって製造されたグラフェンの2D/G比は0.9である。試料74Cによって製造されたグラフェンの2D/G比は0.7である。
【0165】
図15を参照すると、そこに示されているのは、ジュール加熱後にカーボンピル1505をグラフェンに変換するための一実施形態による装置である。カーボンピル1505は、70%の石油コークスと30%の松樹皮との混合物から作られ、1.4g/ccの密度で4mmの直径のピルに圧縮される。より大きな10mmの石英管1510内でジュール加熱された後のカーボンピル1505が示されている。ジュール加熱工程中のいくつかの破片は管壁に沿って集められるが、カーボンピル1505は管壁と接触していない。
【0166】
図16を参照すると、そこに示されているのは、円筒形のカーボンピル1620をグラフェンに変換する方法を実行する一実施形態による装置1600である。圧縮されたピル1620は、電極1605に接続されたグラファイト円盤1610へのより良い電気的接触を可能にするために、円筒形の形状を有している。また、内管よりも小さい直径を有する円筒形状は、カーボンピル1620と管1615との間に隙間を提供する。なお、管1615は透明でなくてもよい。
【0167】
一実施形態では、炭素が2600℃~3000℃の温度でグラフェンに変換されるカーボンピルのジュール加熱の後、カーボンピルは、好ましくは放射冷却によって非常に速く冷却される。圧縮された炭素がチューブに接触しているとき、チューブは、光を速く逃がし、放射冷却を可能にするために光学的に透明でなければならない。
【0168】
一実施形態では、試料から管までの距離が十分長く、試料から管への高速放射熱伝達を可能にする十分な熱容量があれば、カバー管は、透明である必要はない。
【0169】
一実施形態では、試料とカバー壁との間の隙間は1mm~5mmであり、別の例では、ギャップは5mm~100mmである。カバー管の材料は、限定されないが、セラミック、アルミナ、ステンレス鋼またはアルミニウムを含む。導電性のカバー管の場合、電極および試料からの電気的な絶縁が必要である。カバー管を積極的に冷却し、蓄積された熱をカバー管から除去することが有益な場合がある。積極的な冷却方法は、強制的なカバー管の外壁の空冷および水冷などを含む。
【0170】
図17を参照すると、そこに図示されているのは、一実施形態による、円筒形カーボンピル1715をカバー管なしでグラフェンに変換する方法を実行する装置1700である。カーボンピル1715の近傍には、カバー管は存在しない。電極1705に接続されたグラファイト円盤1710は、カーボンピル1715に直接接触する。輻射熱は、周囲に放散され、グラフェンの高速冷却を可能にする。回収トレイ1720は、粉末になったグラフェンを回収するように、処理領域の下に配置される。真空チャンバー1725は、ジュール加熱装置を囲んでおり、装置の一部であってよい。筐体とも呼ばれる真空チャンバは、ポンプで真空に排気されてよく、あるいは代わりに、窒素、アルゴン、ヘリウム、酸素、およびそれらの組み合わせの群からのガスで充填されてよい。真空チャンバーは、プレキシガラス、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アルミニウム、およびステンレス鋼を含む材料群から作られてよい。
【0171】
一実施形態において、第1の炭素材料は、ピルが同様の大きさの炭素粒から作られるように、粉砕され、ふるいにかけられる。全ての粒は、100~200ミクロンの範囲内であってよい。あるいは、炭素粒は、200~300ミクロンの範囲内であってよい。あるいは、粒は、300~600ミクロンの範囲である。第1の炭素材料を粉砕し、ふるい分けすることにより、カーボンピルの密度がより均一になり、ピルを破壊しない高温でのアウトガスを可能にする空隙がピル内に形成される。粒径の細かい粉末ほど耐久性が高く、ピルが薄くなる傾向がある。粒径の大きな粉末は、厚いピルを作る傾向があり、炭素材料の相が不連続になる。大きな粒径の原料は、炭素材料を前処理して揮発分を除去する必要なく、直接ジュール加熱される。
【0172】
一実施形態では、カーボンピルは、それぞれが同様の範囲の粒径を有する2種以上の炭素粉末で作られる。各粉末は、異なる特性を付加する。ある炭素種は結合性を付加し、別の炭素種はピルの導電性を付加できる。
【0173】
一実施形態では、ピルは2種以上の炭素粉末で作られており、一方の種は粒が大きく(ミクロンサイズ)、均一なサイズである一方、他方はナノメートルサイズである。各粉末は、異なる特性を付加できる。大きい方の炭素種が結合性を付加し、他の方がピルの導電性を付加してよい。このピルの設計の一例は、粒径が200~300ミクロンの結合しやすいグリーンペットコークスと、粒径がナノメートルの導電性カーボンブラックの混合物である。
【0174】
一実施形態において、カーボンピルは、2種以上の炭素粉末で作られている。1つの種は実質的に丸い粒を有し、他の種はカーボンナノチューブまたは炭素繊維のような細長い繊維を有する。
【0175】
図18を参照すると、一実施形態による、カーボンピルをグラフェンに変換するための装置の分解された電極1800が示されている。電極は、真鍮などの金属部品1805と、グラファイト円盤終端1810の2つの部品を有する。電極の金属部分は、真鍮、銅、タングステン、チタン、ステンレス鋼、ステンレス鋼合金、モリブデン、タンタル、ニッケル、合金、およびそれらの組み合わせからなる群からの高温金属から作ることができる。グラファイト円盤1810は、真鍮1805にねじ込まれてもよいし、真鍮部品1805は、グラファイト円盤1810が真鍮部品1805に対してより良く電気的に接触する面を有してよい。カーボンピルと接触する電気伝導性の面は、電極1800の真鍮部品1805またはグラファイト円盤1810のいずれかであってもよい。電極は、平坦な表面電極から円筒形の表面電極に高密度電流を流すように構成されたクランプ1815を含む。いくつかの実施形態では、真鍮部品は、代替的に銅で作られる。
【0176】
上記の説明は、1つまたは複数の装置、方法、またはシステムの例を提供するが、他の装置、方法、またはシステムは、当業者によって解釈されるように特許請求の範囲内にあることが理解されよう。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【手続補正書】
【提出日】2022-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンピルをグラフェンに変換するための装置であって、
少なくとも2つの導電性表面の間の空間であって、前記導電性表面が前記空間において少なくとも1つのカーボンピルを支持するように構成されている、空間と、
前記少なくとも2つの導電性表面に電気的に結合された、少なくとも2つの電極と、
前記少なくとも1つのカーボンピルをグラフェンに変換するように、前記電極を通じて電流を流すために前記電極に接続された電源と、を備える、
装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのカーボンピルに加えられる圧縮力を検出するための力センサをさらに備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つのカーボンピルの電気抵抗を測定するための抵抗センサをさらに備える、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの導電性表面は、前記導電性表面に圧縮力を加えて前記少なくとも1つのカーボンピルを前記空間において浮かせるための圧縮ばねに結合される、
請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記導電性円盤は、グラファイト円盤である、
請求項1に記載の装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置によって製造された、
乱層グラフェン。
【請求項7】
グラフェンを合成するための方法であって、
少なくとも1つのカーボンピルを2つの電極の間において圧縮することであって、前記ピルは、ジュール加熱によってグラフェンを合成するための第1の炭素材料と、前記第1の炭素材料を粉末状から錠剤状に結合させること、および前記第1の炭素材料の導電性を向上させることの少なくとも一方のための第2の材料とを備える、圧縮することと、
前記少なくとも1つのカーボンピルに電流を流すことと、
主に前記第1の炭素材料をグラフェンに変換することと、を含む、
方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのカーボンピルに電流を流すことは、
前記少なくとも1つのカーボンピルから水分および揮発性物質を除去するために、前記カーボンピルに低電圧で電流を流すことと、
前記第1の炭素材料をグラフェンに変換するために、前記カーボンピルに高電圧で別の電流を流すことと、をさらに含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記電流は、前記低電圧と前記高電圧との間で連続的に流れ、
前記低電圧は、80V~100Vの間であり、
前記高電圧は、160V~400Vの間である、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記低電圧は、400℃~800℃の間の温度に前記カーボンピルを加熱する、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記高電圧は、2800℃~3000℃の間で前記ピルを加熱する、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法によって製造される、
乱層グラフェン。
【請求項13】
グラフェン変換のためのカーボンピルであって、
ジュール加熱によってグラフェンに合成するための第1の炭素材料であって、前記第1の炭素材料が粉末状から錠剤状に圧縮される、第1の炭素材料と、
前記第1の炭素材料を粉末状から錠剤状に結合させること、および前記第1の炭素材料の導電性を向上させることの少なくとも一方のための第2の材料と、を備える、
カーボンピル。
【請求項14】
前記第2の材料は、前記第1の炭素材料を粉末状から錠剤状に結合させるためのものである、
請求項13に記載のカーボンピル。
【請求項15】
前記第2の材料は、前記第1の炭素材料の導電性を向上させるためのものである、
請求項13に記載のカーボンピル。
【請求項16】
約0.7~1.4g/ccの密度を有する、
請求項13に記載のカーボンピル。
【請求項17】
約16~140mS/mの導電率を有する、
請求項13に記載のカーボンピル。
【請求項18】
前記第1の炭素材料の流動および圧縮を補助するための潤滑性添加材料をさらに含み、
前記潤滑性添加剤は、微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、ステアリン酸マグネシウムおよび二酸化ケイ素からなる群のうちの少なくとも1つを含む、
請求項13のカーボンピル。
【請求項19】
前記カーボンピルの少なくとも1つの端面が主に平坦であるか、または、前記カーボンピルの少なくとも1つの端面が凹面および凸面の群に属する、
請求項13に記載のカーボンピル。
【請求項20】
請求項13に記載のカーボンピルから合成された、
乱層グラフェン。
【国際調査報告】